女優の高畑淳子が5日、主演舞台『土佐堀川近代ニッポン―女性を花咲かせた女広岡浅子の生涯』顔寄せイベントに、赤井英和、南野陽子、田山涼成、葛山信吾、小松政夫、三倉茉奈、紫とも、篠田光亮、越智静香、芋洗坂係長、矢部太郎、武岡淳一、演出の田村孝裕とともに登場した。同作はNHK連続テレビ小説『あさが来た』の原作としても知られる、古川智映子の『小説土佐堀川』を舞台化。明治時代の女性実業家で、大同生命保険、日本女子大学を設立した広岡浅子の激動の生涯を描く。もともとは高畑と藤山直美が主演の『ええから加減』を上演する予定だったが、藤山の乳がん治療のため、同スタッフを中心に演目を変更した。顔寄せイベントでは、南野が「九回転んで、十回起きる浅子さんのように、お身体に気をつけてがんばってくださいませ」と藤山のコメントを代読した。高畑は「大同生命の社長さんが実は『広岡浅子さんは女優さんで言うなら藤山直美さんなんです』とおっしゃったんです」と明かし、「広岡浅子さんのお力、藤山さんのお力、ここにいる皆さんのお力、スタッフ・キャストのお力を借りながら、みなさんが劇場に来てよかったなという作品を作っていけたら」と意気込んだ。藤山について、高畑は「すごく責任感が強くて、名優として生まれた自分の宿命を非常にいつも抱えていらっしゃる方」と表現。「まっすぐ舞台に立つことだけを考えてらっしゃる方で、こういう形でお出にならないことはさぞやご無念だと思います」と言葉を詰まらせた。「念だけ、京都から送って下さい! どうぞ心配なさらずに、次のお芝居でご一緒できることを楽しみにしています」「私たちに任せて下さい」とメッセージを送り、涙を拭った。また高畑は「今回は、朝のドラマ『波瑠が来た』……」と言い間違えてその場を笑わせる。改めて「『あさが来た』でおなじみの、波瑠さんが演じた広岡さんの一生です」と紹介し、「最初の若い頃はちょちょっと片目をふさいでください。後半の老いてからは十分見ごたえがありますので!」とアピールした。
2017年09月05日10月に開幕する高畑淳子主演の舞台『土佐堀川近代ニッポン―女性を花咲かせた女 広岡浅子の生涯』。その製作発表が行われ、出演者の高畑淳子、赤井英和、南野陽子、田山涼成、葛山信吾、三倉茉奈、紫とも、篠田光亮、越智静香、演出の田村孝裕が登壇した。舞台『土佐堀川』チケット情報本作は、NHK連続テレビ小説「あさが来た」(15~16年)でもお馴染みの女性実業家・広岡浅子のドラマチックな人生を描く舞台。「あさが来た」の原案でもある古川智映子の小説が原作で、主人公の浅子を高畑が演じる。製作発表は、浅子が「女性にも学問を」という思いから設立に貢献した日本女子大学が会場となり、冒頭では同大学の講師による“広岡浅子ミニ講義”も開かれた。浅子の波乱万丈の人生を、17歳から亡くなるまで演じる高畑は「最初(十代の頃)はお客さんに特殊眼鏡を渡したいくらいですが(笑)、晩年のほうのシーンはすごくよくて。(脚本を読んでいると)涙でぐしょぐしょになります」と明かし、浅子について「“女性はこう生きなければいけない”という時代に、“なぜ?”と思える人だったんでしょうね。商売に長けた三井家の中で、自分も(男性と)同等に商いをしたい気持ちもあったんだと思います」と印象を語る。演出の田村は「淳子さんは走りだしたら止まらないというか、止まれないというか(笑)。広岡浅子さんと重なる部分がすごく多くて。前を向いたら突き進んでいく印象があるので、僕はすごく(浅子と)重ねやすいです。新しい淳子さんというかそのままの淳子さんというかが見られるんじゃないかと思います」。浅子の旦那・広岡信五郎役の赤井は「大阪の商売人の役なので、それならピッタリやな!と脚本を読ませてもらいました。『涙は悲しいときに出すんやなく、嬉しいときに出すんや』という小藤の台詞に胸を打たれましたね」と劇中の印象的な台詞を披露。広岡家の女中・小藤役の南野は「小藤は浅子の幼いころから晩年までずっとそばで支え続けた、いや逆に支えられた…そのくらい密で、近くにいた人間です。(同じように)高畑さんにいろいろ教えていただきながら、支えていきたいです」と高畑との共演を心待ちにしている様子。広岡正秋役の田山は、実年齢は8歳下である赤井の弟役を演じることに「どう料理しよう」と笑いつつ「浅子さんのような人の影には、その人の気持ちを受け、支える人が必ずいるんだなと感じました」と、今作で描かれる浅子と正秋の関係に思いを馳せた。高畑が「メランコリックにならないで、目の前にあるものを追いかけていきたい」と語る本作は、10月4日(水)から28日(土)まで東京・シアタークリエにて上演後、全国7か所を巡演。取材・文:中川實穂
2017年08月25日作・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)と、女優・広岡由里子との演劇ユニット「オリガト・プラスティコ」。その第5弾となる『龍を撫でた男』が、2月3日(金)、東京・本多劇場にて初日の幕を開ける。初日前日の2日、通し稽古が行われた。『龍を撫でた男』チケット情報精神病医の佐田家則は、妻の和子とその弟・秀夫、義母との4人暮らし。かつて事故でふたりの子供を亡くしており、そのショックから義母は精神に異常をきたしてしまっている。正月、そんな佐田家を訪れた、家則夫婦の知人で劇作家の綱夫と舞台女優の蘭子兄妹。綱夫は和子に、秀夫は蘭子に気があり、また蘭子と家則はちょっとワケありの様子だ。5人の思惑が交錯する中、「異常心理学会創立準備委員」と名乗る男たちまでもが現れて……。作・福田恆存、演出・KERAという、なんとも意外かつ、ワクワクする組み合わせが実現した。福田は評論家としても著名なだけに、硬い文章を想起する人も多いかもしれない。だが『龍を撫でた男』というタイトルからも分かるように、その文体はどこかユーモラス。さらに人間という愚かな生き物に対する優しい眼差しが、セリフの端々から感じることができる。恐らくKERAが本作に惹かれたのも、そんな点にあったのではないだろうか。そしてKERAは、その福田の世界観を過度に現出させることなく、それでいて行間には彼らしい過剰さもしっかり忍ばせる。もちろんそれを体現できる、KERA作品おなじみの役者陣が担ったものの大きさは言うまでもない。夫として、そして精神病医として妻を見守り、そして苦悩を募らせていく家則を演じるのは、山崎一。彼の中に積み重ねられていった、佐田家の負の要素。それゆえの微妙な変化を見せられるのは、やはり山崎の高い演技力あってこそだろう。和子役の広岡由里子、綱夫役の大鷹明良、蘭子役の緒川たまきは、感情の起伏、間合い、話し方など、正気と狂気の境界線上にいる人間ならではの見せ方が絶妙。狂気をさまよう人間の、切なさまでもが伝わってくるようだ。また秀夫演じる赤堀雅秋は、いい意味での気持ち悪さを醸し出し、その存在を強く印象づけた。本作の登場人物たちは、山崎演じる家則以外、何かしら皆精神を病んでいる。ゴーリキーの『どん底』の歌詞のように、暗い牢屋の中で、鉄の鎖に捕らえられてしまっているのだ。だが果たして牢屋にいるのは自分なのか、相手なのか。そして人生で真に望むべきものは、新しい冒険なのか、日々の繰り返しなのか。狂気と正気の差はまさに紙一重。辛辣なラストに、その答えを見た気がした。公演は同劇場にて2月12日(日)まで。チケットは発売中。文・野上瑠美子
2012年02月03日