米米CLUBのジェームス小野田(64)が6日、都内で行われた、難聴がもたらす認知症誤認のリスクを知らせるための短編映画『気づかなくてごめんね』の試写会に参加した。第2弾となる本作は「デイサービス」が題材。小野田は「私も義理の母ももう80歳で、だんだん耳が遠くて、テレビの音も大きくなってきている。なんか他人事ではないような気持ちがします」と感じたという。続けて「私はボーカリストですけど前期高齢者に入りまして、いつ耳が遠くなって聴こえなくなってしまうのか、バンドの音が聴こえなってしまうのが今から心配しています。大きな会場だとイヤーモニターっていうのをつけて、耳に音を出して歌ってるんですけども、これからだんだんと年を取ってイヤーモニターでしか歌えなくなっちゃうんじゃないかなという恐怖感もありつつ…。本当に他人事ではないと思いました」と明かしていた。最後に小野田は「声を大にして言いたいです。高齢者にもっと優しく接してください!」と呼びかけていた。イベントには、石倉三郎、柳田ありす、ヒデ(ペナルティ)、市井紗耶香、上西恵、搗宮姫奈、大和田南那、矢作有紀奈、武智大輔、大村和明、Maica、武田知大監督も参加した。短編映画『気づかなくてごめんね』は、3月中にYouTubeで公開される。高齢期の難聴がもたらす認知症の誤認や、老年期のうつや社会的孤立のリスクを低減させるために聴こえのフレイル=「ヒアリングフレイル」について社会へ広く啓発していくことを目的に開催されたイベント。この日は短編映画『気づかなくてごめんね』の試写会とジャズライブイベントが行われた。
2024年03月06日人気の演劇ユニット“地球ゴージャス”を率い、自ら作・演出を手掛ける岸谷五朗が、14年ぶりに外部の舞台で主演する。作品は『焼肉ドラゴン』などで知られる鄭義信(チョン・ウィシン)の作・演出による音楽劇『歌うシャイロック』。シェイクスピアの傑作『ヴェニスの商人』の高利貸しシャイロックを物語の中心に据えて再構成、さらにそれを全編関西弁で贈るというノンストップエンターテインメントだ。鄭は、岸谷の出世作となった映画『月はどっちに出ている』(1993年)で、崔洋一監督と共に脚本を担当した時からの「主演俳優と作家という付き合い」(岸谷)。共に演劇畑にいながら「こんなタッグの形は初めて」と楽しみながら稽古開始を待つ岸谷が来阪、作品の魅力や意気込みを語った。「歌うシャイロック」 チケット情報演出では『キンキーブーツ』など“地球ゴージャス”以外の作品も手掛けている岸谷だが、俳優として舞台で主演するのは2008年の祝祭音楽劇『トゥーランドット』以来。この2年間で4作品に関わる多忙な中「ラッキーにもこの期間にお話をいただき『やっとできる!』という感じでした。役者だけで出られる幸せって、ほんとにたまんないですね。ドキドキです」と喜びながらも、「3人で苦楽を共にした」崔監督を11月に亡くし「なおさら、この作品を成功させなければという強い意志になりました」。通常は終始悪役のシャイロックだが、今作は目線が違う。「当時のイギリスのユダヤ人への差別と迫害の中を、シャイロックがどう乗り越えていったか。その開き直りと人生に対する憤りがエナジーにつながっている。脚本を読んで、なんてかわいそうな親子なんだろうと。その時代時代にある常識の怖さなど、ただの『ヴェニスの商人』にはない多面的なおもしろさがあって、ウィシンさんらしい、ウィシンさんじゃないと書けない作品だと思います」と魅力を語る。さらに「関西弁にすることで、シェイクスピアが近所のおっちゃんに見えてくるという親近感が作品全体の魅力になり、何倍もおもしろくなっています」。その関西弁は、2003年のNHK連続テレビ小説『てるてる家族』で関西弁のイントネーションを音符にして覚えた特訓が生きた。「シャイロックは悪徳高利貸しなので、言葉が非常に乱暴。ドラマのお父さん役にはなかった関西弁の悪い言葉がいっぱい出てくるのも楽しいですね」。この2年間、自作の大阪公演が中止を余儀なくされてきた岸谷。まだ続くコロナ禍での上演に「我々は作品を作ることが攻撃であり、乗り越えることだと思っています」と力強く語った。公演は2月9日(木)から21日(火)まで京都・南座、2月25日(土)から27日(月)まで福岡・博多座、3月16日(木)から26日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケット発売中。取材・文:高橋晴代
2023年02月06日スターチャンネルオリジナルドラマプロジェクト『5つの歌詩』#2「マスカラまつげ」のメガホンをとった小野田玄監督が語る制作秘話と本編、メイキング映像からなるインサイドストーリー映像が18日、公開された。同プロジェクトでは、脚本家の岡田惠和氏、渡邉真子氏、濱田真和氏がチームを組み、DREAMS COME TRUEの楽曲をドラマ化。「空を読む」、「マスカラまつげ」、「 TRUE, BABY TRUE.」、「何度でも」に加え、このドラマ企画のために書き下ろされた新曲の計5曲がオリジナルストーリーとして映像化される。「マスカラまつげ」の演出を担ったのは、NIKE「JUST DO IT」、資生堂「新TSUBAKI /赤・白」、サントリー「伊右衛門/品質」などのCM演出を担当し、フジサンケイグループ広告大賞2006 MediaMIX 部門でグランプリ、ADFEST2007 360°LOTUS “Gold” Napster Japan Open Your Ears Campaign、電通賞2011 テレビ広告公共部門 “最優秀賞”など受賞歴多数の小野田玄氏。インサイドストーリーの映像内のインタビューでは、「曲調はすごい明るくて元気だったり、前向きなのに歌っている歌詩の内容とかっていうのが、諦めなきゃいけないけど、諦めたくない、強がりみたいなところだったりとかっていうのを、すごい繊細に描かれている、不思議な組み合わせの曲だなと思いました」と歌詩の印象を明かし、ドラマ初演出という点に関して「右も左も分からない状態ですよね。『読み合わせって何?』みたいな。リハーサルして、戻しって言いまして、戻しって何って思いながら、台詞のようにして、どこまで何を口に出していっていいのかとか、考えていたりしていいのかというのが、何もわからない状態で、反省点でもあり、勉強になったところでもあります」と振り返っている。またインサイドストーリーの映像内では、「マスカラまつげ」で主演を務めた高梨臨も登場。「監督も何か“ここはこう”みたいな明確なビジョンを結構持ってる方でしたし、私も私でやっていく中で、“私はこう思う”みたいなところも結構出てきたので、本当に一個一個話し合って、“これだったらこうだね”みたいなのはかなりありました」と監督の印象を語っている。(C)2022 東北新社
2022年08月18日普段、甘めのメイクをすることが多い、タレント・小野田紗栞さんの違う一面が見てみたい!ということで、ヘア&メイク・AYAさんが提案してくれたのはクールな印象のハンサムメイク。パーツごとに立体感を出すことで顔立ちの美しさが引き立つメイクに。「新鮮だったのはヌーディリップ。普段は赤など濃い色で締めがちなんですが、こんな色も似合うんだって新発見。マスカラを下まつ毛にしかつけないというのも初めてでしたが、素敵だと思いました」ライブなどでは自分でメイクをしている小野田さん。最近手放せないのは、ラメ入りのアイカラー。「ステージでライトが当たるとラメがキラキラッと輝いて目立つので、まぶたや目の下につけることにハマっています。プライベートでは、20歳になったのでちょっと大人っぽいメイクがしたいと思って、ブラウンやピンクベージュなど、落ち着いた色に挑戦しているところです」長年、プライベートで欠かせないのは、『キャンメイク』のラスティングリキッドライナー。「ダークブラウン系の02番を5年間くらい愛用しています。目の印象が強くなりがちなので、黒だとやりすぎ感が出てしまうんですが、これだとちょうどいいんです。これからは、今までしたことがないカラーメイクにも挑戦してみたいな、と思ってます」Makeup PointA多彩な質感の色を掛け合わせ印象的な目元に。ルナソル アイカラーレーション EX24¥6,820 7月15日限定発売(カネボウ化粧品 TEL:0120・518・520)Bメタリックな質感。スティロ ユー ウォータープルーフ N 56¥3,520(シャネル TEL:0120・525・519)Cクリーミーな質感。華やかでやわらかな印象に。リップ カラー マット 307¥6,930(トム フォード ビューティ TEL:0570・003・770)D肌色を美しく見せるイエローベージュ。RMKネイルラッカー 08¥2,200(RMK Division TEL:0120・988・271)Aの右下をアイホールと鼻筋の両脇、涙袋にブラシでのせる。次に右上と右下をチップで混ぜてアイホールの半分から下に、さらに左上を指にとり、アイホールの中央にのせる。Bを下まぶたの目頭に1cmほど引き、Aの左上をオン。リップはコンシーラーで色みを消してから、Cをブラシにとり、輪郭をしっかり描きながら塗る。ネイルは服に合わせてDをチョイス。Saori’s Beauty Rules1、外でも家でもたくさん歩いて8時間は寝る。「歩くのが大好きで、1時間半から2時間かけて3駅分くらい歩いています。気分がスッキリするんですよね。雨のときもステッパーを使って、家で2時間くらい歩くのが習慣。私、毎日8時間の睡眠を何より大事にしているんですが、歩くとぐっすり眠れるし、肌の調子も良い気がします」2、コンビニのカット野菜&自炊で野菜を毎日食べる。「スナック菓子が大好きなので、それを相殺するためにも(笑)毎日野菜を摂るようにしています。よく食べているのがコンビニのカット野菜。袋の中でごまドレッシングを混ぜて、割り箸で食べるのがお決まり。家ではほうれん草をバターで炒めて食べることもあります。唯一の自炊です(笑)」3、なるべく負担をかけずきれいなストレートヘアをキープ。「ヘアカラーなどはしたことがないのですが、細くて切れやすい髪質なので、できる限り傷めないように気をつけています。ヘアアイロンもライブ以外ではしません。お風呂上がりに洗い流さないトリートメントをつけて、乾かしてから寝るだけで、朝はうねりのないストレートヘアに」おのだ・さおりハロー!プロジェクト「つばきファクトリー」所属。ニックネームは“さおりん”。ニューシングル『アドレナリン・ダメ/弱さじゃないよ、恋は/アイドル天職音頭』が発売中。ジャケット¥94,000トップス¥34,000パンツ¥18,000(以上ヴォンテ/H3O Fashion Bureau TEL:03・6712・6180)イヤーカフ¥18,700チェーンネックレス¥83,600パールネックレス¥37,400バングル¥56,100右手リング、上¥18,700下¥22,000左手リング¥36,300(以上e.m./e.m. 青山店 TEL:03・6712・6797)※『anan』2022年7月6日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・仮屋薗寛子ヘア&メイク・AYA(TRIVAL)取材、文・古屋美枝
2022年07月01日この夏は目元や口元にお気に入りのカラーを仕込んで。揺らぎがちな肌を守ってくれるスキンケアも必見です。タレントの小野田紗栞さんが新商品をお試しします。タレントの小野田紗栞さんが新商品をお試し!1、POLAホワイトショット クリーム RXS温度差ストレスから透明美肌をガードする。蒸し暑い屋外と冷房の効いた屋内との温度差が、日焼けや肌荒れを助長することを発見。「ソバカスやシミができやすいので、美白コスメはマスト。このクリームはテクスチャーがベタつかず、香りも爽やかなので、夏でも気持ちよく使えそう」。ホワイトショット クリーム RXS[医薬部外品]50g¥13,200 7月1日発売(ポーラTEL:0120・117111)2、Viseeヴィセ リシェ グリッター インパクトライナー BL910夏の気分を盛り上げる鮮やかエメラルドブルー。パールがきらめくリキッドタイプ。「初めてカラーライナーを使いました!目尻にアクセントカラーが入るだけで、こんなに洒落感が出るんだ、とテンション爆上がり。インターネットサイン会のときにも使ってみたいです」。ヴィセ リシェ グリッター インパクトライナー BL910¥1,320*編集部調べ 7月1日限定発売(コーセー TEL:0120・526・311)3、RMKリクイド リップカラー 08軽い質感でフィットして濡れたようなツヤを放つ。透け感がありつつくっきりした発色と、豊かなツヤが魅力。ヒアルロン酸やローズヒップオイルが唇を乾燥から守る。「見た目よりビビッドでしっかり発色するカラー。いつもはシックな色のリップを使う機会が多いので、新鮮!新しい自分を発見できた気がします」。リクイド リップカラー 08¥4,180 7月1日発売(RMK Division TEL:0120・988・271)4、UNMIXアイリッドニュアンス 04さりげなくフェミニンで薄い印象のまぶたを作る。光が当たったときにツヤッと輝くことで、ほんのり色が染まったような素のまぶたを演出。ピンク、ターコイズ、ラベンダー、ゴールドのラメが、夏の日差しに映える。「ナチュラルなピンクで肌なじみが良く、細かく繊細なラメが上品で素敵。絶対人気が出るカラー!」。アイリッドニュアンス 04¥2,860 7月1日発売(UNMIX TEL:03・3375・0233)おのだ・さおりハロー!プロジェクト「つばきファクトリー」所属。ニックネームは“さおりん”。ニューシングル『アドレナリン・ダメ/弱さじゃないよ、恋は/アイドル天職音頭』が発売中。※『anan』2022年7月6日号より。写真・田村昌裕(FREAKS)スタイリスト・荻野玲子取材、文・風間裕美子
2022年07月01日感情豊かでのびやかな美声と卓越したダンス力でミュージカル界の注目を集める小野田龍之介が、日本初演30周年記念公演のミュージカル『ミス・サイゴン』に出演する。一見、狂言回しのエンジニアやベトナムの少女キムに目が向く作品だが、小野田が海宝直人、チョ・サンウンと交互キャストで演じる米兵クリスもキーパーソンだ。小野田がその思いを熱く語ってくれた。ミュージカル「ミス・サイゴン」 チケット情報1970年代のベトナム戦争末期、戦争孤児のキムと米兵のクリスは恋に落ちる。しかし、陥落寸前のサイゴン混乱の中、キムと離ればなれになったクリスは、母国に戻り、後に米国人女性エレンと結婚する…。6年前にもクリスを演じた小野田は「演じる前から、クリスは世の女性やお客さまから、本当に嫌われる役だなという印象が強かったんです(笑)」と明かす。「“君だけだよ”と言っているのにアメリカに戻ったら別の女性と結婚し、今の時代なら非難を浴びそうですけど(笑)、演じてみるとあの時代だからこそ選択した道というのがある。僕は毎回、クリスの役の価値を上げたい、真意を伝えたいと思っています」と力を込める。『ミス・サイゴン』を作る過程で、キャストは様々な戦争映画やドキュメンタリーを見て参考にするそうだ。「軍人たちは戦争の目的とは別に、破壊行為に走ることがあります。クリスも自分でコントロールできなかった瞬間がたくさんあり、子どもや女性を間違えて撃ってしまい、深い自責の念を抱く中で、キムと出会ったことが自分の贖罪になった。背負った罪を彼女で浄化することができるかもしれない。キムを守り抜くのが使命だと思っていたんです」。『レ・ミゼラブル』のクリエイティブ・チームによる、心に染み入る楽曲も特徴だ。「クリスとキムが歌うシーンは、特にロマンティックですが、ふたりに課せられているのは、絶対に離れないという狂おしいほどのエネルギー。歌っていてこんなにも汗がこぼれる大変なシーンだとは思っていなくて。エネルギーが違った方向へ向くと、チャラチャラした男に見えてしまうので、互いを求める強い力を大切に歌いたいです」。クリスと結婚するエレンについてはどうだろう?「クリスは戦争のすべてを忘れたいと思っている。心にトラウマや傷を負った兵士や市民がたくさんいて、彼も例外ではない。クリスは聖母のような存在のエレンに心を救われた男なんですよね」。自身も年を重ねた今回は、「3人の愛の形」をより大切に演じたいという。2020年の再演はコロナ禍のため中止。世界では新たな戦争も勃発した。「改めて世界に対する祈り、生きるための祈りを深く描いた作品だと痛感しました。今まで以上の覚悟を持って、その祈りを届けたいです」。公演は7月24日(日)から8月31日(水)まで東京・帝国劇場(7月24日(日)から28日(木)はプレビュー公演)、9月9日(金)から19日(月・祝)まで梅田芸術劇場メインホール、その後、愛知、長野、北海道、富山、福岡、静岡、埼玉を巡演。大阪公演のチケットは6月19日(日)一般発売。取材・文:米満ゆう子
2022年06月13日音楽劇の名作『三文オペラ』を、戦後の大阪へと舞台を置き換え、鄭義信が書き下ろした意欲作『てなもんや三文オペラ』。そこで演出も務める鄭と、ポール役のウエンツ瑛士に話を訊いた。逆境に生きる人々のたくましさを、時に切なく、時にユーモアたっぷりに描き出す鄭。その手腕は、古典的名作を題材にしたオールメール作品『泣くロミオと怒るジュリエット』(19年)でもいかんなく発揮された。本作はオールメールではないが、もともとポールはポリーという女性の役。その狙いを鄭はこう語る。「主人公のマックは、人たらしというか、男も女も魅了する人物。そういった意味で、ポリーが男性であってもいいんじゃないかなと。かといってLGBTQ問題をやろうというわけではなく、ただ原作よりも愛と希望のある作品にしたいとは思っています」生田斗真演じるマックは、大阪砲兵工廠跡地に残された屑鉄を売りさばく“アパッチ族”の親分。そのマックとウエンツ演じるポールが、結婚式を挙げるところから物語は幕を開ける。ポールについてウエンツは、「愛されるってことがそれまでほとんどなかったキャラクターだと思っていて」と切り出し、「そんな自分がマックに愛されて、しかも結婚出来る。それって時代背景も含めて、ポールにとっては一瞬も思い描くことが出来なかった、夢のようなことが起きているのかもしれないなと。その喜びの大きさを感じながら、今、役を作っている感じです」さらに自らの役どころから、こんなことも考えるそう。「ポールは親となかなか意見が相容れないわけですが、相容れない人と意見を交わすって、改めて大事なことだと思うんです。今って気が合わない人とは簡単に切れますが、その出会いに理由は絶対あるし、そういう人たちとのコミュニケーションこそ大事なんじゃないかと思わされていて。観た方がそんなことも感じてくれたら、とても嬉しいですね」生田、ウエンツのほか、笑いも熟知した手練れが多くキャスティングされており、コメディ要素もたっぷり。だが「戦争が深く影を落としている作品」と鄭が語るように、悲しくも“今”との共通点を痛感する舞台でもある。最後に鄭はこう語る。「僕たちのささやかな日常というのは、実はとてももろく、危ういものの上に成り立っています。だからこそ“愛”や“平和”というものが、生きていく上ではとても大切で。そういったことがビビットに感じられる作品になるといいなと思っています」公演日程は6月8日(水)~6月30日(木)に東京・PARCO劇場にて上演(※6月8日(水)18時~11日(土)13時公演は中止)。その後、福岡・大阪・新潟・長野と各地を巡る。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2022年06月03日鄭義信が結成し、大鶴佐助が座長を務める劇団ヒトハダの旗揚げ公演『僕は歌う、青空とコーラと君のために』が、4月21日に開幕。前日に行われたゲネプロの様子をレポートする。戦後の米軍御用達キャバレーに集う人々の切なくもおかしい人間模様が、1940年代のアメリカンポップスに乗せて綴られる本作。いつか日劇アーニーパイルの舞台に立つことを夢見るロッキー、ファッティー、ハッピーによる3人組のコーラスグループに、キャバレーのママが連れてきたゴールドが加わる。順調に活動するも、ハワイの日系二世であるハッピーの朝鮮戦争出兵によって、ルーツの異なる4人の絆は大きく揺らいでいく──。作・演出を鄭が手がけ、キャストは大鶴のほか、団員の浅野雅博、尾上寛之、櫻井章喜、梅沢昌代が名を連ねている。事前のインタビューで、鄭が「キャスト一人ずつソロ歌唱シーンを設けた」と話していた通り、群像劇の見せ場をヒット曲が彩る。中でもハッピー役の大鶴は、言葉と音の数が膨大な「Boogie Woogie Bugle Boy」(The Andrews Sisters:1941年)を英語詞で披露し、序盤から客席を湧かせた。朝鮮戦争から戻ったあと、心身ともに満身創痍の状態でこの陽気なナンバーをどうリプライズするか、鮮やかに揺れ動く感情の行方をぜひ見届けて欲しい。浅野は、太平洋戦争の特攻帰りである罪悪感を拭えずにいるロッキー役。これに加え、さらなる十字架を背負っている。その重さを仲間に打ち明け、懺悔する場面で見せる表情に注目だ。そんなロッキーを優しく見守るキャバレーのママ・ジーナには梅沢。コーラスグループの新人・ゴールドは朝鮮人。戦地へ向かうハッピーは敵国のアメリカ人にあたるが、これまでに育んだ友情が脳裏をよぎる。「それでも生きていて欲しい」というジレンマを、演じる尾上はハッピーに直情的にぶつけ、確かな存在感を残した。豊かな体躯で喧嘩シーンを圧倒するファッティーには櫻井。シリアスな展開の中に笑いをもたらすコメディリリーフ的な役割をまっとうしていた。上演時間は約120分(休憩なし)。公演は5月1日(日)まで、東京・浅草九劇にて。感染症対策を講じて上演される劇場公演のほか、PIA LIVE STREAMでは4月23日(土)17:00開演回の「オンライン生配信」を実施。48時間後の25日(月)16:59までアーカイブ視聴できる。チケット販売中。取材・文:岡山朋代
2022年04月22日鄭義信が結成し、大鶴佐助が座長を務める劇団ヒトハダの旗揚げ公演『僕は歌う、青空とコーラと君のために』の初日が迫る。戦後の米軍御用達キャバレーに集う人々の切なくもおかしい人間模様が、1930〜50年代のアメリカンポップスに乗せて綴られる群像劇だ。開幕を約20日後に控えた稽古場で、作・演出を務める鄭、そしてハワイの日系二世ハッピー役の大鶴がインタビューに応じた。劇団は「自分たち主体で何かを発信したい」という初期衝動の形(鄭)――鄭さんは劇団結成の経緯を「もう無縁だと思っていた劇団を、皆さんの熱意にほだされ結成することになりました」とコメントされました。作品をつくって上演するなら別の形もあるかと思いますが、あえて“劇団”にした意図を教えてください。鄭プロデュース公演が主流の中で「劇団をつくろう」という気は最初まったくなかったんですよね。飲み屋で話しているうちに、そういう流れになって。オファーを受け取って作品に参加するだけでなく、「自分たち主体で何かを発信したい」という強い初期衝動みたいなものが根底にありました。自分たちがやってみたいことに小回りの利く形でトライできる場、という文脈です。大鶴僕は櫻井(章喜)さんにお誘いいただき、結成のモチベーションをお聞きして共感しました。鄭さんと初めてご一緒した三人芝居の『エダニク』(2019年)に櫻井さんが観客としていらしていて。そのあと食事をご一緒した時にヒトハダの話をされていたので、「それ何のお話ですか?」と首を突っ込んだら……櫻井さんが「入る?」って。鄭もともと劇団は、僕が作・演出した『赤道の下のマクベス』(2018年)のキャストだった浅野(雅博)くんとヒロ(尾上寛之)が意気投合して生まれた話だったんです。「二人芝居を書いてもらえませんか?」と酒場に呼ばれて、ベロベロに酔っ払ううちに……いつの間にか劇団ができていた(笑)大鶴その御三方にどうして櫻井さんが加わることになったのか、いま劇団メンバー全員で話しても誰もわからないんです! でも櫻井さんがいなかったら僕は参加していないし、梅沢(昌代)さんだって……そうですよね?鄭みんなの間でよく話題に挙がるよね、「サク(櫻井)さんはいつからいるの?」って。僕とサクさんは『焼肉ドラゴン』(2016年)で一緒になったけど、ヒトハダ参加の経緯は誰も知らないんです。早くも劇団七不思議のひとつですね(笑)劇団の座長として、僕は何をすればいいですか?(大鶴)――劇団旗揚げのお知らせは最初、鄭さんお一人で行われました。そのまま主宰の座に就かず、大鶴さんを座長に据えたのはどういった経緯だったのでしょうか?鄭多数決です。普通は作・演出が座長になるのかもしれないけど……逃げました(苦笑)。言い出しっぺの浅野くんやヒロもやらないと言うし。「じゃあ誰がやる?」となった時に「いちばん若い佐助が適任では?」って。多数決したら全員一致で佐助に決定!大鶴僕、その場にいなかったんですよ? それで次の日に「佐助、座長になったからよろしく」って事後報告を受けました。最初はジョークだと思ったけど、どうやら本気らしく。――欠席裁判みたいですね(笑)。座長って何をされているんですか?大鶴僕もそれを知りたいくらいです。いろんな方に「座長って何をすればいいですか?」と聞いて回っているんですが……明確なことを誰も教えてくれません(笑)鄭あはは(爆笑)! まぁ、追い追いだよね。いろいろ責任をかぶることになるんじゃないかな。大鶴脅かすのやめてくださいよ!――たとえばオファーを受けて参加することになった現場と比べて、座長だと作品に取り組むスタンスが何か異なるのでしょうか?大鶴(しばらく思い浮かべて)……特に違わないですね。――じゃあ、なおさら「座長とは?」と迷宮入りしますね(笑)大鶴ホントですよ! 誰か教えてください(苦笑)――お父さまの唐十郎さんは状況劇場や唐組と大所帯を率いていましたが、大鶴さんにとって初めて携わる“劇団”はいまのところ、どんな場所でしょうか?大鶴父の劇団を指しているわけじゃなく、僕の勝手なイメージですが……劇団ってトラブルが多発するイメージがあるんですよね(苦笑)。いい意味でも悪い意味でも喧嘩があったり。でもヒトハダは劇団員がみんな優しく、人肌のように温かい。「こんなに平和で居心地のよい劇団あっていいんだ」と感じるほどです。芸達者な先輩たちから、いろんな刺激をたくさん頂戴したいと思っています。一人一曲、見せ場にソロ歌唱があります(鄭)――鄭さんは、大鶴さんの俳優としての魅力をどんなところに感じていらっしゃいますか?鄭まだ若いので飲み込みが早く、柔軟ですね。頭がやわらかすぎるのか、演出の要求に対して「それでいいんか?」って変化球を投げてきます。たとえば僕が「現状こうなのを、こういう風に変えてみて」と要求したことに対して、こちらの想像より一歩二歩違ったところに着地するというか。演劇DNAというか、思考回路が本当におもしろい。思わず「どんどんやれ」って助長してました(笑)――大鶴さんは『エダニク』でご一緒された時に感じた鄭演出の魅力をどのように感じましたか?大鶴静かな会話劇だと思って、本読みの時にストレートにやっていたら……鄭さんから「もっと声を出してみて」とか「今度は東北のおばあちゃんが孫に語りかけるように」といろんなパターンでセリフを言うことを求められました。実際にやってみたら、最初に一人で台本を黙読していただけでは想像もつかなかった人物像が立ち上がっていて。そこからすごく楽しくなりましたね!――鄭さんの戯曲に挑戦するのは本作が初めてですよね? 大鶴さんが『僕は歌う、青空とコーラと君のために』をお読みになって感じたことを教えてください。大鶴戦後の進駐軍クラブに出入りしている、ハワイの日系二世や在日朝鮮人が組んだコーラスグループの物語です。登場人物すべて、戦争に対して抱えているわだかまりや屈託のグラデーションが異なっていて。各自のルーツが異なることに起因するんですが、それでも同じ歌を口ずさみ、歌声で共鳴し合っている。それが素敵だなって思いました。シリアス一辺倒かと思えば、笑えるシーンもあって。緊張と緩和が効果的に活用されていて、ご覧になっている方は感情を揺さぶられるんじゃないかと思います。鄭前々から進駐軍のキャンプまわりにいたコーラスグループの存在に興味があったので、彼らを題材にした物語をつくりたいと構想していました。そこに普段からよくテーマにしている在日外国人やマイノリティを登場させることで、僕らしさを発揮できるのではないか、と思って。それと劇団の“旗揚げ公演”だから、キャストの歌声やピアノの生演奏で華々しく盛り上げたいという気持ちもあって、メンバーには台本よりも先に「あなたの役が歌うソロパートの楽曲はこれです」ってタイトルを渡しました。一人一曲、見せ場にソロ歌唱があるんです。大鶴鄭さん、執筆前に「みんな歌えるよね?」って確認してましたよね。僕、本格的なミュージカルではないけれど「音楽劇なら」とお答えしたら、おそらく登場するナンバーの中でダントツに難しい「Boogie Woogie Bugle Boy」(The Andrews Sisters:1941年)を充てがわれて(笑)。歌詞は英語で言葉数も多いわ、テンポも速いわで……大変です。はじめは「あれヤバい、歌いこなせるか?」って不安でしたけど、練習を重ねるうちに楽しめるようになりました。鄭そうだね、少しずつサマになってきたんじゃない?役人物として揺れ動くのが楽しみ(大鶴)――配役はどのように考えられたのでしょうか?鄭メンバーの顔を見渡して、少しだけハードルの高い役割をそれぞれに与えました。各自苦労するポイントもあると思いますが、これから稽古で詰めていきます。佐助が演じるハワイの日系二世ハッピーには、彼のちょっとトボけたところを乗せてみました(笑)――大鶴さんのハッピーにはどんなハードルを課したのでしょうか?鄭ハッピーは途中でコーラスグループを抜け、朝鮮戦争へ行くんですね。そこから帰って来て、どういう人間に変化しているか。これが佐助にとって、ハードルになるでしょうね。きちんとハッピーを掴んで演じ切ることができたら、いつもよりオトナな佐助を見ていただけるんじゃないでしょうか。大鶴そうですよね。彼を掴むために、ここ2週間くらい鄭さんからお借りした『ハワイ日系二世の太平洋戦争』という資料を読んでいました。敵として日本と向き合うことになった彼らは戦争をどのように受け止め、生きてきたのか書かれた本です。彼らはローマの百四十高地で同僚の兵士がバンバン死んでいく悲惨な状況を体験したうえで、また朝鮮戦争に駆り出される。そりゃハッピーの心はボロボロになりますよね。――しかもアメリカ人のハッピーに対して、コーラスグループのメンバーはアメリカの敵国である朝鮮人なわけで。大鶴そうなんです。この歴然とした事実を受け止めて、自分の中にものすごく大きな根を張らないと……虚構に見えてしまうんじゃないか、と思いました。でないと、単なるハッピー野郎になってしまう(笑)鄭ハッピー野郎!(爆笑)――深い根を張るために、鄭さんからお借りした資料をお読みになったのですね。大鶴はい。知識を得たので、これから稽古でどんどんアウトプットしていきたいです。資料を読んでおもしろいと思ったのが、ハワイの日系二世ってそんな凄惨な戦争体験をしたと感じさせないくらい、普段はあっけらかんとしていること。これ、わりと誰にも当てはまる普遍性なんじゃないかと思いました。人間ってずっと過去にとらわれて生きているわけじゃない。ツラいことを忘れるために、矛盾を抱えることだってありますよね。――ハッピーの人物造形にも当てはまりそうなお考えですね。大鶴そういう人間くさいところを、鄭さんは日常と地続きに描いていらっしゃいます。コーラスグループの愉快な掛け合いをしたかと思えば、急にシリアスになって場をまとう空気の色が変わる。すごくリアルな台本だと思いました。そんな劇世界の中で、いまからハッピーとして揺れ動くのが楽しみでなりません。取材・文:岡山朋代撮影:川野結李歌ヒトハダ旗揚げ公演『僕は歌う、青空とコーラと君のために』(劇場公演/配信公演)チケット情報はこちら
2022年04月15日亜細亜の骨/SORIFA企画主催による、みょんふぁ一人芝居『母My Mother』(作・演出:鄭義信)が2021年12月22日 (水) ~2021年12月28日 (火)に下北沢シアター711(東京都世田谷区)にて上演されます。チケットはカンフェティ(運営:ロングランプランニング株式会社、東京都新宿区、代表取締役:榑松 ⼤剛)にて10月20日(水)より発売開始いたしました。カンフェティでチケット発売中 『母My Mother』公式ホームページ 亜細亜の骨公式ホームページ 激動の時代、戦争や歴史に翻弄されながらも世界中を魅了した世紀の舞姫・崔承喜とその娘・・・彼女たちの最期を知るものは誰もいない。女優・みょんふぁと劇作家・鄭義信がタッグを組み、崔承喜と娘のものがたりが生まれる。舞踊に全てを捧げ、世界中を駆け巡った伝説のスターを「母」に持つ娘・安聖姫の視点から「崔承喜」の光と陰を描く。企画・出演みょんふぁ×作・演出鄭義信 世界中を虜にした世紀の舞姫の存在が、今、蘇る!<崔承喜・伝説の舞姫を語り継ぐ>日韓の演劇や映画界で目まぐるしい活躍を見せる鄭義信の新作は、「世紀の舞姫」として世界中で注目されながらも、時代と戦争に翻弄された伝説の舞姫・崔承喜と、その娘の物語。本公演企画者でもある在日三世の、女優・みょんふぁは、幼少期より韓国舞踊団に所属し、舞踊を通して「崔承喜」の存在を知り、その生き方に心を寄せ、いつか自分で演じることを願い続けていました。そしてついに機は熟し、鄭義信の書下ろし・演出で、今回、舞台化する運びとなりました。悲劇的な歴史に翻弄された、謎多き世紀の舞姫の記憶が、今、舞台に蘇ろうとしています。どうぞご期待ください!崔承喜(Sai Shoki・チェ スンヒ)1911年、日本の植民地下だった京城(ソウル)で生まれた崔承喜は、15歳の時、日本のモダンバレエの先駆者・石井獏の舞台に感銘を受け、東京に渡り門下生になりました。民族の心、東洋の美を取り入れた朝鮮舞踊を次々と発表。その情熱的な踊りは一瞬にして人々の心を捉えました。「半島の舞姫」と称され、川端康成をはじめ多くの文化人に愛され、その美貌と情熱的な創作朝鮮舞踊で、瞬く間にスターとなり、3年に及ぶアメリカやヨーロッパ、中南米での海外公演でも大成功をおさめ、ピカソやジャン・コクトーからも大絶賛。「世界の舞姫Sai Shoki」と、一躍大スターとなりました。しかし、日本が太平洋戦争に突入。戦火を避けるため韓国へ戻るも、日本の慰問活動を行っていたことなどから“非国民”と罵倒され、戦後は北朝鮮に移り住みます。平壌で舞踊研究所を設立し、北朝鮮を代表する舞踊家として活躍していた最中、1967年、夫の安漠、娘の安聖姫とともに、突然、消息不明となります。その最期を知る者は誰もおらず、2003年に名誉回復されるまで、韓国でも北朝鮮でも崔承喜について語ることは許されませんでした。闇に消された崔承喜とその一家。今なお、世界中の研究家たちが彼女に魅了され、その真実を追い求め続けています。みょんふぁ(洪明花)プロフィール女優 / 通訳・翻訳家(日英韓)/司会/ナレーター/プロデューサー幼少期より大阪の韓国舞踊団”グループ黎明”に所属。大阪芸大音楽学科卒業後"劇団そとばこまち"を経て、東京を拠点に女優としてソロ活動を開始。コメディからシリアスな作品まで数多くに参加し、年齢不詳な幅広い役柄をこなすと定評がある。2014年、文化庁の在外研究制度により韓国国立劇団に留学。帰国後は日韓合作の舞台や映画でも活躍し、韓国の作家の翻訳戯曲を次々と上演したことが評価され、2017年小田島雄志翻訳戯曲賞受賞。近年の作品に映画『血と骨』『中学生円山』『湖底の空』舞台『客たち』『コタン虐殺』など。鄭義信脚本家・演出家・映画監督1993年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞を受賞。その一方、映画、テレビにも進出し『月はどっちに出ている』、『愛を乞うひと』の脚本によりキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞など数々の賞を受賞。演劇では『焼肉ドラゴン』において第8回朝日舞台芸術賞グランプリ、第12回鶴屋南北戯曲賞。第16回読売演劇大賞・最優秀作品賞。第59回芸術選奨文部科学大臣賞、韓国でも演劇評論家協会の演劇ベスト3に選ばれるなど、数々の演劇賞を総なめにした。また同作は、鄭義信自身の手によって映画化もされ、日本映画批評家大賞作品書を受賞した。近年では『パーマ屋スミレ』『たとえば野に咲く花のように』『泣くロミオと怒るジュリエット』など多数の話題作を生み出している。2014年春の紫綬褒章受受章。『母My Mother』ストーリー崔承喜がこの世を去った24年後の1993年。東西ドイツが統合された3年後。今は北朝鮮の寒村にひっそりと暮らす娘・安聖姫の元に、日本から取材者が訪れる。最初は口が重かった聖姫だが、しだいに母のことを語りはじめる。日本の植民地下に生まれ、太平洋戦争、朝鮮戦争と、時代の荒波の中でも踊り続けた母、ひたすら自分の踊りを求め続けた母、時代にのみ込まれまいと懸命に生きた母……その踊りは東洋を代表するものとして、世界中で脚光を浴びる。幼かった聖姫は母に憧れ、母と同じく踊る道を選ぶ。踊りのために日本、韓国、北朝鮮と転々と移り住みながら、華々しい脚光を浴びる母と娘……しかし、時代の波は激しく、二人に襲いかかってくる。踊ることが許されない時代がやってくる。その時、母と娘が選択したものは……母と娘だけが知る真実とは……。公演概要みょんふぁ一人芝居「母 My Mother」作・演出:鄭義信(新作書き下ろし)公演日:2021年12月22日(水)〜28日(火)会場:下北沢シアター711(東京都世田谷区北沢1-45-15)■出演みょんふぁ(洪明花) / チャング演奏: 李昌燮(イ チャンソプ)■スタッフ舞台美術:池田ともゆき、照明:増田隆芳、音響:百合山真人、衣裳:阿部美千代ヘアメイク:高村マドカ、振付:金 有悦、演出助手:根本大介、翻訳:洪明花舞台監督:吉木 均/森下紀彦、宣伝美術:奥秋 圭、映像:市野龍一、写真:横田敦史制作:秋元けい子/はざまみゆき後援:駐日本大韓民国大使館韓国文化院 /一般社団法人日本演出者協会/一般社団法人 日韓演劇交流センター特別協力:河 正雄(韓国光州市立美術館名誉館長)/外村 大(東京大学教授)協力:CESエンターテインメント/ハイリンド/Myrtle Arts(マートルアーツ)企画製作:SORIFA/洪 明花主催:亜細亜の骨■チケット料金前売3,500円当日3,800円U25(25歳以下)2,500円*U25券はMyrtle Artsでのみ受付。当日は証明書が必要(全席指定・税込) 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2021年11月02日映画『ONODA 一万夜を越えて』が、2021年10月8日(金)より、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。“最後の日本兵”小野田寛郎の潜伏期間を描く映画『ONODA 一万夜を越えて』は、1974年3月、終戦後約30年の時を経て帰還し「最後の日本兵」と呼ばれた旧陸軍少尉・小野田寛郎(おのだひろお)の潜伏期間に着想を得て、史実をもとに制作された作品。フランス映画界の新鋭アルチュール・アラリが監督を務め、フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本の国際共同製作映画でありながら、ほぼ全編が日本語のセリフで紡がれている異色作だ。第74回カンヌ国際映画祭2021の「ある視点」部門オープニング作品に選出され、現地では約15分ものスタンディング・オベーションを受けるなど、高い評価を得た。登場人物(キャスト)小野田寛郎 青年期(遠藤雄弥)・成年期(津田寛治)終戦後も任務解除の命令を受けられないまま、フィリピン・ルバング島にて約30年間を過酷なジャングルの中で過ごした、小野田寛郎。上官の命令により作戦を決行する為ルバング島に上陸するも、指揮権も与えられないまま敵に襲撃され、攻撃や飢え、病に倒れていく仲間たちを前に苦悩する。ついには、25年以上も共にジャングルを生き抜いた唯一の友である小塚を亡くし、真の孤独に苛まれる。青年期を演じるのは、遠藤雄弥。山崎貴監督の『ジュブナイル』で13歳の時にデビューし、近年はドラマ・映画で活躍している。成年期は、これまでに250本以上の映画に出演し、北野武監督ら日本映画界の巨匠たちから信頼を得る津田寛治が担当。成年期の小野田を体現するため、約1年かけて減量し、撮影に臨んだ。谷口(イッセー尾形)小野田にルバング島でのゲリラ戦を決行するよう命じた上官。鈴木紀夫(仲野太賀)小野田が帰国するきっかけになった旅人。今もなお戦争の中を生き続ける小野田にとっては、シャツにジーンズ、靴下にサンダルばきという見慣れない“奇妙な”出で立ちをした鈴木。小野田は鈴木を警戒し、銃を向ける。一触即発の体制で、鈴木は小野田にこう話しかける。「話がしたいんです。とても長く、辛いご経験をされたと思います。戦争は終わりました。昭和20年に。小野田さん、どうするおつもりですか。ここに骨を埋めるおつもりですか。日本に、僕と一緒に帰りませんか。」この言葉がきっかけで、小野田寛郎の約30年に渡る潜伏生活が終わりを遂げる。劇中では、津田寛治&仲野太賀の出会いを見事に再現した。その他、松浦祐也、千葉哲也、カトウシンスケ、井之脇海、足立智充、吉岡睦雄、伊島空、森岡龍、諏訪敦彦、嶋田久作らが参加し、カンボジアの地で約4ヶ月の撮影に挑んだ。<映画『ONODA 一万夜を越えて』あらすじ>終戦間近の1944年、秘密戦の特殊訓練を受けていた小野田寛郎は、フィリピン・ルバング島にて援軍部隊が到着するまでゲリラ戦を指揮するよう、命令を受ける。「君たちには、死ぬ権利はない」と出発前、上官の谷口から言い渡された小野田を待っていたのは約30年間の過酷なジャングルでの壮絶な日々だった。【詳細】映画『ONODA 一万夜を越えて』公開日:2021年10月8日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開監督:アルチュール・アラリキャスト:遠藤雄弥、津田寛治、仲野太賀、松浦祐也、千葉哲也、カトウシンスケ、井之脇海、足立智充、吉岡睦雄、伊島空、森岡龍、諏訪敦彦、嶋田久作、イッセー尾形制作:bathysphere productions配給:エレファントハウス
2021年09月13日「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」「ウエスト・サイド・ストーリー」などで大役を重ねるミュージカル俳優・小野田龍之介のデビュー20周年を記念するコンサートが、11月6日に東京・よみうり大手町ホールで開かれる。今29歳ながらキャリアは長く、2001年に初めてミュージカルの舞台に立ってから、今年で20年目。「お客さんと一緒に、これまでの歩みを噛みしめるような時間になれば」と語る。20曲前後が披露される予定。ファンからのリクエストも交えた、ミュージカルのベスト盤のようなラインナップだ。過去の出演作の楽曲が大半だが、ディズニーファンとして知られる彼のお気に入りナンバーも。圧倒的な歌唱力を誇るが、プロのダンサーを母に持ち、エンターテインメントへの入口は意外にもダンス。歌って踊ってのショースタイルも可能だが、今回は歌を届けることに専念する。「元々はダンスの人間からすると、20周年で自分がこうしてコンサートをするなんて考えられなかった。選曲しているとき、いろんなことが走馬灯のように思い出されて、ワクワクする楽しさというよりありがたさを感じたんです。今までやってきた役への感謝とリスペクトを込めたコンサートにできたら」昼の回は昆夏美、夜の回は知念里奈がゲスト出演。「昆さんはミュージカル界では数少ない同い年の仲間で、知念さんは僕が15歳ぐらいからの長いお付き合い。昼・夜で別のデュエットナンバーも歌わせていただきます」。また、音楽監督はミュージカルファンにはおなじみの大貫祐一郎が務め、「心強いバディを得た」とうれしそう。幼い頃から舞台の世界に生きてきた小野田にとって、今年はかつてない経験だった。「僕たちは舞台上からエネルギーを与えるだけじゃなく、客席からもいただいて返していく。その循環ができなかった期間はエネルギーが枯渇している気がして、ちょっと怖かったし不安でした。一方で、きっと当たり前になっていたものを改めて見出すことができた。今リハーサルをしていても、人間が紡ぐものってこんなにも心を動かすんだなと実感しています」「生涯現役でこの仕事を続けていきたい」と力強く語る彼が、今年得たものを胸に大切な歌を届ける。文章:武田吏都
2020年10月30日中目黒のホルモン焼肉店「小野田商店」の2号店が、東京・学芸大学駅に2020年3月4日(水)オープンする。新鮮なホルモンをリーズナブルに楽しめる「小野田商店」。学芸大学駅店は、14年半続く中目黒の1号店に次ぐ2号店となり、東急東横線「学芸大学駅」から徒歩1分の立地にオープンする。メニューは全商品単品500円均一の価格設定となっているので、値段を気にせず存分にホルモンを楽しむことが可能。日替わりで内容が異なるホルモンの盛り合わせや、レアでも食べられるハツ、脂付き小腸など、鮮度管理を徹底した素材の味を十分に味わえるメニューが揃う。また、常時50種類以上取り揃える全国各地の焼酎はホルモンとの相性抜群。店内は昔ながらの和テイストな内装となっており、グループで利用できるテーブル席に加えて、スタッフから食べ方のアドバイスを受けられるカウンター席も用意する。【詳細】小野田商店 学芸大学店オープン日:2020年3月4日(水)営業時間:18:00~26:00(最終入店25:00、L.O.25:30)住所:東京都目黒区鷹番3-7-5 ゆざわビル 1階定休日:火曜日TEL:03-4291-2006<メニュー価格例>ホルモン9種の盛り合わせ(2人前) 2,000円+税、角切りハツ 500円+税、脂付き小腸 500円+税、スぺ玉ご飯 500円+税、モロQ 500円+税、山芋キムチ 500円+税
2020年03月06日自民党・小野田紀美議員(36)が7月31日、れいわ新選組の木村英子議員(54)・舩後靖彦議員(61)の介護費用を参議院が負担することに「議員特権では」と批判。さらに文通費を介護費用に充てるよう促す趣旨の投稿を続けた。これに対して「国会法違反では?」と疑問の声が上がっている。木村・舩後両議員は重度の身体障害があるために同月30日、参議院が当面の間は介護サービスの費用を負担すると発表した。Twitterで小野田議員はその対応について《え!?バリアフリー化対応は分かるけども、これは議員特権になりませんか…?当面って何…》と投稿し、こう続けた。《国会議員は文通費として歳費とは別に月額100万円が支給されます。みんなこのお金を使って、私設秘書さんとか、事務員さんとか、政策サポートとか、事務所開設の諸経費とか…要は自分が公務を行うサポートを揃えていると思っております。政党助成金もしっかり交付されているのに…どうして…》文通費とは、正式には「文書通信交通滞在費」というものだ。国会法第9条によると議員らは「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため」に月額100万円を受ける。デジタル大辞泉には「公的文書の発送費や交通費などの名目で国会議員に支給される経費」とも記載されている。文通費は課税の対象ではない上に、その使途を報告する義務がない。適正に使われているのかをチェックすることが困難であるため、たびたび問題視されてきた。例えば13年、民主党の参議院議員を務めた内藤正光氏が文通費を海外投資に流用していると発覚し波紋を呼んだ。国会法で文通費は「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信」に充てるよう定められている。しかし小野田議員の指す「みんな」は私設秘書や事務員を筆頭に「自分が公務を行うサポート」に使っているため、国会法に反することになる。そのためTwitterでは厳しい声が上がっている。《交通費は、目的外に使えないのではないですか?交通費を秘書の給与にしているのは目的外でアウトでしょ》《文通費を介護に使えということですかね。健常者議員は色々なことに使えるようですね》《まさか平然と目的外に流用して居ると公言されて居るのではありませんよね!貰ったお金は好き勝手 なんて事ありませんよね。お答えをお待ちしております》また小野田議員が木村・舩後両議員に必要なサポートについて秘書や事務員などと並列し持論を展開したことについても、こんな意見が上がっている。《小野田さんは国会でお水を飲んだりトイレに行ったりするときその都度お金を払いませんよね。同じ場面で重度障がい者の国会議員は介助を必要とする、ただそれだけです。秘書や事務員に掛かる経費とは違います》《介助者は秘書や事務員とは違います。介助者はライフラインです。ライフラインである介助者は別にお考えいただきたいです。それを雇用側が拒否しやすいのがよくお分かりになったと思います。健常者もトイレや食堂や公共施設や鉄道、道路といった支払いきれない保障のもと生きています》
2019年08月02日作・iaku横山拓也、演出・鄭義信の舞台『エダニク』が6月から7月に東京・浅草九劇で上演される。出演者の稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『エダニク』は、横山が2009年に書き下ろした、食肉加工センターを舞台にした三人芝居。初演以降、さまざまな演出家により再演を重ねられている作品で、鄭が演出を手掛けるのは今回が初。本作について稲葉は「三人芝居、ワンシチュエーション、会話劇…きっと密度が濃いものになるはず。それをどれだけ楽しめるかですよね。この本が鄭さんの演出でどんなふうに変わっていくかも楽しみです」。大鶴は「屠殺場の話ということもあり、直接的ではないにしろ、死の臭いみたいなものがずっと空気中にあるようなイメージです。そんな中3人しか登場しない人物達も、それぞれ抱えてるモノが違う。ひとつの空間が物凄い密度になるんだろうなと思いました」。中山は「最初は真面目な話なのかと思ったのですが、徐々に滑稽になっていく感じがいいなと思いました。最初は真面目に観始めて、“あれ?これはおもしろい芝居に発展するんじゃない?”と思い、“やっぱりそうだった!いい芝居観たな”という感じで。お客さんも楽しめるんじゃないかなと思います」とそれぞれの印象を語る。自身の役柄について、食品加工センターの若手作業員を演じる稲葉は「嫁がいて子供がいるという役も初めてですし、屠殺場で働いている人は身体が大きいのでそういうビジュアルもつくっていかなきゃいけない。今までにないアプローチになりそうです」。取引先の若手社員を演じる大鶴は「純粋なのかひねくれてるのか分からない様な所があるので、そこも楽しみたいです」。センターのベテラン作業員を演じる中山は「おっさんの役は、実はあまりやったことがないので楽しみです。役が関西弁なのですが、今までは僕が稽古場で関西弁を話すと“その設定やめよう”と言われてきたのでビビッてます。なんとか関西弁の似合う強面なおっさんをやりたいです」とコメント。鄭の演出は舞台『すべての四月のために』(2017年)ぶりの稲葉は「鄭さんはご自身のことを“アジアで二番目にしつこい演出家”と言っているのですが、本当にしつこいんですよ(笑)。稽古がすごく濃密。そのなかでさまざまな変化があると思うので、そこも楽しみにしています」と意気込んだ。『エダニク』は6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演。取材・文:中川實穗
2019年04月05日『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』など時代に翻弄される在日コリアンの姿を描いてきた鄭義信の新作である『赤道の下のマクベス』が3月6日(火)より東京・新国立劇場にて上演される。池内博之、平田満ら実力派俳優がそろった稽古場に足を運んだ。【チケット情報はこちら】『焼肉ドラゴン』などで“家族”を描いてきた鄭だが、本作では終戦から2年後のシンガポールのチャンギ刑務所を舞台に、死刑を宣告され、執行を待つ朝鮮人と日本人BC級戦犯たちの姿を描いている。なぜこの題材を?そんな問いに鄭は「僕の父は戦時中、憲兵をやっていて戦後、対日協力者として村八分にされました。上官の命令に従った朝鮮、台湾出身の軍属がBC戦犯として裁かれ、彼らの遺族も戦後、対日協力者として厳しい扱いを受けたという事実を知り、父と重なる部分を感じた」と明かす。この知られざる歴史が大きなテーマであることは事実だが、舞台上で展開するのはあくまでも、いつ訪れるとも知れぬ死刑を前にした者たちによる徹底した人間ドラマ。朝鮮人の軍属だった南星(ナムソン/池内)、文平(ムンピョン/尾上寛之)に年配の日本人兵士の黒田(平田)、戦時中は大尉として朝鮮出身の軍属たちをしごき、戦後は一転、彼らと同じ獄に繋がれることになった山形(浅野雅博)、その山形らの命令で捕虜を使役したことで戦犯となった春吉(チュンギル/丸山厚人)など、異なる出自や立場の者たちが死を前に同じ刑務所で生活している。静かに死を待つ者、諦めに似た境地でおどける者、絶望する者、自分は助かるはずだと信じる者、死を前になお復讐を企てる者など、彼らの心情は様々…いや、ひとりの人間の心情さえもコロコロと変わっていくし、それぞれの関係性も憎み合ったかと思えば、死という共通の未来を前に共感や同情、赦しを抱くようになるなど、目まぐるしく変化していく。そして、舞台上で登場人物たち以上に強い存在感を放っているのが、絞首刑の台である。「笑わせたい。こんな状況だからって暗く演じる必要はない」という鄭の言葉通り、池内演じる南星を中心に、日々の営みの中に笑いやユーモアが散りばめられながら物語は展開するが、一方で、どんな時も死刑台は常に“神”のごとく彼らを見下ろし、死がいつ訪れてもおかしくないのだと知らしめる。タイトルにある「マクベス」は役者を志していた南星が常に持ち歩いている古い文庫の戯曲。殺さずとも王になれたはずのマクベスがなぜ王殺しに手を染めたのか? 南星はそんな大命題とも言える疑問を抱く。登場人物は全員男。鄭は「更衣室が男臭いらしい」と笑い「男子校の部室みたい」と評するが、稽古場で男たちがぶつかり合う姿からも、南方の太陽や土ぼこり、血と汗のにおい、生への渇望、死の重みがひしひしと伝わってきた。『赤道の下のマクベス』は東京・新国立劇場にて3月6日(火)より開幕。取材・文・撮影:黒豆直樹
2018年02月26日長谷川博己、香川照之、岡田将生ら豪華キャストが共演し警察内部の権力闘争や腐敗、その中でもがく現場の刑事たちといった“リアルな警察の姿”を描いたドラマ「小さな巨人」が、6月18日の放送を持って最終回を迎えた。本作は長谷川さんが元捜査一課の刑事ながら所轄に左遷された刑事・香坂真一郎を、岡田さんが同じく捜査一課から所轄に異動した山田春彦を、香川さんが香坂と山田の2人と対峙することになる捜査一課長の小野田義信をそれぞれ演じ、芳根京子、安田顕、春風亭昇太らに加え、第6話からの“新章”では梅沢富美男、和田アキ子、ユースケ・サンタマリアらも加わり「学校法人早明学園」を巡る不正とその裏に潜む“警察の巨悪”に立ち向かう香坂らとそこに立ちふさがる小野田を軸にストーリーが展開した。本作ではズームとアップを多用した長谷川さんと香川さんのオーバーともいえるほどの「顔芸」も見どころの1つだったが、もちろん最終回でも「顔芸」は健在。犯人と疑われた小野田の「私は殺人をしたとは認めない!」と強く叫ぶシーンでは「駄々っ子みたいな言い方で笑う」「爆笑した!!!!」「子どもの言い方」など、あまりの迫力に笑ってしまったという反応が続々ネット上に投稿。その後も真実の公表を迫る香坂と涙を流して17年前の事件の真実を語り出す小野田のシーンでは、「くちびるプルプルし過ぎ」「香川さんの演技すごい」「歌舞伎か」などその演技を賞賛する声がTwitter上に溢れかえった。また「めっちゃ熱い展開で感動の涙も流れてるのに、めっちゃ笑えるドラマって初めてなんですけどwww」という声も。そして17年前の事件の証拠を手元に抱えたまま、香坂を正面から捉えたラストシーンでドラマが終了すると、タイムラインはラストの解釈を巡る“ツイート合戦”へと突入。「本物の怪物は香坂だったというオチなんだね」「結局香坂は自分の身を守ったというか」「17年前の殺人は揉み消して一課に戻る黒い香坂」など、長谷川さん演じる香坂が今度は小野田に代わり“警察の闇”を抱えて生きていくというラストに対し、放送終了後もしばらく賛否両論が多数ツイートされ続けていた。(笠緒)
2017年06月19日長谷川博己を主演に、警視庁と所轄の確執、警察内部の戦いを克明に描く警察エンターテインメントドラマ「小さな巨人」。この度、本作の新たなキャストとして、香川照之の出演が決定。香川さんは、長谷川さん演じる主人公の刑事人生を大きく変える捜査一課長役で登場する。警視庁捜査一課強行班1係長の香坂(長谷川さん)は、祝勝会と称して前捜査一課長でいまは所轄の署長をしている三笠(春風亭昇太)と料亭で会食していると、そこへ現捜査一課長・小野田(香川照之)が現れる。三笠と小野田は優秀な部下の香坂を評価しているという共通点はあるが、互いの捜査理論の違いから腹の底ではいがみあっている。会食を終えた香坂は、料亭の前で中小企業の社長・中田隆一の飲酒運転を目撃して取り調べた際、偶然、隆一の車を傷付けてしまう。すると翌朝、大手ニュースサイト・ゴーンバンクの見出しに“飲酒状態の刑事、車を破損”と記事が掲載。香坂は警察官による不正を調査する監察官・柳沢(手塚とおる)に呼び出され、所轄への異動を命じられてしまう。そして香坂が署にやってくると、日本経済のトップに立つIT企業ゴーンバンク社の社長・中田和正が誘拐される事件が発生。捜査一課のときと同様に捜査をしようとする香坂であったが、これまで部下であった警視庁捜査一課長付運転担当・山田に「所轄は後方支援。現場は本庁に任せてください」と釘を刺されてしまう…。香坂のもとに残されたのは、問題だらけの所轄刑事のみ。彼は窮地を脱し、捜査一課に返り咲くことはできるのか――!?本ドラマは、これまでの事件解決の謎解きを重視した本来の警察ドラマとは一線を画し、いままでにない“リアルな警察の姿”そして“人”を写し出す警察エンターテインメントドラマ。キャストには、捜査一課長を目指す刑事・香坂真一郎役に長谷川さん、同じく捜査一課長を目指す刑事・山田春彦役を岡田将生が演じるほか、安田顕、春風亭昇太、駿河太郎、手塚とおる、木場勝己らが出演する。そして今回新たにキャスト発表された香川さんが演じるのは、捜査一課長・小野田義信。小野田は高卒のノンキャリだが、叩き上げで事件現場の最高指揮官である捜査一課長までのぼりつめた実力の持ち主。対立する前捜査一課長・三笠のお抱えである香坂を自分の部下に引き入れたのは、優秀な道具と認めたから。だが、そんな香坂が左遷される要因となる証言をしたため、2人の関係に亀裂が生じる…。香坂ら警察官たちが目指す最高峰のポジションは、小野田の手に握られており、小野田は己の正義を信じて全うしようとする香坂にとって最大の敵になっていくのだ。今後、ドラマのヒロインとして警察官たちの人事を握る人事課に配属された新人職員・三島祐里役に、いま最注目の若手女優が決定しているという本作。隠された配役の続報も楽しみだ。日曜劇場「小さな巨人」は4月期より毎週日曜日21時~TBSにて放送予定。(cinemacafe.net)
2017年03月12日新国立劇場で連続上演中のシリーズ“鄭義信三部作”、そのラストを飾る舞台『パーマ屋スミレ』が5月17日(火)に小劇場にて開幕する。劇作家・演出家の鄭義信が「激動の昭和の時代に翻弄された、庶民の姿を描きたい」として発表した三部作のうち、『パーマ屋~』は1960年代半ば、九州のとある炭鉱町を舞台に展開。そこで暮らす在日コリアンの炭鉱労働者の家族や彼らを取り巻く人々の、苦境に負けずに力強く生きる姿を、笑いと涙で鮮烈に綴った物語だ。理容室を営む須美役の南果歩、その姉・初美役の根岸季衣など、2012年の初演とほぼ同じキャストが揃うなか、須美の夫・成勲(ソンフン)役の千葉哲也、その弟・英勲(ヨンフン)役の村上淳が今回の再演に新加入。稽古場では、鄭の熱のこもった指揮のもと、激しくも温かい九州の方言が飛び交っていた。舞台『パーマ屋スミレ』チケット情報床屋椅子がひとつポツンと置かれた理容室、路地にある手押しポンプや共同便所など、稽古場に精密に建て込まれたセットから、1965年の炭鉱町の風情が存分に伝わってくる。理容室の座敷に祖父・洪吉(ホンギル)役の青山達三が横たわった状態で、鄭の合図で一幕の頭から立ち稽古が始まった。語り部となる中年の大吉(酒向芳)が登場し、空間を仰ぎ見ながら少年時代を懐かしむ。その穏やかな口調が引き出す郷愁に、早くもささやかな悲劇の匂いを感じて胸を突かれるが、少年大吉(森田甘路)のけたたましい登場とともに空気は一変。続々と生命力あふれるキャラクターが現れ、嵐のような勢いで観る者を巻き込んでいく。須美の妹夫婦(星野園美、森下能幸)がくりひろげる夫婦漫才調のやりとりに笑わされ、生活臭を漂わせた初美・根岸のたくましさ、不甲斐ない夫に怒声を飛ばす須美・南の気っ風の良さに圧倒される。負けじと声を張ってずる賢くかわす成勲の、千葉が見せる狡猾な表情も失笑せずにいられない。片足を引きずって歩く英勲だけは、村上が静かな笑みに諦観の色をにじませて独特の印象を残していた。ドラマの序盤、駆け抜けるような彼らのやりとりを鄭は楽しそうにみつめながら、「だんだんたっぷりと演じてしまっているから、もっと早く」とテンポの良さの重要性を強調。その一方で、根岸が三段落ちのようにして言葉をたたみ掛け、笑いを誘う場面では、「もっと三回目を長くねばって」と要求する。演出家が好む“くどい笑い”へのこだわりに応えるべく、根岸が何度もシーンを繰りかえし、周囲から爆笑を引き出していた。強烈な言葉の応酬、おおらかな仕種から感じとれるのは人間の底知れぬ強さ、突き抜けた朗らかさだ。だがその後に続く物語は、炭鉱事故で彼らの生活が打ち砕かれる様を厳しく映し出す。それでも鄭は、懸命に生きる人々の姿に必ず“笑い”をまとわせることを忘れない。『焼肉ドラゴン』、『たとえば野に咲く花のように』と続いて話題を集めた鄭義信の人間ドラマ、その最終章もやはり、胸をえぐる衝撃が待ち構えているに違いない。公演は5月17日(火)から6月5日(日)まで。前売りチケット発売中。取材・文:上野紀子
2016年05月06日新国立劇場にて過去に上演され、戦後まもない日本社会でたくましく生き抜く人々の姿を在日コリアンの視点を絡めて描き、大きな反響を呼んだ鄭義信作の『焼肉ドラゴン』『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』。この3作が3月から6月にかけて新国立劇場で一挙再演されることになり、1月19日に制作発表会見が行われた。鄭義信三部作 チケット情報会見には鄭義信、新国立劇場芸術監督の宮田慶子、『焼肉ドラゴン』からナム・ミジョン、ハ・ソングァン、馬渕英里何 、中村ゆり、高橋努、『たとえば野に咲く花のように』から演出の鈴木裕美、ともさかりえ、山口馬木也、村川絵梨、石田卓也、『パーマ屋スミレ』から南果歩、根岸季衣、村上淳、千葉哲也の総勢16名が出席した。『焼肉ドラゴン』と『パーマ屋スミレ』は鄭が自ら演出も務め、今回の三部作連続上演を「光栄の至り」と喜びをかみしめる。3作ともキャストの一部を入れ替えての上演となるが「新たな、錚々たるキャストのみなさんと新しく作るということで、喜びと不安、期待でいっぱいです」と意気込みを口にした。『焼肉~』はすでに本読み稽古がスタートしており、初演時に客席で鑑賞し、感動に打ち震えたという馬渕は、エネルギーあふれる脚本との格闘に「読んでるだけでボロボロになります(苦笑)。嬉しくて仕方ないんですが、本を開くと疲れます…」と苦笑いしながらも、「この作品の一員になれる幸せを噛みしめつつ、初演、再演以上の新しい『焼肉ドラゴン』を作れるよう稽古を重ねたい」と力強く語る。『たとえば野に咲く~』主演のともさかは「新国立劇場も鄭さんの作品も(鈴木)裕美さんの演出も初めての“初めて尽くし”です」と緊張の色を浮かべ、「どんな新しい景色が見られるか、楽しみ半分、恐ろしさ半分です」と語る。初演に続いて演出を務める鈴木は「演劇、俳優の力を信じている本だと思います。どの人物も美しさと頭の悪いところが、両方とも描かれている」と改めて鄭の作品の魅力を語った。4年前の『パーマ屋~』初演以来「誰よりも再演を熱望してきた」と自負する南は感慨もひとしおのよう。「鄭さんは『アジアで二番目にしつこい演出家』とご自分で仰ってましたが、北半球で一番ではないかと思います(笑)」とキッパリ。これには鄭も「アジアで一番になるように頑張りたい(笑)」と応戦。南はさらに「人生を懸けてもいいと思えぶつかりがいのある山で、役者にとって最高の幸せであり、不幸であり(笑)、試練!今後、こういう役に出会う機会はないかもしれないという思いで一期一会を感じています」と本作への特別な思いを吐露し、並々ならぬ意気込みをうかがわせた。『焼肉ドラゴン』は3月7日(月)から27日(日)、『たとえば野に咲く花のように』は4月6日(水)から24日(日)、『パーマ屋スミレ』は5月17日(火)から6月5日(日)まで、新国立劇場小劇場にて上演。なお、チケットぴあでは三部作特別割引通し券を1月21日(木)まで発売中。
2016年01月20日栄通はこのほど、TVアニメ「弱虫ペダル GRANDE ROAD」(渡部航原作)のバースデーケーキとして、「小野田坂道」「福富寿一」のプリントケーキを発売した。同社では、白く焼き上げたパンケーキ生地に可食インクでキャラクターをプリントしたロールケーキ「プリロール」を発売している。黄身まで白い卵を使用するため生地は白く焼きあがり、キャラクターの絵柄もきれいにプリントされるという。これまではロールケーキ中心に展開していたが、プリントホールケーキも登場した。今回、同作品のキャラクター「小野田坂道(誕生日:3月7日)」「福富寿一(同:3月3日)」のバースデーケーキを発売。主役の「小野田坂道」のケーキは、デフォルメキャラクターを使用したかわいらしいデザインも用意した。「巻島」や「真波」とのセットデザインも用意している。箱根学園のキャプテン「福富寿一」のケーキでは、「荒北」や「金城」とのセットデザインも用意した。種類は、ホールケーキ(プリケーキ)各3種類、プリロール(通常サイズ)各1種類、プリロール(ハーフサイズ)各1種類、プリロール(ハーフサイズ2本セット)各2種類。食べきりサイズのハーフロール2本セットは、2つ並べると一つのデザインになる。価格は、ホールケーキ(プリケーキ)が3,000円、プリロール(通常サイズ)が2,057円、プリロール(ハーフサイズ)が1,150円、プリロール(ハーフサイズ2本セット)が2,300円。購入者には特典として、オリジナルステッカーをプレゼントする。注文はプリロール公式サイトで受け付ける。※価格は税込。なお、クール便の送料別途(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダルGR製作委員会
2015年02月20日1月にマックスファクトリーから発売されたアクションフィギュア『figma 小野田坂道』が、早くも2015年6月に再販されることが決定し、「GOOD SMILE ONLINESHOP」にて予約受注がスタートしている。価格は5,370円(税別)。『figma 小野田坂道』は、自転車ロードレースに懸ける高校生たちの熱き戦いとドラマを描いたTVアニメ『弱虫ペダル』の主人公で、天賦の才を持つクライマー・小野田坂道を立体化したアクションフィギュア。昨年の発表当時から大きな話題となっており、商品ページの総リツイート数は2,700以上を記録。先週に発売されたものの完売した店舗も多く、その大人気を受けて、早くも再販が発表された。実際の商品では、小野田坂道のフィギュア本体に加え、一部塗装済みのプラキットで「自転車」が付属。グッドスマイルカンパニーの「カホタンブログ」では、自転車のランナー状態からパーツを切り離し、組み立て~完成までの工程が紹介されている。フィギュアの表情パーツには「通常顔」「笑顔」「勝負顔」を用意し、着脱可能な「ドリンクボトル」も付属。「figma」の可動域を生かした小野田坂道のさまざまなポージング、シーンを再現できることはもちろん、自転車と組み合わせたプレイバリューの高いフィギュアに仕上がっている。『figma 小野田坂道』の詳細は「カホタンブログ」まで。商品価格は5,370円(税別)で、「GOOD SMILE ONLINESHOP」の予約締切は、2015年2月25日21:00。商品の発送は、2015年6月を予定。また、「GOOD SMILE ONLINESHOP」で予約すると、特典として「ディティールアップシール(ゼッケン番号ほか)」がプレゼントされる。なお、2015年7月には『figma 巻島裕介』の発売も予定されている。(C)渡辺航(週刊少年チャンピオン)/弱虫ペダルGR製作委員会
2015年01月29日当連載第45回「”パンダ顔”105系、品川駅に現る!」でも紹介した1M式電車105系は、山口県の宇部・小野田線で最後の活躍を見せた戦前型旧型国電をいっせいに置き換えていきました。今回は引退寸前の戦前型旧型国電が走っていた頃の宇部・小野田線を紹介します。最後の旧型国電として活躍し、車齢70年という高齢で引退したクモハ42001も走っていました。宇部線は山陽本線の小郡駅(現在の新山口駅)から、宇部新川駅を経由して山陽本線宇部駅までを結ぶ路線。小野田線は宇部線居能駅から山陽本線小野田駅まで結ぶ路線と、途中雀田駅から分岐し、長門本山駅へ向かう本山支線からなる路線です。これらの路線を「宇部・小野田線」と一緒にして呼ぶのは理由があります。2つの線区の車両基地は宇部電車区(現在は廃止)のみで、所属する車両が共用されていたからです。宇部電車区の戦前型旧型国電は、関東や関西地区で活躍後に転属してきた片運転台車、クモハ41・51・クハ55と、両運転台車のクモハ40・42で構成されていました。旧型国電ならではの元祖・1M式電車の特性を生かし、各線区の輸送量に合わせて両運転台車のみの1両、基本編成の2両、その基本編成に両運転台車を連結した3両、基本編成を2本連結した4両と、フレキシブルに編成を組んで運用されていました。宇部電車区には、両運転台車のクモハ40とクモハ42が計5両配属されていました。両運転台車は使い勝手がよく、基本的に本山支線の単行の他、2連の基本編成に連結した3両編成をはじめ、ときには非パンタ側の幌を活かし、基本編成に組み入れられることもありました。宇部・小野田線の戦前形旧型国電の多くは、ここで紹介した写真の撮影から数日後、3月19~20日のわずか2日間でいっせいに105系に置き換えられ、引退となりました。ただし、クモハ42は奇跡的に生き残ることに。中でもクモハ42001は最後の旧型国電となり、2003年3月の引退まで、その活躍は70年におよびました。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月11日2008年、日韓合同公演『焼肉ドラゴン』の作・演出を手がけ、その年の名だたる演劇賞を総なめにした鄭義信。新国立劇場の財産演目として昨年も再演された『焼肉ドラゴン』に続き、鄭義信が再び演出も兼ね、同劇場に新作を書き下ろす。新作のタイトルは『パーマ屋スミレ』。3月5日(月)の初日に向けて奮闘する稽古場を、2月某日、訪ねた。作品は1965年、九州の炭鉱町で暮らす在日コリアンの炭鉱労働者とその家族の物語。ある日、炭鉱事故に巻き込まれ、訴訟を抱え必死に戦いながらも、石油へのエネルギー転換でやがて彼らが置き去りにされる日本の陰の歴史を描く。有明海を望む“アリラン峠”の集落のはずれにある「高山厚生理容所」には、元美容師の高山須美(南果歩)と再婚した張本成勲(松重豊)とその家族が住んでいる。貧しいながらも、須美は明るく騒がしく姉・初美(根岸季衣)や妹・春美(星野園美)らと力を合わせて暮らしていたが、炭鉱の爆発事故で成勲や春美の夫・大杉昌平(森下能幸)が一酸化炭素中毒患者になってしまう。彼女たちは生活を守るため、そして生き抜くために壮絶な戦いを始めて……。この日の稽古は第6場、物語がシリアスな方向に大きく展開する場面だ。餅をつき、須美と初美がリズミカルに丸めて振る舞うというシーンから始まり、本物のつきたての餅もスタッフから用意された。南と根岸が丁々発止のセリフのやりとりをしながらも、口の中にちぎった餅をポンポンと入れていく胸がすくような食べっぷりにそこかしこで笑いが起きる。台本自体が面白いため、演出をつけずに通しただけでも楽しく観られるのだが、ここからが“世界では2番目、アジアでは1番しつこい演出家”を自称する鄭義信の本領発揮。前述のシーンだけでも、餅をつく速度、炭鉱労働者・木下役の朴勝哲が餅をつく長さ、南が話す説明ゼリフの視線の置きどころや、根岸らしいアドリブのセリフの効果的な入れどころ、人の突き飛ばし方や突き飛ばす長さ、足の悪い成勲役の松重への歩き方指導と、細かい指摘は枚挙にいとまがない。自然な芝居の流れと間、そしてリアルな描写に徹底的にこだわり、俳優の無意識の動作をすべて生活に結びついた動作に変え、セリフと動作をしっかりと意味づける。そうした小さな指摘をひとつひとつ直すごとに、“アリラン峠”に暮らす人々の生活がビックリするほどの鮮やかさでより具体的に立ち上ってくるから不思議だ。大変なのはキャスト陣。つきたての餅という消えモノや多くの小道具を操るだけでもてんてこまいなのに、そこに鄭義信の微に入り細を穿つ演出が加わり、さらに芝居が変わる。第6場ほぼ出ずっぱりの南と根岸は、多くなるきっかけに少々頭を混乱させながらも必死に演出に食らいつく。そんな南にスタッフが、もう一度本物の餅を用意したほうがいいかと尋ねると「食べられるものは全部食べます!」とニッコリ。キャストのガッツと、スタッフ、鄭義信への全幅の信頼感がうかがえる瞬間だった。同作品は新国立劇場 小劇場にて、3月5日(月)から25日(日)まで上演。チケットは発売中。
2012年02月23日