第27回東京国際映画祭が31日に閉幕し、東京・六本木のTOHO シネマズ 六本木ヒルズで行われたクロージングセレモニーで、コンペティション部門をはじめとする各賞が発表された。最高賞である東京グランプリは『神様なんかくそくらえ』に決まり、宮沢りえ主演『紙の月』は、観客賞と最優秀女優賞を獲得した。セレモニーではまず、フェスティバル・ミューズの中谷美紀があいさつ。「豊かな9日間でした。映画漬けの日々を送ることができて、なんて幸せな日々だったんだろうと思っています」と振り返った。続いて、新設された"SAMURAI(サムライ)賞"受賞者の北野武監督とティム・バートン監督が登場し、トロフィーが贈呈された。コンペティション部門では、最高賞の東京グランプリにアメリカ・フランス合作の『神様なんかくそくらえ』が決定。本作は、少女の青年に対する絶望的な愛の物語を軸に、ジャンキーとして生きる若者たちを徹底したリアリズムで描いた作品で、主演女優アリエル・ホームズの実体験を描いた。サフディ兄弟は、最優秀監督賞も受賞。「2つも受賞してうれしく思います」と喜びを語った。日本代表作品の宮沢りえ主演『紙の月』も、観客賞と主演女優賞の2冠を達成。吉田大八監督は「『紙の月』を好きだとおっしゃってくださった方が一番多いという重みを感じます」と語り、宮沢は「おみくじで大吉をひいた時に、『ヤッター!』と思う気持ちの中に自分を引き締めなければという気持ちが湧くのと似ています」と喜びを伝えた。すべての賞を発表した後、コンペティション国際審査委員長のジェームズ・ガン監督が「審査員一同、世界を巡らせてもらえた日々でした」と9日間を振り返り、「今年の作品に流れるテーマは、愛する、そして、愛されるという必要性」だとコメント。「映画作りの楽しさの中で、表現力の相違点と類似点を体験できるのが、東京国際映画祭の魅力だと思います」と語った。第27回東京国際映画祭 受賞作品・受賞者【コンペティション部門】東京グランプリ:『神様なんかくそくらえ』審査員特別賞:『ザ・レッスン/授業の代償』最優秀監督賞:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ(『神様なんかくそくらえ』)最優秀女優賞:宮沢りえ(『紙の月』)最優秀男優賞:ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ(『マイティ・エンジェル』)最優秀芸術貢献賞:『草原の実験』観客賞:『紙の月』WOWOW賞:『草原の実験』【アジアの未来】作品賞:『ゼロ地帯の子どもたち』国際交流基金特別賞:『遺されたフィルム』【日本映画スプラッシュ】作品賞:『百円の恋』スペシャル・メンション:『滝を見にいく』【SAMURAI(サムライ)賞】北野武、ティム・バートン
2014年11月01日第27回東京国際映画祭が10月31日(金)に閉幕。クロージングセレモニー後には各賞受賞者および審査員による会見が行われた。米仏合作の『神様なんてくそくらえ』が「東京グランプリ」と「監督賞」の2冠に輝いたが、コンペティション部門審査委員長の映画監督のジェームズ・ガンは、審査の過程について「シンプルに、一番インスピレーションを与えてくれた作品を選びました。満場一致ではありませんでしたが議論をした上で、最後はみんなの意見が一致に近いところまで辿り着いたと思います」とふり返る。今年はお笑い芸人で映画監督として『漫才ギャング』『ドロップ』というヒット作を送り出した品川ヒロシが審査員に名を連ねたが、9日間の映画祭の日々をふり返り「好きな映画に対して意見が出来たと思います」と充実の表情。「(審査員による決定が)多数決ではなく話し合いでできているのが面白いと思いました。もっと仲が悪い審査員なら、映画になりますね(笑)」とも。『神様なんてくそくらえ』チームはジョシュア・サフディ&ベニー・サフディの両監督、ヒロインのアリエル・ホームズ、相手役を務めたケイレブ・ランドリー・ジョーンズの4人が揃って出席。ヘロイン中毒の若者たちの姿を生々しく描いた本作だが、映画で描かれている物語の一端は、アリエル自身の少し前までの実生活であるという。アリエルは受賞の喜びを口にし、作品について「私自身を取り巻いていた現実、実体験がきちんと映画で描かれていると思います」と語る。さらに「この受賞がどんな意味を持つかはいまの私には分かりませんが、いま私が願うのは、映画を観た人が世の中にいろんな生き方、人生があるということを分かってくれること。そして、どんな命にも重みがあるということです。ニューヨークでホームレスだった少女がいま、ここでこうしているというのはクレイジーなすごいこと。やはり、人それぞれいろんな人生があるのだと思います。誰しもが“声”を持っているので、その声に耳を傾けていただければ幸いです」と呼びかけた。監督のジョシュアは、1年半前の彼女との出会いを「ラッキーだった」と述懐。すでに彼女はロスでの女優としての次の仕事も決まっているそうで、「これからも女優として頑張ってほしい」とエールを送る。そして「ここで描かれていることは決して悲劇ではありません。なぜならエンディングがなく、いまもなお続いているからです」と言葉に力を込めた。なお、「最優秀女優賞」を受賞した宮沢りえは、スケジュールの都合で会見を欠席。『紙の月』の「観客賞受賞」で出席した吉田大八監督は改めて感謝の弁を口にする。「女優賞受賞」の際の宮沢さんの様子について、「驚いていたと思います。普段、彼女はとてもスピーチが上手いのですが、緊張していることが分かりましたし、ものすごく大きな喜びだったのは間違いないと思います」と語る。宮沢さんは壇上で「(トロフィーを)半分に出来るなら監督に演出賞をあげたい」と感謝の思いを語ったが、これを受け吉田監督は「もし自分が監督賞をいただけたなら、同じことを言おうと思ったんですが、機会がなくて残念です」と笑っていた。本作について「分かりやすい映画と思っていないし、シンプルに『大好き』と言える映画ではないと思う」と語るなど、観客の投票による「観客賞」受賞はを予想外の結果と受け止めているよう。「励みになった」と語ると共に「俳優の演技には自信があるので、そこが評価されたのだと思います」と改めて俳優陣への称賛を口にした。(text:cinemacafe.net)
2014年11月01日宮沢りえが第27回東京国際映画祭において『紙の月』での演技で「最優秀女優賞」を受賞。本作は「観客賞」にも輝いた。なお最高賞「東京グランプリ」は米仏合作の『神様なんてくそくらえ』が獲得。こちらも「監督賞」との2冠となった。宮沢さんは艶やかな着物姿で来場。すでに『紙の月』が映画祭に訪れた観客の投票による「観客賞」を受賞したことは授賞式前に発表されていたが、「女優賞」と併せて堂々の2冠獲得となった。審査員の韓国人監督イ・ジェハンは宮沢さんの受賞を「満場一致の決定」と説明。「意味深さと奥深さ、繊細さと脆さを表現し、目で全てを語り、真の自由を求めていた。そして何より、美しい」と称賛を送った。宮沢さんは、信じられないといった表情。なかなか言葉が出てこないようで「なんか震えています…」と苦笑い。「おみくじで大吉を当てて『やったー!』と思う気持ちの中で、『自分を引き締めなくては』と思う気持ちと似ています」と心境を語った。久々の映画主演となったが「7年ぶりということで、不安や緊張もありましたが、吉田大八監督の粘り強く厳しい、でも愛がたくさんこもった演出で、手ごわい役を乗り越えることが出来ました。もし(トロフィーが)半分に出来るなら半分は『最優秀演出賞』で監督にあげたい」と感謝の思いを口にし、席に戻ると吉田監督とガッチリと抱き合った。吉田監督は「観客賞」受賞に「映画を観た後で、コンペの素晴らしい作品の中でこの映画を『好き』と仰って下さった方が一番多いという重みを感じてます。これからの励みにしていきたい」と喜びを語った。「最優秀男優賞」はポーランド映画『マイティ・エンジェル』でアルコール依存症の主人公を熱演したロベルト・ヴィエンツキェヴィチが受賞。本人不在のため、監督が代わりにトロフィーを受け取った。そして、ジョシュア&ベニー・サフディの兄弟監督による作品で、ヘロイン中毒の若者たちを生々しく描いた『神様なんてくそくらえ』が最高賞の「東京グランプリ」と「監督賞」をW受賞。ジョシュアは「2つも受賞して本当に嬉しいです。この映画祭のコンペティションに入選したと聞いたとき『これ以上のことはない』と思いつつ、“極端”を描いたこの作品が日本の方に受け入れてもらえうるのでは?と感じもしました。東京に感謝したいと思います」と挨拶。ベニーは「いろんな犠牲を払いながら作り上げた作品だったけど、思いを込めて作り上げました」と感慨深げに語る。主演のアリエル・ホームズは「何て言っていいか…ありがとうございます」、共演のケイレブ・ランドリー・ジョーンズは「Thank you very very very very very very much!」と短い言葉に感激と喜びの思いをうかがわせた。この他、日本映画を対象にした日本スプラッシュ部門では安藤サクラ、新井浩文が出演する『百円の恋』が「作品賞」を受賞。同部門の「スペシャル・メンション(特別賞)」には沖田修一監督が無名の俳優ばかりを起用して作り上げた『滝を見に行く』が受賞した。<第27回東京国際映画祭/受賞結果一覧>■東京グランプリ:『神様なんてくそくらえ』■最優秀監督賞:ジョシュア・サフディ&ベニー・サフディ(『神様なんてくそくらえ』)■最優秀女優賞:宮沢りえ(紙の月』)■最優秀男優賞:ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ(『マイティ・エンジェル』)■最優秀芸術貢献賞:『草原の実験』■WOWOW賞:『草原の実験』■アジアの未来 作品賞:『ゼロ地帯の子どもたち』■国際交流基金 特別賞:『遺されたフィルム』■日本映画スプラッシュ 作品賞:『百円の恋』■日本映画スプラッシュ スペシャル・メンション:『滝を見に行く』■SAMURAI賞:北野武/ティム・バートン■観客賞:『紙の月』(text:cinemacafe.net)
2014年10月31日第27回東京国際映画祭が開催中の東京・TOHOシネマズ日本橋で30日に日本映画として唯一コンペティション部門に出品された『紙の月』が上映され、プロデューサーの池田史嗣氏が撮影の舞台裏を語った。その他の写真本作はバブル崩壊直後の1994年を舞台に、契約社員として銀行で真面目に働く主婦・梨花(宮沢りえ)が、巨額の横領事件を引き起こすヒューマン・サスペンス。直木賞作家・角田光代氏のベストセラー長編小説を、『桐島、部活やめるってよ』で日本アカデミー賞を受賞した吉田大八監督が映画化した。『八日目の蝉』に続き、角田氏の原作を映画化した池田氏は「どちらも逃げる女性というテーマなので、今回はまったく違うアプローチで映像化したいと思った」といい、『桐島、部活やめるってよ』が公開された直後に、吉田監督にオファー。『クヒオ大佐』『パーマネント野ばら』など、女性の業を描いた作品でも知られ「漠としたイメージだったが、きっと吉田監督がぴったりだと直感した」と明かした。一方、ヒロインを演じる宮沢にとっては7年ぶりの映画主演で「吉田監督とはほぼ初対面だったが、あまりリハーサルもせず、いきなり本番。それでもすごく波長が合っていた」と池田氏。2人の共通点は「いい意味貪欲で、勝負好きなギャンブラー」だといい、「現場では上を目指して、互いに高め合っていた」と振り返った。池田氏自身も「完全燃焼したという自負がある」と胸を張り、コンペティション部門の結果に期待を寄せていた。『紙の月』11月15日(土)全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2014年10月31日現在、開催中の第27回東京国際映画祭(以下、TIFF)。今年は庵野秀明監督の特集上映が組まれたり、オープニング作品をディズニーの『ベイマックス』が抜擢されたりと、例年以上の盛り上がりを見せる今年のTIFF。いよいよ明日(31日)は最終日となり、各賞の受賞結果が発表されるが、中でも注目を集めているのは「コンペティション部門」だ。毎年、熾烈を極めるこの「コンペティション部門」。2011年に最高賞となる「東京サクラグランプリ」(※現在の名称は「東京グランプリ」)に輝いたフランス映画『最強のふたり』は、その後、社会現象ともいえる大ブームを巻き起こすなど、この先の映画界を占う重要な部門となっている。今年、同部門で最も注目を集めているのは、唯一日本からの出品作となった『紙の月』。ベストセラー作家・角田光代の同名小説を原作に、『桐島、部活やめるってよ』を大ヒットさせた吉田大八が監督を務める本作。先日、行われた会見でグランプリへの自信について聞かれた、主演の宮沢りえは「あるといえばある」と語り、報道陣を沸かせており、さらに共演の池松壮亮も「あそこまで役に身を投げれる女優さんは、りえさんしか知らない」と、その体当たりの演技を絶賛しており期待感は十分だ。しかし、同会見で「世界という広い舞台で、この映画がどういう位置づけで見てもらえるのか」と語った吉田監督の言葉のとおり、世界はとにかく広い。今年の「コンペティション部門」さらに「最優秀女優賞」まで含めて見渡した時、宮沢さんのライバルは誰なのか?長年、TIFFの作品選定に携わり、今年の各出品作品を選んだ張本人となるプログラミング・ディレクター矢田部吉彦氏に聞いてみると、まさに世界の“広さ”を感じさせる答えが返ってきた。――「宮沢りえさんの強敵は“おばあちゃん”ですね」と。その“おばあちゃん”の正体は、イランを代表する名女優ファテメ・モタメダリア。日本では無名の彼女だが…演技を計る上で、有名・無名を論じるのは無価値。矢田部氏によると、「アゼルバイジャン共和国の『ナバット』という作品で、『紙の月』とはまた違ったタイプの作品です。村が戦争に巻き込まれて村人たちが去ったあと、ひとり取り残されたおばあちゃんのお話なんです。彼女が淡々と生きていく中で抱える“孤独”が、じわじわと胸に迫ってくるんです」。『紙の月』で平凡な日常から逃げ出すように、世の闇へと堕ちていく女性を演じた宮沢さんと、戦乱という非日常の中でどうしようもなく孤独を抱えながら生きていく女性を演じたファテメ。果たして、今年はどの作品が栄冠に輝くのだろうか?第27回東京国際映画祭は10月31日(金)まで開催。『紙の月』は11月15日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年10月30日女優の宮沢りえが25日、東京・六本木ヒルズで行われた第27回東京国際映画祭「コンペティション」部門・日本代表作品『紙の月』(11月15日公開)の記者会見に出席し、7年ぶりの映画主演作『紙の月』への出演を決めた理由を語った。宮沢は「30歳になって野田秀樹さんの『透明人間の蒸気』という舞台に参加させてもらって、あまりに自分の無力さに驚いて、このままじゃいけないと思った」と言い、「40歳になるまでにできるだけ舞台に心も時間も費やしたい」と舞台に専念することを決意。「40代になった時に、舞台に立っていられる役者になりたい」と目標を立てたという。多くの舞台を経験し、「たくさんの発見があって、学んだこと、豊かになる部分がいっぱいあった」と自分を成長させた宮沢。40代になって「バランスよく映像と舞台とやっていこう」と思った時に『紙の月』のオファーがあり、「やろうと思った時に来たというタイミングがすごかったので、この7年間で得たものを映像の世界に返そう、放出しよう」と明かした。吉田大八監督も、宮沢が舞台に専念していた7年間について、「蜷川幸雄さんとか野田秀樹さんとか世界的な舞台の演出家とお仕事されていて、一方で、映画からちょっと距離をとっているように見えていたので、映画の人間としては悔しいというか」とコメント。そして、「一か八かオファーしたらやってくれると言ったので、自信になりました」と宮沢出演の喜びを語った。「タイミングがよかっただけというのはあとで知った」という吉田監督だが、「この映画が勝負できる映画なんだと、自信を改めて持ったのを覚えています」と振り返ると、宮沢は「グッドタイミングなだけではなくて、監督にもちろん興味があった」とフォローしていた。
2014年10月26日第27回東京国際映画祭が開催中の東京・六本木ヒルズで25日、日本映画として唯一コンペティション部門に出品された『紙の月』の公式記者会見が行われ、吉田大八監督、主演の宮沢りえと共演する池松壮亮が出席した。宮沢は「妥協なく、これ以上のことはできないという現場。その積み重ねが、この映画なので、自信はあるといえばあります」と最高賞にあたる東京グランプリ受賞に期待を寄せていた。『紙の月』公式記者会見その他の写真本作は、バブル崩壊直後の1994年を舞台に、契約社員として銀行で真面目に働く主婦・梨花(宮沢)が、巨額の横領事件を引き起こす様を描くヒューマン・サスペンス。直木賞作家・角田光代氏のベストセラー長編小説を、『桐島、部活やめるってよ』の鬼才・吉田監督のメガホンで映画化した。宮沢にとっては7年ぶりの映画主演で、「40歳になるまで、できるだけ心と時間を舞台に費やしたかった。今回は、舞台を通して得た新しい発見と豊かな恵みを、映画の世界に返したかった」とスクリーン復帰への思いを語っていた。一方、吉田監督は「ここ数年、宮沢さんは舞台を中心に活動されていたので、映画人としては悔しい思いだった。イチかバチかのオファーを受けていただき、自信になったし、勝負できると確信した」と振り返り、「国際映画祭という世界の舞台で、どういう位置づけで観てもらえるのか楽しみ。もちろんコンペティションの意味は分かっているつもり。競争なので負けたくない」と闘志を燃やしていた。また、ヒロインが転落するきっかけとなる年下男を演じる池松は、「これまでたくさんの方と共演したが、これほど身も心も役に投げ出せる女優さんは初めて」と宮沢の熱演に圧倒されていた。第27回東京国際映画祭10月23日(木)から31日(金)まで会場:六本木ヒルズ(港区)、TOHOシネマズ 日本橋(中央区)ほか『紙の月』11月15日(土)全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2014年10月25日第27回東京国際映画祭「コンペティション」部門・日本代表作品『紙の月』(11月15日公開)の記者会見が25日、東京・六本木ヒルズで行われ、吉田大八監督、キャストの宮沢りえ、池松壮亮が登壇した。本作は、平凡な主婦が起こした巨額横領事件を描いた映画で、主人公の主婦・梅澤梨花を宮沢が演じ、梨花の不倫相手の大学生を池松が演じる。記者会見で宮沢は、海外メディアの数の多さに驚き、「こんなに注目されているんだっていう興奮がありますし、7年ぶりの主演ということで、大切に大切につくった映画が海外の方に注目されてうれしい」と喜びを語った。また、「コンペティション」部門の日本代表作品として世界に挑む自信を聞かれると、宮沢は「とても緻密な演出をなさる大八監督と、梨花という役、そして『紙の月』という映画をつくる時間は、妥協なく、これ以上のことはできないと毎回思って、その積み重なりができあがった映画なので、自信があるといえばありますし、胸を張ってみなさんにお届けできる映画になったと思います」と手ごたえを語った。池松も「せっかく選ばれたからには自信を持って、いい知らせを待ちたい」と期待。吉田監督は「こういう機会を得て、もっと広い世界でどういう位置づけに見えるのか、そういうことを想像するのはすごく刺激的だし、それを楽しみたい」と言い、「競争ですからね。その言葉の意味はわかっているので、負けたくはないですね」と語った。
2014年10月25日女優の宮沢りえが10月25日(土)、第27回東京国際映画祭が開催中の六本木ヒルズで行われた主演作『紙の月』の公式会見に臨んだ。「40歳になるまでは、心と時間を舞台に費やしたかった」と本作が7年ぶりの映画主演となった理由を語った。「30歳で野田秀樹さんの舞台に立ち、自分の無力さを思い知った。このままではいけないと思い、舞台に目を向けたこの数年間は、私にとってたくさんの発見があり、豊かな時間だった」と宮沢さん。40歳になるタイミングで、映画『紙の月』と出会い「自分のなかで蓄えたものを、映画の世界に返そうと思った」と言い、今後は映画と舞台の両面でバランスよく活動したいと話した。同映画祭で日本映画として、唯一「コンペティション部門」に出品されている本作。ベストセラー作家・角田光代の同名小説を原作に、夫と暮らす銀行の契約社員・梅澤梨花(宮沢さん)が、年下の恋人のため顧客の金を横領し、その犯行をエスカレートさせる姿を描いた。会見には宮沢さんをはじめ、共演する池松壮亮、吉田大八監督が出席した。宮沢さんは平凡な主婦から横領犯へと転落するヒロイン役で新境地を開拓し、「妥協のない現場で、私自身もこれ以上のことはできないという思いだった。その積み重ねが、この映画」と強い思い入れ。最高賞である東京グランプリの受賞については「自信があるといえばある」と期待を寄せた。吉田監督も「世界という広い舞台で、この映画がどういう位置づけで見てもらえるのか楽しみにしている。もちろん、コンペティションという言葉の意味は分かっているつもり。競争なので、負けたくないですね」と受賞に意欲を燃やした。一方、年下の恋人を演じる池松さんは「出品を目指して、映画を作っているわけではないが、いい知らせを待ちたい」とこちらは控えめに胸踊らせ、「いままでたくさんの女優さんとご一緒したが、ここまで役に身も心も投げ出せる人は初めて」と宮沢さんの女優魂を称えた。『紙の月』は、11月15日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2014年10月25日第27回東京国際映画祭が23日、開幕し、東京・六本木ヒルズアリーナで行われたオープニングイベントで、宮沢りえや安達祐実、中谷美紀、菅野美穂ら豪華女優陣が、それぞれセクシードレスや花魁姿などを披露した。フェスティバル・ミューズを務める中谷美紀は、黒いロングドレスで登場。ファンの歓声を浴びながらレッドカーペットを歩き、ステージで「多くのお客さまがいらしていただいて。本当に映画が好きでいてくださっているんだなと思いうれしい」と感激を示した。中谷は、イベントのラストでも再び登場し、安倍晋三内閣総理大臣と共にレッドカーペットを歩く重要な役割を果たした。コンペティション部門の日本代表作品『紙の月』で主演を務める宮沢りえは、胸元の開いたセクシーなドレス姿で観客を魅了。吉田大八監督、池松壮亮と共にステージに上がり、「撮影は過酷で、ものを作る喜びとつらさを感じながらも、できあがった作品をこうやって華やかな場所に持ってこられたという興奮があります」と語った。また、『花宵道中』の安達祐実は、劇中と同じ花魁姿、『救いたい』の鈴木京香は、落ち着いた色合いの着物で登場した。そして、クロージング作品『寄生獣』に出演する深津絵里は、黒いパンツスーツ、橋本愛はワンピース姿を披露。深津は「雨の中、こんなにたくさんの方に集まっていただいてうれしいです」と喜び、橋本も「たくさんの方々に集まっていただいて、ものすごく大きな力を感じているので、このままみなさんで盛り上がっていければうれしいなと思います」と呼びかけた。さらに、オープニング作品『ベイマックス』の日本語吹き替え版で声優を務める菅野美穂は、星のスパンコールがちりばめられたドレスで、キラキラと輝きを放った。撮影:蔦野裕
2014年10月24日女優の宮沢りえが、主演映画『紙の月』(11月15日公開)で、第28回山路ふみ子女優賞を受賞したことが15日、明らかになった。同映画は、『八日目の蝉』(2011年公開)などで知られる直木賞作家・角田光代の同名ベストセラー小説を原作に、『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督がメガホンを取った作品。東京国際映画祭のコンペティション部門の日本代表にも選ばれている。バブル崩壊直後の1994年を舞台に、巨額横領事件を巻き起こす主婦・梅澤梨花を宮沢が演じた。山路ふみ子賞とは、映画人の育成、功績を称える目的で毎年開催している賞。宮沢が同賞を受賞したのは、『父と暮らせば』(2004年)以来2度目となる。女優賞を2度受賞するのは、吉永小百合に続く史上2人目の快挙。「平凡な主婦が無自覚の内に変貌していく姿を、美しくも重厚に描き、圧倒的な演技を披露したこと」が評価された。(C)2014「紙の月」製作委員会
2014年10月16日女優の宮沢りえが7年ぶりの主演映画『紙の月』で、第28回山路ふみ子女優賞を受賞した。平凡な主婦から横領犯へと転落するヒロイン役で新境地を開拓。宮沢が同賞を受賞するのは『父と暮せば』(2004年)以来2度目で、2度の女優賞は吉永小百合に続き、史上2人目の快挙となる。その他の写真吉報が届いた15日、メガホンを執った吉田大八監督がアップルストア銀座で行われたトークショーに出席。日本映画として唯一、第27回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されており、同映画祭のコンペ部門プログラミングディレクターを務める矢田部吉彦氏を聞き手に、「僕が求めるもの、映画が必要とすることのために、100パーセントの仕事をしてくれた」と本作で宮沢が見せた“女優魂”を振り返った。映画はベストセラー作家・角田光代の同名小説を原作に、夫と暮らす銀行の契約社員・梅澤梨花(宮沢)が、年下の恋人のため顧客の金を横領し、その犯行をエスカレートさせる姿を描いた。吉田監督は「だんだんプロセスが大胆になるなかで、彼女が見せる表情の変遷が、作品の大きなよりどころになった。現場では常にプロフェッショナル。監督としての僕を信頼してくれた」と宮沢への感謝を表した。吉田監督はCM業界で20年のキャリアを積んだ後、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)で長編監督デビュー。『クヒオ大佐』(2009年)『パーマネント野ばら』(2010年)を発表し、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)では第36回日本アカデミー賞で最優秀監督賞を受賞した。「毎回違ったことをしようと心がけるが、いい意味で『監督らしいですね』と言われることも。長年CMをやってきたからか、なるべく自分を消して、誰が撮ったかわからないと思ってもらえるのが理想」と話していた。山路ふみ子賞は映画人の育成、功績を称える目的で毎年開催している。『紙の月』11月15日(土)全国ロードショー取材・文・写真:内田 涼
2014年10月16日第27回東京国際映画祭のコンペティション部門日本代表作品に決定した『紙の月』の吉田大八監督が30日、都内で行われた同映画祭のラインナップ発表会に登壇し、映画祭への意気込みや、主演女優・宮沢りえの魅力などを語った。「勝負事は嫌いじゃないので、自分ごととして映画祭を楽しめそうでワクワクしています」と映画祭への期待感を示した吉田監督。「女性とお金という2つの切り口を持つ物語で映画を作れることを想像した時に、自分なりのアプローチで映画にしたいと思った」と原作小説に魅力を感じ、「(主人公の梨花が)道徳として許されないことをしていく中で、彼女が何を手に入れて、何を失って、最後どこに向かっていくのか、彼女が走っていく先を見つめていきたいと思った」と映画化を決意した思いを語った。撮影では、主演の宮沢のいろんな表情に感激したと言い、「何かを始める前の顔、何かをやっている時の顔…自分の想像を超えた顔、表情を毎日目の当たりにして、それはすごく感動的な経験でした」と振り返った。宮沢にとって7年ぶりの映画主演となった本作。監督は「舞台で素晴らしい活躍をされていて、映画はもう興味ないのかなと思っていたけど、たまたま彼女もそろそろ映画をやりたいと思っていたようで、タイミングがよかった」とオファー時の心境を伝えた。また、海外を含むさまざまな人々に見てもらえることが「一番楽しみ」と言い、「僕も自分の映画の上映に限らず、ほかの映画の上映にもできるだけ足を運んで、話がしたい。僕の映画を見た人と話がしたいですし、僕もだれかの映画を見て、作った人や同じ映画を見た人と話がしたい。映画を見て話したいという人たちが集まって、エネルギーが高まっている場所に、この映画祭の現場がなればいい」と語った。
2014年10月01日第27回東京国際映画祭のラインナップ発表記者会見が30日に東京・港区の虎ノ門ヒルズで行われ、コンペティション部門に出品される15タイトルが発表された。同日、現在公開中のディズニー大ヒット作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェームズ・ガン監督が、コンペティション国際審査委員長に就任したことが明らかになった。同映画祭では史上3番目の若さ、さらにハリウッド大作の監督という異例の大抜てき。期間中の発言や審査結果に注目が集まりそうだ。第27回東京国際映画祭・その他の写真本年度のコンペティション部門には、92の国と地域からエントリーされた計1373作品のうち、厳正な予備審査を経た15本が出品。今回から名称が変更された最高賞・東京グランプリ(旧東京サクラグランプリ)を争うことになった。審査委員にはイ・ジェハン(映画監督)、ロバート・ルケティック(映画監督)、エリック・クー(映画監督)、デビー・マクウィリアムズ(キャスティング・ディレクター)、品川ヒロシ(映画監督/芸人)というバラエティ豊かな面々が勢ぞろいする。会見には、日本映画で唯一のコンペ部門出品を果たした『紙の月』を手がけた吉田大八監督と、今年のフェスティバル・ミューズに就任した女優の中谷美紀らが駆けつけ、東京国際映画祭という晴れ舞台への思いを語った。“日本代表”の吉田監督は「勝負ごとは嫌いじゃないので、存分に楽しめそう」と、前作『桐島、部活やめるってよ』に続く快進撃に期待を寄せる。『紙の月』は宮沢りえが7年ぶりに映画主演を果たし、平凡な主婦から横領犯へと転落するヒロインを熱演するサスペンスで、「女優として内面にもっているものを、この映画のためにすべて出し切ってくれた」(吉田監督)と宮沢の女優魂に感服した様子。一方、中谷は「映画人であり、いち映画ファン。映画祭を通して、国境を超えた交流が深まることを心から祈っている」と抱負を語った。第27回東京国際映画祭10月23日(木)から31日(金)まで会場:六本木ヒルズ(港区)、TOHOシネマズ 日本橋(中央区)ほか【コンペティション部門】『1001グラム』ベント・ハーメル監督『来るべき日々』ロマン・グーピル監督『マルセイユ・コネクション』セドリック・ジメネス監督『神様なんかくそくらえ』ジョシュア・サフディ監督、ベニー・サフディ監督『アイス・フォレスト』クラウディオ・ノーチェ監督『メルボルン』ニマ・ジャウィディ監督『ザ・レッスン 授業の代償』クリスティナ・グロゼヴァ監督、ペタル・ヴァルチャノフ監督『マイティ・エンジェル』ヴォイテク・スマルゾフスキ監督『ロス・ホンゴス』オスカル・ルイス・ナビア監督『ナバット』エルチン・ムサオグル監督『紙の月』吉田大八監督『壊れた心』ケビン・デ・ラ・クルス監督『破裂するドリアンの河の記憶』エドモンド・ヨウ監督『草原の実験』アレクサンドル・コット監督『遥かなる家』リー・ルイジン監督取材・文・写真:内田 涼
2014年09月30日10月23日~31日に開催される第27回東京国際映画祭のラインナップ発表会が30日、都内で行われ、コンペティション部門をはじめとする各部門のラインナップが発表された。また、フェスティバル・ミューズに決定した女優の中谷美紀、コンペティション部門日本代表作品『紙の月』の吉田大八監督も登壇した。はじめに、ディレクター・ジェネラルの椎名保氏が「今年は、日頃映画にあまり関心のない方も楽しそうだなと思ってもらえるようなイベントを組むことになりました。一般の方にも楽しんでいただいて、映画祭の認知が高まれば、いい作品が集まって、さらに知名度が上がるのではないかと。このように認知度、知名度を意識しながら運営したい」とあいさつ。続けて、時代を切り開く革新的な映画を世界へ発信し続けてきた映画人の功績を称える"SAMURAI(サムライ)"賞を新設し、初となる今年は「北野武監督とティム・バートン監督」の2人に贈ることを発表した。また、今年の東京国際映画祭の顔として、主要イベントなどで盛り上げるフェスティバル・ミューズが、中谷美紀に決定したことも発表した。その後、中谷本人が登場。「人生において、苦しい時もいつも映画が私を救ってくれたように思います。お忙しい方々の日常を少しでも彩るような、何か大変なことからエスケープできたり、夢を抱いたり、豊かにするようなツールであってほしいと願っています」と映画の持つ力を語り、「映画を愛する者として、日本、東京を愛する者として、何か貢献できればと思っております」と意気込みを伝えた。コンペティション部門では、国際審査員長に、大ヒット公開中の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジェームズ・ガン監督が決定。そして、日本代表作品『紙の月』をはじめ、セドリック・ジメネス監督の『マルセイユ・コネクション』、浅野忠信主演『壊れた心』など全15作品が発表された。『紙の月』の吉田大八監督も駆けつけ、「勝負事は嫌いじゃないので、自分ごととして映画を楽しめそうでワクワクしています」と心境を語った。コンペティション部門 全15作品『1001グラム』(監督:ベント・ハーメル)ノルウェー=ドイツ=フランス『来るべき日々』(監督:ロマン・グーピル)[フランス]『マルセイユ・コネクション』(監督:セドリック・ジメネス)[フランス=ベルギー]『神様なんかくそくらえ』(監督:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ)[アメリカ=フランス]『アイス・フォレスト』(監督:クラウディオ・ノーチェ)[イタリア]『メルボルン』(監督:ニマ・ジャウィディ)[イラン]『ザ・レッスン/授業の代償』(監督:クリスティナ・グロゼヴァ、ペタン・ヴァルチャノフ)[ブルガリア=ギリシャ]『マイティ・エンジェル』(監督:ヴァイテク・スマルゾフスキ)[ポーランド]『ロス・ホンゴス』(監督:オスカル・ルイス・ナビア)[コロンビア=フランス=ドイツ=アルゼンチン]『ナバット』(監督:エルチン・ムサオグル)[アゼルバイジャン]『紙の月』(監督:吉田大八)[日本]『破裂するドリアンの河の記憶』(監督:エドモンド・ヨウ)[マレーシア]『遥かなる家』(監督:リー・ルイジン)[中国]『壊れた心』(監督:ケヴィン・デ・ラ・クルス)[フィリピン=ドイツ]『草原の実験』(監督:アレクサンドル・コット)[ロシア]
2014年09月30日もはや“あの『ラストサムライ』の少年”という枕詞は過去のものと言えるだろう。ここ数年、TVにドラマに舞台にと目覚ましい活躍を見せる池松壮亮。そして“思わず吸い寄せられて、目が離せない”という形容がぴったりの独特の存在感と可憐さを共存させ、CMや映画が瞬く間に話題を呼び、間違いなく“ブレイク予備軍”の先頭にいる門脇麦。そんな注目株の若き2人がすごいことになっている。大胆に脱ぎ、さらけ出し、交わる!それが映画『愛の渦』である。三浦大輔監督がかつて、舞台作品として自ら主宰する劇団で上演し、岸田國士戯曲賞を受賞した作品を自身の手で映画化。セックスのためだけにマンションの一室に集った男女が相手を変え、やり方を変え、体を重ねるさまを通じて、人間の本能を描き出したと言える本作。池松さんは、親の仕送りを使ってまでこの乱交パーティに参加するニートの青年、門脇さんは地味で清楚に見えて、実は性欲の強い女子大生を演じている。セックスに次ぐセックス。いや、もちろん、あくまで撮影なのだが…。“ランナーズ・ハイ”のようなものだろうか?池松さんも門脇さんも、タオル1枚 or 裸での約2週間の撮影という非日常の中で、奇妙な高揚感・興奮状態にあったという。池松さんは言う。「同じ部屋にみんなで裸でいて、どこか変なテンションで感覚が麻痺して、スポーツ映画を撮ってるような感じでしたね。後から考えると、もうちょっと気を遣ってもよかったんじゃない?ってくらい(苦笑)」。池松さんが特に印象深かったというのがプレイルーム(※セックスをするためにいくつものベッドが用意された部屋)での、あるシーン。「僕らが“愛の渦カット”と呼んでた(笑)、セックスしているベッドの様子を天井から撮影し、部屋をグルグルと回る撮影があったんですが、ほかのベッドを映していて僕らが映らないときもあって、特に僕からは天井のカメラがどこを映してるのか見えないんです。だから、麦ちゃんが『(カメラが)来た来た来た!』って教えてくれて、『よっしゃ、行くぞ』みたいな感じで(笑)。頭おかしいよなって思いながらやってました(笑)」。門脇さんは「とはいえ、女の子だから恥ずかしい気持ちもあるじゃないですか…」と恥じらいの色を浮かべつつ、結構すごい内容を続ける。「結局、撮影になると『よし、やるぞ!』という気持ちの方が強いんですよね…。撮影のときから感じてたんですが、完成した映画を観てると本当にスポーツを見てるような感じで、湿っぽさがないんです。特にプレイルームでは、頭のネジが2~3本飛んでたと思います(笑)」。撮影中、ハードなスケジュールもあって「家には寝に帰るようなもの。毎日、寝に帰って、服着て、現場来て、また脱がされて(笑)――不思議な体験でしたね」と池松さんはしみじみ。門脇さんは撮影中のみならず、撮影を終えてしばらく時が経っても、奇妙な感覚が抜けなかったと明かす。「疑似体験をしている感覚がすごく強かったですね。実際に乱交パーティに行ったことはないのに、映画の中の一夜限りの物語を追ったような感覚がすごくあって、しばらくは変な感じが続きました。変なテンションと言うよりは…すっぽりと何かが抜けたような感じ、空っぽになっちゃった感じが撮影後1~2か月くらいは続いたかも」。池松さんは映画だけでも昨年で3本が公開され、今年は本作を含め5本が公開予定。昨秋には『桐島、部活やめるってよ』の吉田大八監督の初の舞台演出作となる「ぬるい毒」に主演するなど、明らかに俳優として、階段を上るスピードがアップしているようにも思える。それは当然、自らの意思であり、同時に周囲から求められることが多くなったということでもある。「確かにここ1~2年で『こうありたい』『こうあるべき』と自分が目指すべき方向に近づいているという感覚はありますね。それは単純に大学を卒業したというのも大きい。学生だとやれないこともたくさんありましたから。そこから解き放たれても『あいつ、学生気分が抜けないな。変わんねぇな』と言われるようなら辞めてやろうって気持ちで、それくらい真剣にやらなきゃと思ってます。そういう時にこの『愛の渦』のお話をいただいたりしたので、恵まれているなとも感じてます」。“目指すべきところ”とは何か?それは具体的な役柄や評価ではなく、自身の作品に対する「責任」の持ちようだという。「自分が自信を持って『観てください!』と言える仕事をしていきたい。“仕事だから”という理由で嘘をつきたくないから、自分で自分の作品に対して責任を持とうと常日頃から思ってます」。門脇さんは、本作との出会いを「これから何年経ったとしても、私にとって“軸”と言える作品になったと思う」と表現する。彼女を起用するにあたって三浦監督は「彼女と心中するつもりで撮る」と宣言したというが、その決意に間違いはなかったという手応えを監督自身、誰よりも強く感じているのだろう。その後、門脇さんは三浦監督演出の舞台「ストリッパー物語」(つかこうへい作)にも呼ばれている。言葉を探しつつ、しかししっかりとした口調で彼女は言う。「私自身、まだそんなに経験がないので何て言っていいのか難しいんですが、あんなに戦っている人を間近で見て、この監督のために頑張らなきゃって強く思いました。三浦監督が私の中で特別な存在だということも、この先ずっと変わらないと思います」。池松さんが、門脇さんを初めて見たのは、本作よりもさらに前。2012年、下北沢のザ・スズナリで上演された舞台「黄色い月-レイラとリーのバラッド-」でのこと。それは彼女にとっては初めての舞台でもあった。「相手役は柄本時生(※本作にも出演)だったんですけど、見終わって時生に『あの子誰?』って聞いたのを覚えてます。確実に光るものを持ってたし、それに何をやってても、笑ってても寂しそうだったんですよね(笑)。『何か背負ってるな、孤独の色を持ってるんだな、この子は』というのが第一印象でした」。実際に一緒に仕事をしてみて、三浦監督を含めた3人は周囲からも「よく似ている」と言われることが多いのだとか。言われてみれば、そんな気も…。最後に「もう一度、共演するなら?」と尋ねると、池松さんはいたずらっぽい笑みを浮かべる。「これだけ似てるって言われると、兄妹役でいけるんじゃないかと思います。ダメですかね?『あんなことやっといて兄妹やるな!』って言われちゃうかな(笑)?」。たった2歳違い。この先、どのような形であれ、この2人が何度も同じ作品で顔を合わせることになるのは、日本映画界にとって必然だろう。(photo / text:Naoki Kurozu)■関連作品:愛の渦 2014年3月1日よりテアトル新宿ほか全国にて公開(C) 2014映画「愛の渦」製作委員会
2014年02月26日宮沢りえが7年ぶりに映画主演を務め、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)などで知られる吉田大八監督がメガホンをとった『紙の月』の共演陣が24日、発表され、宮沢演じる梨花の不倫相手役を池松壮亮が演じることのほか、田辺誠一、近藤芳正、石橋蓮司、小林聡美の出演が明らかになった。宮沢演じる主婦・梅澤梨花の相手役となる年下の男・光太は、『いけちゃんとぼく』(2009年)、『上京ものがたり』(2013年)ほか吉田監督が演出を手掛けた舞台『ぬるい毒』でも高い評価を獲得し、2014年も立て続けに出演映画が公開される池松壮亮に決定。また、梨花の夫役には田辺誠一、銀行の上司役には近藤芳正、資産家の顧客役には石橋蓮司、そして、映画オリジナルのキャラクターである先輩銀行員・隅役は小林聡美に。小林は、一切のミスを許さず厳格に仕事に向き合い、横領に手を染めていく梨花に対して強烈なプレッシャーを与える、重要な役どころを演じる。現在40歳の宮沢は、17歳年下の池松について「無表情の中にすごくたくさんの表情を持っている人。年齢を超越して、すごくすてきな俳優さんだと思っています。年齢が不詳な感じがあって、何にでも化けられる可能性が、毛穴からプチプチと飛び出ている感じが、すごく刺激的です」と絶賛。小林については「絶妙な言葉の表現や、タイミングの持ち方など、コメディエンヌの才能に、私はとても憧れていて、そんな聡美さんとお芝居で対話ができることが幸せです。池松君もそういうところがありますが、リアリティのある表現をされる方たちだと思います」と共演する喜びを示した。一方、池松は「りえさんの人間力と愛情に日々救われています。りえさんが梨花なのか梨花がりえさんなのか、役と人間が重なる瞬間をこんなにも目撃したのは初めてです。梨花が光太と居た時間がこの映画の光となれるよう頑張ります」と貴重な経験となったようで、吉田監督との再タッグにも「大八監督は相変わらず今では数少ない映像作家だと思います。監督がこの物語を映像化するということに日々ワクワクしています。何が善か、何が悪か、大八監督とりえさんと共に探究していきたいと思います」と気合十分。また、小林は初共演となる宮沢の印象について、「本当にもう、わたしより大人。みたいな感じです(笑)。非常に大人っぽい一方で、可憐な少女の雰囲気を持ちながらも、母性的な雰囲気も持ち合わせている方」とコメント。役になりきるために札の数え方にも気を使ったようで、「1回事務所で指導の方に教えていただいて、それからはもう毎日、テレビを見ながらとか、必ず1回は、練習しました。1回というか、自分が納得するまでは練習してきました。期間は、3週間ぐらいでしょうか」と振り返った。同作は、平凡な主婦が起こした大金横領事件がテーマで、"人生の落とし穴"、快楽と転落を類似体験するサスペンス・エンタテインメント。宮沢演じる平凡な主婦・梨花は、夫と2人暮らしで、仕事では銀行の契約社員として外回りをしている。気配りや丁寧な仕事ぶりが評価され、上司や顧客から信頼されるようになるが、家庭では、自分に興味を抱いてくれない夫との間に空虚感が漂いはじめる。そんなある日、年下の大学生・光太と出会い不倫関係に落ちていく。光太と過ごすうちに、ついに顧客のお金に手をつけてしまい、横領が次第にエスカレートし、ついには…。撮影は1月27日クランクイン。クランクアップは3月中旬を予定している。
2014年02月25日Hameeは、吉田カバンのブランド「PORTER」とインテリアショップブランド「Gallery1950」のコラボレーションで誕生したスマートフォン用バッグ、タブレット用バッグ計3製品の販売を開始した。iPhone/スマホアクセサリー専門店Hameeストラップヤ本店を通じて購入できる。同社が販売するのは、以下の3製品。「PORTER×G1950 Muiti Mobile Shoulder Case モバイルショルダーケース」「PORTER×G1950 2Pocket Mobile Holderツーポケットモバイルホルダー」「PORTER×G1950 Tarminal Case All in One 7インチタブレットターミナルケース」。「PORTER×G1950 Muiti Mobile Shoulder Case モバイルショルダーケース」は、カラビナ、ショルダーベルトなどがついており、腰につけたり、肩からさげたりする使い方が可能。カードポケットやファスナーポケット、コインポケットも付いている。メイン収納内寸は約縦14×横8.3×厚2.5cm。直販価格は12,390円。「PORTER×G1950 Tarminal Case All in One 7インチタブレットターミナルケース」は、7インチタブレット対応ケース。iPad miniなどに最適で、カードポケットやファスナーポケットなども付いており、タブレットのほかにスマートフォンやクレジットカード、紙幣やコインも入れることができる。メイン収納内寸は約縦14×横22.4cm。直販価格は13,440円。「PORTER×G1950 2Pocket Mobile Holderツーポケットモバイルホルダー」は、ポケットが2つついたホルダー。スマートフォンほか、携帯電話を入れて持ち運べる。背面のベルトループ面ファスナーを使い、ベルトに挟んでつけたり、ベルトからぶら下げたりすることができる。メイン収納内寸は約縦15.2×横7.5×厚1.7cm。直販価格は9,975円。(記事提供: AndroWire編集部)
2014年01月08日『桐島、部活やめるってよ』で日本映画界に新たな風を吹きこんだ吉田大八監督が、舞台演出に初挑戦!夏菜と池松壮亮という映像の世界で引っ張りだこの旬な2人を主演に迎え挑む舞台の名は、「ぬるい毒」――その稽古現場に潜入した。原作は吉田監督の長編映画デビュー作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の原作者でもある劇作家・本谷有希子の小説。本谷さん本人が「舞台化不可能」として戯曲ではなく、あくまで小説として発表した作品を“あえて”選び、吉田監督自ら脚本化した。23歳で自分の人生が決すると頑なに信じる自意識過剰の少女・熊田が、彼女に突然、電話をかけてきた向伊という謎めいた男を胡散臭く思いつつも惹かれていく、19歳からの数年間を描き出す。この日、稽古が行われていたのは熊田(夏菜)が彼女に好意を持つ年上男性・原(板橋駿谷)の部屋を訪れるシーン。ミエミエの原の誘いに対し、気のないフリをしつつ乗る熊田。ここで原を相手に人生初のキスを交わすというシーンだが、吉田監督からは時折、もっとぎこちなく、自意識過剰な女子を意識してという意味を込めて「もっと熊田っぽく」という指示が飛ぶ。続いて、東京の大学から帰省した向伊に誘われ、その友人たちも一緒に盛り上がっている居酒屋へと赴くシーン、同じく帰省した向伊と2人きりで心霊スポットである廃墟にドライブに行くシーンの稽古が進められた。ここでも吉田監督は、夏菜さんに対したびたび“熊田らしい”動きや表情、受け答えを要求。稽古を通じて熊田という主人公が形成されていくのが見て取れる。ちなみに、先のキスシーンに続き、この廃墟では熊田がかなり大胆な姿も見せており、夏菜さんの体当たりの演技に注目だ。そんな夏菜さん、池松さん、吉田監督が稽古の合間に取材に応じてくれた。本谷作品ではおなじみとも言える“自意識過剰でプライドの高いヒロイン”を演じる夏菜さんだが、「私は『ああいう時期って私にもあったよな』と思うんです」と意外や共感を口にする。具体的には?という問いに「そこ掘り下げますか…」と苦笑しつつ、「若い頃って無駄にプライドが高かったり、それでいて傷つくのも嫌で背伸びしたり、自分の周りを一枚、殻で覆ってみたり、いろんなことをして大人っぽく見せようとするものだと思う。(熊田の持つ)世間に怒っているような感じは、若かりし頃は私にもありましたよ。最近になって消えましたが(笑)」と明かす。一方、池松さんが演じる向伊もなかなかの曲者。この日の居酒屋のシーンでもそうだが、「バカにしてるのか?」と怒りたくなるギリギリ少し手前のラインを絶妙に行き来し、熊田をイラつかせながらもつかず離れずで、心に引っ掻き傷を残すようないやらしさをも感じさせるが、池松さんは決して彼に対して嫌悪感を持っているわけではなさそう。「みんな、こういうところあるんじゃないですか?こっちが意識するでもなくサラッと言ったことがトゲになることってあるでしょ。そういう積み重ねなのかなと」と語る。一方で、熊田の心理についても「ものすごくよく分かる」とのこと。「本谷さんの書く女の人って男の人の方が分かるんじゃないかなと勝手に思ってます。男の方が弱いですから(笑)」。吉田監督は「僕もまだ手探り」と言いつつも、「毎日、更新されていく感じで、それを見るのが楽しくてしょうがない」と映像とはまた違った楽しみを感じているよう。脚本だけ読んでみると、この癖のある熊田と向伊という役になぜ夏菜さんと池松さんを?とも思ってしまうが、吉田さんは「そういう意外な接点を見つけた気になるのがキャスティングの醍醐味」と、してやったりの様子。「いまのところ、キャスティングで失敗した経験はないので大丈夫。絶対にできる!(この役の要素が2人に)あると思うから」と自信を覗かせる。初日まで1か月を切っているが、夏菜さんは「確実にこれまでと違うキャラ。手応えはまだ分からないけどこれから頑張ります」と意気込み。池松さんも手応えは「まだない(笑)」と言い切るも「これだけ準備したんだから、いつも以上のことができるだろうと信じてます。いま、手応えはなくとも、それは稽古前に脚本を読んだときに確実にあったのでそれを信じてやっていきます」と淡々と意気込みを口にした。舞台「ぬるい毒」は9月13日(金)~26日(木)まで紀伊國屋ホールにて上演。(黒豆直樹(cinema名義))
2013年09月04日「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のクロージングセレモニーおよび各賞の発表が2月24日(日)に開催され戸田幸宏監督の『暗闇から手をのばせ』がグランプリとシネガー・アワード(記者および興行主の審査による賞)の2冠に輝いた。同作のテーマは「障害者の性」。グラビアアイドルの小泉麻耶が障害者専門のデリヘル嬢に扮しており、ハンディキャップを抱える人々を遠ざけようとする社会に鋭い視点と軽やかな描写で切り込んでいく。戸田監督はNHKエンタープライズに所属し、ドキュメンタリーのディレクターを務めている。今回、初めてフィクション作品に挑戦したが、数年前に巡り合った現実の題材が基となっている。そもそも会社でドキュメンタリー作品として製作するための企画を立てたが、許可が下りずに自己資金で制作することを決めたという。シネガー・アワードで最初に登壇した際は「昨夜、飲み屋で携帯をなくしてしまい、この1日は携帯のことばかり考えていたんですがさっき見つかりました」と語り笑いを誘っていたが、最後にグランプリとして再び名前が呼ばれることは予想してなかったよう。驚いた様子で再び舞台中央へと足を運び「さっきいただいたので『もうもらえないのか』とがっかりしてたので驚いてます(笑)」と喜びを語った。会社でボツとなった企画での受賞、しかもスカパー!から次回作のための資金援助として200万円が授与されるということで「NHKザマアミロ!スカパー!さん、ありがとう」と過激な叫びで会場を沸かせる。審査委員長の塚本晋也監督は「(審査員の)みなさんに1(位)、2(位)、3(位)を挙げてもらい、公正に選んだ」と明かし、本作について「お金は出してもらえないけどどうしても撮りたくて自分を信じて作る思いが表れていた。最後まで見せ切り、観る人を引っ張る強さがあった」と評した。吉田大八監督からは「次の作品のテーマに苦労すると思う。苦しむ姿を見たい(笑)。期待したい」という言葉を贈られたが、戸田監督は「タブーに挑戦するテーマで、制約を受けずに作っていきたい」とさらなる飛躍を誓っていた。なお本作は3月23日(土)よりユーロスペースにて劇場公開されることがすでに決定している。このほか北海道知事賞は原田裕司監督の『冬のアルパカ』が受賞。俳優の山本浩司がプレゼンターを務めたが、原田監督は「山本さん主演の『ばかのハコ船』を観て映画を撮り始めたので嬉しいです」と感激を語る。『天使の恋』や『DOCUMENTARY OF AKB48』など既に商業映画で活躍している寒竹ゆり監督の『ケランハンパン』は審査員特別賞に輝いた。勧告を舞台に撮影した本作だが寒竹監督は「予算がなくて主演の村上淳さんと『(衣裳の)靴だけはいい靴を買いたいよね』と話してて『右はおれが買うから左は監督が買って』なんて話してました。そうやって撮った作品をみなさんに見ていただき、笑ってもらえて、賞までいただけて嬉しいです」と喜びを明かした。スカパー!映画チャンネル賞は山口秀矢監督の『樹海のふたり』が受賞。61歳にして、初の監督作品で見事に受賞を果たした山口監督は「自信を持ってここに来たものの、他の監督の作品を見てすっかり自信をなくしてました。この賞をいただき、私も(映画祭のテーマと同じように)一歩先へ行きたい」と語った。そして、最後に塚本監督から「どうしても、もうひとつあげたい」とさらなる特別賞の扱いで“「渚」特別賞”が授与されたのが原將人監督の『あなたにゐてほしい ~Soar~』。急遽、審査員が相談して授与を決定したため賞状やトロフィーはなく花束が贈呈されたが、原監督は自身の妻であり主演を務めた観音崎まおりが双子を妊娠中であることを告白し、さらに宮沢賢治の「双子の星」をベースにした監督作『20世紀ノスタルジア』で観音崎さんと出会ったという不思議な運命をも明かし客席からは温かい祝福の拍手がわき起こった。62歳の原監督は「インディペンデントで45年やってきましたが、これを励みにあと40年、100歳まで作れる気がします!」とさらなる創作に意欲を燃やした。21日(木)からこの日の午後5時までの4日間で映画祭には11,735人もの観客が来場。最終日の25日(月)には受賞作の上映があるため12,000人突破は確実となった。<オフシアター・コンペティション部門 受賞一覧>■グランプリ:「暗闇から手をのばせ」(戸田幸宏監督)■北海道知事賞:「冬のアルパカ」(原田裕司監督)■審査員特別賞:「ケランハンパン」(寒竹ゆり監督)■「渚」特別賞 Special Mention for Nagisa:「あなたにゐてほしい ~Soar~」(原將人監督)■スカパー!映画チャンネル賞:「樹海のふたり」(山口秀矢監督)■シネガー・アワード:「暗闇から手をのばせ」(戸田幸宏監督)■審査員特別賞:「ケランハンパン」(寒竹ゆり監督)(text:cinemacafe.net)
2013年02月25日小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウ氏のベストセラー小説を映画化し、昨年一大センセーションを巻き起こした『桐島、部活やめるってよ』が16日、東京・中目黒で月1回開催されている映画の無料上映イベント「ナカメキノ」第2回作品として登場。上映後には本作のメガホンを執った吉田大八監督をはじめ、この日18歳の誕生日を迎えた松岡茉優、東出昌大、落合モトキ、浅香航大がトークショーを行った。その他の写真映画は地方都市の高校を舞台に、バレー部キャプテンの“桐島”が突然部活を辞めたことで、他の生徒たちが途方に暮れる数日間を描いた青春群像劇。1つの出来事を、伏線を散りばめながら複数の視点で描く構成は公開時、多くのリピーターを生んだ。吉田監督によると「2回目が一番面白いという人が多いみたい」。キャスト陣も「観たのは3回」(落合)、「4回観ました」(浅香)、「私は3回目が一番面白かった」(松岡)とやはり複数回、本作を鑑賞していると明かした。さらに吉田監督は「東京でいえば池袋、渋谷、有楽町と場所によってお客さんの雰囲気や笑いのツボが違う」と分析。客席を見渡しながら「きっと、中目黒のツボというものがあったんじゃないでしょうか」と本作がもたらす“地域差”に関心を寄せていた。『クヒオ大佐』『パーマネント野ばら』など大人の男女が織りなす作品を手掛けてきた吉田監督にとって、高校生を主人公に据えるのは本作が初めて。それだけに「キャスト側のほうが、実際の高校生に近いし、一緒に考えないと答えが出ないので『まずはやってみて』と伝えた」と振り返る。一方、松岡は「演技を否定されることがなかった」と言い、本作が本格的な演技デビューとなった東出は「人前で泣くのも初めて。監督から『キャラクターの気持ちでやればいいから』と背中を押してもらった」と吉田監督の現場を語っていた。『桐島、部活やめるってよ』ブルーレイ&DVD発売中
2013年02月18日女優の吉永小百合が12月18日(火)、都内のホテルで開かれた「第37回報知映画賞」の表彰式に出席。『北のカナリアたち』での熱演が評価された吉永さんは、28年ぶりに同主演女優賞を獲得したが「みなさんから良い作品だという声をたくさんいただき、手応えもあった。もしかしたら、作品賞かなと期待していたので、私ひとりでいいのか…という思いがあります」と恐縮した様子。それでも『北のカナリアたち』、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』の2作品で助演男優賞を受賞した森山未來、お祝いに駆けつけた共演者の満島ひかり、撮影を手がけた木村大作氏とステージに居並び、『北のカナリアたち』がこの日の“主役”となった。「今年は決選投票で、僅差だったと伺っています」(吉永さん)という通り、大接戦となった作品賞を制したのは、内田けんじ監督の『鍵泥棒のメソッド』。内田監督の受賞を祝おうと、堺雅人、広末涼子、香川照之という豪華キャスト陣が駆けつけ表彰式を彩った。「終始ワハハと笑いながら、楽しく平和に撮影した。だから、逆にインタビューで答えることがなくて、インタビュアーさんを困らせちゃったほど」(堺さん)、「素っ裸のまま、銭湯ですっ転ぶ(笑)。そんなたった1秒のシーンを、丸一日かけて撮影したのが昨日のよう」(香川さん)。ちなみに、広末さんは体調不良で声が出ず、挨拶こそなかったが、その分男優2人が丁々発止のやりとりで盛り上げ役を買って出るなどチームワークは相変わらず。内田監督も「この映画は、とにかくキャストが良かった」と喜びの笑顔を見せていた。また、高倉健が約6年ぶりの出演作『あなたへ』で、第2回(1977年)以来の主演男優賞を受賞した。スケジュールの都合で表彰式は欠席となったが、「今回の受賞を励みに、これからも精進していきたい」とメッセージを寄せ、さらなる飛躍を誓うと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。高倉さんの代理として、同作がなんと20本目のタッグとなる盟友・降旗康男監督が登壇し、「健さんを鉄に例えるのも何ですが(笑)、『鉄は熱いうちに打て』という言葉もあるように、とにかく早く次の作品を撮りたい」と次なる21本目に期待感。「ぜひ面白い企画で、健さんを誘い出してくれれば、友人として嬉しい」と映画関係者が集う会場でアピールしていた。<「第37回報知映画賞」受賞結果一覧>作品賞・邦画部門:『鍵泥棒のメソッド』(内田けんじ監督)作品賞・海外部門:『アルゴ』(ベン・アフレック監督)主演男優賞:高倉健(「『あなたへ』)主演女優賞:吉永小百合(『北のカナリアたち』)助演男優賞:森山未來(『ALWAYS 三丁目の夕日’64』『北のカナリアたち』)助演女優賞:安藤サクラ(『愛と誠』『その夜の侍』)監督賞:吉田大八監督(『桐島、部活やめるってよ』)新人賞:満島真之介(『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』)新人賞:能年玲奈(『カラスの親指』)■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会あなたへ 2012年8月25日より全国東宝系にて公開© 2012「あなたへ」製作委員会ALWAYS三丁目の夕日‘64 2012年1月21日より全国東宝系にて公開© 2012 「ALWAYS三丁目の夕日‘64」製作委員会 北のカナリアたち 2012年11月3日より全国にて公開© 2012『北のカナリアたち』製作委員会愛と誠 2012年6月16日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「愛と誠」製作委員会その夜の侍 2012年11月17日より全国にて公開© 2012「その夜の侍」製作委員会桐島、部活やめるってよ 2012年8月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「桐島」映画部©朝井リョウ/集英社11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち 2012年6月2日より全国にて公開カラスの親指 2012年11月23日より全国にて公開© 道尾秀介・講談社/2012「カラスの親指」フィルムパートナーズアルゴ 2012年10月26日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
2012年12月18日吉田拓郎が来年の1月30日(水)にライブDVD『吉田拓郎 LIVE 2012』をリリースすることが決定した。『Forever Young Concert in つま恋』以来、6年ぶりのライブDVDとなる本作。約3年ぶりに行われた首都圏ライブから11月6日の東京・NHKホール公演の模様を収録。こちらの公演では今年リリースされたアルバム『午後の天気』の楽曲はもちろん、『落陽』や『流星』といった名曲も披露された。久々のライブだったが、最後まで声量が衰えることはなく、全22曲を歌い上げた。なお、チケットぴあwebサイトでは同公演のライブレポートを公開中。■『吉田拓郎 LIVE 2012』2013年1月30日(水)発売・LIVE DVD+LIVE CD(2枚組予定)+フォットブック8,950円 (税込み)※初回限定<スリーブ・ジャケット+特殊パッケージ仕様+フォトブック10P予定>・LIVE DVD 6,300円 (税込み)・Blu-ray 6,825円 (税込み)
2012年11月30日化粧品会社に勤める男を演じたが、本音では「ナチュラルな方がいい」と“ノーメイク派支持”を明かす岡田将生。ちなみにこの言葉、男性からしたら100%褒め言葉なのだが、女性の中には「せっかくいつも時間をかけてキレイになってるのに…」と受け取る人もいる“男性の無意識な無神経要注意ワード”なのだとか。それを伝えると「そうなんですか!?」と驚愕しつつ、「そう言われても…」と子供のように口をとがらせる。岡田さんにそんな表情でそう言われたら大方の女性が「しょうがないなぁ」とメロメロになること間違いないと思うが…。まもなく公開の『映画 ひみつのアッコちゃん』はアッコちゃんという“子供”の視点を通して、仕事とは何か?大人とは何か?をユーモラスに描き出す。岡田さんにとってその答えとは?言わずと知れたギャグ漫画の巨匠・赤塚不二夫の原作コミックを現代風にアレンジした本作。魔法のコンパクトで22歳に成長した自分に変身したアッコちゃんが、思いもよらない発想で傾きかけた化粧品会社の復活に力を注ぐ。岡田さんが演じた尚人は、若くしてヒット商品を開発したこともあるエリート社員。デパートの化粧品売り場で偶然出会ったアッコちゃんを企画開発室のバイトとして採用する“王子様”的存在である。「アッコちゃんに説明するセリフが多くて大変でした(苦笑)。アッコちゃんから見て、尚人の佇まいや話し方を情熱的に魅せるということは一番気をつけていたところですね」。精神年齢10歳のアッコちゃんの“正論”が、会社という組織の歪んだ“常識”を打ち破っていく様は痛快。アッコちゃんのような女性に惹かれるか?と聞いてみると「常に物事を新鮮に捉える女の子っていいなと思います。子供だからこその発想ですが、一緒にいて飽きないでしょうね」と肯定的な答えが返ってきた!そのアッコちゃんを演じた綾瀬はるかとは『プリンセス トヨトミ』に続く共演。「小学生の役ということで子役の(吉田)里琴ちゃんと話をしてしゃべり方や動きについて勉強していて、そういうところは尊敬してます」と持ち上げつつも、「やっぱり綾瀬さんは、綾瀬さんでした(笑)」と撮影現場での様々なエピソードを明かしてくれた。「朝、撮影が始まってもお昼のことしか考えてないんですよ。『今日のご飯どうしよう?A定食にしようか?B定食にしようか?』って(笑)。それから尚人がアッコちゃんに母親の話をするシーンで、アッコちゃんがイスをクルクル回しながら近づいてくるんですが、勢い余って僕にぶつかって、後ろのテーブルの物も全部落としちゃったんです。以前から知っているので何となく『やりそうだな』と思っていたら、『やっぱり』という感じで。スタッフさんも多分やるだろうと思ってたみたいで、対応がすごく早かったです(笑)。これはもう何度も紹介されている話ですが、『プリンセス トヨトミ』のときも大阪城のことを“お寺”と言ったり…そういうのが忘れられないんです。もうそれが当たり前のような感覚になっていて(笑)。アッコちゃんに似てる?そういうところはあると思います、全部じゃないですが」。一方で、岡田さんも自らについて「まだまだ大人とは言えない」と言う。「僕、短気なんですよ。だから自分の思い通りに行かないと自分自身にイラッとしてしまいます。タイムスケジュールをしっかり決めたりするんですが、30分以内に掃除しようと決めたのに40分かかったらイラッとします(苦笑)。そういうところは本当に子供です」。さらりとなかなか想像できない素顔を明かしてくれたが、仕事において「常に100%に近づこうとする」という姿勢に繋がっているポジティブな部分と言えそう。改めて俳優という仕事をする上での原動力を尋ねると「出会い」という答えが返ってきた。「まだ出会っていない監督やスタッフさん、俳優さん…まだまだ知らないことがたくさんあります。『この人と一緒にやれたら』と思うとその場を一生懸命頑張れます。それから何より、芝居をしていて楽しいと思うことが多いです。その分、挫折も多いですが…。今回もみんなが100%を目指す現場で、僕もその思いで付いていくという感じですごく刺激的でした。昔は集中力を持続できなくて、台本を読み始めても、飽きてしまって最後まで読めなかったんです。そう考えると少しは大人になったのかな(笑)」。いま現在、一緒に仕事をしたい監督、気になる同世代の俳優を尋ねるとしばし思案――。「つい最近『桐島、部活やめるってよ』を観たんですが、吉田大八監督とお仕事させてもらいたいと思いましたね。同世代の俳優については…うーん、あまりそういうことを考えることがないんですよね。意識はするけど“ライバル”という風にも思わないし。強いて言うなら三浦春馬くんですかね。よく一緒に飲むんですが、まだ共演経験はなくて『やってみたいね』ということは時々、話題にのぼります」。今年は2クールにわたって連続ドラマの主演を務めたのに加え、1年を通じて放送されるNHKの大河ドラマ(「平清盛」)にも出演し、ナレーションまで務めた。「1年を通してということで、意気込みも含めてこれまでとは違う思いはあります。ただ、いまのところ自分の中で何か変わったということは感じてないですね。終わった後に気づくのかもしれないですね」。自分でも測りきれないような変化を待つ――そんな静かな笑みが浮かんでいた。Hairmake:TOKI(fleuRir)/Stylist:Yusuke Oishi(DerGLANZ)(photo/text:Naoki Kurozu)■関連作品:映画 ひみつのアッコちゃん 2012年9月1日より全国にて公開© 赤塚不二夫/2012「映画 ひみつのアッコちゃん」製作委員会
2012年08月30日吉田拓郎が3年ぶりにライブを行う事が決定した。【公演情報はこちら】今回のタイトルは「吉田拓郎 LIVE 2012」。今年6月にリリースしたアルバム『午後の天気』で、アレンジとキーボードで参加した武部聡志と、ギタリスト鳥山雄司が13年振りにライブに参加する。ライブ日程は10月22日(月)東京国際フォーラム・ホールA、25日(木)大宮ソニックシティ 大ホール、29日(月)パシフィコ横浜国立大ホール、11月6日(火)東京・NHKホールの4公演。今回の公演について、本日8月27日放送の『坂崎幸之助と吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』にてコメントが予定されている。なお、オフィシャルサイトでは、9月29日(土)のチケット一般発売に先がけて、8月29日(水)午前12時から9月10日(月)23時59分まで、オフィシャル先行受付を実施。■「吉田拓郎 LIVE 2012」日程:10月22日(月)東京国際フォーラム・ホールA10月25日(木)大宮ソニックシティ 大ホール10月29日(月)パシフィコ横浜国立大ホール11月6日(火)NHKホール(東京都)(各開演18:30/全席指定・9,000円)
2012年08月27日「ぴあ」調査による8月10日、11日公開の映画・満足度ランキングは、老年医療の専門家である和田秀樹が監督を務めた『「わたし」の人生〈みち〉 我が命のタンゴ』がトップに輝いた。2位に神木隆之介主演の青春群像劇『桐島、部活やめるってよ』が、3位アイドルグループ“スマイレージ”のメンバーが出演した井口昇監督による『怪談新耳袋 異形』が入った。その他の写真1位の『「わたし」の人生…』は、実際のエピソードを基に、介護の問題とそのあり方、希望を描いた作品。出口調査では「看護師として介護施設で働いているので、現実と比べ合わせて考えさせられた」「介護の深刻な問題をタンゴと一緒に描くことで奥行きが生まれ、良い映画になっていた」「わかりやすくゆったりとした気持ちで観られるが、考えさせられる作品でもあった」など、40代以上の観客から高い支持を集めた。2位の『桐島…』は、朝井リョウの同名小説を吉田大八監督が映画化。神木のほか、橋本愛、大後寿々花ら若手俳優が出演している。アンケート調査では「高校生の世界がリアルに描かれていて、原作と比べてすごくおもしろい」「ストーリー構成と観終わった後の感じがいい。思春期特有の感覚を上手く表現していた」「高校生の自分が体験しているリアルが映画の中にもあった」「学生時代の懐かしさや、複雑な人間関係を思い出せてくれる作品だった」など、特に10代、20代から好評だった。(本ランキングは、2012年8月10日(金)、11日(土)に公開された新作映画5本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)
2012年08月13日第22回小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのベストセラー小説を映画化した『桐島、部活やめるってよ』が8月11日(土)、全国で封切られた。東京・新宿バルト9で本編上映後に初日舞台挨拶が行われ、主演の神木隆之介を始め、共演する橋本愛、大後寿々花、東出昌大、清水くるみ、山本美月、松岡茉優、落合モトキ、浅香航大、前田朋哉、鈴木伸之、太賀、そして吉田大八監督という総勢13人の“チーム桐島”が登壇。観客がスタンディングオベーションで出迎えると、早速橋本さんは号泣!「感動しております。人生の中で思い出に残る1日です」(神木さん)、「こんな光景見たのは人生初です。ちょっと戸惑ってしまいましたが、最高に幸せ」(橋本さん)。しかし、この後さらに登壇者を感動させる出来事が…。朝井リョウのベストセラー小説を、吉田監督(『クヒオ大佐』、『パーマネント野ばら』)が映画化。田舎町の高校を舞台に、バレー部のキャプテン・桐島が突然退部するという“事件”に、生徒たちが翻ろうされる数日間を桐島不在のまま、映画部部員の映画オタク・涼也(神木さん)、物静かなバトミントン部部員のかすみ(橋本さん)ら複数の視点で切り取っていく。キャスト陣が思い思いに、公開初日を迎えた思いを語り終えると、今度は「インフルエンザになってしまい欠席した」という本作の佐藤貴博プロデューサーから、一人一人に向けた手紙が朗読され「佐藤さんはこの作品を人一倍愛してくれている。(手紙から)愛情を感じました」(神木さん)。橋本さんの目からは、再び涙がこぼれ落ち「何なんですか、これ…」とぼう然とした表情だった。すると今度は劇場内の照明が落ち、真っ暗な状態に…。神木さんらがパニックになり、再び照明が灯ると、なんと“ゾンビ”の大群が姿を現した。実は劇中、涼也が所属する映画部はゾンビ映画を撮影しているという設定で、映画のクライマックスにはゾンビたちが重要な役割を果たしている。その大団円を舞台上で再現した演出に、登壇者は目を白黒。しかもゾンビ軍団の中には、インフルエンザで欠席していたはずの佐藤プロデューサーの姿もあり、神木さんらを驚き&困惑&爆笑させた。そんな感動サプライズの嵐に、神木さんは「今日はビックリすることばかりですね。こんな楽しく感動した舞台挨拶は初めて。みなさんと楽しい時間を共有できたのも幸せです」と感激しきり。一方、吉田監督は「どうなんですかね…、これ。いやあ参りました」と苦笑しながらも、初日の喜びを噛みしめていた。『桐島、部活やめるってよ』は新宿バルト9ほか全国にて公開中。■関連作品:桐島、部活やめるってよ 2012年8月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「桐島」映画部©朝井リョウ/集英社
2012年08月13日朝井リョウのベストセラーを映画化した『桐島、部活やめるってよ』のメガホンを握った吉田大八監督と主演の神木隆之介がインタビューに応じた。その他の写真バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部を巡り、その親友や恋人から全く関係のないはずの生徒まで、学内の人間関係が少しずつ変化していくさまを描いた本作。原作の持つ瑞々しい感覚を最大限に活かしつつ、映画はより鋭くそして、残酷に学校という世界の一面を切り取る。監督は「僕の方が朝井さんより少し意地悪なのかもしれない」と笑いつつ、「僕が一番に感動したのは、小説の最後に出てくる映画部の前田(神木)と桐島の親友の宏樹(東出昌大)のやりとり。ここにたどり着くために物語を作り上げていった」と語る。「ジっとこちらを見つめる視線に心の奥底までのぞかれてしまうような気がした」とは神木が監督に抱いた第一印象。若いキャスト陣と倍以上も年の離れた監督は、この冷静な眼で彼らを見つめ、映画の肝とも言える人物たちの“距離感”を探っていった。「俳優たちが自分の生理にウソをつかずにセリフを言ったり動いたりできるようにしたくて、撮影前にリハーサルだけでなく、ただ一緒に過ごす時間も取ってもらったんです。それを少し離れたところから見て、どうやって彼らにコミットすればこの微妙な関係性を壊さずにカメラに収められるかという間合いを測りました」と慎重な積み重ねの上に作り上げた空気感について語る。前田は“下”のグループに属する一見サエない学生だが、神木は「何を言われても『これがやりたい』と言える芯の強さに共感した」と明かす。さらに「前田は監督自身なんじゃないかと思うんです」とも。それは吉田監督に演技指導を受けながら抱いた感覚だった。「前田という男の子が監督を通してスッと僕の中に入ってくる不思議な感覚でした。これまでのどの監督の指導とも違って、吉田監督からはそのまま人物を渡されたような感じだったんです」。そんな神木の言葉に吉田監督は「最初は『勘違いだよ』と言ってたんですが、あちこちで神木くんがそう言うのを聞く内に、自分でもそんな気になってきて混乱してます」と苦笑を浮かべるが、称賛を込めて「やはり前田は誰よりも神木くん自身」と言い切る。「日常をやり過ごしながらも大事なものを守る強さを神木くんも持ってると思います。前田はカメラを通じて世界と“対決”するわけだけど、そこに神木くんが自分の中から引き出してきた説得力をしっかりと感じましたね」。『桐島、部活やめるってよ』8月11日(土)より、新宿バルト9ほかにて全国ロードショー取材・文・写真:黒豆直樹
2012年08月09日芸能界における幼なじみ。こちらのそんな指摘に神木隆之介はチラリと隣りの大後寿々花を見やり「そうなんです。珍しいでしょ?」とニッコリと笑う。共に1993年生まれで役者としてのデビューの時期もわずか1年違い。ドラマ「あいくるしい」や映画『遠くの空に消えた』など、これまでもたびたび共演してきた2人がまもなく公開される『桐島、部活やめるってよ』で高校のクラスメイトという間柄を演じている。この春、高校を卒業した2人だが、撮影が行われたのは在学時。彼らの生の息吹が映画に焼きつけられていると言える。高校生活ならではの葛藤、気持ちの変化原作は朝井リョウが大学在学中に著した同名処女小説。バレー部のキャプテンで人気者の桐島がバレー部を退部したといううわさが校内を駆け巡る。彼の周囲の人間がこのうわさに翻弄されていく過程で若者たちの心の内が鮮やかに浮かび上がっていく。「脚本を読んで、高校生活独特の複雑な気持ちや葛藤、心の些細な動きが文面からだけでもひしひしと伝わってきた」と神木さん。大後さんも「本当に何気ない高校生活を描いているんですが、学生にとっては本当に共感できる物語だなと思いました」と頷く。多くの若い俳優陣が出演しているが、吉田大八監督の下で撮影の1か月ほど前からワークショップを実施。劇中のクラス内のグループや所属する部活ごとに分かれて行動し、さらに監督からは自分の役柄の生い立ちや性格といった“裏設定”をレポートとして提出するように指示されたという。原作小説をヒントに自分の役を作り上げていく者もいれば、神木さんのように「全くゼロから前田涼也という役の歩んできた道をオリジナルから考えて作った」という者もいた。「前田はヘタレで臆病者なのですが、実はすごく我慢強くて熱いものを内に秘めていて意志も人一倍強い子だと思います。それは脚本を読んだときやレポートを書いたとき、それから演じているときも強く感じていました」。大後さんが演じた沢島亜矢は吹奏楽部の部長。決して目立つ存在ではないが、前田同様に芯の強さを持った女の子であり、自らに重なる部分もあったようだ。「女子がまとまって騒いでてもそれを遠目に見てるタイプです。でも、すごく純粋で好きな男の子の方を思わず見ちゃうところなんかはかわいいですよね。心の中で思っていることはたくさんあるけど、勇気がなくて言えないところは私と似てます(笑)。沢島が感情を高ぶらせるシーンは、まさに私自身と重ねて言葉にならない思いを感じながら演じました。それから吹奏楽のシーンは音楽の力にすごく助けられましたね」。2人の間で役作りは必要なかった?冒頭で2人の劇中での関係をクラスメイトと書いたが、前田と沢島は決して仲が良いわけではない。そんな2人がそれぞれの“事情”を抱えて少しずつ交差していく。幼い頃から互いを知り尽くしている神木さんと大後さんが、恋愛感情も友情もない何とも微妙な前田と沢島の関係性を作り上げているところがおもしろい。神木さんは「あのシーンについて、2人で事前に演技について話をすることは全くなかったんですよ。ね?」とイタズラっぽい笑みを浮かべる。「噛み合わない前田と沢島だけど、どこかで互いに分かり合える部分を持っていると思うんです。だからこそ前田の沢島に対する最後の言葉が出てきたんだろうな、と。大後さんとは何度も共演して、互いにお芝居の仕方だけでなくひとりの人間としての中身もよく知っている。それがあったからこそ、あのどこかで繋がっている2人の関係性をきちんと表現することができたんじゃないかなと思うんです。逆に、例えば橋本(愛)さんのことは僕はほとんど知らなくて、一緒のシーンがある最終日まで『おはよう』しか会話を交わしたことがなかった。実際にぎこちなくて、映画の中の前田とかすみ(橋本)の関係そのままなんです(苦笑)。芝居をしていても互いに距離感が掴めずにズレをすごく感じる。撮影後にようやく喋れるようになったのですが、そういう意味でこの映画はキャスト同士の距離感が絶妙だったと思います」。安心感がある。心地よい幼なじみの関係幼なじみにして、同じ俳優としての道を歩んできた同志でもある2人。この機会に改めて互いの性格や魅力についてマジメに語ってもらおう。神木さん、ずばり大後さんはどんな人?「すごく頭がいいです。とにかく回転が速い!周りに気を遣えるし、しっかりしています、近寄りがたいくらいに(笑)。それが、芝居となるとフワーっと優しく包み込んでくれるんです。僕のイメージでは、黄緑色の薄いカーテンに包まれるような心地いい感じ(笑)。あの感じはいつも共演しながら『すごいな』と思って尊敬してます」。そんな神木さんの言葉に大後さんは頬を赤らめながら、神木さんが共演者にもたらす「安心感」を語ってくれた。「神木さんとは本当に小っちゃい頃から一緒なので、私もリラックスして気負いなく現場にいられます。どんな芝居をしても受け止めてくれる安心感があるんです。普段の神木さんは…すごく優しいですよ(笑)。本当にそのひと言に尽きます。お芝居のことでもそれ以外のことでも、私が考え込んでいるときにその空気を察してフッと温かいひと言をかけてくれる。それがすごく嬉しくて、悩んでたことも『そんなに悩まなくていいんだな』って思えたり。ひと言で私を変えてしまうくらいすごく影響を与えてくれます」。これからも幾度となく共演することになるであろう2人だが、この作品に閉じ込められている感情は間違いなくあのとき、あの場所でしか表現することができなかったものである。懐かしさを感じるもよし、胸の痛みにのた打ち回るもよし、モヤモヤとした何とも言葉にできない、だが限りなく美しい感情を2人の姿を通じて感じてほしい。(photo/text:Naoki Kurozu)■関連作品:桐島、部活やめるってよ 2012年8月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「桐島」映画部©朝井リョウ/集英社
2012年08月08日「クランクアップを迎えて『おつかれさまでした』って声をかけられたとき、思わずワンワン泣いちゃったんですよ」――。それは東出昌大というひとりの俳優が誕生した瞬間だった。10代の頃からモデルとして活躍し、3度にわたってパリコレのランウェイを歩くなど世界の舞台で戦ってきた。そんな彼が23歳にして俳優に転身し、初めて臨んだのが映画『桐島、部活やめるってよ』である。初めての演技の中で24歳のルーキーは何を感じ、何を手にしたのか?映画の公開を前に胸の内を語ってくれた。俳優としての道、その“覚悟”「小説すばる新人賞」を受賞した朝井リョウのデビュー小説を映画化した本作。学校の人気者・桐島がバレー部を退部したといううわさが校内を駆け巡り、友人、カノジョ、果ては桐島と全く接点のなかった者まで様々な視点で青春が切り取られていく。東出さんが演じたのは桐島の親友の宏樹。多くの役がオーディションとワークショップで決まったが、中でも宏樹は最も多くの候補者が集められた役でもあった。そんなこととはつゆ知らず、当時まだモデル事務所に所属していた東出さんは軽い気持ちでオーディションに足を運んだという。「最初からあきらめていたというのも変ですが、『まさか自分が役者なんて』という気持ちが強かったんです。マネージャーが先方に『東出は芝居をしたことないし、できないですよ』と伝えていたくらいで、そんなやりとりがあった後だったので興味を持っていただけるとも思ってなかったんです」。1次選考で吉田大八監督と初めて顔を合わせ「すごく面白い方で、この人と仕事ができたらいいなぁと思った」と言うが、それでもまだ「まさか」という気持ちの方が勝っていた。だが選考が進むにつれて自身の中での気持ちが変化していくのをひしひしと感じていた。「モデルの場合、オーディションはあっても2次までなんです。だから3次選考に呼ばれたと聞いて『マジで?これはもしかするかも…いやいやいや!』って感じでしたが(笑)、だんだん躍起になっていき、その次になると『ここまで来たからには絶対に受かりたい』という気持ちになってました。そこで、また次があることを聞かされて、その頃にはほかの俳優のみなさんとのセリフのやりとりもあったりして、ハードルがどんどん上がっていくんです。意地もあったし、やりがいも感じたし、できないことも増えていったけどそれを面白いって感じるようになってましたね」。最終選考が終わったとき、吉田監督に改めて「これから役者一本で腹を括れるか?」と俳優の道に進む“覚悟”を問われたという。「別室に呼ばれて監督に『どうだった?』と聞かれて素直に『精一杯でした』と答えたんです。『いま、宏樹役を東出くんで考えてる』と言われたんですが、宏樹は原作でも中心人物の一人だったし出番も多い。現場に入ってから心が折れて『やっぱりできません』というわけにはいかないので、あのとき監督は覚悟を決めて『できます』と言える人にしか役は与えられないと最後に確認したんだ思います」。その言葉通り、“元パリコレのモデル”という肩書もプライドもかなぐり捨てて、撮影を通じて「とにかくできることは全てやろうという気持ち」で喰らいついていった。「監督からは『(宏樹がつるむ)帰宅部のみんなで一緒にご飯に行ってこい』と指令が出されたんですが、そういうところで『俺、今回が本当に初めてで』と最初から自分を全てさらけ出したんです。みんな年下ですが、本当にしっかりしてるし『いいものを作ろう』っていう情熱が伝わってくるんです。だから恥ずかしいとかそういう気持ちを抱くことなく『芝居ってどうしたらいいの?どういう風に考えてどう役作りしていくの?』ってどんどん聞いて、台本の読み方を教えてもらうところから始まり、勧められたことは全てやりました」。宏樹はかわいい彼女と陽気なクラスメイトに囲まれた“上”のグループの学生。放課後は帰宅部の仲間とバスケに興じるなどワイワイと高校生活を過ごしつつも、心のどこかに自分でもよく分からない不安やいら立ちを募らせている。それは映画のクライマックスでの映画部の前田(神木隆之介)とのシーンへと帰結していく――。東出さんはかつて高校時代に自身が感じた感情を引き出しつつ、宏樹の内面を作り上げていったと明かす。「僕自身、どちらかというとうるさいグループで『お前なんて悩みないだろ』って思われてたかもしれないけど、確実にモヤモヤした気持ちは抱えてました。モデルの仕事をしてはいたけどそれで一生とは思ってなくて、漠然と大学行くのかなとか。そういうときに美術部や軽音部の連中から『美大に行く』『音楽で生きていく』なんて話を聞かされると雷に打たれたような衝撃を受けたり。それはまさに宏樹と前田のやりとりですよね。限界に近づいていた宏樹が、カッコつけつつも最後の最後で心の声に正直になった結果があのシーンなのかな、と思うとすごく理解できました」。俳優業は「マイペース」、女性には「甘えさせてほしい」オーディションで覚悟を固めた東出さんだが撮影、そしてクランクアップ時の“号泣”を経て、俳優を一生の仕事とするという思いはますます強くなっているようだ。「これまで仕事のことで泣いたことなんてなかったし、ましてや23歳(当時)にもなって自分がそんな反応を示すなんて思ってなかったんですが…(苦笑)。その後、ロケ地の高知から東京に戻って年が明けてもふと『あぁ、もう『桐島』の撮影はないんだな』という思いがよぎってポカンとしてしまうこともあって…。それだけこの仕事にのめり込んでたんだなというのを改めて強く感じました。理想の役者像ですか?人間性を伴った俳優でありたいと思っています。身近なところでいいから幸せになって、それが反映されるような役者になれたらいいですね」。最後に映画ともこれまでの話とも全く関係のない自身の恋愛観についての質問を投げかけると、少しだけ頬を緩めつつこんな答えを返してくれた。「俳優の仕事って“勉強”という一言で片づけちゃうけど、釣りに行ったり慣れないボウリングをやったり、寄席や演劇に行くことも読書も全てが仕事なんですよね。だからそういう部分を理解してもらえないと付き合えないかなと思います。あと良くも悪くもマイペースでないとやっていけない部分もあると思うので柔軟に甘えさせてくださる方がいいですね(笑)」。(photo/text:Naoki Kurozu)特集:年下のカレ■関連作品:桐島、部活やめるってよ 2012年8月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「桐島」映画部©朝井リョウ/集英社
2012年08月06日