主人公のコンさんには、困っていることがあります。それは、ずうずうしい&非常識なご近所さんがいること。ご近所さんはことあるごとに、コンさんに自分勝手な頼みごとをしてくるのです。「今日の夕食は肉にして! うちに持って来て!」と図々しくおすそ分けを頼んできたり、コインランドリーで一緒に洗濯してほしいと言ってきたり、会うたびに非常識な発言を繰り返すご近所さん。 「できるだけ関わらないようにするしかないな」と考えていた矢先、非常識なご近所さんがコンさんの自宅にやってきて、「クレジットカードの番号を教えてほしい」と言い出して……!?人のクレカを使おうとしてきて…… 非常識なご近所さんがクレジットカードの番号を聞いてきたのは、アイドルのコンサートチケットを購入するためだそう。 コンさんが断っても「あとでお金払うからいいでしょ! 私のカード止められてるから無理なの!」と引き下がる様子はありません。 ところが、騒ぎを聞きつけてコンさんの夫が顔を出した途端「他の人当たってみるから……」といそいそと帰っていったのです。 それからもご近所さんの図々しいお願いは続きますが、夫の名前をうまく使いつつ、「自分が疲弊してまで付き合う必要のない人は相手にしない、関わらないようにしよう」と自分の生活を大切にするコンさんなのでした。 コンさんが言うように、ご近所づきあいで大切なのは「お互いに」配慮し合うことです。どちらか一方が自分の生活を犠牲にしてまで、相手に合わせる必要はありません。 つかず離れずの適度な距離を保ちながら、円滑なご近所づきあいを続けていきたいものですね。著者:マンガ家・イラストレーター あべかわ
2024年03月13日主人公のコンさんには、困っていることがあります。それは、ずうずうしい&非常識なご近所さんがいること。ご近所さんはことあるごとに、コンさんに自分勝手な頼みごとをしてくるのです。「今日の夕食は肉にして! うちに持って来て!」と図々しくおすそ分けを頼んできたり、コインランドリーで一緒に洗濯してほしいと言ってきたり、会うたびに非常識な発言を繰り返すご近所さん。 ご近所さんの迷惑極まりない言動……、実は町内では被害者が続出していて……?!自宅に入りたがるご近所さんには要注意! 非常識なご近所さんに振り回されているのは、コンさんだけではないようです。 「トイレットペーパーを盗まれた」「洗濯用洗剤を持ち帰られた」など、被害報告が続々。ご近所さんの行動は徐々にエスカレートしている様子。 その話を聞いて「できるだけ関わらないようにするしかないな」と考えるコンさんでしたが、そんな矢先、非常識なご近所さんがコンさんの自宅を訪れたのです。 「ちょっとだけ話があるの!」と強引なご近所さんにしぶしぶ耳を貸すコンさんですが、次の瞬間あまりの衝撃に思考が停止してしまいます。 というのも、ご近所さんが言い出したのは「クレジットカードの番号教えてほしいのよ。」という無茶苦茶なお願いだったのです。 どんな理由があるにせよ、他人のクレジットカードの番号を聞くのはNG! コンさんに対してだけでなく、他の住人にもご近所さんは非常識な行動をとっているようです……。 これ以上の被害者を出さないためにも、コンさんには強い気持ちで対応してもらいたいものですね。 >>次の話著者:マンガ家・イラストレーター あべかわ
2024年03月06日主人公のコンさんには、困っていることがあります。それは、ずうずうしい&非常識なご近所さんがいること。ご近所さんはことあるごとに、コンさんに自分勝手な頼みごとをしてくるのです。ある朝、ゴミ出しをしていたコンさん。すると、待っていたかのようなタイミングで、例のご近所さんに話しかけられて……?!図々しすぎるご近所さんのお願いに絶句…! 夕飯の一件から数日後、コインランドリーにて……。 ゴミ捨て場で会ったご近所さんに「今日の夕食って何なの?」と話しかけられたコンさん。嫌な予感がしながらも「まだ決めてないんだよね……」と答えると、「じゃあ肉にして! 私肉食べたいからさ。んでうちに持って来てよ!」と言い出したのです。 さらに「お皿を洗うの面倒だから、使い捨てのやつにしてね!」と図々しさを通り越した非常好きすぎる発言まで……!ご近所さんの非常識な言動はこれだけではありません。別の日にはコインランドリーにいるコンさんを追いかけてきて、「ウチの洗濯もの一緒に入れてよ!」とご近所さん。もちろん割り勘するという発想はないようです。 「一緒に洗うなら半額出してもらうよ」と言うコンさんに「ケチだね~!」と言い放つのでした。 ご近所付き合いはお互いが気持ちよく生活できるように配慮し合いたいもの。大人として最低限のマナーを守れないご近所さんには、呆れてしまいますね……。 いくら非常識でも、顔を合わせる機会が多いのがご近所のつらいところ。皆さんは、ご近所さんに非常識なお願いをされたら、どのように対応しますか? >>次の話著者:マンガ家・イラストレーター あべかわ
2024年03月05日皆さんは、ご近所さんとの付き合いに悩みはありますか?今回は「勝手に水を使用するご近所さん」にまつわる物語とその対処法を紹介します。※この物語はフィクションです。(CoordiSnap編集部)イラスト:モナ・リザの戯言人の物を勝手に使うご近所さん主人公の近所には、ケチで有名なご近所さんが住んでいます。人の物を勝手に使うことが多く、住民たちも悩まされていました。ある日、主人公が帰宅すると駐車場から水の音が聞こえます。「何の音?」と不審に思い、駐車場に向かう主人公。出典:モナ・リザの戯言なんと駐車場で、ご近所さんが主人公宅の水道を使って洗車していたのです。目を疑う光景に「何してるんですか!」と怒り、水道を止めます。ご近所さんは「いいじゃない」と言い、怒る主人公を無視して逃げてしまいます。うんざりした主人公は、駐車場に鍵つきのゲートを設置することに。安心したのもつかの間、その日の晩に「車を駐車場にとめたい」と突撃してきたご近所さん。事情も話さずにお願いするご近所さんを、なんとか帰らせる主人公なのでした。読者が回答した対処法主人公と同じく、ゲートを設置して入れないようにするのがいいですね。三角コーンや植木鉢を置く方法など、自分にできる方法で駐車場と水道を守るようにします。(50代/女性)水道を勝手に使われないよう、蛇口にロックをかけられるようにします。ロックがかかっていれば、さすがにご近所さんも諦めてくれるでしょう。(20代/女性)※こちらの記事はみなさんから寄せられたアンケートをもとに作成しています。※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。
2024年02月15日皆さんは、不審な連絡に困惑した経験はありますか?今回は「ご近所さんからの連絡」にまつわる物語とその感想を紹介します。娘が里帰り出産をしていて…ある日、ご近所さんから「内祝いをもらっていない」と言われた主人公。娘が里帰り出産をするために家に来ていましたが、娘はまだ妊娠中でした。しかしご近所さんは「先日、孫を連れていた旦那さんにお祝いを渡した」と言います。「年子なんて素晴らしいわねってみんなで話してたの」とご近所さんは言うのですが…。娘は初産で…出典:Youtube「Lineドラマ」「娘は初産ですけど…?」と勘違いを指摘して、困惑する主人公。「だってお祝い渡したもの!」と言うご近所さんですが、生まれてもない子どもにお祝いなど貰うわけもなく…。謎が深まる主人公なのでした。読者の感想初産にもかかわらず周りには2人目だと思われているなんて、気味が悪いし謎ですね…。ご近所さんが、別人と勘違いしているのかもしれないと思いました。(50代/女性)「孫を連れていた旦那さんにお祝いを渡した」と言っていたご近所さんですが、主人公の夫がなにかを隠しているのでしょうか…。主人公と同じく、謎が深まるばかりです。(20代/女性)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。※実際に募集した感想をもとに記事化しています。※こちらのお話は体験談をもとに作成しています。(Grapps編集部)
2024年01月24日皆さんは、ご近所さんの行動に困った経験はありますか?今回はトラブルを起こしたご近所さんにまつわる物語とその感想を紹介します。※この物語はフィクションです。(CoordiSnap編集部)イラスト:モナ・リザの戯言ご近所さんの迷惑行動ご近所さんの迷惑行動に悩んでいた主人公。ある日、主人公が家でくつろいでいると外から大声が聞こえてきました。庭に出てみると、主人公の家にある池で勝手に子どもたちが遊んでいたのです。どうやらご近所さんに遊んでいいと言われたようで、主人公も頭を抱えてしまいました。ご近所さんの迷惑行為に困っていることを他のご近所さんに話すと、みんな口を揃えて自分も被害にあったと話します。なにか対策をしないとと思いながらも、主人公が家に帰ると…。帰宅すると…出典:モナ・リザの戯言主人公が帰宅すると、駐車場から水の音が聞こえてきました。駐車場には主人公に笑顔を振りまくご近所さんが…。なんと、ご近所さんは主人公の家の駐車場で洗車をしていたのです。「何してるんですか…」とご近所さんの目を疑う行動に主人公は唖然として…。主人公が注意をすると、ご近所さんは車も濡れたままそそくさと逃げ去ってしまうのでした。読者の感想人の家の駐車場を勝手に使っていることに驚愕しました。水道まで使われていたとなると、さすがに注意だけでは済まされないですよね。(30代/女性)敷地内で勝手に遊ばれるなんて、誰でも迷惑ですよね。水道も勝手に使われて、ご近所さんのすることにとても腹が立ちました。(20代/女性)
2023年12月18日皆さんは、ご近所さんとの関係に悩まされたことはありますか?今回は服を作ってほしいと頼まれた女性のエピソードと、感想を紹介します。イラスト:エトラちゃんは見た!服を作るようせがまれて…裁縫が得意で、作った服を販売したり娘の服を作ったりしている主人公。しかし近所の女性に無償で服を作るようせがまれて困っていました。ある日女性から「結婚式用のドレス作って!」と頼まれ、今回はお金を支払ってくれるというのですが…。予算を聞いて驚愕!出典:エトラちゃんは見た!「ちなみに予算はおいくらで…?」と主人公が尋ねると、女性はあっさり「2000円」だと答えたのです。2000円では生地代にしかならず、衝撃を受ける主人公。しかし女性からは「生地代があれば充分でしょ?」と言われてしまいます。後日、そのことを裁縫教室の先生に相談した主人公。そこで、女性への反撃計画を提案され、主人公は実行に移すことを決意するのでした。読者の感想洋服を作るのはいろいろと手間がかかりますよね。生地代だけで作ってもらおうとするのは少し厚かましいなと感じました。(30代/女性)ご近所さんとなると、きっぱり断りにくいでしょう。女性の身勝手な要求に、うまく切り返すことができるといいですね。(20代/女性)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点でのものになります。※実際に募集した感想をもとに記事化しています。※こちらのお話は体験談をもとに作成しています。(Grapps編集部)
2023年12月05日このお話は作者とりまる・ねこぽちゃさんに寄せられたエピソードです。身バレ防止のため、いくつかの話を加え漫画化しています。■前回のあらすじ引越しが終わりようやく平和な日常が戻ると思っていたのに…。義母がご近所にサキの悪い噂を流しているという事実が判明したのでした。■街を歩いているだけでも…■義母の本性を知らないくせに…!義母の言い分だけを鵜呑みにし、すっかり信じ切っているご近所さんたち。常識ないのは義母の方なのに…。職場でも街中でもあることないことを言われ、ストレスはMAXに…!次回に続く「義母と戦ってみた」(全80話)は21時更新!
2023年06月19日自分の子どもに対して親身に接してくれるご近所さんというのは、非常にありがたいものですよね。しかしご近所さんが、子どもへ“教育に悪いオモチャ”を渡していたら……?今回はサレ妻マリコさん(@kusodan_gotohell)の【うちの子を私物化しないでください】より、話の展開を予想して頂く「漫画クイズ」をお届けします!・漫画家名:サレ妻マリコ・原作:千代子さん(マリコのインスタグラムで経験談募集)・漫画:じゅったむ(@junjundqx)引越し先のご近所さんが……夫の転勤による引っ越しがキッカケで、ご近所さんの清水親子と仲良くなった千代子親子。ある日、息子翔太が“飛び出すナイフ”のオモチャを清水からもらったと知った千代子は、そのオモチャを返しに行くと……?ここでクイズです!この後千代子は、清水から“予想外の発言”をされ困惑します。その発言とは、一体どんなものだったでしょうか?ヒントとして清水は、千代子の息子翔太に何かをあげたくて仕方がないようです……。清水の発言とは……?正解は別のオモチャをあげようとした翔太を積極的に家へ招き、過剰に甘やかそうとする清水の言動に恐怖を覚えるようになった千代子。その後彼女は清水と連絡先を交換し、翔太が清水家に向かった際は連絡を入れてもらうようお願いするのでした……。こんなときどうする?ナイフのオモチャやミニカーなど、おさがりとは言え、わが子に次々とオモチャを与えるご近所さんがいたら、不審に思うかもしれませんね……。その後のお話で千代子は、清水の度を超えた“翔太への溺愛発言”に恐怖を感じ、清水親子と距離をとる選択をします。あなただったら、こんなときどう対処しますか?(MOREDOOR編集部)(イラスト/@junjundqx)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点のものになります。
2023年05月02日大人気マンガシリーズ、今回は千代子さんの投稿をご紹介!今回は【うちの子を私物化しないでください】第36話です。原作:千代子さん(マリコのインスタグラムで経験談募集)漫画:じゅったむ様前回までのあらすじ相変わらず週4回ペースでご近所さんの家に遊びに行く息子。ご近所さんの異常性に気づき、距離を置くことに。買い物中、息子の“防犯ブザー”の音が聞こえた千代子さん。公園に戻ると、息子の腕を引くご近所さんの姿が……。異常行動を暴露する息子……はっきり言わなきゃ……その場から逃げ去る……ご近所さんはなぜここまで息子に執着するのでしょう。次もしご近所さんの家に行くことがあれば、息子を返してくれるのでしょうか……?(MOREDOOR編集部)(イラスト/じゅったむ様)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点のものになります。
2023年04月22日大人気マンガシリーズ、今回は千代子さんの投稿をご紹介!今回は【うちの子を私物化しないでください】第25話です。原作:千代子さん(マリコのインスタグラムで経験談募集)漫画:じゅったむ様前回までのあらすじ相変わらず週4回ペースでご近所さんの家に遊びに行く息子。ご近所さんと連絡先を交換し、息子が遊びに来たら連絡して欲しいとお願いしました……。息子の来訪を“うっかり”連絡し忘れていたと言われ、戸惑う千代子さん。しかし故意ではないとわかり、千代子さんは安堵していました……。反省する千代子さん……お詫びも兼ねて……衝撃の事実……ご近所さんの息子が家庭教師や塾で忙しくしているとは初耳です。でもそんなに忙しいのに、なぜご近所さんは息子を執拗に招きたがるのでしょう……?(MOREDOOR編集部)(イラスト/じゅったむ様)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点のものになります。
2023年03月25日新しい家に引っ越すと、近所にどんな人が住んでいるのか気になりますよね。近隣の住民と親しくなれたら、快適な暮らしができそうです。『ご近所さん』が家にやってくる?Twitterユーザーのソフィア・アジュラム(@SofiaAjram)さんの兄弟は最近、新しいアパートに引っ越しをしました。すると、同じアパートの『住民』が、彼の家を訪ねてくるようになったのだとか。しかも、そのご近所さんは彼がドアを開けると、まるで自分の家のようにズカズカと家の中に入ってくるというのです。実際の訪問の様子がこちらです。My brother just moved to a new apartment and his neighbour’s cat keeps barging right in like he owns the place pic.twitter.com/AG1DIZAQC8 — Sofia Ajram (@SofiaAjram) March 9, 2023 やってきたのは、近所の人が飼っている猫!ドアを開けた瞬間、猫は「ただいま」といわんばかりに部屋の中に入って行きます。ソフィアさんたちは、この猫の飼い主さんと知り合いになり、交流が始まったとのこと。猫の名前はファーミンといい、玄関のドアからだけでなく、ベランダからやってくることもあるそうです。ソフィアさんの兄弟の家で、ファーミンが興味しんしんであちこちを見ている様子も公開されています。I’m obsessed his name is Vermin!! pic.twitter.com/0JGdrYVtQJ — Sofia Ajram (@SofiaAjram) March 9, 2023 これらの動画には、猫好きの人たちから羨望の声が上がりました。・なんてかわいくて楽しい猫!あなたの兄弟がすごくうらやましい。・この猫は自分のしもべとなる人を選んだのかもしれないね。・彼は今、猫の法律によって、この猫にベッドとおやつを買ってあげることが義務付けられている。ソフィアさんの兄弟はドアを開けて、ファーミンがニャーと鳴きながら入ってくると、「イエス。フフフ!」と笑いながら返事をしています。彼もファーミンがやってくるのを楽しんでいるようです。こんなにかわいくてフレンドリーな『ご近所さん』の訪問なら、大歓迎したいですね![文・構成/grape編集部]
2023年03月22日大人気マンガシリーズ、今回は千代子さんの投稿をご紹介!今回は【うちの子を私物化しないでください】第17話です。原作:千代子さん(マリコのインスタグラムで経験談募集)漫画:じゅったむ様前回までのあらすじご近所に頻繁に遊びに行く息子。嫌な予感が拭えず、息子にご近所さんから物を貰わないよう諭す千代子さん。不気味なおもちゃは千代子さんが直接返すことにしました……。モヤモヤする千代子さん……違和感を覚える関係性……ご近所さんの元へ……ご近所さん親子のことがよくわからない千代子さん。わからないからこそ、余計に違和感を覚えますよね……。果たして、ご近所さんに無事おもちゃを返せるのでしょうか?(MOREDOOR編集部)(イラスト/じゅったむ様)※本文中の画像は投稿主様より掲載許諾をいただいています。※作者名含む記事内の情報は、記事作成時点のものになります。
2023年02月24日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「自分ならどうするだろう?」という視点を例えばレストランで、ウェイトレスがお客に理不尽な言葉を投げつけられているのを目撃したらどうするでしょうか?誰かがセクハラやパワハラめいたことを言われていたら?いじめに遭っている子どもを目撃したら、止めに入ることはできるでしょうか?アメリカABCネットワーク制作の『What would you do?』は、そんな場面に遭遇したときの「あなたならどうする?」をモニタリングする番組で、YouTubeに字幕付きでも紹介されています。役者たちがレストラン、公園、バー、路上などでトラブルを演じます。少年たちがホームレスをバカにする。レストランでお客がウェイトレスにしつこくセクハラまがいのことを言う。『夫」が『妻』を罵倒する。番組では、そんな場面を見た人たちがどうするのか、というところに焦点を当てます。例えば、アイスクリームスタンドで注文しようとしている男性がいます。彼は字が読めないので、当然メニューを読めない。それを店員は「ありえない!教育を受けていないなんて信じられない」と罵倒します。すると後ろに並んでいた女性がメニューを読んであげて、店員に向かって「ひどいこと言うんじゃない。誰もが平等にサービスを受けるべきだ」と怒りの声を上げます。特に人種差別、障害者差別について、まわりにいる人は猛然と抗議をするのです。また、スーパーマーケットで女性教師が子どもたちのための文房具、そして自分の食べるものなどを買おうとする。ところがお金が足りない。クレジットカードも使えない。後ろに並んでいた人は、足りない分を払うことを申し出たり、中には全額払うと言う人がいます。子どもたちの教育は大切だ。その手伝いができたらうれしい、と。テレビ番組なので、番組にふさわしい場面だけを切り取っている可能性は否めません。最初に観たときにはすべて『芝居』『演出』かもしれないと思ったのですが、立ち向かう人たちの様子からそうとも思えないのです。驚くのは、他人が困っていることに堂々と介入して意見を述べることです。「あなたには正当なサービスを受ける権利がある」「あなたは自分を脅かすものから自分を守らないと」「誰もが大切にされるべき」。人の善意、そして正義感あふれる言葉を聞くと、世の中はそう悪くはないのかもしれないと思います。私たちがそんな場面に遭遇したとき、不当に扱われる人を見たときに、そこに介入していけるでしょうか。トラブルに巻き込まれたくない、と見て見ぬふりをして通り過ぎる気持ちもわかります。それも自分を守ることの一つです。でも、自分がハラスメントに遭っているとき、誰かが支えてくれたら救われた気持ちになるでしょう。人通りの多い道で転んで骨を折ったとき、駆け寄ってくれ、救急車を呼んでくれたのは一人のおじさまでした。善意は行動なのですね。「もしもそれが自分だったら」と立場を変えて考えてみると、そんなとき「どうしたらいいのか」見えてくるかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年12月11日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。心地よい、を選ぶ映画『かもめ食堂』が好きで、もう10回以上は観ています。群ようこ原作のこの映画は、フィンランドのヘルシンキの小さな『かもめ食堂』をめぐる人々の物語。登場人物たちの感情を抑えたやりとりは何とも味があり、リラックスして観られるのが魅力です。小林聡美、もたいまさこらの抑制された演技に不思議に惹きつけられます。癖になると言っていいかもしれません。取り立てて物語のアップダウンはないのに、また観たくなる、奇妙で平和なムードのある映画です。はらはらしたり、シリアスな物語に疲れてしまうようになりました。体のどこかに力が入ってしまうのか、観終わるとぐったり。新しいものを追いかけるのではなく、心地いいことを選んでいく。そんな年代なのかもしれません。『かもめ食堂』を観ていて心地いいのは、登場人物が多くを語らないということがあるかもしれません。説明も感情を吐露し合うこともない。言葉の間合いや、抑えた表情で伝わってきます。そして、『日本人のソウルフード』としておむすびが出てきます。またサーモンの網焼き、唐揚げ、シナモンロールも登場します。一つ一つの食材を丁寧に扱い、丁寧に調理していく描写に静かな感慨を覚えます。この映画の心地よさは、私たちの日常を心地よくするヒントになります。登場人物たちが丁寧な言葉で会話していること。それは小津安二郎の映画で交わされる父と娘の丁寧な言葉づかいのようです。丁寧であることの心地よさ。丁寧に接することは、相手を大切に思っているというメッセージでもあるのです。丁寧にすると、自分自身も心地いいはずです。この循環が、世界をまろやかにしていくでしょう。世界が穏やかであるには、ひとりひとりの言葉や態度から始まるのですね。『かもめ食堂』の中に、こんな会話があります。「フィンランド人はとても穏やかです。どうしてでしょう?」そこでお客のひとりである青年がこう言います。「フィンランドには、すぐ近くに森があります」ここにも気づきがあります。森は、無意識の象徴でもあります。静かな、自然豊かな場所で自分を見つめる。自然に癒され、身体も心も緩める。自然と共にあるという感覚は、日本人と近いのかもしれません。自分が心地よいと思うことを大切に。『かもめ食堂』は、リラックスしたいときの処方箋なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月27日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。神様と約束した時間を生きる神様と約束した時間が、あと120日だとしたら……。元気で過ごす120日なのか、それとも弱っていく120日なのか。どう生きるかはそれ次第ですが、それまで体験したことのない体の衰えと共にある時間と考えるのが妥当でしょう。大好きな友人が若くして亡くなったとき(これが、彼女が神様と約束した時間だったんだ)と思って、その死を受けとめようとしました。受け入れ難いことであっても、それは起こってしまった現実です。そのとき私の胃腸は動かなくなり、食べたものを消化できなくなりました。その症状は、現実を消化できないことと重なります。悲しい現実と自分の心の折り合いをつけることがこんなにも難しいことか。身体も教えてくれました。直木賞作家の山本文緒さんは、2021年に膵臓がんで亡くなられました。58歳、それが、山本さんが神様と約束した時間でした。膵臓がんと診断され、余命4ヶ月を宣告されました。抗がん剤治療がうまくいって9ヶ月。山本さんが余命を宣告されてから綴った日記『無人島のふたり』(新潮社)には、命を終える日へ向かう悲しさ、葛藤、焦燥、諦め、希望……そして、アップダウンを繰り返しながら弱っていく体調が記されています。肩に力の入った文章ではなく、後世に何かメッセージを残さなければという気負いもなく、ただ余命を告げられた日常と、胸の中に吹き荒ぶ思いが綴られています。書くことを手放さない作家の矜持も感じます。1994年に亡くなった安井かずみさんも、最後の日々を綴った『ありがとう!愛』(大和書房)という詩集を残しました。出版されることを前提に書かれたのかどうか、それはわかりません。最期まで夫の加藤和彦さんを愛し、キリスト教の洗礼を受け、ただただ愛と感謝を綴った詩集です。「金色のダンスシューズが散らばって私は人形のよう」この言葉が絶筆となりました。最後の言葉に、安井さんの無念さが閉じ込められているようで、胸が痛みます。言葉を綴るということは、ただただ自分を見つめ続けることだと思っています。アーティストのための作詞をするために物語を作りますが、すべて『自分』を通して生まれるものです。それは自分の経験を通して……ということではなく、自分がどのように世界を見つめているか、ということの表れでもあります。ですから、言葉を生業とするものは、書くことを手放せない。自分がこの状況の中で何を感じ、どんな感情を抱くのか、それを見ずにはいられない。それを記録せずにはいられないのです。なぜなら、書くことが自分に向けての存在証明だからなのです。神様と約束した時間がどのくらいあるのかわかりません。私たちは常に『余命』を生きているのかもしれません。時間を、そして自分を大切に大切に抱きしめながら、生きていきましょう。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月20日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。この波立つ時代を生きるためにこの地球に住む79億人(2022年)の人間が同じ方向を目指して歩んでいたら……。世界のあちらこちらで波立っているような今、79億人の人間が共通して持っているものがあるとしたら、それは命と愛ではないでしょうか。そんな理想主義者のような、夢を見るようなことを思ってしまうのは、この混沌とした時代に少し草臥れているからなのかもしれません。30年ほど前、1曲のクリスマスソングに出会いました。友人が是非観てほしいとプレゼントしてくれたデヴィット・フォスターの長編ミュージックビデオの中で、ナタリー・コールが歌った『クリスマス・リスト』です。デヴィット・フォスターのピアノでナタリー・コールが語りかけるように歌っている場面を、今でもよく覚えています。大人になったけれど叶えたい願いがあるの。必要としている人のために。戦争が起きないように。奪い合わないように。みんなに友達がいて、正義が勝つこと。いつも愛があること。これが私のクリスマスの願い。『クリスマス・リスト』がリリースされた1990年、イラクがクウェートに侵攻し湾岸戦争が起こりました。砲撃が開始された時のニュース映像を今でもよく覚えています。科学は進歩しても、人間の精神は進化しないのだと落胆しました。そんな時期にこの歌を聴き、今、私たちに必要なのはこういうことなのだと強く思ったのです。『クリスマス・リスト』は、エイミー・グラント、バーブラ・ストライサンドなど多くのアーティストによってカバーされました。16年後、この歌を平原綾香さんに歌ってほしいとプロデューサーにプレゼンをし、日本語詞による『CHRISTMAS LIST』を発表することができたのです。自分に何ができるのだろうか。大きなことでなく、自分の小さな両手でできること。79億人の人間が問い続けていけば、波立つ世界に穏やかな風が吹き渡るのではないか。今ならまだ間に合うのではないか。悲しいニュースに触れるたびに、こんなことを考えます。考えなくては、と思います。誰もが持っているものを、大切にすればいいだけのこと。シンプルに、原点に立てばいい。大切なものを、大切にするだけ。命を大切にすることは、愛することを学ぶことなのかもしれません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月13日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。「そうか、君はもういないのか」と思うとき「そうか、君はもういないのか」作家の城山三郎氏が妻の容子さんが亡くなった後に書いた随筆を読みました。容子さんとの出会い、結婚生活を書いたいくつかの未完の原稿を次女の井上紀子さんの手によりまとめた随筆です。最愛の人が、本当に最愛であったことを知るのは、失ったときなのかもしれません。城山氏は容子さんと出会ったとき、「間違って、妖精が天から妖精が落ちてきた感じ」と思い、その思いは結婚生活を通して変わることがなかったそうです。容子さんに先立たれ、城山氏はその現実を心の中にのみ置いていたと、次女の井上紀子さんは語ります。お葬式で喪服を着ず、お墓参りもせず。そして自宅に帰ることなく、ずっと仕事場で寝起きしていたそうです。「そうか、君はもういないのか」このつぶやくような一行を、私は母が亡くなって、愛犬のラニが亡くなってからふと思い出します。死が生命活動の終わりだとわかっていても、私は不思議でなりません。もういない、もう会えないという現実の凄みに、胸を掻きむしられるような喪失感を覚えます。私の腕の中で力なく身を委ねていたラニが、ある瞬間、くっと首をもたげ、驚いたような顔をして私を見たあの瞬間に、ラニの心臓は止まってしまいました。どこに行ったの?と何度も叫びました。いままで名前を呼べば私を見たラニは、どこに行ってしまったのか。空のハウスを見るたびに、いつも寝ていたソファの片隅に目をやるたびに、「もういないんだ」と、わかっているはずの現実を確かめる。すると、胸の奥にあるぽっかりとした空洞に気づくのです。この空洞を埋めるのは、悲しさよりも出会えたことへの感謝なのでしょう。たくさんの贈りものをもらったことに気づいていくことなのだと思います。母が亡くなってしばらくしてから、日常の中に母の愛が宿っていることに気づきました。母がしてくれたことを娘にしている。母が苦しいときも希望を見出しながら前を向いていたように、私もそうしている。ラニは私に無償で愛することを教えてくれた。この世界から旅立ったとしても、大切なことを残してくれている。それでも「そうか、君はもういないのか」と思うことがあります。振り子のように思いを行ったり来たりさせながら、時が経てばいつかその現実に馴染んでいく。でも、それもせつないのです。いないことに慣れていくのが怖い気もするのです。喪失感は執着なのでしょうか。まだその答えは、私の中でまだ見つかりそうもありません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年11月06日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。小さな命の大きなドラマベランダのイタリアンパセリの鉢に、蝶々の幼虫を2匹見つけました。グリーンの体に黒の横縞。その縞にオレンジ色のドット。足?に黒のドット。葉を食べている様子はなく、動かずにじっとしている。昆虫にまったく詳しくないのですが、これはただものではない感じがして、そのままそっとしておきました。調べてみると、どうもキアゲハのようです。キアゲハはセリ科の葉を好むとのこと。イタリアンパセリについていたところを見ると、やはり間違いはなさそうです。冬に向かうこの時期に幼虫だとすると、蛹(さなぎ)になって越冬するのでしょうか。寒さよけはいらないか。何か蛹になりやすい木の枝を鉢に刺した方がいいのか。無事に羽化してほしく、いろいろ調べています。20年近く前の夏のこと。無農薬野菜に緑色の立派な青虫がついてきたことがありました。飼育箱に野菜の葉を入れ、木の枝も立てるようにして入れ、飼ったことがあります。蛹になってからどのくらいの日数が経ったか忘れましたが、夜遅く、ガサゴソと音がして飼育箱を覗いてみると、蛹の裂け目から明るい浅葱色の羽が現れたのです。アオスジアゲハでした。蛹から出て、新しい自分を確かめるようにしばらく羽を開いたり閉じたり。しばらくその様子を家族で眺め、飼育箱を開いて放しました。アオスジアゲハは私たちのまわりをひらひらと回り、そしてゆらゆらと飛んでいきました。浅葱色の紋様が月明かりの中でひらめいて。変容する命の不思議を味わった満月の夜でした。蝶は蛹の中で体を溶かし、体を作り変えます。正確に言うと不必要な部分が溶け、それは体を作り変える栄養分となります。あの小さな蛹の中で、大変なことが起こっているわけです。違う姿に変容する。これは私たちにも起こることです。私たちは何度となく苦しい気持ちを味わい、困難な時期を迎えます。どうにもならない気持ちをどうしていいかわからずに、悶々としてしまう。そんな真っ暗なトンネルを抜けるためには、心を成長させなければなりません。意識を変える、古いやり方を手放す。新しい自分になる。それは思うよりも難儀なことです。腹に落ちる、目から鱗が落ちる、という言葉の通り、頭でわかっているだけでは変われない。蝶のように、じっと自分という蛹の中で、より成長した自分に作り変えていく、変容していく。一つずつ、いまできることから始めてみる。自然は、偉大な先生です。自然が教えてくれることに耳を傾ける。目を見張る。心で学んでいく。キアゲハの幼虫が無事に羽化するために何かできることはないか調べてみましたが、自然のままに、彼らのあるがままに。小さな命の大きなドラマを見守ろうと思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月30日結婚する眞子さんから役職を引き継がれ、特にこの秋は全国各地でご公務に励まれている佳子さま。これまでの皇室にないカラフル&オシャレな装いからは前向きなお気持ちも感じられる。そんな、佳子さまのご公務ファッションを振り返ります。【9月10日】手話でのご公務も積極的に非常勤の嘱託職員としてお勤めの全日本ろうあ連盟などが開催している「高校生の手話によるスピーチコンテスト」に。【9月14日】眞子さんから役目を引き継がれて日本工芸会の総裁として、「日本伝統工芸展」をご視察。淡いピンクの装いで、自ら選んだ総裁賞の竹製の花籠をご覧に。【9月25日】口の見える透明マスクで手話を鳥取県倉吉市で開催された「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」へ。口の見える透明なマスクで高校生と手話でご交流。【10月9日】日本テニス協会名誉総裁として初観戦楽天ジャパン・オープンテニス男子シングルス決勝を日本テニス協会名誉総裁として初観戦。好プレーに拍手を送られた。【10月11日】いちごコーデが話題に「いちご一会とちぎ国体」の閉会式にご出席。栃木県の名産品、いちごを連想させる優しい印象の赤いワンピースが注目された。【10月16日】ジェンダー平等を訴えられて国際ガールズ・デーを記念したイベント「ガールズメッセ2022」にご出席。お言葉ではジェンダー平等の達成を願うと述べられ、課題解決に取り組む高校生と交流された。眞子さんをハグで送り出されてから1年。佳子さまはお姉さまのぶんまで大忙しです!
2022年10月29日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。素直な気持ちを言葉にのせてマスクを手放せなくなって3年。野外ではマスクを外すよう厚生省からお知らせがありましたが、まだほとんどの人がマスクをして歩いています。コロナ禍が始まった頃は異様な光景でしたが、いまではすっかり日常です。やはり顔の下半分を隠してしまうと、表情がわかりません。見様によっては怒っているようにも、無感情のようにも見えます。すると街全体がどこか殺伐とした雰囲気に包まれます。目は口ほどにものを言う……と言葉の通り、目には感情が現れるものです。表情も『言葉』であり自分の『表現』なのですね。マスクをしていても口角をあげていると、目の表情が柔らかくなります。少しでも和らげることができたら……と思い、マスクをつけながら写真を撮るときに優しい気持ちで、口角をしっかり上げたのですが、表情のない写真になってしまいました。表情力とでも言うのでしょうか、私の力不足なのかもしれませんが。まだまだ息苦しさが残るこの世界の中で思うのは、いつにも増して気持ちを伝えることの大切さです。この3年の間で、リモートでの仕事、コミュニケーションの便利さを知りました。家にいながら仕事も、打ち合わせもできる。セミナーにも参加できる。確かに便利なのですが、リモートで講座をするときには、いまひとつもどかしさを感じます。人が集まる『場』はエネルギーです。『気』という表現がわかりやすいでしょうか。いい雰囲気になったり、気まずいムードになったりするものです。リアルで面と向かっていると、表情や雰囲気から相手の気持ちなどを受け取りやすい。しかし画面を通してとなると、受け取りづらいことがあります。ですから、リモートの場合はいつもよりも声かけをし、お互いに意思の疎通を図ることが大切になります。言葉にして気持ちを伝える。それは決して大袈裟なことではなく、感謝の気持ち、うれしさ、楽しさ、つらさ、淋しさ……日常の中で私たちの心の中に湧き上がる気持ちに素直に向き合うことでもあるのです。作詞を手掛けたあるアーティストのCDを聴きながら、この曲を書いたとき愛しかなかったなあ、と思いだしだしたことがありました。そのアーティストが輝ける歌を書く。自分の仕事への熱さではなく、アーティストへ思いをこめて書いたこと。先日、ご本人にその気持ちを伝えると「私も歌うときに胸がいっぱいになる」と言われました。伝えてよかった。私たちの間の水路に、豊かな流れができたような気がしました。お店で、レストランで、仕事場で感謝を伝える。友達、家族の中で素直に交流する。息苦しい時期を脱したとき、この交流はさらにあたたかいものになるのではないか。そう時代が進化しますように。私たち一人ひとりが、進化の担い手なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月23日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。遠い記憶を手のひらで転がして人は、忘れてもいいことは忘れてしまうのでしょうか。もしも脳の中にフィルターがあり、本当に必要な記憶だけを抽出するというのなら、そういうものかと思えるのですが、どうもいろいろと忘れてしまっているような気がしてなりません。手にとるように覚えていたことも、いつの間にか指の間から滑り落ちてしまった感じです。旅に出るときには、必ず日記をつけます。旅の記録、そして思ったことを徒然なるままに、自動書記をするように。先日、30年くらい前にパリに行ったときの日記が出てきました。たいてい一人で旅をしていたので、日記は話し相手でもあるのです。旅日記を読み返しながら、パリの石畳の道を歩いているような気がしてきます。いまはもう味わうことのない気持ちが綴られているのを読むと、遠い日の自分が愛しくなります。そんな日記の中に、ぽっかりと記憶から抜け落ちた出来事について書いてありました。それはパリに住んでいる友人とのことだったのですが、私はそれを初めてページを開く小説のように読みました。その出来事について、すっかり忘れていた自分にも驚いて、何度も何度も読み返しました。でも、遠い日の記憶の尻尾をつかまえられない。そして思い出したのが、その話を聞いたイタリアン・レストランと、オーダーしたイベリコ豚の生ハム。そして「夜は会えないから赤ワインを飲もう」という友人の言葉でした。何かの形でしるしを残す。備忘録。思うよりも早く、時は過ぎていきます。昨年から5年日記をつけ始めました。1日数行の小さな日記帳は、何年か前にニューヨークのソーホーの文具店で求めたもの。同じ日付のページにある1年前の日記を読み、その日のことを綴りながら、いまここにいる自分と向き合う。時を重ねていく自分を感じながら、1日を終える。人生の折り返し地点はとうに過ぎてしまったのですから、1日という時間の手触りを味わいながら過ごすのも悪くありません。時の流れは優しいものです。忘れることは、自分を楽にしてくれることもあるかもしれません。忘れてもいいこと。忘れたくないこと。それを選ぶわけにはいかないかもしれません。手のひらの上で遠い日の記憶を転がしながら、なんとか生きてきたことを愛しく思う。そんな優しい時間を過ごすのもいいものです。忘れてもいいことは忘れていく。昨夜何を食べたかなんて些細なことですが、いまはまだそれを忘れては、なりません。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月16日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『ふとした瞬間』に『自分』を感じる花の香りは、黄昏から夜に立ってくるのでしょうか。夜に閉ざされることで、嗅覚が敏感になるのか。少し街が静かになり、夜が降りてくる頃、ふわりと金木犀の香りが。金木犀の香りに、人々は本格的な秋の訪れを感じます。小さな花のひとつ一つから、あの微かに甘く、どこかエキゾティックな香りが立ち上る。香りは目に見えませんが、小さな花がそうっと開くと同時に香りが霧のように放たれるような。風に溶け込み、空気に溶け込み、消えていく。どこへ行ってしまうのでしょうか。もしかしたら、香りは、感じた人それぞれの心の中に入っていくのかもしれません。目にするもの、香り、手触り、音、味覚。五感を通して感じたものが記憶に結びついたり、胸のあたりが熱くなったりすることがあります。それは、心の奥の弦を弾くような、そんな感覚です。「ふと思い出す」「ふと涙が出る」「ふと悲しくなる」といった、予期しない、脈絡もなく起こる「ふと〜」という様。自分でもなぜそうなるのかわからないこの「ふと〜」という心の動きは、とても大切なものです。その心の動きこそ、その人の感受性であり、感性となり、人生という物語を語るのではないかと。私たちは、実に忙しい現実の日々を送っています。世界の情勢も予断を許さない。時間に追われるように過ごしている生活の中のエアポケットのようなこの「ふと〜」という瞬間は、私たちを大切な場所につなぎとめてくれるような感があるのです。論理性もない、何の根拠があるわけでもない、「ふと」何かを思い出し、「ふと」感情が動くという『現象』は、それぞれの人生の物語の『どこか』『何か』に紐づいているものです。それが悲しみであろうと、懐かしさであろうと、理由など分からなくても、自分の物語を思い出させる小さなトリガーとなる。そこで心の中で思いをめぐらせるのは、感性を育む素敵な時間です。『自分』を感じる瞬間なのです。少し大袈裟な言い方になりますが、人生は現実目標を達成するためにあるわけではない、と私は考えます。現実の生活を通して、目に見えない心を成長させていく。生きるということは、いくつもの体験を重ねながら、自分という物語を紡いでいく。長い人生の中の「ふと〜」と思った瞬間からつながる場所に、物語がある。金木犀の香りにふと思い出した遠い秋の日にも。そんな物語を味わうこと、ささやかでも豊かな時間になるのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月09日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。『自分の歌』を創るという物語今日は主宰している『ソングライティング・クラス』の受講生作品のレコーディングでした。クラスでは作詞法、感性を磨くワークなどを取り入れながら、歌詞の添削を重ねて作品に仕上げていきます。わずか20行、30行の歌詞ですが、そこには1篇の短編小説ほどの物語が凝縮されています。すべてを言葉にすることができない代わりに、比喩や情景描写、心情だけではなく、行間や余韻にも言葉がこめられています。もちろん、音楽も物語を語ります。そして、聴き手の心に響き、聴いた人の数だけの物語が生まれる。自分のワールドに浸れるのが、音楽の楽しみです。希望があれば、歌詞に曲をつけ、本格的なレコーディングをするプログラムもあります。私のクラスの強みは、『ヒット曲を出した作曲家』に曲をつけてもらい、プロのアーティストに歌ってもらうこと。もちろん自分が歌う場合もあります。「歌を書く」というのは、多くの人にとって憧れです。そんな憧れをかたちにし、人生を彩る体験をしてもらいたいと思い、このレコーディング・プログラムを始めました。今日は2曲のレコーディング。記憶が曖昧になっていく母親を思う歌、林住期とも言える人生の後半に出会った、愛する人への歌の2曲です。ここに作者の人生の物語があります。もちろん、作品にするにあたっての作りこみがあるとはいえ、作品にこめた思い……言い方を変えると、書かずにはいられなかった作者の思いがあるのです。私も作詞家として『熱』をこめて書きますが、クラスで書いた歌詞に曲をつけてもらい『歌』として残したいという『熱』には、また違う熱さがあります。これまでに10作品ほどレコーディングしました。高校生の息子さんを交通事故で亡くされたKさんは、その悲しみを2曲の歌にこめました。このことがきっかけで、小さなライブを開催し、歌を通して同じような悲しみの中にいる人たちと思いを分かち合いました。若い頃から音楽が好きで、いつか自分の歌を歌いたいと思っていたMさんは、定年退職後にライブ活動を始めました。みんな『自分の歌』を書くことで、それぞれの人生に新しい物語を創っていったのです。これも歌の力なのでしょう。これまでに1000曲ほどの歌詞を書いてきましたが、考えてみると私は『自分の歌』は書いていないのです。アーティストに提供した歌詞にちょっとずつこめてはいましたが、自分のための歌はありません。いつか、自分のためにこのテーマを!という熱が湧き上がってきたとき、書いてみようか。人生を新しい物語で彩るために。誰に曲をお願いし、誰に歌ってもらうか。想像をめぐらせるだけでわくわくしてきました。吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY 作品集※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年10月02日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。手を差し伸べる『反射力』を先日、マーケットの駐車場に車を停めたときのこと。駐車場は遊歩道の生垣に接しており、左からおじいさんが、右方向からは30代くらいのカップルが歩いてくるのが見えました。全身が見えるわけではなく、生垣の上に胸から上が見える……という感じでしょうか。すると、突然おじいさんが視界から消えました。転んだのでしょうか。右側から歩いてきた二人は立ち止まることなく、おじいさんの横を歩いて行ってしまいました。私はその一部始終を見ていたのですが、一瞬意味がわかりませんでした。おじいさんが目の前で転んだ。駆け寄ることも、手助けすることもなく通り過ぎていった。それは、とても奇妙な光景でした。そう言えば、3年前に転んで手首を折ってしまったとき、まわりに何人も人はいたのですが、駆け寄ってくれたのはおじさん一人でした。抱き起こしてくれ、救急車を呼んでくれました。とても心強かったことを覚えています。とても自分で救急車を呼べるような状態ではなかったですから。まわりには、ただ無表情に私たちを眺めている人もいました。それもまた奇妙な光景でした。私はとりあえずティッシュペーパーを持って、おじいさんのところへ行きました。おじいさんはよろよろと自力で立ち上がり、手についた土をはらっていました。大丈夫ですか?お怪我はないですか?と声をかけると、おじいさんは困った顔をして言いました。「大丈夫です。いつもつまずいて転んでしまうのです」91歳の父の姿が重なりました。つい先日、父は転んで肋骨を折ったばかりでした。足が上がっているようで、上がっていない。老齢になると、イメージと現実の体の動きにずれが出てきます。まだ老齢とまではいかない私も、時々ちぐはぐな体の動きをしていることがあります。転んだとき、父は誰かに助けてもらっただろうか。戸惑っていなかっただろうか。土をはらうおじいさんを見守りながら、これは他人事ではないと思いました。困っている人がいることをわかっていながら素通りしたとき、いつも小さな罪悪感を覚えます。道に迷っている人、重い荷物を持って階段を登っているお年寄り……。さっと手を差し伸べるのは、そんなに難しいことではないでしょう。自分も誰かの助けを必要とすることがある。他人事は、いつか自分事になるかもしれない。誰かの助けを必要とすることがあるかもしれない。そんな想像に及ばずとも、考えるまでもなく、さっと声をかけ、手を差し伸べる反射力が、世の中を穏やかにするのではないか。おじいさんが歩き出す姿に、日頃の反省と共に思いました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月25日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。曖昧な言葉に寛容さが宿っている日本語には、曖昧、または玉虫色的なニュアンスを持つ言葉がたくさんあります。「ほどほどに」「よしなに」「そこそこに」「適当に」「適度に」「無理なく」など。どの言葉にもはっきりとした基準はありません。その人の価値観や判断に任せた言葉です。ですから、同じ「ほどほど」も、人によって違うでしょう。言い方を変えると、その人の価値判断に委ねる。その価値判断の守備範囲は広くても、なんとなくわかりあえるようなものではないでしょうか。言葉の使い方でも日本語は曖昧であると批判されることがあります。イエスなのかノーなのかわかりづらい表現もあり、国際社会では通用しないと言われることもあります。言葉はその民族が培ってきた文化です。そこには精神性も反映されるでしょう。白か黒。善か悪。物事を二極で判断せず、その間の緩衝地帯もあるのではないかといにしえの人は考えたのではないでしょうか。これをある意味優柔不断と見るのか、おおらかさ、優しさと見るか。自然に畏敬の念を持ち、自然によって生かされていると考えていたいにしえの人たちは、「白か黒」ではないものが見えていたのだと推察します。地震、噴火、台風……多くの自然災害に見舞われ、復興を繰り返してきたことで、日本人の忍耐力、受け入れる力は培われたと考えられています。そこには、白か黒で判断できるようなことも、善か悪で判断できることはなかった。自然に生かされている。その自然が猛威を振るう。そこで生きてきた人間は、謙虚に平伏すしかなかったのではないでしょうか。また、日本人は『割れ』や『欠け』の中にも美を見出していました。金継ぎという修復は、『修理』ではありません。『割れ』や『欠け』に漆と金を施すことで、また美を作り出していく。言ってみれば、『失敗』を許し、『失敗』を美へと進化させることです。これもいにしえの人たちの精神性から生まれた文化だと思います。さて、現代の日本はどうでしょうか。白か黒かで分断していく。敵か味方か。自分の正しさを主張するばかりで、相手を真っ向から否定する。世の中をよく眺めてみると、緩衝地帯がなくなりました。寛容さが失われつつあるのです。どちらの考えに賛同するのか、そこで線引きをしたがる。これが、『分断』です。「ほどほど」が許されなくなり、「なんとなく」に対してエビデンスを求める。口汚い言葉が公の場で飛び交う。そして論破する達成感が、さらに相手を倒すことに拍車をかける。日本はこれからどうなっていくのか。言葉は文化であり、精神性の表れです。日本は、今、岐路に立たされていると感じています。「ほどほど」というゆとりを持った気持ちは、人と人を結び、自分を許し、諌めることにつながっているのではないでしょうか。白と黒の間にあるグラデーションに、大切な「何か」があるように思います。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月18日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。時にはゆっくり歩いてみようゆっくり歩くと、いつも見えていないものが目に入ってきます。散歩をするときも、考えごとをしているとただ歩くだけ、まわりをあまり見ていないものです。季節が変わっていくのを感じるのは気温だけではない、街路樹やご近所の庭に咲く木や花の様子、空の色、雲の形……すべて自然からのメッセージです。8月の終わり、青森県の奥入瀬渓流を歩きました。憧れの奥入瀬渓流、8月初めの大雨の影響で渓流の水は少し濁っていましたが、川の流れの音や森の豊かな木々は混沌とした日常を忘れさせてくれました。ゆっくり歩くと見えてくる……いろいろな苔の形、ふわりとした手触り。風で葉が揺れると、小さな水滴が転がり落ちる。ブナのしっとりとした木の肌。空を指差すように朽ちた木の幹。足元を確かめるように、一歩進むたびに見えてくる光景を確かめるように渓流沿いを歩きます。すぐ近くの木で蝉が鳴いていました。どの木で鳴いているのだろうと見上げて、見回します。でもそう簡単に見つかるはずもありません。そして鳴き声を頼りにふっと目線の先にある細い木を見てみると、翅(はね)がぼろぼろになった蝉が止まっていました。エゾゼミという焦茶の体に山吹色の紋様が入った蝉です。私が近づいても飛び去る気配はなく、ギーンギーンと力強く鳴いています。翅を震わせながらギーンと鳴きます。夏の終わり、傷ついた体を精一杯震わせて力強く鳴いています。ひとしきり鳴くと、次はお尻を持ち上げるようにしてギイィーン、ギイィーンと鳴き始めました。そして、ゆっくり木の枝を登ったり、下りたり、心地のいい居場所を探すように動いています。今にも力尽きてしまいそうな体のどこに、あんなに大きな声を出す力が残っていたのでしょうか。暑い暑いと言っていた夏が終わります。ひと色ではない渓流の流れのように、人生もさまざまな流れに巻き込まれ、流れに乗りながら時を重ねていく。思っているよりも、その流れは速いものだとひと段落した暑さに思います。時にはゆっくりと歩みを緩めて、これまで見えていなかったことに目を向けてもいいかもしれません。夏の終わり、命の証を知らしめるように鳴いていたエゾゼミに教えられました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月11日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。生きること、生きていくこと〜夏の終わりの山寺にて京都の山寺でのこと。山門を入り、苔むした境内を歩いていると、ころっとした一匹の蜂に出会いました。その蜂は木に登ろうとするのですが、登っては滑り落ち、登っては滑り落ち。地面に落ちて転がっても、また登りはじめる。それでもまた滑って落ちてしまう。今度は、木の根を越えながら歩きだす。どこへ向かおうとしているのか、くねくねと地を這う木の根をよろよろと越えながら、やがて見えなくなりました。けなげです。触覚や翅が傷ついて飛べなくなったのか、命の終わりが近づいているのか。飛べなくなったら、歩くしかありません。そうして蜂は生きていく道を見つけて進んでいく。蜂に思考能力があるのかわかりませんが、生き抜くために本能が歩くことを選択したのです。そこには欲も得もなく、ただ命の営みがあるのでした。8月も終わりに近づいた山寺の木立の中で、時折、思い出したように蝉が鳴き始めました。夏の盛りであれば、境内には蝉の大合唱が響いていたことでしょう。土の中で長い時間を過ごし、短い夏を謳歌するように鳴き、そして命を終える。蝉の幼虫は約7年間土の中で過ごし、成虫になって土から出ると2週間から1か月で命を終えます。その2週間は、子孫を残す使命を果たすために使われます。それを儚い一生という見方もありますが、土の中の幼虫はゆっくりと幾度かの脱皮を繰り返しながら変容しているのです。自由に飛び回り、大きな声で鳴き、そしてからからになって死んでいくのもドラマチックですが、土の中で変容を繰り返す命には壮大なドラマがあります。私たちの人生もひと色ではありません。年老いて体が衰えることは、決して嘆くようなことではありません。何十年もの時間、喜びがあり悲しみがあり、さまざまな努力や苦労があったはずです。時代に翻弄され、思うように生きられなかった時もあったかもしれない。よくここまで生き抜いてきた。母が人生を終える姿を見、父が老いていく姿を見ていると、命を全うしていくことの尊さに胸が震えます。木に登ることを諦め、歩いていった蜂も、短い夏を飛び回った蝉も、変容しながら命の営みのままに。人は、どのように変容するのでしょうか。自分をより進化させ、作り替えていく。それは心の仕事です。悲しみがあっても苦労があっても、変容のプロセスなのだと解釈すると、また人生の向き合い方が違ってくるかもしれません。夏の終わり、生きものたちの姿に、ふと自分を重ねてみました。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年09月05日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。心の旅をしながら思うこと〜孤独〜「人はみんな孤独だから」30代の初めの頃だったか、ひどく落ち込んでいる私を、友人がこう言って慰めてくれました。そうなのかもしれない。でも、その言葉は私の中に落ちていきませんでした。「みんな孤独」とは何を言うのか、わからなかったのです。『孤独』という言葉を口にするとき、耳にするとき、胸の奥がざわっとしたものでした。それは、孤独であること、孤独になってしまうことへの微かな怖れがあるからでしょう。30代はまだまだ若く未熟だったのです。歌詞を書くとき、例えば「愛する」とはどういうことなのか、「悲しむ」とはどういうことなのかといった物語の核となる感情について深掘りしていきます。孤独についても考えました。孤独とはどういうことなのか。腹に落ちる気づきを得るまで、自分に問い続ける。若さに足りないのは『経験』です。経験とは大きな出来事だけではなく、日々の中でふと感じるささやかなことも含みます。思わず立ち止まって空を見上げてしまう美しい夕焼けを見たとか、小説を読んで泣けてしまったとか、それも経験です。大人になるとは、そんな経験を積み上げながら、「生きる」ということを体験する。悩み、答えを出せずに心は彷徨う。喪失感。乗り越えていけないもどかしさ。怪我の痛み。病気の辛さ。焦り。そのどれも、自分にしかわからないことであって、自分でしか解決できないことなのです。2年前、右手首を骨折したとき、ものすごく痛かったこと。それを誰にもわかってもらえない。痛いことは伝わっても、どのくらいの痛さなのかはわからない。悲しみも自分だけのもの。同じようにわかってもらえない。他人の悲しみも同じように分かち合うことはできない。孤独とは、こういうことなのだと、今は思っています。誰もが、自分ひとりで引き受けていく。どんなに友達がたくさんいても、大家族でも、誰もが孤独を抱えている。同じ痛みを味わうことができないからこそ、互いに優しくなれる。慮ることができるのではないかと思います。海で泳ぐことが好きな親友が、遠泳の隊列から逸れてしまったときのことを話してくれました。「まわりを見回したら誰もいない。海にひとりきり。泳がなくては生きていけない。このとき、これが孤独なのだと思った。自由なんだな、と思った。そしたら、なんだか楽しくなってきたの」孤独と自由。それぞれの心の旅があり、その時々の境地があります。でも大切なことは、孤独であっても、一人きりではないということ。孤独だからこそ、つながっていることが大切なのです。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年08月28日吉元由美の『ひと・もの・こと』作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。8月15日の玉子丼8月15日。朝、靖国神社を参拝しようと思い立ちました。「思い立つ」なんて不敬な表現ですが、なぜか今日行かなくては、と直感的に思ったのです。靖国神社をお参りしたのはずいぶん前のこと。心を寄せてはいても、足を運んではいませんでした。日本が日本でなくなる……そんな危惧があるからなのかもしれません。台風が過ぎ、さらに暑さが戻ってきました。立っているだけでも汗が噴き出てきます。終戦の日だけにまわりの道路は物々しい雰囲気で、多くの警察官が警備にあたっていました。すぐ隣の武道館では、全国戦没者追悼式が行われていることもあり、この日が『日常』ではないことを示していました。神社の塀沿いに歩いていると、私の前をアオスジアゲハがひらりと横切っていきました。蝶は亡くなった人の化身とも言われています。来たことを喜んでくれているのかなあと思いつつ、参拝の長い列に並びました。終戦後77年目を迎えた日本はどこへ向かうのか。亡くなったあまりにも多くの命に報いるような日本になっているのか。それを思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになります。戦争を美化するつもりも神格化するつもりもまったくありませんが、私たちは「大切にする」「大切に思う」という気持ちを忘れてしまったような気がしてなりません。大切なものを大切にする、大切に思うという『覚悟』です。神社内にある靖國八千代食堂で玉子丼をいただきました。鹿児島県知覧の富屋食堂で『特攻の母』と呼ばれた島濱トメさんの玉子丼です。特攻隊員たちの最後のごはん。隊員たちは最後のごはんにもかかわらず、「母や妹、弟たちに食べさせたい」と話したそうです。知覧特攻平和会館には、隊員たちが残した手紙が展示されています。家族への、美しい字で綴られた手紙には、泣き言も恨み言などなく、ただただ国のために飛び立つこと、家族が健やかであることを祈る思いが綴られています。二十歳前後の若者たち、その心の奥を知ることはできませんが清々しくさえ思える手紙は、涙無くして読めません。そんな若者たちのためにトメさんが作り続けた玉子丼。熱々で、ほの甘く、やさしい味で、散蓮華でひと口食べるたびに涙がこぼれ、最後のご飯一粒までいただきました。胸の中を去来した思いを、今もまだ言葉にできずにいます。ただ、「覚悟する」ということを忘れてしまったような自分を情けなく思うばかりでした。食堂を出て、化粧室へ行っている間に隣のお土産屋さんで『Jupiter』がかかったそうです。アオスジアゲハに迎えてもらい、『Jupiter』で送ってもらった参拝。大切なことを大切にしようと、改めて思ったのでした。※記事中の写真はすべてイメージ作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー[文・構成/吉元由美]吉元由美作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。⇒ 吉元由美オフィシャルサイト⇒ 吉元由美Facebookページ⇒ 単行本「大人の結婚」
2022年08月21日