エレコムは5日、スマートフォンとアプリで楽しむVRヘッドセット「EDG-VRG001」と、組立式スマホ天体望遠鏡「EDG-TLS001」を発表した。ともに4月上旬に発売する。価格(税込)は「EDG-VRG001」が5,530円、「EDG-TLS001」が15,250円。○EDG-VRG001「EDG-VRG001」は、バンダイグループのメガハウスとのコラボレーションで制作された「ボッツニュー Lite」シリーズのVRヘッドセット。専用アプリをインストールしたスマートフォンをセットし、仮想空間を疑似体験できる。内部には2つの焦点を持つレンズを内蔵。投影されたVR映像を体験するほか、スマートフォンのジャイロ機能を利用したパノラマ映像も楽しめる。レンズには、歪みが少ない高品質の日本製を採用。装着するスマートフォンの画面サイズは4~6インチに対応する。専用アプリや映像コンテンツなどは「ボッツニュー公式サイト」からダウンロード。本体サイズは約W170×D170×H100mm、重量は約25g。○EDG-TLS001「EDG-TLS001」は、はさみと定規だけで作れるカートン組立式天体望遠鏡。スマートフォンを接眼部に装着することで、光学約35倍の天体望遠鏡として機能する。カメラアプリを使用して、画像の撮影や動画の録画が可能だ。本体レンズとスマートフォンのデジタルズーム機能を利用することで、最大140倍までの拡大に対応。レンズには日本製の光学ガラスアクロマートレンズを採用し、底面に三脚取付用のねじ穴を装備する。未使用時にほこりの付着を防止するカバーが付属。本体サイズは約W420×D145×H約180mm、重量は約220g。
2016年04月05日産業技術総合研究所(産総研)は4月1日、地球観測衛星データに付加価値を付けた「ASTER-VA」を無償提供すると発表した。衛星データは、米国航空宇宙局(NASA)が運用する地球観測衛星「TERRA」に搭載された経済産業省開発の光学センサー「ASTER」で観測されたもので、NASAからインターネット回線を通じて取得・処理し、わかりやすいインターフェースで提供される。ASTER-VAは、産総研独自の擬似天然色画像合成技術を適用した画像データのほかに、地質情報を含む地図との重ね合わせのために地形の凹凸やずれをあらかじめ補正(オルソ補正)したデータ、標高データで構成される。さまざまな地理空間情報の閲覧ソフトウェアなどで使用できるように、KML形式とGeoTIFF形式のいずれかのファイル形式から選択することができる。産総研は、ASTER-VAは全世界のデータを備えており、防災や環境、農林水産業など広範な分野で利活用でき、また利用制限のない公的データ(知的基盤データ)として、地理空間情報を活用したビジネスでの利用も期待されるとしている。
2016年04月01日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月31日、金星探査機「あかつき」の試験観測について、中間報告を行った。あかつきは2015年12月7日に金星に到着。4月からの定常観測に向け、これまで試験観測を行ってきた。あかつきの観測機器の状態は良好ということで、まだ試験観測ながら、興味深い成果が得られつつある。あかつきは金星到着後、12月20日に軌道修正を実施し、現在、遠金点36万km、近金点1,000~10,000km、周期10.5日の軌道を周回している。今後、大きな軌道修正は予定しておらず、定常観測も、この軌道のまま行う計画だ。搭載した観測機器は、順次立ち上げを実施しており、現時点で概ね順調だという。あかつきの設計寿命は4年半。金星周回軌道への投入失敗があったため、観測の開始が5年も遅れてしまったが、これまでのところ、特に故障は見つかっていない。放射線による劣化が予想より低かった理由について、JAXAの中村正人・あかつきプロジェクトマネージャは、「この5年間、太陽活動が低下していたせいでは」と推測する。当初の計画よりも遠金点が高い軌道であるため、観測画像の解像度が低下する時間帯が長いものの、これはあまり大きな支障とはならないようだ。ミッション達成度を示すサクセスクライテリアにおいて、すでにミニマムサクセスを達成。フルサクセスには2年間の観測が必要なため、しばらく時間がかかるものの、試験観測を始める前に比べると、達成できる可能性は「高まったと思う」と中村プロマネ。エクストラサクセスについても、「いけるんじゃないか」との見通しを示した。現在の燃料の残量は3kg(最大7kgの可能性も)。今後、軌道制御に1kg、姿勢制御に1kg使い、残りの1kgは予備としておき、5年間観測できる可能性があるという。前回の失敗で、一時は金星観測の実現すら危ぶまれていた。もちろんまだ楽観はできないものの、ここまで状況を持ち直したことには驚くほかない。あかつき搭載の観測機器の状況については、それぞれ担当者から説明があった。「1μmカメラ(IR1)」については、東京大学の岩上直幹教授が説明した。IR1は、すでに金星の昼側と夜側の撮影に成功。昼側の観測では、金星最大の謎であるスーパーローテーションを観測するが、撮影データを画像処理すると凹凸が良く見えており、問題なく下層大気の雲の追跡ができそうだという。一方、夜側の観測では、地上付近の水蒸気を観測することが主目的であったが、実際に観測されたデータを調べてみると、主に地形が見えていることが分かった。このデータから、地表面の鉱物組成が分かると期待されている。金星に火山があるのかないのか議論されているが、IR1の観測により、この議論に決着を付ける可能性もあるとか。「2μmカメラ(IR2)」については、JAXA宇宙科学研究所の佐藤毅彦教授が説明した。IR2はスターリング式の冷凍機で検出器を冷やす必要があるが、経年劣化のため、最初はなかなかうまく冷却できなかったという。その点には苦労したものの、最近になってようやく解決、昼側も夜側も撮影できるようになったそうだ。夜側の観測では、下層からの熱放射により、雲の濃淡がシルエットのように浮かび上がる。実際に撮影した画像には、南北に広がりを持つ巨大な雲の塊が見えている。昼側の撮影では、緯度50°より高緯度側で劇的に雲の高さが変わっており、複雑な構造があることが分かった。これらは今まで、よく知られていなかったことだという。「中間赤外カメラ(LIR)」については、立教大学の田口真教授が説明した。LIRは雲自身からの熱放射を撮影するため、昼側も夜側も同じように、雲頂の温度を観測することができる。すでに定常観測に近い連続的な撮影も行っており、これまでに数10枚もの画像を取得したとのこと。LIRでは、金星到着直後に撮影された、弓状の模様が写っている画像が大きな話題となった。この大きな構造はその後4日間に渡り観測されたものの、その後は見つかっていない。何か突発的な現象だったと見られているが、そのメカニズムについては現在検討中とのことだ。「紫外イメージャ(UVI)」については、JAXA宇宙科学研究所の山﨑敦助教が説明した。UVIは雲頂で反射された太陽紫外線を観測するため、昼側でのみ使用する。これまであかつきは夜側の軌道であったため、ほとんど撮影チャンスが無かったとのことだが、4月以降は昼側の軌道になるため、本格的な観測が開始できる見込み。紫外線は、雲に含まれる吸収物質の量により反射光の明るさが変わるため、その濃度の違いによる模様が表れ、これを追うことで、雲の速度を算出することができる。紫外線観測はこれまで、他国の金星探査機でも行われてきたが、あかつきでは違う波長域も使った観測を行い、雲の成因にも迫っていくという。「雷・大気光カメラ(LAC)」については、北海道大学の高橋幸弘教授が説明した。LACはあかつきの観測機器の中で唯一高圧電源を使っているため、10日に1回、1時間程度しかない日陰時に運用が限られている。現在、慎重に電圧を上げていく運用を行っているところで、本格観測の開始は6月あたりになる見通しだ。「金星にも雷はあるのか?」というのは、30年以上も続く大論争。未だに決着が付いていないのは、これまで雷専用のカメラが無く、ノイズと雷の区別が難しかったためだが、LACは1秒間に3万回も計測することで、時間変化から両者を区別することが可能だ。あかつきでこの長年に渡る論争に決着が付けられるか、期待されている。「超高安定発振器(USO)」を使った電波掩蔽(えんぺい)観測については、JAXA宇宙科学研究所の今村剛准教授が説明した。あかつきが金星の背後に隠れるときに電波を出せば、電波は金星大気の中を通って地球に届く。この電波の周波数と強度の変化から、大気の高度方向の構造を調べることができる。電波源として搭載されているのがUSOであるが、周波数安定度が劣化していないことを確認。試験観測を、3月4日と3月25日に実施した。周波数の時間変化から気温の高度変化を算出したところ、複雑な層構造が存在することが分かった。今後、他のカメラで得られた水平方向の情報を補完する役割が期待されている。
2016年04月01日石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は3月22日、氷海開発のための高精度氷況観測センサによる国内実証試験に成功したと発表した。JOGMECでは、日本の資源エネルギーの安定確保を図るため、北極海などにおける資源開発に向けた技術ソリューション事業の一環として「氷海開発を支援するための高精度氷況観測技術の開発」を実施している。同事業では、施設周辺の海氷分布および接近速度を検知する「オンボード海氷レーダ」、海氷厚、積雪深および氷表面形状が計測可能な「高機能型EM-BIRD(航空機搭載型電磁誘導センサ)」、氷山などによる海底洗掘の痕跡を水中から高精度観測するための「パラメトリックサブボトムプロファイラ」の3種類の機器について、開発および高精度・高機能化を図ってきた。JOGMECは今回、これらセンサの実証実験を実施した。オンボード海氷レーダについては、精度検証に必要となるデータ取得を目的に、2016年2月25日~2月26日にかけて、東京大学が北海道紋別市にて流氷を対象に実証試験を実施。オホーツク・ガリンコタワーが運営する氷海展望塔オホーツクタワーおよび流氷砕氷船「ガリンコ号Ⅱ」に機器を設置しデータの取得を行った。高機能型EM-BIRDの実証試験は、2016年3月3日に実施され、海上技術安全研究所、北見工業大学、日本大学および北日本港湾コンサルタントが参加。ヘリコプターから同センサを吊り下げて海氷上を飛行することで、海氷の厚さ、積雪の深さおよび氷表面の形状を高精度に観測できたという。また2015年4月30日と10月7日には、東京大学および海上技術安全研究所が、長野県青木湖および北海道サロマ湖にて、ゴムボートおよび小型船舶に開発したパラメトリックサブボトムプロファイラを設置し、海底計測を実施。その精度を検証した。JOGMECは、氷海域における安全で効率的な開発を行うためには、対象海域における氷況を把握できる観測技術が必要不可欠であるとしている。
2016年03月22日宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立天文台、アメリカ航空宇宙局(NASA)の3者は3月10日、太陽観測衛星「ひので」が撮影した部分日食の画像を公開した。公開された画像は「ひので」が3月9日午前9時(日本標準時)に高度680kmでインドネシア上空を飛翔している際に、搭載しているX線望遠鏡で撮影したもの。X線で輝く太陽コロナを背景に、新月状態の黒い月が太陽の南西(画像の右下)から現れ、北に向けて太陽面を横切って行く様子がとらえられている。「ひので」は2006年に打ち上げられた日本の太陽観測衛星。搭載された望遠鏡は、国立天文台が日本国内のパートナーとして、NASAおよび英国素粒子物理学・天文学研究会議(STFC)が国際パートナーとして参加して、共同開発された。また、これらの機関に加えて、欧州宇宙機関(ESA)とノルウェー宇宙局(NSC)が協力して、軌道上での科学運用を実施している。
2016年03月10日米国の重力波観測所「LIGO」(ライゴ)を中心とする国際研究チームは2月11日(現地時間)、宇宙で発生した重力波を初めて直接観測することに成功したと発表した。アインシュタインが重力波の存在を予言するきっかけとなった「一般相対性理論」を発表してから100周年となる今年、その正しさが裏付けられるとともに、「重力波天文学」という新しい宇宙研究の扉が開いた。発表によると、観測に成功したのは日本時間2015年9月14日18時51分(米東部夏時間同日5時51分)のことで、今から約13億年前に、質量が太陽の29倍と36倍もある2つのブラックホールが合体したときに生成された重力波であったとされる。その後、今年1月までかけて検証が重ねられ、今回の発表となった。重力波は、質量をもった物体がある法則で動く際、そのまわりの時空をゆがませ、さらにそのゆがみが波のように伝わるとされる現象で、別名「時空のさざ波」とも呼ばれている。重力波の存在は、物理学者のアルベルト・アインシュタインが1918年に、その2年前に発表した「一般相対性理論」を基に予言した。これまで計算や中性子星の動きの観測などから、間接的にその存在は証明されていたものの、直接観測に成功した例はなかった。今回観測に成功したLIGOは、レーザー干渉計という観測機器を使って観測に挑んだ。これはレーザーの光を直交するふたつの方向に向けて発射し、それぞれの反対側に置いた鏡で反射させて戻し、その2つの光を合成させて見比べるということを繰り返す。光は重力波によってゆがんだ空間に沿って飛ぶという性質があり、もし重力波によって時空がゆがめば、その分だけ光の飛ぶ距離が変わるため、合成した際に光の明るさが変化する。LIGOはワシントン州のハンフォードと、ルイジアナ州のリヴィングストンの2か所に置かれたレーザー干渉計からなり、それぞれ1辺4kmのL字型のトンネルをもち、その中をレーザー光が何度も往復している。2005年から2010年にかけても観測が行われたが検出できず、その後検出能力を上げる改良が加えられ、昨年9月から観測が再開されていた。また観測には、フランスとイタリア、オランダが開発した重力波観測所「VIRGO」(ヴィルゴ)、英国とドイツの重力波観測所「GEO 600」(ジー・イー・オー)の観測チームなども参加し、今回の世紀の大発見を支えた。今後、LIGOと同様に改良されたVIRGOや、日本の「KAGRA」(かぐら)も順次観測を開始する予定で、重力波のより詳しい研究が進む。また、重力波で宇宙を見る新しい研究が始まることで、これまで知られていた宇宙の現象に、また別の姿が見られたり、あるいは想像を超えるまったく新しい現象が見つかったりするかもしれないという期待も高まっている。【参考】・News | Gravitational Waves Detected 100 Years After Einstein’s Prediction | LIGO Lab | Caltech・Detection | LIGO Lab | Caltech
2016年02月12日米国の重力波観測所「LIGO」の観測チーム、カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学は2月8日(現地時間)、2月11日に「重力波の探索に関する新しい情報を発表する」と明らかにした。発表内容は不明だが、アルベルト・アインシュタインが100年前にその存在を予測するも、未だ発見されていない「重力波」の検出に成功したという発表なのではないかという見方が強まっている。発表は日本時間2月12日0時30分(米東部標準時2月11日10時30分)から、米ワシントンD.C.にあるナショナル・プレス・クラブで実施される。発表文には「今年はアルベルト・アインシュタインが重力波の存在を予測してから100周年となります。それを記念し、現在も行われている重力波の観測に向けた挑戦について話します」とのみ記載されており、具体的な発表内容については明らかにされていない。また、LIGOと共同観測を行っている欧州の重力波観測所「VIRGO」も、同所にてLIGOと同時に会見を開くとしている。重力波は別名「時空のさざ波」とも呼ばれ、重力は時空を歪ませており、その重力をもつ物体が動くと、その歪みが光の速度で周囲に伝わっていくとされる現象。今から100年前にアルベルト・アインシュタインが発表した一般相対性理論の中でその存在を予測し、これまで間接的に証明されたことはあるものの、未だ直接には検出されていはいない。もし検出に成功すればノーベル賞級とされるほか、重力波を使ってブラックホールや中性子星、超新星爆発など、さまざまな天体や宇宙現象を観測することで、これまで知られていた宇宙の現象に、また別の姿が見られたり、あるいは想像を超えるまったく新しい現象が見つかったりするかもしれないと期待されている。米国や欧州、日本では1990年代から重力波を検出するためのレーザー干渉計の開発を進め、試験的な観測を実施しているが、現在まで検出はできなかった。その後、性能向上の改良を経て、昨年から再び観測が本格化しつつある。先月には、物理学者のローレンス・クラウス氏がTwitterに「LIGOが重力波の検出に成功したようだ」と書き込んだことで大きな話題となった。その後、別の物理学者も、重力波の検出成功に関して書かれた論文を盗み見たと証言するなどし、その信憑性が増しつつある。なお、LIGO、VIRGOは、このうわさに対して沈黙を続けている。○重力波の検出への挑戦重力波の検出をめぐっては、1965年に米メリーランド大学の科学者ジョセフ・ウェーバーが、巨大なアルミニウムの円柱をぶら下げて設置し、重力波が通過した際に円柱がゆがむのを検出することで重力波の存在を証明しようとしたのがそのさきがけである。1968年から69年にかけて、この2台が同時に「検出に成功」したとされるが、その後、第三者による追試など検証が行われた結果、何かの間違いだったと考えられている。レーザー光を使って空間のゆがみを検出する「レーザー干渉計」という観測機器の実用化の目処が経ち、1992年から米国で「LIGO」(ライゴ)という計画がスタートした。LIGOはワシントン州のハンフォードと、ルイジアナ州のリヴィングストンの2か所にレーザー干渉計を設置して同時観測するというもので、2005年から観測が開始された。しかし検出はできず、2010年にいったん観測を停止して改良工事を実施。そして検出能力を10倍にまで高めた「アドヴァンストLIGO」が完成し、昨年9月から運用が始まっている。またフランスとイタリア、オランダは、イタリアのピサに「VIRGO」(ヴィルゴ)を建設。VIRGOもLIGO同様、検出はできず、2011年に観測を停止し、検出能力を10倍も高くする「アドヴァンストVIRGO」への改良が進んでいる。英国とドイツは、ドイツのハノーファーに「GEO 600」(ジー・イー・オー)を建設し、こちらも検出能力を高めた「GEO-HF」に生まれ変わっている。また日本でも、1991年ごろから宇宙科学研究所(現JAXA/ISAS)や東京大学、国立天文台に実験的なレーザー干渉計が作られ、やがてより大型の「TAMA300」という干渉計による試験を経て、現在はニュートリノの観測でも知られる岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡に大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」(かぐら)が建設されている。すでに重力波の観測に必要な最低限の工事は終わっており、2015年度中に重力波の試験観測を始め、また施設全体が完成する2017年度からは本格観測を開始する予定となっている。参考・LIGO Scientific Collaboration - Media Advisory for Feb 11, 2016・FEBRUARY 11th: Scientists to provide an update on the search for gravitational waves - Advanced Virgo・真貝寿明. ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開. 光文社, 2015, 340p.・特集 重力波天文学が拓く宇宙 - 国立天文台・重力波とは? « KAGRA 大型低温重力波望遠鏡
2016年02月10日京都大学(京大)は1月7日、今までX線でしか観測できないと考えられていたブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象を可視光で捉えることに成功したと発表した。同成果は同大 木邑真理子氏、磯貝桂介氏、加藤太一 助教、上田佳宏 准教授、野上大作 准教授らの研究グループによるもの。1月6日(現地時間)に英国科学誌「Nature」の電子版で公開された。同研究グループが今回観測したのは、2015年6月中旬から7月初旬にかけて急激な増光を示したブラックホール連星「はくちょう座V404星」という天体。「はくちょう座V404星」はブラックホールまたは中性子星(主星と呼ぶ)と、普通の星(主系列星: 伴星と呼ぶ)がお互いの周りを回っているX線連星の中でも、アウトバーストと呼ばれる不定期な増光現象を起こすX線新星であり、正確に距離がわかっているブラックホールの中では地球に最も近いブラックホールを主星に持つ天体として知られていた。○今までの天文学的な常識を覆す成果今回発生したアウトバーストでは、京大を中心に活動してきた国際変光星観測ネットワークVSNET teamなどを通して世界中で行われた大規模な国際協力可視測光観測によって、ブラックホールX線新星のアウトバーストにおいては過去最大の可視測光データを得ることに成功。得られたデータを解析した結果、ブラックホール近傍から出る光の変動を可視光で初めて捉えることができた。ブラックホールは一般的に光さえも吸い込む真っ黒な穴であるため、そのような天体からの光を目で見ることはできないと考えられていたが、今回の成果はブラックホールの「またたき」を、数十cm程度の望遠鏡を使えば直接目で観測できる機会があることを示唆するものだという。また、今回の研究では、このような光度変動が今まで他のX線連星で観測されていたときの光度よりも10分の1以下の、非常に光度が低い時期にも起こっていたことも判明。ブラックホール近傍から出る激しい光の変動は、今まで光度が高いときにしか観測されておらず、理論も、光度が高いことを条件とするものしか提唱されていなかったため、同研究グループはこの結果について「今までの天文学的な常識を覆すものである」と説明している。同研究グループは今後、数年以内に本格稼働を予定している同大学の3.8m望遠鏡や、2016年2 月に打ち上げ予定のX線天文衛星「ASTRO-H」を用いたX線連星の観測も視野に入れ、次にX線新星のアウトバーストが起こったときには、今回のアウトバーストの観測で実現しなかった分光観測など、口径の大きな望遠鏡の利点を生かした観測も行うとしている。
2016年01月07日ウェザーニューズは、スマートフォンアプリ「ウェザーニュースタッチ」の「星空 Ch.」において、「しぶんぎ座流星群」観測を楽しめる「流星キャッチャー」の事前登録を開始した。「流星キャッチャー」は、登録したユーザーのスマートフォンに、星が流れた瞬間から3分以内に流星動画を配信するサービス。そのほか、ウェザーニューズでは、国内6カ所と中国から流星を生中継する特別番組を、同アプリ内の「SOLiVE24 Ch.」、ニコニコ生放送、YouTubeなどで放送する。しぶんぎ座流星群は、毎年正月明けにピークを迎える流星群。流星の出現数は年によって異なる。国立天文台によると、2016年は出現のピークが観測しやすい夜間ではなく、4日夜半過ぎから5日未明までとなり、月明かりなどの影響で多くて1時間に15個程度の出現になるという。
2016年01月04日アクセルスペースは12月10日、地球観測画像データのプラットフォーム「AxelGlobe」を発表、都内で記者会見を開催した。2022年までに超小型衛星「GRUS」を50機打ち上げ、地上を毎日撮影、情報を提供できる体制を整える。同社はこれまで、超小型衛星の開発を主要な業務としてきたが、新たに情報サービスの提供に乗り出す。○なぜ自社で衛星を持つのか?アクセルスペースは2008年創業の大学発ベンチャー。これまでに、「WNISAT-1」(270×270×270mm/10kg)、「ほどよし1号」(503×524×524mm/60kg)、「WNISAT-1R」(524×524×507mm/43kg)といった3機の超小型衛星を開発した実績がある。WNISAT-1/ほどよし1号は現在軌道上で運用中で、WNISAT-1Rについては2016年春の打ち上げを予定している。これまでのビジネスは、特定の顧客のための専用衛星を開発することだった。これに対し、新事業では、自社が衛星を保有し、それを使ったサービスを提供することになる。同社にとっては未知の領域となるが、参入を決めたのは「超小型衛星の利用を爆発的に広げたい」(中村友哉代表取締役)という創業以来の思いがあるからだ。従来の大型衛星の場合、1機あたりの開発費は数100億円程度になる。これだと、宇宙を利用するのは、通信・放送やリモートセンシングなど、確実に収益が見込める一部の分野に限られてしまう。そこで注目したのが超小型衛星である。1機あたりのコストを数億円まで下げられるので、様々な企業が、様々な用途に使うことが期待できる。だが、コストを1/100にしたといっても、まだ数億円だ。とても一般人が購入できるような金額ではないし、利用できる企業も限られるだろう。そこで、衛星利用の敷居をもう一段階下げるために開始するのがAxelGlobeというわけだ。衛星を所有するリスクが無くなるのため、ビジネス上のチャレンジもしやすい。AxelGlobeでは当面、衛星画像の販売が中心となる見込みだが、同社が見据えるのはさらに先だ。オープンプラットフォームとして、自社衛星だけでなく、他社衛星やドローンなどの画像も取り込み、その上でAPIを公開、事業者が独自のサービスを提供できるようにする。目指すのはそういったエコシステムの確立だ。衛星画像の販売はすでにビジネスとして存在しており、世界の市場規模は2,000億円程度だという。だが、衛星画像を活用できそうなアプリケーション市場はもっと大きく、同社がターゲットにしているのはそちらだ。農業、資源・エネルギー、森林、産業情報など、様々な応用分野が考えられているそうだ。○地上分解能2.5mを実現するGRUSAxelGlobeでは、50機の衛星コンステレーションにより、地球上の全陸地の45%を毎日撮影し、画像データを蓄積する。これは、人類が経済活動を行っているほぼ全ての領域に相当するという。従来の衛星画像サービスのように撮影場所をリクエストしなくても、基本的に全部撮っているので、欲しい画像は必ずあるというわけだ。また、全ての場所を撮影しておくことで、時間軸の変化も見えてくる。同社は「トレンドを解析して未来予測ツールとして活用できる」と期待する。AxelGlobeの第1段階として、まずは2017年中に、3機のGRUSを打ち上げる。これで、一部地域限定ながら、毎日更新の観測をスタートさせる。同社は今年、シリーズA投資ラウンドで19億円を調達しており、これを3機の開発費に充てる計画だ。GRUSのサイズは600×600×800mm、重量は80kg。同社にとって過去最大の衛星となる。この中に、口径30cmの望遠鏡を2つ搭載。どちらも仕様は同じで、それぞれ衛星進行方向の左半分と右半分を撮影することにより、57km以上という広い撮影幅を実現する。大きな1つの望遠鏡の方が地上分解能では有利だが、それよりも撮影幅を優先させた設計だ。地上分解能は、パンクロマチック(モノクロ)で2.5m、マルチスペクトルで5.0m。海外には、米Skyboxの「SkySat」のように、分解能1m以下という100kg衛星もあるが、あえて2.5mを選んだのには理由がある。高い分解能を狙うとコストが高くなり、その結果用途が限られてしまう。ズームカメラなので撮影できる範囲が狭くなるし、プライバシーが問題になるリスクもある。そして何より"レッドオーシャン"。米国ではベンチャーがひしめいており、「我々はそんなところで正面から戦う気は無い」(同)というわけだ。逆に5mくらいの解像度だと、都市の解析などには能力が足りない。そして米国の「Landsat」などが無料で提供している画像との競走になってしまい、利益の確保が難しい。分解能2.5mは、その間を狙った戦略なのだ。全エリアを毎日観測するとなると膨大なデータ量になるため、Xバンド送信機の通信速度は200Mbpsに強化。北極圏にあるスバルバード局を活用することで、地球周回の1周ごとに観測データを地上に降ろす方針だ。今後、2016年前半にエンジニアリングモデル(EM)を完成させ、それからフライトモデル(FM)の3機を順次製造する。打ち上げロケットは現時点で未定だが、2016年中には契約を締結する予定。
2015年12月11日物質・材料研究機構(NIMS)は12月3日、同機構が合成したオスミウム酸化物NaOsO3が、観測史上最強のスピン-フォノン結合を示すことを明らかにしたと発表した。同成果は、同機構 超伝導物性ユニット 山浦一成 主席研究員ら、米国オークリッジ国立研究所 スチュアート・カルダー博士らの研究グループによるもので、11月26日付けの英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。スピン-フォノン結合は磁性(スピン)と結晶格子系(フォノン)の相互作用の強度を直接的に表すもので、スピンとフォノンの相互作用が強いほど、たとえば高密度情報記録素子や超高速演算素子を低消費電力で実現できる「マルチフェロイクス材料」などの機能性材料の開発に有利であることが、最近の研究から示唆されている。今回の研究では、同機構が世界で最初に合成したオスミウム酸化物のスピン-フォノン結合を観測したところ、かつて観測されたことがない最強の結合であることが明らかになった。これは、酸化物固体のなかでオスミウムの最外殻電子軌道が空間的に大きく張り出しているためであると同機構は考察している。この構造的な特徴は、白金族元素に共通する特徴であるため、オスミウム以外の白金族元素の化合物も強いスピン-フォノン結合を持つ可能性が高いという。同物質は今後、情報通信やエレクトロニクス分野での次世代材料の新たな候補につながることが期待される。
2015年12月03日TOCOLは18日、スマートフォンに取り付けられる天体望遠鏡「スマホ天体望遠鏡PANDA」を発売した。価格は税別5,000円。「スマホ天体望遠鏡PANDA」は、紙製の組み立て式天体望遠鏡。スマートフォンに取り付け、端末のカメラアプリを使うことで観察できる。口径40mm・光学倍率約35倍だが端末のデジタルズームを併用すれば最大140倍までの拡大が可能だという。パッケージには、「太陽投影板」が付属しているため、太陽の黒点や日食の観測も可能となっている。また、接眼レンズを単体でスマートフォンに取り付けることで、25倍顕微鏡としても使うことができる。サイズは高さ約236mm×幅約180mm×奥行き約32mm。対応するスマートフォンのサイズに制限はない。
2015年11月18日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月16日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データに基づく月別二酸化炭素の全大気平均濃度を公表した。「いぶき」は、環境省、国立環境研究所(NIES)、JAXAが共同で開発した温室効果ガス観測専用の衛星で、二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測することにより、その吸収・排出量の推定精度を高めることを目的とし、2009年1月の打ち上げ以降、現在も観測を続けている。二酸化炭素は高度によって濃度差があるため、地上観測点だけの濃度データでは地球大気の全体濃度を表すことできないが、「いぶき」は地表面から大気上端までの二酸化炭素の総量を観測することができる。発表によれば、2009年5月から2015年7月までの「いぶき」観測データを用いて全大気の二酸化炭素平均濃度を算出したところ、月別平均濃度は北半球の植物の光合成が活発になる北半球の夏に下がり、光合成が弱くなる北半球の冬に挙がる季節変動を経ながら年々上昇し、2015年5月には約398.8ppmを記録した。また、推定経年平均濃度(季節変動を取り除いた2 年程度の平均濃度値)は2015年7月に約398.2ppmに達した。このまま上昇傾向が続けば、月別平均濃度および推定経年平均濃度ともに、2016年中には400ppmを超える見込みだという。環境省、NIES、JAXAの3者は、今回算出した「いぶき」の観測データから解析・推定した月別「全大気」の二酸化炭素平均濃度を、NIES GOSATプロジェクトのWebページにおいて公開し、同衛星の運用が続く限り定期的に結果を更新するとしている。
2015年11月16日理化学研究所(理研)は10月30日、絶縁性の高い磁性体「磁性絶縁体」において磁壁が金属的性質を持つことを、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を用いて観測することに成功したと発表した。同成果は創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの藤岡淳客員研究員と上田健太郎研修生、創発物性科学研究センターの十倉好紀センター長、米国スタンフォード大学のジーシュン・シェン教授らの国際共同研究グループによるもので、10月29日付の米科学誌「Science」に掲載された。今回の研究では、絶縁性を持ち磁気的界面の伝導性の比が最も高い磁性絶縁体であるパイロクロア型イリジウム酸化物「ネオジウムイリジウム酸化物(Nd2Ir2O7)」表面の伝導特性を、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を利用し評価した。磁場をかけずに温度を下げるゼロ磁場冷却を行った後、温度が上昇していく昇温過程でインピーダンスを測定すると、常に磁性をもつ金属である常磁性金属から強い反磁性をもつ絶縁体である反強磁性絶縁体への転移温度以下ではインピーダンスは急に増加し、最低温では三桁ほど大きな値を示す。このとき、絶縁性の高い固体中に、磁壁の金属的性質といえる100nm以下の幅を持つ細線状の金属状態がランダムに分布しているのが観測された。一方、9Tの磁場を加えて温度を下げる磁場冷却を行った後に磁場をゼロに戻してから、昇温過程のインピーダンスを測定すると、ゼロ磁場冷却時よりもインピーダンスの増加が大きくなり、最低温においては二桁以上大きな値を示した。このとき、顕微鏡画像では磁壁の金属的性質を示す細線が消えており、磁場によって磁区がひとつに揃えられることで磁壁が消失することが分かった。同研究グループは今後、固体中における磁性と電子状態に関する基礎的な理解を深めていくとともに、金属的磁壁を利用した新しい磁気メモリーの実現につながることが期待できるとしている。
2015年10月30日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月20日、X線天文衛星「すざく」によるおとめ座銀河団の広域観測から、銀河団の内側から外縁部にわたって元素組成が一定であり、それが太陽系周辺の組成とほぼ同じであることがわかったと発表した。「すざく」は2005年7月に打ち上げられた観測衛星で、2015年8月に科学観測を終えた。同成果はJAXAのオーロラ・シミオネスク 研究員らによるもので、10月1日付の米天文物理学専門誌「The Astrophysical Letters」に掲載された。宇宙に存在するリチウムよりも重い元素は超新星爆発などによって放出されたと考えられている。超新星爆発には重い星を起源とするII型と軽い星を起源とするIa型があり、酸素やマグネシウムなどの軽い元素は前者から、鉄やニッケルなどの重い元素は後者によって宇宙空間に放出されたとされる。II型とIa型で宇宙空間へ放出された元素は星間物質と混ざり合い、次の世代の星に取り込まれるため、星や星間空間における軽い元素と重い元素の比率を調べることで、どの超新星爆発がどの程度発生したかを調べることができる。超新星爆発で放出された元素のほとんどは高温のガスとして銀河と銀河の間に存在しており、この高温ガスをX線で調べることで宇宙の平均的な元素組成を知ることができる。これまで、ペルセウス座銀河団では鉄の元素量が中心部から外側までほぼ同じであることが知られていたが、他の元素についてはわかっていなかった。今回の研究では、太陽系から最も近い銀河団であるおとめ座銀河団を2週間にわたり観測したデータを用い、さしわたし約1000万光年の領域における元素の量を調査した結果、鉄のほか、マグネシウム、ケイ素、硫黄の元素量が中心部から外側までほぼ均一であり、太陽系周辺の組成とほぼ同じであることがわかった。シミオネスク研究員によれば宇宙のほとんどの部分で同様だと考えられるという。「すざく」は観測を終えてしまったが、検出能力を強化したX線観測衛星「Astro-H」が2015年度中に打ち上げられる予定で、同衛星を用いた観測によって「すざく」では検出することができなかった元素についても調べることで、今回の研究成果をベースとした新たな知見の獲得につながることが期待される。
2015年10月21日ウェザーニューズは9月25日、9月14日に北極海の海氷の面積が456万km2を記録し、観測史上4番目の小ささとなったと発表した。北極海の海氷は通常7月から8月にかけて急速に融解し、9月に1年で最も小さい面積となる。近年、地球温暖化により、北極海の海氷の年間最小面積は減少傾向にあり、2012年には観測史上最小の328万km2を記録した。一方、北極海の海氷が減ったことで、北極海航路の商業利用や沿岸域での資源開発が活発化している。今回、ロシア側・カナダ側両航路が2年ぶりに開通し、現在も海氷域に入ることなく航行が可能な状態となっている。今後、徐々に海氷の結氷が進み海氷面積が拡大していくが、同社は10月上旬頃まで開通状態が続くとしている。
2015年09月25日千葉工業大学は9月7日、金星の表層が極度に乾燥している理由について、天体衝突が初期金星の水分を取り除いたとする新説を発表した。同成果は同大学惑星探査研究センターの黒澤耕介 研究員によるもので、欧州科学雑誌「Earth and Planetary Science Letters」電子版に掲載された。金星は地球とほぼ同じ質量であり、太陽からの距離も近いため、形成期の金星表層には地球の海水と同程度の水が存在していたと考えられている。しかし、現在の金星表層には地球の海水量の10万分の1しか水分が存在していない。金星表層の水の行方は、地球と金星がいかにして作り分けられたか、表層に液体の水を持つハビタブルプラネットがどのように作られるのかといった問題に直結する課題の1つとされている。これまでの研究から、太陽に近い金星では海が蒸発し、水蒸気の大気が形成されていたとされる。この水蒸気は若い太陽からの強い紫外線で水素と酸素に分解され、軽い水素は宇宙空間に放出されたと考えられている。しかし、金星サイズの惑星から地球海洋相当量の水に含まれる酸素を宇宙空間に逃すことは難しいため、金星の表層水の行方は水蒸気の紫外線による分解と、水素の宇宙空間への散逸後に残された分厚い酸素大気をいかにして消費するかという問題に帰着するとされてきた。形成末期の金星は現在の1万倍の頻度で天体衝突が起きていたと考えられている。この時期は天体重爆撃期と呼ばれ、水蒸気大気の光化学分解が進行する時期と重なっている。同研究グループは、天体衝突が金星の地殻・マントルを粉砕・掘削して、岩石塵を高温の初期金星大気中に放出し、その結果岩石塵と高温の酸素大気が反応し、岩石が酸化されることで大気から酸素が取り除かれたとする説を提唱。初期金星への天体重爆撃の数値モデルを構築し、天体重爆撃によって粉砕・掘削される岩石の総量を計算した。その結果、大気に放出される岩石塵の総質量は現在の地球大気質量の1万倍におよび、原子金星においては主要な酸素消費源となり得ること、ならびに強い紫外線による宇宙空間への水素散逸効果と合わせると、金星表層から水分を消失させる可能性があることが示された。初期地球にも金星と同程度の天体重爆撃があったと推定されるが、地球は太陽からの距離が金星よりもわずかに遠いため、水蒸気大気が凝縮して海洋を作り、紫外線による光化学分解を免れたと考えられる。この場合は、天体衝突によって岩石塵が大気中に放出されても、酸化反応が効率良く進むことはない。このことから、表層水が液体だったか気体だったかという形態の違いによって、天体重爆撃に対する表層環境の応答に違いが生じ、地球と金星が作り分けられたと推定されるという。同研究グループは「今回の研究成果は形成末期の天体重爆撃が惑星の地殻・マントルと初期惑星大気を激しく混合させ得ることを示しています。莫大な量の岩石塵と惑星大気の間の化学反応は初期大気質量や組成を大きく変える可能性があります。金星の表層水の問題だけでなく、系外惑星の大気進化過程にも重要な役割を果たした可能性があることをも示唆する結果です。」とコメントしている。
2015年09月07日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月19日、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)による桜島の緊急観測を行い、南岳山頂火口の東側で最大16cm程度、衛星に近づく変位が観測されたと発表した。同観測は気象庁からの要請に基づき行われたもので、8月16日の夜と17日の昼に実施された。「だいち2号」に搭載されたLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)で行った観測では、8月16日と今年1月の観測結果の比較から南岳山頂火口の東側の広い範囲で、最大16cm程度の衛星方向に近づく変位が確認された。また、8月16日とは異なる方向から実施された8月17日の観測では、今年7月の観測データとの比較から、南岳山頂付近では最大5cm程度の衛星方向に近づく地殻変動が、東側では最大6cm程度の衛星から遠ざかる地殻変動が見られた。また、地球観測用小型赤外カメラ(CIRC)によって行った観測では、8月17日に取得した画像で、相対的に温度が低い山頂付近に、周囲と比較して5度程度、高く見える場所を確認。この高温域には火口内部の高温の領域が含まれていると考えられるという。JAXAは今後も、関係機関と協力し、桜島の観測を継続するとしている。
2015年08月20日夏フェス、花火大会、海水浴……楽しいイベントが盛りだくさんの夏ですが、今週はこの夏一番の天体ショーがあります!それは「ペルセウス座流星群」です。ペルセウス座流星群は、毎年8月12日~13日頃に活動のピークを迎える流星群。1月の「しぶんぎ座流星群」、12月の「ふたご座流星群」と共に「三大流星群」と呼ばれ、たくさんの流星が出現することで知られています。夏休みやお盆休みと重なる時期なので、毎年帰省先や旅先でこの流星群を楽しんでいる人も少なくないかもしれませんね。今年の見ごろは2夜連続!さて、今年のペルセウス座流星群は、8月13日(木)15時30分頃に活動がもっとも活発になると予想されています。この時間帯は日中ですから、もちろん青空に流星を見ることはできません。でも、ガッカリしないでくださいね。その前後の夜が見頃になりますよ。つまり、流星に出合うチャンスは2夜連続ということ!具体的には次の通りです。1夜目:12日夜半から13日未明にかけて2夜目:13日夜半から14日未明にかけて「夜半まで待たなくても、日が暮れて夜になったら見られるのでは?」と思ったあなた。確かに、流星が見られる可能性はゼロではありません。ですが宵のうちだと、ペルセウス座がまだ地平線の下にいるのです。たくさんの流星を見るコツは?流星群は、空のある一点から流星が四方八方に飛び出してくるように見える現象のこと。流星が飛び出してくるように見える中心点のことを「放射点」といいます。ペルセウス座流星群という名称は、この放射点がペルセウス座の方向にあることを示していますから、ペルセウス座が空高く昇っているときのほうが放射点の高度も高くなっているので、流星の出現数が多くなるというわけです。ペルセウス座は夜半から未明にかけて北東の空高く昇ってきますが、流星を探すときに北東の空だけを見つめるのはNG。というのも、流星は夜空のあちこちに現れるからです。たくさんの流星と出合うコツは、空全体を見渡すように眺めること。夜空を見上げた途端に流星が現れるとは限りませんから、あせらずに15分くらいは空を眺めてみてくださいね。安全な場所に椅子を出して座ったり、レジャーシートを敷いて寝っ転がったりして、楽な姿勢で眺めるのがオススメです。真夜中でも冷え込みが少ない今の時期は、流星ウォッチングに最適。さらに14日が新月なので月明かりの影響がないのもラッキー。街灯などの人工の灯りが少ない場所だと、1時間に数十個の流星が見られるかも!これは夜更かしをするかいがありそうですね。昔から、流れ星に向かって願い事をとなえると叶うといわれています。流星群がやってくる夜は、願いを叶える絶好のチャンス!一説によると、流れ星とは天上界にすんでいる神様が地上の様子をのぞこうとして、天のフタをそっと開けたときにひと筋もれ出てしまった光なのだそう。だから空を見上げ、ひとつでも多くの流星を見つけることこそが、自分の願いを神様に直接届けることになるでしょう。いよいよやってくる星降る夜。あなたの頭上に広がる空が晴れ渡り、1つでも多くの流星が見られますように。景山えりか(かげやまえりか)暦文化研究家、星のティーセラピー(R)レッスン倶楽部主宰旧暦や月の文化に造詣が深く、星や月と親しむ生活を自ら実践。その経験から、自然のリズムに合わせてお茶を楽しむことで、養生やストレスマネジメントにつなげる「星のティーセラピー(R)」を考案。執筆活動やワークショップを通じて、星空とお茶を楽しむ暮らしを提案している。ウェブサイト::自然とつながる暮らしかた
2015年08月12日タムロンは3日、天体写真のコンテスト「星空風景フォトコンテスト」を開催することを発表した。募集期間は2015年8月3日から11月1日まで。募集テーマは、星雲や星団、月、惑星、太陽などの天体や天文現象を撮影した「天体写真」と、天体や天文現象とともに風景を写し込んだ写真を撮影した「星景写真」の2テーマ。応募資格は、タムロンレンズで撮影した未発表の写真。データ応募のみ受け付け、フィルム作品もスキャンデータで応募可能。専用サイト上から受付・アップロードを行うことで申し込める。応募点数は2テーマ合わせ一人合計10点まで。応募は無料。グランプリは両テーマ含む全作品の中から1点で、賞品としてタムロンレンズ「SP15-30mm」もしくは「SP150-600mm」のどちらか一本を贈呈。「テーマ賞」はテーマごとに各1点選出され、賞品はタムロンレンズ「SP15-30mm」もしくは「SP150-600mm」のどちらか一本が贈られる。入選は両テーマから各5点。賞品はタムロンレンズ「16-300mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD Macro [Model B016]」。入賞作品は、2015年11月下旬にタムロン公式ページにて発表される。8月下旬からは、コンテストWebサイトにて、応募作品を公開する(応募時に公開の有無が選択可能)。
2015年08月04日千葉工業大学は7月21日、日本初の3Uキューブサットである流星観測衛星「S-CUBE」が宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機に搭載され、8月16日にH-IIBロケット5号機で打ち上げられることが決定したと発表した。「S-CUBE」は同大学惑星探査研究センターを実施責任機関として、同センターと東北大学が共同で開発を進めてきた。同衛星は3Uキューブサットというカテゴリの衛星で、10cm角のユニットからなる超小型サイズであることを特徴とする。可視カメラ1式と紫外線センサ3式を搭載しており、宇宙からの流星紫外線を観測することで、流星の発光メカニズムの解明や、流星塵成分の新たな情報を得ることが期待されている。打ち上げ後は、「こうのとり」で国際宇宙ステーションに届けられた後、「きぼう」日本実験棟から放出され地球周回軌道に投入される予定。同衛星は2度の打ち上げ失敗に見舞われた流星観測カメラ「メテオ」と相補的な関係にあり、「メテオ」との同時観測を目標としていた。
2015年07月22日アメリカ航空宇宙局(NASA)は7月14日(現地時間)、無人探査機「New Horizons」が冥王星へ最接近し、観測に成功したと発表した。同探査機と冥王星の距離は約1万2472kmで、これはニューヨークからインド・ムンバイまでの距離に相当する。New Horizonsは2006年1月に打ち上げられて以来、9年半かけて約49億kmを飛行し冥王星に到着。打ち上げ時に想定していた到着時間との誤差はわずか1分だったという。最接近後、同探査機は「観測モード」に入ったため地球との通信が行われていなかったが、その後、観測の成功が確認された。New Horizonsの観測データは今後、16カ月かけて地球へと送られてくる予定だ。
2015年07月15日●「あけぼの」によるオーロラの観測2015年6月、北海道でオーロラが観測され、赤く染まる空の写真に多くの人々が息を呑んだ。日本国内でオーロラが見られるのは非常に珍しいことで、北海道で観測されたのは今年3月以来2回、さらに3月の前は11年間にもわたり観測されたことすらなかった。オーロラの発生には、太陽の活動が大きな要因となっている。オーロラは通常、北極や南極の周辺でしか見られず、緯度の低い日本でも見られるということは、それだけ太陽活動が活発になっているという証拠でもある。そんなオーロラの活動を26年間にもわたって宇宙から見守り続けた人工衛星が、今年4月に運用を終えた。磁気圏観測衛星「あけぼの」だ。「あけぼの」はその長期間にわたる運用の中で、オーロラがどうして生成されるのか、季節や太陽活動などの変化によってどういう違いが生まれるのかといったことを観測し続け、多くの成果を残した。その観測対象はオーロラだけではなく、地球を取り巻いているヴァン・アレン帯という放射線帯にも広げられた。そして今、来年打ち上げ予定の新しい衛星「ERG」へとバトンが渡されようとしている。○オーロラと太陽活動ところで、そもそもオーロラはどのようにして発生しているのだろうか。その直接的な原因は、宇宙からやってきた電子やイオンが、地球の高層大気の原子や分子と衝突し、その結果として光を放出することでオーロラを見ることができる。原理としては蛍光灯と同じだ。その電子やイオンは太陽からやってくる。太陽からは、コロナ加熱による「太陽風」や、太陽フレアが関係しているとされる「コロナ質量放出」と呼ばれる現象によって、電気を帯びたガス(プラズマ)が高速で飛んできているためだ。そしてこれらは地球の磁場とぶつかることで、磁気圏という空間を作り出している。地球の磁場は太陽風によって圧迫され、太陽側(昼側)は押し込められ、一方で夜側は吹き流されて、全体的に彗星の尾のような形になっている。地球に磁場があるのは、地球そのものが巨大な磁石になっているためだ。地球の中には核があり、鉄が溶けて対流し、電流が生み出されていることから、磁力が生じる。たとえば方位磁石が動くのもこのためだ。そしてこの電子は、地球磁場が持つ磁力線に沿って、大気のある空間へと入り込んでくる。このときに重要となるのが、オーロラの光る高度約100~300kmよりもはるか上空、3000~1万kmぐらいのところにある、強力な電圧を作り出す電場の存在だ。この電場は地球から見て太陽の反対側の、地球の半径のおよそ10倍から100倍ぐらいの距離の位置の、地球磁気圏の中にある。太陽風のエネルギーはもともと1電子ボルト程度だが、この電場によって、最終的にオーロラを起こすことになる電子(オーロラ電子)のエネルギーは、10キロ電子ボルトぐらいにまでなる。こうして強力な電圧で加速された電子は、地球の磁場の磁力線に沿って地球に向かって入り込み、大気とぶつかることでオーロラを作り出しているのである。もしこの電圧がなければ、電子は地球までやってくることはなく、途中で磁気圏に引き返していくことになるという。このオーロラ上空の強力な電場の存在と、それがないとオーロラは光らないらしいということは、今から40年ほど前から予測されていた。こうしたオーロラの謎を探るべく、日本は1989年に、磁気圏観測衛星「あけぼの」(EXOS-D)を打ち上げた。○「あけぼの」とオーロラ「あけぼの」は1989年2月22日、内之浦宇宙空間観測所からM-3SIIロケット4号機によって打ち上げられた。「あけぼの」は地表に最も近い高度が275km、最も遠い高度が1万0500km、赤道からの傾きが75度の軌道に投入された。ちょうど地球を斜めに回り、上からと下からの両方から観測できるような軌道になっている。当初、目標寿命は1年間とされたが、最終的に2015年4月23日までの、26年2か月間という非常に長い期間にわたって運用が続けられた。磁気圏観測衛星としては世界最寿命で、海外を見渡してもそこまで生き延びた衛星はないという。その運用の中で、「あけぼの」はオーロラ電子や、その生成機構に関連する長期間にわたるデータを取得し続けた。この長期間というのが重要で、季節の変動や太陽活動、地球磁気活動の変化によって、何がどのように影響を与え、また与えられているのかということをつぶさに観測することができ、統計的に分析することが可能となった。たとえば「あけぼの」は、オーロラは冬半球ほど強い、ということを発見した。冬半球というのは南北半球のうち季節が冬の部分で、当然その反対は夏半球となる。たとえば日本は12月ごろが冬半球にあたるが、オーストラリアなどは12月は夏だから、夏半球となる。「あけぼの」の観測は、冬半球の上空にオーロラ電子が多く存在していることを示した。また、オーロラ電子が生み出される電場は、夏半球ほど地球から遠く、冬半球ほど地球に近付くということも発見した。さらに、オーロラ電子の出現する頻度も、夏半球では高度による差異が少なく、一方の冬半球では、低高度ほど頻度が増大することも発見している。これらは電場から出ている電波の強弱を観測し続けることで突き止められたという。●「あけぼの」によるヴァン・アレン帯の観測、そしてERGへ○「あけぼの」とヴァン・アレン帯「あけぼの」はまた、ヴァン・アレン帯の観測でも大きな成果を挙げた。ヴァン・アレン帯というのは、地球を取り巻いている放射線帯のことで、内帯と外帯の2つのベルトから構成されている。この放射線帯は1958年に打ち上げられた米国初の人工衛星「エクスプローラー1」によって存在が発見され、その観測機器を開発したジェイムズ・ヴァン・アレン教授の名前を取って、ヴァン・アレン帯と命名された。この発見をめぐってはこんなエピソードがある。ヴァン・アレン教授らがもともとエクスプローラー1で観測しようとしたのは、宇宙からやってくる放射線の量だった。放射線の量を測る装置は「ガイガー・カウンター」といい、数値でその量が示される。エクスプローラー1の打ち上げ後、衛星の高度が上がるにつれて、ガイガー・カウンターの数値、つまり放射線量は徐々に上がっていった。ところが、あるところを境に「0」を示すようになってしまった。ヴァン・アレン教授らはガイガー・カウンターが壊れたのだと考えたが、別の衛星による観測でもやはり「0」を示すようになってしまった。当初は高エネルギー粒子の数が本当にゼロになってしまったのではとも考えられたそうだが、ヴァン・アレン教授らの研究グループにいた、とある大学院生が、もしかするとあまりに数が多いため、機器が正常にカウントできなくなって0を示したのではないかと思い付き、より多くの粒子を計測できるように改良した機器を打ち上げた。その結果、読みは正しく、地球の周囲に高エネルギーの粒子が大量に集まっている領域、つまり放射線帯が見つかった。それがこんにち知られているヴァン・アレン帯だったのだ。「あけぼの」が造られた当時は、ヴァン・アレン帯を観測することは目的とされてはいなかったが、前述のように「あけぼの」はちょうど地球を斜めに回り、上からと下からの両方から観測できるような軌道に乗ったことから、副次的にヴァン・アレン帯の内帯と外帯を、「輪切り」するようにして、そして長期間にわたって観測することができた。実は、「あけぼの」が26年間もヴァン・アレン帯の中を通過し続けたこと自体が、一つの大きな成果だ。ヴァン・アレン帯は人工衛星にとって非常に危険な領域で、たとえば前述した、オーロラを起こす電子のエネルギーは約10キロ電子ボルトだったが、ヴァン・アレン帯の中の電子のエネルギーは、実に1000キロ電子ボルト以上にもなる。たとえばマイナスの電気を帯びた電子が人工衛星にぶつかると、衛星自体がマイナスに帯電し、ショートを起こし、衛星が壊れることもある。通常の衛星なら数年耐えられれば良いほうで、「あけぼの」が26年間も過ごせたのは非常にすごいことだ。その26年にもおよぶ運用の中で、「あけぼの」は約11年周期で変化する太陽と、それに伴って変化するヴァン・アレン帯の様子を観測することに成功した。その結果、太陽活動が極大になる時期にはヴァン・アレン帯が大きくなり、逆に極小期には小さく、スカスカの状態になること観測した。ヴァン・アレン帯が太陽活動によって変化することを実際に観測したのは「あけぼの」が世界で初めてのことだった。ヴァン・アレン帯内の高エネルギー粒子が、いつ、どのくらい増えるのかを予測するのは大事なことで、いわゆる「宇宙天気予報」の課題の一つでもある。「あけぼの」の観測はそうした予測に大きく役立つものでもあった。しかし、「あけぼの」はヴァン・アレン帯を専門に観測する衛星ではなかったため、その観測範囲は限られていた。そこで来年、ヴァン・アレン帯の観測に特化した、新しい人工衛星「ジオスペース探査衛星」(ERG)が打ち上げられようとしている。○ジオスペース探査衛星(ERG)ERGは「エルグ」、もしくはアルファベットをそのまま読み「イー・アール・ジー」と呼ばれている。ERGとはExploration of energization and Radiation in Geospaceの頭文字から採られており、直訳すると「地球の周りの宇宙空間にあるエネルギーの動きや放射線の探索」といった意味になる。ちなみに「エルグ」は、仕事量や熱量の単位の名前でもある。衛星の大きさは1m x 1m x 2mほどで、打ち上げ時の質量は360kgほどと、「あけぼの」より少し大きいぐらいの、いわゆる小型に分類される衛星だが、その内部には9種類もの観測機器を持ち、ヴァン・アレン帯を徹底的に観測することを目指している。衛星は打ち上げ後、地表に最も近い高度約300km、最も遠い高度が約3万km、赤道からの傾きが31度という軌道による。「あけぼの」と同じように地球をたすき掛けをするように回りつつも、その高度は高くなっており、ヴァン・アレン帯の中心部に突っ込むように飛行することができるようになっている。ERGでは、まずオーロラを光らせているよりも小さいエネルギーから、それよりも6桁以上大きなエネルギーまで、非常に広いエネルギーの範囲を観測することができる。また、プラズマの波と電子を10マイクロ秒という非常に高い精度で観測することができ、ヴァン・アレン帯にある電子の一つ一つのエネルギーの変化を直接検出することさえも可能とされる。そこには世界初の技術が使われているという。ERGは現在も開発中で、予定では2016年の夏ごろに、イプシロン・ロケットの2号機で宇宙へ飛び立つことになっている。「あけぼの」は2015年4月23日15時59分、停波作業が行われた。停波とは、衛星に搭載されている電波の送信機やバッテリーを停止させ、二度と電波を出さないようにするために行われる作業で、これをもって衛星は、運用を終えることになる。「あけぼの」の運用は終わったが、「あけぼの」がこの26年間で残した膨大な量の成果と知見は、今後もERGの観測計画の立案や、データの解析に役立てられるという。「あけぼの」からERGへ託されたバトンによって、私たちの住む地球の周囲にある、磁場が支配するダイナミックな宇宙空間の謎を解き明かし、本当の姿を見せてくれることだろう。
2015年07月07日国立天文台ハワイ観測所(すばる望遠鏡)の研究グループは5月29日、チリにあるジェミニ南望遠鏡を用いて、ケンタウルス座の方向にある太陽型惑星HD 115600の周りに、塵がリング状に分布した構造を発見したと発表した。同成果は国立天文台ハワイ観測所(すばる望遠鏡)研究員のセイン・キュリー氏が率いる研究チームによるもので、米天文学誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載される予定。太陽系の海王星軌道の外側には主に氷から成る天体が多数存在する「カイパーベルト」と呼ばれる領域がある。こららの氷天体は惑星形成の名残と考えられるため、若い恒星にあるカイパーベルトを観測することで、初期の太陽がどのような姿をしていたか知ることができると考えられている。塵のリングが観測されたHD 115600は、太陽より少しだけ重い、太陽が生まれた環境に似た星団に位置している、リングが太陽系のカイパーベルトとほぼ同じ距離にあるなどの特徴から、若かりし太陽にそっくりな恒星である可能性があるという。
2015年06月01日気象庁は5月20日、箱根山の火山活動が活発化したことに伴い、観測体制の強化の一環として、噴火などに伴う空気の振動を観測できる計測機器「空振計」を大涌谷に増設すると発表した。監視体制の強化としては、大涌谷(箱根ロープウェイ大涌谷駅)に遠望カメラを臨時で設置したのに続く措置となる。なお気象庁では 21日より設置作業を進めており、観測の準備が整い次第運用を開始する予定としている。
2015年05月21日ニコンは、天体撮影に特化したデジタル一眼レフカメラ「D810A」を5月28日に発売する。価格はオープンで、推定市場価格は税込420,000円前後だ。2015年2月10日の製品発表時、5月下旬とされていた発売日が今回正式に決定した。D810Aは、有効3,635万画素のニコンFXフォーマットCMOSセンサーを搭載した「D810」をベースに開発された製品だ。CMOSセンサー前面にある光学フィルターのHα(エッチアルファ)線透過率を、D810の4倍に高めたことによって、赤く発光する星雲をより鮮やかに撮影できる。天体撮影向けの機能として、長時間露光マニュアルモード「M*」を新搭載。最長900秒のシャッター速度設定を可能としたほか、設定秒時を実制御秒時として比較明合成写真を撮影しやすくした。
2015年05月15日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月27日、4月25日に発生したネパールの地震を陸域観測技術衛星「だいち2号」で観測した結果を公表した。だいち2号は、2006年から2011年まで運用された「だいち」の後継機として、災害状況把握、国土保全管理、資源探査、森林監視など幅広い分野への貢献を目的とする地球観測衛星。世界最高水準のLバンド合成開口レーダー(PALSAR-2)を搭載し、高分解能かつ広域なレーダー画像取得が可能となっている。今回の観測はセンチネル・アジアや国際災害チャータなどの緊急観測要請に基づくもので、「だいち2号」のPALSAR-2を用いて4月26日に行った。JAXAは今後も関係機関と協力し、ネパールの観測を継続する予定としている。
2015年04月27日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月23日、磁気圏観測衛星「あけぼの」の運用を終了したと発表した。「あけぼの」は1989年2月22日に、M-3SIIロケット4号機で打ち上げられた国内で3番目の磁気圏観測衛星。目標寿命は1年とされていたが、それを大幅に超えた約26年という長期間にわたり運用を継続し、オーロラの観測、地球をドーナッツ状に取り巻く放射線帯であるヴァン・アレン帯の観測などで成果を挙げてきた。しかし、観測機器の多くが放射線劣化によって観測を停止していること、衛星の電源系機器の劣化や高度の低下のため、科学的成果を得られる観測データの取得ができなくなったことから、運用を終了することとなった。
2015年04月24日エフ・ティー・アセットは4月10日、スマートフォンのカメラに双眼鏡や天体望遠鏡などの光学機器を取り付けられるアタッチメント「SNAPZOOM」を発売した。希望小売価格は12,000円(税別)。SNAPZOOMは、これまでスマートフォンのカメラ機能では難しかった望遠撮影の可能性を広げるアタッチメント。双眼鏡や天体望遠鏡などにスマートフォンをドッキングさせて、野鳥や遠くの景色、月、星などの撮影に活用できる。幅93mm、厚さ23mmまでのスマートフォンを取り付け可能で、光学機器はレンズ直径が30mm~50mmまでのものを装着できる。双眼鏡は接眼部分の長さが24mm以下の場合、片方のみの接眼部に取り付ける。SNAPZOOM自体の重量は450g。SNAPZOOMはハワイ在住の二人のサーファーがクラウドファウンディングサービス「Kickstarter」で資金を集め開発された。
2015年04月10日●17年越しで打ち上げられたDSCOVR米国のスペースX社は2月10日、地球・宇宙天気観測衛星「DSCOVR」を搭載した、「ファルコン9」ロケットの打ち上げに成功した。この打ち上げは2つの点で大きな注目を集めた。ひとつは、DSCOVRがかつてアル・ゴア元米副大統領の肝いりで開発が始まったものの、打ち上げ中止などの紆余曲折の末に、実に17年越しで打ち上げられた衛星であったこと。そしてもうひとつは、ファルコン9の第1段機体が海上への着水に成功したことだ。○17年越しで打ち上げられた「ゴアサット」DSCOVRは米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気庁(NOAA)が開発した衛星で、太陽から放出される荷電粒子や、磁気嵐の状況といった「宇宙天気」を観測すること、また地球の昼側(太陽光が当たる側)を常時観測することを目的としている。DSCOVRは「Deep Space Climate Observatory」の略で、直訳すると「深宇宙の気象観測所」といった意味になる。またDSCOVRという略語は、「発見する」という意味の「Discover」に掛けられている。打ち上げ時の質量は570kgで、設計寿命は約2年が予定されている。軌道は、太陽・地球系のラグランジュ第1点と呼ばれる場所に投入される。下図にあるように、この場所は常に太陽と地球の間に存在しているので、太陽と地球の間の環境や、お互いがお互いに与える作用を観測したり、また地球の昼側を観測し続けるのに適している。DSCOVRには、大きく3種類の観測機器が搭載されている。まず「PlasMag」は、太陽から地球に向かって飛んでくる荷電粒子や電子、そして磁場などを観測する。「NISTAR」は地球のエネルギー収支を観測する。そして「EPIC」は、地球表面からのエネルギーの放射量やエアロゾル、オゾン、雲の動きなどを観測することを目的としている。DSCOVRは実に17年越しに打ち上げられた衛星だ。DSCOVRの開発は、もともと1998年に開発がはじまったトリアーナ(Triana)計画をその源流に持つ。トリアーナという名前は、1492年にコロンブスの艦隊がアメリカ大陸に訪れた際、最初に船から大陸を発見した乗組員の名前にちなんでいる。そしてトリアーナにはもうひとつ、「ザ・ブルー・マーブル」のような青く輝く地球の写真を、ほぼリアルタイムで世界中に配信するというミッションも課せられてた。「ザ・ブルー・マーブル」というのは、1972年にアポロ17の宇宙飛行士たちが撮影した、太陽の光を全面に受けて、宇宙に浮かぶビー玉のように輝く地球の写真のことだ。トリアーナを使い、現代の、そして常に最新のブルー・マーブルの映像を世界中に配信することで、環境問題や世界平和への意識を高めることが期待されていた。これは当時のアル・ゴア米副大統領の肝いりで進められたもので、後の証言によると、トリアーナはそもそも、このゴア副大統領の提案が発端となって計画が立ち上がり、他の科学機器はその後に徐々に付け加えられていったのだという。また、ゴア副大統領は太陽・地球系のラグランジュ第1点の持つ価値や、衛星からの観測で分かることなどについて、深い知識を持っていたという。しかし周囲からの評判は芳しくなく、「高価なスクリーンセーバーに過ぎない」と非難されたり、必要性を強固に訴えるゴア氏の名前を取り「ゴアサット」などと揶揄される始末だった。また、他の機器による科学ミッションについても「すでにある気象観測衛星からのデータで十分」という批判が集まるようになり、すでに衛星はほとんど完成していたにもかかわらず、2001年に計画は中止されることになった。トリアーナはスペースシャトルで打ち上げることが予定されていたが、国際宇宙ステーションの建設や、ハッブル宇宙望遠鏡の修理ミッションの方が優先順位が高かったために中止され、打ち上げ手段がなくなったのだ。ちなみに、打ち上げが中止される直前の時点で、トリアーナは、2003年2月1日に空中分解事故によって悲劇的な結末となった、STS-107コロンビアで打ち上げられることが計画されていた。また、この中止の背景には政治的な事情があったといわれることもある。ゴア氏は2000年の米大統領選挙に民主党候補として出馬し、激しい選挙戦の末、共和党候補のジョージ・W・ブッシュに破れている。トリアーナが中止されたのは、まさにブッシュ政権が誕生したのと同じ2001年のことであり、当時のことについて触れられた記事などでは「ブッシュ大統領はゴアサットを見せしめとして潰したのだ」などと書かれることもある。だが、スペースシャトルの運行予定が詰まっていたことは事実であり、かといって別のロケットで打ち上げるには追加予算が必要になること、さらに衛星の必要性が疑問視されていたことから、たとえゴア氏の息のかかった衛星でなかったとしても、打ち上げは中止されていたと見るのが自然だろう。トリアーナは打ち上げ中止となったが、しかし解体されることにはならなかった。NASAは、ゴダード宇宙飛行センターの窒素が充填された箱の中でトリアーナを保管し、いつか打ち上げの機会が巡ってくるときを待ち続けた。2003年には、トリアーナからDSCOVRへと名称が変更された。そして2009年、トリアーナ改めDSCOVRに、NOAAが救いの手を差し伸べた。当時NOAAは、NASAが打ち上げたACE(Advanced Composition Explorer)という太陽風の観測衛星に観測機器を提供し、宇宙天気の研究や、大規模な太陽嵐が発生する可能性があるときには警報を出すといったミッションを行っていた。しかしACEは1997年に打ち上げられた衛星であり、老朽化が進んでいたことから、NOAAでは後継機を欲していた。そこで目をつけたのが、ほぼ完成した状態で保管されていたDSCOVRだったのだ。NOAAの資金提供によって、約8年ぶりに保管庫から出されたDSCOVRは、まず各機器が正常に動くかが確かめられた。また搭載する観測機器はトリアーナ時代と変わらないが、NOAAの要求に合わせて再調整が行われた。こうしてDSCOVRは、姿かたちこそ変わらないものの、ミッションの主役はNASAからNOAAへ移り、新たに宇宙天気の観測を目的とした衛星として生まれ変わった。また、DSCOVRには米空軍も資金を提供している。これには2つの狙いがあった。まず1つ目は、宇宙天気の情報は米空軍の活動、特に弾道ミサイルの発射などを探知するための早期警戒衛星の運用にとって重要であること。そして2つ目は、新興企業のスペースX社が開発した新型のファルコン9ロケットに、1回でも多くの打ち上げの機会を提供することで、「育てる」という狙いがあった。ロケットに打ち上げ機会を提供するために衛星を新しく造るのはお金がかかるし、かといって単なる重りを打ち上げたり、あるいは空荷で打ち上げるのはもったいない。そこで、ある程度製造が終わっていたDSCOVRに資金提供が行われ、DSCOVRの復活を後押しした。米空軍が提供した分の金額は、ほぼすべて打ち上げ費用に充てられた。こうした紆余曲折を経て、DSCOVRは米東部標準時2015年2月11日18時3分(日本時間2015年2月12日8時3分)、米国フロリダ州にあるケープ・カナヴェラル空軍ステーションのSLC-40から旅立った。ロケットは順調に飛行し、約35分後に予定通りの軌道にDSCOVRを投入した。DSCOVRは現在、太陽・地球系のラグランジュ第1点に向けて飛行を続けている。2月24日にはその道程の半分を通過している。観測が始まれば、宇宙に浮かぶ、青く輝く地球の画像が、毎日のように送られてくる。それはきっと息を呑むほど美しいものに違いない。DSCOVRの打ち上げに立ち会ったゴア氏は、自身のblogの中で次のように語っている。「DSCOVRは、地球に関する私たちの理解を深め、市民や科学者たちに異常気象の現実を教え、その解決策を考えるためのミッションへ旅立った。そしてDSCOVRはまた、この地球の美しさと、そして脆さを映し出し、このたったひとつの地球を守る義務を思い起こさせてくれる、すばらしい機会を与えてもくれるだろう」。●ファルコン9ロケットは着水に成功○ファルコン9の第1段は精度10mで着水今回の打ち上げにおける世間の注目は、どちらかというと積み荷のDSCOVRよりも、それを打ち上げるファルコン9ロケットの第1段機体の回収試験に集まっていた。スペースX社は、ロケットを再使用することで、打ち上げにかかわる費用を大きく引き下げることを目指しており、その最初のステップとして、打ち上げを終えて地球に戻ってきたロケットの第1段機体を、広い甲板を持つ船で回収する、という試験を進めている。同社はこれまで、垂直離着陸実験機による試験飛行や、打ち上げ後に第1段を海上に降ろす着水試験を行い、今年1月10日には船の上に着地する試験に初挑戦した。ロケットは巧みに制御されつつ船の真上まで舞い戻りはしたものの、甲板に激しく衝突するように着地し、残念ながら完璧な成功には至らなかった。その詳細については、拙稿『隼は舞い降りられるか? - 再使用ロケットに賭けるスペースXの野望と挑戦』を参照していただければと思う。今回のDSCOVRの打ち上げでは、1月の試験と同じく、太平洋上に用意した回収船の上にロケットの第1段機体を着地させることを目指していた。しかし、打ち上げ当日に着地予定海域を嵐が襲い、船が出せなくなってしまった。また船自体も、エンジンの1つに問題を抱えていたという。あくまで主目的はDSCOVRを打ち上げることにあったので、回収船が出せないからといって打ち上げが延期されることはなかった。しかし、スペースX社は転んでもただでは起きなかった。船こそないものの、本番さならがらに、海のある一点を目指して着水させることを試みた。その結果、約10mの精度で垂直に安定して降下することに成功したという。同社のイーロン・マスクCEOは「天気が安定していれば、船の上に降り立つことは可能だろう」とTwitterで述べている。もちろん今回がうまくいったからといって、次の試験で成功するとは限らないが、それでも可能性は高くなったと言ってよいだろう。ファルコン9の次の打ち上げは3月1日以降に予定されているが、この打ち上げと、さらにその次の打ち上げでは、ロケットの持つ能力を最大限に使う必要があり、着地に使うための追加の推進剤や着陸脚を積む余裕がなく、回収試験は実施されない見通しだ。次に回収試験が実施されるのは、今年4月に予定されているドラゴン補給船運用6号機の打ち上げの際となる予定なので、今しばらく待たねばならない。なお、同社は1月27日に、「ファルコン・ヘヴィ」ロケットの打ち上げを描いたCGアニメを公開した。ファルコン・ヘヴィは、ファルコン9の第1段を3基束ねて、より重い人工衛星を打ち上げられるようにしたもので、現時点で今年中に初の打ち上げが行われる予定だ。ファルコン・ヘヴィも機体の再使用することが考えられており(再使用しなければもっと重いものを打ち上げることができる)、このアニメでも、3基の第1段機体が打ち上げた場所にきれいに舞い戻ってくるという、にわかには信じられないような光景が描かれている。次の回収試験に向けて、期待は高まるばかりだ。参考・ ・ ・ ・ ・
2015年02月27日