いくら歳を重ねても逃れることはできない、人間関係のトラブル。学校や会社、家族での関係をこじらせると、ストレスの原因になります。中でも大人の悩みで多いのは、職場の人間関係でしょう。いくら好きな仕事をしていても、人格に問題がある人と一緒だと疲れてしまうものです。横柄な研修医に、指導医がスカッとする対応!病棟で看護師として働いている、ぱれちに(paretiny)さんが描いたのは、ある病院で起こったエピソード。その病院には、やたらと態度が大きい研修医の男性がいたといいます。横暴な言動をする研修医に対し、周囲の人たちはストレスを感じていました。看護師を見下しているのか、研修医は人を不快にさせる発言を連発。これらの暴言はパワーハラスメント(通称:パワハラ)といえます。しかしある日、指導医は彼のミスをズバリと指摘!「態度がデカいわりに」という言葉を聞くに、指導医は彼の看護師に対する横柄な態度をしっかりと見ていたのでしょう。同僚の前で恥をかいたためか、自分の態度の悪さを反省したのか、その日から研修医は態度を改めたそうです。・スカッとした!叱るんじゃなくて、ちゃんと指摘する指導医さん、かっこいい!・どこにでもいるんですね、こういう態度がデカいのに仕事ができない人。・あるあるですね…。頭がよくても人間性が悪いともったいないですよね。悪い部分を指摘してくれる人がいるのは、ある意味幸せなこと。この研修医は、早いうちに気付くことができてよかったのではないでしょうか。彼が今回の出来事を受け、しっかりと改心することを願うばかりです。[文・構成/grape編集部]
2020年09月26日東京衛生病院小児科の小児科医、私生活では8歳・6歳・4歳の子育て中という3児のママ小児科医保田典子先生のコラム。日本小児科医会から「2歳までテレビもビデオもNG」という提言が出されていますが、「本当にダメなの? 使わせてしまう……」と思うママも多いはず。今回は「子どもとスマホ・テレビとの付き合い方」について保田先生の子育ての体験談を交えながらお話ししてもらいました。 こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今回は「子どもとスマホ・テレビとの付き合い方」について、私の考え方などを交えながらお話ししたいと思います。 赤ちゃんにテレビはいつから見せていいの?まず、日本小児科医会(2004年)から、このようなスマホやタブレットなどディスプレイに関する提言が出ています。 出典:「子どもとメディア」の問題に対する提言/社団法人 日本小児科医会「子どもとメディア」対策委員会 なかなか厳しい提言ですね。この提言を見て、「1分もディスプレイを見せたらダメなんですか?」といった質問をされるママもいらっしゃいます。 ただ、特に上にきょうだいがいる場合、2歳までテレビなしって実際はすごく難しいですし、テレビゲームを30分でピタッと終わらせることは不可能のように思います。 小児科医の私が大事にしている3つのこと子どもとメディアの付き合い方として、「こんな育児がしたいから、こんなときにメディアを使う」というルールをつくっておくといいかなと思います。 ちなみに、私は育児をするうえで、以下の3つを大事にしています。 ① 睡眠時間をしっかりとる② 体をたくさん動かすようにする③ 自己肯定感を育てるようにする WHOの提言では、「5歳までは体をたくさん動かしましょう」「ハイチェアなどにじっと座らせておく時間を少なくしましょう」と言われています。 この3つのルールを守っていると、自然と日本小児科医会の提言がだいたい守れていました。 睡眠・運動時間を多くとると、ディスプレイタイムが減った私は子どもが生後2~3カ月のころから働いていたのですが、①と②を守ろうとすると、自然とディスプレイタイム(テレビ、タブレット、スマホなどの合計時間)が短くなっていきます。休日も、とにかく外に出て遊ぼうとしていたので、テレビはながら見を入れて1,2時間でした。でも、雨の日は自然とテレビ時間が増えることが多いです。博物館などに行くなどもしていましたが、コロナ禍になってからは外出を控えているので「のんびりする日もいいよね」と割り切って、テレビを見せています。 お出かけのときもベビーカーではなく抱っこが多く、かばんやポケットに入っていたスマホを出しにくかったため、子どもがぐずっても電車の中でスマホを使ってあやすことはありませんでした。ぐずりにくい時間帯を選んで移動したり、ぐずりだしたら歌を歌ったりしてやり過ごしていました。 下の子は時間を区切って、じょうずに付き合うしかし、上の子が成長し、テレビを楽しむようになったら、一緒に過ごしている下の子は0歳のときからテレビを見るようになり、2歳からはタブレットも見ています。 動画は、子ども向けアプリだと時間制限ができるので、それで時間を区切って見せています。ゲームなどはタイマーをつけて、決めた時間で終わらせることを条件に、3歳ごろから使っています。親が家事や仕事などをするために、お子さんにスマホやテレビを見せる時間があってもいいかなと思います。 テレビなどを見せるときは、①「わが家は、こんなときはテレビを見ます」といったルールを決めること、②時計の針を絵に描いて「この時間になったらテレビを見ていいよ」など、子どもにもわかりやすい方法でルールを見える化するのがおすすめです。 スマホやテレビの時間を制限したいのではなく、育児で大事にしていることを優先すると、自然と時間制限が必要になってきます。 大事なのは「メディア選定」と「親子のコミュニケーション」 スマホやタブレットなどのメディアは悪いことばかりではなく、メディアによっては子どもの語彙力や計算力が高くなる傾向があるという研究もあります(セサミストリートに関する研究より)。触れさせるメディアを選ぶというのは大事かもしれません。 また、メディアの問題点は、一方的なコミュニケーションになるということ、一度に大量の情報が流れているということ、そして視力に対する影響などがあります。動画やテレビを子どもに見せるときは、一人で見せっ放しにせず、「何見てるの?」とか「これおもしろいね」「どんなところが楽しいの?」など、お子さんとコミュニケーションをとりながら親子の会話や触れ合いにプラスに働くように利用するといいと考えられます。 まずは「どんな子育てをしたいか」考えてみては?0~3歳くらいまでの子どもは、「目が悪くなるからダメ」と言ってもきちんと理解できないですし、突然大好きな動画やアプリを取りあげられたら、グズったり怒ったりするのは無理もありません。まず、子どもにメディアを触れさせるときは、あらかじめ自分がどんな子育てをしたいか、そのためにはどんなときにメディアを利用するか利用しないかなど、方針をたてておくのがおすすめです。 子どもは背景が理解できなくても、パパママの手の中にある小さい機械(スマホ)に楽しいものが入っているとわかると、要求がエスカレートしていきます。電車の中で困ったときはスマホを渡してしまうのではなく、音だけ聞かせてあやすなどすると、子どものスマホに対する意識は低くなるかもしれません。 スマホを与えないとグズって困るという状況にならないためにも、子どもが小さいうちはあまりメディアに触れさせないほうが、結局育児はラクになるかもしれません。困ったときに漫然と使うのではなく、ルールを設けて、賢く利用できると良いですね。 監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。3児の母。
2020年09月25日我が子の血液型って何だろうって気になりませんか?出産したときに調べてくれるところもありますが、私が出産した病院は、産まれたばかりの赤ちゃんの血液型はお母さんの血液の影響を受けているので正確ではない、という理由で調べていませんでした。でも長男が今年小学生になり、色々記入しないといけない書類に目を通していたとき、血液型を記入する所がありました。でも小児科に行って血液型を調べてもらう事に私は抵抗がありました…。なぜかというと…、長男が3歳くらいのときに当時通っていた小児科の先生に血液型を調べて欲しいとお願いしたことがあったんですが…、今は引っ越して以前とは別の小児科に通っているのですが、その先生はいつもニコニコしていて気さくで優しそうな先生だったこともあり、ドキドキしながらも長男の血液型を調べて欲しいとお願いしに行きました!快く引き受けてくれた先生。これでやっと6年越しに長男の血液型が判明するのかー! とドキドキしながら1週間を過ごし、結果を聞きに再び小児科へ行きました。でもそこで先生の口から驚きの言葉が…。結果が書いてある紙を渡してもらい、先生が他に何かありますか? と優しく聞いてくれたので、次男の血液型についても聞いてみることにしました。調べる必要はない! と、口調は違えどいつかの小児科の先生と同じような事を言い出したのです!でもその先生はちゃんと理由も説明してくれました!なるほどー!分かりやすく説明してくれた先生。そう言われれば確かにそうだよね、と納得させられました(笑)もしかしたら、前に検査を断った小児科の先生も、調べてもまた調べることになるんだからお金がもったいないでしょ、という思いで言ってくれたのかもしれません。でもそう言われてもやっぱり知りたくなる我が子の血液型。そんな親の思いも尊重してくれて、素敵な先生に調べてもらえてよかったー!と思た瞬間でした。
2020年09月15日男の子ならではの体のトラブル体験談です。女性であるママにとって男の子は未知の存在。4歳の息子さんが訴えた体の異変は男の子ならではのもので、ママはとても戸惑ってしまったそうです。 三姉妹の真ん中として育った私にとって、男の子は未知の存在でした。そんな私が最初に産んだのは男の子! 元気いっぱいな長男に戸惑いながらも、男の子のかわいさを知っていきました。ところが長男が4歳になったころ、突然「おちんちんが痛い!」と言い始めたのです。 「おちんちん痛い!」と言いだした長男夫の帰りが遅いわが家では、私が4歳の長男・2歳の長女と一緒にお風呂に入っていました。はじめは私が体を洗ってあげていましたが、4歳になったころから長男は自分で体を洗うように……。最初はきちんと洗えているか心配で、私が仕上げに洗い直してあげていました。 しかし長男が自分で体を洗うことに慣れてくると、安心して任せっきりに。私はなんとなく洗えているんだろうな……と思っていました。ところがある日、長男が「おちんちん痛い!」と言い始めたのです。 性器の先端が赤く腫れあがり…!長男が「おちんちん痛い!」と訴えてすぐに、下着を脱がせて確認しました。すると、長男の性器の先端が赤く腫れあがっていたのです。男の子の性器が腫れるところを初めて見た私は驚き、あたふたするばかり……。 何科を受診すればいいのかもわからず、とりあえず近所の小児科に駆け込みました。 小児科に着くと、受診は小児科で大丈夫とのことでひと安心。そして、バイキンが入ったことによる亀頭包皮炎(きとうほうひえん)と診断されました。 小児科でアドバイスを受け…小児科では抗生剤と塗り薬が処方され、やさしく洗うようアドバイスを受けました。きちんと洗えていなかったり、汚れた手で性器を触ってしまうことが原因だそうです。 長男によると「きちんと洗っていないかも」とのことだったので、お風呂場でもっと見てあげていたらよかったなと後悔……。それから、男の子の性器トラブルについてきちんと知っておくべきだったと思いました。処方された薬のおかげで、腫れと痛みは数日で引きました。 長男の性器トラブルを体験して、異性親である私も男の子特有の病気・トラブルを理解しておく必要性を感じました。それから、同性親である夫のことをもっと頼ろうと思いました。性器についてわからないことがあったら、夫に相談してもいいと長男には伝えています。夫婦で協力し合っていこうと実感した出来事でした。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 イラスト/マメ美監修/助産師REIKO 著者:河津明香2男1女の母。旅行代理店勤務をしながらの育児を経て、フリーランスのライターへ転身。現在は発達障害の長男のサポートをおこないながら、旅行・育児・生活雑貨などの記事を中心に執筆。
2020年09月10日娘と息子を連れて小児科を受診したときのこと。先生に診てもらい、会計を待っていると、突然、息子の機嫌が悪くなり始めました。気をまぎらわせようとしましたが、何をやっても効果がありません。そのまま薬局に行き、外で順番を待っていたのですが…どんどん悪くなる息子の機嫌。■すばやくこの場を立ち去ろうとしていたところ…!?もう本人も、何が原因で泣いていたのかも、わからなくなっていました。順番になるまで、とにかく無心でいよう…そして、会計を終えたら、すばやくこの場を立ち去ろう! と思っていると、「あら? きーさん?」声をかけられ、振り向くと、そこにいたのは息子の保育園の先生でした。息子は先生を見るなり、慌てて抱っこしていた私の腕をすり抜け、下に降りました。そして涙をぬぐい、何事もなかったかのように、先生に笑顔を見せました。え~!? あ、あ、あんなに何してもダメだったのに~!?「あれ? 今、泣いてなかった?」と先生が聞くと、「ないてない! ないてない!!」とごまかす息子。 ■3歳男児のプライドを垣間見た私と娘「え~さっきまで泣いたよ!」と言う娘の言葉を、大きな声を出し、さえぎる息子。先生とバイバイした後も、再び泣き出すこともなく、何事もなかったように、歩き始めました。私が、なぜ急に泣き止んだのか、聞いてみると、「だって、はずかしいもん」と息子。これが男のプライドというやつでしょうか…。保育園の先生には、カッコ悪い姿は見せられない…?その後も、あまりに手が付けられないときに、保育園の先生を意識させると、周りをキョロキョロと確認する息子なのでした(笑)家よりも長い時間を過ごす、保育園の先生は、息子にとってはとても大きい存在のようです。いつも優しく、厳しく接してくれる先生に改めて感謝したいと思いました。
2020年09月03日息子の風邪がうつり、生後20日の娘が突然の発熱。あらゆる検査の結果からウイルス性髄膜炎と診断され、小児科に入院となったときの体験談です。今回は、診断されるまでの経過、入院中~退院後におこなった予防などもお伝えします。 初めての高熱…当然の入院3歳の息子が保育園で熱を出し、喉の赤みと鼻水の症状で夏風邪と診断され1週間。息子は完全に回復し、家族の誰もうつらなかったことにホッとしていたころのことです。 娘は数日後に1カ月健診を控えていました。娘を抱っこしていていつもより熱いと思い、熱を測ると40度近い熱。赤ちゃんは母親から免疫をもらっているから病気になることはほとんどないのではとどこかで思っていた私はびっくりしました。母乳の飲みも変わらず、おしっこも出ているし、咳や鼻水もありません。かかりつけ医の小児科に電話すると「今すぐ入院施設のある大きい小児科に行きなさい」と言われ、受診。 すぐにレントゲン・採血・腰からの髄液検査・点滴と次々と検査がおこなわれ、泣きわめくわが子は髄膜炎の疑いでその日のうちに入院になりました。その3日後、検査の結果から「ウイルス性髄膜炎」だと確定診断されました。 ママと2人の入院生活その日以来、病院での24時間付き添い生活が始まりました。娘は点滴と心電図モニターにつながれ、頻回の検温のたびに泣き、高熱の間は苦しいのかよく泣いていました。この病院ではママはあくまで付き添いなので、食事などは出ず、家族に持ってきてもらうかコンビニで済ませます。家族が面会にきたタイミングでお風呂を済ませ、あとは授乳か、おむつ交換か、ひたすら抱っこ。ただただかわいそうという気持ちと、早く良くなることを祈るばかりでした。 退院後も予防の日々やっと熱も下がり、炎症反応もなくなったのを確認し退院が決まりました。その際、医師から「予防接種を2回終える生後3カ月までは特に注意するように」と言われました。息子からの感染を予防するため、手洗い・うがい、保育園から戻ったらまず着替えをさせること、風邪の症状があるときには娘に近づけない、もしくは息子が触ったおもちゃなどは消毒するなどを徹底し、何とか最初の目標である生後3カ月を迎えました。もう入院させまいと常に病気には敏感になっていました。 兄妹のケアも忘れずに感染源が息子であったこと、その後も一番感染源となり得ることから、予防策をとると、さらにイヤイヤ言ったり、悲しそうな顔をする息子。幼いながらに、もっとママに甘えたいという思いが強かったのだと思います。病気中の娘も心配ですが、入院中の面会時は娘を家族に見てもらい息子と遊んだり、退院後も体調が悪いときには子ども2人を接触させないよう、ママである私が息子のそばにいる時間を意識的に作るようにしました。 新生児期であっても発熱することがあり、一見変わりなく見えても入院を伴うような病態になっていたことは、娘自身も家族にとっても大きな負担でした。早めのうちにかかりつけの小児科を決め、相談できる体制をとると共に、日頃からの対策も大事であることを学んだ体験でした。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 監修/助産師REIKO著者:高橋ひな子2児の母。助産師・看護師・保健師の資格を持ち、病院勤務をしながら育児を満喫中。自身の体験をもとに、妊娠・出産・子育てに関する記事を執筆している。
2020年09月01日排尿習慣が整ってくる5歳前後でも、就寝前に飲み物を多く摂ったりするなど、たまに“おねしょ”をするのはよくあることです。ただ5歳を過ぎても1カ月に1回以上、3カ月続けてみられるようなら、それは夜尿症の可能性があります。今回は、夜尿症の症状や受診の目安、治療法などを詳しく紹介していきます。 夜尿症ってどんな症状? 夜尿症の定義は? 夜尿症とは、夜の睡眠中に無意識に尿が漏れてしまう、いわゆる“おねしょ”がみられる病気のこと。昼の排尿習慣が整った5歳を過ぎても1カ月に1回以上、3カ月以上続くと夜尿症と定義されます。おねしょ以外の症状は見られず、睡眠中に無意識に排尿が起こるため、痛みなどの苦痛はないと考えられています。年齢を重ねるごとに改善するケースも多いですが、5歳で15~20%、10歳で5~10%の子どもにみられます。まれに成人まで続くケースもあります。 睡眠中に作られる尿の量が多いことやストレスなどが原因 原因は、睡眠中の尿の量が多い、睡眠中に膀胱にためられる尿の量が少ない、睡眠、もしくは覚醒障害があるという3つです。通常なら脳下垂体から出る抗利尿ホルモンによって、睡眠中の尿の量は日中より減少します。尿がたまったとしても、膀胱の壁が刺激されると就寝中でも尿意を感じて目が覚めるので、おねしょをすることはありません。夜尿症の場合は、寝ている間に作られる尿の量が多いうえ、眠りが深いため尿意を感じても覚醒できず排尿してしまうわけです。 また、膀胱の大きさや機能が未熟なため、多くの尿をためられず尿意を感じる前に膀胱が収縮し排尿してしまうことがあります。そのほか、精神的なストレスや環境の急激な変化も原因となることがありますが、はっきりとした関連は解明されていません。 自然に治る? 医療機関への受診は必要?夜尿症は一般的には成長とともに自然に治ることが多いのですが、1週間で夜尿が3回以上ある場合は、3回未満の場合と比べ自然に治りにくいようです。そのため、小学校に上がっても週に3回以上夜尿が続く場合は、早めに小児科、または泌尿器科を受診するようにしましょう。治療は、問診や尿検査、画像検査などをおこなっています。 簡単に取り組める! 具体的な生活習慣の改善方法を提案 自宅ですぐにおこなうことができる夜尿症の対策を紹介します。下記に具体的な生活改善方法をまとめてみました。 日々の生活習慣を改善しましょう!①規則正しい生活…早寝早起きをして、3食を摂り、夕食後から寝るまでの時間は2時間程度空けます。 ②水分の摂り方…日中はしっかり水分を摂って、夕方から水分は少なめにして、夕食後はコップ1杯程度にします。 ③塩分を控える…塩分が高い食事はたくさん水分が欲しくなるので、塩分は控えめに。 ④便秘解消…腸に大量の便があるなど、便秘は膀胱内の容量を小さくしてしまう可能性があります。普段から野菜など食物繊維が多く含まれる食べ物を摂るようにしましょう。 ⑤寝る前にトイレへ行く…膀胱内の尿をできるだけなくしておきます。 ⑥寝ているときの寒さ(冷え)対策をする…体が冷えると汗をかかず尿の量が増えます。 ⑦無理に夜中に起こさない…「おねしょが続いているから」という理由で、夜間に無理やり子どもを起こし、トイレに行かせようとするのはやめましょう。子どもの膀胱の容量を考えずに起こすことは良くないです。無理に起こすことは成長ホルモンの分泌に影響を与えるほか、夜尿症では膀胱の容量を増やしていきたいので、おしっこがたまる前にトイレに行くことは、かえって逆効果になってしまいます。 ⑧怒らない…朝におねしょが判明しても、ガミガミ怒ることは避けましょう。本人も無意識にしてしまっていることですし、ストレスで夜尿が悪化する恐れもあります。 年齢や症状に応じた治療法! アラーム療法や薬物療法など夜尿症の治療法ですが、生活改善で効果がみられない場合や、年齢、症状に応じて薬物療法やアラーム療法がおこなわれる場合もあります。薬物療法では、尿の量を調節する薬や膀胱の収縮を抑える薬が処方されます。 また、アラーム療法というのは、尿漏れを感知するセンサーを下着などにつけ、尿でパンツが濡れるとアラームが鳴ることで本人に気付かせ、起こしてトイレで残りを排尿させるというもの。効果が出てくると、寝ている間にためられる尿の量が増え、夜尿を減らしていくことにつながります。 夜尿症は、膀胱の機能の未熟さなど体の機能によって起こるものなので、子どもがおもらしをしないように意識することで治ることはありません。ただ、積極的な生活指導や治療で症状改善が早まるとも言われています。ママやパパはあせったり、しかったり、ほかの人と比べたりしないで、おおらかな気持ちで見守りましょう。 著者:アキモトスズ監修者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年08月31日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今、世の中には知育に関する本やグッズが溢れていますね。生まれてすぐに通える幼児教室もたくさんあります。 早期の幼児教育については、小児科医師の中でも意見が別れる話ではあると思いますが、私としての意見は天才性を育てるような先取り教育に関してはあまり肯定的な考えは持っていません。子どもの発達の観点から、知育について解説します。 高IQ児のゆくさき幼児教室の宣伝には「3歳までにやらないと手遅れになる」、「平均IQ150以上」などの文言などが飛び交い、早期教育の必要性をうたっています。幼児教育が生まれてから少し歴史ができてきたのもあり、そのような高IQの子がその後どうなったかというデータも出てきています。 シカゴ大学ヘックマン教授らの「ペリー幼稚園プログラム」の研究によると、幼稚園時代にIQが高かった子どもも、8-10歳になるとその効果はなくなってしまうというそうです。 IQは同年代に比べて現在どのくらい認知能力があるか、という相対評価なので、早期教育をすると短期間、認知能力は上がるものの効果は長続きしない、ということでした。また、IQの効果は短期的だけれど、非認知能力を伸ばし、将来の学力や所得が良くなる傾向があるとも結論づけています。 人間は発達する生き物なので、先取り教育をしても放っておいても、段階的に子どもたちは発達していってくれます。焦らなくても、その子の成長を見守り、時に適切なサポートしてあげれば、子どもは能力を獲得していってくれるのです。 早期療育の効果は高い他方で、言葉が遅いなど発達障害を疑われるようなお子さんに対して、早期療育をすると効果が高い、ということもわかってきています。そのため、1歳半健診で早期に発達障害の疑いのある子を見つけてあげて、早期療育につなげてあげようという取り組みが小児科の中では重要にもなってきています。 上のきょうだいがいる子の方が発達が早い傾向があるように、子ども同士の相互作用によって発達をうながすことができます。 子どもの発達にすごく大切な知育以外のこと 近年、愛着障害などの研究から、夫婦げんかが多い・DVがある・体罰を受けている子どもは、そうでない子どもに比べて脳の一部が萎縮したり、不安定で情動的な行動をとる(例えば精神的に不安定になったり、暴力的になる)ことが多くなることがわかっています。 子どもの行動や情動が不安定になることにより、成績や精神的な安定に影響が出ることも考えられます。 ひとり親はよくない、まったくケンカしない方が良い、という話ではなく、子どもが安心して過ごせる家庭を作ることが子どもの安定に繋がり、子どもの教育を効果的にすることができます。夫婦げんかであれば、きちんと夫婦で「ごめんね」と言い合ったり、ギスギスした雰囲気を引きずらないなど、ケンカをしてしまったあとにどう振る舞うか、が大事です。 子どもの発達をうながす大事なポイント1-3歳の子どもの発達をうながすために、大事にしたいポイントがあります。 ①まずはライフスキルを身につけること排泄(おしっこやうんち)、食事、睡眠などをきちんとするということです。1歳でおむつを外さなくてはいけない、というわけではもちろんなくて、トイレを自分で表現できるようにする方法を少しずつ声かけしていく、ということからでも大丈夫です。規則正しく食事をして、睡眠がしっかりとれていると、子どもの情緒が安定して、成長にも繋がります。 ②言葉のトレーニングをする言葉が使いこなせるようになると、自分の気持ちや表現したいことが他人に伝えられるようになります。言葉が知能の第一歩になるのです。実際にしゃべる言葉が出なくても、自分の表現したいことができるようになってくる、というだけでも子どもの情緒の安定と成長につながります。言葉の発達が心配であれば、かかりつけの小児科医などにご相談ください。 まずは、親が安定していることが一番です興味のないフラッシュカードを機械的に見せたり、やりたくないことを無理やりやることは子どものためにもならないと思います。子どもも親も楽しく教育ができて、安定した家庭環境で知育をすることができれば、すごく効果的な教育になると思います。 例えば、具体的な知育をする暇がなかなかなくても、日々の声かけを工夫したり、有効なほめ方をするだけでも知育とも言えます。親が安定していることが一番です。子どもの成長を喜んで楽しい教育ができるといいなと思います。 参考:『赤ちゃんと脳科学』小西行郎(集英社新書)『佐々木正美の子育て百科』佐々木正美(大和書房)『「学力」の経済学』中室牧子(ディスカバー・トゥエンティワン)『子どもの「10歳の壁」とは何か?』渡辺弥生(光文社新書) 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年08月28日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子どもを子育て中の3児の母です。今回は健診でもたまに聞かれる話題「哺乳瓶の消毒」についてです。実は医学的にエビデンスがしっかりある訳ではなく、医師の間でも考え方が別れる話題です。海外の話も合わせて解説します。 哺乳瓶の消毒の目的は「免疫が弱いから」哺乳瓶を消毒する理由は、「生まれたばかりの赤ちゃんの免疫力が弱いから」です。特に、サルモネラ菌とサカザキ菌に対する危険性が、生後2カ月未満の赤ちゃんは特に高いと言われています。 ミルクは栄養たっぷりなので菌が繁殖しやすいため、しっかり消毒をするほうがいいと言われています。日本では生後3カ月までの発熱は他の月齢の子と比べても注意が必要であり、すぐ受診しましょうと指導されています。そのため、生後3カ月までの哺乳瓶消毒が推奨されています。 生後3カ月以降の赤ちゃんは、自分の手をなめたり、哺乳以外にも何かに接触する機会が増えます。もちろんおもちゃなど手に触れるものは清潔にしておいた方がいいのですが、無菌状態にすることは不可能です。そのことからも、生後3カ月以降は、哺乳瓶の消毒は必ず必要ではなく、赤ちゃんの状況をみて判断していいでしょう。 意外と知らない!? 哺乳瓶消毒のポイント 哺乳瓶の消毒方法は、煮沸消毒でも薬液消毒でも、スチームによる消毒でも大丈夫です。まず第一に、消毒の前に、菌の温床であるミルクの残りかすをしっかり流すことが大切です。中性洗剤を使用して哺乳瓶用ブラシでしっかり汚れを洗い流しましょう。 また、洗剤で洗うときのスポンジやブラシは、しっかり水を切って乾かし、清潔に保つようにしましょう。お湯(水よりお湯の方が良いと推奨されていますが、水でもOKです)でしっかりすすいだあと、消毒をします。 食洗機で洗えば「消毒不要」ですCDC(アメリカ疾病予防管理センター)は、食洗機による洗浄や乾燥を行えば消毒は不要とされています(高温で洗浄、乾燥させるため)。食洗機で洗う際も、しっかりミルクかすを落としてから洗浄をしましょう。 哺乳瓶を取り出すタイミング厚生労働省の『乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン』によると、哺乳瓶を使用する直前に取り出すことが最良だと記載がありますが、授乳ごとにミルクを使わない人であれば、消毒が終わったあとは清潔な場所に保管するようにしましょう。私は薬液消毒をしていたので、次の授乳まで薬液につけっぱなしでとり出してすぐ使うというパターンで使っていました。消毒には薬液に1時間以上浸けておく必要があるのですが、1時間に満たなくなりそうなときは別の哺乳瓶を使っていました。 使わないほうがいいものCDCのマニュアルによると、食器用ふきんやペーパータオルを使わないようにしましょうとも書かれています。どの消毒方法の場合も、消毒した哺乳瓶は自然乾燥するか、乾燥機を使うといいと思います。薬液消毒であれば、取り出すときは手ではなく、キッチン用トングを使うことが推奨されています。 消毒の頻度消毒の頻度ですが、CDCのマニュアルでは、1日1回、もしくはそれ以上はしましょうと推奨されています。つまり、菌のバイオフィルム(微生物が固相表面に形成した集合体)を作らないことが目的なので、生後3カ月未満の赤ちゃんが使用する哺乳瓶は1日1回は消毒しましょうということですね。生後3カ月以上は消毒不要です。 哺乳瓶の消毒方法まとめ①消毒の前にしっかり洗剤で洗うことが大事②消毒方法はどれでも大丈夫③哺乳瓶は消毒後すぐ使用するか、すぐ使わない場合は保管場所も清潔に保つ。ふきんは使わない(煮沸やスチームの場合、やけどに注意)④生後3カ月未満の場合、1日1回は消毒する ミルク作りで気をつけたいことせっかくきれいに哺乳瓶を消毒したとしても、ミルクを作るときに菌に汚染されてしまっては元も子もありません。ミルクを作るときに汚染されやすいのが「サカザキ菌」。サカザキ菌は70度以上で完全に死滅するので、70度以上のお湯で調乳することが大切です。 高温によるビタミン破壊が心配されたりしますが、高温によりビタミンが減っても赤ちゃんに必要なビタミンは充足されていた、という研究結果があるので、しっかり高温でミルクを作ってください。 手間を省いて育児を少しでもラクに免疫力の弱い赤ちゃんを守るためにやっている哺乳瓶の消毒。今までの方法と比べて頻度ややり方など、少しでも手間が省けそうなところはありましたか? 私も食洗機で洗うときは消毒を省略したり、ちょっとでもラクできそうなところは取り入れつつ、清潔な哺乳瓶でミルクを飲んでもらえるように工夫していました。ミルクの授乳は毎日のことだからこそ、回数も多くて面倒でおっくうになってしまいがちですが、ママやパパが少しでもラクに、かつ安全に子育てができることを願っています。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年08月26日子どもの病気については、自治体でもらった資料を読んでわかったつもりになっていました。けれど、それはあくまでもつもりであって、実際に子どもが熱を出し小児科にかかるようになると、迷うことが多くあったのです。わからないことがあると不安になり、冷静さを失います。私の迷いから、子どもにつらい思いをさせてしまったときの体験談です。 薬はまだ残っている子どもが1歳を過ぎたころから、熱を出すようになりました。1歳3カ月ごろ発熱で小児科にかかると、特に検査をすることもなく医師から「風邪でしょう」と言われ、5日分の薬を処方されました。 それまでは2日もすれば熱も下がったのですが、そのときは3日経っても熱が下がらず、子どももつらそう……。薬はまだ残っているし、水分も飲んでいる、だけど良くなってるようには見えない。心配と不安から冷静さを失ない、ただ、オロオロとしてその日を過ごしました。 血液検査を受ける初めの受診から4日目となる翌日の午前中、子どもの様子が変わらないので、小児科を再受診しました。そこで血液検査をすると、炎症の程度と白血球の数から細菌感染の可能性が大きいと告げられたのです。 そして違う薬が処方され、子どももその夜はぐっすり眠り、翌日には熱が下がって元気になっていました。熱が下がりひと安心したものの、「もっと早く再受診していればつらさを長引かせずにすんだのに」と、申し訳ない思いでいっぱいになりました。 自分なりのルールを決めました再受診の検査や薬の処方が変わった経験をきっかけに、医者から指示がなくても自分から聞くことをリスト化しました。 1.このあとたどるであろう経過の様子2.再受診が必要だと判断する目安3.保育園に行ってもよいと判断する目安 以上の3つです。病院がどんなに混んでいて医師が忙しそうであっても、子どもに必要以上に苦しい思いをさせないために、これだけは聞くようにしています。その甲斐あって、今では私も不安になる頻度が減り、再受診の遅さを悔やむことはなくなりました。 今は毎日元気に走り回っていますが、あのときのことを思い出すと頼りにならないお母さんでごめんね、と心の中で子どもに謝っています。一方で、自分なりの受診ルールを決める大切さも感じた出来事でした。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 先輩ママの体験談、いかがでしたか?「共感した」「私の場合はこうだった」など、ぜひベビーカレンダーサイトのコメント欄にご感想をお寄せください。また、ベビーカレンダーでは皆さんから募集した体験談を記事でご紹介させていただくことも。ベビーカレンダーに会員登録すると届くメルマガから、皆さんのオリジナル体験談をご応募ください。 著者:小原水月1児の母。管理栄養士免許取得。「健康が人生をわくわくさせる」をモットーに食と健康の分野でライターとして活動中。高齢出産後、生まれ育った都心を離れ夫の実家がある地方都市へ移住。義母と同居。
2020年08月03日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。今年の暑さは去年ほどではないものの、雨が多いのもあってムシムシ度はすごいですね。屋外の炎天下じゃなくても、家の中でも熱中症っぽい症状の患者さんを今年はちらほら見かけます。今回は本格的に暑くなってきたときに気を付けてほしい、「ベビーカーでの熱中症対策」についてお伝えします。 赤ちゃんは熱中症になりやすいご存知の方も多いかとは思いますが、小児は成人より体の中の水分比率が多く、かつ体積がそもそも小さいので、少し水分を失っただけでも、大人よりも水分喪失の影響が大きくなります。 体積が小さく、体重あたりの表面積は広いため、外気温に体温が影響されやすいという側面もあります。そのため、ちょっと汗をかいただけでも熱中症になりやすいのです。今年は「朝起きたら熱中症症状だった」という子もたくさん診察しています。 ベビーカーは大人が感じるよりもずっと暑い熱中症の危険因子として、暑さ指数(WBGT)が使われることが多いですが、その暑さ指数の測定は、大人の身長に近い150cmを指標にしています。環境省の「熱中症予防情報サイト」によると、「子供、車いすの方を想定した50cmの高さでは大人を想定した高さ150cmに比べ、暑さ指数は平均して0.1~0.3℃高くなります。風が弱く、日射が強いときには2℃程度高くなった事例もありました。また、子供・車いすを想定した50cmの高さでは大人の高さの150cmに比べ、地表面の影響を受けやすいため、体感温度はさらに高くなります。」と警告しています。 例えば、気温32℃のとき、幼児の身長50cmの高さでは35℃を超えるそうです。地面から近いベビーカーに乗った赤ちゃんの体感温度は、大人よりも高いのです。さらに、日焼け対策として幌(ほろ)などの日除けを使ったりすると、ベビーカーの中は温度がさらにこもるため、大人が感じるよりもずっと暑い環境にいる可能性があります。 熱中症の症状チェックポイント 以前、熱中症の記事を書いたときにもお伝えしましたが、熱中症は三段階で症状が悪化します。 第1段階●汗だくになる●水分を欲しがるこの段階であれば、水分をとって体を冷やしてあげれば、熱中症というほどにはなりません。 第2段階●発熱したみたいに体が熱をもってくる●機嫌が悪い●少しぐったりしてくる屋外でこの状態に気がついたら、すぐに涼しい場所へ移動し、水分が摂れそうならしっかり水分補給をします。また同時に、脇の下や首のうしろを、氷枕などを使って冷やしてあげてください。 第3段階●汗も出なくなることがある●ぐったりしている●意識が低下することも熱が高くこの状態になっていたら、赤信号です。すぐに病院を受診しましょう。赤ちゃんは大人よりも脱水になりやすいので、急激に症状が出ることもあります。暑い日はこまめに状態をみてあげてください。 また、体温が40℃を超えている、意識障害やけいれんがある場合は、すぐに救急車を呼んでください。 お子さんに上記の症状がないか、暑い日はよくチェックしてみてください。風邪症状など何もなかったのに、急に元気がなくなるのは熱中症のサインということもあります。 暑い日にベビーカーでお出かけするポイント①一番暑い時間帯は避ける11時から16時までが熱中症発生リスクが一番高い時間帯です。特に、一番気温の高い14時前後のお出かけは避けたほうが良いでしょう。 ②こまめに様子を見る & 水分補給とにかくこまめな水分補給を心がけましょう。夏でも、赤ちゃんは母乳かミルクだけで大丈夫ですが、しょっちゅう授乳するのが難しい場合や特に暑い日などは、麦茶などを準備しておいて、10分~15分おきなど、とにかくこまめに飲ませるようにしましょう。水分補給と同時に顔色なども見て状態をチェックしましょう。ずっとベビーカーに座らせっぱなし、寝かせっぱなしではなく、たまに抱っこをしたりしてベビーカーから出してあげると、赤ちゃんがどれだけ汗をかいているか、体が暑くなりすぎていないかなどもチェックできて、さらにベビーカー内の気温も下げることができるので良いでしょう。 ③風通しをよくする風通しが良いと、ベビーカー内の気温上昇も防げます。日除けカバーの使用も注意した方がいいのですが、幌をガバッとあけて直射日光を浴びるのも良くないので、日陰を作りつつ、風の通り道を作るようにしましょう。 携帯用扇風機なども有効だと思います。その場合はお子さんが扇風機の羽を触らないように工夫してくださいね。 ベビーカーに敷くひんやりとしたシートを敷いたりするのもいいですが、効果は限定的です。ベビーカー内の気温調節や水分補給をメインで気をつけて、補助的にグッズを利用する気持ちでいましょう。 外出は、赤ちゃんにとって家では味わえない刺激を与えることができ、体力づくりにも良いです。しっかり対策して、安心してお出かけできるといいですね。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年07月30日外出を控えたいときの予防接種はどうする?イラスト:ヤマハチ予防接種はできるだけ延期しない新型コロナウイルスのように予防接種がない病気が流行すると、人々の生活が制限され、世の中に不安が広がることを実感した人も多いでしょう。予防接種は必要だとわかっていても「この時期に病院を受診しても良いのか」と不安に思う保護者の方もいらっしゃると思います。子どもの予防接種は時期がある程度決まっていますので、私が医師を務めるクリニックにも「予防接種はどうすれば良いか」という問い合わせはよくあります。問い合わせをいただくすべての方にお伝えしているのですが、予防接種は延期すべきではありません。予防接種を延期することで、防げるはずの感染症を防ぐことができず、また他の人への感染源にもなってしまう場合もあるからです。予防接種で防げる病気はすべて予防接種で防ぐことが原則です。接種期日とスケジュールに注意しよう予防接種を延期することで公費による接種期間を過ぎてしまい多くの費用がかかってきたり、接種ができなくなったりする場合があります。例えば、ロタワクチンについて初回接種は14週6日までに接種しなければなりません。時期を過ぎると接種できず、万が一ロタウイルスに感染すると嘔吐・下痢から脱水症状を起こして入院が必要になる場合もあります。子どものためにも保護者のためにも、予防できる病気はできる限り予防していきたいですね。スケジュールや当日の体調については、かかりつけ医に相談すると良いでしょう。乳児健診には行ってもいいの?イラスト:ヤマハチ乳児健診を延期することのデメリット乳児健診も予防接種と同様に、できるだけ延期しない方が良いでしょう。1ヶ月健診、4ヶ月健診など発達のキーとなる年齢には健診が設定されており、病気の早期発見や時期に応じた保健指導がなされます。延期することで病気の発見が遅れたり、時期にあった相談ができなくなったりするというデメリットがあります。新型コロナウイルスの影響で集団予防接種や集団健診が一時中止になった自治体がありましたが、状況は刻々と変化しています。現在では、集団予防接種や集団健診を再開している自治体もありますので、受診の際には各自治体の情報を確認しましょう。個別受診をするときの病院の選び方は?新型コロナウイルスの感染が収束していない今、外出して病院を受診することに抵抗を持つ保護者の方は多いと思います。感染リスクをできるだけ減らすため予防接種や健診の時間を分けていたり、一般の診療スペースとしっかりと分けていたりする病院を選ぶと良いでしょう。日本小児科学会のサイトで、予防接種や集団健診を受診する際の注意点について述べられていますので参考にしてくださいね(※1)。子どもが体調を崩したら病院を受診してもいいの?イラスト:ヤマハチオンライン受診を活用しよう病院の受診についてはどうするべきでしょうか。定期的に使用している薬の継続であれば、クリニックによっては電話再診やオンライン診療が可能です(※2)。現在、新型コロナウイルス感染症拡大による特例で制限が緩和され、利用しやすくなっています。かかりつけ医が対応している場合は、感染リスクなく受診することができますよ。急に症状が出てきたら?ただし発熱や咳、腹痛など急に出てきた症状に対しては、対面で診察できない電話やオンラインでの診療は難しいと、個人的には考えています。まずは、電話やオンラインでも診療が可能かどうかを医療機関に問い合わせるのが良いでしょう。子どもの様子を見ていて少し具合が悪そうだなと感じても、現在の感染状況から受診をためらう人も多いでしょう。緊急性のある症状かどうかは、日本小児科学会の「こどもの救急」のサイト(※3)を参考にしてくださいね。外遊びのメリットと気をつけることイラスト:ヤマハチ外出は避けるべき?ここまでは医療機関への受診について述べました。では日常生活の外出はどうでしょうか。現在の状況では新型コロナウィルスの感染リスクがある限り、極力自宅で過ごす方が正解となりがちです。しかし、ずっと自宅にいることで子どもたちは運動不足になったり、ストレスが溜まったりすることでしょう。極力「Stay Home」を心がけつつ、できるだけ感染リスクが少ない方法で外出を取り入れるのが現実的な対応ではないでしょうか。日光に当たることも大切子どもたちにとっても大人にとっても日光に当たることは大切です。カルシウム吸収を助けるビタミンDの生成のためには、適度に日光に当たることが必要となります。運動と日光浴を兼ねてお散歩をしてみましょう。ただし感染のリスクをできるだけ減らすために、人通りが少ない場所や時間帯を選ぶなど可能な範囲の工夫をしましょう。公園遊びで気をつけること公園遊びはどうでしょうか。大きな公園には比較的人が集まりやすいですし、遊具での遊びは「密」が生じやすいです。公園によっては遊具が制限されていることもありますよね。屋外の公園であっても感染する可能性はありますので、人が少ない小さな公園を利用したり、人が密集している遊具は避けるようにしたりしたが方が良いでしょう。ぱぱしょー先生ご一家の「Stay Home」子どもの成長のためには外で遊ぶことも必要ですが、雨が降る日があったり、暑くなる日も増えてきたりと、外遊びができないときもありますよね。我が家では、お家遊びとしてシルバニアのおもちゃや、ドリル、ピアノ、お料理などできることをしています。とはいえ、子どもは身体を動かさなければイライラが募りますし、大人も辛いでしょう。そんなとき我が家では可能な範囲で感染対策をしながら、お外を散歩していますよ。子どもに上手に手洗いをさせるには?イラスト:ヤマハチ絵本や動画を活用して手洗いをする正しい手洗いの方法などは、各メディアでも紹介されています。動画を使うのも良いですし、手洗いの方法や意味を説明した絵本もあります。我が子も何回も手洗いをするうちにだんだんと上手になってきました。ただし、頻回に手を洗ったり、アルコール消毒したりすることで子どもたちは手が荒れやすくなっています。ワセリンやハンドクリームなどで保湿してケアをしていきましょう。「うがい」は必要?手洗いとセットで行う人が多いのが「うがい」ですよね。うがいについては小さな子どもは上手にできないかもしれません。しかし、厚生労働省が勧める予防策の中にうがいは含まれていないので(※4)、無理にさせる必要はありませんよ。 うがいが上手でなくてもまずは手洗いや咳エチケット、3密を避けることで感染対策になります。感染症対策を継続しよう!2020年5月14日、東京都、大阪府など8都道府県を除く、39県で緊急事態宣言が解除されました。それに続いて、感染者が特に多かった8都道府県についても5月末に緊急事態宣言が解除されました。しかし、東京を中心に人の行き来が出てきたことで、7月には1日の感染者が過去最高となってしまいました。手洗いを中心とする感染対策、可能な範囲で人混みを避ける対策は、今後も年単位で必要になっていきます。これらの対策は新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザやノロウイルスの流行防止にも役立つので、それぞれができる範囲で継続していくと良いでしょう。ぱぱしょー先生によるお役立ち動画はこちら!YouTubeのままのてチャンネルでは、専門家の先生による育児に関するお役立ち情報を配信しています。ぱぱしょー先生の動画も好評配信中!チャンネル登録をよろしくお願いたします。パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム著者:加納友環(ぱぱしょー)二児(2歳、4歳)の父で小児科専門医。TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。
2020年07月29日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。そろそろ梅雨明けして日差しが強い季節になってきました。ママたちからも日焼け止めの質問を受けることが多くなってきました。 私が普段診療していて「日焼け止めを塗らなくていい子が塗っていて、塗った方がいい子が塗れてないな」と思っています。今回は、日焼け止めの正しい認識と使い方についてお話ししたいと思います。 生後半年未満の赤ちゃんは、日焼け止めを塗らなくていい!1カ月健診でママたちから一番多い質問は「日焼け止めは、どれを使ったらいいですか?」というものです。市販の日焼け止めは、子ども用でもほとんどのものが「生後6カ月から」の記載が多いです(日焼け止めの処方は基本ありません)。生後1カ月から使えるものもありますが、生後1カ月では歩いたりしないので、直射日光に長時間さらされることはあまりありません。 生後半年までは、ベビーカーの幌(ほろ)や、抱っこのときは日傘などで直射日光を避けてあげれば、日焼け止めは塗らなくて大丈夫です。逆に、直射日光を避ける外出をしているのに日焼け止めをしっかり塗ってしまうと、太陽が皮膚に当たることによって体内で合成される「ビタミンD」ができなくなってしまうので、ビタミンD不足による「くる病」になってしまうおそれがあります。日本でもくる病の増加が指摘されてきているので、過度の日焼け止めは避けましょう。 日焼け止めの最大の目的は「皮膚がん予防」! 日焼けのデメリットは、強度の日焼けによる皮膚がん発症リスクの増加です。ほかには、シミやしわなど皮膚の老化も進みます。今後ますます長寿化・高齢化していくので、長期的な視線で見ると、女の子だけでなく男の子もきちんと日焼け対策をすることが大切です! わが子も夏はかなり日焼けしますし、公園では真っ黒に焼けた男の子もたくさん見ますが、将来のためにも、外遊びが多い子こそ日焼け止めを活用しましょう。 日焼け止めの選び方、おすすめは?日焼け止めはさまざま種類がありますが、紫外線防止剤の成分としては「紫外線散乱剤」と「紫外線吸収剤」の2つがあります。お子さんには、肌への刺激が少ない紫外線散乱剤の方がオススメです。また、日本小児皮膚科学会でオススメしている日焼け止めは① 「SPF15以上」、「PA++~+++」を目安普通の生活においては、むやみに SPF の値の高いものを使う必要はありません。② 「無香料」および「無着色」の表示があるもの③ プールでは「耐水性」または「ウォータープルーフ」の表示があるものとあります。 肌に塗るものなので、なるべく刺激にならないものを選びたいですね。プールでは水を汚染してしまうことがあるため、ウォータープルーフタイプの日焼け止めを選びましょう。 日焼けは、こんな時に注意して!紫外線は4月から9月が強く、かつ1日のうちでは10時から14時が強くなります。なので、この時間の外出はそもそも避けた方が無難です(夏は熱中症の心配もありますしね)。紫外線が強い時間帯に外出する場合は、しっかり日焼け止めを使いましょう。 特に長時間外にいることが多いプールなどでは、日焼け対策として日焼け止めを塗るだけではなく、ラッシュガードやテントなどを利用して、ジリジリ日焼けを予防するものありです。 ビタミンDも十分で、皮膚ダメージも影響が少ない日焼けはどのくらい? 最初にお伝えした「ビタミンDがしっかり作られ、かつ皮膚のダメージがない日焼け」は、夏の紫外線が強い正午で、顔と手の甲が直射日光にしっかり当たって25分と言われています。一番紫外線が弱い季節で3.3時間くらいと言われています。夏は顔と手の甲以外も露出しているため、25分よりもずっと短い時間でビタミンDは足りることになります。 お子さんが歩き出して公園などに外出するときは、きちんと日焼け止めを塗りましょう。また、軟膏や保湿剤もそうですが、日焼け止めも多くの人が「塗り方が足りない」と言われています。 正しい塗る量は「皮膚がペトペトになるくらい」なのですが、それだと嫌がる子も多いのが難点です。なるべくしっかり量を塗る、2~3時間に1回こまめに塗り直すなどの工夫も必要です。 健康で、かつ余計な手間は増やさない外出ライフを!紫外線の影響が以前よりも強くなってきているため、外出時は何かしらの日焼け対策は必ず必要です。ですが、どんな子でも日焼け止めを毎回塗らなくてはいけないのではなく、日傘や幌、ラッシュガードを着ることや日陰を歩くなどの工夫も日焼け、紫外線対策です。正しい知識で手間をかけすぎることなくお出かけを楽しめたらいいですね。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年07月27日「子どもはかわいいし、きちんと育てたいと思っている。でも…」家の中でずっと子どもと相対していると、逃げ場がなくなって心が折れてしまいそうになる親は少なくありません。育児ノイローゼ、産後うつなどにならないためにはどうしたらいいのでしょうか?小児科医で2人のお子さんのお母さんでもある森戸やすみ先生は、そういった子育ての不安やイライラ、焦り、迷いを抱えるお母さん・お父さんに向けて、SNSやさまざまな医療メディア、そして著書 『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』 (内外出版社)などで子育てが楽になるヒントやアドバイスを発信してきました。そんな森戸先生に、お母さん・お父さんが日頃感じている子育ての悩みやつらさはどうして起こるのか、それを軽減するにはどうしたらいいかなどお話をうかがいました。●森戸やすみ(もりと・やすみ)先生小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、2020年6月1日、東京都台東区に『どうかん山こどもクリニック』を開業。『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(内外出版社)など著書多数。二児の母。Twitter: @jasminjoy Facebook: ■自分の子育てを自分で責める、あなたの中の「インナー姑」――子育ての悩みにはいろいろありますが、お母さん自身が自分を責めてしまっている、先回りして自分を制してストレスがたまっているケースはないでしょうか。森戸やすみ先生(以下、森戸先生):そうですね。私はそれをインナー姑と呼んでいます。現実に姑から注意されたわけでもないのに、自分の子育てを責める自分がいるんですよね。例えば、お母さんは出産後に美容室へ行くのも申し訳ない、誰に子どもを頼もうかと悩むでしょう。でも、想像してみて欲しいのが、夫も同じ理由で悩むでしょうか? 「子どもが生まれたばかりなのに申し訳ない」と思いながら理容室へ行くでしょうか?お母さんは育児に一生懸命で責任を感じているから、自分ばっかり背負ってしまうところがあります。でも、子どもの親はお母さんだけではありません。1人ですべてを背負いこむことはないのです。――そうですよね。どうしてお母さんの中にはインナー姑が存在してしまうのでしょうか?森戸先生:「子どもの頃から子育てはお母さんがするもの」と刷り込まれているため、そういった社会的イメージにとらわれてしまうのかもしれません。この前、取材で会った方の『子どもができたら以前のように夫にいろいろやってあげられないのが申し訳ない』の言葉に私、ポカンとしちゃって(笑)。家族が1人増えたんだから、今まで通りにはいきません。親になるのはお母さんだけではなくお父さんもなんですから、夫にも自分のことは自分でしてもらうのは当然で、今までのように受け身で待つのはおかしいですよね。――先生のおっしゃる「社会的イメージ」というのは、小さい時から蓄積されてきた良妻賢母のイメージだと思います。それはお父さんとお母さん両方が持っていると思いますが、どうやって切り替えていけばいいのでしょうか。森戸先生:女性は、将来こういう風に子育てをしたい、こういう家庭にしたいと具体的に考えている方が多いように感じますが、男性でそこまで考えている方は少ない印象です。そのため、お父さんは子育てをしながら自分の育児観をつくっていくのでしょうが、その過程で前の世代の刷り込みが出てきてしまうのでしょう。私の場合、小児科医として時短で働いていましたが、夫の衣類をクリーニングに出そうとしたとき、『これって私がしなければいけないこと?』とふと気づいた瞬間がありました。私は子どものために時短勤務をしているわけで、夫のためではない。どうして私だけが仕事をセーブしなければいけないの? これはおかしいと気づいたのです。――でも、お母さんは気づいてもお父さんのほとんどは「それはおかしい」とは気づいてくれませんよね(笑)。森戸先生:それは、誰からも言われないからでしょう。ずっと妻が不機嫌で口をきいてくれないのはどうしてだろう? とは感じることはあっても、それがワンオペ育児で疲れているから、不満があるからとは想像できないのです。だから、『家族が1人増えたのだから物理的に私1人でこなすのは無理です』と伝えた方がいいです。そういう夫へのアドバイスや指導を子どもが生まれる前にできるといいのですが、医療機関にそのインセンティブ(意欲を引き出すための外部からの働きがけ)は残念ながらありません。医療行為ではないから診療報酬につながらないため、ほとんどの両親学級や父親学級でそういった指導は行われていませんね。――「まだ大丈夫」と無理をして体調を崩してしまうお母さんもいますよね。そうなる前に、自分で限界ラインが判断できるポイントはありますか?森戸先生:例えば、食べられない・眠れない場合はかなりつらいい状態だと思います。でも、妻がそんな状態になっていたら、夫に先に気づいてほしいですね。夫がそれに気づかないのは、コミュニケーション不足。育児に大変そうな妻に『大丈夫?』の一言も声もかけられないのだとしたら、それは家族とは言えませんよね。■仕事で子どもに「ちょっと待って」と言う罪悪感――今回のコロナ禍で、保育園から「なるべく登園させないようにご協力ください」と要請されたという話も聞きました。森戸先生:そう言われてしまうと、真面目な保護者ほど『先生たちが大変だから行かせないようにしよう』と頑張ってしまいますよね。そういったときのためにも、預け先の選択肢はなるべく多く持っておくといいです。『預けようと思えばいつでも預けられるけど、まだ大丈夫だからうちで見る』という状態で子どもを見るのと、『私しか子どもを見る人がいないから見るしかないんだ』というのとでは心の余裕が大きく違いますから。――家で子どもを見ながらテレワークをしていたお母さんは「仕事だからちょっと待ってて」と子どもに言わなければいけなかった状況も多かったと思います。そうやってプライベートと仕事が混同する生活は、子どもに負担をかけることになるのでしょうか?森戸先生:それは、『ちょっと待ってて』と言う理由が仕事だから、お母さんが罪悪感を持ってしまっているだけではないでしょうか。どんな場合でも、緊急度の高い順からお母さんは対応せざるを得ないので、それは仕事に限りませんよね。例えば、下の子のお世話をする場合でも上の子に『ちょっと待ってて』と言っていると思います。上の子がいろいろお母さんに話しかけていても、下の子がお椀をひっくり返した、うんちがおむつからはみ出したなどの一大事だったら『ちょっと待ってて』と、そちらにかかりきりになりますよね。それは仕方のないことで、仕事だから特別子どもが傷つくということはないと思います。――確かにそうですよね。それでも罪悪感を持ってしまうお母さんは、自分の気持ちをどうコントロールしていけばいいでしょうか。森戸先生:先ほども言いましたが、『夫も同じように罪悪感を持つだろうか? どうして私はそう感じるんだろう?』と冷静に想像して、子どもや子育てに対して距離を置いてみて欲しいのです。テレワーク中の夫は、ウェブ会議だからと子どもを部屋から締め出しても、おそらく罪悪感は抱かないと思うのです。男性はそれができるのに、どうして私は罪悪感を抱えるのだろうと客観的にとらえるとイライラしなくなるのではないでしょうか。生きていくためにはお母さんも仕事をしなければいけないし、子どもにも協力してもらわなければ共倒れになってしまいます。子どもと仕事、どちらも大切で責任感を持っているからこそ罪悪感が生まれるのであって、一時的にどちらかを優先してしまうことは仕方のないことです。子どもが理解できる年齢かにもよりますが、お母さんもお父さんと同じくらい一生懸命仕事をしていること、だから協力して欲しいことを子どもに伝えるのはいいですね。子どもに説明することで、お母さんが自分で自分を納得させるという効果も期待できます。――コロナ禍のテレワークで、子育てをお母さん1人ですることがどれほど大変か理解できたというお父さんの声も耳にします。お父さんは次にどういった行動に移ればいいと思いますか?森戸先生:今回のことをきっかけに、また保育園が預かってくれなくなった場合はどうするか、もし親のどちらかが病気をしたらどうするか、もし勤務先が倒産したらどうするかなど、もしものときへの備えについてこの機会に話し合ってはいかがでしょうか。■「夜が来るのが怖い…」寝かし方が間違っていたかも!?――なかなか子どもが寝てくれない、夜泣きがひどいなどで「夜が来るのが怖い」というお母さんが多いようです。森戸先生:アジア全域では、子どもに添い寝して家族みんなで寝るのが一般的ですね。日本もしかりで、赤ちゃんが寝るまで親は寝かしつけをし、夜泣きをしたら抱っこしてあやすなどをお母さんはしているでしょう。しかし、寝つくまでに何時間もかかる、夜泣きで度々起きなければいけないなどで、お母さんの多くは「夜が怖い」と感じてしまいます。そういった生活が続き寝不足になるお母さんが陥りやすいのが「産後うつ」や「育児ノイローゼ」です。実は、このお母さんの行動こそが赤ちゃんが寝つきにくく、夜も頻繁に起きる原因ではないかといわれています。子どもとしたら、起きている限りお母さんはずっとそばにいてくれるし、泣けばずっと相手をしてくれるわけですから。なかなか寝なくなるのは当然かもしれません。日本流の寝かしつけや夜泣き対応をしていると、子どもは1人で寝る学習がなかなかできないわけです。――夜泣きについて、先生は著書で「消去法」を推奨されていますね。森戸先生:消去法というのは、欧米で取り入れられている子どもの睡眠方法。生まれて数日したら親子は別々の部屋で夜を過ごし、子どもは1人で寝る練習をするというものです。この消去法では、赤ちゃんが泣いてもなるべく手を出さないようにして様子を見ることが大事。まるっきり一人にする必要はなく、赤ちゃんの様子を観察しつつ、なるべく抱っこしないようにします。そうすることで、一人では眠れない、泣いたらママが来てくれるといった入眠の誤学習を防ぐ方法です。眠りのトレーニングを生まれてすぐすることで、こうやって眠ればいいんだと子どもは生後3〜4カ月までには習得するようです。――泣いても相手をしてあげないと、愛情を感じずサイレント・ベビー(無表情で言葉も遅い赤ちゃん)になってしまうのではないかと心配するお母さんもいるようです。森戸先生:このサイレント・ベビー説は日本で長年信じられてきた育児神話の一つですが、医学的根拠が大変薄いのです。一小児科医が提唱した考えなので科学的根拠もありませんし、その説が正しいとしたら、消去法を取り入れている欧米の子どもはみんなサイレント・ベビーになってしまいます(笑)。赤ちゃんが夜、長時間ぐっすり寝られるように、海外には、夜用の腹持ちのいいミルクもありますよ。日本では、母親が子どものために尽くすことが美徳のようにいわれますが、お母さんも人間なので睡眠はとても大事です。生活リズムを子どもに合わせていたら寝られないし働けないというのなら、そこは大人に合わせてもらうのでいいと思います。子どもの安全を確認しつつ、一人で寝かせてもいいのではないかと考えます。例えば、夜8時に寝かしつけを始めたけれど、結局10時まで寝ないというお母さんが相談に来られるんですけど、その2時間があったらお母さんはいろいろなことができますよね。夜8時に寝かせようと頑張る母親と絶対に寝ないと頑張る子どもの戦いが毎日(笑)。それなら、9時半に寝かしつけるようにしてもいいと思うのです。育児が思い通りにならないと、イライラしてキーっとお母さんもなってしまいますよね。それでは、お母さんも子どももお互いがつらくなってしまいます。それより、多少理想とは違う子育てになっても、お母さんと子どもの両方が楽でうれしい方を選んでいいと思います。例えば『完璧なおやつを手作りしたいからキッチンへ来ないで』と子どもを追い出すよりも、2人でスナック菓子でも食べていた方がお母さんも子どもも幸せではないでしょうか。インナー姑に従って自己満足のためにやる育児ではなく、子どもと親の両方が笑顔で過ごせる方法は? という観点で優先順位を考えた方がいいですね。■「叱った後はやさしく抱きしめる」は本当に正しいの?――子どもへのしつけですが、よく育児書に「子どもを叱った後はやさしく抱きしめてあげましょう」と書いてありますが、その通りなのでしょうか? それは、DV夫が暴力・暴言の後に「ごめんね」と妻にやさしくなるのと一緒ではないかとモヤモヤするお母さんもいるようです。森戸先生:そうですね、叱られてすぐに抱きしめられたら、子どもは混乱しそうですよね。さっきまで叱っていたお母さんが急に抱っこするので「どうして?」と子どもは思います。それに、最終的にやさしく抱っこされるのなら、子どもは何をしたら叱られるかという基準がわからなくなるかもしれません。それに、大きな声やきつい言葉で叱るなどはエスカレートしやすいですし、人前で恥をかかせる行為にもなるので、子どもには逆効果となります。好ましくない言動をしたらお母さんがかまってくれると子どもが誤解しないように、叱るのではなく目を合わせない、話しかけても答えないなど、「無視」が効果的だといわれています。また、タイムアウト法といって、子どもを別部屋に連れていくなど1人にして考える時間を与えるというのも保育園などで取り入れられています。ただし、ほかの人や物、自分自身にも害が及ぶような危険な言動を子どもがした場合には、直ちに止める必要があります。――叱らず相手にしないのが効果的とのことですが、おでかけ先で子どもが泣いたり暴れたりしたとき、親が叱らないと「何だあの親は」と周囲は思いますよね。森戸先生:日本では、周囲へのパフォーマンスとして親の強く怒ってる姿を見せなければいけないというのがあるかもしれませんね。周囲に迷惑をかけるようなら、乳幼児の場合は外に出る、あやすなどの対応をし、言い聞かせることができる年齢の子なら、繰り返し穏やかな声で「静かにしなさい」と短くわかりやすく指令を伝えるブロークンレコードという手法をおすすめします。ただし、周囲へのパフォーマンスとして大声で強く叱ったりする必要はありません。でも、そういった子連れに対して文句を言う人たちは、手を貸してくれるわけではないですし、何か起こったときに責任を取ってくれるわけでもありません。だから、お母さんはあまり気にしなくていいと思います。実は、そういった文句だけの人は少数派だと思います。多くの人が『子どもが泣いてお母さん大変そうだな』『元気な子どもでかわいいな』って思ってる人の方が多いけれど、『うるさいな』というマイノリティーの言葉の方が目立つだけではないでしょうか。だから、そういうお母さんに対する周りの圧力みたいなものは気にしなくていいと思います。――家ではいろいろできそうですが、外では見逃してしまいそうです。森戸先生:それをしてしまうと、子どもは『外なら泣いたり暴れたりしても大丈夫』と覚えてしまうので、お母さんは外でも一貫性を示す必要があるでしょう。場所がどこであっても『やってはいけないことはやってはいけません。お母さんはもう知りません』という態度を示せるといいですね。なかなか難しいとは思いますが…。■イヤイヤ期の子育てがつらい、限界だというお母さんへ――2、3歳のイヤイヤ期の子を持つお母さんで、子育てが楽しく思えない、子どもをかわいく思えないというのは少なくありません。でも、そう感じてしまう自分をまた責めるという悪循環が生まれています。森戸先生:そう思うのは当然ではないでしょうか。例えば、自分もお父さんやお母さんから、いつも100%好かれていたと思いますか? 逆に、自分も親のことはすごく大好きだけど、すごく嫌いなときもありますよね。親から怒られたことがない、親が嫌で家出したいと思ったことがない人の方が少ないのではないでしょうか。子どもだから、家族だから100%好きでなければいけないことはありません。好きだけど嫌いという感情があるのは自然だと思います。――確かにそうですね。でも、頭では納得していてもイヤイヤ期の子どもにはイライラしてしまいます。それをやり過ごすコツや、自分をコントロールする方法はありますか?森戸先生:子どもに尽くそうと思わないこと。人間ですから睡眠も必要ですし、1日に1つは子どものこと以外の楽しみがあるといいですね。イヤイヤ期の子どもは暴言もはきますし、たたいてくることもあるでしょう。親であってもムカッとするのは当然です。そういった楽しみがなければ子育ては続きません。――ときにはお母さんが感情的になってしまうこともあると思います。森戸先生:いつも冷静に大きな声を出さずに子どもを育てるのは無理な話です。それでお母さんが罪悪感を持つことはありません。叱っても子どもに悪いことをやめさせる効果はないかもしれませんが、思わず大きな声が出てしまうのは仕方のないことです。うちもイヤイヤ期は大変でしたけど、当時はタイムアウト法など知りませんでした。でも、子どもが好ましくない行動をしたら無視する、応じられないものには毅然とした態度で受け入れないなど、今から考えるとタイムアウト法に近いことをやっていました。――そうなんですね。先生が子育てで一番悩まれていたのはどんなことでしたか?森戸先生:私は当直があったので『お泊まりで仕事行かないで』と娘が泣くんですよ。うちで子どもが泣いてるのに、病気の子を診なければいけない自分にすごく罪悪感を持っていました。でも、病院には私をすごく必要としてくれる子がいるのに、行ってあげられないというのも嫌だったんです。ですから、2人目が生まれた時には育休を長めにとったり、時短勤務に切り替えたりと働き方を考えました。――ということは、お子さんは0歳から預けられていたんですか?森戸先生:母に預かってもらうこともあったし、職場の保育室へ連れて行ったり、認可保育園に空きがでたら保育園へ。第一子のときは『預けて働くなんてごめんなさい』と思っていましたが、保育園の方が常に複数の先生がいらっしゃるし、相手は子育ての専門家。かわいそうなことは何にもなく、誤解だと気づきました。知らなかったからそんな不安があったんですね。3歳まではお母さん1人で子育てした方がいいといういわゆる『3歳児神話』は厚生労働省によってすでに否定されています(厚生労働省 『厚生白書(平成10年版)』 )。母親だけが育児をするものではないし、むしろ弊害があるケースがあるとはっきり提言を出しているのです。人は社会の中で生きていくのですから、小さい頃から社会に触れるのは大事だと思いますし、むしろ良い面の方がたくさんあると思います。今は、仕事を持つお母さんの方が専業主婦の倍以上いるのですから(厚生労働省 『厚生白書(平成30年版)』 )、子どもを保育園などに預けることは普通のことですよね。■自分の中の「インナー姑」を追い出すには?――自分の中の「インナー姑」を追い出すにはどうしたらいいと思いますか?森戸先生:日本の絶対は、世界の絶対ではないことに気づくことですね。外国人のお母さんに『赤ちゃんは毎日お風呂に入れてますよね?』と聞いたら『いいえ』と言われたことがありました。へその緒が取れるまでお風呂に入れてはいけないという国もあれば、北欧など寒い国では体を冷やさないように毎日お風呂には入れないそうです。子どもは毎日お風呂に入れるものと私にも先入観がありましたが、首も座らない赤ちゃんをベビーバスへ毎日入れるのは大変ですよね。目的は清潔を保つことだから、拭くだけの日があってもいいわけです。『これが絶対』と思わず、いろいろな価値観を知ると、日本古来の『インナー姑』はいなくなるのではないでしょうか。そういった意味でTwitterなどのSNSを利用したり、ネットを活用して情報を収集するのは良いと思います。例えば、母乳をよく出すと言われる食材は国によってバラバラで、決まった食材はないのです。日本ではごはんを食べるように言われますが、じゃがいもとかかぼちゃは食べるけどごはんは食べない国もあります。離乳食も、ヨーロッパはみんなじゃがいもですが、東南アジアはタロイモ、日本はおかゆ。それぞれでいいのだと気づきます。SNSやネットには嘘か本当かわからない情報も氾濫していますが、真偽が怪しいと感じたものは、コメントで質問したりするといいと思います。それで返事がない、リプライがもらえないようなら、そのまま信じずに保留で。そして、同じような意見を持っている人がほかにもいないかリサーチして、総合的に信用できるかできないかを自分で判断するようにしたらいいでしょう。「小児科医はもちろん、産科の先生や看護師、保育園や幼稚園、学校の先生など、子どもに直接関わる仕事をしている人でも、未だに医学的・科学的に根拠のない『育児神話』を唱える人が後を絶ちません。そういったママを追い詰める日本特有の『育児はこうであるべき』が早くなくなればいいと考えています」と森戸先生。その歯に衣着せぬ「子どもを100%好きでいなくてもいいのよ」「お母さんだけが育児を背負いこむことはありません」「できないことは仕方がないから無理しないで」という言葉の数々に救われたお母さんも多いでしょう。森戸先生の著書のタイトルの通り、「子育てはだいたいで大丈夫」。子どもとお母さん、そしてお父さんみんなが幸せなことが、その家族の育児の形なのではないでしょうか。■参考書籍 『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』 内外出版社/森戸やすみ著/1540円(税込)朝日新聞の医療サイト『アピタル』の連載「小児科医ママの大丈夫!子育て」をまとめ、大幅に加筆したた1冊。<参考サイト>厚生労働省: 「厚生白書(平成10年版)」 厚生労働省: 「厚生白書(平成30年版)」
2020年07月20日「読むこと」に苦手意識のある、ディスレクシアや発達が気になる全てのお子さんのために。学校で教科書を読む、知識を得るために本を読む、解くために試験問題を読む。お子さんの現在から将来に渡って必要となるのが、この「読む力」です。そしてこの「字を読むこと」に困難がある学習障害のひとつに、ディスレクシアというものがあります。字を読むスピードの遅さ、読み間違いの多さが特徴です。ディスレクシアに限らず発達が気になるお子さんにとって、「読む力」を育むことは生きる力を育むことに繋がります。でも一体、その「読む力」はどのように育むことが出来るのでしょうか?そこで今回は、医学博士の平岩幹男先生を中心として結成された「読みの学び直し」を支援するプロジェクトチームの代表の方に、ディスクレシアのことや「読む力」の育て方、そして今回開発された新しい学習法について、お話を伺いました。Upload By 発達ナビ編集部平岩幹男 先生医学博士。Editorial board: Austin Journal of Autism and Related Disorder。発達障害にかかわり続けて、これまでに多くの子どもたちと出会ってきました。1976年東京大学医学部医学科卒業。三井記念病院小児科、東京大学医学部研究生を経て帝京大学医学部小児科助手〜講師。1992年戸田市立健康管理センター母子保健課長〜参事・健康推進室長。2009年Rabbit Developmental Research開設(代表)。2012年〜2019年国立成育医療研究センター理事。専門領域:発達障害(自閉症)、乳幼児健診、思春期医学など。著作多数。脇坂龍治 様Team読むトレGO!代表、Edtech企業の(株)サムシンググッド社長。プリキュアなどのキャラクターを使った知育アプリの開発や英語学習ソフトを開発。発達性協調運動障害を抱えるお子さん向けにUooh!(ウー)運動療育ラボを2施設運営。「読む力」を楽しく伸ばすために開発された、「読むトレGO!」とは?この「読みの学び直し」を支援するプロジェクトチームが開発し、7月10日に発売開始されたのが『読むトレGO!』。ディスレクシアや読みの学び直しのために開発された、Nintendo Switch(TM) 対応のゲームアプリです。※1Upload By 発達ナビ編集部画面に表示された文字をマイクに向かって声に出して練習していきます。マイク+音声認識AIプログラム使用することで、正しく読めたかというフィードバックが即座にされることで、お子さんにとっての理解の促進だったり、もっとやりたいという意欲の向上につながります。Upload By 発達ナビ編集部その他にも、文字をバラバラに捉えるのでは無く一つのまとまりとして読むことや、音を聞いて正しい文字を使い分けるトレーニングをすることを通して、「読む力」を定着させていくことができる学習法です。開発チーム代表の脇坂氏に伺った、「ディスレクシアのお子さんにとって本当に意味のある学習の形」とは?ーーディスレクシアのお子さんの「読む力」をどのように伸ばしていけば良いか、悩まれているおうちの方も多いと聞きます。脇坂さん:「読む力」については学校のサポートにも期待したいところですが、日本の義務教育では「読み」と「書き」を同時に学習していきます。それは読みに困難を抱える子どもにとって、とても大変な学習法であると言わざるを得ないでしょう。その意味でもご家庭での関わりが大切となってきます。「読む力」を伸ばすために、私たちソフト開発陣が一番最初に先生方に教わった2つのことは、①まずは読みのトレーニングを中心にすること、 ②読みの学び直しの機会を提供すること、でした。ーーその2つの方法の実践として発売された、Nintendo Switch 対応のゲームアプリ「読むトレGO!」について教えてください。脇坂さん:「読むトレGO!」の特徴は3つあります。一つ目は発達障害分野の第一人者である医学博士の平岩先生との共同研究であること。専門家が一から十まで膨大な時間を割いて開発にあたるケースはとても珍しいと思いますし、それだけにディスレクシアのお子さんにとって価値あるソフトが開発できたと考えています。二つ目は、音声認識によるトレーニングであるということです。読みが苦手であれば少なからず書きにも困難が伴うはず。ですので、文字を見て→ノートに書いて→覚えるという学習方法は難しいこともあるのではないでしょうか。だからこそ、文字を見て音声で答える、これをリズムよく繰り返す事で、まずは読みに集中したトレーニングを積み重ねることができます。三つ目は、実証実験による効果をきちんと確認したのちに製品化していることだと思います。Upload By 発達ナビ編集部ーー実証実験の結果はどのようなものだったのでしょうか?脇坂さん:「読むトレGO!」では、ディスレクシアの診断(DSM-5thに基づく)を受けた児童10名程度を対象にした実証実験を、2回に渡り実施しています。4週間の実験用ソフトを活用したトレーニングを通して、なんと全ての児童の読みのスピードが向上し、2/3の児童は20%以上向上の数値が出ているんです。※2ーー確かな結果が出ているのですね。この「読むトレGO!」ですが、そもそも何故つくろうと思われたのですか?脇坂さん:私たちは教育×ITに特化した開発を行っているのですが、当社の役員の息子さんが自閉症ということがあり、以前から発達障害分野は身近に感じていたんです。私たちのIT開発力を、発達障害、ディスレクシアの分野に活かせないか?という相談を、平岩先生と始めたのが開発のきっかけでしたね。Upload By 発達ナビ編集部ーーそして平岩先生を中心に開発される中で、特にどのような点に気をつけながら進めたか教えてください。脇坂さん:やはり全ては子どもたちの反応を大切にすることですね。ディスレクシア診断のお子さん、そうでないお子さんにソフトを利用いただき、本当に多数の意見を頂戴しました。その中で先ほどの実証実験の結果も得ることができたので、それを自信に変えながら開発を進めていくことができたと思います。開発途中でご協力いただいた皆さまに、とても感謝しております。ーーゲーム機という形を選ばれたのには、何か理由があったんでしょうか?脇坂さん:企画初期段階、「教科書を見ただけで泣き出す子もいるんだよ…」と平岩先生から言われた言葉がずーっと頭にこびりついていて。最終的にNintendo Switch用アプリとして開発することにしました。Switchなら、ジョイコンで剣を振り漢字の勉強ができる。こんな無駄な動作を入れ込むことが出来るのが良いことですね。ゲームは無駄の集まりとも言うことができますし、それがお子さんにとっての楽しさに繋がっていきます。コンセプトは机に座らない=勉強っぽくない学習ですね。Upload By 発達ナビ編集部ーーその他にもご家庭で「読む力」を育むために出来るトレーニングはありますか?脇坂さん:読みの学び直しのトレーニングブックもあるので、それを活用してご家庭で力を伸ばすこともできます。「読むトレGO!」の共同研究を頂いた平岩先生は、今年の6月に書籍版の「読むトレGO!(合同出版)」を出版されています。こちらの本では、まずは何をすべきなのか?などの基本をおうちの方が理解することからスタートします。その後にワークブックでお子さんの練習に取り組んでいく、という一連の流れで構成されているので、初めてでも取り組みやすいと思いますよ。ーーお話をいただきありがとうございました。最後に、ディスクレシアのお子さんをお持ちのおうちの方へメッセージをお願いします。脇坂さん:お子さんの将来の話で言えば、例えば小学2年生の漢字の読み書きができると簡単な日誌などが書けるようになり、単純に就労機会が広がっていきます。小学4年生の漢字を読むことができれば、さらに広がり収入が増えることにつながります。何より子どもたちの自己肯定感の向上が望めるでしょう。平岩先生は良く仰います。「読みの学び直しは何歳からでも遅くない」と。これからも多くの方々から意見を頂戴しながら、ソフト開発に邁進する所存です。どうぞ応援よろしくお願いいたします。『読むトレGO!』でご自宅にいながら「読む力」を伸ばしませんか?Upload By 発達ナビ編集部開発者の脇坂氏の想い、いかがでしたでしょうか。「読むトレGO!」は、合計6コンテンツ、54レベル、227ステージの反復練習を通して、「読む力」を飽きずに楽しく育めることも大きなポイントです。本を読んだり教科書に向かったり自分一人での学習を続けることが難しい場合でも、リアクションがありゲームとして楽しめる学習なので、より効果的に継続的に「読む力」を育むことができます。ディスレクシアや発達が気になるお子さんの成長を応援する、『読むトレ GO!』という新しい学習教材。きっとお子さんの「読む力」を楽しく伸ばしていく、強い味方となってくれるはず。この『読むトレGO!』ですが、いよいよ一般販売がスタートします。下記のボタンより直接購入することも可能ですので、ぜひご自宅で「読む力」を楽しくトレーニングしてみてください。※1 Nintendo Switch Lite には対応しておりませんので、ご注意ください。※2 第1回目は2019年8月から1ヶ月程度。第2回目は2019年12月から1ヶ月程度。論文は小児科医の専門誌『小児科診療2月号』(2020/2/1発行:診断と診療社刊)に掲載。
2020年07月11日授乳、おむつ替え、抱っこに寝かしつけ……赤ちゃんのお世話はやることがたくさん! 「育児を楽しむ余裕なんてない」「いつもお世話や家事に追われている」と感じたら、頑張りすぎているのかもしれません。毎日の育児を笑顔で楽しく続けられるように、ほんの少し肩の力を抜いて、ラクをしてみませんか? 多くのママたちが大変と感じているお世話のなかで「この育児はしなくて大丈夫」「ここまでならラクをしてOK」というポイントを、小児科医であり、3児の母でもあるさくらんぼこどもクリニックの三日市薫先生が紹介します。第1回目は母乳育児編です! 育児を完璧にこなすことよりママが笑顔でいられることが大事 こんにちは。さくらんぼこどもクリニックの三日市です。「育児でラクをする」というと、抵抗を持たれるお母さんもいるかもしれません。しかし、ママたちに余裕がなくなってイライラすると、赤ちゃんも不安になって泣いたりグズったりと、悪循環になってしまいます。家事や育児を完璧にこなすことよりも、お母さんが常に笑顔でいられるためにはどうすれば良いかを大事にしてください。 とはいえ、赤ちゃんのお世話をする以上、守るべきボーダーラインはあります。 第一は衛生面です。決して神経質になる必要はありませんが、やはり清潔を保つことは大事です。 もう1つは安全面です。赤ちゃんの手の届く範囲に危険な物を置いていないか、足がかりになるようなものを置いていないか、などです。衛生面や安全面に気を配るためにも、適度に息抜きをして疲れすぎないことが大切なのです。 ここが大変①:授乳の回数が多くてつらい! 3カ月以降なら「泣いたら授乳」は見直してみて生後3カ月を過ぎると、一度に飲む量も増えて授乳回数が減ってきます。もし生後3カ月以降で「泣いたらすぐ授乳」を続けているのであれば、そろそろ見直してみましょう。おっぱいを吸って泣き止むのは、おなかが空いている場合のほかに、赤ちゃんの原始反射の1つであり、物が口に入ると吸う「吸啜(きゅうてつ)反射」による場合もあります。 吸っている間は泣き止むので、「おっぱいが欲しかったから泣いていたんだ」とママが錯覚しているのかもしれません。おむつの濡れ具合やお部屋の温度を確認したり、抱っこやおもちゃであやすなどほかの方法を試してみましょう。 5カ月になると間隔が空くから自然とラクに!また、ちょこちょこ飲むというのは、大人にしてみると常に食べているのと同じこと。そうすると空腹感がなくなり、まとまった量を飲めなくなってしまいます。次に飲むまでの時間をきちんと空けてあげることが、赤ちゃんの生活リズムを整えるためにも大切です。生後5カ月以降になり離乳食が始まると間隔も空いてくるはずなので、焦らずに取り組みましょう。 夜は起こしてまで授乳しなくてOK夜の授乳は、赤ちゃんが寝ていたら起こしてまでおこなう必要はありません。寝ている間は、赤ちゃんにとって成長するホルモンが分泌されている大切な時間。体重の増えが悪くてしっかり飲ませてくださいとお医者さんに言われない限りは、ゆっくり寝かせてあげましょう。 ここが大変②:授乳をすると体のあちこちが痛い…たくさん密着すると授乳体勢がラクに授乳の際の抱き方を工夫してみましょう。横抱きやフットボール抱き、添い乳などさまざまな授乳の体勢がありますが、いずれもポイントは、赤ちゃんと体を密着させるように意識することです。授乳の時間は赤ちゃんの様子が気になって体が離れがちになります。皮膚と皮膚が触れ合う面積が増えるほど、赤ちゃんは温もりを感じて安心するし、お母さん自身の体勢も安定してラクになります。 神経質にならず腕全体で赤ちゃんを包み込んでみてまた、特に赤ちゃんの首がすわっていない間は、首を守ろうとしてご自身の腕や手首を痛める方が多いですが、基本的にそこまで神経質になる必要はありません。手首や腕の一部でなんとかしようとせず、腕全体で包み込むようにしましょう。 ここが大変③:母乳のために毎日栄養バランスの良い食事は無理!総菜パンやレトルト食品などに頼って自炊にこだわらず、大変なときは惣菜パンやお弁当、レトルト食品に頼りましょう。極端に偏食をする人でなければ、そこまで過敏にならなくても大丈夫です。タンパク質がとれる冷奴や納豆、野菜がとれる具だくさんのスープなど、不足している栄養分を手軽に補える一品を常備・作り置きしておけば献立がラクになります。サプリは過剰摂取による健康被害が出ているケースもあり、医師としては基本的におすすめしません。栄養は食事から補給するようにしましょう。 また、栄養のほかに大切なのは水分です。母乳の約90%は水分でできており、水分が不足すると母乳の量などにも影響します。1日に2L以上を目安に、しっかり飲むように心がけてくださいね。 まとめ月齢が低いころは頻回授乳で大変な日が続きますが、生後5カ月ごろから離乳食が始まるとだんだんと授乳の回数も減り、1歳を過ぎれば卒乳へと向けて負担も減ってきます。特に母乳育児の場合はお母さんの負担が多くなりますが、ほかの家事をお父さんや家族に協力してもらうなど、少しでもラクになる方法を探してみてくださいね。 監修者:医師 さくらんぼこどもクリニック院長 三日市 薫 先生東京女子医科大学卒業、東京大学医学部附属病院、日本赤十字社医療センター、川崎市の保健所勤務などを経て、東京・府中市にさくらんぼこどもクリニックを開院。3人のお子さんをもつ母親でもあり、地域の方々と一緒に病気を考え、子育てができる環境づくりに励んでいる。著者:ライター 大浦綾子2015年8月生まれの男児の母。出版社勤務を経てフリーの編集・ライターに。「夜の寝かしつけ後に仕事を残さない!」を目標に日々奮闘中。
2020年07月01日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。今回は、お風呂の話です。赤ちゃんの沐浴から幼児の入浴まで、お風呂は育児のなかで大変なもののひとつかもしれません。 「沐浴は毎日させましょう」と指導はありますが、果たして本当にそうなんでしょうか? 海外の育児事情なども織り交ぜてお話ししたいと思います。 生まれてから1カ月間、沐浴しないこともある!以前、中国出身の方が「赤ちゃんは生まれてから1カ月は入浴(沐浴)しないで拭くだけにする」という習慣を教えてくれました。中国は広いので、中国全土その習慣ではないかもしれませんが、1カ月健診で顔を見せてくれたその赤ちゃんは、湿疹ひとつないとてもきれいな皮膚でした。匂いも臭さなどはまったくなく、「これはこれでアリなんだ」と印象に残った経験があります。病院のNICUや新生児室でも、以前は出生後すぐ沐浴し、その後毎日沐浴というのがスタンダードでした。しかし今は、出生後すぐの沐浴は体温低下のリスクもあることから、血液などを拭きとるだけで、その後退院までに1~2回沐浴する「ドライケア」を導入する施設が多くなっています。 肌トラブルの原因、大きく分けるとこの4つお風呂やシャワーは1日についた汚れや汗を洗い流す作用があります。肌トラブルの原因は、大きく分けて4つあります。①汚れ(汗、うんち、食べ物など)②石けんのすすぎ不足(汚れによる肌荒れと同じ)③皮脂の取りすぎ(洗いすぎ)④保湿剤不足(皮膚のバリア機能の低下)つまり、お風呂に入っても入らなくても、上記の原因が取り除ければいいわけです。 私もよく「沐浴スキップ」してました私は産後の肥立ちが悪かったのもあり、体がつらい時は沐浴をスキップしていましたし、子どもが大きくなっても体調がつらいときや疲れているときは、冬場のお風呂やシャワーはお休みしたりしています。ただ、陰部はなんとなく洗わないと自分も気持ち悪い感じがするので、おしりまわりだけはささっと洗ったりで済ませたりしました。 海外では、毎日シャワーはするけど、シャンプーは毎日しないという習慣のところもあります(シャワーすら毎日入らない国も多いですが、子どもでは少なさそうです)。皮膚トラブルをかんがみて、日々の清潔方法を選択すればいいのではないでしょうか。 子どもが汗びっしょり!そんなときは?ちなみに、夏場は子どもは特に汗をよくかくので、必要であればシャワーは1日2~3回入って汗を流してあげると、あせも予防になるかもしれません。ただ、皮脂の取りすぎも湿疹の原因になるので、石けん(ボディソープも含めて)は1日1回までが良いでしょう。 お風呂には「別のメリット」もあります湯船に入るのは、体をきれいにするというメリットの他にもいいことがあります。温かいお湯に浸かると、血管が開いて体が温まります。水圧によって循環が良くなったり、自律神経を整えてくれる作用もあります。夜、お風呂で温まった体が入浴後冷えてくると、自然な眠りを誘ってくれるため、入眠にも良い効果があるんですよ。 お風呂の効果を理解して、ストレスのない生活リズムを!ママの体調が悪かったり疲れていたりするときって、ありますよね。そんなとき、子どもをお風呂に入れるのが大変だったら、無理して毎日入れる必要はないですよ。これはどの年齢の人にも言えることなので、皮膚トラブルの原因を考えてみて、特に問題なければ、お風呂はスキップしても全然問題ありません。お風呂はメリットもいっぱいあるので、「あぁ…お風呂に入れなきゃ……」と思わず、入浴できるときにお風呂タイムを楽しめるといいのかなと思います。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月29日離乳食が始まるころから、うんちが出にくくなるお子さんは多いかもしれません。私の娘も生後5カ月ごろからうんちの回数が減りました。私が後悔している、娘の便秘についての体験談をご紹介します。 うんちが出ない…生後5カ月で離乳食を始めてから、娘のうんちが固くなり、3日に1回くらいしかうんちが出なくなりました。最初はそれほど心配していなかったのですが、ほんの少ししか出なかったり、大きなうんちが出るときはきばって泣いたりすることも増えました。 離乳食の水分を多めにしたり、便秘に効くという食材を取り入れたり、綿棒浣腸やマッサージをしたりしましたがなかなか効果が出ず、ようやく小児科を受診することにしました。 小児科を受診することに小児科を受診したのは生後7カ月のとき。診察後にイチジク浣腸をしてもらいましたが、1回ではうんちが出ませんでした。2回目の浣腸後、医師と看護師さんに補助してもらって、ようやく硬くて大きなうんちが驚くほど大量に出てきました。同時に出血も。 このとき、ようやく私は娘の便秘が相当な重症であることに気付きました。医師には「排便時の痛みが続くと、痛いのが嫌でうんちを我慢する子が多いです。そうすると、薬がないと排便できない状態になります。低月齢のうちに改善しましょう」と言われました。 もっと早く受診すればよかった小児科受診後は、整腸剤、うんちをやわらかくする薬、どうしても出ないときの坐薬を併用しながら様子を見ることになりました。薬を飲み始めてから1カ月くらいは、坐薬を使うことも多かったです。 2歳5カ月になった今は、うんちをやわらかくする薬だけを使っています。排便は2日に1回はありますし、排便時に痛そうにすることもないものの、月1回の通院はまだ続けています。気づけばもう2年近くも便秘で通院していることになります。 「うんちが硬いけど、排便時に泣いてるけど、出てるから大丈夫」なんて思わずに、すぐ小児科を受診すれば、あんなにひどくなる前になんとかできたのに……と、娘に申し訳ない思いでいっぱいです。「便秘くらいで病院に行くなんて」と軽く考えていたことを後悔しています。よく言われるように、うんちやおしっこは健康のバロメーター。子どものうんちやおしっこには気を配りたいと思っています。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 イラスト/(c)chicchimama監修/助産師REIKO著者:矢野あい子2歳の女の子と0歳の男の子の母。子どもは2人とも体外受精で授かり、帝王切開で出産。
2020年06月28日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。今回は子どもの自慰(マスターベーション)の話です。なかなかママ友などにも相談しにくいお話。でも自分だけで対処するのも難しいかもしれません。知識を持って対処すれば大丈夫ですよ。 実はけっこうある、子どもの自慰外来でもときどきご相談を受けますが、子どもの自慰は珍しいものではありません。「気がついていたらベビーカーのベルトにおまたを押しつけていた」「家で寝っ転がりながら自慰をしているようだ」など、シチュエーションはさまざま。年齢層も生後数カ月から小学生までと、いろいろなパターンがあります。正確な頻度ははっきりとはわかりませんが、女の子が多いと言われています。 自分の体で触っちゃいけないところなんてない親御さんが初めて小児自慰を発見するとびっくりして、「はしたない」とか「恥ずかしい」という気持ちになるかと思います。でも、小児自慰は性的な意味合いはなく、「触っていて気持ちいいことに気がついた」とか「なんとなく」すると言われています。子どもが触っている場所は、自分の体です。自分の体で触ってはいけない場所はありません。びっくりしたり、恥ずかしい気持ちになると思いますが、まずは「やってはダメなこと」という認識を捨てましょう。 触っていいんだけど、その上での接し方のコツ子どもが自分の体を自分で触ることは、まったく問題はありません。そうは言っても、人前でしたりするのは、周りの人をびっくりさせたり、不快な気持ちにさせる場合があるので、やめた方がいいでしょう。 0歳から1歳ごろ0歳から1歳のお子さんに「人前ではやらないように」と言ってもまだわからないので、自慰から気が逸れるように、何か違うことをやるように働きかけてみると良いですよ。自慰する子どもを見たときのお母さん・お父さんがすごく嫌な顔をしていたら、子どもも嫌な気持ちになるので(悪いことはしていないのに!)、いったん気持ちを落ち着けてから対処してみましょう。 2歳以上2歳以上で、ある程度親の言うことが理解できるようになったら、「触ると気持ちいいのかな? それは自然な気持ちで、触ることは悪いことじゃないんだけど、家の外でやると周りの人が嫌な気持ちになるかもしれない。やるのは家の中でしようね」と説明しましょう。 それでも外でしてしまう場合は、0歳や1歳のお子さんと同様、手を使う遊びなどを働きかけてみましょう。幼稚園や学校でやっている場合もあるので、先生に確認をして、同じような対処をしてもらうようにしましょう。 びっくりしちゃうけど、性教育のチャンス!自慰自体は悪いことではないですが、他の人に触られたりするのは性被害です。人に陰部や胸を触られたり、逆に見せられたりするのは良くないことである、また自分が「嫌」だと思うことはちゃんと拒絶することを覚えてもらう必要があります。 3歳くらいから、このような性被害の話はちょっとずつわかるようになってきます。今は性教育の絵本などもありますので、絵本などを使いながら理解してもらいましょう。 知識がないと、自分が性被害にあっていることもわからない場合があります。幼稚園くらいからおうちでも性教育をして、性被害にあわない、将来性被害をしない子に育てたいものですね。 困っているときには小児自慰について簡単に説明すると以上なのですが、そうは言っても子どもによって状況はそれぞれですし、なかなか上記の対処でうまくいかない場合もあると思います。 困っているときには、信頼できるかかりつけの小児科医にまず相談してみましょう。ストレスが原因で自慰をすることもあるので、必要であれば心理カウンセラーに相談してもいいでしょう。細かな判断は小児科の先生と相談しながら進めていけるといいですね。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月28日東京衛生病院小児科の保田典子です。私生活では7歳・5歳・3歳の子育て中! 今回のコラムは、赤ちゃんを産む前にそろえる準備用品に必ず入っている「ベビー布団」。私はあまり買う必要はないと思っています。その理由について解説したいと思います。 赤ちゃんの布団で最適なものは?独身時代から新生児のケアを見てきたので、私は「赤ちゃんの布団はバスタオル」って思っていました。 こんな感じ。 バスタオル、汚れてもどんどん洗えてたくさん買っても後々も使えるしとても便利ですよ。 そうして第1子(4月生まれ)の新生児育児は使っていない大人用のマットレスを折りたたんで防水シートの上にバスタオルを敷いて赤ちゃん用のベッドにしていました。 結局は「スリーパー」が良い赤ちゃんによりますが、小さくて弱々しい新生児期(生後1カ月まで)を超えたら、今度は布団を蹴ってしまうようになります。 せっかく買った布団も、かけてもかけても取ってしまいます。でも、それが赤ちゃんなのです。 赤ちゃんには布団をかけても無駄ですし、寒くなってしまうのが心配なら、「赤ちゃん自身に着込んでもらう」しかありません。 つまり、スリーパーをするほうが親もラクだし、赤ちゃんも安定した環境で眠れます。 ベビー布団をおすすめしない理由吐いたり汗が多い赤ちゃんに、羽毛布団はあまり向きません。 3人目は12月生まれだったので、ベビーベッドレンタル時に、一緒にベビー布団を3カ月ほどレンタルしましたが、結局2枚付いていた羽毛かけ布団のうち、1枚は使いませんでした。(バスタオルの上に羽毛布団かけました) 高い買い物は本当に使うか検討してなので、特に、4〜8月生まれの赤ちゃんはあまりベビー布団を気合い入れて買わなくて大丈夫ですよ。 寒くなるころには寝返りでフレームアウトするか足で蹴って布団の意味をなさなくなります(笑)! 長い期間、同じベビーベッドに寝かせる欧米スタイルの育児をする予定なら買ってもいいかもしれません。(それでもバスタオルと綿毛布とおくるみくらいのほうが管理しやすいかも……と私は思います) ベビーベッド買っても、結局添い寝になってベビーベッドすら使わなくなる人も多いですよ! 安心かつ、親もゆっくり寝られる環境で寝かせてあげられるといいですね。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月22日東京衛生病院小児科の保田典子です。診療では、風邪などの一般診療に加え、循環器の病気や漢方治療、発達の相談などをしています。ママやパパたちが安心してお子さんのケアができるような診療を心がけています。 私生活では7歳・5歳・3歳の子育て中で、毎日ドタバタな生活をしています。これからベビーカレンダーでコラムを書かせていただくことになりました。よろしくお願いします! まずはじめにお話ししたいこと。それは、「小児科医は安心できる子育てに必要な”サービス”の1つ」だということです。 初めてのお子さんであれば、育児は誰でも初めてです。初めての経験は、誰でもすぐうまくいくとは限りません。さまざまなツールやサービスをうまく使って、育児を乗り切ってもらえたらと思います。 私は、安心できる育児に大事なサービスの1つ、「小児科医」をうまく利用していただきたいなと思っています。 小児科は病気のときだけじゃない病院というと「病気を治すところ」ですが、小児科の役割はそれだけではありません。乳幼児健診などもおこなっていて、「赤ちゃんの健やかな成長を見守り、支える」役目もになっています。 そのため、多くの小児科医は「子育てで悩むパパママの助けをしたい」と思っています。 夜泣き、離乳食、疳の虫、イヤイヤ期…… 「小児科で相談すること?」と思えることが、意外に小児科で解決することもあるので、予防接種や風邪の診療のついででも、子育ての悩みをちらっと相談してみるのもいいと思います! どんな小児科医がおすすめ?初めてのママパパにおすすめなのは、「とにかく話を聞いていて、信頼できると思える先生」がいいと思います。 でも、それってすごく曖昧……クリニックの外観を見ても良くわからないし。 とりあえず、ぱっと探せる指標としては ●小児科専門医であること●行きやすい場所であること●(新しい・古いではなく)ぱっと見て清潔感があること●ある程度ホームページがしっかりしていること がわかりやすい指標でしょうか。 そんなクリニックを探して一度受診してみて、子育ての疑問なども質問してみて、「いいな」と思ったらそこに通ったほうがいいと思います。 とはいえ、小児科専門医であるというのは1つの指標にすぎません。 実は私の場合、今の場所に引っ越してきて、近所の人におすすめされてかかりつけにしている先生は小児科専門医ではありません。 上記の指標のほかにも、しばらく通って「信頼できる先生だと思えたこと」「小児の患者さんが多く経験豊富であること」がわかったので、そのまま通っています。何より、月曜日~土曜日毎日やっているので、他にかかる必要がないのも気に入ってます。 小児科受診。ここは気をつけて!時々来られる患者さんで、「3つ病院にかかったけど良くならなかったので、うちに来ました」という方がいます。 でも、個人的には何度も病院を変えるのはおすすめしません。特に小児はどこにいっても出すお薬はそんなに変わりません。そして、経過をみてこそ、わかることがたくさんあります。 「後医は名医」という言葉があり、あとで診た医師のほうが経過が長い分、事前に治療をされて効果判定ができる分、正確な診断ができます。 そもそも、初診での正診率(正確に診断できる)は15%とも言われています。 なので、この前なかなか治らなかった風邪が、このお医者さんに行ったら治ったから名医!という訳ではないのです。 合うお医者さんは人それぞれ口コミで「良い」と言われている先生でも、「自分には合わないな……」と思うこともあると思います。ママやパパの性格も人それぞれですし、小児科医の先生もそれぞれだからです。 私みたいに、「ママパパたちをとにかく支えたい」と思っている医師もいれば、「とにかく病気をきっちり治すことだけを大事にしたい」と思っている医師もいます。 ぜひ、1つだけでも「自分が行くと安心できる小児科医」をつくってみてください。これからの子育てライフ、心がグッと軽くなると思います。 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年06月20日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。最近よく外来で乳児のママに「子どもが麦茶を飲まないんです」と相談されることが増えてきました。 暑くなってきたし、脱水になりやすいから麦茶を飲ませなきゃ!と思ってしまいますが、実は麦茶は飲ませなくて大丈夫です。今回は赤ちゃんの麦茶事情について解説します。 赤ちゃんに麦茶は、必要ありません市販の赤ちゃん用麦茶には、よく「生後1カ月から」と書いてあります。なので、1カ月健診が終わったころから麦茶をあげるのは間違いではありません。 ですが、医学的には「いつから」というのは決まっていません。それは、離乳食を始める前の赤ちゃんは、母乳か育児用ミルク以外の水分は基本的に必要ないとされているからです。白湯も同様で、離乳食前の赤ちゃんには必要ありません。なので、正しくは「生後1カ月から可能だけど、通常生後5〜6カ月から飲むことを考慮」します。生後5〜6カ月でも、離乳食と母乳か育児用ミルクだけで大丈夫なので、基本的に麦茶を飲ませなくてはいけない時期というのはありません。 夏の水分補給はどうする? 夏でも、赤ちゃんは母乳か育児用ミルクだけで大丈夫です。乳児であれば、3〜5時間おきには水分(母乳か育児用ミルク)を摂取しているので、過酷な環境にいるわけでもないときにはいつもの母乳か育児用ミルクで大丈夫です。 汗が増えるので、多少おしっこが濃いように感じても、“欲しがるときに母乳か育児用ミルク”が摂取できていれば他の水分はいりません。私の場合、家にいるときは母乳か育児用ミルクだけにしていて、外に遊びに行くときに麦茶を準備していました。水分を欲しがるたびにおっぱいや育児用ミルクの準備をするのが面倒だったからです(基本めんどくさがりなので)。 もちろん、赤ちゃんは「のど渇いた」とは言ってくれないので、こまめにあげてみて、「飲まなければいいや」という感じでした。もちろん、外出中でも授乳のほうが適切だなと思うタイミングでは授乳にしていました。 幼児は水か麦茶で水分摂取を!幼児になると母乳や育児用ミルクよりも食事からの栄養摂取がメインになり、母乳や育児用ミルク以外にも水分摂取をする必要が高くなります。水分摂取にはジュースやイオン飲料は使用しないほうがいいので、自然とお水や麦茶、牛乳などを飲むことになります。牛乳も飲み過ぎは注意なので、水や麦茶をメインに水分摂取を考えていただけるといいと思います。 監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。3児の母。
2020年05月29日令和2年5月25日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が全国で解除されました。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、今後もソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用・手洗いの実施、3密の回避など感染予防に努めることには変わりはありません。そんななか、日本小児科医会は「2歳未満の子どもはマスクの着用は不要、むしろ危険である」という見解を公表しました。 心配されるマスク使用による乳児への影響とは乳児の呼吸器の空気の通り道は狭いので、マスクは呼吸をしにくくさせ呼吸や心臓への負担になる日本人の成人の気管の直径は、男性で平均18mm、女性で15mm程度ですが、1〜2才児の気管の太さは6.3mm。呼吸筋も未発達で、1歳未満の呼吸数は30〜60回/分と成人の約2倍です。 赤ちゃんがマスクをすることにより、普段の呼吸よりも負荷がかかるため、呼吸数や心拍数を増やして全身に酸素を取り込まなくてはならなくなります。そのような状態が続くと呼吸筋や心筋が疲労し、最悪の場合、心停止につながることも。 マスクそのものやおう吐物による窒息のリスクが高まる赤ちゃんの枕元においていたハンカチが赤ちゃんの口を塞いでしまった……という事故を耳にすることがあると思います。マスクもある意味同じ状況と言えるかもしれません。 また、赤ちゃんは成人に比べて口の中の容積に対して舌が大きく、唾液などの分泌物も多いため気道が閉塞されやすい状態にあります。マスクをしていることによって唾液や吐き戻したものを口の外に出しにくい状態となり、窒息のリスクが高まると言えます。 マスクによって熱がこもり熱中症のリスクが高まる赤ちゃんは体温調節機能や腎機能が未熟で、成人より水分の出入りが大きく、自分で水分補給できないこともあり、容易に脱水状態に陥ります。 マスクをつけていると体内に熱がこもりやすく、マスク内の湿度があがっているため、のどの渇きを感じづらくなり、知らないうちに脱水が進んで熱中症になるリスクが高まると言われています。 顔色や口唇色、表情の変化など、体調異変への気づきが遅れる赤ちゃんが自分の意思をことばでうまく伝えられないころは、赤ちゃんの泣き声や表情で察することも多いかと思います。マスクで赤ちゃんの顔半分が覆われてしまうと、それも難しくなってしまうかもしれません。 子どもの新型コロナウイルス感染症は今のところ心配が少ない!?子どもの新型コロナウイルス感染症について、以下のようなことがわかってきたようです。 ・子どもが感染することは少なく、ほとんどが同居する家族からの感染である・子どもの重症例はきわめて少ない・学校、幼稚園や保育所におけるクラスター(集団)発生はほとんどない・感染した母親の妊娠・分娩でも母子ともに重症化の報告はなく、母子感染はまれ 米国疾病予防管理センター(CDC)やアメリカ小児科学会(AAP)でも2歳未満の子どもへのマスク使用の危険性を警告しているようです。進行性の呼吸不全が小児の心停止の最大の原因であるとされており、小児は呼吸困難を他者に伝えることが困難であるため、感染予防のためのマスクの使用も注意が必要です。マスクに期待される効果は、細菌やウイルスを含んだ飛沫の拡散を防ぐこと。子どもへの感染は同居家族からの感染が多いということからも、まずは大人がしっかり感染予防をおこなうことが大切です。一旦、落ち着いたかに見える日本の新型コロナウイルスの感染拡大ですが、今後第2波、第3波が来ることは否めません。これからも感染予防に努め、節度ある行動が望まれます。 監修者・著者:助産師 REIKO医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
2020年05月26日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では8歳、6歳、4歳の子育て中です。4月7日に7都道府県で発令され、全国へ拡大した緊急事態宣言。新型コロナウイルス感染拡大が落ちつきつつあり、ついに5月25日にすべて解除されました。学校、幼稚園、保育園も徐々に再開しそうな見通しですが、そんな今やっておきたいことをお伝えします。 第2波は必ずくる今、北海道で第2波がきてピークを超えたかな?という状況です。日本では感染者数が少ない地域でも自粛生活を行っていて、感染拡大がおさえられていました。新型コロナウイルスは潜伏期間が長く、8割の人が軽症もしくは無症状とも言われています。今は飛行機もほとんど飛んでいなくて、地域間の移動も非常に少なくなっていますが、海外も含め、地域間の移動や経済活動が再開されると、多かれ少なかれ第2波がくると考えられています。感染者をゼロにするのが非常に難しい感染症なのですが、大事なのは”急激な”感染拡大をくい止めることです。そのためにこれからできることがあります。 子どもの健康のために学校は行く 学校や幼稚園のお休みで学力の低下や学習環境の格差が問題になっています。他に、子どもたちの状況を見ていると、体力低下も今後問題になってくるのではないかと心配しています。 この状況で、メンタルが疲れてしまった子どもたちも出てきています。病気はコロナだけではありません。今必要以上の社会生活を制限することは、数年後、数十年後の生活習慣病などの病気の原因になることも心配されます。 子どもたちの心身の健康を保つためにも、学校や幼稚園は、緊急事態宣言解除後は行った方がいいのではないかな、と思っています。未就園児の保育園に関しては、今の首都圏の状況をみるとコロナに感染する確率は高くないと考えられますが、保育園に行けば、コロナ以外の風邪をもらってくる可能性がぐんと高まりますので、お仕事や家庭の状況に応じて判断いただくといいと思います。 必要以外の外出は自粛した方がいい会社も学校もレジャーもすべて再開してしまうと、第2波の波が大きく来てしまう恐れがあります。段階的に再開する学校もあるようですが、他の生活も段階的に戻していくのが望ましいです。電車などの公共交通機関を使ったお出かけなどは、可能な限りしない方がいいでしょう。近場でも、スーパーなどは1人で買い物に行くことは継続しましょう。わが家には、ずっと家にいる保育園児がいるのですが、体力が低下している今、いきなりフルタイムで保育園へ行かせるのが不安なので、週2〜3日からとか、1日の保育時間を短くして預けるなどしようかな、と考えています。 冬にお友達と約束したお出かけは、まだまだだなと決めています。迷っているのが、電車に乗って行かなければいけない病院受診です。命に関わることではないので自粛していたのですが、子どもの成長のためには早めに連れて行ってあげたい……。でも、急に遠方へ行くことを再開することは、少し不安です。 どうしたら感染するかを再確認!新型コロナウイルスにかかわらず、「風邪」といわれる感染症のほとんどは「接触・飛沫感染」です。接触飛沫感染は、鼻水や唾液から感染します。しゃべっている口からも飛沫するので、目に見える鼻水や唾液に触らなくても感染することがあるので、ソーシャルディスタンスが大事なのですよね。 また、ウイルスがついた物を触ることによっても感染するので、近くに感染者がいなくても、感染者が前に触ったものに触ることでも感染します。感染は皮膚についているだけで感染するのではなく、ウイルスが鼻や口から入ることで感染します。 そのため、鼻や口に触らないこと、外出から戻ったらしっかり手洗いうがいをすることがとても大事です。2〜3歳以降のお子さんであれば、「なぜしっかり手洗いをしたほうがいいのか」をしっかり伝えて手洗いを一緒にすると、きちんと習慣づけできると思います! ストレスをためすぎないで3月からの3カ月間。親も子もいろいろとストレスがたまったと思います。感染がピークだった時でも、日本はアメリカやヨーロッパに比べると低い感染率で推移しています。きちんと手洗い、うがい、外出時のルールを守っていれば感染はしないと考えてもいい時期ではないでしょうか。怖がりすぎないで、今できる楽しいことを少しずつ再開していきましょう。 今まで考えてきた「コロナが終わったらしたいこと」はありますか?その中でできそうなことを少しずつやって、心も健康な6月を過ごしましょう! 著者:医師 医療法人アドベンチスト会東京衛生病院 小児科医師 保田典子 先生医療法人アドベンチスト会東京衛生病院小児科医師。株式会社メドイース代表取締役。2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。
2020年05月25日フローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみ、毎年5月12日は『看護の日』。2020年の『看護の日』には、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の流行もあり、多くの人が看護師たちへ感謝の気持ちを表明しました。かつて自分や家族、友人などがお世話になった看護師たちに感謝する人が多いようですが、中には別の視点からの感謝もありました。医師から看護師への感謝の気持ち「看護師さんには感謝しかありません。身近では、救命センターでも、ICU(集中治療室)・病棟でも、ドクターヘリでも、看護師さんなくして我々医師は仕事ができません」医師の松村圭祐(keisuke828)さんが、そんな言葉とともに1本の動画をInstagramに投稿。兵庫県にある、北近畿エリア唯一の救命救急センター『公立豊岡病院 但馬救命救急センター(以下、但馬救命救急センター)』に勤務している松村さんは、日々の感謝の気持ちを込めてピアノを演奏しました。その時の演奏がこちらです! View this post on Instagram A post shared by Keisuke Matsumura (@keisuke828) on May 12, 2020 at 1:25am PDTドラマ『コウノドリ』(TBS系)のメインテーマ曲『Baby, God Bless You』を弾く松村さん。しっとりとした曲が大勢の人々の心にしみました。・素敵な曲に元気をもらいました!・医療関係の人たちには、尊敬と感謝しかありません。・松村さん、『コウノドリ』の産婦人科医・鴻鳥サクラみたい!・人命を助け、そのうえピアノも弾けるなんてすごいです!・どうか医療従事者のみなさまが感染することなく、どうか健やかでありますように。毎日途切れることなく重症対応が続いている、但馬救命救急センター。現在、ドクターヘリも感染に注意を払いながら、コロナウイルス対応だけでなく、いつも通り地域の救急需要にも対応しているそうです。患者を助けることができるのは、医師だけでなく看護師がいてこそ…医療従事者の間でも感謝をし合っていることが分かる投稿に、胸が熱くなりますね。[文・構成/grape編集部]
2020年05月20日感染症により、休園・休校の長期化、不要不急な外出の自粛要請で、子育て中のママやパパの負担やストレスは一層倍増しているでしょう。ちょっと気晴らしにお散歩やおでかけも難しい今、家の中でずっと子どもと相対していると、逃げ場がなくなって心が折れてしまいそうになることも。「子どもはかわいいし、きちんと育てたいと思っている。でも…」と悩む親は少なくありません。育児ノイローゼ、産後うつなどにならないためにはどうしたらいいのでしょうか?子育ての不安やイライラ、焦り、迷いを抱えるママやパパに向けて、内外出版社から新刊 『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』 が発売されました。著者は、小児科医で二人のママでもある、森戸やすみ先生。育児に悩むママやパパへ向けたこの本では、これまで信じられてきた育児神話の“本当のところ”や、とくにママがつらく感じる原因、自分らしくラクになれる子育てのヒントなどが、小児科医の視点でわかりやすく解説されています。●森戸やすみ(もりと・やすみ)先生小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、2020年6月1日、東京都台東区に『どうかん山こどもクリニック』を開業予定。『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(内外出版社)など著書多数。二子の母。Twitter: @jasminjoy Facebook: ■育児のトラブル・悩みはすべてママのせい?たとえば、おでかけ先や公共の乗り物の中で、子どもがなかなか泣きやまない。わが子がほかの子とうまく遊べなくて、つい手が出てしまう。せっかく離乳食を作っても、あまり食べてくれない。子育てではよくあることですが、そういう時になぜか決まって言われるのが「それって、愛情不足じゃない?」「もっと子どもには手をかけてあげないと」といった言葉です。とくに、子どもを保育園や学童に預けながら働いているママの多くは、家族だけではなくママ友や会社の同僚、よく知らない人にまで、同じようなことを言われた経験があるのではないでしょうか。実際、著者の森戸先生も、テーマパークで遊び疲れた娘さんが帰りの電車でグズったとき、たまたま乗り合わせた高齢のご婦人から「お母さん、もっと抱きしめてあげて」と諭された経験があるそうです。娘さんがグズったのは、森戸先生が抱きしめなかったからではなく、遊び疲れたからなのに。「それは本当に“親の愛情不足”が原因でしょうか?」と森戸先生は問いかけています。育児で何か問題や困ったことが起こったとき、人はどうしてなのかと原因を求めたくなるもの。しかし、子どもはそれぞれ個性がありますから、どの子にも当てはまる育児の定石はなく、大人の理屈では理解できないことも多いでしょう。一方、愛情というのも数値で測れるものではなく、親がどれほど子どもを愛しているかは目で確かめることはできません。そこで、「理解できない子どもの行動は、誰にも確かめられない親の愛情量に責任転嫁されているのではないか?」と、森戸先生は読み解きます。たしかに、親の愛情不足が原因としてしまえば、言った本人は間違いだと反論される心配もなく、自分に責任がないことも遠回しに主張できます。親に責任を押し付けることで、理屈の通らないことが解決できたと自己満足もできるわけです。しかし、子どもが泣いたりわめいたりすることと、親の愛情不足との因果関係は誰にもわかりません。子どもの数だけ個性もそれぞれで、グズってしまう原因もそれぞれ。それを、手っ取り早く原因を見つけたい大人が、こじつけているだけなのです。ところが、「小児科医をはじめ子どもに関わる専門家の中にも愛情の多寡(たか)の話をする人がいるのですから残念なことです」と森戸先生。たしかに、筆者もわが子を預けていた保育園の先生から同じようなことを言われたことがあったことを思い出しました。こういった周囲の「なんでもかんでも親の愛情不足が原因」というプレッシャーから、育児で何か困ったとき、「ほかの親ほど自分は愛情をかけてあげられていないのではないか」「もっと私がちゃんと子どもを見ていれば」と、無意識のうちに自分を責めてしまう方は少なくないでしょう。でも、それは周りからの勝手な押し付けであって、“親の愛情不足”と決めつけることは害でしかないと森戸先生は一刀両断。この言葉に、悪い夢からスッキリ目覚めたような清々しささえ感じます。■育児神話「根拠のないもの、気をつけたいもの」「子どもの問題は親の愛情不足が原因」と同じように、根拠なく信じられ続けている“育児神話”はたくさんあります。本書で紹介されているだけでも、以下のものが挙げられます。●3歳児神話「3歳までは家で母親の手で育てることが子どもの精神的な発育に一番良い」というイギリスの精神医学者ジョン・ボウルビィによる戦争孤児を対象とした調査報告(1951年)が元となっている考え●スマホ育児批判かつてはテレビやビデオ、パソコン、今はスマホといったメディアを使って子守りをしたり、親自身が夢中になることで、親子関係や子どもの心身の発育が阻害されるという日本小児科医会の提言(『スマホに子守りをさせないで!』(※1)●子どもの夜ふかし子どもは夜9時までに寝ないと、成長ホルモンが分泌されないために発達が遅れ、しかもキレやすくなるというもの●母乳信仰ミルク(粉・液体)よりも母乳の方が優れていて、どんな状況においても絶対に母乳のみで育てる方が赤ちゃんのためには良いという考え●離乳食を遅らせてアレルギー予防離乳食の開始を遅らせ、なるべく母乳だけで長く育てた方が、食物アレルギーの発症を予防できるというものいずれも、日本で一般的に信仰されている“育児神話”です。おそらく多くのママやパパが、これらのほとんど、もしくは全部を正しいと信じ、厳守しながら育児をしているのではないでしょうか。しかし、森戸先生はこれらに「すべてが根拠のあることなのでしょうか?」と疑問を投げかけています。たとえば、「3歳児神話」。精神医学者ジョン・ボウルビィが提唱していたのは、「子どもが育つ過程で、信頼できる大人との愛着関係を築くことが大事だ」ということ。それが、なぜか日本では「3歳まで母親の手によって育てられることが大事だ」にすり替わって信じられてきました。この3歳児神話はすでに国内外では否定されている考え方で、1998年の「厚生白書(平成10年版)」(※2)では「少なくとも合理的な根拠は認められない」とされ、さらに「母親と子どもの過度の密着はむしろ弊害を生んでいる、との指摘も強い」とされています。しかし、いまだにこの古い神話を信じている年配者は多く、「こんなに小さいのに保育園に行かせるなんて」「3歳までは家でお母さんが見た方がいい」といったことを言い、ママは根拠のない罪悪感を背負わされながら働くという事態がいまだに起こっているのです。それは、ほかの育児神話にも当てはまることだと本書は伝えています。たとえば、今のママはスマホから育児情報を得る機会が多く、小児科の予約をスマホでしたりお薬手帳のアプリを使ったりもします。スマホを使っているからといって育児をおろそかにしているわけではないし、息抜きにゲームをしたとしても一日中ではないのだから何も悪くないということ。子どもの夜ふかしがよくないのはたしかだけれど、その理由の一つとされてきた「成長ホルモンは夜10時〜翌2時に分泌される」というのは、今では間違いだとわかっていること。夜9時に寝るべき、早く寝ないとキレやすくなるという説に根拠はないということ。同様に、どんな状況でも母乳育児がいい、離乳食を遅らせたらアレルギーを予防できるという説も、間違っていることがいまでは明らかになっています。むしろ、離乳食に関しては、開始を遅らせることでかえってアレルギーのリスクが高くなることがわかっています。しかし、前述の「“親の愛情不足”ですべて片付ける問題」と同じように、小児科医や産婦人科医、看護師、保健師、保育園や幼稚園の先生といった普段から子どもと接している方でも、いまだにこれらの育児神話を唱える人は少なくありません。そういった専門家でさえ信じているのですから、夫や両親、兄弟、ママ友、会社の同僚が不用意に育児神話を持ち出してくるのも納得です。では、そんな古くさい育児神話とママはどう立ち向かえば良いのでしょうか?■今だから夫婦・家族と子育てについて考えようママが育児に不安を感じたり悩んだりするきっかけの一つに、ほかの人からの言葉かけがあります。たとえば「母乳なんでしょ?」「2人目は?」「こんな小さいのに連れ歩いて」「保育園に通わせるなんてかわいそう」など、挙げていけばきりがありません。子どもを生んでまず最初にびっくりするのは、こういった「余計なお世話」とも取れる不用意な言葉をかけてくる人が本当に多いことです。家族や友人ならまだしも、通りすがりの知らない年配者からも「今日は良いお天気ね」のノリで「私たちの頃はね…」と育児アドバイスが始まったりします。また、そういった言葉はほとんどの場合、お父さんではなくお母さんにだけ向けられるのも不思議です。それは、暗に「子育てのメインは当然、母親」という育児神話の押し付けが見え隠れしているようです。このようなママを悩ませる言葉や態度は、元をただせば前述した根拠のない育児神話がベースになっていることが多い印象です。森戸先生は、「そういった言葉はスルーしていい」と本書の「祖父母世代と親世代のギャップの埋め方とは」の章で解説しています。スルーしていい理由として、次の2つが挙げられています。 祖父母世代が育児をしていた頃の常識が、いまでは非常識となっていることが多い 育児はとてもナイーブで個人的な体験のため、各家庭で事情が違う大抵の場合、言葉をかけた側の問題ですが、相手が義両親や実両親の場合は、育児を手伝ってもらったり一生お付き合いを続けていく関係だからこそ、ことを荒立てられずにイライラ・モヤモヤしながら多くのお母さん、お父さんは我慢しているでしょう。そういった相手の言葉は聞き流す、適度に反論して距離をとるなどして、それでも改善が見られないなら、「育児で大変な時に、無理して会わなくてもいい」と森戸先生はバッサリ。育児の協力者は何も家族でなければいけないことはなく、幼稚園や保育園、保育ママ、ファミリーサポートなどの行政サービスを活用するなどで頼れる先をいくつも持っていた方が、子育てのストレスは軽減されることに気づかせてくれます。そういったことを夫婦で話すことも大切だと本書では伝えています。「育児は母親のもの」といった育児神話によって、これまでずっと子育てにおいて部外者扱い、戦力外通告をされてきたパパ。でも、いまはもうそんな考え方は古く、夫婦2人で子育てに関わっていく時代。パパも育児の当事者であり、同じ視点から、同じゴールに向かってどう子どもと関わっていくかを夫婦で話し合うことが、育児をもっとラクで楽しいものにしていくのでしょう。そのためにも「父親も育児参加できるよう排除しないで後押しを」と社会全体の意識改革も必要だと訴えています。■子育てでつらい、不安になったときは「子どもはかわいいし、初めてのことばかりで大変だけど、育児も毎日発見の連続で楽しい。でも、なぜかイライラ・モヤモヤしてしまうのはどうして…」そんな風にママやパパが悩み、「自分がおかしいと感じているのに『それは、おかしい!』と声を上げられない周囲からの育児プレッシャーが原因」と本書で読み解いてくれた森戸先生。そのほか、子どもの発達に関する疑問やお悩み、子育てメディアとの付き合い方、小児医療の正しい知識などを、小児科医として、また2人のお子さんのママとしての視点から、わかりやすく解説しています。読後は、心の中のモヤモヤがすっきりと晴れわたり、「子育てはだいたいで大丈夫よね!」と育児にたずさわるすべての人に安心と勇気を与えてくれる一冊となっています。■参考書籍 『小児科医ママが今伝えたいこと! 子育てはだいたいで大丈夫』 (内外出版社 森戸やすみ著 1540円(税込))朝日新聞の医療サイト『アピタル』の連載「小児科医ママの大丈夫!子育て」をまとめ、大幅に加筆したた1冊。●森戸やすみ先生1971年東京生まれ、埼玉育ち。1996年私立大学医学部を卒業し、医師国家試験に合格。専門的な学術書と手に取りやすい気軽な本の中間に位置するようなものを作りたいと考えている。<参考サイト>※1 公益社団法人 日本小児科医会: 日本小児科医会の提言(『スマホに子守りをさせないで!』) ※2 厚生労働省: 「厚生白書(平成10年版)」
2020年05月17日厚生労働省では、新型コロナウイルス対応関連情報として、妊婦さんや小さなお子さんがいらっしゃる方に向けて、産婦人科医、小児科医など各分野の専門家からのメッセージを公表しています。今回は、このメッセージについてご紹介します。※青字部分をクリックすると動画を見ることができます。 産婦人科医からのメッセージ日本産科婦人科学会 理事長木村 正 氏日本産婦人科医会 常務理事中井 章人 氏 外国の症例から、妊婦さんが新型コロナウイルスに感染したり重症化する割合は、一般の人と変わらないことがわかってきたそうです。感染予防策に関しても一般の方がおこなっていることと同じように人混みを避ける、手洗い、マスクの着用をすすめています。また気になる症状がある場合は、帰国者接触者相談窓口やかかりつけ医に相談するようお話ししています。(相談するタイミングは今後変更になる方向です) また里帰り出産に関してはおすすめできない現状で、なるべく現在住んでいる都道府県での出産をすすめています。そしてその際には妊婦さん自身で出産場所を探すのではなく、いまかかっている産婦人科の医師のネットワークを活用するよう伝えています。 そして、妊娠中の運動については、1日中寝ているとか座りっぱなしの生活は望ましくないこと、さまざまなメディアから妊娠中のエクササイズやスポーツについての紹介があるが、正しい医療監修のついたプログラムを生活に取り入れるようすすめています。助産師からのメッセージ日本助産師会 会長島田 真理恵 氏順調な妊娠経過のためには、家で過ごしてもいつも通り規則正しい生活を送ること、バランスのとれた食事生活、十分な睡眠、手洗いなどの感染防止と、ひとりで気持ちが落ち込むことのないようにすることなどが重要であると伝えています。 不安に思うことがあれば、助産師、保健師に遠慮なく相談したり、ネットで妊娠・出産・育児に関する情報を得る場合には、発信元が信頼できるかどうかよく吟味するようすすめています。 感染症専門医からのメッセージ国立感染症研究所 感染症疫学センター 室長多屋 馨子 氏小児の新型コロナウイルス感染症について解説しています。小児の新型コロナウイルス感染症では、家族内感染が多い、潜伏期が成人よりやや長い、便中のウイルス排泄が長い傾向がある、全患者に占める割合が低い傾向にあるということがわかってきたとのことです。 ■動画で使用されている資料はこちら 小児科医からのメッセージ国立成育医療研究センター こころの診療部 診療部長田中 恭子 氏■前編■後編 学校の休校や親の在宅勤務などで非日常の生活が続き、子どもたちのストレスは非常に大きくなっています。前編では、子どものストレス反応にはどのようなものがあるか、子どものストレス反応を進行させないための5つの方法などについて紹介しています。後編では、子どもと一緒にできるストレス対処方法を紹介しています。そして最後に頑張り過ぎのサインについてもお話ししています。子どもの発達段階に合わせての対応方法が紹介されているので、参考になるのではないかと思います。 ■動画内で使用されている資料はこちら 新型コロナウイルス感染症に関してデータが蓄積されることによってわかってきたことも多々あります。さまざまな情報が発信されていますが、やはり信頼できるところからの情報を得ることが大切です。自粛生活が続くことで生じる問題もあるかと思いますが、ひとりで抱え込まず、この大変な状況をみんなで乗り越えていけたらと思います。 監修者・著者:助産師 REIKO医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
2020年05月09日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。今は保育園が休園中、登園自粛要請のところが多いですが、4月からお子さんが保育園に入園したご家庭は多いのではないでしょうか。保育園に預けるとき、ママたちは「こんなに小さくて保育園に預けていいのだろうか」「子どもがかわいそうじゃないか」「子どもの発達に悪いのではないか」と悩んでいます。果たして本当に子どもはかわいそうなのでしょうか? 考えてみたいと思います。 ママたちを悩ませる「3歳児神話」、実は根拠がない「保育園よりも幼稚園のほうがいい」という考えが、世の中にあると感じます。共働き世帯が増えてきて、この風潮は少なくなってきているようにも感じますが、依然その考えの原因になっているのが「3歳児神話」です。3歳児神話は、“子どもは3歳ごろまでの間に「母親の手元」で育てられないと、成長に悪影響が及ぼされる”という考え方です。1950年にボウルビィという医師によって提唱されたとされています。 この考え方は、平成10年の厚生白書で“3歳児神話には、少なくとも合理的な根拠は認められない”とされています。なので、保育園に預けることは、子どもの発達、成長に影響を与えることはないと考えて大丈夫です。先ほど出てきたボウルビィも“母親的関わり”が大事と書いていて、アメリカの研究でも保育士さんに愛情を持って育てられれば、成長に影響はないという結果が出ています。 保育園に行くメリット・デメリットは? 保育園に行くと、多くの子が風邪を引きやすくなります。フィンランドの研究でも、保育園に通っている子のほうが、通っていない子よりも風邪をひく回数が多いと結果が出ています。ただ、保育園に通っている子は、小学校になってからの風邪の頻度が、通っていない子よりも低くなることがわかっています。発達に関しては、保育園に通うことによって、言語発達が改善するという指標があります(これは、3歳半の子にたいしてのデータですので、大人のときに言語発達が差がでるかは示していません)。 きょうだいがいる子のほう方がおしゃべりが早いと言われているので、子ども同士の関わりが子どもの発達をうながすのだと思われます。保育園は、小学校入学以降の風邪に関してや、発達に関してメリットがあることがわかります。とはいえ、ママのそばにいたい盛りの子どもが預けられることが多いので、預けるときに子どもが泣いてしまうことも多くあります。そんな子どもの姿を見るのがつらい、ということはよく聞く話です。 保育園に行く・行かないに関わらず、大事なこと 「保育園に子どもを通わせると、母親の幸福度が上がる」ことも先ほどの研究からわかっています。母親の幸福度が高いと何がいいかというと、虐待の防止に役立ちます。虐待までいかなくても、母親が幸福で穏やかだと、子どもの精神も安定します。保育園に行くか行かないかに関わらず、ママの精神的安定は家族の幸せにとても重要ですので、子どものためにもママの幸せをママ自身がきちんと考えていただきたいと思います。 生後8週から働いている、わが家の工夫▲2018年11月ごろの様子提供:保田典子医師 私は3人子どもがいますが、3人ともほぼ育休なしで仕事に復帰しています。産前も短くしたりしていたので、産休を含めても合計1年もありません。早くに子どもを預けて、さみしいという気持ちもありました。特に、末っ子は最後かなと思うと育休を取っておこうかなと悩んだこともありました。保育園に預けるときは、子どもにとって保育園が安心な場所になるように、心がけるようにしていました。たとえば、子どもの性格を先生とシェアしたり、子どもの様子を見て、早めにお迎えに行くようにした時期もありました。そして、自分自身が子どもにとって安心な存在であるように、なるべくイライラしない工夫をしています。 疲れたら、とことんラクをする! 無理しない!私も、3人目妊娠中からすごくイライラしやすくて、妊娠してから1年半から2年くらいが一番つらかったです。そこで行きついた答えは「自分を大事にすること」でした。 眠かったら朝起きずに朝ごはんも作らなかったり、掃除をやめたり。「疲れるなぁ」と思うことをやめると、心に余裕が出てきて、今度は逆に掃除もやろうという気分になってきます。「疲れたときはとことんラクをする、無理をしない!」これがイライラしないコツです。最近は子どもも少し大きくなってきたので、自分の仕事のことを子どもと話すようにしています。そんな子育て法でいいのかはわかりませんが、子育てに「不正解はない」と思っています。保育園でも、幼稚園でも、大丈夫。保育園に通う子どもたちは、決してかわいそうなんかじゃありません。ママたちが子どもの成長を喜びをもって見守ってくれれば、子どもはきちんと育つのではないかと思います。 イラスト/マメ美監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。
2020年04月30日こんにちは、小児科医の保田典子です。私生活では7歳、5歳、4歳の子育て中です。今回は、外来でもよく質問がある耳掃除についてです。「どのくらいの頻度したらいいですか?」「どのくらい深くまで入れていいですか?」など、健診や病気の診察のときなどに結構聞かれる質問です。私は「耳掃除は、しなくていいんですよ」とお答えしています。その理由をお話ししたいと思います。 「耳掃除」しなくていい理由は?健診のみならず、中耳炎の後の診察などでも耳掃除の質問はあります。中耳炎になると耳だれも出てくるので、耳掃除しなくちゃ、となりますよね。でも、耳掃除で中耳炎の予防ができる訳ではありません(鼻水を吸引したほうが中耳炎の予防はできます)。 日本耳鼻咽喉科学会でも、 耳垢は「細菌やカビが外耳道に繁殖するのを防いだり、敏感な外耳道皮膚を保護する役割があります。また苦味があり、虫などの進入も防いでくれます。つまり耳垢が私たちの耳を保護しているのです。」 と耳掃除をしないことを推奨しています。 耳のケア、どうすればいい?「耳掃除」といっても、綿棒や耳かきを耳の穴に入れて「掃除」することはしません。ガーゼなどを指に巻いて、耳を拭きとるというイメージでケアしておけばOK。大人の指なら子どもの耳の穴の奥まで突っ込めないので安全です。お風呂や沐浴で耳の中に水が入っても大丈夫。放っておけば水も自然に排出されます。 ちなみに、私自身は耳掃除をすることがありますが、子どもが大人しくテレビなどを見ているときに(←すごく大事です。急にぶつかってきたら鼓膜を破る危険性も……!)、深くなりすぎないように綿棒でささっとおこなう程度です。本当は不織布かガーゼが良いですよ。 わが家の子どもたちは、基本的に耳掃除はしていません。親がおこなっているのを見ると、「やって〜」と言われるので、スキンシップ程度にすることがある感じです。お子さんが自分で耳かきや綿棒使うと、鼓膜を破ってしまうおそれもあるので、絶対にやめさせましょう! 耳鼻科に行くのは、どんなとき?基本、耳掃除が目的で耳鼻科を受診する必要はないのですが、下記のようなときは、耳鼻科の受診を考えましょう。●耳だれが出るとき●耳の聞こえが悪くなったと感じたとき●耳を痛がるとき●耳の違和感を子どもが訴えるとき●どうしても耳垢が気になるとき 耳鼻科を受診する時に「耳垢が気になって」と伝えると、その場で取ってもらえることもありますし、「今度受診するべきなのか」「受診するタイミング」「受診しなくて大丈夫なのか」など教えてもらえるので、それを参考にするのがいいと思います。 適切なお手入れ法を知ることが大事です人間の体は、耳に限らず「適切なお手入れ方法」があります。 1. きれいにしたほうがよいものうんちをきれいに拭く、歯磨きをする、など 2. そこまで完璧にきれいにしなくていいものせっけんを使い洗いすぎると皮脂を落としすぎてしまう耳垢も適度な量は耳を守ってくれる大事なものなので落としすぎなくて良い、などきれいにすることのメリット、デメリットを理解していると、不要なケアを減らすことができるだけでなく、お子さんの健康を保つことができます。 耳垢よりも「聞こえが悪くなっていないか」「鼻水が詰まって口呼吸になっていないか」などを毎日チェックしてあげて、心配なら耳鼻科の受診を考えてみてくださいね。 監修者・著者:医師 高円寺こどもクリニック院長 保田典子 先生2003年筑波大学医学部卒業、国立国際医療センター、大阪市立総合医療センター小児循環器内科勤務を経て、2014年東京女子医科大学大学院博士課程修了後現職。小児科専門医。一般診療、小児循環器診療に加えて、漢方治療や発達相談にも対応している。2021年、高円寺こどもクリニック開院。
2020年04月29日ぱぱしょー先生が経験した患者さんとのエピソードとは?前回はさまざまな病院の違いについて説明しましたが、今回は「後医は名医」という言葉を紹介します。どのようなことなのでしょうか。私が大学病院に勤めていた研修医のころのことです。近隣のクリニックから患者さんが紹介されました。検査の結果、肺炎と診断したところ、患者さんが怒り出したのです。「前の医者が肺炎を見逃した!!」と。そして私に対しては「よく肺炎を見つけてくれました、さすが大学病院の先生だ」とおっしゃいました。紹介してくださった先生は、古くから地域を支えている先生でしっかりと患者さんをみてくださる良い先生であると私は思っていて、当然私より経験も豊富です。一方当時の私は、まだ経験の浅い研修医でしたので、とても申し訳ない気持ちになりました。初診のクリニックではまだ症状が現れ始めたころで、その後も改善がありませんでした。そのため、詳しい検査が必要とのことで総合病院を受診して肺炎があるとわかりました。私の診断は、クリニックの先生の考えを引き継いだにすぎず、決して私の方が優れた医者というわけではありませんでした。より詳しい検査ができる病院であったからこそ「肺炎」とわかり治療ができたのです。後医が「名医」になるワケイラスト:ヤマハチこのようなことは現場ではしばしば起こっています。後に紹介させる病院ほど情報が集まっているので、適切な診断に至りやすくなります。これまでの検査結果や治療は情報として参考になりますし、時間経過によってより情報が集まってきます。たとえば、インフルエンザになったとしましょう。インフルエンザは発熱してすぐに受診しても、検査上ははっきりしません。初診では陰性という結果がでても、のちに陽性と診断されることもあります。今の時期ですと新型コロナウイルスにおいても、そのようなニュースを目にすることがしばしばあるでしょう。よく、小児科医は「熱が続くようなら再受診してください。」と添えます。これは単なるリスク回避の言葉ではありません。数日経過を見ることで、状況が変わったり情報量が増えたりすることで、より適切な診断に近くためです。症状が出てすぐは、その時点での暫定的な診断のみをすることもあります。たとえば赤ちゃんによくある「突発性発疹」の場合、発熱が数日続き、熱が下がるとともに発疹が出現します。発疹が出現して初めてわかる病気なので、発熱してすぐには診断ができません。ある意味どんな名医でも最初「見逃し」うるものです。初診では緊急性の判断イラスト:ヤマハチ発熱してすぐのときは、診断が何かよりも、水分は取れているか、ぐったりしているかなど全身の状態が安定しているかどうかを中心に見ています。全身状態が良いかどうか、そして暫定的な診断をしてもらって、その次にどのような症状や状態になったら再度受診が必要か説明されるでしょう。最初に受診するクリニックの役割は、最終診断にいたることよりも緊急性の判断、全身状態の把握に重きが置かれます。もちろん診断が明らかであるに越したことはありませんが、情報が少ない状態では暫定的な診断にならざるを得ません。病名より緊急度の高い状態を「見逃さない」ことの方が大切なのです。患者さんとしては初診で適切な診断をしてほしいと感じるかもしれませんが、医療従事者の立場からすると、まずは緊急性や重症度の判断が大切なのです。患者さんにとっての「名医」イラスト:ヤマハチかかりつけ医から他の病院に紹介となり診断名が変わると、かかりつけ医に対して不安を覚えるかもしれませんが、ときにはそういったこともあることを知っておいていただけると幸いです。(もちろん、なかにはニュースで報道されるような大きな見逃しも存在します。)人それぞれ「自分にとっての名医」は異なるものです。誰もできない難手術をやってのける凄腕ドクターは名医でしょう。誰も診断できなかった病気を探偵のようにわずかな違いから見破る医師も名医でしょう。一般的に後の方で見た医師、つまり「後医」は「名医」といわれやすいですが、私は最初に患者さんを診察する「前医」にも、緊急性の判断を間違えずに適切に紹介することのできる「名医」がいると思います。そんな信頼できるかかりつけ医に、皆様が出会われることを願っています。ぱぱしょー先生によるお役立ち動画はこちら!YouTubeのままのてチャンネルでは、専門家の先生による育児に関するお役立ち情報を配信しています。ぱぱしょー先生の動画も好評配信中!チャンネル登録をよろしくお願いたします。パパ小児科医(ぱぱしょー)先生の過去のコラム著者:加納友環(ぱぱしょー)二児(3歳、5歳)の父で小児科専門医。TwitterやInstagramを中心に子育て当事者の立場から、また医療者の立場から子育てに役立つ情報を発信しています。
2020年04月27日