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「俳句は“季語から作る”、と思い込んでいる人が多いです。だからおうちで俳句を作ろうとしても、『家の中には季語がないから作れない』と壁にぶつかるわけですよ。おうちにあるのは、“俳句のタネ”。そう考えれば、家じゅうのモノで俳句を作れるはずです」そう話すのはバラエティ番組『プレバト!!』(TBS系)のコーナー「俳句の才能査定ランキング」でおなじみの夏井いつきさん(64)。芸能人が作った俳句への、舌鋒鋭くもユーモアある添削が人気だ。『夏井いつきのおウチde俳句』(朝日出版社)の著書もある夏井さんは、「俳句作りのハードルは高くない」と優しく説いてくれた。「季語というのは、その俳句を作った人の気持ちや、そのときの情景をイメージできるようにするためのものなんです」記者が、「たとえば『春ごたつ』というのも季語としてありますよね?」と問いかけると……。「そういう季語だけをまず知ろうとするから、俳句のハードルが上がってしまうの!まずは、いちばん簡単な『〜の風』や『〜の空』から始めてみてください。そのうえで、いろんな季語を使いたいという人は、『歳時記』(季語の辞典)を手に取ってみるのもよいでしょう」たとえば、家のテーブルの上にある「砂糖とミルク一つずつ」に季語を足して俳句を完成させてみよう。「(1)『春の風砂糖とミルク一つずつ』、(2)『梅雨ぐもり砂糖とミルク一つずつ』。皆さんはこの2つの俳句を見て、どのような情景を浮かべましたか?(1)は、その人がコーヒーを飲むことを楽しみにしているような、明るい情景が浮かんでくるでしょう。反対に(2)は、家の中でひとり、寂しそうにしているイメージを持つはず。これが“季語の力”です」でも、身のまわりにあるもので季語がないかもやはり気になるところ。一般的な『歳時記』や、夏井さんの著書『夏井いつきの365日季語手帖』(レゾンクリエイト)を見てみると、5〜6月の季語として「ビール」「扇風機」「香水」「バナナ」などが挙がっている。俳句を作るさいに、これらを使ってみてもよいかもしれない。「『俳句を作ったことがない』という人はまだまだいます。でも、俳句を作ることって、そんなに難しくないことがわかったでしょう。まずはメモ帳を手に、タネ探しから!」(取材:インタビューマン山下)「女性自身」2021年5月25日号 掲載
2021年05月14日7月は陰暦で「文月」。由来は、七夕に短冊に詩歌を書いて献じたり、この時期に書物を夜風に曝す風習があるからというのが定説になっていますが、7月は稲穂が膨らむ時期であることから「穂含月(ほふみづき)」「含月(ふくみずき)」、「穂見月(ほみづき)」から来ているという説もあります。「LIMIA歳時記」では、季語と、それにまつわるストーリーを月に1回ご紹介しています。意外にも、「涼し」は暑い夏の季語今年の夏は暑そうですね。私は風鈴やござ、団扇など、昔ながらの情緒ある知恵で夏を乗り切ろうと思っています。それにしても、暑い日々が続くと、ああ、早く涼しくならないかな、という気分にもなるはず。ところが、この「涼し」という言葉、実は夏の季語なのです。たとえば暑い昼下がりに、さあっと風が吹き抜けて、「あ、涼しい」と思うことがありますよね。ほかにも、たとえば直射日光の当たる道路から木陰に入ったときや、どこからともなく風鈴の音が聞こえてきたとき。打ち水をしたとき。かき氷の看板を見たとき。そういうときに感じる、「暑さの中の涼しさ」が、季語でいう「涼し」というわけなのです。古来、夏の暑い盛りに涼を求めることを「納涼」と言い、この言葉は平安時代には既に和歌に歌われていました。今でも「納涼花火大会」、「納涼船」などといいますよね。『源氏物語』によると、平安貴族は、池の面を吹く夕風のなかで、釣りをしたり、詩歌の会や音楽の会を催して暑さを忘れたそうです。優雅ですね。「涼し」には、実際に体に感じる涼しさ以外に、心持ちを表現する場合があります。「涼しい顔」「涼しい目」などといいますが、これはまさに英語でいう「cool」というニュアンスですね。明治から昭和にかけて活躍した小説家・泉鏡花の、江戸時代を舞台にした戯曲『天守物語』に出てくる亀姫が、富姫に向かって「お涼しい、お姉様(あねえさま)」というシーンがあります。これは「お姉様、カッコいい!」という意味のセリフです。この『天守物語』は短い戯曲なのですが、「涼しい」という言葉がそれぞれ違うニュアンスで3回出てきます。ご興味のある方は、原作や映画、舞台などで確かめてみてはいかがでしょうか。【今月の一句】髪少しつめて涼しく結ひにけり高橋淡路女●文如月サラ(きさらぎさら)エディター、俳人。(株)マガジンハウスで『anan』『Hanako』などの編集者を経て独立。現在、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程にて女性のエンパワーメントについて研究中。EDIT THE WORLD●イラストアネタイヨシコYOSHIKO ANETAI▼「LIMIA歳時記」ほかの記事も読む♪▼【LIMIA歳時記】6月は「水無月」。雨降りの季節が訪れます【LIMIA歳時記】5月は「皐月」。新緑が明るく光り始めます【LIMIA歳時記】4月は「卯月」。たくさんの花が咲き始め、本格的な春を感じます【LIMIA歳時記】3月は「弥生」。空気がゆるんで、動物が動き始めます【LIMIA歳時記】2月は「如月」。春の訪れを喜びましょう【LIMIA歳時記】1月は「睦月」。美しい日々を紡いでいきましょう
2018年07月23日俳句の歳時記や季語、と聞くと私には関係ないわ、という方もいらっしゃるかもしれません。いえいえ、歳時記には、日本人が長い時間をかけて季節をあらわすために紡いできた素敵な言葉がたくさん。今月から季語とそれにまつわるストーリーを月に1回ご紹介していきます。「初暦」で、新しくやってくる毎日をワクワク楽しみに新年は、家の中もピカピカ。家族も久しぶりに揃って気持ちも改まり、おごそかな気持ちになるものです。そんな月にご紹介したい季語が「初暦(はつごよみ)。」新年になって初めて暦を使うこと、また、その暦そのものをさしてこう言います。昔は京都の大経師暦(だいきょうじごよみ)、伊勢神宮の神宮暦、静岡県伊豆の三嶋大社の三嶋暦などが有名で、大経師暦は宮中に献上されていました。暦といえばV6の岡田准一さんが主演した映画『天地明察』のことを思い出す人もいるかもしれませんね。暦を作るというのは、政治も揺るがす大事業だったのです。そんな暦ですが、今年はどんなものを使いますか?私は日めくりカレンダーが大好き。日めくりカレンダーには、選日(「一粒万倍日」などのように古くからその日がどういう日柄であるかということを示す)、六曜(「大安」「先勝」など)、二十四節気や年中行事、月齢などが示されて、毎日の情報が満載。なによりも朝からピリッとめくることで、1日が始まるんだ、というリズムにもなりますからね。好きなデザインのカレンダーやお気に入りのスケジュール帳を眺めていると、ワクワクしてきませんか?これからどんな日々が私を待っているのだろう。そんな気持ちになれる「初暦」を眺めながら、新年の抱負を考えてもいいかもしれませんね。【今月の一句】初暦知らぬ月日の美しく吉屋信子●如月サラ(きさらぎさら)エディター、俳人。(株)マガジンハウスで『anan』『Hanako』などの編集者を経て独立。現在、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程にて女性のエンパワーメントについて研究中。EDIT THE WORLD●イラストアネタイヨシコinstagram:@anetai_net
2018年01月05日