2022年9月5日、お笑いコンビ『スピードワゴン』の井戸田潤さんが、モデルの蜂谷晏海(はちや・あみ)さんと結婚。井戸田さんは同日に婚姻届けを提出し、情報番組『ノンストップ!』(フジテレビ系)の生放送にて、笑顔で結婚を発表しました。生放送で結婚を報告した、スピードワゴン井戸田潤『8年間の歩み』に反響!8年間におよぶ交際を経て、ついに夫婦になった、井戸田さんと蜂谷さん。『ノンストップ!』の共演者だけでなく、ネットからも驚く声や祝福の声が上がっています。井戸田潤の結婚に、『スピードワゴン』相方の小沢一敬がコメントその後、『スピードワゴン』で井戸田さんの相方を務める、小沢一敬さんが所属事務所を通してコメントを発表。お笑いの道をともに歩んできた相方であり、大切な友人である井戸田さんの幸せを祝福しました。潤はとても明るい。今、過去を振り返ってみると笑ってる顔ばかり思い出します。明るくて声も大きい。それでいて自分で決めて実行する決断力や行動力もある。潤はまるで太陽のような人です。人を惹きつける力、そばにいる人たちをあたたかい気持ちにする力。そりゃあ、みんな好きになるよと思います。一年中ぽかぽかしたあたたかい家庭をこれからパートナーと作っていくのでしょう。僕は相方ですが友達とも思ってるので、これからのあまーい結婚生活での話を楽屋で聞くのが楽しみです。潤さん。御結婚おめでとうございます。小沢さんのコメントからは、いかに井戸田さんを人として尊敬し、大切に思っているかが伝わってきます。相方である井戸田さんの幸せは、小沢さんにとって、自分のことのように嬉しいのでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年09月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「政治と宗教」です。政策にどれだけ介入していたのか。透明性を求める。安倍元首相の銃撃事件を機に、政治家と旧統一教会との関係が問題になっています。自民党の保守系グループ、なかでも清和会とのつながりは古く、歴史的な経緯がありました。旧統一教会の教祖・文鮮明氏は1968年に国際勝共連合という、共産主義に勝つことを目的に掲げた政治団体を立ち上げました。敗戦後の日本は、民主主義国家になるか、中国やソ連をはじめとする共産化の波に呑み込まれるかの瀬戸際にありました。日本の共産化を防ぐという大義のもと、イデオロギーを同じくする一部の保守系の政治家たちは、勝共連合と強く結びついたのです。1980年代になり、統一教会の悪質な霊感商法などが社会問題になりました。’97年に教会から名称変更の要望がありましたが、実態が変わらないまま変更を認めれば社会に悪影響を及ぼすと、文化庁は認めませんでした。ところが、2015年に変更申請は文化庁に受理され、現在の「世界平和統一家庭連合」に。ちょうど第3次安倍政権が発足して1年目でした。当時の下村博文文科相のもとで交わされた文書が公開されましたが、変更が可能になった理由の部分は黒塗りでした。教会側にとっては、政治家が集会に出て挨拶をしたり祝電を寄せることは、自分たちの正当性を証明することにもなります。信徒たちはボランティアとして無償で選挙運動を支えていました。問題は、政権与党は宗教団体からの政策リクエストをどれほど受けていたのか、ということです。憲法改正やスパイ防止法推進、同性婚や選択的夫婦別姓に反対など、自民党の主張と団体の運動方針は重なるところがあり、因果関係の有無を明確にしてほしいです。旧統一教会に限らず、私たちの与り知らないところで、さまざまな団体が絶えず献金をしたり、選挙を手伝ったり、組織票を入れるなど、政治家と利害関係を結びながら、自分たちの求める政策を実行させるという構図が、今回明らかになりました。政治は放っておくと、お金や力のあるところに吸い寄せられてしまいます。市民やメディアが絶えず緊張感を持ってチェックし、政治の透明性を求める努力を続けていかなければならないと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年9月7日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年09月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「#教師のバトン」です。疲弊した現場があぶりだされた。政策に反映を。「#教師のバトン」は、昨年3月に文部科学省が始めたプロジェクト。ベテラン教師から若手教師に、現職の教師から教師をめざす学生や社会人に、先生方のノウハウや学校にまつわる日常のエピソードなど、情報をSNSを使って発信、共有。教職の魅力を広めてもらう目的でスタートしました。ところが蓋を開けてみたら、いい話もある一方で、教育現場の過酷な状況を訴える投稿が多く寄せられ、国はこれらの実態を把握していなかったのではないか、ということが明らかになりました。最も問題になったのは長時間労働です。2018年のOECDの調査によると、日本の中学校教師の仕事時間は週56時間で、48の調査に参加した国と地域のなかで最長。文科省の調べでは、1950~’60年代と2000年代以降では、小中学校の教育活動時間は近年のほうが長くなっていますが、これは部活動や教育相談、進路相談など、授業以外の時間が増えたためといわれています。しかし、残業時間は一律に決められていて固定化されたままです。また、休日やプライベートの時間を割いて子どもたちの指導にあたらないといけない、ブラック部活動問題もあります。近年は、子どもたちのメンタルヘルスの状況が悪化し、教師の負担を大きくしています。デジタル化や、コロナ禍では消毒や感染対策も先生方の肩に重くのしかかりました。「#教師のバトン」であぶりだされたさまざまな不満は、現場のニーズです。現場の声を国は、具体的な政策にぜひ落とし込んでほしいと思います。部活動の指導に関しては、土日は地域のスポーツ教室に委託する動きも出てきています。しかし、社会経験の豊富な人が、教員免許を持っていなくても1~2コマの授業を担当できるなど、外部参入の障壁を低くする抜本的な改革も必要なのではないかと思います。そもそも教育に潤沢な予算をかけないから、数が足りずに教師に負担がかかっているという指摘もあります。OECDのなかで日本は、教育費がGDPに占める割合が平均以下。これを改善しないと疲弊した状況は変わりません。みなさんもぜひ「#教師のバトン」で現場の声を知ってください。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年8月31日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年08月27日モデルの岩堀せりさん(45)は、ヴィジュアル系ロックバンドGLAYのギタリストであるTAKUROさん(51)と2004年に結婚。その後2005年に第1子男児、2007年に第2子女児が誕生。4人家族になったせりさんファミリーは2018年にロサンゼルスに生活の拠点を移しました。自身のインスタグラムにはロサンゼルスの暮らしぶりやTAKUROさんとの夫婦ショットを投稿し、ファンから注目を集めています。先日は、TAKUROさんとの最新ツーショットを投稿していました。早速チェックしてみましょう!TAKUROさんの肩に寄り添う密着ショットが絵になると反響 この投稿をInstagramで見る iwahoriseri.(@iwahoriseri)がシェアした投稿 「45歳と51歳。」と、窓際に立ち外の景色を見つめるTAKUROさん。そして肩にもたれかかるせりさん。素敵な部屋でグラスを持つTAKUROさんとせりさんがそろうとラグジュアリー感に圧倒されますね。コメント欄には「絵になるご夫婦」「色気がすごい♡美しいご夫婦です」「勝ち組の姿」「45歳と51歳には全く見えません♡」と称賛のコメントが相次いで寄せられておりました。いつまでも夫婦仲が良くオシャレでカッコいいお2人。ツーショット投稿を待ちわびるフォロワーが多いようです。次はどんな夫婦ツーショット写真が投稿されるのか楽しみですね!あわせて読みたい🌈お腹ふっくら?第1子妊娠の大島優子さん、オーバーサイズシャツ姿がキュート
2022年08月23日嵐の松本潤が出演する、日本航空の新WEB動画「櫻井翔・松本潤の行こうぜ! ニッポン! 九州」編 Part1~3が21日、公開された。同WEB動画は、松本と櫻井翔が日本全国に旅に出かけ、各地の魅力を紹介するシリーズの最新作。松本が福岡と佐賀を訪れ、九州の文化・伝統に触れている。佐賀・呼子にある漁協直営の「呼子台場みなとプラザ」を訪れた松本は、名物のイカを自らさばいて食べることに。「イカは暴れるって聞くよ」と墨対策にカッパを着ながら恐る恐るすくい上げ、包丁を入れていくと、見守っていた婦人会から「上手!」と声が上がる。続いて、福岡・八女の「光安青霞園茶舗」で玉露とういろうを堪能し、茶葉の香りや茶器にも興味津々。店主・光安さんのお茶入れを真剣に見つめ、2煎目にはお茶入れにチャレンジし、華麗な所作を披露した。また、最後に訪れた「門田提灯店」では、櫻井へのお土産として提灯の絵付けに挑戦。「櫻井くんといえば迷彩のイメージだけど、時間がかかりそうだな……やっぱり彼の名前を入れるのがいいかな……!」と提灯に“櫻井”の文字を入れることに。“櫻”の字を間違えてしまうハプニングもあり、「(出来上がりが)どうなってもいいや……(笑)」と言いながらも、スタッフが話しかけると「ちょっと静かにしてください」と返し、真剣な様子で書き進めた。旅を終えた松本は、「その土地の文化・食に触れたり、そこに行かないと見られない景色、感じられない空気感を感じることができたので、心が豊かになる気がします。旅に来られてよかったです」と満足気に振り返っていた。
2022年08月22日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「侮辱罪厳罰化」です。言葉は凶器になる。皆で自覚を持ち、誹謗中傷をゼロに。7月より侮辱罪が厳罰化され、1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金が追加されました。自死に追いやられたプロレスラーの木村花さんや、池袋暴走事故の遺族の松永拓也さんらをはじめ、インターネット上の誹謗中傷は大きな社会問題になっています。侮辱罪とは「具体的な事実の摘示をしないで、不特定または多数の人が見られる中で口頭や文書を問わず、他者を侮辱することを内容とする犯罪」です。身体的特徴を揶揄する言葉や、障害者の方への差別的発言も侮辱罪の範囲になります。難民申請で留め置かれている人に対して、「早く国へ帰れ」というのも範疇に入ると僕は思います。また、侮辱罪よりも悪質な、「事実を摘示し、公然と、人の社会的評価を低下させた場合」に成立するのが名誉毀損罪です。さらに、「殴るぞ」「殺してやる」などの暴力的な言葉が入ってくると脅迫罪。嘘、デマを流して経済的・社会的信頼を低下させる行為は信用毀損罪、業務妨害に及べば業務妨害罪になります。侮辱罪はこれらの一番入り口、幅広に適用されます。言う側は、ちょっとした軽口、正義感にかられて発信したとしても、人が苦しめられて亡くなるケースがあります。誰かを侮辱する発言をリツイートするなど広めることも罪に問われます。そのつもりはなくても加害者になる可能性もあるので、注意してください。今回の侮辱罪厳罰化は、注意喚起としては大きな前進といえますが、被害者救済には到底至っていません。被害を受けた方々は、証拠集めから訴訟まで長い時間闘いを強いられ、弁護士費用には、場合によっては100万単位のお金がかかります。被害者の負担が軽減される仕組みづくりが必要ですし、プラットフォーマー側にも、問題発言のリスト化など、迅速に訴訟に協力できるようなシステムがあってもいいのではないかと思います。SNSは公の場という自覚が必須です。自分と直接関係なくても、ネット上で侮辱罪にあたる発言を見たら、通報する機能が各プラットフォームについているので、ぜひ活用してください。そうして、社会全体でメディアリテラシーを底上げすることが大事です。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』8月17‐24日合併号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年08月20日嵐の松本潤が出演する、リクルート・SUUMOの新CM「松本潤さんのスーモノリスで地図検索」編が、17日より放送される。新CMでは、無機質な白い空間に松本が登場。スマホを模した巨大な石板を前に松本が「住まい探し……」「地図……」と語りかける。するとそこに地図が浮かび上がり、手でなぞりながら物件検索をし、「使いやすい……」とつぶやく。■松本潤インタビュー――今回のCM撮影の感想は?楽しかったです! 実は撮影の方は以前から親交がある方でしたし、監督も僕と同い年で、以前から監督が作る映像が好きで、一緒に仕事してみたいと思っていたんです。今回のCMは結構特殊な設定・空間なので、どうやって演じるか目指す映像の世界観を監督と話し合いながら撮影しました。――今回のCMのみどころは?独特な世界観の中でちょっとクセのある感じを楽しんでいただけたら嬉しいです。「SUUMO」が、「物件数 No.1」であり「いろいろな情報が手軽に手に入る」というサービスのすごさと、近未来的な映像のかっこよさの両方を楽しんでいただけたらと思います。――「なぞって検索」機能で検索して、どんなエリアに住みたいですか?リアルに自分が選ぶとすると、普段行くジムや、よく行く友達がやっている飲食店などは、わりと1カ所に集まっているので、そのエリアを囲むかな。やっぱり近い方が楽なので。これまでいろいろな所に住んできましたが、僕の場合、結局行く所はほとんど変わらないんです。そこから離れたエリアに住んだこともあるのですが、やっぱり近い方が便利だなって(笑)。僕はいろいろ見るのも好きなので、緑の多いエリアや、魚がおいしそうな海沿いなどを検索してみるのも楽しそうですよね。――物件選びで迷うことはありますか?あまり迷わないかな。自分がその家に住んだらどこに何を置いて、玄関や風呂へはどこを通って……などを想像しながら選びます。あとは、日当たりや景観、駅からの時間、近くに自分に必要な場所がいくつあるのかなども考えます。でも最終的には、自分のフィーリングで「あ、ここにしよう」って納得がいくということがいちばん大事なのかなと思います。――最近の自宅でのマイブームは?最近は、帰ってきてリラックスするために、お香やキャンドルをたくことがマイブームで、割と習慣づけていますね。現場にいる時間が長いので、家に帰ってきて、仕事と自分の時間を切り替えるスイッチにしているんです。あとは、最近、撮影で朝が早いことが多いので、毎朝6時くらいには起きるようにしています。朝のうちに運動したり、サウナに入ったりして現場に行っています。――現在の自宅を「今後こうしたい」などのお考えはありますか?僕は現状に満足していますね(笑)。あえて言うと、最近仕事が立て込んでいるので仕事の資料が増えてきたんです。本などを買ったことで本棚が整理しきれなくて。前回のインタビューの際に「物を減らしてシンプルにした」と言ったんですけど、もうちょっと収納を作っておけばよかったな(笑)。
2022年08月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アジア系ヘイトクライム」です。まずは身近な差別をなくし、良い関係を築こう。アメリカでは、アジア系住民に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)が近年増えており、コロナ禍で急増しています。今年の1月には、ニューヨークの地下鉄のホームで電車を待つアジア系女性が線路に突き落とされて死亡。2月にはマンハッタンで、アジア系の女性7人が見知らぬ男から突然顔を殴られるなどの暴行を受けました。在ニューヨーク日本国総領事館は、長引くコロナ禍において、日常生活に対する不満が増大しやすく、ヘイトクライムやハラスメントの増加、凶悪化が懸念されると在留邦人に注意喚起をしました。この2年間でアジア系のヘイトクライム被害は1万件にのぼり、5月末には活動休止前のBTSがホワイトハウスを訪問し、バイデン大統領とヘイトクライム問題について議論を交わしたことが大きなニュースになりました。そのころ、ニューヨーク在住のジャーナリストに、アジア人同士の連帯は運動としてあるのか尋ねたところ、Black Lives Matterに比べるとまとまりは弱いという返答でした。足元の日本を見ても、アジア人同士が本当に仲良くできているかというと、さまざまな問題を抱えています。在日韓国人・朝鮮人の方へのヘイトスピーチや差別感情をベースにした社会問題は横たわっています。また、難民問題についても、アジア各国からの避難者の受け入れや待遇の悪さを見過ごせません。2020年の日本の外国人労働者全体の平均賃金は、月額21万8100円。日本人全体の平均賃金は30万7700円で、9万円近い差があります。特定技能の場合、17万4600円、技能実習生の場合は16万1700円。勤続年数も、外国人労働者は2.7年。一般労働者が12.4年なので、外国人の方の雇用の場は極めて不安定といえます。日本の産業構造上、外国から来た人々に対してそもそも冷たいんですね。アメリカのアジアンヘイト問題を語る前に、国内の構造的な格差や差別感情を生み出してしまう有様を変えて、アジア人として連帯できたらと思います。これまでの歴史を知った上で、お互いがフェアな関係を築けるよう模索する必要があるのではないでしょうか。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年8月10日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年08月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「核なき世界の実現」です。唯一の被爆国だからできる橋渡しを望む。77年前の8月6日に広島、9日に長崎に原子爆弾が投下されました。今年の広島の平和記念式典で、岸田総理がどのようなメッセージを発するのか注目しています。岸田さんは広島県が地元で、総理就任の記者会見では「核兵器のない世界に向けて全力を尽くす」と発言していました。核兵器の保有も開発、使用も認めない「核兵器禁止条約」は昨年発効され、現在66の国と地域が批准しています。もとはわずかな数でしたが、広島や長崎で被爆した方々が国連で演説し、核兵器は凄惨な事態を人類にもたらすと訴え続け、第三国が次々と集まり批准しました。ところが、日本はアメリカの核の傘に守られているという立場から、採択は棄権したんですね。今年6月、核兵器禁止条約の第1回締結国会議がオーストリアのウィーンで開かれました。日本政府がオブザーバーとして参加するかどうか注目されていましたが、それも叶いませんでした。外務省は不参加の理由について、「核兵器国の関与がないと核軍縮は進まず、核兵器禁止条約には核兵器国が1か国も参加していないため」と答えています。しかし、だからこそ、唯一の被爆国として中立的な立場から、核保有国と非保有国の橋渡しの役割ができるはずです。日本政府がオブザーバーとしても参加しないというのは、大きな失望を招きました。なお、今回の締結国会議には、広島や長崎の被爆者の方々が参加し、核の恐ろしさを訴え、NATOの核の傘に守られているドイツやノルウェー、ベルギー、オランダもオブザーバーとして参加。ドイツのメルケル前政権では核兵器禁止条約を批准しませんでしたが、オブザーバーとしての参加は決めました。「核保有国の核軍縮交渉を念頭におきながら、核兵器禁止条約の議論にも加わることで建設的に伴走したい」と、ドイツのベアボック外相は語り、その後来日し、長崎原爆資料館などを訪問。被爆者と面会もしました。ロシア軍のウクライナ侵攻が始まり、核の使用が現実味を帯びている今は、日本が核の廃絶を大きな声で訴えられないことを思うと、恐ろしい状況にあるなと感じます。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年8月3日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年07月29日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「円安と物価高」です。放っておけば改善する問題ではない。稼ぐ力が必須!現在、1990年代以来の円安が急速に進んでいます。一番の危機は、当時と違い、今の日本は“稼ぐ力”が失われてしまっているということです。2008年のリーマンショック以降、アメリカは金利を低く抑える金融緩和政策をとっていました。そうして市場にお金を回した結果、インフレが起きてドルの価値は下がってしまいました。これでは国民生活が疲弊する、ドルの強さを取り戻そうと、米連邦準備理事会(FRB)は、6月に0.75%の利上げを決めました。世界中の主要な中央銀行もアメリカに合わせる形で利上げを行っています。ところがその波に乗れなかったのが日本です。日本は実質賃金が’90年代から上がっていません。さらに金利まで上げたら、国民はお金も借りられずに逼迫します。日銀は、大胆な金融緩和を継続することにしました。すると投資家たちは円に替えたところで実入りはないので、円を売りドルに替えます。そのため、ますます円安が加速しているのです。欧米諸国が利上げできたのは、リーマンショック後の世界的不景気を経ても、賃金は上昇してきたからです。38の先進国が加盟するOECDの1997年~2018年の実質賃金の推移を表すグラフを見ると、どの国も右肩上がりなのに対して、日本だけがゼロラインよりも下で、ゆるやかに下降。日本は物価が高騰しているにもかかわらず、賃金が下がっているのです。今では日本の平均賃金は、アメリカの約半分。日本の賃金は、OECD平均よりも下回っており、GDP世界3位の経済大国とは到底思えない状況です。日本はサービスが充実していてモノが安く手に入るので、賃金が上がらなくても暮らしはなんとか成り立っているように見えますが、いつ崩れてもおかしくない状態だという危機感をぜひ共有していただきたいと思います。政府は物価高に対して、ガソリン代を補助していますが、一時凌ぎの補助で乗り越えられる問題ではありません。日本は稼ぐ力を持たなければならず、それには、デジタルや新エネルギーなど新規事業への投資が必要です。また、グローバルな人材の育成も行わないと、新しい産業は生まれないと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年7月27日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年07月23日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ファスト映画と著作権」です。侵害か、宣伝か。表現の自由にも関わる問題。「ファスト映画」とは、映画の映像を権利者に無断で使用し、字幕やナレーションをつけて10分程度に短くまとめ、あらすじを紹介する違法動画のことを指します。東宝や日活などの大手映画会社13社は、これらの違法動画をインターネット上にアップし、多額の広告収入を得ていた男女3人に対し、著作権侵害として総額5億円の損害賠償を求める訴訟を5月に起こしました。映画会社にとっては、ストーリーのネタバレもありますし、映画館や配信でお金を払って観る人を減らしていると問題視しています。実際、こういうあらすじや解説を無許可で行う動画は近年、とても増えてきました。一方、ファスト映画を作る側は、本当に面白い作品はネタバレしていようと観たくなるもの。コンテンツにわかりやすい解説をつけて公表することで、これをきっかけに作品を知る人が増え、オリジナルを観ようとする人も生まれているのだから、権利侵害とはいえないのではないかと主張しています。実際にどれくらいの損害を出しているのかは、実証も必要になるでしょう。ただ、個人に対して5億円の損害賠償というのは、無断で映像を使用するという違法行為そのものへの抑止の意味合いも大きいと思います。著作権侵害に関しては、数年前に無料で漫画が読めるサイトが摘発されました。こちらは全編がそっくりそのまま読めたので明らかな侵害になります。ファスト映画の場合、「10分程度に編集している」というのが、表現の自由として認められる引用の範囲と捉えるかどうかという問題も絡んできます。二次創作という観点では、日本のアニメ文化が世界でコンテンツとして認知された背景に、コミックマーケットやコスプレにおいて、二次創作が一部許容されていることも挙げられます。また、韓国の映画やポップスが世界的に広まったのも、国が著作権侵害を黙認し、拡散を許したということもあるんですね。もちろん、無断で著作物を使用することは明らかに違法です。ただ、どの範囲まで表現の自由として認めるのかにも関わるテーマなので、慎重な議論が求められます。裁判のゆくえを注意深く見ておきたいと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年7月20日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年07月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「世界の女子教育」です。ジェンダー意識に限らず、構造的な問題にも関わる。世界では、6歳から17歳の約1億3200万人の女子が教育を受けられていません。また、非識字人口の約3分の2が女性。発展途上国では約3人に1人の女子が、18歳未満で結婚(児童婚)を強いられています。これらは貧困が大きな原因になっています。女子教育が遅れている地域は主に新興国や発展途上国ですが、「ジェンダー意識が低いから」という単純な理由に限りません。これは産業構造やコミュニティの維持と深く絡んだ問題なんですね。古い慣習のなかでは、女性は家を守り、男性が外に働きに出る暮らしが根付いています。一方では、女子が1年でも長く初等教育を受けると、その子が将来手に入れられる収入が11%アップするという世界銀行の調査結果もあります。つまり、村の豊かさを得るためにも、女子に教育が必要であることを知ってもらう必要があります。カンボジアのある農村部では、男は外へ出稼ぎに行き、女性とお年寄りが留守を守っていました。女性たちは稼ぐ力がないので、病気になっても現金が手元になく亡くなるケースも。そこで日本のNGOが入り、地域に溜め池を作り、家庭菜園で付加価値の高いハーブを作り、それを都市部の自然食品店に売るなどして、女性たちが現金収入を得られるようになりました。このような知恵は、教育を受けることによってより手に入れやすくなります。アフガニスタンのタリバン政権は、3月に女子の高等学校の再開を撤廃しました。ナイジェリアでは過激派組織、ボコ・ハラムが教育を受ける女子をさらい世界を震撼させました。「ボコ=西洋式」「ハラム=禁じる」。イスラム原理主義的な考えでは、女子教育は西洋的だからと禁じられています。日本でも複数の大学の医学部入試で、女子の合格者数を減らすために女子を不利に扱う判定基準があったことが判明しました。それも、女性はキャリアを離れる時期があるとか、深夜勤務をさせられないといった思い込みがあり、男性医師の数を増やそうとする作用が働いているのでしょう。男女平等に教育機会を得ることにより、逆に、男性にとっても生きやすい社会になるという認識が広がるといいなと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年7月13日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年07月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「戦争犯罪」です。ルールはあっても、現実的には大国を裁くのは難しい。国連憲章では、他国への侵略行為、戦争は禁じられています。しかし、戦争になった場合も最低限守るべきルールが、ジュネーブ条約(赤十字条約)によって国際的に定められました。まず、民間人への攻撃は禁止。市民の暮らしの要になるインフラを故意に攻撃することも禁じられています。また、無差別攻撃を目的とする兵器、クラスター爆弾や焼夷弾、化学兵器や生物兵器、毒ガス、対人地雷も使用は禁止されています。兵士を含め、病人や負傷者は手当てを受ける権利が保障されており、それらの人々を助ける赤十字の関係者や施設は、中立的な立場のため攻撃してはいけません。捕虜への拷問や残虐行為も禁止。これらのルールを犯した場合、戦争犯罪になります。また、特定の民族や人種を意図的に根絶やしにするような民族虐殺(ジェノサイド)も禁じられています。ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻では、数々の戦争犯罪の証拠が挙がっています。自転車に乗った民間人を殺害したロシア兵は、明白な戦争犯罪だとして、ウクライナで終身刑が言い渡されました。国家間の紛争を解決するために設立されたのが国際司法裁判所(ICJ)。ウクライナ政府はロシア政府をICJに訴えましたが、ICJは国連の司法機関で、執行は国連安全保障理事会が担います。しかし安保理の常任理事国であるロシアは拒否権を持っています。そのため、ICJがロシアを戦争犯罪を起こしている国と認定しても、実際には裁くことは難しいのです。もうひとつ、国連から独立した国際刑事裁判所(ICC)があり、人道に対する罪や戦争犯罪に問われる、組織のリーダーや個人を裁きます。ICCは、ウクライナでのロシアの戦争犯罪に十分な証拠が揃っていると述べています。しかし、ICCは警察機関を持っておらず、犯罪者の逮捕はその国の警察機関に働きかけます。ただ、ロシアもアメリカも中国も、ICCには加盟していません。そのため、戦争犯罪が立証されても逮捕する手立てはないのです。そもそも戦争を起こさないための知恵を、諦めずに出し合うしか解決方法はないのだろうと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年7月6日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年07月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「IPEF(アイペフ)」です。緩やかな枠組み。でも、対中政策に必要な繋がり。IPEFとは、Indo‐Pacific Economic Frameworkの略で「インド太平洋経済枠組み」のこと。バイデン大統領の声がけで、5月下旬にアメリカ、日本、インド、ニュージーランド、韓国、シンガポール、タイ、ベトナム、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、オーストラリアの13か国が参加を決めました。経済連携の枠組みはいろいろありますが、最後の一文字により形態が変わります。「WTO(世界貿易機関)」はオーガナイゼーション=機関。貿易のルールを決め、逸脱すれば対抗措置もある強固な枠組み。TPP(環太平洋パートナーシップ)やRCEP(東アジア地域包括的経済連携)はパートナーシップ=連携ですから、機関ほど強固ではありませんが、ルールを作り、守ることが前提です。これらに対してIPEFのFはフレームワークなので、さらに緩やかな枠組み。4つの柱、(1)デジタル経済を含む貿易(関税引き下げは除く)、(2)半導体などのサプライチェーンの強化、(3)クリーンエネルギーや脱炭素に対して、質の高いインフラ作り、(4)マネーロンダリングや脱税対策、公正な経済を促すための対策を掲げていますが、できる範囲でOKというスタンスです。アメリカはトランプ政権の時にTPPから離脱しました。外国からの輸入品に高い関税をかけ、国内産業や雇用を守る政策に変えたのです。実は、バイデン政権でもその軸足は変わっていません。その一方でアメリカはいま、インフレに苦しんでいます。関税を下げてモノを安く供給したいけれど、TPPのような枠組みだと政策転換になってしまう。そこで、IPEFを提案。そこには今秋の中間選挙を見据えたアメリカの事情も見えます。ただ、中国抜きにアジア太平洋地域がまとまり、関税の引き下げや撤廃という議論なしで融通し合うというのは、中国と絶妙な関係にあるインドや、中国からプレッシャーをかけられているオーストラリアにとっても大きな意義があります。日本にも、IPEFでアメリカを繋ぎ止めながら、TPPやRCEPをより安定した枠組みにしたいという思惑があるんですね。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年6月29日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年06月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「モビリティ社会」です。移動手段が変わる。社会の課題解決が期待される新分野。インターネットの発達により、車や公共交通などの移動手段のあり方が変わりつつあります。モビリティ(mobility)とは、もとは移動性、流動性という意味で、交通手段や移動手段をめぐるモノ・コト全般を指します。国土交通省は、Mobility as a Service(MaaS)(マース)という、住民や旅行者の個々のニーズに合わせて、複数の公共交通やカーシェアリング、自転車のシェアサービスなど新しい移動手段を最適に組み合わせて検索、予約、決済できるサービスの普及を推進。国は、AIやIoTを使い、モビリティを中心とした新しい技術変革のある街づくりを積極的に進めていこうとしています。その「モビリティ社会」の実現に大きく関与するのが自律型の自動運転の技術。自動運転は6段階にレベル分けされており、周囲の車との間隔や道路の混雑状況などをセンサーにより判断し、運転手がハンドルから手を離しても走れるのがレベル3。世界初、この技術を搭載した車を発売したのはHondaでした。日本は少子高齢化、都市部の人口集中が進み、過疎地では鉄道やバスの維持が難しくなっています。孤立した地域の暮らしを支えるのが自動運転。この技術が進めばコストを圧縮し、人々の移動だけでなく、モノを運ぶサービスも付与できますし、CO2の削減にもなります。TOYOTAは、自動車を中心にした実験都市の開発プロジェクトをスタート。自動運転車が街の交通を担うほか、燃料電池車が蓄電装置となり、地域に電力を供給することも計画中。モビリティ社会は製造業やサービス業、エネルギー産業など様々な業種にかかわりますし、高齢化や過疎化、技術立国など社会の課題解決も期待されます。自動車メーカーはモビリティカンパニーに移行していますが、IT企業のほうが得意な分野。HondaはSONYと提携に向けて協議を始めました。EVはガソリン車に比べ部品が少ないので、切り替えれば多くの部品工場が潰れます。日本の自動車産業を世界に押し上げ、経済を支えてきたのも町工場です。その重みを認識しつつ、各社緩やかな産業転換を図っています。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bit News」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年6月22日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年06月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「SRHR」です。生きる上で大切なテーマ。選択権はあくまで自分に。SRHRとは「Sexual and Reproductive Health and Rights」の略で、「性と生殖に関する健康と権利」という意味です。国際的に、基本的人権の一つとして保障されるべきものとされています。このもとになる「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(RHR)」が定義されたのは、1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議。’70年代から世界的に人口爆発が始まり問題になっていました。人口が増えすぎると食糧難になり貧困層が広がり、紛争や戦争の引き金になります。そこでアフリカで、強制的ともいえる避妊プロジェクトが広まりました。しかし、産む産まないを他人に決められるのは非民主的です。妊娠や出産、避妊や中絶など生殖に関する知識を広め、自分で道を選択できる権利を享受できるようにしようと、RHRが提唱されました。2002年にはWHOが「セクシュアル・ヘルス」を掲げ、この2つが合わさり、SRHRが謳われるようになりました。たとえば一部の地域では、女性器を切除するなど女性に対しての人権弾圧が残っており、不衛生ななかで行われ、命を落とすようなことが起きています。また、性行為のときの同意の必要性、避妊のあり方。子供を産んだあとの母子の保健や衛生環境、育児ノイローゼの問題や男性育休の問題などもすべてSRHRに含まれます。LGBTQを含め、セクシュアリティや生殖に関して、正しい知識を広める教育や支援策、技術や文化をいかに育むか。こういうことが一般に語られるようになったのは、まだ最近のことなんですね。SRHRの観点においては、日本は後進国と言わざるを得ません。つい最近まで優生保護法があり、障害のある人に対して「不良な子孫の出生を防止する」と、強制的に生殖機能を奪うような恐ろしいことが行われていました。自分のカラダや人生は自分のもので、誰かに強制されたり決められるものではない。SRHRには、その当然の権利を保障しようという考えがベースにあります。小さいころから教育機会を得て、自分たちの健康や権利を守り合える未来に到達できればと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年6月15日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年06月10日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「沖縄本土復帰50年」です。もとは独立国家。虐げられてきた歴史に目を向けて。50年前の5月15日、アメリカの施政権下にあった沖縄が日本に復帰しました。沖縄は、古くは琉球国という約450年続いた独立国家でした。明治政府は1872年に琉球国を解体し、琉球藩に。1879年には廃藩置県により、沖縄県に生まれ変わります。「富国強兵」のスローガンのもと、近代国家の仲間入りを果たそうとしていた日本。沖縄は内地とはある種、支配・従属的な関係にありました。中央から派遣された役人や軍人は、沖縄を見下し「はやく大和になれ」と押し付けます。沖縄の人々は差別や偏見にさらされ、「私たちは日本人なのだ」という強い機運を生み、太平洋戦争末期、日本を守るために玉砕、集団自決を決行します。日本で、民間人が戦闘要員として駆り出されたのは沖縄だけです。1945年、米軍は沖縄に上陸し3か月にわたり激しい戦闘が繰り広げられました。沖縄県民の4人に1人が犠牲になり、日米合わせて約20万人の被害が出ました。沖縄戦は9月7日に幕を閉じ、アメリカに統治されることに。マッカーサー元帥は、太平洋地域に拡大した日本国の影響を弱体化させるため、沖縄・南西諸島を日本から分離させることにこだわりました。当時、ソ連や中国を筆頭に共産化の波が押し寄せており、東の果ての防波堤として、沖縄を所有することはアメリカの安全保障上、大きな意味がありました。戦後、沖縄支配は日本からアメリカに移ります。やがて「島ぐるみ闘争」という、米軍支配への反対運動が勢いを増し、日本に復帰するか、独立するか、国連の統治下に置かれるべきか、沖縄住民の間でも意見が割れました。返還交渉は1969年に始まり、年末に最終合意。沖縄県内では「核抜き、本土並み」と核の持ち込み禁止、沖縄と本土が格差のないように扱ってほしいと訴えていました。しかし、裏で秘密協定が結ばれており、沖縄返還に関する費用は日本国が負担し、核の持ち込みも密約では認められていたことがのちに明らかになりました。沖縄には、いまなお米軍基地の約7割が集中しています。国家の安全保障のなかで、沖縄県民の思いを無為にしてきた歴史があることを忘れないでほしいです。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年05月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「核融合エネルギー」です。国際協力により開発中の、未来のエネルギーに注目。水素のような軽い原子核同士が融合すると重い原子核に変わり、非常に大きなエネルギーを生み出すことができます。核融合エネルギーは、主に海水やトリチウムによって作られ、次世代の夢のエネルギーといわれています。核分裂によってエネルギーが作られる原子力発電では、放射能レベルの非常に高い放射性廃棄物(核のゴミ)が出ます。人に影響を与えないレベルに抑えるまで10万年隔離しなければいけないという処理問題があります。その点、核融合炉から出される放射性廃棄物の毒性は100年で100万分の1になり、減容年数がぐんと圧縮されます。核融合実験炉の実現は、一国でできるものではなく、国際共同研究のもと、超大型国際プロジェクトとして進められています。「ITER(イーター)計画」という名で、1985年にジュネーヴで開かれた米ソ首脳会談をきっかけにスタートしました。対立する大国同士が技術開発で協力し合おうと、国際チームが中心となり始まったのです。ITER計画は2025年の運転開始を目指し、日本、欧州、アメリカ、ロシア、韓国、中国、インドにより進められています。いま、ウクライナ危機により、欧米諸国とロシアの対立が深まっています。原油や天然ガスの供給を止めたり、ウクライナの原発がロシアの攻撃対象になっています。その一方で、各国が技術を提供し合って核融合実験炉を共同で組み立てている事実を知るということ自体が、国際協調への強いメッセージ性があると思います。日本では、茨城県那珂(なか)市にある量子科学技術研究開発機構・那珂研究所(旧・那珂核融合研究所)で研究開発が進められています。日本にとって核はセンシティブなテーマ。理解を深めてもらうため、この研究所では1人からでも見学を受け付けています。研究開発費には限りがありますし、世間の関心が低いと、こうした分野の研究継続は難しくなります。福島の事故が起きるまで、原発について深く知ろうとしてこなかった反省も込めて、新しいエネルギーに関して、その恩恵に与るだけでなく、どういう使い方、リスクや効果があるのか、いまから関心を持ち、皆で見守れたらと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年5月18日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年05月13日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「経済安保法案(経済安全保障推進法案)」です。サイバー攻撃にさらされる時代。安全確保は急務。岸田政権が目玉政策と掲げているのが「経済安全保障推進法案」。いわゆる、経済安保法案です。これは、先端技術や機密情報が盗まれる、インフラが攻撃されるというような行為から国を守るための法案です。表向きは何の問題もない経済活動なのに、製品が流通するなかで、ハッキングされて高度な技術が盗まれるというようなことが起きています。経済安全保障に関して、声高に謳われるようになったきっかけのひとつは、アメリカで起きたファーウェイ問題でしょう。ファーウェイ製品や中国が製造した半導体関連の装置に、アメリカの情報を盗み取り中国本土に送る仕組みが施されていると、アメリカはファーウェイを排斥し始めました。ほかにも、欧米では軍事、航空宇宙関連の製品を製造する過程で、中国の部品が使われていないか、サプライチェーンを総点検するという動きが出ています。経済安保法案には4つの柱があります。(1)重要物資や原材料のサプライチェーンの強靭化。(2)14分野の基幹インフラの安全性・信頼性確保。(3)先端技術の育成や支援における官民協力。(4)高度な技術の特許出願の非公開化。技術やデータが盗まれないようにサプライチェーンを隅々まで見直し、基幹インフラがサイバー攻撃に遭わないようにする。また、研究者などが引き抜かれて技術が漏洩するのを防ぐ。企業の買収や合併が、軍事的に緊張関係にある資本によって行われないようにする。これまで国は、民間企業同士の取引にはタッチできないところがあったのですが、国家の機密や発展につながる重要な技術を持つ企業には、事前審査できるよう、法案の可決を急いでいます。対象は電力、ガス、石油、水道、電気通信、放送、金融、郵便、クレジットカード、鉄道、貨物自動車運送、外航貨物、航空、空港の14の業種。サイバー攻撃を受けやすい環境を作ってしまうと、たとえばデジタル制御されている戦闘機が、ハッキングによって自国に向けてミサイルを発射するということもできてしまうんですね。日本の産業を守るためにも、技術を守るためにも、適正な取引を維持するためにも必要に迫られている政策です。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年4月6日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年04月02日2015年の国連サミットで採択され、2030年のゴールまでちょうど折り返し地点の今、SDGsは本当に正しく浸透してる?本誌連載「社会のじかん」の堀潤&五月女ケイ子が、持続可能で、課題のない未来実現のために大切なことを考えます!国連サミットで「誰ひとり取り残さない」ことを誓い、SDGsが採択されたのが2015年。17の持続可能な開発目標を掲げて、2030年までに達成することを目指しています。しかし、残り8年となった今、実際はどこまで実現できているのか。「SDGsという言葉は世の中に着実に浸透して、“何かしなければ”という意識は広まったと思いますが、実際に行動や社会に変化が起きているかというと、そこにはまだ至っていないですね」と、堀潤さん。環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんら若い世代は、大人たちは言い訳ばかりで何も行動に移していない。今すぐ行動を、と強い口調で訴え続けています。堀さんは、SDGsの一部の目標に注意するだけにとどまり、全体を見渡すことや本来の目的にまで思いが届いてないのではないかと心配しています。日本の現状は?いま私たちが知るべきこと、やらなければいけないことは?五月女ケイ子さんを聞き手に、2022年、SDGsの今を堀さんに解説していただきました。番号はあくまで入り口。そこに囚われないで。――SDGsの目標期限は2030年です。あと8年で達成できるのでしょうか?17の目標(ゴール)には、さらに169の細かな指標(ターゲット)があるんですよ。――えー!宿題が多すぎます。夏休み最終日の小学生みたいな気持ち。間に合うのか心配になっちゃいます…。皆さんが、すべての目標を達成しようとする必要はないんです。17の番号はあくまでも“入り口”。気になった項目を見つけて、そこから考えてみませんか?という提案なんですね。平和に関心があるから16の「平和と公正」から始めてみようとか、LGBTQの友達がいるから5の「ジェンダー平等」から考えてみようとか。ただ、企業を見ていると、「私たちは環境にコミットしています。ただし、人権問題に関しては政治問題に絡むのでノーコメントです」とか、「飢餓をなくそう」というキャンペーンに賛同しているのに、社員の賃金を上げることには及び腰だったり…というのが気になります。――ある項目を頑張って解決しようとすると、別の項目が解決できなくなるってことですか?いえ、その逆です。社会問題は、根本の原因を探っていくと、環境も人権も平和もジェンダーも皆絡み合っているんです。たとえば、貧困問題を例に挙げると、原因はいくつも考えられます。お金を稼ぐための知識や技術がない4「教育をみんなに」。男女で賃金差がある5「ジェンダー平等」。災害に見舞われて食糧が生産できない13「気候変動」。戦争が続いていて働けない16「平和と公正」。搾取される側にいる17「パートナーシップで目標を達成」。このように、ある問題は他の多岐にわたる項目とつながっているので、それらを解決することでようやく改善できます。SDGsの目標は、そんな巧みな設計になっているんですね。――なるほど!どこから始めてもいい理由が、よくわかりました。SDGsという言葉は広まりましたし、掲げる企業も増えました。でも、SDGsを知っているだけでは問題解決にはなりません。グレタさんが大人たちのお尻を叩いているように、実際に行動を変えていかなければなりません。国連はSDGsのゴール達成を呼びかけていますが、皮肉なことに戦争や紛争、環境汚染に歯止めがかからない状態。飢餓人口の増加も深刻になっています。ここで諦めたら世界は破綻してしまいます。諦めずに問題解決に向かえば、未来に希望はあるかもしれない。その瀬戸際に立たされています。――SDGsというと、どうしても“=環境問題”というイメージが強いです。そうですね。企業などではそのテーマが一番謳いやすいのだと思います。環境問題の解決法は、石炭火力をやめてCO2を減らすことと思われるかもしれません。もちろんそれは大切なことですが、環境を汚染しているのは石炭だけではありません。戦争によって、モノが破壊されて土壌が汚染されたり、原発事故により放射線物質で汚染されることも。経済成長のために過剰な開発を進めて、汚染水が排出されるというケースもあります。SDGsは「森を再生させよう」「CO2を削減」「ペットボトルをやめてマイボトルに」ということにとどまりがちですが、本を正せば、戦争を起こす政治の対立や民族紛争、人権侵害や貧困格差も原因にある。そこにも目を向けて解決していかないといけないと思います。でも、中国の新疆ウイグル自治区の人権侵害問題があっても日本の企業は、政治的な問題に関わるからと触れないようにしているところが多いですね…。――企業が政治的な発言を避けるのはどうしてですか?問題になっている国とのビジネスができなくなるかもしれないとか、政治色がつくと商品を買ってもらえなくなるのではないか、という心配があるのかもしれません。ただ、欧米では、ウイグル問題が明らかになったときに、いち早くアディダスが「(ウイグル自治区の強制労働に関わっていないか)うちのサプライチェーンを見直します」と発表し、それに多くの企業が続きました。一方、テスラは「中国の市場は大事なので、ウイグル自治区にショールームを作ります」と対抗。このように、欧米では企業のスタンスを明確にすることが、信頼や価値を得ると考えられていますね。――SDGsが目標達成から遅れている理由は何ですか?いくつか考えられますが、日本の場合、企業がまだこれをビジネスチャンスと思えていないことが大きい気がします。ただ、ESG投資といって、環境や人権に感度の高い企業にしか投資をしないという潮流ができてきているので、欧米諸国にならい、日本の企業も次第に関心が向くようになりました。Appleが「環境に負荷をかけている企業とは取引を見直す」と発表したことで、その動きは加速しています。たとえば、日本の電力は火力発電がベースになっていますが、「再生可能エネルギーを増やしてほしい」と企業が政府に陳情し始めているんですね。――日本は、課題のなかでもジェンダー問題が遅れていると聞きますが、どうでしょう?ジェンダー関連では、国会議員に占める女性議員の比率が世界平均は25.5%、日本はいまだ9.9%です。参議院は22.6%ですが、衆議院は圧倒的に少ない。世界経済フォーラムでのジェンダー・ギャップ指数ランキングで、日本は2021年では156か国中120位です。政治分野では、“各政党はジェンダーに配慮する目標を作る”という法律が作られて、選挙のときに、男女の候補者数ができるだけ均等になるよう目指す、という合意をとりつけました。罰則規定はないので、すぐには実現しないかもしれませんが、大きな変化ではありますね。堀 潤さん1977年生まれ、兵庫県出身。ジャーナリスト。NHKアナウンサーを経て2013年独立。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX)に出演中。著書に『わたしは分断を許さない』(実業之日本社)。五月女ケイ子さん1974年生まれ、山口県出身。イラストレーター。『親バカ本』(マガジンハウス)、『乙女のサバイバル手帖』(平凡社)ほか著書多数。2018年には台湾にて展覧会「五月女桂子的逆襲」を開催。LINEスタンプ「淑女のご挨拶」も大好評。※『anan』2022年3月30日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年03月26日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「バイデン政権の1年」です。アメリカのパワーが失われたことが露呈した1年に。アメリカのバイデン大統領の就任から1月で1年が経ちました。就任直後は57%だった支持率が、1年後は40%ほどに落ち込んでしまいました。コロナ禍でも、経済政策としては、失業率も経済指標も上向きにさせました。ワクチンも2億1600万人が接種済みとなったことをひとつの成果と強調しています。しかし、経済活動は回復していますが需要に対して供給が間に合っておらず、物価が上がって市民はインフレに大変苦しんでいます。支持率が落ち込んだ大きな理由はインフレでしょう。これに対して、バイデン大統領は200兆円規模の大型財政歳出を考えていますが、与党内の反対もあり、議会がねじれた状態になると、こういった法案も通らなくなってしまいます。外交面では、昨年の夏、アフガニスタンから米軍が撤退する際に大きな混乱が起きました。かつては「世界の警察」といわれ、世界の平和と安全のために貢献してきたアメリカのパワーが失われているということを国内外に露わにする結果となってしまいました。トランプ政権から一転し、各国との協調関係は取り戻せたので、ヨーロッパ諸国の首脳からは、「コロナ禍でもうまく立ち回れた」と評価の声が上がっています。ただ、トランプ氏はプーチン大統領と疑惑が取り沙汰されるほど仲が良く、中国に対しては真っ向から臨んでぶつかり、ある意味アメリカの影響力を示していました。日本とアメリカの関係も、安倍元首相とトランプ前大統領はとても相性が良かっただけに、岸田政権とバイデン政権の関係が強固ではないところに、アフガニスタンでタリバン政権が復活したり、中国と台湾の緊張関係も高まったり、ロシアがウクライナに侵攻するなど、これでいいのかと思わざるを得ません。リベラルな大統領が誕生ということで、多くの移民がアメリカに押し寄せました。しかし、不法移民に関してはバイデン氏も頭を悩ませ、結局国境を強化するしかありませんでした。2021年度の不法移民の拘束者数は過去最高に達し、一部のリベラル層からは落胆の声が上がりました。11月には中間選挙があります。ここがバイデン大統領の正念場となるでしょう。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年3月30日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年03月25日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「犬猫保護」です。コロナ禍のペット。チップ義務化で改善なるか?コロナ禍では、ペットを飼いたいという人が急増しました。ところが感染流行が落ち着いて元の生活に戻ると飼いきれなくなるケースが増え、問題になっています。環境省によれば、迷子や飼育放棄によって、令和2年度に自治体に寄せられた犬と猫の数は約7万2000匹。うち約2万4000匹は引き取り手がなく殺処分されました。現在、犬猫の「殺処分ゼロ」を政策に掲げる自治体は多く、東京都や神奈川県などでも成果は出ています。しかし、そこにはカラクリがあります。殺処分を逃れるには、新しい飼い主にマッチングをしなければいけませんが、すべてを行政が担うことはできません。そこで、捨てられた犬猫を行政では引き取らず、代わりにNPOなどの民間団体と提携して、民間が引受先となり、そこに補助金を出すようにしたのです。猫が捨てられる原因には「多頭飼育崩壊」も少なくありません。去勢不妊手術をしないまま、ものすごい勢いで子どもが増えてしまい、飼い主が管理できなくなり、不衛生な環境で猫屋敷化してしまうのです。そうして民間団体に預けられた動物たちはたいてい弱っていますし、虐待を受けていた場合、人に怯えて過剰に暴力的になることもあります。そのままでは新しい引き取り手は見つからないので、獣医が治療したり、職員が丁寧にケアをしてようやく譲渡会に出せるようになります。コロナ禍ではそういったNPOがパンクするくらい、多くの犬猫たちが預けられました。そんななか、改正動物愛護管理法により、今年の6月から犬猫へのマイクロチップ装着の義務づけが始まります。チップには、販売業者名や犬猫の品種、性別、飼い主の連絡先が書き込まれ、迷子のペットは飼い主がすぐわかるようになりますし、むやみに捨てられなくなるでしょう。欧米では1980年代から取り入れられていましたが、日本は遅れていました。欧米は、ペットショップ自体が禁じられており、譲渡がメインです。日本は大手流通業者がペットショップ産業に入り込んでおり、なかなか規制が進みません。ペットはモノではなく、命であるという意識を忘れてはいけないと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年3月23日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子
2022年03月18日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「子宮頸がんワクチン」です。女性だけの問題と片付けないで男女で考えたい。子宮頸がんは、そのほとんどが、ヒトパピローマウイルス(HPV)に持続的に感染することで発症するといわれています。HPVは女性の50%は生涯で一度は感染し、主に性交渉によって感染するため、日本では2013年4月より、小学6年生から高校1年生までの女性を対象に、無料の定期接種を行うことにしました。ところが、接種後に副反応に苦しむ人の訴訟問題も起き、厚労省は同年6月から予防ワクチン接種の積極的な呼びかけを中止しました。それにより、子宮頸がんのリスクは高まり、ワクチン接種推奨を再開するよう、医療従事者から警鐘が鳴らされたんですね。子宮頸がんの患者は年間約1万1000人、亡くなる人が年に2900人程度いると報告されています。厚労省の曖昧な姿勢によって、ワクチンの接種率は1%以下に落ちてしまいました。そして昨年末、厚労省は子宮頸がん予防ワクチンの積極的な接種呼びかけを再開することを決めました。推奨しなかった空白の8年間に対象年齢だった、1997年度~2005年度生まれの女性も、無償で接種できるように整備しました。この背景には、新型コロナウイルスの登場により、ワクチンはゼロリスクではないが有効性も実感できること、自己判断のもとに接種するもの、という認識が共有できたことも作用したのではないかと思います。ただ、注意をしないといけないのは、新型コロナワクチンも子宮頸がんワクチンに関しても、副反応が出たと訴える人や、ワクチンに反対する個人を糾弾するのは筋違いということです。副反応の後遺症で苦しむ人は、少なからず存在します。国や専門機関は、しっかりとその情報を収集し、補償の体制を整わせる必要があると思います。子宮頸がんワクチンは、男性が接種することでも罹患リスクを減らせます。HPVは中咽頭がんや肛門がん、陰茎がんなどの原因にもなるといわれています。世界では、77か国が男性の接種を承認しており、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど24か国では、男性の公費接種が行われているんですね。女性だけの問題と片付けず、男女ともに考えたいテーマだと思います。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年3月16日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年03月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「労働組合」です。格差、SDGsの観点から、再注目されています。3月1日は労働組合法施行記念日。1946年のこの日に施行し、労働者の団結権や団体交渉権、ストライキ権が保障されました。労働組合には企業別のものや産業別のものがあり、労働組合の全国中央組織は「ナショナル・センター」と呼ばれ、日本では「日本労働組合総連合会(連合)」がそれにあたります。不当な解雇やリストラに異を唱えたり、人事評価の公正性や経営の透明性を求めたり、パワハラやセクハラなど組合員同士の悩みを解決するなど、組合には相談機能、互助機能、交渉機能が備わっています。しかし最近、組合への加入率は下がっています。厚生労働省によると、組織率は2021年6月末で推定16.9%。前年から0.2ポイント減に。従来のような終身雇用型ではなく、転職する働き方が増えたことや、中小企業やベンチャーなど、労働組合を持つ会社自体が減ってきたことなどが主な理由に考えられます。加入率の低下はアメリカやドイツでも起きています。労働組合のように強い交渉力のある組織があると、企業活動のスピードはどうしても落ちてしまいます。成長を重視する新自由主義的な考えが広がり、会社側も労働組合離れが始まっていたんですね。そんななか、昨年1月、グーグルと親会社のアルファベットでは初めて労働組合が結成されました。また、アマゾンでも組合を作ろうと交渉が続けられています。格差の問題が深刻になり、先進的なIT業界でも、雇用主に対する交渉が求められるようになったのは大きな変化です。非正規社員の割合も増えて、正社員と非正規社員をまとめて交渉するのが難しかったので、労働者たちが連携して交渉する必要が出てきたんですね。また企業側にも、SDGsの観点から、従業員を大切にする取り組みのひとつとして、労働組合を再評価する動きが出てきました。かつての労働組合は、政治的なメッセージの色合いも濃く、敬遠されたところがありました。しかし、いまはイデオロギーではなく、働き方改革や人権保障という側面から、純粋に交渉力を持つ組織が求められています。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年3月9日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年03月05日元女優の堀北真希さんの妹でモデルのNANAMIが5日、京セラドーム大阪で開催された「EXIA Presents KANSAI COLLECTION 2022 SPRING & SUMMER」に出演した。アパレルブランド「CFT.」のステージに登場したNANAMIは、ふわっとした白いアウターにゆるめの白いパンツという春の装い。耳、首、腕にはゴールドのアクセサリーで引き締めた大人のコーディネートだった。「KANSAI COLLECTION」(関西コレクション)は、2011年2月に大阪で誕生したファッションとエンターテインメントのイベント。22回目となる今回のテーマは、「エンターテイメントの再創」=「Re.Entertainment」。ライブやイベントなどの抑制によりエンターテインメント業界のカタチが変貌しつつある今、以前よりもクリエイティブで生の臨場感あふれる時間を体験してほしいという思いが込められている。撮影:蔦野裕
2022年03月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「外国人住民投票権」です。外国人と共生する時代に、考えねばならない課題。昨年12月、東京都武蔵野市議会で、外国人に住民投票権を与える条例案が否決されました。市内に3か月以上住む18歳以上の人には、国籍を問わず投票権を認めるというもので、そこには留学生や技能実習生も含まれていました。しかし、3か月だけ住んだ外国人に、日本人と同じ権利を持たせるというのは少し無理があり、せめてもう少し期間が必要だろうと思います。ちょうど同じころ、アメリカ・ニューヨーク市議会では、外国籍の住民に地方選挙の投票権を与える条例案を可決。こちらは、「永住権を持つ人」「就労許可を得ている外国人」が対象でした。アメリカの主要都市では初めての試みで、世界中が注目しました。これにより、市の人口約880万人のうち新たに80~100万人の外国人が投票する権利を得ることになります。日本では2006年に神奈川県逗子市、’09年に大阪府豊中市で、外国人にも日本人と同様の住民投票権を認める条例が施行されました。ただ、これまでに住民投票は一度も行われていません。外国人への住民投票権付与に反対する主な理由に、その地域に外国人が集中し、行政をコントロールしようとするのではないかと危険視する声があります。しかし、いまのところ両市とも、外国人住民は急増してはいません。外国籍住民が最も多い政令指定都市は大阪市で、住民の5%にあたる約14万6000人。2年前の大阪都構想の住民投票でも、外国籍の方はこの決定に参加することができませんでした。少子高齢化が深刻な日本では、これから外国人労働者はますます必要になりますから、外国人の政治参加についての議論は各地で行われていくでしょう。また、もう一つ大きな課題として、在日コリアンの参政権問題もあります。日本で生まれ育ちながら、票を投じる権利を持たない人が大勢います。外国人と一括りにすると、疑心暗鬼になるかもしれませんが、同じマンションや商店街の顔見知りの「さん」なら、暮らしに関わる決定事項に意見を言うことも自然に受け入れられます。外国人と共生するには、まず地域で交流することが大切なのかもしれません。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年2月16日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年03月01日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「メタバース」です。世界で加速する、超越空間内の事業。日本の開発は?「メタバース」とは、「meta(超越した)」と「universe(宇宙)」を組み合わせた造語で、インターネット上に繰り広げられる超越空間や、そこで展開されるサービスのことを指します。VRゴーグルをつけてメタバースに入れば、自分のアバターを使って、インターネット上で、現実世界と同じように社会活動に参加できます。メタバースでは性別も人格も超越できますし、テクノロジーと組み合わせることで言語の壁も越えられます。Facebookは昨年、社名を「Meta」に変え、主要事業をソーシャルネットワークからメタバースに移行することを宣言しました。VRヘッドセットの普及機を作るオキュラス社を買収し、次のインフラ整備にとりかかっています。いま、メタバースをさまざまなビジネスにつなげようとする動きが世界で加速しています。1月にラスベガスで行われた世界の家電見本市「CES(セス)」。ロボットを開発しているボストン・ダイナミクス社を買収したヒュンダイは、メタバース内でロボットに火星を探索させる様子をプレゼンしました。ロボットをメタバースに接続することで、現実世界と仮想現実を行き来でき、将来は人間の身体感覚が拡張して、仮想現実に没入するだけでなく、実際に行ったかのような感覚を得られるというのです。また、サムスンも、メタバースの「ディンセントラランド」に、バーチャルストアをオープンしたことを発表しました。これからは、加齢や病気によって、たとえ自分の体が動かなくなっても、メタバースの中で働いたり、買い物をしたり、友達を作ったりすることが可能になります。その一方で、今後はデータを握る人たちが強くなり、メタバースを運営する側と搾取される側の格差の広がりが懸念されます。日本政府は、2050年までに人が身体や脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現する「ムーンショット目標」を掲げています。しかし、メタバース分野の研究開発で、日本が世界から後れをとっていることは否めません。今からでも本腰を入れて進めてほしいですね。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年3月2日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年02月26日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「半導体不足」です。製造地域の偏りが大きな要因に。長期的展望が必要。いま、世界的に深刻な半導体不足に陥っています。半導体は、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器のほか、最近は冷蔵庫や洗濯機などの家電にも使用されており、電車の運行など社会インフラにも不可欠なものです。不足した大きな理由は新型コロナウイルスのパンデミックです。世界的にリモートワークが広がり、半導体チップを使った製品の需要が急増しました。ただ、製造工場はコロナ禍になる前から、実はほぼフル稼働状態でした。半導体は年々進化しており、生産ラインも最先端のチップにバージョンアップしていました。ところが、従来のバージョンも依然として需要があり、進化と必要なタイプにズレが生じることに。それがサプライチェーンの生産工程にストップをかけ、生産の減速や停止という事態になったのです。半導体不足による自動車業界への打撃は深刻で、閉鎖を余儀なくされる工場も。ゼネラルモーターズやフォードは20億ドル以上、収益の減少を見込んでいます。もう一つの問題点は、半導体を作る地域が偏っていることです。世界の半導体の87%が台湾、韓国、中国で生産されています。半導体チップの54%は台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング社(TSMC)が製造。当然、需要が集中しても生産能力を急に上げることはできません。また、生産拠点の一つである中国とアメリカの対立も、供給不足に影響を及ぼしました。半導体の大手、アメリカ・インテル社のCEOは、半導体不足の影響は2023年まで続くだろうと予測しました。アメリカは世界の半導体の売上高の47%を占めていますが、自国で生産しているチップは約12%。このため、半導体関連に改めて投資を行うと宣言。東アジアに依存していた半導体製造が分散されれば、リスクも軽減されます。韓国はそうした動きに支援をしたいと、今後10年間で4500億ドル以上の半導体関連への投資を発表しました。日本はかつて世界をリードする半導体国家でしたが、価格競争に負けて、技術者は海外に流出してしまいました。日本の電子産業を今後どう再興するのか?国には科学技術分野への投資と人材育成を強く求めたいです。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年2月23日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年02月17日ベストセラー作家・池井戸潤原作、累計発行部数50万部突破の『シャイロックの子供たち』(文春文庫)が、2022年にWOWOWでドラマ化することが決定した。池井戸潤が「ぼくの小説の書き方を決定づけた記念碑的な一冊」と明言し、作家人生の転機として位置付けてきた本作。タイトルの「シャイロック」とは、シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』に登場する、強欲な金貸しのこと。本作は、銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮らすことの幸福と困難さを鮮烈に描いた群像劇である。物語の舞台となる東京第一銀行・長原支店は、中小零細企業が主な取引先の小さな店舗。出世街道を外れた課長代理・西木雅博をはじめ、家族を支える真面目な女性行員、エリートで策略家の支店長、業績のためにはパワハラも辞さない副支店長、業務課のエースなど、個性豊かで一癖ある行員たちが皆それぞれの事情や葛藤を抱えながら働いていた。そんなある日、長原支店で100万円の現金紛失事件が発生する。女性行員が犯人として疑われるが、紛失事件を追っていたはずの西木が突然失踪してしまう。現金紛失事件と西木の失踪。2つの謎と長原支店の行員たちの物語が交錯し、やがて現金紛失事件の裏に隠された不正が明らかに。そして西木が姿を消した驚きの真相とは。WOWOWでは、池井戸作品がまだ連続ドラマ化されていなかった2009年に『連続ドラマW 空飛ぶタイヤ』(2009年 / 全5話)を映像化し、その年のドラマ賞を席巻。それ以来『連続ドラマW 下町ロケット』(11年 / 全5話)、『連続ドラマW 株価暴落』(2014年 / 全5話) 、『連続ドラマW アキラとあきら』(2017年 / 全9話)、『連続ドラマW 鉄の骨』(2020年 / 全5話)など、数々の池井戸潤原作ドラマを世に送り出してきた(※いずれもWOWOWオンデマンドにて全話アーカイブ配信中)。監督は鈴木浩介、脚本は前川洋一が務め『連続ドラマW アキラとあきら』や『連続ドラマW 鉄の骨』に続いて再び池井戸作品でタッグ。なお、主人公・西木をはじめとする登場人物たちを演じるキャストは今後発表されるという。『シャイロックの子供たち』2022年放送・配信スタート公式サイト:
2022年02月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「海底火山噴火」です。被害・影響が各地で。火山大国であることを忘れないで。昨年8月、小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火しました。1914年の桜島以来、約100年ぶりの規模の大噴火でした。これにより大量の軽石が生み出され、黒潮反流に乗って沖縄県の広範囲に漂着。軽石は脆いので、崩れて細かい砂状になって、海面を漂います。それを魚や海亀の赤ちゃんが大量に飲み込んで死亡するなど、生態系に大きな影響を与えます。軽石が大量漂着した沖縄県では観光業や漁業に大きな被害が出ました。養殖魚が大量死。さらに、軽石が海面を覆い日光を遮断し、海藻に日が当たらなくなってしまいました。海藻は海の栄養分であり魚のベッドですから、海藻がダメになることでも海の生態系は乱れます。また、漁船の海水取り込み口や海水こし器に軽石が詰まるとエンジンが壊れてしまいますから、漁師が漁に出られないという問題も起きました。軽石はその後、潮の流れに乗って奄美群島や東京都や千葉県など、各所に流れ着きました。11月末から、台湾宜蘭県で起きた軽石による漁業被害も、福徳岡ノ場噴火のものである可能性が高いといわれています。そんななか、1月15日に南太平洋のトンガ諸島で大規模な海底火山噴火が起きました。噴煙が最大高さ20km近く、半径260kmも広がった、1000年に一度の規模ともいわれており、被害や気候への影響が心配されています。海底火山噴火というと、直接生活に影響がないように感じるかもしれませんが、日本は火山大国です。活火山の富士山は、いつ噴火してもおかしくない状況です。大規模噴火が起きれば首都圏でも、停電したり交通インフラが止まる恐れがあります。降灰直後から2週間程度、上下水道や電力、流通などが機能停止に陥る可能性があるという試算もされています。三菱地所は昨年11月に、大手町・丸の内・有楽町に所有するビルで、富士山の噴火による降灰を想定した対策を実施すると発表しました。ビルの機能がストップしないように整備するほか、帰宅困難者受け入れの準備もするそうです。私たちも平時のうちから、災害の備えをしておきましょう。堀 潤ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。※『anan』2022年2月9日号より。写真・小笠原真紀イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2022年02月04日