映画『燃えよ剣』(10月15日公開)の完成披露イベントが9日に都内で行われ、岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平、山田涼介、尾上右近、山田裕貴、伊藤英明、原田眞人監督が登場した。同作は岡田演じる土方歳三を主人公に、新選組志士たちの人生と激動の幕末を描く。『関ヶ原』(17)、『日本のいちばん長い日』(15)などで知られる原田眞人監督が、司馬遼太郎の同名小説を原作にメガホンを握り、新選組局長・近藤勇を鈴木亮平、美しき剣士・沖田総司をHey! Say! JUMP・山田涼介が演じる。新撰組を演じての苦労を聞かれると、岡田は「メンバーが本当の隊士のようにチームワークが良くて、誰かが悩んでたら鈴木くんが食事に連れてくとか」と振り返り、鈴木は「局長ですから」とニヤリ。岡田は「新撰組が成り上がっていく中で、山田(涼介)くん演じる沖田はフラットでずっと変わらないということも心がけて距離を取ってくれたんだろうし、本当にその場にいる人たちのような空気感が現場でも作れていた。原田監督の"場作り"というのがすごくある現場で、助けられて演じることができました」と感謝した。原田監督が岡田について「弱く見せなきゃいけないところを苦労してた」と指摘すると、岡田は「最近すごい強いみたいなこと言ってるけど、そんなことないですよ」と苦笑し、鈴木は「強いですよ、岡田さん。我々みんな知ってますよ!」とツッコむ。岡田はアクションも付けていたが、山田涼介は「急遽決まった3人で手合わせをするというシーンがあって、岡田さんとたまたまサウナで一緒になったら、サウナで一生懸命考えられてたので、大変なんだなと思いました」と明かした。サウナでは裸で山田に「ちょっと手を貸して!」と言いながら動きを考えていたというが、岡田は「それも鈴木くんが悪いんですよ」と、鈴木が岡田&山田涼介のシーンを見て「俺もやりたい」と言ったことから生まれたシーンであることを説明。鈴木は「うらやましかったんですよ。土方と沖田がずっと仲良しそうで、じゃれ合うような組み手してるのを見て。結果、裸で考えることになったんですね」と苦笑する。そのシーンは予告映像にも採用されており、原田監督は「近藤局長からのそういう意見が出たら、採用しないわけにはいかない。3人の関係性があれで生きるなと思ったので好きなシーンです」と喜んでいた。最後に「最近一番熱く燃え上がったこと」を聞かれた岡田は、「今日ですね。W山田がそろった……」と答え、山田涼介&山田裕貴から「そこですか!?」と驚かれる。岡田は「2人はどういう感じで話してるの? 個人的には燃えてる」と発言し、山田裕貴が「ゲームの話とか……」、山田涼介が「裕貴くんとは呼んでます」と説明し、連絡先も交換していることがわかると、岡田は「聞けて良かったです」と満足そうにしていた。
2021年09月09日画家ジュゼップ・バルトリは1910年生まれのスペイン人。風刺漫画家でありながらスペイン内戦時代の20代の頃は共和国軍の一員として戦う。’45年にはNYに渡り、マーク・ロスコやウィレム・デ・クーニングらとも交流。雑誌『ホリデイ』『サタデー・イブニング・ポスト』のイラストを手掛け、芸術家としての名声を確立した人物だ。そんな彼が30代の頃に体験したフランスの強制収容所での実話をアニメ化した映画『ジュゼップ 戦場の画家』が今、話題を呼んでいる。1939年2月、スペイン内戦の戦火を逃れようと、隣国フランスには大勢の難民が押し寄せていた。しかしフランス政府によって強制的に収容所に閉じ込められた彼らは、劣悪な環境のもとで寒さや飢え、病気に苦しむことに。難民の一人だったジュゼップは、建物の壁や地面に黙々と絵を描き続けた。若きフランス人憲兵セルジュは、そんなジュゼップに鉛筆と紙を与え、二人は固い友情で結ばれていくが……。フランス人憲兵の監視下に置かれ、理不尽な暴力を受けていた難民の姿を描くとともに、ジュゼップと心優しき新米憲兵セルジュが織りなす友情が胸を打つ。また実際にジュゼップが描いた絵は、収容所の凄惨な日常を後世へと伝える貴重な記録にもなった。フランス出身のイラストレーターである監督のオーレル氏は、ジュゼップのスケッチに衝撃を受け、彼を「レジスタンスとジャーナリストの精神を持ち合わせた人物」と心からの賛辞を送る。人間の尊厳が容赦なく踏みにじられる極限状態の中でも希望を捨てず、ペンを執り続けたアーティストの生き様を伝えるには、動きやリズム、音響を備えたアニメーションが必要だと、自らの手で10年をかけて映画化した。世界中に祖国を失った難民があふれ、人権問題もクローズアップされている現代社会を映しているともいえる本作は、映画ファンはもちろん、ジャーナリストや美術関係者、アニメファンからも称賛の声が。“生きる”という本質的なテーマを肉筆感溢れるスケッチで紹介した映像は、私たちの心に迫ってくるはずだ。『ジュゼップ 戦場の画家』監督/オーレル脚本/ジャン=ルイ・ミレシ。2020年、カンヌ国際映画祭正式出品。アテネ国際映画祭観客賞、脚本賞ほか、数多くの賞を受賞。8月13日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開。©Les Films d’Ici Mediterranee – France 3 Cinema – Imagic Telecom – Les Films du Poisson Rouge – Lunanime – Promenons – nous dans les bois – Tchack – Les Fees Speciales – In Efecto – Le Memorial du Camp de Rivesaltes – Les Films d’Ici – Upside Films 2020※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年08月16日2012年からNHK BSプレミアムで放送されている『岩合光昭の世界ネコ歩き』。世界中の愛くるしいネコたちの一瞬の動きや表情、ネコを通して見える素敵な世界は、9年間にもわたりネコ好きな人々の心を鷲掴みにしてきた。そのロケ中に撮影された写真209点を紹介するのが本展『写真展 岩合光昭の世界ネコ歩き』だ。「本展は番組開始3年の節目から企画されていたもの。当館では美術館をより身近で楽しい場所だと感じてもらえる企画に力を入れているのですが、本展はその意図にふさわしく、6年間も練り上げ今年開催できる運びになったのです」(東京富士美術館学芸員・西野正恵さん)動物写真家の岩合光昭氏は19歳の時に、父・岩合徳光氏に同行したガラパゴス諸島でその大自然を目の当たりにして父と同じく動物写真家を志し、1979年には「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛写真賞を受賞。世界的に知られる『ナショナルジオグラフィック』の表紙を2度飾るなど、その作品は国内外で高い評価を得ている。大自然に育まれた野生動物の姿を追う一方で、人々の暮らしの傍らで飄然と逞しく生きるネコにも眼差しを向け、その何気ない一瞬をとらえた写真は、多くの人々の心を惹きつけてきた。本展では、パリに始まり、欧州、アフリカ、南北アメリカ、アジア、最後に沖縄と世界15地域を取り上げ、ネコをテーマにほぼ地球を一周する構成に。これは番組で放送された地域の中から、視聴者に人気のあった地域や特徴的なネコ、岩合氏のお気に入りのネコが登場する地域が選ばれた結果だという。会場では各地の雰囲気に合わせた展示空間の演出にもこだわり、ネコを通じて土地の人や風景が楽しめる。さらに岩合氏のネコへの愛情を深く感じられるよう、ネコに向けて彼が語った印象的な言葉を各所で紹介する。「ネコを美しく撮るためには背景となる土地の風土が大切。だから常に背景を気にしながら撮っている」と岩合氏。厳しい環境にあっても一生懸命生きようとする健気な姿、生命力の強さ、子育てに奮闘する母ネコの母性など、どんな情勢にも負けない世界のネコの姿は、見ている私たちを勇気づけてくれるはずだ。たとえブタでも、私はあなたが大好き。グァランゲティ♂(生後5か月)とブタのローリー♀(生後6か月) ウルグアイ ©Mitsuaki Iwagoハワイでバカンスを楽しんだ二匹の思い出。ラバ♀(2歳半)とイヌのスヌーピー♀ ハワイ ©Mitsuaki Iwago夜市にも臆せず出かける招きネコ。台湾 ©Mitsuaki Iwagoアパルトマンからの景色がお気に入り。ソシソン♂7歳 パリ ©Mitsuaki Iwago『写真展 岩合光昭の世界ネコ歩き』東京富士美術館東京都八王子市谷野町492‐16月1日(火)~8月29日(日)月曜(8/9は開館)、8/10休一般1000円ほかTEL:042・691・4511緊急事態宣言延長にともない、6月1日(火)より当面の間、時間短縮の措置により、以下の時間で開館しています。詳しい情報は公式HPでご確認ください。開館時間:10:00-16:00(15:30受付終了)休館日:月曜日※『anan』2021年6月2日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年05月31日2011年から2018年まで週刊ヤングジャンプで長期連載されたダークファンタジー『東京喰種トーキョーグール』シリーズで、鮮烈なデビューを飾った漫画家・石田スイ。人の姿をしながら人肉を喰うことで生きる「喰種(グール)」が蔓延する現代の東京を舞台に、互いの種の存続をかけた戦いを通して、生や正義とは何かを問いかけた本シリーズ。全世界累計発行部数が4700万部を超える世界的な人気作だ。映像や音楽と一体となった空間で、石田スイの制作過程を追体験。©Sui Ishida/SHUEISHAそんな石田氏初の大規模展覧会「石田スイ展[東京喰種(トーキョーグール)▶JACKJEANNE]」が始まった。テーマは、“石田スイの世界を追体験、~ゼロから作品が生まれるまで~”。会場では『東京喰種トーキョーグール』シリーズに加え、今年3月に発売されるNintendo Switch用新作ゲーム『ジャックジャンヌ』の2作品に焦点を当て、石田作品の制作過程を、多数のイラストや資料を通して紹介。さらに初期作品であるアナログ原稿やネームも初めて公開される。注目は石田氏が原作、キャラクターデザイン、シナリオを務めた初めてのゲーム『ジャックジャンヌ』。これは男性が男女両役を演じる「ユニヴェール歌劇学校」で、女性であることを隠して入学した主人公・立花希佐が、仲間たちとの絆を深め、時に競い合い、主役になることを目指す少年歌劇シミュレーションゲームだ。ゲーム内の立ち絵やイベントイラストは全て石田氏の描きおろし。ストーリーは小説20冊分を超える大ボリューム、しかもメインシナリオはフルボイスで、豪華仕様だと前評判も高い。そんなファン待望作品のキャラクター設定や楽曲等の制作過程を各分野のクリエイターたちによるコメントとともに紹介することで、石田氏の作品創作の過程を辿ることができるのも魅力の一つだ。会場に一歩足を踏み入れると、まずはイントロダクションとして17台のモニターにより『東京喰種トーキョーグール』の世界感を表現したビデオコラージュ映像が目に飛び込む。ここで用いられている楽曲はTVアニメ主題歌「unravel」をヨルシカのn-buna(ナブナ)氏がリミックスした新バージョン。ワクワク感をさらに盛り上げる。音楽と展示作品、そして造形までもが融合した会場では、文字通り石田氏の世界を追体験できるような趣向があちこちに。石田ファンならずとも見逃せない内容だ。石田スイ展[東京喰種▶JACKJEANNE]池袋・サンシャインシティ 展示ホールA東京都豊島区東池袋3-1-3開催中~3月7日(日)13時~20時(土・日・祝日10時~。入館は閉館の30分前まで)全日日時指定制ローソンチケットで発売中。一般2000円ほか。TEL:03・3535・7815※『anan』2021年2月17日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年02月16日ユニクロや楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパンなどのデザインを手掛け、今や日本を代表するクリエイティブディレクターとなった佐藤可士和さん。そんな彼が自身初、国立新美術館での個展「佐藤可士和展」を開催する。佐藤可士和の美意識の神髄に迫る展覧会。「国立新美術館からオファーをいただいたのがきっかけです。デザインの展覧会を国立の美術館でやることはたいへん意義深いですし、なんといっても2007年の開館時に僕がシンボルマークをデザインした非常に思い入れのある美術館で大規模な個展ができて、とても嬉しいです」今回は過去の膨大な作品の中から約50のプロジェクトを厳選。その多くは、デザインの力でなんらかの新しい挑戦を試みているものだ。「僕が小学5年生の時に描いた『宇宙』という作品から展覧会が始まります。そこから最新のアートワークまで、ほぼ時系列に僕の歩んできた道が辿れる趣向に。プロジェクトの規模はどんどん大きくなっていますが、子供の頃から大切にしていることはあまり変わっておらず、本展で僕の美意識の根底に流れるものも感じていただければ幸いです」特に今回は自身で手掛けたという空間演出も見どころのひとつ。例えば「THE LOGO」のコーナーには、キャンバスに3.5mもあるユニクロのロゴや、実際のタオルで織られている今治タオルのロゴなど、そのブランドの特性を表現する素材でロゴをオブジェ化。20m角の大空間の中に並ぶ巨大なロゴは、ロゴの存在感や重要性を改めて感じられるインスタレーションに。また「UNLIMITED SPACE」は、楽天のテクノロジーをテーマに、佐藤さんと楽天デザインラボ、楽天技術研究所とが共同で作り上げたインタラクティブ作品。展示空間に足を踏み入れると、その動きに反応して楽天で検索されている単語が続々と投影され、一人ひとりの人型を形成するというもの。私たちの体の動きと楽天のデータ世界が可視化される空間演出など、様々なメディアを駆使した空間にはサプライズが満載だ。また今回は、和紙に描かれた岩絵の具のドローイングなど、画才を感じさせる新作も披露される。「デザインとはソリューション。社会の中の問題を一つひとつ解決するプロセスこそがデザインの正体」と言う佐藤さん。彼が30年にわたり、様々な仕事で考えてきた問題解決の方法を、本展ではエンターテインメントの要素も交えて、惜しみなく紹介している。1.「日清食品関西工場」トータルプロデュース2019年滋賀県にオープンした日清食品の工場は、建物を見ただけでそれとわかる象徴的なデザイン。2.グローバル旗艦店「ユニクロ ソーホー ニューヨーク店」屋外広告(工事中店舗の仮囲い)2006年NYにある『ユニクロ』旗艦店。カタカナを使用したスクエアなロゴやシンプルな建物はもはや世界のブランドとして浸透。3.「宇宙」1975年色紙のコラージュ38×53.5cm佐藤氏が小学生の時に描いた作品も本邦初公開。すでに才能の片鱗が!国立新美術館東京都港区六本木7-22-2開催中~5月10日(月)10時~18時(入場は閉館の30分前まで)火曜(2/23、5/4は開館)、2/24休全日日時指定制一般1700円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)さとう・かしわ1965年、東京都生まれ。博報堂を経て2000年「SAMURAI」設立。最新著書『佐藤可士和の対話ノート』(誠文堂新光社)発売中。※『anan』2021年2月17日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年02月14日1990年代に『週刊少年ジャンプ』で連載され、累計発行部数は7200万部超え。アニメ化、実写映画化もされた大ヒット漫画『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』。時代の変化に苦しみつつも自分の信念を貫き、幸せとは何かを模索する主人公・緋村剣心。その生き方や本作に描かれる普遍的なテーマが、価値観の大きく変わる現代にも通じる人生の指針になるはずだと、満を持して「25周年記念 るろうに剣心展」が開催される。描きおろしの原画に加え、無鑑査刀匠が作った逆刃刀も登場。かつてない規模の直筆原稿やカラー原画を展示するほか、現在連載中の続編「北海道編」や、メディアミックス展開がなされた作品も紹介。特筆すべきは、本展に合わせ作者・和月伸宏氏が特別に描きおろした二枚一対の《剣闘図》。剣心と宿敵・志々雄真実の闘いを、作者ならではの躍動感あふれる筆致で描いた直筆原画となる。この作品にふさわしく、場内は燃え盛る炎をイメージした演出に。さらに後期には、岐阜県・関の無鑑査刀匠・尾川兼國氏が作品を元に作り上げた、実物の刀剣「逆刃刀・真打」も登場する。「逆刃刀・真打」 所蔵・写真提供:博物館明治村(後期から展示予定)「25周年記念 るろうに剣心展」東京ドームシティGallery AaMo東京都文京区後楽1-3-611月22日(金)~3月7日(日)(前期~2/10、後期2/11~。一部展示入れ替えあり)11時~19時(土・日・祝日と1/22は10時~。入場は18時半まで)会期中無休一般1600円ほか※完全日時指定制ローソンチケットのみでの販売。東京ドームシティ わくわくダイヤル TEL:03・5800・9999「25周年記念 るろうに剣心展」キービジュアル ©和月伸宏/集英社※『anan』2021年1月27日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2021年01月26日アートディレクター、デザイナーとして多岐にわたる分野で新しい時代を切り開きつつ世界を股にかけ活躍した石岡瑛子。彼女の世界初となる大規模回顧展『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』が開催される。1992年公開のハリウッド映画『ドラキュラ』の衣装を手がけアカデミー賞を受賞。また2008年の北京五輪では開会式の衣装を担当。マイルス・デイビスやビョークら、世界の一流アーティストたちから愛された彼女の仕事と人生を総覧する内容だ。彼女の才能は、資生堂に入社し1年目ですぐに開花する。社会現象となったサマー・キャンペーンポスターをはじめ、独立後もパルコや角川書店などの数々の歴史的な広告で快進撃を続けた。拠点をNYに移した’80年代以降は映画やオペラ、サーカス、演劇、PVなど様々な分野でその才能を遺憾なく発揮し続けた。その活躍を支えたのはデザインを生み出すまでの徹底した調査や、たった1ミリという細部にまでこだわる姿勢。完璧主義を貫く彼女の制作現場は常に緊張の糸が張りつめ、刃物のような立ち振る舞いだと彼女を揶揄する者もいた。そんな声を意に介さず「デザインはタイムレスでなければ。何十年後かに見た時、古くてはならない」「時代を生き残ってゆくために必要なのは自分の内から湧き上がるオリジナリティ」「創造のゴールは国を超え、人種を超え、性別を超えたところに存在する」と哲学を持ち、生涯仕事に邁進した。本展では、「Timeless:時代をデザインする」「Fearless:出会いをデザインする」「Borderless:未知をデザインする」の3部で会場を構成。’60~’70年代の広告の仕事や、石岡のデザインプロセスを示す膨大な資料、ハリウッドをはじめとする世界各国のアーカイブから集められた映画&舞台衣装を展示する。「表現者にとって一番大切なのは鍛錬」とバイタリティの塊のような生涯を送った彼女。その人生と言葉には、人を前に向かせる力がみなぎっている。石岡瑛子とは…「すごい日本人」と、世界が称賛した人物。1938年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部卒。アートディレクターとして資生堂、パルコ、角川書店などの広告でセンセーションを起こす。1980年代からはNYを拠点に幅広いプロジェクトを手がけアカデミー賞、グラミー賞、ニューヨーク映画批評家協会賞、カンヌ国際映画祭芸術貢献賞を受賞。紫綬褒章受章。2012年、すい臓がんで永眠。石岡瑛子1983年 Photo by Robert Mapplethorpe ©Robert Mapplethorpe Foundation. Used by permission.’79年に制作されたPARCOのポスター「西洋は東洋を着こなせるか」は、無国籍で鮮烈なイメージ。高度成長期の日本において世界に目を向けたメッセージ性が注目を集めた。石岡瑛子ポスター『西洋は東洋を着こなせるか』(パルコ、1979年)アートディレクションシルク・ドゥ・ソレイユ『VAREKAI』の衣装。危険極まりなく見えても、絶対安全を確保できる魔法のコスチュームをデザインした。石岡瑛子コンテンポラリー・サーカス『ヴァレカイ』(シルク・ドゥ・ソレイユ、2002年)衣装デザイン Director:Dominic Champagne/Director of creation:Andrew Watson/Set designer:Stephane Roy/Courtesy of Cirque du Soleil『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』東京都現代美術館 企画展示室1F/B2東京都江東区三好4‐1‐1開催中~2021年2月14日(日)10時~18時(入場は閉館の30分前まで)月曜(11/23、1/11日は開館)、11/24、12/28~1/1、1/12休一般1800円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2020年11月25日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年11月24日「翻訳とはコミュニケーションのデザインである」。そんな考えがテーマの展覧会「トランスレーションズ展―『わかりあえなさ』をわかりあおう」が今、話題を集めている。本展のディレクターで情報学研究者のドミニク・チェン氏は、日本、台湾、ベトナムの血を引くフランス人。幼少期は50か国以上から学生が集まるインターナショナルスクールに通い、日常的に翻訳とともに過ごした経験から、うまく言い表せないもどかしさを痛感してきたと語る。「コミュニケーションの根本には“わかりあえなさ”が横たわっている。翻訳によってこぼれ落ちてしまう意味もたくさんあるが、その面白さや豊かさをもっと知ろう。本展の副題にはそんな意味が含まれています」会場では、様々な分野から集まった21作品をキーワード別に、7ゾーンに分けて紹介。その内容は言葉の翻訳を超え、アートやデザイン、身体表現、動物や微生物との対話にいたるまで、多種多様な翻訳スタイルを紹介。例えば「ことばの海をおよぐ」ゾーンでは、自分が叫んだ言葉が一瞬にして世界中の言語に翻訳されるインスタレーションが登場。画面の大小はその言語を話す世界人口の数を示しており、日本のことわざなども絶妙に翻訳してくれる様子に圧倒される。一方「異種とむきあう」ゾーンでは、特殊な香水を使ってサメと人間が恋愛できるか実験した作品や、ぬか床の様子を様々なセンサーで読み取り、「そろそろかき混ぜたら?」「ちょうどいい具合に漬かっているよ」など微生物の言葉を翻訳し、対話できるロボットも。他に植物の気孔の動きを読み取って、植物の言葉を理解しようと試みた作品など、実験的かつユーモア溢れる展示が満載で、実に興味深い。「作品には相手の気持ちを汲み取ろう、ケアしようという想いが共通している」とチェン氏。世界中で分断が進む今、コミュニケーションの本質について考える好機になりそうだ。マイクに向かって話すと、23か国語に翻訳!Google Creative Lab+Studio TheGreenEyl+ドミニク・チェン《ファウンド・イン・トランスレーション》は、翻訳の結果だけではなく、機械が言葉を発見していくプロセスを可視化する。異なる動物と愛しあえる?サメを誘惑する香水。長谷川愛の《Human X Shark》は、異種間の愛について考える作品。ダイビングスーツにサメが好む美味しい香りをつけて引き寄せ、「匂い」を用いてオスを性的に惹起する実験をレポート。植物の葉にある唇から声なき声を読み取る。シュペラ・ピートリッチの作品《密やかな言語の研究所:読唇術》。まるで動物の唇のように開閉する植物の気孔を唇に見立て、読唇術や人工知能を使い、植物の言葉を解読する。「トランスレーションズ展―『わかりあえなさ』をわかりあおう」21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2東京都港区赤坂9‐7‐6東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内開催中~2021年3月7日(日)11時~18時30分(土・日・祝日10時~。入場は閉館の30分前まで)火曜(2/23は開館)、12/26~1/3休一般1200円ほか※事前予約制TEL:03・3475・2121※『anan』2020年11月18日号より。写真・北尾 渉文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年11月13日2018年5月からリバプールで開催され、好評を博した展覧会『DOUBLE FANTASY-John & Yoko』が、ジョン・レノン生誕80年を迎える誕生日から東京でスタートする。ジョンの故郷リバプールでは会期を7か月も延長し、70万人を動員するほど話題になった本展。ジョンとヨーコの物語を彼らの言葉や作品、ヨーコ所有の貴重なプライベートコレクションによって辿っていく回顧展だ。ジョン・レノンとオノ・ヨーコ、影響を与えあった二人の軌跡を辿る。Photo by Iain Macmillan ©Yoko Ono展示はそれぞれの生い立ちから時系列に沿って進む。二人の出会いは1966年にロンドンの画廊インディカ・ギャラリーで開催されたヨーコの個展。当時と同様、会場には彼女の作品《天井の絵》《釘を打つための絵》《リンゴ》を再現する。ジョンが感銘を受け、ヨーコに惹かれるきっかけとなった天井の「YES」を見つけた瞬間など、二人の感動を追体験できるはずだ。また東京展では、たびたび訪れていた軽井沢での家族写真や愛用の洋服なども初めて公開。《WABISABI(侘び寂び)》や《AMAI、SUPPAI、SHOPPAI、KARAI、NIGAI(甘い、酸っぱい、しょっぱい、辛い、苦い)》など、ローマ字で書き込まれたジョンの日本語練習スケッチブックの原画も登場。他にも二人の肉声が収録された復刻インタビュー盤が会場限定で販売されるなどファン垂涎の品が満載だ。ジョンの日本語練習スケッチブック ©Yoko Ono Lennon「イマジン」手書きの歌詞 ©Yoko Ono『DOUBLE FANTASY-John & Yoko』ソニーミュージック六本木ミュージアム東京都港区六本木5-6-2010月9日(金)~2021年1月11日(月)10時~18時(金・土曜、1/11は~20時。入場は閉館の30分前まで)12/31、1/1休一般当日券2600円ほか※ローソンチケットにて販売※『anan』2020年10月14日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年10月13日歴女はもちろん、戦国通も茶道ファンも!華麗な桃山文化の美術品に注目した、特別展『桃山─天下人の100年』。政治史における安土桃山時代とは室町幕府滅亡から江戸幕府開府までの、わずか30年間。織田信長と豊臣秀吉が政権を握っていたこの時代には南蛮文化が伝わり、ヨーロッパの美術品が本格的に日本に流入。日本美術史上もっとも豪華絢爛な時代として知られている。そんな激動の時代に花開いた桃山美術に注目した本展。室町末から江戸初期に至る100年間の美術作品約230件を展示。美術品から日本美術の流れを知るのが狙いだ。まず注目したいのが絵画。狩野永徳や長谷川等伯らによる障屏画を大々的に紹介。さらに桃山時代前後の作品も加える本展ならではの趣向も。例えば室町後期の禅宗寺院の大画面障壁画や洛中図は格式高く、安土桃山時代後の近衞信尹(のぶただ)や俵屋宗達らの作品は優美で自然な調和を重んじている。100年間という時の流れの中、時代を映した日本画の画風の変化を比較できる試みだ。また桃山文化と聞いて外せないのが茶の湯の発展。こちらも千利休から古田織部に至るまで、時の人とともに育まれていった精神性や造形美を選りすぐりの名品から導き出す。最終章では、豊臣家滅亡後の江戸の武家美術も紹介。徳川の時代になって、桃山美術がいかに受け継がれ、どのようにリニューアルしていったのか、その進化から未来を展望する。戦国武将の肖像画から、茶道具、甲冑や刀剣といった武具まで名品が集結する圧巻の内容。美術史のバイブルとして楽しめるのはもちろん、戦国ファンにも、茶道通などカルチャー女子にも満喫できるはずだ。唐獅子図屏風狩野永徳筆安土桃山時代・16世紀東京・宮内庁三の丸尚蔵館蔵後期展示2頭の威圧的な唐獅子は時代の空気を体現。狩野永徳の《唐獅子図屏風》。重要文化財松鷹図襖・壁貼付狩野山楽筆江戸時代・寛永3年(1626)京都市(元離宮二条城事務所)蔵通期展示(部分)狩野山楽の《松鷹図襖・壁貼付》は京都・二条城の大広間の障壁画。重要文化財花鳥蒔絵螺鈿聖龕安土桃山時代・16世紀九州国立博物館蔵前期展示《花鳥蒔絵螺鈿聖龕》は日本から欧州に輸出されたキリスト教の祭儀具。『桃山─天下人の100年』東京国立博物館 平成館東京都台東区上野公園13‐910月6日(火)~11月29日(日)(前期:10/6~11/1後期:11/3~11/29)9時半~18時(金・土曜~21時)月曜(11/23は開館)、11/24休一般2400円ほか※事前予約制。TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2020年10月7日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年10月02日1969年にテレビアニメとして登場して以来、日本で圧倒的な人気を誇るムーミン。’45年に作者トーベ・ヤンソンが最初の小説を発表してから75周年。昨年は埼玉に「ムーミンバレーパーク」がオープンするなど、愛されぶりは周知の通り。けれど、このキャラクターの人気を不動のものにしたのはコミックスだという事実をご存じだろうか。ムーミン人気を決定づけたコミック原画を日本初公開。ムーミンが漫画に初めて登場したのは‘47年。フィンランドの新聞ニィ・ティド紙に2年間掲載されると、‘54年からは英国イブニング・ニューズ紙で連載がスタート。最盛期には全世界で120紙・2000万部の紙面を飾り、世界的なムーミン人気につながっていった。これをきっかけに、トーベは児童文学作家としての国際的な名声を得たのである。ただ、この連載コミックスはトーベ一人で仕上げたものではなかった。当時、アート制作や書籍の執筆などマルチな活躍をはじめたトーベに代わり、それまで主にネタ探しや英訳を担当して彼女を助けてきた弟のラルスが’60年からコミックスを引き継ぎ、15年にわたり執筆を続けた。実は、弟あってこその共作だったのだ。本展ではそんなコミックスを、日本初公開となる原画やスケッチ280余点などを通して紹介。ムーミンの物語やキャラクター以外にも、ヤンソン姉弟がこの物語を守ってきた背景や仕事ぶり、ひいては家族の絆までも知ることができる。従来とはひと味違った切り口のムーミン展だ。ムーミンを家族で守るヤンソン家の絆に注目。トーベ・ヤンソンとラルス・ヤンソン。彫刻家の父と挿絵画家の母との間に生まれた長女トーベ(左)と次男ラルスは12歳差。長男のペルは写真家と芸術一家の中で育つ。©Moomin Characters TMトーベ・ヤンソン「『黄金のしっぽ』習作」。新聞連載の第18話の下書き。©Moomin Characters TMトーベ・ヤンソン「『まいごの火星人』スケッチ」。第11話には警察官など人気キャラも。©Moomin Characters TMラルス・ヤンソン「『Moomin and the Ten Piggy Banks』原画」。ラルスが手掛けた最後のムーミンコミックス。©Moomin Characters TM「ムーミン コミックス展」松屋銀座8階イベントスクエア東京都中央区銀座3-6-19月24日(木)~10月12日(月)10時~20時(9/27、10/4、10/11は~19時30分、最終日は17時閉場。入場は閉場の30分前まで)日時指定制/一般1200円ほかTEL:03・3567・1211(松屋大代表)※『anan』2020年9月30日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年09月23日「汗ばむわ~」のギャグで知られる、女性お笑いタレントの山田花子(やまだ・はなこ)さん。セクシーなギャグと容姿のギャップがウケ、バラエティ番組を中心に引っ張りだこでした。しかし、徐々にその姿を見かける機会が減少。かつて女性お笑いタレントとして一世を風靡した山田花子さんは、今は何をしているのでしょうか…。山田花子、今や2児の母親に2010年にトランペット奏者の福島正紀さんと結婚した山田花子さんは、2012年に長男、2016年に次男を出産し、2児の母に。2012年に長男が生まれた際には、夫の福島正紀さんとともに家族そろってイベントに出席したことがあります。2012年、長男とともにCD発売イベントに出席した福島正紀さん(左)と山田花子さん(右)また、山田花子さんは2016年に次男を出産した際、事務所を通じて「すでにイケメンになりそうな予感がして、育てるのが楽しみです」とコメントを発表。山田花子さん、41歳 帝王切開で第2子出産!母子ともに健康。すでにイケメンになりそうな予感!?そして2020年9月現在、ツイッターでは子供に関する投稿が目立ち、母親として子育てに日々奮闘していることが分かります。これが、金塊やったらな〜私もこんな笑顔するのにな〜 pic.twitter.com/IO91oy8qYA — 山田花子 (@y_hanak0) July 24, 2020 息子、2年生の作品!鉛筆立て!タイトルは、「あくま」らしいです。 pic.twitter.com/2bKFufqH3q — 山田花子 (@y_hanak0) August 6, 2020 山田花子、現在は大阪を拠点に活動中山田花子さんの姿をテレビで見かける機会が減ったのも、子供の存在が関係しています。というのも、2004年に東京に移籍した山田花子さんですが、「慣れ親しんだ地元の大阪で子育てをしたい」という思いから、2016年に活動を拠点を大阪に移し、古巣・吉本新喜劇に復帰しました。大阪に拠点を移した理由は、慣れ親しんだ地元・大阪で子育てをしたいとの思いから。「東京だと子どもがバカにされそうで...大阪の人はお笑いが好きだから大丈夫」と我が子を思いやる気持ちを告白。長男が小学校に上がる前に戻りたいと思い、夫の福島正紀さんに相談したところ、「付いていくと言ってくれました」。すでに東京のマンションは「早めに高く売って」(花子)、大阪での新生活をスタートさせています。よしもとニュースセンターーより引用現在は吉本新喜劇を中心に活躍しているため、これまでよりもテレビで見かける機会が減りましたが、お笑いタレントとしてはまだまだ現役です。今週のNGKは川畑週舞台は豪華客船⚓️✨海上で次々にトラブルが巻き起こる?! #川畑座長 を筆頭に #内場勝則 #浅香あき恵 #山田花子 #宇都宮まき とキャスト陣も超豪華!!!✨是非なんばグランド花月へお越しください♂️♀️ #吉本新喜劇 #川畑泰史 #クルージング pic.twitter.com/VNnFE5DxWR — 吉本新喜劇 (@shinkigeki1) April 23, 2019 山田花子の夫に批判の声前述した通り、2010年にトランペット奏者の福島正紀さんと結婚した山田花子さんですが、夫に関する話題はほとんど聞こえてきません。結婚発表当時、山田花子さんは「結婚できて幸せです!は~今夜も汗ばむわ~」と自身のギャグを交えて喜びをあらわにし、その後、夫婦そろってテレビに出演していたことも。第1子の妊娠を会見で発表した福島正紀さん(左)と山田花子さん(右)。2012年撮影しかし、山田花子さんがバラエティ番組『お笑いワイドショー マルコポロリ!』(関西テレビ)で「1回キスするごとに1000円、夜の生活は1回10万円を夫に支払う」と衝撃告白をしたことをきっかけに、夫婦仲を心配する声が寄せられていました。また、2017年に出演した情報番組『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)では、福島正紀さんが子供に大阪弁を使わせないよう、英語で会話していることも告白。英語が分からない山田花子さんは、夫と子供の会話に入れないことを番組中で嘆いており、視聴者からは「ありえない」「かわいそうで涙が出てきた」と同情する声も…。一方で、山田花子さんはツイッターで、仕事で忙しい自身に代わって、福島正紀さんが保育園の送り迎えをしてくれていることなどを報告しており、2020年9月現在も2人は夫婦関係を継続中です。夫婦関係は当人同士にしか分からないもの。はたから見ると不思議な夫婦関係も、2人にとっては順調そのものなのかもしれません。とはいえ、実際の夫婦仲はどうなのか、山田花子さんの口から説明してほしいと望むファンは多くいるようです。結婚し、2人の子宝にも恵まれ、現在の山田花子さんは仕事に育児にと日々大忙し。何も語らないのは、それだけ山田花子さんにとって、今が一番充実しているということなのかもしれません。[文・構成/grape編集部]
2020年09月11日2018年末にパリのラ・ヴィレットで開催され1か月間で3万人以上を動員した「MANGA TOKYO」展の凱旋展が開催される。「MANGA」を通して再発見できる、世界の人々を魅了する東京。「パリでは日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮への関心が非常に高く、それは19世紀のフランスで日本の浮世絵などがジャポニスム旋風を巻き起こしたことに連なります」教えてくれたのはゲストキュレーターの明治大学准教授・森川嘉一郎さん。出品コンテンツは90タイトル以上、マンガ原画やアニメ、ゲームの制作資料など500点以上という圧巻のボリュームだ。日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品は、現実の都市の景観がリアルに描写されているものも多い。作品とキャラクターが、駅や電車、コンビニエンスストアなど実空間とシンクロすることで、作品と都市の双方にファンが生まれる。本展では、そんな事例をインスタレーションとして再現する試みを実施。1/1000の縮尺で再現された幅約17m、長さ約22mの巨大都市の模型を会場の中心に設置し、それを取り巻くように様々な作品のシーンを展示する。「基本的に作品よりも場面を重視した展示です。時代を超えた東京をそれぞれの時代の少年目線、女性目線で鮮やかに切り取り、会場の巨大模型と照らし合わせることで位置関係を明らかに。フィクション作品をパノラマのように見渡す体験を提供しています」普段暮らしている街がドラマの舞台になると嬉しくなったり、普段の街が違って見える。そんな発見が、本展にはあちこちに溢れている。1もはや日本アニメの定番?永遠のテーマ“破壊と復興”。日本のフィクション作品において、天災や未知なる生物の襲来などで東京が破壊されるシーンはもはや定番。それは東京が実際に何度も壊滅的な打撃を受け、そのたびに奇跡的な復興を遂げてきた歴史があるから。「破壊と復興の反復」セクションでは、単なるランドマークにとどまらず、未来への対策まで映し出された作品を紹介。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』では、街中を疾走する初号機の背景に富士山が。細部までリアリティを追求した表現。©カラー2生活の場である東京の変遷をたどる「東京の日常」シーン。破壊と復興という非日常の合間には人々の暮らしがあった。ここでは江戸時代からの近代化と敗戦、戦後の高度経済成長からバブル、現在まで、作品に描かれてきた人々のライフスタイル、価値観の変化を、絵巻のように並べて紹介。生活の場としての東京の変遷をたどる、まるで時間旅行のような華やかなセクションに。歴史『サクラ大戦』など、江戸時代末期から現代へと、近代化の幕開けを描いた作品で歴史に興味を持つ人も。©SEGA3実際に登場したキャラクターに注目。「キャラクターvs都市」ここでは、現実の東京の都市空間に様々なフィクションのキャラクターが現れるようになっている現実に注目。街に現れるキャラクターのラッピングカーや電車、お台場に現れた実物大のガンダム立像、さらにはアニメの舞台となった現場を訪れる聖地巡礼など、現実とフィクションが混在する新たな都市風景の事例を紹介する。お台場の「実物大ユニコーンガンダム立像」はもはやエリアの顔。子供だけでなく幅広い世代のファンからも支持される。撮影協力:ダイバーシティ東京 プラザ©創通・サンライズ「MANGA都市TOKYOニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020」国立新美術館 企画展示室1E東京都港区六本木7-22-2開催中~11月3日(火)10時~18時(入場は閉館の30分前まで)火曜(9/22、11/3は開館)、9/23休日時指定観覧券当日1600円ほか*事前予約制。オンラインにて日時指定観覧券または日時指定券(無料)の予約が必要。TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2020年8月26日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年08月20日新型コロナウイルスの感染拡大の影響により開催が中止・延期になった展覧会も多い中、美術ファンの救世主となっているのがアートマーケットプレイス『OIL by 美術手帖』内の展覧会図録・グッズ販売特設サイト「EXHIBITION CATALOGUE & GOODS COLLECTION」。ここでは5月22日現在、延期や中止になった展覧会の図録やグッズを販売。今後も規模を拡大してゆく予定。中止&延期になった展覧会の図録やグッズが手に入る。もともとアート専門ECサイトである『OIL by 美術手帖』。日本を代表する50を超える美術館やギャラリーが作品を出展し、品揃えが豊富。しかも運営は雑誌『美術手帖』なので、紙面と連動してアーティストを掘り下げ、理解を深めながら購入を検討できる点も魅力だ。『美術手帖』総編集長・岩渕貞哉さんに思いを聞いた。「自宅で念願の作品を発掘できたり、見逃した展覧会グッズを購入できたり。新しいアートとの出合いを提案していきたいですね」美術館が再開し特設サイトが役割を終えても、引き続き図録やグッズ、アート作品の他、限定品の制作にも力を入れる予定なので要チェック。「バルセロナ展」で注目された名作が、文房具のセットに。名画《幼少期のマリア》をあしらったクリアファイルは、両面に作品をあしらったもの。A6サイズのミニノートは、中が無地で自由に使える。「バルセロナ展」クリアファイル×ミニノートCのセット¥1,045(税込み)バイオテクノロジーを駆使し制作された楽曲は意外にポップ。微生物「シネココッカス」の塩基配列をイメージして作られたやくしまるえつこの楽曲「わたしは人類」CD。ドローイングや顕微鏡写真がプリントされたシャーレつき。「未来と芸術展」ポーチ入りCD¥3,500(税込み)キュートな阿彌陀佛と仏像のテープ。法隆寺の阿彌陀佛・仏像をユニークなイラストにしたマスキングテープ。幅約2.4cmと使いやすく、カットしてシールとして使っても。「法隆寺金堂壁画と百済観音」マスキングテープ(左・阿彌陀佛、右・仏像) 各¥449(税込み)インテリアとしても素敵!チェコ・デザイン展の図録ミュシャのポスターから、キュビスムの家具や食器、社会主義体制下の日用品に加え、児童向けアート、チェコ・アニメーションなど約250の作品を掲載。「チェコ・デザイン 100年の旅」展覧会公式図録¥2,200(税込み)サステナブルな世界をアートを通して訴える。“エコロジーへの気づきとサステナビリティの実践と提案”がテーマの芸術家オラファー・エリアソン。日本初公開の新作も多数収録。「オラファー・エリアソンときに川は橋となる」公式図録¥3,520(税込み)幻の展覧会の全貌がこの一冊に凝縮!新型コロナウイルスの感染拡大の影響により開催中止となった「芸術と力」展。古今東西の芸術が、昔から担ってきた社会的な役割にフォーカスする。「ボストン美術館展芸術×力」公式図録¥2,500(税込み)伝説の写真家の作品でコーヒーを。“カラー写真のパイオニア”と呼ばれたNYの写真家ソール・ライターの作品が印刷されたオリジナルマグカップ。箱入りでギフトにも。「ソール・ライター展」マグカップ(大)〈無題、撮影年不詳〉¥2,200(税込み)OIL by 美術手帖※掲載商品は売り切れの場合もあり。また価格に加え別途送料がかかります。※『anan』2020年6月17日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年06月10日最新技術を駆使したエンタメ&カルチャースポットが続々とオープン中。今回は花をテーマにした施設「HANA・BIYORI」を女優・岸井ゆきのさんが体験しました!岸井ゆきのが体験レポート!エンタメ&カルチャースポット最前線。次々に東京にオープンする新施設のなかで、今回女優の岸井ゆきのさんに体験してもらったのは、先日オープンしたばかりの「HANA・BIYORI」。ここは「よみうりランド」に隣接する、花と自然がテーマの新感覚フラワーパーク。「このあたりは昔から家族や友達と何度も足を運んでいて、実は私にとって馴染み深い場所。今日久しぶりに来て、以前の思い出がよみがえってきました」と懐かしそう。元は「よみうりランド」内にあった日本庭園が装いを新たに新感覚のフラワーパークへ生まれ変わったと知ると「いつの間に。『よみうりランド』もバージョンアップしているんですね」と驚いた様子。未知なる施設に興味津々で「ガンガン歩いて詳しくレポートします」と宣言。早速、期待に胸を膨らませ園内へ!まず、やってきたのは施設の中心に位置する巨大な温室「HANA・BIYORI館」。この館を囲むように、園内には花の庭園と桜並木が広がっている。「この温室がメイン会場なんですね!中に入ってみましょう」と岸井さん。「HANA・BIYORI館」のクライマックスは、1日4~6回上映される花とデジタルのアートショー。こちらは実物の花とデジタル、音響など様々な演出技術を融合させた最新鋭のイマーシブ(没入型)空間がテーマ。投影された四季折々の景色の中を歩き回る岸井さんは、迫力満点の映像に驚きを隠せない様子。「もう、びっくりしました!前後から迫る音響はその振動が体に響くほど。シーンによっては雪まで降る。五感に訴える映像ってこういうことかも」。実は、このシアターはマルチエンディングシステムを採用。センサーが来場ゲストの感情を分析して、エンディングシーンが切り替わるのも画期的。「HANA・BIYORI館」で人気なのが、可愛いしぐさが胸キュンと評判のコツメカワウソ。餌穴を通してコツメカワウソと触れ合った岸井さんも、これには大興奮。「こんなに接近する機会ってあります?あの小さな手を出してくる姿が可愛くて、もう感激です!手が柔らかくて、めちゃくちゃ癒されました」。ここではスタッフからの生態トークや餌をあげる体験イベントも開催予定(現在は休止中)。同館でもう一つの目玉は巨大なアクアリウム。「花だけじゃなく、こんなにたくさんの魚も見られるんですね。色とりどりで綺麗です」と岸井さん。こちらは、沖縄の海を彩る魚が主役の長さ8mの水槽。一方には緑豊かな水草が拡がる3mの水槽が。岸井さんが見上げるのは温室内に併設のカフェテリア店内。「太陽の光がさんさんと降り注ぐ、花と緑に囲まれたボタニカルカフェって非日常的。天井いっぱいのフラワーシャンデリアを眺めながら、ゆっくりお茶できる時間って最高ですね。誰もがリフレッシュできると思います」屋外エリアの見どころのひとつ「四季の庭」には季節ごとに花が1万5000株も植えられ、“毎日がお花見日和”を体現。反対側の「セコイアの庭」に構える世界有数の大木センペルセコイアは象徴的な存在。「母がガーデニング好きなので、私もお花が大好きなんです。今日は自然に触れてマイナスイオンをたっぷり浴びました。またゆっくりと家族で訪れたいです!」HANA・BIYORI満開の花を毎日楽しめる次世代フラワーパーク。300鉢超の吊り花が咲き誇る1500平方メートルの温室では、花とデジタルが融合したアートショーが開催。温室外に広がる日本庭園には文化財も。ワークショップなどイベントも予定。東京都稲城市矢野口4015-1(よみうりランド隣接)TEL:044・966・87179:30~17:00※時期により変動不定休入園料¥1,200ほかきしい・ゆきの1992年、神奈川県生まれ。第43回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。4/10スタート、金曜深夜ドラマ24『浦安鉄筋家族』(テレビ東京系)に出演。ブラウス¥19,000スカート¥23,000(共にロワズィール TEL:03・6861・7658)ソックス¥2,100パンプス¥18,600(共にアデュー トリステス TEL:03・6861・7658)イヤリングはスタイリスト私物※『anan』2020年4月15日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・白男川清美ヘア&メイク・藤垣結圭取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年04月13日4月5日(日)~9月27日(日)に岡田美術館にておこなわれる「生誕260年記念 北斎の肉筆画 ―版画・春画の名作とともに―」の魅力に迫ります。葛飾北斎の実力を思い知る、圧倒的な肉筆画の数々。江戸の浮世絵師と聞いて誰もがまず思い浮かぶ作家といえば、葛飾北斎。1760年、現在の墨田区に生まれた北斎は6歳の頃から好んで絵を描いた。数え年で19歳の時、役者絵版画で一世を風靡し、美人画で有名だった勝川春章に弟子入り。浮世絵師・勝川春朗としてデビューする。勝川派から離れた後は、たびたび画号を変えて90歳で生涯を閉じた。今年は北斎の生誕260年。それを記念した本展では彼の40歳代から最晩年までの各時代を代表する肉筆画11点を中心に、版画・版本、春画を含む全17点の北斎作品が展示される。ちなみに肉筆画とは、大量生産できる版画に対し、絵師が一点一点筆で描く唯一無二の絵のこと。版画より自由度が高いため絵師の実力がダイレクトに反映されるのが特徴だ。まず最大の見どころは、北斎50歳前後の作品と伝わる肉筆美人画。なかでも「夏の朝」「美人夏姿図」の2点が並んで展示される機会はめったにない。また、北斎ファンには欠かせない浮世絵「冨嶽三十六景」より、三役とも呼ばれる「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」も登場する(※)。これらは北斎が70歳の頃に手掛けた作品で、西洋のプルシアンブルーの顔料を使った表現が話題を呼び、風景版画の大ブームを巻き起こした作品だ。さらに通なファンに愛されている『北斎漫画』も展示。北斎の漫画スケッチともいうべき本作は、彼が55歳から没後まで刊行され続けたロングセラー。変顔、動物、コミカルな人の動きなどユーモアたっぷりのこの本もお楽しみのひとつだ。さらにもう一つ、大人向けの企画として紹介したいのが北斎作の春画。特に北斎が絵だけでなくストーリーまで担当した『萬福和合神』は、読み物としても楽しめるはずだ。迫真の精密描写に注目!質感がわかるほどの肉筆画。上・義経、静御前、弁慶という人気の3人を描いた作品は精密かつ構図も洒落ている。葛飾北斎「夏の朝」(部分)19世紀初頭 岡田美術館蔵下・髪を整える女性の傍らには金魚鉢や房楊枝(歯ブラシ)もあり当時の文化も伝える。葛飾北斎「堀河夜討図」(部分)19世紀前半 岡田美術館蔵以前はこんな作風も!40歳代以前に描かれた屏風。北斎が40歳頃よりも以前に描いた屏風絵。私たちがよく知る彼の作風とは違い、優しいタッチで四季の移ろいを伝えている。年代によって違う北斎絵の多彩さを楽しめるのも本展の魅力だ。葛飾北斎「四季耕作図屏風」(部分)19世紀初頭 岡田美術館蔵生誕260年記念 北斎の肉筆画 ―版画・春画の名作とともに―岡田美術館神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-14月5日(日)~9月27日(日)9:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)会期中無休一般2800円ほかTEL:0460・87・3931※冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」「山下白雨」はそれぞれ展示期間が異なります。※『anan』2020年4月8日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年04月01日世界5都市で100万人以上を動員した展覧会「バンクシー展 天才か反逆者か」が上陸!世界で最も注目されているアーティストの一人、バンクシー。イギリスを拠点に活動する覆面アーティストの彼は、世界各地のストリート、壁、橋などにステンシルを使用しつつ風刺的なひと言を添えた作品を描く。社会問題に根ざした批評的な作品が美術界で評価されるほか、テーマパーク、宿泊施設、映画の制作など、その活動は多岐にわたる。彼は20年以上もストリートで描き続け、その場所だからこそ意味のある作品を残してきた。2018年のサザビーズのオークションでは、彼の作品が落札された瞬間にシュレッダーで切り刻まれるという衝撃の事件が起こる。実はこれを仕掛けたのもバンクシー。自分の意に反して、作品が勝手に高値で売買される現実に対するアンチテーゼだった。本展では、そんな反骨精神を貫くバンクシーの作品70点以上が来日。オリジナル作品や立体オブジェクト、限定プリントの展示、またバンクシー作品に込められた政治的なメッセージやユーモアあふれる風刺などを映像で紹介する体験空間も登場。LOVE IS IN THE AIR2003年、パレスチナの分離壁に描かれた本作は「火炎瓶ではなく花束を投げよう」というメッセージ。GIRL WITH BALLOONもともと英国ウォータールー橋に上る階段に描かれた後、数多く英国内に登場したが、現存する壁画はない。「バンクシー展 天才か反逆者か」アソビル神奈川県横浜市西区高島2‐14‐9アソビル2F開催中~9月27日(日) 10時~20時30分(最終入場は20時)無休平日大人1800円ほか※『anan』2020年4月1日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年03月28日6月7日(日)まで三菱一号館美術館にて開催されている『画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン』を紹介します。画家の愛が伝わる子供絵の数々。三菱一号館美術館の開館10周年を記念した本展は「子供」にフォーカスしたもの。19世紀末パリの前衛芸術家グループ「ナビ派」の画家たちの作品を中心に、当時の都市生活や近代芸術を、子供を通して紹介する。ナビ派とは19世紀末にパリで起こった芸術運動のひとつ。ポスト印象派の巨匠ゴーガンやゴッホなどの影響もあり、写実を重んじる伝統的な美術に対して、何気ない日常生活のワンシーンを力強い色彩や単純化された構図で描き出しているのが特徴だ。ナビ派は19世紀と20世紀の美術をつなぐ存在として近年、注目され評価も高まっている。そんな中から今回はピエール・ボナール、フェリックス・ヴァロットン、モーリス・ドニ、エドゥアール・ヴュイヤールら派の中心人物たちが残した油彩・版画・素描・挿絵本・写真など約100点を紹介。家の中で、公園で、と当時のパリ生活と共に描かれた作品からは、画家として、親として、向けられた子供への温かい眼差しが読み取れるはずだ。フェリックス・ヴァロットン≪可愛い天使たち≫1894年 木版/紙 三菱一号館美術館蔵モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル≪ブレのベルナールとロジェ≫1883年 油彩/カンヴァス オルセー美術館蔵Photo ©Musee d’Orsay, Dist. RMN-Grand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMFエドゥアール・ヴュイヤール≪赤いスカーフの子ども≫1891年頃 油彩/厚紙 ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵National Gallery of Art, Washington, Ailsa Mellon Bruce Collection, 1970.17.90フィンセント・ファン・ゴッホ≪マルセル・ルーランの肖像≫1888年 油彩/カンヴァス ファン・ゴッホ美術館蔵Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)『画家が見たこども展 ゴッホ、ボナール、ヴュイヤール、ドニ、ヴァロットン』三菱一号館美術館東京都千代田区丸の内2-6-2開催中~6月7日(日)10時~18時(入館は閉館の30分前まで。祝日を除く金曜、第2水曜、4/6、会期最終週平日は~21時)月曜休館(4/6、5/4、6/1と、トークフリーデーの3/30・4/27・5/25は開館)1700円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2020年3月4日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2020年02月28日文化学園服飾博物館で行われる「ひだ―機能性とエレガンス―」の魅力に迫りました。フリルのドレスは機能性から生まれた?本質を辿る展覧会。プリーツ、ギャザー、タックなど、さまざまな表現で語られる衣服のひだ。ドレープやフリル、などと聞くと優雅なイメージだけど、実はこれらは機能的な理由から誕生したもの。そんなルーツを学べるのが本展だ。例えばチェコやルーマニアの民族衣装のように、寒い東欧では細かいひだがたっぷりの服がよく見られる。実はこれ、寄せたひだの凸凹が空気層を作り、防寒効果をもたらしている。ペティコートやエプロンを重ねるのも効率よく体温調節を行うためだ。一方で高温多湿地域では、サリーなどのように一枚布のひだが外気を通し、直射日光から肌を守る。また、歴史的な絵画を見れば、王侯貴族の襞衿(ひだえり)やタックドレスなど、ひだが着る者のステイタスを表していることはよくわかる。大きな衿や揺れるドレープなど、ひだには豪華な生地や体のラインを強調したり、人の動作を優雅に見せる効果も。現代でいえばロリータ・ファッション愛好家も、お姫様のような華やかさに憧れている部分も多いかも。機能的にも歴史的にも影響力の高いひだ。その本質を本展で学んでみて。ウェディング・ドレスイギリス1855年頃女性用衣装中国苗族1990年代ドレスイタリアフォルチュニイ1910-20年代腰巻衣:マフェルコンゴ民主共和国20世紀女性用衣装チェコ1970年スカート:ガガラインド19世紀後半ひだ―機能性とエレガンス―文化学園服飾博物館東京都渋谷区代々木3-22-7新宿文化クイントビル開催中~2020年2月14日(金)10時~16時30分(1/24、2/7は~19時。入館は閉館の30分前まで)日・祝日、12/27~1/5休一般500円ほかTEL:03・3299・2387※『anan』2019年1月1日-8日合併号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年12月25日乗り鉄、降り鉄、食べ鉄も!アクティブに鉄道ライフを楽しむ女子が、昨今急増中。それを機に、日本の鉄道会社が一丸となり、アイデアと各社に眠るお宝を蔵出ししたスペシャルな展覧会『特別展天空ノ鉄道物語』が始まった。まず注目したいのは空間演出。52階からの景色と融合した会場では、ビジュアルデザインスタジオ〈WOW〉による演出&AR技術により、様々な鉄道が天空や目の前を走っているかのような迫力映像を体験できる。また鉄道車両ドアをモチーフにした映像インスタレーションも注目作。タッチすると電車の扉が開き、様々なイメージが飛び出す映像が幻想的だ。他にもアーティスト島英雄氏が手掛けた段ボールで作る原寸大のSL一号機関車も。さらに館内では往年の寝台特急「トワイライトエクスプレス」の原寸大レプリカを初公開、展望A個室スイートと食堂車両も忠実に再現されている。〈nendo〉がプロデュースしたガチャガチャマシンによる挽きたてのコーヒーや、オリジナル駅弁、駅そばなどのグルメも充実。マニア垂涎のグッズまで圧巻の内容だ。制服からヘッドマーク、時刻表までコンプリート。JR発足時についていた電車のヘッドマーク全国7社分に加え、JR7社、新幹線5社の現行制服が一堂に。また1964年から現在までの時刻表すべてが360度見渡せる展示も圧巻!他では売っていない駅弁、駅そばなど鉄道グルメが集結!会場のカフェでは種類豊富なオリジナル駅弁や駅そばを提供。グッズショップでは全国の人気駅弁も販売する。また併設のレストランでは限定メニュー〈観光列車豪華コース〉も。鉄道ファンの間で話題沸騰、オリジナルグッズも多数!各鉄道会社のオリジナルグッズや本展限定品が多数販売される。鉄道ファンに大人気だった「国鉄冷蔵コンテナ保冷バッグ」のサコッシュ版も数量限定でグッズセット券の特典に。『特別展天空ノ鉄道物語』森アーツセンターギャラリー&スカイギャラリー東京都港区六本木6-10-1六本木ヒルズ森タワー52F開催中~2020年3月22日(日)10時~20時(火曜~17時、入館は閉館の45分前まで)会期中無休一般2500円ほか※『anan』2019年12月11日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年12月06日2017年5月~2019年8月、改装中の渋谷パルコの囲いを彩る美術演出として、漫画家・大友克洋の代表作『AKIRA』の世界観を表現してきたアートウォール。この外壁が11月22日にオープンする新生・渋谷パルコ内のミュージアム&ギャラリーにて、オープニングエキシビションとして復活する。『AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRA ART EXHIBITION』だ。渋谷パルコにAKIRAが再び。アートウォールを手掛けたのはアーティスト・河村康輔。新作を発表すれば瞬く間に売れていく注目のアーティストである彼は、過去にも大友作品を用いて展覧会を開催。大友氏自身とも旧知の間柄で、互いの作品をリスペクトするからこそ実現するものだ。今回の展示では、時間とともにダメージを受けたアートウォールを工事現場から発掘し、再び巨大な作品にコラージュした。新装されたパルコの4階に誕生した「PARCO MUSEUM TOKYO」では、この作品に加えて、マンガやアニメの貴重な原画や連載当時のポスター、作品中に登場するオブジェの再現などを展示。また地下1階の「GALLERY X」には、巨大立体物のインスタレーションが登場する。どちらの展示も「AKIRAのテーマ」でおなじみのパフォーマンス集団・山城組の音楽が鳴り響く中で鑑賞することができる。さらに今回、空間演出を手掛けるのはグラフィックアーティストYOSHIROTTENが率いるクリエイティブスタジオ「YAR」。昨今、アパレルブランドなど国内外の様々な企業から注目される集団だけに、研ぎ澄まされた感性が引き起こす化学変化も見どころだ。写真:渋谷の街で、金田と鉄雄にもう一度会える!作品の舞台と同じく“2020年を目前に控えた東京”に出現した外壁アート。2017年から約2年間、渋谷パルコの外壁に施されたもの。ここでしか入手できない限定グッズも多数登場。記念書籍『AKIRA ART OF WALL 4冊組蛇腹ブック』をはじめ、『READYMADE』『NEXUSVII.』などアパレルブランドとコラボしたTシャツやパーカなど限定品も多数販売される。おおとも・かつひろ1954年生まれ。漫画家、映画監督。代表作『童夢』ほか多数。映画『AKIRA』では国内外で高い評価を獲得した。かわむら・こうすけ1979年生まれ。グラフィックデザイナー、コラージュアーティスト、アートディレクターとして広告や装丁も手掛ける。『AKIRA ART OF WALL Katsuhiro Otomo × Kosuke Kawamura AKIRA ART EXHIBITION』PARCO MUSEUM TOKYO東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷パルコ 4F11月22日(金)~12月16日(月)10時~21時(入場は閉場の30分前まで)GALLERY X(B1)11月22日(金)~12月8日(日)11時~21時(両会場とも最終日は18時閉場)一般1000円ほか。※『anan』2019年11月27日号より。文・山田貴美子©MASH・ROOM/KODANSHA©Kosuke Kawamura©AKIRA ART OF WALL EXHIBITION(by anan編集部)
2019年11月21日デザイナーの皆川明さんが設立したブランド、ミナ ペルホネン。オリジナル生地の服やプロダクトのデザイン、販売まで一貫して自社で手掛けた服は、流行に左右されず、長年着用できる普遍的な美しさを持つ。「特別な日常服」とファンに愛され続けたブランドが2020年に25周年を迎える。そんな節目に開催されるのが本展『ミナ ペルホネン/皆川明つづく』だ。ミナ ペルホネン史上、過去最大の展覧会で、創作の源泉に迫る。「活動当初から、せめて100年は続くブランドにしたいという想いがありました」と皆川さん。学生時代は陸上選手だった彼にとって、ブランドとは駅伝のようにつないでゆくもの、自分だけで終わらず後進と共に作り上げてゆくものだという認識が強くあった。加えて、生産地に赴き現地の職人と共にテキスタイルを作るミナ ペルホネンにとって、地場産業と末永く共存する関係を築くのはとても大切なこと。長い時間愛されるようにデザイナーと技術者が開発した作品は、デザインの寿命が長く、大量消費や大量廃棄を招かない。1枚の服を長く大切に着る、このサスティナブルなサイクルも次世代のファッション業界が“つづく”ために必要なものだと考えている。最近ではファッションに限らず、ファブリックから家具、食器、新聞の挿絵まで、仕事はますます広がっている。「それぞれの仕事にまた違う醍醐味がある」と意欲的に取り組んだ結果、その延長線上に現在がある。仕事は思わぬ方向につづいてゆく。そんな想いも本展のネーミングには込められている。展覧会ではそんな彼らの仕事の全容を多岐にわたり紹介する。生地や衣服、プロダクトに加えて、テキスタイル用の原画、皆川さんの挿絵など創作の背景を浮き彫りにする作品群や資料も併せて展示。演出を手掛けるスタッフも一流ぞろいだ。空間構成は建築家・田根剛が、グラフィックデザインには葛西薫が参加する。さらに会場には皆川さん原案で建築家・中村好文設計の宿のプロトタイプも登場。また現代美術家・藤井光が撮り下ろしたミナ ペルホネンの映像作品の上映も必見だ。「展覧会は見る人と展示品の距離が近く、素材や作品の細部に至るまで見ることもできる。来場者の感性でゆっくりと、何度でも鑑賞していただきたいですね」2000年の発表以来、ミナ ペルホネンを代表するテキスタイルとなった“tambourine”。“tambourine”2017SS photo:Shoji Onuma幾何学模様と具象的な図案を組み合わせた“symphony”。区分けされた菱形の中には小さな世界が広がる。“symphony”2019-20AW photo:sono(bean)年を経るごとに色が変化し、味わいが増すファブリックを用いた、形も色も可愛らしいインテリアシリーズ。数々の展覧会を過去にも行ってきたが、いずれも物語のある空間デザインが話題に。photo:Mitsuo Okamoto『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』東京都現代美術館東京都江東区三好4-1-1開催中~2020年2月16日(日)10時~18時(入室は閉室の30分前まで)月曜(1/13は開室)、12/28~1/1、1/14休一般1500円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)みながわ・あきら1967年、東京都生まれ。’95年に「ミナ」を設立。『クヴァドラ』『クリッパン』などの北欧テキスタイルブランドへのデザイン提供や新聞の挿画も手掛ける。※『anan』2019年11月27日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年11月20日「色彩の魔術師」と呼ばれたラウル・デュフィ。彼は20世紀のパリを代表するフランス近代絵画家のひとりで、アンリ・マティスやアンドレ・ドランなどと並び野獣派と呼ばれる画風を志向した人物。野獣派とは、原色を多用した、平面的で強烈な色彩と激しいタッチが特徴の絵画だ。『ラウル・デュフィ展絵画とテキスタイル・デザイン』が開催中。「まるで音楽が聞こえてくる」と称されたデュフィの鮮やかな世界。1877年、ノルマンディの港町に生まれたデュフィ。音楽好きで教会の指揮者兼オルガン奏者だった父と、ヴァイオリン奏者の母の間に生まれたため、音楽と海はとても身近なモチーフで創作の原点となってゆく。18歳から美術を学び始めた彼に、転機が訪れたのは32歳の時。当時“豪華王”と呼ばれたファッション・デザイナーのポール・ポワレと知り合い、版画でテキスタイルデザインを創り始めると、その鮮やかな色彩と大胆なモチーフの布地は、上流階級の女性たちを魅了し大評判に。これを機にデュフィは本の挿絵や舞台美術、タペストリーや陶器の装飾、『VOGUE』の表紙を手掛けるなど時代の寵児へと駆け上がってゆく。本展ではそんな彼の画業とテキスタイル、2つに注目。特にテキスタイルは草花や昆虫のモチーフ柄から、ダンスホールの風景やスポーツをする人々など、時代を映したモダンデザインまで充実の115点を展示する。また会場には、クリスチャン・ラクロワやオリヴィエ・ラピドスがデュフィデザインの布地を使用した艶やかなドレスや、豪華な舞台衣装も登場。当時の洗練されたモード界の息吹を感じられるはずだ。《ニースの窓辺》1928年 油彩/キャンバス島根県立美術館蔵A.《花と蝶〔デザイン原画〕》1916‐28年頃 インク/紙デュフィ・ビアンキーニ蔵B.《夏〔デザイン原画〕》1925年 グワッシュ/紙デュフィ・ビアンキーニ蔵C.《ヴァイオリン》1989年(デザイン1914‐20年頃) 毛織物デュフィ・ビアンキーニ蔵D.《幾何学模様の構図〔デザイン原画〕》1919‐28年頃 グワッシュ/紙デュフィ・ビアンキーニ蔵A.花と蝶を図案化したテキスタイル。B.特にバラはデュフィが好んだモチーフで、様々なバリエーションが残っている。C.ヴァイオリンと楽譜は音楽好きのデュフィが一生のモチーフにしたもの。D.幾何学模様をテキスタイルにいち早く取り入れたのもデュフィだった。『ラウル・デュフィ展絵画とテキスタイル・デザイン』パナソニック汐留美術館東京都港区東新橋1-5-1パナソニック東京汐留ビル4F開催中~12月15日(日)10時~18時(11/1、12/6は~20時、入館は閉館の30分前まで)水曜休一般1000円ほか TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2019年10月16日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年10月10日コートールド美術館は、ロンドン大学に付属する美術研究所の展示施設として1932年に開館。美術史と保存科学の研究の場としても世界で知られた存在だ。所蔵品の中心となっているのはイギリスの実業家サミュエル・コートールドが収集した印象派&ポスト印象派の作品。改修工事を機に、世界有数とも呼ばれるコレクションが日本にやってきた。研究機関ならではの鑑賞法で読み解く、印象派の名画。まず見逃せないのがマネ最晩年の傑作《フォリー=ベルジェールのバー》。こちらはマネが亡くなる前年に発表された大作で、来日するのは約20年ぶり。また英国随一の充実度を誇るセザンヌの油彩10点をはじめ、ゴーガン、ルノワール、ドガ、ロートレックなど巨匠らの傑作も登場する。さらに、本展の一番の特徴は絵画研究機関ならではの“読み解く”鑑賞法だ。つまり、画家が残した手紙の言葉や時代背景に関する情報、科学的な研究結果など、あらゆる手法で作品をより深く紹介してくれる。例えば、ゴッホの《花咲く桃の木々》には、ゴッホが友人の画家ポール・シニャックに宛てた手紙の内容も併せて紹介。「この地のすべては小さく庭、畑、木々、山々でさえ、まるで日本の風景画のようだ。だから私はこの主題に心惹かれたのだ」と記された内容から、ゴッホがいかに日本に憧れていたかがわかる。こうした画家の内面にも迫る趣向で鑑賞すれば名画の印象も変わりそうだ。『コートールド美術館展魅惑の印象派』東京都美術館 企画展示室東京都台東区上野公園8-36開催中~12月15日(日)9:30~17:30(金曜、11/2は~20:00。入室は閉室の30分前まで)月曜、9/17、9/24、10/15、11/5休(9/16、9/23、10/14、11/4は開室)一般1600円ほか TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)ポール・セザンヌ左の人物はセザンヌ作《パイプをくわえた男》でも描かれる。併せて展示。ポール・セザンヌ《カード遊びをする人々》1892-96年頃油彩、カンヴァス60×73cmコートールド美術館 ©Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)ポール・ゴーガンポール・ゴーガン《テ・レリオア》1897年油彩、カンヴァス95.1×130.2cmコートールド美術館 ©Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)エドゥアール・マネ現実とは異なった映り方をしているという鏡の表現の解説も。エドゥアール・マネ《フォリー=ベルジェールのバー》1882年油彩、カンヴァス96×130cmコートールド美術館 ©Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)フィンセント・ファン・ゴッホフィンセント・ファン・ゴッホ《花咲く桃の木々》1889年油彩、カンヴァス65×81cmコートールド美術館©Courtauld Gallery(The Samuel Courtauld Trust)※『anan』2019年9月18日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年09月16日今年7月に仏政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られたことが話題になった漫画家の永井豪さん。社会現象を巻き起こした『ハレンチ学園』、マンガ界の歴史に名を残す『デビルマン』、巨大ロボットマンガの金字塔『マジンガーZ』など、これまで世に送り出してきた作品は350以上。その作品は海外にも広がり、特にフランスではテレビアニメ版の『UFOロボ グレンダイザー』が『ゴルドラック』のタイトルで大ヒット。今も国際的に活躍する永井さんの50年を超える画業を振り返る展覧会『画業50年“突破”記念 永井GO展』が始まる。本展では、デビュー作から最新作まで、貴重な直筆マンガ原稿、カラーイラストなど600点以上を展示。「鬼・悪魔」「ロボット」「ギャグ」「魅力的なヒーロー・ヒロイン」というジャンル別に紹介される。また会場には『マジンガーZ』や『デビルマン』の世界観をイメージしたエリアを展開。今まで表に出ることのなかった秘蔵資料などを目にすることができる。またデビューまでの道のりをマンガ化した作品も、本展のために描き下ろされ展示される。「この50年はいつも締め切りに追われていて、目の前の仕事ひとつひとつ片付けることに一生懸命でした。気付けば50年という感じ。え、もうこんなに経ったのかと」(永井さん)膨大な量の作品を描いてきた永井さんだが、ネタが枯渇することはなかった。「紙に向かえば何かしら浮かんでくるタイプ」と自己分析し、ギャグマンガとシリアスな作品を描き分ける時も「キャラクターの中に入ってしまえば、自然にモードが切り替わった」と話す。なかでも「キューティーハニー」など女の子のキャラクターには特に思い入れがあり、いずれも自分の好みの女性像をミックスして描き出したものだと語る。創作の根底に流れていたのは、人間の本性を描き出すこと。「人間自体が生物であって、生存本能、異性に対する興味。これを描かなければ人間の本質を描いたことにならないと思うんです。性とバイオレンス、あらゆる人間ドラマのベースに必ずそれはあるはず」そんな想いを胸に生み出した作品にはいずれも、50年の歳月を経ても、色褪せず誰の心にも響く衝撃がある。「僕はデビュー当時、バイオレンスやエロティックを描くのが当然と思っていた。でも僕の中ではちゃんとモラルがあって、少年誌ではここまで、と線引きしてきた。だから自分の表現に対してダメ出しをしてきた数々の編集長とも、渡り合ってくることができたのだと思います」世間の冷たい目を感じながら反骨精神で描いてきた作品が美術館に並ぶ日がくるとは感無量と語る永井さん。その世界観を体感してみて。海外でも絶大な人気を誇る『マジンガーZ』。©1967‐2019 Go Nagai / Dynamic Productionながい・ごう1945年生まれ。石ノ森(当時は石森)章太郎のアシスタントを経て1967年デビュー。2018年、第47回日本漫画家協会賞・文部科学大臣賞受賞。現在も『ビッグコミック』にて「デビルマンサーガ」を連載中。『画業50年“突破”記念 永井GO展』上野の森美術館東京都台東区上野公園1‐29月14日(土)~29日(日)10時~17時(入場は閉館の30分前まで)無休一般1600円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル) 写真提供・永井GO展実行委員会※『anan』2019年9月18日号より。インタビュー、文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年09月11日2007年より全4部作として公開されているアニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ。2020年6月に公開の最終作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を控え、改めてその魅力を再発見できる展覧会『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展+EVANGELION ARTWORK SELECTION』が開催される。「国内外に幅広い年齢層のファンを持つ本作をキーとした催事は、高島屋の中でも特に若い方や外国人のお客様が多い新宿店に相応しいと企画担当者が考えたことが始まりでした。今回は、これまでヒットして全国を巡回してきた『エヴァンゲリオン展』と『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展』の2つをドッキングし、さらに新作映画の展示物も加えた、魅力満載の内容です」(高島屋広報)11階の催事場をフルに使った今回の展覧会は、エヴァンゲリオンの原画と日本刀作品が対応し、双方を楽しめる趣向に。劇中に登場した刀剣を、日本を代表する刀匠が実際の刀剣として再現した作品が今回の主役。ロンギヌスの槍など人気の刀剣に加え、レイやアスカ、カヲルなどの人気キャラクターや初号機などの機体から発想した本展オリジナル作まで26点を展示する。なかでも注目は「刀野薙(なたやなぎ)」。これはエヴァンゲリオン・メカニックデザイナーである山下いくと氏と刀匠・宮入小左衛門行平氏がコラボし、1年7か月もの歳月をかけて完成させた作品。山下氏と宮入刀匠は直接会って話をし、その後も手紙やイメージ画を何度もやり取りしながら細部にまでこだわって制作を進めたとのこと。山下氏が描くエヴァ仕様の刀は、日本刀業界において前代未聞の形状だけに、宮入氏は弟子たちと手分けして様々な分野へ相談、鞘は木工職人や鉄を扱う工場にもサポートを依頼したという。こうして出来上がった逸品は、まさに伝統工芸を担う職人の粋を集結させた目玉だ。また、本展のために原画200点を選りすぐった「EVANGELION ARTWORK SELECTION」には、劇場版4部作の名シーンはもちろん、より細かく描き込まれたアニメーターの筆致が感じられるもの、指示出しなどのコメントやメモが多いものを選出。作品に対する熱、現場の創意を感じてもらいたい意図だ。ファンはもちろん、国内外のクリエイターにも大きな影響を与えるエヴァンゲリオンシリーズ。作品に影響を受けて、業界の垣根を越えて新しい作品を生み出す。その波及効果をリアルに実感できる内容だ。ヱヴァンゲリヲンと日本刀展2012年に備前長船刀剣博物館が企画した、日本刀と『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』がコラボした展覧会。盛況で本展まで全国を巡回してきた。上・「刀野薙」はエヴァのメカニックデザイナー・山下いくと氏がデザインを描き下ろし。下・それを日本屈指の刀匠・宮入氏が再現した作品。宮入氏もマンガが大好きで、本作に意欲的だった。©カラーEVANGELION ARTWORK SELECTION2013年から全国を巡回する『エヴァンゲリオン展』の中から、貴重な原画約200点をセレクトした、本展のために再構成されたオリジナル・コレクション。「:Q」C‐1271/修正原画©カラー『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展+EVANGELION ARTWORK SELECTION』新宿高島屋11階 特設会場東京都渋谷区千駄ヶ谷5‐24‐28月30日(金)~9月9日(月)10時~20時(金・土曜~20時30分、最終日~17時。入場は閉場の30分前まで)一般1000円ほか。新宿高島屋TEL:03・5361・1111(代表)©カラー※『anan』2019年9月4日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年08月31日超大作映画『スター・ウォーズ』シリーズの大展覧会「STAR WARS(TM)Identities: The Exhibition」の見どころを紹介。1977年の公開以来、世界中のファンに愛されてきた『スター・ウォーズ』シリーズ。12月20日に公開される最新作『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で、この超大作映画もついに完結する。そんな記念すべき節目にあわせて開催された大展覧会が好評だ。本展には、ジョージ・ルーカスが2021年ロサンゼルスに開館予定の美術館「ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブ・アート」のコレクションがひと足早くお目見え。小道具、模型、衣装、映画のオリジナルイラストなど約200点の品が展示される。ちなみに終了後は本国の美術館に収蔵されるため、日本で拝める機会は今回が最後だ。また、もうひとつの注目コンテンツがインタラクティブ・クエスト。これは場内10か所に設置されたインタラクティブスペースにて、入場時に渡されるID付きブレスレットをかざし、「自分を作るフォースは何か?」に関連する質問に答えていくと、自身の性格や価値観が反映されたオリジナル・キャラクターが導き出されるというもの。このシステムの開発には、モントリオール・サイエンス・センターと、遺伝、神経心理学、保健科学、心理学などの専門家らが全面協力。自分が『スター・ウォーズ』界の人物だとしたらどんなキャラクターになるのか、科学的な根拠に基づいて解析している。キャラクターは約5000万通りも創造できるから、他人とかぶることもない。その場でURLも発行されるので、キャラクターを持ち帰り、SNSなどでシェアすることも可能だ。大好きな映画の世界観を通して、自分の個性を発見できるハイテクな展覧会。マニアックなファンでなくても、時間を忘れて楽しめそうだ。STAR WARS(TM) Identities: The Exhibition寺田倉庫G1-5F東京都品川区東品川2-6-4開催中~2020年1月13日(月)10時~19時(入場は閉場の30分前まで)9/9、10/21、11/18、2020年1/1~3休大人3500円info@starwarsidentities.jp©&TM 2019 Lucasfilm Ltd. All rights reserved. Used under authorization.※『anan』2019年8月28日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年08月19日赤いきょうだいの中で、唯一黒い魚の物語『スイミー』をはじめ、ねずみの『フレデリック』や、しゃくとりむしの『ひとあし ひとあし』など、数々の名作で知られる絵本作家レオ・レオーニ。日本では「スイミー」が教科書にも掲載されファンが多い。そんな彼の人生とともに、作品を紹介する大回顧展『みんなのレオ・レオーニ展』が始まった。レオーニは本名レオナルド・リオンニといい、1910年オランダ・アムステルダムの裕福なユダヤ人家庭に生まれた。家にはシャガールの油絵があり、デッサンは叔父さんから教わるなど芸術に囲まれて育った。学生時代は両親の仕事の関係で欧米を転々としながら過ごし、多彩な文化に触れながら成長する一方で、「自分とは何者なのだろう」という疑問を常に抱き続けた。その疑問こそが、彼の創作の原点となる。20代後半にはイタリアでグラフィック・デザイナーとして活躍するも、第二次世界大戦中にユダヤ人への迫害を逃れアメリカに亡命。雑誌のアート・ディレクターや編集長を務め、NYでも成功を収める。けれど心には葛藤があった。「本当に自分がやりたいことは何だろう」と。そんな折、孫のために描いた絵本『あおくんときいろちゃん』が出版され、49歳で絵本作家としての人生を歩み始める。他人のための仕事を引退し、「おのれとは何者かを知ることは、子供にとって大切なこと」と仕事に邁進したレオーニ。研ぎすまされた色彩感覚の絵と、人には個性と役割があるというメッセージ。それらが集結した絵本は、世代を超えて今も私たちを惹きつける。「スイミー」1963年スロバキア国立美術館Swimmy©1963 by Leo Lionni, renewed 1991/Pantheon On Loan By The Slovak National Gallery「平行植物」シリーズ:《向月葵》1971年Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family「アレクサンダとぜんまいねずみ」1969年Alexander and the Wind-up Mouse©1969, renewed 1997 by Leo Lionni/Pantheon Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family「ザ・ファミリー・オブ・マン(人間家族)」表紙1955年Works by Leo Lionni, On Loan By The Lionni Family『みんなのレオ・レオーニ展』東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館東京都新宿区西新宿1‐26‐1損保ジャパン日本興亜本社ビル42F開催中~9月29日(日)10時~18時(入館は17時30分まで)月曜休(8/12、9/16、9/23は開館)一般1300円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2019年7月31日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年07月30日フランスを代表する現代アーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの50年にわたる創作活動を紹介する国内最大規模の回顧展が始まった。人の痕跡を日用品から。ボルタンスキーの大規模回顧展。ボルタンスキーは日本とも縁が深く、近年では「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」や「瀬戸内国際芸術祭」にも参加。また2008年からベネッセアートサイト直島にて展開されている≪心臓音のアーカイブ≫は、人間が生きた証として人の心臓音を採録するという斬新なプロジェクトだ。他にも、越後妻有の廃校を使ったインスタレーションや、ドキュメント映像など、様々な作品を日本で発表してきた。作品の根底にあるのは、どれも人間の存在を訴える悲痛な叫びだ。原点は彼の生い立ちにある。1944年、ナチスの占領時代が終わった直後のパリで生まれたボルタンスキー。ユダヤ人である彼の父親は、迫害を逃れるため母親と偽装離婚し、家の床下に隠れ住まなければならなかった。終戦後、周囲から聞かされた強制収容所の話など、幼少時の経験が彼の生涯のトラウマとなる。例えば‘87年に発表された≪保存室(プーリム祭)≫。電球と子供たちの白黒写真を祭壇風に設えたこの作品は、使用されたブリキ缶が骨壺を暗示していて、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を語る代表作となる。その後、ボルタンスキーはユダヤ人にとどまらず普遍的な死の表現に目を向け、あらゆる立場の人々を想った作品を制作。表現手段も多様化し、古着など様々なメディアを使い、人間の存在と不在を示す作品を追求してゆく。‘90年代中盤からは、劇場や廃病院といった空間でのインスタレーションにも着手。最近では作品に神聖さを志向し、人里離れた砂漠や海岸など、簡単には辿り着けない場所に作品を設置していた。そんなボルタンスキーの作品を、東京で体感できる絶好のチャンスが本展。今回は初期作品から最新作まで約46点(予定)もの作品を紹介する。“空間アーティスト”を自認する彼だけに、展示は会場に合わせて作品を組み合わせ、ひとつの大きなインスタレーションとして構成されている点も見どころ。彼の死生観から生まれる独創的な作品は、きっと私たちの琴線に触れるはずだ。≪保存室(カナダ)≫1988 / 衣類 / 作家蔵© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, © Ydessa Hendeles Art Foundation, Toronto, Photo by Robert Keziereクリスチャン・ボルタンスキー1944年パリ生まれ。‘60年代後半から作品を発表し始め、‘70年代からヴェネチアビエンナーレなどの国際展に招待されるなど国際的なアーティストに。2006年、高松宮殿下記念世界文化賞受賞。クリスチャン・ボルタンスキー © Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo by Didier Plowyクリスチャン・ボルタンスキー -Lifetime国立新美術館 企画展示室2E東京都港区六本木7-22-2開催中~9月2日(月)10時~18時(金・土曜に関しては6月は20時まで、7・8月は21時まで。入場は閉館の30分前まで)火曜休館一般1600円ほか。 TEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2019年6月26日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年06月24日浮世絵師たちが愛した江戸を、今も変わらぬ地形から感じる展覧会『江戸の凸凹―高低差を歩く』。今、東京の地形に着目した新しいアプローチの街歩きの本が、書店に続々と登場している。東京スリバチ学会会長・皆川典久氏の著書『東京「スリバチ」地形散歩』シリーズをはじめ、『タモリのTOKYO坂道美学入門』、松本泰生氏の『東京の階段』など。確かに自分の暮らす町について、丘はどんな地層で形成されているのか、幼い頃に遊んだ川はどこに続いているのか…その成り立ちを知ると、地域に対してさらに愛着が湧くのも事実。そんな話題に好奇心をくすぐられるあなたに、ぜひともおすすめしたい展覧会がこちら。東京は、西に武蔵野台地が、東には東京低地が広がる。坂道や階段も多く、高低差を感じながら散策するのも楽しい都市だ。その感覚は、150年以上前に住んでいた先人たちもどうやら同じだったらしい。江戸時代に描かれた浮世絵の風景画を眺めてみると、歌川広重をはじめとする絵師たちも、しばしば地形の高低差を意識した構図で江戸の町を描いている。すっかり変貌した現在の東京と江戸の街並みでも、高低差や坂道などの地形は、ほぼ変わらない。そこで本展では、浮世絵に描かれた江戸の地形、特に高低差に焦点を当てた浮世絵を80点以上紹介。愛宕山や駿河台などの山や台地、神田川など河川の周囲に広がる谷、築地や深川などの水辺に広がる低地、江戸見坂や九段坂などの坂。昔と変わらない地形を眺めつつ、古き良き江戸散歩を追体験できる。「ここはあの広重も愛した江戸の地形なんだ」と思えば、街歩きがさらに感慨深く、楽しくなることは間違いない。歌川広重「名所江戸百景昌平橋聖堂神田川」御茶ノ水にある昌平橋。正面に神田川が流れ、右手に湯島聖堂、左手には切り立った崖があるこの絵は東京屈指の高低差に富んだ風景。会場ではこの絵の横に現在の昌平橋を写した写真を並べて展示する。歌川広景「江戸名所道外尽廿八妻恋こみ坂の景」妻恋神社へ向かう途中にある現在の立爪坂の風景。歌川広重「東都名所御殿山花見品川全図」江戸時代から花見の名所として有名だった御殿山の春模様。『江戸の凸凹―高低差を歩く』太田記念美術館東京都渋谷区神宮前1‐10‐106月1日(土)~26日(水)10:30~17:30(最終入館は17:00まで)月曜休一般700円ほかTEL:03・5777・8600(ハローダイヤル)※『anan』2019年6月5日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2019年06月03日