山沢拓也にポジションに対する強烈なこだわりはない。10番か、15番か。SOか、FBか。その選択は埼玉ワイルドナイツのロビー・ディーンズ監督に委ねている。そもそも、山沢は選手にポジションの選択権はないと考える。「『10番で出る、15番で出る』というのは自分が決めることではないので、『15番で出る』と言われたら、15番としてのプレーをしないといけない。その中で自分ができるプレーをやることを考えています」日本が誇るファンタジスタはSOとしてのプレー経験が長いため、現時点では「やりやすいだけ」だと続けた。「10番の経験の方が長いので、10番の方がやりやすいというのはあります。15番としてのプレー、まだ15番になり切れていないと自分では思っているので、そういう意識はあります10番としてのプレーもそうですが、15番としてのプレーをもっとできるようにしていかないといけないと思っています」SHとともにFWとBKをつなぐSOは司令塔の重責を担う。チームの攻撃をチョイスする洗練されたラグビーセンスとラン、パス、キックの卓越したスキルの両立が求められる。一方、最後尾に位置するFBはディフェンスでは最後の砦としてピンチを防ぎ、アタックではキックで陣地を挽回したり、最後尾からカウンターアタックの起点になることが求められる。山沢は「15番の仕事すべてでまだまだ足りない」と口にした。山沢がポジション観を口にしたゲームがある。3月4日『NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23』第10節・クボタスピアーズ船橋・東京ベイとの首位攻防戦である。今季これまで10番が4回、15番が2回、ベンチスタートが3回の中迎えたS東京ベイ戦で山沢は2試合ぶりに10番を背負った。今季戦線復帰し、10番として5回スタメンに名を連ねてきた松田力也は今季初のメンバー外となった。真価が問われた無敗対決で山沢は躍動。『リーグワン』史上初のフルハウス、2トライ3ゴール2ペナルティゴール1ドロップゴールという離れ業をやってのけて30-15の完勝を収めたのだった。王者埼玉WK、さらには日本代表の司令塔争いは激化かと色めき立つマスコミをよそに、山沢は試合後の興奮を微塵も感じさせずこのようにコメントした。「本当に勝ててまずホッとしたという思いです。10番で出ることについて、みなさんが思っているほどそういう思いはありません。10番で出たら10番の役割を果たしたいし、15番で出たら15番の役割を果たしたいという気持ち。うちにはそれぞれのポジションでいい選手が揃っていて、それぞれに良さがある。そういうことをわかった上で、チームとして選んでもらっているので、自分が出る時は自分ができることをチームのためにやりたいなと思います」ポジションへの執着を見せない山沢は、日本代表への渇望も口にしない。深谷高校3年時の2012年6月に日本代表候補合宿に招集されたが、『ラグビーワールドカップ2015』はおろか、国内で開催された『RWC2019』でも日本代表に山沢の名前はなかった。9月に開幕するフランスでの『RWC2023』では、大会期間中に29歳を迎える。選手としてピークであろう年齢に行われる『RWC』に何が何でも出たいという気持ちは「ないです」。『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメントを前に「今は考えていないです」とあっさり。この発言を桜のジャージをまとう覚悟が足りないと誤解してはいけない。山沢は目の前の一戦に集中しているだけだ。5月13日(土) にはプレーオフトーナメント準決勝・横浜キヤノンイーグルス戦が待っている。翌週の20日(土)・国立競技場では埼玉WKの連覇が懸かっている。試合となればグラウンドの隅々まで見渡す山沢であるが、頭の中では次の次の試合である決勝すら見据えてはいなかった。「一戦一戦です。そんな先のことは考えないです」1位でレギュラーシーズンを終えた埼玉WKは4位の横浜Eと対峙する。第6節の直接対決では沢木敬介監督が用意したスペシャルプレーを決められながら、80分に同点トライを挙げ、逆転CGで21-19と薄氷を踏む逆転勝利を手繰り寄せた。「プレーオフに出てくるチームなので、色んな脅威がチーム全体としてあります。警戒する気持ちもないこともないですけど、スペシャルプレーを気にしてもわからないので、仕方がない。スペシャルプレーは本当にその時初めて見るものなので、それまでに自分たちがどれだけ準備できるかが大事」最後の『トップリーグ』覇者であり、初代『リーグワン』王者でもある埼玉WKは一発勝負のプレーオフの戦い方を熟知している。「もちろんスコアを第一優先でゲームメイクするので、リーグ戦よりもよりスコアを優先した戦い方になります」「逆転のワイルドナイツ」の異名通り、試合終盤の逆転劇はお家芸である。第15節・静岡ブルーレヴズに敗れるまで、不戦敗を除き、47戦無敗、じつに4年間にわたって勝ち続けたのだ。負けそうで負けない、ギリギリで踏みとどまる埼玉WKの強さを山沢はこのように分析する。「『やばいかも』と思う時も正直ありますが、だからと言ってやることは変わらない。そこでテンパったプレーをしてしまったら元も子もないし、どんどん相手のいい流れになってしまうだけ。やばいと思ったとしても思わなかったとしても、チームとしてやるべきことがあるので、それをみんなでやるから最後に何とか勝てたりしたのではと思います」静岡BR戦での敗戦から何かを得ようと考えてはない。試合に勝とうが負けようが、得るものがあると山沢は考えている。「負けから得るものがあると言うより、自分たちに足りないものがあって負けにつながっていると思う。毎週毎週出た課題を次の試合に向けて解消していく中で、負けたからと言って、自分としてはそんなに大きくとらえていない。ただ負けたのでチームとして修正する質がより上がったのかなと思います。自分だけではなく、ほかの人たちもそうだと思うが、負けたからどうという考え方ではなく、勝っても負けてもその試合が終わったら反省して、その反省を次の試合に生かして準備していくだけなので、大きく変わった点はなかったですね」山沢はチームの勝利のために準備を怠らず最優先するが、勝利を追い掛けたりはしない。「結果は後に付いてくるものだと思う。うまくなるためにいろんな課題を修正するという考え。もちろん自分だけではなくチームのことも考え、色んなことを学んで、ちょうど自分の気持ちとチームでの役割、チームに対する気持ちが今いい状態にきていると思います」追い求めるのはラグビー選手としての成長だ。「根本的にうまくなりたいという思いがあるので、それにすべてつながっていくのかなと思います」では、現時点の山沢拓也は理想の選手像の何%まで高まっているのか?「60とか65くらいですかね。理想は高いので」グラウンドを俯瞰して見ているかのような視野の広さと意外なプレーを実行する確かな技術を高いレベルで併せ持つ山沢だが、まだまだ失敗が多いと自己評価は低い。「これまでもなかったように、この先も全く同じシチュエーションで全く同じような見え方がすることはないと思うが、その時にどれだけ見えるか、見たことに対してどれだけ判断できるかにかかっていると思う。みなさんは今までうまくいったプレーばかり覚えていてそういう風に言ってくださるんですけど、たぶん全然うまくいっていないことの方がはるかに多いと思う。そういう失敗をもとに『こういう時はこういう風にしない方がいいな』と少しずつ積み重ねて頭の中でわかってきているかなと思いはあります」前記のS東京ベイ戦で見せた華麗なステップで4人を切り裂いたトライや昨年10月のニュージーランド戦で国立競技場を沸かせたドリブルトライなど、無心でプレーした方がいい結果をもたらす経験則がある。「自分的には無心でやっている方がうまくいくことがあります。考えてやるプレーでは技術的にも判断的にも遅く失敗することがあるので、無心でやった方がうまくいくというのはあると思う」観客を魅了するプレーとチームが勝つためのプレー。山沢は分けて考えたことはないと言う。「やろうと思ってやっているのではないので、そこはコントロールできない。結果的にそういうプレーになったということです。観ている人を喜ばせようと思ってプレーできればいいんですけど、その境地までいっていないので」理想とするラグビー選手に一歩でも近付くために、少しでもうまくなるために、山沢は目の前の試合に臨む。試合のレベルが高ければ高いほど、大きく成長するチャンスだ。国内最強を決める『NTTリーグワン2022-23』プレーオフトーナメントは絶好の機会と言える。世界最強を決する『RWC2023』は言わずもがなである。プレーオフを戦い終えた後、山沢の視界にはいったい何が映っているだろうか。取材・文:碧山緒里摩(ぴあ)撮影:スエイシナオヨシ<NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 プレーオフトーナメント>■準決勝5月13日(土) 14:35埼玉ワイルドナイツ(D1 1位)×横浜キヤノンイーグルス(D1 4位)■準決勝5月14日(日) 12:05クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(D1 2位)×東京サンゴリアス(D1 3位)>■3位決定戦5月19日(金) 19:00秩父宮ラグビー場■決勝5月20日(土) 14:35国立競技場チケット情報はこちら:リーグワン観戦ガイド 2022-23 特別版ラグビー観戦初心者も安心! はじめてのポストシーズン
2023年05月11日高校を卒業し、すぐに年上の彼・ノリオと結婚したサキ。ノリオは義母・シズと2人暮らしだったため、サキは義実家へ入り、同居することになったのですが……「こんなかわいい子と付き合ってるの、知らなかったわ。息子をよろしくねー」そう言ってくれていたシズ。明るく世話好きの良い人に思えましたが、実際はまったくそんなことはありませんでした……。 女の子の初孫を出産。義母の反応は…? 結婚して間もなく女の子を授かったサキ。 義母も喜んでくれたのですが……「男の子じゃなかったのが残念ねー」このひと言に引っかかりました……。 それでも、夫・ノブオも娘をとてもかわいがり、娘も元気に成長していきました。 比較的平穏に時は過ぎ……娘・ハナが2歳を過ぎたころ。サキは外へ働きに出たいとノリオに申し出ました。 「まだ小さいし、無理に働かなくてもいいんじゃないか? もしかして俺の給料が……」と言うノリオに、サキは給料の問題ではないと伝えつつ、「私には社会経験がないから……この子に教えてあげられることが少ない気がして……だから少しでも働いて学んでみたいの……これじゃ自分のためになっちゃうかな?」と、あくまでも子どものために社会経験を積みたいと説明しました。 すると……「そっか! いいと思うよ。サキすごいよ。応援する!」と、ノリオはサキが働きに出ることを快諾してくれました。 そうしてふたりは、同居する義母にもサキが働きに出ることを相談しました。働くことに賛成する義母でしたが、「ハナちゃんはどうするの?」と質問。 サキが保育園に預ける予定だと伝えると……「家にいるんだから、私が面倒みるわよ! 任せて!」義母がそう言ってくれました。 義母は孫にあまり関心がないと思っていたサキは内心驚きましたが……「当たり前じゃない、家族でしょ? 私にとっても初孫だもの」義母の言葉を信じて預けることに。 こうしてサキは近くのスーパーで働くことになったのですが……? 妊娠・出産は奇跡で、どちらの性別であってもおめでたいことに変わりないのに、性差別発言をしてくる義母……。何だか嫌な予感がします。しかし、保育園に付けて働く旨を伝えると、孫の世話役を買って出てくれました。性別関係なく、かわいがってくれると良いですね。 著者:マンガ家・イラストレーター とりまるねこぽちゃ
2022年12月02日女性写真家・山沢栄子の生誕120年を記念し、約25年ぶりとなる大規模個展『山沢栄子私の現代』が東京都写真美術館で開催されている。山沢栄子(1899〜1995)は、戦前のアメリカで写真を学んだ、女性写真家のパイオニアだ。大阪で生まれ、女子美術学校(現・女子美術大学)を卒業後の1926年、27歳の時に単身渡米。写真家コンスエロ・カナガに師事して写真を学び、帰国後は写真スタジオを開設して主にポートレートを手がけ、戦後は企業広告写真や抽象写真の制作を行うなど、半世紀以上にわたって活躍し続けた。同展では、現存する1970〜80年代の代表作を中心に、1960年代に発表された写真集から、戦前の活動を伝えるポートレートや関連資料まで、約140点を全4章構成で紹介する。第1章「私の現代」では、1970〜80年代に手がけた抽象写真シリーズ「What I Am Doing」28点からスタート。第2章は1962年に出版され、抽象表現の原点を示す写真集『遠近』を紹介。第3章「山沢栄子とアメリカ」では、コンスエロ・カナガをはじめ、アルフレッド・スティーグリッツやポール・ストランドなど、山沢の写真表現に大きな影響を与えた20世紀前半のアメリカ写真を代表する作品を展示。そして第4章では、1960年代以前の山沢栄子の仕事を「ポートレート」「疎開中の写真」「商業写真」の 3部にわけて紹介する。明治から平成まで激動の時代を、写真家として独自の芸術表現を探求し続けた山沢栄子。彼女の挑戦と創造の軌跡を、その力強い生き様も含めて辿ってみたい。【開催情報】『山沢栄子私の現代』11月12日(火)から2020年1月26日(日)まで東京都写真美術館にて開催【関連リンク】東京都写真美術館()《コンソェロ・カネガ女史(写真家)》 1955 ゼラチン・シルバー・プリント 東京都写真美術館蔵《山本安英“土”》1943(プリント1990)年ゼラチン・シルバー・プリント東京都写真美術館蔵《静物机、皿、りんご》 1961 写真集『遠近』よりオフセット印刷《仔犬》 1958 写真集『遠近』より グラビア印刷
2019年11月16日筒井康隆の手による、SF小説の金字塔とも言うべき作品で、これまで4度にわたってTVドラマ化されてきた「七瀬ふたたび」が芦名星を主演に迎えて『七瀬ふたたび The Movie』として映画化されることが発表された。主人公・火田七瀬は人の心を読むことができる、すなわち“テレパス”であるがゆえに能力者狩りの暗黒組織に追われている。七瀬以外に透視、念動力、そして未来予知などの特殊能力を持つ能力者たちは存在するが、次々と組織に追い詰められ、命を落としていく。その中には七瀬が秘かに愛していた予知能力者・岩瀬も…。彼女たちは何のために生まれてきたのか?能力者たちの切り札的存在・時間移動の能力を持つ藤子と共に七瀬は最後の戦いに赴くが…。1970年代初頭に刊行され、シリーズ3作(「家族八景」、「七瀬ふたたび」、「エディプスの恋人」/新潮文庫刊)を通じて累計430万部を売り上げた大ベストセラー「七瀬」シリーズ。映画化は今回が初めてだが、原作者の筒井さんは「なんといっても芦名星は、今までの七瀬の中で、もっとも七瀬らしい七瀬である。強いまなざしと、凛とした態度は、七瀬のキャラクターそのものだ。人気が沸き上がること、間違いなしだろう」と太鼓判を押す。七瀬役に抜擢された芦名さんは「『七瀬ふたたび The Movie』は能力者たちのお話で、最初から不思議な世界に引き込まれます。いまの私たちの生活では遭遇しない世界なのですが、知らないところで本当にある世界のような…。演じている方々もとても個性があって、ひとりひとりの不安や葛藤、悲しい出来事やハラハラするような出来事のバランスが素晴らしいと思います。最初からドキドキして、最後まで途切れることなく、スピード感のある映画だと思いました」と自信をのぞかせる。さらに、原作のシリーズの第1作「家族八景」に言及し「こちら(「家族八景」)も読んでいた私には、(映画で)より深い部分が見えて、とても面白かったです。映画をご覧になって下さる方もぜひ『家族八景』を読んでいただいた後に、この映画を観ていただければと思います」とのメッセージを寄せてくれた。七瀬以外の能力者たちに扮する共演陣も豪華!タイムトラベラー・漁藤子役に佐藤江梨子、サイコキネシストのヘンリー・フリーマン役を演じるのはダンテ・カーヴァー、未知の能力を秘めた山沢ノリオ役を今井悠貴が演じ、そして七瀬が秘かに想いを寄せていた予知能力者・岩淵了役に田中圭が扮する。また、七瀬と行動を共にするがゆえに、闘いに巻き込まれていく真弓瑠璃役を前田愛が熱演、さらに吉田栄作が、能力者たちを追いつめる組織を束ねる狩谷を演じている。海外ドラマではここ数年、「HEROES」、「スーパーナチュラル」など超能力者たちの物語が大きな話題を呼んできたが、日本でも色あせぬ輝きを保ち続けるSF小説の傑作がついに映画化!『七瀬ふたたび The Movie』は2010年6月、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて公開。■関連作品:七瀬ふたたび The Movie 2010年6月、シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて公開© 2010「七瀬ふたたび」製作委員会
2009年12月08日