良質で骨太な演劇作品に定評のある、オフィスコットーネのプロデュース公演『墓場なき死者』が1月31日(日)に開幕する。本作は、フランスを代表する哲学者、ジャン=ポール・サルトルによる戯曲。1946年にフランスで初演された。物語の舞台は1944年7月、ドイツ軍占領下のフランス。フランスの自由を勝ちとるため戦うレジスタンスの兵士たちは、村民とともにドイツ軍に虐殺され、生き残ったのはわずかに5人。彼らはドイツに協力しているペタン政権派の民兵により監禁され、 隊長の行方を吐くようにと拷問を受ける。 拷問するのは、兵士たちと同じ、フランス人。極限状態の中、男たちがプライドをかけて選択するものとはーー。演出を手掛けるのは、鵜山仁、松本祐子、青木豪ら、名だたる演出家たちの演出助手を務めてきた、文学座の稲葉賀恵。2019年には立て続けに8本もの国内外作品を演出した凄腕だ。稲葉は「自分が価値ある優れた人間であるのかどうか、拷問する側とされる側が泥仕合の中で『自尊心』を獲得するために這いずり回るさまは、いつの時代にも蔓延る、本質的な人間の心理そのものに迫っています」「この箱庭の中の人間たちを観察することで、今私たちが生きている姿そのものを見つめ直すような作品になれば」とコメント。出演には土井ケイト、劇団Patchの田中亨、山本亨ら、それぞれに異なる出自を持つ俳優たちが結集する。公演は2月11日(木・祝)まで、東京・下北沢の駅前劇場にて。文:小川志津子オフィスコットーネプロデュース『墓場なき死者』作:ジャン=ポール・サルトル翻訳:岩切正一郎演出:稲葉賀恵プロデューサー:綿貫凜出演:土井ケイト / 田中亨 / 中村彰男 / 富岡晃一郎 / 渡邊りょう / 池田努 / 阿岐之将一 / 柳内佑介 / 武田知久 / 山本亨2021年1月31日(日)~2月11日(木・祝)会場:東京・駅前劇場
2021年01月29日主演・菅田将暉、演出・栗山民也による舞台『カリギュラ』が、2019年11月・12月に東京・新国立劇場にて上演される。アルベール・カミュの傑作戯曲を主演・菅田将暉で上演原作の『カリギュラ』は、“不条理の哲学”で知られる、20世紀のフランス文学界を代表するアルベール・カミュ自身が、『異邦人』および『シーシュポスの神話』とともに、“不条理三部作”と位置づけた傑作戯曲のひとつ。愛する妹を失った日を境に、突如として暴君と成り果てたローマ帝国の若き皇帝カリギュラを主人公に、狂気、悲しみ、欲望、純粋、真理、グロテスクといった要素を刺激的に描いた作品だ。1980年に公開された映画版は、その過激すぎる内容を理由に一部地域で公開禁止に。しかし、それがかえって民衆の興味を引き、“禁止されるほどやってみたくなる”という心理現象を意味する「カリギュラ効果」という言葉の語源ともなっている。あらすじローマ帝国の若き皇帝カリギュラ(菅田将暉)は、愛し合った妹が急死した日に宮殿から姿を消し、その3日後に戻ってきた。そして、その日を境にそれまで非の打ち所のなかった皇帝は豹変し、貴族平民問わず、何らかの財産を持つものを区別なく殺し、その財産を没収するという驚くべき宣言を出す。しかし、それはほんの序章でしかなかった。それから3年間、繰り返される残虐非道な行為。親、子供を殺された者、妻を辱められた者、プライドを傷つけられた貴族たちの怒りはカリギュラを殺害することへ向かい、クーデターが計画される。自らの命の危険を知っても止まることなく、更なる暴走を続けるカリギュラだったが―――。菅田将暉「良い意味で震えている」主演を務める菅田は「あの『カリギュラ』に手を出すということで震えています。もちろん良い意味で。どこまで何が出来るかはわかりませんが、身も心もさらけ出し、少しコントロールして、絶対的なカリギュラを作り上げたいなと思います。自分なりの、一つ生き様を。宜しくお願いします」とコメントを残している。公演概要上演時期:2019年11月・12月会場:新国立劇場 中劇場作:アルベール・カミュ翻訳:岩切正一郎演出:栗山民也主演:菅田将暉<チケット>一般発売:2019年夏予定【問い合わせ先】ホリプロチケットセンターTEL:03-3490-4949(平日10:00~18:00/土10:00~13:00/日祝・休)
2019年04月18日『大人のけんかが終わるまで』のプレビュー公演が6月30日、7月1日にシアター1010で上演された。愛知、静岡、岩手ののち、7月14日(土)から29日(日)まで東京・日比谷・シアタークリエ、その後、大阪、広島、福岡、愛媛、兵庫と続く。【チケット情報はコチラ】フランス発の“滑稽な大人のコメディ”に挑戦するのは、気鋭の演出家、上村聡史。ある一夜に偶然出会った大人たちの、切実かつしょうもないけんかを描く。不倫中のアンドレア(鈴木京香)とボリス(北村有起哉)は、お洒落なレストランの駐車場で大げんか。奥さんの勧めたレストランに連れてきたことを「デリカシーがない!」と非難され、嫌気がさしたボリスは「もう帰ろう」と車を発進させる。しかしその時、誤って老女イヴォンヌ(麻実れい)を轢いてしまう!?しかも居合わせた老女の息子エリック(藤井隆)の嫁フランソワーズ(板谷由夏)は、ボリスの妻の親友だったので、大変!不倫関係を誤魔化そうとするボリス。蔑ろにされヒステリックになるアンドレア。認知症のイヴォンヌ。その母を甘やかすエリックと、母子に振り回されるフランソワーズ……5人の勝手な思いが混線し、それぞれ我慢していた感情が浮き彫りになっていく。大人たちの身勝手なやり取りを笑っているうち、ふとこちらも真顔になってしまう瞬間が恐ろしい。作品の魅力について、鈴木は「どのキャラクターにもイヤな人がいない、どこか共感してもらえるところがある」とコメント。北村は「大人のコメディと銘打っていますが、それだけではなくて、もっとたくさん色々なお土産が出来る、色んな想いを残して余韻に浸れる舞台」と寄せた。初日前日のコメントで、藤井は「緊張感がいまMAXの状態です。なんとかこの場に慣れるように、努めます!」と緊張のようす。一方の板谷は「いざ舞台に立つと、空気感といいますか、自分の中の何かが変わるのを感じ、一生懸命に稽古したことや、稽古のとき以上のものを出せるように、頑張るしかない」2組のカップルの中でひとり異なるポジションの麻実は「ちょっと辛口の楽しい作品」との前置きに続き「是非ご夫妻でらっしゃるととても面白いと思います」とコメントした。みっともないけど目が反らせない大人のコメディ。岩切正一郎の瑞々しい翻訳に、岩松了の深部をくすぐる脚本。節々の音楽が5人の感情の疾走感を増す。上村聡史の肉感的かつ冷静な演出が小気味良く、終盤は文字通りハッと息を飲んだ。取材・文:河野桃子
2018年07月03日橋爪功×井上芳雄の二人芝居「謎の変奏曲」が9月14日に開幕、それに先駆けて公開ゲネプロが行われた。【チケット情報はこちら】本作は、1996年にフランスで初演されて以降、世界中で上演されているエリック=エマニュエル・シュミットの戯曲。サー・エドワード・エルガー作曲の「エニグマ(=謎)変奏曲」が持つ“謎”をモチーフにした、ふたりの男の会話劇だ。日本でも上演を重ねられてきた作品だが、今回、演出に森新太郎、翻訳に岩切正一郎とスタッフを一新。新たな「謎の変奏曲」が誕生した。物語は、ノルウェー沖の孤島で一人暮らしをしているノーベル賞作家アベル・ズノルコ(橋爪)のもとへ、地方新聞の記者と名乗る男エリック・ラルセン(井上)が訪れることから始まる。ラルセンは、ズノルコが初めて“愛”について書いたという最新作『心に秘めた愛』を取材するためにきたという。のらりくらりと質問をかわすズノルコと、「ほしいのは真実です」と食い下がるラルセン。しかしふたりが互いの嘘に気付き始める頃、いくつかの真実が明らかになっていく――。橋爪と井上による、約2時間半(途中休憩あり)の二人芝居。セットチェンジも一切なく、ただただふたりの会話だけで物語が進んでいく。観客はじっとふたりの会話に耳を傾け、一挙手一投足を見つめ、彼らと共に隠された真実を知っていく濃密な時間だ。橋爪の演じるズノルコは、ラルセンを迎えたときにみせた“孤島暮らしの偏屈な大作家”という姿が、ラルセンの指摘、自身の独白、そして知ることになる真実の一つひとつから、変貌していくさまが巧み。ふと気づくと滲み出るものも外見も全く違う人間のようになっており、俳優の恐ろしさを感じさせられた。井上の演じるラルセンは、最初から何かを隠し持った雰囲気はあるのだが、それがどこに向かっているのかを誰にも捉えさせない。それにより、ズノルコの言葉に対してラルセンが何を言うかが読めず、物語を煙に巻き、作品全体の緊張感を生み出すのだ。息を呑む一言、その言葉が変える空気、そして長い長い会話の末にふたりがたどり着くひとつの真実。それを見届けた私たち観客はどんな表情で劇場をあとにするのか。芝居の醍醐味をじっくりと味わい尽くせる、森新太郎演出作品ならではの本作。劇場にしかない時間をぜひ楽しんで!東京公演は、9月24日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。その後、大阪、新潟、福岡を巡演する。チケット発売中。取材・文:中川實穂
2017年09月15日時代を超え世界中で上演され続けているフランスの劇作家ジャン・アヌイの代表的悲劇作品「アンチゴーヌ」が、日本を代表する演出家・栗山民也演出のもと、岩切正一郎の新訳で来年1月より上演されることが決定。蒼井優や生瀬勝久ほか、豪華俳優陣を迎え現代によみがえる。■あらすじ古代ギリシャ・テーバイの王オイディプスは、長男ポリニス、次男エテオークル、長女イスメーヌ、次女アンチゴーヌという、4人の子を残した。ポリニスとエテオークルは、交替でテーバイの王位に就くはずであったが、王位争いを仕組まれて刺し違え、この世を去る。その後、王位に就いたオイディプスの弟クレオン(生瀬勝久)は、亡くなった兄弟のうち、エテオークルを厚く弔い、国家への反逆者であるとして、ポリニスの遺体を野に曝して埋葬を禁じ、背く者があれば死刑にするよう命じた。しかし、オイディプスの末娘アンチゴーヌ(蒼井優)は、乳母の目を盗んで夜中に城を抜け出し、ポリニスの遺体に弔いの土をかけて、捕えられてしまう。クレオンの前に引き出されるアンチゴーヌ。クレオンは一人息子エモン(渋谷謙人)の婚約者で姪である彼女の命を助けるため、土をかけた事実をもみ消す代わりにポリニスを弔うことを止めさせようとする。だが、アンチゴーヌは「誰のためでもない。わたしのため」と言い、兄を弔うことを止めようとしない。そして自分を死刑にするようクレオンに迫る。懊悩の末、クレオンは国の秩序を守るために苦渋の決断を下す。姉イスメーヌ(伊勢佳世)に今生の別れを告げたアンチゴーヌに、生き埋め刑執行の刻が近づく。穴に入れられ土をかけられていくアンチゴーヌ。そして入口をふさぐ最後の石が置かれようとしたとき、墓の中からアンチゴーヌではない声が聞こえてくる。エモンがいつの間にか穴に入っていたのだ。一度は助け出されたエモンだったが、自ら命を絶ちアンチゴーヌと永遠の眠りに就く。そして、エモンの死を知った王妃ユリディスも自害し、この世を去る。そして、1人になったクレオンは、早く大人になりたいという小姓に言う。ばかだな。大人になんかなっちゃいけないんだ――。■実力派俳優たちの豪華競演!古代ギリシャ・テーバイの王オイディプスの末娘アンチゴーヌ役を演じるのは、パルコ・プロデュース公演には初出演となる蒼井優。10年前にこの戯曲に出会い、いままで何度も読み返したと言う蒼井さんは、「あるセリフをどうしても生で聞きたいと思っていたのですが、まさかそれを自分が口にすることになるとは」と語り、「本番思い切り楽しめるまで、稽古を頑張ります」と意気込みを見せている。また、オイディプスの弟クレオン役を演じるのは生瀬勝久。蒼井さんとは、「楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき~」で、演出家と女優という立場で仕事をしたそうで、今回は「非常にやりづらいです(笑)演出家として偉そうなことをずっと言いましたから、『なんでこんなお芝居をする人に…』と言われないように頑張ります」とコメント。「この作品には力強い台詞がたくさんあるので、その台詞に負けないような芝居に自分をどう持っていけるか。毎回そうですが、自分のできることを精いっぱいやるということですね」と語っている。この2人のほかにも、舞台を中心に活躍する梅沢昌代、伊勢佳世、佐藤誓ら実力派俳優陣が脇を固める。パルコ・プロデュース2018「アンチゴーヌ」は2018年1月9日(火)~1月27日(土)新国立劇場小劇場<特設ステージ>(東京)ほか、松本、京都、豊橋、北九州にて上演。(cinemacafe.net)
2017年09月12日