子どもの特性にもいろいろありますが…Upload By 荒木まち子Upload By 荒木まち子悩みの尽きない障害児の子育て。その中でも大きな決断となるのが…出典 : 障害がある子どもの親は、たくさんの不安を抱えています。周りの子どもたちとの成長の違いが気になったり、友達との接し方にハラハラしたり、親亡き後のことが心配になったり…。周りに協力者や理解者がいなくて、親自身が孤独を感じる場合もあります。そんな中、子どもの困りごとの解決のため、親は様々な決断を強いられます。今回はその中でも特に親が悩む決断の1つ「服薬」についてのお話です。娘が二次障害になったきっかけは「いじめ」や「からかい」だった出典 : 私には発達障害の診断が出ている高校生の娘がいます。娘は物をすぐに失くしたり、何度も同じ間違いを繰り返したりします。手先は不器用、計算も苦手ですが、興味があることには並外れた記憶力と集中力を発揮します。家族や親しい人とはよく喋る反面、他人とは上手くコミュニケーションをとることができません。受動型のADD(注意欠陥障害)の特性を持っているので、困っていることが見過ごされやすいタイプです。娘は小学校高学年の時に、学校で冷やかしやいじめの対象になったことがありました。その頃の娘はよくイライラし、自宅で物を投げては壊したり、弟に当たったりしていました。後からわかりましたが、娘は二次障害に陥っていたのです。発達障害ということに気づかなかったり、気づいていても適切なサポートを受けられずにいると、周囲に理解されず叱咤や非難を受けたり、失敗体験を積み重ねるなどして、本人の自尊心ややる気が失われ、新たな障害が生じることがあります。これを、いわゆる「二次障害」ともいいます。いじめへの対応に奔走した日々出典 : このままではいけないと思った私は、色々なところに相談をしました。以前から通っていた療育センターや病院、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターの先生…。新たに発達障害専門の塾や家庭教師も探しました。娘の障害の理解のために第三者にも立ち会って頂き、校長先生との話し合いもしました。いじめへの対応と環境改善の具体例を示すため、それまで学校との連携がなかった療育センターのスタッフさんに学校訪問もしてもらいました。娘自身も専門家によるSST(ソーシャルスキルトレーニング)を受け始めました。SSTでは、●イライラした原因やその後どうしたかを書き留める●言葉で表現できない気持ちを絵で表現する●スポーツで体を動かすなど感情のコントロールの方法やストレスの発散方法を学びました。ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、人が社会で生きていくうえで必要な技術を習得するための訓練のことです。それでも辛そうな娘の様子を見て、医師から処方されたのが「お薬」だった出典 : 学校の環境は徐々に改善されていきましたが、いじめや冷やかしが陰で行われることもあり、家での娘のイライラはまだ続いていました。しばらくして、娘の状況を知った担当医から、ごく少量のお薬が娘に処方されました。「好きで暴れている訳ではない。自分でも嫌だ。でも抑えられない。」そう訴える、娘の辛い気持ちを汲んでの処方でした。「何よりも環境を整えることが大切です。お薬はとても少量の処方です。幼児が飲む量ですよ。」処方の際、私達親子は医師からこう説明を受けました。娘はその薬を「イライラ止めのお薬」と呼んで、毎日服用しました。その後も、娘が少しでもストレスなく過ごせるよう、私はスケジュールボードを利用したり、不要なものに目隠しをしたりするなど、環境作りを積極的に行ってきました。娘を理解し、寄り添ってくれる指導者に出会ったこともあり、彼女のイライラは徐々に減っていき、お薬は10ケ月で服用を終えたのでした。使ってみて気づいた、お薬との付き合い方出典 : 一口にお薬と言っても種類、飲む量、飲み方(頓服など)様々あります。また、発達障害で処方されるお薬には、種類や人によって「合う」「合わない」があるかと思います。副作用で眠くなったり、食欲が落ちたり、逆に過食気味になることもあるかもしれません。でも、服薬することで本人や家族の困り感が減り生活の質が向上するのであれば、そのメリットはとても大きいと私は考えます。合う薬に出会うまでは様々なSSTを試すのと同様で、医師の指導の下、あきらめずに探すのも1つだと思います。子どもが大きくなると、服用したときの調子の良さ・悪さが本人にもわかってきます。親亡き後のことも考えると、本人の意思を尊重した病院との付き合い方を考えていくことも、きっと大切になってくるでしょう。また、成長と共に合う薬の種類が変わったり、適量が変わったりすることもあるでしょう。どれも「成長の証」と考え、その時々で臨機応変に対応する柔軟さも、親には必要なのだと思います。あふれる情報の中で、何をどう受け取るのか?冷静さを持って選びたい出典 : 服薬に不安を抱いたとき、まずは医師等の専門家にとことん相談してみましょう。また、親御さんを悩ませる原因の1つに、インターネットの普及も関係していると思います。良い情報も悪い情報も玉石混交で、誰もが簡単に手に入るようになりました。他方SNSでは、周囲に同じ境遇の友達や家族がいなくても、同じ悩みを共有したり励まし合ったりして、元気をもらうことができます。不安な時や悩んでいる時こそ、その情報が正確かそうでないかを冷静に見極め、全てが自分の子どもに当てはまるわけではないということを念頭に置きつつ。その情報を試してみるか、参考までに留めておくのかをしっかりと考えることが、大切なのだと思います。
2017年01月15日発達指数とは出典 : 発達指数とは、日常生活や対人関係などにおける子どもの発達の規準を数値として表したしたものであり、DQ(Developmental Quotient)とも言います。子どもの成長には個人差があり、一人ひとり異なる特性を持っています。しかし個人差がある一方で、発達の道筋や順序には共通して見られる特徴があります。子どもは成長するにつれて、視野を広げ、認識力を高め、まわりの人との関わりを深めていきますが、その経験が次の成長のステップにつながります。子どもが成長していくには、それぞれの発達段階に合った生活を送ることが大切です。そのため、発達を客観的に知るものさしの一つとして発達指数が使われています。発達指数は発達検査と呼ばれる検査によって知ることができます。発達検査で分かる「発達年齢(発達の状態がどのくらいの年齢に相当するか)」を「生活年齢(実年齢)」で割り、100を掛けて算出します。発達年齢と実際の年齢が同じ場合、発達指数の値は100と計算できます。そのため平均は100前後とされていますが、発達指数の値だけで子どもの発達状態を判断をすることはありません。あくまでものさしの一つであり、発達検査から分かる能力のバランスや日常生活の様子などを総合して子どもの発達状態を把握します。参考:子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題|文部科学省参考:発達検査とは?|てんかん情報センター発達指数を知ることができる年齢は?出典 : 発達指数を計ることができる検査としては、主に「新版K式発達検査」と「遠城寺式乳幼児発達検査」の2つが挙げられます。新版K式発達検査であれば生後100日後から成人まで、遠城寺式乳幼児発達検査であれば0歳0ヶ月から4歳8ヶ月まで、発達指数を計ることができます。適用年齢は幅広いですが、主に就学前の子どもが発達検査を受けることが多いです。小学生以上であれば、発達状態を計るよりも、知能検査によって知能を計るほうが一般的だからです。ただし知的障害がある場合など、知能検査だけでは発達の状態や障害の度合いを把握することが難しいケースでは、成人でも発達検査を受けることがあります。参考:発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン|厚生労働省発達指数を調べる目的出典 : 発達指数を調べる主な目的は、1. 子ども一人ひとりの発達状況を理解すること2. 発達段階に合った適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知ることの2つです。注意点として、乳幼児においては、検査を受ける際の子どもの状態や環境に左右されるため、発達指数の値は変動しやすいといったことが挙げられます。そのため1歳6ヶ月健診などにおいて、発達指数の値が低く出てしまったために、軽度の知的障害の可能性を指摘される場合もあるようです。しかし知的障害があるかどうかの判断は、発達検査や知能検査の結果を長期的に把握しながら行う必要があります。発達指数はあくまで発達状態を知るものさしの一つです。発達指数だけでなく、発達検査から分かる発達の特徴、検査を受けている時の様子、日常生活の様子を総合して発達状態を判断することが大切です。発達指数の値だけにこだわるのではなく、定期的な検査結果から分かるお子さんの発達のペースや発達の特徴に注目するようにしましょう。発達指数と知能指数の違い出典 : 発達指数が子どもの発達の基準を数値化したものであるのに対し、知能指数とは人の知的能力(認知機能)の基準を数値化したものです。ここではそれぞれがどのように使われているのか、適用年齢に差はあるのか、検査内容の違いについてご紹介します。・目的発達指数は一人ひとりの子どもの発達状態を知る、知能指数は知的能力の発達に遅れがあるかどうかを知るために使われるものです。適切な学習指導や支援を受ける際のヒントを知るという目的はどちら検査にも共通していると言えます。知能指数と発達指数のどちらを用いるかは、年齢や障害の程度、疾患の種類などによって変わってくるため、専門家の判断によります。また知能検査と発達検査の両方を受ける場合もあります。・適用年齢発達指数は0歳から成人まで計ることができます。就学前の子どもが発達検査を受けることが多いですが、成人でも発達や障害の程度を知るために発達検査を受けることがあります。一方、知能指数は2歳から成人まで計ることができます。子どもに発達障害がある場合、乳幼児期からその兆候が表出することも少なくありません。しかし発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だとされています。乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。・検査内容発達指数は発達検査によって知ることができ、知能指数は知能検査によって知ることができます。発達検査はガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料を用いた検査です。それに対して知能検査は主に小学生以上を対象としているため、言語や書字などを用いて回答する問題が多くあります。知能指数も発達指数もその数値だけで、障害や疾患の確定診断をすることはありません。発達検査や知能検査を受けたとしても、診断を受けるかどうかは、本人や保護者の希望によります。乳幼児健診などにおいて、発達の遅れの可能性を指摘された場合も一度の検査だけでなく、定期的な発達検査の結果によって疾患や障害を見分けたり、診断していく場合が多いようです。さらに2歳からは知能検査を受けることができるため、だんだんと知能検査を中心に受けることになります。障害や疾患によっては、年齢が上がらないと見分けられない場合もあるため、長期的にお子さんの成長を把握していくことが大切です。発達検査を受けることで広がるメリット出典 : 発達指数と発達検査から分かることを組み合わせてどのようなメリットがあるかご紹介します。・相談機関で子どもの成長に対するアドバイスをもらえる児童相談所などの相談機関では、「検査報告書」をもとに今後のお子さんの成長に対してアドバイスをもらえます。「検査報告書」は発達検査を受けたあとにもらえるもので、検査結果や今後日常生活において注意すべきことが記載されています。発達指数の値は「数値結果」欄にあります。相談機関によるアドバイスによって、例えばお子さんの苦手な部分に対し、「なぜ苦手なのか」を知ることができます。また苦手なことだけでなく、お子さんの検査に取り組む姿勢やプロセスなども教えてもらえるため、「総合的にどう成長しているか」を把握することができます。・小学校就学のヒントを得ることができる発達検査から分かることを小学校就学の際に活かすことができます。家庭では特に気になることがない子どもでも、幼稚園などで集団生活に参加することで困りごとが現れる場合もあります。そのような場合、小学校就学を前にして不安になる保護者の方も少なくないようです。お子さんの発達に気になる点があれば発達検査を受け、早めにお子さんの得意・不得意を把握しておくことで、小学校就学後にもどのような支援をしていけば良いか、検討しやすくなるでしょう。さらに発達検査の結果や発達指数の値によっては、療育手帳をもらえる場合があります。療育手帳があることで、特別支援学級といった就学の選択肢を広げることができます。療育手帳については、記事の後半で詳しくご説明します。発達指数を知りたい時は?出典 : 小さいお子さんの場合は、乳幼児健診の際に相談してみましょう。乳幼児健診では、お子さんの身長・体重測定や診察のほかに、日頃の疑問点や悩みごとについて質問できます。特に保健センターで受ける場合は、医師、保健師、心理士などの専門のスタッフに相談することができます。また乳幼児健診では、発達の遅れの可能性を見極める精密検査が必要かどうかを判断するスクリーニングが行われます。スクリーニングにおいて気になる兆候が見られた場合は、保健機関での相談、発達検査の受検、医療機関での2次スクリーニングなどをすすめられることがあります。そのほかで発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くと良いでしょう。子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。発達検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診すると良いでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。検査を受ける際は、まず病院に問い合わせてみましょう。さらに発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達指数を知ることができる発達検査の内容出典 : 発達検査にはさまざまな種類がありますが、この章では主に発達指数を知ることができる2つの検査について紹介します。これらの検査は、任意で受検することも可能ですが、基本的には相談機関や病院ですすめられて受検することが多いです。適応年齢:生後100日後~成人検査項目:328項目(「姿勢・運動領域」、「認知・適応領域」「言語・社会領域」の3領域で構成)それぞれの年齢において、一般的と考えられる行動や反応と、対象となる方の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。適応年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月検査項目:151項目(移動運動、手の運動、基本習慣、対人関係、発語、言語領域)「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。上記の発達検査は発達指数や発達の全体像を知る検査です。これらの検査結果をふまえたうえで、特定機能の発達を計る検査と組み合わせることもあります。なぜなら発達指数の値が正常だった場合でも、異なる検査によって発達における課題を見つけることができるからです。例えばIPTA言語学習能力診断検査であれば、学習障害や言語発達の遅れを見つけることができます。発達検査を受けてもお子さんの発達に心配な点がある場合は、他の検査を検討してみても良いでしょう。発達指数の値によって療育手帳をもらえることも出典 : 発達指数の値だけで受けられる支援はありませんが、発達指数の値は療育手帳の取得判定の際に参考とされます。療育手帳は、児童相談所または知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された場合や、知能指数が75以下(自治体によっては70以下)の場合にもらうことができるとされています。乳幼児の場合は、知能指数の代わりに発達指数を指標とすることができます。療育手帳を貰う流れとしては、まず発達検査を受けて発達指数を知り、指定された医師による診断書を用意する必要があります。注意点として、知的障害の程度は年齢とともに改善が見られることがあるため、療育手帳の更新ごとに障害の等級が変わるということが挙げられます。特に乳幼児においては、発達指数の値は変化しやすいので、更新期限までに必ず再判定を受け、適切な支援を受けられるようにしましょう。障害の判定は発達指数に加えて、日常生活における能力を総合して行われます。療育手帳の基準は地域によって異なりますが、参考までにここでは東京都が交付している「愛の手帳」の例をご紹介します。◇判定基準知能測定値、運動、社会性、意思疎通、身体的健康、基本的生活の6項目を0歳~6歳の子どもの判定基準としています。知能測定値として、知能指数や発達指数を用います。◇区分知能指数や発達指数の値と日常生活における能力を総合し、最重度~軽度の4区分に判定されます。参考:愛の手帳|東京都福祉保健局療育手帳を貰うことで以下のようなメリットがあります。・保育園入園時など保育・教育面での援助・公共交通機関などの割引・レジャー・スポーツ施設などの割引・給付・税の減免や控除に役立つ・就労に向けての支援さらに療育手帳を持っていることで特別支援教育を受けたい際に役立ったり、特別児童扶養手当を貰えたりする場合もあります。自治体によって異なるため、地域の相談機関に相談してみることをおすすめします。まとめ出典 : 発達指数はあくまで発達の度合いを計るものさしの一つです。発達指数の値が低いからといって障害があると決めつけることはできませんし、年齢によって改善されることもあります。そのため発達指数の値だけを見て思い込みをせず、発達検査から分かるお子さんの得意・不得意にも注目し、サポートにつなげることが大切です。客観的、総合的に成長を捉えることで、お子さんに合った学習指導や支援を見つけることができるでしょう。お子さんの発達が気になる場合は、児童相談所などの相談機関に相談し、長期的にお子さんの成長を把握していくようにしましょう。岩﨑 清隆・岸本光夫/著『発達障害の作業療法実践編』2015年三輪書店小山正/著『乳幼児臨床発達学の基礎』2006年培風館/刊
2017年01月09日子どもが学校に通っているときに悩ましいこと出典 : 発達障害児の子育てで悩むことの1つに、学校や先生とどう付きあっていけば、子どもが安心して通えるのか?という悩みがあると思います。私は先日、ちょうどこの悩みを取り上げたテレビ番組を視ていました。12月2日に放映されたNHK・Eテレ「ウワサの保護者会~子どもの発達障害Part3学校とのつき合い方」です。ご覧になった方も多いのではないでしょうか。番組では、学校との関係に悩むたくさんの保護者の声が紹介されていました。その中で代表的だったのが「学校が子どもの発達障害を正しく理解してくれない」というもの。理解のない先生に叱られ続け、学校に行けなくなってしまったお子さんの話や、逆に「障害がある」と決めつけて子どもの悪いところばかりを指摘する先生のお話が紹介され、そこには「学校への不信感」が強く表れていました。でも子どもが安心してのびのびと学校生活を送るためには、「先生が悪い!」と責めるだけ、あきらめるだけで終わらせるわけにはいきませんよね。先生になんとか理解してもらうには、協力してもらうには、どうしたらいいのでしょうか? Eテレ「ウワサの保護者会」14年前、私も教員だった。まだ発達障害そのものが知られていなかった頃…出典 : この番組を見て、自分が教員だった頃のことを思い出しました。今から14年ほど前は、まだ「ADHD」「発達障害」などという言葉は教育現場でさえほとんど知られていない時代です。私が受け持っていたクラスに「ADHD」の診断を受けた男の子がいました。4月の家庭訪問でその子のお母さんから「これ読んでください!」とある本を渡されたのです。それは、当時出版されたばかりの『のび太・ジャイアン症候群』という本でした。お母さんからはその他に、子どもの特性と一緒に「このように配慮してほしい」とたくさんの説明を受けましたが、小学校に赴任したばかりの新米教師だった私は正直、いっぱいいっぱいでした。特性や配慮事項についてはなんとなく認識しましたが、さすがに本を読む余裕はありませんでした。その子に対し、あまり手をかけてあげられなかったのが、今とても悔やまれます。新版 ADHD のび太・ジャイアン症候群 司馬 理英子 (著)両者の立場がわかるからこそ、できることがあるはず出典 : 私は元教員という立場と、発達障害児の母という両方の立場を経験し、両者の葛藤や考えがわかるようになりました。その経験を生かし、自分が母として学校の先生と関わっていくとき、心がけていたことをご紹介したいと思います。一番最初にしたことは「まずは先生に感謝を伝えること」でした。教員経験があるからわかるのかもしれませんが、先生は想像以上に多忙です。子どもの指導だけではなく、大量の事務仕事や様々な会議に追われています。そのため、まず親としてそのことに感謝し、労わりの言葉を先生には伝えていました。また、ほんの小さなことでも子どもの成長が見られたら、それを先生に伝えて「ありがとうございます!」と感謝しました。たとえその成長が直接先生の指導と関係なくても、子どもの成長は先生にとっても嬉しく、親に感謝されたら尚更だと思うのです。それが、「この子をもっと伸ばしてあげよう」という、教師のやる気につながることも多いのです。出典 : 感謝を伝えた上で、「この子はこのようなところがあるので、このような配慮をして頂けるとありがたいです。」ということを丁寧にお願いしていきました。その際には、病院や教育相談でこのようなアドバイスを受けたので、と、親の主観ではなく専門的な知見からのお願いであることを強調していました。そして、家で用意できるものは用意します、など、学校任せではなく家庭でも最大限の努力をしました。もちろん、全員の先生が、子どもの特性や配慮事項を理解してくれた訳ではありません。宿題への配慮を「みんなと同じでないと困るので」と断られたこともあります。それでも、このような先生への対応を続けていったことで、いつでも話ができ、できる範囲での配慮をして下さる関係を、保ち続けることができました。先生と親は、共に子どもを見守っていく同志でありたい出典 : 最後に、「ウワサの保護者会」の中で、面白い!と思ったエピソードがあります。あるお母さんが子どものことで朝の7時半に学校に電話をしたら、ちょうど担任の先生が出たとのこと。その先生も子育て中だと知っていたので「朝早くから大変ですね~」と言ったのだそうです。そうしたら、その先生が「そうなんですよ~!」と、いつもの声と違った素の声で返してきたのだとか。それ以来、そのお母さんと先生はフランクにお話ができるような気さくな関係になれたのだそうです。先生に、子どもに寄り添ってもらいたい、と思ったらまずはこちらが先生に寄り添ってみる。「子どもを見守っていく」という同じ目標に向かって協力する同志になるためには、先生と人間的な心のつながりを持てるよう、関係を築くところから始めるのも、1つの方法なのですね。子どもを守るためには、先生と保護者とで一緒に考えていくことが大事!番組もそう言っていましたが…保護者だけではなく、学校や先生方にも、子どもや保護者に寄り添おう、一緒に考えよう、という姿勢になっていってほしいと願います。
2016年12月19日子どもの遊びでよくあるトラブル。夢中になるのはわかるけど…Upload By モンズースー子どもはおもちゃなど同じ種類の物を規則的に並べる遊びが好きですよね。発達の遅れのある子の中には特にこの遊びが好きな子が多いと聞きます。そんな発達の遅れのある子ども達が集まる場所で、毎回のように起こっていたトラブルが「並べる」と「積む」の争いでした。このブロック、どこの遊び場でも見かけるのですが、部屋に入るとまずこれを並べる子がいつも現れるのです。彼らは全部のブロックを並べたいのですが、我が家の長男を含む数人の子は「積む」遊びが好きなので別の場所から積んでいってしまいす。長男たちの目標は全部のブロックを上に積むこと。最初は相手の行動が見えていないのでお互いのブロックを崩しては並べたり積んだりを繰り返すのですが、なかなか完成せず途中で自分と違う行動の相手に気づきバトルに…。人数が多いと「積む派」と「並べる派」とで乱闘…なんてこともありました。年齢が上の子を見ていると、相手の考えを少し理解できるようになり、譲ったり言葉で交渉したりすることもできるようです。我が家の長男はまだ言葉での交渉が苦手で、相手の考えを理解できても自分の考えを変えられず、争ってしまう時もあります。しかし、人と自分の考えが違うことに気づき、どうすればいいのか考えられるようになった分、少しづつ成長しているのかな…と思いました。そんな経験も、長男にとっては大切な勉強なのだと思います。
2016年12月16日発達障害で働いている人はどのくらいいる?出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能障害によって、発達に何らかの遅れや偏りなどの症状が、通常低年齢において発現する障害です。日本における発達障害の定義は平成16年に制定された発達障害者支援法によって定められており、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の基準に準拠しています。発達障害者支援法における発達障害の定義は以下になります。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。そもそも発達障害のある大人が日本にどのくらいいるか、はっきりした統計的なデータはありません。文部科学省の2012年の調査によると、通常学級に在籍する児童・生徒の中で発達障害の特徴を示す子どもは全体の約6.5%、つまり約15人に1人の割合でという結果になりました。これは、診断を受けている人の数ではありませんが、障害の傾向のある人まで含めると、社会の中にもかなりの数の発達障害のある人がいることを示唆しています。発達障害がある人の中には成人して特性を生かした職業に就いたり、能力にあう職業を選び、雇用されている人もたくさんいます。2011年の障害者職業総合センターの調査によると、- 障害者を積極的に雇用している特例子会社105社のを対象にしたアンケートで、特例子会社で働く療育手帳(知的障害のある方が取得する手帳)所有者が1798人、精神障害者保健福祉手帳を所有している人が198人いて、両者の中で発達障害があると把握されている人は203人という報告があります。ですが、発達障害のある人の中には療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を取得していない人や、障害を開示しないで働いている発達障害の人が多いと考えられます。そのため、実際にはより多くの発達障害のある方が、様々な仕事に携わり、様々な職場で働いていると言えるでしょう。出典:「 発達障害者の企業における就労・定着支援の現状と課題に関する調査研究」(2011年)|障害者職業総合センターHP大人の発達障害、いつ診断された?きっかけは?Upload By 発達障害のキホン発達障害は発達期(~18歳)に発症するとされていますが、障害に気づくタイミングはそれぞれです。子どものころから診断結果が出ている人や、大人になってから何かをきっかけに診察を受け、気づいたという人もいます。母は私が小さい時から「おかしい」と思っていました。小学1年生の時、担任に「学習障害」を相談しましたが「違う」と言われ、中学でも担任に相談しましたが違うと言われました。私自身も、小学生の時点で自分の「変さ」には気づいていました。辛かったです。でも、「発達障害」という言葉自体なく診断されませんでした。近年、発達障害が広く知られるようになってきましたが、かつてはあまり理解を得られず、見過ごされていた人も多いようです。大人になって発達障害に気づくきっかけになるのは、例えば仕事上のミスや、社会人として生活する上で人間関係がうまく築けないなどの悩みなどです。これらのストレスからうつ病などの二次障害を発症し、精神科などを受診して発達障害に気づく人も少なくありません。ですが、大人になってからでも専門家の支援を受けることで自分の特性に気づけたり、対処法を学ぶことは十分にできます。もちろん、日常で問題や障害を感じずに社会に適応している発達障害の人もいますし、現在発達障害の根本的な治療法もないため、必ずしも診断を受けなければいけないわけではありません。私は13年前にうつ病と診断され、6年後に双極性障害と再診断されました。現在は双極性障害2型とパーソナリティー障害が病名になっています。解離性障害で入院していた時期もあり、過去10人以上の医師に診てもらいましたが誰1人私の「発達障害の可能性」を指摘しませんでした。今までのどの診断名も自分にしっくり合わず間にあわせ的な違和感を感じていた私が自ら調べた結果、「根底にあるのは発達障害で双極性障害その他はその二次障害である」という結論にたどり着き、医師にそれを相談したところ診断に「発達障害疑いあり」が加わりました。このように大人になってから新たに発達障害だと医師から診断されることもあります。大人になってからでも、なんらかの困りごとに直面したり、疑いを持った場合はまず専門機関に相談しましょう。発達障害者支援センター・一覧検診で子供の発達障害の疑いを指摘されたことをきっかけに、自分もWISC検査と診察を受け、自閉症スペクトラムグレーゾーンと診断されました。お子さんの発達障害をきっかけに、自分の障害に気付いた方もいるようです。大人の発達障害、特性に合った仕事・難しい仕事は?出典 : 注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人の特徴は、集中力が長時間保てなかったり、落ち着きがない、物忘れをしがちといった行動が目立つため、周囲からやる気がないというような誤解を受けがちです。仕事上では、不注意から同じミスを何度もしてしまうこともあります。また「臨機応変に対応を」と言われ、本人は工夫したつもりが、やりすぎてしまい相手の意図とそぐわないことをしてしまうこともあるかもしれません。しかし、一方ではアイデア力、行動力や独特の感性を発揮し、営業職や企画・開発などで評価され活躍している人もいます。ADHDの人全員に当てはまるわけではありませんが、一般的にミスが絶対に許されないような作業などは不向きともいえます。一方で、ADHDのある人は以下のような強みがある人も多いのです。・興味のあることに対して情熱を持ち、高い集中力を発揮する・アイデアが豊富で、固定概念にとらわれず自由に考えられる・行動力がある・素晴らしいひらめきをすることができる・独特の感性をもち、考えることができるなどどちらかというと、芸術家・音楽家やデザイナー、CGアニメーター、ゲームソフトやコンピューターソフトの製作者、研究・開発者などクリエイティブな仕事が向いています。また行動力を活かしセールスマン・営業職や起業家・企業家として活躍する人もいます。自分の特性に合った職業に就くことができれば、注意欠陥/多動性障害(ADHD) の人も強みを活かして活躍しやすくなります。時間や仕事のリズムにも自由度が高く、うっかりミスも取り返しがつくような、新しいアイデアや変化を問う仕事が向いています。自閉症やアスペルガー症候群などを含む、広汎性発達障害(PDD)・自閉症スペクトラム(ASD)の人は、相手の気持ちや場の空気を読んだり、コミニュケーションをとるのが苦手ということが多いです。また、イレギュラーなことやはじめての経験にスムーズに対応するのが難しいこともあります。これらはあくまで傾向にしかすぎず、全ての広汎性発達障害の人がこの特徴に当てはまるわけではありません。併存する知的障害の重さや一人一人の特性にもよりますが、対人関係が苦手な人は接客業はストレスが多いでしょう。現場で臨機応変な対応が求められる職業は向いていないかもしれません。広汎性発達障害の人の中には、こだわりを持ち、パターン化されたものを好む人が傾向としては多いそうです。そのため、同じ作業を繰り返すルーティンワークで強みを発揮する場合があります。一度仕事のやり方を覚えると効率よくこなす人も多く、職場で高評価を受ける人も多いのです。また、自分にしかわからないような強いこだわりを持っているので、研究や創作などでは群を抜いた能力を発揮することも多いのです。具体的にはデザイン関係の仕事やプログラマー、コンピュータ関連の仕事で力が発揮できると思われます。集中力があり、普通の人では集中力をきらしてしまうような細かい仕事もコツコツと続けることができ、物事を深く追求したりルールに基づいて整理・分析したりするエンジニアや研究者といった仕事、校正者や職人などの特殊技能を必要とする仕事などに向いています。学習障害は、能力の凸凹や特性の偏りが多く、苦手なことにかなり個人差がある障害です。そのため、向いている仕事、向いていない仕事も人によって様々であると言えます。本人の特性を理解し、得意な分野を活かせる仕事につけることが理想ですね。向いていない仕事は一概には言えませんが、苦手な業務が多い仕事内容だと、困難な場面も増え、ストレスを感じることも多くなるかもしれません。一方、別の手段で代替できたり、職場の理解や協力があれば乗り越えられる可能性も大いにあります。たとえば、算数障害(ディスカリキュリア)のある人の場合、日々、多くの計算が業務に必要な仕事は苦手かもしれません。ですが、計算機で解決できる場合もあります。同じ小売業でも、暗算が苦手な場合、お釣りを計算しなければいけないお店の会計業務は向いていないと言えますが、バーコードを読み取るだけのレジであれば、問題ないこともあるでしょう。また、書字障害のある人は、文字を書く業務が苦手かもしれませんが、パソコンでタイプしてプリントすればよいこともあります。読字障害のある人も、音声読み上げソフトを使用したり、録音することで困難が解消できることもあります。苦手な分野を避けることは働き続ける上で大切ですが、テクノロジーや手段を替え工夫することでうまくいくこともあるので、「この仕事は無理」と決めつけてしまう前に検討するのがよいでしょう。実際に、様々な障害特性を乗り越えて作家、映画監督、発明家、俳優など様々な職業で活躍している人もいます。障害特性と向き合いつつも、自分が希望する仕事に目を向ける、という進路も選択肢の一つかもしれません。人のストーリー|発達ナビ大人の発達障害、仕事の探し方は?Upload 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発達障害のキホン発達障害に関する就労支援は、現在、よりよい対応体制を整えている状態です。特別支援学校などでは、卒業後に就職できる企業の紹介もあります。通常学級でも高校、大学ともに進路指導の先生に相談することも可能です。まず、最寄りのハローワークでの相談をおすすめします。障害者雇用の窓口もあるので、そこでご自身の発達障害の特性について伝え、仕事を探していること、仕事をする上で不安に感じていることなどの相談をすることができます。障害者を対象とする障害者合同就職面接会などの情報を得ることもできます。障害者向けの支援を希望しない場合でも、ハローワークできめ細やかな相談・支援を実施してくれます。適職があれば求人に応募してもよいでしょう。「若年者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」として、発達障害などでコミュニケーションに困難を抱えている場合の支援も行っており、不安がある場合には、発達障害者支援センターや医師との連携をとってもらうことができます。適職を自分では探すことが難しい場合には、適職を探す方法や調べてもらえるところも紹介してもらえます。就職に不安をかかえている場合には、就労移行支援という方法で就職をすることもできます。これは障害者総合支援法に基づいた支援で、就労移行支援事業所が各都道府県や政令都市の認可を受けて民間が運営しています。この就労移行支援は手帳を取得していなくても医師の診断書や意見書など、支援の必要性を示す情報があれば利用することができます。まずは最寄のハローワークや就労移行支援事業所に連絡をとってみましょう。ハローワークでは、発達障害のある人が就職された場合、その事業主に対して助成を行う「発達障害者雇用開発助成金」という制度を設けています。他にも「障害者トライアル雇用奨励金」という短期間の施行雇用を行い、仕事に慣れることで実際の雇用につなげる制度もあります。詳しい情報は以下のリンクを確認してください。実際に働いてみると仕事が想像していた仕事内容と大きく異なった、と離職を希望される場合も少なくありません。仕事を探す際には、似たような職種で職務経験を積んでいく方法や、希望の会社でまず一定期間働くことが可能なのか、聞いてみる方法もいいでしょう。より自分の得意・不得意を理解し、どの仕事ならこなせるか、やりがいを持てるかどうかを把握するヒントになるかもしれません。発達障害者支援センターでも「就労支援」を行っています。本人や家族からのあらゆる相談ができ、必要に応じた施設や医療機関の紹介もしてくれます。就労に関しては特性や障害の状況に適正な就労先を紹介してくれたり、雇用後にも個人の必要に応じて支援を行ってくれます。発達障害者支援法第3章第14条に基づき、都道府県・指定都市に設置されています。就職後も相談に乗ってほしい場合はジョブコーチによる支援を受けることもできます。これは、就職後、職場にジョブコーチが出向き、職場でうまく仕事をしていくための支援をしてくれる制度です。若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム発達障害者支援センター・一覧参考:障害者就業・生活支援センター療育手帳や精神障害者福祉手帳を取得している場合はいわゆる「障害者雇用制度」の対象となります。・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントの対象となり、障害者雇用枠での就職ができる・障害者職場適応訓練を受けられるなど、就職への支援が受けられます。実際に障害者雇用制度を利用して就労する人の数は年々増加しています。ですが、希望している職種や企業が障害者雇用枠で募集しているとは限らないこと、賃金などの面で希望と合わないこともあるでしょう。一般の求人に応募したい場合などには、手帳を持っているからといって必ずしもこの制度を利用しなくてもよいですし、手帳取得者であることを報告する義務はありません。制度を利用するかどうか、よく考え、支援機関などと連携し、相談しながら進めていくとよいでしょう。障害者雇用対策|厚生労働省障害者雇用対策|厚生労働省大人の発達障害、会社や同僚へ開示・報告はした方がいいの?自身に発達障害があることを職場に伝えた方が良いかどうか、迷う方が多いのではないでしょうか?会社へ障害があるということを報告するかどうかは、一人ひとりの状況によるので一概には決められません。診断のみでは雇用上「障害」としては認められない現状があることも考慮したほうがよいでしょう。そのため診断とともに障害者手帳を取得しているかどうかでその意味合いが変わってくる場合もあります。一般就労をしている場合、会社に報告するか否かは、障害に理解のある会社であるかどうか、報告することで仕事をしやすくなるかなどを考慮して決めた方が良いと言われています。会社に報告する人が多くなってきていることは事実ですが、周りや会社には報告しないことを選択している人も少なくありません。一方、報告することによって周りからの理解が得られ、離職率が低下するということも考えられます。報告した際のメリットとしては、サポートを受けやすくなったり、フォローしてもらえるようになるということがまず挙げられます。また業務の相談もしやすくなると思いますし、以前より職場環境を快適に感じることにつながるかもしれません。2016年4月に障害者差別解消法が施行され、不当な差別的取扱いを行ってはいけないこと、企業や行政はできる範囲で合理的配慮を行う努力義務があることが定められました。このため、職場でも合理的配慮をお願いしやすくなりました。しかし中には偏見を持ったり、あまり障害に対して理解をしてくれない人がいないとは限りません。発達障害について詳しい知識のある人は少ないので、仕事上での困難や起こりうる問題と、要望などを伝えるようにしましょう。また、障害があるという報告をする場合は人を選んで報告し、仕事のどういうところで具体的にフォローが必要かを伝えるのが良いと思います。デリケートな問題ですので、迷ったら自分だけで決めずに、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談することをおすすめします。一方で、発達障害を開示・報告した場合でも、職場や周囲に偏見が無理解があれば、職場で差別・虐待を受けてしまう可能性もゼロではありません。こうした深刻なケースでは、本人から周りに助けを求めるのが難しい場合もあるので、周囲の人が虐待に気づいた場合、各市町村の障害者虐待防止センターなどの専門機関に虐待の存在を知らせましょう。本人からの申告も可能性です。またこの虐待は就業場に限らず家庭内の虐待も含みます。障害者虐待防止センターに虐待を相談すると、支援・指導を受けることができ、問題の糸口を探す手伝いをしてくれます。強制的に仕事や家族から隔離されたりすることはありませんので、安心して相談することができます。発達障害の仕事での困りごと・よくあるミスと対処法出典 : 発達障害のある人の中には、社会的な「暗黙のルール」というものに気づきにくいという特性も持っている方も多く、周りの人が忙しくしている時や、助けを必要としている状況に気づかず、手伝うことができない場合があります。また決められたこと以外のイレギュラーなことが苦手な特性のある場合、指示をされないと動かない・自分の仕事が終わったら他のことは何もしようとしない、などと周りから見られてしまうことがあります。【対処方法】具体的な指示があると動きやすいという特性を伝え、「具体的に今時点で何を手伝ってほしいのか」指示してもらうようにします。その仕事を終えたら、次の仕事をまた具体的に指示してもらうようにします。複数の仕事を同時に並行して行うことや、脳と体の複数部を同時に動かすことが苦手なこともあります。一つの業務の間には、わずかな時間でも休憩を挟み、終わった仕事に対して評価をしてから、次の仕事をするといった工夫をするとよいでしょう。時間の管理が苦手で、遅刻しがだったり、仕事の手順が就労時間で計画できない場合があります。スケジュールの調節、優先順位だけでなく、仕事に対して熱心に取り組んではいても、こだわりが強すぎて自分の納得いくまで作業を終わらせることができずに、納期が守れないといったこともあります。【対処方法】仕事の完成度が高いことも重要だが、納期を守ることも大切だということを理解しましょう。「納期」とはなにか、具体的にして再確認し、作業のスケジュールを「見える化」すると良いでしょう。またスケジュールは自分だけでなく、複数の人に管理してもらうなどがあります。具体的には以下のような工夫をするとよいでしょう。・作業内容を細分化して書き出し、それを見えるように張り、作業終了目標時間の5分前にアラームをセットする。・終わった作業にはチェックをし、終わった作業への充実感を感じられるようにする。・仕事の計画や優先順位を決めることが苦手な場合、スケジュールをほかの人に管理してもらい、ひとつの仕事を終えたら、次の仕事を具体的に指示してもらうようにする。周りが気になってしまって、やるべき仕事に対しても集中力が続かない場合があります。また、興味がない仕事の場合、会議中などの大事な席でも居眠りしてしまうことも。頼まれていたことを忘れてしまったり、集中力が続かないことが原因で、仕事がスムーズに終わらなかったり、やる気のないような印象を与えてしまい、接客などで様々なトラブルを起こしてしまうことも少なくありません。【対処方法】怠けているという訳でもなく、集中力が続かないという特性を持っている場合は、周りの人に自分の特性を説明し、理解してもらえるようにつとめます。何か別の考えごとをしているな、と感じたら、声をかけてもらえるようお願いしてみましょう。他のことを考えはじめたことに気付いてもらい、今やるべきことがあるのに他のことを考えてミスしてしまうのを防ぐためです。指示を忘れないようにメモの習慣をつけましょう。集中力低下時の居眠り防止には、睡眠不足にならないように心がけることも大切です。またデスクワークなどで気が散ってしまうときは、集中できるよう環境調整をすることも効果的です。デスク周りを片づけて集中できるようにしたり、聴覚過敏がある場合は相談してイヤーマフなどの使用許可をお願いするのもよいでしょう。「想像力の障害」や「コミュニケーション能力の障害」により、敬語の使い方が困難な場合もあります。本人が正しいと思って使っていた言葉使いが、仕事の上では失礼にあたったということに気づけないことがあります。また距離感をうまくつかめないという特性もあり、近くにいるのに声のボリュームが大きすぎて相手を驚かせてしまうこともあります。【対処方法】自分中心の話ばかりでなく、相手が話しているときは意識的に相づちをうつようにするとよいでしょう。場所やその場の雰囲気、相手に合った会話の内容や態度、表情などを意識するということを、ひとつずつクリアしていくようにします。相手のお世辞を正直に受け止め過ぎてしまうことがあるので、注意しましょう。まとめ出典 : 参考:『発達障害者と働く』(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)発達障害のある人が就業する場合、多少の困難はもちろんつきものです。職場の方から偏見を受けたり誤解されてしまうこともあります。発達障害は、一見して外からは見えにくいため、他人には障害があることが理解されにくい場合があります。自分でも自覚が少なく、仕事ができないと他人と比べて落ち込むこともあるかもしれません。しかし、自分の障害特性を理解することで適切な支援も受けられますし、必要な配慮を周囲の人に伝えやすくなります。発達障害だということを職場に告白し理解してもらうのは勇気のいることですが、仕事の円滑さやストレス軽減のための手段のひとつであるとも言えます。仕事がスムーズにいかないのは、本人の能力不足や怠け心があるというのではありません。今勤務している職場環境を改善したり、適職を見つけることのできる相談機関が全国にありますし。それによってサポートを受けながら、働きやすい仕事の環境で継続的に働いていくことも可能なのです。深呼吸し、ひとつずつ課題をクリアしていくように、業務の手順や対人関係の工夫を身につけていきましょう。自信をもって働ける職場環境をつくったり、より適切な職場を見つけたりすることで、仕事や生活全体の充実が得られるようになるでしょう。頑張り過ぎず、自分のペースでいられる時間を持つことで、バランスをとっていきましょう。参考:法令データ提供システム「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」2012年
2016年12月15日LITALICO初の書籍が発売!Upload By 鈴木悠平(発達ナビ編集長)発達ナビの運営会社である株式会社LITALICOの代表、長谷川敦弥の新著が発売されました。SB新書から、『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』というタイトルでの発売です。LITALICOがこれまで学習支援や就労支援のサービスの中で出会ってきた方々のエピソードを中心に、それぞれ違った個性を持った方たちが、どのように自分にあった学び方、働き方を見つけていったのかをご紹介するとともに、多様な個性が活かされる「障害のない社会」とはどのような社会なのか、私たちのビジョンや想いを記した書籍です。発達ナビ編集長である私も、この書籍の構成・編集に携わりました。これまで、発達が気になる子どもたちの学習支援教室や就労支援センターの現場スタッフとして、また自分自身の特性に悩んだ日々も思い出しながら、同じようにご自身やお子さんの将来について悩める方々に届けられるようにと編集させていただきました。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』新著の構成と見所は?以下では、書籍の構成とともに、各章の見所をご紹介します。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。 』第1章:ADHDはぼくの強み第2章:子どもが一番の先生だ!第3章:子どもの心に火をつける第4章:「多様性」を力に変えていく働き方第5章:障害のない社会をつくる-------------第1章は、LITALICO代表である長谷川敦弥自身の人生のエピソードです。ADHDの特性を強く持つゆえに、周囲との関わりに悩んだ幼少期の学校生活。人生の転機となる焼肉屋の店長夫妻との出会い。上京後、自身のADHD的特性を活かして働き、LITALICOを運営するに至るまでの歩みをお伝えします。第2章は、発達支援の教室「LITALICOジュニア」で出会った子どもたちのエピソードです。「困った子だ」「問題児だ」と言われているその子自身が、実は一番困っている。お子さんの特性を理解し、その子が過ごしやすい環境づくりをしたり、その子ならではの学習方法を探して成功体験を積み重ねることの重要性などについてお話します。第3章は、IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」で出会った子どもたちのエピソードです。学校で決められた「枠」からはみ出る子どもたちが、自分の「好き」や「得意」を伸ばしていくことで、苦手を克服したり、新たな進路を切り開いていったエピソードをご紹介します。第4章は、働くことに障害のある方を支援する「LITALICOワークス」の利用者さんのエピソードです。困難と直面しながらも自分らしい働き方を諦めずに探し続け、一人一人違う自分だけの「天職」を掴み取るまでの過程をご紹介します。ご自分の特性や働き方に悩まれている大人の発達障害当事者の方だけでなく、お子さんの将来について悩まれている保護者の方の姿を思いながら、執筆・編集いたしました。第5章は、こうした取り組みを続ける中でLITALICOが大切にしている思い、発達ナビなどのメディア発信や、研究・政策提言活動を通して、「障害のない社会」をどのように実現していきたいかを記しました。発達ナビ読者のみなさまにも、ぜひお読みいただきたい内容となっております。書店やネットショップで手に取っていただけると幸いです。『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』立ち読みページ『発達障害の子どもたち、「みんなと同じ」にならなくていい。』
2016年12月12日子どもの発達が気になるとき、「おやじ」達には何が出来る?出典 : 発達が気になるお子さんの子育てについて、父親の立場からの視点や体験談はまだまだ世の中に少ないのが現状です。・発達障害がある子どもの子育てにおいて、父親が果たせる役割にはどんなものがあるの?・子どもの発達が気になるきっかけやその後の反応は、父親と母親ではどのように捉え方が違うの?・夫婦(パートナー)間でのお互いのサポートはどうすれば良いの?そんな悩みを抱えられているご家庭も多いのではないでしょうか。そこで今回は、ご自身のお子さんにも軽度知的延滞を伴う自閉スペクトラム症があり、同じく発達障害のある子どもを持つ父親同士のネットワーク「おやじりんく」を立ち上げた金子訓隆さんと、長年、発達障害のある子どもの家族支援の実践と研究を重ねてきた、鳥取大学大学院の井上雅彦教授のお二人にお話をいただきます。お子さんの発達が気になるご家族、特に「おやじ」の皆さんのご参加をお待ちしております!平日の夜、仕事終わりにも参加しやすい時間帯です。他にも、この分野に関心のある方々は大歓迎です!ご参加いただける方は、以下の概要を確認の上、申し込みフォームをご提出ください。ゲスト①: 金子訓隆NPO法人「おやじりんく」代表理事Upload By 発達ナビ編集部■金子訓隆(かねこのりたか)NPO法人おやじりんく代表理事10歳の息子、真輝君が軽度知的延滞を伴う自閉スペクトラム症であることから、発達障害支援について我が子の子育てを通じて学んでいく。その後、ブログやSNSを通じて交流し、発達障害児を抱える父親たち10人で2012年11月に特定非営利活動法人おやじりんくを設立。現在は父親視点から障害児・者の自立・就労に向けた支援活動を行っており、同団体で放課後等デイサービス「輝-HIKARI-」を埼玉県内で4か所を運営。精力的に支援活動を行っている。NPO法人おやじりんくホームページ >> 法人「おやじりんく」ホームページゲスト②: 井上雅彦鳥取大学大学院教授Upload By 発達ナビ編集部■井上雅彦(いのうえまさひこ)鳥取大学大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授LITALICO研究所 所長(アドバイザー)応用行動分析学を理論的基盤として「環境」と「個人」の相互作用から「行動」を捉え、さまざまなレベルでの「障害」や「不適応状態」について、「環境」と「個人」の両方向からの心理的支援や教育を研究。『家庭で無理なく楽しくできる生活・学習課題46―自閉症の子どものためのABA基本プログラム (2008年,学研)』、『8つの視点でうまくいく!発達障害のある子のABAケーススタディ―アセスメントからアプローチへつなぐコツ(平澤紀子・小笠原恵共著,2013年,中央法規出版)』など著書多数。研究所ホームページ対談イベント「発達障害のある子どもに父親ができること」概要【日時】2016年12月22日 (木)18:30 開場19:00 開始【場所】株式会社LITALICO東京本社〒153-0051東京都目黒区上目黒2-1-1中目黒GTタワー15F株式会社LITALICOアクセス【定員】80名【参加費】無料※別途、実費1,000円で任意参加いただける懇親会も予定しております。【タイムテーブル】18:30開場19:00開演のご挨拶、諸連絡19:10金子訓隆さん・井上雅彦教授対談〜発達障害のある子どものために、父親ができること〜20:30質疑応答20:45懇親会※タイムテーブルは現状の仮予定です。開始時間は変更しませんが、講演と質疑応答の時間配分を多少変更する可能性がございます。【備考】※1 お申し込み多数の場合、先着順で申し込みを締め切らせていただく場合がございます。※2 遠隔地のためご出席できない方向けのネット中継も予定しております。配信チャンネルは、発達ナビ会員様向けのメールマガジンにて、イベント前日にお知らせいたします。配信観覧ご希望の方は、事前に発達ナビ会員へのご登録をお願いします。※3 先着順、人数が上限に達した時点で応募〆切となります。ご応募いただいた方には参加の可否を1週間以内にご連絡いたしますので、h-navi.jpドメインからのメールを受信可能なメールアドレスでのご登録をお願いいたします。※4 当日、会場での託児サービスはご提供しかねますので、ご了承ください。発達ナビ対談イベント「発達障害のある子どもに父親ができること」申し込みフォーム発達ナビ新規会員登録ページQ&Aコーナーで、ゲストへの質問を募集します!今回の企画に連動して、発達ナビのQ&Aコーナーでは、ゲストのお二人に対する質問を募集します!皆さま、ふるってご投稿ください!※いただいたご質問や体験談は、事前にゲストのお二人にお読みいただきますが、時間の関係上、対談の時間中に全てのご質問にはお答え出きかねますこと、ご了承ください。発達ナビQ&A 金子さん・井上教授への質問大募集!
2016年12月07日息子は来年小学生。主治医から就学に向け、言われたアドバイスは出典 : 私の息子には発達障害の診断が降りています。息子が2歳頃まで、私には気持ち休まる時間がありませんでした。多動で動き回り、癇癪で泣き続ける声にどうしたら良いのか分からず、思わず「うるさい!!」と泣いてしまったこともありました。そんな息子が、来年度いよいよ小学校に入学します。自由保育の幼稚園で先生方にしっかりと支えて頂きながらのびのび育ち、困りごとは今でも形を変えて継続していますが、大変さの度合は以前と比べものにならないほど和らぎ、6年間で別人のように成長しました。しかし、就学について発達外来で相談したとき、ずっと息子を診てくださっていた医師の先生からこんなことを言われたのです。「普通級でも支援級でも、お母さんのお考えに任せます。ただ1つだけ言えることは、小学校に上がると上からガツーンと押さえつけられるような叱られ方で、一気に二次障害に陥ってしまう子もたくさんいるんです。息子君がここまで成長できたからこそ…気を付けてあげてください。」このときの先生のやるせなさそうな顔を、今でもふっと思い出すことがあります。そして迎えた就学時健診。じっとしていられない息子の衝動性はピークに達し…出典 : そして、就学時健診で小学校に息子を連れていったとき、私はこの先生の言葉を噛みしめることとなりました。ほとんどの先生たちが来年入ってくる可愛い小さな子どもたちに、穏やかでわかりやすい指示を心がけていらっしゃいました。うちの息子は、学校に貼ってあるポスターを見て先生を質問攻めにし始めたかと思えば、教室に置いてある本を読み始め、返事もせず…という場面が何度かありました。そのとき、恐れていたことが起こりました。私が受付をする間、衝動性がありじっとすることのできない息子は、健診で使う道具をパッと手に取ってしまったのです。出典 : それを見ていた受付の先生は、大きな声で「さわるな!!!」と怒鳴りました。あまりの大きな声に、私ですらビクッとしてしまいました。息子はその先生の大きな声にパニックに。その拍子にまた別の器具を触ってしまいました。先生はさらに畳みかけるように大声で「おい!!さわるな!!!」と怒鳴りました。息子の顔を見ると真っ青。その直後、体育館の床にうずくまってしまったのです。「小学校って最悪」「ぼく怒鳴られた」「怒鳴る先生がいるなら僕は小学校なんて行きたくない」帰り道、息子は真っ青な顔をしながらそう言ったのでした。子どもの成長を阻まないで…!発達障害児と関わる先生に知ってもらいたい、3つの大事なこと出典 : 健診で起きた事件を振り返り、私は学校の先生にも知っていてほしいな、と思ったことがあります。それは、発達障害児に怒鳴っても、百害あって一利なしということです。発達障害児を特別扱いしろ、優しくしろと言っているわけではないですし、発達障害児の逸脱行動を無条件に受け入れて欲しいと思っているわけでもありません。まずは発達障害児に厳しく怒鳴ると、どんなことが起こるのか?私の息子を例に挙げ、詳しくご説明したいと思います。■1. 多くの発達障害児は耳に入る音や身体に触れられることに敏感です息子の場合は聴覚・触覚・味覚に過敏性があります。女の人の甲高い声や男の人の大声は、耳元でドラを鳴らされたかのように大音量に響いているようです。耳元で大音量で聞こえる人間の声にパニックになると、指示はほとんど聞き取れないそうです。こうなると、冷静に行動することは難しくなります。■2. 気持ちの切り替えが苦手です息子は気持ちの切り替えが苦手で、怒鳴られて不快な気持ちになってしまうと、そこからなかなか抜け出すことができません。不快な気持ちをなんとかするため、パニックになるのだそうです。また、嫌な記憶は数年経っても鮮明に残り、フラッシュバックとなって本人を苦しめ続けます。息子はこのフラッシュバックの影響で、新しいことにチャレンジしようという気持ちがなかなか起こらないようでした。■3. 極端な考え方をする傾向があります発達障害の子は極端な白黒思考の子が多いようです。息子も1度嫌なことがあると、「ここは嫌な場所だ」とか「先生に怒鳴られた自分はダメだ」という考えになり、後からどれだけ励まそうが説明しようが、辛い記憶に引きずられて一気に思考がネガティブな方向へ傾いていきます。それまで「この場所は楽しいところだ」と思えるよういろいろな準備や工夫をしていても、1回嫌な体験をしたら、その思い出は嫌な記憶になるようです。このネガティブ思考を、程よいところまで戻すためには、たくさんの励ましと成功体験が必要になってきます。怒鳴るより簡単!発達障害児に伝わる、指示のコツ出典 : 発達障害児に指示をする場合、怒鳴って言い聞かせるよりもずっと簡単な方法があります。それが、CCQというテクニックです。CCQとは、C(Calm) = 穏やかな声でC(Close) = 子どもに近づいてQ(Quiet) = ゆっくりと話してというものです。うちの息子も、このテクニックを使えばすぐに理解し、サッと指示を聞いてくれます。私たち親が発達障害児を育てる中で、怒鳴りたくなることは日に1度や2度ではありません。でも、怒鳴ったところで自分も子どもも辛いだけだとわかっているので、「どうしたら怒鳴らずに、育てていけるか?」ということに日々頭を悩ませています。子どもの笑顔と成長を促すため、必死に悩み、育ててきました。だから正直、簡単な気持ちで怒鳴らないで欲しいな…と思うのです。学校の先生、どうかパニックになっている子どもたちを、行儀が悪いと睨みつけないでください。適切な方法で指示を出せば、子どもも落ち着いて行動できるでしょう。もし指示がわからなかったとしても、穏やかに話しかけられれば、パニックになることはグッと減るはずです。子どもの成長を願うのは、親も先生も同じ。そのための方法は、1つとは限らないと思います。
2016年12月01日発達障害とは出典 : 発達障害とは、先天的な脳機能の障害で、想定される時期に年齢相応の発達が見られない、または年齢相応のスキルが獲得できないことで起きる障害を指します。その症状は、通常低年齢の発達期において発現します。2005年4月に制定された発達障害者支援法では発達障害は以下のように定義されました。この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。発達障害はいくつかのカテゴリーに分類され、診断基準によって多少異なりますが、大きく分けて「広汎性発達障害(PDD)」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。広汎性発達障害には自閉症やアスペルガー症候群などのコミュニケーションの障害が含まれますが、アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)という障害名に統合されています。また『DSM-5』ではADHDは注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害、学習障害は限局性学習症/限局性学習障害という診断名となります。これらの発達障害の中には知的障害が併存する場合もあります。Upload By 発達障害のキホン発達障害の原因は?出典 : 発達障害の症状は、先天的な脳機能障害が原因となって生じます。ですが、その詳細なメカニズムや、なぜその脳機能障害が引き起こされるのかははっきりとは解明されてはいません。研究が進み、発達障害の一部について証明された事実であったり、関連が指摘された要因については少しずつわかってきました。ですが発達障害の症状は様々であり、原因も多様であると考えられ、全ての人に当てはまる原因はないのではないかとも言われています。一方で、かつて言われていた「親のしつけ方・育て方が悪い」「親の愛情不足」といった心因論は現在では医学的に否定されています。以下に、現在考えられている発達障害の原因とそのメカニズムをご紹介します。発達障害の原因はまだはっきりとは解明されていないものの、発達障害を引き起こす脳機能障害には遺伝的要因が関連している可能性が指摘されています。例えば、広汎性発達障害に関しては、1970年代から盛んに双生児研究が行われ、一卵性双生児間では発現率が5~7割ほどという研究結果が多くあります。この数値は二卵性双生児の場合より高いと言われています。一卵性双生児は遺伝子情報が同じです。その一卵性双生児で一人が広汎性発達障害だと二人とも広汎性発達障害になる可能性が高いという結果が出たことは、何らかの遺伝子要因が広汎性発達障害と関連があることを示唆しています。また現在では、遺伝子研究が進み、染色体の一部分の重複により生じる発達障害があることや、それに関連する遺伝子がいくつか発見されています。ですが、一卵性双生児間での一致率が100パーセントではないことなどから、発達障害が単純な遺伝的要因だけで発現するわけではなく、現在では関連する遺伝子が複数あることもわかってきました。また、「親の育て方」という説や、MMRワクチンの接種が原因とする説など、研究の結果否定された環境要因もありますが、子どもの心身は、胎児期から発達期にとる睡眠や栄養、周りの人との関わりといった様々な要因によって支えられ、発達していきます。そのため、環境要因が全く関わりがないと考えることはできません。これらのことから、現在、発達障害にはなんらかの遺伝的要因が関わっているが、その他のさまざまな環境要因と複雑かつ相互に影響し合って発現するという考えが主流になっています。つまりある特定の遺伝子があれば必ず発症するというわけではなく、また遺伝的な要因と言っても親から子へ単純に遺伝するという意味ではないのです。さらに発達障害は、1つの原因による1つの道筋ではなく一人ひとり違った道筋を経て発症すると考えられ、全ての人にあてはまる要因を解明するのは難しいのではないかとも言われています。発達障害はどうやって発症するの?出典 : 発達障害が発症し、それが明らかになるまでには以下のようなステップがあります。1. 発達障害のもととなる脳機能障害が生じる発達障害はなんらかの遺伝的要因をもつ、つまり発達障害になりやすい体質が先天的にある人が、胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で様々な要因の影響を受け、脳機能障害を生じることで起こると言えます。2. 脳機能障害により認知や感覚の偏りを引き起こされるそうした脳機能の障害や偏りによって、認知の方法や感じ方に違いが生まれ、それが様々な行動特性を引き起こすのではないかと言われています。例えば、情動を認知したりコントロールをする前頭葉や扁桃体などの機能に障害があり、そのために気持ちのコントロールやコミュニケーションをとるのが難しいのではないかという説もあります。また、発達障害のある人は記憶の仕方に特性があるといわれています。そのために非常に記憶力が高かったり、ワーキングメモリと呼ばれる情報の処理や記憶の仕組みにトラブルがあったりする人がいます。刺激を認識する機能になんらかのアンバランスが生じる人もいます。たとえば刺激を感じやすい感覚過敏や、逆に刺激を感じにくい感覚鈍磨がある場合もあります。3. 発達の遅れなどの症状が現れ、問題や困りごとが明らかになる発達障害の症状の発現時期は人によって異なります。最近では早期にそのリスクを発見するため、特に自閉症スペクトラムや広汎性発達障害などではアイ・トラッキング・システムなどを使い、初期症状を見つけるための研究も進められていますが、一般的には症状が顕著に発現するのは幼児期頃からと言われています。乳児期には周りの子どもとコミュニケーションをとったりすることもあまりなく、また個人差も大きい時期なので、はっきりとはわからないことも多いのですが、集団参加や社会的な機能が要求される時期になると、行動面や対人関係・社会性の側面でなんらかの症状が目立ち始めると言われています。きっかけとしては以下のような場合に、発達障害がある可能性に気づき、なんらかの支援を受けることが多いようです。・1歳半や3歳健診などの乳幼児健康診査や小児科などで発達の遅れを指摘される・園や学校に進んで集団生活がはじまり、コミュニケーションなどで困りごとが起きる・子育ての悩みを相談するまた、学習障害の症状の発現時期については、目立った症状が見られるようになるのは読み書きを覚え始める就学前の年齢になり、学習を開始してからだと言えます。また、幼少期の特性の偏りは単にその子どもの苦手や不得意に分類される可能性があり、区別が難しいため診断が遅れる傾向があります。障害が軽度の場合や特に困りごとが起きなかった場合など、見過ごされてそのまま成長することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して発達障害に気づく人もいます。発達障害の理解とl対応広汎性発達障害/自閉症スペクトラム・ADHD・学習障害、それぞれの原因は?出典 : 自閉症スペクトラム(ASD)や広汎性発達障害に含まれるグループについては、現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。最も中心的な関連遺伝子と考えられているのが、シナプスの形成とシナプスの機能にかかわるタンパク質をつくるために必要な情報にかかわる遺伝子です。たとえば、シナプスの形成に関与する遺伝子であるNLGN3やNLGN4、これらと機能的にかかわりの深いSHANK3などが自閉症スペクトラムとの関連が指摘されています。つまり、シナプスにおける神経伝達の軽微な異常によって、自閉症スペクトラムに見られる精神発達に障害が引き起こされると考えられています。(飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊p.95~96より引用)上記を含め、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数多く報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、現時点では、原因となる遺伝子を完全に特定することはできてはいません。かつて広汎性発達障害に含まれていたレット障害(レット症候群)についてはX染色体上に存在する遺伝子の突然変異が原因だということが発見されました。1999年にMECP2という遺伝子が主な原因遺伝子であることが発見され、その後2004年にCDKL5、2008年にFOXG1という原因遺伝子も発見されています。そのため自閉症スペクトラム障害の概念から除外されました。また、広汎性発達障害や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害の症状を引き起こすと考えられる脳機能の偏りとしては以下のような説があります。1. 脳領域間の機能的連結低下脳内のネットワークの連結機能がうまくいかず、定型発達の人の場合と比べて機能が低下していることから自閉症スペクトラム障害になるのではないかという説があります。2. 社会的な活動をするための脳の部位の機能異常人の脳には部位ごとに役割があります。その中に社会的な活動をするために使う部位もあり、以下のような部位に異常が起きたり働きが弱かったりするため、うまく人の表情や感情が理解できないのではないかと言われています。・扁桃体(へんとうたい)…人の表情を認識し感情を読み取る部位です・紡錘状回(ぼうすいじょうかい)…紡錘状回は人の顔を認識する部位です・上側頭溝…人の目や口などの部位の動きを認識する部位です・前頭葉…前頭葉にはミラーニューロンと呼ばれる神経が存在しており、人に対する「共感」の感情に関わっています3. 小脳の異常小脳は、平衡感覚や強調運動などに関わっていると言われています。そのため小脳に異常が起きると、バランス感覚をあまり持てなくなると言われています。ほかにも、小脳に異常が起きると感情や認知にも影響があるのではないかと報告されていますし、自閉症スペクトラム障害の中には実際に小脳への異常が見られた人もいます。4. 脳内物質の異常自閉症スペクトラム障害では、脳内物質に異常があるという報告があります。普通の人と比べて、血中オキシトシンが低い、セロトニンが高い、血中グルタミン酸が高いという違いが見られたという研究があります。ADHDの症状が起こる確かな原因はまだ解明されていませんが、ADHDには複数の関連遺伝子が素因としてあり、それらが様々な道筋をたどって、このような特有の脳機能の偏りを引き起こし、ADHDの症状につながるのではないかと言われています。現在有力だとされている素因は脳の前頭野部分の機能異常です。近年の研究から、ADHDの人は行動等をコントロールしている神経系に機能異常があるのではないかと考えられています。前頭葉は脳の前部分にあり、物事を整理整頓したり論理的に考えたりする働きをします。この部位は注意を持続させたり行動などをコントロールさせたりします。ADHDの人は、この部分の働きに何らかのかたよりや異常があり、前頭葉がうまく働いていないのではないかと考えられています。前頭葉が働くためには、神経伝達物質のドーパミンがニューロンによって運ばれなくてはいけません。しかしADHDの人の場合ニューロンによってドーパミンがうまく運べず前頭葉の働きが弱くなってしまい、それが原因で「多動」「衝動」「不注意」の3つの特徴が現れると考えられています。ADHDの人は五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまう傾向がありますが、それも前頭葉の働きが弱いからだと言われています。思考よりも五感からの刺激を敏感に感じ取ってしまい感覚を過剰に感じてしまうので、論理的に考えたり集中するのが苦手となると考えられています。出典 : 学習障害の症状を引き起こす具体的な脳機能障害としては、中枢神経のトラブルが仮説の中でも最も有力と言われています。脳は無意識に感覚器官から入ってきた情報を処理し、整理して記憶します。そして必要に応じてその情報を取り出します。文字を読んだり書いたり、計算をしたりといった学習にはこれらの働きが必要です。中枢神経は脳や脊髄、体の様々な部分の働きを指令する部分であり、これらの情報処理を担っています。そのため、この機能のトラブルが学習障害の困難を引き起こすのではないかと考えられています。この説の検証が難しい理由は、医学的に検査を行っても分からないほどの小さな異常が原因とされているからです。発達障害を検査する方法はあるの?出典 : 現在の医学では妊娠中の羊水検査、血液検査、エコー写真などの出生前診断で判明することはありません。また、出生後も遺伝子検査や血液検査といった生理学的な検査では診断できません。これは、発達障害の原因が完全には解明されておらず、またその原因も複雑で単一ではないと考えられるためです。今後も生理学的な検査方法を確立するのはかなり難しいとも言われています。発達障害の人の多くが幼児の頃から12歳ぐらいの間に何らかの困りごとや症状をきっかけに専門機関を相談・受診し、医師によって発達障害だと診断されます。診断は問診と心理検査・知能検査などの様々な検査を総合的に判断して行われます。その他MRIを使い脳の器質的な疾病がないかを確認する場合もあります。検査や診察は一度ではなく、何度か行われたうえで慎重に診断が下されることが多いのです。発達障害は治療できるの?出典 : 発達障害を完全に治療する薬や手術などの医学的な方法は現在ありません。しかし、障害の特徴を緩和させたり、本人の困りごとを改善する方法はいくつかあります。例えば環境調整を含めた心理・社会的アプローチや症状を和らげるための薬の使用などです。早期からの療育は症状改善に大きな効果があるとされています。各都道府県に設置された「保健福祉センター」などで相談すると、適切な医療機関や児童発達支援なども紹介してもらえます。療育的支援では、苦手な部分をサポートしたり得意なことを伸ばすような訓練を受けることができます。適切なコミュニケーションの取り方や自己コントロールを学び、苦手な部分に対する対処法を身に付け自信をつけることで、困りごとを減らし二次障害の予防に繋がります。二次障害とは、適切な治療やサポートを受けられない場合に、うつや不安障害、不登校やひきこもりなど障害の主症状とは異なる症状や状態を引き起こしてしまうことを指します。ペアレントトレーニングと言って、発達障害の子どもを持つ親のためのトレーニングを実施している機関もあります。親が適切に接することで、子どもが日々感じている困難を軽減し、症状の改善に繋げます。また、特別支援教育や通常の教育のなかでも環境調整や合理的配慮を行いながら、一人ひとりに合わせた支援が行われます。発達障害の人の中には、こだわりや集中力を活かして高い専門性を身につけたり、優れた才能を持っている人もいます。才能・いいところを伸ばせるような教育が求められます。多動性や衝動性が強い子どもの場合、服薬を取り入れることもあります。脳内の神経伝達物質の不足を改善する働きがあり、症状がやわらぎます。症状が緩和することで、衝動的な行動で周りの友達と関係が築けず、孤立してしまう悩みなどが要因ともなる二次障害も予防できます。薬の服用で困難さが軽減されることで、本来の能力を発揮できるようになり、自分に自信が持てるようになるケースもあります。薬を服用している間は落ち着いて話を聞くことができるので、その間にスキルトレーニングを行い、本人の能力を高められるように親は努めましょう。しかしながら薬には合う合わないもあり、副作用が働いてしまう場合もあります。薬の利用は主治医とよく相談し、納得した上で用法・用量を守って進めるようにしましょう。また薬を利用したとしても、行動面や学習面での親や教育者からのサポートは引き続き必要です。まとめ出典 : 発達障害の原因を探ることは、治療法の開発・研究のためにはとても大切であり、世界中の研究者が日々、研究を進めています。その成果が少しずつ明らかになってはいるものの、いまだにわからないことが多いのが現状です。また、発達障害が発症する道筋は一つではなく、複雑な要因が絡み合っていると考えられるため、すべての人に当てはまるたった一つの原因は今後もわからないのではないかという考え方が主流となっています。ただ、ひとつ確かなことは、発達障害は、親や本人のせいで起きるものではないということです。目の前の子どもにとって大切なことは、どうしたら本人の困りごとがなくなるか、特性を生かしていけるかという対応方法を考えてみることです。一人ひとりの子どもの発達障害の特性は様々なバリエーションがあります。保護者や支援者が一人で悩み考えるのではなく、地域の相談機関や専門家と繋がりながら解決していきましょう。地域情報|発達ナビ日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」参考文献:鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』日本評論社/刊参考文献:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル 』医学書院/刊参考書籍:宮本 信也 , 竹田 一則 /編著『障害理解のための医学・生理学』明石書店/刊参考書籍:服部 陵子/著『Q&A家族のための自閉症ガイドブック―専門医による診断・特性理解・支援の相談室』明石書店,2011年/刊飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊せせらぎメンタルクリニック 「アスペルガー症候群の原因。アスペルガー症候群はなぜ生じるのか」松浦こどもメンタルクリニック 「ADHD」参考書籍:中山和彦・小野和哉/著『図解よくわかる大人の発達障害』ナツメ社,2011年/刊
2016年11月25日発達検査とは?出典 : 発達検査とは、子どもの心身の発達の度合いを調べる検査のことです。検査結果から子どもの発達の特徴が分かったり、普段の接し方のヒントを得ることができたりと、子どもの育ちに関する参考情報を得ることができます。発達の遅れや凸凹からくる困難に応じて子どもをサポートする療育支援なども、発達検査の結果をもとに計画を立てられることが多いです。一般的には、幼稚園や保育園などの教育機関で発達の遅れがあることを指摘されたり、乳幼児健診や医療機関にかかった際に、検査をすすめられることが多いです。もちろん、家庭での様子から、子育て支援センターなどの相談機関に問い合わせて検査を受ける方もいらっしゃいます。発達検査は発達障害の確定診断を行う検査ではありません。発達障害の確定診断に際しては、生育歴や行動観察などの臨床診断と、発達検査・知能検査などの専門診断の結果を経て、総合的に診断されます。よって、発達検査の結果のみで発達障害だと診断されることはありません。確定診断の判断要素として発達検査の結果を参考にしています。発達検査にはさまざまな種類が存在していることから、検査ごとに検査結果の表現方法や評価の仕方が異なります。さらに医師や医療機関ごとに取り扱っている検査も異なるため、受けたい検査がある場合は、お近くの受診機関が対応しているかどうかを事前に問い合わせるとよいでしょう。ここでは発達検査に最も使用されている「新版K式発達検査」と「乳幼児精神発達診断法」について、主に紹介していきます。発達検査って具体的にどんな検査をするの?出典 : 発達検査にはさまざまな種類があります。・新版K式発達検査・乳幼児精神発達診断法・日本版Bayley-III乳幼児発達検査・ASQ-3・KID乳幼児発達スケール・ブラゼルトン新生児行動評価法・日本版デンバー式発達スクリーニング検査など、多種多様な検査があります。この中でも現在、日本で使用されることが多い検査は「新版K式発達検査」と「乳幼児精神発達診断法」です。年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面の検査に重点が置かれます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。また乳幼児向けの検査用具には、振ると音が鳴るガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料が使われています。このような検査用具を使うことによって、子どもの自然な行動が観察しやすい検査となっています。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。■適用年齢:生後100日後から成人■時間:約15~60分程度■形式:1対1(検査者と被検査者)の個別式検査■料金:公的病院でおおよそ840円(保険診療・3割負担の場合)乳幼児精神発達診断法は、上記と同様に年齢と発達の度合いの比較を行い、実際の年齢とどのくらい差があるかを評価する検査です。新版K式発達検査と異なる点は、面接者が保護者に対して子どもの様子を個別に面接し、各項目について尋ねることで行われる点です。乳幼児精神発達診断法では検査した項目と月年齢を軸にした図である「発達プロフィール」を作成します。子どもに直接検査を実施する方法に比べて、子どもの状態や障害に左右されることがなく、普段の生活の状況に基づいて判断されることになります。なお「津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法」と「遠城寺式乳幼児精神発達検査」のふたつがありますので、追って説明していきます。■津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法「運動」「探索」「社会」「生活習慣」「言語」の5領域の438の質問項目から構成されています。適用年齢別に「1~12か月まで」「1~3歳まで」「3~7歳まで」の3種類の質問紙を用いて検査・面接を行います。なお5領域ごとに「発達年齢」が算出されます。・適用年齢:生後1ヶ月から7歳まで・時間:約20分程度・形式:母親など子どもの養育者に個別面接■遠城寺式乳幼児精神発達診断法「運動」「社会性」「理解・言語」の3領域6の質問項目から構成されています。0歳0ヶ月から検査を受けることができます。・適用年齢:0歳0ヶ月~4歳8ヶ月まで・時間:約15分程度・形式:母親など子どもの養育者に個別面接国立特別支援教育総合研究所発達検査の結果から分かること出典 : 発達検査の検査結果から子どもの発達の度合いが示された「発達プロフィール」と「発達年齢」「発達指数」などの数値結果を知ることができます。発達検査の中でも乳幼児精神発達診断法では検査項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」が作成されます。発達プロフィールは下記の例のように折れ線グラフのように記され、このプロフィールの発達の全般的な遅れや、発達障害の特徴を把握することが可能です。発達障害がある子どもの場合は、一定のプロフィールパターンがあることから診断の参考に使用されています。発達検査の中でも、乳幼児精神発達診断法では検査項目と月年齢を軸にした「発達プロフィール」が作成されます。発達プロフィールは折れ線グラフのように記され、発達の全般的な遅れや、発達障害の特徴を把握することが可能です。発達障害がある子どもの場合は、一定のプロフィールパターンが見られる傾向があることから、診断の参考に使用されています。また津守・稲毛式乳幼児精神発達診断法では「発達年齢」が分かります。新版K式発達検査では「発達指数」と「発達年齢」の2つの数値結果が分かります。「発達指数(Developmental Quotient:DQ)」は認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いを示していて、「発達年齢(Developmental Age:DA)」は、検査を受けた方の精神年齢を示すものです。のちにADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断された3歳2カ月の女の子の検査結果の例です。次女の検査結果は次の通りでした。(1)「姿勢・運動領域」発達指数:96(発達年齢:3歳1ヶ月)(2)「認知・適応領域」発達指数:101(発達年齢:3歳3ヶ月)(3)「言語・社会領域」発達指数:75(発達年齢:2歳5ヶ月)(4)「全領域」発達指数:88(発達年齢:2歳10ヶ月)結果は、検査時点での発達状況を換算した『発達年齢』と、生活年齢と『発達年齢』との比率である『発達指数』で表されます。『発達指数』は、その年齢の平均を100で表されますが、実際にはある程度幅があるそうです。各項目ごとに発達指数と発達年齢が分かります。しかし、これらの数値が分かっても具体的に家庭や学校などで、どのような配慮や療育、学習を行えばいいのか分かりませんよね。そのような具体的な接し方などを示してくれるのが「検査報告書」です。発達検査には検査後にやるべきことを示してくれる「検査報告書」というものを受け取ることができます。「検査報告書」を依頼すると1. 検査結果の数値2. 検査結果からいえること3. 日常生活上配慮していただきたいことなどが記載された報告書を作成してもらえます。子どもに対して、日常的にどのような配慮をしたり、療育支援を行っていくのが良いかの参考となるでしょう。無料で「検査報告書」を発行してくれる機関もありますが、有料で発行している機関もあります。検査形態や「検査報告書」の費用は機関によって異なりますので、詳しくは受診する病院への問い合わせが必要です。「数値結果」欄は「発達年齢」や「発達指数」の数値が記載されています。「検査結果から言えること」欄では、発達の遅れの度合いや理由が下記のように詳しく記載されています。検査者が言った数字を同じ順番で繰り返す課題では、1つの数字を繰り返すことが限界である様子が見られています。このように、相手からことばのみで働きかけられる状況では、検査者のことばに注目を向けること自体が難しい、または「何が求められているのか」がわからないと考えられます。「日常生活上配慮していただきたいこと」欄も、下記のように記載されています。大人が見ている物に(次女)さんの注目を向けて貰うのではなく、(次女)さん自身が”今・現在””その時に”目にしているものや耳にしているもの、手に取っているものなどに対して、「◯◯があったね」「◯◯と聞こえるね」というように要点をまとめた簡潔なことばをつけていく。このように、大人に関心を合わせてもらうのではなく、(次女)さん自身が関心を向けている物に大人が寄り添い、ことばをかけていくことで(次女)さんにとって、把握しやすく、覚えやすい状況となるよう意識していく。発達検査と一緒に知能検査を受けるように言われたけど、なぜ?出典 : 場合によっては、発達検査と知能検査の両方を受けることを勧められる場合もあります。発達の遅れと知能の遅れの両方が疑われている場合など、子どもの発達を多角的に捉えるために使用されます。また医師による発達障害の確定診断を行う際の参考情報として、またその人に合った支援や学習指導の方向性のヒントを得ることを目的として、発達検査と知能検査などの結果は使用されます。現在日本でよく使用されているのは新版K式発達検査、ウェクスラー知能検査、田中ビネー知能検査、K-ABC知能検査などです。では、発達検査と知能検査の具体的な違いはなんでしょうか。知能検査は、知能を精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値によって測定するための検査です。これに対して発達検査は、被検査者の精神年齢を示す発達年齢(DA)と、認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いである発達指数(DQ)を調べます。要するに知能検査は子どもの知能がどのくらいあるのかを計測し、発達検査は年齢と発達年齢の差がどのくらいあるのかを計測する検査なのです。子どもに発達障害がある場合は、乳幼児期からその兆候となるような特徴が表出することが多いです。しかし、発達初期の乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だと考えられています。なぜならば乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。発達検査の適用年齢は早いもので0歳0カ月から設定されており、乳幼児期から検査を行うことができます。これに対して知能検査の適用年齢はおよそ2歳から設定されています。両者とも、発達障害の確定診断や、その子の療養支援に役立てるために利用されますが、受検可能な年齢に違いがあることに注意しましょう。なお、どんな場合にどんな検査が適切であるかどうかの判断基準は、専門家の判断によります。発達検査と知能検査のどちらを受けるべきか、まずは専門機関に相談して判断しましょう。発達検査を受ける前にまずは専門機関で相談を!出典 : お子さんやご自身の発達検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くといいでしょう。事前に予約が必要な機関もありますので、相談機関に問い合わせてみてください。また、子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話で相談できる場合もあります。発達検査や知能検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診するといいでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。また診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります。こちらの料金は病院ごとに異なりますので、直接病院に問い合わせてみてください。一方、個人のクリニックや診療所で検査を受ける場合には、すべて自費での診療となります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がないと医師が判断した場合は自費となります。こちらの料金設定も各病院ごとに設定されていますので、受診する病院に問い合わせてみてください。発達検査の結果を受けて、専門機関で確定診断を受けたい場合は発達検査を受けた機関に問い合わせるか、もしくは改めて相談機関(保健センター、子育て支援センターなど)に問い合わせてみてください。発達障害の診断はなくても療育は受られるの?出典 : 発達障害の確定診断がなくても、子どもに対して何らかの療育支援の必要性が認められた場合には、児童福祉法に基づく児童発達支援を受けることができます。児童発達支援は障害児通所支援の一つで、小学校就学前の6歳までの障害のある子どもが主に通い、支援を受けるための施設です。日常生活の自立支援や機能訓練を行ったり、保育園や幼稚園のように遊びや学びの場を提供したりといった、障害のある児童への支援を目的にしています。療育手帳や身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳を持っていなくても、障害児通所給付費支給申請を専門家の意見書などと一緒に提出し、児童発達支援利用の必要が認められれば、受給者証が市町村から発行されます。この受給者証を取得することで通所の申し込みができ、1割負担でサービスを受けることができます。発達検査によって子どもの発達の遅れや凸凹が比較的大きいと分かったけれども、発達障害の確定診断は出なかった、という場合もあります。また、発達検査は受けさせてみたけれど、確定診断を受けに病院で受診させる気持ちにはなれないといった方もおられるでしょう。実際に確定診断を受けるかどうかは、ご家庭ごとの自由な選択です。しかし、診断を受けなくても、子どもの日常生活上の困難さを緩和させるために、早期から療育支援を受けるということ、選択肢として検討してみることをお勧めします。まとめ出典 : 発達検査は、それ自体が発達障害の診断を行うものではなく、確定診断を行う上での判断要素にすることや、発達が気になる方の特性を理解して療育支援などに役立てることが目的の検査です。発達検査を受けたのちに、専門機関で確定診断を受けるか否かは、自由に選択することができます。また、確定診断を受けなくても、発達の遅れや凸凹による困難を解消するために、療育支援を受けることは可能です。また、発達検査後に発行してもらうことができる「検査報告書」も、子育てや療育のヒントとして活用することができます。発達が気になる点があれば、まずはお近くの専門機関に相談して、発達検査や知能検査を受けてみることをお勧めします。
2016年11月24日私がいなくなってもーシングルマザーの私が子どもたちに遺したいもの出典 : 私は、子ども4人を育てるシングルマザーです。4人の子どもたちは、下は11歳から、上は18歳まで。4人中3名に発達障害や難病があり、本人に告知もしています。自分の特性ゆえに悩んだり、学校環境とうまく合わず不登校になったりもしましたが、子どもたち一人ひとりが、それぞれの方法、それぞれのペースで育っていってくれているのを見守るとともに、母である私も色々学ばせてもらっています。一方で、シングルマザーの私がいつも考えるのは、親亡き後ー私がいなくなった後のこの子たちの人生のこと。過去に出産時の事故で軽い脳梗塞も経験し、現在も後遺症が残るなか、いつ、また倒れるかも分かりません。常に「死」を意識しながらの子育て。そんな私がわが子に遺したいと思っているもの。今日はそんなお話をしたいと思います。私があなたに遺すもの: 「他人に相談する力」出典 : 私が子ども達に残したいもの。それは、「困った時には他の人に頼る、相談する力」です。人生は思いのほか短い。その人生を少しでも幸せに生きる為にも、頑張りすぎないようにすること。そのためには、上手に他の人の力をお借りすることが大事だと思っています。困ったことを誰にも相談せずに1人で解決しようとすると、もの凄く多くのエネルギーを使い消耗してしまいます。結果、体調を崩してしまう事もあるかもしれません。「自分は〇〇で困っています。助けてください。(手伝ってください)」と言えるように。子ども達には「困った時には周りの人に聞きなさい。困った時は頼っていいんだよ。」と伝えています。そのためにも、まず私から子どもたちの手本になるように実践しています。「お母さんは、風邪ひいて体調悪いからゴミ出ししてくれたら助かる。お願いできる?」「お母さん1人で外出は寂しいから付いてきてくれる?」と伝えたりして、母自らがわが子に頼ることを通して、見本を見せるようにしています。私があなたに遺すもの: 「あなたをよく知る支援者たち」出典 : 私が次に子ども達に残したいものそれは、「子どもたちの存在を知っている人たちと、支援者」です。私は、子ども達の発達障害を隠さずに、周りにどんどん伝えています。それには意味があります。発達障害のことをどんどん話して伝えていくことで、発達障害のある人への偏見を減らしていくことと、発達障害について知りたいと思う人を増やすこと、そして、発達障害のある人たちへの支援方法を知ってもらうことです。発達障害のことを伝えるのに、血液型を伝えるぐらいの感覚で伝えられるようにする事が私の希望です。それから、私がいつかこの世を去った後、子ども達が困って誰かを頼った時には、誰かが子ども達の支えになってもらえるようにと願ってのことです。いつまでも私が側で見守ることはできません。いつかの日の為にその体制を残したい。お陰様でこの地域では、子ども達の理解者は増えてきました。「気にかけてもらえている」これはとても大切な事だと思っています。私があなたに遺すもの: 「一人ひとりへの遺言書」出典 : これから私が子ども達に残したいもの。それは「子ども達一人一人に当てた遺言書」です。私は元々、文章を書くのは好きでした。幼い頃には、定期で家族新聞を書いて子ども部屋に張っていたぐらいでした。見たこと聞いたこと、感じたことを言葉にして残しておくのが好きな子でした。遺言といっても暗いものではなく、生きるための力が湧くような言葉集のようなものです。自分で生きていく上で胸に留めておいてほしいことを、一人一人の特性に合わせて、書き残しておきたいと思っています。いつか辛い時に読んでくれたら嬉しい。それは発達障害のある子ども達を育てているからこそ、私の中に心配する気持ちが大きいからこそなのでしょう。これから少しづつ、子ども一人一人に向けた言葉をノートに書いて残しておこうと思っています。私があなたに遺すもの: 「自分を認めて生き抜く力」出典 : 最後に、子ども達には何があっても自分たちで「生き抜く力」を、今から育んでいってほしいと思っています。そのためには、まず何より「自分を認めていくこと」が必要になると考えています。時に人生は、予期せぬことが起こります。私もまさか自分が脳梗塞をして、そこから鬱病になるとは思ってもいませんでした。その後にまた鬱病を再発した時には一家心中をしようかと考えてしまうほどに追い詰められました。そんな時に助けになったのは、周りの支えでした。辛いという自分を認め、「私は辛いので助けてほしい」と言えたことが良かったのです。子ども達に身につけてほしい、「生き抜く力」とは、「とにかく頑張る」ということでは決してありません。辛い時にこそ、どこかに味方は必ずいると信じられる心。そして、自分の気持ちを周囲に伝え、助けてもらいながらしなやかに生き抜いていく力を持つことが大切です。生きていれば、心配すること、不安なことは沢山ありますし、それがゼロになることはありません。だからこそ、むやみに心配したり、やみくもに頑張るのではなく、いい意味で諦めること。自分の現状をあるがままに認め、必要があれば周りに頼ってでも生き抜いていってほしい。そう願います。---子ども達と過ごせる残りの時間も先が見えてきました。だからこそ、発達障害のある子ども達の子育てを楽しみながら、子ども達に遺せるものはまだまだあると、私も生き抜いていきたいと思います。
2016年11月24日発達障害のある5歳の娘。だんだん周りの子との違いが目立ってきた広汎性発達障害がある5歳の娘は、言葉の発達に少し遅れがあります。3歳ぐらいまでは周りのお友達との差も少なく、少し接したぐらいでは娘に障害があることはわからなかったと思います。でも4歳を過ぎると、初対面の人でも娘のしゃべり方や雰囲気に違和感を感じたり、「あれ…?」と思われることが増えてきました。Upload By SAKURA誰に、どこまで、どんなふうに話せばいいのだろう?Upload By SAKURA相手が娘に対して「あれ…?」と思った時、私も外から見ていてそれに気づきます。その相手が初対面の人や、それほど親しくない人の場合…娘の障害について話すべきなのかとても迷います。いきなり「娘には障害がある」と話したら、どうリアクションしていいか困ってしまうのではないか。そして困ったリアクションをされたら、私もなんと言っていいかわからなくなってしまう。実際娘の障害のことを話してみて、「あ、言わなきゃよかった」と思うことがよくあります。Upload By SAKURA試行錯誤の結果、私が実践しているやり方は…Upload By SAKURAいろいろ試した結果、今は…「あ、うちの子、言葉に遅れがあってね~聞き取り辛かったらごめんね!」とさらっと明るく話し、そしてすぐに話を変え、相手にリアクションする隙を与えないようにしています。それ以上聞きたくない人は、そのまま話を流してくれますし、「え?どういうこと?」と思った人は、聞き返してくれます。そういう人にだけ、障害のことや詳しい話をするようにしています。娘のことを、いろんな人にわかってほしいから私は娘の障害のことは、恥ずかしいと思っていませんし、障害について話すことは苦ではないです。むしろ娘のことを理解してもらえるためなら、いくらでも詳しく話したいと思っています。ただ、それを聞いた相手を困らせたくないという想いがあります。今は幼稚園の3年間でできたお友達や、ママ友にはうまく伝わり、娘のことを理解してもらっています。しかし来年は娘も小学生…。新しい出会いもあり、娘の障害について話す機会がどんどん増えていくでしょう。娘のことを理解してもらえるよう、私自身努めていきたいと思います。Upload By SAKURA
2016年11月23日息子の障害は言えない…周囲からの批判的な目に怯えていた私出典 : 皆さんは、子どもに発達障害があるとき、入園予定の幼稚園や保育園、習い事などで、障害についてカミングアウトしますか?私は必ず、「うちの子は発達障害があります」という話を、一番最初に言います。けれども3年前、息子に診断が下りたばかりの頃、私は息子に何をやらせるにも、発達障害ということを周囲に隠していました。その理由は、「発達障害と知られたら断られるかもしれない」「周りから差別されるかもしれない」「私の育て方が悪いと言われるかもしれない」といった恐怖心があったからでした。そして、息子の特性が絶対にバレないように…ということに集中し、常に気を張っていました。ただでさえ息子が発達障害であるとわかり、自分自身がそれを受け入れるのに必死になっているときです。その上他人からこれ以上傷付けられたら、自分がどうなってしまうかわからなかったのです。私は、私と息子を守るため周囲に診断の結果を隠していました。でもそれは、私たち親子を逆に傷つける結果になったのです。障害を隠して入会したトランポリン教室。しかしパニックを起こした息子は先生に叱られ…出典 : 私は診断名や特性を隠したまま、近所のトランポリン教室に息子を連れていきました。発達障害の子にはトランポリンが良いと聞いていたからです。ところが、息子は連れていくたびにパニックになりました。プロ仕様のトランポリンは、かなり高く飛ぶことができるのですが、重力不安のある息子には異常な恐怖だったようです。そこで、先生が息子の体を支えて一緒に飛ぶようにしてくれたのですが、息子は触覚過敏があるため、他人に身体を触れられることをひどく嫌います。終いには苦痛のあまり、ぎゃーぎゃーと泣き出してしまったのです。こうして息子は、パニックになるたびに先生に叱られていましたが、それも仕方ない話です。息子の特性がわかっていなければ、この様子はただの我儘な子にしか見えないからです。先生に「ちゃんとやりなさい!」と叱られるたびに、息子はパニックになって部屋中を駆け回り、物を割ったり落としたり。教室内では、「とんでもない問題児が来たよ…」という冷えびえとした視線が突き刺さりました。ある日息子が大暴れし、教室を辞める決意をした私。思わず口から出た本音に先生は出典 : 回目のトランポリン教室で、息子は先生から身体を触られた途端にパニックになり、大暴れした拍子に鼻血が出て止まらなくなってしまいました。1時間のレッスンのうち、50分以上を鼻血の処置をしながら息子をクールダウンさせる時間に費やしました。私は頑張っていた心がポッキリと折れ、帰り際に先生に教室を退会する旨を伝えました。「この子にはとても無理そうなので退会させて頂きます。実はこの子、自閉症スペクトラムの診断がおりてまして…。ここで一緒にやらせて頂くのは難しかったようです。すみませんでした。」そう私が謝ると、先生は「えっ!」と驚いた顔をし、そして言ったのです。「どうして最初に自閉症スペクトラムだと教えてくださらなかったのですか。知っていれば、ちゃんと対処法がわかったのに。うちの教室、自閉症の子をたくさん見た経験あるんですよ。声のかけ方だって、変わってきたのに。」私はそのとき始めて診断名を隠していたことで息子のことも自分のことも無用に傷つけ、先生にも迷惑をかけてしまっていたということに気付きました。入会前にカミングアウトしていれば…!!私はそのとき、初めて自分のミスに気付いて、涙が止まりませんでした。そのときにはもう、息子はトランポリン教室に恐怖心を持っており、これ以上続けることができない状態になっていました。断られる恐怖はまだある。しかし、障害をオープンにすることで合う場所もきっと見つかる出典 : トランポリン教室での失敗を踏まえ、今では幼稚園や習い事に入るときだけではなく、小さなイベントや病院での診療などのときでも、必ず「この子は発達障害があります」ということを最初にお伝えするようにしています。それでも、「断られたらどうしよう」という怖さはいつもあります。でも、断ってくるところに無理して参加させても、もっと傷つくことになるだけだと思うのです。利用サービスの中には、他の子と区別をせずに指導する習い事もあります。けれども、息子がパニックになったときなどに、指導者があらかじめ「この子はこういうことでパニックになりやすい」と知っていてもらうことで、私も息子も十分救われるのです。傷付くことを怖がって隠していても、もっと傷付くことはたくさんあります。それよりも、カミングアウトしても「大丈夫、一緒に頑張りましょう」と言ってくれる人や環境を見つけることの方が、発達障害児の育児はずっと実りあるものになります。
2016年11月17日初めまして、この記事に目を留めて下さりありがとうございます。これを読まれている皆様は発達障害との縁が多少なりともある方だと思います。お子様への接し方が分からない。学校などの集団生活になじめない。他人と考え方・感じ方が異なるため誤解されやすい。抱えていらっしゃる悩みごとは様々だと思います。そこで発達障害当事者である私が、自分の障害とどのようにして付き合い、受け入れ、いまの仕事をしているかについて書かせていただきました。今回は、私の幼少期の学校生活についてです。「障害」を周りの大人たちが認識したのは小学生のとき出典 : 小学生のころ、私は自分自身に障害があることを認識しておりませんでした。私の異常を最初に気づいたのは周囲の大人達で、小学1年生のときでした。この時期になっても未だに私だけ読み書きができなかったためです。私は文字の形を認識することができず、平仮名が書けませんでした。ようやく書けるようになっても、文章を書くことはとても難しかったです。作文の宿題が出ると、机に向かって書こうとするのですが、2~3時間頑張ってやっと2~3行書けたぐらいでした。読解については、文字を1文字ずつしか読めず、意味も理解できませんでした。例えば「がっこう へ あるいて いく」なら「が、つ、こ、う、へ、あ、る、い、て、い、く」か「が、つこう、へある、いていく」としか読めず、単語の認識ができなかったようです。さらに算数も、数字の意味や計算の仕組みを理解する事ができませんでした。1+1すらできなかったそうです。自分の努力と適切な支援のおかげで、勉強ができるようになった出典 : 私の様子を担任の先生から指摘され、手を尽くして原因を調べた母は、「発達障害」の存在を知りました。当時はまだあまり知られていない障害でしたが、運よく発達障害を研究している機関を見つける事ができました。そこで私に下された診断は学習障害(LD)。でもこのとき私はまだ、自分に障害があるということをきちんと認識できていませんでした。研究機関に通って母と医師が何やら話しているものの、私は内容が自分に関することだとは思いもせず、退屈だったので同じ部屋内で遊んでいました。しかしこの診断があったことで、母は「根気よく繰り返し、できなくてもイライラせずに、できた事があれば必ず褒める」という教育方針のもとで私を勉強させてくれました。最初なかなか進歩は見られませんでしたが、学校の授業で漢字が出てきてから変化が見られました。例えば「つき」という平仮名だけだとその意味がわからなかったのですが、漢字の「月」は三日月の絵が崩れて漢字になったという成り立ちを見ながら教えてもらうことで、漢字の形と意味を理解できました。漢字を覚えたことがきっかけで、「文字を組み合わせて単語をつくる」ということもだんだんと理解できるようになり、これをきっかけに文章も徐々に読めるようになりました。作文はやはりかなり苦手で、宿題はいつも母が隣で手助けをする必要がありました。しかし、私が強く「書きたい」と思ったことについては、周囲が驚くほど筆が進んだそうです。算数については、数を数字以外のもので視覚化する事で分かるようになりました。例えば先ほどの1+1は、りんごを用意して実際に数える事で理解できました。ただし、文章問題は問題を読み解く必要があるため、できるようになるまでかなり時間がかかりました。このように私は、苦手なことを他の子どもたちとは違う方法で勉強することで、学習の遅れを補うことができました。いじめもあった。でも得意なことをがんばることで、周りに認めてもらえた出典 : 同級生達を始めとした人間関係ですが、小・中・高のどこでも入学してから数ヶ月の間よくいじめられていました。幸い私の周りには助けてくれる大人たちがたくさんおり、大事には至りませんでした。ただ、担任の先生は私の扱いに困っていたようで、よく怒られていたのを覚えています。でも私自身は何が問題で怒られているのかさっぱりわかりませんでした。何が原因だったのか、はっきりとした事は不明ですが、私は授業中に逃げ出して行方不明事件になる一歩手前まで大騒ぎになった事がありました。このように、後先考えず衝動的に行動するところが、恐らく周りから見て異質に見えたのではと思います。このように書くと「発達障害のある子どもは学校になじめないんだ」と思われるかもしれませんが、そんな事はありません。そして、私自身の得意分野が周りに認められたことも、同級生たちとの関係が良くなった一因でした。小学校3~4年生のころ、クラスメイトの誕生日カードを作る宿題がありました。私はこの宿題に夢中になり、夜中の12時頃まで絵を描き続けて、本来は作る必要のない表紙の絵まで描いたそうです。そのとき母は「学校の成績ではあまり重要ではないことに時間を割いて…」と思ったそうですが、夢中になって完成させたカードはクラスメイトの間で好評になり、同級生たちと仲良くなるきっかけになりました(ちなみに誕生カードを贈ったクラスメイトとは、特に親しい間柄ではありませんでした)。何かを作りだすと夢中になり、図工や美術の科目で良い評価を受けることは、その後もたくさんありました。こういった経緯で、周りから見た私は「変わり者だが、すごいやつ」という認識になっていき、次第に同級生たちから認められるようになっていきました。周囲には「障害は完治した」と思われた。でも自分の心の中には違和感があった出典 : 多くの支援と私自身の努力により、学校の成績や友達関係などの問題は解決していきました。これにより、先生も母も「学習障害は完治した」と思ったそうです。特に母は、障害に対する忌避感も重なって、私に「障害がある」とハッキリと伝えることはしませんでした。これでめでたしめでたし…のように見えて、実はそうではありませんでした。確かに目に見えて明らかな問題は解決しましたが、私は他人と打ち解けることが苦手で、周りとは何とも言えない壁を感じ続けていました。例えるなら私と他人の間には常にガラスの壁があり、わかり合えず、私の声は向こう側に届いていないようでした。この壁に、長い間私は1人で悩まされていました。「障害は完治した」という周囲の認識は、成人してからの私の生活にも大きな影響を与えることになります。障害を受け入れた今、保護者や学校に思うこと出典 : 障害があっても、今後も社会で生きていく以上、学校など何かしらの社会的な集団に所属しておく必要はあると思います。でも自我が確立していない幼少期に、所属している集団で自分の存在を認めてくれる人がいないと、本人が自分を認められず、社会で生きていくことは困難になってしまうかもしれません。ありのまま生きる姿を、「障害」としてではなく「個性」として接してくれる人がいれば、その子にしかない才能を発揮して力強く生きてくれるでしょう。私はいじめも経験しましたが、個性の一部として周囲の人に受け入れられていたため、自分を異常だなどと追い込んだり、できないことや失敗したことを障害のせいにすることはありませんでした。そこで、発達障害のお子さんを持つ親御さんへ、発達障害の当事者としてお願いがあります。どうか皆さんには、お子さんの最大の理解者になって欲しいと思います。良くいわれている事だとは思いますが、発達障害=悪いことではありません。だから、悔やむことも、恥じ入ることも、責められることも何一つありません。悪い方向に傾くのか良い方向に傾くのか、それはこれからの行動次第です。いじめや学習障害を乗り越えた私ですが、自分自身に障害があるとは認識しておらず、障害と向き合うことをしていませんでした。このことが将来に影響を及ぼすこととなります。次回は私が大人になってから仕事をするにあたり、ぶつかった困難についてお話します。
2016年11月02日発達障害児童の親が何よりも知りたいのは、子どもの将来のこと出典 : 発達障害の息子は6歳。その成長は一進一退を繰り返す日々です。今回は、栗原類さんの書籍『発達障害の僕が輝ける場所をみつけられた理由』を読んで、発達障害児を育てる親として、感じたこと、気付いたことを綴ってみたいと思います。幼い頃に発達障害(ADD)と診断を受けた栗原類さん。類さんが今こうしてご自分の障害を告白し、その生きざまを本にして綴ったことには、大きな意味があると私は思います。まず、私たち発達障害児の親は、毎日毎日が子どもへの支援や配慮に手いっぱいの状態です。肝心の「この先に何があるのか」「この子がどう育っていくのか」ということに対する将来像が全く見えていません。これは、発達障害児を育てている親同士で話すと、よく出てくる話です。発達障害児を育てていると、誰もが思うのです。「ロールモデルが欲しい」と。しかし、一般的に取り上げられる「発達障害の大人」のロールモデルといえば、人より秀でた才能があったり、その才能ゆえに幼い頃から特別だったような、いわゆる「天才型」の人が多いのです。実は、これは親にとって、何の励ましにもなりません。そんな特別な子どもはごく一部で、大抵の親は、「誰にでもできることがなかなかできるようにならない」という発達障害児の育児に、毎日くじけそうになりながらも、自分を励ましている状態ではないでしょうか。等身大のロールモデル、それが栗原類さんだった出典 : そこで彗星のように現れたのが、栗原類さんという存在でした。彼は、感覚過敏や強いこだわりといった、発達障害児独特の特性があったのはもちろんのこと、記憶力の弱さや人の感情の読み取りが苦手といった困難さを持ち、学校の勉強にもとても苦手意識がありました。中学生時代にはいじめに遭って不登校になり、高校受験も失敗、決して順風満帆とは言えない人生を送ってきています。この言い方は語弊があるかもしれませんが、私たち親から見ると、栗原類さんは「とても身近な発達障害児」であり、等身大の発達障害当事者であると言えます。この本の表題には「僕が輝ける場所をみつけられた理由」という言葉が入っています。「輝く」という言葉に、芸能人として、モデルとして、華々しい生活をしている類さんのイメージが湧くかもしれません。しかし、この本を読んでいるうちに、類さんは決して「輝ける場所」という言葉を、才能を生かして大活躍する華々しい場所、という意味で使っているわけではないことが分かります。類さんにとっての「輝ける場所」とは、できないことや苦手なことが沢山あっても、それを補い受け入れながら、好きなことを好きと言える安心できる居場所、そんな場所である気がします。そしてそれこそが、多くの発達障害児にとっての「輝ける場所」なのかもしれません。類さんを支えてきた存在、栗原泉さん。その子育てスタンスとは?出典 : 発達障害児は、よくある曖昧なルールや、空気を読み取るのがとても苦手です。普通の子どもであれば、いちいち口に出して注意せずとも習得してくれる社会的ルールのようなものを、発達障害児には、繰り返し伝えなければなりません。しかも、伝えたとしてもすぐに忘れます。次第に、毎日毎日ガミガミと注意を繰り返す自分が、嫌になってきます。本の中に登場する、栗原類さんのお母さん、栗原泉さん。彼女の強力な支援のもと、類さんは目の前に立ちはだかる数々の困難に、1つひとつ対処していきます。面白いことに、栗原泉さんも、決して特別なお母さんではありません。類さんの教育環境を考え、海外に移住するようなフットワークの軽さはありますが、言われたことをどんどん忘れていってしまう類さんに、何度も何度も同じことを畳みかける一面も描かれています。泉さんは「過保護と言われてもいい。子どもの幸せを優先する」というスタンスで育児をしています。発達障害児の親は、これを読んだらきっと、肩の力が抜けることでしょう。なぜなら私たち親は、いつも自分が過保護になり過ぎていないか?自問自答している状態だからです。手助けをしなければ、当たり前のことがなかなかできるようにならない、しかし、「自分の手助けが、いつかこの子の自立を阻むことになるかもしれない」、と手助けするたび罪悪感を感じる毎日。泉さんの「子どもが今幸せであることを大切にする」という割り切った姿勢は、子育てに葛藤を抱いていた私にとって、涙が出るほど有り難いものでした。子どもの得意なこと、好きなことを無理して探していない?出典 : また、泉さんは、発達障害児の世界観を形作るのは「好きなこと」である、と述べ、いろいろなことを体験させることの大切さを説いているものの、泉さんが類さんに体験させてきたことは決して、「特別な何か」ではないことが分かります。博物館や美術館に連れて行くでもいい、インターネットやゲームをさせるでもいい、テレビで一緒にコメディを見るでもいい、泉さんが類さんに体験させたのは、日常的にできる小さな楽しみでした。この本を読んで、発達障害児にとっての「好きなこと」を探すのは、もっと気楽な気持ちで取り組めばいいのだと分かってきます。発達障害児の親をしていると、なぜか「この子の好きなものは何?」「才能のありそうなものは何?」という質問を、周りから嫌というほどされるのです。この質問は、数学や芸術などの天才的な能力があることを、暗に子どもに期待しているものだと思います。これは、一部の天才的な才能のある発達障害者ばかりが取り沙汰されてきたことに原因があるように思います。他のことが全部苦手でも、1つとんでもなく長けている部分があるはずで、そこを伸ばせば良いじゃないかと。この質問をされるたびに、子どもの天才的な才能を見つけることのできない自分のダメさ加減と、特に飛び抜けたものがないように思える息子への情けなさが募るのです。等身大の泉さんの姿で気付かされる、私たち親が背負ってきた無言のプレッシャー出典 : しかし、ほとんどの発達障害児は、平凡な子どもたちです。いや、平凡なことすらも、普通の人よりも何倍もの努力をしないとできるようにならない子どもたちです。ですから、「特別な才能」をわざわざ探すこと自体が、子ども自身の本来の姿を見ていないように感じるのです。そうではなく、泉さんは、類さんが楽しい経験をすること、ちょっとでも好きだと言ったことをとても大切にしています。そして、そんな毎日の小さな「好き」が、やがて大きくなってからの類さんにとって宝物となります。しかし、泉さん自身は、類さんに好きなことを作らせるために躍起になっているわけでもなく、それを極めさせようとするわけでもなく、類さんの楽しいという気持ちを自然に尊重しています。この本で泉さんという等身大の母親の姿を目にして、私たち発達障害児の親は、子どもに対する目も、自分に対する目も、少し優しくなるのを感じるのです。環境は違っても、泉さん親子が取り組んできたことは、「特別なこと」じゃなかった出典 : この本を読むと、類さんが育ったアメリカという国の教育の包容力や、日本の教育とのシステムの違いがとても印象に残ります。ややもすれば、「アメリカで育ったから類さんは恵まれていたんじゃないか?」というようなことを考える人も少なからず出てくるのではないかと思います。けれども私は、類さんが「輝く場所をみつけられた理由」は、アメリカという環境で育ったことが全てだったとは思いません。類さんと泉さんの凄さは、困難にぶつかるたびにそれを分析し、それにいかに対処するかを冷静に考え続けてきたことだと思います。また、高橋先生という専門家に相談し、自己判断のみに頼らなかったことも重要なことだったと思います。そして、対処法についても、誰もが雰囲気やコミュニケーションの中で察してしまうような些細なことでも、泉さんはしっかりルール化していました。泉さんと類さんが、発達障害である自分と向き合うために日々やってきたことは、決して「何かすごいこと」ではないのです。それは本当に、小さな取組みの積み重ねでした。なぜ私たちは、子どもの成長を待てないのだろうか?出典 : 発達障害の特性を劇的に軽減する魔法なんて、残念ながらありません。けれども私たちは、結果が出るか出ないか分からないような小さな取組みを日々積み重ねることに辛くなってしまって、どうしても劇的に変わる何かを求めてしまいます。そこをグッとこらえ、20年、30年の長いスパンで子育てを見つめながら、今ここでできる小さな行動を積み重ねていく、それが今の「輝ける場所」にいる類さんを作ったのだと思います。泉さんは、「コツコツやることの大切さ」を類さんに教えたい、と言っていましたが、お2人の20年の生きざまこそが、まさに「コツコツやることの大切さ」を表していると思います。そしてそれは、先の見えない毎日をもがきながら歩き続ける、発達障害児とその親を、どれだけ励ますものであるか、想像に難くありません。栗原さんの体験談に、発達障害児を育てる親としてもらったもの出典 : 類さんがアメリカにいた当時、まだ日本では「発達障害」という言葉がそれほど認知されておらず、教育現場でただの問題児として扱われて育った人たちが沢山いました。類さんが1番辛かったという中学校時代は、まだ日本では発達障害に関する認識が薄かった頃かもしれません。そういう意味では、先をいっていたアメリカという国で幼少期をおくり、適切な支援を受けることができた類さんはとても貴重な体験をされたのではないかと思います。しかし最近になって、日本の教育現場でも発達障害についての認知が広まり始め、いろいろな体制が急速に変化してきていることを私は肌で感じています。私の息子が入学する予定の学校では、発達障害児の聴覚過敏に配慮し、運動会のピストルを音が小さいものに変えました。刺激に弱い子どもは、特別支援級のついたての中でテストを受けることもできます。別の学校では、特別支援級の授業にiPadを導入するようになりました。類さんが10年以上前にアメリカで受けていた特別支援教育が、ようやく日本にも少しずつ入ってきています。今この時代は、10年、20年前に辛い思いをして育った発達障害の子どもたちが築いてきたのだと思います。私はこの急速に変化していく過渡期の社会を、発達障害児の親として、しっかり見守っていこうと楽しみにしています。類さんの本は、そんな社会を生きる私たちに、生きるヒントをくれる貴重なものであったと思います。発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由 栗原 類 (著)KADOKAWA出典 :
2016年10月13日目を離せばすぐあちこち走り回る子どもたち。当然外出なんて場所を選べる訳もなく…出典 : 我が家には2人の発達障害児がおり、毎日がご想像の通りのハチャメチャぶりです。衝動性の高い子どもたちと出かけることはもちろん至難の技。私の手を振り払って後方へ走り出す次男、それを追いかけるうちに勝手にエスカレーターに乗ってしまう長男。想像しただけでどっと疲れませんか?(笑)そんな子どもたちを連れてわざわざ出かけようという気も、いつしか起きなくなりました。ましてや「子連れで遊ぼう」というお誘いなんて夢のまた夢。行きたいなあ、と思いながらもずっと断ってばかりいました。そんな我が家でも、思いっきりレジャーを楽しめる「キャンプ」があったのです!どんな様子か気になる?ご紹介しましょう!東京都自閉症協会「おやじの会」主催のキャンプに家族で参加出典 : 私も会員として参加している東京都自閉症協会には「おやじの会」という自閉症児の父親の会があり、いろいろなイベントを企画、運営しています。例えば先日参加したキャンプ「エンジョイアウトドアスポーツ」や、障害児のきょうだいにフォーカスを当てた「きょうだいキャンプ」、そして初夏と新年に開催されるBBQなど、家族で楽しめるイベントが盛りだくさんです。ここなら、衝動性の高いうちの子を連れていっても安心です。先日は、主人も連れて家族全員でキャンプに参加してみました。東京都自閉症協会おやじの会母親が子どもにつきっきりにならなくて済む理由出典 : 「迷惑をかけているのでは」と人の目を気にしたり、「迷子になってしまうのでは」と神経を尖らせたり…そんな思いから解放され、心置きなく楽しめるこのキャンプ。それには大きな理由が2つあります。1つ目は、皆が「お互い様」の気持ちでいられる環境であること当事者とその家族が集まってのキャンプなので、普段の生活で感じる気疲れがありません。もう1つは学生などのボランティアさんがたくさん参加していることボランティアさんが野外活動、子どもたちの見守り、イベントの進行や食事の支度など何から何までおやじたちと一緒に取り組んでくれているのです。ボランティアさんの中には、おやじの会のイベントに何度も足を運んでくれている方もいて、あまり人の顔や名前を覚えない長男も、大好きなボランティアさんの名前を覚えて一緒に遊べるのを楽しみにしていました。普段私が「もう休憩させて…」と言ってしまいそうな激しい遊びでも、若い力と優しさでずっと付き合ってくれる姿には、感謝の気持ちでいっぱいになりました。予想を裏切る働きっぷりに、おやじを見直す3日間出典 : このキャンプで家族として得られる大きな収穫、それは「おやじって、結構頼れるんだな」という瞬間です。普段は園や療育への送り迎え、地獄のようなスーパーでの買い物、体力の限界を感じる外遊び…これらを一手に引き受ける母親からすると、「こんなおやじに、子どもを任せても大丈夫かいな」と失礼ながら思ってしまうのも、やむを得ないかもしれません。でも、彼らは違いました。ベテランになると、持っている情報量も多く、ネットワークも広い。そして障害を見つめる切り口が母親とは違う。普段社会で働いているからこそ、イベントの運営もきめ細かくスムーズです。やっぱりいざという時、パパは我が家を立派に支えてくれる存在なんだな。そんな気持ちが何度もよぎる3日間なのです。母親が1人で抱え込まないよう、父親にも子育てに積極的に参加できるきっかけを出典 : パパには日頃、ついつい「療育手帳と受給者証の違いもわからんのか!」「就労移行支援と移動支援は別モンよ!」なんて、偉そうについ言ってしまう私。でも、おやじにはおやじの活躍の場所がたくさんあって、私たちでいう「ママ友」みたいなおやじのコミュニティーってとっても大切だな、と改めて感じました。普段、療育関係のことは私が全て管理したり実際に出向いたりしているので、主人には仲間を増やす機会がなかなか無いことから、同じ環境にいる父親に会えるというのは、主人にとって貴重な時間。また主人が、こんな風に仲間を作ってくれることにより、障害への理解が高まったり育児へ積極的になったりしてくれたので、今回のキャンプの参加は、結果的に家族みんなにとって良かったのでした。自閉症協会に関わらず、全国各地にいろいろな「当事者の会」や「家族会」などが発足されています。気を遣って生活している日々の息抜きとして、同じ気持ちをわかってくれる人のところへ出向いてみるのも、いいかもしれません。きっと新しい発見や仲間が待っているはずです。
2016年10月04日発達障害のある人のため、医療機関ができること出典 : 年現在、多くの地域で、発達障害の診療に携わっている医療機関は著しく不足しています。医療従事者、それを利用する他領域の支援者、時には本人やご家族も、限られた地域の医療資源をできるだけ効率よく活用することを考える必要があります。発達障害のある本人や家族には様々なサポートが必要です。その中には医療機関が提供できる、提供しているものもたくさんあります。その代表的なものを挙げてみます。Upload By 吉川徹けれどもこの中で、どうしても医療機関でなければ提供できない支援というのは、実はあまり多くありません。そして、医療以外でも提供できる支援は、実は他の領域の支援者の方が、有利であったり、得意であったりすることも多いのです。医療でなければできない発達障害支援は何か出典 : 医療でなければ提供できない支援の一つは「診断」です。一方で、広く診断といったときに、その人に発達障害の特性があるのかどうか、発達障害の特性を考慮に入れた支援が有効であるのかどうかという「見立て」は、必ずしも医療機関のみでなされているわけではありません。むしろ本来はこうした見立ては、保健、教育、福祉などの領域でも必要になってきますし、仮に医学的診断を後に受けるとしても、それより前から見たての作業が始まっていることが望まれます。また、「見立て」に限られた時間しか充てられない医療機関に比べて、生活を共にする時間が長い人は、そもそもとても有利でもあるのです。ここは医師の間でも見解が分かれるところなのですが、自分は発達障害のある人すべてが、医療による診断を受ける必要は必ずしもないと考えています。ただし見立てや診断において、どうしても医療機関が必要になる場面があります。それは、・患者の困りごとが、発達障害以外の他の疾患から起こっている可能性を見極め、排除する必要がある場合・患者の困りごとの背景にある疾患を診断する必要がある場合上記の2点です。特に生物学的な検査が必要である場合、医療抜きにこれを行うことはほぼ不可能です。発達障害によく似た状態を示す疾患はたくさんありますし、また発達障害のある人には、脆弱X症候群やダウン症など様々な障害が背景にあることも少なくないのです。このため、何らかの点で典型的ではない、他の際だった特徴のある人の場合、医療機関を受診しておくメリットは大きくなります。そして診断書の発行も医療機関の重要な役割であり、優先度の高い仕事です。一般に医師は診断書の発行を面倒がる傾向があるのですが、これはどうしても医師免許が必要であり、医師が(好まずとも)独占している業務なので、嫌がらずにやらないといけないと自分に言い聞かせています。そしてもう一つ、どうしても医療でないとできない業務は、処方箋の必要な薬物を使うことです。これは当然ですが、では処方箋のいらないお薬、サプリメントはどうか、ということになります。しかし、これらの中に現時点で効果と安全性が実証されているものは、ほぼありません。医師と相談せずに使うことは更におすすめしにくいので、できればそこも医師と相談できると手堅いでしょう。結局、どうしても医療でないとできない主な支援は、診断、特に診断書の発行と薬物療法ということになります。医療でも出来る支援には、他に幾つもありますが、その優先度は低くなります。医療機関が不足している地域では、医療資源はまず診断と投薬のために活用する、その姿勢が求められています。医師の側もその業務を独占している以上、優先的にそれを提供する義務があると言えるでしょう。医療の強みは、卓越した経験と専門性にある出典 : それでは診断や薬物療法以外には、医療のアドバンテージはないのでしょうか。医師の立場からすると「それはある」と言いたくなるのですが、実際にはどうでしょうか。一つには、医師、特に発達障害を専門とする医師は、他の領域の支援者と比べても桁違いに多くの事例に接しているということがあります。一人の専門の医師が同時に診療している発達障害の患者さんは、数百人から時には千人を越えることがあります。医師人生の中で会ってきた患者は数千人ということも珍しくありません。そして多数例の報告に基づいた研究論文がたくさんあるのも医療領域の大きな特徴です。また多くの医師は、ライフステージをまたいで、患者さんに関わり続けています。幼児期早期に受診した子どもが成人し、時には老年期まで診療することがあります。自分一人でそれを見届けることができなくても、連綿と書き綴られたカルテから、比較的若い医師でも目の前の患者の若い頃の姿を確かめることができるのです。多数の患者に関わる医師は、残念ながら養育者や他の領域の支援者に比べると「その子自身」の専門家になれる機会は限られます。そのかわり「自閉スペクトラム症」の専門家、「注意欠如多動症」の専門家などには、なりやすい立場です。多くの例に長く関わっているからこそ、行いやすい見立てや助言があります。それは例えば、・将来を見越して今優先すべき支援の領域を考えること・本人や家族のリソースの配分を考えること・進路の決定などの場面でのアドバイスです。このように医療による支援のなかには、医療でないとできないこと、医療でもできること、そして医療が得意なことと苦手なことがあります。皆さんにはこうした医療による支援の特性をうまく理解して頂いて、上手につきあっていただきたいと思います。
2016年10月03日発達障害のある人が利用できる医療機関の不足は、なぜ起こっているのか出典 : 発達ナビで、新たに医療についての連載をさせていただくことになりました。児童精神科医の吉川徹です。現在は愛知県の障害児者専門病院に勤務しています。皆さんもおそらくはよくご存知のように、発達障害がある子どもや大人が利用できる医療機関は、ほとんどの地域でひどく不足しています。これは一体なぜなのでしょうか。一つにはいわゆる「発達障害」に属する障害、中でも自閉スペクトラム症と注意欠如多動症という障害のある人の数がとても多いことがあります。今までに子どもの心の医療に対象になってきた疾患、あるいは大人の精神医療の対象になってきた疾患と比べても、それを上回る数になっています。国際的に認められたかなり手堅い方法で調べたとき、地域の子どもの中で自閉スペクトラム症と診断できる子どもは一般的に1〜2%程度いると言われています。ところが最近厚生労働省の研究班が報告した数字では、地域によっては小学1年生の子どものうち、5%以上が自閉スペクトラム症の診断を受けているとされていました。また注意欠如多動症(ADHD)も元々とても数の多い障害で、3〜5%以上の子どもがその診断を受ける可能性があるとされています。これは、例えば知的障害を持つ人の数や統合失調症を患う人の数などと比べても、数倍にも及ぶ大きな数字なのです。発達障害の医療にまつわる困難の大半は、この患者数の極端な多さに起因しています。例えて言えば、もともと満員だった電車に今までの3倍の乗客が押し寄せていて、しかもレールが一本しかないので、増発もままならない、そんな状況が日本中で起こっているのです。診療ニーズの拡大に追いつけない原因には、医療機関としての構造的な問題がある出典 : こうした障害は比較的短い期間で広く認知されるようになり、診療のニーズが急速に拡大しました。これに応えるために、厚生労働省でも子どもの心の診療ができる医師の養成のための検討会を開催したり、モデル事業や研修を実施したりしています。平成28年度からは、地域のかかりつけ医を対象とした研修も全国規模で始まろうとしています。専門の医師が集まる学会などでも養成のための取り組みが続けられています。しかし現時点でもニーズの急増に対応できる新たな医師の養成や医療機関の整備は、充分に追いついているとは言えない状況です。まず医療による支援そのものが、他の領域に比べて極めて高コストな構造になっており、専門家の養成や維持には社会に大きな負担がかかることから、供給できる医療の内容や医師の数そのものに厳密な制限がかかっています。そして専門医は促成栽培が難しく、一人一人を手取り足取り教えていく必要があります。そのためそもそも教える立場の医師の数が増えないと、養成できる若手の数も制限されてしまうのです。また、子どもの心の診療自体、構造的に赤字体質であり、なかなか若い医師にとって魅力のある領域になりにくいなど、様々な背景があるのです。本来あるべき支援と、医療信仰とのあいだに存在するギャップ出典 : 残念ながら現在の医療の水準では、種々の発達障害の根本的な治療法は見つかっていません。逆に言えば、根治するために必ず医療を受診しなければならない、という状況ではないのです。これほどの数の多い、発達障害がある子ども達、大人達の支援は、本来は普段の生活の場所、そこから近いところで提供されなければなりません。医療のような日常の暮らしと切り離された場所での対応には、はじめから限界があります。一方で、本人やご家族、他の領域の支援者からはときに医療に対して、万能的、魔術的な期待が寄せられます。また逆に医療領域の支援者には、他の領域の支援者に対する根強い不信があることがあり、良心的な医療者ほどその不信を隠さず、必ず医療機関にかかっておくべきだと主張することもあります。この背景には、そもそも現在の発達障害の概念の多くは医療から出発しており、黎明期である1960年代〜70年代には医療以外の支援が極めて乏しかったこと、現在でも他の領域の支援で支えきれなかったこじれたケースが医療機関を受診する場合が多いことなど、様々な理由があるのですが、現在の視点から見るとそれは不幸なことであると思います。診断の前から支援を行う姿勢が必要。では、本当に「医療は役立たず」なのか?出典 : 例えばいわゆる「学習障害」の場合などでは、地域の一般的な子どもの学力のデータも、多数派の子どもに勉強を教えるノウハウすらも一般的な医療機関にはありません。しかし、最近の診断基準(DSM-5)では、学習障害(限局性学習症)の診断は、何らかの学習の困難に対して、それを対象とした「介入が提供されているにもかかわらず」6ヶ月以上困難が持続している場合に行われるとされています。文部科学省の通知でも診断の前から支援を行うという姿勢がはっきり打ち出されているにも関わらず、なぜか医療機関の受診が支援の前提のように語られることがあるのです。「クリニックからクラスへ」というスローガンにはかなりの説得力がありますね。さて、それでは「医療は役立たずなのか」と問われると、医師の立場としてはやはり「そうではない」と答えたくなります。この連載では医療そのものについての情報よりも、発達障害のあるご本人、ご家族がどのように医療とつきあっていけば、医療のサービスを最大限有効に活用できるのか、そうした観点から考えていきたいと思います。
2016年09月29日「エンタメ療育ダンス」って一体なに?Upload By 発達ナビ編集部ステージの上で踊るダンサーの姿を見て、あんな風に自由に、自分の感情を身体で表現できたならと、憧れたことはありませんか?しかし、いざ実際にダンスをやってみると、思ったよりもはるかに難しい… 手足を同時に様々な方向へ動かすことは、「協調運動」と言われる運動の中でもなかなか高度な動きです。この協調運動は、特に発達障害のあるお子さんの中には苦手とする子も多く、学校の体育の授業や学芸会などで「みんなと同じようにできない…」と、運動面だけでなく、参加そのものへの自信を失ってしまう子も少なくありません。そうした発達の凸凹が気になる子どもたちにもダンスを踊る喜びを届けるために、放課後等デイサービス「プレミア・ケア・ジュニア」(運営: 株式会社トリプル・エース)は「エンタメ療育ダンス」という取り組みを行なっています。先日、9月4日には、トップ振付師の南流石(みなみさすが)さんをゲストに招いての「エンタメ療育ダンス」の発表会が開催されました。今回は、その発表会に参加し、南流石さんにこの企画に込める想いを伺ってきました。「踊りは、アーティストや芸能人のためのものだろうか?」ー振付師、南流石氏の想いUpload By 発達ナビ編集部南流石(みなみさすが)氏振付演出家様々なエンターテイメントシーンにダンス作品を提供する振付界の第一人者。サザンオールスターズ、THE BOOM、PUFFY、大塚愛、乃木坂46、おしりかじり虫(NHK)、くまモン(熊本県)などアーティストの振付演出家として活動する傍ら、医療従事者と共に、乳幼児から高齢者に向けたダンスプログラムを国内外で実践。認知症介護予防推進運動プログラム「ココロからダンス」や、 肢体不自由児を対象としたダンスプログラム「東大寺福祉療育病院・天坊体操」、国連UNHCR協会との取り組みで中東ヨルダン難民キャンプにてワークショップなどを手がける。流石組―南さんが今回の療育ダンスを手がけようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。私はこれまで、アーティストの世界や芸能界で、長年ずーっとダンスをやってきたんですね。ダンスが大好きな人とかダンスを生業としている人たちと一緒に踊ったり振り付けを手がけたりと、とにかくプロとしてダンスを追求してきたわけです。でも、ある日ふと思ったんです。「ここ(芸能界)にいる人たちは自由に踊れるけれど、世の中には踊りたくても踊れない人たちがたくさんいるんじゃないか」って。身体の自由が効かなかったり、行きたいんだけど心が元気じゃなくて動けなかったり、そもそもダンスを楽しめるような環境にいなかったり…そういう、色んな境遇の人たちを思い浮かべたとき、私がやってきた踊りっていうのは、アーティストや芸能人のためだけのもので良いんだろうか?って疑問が浮かんできて。それからです。「踊りたくても踊れなかった人たち」のためのダンスをやっていくことが、私の使命なんじゃないかと思うようになりました。だから今回の療育ダンスに限らずね、 老人ホームのお年寄りや、病院にいる肢体不自由の子どもたち、難民キャンプで過ごすシリア難民たち…私の踊りは、そういった人たちみんなのためのもの。求められたならどこにでも行こう、「心が踊る」っていうことを伝えに行こうと思って、こうした活動をやり始めたんです。―なるほど。踊りたくても踊れない全ての人たちのために…。療育ダンスを手がけられる前に、もともと様々な活動をされていたのですね。そうですね。だから今回プレミア・ケアさんからお話をいただいた時も、先生方の「ダンスで子どもたちの成長を応援したい」という強い思いを感じて、是非一緒にやりたいって思ったんです。―実際に、発達が気になるお子さんたちにダンスを教えてみて、どうでしたか?ちょっと語弊があるかもしれないんですけど、やってる私自身の姿勢は「何も変わらないな」って思いましたね。どんな特徴のある、どんな子どもが相手だって、どこに行ってもやり方は変わらない。Upload By 発達ナビ編集部―何も変わらない…?結局、人間と人間が向き合うだけの話でしょ。だからシンプルに、私が誠実に彼らと向き合って伝えるだけというか「あなたの味方だよ、あなたと一緒に心がつながりたいんだよ」っていう気持ちを持って接すること。発達障害があろうと、外国で言葉が通じなかろうと、どこでも一緒なんですよ。ヨルダンの難民キャンプに行ったときと今回と、私自身はまったく同じ姿勢で彼らと向き合いました。―あなたと繋がりたい。その思いをまっすぐ伝える…そう、その気持ちはどこに行っても変わらない。もちろん、その上で「どうやったら伝わるか」ということは、相手の個性や年代を踏まえて工夫はするんですけどね。Upload By 発達ナビ編集部今回はエンタメ療育ということで、スキルを磨く踊りというよりも、まずは「踊れた!」という達成感を全員に感じてもらえることを大事にしました。見よう見まねですぐに身体を動かせない子もいるでしょう?だから振り付けを教えるときも、「キュッキュッ」とか「よっしゃ」とか振り付けに言葉を添えたり、繰り返しの多いものにして、身体だけじゃなく五感全体を使って覚えていけるように工夫しました。―確かに、シンプルな繰り返しの中で楽しめるような振り付けでしたね。それに、両手両足を動かすのが難しい人は、上半身を動かすだけでもちゃんとダンスになって楽しめるようになっていて、工夫されているんだなぁって感じました。私自身も不器用でダンスが苦手なので…(苦笑)それは良かった(笑)今回はお子さんだけでなく大人にも一緒に楽しんでほしかったので。―今後もエンタメ療育という切り口での活動は続けられるのですか。そうですね、私に出来ることであればぜひ、と思っています。特にやりたいのは、「親子」のためのダンスです。親子で一緒にやることが大事なんです。子どもをダンス教室に送って親はいなくなるのではなく、お父さんもお母さんもお時間のある方は一緒に踊ってみてほしい。一緒に踊ってみれば、子どもが実際どういうところに苦しんでいるかも分かるし、出来たときの喜びも分かち合えるし、子育ての大きな気付きになると思うんですよね。―それはとても大切なことですね。手足の協調運動が難しかったり、運動機能の発達がゆっくりだったりするお子さんもおられますが、周りから「不器用」だとか「どうして出来ないんだ」と言われて自己肯定感が下がってしまうことも少なくないので…そうなんですよ。学校でもいろんな先生と話す機会があったんですけれど、「この子はこうなんです」って一言で決めつけちゃうことが多いんですよね。でも、人間のことを一言で断定しちゃいけないし、できるはずないと思うんですよ。仮になにかひとつ出来ないことがあっても、その子にはいいところもいっぱいあるし、それを見つけて伸ばしていくのも大人の役割でしょ。だから私は、少なくともダンスにおいては、誰が相手であっても、一人ひとりに丁寧に向き合ってその子のいいところを引き出してあげたいんです。「ダンスを始めて、身体を動かすことが好きになった!」参加したご家族の声Upload By 発達ナビ編集部普段から「プレミア・ケア・ジュニア」の教室に通ってダンスを練習している子どもたち。発表会に参加した子どもたちの元気いっぱいなダンス発表を見て、ご家族からこのような声が集まりました。"うちの子は、ダンスを始めて体を動かすことが好きになったんです。私も見ていて、身体の使い方が上手になってきたと感じますし、本人も楽しく、また一生懸命踊っているのが伝わってきて嬉しいです。"“もともと手足の動かし方にぎこちなさがあって、思ったように身体を動かすということが難しいのかなと感じていたところ、ここの教室に出会いました。頭と身体を連動させる動かす力を、少しずつダンスを通して学んでくれたらいいなと思っています。"Upload By 発達ナビ編集部発表会の最後には、南さんが手がけた振り付けで、会場のみんなが一緒に踊りました。曲目はTHE BOOMの「風になりたい」。子どもたちも、保護者の方も、インストラクターの先生方も、会場全体が一体となって本当に楽しそうに踊っていました。南さんの言葉通り、年齢や障害の有無も関係なく「踊る喜び」は全ての人に開かれているのだと感じる、そんな発表会でした。南流石さん、プレミア・ケア・ジュニアさんの今後の取り組みにも、目が離せませんね。児童発達支援・放課後等デイサービス「プレミア・ケア・ジュニア」
2016年09月28日「おしまいです」「大丈夫です」1度決めたら絶対やらない息子出典 : 発達障害の子どもたちは、日頃から苦手なことでパニックになったり、自信を失ったりする機会が多いと思います。ではどうすれば、失敗や苦手なことから逃げずに、工夫することができるのでしょうか?発達障害の息子は、自分が苦手だと感じていることは私が「やろう」と誘っても「おしまいです」「(やらなくて)大丈夫です」と言って、自分の中で完結してしまい、取り組まないことがよくありました。保育園の授業参観で見た光景です。工作の時間に、絵に色を塗ったりのりで紙を貼ったり、というシーンでも、何もしないまま「おしまいです」と宣言して固まっていました。「少しだけでも、一緒にやってみよう」と私が声をかけても、かたくなに拒否。後日、介助の先生と2人だけで取り組んだそうで、その際の様子を先生に伺いました。のりのベタベタが苦手だったのか、「もうおしまいです」と息子は立ち上がろうとしてしまいます。先生が席に戻るように促した後、先生の指先にのりをつけ、その指を息子が持って動かす、という共同作業で、やっと取り組めたそうです。また、三輪車も苦手意識があるせいか、「大丈夫です」といって断り、なかなか乗ろうとしませんでした。このように、息子は1度自分の中で苦手意識が芽生えると、それ以降チャレンジすることができなかったのです。できないことに息子自身も困っていた。苦手で終わらせないための工夫とは?出典 : どうにかして、息子の苦手意識を払拭したい!と躍起になって、あれこれ試していた私ですが、どうも上手くいきませんでした。その時ふと思い出したのが、保育園の先生の介助方法とそのあとの息子の反応でした。・息子は先生の手を借りて、のりを塗って作品を完成させていた・先生と一緒に作品の完成を喜んだ!これで気付いたことは、息子は決して「やりたくない」訳ではないのです。「できなくて困っていた」のでした。いきなり自分の手でのりを塗るというのは、息子にとってはハードルが高かったのかもしれません。そこで、息子の苦手と向き合うため、私が考えたことは●はじめから100%を求めない●Step by stepでできたところを褒める●苦手があっても大丈夫!と安心させるという3つでした。出典 : その後、息子が自宅で工作するときは「○君はのりのベタベタがちょっと嫌いだけど、少しづつ触ってみようね」と、嫌がらない範囲でのりに触れる機会を設け、少ししかできなくても、チャレンジしたことを褒めるようにしてみました。三輪車に乗れたときも、この3つを心がけていました。息子の「楽しむ」ということを優先し、そのそのときにできていることを、褒めるようにしました。すると、三輪車にまたがれるようになってから、徐々にペダルも漕げるように。いきなり乗るように促していたら「乗り物は嫌い!」となっていたかもしれません。乗れるまでは遠回りでしたが、結果は良かったと思っています。現在では自転車も乗れるようになり、公園での乗り物ライフを楽しんでいます。小学校にあがり、持ち物を準備するのが苦手だった息子。2人で考えた解決策は…Upload By たっくんママ小学1年生の時には、学校の持ち物を前日用意するのに、何を用意したほうがよいか分からずに困っていたことがありました。息子も「自分は持ち物を覚えたり、考えたりするのが苦手だ」と自覚があり、私は息子と一緒にどうしたらよいか考えました。2人で考えた結果、●チェックリストを作って、リストを見ながら用意するとうことで話がまとまり、その後はリストを作って用意しています。今でも、祖父宅への帰省や何か準備の時には「そうだお母さん、一緒に(チェックリスト)書いて!」と声かけをしてくれます。自分の苦手に向き合う息子の姿に、成長を感じました。とはいえ、チェックリストを作っても、気が散って他の事をしてしまい、なかなか準備が進まないことも。苦手に対する課題はまだまだあります。言葉遊びでの何気ない会話、母の私も思わず吹き出した一言出典 : 先日息子と話していた時のことです。最近、なぞなぞがブームの息子。なぞなぞの話題から派生して、言葉遊びを始めました。○○を別の言葉でいうと…?というお題です。私がふざけて、「お母さんを別の言葉でいうと?」と聞くと、予想外の言葉が。息子「がんばれ」私「がんばれ!?どんなところが頑張れなの?」息子「僕と一緒で片付けとか、頑張らないといけないから」そうなのです、息子も私も片付けは苦手。どうやら息子にとって私は、威厳のある母ではないようです(笑)でも息子は知らぬ間に、自分の苦手な部分を前向きに、受け止め始めているようでした。苦手はあっても大丈夫。親子で励まし合えば失敗も怖くない!出典 : 息子には、「お母さんにも苦手なことはあるけど、頑張ってるんだよ~」と伝えていて、息子はそんな私を「お母さん、頑張ってるよね~」と応援してくれています。「苦手なことはあっても大丈夫、ただそれとどう向き合っていくか」という姿勢は、折に触れて伝えています。壁にぶつかることもしょっちゅうで、まだまだ試行錯誤ではありますが、息子にはどうすれば暮らしやすくなるのか?生きていく知恵を少しづつ獲得して欲しいと思っています。ちなみに後日、息子にもう1度「お母さんを別の言葉で言うと?」と聞くと、「がんばりとがんばれかな」という答えが返ってきました。なかなかユニークな息子の感性。これからも息子と苦手に向き合いつつ、工夫していきたいです。
2016年09月21日発達障害のある子どもたちと同じくらい、凸凹がある夫出典 : 我が家の子どもたちは、発達に凸凹があります。あいまいな言葉や長い説明が苦手なので、子どもたちに何か伝えるときは、できるだけ細かく具体的に言う必要があります。ただ、この「細かく具体的に伝える」というのは、子どもたちが生まれる前から私の習慣の1つでした。それは、子どもたちに負けず劣らず、私の夫は凸凹のある人だからです。今回は、まだ子どもが生まれる前、私が夫に「なんでそーなるの!?」と衝撃を受けたときのお話です。出産間近の私が入院しているとき、夫に買い物を頼んだ出典 : 第一子の出産が予定日を超え、陣痛前に入院した時の事です。病室に入って落ち着いた頃、私は夫に雑誌と、ジャスミンティーの2リットル入りペットボトルを2本買ってくるようにお願いしました。その時は「病院から近い入り口から地下街に入ったところの食品店があるでしょ。あそこなら売ってるから、ジャスミンティーの大きいペットボトルを2本、その先のビルの本屋さんで〇〇の△月号を買ってきて。置いてある場所は何処其処で、表紙は誰々で、メインテーマは□□だから。先にジャスミンティーを買うと重たいから、先に本屋さんへ行って、帰りにジャスミンティー買ってくるといいよ。」といった感じでした。私の伝え方があまりに細かいので、側で見ていた私の母は「子どもじゃないんだから、そんなに細かく言わなくても…」と夫に対して失礼だと言わんばかりの表情でした。それから1時間後。買い物から帰ってきた夫が手にしていたものは…出典 : 時間後、帰ってきた夫が持っていたのは一体なんだったでしょう。指定通りの雑誌と、ジャスミンティーのティーバッグ20個入りを2箱!「どうして?私『2本』って言ったよね?『重たいから…』って言ったよね?病室で誰がティーバッグでジャスミンティー淹れんの?!しかも40パック…考えたら分かるよね?!」なんて思いました(笑)私の母も、その様子を目の当たりにして「だから細かく伝えるんだ」と納得したようでした。夫は、2つ、3つの話題があると、最後の方のキーワードが頭に残り、最初の内容を忘れてしまうようでした。それ以来、夫に何か頼む時は細かく細かく念を押して伝えるだけでなく、・1つの作業が終わってから次を依頼。2つ一緒には依頼しない・できるだけメモに書いて依頼するという工夫をするようになりました。「大人なんだから、考えれば分かるはず」という思いこみ出典 : どうしてこんなことが起きるのか考えてみました。私は、何か言葉を聞いたり言ったりするとき、頭の中には映像や画像が思い浮かびます。病院から出て道を歩き、地下街の入り口から地下街、そしてお店の中の様子、陳列の様子などが、ストップしたり、数倍速になったりしながら浮かびます。ですが、夫の場合はどうなのかを尋ねてみると、どうやら映像は浮かばず「言われたままを変換もなく記憶する」という感じのようです。私には夫のやり方はできませんし、想像することすら難しいです。言葉から何を思い浮かべるかは、人によって想像を超えるほどに違うものだということが分かりました。この違いがあるため、私には夫の間違いが信じられなかったのだと思います。普段、子どもだけでなく夫婦や家族でこういったすれ違いをしてしまう方も多いのではないでしょうか?「大人なんだから…」「考えればわかる」とついつい思ってしまうものですが、この出来事のおかげで「自分はこの伝え方で分かるから、他の人にも伝わるはずだ」という自分の思い込みに、気付くことができました。
2016年09月11日自信を失った子どもたちの居場所、そこでの子どもたちの変化出典 : 発達が気になる子や、イジメ、不登校などで自信を失っている子に、どうしたら自信を取り戻してもらえるのか?悩む親御さんは多いと思います。見守ることも1つの方法ですが、今回は、子ども達の可能性を広げる、様々な活動についてご紹介したいと思います。私の参加している親の会では、淀川キリスト教病院の医師、谷均史先生を迎え、ゆっくりお話する機会がありました。谷先生は奄美大島で、不登校や発達障害の子どもたちが集まる「おばぁの会」を支援しています。そこでの、子ども達の変化について教えてもらいました。会が発足した当初、たこ焼きパーティを企画したところ、とても盛り上がって人も集まるようになったそうです。ただ集まって食事をし、おしゃべりする場になったことで、子どもたちがイキイキし、それぞれ特技を発揮できるように。学校では集団行動になじめず、叱られて辛い気持ちを抱え、「死にたい」と言っていた子どもたちが、おばぁの会で自由に過ごすことで元気を取り戻していったそうです。先生に写真を見せてもらったのですが、子どもたちが思い思いのことを楽しみ、「安心して存在できる場があると、子どもってすごい力を出すんだなぁ」と感じました。様々な理由で学校にいけない子どもたちと、親たちが集まって、ごはんを食べよう!という『おばあの会』ができて五年。できた当時、大変な状況を抱えていたMITSUKIが知的障害者枠でバスケットボールの鹿児島県代表に選ばれました!よくここまで来ました!(谷均史)料理には、人と関わる楽しさがある出典 : 私の参加している親の会でも、おばぁの会のような活動をしているのか、聞いてみたところ、以前は料理教室をしていた時期があったそうです。そこで調理を教えてくれたA先生は、現在、障害者の料理教室をしています。A先生によると、重い障害がある人で、作業は一切手伝えなくても、その場にいるだけでニコニコとして、嬉しそうな表情を見たそう。それぞれの人が、自分のできることをして、全員で食べる。それだけでその場に、笑顔があふれるのだそうです。栄養士でもあり、ケースワーカーでもあるA先生から聞いて、印象に残っているのは、「お料理ってね、発達障害の方の訓練にもなるんですよ。いろいろな手順があって、どういう順番で取り組むか考えたり、材料を計ったり、手先も使いますし。やることがいっぱいあるから良いんです。そして何より、食べることは喜びで、人にも喜ばれるし達成感がある。それがいいところなんですよ。」という言葉でした。モノ作りは、子どもの自信につながることも出典 : 料理だけではありません。カバン作りなど、裁縫が趣味で、それが仕事に結びついた人もいます。引きこもっていたBさんは、裁縫が好きで作品を作っているうちに、注文が入るようになり、それで収入を得られるようになった方です。Bさんは最初、材料を全て母親に買ってきてもらっていたそうです。しかし、母親が選ぶものは、Bさんが思っていたイメージと全く違っていたそう。結局、自分で買いに行くようになり、そのつながりで、一緒に材料を選ぶお友達もできたのだとか。料理や裁縫に限りませんが、モノ作りというのは、人から評価を得たり、自己表現もできますし、子どもの自信につながるのではないか、と私は思います。娘がめずらしく興味を持ったモノ作り。しかし、そこに居た先生は…出典 : 不登校の娘が中1のときです。編み物カフェに誘うと「行ってみたい」と言い出しました。おばあちゃんに、カーネーションのコサージュを編もうと考えたようでした。しかしいざ行ってみると、編み物の先生は、娘が学校で嫌な思いをした先生に、外見がそっくりだったのです。最初は怖がって、おそるおそる聞いていた娘でしたが、何度「わからない」と聞いても、嫌な顔1つせずに教えてくれる先生に、安心できたようでした。家庭科の授業には出たことのない娘です。いろいろな編み方を駆使するコサージュ、果たして完成するのかどうか?心配でした。でも、集中力を発揮できたおかげで、みごと4時間で完成したのでした。生きる楽しさや自信は、好きなことで見つかるかもしれないUpload By ヨーコ帰り道に娘が言った言葉です。「編み物の先生は、私が何度聞いても怒らずに教えてくれた。すごく嬉しかった」学校で机に突っ伏していた姿を思い出すと、ちょっと泣きそうになりました。学校に行けないことで、自分を責め、自信を失っていた娘。少しでも何かに取組んで、自信を取り戻してほしいと願うのは、親の本音だと思います。そんなとき、娘が自分で「やってみたい」と言ってくれたことは、私にとって、とても嬉しいことだったのです。娘は「またあのカフェで編み物がしたい」と言っています。この頃には、料理にもチャレンジするようになりました。こうした体験を積み重ねて、生きる楽しさと力を身に付けてくれたら…と願っています。
2016年09月09日息子をよく理解した上で、幼稚園にお願いしていた支援出典 : 現在6歳の息子が、発達障害と診断されたのが3年前。私は息子の育てにくい部分や、幼稚園の先生方のお話などから、息子の苦手な部分、支援が必要な部分について、以下のように把握していました。●言語理解が弱く、指示が伝わりにくい●ワーキングメモリ(短期記憶力)が弱い●気持ちの切り替えが苦手●聞いて理解するよりも、見て理解する方が得意これらのことを踏まえて、幼稚園や習い事などでは、「少ない単語数で簡潔に指示を出さないと、理解ができません」「指示が通らない場合は、絵カードや表などを使って、説明すると理解できます」などの支援をお願いしてきました。ところが、検査を受けて見えてきた特性は出典 : 先日、来年度に迫る就学に向け、息子は発達検査(WISC)を受けました。ところが、WISC検査の結果は、衝撃的なものでした。●「言語理解」は年齢をはるかに上回る値●「ワーキングメモリ」が高い値●「視覚からの情報処理」は低い値このように、私の見立てと全く逆の結果だったのです。支援が必要だ、と考えていた不得意なことは、むしろ息子の得意分野だったという、驚きの結果となりました。自分の子どもなら「似ていて当然」という思い込み出典 : なぜ私はこのように、特性について真逆の思い込みと、支援をしていたのでしょうか。それは、私が「発達障害といっても特性の出方は様々である」という1番大切なポイントを、理解していなかったからだと思います。まず1番最初に考えていたのは、「息子は、自分の子どもなのだから、自分に似た特性を持っているはず」という思い込みでした。私を困らせる息子を見るたびに、「私も小さい頃こうだった」「私も似た特性があった」と、自分の方に寄せて考えていたのです。私にはもともと、聴覚による言語理解に苦手意識があり、いろいろと説明を受けたりしても、ほとんど理解できないままのことが、よくあります。ですから、「息子も当然同じだろう」と思い込んでいたのです。たくさんの情報からも刷り込まれていった、思い込み出典 : また、「ワーキングメモリが弱い」というのは、「発達障害児とは一般的に、ワーキングメモリが弱いものだ」という思い込みがありました。発達障害児への、支援に関する本を読んでいると、必ずといって良いほど「ワーキングメモリの弱さを補うための支援」という項目が、出てくるからです。また、「発達障害児には、数学が得意な子どもが多い」「理系には発達障害の人が多い」というような、インターネット上の情報にも、惑わされていました。息子が「言葉の力が弱い」「国語ができない」という風に思い込んだのは、これが原因だったのです。親の思い込みを払しょくできるのが、発達検査。客観的に子どもを分析するツールとしても出典 : 発達検査というと、数値のアップダウンに翻弄されてしまう、親御さんも多いと思います。現に私も、WISC検査の結果をもらったとき、「全検査IQ」と呼ばれる、総合的なIQ値しか見ていませんでした。でも実は、全検査IQはそれほど大事なことではありません。発達検査の項目ごとの数値を見てみると、その子の得意と苦手が見えてきます。それに応じて、適切な支援の仕方を、考えていくことができます。親は、子どものことをよく見ているようで、実は「一般的な発達障害児の特性」や「自分や配偶者の特性」に判断を引きずられていることがあります。でも、発達検査の結果を見ることで、より客観的に、子どものことを分析できるようになります。つまり、発達検査というのは、子どもを分析するだけでなく、子どもが過ごしやすい環境を、調整するという目的でも、とても大切なものだと言えるのではないでしょうか。
2016年09月08日睡眠障害とは?子どもが眠ってくれないのは睡眠障害なの?出典 : 睡眠障害とは、眠りに何らかの問題がある状態を指す医学用語です。子どもの「睡眠障害」というと大げさでは、と思うかもしれませんが、子どもの心身の育ちにとって睡眠はとても重要です。また、子育て中のパパママにとって、子どもの睡眠は大きな悩みのひとつといえます。「子どもが夜ちゃんと寝てくれなくて……」、「たびたび夜中に起きて騒ぐので、家族みんな寝不足で……」という経験をするパパママは少なくないのではないでしょうか。子どもがぐっすり寝てくれないと、付き合ってお世話をするパパママも寝不足になり、体力的にも精神的にもつらいですね。夜泣きしたり騒いでしまったりすると、近所迷惑になっていないかというストレスを感じることもあるでしょう。うまく眠れない日が続くと、何かの病気ではないか、発育に影響はないのか、不安になったりするのではないでしょうか。子どもは、乳児期から3歳くらいまでの間に睡眠リズムを確立します。赤ちゃんの眠りはまだ未成熟で浅い眠りなので、大人と違って夜泣きをすることも多いのです。ですが、3歳以降になっても睡眠に何らかの問題がある場合、改善の必要があるといえます。特に、発達障害のある子どもの多くは、睡眠に何らかの問題を経験する場合が多いと言われています。発達障害の子どもは、睡眠リズムのシステムづくりになんらかの問題があって睡眠に影響したり、発達障害の二次障害として睡眠障害があらわれたりする可能性が高くなるのです。そして睡眠障害の状況が長く続くことで悪循環を生み、障害や日常生活に更なる影響が出てしまうこともあります。子どもの発育に睡眠が重要な理由は?出典 : 子どもの睡眠のメカニズムは、脳の成長につれ変わっていきます。生まれてすぐの頃は短い周期で昼夜の区別なく眠りと覚醒を繰り返します。生後16週ごろまでには昼間に長めに起きて夜に集中して眠る、約24時間の生体リズムが形成されます。その後、午前中の昼寝、午後のお昼寝の順に必要がなくなり、5~7歳くらいまでに夜間にまとまって寝るようになります。睡眠量だけでなく、睡眠の質(睡眠構造)も年齢・成長にともない変化します。人間の睡眠は、レム睡眠(浅い眠りで身体は眠っているのに、脳が活発に動いている状態)とノンレム睡眠(脳も身体が休んでいる深い眠りの状態)の2つに分けられますが、生後間もなくはレム睡眠に似た浅い動睡眠が睡眠全体の約半分を占めます。3ヶ月ごろにレム睡眠とノンレム睡眠があらわれるようになり、2~3歳までにはノンレム睡眠とレム睡眠を90分ほどの周期で繰り返す、大人とほぼ同じ睡眠リズムができてきます。そのために睡眠のシステムが形成される時期に良質な睡眠をとることは、一生の生活リズムを左右する大きな意味を持つと言われています。成長につれ、メラトニンというホルモンの分泌量も増えてきます。メラトニンは夜間分泌されるホルモンで、覚醒と睡眠を切り替えて眠りをうながしますが、日中に光をたくさんあびることで分泌されるので、早寝早起きの生活リズムを続けることでより分泌量が増え、より眠れるようにもなります。乳児期はこれらの睡眠のシステムが形成される途中であるため、睡眠が浅かったり、細切れになりますが、3歳以降になってもこのシステムがうまくできていない場合、対策を考えたほうがよいかもしれません。細胞組織の生成と新陳代謝を促す成長ホルモンは、身長を伸ばしたり、筋肉をつくったりするのに欠かせません。また、脳の発達や記憶などにも関係するホルモンです。この成長ホルモンは、睡眠中、特に入眠後最初に訪れるノンレム睡眠中に多く分泌されると言われています。つまり睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで、身体の組織や脳が構築され発達するのです。このように、子どもにとって睡眠は日中の疲労を回復するだけではありません。乳幼児から思春期の睡眠は、心身が大きく成長する時期に必要なホルモンが分泌される、発達に欠かせないもっとも大切な時間といえるでしょう。そのため、子どもの睡眠の問題には早期に対処することが重要です。睡眠障害が改善されることで発達障害にもよい影響を与えると考える医師や研究者も多く、さまざまな研究も進められています。子どもの睡眠と脳の発達 ─睡眠不足と夜型社会の影響─ 大川匡子子どもの睡眠障害とは?どんな場合に疑われる?出典 : 眠りになんらかの問題がある状態を睡眠障害と言います。「眠れない」不眠症をイメージする人が多いのですが、眠りすぎやいびきなども含め、眠りの質と量にまつわるさまざまな問題を広く含みます。子どもに見られる症状の目安として、以下のうち、ひとつでも当てはまる場合、睡眠障害ではないかを検討するほうがよいとする専門家もいます。①夜間睡眠中に何度も目を覚ます②強くいびきをかく③日中不機嫌でイライラしている④よく泣く⑤保育園や幼稚園に行きたがらない⑥頭痛や腹痛が多い⑦1日中ねむけを訴える⑧朝起きて学校に行くまでにぐずぐずと時間がかかる⑨土曜・日曜日・休日はお昼まで寝ている⑩成績や部活の伸びが止まってしまった、あるいは急激に伸びた(がんばっている)、朝起きることができず学校にも行けなくなった(『子どもとねむり<乳幼児編>』三池輝久著メディアイランド刊P83より引用)このほか、以下の様子が見られるときも睡眠障害が原因の可能性があります。・夜中に突然大声で叫び、パニックを起こす・手足のムズムズ感や違和感、痛みで眠れない・夜中に歩き回る・夜普通に寝ているが、日中眠そうにしていたり居眠りしたりする・寝る時間が遅くて不規則な生活が続き、直せない・睡眠が十分に取れなくて頭痛や体調不良が続いている・落ち着きがなく、衝動性がある睡眠時間や睡眠中に起きる問題のほか、一見睡眠と関係なさそうなことも睡眠障害が原因かもしれません。子どもが良質な睡眠ができているか、普段の様子や生活をチェックしましょう。子どもの睡眠障害の種類出典 : 睡眠障害にはさまざまな症状や病気が含まれます。代表的な睡眠障害にはどんなものがあるのでしょうか?寝つきが悪い、朝早く起きてしまう、眠りの質が悪いなど、睡眠が十分でない状態です。睡眠不足が続くと、「なんとなく調子が悪い」といった不定愁訴や、頭痛・腹痛、不機嫌やイライラの原因にもなります。夜ちゃんと寝ているはずなのに、日中あらがえないほど眠い状態です。低年齢の子どもは昼寝を必要としますし、体力が無いので疲れていることもありますが、じゅうぶんに睡眠時間を取っているのにひどく眠そうな場合やずっと寝ている場合、睡眠時無呼吸症候群など別の病気が関係している可能性があります。昼夜のリズムと体内時計がうまく合わず、調節できなくなって睡眠リズムがくずれてしまい、社会生活に支障をきたす状態のことです。子どもの場合、朝起きられないと園や学校にも遅刻してしまい、不登校につながりやすい傾向も指摘されています。子どものいびきや無呼吸は、正常な睡眠や成長に悪影響を及ぼすことがあります。子どもの場合、いびき、無呼吸の主な原因は、鼻づまりやアデノイド・口蓋扁桃(こうがいへんとう)といったのどや鼻の奥のリンパ組織の肥大で、物理的に気道が狭まることです。また、肥満で気道が狭くなることもあります。呼吸がしにくいので血中酸素濃度が低下し、何度も脳が目覚めてしまい、十分に睡眠がとれなくなってしまうのです。長時間のSASが続くと、慢性的な低酸素症に伴う精神遅滞、深い睡眠がとれないことによる成長ホルモンの分泌低下に伴う低身長など発達のさまたげになるおそれもあります。アデノイドや扁桃肥大の場合、耳鼻咽喉科で手術すると治ることが多いようです。小児の「睡眠時無呼吸症候群」について■むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)脚などの下肢がむずむずするなど動かしたい強い衝動を覚えます。夜間など睡眠時間帯に起こることで、気になって眠れなくなったり深い睡眠をさまたげてしまいます。主に下肢にあらわれますが背中や顔などに違和感が生じることもあります。子どもの場合、成長痛と間違われることもよくあります。脳内の伝達物質であるドーパミンの機能異常のほか、子どもは鉄分不足が原因で起きる場合が多いようです。鉄分の多い食事やサプリメントで改善することもあります。■律動性運動障害乳幼児期から4歳くらいまでの時期で発症する睡眠障害。入眠時や睡眠中に手足や頭を激しく動かしたり、頭を打ち付けたりする。9ヶ月の子どもでは59%に見られるほど、乳児期には非常に多い症状ですが、5歳前後には5%以下になります。ただし、知的障害、自閉傾向にある子どもでは、後年まで症状が残ることもあります。ふとんにぶつける程度の軽度なら問題ありませんが、頭を壁にぶつけてけがをしたり、音で家族が不眠になったりすると、治療が必要になる場合があります。出典:『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p66睡眠中の異常行動や不快な身体的現象の総称です。子どもによくある「寝ぼけ」を含め、睡眠中に歩き回り、起きると覚えていない睡眠時遊行症(夢遊病)、恐怖の叫びをあげたり、泣いたりして目覚める睡眠時驚愕症(夜驚症)、睡眠中に恐怖や不安をともなう生々しい夢をみる悪夢障害などがあります。重症なものは本人や家族を悩ませることがあります。思春期までになくなることがほとんどですが、遺伝やストレス、外部からの刺激が原因と言われています。ストレスや刺激を取り除くとともに、症状が出ているときにけがをしないように見守りましょう。発達障害の二次障害として睡眠障害が現れることもある睡眠障害は、発達障害の二次障害として発症することが多いと言われています。自閉症やADHDなど、発達障害と診断された人は高い確率で睡眠の問題が起こります。特に乳幼児期には、寝つきが悪かったり、ちょっとの音で目を覚ましてしまい、途中で目を覚ますとなかなか寝ないなど、年齢相応の睡眠リズムが確立しにくい傾向が顕著にみられることも知られています。(『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p49より)これは、睡眠障害が発達障害を引き起こすという意味ではありません。発達障害の特性により、睡眠になんらかの問題が出てしまうことが主な原因です。ですが、乳幼児期の睡眠は脳の発育に大きく関わりますので、睡眠障害が長引くこと自体が睡眠不足や生活リズムが乱れて悪循環を生み、子どもの心身の発育に影響している可能性も否定できません。音や光などに対する感覚が過敏なため、覚醒しやすいといわれています。また、睡眠に関係するメラトニンの量や、セロトニン・メラトニンといったホルモンの元となるトリプトファンの量が、極端に多すぎたり少なすぎたりするからではないかと考えられています。ADHDの特性として切り替えが苦手、ということがあります。つまり「起きている」状態から「眠る」状態へ、または「寝ている」状態から「起きる」状態にスムーズに移行することが難しいのではないかといわれています。また、ADHDのある人の脳にはセロトニンが不足しているとも言われています。セロトニンを原料として作られるメラトニンという体内時計をコントロールするホルモンも不足してしまうため、不眠や概日リズム睡眠障害に陥りやすいのではないかと考えられています。寝るのも忘れて熱中してしまう過集中で睡眠リズムが崩れてしまうことが多いようです。また、感覚過敏が、寝つきが悪くなったりすぐに目が覚めてしまう原因にもなります。また、アスペルガー症候群の二次障害としてのうつ症状などによる不眠の可能性も考えられます。Upload By 発達障害のキホン発達障害と誤診される睡眠障害も出典 : 睡眠不足から集中力や落ち着きがなくなった子どもにADHDのような症状がみられることもあります。特に子どもの睡眠時無呼吸症候群の症状として多動や不注意、衝動的行動がよくあらわれることもあり、ときにADHDと誤診されることもあるようです。また、子どものむずむず脚症候群も大人と比べて昼間に症状が出やすく、授業中などにむずむずしてじっとしていられないことからADHDと間違われることもあります。もちろん、診断にはくわしい生育歴などが精査されますので、きちんと医療機関で診断を受ければわかることです。しかし、このことからも、子どもの睡眠障害が、心身の不調や問題行動とされる症状と密接に関わっていることがよくわかります。参考文献:『睡眠障害の子どもたち』大川匡子編著合同出版刊p65、p105Upload By 発達障害のキホン睡眠障害を改善する方法・対処法出典 : 子どもの心身の成長には良質な睡眠が不可欠ですし、軽度の睡眠障害や生活リズムの乱れは家庭での工夫で改善できる場合も多いです。睡眠障害がよくなると、家族の生活の質も上げることになるので、早期に取り組むことが大切です。朝、光を浴びることで体内時計がリセットされます。まず起きたら窓を開け、お日さまの光をあびましょう。毎日早寝早起きのリズムで生活し、きちんと朝食を食べているでしょうか?昼寝の時間や長さは適切でしょうか?生活習慣を見直しましょう。また、適度に疲れていると眠くなるので、外で身体をうごかすなどの日中の行動も大切です。夕ご飯やお風呂が遅くなったり、だらだらテレビを見ることも、不眠につながります。親の都合で子どもの生活リズムが崩れることのないように気をつけましょう。寝る前に着替えて歯を磨く、絵本を読むなどの決まりごとをつくります。毎日同じ習慣や手順で眠りに就くことで、自然と寝るモードに気持ちが変わり、寝つきがよくなります。子どもがどんなことをすると眠りやすいか探しながら、合うものがあれば毎日繰り返して「おやすみの儀式」にしましょう。子守唄をうたう、背中をとんとんするなど、赤ちゃんの寝かしつけにも効果がありますので、試してみてくださいね。寝室の環境も睡眠に影響します。落ち着いて眠りにつける空間づくりと、朝起きやすくなる工夫をしましょう。まず、ベッドは日当たりのよい場所に置きましょう。遮光性のあるカーテンをして、朝決まった時間に開け、起床時に日光を浴びるようにします。インテリアの色使いは、赤などの原色は神経を興奮させると言われていますので、避けた方がよいでしょう。淡い青や黄色、アースカラーなどの穏やかで落ち着いた色がおすすめです。不安を感じやすい場合や光に敏感な場合は、天井に布などを吊って天井を低くしたり、照明を和らげると効果があるようです。また、お気に入りのものを置いたり、囲って個室のようにすると「自分のスペース」と安心できる場合もあります。入眠する数時間前からは明るい照明は避け、テレビやスマホも使用しないほうがよいようです。せっかく寝ようとしても、隣室などから大人の楽しそうな声やテレビの音が聞こえると、目が覚めてしまいます。子どもが静かで落ち着いた雰囲気で眠りにつけるよう、環境づくりを工夫しましょう。どうしても寝つきが悪い時には無理に寝かせようとせず、思い切って起きるという手もあります。一度部屋を明るくして外に出てみたり、好きなことをしたり、音楽をかけてみたり、一度気持ちを切り替えると、かえって落ち着き、眠くなることもあるようです。マッサージもおすすめです。やさしくなでてあげるだけでもよいので、眠る前の親子のスキンシップを入眠儀式として取り入れてみてはいかがでしょうか?睡眠障害の治療法出典 : 子どもの睡眠障害の注意点として、大したことではないと放っておいたり、どこに相談していいのか分からなかったりするうちに悪化してしまうことがあげられます。子どもの眠りについて気がかりなことがあったら、まずは抱え込まずにかかりつけの小児科や地域の保健センターに相談しましょう。専門機関や対処を教えてくれるでしょう。乳幼児期は子どもの心身が発達する大事な時期ですので、早めに対処することが重要です。医療機関で行われる代表的な治療法をご紹介します。子どもの睡眠障害の場合、親の生活習慣の影響を受けやすいので、家族全体の生活習慣を見直したり、夜泣きへのかかわり方などについての指導したりといった、行動療法的なアプローチが特に有効です。まずは睡眠に関する知識を正し、睡眠環境や生活リズムを整えることで適切な睡眠が得られるようにします。睡眠リズムを記録する睡眠表をつけることもあります。子どもの薬物治療については、医師による治療方針やケースにもよりますが、生体リズムの改善のため、メラトニンやドーパミンを薬で調整する治療法があります。また、緊張や不安が原因の場合、それを和らげるための薬が処方されることもあります。いずれにしても薬物治療を行う際には主治医と相談の上、用法や用量を守って進めることが重要です。朝に強い光を浴びることで体内時計がリセットされる仕組みを使い、朝、身体の中心部の体温が上昇し始める時間に、人工的に作った5000ルクス以上の明るい光を浴びる治療法です。睡眠障害が生活指導や薬で改善しない場合などにまれに行われますが、1か月以上の入院が必要となることもあります。睡眠の改善が発達や生活によい影響をもたらします出典 : 睡眠障害は家族も本人もつらい問題ですが、生活習慣や環境の改善などで劇的によくなることもあります。「寝る子は育つ」ともいいますが、子どもにとってよい睡眠は成長・発達にかかせないもの。睡眠に問題があると感じたら早期に対処法を考え、ときに病院などに相談し、一緒に改善していく方法を探しましょう。参考:睡眠薬の適正な使⽤と休薬のための診療ガイドライン|日本睡眠学会HP
2016年09月05日最初は仲間と繋がりたくて参加した親の会出典 : 発達障害児の育児は、毎日が戦いです。1つ悩みが解決したと思うと、また新しい悩みが、思ってもみない方向から出現します。この戦いは、一体いつまで続くのか、成長と共になくなるのか、その先は全く見えません。そんな育児の中で、「毎日の辛さを、ちょっとでも愚痴れる仲間がいたら…」と考えるのは、ごく自然な流れだと思います。発達障害児の親が、自分たちだけで悩みや辛さを、抱え込んでしまわないようにと、地域にはたくさんの親の会が存在します。県全体を含む大きな組織もあれば、小学校の特別支援級の親同士が作る、緩い繋がりもあります。私も育児の愚痴を吐きたい、1人で考え込むのが辛い、そういった理由で親の会にアクセスしたことが、あります。ところが、当初の期待もむなしく、わずか半年足らずで退会してしまうことに。今回は、その経緯と大規模な「親の会」の持つ特質について書きたいと思います。大きな親の会ならではのメリット出典 : 私が入会したのは、県に住む発達障害児の親すべてを対象にした、親の会でした。親の会といっても、きちんとしたNPO団体です。ここを選んだ理由は、大きな組織の方が、いろいろな特性のお子さんを持つ、親御さんと話ができるだろう、という理由でした。確かに「お話し会」のようなものは、頻繁に開催されていて、県のあちこちから集まってきた会員の皆さんから、有意義な話をたくさん聞かせて頂くことができました。また専門家の講演会や、発達障害関連の映画上映会なども、月に1,2回のペースで開催していました。こうした大きなイベントは、どれも参考になるもので、滅多にお話しを伺うことのできないような、専門家の方のお話も、たくさん聞くことができました。イベントだけにとどまらない、大規模さは運営にも出典 : この大規模な会では、会員それぞれが役割を担って運営しています。広報、会計、ゲストの送迎、弁当の注文、場所の確保など、イベントを開催するとなると、ここには書ききれないほど沢山の、運営業務が発生します。何をするにも決めごとや議論となると、運営からメールが膨大に届きます。気付くと、私のメールボックスは運営からのメールで、びっしり埋めつくされていました。大きな組織は、それだけ運営にも人やエネルギーが必要だ、ということを私は後になって、知ったのです。どれだけメリットがあろうと、その場所が自分には合わない場合も出典 : メールを開くたび、本部からのメールがズラッと数10通も並ぶ日々。私は次第に、メールボックスを開くのが億劫になってきました。さらに、月1回行われる定例会のレジュメ作りや、勉強会の資料作り、年度終わりになると今度は総会の運営と、ちょっとした会社に勤めているかのような、仕事量が降りかかってきます。結局、会の運営業務が完全に、自分のキャパシティを超えてしまい、私は退会しました。今は、同じ発達障害児を持つ、仲良しのママさんたちと、少人数で緩く食事会を開催したりしています。私にはそのような形態のほうが合っていたようです。上手に使いわけたい親の会出典 : 大変だったことばかり書きましたが、大きな親の会では、仲間内のおしゃべりでは決して得られないような、専門的な情報を、得ることができます。これは、親の会の最大の強みだと思います。また、大きな組織では、加入者の年齢も様々です。小学校のママ友では、同年齢の子どもを持つ親たちが中心に、集まりますが、大きな組織では思春期の子どもや、成人した発達障害当事者の話を聞くことができます。航海図のない育児だからこそ、これはとても貴重なことだと思います。入会する前に親の会の特質をよく調査し、・自分が親の会に何を求めているのか?・組織運営のための活動は何があるのか・自分は運営活動にどこまで時間を割けるかを、まずはよく考えてみると良いかもしれません。
2016年09月03日1歳半健診とは出典 : 1歳半健診は、正式には「1歳6か月児健康診査」と言い、各市町村の保健センターなどで主に集団で行われる乳幼児健診(乳幼児健康診査)の一つです。乳幼児健診は、子どもの成長、栄養状態、先天的な病気の有無などを確認するとともに、栄養指導や母親へのサポートを行う機会でもある、大切な健診です。乳幼児健診には、医師、歯科医師だけでなく、保健士さん、場所によっては栄養士、管理栄養士、歯科衛生士、看護師、心理職に従事している人などの専門家がいます。保護者の方の日ごろの悩みや子どもの様子で気になることあれば、積極的に相談してみましょう。乳幼児健診の時期は、1ヶ月、3~4ヶ月、6~7ヶ月、9~10ヶ月、12ヶ月、1歳半、2歳、3歳です。ごく少数、自治体によってその後の4歳、5歳、6歳の幼児健診を行っている場合があります。そして、その中でも1歳半と3歳の健診は母子健康法で定められた健診であり、費用は自治体が負担してくれるため、原則無料となっています。自治体によっては、その他の健診も無料の場合があります。母子健康法第十二条 市町村は、次に掲げる者に対し、厚生労働省令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。一 満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児二 満三歳を超え満四歳に達しない幼児第二十一条 市町村が行う第十二条第一項の規定による健康診査に要する費用及び第二十条の規定による措置に要する費用は、当該市町村の支弁とする。歳半健診は、体の発達を中心に診てきたそれまでの乳幼児健診とは違い、心のと体の発達の両方を診査します。保護者の方の中には、「1歳半健診の内容ってどんなものがあるの?」「子どもの様子が気になる」「母子手帳の項目ができない」など、1歳半健診を受ける前に様々な不安を抱えている方も少なくないのではないでしょうか。このコラムでは、1歳半健診の目的や内容を、実際に1歳半健診を実際に経験された先輩パパママの経験談も交えながら説明していきます。事前に詳しい内容や、診査項目、その後の結果を知ることで、健診への不安や心配が和らげば幸いです。1歳半健診の目的出典 : 歳半健診では、次のような目的で診査が行われています。1.子どもの体の健康、発達の確認2.子どもの心の健康、発達の確認3.疾患の有無4.子どもとその保護者のサポート1歳半健診とそれまでの健診の大きな違いは、子どもの心の発達も診査することです。それまでの健診では、乳児の体の成長、たとえば、身長や体重、栄養状態などを確認することを目的としてきました。しかし、1歳半ごろからは脳幹支配から大脳支配が優位になるため、心身の発達がより著しくなってきます。そのため1歳半健診では、体の成長だけでなく、運動面、言語、生活習慣、社会性を診ることも目的となっています。たとえば、二足歩行ができるか、意味のある単語を発するか、理解できているか、などの子どもの成長に関することを診ます。それ以外にも、排尿・排便のしつけや、他の子どもへの興味など生活に関することも診査の対象となっています。そして、1歳半健診では、先天性疾患や、斜視、聴覚異常、心音異常、皮膚の異常などの有無を確かめる重要な機会でもあります。子どもの様子により、経過観察の場合もあれば、専門的な病院を紹介してもらえることもあります。とはいえ、心の発達は体の発達と同じように一人ひとり異なります。1歳半は、心身の発達スピートの個人差も大きい頃です。発達がゆっくりな場合でも早期に働きかけることで、遅れを取り戻すことができることもあるので、1歳半健診を受けて現在の発達状況をしっかり把握しておくことは重要です。子どもと保護者へのサポートも健診の大きな目的として位置づけられています。子育てには保護者やお母さんの健康状態はとても重要です。日々の悩みや不安を保健師さんや専門家に相談できるチャンスが1歳半健診です。多くの健診で相談の時間が設けられているので、事前に相談したいことを考えて行くとよいでしょう。そのほかにも、子どもへの栄養指導や、同じ月齢の子どもを持つ保護者との交流の場としての役割も、1歳半健診は担っています。1歳半健診を受けるには?出典 : 一般的には、子どもが1歳半を迎える頃に市区町村から案内が送られてきます。これに詳しい診査日や場所の記載、診査受診券や要綱が同封されています。後の健診の診査受診券やフッ素塗布受診券などが同封されている場合もあります。1歳半健診を受ける時期は、基本的に子どもが1歳半になった月の翌月から健診の対象となっている市区町村がほとんどです。受ける場所は市区町村によって様々です。役所の多目的室、保健センターや保健福祉センターなど。また、医療機関に委託されている市区町村は、住んでいる地域ごとに近くの病院などで行う場合があります。集団健診とは、決まった日時、場所で他の子どもと一緒に健診を受ける健診方式のことです。同じ月齢の子どもや保護者の方と交流の機会にもなります。現在、1歳半健診のほとんどはこの集団健診方式で行われています。一方、個別健診とは、診査受診券を持って指定された病院や、近所の小児科に行って健診を受ける方式です。個人で受けるため、時間や場所が比較的自由に選べます。ですが、1歳半健診において個別健診を採用している、もしくは集団健診か個別健診を選べる市区町村はまれです。お住まいの市区町村が個別健診を行っているか確認してみましょう。1歳半健診に限らず、乳幼児健診は市区町村ごとに手続きや場所、健診内容が異なります。ホームページの情報だけではわからないことや、少しでも疑問に思うことがあったらお近くの市区町村の保健課や保健センターに相談してみましょう。1歳半健診を受ける前に準備しておくことは?出典 : 歳半健診では、保健師さんをはじめ様々な専門家に相談できる機会があります。日ごろの悩み、相談したいことをまとめておくと良いでしょう。悩みや相談ごとだけでなく、子どもの普段の様子、たとえば、食べ物の好き嫌いや歯磨き、断乳・卒乳や睡眠時間など生活についての事柄や、歩行や運動に関することなど、なんでも相談できます。市区町村からの案内に持ち物が書いてある場合はがほとんどですが、以下のようなものを持って行きましょう。・母子手帳・診査受診券(はがきなどの案内)・問診票・案内に書かれた持ち物(バスタオルやおくるみ、尿検査や便のチェック表など)・筆記用具・着替え・オムツ・おしりふき・オムツ用ビニール袋・飲み物・診察券(個別健診の場合)・保険証・健診助成クーポンなど1歳半健診に子どもを連れて行く際のコツ出典 : 歳半頃の子どもにとって、たくさんの人が行き交う健診会場は未知の空間です。お子さんによっては場所見知りをしてしまったり、お昼ご飯やお昼寝の時間に重なったためにグズってしまうことがあるかもしれません。1歳半健診をすでに経験された先輩パパママの1歳半健診の時の子どもの様子を参考にしながら、1歳半健診での工夫をご紹介します。二日目は保健センターにて、歯科医師による診察と歯科衛生士さんからの講話、保健師さんとの面談でした。息子は順番待ちの間も講話の間もずっとウロウロ動き回り、会議用のテーブルの上に上ろうとすることを繰り返し、私はずっとそれを阻止するために話をゆっくり聞けませんでした。いざ、保健師さんに育児のことを相談しようとすると、飽きてしまった息子がギャン泣きで、後日個別面談をする予定になりました。人見知り、場所見知りがとても激しかった息子の一歳半検診で失敗だったなと思っていることがあります。◯語りかけ、説明の不足自覚あります。言葉が出てなかったのであまり語りかけしていませんでした。◯開始時間がいつもの昼寝の時間だったので昼寝を早めようとしたけどうまくいかず、開始時間に眠気のピークになってしまった。◯送迎をわたしの妹に頼んだこと。会場に着いて妹が去ると泣き出し、眠いのも手伝ってそこから一時間ほど泣き止まず。◯抱っこひもを忘れたこと。受付したもののあまりに泣き止まないので検査も受けられず、『落ち着いてからでいいですよ』と後回しに…何しても泣き止まないのでわたしも泣けてきていったんトイレにこもって泣きました(*_*;その後、外を延々と歩き回り息子は眠りました。抱っこひも忘れたことが本当に痛手でした。健診自体は、1、2時間で終了することがほとんどですが、地域によっては長い待ち時間や保護者への指導の時間があります。子どもがぐずらず、診察が受けられるように、お気に入りのおもちゃや絵本を持って行き、長い待ち時間に備えた準備をオススメしますまた、上記の体験談にもあるように、子どもが眠ってしまった場合に備えて抱っこひもなどがあると便利です。1歳半健診当日の流れと診査内容出典 : 一般的な集団健診の1歳半健診の流れと診査内容を詳しく説明していきます。受付時間が決まっている場合と、健診を行っている時間ならいつ来てもよいという場合があります。市区町村からあらかじめ送られてきた問診票、母子手帳と診査受診券で受け付けを済ませましょう。問診票はあらかじめ記入しておきましょう。ここでは、先ほどの問診票を使いながら、実際に保健師さんが子どもの様子を診ます。その後、保護者の相談に乗ってくれます。子どもの様子については一般的に以下の診査項目で確認していきます。1.積み木指先の微細運動ができているかを診ます。具体的に積み木を2、3個積むことができるか、積み木を打ち合わせて音を出すことができるかを確認します。(場所によっては、クレヨンなどで殴り書きをさせて、指先の微細運動を確認することもあります。)保健師さんが「積み木ちょうだい」などの言葉がけをして、他人の言葉を理解できるかを同時に確認する場合もあります。2.指さし意味のある言葉が理解できているか、物事を理解できているかを診ます。犬や車などの絵が描かれたボードを見ながら、保健師さんの「●●はどれかなー」という声掛けに反応して、その絵を指でさせるかを確認します。また絵を見たときに知っているものに関して、「ぶーぶー」や「わんわん」など発語を伴うか確認します。それと同時に会話をしているときに目が合うかなどを確認しています。3.言葉言葉や話しかけに対する反応を見ながら、コミュニケーションがとれるか診ます。名前を呼ばれて反応するか、「バイバイ」と言いながら手を振ると、真似をしてバイバイと手を振るか、「ポイしてきて」といわれてゴミ捨てができるかなどを確認します。これは実際にその場で確認するより、家庭でできているか聞かれる場合が多いようです。上記の項目が必ずできないといけないわけではありません。上記は、1歳半の子どもにとっての一種の目安でしかありません。子どもの心や言葉の発達は1歳半の時点では一人ひとり発達度合いに差があります。また、家庭ではできているけど、その場でできなかった場合は、保健師さんにきちんとその旨を伝えましょう。家庭でできているかどうかも保健師さんの重要な判断材料です。次に、保健師さんが保護者の相談にのってくれます。事前に用意してきた相談内容を相談してみましょう。市区町村によって、相談は最後になる場合もあります。出典 : 歯の萌出(ほうしゅつ)があるか、乳歯の本数はいくつか、生え方は正常、口内環境や、歯磨きがしっかりできているか、虫歯やそのほかの歯科疾患を診ます。一般的な歯科検診のように行います。事前に歯磨きをしておきましょう。市区町村によっては、フッ素塗布を行ってくれます。身長、体重、頭囲、胸囲を測ります。成長曲線と照らし合わせ、順調に成長しているかを確認します。身長は寝て測るものが一般的ですが、立って測る場合もあります。子どもが怖がって泣いてしまって測れない場合などは、保護者の方と一緒に体重計に乗って測る場合もあります。その後、大泉門が塞がっているか、胸の音に異常はないか、皮膚や性器の状態、脚がX脚O脚になっていなかを触診と目視で医師が診ます。ここでは服やおむつを脱ぎます。受付の時点でおむつ一枚になってくださいと指示をだす自治体もあるので、冬場は寒さ対策をしておくとよいでしょう。また、診察では歩行(一人歩き)の確認もします。転んだり、つかまったりせずに歩けるか、歩くと同時に上半身と下半身の協調運動ができているかを確認します。一人歩きができるかは、1歳半の子どもの運動能力を測るのにちょうどよいとされています。ただし、1歳半の子どもの10%程度は歩行が難しいという報告もありますので、子どもが1歳半健診の時点で歩行をうまくできなくても、それだけですぐに心配だということではありません。また普段とは違う環境で子どもが歩行を嫌がったり、上手にできなかったりした場合は、普段の様子などを医師に伝えましょう。新潟県福祉保健部乳幼児保健指導の手引改訂第4版出典 : 結果とともに母子手帳を返却されます。結果を受けて、保護者が気になっていることを相談できます。自治体によっては、問診のときに行われた相談を結果返却のときに行うことがあります。子どものしつけや育児、保護者自身のことなど、なんでも相談できます。また、栄養指導や歯科指導が行われる場合もあります。食事だけでなく断乳、卒乳に関しても相談指導をもらえるでしょう。診査項目によっては、診査する側の目安として、異常なし、要観察、要紹介と判断が分かれています。・異常なし: 疾患の疑いがない・要観察: 診察や問診等で疾病の疑いがあり、保健機関で経過観察の必要があるもの・要紹介: 診察や問診等で所見があり、医療機関等に紹介して診断や治療等を求める 必要があるもの要観察や要紹介となった場合は、医療機関の紹介や、臨床心理士を紹介してくれることもあります。また、アドバイスや指導がある場合や、3歳健診の時まで様子を見ましょうとなる場合もあります。ですが、これはあくまでも目安であり、子ども一人ひとりの状態や緊急性に合わせて医師や保健師がその後の対応を判断します。1歳半健診を受けた後出典 : 歳半健診を経て、目に見える数字や専門家の視点から、子どもの成長や状態を確認できたことは、保護者にとって安心につながるのではないでしょうか。また、子どもの気になっていた様子や、普段の生活での悩みを保健師さんに相談しアドバイスや答えをもらうことで、今後の子育てに対する見通しを持つことにもつながるでしょう1歳半健診を終えると、今後は2歳健診と3歳健診があります。3歳健診は母子保健法で指定された健診なので原則無料ですが、2歳健診は市区町村によって無料であったり、助成金が出たりと様々です。基本的な健診内容は大きく違いませんが、子どもの様子を確認するよい機会ですのでぜひ受診してみてください。再診査とは、当日うまく測定できなかった項目を再度個別で診査することです。子どもの体調や、その日の気分などで泣いてしまって測定が難しかった場合や、判断するにはもう少し様子を診る必要がある場合などに再診査となるようです。再診査と聞くと、保護者の方は不安になったりするかもしれませんが、重篤な疾患などの見落としをなくすための工夫として、それほど重篤な疾患や症状がない場合でも、なるべく再診査を行う、という方針が取られています。ですので、再検査になったというだけで、不安になり過ぎる必要はありません。再診査のほとんどは、指定された日に個別で行われます。保健師さん、場合によっては医師や臨床心理士さんが診査を担当し、より専門的な診断がなされます。再診査でもうまく測定できない場合、再々診査や再々再診査になることもあります。1歳半健診をきっかけに、子どものサポートにつながることも出典 : 歳半健診は、それまでの乳幼児健診と違い、体の発達と心の発達を診る健診です。そのため、この1歳半健診での診査や相談、再審査をきっかけに、必要な治療や支援につながるケースもあります。1歳半という比較的、早い段階で必要な治療や支援につながることで、症状を治すことができたり、改善することができたりします。1歳半健診をきっかけに支援につながった方の経験談をご紹介します。以下は、一歳半健診をきっかけに子どもの発達が気になり、その後、療育や支援を受けられた方の経験談です。こんにちは。昨年ディスレクシア・書字困難と診断された小5の息子がいます。発達障害を知るきっかけになったのが、まさに1歳半健診からです。1.同じ空間にいた子供たちに比べて多動気味でした。一か所に座っていられないのでウロウロしてました。発達に関する診査項目がすべてできなく、即日別室で発達検査と聞き取りが行われたそうです。公的な療育教室を紹介されたので、希望しました。その後、療育教室から紹介していただいた病院を受診することにしました。療育は小学入学前まで受けました。現在は、病院受診継続と学校の支援学級に在籍しながら通常学級に通っています。小学校入学以降は、学習が中心になるので、それ以外のコミュニケーションや感覚統合の練習など、できる限りの準備をしておいたほうがいいと思います。お友達と関係性などに加え小学入学以降は学習が加わってくるので、フォローする内容が確実に増えます。まとめ出典 : 歳半健診は、子どもの心と体の成長を確認し、保護者のサポートを行う大切な機会です。コミュニケーションが取れているか、言葉を理解しているか、歩行できるか、など様々な診査項目があり不安に感じる方もいるかもしれません。ですが、診査を通して、子どもの状況を正確に把握することで、適切な対応や、育児への工夫につながっていきます。早い時期から様々なサポートや子どもに合った環境を用意するには、普段感じている子どもの特性以外にも、専門家の意見などは重要です。みなさんも1歳半検診を通して、ぜひ子どもの様子を普段より深く知る機会にしてください。また、1歳半健診にはさまざまな診査項目があります。おうちではいつも問題なくできているが、当日の子どもの体調や機嫌でうまくできなかった場合はあせらず、普段の様子を医師や保健師に伝えましょう。1歳半健診は、試験のように当日できるかが問題なのではなく、普段できているかが重要です。普段の様子も、医師や保健師には重要な判断材料になります。母子健康法の現状標準的な乳幼児期の健康診査と 保健指導に関する手引き乳幼児期の健康診査と保健指導に 関する標準的な考え方
2016年09月02日授業参観で10年前は想像できなかった娘の成長を実感。出典 : 発達障害の娘は現在小学6年生。今年の授業参観日では、国語の授業で詩を創作し、発表していました。それを見た私は、「こんなことまでできるようになったのか」と感心しました。なぜなら10年前には、今の姿を想像することすらできなかったからです。娘の成長が気になったのは、2歳頃でした。言葉が出始めるのが遅く、コミュニケーションも、ほとんどとることができませんでした。多動もあり、いつも自分の好きに行動していました。その頃から療育にも通っていましたが、落ち着きなく自由奔放な行動を見て、果たして療育の効果はどれほどなのか?とよく不安になったのを覚えています。診断後、療育を家でも取り入れた。最初は上手くいかなかった出典 : 療育施設に通いだした頃、娘はなかなか着席ができず、座ってもすぐに立ち歩いていました。この頃ほぼ同時期に、ABAという行動分析を家庭に取り入れている、親の会に入りました。そこで受けたアドバイスは、子どもの楽しさや主体性をとても大事にしたものでした。私は、このアドバイスを参考に、親の指示通りに椅子に座る練習を、取り入れてみることに。しかし、これまで自分の好きに立ち歩いていた娘。急に「座って」と言っても座ってくれません。座ることが嫌にならないよう、好きな遊びの最中、機嫌の良いときにイスに座らせてみました。しかしすぐ立ち上がるため、娘の膝を少しだけ押さえるなどの補助を入れましたが、やはり立ってしまいます。それでも、遊びの合間の短い時間、「座って」「立って」の声掛けのタイミングと同時に、体を支える補助を何度も繰り返しました。最初はなかなかできませんでしたが、根気よく続けた結果、2ヶ月ほど経って徐々に指示を理解し、着席ができるようになってきました。しかし、座っていられる時間はまだまだ短いものでした。まずは「机に向かう練習」から、楽しんで取り組めるように出典 : 年長になり、小学校への就学を視野に入れた私は、長時間机に向かって座っていられることを、目標にしました。これは、長時間の着席が目標なので、着席している間に飽きて集中が途切れないよう、娘の好きなおもちゃやゲームなどを活用し、遊ぶことにしました。しかし、娘1人の遊びではすぐ飽きてしまうかもしれない。そこで、私も一緒に娘と遊ぶことにしました。着席の練習と同様、娘が機嫌の良いときに、15分程度から取組みました。また、学校での学習にも慣れるよう、興味の低い活動でも少しずつ練習しました。この時も、集中ができるだけ続くよう、合間に娘の好きなお絵描きの時間を挟むなど、していました。この方法は娘には合っていたようで、着席できる時間は、少しずつ増えていきました。小学生になり、集団参加も安心…と思いきや出典 : 指示や場面に応じて着席することや、長い時間座ることに慣れてきた娘。しかし、いざ就学すると、今度は別の問題が生じてきました。それは、みんなが手を挙げるのを見て、解からない問題でもつられて手を挙げてしまうことでした。そんなとき、娘の「聞く力」を伸ばしたのはフルーツバスケットだった出典 : この問題を療育の先生に相談したところ、「指示の聞き分けを、ゲーム感覚で練習してみましょう」とアドバイスをもらいました。さっそく家で練習です。フルーツバスケットの応用で、方法は簡単です。・家族4人(2人以上が良いです)で、それぞれ違う種類の果物を持ちます。・司会の人を決め、その人に「みかんを持ってる人~?」と聞いてもらい、実際に持ってる人だけが返事をして手を挙げます。・手に持つのは、子どもが理解していれば、果物でなくても構いません。参加人数が多ければ、何名かは同じ種類を持った方が、より実戦向きかもしれません。最初は、授業中と同様に戸惑いながらも、周囲と一緒に手を上げていた娘。間違えたときには「あれ?今はみかんだっけ?」など、司会が言った言葉を確認できるような声かけをすると、娘も自分で間違いに気付けるようでした。このゲームも、学習というよりは、ちょっとした息抜きの時間に、遊ぶ感覚で取組んでいました。このような時間を家族で楽しみながら、繰り返していくうちに、少しずつ指示の聞き分けができるようになっていきました。子どもが学ぶことを楽しめるように出典 : 学校で役に立ちそうな方法を例に挙げてみましたが、コツは楽しくゲーム感覚で練習することです。療育先などでアドバイスをもらうと、つい結果を求めてしまいがちだと思います。しかし、親の気持ちを優先し、子どもの「やりたい気持ち」を置いてきぼりにしては、学習そのものが、嫌な時間に変わるかもしれません。成長を待つことが、結果として子どもの主体性を伸ばし、学習意欲につながるのではないでしょうか?我が家では、楽しさの中でいつの間にか学校生活にも順応できるようになった。そのような関わりや取組みを、心がけています。
2016年08月24日新版K式発達検査とは?出典 : 新版K式発達検査は、子どもの心身の発達の度合いを調べ、それを療育などの子どもの発達支援に役立てるための検査です。1951年に嶋津峯眞、生澤雅夫らによって、京都市児童院(1931年設立、現・京都市児童福祉センター)で開発されました。最近では、おもに自閉症などの発達障害の診断に使われています。新版K式発達検査の歴史をたどると、1980年に「新版K式発達検査」が刊行されたときの適用年齢は0歳~10歳でしたが、1983年の「新版K式発達検査増補版」では、12歳、13歳までに拡張され、さらに2001年に刊行された「新版K式発達検査2001」では成人までに拡張されていることが分かります。このように、新版K式発達検査は改訂を重ねながら、徐々に適用年齢が拡張されてきています。この記事では、新版K式発達検査2001について紹介していきます(以下、新版K式発達検査と表記します)。発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン国立特別支援教育総合研究所発達検査そもそも「発達検査」とは?「知能検査」との違い出典 : 発達検査は心理検査の一つであり、おもに、乳幼児の発達状態を適切に把握するための判断材料として使われています。発達検査と同じように使われている心理検査に知能検査というものがありますが、発達初期にある乳幼児の発達状態を、通常の知能検査によってとらえることは困難だと考えられています。なぜならば、乳幼児は心理的、身体・運動的、社会的側面の発達が十分でないため、知能のみを検査によって測定することは難しいからです。最近では発達検査や知能検査の検査結果を基に、その人に合った支援や学習指導の方向性のヒントを得ることを目的として、ウェクスラー知能検査や田中ビネー知能検査、KーABC知能検査、新版K式発達検査などが日本でよく使われています。では、知能検査と発達検査の具体的な違いはなんでしょうか。知能検査は、知能を精神年齢、IQ(知能指数)、知能偏差値によって測定するための検査です。これに対して発達検査は、被検査者の精神年齢を示す発達年齢(Developmental Age:DA)と、認知面・社会性・運動面などのいくつかの観点から発達の度合いである発達指数(Developmental Quotient:DQ)を調べ、それを療養に役立てるために行う検査です。なお、どんな場合にどんな検査が適切であるかどうかの判断基準は、検査を実施する機関によって異なる場合が多いです。発達検査と知能検査、どちらを受けるべきか、まずは専門機関に相談して判断しましょう。てんかん情報センター発達検査とは?国立特別支援教育総合研究所発達検査新版K式発達検査の特徴出典 : 新版K式発達検査では、被検査者の発達の状態を、精神発達の全面的な進みや遅れ、バランスの崩れなどさまざまな諸側面においてとらえることができます。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。なお、3歳以上では「認知・適応」面、「言語・社会」面に重点を置いています。また、乳幼児向けの検査用具には、振ると音が鳴るガラガラや積木、ミニカーといった乳幼児にとってなじみのある材料が使われています。このような検査用具を使うことによって、子どもの自然な行動が観察しやすい検査となっています。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。新版K式発達検査の対象や実施頻度出典 : ここでは、新版K式発達検査が対象とする年齢の範囲、実施時間や頻度について説明します。■適用年齢の範囲:生後100日から成人新版K式発達検査の適用年齢は成人までとなっています。ただし、知能の発達程度が生活年齢(CA)の何歳に相当するかを示した精神年齢の適用範囲では、14歳、15歳級までとなっています。(生活年齢とは、暦年齢を指します。)なお、どのような発達段階であっても適用可能です。■実施時間:15分~60分程度生活年齢(CA)によって検査用紙が異なるため、実施時間も年齢に応じて異なります■実施頻度:検査結果による検査の結果、とくに発達が遅れていると考えられる子どもの場合は、1回の検査で障害の有無を決めず、検査を受けた後の経過を観察することが必要です。経過観察のための間隔は、1歳未満は1ヵ月以上、1歳~3歳未満は3ヵ月以上、3歳未満は6ヵ月以上、学童期以降は、1年~2年以上あけることが望ましいとされています。経過観察を終えて、再検査する場合が多いようです。発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン国立特別支援教育総合研究所発達検査新版K式発達検査2001の課題と有用性 ─精神遅滞の定義の視点から─新版K式発達検査の検査方法出典 : 新版K式発達検査の検査形式は1対1(検査者と被検査者)の個別式検査です。検査実施の際には、被検査者と検査者は向かい合うのではなく、隣に座ることが原則となっています。新版K式発達検査では、生活年齢(CA)にしたがって、検査用紙が第1葉(よう)から第6葉までの6枚に分かれています。また、検査課題に対し、被検査者が過度に緊張している場合は強要せず、興味や注意が持続させられるよう気を配り、十分に力を発揮できるよう配慮されています。検査では、検査結果だけでなく検査用紙の空白の部分などを利用し、できる限り被検査者を観察した内容を書き留めることが望まれています。『発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン』によると、新版K式発達検査の検査用紙に配置されている検査項目の生活年齢(CA)は以下のようになっています。・第1葉0歳0ヶ月~0歳6ヶ月・第2葉0歳6ヶ月超~1歳0ヶ月未満・第3葉1歳0ヶ月~超3歳0ヶ月未満・第4葉3歳0ヶ月超~6歳6ヶ月未満・第5葉6歳6ヶ月超~14歳0ヶ月未満・第6葉10歳0ヶ月超~成人(第5葉と第6葉は一部重なりがある)実施時間は、検査用紙によって異なります。第1葉は比較的実施時間が短く、第5葉や第6葉は、実施時間が長い場合が多いようです。発達障害児支援とアセスメントに関するガイドライン検査を受ける前にまずは専門機関で相談を出典 : お子さんやご自身の発達検査、または知能検査の受診を検討する際は、まずはお住まいの地域にある身近な相談窓口に行くといいでしょう。事前に予約が必要な機関もありますので、相談機関に問い合わせてみてください。また、子どもか大人かによって、行くべき相談機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童相談所・発達障害者支援センターなど【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談をすることができる場合もあります。新版K式発達検査の受検方法・費用など出典 : 発達検査や知能検査は、公的病院や民間病院で受けることができます。精神科や臨床心理士による検査が受けられる病院を受診するといいでしょう。「児童発達支援センター」などで受けることもできます。発達検査や知能検査の受け方、費用は、検査内容や病院によって異なります。総合病院などの公的病院で新版K式発達検査を受ける場合は、保険内診療となり、その際は、診療報酬点数の規定に基づき、負担費用はおおよそ840円(3割負担の場合)となります。また、診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には、別途料金がかかります(「検査報告書」については後述の『検査報告書の活用』をご覧ください)。こちらの料金は病院ごとに異なりますので、直接病院に問い合わせてみてください。一方、個人のクリニックなど民間病院で検査を受ける場合には、すべて自費での診療となります。検査は基本的に誰でも受けることができますが、特に発達に関して気になる点がない場合は自費となります。こちらの料金設定も各病院ごとに設定されていますので、受診する病院に問い合わせてみてください。診療報酬点数表サクセス・ベル株式会社医科診療報酬点について日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」発達評価(アセスメント)について出典 : 新版K式発達検査の発達評価(アセスメント)では、被検査者の生活年齢(CA)に合った行動発達がみられるかどうかを観察することによって、発達が標準的な過程をたどっているかを判断します。たとえば、標準的な発達だと1歳前後で歩行を獲得しますが、同じ年齢で獲得していない場合は標準的な過程をたどっていないと判断されることが多いです。また、新版K式発達検査では、検査用具を子どもがどのように扱うか、あるいは検査者の教えに対して被検査者がどのように応答するかといった点にもとづいて、発達の評価をおこないます。なお、この検査は、乳幼児や児童の精神発達の状態をとらえるための検査であって、発達スクリーニングを目的としているものではありません。発達スクリーニングとは、精密検査を要するものと要しないものとをふるい分けることです。つまり、この検査は発達状態を細かく分析するものではなく、精神発達の全体的な進みや遅れ、バランスなどの全体像をとらえるための検査になります。国立特別支援教育総合研究所発達検査国立特別支援教育総合研究所アセスメントについて発達スクリーニング検査検査報告書の活用出典 : 新版K式発達検査には、検査後にやるべきことを示してくれる「検査報告書」というものがあります。機関によっては、検査後に具体的な数値や詳細を示した「検査報告書」を作成していただけない場合があるようです。よって、確実に具体的な数値や詳細を確認したい場合は「検査報告書」の作成を依頼する必要があります。以下に、実際に「検査報告書」を依頼した例として、発達ナビ『家庭での具体的な配慮が分かる!発達検査の「検査報告書」とは?』の記事から引用させていただきます。検査結果の詳細が知りたいと病院へ伝えたところ、有料(2700円)で「検査報告書」を作成することができると聞き、その作成を依頼しました。「検査報告書」には次の内容が書かれていました。(1)数値結果(2)検査結果から言えること(3)日常生活上配慮していただきたいこと(2)では、各課題での取り組み方と課題の通過・不通過の理由について詳しく記載されていました。例えば「ことばのみの質問では、そもそも相手のことばに注目を向けること自体が難しかったり、注目を向けることはできても”何が求められているか”という課題の意図を把握しきれないと言えます。」といった具合です。ここから、次女への問いかけ・指示を言葉のみで伝えた時に理解するのは難しいということを理解することができました。(3)では、日常生活で必要な具体的配慮が10項目も記載されていました。例えば「働きかける際には、何をすべきか、何か求められているのか、が把握しやすい見る手がかりに簡潔なことばを添える形で示していくよう心がける」などです。それまで次女が私の指示を聞かないことに苛立つ場面も多かったのですが、「本人が理解しやすい方法で伝える」必要があることがわかりました。このように、「検査報告書」を依頼すれば、詳しい検査結果を知ることができます。無料で「検査報告書」を作成してくれる機関もありますが、検査形態や「検査報告書」の費用は機関によって異なりますので、詳しくは受診する病院に問い合わせてみてください。まとめ出典 : 新版K式発達検査は、ウェクスラー知能検査(WISC・WAIS)や田中ビネー知能検査などの知能検査と同様に、その人に合った支援や学習指導の方向性のヒントを得ることを目的としています。検査を受けて診断結果を知るだけではなく、被検査者の得意不得意を見極めて、ひとりひとりに合った困りごとへの対応を心がけることが大切です。なお、検査を受ける機関によって診断方法や費用が異なりますので、受検を検討される方は、相談機関に相談してみてください。発達ナビQ&A新版K式発達検査で1歳ほど発達が遅いという結果が出ました
2016年08月22日うちの子、発達障害かも?でも診断を受けるのは怖い…出典 : 子どもの発達が気がかりだけど、病院に行く程ではないだろう。障害だなんて…そんな風に思う方もいるかもしれません。でも、大人が思う以上に子ども自身が困っているかもしれません。私の娘は、療育施設に1年ほど通い、その後保育所へ3年通って、現在は地域の小学校に通っています。どの施設でも行事に参加したことがありますが、保育所や小学校の通常クラスであっても「この子、発達障害じゃないかなあ」と思える子が1人、2人ほどいました。しかし保護者会に行くと「まだ子どもは診断を受けていないんです」と言う方もいらっしゃいました。私自身は、親の「発達障害かもしれない…でも、もし障害だと判明したら怖い…」という気持ちが、子どもの得意不得意をちゃんと知れる機会を遅らせしまうのも1つだと思っています。不安な気持ちは、私もよくわかります。療育手帳を持つことに「抵抗がある」という知人もいました。そう簡単に子どもに障害があると受け入れることはできないと思うのです。私たち親子が診断を受けるまで出典 : 確かに、病院へ行って発達障害だと診断を受けたら、気持ちが落ち込むかも知れません。私の場合も、娘の様子が何かおかしいと最初に気づいたのは妻でした。でも私は「ただちょっと遅れているだけだろう」としか思いませんでした。誰しも自分の子どもの成長を、発達障害を前提にして考えてはいません。しかし、インターネットや関連本などで調べていくうちに、その症状が当てはまることに気付いてからは、きちんと病院で調べてもらう気になりました。診断が出たときは、薄々気づいていたとはいえやはりショックでした。でも、娘が大人になった時、社会の一員として暮らしていけるように親として今出来る限りの手助けをしてあげないといけない、と考えなおしました。きちんと診断を受けたからこそ、行政から支援を受ける事ができるならそれは利用するのが得策だとも思いました。誰のための診断なのか、ゆっくり考えてみよう。答えを出すのは家族のペースで良い。出典 : 病院へ行き、診断を受けるのは子どもです。親ではありません。現実を受け止めることは難しいかもしれませんが、親の都合や気持ちで子どもの自身の成長のキッカケを遅らせてしまう一方では、子ども本人のためにはならない、と考えるようになりました。診断を受けるということは、その子に必要な支援がどんなものか?周囲はどう支えたらよいか?をきちと知る機会なのです。診断に行くことは、「障害のラベル」を子どもに付けることじゃない。出典 : 私も診断を受けた直後はショックでしたが、時間の経過とともに大事なことに気づきました。診断名だけにとらわれず、まずは子どもが困っている事にきちんと注目するということです。診断の有無に関わらず、子どもの成長は人それぞれです。。理解のはやい子・ゆっくりな子、運動の得意な子・苦手な子、おしゃべりな子・大人しい子…。子どもの苦手なことが見えたら、どうすれば伸びるかを考えますよね。発達障害の診断がある子どもに関しても、基本的には同じような考え方でいいのではないでしょうか?診断名にとらわれすぎず、今目の前にいる自分の子どもが困っていることや、苦手なところに寄り添い、サポートをしていけばいい。そう思っています。もし、発達障害かもと心配していながらも、病院に行く一歩を踏み出せずにいる方…少し立ち止まってゆっくり考えてみませんか?「診断を受ける」ということは、子どもに「障害」というラベルを付けることではないと思います。診断は、子どもが困っていることに気付き、子どもに合ったサポートや学び方をきちんと考える為のもの、なのですから。
2016年08月21日広汎性発達障害(PDD)とはUpload By 発達障害のキホン広汎性発達障害(Pervasive Developmental Disorders:略称PDD)は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的および常同的な行動があることを特徴として分類される発達障害のグループ です。世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)の診断カテゴリでは、このグループには自閉症、アスペルガー症候群のほか、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害という5つの障害が含まれています。広汎性発達障害の中でも特に自閉症やアスペルガー症候群がよく知られていますが、自閉症の半数以上が知的障害を伴うのに対して、アスペルガー症候群は言葉の発達の遅れが伴わない「知的障害のない自閉症」と言われています。また、知的障害のない自閉症は「高機能自閉症」とも呼ばれますが、アスペルガー症候群との定義の違いが曖昧で、専門家によって異なります。さらに、広汎性発達障害は、最新の診断基準であるアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)では自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。広汎性発達障害の障害名、症状の中には自閉症スペクトラム障害の概念では除外されたものも含まれています。ですが、行政や医療機関で広汎性発達障害の名称を使用している場合も多いこと、すでにこの名称で診断を受けた人も多いことから、本記事では『ICD-10』の診断カテゴリに準拠して広汎性発達障害の名称でご説明します。広汎性発達障害の子どもの生活での4つの困難と対処法出典 : 広汎性発達障害の主な症状は・対人関係・社会性の障害・コミュニケーションの障害・特徴的なこだわりや興味の3つが挙げられます。その他、広汎性発達障害のある人の多くに「視覚」「聴覚」「味覚」「触覚」などの感覚に対して特定の刺激に苦痛や不快感を感じる「感覚過敏」や感覚の鈍い「感覚鈍麻」という症状が見られると言われています。このような特徴を持つ広汎性発達障害の人は、どのようなことを困難に感じるのでしょうか。以下に4つの困難と対処法を述べたいと思います。広汎性発達障害のある子どもは、人の感情を読み取って人の気持ちに共感したり、想像したりすることが難しい傾向にあります。また、比喩やたとえ話も理解しにくい傾向があります。そのため相手の気持ちを考えずに、思ったことをストレートに口に出してしまって相手を傷つけたり怒らせたりしてしまうこともあります。対人関係を築くのが苦手でコミュニケーション障害もあることから、広汎性発達障害の子どもにとって友達を作ることは困難な作業です。例えば、一緒に遊びたいなと本人が思ったとしても、友達を誘う方法自体が分からないこともあります。【対処法】「君太ってる」「あのひと臭い」など、相手を傷つけるような発言をした場合は「そんなこと言っちゃダメ!」と抽象的に叱らずに「太ってると言われると○○さんは悲しいと思うから言わないで」と相手の気持ちを推測できるように促し、具体的に何を言ってはいけないかを提示してあげましょう。相手の気持ちを理解する練習をすることで、言っていいことと悪いことの区別をつけさせるのが大切です。他人とのコミュニケーションをとるのが難しい場合、具体的に友達の誘い方を教えてあげたり、親が遊びの場を作ってあげることも大切です。例えば療育機関などで、社会的スキル訓練や、集団療育を行うことも有効です。広汎性発達障害のある子どもの多くは感覚の過敏性や鈍さを抱えています。電車の音や騒音などにとても強く反応してしまうことがあります。赤ちゃんの泣き声などにも強い拒否反応を示し、自分が癇癪を起したりパニックになったりする子もいます。また、体に触れられることを嫌ったり、温度に敏感でお風呂に入りたがらなかったりなど、少しの刺激でも本人のストレスに繋がってしまい、パニック状態を起こしてしまうこともあります。【対処法】無理に触ろうとはせず、機嫌がいい時や心の準備ができているような時に声かけをしてあげましょう。「今からお風呂にはいろうね、お風呂で○○して遊ぼうか」「今から背中を触るね」など、いきなり体を触らずに声かけしてあげると心積もりができるようになります。にぎやかな場所へいく場合はイヤーマフを使用してみたり、なぜその音が鳴るのか、どうして賑やかなのかを落ち着いているときに説明してあげるとよいでしょう。それでも嫌がる場合は無理をせず、苦手なものを避けてあげるのも一つの手です。広汎性発達障害のある子どもは、こだわりが強く、変化が苦手な場合が多いです。規則や法則など、一定の安定したルーティーンを好むため、少しでも自分のマイルールが侵されることを嫌がることがあります。よって、イレギュラーな対応や予定の変更についていくことができず、癇癪やパニックを起こしてしまうこともあります。【対処法】「○時になったら○○するよ。約束ね」と一緒に時計をみて確認し、一つひとつ理解を促すようにスケジュール管理を行うようにしましょう。言葉で言っても理解しづらそうなときはイラストや写真などを使うのも有効です。見通しが立つと安心することが多いので、予定をあらかじめ把握し、お子さんに伝えてあげるようにしましょう。広汎性発達障害のある子どもは、集団内で暗黙に共有されている「常識」や"空気"を理解するのが難しい傾向にあります。人との距離感や場に合った振る舞いなど、抽象的で境界線がはっきりしないことについて理解が難しく、友達が表情で悲しさや怒りを伝えてきても、感情を読み取れないこともあります。【対処法】指示は分かりやすく伝えるようにしましょう。例えば静かにしなければいけない場面の場合、具体的にルールを短い言葉や文字で示してあげることが大切です。また、「会場内は静かにしましょう」というアナウンスだけでは、何をすべきかがわからないので、「お絵描きしながら静かに待ちましょう」など具体的にどうすればいいかを指示の中にいれると良いです。広汎性発達障害の子どもへの日常の接し方のコツ9選これまで、広汎性発達障害の子の困難とそれらの対処法をご紹介してきました。以下では、広汎性発達障害の子の日常生活の子育てにおいて、どのようなことに気をつければ良いかを紹介します。出典 : 広汎性発達障害のある子どもは聴覚刺激よりも視覚刺激を利用すると効果的な場合もあります。紙に文字を書いて説明するのもよいですが、言語能力の発達に遅れが見られる場合は絵や写真、図表にして説明すると理解しやすくなります。例えば、時間管理をする際はタブレット上に大きいタイマーを表示して、視覚的に「あと何分あるか」を提示しながら取り組んだりするといいと思います。耳よりも目から入った情報の方が記憶にも残りやすいと言われているので、遊びやスポーツのルールを伝える際も紙に書いて説明するとよいでしょう。曖昧な表現を理解することが難しいため、できるだけ具体的な表現や手順を使うことが大切です。例えば、「ちょっと」ではなく「何分、何個」という具体的な数を使って話したり、片付けの際も「ちゃんと片付けて」「キレイにして」ではなく「おもちゃ箱におもちゃを入れる」といった具体的にやるべきことを伝えます。ついつい曖昧な表現を使いがちですが、どうすれば伝わりやすくなるかを常に頭に入れて指示するようにしましょう。その際、上記で挙げた絵や写真を使うのも効果的です。広汎性発達障害の子どもを持つ保護者は、できないことや、やめさせたい行動が多く目につき子育てが不安になってしまうこともあるかもしれません。ですが否定的な言葉を使ったり、大声で叱ることは控え、できるだけ褒めることを心がけることも子育てのコツの1つです。褒めることで「褒められた→嬉しい→またやろう」とやる気を促すことにも繋がります。また、子どもによっては大げさに褒められることを嫌う子もいますので、その子にあった褒め方をしていきましょう。広汎性発達障害のある子どもは、他人と比べて自分ができていないと感じて自信を失ったり、自暴自棄になってしまうケースもあります。子どもの得意分野を見つけて、できることをさらに増やし、成功体験を積むことが大切です。例えば食べ物が好きな子であれば調理やお菓子作りを教えたり、家事を手伝ってもらったりすることも今後の生活に役立ちます。広汎性発達障害のある子どもは、人の気持ちを理解するのが苦手な傾向があります。そのため、嬉しいことは嬉しい、嫌なことは嫌と、気持ちをはっきり言葉にして伝えることも大切です。友達とケンカした際も相手がどう思っていたかを伝え、どう対処すれば良かったかなどを、絵や文字にして具体的に教えることが大切です。頭ごなしに否定してしまうと、やる気をなくしたり、物事自体を拒否するようになってしまいます。まずは子どもの気持ちに寄り添い、なぜそういうことをしてしまったのか子どもの考えを聞いたり、どうすればよかったのかを一緒に考えることが大切です。子どもが興奮したり、泣きわめいてしまった場合、落ち着いてから話をするようにします。広汎性発達障害のある子どもは、急な予定の変更や初めての場所が苦手です。場合によってはパニックとなってしまう可能性もあります。こういった状況を避けるため、できるだけ予定を早めに伝えておき、初めての場所でも子どもが安心できるように、事前に写真やビデオを見せるなど、工夫をしてみましょう。広汎性発達障害のある子どもは、推測することが苦手な場合が多いです。そのため遊びの中でルールを自然に理解することが難しいこともあります。あらかじめ、絵や図にしてルールを予習をしておくと、子どもが理解しやすくなります。また、自由時間といった何をすればよいか曖昧な時間も不安になってしまうことが多いので、何をするとよいか、選択肢を提示したり、選ばせてあげるとよいでしょう。自分ひとりだと子育てのコツが掴みづらい場合は、ペアレントトレーニングのような子育てトレーニングや療育相談を受けることも有効です。専門的なトレーニングを受けた講師から、子どもにあった子育て方法を学ぶことができます。これらのプログラムでは、子どもが危険な行動をとったときに上手に止める方法や褒め方のコツなどを知ることができます。広汎性発達障害の子どもに接する際に注意するべきこと普通の子には当たり前にとる対応や反応でも、広汎性発達障害の子だとパニックを起こしてしまうこともあります。以下のポイントを頭に入れておいて、広汎性発達障害の子とよりよいコミュニケーションがとれるようにしましょう。出典 : ついつい大声で叱りたくなる気持ちも分かりますが、大声は広汎性発達障害のある子どもにとってトラウマとなる可能性があります。怒られるという恐怖心で何もできなくなってしまうこともあります。一度深呼吸をして落ち着く、感情的になったら一度その場を離れるなどして、冷静になってから具体的に悪いことを伝えて、どうすればいいかを指示するようにしましょう。手をひらひらさせたり、ぴょんぴょん飛び跳ね続けたりするなど、広汎性発達障害のある子どもの中には同じ行動を長時間続ける常同行動が見られる場合があります。これらは視覚支援によって見通しを持てる環境を作ったり、コミュニケーションスキルを学んだり、適切な遊びにかえることなどで改善することが多いです。無理に止めさせようとするとパニックに陥ることもあるため、何回やったら終わりと決めたり、何か違うことに集中するための課題などを与えてあげたりするとよいでしょう。何度伝えても伝えたことができない場合、「どうしてできないんだろうか」と悩んでしまう人もいますが、「今日はできなかったな」ぐらいの気持ちで受け止めてみることも大切です。また、自分では上手く伝えていると思っていても、子どもにとっては理解しづらい可能性があります。絵や図などを使い、伝え方を変えてみるなど工夫してみましょう。他の子にとっては当たり前でも、広汎性発達障害のある子どもにとって困難なことは多々あります。親としてはつい他の子と比較したり、同じことができないことに悩んだりすることもあると思います。しかし大切なのは、子どものできることや、頑張っていることに目を向けることです。それらのことを褒めたり認めていくことは、子どもの成長に繋がっていきます。まとめ出典 : 広汎性発達障害のある子どもの子育ては、その子の特性を理解し、視覚的な情報の活用や事前の予告など、工夫を学んでいく必要があります。一人で悩まずに、療育機関や支援センターなど周りの環境を上手く利用しましょう。ペアレントトレーニングや療育相談など、様々なサービスがありますので、地域の情報を探してみましょう。参考文献: 田中康雄 (2014) 『発達障害の子どもの心と行動がわかる本』 西東社
2016年08月18日