女の幸せとは何か?母になるということはどういうことか?男性の目線であれこれ勝手なことを考えても大層な答えなど出てこないことは承知しているが、画面の中の菅野美穂の姿を追いかけていると否応なくそんな考えを巡らせてしまう。ドラマ「働きマン」に『パーマネント野ばら』、『ジーン・ワルツ』、そして先日まで放送していたドラマ「結婚しない」然り。まもなく公開となる『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』では男女の役割が逆転した世に君臨する将軍・綱吉に扮したが、ここでも母として、娘として、国を統べる権力者として宿命と欲求の狭間で揺れる女の性(さが)を狂気すら覗かせながら見せつける。ごく普通の人生の中ではとうてい経験することのできない濃厚な女たちの人生を、役柄を通して生きるというのはどういうことなのか?この小さな体の内に彼女はどれほどの思い、感情、経験を積み重ねてきたのか?公開を前に話を聞いた。まずは綱吉という女性について。強さと弱さ、可憐さと妖しさを併せ持つこの女将軍を菅野さんは愛する娘を失った母親という側面から捉えたという。「最初はボーイズラブの話という印象を持ってたんですが(笑)、そういう描写もあるというだけで原作を読ませていただいたら壮大で本格的で『よしなが(ふみ)先生、天才だな!』と思いました。男女逆転で生まれるはずの難しい部分も男女の業が浮き彫りになることで(歴史の)本流に戻すという作りになっていて。綱吉は天真爛漫で支離滅裂だし、お父さん(桂昌院/西田敏行)との血の繋がりが濃くて、男性に対してすぐ興味を持つくせに薄情で…と、いろんな要素をいっぺんに持っている人。だからこそ危なっかしい魅力を持っていると感じました。その中で子を失った悲しみというのが一番印象に残ったので、それを軸にしようとは思いました」。だが「どこを見て私にオファーしたのかと思った(笑)」と語るように、自分から遠いと感じるところが多かったこの役柄とあって演じる上では「綱吉を理解しようとは思わなかった」とも。「親との関係や子を思う気持ちについて女性として共感できても、将軍家の一番上に立つということや大奥で全ての男が私に見てもらいたがってるという状況は想像してもピンと来ないですからね(笑)。理解しようとすれば背伸びが必要になるので。でも、その状況にいる人はそんなこと疑問にさえも思わないと思うんです。だから自分との違いを考えて演技するというよりはなるべく疑問を持たずに、目の前のシーンに集中していけば映画が完成したときに一つの“線”になるかな?という気持ちでした」。行列を従えて美男たちがひざまずく大奥へと続く御鈴廊下をきらびやかな打掛を羽織って練り歩く姿は、まさに権力と自らを一体化させた強く輝く女性。演じていてなかなか気持ちよいものだったのでは?一方で信頼する家臣の夫を寝取り、真夜中の廊下を白い寝間着姿でさまよい歩くさまは妖艶で何とも言えぬ迫力を放っている。「大奥の廊下を歩くのはきっと気持ちいいんだろうなと思ってたんですが、意外と楽しめない自分がいて『あれ?』っと思ってました(苦笑)。作りが大変で夜中の2時に始まって朝の10時にやっと完成という感じだったので、その日のシーンが全部撮りきれるか心配になって意外に委縮してビビってましたね(笑)。人生で絶対に起こらないことなのでいい経験でした。(夜中のシーンは)原作でも『お前は父に似ておるな』と言う姿は、静かだけど狂気を孕んでいる綱吉の象徴のような気がしました。家臣の夫を寝取って、それに飽きてその息子までって…ちょっとひどいですが(笑)、目の前の興味に素直になり過ぎているがゆえの狂気を感じました」。インタビューの最中、菅野さんの口からはたびたび「女の業」という言葉が発せられたが、この女将軍・綱吉の人生を通して菅野さんの胸の中に強く突き刺さったのは、堺雅人演じる右衛門佐との間の「プラトニックな愛」だった。「人生で経験するであろうひと通りのことを経験した上での最後のプラトニックと言いますか。ほかの男たちとは世継ぎ目当ての恋愛だったけど、右衛門佐とはそこが違って…でも互いの立場もあって言い出せなくて。将軍という一つしかない席に座って何でも思い通りになるはずの彼女も手の届くものでは満たされずに、何を本当は欲しがっているのか分かってなかったと思うんです。でも、やっと右衛門佐と心を通じ合せたときに『(本当に欲しかったのは)心から添い遂げられる人だったんだ』と分かった。でも、プラトニックな愛が一番カロリーを使うと思うんですよ。それを人生が下り坂に入ってから分かるというのは哀しいかもしれないけど、ハチャメチャに生きた綱吉だからこそ美しいなと思えました。幸せかどうかは…どう取るかによりますが(笑)、それでも2人の“夕暮れの恋”は美しいと思います」。相手役の堺さんとは初共演だったが、現場での堺さんの姿から受け取った刺激や自分自身を顧みて感じたことも多かったよう。「堺さんはご自分で研究して役作りをなさってて、監督に自分から提案されたりするんです。研究が進み過ぎて鎌倉時代の小説とか読んでましたね(笑)。私が見て思ったのは、堺さんは学者タイプというか、論文をまとめるかのように研究していく役者さんなんですね。私はスポーツ選手のようなタイプで、監督がコーチなんです。言われたことをやるという感じで言われたことに疑いを持たずにやってるんですね。監督は実際にモニターを見て『こうした方がいい』と言ってくださるので、自分の感覚や内側の目で『ん?』と疑問に思っても監督の目の方が正しいことが多いんですよ」。先述の“プラトニックな愛”など作品を通じて感じたことは少し時間を置いた後で自身の内側にジワジワと染み込んでくることが多いとか。菅野さんはそれを「あと役作り(笑)」と表現する。「スイッチを押すようにカチッとではなく、ちょっとずつちょっとずつ役柄に影響された上でのいまの自分なんだろうなと思ってます。だから5年後の40代になってからの方が綱吉の気持ちをよく分かってるかもしれないですね。『ジーン・ワルツ』のこともいまになって思い出すんですよ。あのときも30代だったし十分に身近ではあったんですが、少し年を重ねたいまになってドラマのこともあったりして余計に思い出します。そういう意味では完全に自分のためだけの“あと役作り”ですね(笑)」。「自分のためだけ」と言いつつも、それをしっかりと現在の仕事に反映させてしまうところが彼女の名女優たる所以である。今回、宿命と葛藤の果てに辿り着いた真実の愛の感情が数年後にどのような化学変化を彼女にもたらすのか楽しみだ。(photo / text:Naoki Kurozu)
2012年12月21日女優の吉永小百合が12月18日(火)、都内のホテルで開かれた「第37回報知映画賞」の表彰式に出席。『北のカナリアたち』での熱演が評価された吉永さんは、28年ぶりに同主演女優賞を獲得したが「みなさんから良い作品だという声をたくさんいただき、手応えもあった。もしかしたら、作品賞かなと期待していたので、私ひとりでいいのか…という思いがあります」と恐縮した様子。それでも『北のカナリアたち』、『ALWAYS 三丁目の夕日’64』の2作品で助演男優賞を受賞した森山未來、お祝いに駆けつけた共演者の満島ひかり、撮影を手がけた木村大作氏とステージに居並び、『北のカナリアたち』がこの日の“主役”となった。「今年は決選投票で、僅差だったと伺っています」(吉永さん)という通り、大接戦となった作品賞を制したのは、内田けんじ監督の『鍵泥棒のメソッド』。内田監督の受賞を祝おうと、堺雅人、広末涼子、香川照之という豪華キャスト陣が駆けつけ表彰式を彩った。「終始ワハハと笑いながら、楽しく平和に撮影した。だから、逆にインタビューで答えることがなくて、インタビュアーさんを困らせちゃったほど」(堺さん)、「素っ裸のまま、銭湯ですっ転ぶ(笑)。そんなたった1秒のシーンを、丸一日かけて撮影したのが昨日のよう」(香川さん)。ちなみに、広末さんは体調不良で声が出ず、挨拶こそなかったが、その分男優2人が丁々発止のやりとりで盛り上げ役を買って出るなどチームワークは相変わらず。内田監督も「この映画は、とにかくキャストが良かった」と喜びの笑顔を見せていた。また、高倉健が約6年ぶりの出演作『あなたへ』で、第2回(1977年)以来の主演男優賞を受賞した。スケジュールの都合で表彰式は欠席となったが、「今回の受賞を励みに、これからも精進していきたい」とメッセージを寄せ、さらなる飛躍を誓うと、会場からは大きな拍手が沸き起こった。高倉さんの代理として、同作がなんと20本目のタッグとなる盟友・降旗康男監督が登壇し、「健さんを鉄に例えるのも何ですが(笑)、『鉄は熱いうちに打て』という言葉もあるように、とにかく早く次の作品を撮りたい」と次なる21本目に期待感。「ぜひ面白い企画で、健さんを誘い出してくれれば、友人として嬉しい」と映画関係者が集う会場でアピールしていた。<「第37回報知映画賞」受賞結果一覧>作品賞・邦画部門:『鍵泥棒のメソッド』(内田けんじ監督)作品賞・海外部門:『アルゴ』(ベン・アフレック監督)主演男優賞:高倉健(「『あなたへ』)主演女優賞:吉永小百合(『北のカナリアたち』)助演男優賞:森山未來(『ALWAYS 三丁目の夕日’64』『北のカナリアたち』)助演女優賞:安藤サクラ(『愛と誠』『その夜の侍』)監督賞:吉田大八監督(『桐島、部活やめるってよ』)新人賞:満島真之介(『11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち』)新人賞:能年玲奈(『カラスの親指』)■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会あなたへ 2012年8月25日より全国東宝系にて公開© 2012「あなたへ」製作委員会ALWAYS三丁目の夕日‘64 2012年1月21日より全国東宝系にて公開© 2012 「ALWAYS三丁目の夕日‘64」製作委員会 北のカナリアたち 2012年11月3日より全国にて公開© 2012『北のカナリアたち』製作委員会愛と誠 2012年6月16日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「愛と誠」製作委員会その夜の侍 2012年11月17日より全国にて公開© 2012「その夜の侍」製作委員会桐島、部活やめるってよ 2012年8月11日より新宿バルト9ほか全国にて公開© 2012「桐島」映画部©朝井リョウ/集英社11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち 2012年6月2日より全国にて公開カラスの親指 2012年11月23日より全国にて公開© 道尾秀介・講談社/2012「カラスの親指」フィルムパートナーズアルゴ 2012年10月26日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
2012年12月18日映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』のプレミア試写会が12月17日(月)に都内で開催。主演の堺雅人と菅野美穂を始め、尾野真千子、柄本佑、要潤、桐山漣、郭智博、永江祐貴、三浦貴大、宮藤官九郎、西田敏行に金子文紀監督の総勢12名が和装姿で艶やかに舞台挨拶に登壇した。よしながふみの人気漫画を原作に先日、最終回を迎えた連続ドラマ「大奥 ~誕生~[有功・家光篇]」の30年後の元禄の世を舞台にした本作。謎の奇病の蔓延で男性の人口が激減し、男女の役割が逆転した日本の権力の頂点に立つ女将軍・綱吉と公家出身ながら大奥の総取締役まで上り詰めた右衛門佐の究極の愛を描き出す。『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』は12月23日(土)より公開。■関連作品:大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇] 2012年12月22日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012男女逆転『大奥[右衛門佐・綱吉編]』製作委員会
2012年12月17日映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』のプレミア試写会が12月17日(月)に都内で開催され、主演の堺雅人と菅野美穂を始め、尾野真千子、柄本佑、要潤、桐山漣、郭智博、永江祐貴、三浦貴大、宮藤官九郎、西田敏行に金子文紀監督の総勢12名が和装で舞台挨拶に登壇した。よしながふみの人気漫画を原作に先日、最終回を迎えた連続ドラマ「大奥 ~誕生~[有功・家光篇]」の30年後の元禄の世を舞台にした本作。謎の奇病の蔓延で男性の人口が激減し、男女の役割が逆転した日本の権力の頂点に立つ女将軍・綱吉と公家出身ながら大奥の総取締役まで上り詰めた右衛門佐の究極の愛を描き出す。登壇陣は会場中央にせり出す形で設置されたレッドカーペットを歩き、2階席まで埋め尽くした4千人の観客の大歓声を浴びた。堺さんはドラマ版では3代将軍・家光の側室で慈愛に満ちた有功(ありこと)に扮したが、本作で演じた右衛門佐は正反対の権力への野心に満ちた謀略の男。「自分自身はあまり野心がないので、ありったけの野心を振り絞って、野心MAXでやらせていただきました!」と胸を張る。菅野さんは、魔性を感じさせたかと思えば天真爛漫なかわいらしい部分も持ち、将軍としての勇ましい一面も持つなど多面的な綱吉について「壇蜜さんみたいな役です(笑)」と説明。演じている最中も、そして映画完成後のインタビューなどでも綱吉を簡潔に説明する適切な表現がなかなか浮かばなかったそうで「今日、やっと分かりました!壇蜜さんです!」と嬉しそうに語り笑いを誘っていた。西田さんは壇蜜さんを知らなかったようで、「どういう方ですか?」と不思議そうに質問。さらに要さんが「僕の役は壇蜜さんとは真逆で…」と語るに至って、堺さんは「さっきから壇蜜さんの話しかしてないじゃないですか!」とキレ気味に抗議し会場は再び笑いに包まれた。宮藤さんは綱吉の正室を演じたが「西田さんは女性との絡みがあってエロい感じだったのに僕はそういうのがなかった…」と残念そうにふり返る。その西田さんは「僕の役者のキャリアの中で数少ない濡れ場がありました」と満面の笑み。「四十数年、役者やってきてこれまで3回くらいしかなかった。それを今回、尾野さんとやらせていただきまして」と嬉しそうに報告すると客席からは拍手が沸き起こった。さらに西田さんは三浦さんを見やり「僕は三浦さんが生まれた日にちょうどお父さんの三浦友和さんと仕事でご一緒してたんです。『今日、生まれるかもしれないんです』と仰っていたのを覚えています」と20年以上前のエピソードを明かすなど、劇中のみならず壇上でも千両役者ぶりを発揮し舞台挨拶を盛り上げた。金子監督はこの豪華俳優陣について「みんな予想を裏切ってくれる」と称賛。特に西田さんのアドリブについて「台本のト書きに『怒ってる』とあるのに、いきなりこのシーンについて『泣きたい』と仰って、みんな『えー?』っとなったんですが、素晴らしかった」とベテラン俳優の想像を超える演技に賛辞を惜しまない。堺さんも「そのシーンが西田さんとの初めてのシーンでしたが、いま思い出しても素晴らしかったです」としみじみと語った。最後に再びマイクを握った堺さんは、本作について「大きな物語ですが、そこに残るのはひとりの人間の寂しさや愛、一組の人間の結びつきだったり、人肌の温かさがメッセージとしてあると思います」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』は12月23日(土)より公開。■関連作品:大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇] 2012年12月22日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012男女逆転『大奥[右衛門佐・綱吉編]』製作委員会
2012年12月17日12月13日(木)~16日(日)の日程で開催された第55回アジア太平洋映画祭にて、日本、韓国、中国を始めとするアジア23か国が集まった作品の中から、『鍵泥棒のメソッド』が3部門にノミネートされ、主演男優賞にノミネートされた主演の堺雅人、脚本賞にノミネートされた内田けんじ監督が現地入りし、レッドカーペットに登場。詰めかけたファンたちに大歓声で迎えられた。ある日、銭湯で転倒し記憶を失った伝説の殺し屋・コンドウと、売れない貧乏役者・桜井、2人の男の人生が入れ替わるところから始まる予想不可能なストーリーが絶妙な笑いを生み出す本作。映画祭の会場となったマカオ最大規模のホテル・ヴェネチアンの前に敷かれたレッドカーペットに堺さんが現れると、その場は黄色い歓声に包まれ、その人気ぶりは名前を書いた垂れ幕を掲げるファンも現れるほど!授賞式では各国の俳優たちを代表して堺さんが主演女優賞のプレゼンターも務め、「マカオを訪れるのは初めてですが、西洋と東洋、古いものと新しいエネルギーが合わさった素敵な町だと思いました。この地にアジアを代表する映画人のみなさまと一緒に立てることを心から光栄に思います」と挨拶し喝采を浴びた。惜しくも受賞は逃したものの、香港、台湾、中国ほか、各国のマスコミも大勢詰めかけた本映画祭にて、堺さん、内田監督共に改めてその存在感をアジアに知らしめることとなった。『鍵泥棒のメソッド』は全国にて公開中。■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
2012年12月17日堺雅人、香川照之、広末涼子の豪華キャストで贈る、現在公開中の映画『鍵泥棒のメソッド』。今月13日~16(現地時間)の期間で開催される第55回「アジア太平洋映画祭」にて、日本、韓国、中国を始めとするアジア23か国から集まった数多ある作品の中で、なんと3部門にノミネートされたことが明らかとなった。ある日、銭湯で転倒し記憶を失った伝説の殺し屋・コンドウと、ひとりの売れない貧乏役者・桜井、2人の男の人生が入れ替わるところから始まる予想不可能なストーリーが絶妙な笑いを生み出す本作。本作がノミネートされた「アジア太平洋映画祭」は、1954年に創設された世界で最も古い国際的な映画祭のうちの1つであり、アジア映画製作連盟が主催する由緒ある映画祭だ。そして今回、主演男優賞で主人公・桜井を演じた堺さん、助演男優賞に香川さん、脚本賞には内田けんじ監督と本作の男衆が揃って主要3部門にノミネートを果たした。堺さんがノミネートされた主演男優賞部門には、『王になった男』のイ・ビョンホンのほかアジアのスターたち計6名で熾烈を極める激戦区、さらに香川がノミネートされた助演男優賞部門は、『チェイサー』や『哀しき獣』の韓国の実力派俳優ハ・ジョンウほか5名、脚本賞部門の内田監督はアジア圏の脚本家たち5名を相手に、その技巧が問われることとなりそうだ。「アジア太平洋映画祭」の授賞式は12月15日(現地時間)にて発表。また、前日14日(現地時間)のオープニング・レッドカーペットには、世界的スターのジャッキー・チェンを始め、イ・ビョンホンや「インファナル・アフェア」のエリック・ツァンなどの錚々たるメンバーの参加も決定している。『鍵泥棒のメソッド』は全国にて公開中。■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
2012年12月06日来年3月公開の堺雅人主演映画『ひまわりと子犬の7日間』の予告編映像がこのほど公開され、小さな命を守るために奔走する主人公を演じる堺の新たな一面が紹介されている。『ひまわりと子犬の7日間』予告動画本作の基になったのは、2007年に宮崎県の動物管理所で起こり、テレビ東京『ポチたま』や日本テレビ『ザ・世界仰天ニュース』でも取り上げられ話題となった実話だ。映画は、引き取り手がなく保育所に収容された犬の母子の命を救おうとする保健所職員の神崎(堺)と、周囲の人々の姿を描く。このほど公開された予告編は、神埼が山に捨てられている犬の母子と出会う場面から始まる。保健所に収容された動物に残された命の期限は7日間で、それまでに引き取り手が見つからなければ、母子は処分されてしまう。予告編は、神崎が周囲の人々を巻き込みながら引き取り手を捜し“小さな命”を未来へとつなごうと懸命に行動する姿が描かれる。主演の堺は、シーンを支配するほどの存在感と、高い演技力でファンから信頼を集めている俳優だが、本作では言語が通じない犬を相手に奮闘し、惜しみない愛情を注ぎながら“動物の処分”という厳しい現実に立ち向かう主人公を熱演する。また、獣医役の中谷美紀や、でんでん、吉行和子、夏八木勲ら共演者も演技派が顔揃えており、本作では堺の新たな一面が見られそうだ。『ひまわりと子犬の7日間』2013年3月16日(土)全国公開
2012年11月21日公開中の堺雅人、山田孝之共演の映画『その夜の侍』。本作を鑑賞した俳優の向井理や女優の松雪泰子をはじめ、各界の著名人、ライターから絶賛のコメントが届いている。その他の写真本作は、劇団「THE SHAMPOO HAT」を率いる赤堀雅秋氏が、自ら作・演出・主演を務めた同名舞台を改稿し、監督を務めた作品。ひき逃げ事件で妻を失った思い出から抜け出せず、犯人への復讐を計画することで自分を保っている主人公・健一(堺)と、ひき逃げ犯の木島(山田)、そして彼らを取り巻く周囲の人々が抱える孤独や葛藤を描いた人間ドラマ。試写会では鑑賞後、「すぐに言葉にできない」との声が多く、堺、山田の魂のぶつかり合う演技や、新井浩文、綾野剛、田口トモロヲ、谷村美月、安藤サクラなど脇をかためるキャストに、「とにかく凄かった」と感想が寄せられているようだ。本作は復讐劇という導入から、人との繋がりを問いかけ人間の本質に迫った人間ドラマであるが、松雪は、「観客の想像力も自ずとひろがっていく作品。登場人物達が哀しく、無様であり、滑稽で愛おしく人間的」と語っており、向井も、「荒んでいく人間たちとその様相を淡々と、そしてリアルに切り取っていく。かなり挑戦的な作品に衝撃を受けました」と絶賛している。また、「匂い立つ、汗まみれの人間讃歌!」(演出家・長塚圭史)や、「作家、赤堀雅秋氏の作品には必ずといっていいくらい、ニオイが立ち込める」(女優・鈴木砂羽)と、スクリーンから放たれる独特の“匂い”についてのコメントも。そのほか各界著名人、ライターから寄せられたコメントや、一般試写での感想も本作の公式サイトにて紹介されている。本作は、モントリオール映画祭やロンドン映画祭に出品した際、その演出力が高く評価されただけあり、海外でも日本でも絶賛の声が多く上がっているようだ。『その夜の侍』公開中
2012年11月20日堺雅人と山田孝之の初共演が実現した『その夜の侍』が17日、全国で封切られ、堺、山田をはじめ、新井浩文、綾野剛、谷村美月、メガホンを執った赤堀雅秋監督が東京・有楽町スバル座で初日舞台あいさつを行った。堺が演じる中年男が、山田扮するひき逃げ犯に復しゅうするヘビーな内容で「撮影が大変で覚えていない」(堺)、「そうですね」(山田)と撮影の過酷さを垣間見せていた。その他の写真劇団「THE SHAMPOO HAT」全作品の作・演出・出演を担当する赤堀監督が、上演作を自ら映画化。愛する妻をひき逃げ事件で奪われた工場経営者・中村(堺)が、復讐を果たそうと出所したひき逃げ犯・木島(山田)を追い詰める姿を通して、現代人が抱える孤独と狂気を描く。国内での公開を前に、第36回モントリオール映画祭、第56回ロンドン映画祭に出品された。堺は以前から「THE SHAMPOO HAT」のファンだといい、「私自身は15年ほど前、劇団に所属していたが、劇団員としての夢はついえた人間。この物語がフィルムに焼き付けられたことで夢が実現し、本当に誇らしい気持ち」と感無量の面持ち。すべてを失い、復讐に燃えるという役柄に「終始トランス状態というか、コントロールできないくらい、かき回された。試写で見ても自分がよくわからない顔をしている」と振り返った。かたや山田も「いろんなところで爆発が起こり、刺激を受ける作品。感情がガタガタにされた」とアピール。「食べるのが怖い地獄鍋のような作品。皆さんにおすそ分けするのは胸が痛みます」(綾野)、「こういう映画が好きという人が増えたら嬉しい」(谷村)と共演陣も本作が放つパワーに圧倒されていた。本作が監督デビュー作となった赤堀監督は、新人監督に与えられる「新藤兼人賞」の金賞を受賞したばかりで「このタイミングで出来過ぎですね。もらえるものはもらいますが、すいませんという気持ちも」と恐縮しきり。なお同賞銀賞は『ヘルタースケルター』の蜷川実花監督が受賞。新井と綾野は『その夜の侍』と『ヘルタースケルター』に出演しており、「両方の作品に参加しているうちらの方がよっぽどすごい」(新井)と自画自賛していた。『その夜の侍』公開中
2012年11月19日映画『その夜の侍』が11月17日(土)に公開を迎え、堺雅人、山田孝之、新井浩文、綾野剛、谷村美月、赤堀雅秋監督が都内劇場で舞台挨拶を行なった。赤堀監督が主催する「THE SHAMPOO HAT」が上演した芝居を監督自ら映画化した本作。妻をひき逃げで殺されて以来、犯人への復讐だけを胸に生きてきた男と刑務所から出所後も反省することなく生きる犯人、そして彼らに翻弄される周囲の人々の姿を描き出す。堺さんは「個人的なことですが」と前置きし、「僕は15年ほど前に劇団をやっていて、残念ながら劇団員としての僕の夢はダメだったんですが、下北沢の小さな劇場で始まったこの作品がこうしてみなさんに見ていただけるようになり、15年前の夢が叶ったような誇らしい気持ちです」と感慨深げに語った。山田さんは暴力的で残虐な木島を演じたが、劇中とは打って変わって「どうも山田です!」と軽い口調で挨拶。「木島よりはまともで普通です。安心してください」と笑いを誘っていた。決して明るく楽しい物語ではないだけに、綾野さんは「地獄鍋のようなこの作品をおすそ分けをすると思うと胸が痛みます」と複雑そうな表情。谷村さんは「こういう映画が好きという人が増えたら嬉しいです」と笑顔で送り出した。赤堀監督にとっては本作が監督デビュー作だが、新人監督に与えられる「新藤兼人賞」の金賞受賞が発表されたばかり。なぜか「すいません」を連発しつつ、赤堀監督は「出来過ぎです。スタッフやキャストのみなさんのおかげです」と頭を下げた。ちなみに同賞の銀賞は蜷川実花監督の『ヘルタースケルター』が受賞しており、新井さんは「その両方に出ているウチと綾野剛くんの方がよっぽどすごいと思います(笑)」と語り喝采を浴びていた。堺さんと山田さんは意外にも本作が初共演だが、印象について聞かれた堺さんは「撮影が大変で覚えていない」と苦笑い。山田さんも「そうです」とうなづき、撮影の過酷さを伺わせた。綾野さんは「孝之に顔をはたかれるシーンがありますが、あそこで僕は一瞬、本当に落ちてます」と告白。新井さんは、堺さんと山田さんを中心とした豪雨の中での渾身のクライマックスシーンの撮影翌日のファミレスでのシーンが最終日だったそうだが「スタッフもみんな気力ゼロでした。最後はひどい現場でしたね」と暴露し客席は笑いに包まれた。『その夜の侍』は全国にて公開中。■関連作品:その夜の侍 2012年11月17日より全国にて公開© 2012「その夜の侍」製作委員会
2012年11月18日のんびり&まったり過ごせるお正月休みは、数々の大作や名作が公開される映画のゴールデンシーズン。年末年始にかけて『007』シリーズやアニメ『ONE PIECE』の最新作、初詣ならぬ初感動必至のドキュメンタリーなど話題作が続々と上映される。そこで今回は「12月公開のお正月映画の中で最も見たい作品」について女性472名にアンケートをとった。>>男性編も見るQ.12月公開のお正月映画の中で最も見たい作品は?(単一回答)1位『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』19.7%2位『レ・ミゼラブル』13.6%3位『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』13.3%4位『ONE PIECE FILM Z』9.3%5位『今日、恋をはじめます』8.7%6位『007 スカイフォール』7.8%7位『映画 妖怪人間ベム』5.9%8位『マリー・アントワネットに別れをつげて』4.0%8位『恋愛だけじゃダメかしら?』4.0%10位 『ホビット 思いがけない冒険』3.4%1位は絵本作家である佐野洋子の「最後の日々」を記録した『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』。「絵本を読んだことがあり、興味がある」(27歳/情報・IT/クリエイティブ職)というコメントとともに、ガンを患い、余命を宣告された「佐野さんの生きざまに興味がある」(32歳/不動産/事務系専門職)という声が多数。刊行から35周年、累計部数180万部を突破した名作は、読んだことはなくとも名前は知っている人は多いはず。「有名な絵本だから」(24歳/電機/営業職)と、若い世代の関心も高い。2位は人気ミュージカルの映画化作品『レ・ミゼラブル』。「原作が好き」(34歳/情報・IT/技術職)、「ミュージカルを見て面白かったので」(48歳/小売店/事務系専門職)のほか「キャストもいいし、予告編もよかったのでかなり期待しています」(23歳/アパレル・繊維/事務系専門職)といった意見が寄せられた。この作品は6,000万人超の観客を動員したミュージカルの最高峰であり、見てがっかりする「はずれ」映画の可能性は低いと言えるかもしれない。3位は、よしながふみ原作の『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』。現在、テレビドラマ『大奥~誕生[有功・家光篇]』が放送中であり、「ドラマを見ていて面白いと思うから」(28歳/商社・卸/秘書・アシスタント職)などのコメントが寄せられた。ドラマにも映画にも出演している「堺雅人が好き」(29歳/学校・教育関連/事務系専門職)というファンの声も。4位は女子人気も高いマンガ『ONE PIECE』の最新劇場版『ONE PIECE FILM Z』。「ワンピ映画は必ず感動できる!」(25歳/金融・証券/事務系専門職)と作品のクオリティを信頼する声も多かった。5位は人気コミックの実写映画『今日、恋をはじめます』。「少女漫画のドキドキ感をどこまで表現できるか気になる」(25歳/通信/秘書・アシスタント職)と実写化に期待を寄せる声が集まっていた。■総評アクションや大作作品が人気だった男性編と大きく異なり、感動や恋愛系の作品が上位を占めた女性編。1位の『ドキュメンタリー映画 100万回生きたねこ』は作品や作者のファンにはもちろん、「愛」を大切に思うすべての人に見てほしい作品だ。「人間は他人を、この世界を愛するために生きている」という佐野洋子の言葉が心に残っている人も多いだろう。2位の『レ・ミゼラブル』も、前評判の高さや豪華キャスト&スタッフから考えて、見て損はしない作品と言えそう。愛について真剣に考えたいカップルにもオススメしたい。人気マンガが原作の3~5位は、原作ファンならぜひチェックしたいところだが、中でも4位の『ONE PIECE FILM Z』は尾田栄一郎が総合プロデュースを務めているため、原作の世界観を崩さずに体験できるのは確実。3位、5位はアニメではなく実写化ということで、どこまで原作ファンの納得いくものになるかも注目したい。特に、3位の『大奥 永遠 右衛門佐・綱吉篇』は演技派の菅野美穂と堺雅人が出演するということで、期待大。(文・塩澤真樹/C-side)調査時期:2012年10月19日~11月2日調査対象:マイナビ ニュース会員調査数:女性472名調査方法:インターネットログイン式アンケート■関連リンク【女性編】『新しい靴を買わなくちゃ』は何位? -10月公開映画で最も期待度の高い作品ランキング【女性編】「この続編は早く見たい!」4~6月公開映画ランキング【女性編】今年の注目株は誰だ!?「NHK紅白歌合戦」に初出場しそうな歌手・グループランキング完全版(画像などあり)を見る
2012年11月18日人気劇団“THE SHAMPOO HAT”の傑作戯曲を映画化した『その夜の侍』で、堺雅人と山田孝之が初共演を果たした。お互いを「いろいろな顔を持っている人」(堺)、「本当の顔が分からない人」(山田)という印象を抱いた撮影を回想する演技派同士が、演じる役柄を通じてむき出しの感情をぶつけ合い、人間の本質をつまびらかにする重厚なドラマを作り上げた。その他の写真「『その夜の侍』はカオスです(笑)」と堺が評する本作は、妻をひき逃げ事故で失い、復讐を誓う中村(堺)と、出所した犯人の木島(山田)の因縁関係を主軸に、孤独な男たちを取り巻く人々の内情や葛藤までも炙り出す。ストーリーこそシンプルだが、人間の心の奥底まで立ち入った濃密なドラマは、観る者に“人間とは何か?”“生きていくこととは?”“他者との関係は?”という身近で深遠なテーマを問う物語に仕上がった。復讐を誓うが、その是非に葛藤する主人公を演じた堺は、「言葉にしてしまうことが難しい作品で(笑)。でも、僕には決して遠い世界には感じなかったです」と本作のリアル感を説明する。暴力的だが、深い孤独を抱えた木島役を怪演した山田も、「僕にはすごく普通の世界で、全然遠くない世界の話だと思いました」とリアルに根差した世界観であることを強調する。忌まわしい事件が起こらなければ中村も木島も出会わず、被害者、加害者の関係にも転化しなかった。緊迫した対立軸の中で、人は予想もしなかった“いろいろな顔”に変わり、“本当の顔”が分からなくなってしまう事態に陥ることがある。その意味で、リアルなのだ。「僕たちは“この中にいる”と思いました。皆、そう感じると思う。それと、木島を演じて、完成した映画を観て、そもそも人には本当の自分さえもないような気がしましたね」(山田)。“人間とは何か?”と本質を問うということは、“自分とは何か?”と自問自答することも意味するはず。逃げ場を失くした孤独な男たちがむき出しの感情をぶつけ合い、やがて辿り着く結末で何を知り、何を想うか。「難しいですよね(笑)。ただ、僕たちだけでなく、それぞれの人たちの人間模様、感情、状況を観てもらえれば。人の、“整理されない気持ち”が分かると思いますよ」(堺)という本作。公開後、大きな反響を集めそうな注目の一作だ。『その夜の侍』11月17日(土)より全国ロードショー取材・文・写真:鴇田崇
2012年11月16日「パンツまで濡れたら人間、何かが終わるんです」。冗談のような答えだが、堺雅人は悟りの境地に達したようにそう語る。映画『その夜の侍』の豪雨の中のぬかるんだ空地でのクライマックスシーンのことだ。山田孝之も「泥が口に入りましたね」と過酷な撮影の記憶を手繰る。意外にも2人は本作が初共演。しかも劇中で、互いに顔を突き合わせるのもこのクライマックスのシーンが初めてだった。妻をひき逃げした犯人への復讐を誓う主人公と、刑務所から出所後も無反省に生きる犯人。おそらく近年、2人が演じた役の中でも最も重く、“理解”からは遠い所に位置するであろうこの役柄をどのように作り上げたのか?どのようにそれぞれのシーンを積み重ね対峙へと至ったのか?公開を前に話を聞いた。「ジレンマの極致のまま終わりたい」赤堀雅秋監督が2007年に作・演出・主演を務めて上演された舞台を自らの手で映画化した本作。妻を失った男と犯人、その周囲の人々のドラマが描かれる――と要領を得ないあらすじだが、登場人物にせよストーリーにせよ“孤独”や“赦し”や“再生”といった分かりやすい言葉で簡単に説明することなどできないのだ。堺さんが作り上げた主人公・健一を見ても、多くの人はそれが堺さんだとにわかには信じられないのではないだろうか。分厚いメガネの奥の表情は常にこわばり、今回ばかりは多くの人を魅了してやまないあの微笑みを拝むことはできない。演じるにあたって赤堀監督から伝えられたのは「ゴールするのではなく、葛藤の極致、ジレンマの極致のまま終わりたい」ということ。「やる側としては落ち着かないですよ。答えがないから収まりが悪いですよね。ジレンマというのはどちらかの間にある状態。どこかに答えを見つけた時点で『そうじゃない』となるわけですから。“葛藤”という言葉すらも収まりがよすぎて、赤堀さんの中では違ったんじゃないかと思います。葛藤かどうかさえも分からないモゴモゴしたところで何かやりたかったような気がしますね。手応え?ないないない(苦笑)!!手応えを掴んでしまえばその時点で足が止まる。赤堀さんはそんな瞬間を嫌ったんじゃないかな」。では、演じ終えた後で改めてふり返ったときに健一という男や物語について理解できたことや掴めたものは?そう尋ねても、やはり堺さんの口から確固たる答えは出てこない。「赤堀さんが書いて自分で舞台で演じた作品をリライトしてほかの誰かに任せるというとき、そこにはすごく高い期待値やハードル、そして本当は自分で演じたかったという思いもあるんじゃないかと思うんです。『オレの舞台のときは、そんなもんじゃなかったぞ』とか『もっと感情が動いたはず』という気持ちがあったかもしれないし、実際に赤堀さんのいろんな思いをぶつけられたと思います。それに応えられたかは分からないけど、なるべく近づけるようにと考えて臨んでいました。もう、そこまで行くと僕がどう感じてどう捉えたか?なんていうことは正直、どうでもいいことだなと思うんです」。一方、暴力的で享楽的で無反省に出所後の人生を歩みつつ、なぜか人を惹きつける木島を演じた山田さんもまた理解や論理性を越えたところで、クライマックスに向けてひたすら木島としての感情を積み重ねていった。「もちろん、最後に2人が対峙するということは分かっているので、そこにテンションをどう持っていくかということは考えますが、だからと言って『最初がこうだから、次がこうで…』という感じではなかったです。スタートからゴールまで点線があってそれをなぞって行くわけでは決してなくて、そのときの木島だと思えることをやる。やっている最中は木島として反応するような感じでした。だから撮影のことをよく覚えてないのかもしれません」。「そこに俳優という仕事の面白さがある」(山田さん)では改めて2人の初めての、そして唯一の共演シーンである豪雨の泥だらけのクライマックスについて。堺さんは「ずっと一緒にやりたいと思っていたし、楽しみにしていた」と山田さんとの対峙を前に抱いた胸の高鳴りを明かすが、実際に撮影が始まるとそれどころではなかった。「本当にね、パンツまで濡れた時点で何かがプチンと切れました(笑)。共演しての印象?ずっと楽しみにしてたけど、実際に会ったときは彼を“俳優・山田孝之”として見ているのか?それとも木島として――それも自分が考えた、健一がずっと会いたがっていた木島として見ているのか…?少なくとも『あぁ、オレはいまずっと共演したかった山田孝之と共演しているんだ』という気持ちではないですよね。いろんな考えがあって、雨があって、アクションまであって…むしろ山田さん個人の印象というよりも、みんなで大変な撮影を成し遂げた仲間たちという思いの方が強かったです。これだけの大変なシーンを信頼し合って一緒に作ることができたというのはすごく嬉しい。いまになって改めて山田さんでよかったなと思います」。雨に打たれ、泥に足を取られながら殴り合う男たち。その姿は激しく胸を打つが、決してカッコいいとは言えない。「この作品はカッコよく見せる必要がないですからね」と山田さん。10月の寒空の下、2夜にわたって行われた撮影を終えたときは、さぞや達成感に包まれていたことだろう…と思いきや、山田さんは静かに首を振る。「全くないです。達成感を感じる余裕すら残ってなかったです。0.1でも力が残っていれば達成感もあったんでしょうが、かなり早い段階でゼロまで行ってましたんで、そんなものは…なかったですね」。理解も、手応えも、達成感さえもない現場…。だが山田さんは言う。「そこに俳優という仕事の面白さがあるのかも」と。「僕自身、木島という役に限らず人が人を理解できないなんて当たり前だと思ってます。人間は常に新しいものを得て、同時にどんどん何かを失って生きていくわけで、どんなにその人の隣にいても完璧に理解するなんて無理でしょう?でもその理解できない意味の分からないものを映画の中で成立させなくちゃいけないわけで。『理解できない』という感覚を抱きながらも役のことを理解しようとして『オレはこの人なんだ』と思い、これが正解だと思いながら演じる。それはすごく変な仕事だし、だからこそ面白いなと思ってます」。一方、インタビューを通じて5~6回は「びしょ濡れのパンツ」の苦労を強調していた堺さんだったが、ことさら俳優としてのやりがいやこの作品ならではの特別な思いを尋ねらると「僕自身としては『やれ』と言われた仕事ができたこと、監督の“受注”に応じられた時点で嬉しいです。特別という言い方をするなら毎回が特別で、それが日常になってますから。そういう意味で通常業務ですね」とサラリと言ってのける。その顔には映画の中で決して見せることのなかった楽しそうな笑みが浮かんでいた。(photo&text:Naoki Kurozu)■関連作品:その夜の侍 2012年11月17日より全国にて公開© 2012「その夜の侍」製作委員会
2012年11月15日堺雅人と山田孝之が共演する映画『その夜の侍』のメイキング映像が公開された。愛する妻を失い復讐だけを考えて生きる男と、出所した犯人の男。対峙したふたりの男の姿を演じる俳優陣の緊迫した空気が伝わってくる映像だ。『その夜の侍』メイキング映像本作は、5年前に妻をひき逃げされて復讐を誓う男、中村(堺)と、刑期を終えて出所したひき逃げ犯・木島(山田)を主軸に、彼らを取り巻く人々の孤独や葛藤を描いた人間ドラマ。劇団“THE SHAMPOO HAT”を率いる赤堀雅秋氏が主演も務めた舞台を、自ら映画化した作品だ。このほど公開されたのは、殺された妻の5回目の命日の夜、ついに中村と木島が対峙する重要なシーンの撮影現場をおさめたもの。撮影現場では大量の雨を降らせたが、中村役の堺は傘もささずに包丁を握る右手に力を込め、愛していた妻を想い、復讐して良いのかと葛藤する男を熱演する。これまで堺は、相手を翻弄する食えない男を演じることが多かったが、本作では急に訪れた妻の死に翻弄され、苦しむ男を全力で演じており、映像では「カット」の声がかかった後の苦渋に満ちた表情が印象的だ。一方、山田演じる木島は不敵な表情を浮かべ、暴力的な行動に出るもその内面には人知れぬ孤独を抱えている人物。雨のシーンでは、木島に不釣合いな赤い花柄の傘が彼の恐ろしさを引き立てており、カメラがまわる前に赤堀監督の演出を受けながら、徐々にテンションをあげていく山田の姿を見ることができる。さらにメイキング映像は、中村が木島に出会い、刃を向ける緊迫したシーンへ。圧倒的な量の雨を降らせながら、ふたりが格闘する複雑なシーンだが、堺、山田とも緊張感が切れることがなく、ふたりの気迫に応えるように赤堀監督らスタッフたちが撮影を進めていく様を確認できる。堺と山田が、むき出しの感情をぶつけ合い、人間の醜さやその本質を体現する映画『その夜の侍』。行き場をなくしたふたりの男が物語の結末でどこにたどり着くのか気になるところだ。『その夜の侍』11月17日(土)より全国ロードショー
2012年11月09日17日公開の堺雅人主演映画『その夜の侍』の完成披露試写会が7日にユナイテッド・シネマ豊洲で行われ、堺、山田孝之、新井浩文、綾野剛、谷村美月、田口トモロヲ、赤堀雅秋監督が舞台あいさつに登壇した。その他の写真本作は、劇団“THE SHAMPOO HAT”を率いる赤堀氏が、自ら作・演出と主演を務めた同名舞台を改稿し、監督を務めた作品。ひき逃げ事件で妻を失った思い出から抜け出せず、犯人への復讐を計画することで自分を保っている主人公・健一(堺)と、ひき逃げ犯の木島(山田)、そして彼らを取り巻く周囲の人々が抱える孤独や葛藤を描いた人間ドラマ。堺は本作について、「とても生々しくグロテスクで汚いんだけど、観終わったあとに美しく、崇高なものを観た不思議な気持ちになる」と話し、「大事な人を亡くした主人公が弔いへ向けて一歩踏み出す話ですが、僕自身も3.11の震災後に抱いていた、弔いたいけどどうしたらいいのか分からない心情が主人公と重なり、この役をやりたいと思いました」と語った。堺と山田は初共演となったが、堺は、「3年分くらいガッツリ共演したので、しばらくは顔も見たくない(笑)」と山田へ本音をぽろり。山田も、「僕も撮影が終わってから、CMで堺さんを見ると『うぇー』ってなりましたね」と反撃した。さらに、「堺さんとの共演シーンを楽しみにしていたが、撮影が始まるとつらい・寒い・帰りたいで最悪でした」と吐露し、本人たちにとってはそれほど濃密で重厚な撮影だったようだ。また、「非常に緊張してます」と、冒頭からハンカチで何度も汗を拭う姿が見られた綾野があいさつ後に中座する場面も。数分後舞台へ戻り、「貧血でした」と苦笑しつつも、「決して面白い作品ではないですし、かつ分かりやすい感動があるわけでもない。でも人間の愚かな姿が実直に出ていて、すごい作品が出来たのではないかと思う」と自信を見せた。続けて堺も、「おすすめしにくい映画だけど、僕は大好きです。願わくば、みなさんの心に突き刺さる作品でありますようにと祈るばかりです」と本作をアピールした。『その夜の侍』11月17日(土)より全国ロードショー取材・文・写真:滝島千尋
2012年11月08日赤堀雅秋が自ら書き下ろした戯曲を映画化した初監督作『その夜の侍』の完成披露試写会が11月7日(水)、東京・ユナイテッドシネマ豊洲で開催された。赤堀監督、主演を務める堺雅人を始め、山田孝之、新井浩文、田口トモロヲ、綾野剛、谷村美月が舞台挨拶を行った。最愛の妻の命を奪った犯人に復讐を果たすため、狂気と日常の狭間を漂いながら生きる男の姿を描いた本作。堺さんと山田さんは本作でファン待望の初共演が実現したが、「向こう3年くらい、顔は合わせたくない。それほど濃密な関係が築けました」(堺さん)、「堺さんがあまりに怖くて、しばらくTVに堺さんが出てくると…」(山田さん)と単なる共演を超えた、特殊な“絆”で結ばれている様子。堺さんは「言葉にしづらいけど、大好きな作品。ご覧になるみなさんの人生に深く深く突き刺さることを祈ります」と真摯にアピールしていた。小さな鉄工所を営む中村健一(堺さん)は、5年前にひき逃げ事件で妻・久子を亡くして以来、虚無感に囚われた生活を送っていた。一方、ひき逃げ犯・木島(山田さん)は刑期を終えて出所するが、しばらくすると“何か”をカウントダウンする匿名の脅迫状が届く。そして久子の命日の夜、遂に2人は対峙することに…。新井さんにとっては、本作がなんと今年10本目(!)となる出演作で「10本中ベスト3に入る自信作です。でも、うちが面白いと思う映画は一般受けしないから…、『これ、つまんねえかな』くらいの気持ちで観てください」と少々自虐的なPR。綾野さんは挨拶冒頭から「緊張で汗が止まりません…」と言葉を振り絞ると、その後舞台挨拶を中座。「すみません、貧血でした」と報告し、舞台挨拶に復帰するひと幕もあったが「決して面白くない映画で、分かりやすい感動もありませんが、愚かで実直な人間の姿を描いた作品に参加できて良かった」と誇らしげな表情だった。『その夜の侍』は11月17日(土)より全国にて公開。■関連作品:その夜の侍 2012年11月17日より全国にて公開© 2012「その夜の侍」製作委員会
2012年11月07日オーネットはこのほど、会員に婚活サポートを行う結婚アドバイザーたちによる「結婚のお世話をしたい芸能人2012」についての投票を実施し、結果を発表した。9万人以上の成婚を生み出したプロの結婚アドバイザー109名の投票によるもの。男性芸能人の1位は福山雅治さん。昨年に続いての1位獲得となった。”いい男”であるが故に、アドバイザーは結婚の行方がとても気になるようで「早く結婚してほしい」「希望のお相手を聞いてみたい」というコメントが多く寄せられたという。2位は、堺雅人さん。前回7位からの大幅ランクアップとなった。3位はSMAP のメンバー、草彅剛さん。「人柄が良さそう」、「素直そう」などのコメントがあった一方で「好きなお相手に告白する勇気もなく、一生独身の感じがするので」という辛口のコメントも。4位は、昨年2位だった堤真一さん。5位は同数で西島秀俊さんと竹野内豊さんだった。7位は向井理さん。向井さんは同社が実施した「独身女性が結婚相手に望む条件に関する意識調査」において「三平女子」の理想の結婚相手No.1だという。一方、女性芸能人は天海祐希さんが堂々の1位を獲得(前回は2位)。今秋からスタートしたドラマ「結婚しない」での、結婚しない道を選択する役柄が、結婚アドバイザーのおせっかい心を刺激したのではと調査では分析している。2位は、最近ダイエットをしてきれいになったと評判の優香さん。3位の菅野美穂さんも天海祐希さんと同じドラマに出演している影響のよう。4位と5位は、バラドル出身の森口博子さんと島崎和歌子さん。前回1 位を獲得していたアラフォー女優の鈴木京香さんは、上位へのランクインの期待を覆し、6位へ後退した。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月01日興行収入23億円を記録し、大ヒットした『大奥』の続編『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』が完成し25日、都内の劇場で堺雅人、菅野美穂、柄本佑、西田敏行、金子文紀監督が出席して完成披露試写会が行われた。作品の画像よしながふみの人気コミックを原作に、本作では前作より過去にさかのぼり、五代将軍綱吉の時代が舞台。謎の疫病によって男女の立場が逆転してしまった江戸時代で、女将軍や女人禁制の大奥が誕生した過程が絢爛豪華に描かれる。映画公開前に放送されるテレビドラマ版『大奥有巧・家光篇』との二部構成。堺は放送中のドラマ版で野心的な主人公・有巧(ありこと)を演じ、映画と合わせて1人2役を務めており「有巧と違って、右衛門佐は包容力があるタイプ」と分析した。一方、“生類憐みの令”で知られる五代将軍・綱吉を演じる菅野は「綱吉といえば、犬将軍ですもんね。お話をいただき、『犬を抱っこできたらいいな~』という下心があったんですが(笑)、台本をいただいて何という大役なんだと震え上がった」と振り返った。そんな菅野について、“お仕えする”堺は「まるで1本の大きなの木のような存在で、僕はそこにまとわりつく“つる植物”のようだった」とコメント。「本当にお美しくて、危険で甘い香りもある」とゾッコンの様子だった。西田は綱吉の父・桂昌院を演じ、「菅野さんがとても素晴らしくて、圧倒されました。(役柄同様)溺愛することができましたし、その気持ちは僕自身もストレートに持っている」と目尻が下がりっぱなし。一方、右衛門佐の右腕を演じ、今作の語り部も兼任する柄本は「ナレーションはほぼ初めてで…」と恐縮しきりだった。前作『大奥』、そして放送中のドラマの演出も手掛ける金子監督は「前作は10代をメインにした青春群像劇で、今回は堺さんが30歳から60歳くらいまでを演じている」と説明。「抵抗できない現実を受け入れて、いかに生き抜くか。登場人物が葛藤する姿は共通している」と両作品に共通するテーマ性を語り、「今まで4本の映画を作ったが、一番気に入っている。正直、反省点がない」と誇らしげな様子だった。映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』12月22日(土)全国ロードショー
2012年10月26日よしながふみによる大人気漫画を原作に、2010年10月に劇場公開され、興行収入23億円、動員数200万人を突破した大ヒット映画『大奥』。その続編にあたる『大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』がついに完成し、10月25日(木)、都内の劇場でお披露目された。上映を前に、主演を務める堺雅人を始め、菅野美穂、柄本佑、西田敏行、金子文紀監督がレッドカーペットセレモニー&舞台挨拶に登場!桜吹雪が舞い落ちる中、映画そのままのゴージャスな世界観を演出していた。“男女逆転”した大奥の愛憎渦巻いた世界を描く同シリーズが、大奥誕生に隠された秘話を軸にドラマ&映画のWプロジェクトで映像化された。すでにドラマ版は「大奥 ~誕生~[有功・家光篇]」(TBS)のタイトルで放送中。堺さんはドラマ版では、汚れなき心で将軍を支える院主・有功(ありこと)、そして映画版では胸に野望を秘めた、有功に瓜二つの男・右衛門佐(えもんのすけ)という一人二役の主役を演じる。「対照的な役柄ですが、演じ分けることに難しさは感じなかったですね。有功は野心家、右衛門佐は周りを包み込む包容力がある」と堺さん。一方、愛を求め続ける5代将軍・綱吉を演じる菅野さんは「綱吉といえば、犬将軍。私も『犬を抱っこできればいいな~』という下心がありましたが、いざ台本をいただき、何という大役なんだと震え上がった。天真爛漫、支離滅裂、予測不可能な女性ですね」とふり返る。そんな菅野さんについて、堺さんは「危険な甘い香りがする。本当にお綺麗な方」とホレボレ。さらに「菅野さんが大きな1本の木なら、僕はそれにまとわりつく“ツル植物”」と独特な表現で、役柄を自己分析していた。西田さんは綱吉を溺愛する実の父親・桂昌院を演じ、いつもながらの存在感をスクリーンで発揮。「菅野さんの素晴らしさに圧倒され、本当に“溺愛”することができた。僕のストレートな気持ちです」と本当の父親のように、目尻が下がりっぱなしだ。冷静沈着な右衛門佐の片腕・秋本を演じ、本作の語り部も務め上げた柄本さんは、「右衛門佐の邪魔にならないように、それでいて呼ばれればすぐに駆けつける。そんな“空気”のような存在を目指した」と語っていた。映画『大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』は12月22日(土)より全国にて公開。■関連作品:大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇] 2012年12月22日より丸の内ピカデリーほか全国にて公開© 2012男女逆転『大奥[右衛門佐・綱吉編]』製作委員会
2012年10月25日2007年、宮崎県の保健所で起こった犬と人間の奇跡の実話を、20年にわたり山田洋次監督作品の共同脚本・助監督を務めてきた平松恵美子監督が、堺雅人を主演に迎えて映画化する『ひまわりと子犬の7日間』。このたび本作の主題歌が、初の武道館ライブが3分でソールドアウトとなるなど絶大な人気を誇る音楽グループ「ソナーポケット」による書き下ろし曲「花」に決定した。ある日、母犬・ひまわりと生まれたばかりの子犬が、保健所に収容される。飼い主が見つからなければ、母子ともども“処分”されてしまうことになるが、保健所の職員・彰司やその家族、仲間たちは必死に子犬を守ろうとするひまわりの姿に心打たれ…。現在の日本で、飼い主のいない犬が置かれている状況を逃げることなく真っ直ぐに描く本作。彰司役の堺さんを筆頭に、中谷美紀、吉行和子、檀れい、小林稔侍など数々の映画賞に輝く実力派俳優陣が名を連ねており、オードリーの若林正恭の映画初出演作としても注目を集めている。今回、ひと足先に同作を鑑賞したソナーポケットは「僕らは3人共、実家で犬を飼っているので、感情移入せずにはいられず、犬と人間の家族愛に終始感動しっぱなしでした」と感想を語る。さらに「僕らは普段、“笑顔の連鎖”を合言葉に日々活動しています。この映画を観てくれる人たちにも笑顔があふれるような、そんな素敵な主題歌を作りたいと思います。いざ!笑顔の連鎖!」とコメントが寄せられている。果たして彰司やその仲間たちは、信じる心を失ってしまった母犬にもう一度愛を伝えることができるのか?ソナーポケットの楽曲が本作にどのように寄り添い、彩りを与えてくれるのか公開を楽しみに待ちたい。『ひまわりと子犬の7日間』は2013年3月9日(土)より宮崎先行公開、3月16日(土)より全国にて公開。■関連作品:ひまわりと子犬の7日間 2013年3月9日より宮崎先行公開、3月16日より全国にて公開© 2013「ひまわりと子犬の7日間」製作委員会
2012年10月17日9月に公開を迎えた、内田けんじ監督最新作にして主演の堺雅人を始め、香川照之、広末涼子ら豪華キャストで贈る『鍵泥棒のメソッド』が大ヒット公開中だ。そんな好調な本作にさらなる朗報が!毎年ハワイ・ホノルルで行われるハワイ国際映画祭で、見事コンペティション部門にて作品賞(最高賞)を受賞したことが明らかになった。ある日、銭湯で転倒し記憶を失った伝説の殺し屋・コンドウと、ひとりの売れない貧乏役者・桜井、2人の男の人生が入れ替わるところから始まる予想不可能なストーリーが絶妙な笑いを生み出す本作。トロント国際映画祭や上海国際映画祭、さらに“台湾版アカデミー賞”と呼ばれる台北金馬奨映画祭など、内田監督が描き出した軽妙な人間ドラマが好評を博し、世界各国の映画祭で絶賛を浴びてきた本作。今回、ハワイ国際映画祭の「Spotlight On Japan」部門には、堺さん主演の『大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』を始め、高倉健主演最新作『あなたへ』や園子温監督作『希望の国』、日本で大ヒットを記録中の『天地明察』などが選ばれ、他部門も併せると合計で21本以上もの日本映画が上映されている。そんな中、『鍵泥棒のメソッド』はコンペティション部門で唯一日本から選出された作品ながら見事、最高賞にあたる作品賞を受賞、と大活躍を見せた。この名誉に内田監督は、「この映画のキャスト、スタッフと喜びを分かち合いたいと思います。本当にありがとうございました!」と喜びつつも、「仕事の都合で映画祭に参加できず本当に残念でした…」と南国・ハワイへの現地入りは叶わず、少々悔しそう?同賞には過去に、『たそがれ清兵衛』(’02/山田洋次監督)や『茶の味』(’04/石井克人監督)といった傑作がその栄光に輝いている。『鍵泥棒のメソッド』は全国にて公開中。■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
2012年10月17日日本映画界を牽引する奇才・内田けんじ監督の最新作『鍵泥棒のメソッド』。インターネットで予約できる前売券“ムビチケ”の本作の販売総額が全国No.1を記録した兵庫県西宮市のTOHOシネマズ西宮OSにて、9月30日(日)に舞台挨拶を実施。内田監督と主演の堺雅人が登壇し、本作の見どころにもなっている“笑い”や撮影の裏話、キャストとのエピソードなどについてたっぷりと語った。ある日、銭湯で転倒し記憶を失った伝説の殺し屋と、ひとりの売れない貧乏役者、2人の男の人生が入れ替わるところから始まる予想不可能なストーリーが、絶妙な笑いを生み出す本作。本州を台風17号が直撃し多くの交通機関が乱れた日でもあっただけに、堺さんは開口一番「大変な日に大丈夫ですか?お帰りの足は…」と来場者を気遣いつつ、「映画をご覧いただいたみなさんの上気したお顔を見られるのが、役者にとって望外の喜びです。ありがとうございます」と、この日会場に詰めかけた観客を前に喜びの思いを口にした。内田監督も「本当に今日はとんでもない日にありがとうございます」と感謝の言葉を述べ、「(劇中で演じた)桜井とまったく違ったしっかりした挨拶をなさった堺さんとのギャップを楽しんでいただきたいと思います」とユーモアあふれる挨拶で会場の笑いを誘っていた。すると司会者から堺さんにまったくダメダメな桜井を演じるのはどんな気分だったか?との質問が。「案外素だったりして、いろんな方にヘタなお芝居が絶妙だったと言われるたびに、心の柔らかい部分が傷ついたりして…」と意外な本音を明かしていた。劇中には香川照之演じる殺し屋・コンドウと堺さん演じる桜井の一騎打ちシーンがあったようだが、そのことについて堺さんが「あのシーンはエアガンが不調で、何度かお芝居できないほど本当に痛いこともありました。香川さんから『あれは笑いを堪えるのが大変だった』と言われました…」と撮影での苦労を明かすと、監督からは「本番で堺さんが突然『てめぇ!』としがみつくアドリブをして、香川さんが笑いを堪えるのが大変だったと言ってました。あれが唯一のこの映画のアドリブです。あのシーンは面白かったので6回やってもらいました(笑)」と思わぬ撮影の裏話も。そして最後には本作のさらなる大ヒットを目指して、西宮中央商店街のキャラクター“ふくみみ福ちゃん”が登場!「階段が狭いので福ちゃんにとっては厳しい導線ですね」と堺さんは、自ら福ちゃんに手を差し伸べて舞台まで誘導するも、写真撮影に入ると、バランスを崩し登壇の台からあわや転落の危機!そんな福ちゃんに、監督からの「(頭を打ったら)記憶がなくなっちゃうよ」と本作にかけた一言で、会場は再び大きな笑いに包まれた。『鍵泥棒のメソッド』は全国にて公開中。■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
2012年10月01日堺雅人主演の映画『鍵泥棒のメソッド』が30日、インンターネットで予約できる前売券“ムビチケ”の販売で本作がナンバーワンを記録したTOHOシネマズ西宮OSで舞台あいさつを実施し、堺、内田けんじ監督が登壇したその他の写真本作は、『運命じゃない人』『アフタースクール』を手がけた内田監督が4年ぶりにメガホンを執った最新作。売れない貧乏役者の桜井(堺)、転倒して記憶を失った殺し屋のコンドウ(香川照之)、婚活中の女性(広末涼子)の三人が巻き起こす事件を描く。当日は台風直撃だったため、「大変な日に大丈夫ですか? お帰りの足は。我々も新幹線でこちらに伺って、神社のえびすさまのお導きかとうれしく思っています。映画をご覧いただいたみなさんの上気したお顔を見られるのが役者にとって望外の喜びです」という、観客を気づかう堺の言葉ではじまった舞台あいさつ。“本当にダメダメ”な主人公・桜井を演じての感想を聞かれると堺は、「案外素だったりして。いろんな方にヘタなお芝居が絶妙だったと言われるたびに、心の柔らかい部分が傷ついたりして。売れていない役者ですが、純粋だし、楽観的に物事をとらえるし、僕はすごくいい役者だと思っています。売れてないのが致命的ですけど(笑)」と苦笑していた。殺し屋役を演じた香川との一騎打ちのシーンについては、「あのシーンはエアガンが不調で、何度かお芝居できないほど本当に痛いこともありました。香川さんからあれは笑いをこらえるのが大変だったと言われました」と堺が振り返ると、内田監督は、「本番で堺さんが突然、『てめぇ』としがみつくアドリブをして、香川さんが笑いを堪えるのが大変だったと言ってました。あれが唯一のこの映画のアドリブです。あのシーンは面白かったので6回やってもらいました(笑)」と、わきあいあいとした現場でのエピソードを明かしていた。また、本作の大ヒットを祈願して、西宮中央商店街のキャラクター・ふくみみ福ちゃんが登場。耳たぶが幸運を呼ぶと言われていることから、狭い階段のなか堺が自ら触ろうとすると、ふくみみ福ちゃんが落ちそうになる場面も。その光景を見ていた内田監督に「(落ちたら)記憶がなくなっちゃうよ」と茶化されると、堺は「僕と福ちゃんが入れ替わるかもしれないね(笑)」とすかさず返し、会場を笑いの渦に巻き込んでいた。『鍵泥棒のメソッド』公開中
2012年10月01日堺雅人、菅野美穂が主演する映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』の主要キャストが揃った華やかなポスター画像がこのほど公開された。その他の写真本作は、2010年10月に公開された『大奥』の続編となる劇場版第2弾。謎の疫病によって男性の数が激減し、男女の立場が逆転してしまった江戸時代を舞台に、五代将軍綱吉(菅野)を頂点とする“大奥”の人間模様を描く。このほど公開されたポスター画像の中心には、才覚と野心で“大奥”の世界をまい進していく右衛門佐(堺)と、将軍綱吉(菅野)の姿があり、ふたりを取り囲むように、側用人として綱吉に使える柳沢吉保(尾野真千子)、右衛門佐の片腕となる部屋子の秋本(柄本佑)、綱吉の側室である伝兵衛(要潤)、大奥の御台所(正室)信平(宮藤官九郎)、そして綱吉を溺愛する父・桂昌院(西田敏行)が並ぶ。キャッチコピーには、“孤独なふたつの魂は、やがて永遠の愛に”とあり、“大奥”での陰謀や愛憎劇が渦巻く中で、右衛門佐と将軍綱吉にどのような運命が待っているのか気になるところだ。このポスターや映画チラシは、29日(土)より本作を上映する予定の劇場に設置、配布される。映画『大奥~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』12月22日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
2012年09月26日劇団「THE SHAMPOO HAT」を率いる赤堀雅秋監督自らが作・演出・主演を務めた同名戯曲を改稿して映画化した『その夜の侍』。映画の公開を記念し、「第四回下北沢映画祭」の開催中、22日にトークショーが行われ、赤堀監督と映画『モテキ』の大根仁監督、本作に出演する新井浩文が登壇した。その他の写真本作は、五年前のひき逃げ事件で死んだ妻・久子(坂井真紀)への思い出から抜け出せず、犯人への復讐を計画することで自分を保っている主人公・健一(堺雅人)と、ひき逃げ犯人の木島(山田孝之)、彼らを取り巻く周囲の人々が抱える孤独や葛藤を描いた人間ドラマ。赤堀監督と大根監督の出会いは、深夜ドラマシリーズ『演技者。』内で赤堀監督の原作戯曲『アメリカ』を大根監督が演出したことがきっかけだったという。赤堀監督にとって大根監督は“一番意見を聞くのが怖い人”というイメージだったそうだが、どうにか合格点をもらったようで、トークショーでは安堵の表情を見せていた。一方、大根監督は、「初監督だから失礼になるけれども、観たときに老練な感じと言うか…赤堀君は演劇と言う場で積んできたものがでかい。技術的なものとか、スタッフワークというのは知らずに入ったかもしれないけど、赤堀君がもともと演劇の場で培ってきた脚本力とか演出力とかに、スタッフや役者が引っ張られてよい作品になっているなあと。異業種監督の作品には全く見えない。むしろ出来過ぎと言う感じがしました」と絶賛。さらに、近年のメジャー作品とマイナー作品の興行収入や動員の格差問題について絡めて、「ものすごくお客さまが入っている作品と、良質な作品なのに全く入らないというのがある。その中間をいき、この現状を打破できるよい邦画として、ちゃんとヒットする作品になってほしい」とエールをおくっていた。また、『モテキ』にも出演し、本作では健一の妻の兄役を務める新井は、「監督のやりきった感じが伝わってきて、参加できてよかったと思った。自分自身でも手ごたえを感じた」と感無量の様子。赤堀監督も、「自分で言うのもなんなんですけど…凄く武骨でエネルギッシュで、とてもおもしろい、よい映画だなと、客観視して思える作品になっているので、ぜひ観てください!」と、本作をPRしていた。『その夜の侍』11月17日(土)より全国ロードショー
2012年09月25日堺雅人と山田孝之をキャストに迎え、自ら書き下ろした戯曲を映画化した赤堀雅秋の初監督作『その夜の侍』。こちらの公開に先駆けて、出演者の新井浩文、「劇団THESHAMPOOHAT」主宰者でもある赤堀監督、親交の深い『モテキ』の大根仁監督が9月22日(土)、東京・下北沢で開催中の「第4回下北沢映画祭」の一環でトークショーを行い、会場を爆笑の渦に巻き込んだ。小さな鉄工所を営む中村健一は、5年前にひき逃げ事件で妻・久子を亡くして以来、虚無感に囚われた生活を送っていた。一方、ひき逃げ犯・木島は刑期を終えて出所。しばらくすると木島の元に、“何か”をカウントダウンする匿名の脅迫状が届くようになる。送り主は中村に違いないと周りの者はそれを止めさせようとするが、久子の命日の夜、遂に2人は対峙することに…。トークショーが始まり、早々に新井さんが「だいたいうちは初号観るまで満足がないんですけど、クランクアップの日、ふと見たら煙草を吸いながら、ひとりで監督が泣いてたんですよ」と撮影秘話を暴露。赤堀監督は「泣いてない!絶対泣いてないよ!!」と大絶叫。それに対して新井は「目を真っ赤にしてうるうるしてた(笑)」とやり取りを続け、会場を笑わせながらも「監督のやりきった感じが伝わってきて、参加できて良かったと思った。自分自身でも手ごたえを感じた」と作品に対する充実感を口にした。赤堀監督と大根監督の出会いは、フジテレビ系の深夜ドラマシリーズ「演技者。」。同ドラマ内で、赤堀監督の原作戯曲「アメリカ」を大根監督が監督を手がけたことがきっかけだったそう。赤堀監督にとって大根監督は「一番意見を聞くのが怖い人」とのことだったが、「どうにか合格点をもらった」と安堵の表情。しかし、大根監督は近年のメジャー作品とマイナー作品との興行収入や動員の格差などについて触れ、「邦画は大作と秀作が両極すぎて…。ものすごくお客様が入っている作品と、良質な作品なのに全く入らないというのがあり、その中間をいき、この現状を打破できる良い邦画として、ちゃんとヒットする作品になってほしい」とこれからも応援していくことを堂々宣言。さらに、「初監督だから失礼になるけれども、観たときに老練な感じと言うか…赤堀くんは演劇と言う場で積んできたものがデカい。異業種監督の作品には全く見えない。むしろでき過ぎと言う感じがしました」と太鼓判を押していた。最後には「四の五の言わずに劇場に来てください!お願いします!」(新井さん)、「自分で言うのもなんなんですけど…凄く武骨でエネルギッシュで、とてもおもしろい、良い映画だなと、客観視して思える作品になっているので、ぜひ観てください!」(赤堀監督)とそれぞれに作品をアピールし、会場を包む大きな拍手と共にトークショーは締めくくられた。『その夜の侍』は11月17日(土)より全国にて公開。特集「シネカフェくんのふらっと映画祭」■関連作品:その夜の侍 2012年11月17日より全国にて公開© 2012「その夜の侍」製作委員会
2012年09月25日現在公開中の堺雅人主演映画『鍵泥棒のメソッド』が、台湾版アカデミー賞とも言われる第49回台北金馬奨映画祭(現地時間11/8~23)のパノラマ部門に出品されることが決定した。その他の写真本作は、『運命じゃない人』『アフタースクール』を手がけた内田けんじ監督が4年ぶりにメガホンを執った最新作。貧乏役者・桜井(堺)が、転倒して記憶を失った伝説の殺し屋・コンドウ(香川照之)になりすましたことで、ある事件に巻き込まれていく姿を描いた喜劇だ。本作はすでに上海、香港、マレーシアの映画祭で上映されており、第15回上海国際映画祭では日本で初めて脚本賞を受賞する快挙を成し遂げている。また、9月にカナダで開催されたトロント映画祭でも絶賛を受け、米「ヴァラエティ誌」は「3人のキャラクターを注意深く重ね合わせ、それを運命的な出来事に向かわせる。練りにねったチェスを動かしているような構造が出来ている」と評価しており、各国で高い評判を得ていることがわかる。今後は、バンクーバー国際映画祭、ハワイ国際映画祭、シドニー・メルボルン日本映画祭、フランス・パリのKINOTAYO映画祭と上映が決定しており、台北で現地時間11月8日より開催される金馬奨映画祭での上映にも注目が集まりそうだ。『鍵泥棒のメソッド』公開中
2012年09月24日人間とは、何と思い込みの強い生き物なのでしょう。そんなこと、散々分かっていたはずなのに、映画『アフタースクール』を観たときに、つくづくそう感じたことをいまでもはっきり覚えています。“思い込む生き物”の特性を手玉に取るかのように、見事に楽しく観客を騙してくれたのは、内田けんじ監督。彼の新作が完成したと知り、「騙される感動をもう一度…」とばかりに、『鍵泥棒のメソッド』を観てきました。今回もスカッと爽快感のある面白さが全編に充満。「あぁ、楽しかった」とつくづく感じる作品となっていました。『アフタースクール』のようなトリックもあるにはありますが、今回一番興奮したのは、俳優・香川照之氏の豹変ぶり。「彼が素晴らしい俳優で、作品ごとに豹変するのは知っている。何を分かりきったことを」と思う方もいるかもしれません。でも、今回はいままで以上に凄い香川氏が観られます。本作品で彼は、血も涙もない伝説の殺し屋・コンドウを演じているのですが、コンドウは記憶を失い、ある男にアイデンティティーを盗まれて、売れないダメな俳優だと思い込む…という展開。もう、これを聞いただけで、“変”すぎてワクワクしませんか?物語は、売れない貧乏役者・桜井が銭湯に行くところから始まります。そこで彼は、羽振りの良さそうな男が石鹸を踏んで足を滑らし、転倒して頭を強打する場に居合わせるのです。そして、羽振りの良さそうな男が全裸のまま記憶を失ったと知るや、彼が持っていたロッカーの鍵と自分の鍵をすり替え、その男・コンドウになりすますのです。一方、桜井の持ち物を見て、自分が売れない貧乏役者・桜井だと信じようとするコンドウ。服装も、顔つきも、性格まですっかり変わってしまったコンドウは、桜井として記憶を取り戻そうと努力をするうちに、結婚相手を探し求める雑誌の編集長・香苗に出会い、心を通わせていきます。やがて、香苗から突然のプロポーズ。平凡な幸せを噛みしめていましたが、その最中、記憶が戻ってしまうのです。さて、コンドウ、桜井、香苗はどうなってしまうのか…。途中、本物の桜井とも絡みながら、生きるために、香苗の編集部でアルバイトをしたり、劇団の稽古を見学したり、演技論を勉強したりと奮闘を続けるコンドウですが、映画にエキストラとして出演すると妙に注目されてしまう…と本物の桜井以上に、俳優として成功しそうな予感があるのがまた面白い。売れない俳優役は堺雅人氏が演じていますが、ひょんなことから、一世一代の大芝居を打つことになったコンドウと桜井の様子がまた爆笑もの。桜井の大根演技ぶりを、演技論を極めたコンドウが指摘し、ダメ出しする様子にも笑いが堪えきれません。堺氏にしても、「この大根演技は演技だよね…あれ、それとも地なの?いやいや演技はお上手なはずだしな…」と観る者を煙に巻く始末。「この人たち、どこまで演技?」、「もしかして素なの?」と思うほどに怪演を披露する俳優陣に翻弄されっぱなしでした。本作では、『アフタースクール』ばりのおもしろいタネ明かしもあるにはあるのですが、今回つくづく感じたのは、映画とは壮大な“だまし絵”であるということ。俳優たちはあくまでも演技しているのだと知っていても、この物語はフィクションなのだと理解していても、この風景はセットなのだと分かっていても、素晴らしい作家の手にかかれば、観客は作りものからでも本物の感情を抱くことができるのです。『鍵泥棒のメソッド』は騙し合いを軸にした物語ですが、この作品を俯瞰で捉えてみれば、騙し合いのドラマと映画手法を使って、観客を楽しく操っている素敵なだまし絵ということに気づかされます。そもそも人は、手品やトリックアートが大好きですよね。見事に騙されると大喜びし、騙しの手法が緩いとガッカリ。もちろん、罪に問われるようなものは別ですが、騙されて喜ぶのは人間ぐらいのもの。変な生き物ですね。というわけで、ご自身が変な生き物であることを認識している読者のみなさま(映画好きはたいてい騙され好きですが)、鍵泥棒ならぬ、“心泥棒”のメソッドを知っている内田けんじ監督と、内田組のみなさんに、すっかり騙されてみようじゃありませんか。(text:June Makiguchi)■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会
2012年09月19日「ぴあ」調査による9月14日、15日公開の映画・満足度ランキングは、知られざるドイツ・サッカーの歴史を描いた人間ドラマ『コッホ先生と僕らの革命』がトップに輝いた。2位に“葉っぱ”で町おこしをした女性たちの実話を基にした『人生、いろどり』が、3位に堺雅人が主演し、内田けんじ監督がメガホンを執った『鍵泥棒のメソッド』が入った。その他の写真1位の『コッホ先生と僕らの革命』は、“ドイツ・サッカーの父”と呼ばれるコンラート・コッホと生徒たちが巻き起こした小さな革命を描いたヒューマンドラマ。出口調査では「封建主義や差別的な社会の中で子どもたちが変わっていく過程がよく描かれている」「ドイツ・サッカーの歴史を知ることができてよかった」「“今を生きる”というメッセージがダイレクトに伝わってき感動した。経験を通して自発的に行動するようになる少年たちの姿が見どころ」「古いものを支えていく難しさがテーマとなっていて、日本の政治にも通じるところが多くあると思った」など、特に40代以上の観客から高い支持を集めた。2位の『人生、いろどり』は、“葉っぱ”ビジネスで過疎化の進んだ町にうるおいを取り戻した人々の姿を描いた人間ドラマ。観客からは「日本人が忘れかけているものを思い出させてくれる作品」「町を活性化するための発想や、生き方、精神的な構え方まで、参考になることがたくさんあった」「役割があることで活き活きすることができると、人との繋がりの大切さを再確認した」など、50代以上の観客を中心に好評を集めた。(本ランキングは、2012年9月14日(金)、15日(土)に公開された新作映画12本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)
2012年09月18日内田けんじ監督の4年ぶりの新作『鍵泥棒のメソッド』が15日に全国で封切られ、内田監督をはじめ、堺雅人、香川照之、広末涼子、森口瑤子が新宿バルト9で初日舞台あいさつに登壇した。その他の写真本作は、『運命じゃない人』『アフタースクール』など先が読めないスリリングな悲喜劇で高く評価される内田監督の最新作で、キーワードはずばり“胸キュン”。広末は「堺さんのモンチッチヘアがすごく可愛い。映画ではもっと長いし、こんな短いの初めて」とこの日珍しく短髪で登場した堺に思わず胸キュンした様子。堺は「若い人はモンチッチってわかるのかな。でも非常に光栄」とニンマリしていた。その後広末が「髪は短ければ短いほど好き」だと告白すると、内田監督はすかさず帽子を脱ぎ、坊主頭をアピール。香川は「バリカン持ってこい!」と息巻いた。その香川は一昨年のNHK大河ドラマ『龍馬伝』を皮切りに、広末と3年連続で共演しており「『龍馬伝』では広末さんを追いかけ回す役で、去年共演した役ではちょっと好きになってくれて、今回やっと両思いになれるんです」と満面の笑み。さらに「そして今年の秋の舞台では、僕がついに広末さんを振るんです」とドヤ顔を見せた。銭湯で記憶を失った殺し屋コンドウ(香川)のロッカーの“鍵”を、売れない役者・桜井(堺)が盗んだことからふたりの人生が逆転。桜井が危険な裏稼業に巻き込まれ、ピンチに立つ一方、コンドウは婚活中の女性編集長・香苗(広末)と出会い、逆プロポーズされてしまう。「本当に面白い映画。期待してください。以上です」(堺)、「幸せな時間を過ごせるはず。僕も一緒に座ってみなさんと見たい」(香川)、「きっと3連休がハッピーになる映画。たっぷり笑って、楽しんで」(広末)とキャスト陣も自信のアピールだった。映画は第15回上海国際映画祭で、日本映画として初の最優秀脚本賞を受賞。9月11日(現地時間)には、トロント国際映画祭のコンテンポラリー・ワールドシネマ部門で上映され、会場を笑いに包んだ。『鍵泥棒のメソッド』公開中
2012年09月18日