すべての音をいつくしむように丁寧に繰り出す音に身をゆだねた。若い世代を代表する人気ピアニスト・吉見友貴のリサイタルを聴いた。(7月17日・めぐろパーシモンホール小ホール)。2000年生まれ。高校2年で日本音楽コンクール最年少優勝。今年5月に開催された難関のエリザベート王妃国際音楽コンクールでは見事セミ・ファイナルに進出した。感染防止対策でファイナル進出者が例年の12人から6人に減らされた今年のエリザベート。通常なら堂々ファイナリストだったはず。颯爽とスタージに現れた吉見は、シャツ・ジャケットとテールワイドパンツの黒づくめの衣装。イメージチェンジした新しいアーティスト写真と同じ姿に、客席のほとんどを埋める女性ファンが軽くどよめいた。プログラム前半はウィーン。ハイドンのピアノ・ソナタ第50番とシューベルトのピアノ・ソナタ第7番を、精細な解像度のタッチと慎み深い解釈で描く。ハイドンの第1楽章はしばしばペダルの用法が話題になるが、ノーペダルの粒立ちとペダルを踏むミステリアスな部分のコントラストがじつに鮮明。後半は一転して開放的に、パリに集った作曲家たちを弾く。強奏でも均整の取れた響きををキープした美しいアルベニス《イベリア》第1巻。華麗に飛翔するフォーレ《ヴァルス・カプリス第1番》。清潔で毅然とした前半と躍動する後半を鮮やかに対置したショパン《アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ》。前半と後半で、そしてそれぞれの曲の中で、「コントラスト」が、コンサートを通じてひとつのテーマになっていたように思う。アンコールにメンデルスゾーンの無言歌とガーシュウィンの《3つの前奏曲第1番》。ていねいに歌う前者と、ややワイルドに、切れ味鋭く弾き切った後者。ここでも「コントラスト」だ。心地よい余韻。リサイタルの様子は7月31日(土)までアーカイブ配信で見ることができる(視聴料1,000円)。また8月7日(土)には浜離宮朝日ホールでのリサイタルも待っている(配信も予定)。大曲リストのピアノ・ソナタをメインにしたプログラムで、こちらも楽しみだ。9月からはボストンのニュー・イングランド音楽院に留学する(すでに昨年から籍を置いているが、1年目はコロナ禍ですべてリモート授業。今秋からようやく対面レッスンが始まる)。東京で渡米前の彼を聴く最後の機会を見逃すな!ライター:宮本明
2021年07月21日2017年第86回日本音楽コンクールを制した若きピアニスト吉見友貴(ゆうき)。2000年生まれの彼が、十代の集大成ともいえるリサイタルを開く(11月24日(日)・トッパンホール)。【チケット情報はこちら】現時点で決まっている演奏曲は、アルバン・ベルクのソナタOp.1、ベートーヴェンのソナタOp.109、そしてショパンのソナタ第3番Op.58。「最近魅力に気づいた」というのがベートーヴェン。交響曲や弦楽四重奏曲など、ピアノ曲以外も熱心に聴き始めた。「もともと、ベートーヴェンはとっつきにくく感じて、弾くのを避けていました。でも《熱情》を弾く機会があって、初めて深く勉強してみたら、彼の頭の良さ、作曲技法の素晴らしさにびっくり。いい機会だから一気に弾いてしまおうと、今回弾く作品109を含む、後期三大ソナタ(作品109、110、111)に取り組んでいます。最後の傑作3曲を続けて勉強するのは大変ですが、前期・後期とは異なるベートーヴェンの真の世界を深く見ることができたような気がします。もちろん今の年齢で完成できるわけではありませんが、これからもずっと向き合いながら深みを増していきたいと思っているところです」ベルクはそのベートーヴェンよりも約100年若い世代の作曲家。しかし、「作品のイデーは通じる」と言い切る。「並べて聞いてもまったく違う音楽に聞こえるとは思いますが、根本的な作風は似ているんです。それが伝えられるといいのですけど」実はベルクを知ったのは、子供の頃に読んだ『のだめカンタービレ』に登場した、ヴァイオリン協奏曲だったのだそう。なるほど、そういう世代だ。「それまでベルクという作曲家を知らなかったのですが、曲を聴いてみて衝撃を受けました。それがきっかけでピアノ・ソナタも勉強して。無調から、ぱっと調性に変わって解決する瞬間がとても好きです。少し難しい曲かもしれませんが、自分の好きな作品をみなさんに知っていただくチャンスにしたいと思います」そしてやはりピアニストはショパンが大好き。なかでもソナタ第3番は、ずっと憧れの作品だった。「ショパンの全作品の中でも、構築美を最も強く感じます。もちろん感覚的なメロディの美しさもありますが、そのうえで、ソナタとして構造的に美しい、素晴らしい作品なのです」この春に桐朋学園高校を卒業し、現在は大学のソリスト・ディプロマ・コースで研鑽中。最近はソロだけでなく、室内楽にも積極的に取り組んでいる。「室内楽は人と合わせるので、テンポなど、制限のある中で自由に弾かなければなりません。そのおかげで、ソロを弾くときも自分勝手にならず、作品全体を、より鮮明に、細かく、そして大きくとらえられるようになってきました」「ピアノでなく音楽を勉強している気がする」と手応えを語る表情は実に頼もしい。成長・進化の真っ只中。今後もさらに大きく羽ばたき続ける彼の「現在」が聴けるリサイタルを聴き逃すな。取材・文:宮本明
2019年06月28日大阪大学(阪大)と国立遺伝学研究所はこのほど、ゲノム編集技術「CRISPR/Cas システム」と「一本鎖オリゴ(ssODN)」を利用し、マウスやラットの遺伝子改変効率を向上させる新技術を開発したと発表した。同成果は阪大大学院医学系研究科附属動物実験施設の真下知士 准教授、国立遺伝学研究所マウス開発研究室の吉見一人 助教らの研究グループによるもので、英科学誌「Nature Communications」に掲載された。「CRISPR/Casシステム」は、DNAを切断する酵素Cas9と、ゲノム上の編集箇所を見つけ出すgRNAをマウスやラットなど動物の受精卵に注入することで、特定の遺伝子を破壊(ノックアウト)したり、特定の箇所へ導入(ノックイン)することができる技術。Cas9/gRNAと一緒に、ドナーDNA となる「ssODN」を導入すると、1~数十塩基(bp)のDNA配列をノックインすることができる。しかし、これまで動物の受精卵では、遺伝子などの大きなDNA配列の導入効率が低く、ノックイン動物を作製することが困難だった。今回の研究では、受精卵でのCas9タンパク質の発現を上昇させ、ゲノム編集効率を向上することに成功したほか、1~3kbp程度の長い一本鎖オリゴを作製した。これらにより、GFP(緑色蛍光タンパク質)遺伝子の効率的かつ正確なノックインに加え、これまで不可能だった大きなサイズのゲノム領域(約200kbp)の導入、ラット遺伝子のヒト由来遺伝子への置き換え(遺伝子ヒト化動物)に成功した。同研究グループは同成果について「マウスやラットなどのみならずさまざまな生物種における遺伝子改変操作の効率を向上させ、新しい遺伝子組み換え生物の作製に非常に有用な技術になることが期待されます。また、作製された遺伝子改変動物は、創薬研究、トランスレーショナル研究、再生医療研究などへの幅広い利用が期待されます。」とコメントしている。
2016年01月21日○私の地元の"最強"絶景吉見百穴(埼玉県比企郡)(c)Flickr/puffyjet○"最強"絶景ってこんなところ丘陵や台地の斜面を掘削して作られた吉見百穴は、古墳時代の末期に造られ、大正12年(1923)には国の史跡に指定されている。現在確認できる横穴の数は219基で、一部の穴には緑色に発光する「ヒカリゴケ」が自生している。戦時中には、地下軍需工場として活用されていたという歴史もある。アクセスは、JR高崎線 鴻巣駅から東武バス東松山駅行きで約25分。○推薦者はかく語る「異国感たっぷりで圧倒される。ただ、元軍需工場ということもあり、重さを感じずにはいられない」(34歳男性/機械・精密機器/技術職)
2015年06月14日