94歳の男性同性愛者に密着したドキュメンタリー映画『94歳のゲイ』が4月20日(土)よりポレポレ東中野にて公開。予告編とポスタービジュアル、場面写真が一挙に解禁された。かつて同性愛は“異常性欲”“変態性欲”だと公然と語られ、“治療が可能な精神疾患”とされてきた。1929年生まれの長谷忠さんは、誰かと交際したことも性交渉の経験もない。ゲイであることを誰にも打ち明けることなく、好きな男性ができても告白することもできない時を過ごしてきた。詩作を心の拠り所にしながら孤独の中で生きてきた長谷さんに訪れた大きな変化、90歳を超えて初めて経験する“出会い”と“別れ”。多くの悲しみを見つめてきたその心に去来する思いはーー。この度、解禁されたのは、若かりし頃のどこか緊張した面持ちの長谷さんと、ひとり静かに短歌を詠む現在の姿が対比されたポスタービジュアル。また、「セックスは一回もやったことない」という言葉から始まる予告編は、詩人として成功しながらも「ものすごく生きづらかった」と語る過去と、現在の日常生活が淡々と映し出され長谷さんの孤独な人生が浮き彫りになっていく。一方で、日本初の商業ゲイ雑誌「薔薇族」の元編集長である伊藤文学さんのインタビューなどで同性愛者たちが歩んできた歴史も語られ、作品の世界観を伝えている。そして、ラストは長谷さんが日々書き綴っている短歌からの引用「笑っておくれ、人の弱みを」という印象的な言葉で締め括られ、余韻が残る予告編が完成した。『94歳のゲイ』は4月20日(土)よりポレポレ東中野ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:94歳のゲイ 2024年4月20日よりポレポレ東中野ほか全国にて順次公開©MBS/TBS
2024年03月03日冷戦期、70年代のソ連領エストニア。兵役を終えようとしている二等兵セルゲイは、パイロット将校のロマンと出会い恋に落ちる。だが、当時は同性愛が法的に禁じられており、彼らの関係は彼らだけの秘密。そんな中、上官のズベレフ大佐はふたりの関係を怪しみ……。無名の俳優セルゲイ・フェティソフによる回想録を基に紡ぎ上げた感動作『Firebird ファイアバード』。2021年にエストニアで公開された本作は大ヒットを記録し、2023年の同性婚法案議決にも影響を与え、エストニアがバルト三国、旧ソ連領としては初めての同性婚承認国となった。回想録に突き動かされ、映画化にこぎつけることに成功したペーテル・レバネ監督、彼に呼応し共同脚本と主演を買って出たトム・プライヤー、そしてロマン役を演じたオレグ・ザゴロドニーが本作の日本公開の直前に来日、「ぴあ」では映画連載でもおなじみのLiLiCoさんとの対談が実現した。2月9日(金) 公開 映画 『Firebirdファイアバード』本予告「ストーリーの方から僕のところにやってきた感じ」LiLiCoセルゲイ・フェティソフさんの回想録と出会ってから映画にするまでのプロセスを教えてください。ペーテル・レバネ監督僕が探したわけではなく、ストーリーの方が僕のところにやってきた感じですね。まず2011年のベルリン映画祭に参加していたとき、エストニアの映画祭のディレクターから紹介された人に、この『ロマンについての回想録』を渡されました。一気にこれを読み終えて、映画にしようと思ったんです。当時の私はミュージックビデオを数々手掛けていましたが、長編映画はまだやったことがありませんでした。このストーリーを読んで、初長編監督をするならばこれしかない、と思ったんです。それと同時に、LAに住んでいるプロデューサーが、トム(・プライヤー)を引き合わせてくれました。それで、彼にこの話を読んでもらい意気投合。映画化に向けて一気に動き始めたんです。トム・プライヤーペーテルと意気投合してから、いくつかのシーンを仮に撮ってみました。セルゲイとロマンが写真を現像するシーン、ロマンの結婚式のシーン、それとセルゲイが母親を訪ねていくシーンです。セルゲイを演じたトム・プライヤーは1990年英国生まれの俳優・脚本家・プロデューサーレバネ監督トムと出会ったのは2014年でしたが、それから2年間はそのようにして脚本を練ったり、セルゲイに会ってインタビューを重ねたり、パイロット版の撮影をしたりで、2年があっという間に過ぎたんです。セルゲイがお母さんのところに行くシーンはもったいなかったんですが、本編には入れてません。LiLiCoオレグさんはこのふたりが築き上げたものと出会ってどう感じました?オレグ・ザゴロドニー本当に好きな物語でしたし、出会えて嬉しかったですね。私がロマンを演じることになったのはオーディションがきっかけでした。そのときは、実は細切れの情報しかなかったんですよ。ソ連のパイロット将校が二等兵と出会い、ロマンスがある、という程度。ラブストーリーだということくらいしか知りませんでしたし、オーディションでも2シーンだけ脚本をいただいて演じたんです。でも、合格してから脚本を全部読み、驚きました。こんなにも大きな役だと思っていませんでしたし、役者として大きなチャレンジになると確信しました。ロマンを演じたオレグ・ザゴロドニーは、1987年ウクライナ・キーウ生まれレバネ監督実はキャスティングは本当に難しかったんですよ。トムとふたりで共同執筆を重ねて、僕たちのイメージしているロマンがあったんですが、オーディションでは全く現れなかったんです。それこそ世界中からデモリールが送られてきて、それを何カ月も吟味していたんですけどね……。LiLiCoえー!ではどうやってオレグさんを……。プライヤーキャスティングディレクターを務めたベアトリス・クルーガーさんのおかげです。彼女はローマを拠点にしているドイツ人なんですが、彼女がドイツ、ロンドン、モスクワでのオーディションを行ってくれたんです。それで、モスクワで行った2日間のオーディションでオレグを見つけることができました。オレグだけではなく、ルイーザ役のダイアナ・ポザルスカヤさん、セルゲイとロマンを調査するズベレフ少佐役のマルゴス・プランゲルさんもそこで見つけることができました。レバネ監督マルゴスさんはエストニアでコメディ中心に活躍する俳優さんなんですが、実はソ連時代にはパイロットを務めていたそうで。実際にあの時代に兵役を務めている人から話をうかがえたのもラッキーでした。LiLiCoむちゃくちゃイヤなキャラでしたけど、そうかコメディアンだったんだ……。びっくり。「衣装の軍服は忠実に再現されているんですが、着心地は……」LiLiCoオレグさんにうかがいたいんですが、役者としてチャレンジだった思い出は?ザゴロドニー一番強く記憶に残っているのは、やっぱり戦闘シーンです。グリーンバックの撮影だったので、実際にどんなふうになっているのか分からなかったんですが、完成版を観てバルト海をバックにしていたんですね。それが非常に印象的でした。また、セルゲイと一緒に暗室で現像した写真を見ているシーンも美しいですよね。LiLiCoそのシーンは本当に素晴らしいですよね。ザゴロドニー実はあのシーンはセリフを書き換えてもらったんですよ。セルゲイとふたりでなにげなく冗談を言い合いながらも、彼らの気持ちがどんどん近づいていくドキドキ感を出すために、私たちがしゃべりやすいように変更をしてもらいました。LiLiCoあそこは自分の心音が聞こえるくらいにドキドキしました。だって、その後KGBが乗り込んでくるんだもん(笑)。暗室もそうですし、冒頭の湖のシーンなどもそうですが、物語ゆえに暗めのライティングや印象的な色合いが多いですよね。レバネ監督それについては、ちょっとだけ話を戻す必要があります。セルゲイ本人……彼は2017年に亡くなってしまったんですが、彼と一緒に過ごした3日間が本当に貴重で素晴らしい機会だったんです。実話のモデルとなる本人からのインプットがあることがこんなにも貴重なことだとは、と感謝しています。モスクワ郊外で会ったそのときは、ジョージア料理のレストランに行ったりロマンと一緒に映った写真を見せてもらって泣いてしまったことを覚えています。そのときに得られた情報が、色にも反映しているんですよ。というのも、当時同性愛は社会的に禁じられて許されないことであり、それを映像で表現するためには色調のコントラストが必要だったんです。そのアイデアは撮影監督のマイト・マエキヴィさんから。彼はアンドレス・タルコフスキーの撮影監督をしていたヴァディム・ジュソフに師事した人で、タルコフスキーの色調の影響を大きく受けているんですね。たとえば、セルゲイとロマンのプライベートな空間では柔らかな黄色味、彼らが公の場にいるときは青、といった工夫をしています。LiLiCoなるほど、美しいだけでなく意味も持たせたんですね。トムさんとオレグさんは役作りのためにされたことは?プライヤー髪の毛の長さや洋服の着こなしなどのルックも大事ではあったんですが、時の経過をどう見せるかが勝負でした。セルゲイは軍を除隊したあと、鮮やかな色調の洋服を着ています。が、前半の軍人時代は軍服ですし、とてつもない閉塞感がある。このコントラストをつけるために、ビジュアル的な見せ方とともに内面から湧き上がってくる感情面で非常に苦心した覚えがあります。それとともに、監督がおっしゃったとおり、現場のライティングやセットの色味はとても役に立ちました。私たちが書き上げた脚本のイメージどおりにしてくれた監督とマイトさんには大感謝ですね。LiLiCo影響を受けた作品などはあったんですか?プライヤートム・フォードの『シングルマン』の色の使い方や、ウォン・カーウァイの『花様年華』ですね。どちらも大好きな作品なので、インスピレーションを得て脚本にしています。ザゴロドニー僕はほぼ軍服でしたからね。すごくバチッとしていて、見た目はいいんですが……実は着心地はあまりで(笑)。衣装の方が用意してくれたあの軍服は、当時の素材で作られたかなり忠実に再現したものなんですよ。そのせいか、見た目はいいんですが、とても堅苦しい。それもまた、生きにくい時代を反映していたんですね。セルゲイとのロマンスや社会情勢だけでなく、将校だと軍の規律以外にもたくさんのルールに縛られていますし、現在とは比べ物にならないような環境です。役作りのために、NATOの基地にうかがい、兵士の人たちから軍における規律などを学んだことは、内面も外見も軍人になるために役立ちました。プライヤー私も物語の前半で着ていますが、あの軍服にはいくつかのバージョンがあるんですよ。軍人ルックでバシッときめるときはとてつもなく着心地の悪いカチッとしたバージョン、その一方で匍匐前進の訓練をしているときに着ているのは、ドロドロになってもいいような作業服的な感じ、と。個人的にはミリタリールックは好きなスタイリングなんですが、役作りとなると全然違いますね。あと、ブーツに特徴があるんですよ。見た目はとてもかっこいいし、立ち居振る舞いを左右する小道具の側面もあるので、かなりこだわって作り込まれています。……が、これもまた履き心地は悪い(笑)。とにかく衣装部の人たちが細部にまでこだわって作り込んでくれたことには感謝しています。「実は姉が日本の小学校で英語を教えていたんです」LiLiCoちなみに皆さん、日本は初めてでした?ザゴロドニー初めてです。日本の印象といえば、ソニーやPanasonicのテレビ、インターネットで見るポップカルチャーのイメージくらいしか持っていなかったんですが、実際に訪れてみるとまるで別世界にいるようですね。すっかりお寿司にハマりましたよ。特にイワシ(笑)。レバネ監督私は2回目です。7~8年前に初めて来たときは、富士山に登り、京都と東京に滞在し、温泉にも行きました。本作のセカンドユニットの撮影監督がロンドンに住んでいる友人なんですが、日本人なんですよ(※浅沼ダンクロウ)。彼にそのときの旅程を助けてもらいました。そのときから感じているのは、物理的ななにかではなく、日本における精神性みたいなところに自分が呼応していることです。本作の日本版ポスターひとつとっても、オリジナル版とは全然違うけど、作品を正しく伝えるために特別に作ってくれてますし。なにごとにもプレゼンテーションを丁寧にこだわるところは、とても共感しています。プライヤー私は3回目の来日になります。前回はほとんど時間がとれなくてすぐに帰国しなければならなかったので、今回の来日は楽しみでした。とにかく食べることが好きなので、食事に出かけることが最高の楽しみ。監督と同じことになってしまいますが、どこもかしこも細かいところにまで気を配られていることには驚かされますね。たとえばスターバックスでも、めちゃくちゃ丁寧にサーブしてくれますし、包装パッケージも美しいですし丈夫。ザゴロドニーそうそう。どこも清潔で作りがすごい。びっくりしました。なんせ、日本のイメージが、父が初めて買ってきたソニーのテレビくらいだったから。そのとき父は給料の3~4カ月分をつぎこんだんですが、「きっとこのテレビは自分より長生きする」って言ってましたよ(笑)。プライヤー実は10歳年上の姉が日本の小学校で英語を教えていたんです。彼女はそのときの生徒さんと文通をしていたんですよ、エアメールで。そのとき、きっとテレビ電話は日本が最初に作るんだろうな、なんて、未来的なイメージも持っていましたね。レバネ監督私はやはり映画から日本の印象をもらってます。黒澤明監督の作品や宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』など、自然とスピリチュアルなもの、それにテクノロジーがある国、と。自然とITが特徴のエストニア人としては近しいものを感じています。取材・文:よしひろまさみち撮影:源賀津己『Firebird ファイアバード』公開中(C)FIREBIRD PRODUCTION LIMITED MMXXI. 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2024年02月09日ドイツでかつて施行されていた<刑法175条>により、特にナチ支配下で男性同性愛者が弾圧されていた事実を、6人のゲイとひとりのレズビアンによる証言を通して描いたドキュメンタリー映画『ナチ刑法175条』。この度、予告編が解禁された。当時、<刑法175条>により約10万人が捕まり、1万から1.5万人が強制収容所に送られ、強制労働や医学実験を強いられた。生存者はおよそ4,000人、本作製作時に生存が確認できたのはわずか10名に満たなかったという。この度解禁される予告編では、<刑法175条>により実際に弾圧された人々の生々しい証言と、当時の写真などのアーカイブフッテージが、緊張感のある音楽とともに映し出されている。「なぜ、男性同性愛者が迫害の対象となったのか?」、これまで“語られることのなかった歴史”を映画は映し出している。監督は『ハーヴェイ・ミルク』(1985年アカデミー賞受賞作)のロブ・エプスタインと、同作のスタッフだったジェフリー・フリードマン。ナレーションは自らもゲイであることを公表しているイギリス人俳優、ルパート・エヴェレットが務めている。『ナチ刑法175条』は3月23日(土)~新宿K‘s cinemaほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2024年02月08日アカデミー賞を受賞した『ハーヴェイ・ミルク』のスタッフがかつてドイツで施行されていた同性愛を禁じる<刑法175条>を通じて自由と尊厳を問う、1999年製作の傑作ドキュメンタリー『ナチ刑法175条』が3月23日(土)より全国順次公開決定。ポスタービジュアル、場面写真が解禁となった。本作は、<刑法175条>により、特にナチ支配下で男性同性愛者が弾圧されていた事実を、6人のゲイとひとりのレズビアンによる証言を通して描いたドキュメンタリー映画。同法により約10万人が捕まり、1万から1.5万人が強制収容所に送られ、強制労働や医学実験に使われた結果、生存者はおよそ4,000人、本作製作時に生存が確認できたのは僅か10名に満たなかったという。同性愛を理由に逮捕され、いきなり収容所に1年半拘置された者や、中にはナチドイツ占領下のフランスでも収容所に送られた者もいたという。監督は『ハーヴェイ・ミルク』(1985年アカデミー賞受賞作)のロブ・エプスタインと、同作のスタッフだったジェフリー・フリードマン。ナレーションは自らもゲイであることを公表している『アナザー・カントリー』などに出演してきたイギリス人俳優、ルパート・エヴェレット。本作は、2000年ベルリン国際映画祭最優秀記録映画賞をはじめ、サンフランシスコ国際レズビアン&ゲイ映画祭最優秀記録映画賞、サンダンス映画祭監督賞など多数の映画賞を授与され、日本でも2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭のコンペティション部門に選出。2023年7月に<刑法175条>を題材にした劇映画『大いなる自由』公開の際に『刑法175条』のタイトルで特別上映されるなど、長く語り継がれている傑作。なお、今回の公開は新たに開発されたデジタル・リマスター版による上映となる。『ナチ刑法175条』は3月23日(土)~新宿K‘s cinemaほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)
2024年01月23日「この国に同性愛者は存在しない。ゆえにそれを裁く法も必要ない」と考えていた“イタリアの独裁者”ムッソリーニの影響を受けた時代に起きたブライバンティ事件。まもなく公開を迎える映画『蟻の王』では、恋に落ちた2人の男性が受けていた不当な扱いと彼らの真実に迫っています。そこで、本作で主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。ルイジ・ロ・カーショさん【映画、ときどき私】 vol. 613イタリア映画界において欠かせない俳優の1人とされ、『輝ける青春』や『いつだってやめられる』など日本でも数多くの出演作が公開されているルイジさん。本作では、同性愛を理由に「一個人をそそのかし完全に従属させた」教唆罪で逮捕された実在の芸術家アルド・ブライバンティを演じています。今回は、出演の裏側にあった思いや作品を通して伝えたいこと、そして日本で叶えたい夢などについて語っていただきました。―この作品には、どのような経緯で出演することが決まったのかをお聞かせください。ルイジさん本作を手掛けたジャンニ・アメリオ監督のことは素晴らしい映画監督だと思っていましたし、何年も前から面識があって「機会があったら一緒に映画を作りたいね」という話は以前からしていました。そしたらある日、彼から電話が来て「話したいことがある」と。実際会いに行ったところ、オファーをいただきました。出演するうえで、クリアしなければいけないこともあった―そこですぐに引き受けようと決意されたのですか?ルイジさんアメリオ監督は事前にカメラテストをせず、相手と話をしていくなかで「この人と一緒に映画のための“旅”ができるかどうか」を直感で決めるタイプ。なので、今回もいろいろと話をしたあとに脚本をもらいました。比喩的に言うと、映画監督というのは洋服を作るお針子さんで、俳優は生地。監督が僕たちの色や形を好きなように変えて映画を作り上げていくものだと考えています。今回、僕のことは“素材”としていいと思って選んでくれたようですが、「この役を演じるにあたって俳優としていくつかクリアしなければいけないことがある」と言われました。―それは具体的にどんなことだったのでしょうか。ルイジさん課題は2つありましたが、1つ目は実在した主人公が北部の人だったので言葉の問題がありました。なぜなら、僕は南イタリアにあるシチリア島の出身なので、これまでは南部の人の役ばかりを求められることが多かったからです。もちろん、標準のイタリア語は話せますが、映画で描かれている60年代当時は、北部の方言が非常に強かったようなので、そこがうまく表現できるかというのがありました。もう1つは、アルド・ブライバンティが必ずしも好感のある人物ではないということ。ときには観客の共感を得られないような感じの悪いところもあるのでそれを受け入れられるかどうか、そしてそういう描き方をすることにも同意してもらえるかというのを監督からは確認されました。権力によって排除された事実を伝えたかった―監督はこの作品について、「暴力と偏見の鈍感さについての映画でもある」とも話されていますが、残念ながらここで描かれているような偏見はいまでも存在しています。ご自身は今回の役を通して、どのようなことを考えられましたか?ルイジさんこの話は非常に個人的な愛の物語から始まっているにもかかわらず、それが正義に反するような裁きを受けてしまいますが、教唆罪で罰せられたのは、アルドの前にも後にも彼一人だけ。そういったこともあって、この映画で重要だったのは「こういう事件がありました」とただ語るのではなく、「危険だ」とレッテルを貼られたものが権力によって排除されたという事実を伝えることでした。しかも、それが法の力によって行われていたので、そこを明らかにすることにも意味があったのです。―そのあたりは現代にも通じるものがあると感じました。ルイジさんそうですね。だからこそ、イタリアから遠く離れた日本のみなさんがこの映画を観て何を学び、どう思うのかということに興味を持っています。ただ、僕たち表現者は、観客の方々に何かを教えようとしているわけではありません。僕たちが届けたいのは、あくまでもエモーション。とはいえ、人が感動を覚えるときというのは、自分と何かしらの関わりを感じたときであって、自分とまったく関係のないものにはなかなか感動することができないものなんですよ。何について感動したかを考える必要がある―確かにそうかもしれませんね。ルイジさんでも、もしこの作品を観て感動したのであれば、「何に感動したのか?」については考えてみる必要があると思っています。そうすれば、「自分もこんなふうに他人から扱われたことがある」とか「自分に偏見はないと思っていたけど実はそうではなかった」といったことに気が付くのではないでしょうか。たとえば、「同性愛に偏見はない」という方でも「もし自分の息子が同性愛だったらちょっと残念に思うかな」と言うのを聞いたことがあります。では、その残念という気持ちは一体どこから来ているのか。そういうことに対して、疑問を抱くきっかけになってほしいです。―人によって受け取り方に違いはあると思いますが、改めて自分自身に問いかけていただきたいですね。話は変わりますが、日本に対しての印象などについて、教えていただけますか?ルイジさん前回日本に来たのは17年前ですが、そのときのことは強く印象に残っています。僕はあまり記憶力がいいほうではないんですけど、初めて日本に来たときのことは本当によく覚えているんですよ。特に感銘を受けたのは、歌舞伎や能。もともと自分は演劇の人間なので、そういう意味でも非常に興味深かったです。あと、相撲の稽古も見に行きましたが、それもすごく面白かったですね。自分の俳優人生は、本当にラッキーだと感じている―ルイジさんは演劇からキャリアをスタートさせたあと、2000年の『ペッピーノの百歩』で映画初出演にして初主演。33歳での映画デビューはどちらかというと遅いほうだと思いますが、そのあとは数多くの話題作に出演してきました。20年を超える映画人生を振り返ってみて、いかがですか?ルイジさん自分は、本当にラッキーだったなと感じています。実は、過去に出演していた舞台の演出家から「お前の芝居はまったくダメだから出ていけ!」と言われたこともありましたが、なんとその日の夕方に『ペッピーノの百歩』の出演が決まったんです。しかもその作品をきっかけに知られるようになると、それまでは僕が芝居を書いても誰も演じてくれなかったのに、急にいろんなところで上演してもらえるようにもなりました。ただ、自分の周りを見るとそういう人ばかりではないので、本当に恵まれていたんだなと。僕は時間の感覚が少しおかしいところがあり、映画に初出演したときのことはコロナ禍よりもあとに感じるのですが、それくらい自分の記憶のなかではインパクトの強い出来事でした。でも、最近になってキャリアや功績に関する賞のお話をいただいたりすると、「自分も年を取ったんだな」と思います(笑)。いまの夢は、いつか日本で朗読会をすること―日本のイタリア映画ファンにとってはこれからのご活躍も期待しているところですが、今後挑戦したいことなどがあれば教えてください。ルイジさん実は、最近カニとサソリを主人公にした本をイタリアで出したのですが、その本が日本語訳で出版され、日本でも朗読会ができたらいいなと思っています。というのも、今回日本に来る飛行機のなかで、カニとサルが出てくる日本の本を読み、「もしかしたら日本の読者のほうが僕の物語を受け入れてくれるのではないだろうか?」と感じたからです。しかも、日本には僕を応援してくださるファンも多いと聞いているので、そういう夢をいつか実現したいと考えています。インタビューを終えてみて…。物腰が柔らかく、紳士的なルイジさん。日本に対してシンパシーを感じてくださっているようでしたが、俳優としてだけでなく、作家としても素晴らしい作品を日本に届けてくださるのを楽しみにしたいと思います。まずは、本作で見せる魂のこもった演技をぜひご覧ください。多様性が叫ばれている時代だからこそ観るべき!いまだになくなることのない差別と偏見のなかで生きる私たちにとって、「人間の尊厳とは何か」を考え直すきっかけを与えてくれる本作。過酷な時代に社会の不寛容さと立ち向かい、愛のために戦い続けた人たちの姿にも心を揺さぶられる1本です。写真・安田光優(ルイジ・ロ・カーショ)取材、文・志村昌美ストーリー1959年春、詩人で劇作家で蟻の生態研究者でもあるアルド・ブライバンティは、イタリア・エミリア州ピアチェンツァで芸術サークルを主催していた。そこには多くの若者が集っていたが、ある日エットレという医学を学ぶ若者も兄に連れられてやってくる。芸術や哲学など、あらゆる話題を語り合っているうちに、2人は互いに魅了され仲を深めていく。5年の月日が流れ、ローマで充実した生活を送っていたアルドとエットレだったが、ある朝、エットレの母親と兄が2人の部屋に突然押しかけ、エットレを連れ去ってしまう。エットレは同性愛の“治療”のために矯正施設に入れられ、アルドは教唆罪に問われて逮捕されることに…。胸に迫る予告編はこちら!作品情報『蟻の王』11月10日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開配給:ザジフィルムズ(C)Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)写真・安田光優(ルイジ・ロ・カーショ)
2023年11月08日みなさんはLGBTQの理解をしていますか?まだ同性同士での結婚が認められていないところもあり、”結婚”の形にも人それぞれあるようです。そこで今回は、MOREDOORの大人気TikTokより、オリジナル漫画「好きな人と結婚することはできません」をご紹介します。漫画のあらすじ「この国ではまだ、私たちは好きな人と結婚することができません。」レズビアンの妻と、ゲイの夫。2人は今でも仲の良い友人です。この国で、愛する人と結婚することができない2人は、お互いを守るため、いつかくるその時のために、"友情結婚"を選びました。1番信用できる友だち読者の感想は……『当事者じゃないとわからない苦労などもあると思いますが、これからの時代に友情結婚という選択肢があってもいいような気がしました。』『色々な形の夫婦があっても良いと思います。』『時代と共に、性の多様性が受け入れはじめていますが、結婚の法律によって自分が選んだ愛する人と公に結婚ができないなんて悲しくなりました。日本が早くもっと自由に誰とでも結婚できる環境や考え方、偏見がなくなっていってほしいです。』など、友情結婚に肯定的なコメントが集まりました。同性愛者同士、信頼できる友だちと結婚した主人公。共同生活はうまくいっているようです。皆さんはこの漫画、どう感じましたか?※こちらの記事・漫画は男女の分断を助長するという意図はございません。あくまで一例として、それについて考えるきっかけ作りになればと思います。※この物語はフィクションです。■脚本:simme■作画:石川ナオ(MOREDOOR編集部)
2023年09月23日『ムーンライト』の製作会社A24が見出した新鋭監督の半生を描いた実話『インスペクション ここで生きる』が8月4日(金)より公開。監督自身の実体験に基づく本作から、海兵隊入りを目指す新兵たちがブートキャンプに到着するや「重罪歴はあるか? 共産主義者か? 同性愛者か?」と怒涛の詰問をされるシーンの本編映像が解禁となった。この度、2005年のアメリカ、監督自身の実体験に基づく本作から、新兵たちがブートキャンプに到着するやいなや“インスペクション=点検・検閲”される、タイトルに紐づく象徴的なシーンの本編映像。ゆっくりと停車するバスの中から走って飛び出してくる青年たち。両サイドから「降りろ!」「さっさと並べ!」と教官たちが大袈裟な身振り手振りとともにがなり立てている。複数の指導者を取りまとめるロウズ上官は、新兵たちに正しい足の揃え方を指示しながら、「3か月でお前らを最強の兵にして戦闘に送り出す」と宣言する。彼らはまだ制服に袖を通すことを許されていない海兵隊の卵たち。そんな彼らに最初に待ち受けている試練は、徹底的に行われる“インスペクション”。点検・検査といった意味を持つ言葉だが、「重罪歴はあるか? 最近大麻を吸ったか? テロ組織に所属していたことは? 共産主義者か? 同性愛者か?」と、全員が海兵隊の物差しで教官たちから詰問される。顔に唾がかかるほどの大声、至近距離で問われた新兵たちも、全力で「ノー、サー!」と叫び返さなければならないのだ。「今までの軍隊ものでは描かれなかったシーンだと思います」とエレガンス・ブラットン監督。鬼教官にしごかれるハードなシーンは、軍隊を描く名作の数々でも散見されてきたが、今回の映像のような入隊前のやり取りはあまり馴染がないかもしれない。それは全てブラットン監督自身の身に起きた事柄であり、彼の経験を色濃く反映している映画だからだろう。また、本作のタイトルに関して監督は、「海兵隊という場では日々、点検・検査が行われているのでもちろん軍隊・上官からフレンチ(主人公)への“インスペクション”ということもあるし、同時に社会の中で自分が“インスペクション”されるという意味合いも込められています」と明かしている。「私は、軍隊に対して否定も賛同もしていない。この映画を通して会話を生み出して欲しかったのです」と話すように、物語の本質は軍隊の描写のその先にある。軍隊で、ひいては社会で誰かが誰かを“インスペクション”すること。それは誰の物差しで、誰が良し悪しをジャッジするものなのか。多様性について世界中が議論を続けている昨今、本作も問いかけている。『インスペクション ここで生きる』は8月4日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)
2023年08月02日2023年7月26日、パフォーマンスグループ『AAA』の與真司郎(あたえ・しんじろう)さんが、東京都渋谷区にある『LINE CUBE SHIBUYA』でファンに向けたイベント『與真司郎 announcement』を開催。イベントの中で、與さんは自身が同性愛者であることを公表しました。イベント後、與さんはSNSで改めて自身の思いを投稿しています。ファンのみなさんへ、今日は僕にとって一つの節目となる一日でした。僕は長い間とある不安と闘っており、自分の一部を受け入れることに苦労していました。でも、さまざまな葛藤を乗り越え、今やっとみなさんにこのことを打ち明ける決意ができました。それは、僕がゲイであるということです。カミングアウトを決意するまでに、すごく時間がかかりました。自分ですら、自分のセクシュアリティーを受け入れることができませんでした。でも、悩みに悩んだ結果、ファンのみなさんをはじめ、僕が大切にしている全ての人達、そして僕自身のためにも本当のことを受け入れ、それをきちんとみなさんに伝えることが僕なりの誠意だと思いました。そして、僕と同じ境遇に置かれている方々にも勇気を持つキッカケになってほしいと思いました。自分は一人ではないということをわかってほしかったです。shinjiroatae1126ーより引用また、イベントでの與さんのスピーチは、同月27日にウェブサイトに掲載予定であることも発表。最後に、與さんはファンをはじめ、家族やほかのメンバーそしてスタッフらへ、感謝の言葉とともに「これからも応援していただけたら嬉しいです」とつづっています。今日はみなさんの顔を直接見ながらこのことを伝えたいと思い、このイベントの場を設けさせていただきました。そして、今日来れなかったみなさんにも僕からの言葉を届けたいと思い、明日ウェブサイトにスピーチの映像を載せようと思っています。プロフィールにリンクを貼っておきます。長年エンターテインメント業界でお仕事をさせていただいて、これまでたくさんの出来事がありましたが、その中でもファンのみなさんと築き上げてきた思い出が間違いなく一番印象に残っています。そして、支えて下さったみなさんに心より感謝しております。そして、今日この日を迎えるまでずっと支えてくれた家族、友達、スタッフのみんな、そして今日来てくれたメンバーも、本当にありがとう。これからも応援していただけたら嬉しいです。與 真司郎shinjiroatae1126ーより引用※画像は複数あります。左右にスライドしてご確認ください。 この投稿をInstagramで見る SHINJIRO 與 真司郎(@shinjiroatae1126)がシェアした投稿 イベントでは、涙ながらにスピーチをした與さんに、ファンからは前向きなコメントも。同性愛者である以前に、1人のアーティストとしての與さんを今後も応援し続けるといった内容のコメントが寄せられています。また、同じく『AAA』のメンバーである西島隆弘さんは、與さんのスピーチでの言葉を引用し「Your happiness begins tonight. We’re always by your side.(今夜から、あなたの幸せが始まります。私たちはいつもあなたのそばにいます)」とTwitterを介してメッセージを送りました。Respect you!Your happiness begins tonight.We're always by your side. — Nissy_staff (@NissyStaff) July 26, 2023 同性愛者であることを周囲に公表するか否かは、本人の自由です。「公表しない」という選択もまた、優先されるべきものでしょう。しかし、環境や周囲との関係性など、さまざまな事情から公表をしたくてもできない人にとって、與さんの「1人ではない」という言葉に背中を押され、勇気をもらった人も少なくないはずです。與さんという存在が、それぞれの選択を、本人の意思で決められ、そして尊重される世の中への一歩になってほしいと願わずにはいられません。[文・構成/grape編集部]
2023年07月27日男女混合パフォーマンスグループ・AAAの與真司郎が26日、東京・渋谷のLINE CUBE SHIBUYA 渋谷公会堂でファンミーティング「與真司郎 announcement」を開催した。2020年に活動休⽌した男女混合パフォーマンスグループ・AAAのメンバーで、2023年6⽉14⽇にエイベックス・マネジメントから独⽴した與真司郎。現在はアーティスト活動を休⽌しながら、新たな挑戦に向けてアメリカ・ロサンゼルスに活動の拠点を移している。今回、一時帰国してファンに向けてのイベントを実施。ステージに登場するや「みんな元気? 結構知っている人がいっぱいいる気がする」と笑顔を見せ、「今日は来てくれて本当にありがとうございます」と感謝の言葉。続けて「芸能界のデビュー前から含めたら20年ぐらいかな。一番緊張しているかもしれない」としつつ、「普段僕がステージ上で手紙とか読まないんだけど、今日はみんなに間違って伝わったら嫌だと思ったので手紙を読ませてもらいます」と説明して手紙を読み始めた。「これから僕が話すことは皆さんが期待して望んでいる内容ではないかも知れません。中には理解するのに時間が掛かる人もいるかと思います。でもこれから僕が話すことがきっかけとなり、少しでもこのことに理解が深まって世界が変わってくれることを願います」と真剣な眼差しを向けながら、「長い間この不安と闘ってきました。様々な葛藤を乗り越えて今やっと皆さんにこのことを打ち明ける決意ができました。それは僕がゲイであるということです」と告白。真実を打ち明ける前は相当悩んだそうだが、「ゲイであるということを公表した上でエンターテインメントを続けること」を願って公表の決断を下したという。その理由として「ありのままの自分でいることで大好きなエンターテインメントの活動を諦めたくなかったんです」と説明。幼い頃からも自分のセクシャリティーに悩んだというが、「男性同士が街中でキスしていたのを見て衝撃を受けました。周りの人たちは彼らの行動を気にすることもなく、その時初めて自分が1人じゃないとホッとしました」と海外で見た光景が自身を変えたという。続けて、「完全に自分のセクシャリティーを受け入れるのに時間が掛かりましたが、僕は自分らしく生きていこうと思います。ゲイであるからといってこれまでの自分は変わりません。これからも変わらず"與真司郎"として生きていきます」と宣言。続けてソロアーティスト活動の再開も報告し、「LGBTQ+の方にかかわらず、悩んでいる人を1人でも多く救いたいという気持ちになりました。ありのままの自分を打ち明けようと決意したことによって発信したいメッセージが明確になりました。本来の自分を表現しながら聴いてくれる人を幸せにするということが僕のアーティストの一番の目標です」と決意を新たにした。アメリカでレコーディングした新曲「Into the light」もこの日発表され、「日本語では"新たな光を指す方へ"という意味です。世界中にこの曲が届けばという思いを込め、歌詞をすべて英語にしました。この曲の売上の一部を日本のLGBTQ+の支援団体に寄付します」と明かし、イベントの最後に同曲のMVも上映。新曲と同時に、この日は自身の半生を描いたドキュメンタリーの制作も発表された。そんなの與の姿を、客席からAAAのメンバーも温かく見守った。與は「一番最初に実彩子に言いました。女の子の方が言いやすくて(笑)」と明かし、「本番前に『俺がついてるから』と言ってくれました」とメンバーの心遣いに感謝するも、「みんな(西島隆弘、日高光啓、末吉秀太)ごめん! タイプじゃない(笑)」と笑いを誘う場面も。與の衝撃の告白を温かく迎えてくれた観客を目の当たりにした與は「もっと早く言えば良かった」と安堵した表情で「またアーティストとして戻ってくるよ!」とファンに約束した。
2023年07月26日戦後ドイツ、男性同性愛を禁ずる「刑法175条」のもとで“愛する自由”を求め続けた男の闘いを描いた『大いなる自由』が、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下にて7月7日(金)より公開。この度、劇中の心震える名シーンを捉えた本ビジュアルと、映画が描いた時代にドイツ東部で実際に使用されていた刑務所で撮影を行った新場面写真が一挙解禁された。イギリス・ヨークシャーを舞台に孤独な青年たちの愛の行方を描いた『ゴッズ・オウン・カントリー』のフランシス・リー監督が「愛、喪失、そして羞恥を怯みなく描き切っている―この作品の虜だ」と評し、抑制的でありながらも熱を帯びた演出で登場人物の感情が観る者にも流れ込んでくるような本作。今回解禁された本ビジュアルは、同性愛者であることを理由に繰り返し投獄されるハンスと、当初は「刑法175条」違反者である彼を嫌悪し遠ざけていた服役囚ヴィクトールのエモーショナルな抱擁シーンを配したもの。“ある出来事”によって感情が抑えられなくなったハンスを、周囲の目もはばからず強く抱きしめ支えるヴィクトール。反発から始まった2人の関係性が少しずつ変化していく様子がうかがえる、心震える名シーンとなっている。“囚人の服”“収容所の壁”“常に曇っている空”を思わせるくすんだブルーグレーの背景にオレンジ色の「Great Freedom」のロゴが映えるデザインは、ティザービジュアルに続き、リヒター展やマンダース展などアートの世界で活躍するデザイナー・須山悠里氏によるもの。“独房の小さな窓、ミシンの針、本に穿った穴ーーーー隔てられた、こちらとあちらの通路へのアナロジー”として、実物のポスター/チラシに小さな穴が開いている仕様を引き続き採用した。併せて解禁された新場面写真では、囚人服からナチス・ドイツのシンボルであるハーケンクロイツのワッペンを引き剥がす刑務のシーン。娯楽室のテレビでアポロの月面着陸を観るシーンなど、1945年の終戦直後から20余年にもわたり何度も投獄されたハンスの、驚くべき時間の流れが見て取れる。本作の監督セバスティアン・マイゼが「粗野で残忍に見えるかもしれないが人並みにもろくて孤独」だと語るヴィクトールが、ハンスの腕に彫られた番号から、彼がナチスの強制収容所にいたことを知り入れ墨を上書きするシーンや、独房の小窓からタバコの火をつけるシーンなど、ハンスとヴィクトールの関係性にも注目だ。また、ハンスと一緒に投獄された恋人のオスカー、刑務所内で恋に落ちるレオなど、愛を諦めないハンスの“消えない炎のような魂”を感じさせるショットも公開。映画が描いた時代にドイツ東部で実際に使用されていた刑務所で撮影が行われただけに、リアルな質感を存分に感じられる写真となっている。さらに、ムビチケ(オンライン)が5月5日(金・祝)より販売開始。ムビチケを利用すると、本作の海外ポスタービジュアルと鑑賞記録を組み合わせた「ムビチケデジタルカード」がプレゼントされる。海外ポスタービジュアル『大いなる自由』は7月7日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:大いなる自由 2023年7月7日よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国にて公開©2021FreibeuterFilm•Rohfilm Productions
2023年05月03日差別や偏見に悩む高校生たちを、ユーモアを交えて描いたさわやかな青春映画『恋人はアンバー』。この度、主人公であるゲイのエディの母親を演じた英国アカデミー女優シャロン・ホーガンと、デイヴィッド・フレイン監督のインタビュー映像が解禁となった。主人公エディを見守る母親・ハンナを温かく演じたシャロン・ホーガン。今年日本で公開された『シング・ア・ソング!~笑顔を咲かす歌声~』でも軍人の妻を演じ、名演技で話題となった。さらに、脚本家や製作者、そして監督としても活躍。代表作に、ホーガンが企画・脚本・製作を務めたサラ・ジェシカ・パーカーが出演するドラマシリーズ「Divorce/ディボース」などがある。イギリスやアイルランドで数々のコメディ作品で賞を受賞してきたホーガン。『恋人はアンバー』は、セクシュアル・マイノリティの物語を自身も当事者であるデイヴィッド・フレイン監督の脚本と、彼女が得意とするシットコム・センスあふれる好演によりユーモアが加えられ、さわやかな青春映画に昇華された。この度解禁となった2人のインタビュー映像では、本作の舞台の2年前の1993年まで、アイルランドで同性愛は犯罪。離婚も1995年の国民投票が実施されるまで自由にできなかったというアイルランドの事実が語られている。また、監督自身も「個人的なこと」と語るように、「自分自身が道徳に反するだけでなく、違法だった」と10代の経験が詰め込まれた脚本についても語る。また、ホーガンは「アイルランドで離婚に関する国民投票がおこなわれた時期が舞台だけど、そんなに前のことではないと考えるとクレイジーだ」と話し、変化の大きい時期の中で「彼女も変化していて、長男の新たな一面を見つけていきます。もちろん、彼女は息子を心配しています。1990年代は、ゲイだとカミングアウトしなければならない子にとって厳しい時代でした」とエディに思いを寄せ、監督も「この映画では、親が子どもを意図的に傷つけようとしていないことがとても大切でした」と明かしている。『恋人はアンバー』はTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:恋人はアンバー 2022年11月3日よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開© Atomic 80 Productions Limited/ Wrong Men North 2020, All rights reserved.
2022年11月06日2008年にイギリスで初演され、ローレンス・オリヴィエ賞などを獲得したアレクシ・ケイ・キャンベルの戯曲『The Pride』が、東京・赤坂RED/THEATERで上演される。劇中では1958年と2008年の英ロンドンを舞台に、同性愛者の男性ふたりと彼らに深い関わりを持つ女性ひとりによるラブストーリーが展開。各年代の社会がつくり上げた障壁と戦いながらも自分に正直に生き、目の前にいる人と深く繋がりたいと願う人々の愛と尊厳の行方が描かれる。演出を手がけるのは、2011年の日本初演で本作に魅せられたというPLAY/GROUND Creation代表の井上裕朗。2チーム制が敷かれた今回の上演版を代表して、side-Bチームのオリヴァー役・岩男海史、フィリップ役の池岡亮介と一緒に、稽古スタートから2週間が経ったタイミングでインタビューに応じた。俳優本人のまま役の人生を体験することが、真の共感に──社会の大きな変化を挟む1958年と2008年で同じ名前の人物を演じながらも、各時代のオリヴァー、フィリップ、シルヴィアは「別人」という設定が興味深いですよね。御三方はこの作品のおもしろさを、どんなところに感じていらっしゃいますか?井上1958年と2008年が交互に描かれますが、別々のストーリーが並行して進むのではなく「交錯」していくのがおもしろいですよね。1958年が2008年に、2008年が1958年に影響を与えていて。演劇的な趣向が凝らされています。岩男ジェンダーにまつわる社会情勢の変化という大きなテーマを扱いながらも、あくまで個人の人間ドラマに物語が凝縮されている。これが魅力だと思いました。周りにいる人との関係性や恋愛感情がベースにあって、親近感が湧きます。池岡ケンカや口論も辞さず、目の前の相手と徹底的に向き合う登場人物が魅力的ですよね。すごくしんどいだろうけど、ぶつからない限り知ることができなかった感情や関係がある。現実世界ではごまかしてしまいそうなことにもエネルギーを費やして対峙するキャラクターに、愛の力を感じます。──井上さんは、どんなことを期待して本作のキャスティングをされたのでしょうか?井上僕が演出する作品の中では、役人物になるからといって自分ではない他者になろうとしないで欲しいんですね。あくまでも俳優本人のままで、役の人生を体験して欲しい。その時に俳優がどう感じるのか、というのが他者の人生を想像すること、真の共感に繋がるのではないか……と思っていまして。なのでそういうことに興味がありそうで、もともとの人間力が高そうな人たちを選んでいます。観客に「イメージさせる」時空間でありたい──おふたりの人間的な魅力をどんなところに感じて、それぞれの役に就いてもらったのでしょうか?井上海史はエネルギッシュでオープンな性格で、とにかくよく喋る(笑)。勇気があって思い切りがいいのも、俳優としての武器だと思います。一方で「掘っていったらまだ何かありそうだな」と感じさせる面もあるんですよね。奥に脆いものを秘めたオリヴァーに通じるような気がしてイメージが湧きました。岩男僕の奥底に眠っていそうなものは、衣裳デザインを手がける両親をはじめ、アーティストの家庭に生まれ育った業というか独特な幼少期が関係している気がしますね。僕の口数が多いのはシンプルに「人間が好き」なのもありますが、寂しがりで甘えん坊の裏返しなのかも。自覚しているわけではないのですが、そんなところはオリヴァーと重なる部分がなくはないのかなって。井上亮介は対照的で、めちゃくちゃシャイでナイーブ。加えてまっすぐに人と向き合う人だな、と第一印象から感じています。フィリップは1958年と2008年で真逆の結末へ向かうんですが、各時代に共通しているのは「固い決意」ですね。これと決めたら絶対に譲らないストレートな面がフィリップと重なるような。池岡そうかもしれません。両方の時代におけるフィリップの決意が理解できるんですよね。少なくとも、自分とかけ離れたキャラクターを演じる感覚ではなくて。──フィリップの「固い決意」がドラマとして映えるのは、同性愛がタブー視されがちだった1958年なのかなと。池岡そうですね。シルヴィアと結婚しているフィリップは、自身の根底に息づく感情を必死に押さえようとしています。にもかかわらず妻からオリヴァーを紹介され、隠していたはずのジェンダーアイデンティティが浮き彫りになっていく。誰かにその葛藤を打ち明けられず「仕方ない」と諦めることしかできない1958年は、フィリップにとって生きづらい時代だったと思います。──「固い決意」の表れとも取れるような、フィリップに訪れる一幕ラストの衝動は何だったと思いますか?池岡(しばらく間を置いて)言葉にするのは……まだ難しいですね。井上稽古していないシーンなんですよ。一幕ラストは、そこへいたる積み重ねがあってのことなので。──一方で岩男さん演じるオリヴァーには、同性愛について解像度が上がっている2008年にドラマが設けられているような。岩男2008年のオリヴァーって世間に飲み込まれていますよね。実情を知らない他者から容易にラベリングというか、「タグ付け」される世の中に圧倒されてしまって。1958年のオリヴァーは同性愛のタブー視に立ち向かう情熱があったけど、彼らを取り巻く環境が改善されているはずの2008年になると50年前とはまた違ったストレスに晒されている。その時代を生きるオリヴァーは、ものごとの本質に向き合わない癖がついて、問題を見ないフリが上手になってしまっている気がします。そんな彼が2008年の最後で踏み出す一歩に、ご注目いただけたら。──現時点でおふたりがこのように受け止めている人物像を、井上さんはどのように演出して形にしていこうと考えていらっしゃいますか?井上『The Pride』という作品における大きなテーマのひとつが、「他者に共感する力」だと思うんですね。自分とは異なる境遇の人の立場や視座からものごとを見て、他者に心を寄せる。これって実は、僕たち俳優が普段している作業で。だから海史や亮介がオリヴァーやフィリップの立場に身を置いた時に、どんなことを感じて何を想像するのか。翻って劇場で時空間を共有する観客の皆さんに、劇世界を鮮やかに「イメージさせる」ことができるのか──。これを演劇の形を借りて実現することが、僕を含めたキャスト・スタッフの腕の見せどころだと思います。みんなで一緒に「想像」できるような取り組みを、とことんしていきたいですね。迫害された同性愛者たちの歴史に心を寄せる50年間──本作のプロモーション動画で、井上さんは「オリヴァー・フィリップ・シルヴィアは30代半ばの設定」と言及されていて、かつ「キャストの実年齢は劇中の彼らより年上のside-Aと年下のside-Bを設けることによって、片方だけではなし得ないものが立ち上がる」とおっしゃっていました。実年齢別の2チーム編成にすることで、どんな効果が期待できるとお考えでしょうか?井上互いにとって相乗効果を感じてもらえたらいいな、と思って実年齢別の2チーム編成にしました。世代が違うと社会や人間に対して注ぐ視線というか、見方が異なりますよね。まだ純粋さが残っている若手と、僕も含めて汚れてしまったベテラン勢(笑)が一堂に会したら、役人物もいろんな角度から捉えることができますし。つける演出はside-A・side-Bで同じだとしても、先ほど申し上げたように「本人でありながら役の人生を体験する」ことによってアウトプットはまったく異なってくると思います。岩男チームによって出てくるもの、ホント顕著に違うよね。池岡それ、僕も感じていて。特に同じフィリップを演じる池田(努)さんを見ていると、「自分の中にあるどの引き出しを開けたら、そのアウトプットになるんだろう?」って感じることが多いんですよ! 1958年では年の功といいますか、やっぱりシルヴィアと夫婦であることの説得力が違うんですよね。岩男わかる。side-Aを見ていると、役の引き込み方がうまいっていつも思うんですよ。キャラクターを動かす時に、自分の中に余白をつくって誘導したりするプル型の選択肢があるというか。対して僕はまだプッシュ一択しか持ち合わせておらず(苦笑)池岡人生経験が違う、に尽きるんでしょうけどね。アプローチやいなし方の選択肢を、僕も増やしていきたいです。──彼らの人間模様を1958年と2008年を交互に行き来しながら描く意図は、どこにあると考えていらっしゃいますか?井上オリヴァー、フィリップ、シルヴィアの名前は同じでも、それぞれの時代では「別人」です。でもどこかで影響し合っていて、1958年があったから2008年がこうなる──みたいな描き方がなされる。たとえばオリヴァーなら、1958年に受けた傷が深いばかりに「自分は幸せになってはいけない」という呪いをかけられた状態で2008年に生まれてきてしまった。だから愛や自分を信じることができず、破滅的な行動を取ってしまう。──輪廻転生というか?井上各時代で別人だったとしても、ひとつの人格における歴史を、ふたつの時代を通して描いているんですよね。フィリップで言うと、一幕ラストの1958年であんなことをしでかしてしまった罪悪感を持って2008年に生まれてきた。だからいろんな問題に向き合って、まっとうに生きられる人物に「仕上がっている」。その状態を指して、僕らはディスカッションで「仕上がった」という言い方にたどり着きました。──1958年と2008年の間には、ちょうど50年の隔たりがありますよね。この空白期間も気になります。井上それまで迫害されてきた同性愛者たちは、この50年間でさまざまな権利を求めて戦いを繰り広げてきました。勇気をもって社会運動を行ってきた人たちの歴史があって、劇中の2008年や現在がある。にもかかわらず、その歴史を忘れてしまった人物の代表としてオリヴァーが描かれているんです。両サイドの時代を描くことによって、実はこの空白期間に起こった出来事についても喚起している作品なんですよね。岩男たくさん考え疑問を呈しながら日々創作しています。その結晶をぜひ見届けていただけたら。池岡2008年のフィリップとは違う意味で「仕上がりきっていない」方に観ていただきたいですね。自分がどういう人間なのか確固たるアイデンティティがまだない人はもちろん、悩んで葛藤し続けている人、反対に考えることをやめてしまった人にも。現在進行形で迷い揺れ動いている方がご覧になったら、ひょっとしたらほんの少しだけ光が差すかもしれません。取材・文:岡山朋代撮影:藤田亜弓<公演情報>PLAY/GROUND Creation #3『The Pride』2022年7月24日(日)~2022年7月31日(日)会場:赤坂RED/THEATER※7月23日(土) 公演はキャスト降板により公演中止チケット情報はこちら:
2022年07月22日「同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症です」こう書かれた冊子を国会議員が参加する会合で配布したのは「神道政治連盟国会議員懇談会」。このことが6月29日、一般社団法人fairの代表理事・松岡宗嗣氏がYahoo!に寄稿した記事によって報じられたことで、連日、“差別的”と大きな批判を浴びている。松岡氏の寄稿記事によると、冊子には他にもこんな主張があったという。「(同性愛などは)回復治療や宗教的信仰によって変化する」「世界には同性愛や性同一性障害から脱した多くの元LGBTの人たちがいる」「LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではなく、LGBTの人自身の悩みが自殺につながる」「性的少数者のライフスタイルが正当化されるべきでないのは、家庭と社会を崩壊させる社会問題だから」神道政治連盟とは、全国各地の神社が参加する宗教法人・神社本庁の関係団体。そして、“懇談会”とは神政連の理念に賛同する国会議員によって構成されている。262名もの国会議員が会員として名を連ねているが、そのほとんどが自民党の議員だ。そこで、本誌はは神道政治連盟の懇談会に参加している複数の自民党議員に「冊子が配布された会合に参加していたか」「冊子で書かれた主張に対する見解」「冊子の内容が批判を浴びていることへの見解」といった質問状を送付。先だって公開した記事では、石破茂議員(65)が会合に参加していないとした上で、「一般論として、LGBTQに対する差別や偏見を助長するような言論を公的な団体が流布していると捉えられるようなことは厳に慎むべきである」とコメントしたことを紹介。現職の大臣である牧島かれんデジタル相(45)からも「同性愛者であることは依存症でも、治療すべきものでもないと考えています」という見解があった。いっぽう、“ノーコメント”の議員も。例えば河野太郎議員(59)は「その会合には出席していません。この冊子を見たことも読んだこともありませんので、内容についてはコメントしようがありません」と回答。『新潮45』‘18年8月号に“LGBTは生産性がない”といった主張が綴られた寄稿をし、大きな批判を浴びた杉田水脈議員(55)は「日程の都合で会合には出席しておらず、当該論文の全文を読んでいないのでコメントは差し控える」といい、稲田朋美議員(63)からも「不回答とさせてだきたくお願いいたします」とのコメントがあった。また甘利明議員(72)や岸田文雄首相(64)からは期日までに回答を得られなかった。懇談会の会合で配布された冊子は波紋を呼び、「差別だ」と怒りの声が相次いでいる。いっぽう岸田首相は’21年に行われた自民党総裁選で“聞く力”をアピールしていたがーー。その声は聞こえるだろうか?
2022年07月05日ウーマンエキサイトをご覧の皆さん、こんにちは。tomekkoです。6月って、日本では梅雨のイメージばかりが強く、あまり目立った季節の行事も無いような気がしますが、実はプライド月間と呼ばれるLGBTQ+(性的少数者)の権利を啓発する活動が行われているって知っていましたか?昔は同性愛は普通のことだった?まさに今国内でも同性婚についてとても先進国とは思えない議論がされているわけですが…家庭内でもちょうど子どもたちの会話から気になるワードが出たのもいい機会だったので…。学生時代に遊女の研究をする過程でジェンダーやさまざまな芸能者の性にも触れてきたワタシとしては、同性の恋愛や結婚に対する日本の歴史的な価値観について黙っていられない…!!今回もこちらのお二方にご案内してもらいます!そもそも日本で同性愛がタブー視されたのは明治以降のようでして…。そう、この連載でもたびたび触れてきましたが、日本は西洋化が進む前と後では価値観ががらりと変わっているのです。戒律(宗教上の禁忌)の無い八百万の神を祀る神道と女性を穢れとする仏教で文化が成り立ってきた日本では、主に僧侶とその身の回りの世話をする稚児(貴族の子弟で未成年)の関係から同性愛は広まったと言われています。ただしこれは男性同士…と言ってもあくまでも『女性の代用』として子どもが使われていたという、現代の感覚で子を持つ親という立場から見ると許せない気持ちになってしまいますが…。歴史研究において恩師からもよく言われた言葉ですが、「歴史上の事実に対して現代の常識や価値観で善悪を判じてはいけない」歴史を知るとモヤモヤすることも多いんですが、ここは気をつけたいところです。とりあえず、当時はそうだったということで…。平安時代は『政治に関わる重要な関係』この稚児愛から始まった男色文化は貴族間へ広まっていきます。そういえば大学時代にすごい史料を読み解く講義があったなぁ…なんて思い出すワタシ。藤原頼長という貴族が好みの男性を取っ替え引っ替えしてはその夜の感想を細かく綴っている、これがホントの黒歴史日記というものがありまして…(正式名称は『台記』)。一緒に講義を受けた友人と「自分の死後1000年経って教材にされたら恥ずかしいと思う手紙や写真は焼き捨てよう…!!」と誓い合いましたとも。(1000年後に“何が恥ずかしいこと”になってるのか…わからないんですけどね!)ただひとつ真面目な話をすると、この頃には『女性の代用』ではなく男色が『趣味』兼『政治に関わる重要な関係』になっていることがわかります。戦国時代は『武将と小姓の主従関係』その後、戦国時代に入ると武将と小姓という上下関係の中での男色が流行っていきます。この時代も『女性の代用』ではないみたい。有名どころで言うと織田信長の小姓、森蘭丸のような美形(史実かどうかは不明ですが)の小姓を連れた戦国武将というのは確かに絵になるショットですが、お飾りのお供ではなく実際武道の腕にも優れ主人のボディガード役でもあったんですって。江戸時代は『庶民の趣味娯楽』江戸時代に入ると武士から庶民へも広まっていきます。女歌舞伎が風紀の乱れを理由に禁止されると、若衆(未成年の男性)歌舞伎が流行。女性がダメなら少年を使えばいい、という概念がやっぱり根底に染み付いてるなぁ、とわかる施策ですが、若衆は若衆でまた風紀を乱す結果になってしまったので、結局成人男性しか出られない『野郎歌舞伎』に落ち着き、現代までそのルールが引き継がれているわけですね。ここで、歌舞伎役者(主に女形)の見習いが女装して客の相手をする『陰間』文化も盛んになりますが、こちらは明治時代にほぼ消滅したようです。さて、ちょっと子どもに見せるにはモザイク強めな話はここまで。ここで気づいた子どもたち。女性はまるで存在してなかったかのよう…そう、日本の歴史上認識されている『同性愛』って、ほぼ男性同士のみ。性的マイノリティーなら女性だっているはずなのに、なぜ?少なくとも日本史上の同性愛って、性的指向や性同一性障がいに寄り添ったものではなく、男性主体の趣味、だったんですね。恋愛(性愛)の決定権や趣味を持つこと自体が、男性にしか許されなかったってことなんだ、と気づいて呆然。女性同士のカップルだって居たことは居たでしょうが、表向きに認知されていなかったり、それこそ隠さなければいけないことだったのかもしれません。歴史学は基本的には男性によって営まれる制度のみに焦点をあてることになり、女性はまるで存在してなかったかのように描かれてしまうようです。明治以降は男女関係なく同性愛自体を禁忌とするイメージが強くなったけれど、性的マイノリティだった女性の生きづらさは江戸時代までと変わらなかったのかもしれないですね。 結婚と恋愛は別物…!そしてもちろん、マイノリティの『結婚』というゴールは設定されていなかったわけで。結婚は家同士の結びつき、そしてニュースでも騒がれていた「生産性」…つまり子孫繁栄のための義務でもあったんですよね。現代よりも結婚という制度は社会のシステムの一部であるという側面が強く、個人の意志は尊重されなかったことが多く…。だからこそ『心中物』(現世で身分違いの恋が叶わない恋人同士が来世で結ばれることを願って自死する話をモチーフにした演劇)が大流行したりもしたのでしょう。そう考えると「昔の日本の方が同性愛に寛容だったから自由だった」とか「昔の方が多様性の受け入れが進んでた」とも言えないです…。最近は性別もいろいろな正当な性のあり方のひとつでしかないと受け止められる社会に、徐々になってきているような気もするけれど、同性婚などの制度が整っていない現実からも、まだ同性愛への理解は深まっていないように思いますよね。家庭を築きたいと考えるカップルが同性か異性か、子どもを産めるか否かに関わらず望めば戸籍を同じくする選択肢が当たり前に国から認められるように…なって欲しいです。社会というのは万古不変のものではなく、少しずつでも変えられるもの。次の一歩を踏み出した日本の姿を子どもたちにも見せてあげたいなぁ…とつくづく思ったのでした。
2022年06月30日実在した同性愛者クラブで1973年に実際に起きた放火事件を題材に、2017年にオフブロードウェイで初演後、世界各国で上演されたミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』が日本初上陸する。2018年にはオーストラリア、シドニーで初海外プロダクションが開幕し、2019年にはロンドン版も上演された本作の演出を手がけるのは、日英米で活躍の場をひろげる英国在住の市川洋二郎。本作で現代からタイムスリップする主人公・ウェスを演じる平間壮一、ウェスに惹かれていく男娼パトリックを演じる小関裕太に話を聞いた。「裕太はなにをやっていても愛されるキャラクター」(平間)──おふたりが『The View Upstairs-君が見た、あの日-』で楽しみにされていることを教えてください。平間初共演の方が多いので、そこがまず楽しみです。そして久しぶりに先輩方に囲まれることになるので、嬉しさもあり、緊張もありって感じですね。──先輩たちと一緒だとどんなところがうれしいですか?平間こういうやり方があるんだ、って盗めるものが多い現場になると思うので、そこはやっぱり楽しみです。小関それで言うと僕は今回、久々に一番年下です。18歳の時の初主演舞台『FROGS』以降は自分が主演でもあまり肩ひじ張らないようになりましたが、やっぱり他のメンバーより年齢が上だとどこか「ピシッといなきゃ」「現場を見ていなきゃ」と思うところがありました。だけど今回は、役柄的にも、年齢的にも、のびのびとやらせてもらえたらいいなという楽しみがあります。──おふたりは事務所の先輩と後輩でもありますが、俳優としてお互いのどんなところが素敵だと感じていますか?小関パワー。平間惹きつける魅力。小関うれしい。平間俺、裕太を嫌いって人に会ったことないよ。小関そうかな。「なんか嫌われているかも」って思うことはありますよ?平間あっはっは!まじ?ないなあ。俺は好きなタイプだからかな。ちゃんと自分を持ってる人だし、嫌なところもないですよ。相手に合わせることもできるけど、大人になって、嫌なものを嫌だと言えるようになったから、より付き合いやすいなと思う。小関うれしいな。平間俺は、悪役を演じるにしろ、いい人を演じるにしろ、愛されるキャラであるべきだと思っているんです。ディズニー作品が悪役も愛されるみたいに。でもそこって、本人が根っから持っている雰囲気が大事な部分だと思うから。そういう意味で裕太はなにをやっていても愛されるキャラクターです。しょうもない男の役をやったとしても、「でもしょうがないよね」ってふうに持っていける。そこが俳優としての魅力でもあるんじゃないかなと思います。「壮一さんのパワーっていつも身体に対して真っ直ぐ」(小関)──小関さんがおっしゃっていた平間さんの「パワー」というのは?小関壮一さんの出演舞台を観させていただいていると、スコーンと強さが抜けていると感じるんですよ。それがカッコいい。僕は人の息とか声とかが図形みたいに見えるのですが、壮一さんのパワーっていつも身体に対して真っ直ぐに見える。そういう意味で、すごく強いものを持っていらっしゃるなと思います。そこがすごくいいなあって。──付き合いの長い、事務所の先輩でもありますね小関壮一さんとは小学5年生の時に初めてお会いして、それからずっと「5つ上のお兄ちゃん」的な存在です。笑顔が素敵で言葉がすごくやさしい。人に届く言葉をちゃんとチョイスされるで、10代の時に「ハンサムライブ」でご一緒していた時は、お客様に対して感謝の想いを届ける言葉が素敵だなと思っていました。真似したいけど、僕にはボキャブラリーが足りないからできないやって気持ちでしたね。──そのボキャブラリーはどこから生まれているのですか?平間思ったまま言っちゃうから、あまり考えていないかも(笑)。でも僕は、恥ずかしいようなことも口に出しちゃう。あまり言葉に関して「恥ずかしい」って思わないんですよ。逆に隠したり偽ったりするほうが恥ずかしくなっちゃう。そういう意味ではお芝居は向いてないと思う小関ええ?平間だってお芝居って嘘だから。究極に嘘がうまい人たちが集まって、用意されたものを本当かのように演じている。時々、「俺、演じちゃってるわ!」って恥ずかしくなる瞬間がある。──こんなにたくさん舞台に出演されていてもですか?平間全然慣れないです。今回も、台本4ページ目くらいでもう恥ずかしかった(笑)。「うわ~俺、これやるんだ!」って。小関僕はあまり「嘘」って思ったことがないかもしれない。平間そこが純粋なんだよね~。小関(笑)。「彼の信じている“本当”ってこうなんだ」と思って台本を読んでいて、そこを疑問視していないんだと思います。──小関さんは、今回平間さんに舞台に関して聞いておきたいことはありますか?小関本番期間中に楽屋に置いておくべきものはありますか?平間俺ね、ミニマリストなのよ。小関ああ~。なるべく置かないんですね。平間置かない。初舞台なんて、ペンシル1本だったもん。「なにやるつもり?」って怒られたから(笑)。そこから始まって、今もこだわっていることはないね。小関加湿器とかもやらないですか?平間やんない、やんない。なんならコロナ禍になる前は人の楽屋にいることのほうが多かったし(笑)。小関そうなんだ!平間だから今はきついよ。一人で楽屋で悶々とするから。この舞台はふたりでつくっていきます!平間・小関(笑)稽古場はカオスになりそう──作品について、市川洋二郎さん(演出・翻訳・訳詞・振付)とはなにかお話しされましたか?平間僕は一度だけお会いして、ボイストレーニングをしました。裕太も?小関会ったのはそうですね。ただ僕は時々連絡を取っています。市川さんはイギリス在住で、向こうでこの作品も観劇されていますし、すごく勉強されている方なので。歴史の話だったり、70年代のファッションだったり、美意識だったり、わからないことはどんどん聞いています。──具体的にどんなことを聞いていますか?小関当時はどのくらいメイクができていたのかとか、そういうことですね。チークなんて塗ってゲイだとバレたら指さされて差別される時代だから、本当は美しくなりたいと思っている人も、リップくらいだと教えてくださいました。でもドラァグクイーンはいたので、そういう人たちはメイクしていたみたい、とか。──平間さんはボイトレを一緒にされたのですか?平間そうです。僕は歌に苦手意識があるのですが、市川さんに新しい方法を教わったんですよ。身体のツボみたいなところを押しながら声を出してみたり、「君はここに力が入ってるよ」と教えてくださったりして面白かったです。新しいなにかが見つかるかもとも思いましたし。……でも今気付いたんですけど、市川さんすごいですね?──というのは?平間だって振付まで……。小関え、振付もなんですか!平間そう。演出も翻訳も訳詞もやってるのにきつくない!?だけど心強いね。日本にいるメンバーだけだとわからないようなことがわかる方がいてくださるのは心強いなと思います。──共演者の皆さんも楽しみな方が多いですね平間稽古場がカオスになりそうな気がする。小関先輩方、どんなアプローチをされるんでしょうね。平間ほんとだよね。本当に濃い方しかいないから。──おふたりとも初共演の方が多いですよね。平間なのでちょっと今、俺と裕太の目標を決めますね。小関お!平間畠中洋さんと仲良くなろう!小関シャイな方なんですか?平間撮影の時になんとなくそういう感じがして。だから「にいちゃん」って呼べるくらい仲良くなりたい。小関いいですね!30歳上の先輩ではありますが。平間それでも兄弟くらいの距離感でいけるようになろうよ!小関そうしましょう!アップステアーズ・ラウンジは“はみ出し者”たちが唯一心を開ける場所──この作品は、実在した同性愛者クラブで、同性愛がまだ罪とされていた1973年に実際に起きた放火事件を題材にしています。作品のベースとなった出来事はどう思われましたか?小関当時の火事の記事を読んだり、実際の火災現場の写真を見て、抉られるような思いでした。火事にまつわるエピソードも、当時の同性愛に対しての考え方も、押しつぶされるような気持ちになりました。平間これは劇中ではあまり描かれてはいないんですけど、今すごく思っているのは、当時の“はみ出し者”である登場人物たちが唯一心を開いて、失礼なことも言い合える、下ネタも言えるし、好きな口調で話せる、みたいな場所がこのアップステアーズ・ラウンジだったんじゃないかなということ。一歩外に出るとそれができない世界だったんだと思うし、本当はそこが表現したいんじゃないかなと、俺の中では思っています。そのぶんラウンジの中で起きていることは、何も知らずに観ると少しびっくりするような下品な言葉などあるかもしれないんですけど、ここがその人たちにとっての居場所なんだってまず理解してもらえると、わかりやすいんじゃないかと思う。そういう場所って誰にでもあるから。そういうたった一つの場所がこんなひどいことになるっていうところも含め、いろんなテーマが入った作品だと思いました。──その中で、現代からタイムスリップする主人公・ウェス役を平間さん、ウェスに惹かれていく男娼パトリック役を小関さんが演じますが、そのことはどう思われていますか。小関僕、実は最初は、お兄ちゃん的な壮一さんと一緒にこの作品をやる、しかも恋仲になる役って聞いて、戸惑いと恥ずかしさはありました。平間でも俺たちふたりは、同じ事務所でちっちゃい頃から知っていて、分かち合える部分が既にたくさんある。そこが役として醸し出されればいいんじゃないかなと思ってる。そういう俺たちだからこそ、表現できるものがあるはず。小関そうかも。そういう視点で挑んだらここにしかない面白みが生まれそう。平間でも初日のことを考えると、今はまだ怖いな。小関稽古も1か月半以上ありますから!平間そうだね。楽曲もとにかく良いので。がんばります!★おまけの質問★Q:俳優として転機になった作品は?平間俺は地球ゴージャスの『LOVE BUGS』(’16年)と『RENT』(’15、’17、’20年)あたりです。自分にとっての第二章なんです。アンサンブルから役がつくまでがんばるのが第一章、そこから役が付いてから主役をやるまでがんばる、っていうところからが第二章。だから次は第三章ですよね。それをどこに持っていくかは、これから考えていきます。小関僕は『ごめんね青春!』(’14年)というドラマです。トランスジェンダーの役を演じました。今でもいつもその時の自分を超えようとしている作品です。自分のライバルは、あの時の自分だなと思っています。ぴあアプリ限定!アプリで応募プレゼント平間壮一さん、小関裕太さんのサイン入りチェキを1名様にプレゼント!【応募方法】1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。こちら() からもダウンロードできます2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!取材・文:中川實穗撮影:源賀津己ヘアメイク:Emiy(エミー)スタイリスト:吉本知嗣
2021年12月20日ミュージカル『蜘蛛女のキス』は、監獄で同房となった政治犯のバレンティンと映画を愛する同性愛者のモリーナが出会う。生き方も価値観も違い、当初は相容れなかったふたりだが、いつしか心を許すように。安蘭けいさんが演じるのは、モリーナの憧れの映画スターであるオーロラと、オーロラが演じる蜘蛛女だ。「幻想の中の役ながら、人間的なリアルな存在として見せていきたい」「この作品を初めて観たときは、救われない人たちの話という印象だったんです。でもいざ自分がやるとなって脚本を読んでいたら、バレンティンとモリーナの愛がすごく切なく迫ってきて。オーロラや蜘蛛女も、これまではモリーナの幻想の中での愛とか死の象徴的な存在としてとらえていたのが、彼女に寄り添って生きているような感じがしたんですね。今はもう少し人間的というか感情的なものも出して、リアルな存在として見せられたらと思っています」安蘭さんといえば、高い歌唱力を誇った元宝塚トップスターであり、演じるキャラクターの心情に丁寧に寄り添った的確な演技で、作品に厚みを持たせる芝居の人でもある。「登場したときに観客に強烈なインパクトを残せたらとは思っているんですけれど、最近、お母さんとか奥さんばかり演じていたので…。出てくるだけで観客がのけぞるくらいのオーラとか迫力とか…カリスマ的な何かが欲しいですね。演出や照明、セットなども含め、独特な世界観を作り出せたらな、と思っています」『CHICAGO』などを手がけた名ソングライターコンビによる美しくドラマティックな楽曲も魅力。「何度も転調したり臨時記号が多かったり、この作品に取り組もうとする人に戦いを挑むというか挑戦的な感じがするんですね。蜘蛛女なら男性でも低いくらいのキーに合わせられていたりして。でもそこを歌うことで凄みが出るし、こちらの想像力が広がって気持ちも高揚するんです」しかし、「ただ気持ちよく歌うだけならカラオケでいい」とも語る。「やっぱり“伝えたい”という思いがあるんですよね。歌は好きだけれど、私はそこに役の気持ちだったり、歌に込められた物語を伝えたいと思う。ストレートプレイの中で表現するような繊細な心情の動きをミュージカルの舞台へも持っていきたいというのが私のスタンスなんです」今年、芸能生活30周年を迎え、あらためて今、「俳優という仕事が、自分の天職だと感じている」そう。「演じている瞬間が本当に幸せなんです。劇場の空間が好きだし、一番自分でいられる場所なんですよね」ミュージカル『蜘蛛女のキス』映画を愛する同性愛者のモリーナ(石丸)は、刑務所の獄房で社会主義運動の政治犯・バレンティン(相葉・村井/Wキャスト)と出会う。当初は反発し合っていたふたりだが、いつしか心を通わせていき…。11月26日(金)~12月12日(日)池袋・東京芸術劇場 プレイハウス脚本/テレンス・マクナリー(マヌエル・プイグの小説に基づく)音楽/ジョン・カンダー歌詞/フレッド・エブ演出/日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)出演/石丸幹二、安蘭けい、相葉裕樹・村井良大(Wキャスト)ほかSS席1万5000円S席1万3500円サイドシート9000円ほかホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949(平日11:00~18:00)大阪公演あり。あらん・けい滋賀県出身。2006年より’09年まで星組トップスターとして活躍。近作にミュージカル『ジェイミー』、舞台『Oslo オスロ』など。最新アルバム『AVANCE』も好評発売中。※『anan』2021年12月1日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2021年11月30日11月26日(金)に初日を迎えるミュージカル『蜘蛛女のキス』。開幕を約1ヵ月後に控えた稽古場で、同性愛者のモリーナ役を務める石丸幹二と、演出の日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)がインタビューに応じた。アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの小説を原作にミュージカル化され、1993年のトニー賞7部門を制した本作。『キャバレー』『シカゴ』で知られるジョン・カンダー(音楽)とフレッド・エブ(歌詞)のコンビが手がける楽曲は人気が高く、1996年以降に日本でも定期的に上演されている。劇中では、ラテンアメリカにある刑務所の一室を舞台にした物語が展開。映画を愛するモリーナは、社会主義運動の政治犯バレンティン(相葉裕樹 / 村井良大:Wキャスト)と同室に。最初は互いを理解できず激しく対立するふたりだったが、極限状態の中、モリーナが映画スターのオーロラ、また彼女が演じる蜘蛛女(安蘭けい:2役)について語るうちに、心を通わせていく──。同性愛者のモリーナは「特別な個性がないとやれない」と思っていたけれど――作品との出会いを教えてください。石丸僕が『蜘蛛女のキス』を観たのは、チタ・リヴェラが蜘蛛女とオーロラに扮していた、ブロードウェイのハロルド・プリンス演出版ですね。リヴェラは『ウエスト・サイド・ストーリー』のアニタが印象的で、群を抜いて声が低くシャープに踊るディーヴァ(歌姫)です。そんな彼女が「どんなことをするんだろう?」って興味から劇場に足を運びまして。バックボーンをまったく知らずに観たら、ラテンのショーみたいだと思いました。――海外でご覧になった当時、石丸さん扮するモリーナにはどんな印象を抱いていたんでしょう?石丸当時は僕もまだ若かったこともあって、バレンティンのキャラクターに共感していました。「彼を演じたい」って。モリーナは「特別な個性がないとやれない役」と思っていたんですが、この年齢になってオファーを頂戴し、僕が海外で拝見したバージョンに立ち返ってみると、ビビビッと繋がって。親近感が湧いたんです。――どんな点に直感が働いたのでしょうか?ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より石丸僕が年始に主演した『パレード』のオリジナル・キャストのブレント・カーヴァーが、当時モリーナに扮していたんです。彼がやっているなら『蜘蛛女のキス』に挑戦したい、と思いました。それでモリーナ視点で台本にあたると、バレンティン目線で読んでいたこれまでとはまったく異なる世界が広がっていて。これを、社会派の人間ドラマに定評のある日澤さんが演出したら「一体どうなるんだろう?」ってね。日澤普段はチョコレートケーキという劇団で、ストレートプレイの演出をしています。大原櫻子さんが主演した『リトル・ヴォイス』などで音楽劇の経験はあるんですが、グランドミュージカルを手がけるのは初めてでして。「ホリプロさんは何を意図して僕にオファーを?」と正直驚きました。でも演目の成り立ちやバックボーンを知って、いろんなことを議論するうちに「演出家のキャリアを重ねるうえでも絶対に向き合うべき作品」と感じるようになって。――それほどまで感じる『蜘蛛女のキス』の魅力って?ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より日澤音楽が物語と絡み合っていて、何ひとつ無駄がないところでしょうか。1曲で成立しているナンバーでもやがて重層的に積み重なって、モリーナとバレンティンの関係を変えているような。物語が進んでいくと、メロディの中に前のシーンで使った象徴的なフレーズがちょっとだけ入ってくるんです。たとえば「蜘蛛女のテーマ」にあるメロディラインは、いたるところに登場する。バレンティンとモリーナに合わせて楽曲も並走している感じが「本当にうまいな!」って。石丸各所にモチーフが散りばめられているんですよね。フレーズが流れるだけで、観客の記憶を呼び覚ます。その効果をすごく使っていて。「蜘蛛女のテーマ」が流れたら「これから不穏なことが起こるんだ」ってメッセージが伝わる。ミュージカルならではのつくり方をしています。メロディに乗るほどの強いメッセージを意識して歌う――そんな「ミュージカルらしいミュージカル」を、優れた社会派ストレートプレイを生み出している日澤さんがどのように味つけしているか気になります。日澤グランドミュージカルの演出に際しても、僕はこれまでのスタンスを変えようとは思っていないんですよね。というのも、どんな作品だって登場人物の心情や関係性に迫るストレートプレイと追求すべきことは変わらないとわかったから。特にバレンティンが歌う「あしたこそは(The Day After That)」という楽曲で、メロディと歌詞の移ろいがモリーナとバレンティンの心情や関係性に変化をもたらしていることをキャストの皆さんと検証した瞬間が楽しかったんですよね。「歌はセリフなんだ」と体感できた。ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より石丸ミュージカルナンバーは、ストレートプレイでいうと「長ゼリフ」ですよね。いろんな感情が溜まりに溜まって、音楽に乗ってあふれ出る。だからこそ「どうして長ゼリフになるのか」という理由が腹落ちしていないと、無意味な“おしゃべり”になってしまうんです。歌になるくらいの強いメッセージを、つくり手サイドは意識しなければいけません。そういう意味で、モリーナの自己紹介ナンバー「ドレスアップ(Dressing Them Up)」は、自分のことが好きすぎるモリーナの想いがよく表れていますよね(笑)日澤たしかに!(笑) 楽しいのは「ドレスアップ」ですけど、僕は「彼女は女(She’s A Woman)」ってナンバーがすごく好きだなぁ。同性愛者のモリーナが「いいよね、あなたは女で」「私も女ならよかったのに」って女性をうらやむ曲なんだけど、幹二さんがモリーナの内面や今の状態を情感たっぷりに表現しているので、ぜひ皆さんに聞いて欲しいです。ラストの「映画の夢(Only in the Movies)」も素敵ですけどね。ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より石丸今回、カッコよく歌い上げる曲はバレンティンとオーロラに占められています(苦笑)。先ほど話題に挙がったバレンティンの「あしたこそは」も光の当たり具合がどんどん変わって、台本をめくったら違う世界が広がっているんですよね。若い頃、歌いたかった!――ぜひミュージカルコンサートでお聞きしたいです!石丸そうですね! でもモリーナにも、秘めた想いの味わい深いナンバーが揃っていますから。「このメロディライン自体がモリーナその人を表しているんだな」と思って、愛しながら歌っています。日澤さんがおっしゃった「彼女は女」も、歌えば歌うほど名曲だということが伝わってくるんですよね。カンダー&エブが手がけた音楽の素晴らしさを、ぜひ観客の皆さんにもお届けできれば。モリーナが好きなアイテムを身にまとい、内面に近づく――モリーナはどういう人物だと受け止めていらっしゃいますか?石丸いまとは時代が違いますから、モリーナのように産まれついた人には「生きづらい」世の中だったんじゃないかな。同性愛者として胸を張って自分らしく生きてはいるけれど、一方では人生に失望してもいて。ひょっとしたら、監獄の中が最低限の尊厳を保って生きていられた場所なのかもしれない。どこまでも愛する人を想って、「これが自分の生きる道」と決意する、ギリギリ崖っぷちなところを必死に生きている人です。――モリーナは数々の先輩が演じてこられた役だと思いますが、石丸さんはどうやってオリジナリティを発揮しようとしていらっしゃいますか?石丸僕ね、日本人キャスト版の先輩モリーナを拝見していないんですよ。だから比較できないんですが、トニー賞授賞式で見たブレント・カーヴァーのパフォーマンスには驚きました。彼、女性としての「生き方」をたった数分間で観客の目に焼きつけたんですよ! その姿を見た時に「ここまでやらないと、モリーナの個性って観客に伝わらないんだな」と。ミュージカル『蜘蛛女のキス』稽古場より――カーヴァーのパフォーマンスには、どんな特徴があったのでしょうか?石丸その人の内面って、所作や振る舞いに表れますよね。カーヴァーはモリーナらしさを、デフォルメしながらも自然に見せていて。対する僕は、モリーナとしての中身が、その時点で空っぽ。どうしようか悩んだ結果、艶やかな色の服を身にまとってみようと思いました。ひとりでは買いに行けないので、ショップまで女性マネージャーについて来てもらって。彼女が買うフリをしながら僕が試着して、自分の体に合うピンク色の花柄ガウンを購入しました。――形から入って、どんな収穫がありましたか?石丸羽織ってみると膝にシャランと落ちて、体にまとわりつくような感じを受けました。着慣れない素材一つひとつ、新鮮でね。いま「こういうものを愛しているのがモリーナなんだ」と学んでいるところです。形だけマネするんじゃなくて、内面まで近づけないとね。日澤稽古初日から派手な色のパンツを履いて、本当にキュートなんです。昨日やった、看守に「モリーナ来い」と呼ばれて連れ出されるシーンの稽古では色っぽさにゾクっとしましたよ。赤いガウンを着ている幹二モリーナが、はだけていた胸元をスッと隠したんです。石丸ホントですか? 自覚なかったけど女性としての防衛本能かもしれませんね。内面もモリーナに近づいているなら嬉しいな。――モリーナらしさを獲得している最中なんですね。石丸そうですね。劇団四季にいた時、『オペラ座の怪人』の稽古でジャージ姿だった僕に対して、浅利慶太さんが「劇中の時代の様式を身につけることで、キャラクターの中身がつくれるかもしれない」とおっしゃったんですね。「作品の世界観にマッチするものを稽古場で身につけなさい」「普段着はボロでもいいから稽古着に気を遣いなさい」と。そのくらいやって「初めて役を獲得できるんだ」とご指導いただいたことを思い出したんです。なので、モリーナと向き合うには「まずピンクから始めよう」と試みました。彼女が好きそうな華やかなアイテムをまとって外見から少しずつ変えたら内面にどんな変化が訪れるかな、と。今日もこんなのを持ってきましたよ!(と言って赤いストールを見せてくれる)――モリーナが好きそうですね! 石丸さんがどのように彼女を立ち上げるか、本番を楽しみにしています。取材・文:岡山朋代ミュージカル『蜘蛛女のキス』2021年11月26日(金)~2021年12月12日(日)会場:東京芸術劇場 プレイハウス、ほか大阪公演ありチケット情報
2021年11月17日ミュージカル『蜘蛛女のキス』の開幕を約1ヵ月後に控えた稽古場で、同性愛者の主人公モリーナ役を務める石丸幹二と、演出の日澤雄介がインタビューに応じた。アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの小説を原作にミュージカル化され、1993年のトニー賞7部門を制した本作。『キャバレー』『シカゴ』で知られるジョン・カンダー(音楽)とフレッド・エブ(歌詞)が手がける楽曲は人気が高く、1996年以降、日本でも定期的に上演されている。劇中では、ラテンアメリカにある刑務所の一室を舞台にした物語が展開。映画を愛するモリーナは、社会主義運動の政治犯バレンティン(相葉裕樹 / 村井良大:Wキャスト)と同室に。最初は互いを理解できず激しく対立する2人だったが、モリーナは映画スターのオーロラ、また彼女が演じる蜘蛛女(安蘭けい:2役)について語る。二人は次第に心を通わせていき──。ブロードウェイで本作を鑑賞した石丸は当時、バレンティンに共感したという。同性愛者のモリーナは「特別な個性がないとできない役」と捉えていたが、自身が年始に主演した『パレード』の本国版で同じ役を務めたブレント・カーヴァーがモリーナに扮したと知ると親近感が湧き、「彼がやった役に自分も挑戦したい」という気になったエピソードを明かす。同性愛者が抱える葛藤を掴むのは難しい。そこで石丸は、劇団四季時代に浅利慶太から受けた「劇中の舞台になっている時代の様式を身につけることでキャラクターの中身に近づける」というアドバイスを思い出す。また、ピンクや赤といった鮮やかな色の衣装を稽古場で身にまとうように。「はだけていた胸元を看守の前で隠す所作にゾクっとした」という日澤の言葉を受け、石丸は「女性としての防衛本能かも。内面もモリーナに近づいてきたんですかね」と微笑んだ。自身が旗揚げした劇団チョコレートケーキで、史実をベースにした社会派の人間ドラマを生み出している日澤。本作でグランドミュージカルを初めて手がけるが、「登場人物の心情や関係性に迫るストレートプレイの演出とスタンスを変えることはない」と話す。「水と油のような関係のモリーナとバレンティンがどうやって互いを認め合い尊重するのか。彼らの“心と心の交流”を丁寧に描くことで生まれる化学反応を現代の客席にお届けできれば」と意気込み、インタビューを結んだ。公演は11月26日(金)~12月12日(日)に、東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて。その後、12月17日(金)~12月19日(日)に大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティへ巡演する。ぴあでは座席指定できるチケットを販売中だ。取材・文:岡山朋代
2021年11月05日2014年に同性愛者であると公表し、2018年にダンサーのエマ・ポートナーと結婚したエレン・ペイジ(『JUNO/ジュノ』)が、トランスジェンダーであることをSNSで明らかにした。「ハイ!友人のみんな。私はトランスジェンダーであることをみんなと共有したいです。私の代名詞はheかthey(彼か彼ら)で、名前はエリオットです」と長文メッセージで報告した。エリオットはついに本当の自分を認めて愛することができたと喜ぶ一方で、トランスジェンダーの人々が直面している問題についても言及。たとえば、トランスジェンダーに対する偏見やヘイトが広まっていること、「2020年だけで、少なくとも40人のトランスジェンダーが殺害された」ことなどを挙げた。「私はトランスジェンダーであり、クィアである自分のことが好き」と明言するエリオットは、「この世界をもっとよく変えるために、私にできることはなんでもやるつもりです」という決意を込めた一文でメッセージを締めくくっている。Netflixの大人気ドラマ「アンブレラ・アカデミー」で女性のヴァーニャ役を演じているエリオットに、Netflixは「私たちのスーパーヒーローを誇りに思います。シーズン3であなたに会えるのが待ちきれない!」とツイート。エリオットがシーズン3にもヴァーニャとして戻ってくることを明らかにした。「アンブレラ・アカデミー」の共演者のトム・ホッパー(ルーサー役)、ジャスティン・H・ミン(ベン役)、製作総指揮のスティーヴ・ブラックマンやマイリー・サイラス、アンナ・パキン、オリヴィア・マンらがエリオットに応援メッセージを送っている。(Hiromi Kaku)
2020年12月02日「同性愛者を法律で守れば足立区は滅んでしまう」と発言をした足立区議・白石正輝議員(78・自民党)。10月20日に陳謝したものの、議事録から発言を削除するよう要請した。その行動が、再び非難されている。白石議員は先月25日に開かれた足立区議会の定例会で、少子化について言及。その際、LGBTに言い触れ「レズとゲイについてだけは、もし足立区に完全に広がってしまったら足立区民がいなくなってしまう」「法律で守られているじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」と持論を展開した。白石議員の発言が報じられると、「同性愛差別だ」との声が相次いだ。またTwitterでは「♯私たちはここにいる」というハッシュタグのもと、《何も滅ばせないし、幸せの形がもっと増えて欲しいな》《絶対に滅ばない。なんなら新しい世界を作ってく》と「同性愛で足立区が滅びる」発言への反論が集まっている。そんななかで今月20日、白石議員は区議会本会議に登場した。各メディアによると「差別的な発言と受け止められる表現があり、不快な思いをした方、傷つけた全ての皆様に対しておわび申し上げる」と陳謝。そして白石議員の要望があり、問題となった発言が議事録から削除されることになったという。「白石議員の所属する自民党といえば、安倍政権下で行われた『桜を見る会』に関する公文書の改ざんや廃棄を行っていたとして非難されていました。また野党の追及が始まった途端、議員らは公式サイトやブログから『桜を見る会』の関連個所を削除。さらに菅義偉首相(71)も自身の著作を改訂するにあたり、公文書の重要性を訴える箇所を削除しています。都合の悪いことをすぐ“なかったこと”にするため、『自民党は歴史を軽視している』との揶揄もあります」(全国紙記者)白石議員の削除要請に、ネットでは「自民党らしい」と呆れる声が上がっている。《他者を攻撃し煽るためにはどんな暴言もしてよくて都合悪くなったら記録を削除、というのが自民党の党是なんだな》《都合が悪ければ無かったことにしてはいおしまい。自民党の十八番ですね》《終始一貫した自民しぐさ》また、削除を許可した区議会に対しても《議会ぐるみでなかったことにするのか》《あくまで議事録として残すべし。足立区議会は発言を無かったことにしてはいけない》《議事録から発言ホイホイ消しちゃうような議会の方が余程足立区滅ぼしそうだがな》と厳しい声が相次いでいる。
2020年10月21日「同性愛者を法律で守れば足立区は滅んでしまう」と発言をした足立区議・白石正輝議員(78・自民党)。10月6日、「当事者が不快と思っても別に良い」などと謝罪を拒否したと報じられ非難が殺到している。白石議員は、先月25日に開かれた足立区議会の定例会で少子化に言及。その際、LGBTに言い触れ「レズとゲイについてだけは、もし足立区に完全に広がってしまったら足立区民がいなくなってしまう」「法律で守られているじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」と持論を展開した。「『同性愛者が増えることで足立区が滅ぶ』と言いますが、その根拠はどこにあるのでしょうか。少子化は貧困や雇用の問題といった、社会における様々な理由が重なって生じているものです。むしろ海外では同性婚を認めることで、出生率がアップした国も。同性カップルが養育を望み、社会的に困窮している子供たちの受け皿になっているというケースもあります」(全国紙記者)毎日新聞によると、同党の鹿浜昭議長は「行き過ぎた発言なので注意した」とコメント。そのいっぽうで「あとは本人の考え方。謝罪や発言の撤回は求めなかった」と明かしたという。同紙によると白石議員は6日、取材に応じたものの「当事者が不快と思っても別に良い」といい「(発言は)人によって受け取り方が違う。私だって共産党の意見を聞いても全部不快だ」と謝罪を拒否したという。すると、ネットでは白石議員への非難が殺到することに。「“不快にしたか、してないか”ではなく人権侵害が問題」など“筋違い”とする声が上がっている。《「共産党の意見」は政治の問題だけど、差別発言は「人権」の問題。不快でもいいという問題じゃない》《問題は人権侵害発言なのに、当事者の快不快問題に矮小化》《人権の問題と党派的主義主張の問題は全く違う ということさえ分からない》《少子高齢化にLGBTを持ってきて人権を軽視した語り草が問題》近年、自民党議員たちの同性愛者への差別発言が相次いでいる。15年6月、兵庫県宝塚市の市議だった大河内茂太氏は「宝塚に同性愛者が集まり、HIV感染の中心になったらどうするのか」と市議会で発言していた。さらに「新潮45」18年8月号では、杉田水脈議員(53)が同性カップルに対して「子供を作らない。生産性がない」とする文章を寄稿。19年1月には平沢勝栄議員(75)が集会で同性カップルに対し「この人たちばっかりになったら国はつぶれちゃうんですよ」とも述べている。そのため、ネットでは自民党への厳しい声も上がっている。《標的が同性愛者に向くって所が、いつも通りの自民党議員による差別表現だよな》《自民党議員の本質はこんなもんなんだろうね》《所属党が除籍なりてを打たないとすれば党の考えとなる。自民党の本質が見えた事柄かなと思われる》《注意したから終わり。じゃないですよね自民党さん??》
2020年10月08日『名探偵ピカチュウ』で主人公ティム・グッドマンを演じたジャスティス・スミスが、同性愛者であることをカミングアウトした。ジャスティスは自身のインスタグラムのアカウントで、ニューオーリンズで行われた人種差別抗議デモに参加したと報告。そのデモでは「黒人の命は大切だ」というだけでなく、「黒人のトランスジェンダーの命は大切だ」、「黒人のクィアの命は大切だ」、「すべての黒人の命は大切だ」というスローガンが叫ばれたという。ジャスティスは「自分が黒人のクィアである身として」とカミングアウトし、「『黒人の命は大切だ』と声高に叫ぶ人たちが、そこにトランスジェンダーやクィア(の命)が加わるとなると、黙ってしまうというのを目の当たりにして、すごく落ち込んだ。それはアンチ黒人も同然だ」とつづった。LGBTQ+のコミュニティのためにも声を上げるべきだと主張した。ここ数日のSNSは悲劇であふれているため、自分が恋人と楽しんでいる日常を見てもらいたいとして、彼氏のニコラス・アッシュとのキスショットも公開した。エル・ファニング、キャサリン・ラングフォード、ブライス・ダラス・ハワード、『名探偵ピカチュウ』で共演したキャスリン・ニュートンらから「大好き」などの応援コメントが寄せられている。(Hiromi Kaku)
2020年06月08日ピクサーが、同性愛者の青年を主人公にした短編映画をリリースした。Disney +でデビューした『Out』で、監督、脚本はスティーブン・クレイ・ハンター。主人公は、ボーイフレンドと一緒に都会に引っ越そうとしているが、両親に対してカミングアウトすることを躊躇している。そんな彼が、本当の自分を隠す必要はないのだと発見する物語だ。ハンターは、ピクサーで『トイ・ストーリー4』などにかかわってきたアニメーター。今作が監督デビュー作となる。ピクサーの最近作『2分の1の魔法』にもレズビアンのキャラクターが登場したが、同性愛者を主人公にするのは、ディズニー、ピクサーの歴史で初めて。文=猿渡由紀
2020年05月25日2月14日に公開された映画『バイバイ、ヴァンプ!』が物議を醸している。「ヴァンパイアに噛まれると同性愛者になる」というストーリーに批判が殺到し、公開停止を求める署名運動まで起こる事態に。制作側が釈明の声明を発表するも、思わぬところに波紋が広がっている。公式サイトによると、同作は美貌の吸血鬼に噛まれた女好きの吾郎が女装した同性愛者となることから騒動が起こる“青春ヴァンパイアホラー”。また予告編には「同性愛の町になっちまう」というセリフも盛り込まれている。そういったことからから署名サイト・change.orgに公開停止を求めるページが作成された。発起人は「同性愛を悪のように仕立て上げ、敵視し差別対象とする表現が見受けられます」「多様な性への配慮が欠けており、視聴者に間違った印象を与えかねません」とつづっている。たちまち署名はネットで拡散され、7,000人もの賛同者が集まるほどの反響に(17日20時時点)。そして16日、同作の公式Twitterアカウントは製作委員会からのコメントを発表した。《この映画には一部、同性愛の方々に対し不快な思いを抱かせる表現が含まれているかもしれませんが、同性愛を差別する作品ではありません》また《愛とは自由であり、人それぞれの愛が尊重されるものであるというテーマのもと、製作されました》《この作品は、そのテーマをエンターテインメントな作風で描いているため、一部の方に誤解や混乱を招いた事をお詫び申し上げます》と釈明していた。しかし、ネットでは疑問の声がこう上がっている。《噛まれたら黒人になっちゃうバンパイア作品は、差別ですか?差別じゃないですか?》《その映画の中に、噛まれる前から存在している同性愛者は描かれているんですか?》同作を鑑賞したある観客は、感想をこうつづっている。《「快楽に弱く、ところ構わず性的な接触を求めだす」とか「相手は誰でも良い」とか「同性間の友情が成立しなくなる」とか、同性愛に対するありとあらゆる誤解を濃縮したような特性が同時に付与される描き方になっていました》さらに、立憲民主党・石川大我議員(45)はTwitterで同作に《茨城県境町が全面協力している》と指摘。同県は昨年3月にLGBTへの差別禁止を盛り込んだ男女共同参画推進条例改正案を可決し、同年7月にはLGBTカップルを公認するパートナーシップ宣誓制度を開始した。そのためこんな声も上がっている。《行政まで誰も問題視せず公開に至ってしまったのか》《何のためのパートナーシップ制度、差別禁止条例だったのか…》
2020年02月17日今泉力哉監督が、最新映画『his』でテーマにしたのは同性愛。田舎町に住む迅(宮沢氷魚)のもとへ子連れで現れたのは、8年前に別れた恋人・渚(藤原季節)。二人は再び愛し合う関係になるが、渚とその妻(松本若菜)は親権を争い裁判へ発展してゆく…。宮沢さんと藤原さんにお話を伺いました。宮沢:LTBTQをテーマにした作品だけに、今回は相手役が重要だと思った。それが(藤原)季節くんだと知り、これまで季節くんが演じた役柄とか写真を改めて見たときに、ちょっと怖いかも…って、それが第一印象(笑)。藤原:(笑)宮沢:でも実際に季節くんに会うとすごく正直でいい人で。僕が演じる迅が、季節くん演じる渚を愛せると思ったし、宮沢氷魚として藤原季節を好きになれると思った。藤原:ありがとう。僕は、まず、宮沢氷魚×今泉力哉監督という組み合わせが想像つかなかった。だって、今泉さんがこれまで描いてきたのは、ありふれた日常の恋愛模様であり、群像劇だったから。そこに氷魚くんみたいなスターが入ってくるんだ、って。宮沢:いやいや…。藤原:今泉さんが氷魚くんの相手役になぜ僕を選んだのかに、必ず意味があると思ったんだよね。だから、迅と渚はお互いにないものをきっと持っていて、それを与え合える関係が作れればな、って。宮沢:(岐阜県加茂郡)白川町の現場に入ってすぐに、同じ部屋に住み始めたのはよかったと思う。毎晩夜中まで、鍋をつつきながら、熱く語り合ったよね。藤原:僕がその前の作品で訪れていた、熊本の天草で手に入れた焼酎を飲みながらね。宮沢:あれ、うまかった!そういえば撮影初日に、天草の教会で買った貝殻ももらったね。藤原:いつもはいきなりそんなものあげたりしないんだけど、きっとスタートの時点から自分が氷魚くんにとって異物でありたかったのかな。ただの映画の相手役じゃないという、枠組みを超えた間柄になろうとしていたのかも。宮沢:お互いに知らない世界に飛び込んでいくことに不安しかなかったし、撮影中も苦しいことのほうがはるかに多くて…。センシティブな部分と向き合っていくうちに、どんどんしんどくなったよ。藤原:渚が子供を連れて迅の前に8年ぶりに突然現れて、しばらく3人で暮らすシーンはただただ幸せだった。でもそのあとに、陰で傷ついている人がいると気づいてからが、僕は辛くて。宮沢:親権争いの裁判シーンは、季節くんはとくに辛かったと思う。藤原:辛かったね…。ちなみに僕が印象的なシーンは、迅が自給自足の田舎生活をしている中で頼りにしている、(鈴木)慶一さん演じる緒方と、山に鹿を狩りに行くところ。鹿を撃ったあとの迅の表情が、すごいんだよね。僕はいつも映画を観るときに、一見すると“ちょっとしてる”ふうに見えるけどじつは“ちょっとしていない”、ふとした瞬間を見たいんだけど、一つの命を奪ったときのあの言葉にならない興奮や激情が込み上げる表情は感動的だった。迅という人間の価値観が崩れ落ち、そして立ち上がるのを感じて。あの芝居はすごかった。宮沢:う~ん、今考えると自然とああなってたかも。慶一さんのオーラと緊張に引き込まれたのもあって、独特な空気が流れていた。藤原:あの瞬間だけが、社会や日常と関係のない、裸の迅だなって。迅と慶一さん二人のシーンは、僕の知らないところで、迅の核が見えるから、気がついたらすっかり一人の人間として氷魚くんを好きになってた。これって僕にとってすごく大事なことだったかもしれない。だって、僕とか氷魚くん、監督たちが唯一忘れちゃいけないのは、「この映画はただ2人の同性愛者の恋愛を描いたもの」なんだってこと。観てくれた人たちにも、「2人の人間がただお互いに好きだってことを描いた映画」だと思ってもらいたくて。特別なことじゃないんだよ、当たり前に存在している人たちなんだよって。宮沢:そうそう。でも、それを作り上げるのは本当に難しかった。藤原:そこにたどり着くために僕ら二人も、そして監督も相当悩んでいたもんね。宮沢:監督に相談すると、監督が一番悩んじゃうからね(笑)。藤原:そうなの(笑)。撮影が終わったからといって、僕らの仕事はまだ終わらない。ここからだと思うんだよね。こんなふうにインタビューを受けることで、自分の認識をどんどん更新していかなければならないって思う。宮沢:話せば話すほど、僕らの認識も変わるから、毎回言ってることが違ってしまうのは本当に申し訳ない気持ちがある。でも、僕らも日に日に新しい発見があって認識を更新していくし、取材で問われる度に考え直してしまう。でもそれでいいんだよね。藤原:考えないこととか、捉え方を更新しないほうが危ないと思う。とはいえ、古かったものが猛烈に新しくなっていくわけじゃないけど、でも10年後には、今はまだ当たり前じゃないことがごく当たり前になっていると思うし、同性愛者のカップルが手を繋いで街を歩いているなんて普通だと思うの。だからこの作品が、その“当たり前”を作るきっかけになればいいなって。10年後にこの映画を観返したとき、本当にこんな裁判があったのかよ、ってなったら楽しいよね。きっとそうなっているよ。宮沢:アンアンが60周年のときにはね!そうそう今年、アンアンは創刊50周年らしいよ。藤原:そうなんだ、すごい!宮沢:100周年になるまで出たいね。でも、僕は75歳か…。藤原:僕らが頑張らないと…(笑)。宮沢:めっちゃ頑固な役者になってたりして!藤原:(笑)。また『his』の続きを作りたいよね。子供の空ちゃんも大きくなって、やべ、反抗期だ、ってなったり!宮沢:あははは(笑)、作りたい!“複雑な感情こそが人間らしい”ということ。物語で描かれる幸せは、迅と渚、その子供・空(外村紗玖良)との日常のシーン。主演の二人も、撮影期間中は役に入り込むのが辛かったが、この場面は幸せに感じたと語る。空を連れ戻しにきた渚の妻。ともすれば悪人になりがちだが、そうはさせないのが監督の手法。それぞれの弱さや言葉足らずな部分から生まれる衝突を、低い温度で描いている。頭を寄せることで相手を求め合う感情を表現。「一人の人間にいくつもの感情がある。派手にしないほど繊細になり、また好きを伝えるパターンは無数にある」と監督。©2020映画「his」製作委員会みやざわ・ひお1994年4月24日生まれ、アメリカ出身。MEN’S NON-NO専属モデル。‘19年はドラマ『偽装不倫』(日テレ系)に出演し、大きな話題に。‘20年は舞台『ピサロ』が上演。ニット¥30,000(ラッド ミュージシャン/ラッド ミュージシャン 原宿 TEL:03・3470・6760)カットソー¥14,000(カイコー/スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575)パンツ¥39,000(ワコ マリア/パラダイストウキョウ TEL:03・5708・5277)靴¥42,000(リーガル シュー&カンパニー TEL:03・5459・3135)ふじわら・きせつ1993年1月18日生まれ、北海道出身。‘19年はU-NEXT『すじぼり』で連続ドラマ初主演を務めた他、『監察医 朝顔』(CX系)に出演。‘20年は映画『のさりの島』で主演。ジャージートップス¥29,000中に着たカットソー¥22,000靴¥58,000(以上トーガ ビリリース/TOGA原宿店 TEL:03・6419・8136)パンツ¥35,638(オフィシン ジェネラル/マッチズファッション TEL:0800・919・1268)※『anan』2020年1月15日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE) スタイリスト・秋山貴紀(宮沢さん)八木啓紀(藤原さん)ヘア&メイク・スガ タクマ(宮沢さん)中村兼也(藤原さん)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2020年01月12日映画『愛がなんだ』などで、カップルの恋愛比重や、恋する人間のかっこわるさなどを魅力的に描いてきた今泉力哉監督が、『his』でテーマにしたのは同性愛。田舎町に住む迅(宮沢氷魚)のもとへ子連れで現れたのは、8年前に別れた恋人・渚(藤原季節)。二人は再び愛し合う関係になるが、渚とその妻(松本若菜)は親権を争い裁判へ発展してゆく…。同性愛者は日常に存在して、わざわざ取り上げるほうが差別的になるのではないかと「あえて避けてきた題材」と言う監督が、これまでの手法をもって、このテーマをどう描くのか、公開前から早くも注目を集めている。映画が終わっても人生は続く。そんな恋愛映画を作り続けたい。恋愛映画を作る時はいつも、明確な悪人を作らずに衝突や葛藤を描きたいという意識があり、なおかつ全体的に“温度”が上がらないように気をつけています。たとえば感情的に泣くような温度の高い芝居って、一歩間違えると役者だけが気持ちいい感じに見えて、お客さんがのれない。だから撮影中に少しでも温度の高さを感じると、その度に脚本に立ち返って確認します。それってドラマティックになりにくいからみんなやりたがらないけど、僕の興味はそこにあるんです。ただ今回は自分の脚本じゃない、同性愛を描いた難しいテーマの中で、主演の二人に任せた部分も多くて。たとえば、台所で歯を磨きながらキスするシーンもそう。僕自身はそういう日常を送っていないし、僕の恋愛映画では日常の何気ないキスや接触を描いたことがないから。でも二人のバランスがいいというのもあって、結果、すごく自然な流れになった。『愛がなんだ』ぐらいから、そんなふうに役者にどんどんゆだねるようにはなっています。役者に任せて僕が持つアイデアよりももっと面白いものが出てきたらそれが正解だから、自分の中の考え含め、どっちだろう…と限られた時間の中でギリギリまで迷いたいし、わからないことは「わからない」ってみんなに頼る。あとは、完成作で全員を納得させるのが監督の仕事だと思っているんで。だから「いつも悩んでる人」って言われちゃうんですよね(笑)。近年の恋愛の傾向としては、極端な話、恋愛はしたくないけど結婚はしたい、結婚はしたくないけど子供は欲しいなど、恋愛に対して損得や効率を考える人が増えている気がします。それって僕は悲しいことだと思います。“温度の低い恋愛”を描いてきましたが、恋愛の醍醐味は面倒くささにあるので。さらに僕は映画の登場人物がまるで隣に住んでいそうな“地続きの恋愛”が好きで。何かを解決してハッピーエンドという映画もあるけれど、それで終わりにするとそのまま登場人物たちも終了しちゃう。映画が終わったあとも登場人物たちの人生は続くという方向にしたほうが、人物は生きると思っているんです。『his』も、ラストシーンは観る人によって登場人物たちのその後の人生について、いろんな解釈ができるはず。やるからには、これまでの同性愛作品と違うものにしたかったし、今後も恋愛映画を通して、これまで描いたのとは違う恋の形を探りたいです。“複雑な感情こそが人間らしい”ということ。物語で描かれる幸せは、迅と渚、その子供・空(外村紗玖良)との日常のシーン。主演の二人も、撮影期間中は役に入り込むのが辛かったが、この場面は幸せに感じたと語る。空を連れ戻しにきた渚の妻。ともすれば悪人になりがちだが、そうはさせないのが監督の手法。それぞれの弱さや言葉足らずな部分から生まれる衝突を、低い温度で描いている。頭を寄せることで相手を求め合う感情を表現。「一人の人間にいくつもの感情がある。派手にしないほど繊細になり、また好きを伝えるパターンは無数にある」と監督。©2020映画「his」製作委員会今泉力哉監督1981年2月1日生まれ、福島県出身。自主制作映画を作っていた頃から、恋愛映画にこだわり続けてきた。監督、脚本、演出まで手がけ、短編を含む映画、ドラマ『時効警察はじめました』、乃木坂46のPVまで幅広く手がける。オリジナル脚本に受賞作が多く『こっぴどい猫』『サッドティー』『パンとバスと2度目のハツコイ』など多数。‘19年公開の映画『愛がなんだ』がヒットし代表作に。今作『his』は1月24日より全国公開。※『anan』2020年1月15日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2020年01月11日ミネラルウォーター・evianのフランス版Twitterアカウントが11月29日、同性愛嫌悪と取れるツイートに対して「アカウントを消せよ」とリプライした。世界中で大きな反響を呼んでいるが、いっぽう日本では思わぬ反応も上がっている。同日、Twitterのあるアカウントがevianのボトルをゴミ箱に捨てる動画をアップした。そのボトルのラベルには男性同士が手を繋ぐ絵と、ハートマークと共に「Paris」という文字があった。するとevianのアカウントは投稿を引用し、英語でこうツイートした。「君の アカウントを 消せよ」差別的なツイートに対抗したevianの投稿は世界中に拡散され、2日ほどで7.5万件のリツイートと22.5万件もの“いいね”を記録。さらにTwitterでは、《こんな素晴らしい企業を愛しているし支えなきゃね》《evianの水を買うことにしよう》とevianを讃える声が上がっている。いっぽう日本では思わぬ余波が生まれている。というのもevianの「アカウントを消せよ」というツイートには、アスキーアートが用いられていたためだ。アスキーアートとは多くのものが2ちゃんねる発祥の、文字や記号を使って表される絵のこと。そのため海を渡ったAAにも注目が集まり、こんな声が上がっている。《Evian Franceが日本生まれの顔文字を使ってツイートした。感慨深い》《evian最高すぎる どう見ても日本産なAAで煽ってるの狂おしいほど好き フランス行った時はお世話になりました》《日本じゃ、公式アカウントが顧客(かもしれない)アカウントに対してあからさまに反論するってことほとんどないから、AAでユーモア感出しつつ、企業理念を貫くevian、今後も注目したいな》
2019年12月01日話題のスポットやエンタメに本誌記者が“おでかけ”し、その魅力を紹介するこの企画。今回は、同性愛がタブー視されているアフリカ・ケニアを舞台に、レズビアンの恋を描いた映画『ラフィキ:ふたりの夢』を紹介します。■『ラフィキ:ふたりの夢』シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開中実は今回、ケニア映画を初めて鑑賞した記者。まずはティーンエージャーのポップでカラフルなファッションやメークの大胆な色使いに目を奪われました。いっぽう大人の社会はそれとは真逆。女性の社会進出がいまだ発展途上。同性愛にいたっては法律で禁じられ、刑務所に送られることもあるという、今の日本では考えられないもの。同性愛者に対しての人々の嫌悪の強さには正直、驚かされました。ゴシップ好きのおばさんは万国共通なのに(笑)。さて、物語の主人公は、看護師になるのが目標のケナと、そんな彼女に「医師にもなれるのに」と大学進学をすすめるジキ。古いしきたりに縛られて生きたくないと意気投合した2人は、自由な価値観を持つ「本物になろう」と誓い合うのです。ところが、2人の父親は国会議員に立候補する、いわば敵同士。2人の仲を裂こうと躍起になりますが、若者たちの恋心は燃え上がるいっぽう。さながらロミオとジュリエットのようでもあります。本物の自分か、社会に受け入れられる自分か、2人はどちらを選択するのでしょうか。ケニア国内では上映禁止。世界が注目する話題作は必見です!
2019年11月18日話題沸騰中のドラマ『きのう何食べた?』に出演中の山本耕史さん、磯村勇斗さん。劇中での役柄そのままにチートデイの恋人を演じていただきました。「ドラマでもここまでイチャイチャしてないですよ」という貴重なカットが実現!?西島秀俊さん、内野聖陽さん演じる主人公カップルの友人で、真面目な芸能プロダクションマネージャーの小日向大策を山本耕史さんが、彼を翻弄するツンデレ年下彼氏、通称ジルベールの井上航を磯村勇斗さんが演じるこのドラマ。お二人は初共演ですが、意外なことで意気投合したようで…。――ドラマの出演依頼が来たときは、どう思われましたか?山本:僕は内野(聖陽)さんと長い付き合いだから、現場が楽しそうだなって思ったのが最初の感想です。同性愛という、ある意味ではシリアスなテーマを扱ってはいつつも、物語の雰囲気はほんわかしているところもいいな、と。それにしても磯村くんの役は、すごい大変だよねぇ。磯村:え、そうですか?山本:そうだよ~。4人の中で一番若いのに、西島さん、内野さん、俺の間に入ってこなきゃいけない。俺が26歳のときだったら、結構悩むし、やりづらいと思うけどね。磯村:そこはもちろん思いましたよ?お相手が山本さんだって聞いて、うわぁ!!って一気に緊張しましたし。しかも山本さん演じる小日向を振り回さなきゃいけないっていう…。山本:最初、磯村くん、どんな演技で来るのかな~って思って見てたら、すごくちゃんと役作りをしているし、台詞も完璧に入ってるし、何より演技に物怖じがなかった。だから俺も、“こういうふうにやってみたら?”って、ちょっと難しいことを要求したりもしたんだけど、それにもきちんと応えるわけ。だから一緒にやるのがとてもおもしろかった。磯村:役柄では僕は振り回す側でしたけれど、現場では山本さんがものすごく引っ張ってくださって。役以外では逆の立場だったっていうのも、楽しかったです。――同性を好きになる、という演技は、難しいものですか?山本:僕はこれまでも何度か同性愛者の役をやっているので、そんなに悩んだりはしないのですが、相手を男性とか女性とか考えず、“好きな人”と思って向かい合うといいのかな、と思ってます。磯村:今回は、恋愛関係なんだけどラブシーンみたいなものがないという作品なので、その上で親密な空気感を作るのが難しかったです。でも、やりがいがありました。――今号はダイエット特集です。憧れの男の体ってありますか?山本:え、そりゃもう絶対、孫悟空でしょ。超(スーパー)サイヤ人の、孫悟空。磯村:山本さん、たぶん女の人たちはわからないと思います(笑)。山本:えー、ホント?(笑)じゃあ、日本では俳優って割と細いのがいいとされてるじゃないですか。でも僕は、筋肉がついたデカい体がいいと思ってるんですよね。筋肉があると瞬発力が出るし。磯村:僕、山本さんが脱いだところ見たことあるんですが…って、着替えてるときですよ(笑)。で、それが、すんごかったんですよ!胸板と腕の厚みが!!うわー、こうなりたいって感じ。だから山本さんの体が、僕の憧れです。山本:磯村くんも鍛えてるよね?タンパク質の摂取が大事だよ。磯村:教えていただいた、鶏の胸肉を茹でたのに塩をつけて食べるやつ、やってますよ。山本:本当?おいしいでしょ?磯村:めちゃくちゃおいしい。おやつみたいに食べてます。小腹がすいたら鶏胸肉。あれは別腹です。山本:俺も2日に一回、鶏胸肉2枚買ってきて塩茹でにしてるもん。磯村:さすがです。山本:あ、もう一つ別腹あった。チョコレート。チョコレートって、ほんの少しだったらとても体にいいって知ってる?磯村:えー、そうなんですか?山本:カカオ率が高いやつね。俺、寝る前にプロテインを飲むんだけど、それを飲みながらチョコをかじるの、最近の至福の時間。鍛え始めてから酒も飲まなくなったし。――それって山本さんにとっては晩酌的な…?山本:そう、僕の晩酌のお供はプロテインです(笑)。磯村:憧れます!!(笑)山本:え、ホント?じゃあぜひやってみて。チョコもいいよ。磯村:はい、今夜から!(笑)『きのう何食べた?』原作はよしながふみの人気漫画。同棲中のカップルである弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)の日常を、日々の料理とともに描く。毎週金曜深夜0時12分よりテレビ東京系で放送中。やまもと・こうじ1976 年生まれ、東京都出身。10歳で舞台デビュー、16歳でドラマデビュー。以降、映画、舞台、ドラマと幅広く活躍中。9月より出演映画『スタートアップ・ガールズ』が公開予定。ジャケット¥32,400パンツ¥20,700シャツ¥13,700シューズ¥20,000(以上AX アルマーニ エクスチェンジ/ジョルジオアルマーニ ジャパン TEL:03・6274・7070)ネックレスは本人私物いそむら・はやと1992 年生まれ、静岡県出身。‘15年に『仮面ライダーゴースト』、‘17年『ひよっこ』で注目を集める。7月よりドラマ『サ道』(テレビ東京系)にイケメン蒸し男役で出演予定。ニット¥40,000(ダブレット)カットソー¥16,000(ウル)パンツ¥29,000(アトリエベトン)以上スタジオ ファブワーク TEL:03・6438・9575ケーキラブリーリボン(直径16cm)¥4,500アニバーサリー早稲田店東京都新宿区早稲田鶴巻町519 TEL:03・5272・843110:00~19:00水曜休※『anan』2019年6月12日より。写真・森山将人(Trival)スタイリスト・岡野友美(山本さん)齋藤良介(磯村さん)ヘア&メイク・西岡和彦(PARADISO le plus/山本さん)佐藤友勝(磯村さん)取材、文・河野友紀(by anan編集部)
2019年06月09日NHKよるドラ第2弾、『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で初主演に抜擢された金子大地さん。原作は小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』。僕と純の共通点は人を好きになるところ。「原作を読んだとき、LGBTの世界観や価値観、悩みなどに深く切り込んだ内容だったので題材も役どころも難しい、というのが第一印象。でも、だからこそやりがいがあるんじゃないかな、とも思いました」金子さんが演じるのは、同性愛者であることを周囲に隠して暮らす、18歳の高校生・安藤純。腐女子の同級生・三浦紗枝(藤野涼子)がある日、書店でボーイズラブの漫画を購入するところに遭遇し、二人は少しずつ接近していくという物語だ。「いつもお芝居をするときは、役作りというよりもその役と自分を繋げるような、しっくりくるラインを見つける作業から入るんです。そのために共通点を探したりするんですが、僕と純が確実に通じ合えるのは“人を好きになる”ということ。相手が異性なのか同性なのかでもちろん違うと思いますが、僕としては、人を好きになるという根本的な気持ちは変わらない。一方で、動物の世界ではオス同士の性行為が多いと聞いて、本能的にそういうことが起こるのであれば、じゃあ世間で言われている“普通”とか、自分が思っている“普通”って何?という疑問は大きくなるばかり。考えるほど、わからなくなっちゃいますけどね」まず世の中のマイノリティの人たちの心に響いてほしい、と金子さん。「だけど重い気持ちではなく“うっかり”気楽に見てほしいです(笑)」『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』ゲイであることを隠して生活する純だが、“異性を愛し、子供を作って家庭を築く”という“普通の幸せ”にも憧れる同級生の腐女子・三浦さんと交際を始めるが…。4月20日(土)スタート、NHK総合23:30~23:59(全8回)。かねこ・だいち1996年9月26日生まれ、北海道出身の俳優。ドラマ『おっさんずラブ』などの話題作に出演。出演映画『劇場版 おっさんずラブ』が8月23日公開、『殺さない彼と死なない彼女』が秋公開予定。※『anan』2019年4月24日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・若山あや(by anan編集部)
2019年04月20日