Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。ヒロインの岩崎和佳(奈緒)が時折例えられていた、ジャンヌ・ダルクだったら、「最後は焼かれちゃうでしょ」と思っていたら「ファーストペンギンも大体食べられちゃいますけどね」と作中で言われ、そこは笑いどころだと思っていた。まさかの最終回。愛した浜を去っていく和佳に、それが冗談ではなかったんだと呆然とする。『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)の最終話は、そのほろ苦さで、見届けた私たちの心に強く残る結末になった。でも不思議と悲愴感はない。少し苦くても、きちんと光さすラストだ。食い詰めたシングルマザーがやってきたのは、うらぶれた漁村だった。そこで彼女は、浜の未来を憂う漁師の片岡洋(堤真一)たちと協力して、従来の漁協の販路を通さない直販事業を立ち上げる。しかし幾多の妨害の果てに、漁協と地元の元政治家から資金繰りを切られ追い詰められた和佳は、元官僚の経営コンサル・波佐間(小西遼生)の紹介を通じてとある民間会社から支援を受ける。しかしその会社は外国企業で、経済を通じて浜の実質的な侵略行為を目論んでいることが判明する。最終回、浜の面々はすんでのところで外国企業を追い返したものの、それは執拗に和佳とさんし船団丸を追い詰めてきた地元の保守政治家・辰海(泉谷しげる)の力あってのことだった。本意ではなくとも、あわやのところで浜を売り渡す寸前だった和佳は、責任を厳しく問われることになってしまう。直販事業をやめるように迫られた和佳は、自分が浜を去ることと引き換えに直販事業を続けられる約束を取り付け、浜の未来を漁師たちに託して浜を後にする。そして10年後、成長した和佳の息子の進(城桧吏)が、片岡を訪ねて懐かしい汐ヶ崎にやってくるのだった。人口が減少し続けて縮んでいくこの国で、生産者と消費者ともに利益ある新しい流通を構築したい主人公たちも、衰退を待つ体制を潰す為に外国と結託して何が悪いかと問う元官僚も、古くあるものには理由があるのだと大衆には見えづらい大局観と体制の意義を厳しく問う老練の政治家も、それぞれの理由があって非常に見ごたえある最終話だった。今あるこの社会は、自然の生態系と同じように、様々な事柄が絡み合って回っている。結果として悪い一つの事象に対して、安易にこれだけを壊して取り除けば良いという『悪者』など本来いないのだろうと思う。それも理解した上で、やはり守旧の側から新しい価値観への対話の余地がもっとあるべきだと痛感した。資金が尽きれば会社は死ぬ。リーダーは、部下や組織に関わる人々を大切に思えばこそ会社が死なないために、どんな藁かも見ないで掴む。そこまでに追い込んだのは、「話してもどうせ分かるまい」と相手を侮って対話を持たずに突き落とした側だろう。その前に、五十年、百年先の未来を見据えた対話は考えられなかったものか。政治家の辰海は和佳のリーダーとしての資質を認めつつも、浜で仕事を続けることは許さず、和佳は辰海相手に自分が去った後のさんし船団丸の仕事の安寧を願って膝を折り土下座する。分かりやすい勧善懲悪の物語なら、最終話に膝を折るのは敵対する側だったろう。あるいは、敵のボスが去ったなら、主人公は立派に凱旋するだろう。けれども、『ファーストペンギン!』は、そのどちらもしなかった。和佳は直販事業の引き継ぎを果たした後は、浜の繁栄を願い去っていく。浜に残った漁師達や和佳が関わった人々は、さざ波が広がるように幸福になり生きていくが、和佳はそこにいない。その後も和佳は元気で暮らしている様子で、浜のことを深く気にかけているけれども、約束相手の辰海の死後も筋を通して浜には戻らず、汐ヶ崎の幸せの輪の中にはいないのだった。「なぜだ、こんなの納得できない」と、見ていて心の片隅が痛くなる。だが、もしこれが少しでも納得いかないと思うなら、「ここで現実を振り返り、縮みゆくこの国の農林水産業を、国全体の未来を考えてみて下さい」という作り手の願いかもしれないと思った。「長いものに巻かれなかった人の勇気に報いられない、今でいいのですか」と。その勇気あるペンギンは最初に飛び込んで、泳ぎきることはできなかった。傍目には敗者かもしれないけれど、最初から最後まで圧倒的に格好よかった。巻き舌の啖呵も、何一つ諦めない図太さも、人の愚かさを包む暖かさも、自分のプライドは二の次で部下の為に土下座する姿も、生涯筋を通す潔さも、何もかも爽快で格好良かった。その発端は、愛する息子がこれまで食べられなかった魚を美味しく食べたという喜びで、その幸福を更に多くの人に届けることのできる事業は決して間違ってはいないという強靱な信念だった。誰かの日々の暮らしの小さな幸福は、いずれ地域社会の繁栄と幸福に、更にこの国の未来にまで繋がっている。それを喜怒哀楽とともに誠実に見せてくれる素敵なドラマでした。作り手の皆様、演じて下さった皆様に深く感謝します。ありがとうございました。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年12月12日あるシングルマザーがひょんなことから、漁師たちを束ねるボスになる爽快リアル・サクセスストーリー「ファーストペンギン!」。12月7日(水)今夜の最終話放送を前に、主演の奈緒がクランクアップした際の写真が公開された。最終回を目前に控えた某日、シングルマザーの主人公・岩崎和佳を演じた奈緒さんがクランクアップ。最後の撮影は、とある飲食店での和佳の食事シーン。スタッフからの「オールアップです!」の声と共に拍手が起こり、主題歌「ミチヲユケ」が流れ出し、ついに撮影が終了した。また、奈緒さんのクランクアップを見届けるために、当日撮影予定のなかった堤真一、梶原善ら「さんし船団丸」の面々が朝からロケ現場に駆けつけるサプライズも。2人から「奈緒ちゃ~ん!お疲れ様!」と笑顔で声をかけられ、花束やプレゼントが手渡され、思わず涙する奈緒さん。「色んな方の想いが詰まった素敵なドラマで、この役をいただけたのは、とても幸せなことだと思っています」と力強く語った奈緒さんは、「『今日、大丈夫かな?このシーンできるかな?』と不安に思うことがあっても、現場に行けば、温かい共演者・スタッフの皆さんがいて、皆さんがいるからこそ、全てのシーンを無事に撮り切ることができました。座長として頼りない部分もあったと思いますが、共演者の先輩方が支えてくださって、“見たことのない景色”を、皆さんのおかげで見ることができました」と感謝の言葉を述べた。一方、「さんし船団丸」船団長・片岡洋役の堤さんは、汐ヶ崎漁港である人物と再会するシーンでクランクアップ。「とても雰囲気が良い現場で、スタッフや役者たちと仲良く、楽しく撮影ができたと思っています」とふり返る。前日には、堤さんを除く「さんし船団丸」の面々がクランクアップをしており、「今日はうるさいの(梶原善)がおらんから静かやなぁ…」とぽつり。しかしその直後、梶原さんがサプライズで姿を現すと、満面の笑顔に。和気あいあいとした雰囲気に包まれながら、全ての撮影が終了した。「ファーストペンギン!」は毎週水曜日22時~日本テレビ系にて放送中。(cinemacafe.net)
2022年12月07日テレビドラマ『ファーストペンギン!』の最終回が、2022年12月7日に放送されます。これまで仲間割れ、倒産危機をはじめ、数々の問題を乗り越えてきた、岩崎和佳(奈緒)率いるさんし船団丸だったものの、外国資本に乗っ取られる可能性が浮上し、最大の危機を迎えた第9話。すでに外国資本に浜全体を売り渡してしまい、なんとか今回の話をゼロに戻すべく、片岡洋(堤真一)をはじめ、さんし船団丸の面々が一丸となって動き出します。『ファーストペンギン!』第9話あらすじ岩崎和佳は、浜全体を外国資本に売り渡してしまったと片岡洋に報告。この話をなかったことにするには、浜の全船団が、波佐間成志(小西遼生)の仲介で締結した神饌オーガニクスとの契約を破棄しなければならないのだという。そこで片岡は、磯田高志(吹越満)と山中篤(梶原善)らを率いて船を出し、他の船団の面々も契約を白紙に戻すよう、説得のために動き出す!さらに和佳は、これまでさんしと敵対関係にあった漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)に『ある協力』を依頼し…!?一方汐ヶ崎に現れた波佐間は、浜尻公平(高杉亘)たちを丸め込み、さんし以外の船団で『浜の一企業化』を進めようと画策。絶体絶命の危機に追いやられた和佳が、最後に下した決断とは…!?[文・構成/grape編集部]
2022年12月06日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。これはもう、意図的なさじ加減で地味目にしてるんだろうなと、最終回を前にした9話で思った。もっと派手に事件が起きて、もっとヒロインにキラキラした恋愛要素を盛り込んで、いつもすっきり勧善懲悪に解決したら、フィクションとして面白く見えるのかもしれない。でも、今現実にある問題と結びつけて、見た人々の記憶に少しでもそれを残すのに、地に足の着いた感触は必須なのだろう。9話まで見てきた『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)を、一言で表すならば『誠実なドラマ』だと思う。身体の弱い一人息子を連れ、食い詰めたシングルマザーの岩崎和佳(奈緒)がやってきたのは山口県のとある漁村、汐ヶ崎。そこで出会った漁師の片岡洋(堤真一)や、さんし船団丸の面々と混獲魚の直販事業『お魚ボックス』を始めて会社を立ち上げたものの、従来の販路から外れた販売のため地元の漁協とのトラブルが絶えない。これまで販売事業とは無縁だった漁師たちの仕事もミスだらけ、次々と苦難は襲いかかるが、一歩一歩階段を上るように和佳は協力者や理解者を増やし、自らも漁師もスキルアップしてボックス事業はようやく軌道に乗る。ところが好事魔多し、さんし船団丸は事故で網を失い、約1千万円の修理費と同時に金融機関の貸しはがしに遭う。必死の思いで頼った経営コンサルタント波佐間(小西遼生)の提案により、大手の食品流通会社から多額の融資を受け危機を切り抜けるが、波佐間の介入を嫌う片岡は浜から出て行ってしまう。さらにその融資元の会社は外国資本で、このままでは浜そのものが事実上の乗っ取りにあう可能性を知った和佳は愕然とする。今回、地方の浜が経済上外国資本に乗っ取られるということが、国防の危機の可能性に繋がることまで言及したことに、そこまで踏み込むかと驚いた。ここまでに漁協という組織の保守性や、漁業の現状とミスマッチが生じている問題点を丁寧に描いてきたが、その保守性や継続性にも役割があり、安易に切り落とすように取り除いてはならないものだと明かされる。一方で外資と知らずとも外部の資金に縋らされるをえないほどに、さんし船団丸を追い詰めたのも漁協を中心とする保守勢力である。もつれあう問題に、これでは衰退する一方の漁業に打開の手はないのかと、見ていて暗澹たる気持ちになってしまう。そんな中、現場の漁師たちのリーダーとして自分でなくても波佐間がいればいいのではないか、戻る必要はないんじゃないかと躊躇する片岡を、永沢は汐ヶ崎に連れ戻そうと腐心する。永沢は、波佐間と一緒にいる時の従いっぱなしの和佳が好きになれない、和佳らしくないと懸命に片岡に訴えかける。ここまで、この作品では『その土地』で『その人たち』が生きていこうとする姿を描いてきた。故郷の衰退を憂いながらなすすべのない中年世代、都会に出たけれどもやむなく戻ってきた若者、ここで家庭を持つ決断が今は難しい若者、一次産業への希望をもってやってくる移住者。立場や経歴ではなく、本音でぶつかり合っても容易には壊れない関係で生きられるなら、自分らしさを発揮しながらより良い未来を目指せるならば、その人たちが、その土地で生きていく理由としては十分なのではないか。永沢が片岡を引き戻そうと熱く語った言葉には、そんな希望が込められていると思った。最終回直前まで、息のつけない困難続きではあるけれども、このドラマが『10年前』から届けられている物語だということは、繰り返し冒頭のナレーションで語られている。何らかの決着がついていると察することが出来るのは、間違いなく光明だろう。ずっと誠実さをもって描かれてきたドラマがどんな希望を見せてくれるのか、最後まで楽しみだ。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年12月05日『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)第8話で、ビジネスコーディネーターとしてさんし船団丸の活動に加わることになった、波佐間(小西遼生)。倒産の危機に直面していたさんし船団丸を救った波佐間は、その後も、出荷作業に参加するなど、『浜を救う救世主』として、その存在感を発揮していきました。一方で、片岡(堤真一)は、さんし船団丸の危機を救い、一気に漁師たちからの信頼を得る波佐間の姿を見て、居場所を奪われたような気持ちに。また、一度はさんし船団丸から去ったものの、再び仲間に加わった永沢(鈴木伸之)も、急速に距離を縮める波佐間と、和佳(奈緒)の姿を見て、モヤモヤを募らせていました。『ファーストペンギン!』第9話あらすじ永沢が戻って来たことに、岩崎和佳とさんし船団丸の漁師たちは驚きながらも大喜び!その頃東京では、片岡が「もうワシの居場所はあそこにはない」と、息子・祐介(渡辺大知)がパートナーの楽(大貫勇輔)と暮らすマンションに居座っていた。片岡がいない間も、お魚ボックスの注文は殺到しており、漁師たちはなんとか片岡の穴を埋めようと大忙し。そこに波佐間が現れ、『お魚ボックス』用の血抜き作業を手伝ってくれることに。パーフェクトに仕事をこなしていく波佐間は、片岡の代わりをいとも容易く務めて、皆の信頼を得ていく。そんな中、波佐間は和佳に「浜の船団を一つの会社にまとめませんか?」と大胆な提案を持ちかける。こうして片岡不在の中、波佐間と手を結んだ和佳は、浜尻(高杉亘)ら、ほかの船団の漁師たちも巻き込み、『浜の一企業化』実現に向けて動き出すが…!?一方、急接近する和佳と波佐間の様子に、モヤモヤを募らせた永沢は、片岡を連れ戻すべく、『ある行動』を起こし…!?『ファーストペンギン!』第9話は、2022年11月30日、放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年11月29日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)を後半まで見続けてきて、この物語は仕事ドラマとして、とても誠実だと何度も感じてきた。そう思う理由は、おそらくこの物語の微妙に『薄曇り』な感じが、私たちが日々の仕事で感じる色合いに近いからではないかと思う。何せ主人公が一つ問題を解決しても、同時進行でまた別の問題が続いているし、何か一つ良い結果が得られても、社員は退職するし、めでたしめでたしにもならない。私たちの現実の仕事の日々もまた、スコンと抜けるように晴れることはほとんどなく、大抵気分は薄曇りか小雨で、どしゃ降りでないだけましだと思って働いている。終盤にさしかかった今回もまた、主人公・岩崎和佳(奈緒)とさんし船団丸の面々には、しとしとと困難の雨が降りかかっている。食い詰めたシングルマザーの和佳がたどり着いたのは、山口県のとある漁村、汐ヶ崎。魚のことは素人なのに、なぜか浜の活力になるような事業を興してほしいと漁師の片岡洋(堤真一)に頼まれ、和佳が考えついたのは混獲魚を中心に直接消費者に通販で届ける『お魚ボックス事業』だった。しかし、ごくシンプルなはずのそのアイデアは、これまで販路を握っていた漁協の強い反発を招き、和佳とさんし船団丸には次々と嫌がらせや困難がふりかかる。今回もまた、1千万円を越える網の修理代と漁師達の離反という二重の危機を抱えつつ、対外的には会社として体裁を保っていかねばならない和佳の苦闘と突き抜けぶりが相変わらずリアルだ。その一方で、和佳の存在がきっかけで漁師に本腰を入れ始めたたくみ(上村侑)と、和佳のママ友の山藤そよ(志田未来)の二人が、留守を守りながらトラブルの原因を突き止めるあたりは、着実に良い方に変化が起きていると実感してホッとする。仲買人の梨花(ファーストサマーウイカ)も、今では大手を振って和佳たちの力になってくれる。今作を通じて、当初は魚の知識もほとんどなかった、そして漁に出られるわけでもない和佳が、なぜ社長として漁師たちを束ねていけるのか、その理由がだんだんと見えてきた。それは彼女が、部下たちにとっての『薄曇り』の労働の日々の中で、いつか来る、抜けるような青空の瞬間、より良い未来を語れる能力を持っているからなのだ。浜の未来を語る明るい表情、水産の未来を語る力強い言葉。職能やカリスマ性以上に、希望のある未来を具体的に提示する力があっての社長、『長(おさ)』なのだと思う。その上で、どんな現場のトラブルにも「何とかするから!」と、やせ我慢を承知で立ち向かう。このドラマには、現代のリーダーシップとは何なのかという答えのかけらが、たくさん散りばめられている。今回、漁師たちの離反と、金融機関の貸しはがしという二つの大きな困難を乗り越えた和佳とさんし船団丸だったが、貸しはがしに対抗するためにビジネスコーディネーター・波佐間(小西遼生)の助力を得ることになる。一見頼りになる存在だが、果たして長期的に見たときに吉と出るかどうか。そして浜の外部から自分以上に頼りになる男性が入ってきたことで、居場所をなくしたように感じた片岡はひとり浜から姿を消してしまう。ドラマの当初から、社会の現状に危機感や罪悪感を持ちつつも、しがらみゆえに価値観も行動も変えづらい、片岡のような中年世代の困惑と、それでも半歩ずつの前進を物語は丁寧に描いてきた。社会に自分の居場所はあるのか、もう本当はどこからも必要とされてはいないのではないか。価値観が年単位でめまぐるしく変わっていく現代におけるミドルの痛みと困惑に物語は踏み込もうとしている。そして物語が前回から提示してきている、余裕のなさ故に漁の頻度を増やさざるをえず、それが結果的に水産資源の減少を招き、更に漁獲を減らし未来を先細りさせるという水産の苦境は、少子高齢化の悪循環にあえぐこの国の苦境の縮図のように見える。物語としての誠実さを維持しながら、抜けた青空のような未来を物語は見せられるかどうか。最終盤を見守りたい。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年11月25日第1話から、どんな形であれ、強い絆で結ばれていることが伝わってきた、さんし船団丸の漁師たち。しかし、テレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の第7話では、船の転覆事故をきっかけに仲間割れが勃発し、今までで一番のピンチを迎えてしまいます。和佳(奈緒)は、船を離れたほかの漁師たちを呼び戻しに行くことを提案するものの、片岡(堤真一)は「経験のある漁師を募集すればいい」といい出すのでした。『ファーストペンギン!』第8話あらすじ船の転覆事故をきっかけに漁師たちが去って行き、片岡洋と小森賢太郎(北川尚弥)ら数人だけが残されたさんし船団丸。岩崎和佳は皆を呼び戻しに行こうと提案するが、片岡は断固拒否。さらに片岡は、和佳が講演を行う水産フェアの会場で、新たに経験のある漁師を募集すればいい、と言い出す。こうして和佳は、全国から漁師たちが集う水産フェアの会場に、片岡も一緒に連れて行くことに。講演会終了後、和佳と片岡は、元官僚のビジネスコーディネーター・波佐間成志(小西遼生)を紹介される。見るからにやり手な波佐間から、「さんしと一緒にビジネスをしたい」と言われた和佳は目を輝かせるが、片岡はそんな2人の姿にモヤモヤし、帰り道に大喧嘩に!東京に置き去りにされる形となった片岡は、帰る手立てを失い、一人迷子になるが…。一方、汐ヶ崎に戻った和佳のもとに、銀行から「融資を切り上げたい」と唐突に連絡が入る!突如として『倒産危機』に直面した和佳に、挽回のチャンスは訪れるのか…!?『ファーストペンギン!』第8話は、2022年11月23日、放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年11月22日逝去後も事務所スタッフのトラブルが続く“昭和のアクションスター”千葉真一さん(享年82)。昨年8月、新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなったが、長女で女優の真瀬樹里(47)が喪主を務めた「偲ぶ会」と、長男の新田真剣佑(25)と次男の眞栄田郷敦(22)が願主となった「お別れの会」で、一周忌がふたつ行われるという異例の事態に。さらに、事務所関係者の間でも対立が深まっている。「晩年まで千葉さんの側近を務め、現在は真剣佑さんの事務所『エム・アンド・リーヴス』代表のA氏と、千葉さんと業務提携を結んでいた事務所『アストライア』代表のB氏の裁判が、10月にはじまりました。千葉さんが遺した会社の権利を巡る争いです」(芸能プロ関係者)トラブル続きの千葉さんだが、うれしい報せもある。「一時はギクシャクしていた2人の息子さんの関係が最近は良好で、お母さんといっしょにそろって千葉さんのお墓に手を合わせに行ったそうです」(千葉さんの知人)息子たちは仕事も好調。千葉さんの生前の夢がかないつつあるという。「マッケンこと真剣佑さんは、来年ハリウッド版『聖闘士星矢』の公開が控えています。弟の郷敦さんもドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(フジテレビ系)で主演の長澤まさみをサポートする若手ディレクター役を好演中ですが、兄に続いてハリウッドからオファーが複数届いているそうです。世界的大ヒットとなったSF映画の続編も含まれているとか」(映画関係者)父も活躍したハリウッドの舞台に、兄弟で立つ日も近そうだ。
2022年11月21日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。人生で何か新しいことを始める時の労力は、それ自体は大変だけれども、重いものを力を込めてゆっくり転がすようで、試行錯誤の余地はある。しかし、それが上手く回りはじめて押す力が要らなくなった時、楽になる一方で思ってもないスピードで走り出す。急に転がりだしたそれが悪目立ちしてしまったり、途中にある何かを跳ね飛ばしたりするし、スピードの分、一手打つ手が遅いと手遅れになる。主人公・岩崎和佳(奈緒)が率いる『さんし船団丸』は、立ち上げの時期を過ぎて、いよいよそんな時期に来ているんだなと7話を見ながら思った。食い詰めたシングルマザーの和佳が一人息子を連れてやってきたのは、かつては水産業でにぎわった山口県のとある漁港、汐ヶ崎。今は漁獲量も減り魚の値段も上がらず、浜は不景気に寂れていく一方だ。そんな浜の未来を憂う中年の漁師・片岡洋(堤真一)は、和佳に浜を立て直せる事業を考えてほしいと依頼する。水産どころか魚の種類の知識もおぼつかない和佳が考えついたのは、従来の流通ルートを省き、消費者に新鮮な魚を直接届けるという至極単純なビジネスモデルだった。しかし、漁協を通さずに魚を売るというそのシンプルなアイデアは、水産業という保守的な業界に大きな波風を立てることになる。最初は地元漁協の圧力、次は同業漁師たちの嫉妬からくる村八分と、トラブルを何度も跳ね返してきたさんし船団丸だったが、今度は『地元の有力者の元議員』に目をつけられてしまう。その元議員・辰海を演じるのは泉谷しげる。昭和生まれ世代にとっては反骨のアイコンのような存在だが、今回は見事に老獪な保守政治家役にハマっている。長年政治家でいたということは、人心の陣取り合戦の機微に通じていることである。その狡猾さで辰海は船団丸の内部に人を送り込み、トラブルが起きるように仕向ける。折しも頼りの永沢(鈴木伸之)が退職し、売り上げも右肩上がりで人手不足のさんし船団丸は、就職を希望してきた三人の若者を迎え入れた。しかし、若い世代と長年漁師として浜で生きていた漁師たちの価値観の差はなかなか埋まらない。片岡が現場で板挟みになって苦慮するうちに、漁の最中に本来ありえない事故が起き、漁船はあわや転覆の危機に直面する。漁師の魂ともいうべき網の破損と引き換えに転覆を免れるが、それでも新入りを庇う片岡に愛想を尽かした漁師達は、片岡と新入りの小森だけを残して去ってしまうのだった。これまでは浜の中で何が起きているのかを丁寧に描いてきたが、終盤にさしかかる今回、この国の水産の苦しい現状と、その中で和佳たちのお魚ボックス事業がどんな立ち位置にあるのかが、徐々に広く目線を広げつつ分かりやすく描かれている。そもそもこのドラマは、実話を元に作られている。実在モデルの坪内知佳さんの半生記を読めば、ある程度ドラマとして作られた部分はあるものの、ほぼ物語の骨組みはそのままである(いや、ドラマも恐れ入るくらい次から次にいろんなことが起こります。のけぞる面白さなのでこちらもおすすめします)。つくづく実話もドラマも、最初は水産の素人で組織がかりでない、一人の女性が淡々と始めたからこそ偉大なる『蟻の一穴』たり得たのだろうと思う。最初の一歩が未来への希望と社会的使命に後押しされて『回り始めた』時に、成長痛のように軋みが生じる。そんな中、物語の当初はとかく事なかれ主義で逃げ腰だった片岡が、新入りの育成を含めて現場で懸命にリーダーであろうとする姿に胸が熱くなった。浜でさんし船団丸が村八分にされて悩む時に、和佳は社長として苦しさを隠して「だから何とかするって!」と言い切ろうとする。片岡もまた、同じように船の転覆の危機に矢継ぎ早に指示を出しながら「何とかするけえ」と絶叫する。苦難の時に人はその地金が出る。良いバディなんだな、と思う。疑念と怒りで分解してしまった、さんし船団丸はこの先どうなってしまうのか。このドラマ、ストーリーとしては中々に苦難のパートが長いし、しかも生々しい。しかしご都合主義的に勧善懲悪ですっきり解決しないのは、これが実話をモデルにした物語だからではないかと思っている。そこで現実に苦闘しながら前に進んだ人たちを思えば、物語の面白さとのバランスを取りつつも、簡単に甘い解決にたどり着かないことは、敬意だろうと思うのだ。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年11月18日和佳(奈緒)の見事な手引きにより、漁協やほかの漁師たちからの嫌がらせを止めさせることに成功した『ファーストペンギン!』第6話。テレビ出演をきっかけに『お魚ボックス』の売り上げも伸び、人員の募集をするほどの好調ぶりを見せていました。第7話では、人手不足を解消するべく、さんし船団丸に3名の新人が加入するも、それをきっかけに、船団の空気がどんどん険悪になってしまう事態に…。『ファーストペンギン!』第7話あらすじテレビ出演のおかげで、『お魚ボックス』の売り上げは絶好調!人手が不足してきたため、岩崎和佳は人員募集をすることに。その頃漁協では、組合長・杉浦久光(梅沢富美男)のもとへ、地元の有力者・辰海一郎太(泉谷しげる)がやって来て、「さんしを潰すには『針』を仕込めば良いのだ」と不敵な笑みを浮かべ…!?しばらくして、さんし船団丸には3名の新人が加入。どうやらその中の1人が、辰海の差し金で紛れ込んだ『針』らしいのだが、何も知らない漁師たちは、浜に若者が来てくれたことを喜び、歓迎ムードに。多忙な和佳に代わって、片岡洋(堤真一)が自ら教育係に名乗り出るも、世間知らずで空気を読まない大卒の新人・小森賢太郎(北川尚弥)の振る舞いに、皆のストレスはたまっていくばかり。船団の空気がどんどん険悪になる中、命にかかわる大きな事件が…!?第6話では、途中、直販事業のメリットを認める姿勢も見せていた、組合長の杉浦。結局、ほかの漁協の手前、再び『お魚ボックス』反対派にまわった杉浦ではあるものの、和佳の改革は徐々に成果をみせています。そんな中で起きる『大きな事件』とは一体…。第7話は、2022年11月16日放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年11月15日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。自分ひとりで生きていくなら、多少収入が不安定でも生活環境が万全でなくても、好きな仕事でいいと思う。大人2人の人生でも、互いに好きな場所で好きな仕事を選びながら、寄り添って生きていける。でも大人が子供を育てていこうというとき、子供にとって良い条件を模索するのは自然なことだ。病気がちな息子のために自然の多い環境を求めること、あるいは、より便利な都会で安定した仕事につくこと。どの道を選ぶとしても、自分の中で繰り返し真剣に天秤に乗せてみるしかない。収入も、暮らしやすさも、生きがいも。食い詰めたシングルマザーが、とある漁村にやってきて、浜の衰退を憂う一人の漁師・片岡洋(堤真一)から、事業の展開を考えてほしいと頼まれる。漁業はおろか魚にすら詳しくなかった主人公・岩崎和佳(奈緒)は、その先入観のなさが幸いして、さんし船団丸の漁師達を引き連れて、混獲魚の直販という新たな事業に乗り出す。しかし漁協を通さないその事業は、漁協や他の漁師達の強い反発を呼び、事業展開は未だにトラブル含み。その上、当初から陰日向に和佳の助けになってくれた若手漁師の永沢(鈴木伸之)が、子供が出来たので漁師を辞めたいと言い出して和佳たちを動揺させる。折り返しの6話、和佳は永沢を引き留めるため、永沢の恋人であるアイナ(足立梨花)を納得させるべくテレビ出演を通じてさんし船団丸の将来性をアピールしようとする。しかしテレビに出るということが、さんし船団丸に不満を持つ他の漁師達を刺激してしまい、これまでも頻発していた嫌がらせはピークに達してしまう。漁師や社員の家族にまで嫌がらせが続き、和佳と片岡はテレビ出演を逆手に取り、嫌がらせの告発を決意する。今回、都会から地方にやってきて、一つ二つ新規事業を軌道に乗せたとしても、そこにある保守的な強い弾力に跳ね返される主人公の苦闘が生々しかった。これまで和佳や片岡に立ちはだかってきた漁協の組合長は、徐々に直販事業のメリットを認めて乗り気になってきたものの、他の漁協の手前、方針を変えられない。そこに住む一人一人は善良な常識人なのだとしても、それが組織や集団やテリトリーの単位になった時に、大きなうねりが起きて変革を押しつぶそうとする。そこで従来暮らしている人たちがいて、彼らには彼らの暮らしが続く以上、そう安易に外から来て問題解決なんかしないし、めでたしめでたしにはならないと淡々と言われているようだ。そんな船団丸の苦境に対し、和佳は表向きテレビで嫌がらせを告発するとアピールしつつ、最終的には矛を収めて漁協や他の漁師達との衝突を避ける。威嚇は功を奏して、ひどい嫌がらせはだんだんと収まり、船団丸には平穏が戻ってくるものの、テレビ出演を見ても永沢の恋人の気持ちは変わらず、永沢は船団丸からの退職を決意する。永沢が最後に漁師の仕事と船団丸への愛着を和佳に語りかける言葉は、誠実だけれども過去形で語られていて、その真摯さの分だけ余計に切なさが募った。地方の一次産業の場には、都会では得がたい素晴らしさが沢山あるけれども、その長所の表裏で、若い世代が家庭を営むにあたって選びづらい理由も同じくらいある。和佳にとって最初の理解者である永沢の退場とともに、そんなほろ苦さが残る回だった。しかし、和佳が永沢との縁をそれっきりに捉えずに、いつか家族で戻ってきてほしいと訴えかける言葉に光明がある。「わたしは、ずっとここにいるからね。いつ帰ってきてもいいんだからね」都会から食い詰めてふらりとやってきた一人の女が、そこを出て行く誰かへのはなむけとして私はここに根付くと宣言する。力強い言葉だった。それにしても、社外の敵に対してはファイティングポーズを取って「殴られっぱなしじゃないぞ」と示し、内部で漁師達の不満を逸らし、実際には外に対して拳を振るわず(振るえばあらゆることが破綻する)綱渡りをしながら組織を鼓舞していく。どんなに苦しくても「何とかするから」と部下を守り、ぶれない理想を語る。組織の長であるということは、本当に孤独であるなと思う。そんなふうに苦闘しながら成長するリーダーシップの物語としても、骨太な本作である。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年11月14日演奏家だけでなく教育者、サントリーホール館長など様々な顔をもつ堤剛の80歳を記念したチェロ・リサイタルツアーが来年4月に東京、長野、大阪で開催される。堤剛は日本代表するチェリスト。演奏活動だけでなく、その場は多岐にわたっており、これまでに鳥井音楽賞(現サントリー音楽賞)、ウジェーヌ·イザイ·メダル(ベルギー)、芸術祭放送大賞、芸術祭優秀賞、レコードアカデミー賞、モービル音楽賞、N響有馬賞、日本藝術院賞、中島健蔵音楽賞、ウィーン市功労名誉金賞、毎日芸術賞(音楽部門)、文化庁創立五十周年記念表彰など多数受賞。2009年秋には紫綬褒章を受章。同年に天皇陛下御在位二十年記念式典で御前演奏を行った。そして2013年には文化功労者に選出。いまなお、自国の作品の世界初演をプログラムに取り入れるなど、精力的な活動を続けている。ツアーにはピアニストの河村尚子も参加。当日のプログラムは、ベートーヴェン、R.シュトラウス、プロコフィエフ、マルティヌーたちのソナタや変奏曲が並び、夫人の堤春恵の委嘱作品で権代敦彦が作曲した新作初演も行われる。堤剛 80歳記念チェロ・リサイタルTsuyoshi TSUTSUMI 80th Anniversary Tour出演者堤剛(チェロ)河村尚子(ピアノ)曲目ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 op.102-1R.シュトラウス:チェロ・ソナタ ヘ長調 op.6権代敦彦:無伴奏チェロのための“Z” ゼータ op. 186(2022)~ 堤春恵委嘱作品 ~プロコフィエフ:チェロ・ソナタ ハ長調 op.119マルティヌー:ロッシーニの主題による変奏曲 H.290【東京公演】2023年4月22日(土) 14:00開演(13:15開場)サントリーホール【長野公演】2023年4月23日(日) 14:00開演(13:15開場)会場:軽井沢大賀ホール【大阪公演】2023年4月30日(日) 14:00開演(13:00開場)会場:ザ・シンフォニーホール
2022年11月10日「俺、子供が出来たらしいんで」漁師の一希(鈴木伸之)の爆弾発言で終わった、テレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)第5話。一希は、主人公・和佳(奈緒)の『相手候補』の筆頭と思われていたからこそ、恋人の存在をにおわせる発言に衝撃を受けた視聴者は多いことでしょう。第6話では、子供ができたことを理由に漁師をやめようとしている一希を引き留めるべく、和佳は一希と遠距離恋愛中の彼女・白峰アイナ(足立梨花)に会いにいくことに。さらに、和佳の悩みはつきず、テレビ局のディレクターから、『お魚ボックス』の取材の連絡が入るも、それがきっかけで、ほかの船団の漁師たちの不平不満が爆発してしまうのでした。『ファーストペンギン!』第6話あらすじ永沢一希から突然、「子どもができたから会社を辞める」と告げられた岩崎和佳は、遠距離恋愛中の永沢の彼女・白峰アイナ(足立梨花)に会いに行き、事情を探ろうとする。しかしアイナは、「ずっと一希に漁師をやめてほしかった」と和佳の説得もことごとく笑顔でかわし…。頭を悩ませる和佳のもとに、テレビ局のディレクターから、「『お魚ボックス』の将来性を見込んで取材をさせてほしい」と連絡が入る。テレビで「将来有望なビジネス」だと取り上げられれば、アイナの気持ちも変わるのではないかと思い立った和佳は、片岡洋(堤真一)たちに事情を説明。永沢に残ってもらうためなら、と皆で盛り上がっていたのだが…。さんし船団丸の面々がテレビに出るという噂が浜全体に広がると、漁協だけでなく、妬みを募らせた浜尻公平(高杉亘)ら他の船団の漁師たちの不平不満が爆発。「さんしは出ていけ」と喧嘩をふっかけられ、大乱闘に発展!嫌がらせも日増しにエスカレートし、『村八分』状態にまで追い込まれる中、和佳は片岡の一言をきっかけに、ある『逆襲の一手』を思い付き…!?『ファーストペンギン!』第6話は、2022年11月9日、放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年11月08日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。世の中の価値観が変わっていくとき、ほとんどその変化はグラデーションだ。どこに境目があったかは、その時は分からない。数年越しに振り返って、ああ、変わっていったんだなと思う。グラデーションは時間の流れにもあるし、世代間にもあるし、中央から周辺への地理的な条件もある。『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)は、一人のシングルマザーがとある漁村にやってきて、漁師達と変革をおこしていく物語だ。それは裏返せば、保守的な土地柄の人々が、時に拒否したり考え込んだりしながら、どのように新しい価値観を受け止めて、変化か現状維持かを判断する様を描いていく物語だ。食い詰めたシングルマザーの岩崎和佳(奈緒)が一人息子をつれてやってきた、山口県のとある漁村・汐ヶ崎。彼女は漁獲量が減り、漁師の収入も減り、寂れていく浜で何か新事業を興せないかと漁師の片岡洋(堤真一)から頼まれ、国の六次産業化プロジェクトの認可を得て鮮魚の直販『お魚ボックス事業』をスタートする。既得権益である漁協の妨害や、通販の作業に不慣れな漁師たちとのトラブルも乗り越えて、銀行からの融資で経営資金も潤沢に得た。しかし、ようやく直販事業が軌道に乗ったところで、思いもよらない人間関係のもつれが明らかになる。今まで、時折和佳にビジネスや漁師達との関係に助言をする琴平祐介(渡辺大知)という謎めいた青年が描かれていたが、今回、その琴平が片岡の息子だと明らかになる。息子は、死別した妻の連れ子で、職業は医者。和佳の息子を診察した縁で親交があることも判明する。祐介は過去に進学にあたって、片岡と互いを思いやるあまりに喧嘩別れしており、東京で片岡たちを案じて和佳に汐ヶ崎行きを勧めたり、間接的に直販事業の相談に乗っていたのだった。それ自体は今までの片岡の回想や琴平の事情ありげな描き方で予想はできたのだが、予想外はここからである。和佳との親密さを見て、結婚を勧めた片岡や漁師たちに、祐介は自分が同性愛者であることを明かす。その上で、この浜に戻って開業医になりたい、自分が性的マイノリティであることを触れ回ることはないけど、「隠すこともない」と言う祐介に、片岡は狼狽えてそれは迷惑だと言ってしまう。「そねえな…お前…東京なら、あれかもしれんけど、そねえな訳分からんもん、ここん持ち込まれても困るんちゃ」息子の生き方を理解したいと頭の半分では思いながらも、東京のような都会ならともかく、この地元ではそれは困ると、おろおろと言う片岡の言葉が生々しい。魚の流通にしても、現状を変えねば未来が暗い、でも今起きるデメリットを受け入れたくない。同様に、マイノリティへの理解にしても、理念の上ではわかっていても自分の身近な存在になると、理念より現実の不安が先に来る。この物語は、総論賛成・各論反対になってしまう人々の綺麗ごとと矛盾を、人情味ある物語の優しさの中で容赦なく斬ってくるのである。再び断絶しかけた片岡と祐介を繋いだのは、祐介のマイノリティとしての痛み多き人生を、父親として理解してあげてほしいと願う和佳の言葉だった。保守的な価値観で生きてきた男には、それが通じる言葉で、実感できる情愛で語りかけていく。年齢、性別、立場を超えて、パートナーとして成熟しつつある和佳と片岡の、この時の会話が印象深かった。この関係性の成熟もスイッチが切り替わるようなものではなく、幾つかの衝突と解決を経たグラデーションだったのだと思う。今週、もう一つの予想外は、ここまで和佳を支えてきた漁師の永沢(鈴木伸之)だった。その優しさと和佳への献身ぶりから、当然『相手候補』最有力に見えていたが、今週のラストでまさかの「船団丸を退職したい。子供が出来たようなので」と、他に恋人がいると伺わせる爆弾発言。やはり森下佳子の脚本は、「定型の展開に見せかけて曲者だ」と痛感する展開だった。これまでにこのドラマは、衰退する地方とシングルマザー(和佳)、生きづらさを抱えた若者(たくみ)、社会的マイノリティ(祐介)といった社会的な弱者の距離を丁寧に描いてきた。そして次は『選ぶ』若者が、よりよい未来の為にどこに住み、どんな仕事を選んで生きるのかを描くのではないかと思う。優しい人情派ドラマに見えて、やはり一筋縄ではない。後半もまだまだ船は揺れそうだ。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら[文・構成/grape編集部]
2022年11月04日第4話で、ようやく足並みがそろった『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の主人公・和佳(奈緒)と、さんし船団丸の漁師たち。魚の直販『お魚ボックス』の売り上げも好調で、将来性を見込んだ銀行が融資をしてくれることにもなり、これまでの和佳の苦労も報われたように思えました。とはいえ、一難去ってまた一難。第5話では、片岡(堤真一)が『お魚ボックス』の事業から抜ける危機が訪れそうです…。さらに、和佳が「先生」と呼ぶ相談相手、琴平祐介(渡辺大知)の正体も明らかに。『ファーストペンギン!』第5話あらすじ和佳が発案した、「お魚ボックス」の売上は好調。その将来性を見込んで、銀行が融資をしてくれることになった。設備も整い、漁師たちの報酬もアップ。さらに事務員として山藤そよ(志田未来)が加わったことで漁師たちのモチベーションは急上昇!活気に満ちた日々が訪れたのだが…。ある日、和佳が「先生」と呼ぶ相談相手・琴平祐介(渡辺大知)が、「大事な話がある」と言って東京からはるばる和佳に会いにきた。そんな二人の姿を、漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)が偶然目撃。杉浦は何かを思いついた様子で、不敵な笑みを浮かべ…!?一方、和佳が「先生」と会っていると知った片岡洋は、どんな男なのかとモヤモヤ…。そんな中、杉浦から片岡に連絡が入り、謎に包まれた「先生」の正体が明らかに!杉浦の話を聞いた片岡は、「わしゃもうボックスなんかやらんけぇの!」と事務所を飛び出してしまい…!?『ファーストペンギン!』第4話は、2022年11月2日、放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年11月01日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。起業した知人から聞いた、ずっと忘れられない言葉がある。「雇った社員が結婚したんだよ。聞いたとき、怖くて足が震えた。自分では、『会社、この先何年やってけるか分からない』って思ってて、もう泥沼みたいな経営で。それなのに『家庭を持つ』っていうんだもの。でも、その時は顔に出さず笑って『おめでとう』ってご祝儀出して。ますます自分は死ぬ気で会社やらなきゃって」同じように数年後、社員が家を買うと言ってきた時にも、本気かと腰を抜かしそうになったらしい。もちろん顔に出さず、励ましたと言っていた。生々しい話で、起業して会社をやっていくって本当に大変なことだと思った。片岡(堤真一)ら漁師たちから贈られた営業スーツを見つめて、65万円の自腹を決めた和佳(奈緒)の姿に、友人のそんな言葉を思い出していた。食い詰めたシングルマザー・和佳がやってきた、山口県のとある漁村・汐ヶ崎。漁獲が落ち、魚の消費量も落ち、寂れゆく故郷を憂う漁師の片岡から、和佳は「浜の建て直しが出来るような事業を考えてほしい」と頼まれる。経営の経験なし、魚の知識もなし。あるのは根性とフットワーク、そして息子たちが生きる未来によりよい社会を残したいという願いのみ。そんなヒロインが奮闘する『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)。和佳は漁協を通さずに鮮魚を直販で届ける『お魚ボックス事業』を始めるものの、既得権益を手放さない漁協の横槍や、漁師達からの反発で事業は一向に軌道に乗らない。いざ直販事業が始まると漁師達の魚の梱包は乱雑で、クレームとその対応で和佳と漁師達はまたしても空中分解寸前になってしまう。獲った魚がどんな料理になるのかを見せれば、漁師達のモチベーションが上がるかもしれないと、和佳は全員の旅費65万円を自腹で借金して、船団丸の面々を高級フレンチに連れて行く。今回、4話ではその『フレンチ出張』と同時進行で、船団丸の漁師・山中篤(梶原善)と、その息子たくみ(上村侑)のすれ違う親子関係が描かれる。昭和生まれの漁師らしく何ごとも深く考えない篤と、一度は就職したものの、東京暮らしが合わずに地元に帰ってきて根腐れしたような生活を送る息子のたくみ。物語は10年前の話だが、おそらく日本全国、今もどこにでもある親子のありようだと思う。若い世代はSNS等を通して、地元に戻ってからも選べたはずなのに選べなかった、あるいは選ばなかった人生を横目で見つづける。親の世代はそんな若い世代の焦燥を腫れ物のように持て余す。今回とりわけ、たくみに東京で何があったのかと問う、若手漁師の永沢(鈴木伸之)との会話が印象深かった。問いかける永沢に、特に何があったわけじゃないが、東京での生活ひとつひとつに疲れたのだとたくみは自嘲気味に応える。学歴や教養や社会常識、地元の暮らしで存分に得られなかったものが、都会での彼を疲弊させたのだと思う。さりとて帰ってきても、さびれゆく土地の、さびれるだけの理由がもう見えてしまっていて、やるせなさは行き場がない。地方で生きていく若者の焦燥や、それでも捨てられぬ愛着がよく描かれたエピソードだと思う。高級フランス料理店での魚料理を通じて、たくみは鮮魚ボックスへの和佳の情熱(彼女はそれを『ロマン』という言葉で表現する)と漁師たちの魚への誇りに触れ、浜での生き方に小さな希望を見出す。大きな転機があるわけではないが、ひとつひとつそこで生きる理由を見つけて、いつか誇りになっていく。それは土地の良いところも悪いところも見つめながら、地方都市で生まれて暮らしていく多くの人々へ、真心のこもった静かなエールに思えた。ここぞという時には強烈なリーダーシップを発揮する一方、時に説明の言葉が足りない和佳と、キレやすい荒くれ漁師たちをつないでいるのは、まだ若い漁師の永沢一希である。大きな体を縮めるように和佳の話を聞き、一晩中子供に寄り添って、時には親子喧嘩の仲裁に入って殴られる。しかも殴られても激することもない。そんな心優しい漁師に、劇団EXILEの鈴木伸之がぴたっとはまっている。鈴木伸之は、昨年の『恋です!~ヤンキーくんと白杖ガール』(日本テレビ系)でも、いかつい外見に反し、繊細で思いやりのある青年を好演していた。あの大柄な体からにじみ出るような優しさには不思議な説得力があり、これから物語の中でどんな役割を果たすのか、楽しみである。立ち上げの時期を経て、事業が順調に走り出すとき、仕入れや人件費、経費がかさみ始める。しかしもどかしいかな、それが収益に変わるのは大抵その少し後なのである。和佳と漁師たちにも、避けて通れないシビアな資金繰りの問題が降りかかろうとしている。倒れた自転車と何気なく渡したチラシは、この先どこに繋がってくるだろうか。幾つもの点を浮かべ、物語は中盤に入ろうとしている。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年10月28日ようやく岩崎和佳(奈緒)を中心にまとまり始め、これからの巻き返しに期待がかかる、テレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)第4話。しかし、そう簡単にはいきません。第3話で、母親としての在り方を問われ、漁師たちとの仕事を諦めかけた、和佳。それでも、和佳の熱心な営業を知り、引き止めにきた漁師たちや、何より息子の進(石塚陸翔)の存在もあり、再び『お魚ボックス』事業を軌道に乗せるべく、和佳とさんし船団丸の漁師たちは、動き始めたのでした。『お魚ボックス』の注文も増え始め、順調かと思われた矢先、配送先の飲食店からは、「魚が痛んでいる」「注文が間違っている」などクレームが続出する事態に。注文が増えても大赤字で、漁師たちへの追加報酬もほとんど支払えない状況を見かねた片岡洋(堤真一)が、和佳に無断でクレーム対応を開始するも、それがまたトラブルを生み出すのでした。『ファーストペンギン!』第4話あらすじ注文も順調に増え始め、順調そうに見えた、「お魚ボックス」事業。しかし、配送先の飲食店からは、「魚が痛んでいる」「注文が間違っている」などクレームが続出!苦情が来るたびに和佳が代品を送る羽目になり、注文が増えても大赤字!漁師たちへの追加報酬もほとんど支払えず、皆の士気は下がっていくばかり……。そんな状況を見かねた片岡洋は、和佳に無断でクレーム対応を開始。片岡が「悪いのは魚ではなく料理人の腕」とお客さんに言い返していることを知った和佳は激怒。片岡も苛立ちを募らせ、2人は大喧嘩に……!頭を抱える和佳のもとに、東京のフレンチレストランのシェフ・流山(速水もこみち)から連絡が入る。流山と話をするうち、和佳は、漁師たちのやる気をアップさせるための“ある秘策”を思い付き……!?『ファーストペンギン!』第4話は、2022年10月26日、放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年10月25日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。漁協からの度重なる陰湿な嫌がらせにも、根も葉もない悪い噂話にも、心折れないヒロイン。だが、その心がポキッと折れたのは、仕事への評価ではなくて、「母親としてあんたどうなんだ」という仲間からの反則の一撃だった。「それを言っちゃあ、おしまいだろ」と思ったら案の定、ヒロインの和佳は漁師たちとの仕事をあきらめて去ってしまう。それはやはり仕事仲間としては、決して刺してはいけないところなのだ。「これはつらいな」と思わずため息が出る。でも確かにその時が物語の底、深い水底でつま先が触れた瞬間だった。あとは蹴って上がるのだ。とある寂れゆく漁村、汐ヶ崎にふらりと現れたシングルマザーが、ひとりの漁師と出会って浜の再建になるような事業を興してほしいと頼まれる。華奢で、経営の経験もなく、おまけにアジとサバの区別もつかない彼女。しかし、類い希な根性と行動力の持ち主だった。そんなヒロイン岩崎和佳(奈緒)と、さんし船団丸の漁師達の奮闘を描く『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)。その行動力で、和佳はこれまでタブーとされてきた、漁協を通さない魚の直販を始めるべく国の六次産業化プロジェクトの認可を得て、漁協からの嫌がらせをものともせず直販事業に突き進む。漁協とのしがらみや増える仕事に渋る漁師達を激励し、叱りつけ、何とか事業をスタートさせたものの、和佳のアイデアを潰したい漁協の組合長・杉浦(梅沢富美男)の陰湿な妨害工作はまだ続いていた。嘘の証言を録音したり、フェイク画像まで作って和佳の悪評を広めようとする組合長の憎らしい悪役ぶりも、相変わらず見事にブレがない。ヒロインにふりかかる試練がエグいほど、後半ジャンプアップして面白くなるのが脚本家・森下佳子のドラマで、それは演技だと分かっていても一瞬「本当に嫌いになりそう」と思わせるような敵役あっての効果である。そのラインすれすれの憎々しさを、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』ではキムラ緑子が担ったが、今回は梅沢富美男が怪演している。さんし船団丸の口座から多額の預金を引き出して、目一杯おしゃれをして東京に出て行く和佳の行動を、漁師達は「会社の金を横領して遊び歩いているのでは」と怪しむが、それは東京の飲食店に魚を買ってもらうための必死の営業だった。何度も無理に食べ吐きしながら営業に回った和佳は倒れて病院に運ばれ、息子の進(石塚陸翔)を船団丸に預けたまま一晩帰れなくなってしまう。ここで漁師たちと和佳の間の不信感はピークに達する。漁師の片岡(堤真一)は和佳の母親としてのありようが酷すぎるのではないか、息子の進の物分かりがあまりにも良いのは、放置の結果の歪みではないのか、と和佳にとっては身に覚えのある『痛い一撃』を食らわせてしまうのである。興味深いのは、物分かりが良すぎる子供への忸怩(じくじ)たる思いが、どうやら片岡自身の過去に繋がっているような部分である。自分にその痛みの後悔があるから、和佳に対してもある意味的確にその武器を使ってしまったのではないか。片岡には病で死に別れた妻がおり、その妻には連れ子がいたということが物語の初回、漁師たちの話で明かされている。そして和佳には琴平(渡辺大知)という経営コンサルタントらしき青年が時折連絡をしてお魚ボックス事業に的確なアドバイスをしている。琴平は、和佳と進の親子に対して何らかの好意はあるようだが、その真意は見えない。その琴平が、今回のラストで汐ヶ崎の漁師たちについて直接見知っているふうなことを言いかけてやめた。そして、まだ和佳に対して何か隠している意図があるらしい。幾つもの点と点が浮かび上がっているが、それがどんな線を描くのかはわからない。中盤に向けての大きな楽しみの一つになりそうだ。こうして一度はさんし船団丸との縁を切ろうと決めた和佳だったが、和佳の献身的な営業の実情を知った漁師の面々が引き止めにやってくる。それでも振り切ろうとした和佳を引きとめたのは、いつも良い子すぎるくらい良い子である息子の進が初めて見せた怒りだった。漁師たちの訴えかけを無視して自転車をこぐ和佳に、進は初めて「ママのばか!」と怒り、驚いて自転車を止めた和佳は追いついてきた漁師たちと和解する。一度切れかけた糸が、繋がってまた撚りあう瞬間だった。しかし遡って考えると、普段は優しい幼い子を怒りに突き動かしたのは『楽しい漁師のおじちゃんたち』への思いやりだろう。それは一晩寄り添った永沢(鈴木伸之)の優しさや、ペンギンの鳴き声を真似て寂しさを紛らわせてくれた片岡の思いやり、そして母親の悪口を子供の目の前で言わなかった高志(吹越満)の気遣いといった、海の男たちの不器用な優しさが絡まりあって醸成されたものだ。つくづく人の縁は、単線ではなくて絡まりあってめぐるものだと思う。同じく森下佳子が脚本を担当した大河ドラマ『おんな城主直虎』(NHK)に、子を生まなかったことを揶揄された主人公が「あいにく子を持ったことはないもので。どの子も等しく我が子のように見えましてな」と返す名台詞がある。このセリフの味わい深さも、そして今作で繰り返される、長いものに巻かれないでも生きられる社会をという描写も、極上のエンタテインメントの中で「私たちは次の世代にどんな社会を残したいですか?」と問われているかのようだ。和佳と漁師たちの奮闘を見守りながら、その答えの一端だけでも見つけられるといいなと思っている。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年10月21日現在の日本社会が抱える問題を縮図したようなストーリーや、キャスティングの絶妙さが受け、第1話放送以降、着々と人気を高めているドラマ『ファーストペンギン』(日本テレビ系)。『お魚ボックス』をめぐり、漁協から敵対視される主人公の岩崎和佳(奈緒)ではあるものの、第2話では、孤軍奮闘する彼女を助ける人たちの存在も出てきました。その1人が、和佳のママ友である、山藤そよ(志田未来)。『お魚ボックス』の注文数を増やすため、東京との往復を繰り返し多忙な日々を送るシングルマザーの和佳に代わり、そよは、和佳の1人息子・進(石塚陸翔)を夜の間だけ預かってくれる頼もしい存在です。ママ友の力を借りながら、1人営業活動に励む和佳でしたが、その裏では、敵対する漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)が吹聴した、「和佳は詐欺師である」という噂が広まりつつありました。『ファーストペンギン!』第3話あらすじ「お魚ボックス」の注文を増やすため、岩崎和佳は東京の飲食店に営業をしに行くことに。息子の進(石塚陸翔)を昼は保育園、夜はママ友・山藤そよに預けて、東京との往復を繰り返す多忙な日々を送っていた。そんな中、進は誕生日を迎える。この日も和佳は東京に出かけており、進は片岡洋(堤真一)たちと一緒に、船団の事務所で帰りを待つことに。しかし、和佳は約束の時間を過ぎても帰って来ず、片岡が何度電話をかけても繋がらない。翌朝になっても連絡がつかない和佳のことを、漁師たちは「男と一緒なのでは?」と疑い始めるが、片岡だけは、「子供の誕生日に母親がそんなこと…」と和佳を信じようとする。しかし、そこに磯田高志(吹越満)が会社の出納記録を持って飛び込んでくる!片岡が和佳に預けていた船団の口座から、大金が引き出されていたことが発覚し……!?『ファーストペンギン』第3話は、2022年10月19日、放送です。[文・構成/grape編集部]
2022年10月18日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。森下佳子脚本ドラマの序盤はつらい。何作品か見て分かっているけれども、『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)の2話、ヒロインをとことん追い詰める容赦なさにまたしても唸った。ヒロインが苦難を乗り越え、問題を解決して仲間を得て目的に進んでいく。そのストーリー自体エンターテインメントとして王道だが、森下脚本でのヒロインの苦難は他のそれよりも更に一段闇が深いと思う。NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』の時には、主人公・め以子が嫁いだ先の小姑の和枝が繰り出す『いけず』は、嫁いじめと言うには悪意が底知れなくて恐ろしかった。大河ドラマ『おんな城主直虎』の時も、ヒロインが領主になった当初はどこを向いても敵だらけで、頼りになるはずの幼なじみも敵方に離反しているように振る舞い、痛々しいことこの上なかった。2021年のテレビドラマ『天国と地獄〜サイコな2人』(TBS系)は男女の入れ替わりが物語の主軸だが、ヒロインは入れ替わった相手、つまり自分の姿をした相手から、意図的に食物アレルギー反応を仕組まれて死にかけてしまう。そして、今作「ファーストペンギン!」である。物語のスタートは、現在の10年前。ヒロインの岩崎和佳(奈緒)はシングルマザーとしてとある漁港に引っ越してくる。そして、ひょんなきっかけから、漁師の片岡洋(堤真一)と出会い、漁獲量が落ちてさびれていく浜を元気づけられるような事業を考えてほしいと頼まれる。折しも国が六次産業化プロジェクトを募集し始めた矢先で、水揚げされた魚を通販で直接販売する『お魚ボックス』の企画を見事に通すものの、彼女の前に立ちはだかったのは従来の販路を外そうとする企画を快く思わない漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)だった。一度は和佳の企画に賛成した片岡も、杉浦の圧力に負けて翻意してしまい、かくして和佳はハシゴを外され漁港の中で孤立してしまうのだった。とにかく、これでもかと和佳にふりかかる試練がえぐい。最初に依頼してきた片岡にハシゴを外されただけでも随分な話だが、その後どんなに漁師を鼓舞しようとしても無視され、自腹でお試し用の『お魚ボックス』を作って売ろうと奮闘しても魚を買えないように裏で仕組まれ、あまつさえ頼みの綱の六次産業化プロジェクトの認定さえも組合長の策略で取り消されそうになってしまう。しかもその理由が和佳がハニートラップで統括担当を脅迫したというひどい嘘なのだった。くじけない和佳のバイタリティもすさまじいが、実はその苦難の一つ一つに、そっと寄り添う人達がいる。とりわけ、周囲に対して大きな声をあげるわけではないけれど、土砂降りの中で傘をそっと差しだしてくれるような女性たちの助力が印象的だ。内緒で魚を売ってくれる女仲買人、解雇しても部屋からすぐに追い出さずに待ってくれる女将、逃げ回る役人に会えるように仕組んでくれるホステス、突然のトラブルの時にごく自然に子供を預かってくれるママ友、そして認定取り消しの動きにシグナルを出してくれる農水省の女性官僚。これは、確かにファーストペンギン・和佳の話だけれども、同時に、もしファーストペンギンたりうる特別な輝きの誰かに、(私自身含め)平凡に生きている人生で出会ったならば、どのように振る舞うかという話でもあると思う。すぐに大手を振ってついていくほどの勇気はなくても、転びかけたところに手を差し出し、気持ちがくじけた時にはそっと背中をさすってあげるような、今、出来ることで支えればいいということではないか。対して、このままでは寂れていく地域社会を維持できないと危機感を持ちながらも、既存のしがらみに絡めとられて動けない、漁師の片岡や中年男性たちの煮え切らなさは実にじれったい。その動きの鈍さ、現状ではまずいと思いながらも、暮らしを維持していかねばならない彼らの焦り。それらの矛盾は、今現実の社会を覆う閉塞感そのもののように見えるし、脚本は彼らのがんじがらめのしんどさを、今はじっと静かに見据えて描いている。2話を終えて、今のところは一難去って更に大きな一難といった具合で辛い展開が続くが、最初に書いたように、序盤の辛さは森下作品の大きな特徴である。中盤から終盤にかけて『その時』がくれば、まるで一気に咲きはじめる花のようにあらゆる登場人物が、そして序盤では到底好きになれそうになかった敵役までもが魅力的に変貌し、主人公が乗り越えてきた苦難一つ一つに意味があったのだと実感する。ドラマを見続ける楽しさが、そこには詰まっている。十年後の息子が語りかける優しいナレーションは、そこにたどり着くための地図なのだろう。まだリクライニングシートを倒してリラックスとはいかないけれど、物語は希望に向けて旅立った。揺れながらも力強く目的地を目指している。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら[文・構成/grape編集部]
2022年10月14日俳優の奈緒さんが主演を務める、テレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の第2話が、2022年10月12日に放送されます。漁師たちが獲った魚を、市場を通さず、直接料理店などに販売するシステムを考案し、後に国から『漁業6次産業化』として認定された『鮮魚ボックス事業』の生みの親、坪内知佳さんをモデルにした同ドラマ。当時、漁協を敵に回すも当然だったシステムは多くの困難に阻まれ、実現までの道のりは決して容易なものではありませんでした。『ファーストペンギン!』第1話でも、『お魚ボックス』をめぐり、主人公・岩崎和佳(奈緒)と漁協の組合長である杉浦(梅沢富美男)の対立が早くも描かれ、第2話で、和佳は仲居の仕事を辞めざるを得ない状況にまでおいこまれてしまいます。それだけではなく、和佳に追い打ちをかけるように、農林水産省の溝口静(松本若菜)から、「『おさかなボックス』事業の認定取り消しに向けた動きがある」と電話が。溝口いわく、申請書類に判をついた統括支店長、通称『統括さん』(伊沢弘)が、「和佳から脅迫され判をつかされた」と漁協に訴え出たのだといいます。『ファーストペンギン!』第2話あらすじ威勢よく啖呵を切ったものの、漁協だけでなく、漁師たちまで敵に回してしまい、孤立する岩崎和佳(奈緒)。それでもめげずに次の作戦を考え、漁師の片岡洋(堤真一)たちに、「お魚ボックス」の注文が取れたから魚を分けてほしいとお願いするのだが、漁協の組合長・杉浦久光(梅沢富美男)と約束したからと、魚を1匹も譲ってくれない。さらに杉浦の圧力は、和佳が勤めるホテルにまでおよび、和佳は仲居の仕事を辞めざるを得ない状況に。従業員寮も出て行かなければならなくなってしまう!そのうえ、農林水産省の溝口静(松本若菜)から、『おさかなボックス』事業の認定取り消しに向けた動きがあるとも告げられ、立て続けに襲いかかる苦難に心折れそうになる和佳だったが、東京にいる琴平祐介(渡辺大知)に背中を押され、"ある秘策”を思い付く!溝口に相談を持ちかけ、「『女』を使えないか?」という和佳だったが……果たしてその思いもよらぬ大胆な秘策とは!?[文・構成/grape編集部]
2022年10月12日Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。2022年10月スタートのテレビドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。誰の人生にも「ここで飛び込めばいいんだろうな」と水面をのぞき込む瞬間がある。でも、ここで飛ばなきゃ死ぬというような特殊な状況(病気の治療や理不尽な暴力から逃げる時など)で無いかぎり、大概の人は飛び込む前にそのまま振り返って静かに元の暮らしに戻っていく。大人になればなっただけ、何かを得ようとしたら何かを失う覚悟が必要だと分かる。失うものも見えすぎる。それでも一握りの人間は水面に飛び込むのだけれど、彼らを飛び込ませる最後の『一押し』は何だろう。お金、名誉、それとも正義。結局、魚のいる海どころか管理されたプールにすら飛び込めない人生を送りそうな私は、『ファーストペンギン!』(日本テレビ系水曜22時)を見ながらそんなことを考える。まるで火花が散るようなヒロイン・和佳(のどか)の啖呵(たんか)を、のけぞりながら聞いている。物語の始まりは現在からおよそ10年前。子連れのシングルマザー岩崎和佳(奈緒)が、とある中国地方の漁村にやってくる。住み込みでホテルの仲居をしながら、副業として事務系の雑用を請け負うつもりでいたところに、和佳は宴席での思い切りのよさと機転を見込まれて、漁船団『さんし船団丸』の社長である片岡洋(堤真一)から、「寂れていく浜の建て直しに何か事業を興せないか」と相談を持ちかけられる。アジとサバの区別すらつかない自分に「なぜそんなこと」をと不審に思いながらも、浜で食べた獲れたての魚の美味しさに商機を見た和佳は、片岡や部下の漁師達とぶつかり合いながらも、農林水産省が推進する六次産業化プロジェクトの認定を得る。和佳の奮闘に浜の建て直しの光明を見て喜ぶ『さんし船団丸』の面々だったが、それは漁協という既得権益の牙城との激しい戦いの始まりでもあった。実は、このドラマは実在の人物、土地、企業をベースにしている。脚本は、温かみのある丁寧なストーリーに定評のある森下佳子。NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(2014年)、大河ドラマ『おんな城主直虎』(2017年)、『義母と娘のブルース』(2018年TBS系)など、近年手堅いヒット作が続いており、とりわけ一風変わった史実や原作ものをドラマとして組み立てる手腕は随一である。今回、ビジネスの実話をどんなふうにエンターテインメントに組み立ててくれるのか期待が膨らむ。初回を見て痛感したのは、人物の描写や設定そのものが寂れた漁村だけではない、今のこの国の縮図だということだった。ヒロインの和佳は、我が子の為に未来によりよい社会を残したい。そのために矛盾や改めていかねばならない部分が見えているし、タフで行動力もある。しかし、若さと圧倒的な男社会の漁業で女性であるということ、そしてよそ者であるというハンデが彼女を阻む。和佳に浜の建て直しを依頼する片岡は、社会を支えるミドルとして地域社会を衰退させてしまった己の来し方を顧みて罪悪感に悩みつつ、年の分だけ絡みついたしがらみが改革の最初の一歩を阻む。結局、総論賛成各論反対の矛盾を体現してしまっている。『さんし船団丸』の若手漁師・永沢(鈴木伸之)は、和佳の奮闘には肯定的なようだ。しかしそれを言葉にして積極的に支援するまでにはまだ至らない。改革者を静かに見つめる若年層のマジョリティのような存在である。そして巨大な既得権益として、漁協の組合長である杉浦(梅沢富美男)が立ちはだかる。かつて生産者たちの心強い味方だった組織が、時代の経過とともに疲弊していると多くの人々が気づいているけれども、あまりにも社会に深く絡みついて、周囲も当事者たちも修繕することも断ち切ることもできなくなっている。ヒロインのジレンマもさながら、現状に強い問題意識を持ちながらも、しがらみで身動きが取れない『さんし船団丸』社長の片岡の描き方が興味深い。初回のラスト、組合長から漁協を通さない魚の直販に脅しをかけられたヒロインに、普通ここは味方して二人で『巨悪』に立ち向かうだろうと思いきや、片岡は組合長相手に尻尾を巻いて、和佳が掛けた『魚の直販』という梯子をあっさり外してしまうのである。このままではいけないとわかっているが、何から手をつけたらいいのか、義理や恩を損なわずに現状を変えていくにはどうしたらいいのか、下からは冷淡な目で見られ上からは押さえつけられて右往左往しているこの国のミドルの現状そのもののようだ。結果、和佳が悔し涙にまみれながら、まるで手負いの獣が暴れるような激しい啖呵を片岡と組合長に浴びせかけて、戦いの火ぶたが切って落とされる。和佳には、学生の頃に校則をめぐり正論を通そうとして、いざ教師と対峙するときには生徒は誰も味方をしてくれずに持論を撤回してしまった苦い過去があった。その傷は思い出に押し込められたように見えて、ずっと彼女の中で治らずに膿んでいた。その長く疼く痛みの人生を、そして長いものに巻かれたほうがいいような社会を、息子の世代に残していいものかという怒りと切迫が彼女を水に飛び込ませたのだと思う。勇気は、愛する誰かに誇れる自分でいたいという願いからやってくる。かくして最初のペンギンは水に飛び込んだ。後に誰か続くのか、ペンギンたちは天敵に食われずに突き進むのか。何せ森下脚本である。この先も上下左右に大揺れして一筋縄ではいかないだろう。ときめきと笑いと阿鼻叫喚の数か月が待っている。ドラマコラムの一覧はこちら[文・構成/grape編集部]かなTwitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。⇒ かなさんのコラムはこちら
2022年10月07日2022年10月5日、俳優の奈緒さんが主演を務める、新テレビドラマ『ファーストペンギン』(日本テレビ系)の第1話が放送されます。縁もゆかりもない、漁業の世界に飛び込んだシングルマザーと漁師たちの『奇跡の実話』をモデルにした『ファーストペンギン』。地元のホテルで仲居として働いていた主人公・岩崎和佳(奈緒)が、『浜の立て直し』を頼み込まれ、しがらみだらけの業界で革命を起こしていく様を描いています。『ファーストペンギン』第1話あらすじ人生崖っぷちのシングルマザー・岩崎和佳(奈緒)は、5才の一人息子・進(石塚陸翔)を連れて、寂れた港町・汐ヶ崎に移り住んできたばかり。地元のホテルで仲居として働いていたある日、漁師の片岡洋(堤真一)から「浜の立て直し」を頼み込まれる。片岡は、漁師たちの高齢化が進み、漁獲量も減りゆくばかりの港の窮状を憂い、かつての賑わいを取り戻したいと思う一方、これといった打開策も見いだせぬまま、ひそかに危機感を募らせていたのだった。アジとサバの違いもわからず、未知なる『漁業の世界』に飛び込むことに尻込みする和佳だったが、片岡に連れて行かれた漁港で振舞われた魚の美味しさに感動。半ば押し切られる形で、片岡の依頼を引き受けることになった。早速漁業について勉強を開始した和佳は、東京にいる相談相手・琴平祐介(渡辺大知)からアドバイスを受けながら、魚の直販ビジネス『お魚ボックス』のアイデアを思いつき、片岡たちに提案。しかし、『お魚ボックス』は、既存の流通の『中間業者』にあたる漁協や仲買を飛ばすことになるらしく、彼らに喧嘩を売るも同然な案だった。片岡たちから「漁協に逆らうなんてありえない」と猛反対を受け、渋々引き下がろうとする和佳だったが、内心は納得しきれていない様子で…。漁師たち自ら、全国のお客さんたちに新鮮な魚を直接届ける『お魚ボックス』の実現に向けて、孤軍奮闘し始めた和佳。漁業はド素人の彼女が、ジリ貧状態の港に嵐を巻き起こすことはできるのでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2022年10月04日奈緒主演、森下佳子が手掛けるオリジナル脚本ドラマ「ファーストペンギン!」の爽快感あふれるポスタービジュアルが公開された。本作は、奈緒さん演じる人生崖っぷちのシングルマザー・岩崎和佳と、堤真一演じるベテラン漁師・片岡洋が、凸凹バディとなり、漁業の世界で大革命を起こす、ウソみたいに爽快なホントの話。完成したビジュアルは、大きなタイを片手に笑顔がはじける和佳と、彼女に勢いよく肩を組まれ驚く片岡の凸凹バディ感が目を引く。また、奈緒さんと堤さんが手にしている魚は、和佳のモデルとなった坪内知佳が率いる漁船団「萩大島船団丸」から取り寄せた新鮮な天然魚。背景のイラストでは、子どもが描いたようなタッチの海の生き物が描かれており、子どもから大人まで幅広い世代が楽しめるドラマの世界観が表現されている。「ファーストペンギン!」は10月5日より毎週水曜日22時~日本テレビ系にて放送。(cinemacafe.net)
2022年09月21日8月19日、千葉真一さん(享年82、本名・前田禎穂)が亡くなって1年を迎えた。2日前の17日には、長女の真瀬樹里(47)が喪主を務める「偲ぶ会」が営まれるなど、今も多くの人々に愛されている。生前はアクションスターとして活躍し、日本だけでなく世界にも大きな影響を与えた。「千葉さんは、日本におけるアクション俳優の草分け的存在。海外にも進出し、空手の達人を描いた映画『激突!殺人拳』(’74年)はアメリカでも大ヒット。千葉さんが海外でSonny Chiba(サニー・チバ)と呼ばれるきっかけになりました。さらに、『ジャパンアクションクラブ(JAC)』を設立するなど後進の育成にも尽力し、日本アクション界の発展に貢献。千葉さんに影響を受けたというタランティーノ監督の『キル・ビル』(’03年)では、俳優として出演だけでなくアクション指導も務めました」(芸能関係者)そのような長年の功績が認められ、’20年12月には「令和2年度文化庁長官表彰」に輝いた。表彰式では、「海外の仲間と話し合っている。あと1つ2つやろうかなと。体も鍛えなおしている」とさらなる意欲を語っていた。しかし、新型コロナウイルスによる肺炎で迎えたあまりにも突然の死。そのため、死後には予期せぬ事態がーー。映画に情熱を注ぎ続けた千葉さんだが、“借金トラブル”の連続でもあった。「’90年に千葉さんが10億円の製作費をつぎ込んで監督を務めた映画は不入りで、2億円の負債が生じました。さらに’08年に開校した俳優養成学校をめぐる金銭トラブルは訴訟にまで発展。騒動の果てに3千万円もの借金を作るなど、どんどん膨らんでいきました。千葉さんは、総額で5億円近い借金を負うことになったのです。’73年に結婚した野際陽子さんも、ご自身の私財や土地などを売らざるをえないほど、千葉さんの借金に苦しんで、’94年に離婚しています。千葉さんが亡くなった当時、借金は数千万円台までに減っていると聞きましたが、関係者たちは『もっとあるんじゃないか』と心配していました」(映画製作会社関係者)実際に千葉さんが亡くなってから、“借金取り”たちが自宅に押しかけてきたという。当時、千葉さんの知人は本誌にこう証言していた。「千葉さんは交友関係が広く、また積極的に映画ビジネスに関わってきましたから、金銭関係の全容を把握している人がいない状況なんです」借金問題だけでなく、今年2月には「FRIDAY」によって“遺品トラブル”も報じられた。「記事では千葉さんの知人が、マネージャーら千葉さんの“取り巻き”たちが映画の衣装や写真などを自宅から無断で持ち去ったと証言していました。さらに千葉さんの実姉も、衣装などが持ち出されていることを認めていました。持ち出された遺品は、取り巻きたちが『形見分け』していたことがSNSの投稿で判明したといいます。千葉さんの財産を管理できる相続人は、樹里さんだけだそうですが……」(芸能関係者)さらに驚くべきは、千葉さんの自宅の鍵が千葉さんのマネージャー・A氏によって替えられていたという。A氏は「FRIDAY」の取材に、遺品を持ち出したことは否定。その上で、「千葉さんが亡くなった後に泥棒が入って、やっぱり遺品がなくなっているんですよ」と“遺品の持ち出しは泥棒の仕業”だと説明。そして、「何かを持っていかれているのですが、物が多くて何が盗まれたかはわからない。それで鍵を交換したんです。それからは大丈夫です」と話していた。しかし、「自宅の鍵を替えた途端、泥棒が入った。中に入れなくなったから窓を壊して入ってきた」と辻褄が合わない回答も。加えて、交換した新しい鍵を樹里には渡さない意思も示していたが……。昭和の大スターとして今もなお慕われ続ける千葉さんだが、死後は波乱が相次いだ。日刊スポーツによると、樹里は17日に開かれた「偲ぶ会」の最後でこう挨拶したという。「私が、父の長子として、残してくれた、たくさんのものを、責任を持って継がせていただいて、関係者、ファンの皆さまに父の作品を楽しんでいただき、ずっと父が心の中に生き続けてくれるように、責任を持って守っていきたい」一周忌での愛娘の決意を、千葉さんは天国から温かく見守っていることだろうーー。
2022年08月19日奈緒が“漁業の世界”に飛び込んだシングルマザーを演じる、実話のドラマ化「ファーストペンギン!」に、堤真一が漁船団を率いる昔気質の漁師役として出演することが決定。コメントが到着した。多くの敵が潜む海に、なかなか飛び込むことができない臆病な動物、ペンギン。勇気ある1羽が飛び込むと、仲間たちも次々と荒海へと向かうことができる。その「勇気ある1羽目」=「ファーストペンギン」のように、縁もゆかりもない“漁業の世界”に飛び込んだシングルマザーと、彼女と共に改革の荒波に漕ぎだした漁師たちの実話をモデルに、「JIN-仁-」「義母と娘のブルース」などの森下佳子のオリジナル脚本で紡ぐ本作。主人公・岩崎和佳役を演じる奈緒この度、漁船団「さんし船団丸」を率いる船団長・片岡洋(かたおかひろし)役に堤真一が決定。本作が日本テレビの水曜ドラマ枠初出演となる。堤さんが演じる片岡洋は、真っすぐで情に厚く、周囲から頼られる親分肌。しかし、「男とはこうあるべき」「漁師とはかくあるべき」という価値観にとらわれ、見栄っ張りな側面がある。都会から移り住んできた若きシングルマザー・岩崎和佳(奈緒さん)と出会い、“浜の立て直し”のオファーを持ち掛ける張本人。しがらみだらけの“漁業の世界”で、真っ向からタブーに切り込もうとする和佳とぶつかり合い、ケンカを繰り返しながらも、少しずつ絆を深め、共に新事業の立ち上げに挑む仲間に。和佳の前では、子どものようにスネたり、ヤキモチを焼いたり、癇癪を起こしたりと、何かと扱いづらい存在。だが、不思議とどこか憎めない、チャーミングな役どころとなる。堤真一「明るさやエネルギーをもらえる作品になる」「元々ドキュメンタリーや報道番組を通じて、ドラマのモデルとなった実話については知っていました」という堤さん。「脚本の森下さんとは一度ご一緒したい!と願っていましたので、今回実現して、とても嬉しいですし、先々の展開が今から本当に楽しみ」と期待を口にする。演じる片岡洋については、「頑固なところがあって、古い価値観からなかなか脱却できない、新しいことをしたいと言うわりには、全然動けない…そんな昔ながらの人物」と分析、奈緒さんら共演陣にも期待を寄せ、「メンバーが素晴らしい!奈緒さんとも話していたのですが、このメンバーで飲みに行ったら楽しいだろうなぁ…って。今の状況では、実現できないので残念ですが…。とにかく楽しい現場になると思います」と語る。「『ファーストペンギン!』というタイトルも好きですし、主人公の成長の記録を描いたドラマになると思います。彼女が何と戦い、周りの人がどう変化していくのか…そういった姿が見られるドラマです。明るさやエネルギーをもらえる作品になると思います」とアピールした。「奈緒さんが新鮮な感性を持って、経験値豊かな堤さんに向かっていく」一方、脚本家・森下さんは「大胆なくせに小心で、熱いくせにしょげやすく、惚れてるくせに暴言を吐き、頑固なくせに妙なとこは素直、夢はあるのに現実にがんじがらめ、片岡というこの漁師は矛盾だらけ、『矛盾』こそが彼のキャラクターといってもいい人物です」ときっぱり。とはいえ、「1人の大人として未来への責任を果たそうと彼なりに悪戦苦闘している。堤さんなら、この『矛盾』だらけの大人の男を人間くさく愛すべき人として表現してくださるに違いない!と、今からワクワクしております。奈緒さんが新鮮な感性を持って、経験値豊かな堤さんに向かっていく。その状況は、劇中の和佳と片岡の有様にそのままかぶるような気もします。そんなところも密かに楽しみにしております」と明かしている。新水曜ドラマ「ファーストペンギン!」は10月、毎週水曜22時~日本テレビ系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2022年08月16日日本を代表するチェリストにして、世界最高峰の音楽の殿堂サントリーホール館長という重責を担う堤剛が、今年80歳を迎える。この節目の年を記念して、堤剛80歳記念コンサート実行委員会(KAJIMOTO内)による、『堤剛 80歳記念スペシャルコンサート』が開催されることとなった(2022年8月31日:サントリーホール)。その内容は、1942年生まれの堤剛の傘寿を祝うべく、日本中のチェリストが一堂に会するという、極めてスペシャルなコンサートだ。プログラム前半は、堤がこれまでに大事にしてきた日本の作曲家たちの作品を並べ、後半は、植木昭雄、山崎伸子、笹沼樹、新倉瞳とのチェロ・アンサンブルが披露される。そしてラストは、向山佳絵子、長谷川陽子、山本祐ノ介の3人と共に、ハイドン「チェロ協奏曲第1番」の第1楽章を演奏するという豪華さだ。これはまさに、日本のチェロ界を俯瞰するかのような“一期一会のチェロ祭り”と言えそうだ。■公演概要8月31日(水)サントリーホール 大ホール堤剛80歳記念コンサート<プログラムと出演者>・ダヴィドフ:賛歌 ほか(指揮:山本祐ノ介、日本チェロ協会チェロ・オーケストラ)・武満徹:オリオン(海野幹雄 & 海野春絵)・細川俊夫:線 II(山澤慧)・三善晃:母と子のための音楽(鳥羽咲音 & 鳥羽泰子)・間宮芳生:チェロと尺八のための「KIO」(堤剛 & 坂田誠山)・ヴィラ=ロボス:ブラジル風バッハ第1番(山崎伸子、植木昭雄、笹沼樹、髙橋麻理子、西谷牧人、濱田遥、掘了介、山本裕康)・クレンゲル:賛歌 op.57(堤剛、山崎伸子、新倉瞳、植木昭雄、笹沼樹、髙橋麻理子、西谷牧人、濱田遥、掘了介、山本裕康、上村文乃、上森祥平)・ハイドン:チェロ協奏曲第1番 ハ長調 Hob.VIIb:1 第1楽章(堤剛、向山佳絵子、長谷川陽子、山本祐ノ介)■堤剛/Tsuyoshi Tsutsumi(チェロ)(C)鍋島徳恭名実ともに日本を代表するチェリスト。桐朋学園子供のための音楽教室、桐朋学園高校音楽科を通じ齋藤秀雄に師事。1961年インディアナ大学に留学し、ヤーノシュ・シュタルケルに師事。1963年ミュンヘン国際コンクールで第2位、ブダペストでのカザルス国際コンクールで第1位入賞。これまでに鳥井音楽賞(現サントリー音楽賞)、ウジェーヌ・イザイ・メダル(ベルギー)、芸術祭放送大賞、芸術祭優秀賞、レコードアカデミー賞、モービル音楽賞、N響有馬賞、日本藝術院賞、中島健蔵音楽賞、ウィーン市功労名誉金賞、毎日芸術賞(音楽部門)、文化庁創立五十周年記念表彰など多数受賞、表彰されている。2009年秋の紫綬褒章を受章。また同年、天皇陛下御在位二十年記念式典にて御前演奏を行った。2013年、文化功労者に選出。カナダ・西オンタリオ大学准教授、アメリカ・イリノイ大学教授、インディアナ大学教授を経て、現在桐朋学園大学特命教授(前学長2004~2013年)、韓国国立芸術大学客員教授。公益財団法人サントリー芸術財団代表理事、サントリーホール館長。日本芸術院会員。
2022年07月11日俳優の堤真一、モデルの蛯原友里、女優の森七菜が出演する、三井不動産商業マネジメント「三井ショッピングパークららぽーと」の新CM「出会いに、会いに。」2022年編が、29日より放送される。堤の撮影は、ららぽーとの“パーク感”、“多様性”を表現した壮大なセットの中で行われ、広い青空・緑あふれる空間で人々が思い思いにららぽーとを楽しんでいる様子が描かれている。また、蛯原は友人と館内でワークショップに参加したり、家族とアパレルショップでお買物を楽しむ様子を、森は友人とバーベキューをしたり、気持ちのよい青空のもとドッグランでくつろぐ様子などを表現している。なおCMの放送開始に合わせて、堤へのインタビューの様子を記録したスペシャルコンテンツが、ららぽーと公式Youtubeチャンネル限定で公開される。○■堤真一インタビュー――CM撮影時の感想を教えてください。今回初めてららぽーとの館内ではなくスタジオでの撮影でした。素敵なセットで、よりららぽーとのよさが表現されていると思います。――お買い物は即決派? 吟味派?僕はどちらかというと吟味派です。ネットでのお買い物も苦手なんですよね。ちゃんと物を見て、いいなと おもっても少し考えて一回妻と相談して買うか買わないか決めるタイプです。――夏になったら必ずすることは?僕は関西人なので、鱧の湯引きが出ると夏だなと思います。僕が東京に出てきた頃は鱧を食べる習慣がなかったみたいで。だけど、今はスーパーでも売っているので鱧を食べますね。
2022年06月28日堤真一、森田剛、伊藤蘭らが出演するCOCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12『「みんな我が子」-All My Sons-』東京公演が5月10日よりBunkamuraシアターコクーンで開幕。それに伴い、スタッフとキャストからのコメント、舞台写真が公開された。『セールスマンの死』(ピューリッツァー賞・トニー賞受賞)、『るつぼ』などで有名な、20世紀を代表するアメリカの劇作家アーサー・ミラーの代表作のひとつとされる戯曲が『みんな我が子』だ。1947年にアメリカ・ブロードウェイで初演され、第1回トニー賞を受賞、その後世界各国で上演、1948年と87年には映画化。近年では、2019年にイギリス・ロンドンで上演、同年ブロードウェイでのリバイバル公演は、第73回トニー賞の演劇リバイバル作品賞を受賞するなど、初演から70年以上の時を経ても色褪せることなく、世界中で上演され続けている。第二次世界大戦後の一見円満そうなとある家族の葛藤と崩壊が描かれ、悲劇的なラストに至るまでにこめられた胸に刺さる台詞の数々は、今もなお多くの観客の心を揺さぶるはずだ。シアターコクーンでの公演としては、2016年にDISCOVER WORLD THEATREシリーズ(以降DWT)の第1弾公演として上演した『るつぼ』以来のアーサー・ミラー作品となる。演出はリモートながらも高い完成度で上演した2020年のDWT vol.9『十二人の怒れる男』から2度目の登場となるリンゼイ・ポズナー。1991年に上演した『死と乙女』にてイギリス演劇の最高峰ローレンス・オリヴィエ賞作品賞を受賞し、多彩な現代劇作家作品の演出で評価を得ているポズナーが、2009年にイギリスで手掛けた『橋からの眺め』以来となるミラー作品をどのように手掛けるのかに期待だ。家族のためにただひたすらに生きる父ジョー・ケラーには堤真一。戦争から戻らない次男ラリーの無事を信じ、家族を愛する母ケイトには伊藤蘭。ケラー家の長男クリスには森田剛。ラリーの婚約者アンには西野七瀬。アンの兄ジョージには大東駿介。そして、ケラー家の隣人ドクター・ジムには山崎一と、日本屈指の俳優陣が本作に挑む。<リンゼイ・ポズナー(演出):コメント>私のプロセスは、まずかなり長い時間をかけて俳優の皆さんとひとつひとつの台詞について1行ずつ、ト書きも含めて心理的動機や社会・歴史的背景を話し合います。それからきめ細かく、何度も短いセクションを繰り返しながら立ち稽古をし、最終段階になったら通し稽古を行います。このような進め方が初めての方もいらっしゃったと思いますが、皆さんとてもオープンで私のやり方をすぐに理解し対応してくださり、クリエイティブで心がひとつになる関係を築くことができたと強く感じています。個人、そして社会全体に対する罪の意識と責任というテーマを扱っているアーサー・ミラーの素晴らしい戯曲を日本で演出できることは本当に名誉なことですし、学びの多い経験となりました。またこの戯曲は、家族の肖像と家族が抱える問題を見事に描いており、これは普遍的に理解されるものであると信じています。私たちのプロダクションが、ご覧になる観客の皆様の心を深く動かし、そして個人と社会における責任の本質について問い直すものになることを願っています。<ピーター・マッキントッシュ(美術 / 衣裳):コメント>来日することができなかった『十二人の怒れる男』(20年上演)を、コロナ禍の最中にもかかわらず上演できたこと、困難を乗り越えてやり遂げたことは、信じられないほど感動的でした。あの経験も、かけがえのないものだったと思います。今回の『みんな我が子』においても、創作過程の一部はリモートで行いましたが、来日できて非常に嬉しく思っています。もし来日が叶っていなかったら、成し遂げることができなかったことも出てきていたことと思います。リモートで行った作業を、来日後にやり直さざるを得なかった部分もありますが、皆さん果敢にチャレンジしてくださっているので、とても充実しています。日本のカンパニーの皆さんは本当に全力を尽くしてくださっていて、共に楽しい時間を過ごすことができています。全ての要素が極めて美しく仕上がり、素敵な作品を創り上げることができました。俳優の皆さんの演技には目を見張るものがあり、ご来場いただく皆様には素晴らしいひと時をお過ごしいただけると思います。どうぞお楽しみください。堤真一・森田剛・西野七瀬らキャストコメント全文「ひと色ではない思いを持ち帰っていただけたら」<堤真一・コメント>やればやるほど難しい台本だなと感じます。ジョーは学もなく単純な人間で、想像力もない。戦場は経験しておらず、戦争はあくまで“外”で行われていることで、人の命に対する感覚が薄れている。最初に台本を読んだ時は「なんて酷い父親だ!」と憤りを感じましたけど、役柄を理解すると、そのどこがいけないんだ?という彼の主張もわからないではないんです。ジョーを演じる上で、落ち着いた強い父親でありたいとは思うものの、声や身体の使い方も含めて、今までにない挑戦です。この強烈な自己主張に満ちた人間を、一見“正しく見える人間”にできるように創り上げたいと思います。それにしてもアーサー・ミラーはやっぱりすごいなと。いかに人間が完璧じゃないかということを突きつけられますね。人は時に自分を正当化しながら生きるものであり、直接・間接に人を巻き込む戦争がいかに馬鹿げたものかも痛感させられる。この父親も観る人によって意見はさまざまでしょうけど、ひと色ではない思いを持ち帰っていただけたらと思います。<森田剛・コメント>会話のスピード感、人物たちの思考がものすごい速さで動いているので、その言葉のキャッチボールはとても演劇的だなと思います。言葉と腹の中で思ってることが全然違う、そんな人がいっぱい出てくる話なので、観る人によって解釈も違ってきますよね。笑っている人の腹の中には絶対にその反対があるな、と思って見ちゃうけど(笑)、意外にそのまんまの笑顔の人だったり。また、怒りの感覚を相手に向けて発散するのと、自分に向けて発散するのでも、見え方がずいぶん違って来る。そういう意味では、クリスはどう見られるんだろうな、という楽しみもあります。稽古が苦しくて逃げ出したくもなりましたが、でも忘れちゃうんですよ。舞台ってそんなものかもしれない。いいことばかり残って嫌なことは忘れちゃう。クリスとして生き生きと、真っ直ぐに立つ自分を想像して、そこを信じてやるしかないなと思っています。<西野七瀬・コメント>海外の戯曲、海外の演出家さん、共演させていただく皆さんも初めての方が多く、初めての経験ばかりです。自分の幸せを実現するために、やむを得ずとはいえケラーを追い詰めるきっかけを作るのはアンです。台本を読む前までは、こんなに物語の鍵を握る役割があるとは想像していませんでした。どうしてこれほど贅沢で素晴らしいお話をいただけたのだろう?と思う一方で、難しい挑戦の方がやりがいがあるということは今までの経験上わかっていました。毎回葛藤しますが、安定の道には行きたくないタイプで、どうしても難しそうな方に興味を引かれてしまう。挑戦は大好きですね。実際はめちゃめちゃ弱音を吐いていますが(笑)、とても充実しています。生の声でちゃんと客席に届けられるのか、もっと細かくリンゼイさんのリクエストに応えたいのに全然できていないところなど、考えなければいけないことばかりで頭が一杯一杯ですが、挫けずにこの壁を乗り越えていきたいです。<大東駿介・コメント>リンゼイさんの演出は面白いです。丁寧に、丁寧に進めていくので、発見がすごく多いんです。こうしてとことん繊細に台本と向き合える時間をもらえたことは本当にありがたいし、演劇はこうして作られるんだ!という楽しさを実感できて、すごく嬉しいですね。この戯曲を最初に読んだ時、いち家族の出来事のなかに、その時代の痛みや悲しみ、そこから先に進もうとする人間の強さみたいなものをすべて見せていると思って、とんでもない重圧を心に感じたんです。その圧の強さをしっかりと舞台の上に表せられるようにしたいですね。ちゃんとその時代の風が、劇場に吹けばいいなと。今、本当に戦争の最中であるという現実、ニュースの映像に対して、どこまで僕らがリアリティを感じられるのか…といったことも考えずにはいられません。それでも僕たちは生きていく、そうした小さな、灯火みたいな命のエネルギーに、向き合える時間になればいいなと思っています。<山崎一・コメント>ミラー作品は「これでもか!」としつこいぐらいに打ちのめされるようなところが面白いと思える人と、そこが苦手な人と、二手に分かれる気がします。僕はこのヒリヒリする感覚が好きですね(笑)。それにやっぱり構成が上手いんですよ。サスペンスめいた部分もありつつ、でも全てが理詰めで成立しているわけじゃない。すごく曖昧な部分も残されている。おそらくケラー家っていい家族だと思うんです。でもひとつの嘘だけが重くのしかかっている。もちろんそれは許されないことだけれど、寛容な心を持って見るならば、その1点のみで友達関係を壊すことをしなかったんじゃないかな。加えて、戦場を経験しながらピュアな心を持ち続けているクリスの存在もジムの心を動かしたんじゃないか…と、勝手に解釈しています(笑)。ジムは知的で、ちょっと皮肉ったジョークも言い、周りが見える人物。ユーモアがありつつも視野が広く、やさしい眼差しを持っている、そんな風にできればいいなと思っています。奇しくも今、ウクライナで戦争が起きて、現実と作品がリンクしています。戦争で犠牲になるのは誰にとっても「我が子」なのにと思ってしまいますね。<伊藤蘭・コメント>繰り返し台本を読んでみると、登場人物一人一人の悩みや葛藤に改めて惹きつけられます。1日に凝縮された中で濃密すぎる出来事が起きていきますが、時に滑稽でもある人物たちが愛おしくなってくるんです。心理的サスペンスのような側面もありつつ、そんな風にそれぞれの人間らしさが浮き出てくるところが、このお芝居が長く愛されてきた理由ではないかなと思っています。強烈な個性の母親役は色々と経験してきましたが、ケイトはひときわアップダウンが激しくて、まるでジェットコースターみたい(笑)。精神的に不安定な人のように見えて、並外れてエネルギーが大きい人だと思います。彼女の判断や深謀は自分でも言う通り愚かかもしれませんが、最後まで揺るがない夫婦の結束、夫に対する愛情という一点は大切にしたいです。ケイトとしては子供たちに愛情を分け与える一面と、感情が沸騰して心の奥底が覗く部分と、メリハリをつけて表現できればと思います。■公演情報COCOON PRODUCTION 2022 / DISCOVER WORLD THEATRE vol.12『みんな我が子』 -All My Sons-作:アーサー・ミラー翻訳:広田敦郎演出:リンゼイ・ポズナー美術・衣裳:ピーター・マッキントッシュ出演:堤真一、森田剛、西野七瀬、大東駿介、栗田桃子、金子岳憲、穴田有里、山崎一、伊藤蘭ほか<東京公演>5月10日(火)~30日(月)全25回会場:Bunkamuraシアターコクーンチケット料金:S席11,000円A席9,000円コクーンシート5,500円(全席指定・税込)※コクーンシートは、特にご覧になりにくいお席です。ご了承の上、ご購入ください。※未就学児童の入場はご遠慮いただいております。<大阪公演>6月3日(金)~8日(水)全8回会場:森ノ宮ピロティホールチケット料金:11,500円(全席指定・税込)大阪公演のチケット公式先行販売中。受付日時:~5月11日(水)23:59受付URL: ※抽選での受付になります。※注意事項詳細は、受付ページをご確認ください。
2022年05月10日COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12『みんな我が子』-All My Sons-Bunkamuraシアターコクーンにて10日、初日を迎えた。同作は『セールスマンの死』(ピューリッツァー賞・トニー賞受賞)、『るつぼ』などで有名な、20世紀を代表するアメリカの劇作家アーサー・ミラーの代表作の1つとされる。第二次世界大戦後の特需景気に沸くアメリカ合衆国の地方都市を舞台に、一見円満そうなとある家族の葛藤と崩壊が描かれる。幸せをつかむためのとある選択が人生を狂わせ、家族を崩壊させる。アメリカの片田舎に暮らす家族と隣人、そして友人家族に起こるたった一日の物語となる。家族のためにただひたすらに生きる父ジョー・ケラー役の堤真一、戦争から戻らない次男ラリーの無事を信じ家族を愛する母ケイト役の伊藤蘭、ケラー家の長男クリス役の森田剛、ラリーの婚約者アン役の西野七瀬、アンの兄ジョージ役の大東駿介。そして、ケラー家の隣人ドクター・ジム役の山崎一が出演。文化や言葉の壁を乗り越えて、上演され続ける家族の物語が、いよいよ開幕する。東京公演はBunkamuraシアターコクーンにて5月10日~30日、大阪公演は森ノ宮ピロティホールにて6月3日~8日。○演出:リンゼイ・ポズナー コメント私のプロセスは、まずかなり長い時間をかけて俳優の皆さんとひとつひとつの台詞について1行ずつ、ト書きも含めて心理的動機や社会・歴史的背景を話し合います。それからきめ細かく、何度も短いセクションを繰り返しながら立ち稽古をし、最終段階になったら通し稽古を行います。このような進め方が初めての方もいらっしゃったと思いますが、皆さんとてもオープンで私のやり方をすぐに理解し対応してくださり、クリエイティブで心がひとつになる関係を築くことができたと強く感じています。個人、そして社会全体に対する罪の意識と責任というテーマを扱っているアーサー・ミラーの素晴らしい戯曲を日本で演出できることは本当に名誉なことですし、学びの多い経験となりました。またこの戯曲は、家族の肖像と家族が抱える問題を見事に描いており、これは普遍的に理解されるものであると信じています。私たちのプロダクションが、ご覧になる観客の皆様の心を深く動かし、そして個人と社会における責任の本質について問い直すものになることを願っています。○美術・衣裳: ピーター・マッキントッシュ コメント来日することができなかった『十二人の怒れる男』(20年上演)を、コロナ禍の最中にもかかわらず上演できたこと、困難を乗り越えてやり遂げたことは、信じられないほど感動的でした。あの経験も、かけがえのないものだったと思います。今回の『みんな我が子』においても、創作過程の一部はリモートで行いましたが、来日できて非常に嬉しく思っています。もし来日が叶っていなかったら、成し遂げることができなかったことも出てきていたことと思います。リモートで行った作業を、来日後にやり直さざるを得なかった部分もありますが、皆さん果敢にチャレンジしてくださっているので、とても充実しています。日本のカンパニーの皆さんは本当に全力を尽くしてくださっていて、共に楽しい時間を過ごすことができています。全ての要素が極めて美しく仕上がり、素敵な作品を創り上げることができました。俳優の皆さんの演技には目を見張るものがあり、ご来場いただく皆様には素晴らしいひと時をお過ごしいただけると思います。どうぞお楽しみください。○堤真一 コメントやればやるほど難しい台本だなと感じます。ジョーは学もなく単純な人間で、想像力もない。戦場は経験しておらず、戦争はあくまで“外”で行われていることで、人の命に対する感覚が薄れている。最初に台本を読んだ時は「なんて酷い父親だ!」と憤りを感じましたけど、役柄を理解すると、そのどこがいけないんだ?という彼の主張もわからないではないんです。ジョーを演じる上で、落ち着いた強い父親でありたいとは思うものの、声や身体の使い方も含めて、今までにない挑戦です。この強烈な自己主張に満ちた人間を、一見“正しく見える人間”にできるように創り上げたいと思います。それにしてもアーサー・ミラーはやっぱりすごいなと。いかに人間が完璧じゃないかということを突きつけられますね。人は時に自分を正当化しながら生きるものであり、直接・間接に人を巻き込む戦争がいかに馬鹿げたものかも痛感させられる。この父親も観る人によって意見はさまざまでしょうけど、ひと色ではない思いを持ち帰っていただけたらと思います。○森田剛 コメント会話のスピード感、人物たちの思考がものすごい速さで動いているので、その言葉のキャッチボールはとても演劇的だなと思います。言葉と腹の中で思ってることが全然違う、そんな人がいっぱい出てくる話なので、観る人によって解釈も違ってきますよね。笑っている人の腹の中には絶対にその反対があるな、と思って見ちゃうけど(笑)、意外にそのまんまの笑顔の人だったり。また、怒りの感覚を相手に向けて発散するのと、自分に向けて発散するのでも、見え方がずいぶん違って来る。そういう意味では、クリスはどう見られるんだろうな、という楽しみもあります。稽古が苦しくて逃げ出したくもなりましたが、でも忘れちゃうんですよ。舞台ってそんなものかもしれない。いいことばかり残って嫌なことは忘れちゃう。クリスとして生き生きと、真っ直ぐに立つ自分を想像して、そこを信じてやるしかないなと思っています。○西野七瀬 コメント海外の戯曲、海外の演出家さん、共演させていただく皆さんも初めての方が多く、初めての経験ばかりです。自分の幸せを実現するために、やむを得ずとはいえケラーを追い詰めるきっかけを作るのはアンです。台本を読む前までは、こんなに物語の鍵を握る役割があるとは想像していませんでした。どうしてこれほど贅沢で素晴らしいお話をいただけたのだろう? と思う一方で、難しい挑戦の方がやりがいがあるということは今までの経験上わかっていました。毎回葛藤しますが、安定の道には行きたくないタイプで、どうしても難しそうな方に興味を引かれてしまう。挑戦は大好きですね。実際はめちゃめちゃ弱音を吐いていますが(笑)、とても充実しています。生の声でちゃんと客席に届けられるのか、もっと細かくリンゼイさんのリクエストに応えたいのに全然できていないところなど、考えなければいけないことばかりで頭が一杯一杯ですが、挫けずにこの壁を乗り越えていきたいです。撮影:細野晋司
2022年05月10日