とにかくぜひ、現物を見てもらえたら。そう強く勧めたくなるのが、ペーター・ヴァン・デン・エンデの『旅する小舟』。昨年〈NYタイムズ〉と〈WSジャーナル〉のベストブックに選ばれた文字のない絵本だ。一枚の紙で折られた小舟が大海原に放たれる。小舟が遭遇するのはとても奇妙な海の生き物や鳥たち、マングローブの薄暗い森、満天の星、オーロラ、氷山――。ペンだけで描かれた絵は全ページ舐めるようにして見たい驚異の緻密さ。日本での刊行のきっかけを作ったのは、本書に解説エッセイを寄せている翻訳家の岸本佐知子さん。「〈NYタイムズ〉の書評コーナーに、この絵本がオーロラのページと一緒に紹介されていたんです。これは、と惹かれて取り寄せたら、どのページも絵が本当にすごくて。絶対日本で紹介したいと思いました」エージェントに話を持ち掛け、芸術専門の出版社、求龍堂に出版を打診。紙の質や重さにこだわり、何度も印刷テストを繰り返して作られた日本版は、著者ご本人も気に入っているという。そんな著者は1985年、ベルギーのアントワープ生まれ。なんと、これがデビュー作だ。「インタビュー動画を見ると、ボーダーシャツを着た爽やかな青年なんです。生物学を学んだ後、カリブ海域のケイマン諸島で2年間ネイチャーガイドをしていたと聞いて納得しました。イマジネーションだけでなく実地の知識も合体したクリーチャーたちの造形が素晴らしい。どのページも見た瞬間から引きつけられますが、やはり一枚描くのにものすごく時間がかかると言っていました」絵を眺めるだけでも十分没入できるが、小舟とさまざまな生き物の出合いには物語性も感じられ、そこでも楽しませてくれる。「何も説明されない分、こちらの推理力が働くんですよね。よく見ると同じ生き物が別のページに出てくるなど、あれっ?と思う箇所がたくさんある。きっと私もまだ気づいていない細かな描写があるんじゃないかな。手元に置いて、何度も何度も読みたくなります」どのページも壮大な光景が広がるからこそ、シンプルな紙の舟の心許なさと、世界の大きさと不思議さの対比も浮かび上がる。「著者は、自分たち人間もこれくらいちっぽけで非力なんだと表現したかったそうです。小舟が隅っこに描かれているページもあり、この絵本は小舟だけでなく“世界”も主人公なんだと感じます」表情もなく、言葉ももたずに旅を続ける小舟に、いつの間にかすっかり感情移入してしまう。どうぞ、この旅の顛末を見届けてください。『旅する小舟』著 ペーター・ヴァン・デン・エンデ執筆 岸本佐知子紙の小舟の大海原の旅。推薦文を寄せるのは『アライバル』のショーン・タン。ティム・バートンやエドワード・ゴーリーが好きな人にもお薦め。求龍堂3080円きしもと・さちこ翻訳家、アンソロジスト。訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ジョン・マーズデン&ショーン・タン『ウサギ』、レベッカ・グリーンの絵本『おばけと友だちになる方法』など。※『anan』2021年12月8日号より。写真・土佐麻理子(岸本さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2021年12月07日ミニストップは6日、東京都中央区日本橋に「cisca 日本橋小舟町店」を開店した。○夜のちょい飲みに対応し、 「アヒージョ」や「トッポギ」を発売同店は、同社が2014年9月に立ち上げた新業態「cisca(シスカ)」の3号店。"cisca"はcity small caféの頭文字からつけた造語で、「できたて」「健康感」「つながり」をコンセプトに、「カフェ」と「デリカテッセン」そして「グロッサリー専門店」を融合させた。1号店の「日本橋本町店」の開店当初より、野菜や果物のみでつくったスムージー、野菜や魚介類をベースにうま味を引き出した具沢山のスープ、発芽玄米を使用したおにぎりや油を使わないカロリー控えめのドーナツなど"気軽に健康的な食事を楽しみたい"というニーズに応えた品ぞろえを実施。朝・昼は、コーヒーをベースに、おにぎりやサンドイッチ、菓子パン、サラダなどの軽食需要として、夜はちょい飲みのできる場として多くのユーザーが利用しているという。2015年2月に開店した2号店「神田多町店」より、生ビール「ハートランド」(400円・税込)の発売を開始。2号店での好調をうけ、1号店でも5月より取り扱いを開始している。今後は、全店舗で開店時より取り扱いを行う。また、今回の3号店開店時より「ナイトメニュー」として、ビールやワインにあう「国産えびのアヒージョ」(598円・税込)など各種「アヒージョ」や「トッポギ炒め」(598円・税込)などのおつまみのラインアップをスタート。日本橋本町店および神田多町店でも取り扱いを開始する。ともに、15時からのサービスとなる。さらに7月下旬からは、お昼の昼食需要に向け、「レッドカレー」「グリーンカレー」「イエローカレー」「プーパッポンカレー」「ガッパオ」「ユッケジャンクッパ」の6種類のエスニック系のお弁当を発売する予定となる。いずれも、店内で最終加工を行い提供。価格は500円~600円(税込)を予定している。
2015年07月07日