焼肉店〈銀座山科(やましな)〉、熟成肉専門店〈中勢以(なかせい)〉などを運営するeatopia。同社が2022年7月18日(月)、銀座4丁目交差点を臨む銀座駅直結〈GINZA PLACE(銀座プレイス)〉最上階に、カウンターの鉄板焼き割烹と完全個室の焼肉割烹の二つのジャンルを一店舗で楽しめるハイブリッド型のレストラン〈本店山科(ほんてんやましな)〉をオープンさせました。鉄板焼き割烹、焼肉割烹から成る銀座〈本店山科〉。〈本店山科〉の窓の外に広がる景色。〈本店山科〉の窓の外に広がる景色。東京メトロ銀座駅A3出口直結、銀座四丁目交差点に面した複合施設〈GINZA PLACE〉の11階にオープンした〈本店山科〉。ビルの最上階に位置する同店からは、和光の時計塔をはじめとした銀座の一等地のきらびやかな景色が広がります。鉄板焼き7名個室カウンター(写真は5名時)。鉄板焼きサブカウンター。鉄板焼きメインカウンター。銀座にある姉妹店〈銀座山科〉のフラッグシップ店として誕生した〈本店山科〉は、カウンターの鉄板焼き割烹と完全個室の焼肉割烹の二つのジャンルを一店舗で楽しめるお店になっています。「鉄板焼きをもっと身近に」そんなコンセプトで提案される鉄板焼きは、“鉄板焼きスタイルの肉割烹”がテーマ。これまでのクラシカルな鉄板焼きの形式にとらわれず、割烹料理を融合させてアップデートしています。料理人・長田卓氏。〈東京ベイ東急ホテル〉や〈鉄板焼 石垣島きたうち牧場 銀座店〉などで経験を積んだ、鉄板焼き一筋20年の料理人・長田卓氏がカウンターで行うライブ感溢れるパフォーマンスも見逃せません。肉は、タン、ハラミ、イチボ、ランプ、フィレ、サーロインなどの部位を生、焼き、煮物、などさまざまな調理法で提供。そのほか、素材の味をシンプルに活かして焼き上げる魚介や旬の季節野菜を織り交ぜた、食べ疲れない鉄板焼きを提案しています。鉄板焼きでは珍しい、ハラミやタン、生肉に加え、スライダーなどの遊び心ある料理を楽しめるのも〈本店山科〉ならではの魅力です。焼肉10名個室。焼肉8名個室。一方の焼肉割烹は、姉妹店〈銀座山科〉の焼肉コースをベースに、日本料理の要素を加えた内容で、各個室に専属の焼き師が立ち、それぞれの肉を最適な火入れで焼き上げます。シグネチャーメニューである、シャトーブリアンを使ったカツサンドは、低温調理した肉を薄衣でサッと揚げ、外はカリッと中はふんわり仕上げた食パンで豪快にサンド。唇で噛み切れるほど柔らかく仕上げています。40カ月以上、超長期肥育させた岡崎牧場の「完熟近江牛」を使用。「完熟近江牛」のタン。鉄板焼き割烹と焼肉割烹の両方でメインとして使用されているのが、滋賀県のブランド牛「近江牛」の中でも最高級ランクとされる、超長期肥育で生体熟成(=生きたまま熟成させること)させた岡崎牧場の「完熟近江牛」。通常24カ月を基準に出荷される黒毛和牛の中で1%にも満たない、40カ月以上かけてストレスなく育てられるメスの「完熟近江牛」は、旨味が強くキレのある脂が特徴です。ちなみに岡崎牧場の「完熟近江牛」は全体で月に30頭ほどしか出荷されず、そのうち1頭を〈本店山科〉が仕入れているそう。大変貴重な牛であることが窺えます。〈本店山科〉のコースメニューは鉄板焼き割烹で11品の「銀座本店コース」15,000円、12品の「鉄板山科コース」25,000円、12品の「鉄板山科特別コース」27,000円の3種、焼肉割烹で12品の「焼肉本店コース」18,000円の1種を展開。今回はこれらのコースの中からおすすめメニューを厳選していただきましたので、その内容をご紹介します。キャビア、ウニ、完熟近江牛を使った「和牛ウニ寿司」。「和牛ウニ寿司」。まずは「銀座本店コース」と「焼肉本店コース」で提供される華やかな見た目の「和牛ウニ寿司」から。この日はウニの殻の中に、つや姫を使った赤酢飯、ウデやカイノミ、トモサンカクやカブリなどを細かく刻んだ完熟近江牛、岩手県産の紫ウニが入っており、イタリア産のキャビアがトッピングされていました。その日に揚がった紫ウニはサイズも大ぶりでトロッと濃厚、赤酢飯のまろやかな酸味と完熟近江牛ならではのアミノ酸系のうま味、キャビアの潮の味わいが、噛み締めるたびに波打つように口の中でさまざまなハーモニーを奏でます。お好みで静岡県産の本山葵をつけて、味を変えるのもおすすめ。コース冒頭でお寿司が提供される点から、従来の鉄板焼きというイメージより、割烹に近い印象を受けました。見た目も味も涼やかな「初夏の一皿」。「初夏の一皿」。続いては「銀座本店コース」以外の3コースで提供される「初夏の一皿」を。右から時計回りで、完熟近江牛のシキンボという部位を大葉や茗荷などとともに昆布で巻き上げた夕日巻きというお料理に、賀茂茄子の揚げ浸しと完熟近江牛の西京焼き、格子模様になった魚のすり身のカステラ、山椒で焼いた完熟近江牛のミスジの蕪蒸しとなっています。蕪蒸しにはミツバや山椒の実が丸ごと入っていたり、夕日巻きは薬味や酸味がきいていたり、蒸し暑さを忘れさせてくれる爽やかな一皿となっていました。技の細かさ、味わいの繊細さは、やはり鉄板焼きながら割烹を謳う同店ならではであると感じます。牛1頭で4人分のみ!希少な「厳選極厚タンステーキ」。「厳選極厚タンステーキ」。続くは「鉄板山科特別コース」でしか提供されない「厳選極厚タンステーキ」。1頭から4人分しか取れない完熟近江牛のタン元を分厚くカットし、両面200度の高温で表面を香ばしく焼き上げたあと、150度程度の低温でゆっくり火入れすることで、美しいロゼ色の断面に仕上げています。「厳選極厚タンステーキ」。焼き上げる際にはモンゴル産の岩塩を振り掛け、仕上げには宮崎県産の天然海塩を使用。お好みでレモンに押し当てていただく極厚タンステーキは、分厚いながらもサクッとした歯切れの良さが素晴らしく、押し返すような弾力、レアな舌触り、じんわりと広がるバターのようなうま味がたまりません。伊勢海老の半身を七輪で提供する「活伊勢海老炭火焼」。「活伊勢海老炭火焼」(写真は4名分)。「活伊勢海老炭火焼」(写真は4名分)。〈本店山科〉の凄さは完熟近江牛だけにとどまりません。「鉄板山科コース」と「鉄板山科特別コース」で提供される「活伊勢海老炭火焼」も注目していただきたい一品です。「香りも味も体験も、最上のものを提供したい」という長田氏の想いもあり、伊勢海老を鉄板で焼き上げるのではなく、別室で炭火焼きにして、鉄板で火入れの調整をし、仕上げに七輪で炙るようなかたちでテーブルにサーブされます。この日の伊勢海老は千葉県大原産。まずは一番身のおいしい部分を、伊万里焼のお皿で提供してくれました。大分豊後産の炭火で焼き上げた伊勢海老は表面に炭の香りをまといつつ、中はレアなみずみずしい仕上がりで、新鮮な伊勢海老の味わいをうまく引き立てています。続いて七輪にのせられた伊勢海老の半身をいただきます。食べやすいようにほぐしていただいた身が、こんもり盛られていて、圧巻のビジュアルと鳥取県産むらげの醬の香ばしい香りに胸が高鳴ります。伊勢海老を殻ごとそのまま七輪にのせているため、甲殻類特有の味わいが先ほどよりも強く、炭の香りがスパイスのような役割を果たしています。極めつきは、頭の部分に詰まった海老味噌。ウニのような濃厚な味わいで、ついつい日本酒もオーダーしたくなってしまいました。キュートなミニサイズでも本格的な味わいの「山科和牛スライダー」。「山科和牛スライダー」。小さいサイズを一つひとつ丁寧に焼き上げる長田シェフ。「銀座本店コース」で提供される「山科和牛スライダー」は鉄板焼きでは珍しい、〈本店山科〉ならではのオリジナルメニュー。完熟近江牛のミンチ20gにタン先の小角20gを食感のアクセントに加え、卵黄と玉ねぎをつなぎにしたパティと、うずらの卵の目玉焼きを、自家製バンズでサンドしています。ソースは完熟近江牛の骨を使ったフォン・ド・ボーとスパイス、そしてトマトと玉ねぎ、ピクルスと油と卵を攪拌したサウザンソース。直径数センチほどのスライダーながら、味はグルメバーガーに匹敵するほどのクオリティで、特にパティのジューシーさとタン先のコリッとした食感のコントラストが素晴らしいと感じました。「近江牛厳選ステーキ」で鉄板焼きの真髄を体感。「近江牛厳選ステーキ」(写真は4名分)。鉄板焼きの王道ともいえるステーキは、コースによってフィレまたはサーロインを選べるようになっています。今回は「近江牛厳選ステーキ」をいただきました。焼き加減もオーダーできますが、シェフにおまかせするのがおすすめです。「近江牛厳選ステーキ」(写真は一人分)。焼いたお肉の断面があずき色で、ぷっくりと身が膨れ上がる様子からも、質の高い和牛であることがうかがえます。お好みでフライドガーリック、生山葵、生胡椒と塩、淡路玉ねぎソースをつけていただきましょう。ステーキの外はこんがりと香ばしく、中は常温程度のレア具合で、口の中でうっとりとするようなとろけ方をします。完熟近江牛だけあり、赤身部分もサシ部分もしっかりと芳醇な味わいです。フライドガーリックは玉ねぎソースと合わせてステーキといただくのもおいしかったです。サマートリュフをたっぷりトッピングした「特製トリュフオムライス」。「特製トリュフオムライス」。この日はオーストラリア産のサマートリュフを使用。〆は「鉄板山科コース」と「鉄板山科特別コース」で提供される「特製トリュフオムライス」を。鉄板焼きで定番のバターライスを、岩手県産の卵で火入れし包みあげ、和風のデミグラスソースをかけ、最後にオーストラリア産のサマートリュフを削りかけた贅沢な一皿です。ブリスケットを煮込み、味噌とマディラ酒を合わせたデミグラスソースの深みのあるコクにトロトロの卵、サマートリュフの芳しい香りが寄り添い至福の味わいです。甘味の後には、ラウンジでの一口菓子&食後酒で甘美な余韻を。デザートのチーズケーキ。この日の甘味は、ヨーグルトアイスとパルメザンチーズをトッピングしたチーズケーキ。こちらをいただいたあとは、ラウンジエリアへと案内いただきました。ラウンジエリア。このラウンジエリアはウェイティングスペースとしてだけでなく、食後の一口菓子と食後酒を楽しむ場所として利用されています。鉄板焼きや焼肉から気分を変えて、しっぽり大人の時間を過ごせる雰囲気です。一口菓子&食後酒(写真は二人分)。この日は一口菓子として、クミンをきかせたガトーショコラ、バナナのフィナンシェ、酒粕を使ったチーズケーキ、ブルーチーズを使ったマカロンの4種類が振る舞われました。合わせて食後酒として、オーストラリア産のシラーを使った赤ワイン、スペインの酒精強化ワイン、貴醸酒の満寿泉の3種類のお酒をペアリング。ゆったりくつろぎながら、素敵なコースの余韻に浸ることができる、贅沢な演出とサービスであると感じました。1000本以上のワインを完備!料理とのペアリングも楽しみたい。「和牛ウニ寿司」にペアリングいただいた「2008 Champagnge/Hugues Godme」。「初夏の一皿」にペアリングいただいた「2020 yui/Kenzo Estate」。「厳選極厚タンステーキ」にペアリングいただいた「2001 Savennieres Clos de LaCoulee de Serant/Nicolas Joly」の抜栓3日後と5日後飲み比べ。「活伊勢海老炭火焼」にペアリングいただいた「2016 Aligote/Leroy」。「山科和牛スライダー」にペアリングいただいた「1989Ch.La Tour du Pin Figeac」。「旬の焼き野菜」にペアリングいただいた「2018 Inglinook Blancaneaux」。「近江牛厳選ステーキ」にペアリングいただいた「2017 Gevery Chambertin Clos Tamisot/Pierre Damoy」。また、店内には1,000本以上のワインを貯蔵する巨大なセラーを完備。イタリアやフランス産だけでなく、カリフォルニア産まで産地も幅広く、ヴィンテージのワインも揃うなど日常で出合うことのできないプレミアムなワインや入手困難な蒸留酒も充実しています。料理に合わせたワインの提案も、ぜひ楽しんでいただきたいところです。なかなかお目にかかることのない完熟近江牛を使った鉄板焼き割烹と焼肉割烹コースを、銀座の美しい夜景とともに味わえる〈本店山科〉。サービスも味も最上級ですが、コースは15,000円からと良心的な価格設定で、むしろこのロケーションと料理から考えるとリーズナブルといえます。特別な日やお祝いごとに、ぜひ利用したい一店です。〈本店山科〉東京都中央区銀座5-8-1 GINZA PLACE 11F03-6264-588817:00〜23:00日休Instagram
2022年07月22日鉄板焼き・焼肉割烹レストラン「本店山科(ほんてんやましな)」が、東京・銀座プレイス(GINZA PLACE)最上階に2022年7月18日(月)にオープン。高級焼肉店「銀座山科」の姉妹店「本店山科」は、「鉄板焼き」または「焼肉」を“割烹スタイル”で楽しめるレストラン。銀座の高級焼肉店「銀座山科」の姉妹店かつフラッグシップ店としてオープンする。カウンターで楽しむ<鉄板焼き割烹>“鉄板焼きスタイルの肉割烹”をテーマにカウンターで展開する<鉄板焼き割烹>では、タン、ハラミ、イチボ、ランプ、フィレ、サーロインなど様々な部位を生、焼き、煮物など様々な調理法で提供するほか、鉄板焼きでは珍しい一口バーガー「スライダー」なども用意。時折、素材の味を活かして焼き上げた魚介や旬の野菜を織り交ぜることで、最後まで美味しく楽しめる鉄板焼きを提案していく。完全個室の<焼肉割烹>一方、「銀座山科」の焼肉コースをベースに、日本料理の要素を加えた完全個室の<焼肉割烹>では、各個室に専属の焼き師が立ち、多彩な肉をそれぞれに合わせた火入れで提供。低温調理したシャトーブリアンを薄衣でサッと揚げ、外はカリっと中はふんわり仕上げた食パンでサンドした「銀座山科」のシグネチャーメニュー“カツサンド”も味わうことができる。最高級ランクの完熟近江牛を使用なお、「本店山科」でメインに使用するのは、岡崎牧場の「完熟近江牛」。滋賀県のブランド牛「近江牛」の中でも“最高級ランク”とされる超長期肥育で生体熟成させた、旨味が強くキレのある脂が特徴の「完熟近江牛」を贅沢に使ったメニューを取り揃える。【詳細】「本店山科」本格オープンオープン日:2022年7月18日(月)住所:東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス 11FTEL:03-6264-5888営業時間:17:00~23:00定休日:日曜日席数:71席(鉄板焼き:29席、焼肉:42席)メニュー:<鉄板焼き割烹> 蒼玉15,000円、紅玉25,000 円、金剛27,000円<焼⾁割烹> 翠玉18,000円※表示価格はすべてサービス料込。※2022年6月20日(月)現在ソフトオープン中。
2022年06月23日発達障害に携わることは、自分の価値観を問われること中央大学では、2007年から一部の教員が「軽度発達障害の縦断的研究」を開始。これを引き継ぐ形で2016年から「発達障害者傾向を有する大学についての縦断的研究」を行い、このたび『キャンパスにおける発達障害学生支援の新たな展開(中央大学人文科研究所研究叢書)』に活動の記録をまとめました。今回は、同研究チームの主査を務めた山科満教授に、学生支援の根底にある想いや具体的な支援事例、支援者の方へのメッセージを伺いました。発達ナビ編集部(以下、――):山科先生の「支援における思想」について教えてください。山科先生:「発達障害」とは何であるのかということに尽きます。これは、私が大学生や社会人になって初めて発達障害と診断されるような人たちと関わってきたことから出てきた問いであって、発達障害という言葉が関与する全ての事象に当てはまるものではないと思うのですが。――特に精神科医時代のご経験が大きいのでしょうか。山科先生:そのように思います。統合失調症の治療をやっている中で、1990年代後半頃から、統合失調症に見えるが実は高機能自閉症、という事例に出合うことが何度かあり、学会報告をしていました。しかし当時はあくまで統合失調症の治療という視点から、「似て非なるもの」を鑑別する、という発想に止まり、発達障害に関心をシフトすることはありませんでした。よりインパクトがあったのは、精神科医の衣笠隆幸生が2004年に「重ね着症候群」として、パーソナリティ障害のベースに軽度の発達障害がある1群の報告をしたことです。精神療法に関心を寄せ実践もしていた身として、思い当たる事例がたくさんあったのです。さらに、2008年以降、精神科医の中安信夫先生が初期統合失調症と誤診していた発達障害の事例について報告するようになりました。これにも私は衝撃を受けました。――インパクトがあったとは、具体的にどういうことでしょうか。山科先生:自分がこれまで出会った患者さんを思い返してみると、発達障害的な特徴を有する人について、それなりに思い当たったのです。しかし、当時は発達障害の診断はなされていませんでした。それらの人たちの診断は正しかったのだろうか、患者さん達のことを私はちゃんと理解できていたのだろうか、と不安になりました。考えを進めていくにつれ、発達障害をほかの診断基準と同じ水準の診断概念として扱って良いのか、徐々に疑問に思い始めました。これが、2010年ごろまでに私が経験したこと、考えていたことです。発達障害の診断は、医学的な手続きだけに拠ってできるものではありません。常に、その人とその人を取り巻く環境との関係性を見ることになります。とりわけ、日本社会は発達の特性を有する人にとっては生きづらい社会です。「障害は社会の側にある」ことを忘れず、「障害」という言葉に押しつぶされることなく、自己と社会との関係性を多角的に捉えていくことが、発達の特性を有しながら生きていく人には必要なのではないかと私は思います。またその思想は、精神科医も含めて支援する側にも必要なことだと思っています。――発達障害との出合いが、山科先生ご自身の大きな転機となったのですね。山科先生:私は発達障害というものに出合ったことで、精神医学の診断基準も、世の中の常識も、絶対的なものではなく相対化して見るようになりました。それまで信奉していた価値観を捨てる作業は、けっして簡単なことではなく、今も何かの折に自分の中で矛盾を抱えていることに気づかされることがあります。もちろん、私は自分の考え方を声高に主張するつもりは全くなく、最終的に辿り着くところは一人ひとり違っていて良いと思います。ただ、発達障害と関わるということは、さまざまな側面で自分の価値観を問われることになるのではないかと、思っています。活動をまとめた新刊『キャンパスにおける発達障害学生支援の新たな展開』――出版までの経緯について教えてください。山科先生:中央大学の学内公募に手を挙げて大学生の発達障害に関する共同研究を始めたのが2012年度でした。本書の中で紹介されている障害学生支援を担う専門職=キャンパスソーシャルワーカー(以降、CSW)を、学内の競争的資金によって初めて採用したのが2014年、その後紆余曲折を経て、2022年度には中央大学全体では6名のCSWを配置するまでになりました。来年にはさらに2名の増員が決まり、中央大学の全学部にCSWが配置されることになりました。どうにか仕事にひと区切りが着いたところで、これまでの活動を振り返り、本にまとめようということになりました。Upload By 発達ナビ編集部――紹介されている支援例の中から一つ、挙げていただけますか。山科先生:私が担当した、共同研究を始めて間もない時期でCSWもいなかったころの事例です。入学後に1年次の基礎科目でつまずいて卒業の見通しが全く立たなくなっていた学生さんがいました。親御さんは困り果て、学科の先生方も事務職員もどう支援して良いのか分からず途方に暮れているようでした。ご本人にお会いしてみると、いわゆる二次障害が酷く、深い絶望感を抱えている人でした。最初の1年は、休学した上で面談を継続し、関係性づくりだけに費やしました。絶望感からの回復には、成功体験を実感していただくことも必要です。そのため、翌年からは少しずつ基礎科目の単位取得から勉学に復帰しましたが、この過程では事務職員の力を大いに借りることになりました。同じ領域の科目群の中でどの科目・どの先生なら単位取得をしやすいかとか、基礎科目と応用科目の順番を考慮し無理のない履修計画を立てるといったことを、本人を含めて関係の事務職員が学期ごとにミーティングを開いて確認しました。遮音のためのヘッドホン装着など初めての支援策については、各教員の理解を得られるよう個別の折衝を重ねました。――じっくり時間をかけて支援を続けられたのですね。山科先生:そうですね。最終的に入学から7年半かけて卒業し、障害者枠で一般企業に就職しましたが、この過程で、発達の特性がある大学生の支援のためには、心理的な関与、精神医学的なアセスメント、そして何より関係者の理解を得ていくためのソーシャルワークが必須だということが分かりました。その経験から、アクティビティの高い心理職を学部事務室に配置してソーシャルワーク的な役割を担ってもらう、という支援の方法に辿り着きました。具体的には、「発達障害に関する精神医学の知識を運用できるだけでなく、学生の困りごとを具体的に把握できる面接を行う能力があり、かつフットワークが軽く多職種連携ができる人」というイメージを持ちました。そして、呼称をキャンパスソーシャルワーカーに決めたのです。支援者は「孤立しない」ことが大切出典 : ――学生支援に携わる人たちへの願いは何でしょうか。山科先生:学生本人が支援を求めてくるのを待っていては、効果的な支援体制は作れません。具体的にはその組織に応じたやり方があるのだと思いますが、困っている学生に、少しだけ「おせっかい」する教員と、それに呼応する事務職員、そして大学生の成長に「伴走」することを喜びと感じるような支援員がいてくれることを、私は願っています。ただし、発達の特性は百人百様です。診断名で支援の内容が決まることはありません。全て個別のオーダーメイド支援になります。「この学生さんにはこういう支援が望ましい」ということをその都度考え、当事者を含めて話し合い、関係者でコンセンサスを作り上げていく必要があります。――支援は連携が重要なのですね。山科先生:そうですね。発達の特性を有する学生への支援は、教員であれ専門職であれ、ひとりの努力で完遂することはあり得ません。多くの関係者が、支援に関する全体的な理念も、個別の学生の理解についても、共有することが必要です。孤立せずに、「話の通じる仲間を増やしていくこと」は、支援者にも必須なことだと思います。――この本を、どのように役立ててほしいとお考えでしょうか。山科先生:大学で発達の特性を有する学生の支援に関わっている方を主たる読者として想定していました。支援の方法は、大学によって異なって当然であろうと思いますが、私たちの方法の背後にある思想については、どの大学であっても通底するものではないかと思います。手前味噌にはなりますが、「発達障害とは何か」「診断とはどういうものか」ということについて、私なりに考えてきたことを自分の分担した第6章で記述しました。そこも含めていくつかの章は、当事者の親御さんにもお読みいただける内容になっていると思っています。執筆/LITALICO発達ナビ編集部<目次>・第1部キャンパスソーシャルワーカー導入の経緯第1章:キャンパス内での支援のかたち―キャンパスソーシャルワーカー(CSW)の学内配置に焦点を当てて・第2部理論・研究編第2章:精神医学的観点からみた大学生の発達障害、第3章:発達障害のある大学生の課題と支援のあり方をめぐって―外国語教員の視点から、第4章:発達障害当事者からみた「自己」をめぐる問題、第5章:発達障害特性を有する大学生の“自己治療”としてのインターネット依存―一般大学生のアンケート調査から・第3部臨床実践編第6章:発達障害特性を有する大学生の自己理解に寄与する支援のあり方、第7章:学生の成長に寄与する支援者の関わり―理工学部CSWとして7年間を振り返る、第8章:キャリア支援と自己理解―法学部キャンパスソーシャルワーカーとして5年間を振り返る
2022年06月22日『よろず占い処陰陽屋へようこそ』のオンラインリーディングライブが、3月7日(土)に2年ぶりに開催される。原作者・天野頌子先生完全書き下ろしストーリーを豪華声優陣が熱演。原作小説は、海外にも多くのファンを抱える人気シリーズで、累計発行部数は130万部を超える。今回の配信公演では、海外からのチケット購入も可能。キャストと世界中のファンが同じ時間を体験、共有するという、リアルタイム配信ならではの贅沢な楽しみ方を体感したい。公演ではメインとなるリーディングライブに加え、キャスト陣によるアフタートークも予定している。チケット販売中。◆メインキャストからコメントが到着!諏訪部順一(安倍祥明 役)本作の朗読イベントは過去にも行われたことがありましたが、今回はライブ配信での実施となります。国内はもとより一部の海外の方にもご覧いただけるそうなので、より一層頑張りたいと思います。今回披露するのは天野頌子先生書き下ろしの物語。陰陽屋シリーズファンのみなさまは特にお見逃しなく!松元惠(沢崎瞬太 役)陰陽屋は、読んだ方がどこかしら自分の身近に感じられる空気を持つ、元気を貰える魅力ある作品だと個人的に感じています。今回はご自宅に居たまま寛いで楽しんで頂けるなんて、陰陽屋らしくてピッタリで素敵な企画だなあと感動しました。そして何より、また皆様にこうして陰陽屋の物語をお届けできることが本当に嬉しいです。がんばります!小野友樹(高坂史尋 役)高坂史尋役、小野友樹です。前回の公演が約2年前と伺って驚きました…!今回はオンラインリーディングという形で、皆さんに朗読をお届けします。是非、楽しい時間を一緒に過ごしましょう。どうぞお楽しみに!遊佐浩二(山科春記 役)今回、「よろず占い処陰陽屋へようこそ」のリーディングライブに参加させていただくことになりました。こういう状況ですので、オンラインで無観客となりますがご自宅でじっくり楽しんでいただけることと思います。ただ、登場人物も限られる分セリフ量は多いと思います。緊張する舞台ですが精一杯努めさせていただきます。◆開催概要【イベント名】 「よろず占い処 陰陽屋と琥珀の瞳」オンラインリーディングライブ【日時】 3月7日(日)開演:17:00【出演】 諏訪部順一/松元惠/小野友樹/遊佐浩二/竹内想
2021年02月19日無印良品は2019年11月1日(金)、京都・JR山科駅前のラクト山科ショッピングセンターに大型店「無印良品京都山科」をオープンする。“食”の専門売場を構える大型店「無印良品京都山科」は、2018年3月に大阪にオープンした無印良品イオンモール堺北花田に続く、“食”の専門売場を備えた大型店舗だ。多くの商品は名前や価格にのみ注目され、そこに込められた生産者たちの想いや、数々の工夫といった情報を中々知ることが出来ない昨今。同店では、「食べる・見つける・買う」をコンセプトに、消費者が目にすることの少なくなった生産加工の過程にある物語を、商品情報とともに伝えていくという。店内では、無印良品の標準的な品揃えに加え、野菜や肉、魚、惣菜、グロサリーなど、食に関する商材全般を販売。新鮮な季節の生鮮食材や近郊で加工生産された商品を選び抜き、担当スタッフ自らがそれらの特徴を取材して伝えることで、「情報編集型店舗」の完成を目指す。店舗情報「無印良品京都山科」オープン日:2019年11月1日(金)場所:ラクト山科ショッピングセンター 地下1〜2階(京都市山科区竹鼻竹ノ街道町91)
2019年08月25日京都府・山科の青蓮院・将軍塚青龍殿にて、透明なガラスで構築された茶室を将軍塚青龍殿大舞台に展示する「吉岡徳仁光庵ーガラスの茶室」が開催される。会期は4月9日~2016年4月(終了時期未定)。拝観時間は9:00~17:00。拝観料金は大人500円、中高生400円、小学生父兄同伴無料。同展は、2002年に構想された「透明な日本家屋」の建築にはじまり、2011年に開催された第54回ベネチアビエンナーレ国際美術展Glasstress 2011にて日本文化を象徴する茶室建築プロジェクトとしてデザインが発表された「ガラスの茶室-光庵」を青蓮院・将軍塚青龍殿の標高220メートルの大舞台に展示するもの。京都・フィレンツェの姉妹都市提携50周年を記念して、京都の重要文化財にも指定される青蓮院の飛び地境内、青龍殿にて、世界で初めて同作品の実物が披露されることとなった。同展の開催に際し、日本人の自然観に関心を抱く吉岡氏は、エネルギーやオーラのようなものを空間から知覚する、日本独自の自然に対する解釈としの空間性に着目。「光庵」の透明なガラスで構築された茶室という小宇宙的な空間から、自然の要素を感知し、自然と一体化することで、日本の思想・文化の原点を見ることができるのではないか、と考えたということだ。なお、吉岡氏は、デザインからアートと幅広い領域において自由な着想と実験的な創作から生まれる作品によって、世界に強く影響を与える創り手の一人として世界のデザイン賞を多数受賞するなど、国内外で高く評価され、同氏の作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)、ポンビドゥーセンター、ビクトリア アンド アルバート博物館など、世界の主要美術館で永久所蔵されている。
2015年03月05日