戦死した将校の姿をリアリスティックに描いた異色の戦争画《國之楯》で近年注目されている日本画家、小早川秋聲(こばやかわしゅうせい、1885〜1974)。彼の初となる大規模回顧展『小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌』が東京ステーションギャラリーにて11月28日(日)まで開催されている。戦争画だけにとどまらず、彼の叙情あふれる作品が並ぶ展覧会だ。小早川秋聲は鳥取県生まれ。寺の長男として生まれ、9歳で東本願寺の宗徒として僧籍に入る。その後、画家となることを決心した秋聲は、京都で日本画を学び、緻密な描写を体得していく。4章構成となる本展、第1章「はじまり 京都での修業時代」では、秋聲の京都での修行時代の作品を紹介していく。いずれも小早川秋聲(左)《誉之的》明治末期〜大正期 個人蔵 (右)《楠公父子》(二編)明治末期〜大正期 個人蔵いずれも小早川秋聲(左)《回廊》1914年頃鳥取県立博物館(中央)《清夢》 個人蔵(右)《長江所見》(上部 扇面は橋本関雪)1916年 個人蔵秋聲は無類の旅行好きであった。国内はもちろん、その時代は珍しく複数回、中国に渡航し、1922〜23年にかけてはアジアからインド、エジプト経由でヨーロッパに遊学。また、1926年には北米大陸へわたり、日本美術を紹介してまわった。第2章「旅する画家 異文化との出会い」は、小早川秋聲が旅先で刺激を受け、より明るく華やかな画風に変化を遂げていく作品が並ぶ。いずれも小早川秋聲(奥)《絲綢之路》大正期鳥取県立博物館(手前)《玩具絵巻》1916年鳥取県立博物館第2章展示風景より小早川秋聲による海外の風景いずれも小早川秋聲(左)《五月晴》1931年頃個人蔵(右)《長崎へ航く》1931年個人蔵しかし、時代が進み満州事変が勃発してからは、秋聲も否が応でも戦争に巻き込まれていく。従軍画家として戦地に赴いた秋聲は、自身の従軍経験もあったためか他の画家とは一線を画す叙情的な戦争画を描く。第3章「従軍画家として《國之楯》へと至る道」では代表作ともされる《國之楯》を下絵と並んで紹介する。いずれも小早川秋聲(左)《護国》1934年 個人蔵(右)《御旗》1936年京都霊山護国神社(日南町美術館寄託)いずれも小早川秋聲(左)《國之盾》1944年、1968年改作京都霊山護国神社(日南町美術館寄託)(右)《國之盾(下絵)》 1944年頃 個人蔵《國之楯》は陸軍省の依頼で描かれたものだが、受け取りを拒まれたもの。制作当初は体の上に桜の花が積もるように描かれていたものの、後に黒く塗りつぶされている。戦後は体調を崩したこともあり、大作は制作せず、仏画や小品などを描くようになった。第4章「戦後を生きる静寂の日々」では、戦後から1974年に亡くなるまでの秋聲の作品を紹介する。いずれも小早川秋聲左から《春寒賜浴》1960年頃 個人蔵、《吉羊黄初平》1945〜74年 園重寺、《延年益寿》1945〜74年 個人蔵、《山を出でます聖》1946年個人蔵秋聲の死後、彼の存在や画業はしばらくの間忘れられていた。彼がふたたび注目を浴びるようになったのは、没後約20年後の1995年のこと。美術雑誌『芸術新潮』で《國之盾》が紹介されたことがきっかけとなり、再評価の機運が高まっていった。いずれも小早川秋聲(左)《聖火は走る》1963年 個人蔵(右)《聖母子像》1945〜74年園重寺このような経緯があるため、小早川秋聲は《國之盾》など戦争画のイメージが非常に強い。けれども、日本中、世界中を旅し、叙情に富んだ作品を描き続けた側面も見逃してはならない。さまざまな魅力を見せてくれる小早川秋聲の画業を、この機会に見渡してみよう。取材・文:浦島茂世【開催情報】『小早川秋聲 旅する画家の鎮魂歌』10月9日(土) ~ 11月28日(日)、東京ステーションギャラリーにて開催
2021年10月26日大正から昭和にかけて、京都を中心に活躍した日本画家・小早川秋聲(こばやかわ・しゅうせい、1885~1974年) の画業を通観する初の大規模回顧展が東京ステーションギャラリーにて開催される。鳥取のお寺の住職の長男として生まれ、9歳で京都の東本願寺の衆徒として僧籍入りした秋聲は、その後、画家になることを志し、日本画家の谷口香嶠(こうきょう)や山元春挙(しゅんきょ)に師事、文展や帝展を中心に出品と入選を重ね、画技を磨いた。旅好きでもあった秋聲は、北海道、山陰、紀州など日本各地を絵に描き、国外では複数回の中国渡航に加え、1922年から23年にかけてアジア、インド、エジプトを経てヨーロッパ十数カ国へ遊学。1926年には北米大陸を横断し、日本美術の紹介にも努めた。1931年以降は従軍画家として満州、中国へ何度も赴き、数多くの戦争画を描いたことでも知られている。なかでも終戦の1年半前の作である《國之楯(くにのたて)》は代表作に挙げられる1点だ。戦後は、罪を問われる覚悟で日々を過ごし、大規模な展覧会への出品も減っていったという。美術史上でも長らく忘れられた存在だったが、近年、従軍画家による戦争画が注目されるなかで、再評価の機運が高まっている。同展では、初期の歴史画から、初公開の戦争画、晩年の仏画まで、100点あまりを紹介。激動の時代のなかで描き続け、多様な作品をのこした知られざる画家の生涯に迫っていく。《長崎へ航く》1931年、個人蔵《回廊》1914年頃、鳥取県立博物館《御旗》1934年、京都霊山護国神社(日南町美術館寄託)《天下和順》1956年、鳥取県立博物館【開催概要】『小早川秋聲旅する画家の鎮魂歌』会期:2021年10月09日(土)〜2021年11月28日(日)会場:東京ステーションギャラリー時間:10:00~18:00、金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)休館日:月曜日(11月22日は開館)入館料:一般1,100円、高校・大学生900円東京ステーションギャラリー公式サイト:
2021年09月21日女優の美山加恋が24日、東京・天王洲銀河劇場で行われた舞台『何者』の公開ゲネプロに、共演の阿部顕嵐(Love-tune)、長妻怜央(Love-tune)、鈴木勝大、宮崎香蓮、小野田龍之介、演出の丸尾丸一郎とともに登場した。同作は作家・朝井リョウによる同名の直木賞受賞作を映画化。就職活動を通して自分が何者かを模索する大学生の姿をヒリヒリと描く。2016年10月には、佐藤健主演で映画化された。舞台版の脚本は黒岩勉、演出は劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が務める。美山は意識高い系女子・小早川理香を演じ、主演の阿部と緊迫感のあるシーンを演じきった。作品に合わせて、もしこの職業に就いていなかったらどの仕事がしたいか? という質問に、美山は「物心つく頃からこのお仕事してたので……」と悩みつつ、「『パティシエになりたい』って思った気がします。甘いもの作るのが好きだったので」と明かす。声優を務める『キラキラ☆プリキュアアラモード』でもパティシエに縁がある美山だが、稽古場には手作りの菓子などの差し入れをしていない様子で、阿部は「ケーキ待ってます」と期待を寄せた。また、阿部が「僕たちの仕事は家にいる以外は面接のようなもの。面接には慣れてると自負はしているんですけど……美容師ですかね」と答えると、小野田が「前置きはなんだったんだ!?」と的確なツッコミを入れる。さらに「すごい、いいのありますよ!」と自信を見せた長妻が「お母さんが履歴書を送ってしまったのが事務所に入ったきっかけだったので、最初の雑誌で将来みんなが『デビューしたい』とか書いているのに、俺、『消防士になりたい』って書きました」と明かすと、鈴木から「それとっておきの話だったの?」、小野田から「長妻くんが『いいことあります』と言った時は大概こんな感じ」とつっこまれていた。しかし小野田も「強いて言えば焼き鳥屋さん。串に鳥を刺す時、気持ちよさそうじゃないですか」と答え、周囲から「怖い怖い!」と総ツッコミを受ける。一方宮崎は「普段スーツを着ることないので、なんでもいいからスーツを着る仕事をしたいなと思います」と希望を語った。“高いビルフェチ”で「きれいな女性を見るのと同じ感覚でビルを見ている」という鈴木は、「職業というよりも、高層ビルで働いてみたいなと思います」と願望を明かす。「入構証をもらって、改札機みたいな機械に入って、外から透けて見えるエレベーターに乗りたい」と語り、「エリアでいうと、汐留が好き」と告白していた。
2017年11月24日●苦悩を身体で表現するアプローチも就職活動中の大学生たちが繰り広げる関係を、SNSなどの要素を絡めて描き、第148回直木三十五賞を受賞した朝井リョウの傑作『何者』。2016年10月には、佐藤健主演で映画化もされた同作が、11月25日より舞台で上演される。ジャニーズJr.内のユニット・Love-tuneの阿部顕嵐(あらん)が主演を務める同作は、キャストを実際に大学生に近い同年代でそろえ、新たな表現を見せるという。就職活動がひとつのフックともなっている同作は、マイナビニュースとしても気になる存在。今回は、演出を務める丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)に話を聞いた。○現代的な切り口に新たな挑戦――今回は朝井リョウさんの小説の舞台化ですが、原作についての印象はいかがでしたか?ビシバシと、物語と感情と人格が伝わってくる、すごく現代的な作品で面白かったですね。就活やSNSという部分を切り取ることで、生きるスタンスを表現できるんだ、と思って。映画版も観に行ったら満席で、若者から共感を呼んでいる作品だなと実感しましたね。――そういう「現代的な切り口」を舞台上でどう表していくのでしょうか。ふだんの舞台で映像を使ったことなかったんですが、今回は新しいことにもチャレンジしなきゃいけないと強く思いました。Twitterという現代的な感覚を、いかに舞台装置に落とし込むかという点が大きくて、これは映像を使わない手はないな、と。その上で映像だけに頼らず、様々な演出でお客さんと感情を共有できるように、原作を舞台に落とし込んでいきたいと考えています。――今回は出ている方も、もしかしたら観に来る方も作中の人物と同年代くらいなのかなと思いましたが、どうアプローチされるんですか?キャストに最初に伝えたのは「僕は演出家だけど、一方的な先生みたいなことはできないし、わからないことはキャストに聞くよ」ということでした。「君だったらどういう感情になるの?」とキャストに聞いて、一緒に作っていく感覚ですね。今の22歳の感覚なら、僕より顕嵐くんの方が絶対に知っているだろうし。――キャストから出てきたことで、はっとさせられたことなどはありましたか?例えば拓人の立ち位置についての議論や、キャラクターがどういうスタンスでいるのか、周りで起こっている出来事をどう見ているかといったことは、キャストの言葉で、はっとさせられることが多いです。特に大きかったことで言うと、舞台上では今回出てこない、烏丸銀次という役をどうするかは、話し合いを進める上で、最初に考えていたプランとは変わりました。○各キャストの印象は――今回出演される6名についてお話を伺えればと思います。二宮拓人役として主演を務める、阿部顕嵐さんについての印象はいかがですか?顕嵐くん、実は最初は心配はしていたんです。拓人の物語が一本の筋となっているので、顕嵐くんがどういう人かによって舞台が大きく変わるなと思っていて。でも、僕がイメージしていた表現ができるし、今回最後にやろうとしている、拓人の苦悩を身体で表現するということのアプローチも、できそうだと思う。だからすごく舞台『何者』の可能性が広がりました。顕嵐くんは、可能性の男だなと思っています。――阿部さんの存在が作品の可能性を広げているんですね。舞台の王道である、笑って泣いて共感して、何か新しいものを持って帰ってもらうということ、お客さんが劇場を出たときに、入る前と変わった気持ちを渡すということ。それが、顕嵐くんを通してできる気がしています。顕嵐くんは僕が行こうとしているところも理解してくれているし、顕嵐くんの行きたいところも僕は理解していて、お互いに明確に行先が見えている感じです。――続いて小早川理香役の美山加恋さん、今回は意識高い系女子ということで。お芝居の基礎ができているし、求心力がある女優さんだなと思います。あとは加恋ちゃんの新しいものを見せたいですよね。せっかく演出をさせてもらって、この舞台に出ているのであれば、なにかしら今までの加恋ちゃんにないものが、お客さんの中で作られるような部分を見せてあげたい。壊れる加恋ちゃんを見せたいなと思っています。●就活独特の強迫観念や焦りを理解してもらう○出演者に化学反応を――ちょっと斜に構えている宮本隆良役の、長妻怜央さん。阿部さんと同じユニットのメンバーなんですね。怜央くんも、本当にポテンシャルがすごいんですよ。つい見ちゃう。もちろんまだ、演技について知らないこともあるし、基礎を固めていかないといけない部分はあるんですが、怜央くんがそういう武器を持った時の強さが見えるから、少しでも高みに連れていけるような演出家になりたいなと思っています。顕嵐くんと怜央くんの同じユニットの安井(謙太郎)くんとは前に作品で一緒になったことがあるんですが、安井くんからは「うちの顕嵐と怜央がお世話になるのでよろしくお願いします」って、保護者みたいなメールがきました(笑)。――舞台経験はあまりないけど、それだけポテンシャルがあるんですね。まず、持って生まれたものがある子なんです。神様からのギフトを持っているから、まだ経験値がないだけであって、経験さえ積めば僕らでは手の届かないところに辿り着けるんじゃないかなと思います。――神谷光太郎役の鈴木勝大さんは、映画『帝一の國』などでも注目されていますね。勝ちゃんは、今回すごく頼りにしています。ガラッと場の空気を変えられる役者さんなんです。光太郎という役も実際そういうキャラクターだし、勝ちゃんが現れることによって、冷たい部屋が明るくなったり暖かくなったり、笑っちゃうような景色が見えたりする。笑える部分の雰囲気は、勝ちゃんが作ってくれますね。――それは、本人の資質も関係するものですか?ありますね。パンっと声が出て、カラッと心の状態を変えられる役者さんなんです。役者さんにもいろんなタイプがいて、徐々に変えていける人もいれば、ベタッとしたところが持ち味の人もいますが、勝ちゃんはカラッと変えていける人だと思います。――拓人から思いを寄せられる、田名部瑞月役の宮崎香蓮さんについてはいかがですか。ザッキーはすごく等身大の人、という印象です。もともとの才能よりも、努力で進んできた人だと思うんです。だから真摯に役に向き合えば、お客さんが最も感情を入れやすく、そこが武器になるはずです。ザッキーが舞台上で輝くと、お客さんはすごく勇気を持てるんじゃないかな。――サワ先輩役の小野田龍之介さんは、もうかなり経験も豊富で。もう、演出家にとって、役者というだけではなくて"参謀"みたいな感じですね。的確なことを言ってくれるし、この座組にいてくれてよかった。龍ちゃんには、みんなの声のトレーニングもやってもらっているんです。昔、鴻上(尚史)さんに「小劇場出身の役者は、無免許運転みたいなもの」と言われたことがあるんですが、僕らは演劇研修所とかでトレーニングを積んだわけじゃなくて、「アクセルふんだら進むから!」みたいな感じで公道を走っている状態(笑)。でも龍ちゃんは子どもの時からトレーニングを積んできていて、いわば免許皆伝です。だから、免許を持った参謀です。――色々なバックグラウンドの方がいる舞台ですよね。そうなんです。だから化学反応を起こさせて、強い作品をつくりあげていけたらと思います。○就職活動のリアリティも必要――「就職活動」がキーになる作品をステージ上で表すにあたって、演出でのポイントや、難しさはどのようなところですか?ショーアップされて見せる演出も考えています。しかし就活独特の強迫観念や焦り、そして同じ就活生でも色んなスタンスの人がいるという雰囲気を、6人がうまく表現していかないと、間口の狭い作品になってしまう。また、いかに就活をしたことない方にも彼らの気持ちを理解してもらうかは大きなチャレンジですね。エントリーシートとか、僕自身もものすごく悩んだ思い出があります。「自分の長所は?」とか、突きつけられるじゃないですか。人生でそういった場面は就活以外にももちろんいっぱいあるとは思いますが、多くの人にとって最初に来るものだし、日本は終身雇用みたいなイメージもあるから「今後の一生を決めるんだ」ということを思うと、震えて足がすくむ感覚です。――出てらっしゃるみなさんも、日々の選択はされていそうですよね。顕嵐くんも、タレントというのは「毎日就職活動しているようなもの」と言っていました。毎日評価を受けて、自分を良く見せることに立ち向かっているから。就活経験はなくても、あの6人の気持ちは、絶対キャスト自身も持っている感情だと思うんです。ただ、就活独特のあの雰囲気や空気感などがわかると、より舞台に重みやリアリティが出てくると思います。――拓人にとって、心の拠り所としての演劇という面があると思うのですが、丸尾さんも共感する部分はありますか?ありますね。演劇って、一月以上も役者やスタッフ、皆で作品に向き合うんで、終わった頃には家族みたいになってる。僕は劇団出身ですが、劇団なんて言いたいことを言い合う若干仲の悪い家族ですよ。今もそんな家族と演劇でご飯を食べていけたらいいなと思って、劇団を続けていますし。実は僕は就活で内定をもらってから劇団鹿殺しを旗揚げしたので、本当に就職するか悩んだんですよ。親からは「とりあえず就職してみたら。嫌だったらやめたらいいと思う。でもやらないのは食わず嫌いみたいなものだから」と言われて、旅行会社の営業部に入りました。営業自体は得意だったんですが、2年位経って、この先この仕事は僕よりも旅行に使命感を持っている人がやるべきだ、そんな自分がこのまま会社いたとしてもトップにはなれないし、僕は僕の好きな演劇に戻ろうと思って、今に至ります。――最後に、作品を観た方に、こういうことを感じてもらえるんじゃないか、という点を教えてください。役としての6人って、特別なギフトを持ってない人たちで、多くの方にとって近い存在なんです。その人たちが、結局は自分という頼りない情けない存在でも、前に進んでいくしかないと認めた時に、一つ大きな階段を昇って見える景色がかわってくる。お客さんが劇場を出たときに、身軽になって飛び立てるような舞台にしたいなと思います。
2017年11月14日朝井リョウの直木賞受賞小説を原作にした舞台『何者』が11月25日(土)に開幕する。出演者の美山加恋と宮崎香蓮に話を聞いた。舞台『何者』チケット情報昨年映画化もされた本作は、就職活動を通して自分が「何者」かを模索する5人の大学生が、お互いを励まし合いながらも、友情、見栄、妬みといった様々な感情が交錯してゆく姿を描く。舞台化は初めてで、演出は劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が手掛ける。「同世代ばかりの現場は久しぶり。楽しみです」と笑顔を見せるふたり。主演・阿部顕嵐(Love-tune/ジャニーズJr.)をはじめ、長妻怜央(Love-tune/ジャニーズJr.)、鈴木勝大、小野田龍之介ら原作にリアルな世代のキャストが揃った。美山も「わたしはちょうど来年が就職活動の年齢で。実際に学校の友達はインターンシップもあるし、(本作で重要な役割を担う)Twitterもやってますし、それを今、取材中なんです。人間関係がリアルなので、舞台でどう表現していこうかとワクワクしますね」。もともと原作を読んでいたという宮崎は「朝井さんの人間描写の鋭さやリアルさはゾクゾクします。特にこの作品は、覗き見のような感覚で読んでいると、最後にドキッとする展開があるので。舞台だとそれがより強く感じられるんじゃないかなと思いますし、そうつくっていきたいです」と魅力を語る。美山が演じるのは、留学帰りであらゆることに意識が高い女子・小早川理香。「プライドが高いのですが、それは自分に自信がないからなのかなと思ったりもします。前へ前へ、という向上心は女優っぽい考え方だなとも思うし、演じやすいんじゃないかな」(美山)。宮崎は、拓人が片思いをしている相手で、理香の友人でもある田名部瑞月を演じる。「強い子だなと思いました。何者でもない自分で生きていく覚悟ができているのか、就活を通してその覚悟を得たのか…。そういうところが上手く表現できたらと思います」(宮崎)。ほとんどの人が避けて通れない就職活動。“受かる者”“落ちる者”がハッキリとする世界だからこその、えぐられるような描写もあるが、本作は「カッコ悪くても、あがいたほうがいいんだって思うし、ああがんばろうって思える」と宮崎。「時期的にこの作品が見納めになる人もいるかもしれないので、2017年の最後にすごいもの観たなって思ってもらいたいです!」(美山)。舞台『何者』は、11月25日(土)から12月10日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて上演。ぴあでは、特別サイトにて10月28日(土)午前10時からチケット発売予定。取材・文:中川實穗
2017年10月27日ジャニーズJr.のユニット・Love-tuneの阿部顕嵐が、舞台『何者』に主演することが10日、わかった。同作は作家・朝井リョウによる同名の直木賞受賞作を映画化。就職活動を通して自分が何者かを模索する大学生の姿をヒリヒリと描く。2016年10月には、佐藤健主演で映画化された。舞台版の脚本は黒岩勉、演出は劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が務める。阿部は冷静で無口でクール、分析能力に長けた大学生・二宮拓人を演じる。また留学帰りの意識高い系女子・小早川理香役に美山加恋、理香と同棲中で就活すること自体が格好悪いと思っている青年・宮本隆良役に、外部公演初出演となる長妻怜央(Love-tune/ジャニーズ Jr.)が決定した。拓人とルームシェアをしている元バンドマン・神谷光太郎役として鈴木勝大、田名部瑞月役に宮崎香蓮、サワ先輩役として小野田龍之介が出演する。朝井は、「『何者』を執筆していたころとは、作品に出てくる【就職活動】や【SNS】等のキーワードを取り巻く環境は大きく変化しています」と状況を分析。「キャスト・スタッフの方々が『何者』をどのようにアップデートしてくださるのか、期待しています」と語った。演出の丸尾は、「主人公・二宮拓人を演じる阿部顕嵐さんとは初めてだが、拓人役に通じる繊細な雰囲気と内に秘めた熱い心を感じ、一緒に作り上げていく作業に今からワクワクしている」と期待を寄せる。「原作にリアルな世代の力のある方々に集まって頂き、素晴らしい『何者』の味付けが出来る事を確信している」と自信を見せた。公演は11月25日~12月10日まで、天王洲銀河劇場にて行われる。○阿部顕嵐コメント初めての外部舞台の主演、そして『何者』の拓人役を演じると聞かされた時は、驚きと喜びが混じり合った複雑な気持ちになりました。原作『何者』を読んでみて、拓人の第一印象は余裕がなく斜に構えていてプライドが高いと感じました。拓人は大学生であり就活生。僕自身も現役大学生なので拓人と分かり合えるポイントは多々あると思います。ですからよりリアルに大学生、就活生としての心の不安などを共感して貰えるように演じたいと思っています。拓人役を他の『何者』でもなく僕が演じて良かったと言って頂ける様に、拓人の人生を生きて全力で役と向き合いたいと思っています。○長妻怜央コメント『何者』という作品に出演させていただけるという話を聞いた時、嬉しいと同時に注目されている作品なのですごいプレッシャーも感じました。就職活動に悩むリアルな日常の雰囲気を表現するのは難しいと思いますが、演出家さんや共演者の方々の助けを借りながら、精一杯頑張ります。僕が演じさせていただく宮本隆良という人物は、僕とは違ってハッキリ自分の考えを他人に伝える力があり、しっかり自分の理想を持っている人だなと思いました。しかし逆に、プライドが高いところは似ていると感じました。彼と僕の違う所と似ている所を研究し、自分なりの宮本隆良を演じていきたいと思います。しっかりと爪痕を残し僕の座右の銘である「常に全力投球」の言葉を忘れずに精一杯頑張っていきます。同じグループの阿部顕嵐とはライバルの気持ちでお互いを高め合っていきたいです。
2017年09月10日朝井リョウの直木賞受賞作を映画化した『何者』(三浦大輔監督)が公開中だ。就職活動を通し自分が「何者」かを模索する5人の大学生を描く話題作。リアルな就活事情やSNSに翻ろうされる若者たちを“観察”した、新感覚の青春群像劇に共感と驚きの声があがっている。主演の佐藤健をはじめ、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生、山田孝之という人気、実力を兼ね備えた超豪華キャストが顔を揃えている点も大きな見どころ。劇中の登場人物がそうであったように、彼らもまた、かつては自身の夢や将来を見据えた“何者”であり、いまは役者としてその本領をいかんなく発揮している。あえて「役者という職業に就職した」という視点から、勢ぞろいした6人に「自分が役者だと実感する瞬間」を聞いた。佐藤健【冷静分析系男子@二宮拓人】デビューしたての頃は、いまみたいに役者としてやっていける自信はなかったですね。だから、実感する瞬間というよりは、徐々に仕事を重ねることで、あるとき「あっ、自分は役者になったんだな」と。年齢でいうと19歳ぐらいです。ちょうど「仮面ライダー電王」の頃ですね。気づいたら、とても忙しくなっていて、毎日現場に行き、一生懸命に芝居をする。その繰り返しをふり返る中で、『何者』風に言えば、役者という職業に就職したのかもしれません。有村架純【地道素直系女子@田名部瑞月】私自身は、「自分が女優」だとか、「女優になった」という風にあまり考えないで日々を過ごしているので、「役者だと実感する」という瞬間は意識していません。ただ、強いて言えば、17歳のときに事務所に入った瞬間ですね。文字通り、自分を取り巻く世界が180度変わりましたし、いまの私にとって、とても大きな出来事だったことに間違いはありません。二階堂ふみ【意識高い系女子@小早川理香】小さな頃から映画が大好きだったので、初めての映画(役所広司の初メガホン作『ガマの油』)で撮影現場に一歩足を踏み入れた瞬間の“アガった”感覚は、13歳だった私にとってとても鮮烈な瞬間でした。現場には私たち俳優部がいて、監督がいて、撮影部さんがいて、一緒に同じ作品を撮っている…。そんな風景を初めて目の当たりにして、学ぶことが多かったです。その仲間入りができた、という気持ちはいまも覚えていますね。菅田将暉【天真爛漫系男子@神谷光太郎】僕の場合、芸名が「菅田将暉」に決まったときです。当時16歳くらいですし、戸籍上の名前とはまったく違う、記号的ともいえる新しい名前で、世の中に出るわけですから、自分自身が「何者?」っていう(笑)。それがだんだん気にならなくなって、自分も役者なんだなって。ただ、共演する皆さんから「菅田くん」「将暉」って呼ばれると、いまも若干違和感はあります。岡田将生【空想クリエイター系男子@宮本隆良】この仕事をずっと続けていこうと心に決めたのは、20歳になる前に当時通っていた大学を辞めたときですね。具体的なきっかけというよりは、いろんな現場でお芝居と向き合いながら、自然と役者への思いが強くなっていきました。山田孝之【達観先輩系男子@サワ先輩】こういう仕事をしていると、ときにはファンの皆さんやお客様から批判的な意見をもらうこともありますよね。すると、やっぱり悔しい思いをするんですよ。その瞬間、自分はプロの俳優なんだなと実感しますね。こういう感覚は、役者を続けていく以上、常につきまとうもの。自分のもとに届く声にどう向き合うか?さっき言った悔しさも含めて、受け止めるようにしています。(text:Ryo Uchida/photo:Nahoko Suzuki)
2016年10月23日文化放送は、「動画」と「音声」でストリーミング配信を行っている日本最大級のアニメ&ゲーム系専門チャンネル「超!A&G+」にて、声優の井澤詩織と立花理香がパーソナリティーを務める新番組「井澤・立花 ノルカソルカ」を2016年4月4日よりスタートすると発表した。毎週月~木の24時30分ごろから10分間放送される。本番組は、同日の4月4日からスタートする新ワイド番組「鷲崎健のヨルナイト×ヨルナイト」内で放送される動画番組。パーソナリティーが対決するゲームやオタクトーク、男性の好みを話し合う女子トーク、フリートークなど、日毎にテーマを設けてさまざまなトークや企画を展開していくという。
2016年03月25日平成生まれの作家として初めて直木賞を受賞した、朝井リョウによるベストセラーを実写化する映画『何者』。この度、主演の佐藤健をはじめ、有村架純、二階堂ふみ、菅田将暉、岡田将生ら豪華俳優陣の出演が決定。演劇界の若き鬼才・三浦大輔が監督・脚本を務め、就職活動を通して自分が「何者」かを模索する5人の大学生の物語に挑戦する。就活の情報交換のため1つの部屋に集まった、5人の22歳。かつて演劇サークルで脚本を書いていた、人を分析するのが得意な拓人(佐藤健)。天真爛漫で何も考えていないようで、着実に内定に近づいていく光太郎(菅田将暉)。光太郎の元カノで、拓人が思いを寄せ続ける、実直な性格の瑞月(有村架純)。人一倍「意識高い系」でありながら、結果が出ず不安を募らせていく理香(二階堂ふみ)。社会の決めたルールには乗らないと宣言しながらも、焦りを隠せない隆良(岡田将生)。海外ボランティアの経験、サークル活動、手作り名刺、SNS、業界の人脈…。様々なツールを駆使して戦っていく就活生たち。企業に入れば「何者」かになれるのか、自分は「何者」になりたいのか――。そんな疑問を抱えて就活を進める中、5人はそれぞれの思いや悩みをツイートするが、一緒に過ごすうちに、就活のやり方やスタンスに嫌悪感を覚えることもあり、徐々に人間関係が変化していく。そして拓人はサークルOBのサワ先輩(山田孝之)に相談するも、思うようにいかない現実に苛立ちを隠せなくなる。やがて「内定者」が現れたとき、抑えられていた妬み、本音が露になっていく。そして、ようやく彼らは自分を見つめ直す。果たして自分は「何者」なのか。原作は、「桐島、部活やめるってよ」で等身大の高校生を描き切った朝井氏による、圧倒的なまでにリアルな就活生の物語を描写したベストセラー小説。実写化に挑むのは、演劇ユニット「ポツドール」主宰者として数々の話題作を上演しつつ、『ボーイズ・オン・ザ・ラン』『愛の渦』といった映画でも高い評価を得ている三浦監督。本作では脚本も担当し、舞台仕込みの演出で作品にさらなる深みを与える。主演には、『バクマン。』『世界から猫が消えたなら』と主演作が立て続く、人気・実力共に兼ね備えた佐藤さん。共演者には、月9ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」主演の有村さんや、『蜜のあわれ』をはじめ映画界で実力派として活躍しながら、バラエティ番組にレギュラー出演する二階堂さん。そして『ピンクとグレー』『暗殺教室-卒業-』『デスノート 2016』と今年公開の出演作がすでに8本発表され、TVCMでもその顔を見ない日は無い菅田さん。松坂桃李、柳楽優弥が出演するドラマ「ゆとりですがなにか」では主演を務める岡田さん。さらに、数々の大ヒット作品に出演し、その存在感を増している山田孝之と、世代を代表する若手実力派俳優陣が集結する。各キャストからのコメントも到着した。■佐藤健(二宮拓人役)クランクイン前に何日間かキャスト全員が集まってリハーサルをやらせていただきました。にも関わらず撮影当日もまた鬼のようにリハを繰り返す、舞台稽古のような現場です。三浦監督のもと、キャスト一同三浦組の劇団員になったつもりで残りの撮影も全力を尽くしたいと思っております。この一筋縄ではいかない原作を、この一筋縄ではいかないキャスト、スタッフのみなさんと映画化できることを嬉しく思います。さて、どんな映画が出来上がるのでしょうか。ご期待ください。■有村架純(田名部瑞月役)この度、映画『何者』に出演させていただくことになり、役作りのための経験として就職活動の体験をさせていただきました。エントリーシートの記入や、面接官との質疑応答など、味わったことのない空気の中、周りの友だちはこのような経験を経て社会に出るのだと改めて感じると共に、自分自身がどうあるべきかを考えさせられました。就活生5人、同じ舞台でお芝居をすることが楽しみですし、たくさん刺激を受け、たくさん吸収したいと思います。とてもおもしろい作品になりそうだとワクワクしています。皆さんと精一杯頑張ります。■二階堂ふみ(小早川理香役)同じ世代間で感じる社会との距離や自分との向き合い、様々な感情が渦巻く『何者』。面白い作品にできたらと思います。三浦組、とても楽しみです!■菅田将暉(神谷光太郎役)想像を絶する群像劇。想像を絶するギターボーカル。想像を絶する就職活動。絶しまくりのスタートでしたが、神谷光太郎の『まっすぐさ』を武器に、いま、凄くワクワクしています。現場では毎日、佐藤健くんがニヤニヤしています。これは何かありますね(笑)何だか面白くなりそうな予感があります。予感で終わらせないように、ビシッとかましてやります!■岡田将生(宮本隆良役)宮本隆良。なかなかの曲者です。この曲者を三浦監督とどう創っていくか。撮影は始まっていますが、確実にいいキャラクターになる自信があります。この作品のいいスパイスになれるよう頑張っていきたいと思います。■山田孝之(サワ先輩役)以前から三浦監督とはお仕事をしたいと思っていたので、今回お声掛け頂いてとても嬉しく思っています。うわさには聞いていましたが、現場ではなかなかOKが出ず、何度も何度も最善を目指しテイクを重ねていますが、芝居を細部まで突き詰めさせてもらえるチャンスだと思い、必死について行っています。と、言いたいところですが実際はスターキャストが集まっていてヒット作の匂いがしたので便乗したと言うのが事実です。映画『何者』は10月15日(土)より全国東宝系にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年03月11日