あべのハルカス美術館では、日本美術や西洋美術、現代アートなど多彩な展覧会を開催しています。2024年度は4月より「徳川美術館展 尾張徳川家の至宝」、7月より「あべのハルカス美術館開館10周年記念 広重 ー摺の極ー」の開催を予定しております。(既報のとおり。詳細は別紙参照)上記2本の展覧会に続き、新たに2024年度後半に開催する展覧会が決定しましたのでお知らせいたします。「印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵」会 期 :2024年10月12日(土)~2025年1月5日(日)共 催 :読売テレビ、産経新聞社開 催 趣 旨 :19世紀後半、モネへの酷評に始まるも西洋美術の伝統を覆した印象派。フランスに留学していた画家たちは、革新的な表現手法を持ち帰り各国で独自に展開していきました。本展では、1898年にアメリカ・ボストン近郊に開館して以来、早くから印象派の作品を収集してきたウスター美術館の所蔵品を中心に出品。とくにアメリカにおける印象派の諸相に注目し、その衝撃と影響をたどります。This exhibition was organized by the Worcester Art Museum※上記の画像データは貸出が可能です。ご希望の方はお問合せください。また、事前に原稿の確認が必要になります。(画像の使用は、本展覧会をご紹介いただく媒体に限ります。ご使用後は破棄をお願いします。)※開催1ヶ月前を目処に詳細なプレスリリースを皆様のもとへお送りします。別紙: 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年12月12日新国立劇場 2023 / 2024シーズン『デカローグ 1~10』の公演詳細が発表された。ポーランドの名匠クシシュトフ・キェシロフスキが発表した『デカローグ』。旧約聖書の十戒をモチーフに1980年代のポーランド、ワルシャワのとある団地を舞台にした、そこに住む人々の普遍的な愛と人間の弱さを描いた、十篇の連作集だ。本公演は全10話を大きく3つのタームに分け、4月から5月は『デカローグ1~4』を、5月から6月は『デカローグ5~6』を、そして6月から7月は『デカローグ7~10』を上演。総勢40名以上のキャストが出演する。上演台本は、ロイヤルコート劇場との共同プロジェクト、劇作家ワークショップ発の作品『私の一ケ月』(2022年)の作家、須貝英が担当。演出は、新国立劇場演劇芸術監督の小川絵梨子、そして上演時間計7時間半の『エンジェルス・イン・アメリカ』二部作(2023年)の演出を手がけたことも記憶に新しい上村聡史のふたりが務める。<公演情報>新国立劇場 2023 / 2024シーズン『デカローグ 1~10』2024年4月13日(土)~7月15日(月・祝) 新国立劇場 小劇場デカローグ1~4(プログラムA&B 交互上演)公演日程:2024年4月13日(土)~5月6日(月・祝)●プログラムA(デカローグ1、デカローグ3)デカローグ1:ある運命に関する物語演出:小川絵梨子出演:ノゾエ征爾 高橋惠子チョウヨンホ 森川由樹 鈴木勝大 浅野令子亀田佳明デカローグ3:あるクリスマス・イヴに関する物語演出:小川絵梨子出演:千葉哲也 小島聖浅野令子 鈴木勝大 チョウヨンホ 森川由樹亀田佳明●プログラムB(デカローグ2、デカローグ4)デカローグ2:ある選択に関する物語演出:上村聡史出演:前田亜季 益岡徹坂本慶介 近藤隼 松田佳央理亀田佳明デカローグ4:ある父と娘に関する物語演出:上村聡史出演:近藤芳正 夏子松田佳央理 坂本慶介 近藤隼亀田佳明デカローグ5~6(プログラムC)公演日程:2024年5月18日(土)~6月2日(日)●プログラムC(デカローグ5、デカローグ6)デカローグ5:ある殺人に関する物語演出:小川絵梨子出演:福崎那由他 渋谷謙人 寺十吾斉藤直樹 内田健介 名越志保 田中亨亀田佳明デカローグ6:ある愛に関する物語演出:上村聡史出演:仙名彩世 田中亨寺十吾 名越志保 斉藤直樹 内田健介亀田佳明デカローグ7~10(プログラムD&E 交互上演)公演日程:2024年6月22日(土)~7月15日(月・祝)●プログラムD(デカローグ7、デカローグ8)デカローグ7:ある告白に関する物語演出:上村聡史出演:吉田美月喜 章平 津田真澄大滝寛 田中穂先 堀元宗一朗 笹野美由紀 伊海実紗亀田佳明デカローグ8:ある過去に関する物語演出:上村聡史出演:高田聖子 岡本玲 大滝寛田中穂先 章平 堀元宗一朗 笹野美由紀 伊海実紗亀田佳明●プログラムE(デカローグ9、デカローグ10)デカローグ9:ある孤独に関する物語演出:小川絵梨子出演:伊達暁 万里紗 宮崎秋人笠井日向 鈴木将一朗 松本亮 石母田史朗亀田佳明デカローグ10:ある希望に関する物語演出:小川絵梨子出演:竪山隼太 石母田史朗鈴木将一朗 松本亮 伊達暁 宮崎秋人 笠井日向亀田佳明公式サイト:
2023年12月01日提供:国立劇場撮影:二階堂健国立劇場、国立演芸場が2023年10月末日をもって、建て替えのため閉場となった。10月29日には閉場式が開催され、関係者やファンが57年の歴史を刻んだ建物との別れを惜しんだ。初代国立劇場は、明治期からの設立構想を経て1966年11月に開場。歌舞伎、文楽をはじめ、舞踊、邦楽、民俗芸能、声明、雅楽等を上演する劇場として長年親しまれてきた。その後、落語、講談等の大衆芸能のための国立演芸場が1979年3月に開場、ともに日本の伝統芸能の拠点として機能し、同時に伝統芸能の保存と振興の役割を担ってきたが、このたび老朽化に伴い閉場となる。中央)独立行政法人日本芸術文化振興会理事長 長谷川眞理子左から)文化庁長官・都倉俊一、文部科学大臣・盛山正仁、松竹株式会社代表取締役会長・迫本淳一、公益社団法人日本俳優協会理事長/一般社団法人伝統歌舞伎保存会 会長・尾上菊五郎(代読:中村時蔵)、公益財団法人文楽協会理事長・鳥井信吾(代理:業務執行理事・八瀬弘範)、公益社団法人日本舞踊協会会長・近藤誠一、一般社団法人日本演芸家連合会長・三笑亭夢太朗提供:国立劇場撮影:二階堂健劇場を運営する日本芸術文化振興会の長谷川眞理子理事長は「年々進む老朽化にいよいよ対応しきれなくなってきた。この半世紀あまりの社会状況の変化も大きく、車椅子のお客様への対応や女性トイレの不足などの基本的な問題をはじめ、その見直しや新たな機能の強化も求められている。そのため、国立劇場、国立演芸場、伝統芸能情報館を一旦閉場し、建て替えることとなりました」と説明。しかしながら「現時点では、昨今の資材の高騰や人手不足などにより、入札手続きに時間がかかっておりますが、一つひとつ解決を図ってまいります」と新劇場の開場目途が立っていないことにも触れつつも、「新たな国立劇場では、社会と伝統芸能との距離をさらに近づけるべく、最新の技術を活用しながら、さまざまな試みに取り組みたい」と話した。中央)文部科学大臣・盛山正仁提供:国立劇場撮影:二階堂健式典では各界からの挨拶も。盛山正仁文部科学大臣は「国立劇場、国立演芸場が送り出してきた研修生たちは、今ではそれぞれの分野で伝統芸能を支える存在として重要な役割を担っています。日本芸術文化振興会には、伝統芸能の伝承と創造の中核的拠点としての機能を強化する新しい国立劇場の整備を進めていただきます。文部科学省としても、伝統芸能の未来、新しい国立劇場の開業について、しっかりと取り組んでまいります」と約束をした。尾上菊五郎の代読として登壇した中村時蔵提供:国立劇場撮影:二階堂健伝統歌舞伎保存会会長である歌舞伎俳優の尾上菊五郎(代読:中村時蔵)は、「今から57年前、この国立劇場が初めて開場したときの驚きと感動は、今も鮮明に記憶しております。昭和41年11月、国立劇場が初めて開場し、2ヶ月かけて『菅原伝授手習鑑』が通し上演されました。最初に出演俳優と竹本、長唄、お囃子の人たちが目にしたのは、まず劇場の威容であり、稽古場の広さ、最先端の舞台、そして楽屋の広さでした。また大劇場の広々とした正面ロビーの中央に、私の祖父・六代目尾上菊五郎の鏡獅子の木彫が据えられているのを見て、身の引き締まる思いとともに、改めて歌舞伎の芸への敬意を抱きました」と懐かしみ、「歌舞伎の台本と演出を改めて見直すという国立劇場の基本方針は、我々出演者側にとって、戸惑いとともに、新たな創造の意欲を抱かせるものでした。以後、この国立劇場で復活上演され、歌舞伎の大切な財産になった作品がいくつも生み出されてきたことは、高く評価されていいと思います。六代目尾上菊五郎をモデルにした「鏡獅子」彫刻(平櫛田中作)また昭和45年から開始された歌舞伎俳優養成研修の終了生は、今では歌舞伎俳優の3分の1を占めるまでに至っています。歌舞伎音楽の竹本、鳴り物、長唄の演奏家養成も、大きな成果をあげています」と国立劇場が果たした役割にも触れ、「この国立劇場としばらくお別れをするのは本当に寂しい思いでいっぱいです。この舞台で演じてきた数々の役が走馬灯のように浮かんでまいります。しかしまた、いずれ立派な劇場として再開場する日を楽しみに待ちたいと存じます」とメッセージを寄せた。再開へ思いを託して。開場記念公演で第一声を発した仁左衛門の『お祭り』で締めくくり日本舞踊協会の近藤誠一会長は「新しい国立劇場も、最新のテクノロジーを使いつつも、心と心のつながりの場であるということをしっかりと認識の上、引き続き新しい時代における日本の伝統芸能の発展に、そして後世への継承に、世界への発信にご尽力いただくことを期待したい」と話し、日本演芸家連合の三笑亭夢太朗会長は「この大劇場の裏に演芸場がございます。演芸場の方では『裏に大劇場がある』と我々は言っておりますが……」と落語家らしく笑いをまぶしつつ、「寄席では特に、お囃子さんや太神楽といった曲芸さんの研修をしていただきました。今、寄席で一生懸命お三味線を弾いていらっしゃる方々は、皆さんこの研修生出身です。この研修がなかったら、寄席は三味線ナシでやっていたかも」と研修制度の重要性に触れつつ、「我々の演芸家連合は、東西併せて14の協会から成っている。毎年5月に振興会の後押しで演芸家連合の『大演芸まつり』というものをやっていた。来年からどうなるかわからないが、再開の折りにはぜひまた皆さまにお運びをいただきたく存じます」と思いのたけを語っていた。その後、式典では記念上演が行われ、日本舞踊『菊』(井上八千代演奏:富山清琴、藤舎名生ほか)、文楽『万才』(豊竹呂太夫、鶴澤清治、吉田和生、桐竹勘十郎ほか)、講談『扇の的』(神田松鯉)、そして最後に歌舞伎『お祭り』(片岡仁左衛門、清元延寿太夫、田中傳左衛門ほか)が披露された。井上八千代による日本舞踊『菊』提供:国立劇場撮影:二階堂健文楽『万才』より、左から)太夫:吉田和生、才蔵:桐竹勘十郎提供:国立劇場撮影:二階堂健神田松鯉による講談『扇の的』提供:国立劇場撮影:二階堂健歌舞伎『お祭り』より、中央) 片岡仁左衛門提供:国立劇場撮影:二階堂健仁左衛門は片岡孝夫時代の1966年、開場記念公演『菅原伝授手習鑑』に出演。大劇場における歌舞伎俳優の第一声を発したことも司会者より紹介された。その仁左衛門は『お祭り』でいなせな鳶頭として舞を披露。最後、花道での引っ込みでは客席に礼をしたのち、本舞台を振り返り、劇場に謝意を伝えるがごとく深々と一礼した姿も印象的だった。1966年の国立劇場開場記念公演『菅原伝授手習鑑』ポスター長谷川理事長によると「劇場が再開場するまでの間は、外部の劇場の施設において主催公演や養成研修事業を実施してまいります」とのことで、すでにシアター1010(東京・北千住)、新国立劇場(東京・初台)等での公演が発表になっているが、新生国立劇場再開場の情報も待たれるところだ。閉場記念式典当日の大劇場ロビー大劇場小劇場舞台国立演芸場舞台隣接する伝統芸能情報館も10月末をもって閉館取材・文・撮影(式典写真を除く劇場内・周辺写真):平野祥恵<今後の公演予定>■令和5年12月文楽公演『源平布引滝 (げんぺいぬのびきのたき)』竹生島遊覧の段・九郎助住家の段2023年12月4日(月)~2023年12月14日(木)■令和5年12月文楽鑑賞教室 / 社会人のための文楽鑑賞教室・『団子売(だんごうり)』・解説文楽の魅力・『傾城恋飛脚(けいせいこいびきゃく)』新口村の段2023年12月5日(火)~2023年12月14日(木)※12月8日(金)「Discover BUNRAKU - 外国人のための文楽鑑賞教室 -」開催会場:東京・シアター1010(足立区文化芸術劇場)■令和6年1月邦楽公演『源氏物語音楽絵巻』―演奏と朗読でたどる光源氏の生涯―2024年1月27日(土)会場:東京・新国立劇場 小劇場■令和6年1月歌舞伎公演2024年1月5日(金)~1月27日(土)会場:東京・新国立劇場中劇場■令和6年2月文楽公演2024年2月5日(月)~2月13日(火)会場:東京・日本青年館ホール■令和6年3月舞踊公演2024年3月24日(日)会場:東京・国立能楽堂※最新の公演情報は、「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」公式サイトにてご確認ください。「未来へつなぐ国立劇場プロジェクト」
2023年11月02日新国立劇場バレエ団 2023 / 2024シーズン開幕公演『ドン・キホーテ』が初日を迎えた。2023 / 2024シーズンはバレエ団の歴代芸術監督へのオマージュを込めたラインアップで、「What We Value」をテーマに新国立劇場バレエ団が25年にわたって培ってきたものを上演。開幕を飾るアレクセイ・ファジェーチェフ版『ドン・キホーテ』は、新国立劇場バレエ団が一番長く上演し続けているレパートリーで、初代の島田廣監督時代の1999年に初演し、今回の上演で10回目となる。1幕の街の賑わいや2幕の幻想的で美しい夢の場、3幕のゴージャスな結婚式と次々に場面が展開し、コメディ的なやり取りからスペイン舞踊、端正な群舞、そして主役のダイナミックなテクニックと盛りだくさんな踊りを披露する本作は、シーズン開幕にふさわしい華やかでパワフルな古典バレエとなっている。初日の主役には、米沢唯と今シーズンからプリンシパルとなった速水渉悟が登場。軽妙なやり取りと鮮やかなテクニックで底抜けに明るく楽しい舞台をつくり上げ、客席を熱狂の渦に巻き込んだ。カーテンコールでは18年ぶりに新国立劇場へ指導に来日した、改訂振付のアレクセイ・ファジェーチェフも登場。ダンサー、マエストロやオーケストラ、そしてスタッフたちへ、満員の客席から万雷の拍手とスタンディングオベーションが起こった。米沢唯速水渉悟■吉田都芸術監督 メッセージ新国立劇場バレエ団の新しいシーズンが、華やかさと楽しさに溢れた『ドン・キホーテ』で始まりました。新国立劇場バレエ団の『ドン・キホーテ』は、モスクワのボリショイ・バレエで活躍し、芸術監督も務めた A.ファジェーチェフ氏によるものです。彼によると、『ドン・キホーテ』はクラシックの粋を集めた舞踊芸術の華麗な祭典であり、プティパのバレエ作品の中でも最もモスクワらしい作品なのだそうです。そして、この「モスクワらしさ」は、何よりモスクワ派のバレエとボリショイの舞踊手に特有の、屈託のない大らかさ、遊びの感覚、即興的な自由がこの作品に溢れているところから生まれてくるそうです。皆さまにはテクニックが詰まったグラン・パ・ド・ドゥから端正な群舞、そしてスペイン舞踊と、見どころがたっぷりの古典バレエの世界を楽しんでいただきたいです。<公演情報>2023 / 2024 シーズンバレエ『ドン・キホーテ』振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ音楽:レオン・ミンクス美術・衣裳:ヴャチェスラフ・オークネフ照明:梶孝三芸術監督:吉田都指揮:マシュー・ロウ、冨田実里管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団出演:新国立劇場バレエ団【公演日程】10月20日(金) 19:0010月21日(土) 13:00 / 18:3010月22日(日) 13:00 / 18:3010月24日(火) 13:00【貸切】10月27日(金) 14:0010月28日(土) 13:00 / 18:3010月29日(日) 14:00会場:新国立劇場 オペラパレス予定上演時間:約2時間45分(休憩含む)【他劇場での公演】11月3日(金・祝) 14:0011月4日(土) 14:00会場:愛知県芸術劇場 大ホール公式サイト:
2023年10月21日“ワルツ王”とも称されるヨハン・シュトラウスII世が作曲したオペレッタ『こうもり』が、12月に新国立劇場 オペラパレスで上演される。本作はシュトラウスの最高傑作のひとつで、次々に繰り出される美しいワルツやポルカ、小粋な風刺やユーモアが最高の音楽劇だ。ウィーンの年末年始の風物詩としてもおなじみで、今年は東京の年末に登場する。演出は、ウィーン宮廷歌手の名テノール、ハインツ・ツェドニク。アール・デコ調の華やかな舞台美術・衣裳も大きな見どころで、金色に輝く幾何学模様や、日本の美感を取り入れた優雅で官能的なラインの衣裳など、クリムトを彷彿させるデザインが随所に盛り込まれている。指揮はオーストリア出身でジャズピアノなど多才ぶりを発揮する若手パトリック・ハーンが務める。本作は、美しい音楽が満載で、オペラ初心者や家族連れでも楽しめる内容になっている。新国立劇場2023/2024シーズン オペラヨハン・シュトラウスII世こうもり 全3幕■チケット情報月6日(水) 19:0012月9日(土) 14:0012月10日(日) 14:0012月12日(火) 14:00新国立劇場 オペラパレスドイツ語上演/日本語及び英語字幕付※予定上演時間 約3時間(休憩含む)指揮パトリック・ハーン演出ハインツ・ツェドニク美術・衣裳オラフ・ツォンベック振付マリア・ルイーズ・ヤスカ照明立田雄士再演演出澤田 康子再演振付石井清子舞台監督髙橋尚史ガブリエル・フォン・ アイゼンシュタインジョナサン・マクガヴァンロザリンデエレオノーレ・マルグエッレフランクヘンリー・ワディントンオルロフスキー公爵タマラ・グーラアルフレード伊藤達人ファルケ博士トーマス・タツルアデーレシェシュティン・アヴェモブリント博士青地英幸フロッシュホルスト・ラムネクイーダ伊藤 晴合唱指揮三澤洋史合唱新国立劇場合唱団バレエ東京シティ・バレエ団管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団芸術監督大野和士 .nntt.jac.go.jp/opera/
2023年10月17日ホリデーシーズンの定番バレエ『くるみ割り人形』が12月22日(金)から来年1月8日(月・祝)まで新国立劇場 オペラパレスで上演される。本作は、チャイコフスキーの三大バレエのひとつで、「花のワルツ」をはじめ「行進曲」「こんぺい糖の精の踊り」など、テレビや街中でも聞き覚えのある有名な曲が次々と登場。子どもから大人まで幅広い年齢層の観客が楽しめる演目だ。新国立劇場では2017年に初演され、ウエイン・イーグリングによる華麗でスピーディーな振付、華やかな美術や衣裳、古典名作の新境地を開く公演として高評価を集めた。新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』撮影:瀬戸秀美会期中の劇場はツリーなどが飾られ特別仕様になっており、来場者へのプレゼント企画なども予定されている。さらに、12月1日(金)から来年1月8日(月・祝)まで期間限定で、『くるみ割り人形』より「行進曲」が、会場最寄りの初台駅の列車接近メロディーになる。新国立劇場ダンス公演『サーカス』『NINJA』で音楽を担当した川瀬浩介が編曲した特別アレンジ版で、1番線と2番線で編曲の異なるバージョンが流れる。2023/2024 シーズン新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」以下の公演はぴあスペシャルデー(ぴあ貸切公演)を開催当日はホワイエでの生演奏やメルマガ登録で抽選会参加など、様々なイベントも予定!12月24日(日)12:15 開場13:00 開演12月29日(金)12:15 開場13:00 開演・pocoapoco先行:10月18日(水)まで・ぴあアプリ先行:10月18日(水)まで■チケット情報月22日(金)~2024年1月8日(月・祝)新国立劇場 オペラパレス予定上演時間:約2時間15分(休憩含む)芸術監督 吉田 都振付 ウエイン・イーグリング音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー美術 川口直次衣裳 前田文子照明 沢田祐二指揮 冨田実里 ほか管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団合唱 東京少年少女合唱隊出演 新国立劇場バレエ団
2023年10月16日入谷【Inoubliable】上野【Chanfe Tokyo/シャンフェ東京】上野【鮨尽誠】上野【中国料理古月池之端本店】上野【ブラッスリーレカン】入谷【Inoubliable】本格フレンチを厳選ワインと堪能。スタイリッシュな店内も話題に美しいロゼ色、柔らかな食感の『仔羊のロティ』モダンフレンチの【Inoubliable】は東京メトロ・入谷駅から徒歩2分。長野県産の「野菜」や北海道産「ミルキーポーク」など、生産者が真心込めてつくりあげたこだわり食材をふんだんに使用した、独創的な世界観を表現する逸品がそろいます。オシャレな雰囲気の中、至福のひと皿が堪能できるはず。U字方のカウンターはひとりにもカップルにもオススメ。居心地抜群北欧のカフェを思わせるカジュアルな雰囲気の店内に設置されるのは、12席のカウンター席と8席のテーブル席。木調の温かみのある空間は一人でもリラックスできる雰囲気で、西洋絵画に親しんだ後などにピッタリのお店です。フランス産のものを中心にセレクトしたワインとおいしい料理で寛ぎの時間を過ごしてみては。Inoubliable【エリア】上野【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】4000円【ディナー平均予算】8000円【アクセス】入谷駅 徒歩2分上野【Chanfe Tokyo/シャンフェ東京】厳選素材を革新的なメニューで提供。アイデア光る魅惑のコースワンタンの皮で包んださつま芋をサクッと素揚げした『芋の天ぷら』上野・不忍池近く。東京メトロ・上野駅から徒歩10分の【Chanfe Tokyo/シャンフェ東京】は、独創性あふれるコース料理が堪能できるダイニングバー。魚介類は朝一番に豊洲へ出向いてシェフ自らが目利きするなど、素材のクオリティを徹底重視。洗練と華やかさを備えた盛付けは目にもおいしい限りです。計算された照明が心地よく、席に着いた瞬間から日常を忘れさせてくれますカウンター席を中心に、ゆったり過ごせるソファ席も用意。落ち着いた雰囲気に一輪挿しの花を添えるといった空間づくりの妙は、特別な日を過ごすのにピッタリです。席数には限りがあるので、予約して訪ねるのがベター。カリフォルニア産を中心とした70種以上のワインも自慢です。Chanfe Tokyo/シャンフェ東京【エリア】湯島【ジャンル】ダイニングバー【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】6000円【アクセス】上野駅 徒歩10分上野【鮨尽誠】目利きの素材で旬のおまかせ握りを満喫。個室の夜景も思い出に旬素材の逸品料理を織り交ぜた『特上おまかせ握りコース』各線・上野駅からの徒歩1分という絶好アクセス。【鮨尽誠】は大将自らが厳選した新鮮な魚介類を、一つ一つ工夫を凝らして丹念に仕上げた料理の数々が自慢。名店で修業を重ねた職人が織り成す握りと、旬素材を活かした一品料理が存分に楽しめます。おまかせ握りコースで味わうのがオススメ!凛とした空気感が漂うカウンター席。店主との会話が緊張をほぐします落ち着いた和の空間の中心は洗練されたカウンター席。店主のおもてなしも心地よく、鮨店のカウンターデビューにもピッタリです。4名からの小グループから利用できる個室は夜景も見事。旬が香るコース料理と相性抜群の日本酒やワインも取りそろえるなど、ドリンクメニューも充実しています。鮨尽誠【エリア】上野【ジャンル】鮨・寿司【ランチ平均予算】3000円【ディナー平均予算】8000円【アクセス】上野駅 徒歩1分上野【中国料理古月池之端本店】レトロムードに包まれた一軒家レストランで出合う、体にやさしい会席中国料理中国と日本の精進料理の長所を掛け合わせた『夜の精進料理コース』東京メトロ・根津駅から徒歩3分。JR上野駅からも徒歩圏内の【中国料理古月池之端本店】。昭和初期から残る風情あふれる一軒家で味わえるのは、伝統的な技法を駆使した斬新な会席風の中国料理。1つのコースに20もの野菜を盛り込むこだわりは、「栄養薬膳大師」の資格をもつ実力派ならではです。襖を外せば大広間としても使える座敷席。多彩なシーンに活躍します豊かな緑に包まれた閑静な一角に立つ一軒家は、まさに大人の隠れ家。店内には、座敷席や畳のテーブル席など趣の違う大小5つの個室があり、特別なひとときを過ごすのに最適です。昭和初期の建具なども活かしたレトロな雰囲気も魅力的。博物館帰りに、展示の話題を語り合うのにオススメです。中国料理古月池之端本店【エリア】上野【ジャンル】中華料理【ランチ平均予算】5000円【ディナー平均予算】12000円【アクセス】根津駅 徒歩3分上野【ブラッスリーレカン】歴史を刻んだ旧貴賓室でいただく、エスプリが香り立つフランス料理魚介のうまみたっぷり。スペシャリテ『末竹シェフの特製ブイヤベース』JR上野駅の改札口を出てすぐという好立地。【ブラッスリーレカン】は、駅に残る旧貴賓室を利用したクラシックなレストランです。テーマは「自由に楽しむもう一つのフランス料理の世界」。各国から厳選した素材でコース料理だけでなく、日本の季節感を大切にアラカルトも豊富にそろえます。由緒ある旧貴賓室を活かした空間は、都会の喧騒を忘れさせてくれる存在昭和7年に造られたアールデコ様式の店内は、当時のままのレトロなインテリアが残るエレガントな雰囲気に満ちています。テーブル席とソファ席を含め座席は全56席で、貸切りも可能。特別な時間が流れる空間は、美術館での余韻にひたるにはベストな選択です。ワインの品ぞろえにも自信あり。ブラッスリーレカン【エリア】上野【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】3000円【ディナー平均予算】6000円【アクセス】上野駅 徒歩1分※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください。
2023年10月16日東京・六本木にある国立新美術館で、「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」がはじまりました。本展の音声ガイドナビゲーターは、声優・俳優の津田健次郎さん。今回、サンローランの服をステキに着こなされた津田さんに、展覧会のご感想やファッションのことなど、お聞きしてきました!津田健次郎さんが音声ガイドに!津田健次郎さん【女子的アートナビ】vol. 312本展は、“モードの帝王”と呼ばれ、ファッション界の第一線で活躍してきた天才デザイナー、イヴ・サンローラン(1936-2008)の没後日本ではじめて開催される大回顧展です。1958年、21歳の若さでディオールのデザイナーとしてデビューしたイヴ・サンローランは、1962年に自身のブランドを発表。2002年に引退するまで、世界のトップデザイナーとして走り続けました。彼の40年にわたる活動を、ルック110体を中心に、アクセサリーやドローイング、写真も含めた262点で紹介。イヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を受けて開催される、眼福かつゴージャスな展覧会です。本展の音声ガイドナビゲーターを務めるのは、津田健次郎さん。本展の内覧会に登壇した津田さんにインタビューも行い、展覧会やファッションのことなど、いろいろお聞きしてきました!尖ったぶっ飛んだスタイルも!――まず、サンローランの服がとてもお似合いですね。着られてみて、いかがですか?津田さんスタイリッシュな感じがします。それに、ラインがきれいです。前から、サンローランはラインがきれいだと思っていましたが、着ると改めて実感しました。スタイルをよく見せてくれる洋服だと思います。――今回の展覧会をご覧になって、全体のご感想を教えていただけますか。津田さんすごくバリエーションが豊かです。12章立てになっているのですが、章ごとに雰囲気が違い、本当に豊かな世界が広がっているのです。現代でも着られるような洋服もかなり展示されていて、1点1点とてもステキでしたね。「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――お気に入りのルックはありましたか?津田さん展覧会のポスターにもなっている、モンドリアンの絵をモチーフにした作品は、かっこいいなと思いました。イヴ・サンローランのアートシリーズは、ほかにもゴッホなど芸術家の作品からインスピレーションを得て、再構築して洋服にされたものがあり、彼はアレンジャーとしてもすばらしい方だと思いました。また、男性のタキシードをアレンジして女性バージョンにしたものとか、その隣にあったジャンプスーツとかも本当にすばらしいと思います。尖ったぶっ飛んだスタイルもたくさんあり、楽しかったですね。「バブーシュカ」ウエディング・ガウン 1965年秋冬オートクチュールコレクション――ぶっ飛んだスタイルというのは、どのルックですか?津田さんマトリョーシカからインスピレーションを受けたウエディング・ガウンです。インスピレーションが爆発しているな、と感じました。かわいいのだけれど、きれいでもあるし、恐ろしく手が込んでいます。あのデザインを思いついて、本当に服にしてしまうというのがすごいし、パンチ力がありますね。ファッションは、商業ベースに絶対に乗せていかなければならない世界。彼は、商業思考の脳みそを持ちつつ、芸術家でもあり、このバランスが、いわゆる画家などのアーティストとはまた違う部分なのかな、と思います。また、彼は、フランスを中心としたファッション界でオートクチュール(仕立服)を成功させただけでなく、アメリカの大量消費社会でプレタポルテ(既製服)も受け入れられました。ヨーロッパだけでなくアメリカでも受け入れられたというのが、彼のすごいところのひとつだと思います。もうリスペクトしかない…――音声ガイドを担当されていますが、おすすめポイントはありますか。津田さん音声ガイドは、ナレーションがメインのものが多いですが、今回のガイドはナレーションだけでなく、サンローランの名言も出てきます。そこは声の雰囲気を変えているので、ぜひ多くの方に聴いていただきたいですね。まず、作品を見て、ご自分のインスピレーションでいろいろ感じていただいて、そのうえで作品にまつわる音声ガイドを聴いていただけると、また情報量が増えて、世界が深くなったりするので、その順番がおすすめです。「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――音声ガイドで、イヴ・サンローランの人生にも触れられていますが、彼の生き方についてはどう思われましたか。津田さん21歳でディオールを継ぐ、というのは驚異的だと思います。それで自身のメゾンを開いて、すごいスピードでファッション界に躍り出る。彼の才能が開花するスピードに衝撃を受けました。華やかな世界で、華やかな作品をたくさん世に生み出して、しかもトレンドの最前線で戦っていた人ですが、この方はめちゃくちゃ静かな方なのではないか、と音声ガイドをしていて思いました。恐ろしくナイーブな方なのだな、と。本展でも、「想像上の旅」という章がありますが、彼は頭の中で旅をするという作業が一番好きで、それがクリエイティブの根源にあったのではないかな、と思いました。あとは、ご本人がかっこいい。スーツとメガネが本当にステキですよね。あのメガネ売っていないかな(笑)買いたくなっています。――イヴ・サンローランは、仕事に対して完璧主義だったと伝わっていますが、その姿勢についてはどう思われますか?津田さんもう、リスペクトしかないですね。そこまで到達できる表現者は、やはりなかなかいないと思います。まずは、そういう仕事の環境を獲得できるのがすごいことです。あとは、尽きない情熱。最後の最後まで追い込んでいく、という姿勢です。特にファッションは、ひとりの作業でつくれるものではないので、職人さんとともに、もしくはカンパニーとして、ひとつひとつの洋服を本当に極限まで追い込んでつくっていく。その姿勢と、折れない表現の力、強い信念、すごく学ぶべきものがありますよね。今回、音声ガイドの仕事で彼のことを詳しく知り、今日、実際に作品を見せていただいて、「すごいっ!」とひれ伏したくなりました。表現というものは、時代とともについえていくものでもあるのですが、サンローランの服は残る気がします。地域や時代を超えて、残っていくすごみを感じました。感動して拍手したくなる「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」展示風景――今回はファッションの展覧会ですが、アートの展覧会などにも行かれますか。津田さん芝居の仕事をするなかで、できるだけ自分のなかから出てくる独自のものを表現していきたいと思っているので、いろいろインプットするように心がけています。そのひとつが、美術館に行くことです。――どんな美術展に行かれましたか?津田さん今年は、マティスやシーレ、佐伯祐三などの展覧会に行きました。どれもすばらしかったですね。例えば、マティスは表現を突き詰めていった末、晩年に切り絵のスタイルになりますが、その切り絵が超ハッピーな感じなのです。おじいちゃんになって、新たにドーンと飛び出したような感じで。そんなポップな切り絵を展示室で見たとき、本当に感動して、拍手喝さいしたくなりました。ブラボーで、スタンディングオベーションしたくなるほどの気持ちでした。その後、最晩年にマティスはロザリオ礼拝堂の設計を手がけますが、切り絵で爆発したポップが教会のデザインに着地していくのです。美術館に行くと、キュレーターさんの想いも伝わり、それらも含めてすごく感動します。――津田さんの感動が伝わってきます。ほかにも、記憶に残る展覧会はありますか?津田さん以前見たゲルハルト・リヒター展は、特にすごかったです。なかでも、《ビルケナウ》という有名な絵がある展示空間は、本当にすばらしかったです。展示室内に4つの絵画作品が並び、その作品の複製が向かいに並び、その横には横長の鏡の作品があり、鏡の反対側にはアウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所の写真があるのです。この空間自体がアートだな、と思いました。現代美術というのは、どんな角度で物事をとらえるのかが大事だと思うのですが、その部分をリヒターの作品で深く体験できました。リヒターという作家は幅が広くて、手法をどんどん変えいくのです。自分がやってきたものが膠着しそうになると、また技法を変えて試していく。絵画とは、アートとは何か、という彼の表現に対する恐ろしいほどの探究心に圧倒されました。――ありがとうございます。では、最後に、展覧会に来られる方にメッセージをお願いいたします。津田さん今回の「イヴ・サンローラン展時を超えるスタイル」、本当に写真だけでは伝わらない作品が多数ありますので、ぜひ実物を見に来ていただけたらと思います。刺繍やスパンコールのすごさとかも実物を見ていただきたいですし、超一流の職人さんが一年がかりでつくっている作品もあります。そして、ぜひ音声ガイドとともにご覧いただけたらうれしいです。――ありがとうございました!取材を終えて…上品なサンローランのスーツがとてもお似合いだった津田さん。イヴ・サンローランの才能や、好きなアートについて語るときの熱量が非常に高く、表現者としてさまざまな人や作品をリスペクトされているお姿に感銘を受けました。そんな津田さんの美しく魅力的なボイスがたっぷり聴ける音声ガイドとともに、展覧会を楽しんでみてください。©︎ Musée Yves Saint Laurent ParisInformation会期:~2023年12月11日(月)休館日:毎週火曜日会場:国立新美術館企画展示室1E時間:10:00〜18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,300大学生¥1,500高校生¥900音声ガイド貸出価格:¥650(税込)※お一人様一台につき
2023年10月07日新国立劇場の2023/24シーズンが、プッチーニ《修道女アンジェリカ》とラヴェル《子どもと魔法》のダブルビル(2本立て上演)で幕を開けた[10月1日(日)新国立劇場オペラパレス]。新国立劇場オペラ「修道女アンジェリカ」「子どもと魔法」のチケット情報はこちら正攻法の修道院のセットで演じられた《修道女アンジェリカ》。やはり何と言っても題名役のキアーラ・イゾットン(ソプラノ)が圧巻だ。伯母の公爵夫人によって息子の死が告げられた後の20分ほどは(合唱はあるものの)アンジェリカの一人芝居。会えないままに死んだわが子を思う悲痛なアリア〈母もなしに〉。毒をあおって自死を選ぶ罪と、それによって天国で子どもに会えないかもしれないことを悔い怖れる叫び。深い響きの力強い声で客席を唸らせた。事前開催のトークイベントで、ラストシーンの「奇跡」の描き方が見どころと語っていた演出の粟國淳。彼がアンジェリカに用意したのは、亡き子が聖母に導かれて現れるショーアップされた奇跡ではなく、黒い十字架の下の、孤独で静かな死だった。納得。休憩を挟んで後半はラヴェル。粟國は、ダブルビル上演でよくあるように舞台美術を共有するのでなく、2作品を独立した作品として扱う。アニメ映像が生の舞台へ変わっていくカラフルなファンタジー。子どもたちが観てもきっと楽しい、ワクワクする《子どもと魔法》を描き出した。主役の「子ども」を演じるクロエ・ブリオ(ソプラノ)を別にカウントすると、上映時間45分の短い作品の中に9人の歌手たちが入れ替わり立ち替わり登場して20の役を歌う。物語の構成上も、そして音楽的にも、そうした短いエピソードの集積でできているので、見どころ・聴きどころが満載だ。コロラトゥーラの名人芸からダンス音楽まで、さまざまなジャンルの音楽が玉手箱のように詰まっている。一人だけ、最初から最後まで出ずっぱりなのが子ども役のブリオ。フランスの若手だが、この役をすでに200回(!)歌っているそう。やんちゃな少年ぶりで、いわば狂言まわし的に各場面を巧みに結ぶ。ラヴェルっぽい4度下行の「ママ!」がメジャー7の和音とともにふっと消えるラストの、幻想的で不思議な余韻。指揮の沼尻竜典が東京フィルから音のニュアンスや色彩の変化を鮮やかに引き出すのを目の当たりにして、彼の作曲の師が、ラヴェルをことさらに愛した三善晃だったことをあらためて思い出した。公演は10月9日(月・祝)まで残り3公演。(宮本明)
2023年10月03日新国立劇場 2023/2024シーズン 演劇『東京ローズ』が、2023年12月7日(木) から24日(日) に新国立劇場 小劇場で上演される。『東京ローズ』は、全ての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画の第6弾。企画初のミュージカル作品で、2019年にイギリスのBURNT LEMON THEATREが製作した『東京ローズ』の日本初上演となる。太平洋戦争時、米兵の士気を失わせるため、日本が放送したプロパガンダ放送「ゼロ・アワー」。正体不明の女性アナウンサーたちは、「東京ローズ」という愛称で呼ばれ、米兵のラジオアイドルともいえる存在に。終戦後、アメリカ人記者たちの「東京ローズ」の正体探しが加熱する中、米国籍、日系二世のアイバ・トグリ(戸栗郁子)が名乗り出る。本作はこのアイバ・トグリが戦中戦後の歴史の波に飲み込まれながら、アメリカと日本、ふたつの祖国にアイデンティティを引き裂かれ、自身の権利を奪われながらも、決してあきらめることなく闘う姿を女性6名のキャストによって描くミュージカルだ。2022年12月から始まったオーディションには936名の応募者がエントリーし、2度にわたる映像審査を経て、2023年1月下旬から2月初旬にかけて一次、二次選考を実施。その中から飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森加織、山本咲希の6名がキャストとして選ばれた。翻訳は新国立劇場 演劇芸術監督の小川絵梨子が手がけ、演出は新国立劇場では『東京ゴッドファーザーズ』で緻密な物語の世界観を丁寧に描き出した藤田俊太郎が担う。今回の藤田による演出では、主人公アイバを6人がリレー式に演じる。上演にあたり、小川は「国家同士の戦争によって自らの存在を否定され、激しい人種的偏見によって二つの国で尊厳を奪われた個人の物語。この『東京ローズ』は決して過去のものではなく、今の時代の物語でもあると思っております」。藤田は「歌唱映像で参加してくださった936名の歌声には魂、唯一無二の魅力がありました。全員とお会いすることは叶いませんでしたが、対面での選考を共にした女優の演技者としての実力に心が熱くなりました」とオーディションを振り返り、「(選ばれた)6人がリレー式にアイバを演じ、全員でテーマを背負います。男性と女性、アメリカ人と日本人、差別する側とされる側、終戦後のアメリカでの裁判で、裁く側と不当にも裁かれる側を演じ分けます。台本、音楽、身体、テーマにカンパニー皆でとことん向き合いたいと考えます。演劇の言葉、新しい価値観を模索する可能性に挑戦をしたいと思います」とコメントを寄せた。■翻訳:小川絵梨子 コメント『東京ローズ』は、BURNT LEMON THEATREが制作したミュージカル作品です。今年の一月にBURNT LEMON THEATREの劇作家、作曲家、演出家の方々にお会いする機会があり、この度の新国立劇場での公演を大変喜んで下さっていました。また翻訳等で質問があればいつでもどうぞ、とあたたかく仰って下さり大変にありがたく、心強く思っております。アメリカ国籍を持っていた『東京ローズ』の主人公は太平洋戦争後に敵国に加担としたとして逮捕され、国家反逆罪で法廷に立たせられました。その後、有罪判決を受け国籍を剥奪されますが、一方、日本で働いていた頃には敵性外国人と見做され、警察から圧力をかけられていたといいます。国家同士の戦争によって自らの存在を否定され、激しい人種的偏見によって二つの国で尊厳を奪われた個人の物語。この『東京ローズ』は決して過去のものではなく、今の時代の物語でもあると思っております。■演出:藤田俊太郎 コメント新国立劇場フルオーディション企画第6弾。オーディションを通して、日々大きな喜びを感じました。歌唱映像で参加してくださった936名の歌声には魂、唯一無二の魅力がありました。全員とお会いすることは叶いませんでしたが、対面での選考を共にした女優の演技者としての実力に心が熱くなりました。素晴らしい役者の力、演劇の力をあらためて感じて震えるような気持ちです。主人公の日系二世アイバ・トグリ(戸栗郁子)は生涯を通じて翻弄され続けます。「東京ローズ」と呼ばれ、ラジオのアナウンサーとして、祖国アメリカ合衆国から反逆罪に問われます。本人はアメリカ軍人に対するプロパガンダ放送ではないと主張しましたが、戦争と人種差別の犠牲となったアイバは国籍を奪われました。それでも後悔はない、人を恨まないと、アメリカ人として信念を貫きました。収容所で亡くなった母親、財産を全て奪われた父親、家族の存在、ルーツ、語った真実は今を生きる私たちに多くのことを教えてくれます。戦前、戦中、戦後。太平洋戦争の時代と格闘し、強く生きた一市民の姿を板の上に克明に焼き付けたいと思います。出演者は女性だけです。6人がリレー式にアイバを演じ、全員でテーマを背負います。男性と女性、アメリカ人と日本人、差別する側とされる側、終戦後のアメリカでの裁判で、裁く側と不当にも裁かれる側を演じ分けます。台本、音楽、身体、テーマにカンパニー皆でとことん向き合いたいと考えます。演劇の言葉、新しい価値観を模索する可能性に挑戦をしたいと思います。観客の皆様には、新しいミュージカルの誕生を是非劇場で楽しんでいただけたらと思っています。最後になりましたが、この作品を創り、私たちに日本初演の機会を与えてくれたBURNT LEMON THEATREに心からの感謝と敬意を込めて。<公演情報>新国立劇場 2023/2024シーズン 演劇『東京ローズ』2023年12月7日(木) ~24日(日) 新国立劇場 小劇場新国立劇場 2023/2024シーズン 演劇『東京ローズ』チラシビジュアル台本・作詞:メリー・ユーン/キャラ・ボルドウィン作曲:ウィリアム・パトリック・ハリソン翻訳:小川絵梨子訳詞:土器屋利行音楽監督:深沢桂子演出:藤田俊太郎芸術監督:小川絵梨子キャスト:飯野めぐみ、シルビア・グラブ、鈴木瑛美子、原田真絢、森加織、山本咲希【チケット情報】A席7,700円/B席3,300円公式サイト:
2023年09月28日「古代エジプト美術館展」が、東広島市立美術館にて2023年10月10日(火)から11月26日(日)まで開催される。福岡アジア美術館でも開催された巡回展だ。古代エジプト専門美術館「古代エジプト美術館 渋谷」所蔵作品を紹介「古代エジプト美術館展」は、古代エジプト専門美術館である「古代エジプト美術館 渋谷」の所蔵作品を紹介する展覧会だ。同館が所蔵する古代エジプト遺物は1,000点以上にのぼり、先王朝時代からローマ支配時代までを網羅。それらコレクションからは、古代エジプト文化の全貌をうかがい知ることができる。ミイラや木棺・ツタンカーメンの指輪など約200点を展示本展では、「古代エジプトの神々と信仰」「ファラオが率いた国家」「古代エジプト人の衣・食・住」「古代エジプトの死生観ー再生とミイラ」の4つのテーマに分けて作品を展示。ミイラやミイラマスク、人型木棺、神殿の石柱、ツタンカーメンの指輪といった当時の生活様式が分かる作品など約200点を展示する。古代エジプトの神々と信仰古代エジプト人は、この世界や宇宙は創世神によって創造されたもので、後に多くの神々が誕生したと考えていた。中でも、動物は人間にはない特別な能力を持つものと信じられていたことから、多くの動物神が信仰されていた。第1章「古代エジプトの神々と信仰」では、そんな動物神の信仰に着目し、多様な神々の護符や神像、動物のミイラを扱う。ファラオが率いた国家&古代エジプト人の衣・食・住このほか、第2章「ファラオが率いた国家」では、常に絶対的権力を行使していた国王ファラオや、人口の約10%にあたるエリート高官たちにフォーカスし、ファラオをモチーフとした像やレリーフ、神殿の柱などを展示。また第3章「古代エジプト人の衣・食・住」では、ツタンカーメン王の指輪や化粧用容器、ジュエリーなどを展示することで、当時の人々の生活様式に迫る。古代エジプトの死生観ー再生とミイラまた、古代エジプト人は、死後に再生し永遠なる生命を得ると信じており、死者の遺体をミイラとして保存していた。現在確認できている最古のエジプトのミイラは、先王朝時代に自然乾燥により作られたものだ。そして、第3中間期にミイラ作りの技術が頂点に達して以降、末期王朝時代からプトレマイオス朝、ローマ支配時代にかけても多くのミイラが作られた。第4章「古代エジプトの死生観ー再生とミイラ」では、少女のミイラや人型木棺、副葬品などを紹介する。ピラミッドの最新調査の様子も紹介さらに本展では、過去100年間学術調査がほとんど行われなかったメイドゥム(マイドゥーム)・ピラミッドの最新調査も紹介。古代エジプト人が築いた神々への信仰や国家、暮らし、死生観など多様なテーマから、3,000年にわたる巨大文明の歴史を紐解いていく。展覧会概要「古代エジプト美術館展」会期:2023年10月10日(火)~11月26日(日)会場:東広島市立美術館 2階・3階展示室住所:広島県東広島市西条栄町9-1時間:9:00~17:00(入館は閉館30分前まで、ただし10月10日(火)は10:00開館、10月28日(土)・11月25日(土)は19:00まで開館)休館日:月曜日観覧料:・前売券 一般 1,040円、大学生 720円・当日券 一般 1,300円、大学生 900円、高校生以下無料※当日券に限り20名以上の団体2割引き。※学生料金は学生証の提示が必要。※後期高齢者医療被保険者証・身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の交付対象者は提示により、観覧無料。※11月3日(金・祝)は無料開館日。前売券販売所:東広島市立美術館、セブンチケット(セブンコード:102-269)※販売期間:2023年8月10日(木)~10月9日(月・祝)/東広島市立美術館での販売は休館日を除く。【問い合わせ先】東広島市立美術館TEL:082‐430-7117
2023年09月28日“スラブ最高のオーケストラ”とも称されるウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団が4年ぶりに来日し、12月に日本各地で公演を行う。ウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団は、1995年にキーウに本拠を置く国立フィルハーモニー協会の専属オーケストラとして創設。古くはミルシテイン、オイストラフ、ホロヴィッツ、リヒテルなどの大巨匠を生み出してきたウクライナの伝統を受け継ぎ、主に拠点キーウで年間50回以上の定期公演を行うほか、ヨーロッパ全土から客演に招かれ活動している。しかし、2022年2月にウクライナへの侵攻が始まり、楽団の活動も中止。団員の中には軍に志願した人もいるが、戦火に苦しむ市民から「心の癒しがほしい」という声を受け同年9月に定期演奏会を再開した。現在もリハーサルや公演が空襲警報で中断する日々が続くが、ウクライナの人々から愛され、公演は満席が続いているという。今回が9度目の来日で、“家路”のメロディーでおなじみのドヴォルザーク『新世界より』や、ベートーヴェンが残した偉大なる人間賛歌『第九』を含む多彩なプログラムを披露する予定。東京公演ではチケット代金のうち 1000円が人道支援の義援金として在日本ウクライナ大使館に寄付されるほか、音楽を通して支援の輪を広げる取り組みが予定されている。ミコラ・ジャジューラ (C)三浦興一ウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団 日本ツアー■チケット情報ウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団 新世界&第九12月22日(金) 19:00開演東京芸術劇場 コンサートホールほか、以下の日程で開催12月7日 青森12月9日 盛岡12月10日 山形12月13日 札幌12月15日 山梨12月16日 沼津12月17日 新潟12月19日 立川12月20日 市川12月21日 武蔵野12月23日 福島12月24日 塩尻12月25日 岩国12月26日 熊本12月27日 福岡12月29日 山口12月31日 大阪2024年1月1日 大阪出演:ウクライナ国立フィルハーモニー交響楽団ミコラ・ジャジューラ(指揮)アントニー・ケドロヴスキー(指揮/12月24日、29日)テチアナ・ガニーナ(ソプラノ)アンジェリーナ・シュヴァツカ(アルト)ドミトロ・クズミン(テノール)セルギィ・マゲラ(バス)フジコ・ヘミング(ピアノ/12月7日、20日)村田夏帆(ヴァイオリン/12月10日、25日)荒川太一(ヴァイオリン/12月16日)野田枝里(フルート/12月16日)
2023年09月21日国立新美術館(東京・六本木)では、モードの帝王、イヴ・サンローランの没後日本初となる大回顧展「イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル」が開幕しました。オフィスでのイヴ・サンローラン、パリのマルソー大通り5番地のスタジオにて、1986年/© Droits réservésイヴ・サンローランはクリスチャン・ディオールの急死をうけ、1958年にディオールのデザイナーとして鮮烈なデビューを飾り、1962年からは自身のブランド「イヴ・サンローラン」を発表します。それ以来、2002年の引退まで約半世紀にわたって世界のファッションシーンをリードし、サファリ・ルックやパンツスーツ、ピーコート、トレンチコートといったアイテムを定着させるなど、女性たちのワードローブに変革をもたらしました。イヴ・サンローラン、アンヌ=マリー・ムニョス、ピエール・ベルジェ、パリのマルソー大通り5番地のスタジオにて、1977年/© Guy Marineau本展はイヴ・サンローラン美術館パリの全面協力を得て、没後日本で初めて開催される大回顧展です。わずか21歳で衝撃的なデビューを果たしてから、自身のブランドとして初のコレクションを成功させ、美術作品や舞台芸術、そして日本にも影響を受けながら独自のスタイルを確立するまでの40年にわたる歴史を、ルック110体のほか、アクセサリー、ドローイング、写真を含む262点によって、12章構成で余すところなく紹介しています。20世紀後半における偉大な才能であるイヴ・サンローランから生み出される、唯一無二でありながら、豪華絢爛な美の世界を間近で堪能できる大変貴重な機会となります。Photo by FASHION HEADLINE■会場構成Chapter 0ある才能の誕生Photo by FASHION HEADLINE幼い頃、家で絵を描くことが好きだったイヴ・サンローランは、絵本の装丁や挿絵を手掛けた後、ファッションに情熱を傾けるようになりました。1953年、17歳でパリに渡り、コンクールのドレス部門で入賞したことをきっかけに、クリスチャン・ディオールのアシスタントに抜擢されます。1957年にクリスチャン・ディオールが急逝した後、21歳の若さでディオールのチーフデザイナーを務めることとなりました。1958年にはディオールで最初のコレクション「トラペーズ・ライン」を発表し、後継者として熱狂的に迎え入れられます。Chapter 11962年:初となるオートクチュールコレクションPhoto by FASHION HEADLINEディオールで6つものコレクションを手掛け、デザイナーとして成功を収めた後、1961年にピエール・ベルジェらと共にオートクチュールメゾン「イヴ・サンローラン」を設立。翌年に発表された初のコレクションでは、船乗りの作業着に着想を得たピーコートなどを発表し、大きな注目と賞賛を浴びました。Chapter 2イヴ・サンローランのスタイル:アイコニックな作品Photo by FASHION HEADLINEイヴ・サンローランの代名詞的存在となったデザインの中でも特に革新的だったのは、紳士服からヒントを得て作られたタキシードやジャンプスーツ、サファリ・ルック、トレンチコートなどです。彼は、紳士服のカットの美しさ、快適さ、実用的な側面を維持しつつ、シンプルさとエレガンスを組み合わせた女性のシルエットを生み出しました。これらの作品の発表は女性解放運動が興隆した時期と重なっていたこともあり、時代の空気と呼応したスタイルは、人気を不動のものにしました。そのほか、ネイビールックなど女性らしくアレンジが施された服装も手掛けました。Chapter 3芸術性:刺繍とフェザーPhoto by FASHION HEADLINEイヴ・サンローランの作品は、織工、染色、捺染(なっせん)、刺繍、金細工、銀細工など、多くの熟練した職人たちによって支えられていました。長年にわたって受け継がれてきた技術を持つ職人たちと密接な関係を保つことで、展示作品に見られるように極めて精緻なデザインを実現可能にしました。彼の厳格なまでの完璧主義は、一つの作品を完成させるのに、何百時間もの作業を必要としました。Chapter 4想像上の旅Photo by FASHION HEADLINE読書や美術作品の収集によって想像を巡らせる「机上の」旅を通じて、モロッコ、サハラ以南のアフリカ、ロシア、スペイン、アジアといった遠い土地へ抱いた幻想をデザインで表現しました。やがて、鮮やかな色彩や独特な形によって表された「異国情緒」は、イヴ・サンローランの作品にとって不可欠な要素になりました。Chapter 5服飾の歴史Photo by FASHION HEADLINEPhoto by FASHION HEADLINEキャリア全体を通じて、イヴ・サンローランはヨーロッパの様々な時代に特徴的な装いを自身のデザインに取り込みました。古代ギリシア・ローマ彫刻がまとっているようなドレスや、中世の装いを思わせるガウンなど、幅広い時代のスタイルを自在にデザインソースとしていることから、過去の服飾の歴史に敬意を払いながらも、自由な創造性を発揮していることがわかります。Chapter 6好奇心のキャビネット:ジュエリーPhoto by FASHION HEADLINEアクセサリーはイヴ・サンローランの表現にとって非常に重要な要素でした。天然の真珠や宝石に固執することなく、木 材、金 属、ラインストーン、ビーズなどのイミテーションを多用することで、素材の無限の組み合わせを可能とし、想像力と表現の幅を広げていったのです。Chapter 7舞台芸術─グラフィックアートPhoto by FASHION HEADLINE生きた芸術に魅了されたイヴ・サンローランは、演劇、バレエ、ミュージックホール、映画などの衣装を数多く制作しました。色彩や素材を駆使した絵画的手法と、綿密で生き生きとしたコントラストの強い線から伝わる描画の才能は、本展で展示されるスケッチに色濃く表れています。Chapter 8舞台芸術─テキスタイルPhoto by FASHION HEADLINEイヴ・サンローランは、オランで過ごした少年時代から演劇や舞台に夢中になりました。カトリーヌ・ドヌーヴ主演の映画『昼顔』やジャン・コクトーの演劇『双頭の鷲』、ローラン・プティが芸術監督を務めたミュージックホールなど、生涯を通して様々な演劇や映画の衣装を手掛けています。Chapter 9アーティストへのオマージュPhoto by FASHION HEADLINEPhoto by FASHION HEADLINEイヴ・サンローランは画家や作家など多くのアーティストたちと交流し、彼らの才能へ敬意を払った作品を多く発表しました。特にピカソ、マティス、ブラック、ファン・ゴッホ、ボナールといった過去の画家への強い尊敬と親愛の念は、作品の中でも表現されました。美術作品とファッションの融合は、伝統的なオートクチュールの世界に新風を吹き込んだのですChapter 10花嫁たちPhoto by FASHION HEADLINEオートクチュールのファッションショーに欠かせないのがフィナーレを飾るウエディングドレスです。イヴ・サンローランは、19世紀の終わりから続く伝統的なガウンの形式と、新しい女性像として斬新なデザインの両方を展開しました。Chapter 11イヴ・サンローランと日本Photo by FASHION HEADLINE1963年の来日をきっかけに、イヴ・サンローランは日本の文化や伝統工芸品に魅せられ、その後の創造にも多くの示唆を与えました。一方、彼が発信するスタイルは、日本のファッションやデザインの世界にも様々な影響を及ぼすものでもありました。本章では、イヴ・サンローランと日本の関係を、資料を通して紐解きます。初来日時のイヴ・サンローラン、1963年4月/© Droits réservés展覧会実施概要【展覧会名】イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル Yves Saint Laurent, Across the Style【会期】2023年9月20日(水)~12月11日(月) 毎週火曜日休館【開館時間】10:00~18:00 ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで【会場】国立新美術館 企画展示室1E 〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 【主催】国立新美術館、産経新聞社、TBS、ソニー・ ミュージックエンタテインメント【特別協力】イヴ・サンローラン美術館パリ【特別協力】SAINT LAURENT【後援】在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ、BS- TBS、TBSラジオ【協賛】SOMPOホールディングス、野崎印刷紙業【協力】日本航空【企画協力】Ueki & Associes【展覧会HP】 【お問合せ】050-5541-8600(ハローダイヤル)【音声ガイド】津田健次郎
2023年09月21日プッチーニ《修道女アンジェリカ》とラヴェル《子どもと魔法》のダブルビル=2本立て上演(新制作)で幕を開ける新国立劇場の2023/24シーズン。指揮の沼尻竜典と演出の粟國淳が演目の魅力を語るオペラトークが開催され、熱心なファンが集まった(聞き手:井内美香)。[9月18日(月・祝)新国立劇場オペラハウス ホワイエ]新国立劇場オペラ「修道女アンジェリカ」「子どもと魔法」のチケット情報はこちらダブルビルというと、多くの場合は舞台装置を共有して上演する。しかし今回はあえて別々の装置を組み、作品の書法の違いをはっきりと見せることで、逆に両者に通じるテーマがどこにあるのかを感じてほしいと語った粟國。その共通性については今回、「母の愛」という大きなテーマが掲げられているが、他にもたとえば、「それは本当に起きたことなのか?」。《修道女アンジェリカ》のラストは、死んだ愛児が聖母とともに現れる奇跡のシーン。約100年前のMET初演時は、写実的すぎる演出が不評だったのだそう。粟國は「奇跡は本当に起きたのか。奇跡というのはみんなに見えるものではない。アンジェリカが奇跡と感じればそれが奇跡なのだという方向で描きたい」と話した。一方の《子どもと魔法》は、物や動物たちが動きしゃべるファンタジーな世界観そのものが、本当に起きていることのか、夢なのか。言われて初めて気づいたのが、両作品に登場する「子ども」の年齢。アンジェリカが未婚の子を産んだのが7年前。《子どもと魔法》の主役である子どもの年齢も6~7歳という設定だ。「短く言うと“7歳ダブルビル”です」という沼尻の「分析」が大いにウケた。沼尻が明かした修道女たちの衣裳に関わるエピソードも面白かった。立ち稽古では各自が役名のゼッケンをつけているのでわかりやすいのだけれど、同じ修道服を着て頭巾を被ると区別がつかず、指揮者としては歌のきっかけを与えるのに苦労するのだとか。しかし粟國によれば、それこそが大切なポイントだそうで、個が曖昧な修道院という社会の中で、修道女一人ひとりの個性が少しずつ描かれ、それがやがて大きく展開してアンジェリカの絶望と自殺につながるのだという。なるほど!後半には歌手たちが登場して楽曲紹介も。眼前で繰り広げられるこまやかな歌唱の能弁さに、本番へのわくわく感が一気に最高潮に達した。新国立劇場の『修道女アンジェリカ/子どもと魔法』は10月1日(日)から9日(月・祝)まで全4公演。新国立劇場オペラパレスで。(宮本明)
2023年09月21日東京・初台の新国立劇場のオペラ2023/24シーズンが10月1日(日)に幕を開ける。プッチーニ《修道女アンジェリカ》とラヴェル《子ども魔法》のダブルビル(2本立て上演)。9月初旬、この開幕公演を指揮する沼尻竜典に抱負を聞いた。「開幕公演だということに気づいてなくて。最近になってそれを認識して、なかなか緊張しております(笑)。私自身、フルの舞台形式のオペラの新制作を指揮するのは久々です。コロナ禍では密を避けるためオーケストラをステージに上げることが多く、私が今年3月まで16年間芸術監督を務めたびわ湖ホールも、この3年間はセミステージ形式の上演になっていましたから。《修道女アンジェリカ》と《子ども魔法》はどちらも上演時間1時間足らずの短いオペラ。作曲家は長いオペラとは少し違った姿勢で書いていて、ある種、箱庭づくりみたいなところがあるんですね。短い時間の中に、自分の持ち味、最上のエッセンスを注ぎ込んでいく。それが短いオペラを書く醍醐味だと思います。だから両作品とも、“これまで培ったものを全部込めました”的なところがある。《子どもと魔法》の3拍子のワルツで《ラ・ヴァルス》が聴こえてきたり、《アンジェリカ》で《トスカ》第2幕と同じ和声が聴こえてきたりすると、ファンは、『あっ、これは!』とたまらないわけです。アラカン世代限定のネタですが、キャンディーズの『微笑みがえし』を聴く喜びみたいなね(*)。音楽的にも、プッチーニのモダンな和声感と、ラヴェルのそれにはとても共通点があるんです。ちょっと専門的になりますけど、六の和音をずらして使っていくとか。六の和音っていうのは、たとえばドミラ。それをドミラ→シレソ→ラドファ→ソシミとずらして使っていく。そういう、同じ和声テクニックを使っている箇所があるんですね。そんなことからも、この2つの作品が同じ年代のものだとわかります」(*)昭和のアイドル・グループ、キャンディーズのラスト・シングル『微笑みがえし』(1978年2月リリース)の歌詞には、過去の楽曲のタイトルが散りばめられている。アンジェリカ役にはキアーラ・イゾットン、《子どもと魔法》の子ども役にはクロエ・ブリオ。世界が注目する二人のソプラノの名花が出演する。「私はふたりとも初共演ですが、ふたりとも本当に素晴らしい歌手です。主役のふたり以外も、すごく贅沢なキャストです。たとえば、《アンジェリカ》のオスミーナは歌うところが少ないのに、8月に日本各地を回るグランドオペラin Japanで《蝶々夫人》の主役を歌っていた伊藤晴さんが演ずるのですから。《子どもと魔法》のほうでは、齊藤純子さんのお母さん役はピッタリ。安楽椅子などを歌う盛田麻央さんはフランスで勉強した人で、フランス語もめちゃくちゃ上手です。青地英幸さんが演ずる蛙も、ベテランならではの味わいがいいですね。出演者が多いオペラですが、主役や準主役ができるような人たちがずらっとキャスティングされている。けっしてヨイショするわけではないですが、さすが新国立劇場です」演出・粟國淳、芸術監督・大野和士との厚い信頼新国立劇場の現在の「ダブルビル枠」は、大野和士オペラ芸術監督が2018年の就任時に、劇場のレパートリー拡充のために打ち立てた上演計画の一環で、2019年4月のツェムリンスキー《フィレンツェの悲劇》とプッチーニ《ジャンニ・スキッキ》でスタート。その公演の指揮を委ねられたのも沼尻だった。「古くはダブルビルといえば、《道化師》と《カヴァレリア・ルスティカーナ》が定番でした。大野さんは、意外性のある組み合わせを考えてくださった。前回の《フィレンツェの悲劇》と《ジャンニ・スキッキ》もなかなかレアでしたけど、今回のダブルビルは、世界的に見ても珍しいんじゃないでしょうか。大野さんが次を考えてらっしゃるかどうかは知らないけれど、プッチーニの三部作、《外套》《修道女アンジェリカ》《ジャンニ・スキッキ》をあえて一晩にまとめずバラして、そこに近代の作品を組み合わせるというスタイルですね。今回の2作品は、大劇場ではあまりやらないかもしれないけれども、音大出身者には親しみのある演目かもしれません。《修道女アンジェリカ》は(合唱以外の)登場人物がすべて女声。音楽大学は女性が多いから、よく学内オペラ公演で取り上げられます。《子どもと魔法》も、出演者が多いので大勢が出る学生の公演には都合がいい。そういうこともあって、双方とも意外と上演回数があると思います」演出家・粟國淳とのコンビでの上演。これまで何度も協働を重ね、厚い信頼を寄せ合うふたりだ。「日生劇場やびわ湖ホールでも長年ご一緒してきましたけれども、粟國さんは絶対に変なことをしない。変なことというのは、たとえば修道院がいきなり精神病院になっているとかですね。今、読み替えで注目を狙うような演出が、ドイツを中心に流行ってしまって。作品自体の魅力を引き出すより演出家のアイディアを見せようとするみたいなね。読み替えが全部ダメとは言いたくないけど、つじつまの合わない読み替えも多いんです。粟國さんは常に王道を行く演出で、音楽に沿って、作曲家や作品をリスペクトするのが基本だから、ストレスがまったくないんです。歌手たちも安心して歌えると思いますね。歌っている言葉と動作が一致しているし、アリアを1曲まるまる寝っ転がって歌えとかいう無理も絶対にさせない。そしてやっぱりイタリア育ちなので、日本よりも濃い海や空の色を見ていたのでしょう。普通の日本人にはない色彩感をお持ちです。宗教的シーンも自然に作れますね。たとえば、修道女といったって、われわれ日本人はなかなかピンとこないけど、彼は当然イメージを持っている。もちろんイタリア語は母国語のようなものなので、たぶん考えごとはイタリア語でしているんじゃないでしょうか。音楽的にもいろいろ助けてもらっています」5学年上の大野和士芸術監督とは長い付き合いがある。「ずっと前ですけど、質問したいことがあってスコアを持って訪ねて行ったらインタビューの最中で、『質問に来た後輩』として写真に撮られ、一緒に雑誌に掲載されてしまいました(笑)。僕は学生時代の大野さんが指揮するのも見ているんですよ。自分がまだ高校生の頃で、当時私がアルバイトでたまにピアノを弾いていた、長門美保歌劇団の公演でした。メノッティの《泥棒とオールドミス》だったと思います。そんな頃からずっと背中を追ってきた。追い切れてないですけどね。彼が尊敬していたヴォルフガング・サヴァリッシュは僕も大好きな指揮者だったので、ミュンヘンでもお会いしています。そういえば、大野さんと同じ週に、ミュンヘンの歌劇場で指揮したこともあるんですよ」いまや日本のオペラ界を担う第一人者として活躍するふたり。40年来の指揮者仲間に託した、芸術監督肝いりのダブルビル公演なのだ。見逃せるはずがない。この取材後に始まった稽古もいよいよ佳境。開幕はまもなくだ。取材・文:宮本明撮影:石阪大輔ジャコモ・プッチーニ修道女アンジェリカモーリス・ラヴェル子どもと魔法■チケット情報月1日(日) 14:0010月4日(水) 19:0010月7日(土) 14:0010月9日(月・祝) 14:00新国立劇場オペラパレス
2023年09月20日リンシュウ(RYNSHU)の2024年春夏コレクションが、東京・新国立美術館にて発表された。苦くて甘い恋心今季のリンシュウは、“Bitter Sweet Romantic”がテーマ。ロマンティックな恋に落ちたときの甘い瞬間や、淡く苦い思い出、燃え上がるような情熱を衣服に落とし込んだ。そんなコレクションをパリの2024年春夏ファッションウィーク前に、東京にて先行公開。会場の青い光が、ドレスコードであるブラックの装いに身を包んだ観客を照らしていた。軽やかなオーガンジーを纏ってファーストルックには、軽やかに透けるオーガンジー素材のドレスが登場。ネイビーからブルー、ライトブルー、ピンク、ホワイト…と移り変わる甘い恋心を表しているかのようなカラーリングが印象的だ。また、深いブルーのシルクサテンシャツにオーガンジーを組み合わせたシャツドレスや、袖のスリット部分からピンクのオーガンジーが見えるテーラードジャケットなど、エレガントなルックが散見された。密かに燃える想い“胸の内で密かに燃える想い”を体現したデザインも今季ならでは。黄色と赤、黒白のユニークなアート柄を自在に型取り、組み合わせているのが特徴だ。ジャケットをはじめ、ハーフパンツやドレス、ブーツなどの多彩なラインナップには、“自分の気持ちを自由に伝えてほしい”というデザイナー 山地正倫周・りえこの思いが込められている。大胆なカラーパレットまた特徴的なのが、ランウェイの中盤から鮮やかなカラーパレットのルックが披露された点。ブラックやネイビーなどのベーシックカラーとパステルカラーを基調とする中、ピンクのロングジャケットとハーフパンツ、光沢のあるブルーのセットアップや輝くグリーンのドレスが、コレクション全体に大胆なアクセントを加えていた。嵐の前の静けさラストは、ツヤ感のあるブルーとネイビーのテーラードに、立体的なブラックのオーガンジースカートを合わせた“嵐の前の夜明け”を暗示するモダンモノトーンで幕を閉じた。ロマンティックな夏を予感させる。
2023年09月10日新国立劇場演劇公演『骨と十字架』が、本日9月1日(金)より無料映像配信される。期間は1ヶ月、新国立劇場ウェブサイト内の「新国デジタルシアター」( )、新国立劇場YouTubeチャンネル( )から視聴可能となっている。『骨と十字架』は、2019年に小川絵梨子演劇芸術監督就任のシーズンの締めくくりとして、小川自身の演出で上演された、劇団パラドックス定数を主宰する劇作家・演出家の野木萌葱による書き下ろし作品。進化論を否定するキリスト教の教えに従いながら、同時に古生物学者として北京原人の発見に関わり、一躍世界の注目を浴びることとなった実在のフランス人司祭、ピエール・テイヤール・ド・シャルダンの物語だ。『骨と十字架』より撮影:宮川舞子■あらすじローマ、イエズス会本部。テイヤールは、敬虔な司祭として神に身を捧げる一方、古生物学者として人類の進化の道について探求する日々を送っていた。イエズス会は、彼の信仰のあり方に対してキリスト教の教義、神の御言葉に矛盾するものとして、彼の処遇を問題視することになる。テイヤールに科せられたのは、ヨーロッパから遠く離れた北京への赴任だった。どうしても譲れないものに直面したとき、信じるものを否定されたとき、人はどうなっていくのか、どう振舞うのか……立場を異にする男性5人の聖職者による濃密な会話劇は、上演時に大きな反響を呼んだ。1ヶ月間の無料映像配信というまたとない貴重な機会に、ぜひ堪能して欲しい。<配信情報>■配信メディア新国立劇場ウェブサイト内 新国デジタルシアター新国立劇場YouTube チャンネル■配信内容2018/2019 シーズン演劇『骨と十字架』日本語上演収録日:2019 年7 月25 日(木)作:野木萌葱演出:小川絵梨子美術:乘峯雅寛照明:榊 美香音響:福澤裕之衣裳:前田文子演出助手:渡邊千穂舞台監督:藤崎遊出演:神農直隆 / 小林隆 / 伊達暁 / 佐藤祐基 / 近藤芳正
2023年09月01日ヴェルディ円熟の傑作『シモン・ボッカネグラ』が11月に新国立劇場で初めて上演される。海の男シモン・ボッカネグラを題材にした力強い作品で、オペラファンなら必ず観ておきたい公演だ。『シモン・ボッカネグラ』は、ヴェルディが43歳で作曲し、24年後の大幅改訂で一躍成功を収めた作品。14世紀に実在した初代ジェノヴァ総督シモン・ボッカネグラを題材に、平民と貴族の抗争、親子や恋人の愛憎が入り組むドラマが力強い音楽で描かれる。フィエスコの沈痛なアリア「引き裂かれた父の心は」、アメーリアのロマンツァ「暁に星と海はほほえみ」、シモンとアメーリアの二重唱、ガブリエーレのアリア「わが心に炎が燃える」、シモンのモノローグ「慰めてくれ、海のそよ風よ」、そして緊迫した重唱や多彩な合唱など、聴きどころも満載。元海賊で名総督となるシモン(バリトン)、貴族階級で厳格な性格の宿敵フィエスコ(バス)をはじめ、ヴェルディならではの男声低音キャラクターの魅力が凝縮されている。演出にあたるのは、長年オランダ国立オペラを率いて同歌劇場を変革し、2018年からエクサン・プロヴァンス音楽祭の総監督を務めるピエール・オーディ。新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士が自ら指揮を務める。■大野和士芸術監督からのメッセージ2023/2024シーズンの新制作としまして、現在エクサン・プロヴァンス音楽祭の総監督である演出家ピエール・オーディを迎え、ヴェルディの最後期の作品が生み出される先駆けとなった『シモン・ボッカネグラ』の新国立劇場初演を行います。主役のシモン・ボッカネグラにはロベルト・フロンターリ、娘アメーリアにはイリーナ・ルング、フィエスコには名バスのリッカルド・ザネッラート、アメーリアの恋人役のガブリエーレにはルチアーノ・ガンチほか、世界の第一線の歌手が揃い、貴族社会と平民社会、それとボッカネグラとアメーリアの間の親子の確執が、胸をえぐるような深い劇的な波となって皆さんの心に刻まれることでしょう。新国立劇場 2023/2024 シーズン オペラジュゼッペ・ヴェルディシモン・ボッカネグラプロローグ付き全 3 幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉11月15日(水) 19:0018日(土) 14:0021日(火) 14:0023日(木・祝) 14:0026日(日) 14:00新国立劇場 オペラパレス※予定上演時間 約2時間45分(休憩含む)■チケット情報指揮 大野和士演出 ピエール・オーディ美術 アニッシュ・カプーア衣裳 ヴォイチェフ・ジエジッツ照明 ジャン・カルマン舞台監督 髙橋尚史シモン・ボッカネグラ ロベルト・フロンターリアメーリア(マリア・ボッカネグラ) イリーナ・ルングヤコポ・フィエスコ リッカルド・ザネッラートガブリエーレ・アドルノ ルチアーノ・ガンチパオロ・アルビアーニ シモーネ・アルベルギーニピエトロ 須藤慎吾隊長 村上敏明侍女 鈴木涼子合唱指揮 冨平恭平合唱 新国立劇場合唱団管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
2023年08月29日日本工芸週間実行委員会は、「日本工芸週間」2023年の最終日9月24日(日)、東京国立近代美術館にて、墨と硯と水をテーマにした講義と実演のイベントを開催します。【趣旨】墨を使う、書画のプロは必聴!いま、忘れ去られてしまった、使う側の常識「硯の目を立てる」あなたはできますか?硯を扱う際の必須知識を実演します。秋のお彼岸に合わせて開催される「日本工芸週間」。今年のテーマは「自然素材」です。一つの素材を有効に使い、古くなれば形を変えて再利用するという昔ながらの日本の文化を、次世代へと繋ぐためのイベントです。墨と硯と水に焦点を当て、実物の観賞・レクチャー・実演により、素材への多角的なアプローチを行います。・墨・硯・水・紙・筆“きほんのき”・水墨画を、構成要素である墨と水から解き明かす・本来必要なお手入れ“硯の目立て”手順を解説雪舟、牧谿、狩野探幽、そして伊藤若冲、横山大観に至る、水墨画の名品を見ると、あるときは青く、あるときは赤みを帯び、見事なグラデーションとなっています。豊かな表情は、筆力は当然ですが、墨と硯、そして墨を磨るための水、紙、筆の素材の質の高さにも支えられています。京の軟水を使った墨と江戸の硬水を使った墨では、色も表情も異なります。紙との相性によっても変わっていきます。そして、墨を磨るための硯は、卸し金と同様に、よく目の立った道具でなければなりません。墨と硯と水について、当たり前のようで、これまで語られてこなかった大切な話が実物をみながら披露されます。墨と硯と水青木芳昭(あおき・よしあき)【開催概要】「墨・硯・水のはなし」日時 :9月24日(日)14:30~16:30会場 :東京国立近代美術館 講堂参加費:5,000円定員 :100名(要事前申込・先着順)講師 :青木芳昭(あおき・よしあき)1953年生まれ。1999年アカデミア・プラトニカ設立・代表。2011年京都造形芸術大学教授、『よくわかる今の絵画材料』(生活の友社)出版。2015年寺田倉庫PIGMENT(ピグモン)顧問、21世紀鷹峰フォーラム研究協力「絶滅危惧の素材と道具」で害獣の鹿の皮から和膠の復刻、毛から筆・刷毛の道筋を築く。2016年日本文化藝術財団より「第8回創造する伝統賞」受賞。【詳細】東京国立近代美術館常設展示11室を鑑賞後に集合13:45 開場14:00~14:30 青木氏所蔵の文房四宝(墨・硯・紙・筆)を実見14:30~15:30 レクチャー15:30~15:50 11室の水墨画(富岡鉄斎ほか)を解説15:50~16:20 実演 硯の目立て16:20~16:30 質疑応答イメージ1イメージ2主催: 日本工芸週間実行委員会共催: 公益社団法人日本工芸会一般社団法人 TAKUMI - Art du Japon北陸工芸プラットフォーム実行委員会 /JapanCraft21日本漆アカデミー一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン運営: 日本工芸週間運営事務局(一般社団法人ザ・クリエイション・オブ・ジャパン内)【申込みフォーム】 二次元コード 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年08月25日新国立劇場の2023/2024シーズンが古典バレエ『ドン・キホーテ』で幕を開ける。セルバンテスの原作を基に、床屋のバジルと町娘キトリの恋物語が陽気に賑わうバルセロナの町で繰り広げられる。新国立劇場バレエ団の『ドン・キホーテ』は、モスクワ・ボリショイバレエ団で活躍し、芸術監督も務めた アレクセイ・ファジェーチェフによるもの。今回の上演では、ファジェーエフが来日し、バレエ団に指導を行う予定だ。闘牛士や町の女たちによるスペイン舞踊、風車のエピソード、ドン・キホーテの夢の中で繰り広げられる美しい群舞、そして最終幕の恋人たちによるグラン・パ・ド・ドゥまで、古典バレエの美しさとバラエティ豊かな踊りを楽しめる人気演目で、新シーズンの開幕を華やかに彩る公演になりそうだ。新国立劇場 2023/2024 シーズンバレエ「ドン・キホーテ」10月20日(金)から29日(日)まで新国立劇場 オペラパレス■チケット情報振付 マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー改訂振付 アレクセイ・ファジェーチェフ音楽 レオン・ミンクス美術・衣裳 ヴャチェスラフ・オークネフ照明 梶 孝三芸術監督 吉田 都指揮 マシュー・ロウ/冨田実里管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団出演 新国立劇場バレエ団
2023年08月21日新国立劇場で10月18日(水)から『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の交互上演がスタートする。両作は単なる喜劇ではなく、戯曲のもつ複雑さ、登場人物たちの屈折した人間像から、"ダークコメディ”と呼ばれている。『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』は、時をおかず執筆されたと推測される。ストーリー的にも同じテーマを持つ表裏一体のような戯曲だと考え、2作品を交互に上演することで、シェイクスピアの鋭い視点と同時代性が浮かび上がることを目指すのが本プロジェクトだ。2作品とも「新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ」を手がける鵜山仁が演出を務め、岡本健一、浦井健治、中嶋朋子をはじめとする本シリーズお馴染みの俳優陣と、今回新たに参加するメンバーが出演。ソニンは、『ヘンリー六世』以来、14年ぶりの新国立劇場シェイクスピア作品の出演となり、注目を集めることになりそうだ。両作はシェイクスピア作品の中でも上演機会が多いとは言えないが、そこに描かれるドラマや人物造形は現代の観客に深く刺さるものがある。そんな2作品を同時期にひとつの劇場で観賞することで新たな発見もあるだろう。時間をかけて創作を続ける新国立劇場だからこそ実現した意欲的なプロジェクトになりそうだ。●演出:鵜山 仁からのメッセージ物の見た目や物を見る立場が変わると、人の心は他愛無く変化してしまう。加害者のはずが被害者になり、被害者のはずが加害者になる。とすれば「生」の世界はたちまち「死」の世界に、「死」の世界がもしかしたら「生」 の世界に反転するかもしれない。『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』。この二つの「問題劇」にしかけられた二つのベッドトリックは、そんな人生と世界の変容を象徴しているような気がします。三年に及ぶコロナ禍、僕にとって驚きだったのは、目にも見えない、生物だか無生物だかも判然としないウイ ルスという存在に、世界がここまで翻弄されてしまったことです。そして昨年二月以来のロシアによるウクライナ侵攻は、「戦争」が、実は平穏に見えたわれわれの日常の、すぐ隣に息を潜めていたことを痛感させました。われわれの目に見えていたのはなんと狭い世界だったのか、ならば舞台という特権的な場では、生きている現実の人間だけではなく、目には見えない世界、死者たちの歴史や、ウイルスも含めた森羅万象、あらゆるものとの交信を心がけたい。ここでは日常生活の利害、効率、善悪を一旦度外視した、遠大、深遠なコミュニケーションが求められます。そのためにあらゆる手段を動員して見えない者たちに呼びかけ、見えない者たちの呼びかけに応えたい。2009年の『ヘンリー六世』から2020年の『リチャード二世』に至るまで、新国立劇場の舞台で、シェイクスピアの歴史劇を創ってきた仲間たちとの新しいチャレンジ。これを機会に是非、もう一歩先の世界に、分け入ってみたいと思っています。新国立劇場 2023/2024シーズン 演劇シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』■チケット情報月18日(水)~11月19日(日)新国立劇場 中劇場作:ウィリアム・シェイクスピア翻訳:小田島雄志演出:鵜山 仁キャスト:岡本健一浦井健治中嶋朋子ソニン立川三貴吉村 直木下浩之那須佐代子勝部演之小長谷勝彦下総源太朗清原達之藤木久美子川辺邦弘亀田佳明永田江里内藤裕志須藤瑞己福士永大
2023年08月09日国立西洋美術館の常設展示室で、小企画展「美術館の悪(わる)ものたち」が開かれています。本展では、国立西洋美術館が所蔵する膨大なコレクションのなかから、「悪ものたち」が登場する作品を展示。まがまがしい悪魔から、心惹かれる魅力的なキャラクターまで、さまざまな悪党が登場します。このユニークな展覧会を担当された研究員さんに、展示の見どころなどお聞きしてきました!西洋の「悪ものたち」が勢ぞろい!「美術館の悪ものたち」展示風景【女子的アートナビ】vol. 306「美術館の悪(わる)ものたち」では、国立西洋美術館が所蔵するコレクションからセレクトされた作品を49件展示。デューラーやルーベンス、クラーナハ、ドーミエ、ゴヤなど、ルネサンス期から20世紀までの名作版画のほか、油彩画も紹介されています。描かれている「悪もの」は、悪魔や怪物だけではありません。怠惰や大食い、嫉妬、貪欲、淫欲などもキリスト教会では「大罪(悪徳)」とされ、それらを描いた作品も展示。また、「死」をイメージ化した不気味な版画や、悪徳政治家を揶揄した風刺画もあり、多彩な西洋の悪ものたちが勢ぞろいしています。この楽しい展覧会を企画された国立西洋美術館 学芸課長の渡辺晋輔さんに、見どころや版画の楽しみ方をお聞きしてきました。悩みに悩んで「悪ものたち」に…――まず、本展開催の経緯について教えてください。渡辺さん国立西洋美術館の版画素描展示室では、大きい展覧会を開催するたびに、当館の所蔵作品を使った小さい展覧会をしています。今回、企画展示室では学術的なスペイン版画の展覧会をしているので、その裏番組として、この小企画展ではやわらかめのテーマで版画などを出すことにしました。――「美術館の悪ものたち」というタイトルにとても惹かれます。なぜ、「悪もの」をテーマにされたのですか?渡辺さん夏休みの期間とも重なるので、子どもが楽しめるものにしようと思いました。テーマは悩みに悩み、「悪魔と魔女」も考えましたが、それだけで作品を集めるのは難しく、もう少し広めのテーマとして出てきたのが「悪ものたち」でした。「悪い奴ら」にしようかとも思いましたが、最終的には「悪ものたち」となりました。「悪もの」は自由に描ける!――作品には、悪魔や怪物などキャラクターたちがたくさん登場しています。今のように簡単に情報が得られない当時の芸術家たちは、どんな風に個性的なキャラクターを生み出したのでしょうか?渡辺さん当時も、少ないながらも情報は得られました。その役割を果たしたのが版画です。ルネサンス期は、版画により情報の伝達が進み、各地で描かれている変わった怪物などを知ることができました。例えば、ユニークな怪物を描いたヒエロニムス・ボスの版画を見た画家が、それをもとに工夫を重ねて発展させて描いたりしています。また、16世紀はローマ時代の壁画などが発掘され、古代の変わった装飾模様が見つかった時期でもあるので、そのデザインを発達させたという可能性もあります。――西洋文化のなかで「悪ものたち」のイメージが受け継がれ、発展していったのですね。渡辺さん悪いものや醜いものは、「こう描かなければならない」という制約がありません。例えばキリストや聖人は、描き方が厳密に決まっています。また、美しい人の描き方もある程度決まっています。「悪ものたち」はそれらと正反対にあり自由なので、画家たちは創意工夫を発揮しやすく、自分の能力を示すきっかけにもしていました。不倫の濡れ衣を着せられた人妻の絵…スケッジャ(本名ジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニ・グイーディ)《スザンナ伝》15世紀――本展の構成を教えていただけますか?渡辺さん会場では、セクションにわけながら、ルネサンス期から20世紀へと時代が下がるように展示していますが、時代の流れは厳密ではありません。また、本展では、当館コレクションのなかでもかなり良い版画を選んであります。テーマを設けていますが、名品展にもなっていて、基本的にどれを見ても良い作品です。――どれも名品とのことで、そこからセレクトするのは難しいと思いますが、各セクションのおすすめ作品を教えていただけますか?渡辺さん最初のセクション「罪深い人々」では、一番目に展示してあるテンペラ画が見どころです。描かれている「スザンナ伝」は、当時とてもメジャーな話です。旧約聖書に題材をとったもので、長老たちに言い寄られ、不倫の濡れ衣を着せられた人妻スザンナの様子などが描かれています。その長老たちが、典型的な悪人とわかるようになっているので、おもしろい作品です。――この絵は、部屋に飾って楽しむためにつくられたのですか?渡辺さん本作品は、もとは「カッソーネ」と呼ばれる、衣服などを入れる長持ちの前面を飾る装飾パネルでした。これは嫁入り道具です。スザンナは貞節を守った女性なので、花嫁のお手本のようなイメージとして、当時の花嫁道具に好んで描かれました。版画史に残る名品!アルブレヒト・デューラー《騎士と死と悪魔》1513年エングレーヴィング――次のセクション「悪魔と魔女」のおすすめ作品を教えていただけますか?渡辺さんデューラーの《騎士と死と悪魔》は、版画のなかで最高峰作品という位置づけで、版画史に残る重要な作品です。技法も優れていますし、「死」をデューラーが工夫して発展させ、あのような版画に仕上げた点もすばらしいです。右側に、ブタの鼻をもつ悪魔も描かれています。「美術館の悪ものたち」展示風景渡辺さんまた、このセクションでは、版画によってイメージがイタリアからドイツへ、そしてドイツからイタリアに伝わったことがわかる作品も3点展示しています。イタリアのマントヴァで制作されたマンテーニャの版画がドイツに運ばれ、それをデューラーが入手し、あるイメージを引用して「魔女」を描きます。その版画が、今度はローマに流通し、ヴェネツィアーノという画家が魔女の作品を描きました。会場では、パネルで詳しく解説してありますので、そちらもご覧ください。ずっと見ていて飽きないイチオシ版画ジョルジョ・ギージ《人生の寓意》1561年 エングレーヴィング――続いて、「魔物」のセクションについて、見どころを教えてください。渡辺さんギージの作品は、16世紀の版画のなかでは非常に有名で、とても魅力的だと思います。作者の空想がすごく発揮され、画面が謎めいていて、今でも何が描かれているのかよくわからない部分もあります。技術力も高く、細かなところまで描き込まれていて、見ていて飽きませんし、純粋に楽しいです。また、本作品は自分が購入を担当したものでもあり、ぜひ見ていただきたかったという思い入れもあります。――この作品は、大きなパネルにもされて、描かれている「生き物」を探すというクイズも出されていますね。渡辺さん動物や怪物だけでなく、よく見ると、「ラファエロ作」という文字も書いてあります。モチーフをラファエロから引用しているところもあり、いろいろな解釈が盛り込まれています。当館ホームページの作品検索ページでも本作品を拡大して見ることができますので、ゆっくり動物など探してみてください。男の醜さを際立たせた作品ウィレム・ファン・スワーネンブルフ、マールテン・ファン・ヘームスケルク の原画に基づく《『世俗財産の悪用についての寓意』より、男に矢を放とうとする死》1609年エングレーヴィング――「死」のセクションのおすすめ作品も教えてください。渡辺さんスワーネンブルフの作品は、世俗財産の悪用を寓意として表しているところがおもしろい作品です。「死」の訪れで財産が崩れ去り、結局死んでしまえば何も残らないという教訓がこめられています。――このような版画は、当時の人たちは飾って楽しんでいたのですか?渡辺さん版画は、本来は手元に置いて、見て楽しむものです。例えば、16世紀に入ると素描のコレクションをする人たちが出てきますが、これは一点ものでなかなか手に入らないので、その代わりに版画をコレクションしていました。今の切手帳みたいに帳面に版画を貼って、鑑賞するというやり方です。裕福な人の趣味ですが、安い物もありました。フェリシアン・ロップス《ポルノクラテスあるいは豚を連れた女》1881年エッチング、アクアティント――最後のセクション「近代都市の悪ものたち」の見どころを教えてください。渡辺さんロップスの作品はインパクトがあります。裸の女性が目隠しをしてブタを連れて歩いている版画です。「ポルノクラテス」とは「娼婦政治家」のことで、自分の利益しか見ていない政治家を風刺している作品です。近代都市の堕落したところを見せつけているように思います。左:フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテス《『ロス・カプリーチョス』より、何たる犠牲か》1799年エッチング、アクアティント(一部掻き落とし)、ドライポイント右:オノレ・ドーミエ《『表情のクロッキー』より、(39)なあ、いいだろう…ご主人様に接吻しておくれ…今すぐに…》1838年リトグラフ渡辺さんゴヤやドーミエが描いた、中年男性が若い女性を口説く作品もおもしろいです。「不釣り合いなカップル」という主題は歴史が長く、ルネサンスのころからあります。年寄りの男性と若い女性、醜い男性と美しい女性など、いろいろなところが対比となっています。醜い男性を描くとき、いかにして醜さを際立たせるかが画家に求められていました。ゴヤもドーミエも、その部分をうまく表現していると思います。深く考えずに楽しんで!――最後に、版画の鑑賞法について教えてください。版画は、木版やエングレーヴィング、エッチングなどさまざまな技法があり、少し難しいイメージがあります。初心者は、どんなふうに見ればよいのでしょうか?渡辺さんあまり深く考えずに見ていいと思います。技法がわからないと作品がわからない、ということではないと思います。見ていると、素描とは違うというのはわかると思いますので、何か違うなという感じを楽しんでいただければ、それで十分だと思います。例えばデューラーの版画は、純粋に画像が醸し出す雰囲気がすごいと思います。風格があり、見ていると圧倒されます。その魅力を、会場で見て感じていただけたらうれしいです。――詳しく解説していただき、ありがとうございました。クビーンのポスターも見てください!渡辺さんのお話、いかがでしたか。モノトーンの版画は、一見すると地味ですが、描かれているテーマやストーリーを知ると、大変おもしろいアートだと思いました。本展は、タイトルもユニークですが、ポスターも非常にインパクトがあります。アルフレート・クビーンという画家が制作した、不敵な笑みを浮かべた骸骨の版画がデザインされているのですが、残念ながら本作品は著作権の関係で、ポスターも含めて写真を掲載できません。クビーンの作品はネットでも話題になっていて、「あの版画のグッズが欲しい」というコメントもちらほら。間違いなく、本展で一番キャラ立ちのスゴい「悪もの」です。会場で、クビーンの版画は最後に登場するので、ぜひ直接美術館でご覧になってみてください。「美術館の悪ものたち」は9月3日まで開催。Information会期:~9月3日(日)休館日:月曜日※8月14日(月)は開館会場:国立西洋美術館新館2階版画素描展示室時間:9:30~17:30※毎週金・土曜日:9:30~20:00※入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥500大学生¥250※本展は常設展の観覧券または企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」(7月4日(火)~9月3日(日))観覧当日に限り、同展観覧券でご覧いただけます。
2023年07月30日国立新美術館で、「テート美術館展光— ターナー、印象派から現代へ」が開かれています。本展のアンバサダーは、俳優の板垣李光人(いたがきりひと)さん。ご自身でもデジタルアートを手がけるなど、アートが大好きな板垣さんに、展覧会の感想や楽しみ方について、語っていただきました!板垣李光人さんがアンバサダー!板垣李光人さん【女子的アートナビ】vol. 305「テート美術館展光— ターナー、印象派から現代へ」では、英国・テート美術館から「光」をテーマにセレクトされた作品が来日。イギリスが誇る風景画家のターナーやコンスタブル、印象派のモネ、室内の淡い光を描いたハマスホイなどの油彩画や、近代の写真作品、現代アートのインスタレーションなど多彩な作品をとおして、光とアートをめぐる200年の流れを体感することができます。今回、テート美術館から来日する約120点の作品のうち、およそ100点が日本初出品です。本展は、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドをめぐってきた世界巡回展。最終会場の日本では、大人気のロスコやリヒターの作品も特別に出品されます。そんな注目の展覧会でアンバサダーと音声ガイドを務めるのが、NHK大河ドラマ『どうする家康』でモテモテの井伊直政役を演じている俳優の板垣李光人さん。ドイツ語で「光」を意味する「Licht(リヒト)」という名をもつご縁でアンバサダーに選ばれた板垣さんが、プレス内覧会に登場。その後、インタビューも実施しましたので、まとめてご紹介します。すごく不思議な感じ――展覧会のアンバサダーになられて、いかがでしたか?板垣さんすごく不思議な感じです。アートが好きなので、美術館はプライベートでもよく来ている場所です。そこでこうしてお仕事をさせてもらってるというのが不思議な感じですし、本当に光栄で嬉しいです。国立新美術館もよく来ていて、展示室で作品を見たあとは、余韻に浸りながら館内のカフェでお茶しています。そこでケーキを食べたりもしています(笑)。――音声ガイドも担当されています。特に、収録で心がけたことなどありましたか?板垣さん音声ガイドは、作品を鑑賞するための手助けで、作品が主役という意識はありました。また、自分で美術館に来たときにもいつも聴いていたので、どういうテンポがいいのか、どんな感じがいいのか、ある程度はわかっているつもりでいましたので、割とスムーズにできました。完成したものはまだ聴いていないので、また来て聴いてみたいです。――音声ガイドの収録で、特に印象に残った作品解説はありましたか?板垣さん原稿を読んでいて興味深かったのは、草間彌生さんの鏡の作品《去ってゆく冬》です。草間さんの作品は、有名な水玉の絵や立体かぼちゃのイメージでしたが、今回の作品ははじめて知りました。無限を表している作品で、彼女が水玉を描く理由も原稿で触れられいて、興味深かったです。――その作品を実際にご覧になってみて、いかがでしたか?板垣さん会場で作品を見てみると、鏡の奥に続く水玉が、直線で続くのではなく曲線を描くことで、その先が円になるように想像できました。それにより、輪廻というか循環を連想できて、おもしろかったです。あの作品は、写真で見るよりも、やはり実際に本物を見ないとわからないと思いました。解脱したような感じ…――展覧会の全体をご覧になって、いかがでしたか?板垣さんとにかく幅が広いな、と思いました。時代の幅もそうですけど、油絵から現代アートまであり、いろいろな世代の方に楽しんでいただけるのではないかと思います。――お気に入りの作品を教えていただけますか?板垣さんいろいろあるのですが、まずジェームズ・タレルの《レイマー、ブルー》という作品はよかったです。見る人によって解釈や感じ方が全然違うと思うのですけど、ぼくはすごく高尚なもののように感じました。白い無垢な空間に青い光が映し出されるのですが、それがあの世への入り口のような感じで……。安らかで清らかで、煩悩がなくなり、解脱したというか、解脱の入り口にいるような感じがしました。――解脱できるような作品というのはすごいですね。ほかには、どんな作品がよかったですか。板垣さんジョン・ブレットの《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》も好きでした。海に光が降り注ぐ絵で、画家自身が航海に出て見た海の風景を描いたそうで、陸や港から見る海の景色とはまた違う力強さがありました。海の美しさだけでなく、航海に出ているからこそ海の恐ろしさ、厳しさ、力強さみたいなものがわかり、そのうえで描いている絵なので印象的です。波の質感や、光が降り注いで光が波に反射している様子など、ディテールを近くで見るのもいいし、少し離れて全体の力強さを楽しむのもいいです。――鑑賞方法が本格的ですね!板垣さん自分も絵を描いたりするので、ディテールとか見てしまいます。――絵を描かれる立場からご覧になって、すごいと思った作品はありましたか?板垣さんゲルハルト・リヒターの《アブストラクト・ペインティング(726)》はおもしろいと思いました。キャンバスを2個つなげている作品で、アナログで描いているので筆の跡もあるのですが、その筆の動きがデジタルな電子的なものにも思えました。解説を聴いたら、専用のスキージーで描いているそうで、機械的な動きによりその質感が出ているとのこと。油彩的なアプローチによるインクの飛び方とか筆の運び方とかのバランスがおもしろいと感じました。画家自身で自分の色も確立されていますよね。――本展をご覧になり、ご自身のアート制作などでトライしてみたいことなど出てきましたか?板垣さんぼくはデジタルアートを描いているのですが、キャンバスに描きたいなと思いました。リヒターを見たらいいな、と(笑)。専用の部屋を借りてアトリエみたいにして、壁をブルーシートで覆って汚れてもいいようにして、そんな環境が欲しいな、と思いました。衝撃を受けたアートは…――板垣さんは、デジタルアートで現代仏画をお描きになってNFTでリリースされていました。なぜ仏画というジャンルにされたのですか?板垣さんもともと仏教だけでなく宗教画が好きなんです。キリスト教絵画は、印象派などと違う質感があり、おもしろいと感じます。例えば、人物のバランスが、概念的な偉大さや存在の大きさにより描かれるサイズが決まったりして、そのめちゃくちゃ大胆な感じがおもしろいです。色の使い方も、絵の具の発達により変わってきますが、古いものは、その描かれた当時の独特の色の出し方があり、そんな色使いも好きです。ヨーロッパだけでなく、アジアの曼荼羅などもおもしろいですね。だから、もともと宗教画に興味があり、デジタルでイラストを描いていて、さらにファッションも好きなので、その自分の好きなものを組み合わせて紹介したいと思い、たどりついたのが現代仏画でした。――では、お寺などにも行かれたりするのですか?板垣さんお寺も仏像も好きです。お寺や神社にもいろいろ様式があり、例えば仏像でも攻めている感じのものもあったりして、見ていておもしろいです。――アートは、描くのも見るのも好きとのことですが、いつからアートに興味があったのですか?板垣さん絵は、覚えていないくらいのころから描いていました。アーティスティックなものが好きだと自覚したのは、ティム・バートンの『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』を見てから。この映画がとても好きでした。小さいころからティム・バートンの作品が好きで、それが今にも通じてくるのかなと思いました。――これまでに見た展覧会で、印象に残っているものはありますか?板垣さん以前、森美術館で開催されていた「塩田千春展:魂がふるえる」。あれは衝撃的でした。今回のテート美術館展でも、大きな卵のような作品《イシーの光》(アニッシュ・カプーア作)がありましたが、あのような生命とかエロティシズムを感じるような作品もすごく好きで、塩田さんの作品も血のような肉体的なものを感じ、そんな作品が好きで強烈だったので覚えています。――たくさん美術展に行かれていますが、アートの楽しみ方を教えていただけますか?板垣さん例えば今回のターナーの作品など、百数十年以上も前に描かれたものです。その時代に生きていた人たちが感じていたもの、考えていたこと、におい、五感などすべて表現されているのが絵なので、その時代にタイムスリップできる感覚を味わえるのが美術だと思います。来たことがない方は、とにかく一回来てみると、自分なりの楽しみ方が絶対に見つかると思います。――では、最後に読者のみなさんにメッセージをお願いします。板垣さんこの展覧会には、はじめて日本にくる作品もたくさんあり、絵だけでなく立体作品もあります。ふだん絵や美術に興味がない方や、美術館に来る機会がない方でも、すごく楽しみやすいと思います。いろいろな時代のものがあり、何か自分のなかにビビッとくる、心惹かれる作品が絶対にあると思うので、いろいろなテートの光を感じに来ていただけたらと思います。――ありがとうございました!取材を終えて…アートについて、非常に造詣の深い板垣さん。作品についての感想も、ひとつひとつがとても深く、でもわかりやすい言葉で話してくださり、聴き惚れてしまいました。容姿だけでなくお声も優しく美しいので、音声ガイドも心地よく聴くことができます。ぜひ、板垣さんのガイドを聴きながら、作品をご覧になってみてください。Information会期:〜10月2日(月)休館日:毎週火曜日会場:国立新美術館企画展示室2E時間:10:00〜18:00※毎週金・土曜日は20:00まで※入場は閉館の30分前まで観覧料:一般¥2,200大学生¥1,400高校生¥1,000
2023年07月30日イギリスを代表する美術館、テート美術館のコレクションから「光」をテーマにした作品を紹介する展覧会『テート美術館展光― ターナー、印象派から現代へ』が、7月12日(水)に国立新美術館にて開幕、好評を博している。18世紀末から現代までの約120点の作品がならぶ展覧会は10月2日(月) まで開催される。テートは、英国政府が所有する美術コレクションを収蔵、管理する組織で、ロンドンのテート・ブリテンとテート・モダン、テート・リバプール、テート・セント・アイブスの4つの国立美術館で構成されている。この展覧会はそのテートが誇る約7万7000点のコレクションのなかから「光」をテーマに約120点をセレクトし紹介する国際巡回展。2021年、上海の美術館を皮切りにソウル、メルボルン、オークランドを巡回し、日本が最終会場となる。展覧会は7章で構成され、それぞれテーマに沿った作品が展示される。第1章「精神的で崇高な光」は、光と闇をもって宗教的主題や精神世界の表現を追求した作品が並ぶ。詩人であり画家であったウィリアム・ブレイクの《アダムを裁く神》では、神の背後に後光が描きこまれているが、これは威厳や権威を表現したもの。ジョン・マーティンの《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》では、イタリアのヴェスヴィオ火山の噴火と逃げまとう人々を光と闇を用いてドラマティックに描き出した。また、バーン=ジョーンズの《愛と巡礼者》では、天使のような人物が黒い服をまとった巡礼者を誘導する場面で光と闇を対比的に用いている。ウィリアム・ブレイク《アダムを裁く神》1795年ジョン・マーティン《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》1822年~2011年修復エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ《愛と巡礼者》1896~97年第2章「自然の光」は、自然のなかにある光をありのままに捉えようとした画家たちの動きを追う。ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》は、雲の間を抜け、海に光を落とすやわらかい光を描いている。ターナーやコンスタブルなどイギリスを代表する画家や、モネやシスレーなど印象派の画家たちの作品もならぶ展示室中央には草間彌生による鏡の作品《去ってゆく冬》が据えられており、周囲の作品や人物、そして光を映し出す印象的な空間になっている。ジョン・ブレット《ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡》1871年中央:草間彌生《去ってゆく冬》2005年第3章「室内の光」は、室内の光を捉えようとした画家の作品に焦点を当てる。デンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイは、自宅の一室を何度となく描き続けた。第4章「光の効果」では、科学的なアプローチなどを用いて光と対峙した絵画、インスタレーション、写真などを取り上げている。左:ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内》1899年、右:ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内、床に映る陽光》1906年第5章の「色と光」は、色と光の関係を探求した作品を紹介する。光を探求し、さまざまな切り口の作品を制作するゲルハルト・リヒターの《アブストラクト・ペインティング(726)》は、なにかが描かれていた画面から絵具がスキージ(へら)で削り取られ、その結果抽象的な作品へと変化した作品。先に描かれていたと思われる絵はぼんやりとした形で残されていて、光に包まれているようにも見える。ゲルハルト・リヒター《アブストラクト・ペインティング(726)》1990年アメリカ人作家、ベー・ホワイトによる《ぶら下がったかけら》は、482本の糸と色とりどりの紙片で構成された作品だ。ペー・ホワイト《ぶら下がったかけら》2004年第6章「光の再構成」は、人工の光を素材とするアーティストに着目する。デイヴィッド・バチェラーの《ブリック・レーンのスペクトル 2》は夜の都市のような光を作り出し、オラファー・エリアソンは《黄色vs紫》で、特殊なフィルターが貼られた黄色いディスクに光を当てるインスタレーションを展開している。プロジェクターから投射された光は、ディスクを通して、2種類の色を壁に映し出されている。左:デイヴィッド・バチェラー《ブリック・レーンのスペクトル 2》2007年、右:デイヴィッド・バチェラー《私が愛するキングス・クロス駅、私を愛するキングス・クロス駅 8》2002〜07年オラファー・エリアソン《黄色vs紫》2003年そして最終章となる第7章「広大な光」では、光をよりダイナミックに扱う作家の作品を紹介する。ジェームズ・タレルの巨大なインスタレーションや、四方に光を投げかけながら回転するオラファー・エリアソンの《星くずの素粒子》などは、時間を忘れて見つめてしまうはずだ。オラファー・エリアソン《星くずの素粒子》2014年単なる名品展にとどまらず、18世紀の絵画作品から現代アートまで幅広い作品を通して「光」について考えることができる非常に刺激的で新しい発見に富んだ展覧会。夏休みにぜひ訪れたい展覧会だ。取材・文:浦島茂世<開催情報>『テート美術館展光— ターナー、印象派から現代へ』2023年7月12日(水)〜10月2日(月)、国立新美術館にて開催
2023年07月26日小企画展「美術館の悪ものたち」が、東京・上野の国立西洋美術館にて、2023年9月3日(日)まで開催される。国立西洋美術館に潜む「悪ものたち」に着目国立西洋美術館が所蔵する作品には、多くの「悪ものたち」が登場する。お金に目がくらむ若者、若い女性にうつつを抜かし、あるいは嫉妬する老人、盗人たち。ひいては悪魔や魔女といった悪を象徴する存在やその手下たち、死の象徴でもある憎々しい骸骨などがその例である。小企画展「美術館の悪ものたち」は、国立西洋美術館が所蔵する作品に見られる「悪ものたち」に着目した展覧会。15世紀から20世紀初頭にかけての所蔵版画作品を中心に紹介する。画面の中に描かれた個性的で、時にコミカルな姿で表される悪ものたちの姿を通じて、芸術家の豊かな空想力を感じることができる。会場では、「罪深い人々」「悪魔と魔女」「魔物」「死」「近代都市の悪ものたち」に分けて版画数十点、絵画数点を展示。特にマルカントニオ・ライモンディやアルブレヒト・デューラーが描いた各ジャンルの「悪ものたち」の作品を鑑賞できる。悪に対するかつての西洋の価値観を垣間見るはるか昔に描かれた「悪」や「正しくないこと」は、現代の価値観とマッチするものもあれば、理解に苦しむものもある。たとえば殺人や嫉妬は「悪」であり「正しくないこと」であるのに対し、大食いが罪とされるのには違和感を覚えるように、善悪の線引きは、古来より変わらないものもあれば、時代や地域、社会によって異なるのである。18世紀末期以降に脱宗教化・世俗化が進むと、「悪」を客観的に捉え社会批判を含んだ絵画なども多く描かれるようになる。「近代都市の悪ものたち」の章では、フランシスコ・ホセ・デ・ゴヤ・イ・ルシエンテスやオノレ・ドーミエらによる作品も展示される。本展は、「悪」に対する西洋の価値観の一端にも触れることができる展覧会となっている。展覧会概要小企画展「美術館の悪ものたち」会期:2023年6月27日(火)~9月3日(日)会場:国立西洋美術館 新館2階 版画素描展示室住所:東京都台東区上野公園7-7開館時間:9:30~17:30(金・土曜日は9:30~20:00)※入館は閉館の30分前まで休館日:月曜日※ただし8月14日(月)は開館観覧料:一般 500円(400円)、大学生 250円(200円)※( )内は20名以上の団体料金(オンラインにて要事前予約)※高校生以下および18歳未満、65歳以上は無料(入館時に学生証または年齢の確認できるものを提示)※心身障害者および付添者1名は無料(入館時に障害者手帳を提示)※7月9日(日)、8月13日(日)、9月3日(日)(Kawasaki Free Sunday)は本展および常設展は観覧無料※8月26日(土)(にぎやかサタデー)は本展、常設展および企画展は観覧無料※本展は常設展の観覧券または企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」(7月4日(火)~9月3日(日))観覧当日に限り、同展観覧券で観覧可【問い合わせ先】TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2023年07月24日ドキュメンタリー映画『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』が7月15日(土) に公開される。ル・コルビュジエの建築作品として世界文化遺産に登録され、東アジア最大級の西洋美術コレクションを誇る国立西洋美術館の2020年10月から1年半をかけて行った整備工事にカメラが潜入し、ふだん見られない所蔵品の数々、スタッフの活動など、貴重なミュージアムの内部を収めた。特別展を見ているだけではわからなかった、美術館の本当の姿が見えてくる。『わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏』ふた月に1度くらい、上野の美術展に行く。その程度の美術ファンだ。上野の森でもちょっと奥まった東京都美術館や東京国立博物館に行く道すがら、国立西洋美術館の広い前庭が目に入る。その前庭もコルビュジエの設計なのだが、本館までの動線や樹々の配置などがその後の増設工事を経て少しずつ変えられていた。それを創建当時の姿に戻すことが整備の主要目的。前庭のどこをどう通って行くか、入場者にそれがどう見えるか、コルビュジエのコンセプトを正確に後世に伝えるためだ。リニューアル後の国立西洋美術館整備工事は、庭に展示されているロダンの「考える人」「カレーの市民」、ブールデルの「弓をひくヘラクレス」を一時避難させることから始まる。普通には気付かないが、実は、この前庭の地下は特別展用のスペースと収蔵庫になっていて、その天井の防水工事や、美術品を別の場所に移す作業も必要だ。養生、といっても対象が美術品、大事に、大事に扱われる。「考える人」は、包帯のような布にぐるぐる巻きにされ、大けがをして痛がっている人のようだ。そもそも、国立西洋美術館の所蔵品の基礎となったのは、大正から昭和にかけて、造船業で財を成し、稀代の美術コレクターとなった松方幸次郎の「松方コレクション」。戦後、フランス政府に差し押さえられていた400点が返された。その返還の条件に、収容する美術館を建設すること、という項目が入っており、日本政府はフランスの建築家ル・コルビュジエに設計を依頼した。完成し、開館したのは1959年だ。この映画は独特なスタイルで作られている。冒頭に簡単な美術館ができた上記のようないきさつと、途中に松方コレクションの紹介が文字で入るものの、説明的なナレーションはなく、最低限な字幕と、美術館スタッフと企画展の外部協力者へのインタビュー、取材映像で綴られる。そして、ここまでよく許可したなと思わせる丁寧な取材。美術館といえば、特別展を行う場所と考えてしまうが、実は美術品の収集、維持管理と、その所蔵品の展示、貸し出しも重要な仕事。6000点に及ぶ所蔵品の管理、修復の現場だけでなく、海外や地方美術館での巡回展など、多岐にわたる活動を追っていく。学芸員が集まり日常的な業務報告をする会議や、購入作品を検討する委員会、常設展の企画ミーティングまで、美術館のバックヤードともいえる場所へ、カメラはどんどん入っていく。国立西洋美術館は職員21人と研究員が勤務している。取材期間中に馬渕明子館長が退官し、現在の田中正之館長にバトンタッチしたが、そのふたりの館長を始め、ほとんど全員といってもいいスタッフが、インタビューに答えている。今の仕事の内容だけでなく、個人的になぜ、この道を目指したかも、自分の言葉で話す。ここが魅力といってもいいところ。少年の頃、この映画を観たら、美術館スタッフを志したかもしれないと思えるほどだ。証言からは、国立美術館が抱える課題も浮かび上がってくる。例えば、新聞やテレビなどのマスコミの力なくしては成り立たない特別展の構造。社会における美術館のあり方もテーマのひとつ。一方で、東アジアで随一の所蔵品数を誇る国立西洋美術館はインバウンド観光客から注目されている。世界遺産登録はその大きな“観光資源”である。こういった新しいニーズに対応するためのマンパワーも必要になってくるのだろう。監督は、NHKで『新・シルクロード』『世界遺産1万年の叙事詩』などを担当したプロデューサー、ディレクターの大墻敦(おおがきあつし)。劇場用ドキュメンタリーは『春画と日本人』『スズさん 昭和の家事と家族の物語』に続き、本作が3作目。フレデリック・ワイズマン監督の『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』のような映画を国立西洋美術館でつくれないかと企画し、実現させた。馬渕明子前館長は、退任の挨拶で「国立西洋美術館は誰のものか。それは国民のものです」と明快に話す。映画のタイトルは、そういう意味も込めたものと思う。気に入った特別展だけでなく、気軽に常設展を覗いてみよう、映画を観終わってそんな気持になった。コルビュジエの世界遺産もしみじみ堪能しなくちゃ。文=坂口英明(ぴあ編集部)【ぴあ水先案内から】村山匡一郎(映画評論家)「……これまでもわが国の美術館を紹介する文化映画はあったが、美術館の全貌に迫るドキュメンタリーとしては意義深い。」村山匡一郎さんの水先案内をもっと見る()(C)大墻敦
2023年07月10日長塚圭史が上演台本・演出を手がけ、夏休みシーズンに東京・新国立劇場にて上演される「こどもも大人も楽しめるシリーズ」の最新作、『モグラが三千あつまって』。長塚はこれまでも同劇場で『音のいない世界で』(2012年)、『かがみのかなたはたなかのなかに』(2015年・17年)、『イヌビト ~犬人~』(2020年)などで子どもと大人に向けた作品を発表してきたが、今回は武井博の児童文学を原作に、振付を近藤良平、音楽を阿部海太郎に託した。劇中では南の海に浮かぶ3つの島を舞台に、食料のタロイモをめぐって争いを繰り広げるモグラ族、イヌ族、ネコ族の姿が描かれる。7月14日(金) の開幕を約20日後に控えた6月下旬、ぴあアプリ編集部は新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯による本作の稽古場訪問に同行した。『モグラ〜』と同じ7月に予定されている「新国立劇場 こどものためのバレエ劇場2023エデュケーショナル・プログラム『白鳥の湖』」において主演のオデット(白鳥)・オディール(黒鳥)を務める米沢に、稽古からどんなインスピレーションを得たか尋ねてみると──。新国立劇場バレエ団プリンシパル・米沢唯長塚圭史・阿部海太郎が追求する、キャラクターとしての自然な反応左から)音楽の阿部海太郎、振付の近藤良平、上演台本・演出の長塚圭史撮影:田中亜紀モグラが3000匹も登場する物語ながら、出演者はたったの4人──。観客を劇世界へいざなうキャストには吉田美月喜、富山えり子、小日向星一、栗原類が名を連ねる。稽古前には、ストレッチやウォーミングアップ、スタッフとの小道具確認、台本を熱心に読む者など、それぞれに稽古へと備える。定刻になると、稽古は発声練習から始まった。唇を震わせながら行うリップロールや、動物の鳴き声を彷彿とさせる「ウォウウォウ」をはじめ、「フィー」「ぬぉんぬぉん」といった多様な音を用いる。表情筋を大きく動かしながら笑顔や泣き顔をつくったり、口の前に指を当て息の漏れ具合を確認したり、各自がそれぞれ「効果」を意識しながら基本動作を繰り返している様子が伝わってきた。次に行われたのは、音楽の阿部海太郎による歌稽古だ。阿部はまず「動きなし」で各ナンバーを確認し、調整後に「動きあり」で同じナンバーを繰り返し稽古した。こだわっていたのは、キャラクターとしての自然な動きと歌声を両立させること。キャストがそれぞれ修正点を反映すると魅力的なシーンに変貌を遂げ、阿部も「すごくいいですね!」と褒め称えた。イヌ族を退治しようとするモグラ族の知恵者マチェック役の吉田は、戦果を澄んだ声でひたむきに歌い上げる。富山は落ち着きのある低音で、度胸あるモグラ族のバンゲラ親分を体現した。新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀特筆すべきは、四方の客席が中央にある円形ステージを取り囲む美術セットだろう。円形ステージの下もアクティングエリアになっており、ウクレレや小さなドラムセットなど楽器を仕込んだセンターステージの中でキャストが演奏する場面も見受けられた。イヌ族やネコ族の襲来から身を守るために「地下都市をつくろう」と提案するモグラ役の小日向は、はじくと高い音が出るハープのような楽器、鈴、吹き戻し(笛)を次々と繰り出しながらセットの中をかがんで駆け回る。新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古風景撮影:田中亜紀その後に行われた芝居稽古(小返し)では、長塚の演出が光った。論点は、イヌ族が掘り起こしたタロイモが無防備に積み上げられているのを「モグラ族の罠ではないか」と訝しく感じているネコ族の様子をどのように表現するか。長塚は「目の前で起こっている事態が都合が良すぎて怪しすぎる、と反応すればいい」とアドバイス。ネコ族ガンス隊長役の栗原は真摯に耳を傾けていた。米沢唯「細部にこだわることで『白鳥の湖』にもリアリティを」キャストと同じくらい、長塚の言葉に熱心に耳を傾けていた米沢。もともと演劇が好きで、所属する新国立劇場で上演された『音のいない世界で』『かがみのかなたはたなかのなかに』『イヌビト~犬人~』を見届けている長塚作品ファンでもある。演劇の稽古を見学したのはこれが初めてらしく、「すごく楽しかったです!」「ずっと観ていられる」「一日中、稽古場にいられると思いました」と興奮しきりだった。新国立劇場演劇『モグラが三千あつまって』稽古場を訪れた米沢唯「目線をどのタイミングでどのように動かすか、セリフをどんな間でどのように発するか、細部にこだわることでリアリティが生まれるのは、バレエにも通じます」と『モグラ〜』稽古見学を経ての気づきを口にする。今夏の『白鳥の湖』ではストーリーをまっすぐ受け止める子どもの観客やバレエ鑑賞初心者が多いぶん、「お客様を劇世界に没入させるだけのリアリティを追求しないと」と背筋を伸ばしていた。取材・文:岡山朋代■新国立劇場の演劇『モグラが三千あつまって』チケット情報■こどものためのバレエ劇場2023エデュケーショナル・プログラム「白鳥の湖」チケット情報
2023年07月06日国立西洋美術館の常設展・企画展が1日観覧料無料となるイベント「にぎやかサタデー」が、8月26日(土) に開催されることが決定した。本イベントは、「美術館では静かにしなくてはいけないから緊張する」「小さな子ども連れだとなかなか展覧会には行きづらい」といった人にも、おしゃべりしながら気兼ねなく美術館での作品鑑賞を楽しんでほしいという想いから行われる。当日は、キッズスペースや授乳室も設置し、年齢を問わず作品鑑賞を楽しめる企画が用意される。モネの「睡蓮」やロダンの「考える人」を展示している常設展では「この絵をさがしに行こう!」企画を実施。ひとり1枚配られるポストカードには、作品の一部分を切り取った写真が添付されており、ゲーム感覚でアート鑑賞を楽しむことができる。また、企画展では『スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた』が開催中で、鑑賞体験をより深めるための問いかけや、作品解説を掲載した小冊子が配布される。企画展「スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた」小冊子<開催情報>「にぎやかサタデー」8月26日(土) 国立西洋美術館(常設展/企画展)開館時間:9:30~20:00料金:無料(但し、ショップや「CAFE すいれん」をご利用の場合は別途料金がかかります)詳細はこちら:
2023年06月23日新国立劇場バレエ団ダンサーの柴山紗帆と速水渉悟が、2023/2024 シーズンよりプリンシパルに昇格することが発表になった。この決定は、17日の夜に行われた『白鳥の湖』のカーテンコールで吉田都芸術監督より観客の前で発表された。柴山紗帆Photo by Masatoshi Yamashiro柴山紗帆は、東京都出身で、これまでに田中洋子、スヴェトラーナ・オシエヴァ、デニス・マーシャル、マジョリー・グルントヴィに師事。バレエスタジオ DUOや、ハリッド・コンサーヴァトリー、ピッツバーグ・バレエシアター・スクールで研鑽を積んできた。2014年にソリストとして新国立劇場バレエ団に入団し、『くるみ割り人形』『シンデレラ』『白鳥の湖』などの公演に出演。2021年にはファースト・ソリストに昇格していた。速水渉悟Photo by Masatoshi Yamashiro速水渉悟は京都府の出身。ジョン・クランコ・バレエ学校を経て、2015年にヒューストン・バレエに入団。同年にはユース・アメリカ・グランプリ NY ファイナルシニア男性の部で金メダル、審査員特別賞を受賞している。2018年に新国立劇場バレエ団にソリストとして入団。2020年『ドン・キホーテ』で全幕主演デビューを果たし、『ジゼル』『くるみ割り人形』『コッペリア』などの公演に出演した。柴山と同じく2021年ファースト・ソリストに、そしてこのたびプリンシパルに昇格した。新国立劇場では通常のバレエ公演だけでなく、こどものためのエデュケーショナル・プログラムなども実施しており、7月には「こどものためのバレエ劇場 2023 エデュケーショナル・プログラム 白鳥の湖」が開催。柴山と速水も出演する。こどものためのバレエ劇場 2023エデュケーショナル・プログラム白鳥の湖7月28日(金)~7月30日(日)新国立劇場 オペラパレス■チケット情報月28日(金)13:00【オデット/オディール】米沢 唯【ジークフリード王子】渡邊峻郁7月28日(金)16:00【オデット/オディール】木村優里【ジークフリード王子】速水渉悟7月29日(土)13:00【オデット/オディール】柴山紗帆【ジークフリード王子】井澤 駿7月29日(土)16:00【オデット/オディール】米沢 唯【ジークフリード王子】 渡邊峻郁7月30日(日)13:00【オデット/オディール】木村優里【ジークフリード王子】速水渉悟7月30日(日)16:00【オデット/オディール】柴山紗帆【ジークフリード王子】井澤 駿【振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー【美術・衣裳】フィリップ・プロウズ【照明】ピーター・タイガン【指揮】冨田実里【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
2023年06月22日大阪の国立国際美術館にて、特別展「ホーム・スイート・ホーム」が開催される。会期は、2023年6月24日(土)から9月10日(日)まで。“ホーム”をキーワードにした現代美術日本国内外の現代美術作家たちが参加する今回の「ホーム・スイート・ホーム」展。“ホーム”というキーワードのもと、作品を通じて、私たちにとっての「ホーム」――家、国そして家族とは何か、私たちが所属する地域、社会の変容、普遍性を浮かび上がらせることを試みる。本展に出品する作家の一人である鎌田友介は、日本のみならず、韓国や台湾、ブラジルなどに建てられた20世紀の日本家屋をリサーチ。忘れ去られようとする現代日本の歴史を再構築する『The House』シリーズが展示される。ジョージア出身のアンドロ・ウェクアが贈る《Levan Portrait》。自身の実体験を踏まえながら、独特な色調で描いた絵画だ。そのほか、フィリピンで生まれたマリア・ファーラの絵画《テラスのある部屋》や、潘逸舟が段ボールを使って構成したサウンドインスタレーション《ほうれん草たちが日本語で夢を見た日》などが展示される。【詳細】「ホーム・スイート・ホーム」会期:2023年6月24日(土)~9月10日(日)時間:10:00~17:00 ※金・土曜日は20:00まで。休館日:月曜日(7月17日は開館)、7月18日(火)場所:国立国際美術館 地下3階展示室住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55料金:〇通常一般 1,300円/大学生 800円/高校生以下・18歳未満 無料〇団体一般 1,100円/大学生 500円/高校生以下・18歳未満 無料■出品作家アンドロ・ウェクア、マリア・ファーラ、鎌田友介、石原海、竹村京、潘逸舟※入場は、閉館の30分前まで。※20名以上で団体料金を適用。※画像の無断転載禁止。【問い合わせ先】国立国際美術館TEL:06-6447-4680(代表)
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