ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)の2024年秋冬ウィメンズコレクションが発表された。身体と装い、官能の関係性今季のドルチェ&ガッバーナがテーマとしたのが、「タキシード(TUXEDO)」──一般に男性のもっともフォーマルな装いのひとつに数えられるものである。ドレスに見られるような装飾を一切廃し、色彩の繚乱すらも厳しく抑制することで、身体の理想的なフォルムを純粋に描きだすこの構築的なテーラリングは、ここでは女性の装いへと転換されることになる。コレクションはしたがって、ブラックのなかにシルクの光沢が華やぐ、タキシードの多様さを軸としている。テーラリングは、ダブルブレストのジャケット、ミドルコートやロングコート、ショート丈やワイドショルダーのジャケットなど、さまざまな丈感やバランスで変奏するばかりでなく、その特徴である大ぶりのピークドラペルを引き継ぎ、ジレや付け襟にも反映している。先に、テーラリングはその明晰な構築性でもって、身体の理想的なフォルムを具現化するものであると言った。では、ここで試みられているのは、いかなるシルエットか。シャープなセットインショルダー、流麗にシェイプさせたウエスト、すっと直線を描いて伸びる裾と、いわばアワーグラス型のラインを、力強くセンシュアルに描きだしているといえる。テーラリングが具現化する、シャープな身体のライン。ではここで、衣服をまとう身体は、装いの圧倒的な不透明性の裡に隠蔽されるのか。その答えは否である。装いは身体を覆うことで、逆説的に身体を際立てる。それは裸形の官能性にも当てはまる。つまり、ヌードはそれ自体としてエロティックであるのではなく、衣服に覆われうるからこそ──換言すれば、衣服との関係裡にあるからこそ──、事後的に官能性を帯びてくるのだ。ドルチェ&ガッバーナは、衣服と裸形の官能的な関係性を、積極的に引き受けているように思われる。ランジェリーを彷彿とさせる、レースのキャミソールドレスやジャンパードレス。タキシードのラペルを引用した、シースルーのガウン。シアー素材のボリューミーなブラウス、あるいはネットのドレスやトップスなど、その透け感でもって身体のシルエットを二重化するウェアが数多く見られる。そして、衣服と裸形が重なる臨界に、愛でるべき官能が装いへとのり移るフェティッシュがあるのではなかろうか。透け感のある素材が光の行き交う視覚性であるのならば、フェティッシュはむしろ、艶かしい触覚性である。それは、ダイナミックなロングコートやショート丈ジャケットのファー、タキシードを基調としたジャケットやコートのベルベットなどと、肌理を愛でるかのように豊かな素材感の裡に表されている。
2024年03月05日世界的な影響力を持つ、アジア作品の官能の美学。ここでは、’90年代から活躍するウォン・カーウァイ監督を輩出した、中華圏のお薦め作品をご紹介します。【中華】直接的、非直接的に、魅了する官能。ウォン・カーウァイ監督を輩出した中華圏は、いわばアジアの官能表現のルーツともいえるエリア。「そもそも中国の性文化自体は何千年もかけて深化を遂げてきましたが、現在は規制が厳しく直接的な表現には制限が。それにより、映像の光と影や小道具にエロスを滲ませる独自の手法が発展する結果に。台湾作品では性描写を含めてリアルな表現を追求していたりと、さまざまな官能の世界を楽しめます」(ライター、中国語翻訳者・沢井メグさん)美と色気で敵を惑わす暗殺者の妖艶な手管に注目。【DRAMA】『晩媚と影~紅きロマンス~』女刺客と彼女を支える護衛の間の愛を切なく綴った恋愛史劇。「ヒロインも魅力的ですが、個人的には清純な役柄が多かったパフ・クオがセクシーな暗殺者を演じている点がツボ。腕の刺青を利用して敵を攻撃したり男性を誘惑したりと、艶っぽさを遺憾なく発揮しています。原作の際どいシーンは大幅に削られているものの、近年のドラマの中では表現に対して挑戦的な作品」(沢井さん)。〈シンプルBOX 5,000円シリーズ〉DVD‐BOX 1・2 各¥5,500提供:エスピーオー/BS12 トゥエルビ発売・販売元:エスピーオー©Media Caravan Ltd.緩やかに流れる時間が生み出す、静謐なエロス。【DRAMA】『夏花』美容室で髪を洗ってくれた年上男性に心を奪われた病弱な美少女の恋と成長を描く。「冒頭に出てくる、長い髪を洗うシーンがとにかく官能的。手の動きや水の音、ほの暗いシャンプー台に差し込む光までが行為のエロスを際立たせます。寡黙な男性を演じるジェリー・イェンは、台湾版『花より男子』に出演していた華流の元祖ともいえる俳優。年齢を重ねても色っぽさを保っていて、ただのタンクトップ姿でも断然セクシー」。DVD‐SET 1・2 各¥16,500発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited女性への憧憬とフェティシズムをギュッと凝縮。【MOVIE】『若き仕立屋の恋 Long Version』オムニバス映画『愛の神、エロス』内の一編のロングバージョン。「コン・リー演じる高級娼婦に魅了され全ての情欲を彼女のドレス作りに投じた仕立屋見習いの青年の話なのですが、そもそもチャイナドレス自体がかなり色っぽいですよね。女性が持つ曲線を美しく見せるデザインで、体に触れるか触れないかの採寸作業もすごく淫靡。ストーリー自体はシンプルだからこそ、ウォン・カーウァイ監督のフェティシズムが前面に出た作品だと思います」配給:TCエンタテインメント©2004 BLOCK 2 PICTURES INC. ©2019 JET TONE CONTENTS INC. ALL RIGHTS RESERVED慰めいたわりながら体を交わす姿にリアリティが宿る。【DRAMA】『此の時、この瞬間に』コロナ禍の様々な恋を描いた台湾発のオムニバスドラマ。「7話の『軽井沢の約束』は、パートナーの不倫を暴きに行った二人が現場で出会い、彼らも男女の関係に…というお話。2組のベッドシーンを同時に映す場面では、不倫カップルがただ肉欲にまみれているのに対し、浮気された二人は互いの傷を舐め合い、次第に優しい気持ちを抱いていく様子が映し出されます。その営みの対比がとても官能的で、リアルを追求する台湾ドラマらしさを感じました」Netflixシリーズ『此の時、この瞬間に』独占配信中妖しい緊張感が漂う麻雀シーンの艶っぽさは白眉。【MOVIE】『ラスト、コーション』日本占領下の上海を舞台に、日本側の特務機関員の男と女スパイの禁断の愛を描く。「ヒロインのタン・ウェイがほぼ新人の時の作品で、純朴さを残した彼女が激しいベッドシーンを演じている点が衝撃度に拍車をかけました。個人的に色っぽさを感じるのは、肉体関係を持つ二人と男の正妻の麻雀シーン。シーツを思わせる布の上で美しい手が牌をつまむ妖しさにそれぞれの思惑が加わり、独特な緊張感が漂うエロティックな戦いに」。Blu‐ray¥5,170発売元:フライングドッグ販売元:ビクターエンタテインメント©2007 HAISHANG FILMSままならない葛藤やすれ違いが官能を際立たせる。【MOVIE】『君の心に刻んだ名前』舞台は1987年の台湾。カトリック系の高校に通う2人の青年が惹かれ合い、葛藤する姿を見つめたラブストーリー。「台湾はLGBTQフレンドリーな印象がありますが、当時は同性愛に対する強い偏見が残っていた時代。そんな背景がある中、彼らが一緒にシャワーを浴びるシーンがあるんです。二人だけの隔絶された空間でようやく気持ちをぶつけ合えた心情的な高まりと、洗い合う行為による肉体的な反応が混じり合い、とても官能的な場面になっています」Netflix映画『君の心に刻んだ名前』独占配信中エドワード・チェン(陳昊森)恋する苦悩を演じ切る憂いを湛えた瞳がセクシー。映画『君の心に刻んだ名前』で同性に惹かれる高校生を演じブレイクを果たしたエドワード・チェン。「どこか寂しげな瞳が色っぽく、葛藤を演じさせたら天下一品。ドラマ『美男魚(マーメイド)サウナ ~魂になし~』ではコメディも見事にこなし、役者としての幅を感じます。スポーツで鍛えたという均整のとれた体格も素晴らしい」©VCG/gettyimages沢井メグさんライター、中国語翻訳者。中国&台湾で話題のニュースやカルチャー記事の翻訳編集のほか、自ら現地に赴いて取材を行いコラムの寄稿をすることも。華流ドラマウォッチャーでもある。※『anan』2024年2月21日号より。文・真島絵麻里(by anan編集部)
2024年02月20日光、色、湿度…。官能の美学に魅せられる、アジア映画&ドラマの世界。タイのエンタメ情報を発信しているライターがお薦め作品を紹介します!【タイ】渇いた大都市に、“湿度”さえ感じさせる距離感が生む官能。官能性をひもとく鍵のひとつに“湿度”があるが、意外な事実が。「タイは蒸し暑いイメージですが、実際はわりとカラッとしていて湿度が低いんです。光や音楽を用いた五感に訴える演出で、濃密な湿度感を作り出してしまう点がタイの映像作品の魅力のひとつ。また、近年世界的に人気が高まっているBL作品で描かれる、男性同士の微妙な距離感や関係性が生み出すエロティシズムにも注目を」(タイ式芸能ライター・白田麻子さん)解釈を委ねた結論が生み出す余韻に浸って。【DRAMA】『180 Degree Longitude Passes Through Us ―僕らを隔てる境界線―』幼い頃に父親を亡くした青年が母親との旅の途中で父の旧友に出会い、森の中にある男の家に滞在した数日間をこまやかに描いたBLドラマ。「主人公は父親の親友に恋心を抱くのですが、二人の間に起きた出来事を観る人の想像に任せる演出がなんとも官能的。ブルーアワーを思わせるほの暗い映像も物語の雰囲気にピッタリで、演劇界で著名な監督ならではの人の心を抉るような台詞の数々も素晴らしい」(白田さん)。Blu‐ray¥11,000発売元:コンテンツセブン販売元:TCエンタテインメント傷つき逃げ惑うハラハラ感が感情を揺さぶる。【MOVIE】『卒業 ~Tell the World I Love You~』生きる世界が異なる3人の青年が偶然出会い、苦悩を抱えつつも困難に立ち向かう姿を描く青春譚。「優等生の主人公が、仲間に襲われた裏の社会の青年を助けたことから彼らの逃亡劇が始まるのですが、傷つきながら逃げ回り、次第に追い詰められていくハラハラ感には扇情的な吊り橋効果がある気が。ライティングや色彩が美しく、バンコクの生活感ある街並みがすごく魅力的に描かれている点も心に響くポイントに」。DVD¥4,290発売・販売元:ギャガ©2022 FILM GURU CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.何気ない日常が輝いて見える情景描写が秀逸。【DRAMA】『Senior Secret Love:Puppy Honey』1&2犬猫の保護サークルに所属する大学生の恋模様を描くシリーズ。「タイBLの人気ペア・オフ&ガンを生んだとされる作品。彼らがメインで描かれるのは2作目ですが、1作目の二人で水を掛け合う場面が繊細で。日常を切り取るのが上手なウィーラチット・トーンジラー監督の演出力に子役出身のガンの演技力、オフのナチュラルなセクシーさとバックに流れるT‐POPのエモさが相まって、湿度を感じさせる夏の情景に仕上がっています」U‐NEXTで配信中©GMM TV Co., Ltd., All rights reserved光との対比で闇の持つ官能性が鮮やかに匂い立つ。【MOVIE】『トロピカル・マラディ』愛し合う二人の青年の日常を描く前半と、中島敦の『山月記』をモチーフにした後半の2部構成で綴る異色作。「森にこだわるアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の作品らしく、後半の舞台は真っ暗な森。森の暗さや湿度はある意味エロティックですし、物言わぬ静けさが登場人物の気持ちを代弁している感覚も。一方、田舎道をバイクで二人乗りする前半のシーンは惹かれ合う気持ちがただ眩しく、謎めいた後半とのギャップが際立ちます」Courtesy of Kick the Machine Films重厚感が漂う独特な関係性が艶っぽさの秘密。【DRAMA】『Cutie Pie』旧家出身の大学生とその許嫁であるビジネスマンが、すれ違いながら愛を探すラブコメディ。「中華系のタイ人は年長者を“ヒア”と呼ぶのですが、この作品のカップルもまさにそう。一般的に使われる“ピー”より重厚感があり、どこか艶っぽい独特な関係性を生み出しています。やり手ビジネスマンを演じるシーの圧倒的なスパダリ感&日常シーンはワチャワチャなのにラブシーンになると急に大人になる二人の意外性もドキドキを誘う鍵」U‐NEXTで配信中©Mandeework都会の中に潜むむせかえるような熱い情欲を表現。【DRAMA】『KinnPorsche The Series』マフィアとボディガードの間に生まれた恋と絆、血で血を洗う闘争を描いたハードボイルドBL。「品格を感じるマフィア×野獣味溢れるボディガードのカップルという設定だけで十分セクシーですが、特筆すべきはインフィニティプールで二人が愛し合うシーン。高層ビルが立ち並ぶバンコクの暗く乾いた街並みに、揺れて輝くプールの水面。湿度の高い空気を感じる映像に、彼らの情欲の高ぶりと刹那的な生き方が滲んで印象に残ります」U‐NEXTで配信中パース(タナポン・スクムパンタナーサーン)10代から俳優として活躍。色気の伸びしろは無限大!映画『卒業』に出演したパースは、10代の頃からBLドラマで主演を務め注目の存在に。「22歳という若さながら、寡黙で佇んでいるだけで色気が滲み出る俳優の一人。もう少し年齢を重ねたら、さらにセクシーになると思います。ロック好きで、コンサートでギターを披露する指先もきれい」『Dangerous Romance』TELASAで見放題配信中©GMMTV白田麻子さんタイ式芸能ライター。タイと日本を行き来し、20年以上にわたって映画、音楽、ドラマ、芸術といったタイのエンタメ情報をたくさんの人に広めるべく国内外に向けて発信中。※『anan』2024年2月21日号より。文・真島絵麻里(by anan編集部)
2024年02月19日触れてもいないのに、ドキドキが止まらない…。画のすみずみから色香を感じるアジアの映像文化。その秘密はどこにあるのか?韓国映画&ドラマの官能作品をご紹介します。【韓国】追う、追われる、見る、見られる、相互関係の官能。韓国映画は性描写が激しい印象があるけれど、近年は官能をテーマにした作品が減少しているそう。「官能映画の巨匠パク・チャヌク監督も性的シーンを封印した作品に挑むほど、傾向が顕著に。その試みから生まれたのが『別れる決心』ですが、容疑者と刑事の追いつ追われつの執着や相手を見つめる行為がなんとも色っぽく、今まで以上に高度になった関係性で描き出す官能表現はさすがの一言」(ライター・西森路代さん)愛よりも激しく濃密な、憎しみと殺意を描き切る。【MOVIE】『名もなき野良犬の輪舞』刑務所で出会い絆を育んだ2人の男による、裏切りと復讐を描く韓国ノワールの名作。「性愛シーンはないけれど、男性同士の愛の物語だと監督が明言している作品。それを踏まえて観ると、彼らが迎えた結末の捉え方が変わってくるはず。今までのノワール映画で暗喩的に描かれていた“自らの手で相手の命を奪う”行為の官能性が、意図的に示されていると思います」(西森さん)。Blu‐ray&DVD各¥5,170発売・販売元:ツインデジタル配信中©2017 CJ E&M CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED大人女性の知性とウワテな色香を堪能。【DRAMA】『ハイエナ ―弁護士たちの生存ゲーム―』勝つためには手段を選ばない女性弁護士とエリート弁護士が、法曹界での生き残りを懸けて争うヒューマンドラマ。「女性弁護士役のキム・ヘスは、50歳を過ぎた今も韓国映画界の中心で活躍しているセクシーの権化のような俳優。この作品では普段はインパクトが強く、セクシーとは縁遠そうなキャラですがライバル弁護士から情報を得るために自ら官能スイッチを入れ、虜にしていく。そのギャップに思わず引き込まれます」Netflixシリーズ『ハイエナ ―弁護士たちの生存ゲーム―』独占配信中ソン・ソックのただならぬ色気は一見の価値あり。【DRAMA】『私の解放日誌』都会と田舎を往復する毎日に閉塞感を感じている三きょうだいと、彼女らの自宅の離れに住む謎の男の日々を描く。「韓国ドラマにしては珍しい“何も起こらない系”の物語で、謎めいた男を演じるソン・ソックの怪しく“けしからん”色気で見る者を高ぶらせる。末妹と謎の男は、そこはかとない生きづらさを感じていて、次第にシンパシーを感じ近づいていく様子は、官能的なシーンがないのに、いけないものを覗いているような感覚があります」Netflixシリーズ『私の解放日誌』独占配信中Son Suk-ku(ソン・ソック)得体の知れなさに心惹かれるミステリアスな“けしからん”男。韓国で人気急上昇中のソン・ソックは、現在41歳の遅咲き。「醸し出す雰囲気が独特で、謎めいた役柄がピッタリ。そうかと思えばマ・ドンソクの『犯罪都市』シリーズでは凶悪なヴィランを演じたことも。日本作品のリメイク版で、彼と似た空気感が魅力の綾野剛さんが演じた役を務めることが多い点も興味深いです」©Han Myung-Gu/gettyimages官能映画の巨匠が辿り着いたエロスの新境地。【MOVIE】『別れる決心』夫の殺害を疑われる女と、事件を追う刑事。疑惑の中で惹かれ合う二人を描くサスペンスロマンス。「ずっと官能を描いてきたパク・チャヌク監督が、直接的な描写を用いずに官能性を追求した意欲作。“死”というものを共有している特殊な関係性がどこかセクシーですし、刑事に観察されていた女が途中から刑事を観察するようになり“見る”“見られる”の立場が逆転する点にも監督の意図を感じます」。Blu‐ray¥5,500DVD¥4,400発売元:ハピネットファントム・スタジオ販売元:ハピネット・メディアマーケティング©2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED過激な性描写の裏にある女性同士の連帯と愛に注目。【MOVIE】『お嬢さん』日本統治下の韓国を舞台に、令嬢とメイド、メイドを操る詐欺師の男が豪邸内で繰り広げる騙し合いを描く。「エロティックな描写が多く、とりわけ印象深いのが家父長制に抑圧されてきた令嬢とメイドが逃避行を実現した末にようやく愛し合うことができたシーン。そこに至るまでの残酷な背景や女性同士の愛といったモチーフを物語としてきちんと昇華できるのは、パク・チャヌク監督の手腕あってこそ」。Blu‐ray 通常版¥5,280発売・販売元:TCエンタテインメント提供:ファントム・フィルム©2016 CJ E&M CORPORATION, MOHO FILM, YONG FILM ALL RIGHTS RESERVED西森路代さんライター。韓国を中心としたアジアのエンターテインメントに関するインタビューや批評、コラムの執筆を手掛ける。著書に『韓国ノワール その激情と成熟』(Pヴァイン)などがある。※『anan』2024年2月21日号より。文・真島絵麻里(by anan編集部)
2024年02月18日カンヌ映画祭ほか世界中で注目された官能ラブストーリーの傑作『帰らない日曜日』が、本日よりデジタル配信開始となった。ノーベル賞作家カズオ・イシグロが絶賛し、「最良の想像的文学作品」に与えられる「ホーソーンデン賞」を受賞した小説『マザリング・サンデー』(グレアム・スウィフト著)を原作に、アカデミー賞6部門にノミネートされた名作『キャロル』のプロデューサー、エリザベス・カールセン、スティーヴン・ウーリーが映画化したラブストーリー。天涯孤独なメイドと名家の跡継ぎの、誰にも言えない身分違いの“秘密の恋”を、絵画のようなイギリスの風景とともに官能的に描き出す。『帰らない日曜日』大胆な全裸シーンにも果敢に挑み、主人公・ジェーンを演じたのは新星オデッサ・ヤング。秘密の恋の相手・ポールを、大ヒットTVシリーズ『ザ・クラウン』でゴールデングローブ賞、エミー賞ほか各賞を席巻したジョシュ・オコナーが演じる。さらに『英国王のスピーチ』のコリン・ファース、『女王陛下のお気に入り』のオリヴィア・コールマン、アカデミー賞2度受賞の伝説的女優、グレンダ・ジャクソンというアカデミー賞受賞俳優陣が脇を固め、圧巻の演技を見せている。『帰らない日曜日』予告また本日、本作のDVDも発売となった。匂い立つほどにエレガントで息をのむほどに美しい恋の物語を、デジタル配信やパッケージで何度でも堪能してみてはいかがだろうか。『帰らない日曜日』監督:エヴァ・ユッソン原作:グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』出演:オデッサ・ヤング、ジョシュ・オコナー、ソープ・ディリス、グレンダ・ジャクソン、オリヴィア・コールマン、コリン・ファース2021年イギリス/カラー/約104分/原題『Mothering Sunday』/2022年5月日本劇場公開(配給:松竹/映倫R-15)■デジタル配信へのリンク■DVD価格:4,180円(税込)発売・販売元:松竹©CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION,THE BRITISH FILM INSTITUTE AND NUMBER 9 FILMS SUNDAY LIMITED 2021
2022年11月16日きわどい描写の中に、耽美でロマンティックな表現が潜む“官能小説”の世界。人気官能小説レーベルが推す、女性がグッとくること必至の作品を集めました。女性におすすめの官能小説ティアラ文庫/オパール文庫プランタン出版が手がける女性向けTL小説レーベル。ファンタジーやヒストリカルなど本格ラブロマンスに定評のある「ティアラ文庫」、リアルな設定で大人女子の胸キュン恋愛を描く「オパール文庫」がある。『明治艶恋浪漫譚華族令嬢は焦がれるほどの愛を刻まれる』蒼磨 奏復讐のため豪商の御曹司・清秋と結婚した雪乃。目的を果たすまでの夫婦関係だったはずが、濃密な夜を過ごすたびに彼に惹かれていって…。復讐と愛の狭間で揺れ動く心の葛藤を描いた、明治時代を舞台にしたヒストリカル和風ロマンス。ティアラ文庫715円『君は誰にも渡さないワケあり王子の一途な求婚』ナツ伯爵令嬢マリエットの屋敷にやってきた、傷ついた少年レオ。最初は家族愛のはずが、気づけば真面目で優しい彼に恋をしていて――。互いに惹かれ、思い合っているのにすれ違う切ない心情描写が秀逸。後半の愛にあふれるラブシーンにも注目。ティアラ文庫858円『ずっと、ずっと好きだった―再会愛―』緒莉取引先の御曹司に押し倒された春。彼は10年ぶりに会う初恋の人で…。中学時代の淡い恋の記憶や思春期ならではの鬱屈した思いなどを越え、10年越しの約束を果たすクライマックスは感涙。きっと恋がしたくなる珠玉のラブストーリー。オパール文庫715円『愛していると言ってくれ寡黙な御曹司はこじらせ処女を離さない』佐木ささめ初恋の相手で資産家の息子・鷹弥に処女を捧げた麻子。一度きりの関係だったはずが、何度も抱かれてしまい――。出会った当初は冷淡だった鷹弥が次第に麻子に心を開き、執着していく様子にときめくこと必至。彼のツンデレぶりにも注目。オパール文庫792円幻冬舎アウトロー文庫幻冬舎が1997年に創刊した文庫レーベル。官能小説だけでなく、ヤクザものや犯罪系など裏社会を題材にしたノンフィクションも刊行する。官能小説はストーリー性が高く読みやすいものが多く、表紙のイラストもマイルド。『花と蛇』1団 鬼六SM小説の大家であり官能小説の第一人者として知られる団鬼六の代表作。誘拐された貞淑な令夫人があらゆる手を尽くして調教され、自分の中に眠るマゾヒズムを開花させていくストーリー。官能文学の金字塔といわれる名作の10巻からなるシリーズ第1巻。713円『華宴』藍川 京最愛の男と結ばれるため、人里離れた宿で、画家、書道家、刺青師など6人の男と肌を合わせる女子大生・緋絽子。作中に織り込まれた日本文化の雅な描写が官能表現を際立たせる。名作とうたわれながらも入手困難だった作者の処女作を改題して復刻。713円『指づかい』うかみ綾乃カメオ職人の瀬能岳生と、彼に惹き寄せられる女性たちの情交を描いた連作短編集。女性作家ならではの性描写に引き込まれるはず。日本官能文庫大賞新人賞、団鬼六賞大賞を受賞するなど、性愛を通して人間を描くことに定評のある官能作家のデビュー作。660円『断れない女』草凪 優2004年のデビュー以降、180冊超の著作を刊行する人気官能作家による短編集。表題作のほか、「壊す女」「捧げる女」「嵌る女」など、働くアラサー女性を主人公にした5編を収録。リアルな設定や身近なところから始まる関係は、読みやすく引き込まれる。586円ジュエル文庫大人の女性のための恋愛小説レーベルとして、KADOKAWAが2015年に創刊。共感を誘うリアルなストーリーや官能シーンが持ち味で、読むことで気持ちが高まることを重視している。ティーンズラブタッチの表紙が特徴。『龍の執戀お嬢様はヤクザに堕とされる、恋に。』草野 來老舗料亭のお嬢様が凶暴なヤクザから激しく、一途に愛されるストーリーでレーベル最大のヒット作。アウトローたちのリアルに作り込まれた人物像や不器用な男の純愛が人気の理由。鍛え抜かれた肉体や刺青など、高まりそうな描写が満載。続編も好評。814円『悪女後宮物語』丸木文華中国の後宮を舞台に、皇帝の寵愛を巡って争う女性たちの物語。皇帝に一目惚れされた娘・雹華。後宮に迎えられ、寵愛を一身に受けるが、それを快く思わぬ3人の妃たちに次々と不幸が襲いかかる――。退廃的なエロスの世界に新たな扉が開かれるかも。737円『酒蔵ほろ酔い一途婚蔵元おじさま、幼妻にがっつく』斉河 燈根強い人気を誇る年の差カップルによる恋愛モノ。ヒロインが20歳も年上の職人気質な酒蔵オーナーを追いかけ、結婚するまでを描く。思いが成就してからのギャップに萌え、酸いも甘いも噛み分けた大人の男性ならではの包容力にノックアウトされそう。770円『狂獣冷酷なる執着愛』御厨 翠シチリアマフィアのボスの隠し子だったヒロインの花楓。ある日突然、マフィアの幹部が迎えに来て…。外では冷酷な男性に一途に愛されるストーリーが女心を刺激する。まるで洋画のようなめくるめく展開がドラマティックで、最後までハラハラさせられる。792円※『anan』2022年3月9日号より。写真・小笠原真紀取材、文・宮尾仁美撮影協力・TITLES(by anan編集部)
2022年03月05日漫画家の中村明日美子さん、小説家の榎田ユウリさん共著による『先生のおとりよせ』が、2022年4月からテレビ東京系で実写ドラマ化することが発表されました。『先生のおとりよせ』キャストは向井理と北村有起哉『おとりよせグルメ』を軸に、漫画と小説のリレー形式でつむがれる同作品。コメディとグルメを組み合わせたエンタメ性はもちろん、作品に登場する『おとりよせグルメ』は、実際に購入できるものとあり、人気を博してきました。ドラマでは、ドSで不愛想な官能小説家・榎村遥華を向井理さんが、ドMで明るくフェミニンな漫画家を北村有起哉さんが演じます。向井理さんコメントおとりよせ愛に溢れたキャラクターなので、役自身の思いに負けないよう情熱を持って演じたいと思います。ただ、実際に素晴らしいおとりよせ品をいただけるとのことなので、台本を読んでいるだけでニヤけています。北村有起哉さんコメントフェミニン男子という設定なんですが…、そこのさじ加減が難しそうです。漫画原作をドラマでそのまんまマンガのように安易に演じないように、実写でできることを模索してます。相手役の向井くんや監督と相談しながら自然と役が浮き上がってくれたらなと。家にいながら全国各地のグルメを楽しめる『おとりよせグルメ』。新型コロナウイルス感染症で、『おうち需要』が高まっている現在だからこそ、ドラマもより注目を集めるかもしれません![文・構成/grape編集部]
2022年01月31日アイドルグループ『A.B.C-Z』のメンバー、橋本良亮さん主演で実写ドラマ化が決定している『痴情の接吻』のメインビジュアルが、2021年6月13日に解禁されました。橋本良亮、主演ドラマ『痴情の接吻』メインビジュアル如月ひいろさんの同名漫画を実写ドラマ化した『痴情の接吻』は、甘く、官能的なラブストーリー。劇中には刺激的なシーンもあるといい、メインビジュアルも、そんな同作の世界観を表現した仕上がりになっています。\メインビジュアル公開/偏愛片想い男×本を愛しすぎる女刺激的で美しいラブストーリーをお楽しみに #ABCテレビ (関西)7月4日(日)スタート #テレビ朝日 (関東)7月3日(土)スタート #痴情の接吻 #橋本良亮 #ABCZ #中村ゆりか pic.twitter.com/yuNvrQ29yg — ドラマ「痴情の接吻」公式【2021年7月放送スタート】 (@chijonokiss_6) June 12, 2021 なお、橋本良亮さん演じる主人公・上条忍が思いを寄せるヒロイン・柏木和華役は、テレビドラマ『ギルティ〜この恋は罪ですか?〜』(日本テレビ系)や、映画『賭ケグルイ』などで知られる、中村ゆりかさんが務めます。橋本良亮さんにとって、同作が初の単独主演ドラマということもあり、放送前から話題沸騰の『痴情の接吻』。2021年7月3日からテレビ朝日で、同月4日からはABCテレビで放送開始予定です。[文・構成/grape編集部]
2021年06月13日まっすぐ美しく響く歌声とミステリアスな雰囲気を纏う、古川雄大さん。日本ミュージカル界をもり立てる古川さんに、ミュージカルに潜む官能性についてお聞きしました。今回のテーマは、ミュージカルの官能性。観客としてそれを感じた経験はあるのだろうか。「ブロードウェイの舞台を観た時に味わった感動が近いのかなと思います。出演している方々の歌声や声量がすばらしくて、言葉は完璧にはわからなくても、魂に訴えかけてくるものがありました。歌い上げた後、お客さんの拍手や歓声がすごくて…。驚きましたし、感動して心が震わされました。すばらしい映画に感動することもありますけれど、生の舞台だからより直接的に伝わってくるものがあるのかなと思っています」ストレートプレイとは違うミュージカルの魅力は、展開されるストーリーラインに楽曲が寄り添うことで役の心情が言葉だけよりも五感に直接的に響いてくるところ。「ミュージカル『モーツァルト!』という作品のなかに、僕が演じているヴォルフガングが父親のレオポルトへの想いを歌う『何故愛せないの?』という曲がありますが、たまにオーケストラだけの音源を聴くことがあるんですね。聴きながら、自分の頭のなかで最高の歌をイメージしていると、たまにその歌詞の世界がリアルに感じられる瞬間があって…。父親役を演じてくださっている市村(正親)さんの顔が浮かび、そこに自分の父親が重なって、いろんな感情が湧き上がってきて、楽曲がスーッと入ってきて、ふいに涙がこみ上げてきたりします。その時のような感覚を舞台に立っている時に味わいたいと思うけれど、ここでロングトーンを出したいとか、次のセリフなんだっけとか、舞台上だからいろいろ考えてしまうんです。そういう邪念を一切なくして無心で役と向き合えた時に、できるのかなと思うんですけれど」大きく作用するのは、そのミュージカルの楽曲そのものの力だ。『モーツァルト!』は、メロディの美しさに、登場人物たちが抱える葛藤や苦悩、悲しみや愛が織り込まれた名曲が詰め込まれた作品。「たとえば、母親が亡くなって歌う『残酷な人生』という曲があって、最初は何も変わらない街の景色を淡々と描写していくんですけれど、徐々に音がクレッシェンドしていくに従って、歌詞も絶望から苛立ちへと変わっていき、最後の“ただひとり”で高音になる。気持ちの流れを音楽がしっかり作ってくれているんです。ほかにも、同じ曲なのに後半では転調して歌われることで最初とは違う気持ちを表現するとか、リプライズ(反復)もすごく面白い。あらゆる部分が、すごく計算されて丁寧に作られているんです」この春、約3年ぶりに『モーツァルト!』に挑む古川さん。今回の課題は「無心」なのだとか。「ヴォルフガングという役に真正面から向き合って、そこで起こることをリアルに受け止め表現していけたらと思っています」官能を刺激する、古川雄大のこの役『エリザベート』2019年少女漫画から抜け出たような、妖艶で美しいトートに魅了される。ハプスブルク帝国最後の皇后・エリザベートと、彼女に魅了された黄泉の帝王“トート=死”との愛を、歴史になぞらえ描いた壮大なラブストーリー。古川さんは’12年に、エリザベートの息子・ルドルフ役で今作に初参加し、’19年にトート役に。この世のものとは思えない妖艶なトートは大きな話題に。写真提供:東宝演劇部『モーツァルト!』2018年不器用でピュアすぎるモーツァルトが痛々しく愛おしい。世界的音楽家、ヴォルフガング・モーツァルト。比類なき音楽の才能を持ちながら、遊び好きで人間的な一面を持つ彼の葛藤や、天才ゆえに家族や恋人にさえも理解されない苦悩や孤独を描き出す。’18年に初参加し、今回が2度目の主演。まっすぐにしか生きられない不器用なヴォルフガングの姿が切ない。4月8日から帝国劇場で上演。ヴォルフガングは山崎育三郎さんとのWキャスト。札幌、大阪公演も。写真提供:東宝演劇部ふるかわ・ゆうた1987年7月9日生まれ、長野県出身。2007年に俳優としてデビューし、翌年には音楽活動もスタート。数々のミュージカル作品のほか、近年は、連続テレビ小説『エール』ミュージックティーチャー・御手洗役など映像作品にも数々出演。シャツ¥62,000パンツ¥53,000(共にエルメネジルド ゼニア/ゼニア カスタマーサービス TEL:03・5114・5300)※『anan』2021年2月10日号より。写真・森山将人(TRIVAL)スタイリスト・森田晃嘉ヘア&メイク・カスヤユウスケ(addict_case)取材、文・望月リサ撮影協力・AWABEESBACKGROUNDS FACTORY(by anan編集部)
2021年02月08日「名画の謎」「怖い絵」シリーズなどで知られる中野京子さんに“官能”をテーマに、2点の絵画を選んでいただきました。描かれる者の美しさのみならず、背景にある物語を知ることで、ますますその色香に魅せられ、目が離せなくなってしまうはず。2つの名画から浮かび上がる、官能表現の普遍性。人間が甘味を好むのは、それがエネルギー源であることを体が知っており、快を感じるようにプログラムされているからだという。では美しい人を好む理由は?それは自分の子孫を残したいため、との説がある。つまり男女問わず美しい人というのは――時代や文化によって美の基準が異なるとはいえ――概ね、若くて肌がなめらかで目鼻のパーツが整い、肉体に瑕疵がない。言いかえれば、そのような相手との間に生まれる子は健康で生き延びる確率が高く、自分のDNAを末永く伝えてくれる可能性がある。だから多くの人は無意識に美しい人に惹かれ、また美しい人を見ることに快を覚えるのだそうだ。かなり説得力のある説と思われる。絵画に美男美女があふれているのも無理からぬことだろう。さらには、画面に描かれたそれら美男美女が、単に外見が美しいだけでなく、セクシュアルな魅力にあふれているのも当然ということになる。たとえ絵の中であれ、描く方も観る方も美によって官能を刺激されることが「快」となる。さて、そうなると画中の美しい人は笑ってはなるまい。微笑みを浮かべて誘うことはあっても、ほがらかな笑いは官能とは相性が悪い。なぜなら(ごく一般的な例で言うのだが)真剣な性の営みのさなかに笑いだされて平気な者はおるまいから。十九世紀フランスの新古典派ジャン・ブロック作「ヒュアキントスの死」を見よう。ギリシャ神話におけるヒヤシンス(=ヒュアキントス)の花の誕生譚でもあるこの物語は――太陽神アポロンがスパルタ王の息子ヒュアキントスを愛し、片時もそばから離さなかった。ある日、いつものように野原で円盤投げをしていると、二人の仲を嫉妬した西風ゼフュロスが円盤を急旋回させ、ヒュアキントスの頭にぶつけた。嘆くアポロンの腕の中でヒュアキントスは息絶え、彼の血で染まった大地からは赤いヒヤシンスの花が咲いた……。ブロックは画面のすみずみにまで、抜かりなく小道具をちりばめている。黄昏時の野原。西からの風にひるがえる赤いスカーフ。アポロンは彼のアトリビュート(その人物をあらわす持ち物)たる矢筒を背に負い、死にゆくヒュアキントスを愛しげに抱きしめる。足元には血のにじんだ円盤とヒヤシンスの花。二人の肉体は少年から青年への移行期にある、まだ男女の性差定かならぬ繊細な美しさと、けぶるような柔らかさに輝いており、ボーイズラブのお手本のごとき完璧さだ。何よりヒュアキントスの表情、それは愛に包まれて死へ向かうというよりむしろ、性愛における没我状態と見紛うばかりだ。もちろん画家はそれを意図している。観る者にそれを喚起させようとしている。一瞬の自己崩壊たる性の恍惚は限りなく死に近いことを、観る者にありありとイメージさせようとしている。そしてもちろんそれに成功している。もう少し控えめな官能表現もある。イギリスのラファエロ前派に属するダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの「ベアタ・ベアトリクス」。名前からわかるように、ロセッティはダンテ研究家の父からこの名を与えられ、自らをダンテに、自分の妻リジーをダンテの永遠の恋人たるベアトリーチェに投影してこの作品を描いた。リジーは病弱で痛み止めに服用していたアヘンチンキ中毒となり、摂取過剰で若くして死んでいる。これは死後に制作されたもの。リジーの手に赤い鳥がケシ(=ポピー)を運ぶ。アヘンのもととなるこの花のシンボルは夢と死だ。独特な魅力を放つリジーの顔。だがその表情はヒュアキントスとよく似ている。顎をあげ、目を閉じ、かすかに口を開け、恍惚に身をまかす。ヌードでなくとも十分エロティックだ。こうした官能表現は世界共通だからこそ、絵ばかりでなく映像にも使われ続けているのだ。ジャン・ブロック作「ヒュアキントスの死」作者は、ルネサンス期の写実的な表現を追求した「新古典派」の画家、ジャン・ブロック(1771~1850年)。代表作といわれる本作は1801年に発表。フランス西部ポワティエ州のサントクロワ美術館に所蔵。提供:ALBUM/アフロPOINT1:性愛の没我状態を彷彿させる表情POINT2:柔らかく輝く二人の肉体ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ作「ベアタ・ベアトリクス」ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ(1828~’82年)はロンドンのイタリア系の家族に生まれる。本作は1864~’70年の間に発表(モデルとなった妻リジーの死後)。イギリス・ロンドンのテート・ギャラリー所蔵。提供:akg‐images/アフロPOINT1:恍惚に身をまかせた表情POINT2:ケシ(=ポピー)の花は夢と死を象徴中野京子さん北海道生まれ。作家、ドイツ文学者。西洋の歴史や芸術に造詣が深く、「名画の謎」シリーズ(文藝春秋)、「怖い絵」シリーズ(角川文庫)ほか、多数の書籍の執筆、新聞や雑誌での解説を手掛ける。近著に『運命の絵 なぜ、ままならない』(文藝春秋)が。※『anan』2021年2月10日号より。(by anan編集部)
2021年02月06日短歌や俳句のように形式がなくとことん自由な詩の世界。注目の現代詩人、水沢なおさんに詩の魅力と楽しむコツを聞きました。詩に興味はなかったという水沢さんの心を最初に動かした作品は、高校の教科書に載っていた宮沢賢治の「永訣の朝」と吉野弘の「I was born」。「短編小説のようで、切なさと言葉の力強さが印象的で、詩の印象が一変しました。さらに、国語の先生が言った『世の中で一番美しいのは詩です』という言葉が心に残り、詩を書き始めたんです」詩人になって水沢さんが一番感じるのは、「詩はなんでもアリ」ということ。「詩は本当に自由。いろいろな作品があるので、心に響く運命の詩が必ず見つかるはずです。難しそうとイメージで敬遠するのはもったいない。思い切って、広い詩の世界に飛び込んでみてください」五感を刺激される。読み進めるうちにイメージがくっきり立ち上がり、音や匂いまで感じられたり、研ぎ澄まされた言葉に心を射貫かれたり。五感に直接的に響く読み心地は詩ならでは。水沢さんの作品でいえば、湿度をまとった淡い色彩の絵画やSF映画を鑑賞しているような気分にも。「詩は読むというより、感じる、味わう感覚が近い気がします。私が好きな井戸川射子さんの詩は、脈絡のない言葉の連なりのなかに手触りがあって、それが自分の記憶とつながって懐かしい気持ちになります。想起される五感を頼りに詩を楽しんでみて」(水沢さん)属性にとらわれず読める。詩の語り手はひとりの人間とは限らない。モノや動物だったり、複数の語り手が入れ替わったり。そもそも明示されないことも多い。そうした設定を限定しない詩の特性に加え、水沢さんと同世代の作品は、多様性やジェンダーレスの時代を映した「揺らぎ」が宿り、属性がよりあいまいに。「女性であるとか会社員であるとか、自分の立場と関係なく読めるものが多いなと感じています。あえて属性を際立たせないところに普遍的な感情や、優しさも感じられて、読んでいてとても心地がいいです」「わからない」ことを好きになれる。難解なイメージから詩を遠ざけてきた人も多いはず。また詩を理解できないとき、自分の未熟さを感じてしまう…なんてことも。でも「わからなくても『好き』と言えるのが詩の良さ」と水沢さん。「小説や映画は主題が伝わりやすい創り方をしているけど、詩はそうではありません。意味が理解できなくていいんです。なんか好き、なんだか気になるという感覚を大事にして、作品に触れてほしい。好きだけど、ちょっと距離のある感じも詩の魅力だと思うし、その距離がぐっと縮まる瞬間と出合えるのも喜びです」読み手の受け取り方も作品の一部となる。水沢さんいわく、詩は「説明」を削ぎ落として、どんなふうにも読めるように書かれているという。つまり、読み手が解釈できる余地が無限にあるということ。「たまにSNSで私の詩を私の意図とは違う解釈をつけてくれている人を見つけますが、『そんな受け取り方もあるのか!』と吃驚します。その人が言葉と向き合い、その人自身と混ざり合った結果の解釈は、とても興味深いです」読む人それぞれの価値観や経験、そのときの状況によっても受け取り方は千差万別。多様な解釈も含めて詩の豊かさは作られる。すき間時間に楽しめる。小説や映画の鑑賞はある程度まとまった時間が必要だが、詩ならすき間時間で区切りよく読める。決まった時間に一編読むことを日課にしたり、気持ちを切り替えたいときにパッと開いたページの詩を楽しんだり。思い思いの読み方で味わってみよう。「さあ読むぞと、構えなくてもさらっと読めるのがいいですね。私はひと息つきたいときや寝る前などに詩集を開くことが多いです」ハンディな詩集は移動中の読書や旅のお供にもぴったり。お気に入りの詩集を一冊、バッグに入れて持ち歩いてみては。言葉の美しさに浸れる。詩のなかの言葉は、私たちが普段使う伝達の言葉と違い、作者の心のうちを表現するために一字一句磨き抜かれたもの。それゆえ、しなやかで力強く、美しい。「詩を読んでいると、磨かれた言葉のなかに自分がどんどん溶けていく感覚があります。いい意味で自我が消えて、裸の自分で世界にひとり立っているような。この感覚が味わえるのは詩だけだと思うし、私もそういう作品が創れるようになりたいです」言葉の海にたゆたい、新たな自分を発見する。詩はそんな得がたい読書体験をもたらしてくれる。水沢なおさん1995年生まれ。武蔵野美術大学在学時から詩作を始め、第1詩集『美しいからだよ』(思潮社)で2020年の中原中也賞を受賞。“身体性”をテーマに、残酷さをはらむ美しい作風で注目の的に。※『anan』2021年2月10日号より。文・熊坂麻美(by anan編集部)
2021年02月06日ちょっと暗くて温かみのあるトーンの光は部屋の雰囲気をムーディに、官能的に演出するポイント。照明選びのコツを、プロのデザイナーがアドバイスします。官能を高めることで人間関係までもスムーズに。意外なことに、対人関係の悩みを解決するためにも官能がひとつのカギになる、と公認心理師の山名裕子さん。「心理学では、“官能”はセクシュアルな意味に限らず、心を開いたリラックス状態のことも表します。心を開くと他人の言動を快く受け止めることができて、結果、包容力がある印象を与え、人との対話がスムーズになるんです」官能を高める=心を開くには、さまざまな感覚を意識するのが大事だそう。「官能には、五感という意味も含まれます。現代人は、情報収集の約8割を視覚に頼っています。そのため脳の視覚に関わる部分が疲弊し、触覚や嗅覚などは鈍くなりがち。部屋の照明や香り、肌着などを工夫して官能=五感を高めて。触覚や嗅覚から得られる心地よさがホルモンにも影響し、幸福感に満たされます。心理的な余裕は他人にもすぐに伝わるので、より落ち着いた雰囲気を身につけられるはずです」ナチュラルな陰影の照明が心を解放させる。山名さんによると、光の色や明るさは、心の解放度=官能性に影響を及ぼすという。「色彩心理学において、白く明るい光は集中力を高め、オレンジの光はリラクセーション効果をもたらすとされます。また、電気のない時代を長く過ごしてきた人類にとって、一日中明るい状態は不自然。部屋の明るさは、太陽光と同じように夜になるほど暗くしたほうがリラックスできます」(山名さん)照明デザイナーである奈良千寿さんも、リラックスするなら暗いオレンジ系の光が適している、と説明する。「隅々まで青みがかった強い光に照らされた部屋で過ごすと、心身ともに緊張してしまいます。温かみのある光を使って多少陰影がつくようにした部屋のほうが、人はくつろげるんです。特に寝る前、リラックスして過ごしたい寝室にはオレンジ系の光を使うのがおすすめ。ワンルームなら照明をいくつか設置して、明るい作業用の光とオレンジ系の癒し系ライトを切り替えるとよいでしょう」(奈良さん)光の色を変えるには、電球のスペックをチェック。「色温度が3000K(ケルビン)以下、一般的には“電球色”と表記されたものを選びましょう。色温度とは、光の色を表す数値のこと。昼間の太陽なら6500Kくらいで、ちょっとムーディなレストランだと2700Kくらいです。数値が高いほど青みがかった光になり、低いほど赤みがかった光になります」(奈良さん)3つの照明で、リラックスできるパーソナルスペースに。部屋の照明は1つに限らず、複数設置を。時間帯や過ごし方によって光を変えれば、ワンルームでも雰囲気をガラリとチェンジできる。1、上から照らす光部屋全体を照らすメインライトには調光機能を。天井に取りつける照明には、部屋全体を照らす役割が。「仕事など作業をするときは明るく、夜は暗めに調光できる電球を選ぶとベター。高い位置から降り注ぐ光はまぶしく感じますが、天井から下げるペンダントライトだと、あまりまぶしく感じません」(奈良さん)。Anoli 1¥78,000(Nuura/リビング・モティーフ TEL:03・3587・2784)2、低めの位置の光寝る前の落ち着いたムードづくりに大活躍。高い位置に設置した照明を消して、低い位置だけの光にして、雰囲気を切り替え。「就寝時のナイトスタンドとしても使えるライトをベッドサイドに置きリラックスモードに。自然な陰影と安心感を部屋にプラスしてくれます」(奈良さん)。STONE TABLE¥62,800(トム・ディクソン/トム・ディクソン ショップ TEL:03・5778・3282)3、上向きの光間接照明ひとつでおしゃれ度がワンランクアップ。余裕があれば取り入れたいのが、下から上を照らし、壁に光を反射させるアッパーライト。「間接照明には、部屋を官能的に演出する効果が。幻想的な月の光も、元は太陽の反射光ですよね。ライトを床に転がすだけでも、部屋がおしゃれに見えますよ」(奈良さん)。TARS¥100,000(ニューライトポタリー TEL:0742・31・5305)山名裕子さん公認心理師。「やまなmental care office」代表。自身の事務所での相談のほか、女性誌や情報番組等の監修を手がける。著書『読むと心がラクになる めんどくさい女子の説明書』(サンマーク出版)など。奈良千寿さん照明デザイナー。照明デザインスタジオ「NEW LIGHT POTTERY」を立ち上げ、陶器や真鍮、ガラス、木材などさまざまな素材を取り入れたオリジナル照明の開発、店舗や住居の照明計画を手がける。ローテーブル¥72,000モヘアブランケット¥24,000(共にラプアンカンクリ)フラワーベース¥23,000(ハビタ) 以上タイトルズ TEL:03・6434・0421※『anan』2021年2月10日号より。写真・田村昌裕(FREAKS)スタイリスト・中根美和子取材、文・風間裕美子(by anan編集部)
2021年02月04日2/3(水)発売のanan2236号『官能の記憶。』特集の表紙は玉森裕太さん。表紙撮影のエピソードを紹介します。王子みたいな甘さと、情熱的なベッドシーン…。“最上級に美しい”、官能の二面性を魅せる!今号の表紙を見て、驚かれた方は多いと思います。そう、カバーを飾っているのは、現在、TVドラマも大評判、役者としてもますます磨きがかかっている玉森裕太さん! まさかの、ananで2度目のヌード企画に挑戦してくださったのです。しかも、前回のソロ出演とは異なり、今回はお相手の女性モデルさんも迎えた、カップルの官能ストーリー(※撮影前にPCR検査済み)。とろけるようなスイートな時間と、激しく昂まる情熱的なベッドシーン…その「官能の二面性」をテーマに、湿度高めの、大人のエロティシズムを表現してくださいました!撮影1か月前の打ち合わせ時、「前回、出させていただいたのが5年半前…。まさか、2度目がくるとは思いませんでした(笑)」と笑うご本人。しかし、「僕も30代になりました。出させていただくからには、前回を超える、今だからこそできる大人の色気をお見せできたら。ちょうどドラマで体作りをしているので、どの角度で撮られてもいいように頑張ります」と、気合十分でにっこり。すでにその時から、シャツを着た上からでもわかる肉体美ではあったものの、撮影当日に現場にいらしたとき、さらに筋肉量が増しているのでは…? と。撮影後のインタビューで伺うと、「じつは昨日夕方から水も飲んでなかったんです(笑)」と、ほぼ丸一日断食してくださっていたとのこと(泣)。そのストイックな姿勢は、グラビアを見ていただければわかるはず! 以前より大きくなった逆三角形の肩まわりや、きれいな筋の入った腹筋、引き締まったお尻まで、本当にどこから撮っても完璧な体つき。その逞しい腕で、相手のモデルさんをひょいっと抱き上げる姿なんて、夢のような世界、王子そのものです!普段の玉森さんのイメージに近い、やさしさに溢れた甘く温かいラブシーンはもちろん、ちょっと意外(!?)な、指や首元をそっと噛むような情熱的なベッドシーン、さらにはシャワー室に籠もった、息づかいを感じるドラマティックな官能シーンも…! 一貫して言えるのは、そのどれもがとにかく芸術的な美しさに溢れていたこと。30歳になり、より落ち着いた深みのある大人の色気を纏いながらも、20代の頃と変わらない甘やかな玉森さん独特の美麗な空気感は健在。人として“最上級に美しい瞬間”は必見です!インタビューでは、少し照れながらも、愛しい人との愛すべき時間、官能スイッチが入る瞬間について語ってくださいました。今の玉森さんにしか表せない、大人の官能の世界に浸ってください!(ES)
2021年02月02日『パリの家族たち』のノエミ・メルランが主演し、『ポリーナ、私を踊る』のニールス・シュネデールが共演した『不実な女と官能詩人』。この度、本作の予告編が到着した。フランス象徴主義の詩人ピエール・ルイスは、生涯で2,500人以上の女性と関係を持ったと言われ「エロスの祭司」とも称された。彼の死後、自身が撮影したと思われる大量のポルノ写真が発見される。そのモデルのうちのひとりは、著名な詩人ジョゼ・マリア・ド・エレディアの次女で、親友の妻だったマリーその人だった――。2人はどのように出会い、関係を結んでいったのか、さらに、なぜピエールは女性の痴態を撮影し続けたのか?その秘められた愛と官能の物語が本作で明らかになる。今回到着した予告編では、関係を持った女性たちを記録する稀代のプレイボーイ、ピエールの姿や、ピエールとマリーが笑い合うも、マリーが「ほかにも愛人がいるの?」と問うと空気が一変する…。単なる官能の物語ではない、女性が不自由な時代に自由に生きたいと願った一人の人生のほんの一部が、本映像では覗くことができる。『不実な女と官能詩人』は11月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:不実な女と官能詩人 2019年11月1日よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて公開©CURIOSA FILM
2019年10月29日生涯で2,500人以上の女性と関係を持ったといわれ、“エロスの祭司”とも称された異端の詩人と、親友の妻との秘められた愛と官能の物語を紐解く『不実な女と官能詩人』(原題『CURIOSA』)が、11月1日(金)より公開されることが決定した。作曲家クロード・ドビュッシー、小説家アンドレ・ジッド、詩人オスカー・ワイルドなど高名な芸術家たちと交友を結び、影響を与えたといわれるフランス象徴主義の詩人ピエール・ルイス。彼の死後、自身で撮影したと思われる大量のポルノ写真が見つかる。そのモデルのうちのひとりは、著名な詩人ジョゼ・マリア・ド・エレディアの次女で、親友の妻だったマリーだった。道ならぬ恋におちた2人はどのように出会い、関係を結んでいったのか。なぜ、ピエールは女性の痴態を撮影し続けたのか。フランス文学史にその名を刻む異端の詩人、その秘められた愛と官能の物語が明らかにされる。主演をつとめたのは、『英雄は嘘がお好き』『パリの家族たち』などに出演し、いま注目を集めるノエミ・メルラン。そして稀代のプレイボーイ、ピエール・ルイスを演じるのは『ポリーナ、私を踊る』『KOKORO』『胸騒ぎの恋人』などで知られるニールス・シュネデールとフランスの次世代を担う若手スターが共演。監督は、新進気鋭の女性監督ルー・ジュネ。本作を単なる官能の物語ではなく、19世紀末、女性が思うように生きられなかった時代に自由に生きたいと願った1人の人間の人生の記録として描き出す。あらすじ19世紀、パリ。著名な詩人ジョゼ・マリア・ド・エレディアを父に持つマリーは、新進気鋭の詩人ピエール・ルイスと恋に落ちる。しかし、2人の思いを知ってか知らずか、両親は金銭的理由から同じくマリーに思いを寄せていたピエールの親友で貴族出身の詩人アンリ・ド・レニエとの結婚を決めてしまう。打ちひしがれたピエールはアルジェリアに渡り、女性の痴態・官能美を写真に収めることに情熱を傾け退廃的な生活を送る。アンリの一方的な思いだけが結べつけたマリーの結婚生活もまた、味気なく乾ききったままだった。1年後、ピエールが帰国したとのうわさを聞きつけ、マリーはたまらず彼のもとに駆けつける。「あなたと結婚したかった」――マリーが発した言葉、それが彼女とピエールの長い長い情交の始まりだった。セックス、文学、そして官能的な写真の数々。2人の奔放な関係は周囲の人々を巻き込み、思いも寄らない方向へ転がり始めてゆく――。『不実な女と官能詩人』は11月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて公開。(text:cinemacafe.net)
2019年10月01日官能という言葉を、セックスをするという狭い世界から解き放ち、読者の五感をくすぐるように描き出す田中兆子さん。『私のことならほっといて』は、恋人に裏切られた若い女性の小さな復讐とカタルシスの物語「歓びのテレーズ」や、娘の視点から母の愚かで一途な愛を描く「薄紅色の母」など、少女から大人までを主人公にした7つの短編集。女性たちがふとした瞬間に触れる、自分だけの“官能”を描く短編集。「文芸誌の官能特集などに寄稿したものをまとめました。そのつど編集の方といろいろやりとりしながら、百合風あり、ディストピアものありと、いろいろなテイストに挑戦できて楽しかったです」表題作で描かれるのは、人妻の破滅的な恋。〈私〉はダブリンの街で見知らぬ男性に心惹かれるが、それは夢での逢瀬。しかし、その夢の中で続く不倫は、やがて平穏だった日常生活を侵食し始めて…。「私も、子どものころからの妄想グセが夢でも続いて、何日も何年も続くシリーズドラマのようになってしまったことがあります(笑)。私の場合、創作のきっかけとして、記憶はまるで頼りにならない。なので、妄想や夢や偶然見かけたニュースなどがごっちゃになって、それがふと立ち上がってくる感じです。短編は特に、ジョゼフ・コーネルの“箱作品”のようなものに近いかも」好きな文芸作品の持つイメージにインスパイアされることも多いそう。たとえば、表題作のモチーフは、篠田節子の短編「レクイエム」で扱われたある種のタブー。死別した夫の片脚と同居する未亡人の心理を描いた「片脚」は、田中さんが川端康成の「片腕」という作品を偏愛しており、そこから考えたお話だという。「私はセックスシーンよりフェティシズム的な世界を書くのが好きですが、自分自身に何かフェティッシュな欲望があるかといえばそうでもないんです。強いて言えば、肉体の質感やかたちの変化を観察すること。編集さんにも『男女問わず、人体描写がねちっこいですね』と言われました(笑)。若くてぴちぴちした肉体だけではなく、老いてしなびたのも味わいがあります。やせただの、色つやが悪くなっただの、そういう変化を愛でる気持ちに愛を感じてしまう。登場人物はみなちょっと病んでいたり変だったりするけれど、そういう人も肯定したいんです」たなか・ちょうこ1964年、富山県生まれ。作家。2011年、「べしみ」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。同作を含む処女短編集『甘いお菓子は食べません』が話題に。他の著書に『徴産制』など。『私のことならほっといて』著者1年ぶりの新刊は、リベンジ・ポルノ、匂いフェチ、管理された生殖など、現代的で切なくて、ちょっときわどいエロスの世界が7編。新潮社1500円※『anan』2019年7月31日号より。写真・土佐麻理子(田中さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天沙子(by anan編集部)
2019年07月28日男女の恋愛の深淵、奥ゆかしくも逞しい女性の美しさ、インモラルな官能の世界…。時代を超えて読み継がれる文学の名作には、今学ぶべき“色気”のエッセンスが詰まっている。文学作品の色気は、知性の中にこそ漂う。「色気の形はさまざまあると思いますが、文学に描かれる色気に漂っているものは“知性”。決してストレートな描写ではなく、美しい文体で綴られた表現のひとつひとつに、真の色気や美しさが宿るものなのです」(宇都宮大学教育学部教授・鈴木啓子さん)文学に慣れ親しんでいない人でも手を出しやすい作品から、一見難解な文章で描かれた名著まで。それぞれの作家が描きたかった色気の正体を、象徴的な一文から感じ取って。「現代に通じる感覚もあれば、その時代だからこそ感じられる色気もあり、違いを肌で感じてみるのも面白いはず。また、作品が描かれた時代背景や、作家自身の人生に思いを馳せて読んでみると、さらに味わい深く楽しめます」(書評家、ブックライター・石井千湖さん)お二人に色気があふれる本を選んでもらいました。画家の目を通して描かれる“色気論”。(鈴木さん選書)『草枕』夏目漱石「美しい見た目ながら、薄幸というアンバランスな魅力を持つ女性・那美は、戦争に行く従兄弟を見送る場面で、野武士のように落ちぶれた元夫に再会します。その顔に浮かんだ“憐れ”の表情こそが、彼女の美を完成させる要素だったと、その様子をそばで見ていた画家は思うのです。つまり、色気とは“憐れ”。弱者へ共感を抱いた時にこそ発揮されるものだという、漱石独自の色気論ではないでしょうか」(鈴木さん)住みにくい人の世を芸術の力で打破できぬかと思案する青年画家。温泉場の出戻り娘・那美に惹かれ、絵に描きたいと思うが何か物足りなさを感じていて…。新潮文庫430円決して触れ合えない、淡く切ない恋心。(石井さん選書)『たけくらべ』樋口一葉「ある雨の日に、家の前で鼻緒が切れて困っている信如を美登利が見かける、という場面。今ではあまり考えられないことですが、物語の背景は男女が簡単に触れ合えない明治時代。二人が戸惑う姿は微笑ましく、また“触れたくても触れられない”ギリギリのところで、美登利が格子の隙間から端切れを“投げ入れる”という情景も味わい深い。初々しさの中にこの時代ならではの色っぽさを感じる一文です」(石井さん)吉原の遊郭に住み、遊女を姉に持つ14歳の美登利と、ゆくゆくは僧侶になる定めの信如との思春期の淡く密かな恋を描く短編。『にごりえ・たけくらべ』新潮文庫370円“清潔”という言葉で色気を表現する奥深さ。(鈴木さん選書)『雪国』川端康成「蛭の輪のようになめらかに伸び縮みする美しい唇を持つ芸者、駒子。その若々しい美しさを、この小説ではたびたび“清潔”という言葉で表現します。清潔と色気は一見、相反するものにも思えますが、それはまさに、穢れのない、生命体としての美しさに他なりません。“色気=奔放なもの”と捉えられがちな中で、“真面目で、心根の純な清らかさこそが真の色気である”と教えてくれる作品です」(鈴木さん)無為徒食の男・島村は、芸者の駒子に会うため雪国の温泉場を再訪する。駒子から一途な情熱を注がれる一方、島村は汽車で出会った女・葉子にも興味を抱いていて…。角川文庫362円鈴木啓子さん宇都宮大学教育学部教授。泉鏡花を中心に、日本近現代の小説を研究。一般学生に向けた「近代文学史」も開講している。監修した書籍『マンガで楽しむ名作 日本の文学』(ナツメ社)が好評。石井千湖さん書評家、ブックライター。書店員を経て、現在は書評とインタビューを中心に幅広く活動。著書に『文豪たちの友情』(立東舎)がある。また『週刊文春』にて、「名著のツボ」を連載中。※『anan』2019年4月3日号より。写真・中島慶子取材、文・瀬尾麻美(by anan編集部)
2019年04月01日女優の木村多江が妖艶で官能的なタンゴを踊るファミリーマートの“ファミチキ”の新テレビCM「TANGO」編が1日、撮影裏を収めたメイキング映像と併せて公開された。公開されたCMには、夜のファミリーマートでファミチキを購入したばかりの木村が映し出される。「また買ってしまった…」と微笑みながらファミチキを見つめる木村。すると意識は、大人の男女が熱いダンスを披露する舞踏会へ。買い物時とはうって変わって真っ赤なロングドレスをまとう木村は、アルゼンチンタンゴのリズムにのせて、“ファミチキ先輩”と愛し合う男女のようにお互いの心と心を通わせる姿が描かれ、夜にこっそりファミチキを食べる背徳感を情熱的なタンゴで表現している。日本舞踊やバレエを特技とする木村だが、アルゼンチンタンゴを踊るのは今回が初めて。撮影のために4日間の猛特訓をしたという。木村さんは「振りを覚えてその通りに踊るだけだと思っていたのですが、タンゴは相手の気をお互いに感じ取って踊るんだということが分かったんです。その“気を合わせる”ことがとても難しいんです。でも、お互いの気が合うとすごく気持ちがいい! 化学反応が起こるお芝居のようで、ちょっとハマっちゃいました!」と感想を語る。官能的で甘美なタンゴのお相手を務めたファミチキ先輩のリードに関しては「包み込むような優しさがありながらも、急に情熱を出してきたりするんです…。リードも凄く上手くて、自分がそれに合わせられると、ちょっと恋しちゃう気持ちになりました。そういうドキドキ感がありましたね」と告白。しかし、「先輩はお身体がだいぶ四角い方なので…私が彼の体にフィットして踊るというのは、なかなか難しかったです…。あっ! でもとても魅力的な方なので、容姿にはとらわれずに恋に落ちることができましたよ!」と、ユーモアたっぷりに話した。
2019年03月01日愛する二人が行きつく先にあるもの……それは美と官能で彩られた世界。最も深いスキンシップである“セックス”です。大切にしたいですよね。今回は占い師の脇田尚揮さんに、12星座別“2月後半のセックス運”をご紹介いただきます。文・脇田尚揮12星座別「2月後半のセックス運」牡羊座…自分が主導権を握った方が楽しめそう性欲が強く恋愛体質のあなた。2月後半は、自分が主導権を握った方が満足度の高いセックスになりそうな予感。純粋にプレイを楽しみ、終わった後はわりとあっけらかんとしているタイプなので、サッパリとした性格の異性と相性が良いでしょう。牡牛座…繊細さと激しさのある相手と甘い夜をあなたは昼は慎ましい顔、夜はセクシーな顔と使い分けているタイプ。セックスでは本来“尽くすタイプ”ですが、2月後半は快楽に溺れ激しい部分があらわになるかもしれません。繊細かつネットリと長く時間をかけるプレイが吉。淡白な異性とは楽しめないかもしれません。双子座…相手に合わせて攻めたくなるはず性欲はそこまで強くないものの、性への関心は人一倍あるあなた。2月後半は異性の心を掴みやすいので、自然にセックスに持ち込めるでしょう。そして、プレイ最中に相手のセックス傾向を分析しながら攻めたくなりそう。蟹座…優しく愛撫されると感じてしまうもともと、感じやすいタイプのあなた。2月後半は、優しく愛撫してくれるような異性とのセックスが◎。時間をかければかけるほど、より幸せを感じられるはず。ただ感情の起伏もある時期なので、気分や体調で感度は変わってくるでしょう。獅子座…褒めてもらえるとドキドキ! リードしてあげて情熱的で、常に魅力的な異性を求めている肉食系のあなた。あなたにとってセックスは、自分の魅力を再確認する行為でもあるため、評価されないと拗ねてしまう部分も。2月後半はセックス中、身体を褒められると最高に気持ちよくなれるでしょう。体の美しさを見せつけて!乙女座…慎ましい仕草で彼の支配欲をくすぐってあなたは恥ずかしがり屋で、心と身体を開放するのに時間がかかるでしょう。そんなあなたは、2月後半は受け身のセックスが◎。恥ずかしがるあなたの姿見て、相手も燃えること間違いなし。精神的な結びつきを重視したセックスは満足度もかなり高そう。天秤座…エッチをした相手の運を上げられる予感が!?美意識が高く、上品なセックスを好む耽美派のあなた。2月後半は、好奇心をくすぐる知的な異性と相性抜群です。極端なプレイや変態的な行為はあまり好まないあなたですが、攻めも受けもどちらもOKという柔軟性を持っているため、相手もメロメロになりそうな予感。蠍座…ミステリアスなあなたの表情でメロメロにして好きな異性には身も心も捧げる一方、嫌いな異性には見向きもしないあなた。2月後半は、夜にあなたのミステリアスな雰囲気が爆発するでしょう。男性は、そんなあなたにグッとくるはずです。あなたの“隠れエロス”をいかんなく発揮して。射手座…様々なプレイに挑戦したくなるけど抑えてノリがよく楽しいことに目がないあなた。セックスでも、自由で刺激的なプレイを求める傾向が強いでしょう。2月後半は様々なプレイに挑戦してみたいという願望が生まれるものの、性欲自体はそこまで盛り上がらないかも。無理は禁物。ピロートークなどを大事にするといいかも。山羊座…経験豊富な異性に開発されてしまいそうな予感慎重で堅実なあなたは、性に対しても開放的になれきれない部分が。そんなあなたですが、2月後半は経験豊富な異性に導かれる兆しが。セックスの悦びを知ると大きく化ける可能性も。全力で楽しむことをおすすめします。水瓶座…少しアブノーマルなプレイに興味が出そうあなたは、性欲旺盛なタイプではありません。しかしテクニックはかなりの技巧。好奇心が強いあなたは、2月後半は色々なプレイに挑戦したくなりそう。少しアブノーマルなプレイにものってくれる相手であれば、満足度が高いセックスができるでしょう。魚座…肉体の快楽を超越した性の悦びを感じられそうあなたは、デリケートで想像力豊かな性格。幻想的なセックスを好み、心と心の結びつきを大切にするロマンチストです。2月後半は、肉体を超越した性の悦びを感じることができそう。感受性の強い相手となら相性はバッチリ。でも、乱暴な相手とは合わないので、相手選びは慎重に。美と官能の星・金星が、3月2日まで山羊座に位置しています。やるべきことを終わらせてから、ゆったりとした甘美なセックスがおすすめです。また、疲れた心や身体を癒すために、入浴剤入りのお風呂に彼と一緒に入ってみるといいかも。普段以上にうっとりした気分になれそう。© Photographee.eu / shutterstock© Galina Tcivina / shutterstock
2019年02月14日花房観音さんをご存知ですか?昼はバスガイドとして修学旅行生などを案内、夜は濃厚な官能小説を執筆、と二足のわらじを履いている京都在住の作家さんです。経歴も興味深いのですが、彼女の小説には“醜女”、つまり不細工な女性が出てくることが多い、という特徴が。しかも官能小説ですから!そんな花房観音さんの、おすすめ“醜女小説”をご紹介しますね。■乾いた心に潤いを与える?怖い一冊『どうしてあんな女に私が』幻冬舎文庫もう、このタイトルがすごいですよね!こんなふうに呟いたことのある女性は少なくないのでは?「どうしてあんな女に私が負けるの?」「どうしてあんな女に私が彼氏を取られるの?」「どうしてあんな女に私が馬鹿にされなくちゃいけないの」……と、後に続く言葉もいろいろありそうです。◎どんな作品?本作の主人公は作家・桜川詩子。ルックスにコンプレックスを持つ42歳の女性です。一方、おデブでおブスな“さくら”は男性にモテモテで女神扱い。いったいどうして?この“さくら”の正体は徐々に明かされていきます。真相はぜひ、小説で確認してくださいね。ちなみに、単行本として出た当初は『黄泉醜女』というタイトルでしたが、文庫化の際に『どうしてあんな女に私が』に変わりました。◎女同士の醜い争いが勃発作者の分身のような存在と思われる詩子は“さくら”を題材に小説を書くことになり、取材を進めるうちに “醜女=さくら”に対する罵詈雑言が噴出!女たちの醜い争いが繰り広げられます。でも、そこは官能小説。随所に色っぽい表現が登場するので、心が乾燥気味の女性はリハビリを兼ねて読んでみてもいいかも。女ってそうだよね……と共感できる部分も多い作品です。■なぜか負の感情が浄化される!?『愛欲と情念の京都案内(京都しあわせ倶楽部)』PHP研究所こちらは、現役バスガイド&小説家ならではのエッセイ。花房さんはホラーテイストの小説を手掛けることも多いのですが、その作品の源泉は京都にあるんだな、ってことが伝わってくる一冊です。◎どんな作品?転ぶと三年後に死ぬという「三年坂」、その井戸の水を飲ませると相手との縁が切れる「鉄輪の井戸」、「みたらし団子」の本当の意味など、こんな京都があったの?とびっくりな“裏京都案内”を楽しめます。怨念、嫉妬、呪い、縁切り、性の禍々しさ、人間の情といった、誰の心にもあるような負の感情が綴られていて、逆に読んでいる自分の負の感情が浄化される気もするから不思議。■大人の女性におすすめ女性が書く官能小説が気になる人はもちろん、京都好きやホラー好き、女の業や性に興味津々、“醜女”にピンと来た……なんてみなさん、ぜひ花房観音さんの著書を手に取ってみてくださいね。あなたもエロティックで美しく、そして怖い、独特の世界観にハマってしまうかも。
2018年10月28日注目の新進女優・桜井ユキと、いま、最も女性を熱くする男・高橋一生の美しくも官能的なラブシーンが話題を集め、『リミスリ』ロス現象を巻き起こした『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』。この度、本作のBlu-ray&DVDが7月18日(水)に発売されることが明らかとなった。本作で映画初主演を果たし鮮烈な演技を披露したのは、石井岳龍、園子温、三池崇史といった日本映画界の名だたる鬼才監督の作品への出演が続き、話題作『娼年』にも出演する桜井ユキ。そして主人公の恋人を演じるのは、 いま最も女性たちの熱い視線を集める高橋一生だ。25歳の新進気鋭・二宮健監督による現実と妄想、過去と現代が錯綜する幻想的で彩り豊かな世界観は、日本映画の既成概念を破壊する挑発的な作品となった。さらに、怪しいバーテンダーに成田凌、華麗なショー番組のMC役に満島真之介といまをときめく若手注目株の俳優陣が出演しているのも見どころとなっている。今回の発表に合わせ、Blu-rayとDVDの特典として満島さんが劇中と同じようにMCを務めた異例の爆笑舞台挨拶の映像とメイキング映像の収録が決定。幻想的な映像と音楽でつむぎされる、美しくも儚いベッドシーンは、劇場公開時にはリピーターが続出したほど。本作が商業映画デビュー作となった二宮健監督は、岡崎京子原作で門脇麦が主演を務める『チワワちゃん』の公開も控えており、次世代の日本映画界を担う存在。絶対に見逃せない作品となるだろう。『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』は7月18日(水)よりDVDリリース。(text:cinemacafe.net)■関連作品:THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTYーリミット・オブ・スリービング ビューティー 2017年10月21日より新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開ⓒ 2017 KingRecords
2018年04月13日ストレス過多な現代社会で、人は傷つかないように感情をフラットにした無感覚状態に陥りやすく、官能を感じる状態にはない、とはボディワーカーの藤本靖さん。そこで今回は、無感覚に陥った身体を、自律神経への刺激で蘇らせる方法を教えていただきました。ストレスで疲弊した神経系が、心身を無感覚にさせてしまう。「官能に必要なのは緊張とリラックスのブレンド。身体的にいえば交感神経と副交感神経の両方に適度にスイッチが入った状態です」(藤本さん)でも、現代社会はストレス過多で、神経が刺激を受けすぎて過緊張状態となり、それに耐えきれずに無感覚になることで自分の身を守ろうとする傾向がある。「交感神経と副交感神経に同時にスイッチを入れるボディワークで脳神経系を覚醒させましょう。そうすれば、刺激と癒しが同時に起こり、官能的な感覚も蘇ります」ボディワークで交感神経と副交感神経のスイッチを同時にオン。官能的ボディに必要なのは、刺激と癒しのどちらも感じ取れる自律神経のバランスの良さ。刺激を受け取り活動する交感神経と、癒しをもたらす副交感神経の両方を稼働させるワークはマスト。さらに目や喉にもアプローチして、脳の疲れを取り神経系を覚醒させたり、肌感度を高めるワークを実践すれば、神経バランスは整っていく。背骨を刺激しながらの呼吸で両神経にスイッチ。背骨の両脇には交感神経節が並んでいるので、肩甲骨と骨盤を使い背骨をキュッと挟み込むような刺激を与えると、交感神経がオン。同時に細く長い呼吸を繰り返すと内臓の感覚が刺激され、内臓の働きを司る副交感神経も稼働する。両手を後ろに組み胸を張る。背骨を反らさず、左右の肩甲骨と骨盤で背骨を挟み込むイメージ。この状態で口をすぼめ、ストローから吐き出すように「ふー」と息を細く出す。鼻から吸い口から吐き、30秒繰り返す。目の緊張を解きほぐし、脳を休ませてあげる。日頃、視覚情報が過剰なので脳は疲弊しているもの。目の緊張を取ると脳の緊張も取れ、ゆっくり休むことができる。また、実は両目で見るより片目で物を見る方が、物体の立体感や距離感にズレがなくなるので、脳のストレスが減る。左手の人さし指、中指、薬指を右のまぶたの上に軽くのせて右目を塞ぎ、右手は後頭部を支えるように包む。左目で周囲をぼーっと眺める。30秒ほど見たら、眼球をゆっくり上下左右に動かす。続いて左目を塞いで同様に。肌感覚を高めて、触覚を蘇らせる。刺激過多から身を守ろうと、感じにくくなっている触覚を呼び覚ますには、肌が心地よく感じる優しい刺激を与えること。触れることで皮膚のセンサーの感度は戻るので、外からの刺激を心地よく受け入れられるようにしてあげて。右手のひらを使い、左腕を優しく撫で上げる。母猫が子猫を舐めるようなスピード(1秒に5cm動く程度)で、手の甲から肘、肩へ。右腕も同様に撫でる。両腕だけでも効果があるが、時間に余裕があれば肩、胸まわりも。喉の詰まりを解消して、脳を覚醒させる。喉の奥を震わせて行う呼吸は、喉の詰まりを取ってくれる作用が。言いたいことを我慢しがちな人は常に喉をつまらせているもの。呼吸を使って喉を目覚めさせることで、喉につながる脳神経を刺激すれば、頭がスッキリ冴えてくる。喉仏を親指と中指で軽くつまみ、反対の手を胸の真ん中に置く。口を閉じたまま、喉の筋肉を締めて声帯を震わすイメージで鼻から息を吸う。胸に溜めた息を鼻から吐く時も喉を空気が通ることを意識。1分ほど続ける。藤本 靖ボディワーカー。ロルファー(TM)。ロルフィング(R)スタジオ『オールブルー』主宰。独自の身体論で疲れない身体を提案。近著に『肩こりには脇もみが効く』(小社刊)。スリップ¥4,980(ピーチ・ジョン/ピーチ・ジョンTEL:0120・066・107)フリルベッドカバー¥17,584フェザークッション各¥3,695ベロアクッションカバー¥1,843(以上ザラホーム/ザラホーム・ジャパン カスタマーサービスTEL:03・3462・2133)※『anan』2018年3月14日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白男川清美ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ)モデル・中尾有伽(NAME)イラスト・和泉琴華取材、文・板倉ミキコ撮影協力・AWABEESUTUWA(by anan編集部)
2018年03月11日瑞々しく、豊かな感性がもたらす官能的な心と身体は、私たちの人生に必須。湧き出る本能に従えば、脳神経科学者の枝川義邦さん曰く、官能は“脳のエネルギー”となる。そこで今回は、官能を理性で抑えてしまう、女性らしい脳の仕組みを理解するためのレッスンです。官能に忠実になることが、脳にとっての最高のエネルギーに。脳の働きは原始時代から大きく変わっていない。だから官能を感じる、欲するという本能的欲求は、人間なら誰しも持っているものだと枝川さん。「官能は湧き出る本能的な感情。それを抑えるのは、脳が必要としているエネルギーを与えないばかりか、逆にエネルギーを費やして脳を消耗させてしまうのです」特に女性は、性欲や官能を理性でコントロールしがちなので、官能のスイッチを入れるためには、身体を反応させるより脳そのものを反応させる方が効果的。LESSON1:普段のストレスから離れられる場所に行き、本能を解放する。理性的な思考を司る前頭前野は、外界から様々なストレスが働くことによって、それに対して理性的な対処をしようとするので、それにより本能に基づく官能的な判断を邪魔してしまう。そこで、普段の自分から離れられ、ストレスを感じない場所に行き、五感が喜ぶ=脳が喜ぶことをして本能を解放しよう。結果、脳が活性化される。LESSON2:目、耳、手、唇、舌に意識を集中して過ごしてみる。身体の中で、インプット、アウトプットともに情報処理能力が高いとされるのが、目、耳、手、唇、舌。これらの部位を意識的にいつもより多めに刺激し、インプットの量を増やしていけば、脳の広い範囲が活性化して感度が上がってくる可能性が。自分が好きなもの、心地よく感じるものを見て、聞いて、触れて、味わっていこう。LESSON3:目隠しをして好きな俳優の声を聞いてみる。官能のスイッチを入れるために大切な役割を担っているのが、想像力と創造力。女性は、言語と深く関係した脳の左側にある扁桃体が活性化して、イマジネーションを掻き立てられやすい。例えば、好きな俳優の声を目隠しして聞いてみる。耳で聞いた情報を頭で映像化したり、妄想を発達させると、官能的な記憶情報を強化できる。LESSON4:黄体期に、自分が何を心地よいと感じているかをジャッジする。黄体期(排卵後、基礎体温が高温の期間)は、快不快などの強い感情に関係する脳の島皮質の活動が活発化しやすく、自分が何を求め、心地よいと感じるかがわかりやすくなる。この時期に下したジャッジを「本能の声」と受け止めることで、真に求める欲求を満たすための判断基準として、黄体期以外の期間に生かすのもよいだろう。枝川義邦脳神経科学者。早稲田大学研究戦略センター教授。脳科学と、行動や社会とを融合。『「脳が若い人」と「脳が老ける人」の習慣』(アスカビジネス)など著書多数。ロングブラウス¥29,000(エンリカ/フラッパーズTEL:03・5456・6866)※『anan』2018年3月14日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白男川清美ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ)モデル・中尾有伽(NAME)取材、文・板倉ミキコ撮影協力・AWABEESUTUWA(by anan編集部)
2018年03月11日甘く深い官能の世界は、いつでもそこにあるものの、それを受け入れる心と身体の準備ができていなければ、その悦びを本当の意味で感じることはできません。今回は心理カウンセラー・塚越友子さんに実践的なアプローチで五感と本能を目覚めさせ、人生の新たな扉を開くための、特別レッスンをお願いしました。快楽を求める本能に忠実に、自分を縛るタブーを捨てる方法とは?未知の体験を心から味わって、社会や文化に囚われた自分を解放。日本は社会的にも文化的にも、女性が官能的な快楽を求めることをタブーとしてきた歴史が長い。「その結果、極私的な感情&感覚であるはずの官能の要不要を、男性の望みにどう応えるかで判断しがち。生身の自分自身の身体や心がどう感じているかに対してはなおざりなんです」(塚越さん)また情報過多な現代では、官能まで情報に支配され、体験を味わいきれずに消化することに終始してしまう。「官能とは感じること。未知の体験を重ねましょう」LESSON1:茶道や華道を始めてみる。周りの意見を気にしがちな人は特に、雑念と距離を置く有意義な時間を持って。世の中の刺激から離れ、体験そのものに集中、没頭できると、自分主体の考えが持て、官能的思考も復活する。瞑想も効果的だけど、慣れない人にとっては対象があった方が集中しやすい。対象物に集中、没頭することができる、茶道や華道がオススメ。LESSON2:子供の頃に好きだったものを書き出してみる。行動を起こす時に「~しなければ」という思考が優先してしまう人は、価値基準が他人任せになっている証拠。大切なのは「~したい」「~すると気持ちいい」という感覚。大人になるにつれて自分の感覚を後回しにしがちなので、子供の頃に好きだったこと、心地よいと感じていたことを書き出して、本来の自分を取り戻して。LESSON3:普段はやらない、非日常の体験をする。最近は、失敗することを恐れて未知の体験を避ける傾向が。でも、ネガティブな感情も含めて様々な感覚を経験することが心の解放につながる。特に不感症になっている人には荒療治が必要。一人旅など非日常の体験をすることで、自分自身のリアルな感覚がわかってくる。行く場所、やることもその場の感覚に任せるとより効果的。LESSON4:湧き起こる気持ちが自分自身の感情か、確かめてみる。官能的な感情はとても個人的なもの。でも普段から他人の感情に振り回され、物事のジャッジを人任せにしている人は要注意。他人が良いと言ったものを良いものと思い込んでいるだけかもしれないし、負の感情も同様。今感じている気持ちは、他人の感情か、自分自身のものか、折に触れ客観的にジャッジする癖をつけてみよう。LESSON5:家族やパートナーと一緒に餃子を手作りする。人との心の距離感を取りづらいと感じている人は、実は、相手を自分の思い通りにコントロールしようとしすぎなのかもしれない。心理的なアプローチとしてある心理学者が提案しているのが、家族や恋人と一緒に餃子を作って食べること。五感全てを使う行為なので、情緒的な共通体験が、心地よい関係性を築いてくれるそう。塚越友子心理カウンセラー。『東京中央カウンセリング』代表。薬を使わない臨床心理を実践。現在改めて大学院に通い、親子間における心理学の新たな研究にも没頭している。スリップ¥4,980(ピーチ・ジョン/ピーチ・ジョンTEL:0120・066・107)フリルベッドカバー¥17,584フェザークッション各¥3,695ベロアクッションカバー¥1,843(以上ザラホーム/ザラホーム・ジャパン カスタマーサービスTEL:03・3462・2133)※『anan』2018年3月14日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白男川清美ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ)モデル・中尾有伽(NAME)取材、文・板倉ミキコ(by anan編集部)
2018年03月10日秘めた官能を解き放つレッスン。今回は、栄養コンサルタントのエリカ・アンギャルさんに、眠っている感性を刺激して、感じる心を取り戻す方法を教えていただきました。自分にしかわからない、喜びや満足感を十分味わうこと。「日本人が思う官能という言葉は“セクシュアル”な面ばかりが強調され、自分を愛し満たす、感性や感覚という“センシュアル”な面を忘れています。官能とは心と身体で幸せを感じること。生きていくエネルギーなんです」(アンギャルさん)自分の欲を優先させることに罪悪感を持つ人が多い日本女性に、官能を感じる心身のベース作りをアドバイス。「小さなことでもOK。日々、自分だけの感性=センシュアリティを満たしていけば、必ず変われます」LESSON1:血行を改善する食材を積極的に摂る。冷え症や血行不良の状態では、五感で一番大きなセンサーである肌の感度が低下してしまう。そこで、血管を広げ、血行を改善してくれる食材を積極的に摂って。オススメはオメガ3脂肪酸が豊富なクルミなどのナッツ類や、血管のアンチエイジングに役立つダークチョコレート。日頃から身体を冷やさない食生活を心がけていこう。LESSON2:みずみずしい果実を味わう。自分の感性を満たすものが何なのかよくわからない、という人は、センサーがかなり鈍感になっている証拠。眠っているセンシュアリティを刺激する方法としてエリカさんが最初に挙げたのが、“みずみずしい果実を食べる”こと。フレッシュな香り、唇に触れる感触、舌に当たる果肉、喉を潤す果汁…。全てをじっくり味わってみよう。LESSON3:忙しい時間こそ、ながらの習慣をやめる。仕事の場などで発揮される、物事を同時進行させてスピード処理する行動は、官能的な心身とは正反対の脳の使い方をしているもの。自宅で過ごす時はできるだけ“ながら”の習慣を封印しよう。5分でもいいので、音楽を1曲集中して聴いたり、お茶をゆっくり飲んでみる。忙しい時こそ、こうした時間を取ると心が満たされてくる。LESSON4:スケジュール帳には、好きなことやご褒美の予定を最初に書き込む。日々やるべきことに追われていると官能的思考を遠ざける。そこで、自分の心をなおざりにしないよう、スケジュール帳の書き方を変えてみる。やるべきことを書く前に、自分の好きなことやご褒美の予定を書き込んで。“to do”より“want to”を優先させる習慣をつければ、他人主導の考えが自分主体に変わっていく。LESSON5:シャワーを浴びる時、水の当たる感覚を全身で感じる。睡眠で心身がクリアになっているので、朝のシャワーは最高の感性刺激タイムに変わる。肌には触覚と連動する500万ものレセプター(受容体)があるので、水が肌に当たる感覚を全身で味わって。特に敏感な背中は重要。水の刺激を楽しみたい。さらに、寝起きにマッサージをして身体を目覚めさせてからシャワーを浴びると効果大。エリカ・アンギャル栄養コンサルタント。“心身が美しくなる食生活”を様々な媒体を通じて指南。近著『ラブダイエット スイーツなしで体と心を満たす美の教科書』(幻冬舎)が話題。Vネックスリーブレスリブニット¥2,600(ピーチ・ジョン/ピーチ・ジョンTEL:0120・066・107)ピアス¥22,000(イー・エム/e.m.表参道店TEL:03・5785・0760)※『anan』2018年3月14日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白男川清美ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ)モデル・中尾有伽(NAME)取材、文・板倉ミキコ(by anan編集部)
2018年03月10日五感を目覚めさせ、本能を取り戻す。今回は、女性ホルモンバランスプランナー(R)・烏山ますみさんに、ホルモンバランスを整えて、官能を受け入れる心身を作るレッスンをしていただきました。ホルモンバランスが整えば、官能を楽しむベースができるはず。官能的な心と身体のためには、動物的に成熟した肉体と人間ならではの瑞々しい感性が必要になる、と女性ホルモンバランスプランナー(R)の烏山ますみさん。「官能を楽しむ土台になるのが、心身の状態を左右する女性ホルモンだと思います。でも、女性ホルモンのバランスが乱れた人が増えたのは、本能を抑制してしまう人が増え、本能を司る脳の視床下部にも影響を与えているからかもしれません。心と身体を一致させ、女性性を心地よく受け入れられる方法を実践してみてください」LESSON1:身体の先端まで、優しく丁寧にケアをする。感覚のベクトルを自分自身にしっかり向けるためには、全身のケアが有効。特に足先はおざなりにしがちなので、指先まで丹念に行って。クリームなどを使い優しく肌に触れ、全神経をボディに向けていくと、身体が反応してくれる。優しいタッチでもリンパや血液の流れが改善され、これだけで冷え症が改善された人もいるほど。LESSON2:仕事の合間に、ハーブティーを五感で味わう。仕事中は交感神経が優位になりがち。自律神経の乱れは女性ホルモン分泌の乱れにもつながるので、たまに心身をオフにする副交感神経のスイッチを押してあげよう。鎮静効果の高いラベンダーやカモミールなどのハーブでティーブレイク。この時、香り、味、喉ごしなど、五感を駆使してお茶をしっかり味わうと感性も磨かれる。LESSON3:ベッドまわりに、ピンク色を取り入れる。セクシュアルなことを受け入れられない人は、女性性を否定している可能性が。ピンク色には女性らしさをもたらす心理作用があるだけでなく、内分泌を盛んにする効果も実証されている。そこで、花やリネンなど、ベッドまわりにピンクを取り入れてみよう。朝目覚めた時のクリアな心身に飛び込んでくる、ピンク色の力に期待して。LESSON4:骨盤の形を整えて、男性を受け入れられる身体になる。骨盤は心理状態に敏感に反応する。他人に対して威嚇する気持ちが強く、男性的な思考が優っていると、仙骨が立ち、キュッと硬く締まった反り腰になる傾向が。結果、子宮まわりを圧迫して血流が滞ってしまう。女性の理想の骨盤は、適度な緩みがあるお椀型。とかく威嚇の気持ちが増す仕事中に、骨盤を緩めるポーズをしてみよう。【骨盤をゆるめるポーズ】右・座った状態のまま背中を丸め、骨盤を丸めて後傾させる。その状態でゆっくり呼吸。左・左脚を組み、膝を右手でぐっと引き寄せながら上体を左にねじり、左脚の付け根を手でグリグリほぐす。反対の脚も同様に。烏山ますみ女性ホルモンバランスプランナー(R)。女性ホルモンバランスを整えることに着目したメニューを展開するアロマエステサロン『ICHIKA.』代表。ワークショップやセミナーも多数開催。スリップ¥4,980(ピーチ・ジョン/ピーチ・ジョンTEL:0120・066・107)※『anan』2018年3月14日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白男川清美ヘア&メイク・浜田あゆみ(メランジ)モデル・中尾有伽(NAME)イラスト・和泉琴華取材、文・板倉ミキコ撮影協力・AWABEESUTUWA(by anan編集部)
2018年03月09日シンガーソングライターダンサーの岡村靖幸さんにとって、官能的存在とは誰?岡村さんに“官能の本質”とは何かを聞いてみました。思い出と密接にからまる気持ち。官能とは。難しい問いですね…。お相撲さんに官能性を感じたりします?というのも、前に相撲を生で観戦したことがあって、力士の肉体って官能的だなと思ったんです。肉体と肉体がぶつかる瞬間、昂揚した力士の肉体が赤く染まっていく様、それはそれは官能性があるものだなと。相撲好きの女性が多いのはそういう理由かと腑に落ちました(笑)。思春期の頃は、山口百恵さんが僕にとっての官能的な存在だったと思います。情報過多ではない、引き算の魅力。彼女がかもし出すミステリアスな雰囲気に惹かれたんです。声のトーンが低く、あまりおしゃべりをしない寡黙な女性。手が届きそうで届かない、自分の住む世界とは違う場所に存在している。そこに色気のようなものを感じたんでしょうね。官能って記憶が大きく作用するものじゃないかしら。少年期のリビドー(性的欲求)が強いときに見たものが官能的な思い出として強烈に残り、それが官能を感じるセンサーの基準となる。たまに「寅さん」(山田洋次監督の映画『男はつらいよ』シリーズ)を観るんですが、「寅さん」に出てくるマドンナたちにも百恵ちゃんと同じような官能性を感じるんです。浅丘ルリ子さん、岸惠子さん、松坂慶子さん……。極端なことを言えば、官能的な女性って幻想なのかもしれない。小説や漫画や映画や音楽や、そういったものを通して抱くイマジネーションを孵化させ盛り上がるのが官能の世界。つまり官能性とは、妄想の中だけに存在する感覚ではないのかと。でもそれは、少年時代のメモリーに囚われているからで、リビドーに響いた感覚が現代とマッチしないからそう思ってしまうだけかもしれない。音楽と官能は、ミュージシャンである僕にとっては非常に密接です。聴覚だけでなく、嗅覚、視覚をも刺激する官能的な音を追求する。それは僕に限らず、音楽全般に言えることなんです。古来、音楽とリビドーは繫がっていて、ショパンでもエルヴィス・プレスリーでもビートルズでも、官能性はどんな音楽にも存在しているし、もっと言えば、文学やアート、映画といったジャンルでもそうですよね。ただ、音楽にしろ文学にしろ、官能性は直接的に表現できるものではないので、それを受け止めるには知性や感受性が必要となってくる。いまの世の中、インターネットから洪水のように情報が流れているけれど、あまりにもそれを浴び続けていると感受性が乱暴になっていくように思うんです。感受性が鈍化すると直接的な表現にしか反応しなくなってしまうんじゃないかと。やっぱり、行間を読む力や、そこからセクシュアルな文脈を受け止める感受性は官能を感じる力と結びついていると思いますから。そう考えると、百恵ちゃん的官能性は、昭和のあの時代だったから存在し得たのかもしれません。情報も少ない、ネットもない、SNSもない、自意識過剰ではないスキだらけの世の中だったからこそ、幻想の官能性を受け取ることができたし、それを膨らますこともできた。いろんなことが可視化され、美しいものだけを並べるようになった現代は、官能性を膨らませるミステリーやスキのようなものが存在しにくくなったように思います。官能性って、自意識ではない、無意識から生まれてくるものであって見せつけるものではない。それを受け取った側が膨らませるものじゃないでしょうか。結局、「官能とは何か」という問いに対する答えは僕にはよくわかりません。叶姉妹なら的確に答えてくれるんじゃないかと思うんですけれど(笑)。おかむら・やすゆきシンガーソングライターダンサー。4月14日から岡村靖幸2018 SPRING TOUR「マキャベリン」がスタート。※『anan』2018年3月14日号より。文・辛島いづみ(C)White Rock(by anan編集部)
2018年03月09日大人の女性が語る“官能の本質”。さまざまな経験と卓越した感性を持つ女優の一人、寺島しのぶさんに“官能”について聞いてみました。想像することのいやらしさに、官能がある。官能とは、女性ホルモンを刺激するものだと思うんです。私にとっては、それをもたらしてくれるのが男性。つねに男性には興味を持っているし、私が「素敵だよねー」って話すのを、旦那さんはいつも何も言わずに黙って聞いてくれています。男性は、個人的な好みで言うとマッチョな人がタイプですし、筋骨隆々な背中に顔を埋めてみたいという願望もある(笑)。でも、それを実行に移すかといったら、それは少し違う。それじゃ単なる性欲を発散する行為になってしまって、情緒がないんですよね。私が男性に官能を感じるのは、女性とは決定的に異なっているからだと思うんです。私は男社会で育ってきて、メンタル面ではかなり中性的。女優という仕事も、男性目線で女性の見え方を考えて演じていたりしますし。ただ、どうあがいても自分の性は女で、男性には自分にはないものがある。でも持っていないものを持つ相手だからこそ興味が惹かれるし、わからない部分があるから想像を掻き立てるんです。だから私は女子会反対派。互いに慰め合うことはできても得るものはないと思っています。官能と似た意味の言葉に、エロティシズムがあると思うんですが、官能は淫靡なイメージ。エロティシズムは、肉体と直結して性欲を刺激する具体的なもので、もっとシンプルで単純な気がします。エロと官能の何が違うかといったら、官能はこの人と喋るのが楽しいとか、声を聴いているだけで嬉しいとか、仕草が美しいとか、性的なものとは直接的には結びつかないものが大事だということ。それが脳を通して心のひだに一枚一枚触れていって体が反応していく…ぞわぞわするような感覚。いやらしいことを頭で想像したり、妄想を掻き立てられたり。そっちの方が官能的だといえるんじゃないでしょうか。女優として作品のなかでエロティックなシーンを演じることがありますが、ヌードになることや、行為のシーンを演じることが官能を表現していると考えてはいないんです。これは完全に無意識でやっていたことですが、セクシーに見せる時に意識するのは、言葉を交わさない間の、相手に目線を送るタイミングだったり、ふっと触れるわずかな瞬間だったり。なかには、佇んでいるというだけの場面が、ものすごく色っぽく見えることもある。その時に大事にしているのは“間”。色気って間に宿るんです。逆に、セリフを喋っている時には、なかなか表現しづらかったりして。無言の間には、言葉以上にさまざまな感情が交錯していて、対峙する相手に、「一体何を考えているんだろう」って想像させる力がある。例えば、作品のなかで恋人同士を演じることがあります。その相手と実際に恋愛に至る方もいますが、私は、カットがかかったら現実に戻って、「じゃあ明日」と言ってそれぞれの家に帰る、その寸止め感が好き。その方が、演じている時の濃密度は増す気がします(笑)。それに、現実にしてしまうより、フィクションのなかに閉じ込めておく方が、想像を膨らませることができてよりエロティックな感じもしますし。自分のなかの官能を育てるには、想像力を広げること。それには、本を読むのがいいんじゃないでしょうか。いまって、調べればインターネットですぐに情報が得られる時代ですけれど、すぐに得られるものには想像の余地がないですよね。本はビジュアルがないぶん、いくらでも自由に想像を広げられます。そして本からいろんな人生や価値観を知ることで、想像力をさらに豊かにしていけるはずです。てらじま・しのぶ女優。4月7日より上演の舞台『ヘッダ・ガブラー』に主演。19世紀末、恵まれた環境に育ちながらも日々フラストレーションを抱える主人公・ヘッダを演じる。※『anan』2018年3月14日号より。文・望月リサ(C)Vladimir Vladimirov(by anan編集部)
2018年03月08日知的な大人は知っている。官能の扉が開く瞬間。歌手・JUJUさんに“官能の本質”をお聞きしました。うっとりする時間を失うと大人はつまらない。人として生まれたのに、官能に対するセンサーがなかったら、まったく楽しくない人生になると思う。官能とは人間にとって、水とか空気、食べ物と同じぐらい大切なものだと思います。じゃあ、何が官能かといえば、言葉尻だけ見てしまうと、官能小説とか官能映画とか、エロティックな方向に想像が行きがちだけど、実は官能って、イコール≪うっとり≫だと思う。うっとりできる甘美なものが官能とすれば、それはおいしいものを食べたとき口の中に広がる多幸感も官能だし、いい音楽を聴いたときに心の底からジワッと溢れてくるものも官能だと思う。私にとって、いちばん官能を感じるのは、やっぱりいい音楽に出合ったとき。最高の瞬間です。生まれてはじめて音楽にうっとりしたときのことは、いまだに憶えています。幼稚園児が聴くようなものではない、大人の女性歌手がしっとりと歌うラブソングでした。その歌を何度でも聴きたくて、母にせがんでCDを買ってもらったほど。いま思えば、私のうっとりセンサーは、生まれながらに身についていて、いまもそのメーターの振れ方は少しも変わっていないようにも感じます。うっとりすることのない大人の生活は、まったく楽しくないと言い切れます。だけど大人になればなるほど、知っているものが増えてくる。はじめて見るものはどんどん少なくなるし、はじめて経験することは減る一方。例えば、美しく完璧なフォルムのシューズを見たとき、子どものころだったら、うわぁと思って、何時間でも眺めていられるほどうっとりできたけれど、いまは、ああ、この靴キレイと思っても、そこまで陶酔できなくなっていることに気づく。昔は手に届かないものだったから、余計にうっとりできたのでしょう。でもうっとりすることに、心を砕いて生活しているほうが、毎日がはるかに楽しいはず。日常的な官能は日常生活の中にあるべきだと思うので、大人として日々官能とともに生きていけたら、なんと素晴らしいことだろう。官能を語るとき、しばしば「官能の扉が開く」という表現が使われますよね。それは、すごく言いえて妙で、やっぱり心や体の感覚の扉を開けてあげないと、官能は解放できない気がします。その扉がひとつ開き、またひとつ、そして、3つ、と開くごとに、人生を楽しむ術が増えていくのでは。逆に言えば、うっとりすることを躊躇するほどの愚行はないと思う。常に官能に対して臆さずにいること。いま自分がうっとりしている、ということは他の誰かとシェアする必要は、まったくない。そうやって自分だけが感じる官能のスイッチを、こっそりと、どんどん増やしていけばいいと思うんです。もちろん性的な官能も大事だし、いちばんわかりやすい官能かもしれないけど、単純に官能=エロ、っていう図式をとっぱらったほうが、より官能に素直に生きていける気がします。最近よく聞く「他人と接触することが気持ち悪い」とか「キスが気持ち悪い」という人々の話には、驚かされるけど、そんなことでは寂しい人生になってしまう。そういう人たちこそ、素直にうっとりする時間を増やしてほしい。もしお酒が飲めるなら、酔うほどに官能のスイッチが入りやすくなると思う。そういった、きっかけも探してみてほしい。特別なことでなくていい、自分が好きなことを見極め、たくさんのうっとりを持ち、幸せを感じることに、もっと貪欲になるべきだと思っています。ジュジュ最新アルバム『I』発売中。小田和正や平井堅など楽曲提供するのが稀なアーティストが、彼女のために書いた曲を収録。「うっとりする要素が満載のアルバムです」※『anan』2018年3月14日号より。文・北條尚子(C)valentinrussanov(by anan編集部)
2018年03月08日さまざまな経験と卓越した感性を持つ方々が、そっと語る、官能の本質とは?今回は、作家・島本理生さんに投げかけてみました。台風のように訪れる、官能をつかむ悦び。つかみどころのない異性との、不安定な関係に官能的なものを感じて、惹かれていたころがあります。友達に紹介しても「いい人だね」「お似合いだよね」と応援してもらえない危険なタイプ。作家としての好奇心もあったのかもしれないです。彼が次に何を言うか、何をするかがわからなくて、ハラハラすればするほど、気持ちを持っていかれていましたね。ところが、自分も年齢や経験を重ねてくると、何を考えてるかわからない人って、案外何も考えていないのかもとわかってきた(笑)。若いころは刺激だけでドキドキできても、軸がない人の魅力はだんだん頭打ちになるように思います。いつまで経っても心がぶつかり合わないとしたら、不安定な関係は、ただ不安を煽るだけで、何かが深まる気がしません。がっぷり組み合う関係性の中でこそ、深くなっていく官能もあると思うようになってからは、もっと、骨のある男性に惹かれるようになりました。若さが削られていくにつれ、見た目や体つきが色っぽいというよりも、その人自身が生きてきた積み重ねがモノをいうからでしょうね。たとえば、学生時代、同じ教室にいたときには、みな似たようなただの男の子だったのに、社会人になって再会すると、いい色気が出てくる男性がいます。仕事や家庭など社会的な責任を持つ年齢になれば、成熟していかざるを得ないわけだけど、それが垣間見える瞬間は官能のアンテナを刺激されます。物語の中の有名な美男子といえば光源氏ですが、助川幸逸郎さんの『光源氏になってはいけない』という解説本の中に、象徴的なエピソードがあります。若き日の光源氏は、それはもう輝くような美しさだったんですよね。ある宴会に出たときも、あえて普段着に近い、気張りすぎない服装で現れ、逆にその生まれの良さや美しさでまわりを圧倒します。一方、源氏と仲がいいけれどライバルのような関係でもあった頭中将は源氏に比べればパッとしなかった。ところが十年以上経って二人が祝いの席に出てみると、年齢相応の貫禄を身につけた頭中将のほうが魅力的に書かれているというのです。というのも、光源氏は相変わらず若いころの自分を引きずっていて、悪い意味で青年にしか見えないんですね。いまこの瞬間に対して、しっかりと向き合って生きようとしていると、たぶん自分の年齢に合わせた魅力にシフトしていける。そういう人には成熟した色気も自然と備わってくるのかな、と感じます。官能というのは、台風みたいなものかもしれません。突然訪れるときもあれば、待てどもまったく来ないこともある。いざやって来たときは、家の中でじっとしていれば避けることができるけれど、それに身を任せるかは自分次第。楽しく戯れられる台風なのか、出ていったら取り返しがつかないほど大変なことになる台風なのかは、ドアを開ける前に多少なりとも見分けたいですよね。一つ気を付けたいのは、せっかく煮詰まった官能の瞬間を散らかしてしまうことでしょうか。「自分には色気がない」と悩む女性の中には、照れくささや緊張から、ばーっと一方的にしゃべったり、茶化したりしてしまう人が多いように感じます。色気を扱うのが得意な人に共通するのは、沈黙の使い方が上手いということ。黙るべきときに黙る。次のステップへ促すべきときに促す。いま何を言うかより、いま何を言わないかの取捨選択が上手い人は、官能とは何かをも知っているように思います。しまもと・りお作家。2005年刊行の『ナラタージュ』で恋愛小説の旗手に。‘15年、『Red』で島清恋愛文学賞を受賞。最新刊は『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』(幻冬舎)。※『anan』2018年3月14日号より。文・三浦天紗子(C)TwilightShow(by anan編集部)
2018年03月07日