嵯峨野観光鉄道はトロッコ嵯峨駅からトロッコ亀岡駅まで、総距離7.3kmの観光トロッコ鉄道です。線路は山陰本線の旧線をそのまんま使っています。あの一世を風靡したテレビゲーム『電車でGO!』の最初のバージョンで、キハ58系が走っていた路線というとわかりやすいでしょうか(わかりやすくないか……)。客車はJRの貨車を改造し、機関車はDE10形を塗り替えて使っています。列車は保津川沿いの渓谷を走っていて、急流下りで有名な保津峡を見下ろす景色が楽しめます。京都と亀岡の市街地に挟まれた短い路線ながら、意外と山深い山岳鉄道の趣があります。このあたり、叡山電鉄の回でも書きましたが、いわゆる「京都の中自然」といった雰囲気ですね。人を拒絶するようなグレートネイチャーな世界ではないけれど、「夜にはしっかりお化けが出ますよ」的な山深さ。よく晴れた秋日和、筆者はひとり、トロッコ列車が来るのを待ち構えていました。しかし人里離れた山峡にひとりでいると、いささか寂しい気持ちになります。お化けだって、「昼間は絶対に出ません」と約束してくれているわけではありません。不意に川のほうから歓声が上がりました。やばい、昼間から出たか!? と思って目を凝らすと、生い茂った枝越しに、瀬に揉まれるラフティングのボートが見えました。筆者のいた場所より、その下の川のほうが人通りが多いみたいです。なんとなく不思議な感覚です。さらに奥へ進むと、いままさに現役バリバリのJR山陰本線の鉄橋が現れました。緑の谷間に、特急形電車381系の国鉄色が映えます。トンネルと鉄橋で、ほぼ直線ルートで走り去る山陰本線の列車と、その下をくぐって川沿いの景色を楽しむトロッコ列車と。やはり鉄道、どちらもいいものですね。この嵯峨野観光鉄道、トロッコ嵯峨駅はJR嵯峨嵐山駅と同じ敷地にあるのですが、トロッコ亀岡駅は最寄りのJR馬堀駅からちょっと離れています。だから、トロッコ嵯峨駅から往復で乗るか、あるいは亀岡からの帰りは保津川下りに乗船するか……というのが、嵯峨野観光の楽しみ方として良いのかもしれません。駅もそういう役割を自覚しているのでしょうか。トロッコ嵯峨駅には蒸気機関車D51形が展示されていたり、巨大ジオラマ館が併設されていたりして、平日でも観光客でにぎわっていました。いよいよ京都は紅葉のシーズン到来です。観光客でごった返す嵯峨野へ、あえて突入してみるのもまた、楽しいのではないでしょうか? いや、かなりの大混雑になるので、筆者はちょっと遠慮しておきますが……。
2014年11月09日嵯峨野観光鉄道は27日から、トロッコ保津峡駅の手前にある吊り橋「鵜飼橋」の復旧工事が完了したことを受け、同駅での乗降を再開する。鵜飼橋は、トロッコ保津峡駅と京都日吉美山線を結ぶ唯一の橋。昨年9月16日の台風18号にともなう豪雨で被害を受け、これまで京都市による復旧工事が行われていた。嵯峨野トロッコ列車は被災3日後から運転を再開したものの、復旧工事の間は橋が全面通行止めとなっていたため、現在までトロッコ保津峡駅での乗降を休止していた。京都市による復旧工事の完了にともない、鵜飼橋は27日11時から通行が再開されることに。これと同時に、嵯峨野トロッコ列車のトロッコ保津峡駅での乗降も再開となる。なお、トロッコ列車には当日始発から、「保津川鵜飼橋通行再開記念ヘッドマーク」を機関車側と客車側の先頭それぞれに装着するとのことだ。※写真は本文とは関係ありません。
2014年06月27日