子どもに人気がある学びのツールといえば、絵本の読み聞かせがあるでしょう。むかしから変わらない、大定番のツールです。発達心理学と認知心理学の専門家である十文字学園女子大学の大宮明子先生によれば、「もちろん、読み聞かせにはたくさんの学びの要素がある」とのこと。ただ先生は、「その学びが読み聞かせの目的だと思ってはいけない」とも語ります。その理由はいったいどんなものでしょうか。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)読み聞かせがもたらすさまざまな学び幼い子どもに絵本の読み聞かせをする場合、親御さんとしてはどうしてもその「学びの効果」を期待してしまうものですよね。もちろん、子どもは読み聞かせによって多くのことを学び、吸収していきます。第一に、絵本を読み聞かせしてもらうことで、それまで知らなかった言葉やその使い方を知るということが挙げられますし、さまざまな概念も覚えるでしょう。たとえば絵本に「宅配便」が登場したら、「宅配便って荷物を運んでくれるお仕事のことなんだ」と知ることができる。実際にはまだ見たことがないものであっても、絵と文章によって新たな概念を覚えられます。また、読み聞かせのシチュエーションがちがえば、子どもが学ぶことにもちがいが出てくる。たとえば、家庭でなく幼稚園や保育所などでお友だちと一緒に読み聞かせしてもらうことには、マンツーマンになりがちな家庭での読み聞かせとはまたちがった学びがあります。それはなにかといえば、共感するということ。ドキドキするような少し怖いストーリーなら、ひとりだと不安になってしまいますよね。でも、隣に同じようにドキドキしているお友だちがいれば、互いに気持ちが通じ合ってちょっと安心できる。ストーリーが進んで怖い場面を過ぎれば、「ああ、よかった」と一緒にほっとするするかもしれない。そのようにして、お友だちと一緒にドキドキしたり悲しくなったりよろこんだりして、自分自身の心に気づき、心を動かす楽しさを知りながら、共感力を高めることになるのです。子どもは絵本で学びたいわけではない?ただ、それらが読み聞かせの目的だと考えてしまってはいけないとわたしは考えています。子どもが「絵本を読んで」と親におねだりするときは、なにかを学びたいわけではありませんし、もっといえば絵本の内容を知りたいわけでもないという場合もあります。つい昨日も読んだばかりの絵本を子どもが持ってきて、親としては「またこれ?」と思うこともあるはずです。子どもは同じ絵本をなぜ読んでほしいのでしょうか?それは、絵本の内容を知りたいのではなく、絵本を読んでもらうことで親と一緒にいられる時間が楽しいとか、その時間だけは大好きなお父さんやお母さんを独り占めできてうれしいとか、そういう気持ちがあるからなのです。また、子どもには子どもなりの絵本の楽しみ方があります。「昨日は絵本の左ページばかり見ていたから、今日は右ページをよく見てみたい」といった単純なことも、子どもの楽しみ方だと思うことが大切です。それから、親が一生懸命に読んでいるのに子どもは上の空で聞いているように見えることもありますよね。そういうときは、絵本のストーリーを自分で膨らませて、絵本のなかの世界に自分も入っているような想像を広げているということもあります。ですから、学びを意識するのではなく、そういった子どもなりの楽しみ方を大事にしてあげてほしい。「どんなお話だった?」は最悪のNGワードそう考えると、読み聞かせのコツも自ずと見えてくるはずです。ちょっとまずい読み聞かせとしては、大人がただ音読しているようなもの。まるでアナウンサーがニュースを読んでいるようにさらっと読んで「はい、おしまい」という感じの人が少なくないのです。とくに、男性に目立つタイプですね。それでは、子どもが自分なりに楽しむどころではありません。あくまで読み聞かせですから、「聞かせ」に重点を置く必要がある。子どもが聞いて楽しめるかと考えながら読むことがポイントです。保育士さんとちがって、一般の親御さんの場合は恥ずかしさも邪魔します。その恥ずかしさを取っ払って、登場するキャラクター別に声色を変えてみたり、場面によってはゆっくり読んでみたりと工夫をしてみましょう。それから、読むスピードも意識してほしい。まるでルールが決まっているようにどのページも同じスピードで読んでしまう人がいます。そうではなくて、子どもがじっと注目しているなら、そこで止まってあげる。子どもが満足したようなら、「じゃ、次にいこうか」というふうに進んであげてください。逆に、子どもがそのページに興味を示さず、先をめくりたがるという場合もありますよね。そういうときはさっさと進んであげればいいのです。「ちゃんと聞きなさい」「飛ばしちゃったらお話がわからないでしょ?」なんていうのは、単なる大人の理屈に過ぎません。子どもにとっての絵本の楽しみ方はストーリーを追うことだけではありません。子どもが興味を持ったところで止まり、興味の移ろい次第では前のページに戻ってもいい。読み聞かせは子どものためにするのですから、あくまでも主体は子どもにあるのです。そういう意味で、最悪なNGワードは、読み聞かせのあとの「どんなお話だった?」というもの。これをいってしまうと、子どもは絵本を読んでもらったあとは必ずそう聞かれると思って、絵本を楽しむことができなくなります。信じられないことに、「せっかく読んであげたのに聞いていないんだったらもう読んであげない」なんてことをいう親御さんもいます。それでは、親がわざわざ子どもの興味の芽を摘んでいるようなものです。誰かの「おすすめ絵本」は参考程度にどんな絵本を選ぶかも、子どもの興味に合わせていくことがベストです。子どもの好みはそれぞれちがいます。ストーリーものを好む子もいれば、図鑑っぽいものを好む子もいます。ですが、図鑑っぽいものにしか興味を示さない子どもの場合、親御さんとしてはストーリーものを楽しめない子に育つのではないかと心配してしまうかもしれませんね。そういうときにも工夫できることがあります。たとえば、働く車の図鑑ばかりを見たがる子どもだったら、働く車が主人公のストーリーものを選んであげればいい。そういう子どもも、ストーリーものはなんでもかんでも嫌いというわけではなく、たまたま内容物に興味がないだけというケースもありますからね。いずれにせよ、子どもがどんなものに興味を持っているのかをしっかり観察して、夢中になれる絵本を選んであげましょう。どこかの誰かが「おすすめの絵本」として挙げているような名作も、子どもによってはまったく興味を示さないことも大いにあり得ます。そういう名作リストは、参考程度と考えるようにしてください。『幼児期からの論理的思考の発達過程に関する研究』大宮明子 著/風間書房(2013)■ 十文字学園女子大学教授・大宮明子先生 インタビュー一覧第1回:東大・京大・司法試験・医師試験の合格者たちが、幼児期に共通してやっていたこと第2回:「ママがやって」と言われたら黄色信号。子どもの考える力を奪う親のNGワード第3回:「親の言葉遣い」に見る、成績優秀な子が育つヒント。語彙力が伸びる会話の特徴第4回:絵本の目的は学びにあらず。子どもの興味の芽を摘む、読み聞かせ後の「最悪の質問」【プロフィール】大宮明子(おおみや・あきこ)6月5日生まれ、東京都出身。十文字学園女子大学人間生活学部幼児教育学科教授。1988年、中央大学法学部法律学科卒業。1997年、お茶の水女子大学教育学部教育学科心理学専攻3年次編入学。2001年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科発達社会科学専攻博士前期課程修了。2008年、お茶の水女子大学大学院人間文化研究科人間発達科学専攻博士後期課程修了。人文科学博士。発達心理学、認知心理学、とくに子どもの思考の発達、乳幼児期の親子の関わりを専門研究分野とする。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2019年05月11日「エデュテイメント」って知ってる?教育の分野でよく使われている言葉で、「学び」という意味の「エデュケーション」と、「娯楽」という意味の「エンターテインメント」を合わせた造語。あんふぁんでは今年度「学ぶって楽しい!エデュテイメント」をテーマに、学びと遊びの関係について考えていきます。入園、進級、おめでとうございます!幼稚園での毎日の中で、子どもたちは大きく成長します。それは、幼稚園での“遊び”が、成長のための“学び”につながっているから。遊びの大切さと、遊びを通して子どもたちがどう育っていくのか、聖心女子大学・教育学科教授の河邉貴子さんに聞きました。お話を聞いたのは聖心女子大学文学部教育学科教授河邉貴子さん東京都公立幼稚園で12 年間教諭として幼児教育に携わった経験を持つ。専門は幼児教育学。著書に『遊びを中心とした保育〜保育記録から読み解く「援助」と「展開」』(萌文書林)ほか。NHK Eテレ「すくすく子育て」でも活躍遊びを繰り返して発達に必要な経験を積み重ねる一見、ただ楽しく遊んでいるように見える幼稚園の日常。しかし、子どもにとってはすべてが大切な学びにつながっています。子どもは生まれながらにして外界の情報を取り込む力を持っています。面白いところに手を伸ばす、新しい刺激を追う…。手や足を動かして感じて、世の中を知る、それを“遊び”の中で体得していくのです。遊びの本質は、自分からやってみたいという気持ち、やっていて楽しいという感覚、やり遂げた達成感にあります。その中で、見通しを立てる力、最後までやり通す力など、さまざまな能力を獲得します。こうした感情や感覚は、大人に押し付けられたり、正解を先回りして教えられても身に付きません。「非認知能力」の重要性が問われていますが、これは幼少期の遊びの中で、興味を持ったものに夢中になり、試行錯誤することで養われます。「認知能力」が高まるには、「非認知能力」が大切との研究結果も出ています。幼児期の遊びが、子どもの自発性を育み、小学校に上がってからの学習への自発的な意欲につながっていくのです。Keyword非認知能力とは目標に向かって頑張る力や自己肯定感を持つといった自分に関する力や、他者への思いやりやコミュニケーション能力など、人間として生きていく上で大切な内面的な心の力のこと。対して、文字が読める、計算ができるなどIQで測れる力を「認知能力」といいます先生や友達との関わりの中で質の高い遊びに日本では初の幼稚園が開園した約140年前から、遊びを中心とした保育を行っていて、「幼稚園教育要領」でも「遊びは幼児にとって重要な学びである」と明記されています。幼稚園に入ると、子どもの世界は広がります。中でも大きく変わるのが「人との関わり」。はじめはひとりで遊んでいる子どもたちも、お友達に影響されて、興味の幅が広がります。もちろん、ケンカになることも多々ありますが、そんなときは、保育者がそれぞれの気持ちを代弁して、相手にも気持ちや意見があることを知ります。「仲よくしましょう」と言われてできるものではありません。ぶつかりあう経験を通して、人との関わり方を学んでいくのです。また、子どもたちを放任していると、同じことをずっと繰り返したり、遊びが停滞することがあります。そんなときは保育者が助言を与え、見守り寄り添うことで、ひとつの遊びがどんどん発展して膨らんでいき、「質の高い遊び」ができるようになるのです。幼児期の遊びで心も、体も、頭も育つ運動会や発表会などの行事を通して、子どもたちが成長した姿を実感することも多いでしょう。しかし大切なのは、当日の成果ではなく、そのプロセス。みんなでひとつのことをやり遂げる、人と一緒に頑張ることの楽しさを、子どもたちは学びます。当日うまくいかなかったとしても、それまでの頑張りをほめてあげてほしいですね。幼児期の遊びで、心も、体も、頭も育ちます。そして遊べば遊ぶほど、能動的な学び手となって成長するのです。幼児期に夢中になって遊んだ経験が、大人になっても持続的に幸せを感じる土台を作ると言われています。幼稚園でたくさん遊んで、どんどん成長していく子どもたちの毎日を、親は見守り、一緒に楽しんでください。読者ママアンケート「小学校に上がる前に幼稚園で身に付けてほしいことは?」(※上位3つを複数回答)1位自分の考えを人にちゃんと伝えることができる74.8%2位先生や親、友達の話をちゃんと聞くことができる51.2%3位最後まで諦めずにやり通すことができる40.2%※あんふぁんWebアンケート2019年1/9~2/5、有効回答数1296人河邊さんからのアドバイス小学校に入ると、子どもたちは人間関係をイチから作り上げる必要性があります。幼稚園時代は毎日を一緒に過ごす中で、お友達とも分かりあえる力が高まっていますが、それがすべてリセットされてしまうのです。その中で「自分の意見を言えること」「お友達や先生の意見を聞けること」が、新しい環境で自分の居場所を見つけるのに重要になってきます。その意味でもこの結果は、とてもいい願いですね。「小学生になったら人の話をちゃんと聞くんだよ」「自分の意見を言いなさい」と親や先生に言われたからといって、できることではありません。幼稚園時代に、人との関わりや遊びを通して、お友達の話を聞くと自分の意見も聞いてもらえることや、イヤなことをイヤと言う大切さなどを、体感することが必要なのです。幼稚園での“遊び”を通して、こんなに成長します!子どもたちは遊べば遊ぶほど、遊びの質がどんどん高まっていきます。幼稚園での遊びを通じて、どのように成長していくのか見てみましょう。◆年少ひとり遊びから始まり、同じことをする楽しさを知る始めは一人ひとりが好きなことをバラバラに遊びます。同じ動作をする他者を感じて楽しい気持ちになる「身体同調」という感覚がありますが、園の環境に慣れてくると、隣のお友達を見て、「楽しそう、やってみようかな」という気持ちが芽生えてきます。ままごとをしていたら、全員がお母さん役になっていても不都合を感じないのがこの時期です。◆年中役割を決めてお友達と一緒に楽しむ友達とのやり取りの経験を積むと、相手に気持ちがあることや、ケンカをしても言葉で解決できることが分かり、その都度、どうしたらいいかを考えられるようになってきます。ままごとをしていても役割分担を決めて一緒に遊べるように。仲良しの友達ができる反面、お互いの主張が対立してケンカになったりもします。◆年長ひとつの遊びを通して、どんどん世界が広がる見通しを立てて遊ぶことができるように。また、友達との関わりの中で、意見を出し合い、ひとつの遊びがどんどん発展したり、みんなで一緒にひとつのことを成し遂げる楽しさが分かるようになります。ままごとでも、見えない部分のシチュエーションを考えていたり、現実を取り入れたり、発想が豊かになり、遊びの世界がどんどん広がります。ママの心配事に答えますQ スマホの動画やゲームが好きでずっと遊んでいますが、遊びといえますか?A この時代に生きていると、スマホ・パソコンはそのうち絶対触れるものです。全てを否定するわけではないですが、遊びは実際の経験の中で楽しみを見つけていくもの。バーチャルで見ただけのことは遊びとはいえず、実は身に付いていないことも。園時代は、べちゃべちゃしたり、どろどろしたりといった、実際の手触りや感覚を大事にしてあげてほしいですね。バーチャルしか知らないと、寛容性が狭まる恐れもあります。見せるにしても時間を決めるなどのルールは必要です。Q 遊びに夢中で、ひらがなや数字に興味なし…、小学校へ行っても大丈夫?A 遊びの中で「看板に文字を書きたい」「お友達にお手紙を書きたい」など、興味を持ったときに教えてあげるのはOKですが、興味がない子に「“あ”を書いて」など無理やり教える必要はありません。また、字が汚いとか書き順が間違っているなど、子どものやる気を奪うようなことは幼稚園時代には言わないで。小学校に入るときに、自分の名前が読めて書けるくらいで十分です。遊びに夢中になれるのは素晴らしいこと!この時期に大切にしてほしいのは、習得ではなく、文字・数字に対しての豊かな経験。ママが本を読んでいる姿を見せたり、一緒に絵本を読んだりする体験を積んであげてください。Q ママにべったりで、幼稚園でママから離れてちゃんと遊べるか心配ですA 幼稚園に入ったのだから、しっかりさせなきゃと思うママもいるでしょうが、新しいところにすぐなじむ子もいれば、時間がかかる子もいます。自分の目で新しい環境をじっくり見て、安心できるところや、自分の居場所はどこかを子どもはしっかり考えています。見るだけで満足している場合もあります。ママは心配もあるでしょうが、「今日は何したの?」「今日はどうだった?」などと、矢継ぎ早に、問いただすようなことはしないで見守ってあげてください。一見何もしていないようでも、子どもたちはいろいろなことを学んでいますよ。ママも実感!幼稚園でわが子が成長したと感じたエピソード● 幼稚園の事を聞いてもいつも「分からん、知らん」と答えていましたが、最近になり、自分から「今日ね…」と話してくれるようになりました。言葉の発達、園生活でのいろんな感情、何よりも楽しんでいるからこそ少しずつ話してくれるようになったのかなーと思えてうれしくなります。(愛知県・年少ママ)● 作品展の制作で、あまりお友達や先生に意見を言う事のない息子が、初めて自分から意見を言い、それがみんなに好評価だったそう。それからは、何かあるたびに「こうした方が良いんじゃない?」とか「こうしたらどうかな?」と積極的に発言するようになりました。(愛知県・年少ママ)● 発表会で、年中までは声が小さくてセリフを聞き取れませんでしたが、年長では堂々と大きな声でセリフを話していて、その姿に成長を感じました。本人の自信になったようで、普段も積極性が出てきたと先生から聞きうれしくなりました。(青森県・年長ママ)● 友達と遊ぶ時、仲間と協力して大きな物を作ったり、新しいルールを決めてみたり。 大人との関係では築けないような、独創性や仲間意識が見られるようになりました。(東京都・年長ママ)● 縦割り保育で、上の学年の子たちから優しくしてもらったり、下の学年の子たちの面倒を見てあげたりすることを通して、自分の妹にも優しくいろいろ教えてあげたりできるようになってきました。(東京都・年中ママ)河邉さんからメッセージ子どもたちは幼稚園でプラスの体験、マイナスの体験を積んで育ちます友達との関わり、ダイナミックな遊び…、家でできないことをするのが幼稚園です。もちろん毎日、いろいろなことは起きるでしょう。まずは何事も、素晴らしい体験をしていると思って、園に委ねてください。子どもはプラスの体験だけでなく、マイナスの体験をして育っていきます。小さな失敗や挫折を乗り越えていくことが子どもを成長させるのです。ママが一緒に落ち込むと、その気持ちは子どもにも伝染します。共に悲しむのではなく、いい経験と前向きに捉えてみてください。入園当初はママも不安なことも多いでしょうが、気になることや心配事はどんどん先生に聞いたり相談してください。また、何かかができるようになることを焦ったり、周りと比べず、子どものできたことに目を向けてあげましょう。幼稚園で子どもたちは思いっきり遊んで、どんどん成長しますよ!イラスト/柴田ケイコ
2019年04月13日日々、子どもをたっぷりと遊ばせていますか?最近の調査や研究から、“幼児期に遊んだ経験” が「賢い子」「あと伸びする子」「学びに向かう力の強い子」につながることがわかってきました。子どもはみんな遊びが大好きですから、これを大いに利用しない手はありません。でも、いったいそれはなぜ?遊びだったら何でもいいの?そんな疑問が湧いてきますよね。詳しくご紹介していきましょう。「遊びこむ経験」が学びに向かう力となるベネッセ教育総合研究所が、全国の幼稚園・保育園・認定こども園などに通う年長児をもつ保護者2266人に行なった調査(2016年)によると、園で「遊びこむ経験」を多くしている方が、「学びに向かう力」が強い傾向がみられました。ここでいう、「遊びこむ経験」とは、自由に好きな遊びをする・好きなことや得意なことを活かして遊ぶ・遊びに自分なりの工夫を加える・挑戦的な活動に取り組むなどを指しています。そういった遊びをたくさんしている子どもは、「いろいろなことに自信を持って取り組める」「新しいことに好奇心を持てる」など、今まさに重要視されている「学びに向かう力」が高いのです。さらに、「協同的な活動」が多ければ多いほど、文字・数・思考のスキルも高いという結果も出ています。これは、友だちとの遊びややりとりを通し、自然とそういったスキルを身につけられている、ということを指しています。また、中学受験のプロとして知られ、ウェブサイト「中学受験情報局『かしこい塾の使い方』」主任相談員の小川大介氏も次のように指摘しています。「幼いときになにかに熱中した経験」があるかどうか――。これが後伸びする子どもとそうでない子どものちがいだとわたしは考えています。後伸びする子どもは、エネルギーにあふれています。体力だけでなく、好奇心や自分の世界を深めていく心のエネルギーも強い。そのエネルギーを生み出すのは、幼いときに好きなことを好きなだけやった経験です。(引用元:Study Hackerこどもまなびラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方)楽しいからずっとやっていたい、もっと上手にやってみたいという様子で子どもが夢中で遊んでいるとき、心身は学びを受け入れやすい状態になっているのだそう。そういうときは親が特別に何かを与えなくても、子ども自身が学び、発見をしているのだと言います。そして、そういった経験をたっぷりと持つ子は、中学受験をはじめ、その後の人生において自分の能力や才能を発揮していくのだと。子どもにとって「遊び」がとても重要だということがよくわかりますよね。きっと私たちの想像以上に、子どもは「遊び」を通して多くのものを得ているのでしょう。こんな遊びが、脳を刺激&活性化する遊びといっても、さまざまありますよね。ここでは、教育の専門家や脳医学者が勧める、子どもの脳の発達やスキルにより効果的な遊びをご紹介しましょう。ぜひ親子で楽しんでみてくださいね。【ごっこ遊び】ノーベル賞受賞者やマッカーサー財団の「天才賞」受賞者を調査した結果、幼児期に「ごっこ遊び」をたくさんしていた人が多いこともわかっています。おままごとやヒーローごっこなど、子どもが大好きな「ごっこ遊び」は、相手の立場になって考える思考力や、言語力、コミュニケーション能力を伸ばしてくれます。また、子どもが「目標を立て、計画し、タスクを継続し、注意散漫にならない」ためのスキル(=脳の実行機能)の発達も促すと言われています。<こうすれば、より効果的!>お店屋さんごっこなどの場合、「身体に良いお菓子はありますか?」というように、子どもの思考をちょっと刺激する質問をしてみましょう。【図鑑を見る】子どもの脳の発達や科学的な子育てについて研究している脳医学者の瀧 靖之氏は、「あと伸びする子は、幼い頃から図鑑が好きでよく見ていた子が多い」と言います。図鑑は、文字のほかに写真やイラストが載っているので、言語、図形、空間を一度に認識し、それが脳の活性化につながるのです。図鑑は基本的に自然科学がテーマなので、理系の世界に自然と興味を持つこともできます。「動物」「昆虫」「植物」「地球」「人体」など、図鑑にはさまざまなテーマがあるので、ぜひお子さんの興味のあるテーマから取り入れてみましょう。さらに、図鑑で見た花や虫の本物を外で実際に見るのもより効果的。リアル(本物)とバーチャル(図鑑)を体験することで子どもの好奇心はさらに刺激され、学びも深まります。<こうすれば、より効果的!>「どうして雲ができるか知ってる?」と、親がちょっと難しいクイズを出します。子どもなりに十分に考えたタイミングを見計らってから、「答えはね……」と言いながら、一緒に図鑑を見ましょう。【日常生活の中でたくさんの言葉に触れる】語彙が豊かになれば、思考力も鍛えられることが調査などで明らかになりました。語彙のほか、ひらがな・カタカナ・漢字などを定着させるのにぴったりなのがこの方法。■新聞や広告などから習った漢字を1日1個見つける→見つけた言葉が子どもの知らない熟語などの場合は、その意味も一緒に調べましょう!■買い物の際は買い物メモを書く→習ったばかりのカタカナや漢字などをたくさん書かせたり、子どもがあまり親しみのない食材をメモに書かせ、実際にスーパーで子どもに見つけてもらったりするのも効果的です。■車や電車などで移動中に看板や広告を読む→文字を読む以外に、特定の文字がつくものを街中で探すゲームも面白いですよ。■アナグラム(言葉のつづりの順番を変えて別の語や文をつくる遊び)を楽しむ→自分や家族、友達の名前でアナグラムしてみましょう。例えば、「れいぞうこ」なら、「ぞう」「こい」「これ」などの言葉を作ることができます。これらの遊びは、机に向かってドリルに取り組むのが退屈な低学年でも楽しめます。また、移動中や入浴中などいつでもどこでも遊べるので、忙しいご家庭でも比較的取り入れやすいのではないでしょうか。ぜひ親子で一緒に楽しんでみてくださいね。文/鈴木里映(参考)トレーシー・カチロー(2016),『最高の子育てベスト55』,ダイヤモンド社瀧靖之(2016),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える賢い子に育てる究極のコツ』,文響社船津徹(2017),『世界標準の子育て』,ダイヤモンド社ベネッセ 教育情報サイト|語彙力につながる「言葉遊び」ベネッセ教育総合研究所|園での経験と幼児の成長に関する調査日経DUAL|頭のいい子に育てないなら、幼少期はとことん遊ばせてStudy Hackerこどもまなび☆ラボ|“後伸び”する子としない子の違い。成長後に学力が急伸する幼少期の過ごし方
2019年04月02日教えたい!と学びたい!をつなぐアプリ4月25日、株式会社メルカリのグループ会社である株式会社ソウゾウは、学びを売り買いできるフリマアプリ「teacha」(ティーチャ)をリリースした。「teacha」は、勉強や趣味など幅広いジャンルのレッスンを扱ったフリマアプリ。少ないステップで自分のスキルを活かしたレッスンを設定したり、それを受講したりできる。すでに語学や料理といった「習い事」の定番から、キャンプのハウツー、LINEスタンプの作り方など、まさにフリマのように様々なレッスンが設定されている。キレイになれるレッスンもたくさんビューティー関連のレッスンとしても、表現力を高めるメイクや自分でできるヘアメイク方法、流行中のジェルネイルレッスンやダイエットのためのエクササイズなど様々。見ているだけでも楽しくなるたくさんのレッスンの中から、自分が求めるレベルの運動やメイク方法などを探せるのが「teacha」の魅力のひとつだろう。レッスンは最短30分から、最低料金500円から設定できるので、一般的な習い事よりも低価格で受講できるものも多い。「何か始めてみたい」「美について学びたいことがある」と思っている人は、フリマに立ち寄る感覚で「teacha」を覗いてみてはいかがだろうか。(画像はプレスリリースより)【参考】※プレスリリース
2018年05月01日兄弟がいると、程度の差はあってもケンカをすることは避けられないと思います。大抵は些細なことがきっかけで始まることが多いと思いますが、毎日だと親もどう対応していいのか悩みますよね。兄弟げんかにはどう対応すればよいのでしょうか。兄弟げんかは学びの機会兄弟仲良くいてほしいと思っていても、兄弟がいるとケンカをするものです。しかし兄弟げんかは社会性を育む貴重な機会であり決して悪いことではありません。幼い内になるべくたくさんケンカをすることで、おのずと社会性や対人関係を学びます。ケンカをしたら無理に止めるのではなく、なるべく介入せずに公平に接することを心がけましょう。友達とのけんかの違い兄弟がケンカをするのは、家庭が安心できる証拠であり自分の意見を自由に言えるということ。友人関係とは違い、甘えや安心感があるからこそケンカができるのであり、健全なことです。園や学校の友達とのケンカと違い、兄弟げんかはケンカした後もひとつ屋根の下で一緒の生活が続きます。悲しそうにしていたり痛そうにしていたりする姿を見て、相手の想いを想像して反省したり手加減したりという経験を積み重ねることができます。また、兄弟げんか特有の理由として"親を独り占めしたい"、"注目されたい"という気持ちから起こることもあります。親が心に余裕を持ち、兄弟を順番に抱きしめたり甘えさせたりすることで子どもが落ち着くこともあります。普段から公平に愛情をかけることも大切です。ケンカを公平に見守るための親の心構え兄弟げんかには、大きな危険がない限り基本的には見守ります。親の心構えを知っておきましょう。・ケンカの最中に口出しをしない・上の子ばかり叱らない・一方的に判断しない・意識的に公平に接するように努める・子どもの気持ちを尋ね、共感する・子どもが納得する家族のルールを作る・ケンカ自体を「いい経験である」と前向きに捉えるケンカでは子どもの本音が飛び出すので注意深く耳を傾けましょう。途中でけんかを止めると後から蒸し返しがちになります。時間を置いて落ち着いたのを見計らって、「どうしてほしかったの?」などとフォローしましょう。兄弟の年齢や体格に差がある場合は助け船を出しましょう。「弟が言いたいことをしゃべるまで待ってあげてね」「小さい妹と取っ組み合いになったらどうなると思う?」など、自分で考えさせたり我慢させたりすることは良い経験となります。私自身3人兄弟の一番上なので、「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい」などと言われることは多くありました。親から見ると、年齢が上の子によりしっかりしてほしいという気持ちは強くなるものなので、公平に扱うということはとても難しいと思います。だからこそケンカの際は親が口出しをせず見守ることで、子ども同士が対等に関わることができます。見守ることが一番難しいかもしれませんが、大人の思い込みや先入観は子どもの成長を妨げます。けんかを止めたい気持ちはわかりますが、少し下がって見守るようにしていきましょう。
2018年04月16日入園・進級おめでとうございます!幼稚園の醍醐味(だいごみ)は何といっても「遊び」。そこには成長のための「学び」が秘められています。ママたちから寄せられた、遊びに関する心配事にお答えしながら、子どもたちがどんな学びをしているのか見ていきましょう。年少ママの心配事Q:お迎えに行くといつも一人で遊んでいます。友達ができないのかと心配です。A:不安解消のための大切な過程。一人遊びも大事な時間です。ママたちには、「せっかく幼稚園に入ったんだから、早くお友達と遊んでほしい」という思いがあるかもしれません。でも、入園したての年少児は、ワクワクの一方で不安がいっぱい。自分の好きな遊びに打ち込むことで安心感を得ようとしています。一人でとことん没頭して遊ぶこと、遊びに夢中になることはとても大切です。自分の思いや好奇心が満たされる経験は、子どもたちの興味をいろいろな方向へと広げていくからです。園での生活に慣れてくると、興味を持った子から声を掛けられたり、「みんなで遊ぶのも楽しいかも」と気が付いていきますから、もう少し待ってみてください。一人で寂しそうにしていたり、他の子と遊びたいのにうまくいかなかったりしていたら、保育者がタイミングをよく見て援助していきます。Q:お絵描きなど、室内で遊ぶことが多いみたい。外でも遊んでほしいのですが…。A:自分が「やりたい」と思ったことに熱中する時間が学びのチャンスです。他にしたいことがなくてお絵描きばかりしているのは問題ですが、子どもが自分から進んでお絵描きに打ち込んでいるなら、それは素晴らしいことです。ママたちからすると「絵ばっかり描かずに他のこともしてほしい」と思うかもしれませんが、子どもは一つの遊びに継続して打ち込むことで、「次はこんな色を使ってみよう」と発想を膨らませたり、「お店屋さんごっこの看板の絵を描こう」と他の遊びにつなげたり、たくさん学びのチャンスを得ています。これらは、自分から「やりたい」と思っているからこその学びです。保育者は、他にしたいことが見つからないなら遊びの提案をしたり、得意なものに没頭しているなら、さらに深められるように環境をつくったり、その子に合わせた援助をしていきます。Q:お友達とけんかしたりおもちゃの取り合いをしたりしないか心配です。A:けんかは人間関係を学ぶ機会。親は「お互いさま」の気持ちを持ちましょう。子どもたちは時にぶつかり合うことで、自分と違う意見があることを知り、折り合いの付け方を学んでいきます。その中で、たたく・たたかれるの問題が出てくることもありますが、ママたちには、これも一つの学びの機会なんだと捉えて、「お互いさま」の気持ちを持ってください、とお願いしたいですね。もし、お子さんが「◯◯ちゃんにたたかれた」と言って帰ってきても、相手の親に問いただすのはトラブルの元になるので避けましょう。お子さんの気持ちはしっかりと受け止めて、詳しい事情は担任の先生から聞くようにしてくださいね。子どもたちの遊びには正解もゴールもない雨どいを使って遊び始めた子どもたち。水を運ぼうとしてこぼしたり、穴を掘る道具として使ったり、水を流したり…。子どもたちにとっては、その一つ一つが遊びであり、場面ごとに楽しさを見出しています。子どもたちの遊びには、正解もゴールもありません。保育者は、遊びが広がらず堂々巡りになっていると判断したときだけ助言しています。「見ているだけ」の子も学んでいる遊びの周りにいる子たちを見て、ママは「うちの子も遊びたそうなのに、先生は声を掛けてくれないのかしら?」と思ってしまいがちですが、実は見ている子どもたちは学びの最中。お友達の姿から遊び方を学んだり、楽しい雰囲気を感じたりしています。互いに意見を出し合い遊びを発展させていく複数の子どもたちが関わり合って、一つの作品を作り上げる経験もします。同じ作品に継続して取り組むことで、さまざまな意見が出て、「迷路を大きくしよう」「僕がガムテープ切るよ」というように、協同的に発展していきます。遊びの中には失敗や挫折の経験も園庭で「かき氷屋さん」を開いているところ。しかしなぜか1人もお客さんが来ず、結局閉店することに…。遊びには楽しい経験だけでなく、こうしたうまくいかない場面もたくさんあります。しかし彼らの遊びは、やがて色水遊びへと変化。かき氷のシロップで色水を使った経験を元に、遊びを発展させたのです。色を混ぜるとどう変わるか、夢中になって調べていました。年中ママの心配事Q:女の子のグループができていて違うお友達を仲間に入れません。A:悪気はなく、仲良しのお友達を独占したい気持ちの表れです。年中の秋ごろから、特に女の子はグループができてくることがあります。ママたちに分かってもらいたいのは、これは「いじめ」ではないということ。自分中心だった年少に比べ、お友達への興味や、大好きなお友達を取られたくないという独占欲が出てきているんです。これ自体は悪いことではなく、成長の表れです。一方、相手の気持ちを想像する力はこれから伸びてくるものです。保育者は「◯◯ちゃんは仲間に入れてもらえなくて悲しかったんじゃないかな?」と相手の気持ちを伝えたり、「2人だけでおままごとするより、大勢の方がいろんな役がいて楽しいんじゃない?」と声掛けしたりしていきますが、みんなで遊ぶ楽しさを家庭でも伝えていってほしいです。Q:勝ち負けにこだわる気持ちが強くかるたやトランプをやりたがりません。A:ルールのある遊びを通じて「負けても次がある」ことを学んでいきます。「負けて悔しい」という気持ちが芽生えたのは、心が成長している証拠です。無理強いして遊び自体が嫌いになってしまってはつまらないので、今は無理にやらせなくていいと思います。年中から年長にかけて、例えば鬼ごっこでも、ドロケイや色鬼などルールのある遊びを楽しむ中で、子どもは「負けても次がある」「みんなで同じルールを守って遊ぶって楽しい」ということを学んでいきます。その経験を積み重ねて、「他の遊びも同じかな?」と思えるようになれば、かるたやトランプにも、自分から「やりたい!」と気持ちが向かっていくはずです。年長児の姿から大きくなることへの憧れを感じる園庭でドッジボール。最初は保育者が教えながら、徐々に自分たちだけで楽しめるようになります。たまに年少児が交じり、ルールは分からなくとも楽しい雰囲気を感じています。(写真右)リリアン編み。いろいろな場面でとてもうまい年長組を見て、「年長さんになったらやりたい!」と思えるのも大事な気持ちです。外からの刺激を受けて遊びが生まれるクリスマス会で保育者が披露したチアダンスに刺激を受け、「私たちも!」と、子どもたち自ら結成したダンスグループ。自分たちで音楽をかけて踊っています。これも楽しい遊び。年長ママの心配事Q:外で遊ぶ所がなく家で電子ゲームをする時間が長くなります。A:電子ゲームはコミュニケーションのない遊び。最長でも1日30分に。幼児期に大事なことの一つに、コミュニケーションを取り合い、工夫しながら遊ぶという経験があります。電子ゲームでは、そうした対話や工夫が生まれないので、できればやってほしくないというのが私の考えです。それが無理ならば、最長で1日30分とルールを決めましょう。お友達を家に呼んだときには、お友達にもそのルールを守らせます。そして、親自身もルールを守りましょう。どうしてもという場合は、子どもが寝てからに。できることなら、同じ室内遊びでも、トランプやボードゲームなど、リアルにコミュニケーションを取れる遊びを増やせるといいですね。Q:戦いごっこが本気モードに。力が強くなっているので心配です。A:戦いごっこで終わるのではなく発展性のある遊びへ広げていきましょう。いくら遊びが大事といっても、ただ遊んでいればいいというわけではありません。私は、遊びには「質の高い遊び」と「質の低い遊び」があると考えています。「質の高い遊び」とは、一つの遊びがいろいろな方向へ発展し、膨らんでいく遊びのこと。一方、「質の低い遊び」とは、子どもたち自身が遊び方をどう工夫すればいいか分からず、堂々巡りになってしまっている場合です。おそらく、たたき合う以外に遊びを膨らませられないから、けがを心配するほど過激になるのではないでしょうか。園ではそうなる前に保育者が、「武器を作ってみよう」「秘密基地はどこにする?」などとヒントを与え、遊びの質を高めていきます。ご家庭で声を掛けるときの参考にしてみてくださいね。得意を伸ばした子は互いを認められるようになる木登りが得意な子、工作が得意な子…、いろいろいます。遊びの中で得意なことを伸ばして仲間に認められるうれしさを実感した子は、自信が付くだけではありません。「◯◯ちゃんはお絵描きが得意だよね」というふうに、他の子のことも認められるようになっていきます。田澤先生から「遊びの大切さ」について「面白い」「楽しい」「うれしい」遊ぶことで育まれる感情は生きる上での根っこです遊びの中には、その子にとっての「学び」があります。「これって何だろう?」と面白がる気持ち、遊びを工夫して楽しむ気持ち、試行錯誤の末にうまくいったときのうれしさなどのたくさんの感情を感じ取ることが学びなのです。そしてそれが、その子の一生を支える根っこになります。こうした感情は、大人から「これをやりなさい」と遊びを押し付けられたり、「こうすればうまくいくのよ」と正解を教えられていては生まれないものです。失敗して、うまくいって、また失敗をして…という経験を繰り返す中で、子どもたちはそれぞれが考え、意見を出し合い、いろいろなことを感じながら成長していきます。園はまさに試行錯誤の機会を子どもたちに提供していく場だと私は考えています。ですからどの園でも、保育者は子どもたちが遊びに打ち込める環境はしっかり整えますが、遊び方にまでは細かく口を出さないようにしているはずです。ただし、遊ぶことがなくて困っているなど、サポートが必要な場合には援助しますし、遊びが広がり、さらに学びが深まるような環境の工夫もします。おうちの方には、プロとしての保育者の目を信じて、園での学びを見守ってほしいと思います。園での成長を楽しみにしていてください!お話を聞いたのは:田澤里喜先生 たざわ・さとき東一の江幼稚園(東京都江戸川区)園長。玉川大学教育学部准教授。副園長を経て2015年に園長に就任してからは、遊びの時間をいっそう増やすなど、園児たちが自分の好きな遊びに集中できる環境づくりを行っている。監修/西東桂子(あんふぁんサポーター) 写真協力/東一の江幼稚園
2016年04月13日3月13日、Apple Store銀座にて、「Teacher’s Night:iPadが変える学び『コラボレーションと問題解決』」と題されたイベントが開催された。本イベントでは、筑波大学附属桐が丘特別支援学校の生徒向けに、筑波大学情報科学類の学生が開発したiPadアプリを紹介しつつ、学生、児童生徒と先生が共同開発をはじめた想いや歩み、今後の取り組みについてなどが語られた。イベントにはまず、筑波大学附属桐が丘特別支援学校の白石利夫教諭が登壇。桐が丘特別支援学校でどのようにiPadが利用されているかの説明があった。肢体不自由のある生徒にとっては、教科書のページを捲る、文字を書く、荷物を運ぶといったがことが困難であることが多いのだが、iPadを使うことで、そういった局面での問題を解決できるのである。生徒達の学習や生活の幅を広げるのに一役買っているというわけだ。白石教諭がiPadの導入について、持ち運びのしやすさ、すぐに起動して使えるという手軽さ、ユーザーインターフェースのデザインが統一されているので、シンプルで直感的に操作できる点、セキュリティ面での信頼性、そして、さまざまな障碍に対応するアクセシビリティが豊富に備わっているという5つのメリットを指摘したのち、特別支援学校の生徒が登壇。iPad使用前の困難な点と使用後の変化を解説してくれた。生徒は教科書とプリントを同時に使う授業では、教科書を押さえながらプリントに書き込むという作業が難しいことを最初に挙げた。これがiPadに教科書を取り込むことで、簡単にページ送りが可能になったという。続いて、Apple TVを使ってAirPlay経由で液晶ディスプレイにiPadのノートを見せられるようになったので、積極的な発言ができるようになったと打ち明けた。学習意欲の向上にもiPadは貢献しているようだ。また、プレゼンしてくれた生徒の場合、疲労を軽減するために、一日のうちに、何度か横になる必要があるとのことだったが、これもiPadのおかげで、横臥した状態でも教科書を読んだり、板書したりといったことができるようになったと報告してくれた。しかしながら、アプリを利用する上で問題が二点あったと訴える。一つは、一般的なアプリでは、ボタンやキーが小さかったり近付きあいすぎたりして、押し間違えることが多くなるという点。二つ目は、文字の拡大に際して、長押しでルーペを表示させるの操作が難しいという点だ。こういった問題を解決するために、筑波大学情報科学類の学生との協同作業がスタートしたのである。ここで、筑波大学情報科学類の櫻井鉄也教授が登壇。大学についての簡単な説明のち、今回の共同開発がスタートした経緯を述べた。80年代にMacintosh Plusを購入し、アルゴリズムの記述や計算ができる「MathGUIde」というアプリを開発した経験もあるとのことだったが、ここ数年はiPadアプリの開発にも携わっており、そんな中で、白石教諭からコンタクトがあったと、その時の状況を櫻井教授は振り返る。これを受け、白石教諭は、桐が丘の生徒はiPadで文字を入力することはできるが、分数などの数式を書くのが厳しいということがあるので、入力しやすくルールが複雑でないツールはないかとリサーチを続けていたと、述懐した。そこで筑波大学の学生が公開している動画を見つけたのがコラボレーションのきっかけになった、と白石教諭。共同開発の展開に関しては、筑波大学情報科学類の学生が案内。「COINS-Project」という計画を立て、肢体不自由者向けのアプリ開発を行う「COINS-Project AID」、筑波大学の公式アプリ「iTsukuba」の開発、学内向けのプログラミングの勉強会などの実施など、活動を詳説した。COINS-Project AIDにおいては、桐が丘の生徒のアイディアや筑波大学の学生の閃きからアプリを開発、その後、実際に桐が丘の生徒にアプリを使用してもらい、彼らからのフィードバックを得、機能を改善というサイクルを経て、適当なタイミングでApp Storeに公開するというプロセスを踏んでいるそうだ。その中で生まれた「iPolyFactor」という因数分解を解くためのアプリを紹介。最初のバージョンでは、ボタンのミスタッチが多い、操作部と表示部が左右に分かれているので、利き腕によっては上手く使えないといった問題が出てきたのだが、ボタンの大きさを可変に、操作部と表示部を入れ替えられるようにするという機能が追加された。このように相互の対話があった上で、作業は進められていく。続けて「Planner」と命名されたスケジュール管理アプリを紹介。スケジュールの管理と書字が苦手という桐が丘の生徒は、このアプリを使うようになってからの劇的な変化について触れた。生徒は、書字に時間がかかるので、これまで予定表を作るのは母親に作成を依頼し、学習が終わったら、その表のマスを塗りつぶしてもらうという作業を繰り返していたと話す。苦手な科目はやらない、など、勉強する教科は偏ってしまいがちだが、予定表を作ることで、やらなければならないことの整理がしやすくなると生徒は省察する。「Planner」では、現在の進捗状況を一瞥しただけで分かるようにでき、簡単な操作のみで計画表を作成、入力できるようになっているが、これも生徒が使用していたものに似せてUIをデザインし、マスの数とタイトルを決めるだけで表が構成できるようにしたと、フィードバックから仕様が決まっていったことを強調した。生徒は、これまで出来なかったことが出来るようになったと喜びをあらわし、さらに、今まで自分で出来ることも他者に頼んでいたところがあったと反省しつつ、自分で出来ることは自分でやるようになったと、前向きな気持ちを伝えた。iPadとアプリを使うことで、勉強が捗るようになっただけではなく、人間的な成長にも繋がっているということには感銘を禁じえない。イベントの締めくくりに、この三年間の取り組みに関して、感じたもの得られたもののヒアリングが。コラボレーションの効果として、学習上の課題を克服することで、生徒全体の学習能力がアップしたことが挙げられ、適切なコンテンツにより、さまざまな問題を解決できるiPadの素晴らしさを感じ取ることができたこと、ICTと人材が組み合わさることで、障碍を克服する新しい手段を獲得できるようになるといったことが指摘された。しかしながら、全ての問題が片付いたというわけではない。桐が丘の生徒からは、文字入力や音声認機能への要望が寄せられた。ソフトウェアキーボードでは、画面の半分が隠れ、作業スペースが狭くなってしまうという現象が起こる。外部キーボードを使うにも、そもそも彼らにとっては、運ぶのが一苦労で、導入にも躊躇いを覚えるのだ。作業スペースへの不満は実感として非常によく分かる。自分が書いたものを一瞬で全て把握できないのはかなりのストレスであるのに違いない。これに対して、iPhoneをiPadのキーボードとして使えないかというアイディアが提出された。着想として面白いだけでなく、実用性も高そうなので、アクセシビリティの機能向上として、iOS側で是非取り入れていただきたいところだ。また、構音障碍のある生徒からは、Siriの認識率を上げてほしいというリクエストが寄せられた。生徒は、「Siriは、本当は私たちにこそ必要な機能」と力説したが、これも間違いなくその通りである。肢体不自由がある場合、体の可動域に大きな制約があり、たとえそれがiPadのような使いやすいデバイスだったとしても、支援ツールなくしては道具として利用できないこともあるからだ。最後に、印象に残った筑波大学の学生のコメントを紹介しよう。学生は「今回のコラボレーションを通じて、大学で学んだことが実際に人の役に立っていると実感を得ることができ、それらがプログラミングを続けるモチベーションになったし、ただ意見を貰ってアプリの開発にあたるのではなく、そこから本当に必要な技術とは何かを考えるようになった」と述告したが、これは、障碍者支援のあるべき形を端的に言い表しているように感じられた。続けて「一般の企業には出来ないような局所的なニーズに応えていきたい」と意気込んだが、この発言は高く評価してしかるべきである。マーケットの論理が支配的な世界においては、金にならなければやらないし、コストが高くつきすぎれば研究の支援はできない、となるのが当たり前だが、彼らは学術機関としての大学の責務をきっちり果たそうとしているからだ。最高学府としてあるべき姿とは何かということを筑波大学と学生達はしっかりと理解している。障碍者向けの支援ツールは、往々にして世代が変わるとボタンなどの配置が変更されてしまい、一から使い方を覚え直さなければならないが、iPadならそれはない。開発に携わった学生が卒業してプロジェクトを離れてしまったとしても、コラボレーションは問題なく継続可能だろう。また、プロジェクトの関係者や教員、家族だけでなく、たまたま通りかかった人でも、iPadなら皆が使っているものであるから簡単にサポートできる。障碍者と健常者の間に橋を渡すという役割を彼らは担ってくれた。また、障碍者支援ツールとしてのiPadの可能性を、彼らは大きく切り拓いたのである。
2016年03月18日全国産業人能力開発団体連合会は、全国の30歳・40歳といった年齢の「節目」を目前に控えた男女を対象に、『学び』に関する調査を実施した。調査は9月8日~12日にかけて行い、1,200名から有効回答を得た。同調査は、過去1年間で通学・通信・WEBを含む講座受講を行った、あるいは検討したことがある人を対象に実施した。まず、受講動機について尋ねたところ、仕事や生活の上で、必要に迫られたことで始める「現実層」が最も多かった(44.6%)。将来のキャリアや家計を考えたときに、現状が心配になって始める「不安層」は、現実層のおよそ半分となっている。男女の傾向の違いをさらに見ると、女性は「不安層」の比率が男性と比較して高く(男性14.9%、女性29.5%)、逆に、「現実層」は男性が51.1%と女性に比較して高い(女性37.6%)といった結果になった。憧れの業種や職種へのチャレンジなど、理想実現のために始める「希望層」は男女とも大きな差は見られなかった。キャリアプランのために学ぶ際に期待することについて尋ねたところ、行政機関に期待する点については、「受講時の助成金などの経済的な支援」が70.5%で1位だった。これは男女共に同じ傾向(男性67.0%、女性74.4%)にある。男女の差異が出たのは「保育児童の預かり支援」で、男性11.0%に対し、女性は約3倍の33.2%だった。勤務先に期待する点は、「資格取得や勉強に対する理解と協力」が男性68.2%、女性69.1%で共に1位だった。「キャリア構築のための資料購入や勉強会参加費用の支援」の回答(男性38.4%、女性45.1%)を大きく上回る結果となり、「経済的な支援」を期待する対行政の回答とは異なる結果となっている。
2014年11月26日東洋大学は6月17日、大学進学を考えている高校生を対象とするイベント、「“学び”LIVE授業体験」を開催する。同イベントは、高校生自身に100講座から興味のある授業を選んでもらい、自由に体験してもらおうというもの。実際の大学の授業を通じ、自分に向いている学問、学びたい学科を発見できる機会として、毎年大盛況となっており、昨年は約2,500人が参加したという。2013年4月に開設予定の食環境科学部(板倉キャンパス)や、文学部の既存哲学系2学科を再編して誕生する東洋思想文化学科(白山キャンパス)のほか、各キャンパスに学科別個別相談会や教員・在校生ブースを設置し、東洋大学の特徴や雰囲気を体感できる。日時:2012年6月17日(日) 10:00~ ※事前予約不要、入場無料 ■白山キャンパス(東京都文京区白山5-28-20)文学部、経済学部、経営学部、法学部、社会学部、国際地域学部、イブニングコース ■朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市岡48-1)ライフデザイン学部 ■川越キャンパス(埼玉県川越市鯨井2100)理工学部、総合情報学部 ■板倉キャンパス(群馬県邑楽郡板倉町泉野1-1-1)生命科学部、食環境科学部(※2013年4月開設予定) 【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年06月15日