「老後の生活不安を解消するためにも、実際に使えるお金である年金の手取り額を把握しておくことがとても重要です。ところが、自分が受け取るはずの手取り額を知っている人は思いのほか少ないのです」そう話すのは、社会保険労務士で年金制度に詳しい「年金博士」こと北村庄吾さんだ。50歳以上の人に届く「ねんきん定期便」の「見込み額」を見て、自分の年金額をわかったと思い込んでいる人は要注意だという。「60歳まで同額の保険料を払うことを前提にした『見込み額』は、給与明細でいうところの額面です。実際の手取り額は、そこから税金(所得税と住民税)と社会保険料(国民健康保険料と介護保険料)を引いた額になります」実は“額面”に対する手取り額の割合が、この22年間で大きく減っている。ファイナンシャル・プランナーの深田晶恵さんが語る。「年金300万円の額面のケースで、介護保険が導入される前の’99年と’21年を比較したところ、手取り額に37万円の差がありました。’00年から介護保険料がかかるようになり、さらにその後65歳以上の人や税金も増えたため、手取り額が目減りしてしまったのです」そんな社会保険料は、地域ごとに差がある。北村さんが解説する。「年金収入だけの生活に入ると、厚生年金保険料はかからず、国民健康保険料と介護保険料の2つが引かれます。これら社会保険料は、その地域の財政状況や高齢化率などによって大きく異なってきます。住んでいる場所によって年金の手取り額がかなり変わってくるのです」そこで北村さんが代表を務めるブレイン社会保険労務士法人の山岡正和さん、伊藤紀代美さんに、夫婦で“受給額(額面)”が160万円(夫・80万、妻・80万円)、260万円(夫・180万円、妻・80万円)、420万円(夫・260万円、妻・160万円)という3つのケースで、複数の自治体の年金の手取り額を試算してもらった。■都庁のある東京の中心・東京都新宿区夫婦の額面・〈年額:160万円〉手取り額(概算)・〈年額:145万7,600円〉夫婦の額面・〈月額・13万3,333円〉手取り額(概算):〈月額・12万1,467円〉【手取り率:91.1%】夫婦の額面・〈年額:260万円〉手取り額(概算)・〈年額:243万1,842円〉夫婦の額面・〈月額・21万6,667円〉手取り額(概算):〈月額・20万2,654円〉【手取り率:93.5%】夫婦の額面・〈年額:420万円〉手取り額(概算)・〈年額:376万2,244円〉夫婦の額面・〈月額・35万円〉手取り額(概算):〈月額・31万3,520円〉【手取り率:89.5%】■財政危機にある天下の台所・大阪府大阪市夫婦の額面・〈年額:160万円〉手取り額(概算)・〈年額:142万6,865円〉夫婦の額面・〈月額・13万3,333円〉手取り額(概算):〈月額・11万8,905円〉【手取り率:89.2%】夫婦の額面・〈年額:260万円〉手取り額(概算)・〈年額:239万6,841円〉夫婦の額面・〈月額・21万6,667円〉手取り額(概算):〈月額・19万9,737円〉【手取り率:92.2%】夫婦の額面・〈年額:420万円〉手取り額(概算)・〈年額:370万318円〉夫婦の額面・〈月額・35万円〉手取り額(概算):〈月額・30万8,835円〉【手取り率:88.1%】■人口が日本第1位の自治体・神奈川県横浜市夫婦の額面・〈年額:160万円〉手取り額(概算)・〈年額:147万1,280円〉夫婦の額面・〈月額・13万3,333円〉手取り額(概算):〈月額・12万2,607円〉【手取り率:92.0%】夫婦の額面・〈年額:260万円〉手取り額(概算)・〈年額:244万5,360円〉夫婦の額面・〈月額・21万6,667円〉手取り額(概算):〈月額・20万3,780円〉【手取り率:94.1%】夫婦の額面・〈年額:420万円〉手取り額(概算)・〈年額:376万2,840円〉夫婦の額面・〈月額・35万円〉手取り額(概算):〈月額・31万3,570円〉【手取り率:89.5%】■中部地方の中核都市・愛知県名古屋市夫婦の額面・〈年額:160万円〉手取り額(概算)・〈年額:145万5,752円〉夫婦の額面・〈月額・13万3,333円〉手取り額(概算):〈月額・12万1,313円〉【手取り率:91.0%】夫婦の額面・〈年額:260万円〉手取り額(概算)・〈年額:243万1,448円〉夫婦の額面・〈月額・21万6,667円〉手取り額(概算):〈月額・20万2,621円〉【手取り率:93.5%】夫婦の額面・〈年額:420万円〉手取り額(概算)・〈年額:374万9,590円〉夫婦の額面・〈月額・35万円〉手取り額(概算):〈月額・31万2,466円〉【手取り率:89.2%】「社会保険料の差が大きく反映されました。国民健康保険料と介護保険料の負担が大きい自治体では、特に手取り額が少なくなります。たとえば夫婦2人の年金受給額が260万円のケースでは、負担が多い大阪市と少ない横浜市では概算で4万8519円もの差が出ました」(山岡さん)夫婦そろって90歳を迎えた場合、25年で121万円もの差になる。今後も、自治体ごとの“格差”は広がっていきそうだ。
2021年06月24日「国民の大半は開催に賛成していなかったが、ここに来て『オリンピックはしょうがないかな』という形で認めてもらっている」6月20日に選手村での報道陣向け内覧会でこう発言したのは、元日本サッカー協会会長の川淵三郎氏(84)。同氏は、19年12月に選手村の村長に起用され、国内外に向けた主催者の1人として就任していた。今年2月に東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗元会長(83)から、後任会長に推された“密室人事”で波紋を呼んだ川淵氏だが、またしても物議を醸している。毎日新聞によると、東京五輪の成功に向けて報道各社に協力を要請した川淵氏。開催をめぐって「マスコミを通じて相当な議論があった」とし、冒頭のように述べたというのだ。また川淵氏は「開催の是非ばかり議論されている」と指摘し、「国際社会に約束したイベントであるという立場での議論がほとんど行われていない」と不快感を表したとも報じている。さらに報道陣に向けて、「不満もあるでしょうが、ここまで来たのだから日本の国力、信頼感、日本のプライドを世界に発信していけるように支援をお願いしたい。マスコミもそこに心を砕いてもらいたい」と呼びかけたという。「オリンピックはしょうがない」と国民の気持ちを“代弁”したつもりの川淵氏だが、利己的な姿勢にネットでは批判の声が上がっている。《オリンピックはしょうがないかなって誰が言ってくれたの?そう思ってる人もいるだろうけど、私はそうは思えない。不満があったら協力できる訳がない》《結局、この人も馬鹿の一つ覚えで精神論でまとめようとしている。ただの一つも論理的じゃない。退場してください》《報道人へのこの要求、アスリートに対して八百長に協力しろと言っているに等しいのだが》今年5月、大会組織委員会が日本スポーツ協会を通じて協会公認のスポーツドクター約200人を募集していたことが判明。そのことで批判の声が上がっていたが、《何故この事が批判の対象になるの?》とツイートし、波紋を呼んでいた川淵氏。世論に耳を傾けているつもりなのかもしれないが、発言するたびにその溝は広がっているのではないだろうかーー。
2021年06月21日「’22年の4月からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります」そう語るのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。公的年金の受給開始時期は、現在は65歳を起点に、60歳までの繰り上げと、70歳までの繰り下げができる。「年金繰り下げ受給の魅力はなんといっても年金が増えること。1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%ずつ増額されます。仮に65歳時点で年金を年間200万円もらえる人が70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にまで増加するんです」ただし、繰り下げ受給によって所得が増えると、税金や保険料などもアップするため、年金の増額分に比べ手取りの増加はやや少なくなる。そもそも年金の受給開始時期は、夫と妻、厚生年金と基礎年金でそれぞれを別々に指定することができる。したがって、その時々の金銭や生活の状況によって一部だけを繰り下げることも可能だ。「けれど、実際に繰り下げているのは全受給者の1%程度。早く死ぬかもしれないから、繰り下げ受給をしても元が取れるかわからないと考えている人が多いのです」日本人女性の平均寿命は10年ごとに2歳ずつ延びて、現在87.45歳(’19年、厚生労働省)。仮に70歳まで繰り下げた場合に、受給期間が短くなることで減少する総受給額を、繰り下げによって増加した総受給額が上回るのは82歳前後といわれている。女性の場合、元を取れる確率は高そうだ。「女性は男性よりも長生きする一方で、厚生年金加入期間が短く年金額が少ない人も多いです。夫には定年後も働いてもらい、夫亡き後の生活に備え、自分の年金だけでも繰り下げるのが賢い選択。年金は、生きている限りもらい続けられますから、繰り下げ受給は長生きへの備えになるのです」繰り下げによる年金の増額は魅力的でも、老後資金を大きく取り崩してまで繰り下げるのでは本末転倒。2,000万円の貯蓄があっても、65歳以降、年300万円の支出があると70歳時の貯蓄額は500万円まで減ってしまう。大きな病気や災害など、不測の事態に備えるため、まとまった金額の老後資金は必要だと考えよう。とはいえ年金の繰り下げ受給によって年金額を増やせるのが最善。そのためには、働くことによって繰り下げ期間中の収入源を確保するのが一番。生活費のすべてを収入で賄えなくても、貯金に手を付ける金額を可能な限り減らしつつ、妻の年金だけでも繰り下げられると、老後の安心感が増す。「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載
2021年05月12日「’22年の4月からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります」そう語るのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。公的年金の受給開始時期は、現在は65歳を起点に、60歳までの繰り上げと、70歳までの繰り下げができる。「年金繰り下げ受給の魅力はなんといっても年金が増えること。1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%ずつ増額されます。仮に65歳時点で年金を年間200万円もらえる人が70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にまで増加するんです」ただし、繰り下げ受給によって所得が増えると、税金や保険料などもアップするため、年金の増額分に比べ手取りの増加はやや少なくなる。そもそも年金の受給開始時期は、夫と妻、厚生年金と基礎年金でそれぞれを別々に指定することができる。したがって、その時々の金銭や生活の状況によって一部だけを繰り下げることも可能だ。「けれど、実際に繰り下げているのは全受給者の1%程度。早く死ぬかもしれないから、繰り下げ受給をしても元が取れるかわからないと考えている人が多いのです」日本人女性の平均寿命は10年ごとに2歳ずつ延びて、現在87.45歳(’19年、厚生労働省)。仮に70歳まで繰り下げた場合に、受給期間が短くなることで減少する総受給額を、繰り下げによって増加した総受給額が上回るのは82歳前後といわれている。女性の場合、元を取れる確率は高そうだ。「女性は男性よりも長生きする一方で、厚生年金加入期間が短く年金額が少ない人も多いです。夫には定年後も働いてもらい、夫亡き後の生活に備え、自分の年金だけでも繰り下げるのが賢い選択。年金は、生きている限りもらい続けられますから、繰り下げ受給は長生きへの備えになるのです」サラリーマンの夫が年上の場合、注意してほしいのが加給年金の制度。家族手当のようなもので、夫が厚生年金に20年以上加入していて、妻が年下かつ厚生年金の加入期間が20年未満など一定の要件を満たせば、妻が65歳になるまで年約39万円がもらえる。妻が5歳年下なら39万円×5年分で約200万円に!しかし、加給年金は夫が厚生年金を受給していないともらえない。その場合、夫の厚生年金だけを65歳から受け取り、基礎年金は繰り下げるのがベスト。これなら繰り下げで多少なりとも年金を増やせるうえ、加給年金も受け取れるのだ。女性のほうが長生きする確率が高いことを考え、妻の年金はすべて繰り下げて長生き対策に。「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載
2021年05月12日「’22年の4月からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります」そう語るのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。公的年金の受給開始時期は、現在は65歳を起点に、60歳までの繰り上げと、70歳までの繰り下げができる。「年金繰り下げ受給の魅力はなんといっても年金が増えること。1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%ずつ増額されます。仮に65歳時点で年金を年間200万円もらえる人が70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にまで増加するんです」ただし、繰り下げ受給によって所得が増えると、税金や保険料などもアップするため、年金の増額分に比べ手取りの増加はやや少なくなる。そもそも年金の受給開始時期は、夫と妻、厚生年金と基礎年金でそれぞれを別々に指定することができる。したがって、その時々の金銭や生活の状況によって一部だけを繰り下げることも可能だ。「けれど、実際に繰り下げているのは全受給者の1%程度。早く死ぬかもしれないから、繰り下げ受給をしても元が取れるかわからないと考えている人が多いのです」日本人女性の平均寿命は10年ごとに2歳ずつ延びて、現在87.45歳(’19年、厚生労働省)。仮に70歳まで繰り下げた場合に、受給期間が短くなることで減少する総受給額を、繰り下げによって増加した総受給額が上回るのは82歳前後といわれている。女性の場合、元を取れる確率は高そうだ。「女性は男性よりも長生きする一方で、厚生年金加入期間が短く年金額が少ない人も多いです。夫には定年後も働いてもらい、夫亡き後の生活に備え、自分の年金だけでも繰り下げるのが賢い選択。年金は、生きている限りもらい続けられますから、繰り下げ受給は長生きへの備えになるのです」「人生100年時代」の年金は、できるだけ長く働き受給開始を遅らせて、年金額を増やすのが賢明だ。特に、年金額の少なくなりやすい自営業者やフリーランスは、定年がないメリットを生かして可能な限り、労働収入で暮らしたい。満額の基礎年金は月額6.5万円、夫婦で13万円ほどだが、5年繰り下げして70歳から受給を開始すれば額面で月額約9.2万円(夫婦で約18.4万円)、10年繰り下げで月額約12万円(約24万円)に増加する。繰り下げによって受給期間は短くなるが、70歳で受給開始なら82歳、75歳で87歳より長生きすれば、65歳から受け取るよりも得になるといわれている。90歳まで生きる確率は女性で6割強あることも考慮しよう。「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載
2021年05月12日「’22年の4月からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります」そう語るのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。公的年金の受給開始時期は、現在は65歳を起点に、60歳までの繰り上げと、70歳までの繰り下げができる。「年金繰り下げ受給の魅力はなんといっても年金が増えること。1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%ずつ増額されます。仮に65歳時点で年金を年間200万円もらえる人が70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にまで増加するんです」ただし、繰り下げ受給によって所得が増えると、税金や保険料などもアップするため、年金の増額分に比べ手取りの増加はやや少なくなる。そもそも年金の受給開始時期は、夫と妻、厚生年金と基礎年金でそれぞれを別々に指定することができる。したがって、その時々の金銭や生活の状況によって一部だけを繰り下げることも可能だ。「けれど、実際に繰り下げているのは全受給者の1%程度。早く死ぬかもしれないから、繰り下げ受給をしても元が取れるかわからないと考えている人が多いのです」日本人女性の平均寿命は10年ごとに2歳ずつ延びて、現在87.45歳(’19年、厚生労働省)。仮に70歳まで繰り下げた場合に、受給期間が短くなることで減少する総受給額を、繰り下げによって増加した総受給額が上回るのは82歳前後といわれている。女性の場合、元を取れる確率は高そうだ。「女性は男性よりも長生きする一方で、厚生年金加入期間が短く年金額が少ない人も多いです。夫には定年後も働いてもらい、夫亡き後の生活に備え、自分の年金だけでも繰り下げるのが賢い選択。年金は、生きている限りもらい続けられますから、繰り下げ受給は長生きへの備えになるのです」個人年金や企業年金などの収入があったり、貯蓄がかなりたくさんある場合など、貯蓄を大きく取り崩さずにいられるなら、繰り下げ受給を検討しよう。貯蓄の取り崩しはできるだけ避け、最低でも70歳時点で1,000万円は確保しておきたい。また、もし個人年金などの収入はあるがまとまった貯蓄がない、という場合は「一括受給」の選択肢も。65歳で受け取らなかった年金は「繰り下げ年数に応じて増えた金額で今後受給する」か「65歳からその年齢までにもらうはずだった年金を一括で受給する」かを選ぶことができる。65歳時点の年金額が200万円の場合、70歳で5年分を一括受給すると増額はないが1,000万円がもらえる。「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載
2021年05月12日老後生活の頼みの綱である年金の繰り下げ受給。しかし、なかには繰り下げが向いていない人も……。自分にぴったりの受給の仕方を診断しようーー!「’22年の4月からは、年金の受給開始年齢が75歳まで繰り下げられるようになります」そう語るのはファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん。公的年金の受給開始時期は、現在は65歳を起点に、60歳までの繰り上げと、70歳までの繰り下げができる。「年金繰り下げ受給の魅力はなんといっても年金が増えること。1カ月繰り下げるごとに年金額は0.7%ずつ増額されます。仮に65歳時点で年金を年間200万円もらえる人が70歳まで繰り下げると284万円、75歳まで繰り下げると368万円にまで増加するんです」ただし、繰り下げ受給によって所得が増えると、税金や保険料などもアップするため、年金の増額分に比べ手取りの増加はやや少なくなる。そもそも年金の受給開始時期は、夫と妻、厚生年金と基礎年金でそれぞれを別々に指定することができる。したがって、その時々の金銭や生活の状況によって一部だけを繰り下げることも可能だ。「けれど、実際に繰り下げているのは全受給者の1%程度。早く死ぬかもしれないから、繰り下げ受給をしても元が取れるかわからないと考えている人が多いのです」日本人女性の平均寿命は10年ごとに2歳ずつ延びて、現在87.45歳(’19年、厚生労働省)。仮に70歳まで繰り下げた場合に、受給期間が短くなることで減少する総受給額を、繰り下げによって増加した総受給額が上回るのは82歳前後といわれている。女性の場合、元を取れる確率は高そうだ。「女性は男性よりも長生きする一方で、厚生年金加入期間が短く年金額が少ない人も多いです。夫には定年後も働いてもらい、夫亡き後の生活に備え、自分の年金だけでも繰り下げるのが賢い選択。年金は、生きている限りもらい続けられますから、繰り下げ受給は長生きへの備えになるのです」しかし、繰り下げ受給の仕方によっては損をしたり、老後資金の安定性を損なう場合もあるという。■年金繰り下げ診断〈夫は自営業〉→YES→【タイプA】〈夫は自営業〉→NO→〈65歳以降も働く〉→NO→〈個人・企業年金などで貯金を大きく崩さずに暮らせる〉→YES→〈夫は年上〉→NO→【タイプB】〈夫は自営業〉→NO→〈65歳以降も働く〉→NO→〈個人・企業年金などで貯金を大きく崩さずに暮らせる〉→YES→〈夫は年上〉→YES→【タイプC】〈夫は自営業〉→NO→〈65歳以降も働く〉→YES→〈夫は年上〉→NO→〈65歳以降も収入のみで生活が成り立つ〉→NO→【タイプD】〈夫は自営業〉→NO→〈65歳以降も働く〉→YES→〈夫は年上〉→NO→〈65歳以降も収入のみで生活が成り立つ〉→YES→【タイプA】〈夫は自営業〉→NO→〈65歳以降も働く〉→YES→〈夫は年上〉→YES→【タイプC】〈夫は自営業〉→NO→〈65歳以降も働く〉→NO→〈個人・企業年金などで貯金を大きく崩さずに暮らせる〉→NO →【タイプD】【タイプA】働くことで年金に手を付けない「長働きタイプ」夫:繰り下げ、妻:繰り下げ。できる限り働く&繰り下げで年金額アップ!【タイプB】老後収入に困らない「悠々自適タイプ」夫:繰り下げ、妻:繰り下げ。長生きリスクに備えて繰り下げを!【タイプC】単純に繰り下げると損する「年下妻タイプ」夫:基礎年金だけ繰り下げ、妻:繰り下げ。夫の年金を部分繰り下げして加給年金をゲット!【タイプD】老後資金に不安のある「貯蓄守りタイプ」夫:65歳から受給、妻:65歳から受給。貯蓄に手を付ける前に受給開始を!【おひとりさまの場合】夫婦世帯よりも困窮しやすい、単身者の年金暮らし。おひとりさまは、少なくとも70歳まで働いて生活資金を確保しつつ、さらに繰り下げによって年金受給額も増加させるのがベストだ。「65歳以降は仕事をしないで、貯蓄を取り崩して生活するつもりという人は、繰り下げ受給には向いていない場合が多いです。たとえ2,000万円の老後資金を用意していても、65歳以降の年間支出が300万円だと、5年後の老後資金は500万円に。90歳まで生きるとして、老後20年を過ごすには心もとない金額ではないでしょうか。年金受給までの生活費を賄うために貯金を取り崩した結果、70歳の時点で貯蓄が1,000万円を下回るような場合には、繰り下げないほうが賢明だと考えます」また、夫婦の年齢差にも注意がいるという。「会社員の夫が年上の場合、夫は加給年金が受け取れます。しかし、夫が厚生年金を繰り下げて受給してしまうと、受け取れなくなってしまうのです。夫の基礎年金と妻の年金は繰り下げつつも、夫の厚生年金は65歳から受給するのがおすすめです」何歳まで繰り下げればいいのだろうか?「年金はもらいたくなったら、いつでも受給を開始できますから、まずは70歳を目標に繰り下げてみてはどうでしょうか」自分にぴったりの年金受給方法を見つけよう!「女性自身」2021年5月11日・18日合併号 掲載
2021年05月12日「老後資金をどう作ろうか」とお悩みの人も多いだろう。会社員なら、公的年金と退職金が老後資金の中心になるだろう。そんな退職金は、会社を辞めるとドンと手に入る。人は大金を持つと、気が大きくなって使いたくなるものだが、定年後の人生はおおよそ30年。もらってすぐ派手に使うのはNGだ。「ムダ遣いしないように、小分けして支給して」と考え、年金型での受取りを選ぶ人もいるかもしれない。「退職金の受け取り方は、よく考えて!」と、税理士の板倉京さんは助言する。「退職金には『退職所得控除』という大きな非課税枠がありますから、これを最大限活用するのがお勧めです」退職所得控除は、勤続年数で決まる。勤続20年以下の方の退職所得控除は40万円×勤続年数。勤続20年超なら、40万円×20年+70万円×(勤続年数-20年)。「退職所得国所を最大限活用するなら、退職金は、年金型より一時金で受け取るほうがよいでしょう。そのほうがお得になる方が多いと思います」たとえば22歳で入社、38年勤めあげ、60歳で退職するAさんを例に考えよう。「Aさんは勤続38年ですから、退職所得控除として2,060万円もの非課税枠があります。これを活用するのです」非課税枠が2,060万円ということは、そもそも退職金が2,060万円以下なら、税金は不要だ。たとえ2,060万円を超えていても、退職金から非課税枠である2,060万円を差し引いた額の2分の1に税率をかけて納税額を算出するので、税額はかなり抑えられる。「逆に、年金型で受け取った場合は、退職所得控除は使えません。1年間の退職金の受取額と公的年金を合わせた額から『公的年金等控除』を差し引き、税額を計算することになります。公的年金等控除は、退職所得控除と比べると額が少なめなので、納税額が多くなってしまう傾向があるのです。さらに、年金型で受け取る退職金は、公的年金と合わせて『収入』とみなされ、この収入を元に、社会保険料が計算されます。退職金が上積みされている分、収入が増え、社会保険料も高くなりがち。さらに、収入が高いと、高齢の低所得世帯への優遇措置などを受けられないこともあります」会社に預けておくと、比較的高利回りで運用してくれるという好条件があっても、退職所得控除を最大限活用できる一時金で受け取ったほうが、メリットが大きいのだ。板倉さんは「知らないと大損する!定年前後のお金の正解――会社も役所も教えてくれない手取りを増やす45のコツ」(ダイヤモンド社刊)を上梓。お得ワザを知って、老後資金をがっちり貯めよう。
2020年12月24日「ドイツではこれまで『もしクリスマスにロックダウンになれば暴動が起こる』と言われていました。でも、実際にロックダウンが決まったら、暴動どころか国民が一丸となってコロナと戦おうとしています」こう驚きをあらわにするのはベルリン在住の日本人だ。ドイツでは16日からこれまでよりも厳しい外出制限である「ロックダウン・ハード」が始まることが決まった。「クリスマスはヨーロッパでは一年で最も重要なイベントです。イギリスやフランスでも、クリスマスは一時的に外出制限を緩和すると発表されています。しかし、ドイツでは1月10日までお店も学校もできるだけ閉まるようになり、クリスマス前後の3日間は各世帯+4人までの親族の集会だけが可能となりました。また、ドイツ人にとっては年越しもビッグイベントです。普段は禁止されている花火が大晦日だけ解禁となるため、花火を人に向けて打ちまくるのがドイツの年越しです(笑)。例年この時期のみ、大量の花火がスーパーで飛ぶように売れていくんですが、今年は花火の販売もなくなりました。それでも国民が素直に従っているのは、やはりメルケル首相の真剣な訴えに耳を傾けたからだと思います」ドイツ国民を一つにまとめたというアンゲラ・メルケル首相(66)の“魂のスピーチ”は、9日に連邦議会で行われた。「(クリスマスマーケットの)ホットワインやワッフルの屋台がどれほど恋しいことでしょう。外食できずに持ち帰りだけが許されるなんて納得できないこともわかっています。ごめんなさい。本当に心の底から申し訳ないと思っています。でも、毎日590人の死者という代償を払い続けることは、私には受け入れられないのです。(中略)クリスマス前に多くの人と接触したせいで、『あれが祖父母と過ごす“最後“のクリスマスだった』なんてことにはさせたくない、それだけは避けたいのです」普段は冷静な対応で知られるメルケル首相が、「心の底から」と言う時には胸に手を当て、また両手を合わせて懇願。また時には絞り出すような声で必死に訴えたこのスピーチは、ドイツ国民だけでなく、世界中から賞賛された。ベルリンでは、ロックダウン直前の12日の土曜日にサンタの格好をしたバイカー集団約100人がチャリティーイベントを開催したという。「寄付を募り施設の子供にプレゼントを届けるサンタ集団なんですが、感染対策ということでバイクによるパレードをしました。ベルリン市民は距離を取りながらも沿道でペンライトを振るなど賛同する意思を伝えていました。今ドイツで起きていることは、暴動どころか、国民が連帯感を持ってこのコロナ禍での特別なクリスマスを迎えようとしているんです」(前出のベルリン在住日本人)一方の日本では、「こんにちは、ガースーです」と菅義偉首相(72)が動画配信番組で笑いながら出演したことで批判が殺到した。その直後に支持率が急落。菅首相は14日、これまで頑なに「感染拡大のエビデンスはない」と言って停止を拒んできたGoToトラベルの全国一斉停止を発表した。「菅首相は14日夜、トラベル事業と感染拡大の関連を示すデータはないとの認識を変えたのかどうか記者団に尋ねられると、『そこは変わらない』とし、『あくまで専門家の意見を踏まえた一時的な措置だ』と強調しました。結局、これまでの自身の主張を覆す決定についての明確な説明はありませんでした。GoToトラベルと感染拡大に因果関係がないといまだに言い張るなら、一時停止するのはなぜなのか。方針に一貫性がないこと以上に、その説明がなされないことが、何より国民を混乱させていることに気がつくべきではないでしょうか」(全国紙記者)菅首相が9月の就任以来に行った会見は、訪問先のインドネシアを含めて計3回のみで、国会は閉会。12月4日の会見も終始原稿に目を落としたまま、国会答弁と同じ内容を繰り返しただけで「朗読会」と批判された。桜を見る会、学術会議任命拒否、Go Toトラベル、何一つ国民が納得できる説明をせず、自らの言葉を発することもなく、国民をはぐらかし続けている。ツイッターでは、《国民に危機を訴えかけるメルケル首相 日本の首相は?》《メルケルさんとは格が違います。満面の笑顔「こんにちは。ガースーです」》《メルケルさん見て思ったけど、日本も民衆の心に響く言葉を発せる指導者がいる国であってほしい》《支持率急落したら、慌ててGoto停止。国民のためではなく自分のためにやっていることがわかる》心からの言葉で国民に向き合うメルケル首相。菅首相は一体どこを向いている?
2020年12月16日老後の生活を考えるうえで軸となる年金の受給額。妻のもらえる年金の額で損をしないためには、いくつかの“落とし穴”にご用心!「ねんきん定期便」には書かれていない注意点を早めに押さえておこうーー。「夫がもうすぐ定年なのですが、受け取れる年金を確認したときに、思いのほか金額が少なかったので、老後の生活をどうしたらいいのか悩んでいます」そう語るのは都内に住むA子さん(55)。すでに子どもたちは独立し、夫(58)と2人暮らしだ。毎年、誕生日に送られてくる「ねんきん定期便」で、年金額を改めて確認してみたところ、その金額に不安を覚える人は少なくない。「ねんきん定期便は夫と妻へそれぞれに届くので、夫婦合わせていくら受け取れるのかを確認することが大切です。ただし、ねんきん定期便に書かれている『加入実績に応じた年間額(年額)』から、社会保険料、所得税、住民税などを支払うため、実際には1割ぐらい差し引いた金額が手取りの額になります。そこから生活費をシミュレーションしましょう」そうアドバイスするのは、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんだ。A子さん夫婦の場合、夫は老齢厚生年金と老齢基礎年金を合わせて月額約16万5,000円、A子さんは結婚前に働いていたので、老齢基礎年金約6万5,000円に老齢厚生年金2万円がプラスされた額を毎月もらえる。社会保険料の1割分を差し引いた額で見てみると、夫の年金は月約14万8,500円となり、夫婦合わせた年金収入は月額で約23万3,500円となる。「夫の会社は退職金が少ないのと、老後の定期収入は年金だけ。それだけでは足りないので、私も夫も健康なうちは働きながら、その間は年金受給を繰り下げようと話し合っています」(A子さん)’19年の日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳。今後はより“長生きリスク”への備えが必要になってくる。「人生設計も夫に先立たれた後、妻ひとりの生活が成り立つように、いまや80代後半までではなく90代後半、あるいは100歳までのライフプランが必要になってきます」(井戸さん・以下同)年金受給額を増やす方法の一つに、A子さん夫婦が考えているのが「年金の繰り下げ」だ。年金は現在60〜70歳の間で、’22年4月からは60〜75歳の間で受給開始時期を選択できる。受給開始を60〜64歳に繰り上げると、1カ月あたり0.4%(現在は0.5%)差し引かれた額で一生涯受け取る。逆に66歳以降に受給開始を繰り下げると、1カ月あたり年金額は0.7%プラスされる。「年金を繰り下げ受給するときには、注意点があります。夫の厚生年金の加入期間が20年以上ある人は、65歳または定額部分の支給開始年齢に達した時点で、65歳未満の妻や18歳の年度末までの子どもがいる場合『加給年金』がプラスされます。妻が65歳以降になると、それが『振替加算』として老齢基礎年金にプラスされて妻が受け取れるのですが、夫が繰り下げを選択するとその期間は『加給年金』はもらえません。また、妻が老齢基礎年金の受給を繰り下げると、振替加算を受け取ることができなくなります」A子さん夫婦のケースで見てみよう。夫は65歳になったときからA子さんが65歳になるまでの3年間、加給年金が年39万9,900円もらえる。繰り下げを選択すると、3年分の加給年金をもらえなくなる。また、A子さんが65歳になってからは老齢基礎年金に加えて「振替加算」として年1万5,068円を生涯受け取ることができる。繰り下げを選択するとその期間は振替加算をもらえない。このケースでは、「加給年金と振替加算をもらいつつ、年金を繰り下げ受給する」のがベスト。「老齢厚生年金と老齢基礎年金は別々に受給開始時期を選択できるので、夫は老齢厚生年金を65歳から受け取り、老齢基礎年金を繰り下げる。妻は老齢厚生年金を繰り下げて、老齢基礎年金だけを受け取れるようにすれば、加給年金も振替加算も受け取ることができます。いずれも、一度選択すると取り消すことができないので、受け取れる額を比較して慎重に決めたほうがいいでしょう」加給年金・振替加算はねんきん定期便には掲載されない情報で、’66年4月2日以降に生まれた妻は振替加算をもらえないので注意が必要。妻の年齢で振替加算がいくら受け取れるのかは日本年金機構のホームページで確認しよう。「女性自身」2020年10月20日号 掲載
2020年10月08日老後の生活を考えるうえで軸となる年金の受給額。妻のもらえる年金の額で損をしないためには、いくつかの“落とし穴”にご用心!「ねんきん定期便」には書かれていない注意点を早めに押さえておこうーー。「ねんきん定期便」には、保険料を納めた期間に応じて、老齢厚生年金と老齢基礎年金の額が記載されている。そして、ねんきん定期便には書かれていないけれどもらえる年金があり、これは請求しないと受け取ることができないので注意が必要だ。自分がもらえる対象なのかどうかを確認する必要がある。そんな「もらい忘れ」に注意が必要な妻の年金を、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さんが解説してくれた。【ケース1】いまは専業主婦の妻が、独身時代に勤めていた会社に「企業年金」があったまず注意したいのが、「厚生年金基金」のもらい忘れ。年金は1階が国民年金、2階が厚生年金、企業年金を3階と表して、厚生年金基金は企業年金の一つにあたる。’14年3月までの加入期間で、おおむね10年未満で中途退職した場合、企業年金連合会に記録が移っている。「よくあるケースは、妻が寿退社するまで勤めていた会社に厚生年金基金があったのを知らずに放っておいてしまうこと。結婚後に姓や住所が変わると本人の特定が難しくなり、通知が送られてこないというケースがあるのです。企業年金連合会のホームページからコールセンターに問い合わせるか、勤めていた会社に連絡して確認することをおすすめします」(井戸さん・以下同)結婚してから夫の扶養に入ると、手続きは夫任せ、という人も多い。特に夫が会社を退職したときに注意が必要だという。【ケース2】夫の退職時に、妻が第3号被保険者から第1号被保険者に変更になった厚生年金に加入している会社員や公務員(第2号被保険者)に扶養される20歳以上、60歳未満の主婦や主夫は、国民年金の第3号被保険者になる。保険料は自分で納める必要はなく、65歳以降、老齢基礎年金をもらうことができる。「注意が必要なのは、夫の定年退職後です。60歳未満の妻は、60歳まで年金保険料を支払わないと老齢基礎年金を満額で受け取ることができません。夫の退職と同時に妻は3号被保険者から自営業者などが加入する1号被保険者になりますが、この手続きを忘れてしまいがちなのです。市区町村の国民年金課に行き、自分で手続きをしましょう」夫が転職を繰り返している場合も、妻はその都度「3号被保険者」になるので、転職の都度、自分で確認しておきたい。「ねんきん定期便」で、加入期間をチェックして、加入期間が40年に足りていないことがわかったら、60歳以降も国民年金に加入して保険料を納める「追納制度」を利用することで加入期間を40年、480カ月の満額にすることができる(ただし、さかのぼることができるのは10年以内の分まで)。【ケース3】妻の前年の年金+そのほかの所得の合計が77万9,900円以下だった専業主婦だった妻が夫に先立たれた後など、年金収入が少ない人には年金に上乗せして支給される給付金制度が適用されることを知っておきたい。「’19年9月からスタートした『年金生活者支援給付金』は、消費税が10%に上がったタイミングで設けられました。65歳以上で、国民年金の保険料に未納期間がない場合、老齢基礎年金に年6万円が上乗せされた額を受け取ることができます」受け取るためには、前年の年金とそのほかの所得の合計が77万9,900円以下で、同居の家族が住民税非課税といった条件がある。さらに、年金を受け取る前に夫が他界したら、遺された妻が、夫が受け取るはずだった年金の一部をもらえる制度もある。【ケース4】夫が年金を繰り下げ受給しようとしたが、受給開始前に亡くなった年金を支払い続けていた夫が亡くなったときに遺族年金があり、一緒に「未支給年金」の請求を行うが、遺族年金を受け取れない自営業の人などはもらい忘れる可能性がある。未支給年金とは、65歳以降に夫が受け取るはずだった年金を、遺族が代わりに受け取ることができる年金のこと。「すでに老齢基礎年金を受け取っている人が7月20日に亡くなったとすると、その人が最後に受け取れる年金は6月15日に支給される4月分と5月分になります。このとき、6月分と7月分が『未支給年金』となります。市区町村の国民年金課で手続きをしなければもらえない年金で、5年経過すると時効になってしまうので、忘れずに請求しましょう」また、年金を繰り下げている間に亡くなったとき、受け取るはずだった年金を過去5年間さかのぼって受け取ることも可能。たとえば、老齢基礎年金(78万円)、老齢厚生年金(122万円)ともに繰り下げをして70歳で受け取るつもりが、69歳で亡くなった場合、遺族が請求できるのは繰り下げ前の年金額200万円×4年分の800万円となる。これから75歳まで繰り下げられるようになるので、もらい損にならないように制度をきちんと知っておこう。【ケース5】’66年4月1日以前に生まれた女性で、厚生年金に1年以上加入していた公的年金の受け取りは原則65歳からが基準だが、65歳前でももらえる人がいる。「特別支給の老齢厚生年金」は、厚生年金に1年以上加入した場合、60歳から厚生年金の一部を受け取ることができる。金額は生まれた年によって異なってくる。「男性は’61年4月1日までに生まれた人、女性は’66年4月1日以前に生まれた人が対象です。受け取り開始の3カ月前に年金請求書が送られてきますが、『年金は65歳から受け取るものなので、後で請求すればいいや』と勘違いをして、請求し忘れているケースが散見されます」これも、手続きを忘れると5年で時効になってしまう。十分に気をつけよう。「女性自身」2020年10月20日号 掲載
2020年10月08日年金問題と言えば、昨年には「老後資金2,000万円問題」が話題となりましたが、平成19年には約5,000万件の年金記録が誰のものかわからないという「消えた年金問題」で大騒動となりました。現在も誰のものかわからない年金記録は約2,000万件あり、特に年金手帳の表紙がオレンジの人は要注意です。今回の記事では、年金手帳の表紙の色による違いと注意点について解説します。公的年金の種類と基礎年金番号日本年金機構|年金番号・年金手帳について表紙の色は交付年月日で違う表紙の色は、年金手帳の交付年月日などによって下記の4つに大別できます。昭和49年11月に国民年金手帳と厚生年金手帳が統一され、オレンジの年金手帳になりました。1つの手帳にすべての年金記録(番号)が集約されるようになったのです。さらに、平成9年1月には基礎年金番号の導入によって1つの番号ですべての年金記録が管理され、同時に年金手帳の色も青色に変わりました。共済年金加入者には基礎年金番号通知書が送付される共済年金加入者には年金手帳が発行されないため、基礎年金番号通知書の送付によって基礎年金番号が通知されます。日本年金機構|年金番号・年金手帳についてまた、平成9年1月(基礎年金番号導入時)には、国民年金番号や厚生年金番号を持っていた人に対し基礎年金番号通知書が送られました。年金手帳を再発行した人は青色基礎年金番号が導入される前に年金加入した人も、年金手帳を紛失して再発行すれば、年金手帳は青色に変わります。再発行前に記載されていた国民年金番号や厚生年金番号は新しい年金手帳にはなく、基礎年金番号だけが載っています。年金手帳がオレンジの人は要注意いまから年金の受給が始まる人のほとんどは、年金手帳がオレンジの人です。年金手帳がオレンジの人は、青色の人と比較して年金記録に漏れ・誤りが多いので注意が必要です。[adsense_middle]年金手帳がオレンジの人の年齢オレンジの年金手帳の交付は昭和49年11月から平成8年12月の間です。20歳で年金加入する人が多いので、年金手帳がオレンジの人の現在の年齢は44歳から66歳くらいです。一部に人はすでに年金受給が始まっていますが、大半は今後20年くらいの間に受給手続きすることになります。年金記録が漏れている可能性前述のとおり、年金手帳がオレンジの人は、年金加入時は国民年金番号や厚生年金番号が付番されていました。基礎年金番号に記録を統合するとき、誰のものかわからない年金番号が多数あることが判明しましたが、年金手帳がオレンジの人もこの中に含まれます。実際に記録漏れが多いのは次のような人です。転職回数が多い人結婚後に退職して姓が変わった人名前の読み方が複数ある人再婚している人転職回数が多い人何回も転職している人は、複数の年金番号を持っていることがあります。特に転職のたびに新しい年金番号を発行している場合、10件前後の年金番号を持っていることも珍しくありません。こういった事情から、数の多い番号の一部が統合されなかったことで年金記録漏れするケースが多数発生しました。また、転職回数の多い人は短期間で辞めた会社について忘れてしまっている可能性もあり、年金記録の空白期間については慎重に確認する必要があります。結婚後に退職して姓が変わった人結婚して姓が変わった人も年金記録に要注意です。結婚前の姓と結婚後の姓がうまく名寄せされずに、結婚前に加入していた年金記録が別人のものと判断されるケースがあるのです。年金記録を調べるとき、まずは結婚前の年金記録が正しく反映されているかを確認しましょう。名前の読み方が複数ある人など名前の読み方が複数ある人や漢字名をよく間違えられる人も、年金記録が漏れている可能性が高いです。年金加入時に漢字名や読み方が間違って登録されたため、別人の年金記録だと判断されたケースなどです。氏名が間違って登録されるのは、次のような場合です。小山(オヤマ)さんの読み方を「コヤマ」と登録長田(ナガタ)さんの漢字名を「永田」と登録斎藤(サイトウ)さんの漢字名を「斉藤」や「齋藤」と登録氏名以外にも、生年月日が誤って登録されていたケースもあります。再婚している人再婚して何度も姓が変わっている人も、年金記録の漏れが散見されます。婚姻や離婚前後の姓がうまく名寄せされないことが原因です。長期間、厚生年金に加入している人はあまり問題ありませんが、結婚や離婚のたびに国民年金の第1号、第3号被保険者への加入を繰り返しているケースは要注意です。年金記録が間違っている可能性年金記録が漏れているケース以外にも、下記のように記録自体が間違っているケースもあります。加入期間や標準報酬額(保険料や年金額の計算基礎となる報酬)に誤りがある第3号被保険者期間に誤りがある加入期間や標準報酬額に誤りがある厚生年金の加入期間や標準報酬額に誤りがあるケースも散見されます。勤務先の会社が誤って報告するケースもありますが、旧社会保険庁の年金記録の管理が十分でなかったことが原因で発生した誤りも多数見つかりました。また、昔は紙ベースの台帳で年金記録を管理していたため、年金記録をデータベース化する際に加入期間や標準報酬額などが誤って登録されたケースも数多くあります。ずさんな年金記録の管理が社会問題となり、旧社会保険庁解体の一因にもなりました。第3号被保険者の加入期間に誤りがある会社員の配偶者などが加入する国民年金第3号被保険者の記録についても、多くの誤りが発生しています。第3号被保険者の手続きは、配偶者が会社に届け出て会社が日本年金機構へ書類提出しますが、会社への届け出や会社の対応が遅くなったため、年金加入が遅れたり未加入だったりするケースもあります。第3号被保険者は保険料の支払いがなく手続きも自分でしないため、年金に対して関心が薄い人もいます。しかし、将来受け取る年金額が減ってしまうリスクがあるので、記録の確認だけでも自分でしましょう。基礎年金番号が付番されていない可能性平成9年1月以降、国民年金や厚生年金などに加入していない場合、基礎年金番号が付番されていない可能性もあります。基礎年金番号を付番してもらうには、年金事務所での手続きが必要です。基礎年金番号通知書を持っている人や年金定期便が送付されている人は、すでに基礎年金番号が付番されているので上記手続きは不要です。基礎年金番号が複数ある可能性基礎年金番号の最初の2桁が「99」の人は、基礎年金番号が複数ある可能性が高いです。年金加入時に基礎年金番号が確認できなかったときには「仮基礎年金番号」が発行されていました。「99」で始まる基礎年金番号は、あくまで仮の番号なので、年金事務所で正式な基礎年金番号を付番してもらいましょう。また、「99」で始まる基礎年金番号を持つ人に対しては、日本年金機構から確認の案内が送付されていますので必ず対応しましょう。年金記録の確認方法と訂正方法公的年金は老後の生活を支える重要な資金です。年金記録に誤りがあると年金額が少なくなるので、早い時期に年金記録を確認し、誤りがある場合は記録の訂正手続きを取りましょう。[adsense_middle]年金記録の確認方法年金記録は下記により確認できます。年金定期便:毎年ハガキで送付され「年金加入期間」が記載。35歳、45歳、59歳に封書で送付される定期便には加入記録が詳細に記載されている。ねんきんネット:インターネットで「年金加入状況」を確認できる。将来受け取る年金額のシミュレーションも可能。年金事務所:「年金加入状況」の確認のほか、年金相談も可能。年金記録確認のチェックポイント年金記録確認のチェックポイントは下記のとおりです。未加入期間の確認複数の年金に加入していた場合、前の年金の資格喪失日と次の年金の資格取得日が同日か確認しましょう。同日でない場合、その間の期間が未加入期間です。未加入期間の加入状況の確認年金記録上は未加入である期間についても、会社に勤めていたり国民年金保険料を払っていたりしたことがないか確認しましょう。自分の記憶以外にも、古い年金手帳、未加入期間の給与明細、源泉徴収票、保険料の振込用紙などで記録が判明するケースもあります。年金記録の訂正は年金事務所で年金記録の訂正が必要な場合、または可能性がある場合は年金事務所で確認・訂正します。本人確認書類以外に必要書類はありませんが、前述の古い年金手帳や当時の給与明細など記録の確認に役立ちそうな資料は持参しましょう。また、勤務先の会社名や加入時期など、覚えていることはメモしていくことをおすすめします。年金記録を証明する書類がなくても、勤務先の会社名や住所、加入期間が確認できれば、自分の年金記録として認められるケースもあります。よくわからない場合も含めて、まずは年金事務所で相談することをおすすめします。オレンジの年金手帳に関するまとめ年金手帳の表紙の色は交付年月などによって異なります。昭和49年11月からオレンジの年金手帳、平成9年1月から青色の年金手帳が交付されました。オレンジの年金手帳が交付されたときは国民年金番号や厚生年金番号が使われていて、基礎年金番号導入時にうまく統合されなかった年金記録があったため、年金記録に漏れが発生しました。老後生活を支える年金を確実に受け取るために、早めに年金記録を確認し、誤りがあれば年金事務所で訂正しましょう。
2020年10月06日「だってこの人たち6年、ここ(日本学術会議)で働いたら、その後、学士院というところにいって、年間250万円年金もらえるんですよ(一同「えーっ」)。死ぬまで(一同再び「えーっ」)。みなさんの税金から。そういうルールになってるんです」10月5日に放送された「バイキングMORE」(フジテレビ系)でそう語ったのは、フジテレビ報道局解説委員室上席解説委員の平井文夫氏(61)だ。菅義偉首相(71)が日本学術会議の会員候補だった学者6人の任命を見送った問題について解説する中で出た発言。これには坂上忍(53)ら番組の出演者も驚愕し、思わず声を挙げた。すでにこの部分だけ抜き出した動画はツイッター上で拡散しているのだが、これは明確な誤りだ、という指摘が相次いでいるのだ。《日本学士院は定員150名、終身会員です。日本学術会議の人が全員日本学士院に入れるはずがないだろ》《この平井文夫氏のコメントは、あまりに出鱈目で、びっくりしました。学士院会員に年金が出るのは確かですが、学術会議とは別組織で、学術会議を辞めたら学士院に、などという「ルール」(平井氏はルールと言いました)はありません》内閣府の特別機関である日本学術会議の会員数は210名。任期は6年で、3年ごとに約半数が入れ替わる。対して、日本学士院は文部科学省の特別機関であり、定員は150名で、会員は終身になっている。したがって、日本学術会議の会員を退任した者がすべて日本学士院の会員となることは、物理的に不可能なことなのだ。そもそも、両組織の目的はまったく異なる。いま注目を集めている日本学術会議は「わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業及び国民生活に科学を反映浸透させることを目的」(日本学術会議法 第二条)とした組織。科学的な知見に基づいた政府への提言などを主な役割としていて、会員も40~60代の研究者が中心で、70歳が定年となっている。一方、日本学士院は「学術上功績顕著な科学者を優遇するための機関とし、この法律の定めるところにより、学術の発達に寄与するため必要な事業を行うことを目的」としている。会員も、複数のノーベル賞受賞者を含む、国内外のさまざま学術賞を受賞したことのあるような重鎮によって構成されている。年齢層も60代後半から90代が多く、最年少はノーベル生理学・医学賞受賞者でもある山中伸弥所長(58、京都大学iPS細胞研究所)。彼らのような“学術上功績顕著な科学者を優遇”するための組織であるため、年金も支給されることになっているのだ。もちろん、日本学術会議は日本を代表する研究者で構成されているので、会員を退任したあと、日本学士院会員となる例はある。また、今年度から日本学術会議の会長を務める、ノーベル物理学賞受賞者の梶田隆章所長(61、東京大学宇宙線研究所)のように、両組織の会員を兼ねるという例もないわけではない。だが、会員数や任期の関係もあり、平井氏のいうように「ここ(日本学術会議)で働いたら、その後、学士院というところにいって」ということはあり得ないことなのだ。ツイッター上では平井氏のこの誤った情報によって、日本学術会議に対する憎悪が高まっている。平井氏の発言の映像とともに、こんなツイートが……。《税金にたかっている》《そりゃあ250万円の年金が 今の年金にプラスされるのなら 激怒してデモを起こすわな》目的も、属性もまったく異なる組織を関連付けて、日本学術会議への批判の材料とした平井氏。ほかにも不正確な発言があった。「2017年に日本学術会議が軍事研究の禁止というとんでもない提言を出したんですね」あたかも、近年になって日本学術会議が軍事研究に反対した反対し始めたような発言だったが、日本学術会議は創立翌年の1950年とベトナム戦争の最中だった1967年に“軍事目的の研究は絶対にしない”という内容の声明を出している。2017年の声明は、防衛装備庁が将来の“装備品”に使える基礎研究に研究費を支給する「安全保障技術研究推進制度」を2015年に創設したことを受けて、過去の声明を継承することを確認したものに過ぎない。平井氏は2017年の声明がきっかけで、「(政府の)堪忍袋の緒が切れて、もうちょっと“偏っていない機関”にできないかという声が政府内であがって、今回のこと(任命拒否)になった」と説明したが、日本学術会議の軍事研究に対する態度は70年間ずっと一貫している。むしろ変わってしまったのは日本政府のほうではなかろうか。平井氏は“首相が日本学術会員の人事に介入するのは当然”“日本学術会議はいっそ民営化するべき”といった趣旨の主張をしてきた。だが、誤った情報を基とした主張が説得力を持たないことは論じるまでもない。
2020年10月05日大学を卒業し会社に就職したときや転職したとき、必ずといっていいほど「入社手続きに年金手帳を持ってきて」と言われます。普段使わないだけに、どこにしまったか忘れて大慌てで探す人も多いと思います。今回の記事では、年金手帳がないと困ることを中心に、年金手帳の役割と再発行する方法について解説します。国民年金と年金手帳日本年金機構|年金番号・年金手帳について厚生年金保険被保険者証と国民年金手帳は昭和49年10月以前発行のもので、この年金手帳を持っている人のほとんどは年金受給者です。ブルーの年金手帳は、基礎年金番号がスタートした平成9年1月以降のもので基礎年金番号のみが記載されています。また、オレンジの手帳は平成8年12月以前の発行で、厚生年金番号や国民年金番号が記載され、「基礎年金番号通知書」が添付されています。基礎年金番号通知書基礎年金番号通知書は、基礎年金番号導入時にすでに厚生年金番号や国民年金番号が記載された年金手帳を持っている人に対し、基礎年金番号を知らせるために作成されたものです。年金手帳の再発行はせずに、各自の年金手帳に通知書を添付する形となっています。また、公務員などの共済年金加入者には年金手帳を発行しないので、基礎年金番号通知書によって基礎年金番号を通知します。日本年金機構|年金番号・年金手帳について年金手帳の役割日本年金機構|年金手帳再交付申請書再発行の申請方法年金手帳の再発行申請は、窓口での提出のほかに郵送や電子申請(e-Gov)でも可能です。電子申請(e-Gov)を行うには、事前に電子証明書の取得が必要です。年金手帳がない場合に起こること&再発行手続きに関するまとめ年金手帳は、国民年金に加入している証明であり、基礎年金番号や年金記録を確認するためのものです。公的年金への加入から年金受給するまでの間のさまざまな手続きに必要となります。マイナンバーカードがあれば年金手帳がなくても可能な手続きがあり、必要なときに再発行するという方法もありますが、「入社時に会社への提出が間に合わない」など不測の事態に備えて、紛失が判明したら再発行手続きしましょう。再発行手続きについて、第2、3号被保険者は会社へ年金手帳を紛失したことを届出しましょう。第1号被保険者は市区町村役場でも手続き可能ですが、即日再発行できる年金事務所に行くことをおすすめします。
2020年09月30日日本国民なら20歳になると国民年金に加入しなくてはなりません。すでに会社勤めなどをしている人なら労使折半で保険料を収めているはずですが、収入のない学生はどうしているのでしょうか。保険料が払えないからと未納のままにしている人、もしくはしていた人も多いのではないでしょうか。学生時代に国民年金の保険料を払っていないと、将来の年金額に影響が及びます。今回は、学生時代に年金の保険料を払わなかった場合の対処の仕方などについて解説していきます。国民年金には保険料の免除や猶予の制度がある自営業者や学生、農業の人など国民年金の第1号被保険者のうち、保険料を支払うことが経済的に困難な方のために、保険料を免除したり猶予したりする制度があります。免除や猶予の手続きをすると、何も手続きを行わずに保険料を納付しない、単なる未納とは区別されます。未納のまま放置すると、老齢年金の受給以外にも不利益を被ることがあります。そのため、免除や納付猶予の制度が利用できる場合はきちんと手続きをし、未納を避けるべきです。国民年金保険料未納のデメリットとは?国民年金保険料を免除や猶予の手続きをせずに未納のままにすると、どのようなデメリットがあるでしょうか。年金が受け取れない、または年金受給額が減る未納の場合、保険料を払わないので「年金額が減る」というデメリットがあることは、難なく想像ができると思います。けれども、「全く受け取れなくなる」可能性もあることは想定外の人が多いのではないでしょうか。老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)を受け取るには、保険料を納付済みの期間と、免除や猶予の期間の合計が10年以上であることが条件になります(受給資格期間といいます)。未納の期間が長くて受給資格期間を満たせない場合、老齢基礎年金を1円も受け取ることができません。「障害年金」「遺族年金」が受け取れない一般に「年金」というと、上述した「老齢基礎年金」のように老後に受け取る「老齢年金」をイメージする人が多いと思います。しかし公的年金には、亡くなったときに遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」もあります。障害年金、遺族年金を受給するためには以下のいずれか条件が必要です。それまでの加入期間の3分の2以上について、保険料を納付済みまたは免除されていること直近1年間に未納がないこといずれの場合も、未納の期間が長いと受給資格を満たせなくなり、いざというときに障害年金や遺族年金が受給できなくなる可能性があります。例えば、交通事故のケガで後遺症が残って働けなくなった場合などに障害年金が受け取れないのは、経済的なダメージも大きいはずです。保険料免除制度とは?本人・世帯主・配偶者の前年の所得が基準額以下の場合、「保険料の全額、4分の3、半額、4分の1」のいずれかが免除されます。いくら免除されるかは前年所得額によって決定します。免除を受けると年金の受給額は減額になりますが、半分は保証されます。保険料納付猶予制度とは?50歳未満の加入者で、本人と配偶者の前年の所得が基準額以下の場合に、納付を猶予してもらうことができる制度です。納付猶予は免除とは違い、後から保険料を納めることを前提としています。そのため、年金を受け取るために必要な受給資格期間に算入されますが、猶予期間分の年金の受給額には算入されません。学生納付特例制度は保険料の後払いを前提とした制度学生の場合は、納付猶予の特例で「学生納付特例制度」という制度を利用できます。「学生納付特例制度」とは?「学生納付特例制度」とは、学生で保険料を納めるのが難しい場合、本人の所得が118万円までであれば、年金保険料の納付を猶予する制度です。この制度を利用すれば、保険料を納めなくても受給資格期間に算入されます。しかし、「猶予」とは「免除」と違い、保険料の後払いを前提としています。ゆえに、そのまま保険料を納めなければ、将来の年金額は減額されるので注意が必要です。学生納付特例制度を申請し忘れた場合学生納付特例制度は、20歳になって「国民年金加入手続きのご案内」が送られてきたタイミングで申請するのが一般的です。もし、そのタイミングで申請しそびれた場合、2年1か月まで遡って申請を出すことができます。この期間も過ぎてしまった場合は学生納付特例制度は使えず、その期間は未納ということになってしまいます。未納期間分の保険料の後払いはいつまでできる?学生時代に学生納付特例制度を利用してもしなくても、保険料を納めていないなら、将来の年金額が減ることには変わりがありません。20歳から40年間、国民年金の保険料を払い込んだ場合に受け取れる年金額の年額は、2020年(令和2年)度で781,700円です。仮に3年間の未納だとすると、将来の年金額は約60,000円(約8%)も減ります。国民年金は一生涯受け取る年金なので、長生きすればするほど、減額の影響は大きくなります。そこで、納めていない保険料を後から納めて、将来受け取る年金を増やす方法について見ていきます。[adsense_middle]学生納付特例を利用した人の追納の期限とタイミング保険料納付猶予制度や学生納付特例は、保険料の納付を先延ばしにして後で払うことが前提であると述べました。その「後払い」にあたる行為を「追納」といいます。追納は、免除や猶予された期間の保険料を10年まで遡って納めることができる制度です。ただし、3年以上前の保険料を追納する場合には、経過期間に応じた加算額(延滞利子のようなもの)が付きますので注意してください。追納の最適なタイミングとは?3年以上経ってからの年金保険料の追納は加算額が上乗せされるので、2年以内に追納したほうがいいということになります。ただ、ここでもう一つ考えるべきことがあります。それは、追納した保険料は社会保険料控除の対象になり、所得税と住民税が軽減される点です。所得税と住民税の節税効果は収入の高い人ほど大きくなります。もし、追納によって所得税の税率が変わるような場合は、そのタイミングで追納するほうが、加算額を回避するより有利な可能性があります。学生納付特例を利用した人が社会人になったら、追納の保険料をいつ払うのがいいかを考えておきましょう。奨学金の返済と追納の関係日本学生支援機構の貸与型の奨学金を受けた場合、社会人1年目の10月から返済が始まります。ここで、年金保険料の追納と奨学金の返済が重なると、負担が重すぎる場合も考えられます。その場合は、奨学金の返済を優先し、年金保険料の追納は生活が安定してからにしましょう。なぜなら、奨学金を返済しない場合のほうがリスクが高いからです。未納で減った年金額を取り戻すその他の方法学生納付特例も利用せず、保険料が未納だった場合は60歳以降で年金額を増やす方法があります。厚生年金を継続して経過的加算額を増やす会社員の場合、厚生年金は最長70歳になるまで加入できます。国民年金の保険料は60歳以降は納めないため、60歳以降に会社勤めをしている場合は国民年金の年金額は増やせません。しかし、老齢厚生年金の経過的加算額は増えていきます。経過的加算額は厚生年金に3年加入して約60,000円増やすことができますので、3年間の未納で減った年金額をほぼ埋め合わせることができます。国民年金の任意加入国民年金が満額に足りない人は、60歳以降も65歳まで国民年金の任意加入をして国民年金保険料を納めることができます。60歳以降会社勤めをせずに厚生年金に加入しない場合は、この方法を利用すれば老齢基礎年金が増やせます。学生時代の年金の未納と追納に関するまとめ学生納付特例を利用した場合は、10年以内に遡って「追納」をすることができます。追納の保険料は社会保険料控除の対象になります。一方、学生納付特例を利用しなかった場合は、60歳以降に厚生年金の継続、または国民年金の任意加入で老後の年金を増やすことができます。上記のように、学生時代の国民年金の保険料が未納のとき、学生納付特例を利用した場合としない場合で、老後に受け取る年金を増やす方法が異なるため注意しましょう。
2020年09月27日日本国民であれば、20歳になったら国民年金に加入しなくてはなりません。それは、まだ働いていなくて収入のない学生も同様です。2021年(令和3年)3月までの国民年金保険料は16,540円(月額)ですが、もし保険料を支払うことができない場合はどうすればいいのでしょうか。国民年金には単なる未納とは異なる、免除や猶予という制度があります。学生には、学生納付特例猶予があります。今回は、これらの制度の基礎知識についてお伝えします。大学生が利用できる国民年金の猶予制度「学生納付特例」とは?「免除」と「猶予」は、経済的な理由で国民年金保険料を納めることができないときでも未納にならないための制度です。免除や猶予の手続きを行っておけば、その期間は受給資格期間に含まれます。これらの制度を利用したのちに年金額を増やすためには、保険料の追納や、60歳以降も国民年金に任意加入するなどが必要です。国民年金の免除制度とは?免除制度は失業などの理由で国民年金保険料を納められない人が審査を受けて、その所得に応じた免除割合が決められます。そして、免除の割合によって将来受け取る国民年金が減額されます。国民年金の納付猶予制度とは?これに対し、納付猶予は学生やそれ以外の若年者(20歳以上50歳未満)といった、将来的に納付が可能な人に納付を猶予する制度です。免除制度では年金額への反映がされますが、猶予制度では猶予期間中の年金額は未納と同様に計算されません。「学生納付特例制度」とは?20歳以上で所得が一定以下の学生は、申請により国民年金保険料の納付猶予を受けることができます。所得は本人の所得のみが対象です。所得基準2020年(令和2年)度の所得基準は以下のとおりです。118万円+(扶養親族等の数×38万円)+社会保険料控除等「学生納付特例制度」のメリット「学生納付特例制度」は国民年金保険料の支払いが猶予される、税金でいうところの「延納」のようなものです。よって、保険料を払わなければ年金額は減ってしまいます。では、「学生納付特例制度」を利用した場合のメリットには、どんなものがあるのでしょうか。手続きをしていれば受給資格期間に算入される公的年金を受給するためには、年金保険料を支払った期間や保険料の免除期間の合計が一定以上必要です。その期間を「受給資格期間」といいます。現在、老齢基礎年金(国民年金の老齢年金)の受給資格期間は10年です。国民年金に限らず、厚生年金の保険料を支払った期間や免除期間も合算して10年以上であれば、老齢基礎年金を受給することができます。受給資格期間受給資格期間は以下の計算式で求めます。「国民年金の保険料の納付月数」+「若年者納付猶予制度の対象月数」+「国民年金の保険料の免除月数」+「学生納付特例の対象月数」「学生納付特例の対象月数」は受給資格期間に含まれるため、単なる未納の場合に比べて有利になります。「障害基礎年金」や「遺族基礎年金」を受け取る権利ができる公的年金は老後に受け取る老齢年金だけではありません。亡くなったときに遺族の生活保障の役割を持つ「遺族年金」、そして重度の障害になったときの所得保障である「障害年金」があります。「学生納付特例制度」の手続きをし、国民年金に加入した人は「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を将来受ける権利が生じます(ただし、障害を負った、または亡くなった時点で、障害基礎年金や遺族基礎年金それぞれの受給要件を満たしている必要があります)。特に、万が一のときに障害基礎年金を受け取れないと経済的なダメージが大きいので注意が必要です。仮に、交通事故などでケガをして身体障害者になってしまった場合、本来なら障害基礎年金の障害等級の1級や2級にあてはまる場合でも、未納では受け取ることができません。公的年金は老後の年金だけではないことをきちんと理解して、学生納付特例の手続きを忘れずにしておきましょう。追納によって減った年金額を満額にできる「学生納付特例制度」を利用した場合、保険料を全額納付した場合と比べて年金額が減額になります。しかし、「学生納付特例制度」の承認を受けた期間の保険料については、後から納付(追納)することにより、老齢基礎年金の年金額を増やして最終的に満額にすることができます。また、社会保険料控除により、所得税・住民税が軽減されます。「学生納付特例制度」を利用した期間が年金額に反映されないのは、「学生納付特例制度」が保険料の猶予であり、後払いを前提としているからだと考えられます。追納するなら2年以内を目標にする追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除等期間に限られています。「学生納付特例制度」を受けた期間の翌年度から数えて、3年目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額(延滞金のようなもの)が上乗せされます。追納するなら2年以内を目標にしましょう。追納によって受給額はどれくらい増えるか追納することで受給額はどの程度増えるのでしょうか。例えば、1カ月分の保険料を追納したら、「781,700円(令和2年度の満額)/480カ月≒1,629円」の年金を増額できます。1年分の追納の場合は、約19,542円の年金を増額できます。増額した年金は終身で受け取れます。「学生納付特例制度」のデメリット追納をしなければ年金額が減額になる上記の追納の説明でも述べましたが、「学生納付特例制度」を利用した場合、追納をしなければ年金額が減額になります。例えば、学生納付特例制度を2年間利用したとします。減額される年金額は以下のとおりです。(781,700円×38年)÷40年=742,615円満額との差額は以下のとおりです。781,700円-742,615円=39,085円実に40,000円近い年金額のカットが、65歳以降一生涯続きます。学生時代にはありがたかった学生納付特例制度が、忘れたころに老後生活にネガティブな影響を及ぼすのです。「学生納付特例制度」を申請する方法[adsense_middle]20歳になったら必要な国民年金の手続き20歳の誕生日を迎えてから2週間以内に、日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」という書類一式が、保険料の納付書とともに送られてきます。通常は、毎月保険料を納めることになります。しかし、収入のない学生で保険料の支払いが難しい場合などは、これまで解説してきたとおり「学生納付特例」を利用することになります。学生納付特例制度の申請書は「国民年金加入のお知らせ」の書類一式の中に入っています。学生納付特例制度の申請場所学生納付特例制度の申請は次の場所で受付けています。住民票のある市区町村の役所の国民年金担当窓口最寄りの年金事務所なお、学生納付特例の申請は郵送でも受付けています。手続きに必要なもの窓口の申請の際には以下のものが必要です。国民年金保険料学生納付特例申請書年金手帳(※)学生証または在学証明書※まだ年金手帳を持っていない人は身分証明書(運転免許証・パスポート・個人番号カード)を持参します。学生の年金&猶予と免除の違いに関するまとめ収入のない学生は、申請によって保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」を利用できます。「学生納付特例制度」は保険料の支払いを猶予する「後払い」を前提とした制度であるため、期間中の年金額には反映されません。10年以内に追納をすることにより、年金額を満額に近づけることができるようになっています。また、「学生納付特例制度」の期間は老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。このように、単なる未納と手続きを踏んで猶予してもらうことには大きな違いがあるので、「国民年金加入のお知らせ」が届いたらくれぐれも放置をしないようにしましょう。
2020年09月05日少子高齢化が進み、公的年金だけでは老後の生活が成り立たないと、ほとんどの人が不安を感じています。特に、国民年金だけで厚生年金のような上乗せがない自営業者は、より一層不安が大きいことでしょう。今回は、自営業者の人の老後の支えになる公的年金の基礎知識と、老後のための自助努力について解説します。自営業の公的年金制度についての基礎知識厚生労働省ホームページ国民年金の年金額はどのくらい?公的年金でもらえる金額は?では、国民年金の年金額は厚生年金に比べてどのくらい少ないのでしょうか。厚生労働省が公開している「平成30年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、会社員などの第1号厚生年金被保険者に対する厚生年金の平均支給額は、月に143,761円です。これに対し、国民年金の平均支給額は月に55,809円です。夫婦ともに国民年金の世帯では、月当たりの年金額が10万円強ということになります。これでは、住宅ローンなどもなく質素な暮らしをしたとしても、生活していくことは難しいでしょう。もちろん、健康であれば働けるだけ働くことも可能ですし、それが自営業のメリットでもあります。ただ、将来にわたって健康である保証はなく、若いうちから年金増額対策をコツコツ積み重ねることは必須といえます。自営業者が加入できる年金の上乗せ制度とは?それでは、具体的に自営業者が年金上乗せの自助努力として利用できる制度について見ていきましょう。自営業者が利用できる年金対策の制度は主に以下のようなものがあります。iDeCo(個人型確定拠出年金)小規模企業共済国民年金基金[adsense_middle]iDeCo(個人型確定拠出年金)iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、個人である加入者が掛け金を積み立て、自分で選んだ商品で運用を行い、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができる私的年金制度です。運用の成果によって、将来受け取る年金額は変化します。iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入条件iDeCoは原則として日本在住で20歳以上60歳未満、国民年金や厚生年金などの公的年金に加入している人であれば加入できます。iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金iDeCo(個人型確定拠出年金)は月々5,000円以上1,000円単位の掛け金から始めることができます。掛け金には上限額があり、自営業者の場合は月額68,000円が上限となっています。iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリット掛金が全額所得控除iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛け金は全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。この節税メリットはiDeCo(個人型確定拠出年金)の最大の魅力といっても過言でありません。個人の税引き後の資金で運用するのに比べ、断然有利になります。運用益に対して非課税個人の資金を投資信託などで運用した場合、運用益に対して所得税が課税されますが、iDeCoでの運用益には課税されません。受取時にも税制優遇60歳以降にiDeCoの積立金を受け取る場合、分割して受け取る年金方式と一括で受け取る一時金方式、または両者の併用から選ぶことができます。年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。インフレ対策が可能iDeCoでは株式や不動産(リート)などに分散投資が可能となっており、老後までに徐々にインフレが起ったとしても対策することができます。iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリット60歳まで引き出しできないiDeCo(個人型確定拠出年金)の積立金は原則として60歳になるまで引き出しはできません。iDeCo(個人型確定拠出年金)は老後資金を自助努力で準備する制度であるため、税制が優遇されています。それゆえ、目的外の資金の利用は制限されるのです。また、一度加入すると、掛金の減額はできますが脱退はできません。元本保証ではないiDeCo(個人型確定拠出年金)の運用は加入者が自ら行います。運用商品の中には元本保証でない投資信託も含まれます。運用がうまくいけば高い収益を得ることができる半面、場合によっては元本割れを起こす可能性もあります。ただ、iDeCoの毎月定額での運用商品の買い付けは長期で続けるほど平均購入単価が下がり、リスクを抑えることにつながります。小規模企業共済小規模企業共済とは、個人事業主や会社役員などが事業を廃止・会社を退職する際に、それまで積み立てた掛金に応じて給付金を受け取る退職金制度のことです。独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しており、全国で約132万人の加入者がいます。小規模企業共済の加入資格常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業では5人以下)の個人事業主および会社の役員小規模企業者たる個人事業主に属する共同経営者(個人事業主1人につき2人)一定規模以下の企業組合・協業組合及び農業組合法人の役員常時使用する従業員が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員なお、加入年齢の制限はありません。小規模企業共済の掛金毎月1,000円以上で500円単位で自由に設定可能で、上限は月額70,000円です。増額、減額も可能です。小規模企業共済のメリット積み立てた以上の金額が受け取れる事業の廃業や退職時に、それまで積み立てた金額を「共済金」として受け取ることができます。20年(240ヶ月)以上積み立てていれば、掛金の支払額以上の給付が見込めます。掛金が全額所得控除小規模企業共済の掛け金は全額、所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となります。受取時にも税制優遇小規模企業共済の共済金を受け取る場合、分割して受け取る年金方式と一括で受け取る一時金方式、または両者の併用から選ぶことができます。年金の場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になります。契約者貸付制度あり払い込んだ掛金の範囲内で、無担保・無保証人にて事業資金の貸付けが受けられます。小規模企業共済のデメリット掛け捨てと元本割れのリスクあり納付月数が12ヶ月(1年)未満で解約となった場合は掛け捨てになります。また、加入期間が20年未満の場合は、元本割れしてしまいます。国民年金基金国民年金基金とは、国民年金の第1号被保険者が任意に掛金を拠出することによって将来の年金受給額を増やす制度です。各都道府県ごとに設立された「地域型国民年金基金」と、同じ職種ごとに全国規模で設立された「職能型国民年金基金」があります。国民年金基金の加入資格20歳から60歳になるまでの間の人で、国民年金の保険料を納めている第1号被保険者日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の国民年金任意加入被保険者国民年金基金の掛金掛金月額は加入時に選択した給付の型、口数、年齢、性別に応じて変わりますが、将来も一定です。国民年金基金のメリット掛金が全額所得控除国民年金基金の掛け金は全額、所得控除(社会保険料控除)の対象となります。将来、受け取る年金額が確定している国民年金基金では加入時の予定利率が将来にわたって変わらないため、将来受け取る年金は運用状況などによって変動することはありません。終身年金を選択できる国民年金基金に加入する場合、少なくとも最初の1口目は、終身年金を選択することが必要です。終身年金は一生涯、年金を受け取ることができます。そのため、長生きのリスクに対応することが期待できます。国民年金基金のデメリット一度加入すると解約できない国民年金基金への加入後は原則として解約できません。掛金の支払いが困難な場合は、減額や支払い猶予を利用できます。インフレ対応ができない国民年金基金の予定利率は加入時から将来にわたって変わらないと述べました。これは、将来の年金額が確定しているということであり、インフレによる物価上昇には対応できません。国民年金基金は遠い将来のための制度ですが、将来のインフレリスクに対応できないことは大きなデメリットといえます。自営業者の年金に関するまとめ自営業者の老後の公的年金は国民年金しかないため、それだけで生活していくことはほぼ不可能です。対策としては働けるうちは働き、働いている間に国民年金だけでは足りない部分を自助努力で準備することが考えられます。自助努力のために活用できる主な制度は、iDeCo(個人型確定拠出年金)、小規模企業共済、国民年金基金があり、それぞれにメリット、デメリットがあります。加入を検討する際は、自分が重視する点は何かなどをよく考えましょう。
2020年09月02日国民年金は日本国民なら20歳になったら加入しなくてはならないはずなのに、納付率が6割に満たないという調査結果が出ています。「年金財政はいずれ破綻するから年金保険料は払わない」という若者が増えているのです。さらに、2019年の金融庁報告書をきっかけとした「老後2000万円問題」のニュースが、公的年金制度への不信に拍車をかけるようになりました。本当に日本の年金制度は破綻するのでしょうか。今回は年金制度の実情と、私たちが備えるべきことについてわかりやすくお伝えします。日本の年金制度の現状最初に、簡単に日本の公的年金制度の現状についてご説明します。公的年金制度の仕組みは「2階建て」と呼ばれます。基礎年金(1階部分)として、20歳以上60歳未満のすべての人を強制加入とする「国民年金」基礎年金の上乗せ(2階部分)として、厚生年金・共済年金などの被用者年金さらなる上乗せ(3階部分)として確定拠出年金や厚生年金基金などがあります。厚生労働省ホームページ公的年金は世代間扶養の仕組み公的年金制度でよくある誤解に、「自分が受け取る年金は自分が負担していた年金保険料から支払われる」というものがあります。日本における公的年金制度はそのような「積立て方式」ではありません。現役世代の納める保険料で高齢者世代の年金給付を賄う、世代間扶養の仕組み(賦課方式)で成り立っているのです。現在、日本は少子高齢化が進行しており、1人の年金受給者を支える現役世代の人数は減る一方となっています。2050年には現役世代1.2人で1人の年金受給者を支えるようになると言われています。ほぼ1人の現役世代の年金保険料で、1人の年金受給者の年金給付を賄うことはできるのでしょうか。年金制度崩壊が不安視されるのは、このような事情からです。なぜ、日本の公的年金制度は破綻しないのか結論から言いますと、日本の公的年金制度は破綻しません。公的年金制度が破綻しない理由なぜ、日本の公的年金制度は破綻しないと言えるのでしょうか。それは、以下の理由からです。公的年金制度が維持できないと国が困るから長期的に年金原資が枯渇しないように運用しているからマクロ経済スライドで年金保険料収入と年金給付を調整しているから公的年金制度が維持できないと国が困るから公的年金制度が破綻しない一番の理由は、「公的年金制度がなくなると、国はそれ以上に巨額の生活保護費を負担しなくてはならなくなる」からです。国には日本国憲法にも謳われている最低限度の生活を国民に保障するために、生活保護を支給する義務があります。生活保護の財源は全額税金です。つまり、全額国の負担ということになります。これに対し、公的年金は加入者と企業からの年金保険料と税金で賄われているため、生活保護よりはるかに国の負担は少なくてすみます。よって、国は制度の改正はしますが、廃止することはほぼありえないと考えられます。長期的に年金原資が枯渇しないように運用しているから2016年10月に従業員数が501人以上の事業所において、それまでの「週30時間以上働く労働者」から、「週20時間以上働いており、賃金の月額が8万8000円以上で、雇用期間が1年以上見込まれる」労働者へと厚生年金加入対象者が拡大されました。そして、今後はさらに厚生年金加入対象者が拡大されます。理由としては、パートタイマーなどの非正規労働者の将来の生活のためと謳われています。しかし、実際にはこの改正によって年金保険料収入が増えることが、大きな目的です。このように、公的年金は原資が枯渇しないように、保険料収入と支出のバランスが取れるような調整を随時行っているのです。上記のような改正以外にも、加入期間を延ばして年金保険料を増やす方法などが考えられます。公的年金制度は保険なので、現役世代からの保険料収入と高齢者に支給する年金を調整することで、維持することが可能です。マクロ経済スライドで年金保険料収入と年金給付を調整しているから「100年安心プラン」と呼ばれた2004年の年金制度改正では、「マクロ経済スライド」という制度が導入されました。「マクロ経済スライド」とは年金制度の収入である保険料と、支出である年金給付を調整する仕組みです。マクロ経済スライドによって、賃金や物価の上昇にともなう年金給付の伸びは抑えられるようになります。そのため、現在年金を受給している高齢者と、保険料を負担している現役世代との公平性が高くなると言われています。将来の公的年金はどうなるのか?「日本の公的年金制度は破綻しない」という結論ですが、この結論は老後の安心を意味しているわけではありません。制度としての公的年金は維持されますが、そのために国民に有利な変更がされる可能性はゼロに等しいのです。年金制度崩壊のための改正というのは、ほぼ「給付の引き下げ」の繰り返しです。公的年金は生きている限りずっと受給できるため、老後の生活資金のなかで重要なものです。しかし、年金だけで生活することはほぼ不可能であり、老後生活への不安はつきまといます。年金はいつからもらえるのか?現行の公的年金制度では、支給開始年齢を65歳としています。受給開始年齢は前後5年繰り下げと繰り上げが可能で、60歳から70歳で選べるようになっています。繰り上げた場合は年金額は減額、繰り下げた場合には増額される仕組みです。2020年の改正では、繰り下げ可能な年数を10年に延ばし、60歳~75歳で選べるようになります。寿命の延びとともに働く期間も延長し、受け取る年金を増やせるようにする狙いからです。「75歳にならないと年金が受け取れない」と誤解する人もいますが、そういうことではありません。年金不安への対策年金を受け取り始める時点における年金額が、現役世代の手取り収入額と比較してどのくらいの割合かを表す数字として、「所得代替率」というものがあります。将来的には、所得代替率は50%くらいと考えておくといいでしょう。いくら質素な生活をしたとしても現役時代の半分の収入では生活は成り立たないはずです。公的年金の不足分はどのように補えばいいのでしょうか。[adsense_middle]年金問題を解決するにはどうすればいいか?公的年金制度を正しく理解し、改正にも注意する働く期間を延長して年金を繰り下げ受給するiDecoなどを活用して老後資金の不足分を準備しておく公的年金制度を正しく理解し、改正にも注意する残念なことに公的年金制度について、義務教育で詳しく学ぶ機会が私たちにはありません。そのせいで、制度を誤解して「年金はどうせもらえないのだから、保険料は払いたくない」などと考えてしまうと、将来の生活が成り立たなくなる可能性もあります。細かいことまで知らなくてもいいですが、年金制度の大まかな仕組みや、破綻はしないけれど老後生活には不安があることなどを理解しておきましょう。そして、改正はたいていの場合、国民に不利益なものになりますので、その都度確認してください。働く期間を延長して年金を繰り下げ受給する平均寿命の伸びにともない、健康なら65歳以降も働くことを考えましょう。働いている間は年金は受け取らず、仕事の収入で生活するようにします。そうすることで年金の繰り下げ受給になり、将来受け取る年金の額を増やすことができます。iDecoなどを活用して老後資金の不足分を準備しておく現役時代の半分しか年金で賄えないので、老後資金の不足分は自助努力で備えなければなりません。いくらくらい準備したらいいか、シミュレーションをしてみましょう。iDecoは、公的年金だけでは不足する老後資金の準備手段として、国が税制面を優遇している制度です。積極的に活用しましょう。年金制度崩壊に関するまとめ少子高齢化により、年金財政は悪化の一途をたどっています。漠然とした不安を抱えたままにせず、年金制度をしっかり理解して必要な準備を考えましょう。その上で、できるだけ早いうちに対策を講じる必要があります。ねんきん定期便などを参考に不足額を算出し、不安のない老後を迎えたいものです。
2020年07月31日「もし、あなたが自営業者やフリーランスとして働く夫を亡くした場合、夫が会社員の人ならもらえる『遺族厚生年金』がありません。平均寿命が男性より長い女性は、夫の死後に訪れる生活について、早めに考えておく必要があります」そう話すのは、年金に詳しいファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんだ。年金保険料を25年以上納めていた元会社員の夫が亡くなった場合、夫が受給していた老齢厚生年金の4分の3を妻は受け取ることができる。「夫婦2人の国民年金(老齢基礎年金)は約13万円、夫の現役時の収入で決まる厚生年金の報酬比例部分が約9万円、合計約22万円を受給していた夫婦がいたとします。夫が亡くなった後でも、厚生年金の75%にあたる約6万8,000円が終身で受給可能。自分のぶんの国民年金とあわせ、月に13万円ほどの年金を受け取ることができる」(山中さん・以下同)だが、これは厚生年金加入者だけの制度。自営業者やフリーランスなど、国民年金のみに加入している第1号被保険者にはこれに類する制度はない。国民年金は満額でも月に約6万5,000円、夫婦あわせても13万円程度にすぎない。夫が亡くなった場合、年金額が半減すると思って備えたほうがいい。そこで、山中さんがおすすめの対策を教えてくれた。【国民年金基金】掛金の上限額(自営業者、年間):合計81万6,000円加入年の上限:60歳まで(任意加入者は65歳まで可)受け取れる時期:60歳以降節税効果の例:年約24万円※特徴:現在は予定利率1.5倍で運用されている。ライフプランに応じて、受給の種類を選ぶことができて、終身受給のものもある。保険料は所得控除の対象になり、所得税や住民税を節税できる。【iDeCo(イデコ)】掛金の上限額(自営業者、年間):合計81万6,000円加入年の上限:60歳まで(2022年、年金被保険者については65歳まで引き上げ)受け取れる時期:60歳以降節税効果の例:年約24万円※/運用益非課税特徴:金融商品を選んで、自分で運用する。国民年金基金よりも高い利率で運用できる可能性がある一方、元本割れのリスクも。受け取りは分割と一括で選べて、一括の場合、サラリーマンの退職金と同様に、税金が大きく優遇される「退職所得控除」の対象になる。【小規模企業共済】掛金の上限額(自営業者、年間):84万円加入年の上限:働いている間はいつでも受け取れる時期:原則廃業時節税効果の例:年約24万円※特徴:現在は予定利率1%で運用されている。自営業者のための「退職金制度」。途中解約しない限り、払い込んだ総額を下回ることはなく、受給権の差し押さえも禁止されている。保険料は所得控除の対象。受け取りは分割と一括どちらでも選べる。【付加年金】掛金の上限額(自営業者、年間):4,800円加入年の上限:60歳まで受け取れる時期:65歳以降節税効果の例:年約1,500円※特徴:国民年金保険料に月々400円を足して納めると、将来年金額が月々200円増える。仮に50歳から10年間払い続けると、年金額は2万4,000円増える。国民年金基金に加入していると、付加年金を払うことはできない。※加入時の上限や受取金額は加入状況等により異なる場合がある。課税所得400万円で上限額まで加入した場合の所得控除による節税効果の例。【事業の法人化】メリット:個人事業主よりも煩雑な手続きが必要になるが、法人を設立して、そこに勤めているという形態をとれば、厚生年金に加入できる。また企業型確定拠出年金に加入した場合、掛金は損金として計上できるので、税制上のメリットも受けられる。国民年金加入者のみが入れるのが「国民年金基金」だ。「国民年金に上乗せされて、年金額を増額します。利回りは限定的ですが、亡くなるまで保障が続く、終身のものもあるのがメリット。もう少し増やしたいなら個人型確定拠出年金『iDeCo』です。運用の成果によって受取額が変動します。もし加入中に亡くなっても、積み立てた資産は家族に“継承”できる。掛金の上限額は2つ合わせて月6万8,000円です」(山中さん・以下同)両方に加入したい場合、働いている夫と専業主婦の妻であれば、お得な組み合わせがある。「iDeCoは『小規模企業共済等掛金控除』なので、契約者本人のみの控除ですが、国民年金基金は『社会保険料控除』。夫が妻の掛金を夫の所得から控除できます。よって、収入のある夫がiDeCo、妻が国民年金基金に加入するというのが、控除のメリットを最大限活用できる入り方です」自営業者やフリーランスには退職金はないが、それに代わる制度として「小規模企業共済」がある。「掛金は月1,000円から、500円単位で最大7万円。他の制度と違い、働いている間は何歳まででもかけ続けられ、年齢と関係なく、仕事を辞めたときに共済金を受け取れる」iDeCoと小規模企業共済は、一時金で資産を受け取る場合、「退職所得控除」扱いにすることができる。控除額は勤続20年までは1年につき70万円というふうに増えていくのだが、この二つの制度では、加入期間を勤続年数と読み替えて控除計算できる。「同じ年に両方を受け取ると、控除額を超えて課税される場合は、受け取る時期を一定期間開けたり、一括ではなく分割で受け取るなどの対策も検討しましょう」毎月大きな掛金を払う余裕がない場合は、どうすれば?「月400円で年金額が増やせる『付加年金』を検討しましょう。将来、払った期間分×200円がもらえるので、2年で元が取れます」また、法人を設立するという方法もある。「ややこしい手続きは増えますが、厚生年金に加入できることなど、メリットは大きい」自営業者には定年がない。山中さんは働いている限り、繰り下げをして、もらえる年金額を少しでも増やすことを勧めている。「わからないことがあれば、専門家を頼ってください。年金事務所なら年金について無料で相談できますし、資産運用も含めて包括的に相談したいのであれば、ファイナンシャルプランナーなどに」「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載
2020年07月29日日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳で、差はおよそ6年。別離は想像したくないけれど、夫の没後も生活が成り立つか、誰もが考えないといけないーー。「もし、あなたが自営業者やフリーランスとして働く夫を亡くした場合、夫が会社員の人ならもらえる『遺族厚生年金』がありません。平均寿命が男性より長い女性は、夫の死後に訪れる生活について、早めに考えておく必要があります」そう話すのは、年金に詳しいファイナンシャルプランナーの山中伸枝さんだ。年金保険料を25年以上納めていた元会社員の夫が亡くなった場合、夫が受給していた老齢厚生年金の4分の3を妻は受け取ることができる。「夫婦2人の国民年金(老齢基礎年金)は約13万円、夫の現役時の収入で決まる厚生年金の報酬比例部分が約9万円、合計約22万円を受給していた夫婦がいたとします。夫が亡くなった後でも、厚生年金の75%にあたる約6万8,000円が終身で受給可能。自分のぶんの国民年金とあわせ、月に13万円ほどの年金を受け取ることができる」(山中さん・以下同)だが、これは厚生年金加入者だけの制度。自営業者やフリーランスなど、国民年金のみに加入している第1号被保険者にはこれに類する制度はない。「子どもがいる家庭であれば、『遺族基礎年金』の対象になることがあります。妻と子どもを扶養していた夫が亡くなった場合、年額78万1,700円と、子どもの数に応じた加算(第1子・第2子は年22万4,900円、第3子以降は7万5,000円)を支給する制度です。しかし、原則として子どもが高校を卒業すると、受け取ることができなくなります」■夫の没後はこんなに違う【厚生年金を受給している夫婦】22万724円(厚生年金9万442円夫と妻の国民年金6万5,141円×2)〈夫が亡くなったら〉13万2,973円(夫の厚生年金の75%6万7,832円、妻の国民年金6万5,141円)【国民年金のみを受給している夫婦】13万282円(夫と妻の国民年金6万5,141円×2)〈夫が亡くなったら〉6万5,141円(妻の国民年金6万5,141円)※厚生労働省「令和2年度の年金額改定について」より本誌が作成。厚生年金をもらっている夫婦は夫が平均的な収入(平均月額43.9万円)で40年間加入し、その間に妻が専業主婦だった夫婦。国民年金をもらっている夫婦はいずれも年間加入し、満額で支給された場合。国民年金に限った保証制度もあるにはあるが……。「10年以上国民年金に加入していた夫が亡くなった場合、生計を維持されていた妻に対して60歳から65歳になるまで、夫が本来受け取るはずだった老齢基礎年金の4分の3が受け取れる『寡婦年金』制度があります。また一定の条件を満たせば、『死亡一時金』も受け取れますが、最高額でも32万円。いずれも、長い老後の生活に安心を与えてくれるものではありません」今から計画的に備えておこう!「女性自身」2020年7月28日・8月4日合併号 掲載
2020年07月29日かねてから指摘されてきた国民年金と厚生年金の“格差”。いま両者の統合案が政府内で出ているのだが、それが招くものはーー。「年金財政を延命させるため、6月に年金制度改正法が公布されたばかり。しかし、早くも’25年に予定されている次の年金改正に向け、厚生年金と国民年金の積立金統合案が持ち上がっています。会社員などの年金受給額が減額する可能性もあるため、大きな議論となるでしょう」(経済誌記者)将来の年金給付の財源として積み立てられてきた「年金積立金」。サラリーマンや公務員などの給与所得者を対象にした厚生年金と、自営業者やパート従業員などを対象にした国民年金で、別々に計上されている。厚生年金の被保険者は約3,980万人、積立金は国家予算の1.5倍にあたる157兆円超にのぼる。一方、国民年金のみに加入している自営業者などは1,462万人。積立金は9兆円にとどまる。経済評論家の平野和之さんはこう語る。「厚生年金は収入に応じて保険料が上がりますが、国民年金は一律約1万6,000円。さらに、“将来、もらえないんじゃないか”という年金不信も広がっていて、未納率も3割を超えています」昨年8月に発表された「財政検証」で、国民年金の厳しい状況が浮き彫りになった。「財政検証とは、厚生労働省が5年に1度行う、年金財政の健康診断のようなもの。将来、現役世代の男性の平均手取り収入額に対して、モデル世帯の夫婦の年金給付額がどのくらいの割合になるのかを示した“所得代替率”の未来予測が検証されています」(平野さん)現在の現役男子の平均手取り額は35万7,000円とされている。厚生年金に40年間加入していた夫と、専業主婦の妻というのがモデル世帯。現在の所得代替率は61.7%で、夫婦の年金額はおよそ22万円となっている。しかし、国民年金加入者が受け取れる基礎年金に限れば、現在でも所得代替率はわずか36.4%、夫婦で約13万円に過ぎない。「財政検証では、経済成長率、物価上昇率などを加味して6つのシナリオが示されています。もっとも平均的なケースでも、’40年度の基礎年金の所得代替率は29%になる見込みです。現在の平均手取り額から試算すると、国民年金のみを受給している夫婦は、わずか月額10万3,500円で生活しないといけない」しかも、これは夫婦ともに40年間保険料を欠かさずに払い続けた場合の給付額。未納期間があれば、この金額には届かない。「このまま国民年金の給付額が下がり続けた場合、とても生活は成り立ちません。余裕のある厚生年金の財源に頼らざるを得ないというわけです。当然、厚生年金加入者からは、『なんで厚生年金の積立金で、未納者もいる国民年金も支えないといけないのだ!』という反対の声が上がることが予想されます」厚生年金と国民年金の積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、株式や債券で運用している。年金博士として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんはこう指摘する。「新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済の落ち込みは、積立金に大きな影響を与えます。さらに、国民年金と統合されることで、厚生年金の積立金の計画は大きく狂ってしまうことになるでしょう」厚生年金はどの程度の影響を受けるのか。平野さんが注目するのは、財政検証で示された最悪のケースだ。「このケースだと、’52年度に積立金が枯渇すると予想されていますが、統合などによって、時期はさらに10年、15年と早まる可能性がある。そうなれば、現在の50代も無関係ではいられません。積立金が使い果たされた場合、厚生年金の所得代替率は36~38%まで落ち込むと試算されています。現在の平均手取り額から計算すると、将来の厚生年金の受給額はわずか月額13万5,000円。現状の22万円よりも、8万5,000円も減額されてしまうことになります」「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月16日「先日、新しい年金改正法が公布され、’22年4月から施行されます。今回の大きな改正は、“年金の受給開始年齢を75歳まで延長可能にする”ということです」そう話すのは、ファイナンシャルプランナーで保険のプロ・長尾義弘さん。年金の受給開始のタイミングが拡大することで、何が変わるのか?長尾さんに詳しく解説してもらおう。現行の制度では、65歳を起点に、それより早く年金をもらい始めることを“繰り上げ受給”、66歳以降に遅らせることを“繰り下げ受給”という。改正により、この繰り下げ可能な期間が5年広がることになる。「ここでは、“65歳のときの年間受給額が、厚生年金と基礎年金を合わせて150万円になる会社員”のケースを想定。60歳で受給を開始すると、受給額は年間約36万円の減額となります。すると、80歳の時点で、65歳から受給を開始したときの総受給額の2,400万円と比べて、総受給額は2,394万円と少なくなってしまうのです。日本人の65歳時点での平均余命は男性19.7歳、女性24.5歳。この数字を考えると、繰り上げ受給は損をしてしまう選択と言えるでしょう」いっぽう、繰り下げたケースをみてみるとーー。「繰り下げ受給は年に8・4%の増額となるので、70歳まで繰り下げると、最大42%の増額です。65歳で年額150万円のケースだと、年間の受給額が213万円にアップ。月額にして約18万円になります。この金額であれば、年金だけで夫婦2人の生活費をなんとかカバーすることができます。そのため私は、これまで70歳からの受給開始をすすめてきました」それが、75歳まで繰り下げが可能となることで、長尾さんがすすめる受給開始のタイミングも変わってくるという。「がんなどで余命を宣告された人は60歳から受給を開始するという選択もあります。しかし、多くの人にとっては、“72歳で受給開始”がベストな選択というのが私の試算です」長尾さんはその理由として、3つの観点を挙げる。【1】長生きしたときの“受給総額”「95歳時点での総受給額を見ると、72歳以降の総額はすべて5,700万円台。それほど大きな差は発生しないのです」【2】65歳からの“平均余命”「年金は受給を遅らせれば遅らせるほど、月々の支給額が多くなります。その損益分岐点は11~12年。つまり、受給開始から11~12年で、65歳で受給開始したよりも総額がアップする、ということです。受給開始を72歳にすると、損益分岐点が、ちょうど男性の平均余命と近くなります。しかも月々受け取れる金額は65歳から受給した場合の金額に比べて約6割の増額。これならば、ある程度ゆとりのある生活が保障される金額になります。年金の役割を、“長生きをしたときの保険”と考えれば、72歳まで繰り下げをして受給額を増やすほうがいいでしょう」【3】元気に働ける“健康寿命”「何歳まで元気に日常を過ごせるかを表したのが健康寿命です。厚労省の統計では、男性が72歳、女性は75歳。男性が無理なく働ける平均年齢は72歳と考えることができます」定年後もまだ働けるうちはイキイキと働くことで健康的に過ごし、その後は繰り下げ受給により増額した年金で老後の生活を豊かにしようというのが、長尾さんがすすめるライフプランだ。「繰り下げ受給の手続きは、日本年金機構に繰り下げ請求を提出することで可能となります。繰り下げの場合は、いつ繰り下げるのをやめるのも可能。生活具合に応じて支給を開始することができる自由度の高い制度です」生活の支えとして年金が必要になったら、無理せず申請する。その最終目標は72歳。それを安心できる老後生活の指針にしてみては。「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月16日「年金財政を延命させるため、6月に年金制度改正法が公布されたばかり。しかし、早くも’25年に予定されている次の年金改正に向け、厚生年金と国民年金の積立金統合案が持ち上がっています。会社員などの年金受給額が減額する可能性もあるため、大きな議論となるでしょう」(経済誌記者)将来の年金給付の財源として積み立てられてきた「年金積立金」。サラリーマンや公務員などの給与所得者を対象にした厚生年金と、自営業者やパート従業員などを対象にした国民年金で、別々に計上されている。年金博士として知られる、社会保険労務士の北村庄吾さんはこう語る。「集まった保険料のうち、年金の支払いにあてられなかったぶんを、将来に備える資金としたのが積立金の始まりです。現役世代が多く、景気も右肩あがりだったバブル期、年金受給者に支払う額を大きく超えた保険料が集まりました。その結果、圧倒的に加入者が多く、給与から自動的に保険料が差し引かれる厚生年金の積立金は膨れ上がってきたのです」これまでほかの公的年金の財政が悪化するたび、財政に余裕のある厚生年金が救済役となってきた。「’97年には、持続困難となった旧三公社(NTT、JT、JR)の共済年金を厚生年金に統合。’15年には公務員共済、私立学校教職員共済を統合してきた経緯があります。今回の国民年金の統合案も、この流れに沿うものです」(北村さん)厚生年金の被保険者は約3,980万人、積立金は国家予算の1.5倍にあたる157兆円超にのぼる。一方、国民年金のみに加入している自営業者などは1,462万人。積立金は9兆円にとどまる。経済評論家の平野和之さんはこう語る。「厚生年金は収入に応じて保険料が上がりますが、国民年金は一律約1万6,000円。さらに、“将来、もらえないんじゃないか”という年金不信も広がっていて、未納率も3割を超えています」厚生労働省「平成30年度の国民年金の加入・保険料納付状況」によると、収入が少なく、不安定な若い世代ほど未納が多く、25~34歳では、約4割が未納だという。「今後、コロナ不況が深刻化すれば、この傾向はさらに高まり、未納率が上昇してしまうことも懸念されています」(平野さん)はたして、われわれの年金はどうなるのか。次の年金改革は5年後だが、議論はすでに始まっている。自分の老後のために、その行方を注視しよう。「女性自身」2020年7月14日号 掲載
2020年07月16日消費者庁が管轄している独立行政法人国民生活センターは、ウェブサイトで生活上の豆知識を公開しています。悪徳商法や詐欺への対処法など、多くの人から寄せられた相談事例と解決策を案内しているのです。その中の食品に関する事例が、ネットで再び話題になっています。「米を買ったら虫が湧いていた」という意見に、国民生活センターは…話題になっているのは、2016年に公開されたお米に関するクレーム。意見の投稿者によると、新品の米を103購入したそうです。しかし、しばらくして食べようと思い袋の中を見たら、虫が湧いていたのだとか。インターネット通販で103入りの米を購入し、棚の中に保管していました。3カ月後に食べようと思ってビニールの米袋を見たら、中に全長33くらいの黒い虫がぞろぞろいました。開封していないので、外から入ったものではないことは明らかです。返品、交換してもらいたいです。国民生活センターーより引用投稿者は、新品の米に虫が混入していたとみなし、返品を希望している模様。この意見に対し、国民生活センターは袋の中にいた虫を『コクゾウムシ』であると回答した上で、「コクゾウムシの混入は、完全に防ぐことはできない」と述べました。コクゾウムシは米や麦、乾麺などに湧く虫であり、食品の保管方法と保管期間などによっては、卵から孵化(ふか)することがあるのだとか。続けて、国民生活センターはこのように解説をしています。米は、生鮮食品と同じく長期保管には向きません。食べる分だけ少しずつ購入し、冷蔵庫などの冷暗所で保管しましょう。最近は、異物混入で問題になることを嫌う販売店の方針や、洗浄や精米といった技術の進歩、流通の進歩等により生鮮食品に害虫がついていることは少なくなり、それに伴い、私たちは、米だけに限らず生鮮食品に害虫や土などはついていなくて「当然」、それが「普通」というような感覚を持つようになってきています。たしかに、米の袋の中に黒い虫がぞろぞろいれば、大変に気味が悪いだろうと想像はできますが、高温多湿の日本で、数カ月も米を放置していれば、コクゾウムシの発生は当然予想すべき事象の範ちゅうです。自然の恵みである収穫物を消費するにあたっては、生産者や卸業者、販売業者だけが知識を持つだけでなく、最終的に消費する消費者自身も食品に関する知識を有することは自身にとって非常に大切なことです。なお、コクゾウムシは、15℃以下では発育・繁殖できないため、米を冷蔵庫に保管していれば、コクゾウムシの発生(孵化)は防げます。米袋の中でコクゾウムシが見つかった場合、米を天日干しすれば取り除くことができます。虫の発生が少しであれば、食べるのに問題はありませんが、たくさん発生していた場合、食い荒らされた米がおいしいかは、疑問です。国民生活センターーより引用投稿者に対し、そもそもなぜ米に虫が湧くのかを丁寧に説明した国民生活センター。高温多湿の日本で、なんの対策もせず米を放置すれば虫が湧くのはむしろ当然のことであり、虫を防ぐには消費者が正しい知識を持つことが重要であると説きました。一般的に、コクゾウムシの対処は冷蔵庫で米を保管したり、防虫剤を使用したりすることが有効とされています。米を買いだめするのも避けたほうがいいでしょう。国民生活センターの回答に対し、ネットからは「素晴らしい対応」「参考になった」など称賛の声が上がっています。・元々、お米や麦に虫や卵が混入するのは普通なんですけどね。だからこそちゃんと保管しないと。・国民生活センターの毅然とした対応や丁寧な説明に、胸がすっとした。・とてもいい解説!これを書いた担当者の温かみを感じますし、参考になりました。食べ物に虫が湧いていたら、ゾッとしてしまうのは仕方のないこと。しっかりと正しい知識を身につけ、食事を楽しみたいですね![文・構成/grape編集部]
2020年07月11日「新たな年金改革法が成立し、’22年の4月からは段階的に制度が変わっていきます。年金を損なく受け取るには、これまで以上に働き方や受給開始のタイミングが重要となるでしょう」こう語るのは“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾さん。パート主婦が注目すべき改革の内容はおもに2つあるという。1つ目は、パートを代表とする短時間労働者の厚生年金適用拡大だ。「これまでの厚生年金の加入条件は、労働時間が週20時間以上、月収8万8,000円(年収106万円)以上、企業規模が従業員501人以上などでしたが、段階的に企業規模の条件を緩めることになりました」具体的には、’22年10月に従業員数101人以上に、’24年10月には従業員数51人以上に緩和される予定。最終的に、約65万人が新たに加入するようになると、社会保障審議会は試算している。加入で、まず大きな影響を受けるのは、パートの手取り額だ。「月収8万8,000円だと、新たに厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料がかかるようになり、概算ですが、手取りは月1万3,000円ほど減ります」こう聞くと減収ばかりに目がいってしまう。ただ、北村さんはメリットも考慮すべきだと語る。「将来、老齢基礎年金に厚生年金を上乗せできるのです。公的年金の特徴は亡くなるまでもらえること。“長生きリスク”を考慮すると、もらえる年金額を増やすことは重要です」上乗せされる厚生年金の目安は、北村式計算法によると《年収の百万の位の数字×5,500円×勤続年数》。たとえば、55歳のパート主婦が10年間、年収106万円で働いたとすると、《1.06×5,500円×10年》で、年間5万8,300円が、生涯にわたって上乗せされる計算になる。もうひとつ今回の改革で注目すべき点は、年金受給を開始する年齢の選択肢が増えたこと。「受給開始年齢は通常65歳ですが、現状でも最大で5年、開始時期を繰り上げ(早め)たり、繰り下げ(遅め)たりできます。繰り下げた場合、1カ月ごとに年金は0.7%増額(最低1年以上繰り下げなければならない)。最大で42%増えますが、今回の改革で繰り下げの上限が、’22年4月からは10年となり、最大で84%増額できるようになります」年金を損なく受け取るには、こうした厚生年金による上乗せや繰り下げ受給をうまく活用することが重要になってくる。そこで、10年間、年収106万円のパートを続けた主婦が、平均寿命の87歳で亡くなる場合、何歳で年金を受給し始めると、得するのかをシミュレーションしたーー(ブレイン社会保険労務士法人への取材をもとに編集部が概算。年収は106万円、厚生年金加入期間は10年とし、女性の平均寿命である87歳まで生存すると想定した。年金の内訳は基礎年金が年間78万1,700円、厚生年金の上乗せ額が年間5万8,300円。パート期間中の社会保険料は10年間の厚生年金保険料や健康保険料などの総額である)。【A】厚生年金なし、65歳から受給受給率:100%年金額(年間):78万1,700円87歳までに受け取る総年金額:1719万7,400円パート期間中の社会保険料:0円保険料を引いた総年金額:1,719万7,400円【A】と比較した場合の損益:0円87歳時点での受給年金総額は約1,700万円。このケースを基準にして以降は損得を計算する。【B】厚生年金あり、65歳から受給受給率:100%年金額(年間):84万円87歳までに受け取る総年金額:1,848万円パート期間中の社会保険料:158万1,840円保険料を引いた総年金額:1,689万8,160円【A】と比較した場合の損益:▲29万9,240円厚生年金による上乗せで、【A】に比べて、87歳までにもらう年金総額は約128万円多い。だが、前述のようにパート期間中は社会保険料の支払いが発生。その金額を差し引くと約30万円の赤字に。収支がプラスになるのは93歳以降だ。【C】厚生年金あり、70歳から受給受給率:142%年金額(年間):119万2,800円87歳までに受け取る総年金額:2,027万7,600円パート期間中の社会保険料:158万1,840円保険料を引いた総年金額:1,869万5,760円【A】と比較した場合の損益:149万8,360円繰り下げにより年金額は42%増額。パート期間の各保険料を差し引いても、87歳時点では【A】より約150万円の黒字となり、長生きするほど黒字額は増えていく。【D】厚生年金あり、75歳から受給受給率:184%年金額(年間):154万5,600円87歳までに受け取る総年金額:1854万7,200円パート期間中の社会保険料:158万1,840円保険料を引いた総年金額:1,696万5,360円【A】と比較した場合の損益:▲23万2,040円84%増額されるものの、受け取れる期間は12年と短く、結果的に【A】と比べて約23万円の赤字。翌年の88歳以降からはプラスとなる。「シミュレーションだと改革後は、会社員の夫は65歳から受給し、厚生年金に加入のパート妻は70歳まで繰り下げるのが、ベストでした。今回の制度改革では、“75歳まで繰り下げると84%も増額”が強調されますが、目先の数字に惑わされずに、平均寿命や健康寿命を考慮して年金受給計画を立てましょう」年金財政悪化により次々に改革が打ち出される。柔軟に対応して、損なく年金を受け取ろう。「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載
2020年06月25日今回の年金改革の目玉である「75歳からの繰り下げ受給で84%の増額」。数字だけを見れば飛びつきたくなるが、そこには落とし穴もーー。「新たな年金改革法が成立し、’22年の4月からは段階的に制度が変わっていきます。年金を損なく受け取るには、これまで以上に働き方や受給開始のタイミングが重要となるでしょう」こう語るのは“年金博士”こと社会保険労務士の北村庄吾さん。パート主婦が注目すべき改革の内容はおもに2つあるという。1つ目は、パートを代表とする短時間労働者の厚生年金適用拡大だ。「これまでの厚生年金の加入条件は、労働時間が週20時間以上、月収8万8,000円(年収106万円)以上、企業規模が従業員501人以上などでしたが、段階的に企業規模の条件を緩めることになりました」具体的には、’22年10月に従業員数101人以上に、’24年10月には従業員数51人以上に緩和される予定。最終的に、約65万人が新たに加入するようになると、社会保障審議会は試算している。加入で、まず大きな影響を受けるのは、パートの手取り額だ。「月収8万8,000円だと、新たに厚生年金保険料や健康保険料などの社会保険料がかかるようになり、概算ですが、手取りは月1万3,000円ほど減ります」こう聞くと減収ばかりに目がいってしまう。ただ、北村さんはメリットも考慮すべきだと語る。「将来、老齢基礎年金に厚生年金を上乗せできるのです。公的年金の特徴は亡くなるまでもらえること。“長生きリスク”を考慮すると、もらえる年金額を増やすことは重要です」上乗せされる厚生年金の目安は、北村式計算法によると《年収の百万の位の数字×5,500円×勤続年数》。たとえば、55歳のパート主婦が10年間、年収106万円で働いたとすると、《1.06×5,500円×10年》で、年間5万8,300円が、生涯にわたって上乗せされる計算になる。「さらに厚生年金の適用に伴い、いざというときは健康保険から疾病手当金が支払われます。病気やケガなどで長期間仕事を休むことになったとき、未加入だと、療養している間は無収入となります。一方で加入していれば、3日連続で仕事を休んだ場合、4日目から最長1年半までの間は、給料の約3分の2がもらえるようになる。民間の保険ではありえないような手厚い保障もセットになっているのです」もうひとつ今回の改革で注目するべき点は、年金受給を開始する年齢の選択肢が増えたこと。「受給開始年齢は通常65歳ですが、現状でも最大で5年、開始時期を繰り上げ(早め)たり、繰り下げ(遅め)たりできます。繰り下げた場合、1カ月ごとに年金は0.7%増額(最低1年以上繰り下げなければならない)。最大で42%増えますが、今回の改革で繰り下げの上限が、’22年4月からは10年となり、最大で84%増額できるようになります」年金を損なく受け取るには、こうした厚生年金による上乗せや繰り下げ受給をうまく活用することが重要になってくる。「たとえば、男性の平均寿命は約81歳。増額狙いで75歳から受給を始めても、もらえる年金総額が65歳から受け取り始めた場合を超えるのは86歳10カ月以降と、平均寿命の約5年後からです」一方で女性の平均寿命は約87歳と先が長く、’70年生まれの女性が90歳まで生きる確率は67%だ。「夫が65歳で定年を迎えて収入が減ることも考慮すると、夫の年金受給開始は65歳にして、預貯金と相談しながら妻の年金のみを繰り下げるというのが、1つの基本的な考え方になるでしょう」「女性自身」2020年6月23・30日合併号 掲載
2020年06月24日日本では国内に住む20歳以上のすべての人が国民年金に加入し、保険料を支払うことが義務になっています。これは学生も例外ではありません。ただし、収入が少なく国民年金保険料を支払うのが難しい学生には、保険料を支払わなくてもよい「学生納付特例」が設けられています。今回は「学生納付特例」について、仕組みと注意点を解説します。学生の国民年金保険料は「免除」ではなく「猶予」される日本年金機構提出が必要な書類申請では申請書のほか、在学期間のわかる在学証明書の原本または、学生証の写しを添付して提出します(申請手続きの際に窓口で添付すべき書類を提示する場合は添付は不要)。申請できる期間学生納付特例の申請は、原則として年度(4月〜翌年3月)ごとに申請書を提出して行います。2020年度分の学生納付特例を申請する場合、申請ができるのは2020年4月〜2021年3月の間であり、2020年3月までは2020年度分の申請はできません。逆に保険料の納付期限から2年経過する前(申請時点から2年1カ月まで)の期間については、さかのぼって特例の適用を申請できます。たとえば2018年10月分の保険料(納付期限2018年11月30日)は、2020年11月30日までに申請すれば猶予を受けられる可能性があります。これ以降は時効により猶予申請ができなくなります。学生納付特例制度を利用する際の注意点日本年金機構追納の申込みが承認されると自宅に通知書と納付書が届くので、納付書を使って追納分の保険料を支払います。追納を行う際は、承認された追納期間のうち古い期間から行うと決められています。親が子どもの国民年金保険料を払うことは可能子ども自身の国民年金保険料は、被保険者である本人が払うのが原則ですが、親が払っても問題はありません。在学中に本人が保険料を支払うのが難しい場合、学生納付特例制度を利用し、就職後に本人が追納するのが筋でしょう。とはいえ、就職後も子どもに追納できる余裕があるかはわかりません。追納時期が遅くなれば割増保険料を支払わなければならず、追納しないまま10年を経過してしまうおそれもあります。そのような事態を防ぐという意味では、親がいったん子どもの保険料を払ってしまうのも有効な選択肢といえるでしょう。親に経済的な余裕があれば、特例を利用せず直接保険料を支払えば問題ありません。学費や仕送りと重なるなど、あまり余裕がない場合は特例を利用し、子どもが卒業後に余裕ができたタイミングで追納するといった方法が考えられます。国民年金保険料は支払った人の社会保険料控除の対象になる国民年金保険料は、その全額が支払った人の社会保険料控除(所得控除)の対象となります。所得税は所得の多い人ほど高い税率が適用されるため、一般的に所得の少ない子どもが支払うよりも、所得の高い親が支払ったほうが、より高い節税効果が期待できるというメリットもあります。自分の年金保険料は自分で払わせたいという考えの場合でも、いったん親が保険料を代わりに払い就職後に子ども返してもらうほうが、節税効果の分だけ有利になるケースが多いといえます。あくまで「立替え払」であるなら、その点があやふやにならないよう、あらかじめ話し合いの場を持ち、その旨を伝えておくようにしましょう。国民年金保険料の学生納付特例まとめ20歳になれば学生であっても国民年金に加入し、保険料を払う義務があります。収入が少なく本人が保険料を払うのが難しい場合には、学生納付猶予制度を活用する、あるいは親が立替払いするなど、くれぐれも未納とならないように気をつけましょう。どのような方法をとるにしても、本人が主体的に考え行動することが、社会人としての第一歩です。
2020年05月29日個人事業主と会社員では年金制度に違いがあり、個人事業主のほうがもらえる年金額が少ないということはなんとなく知っているけれど、詳細はわからないという人は多いのではないでしょうか。個人事業主でも従業員を一定以上雇用している場合は、義務として厚生年金への加入が必要になる可能性があるため注意が必要です。そこで本記事では、個人事業主と会社員の年金制度における大きな違いである厚生年金について詳しく解説します。会社員が加入する厚生年金と国民年金厚生年金とは、第2号被保険者といわれる会社員や公務員が加入する年金のことで、一般的には受け取る年金が高いといわれています。これは、厚生年金で受け取れる年金がすごく高いというよりも年金制度の構造によるのです。年金制度は2階建てで保険料を支払っているそもそも会社員の場合は、国民年金に加入した上で、さらに上乗せで厚生年金や厚生年金保険基金に加入しているので、将来的に受け取れる年金額が多くなります。対して、個人事業主の場合は第1号被保険者に分類され、国民年金のみに加入することになるので、将来的に受け取ることができる年金額が会社員に比べて少なくなってしまうのです。では、個人事業主でも厚生年金に加入できるのでしょうか。厚生年金は任意加入か強制加入厚生年金は任意で加入できる事業所と、強制的に加入しなければならない事業所に分かれます。株式会社などの法人登記されている事業所については、事業内容に関係なく厚生年金への加入が義務付けられていますが、個人事業主の場合はそうとは限りません。個人事業主は任意適用事業所に該当しない業種のうち、常に5人以上の従業員を雇用している場合、強制的に適用されることとなります。任意適用事業所とは厚生年金に加入はできるけれども強制ではない事業所のことを任意適用事業所といいます。任意適用事業所は、従業員の半数以上が同意した場合において厚生年金に加入することが可能です。常時雇用している従業員の人数が5人未満の事業所が対象ですが、次の業種については5人以上でも任意適用事業所となります。農林水産業サービス業士業宗教業よって、これらに該当しない事業所は厚生年金への加入が義務付けられている強制適用事業所に該当するので、たとえ個人事業主だったとしても加入手続きをしなければなりません。被保険者ごとの加入条件厚生年金に加入することが可能な被保険者は、次のように4つの種類に分けられます。当然被保険者適用される事務所にいつも雇われている70歳未満の人。任意単独被保険者適用される事業所以外で雇われている70歳未満の人で厚労大臣から認可を受けた人。高齢任意加入被保険者70歳以上で適用される事業所で働いている人、または適用される事務所以外で事業者と厚労大臣の認可を受けた人。アルバイト、パートアルバイトまたはパートは厚生年金の被保険者になります。このように、個人事業主の場合でも適用される事務所に該当すれば、上記の人について厚生年金に加入させる必要があります。ただし、これらはすべて個人事業主本人のことではなく、個人事業主に雇用されている人たちの厚生年金への加入についてです。では、個人事業主本人は厚生年金に加入できるのでしょうか。個人事業主本人は加入できるのかここまでは個人事業主が従業員を雇用した場合の、厚生年金の取り扱いについて解説してきました。雇用されている従業員は厚生年金に加入することができますが、個人事業主本人については残念ながら厚生年金に加入することができません。ただ、そうなると老後の年金が心配です。どうにか個人事業主で厚生年金に加入する方法はないのでしょうか。法人化するしかない個人事業主本人が厚生年金に加入したい場合は、法人化して加入するしかないようです。法人化して厚生年金に加入すれば、加入期間がたとえ1年だけだとしても、加入期間が存在すれば年金を受け取ることができます。会社法が改正されて以降、資本金1円でも法人化が可能になったので、ある程度の利益がある個人事業主であれば、老後を見据えて厚生年金に加入できる株式会社に変更する選択肢もありでしょう。法人化すれば経費にできる範囲も広くなるほか、配偶者や家族を役員にして配当を出すことによって、所得を分散して所得税を節税することも可能です。[adsense_middle]個人事業主が厚生年金に加入する際の手続き厚生年金の加入手続き個人事業主が従業員を厚生年金に加入させるためには、加入要件を満たすこととなった事実が発生した段階から5日以内に、住所地を管轄している年金事務所に新規適用届を提出する必要があります。書類を持参する方法のほか、郵送やインターネットによる届出も可能です。法人の場合は会社謄本を提出しますが、個人事業主の場合は個人事業主本人の住民票の原本の添付が必要になります。また、厚生年金への加入義務がない個人事業主が任意で加入する場合は、同じように新規適用届を提出するほか、任意適用申請書も一緒に提出が必要です。ただし、任意の場合は厚生年金への加入について従業員の過半数以上が同意していることが前提となります。厚生年金に加入することによるメリット保険料が控除できる個人事業主が支払った保険料や掛け金は、残念ながら経費として計上はできませんが、社会保険料控除によって確定申告の際に控除することが可能です。また、あわせて健康保険料も控除の対象になります。保険料の免除規定加入している従業員が出産などで休業する場合、産前42日、産後56日のうち妊娠や出産が理由で仕事ができなかった期間について、厚生年金保険料が免除されます。厚生年金保険料は被保険者と事業主で折半して支払いますが、当該事項によって保険料が免除になると、被保険者と事業主の両方が免除される点が大きなメリットです。当該免除を受けるためには、事業主から年金事務所に対して産前産後休業取得者申出書を提出する必要があります。しかも、この期間は保険料の支払いが免除されるだけでなく、年金額の計算をする際に保険料を支払ったこととして扱われるという非常にありがたい制度なのです。育児休業も免除になる出産後、従業員が育児休業を取る場合、満3歳未満の子の育児休業であれば厚生年金保険料の支払いが同じように免除されます。この場合も被保険者および事業者ともに免除されるのです。また、年金額の計算においては保険料を支払ったものとして扱われる点も同様です。よって、個人事業主で妊婦さんを雇用している方は、積極的に産休や育休を取得させることをおすすめします。個人事業主の厚生年金加入に関するまとめ個人事業主は結論として厚生年金に加入することができませんが、適用事業所に該当する場合は、自分が加入できなくても従業員を加入させる必要性が出てくる点に注意が必要です。実は、この点を理解していない個人事業主の方がたくさんいます。確かに、自分自身が加入できないわけですから、「個人事業主は厚生年金に加入することはない」と思い込んでいても無理はありません。ただ、個人事業主でも従業員を雇用すれば雇用主としての責任が発生するので、一定の要件を満たしている場合は速やかに加入手続きを取らなければなりません。将来受け取る年金額を上げる方法として、国民年金基金や個人年金、付加年金などもあわせて検討してみるとよいでしょう。どうしても自分自身が厚生年金に加入したいのであれば、法人化した上で年金事務所に届け出る必要があります。
2020年05月27日年老いてからの生活費の準備に活用できる個人年金保険ですが、税金がかかることをご存じでしょうか?課税にはいろいろなパターンがあるので、基本的な内容を知っておきましょう。本記事では、個人年金保険の税金について解説します。節税のポイントについてもまとめていますので、参考にしてください。個人年金保険の課税はどうなっている?老後の生活費は国からもらう年金だけでは足りないという人がほとんどですから、個人年金保険を受け取れると心強いものです。しかし、忘れてはならないのが税金です。保険契約でお金をもらったとしても、課税はされます。タイミング別・かかる税金個人年金保険を契約すると、何年か継続して保険料を積み立て、契約で定めた年齢(60歳など)になれば年金として払ってもらうことになります。タイミングにより意識しておくべき税金は、次の表のとおりです。どんなときに課税される?税金が発生するのは、年金や一時金、年金受給権、解約返戻金などをもらったときです。ただし、個人年金保険を解約して利益が出るケースはあまりないので、解約時はそれほど心配しなくてよいでしょう。積立期間中は節税メリットもある!保険料を払うときには支出だけなので税金はかかりません。逆に、払うときには所得控除が受けられるので、税負担を抑えられます。個人年金保険の種類を確認個人年金保険は民間の保険会社で取り扱いされています。基本的に現役世代の間に年金原資を積み立て、60歳など契約時に定めた年齢に達すると支払いが受けられるものになりますが、いろいろなタイプの商品があります。課税について理解する前提として、個人年金保険の主な種類を確認しておきましょう。年金の支払いがあったら所得税・住民税がかかる個人年金保険で契約時に定めた年齢に達し、年金をもらうと、所得税・住民税がかかります。所得の種類まず、所得の種類を確認しておきましょう。次の10種類に区分され、種類によって計算方法などが変わります。毎年受け取るなら雑所得雑所得とは基本的に他の区分に該当しない所得で、公的年金も含まれます。個人年金保険も、年に1回、2回、6回、12回など分けてもらう形であれば、雑所得となります。雑所得は収入の全額ではなく、必要経費を差し引きできます。雑所得=収入金額-必要経費必要経費とは?払い込んだ保険料のうち、今年支払いを受けた額に対応する部分です。必要経費=1年間の年金受取額×払い込んだ保険料の合計額/支払われる年金の合計額(または見込額)計算例たとえば、払い込んだ保険料の合計額を420万円、1年間の年金受取額を48万円、年金受取期間を10年と仮定してシミュレーションしてみると、次のとおりです。必要経費=48万円×420万円/(48万円×10年)=42万円雑所得=48万円-42万円=6万円一括受取する場合には?受取期間が決まっている確定年金は、一括して受け取ることができます。保証期間付終身年金でも、保証期間の年金を一括して受け取れます。確定年金確定年金を一括して受け取ると、一時所得となります。一時所得とは臨時の収入で、生命保険の満期金のほか、懸賞の当選金やギャンブルの払戻金などが該当します。一時所得=支払いを受けた金額-払い込んだ保険料の合計額-50万円上記の式で算出した金額のうち2分の1が課税の対象になります。保証期間付終身年金保証期間内の年金を一括受取しても、契約は消滅しません。保証期間経過後に被保険者が生存していれば、再び年金を受け取れるようになります。一括で受け取った年金は、雑所得となります。年金受給権に贈与税がかかることも!契約者(保険料を払った人)と受取人が異なるときには注意が必要です。[adsense_middle]贈与税とは無償で財産を譲り受けたときに、譲り受けた人にかかる税金です。1年間に贈与で取得した財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引きした金額に税率をかけて計算します。贈与税の税率は贈与を受けた金額に応じて変わり、10%~55%となっています。贈与税がかかるケース以下パターンでは、妻が年金受取開始時に夫から年金受給権の贈与を受けたことになるので、贈与税がかかります。なお、2年目以降受け取る年金は、通常どおり雑所得となります。当事者が亡くなったときはどうなる?契約者(保険料負担者)、被保険者、受取人が亡くなった際には、相続税が関係してくることもあります。年金をもらう前に亡くなったら?個人年金保険に加入した後、年金をもらう前に被保険者や契約者が亡くなったケースを考えてみましょう。被保険者の死亡年金をもらう前に被保険者が亡くなると契約は終了し、死亡給付金受取人が死亡給付金をもらえます。この死亡給付金には、パターン別に次の表のような税金がかかります。相続税は、亡くなった人(被相続人)が残した財産を取得した人にかかる税金で、財産全体の規模で課税の有無が分かれます。被相続人の残した財産が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数なお、相続税には生命保険金の非課税枠があり、個人年金保険の死亡給付金も対象になります。契約者の死亡契約者と被保険者が同一なら、上の表のとおりです。契約者と被保険者が別人なら契約は続くことになり、死亡時点で相続税がかかります。年金をもらっている期間に被保険者が亡くなったら?年金の種類によって、次のようになります。有期年金、保証期間経過後の年金、終身年金契約は終了するので、課税はありません。確定年金及び保証期間内の年金契約は継続し、継続受取人がその後に支払いを受けた年金は雑所得となります。契約者、被保険者、受取人が同一のケースでは、継続受取人に相続税がかかります。年金をもらっている期間に受取人が亡くなったら?継続受取人が引き続き年金を受け取る場合、毎年もらう年金は雑所得です。受取人の死亡時点の課税関係は、パターン別に次のようになります。契約者と受取人が同一妻の相続する年金受給権に相続税がかかります。契約者と継続受取人が同一子の死亡時点では税金は発生しません。契約者・受取人・継続受取人がすべて異なる残りの年金部分の年金受給権を夫から妻に贈与したものとみなされ、妻に贈与税が課されます。iDeCoでかかる税金との違いは?老後資金の積立には、iDeCoを活用することもできます。個人年金保険とiDeCoの税金の違いを知っておきましょう。[adsense_middle]老後資金の積立にはiDeCoの利用も可iDeCoとは個人型確定拠出年金のことです。20歳以上の人なら誰でも加入して掛金を積み立てることができ、60歳以降で年金を受け取れます。iDeCoで受取時にかかる税金iDeCoで年金・一時金を受け取った際にかかる税金の扱いは、個人年金保険とは異なります。年金で受け取る場合雑所得ですが、iDeCoでは公的年金控除が受けられます。一時金で受け取る場合iDeCoを一時金で受け取ると、退職所得となります。退職所得には勤務先から支給される退職金も含まれます。退職所得については退職所得控除という大きな控除があり、税負担が軽くなっています。贈与税や相続税は?iDeCoでは自分で積み立てた掛金を自分で受け取ることになるので、贈与税は発生しません。もしiDeCoに加入後に亡くなったら、遺族に死亡一時金が支払われます。この死亡一時金には相続税がかかります。個人年金保険の節税ポイント個人年金保険に加入するときには、節税対策もしておきましょう。以下、節税のポイントをまとめます。加入するときには税制適格特約付きのものにする生命保険料控除の中には次の3つがあり、それぞれ上限が4万円です。一般の生命保険料控除介護医療保険料控除個人年金保険料控除税制適格特約付きなら個人年金保険料控除で最大4万円の控除が受けられます。税制適格特約が付いていないものでも、一般の生命保険料控除が受けられます。ただし、他の生命保険にも入っている場合には、同一枠内なので控除額が少なくなることがあります。契約者と受取人を同じにする契約者と受取人が別人なら、贈与税と所得税の両方がかかってしまいます。贈与税は税率が高く、負担が大きくなりがちです。特に、夫婦で加入を考える際には、契約者と受取人を同じにしておきましょう。死亡給付金受取人を法定相続人にする年金をもらう前に被保険者が亡くなったときには、死亡給付金受取人が死亡給付金を受け取れます。この場合、被保険者と契約者が同一、死亡給付金受取人が法定相続人であれば、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)が使えるので節税になります。個人年金保険にかかる税金に関するまとめ個人年金保険を受け取ると、年金払いの場合には雑所得、一括払いの場合には一時所得となり、所得税・住民税がかかります。その他、契約当事者が亡くなった場合にも税金が発生することがあるので注意しておきましょう。老後資金の積立にはiDeCoという方法もあります。税制メリットが大きく個人年金保険との併用も可能なので、iDeCoについても検討してみるのがおすすめです。
2020年05月18日老後の生活費に不安を感じている人は多いのではないでしょうか?老後資金を積み立てる方法として、個人年金保険とiDeCo(イデコ)があります。本記事では、個人年金保険とiDeCoの違いについてご説明しますので、それぞれのメリット・デメリットを比較しながら、自分に合った老後資金の準備方法を考えましょう。個人年金保険とiDeCoを比較してみよう個人年金保険やiDeCoという言葉を聞いたことがあっても、詳しくは知らないという人もいると思います。まずは、両方の概要を知っておきましょう。個人年金保険の概要個人年金保険は民間の保険会社が取り扱っている貯蓄型保険で、老後資金の積み立てに利用できるものです。契約で設定した年金受取開始年齢になれば、払ってきた保険料を原資として、年金や一時金で支払いを受けられます。iDeCoの概要iDeCo(イデコ)とは「個人型確定拠出年金」のことです。iDeCoは商品名ではなく、制度の名称です。確定拠出年金は法律にもとづき2001年に開始した制度で、個人型と企業型の2種類があります。企業型確定拠出年金は、勤務先で制度が導入されているサラリーマンのみが加入できるものです。一方、iDeCoは20歳以上60歳未満の人なら基本的に誰でも加入できます。iDeCoの申し込み方法は?iDeCoを利用するには、「運営管理機関」と呼ばれる金融機関(銀行、証券会社、保険会社)で申し込みが必要です。申し込みの際には、金融機関で用意されている商品(定期預金、投資信託、保険商品など)から自分で複数の商品を選びます。iDeCoの受取時期・受取金額は?iDeCoは老後資金を積み立てるための制度なので、60歳以降でなければ受け取れないという制限があります。受け取れる金額は、自分が選んだ商品の運用結果によって変わります。共通のメリットは所得控除が受けられることお金を貯めるだけなら、通常の預貯金でもいいはずです。しかし、個人年金保険とiDeCoには、通常の預貯金にはない節税効果があります。所得税・住民税は所得控除で安くなる所得税・住民税は所得を基準に計算するので、所得が多ければ税金が高くなります。ただし、所得からは各種の所得控除を差し引きできるので、所得控除が増えるほど税金を抑えられます。個人年金保険(税制適格特約付きのもの)またはiDeCoに加入していれば、いずれも所得控除が受けられます。老後資金を積み立てるなら、通常の預貯金よりも個人年金保険やiDeCoを利用した方がお得です。個人年金保険で受けられるのは「個人年金保険料控除」税制適格特約の付いた個人年金保険に加入している場合には、所得控除の中の「生命保険料控除」が受けられます。生命保険料控除は3種類に分かれていますが、通常はそのうちの「個人年金保険料控除」の対象となります。なお、個人年金保険料控除で受けられる控除金額の上限は4万円です。iDeCoで受けられるのは「小規模企業共済掛金控除」iDeCoの掛金を払っている場合には、所得控除のうちの「小規模企業共済掛金控除」が受けられます。年間に払った掛金の全額が控除の対象となります。個人年金保険とiDeCoの違い:個人年金保険のデメリット個人年金保険は保険会社と自由に契約できる商品なので、自分の希望に合わせて内容を決めやすくなっています。一方、iDeCoは国の制度として大きな優遇がありますが、その分制限も多くなります。両者をデメリットの面から比較してみます。[adsense_middle]個人年金保険のデメリット①控除額に上限がある個人年金保険で払った保険料は、所得控除できる金額に上限があります。年間保険料払込額が2万円以下であれば全額控除の対象になりますが、2万円を超えていれば一部しか控除の対象になりません。所得控除による節税効果はiDeCoの方が大きくなります。個人年金保険のデメリット②自分で年金受取額を増やせない個人年金保険ではお金の運用は保険会社に任せることになるため、自分で年金受取額を増やせません。将来の年金受取額が確定している確定型の商品は、低金利の現在はメリットが少なくなっています。iDeCoでは元本確保型の商品(定期預金、保険)以外に、投資信託も選べます。投資信託にはリスクもありますが、運用の成果によってはリターンが大きくなり、年金受取額を増やせる可能性があります。個人年金保険のデメリット③途中解約すれば元本割れしてしまう個人年金保険を途中解約した場合、元本割れしてしまうケースが多くなります。柔軟性がある反面、最後まで保険料を払い続けることができなければ結局は損してしまいかねないというデメリットがあります。個人年金保険とiDeCoの違い:iDeCoのデメリット続いて、iDeCoのデメリットを見ていきましょう。iDeCoのデメリット①原則として途中解約ができないiDeCoは原則として途中解約ができません。60歳を過ぎないと引き出せないので、急にお金が必要になったときに困ることがあります。iDeCoのデメリット②掛金に上限額があるiDeCoでは掛金が全額所得控除になるメリットがある代わりに、掛金の金額に上限が設けられています。iDeCoの毎月の掛金上限額は、職業などによって変わります。(1) 第1号被保険者(自営業者・個人事業主)月額6万8,000円が上限になります。ただし、国民年金基金または国民年金の付加年金にも加入している場合には、両方を合わせての上限額になります。(2) 第2号被保険者(会社員・公務員)第2号被保険者の掛金上限額は、勤務先での企業年金の加入状況等によって異なり、次の表のようになります。なお、企業年金にはDB(確定給付年金)とDC(確定拠出年金)があり、どちらに加入しているかで区別されます。(3) 第3号被保険者(専業主婦)月額2万3,000円が上限になります。iDeCoのデメリット③受取期間が決まっているiDeCoでは60歳になるまでは年金を受け取ることができません。また、受け取るときには、5年以上20年以下の有期年金として受け取るか、70歳までに一時金として受け取るかのどちらかになります。いつでも好きなときに受け取れるわけではありません。個人年金保険の場合には、保険会社との契約により受取期間も柔軟に選べます。終身タイプの商品もあるので、一生涯年金をもらうことも可能です。iDeCoのデメリット④手数料が発生するiDeCoに加入すると、次の表のようなさまざまな手数料が発生します。元本確保型の商品だけで運用していると損してしまうことがありますので気を付けましょう。個人年金保険とiDeCoのどちらを選んだらいい?個人年金保険とiDeCoにはそれぞれメリット、デメリットがあります。どちらを選んだらよいかは、資産運用に対する考え方や年齢などによって変わってきます。[adsense_middle]年金を積極的に増やしたいなら保険会社が着実に運用してくれる個人年金保険と違い、iDeCoは自己責任で運用するものです。運用に失敗すれば元本割れしてしまうリスクもありますが、逆にお金が増える可能性もあります。通常、預貯金の利息や投資信託などの運用益には20.315%の税金がかかります。しかし、iDeCoでは利益に対する税金も非課税となっており、効率よく資産運用ができます。iDeCoでは手数料も発生するので、預貯金だけで運用すると損してしまうこともあります。投資を行って積極的に年金を増やしたい人は、iDeCoの方がおすすめです。50代以上で加入を考えるならiDeCoでは通算加入期間によって、年金受取が可能になる年齢が次のように決まっています。iDeCoで60歳から年金を受け取るには、10年以上の積立期間が必要です。50代の人でも加入のメリットがないわけではありませんが、60歳から年金をもらうことはできません。個人年金保険の場合には、保険料の一時払いも可能になっており、年金の受け取り開始年齢も契約で自由に設定できます。60代や70代で加入できる商品もあるので、高齢になってからの資金準備に活用できます。個人年金保険とiDeCoは併用できる個人年金保険とiDeCoの両方に加入することも可能です。所得控除の枠もそれぞれ別になるので、両方を併用すれば節税効果も大きくなります。たとえば、iDeCoだけで積み立てると、急にまとまった資金が必要になったときに引き出せず困ってしまうことがあります。途中解約もできる個人年金保険でも積み立てをしておくと、資産運用に柔軟性を持たせることができます。個人年金保険とiDeCoに関するまとめ個人年金保険やiDeCoには節税効果があるので、老後資金の積み立てに活用するのがおすすめです。できるだけ若いうちから積み立てを開始した方が確実に老後資金の準備はできますが、長期間保険料や掛金を払い続けなければならないこともしっかり認識しておく必要があります。加入するときにはデメリットも把握しておき、後で慌てることのないようにしましょう。
2020年05月11日