COCOON PRODUCTION 2022『ツダマンの世界』に出演する、吉田羊さんにお話を伺いました。吉田羊さんが松尾スズキ作品と出合ったのは、’12年の舞台『ふくすけ』だそう。エロもグロも毒も笑いも、そしてその奥に潜む切なさや美しさも、まとめてごった煮にしたような独特の世界観に、「最初は正直、よくわからなかった」と吐露する。「ただ、なんだかすごいものを観たという感覚だけはありました。しかも、観終わった後もずっと何かを問いかけられているような余韻があって。その後、さまざまな作品を拝見するうちに、弱さとか本音を必死に取り繕って生きる人間の滑稽さみたいなものをユーモアで包んで笑い飛ばして、寄り添ってくれるようなところが松尾作品の魅力なのかなと思うようになりました。ダメなところがあるのはみんな同じだよね、だから許そうよ、君も不完全でいいんだよって言ってもらえているような、そんな優しさを感じたんです」そこから「いつか自分もこの舞台に」と憧れていたそう。念願叶った舞台『ツダマンの世界』は、昭和初期から戦後の日本を舞台に、阿部サダヲさん演じる小説家・ツダマン(津田万治)を軸に描かれる愛憎劇。そこで吉田さんが演じるのは、ツダマンと再婚する戦争未亡人、数。「今回すごく演劇的な作品になっていると思います。舞台転換もですし、ひとりの俳優が2役、3役と演じ、ド派手な音楽の中で非現実的な展開が繰り広げられていて、まさに舞台でしか見られない世界。でもその一方で、これまで時間や場所などを限定しない世界で描いてきた松尾さんが初めてだとおっしゃるように、リアルな時代背景で描かれている作品でもあるんですね。命の危険と隣り合わせの戦時下にあっても愛憎にまみれ、嫉妬とプライドに身をやつす人間の愚かさみたいなものも笑いに変えて描いていくところに、松尾さんらしさも感じられます」じつは台本を手にするより前、あらすじを読んだ段階で、吉田さんは思わず泣いてしまったのだとか。「物語終盤、数さんがそれまで溜め込んでいた気持ちを吐き出すセリフがあるんですけれど、自分と重ねてしまい胸がキュッとしてしまったんです。数さんは、無学な自分に引け目を感じつつも小説家の妻としてふさわしくあろうとする女性なんですが、私自身も自己肯定感が低い中で自己研鑽の日々を送っているので、どこか身につまされたんだと思います。最初お話をいただいたときは、松尾さんの世界を果たして自分がどれくらい理解できるかと心配していましたが、もしかしたら自分だからこそできる数さんがあるかもしれない、と思えるようになりました」実際に松尾演出を受けてみて感じるのは、その繊細さだという。「最初に驚いたのは、アドリブのように見えていた部分が、ほとんど台本通りだったことでした。むしろ、受けの芝居を細やかに積み重ねていかれるという印象で。しかも、ちょっとした間や、言葉のニュアンスにこだわられていて、そこの些細な音の違いで、見え方や感じ方が一気に変わるんです。その演出を受けて、黙って隣に座っていた俳優さんが途端に生き生きして見えてくる瞬間があって、本当にすごいなと」かつて吉田さんが松尾さんの手がけたコント番組に出演した際には、台本に書かれた「あ゛」というセリフの発音に対し、すごく熱心に演技指導を受けた経験が。笑いを交えながらも、なんだか妙に心の深い部分に刺さる松尾作品の魅力は、そんな小さなこだわりが積み重なって生まれてくるものなのかもしれない。「世の中に、感情を理路整然と話せる人って少ないですよね。でも、しっちゃかめっちゃかになりながらも、自分なりの言葉を尽くして想いを必死に伝えようとする人の姿には、心を打たれるものがあります。松尾さんの作品には、何かそれに似た美しさを感じるんです」COCOON PRODUCTION 2022『ツダマンの世界』地味に小説を書き続け、中年にさしかかった頃、新作が文壇最高峰の賞の候補となった万治(阿部)は、幼馴染みの勧めにより戦争未亡人の数(吉田)と結婚する。豪商の息子・葉蔵(間宮)は弟子になりたいと押しかけてきて…。11月23日(水)~12月18日(日)渋谷・Bunkamura シアターコクーン作・演出/松尾スズキ出演/阿部サダヲ、間宮祥太朗、江口のりこ、村杉蝉之介、笠松はる、見上愛、町田水城、井上尚、青山祥子、中井千聖、八木光太郎、橋本隆佑、河井克夫、皆川猿時、吉田羊S席1万1000円A席9000円コクーンシート5500円Bunkamura TEL:03・3477・3244(10:00~18:00)京都公演あり。よしだ・よう福岡県出身。小劇場で演劇活動をスタートし、ドラマ『HERO』などで注目を集める。最近の主な出演作に、ドラマ『きれいのくに』、舞台『ザ・ウェルキン』など。出演映画『マイ・ブロークン・マリコ』が現在公開中。ニット¥63,800スカート¥85,800(共にケイタマルヤマ TEL:03・3406・1935)リング、右手人さし指¥165,000右手薬指¥99,000左手¥264,000ピアス¥319,000(以上グリンビジューInstagram:@gren_jewelry_official)※『anan』2022年11月30日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・石井あすかヘア&メイク・赤松絵利(ESPER)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年11月29日娘を愛せない母と、母の愛を求める娘の関係を描く映画『母性』。親子を演じた、戸田恵梨香さんと永野芽郁さんに、作品について伺いました。――現場の雰囲気はいかがでしたか?戸田恵梨香:仲のよくない母と娘役だから、役作りで話をしないようにするとかはお互い皆無で(笑)、ずっと話していましたね。永野芽郁:私はこの作品で初めて戸田さんとご一緒できる嬉しさで、撮影が始まったばかりの頃は「うわ~、戸田さんだ!」って感じでしたが(笑)、すごく気さくに話してくださったので、ずっと楽しく笑って過ごせました。戸田:本当にずっと笑ってたね。芽郁ちゃんは明るくてキラキラしてるなって思いながら見てた。――それぞれ、演じた役について教えてください。戸田:母のルミ子は、メイクや服装といった外見から、喋り方、考え方まですべて、ルミ子の母の世界で生きている人です。だからこそ、母がいなくなり、絶望の淵に落とされてしまいます。永野:娘の清佳は、お母さんに気に入られたくて頑張るんですが、お母さんの心ここにあらず…。虚無感を抱きながら生きていて、救われるポイントが全然ないんです。――同じ出来事でも母と娘の記憶が全く異なることを際立たせるために、それぞれの視点で2パターンのシーンがあります。演じ分けは大変だったのでは?戸田:演じ分ける難しさは感じませんでした。ただ、清佳を思い通りにできなかった時のルミ子は、彼女自身がどうなるかわかっていない。娘側の回想シーンで、そこはすごく考えながら演じました。清佳の子供時代の回想が多かったので、芽郁ちゃんと2パターン撮ったのは最後くらいだったよね?永野:そうですね。私は、お芝居しながら、清佳のように笑うことが全くない人生って寂しいなと思いながらずっと演じました。――食事シーンが多いですね。戸田:ルミ子にとっての実母と義母との関係性を差別化するうえで、食事シーンの持つ意味はとても大きかったと思います。美しい家庭を求めるルミ子にとっては、どれだけ家族が破綻していたとしても、形だけでも食卓を囲み続けることが大事だったんでしょうね。永野:私はずっとおばあちゃんを睨んでたので、演技中は全くごはんがおいしくなかったです(笑)。戸田:ずっと怒ってたもんね。私はおいしくいただいてたけど(笑)。永野:カットがかかってから、一緒にバクバク食べましたよね(笑)。そしたら、すごくおいしかったです!――anan世代にとって、母性とは何かを問う本作には、考えさせられることがたくさんあります。戸田:母になること、人の命を預かることはどういうことなのか、問う作品ですよね。子供が欲しいかどうかは考えても、自分が母性を持ち合わせているのか、子供を愛せるのかまでは、あまり考えないと思うんです。そんな中で、この作品が、母性について考えるきっかけになるかもしれません。永野:正直、私にはまだ難しくて、「母性って何かな」というところまで辿り着いていないです。戸田:なかなか辿り着かないよ。永野:なので、タイトルは『母性』だけど、「母性を理解しましょう」という話ではないですし、みなさんそれぞれ、この作品を受け止めてもらえたらと思います。戸田:そうだね。そのうえで、どんな選択であっても、自分自身が幸せになる道を選ぶべきだってことが伝わるといいな。とだ・えりか(写真右)1988年8月17日生まれ、兵庫県出身。『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』シリーズや、NHK連続テレビ小説『スカーレット』など話題作に多数出演。コート¥609,400パンプス¥138,600※参考色(共にロエベ/ロエベ ジャパン クライアントサービス TEL:03・6215・6116)タイツはスタイリスト私物ながの・めい(写真左)1999年9月24日生まれ、東京都出身。映画『そして、バトンは渡された』(’21年)で第45回日本アカデミー賞優秀主演女優賞などを受賞。来年、Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』が全世界配信。ジャケット¥836,000ワンピース¥440,000トップス¥117,700パンプス¥167,200※すべて予定価格(以上プラダ/プラダ クライアントサービス TEL:0120・45・1913)『母性』湊かなえの大ヒットミステリー小説を映画化。女子高生が遺体で発見された事件を機に、娘を愛せない母・ルミ子と母に愛されたい娘・清佳がそれぞれの記憶を辿っていく。食い違う二人の告白を通じて衝撃の真相が明らかになっていく。11月23日全国公開。※『anan』2022年11月23日号より。写真・宮﨑健太郎スタイリスト・大浜瑛里那(戸田さん)鴇田晋哉(永野さん)ヘア&メイク・松井里加(A.K.A./戸田さん)吉田美幸(Bside/永野さん)インタビュー、文・小泉咲子(by anan編集部)
2022年11月22日モデル、そして俳優として表現の幅を拡げる林田岬優さん。“心が動く”ことを大切にしている彼女が考える、恋やときめきの意味。「年齢や性別は関係なく、素直に心が喜ぶ恋愛が理想です」インタビューの冒頭から、自身の恋愛観をこう語ってくれた林田岬優さん。日頃から心をときめかせることも大事にしているそう。「モデルや俳優として何かを表現するためにも、心の鮮度が大切だなって。だから常にときめきを求めていますね」ただ、その対象は必ずしも人である必要はないと林田さんは言う。「映画に恋をするとかでも全然いいと思うんです。大事なのは、心が動くかどうか。私は恋愛をしていない時でも、絵を描いたり、チェロやピアノを弾いたり、何かしら心がときめくことをしています。5年くらい前にパリ旅行から帰ってきた時、いつもお世話になっている方から、“パリで恋でもしてきた?”って言われたことがあったんです。全然そんなことはなかったのですが(笑)、美術館を巡って芸術に触れたり、初めてのパリの街並みにうっとりしたり、そのときめきが伝わったのかなって。やっぱり何かを感じることって大事ですよね」たとえ傷ついたとしても、何もないよりはずっといい。そんなふうに、心をときめかせる手段の一つとして、恋愛はある。「恋愛をしていると足取りが軽くなるし、いつもの景色が違って見えるくらい単純にハッピー(笑)。それに、些細なことでも楽しく感じられるようになりませんか?」とはいえ、恋愛は楽しいことばかりとは限らない。たとえそれで傷ついたとしても、「何もないよりはずっといい」と断言。「何もない淡々とした日々のほうが、何の感動も生まれなくてつらいなって。悲しいことがあるからこそ、小さな幸せにも喜びを感じられるように、恋愛で傷つくことがあったとしても、そのぶん嬉しいことがあった時の喜びは大きいし、恋愛以外のことにも幸せを感じられるようにもなる。だから恋をしていないよりは、していたほうがいいなって思うんですよね」それは、いわゆる“ダメ恋”も例外ではないそう。「私は無駄な恋愛なんて一つもないと思っているんです。ドラマ『真犯人フラグ』で演じた茉莉奈もそうですけど、相手に依存してしまう恋愛とか、頭では離れたほうがいいってわかっている恋愛でも、そこには確かに“好き”という気持ちがあるわけだから、それはそれで幸せなことだなって。過去の恋を無駄と思ってしまうと、その時の自分まで否定することになるので、どんな恋でも無駄なんて思ってほしくない。恋する気持ちは理屈ではないし、そこから得るものも必ずあるから、遠回りでもなんでもないってことは、みなさんにも伝えたいです(笑)」失恋を経験したからこそ、大切なものを再確認できた。林田さん自身、過去の失恋の経験から得たものは大きかったそう。「10代の時に大失恋をしたんです。今でも妹に“あの時お姉ちゃん、めっちゃ泣いてたよね”って言われるほど(笑)。でもその経験をしたからこそ、次に好きになる人のことはもっと大切にしようって思えたし、その時に仕事関係者の方の明るさに救われた部分もあったから、仕事も大事にしようって思えたり。今あるものの大切さを再確認できた出来事でもあったと思います。あと、失って初めて、自分が相手に求めすぎていたんだなとか、好きになれたことだけでも幸せだったんだなとか、とても大事なことを忘れていたことにも気づかされました」ちなみに、生き方も多様化している今、結婚願望はありますか?「いつかはしてみたいと思っています。でも、結婚をしなくてもきっと楽しい人生だろうなと思うので、絶対ではありません。ただ、恋する気持ちはずっと忘れずに持っていたいなと思いますね」はやしだ・みゆ1993年11月23日生まれ、愛知県出身。モデルとしてさまざまな雑誌で活躍する他、近年は俳優としてドラマ『真犯人フラグ』や『新・信長公記』などに出演し、注目を集める。※『anan』2022年11月2日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)ヘア&メイク・川村友子取材、文・菅野綾子(by anan編集部)
2022年10月27日さまざまなジャンルの作品が動画配信サービスで楽しめる時代。密かに「Vシネ」が女子たちの人気を集めています!シリーズ累計60作品を超え、Vシネ作品のなかで圧倒的人気を誇る『日本統一』の主人公二人(プライベートでも大親友!)、本宮泰風(as氷室蓮司)さんと、山口祥行(as田村悠人)さんがanan初登場。ハマる人続々の沼深い魅力に迫ります。実はお二人、俳優になる前の15~16歳の頃に出会い、以来公私ともに仲良くしてきた、大親友。いわゆる“怖い人たち”が登場するドラマの取材にもかかわらず、笑いが絶えない&ほのぼのムードな時間と相成りました。――お二人は、もともとお友達でいらしたそうですね。本宮泰風:はい。この『日本統一』は、僕が演じる氷室蓮司と山口さんが演じる田村悠人の、任侠二人のバディものなわけですが、僕ら本当に知り合って長いので、お互いのことをこんなに理解し合っている二人もいないんじゃないかって感じなんです。作品にも、その空気感は出ているんじゃないですかね。――9年前、1作目で共演することが決まったときは…。山口祥行:嬉しかったですよ。本宮:僕も、こんなに一緒にいて楽な人間はいないので、そういう相手と作品を作れるのは、嬉しかったです。山口:葬式のときには、泰風に喪主になってくれって言ってるの。本宮:そう、いつも言うよね(笑)。――お互いの好きなところは?山口:すごく頼りになるんです。僕らの周りの人間は全員、泰風を頼りにしてます。キャプテンですから、我らの。――キャプテンとは?本宮:野球チームをやってまして、そのキャプテンなんです(笑)。山口:あと、アジアスターに匹敵するイケメンですし背も高いし…。本宮:そういうのやめて(笑)。えーと山口さんの好きなところはいっぱいあるんですが…、明るいところかな。人並み外れた明るさの持ち主です。『日本統一』の現場の、ビタミンCって呼ばれてます。山口:そういうのやめて!!(笑)――Vシネマとして始まったこの作品ですが、9年目で初の民放地上波の放送です。いかがですか?山口:真面目な話をすると、最初はこんなに続くと思ってなかったんですよ。5本から10本くらい作れれば良いねって感じで。本宮:Vシネマって、2~3本撮ってみて運が良ければ4~5本、上手くいけば10本みたいな世界なんです。でもありがたいことに人気が続いて制作が継続になり。でも、10本目を過ぎた頃に「ぼちぼち終わるか」的なムードになったんですよね。ただ、なんかやめちゃいけない気がして。僕がメーカーさんに直談判をし、続けられることになったんです。――なぜ、「やめちゃいけない」と思われたんでしょうか…?本宮:僕もよくわかんないんですけど、勘?霊的な勘(笑)。山口:泰風の霊的な勘って、仲間内ですごく信用されていて。泰風が「行こう」と言ったら、全員1ミリも疑わず、ついていきますよ。本宮:根拠ないのにね。山口:だって、キャプテンだから。そりゃついていくでしょ。――あの、お二人は本当に仲良しなんですね。二人:(しばし見つめ合い…)山口:50歳になって、「仲良し」って、ねえ…。本宮:恥ずかしいね…。――弊誌の読者は20~30代の女性がメインです。どんなところを見てもらいたいですか?本宮:山口さんが演じる田村でしょう。田村は女性の心をくすぐるキャラクターなんで。山口:マジかよ(笑)。本宮:いや、ホントです。僕、実は女性ファンを獲得するために、いわゆる“萌え”みたいなものをものすごく勉強したんです。なので、心をくすぐられると思います。山口:泰風演じる氷室は?本宮:氷室?それに比べたらつまんない男ですよ…。山口:(爆笑)本宮:でも、そんな田村と氷室が一緒にいるバディ感は、たぶん好きっていう人、多いと思うよ。――確かに、男の人がキャッキャしている様子、好きな人多いです。本宮:そう、それも実は勉強したんです。なので、みなさんが僕ら二人に萌えを感じてくれたら、してやったりです。ぜひ僕らをそういう目で見てください(笑)。『日本統一 北海道編』今作の舞台は北海道。根室の食品会社支社長が暗殺され、調査依頼が氷室率いる侠和会に。事件の裏には薬物の密輸、ロシアとの関係が…。北海道文化放送にて放送中。また日本映画専門チャンネルでも配信予定。詳細は公式サイトで。もとみや・やすかぜ(一枚目写真左)1972年2月7日生まれ、東京都出身。俳優。ドラマ、映画に加え、Vシネマでも活躍。ネオVシネ四天王の異名も持つ。総合格闘チーム「本宮塾」塾長でもあり、RIZINではセコンドを務めることも。やまぐち・よしゆき(一枚目写真右)1971年8月6日生まれ、東京都出身。俳優。ドラマや映画など、幅広いジャンルの作品に出演。本宮さん同様、ネオVシネ四天王の一人。現在ドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)に出演中。※『anan』2022年10月22日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・荒川小百合猿田恵里ヘア&メイク・坂口佳那恵(by anan編集部)
2022年10月23日青春漫画の金字塔として知られる『耳をすませば』。10年後を描いた初の実写映画で主演を務める清野菜名さんと松坂桃李さんにとっての“感動ポイント”とは?――お二人は様々な映画やドラマに携わってきたかと思いますが、作品づくりの中で一番感動する瞬間はいつですか?清野菜名:エンドロールで自分の名前が出てくる瞬間ですね。あと、舞台のカーテンコールでたくさんの拍手をいただけた時は「頑張ってよかった!」っていう達成感があります。松坂桃李:僕はオールアップの時ですね。何か月もの時間を一緒に過ごしたこのメンバーはもう揃わないのかと思うと寂しい気持ちもあるんですが、やっぱり達成感がすごくある。特にスタッフの充実した顔を見ると「やってよかったな」って思います。――感動を届けるために意識していることはありますか?清野:「想いが伝わるといいな」という気持ちで常に100%の力を出すようにしています。少しでも手を抜くと、作品の空気感に出てしまって届かないものがあるんじゃないかって思うんですよね。松坂:僕らの仕事は何をもって感動を伝えられるかが明確にあるわけではないので、台本を読んだ時に感じた感情をそのまま作品に投影して、観る人にも同じように感じてもらえるような全力の出し方を心がけています。そのシーンをパイプ代わりにするというか。清野:すごい!勉強になります。松坂:(笑)。いやいやいや。清野:桃李さんの目を見ていると、その時どきの心情がいつもまっすぐに伝わってくるんです。『耳をすませば』では、それによって引き出してもらえたところがすごくありました。雫と聖司が一緒に音楽を奏でるシーンや告白のシーンは特にそうでしたね。今思い出しても感動します。松坂:ありがとう。現場に入る前に監督に大人の雫ちゃん(清野)と中学生の雫ちゃん(安原琉那)が向き合って歌を歌ってる動画を見せてもらって、「うわ、雫だ!」って思って感動して、「早く会いたい」と思ったんです。実際清野さんが目の前に現れた時も同じような感動がありました。――長く愛されている作品の実写を演じられることに対するプレッシャーはありましたか?松坂:ありますよね(笑)。頻繁に放送されていますし。清野:年代問わず多くの人が通った作品。その実写を演じるというのはドキドキでした(笑)。今までで一番原作とアニメを研究して、撮影に臨んだかもしれないです。松坂:散々観てきたはずなのにね。清野:なんか心配になっちゃって。松坂:それはあったね。しかも原作から10年後という設定のオリジナル版だから、自分が観てきたものと新しい要素のすり合わせもちゃんとやらなきゃいけない。委ねられている部分が大きくていろいろと緊張しました。――『耳をすませば』というタイトルには「耳をすませば自分の心の声が聞こえる」という意味合いがあるということが劇中で描かれていました。普段、大切なものをキャッチするために意識していることはありますか?清野:流行りとかには全然ついていけてなくて…。私は自然が好きなので自然の音は聞くようにしています。気温によって結晶の形が変わるんですよ。それを眺めたりしています。松坂:僕も時代には多分ついていけてないと思うんですけど(笑)、『マツコの知らない世界』が大好きで、心置きなく楽しむために見る前に家のことやいろんなことを全部終わらせたり、ゲストの方が話すマニアックなトピックをその都度検索しながら見て、思いっきり楽しんでますね。まつざか・とおり1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年、俳優デビュー。’20年、『新聞記者』で第43回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞受賞。待機作に映画『ラーゲリより愛を込めて』(12月9日公開)など。スーツ 参考商品(BRIONI/ブリオーニ クライアントサービス TEL:0120・200・185)その他はスタイリスト私物せいの・なな1994年10月14日生まれ、愛知県出身。2007年デビュー。’15年、『東京無国籍少女』で映画初主演。代表作に『今日から俺は!!』『キングダム2 遥かなる大地へ』などがある。トップス¥30,800ボトムス¥35,200(共にHOUGA TEL:03・4291・7188)キューブイヤリング¥8,800クリップイヤーカフ¥28,600(共にCHIKAKO YAJIMA TEL:03・6407・8787)シューズはスタイリスト私物『耳をすませば』読書好きの中学生・月島雫は夢に向かって生きる天沢聖司に想いを寄せる。聖司がイタリアに渡ってから10年後の物語も描く。監督・脚本/平川雄一朗出演/清野菜名、松坂桃李、山田裕貴、内田理央ほか全国公開中。※『anan』2022年10月26日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・下山さつき(清野さん)丸山 晃(松坂さん)ヘア&メイク・光野ひとみ(清野さん)Emiy(松坂さん)インタビュー、文・小松香里(by anan編集部)
2022年10月22日子ども時代はさまざまことに疑問を持っているものの、大人になると、ついボーっといろんなことを見過ごしてしまいがち。そんなときに喝を入れてくれる存在といえば、幅広い世代から愛されている“永遠の5歳児”チコちゃんです。今回は、舞台を映画化した『チコちゃんに叱られる!on STAGE~そのとき歴史はチコっと動いた!~』で、大活躍を見せるこちらの方にお話を聞いてきました。チコちゃん【映画、ときどき私】 vol. 524素朴なギモンに鋭く切り込み、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」でおなじみのチコちゃん。今年3月に上演された『チコちゃんに叱られる!』のオリジナル舞台では、ねじ曲がった日本の歴史を戻すためにタイムスリップし、歴史上の偉人たちと楽しいやりとりを繰り広げています。そこで、歴史を学ぶ楽しさや憧れている偉人、そしてチコちゃんが思わず叱りたくなる人について、教えてもらいました。―初舞台にして最年少座長を務めましたが、苦労したことはありましたか?チコちゃん「最年少座長」なんて言っていただいていますけど、みなさんが作ってくれたものの上にちょこんと座らせてもらっただけ。あくまでも、全員で力を合わせてひとつのものを作っていくなかの一員という感覚です。稽古中はみんなとも仲良くなったので、「あそこの何がおいしい」とか「大阪公演のときはあれを食べましょう」とかそんなことばっかりをしゃべりながらやっていました。―今回は、いろんな時代にタイムスリップしていましたが、チコちゃんが行ってみたい時代はいつですか?チコちゃんチコは平安時代がいいかなぁ。女流文学が栄え、いろんな遊びもあった平和な時代なので、そのなかでキレイな着物を身に着けて街を歩いてみたいです。豊臣秀吉から、人のまとめ方や動かし方を学んでみたい―さまざまな歴史的偉人とも会いましたが、印象に残っている人物を挙げるとすれば?チコちゃんそれはやっぱり、織田信長です。チコは彼が16歳のときと殿さまになってからの両方に会うことができました。子どもの頃は、やる気がない少年でしたが、そのときに未来を見据えたような面白いことを言っていたので、そのあたりも印象的だったわ。―もし、チコちゃんが憧れている偉人がいれば、教えてください。チコちゃんチコが一番好きで、会ってみたかったのは豊臣秀吉。いろんなことを学んだ人なので、私も秀吉さんの下で勉強してみたかったわ。―どんなことを教えてほしかった?チコちゃん信長さんや(徳川)家康さんがいた群雄割拠の時代に、百姓の出身で将軍にまでなった人ですからね。人のまとめ方や動かし方というものを学ばれたのではないかなと思うので、そういうことをチコも経験してみたかったです。争いのない喜びを感じられる時代になってほしい―また、劇中では、鳴かないホトトギスのことを詠んだ有名な句が登場し、それによってそれぞれの偉人たちのキャラクターがよくわかりますが、チコちゃんなら「鳴かぬなら…」のあとどうしますか?チコちゃんちょっと秀吉さんと似てるかもしれないけど、「鳴かぬなら 一緒に鳴こう」とか「鳴き方を思い出させてあげよう」とかそんな感じかな。あとは「一緒にチャーハン食べよう ホトトギス」とか、お出かけに誘うのもいいかもしれないわね!―寄り添ってくれる系ですね(笑)。本作ではチコちゃんと一緒にいろんな歴史の裏側を学ぶことができましたが、どうして歴史を勉強することは必要だと思いますか?チコちゃんどの時代も、過去があっていまがあり、そして未来があるので、歴史というのはすごく大切なことよね。これは一人一人の人生においても同じことが言えますが、一見無駄に思えるようなことでも、無駄なことなんてありませんから。後悔をしないためにも、歴史を知ることは大事だと思うわ。―今回はチコちゃんのおかげで、ねじ曲がった歴史が元に戻りましたが、チコちゃんが作りたい歴史はありますか?チコちゃんそんな大それたことは言えないんですけど、いつも番組ではみなさんが考えたこともないようなことから考える必要がないようなことまで、ちょっとした知識としてお話しているので、興味を持つことの大切さを伝えていけたらと。それが明るくて平和な未来に繋がっていったらいいな。争いがなくて、喜びをたくさん感じられる時代になったらいいなと思ってます。―ちなみに、チコちゃんが喜びを感じる瞬間といえば?チコちゃん料理が完成して、一口目を食べる直前がチコは一番幸せかな。口のなかにアーンとするちょっと前くらいがピークですね(笑)。というのも、それが初めての経験を感じる瞬間であって、あとはどんどん経験になってしまうからです。最近は、礼儀がなくなっていると感じることが増えている―なるほど。では、いま新たに経験したいことがあれば、教えてください。チコちゃんまだやっていないことは、たくさんあるわ。これから寒くなるけど、スキーもスノボもしたことはないし、オーロラも見たことないし。そんなふうに、経験したことよりも、やっていないことや見ていないことのほうがたくさんあるので、思いついたことからひとつずつ順番に挑戦していきたいです。―本作では“気づき”の大切さも教えてくれますが、チコちゃんが最近得た気づきはありましたか?チコちゃんそれは日々ありますね。たとえば、チコは体がかさばるから歩いていても人とぶつかりそうになることが多いんだけど、そのときに譲り合いとか、ぶつかったときに「ごめんなさい」を言うとか、ちょっとしたことの大切さに気づかされています。自信を持って一歩を踏み出している人はカッコイイ―まさに、人の振り見て我が振り直せですね!ananwebの読者はアラサーのお姉さんたちですが、チコちゃんが素敵だなと思う女性はどんな人ですか?チコちゃんその世代の女性たちは、仕事や結婚などについていろんなことを考える時期だと思いますが、同時にたくさんの可能性がある年代でもありますよね。そこで実際に行動に移そうと一歩踏み出している人は輝いているし、「自分はこれでいいんだ!」と自信を持っている人はカッコイイなとチコは思います。―逆に、思わず叱ってしまいたくなる人は?チコちゃん思っているだけで何もしないとか、文句ばっかり言っている人はあまりよくないかなぁ。怖がってばかりで何も経験せずにやめてしまうのはダメじゃないかなと思っています。―もし、その怖さを乗り越えるためのアドバイスがあれば知りたいです。チコちゃん男女関係なく、人間はザラザラしていたり、ゴツゴツしていたりする人のほうが面白味があるので、完璧じゃなくても荒削りでいいんじゃないかしら。もちろん常識は必要ですけど、「こうならなきゃいけない」と考えすぎずに、もうちょっとだけ自由でいいんじゃないかなというのは伝えたいです。ボーっとする時間も取りつつ、夢を持つのは大切なこと―確かにそうですね。ところで、チコちゃんもボーっとしちゃうときはありますか?チコちゃん本当は、チコもボーっとしたいタイプなのよ(笑)。でも、いろいろと気がついて調べたくなっちゃって、人に言いたくなっちゃうからそうしているだけで。結局のところ、好奇心が旺盛なのかもしれないわね。知らない世界のことのほうが圧倒的に多いですから、そこで知る喜びを味わえることが源になっているんだと思います。―それでは最後に、ananweb読者にボーっとせずに生きる秘訣を教えてください。チコちゃん意外かもしれませんが、チコは誰にでも「ボーっと生きてんじゃねーよ!」と言う柄でもないんです(笑)。なので、ボーっとする時間も取りつつ、みなさんらしくそのままでいいんじゃないかなと。でも、夢や理想の自分像を持つのは大切だと思うわ。少しでも何かに踏み出すことはいいことですから。ただ、「やろうと思っています」と言うだけではダメよ。思っているだけではゼロなので、とりあえずみなさん動いていきましょう!チコちゃんからananweb読者に特別動画メッセージ!インタビューを終えてみて……。撮影中はモデル顔負けのポーズをノリノリで披露し、現場でも「かわいい」の大合唱を巻き起こしたチコちゃん。取材中もいつものように身振り手振りを交えながら、面白いだけではなく、5歳児とは思えない説得力のある言葉もたくさんくれました。舞台でも、歌って踊って一生懸命のチコちゃんに注目です。笑いも学びもワクワクもてんこ盛り!普段の生活のなかでは忘れがちな過去の歴史を通して、いろんな気づきと学びを与えてくれる本作。ボーっとしてしまうときがあっても、知らないことがあっても、キレのいい喝を入れてくれるチコちゃんと一緒に、楽しく勉強してみては?写真・北尾渉(チコちゃん)取材、文・志村昌美ストーリーいつものように、大人たちに素朴なギモンを投げかけていたチコちゃんとキョエちゃん。ところがある日、突然タイムマシンが出現する。現れたのは、“タイムパトロール”と名乗るダイゴとミライ。2人は、「チコちゃん、助けて!歴史を元に戻してほしいんだ」と訴える。なぜなら、過去の偉人たちがボーっとしてしまい、歴史がねじ曲がってきていると言うのだ。すると、キョエちゃんの様子にも異変が起きてしまう。歴史を元に戻すため、チコちゃんたちは過去に遡るタイムスリップへと向かうことに……。チコっと覗ける予告編はこちら!作品情報『チコちゃんに叱られる!on STAGE~そのとき歴史はチコっと動いた!~』10月7日(金)よりユナイテッド・シネマ他、全国ロードショー配給:ユナイテッド・シネマ️©NHK©「チコちゃんに叱られる!on STAGE」製作委員会写真・北尾渉(チコちゃん)
2022年10月06日この秋も、幅広いジャンルの話題作が国内外からそろっていますが、そんななかアメリカで大ヒットした注目のアニメ『バッドガイズ』がいよいよ日本にも上陸。そこで、日本語吹替版で主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。尾上松也さん【映画、ときどき私】 vol. 523劇中で松也さんが演じているのは、華麗なテクニックで財宝を奪う怪盗集団<バッドガイズ>のカリスマ的リーダーであるウルフ。クールに見えて、ほめられるとお茶目な一面が顔を出してしまう愛すべき主人公です。今回は、本作に共感した点や払拭したい自身のイメージ、そしていいリーダーになるために心がけていることなどについて、語っていただきました。―今回のご自身の役どころについては、どのような印象を受けましたか?松也さんウルフはとてもまっすぐで、物事や仲間に対しても熱い思いがある、愛情深いキャラクターだと感じました。バッドガイズのリーダーとしていままで悪いことばかりしてきましたが、自分のなかにある善の心に目覚めていくところが見どころだと思います。―以前、声優を務めた際、声優と歌舞伎では演じ方に似ているところもあると感じたそうですが、今回はいかがでしたか?松也さん歌舞伎というよりは、舞台全般の技術や表現方法が僕のなかでは活かされているような気がしています。とにかく、あまり小さくなりすぎないように、というのは意識しました。ほめられたり、感謝されたりすると気持ちがいい―ちなみに、松也さんとウルフとの共通点は、ほめられて伸びるタイプだとか。松也さんそうですね、やはりほめられたほうがうれしいですから。いいことをして感謝されたり、喜ばれたりすると、気持ちがいいものですよね。おそらくそれば僕だけではなくて、みなさんも同じだと思いますが、本作ではそういう感情をウルフが体現してくれています。―最近ほめられてうれしかったことはありましたか?松也さんいやー、最近は全然ほめられてないので、ほめられたいですね!チヤホヤしてほしいです(笑)。―とはいえ、やはりお客さんからの反応は喜びなのでは?松也さんもちろんそうですね。特に、舞台ですとその場でダイレクトに伝わってきますので、舞台がやみつきになるのは、そういうところだと思います。最近は映像のお仕事が続いていましたが、根本は舞台人ですので、そういった刺激はつねに求めています。ですが、何をしても万人に受けるというのは難しいことですので、批判する方もいれば、絶賛する方もいるのが当たり前の世界。いい声だけをキャッチしていればいいですけど、よくない声を聞くとやっぱり落ち込むことはありますね。いままでに、いろいろな方から勘違いされることもあった―そんなときは、どのように対処しているのか教えてください。松也さんと言いつつも、実はあまりほめられるのもよくないかなと思っている部分もあるんです。特に、舞台のときに「あのセリフがよかったよね」と言われるとうれしいですけど、その翌日に同じシーンを演じるときに意識してしまいますから。「ここでがんばらなきゃ!」みたいな。そうするとうまく表現ができなかったりするので、いまは「ほめていただきたいけど、千秋楽が終わってから聞かせてほしい」という感じです(笑)。―わかる気がします。また、バッドガイズたちといえば、本当はそうではないのに、外見や環境だけで判断されてしまう部分もありますが、ご自身にもそういった経験はありますか?松也さんバッドガイズのみんなは周りから決めつけられて生きてきたけれど、蓋を開けてみたら実は真逆の精神を持っていたというのがこの作品の肝ですが、僕にも似たようなことはありました。僕の職業は歌舞伎が主軸ですので、特殊といえば特殊な環境です。歌舞伎界自体が勘違いされてしまうところがありますが、僕もいままでにいろいろな方から勘違いされてきた経験がありました。リーダーとしての心がけは、みんなを楽しませること―たとえば、どんなことがあったのでしょうか。松也さんコンビニに行った話をすると、「コンビニ行くの!?」と言われたことも。「行くに決まってるでしょ!」と(笑)。スーパーで買い物もしますし、もちろん洗濯も自分でしているのですが、不思議なほどに高尚なイメージが付いてしまっているのは苦手ですね。―おそらくそれは、松也さんが20歳で一門を率いる立場となったことも大きかったのではないかなと。主演として周りを引っ張っていく役割を果たすことも多いと思いますが、リーダーとして意識していることはありますか?松也さん僕の場合、舞台でもドラマでも自分が中心としてお仕事をさせていただくときに心がけているのは、作品の内容がシリアスでもコメディでも全員が楽しくお仕事をできること。それを一番にしています。そのうえで全員がチームであるという感覚を持っていただけたらいいなと考えています。いまではそう言えるようになりましたが、昔はリーダーというのは先頭を切って走っていかなければいけないと思っていたんです。ですが、ただ突っ走っているだけですと周りもついていくのに必死になってしまい、混乱が起きてしまうことを学びました。それを経験してからは、最初だけ先に走って、あとはゆっくりと後ろに下がっていくイメージです(笑)。自分ひとりだったら、とっくに辞めていた―なるほど。それは、過去の経験があったからこそ得た教訓ですね。松也さんそうですね、実際に何度も失敗したことがありました。特に、初めは自分のやりたいことを貫いて突っ走っていけばみんなついてくると思っていましたし、「それが男だ!」みたいなときもありました(笑)。ですが、その考えですと「報告」「連絡」「相談」のほうれんそうが成り立たないですし、何をしたいのかが伝わらず、結局は独りよがりになってしまう。もちろん、それでうまく引っ張っていける方もいるとは思いますが、僕はそういうタイプはないということに気がつきました。―それこそ、昔は何度も辞めたいと思ったこともあったそうですが、それを続けてこられたのは何が支えになっていたのでしょうか。松也さん僕は自分のなかに「こうありたい」とか「こういうことがしたい」といった目標がたくさんありましたので、まずはそれを達成したいという思いがありました。あとは、歌舞伎の自主公演で客席があまり埋まっていなかった時期でも、少なからず見に来てくださるお客さまがいて、それを支えてくれるスタッフがいましたので、それは大きかったかなと。心が折れそうになっていたときは、周りの方たちのためにいろいろなことを自分に課すようにしていました。もし自分ひとりのことでしたら、とっくに終わっていた気がします。あとは、自分が成功したときのことをつねに思い描いて、ポジティブなほうに何とか自分を持っていく。毎回その繰り返しでしたね。つらいときは、好きなことをして周りに甘えてもいい―そんななかで、大切なのは息抜きすること。松也さんといえば、キャンドルやスニーカーをはじめ、いろんな趣味をお持ちですが、いまハマっていることはありますか?松也さん最近は、ボードゲームと古着です。ボードゲームは前から興味がありましたので、いくつかは持っていましたが、どんどん買い集めるようになったのは、ボードゲームに詳しい宮下草薙の宮下くんと仲良くなってから。定期的にボードゲーム会も開いているほどです。古着も前から気になっていましたので、あるときロケで古着屋さんに行ったのですが、そこですっかりハマってしまいまして、収録の翌日にもプライベートで同じお店に行きました。もともとハマりやすい性格というか、満足するまで揃えたくなってしまう性分なんです。終わりが見えるものならいいのですが、ボードゲームも古着もキャンドルもスニーカーも、永遠に出続けますから……。きりがないので、逆に終えてほしいくらいです(笑)。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いいたします。松也さん仕事や恋愛に悩んでいる方がいらしたら、明るい気分になれる映画ですので、ぜひ『バッドガイズ』を観ていただきたいです。そして、辛いときは自分が好きなことするのはもちろん、周りに甘えてしまってもいいのではないでしょうか。人にとってよくないことは心が暗くなることと思っておりますので、落ち込んでいると感じるときは、休むなり、多少の暴飲暴食するなり、翌日のお仕事のことなんて考えないで楽しみに行ったりしてください。ときには、そういう割り切り方をしてもいいと僕は思っています。インタビューを終えてみて……。遊び心があるやりとりで、終始楽しませてくださった松也さん。笑いが溢れるなかでも、歌舞伎の話になると真剣な眼差しを見せ、歌舞伎への愛の深さを感じました。本作では、ウルフの魅力を最大限に引き出している松也さんにしか出せない声色を存分に堪能してください。エキサイティングな怪盗ドリームチームに心も躍る!息もつかせない予想外の展開と華麗なワルっぷりで、観客のハートまで盗んでしまうバッドガイズたち。アニメーションならではの映像を楽しめるだけではなく、仲間の大切さから「善と悪とは何か?」まで、見どころ満載の必見作です。写真・北尾渉(尾上松也)取材、文・志村昌美ヘアメイク・岡田泰宜(PATIONN)スタイリスト・椎名宣光ジャケット¥49,800、パンツ¥30,800(ともにルームサーティーン)、シューズ¥49,500(ファクトタム/シアン PR 03-6662-5525)、その他スタイリスト私物ストーリー「ワルをやるなら思いきり」を合言葉に、数々の盗みを成功させてきた怪盗集団<バッドガイズ>。メンバーは、“天才的スリ”にしてカリスマ的リーダーのウルフをはじめ、“金庫破り”のスネーク、“変装の達人”シャーク、“肉体派”ピラニア、そして“天才ハッカーの毒舌ガール”タランチュラ。お尋ね者の5人組が次に狙うのは、伝説のお宝《黄金のイルカ》だった。ところが、あと一歩のところで大失敗し、逮捕されてしまう。そして、彼らは街の名士マーマレード教授の更生プログラムを受けることになる。ノったフリしてウラをかき、史上最大の犯罪をもくろんでいた彼らだったが、背後ではさらなる巨悪が密かに動き始めていた……。華麗でクールな予告編はこちら!作品情報『バッドガイズ』10月7日(金)TOHOシネマズ 日比谷他 全国ロードショー配給:東宝東和、ギャガ️© 2021 DREAMWORKS ANIMATION LLC. ALL RIGHTS RESERVED.写真・北尾渉(尾上松也)
2022年10月06日映画『あの娘は知らない』に出演する、福地桃子さんのインタビューをお届けします。「映画ができるまでの過程をここまで一緒に歩ませてもらったのは初めての経験。この先もきっとなかなかないことだと思うので、すごく貴重な時間でした」幼くして家族を失い、海辺の町でひっそり旅館を営む中島奈々と、亡くなった恋人の足跡を辿り、その町に行き着いた藤井俊太郎。そんな喪失感を抱えたまま生きる2人の出会いと再生を描いた映画『あの娘は知らない』。実はこの作品、井樫彩監督が主人公の奈々を演じる福地桃子さんに当て書きしたものだそう。「2019年の終わりに初めて監督とお会いして、そこからいろいろなお話をしました。監督は私の“自分の話をあまりしない”という部分から人物像を広げてくださったみたいなのですが、台本を読んでみると、どこが自分と重なっているのか、はじめはよくわからなかったんです」しかし、いざ現場に入ってみると、驚くほどスムーズに演じられたそう。「奈々とは境遇や設定など、キャラクター自体の共通点はほとんどないんです。でも、人によっては矛盾しているように見える部分でも、そこに何の疑問も湧かなかったり、相手へのアプローチの仕方や行動だったりで、理解できないところもなかった。自分の中ではものすごく自然に物語が進んでいきました」物語の中で、印象的だったというのが、岡山天音さん扮する俊太郎と温泉の壁越しに言葉を交わすシーン。「面と向かって言うわけではないけれど、抱えているものをさらけ出して、奈々との距離を縮めようとしてくれる場面なので、台本を読んだ時から、“なんか好きだな”と思っていたんです。実際に演じてみても、一番自然に会話ができたような気がしますし、それまで“ここはこうかな?”って、想像しすぎていた部分がなくなった瞬間でもありました」派手な演出はないからこそ、奈々や俊太郎の心情が色濃く映し出される本作。そんな繊細な役を生きる上で、意識したこととは。「私も最初は、すごくデリケートな部分をどう表現したらいいんだろうと考えていましたが、奈々にとってはそれが日常で、抱えているものですら、すでに根付いてしまっているものなんだと気がついて。だから特別なことは何もない、ただ普通に日々を生きるということを、一番大事に演じていたような気がします」そんな何気ない日常も、俊太郎との出会いによって変化していく。「俊太郎さんもまた、奈々との出会いによっていろんな影響が出てきます。誰かと出会うことによって、自分の知らない自分や感情に出合えるのは、とても素敵なことですし、自分が広がるきっかけや温もりも、日常のどこに落ちているかわからない。だから、人と関わることをやめないでほしいなって。それが私自身、この映画から受け取ったものでもあるし、誰かの心にも届けばいいなと思います」『あの娘は知らない』恋人が亡くなる直前に宿泊していた旅館を訪ね、足跡を辿る俊太郎(岡山)。そんな俊太郎を見た旅館の主・奈々(福地)は案内役を買って出て、彼と行動を共にするように…。出演/福地桃子、岡山天音ほか9月23日公開。©LesPros entertainmentふくち・ももこ1997年10月26日生まれ、東京都出身。現在放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(毎週日曜20:00~)、NTV系『消しゴムをくれた女子を好きになった。』(毎週月曜24:59~)に出演中。ブラウス¥40,700パンツ¥25,300(共にアー・ペー・セー/アー・ペー・セー カスタマーサービス TEL:0120・500・990)ピアス¥22,000(ノジェス TEL:0800・500・5000)インナーはスタイリスト私物※『anan』2022年9月28日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・武久真理江ヘア&メイク・曳田萌恵インタビュー、文・菅野綾子(by anan編集部)
2022年09月26日これからますます秋が深まるなか、欠かせないのが芸術の秋。そんなときにオススメの1本は、物語の詳細を伏せて公開された謎多き注目作『彼女のいない部屋』です。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。マチュー・アマルリック監督【映画、ときどき私】 vol. 521フランスの名だたる映画監督から愛されるだけでなく、『007 慰めの報酬』などの話題作にも出演し、国際的な俳優としても知られているマチューさん。近年は監督としての評価も高まっていますが、家族を残して家出をした女性を描いた本作は、「彼の最高傑作ではないか」とも言われているほどの意欲作です。今回は、監督としてのこだわりや俳優との信頼関係の築き方、そして日本への熱い思いについて語っていただきました。―本作の原作を読まれた際、赤ん坊のように泣きじゃくってしまったそうですが、何がそこまで響いたのでしょうか。マチューさん実は、読んでいる最中は泣いていませんでした。というのも、映画では構成を変えましたが、この戯曲の構成は最後の最後にどんでん返しがあるので、それまでは家出をした一人の女性が置いてきた夫や子どもたちのことを想像している話だと思っていたからです。そんななか、“ある理由”があったことをラストで知ったときに、涙が一気に溢れてきました。ただ、その涙は彼女の苦痛が伝わってきたからではなく、彼女の持つ想像力が素晴らしいと感じたから。僕たちも苦しい人生を生きていくために、何かを想像して乗り越えることはありますが、それを彼女が見事にやってみせていたので、その姿に感動しました。仕事というのは、簡単に見えてしまわないほうがいい―私は本作を2回拝見しましたが、1度目は主人公・クラリスの感情を追体験するような感覚。2度目はさまざまな時間と幻想とを行ったり来たりするなかで、それぞれのピースがいかに緻密に組み込まれているかを知り、非常に驚かされました。本作を構成するうえで、どのようなことを意識されていましたか?マチューさんまさにいま言ってもらったように、最初に観るときは感情移入してしまってどういうふうに構成されているのか、観客には具体的なものがわからないようにしています。なぜなら、シナリオや編集でどれだけ緻密に構成していても、それが簡単にはわからないような霧がかっている作品を僕が目指しているからです。たとえば、パッと見は模様がないと思った服でも、よく見ると実は模様がある場合ってありますよね?仕事に関しても、そんな感じであまり簡単に見えてしまわないほうがいいと僕は思っています。―まさに本作で体現されていることですね。マチューさん例として挙げるなら、同じ意味合いを持つのは部屋に飾られているロバート・ベクトルのハイパー・リアリズムの絵。最初は写真のように見えるので、簡単に撮られたもののように思われますが、それが絵であるとわかった瞬間に画家の緻密な仕事ぶりに気づかされる。観客のみなさんにはそんなふうにこの映画を観ていただきたいので、最初から細部に注意を払うのではなく、セリフや音楽から頭のなかで何かを連想するような感覚で捉えていただけたらいいなと思っています。―そういった計算がされていたからこそ、1度目と2度目ではまったく異なる映画体験と感動が味わえました。マチューさん初めはパラレルワールドのような何か違う現実を見せられているのではないか、と感じるかもしれません。でも、その感覚はまさに日本のみなさんが長けているところではないでしょうか。それに比べて、僕たち欧米人は「そんなパラレルワールドなんてないよ!」と合理的な考え方をしがちですからね。関係を築くうえで大事なのは、与えること―ananwebでは前作『バルバラセーヌの黒いバラ』で主演したジャンヌ・バリバールさんにも取材しており、監督であるマチューさんの存在感の大きさを感じていました。本作でも俳優とマチューさんとの間に絶大な信頼があることが伝わってきましたが、俳優と関係を築くうえで、大事にしていることとは?マチューさんまず大事なのは、与えること。僕は仕事を通して相手に“贈り物”を自分から手渡しますが、やっぱりプレゼントをしないとプレゼントはもらえないんじゃないかなと。とはいえ、撮影期間は2か月くらいなので、短期間の恋愛関係みたいに、短いから良い関係でいられるというのもありますが(笑)。でも、恋愛においても相手に何もせず「あなたのことが大好きです」と言葉では言って、「じゃあ代わりに僕にマッサージしてよ」なんてそんなのはダメですよね。まあ、監督のなかにも「あなたは素晴らしい俳優だから大丈夫。僕はちょっと食事してくる」なんて言う人もけっこういるんですけど……。―つまり、ご自身が俳優という立場で監督と接する経験が、活かされている部分も大きいと。マチューさんそれは、すごく役に立っていると思います。だからこそ、俳優との間に言葉がなくても感じ合えるのかもしれません。僕が監督として意識しているのは、技術的にしっかりとコントロールされている安全な遊び場を提供しているような感覚。好きに遊ばせているように見えても、ちゃんと彼らを見守り、危ないところも細かく教えるようにしているので、俳優たちには僕らがきちんと準備をした場所のなかで自由に演じてもらっています。日本とは、相思相愛だと感じている―なるほど。ちなみに、日本にもマチューさんのファンは多いですが、日本に対してはどのような印象をお持ちでしょうか。マチューさんファンが多いって、本当に(笑)?とにかく言葉にするのがすごく難しいんですが、久しぶりに日本に来てみて、「どうして僕はこんなにエキサイトしているんだろうか」と自分でも思っているほど。それくらい日本とは心がつながっているように感じています。しかも、ここにはずっといられないんだなと考えると、触れると消えてしまう泡のようなはかない時間なんだなと思うのです。日本と僕は相思相愛なので、すぐに恋しくなるでしょうね。今回は、4日間ほどフリータイムがあるので、みんなが「キレイでいいよ!」と勧めるようなところに行くのではなく、携帯も持たずに、まったく言葉が通じないような村で迷子になってみたいなと。そこで何かが起こるんじゃないかなと期待しています。―そこまで日本を好きになったきっかけは何ですか?マチューさんやっぱりそれは映画ですね。日本の映画は、いつも非常に深いことを語っていると感じていますから。『彼女のいない部屋』も、僕が好きな黒沢清監督や河瀨直美監督の作品で亡霊が出ていたり、想像力の豊かさを描いていたりしていたのを見ていたからこそ作れた映画だと思っています。あと、僕たち欧米人にとって魅力的なのは、日本人の魂と正確さ。いい加減なところで妥協することなく、徹底的に取り組む姿をリスペクトしています。僕たちは「何となくこれくらいでいいんじゃない?」という感覚なので、「シャツにアイロンかけていないけどまあいっか」みたいなところがありますよね(笑)。もちろん、僕も本当はアイロンをかけたほうがいいんじゃないかなと思ってはいるんですよ!とにかく、なぜ僕が日本を好きなのかは、もはや謎のようなものかもしれません。―今回の滞在で、その“答え”が見つかるといいですね。マチューさんとはいえ、あまり近づきすぎないほうがいいこともありますよ。決して知りたくないというわけではなく、これはカップルにも言えることですが、ミステリアスな部分を残しておくほうが長続きしますから(笑)。よくないことばかりを考えすぎないほうがいい―確かにそうですね。また、本作では愛する人と離れたときの喪失感についても描かれていますが、マチューさん自身にもそういった経験はありますか?マチューさん僕もその感情は味わったことがありますよ。特に、ひとつの恋が終わったときなんて死んでしまうかと思うほどつらかったりしますからね。あとは、子どもが生まれるとそれもまた大変なことが始まる出発点。「もし子どもが亡くなってしまったらどうしよう」という悪夢を見て、夜中に目覚めることもあるくらいですから。ただ、あまり考えすぎると、それが実際に起きてしまうこともあるので、そのことばかりを考えるのはよくないと思っています。劇中では、クラリスがある悲劇を乗り越える術を自分で見つけていくので、そのあたりも見ていただきたいです。―実際にお会いしてみて、マチューさんは非常にエネルギッシュな方だと感じていますが、その源になっているものを教えてください。マチューさんやっぱりいまは日本にいること自体がすごく幸せで、感動しているからかもしれませんね。あとは、何と言っても、ビジネスクラスの飛行機に乗せてもらって日本に来ましたから!そうじゃなかったら、いまごろ疲労困憊していたと思いますよ。自分の居心地がいい場所にいられる努力は欠かさない―それは間違いないです(笑)。では、人生を楽しむために心がけていることはありますか?マチューさんシンプルなことではありますが、いつも自分が居心地のいい場所にいられるための努力はしています。たとえば、本当に好きな人や尊敬している人としか仕事をしないとかもそのひとつ。いまは小説家とミュージシャンと僕という同世代の男3人と子どもたちと一緒にパリのアパートをシェアして暮らすようにもなりました。敬愛する人と生活をともにすることで、子どもとの関係もよくなったし、愛情や友情も生まれるし、相互援助の気持ちとインスピレーションも湧いてくるので、すごくいいですよ!全員男ばっかりですが(笑)。―楽しそうですね。それでは最後に、日本のファンに向けてメッセージをお願いします。マチューさんもし、僕の映画を観てくれなければ、僕はもうプロモーションで日本には来ません。というのも、配給会社の人から「観客が入らなかった次はエコノミークラスだよ」と言われてしまいましたから……(笑)。なので、どうか観てください!というのは冗談で、本当は真面目に答えたいのに、すぐふざけてしまってごめんなさいね。ただ、この作品は1回では足りず、2回観ないと味わえないので、ぜひ2回は観ていただきたいというのは伝えたいです。ちなみに、一人で観るとつらすぎて泣いてしまうかもしれないので、お友達と一緒がいいかなと。2人で2回なら、チケットも4枚売れますし(笑)。みなさん、ぜひお願いします。インタビューを終えてみて……。溢れるような大人の色気を見せたと思ったら、急にいたずらっ子のようなお茶目な顔で冗談を言ってみたり、映画への情熱を真剣に語ってみたりと、さまざまな表情を見せてくれたマチューさん。そんな様子に魅了されっぱなしの取材でしたが、耳を赤くしてまで日本に対する思いを一生懸命に語ってくれる姿にはこちらまで胸が熱くなりました。マチューさんの監督としてのキャリアにおいても、欠かせない1本であることに間違いないので、そういう意味でも必見です。見事に組み合わされた美しい映像と音楽にも注目!過去と現実に、想像が交錯して生み出されるミステリアスな世界へと誘われる本作。バラバラに散りばめられたピースがひとつに繋がり、埋もれていた“家族の真実”が明かされたとき、その衝撃には誰もが心を激しく揺さぶられるはずです。写真・山本嵩(マチュー・アマルリック)取材、文・志村昌美ストーリーフランスのとある地方都市に住むクラリスには、夫と2人の子どもがいた。ところがある朝、クラリスは家を出て一人で車を走らせている。果たして、彼女は家族を捨てて家出をしたのか……。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『彼女のいない部屋』Bunkamuraル・シネマ他全国順次公開中、10月14日(金)からはアップリンク吉祥寺で公開配給:ムヴィオラ️© 2021 - LES FILMS DU POISSON – GAUMONT – ARTE FRANCE CINEMA – LUPA FILMイメージフォーラム・フェスティバル 2022開催中マチュー・アマルリック主演作『トラララ』は、9月24日(土)SHIBUYA SKYにて上映写真・山本嵩(マチュー・アマルリック)
2022年09月23日他人との接し方や距離感について悩まされる時代を生きるなか、家族でも友達でもない人たちによる新しいつながり方を描いた話題作『川っぺりムコリッタ』が公開を迎えます。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。松山ケンイチさん & ムロツヨシさん【映画、ときどき私】 vol. 520ある理由から誰とも関わらずに生きようと決めた主人公の山田たけしを演じているのは、唯一無二の存在感で観客を魅了する松山ケンイチさん。そして、山田が引っ越したボロアパート「ハイツムコリッタ」の住人で、山田の日常に踏み込んでくる隣人の島田幸三を、どんな役でもこなしてしまうムロツヨシさんが演じています。今回は、現場での忘れられないエピソードやおふたりが1日のなかで大切にしている幸せな時間、そして本作を通じて感じた死に対する考えなどについて語っていただきました。―今回、松山さんは台本に惚れ込んで出演を決めたそうですが、どういったところに惹かれましたか?松山さん荻上直子監督の前作『彼らが本気で編むときは、』を観たときに、すごい映画だなと驚かされたので、そんな衝撃を与えてくれた監督と一緒に作ってみたいという思いがまずはありました。あとは、これまで自分の世界にはいなかったような人たちの物語から、何を感じることができるのか。そういったことに興味があって、出たいと思いました。苦しみの反対側には、喜びや幸せがあると気がついた―実際に演じてみて、感じたこともあったのでしょうか。松山さん人は苦しい状況にいるとき、その反対側には喜びや小さな幸せもあるのに、どうしても苦しみのほうが目立つので見逃しがちではないかなと。でも、山田は隣人たちにかき回されていくことで、それを実感していく。それぞれの苦しみを抱えながら生きている人たちが、そういったことに気がついていく話だと感じました。「生きていて意味あるのかな」と考えることって誰にでもあると思いますが、それとは逆に「生きよう」とする気持ちが遺伝子のなかにあるから、その矛盾に苦しくなるんですよね。そんなときに、この映画はこれからどう生き延びていくのかのヒントにもなっていると思います。僕も自分のことをもう一度ちゃんと観察しようと思えましたし、自分のなかに足りなかった部分を改めて教えてもらったような気がしています。―ムロさんは、ご自身の役どころに関してはどういったイメージで演じられましたか?ムロさん僕が演じた島田は、一見すると愉快で人懐っこくて、他人を巻き込む人物のように思われますが、傷や後悔を背負って生きている男です。本編では過去についてはあまり描かれていないものの、僕は個人的に監督から説明を受けました。ただ、作品で描かれていないことなので、あえて触れませんが、過去との向き合い方は人それぞれですよね。監督からは「寅さんみたいに」というアドバイスをいただいたので、それを織り交ぜながら演じました。楽しかったのは、2人でご飯を食べるシーン―印象に残っているシーンや現場の様子についても、教えてください。ムロさん基本的にアドリブとかはしていなかったと思いますが、楽しかったのは、2人でご飯を食べるシーン。友情なのか何なのかわからないなか、島田が隣人であることの縁を認め、運命を受け入れざるを得ない山田とのやりとりは面白かったです。松山さん静かなのに、印象に残る演技をみなさんがされていたので、撮影していたときのことはいまでもよく覚えています。そのなかでも、今回のムロさんは、いままでとはまた全然違ったムロさんですごく好きでした。あと、(柄本)佑くんも真面目にやってるんだろうけど面白いし、(満島)ひかりちゃんも華奢なのに「どこからそのパワー出てくるの?」みたいな感じでしたから。ムロさん本当に、すごい力ですよ。松山さんあと、吉岡(秀隆)さんは、「この人に近づいたら本当に危なそうだな」という雰囲気がありましたよね(笑)。ムロさんもちろん、役としてですけどね!松山さんこの作品の登場人物のように、家族でも友達でもないけれど、チームとして撮影に挑めたので、お互いに支え合っていた部分はすごくあったと思います。特に、撮影をしていた2年前は、コロナ禍が始まったばかりで死を意識するような時期でもあったので、待ち時間のときにムロさんと吉岡さんとひかりちゃんと僕の4人で、普段だったら絶対にしないような話もしました。「死にたいと思ったことありますか?」とか。これは死に関することを描いた映画でもあるこの作品で、あの瞬間でしか聞けないことだったと思います。こういう話は、家族でもなかなか共有できるものではないので、本当に貴重な時間でした。どういう死に方をしたいかは、いつも考えている―確かに、本作では死について思いを巡らせる瞬間が多いですが、おふたりはどういう“人生の最期”を迎えたいと思っていますか?ムロさん考えたことないですね。でも、ここですぐに「舞台上で死にたいです」と言えたらかっこよかったんでしょうけど……。そのときにもし僕にも家族ができていたら、家族と一緒がいいのかな。何か希望はありますか?松山さん僕は、老衰がいいです。そのためにも、いまから健康な状態で生きていかないといけないなと思っています。ムロさん確かに、それが一番いいですね。松山さんいますぐには絶対に死ねないですけど、どういう死に方をしたいかというのは、いつも考えています。ムロさん40歳を過ぎると、いつか死ぬんだろうなと思うことは少しずつ増えますし、いまは自分がいつあちら側にいくかわからない時代ですからね。でも、やっぱりここは「舞台上で死にたいです」にしておきましょうか(笑)。―また、劇中ではさまざまな形の弔い方が描かれており、そのあたりも非常に興味深く、観客も「もし自分だったら……」と考えるのではないかなと。おふたりにも理想があればお聞かせください。ムロさん骨を海にまいたり、話のなかで出てきたような花火のなかに入れたりとかいろいろありますが、僕は夫を亡くした「ハイツムコリッタ」の大家の南さんみたいに、手元にひとつだけ骨を置いて相手を想う姿が素敵だなと。僕にもそんな人がいてくれたらいいなと思いました。松山さん僕は養分になりたいので、樹木葬がいいなと考えています。ムロさん「養分になりたい」ってすごいね。松山さんというのも、僕らは自然からいろんなものを与えてもらっているのに、何も返せていませんから。せめて自分の体を土にして返していきたいというか、それしかできないんじゃないかなと思うんですよ。あと、気になっているのは、僕は死ぬ間際に自分の子どもたちに何を言うんだろうかというのは考えます。「死にたくない」とか言うのか、それともがんばってかっこいいこと言って死ぬのか。ムロさんきっと、ジタバタするんだろうな。幸せをかみしめる瞬間は、子どもたちが寝静まったあと―これを最後に言えたらいいな、と思う言葉はありますか?ムロさんいまは独り身なので、「ありがとう」と言える相手がいたらいいなと思います。「ここまで一緒にいていてくれて、ありがとうございました」と誰かには言いたいですね。松山さん僕はそれまで言えなかったことが出てきそうだなとは思っています。いまは自分でも何に蓋をしているのか気がついていない可能性もあるので、本当にそのときまで誰に何を言うかわからないですよね。「実はお前のこと大嫌いだった」とか誰かに言っちゃったりするかもしれないし(笑)。ムロさんいやいや、それを言われた人は、そのあとどうやって生きていこうかと悩みますよ!―確かに、それはトラウマになりそうです。本作のタイトルにもある「ムコリッタ」とは、仏教の時間の単位のひとつで1/30日=48分を指していますが、おふたりが1日のうちに大事にしている“ムコリッタな時間”といえば?ムロさん僕は朝と夜の1日2回お風呂に入るので、その時間です。タブレットを持って入るので、漫画を読んだり、リラックスできる音楽を聴いたりしています。朝は目を覚ますためでもありますが、夜はビールをおいしく飲むため。どこに行っても、必ず湯船にお湯をためて入るようにしています。松山さん僕は子どもたちが寝静まったあとの48分間がすごく好きです。「あー、今日もやっと終わった!」と感じられるので。そのときに、妻と1日を振り返って「今日もうるさかったな」とか話したりしますが、きっと幸せをかみしめている瞬間でもあるんだと思います。失敗はデータ化して、同じことが起きないようにする―素敵ですね。また、劇中で山田が怖いことがあるたびに、九九の7の段を逆から言って気を紛らわせているシーンも印象的でした。何か怖いことや嫌なことがあったときに、おふたりが実践していることがあれば、教えてください。ムロさん嫌なことがあったとき、もう一度その記憶をすべて思い出して、あえて真正面から向き合います。そうしないと、僕はずっと引きずってしまうので。そのときに、失敗をデータ化して、次に同じことが起きないように自分に言い聞かせて終わりにするので、確実に記憶に残すという作業をしています。松山さん僕はすぐに切り替えちゃうので、ムロさんとは逆で逃げているのかもしれないです。ただ、そうするとふとしたときに浮かんできてしまって、自分のなかで終わらせられてないんだなと感じることもあります。そのときは大したことないと思っていても実はすごく傷ついているときもありますし、逃げているつもりじゃなくても逃げていたのかなと思うときもあるので、結局はいまでもうまく対処できていないですね。まだまだいろんなことが怖いので、いつも迷っています。自分の体の声を聞く時間は、忘れずに持ってほしい―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。ムロさんいまは人と人とのつながりも多様化してきましたが、大切なのは自分なりにいい距離感を見つけること。そして人と向き合う時間を1分でも増やしてみると、新しい発見があるのではないかなと思っています。いい感じにがんばって、いい感じにさぼって、一緒になんだかんだやっていきましょう!僕もみなさんのことを応援しています。松山さん20代も30代も、働き盛りの年代なので、僕もみなさんと同じように突き進んできました。ただ、突き進みたい気持ちと自分の体の声を聞く時間はセットとして持っておかないと、体を壊したり、精神的に落ち込んだりしてしまうので、自分で自分のことを大事にしてほしいなと思っています。僕自身もそれですごく悩みましたし、みなさんが潰れてしまうと日本の損失にもなってしまいますから。なので、“自分の声を聞く”ということを忘れないでください。インタビューを終えてみて……。劇中と同じく、息の合った絶妙なやりとりを見せていた松山さんとムロさん。いつまでもお話を聞いていたくなるくらい、とても心地よい取材となりました。興味深いおふたりの人生観や死生観を踏まえると、作品もより楽しめるので、そのあたりにもぜひ注目してみてください。ユーモアたっぷりの味付けに心が温まる!人生に欠かせないのは、おいしいご飯と大切な人と過ごすムコリッタな時間。誰もが孤独に陥りやすい日々を送るなか、人と生きることの楽しさやささやかな幸せに気づかせてくれる優しい物語は、きっと心もお腹も満たしてくれるはずです。写真・北尾渉(松山ケンイチ、ムロツヨシ)取材、文・志村昌美松山ケンイチ ヘアメイク・勇見勝彦(THYMON Inc.)スタイリスト・五十嵐堂寿シャツ¥12,100(J.PRESS/オンワード樫山お客様相談室03-5476-5811)、他スタイリスト私物ムロツヨシ ヘアメイク・池田真希スタイリスト・森川雅代ストーリー山田は、北陸の小さな街にある塩辛工場で働き口を見つけ、社長から紹介された「ハイツムコリッタ」という古い安アパートで暮らし始める。風呂上がりの冷えた牛乳と炊き立ての白いごはんだけをささやかな楽しみにしていた山田は、できるだけ人と関わらず、ひっそりと生きていこうと決めていた。ところが、隣の部屋の住人・島田が風呂を貸してほしいと上がり込んできた日から、山田の静かな日々は一変。夫を亡くした大家の南、息子と二人暮らしで墓石を販売する溝口といった、訳アリの住人たちと関わりを持ってしまう。そんなある日、子どもの頃に自分を捨てた父親が孤独死したという知らせが入る……。心がほぐれる予告編はこちら!作品情報『川っぺりムコリッタ』9月16日(金)全国ロードショー配給:KADOKAWA©2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会写真・北尾渉(松山ケンイチ、ムロツヨシ)
2022年09月15日ドラマ『マイファミリー』で、濱田岳さん扮する東堂の妻で、娘が失踪し憔悴しきった母親という、これまでにない役を生々しく演じ話題を呼んだ珠城りょうさん。元宝塚歌劇団・月組トップスターの経歴も何のその。ご本人は「役への抵抗も違和感も全然なかった」と語る。綺麗ごとばかりじゃない物語だからこそ興味をそそられる。「昔から映画もドラマも好きでよく見ていましたから、映像の世界では舞台にないリアルさが求められるだろうと想像はしていて、それを体験できたことが楽しかったです。私自身、他人の人生を生きて自分とは違う役の感情を味わう喜びを、お芝居に感じて今までもやってきました。映像はシーンごとに撮りますが、スタートがかかった瞬間、そこに至るまでの感情になったり、濱田さんに夫婦のような愛情を感じてそういう空気感になったり。もちろんそれは濱田さんという素晴らしい俳優さんがいてこそですが。初めての経験にとても刺激を受けました」笑顔で熱っぽく語るその表情からも、充実感が伝わってくるほど。「舞台で真っ暗な客席に向かってお芝居をするとき、実際には見えない景色が目の前に広がっているようにイマジネーションを膨らませることを意識してきたんです。でも映像の現場では、補完しなくても景色は目に見えるし、家には娘の描いた絵日記が実際にあったり、生活の跡があって想像しやすかったです」そんな珠城さんが満を持して、退団後初となる演劇作品に出演する。かつてフランソワ・オゾン監督により映画化もされた『8人の女たち』。雪に閉ざされた大邸宅で起きた殺人事件を巡り、邸宅にいた8人の女たちが互いを探り合うミステリーだ。「ハッピーなミュージカルも好きなんですけれど、在団中から、人間の本質的な部分を描いた結構ヘビーな作品をやるのが好きでした。世の中って綺麗ごとばかりじゃないですよね。だからこそ、そこを描いた作品に人間味を感じるし興味をそそられる。今回の作品でも、8人の女性たちがそれぞれに何かを抱えながら、心理戦で本心を誤魔化したり隠したりしている。そうやって絡まった糸が、ある瞬間にぱぁっと解けて真実が明るみになっていくところも、とても面白いなと思っています」8人の女性キャストは全員が元タカラジェンヌ。ファンの間では配役予想でも盛り上がったが、珠城さんの役どころは邸宅の主人で被害者でもあるマルセルの妹・ピエレット。「私の配役予想はほとんど当たっていなかったとスタッフさんに伺って、演じ甲斐があるなと思いました。いい意味で、皆さんの予想を裏切ったピエレットにしていきたいですね」宝塚退団から約1年。生活環境は変わったが、「想像以上に、私自身は何も変わっていないです」と笑う。「周りからも、芸事に対するスタンスや、関わる人たちへの向かい方も変わらないと言われるんです。何より、男役を卒業してもファンの方が変わらず私を受け入れてくれていて、それが本当にありがたいです」『8人の女たち』雪に閉ざされた大邸宅の主人・マルセルが殺害された。邸宅にいるのは8人の女たちのみ。互いが疑心暗鬼となり犯人を探り合ううち、それぞれが抱えた思わぬ秘密が明るみになっていく。8月27日(土)~9月4日(日)池袋・サンシャイン劇場原作/《HUIT FEMMES》by Robert THOMAS上演台本・演出/板垣恭一出演/湖月わたる、水夏希、珠城りょう、夢咲ねね、蘭乃はな、花乃まりあ、真琴つばさ、久世星佳S席1万1500円A席9000円梅田芸術劇場 TEL:0570・077・039配信あり。大阪公演も。たまき・りょう愛知県出身。2008年に宝塚歌劇団に入団し、早くから注目され大役に次々抜擢。’16年~’21年に月組トップスターを務めた。退団後の舞台出演は『Greatest Moment』に続き本作が2作目となる。トップス¥150,700パンツ¥75,900(共にポールカ/アオイ TEL:03・3239・0341)イヤリング¥11,000(マナ ローザ ジュエル/マナ ローザ TEL:011・616・0106)※『anan』2022年8月31日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・久保コウヘイヘア&メイク・河上智美インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年08月28日人生に挫折しそうなとき、救いを与えてくれるもののひとつといえば音楽。そんな思いに共感する1本としてオススメは、音楽映画でありながら刑事モノとしての側面も持つ話題作『異動辞令は音楽隊!』です。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。高杉真宙さん【映画、ときどき私】 vol. 513犯罪捜査一筋30年の鬼刑事が警察音楽隊にまさかの人事異動を言い渡され、どん底から再び輝きを取り戻そうとする姿を描いた本作。高杉さんは、主人公が所属する音楽隊でサックスを担当する北村裕司役を演じています。今回は、役作りでの苦労や主演を務めた阿部寛さんから学んだこと、そしてバラエティ番組に出演するようになってから感じる最近の変化などについて語っていただきました。―まずは、本作に出演したいと思った理由から教えてください。高杉さんやっぱり、内田英治監督とご一緒できるというのは大きかったです。特に、お話をいただいたときは『ミッドナイトスワン』を観たあとで、内田監督の作品に出たいと望んでいたときだったので。うれしかったですし、ありがたかったです。―実際に内田監督の現場を経験されてみて、いかがでしたか?高杉さんいつも一緒にお仕事されているスタッフの方が多かったこともあって、みなさんの意志疎通がスムーズで素晴らしかったです。あとは、カメラワークがすごかったですね。普段、僕は撮影中にあまり映像をチェックしないほうですが、見せていただいたときに「こんなふうに撮られていたのか」と驚きましたし、迫力があってかっこいいなと思いました。役を演じるうえで意識したのは、感情のバランス―演じられた北村は、反発はするけれど実はいいヤツというキャラクター。演じるのにかなりの技量が必要ということで、プロデューサー陣から真っ先に高杉さんのお名前が挙がったとか。ご自身にとっても、難しい役どころでしたか?高杉さん知らないところで、僕はそんなに持ち上げられていたんですか!?いやいや、怖いです(笑)。今回、僕が一番気にしていたのはバランス。ただの嫌なヤツが阿部さん演じる成瀬の言葉で変化していくというのではなく、もっと北村の存在を大事にしたいなと思いました。ツンケンしているのも、彼なりの正義や理由があってしていること。成瀬さんに対して嫉妬もあれば、憧れや尊敬の感情もあるので、そういうひとつひとつのバランスは難しかったです。みなさんから好きになってもらえなくても、どうしたら嫌いにならないでもらえるかは考えながら演じました。―なるほど。監督からは、どのような演出がありましたか?高杉さん衣装合わせのときに、「もっとダサいほうがいいな」と監督がずっと言っていたのは印象的でした。僕もキャラクターを作るうえで重要だと思っているのは、衣装やメイク。今回は、服に関心はないけど仕事は大好きという人物像だったので、そういうところからも少しずつ作り上げていきました。最後の白い制服はかっこよかったですね。―ほかにも、初挑戦となったサックスも大変だったのではないかなと。高杉さん難しかったですね。撮影の1か月くらい前に初めてサックスを触り始めたのですが、別のドラマのためにベースの練習をしていた時期とちょうど重なってしまったので、練習量に不安はありました。ただ、ありがたいことに撮影中も練習する時間をいただけたので、何とか作品には間に合うところまではいけたかなと思っています。でも、覚えることが本当に多くて大変でした。自分がどれくらい努力できているか考えさせられた―撮影前までにみなさんがかなり仕上げてきていたことに、スタッフからは感動の声もあがり、高杉さんに至っては格段に成長していたので寄りのショットが急遽増えたとか。高杉さんこちらこそ、「本当にありがとうございます」としか言いようがないです。自分では、全然ダメだと思っていましたから。撮影では2日間ほど先生に教えていただいたあと全体練習に挑みましたが、そこで少しは胸を張れるようになれたので、やっと楽しくなりました。―主演の阿部さんとのやりとりで、思い出に残っていることはありましたか?高杉さん僕は運転するシーンがあったのですが、撮影前に同じ部屋で阿部さんと2人っきりになったことがありました。普段あまり運転しないほうなので、それについて相談したときのことがすごく印象に残っています。―どんなアドバイスをもらったのでしょうか。高杉さん「がんばれ!」と。―(笑)。シンプルかつ力強いひと言ですが、うまくいきましたか?高杉さん僕一人ならまだしも、倍賞美津子さんと板橋駿谷さんを乗せて運転しなければいけなかったので、緊張しました。自分で自分を慰めながら挑みましたが、楽しく運転できてよかったです。―ほかにも、俳優の先輩として阿部さんから学んだことがあれば、教えてください。高杉さん阿部さんがいるだけで、みんなの士気が上がる感じはありました。最近、阿部さんと同世代の方々とお仕事をする機会が多いですが、どなたもとにかくストイック。自分もその年代になったときに、そういなきゃと思わせられますし、いまの自分がどれくらい努力できているんだろうかと考えさせられます。それは今回の阿部さんを見ていて感じたことでもありますが、そういう姿勢だからこそ、これほど長く続けられているんだろうなとも思いました。本当に、かっこいい方が多いですよね。音楽は、シーンと気分に合わせて聴いている―現場の様子についてもおうかがいしますが、みなさんで一緒に演奏をしていたこともあって団結力も上がったのでは?高杉さんそうですね。音楽でひとつの作品をみんなで作っている実感があったので、一緒にゴールに向かっていくイメージはありました。一体感が生まれますし、お互いに仲良くもなれるので、これからは現場に入る前にキャストで音楽かスポーツすればいいんじゃないかなと思ったほど。ただ、スポーツだと敵対心が出てくることもあるので、すごく仲良くなるか、すごく殺伐とするかのどっちかかもしれませんが(笑)。―確かに、その可能性はありますね……。本作では、音楽によって救われる人たちが描かれていますが、高杉さんも音楽に救われた経験はありますか?高杉さん僕は音楽をずっと聴いていないとダメというほどのタイプではありませんが、気分とシーンに合わせて聴いています。たとえば、疲れたときとかテンションを上げたいときは、メタルを聴くのが好きです。あと、朝起きたとき、夜寝る前、「明日仕事でがんばろう」と思うときは、それぞれ違う曲を聴くので、そういう部分では助けられていると思います。―ちなみに、最近のお気に入りがあれば、教えてください。高杉さん星野源さんの「POP VIRUS」です。この曲は、家に帰ってきてゆっくりしたいときに聴いています。あと、昔からよく聴いているのは、高橋優さんの「明日はきっといい日になる」。今回でクラシックや吹奏楽も聴くようになったので、仕事をするたびに音楽の幅も広がっていく感じです。いつまでもミスを落ち込んでいても仕方がない―音楽以外にも、落ち込んだときに自分の救いになっているものはありますか?高杉さんあまりないですね。というのも、僕は立ち直りが早くて、ミスをしてもへこむのはだいたい3時間くらい(笑)。落ち込んでいても仕方ないので、ゲームや趣味で気分を変えて、考えないようにすることが多いかなと。ただ、そのなかでも、次は失敗しないように心がけてはいます。―ちなみに、1年ほど前にご登場いただいたananwebのインタビューでは、「ゲーム以上に好きになれるものを探している」とおっしゃっていましたが、その後何か見つかりましたか?高杉さんいやー、なかなか超えられないです(笑)。それくらいゲームが大事ってことなんでしょうけど、見つけられないものですね。―今回のサックスはどうでしょうか。高杉さん今後も続けたいくらい好きにはなりましたし、マウスピースも大事に飾ってはいますが……。―では、もし何かを見つけたら教えてください。ちなみに、そのときに1人旅にも興味があるとおっしゃっていました。どこか行かれましたか?高杉さん申し訳ないことに、これもまだしていないです(笑)。でも、長崎とか、東京の島に行ってみたいなと思っていて、いろいろと調べてはいます。僕は電車旅が好きなので、ぜひ電車で行ってみたいです。20代のうちに、落ち着きを持てるようになりたい―旅の感想もお待ちしています。20代も折り返しになりましたが、今後はどのようになっていきたいですか?高杉さんいろいろありますが、20代のうちに落ち着きを持てるようになりたいです。いまは、話し方も行動もフラフラしていますから。まずは、落ち着いた発言や行動ができるようにがんばります。―最近は、バラエティでも活躍されているので、いろんな変化もあったのでは?高杉さん『ゴチになります!』を見ている方は多いので、それで僕を知ってると言ってくれる方は増えました。あとは、「本当に自腹なの?」とよく聞かれます(笑)。本当に自腹です!この前も払いましたよ。―これまでは役として表に出ることが多かったなかで、素の自分で出ることに戸惑いもあったのではないかなと。高杉さん収録も重ねてきたので、最初よりはだいぶ慣れました。バラエティもみんなで作っているというのがわかってから、あまり緊張しなくなったのかもしれません。僕も少しでも面白いことが言えたらいいなとずっと考えてはいますが、まずは自分が楽しもうと思っています。―それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いします。高杉さんいまはいろんなことがあるので、緊張感を持って日々を過ごさないといけないところもあるとは思いますが、気分転換に映画館に足を運ぶのはいかがでしょうか?その際は、ぜひ『異動辞令は音楽隊!』を選んでいただけたらうれしいです、そして、吹奏楽の素晴らしさもみなさんに伝えたいなと思っています。インタビューを終えてみて……。ananwebの連載にご登場いただくのは4回目で、最多となる高杉さん。今回も変わらぬ天然ぶりを発揮されていて、楽しませていただきました。ゲームと旅の話は、ほぼ毎回恒例になりつつありますが、今後も高杉さんが新たに何かと出会っていく様子を探っていきたいと思います。人生は、思いがけないことの連続だから面白い!居場所を失い、暗闇のなかで先が見えなくなったときこそ大切さに気づかされるのは、手を差し伸べてくれる仲間たちの存在。キャストが奏でる見事なハーモニーに乗せて届くメッセージは、新たな人生を歩き出す人にとっては、最高の“応援歌”となるはずです。写真・山本嵩(高杉真宙)取材、文・志村昌美スタイリスト・荒木大輔ヘアメイク・堤紗也香シャツ¥40,700、パンツ¥34,000/Cellar Door(untlim 03-5466-1662)、Tシャツ¥15,400/CINOH(MOULD 03-6805-1449)、その他スタイリスト私物ストーリー犯罪捜査一筋30年の鬼刑事・成瀬司は、犯罪撲滅に人生のすべてを捧げてきた。ところが、コンプライアンスが重視されるいまの時代に、違法すれすれの捜査と高圧的な態度を見せる成瀬は周囲から完全に浮いてしまう。そんななか、成瀬はついに上司から異動辞令を言い渡される。行き先は、まさかの警察音楽隊。しかも、小学生の頃に和太鼓を演奏していたというだけで、ドラム奏者に任命される。警察のはぐれ者たちの群れに迷い込み、愕然とする成瀬。練習にも身が入らず、隊員たちとも険悪な関係に陥ってしまうことに……。注目の予告編はこちら!作品情報『異動辞令は音楽隊!』8月26日(金)全国ロードショー配給:ギャガ️©2022『異動辞令は音楽隊!』製作委員会写真・山本嵩(高杉真宙)
2022年08月25日日本が誇る絶景のひとつといえば、瀬戸内海にある自然豊かな島々の景色。そんな美しい眺めを体感できる映画『凪の島』がまもなく公開を迎えます。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。結木滉星さん【映画、ときどき私】 vol. 512東京から瀬戸内の小さな島へ越してきた小学4年生の凪が経験するひと夏を描いた本作で、島に暮らす漁師の青年・守屋浩平を演じた結木滉星さん。スーパー戦隊シリーズ『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』で初主演を務めたのをはじめ、映画や舞台、さらにメンズファッション誌『smart』の専属モデルとしても活躍し、注目を集めています。今回は、撮影中の思い出や理想の結婚式、そして意外な素顔などを教えていただきました。―今回は、吃音を持っている漁師の青年という役どころでしたが、役作りをするうえで意識したことはありましたか?結木さん最初は、吃音症についてあまり知らなかったので、本を読んだり、動画を見たりするところから始めました。浩平自身がポジティブに捉えているので、あまり気にすることなく、癖のひとつくらいの感覚で演じています。作品全体を通しても温かくてほっこりしますし、浩平の前向きな感じにも元気をたくさんもらったので、演じるのがすごく楽しみでした。漁師といえばガッチリとして強そうなイメージですが、僕はどちらかというと親しみやすい雰囲気を出せるように意識しています。普段とは違う環境で、自分を見つめ直す時間ができた―漁師として、事前に準備されたこともあったのでしょうか。結木さん実は、これまで釣りをしたことがなければ、海に対してもあまり免疫がありませんでした。なので、まずは釣り好きの友達に連絡をして、釣りに連れて行ってもらうところから始めることに。最初は魚に触れられるどうかも不安なくらいでしたが、撮影前にいろいろと経験していたおかげで、釣りをしているシーンもうまく行ったと思います。あとは、船酔いしてしまうのではないかと心配でしたが、自然のなかにいる気持ちよさのほうが勝っていたのか、それもまったく問題なくできたので、すごく楽しかったです。―山口県にある島での撮影ということで、都会の現場とはかなり違ったのではないかなと。結木さん朝起きて、すぐに海が見えるというのは気持ちよかったですね。普段ではなかなか味わえない環境だったので、自分を見つめ直すような時間にもなりました。ただ、唯一感じた不便といえば、コンビニにすら歩いて行けないような場所にホテルがあったことと、コロナ禍でどこにも行けない状態であったこと。ひたすらホテルにいたので、筋トレしたり、外の空気を吸ったりして過ごすしかなかったのですが、海が見える露天風呂に入れたのはすごくよかったです。また戻ることができたら、次はおいしいものを食べたりしたいですね。―今回、主人公の凪を演じた新津ちせちゃんと共演してみて、いかがでしたか?結木さんちせちゃんは、子どもの部分と大人の部分の両方を持っているのですが、あの年齢でこんなにもちゃんと周りが見えていて、気が遣えるのかと驚きました。その姿を見て、僕もこのままじゃいけないなと(笑)。そのあたりは、ちせちゃんから学びました。いい意味で上下関係のない現場だった―そのほかにも嶋田久作さんや木野花さんなど、実力派の先輩方が多かったと思いますが、現場の様子についても教えてください。結木さん都会にはない時間の流れというか、山口県の空気感のおかげかもしれませんが、大ベテランで大先輩の方々との間にもいい意味で上下関係がない現場でした。僕も緊張することなく、みなさんと打ち解けられたのはよかったなと思っています。―劇中で浩平が想いを寄せるのは、学校の先生として登場する瑞樹。演じていた島崎遥香さんとは、どんなやりとりをしてから撮影に入られましたか?結木さん役に関することは特に話していなくて、ほかのみなさんと同じように仕事と関係ない話ばかりしていた気がします。「東京に戻ったら何食べたい?」とか「いまUber Eatsがあったら何頼む?」とかそんなくだらないことばっかり話していました(笑)。―結木さんから見て、瑞樹みたいな女性はどう見えましたか?結木さん僕は「先生」というだけでも憧れてしまうところがありますが、子ども思いで、他人のことを思いやれるところが素敵だなと感じました。特に、子どもと触れ合っている瞬間は、その人の優しさも出ると思うので。しかも、あんなキレイな先生がいたら、男は惚れちゃいますよね(笑)。結婚式のシーンは、一生できない経験になった―確かに、間違いないです。そして何より、劇中で行われた海の上での結婚式が素敵でした。結木さん僕もあのシーンは、一生できない経験をしたと思っています。今後も、結婚式のシーンは演じる機会があると思いますが、海の上でというのはなかなかできないので、すごく楽しかったです。しかも、僕が和装で相手がドレスといういい意味でのミスマッチ感もよかったなと思います。―もしご自身が思い描く理想の結婚式があれば、教えてください。結木さん結婚願望はありますし、子どももほしいですが、まだまだ先の話のように感じてしまうので、いまは全然想像できないですね。でも、身内だけとか、劇中と同じように仲のいい人だけを呼んでこじんまりした式をするほうがいいのかなとは思いました。―浩平とご自身、似ているところや共感するところはありましたか?結木さん女性に対してシャイになる気持ちは、すごくわかりました。あまり見せないようにしていますが、実は僕もシャイなので……。―そういう性格は、子どもの頃からですか?結木さんいや、子どものときは逆にクラスで一番うるさいくらいで、本当にお調子者でした。ただ、中学校に入って、異性を意識するようになった頃から、急に恥ずかしがり屋になった気がします。相当カッコつけてたので、いま振り返ると嫌いなタイプですね(笑)。ただ、大人になったいまでもカッコよく見られたい気持ちはありますよ。なので、シャイであることに気づかれないために、あえてよくしゃべったりすることも。でも、相変わらず根はシャイなままだと思います。役者としても、人間としても先を考えるようになった―俳優デビューから、今年で10周年となります。改めて振り返ってみていかがですか?結木さんまずは、あっという間だったなと感じています。僕がこの仕事を好きな理由は、つねに新たなことにチャレンジし続けられるところ。その都度乗り越えていくのが楽しいです。―次の10年に関しては、どういったビジョンを持っていますか?結木さん今年で28歳になるので、今後についてはもう少しちゃんと考えないといけないなとは思っています。役者としてどうするかということだけでなく、ひとりの人間としても自分の人生について考えるようにはなりました。―近いところでいうと、30歳という節目もありますが、それまでにしたいことを挙げるとすれば?結木さんそもそも、僕はモテたいと思ってこの仕事を始めたので、もっと多くの作品に出て、30歳の頃には街を歩けないくらいになりたいですね(笑)。まっすぐな2人の恋にも注目してほしい―プロフィールには、「特技:カラオケ」とあります。歌のお仕事も考えているのでしょうか。結木さんただ好きなだけで、うまくはないです。なので、特技とは言えないですね(笑)。現時点では、仕事にできるレベルに達していないですが、もし達することがあればやってみたいなとは思います。―楽しみにしています。ちなみに、得意な曲はありますか?結木さん音楽に関しては、わりとミーハーなので、そのときに流行っている曲を友達と歌うことが多いかなと。ただ、バンド系よりも、シンガーソングライターのバラードみたいなタイプの曲をよく聴いています。―そのほかにも息抜きにしていることがあれば、教えてください。結木さん友達と飲みに行ったり、洋服を買ったり、好きなサッカーを観戦したりすると気持ちが落ち着いてリフレッシュしますね。あとは、YouTuberの平成フラミンゴさんの動画を見ること。すごく元気をもらっています。―それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いいたします。結木さん今回のインタビューでは、映画の話だけでなく、僕自身についてもいろいろと話をさせていただいたので、まずはこういう人間がいて、役者をやっていることを知ってもらえたらうれしいです。僕個人でも、役を通してでもいいので、ぜひ応援していただけたらと思います。この作品に関しては、見ているこっちか恥ずかしくなるくらい浩平と瑞樹の恋がまっすぐなので、そのあたりも注目していただけたらいいなと。「昔の自分もそうだったなぁ」と思い出しながら楽しんでいただきたいです。インタビューを終えてみて……。凛々しい顔立ちと、さわやかな笑顔が魅力的な結木さん。「モテたくてこの仕事を始めた」というエピソードは意外でしたが、いまでは役者に対する強い思いがひしひしと伝わってきました。劇中では、漁師として光り輝く夏の海に佇む姿も素敵なので、ぜひお見逃しなく!誰にとっても、かけがえのない夏になる!心に傷を負った少女が、豊かな自然と温かい人たちに囲まれるなかで大きく成長していくさまを描いた本作。それぞれの悩みを抱えながらも前向きに生きようとする大人たちの姿に背中を押され、海の美しさにも癒されるのを感じられるはずです。取材、文・志村昌美撮影・宮本剛ヘアメイク・松田陵スタイリスト・伊藤省吾ストーリー両親が離婚したことにより、母の故郷である山口県の瀬戸内にある小さな島に移り住むことになった小学4年生の凪。普段は明るく振る舞う凪だが、母に暴力を振っていたアルコール依存症の父親の姿を思い出すと過呼吸を起こすようになっていた。そんな凪の事情を知った島の人々は、何も言わずに彼女を温かく迎える。そして凪もまた、同級生や担当教師の担任教師の瑞樹、用務員の山村、漁師の浩平をはじめとする島の人たちの悩みを知るようになり、彼らを支えようとするのだった。ところが、平穏な日々を送っていた凪たちのもとに突然父親がやってきて、再び家族に戻りたいと言い始めることに……。手に汗握る予告編はこちら!作品情報『凪の島』8月19日(金) 新宿ピカデリー、MOVIX周南ほか全国順次公開配給:スールキートス© 2022『凪の島』製作委員会
2022年08月17日夏の風物詩である甲子園ではすでに熱戦が繰り広げられていますが、負けないくらい熱くて激しい青春を体感できると話題の映画『野球部に花束を』もいよいよ開幕。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。醍醐虎汰朗さん【映画、ときどき私】 vol. 510アニメ『天気の子』で主役に抜擢されたのをはじめ、舞台『千と千尋の神隠し』ではハク役を務めるなど、注目を集めている醍醐さん。本作では、青春を謳歌しようと高校に入学したはずが、いつの間にか地獄のような野球部生活を送ることになってしまう主人公の黒田鉄平を演じています。今回は、過酷な撮影現場の裏側や青春の思い出、さらにいま夢中になってることなどについて、語っていただきました。―ご自身にとって本作は実写映画で初主演となりますが、現場に入ったときはどのようなお気持ちでしたか?醍醐さんワクワクする気持ちもありましたが、いろいろ考えすぎてしまった状態だったこともあり、初日はとにかくガチガチ。あまりにも緊張していたので、歩き方がわからなくなるほどでした(笑)。―緊張されていた理由のひとつには、野球が未経験だったこともあるのではないかなと思いますが、事前にかなり練習して挑まれたとか。醍醐さんクランクインの前にコーチの方がついてくださって練習しました。まずはキャッチボールから始めて、そのあとはバットを振ったり、キャッチャーの捕球練習をしたりしました。そのときに驚いたのはボールの硬さ。正直に言うと、いままでは野球の試合でデッドボールに当たって痛そうにしている人のことを「大げさだな」と思っていたんです。でも、痛いどころの騒ぎではないことがわかりました。硬球はもう石ですね……。僕も大きなあざがたくさんできました。―ということは、劇中で痛がっているシーンは実際のリアクションですか?醍醐さんそうですね。撮影中はボールを受ける手がパンパンに腫れました。でも、芝居はしないといけないし、ビビッていると監督から注意されるので、歯を食いしばって続けるしかなかったです。でも、内心では地獄だなと思っていました(笑)。芝居ではなく、本当に部活をしている気分だった―髙嶋政宏さん演じる野球部の監督はスパルタでしたが、本作の飯塚健監督もかなり厳しかったんですね。醍醐さんこれは僕の話ではないですが、本番中に髙嶋さんのアドリブがおもしろくて笑ってしまった人がいて、それがきっかけでカットになってしまったことがあったんです。そしたら飯塚監督がその人のところに近づいていって「ふざけてんのか?」と。もしかしたら、野球部よりも現場の監督のほうが、怖かったかもしれません(笑)。―とはいえ、実際に髙嶋さんの演技はかなりおもしろかったのでは?醍醐さんまだ慣れていないときは、僕も笑っちゃいましたね。ただ、髙嶋さんの演技は慣れてもおもしろいですし、絶対に笑っちゃいけないと思うと余計笑いそうになるので、カメラが違うところを向いているときに笑ったりしながら乗り切りました。―髙嶋さんからは「自分がアドリブを延々とやりすぎてみんなに申し訳なかった」といったコメントが出ているようですが、何があったのでしょうか。醍醐さん劇中で、髙嶋さんに合わせて「野球に狂え!」とみんなで一緒に叫ぶシーンを撮っていたときのこと。テストも本番もまったくカットがかからなくて、延々と叫んでいたら、翌日になって部員の大半の声がカスカスになってしまったんです。僕は喉が強いほうなので大丈夫でしたが、とはいえ舞台のお仕事以外で龍角散を溶かした水を常備して挑んだ現場は初めてな気がします。―肉体的な疲労もかなりあったと思いますが、きつかったシーンといえば?醍醐さん引退ノックをしている場面では、本当に倒れるまでやり続けたので、あのシーンでは誰も芝居していないですね。みんな本気でしたし、素で限界を迎えて倒れています。翌日もみんな歩けないくらいになっていたので、本当に部活をしている気分でした。サッカー部だった頃を思い出して、懐かしくなった―ご自身は、中学生のときにサッカー部に所属されていたそうですね。劇中の練習風景はいまなら問題になりそうなものばかりでしたが、当時を思い出すこともありましたか?醍醐さん僕がいたサッカー部もいまの時代っぽくないくらい本当に厳しかったので、そういう意味では懐かしい気持ちになりました。あと、劇中で出てくる“野球部あるある”で「怖い指導者ほど一度泳がす」というのはどこも同じなんだなと。いまでもたまに調子に乗ってると、泳がされたうえでスパーンと怒られることがあるので、この言葉は心に刻まれました(笑)。―怖いと言えば、“顔面凶器”と呼ばれる小沢仁志さんが先輩役として登場するシーン。共演されてみていかがでしたか?醍醐さん誰よりも現場に早く入り、座ることなくモニターの前でつねにチェックされていらっしゃるのがすごいなと思いました。ただ、いままで出会ってきた人のなかでも、トップレベルで怖かったです(笑)。といっても、ご本人は本当に優しい方なので、Vシネマのイメージから僕が勝手に怖がっていただけですが……。撮影の合間には、日常的な会話もさせていただいたのに、粗相をしてはいけないという気持ちが強すぎてどんな話をしたのかまったく思い出せません(笑)。―そのお気持ちもわかるほど、画面越しでも伝わる迫力がありました。今回は、中学生以来の坊主にも挑戦されていますが、抵抗はなかったですか?醍醐さんいや、最高でしたね。お風呂なんて、体感2分で終わる感覚です。中学生のときは、髪の毛がなかったら女の子にモテないと思ってショックを受けていましたが、いまはそういうのもなくなりましたし、仕事なので何とも思わなかったです。高校生に戻れたら、映画のような恋愛をしてみたい―ただ、劇中で坊主にするシーンでは、1発で決めないといけないプレッシャーもあったのではないかなと。醍醐さん本来、坊主にする場合は、一旦髪を短くカットしてからしないとバリカンに髪の毛が絡まってしまうんですが、今回は長いままの状態から一気にいったので、けっこう引っかかってしまって……。髪の毛がブチブチ抜けてめちゃくちゃ痛かったです。でも、坊主にされる僕だけでなく、僕を坊主にする人も周りが見えなくなるくらいアドレナリンが出ていたからこそできた気がします。―ちなみに、ご自身にとって青春の思い出といえば何ですか?醍醐さん暇さえあれば友達と遊んでいたので、用もないのに友達の家に泊まりに行ったり、花火をしたり、というのをよくしてましたね。―もし高校生に戻れたらしたいことはありますか?醍醐さん部活には入らなかったので、部活に熱中するのも楽しそうかなと。あと、ほかのことは何も考えずに、映画のような恋愛とかもしてみたいです(笑)。―まさに青春ですね。では、いま一番夢中になっているものがあれば、教えてください。醍醐さんそれは、『バチェロレッテ・ジャパン』です。シーズン2が始まったこともあって、僕の周りもみんな見ています。参加者の気分も楽しみつつ、バチェロレッテの尾崎美紀さんのファンとしても応援しているところです。―ちなみに、醍醐さんが女性に魅力を感じる瞬間といえば?醍醐さんたとえば、人の家に行って、みんながワーッと脱いだ靴を自分のと一緒に何気なく揃えてくれる姿とかはいいですね。あとは、よく笑う人です。求められたことにひとつずつ全力で取り組んでいる―お休みの日は、どのように過ごすことが多いですか?醍醐さん夕方くらいから友達とお酒を飲むか、サウナに行くか、そのどちらかですね。家で飲むときは、つまみとして角煮を作るのが好きなので、長い時間をかけてホロホロの肉を育てています。ただ、飲みながら料理しているので、角煮が出来上がるころにはベロベロになってしまうんですけどね。ポイントとしては、あえて少ししか作らないこと。量が少ないぶん、すぐに食べ終わってしまうのですが、そこで「お肉がもうなーい!」となるのが楽しいです(笑)。―なかなか独特な楽しみ方ですね。まもなく22歳となりますが、お仕事に関しては20代に入ったことで変化を感じることもあるのでしょうか。醍醐さんもっと若いときは遊びの延長みたいなところも少しあったかもしれませんが、最近は僕の周りもちょうど就職活動をしている人が多いので、より仕事としての意識が芽生えたところはあると思います。―現在は、映像作品から舞台、声優と幅広く活躍されていますが、今後やってみたいことは?醍醐さんいまはまだ僕が選ぶ立場にはいないと思っているので、まずはいただいたお仕事をひとつひとつ全力でやっていきたいです。そのなかで、いつか第一線で活躍されている方々と肩を並べられたかなと思えるところまで来たら、そのとき初めて自分がしたいことを考えたいなと。それまでは、求められたものを一生懸命する時期だと思っています。周りを鼓舞できるスーパーポジティブな人になりたい―それでは、男性として目指している理想像などがあれば、お聞かせください。醍醐さん僕は、スーパーポジティブで太陽みたいな人間になりたいです!その場にいるだけで周りを鼓舞できるような存在になりたいので、普段からネガティブな発言はしないように気をつけています。―最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。醍醐さん女性にとっては、「男のノリってこんな感じなのかな?」という教科書みたいなところも楽しんでいただけると思っています。いまはこういうご時世であまりハッピーな雰囲気ではないかもしれないですが、この作品のように「ただおもしろいだけ」という映画はあまりないと思うので、ぜひ笑いに来て明るい気持ちになっていただけたらうれしいです。インタビューを終えてみて……。とにかく明るくて、太陽のような笑顔が似合う醍醐さん。そのいっぽうで、女性読者へのメッセージをお願いした際には、「女性に向けて言うのはちょっと恥ずかしい」とシャイな一面も覗かせていました。さまざまな顔を持つ醍醐さんだけに、幅広い役どころでこれからも楽しませてくれそうです。思春期あるあるに共感必至!あり得ないほど理不尽な世の中も、メジャーリーグ級の“笑いのホームラン”ですべて吹き飛ばしてくれる青春コメディ。泥まみれになっても何度でも立ち上がる部員たちの姿に愛おしさを覚え、いつの間にか胸が熱くなってしまうはず。汗と涙を流しながら全力で生きる人たちに届けたい最高のエールを受け取ってみては?写真・北尾渉(醍醐虎汰朗)取材、文・志村昌美ストーリー中学時代の野球部生活に別れを告げ、坊主頭から茶髪にイメチェンして高校デビューを目指していた黒田鉄平。夢見たバラ色の高校生活は、同級生と一緒にうっかり野球部の見学に行ったことによって、あっけなくゲームセットとなる。しかも、新入生歓迎の儀式で早々に坊主に逆戻りしてしまうのだった。鬼のように豹変した二年生と三年生、そして昭和スパルタ丸出しの最恐監督のもと、 黒田ら一年生は“ザ・ハラスメント”な世界に翻弄され、憔悴していくことに。しかし、恐れていたはずの“伝統”に、気がつけば自分たちも染まっていくのだった……。衝撃の予告編はこちら!作品情報『野球部に花束を』8月11日(木・祝)全国ロードショー配給:日活️©2022「野球部に花束を」製作委員会
2022年08月08日自主的に母親のペットとなった30代の息子とその家族を描き、型破りな映画として注目を集めている『猫と塩、または砂糖』。いよいよ公開を迎えるなか、ヒロインに抜擢されたこちらの方にお話をうかがってきました。吉田凜音さん【映画、ときどき私】 vol. 504歌とラップを織り交ぜたポップな楽曲で話題となり、Z世代に人気の吉田さん。歌手、女優、モデルなど幅広い活躍を見せるなか、女性ラッパーたちが競い合う中国の音楽ドキュメンタリー番組に唯一の日本人として出演するなど、現在は国内外で注目度の高い存在でもあります。本作で吉田さんが演じているのは、主人公の一郎を翻弄し、父親のために白くて無垢なアイドルでいようとする謎の美少女・絵美。そこで、役との共通点や現場でのエピソード、そして幸せを感じる瞬間などについて、語っていただきました。―まずは、脚本を読んだときにどのような印象を受けましたか?吉田さんどんな作品になるのか、まったく想像がつかなかったので、「どうなるんだろう?」と頭のなかはハテナマークがたくさんになりました。でも、わからなすぎて、逆に興味が湧いてきたので、現場に入るのは楽しみでしたね。―そんななかで、役作りをするのも大変だったのでは?吉田さん私としては、お父さんのために生きている普通の女の子の役かなと思ったので、まずはその部分を考えるようにしました。ただ、感情を表に出さない子でもあるので、無表情のまま感情を表現するのは難しかったです。とはいえ、一郎の家族と出会うことで絵美にも徐々に感情が表れてくるので、そのあたりは意識して演じています。こんなに役になりきれることはあまりないので、すごく楽しかったです。何にでもなれる白みたいな人になりたい―演じるうえで、共感するところもありましたか?吉田さんそうですね。私もたまに「感情あるの?」と聞かれるタイプなので、そういうところは似ているのかなと(笑)。特に、撮影当時はまだ18歳くらいで、感情をあまり見せないようなところもあったので、絵美の気持ちは理解できました。―監督からは、どういった演出があったのでしょうか。吉田さん私たちキャストが考えていたことと、監督が目指しているところが同じだったこともあり、演技指導のようなことも特にありませんでした。そんななかで、監督が何よりもこだわっていたのは、絵美を真っ白な存在にすること。4人が一緒のシーンでも、一瞬しか映らないようなシーンでも、私だけずっとライティングされていたので、本当に徹底しているなと感じました。おかげで、私はつねに光っています(笑)。―そのかいあって、絵美はまぶしいほどの白さが印象的でしたが、もし自分を色に例えたら何色ですか?吉田さん私は白みたいな人でありたいなとは思いますね。白って、何にでもなれる色ですから。―ちなみに、お好きな色も教えてください。吉田さん好きなのは、逆に黒です。特に、10代の頃の私服は「真っ黒じゃないと嫌」というくらいでしたね。でも、20代に入って心境の変化があったのか、最近は白い服が増えた気がしています。音楽活動と女優業は生きてると感じられる場所―劇中では、一郎を演じる田村健太郎さんをはじめ、宮崎美子さんや池田成志さんといった先輩俳優の方々がそろっています。現場で思い出に残っていることはありますか?吉田さんボクシングのゲームをしているシーンで汗をかいていないといけなかったので、田村さんと一緒に家の周りを走ってみたり、川を見に行ったりしました。宮崎さんは本当のお母さんみたいに優しかったですし、池田さんも本当のお父さんみたいに私を守ろうとしてくれて、うれしかったです。―本作では「幸せとは何か」というのも題材となっていますが、ご自身の“幸せのベクトル”が向かっている先を教えてください。吉田さん私が幸せを感じるのは、やっぱり音楽活動と女優業をしているとき。どちらも、私が生きていると感じられる場所でもあります。曲作りをしていたり、現場に入ったりするたびに、ここに私の幸せがあるんだと実感しているところです。―逆に、落ち込んでしまったときはどのようにして乗り越えていますか?吉田さんどんなに悔しいとか、辛いと感じることがあっても、それ以上に「こんなところで負けていられない!」という思いが自分のなかにあるので、意外とすぐに忘れて前を向いていけるタイプです。そもそも、何があっても寝ればわりとすぐに立ち直るほうですからね(笑)。―では、仕事をするうえでやめたいと思ったこともないと。吉田さんそれに関しては、中国で番組に参加しているときにリタイアしたいと何度も悩んだことはありました。いま振り返っても、あの半年間は21年生きてきたなかで一番大変だったかなと。でも、「中国まで来てこんな経験はいましかできない」と考えたら、最後まで残ることができました。あのときにめちゃめちゃ鍛えられたので、いまでは自分のことを“無敵”だと思っています(笑)。人にパワーを与えられる存在でありたい―いまとなっては、素晴らしい経験になったんですね。また、監督は常識という価値観を押しつけられることが嫌で本作にその思いを込めたそうですが、ご自身も周りに持たれるイメージと素の自分の間にギャップを感じることもありますか?吉田さん私は仕事もプライベートも家族といるときも、全部が素の状態。もちろん、いろんな顔を持ってはいますが、かわいこぶったりもできないのでありのままで生きてきました。ファンの前でも全部を見せているので、おそらくみなさんも知っているのではないかなと思いますが(笑)。―吉田さんは、その飾らないところが魅力だと思います。ご自身が影響を受けている方はいらっしゃいますか?吉田さん子どものころから尊敬しているのは、中川翔子さん。小学2年生のときに見に行ったしょこたんのライブでたまたま舞台に上げていただき、それがきっかけでアーティストを目指すことに決めました。テレビの3分クッキングの音楽にも合わせて踊っていたくらい、小さいときから踊ることが大好きで、最初はダンスを習っていたんですが、しょこたんとの出会いで歌も習うことに。そこからは歌手になることだけを目指してがんばってきました。あとは、東京事変さんとかも好きですが、やっぱり音楽そのものに大きな影響を受けていると思います。特に、ライブで感じる音からはパワーをもらいますが、私も人にパワーを与えられる存在でありたいです。20代は先を見ながら進んでいけるようになった―今後、さらに力を注いでいきたい活動や挑戦してみたいことがあれば、お聞かせください。吉田さんもともと演じることは好きですし、音楽活動と女優業は「表現する」という意味では似ているところも多いので、これからもこの2つはずっと続けていきたいと考えています。女優のお仕事では新たな感情を教えられることがあり、それを音楽に活かすことで歌詞が生まれる場合もあるので、その連携されている感じも好きなところです。いまやってみたい役を挙げるなら、悪役。これまでは活発な子やおとなしい子とか、意外と”普通の子“みたいなキャラクターが続いていましたから。ぜひ、めちゃくちゃ悪い役を演じてみたいです(笑)。―楽しみにしています!現在21歳ですが、20代に入ってから変わったことはありましたか?吉田さん仕事に対する思いは変わっていないですが、目の前のことばかりに立ち向かってきた10代に比べると、20代は先を見ながら進んで行くことができるようになったと感じています。あとは、お酒が飲めるようになったので、いろんな人と出会う機会が広がったのではないかなと。でも、そのくらいですね。かっこいいと思うのは、好きなことをしている人―美容面で続けていることや最近始めたことがあれば、教えてください。吉田さん私は美容がものすごく好きなので、お風呂から出たあとにいろんなケアをしているときが本当に楽しいです。どちらかというと、それによって得られる結果よりも、ケアの工程を楽しんでいるのかもしれません。ちなみに、最近買ったのは、人気のダーマペンのなかでも、ダウンタイムが必要ないとされている光のダーマペン。使い始めたばかりで効果についてはまだわかりませんが、美容の最新情報を追いかけるのが大好きなので、いつも欠かさずチェックしています。―いま目指している理想の女性像などもありますか?吉田さんやっぱり好きなことをしている人が一番かっこいいなと思います。そんなふうに毎日を過ごしている女性は輝いているので、私もそうなりたいです。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。吉田さんこの映画については、どこがおもしろいとか、何も言えない作品なので、まずはとにかく観てほしいです。人によって感じ方もまったく違うはずなので、幅広い年齢の方に観ていただけたらいいなと思っています。私自身に関しては、これからも好きなようにやっていけたらと考えているので、ぜひ応援していただけたらうれしいです。インタビューを終えてみて……。驚くほど高い透明感と、目力の強さが印象的な吉田さん。仕事の話をしているときのキラキラした表情からは、いかに充実しているかがうかがえました。今後、歌手としても女優としても、どのような振り幅を見せてくれるのか楽しみです。クセが強くて、目が離せない!多様性が重視される時代になったとされてはいるものの、いまだに仕事や結婚、子育てなど、社会の多数派による“常識”を押しつけられて生きづらさを感じている人も多いはず。そんなときだからこそ、一癖も二癖もある主人公たちが新たな“幸せのベクトル”を見つけようと模索する姿を観察してみては?写真・北尾渉(吉田凜音)取材、文・志村昌美ストーリー舞台は、日本のどこにでもある住宅街に建つ一軒家。社会を拒絶し、自主的に母のペットである“猫”になった息子の一郎は、慎ましい母とアル中の父の3 人で淡々と暮らしていた。そんなある日、母親が元カレと再会。得体の知れない金持ち紳士風の男は、父親のためにアイドルとして生きる娘とともに家にやってくる。そして、いつの間にか5人の奇妙な同居生活が始まることに……。予測不能な予告編はこちら!作品情報『猫と塩、または砂糖』7月23日(土) より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー配給:一般社団法人PFF/マジックアワー️©2020 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF写真・北尾渉(吉田凜音)
2022年07月20日連日、炎天下の日が続いていますが、そんな暑さにも負けないほどの激しいバトルとアクションが体感できると話題の映画『炎のデス・ポリス』。ついに日本でも戦いの火蓋が切られようとしていますが、今回は公開に先駆けてこちらの方にお話をうかがってきました。アレクシス・ラウダーさん【映画、ときどき私】 vol. 501プロの殺し屋とワケありの詐欺師、そしてイカれたサイコパスが小さな警察署に集結し、一夜にして戦場と化してしまうさまを描いた本作。劇中でラウダーさんは、唯一の女性キャラクターとして活躍する正義感溢れる新米警官のヴァレリーを演じています。映画『ブラック・パンサー』やテレビシリーズ『ウォッチメン』といった話題作への出演が続き、ハリウッドでも注目度の高い存在となっているラウダーさん。そこで、個性豊かなキャストとの現場の様子や自身が持っている信念、さらに日本の女性たちに伝えたいことなどについて語っていただきました。―本作のジョー・カーナハン監督は、ラウダーさんと最初に会われたときにヴァレリーを演じるのに適していると思われたそうですが、ご自身でも共感する部分はあったのでしょうか。ラウダーさん彼女の強さや自分に自信のあるところなど、ヴァレリーが持っている性質の大半が私のなかにもあると感じました。とはいえ、彼女は決して知ったかぶりをすることなく、わからないことは謙虚に質問し、弱さを見せられるタイプ。そういったところにも、共感しました。そのほかに、演じるうえで意識したのは競争心の強さ。それは私が過去に陸上をしていたときに培ったものですが、それらも彼女のなかに取り込んでいきました。面白くてオープンな現場で、本当にありがたかった―今回は、ジェラルド・バトラー、フランク・グリロ、トビー・ハスといった個性豊かな先輩俳優たちのなかで紅一点でしたが、現場はどのような雰囲気でしたか?ラウダーさん私のことをみなさんが両手を広げて迎えてくれるような、本当にオープンな環境だったと思います。そのおかげで、私はほかの人たちに比べて自分のキャリアが短いことを気にする必要もまったくありませんでした。私にとっては初めて主演級の役を演じた現場でしたが、監督も共演者も私の意見や私がどう思っているのかをとても尊重してくれたので、そういう意味でも本当にありがたかったです。あとは、とにかく楽しい現場でもありましたね。特に面白かったのは、トビー・ハス。監督も「どんどんやってくれ!」と言っていましたが、彼の演技はアドリブ満載なので、私も大笑いしてしまいました。あまりにも共演者の方々の演技が面白かったので、私がいないときにみんながどんなことをしているのか、現場で何が起こっているのかを知りたくて、出番がない日でもわざわざ撮影を見に行ったほどです。―激しいアクションシーンでは、鍛え上げられたしなやかなスタイルが非常にカッコよかったです。体づくりで実践されていることや日課として続けていることはありますか?ラウダーさんまず、映画のためには銃の扱い方やさまざまなファイトシーンなどをスタントチームとともに、一生懸命トレーニングしました。個人的に大好きでしているのは、ムエタイ。有酸素運動にもなりますし、コアを鍛えるのにはとても役に立っていると感じています。すべてのことに全力を尽くすのが信念―劇中に登場する殺し屋のボブ・ヴィディックは、「何が何でも任務を完遂する」というルールを持っている男。ヴァレリーも正義を貫くキャラクターでしたが、ラウダーさんご自身が貫いている信念といえば?ラウダーさん私が大切にしていることのひとつであり、最高の方針としても掲げているのは正直さ。そして、「やるならすべてのことに全力を尽くす」ということも大事にしています。そういった思いもあり、心がけているのは、たとえ誰も見ないような小さな作品だったとしても、大きな作品と変わらず自分のベストを尽くすことです。なぜなら、私が成長していろんな作品に出るにつれて、人々は過去の作品も観ることになりますからね。そのときに、いかに自分が一貫した人間であるかを見せられるかが重要だと考えているので、それらはすべて次につながっていくと思っています。―仕事のオンオフを切り替えるうえで意識されていることがあれば、教えてください。ラウダーさん最近は、ドラマシリーズや何本も映画を撮っていたので、本当に仕事ばっかりですね(笑)。でも、仕事が少なかった時期には、これくらい仕事をしたいと思ってがんばってきたので、忙しい状態が続いていますが、すごくハッピーでもあります。なので、「これが終わってほしくないなぁ」と思っているほどで、次はどんなお仕事ができるか楽しみにしているところです。そういったこともあって、オフタイムのときは何をしていいかわからなくなってしまうことも(笑)。そんなときはムエタイに行ったり、忙しくて観れなかったドラマや映画をまとめて観たりして過ごしています。―多忙な日々のなかで、ご自身なりのご褒美みたいなものはありますか?ラウダーさん毎日ではありませんが、大変な仕事を終えて家に帰ったときには、鏡に映る自分に向かって「あなたのことを誇りに思っているわよ」と自分自身に話しかけるようにしています。そんなふうに、自分に優しくすることが一番大切じゃないかなと考えるようになりました。あとは、乳製品を使っていないお気に入りのアイスクリームがあるのですが、それを食べているときです(笑)。―身も心も癒されるいい方法ですね。では、今後挑戦してみたいことがあれば、お聞かせください。ラウダーさんこれまでいろんなジャンルの作品に携わってきましたが、まだ経験したことがないのがラブコメ。ぜひ、そういった作品に出演してみたいです。気になることがあれば、まずは一歩踏み出してほしい―これまでとは違うラウダーさんを楽しみにしています。いよいよ日本で公開を迎えますが、日本に対してはどんな印象をお持ちですか?ラウダーさん残念ながら、日本にはまだ行ったことがありませんが、すごく楽しそうな国だと思っています。あと、日本が舞台の映画で見たことがある田舎の景色もいいですよね。田んぼがいっぱい広がっているようなところにぜひ行ってみたいです。それから、テクノロジーが進化していたり、芸術的な建物があったりするので、いつか自分の目で見ることができたらいいなと。街が清潔なところにもすごく感心しているので、すぐにでも行きたいくらいです!―お待ちしております。それでは最後に、ananwebを読む日本の女性たちに向けてメッセージをお願いします。ラウダーさんみなさんに推奨したいことは、「何か自分のなかにひっかかるものがあったら、それに向かって一歩を踏み出してみる」ということです。それがどこにつながっていくかはわかりませんが、そこがきっかけとなり、自分がやるべきことが見つかる場合もありますから。ちょっとでも気になることや惹かれるものがあれば、全力を尽くしてやってみてください。そういう行動を取ること自体、自分にとって非常にパワフルなものになると思います。それから、本当に嫌なことがあれば、「No」というのも大事なこと。これは私が子どもの頃の話ですが、ある日、学校に行く前に母から「今日はすべてのことにNoと言いなさい」と言われたことがありました。たとえば、「鉛筆貸して」と言われても、「外に遊びに行かない?」と言われても、すべてにおいて答えは「No」。実はこれは、「No」を言う練習だったのです。というのも、みなさんも知っているように「No」と言うのは誰にとってもパワーが必要ですよね?大変なことだからこそ、ある程度練習をしておくと、本当に嫌なことがあったときに「No」と言えるようになるので、そんな方法もあるということは伝えておきたいです。いずれにしても、自分が嫌だと感じることがあれば、きちんと「No」と伝えることは大切なことだと思います。インタビューを終えてみて……。劇中ではタフで強靭な女性でしたが、実際はチャーミングな笑顔が印象的なラウダーさん。日本語の挨拶を覚えてきてくれており、がんばって話そうとくださる姿がとてもかわいらしくて一瞬で魅了されました。今後、さらなる活躍に大注目です!衝撃展開の連続に心も体も熱くなる!留置場という閉ざされた空間のなかで繰り広げられるのは、予測不能はバトル・ロイヤル。クセモノたちによるスリリングな騙し合いはもちろん、生き残りをかけた壮絶な戦いに誰もが釘付けになってしまうはずです。取材、文・志村昌美ストーリーある夜、砂漠地帯にたたずむ警察署に連行されてきたのは、暴力沙汰を起こした詐欺師テディ。マフィアのボスに命を狙われているテディは、避難するためにわざと逮捕されたのだが、留置場の向かいには、マフィアに雇われた殺し屋ボブが泥酔男に成りすましてやってきた。新人警官ヴァレリーの活躍によって、ボブのテディ抹殺計画は阻止されたように見えたが、マフィアが放った新たな刺客として現れたサイコパスのアンソニーによって、小さな警察署は大惨事となってしまう。果たして、この一夜限りの壮絶な殺し合いを生き抜き、朝を迎えられるのは一体誰なのか……目が離せない予告編はこちら!作品情報『炎のデス・ポリス』7月15 日(金)より TOHO シネマズ 日比谷他にて全国公開配給:キノフィルムズ©2021 CS Movie II LLC. All Rights Reserve
2022年07月14日野田秀樹さんによるNODA・MAP が2019年に発表した『Q』:A Night At The Kabukiは、QUEENの傑作との呼び声の高いアルバム『オペラ座の夜』の楽曲を使い、『ロミオとジュリエット』のふたつの家の対立を源氏と平家の戦いに置き換え、恋人たちのその後を描いた作品。今回、初演のキャストが全員集結しての再演、さらにロンドンと台北での海外公演も決定。主要キャストの志尊淳さんにインタビューしました。楽しんで作っている姿にプロフェッショナルを感じました。「NODA・MAPに携わる前は、野田(秀樹)さんが思い描く世界を自分がどれだけ体現できるかを求められるんだろうと思っていたんです。でも入ってみたら、誰もが自由に意見を言い合える雰囲気で、野田さんは舵取り役という感じ。それって自分の意見にこだわらず、作品をよくする方を重視しているということですよね。しかも、全員がそれを楽しんでやっていて、すごいプロフェッショナルを感じました。すべてが詰まった現場でした」初演の思い出をそう語った志尊淳さん。野田さんは「違うときは言ってくださるけれど答えは言わない。それでもつねに俳優の味方でいてくれる」演出家。初演時、その野田さんから要求されたのは舞台上を駆け回ること。「なんでこんなに走れって言われるんだろうと思っていたんです。でも周りから、走る姿に若い青春感や疾走感、キラキラ感を感じたと言われて、言葉以外の肉体で表現できるものがあるんだと知って。僕は先輩方のように意見が言えないけど、走ることで役を少しでも広げることができたかなと思っています」志尊さんが演じた若き日の瑯壬生(ろうみお)の“それから”を演じたのは上川隆也さん。「上川さんの瑯壬生を見たとき、誠実さがものすごく伝わってきたんですよね。僕の瑯壬生は、まだ理性が伴っていなくて荒々しさがあるんですが、その後の後悔があって上川さんの瑯壬生にたどり着く。その道筋を作るうえで、人との対峙の仕方など“誠実さ”が僕の中で重要なキーワードになっていました」初演から3年。再演への気負いはない。「海外ツアーをやらせていただけるのは嬉しいですが、今回はこう見せていきたい、みたいな意気込みはないです。へんに構えたり気負ったりせず、あくまでも楽しくやることを目標にしたいです。NODA・MAPに参加するまで、僕、ずっと仕事100%で生きてきたんです。でもNODA・MAPの現場には、“楽しい”の延長線上に創造的なものづくりがあって、それまで抱いていた仕事観や価値観が大きく覆されました。楽しんで仕事に取り組むためには、休息も必要だと思えるようになったのも大きいです。それまでは事務所に休みはいらないですって言ってたくらい(笑)。俳優人生で大きな転機になった作品です」また、野田作品は、数あるエンタメの中でも、舞台ならではの魅力を実感できる場所。「物語どうこうだけではなく、俳優の体と、その熱量から感じるものがたくさんあるはずです。20代から60代までの肉体の全力が交わる瞬間を見ていただきたいです」NODA・MAP 第25回公演『Q』:A Night At The Kabuki初演時には第27回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞。今回オリジナルキャスト10名全員が再結集。7月29日(金)~9月11日(日)東京芸術劇場プレイハウス、10月7日(金)~16日(日)大阪・新歌舞伎座にて上演。NODA・MAP TEL:03・6802・6681撮影・篠山紀信(写真は2019年初演の舞台から)しそん・じゅん1995年3月5日生まれ、東京都出身。2011年にデビューし、’18年のドラマ『女子的生活』で文化庁芸術祭テレビ・ドラマ部門放送個人賞などを受賞。近作に映画『バブル』などがある。ニット¥154,000パンツ¥121,000ジャケット¥346,500シューズ¥117,700(以上GUCCI/グッチ ジャパン クライアントサービス TEL:0120・99・2177)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年7月13日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・九(Yolken)ヘア&メイク・礒野亜加梨(studio mamu)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年07月11日発表する作品が常に“演劇的事件”となる、野田秀樹さんによるNODA・MAPの舞台。2019年に上演した話題作『Q』:A Night At The Kabukiがこの夏、奇跡の再演を果たす。初演と同じ豪華出演陣、しかもロンドン&台北公演も実現。主要キャストの広瀬すずさんにインタビューしました。頭では理解できていなくても、やっていてすごく心地よかった。本作『Q』:A Night At The Kabukiで初舞台を踏んだ広瀬すずさん。セリフに言葉遊びを用いた重層的で一筋縄ではいかない戯曲に、舞台を駆け回り俳優の肉体を駆使する演出。さぞや苦労を…と思ったら、「野田(秀樹)さんがおっしゃることに違和感が全然なくて、初舞台がここでよかったです」と笑顔で前回を振り返った。「野田さんのホンは読むだけじゃわからない部分がいっぱいあって、これを簡単に理解しようなんて無理だと思い、最初から頭で考えることを諦めていました(笑)。稽古場で動きながら…共演の方々の顔を見て、声を聞いて、お芝居を見て、どさくさに紛れて動いていると、なんとなくですが自分の居方が見えてくる。野田さんは動きや声のことくらいで、細かいことはあまりおっしゃらないんですが、稽古を重ねながら間を丁寧に埋めていく感じもあって。全部を理解できたわけじゃないのに、やっていてとても心地よかったです」ロミオとジュリエットが生きていたら…を綴った物語の中で、若き日の“源の愁里愛(じゅりえ)”を演じた広瀬さん。同役の“それからの愁里愛”を松たか子さんが演じたが、「終始ずっと松さんという存在に圧倒されていた」とか。「松さんの愁里愛は、強くて揺るがないものを持ちながらも、ふとした瞬間フニャッてなる…それは弱さじゃなく、過去と接して一瞬迷ったりする。その姿がすごく好きでした。全部が全部すごいのにご本人はとてもフラットで、そこもかっこいいんですよね」愁里愛の強さと憂い、舞台に立つ際の淡々とした大胆さは、広瀬さんにも通じるもの。「仲良くさせていただいている大原櫻子ちゃんの舞台を観に行ったとき、感情をパンパンになるまで溜め込んで、なにかの瞬間、蓋が開いて心が開放されていく感じにやられたんです。やる側は大変だけど観ていてすごく気持ちよくて。この作品での愁里愛の感情の出し方に、すごく参考にさせてもらいました」今回の再演では、なんと海外ツアーも。「さすがNODA・MAP(笑)。私はもはや“これが初舞台”くらいの顔で、野田さんと松さんについていけばいいやという心持ちです。ただ前回、『めちゃくちゃ早口だったよ』と言われたので、滑舌だけはよくしようと」舞台でも映像でも、その場その瞬間に生まれてくる感情や感覚が好きだと言う。「無条件に楽しいんですよね。私たちがやっているのは作りものの世界だけれど、ふとしたときに、ものすごく意味があるように思えたり、本当だと信じられたりする瞬間があるんです。それがすごく面白いんですよね」NODA・MAP 第25回公演『Q』:A Night At The Kabuki初演時には第27回読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞。今回オリジナルキャスト10名全員が再結集。7月29日(金)~9月11日(日)東京芸術劇場プレイハウス、10月7日(金)~16日(日)大阪・新歌舞伎座にて上演。NODA・MAP TEL:03・6802・6681撮影・篠山紀信(写真は2019年初演の舞台から)ひろせ・すず1998年6月19日生まれ、静岡県出身。2012年にデビューし、数々のドラマや映画で活躍。初演『Q』で初舞台ながら紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。近作にドラマ『津田梅子』、映画『流浪の月』など。衣装協力・JOTARO SAITO(ジョウタロウ サイトウ/JOTARO SAITO GINZA SIX店 TEL:03・6263・9909)※『anan』2022年7月13日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)着付け・大竹恵理子ヘア&メイク・奥平正芳取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年07月10日1906年に出版された、島崎藤村の小説『破戒』。これまで、木下恵介監督と市川崑監督により映画化された不朽の名作が、60年ぶりに、前田和男監督により映画化された。主人公の瀬川丑松を演じたのは、間宮祥太朗さん。被差別部落に生まれ、父の戒め通りに出自を隠して小学校教員になった丑松の、苦悩を描いた難役に、どのような想いで挑んだのだろう。「なぜ、今また映画化するんだろう、と考えながら原作と脚本を読みました。その上で、物語が持つ普遍性を語り継ぎたいという製作陣の意志にも納得して、ぜひ演じさせてほしいとお返事しました。部落差別をテーマにした作品ですが、現代にも、人種差別や新たに名前のついた多くのハラスメントなどが存在します。僕自身、学生時代に学校の授業で習っていた時よりも、差別を身近に感じているからこそ、今やる意味があると思ったんです」暗く、重いテーマと向き合い、気迫のこもった芝居で、芯の強い、そして純粋な丑松の人間性を丁寧に演じきった間宮さん。「同僚や上司、生徒たちに対して、立場や年齢ではなく、対ひとりの人間として向き合うのが、丑松の素敵なところ。全てのお芝居に悩みましたが、生徒たちに自分の出自を告白し、戒めを破るシーンに向けて、逆算しながら演じていきました。それは、熱量の配分というより、結末に向かうために進むべき道を通るという感覚かな。プレッシャーを感じていた重要なシーンだったので、撮り終えたあとは、ホッとしました」一方で、石井杏奈さん演じる志保と、言葉は交わさなくとも惹かれ合う描写が、とても美しい。「言葉もツールも多い今の時代とは違い、丑松と志保の、気持ちを隠しているのに溢れ出てしまう感じは、僕もすごく素敵だと思う。可愛らしい二人を、もどかしく感じてもらえたらいいなって。また、繊細な表情の移ろいや、あえて丑松の面持ちがわからないように後頭部だけを撮ることで、どんな表情をしているんだろうと、観ている人が作品にまた一歩近づくと思っていて。そんな、説明しすぎない余白みたいなものを生み出した、監督の手腕も活きていると思います。丑松を演じた僕が思う『破戒』があり、みなさんがそれぞれ感じる『破戒』があるはず。そうやって、この作品が広がって、想いが増えていけば嬉しいです」映画やドラマなど、出演作をどんどん増やし、多彩なお芝居でエンターテインメントを届けてくれる間宮さんが、役者として大切にしているのはどんなことだろう。「(少し考えて)作品や役によって、大切にしていることが変わることかな。例えば、『ナンバMG5』の難波剛と、丑松がそれぞれ大切にしていることは違うから。切り替えるというよりは、現場に入れば自然と変わります」プライベートでは、今まであまり触れてこなかったエンターテインメントに惹かれているそう。「ピクサー映画や、日本の昔のテレビドラマなどを見るようになりましたが、この前たまたま行った『ムーミンバレーパーク』もすごく新鮮で。ムーミンママの“今は絶対に旅に出るべき。じゃないと、家族が悪い方向に向かう気がするの”という言葉が素晴らしくて、家族で気分転換するという発想は刺激になりました」映画『破戒』亡くなった父からの戒めで、被差別部落出身であることを隠して、地元を離れ、小学校教員として奉職する瀬川丑松(間宮)。生徒から慕われるよい教師であったが、出自を隠していることに悩み、差別の現状を体験するたびに心を乱しつつも、下宿先の士族出身の志保(石井杏奈)に、恋心を抱いていた。そんな時、丑松はある事件をきっかけに、決意を胸に教え子たちが待つ最後の教壇に立つことに…。7月8日より全国ロードショー。まみや・しょうたろう1993年6月11日生まれ、神奈川県出身。主演作に映画『殺さない彼と死なない彼女』、ドラマ『ナンバMG5』ほか。ドラマ『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)に出演。ジャケット¥84,700(UJOH/M incorporated TEL:03・6721・0406)パンツ¥33,000(NEPHOLOGIST)シューズ¥132,200(Christian Louboutin/Christian Louboutin Japan TEL:03・6804・2855)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年7月13日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・津野真吾(impiger)ヘア&メイク・三宅 茜取材・文・若山あや(by anan編集部)
2022年07月08日孤島に生活しながら、俗世の汚れを浄化し、“安住の地”へ出発するための修行を行っている、2人の男と1人の女。純粋な信仰心を貫いていたはずの3人は、ある日を境に次第に欲望を抑えきれなくなり、性への解放に目覚め、暴走していく…。映画『ビリーバーズ』の原作は、山本直樹氏の同名漫画で、1999年に週刊漫画雑誌に連載された当時から“問題作”といわれてきた。実写化したのは、学生時代より山本作品のファンであるという城定秀夫監督だ。主演を務めたのは、磯村勇斗さん。意外にも映画初主演だという。「原作を読んだ時に、これをどう実写映画化するんだろう…とは思いましたが、それ以上に好奇心が上回りました。俳優をやっていて、人間の本能がこんなにもむき出しになっていく役柄に出合う機会は、そうそうないんです。本能の中でもエロスの要素が強い作品ですが、僕が演じた“オペレーター”と“副議長”(北村優衣)、“議長”(宇野祥平)の3人の純粋な信仰心とエロスとのバランスや、せめぎ合いみたいなところにすごく惹かれて、この世界を生きてみるのも面白そうだな、という直感がありました」体を絞り、髭を蓄えて挑んだ磯村さん。クランクイン前日は嵐の中、撮影地に置かれた何もないコンテナに泊まり込んだという。「作品によって、役作りのアプローチは毎回違いますが、いろいろ試しながら、必要であれば自分に刺激を与えたりもします。今回、3人で事前に本読みをしたのは1度だけでしたが、撮影初日から役にすんなりと入っていたので、それぞれがしっかり作り込んできたんだと思います。テーマ性が強いだけに、この3人の俳優が好相性だったというのもよかったのではないでしょうか。そのうち現場での生活にも慣れ、虫や日焼けが気にならなくなったし、裸で立っていても違和感がなくなりました。争いが絶えず、未知のウイルスが蔓延しているような“常識”の世界が実は“異常”で、純粋な僕たちが正しい、と思える気持ちもわかるようにもなって。そういうふうに、生きる世界によって考え方が真逆になるというのも面白かったし、3人の心情がどんどん壊れていきながら、欲望の解放に向かっているところが、この作品の面白さだと思いました。問題作とはいわれていますが、全然問題じゃないと思います(笑)。構えずに、ラフに観ていただきたいです」今年公開の出演映画は7本にも及ぶ売れっ子は、「何でもやること」が俳優としての信念だと話す。「僕たち俳優がしっかり役に向き合って演じることで、社会に届けられるものがきっとあるだろうと思っています。観てくださる人がいるから、僕はお芝居ができる。その意味や役割を大事にしながら、刺激を受ける作品に挑戦し続け、みなさんを驚かせ続けたい。内に秘めたものを、ポンと発散させるのが好きなので、振り切ることにも昔から壁みたいなものはないんです。だから今作のオペレーター役も、もう一人の僕が上から俯瞰で見ていて…って、この作品でこれを言うと、ヤバさが増してしまいますが(笑)。でも、エンターテインメントを届ける立場として、観てくださる人のためというのはもちろん、日々闘志を燃やしている作り手の人たちのためにも、頑張りたいと思うんです」いそむら・はやと1992年9月11日生まれ、静岡県出身。『前科者』『ホリック xxxHOLiC』ほか出演作多数。出演映画『PLAN 75』が現在公開中。『異動辞令は音楽隊!』は8月26日、『さかなのこ』は9月1日公開予定。シャツ¥24,000(kenichi/サカスPR TEL:03・6447・2762)ニットベスト¥39,600(DISCOVERED TEL:03・3463・3082)ブレスレット¥53,900(All Blues/エドストローム オフィス TEL:03・6427・5901)その他はスタイリスト私物映画『ビリーバーズ』“ニコニコ人生センター”という宗教的な団体に所属する3人は、“孤島のプログラム”を遂行するために、無人島で共同生活を送っていた。純粋な信仰心のもと、飢えに耐え、煩悩を抑え込む限界ギリギリの日々を過ごすうち、3人の間に、愛と欲と猜疑心が交錯し始める…。7月8日(金)より全国公開。※『anan』2022年7月13日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・齋藤良介ヘア&メイク・佐藤友勝取材、文・若山あや(by anan編集部)
2022年07月08日まもなく公開される映画のなかで、60年振りに映画化されることでも関心を集めている『破戒』。そこで、日本文学における不朽の名作に挑んだこちらの方々にお話をうかがってきました。間宮祥太朗さん、石井杏奈さん、矢本悠馬さん【映画、ときどき私】 vol. 499間宮さんが演じたのは、亡き父から強い戒めを受け、被差別部落出身者であることを隠し続けて苦悩する主人公の丑松(うしまつ)。そして、その丑松が想いを寄せる士族出身の志保役を石井さん、さらに丑松の同僚であり親友でもある銀之助役を矢本さんが務めています。今回は、現場での忘れられない思い出やそれぞれのターニングポイントなどについて、語っていただきました。―共演された感想からおうかがいしたいのですが、まずは間宮さんから見た石井さんの印象を教えてください。間宮さんもともと凛とした雰囲気を持っている女優さんだなと思っていましたが、それが今回の志保という役をより魅力的にしていると感じました。所作にも哀愁のようなものが含まれているので、立ち姿だけで説得力がある方だと思います。―また、親友役にプライベートでも親交の深い矢本さんが決まったときはいかがでしたか?間宮さん悠馬に関しては、もはや印象も何もないですよね(笑)。でも、銀之助が丑松にとっていかに重要な存在だったのかがわかっていたので、その役を悠馬がやってくれると聞いたときに、これは間違いないものになるだろうなと。そういった確信と安心感がありました。矢本さん僕は、はじめは本当の友達だからオファーされたのかなと(笑)。でも、台本を読んでみると、僕が銀之助を演じる重要度やキャスティングの意図は汲み取れたので、納得のいく形で最後まで緊張感を持って務めあげられました。ただ、最初に聞いたときは、また一緒かと笑っちゃいましたが……。2人の間にしか流れていない緊張感があった―やっぱり照れ臭い部分があるのでしょうか。矢本さんいやぁ、本当は共演なんてしたくないですよ!間宮さんあははは!矢本さんだって、みなさんも同じだと思いますが、仕事場にプライベートの友達がいるとこそばゆくないですか?まさにそういう感じです。でも、今回は題材として根底に重いものが流れているなかで、友達としての関係性をゼロから築いていくのはしんどいところもあったの思うので、そういうなかで仲のいい連れと親友役ができたというのよかったです。おかげで最初から芝居だけに集中できたので、ストレスなく気持ちがいい状態で現場に入ることが出来ました。―石井さんから見た間宮さんはいかがでしたか?石井さん本当に裏表のない方なんだろうなと思いましたが、私が京都で見た間宮さんは、佇まいなどすべてが丑松さんという印象でした。なので、取材でお会いした際、「こんなに笑う方なんだ」と思ったくらいです(笑)。間宮さん確かに、普段はラフですけど、今回の志保と丑松は、2人の間にしか流れていない緊張感みたいなものがある関係性だったので、現場ではお互いにあまりしゃべる感じではなかったよね。―長年一緒にいる矢本さんから見て、本作での間宮さんの魅力といえばどんなところでしょうか。矢本さん今回は、不完全燃焼な人生に葛藤するようなところがあり、いままで祥太朗が演じてきたなかでも精神的なカロリーが高い役。それだけに、台本を読んでいるときからどうやってこれを演じるんだろうかと考えていました。というのも、いつもは何となくどういう感じで祥太朗が肩を作ってくるかわかるんですけど、今回はどんな球種かもまったく見えないまま。だからこそ、この現場で祥太朗を見るのは新鮮でした。それに、僕の銀之助は祥太朗の丑松を見てからではないと完成しない役だったなと思います。この現場でもう一度初心に返ろうと思えた―石井さんにとっても、そんなおふたりの存在は大きかったのではないかなと。石井さんそうですね。私はあまり時代劇の経験がなく、京都の撮影所も初めてだったので、とても緊張していましたが、おふたりが他愛のない話で盛り上がっていたり、テンションが高く元気だったおかげで、リラックスして演じることができました。―ほかにも、幅広いキャストが揃っていましたが、印象に残っている方は?間宮さん僕は、大先輩の石橋蓮司さんですね。矢本さんいや、もう大、大、大先輩ですよ。間宮さん撮影中に天候の関係で、人力車に乗ったり降りたりを何度も繰り返していたことがあり、すごく大変そうでしたが、人力車の上で前のめりの状態のままでも、何も言わずにじっと止まっていらっしゃる姿がすごく印象的で。本当に優しい方なんです。矢本さん僕は、本田博太郎さん。いままでもけっこう共演しているんですが、こういう緊張感のある作品でもいつも通りで、「俺は爪痕を残すことしか考えていない!」とおっしゃっていたんですよ。博太郎さんほどの大先輩で、あの年齢で、もう十分されてきたのに、まだ爪痕を残そうという精神と役者としての欲深さみたいなものがすごいなと。自分も若手の頃から考えると、そういう欲が少し減ってきていたので、焦りも感じましたし、いい刺激になりました。俺もこうじゃないといけないな、みたいな。間宮さん確かに、爪痕残そうと思わなくなったら終わりだよね。矢本さん役者になりたてのころに、「80歳まで爪痕残すんだ!」と言っていたことを思い出して、もう一度初心に返ろうと思いました。ターニングポイントで人生が大きく変わった―丑松は戒めを破ることで、人生の新たな一歩を踏み出していきますが、みなさんにとって大きなターニングポイントを振り返るとしたらいつですか?間宮さん実は、一昨日ある番組を収録したときに気がついたんですけど……。矢本さんえまさか一昨日がターニングポイント?もしかして、いまはターニング後に会えてるってこと?間宮さん違う違う!そんなピンポイントじゃないから(笑)。でも、僕は今年ですね。『破戒』という歴史のある文学作品で主演をさせていただき、ゴールデンタイムでドラマ初主演、さらに3クール連続でドラマにも出させていただいているところなので。とはいえ、いまは渦中にいるからわからないですが、何年かして振り返ったときに、今年がターニングポイントだったと感じるのではないかなと。そういう年を経験してから30代に突入できるというのは、今後意味を持つような気がしています。石井さん私は2年前にアーティスト活動と女優業の両立から、お芝居一本にしようと決めたときです。ただ、私もまだまだがむしゃらに進まなければいけない時期で、振り返る余裕はないですが、みんなで話し合いをしながら決めたことでもあるので、そこがターニングポイントだと思います。実際、人生は大きく変わりました。矢本さん僕は明確にあって、役者を始めた初日です。実は、それまでは友達からおもしろいとチヤホヤされていて、僕は自分のことを天才だと思ってたんですよ(笑)。でも、大人計画の研究生として先輩たちの舞台稽古を見学していたら、アドリブがあまりにおもしろくて「役者とはこんなバケモノしか活動できないものなのか。俺なんてただの凡人じゃないか」と打ちのめされまして……。その翌日には、「役者をやめたいです」と言っていました(笑)。でも、あの日の“洗礼”というか、挫折がなかったらいまみたいに自分のやりたいことに対して心を強く持てなかったと思うので、1日目に地面に膝がついて本当によかったです。自分は何者でもないと思いながらやっている―みなさんは、ご自身に課している“戒め”はありますか?矢本さん僕は調子に乗りやすいので、天狗にならないように、つねに自分に言い聞かせています(笑)。いまは、バイプレイヤー的な感じの立ち位置なので自分をキープできていますが、もし一気に売れるようなことがあったら危険だなと。実際、もしいまの若い子みたいにスターになるようなタイプだったら、半端なく嫌なヤツになっていたでしょうね。なので、「俺は何者でもないんだ」と思いながらやっています。間宮さん戒めというわけではないですが、仕事に関することだと、僕たちの場合は作品ごとに職場自体が変わって、雰囲気も全然違うので、そこに対応できる柔軟さは持ち続けていたいですね。自分がしたいことを貫くというよりも、その現場の空気に合った自分の居方(いかた)をそれぞれで見つけていきたいなと思っています。石井さん私も戒めではないかもしれませんが、何事も嫌いにならずに、楽しみたいという心意気を持つようにしています。つらいことがあったとしても、それによって何かを嫌いになりたくないので、まずは楽しむことを大事にしながら日々を過ごしているところです。自分の好きなことをしているときが一番魅力的―それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いします。石井さんこの映画は、若い世代の方にも観ていただきたい映画になっているので、多くの方に届いてほしいなと思います。矢本さん僕は、女性というのは、年を重ねれば重ねるほどキレイになると思っているので、それだけを伝えたいですね。間宮さん(笑)。ここってそういうコーナーなの?じゃあ、とりあえずその系統に合わせると、女性は自分の好きなことを心から楽しんでいる姿が一番魅力的だと思います。あと、映画に関して付け加えると、最近は恋愛リアリティー番組とかで、男女が公の場でイチャイチャする姿に見慣れてきたかもしれませんが、志保と丑松はプラトニックな関係。ただ目が合うだけでも、指が触れそうになるだけでもドキドキするようなところがあり、僕もそこがいいなと思ったので、そういった奥ゆかしい感じも楽しんでいただきたいです。インタビューを終えてみて……。大変な撮影をともにしたからこそ生まれたお互いへの信頼感も伝わってきた間宮さん、石井さん、矢本さん。3人揃っての取材は今回が初ということでしたが、緊張感の漂う劇中とは違い、とてもリラックスした笑いの絶えない取材となりました。いつもとはまた違う表情を見せるみなさんの熱演は、ぜひスクリーンで堪能してください。自らの信念を持って未来を切り開く!生きていくうえで誰もが抱える葛藤や人間としての尊厳など、現代にも通じるものが描かれている本作。“戒め”を破った先に開けた道へと向かって歩いていく丑松の姿、そして胸を締め付ける恋模様にも心を揺さぶられる渾身の1本です。写真・角戸菜摘(間宮祥太朗、石井杏奈、矢本悠馬)取材、文・志村昌美ストーリー自分が被差別部落出身ということを隠し、地元から離れた小学校で教師として勤めていた瀬川丑松。彼は出自を隠し通すように、亡くなった父からの強い戒めを受けていたが、そのことに悩み、差別の現状を体験するたびに心を乱されていた。そして、下宿先の娘で士族出身の女性・志保への恋にも心を焦がすことに。友人の同僚教師・銀之助に支えられながらも、苦しみのなかにいた丑松は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎に傾倒していく。そんななか、学校では丑松の出自についての疑念もささやかれ始め、丑松の立場は危ういものになっていくのだった……。胸に刺さる予告編はこちら!作品情報『破戒』7月8日(金)丸の内TOEIほか全国ロードショー!配給: 東映ビデオ©全国水平社創立100周年記念映画製作委員会写真・角戸菜摘(間宮祥太朗、石井杏奈、矢本悠馬)
2022年07月07日これからジメジメとした季節に入りますが、そんな気持ちも笑いで吹き飛ばしてくれるオススメの映画といえば、大ヒットドラマから誕生した『極主夫道 ザ・シネマ』。そこで、本作の見どころについてこちらの方にお話をうかがってきました。玉木宏さん【映画、ときどき私】 vol. 491超コワモテの元極道でありながら、いまや“最強の専業主夫”となった主人公・龍を演じる玉木さん。2020年にドラマ化された際には、これまでのイメージを覆すコミカルな演技も大きな話題となり、幅広い層から人気を博しています。今回は、映画版の撮影秘話だけでなく、自身が好きな家事や育児で大事にしていることなどについて、語っていただきました。―ドラマが終わってから映画の撮影に入るまでの間は、まったく違うタイプの役を演じられていましたが、すぐに戻ることはできましたか?玉木さん間隔が1年ちょっと空いていたこともあって、肉体面などの準備が大変なところはありました。でも、実際に撮影に入ってみたら、監督をはじめスタッフがドラマのときと同じだったので、頭で思っていたよりも体が勝手に動いていくような感覚。安心した環境下で撮影できてよかったです。―この役を演じるうえでは、顔の動かし方からセリフの言い回し、アクションなど、求められる要素が多いですが、玉木さんにとって一番の苦労といえば?玉木さん肉体づくりやハイテンションな演技が注目されていることもあって、最近忘れられがちで、まったく触れられなくなっていますが、関西弁で話していることが意外と大変です。現場では方言指導の先生がそばについてくださっていますが、ちょっとしたニュアンスが出せないストレスがあったりするので、本来自分の言葉ではない関西弁へのチャレンジに難しさを感じました。ゲストのみなさんから学ぶことは多かった―本作では個性豊かな共演者の方々とご一緒でしたが、なかでも印象に残っている方について教えてください。玉木さん今回、ゲストとして出ていただいた吉田鋼太郎さん、松本まりかさん、安達祐実さんのお三方は、本当に三者三様ですごかったです。特に、鋼太郎さんはエネルギッシュな方なので、この作品にパワーを与えてくださいましたし、現場の士気も鋼太郎さんのおかげで高まっていくのを感じました。今回のような特殊な役でも説得力を持って演じられる人は、ほかにいないと思います。松本さんとは、以前にも共演したことがありますが、コミカルな現場は初めて。彼女は役や仕事に対して高い熱量を持ちつつ、繊細な部分も持ち合わせているので、人を惹きつける力がすごくある女優さんだと思っています。安達さんは同世代ではありますが、僕が幼い頃から活躍されているので、すべてにおいて達観している方だなという印象を受けました。技術面や見せ方など、勉強になることが本当に多かったです。―アドリブが多いシーンなどもあったのでしょうか。玉木さん僕と滝藤(賢一)さんと松本さんは、それぞれ方言でしゃべる役ということで、あまり自由が効かないというのはありました。でも、隙間を埋めるのも僕らの仕事。台本をベースにしながら、テストの段階でいろいろと相談して作り上げていきました。苦労したのは、アクションシーンが多かったこと―なるほど。ちなみに、武器屋を演じているくっきー!(野性爆弾)さんとのシーンはみなさん素で笑っているようにも見えましたが……。玉木さんあのシーンでは、だいたい7~8分ほど長回しをしていたと思いますが、そのなかでまったく使えない部分もありました(笑)。それをうまく編集して本編に使われていますが、あれだけの長い時間を武器だけで大喜利し続けるくっきー!さんはさすがですね。くっきー!さんに関していうと、セリフで決められているのはひと言だけで、あとは全部アドリブ。最初にカメラ位置と照明だけ決めたらいきなり本番なので、それであれだけ続けられるのは、本当にすごいことだと思います。―やはり芸人さんと俳優さんでは、違いを感じる部分も多かったですか?玉木さん全然違うと思います。特に、瞬発力だけでなく、そこにプラスして人を笑わせるというのはすごいことなんです。しかも、センスも秀逸。そういったことを瞬時に出せる人は、俳優にはほとんどいないと感じたほどでした。―では、玉木さん的に一番苦労したシーンといえば?玉木さんドラマのときに比べるとアクションシーンが多かったので、撮影期間中の1か月間は、これでもかというくらいアクションをしていた気がしています。派手に見せたいですが、けがをしてしまったら元も子もないので、とにかく安全第一で進めることを心がけていました。家族のために料理をすることが楽しい―本作では、実際の家事に役立つような内容もたくさん含まれていますが、この役を演じるようになってから私生活に取り入れていることはありますか?玉木さんたとえば、ドラマのときにしていたTシャツのたたみ方とか、映画で出てくる観葉植物の掃除の仕方とか、役に立つことが多いなと感じています。僕自身も共働きということもあり、家事を自分ですることがあるので、興味深い時期にこういう作品に巡り合えてよかったなという思いです。あと、これはつい最近ですが、ずっと探していたものが洗濯機の裏に落ちていたので、それを取ろうとしたときのこと。殺陣の練習用として昔から持っていた木刀に薄手の布を巻いて取り出したんですが、そのときにこのシチュエーションは龍っぽいなと自分でも思いました(笑)。―確かに、まさに龍ですね。では、玉木さんが一番得意な家事といえば何ですか?玉木さんもともと好きなのは、料理です。ただ、いまは自分のためだけでなく、家族の分も含めて作るようになりました。子どもは味付けを少し薄くしないといけないので、同じメニューでも子ども用と大人用を同時に作っていて、それがすごく楽しいです。―本作には、小さいお子さんが登場しますが、ご自身も2年前にお子さんが誕生されているので、父親役を演じるうえで意識に変化などもあったのではないかなと。玉木さんそうですね。以前から子ども好きでしたが、いまは撮影の待ち時間に子役のケアもできるようになりました。特に、今回はまだ仕事をしていることを理解できない年齢の子どもだったので、たとえ記憶に残っていなくても楽しいと思いながら撮影してほしいなと。共演者も子ども好きな人たちばかりだったこともあって、セットのなかにあった人形やおもちゃを使って一緒に遊んでいました。本当にいい子でした。何でもできて、何にでもなれる人になりたい―玉木さんといえば、サーフィンやキャンプ、船舶の免許など、幅広い趣味をたくさんお持ちですが、主夫道を極めた龍のように、今後極めたいことは?玉木さん僕らの仕事というのは、基本的には“何でも屋さん”。だからこそ、極めるという意味では何でもできて、何にでもなれる人になりたいです。最近で重きを置いているのは、ブラジリアン柔術。もともとやっていたボクシングとは違うアクションに使えると思って始めましたが、いまは楽しくてハマっています。いろんなことをしてきたおかげで今回のアクションも吹替なしでできましたが、それはすごく意味のあることだと感じているので、これからもカラダが続く限りは自分でトライしていきたいなと。趣味でやっていることがそれを支えてくれると思うので、これからも趣味は一生懸命やっていきたいと思っています。―ほかにも、いま興味を持っているものはありますか?玉木さん前から考えているなかのひとつは、大きな木にツリーハウスを作ることです。それはDIYを極める感じに近いかなと思っています。仕事や趣味に没頭すれば、人生は華やかになる―以前、お子さんにはご自分の持っている知識を全部教えたいとおっしゃっていましたが、そのなかでもこれだけは受け継いでほしいと思うものは?玉木さんまずは、純粋に楽しんで生活をしてもらいたいなと思っています。なので、とりあえずは僕が楽しいと思ったことには触れさせたいです。―将来、お子さんと一緒にしたいことはありますか?玉木さんこれは漠然とした夢ですが、海外で一緒に生活できたら楽しいだろうなと考えることはあります。―素敵ですね。それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。玉木さん最近はどの現場に行っても女性がたくさん働いていますが、僕は女性のほうが頼もしいなと感じることが多いので、これからもみなさんには、自分の気が赴くままに仕事や趣味に没頭していただきたいなと。そうやっていろんなことを体得していくことができれば、個性もより強くなり、人生がさらに華やかになっていくと思っています。また、ここ数年間は閉塞感や窮屈な時間を味わってきた方も多いと思いますが、だからこそ、本作で大いに笑っていただきたいです。それは僕たちがこの映画を作った意味でもあるので、ぜひ劇場にお越しください。インタビューを終えてみて……。劇中の龍と同じく、ご自身も家事や育児を楽しんでいる様子が伝わってくる玉木さん。普段とのギャップに魅了されるのはもちろん、映画版ではさらにパワーアップしたキレキレの演技と肉体美も必見です。爽快感と疾走感が止まらない!最初から最後まで、お祭り騒ぎで抱腹絶倒間違いなしの最強コメディ。一癖も二癖もあるキャラクターの変顔あり、アクションあり、そしてまさかの感動もありの本作は、日々の疲れもストレスも忘れさせてくれる誰もが楽しめる1本です。写真・安田光優(玉木宏)取材、文・志村昌美ヘアメイク・渡部幸也(riLLa)スタイリスト・上野健太郎ストーリーかつて“不死身の龍”と恐れられた伝説の極道・龍は、美久との結婚を機に足を洗い、最強の専業主夫として血のつながらない娘と3人で穏やかに暮らしていた。そんなある日、街に現れたのは、極悪な地上げ屋。執拗な嫌がらせをされていた保育園を守るため、龍は元舎弟の雅と用心棒を買って出ることに。やがて元武闘派ヤクザで現在はクレープ屋の虎二郎と、その妹で元レディース総長の虎春も龍の仲間に加わるが、龍の家の前に男の子が捨てられていたことで“隠し子騒動”が持ち上がる。さらに、龍の男気に虎春が惚れたことで美久との間に龍を巡る恋愛バトルが勃発し、次々と問題が起きてしまうのだった……。ハイテンションな予告編はこちら!作品情報『極主夫道 ザ・シネマ』全国公開中配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント️©2022「極主夫道 ザ・シネマ」製作委員会写真・安田光優(玉木宏)
2022年06月13日以前、大河ドラマで夫婦を演じた二人が、今作『はい、泳げません』で8年ぶりの共演。長谷川博己さんは、泳げないどころか水に顔をつけることすらもできない小鳥遊(たかなし)を、綾瀬はるかさんは、そんな小鳥遊に「必ず泳げるようにします」と自信満々に言い放つ、スイミングコーチ・静香を演じた。長谷川博己:実は、知人から薦められて、原作を4~5年前には読んでいて。面白いな、と思っていたところに、映画のオファーをいただきました。綾瀬はるか:運命ですね(笑)。長谷川:小鳥遊は大学で哲学を教える、普通とは少し違う世界観の人。その気難しくて複雑な思考回路は、想像がつかない部分も大きくて。でも、あえてあまりデフォルメをしないほうがいい、と思って演じました。綾瀬:静香は、強気で自信たっぷりな性格を見せつつ、とにかく泳ぎを身につけなければいけなかったです。長谷川:休憩中も泳いでいたよね。綾瀬:基本、クロールでゆっくり優雅に泳ぐ練習をしていたんですが、溺れた小鳥遊を素早く助けに行くシーンがあって。あの泳ぎはカッコよかったです、はい。私の一番の見せ場でした(笑)。長谷川:一番…(笑)。でも、本当にあのシーンはカッコよかった。――プールの中でも、頭でっかちな言い訳を並べる小鳥遊。少しずつ水を克服していくが、小鳥遊がなぜ泳げるようになりたかったのか、また静香が抱えるトラウマなどが明かされていくにつれ、それぞれの人生の物語からも、目が離せなくなっていく。長谷川:完成作を観て、別に触れなくていいことや、思い出さなくてもいいことをあえて思い出すことは、ある意味大事なのかなって思いました。きついトラウマかもしれないけれど、それを含めて人生。向き合うのもいいし、いつの間にか克服できていることもあるだろうし。そんな自分を見つめ直すきっかけみたいなものを、ほんわか感じていただけたら嬉しいですね。綾瀬:小鳥遊も静香も、何か事情を抱えていて、その周りの人たちにも過去があって。でも、ちょうどいいタイミングが来た時に、自分が受け入れることで新しくまた踏み出せるんだ、ということがわかり、私も、諦めちゃいけないな、と思いました。――本来は、泳ぐのは好きだという長谷川さん。長谷川:でも、泳げない演技は、泳げたほうができるのかな、って気がしました。僕自身、あまり苦手なことはないけど…終わったあとに、反省や心配をするのはやめたいかも。綾瀬:8年前に共演した時も「あれでよかったのかな」って、よく言ってたね(笑)。長谷川:じゃあ、やっぱり変わってないってことだ(笑)。綾瀬:それが、長谷川さんのいいところ!私は、度胸が欲しい。焦ると何事もあまりよくならないから。いかにリラックスできるかを目標にしたいですね。長谷川:あ、俺も綾瀬さんの面白いこと思い出したけど、やめておこう。綾瀬:え、それで終わるの?なになに?気になるなぁ!(笑)『はい、泳げません』大学教授で、泳げない小鳥遊が、静香のコーチのもと、泳げるようになる過程での、希望と再生を描いた物語。原作/髙橋秀実『はい、泳げません』(新潮文庫刊)監督・脚本/渡辺謙作6月10日(金)より全国ロードショー。©2022「はい、泳げません」製作委員会はせがわ・ひろき1977年3月7日生まれ、東京都出身。大河ドラマ『麒麟がくる』をはじめ、ドラマ『獄門島』『小さな巨人』、映画『シン・ゴジラ』など、主演作を多数持つ。コート¥454,000パンツ¥270,000シャツ¥148,000(以上ザ・ロウ/ザ・ロウ・ジャパン TEL:03・4400・2656)あやせ・はるか1985年3月24日生まれ、広島県出身。ドラマ『義母と娘のブルース』や、『奥様は、取り扱い注意』『天国と地獄~サイコな2人~』などで主演。ドラマ『元彼の遺言状』(CX系)が現在放送中。シャツ¥141,900スカート¥363,000(共にザ・ロウ/ザ・ロウ・ジャパン)※『anan』2022年6月15日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白山春久(長谷川さん)椎名直子(綾瀬さん)ヘア&メイク・宮田靖士(THYMON Inc./長谷川さん)栗原里美(綾瀬さん)取材、文・若山あや(by anan編集部)
2022年06月12日「今回の舞台のお話をいただいたとき、嬉しくて胸が高鳴りました」正統派ヒロインから奇抜で強烈なキャラクターまで、これまで幅広い役柄を演じてきた奈緒さんがそこまで語る作品は、栗山民也さんが演出を手がける舞台『恭しき娼婦』だ。「まだ舞台を1回もやったことがないときに、栗山さんが演出された『アンチゴーヌ』という舞台を観て、衝撃を受けたんですよね。シンプルな舞台セットがすごく美しくて、その中で目が離せないような感情の動きが表現されていて、終わった後もしばらく放心状態でした。これが演劇なんだなって思って、もし舞台をやるならこういう作品をやってみたいと思っていたんです。栗山さんと舞台でご一緒された先輩方や仲間から稽古場のお話を伺うこともあり、いつかぜひと思っていたのがこんなに早く実現して光栄です」人種差別が根強く残る時代、白人が犯した殺人の濡れ衣を着せられた黒人青年をかくまう娼婦・リズィーが奈緒さんの役だ。しかし街の権力者が、彼女に虚偽の証言を強いろうとする。人間の尊厳とは何か、正義とは何かを突きつけてくる問題作だ。「稽古中、栗山さんから『これはアンチゴーヌだよね』って言葉を聞けたんです。逆らうということがあり得ない関係性にありながら、自分の意思を貫こうとするのはアンチゴーヌにも通じる。運命だなって(笑)」重苦しくヒリヒリとした展開が続く物語だけれど、「比較的恵まれた環境の中で生きている自分が、役者としてだけでなく人として向き合わないといけない題材」だと語る。「自分が今ここにいる意味だったり、自由に生きるということはどういうことなのかだったり。そういうことを考えさせてくれる作品です。正直、向き合おうとすると、世の中にこんなに苦しく理不尽なことがあったんだって、苦しい気持ちでいっぱいになったりします。それでも、やっぱり知らなきゃいけないと思うんですよね。世の中にはすごく悔しい気持ちや、やるせない怒りを抱えている方がいて、そういう誰かを、私自身が無知なせいで気づかないうちに傷つけていることって、きっとたくさんあると思います。その無知をすごく恥ずかしく思う一方で、自分がこれまで触れながらも、気づいていなかった人間の奥底に少しずつ近づけていることが嬉しいんですよね。そしてまた、これを多くの方々に伝えるんだっていう使命感みたいなものもあって。どう受け止めるかは、もちろんご覧になる方の自由でもあるけれど、この作品があるべき姿で正しく伝えたいとは思っています」念願の栗山演出。稽古の様子を語る表情からも充実感が伝わってくる。「最初にお芝居に出合った頃に感じたような、新鮮な気持ちで稽古に行けています。稽古を終えて家に帰ったとき、久しぶりに『お母さん、お芝居がね、すごく楽しいの』って報告しちゃったくらい。失敗さえマイナスな落ち込みにならなくて、わからないことが逆に“もっと追究したい”に変わる。この瞬間瞬間を刻みながら本番に臨みたいですね」『恭しき娼婦』列車内で、若い白人男性が黒人男性を撃ち殺す場面を目撃した娼婦のリズィー(奈緒)。しかし、犯人の親族である街の有力者の息子・フレッド(風間)は、彼女に嘘の証言を強いろうとする。6月4日(土)~19日(日)新宿・紀伊國屋ホール作/ジャン=ポール・サルトル演出/栗山民也出演/奈緒、風間俊介ほか全席指定9500円サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00)兵庫、愛知公演あり。なお1995年2月10日生まれ、福岡県出身。主演映画・MIRRORLIAR FILMS Season3『可愛かった犬、あんこ』公開中。出演映画『TANG タング』『マイ・ブロークン・マリコ』も公開を控える。ワンピース¥39,600(ル フィル/LE PHIL NEWoMan 新宿店 TEL:03・6380・1960)※『anan』2022年6月8日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・岡本純子ヘア&メイク・竹下あゆみインタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年06月05日太平洋戦争開戦前夜の長崎で、考古学者のカナクギ(片岡亀蔵)の助手であるオズ(大鶴佐助)が遺跡を発掘する。それは、若く美しいヒメ女が治めていたが滅亡した古代王国だった。現代と古代の世界が折り重なり、やがてとんでもない古(いにしえ)の秘密が明かされていく。野田秀樹さんが1999年に書き下ろし、これまでタブー視されてきたテーマに真っ向から切り込み、壮大なスケールで描かれた戯曲『パンドラの鐘』。今作で葵わかなさんが演じるのは古代の女王・ヒメ女。「最初に脚本を読んだとき、キャッチーな作品だなと思ったんです。時代が行き来するので、最初は少し混乱もするけれど読み進めばわかってくるし、小説のようにいろんなところに伏線が張り巡らされていて、最後にそれがわかるとすっきりする。それでいて、観る人によっていろんな捉え方ができる物語だと思います。答えがひとつじゃないというか、定まった答えを提示するのではなく、伝えたいことをニュアンスで描いて、大事なことは言葉にしきらないんです。そこがお洒落だし、明確な言葉を使わないことが逆に、そのテーマに対して敬意を払っているように感じました。今の社会情勢や人々が抱えているものに対して、いろんな角度から寄り添ってくれるような物語だと思うし、そういう側面がありながら、コメディチックなセリフやテンポ感で進んでいったりもする。そのちぐはぐ感が魅力的ですよね」演出を手がけるのは、若手の気鋭として注目を集める杉原邦生さん。初演時は、野田さんと蜷川幸雄さんが同時期に本作を上演。まるで違う演出で上演されたことで、戯曲の多面的な魅力がより浮き彫りにされた。今回の杉原演出版は、「華やかな舞台になりそう」とのこと。「セットだったりダンサーの方の動きだったりは、イメージの中に歌舞伎の要素も入っているようで、和洋がミックスされているんじゃないかと思います。かと思えば、音楽は現代がミックスされた不思議な雰囲気で、それが爆音で流れたりもして」ヒメ女は、兄・狂王の幽閉により女王に担ぎ上げられるが、次第に自分の役割を自覚していく。「14歳の女の子がどうやって成長していくのか、その過程をどう作るかが大事じゃないかと思っているんですよね。最初は14歳の少女らしく不安定さがあって無知で。でも大人になっていく中で、純粋の塊ゆえに出会うものすべてからいろんなことを吸収して、ときには間違ったりしながらも女王としての覚悟を持っていく。真っ白なものが徐々に色づいていく感じを、今はまだどう表現できるかわからないですけれど、素敵に演じられたらと思っています」3年前にミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で初舞台を踏んで以来、舞台出演がコンスタントに続く。「ミュージカルに参加できたとき、自分が知らなかった舞台に立つ楽しさを教えてもらったんですよね。その後に経験したストレートプレイの舞台では、自分が思っていた価値観が総入れ替えされるくらいの刺激をもらって、視野をものすごく広げてもらえたんです。ドラマで描かれるような身近に起こりそうな物語もすごく好きですけれど、それとはまた違う別の刺激や興奮を舞台では味わわせてもらえている気がします」COCOON PRODUCTION 2022 NINAGAWA MEMORIAL『パンドラの鐘』古代王国の女王・ヒメ女(葵)のために葬式屋のミズヲ(成田)が持ち帰った「パンドラの鐘」が、現代の長崎で掘り起こされる。鐘に記された、王国滅亡の秘密とは?古代の閃光の中に浮かび上がった〈未来〉の行方とは?6月6日(月)~28日(火)渋谷・Bunkamura シアターコクーン作/野田秀樹演出/杉原邦生出演/成田凌、葵わかな、前田敦子、玉置玲央、大鶴佐助、柄本時生、片岡亀蔵、南果歩、白石加代子ほかS 席1万1000 円ほかBunkamuraチケットセンター TEL:03・3477・9999(10:00~17:00)大阪公演あり。あおい・わかな1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。最近の出演作にドラマ『女の戦争~バチェラー殺人事件~』『インフルエンス』『年の差婚』、舞台『冬のライオン』、ミュージカル『The PROM』など。Tシャツ¥56,100パンツ¥108,900(共にマルニ/マルニ ジャパン クライアントサービス TEL:0800・080・4502)ピアス¥11,000(マナ ローザ ジュエル/マナ ローザ TEL:011・616・0106)靴¥255,200(クリスチャン ルブタン/クリスチャン ルブタン ジャパン TEL:03・6804・2855)※『anan』2022年6月1日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・岡本純子ヘア&メイク・竹下あゆみインタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月29日微かにあどけなさが残る笑顔や、力強くて鋭い眼光。シャッターを切るごとに多彩な魅力を放つ俳優・藤原大祐さんを、2000年生まれの気鋭の写真家・柘植美咲さんが撮り下ろし。2019年に芸能活動を始めて約3年。立て続けに話題作への出演を果たし、注目の若手俳優として躍進を続けている藤原大祐さん。フレッシュな可愛らしさの奥に芯の強さを感じさせる彼が語る、これまでとこれからへの想いとは。「この3年間はとにかくその時どきを必死で頑張って駆け抜けたので、本当にあっという間でした。改めて振り返ってみても“もったいない時間を過ごした”という気持ちは一切ないし、有意義な日々を送れていたように思います。この間イベントでファンの方々にお会いしたのですが、みなさん本当にいろんな作品で僕を知ってくれていて。1日だけの仕事も、長い時間をかけて撮影した作品も、すべてが僕を形成しているんだなと改めて実感しました。経験や知識がゼロの状態からこの世界へ飛び込んで、“何でもどんどん吸収できるスポンジのような存在でありたい”と思って活動していたので、そういう意味ではしっかり成長できたのではないかと思います。これからもそのスタンスは変えずに、いろんな先輩方とお仕事する中でどんどん吸収し続けたいですね」撮影を担当した柘植美咲さんとは3歳差。同世代での撮影は、他の現場とはちょっぴり違う、新鮮なひと時となったよう。「柘植さんから“今この瞬間を撮りたいんだ!”という想いがビシビシと伝わってきて、それに身を委ねるのがすごく楽しかったです。僕は常々、“カメラに撮られているのではなく人に見られている”という意識を持つことを大切にしているんです。だから今日も、柘植さんが持つカメラの奥にいる人々に自分を表現しようと思って臨みました」この日撮影を行った下北沢は、藤原さんがプライベートでもたびたび訪れる街。大好きな古着を求めて、ヴィンテージショップを巡ることが多いそう。「コーディネートに何か1つは自分だけの一点ものを取り入れるというのが僕のファッションのこだわり。ちょっといいなって思うものを10個買うより、珍しいものを1個手に入れたいタイプなんです。古着はそういう奇跡の出合いを楽しめるところが好きですね。撮影した『明天好好』は、近くを通るたびに気になっていました。僕、実は甘いものが大好物なんですよ!豆花は初めて食べましたが、優しい味わいでなんだかクセになりそう。普段から黒酢ドリンクをよく飲むので、このブラックビネガーソーダも気に入りました。今度来た時は大好きな餃子を頼んでみたいな」10代らしいチャーミングな一面と落ち着いた表情をあわせ持ち、なんとも不思議な魅力を醸し出す藤原さん。今後の目標について尋ねると、真剣な眼差しで熱い想いを語ってくれた。「やはり、先輩方の過去の話を聞くと刺激を受けますよ。例えば“この人は20歳の時にこんな仕事をしてたよ”って言われたら、絶対にそれを超えたいと思っちゃうし。でも、誰かの後ろをただ追いかけるだけでは他の人の二番煎じにしかなれないから、何かオリジナルの面白いことをやらなくちゃいけないとは常に考えています。あとは、年齢を重ねてもずっと変わらない自分でありたいという想いも強いです。周りの方々から“視点がたくさんある”とか“客観的にいろんな物事を見てる”と言ってもらうことが多いので、そういう僕ならではの観察力を活かして、いろんな人の人生に寄り添える役者でありたいですね。具体的な目標としては、20代で『anan』の表紙を飾りたい!それまでにしっかり体を鍛えておかないと(笑)」ふじわら・たいゆ2003年、東京都生まれ。’19年に芸能界デビューを果たし、『おじさんはカワイイものがお好き。』や『恋する母たち』など話題のドラマに出演。初主演を務める映画『追想ジャーニー』の公開も控える、今後の活躍が期待される若手俳優の一人。テーラードジャケット¥88,000(クードス/エムエイティティINFO@THE‐MATT.COM)Tシャツ¥17,600パンツ¥34,100(共にストックホルムサーフボード クラブ)ネックレス¥115,500ブレスレット¥57,200リング¥51,700(以上オール ブルース) すべてエドストローム オフィス TEL:03・6427・5901ニットキャップ¥14,300ショルダーバッグ¥26,400(共にyushokobayashi/シープ TEL:03・6434・0333)シューズ¥9,900(コンバース/コンバースインフォメーションセンター TEL:0120・819・217)つげ・みさき2000年、三重県生まれ。高校1年生から写真を撮り始め、18歳で「ポカリスエット」の広告に高校生カメラマンとして起用され一躍注目の的に。’20年には、写真コンテスト「IMA next」の“LOVE”をテーマにした回でグランプリを受賞した。※『anan』2022年5月25日号より。写真・柘植美咲スタイリスト・井田信之ヘア&メイク・外山友香(mod’s hair)取材、文・大場桃果撮影協力・明天好好(by anan編集部)
2022年05月19日山田孝之さんが発起人を務める「MIRRORLIAR FILMS」プロジェクトの第3弾で、山田さん自身が監督として登場。その監督作『沙良ちゃんの休日』の主演が南沙良さん。山田さんと、山田さんが注目する南さんの視線の先にあるものは。山田孝之が監督として撮る俳優・南沙良。今、ふたりが注目する世界。――山田孝之さんが監督を務められた短編映画『沙良ちゃんの休日』創作経緯と南沙良さんの起用の理由、そして南さんはオファーを受けて思ったことを伺えますか。山田:映画冒頭の、歩いている女性と男性が交差していく絵は、何年か前から頭にあってメモしてあったんです。今回はそれを広げて映画にしようと思って、脚本家の小寺(和久)くんと話し合いながら物語を組み立てていった感じです。南さんとは、『ゾッキ』という映画で少しだけご一緒させていただいたご縁があったのと、一方的にですけれど南さんが出演されていた、とあるCMがすごく好きだったのもあって。なんというか、絶妙な表情をされるんですよね。普段何を考えているんだろう、今何を思っているんだろうって探りたくなる。その空気感が今回の作品に欲しかったんです。南:…嬉しいです。私もご一緒させていただいたときに、また機会があればとは思っていたんですけど、どんな中身か知らない状態で『沙良ちゃんの休日』ってタイトルを聞いたのでびっくりして…。山田:そりゃ戸惑いますよね。南:どういうことだろう、と…。山田:映像の最後にタイトルを出したいと考えていて、なんかかわいいタイトルにしたかったんです。でも一応、オファーのときにタイトルが嫌なら変えます、とはお伝えしていた気がします。南:戸惑いはしましたけどとても面白そうだったので、ぜひご一緒させていただきたいなと。――変わったお話ですよね。観た後に考えさせるというか。山田:僕としては、わりとわかりやすい話ではあると思っているんですけど…。ただ、もっとわかりやすいエンターテインメント作品というものがある一方で、そうじゃないものもあっていいという気持ちはあります。単純に好みとして、観終わった後、あれってどういうことだったんだろうって1回では理解できない作品が好きなんですよね。それについて誰かと話すのも好きなんで、僕は映画がコミュニケーションのツールになってくれたらって思っているんです。南:…私も脚本を1回読んだだけではわからなかったです。でも、私自身が映画に限らず小説も漫画も、1回じゃ理解できないことを考えるのが好きなんで…。――南さんは言葉数は多くないですが、ご自身で文章を書かれていますし、インタビューを読んでいても、頭と心でいろんなことを考えている方なのかなと思います。南:普通ですよ。とくに面白くもないですし…。山田:さっき手芸をされるって話していましたけど、どういったときにやられるんですか?南:手芸というか洋服を作ったりするのが好きなんです。縫ったり、ミシンをかけたり、無心になりたいときに刺繍したり。以前、お仕事で自分の想像の中の女の子に着せる洋服を作ったこともあります。山田:すごい面白いアプローチ。南:しゃべるのがあまり得意ではないんです。でも、文章で自分の言葉を伝えるとか、何かを作ったりすることとかは好きでした。山田:書くことも作ることもお芝居も、全部表現なわけで、南さんはきっと表現が好きなんでしょうね。好きというか、表現したくなっちゃうというか。僕も俳優だけじゃなくプロデューサーをやったり監督をやったり、曲作って歌も歌ったりしていますけれど、自分にとっては全部が同じ“表現”なんですよね。俳優なのに…って言う人もいるけれど、そもそもそれを僕は職業として捉えていないんです。やりたい表現をそのときにやっていたり、やらなきゃいけない必然性を感じるものもあるし。――南さんの中で演じることは、どのような位置にあるものですか。南:昔から俳優さんになりたいってずっと思っていたんです。それは自分じゃない誰かになりたかったんですね。自分じゃない誰かになったら何か起こるんじゃないかと。それで、別の人になれる俳優という職業ってかっこいいなと思って。ですので同じ表現でも、文章を書いたり服を作ったりするのとは、向き合う意識としては少し違う気がしています。――今回の「MIRRORLIAR FILMS」プロジェクトは、映画監督だけでなく、いろんな方が監督として参加していますよね。いつか南さんが作り手として参加する可能性もあるわけですか?山田:なにせ文章を書かれる方ですからね。脚本を書いてみたら、自分で撮ってみたくなったり、自分で演じてあの人に撮ってほしいってなったり、するかもですね。南:できるかわからないですが…。山田:一応、我々は“だれでも映画を撮れる時代”を謳ってますからね。映画監督というと難しいイメージがありますけど、今の時代、スマホでも撮ろうと思えば撮れる時代なわけだし、やりたいと思ったらやっちゃえばいいじゃんって思うんです。このプロジェクトに参加してるのも、ベテランの監督だったり、注目されている映像作家だったり漫画家さんとか、いろんな人がいて。そのほうがなんか面白いじゃない?――南さんは監督に興味は?南:ぜひ挑戦してみたいです。山田:おおすごい!――山田さんのように、映像でアイデアが浮かぶことはありますか。南:映像はないですね。お仕事でエッセイだったり短い文章を書いたりはしますけれど…。山田:今はまだそこにピントが合ってないんでしょうね。監督をやってみようってなったらきっと、普段とは違う視点で物事を見るようになると思うんだよね。そうやって気になるものをメモしているうちに勝手にストーリーができてくると思うから。南:それも面白そうですね。やまだ・たかゆき1983年10月20日生まれ、鹿児島県出身。俳優として活躍する傍ら、近年では自身がプロデューサーとして数々の映画やドラマの制作に携わるほか、映画『ゾッキ』シリーズでは共同監督のひとりを務めている。ジャケット¥95,700ベスト¥146,300シャツ¥52,800パンツ 参考商品シューズ 参考商品(以上Vivienne Westwood/ヴィヴィアン・ウエストウッド インフォメーションcontact@viviennewestwood-tokyo.net)みなみ・さら2002年6月11日生まれ、東京都出身。モデルを経て、’18年の映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では数々の映画賞で新人賞を受賞。放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』ほか、主演映画『この子は邪悪』も公開予定。ドレス¥48,000パンツ¥36,000(共にTOGA PULLA/TOGA原宿店TEL:03・6419・8136)靴はスタイリスト私物MIRRORLIAR FILMS Season3 『沙良ちゃんの休日』年齢、性別、職業やキャリアなどの垣根を越え、「だれでも映画を撮れる時代」に自由で新しい映画製作の実現を目指し発足された短編映画プロジェクトの第3弾。発起人のひとりでもある山田孝之さんが監督を務めた本作は、南の島を訪れた沙良ちゃん(南沙良)と、見知らぬ男(紀里谷和明)との邂逅を描いた作品。ほかに渡辺大知さんや松居大悟さん、李闘士男さんなどが監督として参加。現在公開中。※『anan』2022年5月25日号より。写真・宮崎健太郎スタイリスト・五月桃(山田さん)道券芳恵(南さん)ヘア&メイク・南辻光宏(山田さん)藤尾明日香(南さん)取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月19日幼少より、祖母の紫派藤間流家元・初代藤間紫に師事し、日本舞踊家として活躍。現在は話題のドラマ『マイファミリー』に出演するなど、俳優としても活動中の藤間爽子さん。祖母も歩んだ舞踊家と俳優の二刀流の道を邁進する。「祖母を真似してということではないのですが、気がついたら同じ道に進んでいました。小さい頃から日本舞踊をやっていたせいか、表に出ることが好きで。学芸会や演劇部でも率先して主役をやるタイプだったんです(笑)」2つの肩書を持つ強みは、「表現の幅が広がる」こと。「俳優業をやることで、演技の引き出しは増えたと思いますし、本番に臨む回数も間違いなく増える。舞踊家は人に教えることが主な仕事で、公演会も、例えば歌舞伎のような長期間ではなく、多くて3日程度。でも、俳優として舞台に出演したら2週間ぐらいお客様の前でお芝居できたりするので、場数を踏めるのも大きいですね」昨年、三代目藤間紫を襲名。26歳という若さで流派を背負う覚悟と責任の重さはいかほどか…。「襲名に関しては、小さい頃からそれとなく言われていて。ただ、14歳のときに祖母が他界し、当時はまだ家元になれる年齢でもないので、二代目を祖父が継承。その後、私は俳優業もスタートさせ、なかなか家元になる覚悟が決まらず、揺れ動いていたんです。でも、正直このまま逃げていても自信を持てるときなんて来ないかもしれないと思ったら、むしろ若さを武器に、皆さんに支えてもらいながらやってしまったほうがいいのかなと、襲名を決意しました」今年1月には襲名披露公演を開催。決意を胸に挑んだ演目は、歌舞伎舞踊の中で女形の最高峰といわれる『京鹿子娘道成寺』。「一つの節目として、あえて高い壁に挑戦したいと思って。でも、本番を迎えるまでは恐怖との戦い。1年ほど前からお稽古に取り掛かり、最後の1か月は毎日稽古場にこもって踊り、自分と向き合う時間を過ごしました。公演を終えて、周りの方々からは『もっと頑張っていかなきゃね』という厳しいお言葉もいただきましたが、それはありがたいこと。現状に満足したら終わりですし、自分も幕が閉じたあと、もう一回やりたいと思った。また30代で踊るぞって」何度でも同じ演目に挑戦したくなる。「それこそが日本舞踊の奥深さであり、醍醐味」と話す。「7月に『藤娘』という演目を踊るのですが、お酒を飲んで酔っ払う振りが出てくる。私は過去に2度踊ったことがあるのですが、最初が小学6年生で、2度目は高校生。酔っ払う感覚はわからず、こんな感じかなと想像して演じていたものが、今は経験を元に演じられる。同じ演目でも年齢によって感じ方も違い、長いスパンで変化を楽しんでいけるのが日本舞踊の面白さなのかなと思います」家元としての一歩を踏み出し、昨年、日本舞踊の配信映像作品でも主演を務めた藤間さん。「『地水火風空 そして、踊』は日本舞踊を盛り上げていこうと考えられた試みで、映像作品の中で踊るというのは私も初めて。普段は引きで見ているものを、手先や足元に寄って撮ったりするので、細部まで見ることができるのは映像ならではの魅力ですし、“日本舞踊ってカッコいいな”と改めて惚れ直しちゃいました(笑)」同時に、劇場空間を飛び出して踊る楽しさを知り、新たな願望も。「去年、『あしかがフラワーパーク』で満開の藤の花を見たのですが、今度踊る『藤娘』をここで踊りたいと思ったんですよね。もちろん日本舞踊は劇場で踊るように考えられているし、実際にはないものをあるように演じる面白さもある。でも、本物の藤の花の前で踊ったり、演目ゆかりの地で作品の背景を感じながら演じるのも楽しいだろうなと思うんです」慣習や固定観念に囚われず、柔軟な視点で日本舞踊を楽しむ。そこには、家元の肩書に縛られず、「一人の人間としてやりたいことをやる」という強い信念が。「責任ある立場ではありますが、自分が楽しいと思えなければ続けられない。日本舞踊をすごく好きだからこそ、嫌いになってしまわないように、楽しむことを大事にしています。私の場合、俳優業もやらせてもらっているので、なかには『責任感が足りない』『舞踊を疎かにして…』と思う方もいるかもしれないけれど、こんな舞踊家がいてもいいんじゃないかなって思うんですよね(笑)」「家元としてのコメントを求められると、正直ドキドキしちゃう」とハニかみながらも、伝統芸能の未来にしっかり目を向けている。「今は『劇団ひまわり』の役者さんに教えるなど、生徒さんを増やす活動も考えています。日本舞踊を通して、所作や礼儀作法、日本人が持つ心の美しさを伝えていけたらいいなと思って。日本舞踊はハードルが高いと思われがちですが、着物を着てみたい、美しい所作や立ち姿を身につけたい、健康のために体を動かしたい…といった気軽な気持ちで一度触れてみてもらえたらうれしいですね」WEB限定公開の「一問一答」藤間爽子さんに10の質問を投げかけてみました。Q. 朝起きて、一番にすることは?カーテンを開ける。Q. なかなか眠れない夜、何をする?寝れないときは、寝ようと思わないで諦める。かといって、携帯をいじったりもしないでぽけーっと、ベットの中でただボーっとする。Q. 犬派?猫派?どっちもって言いたいけど、犬を飼っているので犬派。Q. タイムマシーンがあったら過去に行きたい?未来に行きたい?過去。おばあちゃんが生きていた頃に、今のこの自分の状態で戻りたい。Q. 宝くじが当たったら、何に使う?額にもよるな(笑)。貯金はするけど、旅行に行きたいです。Q. 愛用のマスクはどんなデザイン?立体型のサンカクになるタイプ。お稽古してるときにマスクすると苦しいのですが、そのタイプだと息を吸いやすいんです。Q. 好きなおにぎりの具は?迷う~。白米もいいけど、ふりかけの混ぜご飯みたいなものも好きです。「まつのはこんぶ」を混ぜたのも大好き。Q. あなたの弱点を教えてください。ジェットコースターが苦手です。地に足がついてないところや、飛行機とかふわふわしてるのも苦手。Q. 子どもの頃の夢は?小学生のときに答えていたのは、「日本舞踊のできる女優さん」。Q. 無人島に持って行くなら?家族とか仲間。物とかいらないので、大切な人と一緒に行きたいです。ふじま・さわこ1994年8月3日生まれ。東京都出身。日本舞踊家として活動する傍ら、劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」に所属し、俳優としても活躍。現在はドラマ『マイファミリー』(TBS系・日曜21時~)に出演中。トップス¥19,800スカート¥46,200(共にシーエフシーエルcfcl.jp)ハートリング¥16,500サファイヤリング¥88,000(共にエナソルーナ)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・石川美久ヘア&メイク・村上 綾取材、文・関川直子(by anan編集部)
2022年05月18日3歳で芸能界入りし、5歳でCMデビュー。以降、『山田太郎ものがたり』や『メイちゃんの執事』など、子役時代から話題作に出演してきた吉川愛さん。印象深い作品として、10歳のときに出演したドラマ『ハガネの女』を挙げる。「この作品で初めていじめっ子役に挑戦し、私はこれが得意なのかもと思ったんですよね(笑)。それからは、いじめっ子やキツい女の子を演じることが増えました。俳優としての最初のターニングポイントだったと思います」役のイメージで「怖がられることもあった」と笑う吉川さん。「素もキツい人間なんじゃないかと勘違いされることがあり、本当の私は違うんだけどなぁとモヤモヤすることも。その頃はまだSNSも今ほど普及していなかったので、自分の言葉を発信する場所もなかったですし。他にもお仕事で悩んだり、葛藤することもありましたが、誰かに相談することはほとんどなく、自力で乗り越えてきた気がします。小さい頃から大人に囲まれて過ごし、いろんな方を見てきたので、何かあったときはこうしようと自分で想像したり、対処する能力が自然と身についていたんだと今になって思います」その後、学業を優先するため高校入学と同時に芸能界を引退し、1年後、俳優業に復帰。離れた期間は“己を知る”時間だったよう。「俳優業を辞めて、パン屋さんでアルバイトしていたとき、自然と“パン屋で働く自分”を演じていることに気づいたんです。当時は、芸能界に戻るつもりは全然なかったけど、結局私は演じることが好きなんだと思い、復帰することを決めました。でも、一度辞めて戻る私を受け入れてもらえるのだろうか…という怖さもありました」復帰作となったドラマ『愛してたって、秘密はある。』で演じた役柄は、吉川さんが得意とするミステリアスなクール系キャラ。にもかかわらず、「思ったような演技ができず、もどかしさを感じた」と、当時を振り返り苦笑い。「映像で見ても演じた人物には迫力がなく、何か物足りない。1年のブランクの大きさを痛感しました。それは演技だけでなく外見も。パン屋さんで働いているときはマスク着用なのでノーメイクだし、日焼けも気にしない。体重も増えていたので、復帰前には1か月で5kg落としましたが、それでも顔は垢抜けなかった(笑)。顔つきが、何も意識してなかった人の表情で…本当に恥ずかしかったです」求められる演技も子役時代とは違った、と吉川さんは言う。「例えば泣く芝居でも、子役だったら『うえーん』と思いっきりわかりやすいものを要求されることが多いけれど、今はツーッと静かに流す涙だったり、演技の質が違う。そこに最初はとまどい、復帰直後は新人の気持ちでお芝居と向き合っていました。ただ、子役時代に多くの俳優さんと共演させていただいたので、『こういうシーンで、あの方はこうしていたな』と思い出しながら演じてみたり。小さい頃から多くを見てきたことで演技の引き出しは増えたと思うし、それらが今の自分の演技に繋がっている。全て俳優業の糧になっていると思います」再スタートを切るまでの1年の休息期間で得たものも当然ある。「アルバイトの大変さを知れたし、2日連続でお休みができたら友達と韓国旅行に。それまではスケジュールが不規則で、友達と出かけることも難しかったので新鮮な感覚。高校生らしい時間を送れたことは貴重な経験でした」芝居勘が戻ってきたと手応えを感じられたのは、ヒロインを演じた青春映画『虹色デイズ』。「それまでヒロイン役をやることはあまりなく、新たな挑戦でもありました。しかも、演じた杏奈はおとなしい女の子で、私が得意としてきたキャラとは真逆。最初は不安もありましたが、自分が思い描く杏奈を演じられたことで感覚が戻ってきたことを実感できたし、なにより自信にもなりました」復帰から5年。ドラマ『恋はつづくよどこまでも』ではドライな新人看護師、昨年公開の映画『ハニーレモンソーダ』では内向的な優等生など、役柄の幅もさらに広がり、子役から大人の俳優へと華麗に進化。現在はドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』で主演を務め、レンタル彼女として働く女子大生の雪を好演している。原作は若い女性を中心に口コミで火がついた人気マンガで、作品の世界観にハマり、共感する読者が続出中。「5人の女性の悩みやコンプレックスを描き、それがリアルで共感できる。私が演じる雪は壁を作り、自分をうまく出せない女の子で、その気持ちはちょっとわかるなって。登場人物の中で好きなキャラは整形を繰り返す彩ちゃん。周りの目を気にすることなく、自分の意志を貫く姿勢に惹かれます」そして、「私も芯のあるカッコいい女性になりたい」と続ける。「理想は天海祐希さん。周囲を気遣い、現場を盛り上げ、芝居への取り組み方も嘘のない演技も、全てがカッコいい。私も天海さんのように、誰かに憧れてもらえる俳優さんになりたいなと思います」WEB限定公開の「一問一答」吉川愛さんへ10の質問!WEB限定公開、必見です。Q. 朝起きて、一番にすることは?携帯をいじりながら、ベッドの中でダラダラする。朝が弱くてすっと起きれないので、出かける2時間ぐらい前に起きて、そのうちの1時間はベッドの中でボケーっとYouTubeを見たり、LINEを返したり、ゲームしたりします。Q. なかなか眠れない夜、何をする?なかなか眠れないんだったら寝ません(笑)。ベッドにも入らず、犬と遊ぶ。オモチャを投げたり、いい子イイ子したり。それで、眠くなったらベッドに飛び込みます。Q. 犬派?猫派?犬派です。愛犬がいるので。Q. タイムマシーンがあったら過去に行きたい?未来に行きたい?未来に行きたい(笑)。過去は覚えてるので、10年後の未来を知りたいです。Q. 宝くじが当たったら、何に使う?ベースは貯金したいですが、車を買う。Q. 愛用のマスクはどんなデザイン?今、つけている、フィッティのマスク。CMをやらせていただいてるんですけど、ホントに使いやすくて。私は鼻が痛くなりがちなのですが、これは大丈夫です。息もしやすいし、ホントにオススメです。Q. 好きなおにぎりの具は?いくら。小さい頃から好き。いくらか塩むすびを買ってます。Q. あなたの弱点を教えてください。面倒くさがり屋。予約したりだとか、あれやらなきゃ、あそこに電話しなきゃ…と思っても、「面倒だから明日でいいか」って(笑)。Q. 子どもの頃の夢は?パティシエです。一番はショコラティエになりたかったです。テンパリングとかやってみたいかった。よしかわ・あい1999年10月28日生まれ。東京都出身。3歳で芸能界入り。主演ドラマ『明日、私は誰かのカノジョ』(MBS/TBS)放送中。待機作に映画『ALIVEHOON アライブフーン』(6月10日公開)がある。ブラウス¥52,800(LOKITHO/アルビニムス TEL:03-6459-3946)スカート¥47,300(UJOH/M TEL:03-6721-0406)ブレスレット参考商品(NOMG info@nomg.jp)左リング¥24,750、右リング¥28,050(PLUIE/PLUIE Tokyo TEL:03-6450-5777)※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・川崎加織ヘア&メイク・山口恵理子取材、文・関川直子(by anan編集部)
2022年05月18日「この映画を観て何か行動を起こしてくださいとは思わないんです。でも、世の中には理不尽なことがいっぱいあって、この映画もそれを知る一つのきっかけであればいいなと思います」日本人と変わらない生活を送っていた17歳の在日クルド人の少女サーリャが、難民申請が不認定となったことから、当たり前の生活を奪われてしまう。イギリス人の父と日本人の母を持つ川和田恵真監督が、成長過程で感じたアイデンティティへの想いを元に、“日本の今”を映し出した『マイスモールランド』。奥平大兼さんは、理不尽な状況に置かれたサーリャにまっすぐに向き合う高校生・聡太を演じている。役のために痩せたデビュー作『MOTHER マザー』とは違い、今作では役作りはほとんどしなかったそう。「しなさすぎて、不安でした(笑)。クルドに関しても、僕は劇中で知ることになる役なので事前に知識を入れないほうがいいと思いましたし。むしろクランクインしてからのほうが、いろいろと感じることがすごく多い役なので、そこがちょっと大変だったかな」それも演技へのあるこだわりから。「いいことかわからないんですけど、自分の台詞以外は覚えないですし、自分のいないシーンは台本も見ないんです。だから、お芝居をして初めて相手の台詞を聞いて、なぜ、自分がその台詞を言うのかがわかる。すると、ちゃんと自分の気持ちがこもった言葉が言える。そのぶん、撮影現場では必死に相手の台詞を聞きます。ただ監督に“台本を覚えていかないです”と言う勇気はないので(笑)、最初にお伝えするんです。僕は段取りがめちゃくちゃ下手くそですが、決してお芝居をなめてるわけではないので許してくださいって」そんな若き注目俳優が、聡太を演じて確信したことがあるそう。「聡太の一番の武器は、肯定してくれることだと思うんですよ。相手を否定することから入らない。言葉で言うと簡単ですけど、僕には意識していてもなかなかできないことなので。否定から入ると選択肢が狭まるし、相手を傷つけることもある。肯定する側になるだけで広がる世界は全然違うと、聡太を見てめちゃくちゃ確信が持てました」では、奥平さん自身の武器は?「いろんなものに興味があることですかね。そうすれば知識も増えて、引き出しも増えてくる。今すぐには役に立たないかもしれないけれど、引き出しを増やしてる最中です」『マイスモールランド』在留資格を失ったクルド人の17歳の少女を通して、世界中で起きている問題を浮き彫りに。監督・脚本/川和田恵真出演/嵐莉菜、奥平大兼、平泉成、藤井隆、池脇千鶴ほか全国公開中。©2022「マイスモールランド」製作委員会おくだいら・だいけん2003年9月20日生まれ、東京都出身。映画『MOTHER マザー』(’20)で俳優デビューし、数々の新人賞を受賞。W主演を務めるドラマ『早朝始発の殺風景』(WOWOW)は2022年放送予定。シャツ¥42,900パンツ¥42,900(共にスレッド マウス アンド ザ ムーン/トゥモローランド TEL:0120・983・522)Tシャツ¥9,900(ザ シード バイ ウィリー チャヴァリア/WISM渋谷店 TEL:03・6418・5034)※『anan』2022年5月18日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)スタイリスト・伊藤省吾(sitor)ヘア&メイク・髙橋幸一(ネステーション)インタビュー、文・杉谷伸子(by anan編集部)
2022年05月16日