塚原千恵子氏すべてはここから始まった。昨年8月29日、女子体操競技の宮川紗江選手が記者会見を開き、日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長と夫の光男副会長からのパワハラを訴えたのだ。「光男さんは’68年のメキシコ五輪から3大会連続で金メダルを獲得した体操界のレジェンド。千恵子さんもメキシコ五輪に出場し、塚原夫妻は体操界で圧倒的な権力を持っていました」(スポーツ紙記者)特に千恵子本部長は女子体操界では“女帝”的な存在だった。そんな彼女に、宮川選手は歯向かったのだ。「塚原夫妻の尊大な振る舞いに眉をひそめていた体操関係者も多く、18歳だった宮川選手の勇気ある行動が称賛されました」(同・スポーツ紙記者)体操協会は、真相究明のために第三者委員会を設置して、塚原夫妻のパワハラを調査。昨年12月10日、その結果が発表されたのだが──。「第三者委員会は“配慮に欠け不適切な点も多々あったとはいえ、悪性度の高い否定的な評価に値する行為であるとまでは客観的に評価できない”とし、要は“パワハラとは認定されない”という結論だったんです」(体操関係者)■協会は依然、パワハラ体質さらに今年3月9日、体操協会は宮川選手の一部の言動が千恵子本部長の名誉を傷つけたなどとして、彼女に反省文の提出を求めた。「宮川選手を擁護していた五輪メダリストの池谷幸雄さんも、“テレビで推測による発言をして協会の信用を失わせた”として誓約書の提出という処分を受けています」(前出・スポーツ紙記者)処分が発表された当日、編集部は池谷にこの処分についてどう思うのかを所属事務所を通じて問い合わせていた。すると、事務所スタッフの答えは意外なものだった。「何の話ですか?協会から何も聞いていないのでお答えすることができません。ちょっとお待ちください」数分後には、こんな言葉が。「本当ですね……」日本体操協会は、池谷側には何の事前連絡もせずに処分を発表していたのだ。「勝手に処分を決めて、勝手にメディアに発表する。協会が依然、パワハラ体質であることが証明されたようなものです。体操界には結局“モノ言えぬ空気”が蔓延(まんえん)していますね」(別の体操関係者)■千恵子氏は子どもたちに体操を教える日々千恵子氏は、今年3月いっぱいで強化本部長を、光男氏は6月いっぱいで副会長を任期満了による退職をしている。だが、千恵子氏の女帝っぷりはまだ健在のようで、「今でも千恵子さんには付き人の女性がついています。車の運転をしたり買い物をしたりと身の回りの世話をしているようです」(近隣住民)体操関係者からは、こんな声も聞こえてくる。「息子でアテネ五輪金メダリストの直也さんが総監督となった朝日生命体操クラブで、子どもたちに体操を教える日々を送っているようですが、千恵子さんがこのまま隠居するとは思えない」女帝復活を虎視眈々(こしたんたん)と狙っているのかも──。
2019年08月14日強化本部長に復職した千恵子氏「あの恐怖支配がまた始まってしまうのか……」(体操クラブ関係者)そんな落胆の声が続々と上がっている。12月10日、日本体操協会は、塚原光男副会長・千恵子女子強化本部長の宮川紗江選手に対するパワハラ行為の処分を発表した。「第三者委員会の調査結果は“配慮に欠け不適切な点も多々あったとはいえ、悪性度の高い否定的な評価に値する行為であるとまでは客観的に評価できない”というもの。要は“パワハラとは認定されない”という結論でした。宮川選手と速見佑斗コーチへの引き抜き行為も認められませんでした」(スポーツ紙記者)体操協会は、これを受けて塚原夫妻に科していた一時職務停止を解除した。「こんな大騒動を起こした張本人たちなのに、いっさいおとがめなしで復職。この結果に、関係者は“あの事件を彷彿とさせる、またなのか……”と、みんながボヤいています」(体操クラブ関係者)あの事件とは、’91年の全日本選手権で起きた大量ボイコット事件のこと。「これは塚原夫妻の露骨な引き抜き工作に対する抗議で、女子選手を含む55人が出場を拒否したんです」(前出・スポーツ紙記者)当時は塚原夫妻による実力のある選手への引き抜き行為が横行し、世界選手権の代表7人中3人が彼らの運営する朝日生命体操クラブ所属の選手となっていた。「朝日生命の選手の採点を優遇したり、本当にやりたい放題でした。このボイコット事件の責任をとって塚原光男氏は女子競技委員長を辞任しました。ですが、塚原夫妻はその後すぐに復権し、女子の日本代表が朝日生命体操クラブの選手で占められるほど、体操界を牛耳っていきました」(同・スポーツ紙記者)体操協会は、なぜこのようなパワハラ問題が起きてしまったのかを改めて検証する『特別調査委員会』と、第三者委員会から受けた提言を遂行するための『提言事項検討委員会』の設置を決定。特別調査委の調査結果次第では、改めて塚原夫妻に対して懲戒処分が下る可能性も……。「結局、今回の騒動が起きても協会の体質は変わらなかったということです。塚原夫妻が“私たちを処分したら協会を訴える”と、脅しともとれるような発言をしたという話もあります。協会も不透明な資金の流れなど突かれたら痛いところがあるようで、彼らに強く出られない。おそらく処分されないでしょうね」(前出・体操クラブ関係者)膿を出し切れなかった体操協会に、世間の厳しい目が光っている─。
2018年12月18日2018年9月3日、日本体操協会の塚原光男副会長と妻の千恵子女子本部長が、『週刊文春』(文藝春秋社)に掲載された自身の記事が不適切として、東京地裁に「掲載禁止の仮処分命令の申し立て」を行ったことが話題になりました。このような出版物の掲載禁止要求は極めて異例で、対応が注目されましたが、東京地裁は5日に「差し止めの要件を充足しない」として却下しています。犯罪行為や不貞など、掲載された内容が真実ならば致し方ない部分もありますが、事実と異なる場合はやはり掲載を差し止めたいもの。そのようなことは可能なのか。また、過去に事例はあるのか。パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士に見解をお伺いしました。 ■差し止めは可能なのか?櫻町弁護士:「名誉毀損にあたる記事が公表されそうなときに、これを一般の目に触れないようにするための法的手段としては、今回のような「出版物(週刊誌等)への記事掲載差し止め」という形のほか、出版(製本)差し止め、頒布(販売、配布)差し止めといった形があります。このような「事前の」差し止めが認められるかについてのリーディングケースとしては、最高裁昭和61年6月11日判決(民集40巻4号872頁)があります。この最高裁昭和61年判決は、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害された者は、損害賠償(民法七一〇条)又は名誉回復のための処分(同法七二三条)を求めることができるほか、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対し、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差し止めを求めることができるものと解するのが相当」として、「人格権としての名誉権に基づく差止請求」を肯定しました(なお、この裁判自体は、差し止めの可否が直接的に争われたものではなく、雑誌出版差止めを裁判所が認めたことは違法だとして、雑誌の発行会社が国などに対して損害賠償を求めたものです)。ただし、こうした事前差し止めは、表現が一般に伝わる前に制限してしまうものであり、「表現の自由」(憲法21条)に対する重大な制約であることから、差し止めが認められるべきかどうかについては、慎重に判断しなければならないとされています。 ■裁判所の判断は…櫻町弁護士:「この点について上記最高裁昭和61年判決は、「表現行為に対する事前抑制は、新聞、雑誌その他の出版物や放送等の表現物がその自由市場に出る前に抑止してその内容を読者ないし聴視者の側に到達させる途を閉ざし又はその到達を遅らせてその意義を失わせ、公の批判の機会を減少させるものであり、また、事前抑制たることの性質上、予測に基づくものとならざるをえないこと等から事後制裁の場合よりも広汎にわたり易く、濫用の虞があるうえ、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられるのであつて、表現行為に対する事前抑制は、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法二一条の趣旨に照らし、厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる」として、「厳格かつ明確な要件」を満たす場合にのみ、差止請求が認められるとしました。そして、その「厳格かつ明確な要件」について、具体的には「表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差し止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差し止めが許されるものというべき」としています。今回、文春オンラインの記事によれば、「塚原氏側の代理人弁護士から東京地裁に「掲載禁止の仮処分命令の申し立て」、事実上の出版の事前差し止め請求がなされた。」とありますが、名誉権に基づく差止請求であったのかどうかは不明です(ただし、当該記事が、塚原氏らのパワーハラスメント等について取り上げたものであったとすれば、記事の内容が名誉毀損にあたるとして、名誉権に基づく差止請求として申し立てたものと推測されます)。東京地裁は、この仮処分申請を「差し止めの要件を充足しない」として却下したということですから、差止めが認められる要件を充足していなかったため、裁判所は塚原氏らの差止請求を認めなかったということになりますが、東京地裁が、最高裁昭和61年判決の示した厳格かつ明確な要件、すなわち、「表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき」という要件を用いたとすれば、この要件をクリアするハードルは非常に高いといえます。仮処分の申立てが認められるかどうかも重要ですが、申立てをすること(そして、それを公表すること)によって文春側を牽制するという意図もあったのかもしれませんね」 ■書いたもの勝ちにはならない「表現の自由」に配慮し慎重に判断する必要はあるものの、「厳格かつ明確な要件」を満たしている場合には、出版物の差し止めが認められることもあるようです。「書いたもの勝ち」にならない法律も、しっかりと用意されているのですね。*取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)塚原夫妻が『週刊文春』に「掲載差し止め」を要求するも却下認められたことはあるの?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。塚原夫妻が『週刊文春』に「掲載差し止め」を要求するも却下認められたことはあるの?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年10月09日経費の内訳などについて問い合わせたが、明確な回答がなかった日本体操協会体操女子パワハラ問題で、新たな問題点が浮上してきた。それは『体操女子2020東京五輪強化選手(以下、2020)』というプロジェクトをめぐる疑惑である。「もともと『ナショナル選手』という制度があるのに、さらに新たな枠組みを作る必要があるのか、そもそも疑問でした。強化選手は知らぬ間に入れ替わるし、『味の素ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)』使用規定が突然、変更されたりします。どういう経緯で始まったのかも不明なまま。女子強化本部長が牛耳っているのは明らかでしたし……」(体操関係者)『2020』は、リオ五輪で体操女子がメダルをとれなかった反省から始まった制度とされている。東京五輪に向けて、メダル獲得のために選手を強化するのが狙いだ。現在14名の選手が入っている。しかし、『週刊女性』が『日本体操協会』に情報開示を求めると、いくつもの疑問点が見えてきた。’17年の段階では《強化本部員より推薦、強化本部長の承認を得た選手》が対象者とされていた。それが’18年になると、なぜか強化本部員の権限が消滅して《強化本部長の推薦を得た選手》に変更されている。その強化本部長とは、渦中の塚原千恵子氏だ─。「彼女に気に入られないと、参加できないってことですよね?“女帝”と言われてもしかたがない絶対的な権力を協会が与えてしまいました。だから私たちは彼女の顔色をうかがうしかないんです。しかも年間を通じてNTC及び『塚原体操センター』での強化合宿に参加できる者という条件もあって……。彼女のおひざ元で練習していたら、言いたいことも言えなくなりますよ」(同・体操関係者)NTCの使用法についても不思議な話がある。速見元コーチは会見で、強化本部長から「『2020』に入ってないから、NTCは使えない」と言われたと述べた。しかし、利用規定には『2020』を優遇するとはない。「内村航平選手や白井健三選手が使用を申請しても、『2020』が合宿をしているからという理由で断られたこともありました。恣意的な運用ですよね。塚原夫妻がNTCという素晴らしい施設を私物化しているとしか思えません」(スポーツ紙記者)■JOCからの助成金はどう使われる?日本オリンピック委員会(以下、JOC)からの助成金がどう使われているかも不透明だ。’17年度は約3071万円、’18年度は約5269万円がJOCから『2020』に支払われているが、内訳を見ると’17年は《12回の月次合宿と2回の海外合宿の14事業》、’18年は《月次合宿及び海外合宿2件を予算計上済》と記載されているだけ。『週刊女性』は、詳細な内訳や管理方法、資金に関する強化本部長の権限などを明らかにするよう協会に求めたところ、「問い合わせが殺到しているため、1件1件に対応するのが困難です」と明確な回答は得られなかった。これでは女帝が自分の思うままに助成金を使っているのではないかと、体操界で勘ぐられてもしかたがない。9月11日放送の『スッキリ』(日本テレビ系)に生出演した塚原光男副会長が『2020』についても話した。だが、この発言を「間違いだらけだ」と厳しく指摘するのは、バルセロナ五輪・銀メダリストの池谷幸雄氏。彼が体操関係者に確認すると、現場からはこんな声があがってきた。「光男氏は『2020』にはトップ選手はみんな入っていると言っていましたが、実際はナショナル、ジュニアナショナル選手の半分くらいしか入っていません。宮川選手だけが拒否していたかのような言い方はおかしい。『2020』自体が年間を通した合宿を行っている実態がないし、強化内容もよくわからない。納得できるプロジェクトではなかったので、入ることに不安を感じた選手やコーチも多かったはずです」(現役の体操クラブコーチ)宮川紗江選手は『2020』コーチ陣のほとんどが朝日生命関係者なので、入ると引き抜かれるのではないかと恐怖を感じたと話していた。これに対して、光男氏は「朝日生命のコーチは11人中3人しかいない」と反論したが、「『2020』のコーチには朝日生命関係者が6人います。その中の2人はJOCの専任コーチでもある。3人という数字にどんな根拠があるのかまったくわかりません」(前出・体操クラブコーチ)光男氏は『2020』の強化内容に関しては、コーチたちと話し合って決めているとも述べていた。「話し合いなんてないですよ。ほとんどのことは、知らない間に決まっています。意見を言えば、協会に“協力的ではない”というレッテルを貼られるだけですから。私たちは塚原夫妻と意見を言い合えるような立場ではないんです」(体操協会関係者)■パワハラ新証言も千恵子強化本部長のパワハラについても、新たな証言が出てきた。「『2020』のトライアウトを受けるには年齢制限があります。うちの選手ははずれていたので受ける権利がないのはしかたがないと思います。でもナショナル選手なのにNTCの利用時間に制限がかかるのは納得できません。抗議しましたが、とりあってくれませんでした。それなのに、うちの選手より下の成績の選手がNTCの利用で優遇されています。結局、千恵子先生のお気に入りにならなければダメなんです。紗江ちゃんとは違う形でいろいろな選手がパワハラを受けているんですよ」(別の体操クラブコーチ)光男氏は、宮川選手が強化合宿から「世界選手権、頑張るんだ!」と元気に帰っていったから、私たちが逆告発されるのは想定外だったとも話していたが、「合宿から帰ってきたときの紗江ちゃんは、今までに見たことのないような顔をしていたそうですよ。選手の気持ちとか表情とかがわからない人たちなんですかね……」(前出・体操クラブコーチ)9月7日に第三者委員会が設立されたが、真相解明にはまだ時間がかかる。日本体操協会は10日に会見を開き、調査が終わるまで光男副会長と千恵子強化本部長の職務を一時停止すると発表した。選手たちがのびのびと競技に打ち込める日は、いったいいつになるのだろうか─。東京五輪まであと2年。体操界は“選手ファースト”を徹底してほしいものだ。
2018年09月17日8月30日の朝、自宅から出てきた“女帝”は報道陣に何も語らずスポーツ界のパワハラ体質はいったいどこまで広がっているのか─。宮川紗江選手の告発で、日本体操協会の塚原千恵子女子強化本部長が“女帝”としてクローズアップされている。一連の問題の発端は、8月15日に速見佑斗コーチが宮川選手に対する暴力行為で処分されたことだった。21日になって、宮川選手が弁護士を通して《パワハラされたと感じていません》という直筆文書を発表。指導継続を求める意思を明らかにした。29日に宮川選手が記者会見を開く。暴力行為があったことは認めながらも処分が重すぎると訴え、体操協会の幹部である塚原夫妻からのパワハラを告発した。速見コーチに処分が下される前の7月15日、彼女は塚原夫妻から味の素ナショナルトレーニングセンター(以下、NTC)内の小部屋に呼び出されたという。「宮川選手の証言は、かなり具体的でしたね。“暴力の話が出ている。あのコーチはダメ。だからあなたは伸びない。私なら速見の100倍教えられる”と詰め寄られ、暴力があったと証言するよう求められたそうです。彼女がそれを拒否して“これからも家族とともに先生を信頼してやっていきます”と言うと、“家族でどうかしている。宗教みたいだ”となじられたとも話しました」(スポーツ紙記者)宮川選手が塚原本部長からの高圧的な態度に恐怖を感じ始めたのは、2年前の冬だったという。「“2020東京五輪特別強化選手”という制度がスタートしたのですが、彼女は手を挙げなかった。強化方針が具体的ではなく先行きが不透明だというのが理由で、ほかにも参加を見送った選手が多くいました。もともと“ナショナル選手”という制度があるのに、なぜ新たな枠組みを作るのか、疑問の声が上がったのは当然でしょう」(前出・スポーツ紙記者)すると、塚原本部長から宮川選手の自宅に電話があり、「“2020”に申し込みをしないと協会として協力できなくなる。五輪にも出られなくなるわよ」と脅迫めいた言葉を突きつけられたという。「その後、実際にNTCの使用が制限されるという事態に。宮川選手はしかたなく今年6月に参加したのですが、今度は塚原夫妻の『朝日生命体操クラブ』への移籍をすすめられたというんです。それで彼女は“最初から速見コーチの過去の暴力を理由に、コーチを排除して自分を朝日生命に入れることが目的だったんだと確信した”と話しました」(前出・スポーツ紙記者)宮川選手は「体操女子を変えるには本部長が代わるとか、何か手を打つことを考えなければいけない」と訴えた。18歳の少女がここまで踏み込んだ発言をしたのは、競技を続けられなくなるという危機感があったからだ。■資金源を断たれて体操ができなくなる「宮川選手はスポンサー契約していた『株式会社レインボー』という会社との関係が悪化していました。その裏にも、千恵子氏が関係していると言われています。スポンサーを引きはがすことで、彼女とコーチを孤立させようと画策したのではないか、と」(体操関係者)そんな噂が出てくるのは、過去に似たようなケースが繰り返されていたからだ。「塚原夫妻が選手に“うちに来たほうがうまくなる”“あのコーチはダメ”と声をかけて勧誘する手口は有名です。小さい体操クラブが育ててきたジュニアの選手が日本代表になると『朝日生命』所属になってしまう。選手の引き抜きはご法度なんですが、彼らのやり口はとても狡猾なんです。5年前にも、今回とそっくりな例があります。『羽衣体操クラブ』で指導していた井岡淑子コーチが女子選手2人に暴行したとして、傷害容疑で書類送検されました。すると彼女が指導していた同クラブ所属の杉原愛子選手は、朝日生命に引き取られるという形で移籍しています。コーチの不祥事に便乗して引き抜きをするやり口ですね」(スポーツジム関係者)露骨な引き抜き工作から大騒動に発展したことも。’91年に開催された全日本選手権では、女子選手を含む’91人中55人が出場をボイコットした。「当時、体操界を牛耳っていた“塚原帝国”に対する抗議でした。実力のある選手の引き抜きが続き、世界選手権の代表7人中3人が朝日生命所属の選手でしたから。朝日生命の選手の採点を優遇したりして、本当にやりたい放題だったんです。夫の光男氏は責任を問われて競技委員長を辞職しています。この一件であまり強引な引き抜きはできなくなり、最近は朝日生命の日本代表選手が減少。今回は焦って荒っぽいやり方をしてボロが出てしまったんじゃないかな」(前出・体操関係者)■“贈り物は厳禁”が習慣化?「光男氏は日本体操協会の副会長で、夫婦で要職を務めています。光男氏は’68年のメキシコ五輪から3大会連続で金メダルを獲得した体操界のレジェンド。千恵子氏もメキシコ五輪に出場し、息子の直也氏はアテネ五輪金メダリストという体操一家です。体操界への貢献度が高かったのは確かでしょう。朝日生命は名門と言われ、夫妻は指導者として多くのオリンピック選手も輩出しているので、体操界への影響力は絶大。特に千恵子氏は女子体操界では“女帝”的存在ですね」(前出・スポーツ紙記者)選手としての実績があり、指導者としても力を発揮してきたわけだが、尊大な振る舞いに眉をひそめる関係者も多いという。これまで実態が明らかにならなかったのは、圧倒的な権力を持つ塚原夫妻への“忖度”があったからだ。「朝日生命では、試合に出場できるかどうか瀬戸際の選手の親は、塚原夫妻に付け届けするのが常識だったようです。いいものを渡せば優遇されることを知っていますから。お中元を贈ったら気に入らなかったのか送り返されてきたので、現金を渡した親もいた。品物は送り返してきたが、現金は受け取ったそうです。以前にお金持ちの親がコーチたちに現金を配ったことがあり、それから定着してしまった習慣らしいですね」(体操クラブ関係者)権力の集中が続いたことで、組織自体にも歪みが生じている。体操女子ナショナルコーチの中には、朝日生命所属のコーチや塚原本部長と親しい指導者が在籍している。「ナショナルチームのコーチは、日本の体操を強くするための活動をしなければなりません。さまざまな選手を指導して、日本チーム全体を強化するのが仕事ですから。でも、朝日生命のコーチはナショナルコーチとしてJOC(日本オリンピック委員会)から給料をもらっていながら、NTCでも朝日生命の選手しか熱心に指導していないのは、誰でも知っていますよ。これって、JOCのお金で自分のクラブの選手を強くしているということになりますよね」(前出・体操関係者)宮川選手が当初申し込みを見送っていた“2020特別強化選手”に関しても、不可解な事態が発生している。内村航平選手や白井健三選手など体操男子のナショナル選手がNTCの使用を申請して断られたというのだ。“2020”の女子選手数人が合宿をしていることが理由だという。「NTCはトップレベルの競技者用のトレーニング施設です。それなのに、内村や白井のような選手が使用を断られるなんてありえません。とても大きな施設なので、男女合同でも十分に練習できるんですよ。“2020”が異常に優遇されているのは、バックに千恵子氏の存在があるからでしょう」(前出・体操関係者)体操選手にとっては、とりあえず“2020”に参加したほうが良好な練習環境を得られそうだ。それでもなぜ拒否するのだろうか。■“2020”コーチの多くは朝日生命所属「“2020”のナショナルコーチの多くは朝日生命のコーチなんです。だから“2020”に入ると、朝日生命に引き込まれてしまう。そうなれば宮川選手も速見コーチと引き離されてしまう可能性は高い。それを恐れて断っていたんじゃないかな。これでは塚原夫妻がNTCという素晴らしい施設を私物化しているとしか思えません。そもそもJOC強化費のお金の流れがまったく見えないところも不思議。協会は情報を開示していないから、どこで何に使っているのかわからないんです」(前出・体操関係者)宮川選手の会見のあと、塚原光男副会長は「全部ウソ」と発言。千恵子本部長も、「悪いことはしていないし、宮川が勝手に言っている」と宮川選手の証言を全面否定した。「選手の告発に対して高圧的な態度をとったことで、印象は最悪です。体操協会は30日に臨時の会議を開いて対応を協議。具志堅幸司副会長は報道陣に対し、塚原副会長の発言について“非常に残念な言葉。言うべきではなかったと思う”と苦渋の表情をした。真相解明に向けて第三者委員会を設置することを明言しました」(前出・スポーツ紙記者)塚原夫妻は翌31日になってトーンダウン。発表された声明文には《私たちの言動で宮川紗江選手の心を深く傷つけてしまったことを本当に申し訳なく思っています》と記されていた。しかし、《決して宮川選手を脅すための発言はしていません》と、パワハラについては依然として認めていない。宮川選手とのやりとりを録音したということで、証拠として第三者委員会に提出するという。体操界からは宮川選手を応援する声が上がっている。ロンドン五輪代表だった田中理恵は《いろんな形での助け方があります。私もさえのためにも、選手たちのためにも、協力します》とツイート。かつて千恵子本部長の指導を受けていたことのある鶴見虹子氏も、《元朝日生命で元日本代表として、全力で宮川さえちゃんを応援したいです。皆さんも応援してあげて下さい》とツイートした。バルセロナ五輪銀メダリストの池谷幸雄氏に話を聞くと、元日本体操協会理事という立場から組織変革の必要性を語ってくれた。「もし第三者委員会が宮川選手の言うことが本当だったと認めたら、協会は変わらなくてはいけないと思います。人事構成も、システムも。ただ、それよりもまず、宮川選手がいち早く練習できて速見コーチが指導できるようにしてほしいですね。彼女は世界選手権を辞退すると言っていましたが、今ならまだ間に合います。ケガもしていないのに、選手本人が試合に出ないという状況にしちゃダメですよ。選手ファーストではない協会の姿を見せてしまったら、選手たちは何を希望に練習してよいのかわからなくなってしまいます」慎重に言葉を選びながらも、元選手として宮川選手の置かれた状況を気遣っていることが伝わってきた。速見コーチは処分撤回を求めて仮処分を申し立てていたが、31日に弁護士を通じて取り下げを発表。「もとを正せば私の行動によりいちばん被害を受けているのが宮川選手です。しかしながら宮川選手がいちばん望んでいることが私の指導の復帰です。私がすべきことは処分を不服として争うことではなく処分を全面的に受け入れ反省し、みなさまに認めてもらったうえで、一刻も早く正々堂々と宮川選手の指導復帰を果たすことが選手ファーストだという結論に至りました」暴力も、パワハラも、許されることではない。何よりも今は18歳の少女の未来を最優先に考えることができるかが問われている。
2018年09月03日日本が史上最多のメダル獲得という素晴らしい結果に終わったロンドンオリンピック。中でも体操の内村航平選手は個人で金メダル、団体でも銀メダルと素晴らしい活躍でした。さて、その内村選手の演技中に「伸身のコールマン!」、「トカチェフ!」といった技の名前がいくつも登場しましたが、これらはすべて人の名前から付けられた技名。スポーツのテクニックには同じように人名が付けられた技が数多く存在します。今回は、そんな人の名前がついたスポーツの技を紹介します。●『モリスエ』ロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得し、現在はタレントとして活躍する森末慎二さんの名前が付けられた平行棒の技名です。後方棒上かかえ込み二回宙返り腕支持(未経験者にはどういう技かわかりません……)で技の難易度はD難度。体操の技には人名が由来となっているものが非常に多く、日本人の名前が由来になった技ですと、モリスエ以外にも、ツカハラ(塚原光男)、エンドー(遠藤幸雄)など数多く存在します。●『イナバウアー』2006年に行われたトリノオリンピックで、荒川静香選手が披露したことで一躍有名になったフィギュアスケートの技名。旧西ドイツの女子フィギュアスケート選手のイナ・バウアー選手が開発した技なので、この名前が付きました。●『アクセルジャンプ』フィギュアスケートの中継などでよく聞くのが『ダブルアクセル』や『トリプルアクセル』。この『アクセル』というのは実は人の名前から付けられています。元になったのはノルウェーのアクセル・パウルゼン選手。「案外知らなかった」という人が多いのではないでしょうか? ちなみに『ルッツジャンプ』の「ルッツ」や『サルコウジャンプ』の「サルコウ」も由来元は人名です。●『バサロ泳法』『バサロ泳法』とは、背泳ぎにおいての潜水での泳法のことです。1988年のソウルオリンピックで日本の鈴木大地選手がバサロ泳法を駆使して金メダルを獲得したことから、一般の人にもこの名前が知り渡りました。名前の由来となったのは1970年代に活躍したアメリカのジェシー・バサロ選手。バサロ泳法はあまりにも有効なテクニックであるため、現在では潜水で泳いでもいい距離が15メートルと定められています。●『デンプシー・ロール』ボクシングには『デンプシー・ロール』という、体を振り子のように揺らしてその反動で強力なパンチを打つテクニックがあります。某有名ボクシング漫画の主人公がよく使うのでもしかしたら聞いたことがあるかもしれません。このデンプシー・ロールは、ジャック・デンプシーというボクシング選手が編み出したため、この名前がつけられました。●『アリ・キック』アントニオ猪木選手が使う『アリ・キック』も人名由来のテクニック。1976年に日本武道館でボクサーのモハメド・アリと戦った際に繰り出したローキックにつけられた名前です。プロレスの技名は自分の名前を付けたものが多いのですが、これは相手の名前が付けられ定着した珍しい技名です。●『クライフ・ターン』数多くあるサッカーのテクニックですが、人名が由来となっているものは非常に少数。その少ない中でも非常に有名なのが「トータルフットボール」で知られるヨハン・クライフの名前がつけられた『クライフ・ターン』です。ボールをけるフリをして軸足の後ろにけりだしてターンをするこのテクニックは、世界中のサッカーファンをとりこにしました。今回紹介した以外にも、人名が由来となっているスポーツのテクニックは数多くあります。特に体操種目は最初に国際大会でその技を成功させた選手の名前が採用されるため、ほとんどが人名由来のものです。そのうち、内村航平選手の名前が由来の『ウチムラ』という技名が追加されるかもしれませんね。(貫井康徳@dcp)
2012年11月23日