質問:高齢出産には脳血管疾患のリスクがあると聞き、妊娠・出産に不安を抱えています。昨年結婚をし、妊娠を計画しています。予定通りならば高齢出産の枠に入るかと思いますが、高齢出産には妊娠高血圧症による脳血管疾患のリスクがあると聞き、妊娠・出産に不安を抱えています。出産の際に脳血管疾患を患った場合の危険性や、どのくらいの入院と通院が必要となるのか、また、出産時の脳血管疾患に備えて、今からできる生活改善法などがありましたら教えてください。島根県:pinohinaさん(35)回答:高齢出産時の脳血管疾患のリスクについてお答えします。――妊娠と脳血管障害の関係ご結婚、おめでとうございます。高齢出産になると、心配の種はつきませんよね。妊娠・出産は、女性の身体にとても負担がかかるものです。ご相談者さまのおっしゃるとおり、高齢出産では、「妊娠高血圧症候群」になるリスクが上がり、また、妊娠そのものが脳血管障害の危険因子となってしまいます。若い女性に脳血管障害が起こる頻度は、妊娠により、非妊時と比べて1.5倍の発症を見る、という報告があります。原因としては、以下が挙げられます。妊娠による血液量の増加、心拍出量の増加妊娠によるホルモン作用(血管拡張、血管壁の変化など)妊娠による凝固系の亢進脳血管障害が起きる妊産婦は1万人に1人程度といわれています。出産の際に脳血管疾患を患った場合の危険性、とのことですが、母体の死亡率は9~38%とかなりの高確率になります。また、脳血管疾患を乗り切っても、まひ、言語障害などの後遺症が残る割合は、40~63%とこれもまた高い確率で見られます。どのくらいの入院、通院になるのかは、発症した状態によってまったく異なるので、何とも言えません。<「妊娠高血圧症候群」の予防>妊娠高血圧症候群を防ぐポイントとしては、以下のことに気をつけましょう。■塩分を控えるこれは、普通の高血圧症の方の食事療法にもなりますね。スパイスを効かせるなどして、塩分を減らしても、食事を楽しめる工夫をしましょう。■ストレスを解消するストレスがたまると、交感神経が緊張して、血圧が上がる傾向があります。妊娠しているときは、心配でストレスがたまることが多いでしょうが、ストレスを解消する方法を見つけて、リラックスした妊婦生活を送れるようにしましょう。■体重に気をつける体重の増えすぎには気をつけましょう。健診を忘れずに受けることで、体重増加の制御になります。高齢出産では、リスクが伴うことが多く、心配になることも多いと思います。健診をしっかり定期的に受け、かかりつけの産婦人科医の指示に従うようにしてください。Doctors Me(ドクターズミー)が保証している医師が回答しています
2016年12月18日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。近年では珍しくなくなった高齢出産ですが、高齢ママたちの姿が若いママたちや子育てを終えている同年代ママたちなどの目に、実際のところどう見えているのかを知っておくと、ママ友との付き合いで失敗しません。若いママたち、子育てを終えた同年代ママのほか、産婦人科医、世の中のパパたちがどう見ているのか、聞いてみました。●若いママには理解が難しい地域の母子プレイグループに参加していた3人のママ(20代〜30代前半)に話を伺いました。その結果、「子どもと一緒に遊べないのでは?」「子どもの成長を見届けられないかも」「学校でいじめられるかも」などといった、子どもサイドに立った意見が目立ちました。高齢になっても子どもが欲しいと思う気持ちや実際に産むことが可能であるという事実は認められても、現実的な子育て面でトラブルが発生しやすい状況がある以上、手放しで歓迎できない というわけです。若いママたちの懸念は、高齢ママたちも同じように感じています。その上で熟慮を重ねて出産を決意しているはず。でも、そこまでは若いママには想像することも理解することも難しいようです。そのため、『親の(高齢であっても)子どもが欲しいという勝手な思いから生まれた子どもがかわいそう』というニュアンスの発言が出てくることがあるのです。●同年代ママにとっては希望であり不安でもある30代後半以降のママたちにとって高齢ママの存在は、「え、今から出産?」という驚きと、「母体は大丈夫なの?」という心配 と、「子どものためにはどうなんだろう?」という疑問 、「私もまだ産めるのかしら」という希望 など、いろいろな思いが交錯するようです。知人が45歳で初産を控えているという45歳の2児のママは、『どう声をかけていいかわからない』と言います。『何を言っても、ひょっとしたら傷つけるかも、嫌味に聞こえるかも、とか考えてしまう』そうです。同じく、30代後半で初産を迎えた現在40代前半のママも、『私の年齢でも高齢出産のリスクが心配だった。より高齢のママを見ると、いろんな意味ですごいな と思う』と言葉を選ぶようにして話してくれました。●パパたちの目にはどう映っているのか?子どもを望んでいるパパたちにとって、高齢ママの姿は希望です。子どもに恵まれなかった40代の男性Tさんは、『同年代かそれ以上の親が小さな子どもを連れているのを見ると、正直羨ましい』と言います。『ただ同時に、祖父母のようにも見えてしまうし、定年退職までに大学を卒業させてやれないから、ウチは40歳を境に不妊治療をやめた』そうです。彼のようなパパにとっては、高齢ママやそのパパの姿は、自分は越えられなかった壁を越えた羨ましい存在 に映るようです。では、そのほかの若い世代や子育て真っ最中、子育てを終えたパパはどうでしょうか?『無理しているように見える』と言うのは20代パパの意見。『他人事ながらそんな年齢で産んで大丈夫なのか?と思う』と答えてくれたのは、30代のパパ。もう一人50代のパパからは、『子どもが欲しい気持ちは理解できるが、将来を考えると無謀な気もする 』という言葉が返ってきました。●産婦人科医たちの意見は?医療の進歩や中年域の女性たちの元気さから、高齢出産は確かに可能になってきました。ただし、産婦人科医によると、『女性は年齢を重ねるほどに、妊娠に異常が起こる割合も増加する』として、安易に高齢出産を勧めることはできない と警鐘を鳴らしています。ダウン症児の生まれる確率の増加、難産や死産の確率も30代前半までとそれ以降とでは大きな違いがあるのが現実です。だからこそ、高齢出産を乗り越えた高齢ママに対する祝福の気持ちと同時に、安易に「高齢出産も大丈夫よ!」と発言しがちである現状に対して不安を感じてもいるそうです。●まとめとして高齢ママたちの多くは、それぞれの選択の前に多くの熟慮や研究を重ねて、その結果出産に到達しています。でも、出産前の部分は周囲には見えません。だからこそ、いろんな意味で「大丈夫なの?」という不安や心配の眼差しを向けられがちです。これが、ママ友関係に影響を与え、声をかけることも、会話の内容にも遠慮が生まれてしっくりこないという状況を導き出しているのでしょう。高齢ママ側としては、周囲が自分を戸惑いがちに見ている理由を知っておくことで、一定の距離感を受け入れることも、たとえば自分の経験をある程度話すことなどでその距離を縮めることも可能なのではないでしょうか。【参考リンク】・高齢初産(高齢出産)について | 中央クリニック()●ライター/さとうあきこ(海外在住プロママライター)●モデル/前田彩(桃花ちゃん)
2016年11月04日日本では少子化や高齢化が問題となっていますが、未婚率の上昇も問題視されています。この10年で35歳〜39歳のアラフォーの未婚率は男女ともに約5%前後上昇しています。最近の調査では、35歳まで独身だった女性が結婚できる確率は約1%という衝撃的な数字まで出ています。なぜ結婚できないアラフォー女性が増えているのでしょうか。今回は、周囲に結婚できないアラフォーの友達がいる既婚女性たちに、なぜ彼女たちが結婚できないのかを分析してもらいました!目次(1)理想が高い(2)お酒でストレス発散(3)そこそこ美人(4)部屋が汚い●(1)理想が高い『私の友達の場合はとにかく理想が高い。本人は普通なんて言ってるけど、彼女の普通は年収600万でスラッとした体型で優しい性格の男性。そんな男まずいないし、いたとしても絶対釣り合わんだろ って心の中で突っ込んでます』(36歳女性/2児のママ)本人にとっては“普通”でも、周りから見たらかなりハードルが高い理想を抱いているアラフォー女性っていますよね。これには厄介な原因があって、若いうちは同年代の男性の平均年収が低く、重要な役職にも就いていないことが多いので、あまりハードルを高くしすぎず結婚できるのですが、年齢が上がるにつれ同年代の男性の平均年収も高くなっていきます。そのため、“普通”の基準がどんどん上がっていく ことになり、結果的に高望みという形になるのです。もし仮に年収600万の男性がいたとしても、20代の女性と30代の女性を選ぶとき、多くの男性は20代の女性を選びますから、そもそも自分の年齢が30を越えていることにハンデを感じなければいけないわけです。それなのに、若いころのように「自分の年代にあった収入の人を……」と考えていると、どんどん若い人たちに追い抜かれていってしまいます。●(2)お酒でストレス発散『1か月に1回子どもを実家に預けられるので、独身アラフォーの友達と飲みに行くのですが、その友達は毎日のようにお酒を飲んでストレス発散しているようです。やれ仕事で理不尽なことがあった、やれ理想の恋人が現れない、などストレスをお酒にぶつけて飲んでいる感じ です。これじゃあ男も寄り付かんだろって思います』(39歳女性/2児のママ)これも独身アラフォーあるあるですね。寂しさのあまりお酒に手を出してしまい、それが習慣化してストレスは全部お酒で解決するという女性は結構います。現状に焦っているのをお酒で発散させてしまうと、異性との出会いへのモチベーションがなかなか高まりません。とくに自宅で飲んでいる人は、男性と出会うチャンスも失ってしまいます からとても非効率なやり方です。どうせ飲むなら、せめてバーやオシャレな居酒屋などで飲むようにしたいものです。●(3)そこそこ美人『私の友人に結構美人なのに結婚できない人がいます。本人は彼氏を取っ替え引っ替えしてるので、「結婚“できない”じゃなくて“しない”」と言いますが、私には“できない”の方に思えて仕方ありません。このまま歳を重ねたら誰も相手しなくなる から早く結婚したほうがいいと思うのですが……』(35歳女性/子どもなし)そこそこ美人なのに、アラフォーになっても結婚できていない女性ってよく見かけますよね。彼女たちが結婚できない大きな理由は、“余裕”にあるようです。30を越えてもそこそこ男性にモテるので、「いつでも結婚できる」と楽観的な考えを持ってしまいます。しかし、この方もおっしゃっているように、どんな美人も年齢には勝てません 。いずれ男たちにチヤホヤされなくなります。そうなったときに結婚を望んでも、振り向いてくれる男性はいません。また、もう一つの理由として、過去の彼氏たちのスペックが高すぎた、というのも挙げられます。10代20代のときに皆が憧れるような男性と付き合っていたせいで、すっかり「私には“良い男”が似合う」と思い込んでしまい、それをアラフォーになっても持ち続けてしまっているのです。●(4)部屋が汚い『遊びにいくたびに部屋が散らかりまくっている友達がいるんですが、「こりゃ結婚できないな」と思ってしまいます。若いうちなら一緒に生活したときに家事ができなくても許されるけど、アラフォーでこれはキツいなって 』(37歳女性/子なし)アラフォーは働き盛りなので仕事も多忙になりがちですが、それでも部屋が荒れ放題で自炊も全くやっていないという女性には引いてしまいますよね。アラフォーの女性を交際相手に選ぶ男性は、少なくとも”最低限の家事能力”を求めていますから、それがない女性には魅力を感じることができません。「同棲してからちゃんとしよう」と思っていても、30後半まで引きずり続けた“サボりグセ”はなかなか治りませんから、すぐに発覚してオサラバということになります。----------いかがでしたか?結婚できないアラフォー女性は自覚がないことが多いですから、周囲のアドバイスが大切だったりします。もし周りに「明らかに結婚できないのはこれが原因でしょ」という友達がいれば、優しく指摘してあげましょう。●文/パピマミ編集部
2016年10月02日少子高齢化やIT技術の発達により、私たちが生きる社会はめまぐるしいスピードで変わっています。今は普通に存在する職業が、数年後、数十年後にはなくなってしまったり、全く違ったものになってしまうかもしれません。ここでは、そんな「近い未来に消えてしまうかもしれない職業」をご紹介します。就活を控える大学生は、一度目を通しておく価値ありですよ。■圧倒的な人口減で……教育関連少子高齢化による人口減少が進む日本。2014年の国交省の発表によると、2050年には、人口は約9700万人に減少すると考えられています。この試算によれば、全国の6割以上の地域において、人口が2010年時点のおよそ半分ほどになるのだとか。ここまで人口が減ってしまうと、国内の産業全体が打撃を受けるのは当然です。しかし、その中でも特に大きなダメージを受けるのは、教師や塾講師、保育士といった子ども関連の仕事。少子化が問題になっている今よりも子どもの数が減っているわけですから、それに関連した働き口が減るのも自然と言えば自然なことです。今後は先生であっても、某予備校教師のような個性的なキャラづくりが求められる日も近いかもしれません。授業のわかりやすさや子どもとの信頼関係だけでなく、「他の先生にはない強み」をアピールしていく必要がありそうです。■テクノロジーの発達で失職するかも日々進化していくテクノロジー。作業の効率化が図られ、人間の行っていた作業が機械に代替されるようになってきました。例えばアマゾンや楽天などの大手通販は、倉庫にロボットを活用することで人件費を削減しています。また、監視カメラやセンサーの発達により、交番も年々減少しているそう!さらに、男の子の憧れる職業である電車の運転手も、センサーやGPSによる無人運転が実現すれば、将来は必要なくなるのではとの声も。自動車の自動運転技術も話題になっているだけに、ありえない話ではなさそうです。そんなに機械の仕事が増えるなら、プログラマーになればいいのでは?と思いますよね。しかし、プログラミングそのものが機械化される可能性もあるのだとか。機械にとって代わられないようにするには、「人の手でしかできないスキル」を身につける必要がありそうです。■インフラだから安心……はできない!私たちの生活に欠かせない、電気やガス・水道などのインフラ事業。なくなることはありませんが、だからといって安泰とも言いきれません。すでに電気の自由化が行われ、2017年にはガスも自由化が始まります。これにより、新規事業者の参入による価格競争がはじまるでしょう。今は自由化が決まっていない分野でも、この先そのような動きがあるかもしれません。まだ電力自由化は始まって1年と経っていないため、その競争結果についてはもう少し長い目で見る必要がありそうです。しかし、競争が激化すればそれだけ生き残るのも大変。インフラ業界だから安定しているだろうと就職を決めるのは、少々危険かもしれません。■専業主婦はすでに過去のモデル不況が長く続き、少子高齢化で働ける人の数も減っています。一昔前は、そこそこの企業に入りさえすればあとは年功序列で安泰でしたが、今は有名大学を出てもそんな保証はありません。家長である男性の給料だけで家計を支えていくのは難しい時代に入っています。実際に、日本の全世帯数における共働き夫婦の割合は約60%という数字が出ています。先行き不透明なこの時代、夫婦二人で収入を得ていれば、パートナーが急に働けなくなったときもリスクヘッジになりますよね。また、「年金の支給年度の引き上げは避けられない」との声も。老後の資金準備のために共働きを選択する夫婦もいるようです。一部の裕福な家庭を除いては、もはや専業主婦でいるのは夢のような時代なのですね。専業主婦を目標に人生設計をしている女子は、一度考え直してみる必要がありそう。■今は当たり前にある職業も、なくなる可能性がある就職活動を迎える大学生にとって、職業の将来性を考えるのは大切なこと。やりがいやワークライフバランスなども大事ですが、業界・職種を長期的な目で見ることも欠かせません。ただ就職するだけでなく、積極的にスキルや資格を習得していくこともおすすめです。「ようやく就職できたのに、こんなはずじゃなかった」なんてことにならないように、業界や職種の未来にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
2016年09月22日こんにちは、金融コンシェルジュの齋藤惠です。今回は、『市民後見人 』について、その仕組みやルールをご説明します。今はまだ聞き慣れない言葉かもしれませんが、高齢化などが社会問題となっている現代で、これからのためにぜひ多くの人が知ってほしい制度です。●市民後見人とは?認知症や知的障害、精神障害などによって法律に関わる行為などが一人でできない人は、通常は親族の中から選ばれた後見人が本人に代わって財産管理や介護利用契約などをしてくれるものです。しかし、病気や障害を持った人の近くに必ずしも後見人になり得る人がいるとは限りません。そんなときに求められるのが、“親族以外の市民による後見人 ”です。これを『市民後見人』と呼びます。●市民後見人のサポートを受けるには?こちらも自治体によって細かなルールが異なるようですが、主に担当職員が希望者と面談をして状況を確認したり、医療や介護に携わる専門機関に相談をしたりして、希望者が市民後見人制度を受ける必要があるかを判断するようです。そのときの判断材料として、自治体は希望者の資産、住居や生活環境の状態、家族関係、現在の支援体制などを正しく把握する必要があります。家族以外の第三者が関わる制度なので、より慎重な調査となるでしょう。●市民後見人になるには?市民後見人は自治体が主催している研修 を受けた後、家庭裁判所からの選任 によって活動を開始できます。たとえば名古屋市の場合は、『市民後見人候補者養成研修』を受講→『市民後見人候補者バンク』に登録→家庭裁判所からの選任を受ける→市民後見人としての活動がスタート、という流れのようです。しかし活動前の研修内容や実際の活動の幅が自治体によってさまざまなので、「どうすれば市民後見人になれるのか?」「どんな人がなれるのか?」「具体的に何をするのか?」が一般市民にほとんど認知されていないのが現状です。●市民後見人になった後の支援体制は?市民後見人となった人は、その活動が始まってからも自治体によって支援と監督を受けることになります。たとえば、監督行為として定期的な活動内容のチェックや財産目録作成の立ち合い、支援行為として24時間のサポート体制や保険加入などがあります。トラブルや双方のストレスを避けるため自治体側も手を尽くしてくれているようです。----------まだまだ課題が多いといえる市民後見人制度ですが、私たち一人ひとりが正しく理解と関心を深めることで、今後ますます安心して参加・利用ができる制度になるでしょう。【参考リンク】・市民後見人とは | 名古屋市成年後見あんしんセンター(PDF)()●ライター/齋藤惠(金融コンシェルジュ)
2016年09月05日終身雇用制度が終焉を遂げ、少子高齢化によって年金制度の維持も危ういこれからの時代。もはや、会社からの給料だけで穏やかな老後を迎えられると思っている人は少ないでしょう。そのためか、「お金がお金を生む」資産運用に着目し、株式や投資信託などで少しでも金融資産を殖やそうと試みる現役世代が急激に増えています。ただし、投資してうまくいくケースはそれほど多くはありません。特に株式投資においては、失敗して大損し、借金を抱えてしまう人もいます。タイミングや予測の問題など、表面的な原因も関係していますが、より大きな影響を与えているのは「心理現象」です。よくある失敗のうち、2つの心理的な原因について解説したいと思います。■1:損したくない気持ちが強すぎて失敗する「プロスペクト理論」のワナ失敗でもっとも多いのが、「ちょっと株価が上がった時点で株を売ってしまい、反対に株価がどんどん下がる局面で損切りの決断ができず、大損をしてしまう」タイプです。基本的に、株価市場の動きは完全に予測できません。テクニカル分析やファンダメンタルズ分析などにより、ある程度の予測は可能であるとしても、大震災などのような大きな災害や、リーマンショックのような大規模な金融危機の発生については誰も予測できないのです。また株価の動向は、一人の意図でコントロールすることはできません。つまり株式投資の場面では、「こうなってほしい」という期待や執着を捨て、株価変動に左右されることなく、市況を冷静に客観視し、分析する「大人の態度」が必要なのです。同時に、保有株式の企業の不祥事の発覚や大災害、大規模な経済事件が発生した場合には、いさぎよく損切するだけの胆力が欠かせません。しかし、そういった熟慮や考察もなく、ただ「お金を働かせよう」「不労所得」「ラクして稼げる」といった言葉に惑わされて株式投資を始めた場合、株式市況の見方や構え方はもちろんのこと、自分の感情の動き方もコントロールの仕方もわかりません。そのため、株価の動向に一喜一憂してしまうのです。具体的には、ちょっと株価が上がるとすぐに利益を確定してしまい、反対に株価が下がると損失を確定したくなくて「もう少し待てば株価が持ち戻すかもしれない」などと損失確定の時期を先延ばしにしてしまうということ。特に大きな社会的イベントがないときならよいのですが、ネットバブルや不動産バブルの上昇期や大災害時や経済危機に見舞われた際には、チャンスを失い大損害を被ることになってしまいます。このような心理現象はなぜ起こるのでしょうか?理由は、「プロスペクト理論」で説明できます。プロスペクト理論とは、人間がリスクを伴う意思決定の際、価値の感じ方が異なることに注目し、「利益が出ている局面では確実性を好み、損失が出ている局面では賭けに出たがる」という人間の心理現象を導き出した認知心理学のひとつ。もうひとつつけ加えるなら、リスクが人間の生存欲とより密着であればあるほど、そこに恐怖が生まれるということです。株式投資には、人間の生活や人生を大きく左右する「お金」が密接に関係しています。なおかつ、その投資額も万単位です。そのため、先述のプロスペクト理論も大きく作用するのです。■2:みんなと同じで安心して失敗する「ハーディング現象」のワナ株式投資の初心者が失敗するもうひとつのパターンは、「みんなと同じ」になりすぎて損をすることです。基本的に、株式投資の場面では「みんなと同じ」をやっていては儲かりません。大災害や政権交代、大規模な経済危機などにより、株価が低迷しているときに株を購入し、バブルや好況時などにより株価が高騰しているときに売却することで初めて売買益を手にできるのです。冷静に考えれば、これは誰でもわかる原理原則です。同時に、この原理原則を熟知している投資家ほど、日ごろから四季報を見て株価や利益率、事業内容を細かくチェックし、時代の動向と併せて日々研究しています。ところが「みんなと同じ」を好む投資家は、そういったこまめな勉強をしません。証券会社の営業マンや株式評論家の意見に従う、あるいはマネー雑誌の袋とじの株を買うなど、周囲の意見に左右されて株の売買を決定しているのです。なかには「他の株主はもう売却しているよ」のひとことで動揺し、慌てて売却する人もいるほどです。なぜ、このようなことが生じるのでしょうか。こういった心理現象は「ハーディング現象」として説明ができます。「ハーディング現象」とは、「みんなと同じであることで安心する」心理のこと。この心理は、諸外国にくらべて日本人に特に多いとされています。それは、「出る杭は打たれる」「波風立たせない」「赤信号みんなで渡れば怖くない」という日本独特の言い回しからも理解できます。株式投資は、「お金」という人間の生存欲に強く影響を与えるものに関わる活動です。さらに扱う金額も100円、1,000円ではなく、10万円、100万円といった大きな単位になります。当然、日常の買い物などとは違い「安心したい」「危ないことはしたくない」という感情が大きく動きます。そのために、得を狙って始めたはずの株式投資で、「みんなと同じ」を求め、結果として儲からずに失敗するのです。つけ加えるなら、幼少期から親や学校のいいなりで育ち、自分の頭で考えて行動を決めることをして来なかった日本人特有の「自由に考えてはいけない」という思い込みも大きく作用しています。心理の奥底に、失敗に対する極端な恐怖が隠れているのです。*繰り返しになりますが、株式投資には、人間にとって大事な生命や生活、人生を大きく左右する「お金」が絡みます。大事なものを左右するということは、欲や感情を左右するということです。欲や感情に左右されると投資は失敗します。投資で成功するためには、冷静さや理性と言った大人の態度が必要です。それには「自分の欲や感情の動き方を知る」ことが前提となります。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という言葉が孫氏の「兵法」にあります。株式投資もまたしかり。欲や感情を甘く見ず、一歩自分を客観視する姿勢を保って投資を成功させましょう。(文/税理士・心理セラピスト鈴木まゆ子)
2016年08月11日こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。超高齢化社会を迎え、全国のママさんパパさんの御両親もおじい様おばあ様も多くはお元気でお過ごしのこととお慶び申し上げます。筆者も自分の親は二人とも他界したものの、妻の方はおかげさまで父親が90歳、母親が87歳とまだまだ元気に毎日を過ごしています。ところで、そのように元気な今のわが国の高齢者の人たちですが、実は“これだけは絶対に気をつけなければならない深刻な健康上のリスク” があることをご存じでしょうか。絶対に回避しなければいけないこと、それは“転ぶこと”なのです。定期的な一般健診もがん検診も血液検査ももちろん大切ではありますが、それ以上に“転ばないこと”こそが高齢者にとっては極めて大事なことなのです。どうしてでしょうか。●転んで入院生活に入ることで、医療の手にかかる状態から抜け出せなくなる傾向がある高齢者の多くは1つや2つの持病は持っています。それでも“一病息災”“二病息災”といった感じで明るく前向きに過ごすことで、病気に打ち勝ちながら生きているというのが本当のところです。実際、厚生労働省のホームページによると、日本人の場合男性の2人に1人、女性の3人に1人はがんにかかるそうです。しかし、積極的に適切な治療を受けることによって多くのがん患者は命までは落とさないですむようになってきました。また、がんではない病気なら高齢者のほとんどが何かしら持っていますが、“気にし過ぎない”で日常生活を続けることで、“医療過多”にならずに健康な生活を保っているという面もあります。ところが、ひとたび転んでしまい、特に大腿骨を折ってしまう と人生終盤の様相が全く違うものになってきてしまいます。手術をしなければ骨はつながりませんから寝たきりになってしまいますし、手術をしたらしたで高齢者にはさまざまなリスクが伴うものであり、入院生活に入ることによって病院側が“細かいことも見逃してくれなくなる”ため、さまざまなリスクが表面化し、“医療の手にかかる状態から抜け出せなくなる”傾向があるのです。●昨日まで何でも自分でやっていた人が、転んでしまうとわずか数か月で帰らぬ人になることも都内の総合病院の整形外科に勤務するある医師によると、高齢者が大腿骨頸部骨折に代表されるような外科的手術を伴う入院生活に入ることによる主なリスクは次のようなものです。(a)感染のリスク(b)麻酔のリスク(c)再骨折・脱臼のリスク(d)痛み・しびれ等の残存(e)歩行・移動能力の低下ないし喪失(f)内科的疾患の出現(g)認知症の出現(h)せん妄の出現(40代男性/都内総合病院整形外科勤務、整形外科医師)また、これは正確な統計がとれていることではないため、あくまでも個人的な談話として聞いた話ですが、『大腿骨頸部の骨折で入院・手術をした後期高齢者の人で半年以内で死亡する人の割合は実は一般の人がイメージしている数字よりもっと多い』と仰る整形外科の医師(60代男性/都内整形外科クリニック院長)もいるほどなのです。現実に筆者の母親はそれまで何でも自分ですることができていたのに、1月下旬に自宅の自分の部屋で転んで大腿骨頸部を骨折し、入院・手術してからというもの、日に日に全身の状態が低下 していき、5月下旬には帰らぬ人となりました。●高齢者は“転んだら最後”のつもりで周囲は細心の注意を~意外と見落しがちな注意点~おじいちゃんおばあちゃんに、いつまでも転ばずに元気で過ごしていただくために、周囲は“転ばせてしまったら最後”くらいのつもりで細心の注意を払う必要があります。もちろん皆さんそのつもりでやってはいるのですが、より一層ということです。そこでこのコラムでは、普通の健康な大人だと「そんなものが転倒リスクになるの?」と思うような、意外と見落しがちな転倒リスクについて触れて、しめくくりたいと思います。●(1)薬の服用状況に注意を高齢者の多くは多種類の薬を服用しており、その中には副作用としてフラつきや眠気、ぼうっとするなどの症状をもたらすものも多く存在します。それらの副作用が出ているときの歩行は、高齢者にはさせないように気をつけるべきです。●(2)靴下やスリッパは履かない方がいい靴下やスリッパは、滑り止め付きのものを常に履く習慣ができている場合を除いて、履かない方がいい かもしれません。裸足に慣れましょう。冬の寒い日に履かないと耐えられないと仰るのであれば、むしろ布団から出ずに休んでいることをおすすめいたします。●(3)日常の細かな整理整頓に無頓着になった方がいいその人のパーソナリティもあるので一概には言えませんが、日常の細かな整理整頓に伴う動き には多くのリスクが潜んでいます。ほんの一例ではありますが、几帳面だった筆者の母は滑り止めの付いていない“あったか靴下”を履いた状態でベッドのシーツを直そうとして滑って転び、わずか4か月後に帰らぬ人となりました。几帳面な高齢者に何か気になることがある様子を感じたら、何が気になるのか聞いて、できることは代わってしてあげるのがベターです。なお、(2)の裸足に慣れましょうという提案は、神奈川県で内科医院を開院する東邦彦医師もホームページで推奨していらっしゃいます。【参考リンク】・高齢者の転ばない暮らし方について | 東内科医院()●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
2016年08月09日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「18歳からの選挙権」です。***公職選挙法が一部改正され、70年ぶりに選挙権の年齢が引き下げられました。いよいよ、満18歳から投票できるようになります。少子化が進むなか、未来を担う若い世代が政治に参画できるようになるというのは、喜ばしいことですね。ただ、今年18歳、19歳になる人の数は約240万人で、有権者全体の2%にすぎません。ですから、これを機に政策がいきなり若い人向けにシフトするということはないでしょう。10代の有権者が生まれるということは、政党にしてみれば新たな支持者を囲い込めるチャンス。高校生や大学生を対象にボランティアを募ったり青年部を作るなど、どの政党も積極的にアプローチをかけています。世界的に見ると、191か国・地域のうち9割以上の国で、選挙権の年齢を18歳以上にしています。日本の有権者の年齢が20歳以上だったのは、成人年齢が20歳だからです。選挙年齢の引き下げは、国民投票の年齢が満18歳以上に定められたことがきっかけになっていますが、政府は将来的に、日本の成人年齢を18歳にすることも検討中。そうなれば、少年法も改正されますし、国民年金保険料を納める義務も18歳から課せられます。少子高齢化対策として、国は、働ける人、税金を払える成人の数を増やしたいんですね。18歳選挙は夏の参議院議員選挙から始まります。本番を前に「模擬選挙」を実施している学校もあります。議題に合わせて、生徒同士で議論を戦わせ、多角的な視点から、どこに投票するか考えをまとめる力を養うというもの。日本人はディベート下手ですよね。自分の意見が否定されると人格まで否定されたように感じて、人間関係に支障が出てきたり。感情と切り離して議論することは大切です。皆さんも、今日のランチをどこにするかというような身近なテーマでも、お友達とディベートをしてみてはいかがでしょう?汚職問題などを機に政治不信が募り、若者の政治離れに拍車がかかって、今、20代30代の投票率の低さが問題になっています。10代の政治参加に刺激されて、20代30代の政治意識が高まることも期待されているんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2016年6月29日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2016年06月26日こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。超高齢化社会を迎えたわが国では、高齢者が人生最後の時期を住み慣れた土地や家族に囲まれた自宅で過ごしたいと望んでも、かなわないケースが増えてまいりました。国は社会保障費の抑制のために療養型病棟の削減と在宅医療システムの充実を方針に掲げて終末期医療の問題に臨んでいますが、『実際には医療型療養病床に入院している患者さんの医療区分は2と3の占める割合が毎年増加しているのが現実』(50代男性/都内医療療養型病院院長・医師)で、在宅医療では対応しきれないほどの、すぐに受けられる医療の必要性が高まっています。●日本の高齢者の多くが人生最後を病院で過ごすワケ現代のわが国の高齢者のおよそ8割は病院でなくなっています。自宅でなくなった人の割合は2010年の時点でわずか12.6%にすぎません。わが国の高齢者が終末期を過ごし、最期を迎える場として重要な役割を担っている医療型療養病床の平均入院日数は約280日と長く、死亡退院が退院全体の約3割 を占めています。それほど日本の高齢者が人生の最期を過ごす場は、“病院”が中心であるということなのです。国が「在宅中心の終末期医療」の旗印を掲げても、現実は容易にはそうなっておりません。なぜでしょうか?それは、わたしたち日本人には「まだ生きられる人を死なせてはならない」という“価値観”があるからだと、筆者は考えています。そして、まだ生きられる人を死なせないためには、医師や看護師がすぐそこにいる病院にいないことにはだめだからだと思うのです。●つきっきりの介護は、現実的に難しい筆者自身も、高齢の母親が転倒による大腿骨頸部の骨折をきっかけにあっという間に全身の健康状態が低下し病院で寝たきりになりました。そんな中でも、子どもたちや孫たちが居て、ひ孫が遊びに来る自宅に、いずれは何とか帰って来てもらいたいという希望と目標を持って、転倒から3か月ほどは努力しておりました。しかしながら、体の老化という現実はそう甘いものではありませんでした 。大腿骨頸部の骨折部位の手術には成功したものの、周辺の筋肉の委縮は老化によって進んでしまっており、車椅子に乗ろうと体をちょっと動かしただけで患部が脱臼してしまう。これではリハビリは不可能でした。入院生活のストレスからせん妄を起こし、大腸の壁が薄くなってしまっているせいで下血をし、食事を止めることによる低栄養防止のために高カロリーの栄養を点滴すれば肝機能をやられ、幾日もつづく炎症と微熱と腎機能の低下。食欲が全く湧かない。飲み込む力も弱まってくる。痰の吸引は一日に何度も必要。医師は経鼻栄養法を奨める。それでもやっぱり口から食べられるうちは口から食べさせてあげたい。日々刻々と変化する母の容態に応じて筆者も筆者の妻もきょうだいも、自分や連れ合いや子どもたちの生活のために働きながら、時間を作っては病院にいる母を訪ね、話をしたり食事の介助をしたりをつづけています。ここまでの状態の患者を在宅で看るということは不可能です 。やろうと思ったら筆者も妻もみな仕事を辞め、母の看護に専念するしかありません。そして、そのような選択をすればそう遠くないうちに今度は筆者や妻が破綻することは間違いない でしょう。わたしたちが生きている21世紀初頭の日本という社会は、ほとんどの一般庶民にとっては「生きるのがとても大変な社会」です。ごく一部の恵まれた家柄にお生まれになった方を除けば、みんな「ギリギリで生きている」というのが本当のところ なのです。そのような中にあって、いたずらに「家族の愛が大事」「在宅で家族に囲まれて暮らそう」と言わんばかりの国の方針というのは、いかがなものなのでしょうか。筆者の40年来の友人で、かつて慶應義塾大学病院の神経内科でさまざまな種類の神経性難病を羅患しながら終末期を迎えられた高齢者の人たちと臨床で向き合った医師のY君は言います。『今の日本はもう、“家族”が全て看るという時代ではないと思う。家族に甘え過ぎたら、その愛する家族が破綻してしまう。社会が全体で支えなければならない。私自身は、もし自分が年を取って医療や看護の手を離れることができない状態になったとしたら、病院や施設でプロの看護・介護を受けたいと思う。家族はたまに顔を見せに来てくれればそれでいい。寂しいが、それで十分幸せだと思わなければいけないんじゃないか。病院で自分に相い対してくれる看護師さんやヘルパーさんとのコミュニケーションを人生の楽しみとして、暮らして行こうと思うのです』(50代男性/神奈川県内市立総合病院勤務・神経内科医師)●人生の最期を病院で暮らすことになった場合の生き方はまだ生きられるのに、欧米のように経管栄養法などを施さないことで高齢者が数週間後にはこの世を去って行く社会を、“理想”としてマネるのか。欧米社会ではキリスト教的な価値観からか「そこまでして延命することは人間として自然なあり方ではない」 と捉える傾向があるようですが、わたしたち日本人は果たしてそのように割り切ることができるのか。筆者の答えは「ノー」です。『人間は、まだ生きられるのであれば最後のそのときが来るまで生きなければいけないと思うんですよ。これは“死生観”の問題ですから、「それは違うよ」と言われても反論はしません。「そうですか」と言うだけです。でも、少なくとも自分はそういった価値観に基づいて入院しているお年寄りの看護に携わっているつもりです』(30代男性/都内医療療養病床併設型総合病院勤務・看護師)これは筆者の母を看てくださっている、療養病床の男性看護師Sさんの言葉です。Sさんは明るくて気さくな方で、阪神タイガースの大ファンなのですが、巨人ファンの母と今シーズンどちらが優勝するか賭けをしているそうです(何を賭けているのかは存じませんが)。家族ではなくても血のつながりとかはなくてもSさんのような方との会話が、長くつづく入院生活のなかでどれほど母の励みになっているか、計り知れません。人生の最期を病院で暮らすことになった場合の生き方は次のようなものでありたいと、筆者は思います。・看護師さんやヘルパーさんといった、職業として自分に接してくれる人たちとのコミュニケーションを大切にし、楽しむ 。家族とは違うかもしれないが、家族とはまた違ったプロフェッショナリズムを尊重する。・家族は「時々顔を出してくれればそれでいい」と考える 。ほとんどの国民にとって、終末期医療にかかる費用はその人が受給している年金額を超えてしまっており、蓄えが十分にある世帯を除けば現実には家族が働くことによって支えています。その家族が働くのを妨げないことです。家族は時々顔を出してくれればそれでいいと考えましょう。・あまり多くのことはできないかもしれないが、残された身体機能を使ってできることだけは大いに行い、楽しむ 。飲み込む力がまだ残されているのであれば口から食事を取ることを楽しみ、見る力や聴く力があるのなら、テレビや新聞も楽しむ。疲れない程度でかまわない。・ペンを執り文字にすることはできなくても、人生を通して思うことなどを短いセンテンスでいいので考えておく 。例えば孫に「一所懸命にやれば必ず何かが得られるよ」など。旅立つ前にその言葉を聴いたら、孫にとっての宝物になることは間違いありません。【参考リンク】・入退院経路調査(平成21年) | 慢性期医療協会<PDF>()●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
2016年05月31日少子高齢化は人間にとって積年の課題ですが、高齢化が進んでいるのはどうやら猫の世界も同じのようです。■最近の猫の平均寿命は30年前の4倍!一般社団法人ペットフード協会が毎年行っている「全国犬猫飼育実態調査」の平成27年度版によると、猫の平均寿命は全体で15.75歳。もちろん野良猫はもっと寿命が短いですし、室内で飼われている猫と、外で飼われている猫とでは差があります。室内で飼われている猫の方が2年ほど長いという結果でした。過去にさかのぼって10年ごとに見てみると、2006年の平均寿命は14.3歳、1996年は7.8歳、1986年はなんと4歳でした。特に2000年代に入ってからの伸びが著しく、1980年代は約3~5歳、1990年代は約5~9歳だったものが、2002年に11.2歳に伸びて以降は平均寿命が10歳を下回ることはありません。危険の多い屋外で飼われることが多かったころは短かった寿命が、室内で安全に買われるようになって延び、さらにこの10年ほどでペットの医療機関の発達や、キャットフードの進化などもあって、猫の高齢化さらに進んでいるようです。■キャットフードが年齢に合わせて細分化キャットフードは、以前から「子猫用」「成猫用」「シニア用」など、年齢別の商品が多く販売されていましたが、写真のように最近はさらに年齢ごとに細分化されているようです。「カルカン」のブランドで知られるマースジャパンの製品は、シニア猫用に「8歳から」「11歳から」「15歳から」「18歳から」の4つのラインを展開。高齢の猫でも食べやすいスープ仕立てや、柔らかいゼリー仕立てで提供しています。「モンプチ」のネスレ日本も同様に、「11歳以上用」「15歳以上用」「18歳以上用」と3つのラインで、スープ仕立てのフードを販売。やはり高齢猫では噛む力が弱くなることがあったり、虫歯などで歯の健康を害したりしている場合もあることを考慮して、汁気の多いフードになっているようです。さらに柔らかいペースト状のフードにこだわっているのは、ペットライン株式会社のキャネット「メルミル」シリーズ。「11歳から」「15歳から」「18歳から」の3ラインで、「国産のなめる栄養食」を販売しています。「ヨード卵光」で知られる日本農産工業株式会社のグループ会社だけあって、原材料にヨード卵の粉末が入っているのが特徴的です。年齢の段階をさらに細かくしているのが、「ねこ元気」「銀のスプーン」などを販売するユニ・チャームの製品。「7歳頃から」「7歳以上」「10歳が近づく頃から」「10歳以上」「13歳が近づく頃から」「13歳以上」「15歳が近づく頃から」「15歳以上」「20歳を過ぎても」と、シニア猫に9つのラインを用意しています。いずれも、ビタミンやミネラル、必須脂肪酸やたんぱく質などのバランスを重視した総合栄養食だったり、栄養補助に役立つ副食だったりと、高齢猫の健康を考えた配合のフードばかり。しかし、猫はそれぞれに個体差がありますし、必要とする栄養素も異なってきますので、健康を考えて高齢猫のキャットフードを選ぶ際には、いちど獣医に相談する方がよさそうです。■そもそも「高齢猫」とは何歳からなのか最後に、改めて猫の年齢を人間に換算すると何歳になるのか、「獣医師広報版」を確認しておきましょう。1ヶ月(1歳)6ヶ月(9歳)1年(17歳)5年(36歳)8年(48歳)11年(60歳)15年(76歳)18年(88歳)20年(96歳)11歳で人間の60歳、15歳で人間の76歳、18歳で人間の88歳、20歳では人間の96歳……。かわいいけれど、たしかに「高齢」ですよね。ちなみに、日本での長寿猫記録は36歳、海外では38歳まで生きた猫もいるそうです。ペットも大事な家族。健康に気を付けて、できるだけ長生きしてほしいものですね。(文/宮本ゆみ子) 【参考】※全国犬猫飼育実態調査-一般社団法人日本ペットフード協会※犬・猫と人間の年齢換算表-獣医師広報版
2016年05月30日全国のラーメンを食べ歩くラーメンミュージシャン、井手隊長です。いま、日本の少子高齢化はまったく歯止めのきかない状態ですよね。国立社会保障・人口問題研究所によると、65歳以上の老年人口割合は、2010年に2,948万人、2012年には3,000万人を超え、2020年には3,612万人へと増加する見込み。2013年の時点で割合は25.1%と、すでに4人に1人を上回っている状況です。ただ、高齢者のみなさんの「いつまでも若い自分でいたい」という気持ちや、アンチエイジングの技術向上などもあり、大変若く生き生きとした方が多い印象ですね。そんな高齢者で気になるのはやはり「認知症」や「ボケ」の問題。「いくら若々しくても、「脳」の老化は避けられないのでは?」と思っている方も多いと思います。そんななか、「脳は老化なんかしない。きちんと鍛えれば100歳でも成長する」と説くのは医学博士で「脳の学校」代表の加藤俊徳先生。加藤先生の『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)が27万部突破の大ベストセラーとなり、“第2次脳トレブーム”が到来しました。脳を8つの番地(エリア)に分け、それぞれが自分の足りない部分を鍛えれば脳はいくらでも成長するという考え方で、思考系/感情系/運動系/聴覚系/視覚系/伝達系/理解系/記憶系の8番地に分かれます。いわゆるパズルや数式を解く従来の脳トレとは違い、「植物に話しかけてみる(感情系)」「利き手と反対の手で歯みがきをする(運動系)」など日常ですぐにできるお手軽脳トレメニューになっていて、それも大変ウケています。そこで今回は加藤先生に、「ラーメン屋でできる簡単な脳トレメニュー」を伺ってみました。ラーメンを食べながら脳トレができるなんて夢のよう!早速見ていきましょう。■1:店主さんに話しかけてみるラーメン屋さんに行っても無言でお店に入って、「ごちそうさま」もなくお店を出て行くお客さんが多く見られます。なんだか寂しいなと思いますが、店主さんに話しかけるのも伝達系脳番地を鍛える脳トレになるんだそう。「どうやって顔をおぼえてもらうか?」とか「おいしい食べ方を聞いてみよう」とか、いろいろ考えて話しかけてみては? ただし、店主さんが忙しそうなときは遠慮するようにしましょう。■2:あえて店主さんの目の前に座ってみるカウンターが空いているとどうしても端っこの方に座ってしまうものですが、たまには店主さんの目の前に座ってみましょう。プロの人がどうやってつくっているか、じっくりと見てみると観察力がつき、視覚系脳番地が鍛えられます。「この店、どんぶりを温めているな」とか「味玉をヒモで切っている!」とかいろいろ発見があって楽しいですよ!■3:トッピングを工夫してみるラーメンを自分好みの味にアレンジするのも、いい脳トレメニュー。理解系/思考系脳番地が鍛えられます。はじめはもちろんそのまま食べていただきたいですが、途中で「味変」してみるのもラーメンの楽しみ方のひとつ。横浜家系ラーメンではニンニクに豆板醤にお酢、博多ラーメンには紅ショウガにニンニク、辛子高菜など、定番の卓上トッピングもおなじみですね。ただし入れ過ぎは、味が壊れてしまう場合があるので注意してくださいね。■4:食券機でちょうど1,000円にしてみる食券機で買うときに、ちょうど1,000円になるように計算する脳トレ。思考系脳番地が鍛えられます。加藤先生も昔、アメリカでお金がなかったころ、1日ちょうど10ドルで過ごす工夫をされていたそうです。*脳トレと聞くとなんだかハードルが高そうですが、身近にできる脳トレって意外とたくさんあるんですね。脳の老化が気になる方は、ぜひ試してみてください!(文/ラーメンミュージシャン・井手隊長) 【取材協力】※加藤俊徳・・・発達脳科学・脳機能生理学・脳画像MRI・脳機能計測の専門家。小児科専門医。医学博士。株式会社脳の学校(KATOBRAIN Co.,Ltd.)の創業者。現在は、ヒトの脳研究者、医師として活動する傍ら、脳の学校の代表を務め、MRI脳個性鑑定、おとなと子どもの発達障害の診断と支援サービス、脳科学研究の支援事業、脳科学情報の提供、脳商品開発事業に従事している。『脳の強化書』シリーズほか、著書多数。 【参考】※脳の学校※加藤俊徳(2010)『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』あさ出版
2016年04月25日35歳を超えてからの初産を高齢出産と言いますが、日本では晩婚化の影響により高齢出産をする人が増えてきています。そんなママたちを不安にさせるのが、高齢出産による胎児や母体へのリスク。ママであれば、妊娠高血圧症候群や糖尿病にかかる確率が上がり、胎児であれば、流産やダウン症の確率が上がってしまいます。それでも過酷な条件を乗り越えて高齢出産をしたママには、思わず敬意を感じずにはいられません。そんな高齢出産ママは芸能界にも数多く存在し、中には50代で出産して世の女性に希望を与えた人もいます。そこで今回は、パピマミ読者のママに「高齢出産を頑張った」と思う女性芸能人について聞いてみました!●「高齢出産を頑張った」と思う女性芸能人は誰ですか?※名前横の()内は第1子出産時の年齢・1位:ジャガー横田(45歳)……39%(131人)・2位:坂上みき(53歳)……37%(126人)・3位:兵藤ゆき(46歳)……8%(27人)・4位:田中美佐子(43歳)……5%(18人)・5位:はしのえみ(41歳)……5%(17人)・同率6位:杉山愛(40歳)……2%(7人)・同率6位:松嶋尚美(40歳)……2%(7人)・8位:膳場貴子(40歳)……1%(3人)・9位:北陽・伊藤さおり(40歳)……1%(2人)・同率10位:落合信子(42歳)……0%(1人)・同率10位:NOKKO(42歳)……0%(1人)※11位以下は省略※有効回答者数:340人/集計期間:2016年4月14日〜2016年4月18日(パピマミ調べ)●1位:ジャガー横田(45歳)第1位はこの人!『ジャガー横田(45歳)』さんで39%(131人)となりました。『なんだろう、年齢もそうだしあのキャラもあってか、すごい感動した記憶があります』(30代ママ)『ジャガーさんはあまり美人とはいえないけど、医者の旦那を掴まえて高齢出産も乗り切った。多くの不妊女性に希望を与えた と思う』(40代ママ)女子プロレスラーとして現在でも活躍しているジャガー横田さんですが、2004年には医師である木下博勝さんと結婚して話題を呼びました。結婚当時43歳という年齢であることから、夫婦で一緒に不妊治療を行っていたと言います。しかし、不妊治療をしていく中でストレスがたまり体調を崩すように……。その後ジャガーさんは不妊治療を諦めてしまうのですが、なんとやめた途端に自然妊娠に成功。妊娠確率は3〜4%と言われていたことから、ほとんど奇跡的な確率 です。妊娠してからも子どもへのリスクが心配だったそうですが、45歳のときに無事子どもを出産。54歳となった今でも現役プロレスラーとして活躍しながら、子育てに励んでいます。見た目に違わず、タフでかっこいいママとして多くの女性に勇気を与え続けていますね。●2位:坂上みき(53歳)第2位は驚異の超高齢出産を成功させたこの人!『坂上みき(53歳)』さんで37%(126人)となりました。『私自身、不妊治療をしている者ですが、坂上さんの50代での妊娠にはとても勇気をもらいました 』(40代ママ)『本当に、純粋に「よく頑張った!」という言葉しか出てこない』(30代ママ)ラジオパーソナリティとして活躍している坂上みきさんですが、2006年に12歳年下のニュージーランド人男性と結婚しました。その後6年間にも及ぶ不妊治療の末、なんと53歳で妊娠に成功したことが判明しました。これには多くの人が驚きましたが、「大丈夫だろうか……」という不安の声も同様に飛び交っていました。しかし、そんな周囲の不安とは裏腹に、2012年9月10日に無事男児を出産しました。この奇跡とも言える超高齢出産に、多くの人が「日本中の高齢出産ママの希望」 と賞賛。実際に坂上さんの高齢出産に勇気をもらって不妊治療を始めたという人もいるようです。坂上さんの53歳という年齢での出産は、自分の子どもだけではなく、世の女性への希望も一緒に産み落としたのかもしれませんね。●3位:兵藤ゆき(46歳)第3位は『兵藤ゆき(46歳)』さんで、8%(27人)となりました。『芸能人の高齢出産といったら、この人ってくらい昔は有名だった。今と比べて医療も発達していない中、よく出産できたと思う』(50代ママ)兵藤ゆきさんといえば、1980年代にバラエティ番組などを中心に活躍し、現在でもラジオパーソナリティとして知られるパワフルな女性というイメージがありますね。そんな兵藤さんは1996年にミュージシャンの文田博資さんと結婚、その2年後の1998年に46歳という高齢で長男を出産しました。今でこそ芸能人の高齢出産は当たり前のようになっていますが、当時はとても珍しかったようです 。64歳になった今でも元気に活躍している姿を見ると、このパワフルさが高齢出産成功の秘訣だったのかな、と思ってしまいますね。----------いかがでしたか?高齢出産にはさまざまなリスクが伴うため、不安に思う女性も少なくないと思います。しかし、芸能界には高齢出産をした人が数多く存在し、皆さん不妊治療などの努力をしています。もしも子どもを産みたいのに、「高齢出産だからどうせムリ……」と諦めてしまっている方は、一度不妊治療を行っている病院へ相談に行くのもいいかもしれませんよ。【参考リンク】・【アンケート結果(1位〜12位)】「高齢出産を頑張った」と思う女性芸能人は誰ですか?()(文/パピマミ編集部・上地)
2016年04月24日現在、高齢者の貧困問題がさかんに報道されています。生活保護の受給者数が過去最高を更新し、高齢者世帯の生活保護受給数も増加。厚生労働省の発表によれば、平成27年12月に生活保護を受給した世帯の49.6%が、高齢者世帯となっているのです。また年金だけでは暮らせず、生活保護を受給する高齢者が増加していることも話題になっています。そこで高齢者の生活保護実態について、横浜市健康福祉局・生活支援課の大井担当課長にお話を伺ってみました。■60歳以上で生活保護を受給する人は107%も増加横浜市の平成24年から平成27年度までの生活保護受給者数は、全体で103.6%の増加となっています。しかし60歳以上では107%の増加、そして60歳以上で老齢年金を受け取りながら生活保護を受給する人は122.7%の増加だそうです。老齢年金受給者は、老齢基礎年金のみ、基礎年金と厚生老齢年金、(旧)老齢年金の受給者の合計です。障害年金や遺族年金などは除いています。横浜市のデータでもわかるとおり、年金だけでは生活できず、生活保護に頼る高齢者が増えているのです。理由としては、「貯蓄がない」「持ち家などの資産形成ができなかった」「親族からの援助が望めない」などが挙げられるといいます。たとえば、70代のひとり暮らし女性の場合。家賃が5万円で、生活費を含めて毎月13万円が必要だと仮定します。これまでは年金6万5千円、アルバイト収入6万円、息子からの仕送り1万円の計13万5千円でギリギリ生活できていました。しかし仕事をするのが困難になり、収入がゼロに。息子からの仕送り額も増やせず、貯金もなければ、自力では生活できなくなり、足りない分を生活保護に頼らざるを得ない事態になるわけです。生活保護費は、地域や世帯の状況によって異なりますが、生活保護の基準となる最低生活費から、収入(年金や親族からの援助等)を差し引いた差額が支給されます。上記のケースの場合は、最低生活費から、年金6万5千円と仕送り1万円を引いた額が支給されるのです。■国民年金の40年間納付だけだと老後の生活が厳しいずっと正社員で働き、厚生年金にも加入している場合は、年金受給額も少なくありません。一方、自営業やフリーランスの人など国民年金だけの場合は、40年間納付したとしても、支給額は月6万5千円程度。国民年金だけを頼りに生活していくのは厳しいのです。年金をもらいながらでも働くことは可能です。しかし継続雇用で65歳まで働けたとしても、その後の職探しは簡単ではありません。現在、65歳以降も働きたい人が増えているようです。平成27年4月には、経済的に困っている人に、自立に向けた人的な支援を行う「生活困窮者自立支援制度」がスタート。横浜市の相談窓口には、高齢者からの相談も多いといいます。年金だけでは不十分、体が丈夫なうちは働きたいと希望する人が多いそうです。就労支援の他に、家計管理の支援も行っていて、とても好評だと聞いています。■公的な年金以外に個人年金や不動産購入を検討すべし仕事が見つかったとしても、いつまで元気で働けるかはわからないもの。老後破産を防ぐには、早めの備えが必要です。大切なのは、いまから老後の資金形成を行うこと。公的な年金をきちんと納めつつ、個人年金保険への加入や不動産の購入、個人事業主なら国民年金基金への加入もいいかもしれません。持ち家があれば、毎月の家賃の支払いがないため、年金と貯金で生活していける可能性があります。また、リバースモーゲージを利用する手もあるでしょう。リバースモーゲージとは、持ち家を担保にして生活資金の融資を受け、死亡した時点で自宅を処分して一括返済すること。つまり、自宅を死後売る約束を生前に結び、先にお金を受け取ることができるのです。*老後を年金や貯蓄などで無理なく暮らしていければ、それに越したことはありません。ですが将来、生活できないほど困窮状況になる可能性もあるわけです。不正受給問題などのニュースから、生活保護に悪いイメージを持つ人は多いもの。しかし生活保護は、最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度です。本当に生活に困ったときには、その選択肢があることも頭に入れておきたいですね。そして老後はまだまだ先のことだと思わず、情報を集め、老後資金の準備を始めていきましょう。(文/椎名恵麻) 【取材協力】※生活支援課-横浜市健康福祉局 【参考】※第1回~第4回被保護者調査集計結果(平成24年度~平成27年度)-横浜市健康福祉局保護課※被保護者調査(平成27年12月分概数)-厚生労働省
2016年03月24日日本の高齢化は加速の一途をたどっています。増える高齢者、減っていく新生児。根本的な改革が必要であると同時に、激増する高齢者のケアも忘れてはなりません。今回は大切なケアのひとつである睡眠にスポットを当てます。日本は“超”高齢社会現在、ひとり暮らしの高齢者数は年々増加傾向にあります。内閣府が発表している調査結果によると、65歳以上のひとり暮らしは1980年で約88万人、2000年で約303万人、現在は推定約600万人で、2035年には約762万人にまで増えるといわれています。35年間で7倍弱、55年間で約8.5倍にまで膨れ上がる数値が、日本が“超”高齢社会であることを如実に表しています。それに伴い、孤独死や彼らからのSOSが周囲に届かないことなどが社会問題として取り上げられることも増えました。最近では、高齢者を見守るサービスなど地域ぐるみで対策を取っている自治体も現れています。今後どのようにケアをしていくかが、日本が抱える大きな課題であることに間違いありません。自分では気付かない睡眠障害睡眠に関する問題も、この“超”高齢社会と関係があります。高齢になると睡眠の質が低下するので、不眠で悩む人や睡眠障害で苦しむ人が増えるといわれているのです。でも、ひとり暮らしの場合は「自分が睡眠障害である」と気付かないこともあります。たとえば、「睡眠時無呼吸症候群」という夜中に呼吸が一時的に停止する睡眠障害は、自分では気付きにくいといわれています。朝起きたときに熟睡感がなかったり、疲れていたりしても、まったく眠れなかったわけではない場合、まさか睡眠中に呼吸が止まっているなんて、考えないのが普通かもしれません。ひとり暮らしでも睡眠時無呼吸症候群に気付ける方法はあるのでしょうか?体は何らかのサインを出している!通常、睡眠時間と体や脳の疲労回復にはある程度の相関関係があります。もちろん個人差はあるものの、過去の自分のデータと照らし合わせて「毎日、7時間寝ているのに、こんなに日中に眠くなるのはおかしい」と思ったら、それは睡眠障害のひとつのサインです。つまり、睡眠時間と体調に矛盾する点が見つかったら、睡眠障害を疑い、早めに医師に相談するなど対処する必要があります。たかが睡眠と放っておいてはいけません。睡眠時無呼吸症候群は血液中に酸素不足の状態が続くことで、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高める可能性があるのですから。そのサインは体が何らかの形で発信しているということを、特にひとり暮らしの方は覚えておくとよいでしょう。photo by pixabay
2016年03月04日NHKは2月20日、「私たちのこれから Our future #超少子化」と題したNHKスペシャルを放送した。番組では日本におけるこれまでの少子化対策、それに海外や地方自治体の先進的な事例を紹介。「保育園義務教育化」を主張している社会学者の古市憲寿さんなど8人の論客と一般参加者が「少子化」をテーマに議論した。○"若者の草食化"で総括できる問題ではない番組でははじめに、日本における合計特殊出生率の変遷について紹介。第1次ベビーブーム期にあたる1949年には4.32%だった出生率が、1989年には1.57%に減少している。これは「1.57ショック」と呼ばれ、国は当時から「女性の社会進出が進む中、仕事と育児を両立できる環境が不十分」な点をその原因と分析していたが、具体的な対策は打たれなかったという。その後、経済状況の悪化から非正規労働者が増え、結婚しない若者も増加。男性の非正規雇用が与える少子化への影響が叫ばれていたが、「大きな課題になっていかなかった」と分析されている。2005年の出生率は1.26%まで低下。このまま少子高齢化が進めば、2.3人の労働者が1人の高齢者を支える現在の状況はさらに悪化し、2040年には1.5人の労働者で1人の高齢者を支えなければならなくなってしまうと警鐘を鳴らした。議論に参加していた67歳の一般男性は、少子化の一因とされている未婚率の高さについて「男の男らしさがなくなり、優しさばっかりで、なんとかしようという気概がない」と、その理由を分析。これに対し社会学者の古市憲寿さんは、「若者の草食化と言われがちだが、そこだけじゃない。社会的、経済的な事情で結婚・出産に踏み切れないという人は多いと思う」と主張した。また家族社会学を専門としている中京大学の松田茂樹 教授は、「結婚や子育てはある程度の負担がかかる。しかしそれだけ負担をかけても、報いるものが少なくなってきたというのが現在。子どもを多くうみ育てたほうが、経済的にも非経済的にもよくなっていくというのがない社会であるというのが、通底する問題だと思います」と述べた。○「子育て支援税」があってもいい次に紹介されたのが、近年めざましい出生率の回復を果たしたフランスの家族政策だ。番組によれば、子どもをうめばうむほど、その家庭の減税額は増えていき、子どもが20歳になるまでの減税額は1人で600万円、2人で1,900万円、3人では3,900万円にのぼるという。さらに出産手当、基礎手当、新学期手当などの行政による補助も豊富で、2人目以降は家族手当と呼ばれる補助も新たに追加される。これについて、日本総研の池本美香 主任研究員は、「多く子どもがうまれても、離婚したり仕事を失ったりしても、国がお金を出してくれるという安心感がある。国民が"全ての子どもには平等に育つ権利がある"ということに合意しているからだ」と述べた。続けて番組では、出生率2.81%を達成した岡山県奈義町の取り組みにも触れ、医療費、保育料、住宅支援など、同町の幅広い子育て支援が功を奏したと解説した。議論は、「もし国全体でこのような政策を行う場合、国民がどれだけ負担を許容できるか」というテーマに発展。松田教授は「子育て世帯だけでなく、シニアにも同じように負担していただく"子育て支援税"があってもいい。世論の合意は不可能ではないと思う」と主張した。これに対し、政策研究大学院大学の松谷明彦 名誉教授は「国民的なコンセンサスが得られるかどうか疑問だ」と指摘。一方、古市さんは日本の社会保障のあり方を、義務教育の年齢を下げ、幼児教育を充実させる「事前配分」に変えるべきだと提案した。「事前配分」とは、格差がうまれる前の子どものうちに、国民から集めたお金やサービスを配分しようという考え方。現在の政府の施策は、低所得者や生活保護者に対しての補助など、大人になってからうまれた格差を埋めるための支援が中心だ。古市さんによれば、「事前配分の方が社会にとってお得」で、例えばアメリカで行われた研究では、貧困家庭の子どもに教育を施すと、将来一定以上の収入を得る人が増え、より多くの税金が納められることが証明されているという。このあと「少子化対策に新たな負担はあり? なし?」というテーマで、視聴者を対象としたデジタル放送上の投票が行われたが、「あり」と回答した人は82.6%にのぼった。○仕事、家事、出産育児、介護を全部やるのは無理番組のタイトルにハッシュタグが付けられていることもあり、Twitter上ではさまざまな意見が寄せられた。「子どもは家族が育てるものではなく国家で育てるもの」「高齢者にわたっているお金を子育て世帯にまわすべき」「妊娠、出産、育児の費用がかかりすぎでそれを補う施策は絶対に必要」といったように、子どもに対する施策により多くの税金を使ってもいいのでは、という声が多かった。加えて「現金給付ではなくて、教育の無償化をすべき」「共働き前提の社会にするなら保育園を増やすべき」など、その使い道に対しても議論があった。さらに子育て中の親からは、「女性の社会進出と同じくらい男性が家庭進出すればいい」「社会進出、家事、出産・育児、親の介護を女性に全部やれというのは無理」「保育園にも入れず、夫も育児に参加できず、仕事しながら子育てなんてできない」といったような、現状の苦しさを訴える声もあがった。番組の最後では論客の多くが、"育児を社会で支えていく"という考えの大切さを訴えていた。少子化対策は待ったなし。国や社会全体の本気度が試されているようだ。※写真と本文は関係ありません
2016年02月22日先進国はアメリカをのぞいて、人口減少と少子化に苦しんでいます。少子化だけで考えても、平成25年の日本における合計特殊出生率は1.43、2012年のデータでは、ドイツは1.38、アメリカは1.88という状況です。国際経済評論家の長谷川慶太郎さんとジャーナリストの田原総一郎さんが、オリンピックイヤーの日本社会を予言した『2020年世界はこうなる』(SBクリエイティブ)では、出生率改善のために、子育てにまつわる優遇制度を手厚くするべきだと論じています。子育てしやすい社会のため、保育園数の確保は必要不可欠。そのためには保育士の給料の改善と、保育士および介護士にロボットを大量投入して財政資金で補助するという、驚きのアイデアも提案されています。さらに未婚者の増加について、「国から結婚お祝い金を出すべきだ」という話も飛び出しますが、それもまったくトンデモない話ではないかもしれません。ところで日本が効果的な少子化対策をできずにいる一方、50年かけて人口が増加した国があります。それはフランス。なぜフランスは自然の人口増加が達成できたのでしょうか。著者のひとり、長谷川慶太郎さんに伺いました。■フランスの2人目が産みたくなる制度とはそもそも、フランスが少子化対策に力を入れた理由とはなんだったのでしょうか。長谷川さんによると、「フランス政府は1930年代、ドイツとの対抗上、人口増加政策を導入しなければならないという政治判断に至り、育児奨励策を導入しました。戦後はその伝統を一段と発展させるべく一連の制度を確立する努力を重ねて今日に至っています。同国の出生率は2008年に2.01となった後、現在まで2を維持しています。政府が国民に対して手厚くきめの細かい家族手当を実施していることが、その理由です」とのこと。つまり、フランスは「ドイツに負けたくない」精神が出生率増加につながったのです。また、フランスは家族手当の制度が充実しており、その数は30種類以上あります。それも出生率増加に大きく関係しています。「第2子以降は所得制限なしで20歳になるまで家族手当を給付するほか、子どもが3歳になるまで育児休暇か、労働時間の短縮が認められ、第2子の育児休業手当は3歳まで受給されます。さらに、ベビーシッターを利用する際には補助金も支給されるのです。この政策は、2人目の子どもを産むかどうかで、強烈なインパクトをもたらしたのではないかと思います。日本でも同様な政策が講じられれば、出生率は上昇するのではないでしょうか」(長谷川さん)日本の児童手当の制度は1971年にスタートしましたが、フランスの家族手当は1932年にスタート。支給額や支給期間も、日本とはくらべものにならないぐらい充実しています。現在のフランスの高出生率を支えているのが、この家族手当なのです。家族手当は20歳未満の児童は第二子から支給され、123ユーロ、第三子は158ユーロ、そしてさらに11歳以上の子に対して34ユーロ、16歳以上の子に対して61ユーロの加算があります。しかも所得制限はなく、どのような収入の人にも無条件で支給されるのです。■育休期間短縮の代わりに給料5割アップ!日本では1人目を出産しても、保育園や職場復帰の問題で、2人目出産を躊躇する「2人目の壁」が存在するといわれています。一方、フランスでは育休制度も充実しており、子どもが3歳になるまで取得することが可能。親が終日休む育児休業と、労働時間を短縮する時短勤務のどちらかを選ぶことができます。また第三子については休業時間を1年に短縮するかわりに、賃金制度を5割増しにする制度が導入されました。手厚い給付と並んで、柔軟な休業制度がフランスの家族政策の特徴となっています。さらにフランスには、子どもを大切にする文化があります。チケット売り場やレジなどでどんなに長い行列ができていても、子連れは先頭にまわしてもらえるのです。公共交通機関では小さな子どもを連れている場合、席を譲ってもらえることがほとんど。手厚い政策だけでなく、国民の間に誰に強制されたわけでもない子供を優先してあげる文化が根づいているため、多くの人が「子どもを産んでみよう」「この国で育ててみよう」と思えるのです。人口を国力と考え、公立保育園も午前8時半から午後4時半まで、無料で預かってくれます。保育アシスタントも利用されており、3歳未満の子どもを自宅で預かってくれる制度があります。保育料は年間1万ユーロかかりますが、こちらも公的な補助を受けることができます。そして、文化面で見てみると、シングルマザーや事実婚の許容など、多様な家族のあり方が認められています。未婚の母も多く、いろいろな価値観が浸透しているのです。多様な家族のあり方を許容しているからこそ、子どもを産みたいと思った時にすぐ産める環境が整っている、といえるでしょう。*日本でも徐々にステップファミリーが増えてきており、多様な家族のあり方が浸透してきました。2020年には、日本もフランスのような家族のあり方が増えてくるかもしれません。長谷川さんは『2020年世界はこうなる』のなかで、日本以外の国についても今後どうなるのかを予測しています。世界の将来が気になるかたは、必読です。(文/渡邉ハム太郎)【取材協力】※長谷川慶太郎・・・国際エコノミスト。1927年京都生まれ。1953年大阪大学工学部卒業。新聞記者、雑誌編集者、証券アナリストを経て、1963年に独立。1983年に出版した『世界が日本を見倣う日』(東洋経済新報社)で、第3回石橋湛山賞を受賞した。【参考】※長谷川慶太郎・田原総一郎(2015)『2020年世界はこうなる』SBクリエイティブ※人口動態統計-厚生労働省※平成26年版少子化社会対策白書-内閣府※パパの育児休暇69%がとれたら嬉しい-1 more baby応援団
2016年02月11日東京国際空港ターミナル(TIAT)、日本空港ビルデング(JAT)、日本電信電話(NTT)、パナソニックは12月3日より、世界初の情報ユニバーサルデザイン高度化の共同実験を国際線旅客ターミナルで開始した。同実験は、2020年に向けて訪日外国人の増加や少子高齢化のさらなる進展が想定される中、最先端情報技術の活用により安心・便利にサポートしていくことを目指したもの。訪日外国人や車いす・ベビーカー使用者にとっても便利なユニバーサルデザイン、そして、「音」「光」「画像」「無線」等による最先端情報技術を活用したデザインとなっている。「情報ユニバーサルデザイン高度化」の共同実験は12月3日~2016年3月31日にかけて、羽田空港国際線・国内線旅客ターミナルにて実施。実験内容として、NTTは画像解析技術を用いたかざすUIによる情報提供、ビッグデータ解析技術を用いた動的サインによる人流誘導、音声処理技術による音サインの明瞭化を行う。パナソニックは、光ID技術を使用した商業エリアなどの空港施設の認知検証、Bluetoothビーコンを使用した施設案内誘導検証を実施する。NTTのUIによる情報提供の実験では、直感的な動作だけで有益な情報を容易に取得できる技術の確立を目指し、NTTが開発した「アングルフリー物体検索技術」を利用。到着ロビーの看板・案内板や商業エリアの店舗建物や料理サンプル・商品に、スマートフォンのカメラを向けるだけで適切かつ有用な情報を得られるというUXの有用性を評価するとともに、実フィールドでの画像認識精度向上とサービス化に向けた課題の抽出に取り組んでいく。NTTのビッグデータ解析技術を用いた動的サインによる人流誘導実験では、変化する混雑状況を先読みし、動的に案内サインを変化させることによって施設内での混雑を回避し、最適な人の流れ(人流)の誘導の実現を目指す。到着ロビーや出国口等の人の滞留が発生しやすいカ所において動的な案内サインを提供することで、最適な表現(表記、色彩、タイミングなど)についての知見獲得を図るほか、従来は音声アナウンスで対応しているシーン(緊急案内など)に示す情報を視覚化することで、聴覚障がい者などへの情報提示手法としての有効性についても確認していく。NTTの音声処理技術による音サインの明瞭化実験では、周囲に雑音があっても聞き取りやすい音声で案内を行うとともに、音サインの音声自体が周囲に対しての騒音とならないよう環境に配慮された「インテリジェント音サイン」を使用。空港内の音サインを対象に視覚障がい者への被験者実験を行い、実際の被験者の体感ヒアリングや行動測定により、実用化に向けた課題を明確化していく。パナソニックの光ID技術を使用した実験では、空港施設内に光ID対応の案内看板を設置し、看板付近を通過する障がい者や外国人などの空港利用者に対して光ID看板にスマートフォンをかざすことにより多言語での店舗情報を取得し、商業エリアの認知の効果が得られることを被験者実験により検証する。パナソニックのBluetoothビーコンを使用した実験では、羽田空港内の商業エリアに指向性ビーコンを設置し、バリアフリーナビゲーションアプリを使用して目的地までの誘導がスムーズに行えるかを検証する。また、利用者の動線情報を分析することで、今後、障がい者や外国人などをターゲットにした業務改善用途やマーケティング用途などで指向性ビーコンを活用していくための技術的な課題を明確にしていく。TIAT、JAT、NTT、パナソニックの4社は、11月26日に設立された「空港における情報 UD 検討委員会」に参画し、情報ユニバーサルデザイン高度化を推進。4社は空港旅客ターミナルが求められていることと、その解決・実現に向けた最先端技術を持ち寄り、羽田空港国際線・国内線旅客ターミナルにおいて実証実験を行うことによって、技術の有効性の検証と導入に向けた課題の明確化をしていくという。
2015年12月07日高度成長期と比べて、日本は大きく変化してきた。少子高齢化時代となり、年金や医療費が高騰するなど、財政状態が危機的な状況となっている。また、企業の年功序列制度は崩壊しつつあり、経営自体も持続的な成長が難しい状況だ。このような状況下で、夫婦共働きは当たり前の時代となっており、これまでの日本の働き方では、さまざまなひずみが生まれてきている。こうしたさまざまな問題を抱える日本で、これからどのような働き方をしていけばよいのだろうか? 11月6日に開催された「cybozu.comカンファレンス2015」で、サイボウズ 社長室 フェローの野水克也氏は、これからのワークスタイルについて講演を行った。○なぜワークスタイルの見直しが必要なのか?まず、野水氏は"いい会社"の定義を3つ挙げた。1つめは、持続的に成長している会社。2つめは、働き続けたいと社員が思える会社。3つめは、地域や業界の模範となる会社。この"いい会社"になるためには、3つの要素が必要だという。要素の1つめは、オンリーワンであること。2つめは、働く社員が幸せな環境が整っていること。3つめは、社員が自発的に働いていること。これらの3つの要素を支えるものが、チームワークとなってくるという。野水氏は、現在の日本が抱える課題について次のように指摘した。「もはや日本は、儲けるモデルが変わってきている。昔は同じ価値観の人たちに同じ行動をさせ、長時間労働をさせればよかったが、これは低所得時代の働き方。若い人材が不足し、低所得でもない今の日本では、付加価値で勝負しなければいけない。しかし、『皆で同じ視点で、同じことをやろう』という姿勢のまま『個性を出せ』と言っており、矛盾が生じている。皆で同じことを一斉にやるチームワークは日本のよいところではあったが、もはや限界だ」(野水氏)○クラウドが実現するチームワーク野水氏は、これからのチームワークのつくり方について、クラウドの活用を推奨する。「クラウドを使えば、情報を共有することができ、労働を分配することもできる。また、いつでもどこでも取引することができる。これによって、日本が抱える課題を解決することができる」(野水氏)「ITが発達する前の時代では、働き方が固定化されるさまざまな障害があった」と野水氏は述べる。例として、朝の出勤が挙げられた。「いつでもどこでも仕事ができれば、朝9時に皆が会社へ出勤する必要はないはず。全員が朝9時に出社することによって、電車の本数などにも無駄が生じている」また、人材活用の面での課題にも触れられた。フルタイマーは知識労働者、パートタイム労働は単純労働、といった概念がつくられていることに対し、「1日3時間だけ働く有能な人を見たことがない。しかしそれは、3時間の労働時間に、有能な仕事が与えられていないことが課題。スキルの高さと働ける稼働時間には関係ない」と野水氏は語る。そして、年功序列制度の"最大の弊害"として、野水氏は「一度落ちたら上がれないこと」と指摘した。「一度会社をやめたりすると元のランクに戻れなくなるから、無理をして働き続ける。これが自殺につながっている。これからは夫婦交代交代で働いていけばよいのではないか? そうすることによって、成長しながら収入を確保していく道が開けていく」(野水氏)では、どうすればそのような働き方ができるのか? サイボウズでは、自分の働き方について選択できるようになっているという。クラウドで業務の見える化を行い、年間計画で誰がどのくらい働くのかを決めていく。また、クラウドでコミュニケーションが取れることから、場所や時間を選ばない働き方ができるようになっている。さらに、育児休暇・介護休暇が6年ずつ取得できる。"育自分休暇"という自分に対して取得できる制度も用意されている。「当社の社長は『ワークスタイルはスキルではなく、覚悟。決意すれば誰でもできる』と話している。やるかやらないか。ただし、チームワークでカバーする仕組みが重要。ワークスタイルの改革とは、会社のチームワークをリデザインすることだ」(野水氏)
2015年11月17日高齢出産をすると、周りのママの年齢が気になってくる。でも、東京だとアラフォーママもそこそこいて自分の年齢を気にすることも忘れてしまうくらい。それが夫の地元に帰ると事情は違って……。イラスト: まろ子
2015年10月21日健康保険組合連合会はこのほど、健康保険制度についての理解や認識の度合いをはかるべく、「健康保険に関する調査」を実施し、その結果を発表した。それによると、少子高齢化の進行による高齢者医療費を支える健康保険料の負担や、日本の健康保険制度への不安を強く感じている人が多いという現状が浮かび上がったという。まず、健康保険料についての印象を尋ねたところ、最も多かったのが「健康保険料は高いと思う」の69.6%(「そう思う」「ややそう思う」の合算。以下同様)で、次いで「最近、毎年健康保険料が増え続けている気がする」が63.1%。一方、「勝手に天引きされる(控除)から気にしても仕方ない」という人も4人に1人程度(25.3%)存在していた。続いて、日本の健康保険制度についての印象を尋ねたところ、「高齢化による医療費の増大を考えると、将来的に制度が維持できるか不安」が80.8%、「将来、自分も制度の恩恵を受けられるか不安」が74.9%と、不安に感じる人が多いようだ。少子高齢化については、「少ない人数で高齢者を支えられるか心配」が88.7%、「漠然と将来に不安を感じる」が87.4%と、9割近い人が不安に感じていることがわかった。一方で、高齢化により影響を受ける健康保険制度について、全体では70%以上(「関心がある」「やや関心がある」の合算。以下、同様)が関心を示しているものの、20代・30代では60%前後となり、若い世代ほど関心が低いことが判明した。同調査は、9月に全国の20~70代の男女を対象とし、性別ごと年齢階層別にスクリーニング調査で抽出して実施。各カテゴリの設定数を100人とし(年齢階層ごとに男性100人、女性100人)、合計1,200人を回収した。集計の際は、日本の性別・年代の人口推計比率に応じたウェイトバック集計を行っている。
2015年10月19日格差社会・少子高齢化・不確実性の時代…など、不安をあおる言葉ばかりが飛び交っていますが、これからの時代は本当にマイナス面ばかりで、若い世代にとっての利点は全くないのでしょうか。また、時代に見合った資産形成はどうすればよいのでしょうか。この連載では、夫婦の財産はどう分配すればよいか、いわゆる「おひとりさま」の人生はどう備えていけば安心かなど、時代に応じた資産形成・サバイバル方法などについて考えていきます。○運用の価値時間とは - 投資は早めに着手が成功のもと運用の価値時間とは、利益を生んでくれる時間=年数のことです。下記の図を見るとAさんは就職した年からコツコツと年間20万円貯蓄し、4%で運用し、33歳までそれを継続します。その後貯蓄は中止し、33歳時の資金をそのまま65歳まで4%で運用し続けると、65歳で約1,000万円の資産が手に入ります。33歳から65歳までの時間が利益を生み続けてくれます。一方Bさんは37歳から同様の貯蓄と運用を開始し、65歳まで継続すると同じく約1,000万円の資産が手に入ります。しかしAさんの貯蓄期間は12年なのに対してBさんは29年と2倍以上の開きがあります。AさんはBさんの半分以下の金額の投資で65歳時にほぼ同額の金額を手にするのです。4%の利回りは現状かなり難しいかもしれませんが、Aさんの例で考えると、まだ若く、親も現役で仕事をしている年齢で、冒険も可能です。安定した貯蓄と利回りの高い投資の配分を考えてチャレンジする事が可能な年齢です。34歳からも同額の貯蓄を継続すれば、65歳までの総額は利子分を考慮しなくても20万円×31年=620万円となり、あわせて約1,600円以上の老後の資金が得られます。一方Bさんが貯蓄する年代は子供の教育資金も必要で、その後は自分たちの老後の資金の準備をしなければなりません。リスクの高い投資は難しい年齢です。つまり利回り高の如何にかかわらず、若い頃からの投資が重要な事がわかります。表の方は運用率を3%にしたものです。Aさんは65歳に1,000万円受け取るために積立期間を15年にしています。○無駄を省いた分で投資の資金を - 節約と運用は表裏一体で!運用の価値時間の事例の年間20万円を利回りの高い運用先に投資するのはリスクが大きいと感じるかもしれません。しかし、知らず知らずに消費していた金額であれば、リスクが高くても問題ないはずです。例えば、街中に自動販売機はどれ程あるでしょうか。私が住んでいる場所は駅近くなので数10mごとにある気がします。それだけ利用されているということでしょう。下記の表のように毎日1本消費すると、22歳から65歳まで200万円にもなります。飲んだつもりになって貯蓄すると運用次第ではびっくりする金額になります。タバコ代は禁煙すればさらに格好の投資資源となります。毎日1箱消費すると65歳までに700万円も使うことになります。ペットボトル飲料と合わせれば1,000万円近くにもなります。ペットボトル飲料の表のように3%で運用すると、65歳時には1,500万円を越える金額が手元に残るでしょう。苦労して禁煙しても、いつのまにか他の消費に消えてしまっては意味がありません。大切なことは節約した分をしっかりと貯蓄や投資などの資金に振り分けることです。ペットボトル飲料やタバコ以外にもコーヒーなど、何となく日々消費してしまっているものがいろいろあると思います。毎月決まった金額を貯蓄することをベースに、自分なりの無駄を見直しして、その分の金額を別途貯蓄してみてください。通帳などもベースの貯蓄分と別にすると良いと思います。別に分けた通帳の金額を使って利回りの良い投資先で運用するのも良いでしょう。リスクはありますが、ベースの貯蓄はしっかりしている前提ですので、消費したつもり貯蓄のご褒美に運用を試みても良いと思います。どう配分するかは人生設計次第です。○生活スタイルもフローからストックへ - 時代に見合った新しい価値観を見出す事が大切現代は消費生活が膨張しすぎています。私は住宅の仕事をしてきましたが、1人用アパートの間取りは次第に贅沢なものになってきました。私自身、就職して親から独立する時にアパートをいろいろ見てきましたが、風呂なし、トイレ共用が普通でした。中にはキッチンも共用というところもありました。部屋の広さも3畳というものもあり、4.5畳が普通、6畳は贅沢なイメージでした。私が借りたのは6畳キッチン付きで風呂やトイレはありませんでした。今は全て揃っていないと借り手はないでしょう。しかも昔のバスとトイレがセットになったタイプが敬遠され、トイレが別でないと借り手に敬遠されます。空室が増えた大家さんに建て替えた方が良いか、よく相談されました。後戻りはなかなか難しいですが、シェアハウスやルームシェアなど、新しい形の暮らし方も登場しています。使い捨てのフロー時代から長く遣い続けるストック時代への転換のために、政府はいろいろ策を凝らしてきましたが、国民の意識が変わらないと、なかなか思い通りにはいきません。物質的な豊かさから精神的な豊かさを追求して、時代に合った生活スタイルを作り上げていくのは可能だと思います。自分なりの生活スタイルを見出して、それに見合った節約や貯蓄を考えていけば、将来は明るく感じられないでしょうか。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年08月31日格差社会・少子高齢化・不確実性の時代…など、不安をあおる言葉ばかりが飛び交っていますが、これからの時代は本当にマイナス面ばかりで、若い世代にとっての利点は全くないのでしょうか。また、時代に見合った資産形成はどうすればよいのでしょうか。この連載では、夫婦の財産はどう分配すればよいか、いわゆる「おひとりさま」の人生はどう備えていけば安心かなど、時代に応じた資産形成・サバイバル方法などについて考えていきます。○なぜ政府は不安だけをあおるのか?資産形成には、前提となる人生設計が重要です。どのような人生を送りたいかによって貯蓄や投資の方法も異なります。さらに人生設計を立てる上で、社会の方向性を見極めることも大切です。格差社会・少子高齢化・不確実性の時代…など、不安をあおる言葉が氾濫していますが、これからの社会は見通しの暗い部分だけなのでしょうか。明るい見通しの部分はないのでしょうか。人生設計や資産形成は有望な部分に目を向けて行う方が有利です。しかし世に出る情報は、どちらかというとマイナス面が強調されがちです。情報は疑ってみること、元データまで遡って分析することを常日頃から心がけていく習慣をつけましょう。日常的な諸現象から「どこかおかしい!」というような感覚を研ぎすませることも大切です。例えば、少子化が問題視されていますが、それでは永遠に人口が増え続けるのがよいのでしょうか。経済が成長し続けるのが良いのでしょうか。経済成長は石油等の化石燃料が永遠に存在するという前提です。世界的に見れば人口増加による食糧問題が取りざたされ、経済成長に伴う地球環境の破壊も問題となっています。原子力に頼るとどうなるかは東日本大震災で経験済みです。そもそも、日本列島に1億3,000万人は多すぎませんか。昭和の初めは6,000万人台だったことを考えれば、「生めよ! 増やせよ!」の政治的作為が問題だったのです。少子化を問題視するだけではなく、その枷が外れて自然に調整されていっていると考えた方が正しいと思います。人口が減少するのは事実です。高齢化も同時進行しています。しかし一時的ないびつさを問題視する前に、少子化の利点はないかの検証も必要です。例えば住居費の負担は明らかに少なくなるでしょう。農林水産省が発表する日本の食糧自給率は40%です。これまた不安をあおるデータです。しかし日常的な感覚では違和感があります。私は原材料で外国産を購入することは限りなくゼロです。確かにパンや味噌、醤油といった小麦などの加工品は知らずに外国産を購入しているでしょう。外食は外国産素材の比率は高くなるでしょう。それでも40%には違和感があります。最近、自給率のデータはカロリー換算で、生産額ベースで計算すると70%だということを知りました。また曲がったきゅうりや少々のキズの野菜は捨てられています。返品や消費期限間際のものも大量に捨てられています。高級で贅沢な果物は日本のお家芸です。耕作放棄地の存在なども合わせて考えれば、70%を100%にするのはさほど難しくない気がします。ではなぜ不安をあおるデータとするのでしょうか。エネルギー問題も同様です。日本は資源が少ないといわれてきました。しかし未利用の資源が眠る排他的海洋水域の広さは世界第6位の面積です。現在ある全ての多目的ダムを水力発電にも利用し、必要に応じてダムの嵩上げをすれば、原子力発電所9基分に相当するそうです。ダムの専門家によるとそれはさほど難しくない技術だそうです。化石燃料が枯渇すれば、太陽エネルギーを利用した水力発電が可能な日本が圧倒的に有利だと思います。アメリカでは相当な勢いでバイオエタノールの生産に注力していますが、日本と違ってとうもろこしを育てるアメリカの水源は化石地下水で、石油と同様使ってしまえばおしまいなのです。以前から小規模水力発電に興味があったのですが、なぜそれが活性化しないのか発電に詳しい知人に聞いて見ると、多分に電力会社と政府の思惑という意見でした。険しい山岳地帯が多く、台風や地震などの災害の集中地帯ですが、水力発電や再生可能な水資源には恵まれているのです。○日本列島の適正人口は? - 自然エネルギーとリサイクルのみで養える人口は3000万人江戸時代以前の日本の人口は2,000万人もありませんでした。国内が統一されて安定したので、江戸時代に人口が急増し、約3,000万人になりました。しかし太平の時代が続いたにもかかわらず江戸時代の人口はほぼ一定の数値で推移しています。つまり自然エネルギーだけで生きられる人口は、江戸時代のようにかまどの灰まで再利用した徹底したリサイクル社会でも3,000万人が限度だということではないでしょうか。しかし、明治維新とともに現代の1億3000万人弱まで直線的に急上昇します。大正時代5,000万人台、昭和一桁時代は6,000万人台、昭和10年代は7,000万人台、昭和20年代は8,000万人台(出典「わが国の推計人口」-大正9年~平成12年 統計局)でした。厚生労働省の「日本の人口の推移」によると2060年には再び8,000万人台となるようです。生産年齢人口の比率が低くなる高齢化が問題ですが、実際は周囲を見回しても多くの65歳以上は働いていますので、現実的な統計値が欲しいところです。○縮小生活を楽しむ工夫 - 物質的な豊かさから精神的な豊かさへ若い世代が、将来自分たちがもらえる年金が少なく、不公平感を抱くのであれば、単純に考えれば自分たちが子供をたくさん作ればすむ問題ではないかと聞いてみると、社会的不安や低成長時代に子供を生む不安があるという答えが返ってきます。しかし、歴史を広く振り返ってみると、先々を見通せた時代なんてほとんどありません。明治維新や終戦時を考えてみれば分かります。私の双方の祖父母は都会に拠点があったために戦争で財産を全て失いました。両親はゼロからのスタートだったのです。実際に私が物心ついたときに我が家にあった電化製品はラジオだけでした。アイロンもなく、母親はコテを使っていました。コテとは鉄の棒の先が小さなアイロンの型をしていて、反対の端に木の持ち手がついていました。コテ先を火鉢の炭の中に入れて熱して使います。幼児だった私もドン引きするくらい節約した生活でした。でもそれが世間一般の普通の生活だったのではないかと思います。今思うのが、その時代の生活が再びやってきても普通に受け入れられることです。むしろそのシンプルな生活が懐かしくも思えます。自分自身を振り返ってみると、大学を卒業して親から独立したときに所有していた電化製品は冷蔵庫と実家から持参した電気スタンドとラジオだけでした。それから順々に増えていった電化製品を振り返ってみると、当時の私の人生設計が透けて見えます。次はミシンとアイロンだったと思います。ちょっとした衣服は自作していました。その次はポータブルステレオでした。「断捨離」、「ミニマリズム」という言葉が注目されています。現実は潜在的にモノにあふれすぎた生活にストレスを感じ、飽き飽きしているのではないでしょうか。大人のアトピーはベッドと机程度の何もない簡素な部屋で生活すると治るそうです。アレルギーの要因が少なくなることもその理由ですが、シンプルな暮らしがストレスを少なくする事が良い結果になるようです。少子高齢化で将来が不安であれば、今までのような物に執着する生活は見直さなくてはなりません。シェアハウスなどが人気なのは、これからの価値観を暗示しています。一昔前であれば、キッチン・風呂などが共用であれば貧乏アパートのイメージでしたが、共に暮らすことに新しい価値を見出した結果でしょう。<著者プロフィール>佐藤 章子一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。
2015年08月28日トヨタ自動車は7月16日、障害者や高齢者などの家庭内での自立生活をアシストする生活支援ロボット(HSR)の早期実用化を目指し、複数の研究機関などと連携して技術開発を推進する仕組みとして「HSR開発コミュニティ」を発足すると発表した。同社が開発しているHSRは、小回りの利く円筒型の小型・軽量ボディに格納できるアームを備えることにより、「床の上の物を拾う」「棚から物を取ってくる」などの仕事ができるロボット。2012年の発表以降、改良が重ねられており、今回、研究用として貸与を開始する新型HSRは、機能性、安全性、研究開発や実証実験における運用性などが向上しているという。新型HSRの仕様は、本体高さが1005~1350mm、重量約37kgなど。同コミュニティの加盟機関は、同社が貸与するHSRを用いて障害者や高齢者の生活支援を想定したロボットの機能向上のための技術開発を推進する。研究開発の成果はコミュニティで共有され、加盟機関が利用できるようにすることで、技術開発の加速を図っていく。トヨタは、研究開発の成果を検証する実証実験の協力先を紹介するなど、加盟機関による実証実験の推進も支援していく予定。同コミュニティはこれまでHSRの共同研究を実施してきた研究機関の数機関と共に、9月をめどに活動開始を予定している。さらに、10機関程度を公募し、2016年4月以降に規模を拡大する計画。
2015年07月17日経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織で構成される「日本健康会議」が7月10日に発足した。「日本健康会議」は、少子高齢化が急速に進展する日本において、国民の健康寿命の延伸と、医療費適正化について、行政のみならず、民間組織が連携し実効的な活動を行うために組織されている。経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織が連携し、厚生労働省・経済産業省の協力のもと、具体的な対応策を実現していくことを目的としている。発足式では、主催の日本商工会議所 会頭 三村明夫氏から、同会発足の趣旨について次のように説明があった。「人口減少、少子高齢化が進む日本において、今後は高齢者の労働参加率を上げていかなければならず、そのためには健康維持が欠かせない。企業は、従業員の健康管理を経営的な視点で考えなければいけない。健康経営は、医療の削減のみならず、生産性の向上や従業員の能力発揮につながるもので、コストと捉えずに経営戦略の一環として捉えてもらいたい」(三村氏)同会は、2020年に向けた具体的な活動指針となる「健康なまち・職場づくり宣言 2020」を策定し、達成目標を設定した8つの宣言を行った。宣言1:予防・健康づくりについて、一般住民を対象としたインセンティブを推進する自治体を800市町村以上とする。宣言2:かかりつけ医等と連携して生活習慣病の重症化予防に取り組む自治体を800市町村、広域連合を24団体以上とする。その際、糖尿病対策推進協議会等の活用を図る。宣言3:予防・健康づくりに向けて47都道府県の保険者協議会すべてが、地域と職域が連携した予防に関する活動を実施する。宣言4:健保組合等保険者と連携して健康経営に取り組む企業を500社以上とする。宣言5:協会けんぽ等保険者のサポートを得て健康宣言等に取り組む企業を1万社以上とする。宣言6:加入者自身の健康・医療情報を本人に分かりやすく提供する保険者を原則100%とする。その際、情報通信技術(ICT)等の活用を図る。宣言7:予防・健康づくりの企画・実施を提供する事業者の質・量の向上のため、認証・評価の仕組みの構築も視野に、保険者からの推薦等一定の基準を満たすヘルスケア事業者を100社以上とする。宣言8:品質確保・安定供給を国に求めつつ、すべての保険者が後発医薬品の利用勧奨など、使用割合を高める取り組みを行う。これら8つの宣言をKPIとし、目標を達成するために次のワーキンググループ(WG)を設置し、厚生労働省・経済産業省とも協力して具体的な推進方法を検討していくとしている。1:ヘルスケアポイント等情報提供WG2:重症化予防(国保・後期広域)WG3:健康経営500社WG4:中小1万社健康宣言WG5:保険者データ管理・セキュリティWG6:保険者向け委託事業者導入ガイドラインWG7:保険者からのヘルスケア事業者情報の収集・分析WG8:保険者における後発医薬品推進WG9:ソーシャルキャピタル・生涯就労支援システムWG東北大学大学院医学系研究科 教授 辻一郎氏は健康経営の重要性について、次のように説明した。「生活習慣を変えるためには、個人の努力では行動変容しにくい。社会環境が個人の行動を規定し、健康行動を支える社会環境づくりが重要だ。職場も健康づくりを支える重要な環境である。また、2014年の経済産業省の調査では、健康経営に優れる企業(経済産業省調査の評価上位20%)の平均株価を見ると、TOPIXを上回って推移している。特に、銘柄に選定された22社の平均株価は、それをさらに上回る結果となった。この結果から、健康経営を行うと企業の業績向上や株価の向上が期待できる。今後はインセンティブの導入を検討しており、ポピュレーション戦略を加速させたい」(辻氏)同式では、塩崎恭久厚生労働大臣も出席し、次のように述べた。「日本は国民皆保険のもと、世界最高水準の保健医療制度を確立しているが、今後はさらにこの保健医療システムを進歩させ、予防や健康づくりを意識し、国民の健康寿命を延伸させることが重要。健康先進国を目指し、20年後には、人々の主体的な健康づくりを社会で確立している日本を目指したい」
2015年07月13日「若いときのようにたくさん眠れない」「朝早く目が覚めてしまう」と悩んでいる高齢者も多いでしょう。また、昼夜問わずウトウトしてしまうと悩む人もいるかもしれません。実は、高齢者にとってこれらは当たり前のことなのです。加齢による睡眠時間の変化を知って、正しい眠りを心がけましょう!高齢者の睡眠時間が短くなるのは自然なこと年を重ねるごとに白髪やシワが増えるように、睡眠パターンにも変化が表れます。なかなか寝つけなかったり、眠りが浅くなって夜中に何度も目を覚ましたり、または朝早くに目が覚めたりしてしまうことがあるでしょう。しかし、これらは異常なことではなく、高齢者であれば誰にでも見られる自然な現象です。睡眠と深い関係がある基礎代謝の基準値は、赤ちゃんのころをピークに低下していきます。高齢者になると、筋肉などの脂肪量が減少するため、とても低い数値に。基礎代謝が低くなると、深い眠りを必要としなくなり、浅い眠りであるレム睡眠の時間が増えます。その結果、生体機能のリズムが少しずつ前倒しされ、若者にくらべて睡眠時間が短くなるのです。無理に寝ようとすると昼夜のバランスが崩れることも自然なこととはいえ、眠れないのは辛いもの。朝早くに目が覚めて、無理矢理もう一度寝ようと布団から出ない人も多いようです。実際、厚生労働省の調査によると、高齢者ほど寝床にいる時間が長いことがわかっています。ただ、この行為は昼夜のメリハリをなくす原因になると言われているので注意が必要です。また、仕事の退職などにより自由な時間が増え、昼間にウトウトすることがあるかもしれません。だからといって寝床にしまうと、この現象を助長させてしまう危険性があります。なぜなら、浅い眠りが続くと、睡眠に対する満足感が得られず、常に眠気を感じるようになってしまうから。その結果、昼夜のメリハリがなくなり、夜に寝つけなくなってしまうそうです。自分に合った眠り方をしよう!年をとったら、若いときと同じような眠り方ができると考えてはいけません。自分の年齢に合った睡眠時間を知り、必要な分だけ眠るようにしましょう。厚生労働省が平成26年に発表した睡眠指針によると、65歳あたりの世代の適切な睡眠時間は『6時間』とされています。高齢者は睡眠時間が短いとはいえ、この数値を下回っている方は多いのではないでしょうか。そういった方は、もしかすると昼夜の睡眠バランスが崩れているのかもしれません。適切な睡眠時間を確保するためにも、日中はなるべく寝床から離れ、昼寝をしないように心がけましょう。昼夜のメリハリをきちんとつけて、健康的な生活を送りましょう!photo by pixabay
2015年07月05日MS&ADインシュアランスグループの三井住友海上火災保険ならびにあいおいニッセイ同和損害保険は24日、損害保険業界で初めてという、少子高齢化に対応した火災保険を共同開発し、10月1日以降保険始期契約から販売を開始すると発表した。昨今の少子高齢化の進展に伴い、賃貸住宅内での高齢者の孤独死や、高齢者の日常生活におけるサポートサービスのニーズが年々増加しているという。これらの環境変化へ対応すべく、火災保険の新たな特約・付帯サービスを開発したとしている。MS&ADインシュアランスグループは、今後もグループ各社のノウハウを結集し、多様化する顧客ニーズに応える商品・サービスの開発を積極的に進めていくとしている。○新特約・付帯サービスの概要(1)家主費用特約-新設加入対象者:賃貸住宅のオーナー(家主)特長:賃貸住宅内での死亡事故(孤独死・自殺・犯罪死)によりオーナー(家主)が被る家賃収入の損失や、清掃・改装・遺品整理などにかかる費用を補償する。死亡事故の発生戸室のほか、上下左右の隣接戸室も補償の対象となる新設の背景:不幸にして死亡事故が発生してしまった賃貸住宅では、その後の空室・家賃値引きなどによる家賃収入の損失や各種費用の負担が重く、オーナーにとっては賃貸経営上の大きなリスクとなっていた。賃貸住宅を対象とする火災保険に特約として補償を追加することで、これらのリスクを回避できるようになる。オーナーにとっては「安心して部屋を貸すことができる」、単身高齢者にとっては「より部屋を借りやすくなる」というメリットがある(2)受託物賠償特約-拡充他人から借りた物に損害を与えた場合の賠償責任を補償する「受託物賠償特約」に、限度額100万円のパターンを新設。これにより、従来から火災保険とその特約で補償していた「自宅内での事故」による家財の損害、「自宅外での事故」による携行中の家財などの損害に加えて、介護機器や備付家具等の高額なレンタル品に関する損害も補償できるようになった(3)家具移動・電球交換サービス-新設上記(2)の特約にセットで加入した顧客向けに、新たに「家具移動・電球交換サービス」を提供し、高齢者の日常生活をサポートする65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合は過去最高を更新し、2035年には33.4%と見込まれているという。少子高齢化のさらなる進展を踏まえつつ、今後も「過ごしやすい高齢化社会の構築」に寄与する商品・サービスの開発を積極的に進めていくとしている。
2015年06月26日政府は6月22日、2015年版「少子化社会対策白書」を閣議決定した。その中には、未婚で恋人がいない20代の男女4割が「恋人が欲しくない」と回答した意識調査も盛り込まれた。調査は、内閣府による「結婚・家族形成に関する意識調査」。2014年12月5日~2015年1月16日、全国の20歳~39歳の男女7,000人を対象に郵送で実施、2,643人の有効回答を得た。○「恋人が欲しい」は60.8%未婚者、かつ現在恋人がいない人(761人)を対象に「恋人が欲しいですか」と聞いたところ、「はい」が60.8%、「いいえ」が37.6%という結果になった。「はい」(恋人が欲しい)は男女間で大きな差はみられないが、ともに30代の方が20代よりも割合が高い。男女とも20代は、約4割が「いいえ」(恋人が欲しくない)と回答している。○交際経験、年収、ひとり暮らし経験、コミュ力で比較さらに、「恋人が欲しいですか」という質問を交際経験、本人の年収、離家経験(自分の親と別居して生活したことがあるかどうか)、コミュニケーション力別に比較した。交際経験別にみると、「恋人が欲しい」という人は「交際経験あり」では69.7%であるのに対し、「交際経験なし」では47.0%にとどまった。離家経験の有無別にみると、「離家経験あり」(65.0%)の方が「離家経験なし」(56.6%)よりも、「恋人が欲しい」とする割合が8.4ポイント高い。コミュニケーション力別では、女性の「社交性・高」で「恋人が欲しい」が77.1%と高いのに対し、「社交性・低」は51.5%、男性では「自己効力感・高」で「恋人が欲しい」が74.3%と高いのに対し、「自己効力感・低」が52.1%と女性は社交性の高低、男性は自己効力感の高低による差異が大きい。○恋人が欲しくない理由は?未婚者かつ現在恋人が欲しいと思わない人に、「今、恋人が欲しいと思わない理由を教えてください」と選択肢の中から選んでもらった。全体では「恋愛が面倒」が46.2%で最も高く、次いで「自分の趣味に力を入れたい」が45.1%、「仕事や勉強に力を入れたい」が32.9%と続く。「恋愛に興味がない」は、28.0%。男女とも、20代では「自分の趣味に力を入れたい」(男性51.6%、女性49.5%)が、30代では「恋愛が面倒」(男性47.3%、女性51.2%)が、それぞれ5割前後と最も高かった。○交際への不安は?また、未婚者かつ現在恋人がいない人に「恋人として交際する上での不安は何ですか」として選択肢の中から選んでもらった。全体では、「そもそも出会いの場所がない」(55.5%)が最も高く、次いで「自分は魅力がないのではないかと思う」(34.2%)、「自分が恋愛感情を抱くことができるのか不安だ」(20.5%)が続く。男性では、「気になる人がいても、どのように声をかけてよいかわからない」「どうしたら親しい人と恋人になれるのかわからない」「恋愛交際の進め方がわからない」といった項目がそれぞれ20%超で比較的高い。女性では、「自分が恋愛感情を抱くことができるのか不安だ」(24.9%)が比較的高い。
2015年06月23日体が必要としている睡眠時間に対し足りていない分の睡眠時間は、「睡眠負債」として蓄積されていくそうです。しかし、沖縄の高齢者のデータを見ると、東京の高齢者と同じ睡眠時間にもかかわらず、睡眠負債が少ないようです。なぜ、眠りの質が違うのでしょうか?睡眠愁訴をする高齢者は東京より断然少ない!『長寿の島』として知られる沖縄は、本州・九州などとは違った食文化や、「なんくるないさ(大丈夫)」、「ゆいまーる(相互扶助)」といった独特の精神風土が根付いている地域です。琉球大学が行った研究によると、沖縄独自の食生活や考え方が、長寿の人を生み出しているようです。そして、もうひとつ、本土の人に比べ沖縄県民の睡眠の質が高いことも長寿の理由として指摘されています。というのも、東京都の高齢者と比較すると、沖縄県民のほうが起きる時間が早く睡眠時間が少ないにもかかわらず、睡眠負債は半分程度という結果が出ているのです。また、睡眠による不調を訴える高齢者は、東京が9割であるのに対し、沖縄では1割程度しかいません。いかに良好な睡眠状態を保っているか、よくわかる指標と言えます。沖縄県民の睡眠負債が低い理由は規則正しい生活サイクル沖縄と東京の高齢者の睡眠時間を比較すると、ほとんど変わらない長さです。しかし、高い睡眠の質が保たれている理由として、普段と休日で睡眠時間が変わらないことが明らかになっています。60歳代の平均睡眠時間を見ると、普段は7時間6分、休日は7時間24分と、大きな開きが見られません。70歳代、80歳代も同様で、普段と休日の睡眠時間は30分程度しか違いがないことから、平日、休日に関係なく規則正しい睡眠サイクルができていることがわかります。また、東京の人にくらべ、沖縄の高齢者は昼寝の習慣と夕方の散歩の習慣がある人が多いという調査結果も。短時間の昼寝と軽い運動も夜の睡眠の質を高め、睡眠負債を減らす手助けをしているのかもしれません。メリハリのある生活で睡眠サイクルを整える睡眠が規則正しいだけでなく、生涯現役として畑仕事をしたり伝統工芸に力を入れたりと、沖縄の高齢者の暮らしは充実している様子。身体を動かしたり頭を使ったりすることで、東京の高齢者よりも健康的でメリハリのある生活を築いているのかもしれません。「毎日忙しいから休みの日は多めに寝よう」と考えているあなた。実は、その考え方が生活リズムを乱し睡眠負債を増やしているのかもしれません。規則正しい睡眠サイクルで、毎日シャキッと過ごしましょう。Photo by Hiroaki Kaneko
2015年06月10日日本郵政グループ、米IBM、米Apple は4月30日、ニューヨーク(米国)において、日本における高齢者向け生活サービスの提供に向け、高齢者向けタブレットなどを活用した実証実験を共同で行うことに合意したと発表した。同グループは、今回の業務提携により、全国2万4000の郵便局のネットワークを活用して、ICTを活用した新たな高齢者向け生活サポートサービスを 2016年度から本格展開することを目指す。これに向け、同グループは、2015年度下期にIBMとAppleが開発した高齢者向けの専用アプリやiPadを配布して、それらを活用した各種のネットサービスなどを支援する実証実験を行う。専用アプリでは、薬を飲む時間や運動、ダイエットのお知らせや、コミュニティ活動、食料雑貨の買い物支援、就業支援などの各種サービスに直接アクセス可能。同グループに対しては、IBM MobileFirst for iOSプラットフォームの専用クラウド・サービスによるデータ統合とセキュリティ、アナリティクス、機器管理機能が提供される。実証実験では、ICTの利活用を併用した「みまもりサービス」のほか、世代向け・子世代向けの「コミュニケーションサービス」、自宅での申し込みによる「買い物支援サービス」、自治体と連携した「地域情報サービス」、各種相談サービスを、地域特性に応じて順次提供していく。同グループは、サービスを段階的に増やしながら、2020年に国内の400万人から500万人規模の顧客へのサービス提供を目指す。
2015年05月01日秋田県湯沢市、ヤマト運輸、ヤマトマルチメンテナンスソリューションズは4月30日、「高齢者の見守り支援」と「高齢者世帯向けリコール製品回収の取り組み」に関する連携協定を締結したと発表した。この協定により、高齢者向け住民サービスの一環として、「配達時の見守りサービス」と「リコール製品の回収支援サービス」が提供される。配達時の見守りサービスでは、配達先の高齢者が長期間不在にしている場合や体調不良があった場合に自治体に報告する。リコール製品の回収支援サービスでは、リコール製品の情報を自治体の配布物として高齢者の自宅に宅急便で届けるほか、リコール製品が見つかった場合は商品の回収を行う。取り組み開始時は、積水化学工業とTDKの情報が届けられる。
2015年05月01日