20歳の頃から唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第三十二夜は、お蕎麦と合わせて飲みたい日本酒を厳選して3本ご紹介。蕎麦の香り、風味、のどごしにぴったりな日本酒3本を選びました!(左から)「美酒の設計 純米吟醸」「神開 吟吹雪 九號 生原酒」「多満自慢 純米無濾過」秋田県由利本荘市にある齋彌酒造店の代表銘柄「雪の茅舎(ゆきのぼうしゃ)」。こちらの「美酒の設計」は、兵庫県の山田錦を使用し、香りも華やかで蕎麦の香りと合わさって好相性。「美酒の設計純米吟醸」720ml 2,260円(ひいな購入時価格)/株式会社 齋彌酒造店滋賀県甲賀市にある藤本酒造の代表銘柄「神開」。その名のとおり、神様のお告げで井戸を掘ったところ良質な水が湧き出したという由来から命名された。9号酵母と吟吹雪という酒造好適米を使用。酸味がたまらない「神開 吟吹雪 九號 生原酒」720ml 1,760円(ひいな購入時価格)/藤本酒造株式会社東京都福生市にある石川酒造の代表銘柄「多満自慢(たまじまん)」。こちらは一番ベーシックな純米酒で破格のプライスながら、そのおいしさでデイリー酒にもってこい。アルコール度数は14度と少し低め。「多満自慢 純米無濾過」720ml 1,130円(ひいな購入時価格)/石川酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「月に一度の晩酌がやってまいりました〜!」父・徹也(以下、テツヤ)「久しぶりだねぇ。髪の色変えたんだ?」ひいな「そう。毎回、髪色違うよね(笑)」テツヤ「今日はなんと特別ゲストをお呼びしております!」ひいな「どうぞ〜!」山崎智世(以下、山ちゃん)「失礼します!」テツヤ「フォトグラファーの山崎智世さんこと山ちゃんです。カナダからおかえり!」フォトグラファーの山崎智世さんは、現在カナダ在住。久しぶりの日本帰国で、伊藤家に居候中のところ、特別ゲストにご登場いただきました!ひいな「おかえりなさい〜!」山ちゃん「ただいま〜!」テツヤ「今、山ちゃんは伊藤家に居候中ってことでゲストに来てもらいました!」山ちゃん「伊藤さん家にはだいたい3週間くらいお世話になってます(笑)」テツヤ「だいぶいるね(笑)。いやぁ、山ちゃんが来てからね、酒量が増えちゃって(笑)」山ちゃん「私もですよ!お互いさまです」テツヤ「資源の日に出すゴミの量がすごくてさ(笑)。どんなに疲れて帰ってきても、ちょっとだけ付き合おうかなってなっちゃう」山ちゃん「昨日もね(笑)」テツヤ「早く寝ようと思ってたのに、結局夜中の2時半まで飲んじゃってさ」山ちゃん「俺はこれで寝るよ!って言いながら」テツヤ「あと一杯、って終わらなくて」ひいな「最近私が実家に帰ってくるとおかえりって言ってくれるしね。山ちゃんが帰っちゃうとさみしくなっちゃうね」山ちゃん「いらっしゃいってね。ひいなのことも小さい頃から知ってるし、なんか家族みたいな」ひいな「そうそう。カナダからおかえりなさい!」テツヤ「今回は、久しぶりに日本に帰国した山ちゃんに、ぜひおいしい日本酒をご紹介したいと思ってね」ひいな「日本酒って普段飲みますか?」山ちゃん「カナダでも買えるんだけどものすごく高いから、お正月しか飲めない」テツヤ「え〜お正月だけ?むしろカナダでどんな日本酒が飲めるのか気になるね」山ちゃん「すっごく高くて。『獺祭』『谷川岳』『加賀鳶』はあったかな」ひいな「どれもいいお酒ですね(笑)」山ちゃん「その3本を買って8,000円くらいしたかな」テツヤ「おぉ、いいお値段するね」山ちゃん「そう。だから日常的に日本酒を飲むのはなかなか難しいかな」テツヤ「そうなるよなぁ」山ちゃん「だから伊藤家に来て、いっぱいお酒があるのでたくさんいただいています」ひいな「今回はおうちでお蕎麦屋さんをしようと思って。お蕎麦屋さんに行くと日本酒飲みながらちょとっとつまみたいじゃない?」テツヤ「大人の贅沢だよね」ひいな「つまみながら飲みながら、日本を感じてもらう企画です!」テツヤ「山ちゃんにも久しぶりのそばでおもてなしってことで!」山ちゃん「おそば大好物です!」ひいな「よかった〜!」まずは、香りの華やかな純米吟醸「美酒の設計 純米吟醸」からひいな「お好きなおちょこをどうぞお選びください〜」テツヤ「蕎麦屋みたいだね」山ちゃん「わぁ〜!私はこれにしてみよ」テツヤ「いいねぇ」山ちゃん「3本あるけど、どれから飲むの?」ひいな「私の理想としては左の『美酒の設計』から。香りがすごいの。まず嗅いでみてほしい!」山ちゃん「う〜ん!いい匂い!」『美酒の設計』は、毎年お米のできに合わせて12種類ある酵母の中からどれを使うか選ぶというこだわりよう。テツヤ「『雪の茅舎』って蕎麦屋にあるイメージない?」ひいな「あるある!」テツヤ「『ゆきのぼうしゃ』って読めなくて、『これください』って指差したりして(笑)」ひいな「確かに読めない(笑)。これは今までの『雪の茅舎』のイメージが変わるかもしれないよ」テツヤ「お?そうなんだ。楽しみ!」ひいな「では、おつぎしますね」山ちゃん、おかえりなさい〜!一同「乾杯〜!」テツヤ「あぁ、うまい!」ひいな「おいしい…」山ちゃん「う〜〜〜ん!甘い!」ひいな「甘みがあるんだけど、ちゃんとお米って感じがするというか」山ちゃん「そうそう。おいしい」ひいな「この間、お蕎麦屋さんに行ったんだけど、こういう香りがあるお酒もいいなと思って選んでみた」テツヤ「ひいなも蕎麦屋で飲んだりするの?」ひいな「この前、おばあちゃんとお昼にお蕎麦屋さんで飲んだの」山ちゃん「それ最高だね」ひいな「おばあちゃんと2人で、のどぐろの天ぷら、筑前煮、もろみ味噌ときゅうり、蕎麦がきとか蕎麦前で食べたりしてね」テツヤ「何それ!いいなぁ」ひいな「すごくおいしかった。その時に香りがある日本酒もいいなと思ったんだよね」テツヤ 「この香りは蕎麦の邪魔にならないのかな?」ひいな「むしろ風味が豊かな感じになると思う。お蕎麦の香りにも合うと思うし、蕎麦を食べるまでの“蕎麦前”でも楽しめると思うよ!」テツヤ 「俺はね、蕎麦食べながら飲めるんだよね」ひいな 「本当に?」テツヤ 「蕎麦をつまみに飲む。蕎麦が固まっちゃったらお酒をかけちゃったりして」山ちゃん 「え!お蕎麦に日本酒かけるの?」テツヤ 「そう。あとはわさびじゃなくて七味を直接おそばにかけるの」ひいな「それで塩とかで食べるってこと?」テツヤ「いや、七味をそばにかけてからつゆにつけるの。そのほうが香りがいいの」2本目は、乳酸系の甘酸っぱい酸味を感じる「神開 吟吹雪 九號 生原酒」テツヤ「では、次いってみましょうか」ひいな「次は『神開』を!」一同「じゃ、乾杯!」テツヤ「これはね、俺が好きなやつですよ。ぬか漬けっぽい!」山ちゃん「あ、匂いが全然違うね!」ひいな「乳酸感があるよね」山ちゃん「初めて飲む味!でもおいしい」テツヤ「カナダじゃ飲めない味だよね、きっと」山ちゃん「うん、このクセがいいね。おいしい」ひいな「なんかこの2本でも、香りがあるところは一緒なのに、香りの系統が違うよね」テツヤ「うん、真逆だよね」山ちゃん「それぞれ違っておもしろいね」ひいな「でも、次のお酒飲んだら、また印象が変わるかも」山ちゃん「え〜!」テツヤ「マジか!」テツヤ「この酒は、蕎麦屋で腰を落ち着けて飲みたい感じだね。気軽に飲む感じというよりは、今日は俺3時間います!みたいな(笑)」ひいな「蕎麦屋で長期戦!最高だね」山ちゃん「そうそう。ちびちびいきたいね」ひいな「お蕎麦屋さんで日本酒を飲むようになったのって江戸時代かららしいんだけど」テツヤ「へぇ」ひいな「注文が来てからお蕎麦を切ると出てくるまでに時間がかかるでしょう?お蕎麦が出てくるのを待ってる間に“蕎麦前”を食べるっていうのが、江戸の粋な食べ方だったんだって」テツヤ「なるほど。蕎麦だけ食べるのは粋じゃないのか」ひいな「一杯ひっかけて、っていうのが通なんじゃない?」山ちゃん「なるほど、そういう食べ方だったんだね」こっくりとした旨みたっぷりな純米酒で飲み飽きない「多満自慢 純米無濾過」ひいな「3本目は『多満自慢』の中でも一番スタンダードなお酒です!なんとこのお酒すごくお安くて…」テツヤ「いくらなの?」ひいな「1,130円!(ライター注:石川酒造のオンラインショップではなんと990円で購入可能です!)」テツヤ「安すぎる!」山ちゃん「安い〜!」テツヤ「味が気になるよ」一同「乾杯!」テツヤ「う〜ま〜い〜」山ちゃん「あらぁ、好きかも」テツヤ「俺も『多満自慢』好きだな」ひいな「でしょう?おいしいでしょう?安心感があるおいしさだよね」山ちゃん「全部タイプが違うから、一番って決められないけど、すごく好き!」ひいな「このお酒を選んだ理由としては、一番穀物っぽさがあるなと思って。蕎麦に合わせるならこれかなって」山ちゃん「なるほど。早く合わせたい!」板わさ、だし巻き卵、わさび漬け…お好きな蕎麦前を準備してひいな「じゃ、蕎麦前からいきましょうか」山ちゃん「きゃ〜!きれいなたまご焼き!これ、ひいながつくったの?」ひいな「昨日練習しました」山ちゃん「お店みたい!」一同「いただきます!」テツヤ「子どもの頃から蕎麦屋で飲むのって憧れでさ。大人になったら蕎麦屋に行きたいって思ってた」山ちゃん「わかる!蕎麦屋で飲むのって憧れるよね」ひいな「ね!こうやっておうちでもできちゃう」山ちゃん「日本酒はやっぱり和食に合うから日本で飲むのがいいねぇ。カナダで飲むよりやっぱりいい!」ひいな「日本の風土で味わうのが一番おいしい?」山ちゃん「うん、そう思う!」ひいな「『神開』はさ、食事があって完成する感じしない?」山ちゃん「あります!」板わさの厚さにご不満の父・テツヤ(笑)。わさびをつけすぎて鼻にツーン!でもその刺激がたまらないんですよね。テツヤ「わさび漬けも合うな。そばにも絶対合うでしょう」ひいな「だし巻きも食べてみて」山ちゃん「ひいな、上手〜!すっごくおいしい!」テツヤ「こりゃ酒がすすむね〜」ひいな「おうち蕎麦屋最高だねぇ」山ちゃん「しあわせ〜」テツヤ「おうち蕎麦屋、楽しいね」ひいな「でしょう?おうち蕎麦屋やるならいいお酒をそろえて…」テツヤ「蕎麦前いろいろそろえて。あとはおいしいお蕎麦があれば完成じゃない?」山ちゃん「これはビールじゃないし、ワインじゃないよね」テツヤ「やっぱり日本酒でしょう!」ひいな「江戸時代は醤油が高級品だったから、蕎麦前に味噌が多いらしいよ」テツヤ「あぁ、焼き味噌とか蕎麦味噌とかね!」ひいな「最近一人暮らしをはじめて、ちょっとつまみたいけどつくる元気がない時はかまぼこを食べるんだけど」テツヤ「あぁいいね。立派な蕎麦前じゃん。でもさ、高級な蕎麦屋ってもう少し厚く切ってくれるんだけど…」ひいな「そうなの?厚めに切ったつもりだったんだけど(笑)」山ちゃん「もっと厚いんだ?これも十分厚いよ!」テツヤ「厚くてわさびがいっぱいついてくるの。今日は庶民的な感じで(笑)。カナダでかまぼこ売ってるの?」山ちゃん「売ってるけど。真っピンクのやつだよ」ひいな「私がいつも食べてる某スーパーの78円のかまぼこも真っピンクですよ(笑)」テツヤ&山ちゃん「安!」テツヤ「お酒に絶対合うし、ヘルシーだし、いいつまみだよ」いよいよ、お蕎麦が登場!日本酒との相性はいかに?のりをたっぷり、ネギもそえて。乾麺でも十分おいしい!伊藤家の定番の十割そばとそばつゆ。そばつゆはこの2つを1:1で割るのがおすすめとのこと!「山本かじの」の「北海道産100%国産 十割そば」、「にんべん」の「つゆの素ゴールド」、「上野藪蕎麦総本店」の「藪そばつゆ」。テツヤ「そろそろ、蕎麦食べながら飲みたいんですけど」ひいな「おまたせしました〜」一同「いただきます!」テツヤ「いやぁ、ほんと乾麺ってうまくなったよね」まずは山ちゃんからどうぞ〜!山ちゃん「おいしい〜!ほんとにおいし〜!」テツヤ「ちょっと固まってるから、日本酒かけちゃう?」ひいな「かけちゃおうか」テツヤ「どれかけちゃう?」ひいな「『多満自慢』にしようか。一番合いそう」ちょっと固まってしまったおそばに、たっぷりと日本酒を回しかけてほぐします。山ちゃん「わ、やっちゃった!」テツヤ「時間が経っちゃうと固まっちゃうからさ、こうやって日本酒かけるとほぐれるんだよ」山ちゃん「伊藤家では普通のことなんだね(笑)」テツヤ「おいしいよ」山ちゃん「乾麺って、こんなにおいしいんだ!」ひいな「お蕎麦に一番合うのって『多満自慢』かなってイメージだったんだけど『美酒の設計』もいいかも。やっぱり華やか系と合う!」テツヤ「なるほど。うん、すごくわかる」ひいな「そばの香りとお酒の香りが鼻から抜けて、さわやかなんだけど、豊かな感じがする」テツヤ「蕎麦屋に『雪の茅舎』が置いてあるのがわかる気がするね」山ちゃん「家で蕎麦屋楽しいね」テツヤ「最高だね。どう?日本感じた?」山ちゃん「感じました!伊藤家のホームステイでも」テツヤ「ちょっと太ったんでしょう?」山ちゃん「太りましたし、ウルルン滞在記みたいな。もう今から悲しくなってます」テツヤ「もう別れを感じて?」山ちゃん「そう。来年もお世話になろうかと」テツヤ「今度は、夫のブンちゃんも一緒に」山ちゃん「いいの?」ひいな「ぜひぜひ!外国の方に日本酒飲んでほしい!」蕎麦湯に日本酒!?日本酒の蕎麦湯割で、おうち蕎麦屋クライマックス!ひいな「あぁ、忘れるところだった!蕎麦湯持ってくるね!」テツヤ「蕎麦湯は薄いのより濃いほうが好きなんだよな」山ちゃん「茹でる時のお湯を少なくして、蕎麦湯を濃くすればいいんだよね?」テツヤ「でも、たっぷりのお湯で茹でるのがいいっていわれてるからね。でもさ、それだと蕎麦湯が薄くなっちゃうからさ」ひいな「あのね、やりたいことがあるんだけど。日本酒1:蕎麦湯3で割る飲み方があるらしくて」テツヤ「いいじゃない!やろう!」山ちゃん「どういうこと?日本酒で割ちゃうの?」ひいな「そう。そばつゆをお好みで足してください」テツヤ「焼酎の蕎麦湯割りみたいな感じだな」山ちゃん「焼酎の蕎麦割りってあるんですか?」テツヤ「あるある」山ちゃん「蕎麦屋で飲めるの?」テツヤ「蕎麦焼酎で割ったり」ひいな「日本酒で割ってもおいしいっていううわさを聞いたので」テツヤ「確かにうまいだろうね。その場合、この3種類どれがいいんだろうね」ひいな「どれがいいかな?」テツヤ「『多満自慢』かなぁ」ひいな「一番クセがないから合いそうだよね。焼酎のお湯割りみたいに蕎麦湯に日本酒を入れたほうがいいかな?」テツヤ「そのほうが良さそうだね!」ひいな「蕎麦湯どろっとしていていい感じ!」テツヤ「うん、いいね。どろっとしてる!」ひいな「鶏白湯みたい(笑)」テツヤ「俺は『多満自慢』にしてみた」山ちゃん「私は『神開』」ひいな「じゃ、私は『美酒の設計』にしてみようかな」テツヤ「そうだね、三者三様で」蕎麦湯に日本酒を加えて…。さてはてお味はいかに?熱々の蕎麦湯が甘酒みたいな甘みとおつゆのしょっぱさで絶妙なバランスに!テツヤ「いただきます!あれ?甘酒みたい(笑)!でもおいしい」山ちゃん「おいしい〜!」ひいな「おもしろい〜!甘酒だね」テツヤ「そばつゆも入れてみるか」ひいな「うんうん、入れよう」テツヤ「うわ、最高!おいしい!ぐびぐび飲んじゃうね。焼酎よりいいかも」ひいな「だし割りだね」テツヤ「そばつゆ入れて日本酒入れて蕎麦湯で割る。うまい!」山ちゃん「おもしろいね〜!」テツヤ「うまいね。ほんとにうまい。マジでうまい。酔っ払うかも(笑)」ひいな「最後にほっこり終われるね。おうち蕎麦屋大成功!」テツヤ「来年はブンちゃんも!」ひいな「伊藤家で待ってます〜!」山ちゃん「また来ます〜!」【ひいなのつぶやき】蕎麦前とお蕎麦のセットは、おうちにいながら簡単に外食気分を味わえるのでおすすめ日本酒を数種類用意するとより本格的に楽しめます!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Shu Yamamoto illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2022年05月08日女優の伊藤沙莉(27)が12日、ツイッターを通じ、自身の熱愛報道を受けて「温かく見守っていただけると幸いです」とつづった。前日のFRIDAYデジタルで、脚本家・蓬莱竜太(46)との熱愛が報じられた伊藤。記事では知人の証言として「蓬莱さんが猛アプローチをかけ」とあったが、「彼から猛アプローチっていうのはwww」と笑い飛ばして「お互いにってやつですよ」と訂正し、「#18歳差」のハッシュタグを添えて「ひとまず、温かく見守っていただけると幸いです」と呼びかけた。多くの祝福の声が寄せられる中、兄のオズワルド・伊藤俊介もこのツイートに反応。「#俺とは13歳差」「M-1も妹もおじさんに獲られました。一旦辞めさせて頂きます」と胸の内を明かしている。
2022年04月12日20歳の頃から唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第三十一夜は、飲みやすいと評判の低アルコールな日本酒を3本ご紹介。日本酒をもっと気軽に!飲みやすさが段違いの低アルコールな日本酒3本(左から)「五橋 ride?桃色にごり 純米大吟醸」「飛良泉 飛囀 雛 山廃 純米吟醸」「御前酒 菩提酛 うすにごり生原酒 ukigumo」山口県岩国市にある酒井酒造の代表銘柄「五橋」の赤色酵母を使うことで甘酸っぱい発泡感で春のお酒にぴったり。アルコール度数はたったの11度!「五橋 ride?純米大吟醸桃色にごり」720ml 1,650円(ひいな購入時価格)/酒井酒造株式会社秋田県にかほ市にある飛良泉本舗。代表銘柄の「HITTEN(ひてん)シリーズ」の低アルコールタイプはピンクの文字が目印。度数は13度。「飛良泉 飛囀 -雛(HINA)-ライトタイプ 山廃 純米吟醸」720ml 1,760円(ひいな購入時価格)/株式会社飛良泉本舗岡山県真庭市にある御前酒蔵元がなんとセレクトショップ「BEAMS “TEAM JAPAN”」とコラボして生まれたお酒。岡山県産の雄町を使い、昔ながらの手法「菩提酛(ぼだいもと)」で仕込んだクラシックな1本。度数は13度。「御前酒 菩提酛 うすにごり生原酒 ukigumo」720ml 1,870円(ひいな購入時価格)/御前酒蔵元 株式会社辻本店娘・ひいな(以下、ひいな)「すっかり春だねぇ」父・徹也(以下、テツヤ)「今年も春が来たねぇ」ひいな「今回は、春にぴったりな低アルコール特集です!3月に紹介した復刻米のお酒『産土(うぶすな)』がアルコール度数13度だったんだけど」テツヤ「うんうん、すごく飲みやすくておいしかったよね」ひいな「そこで今回は、低アルコールな日本酒に着目してみました!」テツヤ「低アルコールの日本酒ってほかにもあるんだね。いいね!」ひいな「春だし、ぐいぐいっと飲んでほしいなと」テツヤ「春だと飲みたくなるもんね!」ひいな「なんかラベルも春っぽいでしょ?」テツヤ「うすにごり!」ひいな「そう!『ukigumo』はこだわりにこだわり抜いた日本酒なんだけど、そんなことを感じさせないクールな感じでしょ?3月に紹介したお酒はどれも達筆な筆文字が多かったけど、今回は横文字だったり、割とカジュアルめでライトだよね。春っぽいイメージにぴったり」テツヤ「いいねいいね。しかも低アルコール!」ひいな「こういうお酒がいまきてるという感じがあるんだよね」テツヤ「だってさ、やっぱり低アルコールのほうが飲みやすいもん」ひいな「アルコール度数が高いと、ちょっととっつきにくいなっていうイメージってやっぱりあるよね」テツヤ「低アルのほうが、お酒飲まない人たちにも、とっつきやすいかな。導入の日本酒としてももってこいな感じ?」ひいな「そうだよね。女子会しようか!となってお酒を持ち寄った時、日本酒持っていくとなるとちょっと考えちゃう。どういうのがいいかなって」テツヤ「そうだねぇ」ひいな「今回紹介する日本酒は、女子会でも持って行きやすいと思います!」テツヤ「いいね、いいね」ひいな「ワインみたいに軽く飲みたいっていうイメージで、日本酒でも低アルコールを求めてる方が多いので、最近増えてきた気がする」テツヤ「ワインって、度数どれくらいだっけ?12〜13度くらい?」ひいな「そうだね。だいたい、13度より低いくらいじゃないかな」テツヤ「もっとライトな日本酒あるといいなぁ」ひいな「今日ご用意した3本は、11度、13度、13度です」テツヤ「おぉ!味、想像つかないから楽しみ!」ひいな「左から山口、秋田、岡山です!楽しみにしててね」開栓要注意!発泡ありの甘酸っぱいお酒で、低アル春酒の定番に確定!ひいな「では『五橋(ごきょう)』から行こうかな。山口では『獺祭』よりももともと知名度があったお酒なんだよ」テツヤ「へぇ、同じ山口だもんな。このラベルはなんだ?バイクかな?」ひいな「『ride』っていうシリーズだからバイクなのかな。『五橋』の中でも5種類ブランドがあってね、ラベルも5種類違って。そのなかの『ride』シリーズをご用意しました!まずは飲んでみようか」テツヤ「それにしてもすごいピンクだね。味が想像できない」ひいな「『五橋 ride?純米大吟醸 桃色にごり』です」テツヤ「まさに桃色にごり!」ひいな「この間、『五橋』のYouTubeを見たの。発泡のお酒だから開け方をスタッフの方が紹介してて。でもね、軽く振ってから開けててびっくりしたの」テツヤ「マジで?吹いちゃわないのかな?“開栓ご注意”ってタグがついてるけど(笑)」ひいな「よし、やってみようか。にごり酒って上澄みだけで楽しむ場合と、全部混ぜて楽しむ場合があるんだけど、どっちがいい?」テツヤ「最初はやっぱり上澄みじゃない?」ひいな「よし、混ぜないでやってみようか。みなさんも開栓する時はしっかり冷やしてくださいね!そしたら吹かないはずなので!」テツヤ「冷やしておくこと、大事!」蓋を少しずつ開けてみると、なぜか勝手に混ざり始めるお酒。テツヤ「わわわ、閉めたほうがいい閉めたほうがいい」ひいな「いちごみるくみたいできれい〜」テツヤ「おいしそうだね(笑)。勝手にまざちゃったね(笑)。色がかわいいね。結果、吹かずに勝手に混ざってくれてよかったんじゃない?」ひいな「そうだね。おいしそう!みなさん、開栓する時ゆっくりガスを抜きながら開けてくださいね!私は飲食店で働いていた時、日本酒が吹き出して、お客様の頭にかぶせてしまったことがあるんだけど…」テツヤ「え〜〜〜〜!マジで?」ひいな「開栓注意とかも一切書いてなくて、普通に開けたたらボンって栓が飛んでってきれいにお酒が飛び出してお客様のつむじに…」テツヤ「放物線を描いたわけだ(笑)」ひいな「そのお客様はまたお店に来てださって。その節はたいへん失礼しました!」テツヤ「飲食店ではそういうこともあるんだな(笑)。要注意だな」ひいな「はい、気をつけます!」テツヤ「開けたてのシュワシュワとした発泡感がおいしいんだよな。このピンク色なのは酵母?」ひいな「そう、赤色酵母を使ってるから。山形の『ピンクのかっぱ』もそうだったよ」テツヤ「ますますどんな酒なのか気になる。うわ、シュワシュワだね。これは春の花見にぴったりじゃない?」完全に混ざり合い、いちごみるくのような日本酒に。乾杯!かわいい飲み物に見えますけど、日本酒です。いただきます〜!テツヤ&ひいな「乾杯〜」テツヤ「もうこりゃ花見だね。桜が目に浮かぶよ。ゴクゴクいっちゃうね」ひいな「ゴクゴクゴクゴク」テツヤ「もう飲み干したくなるくらいうまい。おいしい。日本酒って言われないと、なんだかよくわからないかもね」ひいな「そうそう。スパークリングワインでもないし…。スパークリングワインを使ったカクテルとかでこういうのありそうじゃない?」テツヤ「あぁ、そうかもね」ひいな「お米っていわれないとわからなくない?」テツヤ「お米の後味は感じるんだけどね」ひいな「あれ?いま気づいたんだけど、もしかしてハチマキうっすらピンクじゃない?」テツヤ「あ、バレた?」ひいな「やっぱり!薄ピンクだよね?『五橋』にぴったり!すごいマッチング!」テツヤ「そうそう。このお酒に合わせようと思ってさ」ひいな「わかりやすくおいしいでしょう?難しい知識とかなしに、素直に『おいしい!』って思ってもらえると思うな」テツヤ「いちごとかさ、甘酸っぱいのが好きな人にはたまらないでしょう?」ひいな「そうそう。甘すぎることなく、でもさわやかで飲みやすくて、さらっとしてて低アルコール。お米はしっかり50%まで削ってるから純米大吟醸。日本酒度はプラスは辛口、マイナスは甘口で表すでしょう?」テツヤ「これはいくつなの?」ひいな「いくつだと思う?」テツヤ「相当甘そうだけど?でもさ、ただの甘さじゃないもんな」ひいな「日本酒度が+15とかだと超辛口、辛口のお酒で+4とか8くらいかな。これはもちろんマイナスなんだけど…」テツヤ「ただ甘いっていうのとも違うよね。シュワシュワしてるのもあってさ」ひいな「ガス感は確かに味の感じ方に影響してるかもね」テツヤ「意外と低めなんじゃない?−4くらい?」ひいな「−50です!」テツヤ「え〜!!そんなに甘いんだ。でも、ぜんぜんいやな甘さじゃないよな」ひいな「酸度は2.0くらいが普通なんだけど、これは酸度が5.0なのね。酸度が高いから後味が丸まってるし、甘さとのバランスがいいんじゃないかな」テツヤ「なるほど」ひいな「すっきりと切れる感じ」テツヤ「たしかに切れるね。さっぱっりね」ひいな「そうそう。後に引かないから、意外と食前酒で飲んでも、次の料理を選ばないかもしれない」テツヤ「世のお父さんたちってさ、だいたいが辛口の酒が好きでさ。甘口は飲まない!なんて言っちゃう人は出会えない酒だよね。もったいないね」ひいな「飲まず嫌いってやつだよね。辛口好きなお父さんにも目をつぶって飲んでみてって言って飲んでもらったら、こういう日本酒もあるんだなっていうのを知ってもらえるのにな」テツヤ「確かに。見た目のピンクできっと選ばないというのもある(笑)」ひいな「そうなの。このピンクの見た目のままだと、これ日本酒だよって言っても、口つけてくれない可能性もあるかもしれない」テツヤ「日本酒のイメージとかけ離れすぎてるからな」ひいな「日本酒飲もう!っていう時には選ばないかもしれないね。フランクにみんなで日本酒とか飲んでみる?って言って楽しめる、敷居が高くない日本酒かな」テツヤ「そうそう。その気軽さを目指してるわけだもんな」ひいな「それでいて、低アルっていうね」テツヤ「実際、この低アルで十分な気がするな。色のイメージもあってピンク=甘いみたいな。ロゼ=甘口みたいなのが若干あるけども」ひいな「飲みやすいから減りも早いよね(笑)」テツヤ「一口でゴクゴクいけちゃうもんな」ひいな「友だちの家でパーティするならぜひ持っていきたい!」テツヤ「食前酒とか食後酒にもいいと思う」ひいな「いちごに合わせたり」テツヤ「フルーツも合うし、スイーツにも合いそう!」ひいな「いいね。いいね。こういうライトな日本酒から始めるのもいいと思うんだよね」テツヤ「そうだね。まずは飲みやすくて、おいしい低アルから」ひいな「ピンクじゃなかったらね、もっとほかの印象だったかもしれないんだけど」テツヤ「思ったよりさらっとした甘さで、おいしいお酒なんだけどね。イメージが固定されちゃうのかもしれない。日本酒度−50っていうからすごく甘口なのかなと思うけど、低アルだからすっきり飲めるっていう、バランスのよさもいい!」ひいな「軽めに飲めるのがいいよね」テツヤ「日本酒業界の方へ。11〜13度くらいのアルコール度数でいいんじゃないんでしょうか?そのほうが飲めるし、売れる気がするけどなぁ」ひいな「私もそう思う!」テツヤ「この『五橋』は見た目と味のギャップがすごかったな。勝手にすいません、舐めてました。めちゃくちゃおいしかったです」ひいな「素直でよろしい(笑)」日本酒らしさが感じられる定番の1本。数日置いて味の変化を楽しんで。ひいな「次のお酒に行こう!次は日本酒度−2.0、酸度2.0なので平均的なお酒ではあるんだけど『飛良泉』は第55回で『まる飛』っていうお酒を紹介したんだけど、今回は『飛良泉』から違うお酒を紹介したいなと思いまして」テツヤ「ひてん!」ひいな「ひな!山廃純米吟醸原酒」テツヤ「え、それで度数13度なの?名前だけ聞くとなんか濃そうなイメージだけど」ひいな「13度で原酒っていうのが気になるポイントだよね。雛のほかにも鸙(ひばり)鵆(ちどり)、鵠(はくちょう)っていう鳥の名前をつけているシリーズなんだけど、まずは飲んでみようか」美しい水のようななめらかさ!2本目、いただきます!テツヤ「きれいなクリアな色だね!」テツヤ&ひいな「乾杯!」ひいな「あぁ、私の好みのお酒です」テツヤ「あぁ、これはいい酒ですね」ひいな「そうなんです!いい酒なんです!」テツヤ「どんな飯にも合うんじゃない?」ひいな「これを飲んでる時、おでんを食べてたんだけど、出汁とも合う純米吟醸としていいなと思って」テツヤ「え、でも逆に、合わないものってあるの?」ひいな「なんだろうね」テツヤ「う〜ん、これさえあれば何にでも合う気がするけど。どうなの?」ひいな「むしろペアリングが難しいかもしれない。これに一番に合う料理を選ぶのが」テツヤ「なるほどね。何にでも合うだけに一番が見つからないと」ひいな「低アルでちゃんとおいしいって優秀なお酒だよね」テツヤ「温度帯で変化しそう」ひいな「冷酒でもおいしいけど、ちょっとぬるくしてもおいしそうだね」テツヤ「燗酒もいいと思うな」ひいな「お出汁系とも合うから」テツヤ「今日飲んだなかで一番、日本酒ぽい感じがするな。いい意味で。苦味もあるし。これが13度なら人に勧めやすいしいいな。ちょうどいいというか。さっきのはピンクだし、ちょっと奇を衒(てら)ってるというか…」ひいな「うんうん、わかるよ。万人受けするのはこっちだと思う」テツヤ「優秀というか、純粋に誰もがいいなって思うやつだよ、これは。バランスが抜群だね」ひいな「創業1487年創業の『飛来泉』なんだけど、この『HITEN(ひてん)』シリーズは、27代目の蔵元が新しい味わいとか次世代へ届けたいお酒を目指して生まれたんだって。低アルコールにしたのは、飲み疲れせずに軽くてスムースな飲み口にしたかったから」テツヤ「まさにテーマ通りだね。このくらいにしたら、日本酒もっと売れるぜ」ひいな「いいよね」テツヤ「めっちゃ気に入りました。今日イチかもしれない」ひいな「そうなんだ!うれしい!わかるよ」ひいな「蔵元さんが言ってたんだけどね。たとえばアイスクリームだって冷凍庫から出した途端よりも、ちょっと常温にして溶かした方がおいしいじゃない?」テツヤ「うんうん」ひいな「その要領で1〜3日開栓して冷蔵庫に保存してすると味わいがまろやかにおいしくなりますよっていうのをウェブサイトで言ってるくらいなの」テツヤ「へぇ、そっりゃ楽しみだね。明日明後日か」ひいな「おいしくしよう」テツヤ「残しておかなきゃ」ひいな「変化を楽しみながらちょっとずつ飲めるの最高!」こだわりの米、こだわりの製法で誕生。〈BEAMS〉との話題のコラボ日本酒!ひいな「最後は岡山の『御前酒』をご紹介します!今度は13度。ラベルだけ見てみて。これ、どっかのブランドとコラボしてます。どこでしょう?」テツヤ「え〜?食?ファッション?」ひいな「ファッションっていうか、セレクトショップっていうか…」テツヤ「え〜どこだろう?」ひいな「最近だと『仙禽』と〈UNITED ARROWS〉がコラボして雪だるまにアロウズのショップの袋をぶら下げててたりして」テツヤ「わかった、じゃ〈BEAMS〉だ!」ひいな「え、え、正解!すごいね、一発で当てたね」」テツヤ「わはは(笑)」ひいな「〈BEAMS〉だと、岡山の蔵元の辻本店さんがコラボしてできたお酒です」テツヤ「あれ?このタグ、〈BEAMS〉カラーじゃない?」ひいな「あ、ほんとだ!気づかなかった」テツヤ「このオレンジといえば〈BEAMS〉だもんな」ひいな「〈BEAMS〉が全国から集めた日本の名品を発信するっていう『チームジャパンプロジェクト』から生まれたお酒なの」テツヤ「へぇ、おもしろいね。日本酒に目をつけたんだ」ひいな「『御前酒 ukigumi 菩提酛 純米うすにごり生原酒』テツヤ「すごいな(笑)」ひいな「名前が強すぎて(笑)」テツヤ「菩提酛で、うすにごりで、生原酒」ひいな「強い総集編でもう最終回なのかな?っていうくらいラスボス感(笑)」テツヤ「そうだね(笑)」ひいな「菩提酛といえば、第56回の『風の森』の番外編をやった時に紹介してて」テツヤ「あったね」ひいな「まず飲んでみようか」光にかざしてた澱が、ボトルのなかでゆらゆらとたゆたう様子が美しかった。うすにごりは春のお酒のイメージですよね。テツヤ「すごく澱があって。くらげみたいに漂ってるね」ひいな「すごいでしょう?きめ細かいうすにごりはよくあるけど、こんなにも目に見えるうすにごりってなかなかないかも」テツヤ「フレッシュ感あるのかな?」(パコーン!!!開けようとしたらフタが吹っ飛びました!)テツヤ「すごい勢いで飛んでったね(笑)」ひいな「びっくりした〜」テツヤ「ガスがあったんだね」テツヤ&ひいな「気持ちを落ち着かせて(笑)。いただきます!」テツヤ「うわ〜!うんまい。これも13度?」ひいな「うん」テツヤ「やっぱりこくらいがいいね。おいしい。飲みやすい」ひいな「お米を噛んだみたいな甘みだよね」テツヤ「うん、米だね。あぁ、ちょうどいいな。昼飲みにこれくらいの感じ最高だな」ひいな「ね。低アルって言ってるけど13度あるんだけどね(笑)」テツヤ「13度の日本酒ってそんなに多くないの?」ひいな「うん、そんなに多くないかな」テツヤ「これからも増えてほしいなぁ」ひいな「私がお店に立ってたら、低アルコールをストックしておいて、ビール飲んだあとに何を飲もうかな?ってお客さんに、いきなり16度とかの日本酒はあれだから、飲みやすい日本酒があるんですけどっておすすめしやすいかなって思う」テツヤ「いいね、いいね。そういう選択増えてほしいな。日本酒としてのおいしさもちゃんとありつつ、ライトで酸味も旨みもあって」ひいな「これは特に米感もしっかりあるしね。雄町を使ってる」テツヤ「へぇ。そうなんだ」ひいな「地元のお米だからね。あと菩提酛っていう製法が何よりの特徴なんだけどね。奈良の正暦寺発祥で室町時代に生まれた製法で、大正時代には一回なくなっちゃって、ほぼ使われなくなったんだけど、昭和の末期に…」テツヤ「え、ちょっと待って。昭和の末期って言い方するの(笑)?ついこないだなんだけど(笑)」ひいな「歴史上だとそうなるらしい(笑)」テツヤ「バブルの頃ね(笑)」ひいな「昭和の末期に(笑)、菩提酛が2つの地域で復活したんだって。ひとつは奈良、もうひとつが岡山で、造り方に微妙に違いがあって。奈良式よりも岡山式のほうが手が込んでるというか、時間がかかる菩提酛ではあって。岡山は『御前酒』の前の杜氏をやっていた原田さんって方が岡山式の菩提酛を確立したんだって」テツヤ「へぇ!」ひいな「菩提酛で、しかもうすにごりって珍しくて。昭和61年の時点で菩提酛のにごり酒として『御前酒』を原田さんが商品化してるの」テツヤ「そんな前から造ってたんだ!」ひいな「そう。それを今回アレンジして〈BEAMS〉とコラボしたの。飲み味を少しライトにしたのかな?」テツヤ「そういう背景も含めて〈BEAMS〉っぽいよね。めちゃこだわりの1本なんだね」軽めの飲み心地で、低アルコールが日本酒のイメージを変える切り札に?ひいな「低アルコールの作り方っていくつかあって…」テツヤ「加水する!」ひいな「正解。詳しくなってきてるね(笑)」テツヤ「あとは…発酵時間を短くするとか?」ひいな「うんうん。あっという間に正解出ちゃった!」テツヤ「あとは…」ひいな「その2つだけだよ(笑)」テツヤ「あぁ、全部当てちゃったんだね(笑)」ひいな「大まかには2つあって、加水してアルコール度数を下げるのと、途中でアルコールの発酵を止めるパターン。あとは、赤色酵母自体が度数が上がらない酵母でもあるから、『ピンクのかっぱ』アルコール度数10度で低めだったしね」テツヤ「日本酒のアルコール度数が今の時代には少し高いのかもしれないね」ひいな「15度とか16度とかってさぁ飲むぞ!って意気込む感じあるじゃない?」テツヤ「あるある。今日飲むぞ!明日何もないから飲むぞ!みたいなね。日本酒ってさ、ブームにはなってるけど、実際には広がっているかといえばそこまでではないと思ってて」ひいな「一部では広がってるんだけど」テツヤ「低アルコールっていうところにヒントがあるんじゃないかなって今日飲んでみて思ったな。13%がひとつの基準になりそう」ひいな「うんうん」テツヤ「だってこんなにたくさん飲んでも疲れないもん(ライター注:撮影日には6〜9本ほど飲むことが多く、この日は6本目の収録中でした)。日本酒ってやっぱりだんだんと疲れてくるっていうかさ。おいしいし、大好きなんだよ?でもやっぱり何本も飲んでると疲れちゃうんだよな」ひいな「量を飲むか飲まないかは関係なくね」テツヤ「そう。量じゃなくてね、疲れちゃう感じがあるんだよね」ひいな「たしかにあるよね」テツヤ「よくさ、何人かで飲んでてワインだと5本開けちゃった!っていうことは聞くけど、四合瓶5本開けちゃった!ってあんまり聞かないもんねぇ。量が飲めないのもあるよね」ひいな「家で飲み比べできたら楽しいよね。何本か飲みたいもんね」テツヤ「もうちょっと気軽さ、カジュアルさがある、低アルって大事な気がするな。ワイン好きな人にも飲んでもらいやすいし。低アルのもっと種類が増えるといいね」ひいな「低アルがもっと増えて、日本酒を飲むきっかけが増えたらうれしいな。日本酒飲む人って、次の日を気にしがちなんだけど」テツヤ「そう、気合というか構えがいるんだよな。でもだいたい次の日ってなんかあるんだよ、みんな(笑)。だから低アルが定番になったら、ほかのものが高アルって言われる時代もくるんじゃない?」ひいな「そうかもね!」テツヤ「この企画、定番化してほしいな!ほかの低アルも飲んでみたい!」ひいな「ほかにもまだまだあるのでご紹介します!」テツヤ「ぜひ教えてよ」ひいな「夏にはロック用に19度のお酒を出すところもあれば、低アルを出してくるところと二極化するから、夏も楽しみにしててね」【ひいなのつぶやき】酒屋さんで買うものを迷った時に、難しい製法やお米の品種ではなく、シンプルに度数で選ぶのもおすすめです!気軽に日本酒を楽しめる時代がやってきました!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Shu Yamamoto illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2022年04月03日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第三十夜は、かつて使われていた米を復刻して造られたという限定酒を3本ご紹介。日本酒は米で選ぶ!?知る人ぞ知る、幻の復刻米を使った限定酒3本(左から)「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」「美田 山廃純米 古醸 2018」「産土 2021 穂増」栃木県小山市美田地区にある小林酒造。マスカットのようなさわやかな飲み口で華やかな香り。復刻米「亀の尾」を使用。「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」720ml 2,200円(ひいな購入時価格)/小林酒造株式会社福岡県三井郡にある蔵元「三井の寿(みいのことぶき)」の「美田」は、福岡県糸島産の復刻米「穀良都(こくりょうみやこ)」を使用。「美田 山廃純米 古醸 2018」720ml 1,485円(ひいな購入時価格)/株式会社みいの寿熊本県玉名郡「花の香酒造」は、熊本県に伝わる在来種「穂増(ほませ)」と呼ばれる復刻米を使用。2021年12月に発売されたばかりの「産土(うぶすな)」シリーズが日本酒好きな間で話題沸騰。「産土 2021 穂増」」720ml 2,530円(ひいな購入時価格)/花の香酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「今回はマニアックなテーマでやろうと思ってて。復刻米って知ってる?」父・徹也(以下、テツヤ)「復刻米って、古代米みたいな感じ?」ひいな「うん。昔、流行ったお米があって、一度、途絶えちゃったんだけど、最近そうしたお米を復活させてお酒を造ってる蔵があって。今回はその3本をご紹介します!」テツヤ「へぇ〜。野菜もさ、在来種ってあるじゃない?そういうお米なのかな」ひいな「うん。その土地のお米だね」テツヤ「復刻米の日本酒って流行ってるの?」ひいな「うん。お米に関して今、2つの流れがあってね」テツヤ「うんうん」ひいな「『百万石乃白(ひゃくまんごくのしろ)』っていう石川県の品種とか、栃木県の『夢ささら』とか、最近、新しく品種改良されたお米ができている流れと、もうひとつは昔のお米を復活させる方向性と2つある気がしてて」テツヤ「なるほど。昔ながらの米を復活させるのは酒造りの原点回帰なわけだな。でも、栽培が大変なイメージあるけど」ひいな「そうなの。なぜなくなったのかっていう理由があるわけだからね」テツヤ「そうだよね」ひいな「栃木の『鳳凰美田』、福岡『美田』、熊本『産土(うぶすな)』の3本をご紹介します!」テツヤ「ひいなは北関東好きだねぇ。九州から2本か!」ひいな「今回の3本は〈住吉酒販〉で購入いたしました!」テツヤ「いつもお世話になっています!復刻米っていうのはさ、ラベルでわかるものなの?記載があるの?」ひいな「ラベルにお米の名前が書いてあるものもあるよ。この3本はラベルにお米の名前が書いてある」テツヤ「どんな味なのか気になる!早く飲もうぜ!」明治時代の復刻米「亀の尾」を使った「鳳凰美田 純米吟醸 亀の尾」ひいな「1本目は『鳳凰美田』です!」テツヤ「飲もう飲もう」テツヤ&ひいな「乾杯!」まずは「鳳凰美田」から。いただきます!テツヤ「うわ!うまいなこれ!吟醸?」ひいな「うん。純米吟醸」テツヤ「昼間に飲む純米吟醸っていいね。でも正直なところ、復刻米かどうかはよくわからないけど…」ひいな「『鳳凰美田』って結構テンション高いお酒が多くて。全体的に甘さが際立つお酒なんだけど、その中でもこの『亀の尾』っていう復刻米を使ったこのお酒は落ち着いてる感じがするというか」テツヤ「これで落ち着いてるんだ」ひいな「うん。これは『鳳凰美田』のなかでは落ち着いてるほうだと思うよ」テツヤ「そうなんだ。甘さのわりにあと口がキレるというかさ。これすごくうまいよ」ひいな「甘ったるくはないよね。上品な甘さがある」テツヤ「復刻米だから、そういう味わいになったのかな」ひいな「うん。そうだと思うよ。この『亀の尾』っていうお米は明治のお米なの。『亀の尾』の亀は、阿部亀治さんという方が、冷害で被害を受けた田んぼのなかで元気に育ってる3本の稲穂を見つけたことで名づけられたんだって」テツヤ「3本しかなかったんだ」ひいな「そう。冷害を乗り越えた3本だったの」テツヤ「丈夫に生きてたんだね」ひいな「阿部亀治さんが山形で見つけたお米なんだけどね。1925年ごろは、“東の亀の尾、西の雄町”って呼ばれてくらい有名なお米だったんだって」テツヤ「へぇ。あの雄町と!」ひいな「そう。雄町に匹敵するお米っていわれてたの。でも『亀の尾』が廃れた理由は、冷害には強いんだけど、虫に弱かったり化学肥料や農薬を使うとお米が極端にもろくなっちゃうらしくて」テツヤ「なるほど。それは育てるのが難しいお米なんだな」ひいな「そっか。農業の現代化に向いてなかったんだね。『夏子の酒』って漫画あるでしょう?」テツヤ「あるある」ひいな「幻の米で造った吟醸酒が忘れられないっていう話を聞いて種もみを探し始めて復活させて、そのお米で鑑評会で金賞を取るっていう物語があるんだけど、その幻の酒米のモデルが『亀の尾』なの」テツヤ「へぇ!いや、実に上品だね、このお酒。でもちゃんとジューシーさもあってうまい!これが『亀の尾』のうまさなんだろうな。復活させてくれてありがたいね」ひいな「地元に愛されるお酒を目指そうとして、昔ながらのお米である『亀の尾』に着目したんだろうね」テツヤ「原点に戻ったんだね」ひいな「新しいお米じゃなくてね」テツヤ「『亀の尾』で造ったほかのお酒も飲み比べてみたいな」ひいな「いいね。すごい数になっちゃうと思うけど」テツヤ「え、そうなの?結構、あるってこと?」ひいな「『亀の尾』は、平成9年から11年間、亀の尾サミットっていうのがあったりするくらい、復活してからは『亀の尾』を使ったお酒がたくさんあるの。『亀の尾』ってね、実はコシヒカリとかササニシキ、あきたこまちの先祖なの。『亀の尾』がルーツなんだって」テツヤ「へぇ。どれも寒いところの米だもんな」ひいな「そうだね、冷害に強いからね。しかも収穫量が多いらしい。粒が大きいから吟醸造りで削っても残るんだって」テツヤ「だけど、育てにくいんでしょう?」ひいな「そう(笑)」テツヤ「すごい手間ひまかけて育ててるっていうことなのかな。ということはお値段も張るんじゃないの?」ひいな「2,200円です!」テツヤ「ちょっと高めだけど、こだわりの米を使ってるんだから妥当だよね」ひいな「だよね」テツヤ「『亀の尾』だね。もう覚えた!」知る人ぞ知る、復刻米「穀良都」を使用した「美田 山廃純米 古醸 2018」テツヤ「あれ?さっきも『美田』じゃなかった?」ひいな「さっきは『鳳凰美田』で、こっちは『美田』」テツヤ「違うんだ?」ひいな「違う蔵のお酒だよ。よく『鳳凰美田』が好きな人って『美田』って略していう人がいるんだけど、私は『美田』といえばこっちのお酒を思い浮かべる」テツヤ「略しちゃダメだね(笑)。2018年って書いてあるけど熟成されてるの?」ひいな「そう」テツヤ「しかも糸島って書いてあるぞ。糸島の酒なの?」ひいな「福岡のお酒なんだけど、糸島産のお米を使ってるの」テツヤ「なるほど。復刻米を作ってるのが糸島なんだな」ひいな「これは『穀良都』っていうお米を使ってるんだけど。明治の時に生まれたお米なんだけど、山口県の農民の伊藤さんによって品種改良されて誕生したのが『穀良都』なの。まず、飲んでみる?」テツヤ「あぁ、そうだね。勝手に渋い感じを予想してるんだけど」ひいな「ちょっと強烈かもしれない」テツヤ「山廃で熟成酒だもんな」ひいな「香りだけでも、濃厚さを感じるかも」テツヤ「お?うまそうな匂いだぞ」ひいな「香ばしい感じあるよね」テツヤ「あ、色がついてるね。みりんみたい」ほんのりと色づいておいしそう。2本目いただきます!香りをじっくりと味わう父。テツヤ&ひいな「乾杯!」テツヤ「うわぁ〜匂いがもう独特だねぇ。これめちゃくちゃ好きかも!」ひいな「透明感のある熟成酒って感じがするよね、コクとか香ばしさもありながら」テツヤ「そして土っぽい。ミネラル感もあって。穀物を飲んでる感じっていうか。『穀良都』っていうお米の名前らしい味わいっていうか、大地を飲んでるって大げさかもしれないけど、すごい感じるね」ひいな「わかる。お米にフィーチャーしてる感じするよね。日本酒だから当たり前なんだけど」テツヤ「これはうまいよ。さっきの『鳳凰美田』は俺にはおしゃれすぎたな」ひいな「確かに(笑)。なんとこの『美田』、1,350円+税というお値打ち価格」テツヤ「安くない?そんな貴重なお米使ってるのに?」ひいな「申し訳ないよね。しかも熟成までしてるのに!」テツヤ「ほんとだよ!」ひいな「今日は冷やしちゃったけど、常温かお燗でもいいお酒だと思う」テツヤ「うん。匂いのイメージより飲みやすいし、和食とも合いそう。飲み始めのインパクトと違って水っぽくも感じるし、するするいく感じ」ひいな「今回、『穀良都』って私も初めて聞いたんだけど、相当めずらしいお米だと思う。山口で生まれたお米なんだけど、昭和初期、西日本で流行ってたらしくて、昭和天皇即位の時に献穀米になったくらい有名なメジャーなお米だったんだって。さっき紹介した『亀の尾』とか『山田錦』とかと同じくらい評価されたお米で、品質が高かったらしい。でも、稲穂の背が高くて、栽培に手間がかかるのが難点だったと」テツヤ「倒れやすいからな」ひいな「だから新しい品種がどんどん出てくると…」テツヤ「そっちにいっちゃうよな」ひいな「それで一度、衰退しちゃったんだけど、1996年に12粒の種もみから復刻に取り組み始めたんだって」テツヤ「すごいね。奇跡の米だね」ひいな「うん、裏にも幻の米って書いてある」テツヤ「そんな貴重なお米のお酒がこんな安く飲めちゃうの?そんな苦労して復刻したのにこの価格は安すぎるよ。値付け間違ってるよ!そんな貴重なお米だったら、もうちょっと主張してもいいのにね。『穀良都』って知る人ぞ知る感じなのかな?」ひいな「ほとんど知らないと思う。私も〈住吉酒販〉さんに教えていただいて初めて知ったの」テツヤ「ラベルに『穀良都』って書いてあっても米の名前だってわからないよな」ひいな「そうだよね。この『穀良都』は、精米時に砕けやすいらしくて大吟醸には向いてないんだって。だから昔ながらの純米造りがいいんじゃないかな」テツヤ「なるほど」ひいな「お米自体は、淡麗でキレのいいお酒になるらしいんだけど、もしかしたら熟成してるからこんな感じなのかもしれないね」テツヤ「燗にしてみたら落ち着くねぇ。おつまみがあるとさらにうまく感じるんだろうな」ひいな「住吉酒販だとチーズをおすすめしてくれるんだって」テツヤ「え!俺もチーズだって思ってた!」ひいな「え、ほんとに(笑)?」テツヤ「マジで。クリームチーズとかどうかなと思ったんだけど」ひいな「いいと思う。熟成系のチーズも合うと思うよきっと」テツヤ「あ!いぶりがっことクリームチーズとか最高じゃない?」ひいな「いいねぇ」幻の復刻米「穂増」を使用した「産土 2021 穂増」は2022年2月の発売以来、入手困難!ひいな「次のお酒は、2022年2月に発売になったばかりのお酒です!」テツヤ「おぉ!それは気になるねぇ」ひいな「第27回に、同じ蔵の『和水』ていう山田錦を使ったお酒をご紹介したんだけど、“ドメーヌ”がキーワードになっていて」(ライター注:ドメーヌとは水、米など、その土地のものでお酒を造ること)テツヤ「これも?」ひいな「そう。このお酒は『穂増(ほませ)』っていうお米を使っています。お酒は『産土』で、うぶすなと読みます」テツヤ「へぇ!」ひいな「2021年12月にこの産土シリーズが生まれたばっかりで、最近、すごく注目されてるお酒です!しかも、今日紹介するお米のなかで一番古いお米」」テツヤ「へぇ。いつ?」ひいな「穂増の元々の品種が江戸肥後米って名前なんだけど、江戸時代には九州全体で栽培されてたすごくメジャーなお米で、江戸末期には“天下第一”の米って呼ばれてたらしい」テツヤ「へぇ、ってことは、酒米じゃなくて食米だったってこと?」ひいな「そう。もともとは食米だったみたい」テツヤ「聞いたことなかったよ」ひいな「でね、このお米が復活したのは2017年で、なんとつい最近なの」テツヤ「うわぁ、そんな昔の米を最近復活させたんだ」ひいな「地元に根づいたお米で造りたい!ってなったんだろうね」テツヤ「いいことだね。それぞれの蔵の地域性があらわれるところだもんね、米って」ひいな「そうそう。飲んでみようか。13度だから、アルコール度数は低めかな」(パコーン!)ひいな「わっ!びっくりした(笑)」テツヤ「すごい勢いで開いたね(笑)」ひいな「生酒だから。発泡してるね」テツヤ「初穂増いただきます!」テツヤ&ひいな「乾杯!」しゅわしゅわと発泡してるのがわかります。「穂増」いただきます!テツヤ「うわ、何これ?いいねぇ。春飛び越えて初夏って感じだな」ひいな「おいしい!第27回で紹介した『和水』と共通点あるよね」テツヤ「うん、あるある」ひいな「最高に高揚感のあるお酒だな」テツヤ「これいくら?」ひいな「2,530円。自然栽培のお米を使ってるから」テツヤ「自然栽培って?」ひいな「肥料なし、農薬なしで育ててる」テツヤ「なるほど」ひいな「『穂増』自体、農薬が出る前の品種だから農薬を使うとうまく育てられないらしい」テツヤ「そっか。昔は農薬も肥料もないもんね。復刻米って実は今のオーガニックな流れに合う品種ってことなのかもね」ひいな「稲が倒れたり、脱粒(だつりゅう)って言って稲穂から種もみが落ちちゃうことが多かったらしくて。明治以降はもっと育てやすいお米に取って代わられちゃったんだって」テツヤ「なるほど。そうなっちゃうよね」ひいな「1970年くらいになると甘み、粘りがあるコシヒカリが主流になっていったんだけど、『穂増」の特性は粘りが少なくて、お米としての噛みごたえがあるというか」テツヤ「まさに大地の恵みだね。『産土』って名前にぴったりじゃない」テツヤ「ほんとに。産土シリーズはすごくこだわってるお酒だから、ぜひHPを見てほしい!」テツヤ「いやぁ、3本とも個性があっておもしろかったな。俺、復刻米の酒好きかも。ナチュールワインにより近い気がする」ひいな「ナチュールが好きな父にはぴったりかもしれないね」テツヤ「それぞれの個性があって、ストーリーがあるじゃない」ひいな「昔のお米を復刻させるってすごい大変なことだもんね」テツヤ「うん、これは買いたいし語りたくなるかも。日本酒を選ぶ時、お米で選ぶようになったら通だよな」ひいな「そうだね。これからはお米にも注目してほしいな」テツヤ「今日の3本はかなりお値打ちだったね。日本酒好きな人に教えなくなる」ひいな「どれを紹介しても、お土産で持っていっても喜ばれると思う」テツヤ「語っちゃうよね。これはね…って。いやぁ、最後に飲んだ『産土』の13度が軽くてよかったな」ひいな「次回(4月3日公開予定)は、まさにアルコール度数に着目した回なのでお楽しみに!」テツヤ「次号予告まで(笑)。乞うご期待です!」【ひいなのつぶやき】蔵の歴史や地域の背景を知ると、味わいもより深みが増す気がします!ぜひ、お米に注目して日本酒を選んでみてくださいひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Shu Yamamoto illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2022年03月06日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は「しぼりたての新酒」がテーマとなった第二十九夜の総集編をお届けします。1本目/にごりを雪に見立てた大人気の1本「仙禽 雪だるま しぼりたて活性にごり酒」栃木県さくら市にある「仙禽(せんきん)」は、『伊藤家の晩酌』第1回、第2回でも紹介したことがある記念すべき日本酒。中でも、人気の「雪だるま」は季節限定のにごり酒で、かわいいラベルが目印。しぼりたてでフレッシュなぷちぷちとした発泡感も味わえる。「仙禽 雪だるま しぼりたて活性にごり酒」720ml 1,800円(ひいな購入時価格)/株式会社せんきんあわせたおつまみは「大根の唐揚げの銀あんかけ」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!2本目/今、注目すべき新酒の「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」山口県下関市にある「長州酒造」は、かつて「菊川」という酒を造っていた児玉酒造から事業継承するかたちで、ゼロから「天美(てんび)」という新しい銘柄を生み出し、そのおいしさで瞬く間に入手困難な銘柄となり、わずか1年で一躍話題の日本酒に。「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」720ml 1,980円(ひいな購入時価格)/長州酒造株式会社あわせたおつまみは、生姜醤油と塩で食べる「しいたけの海老しんじょう」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!3本目/見事なバランス感で誰もが好きになる「よこやまSILVER7 生 純米吟醸」長崎県壱岐市で1914年に創業した「重家酒造」は当時から焼酎と日本酒を製造。一度は日本酒の製造が途絶えたものの、2018年に日本酒造りを再開。他の酒蔵で修業し、壱岐産の山田錦の栽培を行い、「よこやま」シリーズが誕生。「よこやまSILVER7 生 純米吟醸」720ml 1639円(ひいな購入時価格)/重家酒造株式会社さっぱりだけど濃厚な味わいの「じゃがいものニョッキ」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!毎週日曜の夜更新。「伊藤家の晩酌」をチェック!娘・ひいなと父・テツヤが毎週織りなす愉快な親子晩酌。これまでの連載内容はこちらをクリック!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
2022年02月20日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第二十九夜の3本目は、麦焼酎発祥の地で、新たに生まれた長崎県のお酒。今宵3本目は、見事なバランス感で誰もが好きになる「よこやまSILVER7 生 純米吟醸」。長崎県壱岐市で1914年に創業した「重家酒造」は当時から焼酎と日本酒を製造。一度は日本酒の製造が途絶えたものの、2018年に日本酒造りを再開。他の酒蔵で修業し、壱岐産の山田錦の栽培を行い、「よこやま」シリーズが誕生。「よこやまSILVER7 生 純米吟醸」720ml 1639円(ひいな購入時価格)/重家酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「本日ラスト!新酒3本目は『よこやまSILVER7』です!」父・徹也(以下、テツヤ)「へぇ。『シルバーセブン』ってめずらしい名前だね。どこの蔵?」ひいな「長崎県の壱岐」テツヤ「お!島だ!」ひいな「そう。壱岐島のお酒です」テツヤ「壱岐島に日本酒の蔵があるんだ」ひいな「壱岐にはもともと焼酎蔵がたくさんあって、重家(おもや)酒造っていう蔵で日本酒も造ってたんだけど、1990年から日本酒を造るのをお休みしたんだって」テツヤ「日本酒も造ってたんだね」ひいな「麦焼酎の『ちんぐ』を製造してる蔵なんだけど、2018年に日本酒蔵を建設したの。杜氏の横山太三さんという方が再建したんだけど、この蔵、前に紹介した『東洋美人』澄川酒造場とゆかりがあって。横山さんがこの蔵で修行をしてたんだって」テツヤ「おぉ!」ひいな「その修行を終えて壱岐に戻って、2018年に蔵を建設して日本酒が復活したの。1902年の壱岐島には17個の日本酒蔵があったんだって!」テツヤ「それはすごいね。そんなにあったんだ。壱岐は焼酎もあるけど、日本酒の島でもあったんだね」ひいな「激しい気候の変化と杜氏の高齢化で1990年には日本酒を造る蔵はゼロになっちゃった」テツヤ「あら。重家酒造が最後だったんだ」ひいな「そう。でも、2018年に復活して生まれたのが『横山五十』なの。横山さんが高校生の頃に日本酒造りを辞めたんだって。親が苦しい思いをしてるのを近くで見てたみたい。日本酒をもう一度やりたいと思ったきっかけは、〈はせがわ酒店〉の代表の方とお話ししたことで自分たちは日本酒を造りたいんだって目覚めて、壱岐で日本酒を復活させようと思ったらしい」テツヤ「新しく生まれた『よこやま』飲むのが楽しみだねぇ」ひいな「今回は徳利に入れてみるね」ガラスの器でいただきます!いただきます!さてはてお味はいかがでしょう?はぁ。おいしいねぇ。香りさわやか、味わいもフルーティでめちゃくちゃ飲みやすいよ!テツヤ「少しにごってる?発泡してる感じもあるね」ひいな「新酒だからね。このお酒は純米吟醸の生酒になります」テツヤ「いただきます!わぁすっきりしてる!」ひいな「うん、おいしい!」テツヤ「春酒って感じだな」ひいな「うんうん、春酒っぽいよね」テツヤ「2月だしもう新春だし、まさにぴったり!」ひいな「ほんとだね」テツヤ「いやぁ本当においしいね、このお酒。こういうお酒こそ、日本酒入門編にいいんじゃない?みんな好きだと思うな」ひいな「本当にそう思う。飲みやすいよね。特等の山田錦を使ってるっていうのもあって、いいお酒だと思う」酔っ払ってグラスをこぼす父・テツヤ。たまにはこういうことも起こります(笑)。テツヤ「失礼しました(笑)!新酒なのにもったいなかったね」ひいな「そろそろ、このお酒に合わせるおつまみを持ってくるね!」「よこやまSILVER7 生 純米吟醸」に合わせるのは、さっぱりだけど濃厚な味わいの「じゃがいものニョッキ」。テツヤ「お?これはニョッキ?」ひいな「そう!じゃがいもをつぶしてニョッキにしてみました」テツヤ「めっちゃうまそう〜!イタリアンを日本酒に合わせちゃうんだな」ひいな「ニョッキを作ったのは実は人生で2度目で。1回目は料理家の広沢京子さんの福岡のお家に中学生の頃遊びに行った時、ニョッキの作り方を教えてもらったの」テツヤ「いいねぇ。思い出のニョッキだね」ひいな「そこまでの完成度ではないかもしれないけど」テツヤ「ニョッキってあんまり食べたことないんだよなぁ。うん、これはおいしい!日本酒にもめっちゃ合う」ひいな「合う?」テツヤ「合う、合う。イタリアンなのにすごく合ってる。ソースは何が入ってるの?」ひいな「生クリームと牛乳とチーズ」テツヤ「いやぁ、ニョッキと合わせたら、急にワイン飲んでる気持ちになってきたぞ」ひいな「たしかに(笑)」テツヤ「ニョッキ食べた途端、ワインになった」ひいな「わかる(笑)」テツヤ「この日本酒、ニョッキとめちゃくちゃ合う。びっくりするくらい合うよ。日本酒って、意外と乳製品と合うんだな」ひいな「そう。チーズとかクリームソースとかと合うよね」テツヤ「さらにこの新酒がすごく合う気がする。乳酸感があるからかな?」ひいな「あ、そうかもしれないね。発酵感がチーズとも合うよね」7号酵母から生まれた「よこやま」と「真澄」の味わいは似てる?テツヤ「どうしてこの日本酒の新酒を選んだの?新酒って他にもいっぱいあるわけじゃない?」ひいな「日本酒業界が今フォーカスしてる日本酒を紹介したいなと思って。2018年に蔵を再建した時に『横山五十』っていうお酒を出したんだけど、それがブレイクして。このお酒はそのシリーズなんだけど…」テツヤ「この『SILVER7』の意味は?」ひいな「7号酵母のこと」テツヤ「あぁ、そういうことか!」ひいな「7号酵母のお酒、一度紹介したことがあるんだけど覚えてる?」テツヤ「たしか九州のほうじゃなかった?」ひいな「惜しい!それは9号酵母。『真澄』のスパークリングを紹介したんだけど、『真澄』って7号酵母なの。7号酵母の発祥は『真澄』っていわれてるんだけど、その7号酵母を使ってるからどことなく『真澄』っぽさを感じるというか」テツヤ「なるほどね。そういうことか」ひいな「私の好きな味がする(笑)。『真澄』の控えめだけど華やかな感じがしていいなと思ったのが、このお酒を選んだ理由かな」テツヤ「確かに『真澄』っていわれたら『真澄』っぽいね(笑)」ひいな「でしょう?」テツヤ「長崎の『よこやま』と長野の『真澄』か。“長”つながりだね」ひいな「だね!」テツヤ「壱岐といえば、知り合いのお兄さんが壱岐で焼酎の酒蔵やってるって言ってたな」ひいな「わぁ、そうなんだ。日本酒は造ってないのかな?」テツヤ「原田酒造だ。焼酎とクラフトビールを造ってるんだって」ひいな「そうなんだ」テツヤ「麦焼酎なんだね。島でも米を作ったりしてるのかな」ひいな「壱岐って気候が豊からしくて。だから作物が育ちやすいから、米も育てやすいらしいよ。だから日本酒の蔵もたくさんあったんじゃないかな」テツヤ「なるほど。日本海側だし寒暖差もありそう」ひいな「そうそう。そのほうがお米は育ちやすいもんね。壱岐島のなかでも、アスパラガスが育つくらいミネラル豊富なところに蔵を造ったらしくて」テツヤ「アスパラガスってそうなの?」ひいな「水源の上に蔵を建てたんだって。理想の味わいにするためにタンクの規模をコンパクトにしていて、味の調節が効くようにもしているらしい」テツヤ「なるほど。小さいロットで造ることでいろいろな味わいで造れるわけだな」ひいな「そういうこと」テツヤ「壱岐って大きいのかな。人口どれくらいなんだろう。多いのかな(ライター注:壱岐市の人口は約2.5万人(令和3年時点)だそうです)」ひいな「日本酒の蔵がそんなにたくさんあったんだもんね」テツヤ「たしか神社がすごく多くて神聖なところだよね」ひいな「そうそう」テツヤ「島で日本酒が造られてるなんて知らなかったよ」ひいな「横山さんが復活してくれて本当によかったね」【ひいなのつぶやき】長崎の島で生まれた、人とのつながりが感じられる1本です!洋食とも合うフレッシュな日本酒、お試しあれ!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2022年02月06日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第二十九夜の2本目は、人気女性杜氏が醸す、日本酒界を賑わす山口県のお酒。今宵2本目は、今、注目すべき新酒の「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」。山口県下関市にある「長州酒造」は、かつて「菊川」という酒を造っていた児玉酒造から事業継承するかたちで、ゼロから「天美(てんび)」という新しい銘柄を生み出し、そのおいしさで瞬く間に入手困難な銘柄となり、わずか1年で一躍話題の日本酒に。「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」720ml 1,980円(ひいな購入時価格)/長州酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「次の新酒は『天美(てんび)』でございます!『天美』って知ってる?」父・徹也(以下、テツヤ)「ううん。初めて聞いた」ひいな「天に美しいで『天美』なんだけど、なんとこの酒蔵は2020年11月に初めてお酒を出荷して、1周年を迎えたばかりなの」テツヤ「え?じゃ、コロナ禍にデビューしたんだ」ひいな「そう。下関で生まれた蔵なんだけど、女性杜氏の藤岡美樹さんが造ってらっしゃるお酒です」テツヤ「へぇ、これも山口のお酒か」開封時に振る際はお気をつけください!無事、あふれることなく開栓!ワイングラスでいただきます!うすいにごりがおいしそう。ひいな「まずは飲んでもらおうかな。では、おつぎします!」テツヤ「わ、思ったより軽そうな感じだね?」テツヤ&ひいな「乾杯!」テツヤ「うわぁ、こりゃおいしいね」ひいな「おいしい〜!」テツヤ「ほら、あのスポーツドリンクみたいじゃない?」ひいな「最近、いい日本酒のたとえでスポーツドリンクみたいだねってよく聞く」テツヤ「マジで?俺、最近、日本酒勉強してるから」ひいな「いつのまに(笑)」テツヤ「でも、本当にそんな味がするよ」ひいな「上質なお酒って、よくスポーツドリンクにたとえられるから大正解」テツヤ「俺もだんだん日本酒を語れるようになってきたね(笑)。これはうすにごり?」乾杯!ひいな「これはにごり生で、通称“あおてん”って呼ばれてて」テツヤ「あおてん?」ひいな「『天美』っていくつかあるんだけど」テツヤ「あ、わかった!青い『天美』だから“青天”か!」ひいな「そう!メジャーなのは“白天”で純米吟醸。“青天”は純米吟醸のにごり生なの」テツヤ「なんでそんなに人気になったの?」ひいな「それはやっぱりおいしいからじゃないかな」テツヤ「うん、確かにめちゃくちゃうまい」ひいな「だから、ぜんぜん手に入らないの」テツヤ「そうなんだ。よく手に入ったね」ひいな「〈はせがわ酒店〉に行ったらたまたま売ってて、すぐに買っちゃった」テツヤ「さすが〈はせがわ酒店〉!『天美』見つけたら、即買いだね。『天美』覚えておかないと」ひいな「うん、即買いで!あと“桃天”もあって、それがうすにごりになるかな」テツヤ「さっき飲んだうすにごりの『雪だるま』より濃い気がするんだけど」ひいな「そうだね。『雪だるま』はアルコール度数13度で『天美』は15度だしね。フローラルな感じなんだけど甘みがあって、食欲を増進させるような感じがあると思ってて」テツヤ「お酒自体の濃さがあるから、さっぱりしてるのに飲みごたえもあって」ひいな「そうだね。蔵の目指す酒質っていうのがあって、甘さとバランスの良いキレのいいお酒で、香り控えめで味わいに寄り添うようにしたいっていうのがあるらしいんだけど、その通りだなと思う」テツヤ「うんうん」「天美 新酒 純米吟醸 にごり生」に合わせるのは、生姜醤油と塩で食べる「しいたけの海老しんじょう」。テツヤ「さっきから揚げ物の匂いがしてるんだけど…」ひいな「あ、バレちゃった?」テツヤ「たしかに、揚げ物すごい合いそうだね。揚げ物を日本酒の酸で切るというか」ひいな「はい。合わせるのは揚げ物です(笑)」テツヤ「お?何だこれ?」ひいな「しいたけの海老しんじょうです」テツヤ「あぁ、うまそう!最高!かたちがなんともかわいいねぇ」ひいな「生姜醤油をつけてお召し上がりください」テツヤ「いいねぇ。なんで『天美』にしいたけ海老しんじょうだったの?」ひいな「『天美』に唯一足りないものって、だし感とかうまみ成分だと思ってて」テツヤ「たしかにすっきりしてるもんな」ひいな「それを補えるものって何だろう?って考えた時に、海老のうまみとしいたけのうまみのダブルはどうだろうと」テツヤ「うまみの塊を合わせたわけだな?俺、揚げ物は手で食べたい派なんだけど、こりゃ熱すぎてダメだわ」ひいな「やけどに気をつけて(笑)」テツヤ&ひいな「いただきます!」テツヤ「わぁ、こりゃおいしい。お酒ともすごく合ってるね。バッチリ。でもさ、生姜醤油もいいんだけど、塩でもおいしそうじゃない?」ひいな「塩も合うと思う!」テツヤ「この塩はさ、能登のはま塩って言って、桶で海水を撒いて揚げ浜式の製法で作られてる自然塩なんだって」ひいな「うん、おいしい!塩、めちゃ合うね」テツヤ「塩だった?」ひいな「うん。『天美』のやわらかい感じには、もしかしたら塩で合わせた時のだし感のほうが合うかもしれない」テツヤ「うん、だよな。この塩めちゃうまいな。まろやか!」ひいな「塩だけでも日本酒にも抜群に合う。能登に行かないと買えないの?」テツヤ「そう。『dancyu』の編集さんが買ってきてくれたのよ。しかも、この塩は先代の方が作った塩でなかなか手に入らないらしい」ひいな「貴重だね」揚げたてアツアツ。口のなか、やけどに注意。テツヤ「しいたけ海老しんじょうもうまいよ。どうやってこんなの作れるの?」ひいな「もともとはしいたけを焼いて、かさのところにだし醤油とか入れようかなって思ってたんだけど」テツヤ「それもいいね」ひいな「でもやっぱり海老のうまみをプラスしたくて。海老は完全にすりつぶしたほうがいいらしいんだけど、ちょっと歯ごたえを残して、つなぎのはんぺんの食感も残ってる感じにしてみた」テツヤ「はんぺんが入ってるからこんなにふわふわなんだな。食べる時はさ、海老じゃなくてしいたけ側を舌につけて食べたほうがうまいと思う」ひいな「え(笑)」テツヤ「絶対、味わい違うと思うよ」ひいな「うん、しいたけ感をより感じられるかも。お酒がからっぽになっちゃったね」飲み干しちゃいました。テツヤ「それくらいうまいってことだよ」ひいな「うまみに『天美』が合うでしょう?」テツヤ「うん、バランスいい。食べたあと味を切る感じがあるね。『伊藤家の晩酌』の中でもかなりいいつまみだと思います!」ひいな「よかった〜」1つの蔵から生まれるお酒を四季ごとに味わって、1年かけて追ってみたい!ひいな「蔵のスローガンはね、『微差は大差』なんだって。かっこよくない?」テツヤ「どういうこと、どういうこと?」ひいな「ちょっとの差は大きい差になってしまうっていうこと」テツヤ「なるほど。それは日々酒造りに向き合ってるなかで生まれた哲学なんだろうな」ひいな「日本酒が苦手な人でも感動する極上の一杯をって造られてるから、本当になんの抵抗もなく飲めるお酒って感じがするな」テツヤ「うんうん」ひいな「この蔵はね、昔、『菊川』っていうお酒を造ってた児玉酒造ってところがあって、そこが製造量の減少に伴って製造を停止しちゃったんだって。そしたら、長州産業株式会社っていう太陽光発電システムを開発している会社が、事業を継承するかたちで長州酒造に改名して、そこに杜氏として藤岡さんを迎え入れたんだって」テツヤ「あぁ、そういうことか」ひいな「杜氏の藤岡さんは、東京農業大学の醸造科を出てるんだけど、奈良県の『やたがらす』っていうお酒を造ってるところにいたり、香川県の『川鶴』とか、三重県の『作(ざく)』とかを造ってた有名な方で、新しいこの蔵に就任したの」テツヤ「へぇ!どれも聞いたことあるお酒ばっかり。知る人ぞ知る杜氏なんだな。藤岡さんの造る味の系統ってあるのかな?」ひいな「こういう造りをしたいっていうのはあると思うよ。実はさ、『天美』のほかにも別の蔵から『天賊(てんぶ)』ってお酒もあって」テツヤ「どこが出してるの?」ひいな「芋焼酎の『富乃宝山』を出してる、鹿児島県の西酒造」テツヤ「おぉ」ひいな「この『天美』と『天賊』が2020年に人気だったツートップで」テツヤ「へぇ。全然知らなかった。山口県と鹿児島県、西のほうのお酒がトレンドなのかな。しかも『天美』はまだ1年の蔵なのに!」ひいな「そう。この1年ですごいファンがついたの」テツヤ「自粛期間にみんな家で飲んでたんだな。でも毎年、トレンドって変わるでしょう?」ひいな「そう。でも流行りがあるなかでも『天美』はすごく好感を持ってて。これからも応援していきたいなと思う酒蔵で。春に出る“桃天”も楽しみにしてて」テツヤ「たとえばさ、季節ごとに変わる日本酒をそろえてさ、たくさんの種類じゃなくていいから、いくつかお気に入りの蔵の日本酒を1年通して飲める宿とかあったらいいよねぇ」ひいな「あぁ、素敵だね」テツヤ「常連の宿にしてさ、こういう季節になりましたよ、今年のお酒はこうですよっていうほうが通いたくなるなぁって」ひいな「1週間に3〜4回通うお店よりも、1年間に4回、四季に合わせて行くことに価値があるよね」テツヤ「たしかにね。季節が変わるタイミングで通うって素敵だな」ひいな「どこの蔵を年追っかける?」テツヤ「どこだろう?1年中、いつ飲んでもうまい酒がいいよね。今まで100回以上連載やってきたけど、もう一回全部を飲み比べてみたい!」ひいな「やりたい!大試飲会!」テツヤ「で、俺の蔵ベスト3を選ぶ!」ひいな「今年も長くつきあっていきたい、おいしい酒蔵を探していきたいねぇ」【ひいなのつぶやき】杜氏の藤岡さんがこだわり抜いたからこそ、世間が愛しているお酒だと感じています!「微差は大差」を舌で味わいましょう!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2022年01月23日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、2022年、新年にふさわしいしぼりたての新酒をご紹介。第二十九夜の1本目は冬の雰囲気を盛り上げる栃木県のにごり酒。今宵1本目は、にごりを雪に見立てた大人気の1本「仙禽 雪だるま しぼりたて活性にごり酒」。栃木県さくら市にある「仙禽(せんきん)」は、『伊藤家の晩酌』第1回、第2回でも紹介したことがある記念すべき日本酒。中でも、人気の「雪だるま」は季節限定のにごり酒で、かわいいラベルが目印。しぼりたてでフレッシュなぷちぷちとした発泡感も味わえる。「仙禽 雪だるま しぼりたて活性にごり酒」720ml 1,800円(ひいな購入時価格)/株式会社せんきん娘・ひいな(以下、ひいな)「あけましておめでとうございます!」父・徹也(以下、テツヤ)「あけましておめでとう!」ひいな「今年もどうぞよろしくお願いいたします!新年第1回目は、恒例の新酒特集です。今回から3回にわたって新酒を紹介いたします!」テツヤ「いやぁ、かわいいね、雪だるま。雪積もってるねぇ」ひいな「雪に見立てたにごりがかわいいよね」テツヤ「にごり酒かぁ。冬だねぇ。この雪のところはどうするの?」ひいな「一回開けてから振れば大丈夫なんだけど…」テツヤ「雪だるまにハラハラと散る雪がいいんじゃない?」フタに穴が空いてるのは発泡している証拠。雪が舞うのはきれいだけど吹き出してしまわないか心配…。いよいよオープン!セーフ!吹き出さずに開栓できました。ひいな「やっちゃおうか」テツヤ「うわ〜かわいい、雪が舞って白くなって」ひいな「このお酒、実は『仙禽』なの」テツヤ「おぉ?ひいなの好きなあの『仙禽』?」ひいな「そうそう。第1回、第2回でも紹介した『仙禽』。私が日本酒にはまったきっかけのお酒なんだけど、冬に出る季節商品『雪だるま』を今回はご紹介します!」テツヤ「『仙禽』かぁ。うまいだろうなぁ」ひいな「やっぱり、『仙禽』といえば“あまさん”だから」テツヤ「あまさん?」ひいな「甘みと酸味で“甘酸”は健在だから。まず飲んでみようかな」テツヤ「白くてきれいだねぇ。にごりっていうほどドロっとはしてないね。さらっとしてる感じ」ひいな「そうなの」ワイングラスでいただきます!あけましておめでとうございます!ゴクリといただきます。テツヤ&ひいな
2022年01月09日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は「燗酒にぴったり」がテーマとなった第二十八夜の総集編をお届けします。1本目/熱燗好きが、熱燗のために造ったという「月波ノ波」と「月波ノ月」長野県大町市にある薄井商店の代表銘柄といえば「白馬錦」。「山と、水と、ともに生きる。」という蔵のコンセプト通り、北アルプスのふもとで酒造りを行う。長野県小谷村との共同開発で生まれた「月波」シリーズは、夏でも冬でも熱燗が大好き!という小谷村の方々の熱燗への熱い思いによって生まれたお酒。左:普通酒「月波ノ波」990円右:純米酒「月波ノ月」1,430円(各720ml、ひいな購入時価格)/株式会社薄井商店あわせたおつまみは〈道の駅おたり〉で買った地元グルメセット左上から時計回りに。唐辛子が効いたピリッと辛い「こしょうみそ」、〈おたり生ハム工房〉の「熟成生ハムニンニクオリーブ」と「原木熟成プロシュートペースト」は止まらないおいしさ。酸味と食感が抜群の「野沢菜ふぶき」の4つ。この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!2本目/香り華やか&フルーティで上品な甘みの「東洋美人 純米大吟醸 ASIAN BEAUTY」山口県萩市にある「澄川酒造場」は、2021年で創業100周年を迎えた。山口県産の山田錦を使い「王道の酒造り」にこだわる。日本酒を飲んだことのない人にも飲んでもらえるよう「0杯から1杯へ」を目標においしさと親しみやすさを追求。リーズナブルな価格で純米大吟醸が楽しめる1本。「東洋美人 純米大吟醸 ASIAN BEAUTY」750ml 1,375円(ひいな購入時価格)/株式会社澄川酒造場あわせたおつまみは、「牛肉の西京漬焼き」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!3本目/70度まで熱くする“ふつふつ燗”で!「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」京都府丹後市にある「木下酒造」は1842年創業。「変化がおもしろいお酒」の玉川。蔵の推奨は「適温は高め」、55度以上にしっかりと熱くし、燗冷ましで変化を楽しむことを勧めている。アルコール度数は20度と強め。「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」720ml 1,705円(ひいな購入時価格)/木下酒造有限会社あわせたおつまみは、ごまだれたっぷりの「坦々風水餃子」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!毎週日曜の夜更新。「伊藤家の晩酌」をチェック!娘・ひいなと父・テツヤが毎週織りなす愉快な親子晩酌。これまでの連載内容はこちらをクリック!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
2021年12月26日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、寒い季節に飲みたくなる燗酒にぴったりな日本酒をご紹介。第二十八夜の3本目は、熱燗にしておいしささらに増す、京都のお酒。今宵3本目は、70度まで熱くする“ふつふつ燗”で!「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」。京都府丹後市にある「木下酒造」は1842年創業。「変化がおもしろいお酒」の玉川。蔵の推奨は「適温は高め」、55度以上にしっかりと熱くし、燗冷ましで変化を楽しむことを勧めている。アルコール度数は20度と強め。「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」720ml 1,705円(ひいな購入時価格)/木下酒造有限会社娘・ひいな(以下、ひいな)「3本目の燗酒は『玉川』です」父・徹也(以下、テツヤ)「『玉川』?初めて聞いた」ひいな「京都のお酒なんだけどね」テツヤ「ラベル、いいね。かわいい。俺、好きなやつ」ひいな「今の杜氏さんになってからかな、ここ10何年かでラベルチェンジもしたの」テツヤ「柚木沙弥郎さんっぽさもあるっていうか、すごいかわいい」ひいな「山廃純米無濾過生原酒です」テツヤ「うわ〜。濃そうだね」ひいな「飲む前にお酒の情報を。これは試験的に造ってるシリーズらしくて、これは雄町を使って山廃純米を造ってみたら好評で、毎年1タンクしか造ってないんだって」テツヤ「普段は雄町じゃないの?」ひいな「うん。いろんなお米を使ってるみたい。この蔵は割とアルコール度数が高いものを造ることで有名なんだけど、これも19度〜20度もある」テツヤ「うわ、ほんとだ!高い!」ひいな「日本酒のアルコール度数って22度未満だから相当高いよね」テツヤ「俺が知ってる日本酒のなかで一番高いよ!」ひいな「私もそうかも。同じ蔵が出してる『Ice Breaker(アイスブレーカー)』っていうお酒があるんだけど、それはロックにして飲むことをおすすめしてる日本酒なの」テツヤ「わぁ、そういう日本酒もあるんだね、おもしろね」ひいな「そういうユニークな発想で酒造りをしてるのが、杜氏のフィリップ・ハーパーさんっていう方で、イギリス出身でオックスフォード大を出てるんだって」テツヤ「へぇ。ロックで飲むってウイスキーから着想したのかな」ひいな「ね。HPを見たら『玉川』の特徴を紹介する7つの項目があって、燗の一般論と玉川のお薦めがおもしろかったから紹介するね。一般的なとびきり燗は55度だけど、『玉川』をおいしく飲む温度帯の最低ラインが55度なんだって」テツヤ「最低が?」ひいな「そう。つまり55度以上に熱くしていいっていうこと」テツヤ「そりゃすごいな。アルコール度数が高いから温度を高くしてもアルコールが抜けないってことなのかな?」ひいな「うん。へたらないし、ガンガン燗にしたほうがおいしい」テツヤ「そりゃ頼もしいね」ひいな「燗酒の温度に正解はないから、いろんな温度帯で遊んでいただきたいって書いてあって」テツヤ「いいね、いいね。公式にお墨付きをいただいたわけだ」ひいな「ね。いろいろ試してみないとね!」テツヤ「今度は何度くらいにしてみるの?」ひいな「がんがん飛ばそうと思ってる(笑)」テツヤ「飛ばしちゃうんだ(笑)」ひいな「温度を上げるっていう意味ね(笑)」テツヤ「スペックだけ聞いてると強そうだもんな。雄町で山廃で無濾過生原酒で度数も高くて」ひいな「2020BYだから少し寝かしてある」テツヤ「少し熟成もしてるんだね。うわぁ、高そうなお酒じゃない?」ひいな「1,705円」テツヤ「お?そんなに高くないね。これはどうやってお燗にするの?」ひいな「またやかんにちろりスタイルで」テツヤ「いいね、いいね。温めよう!」ひいな「正直、常温だと『玉川』は苦手なんだけど熱燗にしたらすごい好きなんだよね」テツヤ「おぉ!もう開けただけで匂いにクセがあるぞ」ひいな「まずは常温でいただきます!」ひいな&テツヤ「乾杯!」まずは常温でいただきます!常温だとなかなかクセのあるお味のようで。ひいな「どう?」テツヤ「うわぁ濃いね〜これはクセあるねぇ」ひいな「紹興酒みたいだよね」テツヤ「そうそう。日本酒じゃないね。これは燗に期待しちゃうなぁ」ひいな「さっき紹介した『玉川』の特徴の1つ目には『変化が面白い玉川』書いてあって『時間軸や温度の違いによる味の変化は日本酒の最大の魅力』って書いてあって、極端な熱燗もOKって言ってます!」テツヤ「そりゃいいね。やっちゃおう!どこまで上げる?」ひいな「あちちち。いま70度かな」テツヤ「そんなに?アルコール飛んじゃわないか心配だけど」ひいな「大丈夫、大丈夫。飲んでみよう」湯気が立つほど熱々に。70度の日本酒。ふうふうしていただきます!お茶飲むみたいにゆっくりと。テツヤ&ひいな「いただきます!」テツヤ「うわ〜おいしくなった!」ひいな「おいし〜!」テツヤ「クセがなくなったのかな?」ひいな「クセが心地よくなる、っていう感じかな」テツヤ「常温の時にあったえぐみみたいなのが消えたね。酸とコクがましてめちゃおいしくなった」ひいな「あぁ、本当においしい〜」テツヤ「こりゃいい酒なんじゃない?熱くしたほうが絶対おいしいよ。ボディがしっかりしてるからこんなに温度上げてもおいしいんだな」ひいな「酸もしっかり残ってるしね」テツヤ「熱燗を意識して造っただけあるね。最低温度が55度なんだもんな」ひいな「そうそう」テツヤ「これは町の集会所で飲むやかん酒っていうよりは、薪ストーブの前でちびちび飲みたい感じだな(笑)」ひいな「わかる(笑)」テツヤ「いやぁ、それにしても化けたね〜!燗にした時の酒の味を想像して酒を造るってすごいよなぁ。でもさ、意外とわからないままなのかもしれないよね。あとからタイトルつけるみたいなさ」ひいな「確かに」テツヤ「意外とこんなのができちゃったっていう感じかもなって。このひいなのお燗の実験も功を奏してるっていうか、日本酒の可能性を広げてるよね」ひいな「ありがとうございます」テツヤ「日本酒を70度にするなんて初めてだよ!」「玉川 山廃純米 雄町 無濾過生原酒」に合わせるのは、ごまだれたっぷりの「坦々風水餃子」。テツヤ「うわ〜うまそう!」ひいな「坦々風水餃子です」テツヤ「ごまだれで食べるんだね。うまい〜!この酸味は何?」ひいな「ポン酢を隠し味に入れてみたよ」テツヤ「なるほど〜。このお酒に合うね。中華だね。紹興酒だね」ひいな「これは絶対にごまだれだな!と思って。ごまだれのなかでもごまをもっと感じたい!と思ってごまを追加したんだけど、ラー油も入れてアクセントにしました」テツヤ「いいね、いいね。うまいよ」ひいな「クセとクセを合わせる感じで」テツヤ「お酒と合わせるといい調和になってる。ポン酢の酸味が『玉川』の酸味とも合ってるし」ひいな「よかった」テツヤ「お燗って楽しいね。こんなにおいしくなるなんてね」ひいな「自分でひと手間加えて、日本酒をおいしくするのが楽しいよね」テツヤ「そうそう。自分で調整しておいしさを追求する楽しさがあるよね」ひいな「ちなみに『玉川』はどれだけ温度を上げてもOKって言ってて、熟成もOKって言ってる蔵だからやってみるのもいいと思う」テツヤ「さっきの70度のおいしさを知っちゃうと、50〜55度ってちょっとつまらなく感じちゃうな。間違いのない味だけど、さっきのほうがパンチがあって好きだな。ふりきったほうが絶対いいよ」ひいな「そうそう。50度くらいって無難でしょ?」テツヤ「可もなく不可もなくって感じだね。温度が高いほうが酸も感じた」ひいな「でも、50度がふつうの熱燗っていわれる温度なの。このお酒は、燗にしたほうが酸が立つけど、冷やして酸が立つお酒もあるし、そのお酒に合わせたおいしい温度帯があるんだよね。このお酒の蔵の推奨は55度以上だから」テツヤ「もう一回飲みたいから温めよう!」ひいな「酒造のスタッフさんは55度以下に低くつけることはありませんって書いてたよ。ぬる燗にすることはありません!って」テツヤ「おいしさを知ってるから、そう断言できるんだね。絶対さっきのほうがおいしいもんな」ひいな「ね。ほんとに」テツヤ「不思議だよ。温度によってこんなに違うなんて」ひいな「好みに合わせて冷たくも、温かくもできるのがいいよね」テツヤ「こうやって自分で温度を変えて味わいの変化を楽しめるのが日本酒の良さでもあるって、まさに蔵の言う通り!」ひいな「そうそう。その自由度が楽しい!」熱燗のまだまだ底知れぬ奥深さに、のめり込んでしまいそう!?70度にまで温めるには沸騰させたお湯が必要です。70度にして、また乾杯!テツヤ「70度になったよ!」ひいな「あぁ、おいしい!」テツヤ「やっぱりこれだね。圧倒的に70度だね」ひいな「ぜんぜんおいしさが違うね」テツヤ「いやぁ、熱燗は奥が深いなぁ。追求しがいがあるね」ひいな「前回、燗酒特集やった時は、燗冷ましがかっこいいって思ってた自分がいたんだけど…」テツヤ「あぁ、去年やったね」ひいな「ちょっと今は恥ずかしい」テツヤ「そうなんだ。でも燗冷ましもありでしょう?」ひいな「もちろん!ぜんぜん今でもありなんだけど、燗酒の先輩の〈つきや酒店〉の知香良くんから教えてもらったのがね、一度ある温度まで上げて、そこに常温のお酒を加えて、また温度を上げるっていうことをすると味が全然違うって」テツヤ「なんだかもうすごい世界だな(笑)」ひいな「確かにぜんぜん違ったの」テツヤ「熱燗にすることで飛んでしまう成分をきっとお酒を加えることで補うんだろうな」ひいな「そういうことだと思う。燗酒は奥が本当に深いよ」テツヤ「実験だね」ひいな「知香良くんのお燗を飲んだら、自分のお酒を飲むのにちょっと時間がかかるくらい本当においしいんだよね」テツヤ「知香良くん、今日、ゲストできてるんでしょう?」ひいな「いつかお燗の特集に来てもらおう(笑)」テツヤ「また来年か?」ひいな「日本酒の知識も大切なんだけど、おいしく飲む方法をもっともっと知りたいな」テツヤ「そうだね。実験あるのみ!この3回じゃ収まりきらない燗酒特集だね。燗酒って正解がないからさ」ひいな「おいしいって思ったら正解だと思う」テツヤ「おいしさの感覚も変わっていくしね。外の気温とかさ」ひいな「そうそう。お酒の流行りとかもあるしね。これからも研究していきたいね」テツヤ「燗酒ばんざい!」ひいな「来年もお楽しみに!」【ひいなのつぶやき】遊び心ある「玉川」を、オリジナリティあふれる飲み方で楽しんでみてください!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年12月26日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、寒い季節に飲みたくなる燗酒にぴったりな日本酒をご紹介。第二十八夜の2本目は、リーズナブルで飲みやすい山口のお酒。今宵2本目は、香り華やか&フルーティで上品な甘みの「東洋美人 純米大吟醸 ASIAN BEAUTY」。山口県萩市にある「澄川酒造場」は、2021年で創業100周年を迎えた。山口県産の山田錦を使い「王道の酒造り」にこだわる。日本酒を飲んだことのない人にも飲んでもらえるよう「0杯から1杯へ」を目標においしさと親しみやすさを追求。リーズナブルな価格で純米大吟醸が楽しめる1本。「東洋美人 純米大吟醸 ASIAN BEAUTY」750ml 1,375円(ひいな購入時価格)/株式会社澄川酒造場娘・ひいな(以下、ひいな)「熱燗特集2本目です!」父・徹也(以下、テツヤ)「ウェ〜イ。もうすでに4本くらい飲んだ気になってるんだけど(笑)。熱燗は酔いが回るねぇ」ひいな「ね(笑)。今回紹介する『東洋美人』は、大学生の時にハマってよく飲んでたお酒で。渋谷の東急百貨店の地下に酒屋さんがあったんだけど、あそこで買って、よく路上で飲んでたの」テツヤ「路上なんだ(笑)。聞いてないな」ひいな「一合瓶を2人で1つずつ買って飲んだりしてね」テツヤ「おぉ、青春だねぇ。思い出の酒だねぇ」ひいな「そんな『東洋美人』を熱燗で飲んでみたいと思います!」テツヤ「熱燗が合うんだ?」ひいな「実は今回、やってみたいことがあって…」テツヤ「なになに?」ひいな「純米大吟醸をとびきり燗にしてみたい!っていう野望があって」テツヤ「そりゃ実験だ!」ひいな「そう。実験をしてみたくて」テツヤ「確かに家でしかできないことだもんな」ひいな「まずはそのままで飲んでみよう。『東洋美人 純米大吟醸 ASIAN BEAUTY』です!」テツヤ「わぁ〜!知らなかったよ『東洋美人』」ひいな「山口県萩のお酒です!」テツヤ「へぇ」ひいな「このお酒はね、テンション高いんだ、ほんとに」テツヤ「華やかなんだな?」ひいな「そうそう。純米大吟醸らしいお酒だよ」テツヤ&ひいな「いただきます!」まずは常温でいただきます!純米大吟醸らしく、香りにバナナ香が。テツヤ「え?華やかだけど、意外と地味じゃない?」ひいな「そう?確かに振り切る感じはないかもね。いわゆるバナナ香を感じてもらえるかと」テツヤ「確かにフルーティ」ひいな「甘ったるくはないけど、テンション高めではある」テツヤ「うん。高めではあるね」ひいな「じゃ、さっそく燗をつけてみるね。今まではサーモスにお湯を入れて熱燗にしてたじゃない?」テツヤ「そうそう」ひいな「サーモスだと50度くらいしか上がらないから、今回はそれ以上あげたいので……」テツヤ「やかんのたっぷりのお湯であっためるんだな!」ひいな「そう。たっぷりのお湯で燗にします!」テツヤ「とびきり燗って何度まで温めるの?」ひいな「55度以上かな」テツヤ「どんな味になるのか楽しみだなぁ。熱燗にしたらどう変化するんだろうね。このままで十分おいしいからさ」ひいな「これは完全にやってみたかったことを今回やってみるだけだから」テツヤ「合わなくてもいいんだな」ひいな「そう。まずは試してみないとね!」60度まで上げちゃいました!テツヤ「60度までいった!」ひいな「いいね。そろそろ飲もうか」ひいな&テツヤ「乾杯〜」熱々のとびきり燗でいただきます。2回目のいただきます!温めたことで香りも味も変化。テツヤ「なんかおもしろい匂いがするね。あ、おいしい!」ひいな「おいしいでしょう?」テツヤ「常温より華やかになったけど、うわついた華やかさじゃないっていうか。さっきより飲みやすくなったね」ひいな「すごい勝手なイメージだけどさ、東洋美人感あるよね」テツヤ「うんうん。酸味もちゃんと残ってるしおいしいよ。純米大吟醸の熱燗ってこうなんだ!っていう感じ」ひいな「純米吟醸、純米大吟醸レベルになると、『お燗につけてください』って言っても断るお店があるくらいなのね」テツヤ「そうそう。なんかやっちゃいけない感じっていうか、タブーな感じあるよね」ひいな「生酒と純米大吟醸の熱燗はタブーなイメージがある」テツヤ「やったことないだけなんじゃないかなぁ」ひいな「うんうん。それもあるよね」テツヤ「もっと柔軟においしいものを追求したいよね。お酒なんだからさ」「東洋美人 純米大吟醸 ASIAN BEAUTY」に合わせるのは「牛肉の西京漬焼き」。ひいな「今回、思いついたアテが2つあって。そのうちの一つは口のなかがパサパサしそうだからやめて、もう一つにしてみたよ」テツヤ「その却下したほうが気になるんだけど」ひいな「フィナンシェ」テツヤ「え?何?」ひいな「マドレーヌみたいな」テツヤ「おぉ〜。甘いものと合わせるのね」ひいな「それもいいかなって」テツヤ「あぁ、でもわかるわかる。この甘みに合うと思う」ひいな「でも口のなかの水分奪われて、水飲みたくなりそうだなと思って和食にしました」テツヤ「急に変わったね(笑)」ひいな「牛肉の西京漬焼きです!」テツヤ「なんか想像してたのと違った!うまそ〜!フィナンシェからこっちへ大きく振ったねぇ」ひいな「白味噌と純米酒をたっぷり入れて、みりんとお砂糖で味付けしてみたよ」テツヤ「『東洋美人』に漬けたの?」ひいな「今回は違うお酒で漬けました。でも良いお酒だよ(笑)」テツヤ「ぜいたくだなぁ」ひいな「いろいろレシピがあるんだけど、今回はお酒を使って風味を合わせてみようかと。味は濃いめにしましたので、白髪ねぎと合わせてお召し上がりください」テツヤ「一口で?」ひいな「うん」テツヤ「いただきます!うん、おいしい!この味噌の甘さがお酒と合うね」ネギをたっぷり巻いて。甘いお味噌と甘いお酒が好相性。ひいな「でしょう?黒砂糖を使ってみたよ」テツヤ「お酒の酸味と味噌の甘みが合うねぇ。肉もやわらかいねぇ」ひいな「お味噌に漬け込んでるからね。このお酒を調べてたら、納得することがあって」テツヤ「うんうん」ひいな「どこかのお酒の“イズム”を引き継いでる感じがして」テツヤ「イズム?どこだろう?」ひいな「どこだと思う?」テツヤ「え〜!俺でもわかる?」ひいな「『東洋美人』は、四代目の方が実習先で学んだ経験をもとに造ってるんだって」テツヤ「ようは、その実習先っていうのが知られてるところなんだな」ひいな「確かにこの上品さはね、似てるなって」テツヤ「俺、蔵に行ったことある?」ひいな「ないんじゃないかな?」テツヤ「俺、飲んだことある?」ひいな「『伊藤家の晩酌』の中ではないかな。でも絶対飲んだことはあると思う」テツヤ「じゃ、わかんないな」ひいな「『十四代』を造ってる高木酒造」テツヤ「へぇ」ひいな「そこで実習を積んだんだって。『十四代』は飲んだことあるでしょう?」テツヤ「あるある」ひいな「『十四代』の命を削る酒造りに感銘を受けたって書いてあって」テツヤ「そりゃすごい」ひいな「王道の日本酒造りを意識してたりとか」テツヤ「純米大吟醸らしさってみんなが想像するものに当てていくっていうことだな。スタンダード」ひいな「このお酒も、純米大吟醸だなって誰もが思う味わいというか」テツヤ「あぁ。なるほどね」ひいな「純米大吟醸って華やかで、あとにべたってするところもあると思うんだけど、それがないのが『東洋美人』のいいところで。あと『0杯から1杯へ』ってうのを目標にしてるらしくて」テツヤ「あぁ、なるほど」ひいな「日本酒をまったく飲まない人が飲むようになるっていうのが目標らしい」テツヤ「フィナンシェに合わせようとしたってことはさ、お菓子にも合わせられるってことだもんな」ひいな「入り口を狭めちゃうのは王道って言えないのかなって思う」テツヤ「確かに」ひいな「この純米大吟醸を嫌いな人っているのかな?って考えたらすごく少ないと思うんだよね」ひいな「うんうん、わかるよ。俺はお燗にした方が好きだったな」編集・小倉「俺も」ライター・薮下「私も」ひいな「これは蔵の人に伝えないとね」テツヤ「純米大吟醸=冷酒が当たり前なんだもんな。これがスタンダードになると、俺たちが今まで知ってた純米大吟醸はなんだって話になるよな。新しい感じがするなぁ」日本酒にもっと自由を!純米大吟醸を熱燗にしてもおいしいことを証明したい。テツヤ「でもさ、純米大吟醸ってことはお高いの?そんなお酒を温めちゃったの?」ひいな「結構安くてびっくりしたの。いくらだと思う?750mlだから四合瓶より30ml多いね」テツヤ「2,000円以下なわけないよな。2400円!」ひいな「なんと1,375円!」テツヤ「え〜!安い!それは燗にしてもいいよな(笑)。なんでなんで?」ひいな「安くてこのクオリティなんだよ!」テツヤ「こりゃいいね」ひいな「大学生の時に私がハマった理由は安さだったんだよね」テツヤ「なるほどね。純米大吟醸でその価格はすごいね。お求めやすい純米大吟醸なんだな」ひいな「ちなみに、2016年の日露首脳会談の晩餐会でプーチン大統領が『東洋美人』の『一番纏』を飲んで大絶賛したらしいよ」テツヤ「好きそうな感じするよね(笑)」ひいな「2019年にはJALのビジネスクラスでも出たりとか『東洋美人』は人気のお酒なの」テツヤ「知らなかったよ」ひいな「2013年に萩で集中豪雨があって床上浸水で1万本以上流されちゃったんだって。被災後には1500人以上の方が復興を手伝って、2014年に3階建の蔵を建設したんだって」テツヤ「いろいろあったけど、今があるんだね」ひいな「山口県産の山田錦を使ってて、2021年で100周年なんだって」テツヤ「すばらしいね。そういうタイミングで行けたら最高だったのにね」ひいな「今回ね、このお酒を燗にすることで熱燗の間口を広げたいなと思ったんだよね。純米大吟醸を熱燗にしたらダメとか、『東洋美人』みたいなきれいなお酒を熱燗にするなんてもったいないとか言われがちなんだけど、そういうお酒を燗にすることで、やってもいいんだって思ってもらえたらいいなと思って」テツヤ「うんうん。日本酒もさ、もっと自由に飲めたらいいよね」ひいな「やっぱり純米大吟醸を熱燗にすると、やっちゃいけない背徳感があるというか(笑)。でもやったら奥深さますじゃん!ほらみたことか!っていう感じもある」テツヤ「わかるわかる。やってみたらうまかったんだから大成功!でもさ、もっと温度が低いと違う味わいてことだよね?」ひいな「これ40度くらいでも燗にしてみたんだけど、いまいちパッとしなかった。別に燗にしてなくてもいいかなって思っちゃった」テツヤ「やっぱりとびきり燗にしないといけないんだな。この値段だったら罪悪感なくできるのがうれしいよね」ひいな「そういってもらえてよかった!」テツヤ「絶対にやっちゃいけないのかもしれないけど、燗冷ましをロックで飲みたいな」ひいな「もう意味がわからないね(笑)」テツヤ「なんかこのフルーティさが梅酒っぽいっていうかさ。甘みがあるから、氷入れて飲んでみたいなと思って」ひいな「あとはご自由にどうぞ!」【ひいなのつぶやき】固定観念を取っ払うと新たな発見が生まれることを、この回で証明できたと思います!“純米大吟醸燗”、ぜひお試しあれ!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年12月19日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は、寒い季節に飲みたくなる燗酒にぴったりな日本酒をご紹介。第二十八夜の1本目は、燗酒のために造られたという、お手頃な長野のお酒。今宵1本目は、熱燗好きが、熱燗のために造ったという「月波ノ波」と「月波ノ月」から。長野県大町市にある薄井商店の代表銘柄といえば「白馬錦」。「山と、水と、ともに生きる。」という蔵のコンセプト通り、北アルプスのふもとで酒造りを行う。長野県小谷村との共同開発で生まれた「月波」シリーズは、夏でも冬でも熱燗が大好き!という小谷村の方々の熱燗への熱い思いによって生まれたお酒。左:普通酒「月波ノ波」990円右:純米酒「月波ノ月」1,430円(各720ml、ひいな購入時価格)/株式会社薄井商店娘・ひいな(以下、ひいな)「今回は何度目かの熱燗特集です!」父・徹也(以下、テツヤ)「ウェ〜イ。さっき確認したら3回目だったよ」ひいな「毎年やってるんだね(笑)。今回はね、いろんな熱燗のバリエーションを紹介したくて」テツヤ「ぬる燗、熱燗とか温度によっていろいろあるけどさ、さらにバリーエーションがあるんだな」ひいな「今回は、熱燗で遊び心を取り入れようっていうのがテーマ」テツヤ「日本酒は、ちょっと真面目すぎるところがあるからな〜」ひいな「そうだね。まだまだ固いところがあるからね」長野県に取材に行ってきました〜!有名な「白馬錦」を造っている蔵が手がけた新しいお酒です。ひいな「ということで、熱燗1本目は〈薄井商店〉の『月波』というシリーズをご紹介します!」テツヤ「このお酒はこの間、ひいなと一緒に長野の小谷村(おたりむら)に取材に行って飲んできた日本酒なんだよね」ひいな「『白馬錦』っていうお酒を造っている薄井商店さんの蔵に伺ったんだよね。この『月波』シリーズは『月波ノ月』ってお酒と『月波ノ波』っていう2種類あって。『月』が純米酒で『波』が普通酒なんだけど」〈薄井商店〉さんに伺いました!タンク1本で「月波」シリーズを造っています。原酒は同じ。テツヤ「普通酒ってなんだっけ?」ひいな「原料とか精米歩合などが定められた特定名称酒(純米酒、本醸造酒、吟醸酒など)に属さないお酒のことを普通酒っていうんだけど」テツヤ「なるほど」ひいな「私は純米酒が好きだから『月』がいいかなと思ってたんだけどね…」テツヤ「うんうん、ひいなは純米酒好きだからな」ひいな「でもね、長野ではずっと『波』を飲んでたんだよねぇ」テツヤ「そうそう」ひいな「まずは普通に常温で飲んでみようか」テツヤ「熱燗にしたらどんなふうに味が変わるのか比較しないとね」まずは常温で。いただきます!ひいな「じゃ、まずは純米酒の『月』から」テツヤ「じゃ、俺は普通酒の『波』から」ひいな&テツヤ「いただきます!」テツヤ「常温でも普通にうまいよ!」ひいな「じゃ、今度は交換して私が『波』を」テツヤ「じゃ、俺は『月』を」ひいな&テツヤ「いただきます〜!」テツヤ「あぁ、俺やっぱり『波』のほうが好きだわ」ひいな「でしょう?私も」テツヤ「何なんだろう。波のほうがスーッっと入ってくるよね」ひいな「純米酒のほうがバランスがいいとか言われがちだけど、普通酒の『波』ほうが整ってる感じがするかな」テツヤ「これ、絶対、熱燗したらうまいだろう!って酒だよな」ひいな「小谷の人はさ、やかんで燗をつけるんだよね」テツヤ「そうそう。やかんに直接入れてね」ひいな「今日はそのやかん酒をぜひみなさんにもご紹介したくて、実践してみたいと思います!」小谷村直伝!やかんで直接、火にかける燗酒の作り方。やかんに直接日本酒を注いで火にかけます。ひいな「今回は、普通酒の『波』を燗にしてみようか。まず日本酒をやかんに直接入れます」テツヤ「湯煎じゃないんだよな」ひいな「そう。やかんに入れて、直火で温めるんだよね」テツヤ「しかもさ、やかんっていうのがいいよね」ひいな「アルコールが飛んじゃわないように、必ずふたをしてください!小谷村の方曰く、ふたをするのがポイントだそうです!」テツヤ「アルコールを余すことなくいただくためにも、ふたは忘れずに!」ひいな「じゃ、火をつけるね」テツヤ「火加減はどうするの?温度ってどうやって測るの?」ひいな「鍋肌がふつふつしてきたな、っていうぐらいでいいみたい」テツヤ「あぁ、沸騰する前のふつふつで止めるんだな」ひいな「実は、〈薄井商店〉の社長さんにいただいたものがありまして…」ひいな「その名も『おかんメーター』!」テツヤ「すごいレトロだよな。どこで売ってんだろう(笑)」ひいな「私も初めて見たよ」編集・小倉「僕、〈東急ハンズ〉で見たことありますよ(ライター注:各ネットショップなどでも購入できるようです)」ふつふつするまで火にかけたら、70度近くまでいきました!ひいな「こんふうにやかんにそのまま入れて温度が計れます」テツヤ「ぬる燗と熱燗の間ってなんていうか知ってた?」ひいな「上燗?」テツヤ「あたり!温度によって何燗なのか書いてくれてるのがありがたいね。今日はどのあたりにするの?」ひいな「今日はかなり熱めで。とびきり燗って言われる温度かな」テツヤ「おかんメーターには書いてないや。とびきり燗は何度なの?」ひいな「55度以上かな」テツヤ「熱々だな」ひいな「今回は、繊細な温度のぬる燗とかじゃなくてガチガチのお燗を」テツヤ「おぉ!温度ぐんぐん上がってきた!あっという間に60度超えた!」ひいな「ふつふつしてくるぐらいが60度くらいなんだね。あ、70度までいっちゃった!」テツヤ「もういいんじゃないの?」ひいな「もういいね(笑)」熱々のお酒を湯呑みに注いで…。ふぅふぅしながら飲む熱燗、たまりませんね。(注:お茶ではありません)テツヤ「わぁ、湯気が立ってる!」ひいな「じゃあ、いただきましょう」ひいな&テツヤ「あぁ、うまいよ。香りが全然変わったね」ひいな「あぁ、これだ。これだね!」テツヤ「さっきの常温よりぜんぜんうまいよな」ひいな「余計なものが飛ぶんだろうね」テツヤ「甘みがすごく残るよね。ぜんぜんいやな甘みじゃなくってさ。するっとお茶みたいに飲めちゃうな(笑)」ひいな「そうそう。火を通すことでお酒の味が平坦になって、ずっと飲み続けられるお酒になるっていうか」テツヤ「やっぱりさ、やかん酒は湯呑みだよな。おちょこより湯呑みが似合うよ」ひいな「本当にお茶を飲んでるみたいな感覚だよね」「月波ノ波」に合わせるのは、〈道の駅おたり〉で買った地元グルメセット!左上から時計回りに。唐辛子が効いたピリッと辛い「こしょうみそ」、〈おたり生ハム工房〉の「熟成生ハムニンニクオリーブ」と「原木熟成プロシュートペースト」は止まらないおいしさ。酸味と食感が抜群の「野沢菜ふぶき」の4つ。ひいな「これに合わせるおつまみは、小谷の道の駅で売ってる、地元名産品の数々です!」テツヤ「絶対うまいだろ!ってやつばっかりセレクトしたもんな」ひいな「このプロシュートペースト、気になるよね」テツヤ「〈おたり生ハム工房〉は、小谷で豚を放し飼いで飼育してるところがあってね。その豚を加工してプロシュートを作ってて。栂池高原のゲレンデの上にある変電室みたいな小屋にぶら下がってるんだよね」ひいな「そう。すごい数ぶら下がってたよね。その生ハムを使ったパテと、生ハムをにんにくオリーブオイルにつけこんだものと…あと、取材に同行してくれたカメラマンさんの米谷亨さんおすすめの野沢菜も」テツヤ「そうそう。米ちゃんが『これすごくおいしいんですよぉ〜』って教えてくれたんだよね」ひいな「モノマネすごい似てる(笑)。このこしょうみそは、いわゆる唐辛子味噌で『白馬錦』の〈薄井商店〉さんに行った時、『ちょっと待ってて』って社長がかばんの中から、こしょうみそを出してくれたんだよね」テツヤ「そうそう。自家製のね」ひいな「いつも持ち歩いてるんだ!ってびっくりした(笑)」テツヤ「熱燗に合わせるつまみの定番なんだね」じひいな「じゃ、そろそろ、やかん酒に合わせてみようか!」ひいな&テツヤ「いただきます!」テツヤ「この野沢菜本当にうまいな!米ちゃん、ありがとう!」ひいな「うん、本当においしいね、この野沢菜。日本酒も、燗冷ましになってきて、どのおつまみとも合う〜!」テツヤ「全部ごはんのお供だよな」ひいな「ごはんのお供ってことはお酒のお供だから(笑)」テツヤ「プロシュートと小豆島のオリーブオイルのやつも最高だな。生ハムのうまみとやかん酒が合わさったら、口の中でスープになったよ。この〈おたり生ハム工房〉さん、ヤバいね」ひいな「じゃ、そろそろ、あれを…」〈おたり生ハム工房〉の小谷産原木熟成プロシュート買ってきてしまった伊藤家。やかん酒のいいつまみになります。プロシュートを食べたいだけ削ります!なんと贅沢!テツヤ「原木で買ってきちゃったね(笑)」ひいな「食べ放題やりたい!」テツヤ「あぁ、最高!日本酒にも最高に合うよ。ワインよりも合う気がする」ひいな「やかん酒の味の平坦さに、プロシュートの味の盛り上がり方がすごいから合うんだよね。やかん酒がなんでも受け止めてくれる感じかな」テツヤ「日本でプロシュート作ってるところって少ないんだって。温度管理がむずかしいのかな。これ24ヶ月熟成らしいんだけど」ひいな「うまみがぎっしり詰まってる」テツヤ「ちょっと発酵した香りもあって。クセになるよね」ひいな「買ってきてよかった」テツヤ「カメラ機材より、プロシュート2本のほうが重かったもんな(笑)」ひいな「1本は誕生日プレゼントであげたんだよね」テツヤ「ありがとう。自分で削ってつまんで。永遠に飲んでられる、最高のプレゼントです!」熱燗のために開発された「月波」シリーズ。「月」と「波」どっちがお好き?テツヤ「このさ、湯気が出た日本酒を湯呑みに入れて、ふぅふぅ言いながら飲む感じがいいんだよなぁ」ひいな「冷めてきて飲むのもまたいいんだよねぇ。それが燗冷まし。どの温度帯でもおいしいのがやかん酒の特徴だなと思ってて」テツヤ「確かに。沸かしたてより、少し冷めてきた今がうまいぞ。うまみが出てきた感じ。出汁っぽさもあるっていうか。ほんとにずっと飲めるよ。やかん酒、小谷村で初めて飲んだ時も最高だったもんな」ひいな「そう!小谷村で行ったジンギスカン屋さんは大きいやかんで出してくれてね」テツヤ「あれは大きかったよなぁ」ひいな「朝10時からジンギスカン屋さんでやかん酒(笑)」テツヤ「ジンギスカンみたいな濃いやつを合わせるのがすごいよかったんだよね」ひいな「この『月波』シリーズは熱燗をつけるために造られたお酒なんだって」テツヤ「それをコンセプトに開発されたんだよね。夏でも熱燗にするって言っててびっくりしたよね。夏は冷酒だとばっかり思ってたからさ。普段からやかん酒を飲むって言ってたけど、やっぱりお茶みたいな感覚なのかな」ひいな「そうかもね。昔から飲んできた伝統があるんだろうね」テツヤ「村の寄り合いがあれば、やかん酒を飲むんだろうな」白馬錦もいただきました!ひいな「〈薄井商店〉の代表銘柄の『白馬錦』もお燗にしておいしいお酒なんだけど、それで〈道の駅おたり〉の方から〈薄井商店〉さんに『お燗にしておいしいお酒を造ってください』っていう依頼がきて造ったんだって」テツヤ「お燗好きな人たちからのオーダーだったんだな」ひいな「小谷百姓七人衆っていう若手の生産者さんたちが造った地元の『ひとごこち』っていうお米だけを使って造ってるんだって」一面、黄金色のたんぼ。『月波』のふるさとです。テツヤ「『月』もおいしいんだけど『波』がほんとうにいい。おすすめ。これ、確か安いんだよな?」ひいな「うん。普通酒の『波』は990円。純米の『月』が1430円」テツヤ「安くてうまいとか最高だよ。気兼ねなくやかん酒にできるしね」ひいな「うん、断然、やかん酒だよね」テツヤ「なんか飲めば飲むほど、長野の酒って感じがするよな。魚じゃないっていうかさ」ひいな「あぁ、分かる気がする!」テツヤ「ほら、みそとか野沢菜とかと合わせるイメージ。雪深いところで熱々のやかん酒を飲むの。あったまるな〜。もうこれはやかん酒のチャンピオンだな」ひいな「うん、チャンピオンだね!」【ひいなのつぶやき】奥の深いお燗酒ですが“やかん”で温めちゃうのも立派な楽しみ方のひとつ!難しいことはさて置おき、温める過程も楽しんじゃいましょう!薄井商店を父娘で訪ねた蔵元レポートはこちらひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年12月05日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は第二十五、二十六夜の総集編をお届けします。お宅にお邪魔した料理家さんは…ワタナベマキ保存食や乾物を使った料理に定評があり、ライフスタイルを紹介した著書も多数。近著に『ワタナベマキの梅料理』(NHK出版)、『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)が好評発売中。冷水希三子ひやみず・きみこ/奈良県生まれ。レストランやカフェ勤務を経て、フードコーディネーターとして独立。旬の食材を生かした料理が人気。現在は料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ製作を中心に書籍、雑誌、広告など活躍の場を広げる。公式HPはこちらワタナベさん1品目/甘み、塩気、花椒の辛味が三位一体!「豚肉とトウモロコシの花椒和え」あわせた日本酒は「開華 遠心分離酒(純米吟醸生酒)」栃木県佐野市の第一酒造は、1673年創業で県内でも最も歴史のある酒蔵。創業当時から農家として米作りから酒造りも行う。さらりとした飲みやすさと、ふくよかな米の味わいが両立するバランスのいいお酒『開華 遠心分離酒(純米吟醸生酒)』720ml 2,145円(税込・ひいな購入時価格)/第一酒造株式会社この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!ワタナベさん2品目/夏の香り漂う香味野菜と、鮎のほろ苦さが大人の味わい「鮎の塩焼きと香味野菜の和えもの」あわせた日本酒は「櫛羅 純米 無濾過生原酒」奈良県御所(ごせ)市にある、櫛羅(くじら)という町にある千代酒造。櫛羅の地で育てられた山田錦を100%使用。他にも「篠峯」という銘柄も人気。「櫛羅 純米 無濾過生原酒」720ml 1500円(税込・ひいな購入時価格)/千代酒造株式会社この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!ワタナベさん3品目/梨とプラムを使った「フルーツのスパイスシロップ漬け」あわせた日本酒は「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」茨城県結城市にある結城酒造。蔵に嫁入りしたという女将・浦里美智子さんが杜氏として手がけたのが「結ゆい(むすびゆい)」。ごく少量生産ながらその味わいにファンがつき、人気の銘柄に。岡山県産雄町を使ったフレッシュな1本「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」720ml 1760円(ひいな購入時価格)/結城酒造株式会社この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!冷水さん1品目/生クリームを使ったフランスの煮込み料理「チキンときのこのフリカッセ」あわせた日本酒は「東鶴 純米吟醸 生酒 BLACK」佐賀県多久市にある東鶴酒造。県産の酒造好適米「さがの華」を100%使い、地元の山から流れ込む伏流水に、黒麹で仕込むことでコクと厚みが生まれた一本。「東鶴 純米吟醸 生酒 BLACK」720ml 1,760円(ひいな購入時価格)/東鶴酒造株式会社この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!冷水さん2品目/フェンネルの根を使った「フェンネルとイカとオレンジのサラダ」あわせた日本酒は「卯酒 月見うさぎ」福島県本宮市にある大天狗酒造。JR本宮駅からすぐの場所にある小さな蔵で福島県産の米、麹、水で仕込んだ丁寧な一本。夏を越して熟成感が増した純米吟醸酒は秋の夜長にぴったり。「卯酒 月見うさぎ」720ml 1,540円(ひいな購入時価格)/大天狗酒造株式会社この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!冷水さん3品目/こんがり焼いた鯖に酸味のあるソースを合わせた「鯖のトマトバターソース」あわせた日本酒は「長陽福娘 山廃特別純米 山田錦」山口県萩市にある岩崎酒造。萩産の山田錦と地元阿武川の水を使った山廃仕込み。旨みと酸が料理を引き立てる。「長陽福娘 山廃特別純米 山田錦」720ml 1,485円(ひいな購入時価格)/岩崎酒造株式会社この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!過去の連載はこちら娘・ひいなと父・テツヤが毎週織りなす愉快な親子晩酌。これまでの連載内容はこちらをクリック!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年11月21日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回も伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。料理家の冷水希三子さんのお宅にお邪魔し、ワインに合う洋風な料理を作っていただきました。第二十七夜の3本目は、濃厚なバターソースにも合う福島のお酒。3品目は、こんがり焼いた鯖に酸味のあるソースを合わせた「鯖のトマトバターソース」。父・徹也(以下、テツヤ)「こりゃ、いい鯖だねぇ。立派!」冷水希三子(以下、冷水)「これはどうだろう?イメージ通りかな?」娘・ひいな(以下、ひいな)「正直に言っていいですか?まだわからないです(笑)」テツヤ「自信なさげだね(笑)」テツヤ&ひいな「うわ〜おいしそう〜!」ひいな「焼き目がほんとに美しい。バターのいい香り!予想とは違ったけど合うと思います!」冷水「お!」テツヤ「お!」鯖に塩をしてしばらく置き、バターとオリーブオイルを使ってフライパンでこんがりと焼き目がつくまで焼く。時々油をまわしかける。小鍋にバター、プチトマト、玉ネギ、ケイパー、レモン汁を加えてトマトバターソースを作り、焼いた鯖にたっぷりとかける。レモンの酸味の効いた濃厚なソースに、香ばしい鯖が最高の組み合わせ。冷水「はい、鯖のトマトバターソースです」ひいな「もう絶対おいしい!」テツヤ「バターソースなんておいしいに決まってるよね。鯖も好きなんだよな」ひいな「おいしいよねぇ。トマトバターソースってお聞きしてたんですけど、どんなソースなのか想像がつかなくて」テツヤ「あぁ、確かに。これはいわゆるトマトソースって感じじゃないもんな」ひいな「トマトが崩れたような、もっとトマトをベースにした感じかと思ってたんですけど」冷水「うんうん」ひいな「想像してたのとは少し違ってたんですけど(笑)、でも今回は合うと思います!」冷水「よかった!」テツヤ「期待しよう!」冷水さんに取り分けていただいて…。さぁ、みんなでいただきます!ひいな&テツヤ「いただきます!」冷水「どうぞ!」ひいな「身がやわらかい!!!」テツヤ「身がぷっくりとして、本当に立派なサバだねぇ。これは本当にうまい!」ひいな「おいしすぎる…」テツヤ「もう何もいらん!」冷水「お酒は…(笑)?」ひいな「もうね、これは絶対お酒に合うと思う!」冷水「お酒飲もう?鯖がなくなっちゃいそうだから(笑)」ひいな「はい。もう飲みましょう!」テツヤ「早く早く!」「鯖のトマトバターソース」に合わせるのは「長陽福娘 山廃特別純米 山田錦」山口県萩市にある岩崎酒造。萩産の山田錦と地元阿武川の水を使った山廃仕込み。旨みと酸が料理を引き立てる。「長陽福娘 山廃特別純米 山田錦」720ml 1,485円(ひいな購入時価格)/岩崎酒造株式会社ひいな「このお酒が3本の中で一番渋いです」テツヤ「山廃か!」ひいな「『長陽福娘(ちょうようふくむすめ)』っていうお酒です!」冷水「日本酒らしい名前だね」テツヤ「この空間で存在感あるね。和と洋の融合だね!」ひいな「では、注ぎますね」一同「いただきます!」早く飲みたくて、日本酒が待ちきれない3人。いただきます!!鯖に合うほどよい酸味がいい感じ。テツヤ「おぉ。ぜんぜん違う!山廃だもんね」ひいな「ケイパーとの相性がいいんじゃないかと思ってるんですけど、どうですか?」テツヤ「うん、これはいいね」冷水「うん、合う合う!」ひいな「よかった〜!トマトとケイパーの酸味が合うと思います」冷水「うんうん。バターにも合うね。料理と日本酒を一緒に食べて飲むほうがいいね。両方がおいしくなる」テツヤ「いいね、いいね」ひいな「このお酒は酸度が普通の日本酒よりもやや高めなんだけど、濃いめでも淡白な味でも何でもいけるって蔵は言ってて」冷水「バターと鯖もOKだもんね」テツヤ「濃いめの味つけでもバッチリ合ってるもんな。鯖とトマトとケイパー以外何が入ってるの?」冷水「ソースにちょっとだけ玉ネギが入ってる」テツヤ「そうか。それもいい味だしてるんだね」冷水「あとはレモンが結構たっぷり入ってるかな」テツヤ「うん、この酸味、すごく合うよ」ひいな「この蔵は山口県の萩にあって。お米は山田錦を使ってるんだけど萩で作られたものなんだって。『長陽福娘』っていう名前の由来は明治34年の創業当時の蔵元の岩崎さんに女の子が次々と誕生して、すくすく育ってほしいということで名づけられました」冷水「なるほど」ひいな「萩の昔の呼び名の長陽に『重陽の節供』の重陽にもかけてるんだって」テツヤ「福娘って縁起がいいねぇ。親心だねぇ」ひいな「阿武川の中軟水を使ってるそうなんだけど、やわらかくてまろやかな飲み心地のこのお酒の優しい味わいを作り出す一因になってる。そのお水がおもしろくてね。蔵で水を磨くんだって」冷水「水を磨くってどういうこと?」テツヤ「水の大吟醸か?」ひいな「水を濾過して紫外線で殺菌をしてるらしい」冷水「へぇ、すごいね」ひいな「鉄分とか有機物って発酵する時の妨げになるから、あらかじめ水をきれいな状態にしておくらしくて。それはなかなか珍しいかもしれない」テツヤ「へぇ。そういう蔵はあんまりないんだな。日本酒の世界って奥深いねぇ」ひいな「蔵ごとに、それぞれこだわりがあるよねぇ」冷水「蔵でお米を育てたりもしてるんでしょう?」ひいな「そうです。自社田を持ってところもありますし」冷水「きっと自分たちで作りたくなるんよね」ひいな「そうですね。水もお米もこだわりたいんでしょうね。昔はお酒を仕込む冬の時期だけ蔵人を雇っていたんですだけど、夏場も雇うためには田んぼから手がけるっていう蔵も増えてますね」冷水「なるほど。そのほうがいいよね」テツヤ「昔の漫画とかにもさ、夏が終わって杜氏さんが蔵にやってくるっていうシーンがあるもんな」ひいな「何の漫画?」テツヤ「『夏子の酒』」ひいな「へぇ」あっという間に鯖を平らげた父・テツヤ。骨で余韻を味わいます(笑)。冷水「ひいなちゃん、鯖とこのお酒、すごく合ってた!」テツヤ「これ、めちゃくちゃメインだね。主役だよ!」冷水「うん、メインだよね!」ひいな「2本目に飲んだ『卯酒』と合わせてみますか?」冷水「あ、鯖がなくなっちゃった?」テツヤ「大丈夫。骨をしゃぶるよ(笑)」冷水「(笑)」テツヤ「まだ口の中に鯖の余韻があるから大丈夫」一同「いいただきます!」ひいな「鯖と『卯酒』すごく合いますね」一同「うん。そうだね。鯖に合ってる」冷水「うんうん。こっちのほうが合ってるね」「ワインと日本酒の境目がない」という冷水さんの日本酒のつきあい方。ひいな「冷水さんが最初に飲んだことのある日本酒ってどんな思い出ですか?あんまりいい印象がなかったりします?」冷水「日本酒か。いつ飲んだんだろう?」テツヤ「冷ちゃん世代もね、そんないい印象ないよね?」冷水「たぶん、最初はあんまりいい思い出ないよね」テツヤ「そうそう。酔うための酒みたいなさ」ひいな「どういう時に日本酒を飲まれます?」冷水「和食と合わせてかな。家ではほぼ飲まなくて。和食屋さん行ったり、お寿司屋さんに行ったら必ず飲むよ。ワインを置いてるところもあるけど、そういう時は日本酒」テツヤ「へぇ。ワインじゃなく」冷水「うん。途中で味を変えたい時にワイン飲んだりとか。私の中では今、ワインと日本酒の境目がなくて」テツヤ「あぁ〜」冷水「日本酒とワイン、交互に飲んでも大丈夫」テツヤ「なるほどね」ひいな「一番いい日本酒とのつきあい方をされてますね」テツヤ「そうだね」ひいな「そうなってほしいよね」テツヤ「そうやってさ、ワインと日本酒、行ったり来たりできたらいいよね」冷水「ワインもずっと飲んでるとね、他のが飲みたくなる」テツヤ「そうそう。気分転換に違うお酒を飲みたくなるよね。1本目に飲んだ『東鶴』もワインみたいだいだったもんね」ひいな「うん。今は日本酒もいろいろあるから」テツヤ「バターソースとかフリカッセとかフレンチとも日本酒を合わせられるっていうことがわかったよね。本当にうまかったなぁ。こんなの食べられるレストランがあったら即予約しちゃうよね!」冷水「ほんと?やったね!」テツヤ「冷ちゃんの料理の中でこれくらい濃い味つけってめずらしくない?」冷水「そう。これは結構ね、ガツンと」テツヤ「そうだよね。それはやっぱりお酒に合わせた感じなんだ」冷水「うん。今回はひいなちゃんが日本酒を選びやすいようにと思って。味が想像できるようにと思ってメニューを選んだんだけど、フェンネルは難しかったね」テツヤ「ひっかけ問題があったね(笑)」ひいな「(笑)。フェンネル、サラダってちゃんと調べてればよかったです」テツヤ「確かにあのフェンネルの根っこは見たことなかったし、勉強になったね」冷水「今回は和食と合わせてるわけじゃなくて、冒険してるんだから」テツヤ「そうそう。普段合わせたことのない料理との組み合わせがおもしろいわけだから」ひいな「今回も本当においしかったです」テツヤ「冷ちゃん、どうもありがとう。これからも冷ちゃんの撮影の時は、夜が遅くなると思っていただいて…」ひいな「了解です(笑)」冷水希三子ひやみず・きみこ/奈良県生まれ。レストランやカフェ勤務を経て、フードコーディネーターとして独立。旬の食材を生かした料理が人気。現在は料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ製作を中心に書籍、雑誌、広告など活躍の場を広げる。公式HPはこちら【ひいなのつぶやき】冷水さんの食材選びや味のメリハリのつけ方に、とても感動した出張篇でした。そして日本酒の可能性をより感じました!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年11月07日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回も伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。料理家の冷水希三子さんのお宅にお邪魔し、ワインに合う洋風な料理を作っていただきました。第二十七夜の2本目は、スッキリとした飲み口強めの福島のお酒。フェンネルの根を使った「フェンネルとイカとオレンジのサラダ」。父・徹也(以下、テツヤ)「さっきからずっと作ってる様子見ながら『おいしそう』を連発してるよね」娘・ひいな(以下、ひいな)「食べる前から興奮してるよね(笑)」冷水希三子(以下、冷水)「次はフェンネルを使ったサラダです」テツヤ「え?これがフェンネル?」ひいな「セロリみたい」テツヤ「え、そういうふうに売ってるの?俺、初めて見たかも!」冷水「ほんとに?」テツヤ「こんなふうに売ってるんだ。きれいだなぁ」ひいな「葉っぱしか見たことなかった」テツヤ「どこで買えるの?」冷水「〈紀伊國屋〉は年中、売ってるよ」フェンネルの全貌がこちら!今回は葉っぱではなく、白い根をサラダにしていただきます。ひいな「その白いところは食べられるんですか?」冷水「ここを食べるんです」ひいな「え〜!」冷水「葉っぱは風味づけとかに使って、ここをサラダに」ひいな「葉っぱを使ったサラダなんだとばっかり思ってました…」テツヤ「まるっと葉っぱから根っこまで使えるんだ。どんな味なんだろ。楽しみ!」冷水「昔のレシピとかには『フェンネル(セロリで代用)』って書かれてて、ぜんぜん味が違うんやけどね(笑)」ひいな「うわぁ。味の想像がつかないです…」冷水「食べたことないとね。香りはフェンネル」ひいな「なるほど…」テツヤ「確かに、見た目はセロリに似てるね。日本でも作ってる農家さんがいるんだね」冷水「うん。日本でも作ってる農家さんはいて、長野が多いのかな」テツヤ「気候的に作りやすいのかな。うわ、固そう?」ひいな「ね。食感も想像がつかない。わ、イカとオレンジが入ってきれい〜」フェンネルの根を薄切りにする。香りづけに葉も少しだけ刻んでおく。イカはさっと茹で、オレンジは皮をむく。フェンネル、イカ、オレンジに、オリーブオイル、塩、かぼすをたっぷりしぼって混ぜ合わせたら完成。冷水「ひいなちゃんが、だんだんと無口になってきたけど…大丈夫?」ひいな「…イメージしてたのと全然違いました。葉っぱだと思ってて。想像してたのと違ったな、と思って(笑)」テツヤ「そういう驚きもいいよ。どんなマッチングになるか、楽しみにしようよ」ひいな「フェンネル=葉っぱだと思い込んでました」冷水「セロリとイカとオレンジのサラダって言った方がわかりやすかったかな」ひいな「でもそれだと風味が違いますよね?」冷水「うん。これはオレンジをポイントに日本酒を選んだの?」ひいな「いや、どちらかというと、フェンネルですね」テツヤ「そりゃ、困ったね。でも、食べてみようよ!おいしそう〜」冷水「きっと日本酒に合うと思うよ」ひいな「急にドキドキしてきました」冷水「たこきゅうりと似たようなもんだし(笑)」ひいな「食感が楽しそうですね」テツヤ「ね。食べよう食べよう!イカが大好物なんだよ」ひいな「私も!」冷水「ご家族で(笑)。さぁどうぞ」見たことも食べたこともないフェンネルの根を使ったサラダが登場!どんな味なのか興味津々。さぁ召し上がれ。一同「いただきます!」ひいな「フェンネルの味、気になるね」テツヤ「こりゃセロリじゃないよ(笑)」冷水「ね!」テツヤ「どっちかっていうとカブに近い?」ひいな「食感が思ってたよりやわらかいね」テツヤ「オレンジがさわやか〜」ひいな「かぼすも入ってたから、そのさわやかな酸味もあって。おいし〜」テツヤ「こりゃバクバク食べちゃうね」ひいな「日本酒と合わせる前に食べ過ぎちゃうからお酒持ってくるね!」「フェンネルとイカとオレンジのサラダ」に合わせるのは「卯酒 月見うさぎ」。福島県本宮市にある大天狗酒造。JR本宮駅からすぐの場所にある小さな蔵で福島県産の米、麹、水で仕込んだ丁寧な一本。夏を越して熟成感が増した純米吟醸酒は秋の夜長にぴったり。「卯酒 月見うさぎ」720ml 1,540円(ひいな購入時価格)/大天狗酒造株式会社ひいな「…ちょっといいですか?」テツヤ「どうしたの?」ひいな「このサラダに、この日本酒は合わないかもしれない…(笑)」テツヤ&冷水「(笑)」ショックを隠せない娘・ひいなの横で励ます(?)父・テツヤ。テツヤ「いいじゃない、いいじゃない。そういう回があってもいいじゃない」ひいな「このお酒はね、すっごくおいしかったの。大天狗酒造っていう、福島県の蔵に行っていろいろ飲み比べさせていただいて、フェンネルと合うと思って選んだの。だけど、完全にオレンジとイカの存在を忘れてて…」テツヤ「そうかそうか。酸味がね」ひいな「柑橘と合うかな?っていうのがすごく不安です…」冷水「飲もう!」テツヤ「合わなかったら合わなかったで」ひいな「でもね、お酒としてはおいしいんだよ?ほんとにおいしいの。でも…」テツヤ「そういう予感って当たっちゃうんだよな」ひいな「うん。割と当たっちゃう。もともと、この蔵がキリっとサラッとしたお酒を造る蔵で、その中でもこのお酒は割と香りがあるほうなんですよ」お酒の香りの印象とフェンネルの組み合わせは相性いいのですが…。冷水さんも香りは合わなくはないとおっしゃいますが…。冷水「香りをかいだ感じだと、合わなくはないと思うけど。香りは(笑)」ひいな「では、おつぎいたします」テツヤ「小さいおちょこだね」ひいな「この大きさがちょうどいい感じ」テツヤ「なるほど。強めってこと?」ひいな「そう。ゴクゴク飲むお酒ではないっていうか」冷水「そういうことね」ひいな「少しずつ楽しむお酒かな」いただきます!お味はいかに?しっかりとした味わいで口当たり強め。一同「いただきます!」冷水「おぅ。結構どっしり」テツヤ「なるほどね。小さいおちょこの意味がわかった」冷水「なるほどね。合わないね(笑)」テツヤ「さっそく(笑)。なんか焼酎っぽくない?」冷水「かぼすと焼酎は合うよ?」テツヤ「福島のお酒なんだよな?泡盛じゃないけど、そんなイメージがあるぞ」ひいな「言い訳をしていい?フェンネルって香りがあるでしょう?」テツヤ「うん。でもこの根っこは、そこまで香り強くないもんな」ひいな「フェンネルの香りに乗っかるお酒をイメージしたの。もうちょっと合うと思ったんだけどな〜」テツヤ「合わせるとちょっと苦く感じるかも」ひいな「合わなくはないけど、すごくう合うわけじゃない」テツヤ「いつもバッチリ合うお酒が多いからね。こういう組み合わせもあっていいと思うよ」冷水「うん、いいと思うよ」テツヤ「このお酒に何が合うのか冷ちゃんに教えてもらおうよ」冷水「むずかしいなぁ(笑)」ひいな「蔵はソーセージときのことシチューとチーズに合うっておっしゃってて」テツヤ「ということはフリカッセのほうが合うんじゃない?日本酒としては俺すごい好きだけどな」冷水「うん」ひいな「おいしいよね」テツヤ「甘くないし、すっきりしてるから食事に合うよ。余韻がいいね、このお酒」ひいな「冷水さんにフリカッセのきのこと合わせて飲んでみていただきたいです!」冷水「(フリカッセのきのこを一口)う〜ん…」テツヤ「素直な反応だね(笑)」ひいな「フリカッセと合わせると渋みが出てきますね…」冷水「それよりは、焼き魚とかのほうが合うかもね」ひいな「焼き魚!それは蔵も目からうろこだと思います」冷水「もしかしたら、次に紹介するサバの方が合うかも」ひいな「なるほど!じゃ、お酒少し残しときましょうか」テツヤ「うんうん。そうしよう」冷水「合わないわけじゃないんだけどね」ひいな「蔵のおすすめするソーセージとの組み合わせってどんな感じなんだろう」冷水「確かにこのお酒なら、ソーセージのパンチと塩味と脂に負けないのかも」ひいな「結構、強いですよね、お酒の印象」冷水「うん。でも、強いけどキレるから残らないというか」テツヤ「そうそう。するっと消えるよね」冷水「あ!お寿司とかいいかも」ひいな「お寿司!」冷水「炙ったお寿司!」テツヤ「あぁ〜!」冷水「のどぐろとか」テツヤ「脂と炙りの香ばしさだね」冷水「イカを炙ればよかったかね。茹でずに」テツヤ「それでサラダにするの?」冷水「そう。このサラダ、イカを炙ったバージョンと茹でるバージョン両方作るの」テツヤ「そりゃいいね。この企画のおもしろさはこういうところだよね」冷水「何が出てくるかわからないもんね」テツヤ「ひいなも勉強になったね」ひいな「一歩成長するために」テツヤ「こうやって教えてもらうのが一番いいからね。いやぁ、このフェンネルの根っこ、おいしいね。こうやって食べるんだね」冷水「イタリアンレストランに行くと前菜とかでよく出てくるよ」テツヤ「初めて食べたよ!」小さな蔵の20代の女性杜氏が造った日本酒を応援したい!ひいな「杜氏さんはね、小針さんっていう女性の方なんだけど、2018年に福島県の清酒アカデミーを卒業したばっかりで」テツヤ「え、ついこないだじゃん」ひいな「そう。杜氏として活動しはじめたのは最近なの」テツヤ「お若い方なの?」ひいな「うん。同年代だと思う」冷水「ひいなちゃんの同年代!」テツヤ「いいね、いいね。あれ?飲み始めより、今のほうがサラダに合う気がするぞ」ひいな「温度が上がってきたからかな」テツヤ「日本酒ってさ、飲む温度によって印象変わるもんね。福島のどのあたりの蔵なの?」ひいな「郡山から電車で5〜6駅くらい」テツヤ「海側?山側?それによって魚に合うか肉に合うか違いがありそうだよね(ライター注:ちょうど福島県中部、中通りに位置します)」ひいな「栄冠は君に輝く〜の歌を歌ってる、誰でしたっけ?」冷水「何それ何それ」テツヤ「高校野球の歌(ライター注:全国高等学校野球大会の歌)」ひいな「その方の出身地(ライター注:伊藤久男さんが本宮市出身です)」テツヤ「それで覚えてるんだ(笑)」ひいな「本町駅にその方の銅像があってボタンを押すとその曲が流れるの。大天狗酒造は日本の中で駅から一番近い蔵って言われてて。本当に駅から徒歩1分半で着きました。明治初期には倉庫業をやっていたそうで、その蔵を掃除したら2つの天狗のお面が出てきたから大天狗酒造っていう名前なんだって」テツヤ「縁起がいいねぇ」ひいな「名前と同じで、力強い味わいのお酒を醸したいっていうのが蔵のモットーなんだって」冷水「合ってるね」テツヤ「コンセプト通り」ひいな「すごく小規模なお酒造りをしていて、本当に倉庫を改築したみたいなところで造ってて」ひいな「写真見て。ほら、こんなにタンクが小さいの」冷水「わ、小さいね」ひいな「バケツで水を運んだり、麹室もこんな小さくて」冷水「わぁ」ひいな「ラベルも手貼り。小さい蔵だからすべて手作業」テツヤ「そうか、大切に飲まなきゃな」ひいな「ね」テツヤ「さっき飲んだ時より、いまのほうがだんだんおいしくなってきたよ」冷水「温度が上がって苦味が抜けてきた?」テツヤ「うん。常温に戻した方がいいんじゃない?」ひいな「お米は、県が独自に開発した福島産『夢の香』っていう酒造好適米を使っていて、『うつくしま夢酵母』っていう県が開発した酵母を使ってるから、完全に県に密着したお酒なの。ラベルも印象的でしょ」冷水「イラストなんだね。メルヘン」テツヤ「うさぎだから卯酒なんだな」ひいな「ビオンディ・チョッパーさんっていう有名なイラストレーターさんが描いた絵なんだって。うさぎの『卯』に酒で『うさけ』って読むんだけど、卯酒シリーズの秋バージョンがこの『月見うさぎ』。春は花見うさぎ、夏は夏空うさぎ、冬は雪うさぎがある」冷水「なるほど」ひいな「四季で楽しんでほしいっていうお酒かな」テツヤ「味も変わるのかな?」ひいな「造りが違うんじゃないかな。これは一回火入れのひやおろしだと思う。ちょっと熟成感もあるし、口開けてすぐでも尖ってない感じがするというか」テツヤ「このお酒はどんなつまみにも合うっていうお酒ではないのかもね」冷水「確かに」テツヤ「お酒の味を楽しみながらちびちび飲むっていうかさ」ひいな「燗酒もいいらしいよ」冷水「燗、合うかもね」テツヤ「少し肌寒くなってきたし、燗酒にしながらちびちびやりたいね」ひいな「いいね。秋にぴったり」冷水希三子ひやみず・きみこ/奈良県生まれ。レストランやカフェ勤務を経て、フードコーディネーターとして独立。旬の食材を生かした料理が人気。現在は料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ製作を中心に書籍、雑誌、広告など活躍の場を広げる。公式HPはこちら【ひいなのつぶやき】のどぐろのお寿司やソーセージと、この「卯酒」を合わせてみたい!フェンネルのサラダと相性の良い温度帯を探すのも今後の課題です!!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年10月24日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回も伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。料理家の冷水希三子さんのお宅にお邪魔し、ワインに合う洋風な料理を作っていただきました。第二十七夜の1本目は、ナチュールワインのような甘酸っぱい佐賀のお酒。料理研究家の冷水希三子さんに作っていただいたのはフランス料理!?父・徹也(以下、テツヤ)「改めまして。料理家の冷水希三子さんです!」冷水希三子(以下、冷水)「こんにちは!」娘・ひいな(以下、ひいな)「今日は出張第2弾!冷水さんのお宅に参りました!」冷水「よろしくお願いします!」ひいな「父がいつもお世話になっております」冷水「いえいえ(笑)」テツヤ「いつもお世話になっております。撮影が終わるとたいてい、そのへんに寝ているという…」ひいな「冷水さんの料理を食べて、飲んで、寝る」テツヤ「そう」ひいな「困ったもんだねぇ。でも、しあわせだねぇ。うらやましいな」テツヤ「僕がね、料理の写真を撮るきっかけになったのが冷水さんなので」ひいな「そうなんだ!」冷水「そんな大げさな(笑)」テツヤ「2017年くらいまで、料理家さんとはほとんどご縁がなくて。料理家さんと料理を撮影する仕事をしたのは冷ちゃんが最初」ひいな「へぇ!伊藤徹也、第2の人生の原点なんだね」テツヤ「そう、原点!その頃、冷ちゃんは鎌倉に住んでてね」冷水「そうそう」テツヤ「料理家さんの家ってどんなだろうって思ったら…」冷水「小さいおうちの小さいキッチンで」ひいな「そうなんですか!」テツヤ「そうそう。でも、すごく光がよくてね」冷水「初めて仕事する方で、大御所さんって知ってたから…」テツヤ「大御所って(笑)」ひいな「まさか今では冷水さんの家の床で寝るようになるとは(笑)」冷水「ね(笑)」テツヤ「でもね、2〜3回目くらいの撮影から、編集さんが帰った後、ワイン持って海に行って飲んだりしてたんだよね」冷水「そうそう。料理の撮影の後は飲めるもんだと思ってるからね」テツヤ「車で撮影に行かないもんね」冷水「撮影する時は荷物を置きに前日入りしたり(笑)」テツヤ「搬入日を設けました(笑)」ひいな「飲むのに本気な父。さすが(笑)」テツヤ「今日は、冷ちゃんの料理をいただきながら日本酒を飲めるとあって、最高にしあわせな撮影です!」ひいな「今回、冷水さんから『チキンときのこのフリカッセ』というメニュー名をお聞きして、『フリカッセ』をあわてて調べました(笑)。クリーム系だっていうことはわかったんですけど」冷水「日本酒に合わせなさそうなメニューだよね。生クリームが日本酒に合うのかどうか…!?」テツヤ「もし合わなかったら、合わないって正直に言っていただいて」冷水「は、はい!」ひいな「遠慮なく言ってください!今回は個性派の日本酒をそろえてみました!」冷水「わぁ、楽しみ!」ひいな「楽しみにしていてください!」1品目は、生クリームを使ったフランスの煮込み料理「チキンときのこのフリカッセ」。ひいな「わ〜、いい香り!」テツヤ「いいね〜」冷水「さぁ、どうぞ!」さぁ、召し上がれ!ごろっと大きな骨つきの鶏肉で食べ応えたっぷり。ワインが飲みたくなるおいしさ(笑)。ひいな&テツヤ「いただきます!」ひいな「両手でいっちゃっていいですか?」冷水「どうぞ、どうぞ」テツヤ「え〜ワインください」冷水「え〜(笑)」ひいな「私もワインください!」冷水「ダメじゃん(笑)」レモン汁やハーブでマリネしておいたチキンをフライパンで焼く。こんがりときつね色に焼けたら…。チキン、きのこ、白ワイン、生クリームを加えて煮込む。「フリカッセ」とはフランスの家庭料理で「白い煮込み」という意味。テツヤ「いやだって、こりゃうまいよ。ワインでしょう?このクリームソースが決め手なのかな?ワイン少し入ってる?」冷水「入ってる」テツヤ「日本酒に合いそうな感じはあるけど…やっぱりワイン飲みたくなるね(笑)」冷水「今まで私が飲んできた数少ない日本酒のラインナップだと合うかどうかわからないけど、ひいなちゃんが選んできてくれた日本酒なら合う気はする」テツヤ「さぁ、どうなることやら」ひいな「私がイメージしていたフリカッセより、すごく軽いです」テツヤ「うん、確かに軽いね。ぜんぜん重くない」ひいな「だから、日本酒とも合わせやすそう」冷水「おっ!?」テツヤ「フリカッって聞いて、どういうお酒をセレクトしたの?」ひいな「どちらかというと、クリームソースと合わせるためにちょっと変わり種の日本酒というか、昔ながらの日本酒っぽくないやつをセレクトして、軽めに流そうかなと思っています」テツヤ「じゃ、食べた後、流す感じなんだね」ひいな「うん。チキン日本酒って行き来できるようなイメージで」冷水「なるほど」ひいな「でもどうしよう。合わなかったら…」冷水「大丈夫、大丈夫」テツヤ「まぁまぁ、飲んでみよう」「チキンときのこのフリカッセ」に合わせるのは、「東鶴 純米吟醸 生酒 BLACK」。佐賀県多久市にある東鶴酒造。県産の酒造好適米「さがの華」を100%使い、地元の山から流れ込む伏流水に、黒麹で仕込むことでコクと厚みが生まれた一本。「東鶴 純米吟醸 生酒 BLACK」720ml 1,760円(ひいな購入時価格)/東鶴酒造株式会社テツヤ「手描きのラベル、ワインぽくない?」冷水「うん、ワインっぽい」ひいな「でも、名前は昔ながらの『東鶴(あずまつる)』って言うんですけど」テツヤ「東に鶴で『東鶴』?」ひいな「そう」冷水「どこの日本酒?」ひいな「佐賀の多久市です」テツヤ「へぇ」b>ひいな「『東鶴 純米吟醸 生酒 BLACK』です」テツヤ「生酒 BLACK」冷水「名前だけ聞くとね」テツヤ「ザ・日本酒だよね」ひいな「フリカッセと合うかどうかドキドキですが、香りを嗅いだら合うってわかるかもしれない」テツヤ「ほんと?」冷水「香りで合うのがわかるってすごい!」ひいな「ぜひ。冷水さんに嗅いでいただいてもいいですか?」ひいな「どうですか?」冷水「うん、合うと思う。でも、流すんじゃなくてクリームのソースが立ってくる感じの合わせ方だと思う」(父・テツヤも香りを嗅ぐ)テツヤ「うん。こりゃ、流すんじゃないね」ひいな「え〜。ずるい!」テツヤ「いや、いずれにしても合うと思うよ」ひいな「温度はね、常温よりちょっと冷たいくらいで飲んでもらおうと思って」テツヤ「さっき、冷蔵庫から出してしばらく外に置いてたもんな」ひいな「では、いただきましょう」冷水「伊藤家へようこそ!」ひいな「お邪魔します(笑)」みんなで乾杯〜!おどろくほどフルーティ!一同「乾杯〜!」冷水「あぁ、おいしい!」テツヤ「日本酒ぽくないね」冷水「うん。ワインっぽい」テツヤ「絶対フリカッセに合うよ。わかるよ」ひいな「すごいおいしいよね」テツヤ「酸味と甘みがね、なんかね…」ひいな「お!そのコメント数値的にも正しい」テツヤ「酸味と甘みのバランスがいいね。りんごみたいな、フルーティな酸があるよね」ひいな「たとえがうまくなってきたね(笑)」冷水「さすが(笑)」テツヤ「もうね、この連載も100回越えたからね」冷水「それはすごい!」ひいな「日本酒の酸度って数値であらわすと、1.6とか1.5とかそのあたりが普通なんだけど、これは3.4なの」テツヤ「高いんだね」ひいな「そう。だいぶ高いから酸度が高めということ。伊藤家は酸っぱいの好きだからね」テツヤ「結構、色もついてるよね」ひいな「ちょっと発泡してる感じもある。日本酒度ってプラスになればなるほど辛くて、マイナスになればなるほど簡単にいうと甘いっていわれてるんだけど、これは−11だから」テツヤ「甘口だね」ひいな「酸っぱいけど甘いっていうことだね」テツヤ「俺の第一印象は合ってたわけだ」冷水「すごいね!」ひいや「冷やしすぎると酸がもっと強く感じると思うので、今回はクリームに合わせてまろやかな感じがいいなと思ってほどほどの温度に。蔵が推奨してるの温度が15度らしくて」テツヤ「うん。ちょうどいい感じだよ」ワインだけじゃない!パンに合わせてもおいしい日本酒をとうとう発見!?ひいな「このお酒は佐賀のお酒なんだけど、BLACKっていってるのは黒麹を使ってるからなの」冷水「へぇ、黒麹を!」テツヤ「焼酎とかで使われる?」ひいな「そうそう。黒麹で仕込んでるからBLACK。もうひとつWHITEもあって」テツヤ「それは白麹なんだな」ひいな「そう。それとはまた別で、ワイン酵母で造ったお酒もあったりして、普通の酵母じゃなく挑戦的なことをしている蔵なの。今回、フリカッセと聞いてワイン酵母と合わせようかなと思ったんだけど、ワイン酵母のお酒のほうは風味が強くて、もしかしてフリカッセの邪魔をしてしまうかもしれないと思ってBLACK にしました。BLACKは、蔵元さんが赤ワインをイメージして作ったらしいんですよ」冷水「赤ワイン?」ひいな「そう。だから牛肉とかに合わせて、15度で飲んで欲しいって言ってて」冷水「なるほど。脂が固まらないようにね」テツヤ「だから流せるんだ」ひいな「『東鶴』は江戸末期に創業した老舗の蔵なんだけど、平成元年に一度休業してて、平成21年に蔵元杜氏として再スタートしたらしい」冷水「杜氏の方は若い方なの?」ひいな「年齢はちょっとわからないんです。でも、こういうデザインなのもあって、感性が若い方なのかなと」冷水「なんかね、ナチュールっぽさがあるというか」テツヤ「そうだね、ナチュールっぽいね」冷水「ナチュール系とかこういう日本酒って若い造り手さんが多いイメージがある。味の持って行き方の方向性が一緒というか」テツヤ「テロワール的な考え方が似てるよね」ひいな「うんうん」冷水「はい、パンも焼けました!」テツヤ&ひいな「わ〜い!」ひいな「このソースにつけたかった!」冷水「香川県にある〈360°〉っていうお店のパンなんです」テツヤ「へぇ。そりゃうれしいね」ひいな「このお酒、パンとの相性がすごくいいかもしれない」冷水「うんうん、合うね」テツヤ「パンと合う日本酒をすごく探してたんですよ!まさかこれだとは思わなかった」テツヤ「日本酒とパンか。いいね」冷水「ソースをぬぐったパンが合うね。なんでだろう。黒麹だから?」テツヤ「なんでだろうね」ひいな「パンに入ってるくるみとも合う」冷水「うん。香ばしさが合うのかな」ひいな「白麹よりも黒麹でお酒を造ったほうが、お酒はコクが出やすいっていうのがあって。WHITEはあっさりしてるというか」冷水「この料理には生クリームを使ってるから、BLACKのほうがコクがあっていいと思う」ひいな「特にソースにつけたパンと!」テツヤ「このソース、いつまででも舐めてられるんだけど」冷水「(笑)」テツヤ「ソースも残らずね」ひいな「パンにつけてね」テツヤ「冷ちゃんは普段、料理に日本酒って合わせたりする?なんとなくワインのイメージがあるけど」冷水「そうだね。ワインが多いかな。みんなもワインを持ってきてくれるし。でも和食屋さんに行ったら日本酒飲むかな」テツヤ「この日本酒はどうだった?」冷水「好き、好き」ひいな「あぁ、よかった〜!」テツヤ「ということはマッチング成功なんじゃないの?」ひいな「1本目、無事成功しました!」冷水希三子ひやみず・きみこ/奈良県生まれ。レストランやカフェ勤務を経て、フードコーディネーターとして独立。旬の食材を生かした料理が人気。現在は料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ製作を中心に書籍、雑誌、広告など活躍の場を広げる。公式HPはこちら【ひいなのつぶやき】フリカッセと黒麹。日本酒界のペアリングとは思えないこの2つの言葉。なんとかペアリングが成功してホッとしています(笑)。ぜひお試しください!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年10月10日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回から伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。「一番好きなお酒は日本酒!」という料理家のワタナベマキさんのお宅にお邪魔し、スパイスを使った料理を作っていただきました。スパイス×日本酒、その相性はいかに!?第二十六夜の最後を飾る3本目は、フルーツのエキスがたっぷりしみ出たシロップにベストマッチの茨城のお酒。スパイスを使ったメニュー3品目は、梨とプラムを使った「フルーツのスパイスシロップ漬け」。父・徹也(以下、テツヤ)「マキ先生は、料理の仕事を何年やってらっしゃるんですか?」ワタナベマキ(以下、マキ)「20年弱くらい経つかな?」テツヤ「たとえば、普通のお店だったら、メニューは門外不出なわけですよ。でも、マキ先生はおいしい料理をどんどん出さなきゃいけないっていうすごいお仕事ですよね。結構なペースで本を出されてるし、そのレシピったらすごい数じゃないですか。一体、どうやってインプットされてるんだろうって」マキ「たぶん、ひいなさんもそうだと思うんだけど、これとこれ合わせたら、おいしいんじゃないかな?という想像から始まるというか」娘・ひいな(以下、ひいな)「うんうん。わかります」マキ「お酒に合わせる料理っておもしろいんですよ。子どもに作る料理とお酒に合わせる料理ってやっぱり違って、お酒に合わせるからちょっとポイントを効かせたりだとか、ここを引き立たせようかなとか、そういう風に考えるかな」ひいな「なるほど。とても勉強になります!」テツヤ「それでいくと、このスパイスシロップ漬けが日本酒とどう合うのか、一番想像がつかないな」ひいな「これはデザートになるんですか?」マキ「デザートとというよりは、ちょっと、中休み的な?」テツヤ「一度、中休みしてこの後、また飲むぞ!的な」マキ「そうそう(笑)。普通のシロップ漬けなんですけど、このシロップと日本酒を割りたい!と思って」ひいな&テツヤ「わぁ〜!」テツヤ「まさかのシロップ割ときたか。もうマキ先生、根っからの酒飲みですね(笑)。最高です!」お酒好きのマキ先生だからこそ生まれた、日本酒のシロップ割!?ひいな「それでしたら、このお酒、最高に合うと思います」テツヤ「え?そうなの?事前に打ち合わせしてない?」マキ「裏でね、実はね…(笑)」ひいな「ね(笑)。八角が入ってるから、どんなシロップなのか気になります」八角、黒コショウ、クローブ、シナモンの入ったシロップに梨を漬けて冷蔵庫で冷やす。プラムを食べやすい大きさにカットして、シロップに加えて混ぜれば完成。スパイスの香りと梨のエキスがたっぷりと溶け出したシロップがむしろ主役。マキ「八角の他には黒コショウ、クローブ、シナモンが入っています。キンキンに冷やしてもおいしいですよ。じゃ、まずはシロップからどうぞ」テツヤ「わ!このシロップ、スパイスの風味がしっかり出ていて、めちゃくちゃいいですね」ひいな「プラム大好きなんです」マキ「プラムの酸味を加えました」ひいな「スパイスのいい香り〜」テツヤ「これ、ほんとにおいしい」マキ「よかった〜」ひいな「おいしいです!」テツヤ「これ、夏の疲れた時とかに最高ですね。梨のエキスがたっぷり出てて、控えめな甘さがまたね。体に染みわたるおいしさ」マキ「そうそう。フルーツを食べるというより、シロップを楽しんでほしい」テツヤ「これ、高校球児に食わせたいなぁ」一同「(笑)」シロップのおいしさにノックアウトされる父・テツヤ。ひんやり冷たいシロップの甘さが夏にぴったり。テツヤ「これ飲んだら、絶対、復活するでしょ?疲れ吹き飛ぶでしょ?」ひいな「確かに、体に沁みわたるおいしさだよね」マキ「これはね、私としても挑戦だったんです。ひいなさんがどんな日本酒を合わせてくれるだろうって」ひいな「実は、フルーツシロップ?ってなりました(笑)」テツヤ「どこまで聞いてたの?」ひいな「果物を使ったスパイスシロップ漬け的なものとは聞いてました」マキ「アバウトですね(笑)」テツヤ「その情報だけで、ひいなはどんな日本酒を選んだんだろう?そろそろお酒飲みたくない?」マキ「ぜひ!」ひいな「はい!お酒持ってくるね!」「フルーツのスパイスシロップ漬け」に合わせるのは、「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」。茨城県結城市にある結城酒造。蔵に嫁入りしたという女将・浦里美智子さんが杜氏として手がけたのが「結ゆい(むすびゆい)」。ごく少量生産ながらその味わいにファンがつき、人気の銘柄に。岡山県産雄町を使ったフレッシュな1本「結ゆい 赤磐雄町 特別純米 亀口直汲み 無濾過生原酒」720ml 1760円(ひいな購入時価格)/結城酒造株式会社ひいな「“むすびゆい”と読みます。ボトルの後ろにラベルの由来が書いてあって。『結城紬の糸の輪の中に“吉”が入るという文字デザインです。おいしいお酒で、人と人、人と酒、人と街を結び、未来へつなげたいという願いが込められています』とのこと」マキ「わぁ。いいですね」テツヤ「いまの時代にぴったりだね」マキ「本当ですね」ひいな「こちらのお酒をシロップに合わせたいと思います!」マキ「どんな味になるんだろう?」テツヤ「ね。どんな味かまったく想像できないんだよなぁ。俺は正直に言うからね。嘘つかないからね」ひいな「もちろん!正直な感想聞かせてね」一同「いただきます!」マキ「わ。香りがいい!」テツヤ「お?」マキ「うんうん。これは合う!」テツヤ「ヤバい。もうこれ絶対合うでしょ」ひいな「でしょ?シロップに合わせてまったりした味わいの日本酒を選びました」マキ「わ、わ、わ。おいしい!」テツヤ「シロップと日本酒とスパイスの香りがもうね、すんばらしい!」ひいな「日本酒とシロップ、2つのものが1つになってこんなにおいしいんだって感動してます」マキ「日本酒とすごく合うね。本当においしい」テツヤ「これ、腰抜かすレベルのおいしさだよ。マジでうまいよ」マキ「すごい相乗効果というか。ぴったり」ひいな「そう。どっちもさらにおいしくなってます」マキ「でも、このお酒だからだと思うな。2本目に飲んだ日本酒だと合わないと思うし」テツヤ「この日本酒だからこんなにも合うんだね」マキ「これは、ぜひともこの組み合わせで飲んでみてほしい」ひいな「とろりとした感じがシロップと合いそうだなと思って選んだんだけど、こんなにも合うとは私も驚きました」神がかったベストマッチに拍手で称えあいます。マキ「すごいよ!この組み合わせは!」テツヤ「このお酒さ、後味にちゃんと苦みがあるじゃない?それがちょうどシロップと果物の甘みに合うっていうか。ただ甘いだけじゃない苦味が加わることで味が深まるというか」マキ「そうそう。絶妙なおいしさ!」テツヤ「しかも、この日本酒とシロップを合わせることで、すーっと入っていくんだよね。こんな抜群の組み合わせ、なかなかないよ」ひいな「これはね、茨城のお酒なんだけどね。実はこのお酒を作った杜氏さんは、お酒造りとは無縁だった蔵に嫁いできたお嫁さんなの。日本酒の生産量400石のうちの50石だけ、美智子さんが酒造りを勉強して『結ゆい』を造ったんだって(ライター注:1石は180リットル。一升瓶なら100本分、四合瓶なら250本になる)マキ「わぁ。その50石が、このお酒になったんだ!」ひいな「もともと蔵出身でもなく、日本酒を勉強したわけでもない美智子さんが造ったおいしいお酒です。シロップ割してみたいです!」テツヤ「いいねぇ。単体で交互に飲んでも抜群に合うってわかるんだから、合わさっちゃったら絶対にうまいでしょう?」マキ「もうね、絶対おいしいよね」ひいな「うん、絶対合うと思います。フルーツポンチ的な」マキ「そうそう!」ひいな「大人のフルーツポンチ!」マキ「シロップ割、やってみましょう」テツヤ「このシロップ、ちょっと塩味入ってますか?」マキ「ちょっとお塩が入ってるんです。さすが!」テツヤ「なんとか少し塩気を感じた。それが重要なんですね?」マキ「そうなの。ちょっとだけね」テツヤ「シロップ割いただきます!わ、こりゃめちゃくちゃ合うわ」マキ「すごく合う!すばらしい!」テツヤ「こりゃすばらしい。ふたりがすばらしい!おもしろいね。この化学反応」マキ「このシロップ割、美智子さんにも飲んでほしいね」テツヤ「ほんとですね。最高の日本酒ポンチだよ。日本酒とシロップがこんなに合うなんて意外な発見でした。知らなかった」ひいな「ちなみにこのお酒、お米にもこだわってて。ラベルにもある通り、岡山県赤磐産の赤磐雄町(あかいわおまち)を使ってて。雄町の中でも最高品種っていわれてるんだけど、堀内由希子さんという女性の方がつくってらっしゃるの。お米づくりからお酒造りまで女性がタッグを組んでる。『亀口直汲み』っていうのは搾ってすぐ瓶詰めしてる」テツヤ「つまり、フレッシュっていうことだな」ひいな「そう。だから生酒で飲んでほしい」料理家さんとのコラボによって、今までにない新しい日本酒の可能性が広がった。テツヤ「このお酒はさ、もともと、どんなお料理と合わせるのがオススメなの?」マキ「確かに。なかなかシロップには合わせないですもんね」ひいな「う〜ん、何だろうね」テツヤ「マキ先生なら、このお酒には何が合いそうな気がしました?」ひいな「うん、聞きたい!」マキ「え、何だろう」テツヤ「結構、苦味、強いですよね」マキ「うんうん」テツヤ「その苦味がシロップと抜群に合うんだよね」ひいな「普通に飲むとしたら、お酒を開けて2週間くらい置いちゃうかもしれないですね」テツヤ「置いとくとどうなるの?」ひいな「口当たりがやわらかくなる」マキ「もっとやわらかくなるんだ」ひいな「そうなんです。あと、苦味が少し飛ぶ」マキ「なるほど、よりまろやかになるんだ。うーん。料理と合わせるなら……何なんだろう?シロップとの相性が良すぎて思いつかないな」テツヤ「酢豚とかどう?」ひいな「あぁ、酸味か。だったらトマトソースとかどうかな?」マキ「うんうん。フレッシュな感じとか、甘みに合うかもしれないね」ひいな「ですよね」テツヤ「今回さ、打ち合わせせずにここまでぴったりだとは思わなかったね」ひいな「自分でもびっくりでした」マキ「すごくおもしろかったねぇ」テツヤ「めちゃくちゃおもしろかったです」ひいな「味を想像するのがすごく楽しかったです。日本酒好きなマキ先生だから、日本酒に合わせてお料理を考えてくださったっていうのもよかった」マキ「私も。どんなお酒がくるんだろうっていうのを楽しみながら考えました。たとえば、花椒は効きすぎないようにっていうのを意識したり」テツヤ「あぁ、なるほど。日本酒じゃなかったらもう少し花椒効かせてみようってなるわけですね」マキ「そうそう。そうなると他のお酒になっちゃうと思う。テキーラとか」テツヤ「さすが、酒好きな方の発想ですね(笑)」マキ「(笑)。日本酒のこのふくよかさとか甘みとかと合わせるなら、ほんのり効かせる感じがちょうどいいかなって」テツヤ「あぁ。その加減がすばらしかったです。ほんとにおいしかった」マキ「こちらこそ!すごく楽しかった!」ひいな「すごくうれしい!」テツヤ「マキ先生の心からの『楽しかった』をいただきました!普通の料理本の撮影だと、マキ先生の作りたいものを撮るっていう仕事だから、コラボではないじゃないですか」マキ「そうそう」テツヤ「だから、今回はすごく予想外な展開というか、コラボっておもしろいなって思った」マキ「ね。私もおもしろかった」テツヤ「今までコラボするような機会ってありましたか?」マキ「ないですね。ひいなちゃんが初めてかな」ひいな「わぁ、光栄すぎます!」マキ「自分で選ぶお酒と人に選んでもらうお酒ってぜんぜん違うから、それがおもしろいし、そこからすごく広がるというか」ひいな「私もすごく勉強になりました」マキ「こちらこそ、私も勉強になりました。いいですね、このコラボ企画」テツヤ「いいケミだったね」一同「すばらしい!」マキ「お声がけいただき、どうもありがとうございました」ひいな「こちらこそ、ありがとうございました。本当においしかったです」テツヤ「新しい日本酒の可能性を見たね」ひいな「ね。神回だったね」テツヤ「そうだね。101回やってきて、神回きたね」ひいな「本当に楽しい。楽しくて仕方がない」テツヤ「いつかはぜひ、伊藤家にも来ていただいて」マキ「わ、ぜひぜひ。行きたい、行きたい!」テツヤ「3本とも大成功でした。ありがとうございました!」マキ「3本とも全部味わいが違って。すごいです、ひいなちゃんのセンス!」テツヤ「ひいな、おつかれさま!びっくりしたよ」ひいな「読者の人にもぜひ飲んで、食べてほしい!」テツヤ「日本酒飲んでもらうイベント、いつか実現させたいねぇ」マキ「それ楽しい、楽しい!」ひいな「蔵元さんもきっと喜んでくれると思うな」テツヤ「ほんとうにすばらしい1日だったね」ひいな「出張篇、大成功!」ワタナベマキ保存食や乾物を使った料理に定評があり、ライフスタイルを紹介した著書も多数。近著に『ワタナベマキの梅料理』(NHK出版)、『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)が好評発売中。【ひいなのつぶやき】ワタナベマキさんのお力添えで、1人では生み出せないであろうペアリングが完成しました。味とまっすぐ向き合うって素敵なことだと感じました!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年09月05日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回から伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。「一番好きなお酒は日本酒!」という料理家のワタナベマキさんのお宅にお邪魔し、スパイスを使った料理を作っていただきました。スパイス×日本酒、その相性はいかに!?第二十六夜の2本目は、夏らしいさわやかさですっきり飲める奈良のお酒。連載第100回目を記念する特別ゲストは、料理家のワタナベマキさん!娘・ひいな(以下、ひいな)「お知らせがあります。なんと、『伊藤家の晩酌』、この回をもちまして、連載第100回目になりました!」父・徹也(以下、テツヤ)「イェ〜イ!」ワタナベマキ(以下、マキ)「すごい!何年やってるんですか?」テツヤ「2年ちょっとかな?」(ライター注:2019年7月21日に連載がスタートしました)ひいな「もうそんなに経つんだね。毎週日曜日にコツコツと続けてきたおかげです」マキ「毎週か。それはすごいね」テツヤ「サザエさんみたいにね(笑)。でもこの回から、毎週じゃなくて隔週掲載になるんですけどね」マキ「それでも隔週もすごいです」テツヤ「記念すべき100回目に、マキさんに出ていただけて本当にありがとうございます」マキ「そんな記念すべき日に、こちらこそ、ありがとうございます。うれしいです」ひいな「私、もしかしたら、こんなに長く物事を続けたことないかもしれない」テツヤ「あはは(笑)。連載100回ってなかなかないよね」マキ「ないない!」テツヤ「じゃ、孫の代まで続けていこうかね(笑)」マキ「それにしても、100回はすごいなぁ」夏の香り漂う香味野菜と、鮎のほろ苦さが大人の味わい「鮎の塩焼きと香味野菜の和えもの」。マキ「2品目は、夏らしく鮎を使いました。とてもシンプルに薬味と塩を効かせて焼いた鮎を和えたものなんですけど、アクセントにちょっと辛味を効かせたくて、夏なので青唐辛子を入れました」テツヤ「このおつまみは、延々と食べてられそうだな。酒が進むつまみですね」マキ「うん、延々と食べてられると思います(笑)」強めに塩を振った鮎を、こんがりと焼き目がつくまで焼く。焼いた鮎は熱いうちに頭と骨はずして、身をほぐし、熱いうちにスダチを回しかけることで臭みをとります。ミツバ、ショウガ、ミョウガを細かく切って水にさらしておく。青唐辛子はお好みで。鮎と薬味を和え、足りなければ塩を加えて味を調える。最後にゴマを加えて完成。マキ「今回は、苦味のある魚のほうが日本酒に合うかなと思って、鮎にしました」ひいな「苦味をまるごと生かすんですね」マキ「うんうん」テツヤ「夏にぴったりなつまみだなぁ。もうこれは全部混ざってるから、ひと口の中にいろいろな味が組み合わさってるんですね」ひいな「早く!食べたい!」一同「いただきます!」テツヤ「あぁ〜。うんうん」(一同、無言に)目をつぶって味わう、父・テツヤ。この表情でわかりまよね?マキ「どうですか?」テツヤ「っていうか、酒いらないかも?」マキ「え(笑)?」ひいな「わかる。おそうめん食べたくなる!」テツヤ「“何も足さない、何も引かない”って、確かウイスキーのコマーシャルあったけどさ、ほんとにすごいですね。完璧なバランス」ひいな「青唐辛子が効いてます。すごくおいしい!」テツヤ「旅館の先付けでこれでてきたら、もうずっとこれでいいってやつですね」マキ「鮎とスダチの酸味と薬味とのバランスがね」テツヤ「日本の夏の香りが詰まってる感じがね、もう最高です」マキ「そうそう」テツヤ「めっちゃ日本の夏ですね!」ひいな「本当においしいです!やっぱりお酒飲みたくなってきたので(笑)持ってきますね」「鮎の塩焼きと香味野菜の和えもの」に合わせるのは、「櫛羅 純米 無濾過生原酒」。奈良県御所(ごせ)市にある、櫛羅(くじら)という町にある千代酒造。櫛羅の地で育てられた山田錦を100%使用。他にも「篠峯」という銘柄も人気。「櫛羅 純米 無濾過生原酒」720ml 1500円(税込・ひいな購入時価格)/千代酒造株式会社ひいな「奈良県のお酒です!」テツヤ「へぇ」ひいな「『櫛羅』と書いて『くじら』と読みます」マキ「おもしろい字を書くんですね。どうしてこの名前なんだろう」ひいな「『櫛羅』っていう町に蔵があるみたいで」テツヤ「へぇ、そうなんだ」マキ「すてきなボトル!」ひいな「そうなんです。このお酒も無ろ過生原酒になります。お注ぎしますね」無ろ過生原酒の透明ボトルが夏らしく涼しげ。2本目、乾杯!いただきます!口に含み、じっくり味わいます。一同「乾杯!」マキ「『櫛羅』、いただきます!」テツヤ「わ、これ発泡してるじゃん!」マキ「うん!本当だ!」ひいな「うん、発泡してるね」テツヤ「これ、マキさん好きなお酒じゃないですか?」マキ「うん。好き、好き。この発泡感がいいね、すごく」テツヤ「これはね、つまみに合わせる前から合うってわかるわ」マキ「うん、絶対おいしいよね」テツヤ「ひいな、すごいね」ひいな「やりましたね」テツヤ「ツーストライク!」マキ「あぁ。おいしいなぁ。すごく合う」ひいな「わぁ、よかった!」テツヤ「想像力ってすばらしいねぇ」マキ「本当だね」ひいな「鮎ってお聞きしたので、ほろ苦さにマッチするんじゃないかなと思ったのと、青唐辛子のさわやかな辛さにすごく合ってるね」テツヤ「うんうん、合ってる」マキ「本当においしい。このお酒、微発泡でさわやかなのにすごく深みがある。だから鮎の苦味とも合うというか」ひいな「そうなんです。苦味と合いますよね。微発泡感もいいし。お酒にも少し苦味があって」テツヤ「あぁ、わかるわかる。これはもう延々と食べてたいし、ずっと飲んでたいね」マキ「うれしいなぁ」テツヤ「この料理は、どういうふうに生まれたものなんですか?鮎を使うことが前提だったんですか?」マキ「うん。夏のお魚を使いたくて」テツヤ「魚料理というのが決まってたんですね」マキ「そう。魚料理がいいなと思って。1品目が豚肉の和えものだから、2品目は焼き目をつけてちょっと香ばしさを出した料理にしようかなと」テツヤ「魚鮎焼くときて…」マキ「そうすると酸味入れたくなっちゃって。スダチを」ひいな「そうやってお料理を組み立てていくんですね。勉強になります!」マキ「でもね、柚子胡椒にしようか、スダチと塩と生の青唐辛子にしようか、すごく悩んだんです。でも青唐辛子が旬だからフレッシュなほうがいいかなと思って」ひいな「すばらしいです」テツヤ「試作はなし?」マキ「あ、そうですね(笑)」テツヤ「わ、すごい。脳内調理だ!」ひいな「脳内調理って言葉が初めて出た(笑)」テツヤ「想像力ってほんとにすごいね」マキ「どんな料理かな?って想像しながらのお酒選びってどうでしたか?」ひいな「スパイスに合うお酒というのは、自分の中で何本かストックがあって」テツヤ「お!そうなんだ」マキ「わ、すごい、すごい!」ひいな「1本目みたいに幅広く合わせられるものと、もうひとつはとがってるところをぶつけるお酒」テツヤ「あえてね」ひいな「あとは貴醸酒みたいなまったりしたやつを合わせるとか、いろいろ考えたんだけど、今回は事前にいただいてた情報は“香ばしく焼いた鮎と香味野菜”っていうのをお聞きしていて。まず、香味野菜に合わせるのを考えようと思って」テツヤ「魚じゃなくて」ひいな「うん。浜松町にある〈浅野日本酒店〉で相談して。いろいろ飲み比べてみたら、このとがり具合と微発泡な感じは、香味野菜に刺さるかなと思って合わせてみました」テツヤ&マキ「おぉ〜!」マキ「刺さる、刺さる」テツヤ「俺、一度も行ったことないんだけどさ、京都の川床で一杯やってる気分だね、今」マキ「いいねぇ。川の音、聞きながらね」テツヤ「もうそうやって気持ちだけでもね、夏を感じないと。すごくさわやかだよね。お酒もおつまみも」ひいな「ね。本当に夏らしい味わい!」日本酒の味わいの表現の多様さ。甘み、酸味、苦味……複雑な味わいをどう表現するか?ひいな「このお酒の第一印象が『とがっていて、おいしい!』しかなくて(笑)、ほかの方はどういう評価をされているのかを調べてみたの」テツヤ「うんうん。気になるね」ひいな「あるサイトでは、香りはふわりと穏やか。かつ、熟したメロンのように上品って書いてあって」テツヤ「わかる。ちょっと苦味がある感じがメロンっていうか」マキ「瓜っぽい?ちょっとした苦味があるのかも」ひいな「果物じゃない感じありますよね。キュウリっぽさというか」マキ「あるある。塩もみしたキュウリも合うと思うな」ひいな「あぁ、いいですね。ほかには生酒らしいピチピチ感にピリッとした辛味と存在感のある酸味が特徴的、って書いてあって。鴨肉や白味魚に合うと」テツヤ「お!」マキ「合ってた!」ひいな「こりゃ、合うわけだと」日本酒×料理の大成功のマリアージュに、マキさんもおおよろこび!ひいな「鮎を塩強めで焼いたとおっしゃってましたけど、このお酒はしょうゆとか味噌とかじゃなく、塩味が合うと思います」マキ「うんうん、確かに塩が合いますね」テツヤ「香味野菜のさわやかさと鮎の香ばしさにスダチの酸味と鮎の苦味と、いろいろな味が絡み合って複雑な味わいだもんね」ひいな「日本酒も、甘みと苦味と酸味といろいろな味があるから合うのかな」マキ「うんうん。飲めば飲むほど、複雑な味がする」ひいな「このお酒の豆知識をひとつ」マキ「はい!知りたい、知りたい」ひいな「『櫛羅』は山田錦という酒造好適米を使ってるんですけど、奈良県御所(ごせ)市の櫛羅地区でつくられた山田錦100%なんです。山田錦といえば、兵庫県の特A地区のものが一番有名なんですけど、そこと比べて、櫛羅地区は、砂っぽくて肥料も水も抜けやすいんですって」テツヤ「そりゃ、田んぼに適してないだろうね」マキ「お米がつくりにくい場所ってことだよね?」ひいな「そうなんです。そんな場所で育った山田錦なんです」テツヤ「もしかして、そういう場所だからこそ生命力があるっていうか、旨味が凝縮するのかな?ほら、トマトとかもお水を与えない農法とかあるじゃないですか」マキ「そうですね。そのほうが甘みが増したりね」テツヤ「本当においしいもん、このお酒」マキ「ずっと飲み続けられます」テツヤ「マキさんお気に入りの近くの酒屋さんで売ってるといいんですけど」マキ「そうですねぇ。あるといいんだけど」テツヤ「日本酒って、自分が行く酒屋にどんな種類のお酒があるかによりますよね」マキ「そうそう。だから、知らないお酒がまだまだいっぱいある。いいお酒を教えてもらっちゃいました!」ひいな「こちらこそ、勉強になりました!」テツヤ「新たな扉をマキさんが開いてくれたね」マキ「うれしい。鮎って香りも味わいも広がるお魚だから、ほんとに日本酒と合うと思います」テツヤ「マキさんが日本酒好きって一般的に知られてるんですか?」マキ「いや、そんなに…」テツヤ「お酒を飲むイメージないですもんね」マキ「そうそう。でも私の料理を食べたことある人には、『お酒飲むんでしょ?』って言われる(笑)」テツヤ「お酒飲む人にはすぐわかるんですね(笑)。これからは酒のお仕事もぜひ」マキ「こんないいお仕事ないです!」テツヤ「いやぁ最高でした。ほんとに」マキ「わ〜い!」ワタナベマキ保存食や乾物を使った料理に定評があり、ライフスタイルを紹介した著書も多数。近著に『ワタナベマキの梅料理』(NHK出版)、8月10日に『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)を発売したばかり。【ひいなのつぶやき】料理を分割して考えると、日本酒のペアリングもやりやすくなることが今回、わかりました!塩味・苦味・香味×「櫛羅」。正解が生まれました!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年08月22日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回から伊藤家を飛び出し、出張篇を全3回でお届け。「一番好きなお酒は日本酒!」という料理家のワタナベマキさんのお宅にお邪魔し、スパイスを使った料理を作っていただきました。スパイス×日本酒、その相性はいかに!?第二十六夜の1本目は、ピリッと刺激的な花椒(ホアジャオ)に合わせる栃木のお酒。「日本酒が大好き!」という料理家のワタナベマキさんが、おつまみに選んだものは!?料理家ワタナベマキさんのお宅にお邪魔させていただきました!娘・ひいな(以下、ひいな)「いつも父がお世話になっています。父とワタナベさんがお会いするのは何回目ですか?」父・徹也(以下、テツヤ)「まだ、7回目くらいですよね?」ワタナベマキ(以下、マキ)「それくらいかな?」ひいな「短い間にぎゅっとたくさんお会いしてる感じなんだね」テツヤ「そうそう」マキ「本の撮影でご一緒させていただいて」(ライター注:8月10日発売の『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)という料理本を父・テツヤが撮影しています)テツヤ「こんなずうずうしいお願いを……ご快諾いただきありがとうございます」マキ「いえいえ。こちらこそ。とてもうれしいです」テツヤ「日本酒が一番好きと聞いて、これは出ていただかないと!と即お声がけしました」マキ「はい。日本酒が一番好きなんです。そんなにたくさん詳しいっていうわけではなくて、いつも同じものばかりで。だから、ひいなさんからたくさん日本酒のこと聞きたい!教えてください!」ひいな「こちらこそ、楽しみです!今からもう、おなかがすいてしょうがないです(笑)」テツヤ「マキさんは、日本酒の中でも、何を好んで飲まれるんですか?」マキ「私は辛口が好きなんですけど、近所の酒屋さんに勧められるまま。日本酒が一番酔わなくて。ワインとかすぐ酔っちゃうんですけど」テツヤ「日本酒が体に合うんですね」マキ「日本酒はぜんぜん平気なんです」ひいな「えぇ!それはいいですね」テツヤ「お酒の相性って、人それぞれ違いますもんね。おもしろいなぁ」ひいな「お料理と日本酒の組み合わせって、どうですか?」マキ「日本酒ってやっぱりお米でできてるから、すごく合わせやすいというかどんな料理にも合うなと。あと、私は酸味が好きで、料理にも酸味を使うので日本酒はキリッとしたものが合うかなと思います」ひいな「なるほど。料理の酸味に対してのペアリングなんですね」マキ「あと、後味がすっきりしているものが好きですね。お酒を飲んで、また料理に戻れるっていうか」ひいな「やわらかいお水みたいな感じですよね」マキ「たしかに。うんうん」テツヤ「今回はマキさんにどんな料理を作ってくださるかを聞いてから、ひいなが日本酒を選んだんだよね」ひいな「うん。初めての試みです。撮影の前に、どういう料理を作ってくださるのかというのをお聞きして、それに合わせた日本酒を持ってきました!」テツヤ「おぉ、楽しみだなぁ」マキ「楽しみです!」1品目は、甘み、塩気、花椒の辛味が三位一体!「豚肉とトウモロコシの花椒和え」。マキ「1品目は、豚肉とトウモロコシの花椒(ホアジャオ)和えです」テツヤ「ホアジャオかぁ!」ひいな「伊藤家、ホアジャオ大好きです!」マキ「夏なのでスパイスを使ったものを作りたくて。シンプルにホアジャオと塩で味付けしました。トウモロコシの甘みにピリッとした辛さと塩気を合わせて」テツヤ「味付けは塩だけですか?」マキ「あとはお酢がちょっとだけ。酒粕からできた赤酢を使いました」ホアジャオはフライパンで炒って、香りを出して。生のトウモロコシをごま油で焼き目がつくまでしっかりと炒める。水にさらした紫玉ネギ、炒めたトウモロコシ、ゆでた豚肉を、すりつぶしたホアジャオと塩で和え、赤酢を少し加えて酸味を足してできあがり。テツヤ「夏を感じる一品ですね」ひいな「ね。おいしそう。色合いがかわいい!」マキ「トウモロコシの黄色がね」ひいな「元気になる色!」テツヤ「料理家さんに取り分けてもらうなんて!」ひいな「ほんとうに贅沢!ありがとうございます」できたてアツアツのお料理を取り分けていただいて……。マキさんの愛猫はっとりくんの箸置き。豚肉にトウモロコシをたっぷり巻いていただきます!テツヤ「これぞ、出張篇の醍醐味だね。むしゃむしゃ食べちゃいそうだけど、日本酒のために取っておかないと!」マキ「そうでした(笑)」一同「いただきます!」テツヤ「もったいないな、食べるのが(笑)」ひいな「ね。もったいない!」テツヤ「どうですか?マキ先生」マキ「う〜ん、お酒と早く合わせたい!」テツヤ「早くお酒を(笑)!」マキ「どうですか?」テツヤ「最高です。めちゃくちゃ食べちゃいます」ひいな「うん!おいしい!」テツヤ「トウモロコシの甘みとホアジャオ、すごく合いますね」ひいな「うん、ホアジャオの香りがすごくいい」テツヤ「ね。あとからくるね」マキ「豚肉でトウモロコシを包んで、一緒に食べてもらうといいかなと思います」ひいな「では、そろそろ、お酒持ってきますね」「豚肉とトウモロコシの花椒和え」に合わせるのは、「開華 遠心分離酒(純米吟醸生酒)」。栃木県佐野市の第一酒造は、1673年創業で県内でも最も歴史のある酒蔵。創業当時から農家として米作りから酒造りも行う。さらりとした飲みやすさと、ふくよかな米の味わいが両立するバランスのいいお酒『開華 遠心分離酒(純米吟醸生酒)』720ml 2,145円(税込・ひいな購入時価格)/第一酒造株式会社ひいな「これは栃木県佐野市にある第一酒造の『開華(かいか)』というお酒です。蔵に行って買ってきたお酒なんですけど」マキ「へぇ、すごい!」待望の日本酒が登場して、マキさんも大よろこび!ひいな「実は、私が第一酒造のアンバサダーをさせていただいているんです!」マキ「わぁ!アンバサダーなんて素敵!もともとここのお酒が好きで?」ひいな「そうなんです。もともとここのお酒が好きで飲んでいて、アンバサダー募集してる!ってなって応募して選んでいただきました」マキ「わぁ、それはすごい!」テツヤ「すごいですよね(笑)」ひいな「この前、蔵に行ってきて。そこで、蔵の方に『ワタナベマキさんという料理家さんにスパイスを使った料理を作っていただくんですけど、どのお酒がいいと思いますか?』ってお聞きして、何種類も試飲して選んできた1本がこちらです!」テツヤ「おぉ!」ひいな「『開華』の純米吟醸 遠心分離生酒です」マキ「ひいなさんの選りすぐりの1本!」テツヤ「今日は、マキさんに酒器もたくさんご用意いただいて」マキ「夏だからガラスの酒器をたくさん用意しておきました」ひいな「どれも素敵です!じゃ、1本目はガラスの酒器にしましょうか。では、お注ぎしますね」まずは、マキさんから。マキさんに注いでいただいて……。さて、みんなで乾杯です!マキ「わ〜い!」ひいな「とりあえず飲んでみてほしいな」一同「いただきます!乾杯!」テツヤ「お?おいしいぞ、これ。香りもフルーティ!」マキ「うんうん。おいしい〜」はてさて、お味はいかに?ひいな「まろやかで、まとまってる感じもありますよね」マキ「すっきりとした軽やかさもあって」テツヤ「味わい深さも感じるな」ひいな「そうなの!重たくないのにうまみがちゃんとあるっていうのがこのお酒のいいところで」マキ「ほんとだ。なんだろう。飲んだ時はすごくすっきり。あれ?違う。後味がすっきりしてるのか」テツヤ「ふくよかさ、ありますよね」マキ「そうそう。飲んだ時にふくよかで、後味がスーッと消えていく感じ」ひいな「酸味もありますよね」テツヤ「酸味あるね」マキ「うん。これはすいすい飲めちゃう」テツヤ「料理のスパイスをお酒で流す感じですかね」マキ「うん、それがいいと思う!」テツヤ「これはめちゃくちゃ合うんじゃないか?」マキ「うん。豚肉とすごく合ってる」ひいな「相性いいね!」テツヤ「ひいなは、マキさんからメニュー名を聞いて、味を想像しながら日本酒を選んだんだよな?」マキ「ホアジャオだっていうのはお伝えしてたけど……」ひいな「あと、豚肉とトウモロコシという材料はお聞きしてました。でもどういう味付けなのかはわからなかったので」テツヤ「こういうのだとは想像してなかったなぁ。このお酒、料理にすごく合ってる!」ひいな「わ〜い!」(パチパチパチパチ)スパイス×日本酒。お題をいただいて、新たな可能性の扉を開いた!?ひいな「このお酒、『遠心分離』のお酒なんだけど、小さいタンクにもろみをいれて、遠心分離でぐるぐる回すと、まわりに酒粕がこびりつくの。その真ん中から採れたお酒には、無駄な圧力がかかってなくて」テツヤ「あぁ、なるほど。普通は、押したりして搾り出すんだもんね」マキ「あぁ、そうか」ひいな「圧力をかけない遠心分離のおかげで、クセがなくなるんだって」マキ「遠心分離をやってる蔵はほかにもあるの?」ひいな「そんなに多くないですね。機械の費用が割とかかるので少ないみたいで」テツヤ「一般的ではないよね。お魚でも家畜でもストレスがないほうがおいしいっていうじゃないですか。同じことなのかもしれないですね」マキ「確かに。食べ物でいうと余分なアクとか、そういうものが出てこない、自然のままの味になるのかも」ひいな「第一酒造のお酒は、基本的に火入れしてあるものが多いんですけど、これはフレッシュな生酒でピチピチな感じをそのまま生かしたお酒になってます」マキ「余計な雑味とかが出てないんだね。ピュアっていうことか」テツヤ「マキさんは、日本酒に合わせる料理で、どうしてスパイスが頭に浮かんだんですか?」マキ「スパイス料理は自分でもよく作るんだけど、日本酒を飲む時っていつもありきたりで。スパイスを使ったお料理だったら、どういう日本酒を持ってきてくれるんだろう?って」テツヤ「ひいなへの挑戦状でもあったわけですね!」マキ「スパイスと合う日本酒が知りたい!と思いまして」ひいな「なるほど」マキ「日本酒にスパイス料理って組み合わせ、思い浮かばない人もいるのかもしれないけど」ひいな「確かに、スパイス料理には日本酒じゃないと思う人もいるかもしれないですよね」ひいな「ナチュールとか無難に合わせそうな感じもしますしね」マキ「そうそう。どういうタイプの日本酒が合うんだろうっていうのが知りたかった」ひいな「今回、ホアジャオを使うって聞いた時に、ホアジャオに対して、ど直球で日本酒を合わせるのは無理だと思ったの」マキ「うんうん」ひいな「ホアジャオを包み込めるような、受け口の広いお酒を持ってくれば合うんじゃないかなって」テツヤ「たしかに包み込む感じあるよ」ひいな「よかった」テツヤ「マキさんが日本酒を飲みたいっていうのはどういう時なんですか?」マキ「日本酒は週末に。だらだら飲める時に飲むかな」テツヤ「昼間から?」マキ「そうそう」テツヤ「え〜、全然想像できないけど(笑)」マキ「飲んでます(笑)。飲むと手元が危うくなるし、すぐ真っ赤になるし、何もできなくなるから何もしません(笑)!」テツヤ「おつまみは自分で作るんですか?」マキ「先に作っちゃって、それをゆっくり食べながら」テツヤ「そりゃ贅沢だなぁ」マキ「いやいや、簡単なものを。自分だとやっぱり簡単なものになっちゃいます」ひいな「わ、1本空いちゃった!」テツヤ「撮影中に飲み干したのは初めてだね(笑)。マキさん、顔赤くなってますよ(笑)」マキ「すぐ赤くなっちゃうんですよ。もうちょっとしたら引いてくるから、待っててください。あ、でも写真に残っちゃうんですね、わぁ(笑)」テツヤ「レタッチ効かないんで、そのままになります(笑)」マキ「飲み続けると、引いてくるから!」テツヤ「じゃ、このまま飲み続けましょう!」ワタナベマキ保存食や乾物を使った料理に定評があり、ライフスタイルを紹介した著書も多数。近著に『ワタナベマキの梅料理』(NHK出版)、8月10日に『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)を発売したばかり。【ひいなのつぶやき】ワタナベマキ先生との光栄すぎるコラボ企画はスパイスがテーマ!花椒×遠心分離のコラボは、この業界では珍しいのではないでしょうか!続きをお楽しみに!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita
2021年08月08日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?番外編の今夜は、福島県の仁井田本家からコンセプトの違う3本を飲み比べ。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)今宵は番外編!熱狂的なファンを持つ仁井田本家から、人気の3本をセレクト。福島県郡山市にある1711年創業の老舗酒蔵「仁井田本家」。無肥料、無農薬の自然栽培米を使い、自然を生かした酒造りにファンが多い。父・徹也(以下、テツヤ)「ずらりとグラスが並んだねぇ」娘・ひいな(以下、ひいな)「次は番外編として、今までどうして出てこなかったんだろう?っていうお酒をご紹介します」テツヤ「『越乃寒梅』?『八海山』?」ひいな「違います(笑)。私が20歳になりたての頃によく買ってたお酒なんだけど」テツヤ「4年前ってことか。なんだろう?」ひいな「『にいだしぜんしゅ』を出してる仁井田本家のお酒です!」テツヤ「おぉ。仁井田本家の3本なんだな。仁井田本家ってどこにあるの?」ひいな「福島県の郡山市」テツヤ「へぇ」ひいな「今回の番外編は、仁井田本家の3本を飲み比べてみたいと思います!」テツヤ「イェ〜イ!」ひいな「仁井田本家さんとのつきあいは、福島のお酒フェアみたいなイベントが新橋駅で2年前ぐらいにあった時に、女将さんがPRで来てらっしゃって」テツヤ「新橋の駅前といえば、SL広場でやってたのかな?」ひいな「そうそう。そこで女将さんと初めて名刺交換させていただいて」テツヤ「へぇ」ひいな「この間、Clubhouseでも女将さんとお話しして、私のこと覚えてくださったの!」テツヤ「あらあら、ありがとうございます」ひいな「その仁井田本家さんのお酒を今回は3本、ご紹介します!」テツヤ「はい!」ひいな「『にいだしぜんしゅ』の純米原酒、『おだやか』の純米吟醸、『田村』の純米吟醸の3本です」テツヤ「同じ蔵でも見た目からぜんぜん違うんだねぇ」ひいな「それぞれコンセプトが違ってるお酒だから、味わいもいろいろでおもしろいと思うよ。とりあえず飲んでみようかな」テツヤ「じゃ、飲んでどれが好きかって正直に言ってもいい?」ひいな「いいよ、いいよ」テツヤ「この中だと『にいだしぜんしゅ』の純米原酒が一番濃そうだよね」自然栽培米の旨みを存分に味わえる「にいだしぜんしゅ 純米原酒」ラベルもシンプルな手書き文字。720ml 1540円(税込・ひいな購入時価格)/有限会社仁井田本家ひいな「そうだね。『にいだしぜんしゅ』から飲んでみる?」テツヤ「OK!お。結構、色ついてるね」まずは「しぜんしゅ 純米原酒」からいただきます!お味はいかに?ひいな&テツヤ「乾杯!」ひいな「蔵のコンセプトとしては、100年後に誇れるものを造るっていうのが一貫してあって」テツヤ「あぁ、おいしいね。でも、めっちゃ濃い!本当に不思議なんだけど、なんとか本家って書いてある酒って全部うまそうなんだよな。次、『おだやか』いただきます!」ひいな「早い(笑)」かえるのラベルが目印。白糀酒母仕込みの甘みと酸味が飲みやすい「おだやか 純米吟醸」。720ml 1650円(税込・ひいな購入時価格)/有限会社仁井田本家テツヤ「うわ、『おだやか』は白いね!色もぜんぜん違うね。全部純米なんだ」ひいな「そう、純米と純米吟醸。どう?」テツヤ「うん。酸味があって、飲みやすいね」ひいな「でしょう?」テツヤ「となると、『田村』が断然気になるな。早く全部飲んでみていい?」ひいな「いいよ(笑)」自社田米を使った生もと仕込みの「田村 純米吟醸」1760円(各720ml、税込・ひいな購入時価格)/有限会社仁井田本家テツヤ「俺、『田村』が一番いいわ」ひいな「え?本当に?」テツヤ「この『田村』が一番スーッと入ってこない?」ひいな「『田村』は、雑味が多いのが売りかと思ってたんだけど」テツヤ「俺、雑味、大好きなんだよね」ひいな「さすが。お酒弱い人の意見じゃないね(笑)」テツヤ「俺は『田村』が好みだけど、ひいなは?」ひいな「私は『おだやか』派」テツヤ「俺は、断然『田村』だけど、日本酒知ってる人は『おだやか』なのかな?」ひいな「いやいや(笑)。玄人こそ『田村』だと思うよ」テツヤ「じゃ、俺は玄人だな」ひいな「すごい意外だわ。どうして『田村』が好きだと思ったの?」テツヤ「『田村』はね、ぬか臭さもありつつキレもある。抜ける感じがあるっていうか」ひいな「なるほどね。意外だなぁ」テツヤ「いいじゃない、意外で(笑)。みんなはどう?どれが好きだった?」ライター・ヤブシタ「私は断然『おだやか』ですね」母・美樹「私も『おだやか』かな」編集・小倉「僕は『にいだしぜんしゅ』ですね」ひいな「わぁ、バラけたね。同じ蔵でも3種類お酒を出してて、好き嫌いが分かれるところがいいなと思ってて」テツヤ「すごいよね、確かに。同じ蔵なのに、こんなに意見が分かれるなんてね。でも、同じ蔵が出してるお酒っていう感じは通底してるよね」ひいな「そうそう。そうなの!」燗酒にして味わいの変化を楽しむ。ふくよかな味わいがさらに増し増しに。ひいな「『にいだしぜんしゅ』のいいところは、燗につけるとおいしいところなんだよね」テツヤ「え、そうなんだ。じゃ、燗にしてみようか」ひいな「どれにする?『にいだしぜんしゅ』がおいしいと思うけど」テツヤ「『おだやか』は?俺の中でまだピンときてないから、燗にして飲んで変化を楽しんでみたいね」ひいな「了解」(「おだやか」を燗につけて……)テツヤ「何度くらい?」ひいな「45度いかないくらいかな」テツヤ「『おだやか』がどう変わるかな?」ひいな「このお酒はね、自然派白麹酒母仕込みで、日本酒本来の味わいと香りをあえて控えめにすることで、冷やしておいしい現代のどんな食事にも合うお酒なんだって」テツヤ「それを燗にしちゃうんだな(笑)」ひいな「そう(笑)。『おだやか』を燗にする日が来るとは思わなかったな。今の杜氏が18代目の仁井田穏彦(やすひこ)さんなんだけど」テツヤ「え、ちょっと待って。18代目?すごいな。将軍家みたいだね」ひいな「修業先から実家に戻った時に立ち上げたブランドで、穏彦さんの穏の字をとって『おだやか』なんだって。燗できました!」テツヤ「いただきます!わー!ひいな、俺こっちのほう好き。めっちゃ味が変化したね。同じ酒とは思えないよ」ひいな「本当?」テツヤ「『おだやか』が今一番に躍り出たね。急に開いた感じ!さっきの冷酒の『おだやか』より100倍好きかも。温めて正解だと思う」ひいな「この『おだやか』の燗が好きなら、『にいだしぜんしゅ』の燗はもっとヤバいと思うよ」テツヤ「もっとおいしい?」ひいな「うん」テツヤ「じゃ、全部燗にして比較してみようよ」ひいな「やってみよう!」(「にいだしぜんしゅ」を燗にして……)テツヤ「今度は何度?」ひいな「53度くらい」テツヤ「濃そうだね。あぁー!これは古酒だよ。紹興酒みたい。こりゃうまいなぁ」ひいな「おいしいね」テツヤ「これは麻婆豆腐に合わせたくなる味だね。こんなに味が変わるなら『田村』はどうなっちゃうんだろう」ひいな「『田村』は燗にしたら、もっとおいしくなると思うよ」テツヤ「俺は『田村』派なんだから、『田村』の燗も飲まないと」(「田村」を燗にして……)ひいな「これが『田村』の燗です。どう?」テツヤ「あれ?燗にすると3本の差がなくなってきて、正直よくわからなくなってきた(笑)。冷えてた時は、田村がダントツだったんだけどさ。『田村』のほうが酸は立ってるけど、入りは確かに『にいだしぜんしゅ』と似てるな……」ひいな「3本とも同じ入り口ではあるけど、後味の抜け方が違うというか。より似てるところが際立つのかもね」テツヤ「うん、うん」「おだやか」のラベルに描かれた“かえる”の意味とは?ひいな「『田村』は、この『にいだしぜんしゅ』の30周年を機にうまれた日本酒で、全量自社田の米なんだって。生もとの三段仕込み。福島県郡山市田村町の天然水と自然栽培米を田村町の人が醸すっていうことで、完全にドメーヌ化してるんだって」テツヤ「蔵の一番の売りは『田村』なの?」ひいな「『おだやか』のラベルにはかえるが描かれるんだけど、自然と調和してるっていうのを表してるんだって。それぞれお酒、全部に力を入れてるんじゃないかな」テツヤ「へぇ。なるほどなぁ」ひいな「このお酒はね、経堂にある〈つきや商店〉さんで買ったんだけど、仁井田本家さんのお酒をたくさん取り扱っていて、ここで3種類とも手に入れたの。店主の息子さんが林 知香良(ちから)さんっていう方なんだけど、私と同じ年で、24歳で酒屋さんを継いで、学校の先生をやりながら土日はお店にいるんだって」テツヤ「お若いんだねぇ」ひいな「『にいだしぜんしゅ』ってね、ファンの方が熱狂的なのが有名で」テツヤ「へぇ、そうなんだ」ひいな「昔は、東京で日本酒のイベントとかがあるとかえるのTシャツを着たファンの方たちがそれこそ全国から押し寄せてたの。仁井田本家の良さを押し出そうっていう熱意がすごくて」テツヤ「すごいね(笑)。そんなにファンがいるんだ。熱狂的なんだね。ファンのみなさんにも、この記事読んでもらえるといいね」ひいな「ね!」【ひいなのつぶやき】日本酒好きなら必ず通る道「仁井田本家」。銘柄も温度帯によっても楽しめるのはファンにとってはたまらないですね!!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年07月25日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は「常温でおいしい」がテーマとなった第二十五夜の総集編をお届けします。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)1本目/温度を気にせず飲める常温が最高な「喜量能 上撰 純米造り」滋賀県東近江市にある畑酒造。地元の米と水を使った地酒は、そのおいしさで地元の人に親しまれている。「喜量能(きりょうよし) 上撰 純米造り」1800ml 2,145円(税込・ひいな購入時価格)/畑酒造有限会社あわせたおつまみは「マッシュルームとくるみのリゾット」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!2本目/辛口か旨口か。論争を巻き起こすうまい酒「惣譽 特別純米酒 辛口」栃木県芳賀郡にある惣譽酒造。代表銘柄「惣譽」は種類もいろいろ。こちらは特A地区の山田錦100%を使った特別純米酒。ラベルには辛口とあるが、米の旨みを存分に感じる旨口のお酒。「惣譽 特別純米酒 辛口」720ml 1512円(税込・ひいな購入時価格)/惣譽酒造株式会社あわせたおつまみは、「豆腐の卵とじ」おっとっとっとっと……と言いながら。この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!3本目/全国にファンの多い名酒「磯自慢 極上特別本醸造」静岡県焼津市にある磯自慢酒造。国内外で名酒として広く知られる「磯自慢」。その中でも、特A地区東条産の特等の山田錦を100%使った贅沢なお酒。「磯自慢 特別本醸造」720ml 1,793円(税込・ひいな購入時価格)/磯自慢酒造株式会社あわせたおつまみは、「マスタードシードのナンプラー漬け」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!毎週日曜の夜更新。「伊藤家の晩酌」をチェック!娘・ひいなと父・テツヤが毎週織りなす愉快な親子晩酌。これまでの連載内容はこちらをクリック!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年07月18日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十五夜は、冷蔵せず、常温でおいしい日本酒をご紹介。日本を代表する、静岡県のあのお酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)今宵3本目は、あの名酒を常温で!?「磯自慢 極上 特別本醸造」静岡県焼津市にある磯自慢酒造。国内外で名酒として広く知られる「磯自慢」。その中でも、特A地区東条産の特等の山田錦を100%使った贅沢なお酒。「磯自慢 特別本醸造」720ml 1,793円(税込・ひいな購入時価格)/磯自慢酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「最後は、なんと『磯自慢』です!」父・徹也(以下、テツヤ)「え!? 実は、俺の日本酒デビューは『磯自慢』なんだよね」ひいな「え?いつ?」テツヤ「俺が20代の頃にね、いまは『Tarzan』で編集をやってる松浦さんと伊豆で釣り船に乗ってウマヅラハギが爆釣した後、『磯自慢』を飲んだんだけどさ、そのうまさはね、もうね……」ひいな「うわぁ、それはおいしいそう」テツヤ「一番最初に日本酒っておいしいんだなと思ったのが『磯自慢』だったかな。そのあとは馬鹿の一つ覚えみたいに、どこに行っても『磯自慢』飲んでた」ひいな「なるほどね。おいしいお酒としての記憶が『磯自慢』なんだ」テツヤ「松浦さんのオススメなら確かだなと思って」ひいな「さすが松浦さん!いまのおいしい日本酒の流れをつくったのは『磯自慢』なんじゃないかなって思うくらい有名なお酒だからね。入手困難なお酒もあって高級なイメージもあるし」テツヤ「そうそう、そういうイメージのお酒だよね。ひいなが『磯自慢』を選ぶとは……」ひいな「実を言うと、『磯自慢』はずっと避け続けてきたんだけど……」テツヤ「そんな有名な『磯自慢』を常温にしちゃうんだ?」ひいな「そう」テツヤ「『磯自慢』って本醸造だよね?」ひいな「そうなの」テツヤ「ってことは、アル添(ライター注:醸造アルコールが添加された日本酒のこと)だよね?」ひいな「うん」テツヤ「そこがおもしろいよね。純米酒とか純米吟醸とかがもてはやされてる時にあえて本醸造を貫いてるんだもんな」ひいな「これは吟醸造りだから“特別”って言ってる。吟醸酒って言ってもいいお酒なんだけど、あえて本醸造なんだと思う」テツヤ「本醸造へのこだわりがすごいね!」ひいな「うん。本醸造にしてるのは、うまさを追求してのことなんだと思うよ」テツヤ「アル添することで、よりおいしくなるっていうことだよね。世の中の純米信仰に対するアンチテーゼというか。たとえばワインでも、ナチュールじゃなくてもうまいワインってあると思うし、そういうことだよね」ひいな「うんうん」テツヤ「極上ってことは、高いんじゃないの?」ひいな「いくらだと思う?」テツヤ「え、いくらなんだろう(笑)?」ひいな「1,793円」テツヤ「極上と言う割にはお手頃だね」ひいな「『磯自慢』はピンキリだからね」テツヤ「そのなかでは安い方だよな」まずは徳利へ注いで……。さぁさぁ、どうぞどうぞ。父・テツヤの思い出の酒「磯自慢」。お味はいかに?いただきます!テツヤ「岩田圭介さんのおちょこで飲むの、久しぶりだね」ひいな「これだとなんでもおいしく飲めるよね」ひいな&テツヤ「乾杯!いただきます!」ひいな「あ、おいしい?うれしそうな顔してる(笑)」テツヤ「あぁ〜。いいよ『磯自慢』」ひいな「おいしいね」テツヤ「華やかだよね」ひいな「そうなの。華やかなんだよね」「磯自慢 極上特別本醸造」に合わせるのは、ピリッと辛い「マスタードシードのナンプラー漬け」テツヤ「うん!? 何これ?」ひいな「お母さんに仕込んでもらった、マスタードシードのナンプラー漬けです!」テツヤ「こんなおつまみ初めてだな」ひいな「めかぶとかね、明太子とかとすごく合うんじゃないかと思って『磯自慢』と合わせてみたんだけど、ことごとく合わなかったの。ツナも合わせたけどダメだった」テツヤ「なるほど」ひいな「その時に食べたのがこのナンプラーで仕込んだマスタードシードで。お母さん、どうやって作るの?」母・美樹「マスタードシードをただナンプラーに漬けただけ」テツヤ「あぁ、合う!めっちゃニッチな感じだけど合う!」ひいな「合うでしょ?」テツヤ「マスタードシードの香りとナンプラーの香りと、どっちも強いんだけど、『磯自慢』に合ってる気がする。どっちもパンチがあるっていうかさ」ひいな「ナンプラーも魚からできてるしね」テツヤ「マスタードシードと合わせて飲むと、熟成酒みたいな味がするね」ひいな「あ、そうかも!」テツヤ「後味が紹興酒みたいに変わったもん。味も香りも」ひいな「うんうん」テツヤ「これさ、2粒かじって『磯自慢』飲んでって、ずっとちびちびいけちゃう感じ」ひいな「ね!」テツヤ「マスタードシードっておいしいな。すごく罪なものを食べてる感じがするね」ひいな「それは褒め言葉だよね(笑)。おつまみと合わせることで味わいが変わるってこのことだよね」テツヤ「なんでマスタードをチョイスしたの?」ひいな「海鮮に合うって決め込んでたんだけど、全然合わなかったから、何かインパクトがあるものがいいかなと思ったの」テツヤ「確かに刺激はあるよね。でも、『磯自慢』にマスタードシードを合わせようと思ったひいながすごいよ。日本酒バーにある変わり種のつまみみたい」ひいな「でもさ、やっぱり『磯自慢』っていう名前を聞くと、海鮮に合わせたい感じがやっぱりあるじゃない?」テツヤ「名前から受けるイメージはそうだよね」ひいな「そういえば、さっきお届け物が届いたんだよね!」テツヤ「そういえばそうだった!富山から」ひいな「グッドタイミング!」テツヤ「すごいのきたー!!!白えびのお刺身、甘い〜〜!」ひいな「おいしい!」テツヤ「『磯自慢』にぴったりじゃない?」ひいな「うん、合うね」日本酒のデビュー戦を飾る、ひいなのおすすめの日本酒とは?ひいな「常温で飲んでもらったけど、冷やしたものもあるから飲んでみる?」テツヤ「おぉ、いいね。比較してみたいね。常温がうまいのかどうか。『磯自慢』ってどこのお酒なんだっけ?」ひいな「静岡県焼津市」テツヤ「焼津といえばかつおだね」ひいな「冷たい『磯自慢』は3日前に開けたものだから、そんなに日は経ってないかな」テツヤ「あぁ、冷えてるのもいい。おいしいよ」ひいな「ラベルの裏には『伝統と革新の融合 そして本質へ』って書いてあるね。“吟醸酒タイプです。できるかぎり冷やしてお試しください”って書いてあるね」テツヤ「冷やせっていわれてるのに、あえて常温で(笑)」ひいな「そう、常温で。『磯自慢』のホームページ見るとね、たくさん“自慢”が書いてあって」テツヤ「『磯自慢』だけに」ひいな「そう(笑)。蔵として利用する全酒米のうち65%が東条産の山田錦を使ってるんだって。兵庫県の東条って、特A地区でいいお米をつくってるところだし、造り方にもとことんこだわっていて」テツヤ「ひとつ疑問なのは、そんなにいろんなものにこだわっていて、あえて醸造アルコールを添加するっていうコンセプトが気になるんだよね」ひいな「醸造アルコールは原料の一種であって、添加することできっと口当たりがなめらかになるとかバランスが整うとか、意味があってのことなんだと思うよ」テツヤ「アル添することを逆算して酒を造ってるということだよね」ひいな「そうだと思うよ」テツヤ「なるほどね。このお酒は、アル添のイメージを覆してくれる酒なんだね」ひいな「そうだね」テツヤ「なるほど。いい酒だよ。俺の日本酒デビュー戦をかざってくれた酒でもあるし」ひいな「思い出深いお酒だね」テツヤ「ひいなだったらさ、デビュー戦に何の酒を持ってくる?これから日本酒をはじめてみようっていう人におススメする酒」ひいな「え〜!すっごく難しいけど……」テツヤ「俺のデビュー戦、『磯自慢』って恵まれてたんだなぁ」ひいな「渡辺酒造店の「W(ダブリュー)」シリーズかな」テツヤ「へぇ」ひいな「ちょっと微発泡な感じで飲みやすくて」テツヤ「やっぱりさ、デビュー戦は大事だよね」ひいな「これから日本酒を飲もうっていう人には、おいしい日本酒に出会ってほしいからね」テツヤ「いやぁ『磯自慢』を常温で飲んだのはじめてだわ。贅沢だなぁ」ひいな「実はね、『磯自慢』を初めて飲みました」テツヤ「え?初めてなの?」ひいな「ずっと純米酒ばっかり飲んできたから。本醸造でも、おいしいお酒があるんだなってわかった」テツヤ「ひいなの好みも変わってきたのかな」ひいな「純米酒の旨口で後味に重心がくるようなお酒が好きだから、本醸造を飲むと入り口からさっぱりしててすごく新鮮なんだよね」テツヤ「なるほどね。わかる気がする。いやぁ、今回の常温の3種類のセレクト、みんなよかったな。みんなやさしくて飲み続けられるっていうかさ。それがデイリー酒ってことなんだろうな」ひいな「造る人からすると実はそういうお酒を造るのが一番難しいとも思うんだけどね」テツヤ「いつか蔵の人に聞いてみたいね。この連載で2人で好き放題言ってるけどさ、どんな気持ちで造ってるのか」ひいな「ね、いつかきっと!」テツヤ「今日、松浦さんをゲストで呼びたかったな」ひいな「まさか、『磯自慢』がそんなに思い出深いお酒だとは思わなかったから」テツヤ「松浦さんは、風呂で釣り雑誌を読み込んで、水分で倍くらいにふやけちゃうくらい釣りが好きなんだよ。あと、家の冷蔵庫の野菜室に日本酒を熟成してるらしいよ」ひいな「わ!松浦家でぜひ出張『伊藤家の晩酌』をお願いします!」テツヤ「ひいなの後学のためにぜひ、よろしくお願いします!」ひいな「よろしく、お願いしたいです!」【ひいなのつぶやき】父が人生で初めて感銘を受けたお酒「磯自慢」。みなさんにとっての「磯自慢」はどんなイメージなのか気になります!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年07月11日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十五夜は、冷蔵せず、常温でおいしい日本酒をご紹介。地元で日常的に愛される栃木のお酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)今宵2本目は、このお酒を表現する新たな言葉が必要!?「惣譽 特別純米酒 辛口」栃木県芳賀郡にある惣譽酒造。代表銘柄「惣譽」は種類もいろいろ。こちらは特A地区の山田錦100%を使った特別純米酒。ラベルには辛口とあるが、米の旨みを存分に感じる旨口のお酒。「惣譽 特別純米酒 辛口」720ml 1512円(税込・ひいな購入時価格)/惣譽酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「2本目は栃木県の『惣譽(そうほまれ)』です!」父・徹也(以下、テツヤ)「おぉ!聞いたことある」ひいな「『惣譽』は、いろんな種類のお酒を出してて、この時期にはこれ、この時期にはこれ、みたいな」テツヤ「へぇ」ひいな「私が一番好きな季節酒は『睡蓮』っていうお酒なんだけどね」テツヤ「『惣譽』のなかに『睡蓮』があるの?」ひいな「そう。モネの『睡蓮』を模して、画家さんが描いたラベルがあって。でも『惣譽』と言ったら、毎日飲める日常のお酒っていうイメージが強いかな」テツヤ「栃木では有名なお酒なの?」ひいな「うん、有名。日本酒界でも有名」テツヤ「こないだ、栃木へ取材に行った時、道の駅で見たよ」なみなみとお酒を注いでもらうと、居酒屋みたいな気分に。おっとっとっとっと……と言いながら。酒受皿つきのグラスがほしくなりますね。ひいな「まず、飲んでもらおうかな。この酒受皿つきの厚口グラスは、谷中の〈松野屋〉さんで買いました」テツヤ「このグラスが家にあるってすごいよね(笑)」ひいな「グラスからお酒があふれて、おっととっとって家でできるの楽しいね」テツヤ「じゃ、乾杯はグラス持たずにあふれるお酒をすすろうかね」いただきます!こんな姿勢ですいません!父、満面の笑み。はぁ〜うまい〜。ひいな&テツヤ「乾杯!」テツヤ「うわ〜常温がおいしい〜!」ひいな「おいしいね!」テツヤ「実は、ちゃんと飲み方がわかってないんだけどさ、受け皿にあふれたお酒はどうしたらいいの?」ひいな「グラスの底を拭き取ってからテーブルに置いて、受け皿のお酒をグラスに入れて飲むか、受け皿からそのまま飲んでもいいよ」テツヤ「あぁ、なるほどね。一回持ち上げたグラスは受け皿に戻さないってことだな?」ひいな「うん」テツヤ「いやぁ、常温でもおいしい酒ってあるんだねぇ。ほんとうにおいしいよ」ひいな「このお酒、9割は栃木県の地元で消費されてるの」テツヤ「おぉ、そりゃすごいね。地酒だ!」ひいな「地酒といえば『惣譽』だし、そんな『惣譽』だから気取ったワイングラスで飲むよりも、こういうほうが合うかなと思って」テツヤ「いいね。合う合う。地元で飲まれてるお酒っていいね。実はさ、今まで栃木にあんまりイメージが湧かなかったんだけど、最近、栃木が好きなの」ひいな「どうして?」テツヤ「益子もあるし、黒磯もそうだし、ごはんおいしいしさ、移住してる人が多いんだよ。最近、知り合いのスタイリストさんも二拠点生活はじめたりとか、〈宗像堂〉のスタッフだった子が佐野にお店出したりとか。最近よく栃木に縁があるなと思って」ひいな「いいね!」「惣譽 特別純米酒 辛口」に合わせるのは、お出汁が効いた「豆腐の卵とじ」ひいな「このお酒に合わせるものはなんでしょう?」テツヤ「栃木だろ?う〜ん。いちごしか思い浮かばないな(笑)」ひいな「栃木のお酒だけど、そこから一度離れて(笑)。地酒っていうイメージが強いから、派手な料理を用意してないよ」テツヤ「山菜とか?煮物とか?」ひいな「お!近い。豆腐の卵とじです!」テツヤ「へぇ」ひいな「豆腐をお出汁で煮て、卵でとじました」テツヤ「お出汁のいい香り〜!」ひいな「山椒を振って召し上がれ。ニンニクが結構効いてると思うよ」テツヤ「あ、これは危険な味がするな。こりゃ居酒屋の味だね。家庭の味じゃないよ」ひいな「そう?」テツヤ「いま一番飢えてる味だね。うまっ!」ひいな「変に気取らず、お酒に合わせてみたよ」テツヤ「うんうん、最高」ひいな「お酒が気取りすぎてないのに、おつまみが気取ったものだとバランスがくずれちゃうかなと思って」テツヤ「たしかにね」ひいな「庶民的な味というか」テツヤ「うまいよ、これ。居酒屋のお通しで出てきたら最高だな」ひいな「居酒屋の味に飢えてるからね(笑)」テツヤ「おかわり!」ひいな「常温のお酒だから、あったかいもの合わせるのいいかなと思って」テツヤ「うん、当たりです」日本酒の味を表現する「辛口」「甘口」から「旨口」へ。ひいな「このお酒を選んだ理由は、常温で飲みたいお酒ってテーマを決めた時に、真っ先に『惣譽』が思い浮かんだの」テツヤ「そういうイメージがもともとあったんだね」ひいな「そう。『惣譽』って常温でおいしくて、かつ常温で味わいがぶわっと出てくるイメージがあったんだよね。季節酒とかはまた違うけど、通年で出してる、この『特別純米酒 辛口』とかは特に常温で飲んでほしかったから、このテーマにした時に真っ先に思い浮かんだ」テツヤ「ほんとに常温でうまいよ、このお酒」ひいな「このお酒をみんなどう表現してるのかなと思って、いろんなホームページを見てみたの。そしたら『旨口好きにはたまらない1本』とか、『幅のあるしっかりとした味わい』とかで、最適な表現がむずかしいなと思ったの」テツヤ「うんうん」ひいな「このお酒、辛口って謳ってて」テツヤ「え、辛口なの?」ひいな「『特別純米酒 辛口』ってラベルに書いてあるんだけどね。とあるホームページには『辛口にして辛さを感じない純米酒』って書いてあって」テツヤ「えっ(笑)」ひいな「『辛口にして辛さを感じない純米酒』だけど、旨口好きにはたまらなくて、幅のあるしっかりとした味わいで……。一体、どんな表現がいいのかわからなくなっちゃって」テツヤ「日本酒度では辛口なだけで、味わいとしては辛口じゃないってことかな?」ひいな「日本酒度は+5くらいだからそんなに辛口ではないかな」テツヤ「日本酒度ってひと昔前は浸透してたけど、今はそんなに言わなくない?辛口のお酒ほしいとかもう言わなくない?」ひいな「辛口ってどういうイメージ?」テツヤ「辛口はさ、キレがある感じ」ひいな「そうだよね。味っていうより、キレだよね」テツヤ「日本酒度っていうから難しいんじゃないの?キレ味の話なのか味わいの話なのかで変わってくるよね。ビールもそうじゃない?のどごしとか辛口って、つまりキレ味のことだよね」ひいな「そうだね」テツヤ「うーん、俺には辛口ではないかな?」ひいな「中間じゃない?」テツヤ「そう?」ひいな「私的には、辛口で後味のキレはいいけれど、まったりしてる要因があるのを旨口って言ってたの」テツヤ「納得。旨口っていい言葉だよね」ひいな「いい言葉なんだけど、便利な言葉だなと思ってて」テツヤ「そうだよね、かわいいとかヤバいみたいな」ひいな「旨口以外にもうちょっと語彙力がないかなと思って。私にも世間にも」テツヤ「なるほどねぇ。うん。やっぱり、これは辛口ではないかな」ひいな「うん」テツヤ「常温なんだけど、燗酒の余韻も楽しめるような」ひいな「余韻が伸びる感じが、ね。『普段に飲むお酒のよさこそ蔵の顔である』と信じていますってホームページに書いてあったよ」テツヤ「いい蔵だねぇ」ひいな「ね。いいお酒だよね。『惣譽』は季節を追って飲んでほしいお酒でもあるけど、年中いつでも、常温で置いておいて飲んでほしいお酒でもあるかな」テツヤ「晩酌にぴったりだ!飲んべえの人ってさ、毎日当たり前にお酒飲むけど、普段あんまり飲まない人たちって、『今日飲もう!』って思って飲むらしいよ」ひいな「え、そうなの?」テツヤ「お酒があるから飲むんじゃなくて、飲もうと思って買ってくるんだよ!今さら気づいたけど、俺たち飲んべえなんだね(笑)」ひいな「今日、どんな気分?って晩酌考えるもんね」テツヤ「飲まないってことはないもんな」ひいな「日本酒なのか焼酎なのかワインなのか『今日はどんな気分?』から始まるもんね。『軽めにいきたいね』とか『今日は飲む気分か』とか」テツヤ「伊藤家は、酒がないとコミュニケーションが取れないので(笑)」ひいな「みんなそれを楽しみに家に帰ってくるからね。なんならヨガしてる時に、『今日の夜、何を飲もうかな』って考えてるからね(笑)」テツヤ「いいんですよ、それで」ひいな「みんなが飲めるっていいことだね」テツヤ「家族みんなで飲めるってしあわせだね」【ひいなのつぶやき】あなたはこのお酒をどう表現しますか? 飲んべえの意見をお聞かせください(笑)!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年07月04日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十五夜は、冷蔵せず、常温でおいしい日本酒をご紹介。レトロなラベルの一升瓶がグッとくる滋賀のお酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)今宵1本目は、一家に一本! キープしておきたい「喜量能 上撰 純米造り」から。滋賀県東近江市にある畑酒造。地元の米と水を使った地酒は、そのおいしさで地元の人に親しまれている。「喜量能(きりょうよし) 上撰 純米造り」1800ml 2,145円(税込・ひいな購入時価格)/畑酒造有限会社娘・ひいな(以下、ひいな)「今回は、常温で飲みたい特集です!」父・徹也(以下、テツヤ)「おぉ。常温か。渋いねぇ」ひいな「渋いでしょ?渋い3本続くから、覚悟しといて」テツヤ「(笑)常温の酒かぁ」ひいな「常温の日本酒ってどんなイメージある?」テツヤ「うんとね。日本酒飲み慣れてない人にとっての常温はハードル高いんじゃないかな」ひいな「ハードル高い?」テツヤ「でもほら、冷えたお酒よりもちょっと温度が上がると香ってくるとか味が変化するとかもさ、この2年間で勉強してきた感じだから」ひいな「おぉ!」テツヤ「常温、楽しみではあるよね」ひいな「うんうん」テツヤ「常温=火入れしてあるってことでしょ?火入れしてないほうがいいんじゃないかっていうイメージというか、生原酒のほうがいいのかなって。日本酒買いに行っても、冷蔵庫にある日本酒に行っちゃうっていうかさ。そのイメージを覆す、いい酒があるのかな?」ひいな「うん。今回のお酒はネットで注文したんだけど、3本とも常温で送られてきたよ」テツヤ「でも、焼酎も常温で保存するし、ある意味エコだよね」ひいな「冷蔵しないでいいぶんね」テツヤ「それでおいしければなお良し」ひいな「でも、どこで電気を使うかっていうのはあるけどね」テツヤ「まぁそうだな(笑)。火入れしてるからね。この間酒蔵を取材したんだけど、火入れの作業が思ってたのと違ったんだよ」ひいな「どういうの想像してた?」テツヤ「なんか“火入れ”って言葉から激しいのかと思ってたんだけど(笑)」ひいな「タンクのなかで湯煎する感じのところもあるし。瓶のまま湯煎したり、ホースを通す時に火を入れたり、いろいろあるよ」テツヤ「何度で火入れっていうのかな?」ひいな「60度くらいかな」テツヤ「今回はラベル特集じゃないのに、このラベルヤバいね」ひいな「いいでしょ?」テツヤ「絵がいい。めっちゃデフォルメされてる富士山がいいね。どこのお酒?」ひいな「滋賀県」テツヤ「滋賀から富士山見えるのかな?これ琵琶湖かな?何て読むの?」ひいな「きりょうよし」テツヤ「へぇ。いいね!」ひいな「この片口、すごくすてき〜!」テツヤ「〈spicy curry 魯珈〉さんのカレー本を作った時に、アシスタントで来てくれた輪笠伸好さんっていう方が陶芸家でさ。最後の打ち上げの時に、スタッフそれぞれのイメージに合うものをくれたんだけど、僕はその片口をいただいたの」ひいな「こういうイメージだったんだ」テツヤ「娘と連載をやってるって言ってたかもしれないけど」ひいな「すごくかわいいの。ギリギリまでお酒を入れるとゆらゆらと揺れる感じが神秘的」テツヤ「魯珈のスパイスカレー本も絶賛発売中です!」すてきな片口からぐい呑みへ。いただきます!父、一升瓶がお似合いで。ひいな「じゃ、飲んでみようか」テツヤ&ひいな「乾杯~!」ひいな「どう?」テツヤ「いや、これ、うまいねぇ。勝手なイメージだけど、船の上とか港で飲んでもいい感じだよね。漁師酒みたいな」ひいな「若干のすっきり感があってね」テツヤ「これはクセが何もないから」ひいな「そうなの」テツヤ「スーッと飲めちゃうね。好きだな」ひいな「クセが何もなくて。いいお酒だと思う」テツヤ「これは純米?」ひいな「純米規格だよ。等外米(ライター注:特等、一等などの等級がつかないお米のこと)を使ってるから純米酒とはいえないんだけど」テツヤ「これ、祭りの酒だったら最高だよね。紙コップで飲んでもうまいっていう。常温って野外な感じするからぴったり。これいくらするの?」ひいな「一升瓶で2,145円」テツヤ「安い!しかもうまい!これは買いだな」ひいな「でしょ?お得だよね」テツヤ「常温で置いておいて、夏とかは氷入れて飲めばいいんじゃない?」ひいな「あぁ、それいいね」テツヤ「常温でロックで飲むのめちゃくちゃいいと思うな。飲むぞ!っていう日に一升瓶抱えてさ」ひいな「ほんとうに一升瓶が似合うねぇ」テツヤ「いい酒だよ、これ」ひいな「五反田に〈月。〉っていう和食のお店があるんだけど、そこはすごくいろいろな流行りのお酒とかも置いてあるなかで『とっておきの1本があります』って言われて出されたのがこれだったの」テツヤ「おぉ。その時も常温で飲んだの?」ひいな「そう。これをどうしても『伊藤家の晩酌』で紹介したいと思った時に、正直、ジャケット特集で紹介するか、常温特集で紹介するから迷ったくらいだったの」テツヤ「確かに、レトロかわいいよね。いや、でもこれは常温だよ!常温でこんなにうまいんだね」ひいな「でしょ?」テツヤ「常温でおいしいお酒って、実は一番優秀なんじゃないの?」ひいな「そうかもね」テツヤ「花見できなかったけど、花見とかアウトドアとかにバッチリじゃない?」ひいな「あぁ、確かに!」テツヤ「冷やさなくていいって最高!」「喜量能 上撰 純米造り」に合わせるのは「マッシュルームとくるみのリゾット」ひいな「このお酒、どんな料理に合うと思うんだけど」テツヤ「なんでも合うだろうね。うわ?何これ?おかゆ?」ひいな「マッシュルームとくるみのリゾットです」テツヤ「米か!いただきます!」ひいな「どう?」テツヤ「うわ、めちゃくちゃおいしい!」ひいな「桉田優子さんの『食べつなぐレシピ』にあった干しマッシュルームとくるみのリゾットを参考にしました」テツヤ「日本酒と合わせてみると……うん、うまい!」ひいな「なかなか、お米と合わせるお酒っていうのが今まで見つからないでいたんだけどね」テツヤ「米と米だもんね」ひいな「ね、よく見てみて。お米の粒が大きくない?」テツヤ「うわ、ほんとだ」ひいな「これ、祝(いわい)っていう京都産の酒米を使ってて」テツヤ「酒米なの??」ひいな「そう、酒米のリゾットなの」テツヤ「え〜〜〜!だからこんなにぷっくりしてるんだ。めちゃくちゃおいしいよ!」ひいな「そうそう」テツヤ「これ、イタリアンで出してもいいくらいだよ」ひいな「この酒米は希少価値もあって、なかなか出回ることが少ないの。お酒でも貴重なくらい」テツヤ「それが酒米として売ってるんだね?」ひいな「そう。『産地応援企画』って書いてあるから、今は飲食店に流通してなかったりとかコロナの事情もあるのかもしれない。経堂にある〈つきや酒店〉っていうところで買ったの」テツヤ「ほんとにうまい!」ひいな「わ、ぺろっと食べちゃったね(笑)。このお酒だったら、お米も受け止めてくれるかなと思って」テツヤ「くるみとの相性もいいね」ひいな「おいしいよね」テツヤ「いやぁ、常温のお酒っていいね。味が一定で変わらないってすごいことじゃない?冷酒とか燗酒だとだんだんとぬるくなって味が変わっちゃったりするから」ひいな「そうだね。常温だと味がずっと一緒だもんね」テツヤ「よく考えたら、それってすごいことだよね」毎日飲める手頃な価格の日常酒が、日々の暮らしにあるしあわせ。ひいな「『喜量能』は畑酒造の蔵のある東近江市でひっそりと販売されてるんだって」テツヤ「へぇ、そうなんだ」ひいな「でも〈君嶋屋〉のネットショップでも買えたから探せばみつかると思う。この蔵で有名なお酒は『大治郎』っていうお酒なんだけど飲んだことある?」テツヤ「焼酎?」ひいな「ううん。だいじろう(笑)。鈴鹿山系の伏流水を地下100mから汲みあげて酒造りに使ってるらしくて。名前の由来は、『量(はかり)が能(よい)のは嬉(うれしい)もの』と漢語みたいにつけたらしい」テツヤ「ほほう」ひいな「もともと酒造は、量り売りしたり、“つぼいり”っていう言われる立ち飲みで賑わう『受け酒屋』が前身だったらしいよ」テツヤ「めっちゃいい酒だね。確かに好感度がめちゃくちゃ高いわ」ひいな「そうなの!」テツヤ「手が届く値段帯で安くてさ、なんの嫌味もなく、すっと入っていく日常酒っていうかさ」ひいな「でしょう?」テツヤ「このお酒の杜氏さん、会いたいね」ひいな「会ってみたいよね」テツヤ「どういう思いでこのお酒を造ってるのか聞いてみたいね。常温で飲んでくださいってお酒ってあんまりないもんね」ひいな「そうだね」テツヤ「よほど自身があるとしか思えないよね。逆に」ひいな「『大治郎』はもう少し味にインパクトがあったイメージなんだよね。それに比べて『喜量能』はインパクトはあるけど、落ち着いてるかな」テツヤ「たしかに、名前からして、どこに出しても恥ずかしくないという自信を感じるね」ひいな「うん」テツヤ「久々にいい酒だなって思った」ひいな「これね、一升瓶でしか売ってないの」テツヤ「そうなんだ」ひいな「それもいいなと思って。このお酒を時間かけてちびちび飲んでほしい!」テツヤ「常温でいいんだもんね」ひいな「そうそう」テツヤ「ちなみに、常温ってそもそも何度くらいのことを言うの?」ひいな「うーん、20度とか?季節にもよるだろうけど」テツヤ「今はきっと高いよね。常温ってどこに置いておけばいいの?」ひいな「日陰、冷暗所だね。日の当たらないところに保管してください」テツヤ「キッチンの下とか?」ひいな「そうだね。室温で温度変化の少ないところで日が当たらないところがいいかな」テツヤ「冷やしてもいい?」ひいな「冷やしてもいいけど、冷やさなくてもおいしい3本を今回はご紹介します!」テツヤ「いいよね。実家帰ったら、お父さんが『喜量能』飲んでるとかさ」ひいな「ここ、実家だけどね(笑)」テツヤ「いやぁ、ものすごく好感度のいい酒だった!」【ひいなのつぶやき】一本持っておくと、日々の生活にちょっとした幸せが訪れるようなお酒です!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年06月27日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回は「ジャケ買い」がテーマとなった第二十四夜の総集編をお届けします。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)1本目/蛇の目や杉玉を意識したデザインの「KURAMOTO」日本酒発祥地の奈良県で1871年創業の「倉本酒造」。代々、大切にしてきた裏山の水を使い、日本酒の新たなスタンダードを目指す。まさに温故知新な酒造りで生まれた新しい1本。「KURAMOTO」720ml 2750円(税込・ひいな購入時価格)/倉本酒造株式会社あわせたおつまみは「ウフマヨ」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!2本目/「京の春 特別純米無濾過生原酒 京の輝60 大漁旗ラベル」京都府北部、日本海側に位置する与謝郡伊根町は“舟屋”と呼ばれる家屋が建ち並ぶ町並みが独特の風情。向井酒造は、“海に一番近い純米酒を醸す蔵”といわれ、「京の春」のほか、古代米を使ったピンク色のお酒「伊根満開」も人気。「京の春 特別純米無濾過生原酒 京の輝60 大漁旗ラベル」720ml 1760円(税込・ひいな購入時価格)/向井酒造株式会社あわせたおつまみは、「緑の温サラダ」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!3本目/祭りの夜をイメージしたネーミングの「セトイチ ぴぃひゃら」神奈川県足柄上郡のにある酒蔵「瀬戸酒造店」の「セトイチ」シリーズは、飲む人やシーンをイメージした酒造りで、ユニークなネーミングで惹きつける。「セトイチ ぴぃひゃら」720ml 1834円(税込・ひいな購入時価格)/株式会社瀬戸酒造店あわせたおつまみは、「ブロッコリーの芯のぬか漬けと生ハム」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!毎週日曜の夜更新。「伊藤家の晩酌」をチェック!娘・ひいなと父・テツヤが毎週織りなす愉快な親子晩酌。これまでの連載内容はこちらをクリック!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年06月20日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十四夜は「ジャケ買い」がテーマ。3本目は、一度聞いたら忘れられない名前のお酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)第二十四夜3本目は、祭りの夜をイメージしたネーミングの「セトイチ ぴぃひゃら」神奈川県足柄上郡のにある酒蔵「瀬戸酒造店」の「セトイチ」シリーズは、飲む人やシーンをイメージした酒造りで、ユニークなネーミングで惹きつける。「セトイチ ぴぃひゃら」720ml 1834円(税込・ひいな購入時価格)/株式会社瀬戸酒造店娘・ひいな(以下、ひいな)「最後は、『ぴぃひゃら』です」父・徹也(以下、テツヤ)「お?」縦笛が登場!?祭り囃子の演奏が鳴り響くひいな「ぴぃぴぃぴぃひゃらららら〜〜〜〜〜〜」テツヤ「まさに!」ひいな「『ぴぃひゃら』は、神奈川県足柄の瀬戸酒造店のお酒です」テツヤ「かわいいね」ひいな「かわいいでしょ?この名前に惹かれたっていうのもあるけど、ホームページがね、すごいの」テツヤ「そうなんだ。どんな?」ひいな「最初に、このお酒の名前『ぴぃひゃら』ってなんぞや?って気になったんだけど、ほかにもいろんな銘柄があってね。『いざ』『はるばる』『手の鳴る方へ』『月が綺麗ですね』『かくがくしかじか』『風が吹いたら』『音も無く』『Fly me to the moon』とかいろいろあって」テツヤ「え(笑)。それはお酒の名前なの?」ひいな「そう。あとね、『ぴぃひゃら』について書いてあった言葉をそのまま読むね。“ちゃんか、てんつく、ぴぃひゃらら。祭り囃子が鳴り響きゃ、居ても立ってもいられない。腹ごしらえもそこそこに、体が勝手に動き出す……”」テツヤ「祭りの酒なのか!いいね」ひいな「いいでしょ?」テツヤ「祭りっていいよな。なんか、こんな時代だから祭りが恋しいよ」ひいな「飢えてるよね。お祭り家族だもんね」テツヤ「ひいなは、お囃子やってるもんな」ひいな「太鼓と、笛は練習中」テツヤ「小学生からだもんな。お祭りとか年越しの時にね」ひいな「ひょっとことか獅子舞とかやったりしてて。だから『ぴぃひゃら』が目についたんだよね」ワイングラスでどうぞ。乾杯〜!さてはて、お味は?テツヤ&ひいな「乾杯〜!」テツヤ「あぁ、これもいいぞ。おいしい!すっきりしてて香りもいいね。でも……、すごく個性あるかと言われたら……ないかな」ひいな「そうなの。純米吟醸なんだけどね、アルコール度数15〜16度、精米歩合60%、日本酒度+2だから、そんなに甘口でも辛口でもない」テツヤ「これは何にでも合うお酒だな」ひいな「でもね、何にでも合うからこそ、これにぴったりハマる料理を探すのが難しかった」テツヤ「何でも合うだけに。でもさ、こんなにまとまった味のお酒を造るほうが難しいんじゃないかと思うくらい、めちゃくちゃバランスがいいね」ひいな「そうなの。おつまみ持ってくるね!」「セトイチ ぴぃひゃら」に合わせるのは「ブロッコリーの芯のぬか漬けと生ハム」。ひいな「このお酒に合わせる料理、すごく迷って」テツヤ「え、これ何?パイナップル?何だろう?」ひいな「ブロッコリーの芯のぬか漬けと生ハムです!」テツヤ「ブロッコリーの芯?」ひいな「そう。ぬか漬けにしてあるんだけどね。お母さんの会社の人が教えてくださって。芯のぬか漬けがおいしいって」テツヤ「そうなんだ。生で漬けるの?」ひいな「茹でてから」テツヤ「めちゃいい感じで漬かってる。確かにこのぬか漬けの酸味がお酒の酸味に合うねぇ」ひいな「そうなの!シャープな酸味と合わせる感じ」テツヤ「うん、めちゃ合う。ここにクリームチーズ入れてもいいかも」ひいな「入れてみる?」テツヤ「合うよ、絶対。塩気と乳酸発酵に。いやぁ、このブロッコリーの芯、うんまいね。きゅうりよりうまいかも。これクリームチーズと抜群に合うね!」ひいな「クリームチーズあったほうがおいしいね。お父さんのアイデア、いただき。まとまりが出てきた感じがする」テツヤ「俺もこの連載2年やってやっと、娘にいい提案ができた気がする」ひいな「そんなことないよ(笑)」テツヤ「この酒、久々に、なんていうか優等生な酒だよね」ひいな「うん、正統派だよね」テツヤ「そうそう。欠点がない感じ。いいやつだなって感じがするよ」日本酒の名前から広がるイメージ。誰と、いつ、どんな肴で飲むかを想像しながら。ひいな「“全量小仕込みの丁寧な酒造りだからこそできる様々な顔つきの日本酒を提案し、日本酒のよろこびを広げる”っていうのが、このセトイチシリーズなんだって。“誰と、いつ、どんな肴で飲みたい酒か”をイメージして造ってるらしくて」テツヤ「へぇ。おもしろいね」ひいな「“祭りの夜を思わせる軽快な香りと濃厚な味わい。若々しい張りのある元気な酒”って書いてあって」テツヤ「どんな祭りをイメージしてるんだろうね。いい思い出なんだろうな。俺のイメージはね、浴衣着てる同級生とデートしてるよね。青春の甘酸っぱい思い出だろう、これは」ひいな「え、そう?私は神輿担ぎながら、夜は浴衣に着替えてデートするみたいな感じ?」テツヤ「そんな器用なやついる?」ひいな「イメージはそれぞれだから(笑)。ほかにもおもしろいこと書いてあって。“ジムで鍛えて筋肉をつけた身体ではなく、日々の労働によって引き締められたシャープな身体”のイメージなんだって。ゴリゴリな筋肉質よりは、内にひそむ筋肉みたいな?」テツヤ「つまり、インナーマッスル?」ひいな「そういうことかな(笑)。あとね、お酒にそなえたいことっていうのもおもしろくてね。(1)センターがしっかりしていること(2)良いものが持つ本質的な軽みがあること(3)静かであること(4)品の良さと荒々しさが同居していること(5)長所が欠点を上まわること。なんだって」テツヤ「へぇ。まさにその通りの酒だよね。うん。すごくいい酒だと思う」ひいな「特にこの(1)と(2)ね。センターがしっかりしていて、良いものが持つ本質的な軽みがあることっていうのがね。すごくわかる」テツヤ「センターがブレるとどうしようもないからね。どの世界でも」ひいな「これくらいまとまったお酒って反対に造るの難しそうだけどな」テツヤ「確かに、個性が際立つ世界でね。でもこれは誰もがおいしいって言う酒だと思うよ。ただ、これを飲んで『ぴぃひゃら』だってわかるかどうは別の話だけど」ひいな「これ、ずっと飲み続けられるお酒だよね」テツヤ「なんでこれジャケ買いしたの?」ひいな「これはジャケっていうか、ネーミングに惹かれたからかな」テツヤ「写真では伝わらない質感があるラベルだよね。これ版画だよね。金の箔押しもあるし」ひいな「いいね。あとね。このお酒のいいところは、小さい300mlのお酒も売ってるの」テツヤ「へぇ、そりゃ珍しいね」ひいな「私が瀬戸酒造店さんを知ったのは、ブレンドを蔵が推奨しててたことなの」テツヤ「え?お酒を混ぜちゃうの?」ひいな「そう。2つのお酒を1対1とか、いろんな比率でオススメしてて、セット売りしてたことがあって」テツヤ「それはおもしろいね」ひいな「そう。しかもね、社員の声でね、“杜氏さんは何対何が好きでした”とか書いてたりしてて、それがすごくおもしろいなと思って」テツヤ「酒蔵がそれをオススメしてるんだ。自由でいいね」ひいな「自由だよね。『ぴぃひゃら』とか言ってるくらいだから(笑)」テツヤ「日本酒もさ、もっと自由でいいと思うんだよね。もっと自由に、もっとおいしく飲めたらいいよね」ひいな「賛成!」【ひいなのつぶやき】自由な日本酒のあり方を推奨してくれる瀬戸酒造店。「伊藤家の晩酌」でも、お酒のブレンドをする回やってみたいな〜!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年06月13日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十四夜は「ジャケ買い」がテーマ。2本目は、レトロなラベルが目を引く京都のお酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)第二十四夜2本目は、後味に苦みの余韻が残る「京の春 特別純米無濾過生原酒 京の輝60 大漁旗ラベル」京都府北部、日本海側に位置する与謝郡伊根町は“舟屋”と呼ばれる家屋が建ち並ぶ町並みが独特の風情。向井酒造は、“海に一番近い純米酒を醸す蔵”といわれ、「京の春」のほか、古代米を使ったピンク色のお酒「伊根満開」も人気。「京の春 特別純米無濾過生原酒 京の輝60 大漁旗ラベル」720ml 1760円(税込・ひいな購入時価格)/向井酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「実はね、ラベルについていろいろ語れるのは1本目の『KURAMOTO』だけで、ほかはただ単に好きで選んだだけなんだけど(笑)」父・徹也(以下、テツヤ)「いいじゃない。ラベルは手にとるきっかけのひとつなんだから」ひいな「そうなの」テツヤ「ひいなはさ、蔵のこと、銘柄のこと、いろいろ知ってるから、それを無しにして、純粋にラベルだけでいいと思ったっていうことだろ?それってすごいことなんじゃない?」ひいな「そうだね」テツヤ「ナチュールワインもクラフトビールも、ジャケで買ってもほぼ間違いないもんね。そこにつくり手の思いが込められてるもんだからさ。日本酒はまだ判断しづらい部分もあるけど。ひいながピンときたお酒っていうことだけで、おもしろいと思うよ」ひいな「今回は、こちらです! 『京の春』です!」テツヤ「出たー!ジャパン!! 魚が飛んでる!」ひいな「かわいいでしょ?ほら、お父さんが持つと漁師みたいにお似合い(笑)」テツヤ「俺の酒じゃい!」ひいな「似合いすぎだね(笑)。『京の春』はその名の通り、京都のお酒なんだけど、伊根町っていうところのお酒なの」テツヤ「俺さ、伊根に2回くらい行っててさ。まさに、このイラストの通り、海に面してて、家の中に船が着くようになってて。本当にいいところなんだよね。ひいなにも行ってもらいたい」ひいな「連れてってくれるの?」テツヤ「妹のひびきが免許取ったんだから、2人で行ってくればいいよ。魚もうまいしさ」ひいな「いいね」テツヤ「ひいなはさ、なんでこのラベルがいいと思ったの?理由聞きたい」ひいな「今のこの時代に、気取りすぎてないところ?」テツヤ「なるほど。ひいなにとって新鮮なんだな」ひいな「うん。このレトロさが、心に響いたというか」テツヤ「版画っぽさもいいよね。俗にいう日本酒のレトロとは違う感じでね。マットな紙の発色もすごくいいし。カメラマン目線でいうと、このブルーがね、絶妙なんだよね」ひいな「へぇ」テツヤ「いい色だなって」ひいな「棚にこのお酒があると、すごく目立つんだよね。落ち着いた色合いのラベルの中にこれがポツンとあると何これ?って目に入る」テツヤ「日本酒にはない配色だよね。何よりうまそう!」ひいな「でしょ?そう思って選んじゃった」テツヤ「伊根にはほかにもお酒あるの?」ひいな「『伊根満開』っていうお酒があって、それは古代米を使ってるからピンク色してて」テツヤ「ピンクの日本酒?」ひいな「同じ蔵なの。とりあえず、飲んでみようか」ぐい呑にたっぷりと。さぁ、どうぞどうぞ。いただきます!テツヤ「このお酒も、だいぶ色ついてるよね」ひいな「でしょ?この色と香りも味わってほしい。初めて匂いをかいだ時、チーズ系と合わせようかなと思ったんだよね」テツヤ&ひいな「いただきます!」テツヤ「わ、濃い!」ひいな「濃いでしょう?」テツヤ「濃いねぇ。でも味わい深くておいしい。冷酒でこんなに濃いんだから、常温とか燗にしたら……」ひいな「もっと分厚く感じると思う」テツヤ「これは何の米を使ってるんだろう?」ひいな「『京の輝』っていうのを使ってるらしいよ」テツヤ「後味がさ、すごい独特じゃない?」ひいな「うんうん」テツヤ「苦味じゃないんだけど。なんていうんだろう、ぬか?」ひいな「ぬかっぽさ、あるね。後味にひっかかる感じもあって」テツヤ「スーッと抜けていかない感じ。でも、これは意外と昼間からちびちび、だらだらやっていける感じがするぞ」ひいな「それは危険だね(笑)」テツヤ「いやぁ、好きな酒かも」ひいな「今までと違うタイプなんだけど、好きな味でしょ?それはうれしいな。今までは酸が立つのが好きだったのにね」テツヤ「これはおもしろいバランスだね。甘みと苦み。でも、その苦みがいやじゃない苦みなんだよ。そしてこのぐい呑で飲むのがいいね」ひいな「そうなの。これはワイングラスじゃないなと思って」テツヤ「確かに」ひいな「このお酒に合わせるもの持ってくるね!」「京の春 特別純米無濾過生原酒 京の輝60 大漁旗ラベル」に合わせるのは「緑の温サラダ」。ひいな「緑の温サラダです!」テツヤ「へぇ。意外だったな。アスパラの匂いがする!」ひいな「このアスパラは北海道で買ってきてもらったやつで、すごく大きくて立派だった!北海道のどこで買ってきてくれたんだっけ?」テツヤ「旭川に取材に行った時にね。ぎりぎりまで粘って、地元のスーパーで買い物してきました(笑)」ひいな「春菊とニラとアスパラっていうそれぞれのクセを合わせてみようと思って」テツヤ「酒もクセあるし。クセだらけだな」ひいな「このクセ、永遠にいけるアテだと思うよ」テツヤ「味付けは?」ひいな「簡単にみりんとしょうゆだけ。茹でる時に塩を多めにした。これ単品だと永遠には食べられないけど、お酒が入ることで永遠に食べられるから」テツヤ「いただきます!」テツヤ「しゃきしゃきとした歯ごたえでいいね。茹で方、ちょうどいいよ」ひいな「食感もアクセントになるかなと思って」テツヤ「もうね、クセだらけだよ口の中!これ褒め言葉だからね(笑)」ひいな「これさ、無限ループじゃない?」テツヤ「なんかね、いい意味でのえぐみ、苦みだらけだよ、口の中が(笑)」ひいな「このお酒にね、ミモレット、カマンベールとかのチーズも合わせてみたんだけど、びっくりするほど合わなかったのね。でも、ニラのクセにはすごく相性がいいなと思って」テツヤ「勝負してる感じがあるな」ひいな「勝負してる?」テツヤ「それぞれがね、切磋琢磨してる感じがする。『俺も負けへんで!』って」ひいな「(笑)」テツヤ「個性のぶつかり合いが、いい方向に向いてる感じがするね」ひいな「なるほど。宝塚でたとえると星組だね」テツヤ「星組は愛ちゃんがいるところ?」ひいな「そう。愛月ひかるさんがいるところ。(ライター注:愛月ひかるさんは、ひいなちゃんの推し)」テツヤ「でも、よくこの組み合わせ思い浮かんだね」ひいな「最初、ニラが合うなと思って。でも、ニラだけじゃなと思って、どうしようかと思って、食感を入れたいからアスパラを思いついて」テツヤ「それも意外な組みわせだけどね」ひいな「結局、緑でまとめたいなと思って。水菜を入れてもおもしろくないし、じゃ、春菊と合わせてみたら、正解だった」テツヤ「なるほど。緑だけっていうのもビジュアル的にインパクトあるし、すごいいいよ」ひいな「よかった!」日本酒の賞味期限とは?開けたあとの味の変化もお楽しみのひとつ。ひいな「実はね、開けてから1週間経ったやつもあるんだけど、それも飲んでくれる?」テツヤ「いいね。この酒はさ、伊根の海が見えるところにポツンと座ってさ、しみじみ飲んでたいね」ひいな「それ似合いすぎる(笑)。哀愁漂う、後ろ姿が想像できちゃうもんね(笑)」テツヤ「だろ(笑)」ひいな「これがね、1週間前に開けたやつ。まろやかさが増してると思うよ」テツヤ「いただきます。お?これは開けておいたやつのほうがうまくないか?これ別物だよ!」ひいな「開けておいたほう、おいしいよね」テツヤ「ぬか臭さが弱まるのかな。雑味が減ってるというか」ひいな「うん、味にまとまりが出てくる感じだよね」テツヤ「うんうん。確かに。おもしろい変化だね」ひいな「無濾過生原酒って1週間で飲み切るようにってよく言われるんだけど、こうやって飲んでみると、ぜんぜんおいしいと思うんだよね」テツヤ「うん、絶対こっちのほうがうまいよ」ひいな「賞味期限ってなんなんだろうってなるよね」テツヤ「変化が楽しめていいと思うけどな」ひいな「うん。もう少し置いてもいいと思うよ」テツヤ「熟成させてもうまそうじゃない?」ひいな「うん、絶対おいしいと思う」ひいな「この蔵はね、杜氏が向井久仁子さんっていう女性の方で、弟さんが社長なんだって。“自分がこれだっていう酒を造り上げる”っていうコンセプトがあるそうなんだけど、すごく納得しない?」テツヤ「そうだね」ひいな「“杜氏が目指すのは、ほどよい苦みや酸味があり、料理とのペアリングの妙を楽しめる通好みの味”」テツヤ「まさにその通り!すばらしい」ひいな「日本で一番海から近い蔵っていわれてるんだって」テツヤ「あぁ、伊根に行きたいねぇ」ひいな「みんなで早く取材に行きたい!」【ひいなのつぶやき】伊根町のイメージが湧く派手なラベル。味わいとラベルのインパクトがイコールな気がします!!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年06月06日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十四夜は「ジャケ買い」がテーマ。1本目は、ワインのような香りと味を追求した奈良のお酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)第二十四夜1本目は、ソーヴィニヨンブランと同じアロマ成分を含む「KURAMOTO」日本酒発祥地の奈良県で1871年創業の「倉本酒造」。代々、大切にしてきた裏山の水を使い、日本酒の新たなスタンダードを目指す。まさに温故知新な酒造りで生まれた新しい1本。「KURAMOTO」720ml 2750円(税込・ひいな購入時価格)/倉本酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「今回の特集は、ラベルが気になっちゃった特集です!」父・徹也(以下、テツヤ)「ジャケ買いってやつだね(笑)」ひいな「そうそう」テツヤ「今まで飲んだことのないお酒?」ひいな「そう。飲む前にラベルが気になってジャケ買いして、おいしかった中から厳選した3本ご紹介します!」テツヤ「どれだけ飲んだの(笑)?」ひいな「飲まないと決められないからね!」テツヤ「そりゃそうだ(笑)」ひいな「ねぇねぇ、このラベルに見覚えあったりする?」テツヤ「うーん、あるような。この雰囲気、どっかで見たことあるぞ」ひいな「第58回で出てきました」テツヤ「それはさすがに覚えてないな(笑)」ひいな「ゲストの方に料理を作ってもらったんだけど……」テツヤ「あ、料理長の早乙女さんの回だ!」ひいな「そう。白いラベルのお酒で『六十餘洲』 って覚えてる?」テツヤ「あぁ!もしかして熟成酒?」ひいな「そうそう。あのお酒とデザイナーさんが同じなの。安藤次朗さんという方がデザインしてるんだけど」テツヤ「へぇ」ひいな「このラベルについては、あとで話しするとして」テツヤ「OK(笑)」ひいな「これは、“品目 日本酒”って書いてあるんだけど、本当に日本酒?って思っちゃうようなお酒なの」テツヤ「へぇ。早く飲んでみたいな。ワイングラスが出てるってことは、ワインぽいってことかな?」ひいな「ね。まず飲んでみようか」テツヤ「いい音!きれいな透明だね!」ひいな「ね。きれい〜」ワイングラスでいただきます!注ぐだけでいい香り〜!いただきます!テツヤ「おぉ、いいぞ。酸味がいいぞ」ひいな「マスカットっぽくない?」テツヤ「うんうん。確かに。香りがすでにめちゃくちゃ緑のぶどう感あるね」ひいな「そう。ぶどうっぽい渋みは感じないワインというか」テツヤ「あぁ、そうだね。寿司屋でさ、ワイン置いてあるお店ってあるけど、寿司とワインは合わないんじゃないかって個人的には思ってるんだけど、これはいいかもね」ひいな「日本酒とワインの間というか」テツヤ「どうしてこんなにぶどうっぽいんだろう?」ひいな「不思議でしょ?それがね、調べても出てこないの(笑)。でも、『4MMP』っていわれる、白ワインに使われる品種のソーヴィニヨンブランの香りの成分が含まれてるみたいで」テツヤ「おぉ!ワインぽいと感じたのは間違ってなかったんだね」ひいな「ライチとかマスカットとかグレープフルーツが融合した感じの香りなんだって」テツヤ「うんうん、わかる気がする。その香りって酵母が関係してるのかな」ひいな「おそらく。日本酒を飲みたいっていう時はこのお酒じゃないかもしれないけど」テツヤ「でも、最初の一杯とか、軽く飲みたいとかにいいよね」ひいな「ね。精米歩合は64%、純米とは書いてないけど純米規格らしいよ」テツヤ「情報が少ないんだね」ひいな「書いてない部分は想像して楽しんでくださいってことなんだと思う。ちょっと秘密めいてる感じ」テツヤ「『KURAMOTO』いいね。ちょっと知ってるとよくない?」ひいな「そうそう。2750円って、それなりの値段ではあるんだけど」テツヤ「まあまあするねぇ(笑)」ひいな「でも、ほらワイン買ったと思えば」テツヤ「確かにね。ワインとして考えるんだったら、何が合うんだろう?」「KURAMOTO」に合わせるのは、ビストロの定番たまご料理「ウフマヨ」テツヤ「これは何だ?たまご?」ひいな「これは、ナツ・サマーさんと飲みに行った時に人生で初めて食べたウフマヨです(ライター注:ナツ・サマーさんには第十六夜にゲストでご登場いただきました!)」テツヤ「ウフマヨって何?」ひいな「フランス語でウフはたまごっていう意味なんだけど」テツヤ「フランス語なんだ」ひいな「そう。マヨはマヨネーズ。今回、マヨネーズは既製品を使ったんだけど、マヨネーズを牛乳でのばして、お酒と合うようにお酢を入れてみました」テツヤ「へぇ。どんな味なんだろう。このマヨソースが気になるね」ひいな「このマヨソースと黄身を合わせるのに試行錯誤したの」テツヤ「どういう食べ方がいい?」ひいな「最初にウフマヨを食べてから飲んで、また食べて飲んで、かな。シンプルにフランス料理屋さんに行って、最初に前菜としてウフマヨを頼んだ、みたいなイメージで」テツヤ「なるほど。ほんとに合うのかな?」ひいな「どう?」日本酒にウフマヨ!?と半信半疑な父・テツヤ。お酒にもバッチリ合いました!テツヤ「うん、合う(笑)」ひいな「よかった〜!合うでしょ?お酒にはないとろみをカバーしてくれてる感じがあるでしょ?」テツヤ「確かに。お酒がさらっとしてるもんね」ひいな「マヨの酸味も合うし」テツヤ「お酒でさらにのばす感じもあるというか」ひいな「ウフマヨだけだと抜群においしいわけじゃないと思うんだけど、お酒があるから引き立つというか」テツヤ「うんうん。確かに増長してる感じ」ひいな「お酒と合わせるからいいんだよね」テツヤ「マヨネーズが合うね。さっぱりとする。このたまごってさ、もしかして、益子で買ってきたやつ使ってる?」父が益子の道の駅で買ったという「丈夫卵」ひいな「そう」テツヤ「白身がおいしいってことで買ってみたんだけど。このたまご、独特の白身だよね?」ひいな「そう。弾力がすごいよね。ぷるんぷるん」名前や情報だけじゃない、ラベルに込められた蔵の想いやメッセージを読み解く。ひいな「このラベルの話していい?」テツヤ「お願いします!」ひいな「安藤次朗さんがデザインしてるんだけどね、中心に波紋があるのわかる?」テツヤ「うんうん」ひいな「それに重なり合って、白い波紋がうっすらと見えるでしょう?」テツヤ「あぁ」ひいな「平面なんだけど、奥行きがあるようなデザインになっていて」テツヤ「手触りもいいね」ひいな「日本酒の色を見る“蛇の目”ってわかる?」テツヤ「蛇の目?」おちょこの底に描かれた蛇の目の模様は利き酒の時に色を見るためのもの。ひいな「これなんだけど」テツヤ「あぁ、これか!なるほど。これは蛇の目っていうんだ」ひいな「これは、蛇の目とか蔵の軒下によくぶら下がってる杉玉を意識したデザインなんだって」テツヤ「なるほど」ひいな「デザイナーの安藤次朗さんが蔵に行って、杜氏の方にお話を聞いたりして、裏山の手入れを自分たちで行なったり井戸水を使うことから、山と波紋っていうイメージが生まれたんだって」テツヤ「へぇ」ひいな「歴史がある蔵だから、さらに日本酒の世界を拡張するために固定概念にとらわれず、温故知新でこのお酒を造ったらしくて、新しいラベルを取り入れたのも、これからにつなげていくためなんだって」テツヤ「シンプルな中にメッセージが込められてるんだね。ちょっと温度上がってきたら味が変化してきたね。キンキンに冷やして飲んだほうがおいしいかも」ひいな「うん。温度が上がってくると少し渋く感じるね。私もノートに『キンキンがおいしい』って書いてあった。正解!」裏に書いてあるQRコードを読み込むとウェブサイトへ飛びました。テツヤ「やった!ワインじゃないけど、ワインみたいに合わせたいね。いいお酒を教えてもらったなぁ」ひいな「この雰囲気、他にあんまりないと思うな」テツヤ「贈り物にもいいんじゃない?」ひいな「気の利く1本だよね」テツヤ「そうだよね。センス良く思われるかな?」【ひいなのつぶやき】ちょっとしたプレゼントにも、自分へのご褒美にも、知っておくとタメになる1本です!仕事終わりの贅沢な一杯にもいいなぁ〜!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年05月30日弱冠22歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?今回はラベルの文字が反転した「裏ラベル」を特集した第二十三夜の総集編をお届けします。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)1本目/愛情100%で造られた「純米大吟醸 裏 手取川」石川県白山市の吉田酒造店の代表銘柄「手取川」。精米歩合45%、純米大吟醸の2本を飲み比べ。「裏 手取川」は、石川県オリジナル品種の酒造好適米「石川門」を使用し、ほどよい酸味で伊藤家好みの味わい。「純米大吟醸 裏 手取川」1880円(720ml、税込・ひいな購入時価格)/株式会社吉田酒造店)「手取川 純米大吟醸 本流」2200円(720ml、税込・ひいな購入時価格)/株式会社吉田酒造店)あわせたおつまみは「ヨーグルト 玄米甘酒がけ」この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!2本目/常に変化し続ける蔵のチャンレンジタンク「裏ちえびじん〜番外編〜」大分県杵築市にある中野酒造。食文化やトレンドに合わせて進化し続ける蔵のチャレンジ精神から生まれた番外編は、シンプルなラベルにゴールドの反転した文字が雰囲気抜群。左:「ちえびじん 純米吟醸 山田錦」1760円右:「裏ちえびじん〜番外編〜」1650円(各720ml・税込・ひいな購入時価格)/有限会社中野酒造あわせたおつまみは、「ピーマンのオイスタービネガー炒め」表と裏で違いはあるのか!? 色はほぼ一緒!香りもほぼ一緒!さてはて、お味はいかに?この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!3本目/高知県高岡郡の歴史ある酒蔵「司牡丹酒造」による数量限定の裏バージョン(右)。4種のお米を使い、気温が高い時に仕込んでいるため酸が強め。表となる純米酒(左)には、永田農法による高知県四万十産米を使用。左:「司牡丹 米から育てた 純米酒」1301円、右:「司牡丹 純米しぼりたて 生酒 裏バージョン」1340円(各720ml・ひいな購入時価格)/司牡丹酒造株式会社あわせたおつまみは、「いちごムース」表も裏も色は一緒のようだけど……!?表から乾杯〜!裏バージョンのフルーティさにぞっこん。この日の晩酌の詳細はこちらをクリック!毎週日曜の夜更新。「伊藤家の晩酌」をチェック!娘・ひいなと父・テツヤが毎週織りなす愉快な親子晩酌。これまでの連載内容はこちらをクリック!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年05月09日弱冠24歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入!酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは?第二十三夜は、ラベルの文字が反転した「裏ラベル」を特集。3本目は高知を代表する蔵が手がける裏バージョン。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)第二十三夜3本目は、春らしいピンクのラベルの限定酒「司牡丹 純米しぼりたて 生酒 裏バージョン」高知県高岡郡の歴史ある酒蔵「司牡丹酒造」による数量限定の裏バージョン(右)。4種のお米を使い、気温が高い時に仕込んでいるため酸が強め。表となる純米酒(左)には、永田農法による高知県四万十産米を使用。左:「司牡丹 米から育てた 純米酒」1301円、右:「司牡丹 純米しぼりたて 生酒 裏バージョン」1340円(各720ml・ひいな購入時価格)/司牡丹酒造株式会社娘・ひいな(以下、ひいな)「最後は『司牡丹』です!今回は、表のお酒が難しくて。純米酒なことと精米歩合70%ということで選んでみました」父・徹也(以下、テツヤ)「裏に対する表のお酒がないわけだね」ひいな「そうなの。この蔵の一番有名な銘柄って何かわかる?」テツヤ「なんだろう?」ひいな「高知県なんだけど」テツヤ「『酔鯨』?」ひいな「ブー」テツヤ「『南』?」ひいな「ブー」テツヤ「ヒント」ひいな「坂本龍馬に由来してます」テツヤ「俺、倫理・政経だったからなぁ(笑)」ひいな「歴史に弱いと(笑)。『船中八策』です!(ライター注:坂本龍馬が船中にて考えたという策に由来)」テツヤ「へぇ。初めて聞いたよ」ひいな「土佐らしいお酒で有名なの。じゃ、さっそく飲んでみようか」表も裏も色は一緒のようだけど……!?表から乾杯〜!裏バージョンのフルーティさにぞっこん。テツヤ「これもまた色は一緒だねぇ」ひいな「だねぇ」テツヤ「差し替えちゃったら、わかんなくなりそう(笑)」ひいな「じゃ、表から飲んでみようかな」テツヤ「まず、匂いかいでもいい?わ!ぜんぜん違うね。めっちゃフルーティ」ひいな「いい匂い」テツヤ「表はミネラル感というか、フレッシュ感というか」ひいな「うんうん」テツヤ「でも、裏の方が好みだな。このお酒は純米?」ひいな「そう。純米酒。お米にこだわった純米酒だよ」テツヤ「なるほどね。どっちから飲む?」ひいな「表からがいい気がするね」テツヤ「表からいこう」ひいな&テツヤ「乾杯〜!」テツヤ「これ、水ですか?」ひいな「うん、水だね(笑)」テツヤ「硬水みたいな。でも、なんかうま味も感じるな。おいしい」ひいな「実はね、この蔵のあるところの水は軟水なの」テツヤ「え、軟水なの?へぇ。これが軟水のお酒とは思えない」ひいな「日本一きれいな水っていわれている仁淀川水系の湧き水を使ってるんだって」テツヤ「高知って、確かに四万十川とか水が豊富な場所だもんな」ひいな「『神々に捧げるための酒造りに、この清水を用いた』と記されてるらしいよ。『司牡丹』の故郷の酒場町は、仁淀川の中流域に位置していて、周囲は山に囲まれた盆地なんだって。湧き水も豊富で、古くから酒造りの町として栄えていたとのこと」テツヤ「良さそうなところだねぇ。聞いてるだけで景色が目に浮かぶよ」ひいな「いいよねぇ」テツヤ「きれいな川を想像しながら、今度は裏を飲もう」ひいな「あぁ、ジューシーさが違うね」テツヤ「しぼりたて感あるね。俺、『司牡丹』は表も裏も好きだな」ひいな「おいしいよね。このしぼりたての裏ラベルに合わせたもの、持ってくるね!」テツヤ「楽しみ〜」「司牡丹 純米しぼりたて 生酒 裏バージョン」に合わせるのは、いちごたっぷり贅沢な「いちごムース」テツヤ「お!? 冷蔵庫から出てきたぞ?」ひいな「いちごのムースです!」テツヤ「おぉ、いちごかぁ!おいしそう」ひいな「この上にお酒をたらしてもいいかもね」テツヤ「うわ、それやりたい!」ひいな「一個やってみよっか」テツヤ「いただきます!あぁ、これはね、裏とめちゃ合うよ」ひいな「合う?」テツヤ「合う合う。これはすごい合う。お酒入れたら一気に大人のデザートに変身した」ひいな「おいしい〜!」テツヤ「表とはどうだろう?」テツヤ「表と合わせると、すごく苦みが勝っちゃうね」ひいな「うわ、びっくりするほど苦いね」テツヤ「いちごの酸味と、裏の酸味がマッチしたのかな」ひいな「ムースのコクを流してくれる感じもいいよね」テツヤ「裏との相性がぴったりだね」季節ごとに、その時にしか味わえないおいしさがあるのが、日本酒らしさ。テツヤ「日本酒ってさ、2ヶ月くらいでできるんだっけ?」ひいな「うん。早かったらそれくらいかな」テツヤ「お米からつくるとなると1年がかりだもんね。俺たちの仕事と違って、1年通してやっと結果が出るんだよ」ひいな「すごい仕事だよね」テツヤ「すごくクリエイティブな仕事だよね。農業とか酒造りって。想像力が必要な仕事だと思うな」ひいな「うん。そうだよね。あと、結果がすぐに出ない怖さもあるし」テツヤ「それには、経験とセンスと想像力が必要じゃない?この麹を使って、この酵母を使って、というかけ合わせを脳内で考えて、実際に様子見ながらやるわけでしょう?」ひいな「うん。お米洗う時間とかでも変わってくるくらいだから」テツヤ「含水率が違ってくるっていうこと?」ひいな「そう。それを計算してお米を洗って、浸水して」テツヤ「その日の湿度とかもあるわけでしょう?」ひいな「そうそう」テツヤ「すごいよな。そのさじ加減で味が変わっちゃうわけだから。でもさ、自分の中の芯がしっかりしてたら、そのブレがおもしろさになるのかな?」ひいな「今回は、こんな味になったってね」テツヤ「そう。全部はコントロールできないわけじゃない?そのコントロールできないことをおもしろく思える人がやってられるのかな。だから、『2019年が最高の出来だった!』みたいなことが起こるんだもんね」ひいな「そうだね」テツヤ「その味の違いがおもしろいわけだし。いつも安定した味を提供することも大事なのかもしれないけど。日本酒の良さってさ、熟成酒もいろいろ紹介してきたけど、季節ごとに、その時々の瞬間でおいしいっていうのがいいなと思ってて」ひいな「うんうん、今しか出会えない、いろんな味を楽しみたい」テツヤ「今を楽しみたいよね。ナチュールワインの造り手も、そのタイミングで造ったものを楽しむ感じがある」ひいな「そこが似てるよね」テツヤ「だからこそ、毎年違った味ができるんだもんね」ひいな「ね。次々と出るお酒を追っかけるのが大変だけど、それが喜びでもある」テツヤ「裏ラベルも、もっと追っかけたいね」【ひいなのつぶやき】“チャレンジタンク”ともいわれる「裏ラベル」。酒蔵渾身の1本を見つけたら味わってみるのも楽しいですよ!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
2021年05月02日