ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)が展開するブランド、グラウンド ワイ(Ground Y)は、劇場版アニメ「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズとコラボレーションした「Ground Y ☓ EVANGELION 2018-19AW Collection」を2018年7月13日(金)より発売する。2018-19年秋冬シーズンは「Clash and Reaction」をテーマに展開。服を構成する異なる要素同士が衝突することによって起こる表情の変化を表現している。シーズンのコラボレーション第1弾となるのは、庵野秀明総監督が手掛ける「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」。おなじみの、EVA零号機、EVA2号機、EVA13号機、レイ、アスカ、マリといったキャラクター達を描いた貴重な原画をデザインに使用している。スタイリッシュで斬新な作品世界と、グラウンド ワイならではのデザインが融合したアイテムが揃う。今までにも「ヱヴァンゲリヲン」シリーズとのコラボレーションを行っているが、今季はよりミニマルなデザインがメインとなっている。ロングシャツをジャケット風に仕立てたアウターは、裏地にキャラクター原画をあしらったデザインで日常のコーディネートにも取り入れやすい仕上がり。また、異素材を組み合わせたロングカーディガンや、流れるようなドレープ感のバルーンパンツにはレーヨンツイル生地を採用。いずれも、モノトーンのプリントに1点ずつ職人がハンドペイントを加えた、表情豊かなアイテムとなっている。今季のキーヴィジュアルにはモデル・⼥優の松井愛莉、メンズノンノモデル・俳優の中田圭祐、そしてフォトグラファーにはTakako Noelを起用している。【詳細】Ground Y ☓ EVANGELION 2018-19AW Collection発売日:2018年7月13日(金)※公式オンラインショップ、正規ディーラーでは7月20日(金)より発売。販売場所:グラウンド ワイ ギンザ シックス、グラウンド ワイ ラフォーレ原宿、公式オンラインショップ■アイテム例ジャケット 115,000円+税、パンツ 60,000円+税、シャツ 58,000円+税、カーディガン 48,000円+税、カットソー 28,000円+税、トートバッグ 5,500円+税【問い合わせ先】ヨウジヤマモト プレスルームTEL:03-5463-1500
2018年07月06日アイドルグループ・V6の三宅健と、タッキー&翼の滝沢秀明のユニットKEN☆Tackeyの出演する、ケンタッキーフライドチキンの定番ボックスメニュー「カーネルボックス」のTVCM放送されることが29日、わかった。新CM「PRESENTATION」篇は、31日から7月4日まで全国でOAされる。滝沢が座長を務め、新橋演舞場にて上演されている『滝沢歌舞伎2018』に、三宅が3年連続出演していることから同ユニットのCDデビューが決定。舞台で披露していた楽曲「逆転ラバーズ」が7月18日にシングルCDとして発売される。また、『滝沢歌舞伎』共演中の2016年にも、2人で「ケン」「タッキー」と呼び合う同社のCMがOAされていた。CMでは、KEN☆Tackeyが歌う「逆転ラバーズ」をBGMに、三宅が「カーネルボックス」をフリップで紹介し、同時に滝沢が「チキンフィレサンド」「カーネリングポテト」「骨なしケンタッキー」「ドリンク」をおいしそうに次々と食べていく。自分が食べられずに不機嫌そうにしていた三宅に滝沢が気づき、デザートの「ミニアップルパイ」を一口おすそわけ。2人の笑顔でCMが終わる。撮影は、4月5日から開演された『滝沢歌舞伎2018』公演中の合間をぬって行われた。滝沢が1人でおいしそうに次々と「カーネルボックス」を食べ続ける姿に、三宅だけでなく、スタッフも羨ましそうな様子に。撮影後も揚げたてのチキンをおいしそうにいくつもほおばり、大満足な2人だった。
2018年05月29日松坂桃李の主演映画『娼年』(三浦大輔監督)は、女性に体を売る青年を描き直木賞を受賞した石田衣良の小説の映画化で、その設定が世間をざわつかせた。経済的な理由により女性が体を売る商売を行うことが問題視されたり、映画などで女性が衣服を脱ぎ身体をさらすことを女優として文字通り一皮むけたと注目されたり、ヌード写真集を出すことが芸術か否かと物議を醸したりしているなかで、男性である松坂桃李が、体を売る商売を行う青年役を演じ、裸体をさらしまくることで話題になることは、なんてフェアな行為であることか。世の中には、女性にお金を出してもらうホストという仕事や、裸になったりセクシャルな表現を売りものにしたりする男性もいるにもかかわらず、女性のことばかりが取りざたされるのもおかしな話だからだ。○女性たちに寄り添っていくリョウ松坂桃李演じる主人公リョウは、女性とのつきあいに何の価値も見いだせずにいたが、あるときから、女性に体を売る仕事をすることになる。ここで出会った女性はお金持ちだが、ワケありの人が多く、リョウはそれぞれの独特の性癖に向き合い、彼女たちを満足させることに勤しむうちに、表面的でなく心から、ひとりひとりの女性の心に寄り添っていく潜在能力に目覚めていく。……と書くと、ものすごくロマンティックで美しいお話のようにも思えてしまうが、出て来る女性たちの求めるものは、どれもどこか滑稽で、だからこそ、誰にでも、裸以上にさらけ出せるものではなく、この人と思った人にしか見せられない。松坂桃李演じるリョウは、“この人”と白羽の矢が立つ存在で、みごとにその要望を叶え、売れっ子になっていく。○一皮むけた松坂桃李この映画で、松坂桃李は世の女性と同じく、俳優として一皮むけたと思う。その根拠となる部分は、ふたつある。まず、イメージの刷新だ。近年の松坂は、女性の敵のような役がハマっていた。嘘つきの遊び人のエリート医師を演じた『エイプリルフールズ』(15年)にはじまり、エリート医師ならともかく、中身もないのに受け売りの情報で女を騙すクズ男を演じた『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年)など、松坂は知的な二枚目という雰囲気を生かして、見る者を鮮やかに裏切ってきた。『娼年』では、女性に体を売るという一見、背徳的に見えながら、じつは最も女性の味方になるという役を演じって小気味よかった。芸能を聖職のように美化することなく、人の欲望を一身に背負う仕事であることを達観して淡々とやっている俳優のひとりに斎藤工がいるが、松坂桃李が彼と並ぶ2大俳優であると思う。2人の共通点は、唇である。彼らの肉感的で、少しだけ暗い血の色をして、その奥に何か深遠なものを湛えているかのような唇は、人間の欲望は気高さと堕落を行き来していることを示しているように見える。○影法師のようにふたつめは、身体表現の技術だ。女性を喜ばせるときの彼の所作もまた、黙って立ったり横たわったりしていれば、鍛え上げられた身体に素敵な照明で陰影がつき、じつに素敵だが、一生懸命になればなるほど滑稽に見えていく。とりわけ、大殿筋の震えはすばらしかった。身体を意識的に操りエンターテインメントに昇華するという、パフォーマーとしての才能を開花させたといえるだろう。言葉数少なく、演技しています! という気負いも見せず、にもかかわらず、圧倒的に、なかなか手が出せない意義深い役を演じていく松坂桃李。なんとも不思議な俳優だ。俳優デビューは戦隊もので、“イケメン俳優”と呼ばれる若い俳優たちの登竜門であり、世間の認識は自ずと“イケメン俳優”のひとりとなった。だが、自身でも語っているように、インタビューなどでキャッチーな発言もしないし、どこか冷めているようなところがあって、“イケメン俳優”枠に収まらない空気を漂わせてきた。そんな彼だからこそ、ふつうはファンがショックを受けそうな、女性の敵のような役もやってのけるのだろう。爽やかさや健全さが売りのひとつである朝ドラの『わろてんか』(17年)で、主人公(葵わかな)の相手役をやっている最中も、映画『不能犯』で悪役をやり、さらに、朝ドラが終わった直後に『娼年』をやって、イメージを固定化することをひらりひらりと交わしていった。そもそも、朝ドラ『わろてんか』では、途中で亡くなったにもかかわらず、毎週土曜日に幽霊として登場し、主人公を励まし、最終回も、幽霊なのに生きている主人公との2ショットで終わったという前代未聞のファンタジー朝ドラの立役者となったのだ。松坂桃李は、まるで影法師のようだ。常に人間に寄り添い、人間の光に照らされている面とは違う、環境によって形も変えていくような面を演じ続ける俳優。いつまでもミステリアスに蠢き続けてほしい。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。)
2018年04月25日わずか2週間の限定上映にもかかわらず、動員が20万人を超えた映画『クソ野郎と美しき世界』。主演の稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の3人を応援しているファンの人たちにまず見てほしいという思いからマスコミ試写を行わなかったらしい、この映画。2週間ってほんとにあっという間で、慌てて劇場に駆けこんだが、平日にもかかわらずどの上映回も満員だった(私はTOHO シネマズ新宿で見ました)。○"新しい地図"という意義のある作品映画はオムニバス形式で、稲垣主演、園子温監督『ピアニストを撃つな!』香取主演、山内ケンジ監督『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』草彅主演、太田光監督『光へ、航る』3人勢揃い、児玉裕一監督『新しい詩』……という4本立ての1時間45分。3人がそれぞれ忙しく、個性もバラバラだから別々の作品を撮ったものを並べたというわけではなく、最後の『新しい詩』は、前3作の要素も盛り込んだ、まとめ的な感じになっている。ひとりひとりの力と、それが融合したときの力という、“新しい地図”という集団の意義がある作品。プロデューサー、監督、スタッフ、出演俳優……と日本の優れた才能がこれでもかというほど集まり、3人をバックアップして、完成度の高いものになっていた。パンフレットには、「稲垣は暴力とエロス、香取は歌、草彅は涙」というふうに役割分担されたとプロデューサーがコメントしていて、実際は「暴力」は草彅作品にもかなりあったものの、かなりうまいことジャンル分けされている。○4編の見所は三人三様ながら、通奏低音は、タイトルのとおり、愛すべき「クソ野郎」たちの物語だ。『ピアニストを撃つな!』の稲垣は、お髭が色っぽい、愛に生きるエロピアニスト役。一目惚れした女性(馬場ふみか)を想って、ピアノを弾き続ける。監督・園子温は、『愛のむきだし』や『地獄でなぜ悪い』などの代表作のタイトルどおり、愛がむきだしで地獄の業火のような人間のエネルギーを撮っていく人物。寺山修司の流れを汲んでいる監督だけに、その世界は、昭和のアングラ浪漫的な詩的で知的な笑える変態さがあり、稲垣吾郎はそこにみごとにハマっていた。そういういうものを受容する素養があるのだと思う。ともすれば、それはマイナーの領域なのだが、稲垣がやることで門戸が広がるところがいい。『慎吾ちゃんと歌喰いの巻』の香取は、歌と絵のアーティスト。ひとの歌を食べてしまう“歌喰い”という名の少女(中島セナ)に歌を食べられてしまう。そのうえ、絵も狙われて……。カラダは大きいが、内面が誰よりも繊細な印象のある香取にぴったりの、ファンタジックな作品だった。山内ケンジ監督は、映画化もされた『トロワグロ』で岸田國士戯曲賞を受賞した奇才。舞台の作・演出や映画、CMも手がけている。人間の奇妙な生態を観察するように描きながら、突き放し過ぎず、人間のダメさを赦している感じが魅力で、『〜歌喰いの巻』もくすっとなるところが随所に盛り込まれ、香取はその微妙な間合いを巧く演じていた。淡々とでも可笑しいという難易度の高い笑いを、みごとにやってのけるのは、萩本欽一のところで学んだだけはあるなと感じる。太田光の『光へ、航る』は、子供を失くした夫婦(草彅、尾野真千子)が、その子供の腕を移植した少女に会いに行くロードムービー風。根っこはかなり悲しい話だし、草彅の役は足を洗ったヤクザで、ダーティーな世界観。でも、ずっぽりそこに行きすぎず、思い切って笑いに振っていくところなどもある。なかなか難しいところだと思うが、お笑いをやっている太田光だからこそ、その匙加減が的確だった気がするし、なにより、草彅がひたすら真面目に演じているのがいい。最近の代表作『銭の戦争』(15年)、『嘘の戦争』(17年)のような、お腹のなかにマグマを抱えたような雰囲気がよく出ていた。パンフレットによると、草彅は、その手の役はもういいと考えていたようだが、怒りや悲しみの火柱をストレートに出せる芝居ができる俳優は貴重で、笑いの部分を哀愁に昇華したのは草彅の力だと思う。そして『新しい詩』。各作品世界でのたうちまわって生きていた人たちが一同に介し、『新しい詩』を歌い上げる。ショーっぽい構成の、かなりの多幸感に満ちたエピローグで、終わったあと、立って拍手したくなった。○新しい旅立ちをする者たちへの応援歌この映画の主人公3人は、もともとハッピーに生きてるなわけではない。みんな、なんらかの欠落を抱えている。稲垣の役は、どんなに恋愛してもどこか虚無を抱えていて、香取の役は、大事な歌を奪われ、草彅の役は子供を亡くしている。彼らの物語を観ている私たちも、日々の生活のなかで、大なり小なり喪失体験はしているから、彼らの欠落を抱えた想いが強く響く。……思えば、新しい地図の3人は、芸能のお仕事をはじめたときから、欠落の物語を背負ってきている。最初に仲間をひとり失って、口には出せないがその人の分も背負って生きてきて、やがて、集団自体を失くして、それでも活路を求めて、いまがある。しかも、失くしたものについて、語ることもない。ないないづくしである。それもまた、彼らほどではないにしても、観客である私たちにも、きっとなんらかの思い当たる体験があるはず。大切なものを失くした記憶、言いたいことを言えない記憶が。そんなときの想いを、新しい地図の3人に見てしまう、託してしまう。スクリーンのなかの彼らは、何かを失いながらも、立ちあがって、歩き出す。『クソ野郎と美しき世界』は新しい旅立ちをする者たちへの応援歌だ。私たちは映画のなかの彼らを応援し、そんな私たちは映画のなかの彼らから希望をもらった。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年04月18日2017年3月30日にオープンした、日本初の特殊機構をもった劇場・IHI ステージアラウンド東京は、当初2016年11月に豊洲市場が開場するに先駆けて、華々しくオープンする予定であった。ところが、市場のオープンが延期となったため、何もない豊洲市場前という荒野を、この1年間、たった一館で支え続けることに。こけら落としとして上演された演目、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』は、奇しくも、戦国時代の終わり、江戸城が建つ前の、まさに荒野のような関東平野が舞台。織田信長亡き後の覇権争いに端を発する壮絶な人間たちの生のぶつかりあいを描いた『髑髏城の七人』Season花、鳥、風、月の4作(は上弦、下弦とWチーム)と、その締めくくりのような「Season極」と銘打った『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極~』によって、市場前駅を訪れる人たちは1年間、あとを絶たなかった。5月31日まで上演される『修羅天魔』は、『髑髏城の七人』のパラレルワールド作のようなもので、ストーリーの概要は『髑髏城~』に倣いつつ、主人公が極楽太夫(天海祐希)という女性に変更された。『髑髏城~』にも極楽太夫は出てくるが、関東平野にある色里「無界の里」の一番人気の遊女という役割で、今回の彼女はちょっと違う。そして、その色里には『髑髏城~』には出てこない若衆太夫・夢三郎がいる。ここでは、男性ながら艶やかな女装をして客をとる異端の人物・夢三郎を演じている竜星涼について書きたいと思う。○描かれていない部分を想像させる竜星竜星涼といえば、1~3月期に放送され人気を博したドラマ『アンナチュラル』(TBS)での活躍が記憶に新しい。彼が演じた葬儀屋・木林南雲は、出番こそ少ないながら、あやしい魅力を漂わせていて、目が離せなかった。商売柄、死体に関する情報に通じているため、ある目的である特徴をもつ死体を探している法医解剖医の中堂(井浦新)に、バイト感覚で情報を提供している。死に対する感覚が常人離れして乾いていて、使い魔的雰囲気があることから、もしかしてラスボス的な役割を担うのではないかというミスリードにも寄与した。あやしい役を演じても、陰に寄り過ぎず、明るさがあるのがいい。デビューは2010年、戦隊モノ(『獣電戦隊キョウリュウジャー』)でブレイクし、スタイルのよさを生かしてモデルなどもやっている、いまどきの若い男性俳優の王道を歩む竜星涼がさらに広く認知されたのは、17年の朝ドラ『ひよっこ』であろう。これまた出番こそ少ないながら、主人公(有村架純)と同郷の境遇ゆえ、東京に出てきた彼女に親身になって世話を焼く警察官・綿引正義を演じて、好感度を上げた。東京に出稼ぎに来て行方不明になった主人公のお父さん(沢村一樹)を探したり主人公にクリームソーダをおごったり、素敵なお兄ちゃんだった。もうひとつ忘れられないのは、17年10月~12月期に放送された深夜のコメディドラマ『オトナ高校』の先生役。若者が草食系になって少子化が進む日本で、エネルギーに満ちた子沢山の人物・翔馬(ペガサス)先生をユーモラスに演じていた。善人過ぎる善人、ちょっとおもしろい人、死の香りを漂わすミステリアスな人物と、竜星は器用に様々な役を演じてきた。残念なのは、常に、話の骨子には関わってないことだ。役名は、常にものすごい存在感があるにもかかわらず、あくまでテーマを背負う人物の補助的な存在でしかない惜しさ。ただ、求められる役割を完璧に演じきっていることは素晴らしく、彼の奮闘によりドラマの密度を濃くしていることは確かだと思う。たとえば、漫画原作のキャラをそっくりに演じることがうまい俳優はいるけれど、オリジナルのドラマのキャラクターで、絵になりそうなほど立ったキャラをつくりあげることができる竜星には可能性がある。『アンナチュラル』の木林はかなり絵心をくすぐる役に育っていた。竜星涼には、演じた役の、描かれていない前後の道まで想像させる力がある。○いい意味で印象を裏切ったさて、無界の里の若衆太夫として、美しい女性の姿で参加する『修羅天魔』は、役割的に、『髑髏城の七人』の主要人物のひとり・蘭兵衛的なところを担うのかなという想像もあって、だとしたら見せ場はある。動ける(アクションができる)俳優だし、身体能力をいかしてほしい。でも、女装している役だし、どうなんだろう……。舞台経験がそんなにないから、お試し出演として、主人公の天海祐希と古田新太が大暴れするのを福士誠治などと共にしっかりサポートする役割になるのだろうか、などといろいろ気になりながら観た。詳細はネタバレになるので触れないでおくが(ああ書きたい、でも書けない)、この1年ほどの竜星涼への、あともう少し、あともう少し見たいと思わせる寸止め俳優という印象を、いい意味で裏切られたことは確かであることは、文字を大にして書きたい。無界の里はあらゆる境界がなくなる場所という設定。そこで男とか女とかの境界をなくした存在である夢三郎を演じる竜星涼は、これまでの、目立つのに本筋ではない、そのどっちにもいけそうな謎めいた感じを、いい方向に使ってみせたと思う。8等身以上あるので舞台映えしないのではないかと心配(舞台は客席の後ろからでもよく見えるので顔が大きいほうが良いとかつては考えられていた)も不要で、じつに華やかに、躍動する。ある場面では、私は思わず、エヴァンゲリオンのサキエルを思い浮かべた(大きな身体に小さな顔がちょっとついている使徒です)。それだけの凄みがあったのだ。木林ラインか、綿引ラインか、翔馬先生ラインの3人のどれに近いかといったら、どちらかといえば、木林ラインであろうか(あくまでどちらといえばという話です)。少なくとも、竜星涼への期待値は『修羅天魔』でさらにあがった。もっと舞台に出てほしいし、『アンナチュラル』のスピンオフ、葬儀屋・木林編も見たい。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年04月09日フレデリック・カッセルは、4月限定“野イチゴ”のスイーツを発売。春夏通してのテーマである「フリュイ・ルージュ=“赤い色をした果物”」より、4月は“野イチゴ”にフォーカス。ぎゅっと凝縮された果実の深い味わいと、甘酸っぱい酸味を活かした、春にぴったりのスイーツが登場する。「シュー フレーズ・デ・ボワ」は、鮮やかな赤のクランブルシューに野イチゴのカスタードクリームと、野イチゴの軽やかなマスカルポーネクリームを合わせた贅沢な味わいのシュー。シュー生地のサクサクとした食感も楽しめる。フランスの定番菓子をアレンジした「シャルロット フレーズ・デ・ボワ」は、爽やかなフロマージュブランのムースに野イチゴのソースを閉じ込め、ビスキュイを合わせたケーキ。ムースと、野イチゴの酸味が相まって華やかな味わいに。その他、香ばしいタルト生地を使った「タルト フレーズ・デ・ボワ」や、柔らかな甘さのバニラガナッシュと野イチゴの風味を味わえる「マカロン フレーズ・デ・ボワ」といったラインナップが揃う。【詳細】フレデリック・カッセル 4月限定スイーツ販売期間:2018年4月1日(日)~4月30日(月)販売店舗:フレデリック・カッセル三越銀座店住所:東京都中央区銀座4-6-16 銀座三越B2FTEL:03-3562-1111(代表)■限定メニュー・シャルロット フレーズ・デ・ボワ 605円(税込)・シュー フレーズ・デ・ボワ 648円(税込)・タルト フレーズ・デ・ボワ 756円(税込)・マカロン フレーズ・デ・ボワ 250円(税込)
2018年04月07日滝沢秀明(36)と三宅健(38)が、新ユニットを結成。ユニット名をKEN★Tackey(ケンタッキー)としCDデビューすることが4月5日、滝沢の主演舞台「滝沢歌舞伎」の初日公演で発表された。KEN★Tackeyは、公演内で初披露された新曲「逆転ラバーズ」を今夏にリリースするという。 三宅は16年から3年連続で同舞台にゲスト出演しているが、「まさか(KEN★Tackeyとして)CDデビューするようになるとは思いませんでした」と驚きが隠せない様子。滝沢は「ファンの方からの声もいただいていましたし、お待たせしましたという感じ。先輩と一緒にできるなんて、すごくうれしいです」と喜んだ。 16年4月には、名前の通り「ケンタッキーフライドチキン」のCMに出演していたKEN★Tackey。待望のデビューに、ファンからは歓喜の声が上がっている。 《な、なんて!?KEN★Tackey??!楽しみすぎるだろ!!!!》《KEN★Tackey CDデビューにあたって音楽番組やバラエティにも2人で出てくれたりするんでしょうか!?めっちゃ高まるっっっ!!》《嬉しすぎる朗報 ずっとずっと思ってたCDを出してくれるなんてもう胸がいっぱいです ありがとう、滝沢歌舞伎》 これからの目標について訊かれた三宅は「全然考えてないんですよ。趣味の一環なので」とジョークを飛ばしたが――。新ユニットでも、羽ばたいてほしい!
2018年04月06日アイドルグループ・V6の三宅健と、タッキー&翼の滝沢秀明が、ユニット「KEN☆Tackey」(ケンタッキー)としてCDデビューすることが5日、東京・新橋演舞場で行われた舞台『滝沢歌舞伎』の初日で発表された。これまで同舞台で「浮世艶姿桜」「蒼き日々」「LOVE」などの曲を発表してきた2人だが、今回の新曲「逆転ラバーズ」で夏にCDデビューが決定。5月下旬から全国で放送するケンタッキーフライドチキンCMにも2人で出演する。また、オフィシャルHPも5日21時よりオープンした。パフォーマンスの初公開には、後輩であるジャニーズJr.のHiHI Jetsが登場し、ローラースケートで「KEN☆Tackey」「新曲」のフラッグを持ち、新曲を告知した。目を引く赤の衣装でのパフォーマンスで、三宅と滝沢が向き合って歌う場面や、滝沢が後ろから三宅の肩に手を置く振り付けも。サビでは「Can touch it」「Can take it」と繰り返し、「ケンタッキー」と聞こえるような歌詞の仕掛けが施されていた。初日直前に行われた公開ゲネプロ後の取材では、三宅も「一昨年の(『滝沢歌舞伎』の)記者会見で『おいしい関係になれたらいいですね』なんてことを冗談で言っていたら、その時にケンタッキーさんのCM(2016年)が来て、そこからまさかのCDデビューになるとは」と驚いた様子。滝沢も「ファンの方も結構声をいただいていたので、ようやく」と喜びを表した。向かい合って歌うシーンについて、三宅は滝沢について「ニコニコですよ。僕の知っているタッキースマイルが見えましたよ」と表す。一方滝沢は、三宅について「キラキラですね。奇跡のおじさんでした」と称賛した。真っ赤な衣装は、三宅がプロデュース。「(今回は)赤でいきましょうと話し合って、全体的の流れもあるので、一番分量の多いものを僕たちがまとって」と説明する。紅白歌合戦について話が及ぶと、2人とも「全然考えてない」と苦笑し、三宅が「趣味で!」と言い放つと、笑いが起こっていた。フォトセッションでは、「手を(拳に)握ってください」という指示に、2人で手をつなぐなど、お茶目な姿を見せた2人。「おじさん同士だよ?」と言いつつも、握手のポーズの際に三宅が"恋人つなぎ"のように指を絡ませると滝沢が崩れ落ちるなど、仲の良い様子を見せていた。
2018年04月05日●グループの枠を超えてユニットに舞台『滝沢歌舞伎』の公開ゲネプロが5日、東京・新橋演舞場で行われ、滝沢秀明、三宅健が取材に応じた。同舞台は滝沢が2006年、和によるスーパーエンタテインメント『滝沢演舞城』として上演し、新橋演舞場で史上最年少座長を務めた。2010年には日生劇場で『滝沢歌舞伎』として上演。2014年よりタイトルを『滝沢歌舞伎』に統一して上演している。2018年は、6月に名古屋・御園座での公演も決定し、例年芝居を行っていた2幕もショー仕立てにしたという。全体的な振り付けをA.B.C-Zの五関晃一が担当したほか、激しい殺陣の立ち回りや、虹をモチーフにした滝沢による創作歌舞伎、ハンモック・フライング、360度回転する腹筋太鼓パフォーマンスなど、迫力満点のショーとなった。また、滝沢と三宅によるユニット「KEN☆Tackey」のCDデビューも発表。今夏に新曲「逆転ラバーズ」が発売される。後輩のジャニーズJr.も、全員による楽曲「Thousand Suns」(滝沢プロデュース、三宅衣裳プロデュース、五関振り付け)やタップダンス、2幕の演目・鼠小僧での女装(お丸/深澤辰哉)、犬同士の戦い(ナベ郎/渡辺翔太、ガン太郎/岩本照)のコミカルな演技などで舞台を盛り上げた。○会見全文――いよいよ今年も滝沢歌舞伎の桜が満開になりましたね。滝沢:毎年恒例というか。滝沢歌舞伎の時期が来たなと実感していますね。――今回で3回目のタッグということですが。三宅:二度ある事は三度ある。まさかね、3年連続出演することになるとは思っていませんでした。純粋に嬉しかったですね。気心知れた仲なので。――すごく名コンビで、先ほどのフォトセッションから笑いが絶えないですね滝沢:『滝沢歌舞伎』で改めて健くんとご一緒させていただいて、一からお互いを知っていく3年間でした。最初はしゃべったこともないくらいの関係だったので、この作品で色々と知れて。――今はどういう関係ですか?三宅:まあ、「おいしい関係」です。――新曲も「ケンタッキー」にしか聞こえない歌詞で。三宅:「Can touch it、Can take it」ですね。――念願のCDデビュー、ついにですね。三宅:一昨年に僕が出演するということになった時に、記者会見で「おいしい関係になれたらいいですね」なんてことを冗談で言っていたら、ケンタッキーさんのCMが来て、そこからまさかのCDデビューになるとは。レーベル(avex trax)は一緒だったんですけどね。――もっと早く実現するかと思いました。三宅:レーベルの方がもたついてたんだと思います(笑)。滝沢:僕らは言ってたんですけど。ファンの方も結構声をいただいていたので、ようやくというか。『逆転ラバーズ』という曲なんですけど、とにかくハッピーな気持ちになれる。――若々しい感じがしましたし、2人とも笑顔でしたね。三宅:楽しくなってきちゃうんだよね、向かい合って踊ってるから。なかなか向かい合って踊ることもないから。(滝沢は)ニコニコしてましたよ。僕の知ってるタッキースマイルが見えましたよ。滝沢:嬉しいですよね、先輩と一緒にできるというのは。(三宅は)キラキラですね。"奇跡のおじさん"でした。ファンの方の声がものすごくあったので、ようやくお待たせしました、という感じです。三宅:グループの枠を超えて、まさか(滝沢)歌舞伎の中からユニットができる、というのは、ジャニーズならではなんじゃないかなと思います。――今着ているのが新曲の衣裳で、歌番組に出たりも?三宅:衣裳、真っ赤な感じで。滝沢:(歌番組も)おいおいあるんでしょうね。CDは今年の夏を予定しています。――紅白を狙ったりは?三宅:そんな壮大な!? 全然考えてない。滝沢:そこまではね。三宅:(CDデビューは)趣味で!滝沢:趣味の一環で(笑)。●療養中の今井翼へ「待ってるよ」○先輩後輩は縦社会――『滝沢歌舞伎』の方も、盛りだくさんですが。滝沢:去年まで2幕はお芝居を中心にしていたんですけど、今年は初めて(名古屋の)御園座にも行かせてもらうので、2幕も滝沢歌舞伎のショーのスタイルという感じです。セリフで伝えるというよりパフォーマンスで伝えていくスタイルで、海外の方が見ても楽しめるようなショーをめざしています。海外の反響も届いてます。日本だけじゃなくて、色々な国から来てくださいますので、そういった方達でも楽しめるようなショーにしたいですね。――太鼓もすごかったです。三宅:罰ゲームをしながら太鼓を打ってるような……。滝沢:罰ゲームじゃないですよ! 健くんも、なんだかんだやってくれるので。最初は「嫌」って言うんですけど(笑)。――最終的には(360度回転で)タッキーが下になるんですね。滝沢:はい、後輩なので。三宅:縦社会なので(笑)。――先輩後輩関係は?滝沢:ここ数年一緒にやらせていただいて、関係性もできてきましたので、僕も遠慮なくお願いをしていますね。今着ている衣裳も、健くんがこうしたらいいんじゃないかとか、僕の衣裳も全部決めてくれたりとか。こういったジャケットにしようとか、インナーはこうがいいとか。全部任せていますね。三宅:(今回は)赤でいきましょうとスタッフさんたちと話し合って、全体的の流れもあるので、一番分量の多いものを僕たちがまとって。赤を主張しようと、コートになりました。○滝沢の趣味・マグマに2人で?――2人の関係性としてプライベートで趣味に付き合ったりは?三宅:誘われてるのは、ダイビングと、マグマ。燃える男だから。滝沢:誘ってます!三宅:僕も少し興味はあるので。なかなか「マグマ一緒にいく?」という人も周りにいないけど、たまたまいるから、「行ってみようかな」という気持ちはあります。10日間くらい一緒にいなければいけないらしいですよ。滝沢:僕はぜひ行きたいですよ。――逆に三宅さんから誘ったりは?三宅:去年、「お寿司に行こう」と言って、まだ一度も行けていないです。滝沢:去年の千秋楽の日に「ちょっと寿司でも行こうぜ」と言って、1年経ちましたね。先輩、1年経ちましたから。三宅:今年は行こうね。――ダイビングの免許はあるんですか?三宅:僕は持ってないです滝沢:僕と、一から。三宅:(滝沢が)アレンジメントすごい好きなので。滝沢:行けるなら、全部手配しますよ。火山も。○メンバーへの言葉――KEN☆Tackeyとして新たなスタートになりますが、V6のメンバーにもおめでたいメンバー(結婚を発表した森田剛)もいまして、三宅さんの方はいかがですか?三宅:僕の話!? 僕はまあ、歌舞伎の舞台中ではありますけども、やっぱりそういった色恋沙汰は……隣に、今はこんなおじさんの……(滝沢を指しながら)。滝沢:おじさんの!?三宅:綺麗なおじさんの姿ですけど、(滝沢の)女方がありますから。舞台上ではいい匂いするんですよ。女方の時だけいい匂いさせてるでしょう、あなた。滝沢:そんなことないですよ!三宅:させてるよ絶対! いつもいい匂いがするし、今はおじさんですけども、本番中はうっとりするくらい綺麗で、いい匂いをさせてくるんですよ、この人は。滝沢:いやいや、本当ですか!?三宅:つけてるでしょう? えっ……自然に出てくるやつ!? この年になって自然に出てくるのは加齢臭ですよ!滝沢:健くん、明るい話を!三宅:まあ、(色恋沙汰は)ここにいますから。(滝沢に)惚れていますから。――メンバーのお祝いはされましたか?三宅:もちろん、メンバーですから。「おめでとう」と言いました。プレゼントは何もしてないです。わたくし、忙しいので(笑)。――療養中の今井(翼)さんが心配ですが。滝沢:ちょっとまだ翼とも話せていないので、状況は僕も把握しきれてない部分はあるんですけど、とにかく今はまず、体調を回復してもらいたいなという思いが強いですね。焦らずに、「待ってるよ」という感じです。○誕生日の逆サプライズ――滝沢さんの誕生日も今年は滝沢歌舞伎のメンバーと。滝沢:稽古があったので、いつも通り……。三宅:いつも通りか? 平野ノラさんの格好をして、この人が登場してきた。滝沢:言わなくていいですよ!三宅:高いカツラまであつらえたらしい。自分の誕生日ですよ? 普通、祝われる方じゃないですか。すごい準備してくるんですよ。女装ですよ、女装。滝沢:全部そろえました。毎年みんなにやっていただいてたので、さすがにサプライズ的な要素、ないじゃないですか。もう僕もわかっているので、だったら逆にサプライズをしようと。三宅:あれ、なんだったの? 「パーティーしよ?」ってずっと言ってたじゃない。滝沢:僕のパーティーをしようって(笑)。パーティー、しました。――では、滝沢歌舞伎への意気込みを。滝沢:とにかく今年は長い期間やりますし、新橋演舞場はもちろん、御園座も控えていますので、一人でも多くの方に、『滝沢歌舞伎』というエンターテインメントを感じていただきたいと思います。三宅:今年は2幕はショータイムという新たな『滝沢歌舞伎』なので、また色々なお客さんに見ていただきたいと思います。――新年度ですが、舞台以外の目標は?滝沢:とにかく、一個一個ちゃんとこなしていく感じですかね。KEN☆Tackeyの活動もですし、自分の活動もですし、目の前にあることをちゃんとやっていく。三宅:決断力を強くしたいです。割と優柔不断です。スパッと決めたいです。――最後に、タッキー&翼が活動休止された時の心境は。滝沢:自分たちで決めたことなので、休止したからには、ファンの方の期待に応えらえる状態を作っていきたいです。
2018年04月05日競技かるた、百人一首……とクラシカルなアイテムがこんなにもワクワクするエンターテインメントになるなんて! と驚かされた『ちはやふる』の完結編は、その名もずばり『ちはやふる -結び-』だ。きっとこの“結”には、「完“結”」だけでなく、いろいろな“結”の意味がこめられているに違いないが、とりあえず、映画で主人公・千早(広瀬すず)たちは、高校3年生になり、高校生活最後の大会に挑むことになる。メインの登場人物は3人。かるたの天才・千早と、彼女の幼馴染で、こどもの頃からかるた仲間だった太一(野村周平)と新(新田真剣佑)。新は幼い頃に引っ越してしまい、千早は、いつかまた新とかるたをやることをモチベーションにして懸命にかるたに邁進。その姿を、太一はひたすら見つめ、支えてきた。やがて新と再会して……というのが前作『ちはやふる 上の句/下の句』だった。『-結び-』では、かるたを再びはじめた新と、大会で対戦するために、がんばる千早に対して、残された太一は、受験勉強も重なって、大きく心を揺らす。主人公は千早だが、<上の句><下の句>も含め、かるたを通してたくさんの登場人物が交錯し、その誰もがみんな魅力的な群像劇になっている。そんななかで、今回は、悩める太一の話も手厚く描かれている。新の千早への想いを知った太一は、かるたにも受験にも身が入らず、悩んだ末、かるた部を辞めてしまう。千早に次ぐ戦力が不在となり、苦戦を強いられる瑞沢高校かるた部だったが、問題児の新入部員たちと新たなチームワークを結びはじめる。一方、太一は、なんだかワケありな周防名人(賀来賢人)の生き方に触れながら、自分の道を模索していく。登場人物たちが、それぞれ自分の未来を切り開いていくキラキラした姿に、勇気づけられるうえ、かるたの試合の緊張感と躍動感も最高だ。○"見つめる"役割を好演する野村そんななかで、太一はつねに、千早といい周防といい、ちょっと突出したヘンな人物(要するに奇才)を見つめていく役割で、野村周平はその役割を完璧に遂行している。ただただじっと対象に目を凝らし、何か頭のなかで咀嚼しているような賢げな雰囲気を漂わせながら。基本は澄んだ瞳。でもいざというとき、感情をたっぷり黒目に湛えて。観客のガイドでもあるこの役、存外、難しい役だ。観客の視点・代表なので、出しゃばり過ぎず、地味過ぎず、誰もに平等に好意と共感をもってもらわなければならない。言ってみたら、白米。もしくは、水。嫌いな人はあまりいないし、ないと困る。美味しい白米や水はありそうでなかなかないものだが、野村周平にはその素養がある。ドラマ『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』でも、ビデオから飛び出してきたヒロインに振り回されながらも彼女をひたすら愛し、見つめる役を好演している。見つめるキャラってほかに誰がいる? と聞かれれば、代表格はまず、事務所の先輩の佐藤健であろう。大ヒットした『8年越しの花嫁 奇跡の実話』もその系譜。次の朝ドラ『半分、青い。』もおそらくその役割を託されているように思う。ほかに今一番、需要があるのは、高橋一生。大河ドラマ『おんな城主 直虎』や朝ドラ『わろてんか』などで、主人公をじっと瞳でお支えした。それから、小栗旬。彼がブレイクしたドラマ『花より男子』(05年)は、ヒロインをまぶしそうに見つめるあの眼差しが魅力のひとつだった。あの絶対主人公的な木村拓哉すら、二番手ながら熱狂的なファンがついた、ドラマ『あすなろ白書』(93年)では見つめるキャラで、メガネ越しの愛情深い瞳が女性ファンの心を鷲掴みしたものである。彼らのように、瞳のちからで女の子を支える、騎士(ナイト)系の役ができる俳優は、伸び代があると私は思っているので、野村周平もこれからもっともっといろいろな役をやっていくことになるのではないかと思う。○動いてよし、動かなくてもよしさて、期待値の高い野村周平の『ちはやふる』の好演に目を見張るものがもうひとつあった。うつむき顔である。もともと『ちはやふる』は“かるた”という競技の性格上、登場人物がうつむいている場面がやたらと多い。うつむいた顔は、重力がかかるので、若くないと対応が厳しく、お肌の下り坂を順調に下降中の私なんかは、千早や太一たちのどんなに頭を低くしても決してたるまないお肌がうらやましくて仕方ない(若くてピンとこない方も何年もしたらわかるときが来ると思います)。野村周平演じる太一は、かるた部を辞めてしまうので、その重力の刑から解放されるのだが、代わりに別の試練(?)が用意されている。スマホである。最近の映画やドラマは、コミュニケーションの手段がSNSになっていて、しゃべることなく、SNS でのやりとりのシーンが増えた。そうなると、やっぱりうつむいた顔が多くなり(スマホのせいでストレートネックになる人が増えているとか)、今度は、手元が映ることが増える。むしろ手元が大事になる。となると、演技のしようがなく、かるたで身体能力を見せつけたほうがいいのではないか、という状況でも野村周平は泰然と画面を保たせていた。今後ますます、スマホによるやりとりが映画やドラマに登場せざるを得なくなるとしたら、野村周平のような、動いてよし、動かなくてもよしの俳優が求められていくだろう。(C)2018映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年03月27日『去年の冬、きみと別れ』(略して『冬きみ』監督:瀧本智行 原作:中村文則)は、岩田剛典の、「犬系男子」ではくくりきれない、演技の飛距離を感じさせる映画であった。彼のポテンシャルのすべてをぶっこんだものになっていたように思う。岩田剛典は、芸能界の一角を担う勢いのEXILE TRIBEの人気アーティストで、EXILEや三代目J Soul Brothersのパフォーマーとして活躍。俳優としては、EXILE TRIBE大集合のアクションエンタテインメント『HiGH&LOW』シリーズから、それこそ彼を「犬系男子」に決定づけた、ある日女の子の家に居候するところからはじまる『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』までヒット作に出演、人気を誇り『去年の冬、きみと別れ』が初の単独主演作となった。だからこそ、彼のポテンシャルのすべてをぶっこんだものになっていたように思う。「観た人すべてがだまされる」というキャッチコピーのミステリーなので、公開からすでに約10日間経過したとはいえ、まだ観ていない方もいることを配慮してネタバレしてはいけないと思うと、具体的なことが書けず、よって岩田剛典のどこに演技の飛距離を感じさせる映画なのか書きづらい困った状況ではあるが、ネタバレしないでどこまで書けるかがんばってみたい。○知性、癒やし、激情とあらゆる面を見せる岩田『去年の冬、きみと別れ』を劇場で見たら、上映前の予告に、岩田剛典の次回作『パーフェクトワールド』(10月公開)の予告が流れた。ヒロインと、車椅子生活を余儀なくされた男性との恋という単なる甘い恋ではない作品とはいえ、女性漫画の映画化なので、『植物図鑑』のように、光に包まれたふわっとしたきれいな画面の作品で、またしても岩田剛典の爽やかな面に溢れた映画なのだろうなあ……と思って観ているうちに、ほかの予告も経て、『去年の冬、きみと別れ』がはじまる。色調はかなり暗く、画面も固く締まった感じで、岩田剛典もきりっとしている。岩田が演じる主人公は、フリーライター・耶雲恭介。盲目の女性(土村芳)が焼死した事件の容疑者だったカメラマン木原坂雄大(斎藤工)に密着し本を書きたいと、出版社にやって来る。編集者・小林良樹(北村一輝)は最初、その企画に乗り気ではないが、上司のすすめもあって、担当することになる。女性が焼死していく様を撮影していたのではないかという疑惑のある木原坂は、初っ端からあやしさを振りまき、対して耶雲は、いかにも真面目な常識人という印象。だが一方で、若さゆえの功名心もあるようで、恋人・松田百合子(山本美月)と結婚を前に、一冊自著を出そうと意欲に燃えていた。木原坂の事件の真相を暴くことができれば、ジャーナリストとして認められる、そんな思いも手伝って取材を続けるうちに、愛する百合子が木原坂のスタジオに監禁されてしまい、耶雲は、精神バランスを狂わせてしまう……。このへんまでは予告編にも出てくるところなので、未見のひともご心配なく。慶応大法学部出身の、岩田の知性を活かして演じるジャーナリストが、木原坂を取材するうえに、じょじょに変化していくところが、この映画の見どころのひとつで、そこに、岩田の演技の幅を感じたというわけだ。『HiGH &LOW』シリーズのようない熱く激しい狂犬のような面も見られるし、『植物図鑑』のような柴犬感もところどころ見ることができる。知性、癒やし、激情とあらゆる面が見られ、それは例えるなら、興福寺の国宝・三面六臂の阿修羅像のようであった。○★ここからややネタバレあり物語は、斎藤工演じる悪魔的なアーティスト(カメラマン)と、岩田演じる阿修羅王のようなジャーナリストとの、真相を巡る心理戦にとどまらず、そこへ、北村一輝演じるベテラン編集者も加わってくる。北村一輝と斎藤工というと、W不倫のドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち』を思い出してしまうが(映画化された『昼顔』には北村は残念ながら出演していない)、そのドラマで食虫植物的能力を発揮していた斎藤が、『冬きみ』では捕獲気分ダダ漏れで、『昼顔』で野生のケモノ的色気ムンムンのアーティストを演じていた北村一輝は、『冬きみ』でもやっぱり隠しきれないケモノ感を放つ。最終的には、阿修羅王のような柴犬の岩田、食虫植物の進化系の斎藤、いつだって野性的な北村の三つ巴の戦いになっていく。ミステリーの内容もドキドキするが、ちょっと違った『HiGH& LOW』のような男のぶつかり合いにもドキドキする。柴犬系で、つぶらな瞳のイメージの岩田剛典が、目をかっと見開くと、ものすごく目が大きくなって、眼輪筋のちからのハンパなさに目を見張る。『冬きみ』物語の果てに、何が見えるか。未見の方は、ぜひご体験を。(C)2018 映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年03月22日藤ヶ谷太輔、痩せたなあ~! まず思ったのはそれだ。舞台『そして僕は途方に暮れる』に主演するにあたり、稽古で3キロほど痩せたそうだ。気鋭の作家・三浦大輔の演出は、緻密で、リアリティーを求めるものなので、精神的なものかと思ったが、藤ヶ谷の役は、その三浦自身を投影している。三浦はかなり痩せて、影のある風貌をしているので、そこに近づいてしまったのかもしれない。○BUSAIKU判定でもおかしくない主人公作家を投影した菅原裕一という役は、自堕落な日々を送っていて、恋人(前田敦子)、親友(中尾明慶)、バイト先の先輩(米村亮太朗)、学生時代の後輩(三村和敬)、姉(江口のりこ)……と次々と頼り、その都度、関わった人たちを怒らせ、怒られたくなくて、問題から向き合うことなく逃げてしまう。ついには故郷の母(筒井真理子)の元へと逃避するが、そこでもうまくいくわけはなく……逃げ場がなくなったとき、出会ったのは、家を出ていって何年も経つ父親(板尾創路)。この親にしてこの子ありという感じで、父こそ、あらゆることから逃げていた。つまり、逃げまくった末路の見本を目の前にして、裕一はどうするのか……というのがだいたいの流れだ。この舞台を紹介する記事で、「バラエティ番組『キスマイ超BUSAIKU!?』(フジテレビ系)での、彼女への対応がカッコイイかブサイクか判定するコーナーで低評価をとることがあまりない藤ヶ谷が、対人関係がうまくいかない人物を演じることが興味深い。」(『週刊SPA!』2018年3月6日号)と書いたように、藤ヶ谷は人に対してきちんと接するイメージがあった。姉役の江口のりこに取材をしたとき「稽古初日から稽古場に対して心を開いているところが凄い。なかなかそんなことできないから」(『プラス アクト』2018年4月号)と言われていた藤ヶ谷が、裕一を演じると、とことん人と目を合わせず、だらだらしていて、他人の家にお邪魔したときも、ついつい実家にいるかのように全力で甘えて、まったく気が利かない。『キスマイ超BUSAIKU!?』で言ったら、「超BUSAIKU」判定を受けるに違いないその態度に笑ったり、いらっとしたり、自分にもそういうとこあるかも……とギクリとしたりしながら観た。それに、部屋でだらだら過ごす藤ヶ谷の姿の無防備な感じも、覗き見気分で楽しめるのではないかと思う。○ハードルの高い仕事に挑む藤ヶ谷『そして僕は途方に暮れる』は2幕構成。1幕目は裕一と恋人や友人知人、家族の一対一のやりとりで、2幕目は実家で向き合う人数が増えていく。裕一の関係者も、いなくなった彼を心配して連絡をとりあうなどして関わりをもっていくが、基本的に、裕一と相手による2人芝居の総当たり戦。にもかかわらず、誰に対しても"ちゃんと向き合わない"という、ある意味苦行に、藤ヶ谷はみごとに耐えて、やりきっているところが見事だ。ものすごく悪いことを言ったりやったりする人物のほうが、動きのバリエーションもつけやすいが、悪い人ではなく、ただなんとなく逃げ腰っていうほうが難しいと思う。しかも、人と向き合って会話するよりも、LINEで済ますような現代人で、LINEを打つ演技ってあまりやりようがない。そういうところがあるのが、この作品の面白さで、裕一に対する人たちは熱をもって彼に当たるが、それをスルーしたり、ネットで済ましたりする希薄なコミュニケーションのリアリティーを3時間近くも演じ続けるのは、やはり苦行と思うが、公演をやり遂げたら、俳優として飛躍できるだろう。ずいぶんとハードルの高い仕事に挑んだ、その姿勢に感動を覚える。○★ここからややネタバレありただ、じょじょに変化もあって。救いようのない人ではないのだなと思うし、逃げて、逃げて……、その結果、ある瞬間、裕一が他者に対していままでにないリアクションを見せることがあって、そのときの藤ヶ谷の見せる、明らかな違いには目を見張るものがある。とにかく、思いがけない展開が待っている。長い時間、はっきり言葉にしない登場人物の気持ちを観察し続けた結果のサプライズを、どう捉えるかは、人それぞれ……。最後に。藤ヶ谷太輔、ダッフルコート、似合うなあ!ダッフルコートは、青春の苦さの象徴だなあと思う。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年03月15日舞台やドラマ、映画など多方面で活動中の俳優・滝沢秀明が、2月7日(水)今夜オンエアされる「TOKIOカケル」にゲスト出演。番組おなじみの「生まれて初めて聞かれました」で「TOKIO」メンバーと心理戦を繰り広げるほか“秘境探検家”としての意外な一面も明かす。「TOKIO」城島茂、山口達也、国分太一、松岡昌宏、長瀬智也の5人が毎回ゲストを迎え、さまざまなゲームやトークを展開する本番組。今夜のゲストである滝沢さんは、13歳でジャニーズ事務所に入所し「ジャニーズJr.」の筆頭メンバーとして人気になると、鈴木保奈美と共演した「ニュースの女」や松嶋菜々子と共演した「魔女の条件」、大河ドラマ「義経」に主演するなど俳優としても注目。今井翼とのユニット「タッキー&翼」でCDデビューを果たした後は舞台「滝沢演舞場」をスタートさせ、「滝沢歌舞伎」では自ら演出も手がけるなど着実に成長を遂げ、最近も「せいせいするほど、愛してる」や『こどもつかい』などドラマに映画にと大活躍している。そんな滝沢さんを迎え今回は、「TOKIO」の5人が事前に考えたゲストがいままで聞かれたことがないであろう質問をカードに記入し、ゲストがそれらのカードを1枚ずつ引いて書かれている質問に答えていく「生まれて初めて聞かれました」を実施。ゲームやフリートークから見えてくる滝沢さんの新たな一面とは!?また今回は世界のいろんな危険地帯を冒険する滝沢さんがその“秘境愛”を語るほか、大好物ベスト10では異常な“青のり愛”も発覚。新たな“滝沢さん像”が見られる今夜の「TOKIOカケル」をお楽しみに。今夜のゲスト、滝沢さんだが主演最新作となる東海テレビ開局60周年記念ドラマ「家族の旅路 家族を殺された男と殺した男」が放送中。同作で滝沢さんが演じるのは30年前に起きた一家三人惨殺事件の生き残りで、いまは青年弁護士として活躍する浅利祐介。祐介が事件の犯人とされた死刑囚の再審請求という難問に向き合うなかで、祐介自身に関わる衝撃の事実が次々と明らかになっていく…というストーリーが展開する。「家族の旅路 家族を殺された男と殺した男」は毎週土曜日23時40分~東海テレビ・フジテレビ系にて放送中。「TOKIOカケル」は2月7日(水) 23:00~フジテレビ系でオンエア。(笠緒)
2018年02月07日恋人が難病にかかってしまうお話というと、悲しいラストが待ち受けていることが多いもの。だが、『8年越しの花嫁奇跡の実話』(瀬々敬久監督 以下ハチハナ)は違う。恋人たちが難病という試練を超えていく幸福なお話だ。そこがいい。元気になる。勇気づけられる。2017年の暮れに公開された映画だが、まだ上映していて、興収20億円も突破する大ヒットとなっている。年のはじめに見る作品としてふさわしい一作だ。結婚式を3カ月後に控えた幸せいっぱいの尚志(佐藤健)だったが、恋人・麻衣(土屋太鳳)が突如、病で意識不明になってしまう。尚志は、回復を信じて看病を続け、数年後、麻衣はようやく目覚めるが、なぜか尚志のことを覚えていなかった。努力しても思い出せないことが麻衣の負担になるくらいなら身を引こうとする尚志。とにかく麻衣ファーストで8年。小学1年生が中学2年生になると思うとかなり長い。最初の数年は、意識がない恋人の元に毎日通って、世話したり、話しかけたり、ふたりが話をできない分を埋めるように、スマホ動画を撮り続ける尚志。数年後に麻衣が目覚めるとリハビリにつきあい、誰よりも麻衣に良くしているにもかかわらず、なぜか自分との思い出を覚えられていないなんて……。でも尚志はくじけない。ほかの誰にも心を寄せることなく、麻衣一筋。こんないい人いないから、麻衣はたとえ思い出せずとも、もう一度、まっさらな心で尚志に恋して、やり直せばいいではないか、世の中にはそういう物語もあるよね、確か…などと思うものの、この映画では、あくまでもふたりの過ごした大切な記憶を大事にする。それによって圧倒的なラストへと導くのだ。これは実話をもとにしたお話だそうで、こんなことがあるのだなあ、いい話だなあと、原作者ご夫婦の幸せを心から喜んだ。また、back numberの書き下ろし主題歌「瞬き」がじつにいい頃合いで流れるものだから、堪らない。○土屋太鳳を支える佐藤健なにより、この映画が素敵だったのは、俳優の力によるところが大きい気がする。まず、ある日突然、記憶が曖昧になり、意識まで失ってしまう麻衣を、土屋太鳳が体当たりという言葉がこれほどふさわしいこともなかなかないほど体当たりで演じた。例えるなら、ひとたび走り出したらゴールに向かって猛然と走るとても優秀な競走馬のようで、その姿は強く激しく美しい。そしてなんといっても、威勢のいい土屋太鳳を献身的に支える佐藤健。彼は『るろうに剣心』シリーズで華麗なアクションを披露して以来、動ける俳優というイメージがあり、17年も『亜人』でもその運動神経を遺憾なく発揮した。その一方で、黙って立っているだけでも、その大きな瞳にあらゆる感情を映し出すことに定評があり、『BECK』(10年)、『世界から猫が消えたなら』(16年)、『何者』(16年)などでは、“静”の演技で観客を釘付けにした。ハチハナも佐藤健“静”バージョンである。今回は目ヂカラのみならず、全身で、地方都市で毎日こつこつ労働に励む一市民・尚志のリアリティーに迫る。尚志は車の修理工場で終日、泥だらけになって働いていて、麻衣に出会うまでは、その仕事以外に趣味もないような仕事人間。麻衣が病気になってからは、毎日、工場と病院と自宅をバイク(このバイクもごくふつうの小型バイク)で行き来する(ロケ地岡山。川を渡る橋がとりわけ印象的)。短くカットされた髪や、そのためむき出した首まわりのしっかりした感じは、日々労働しているからこそ出来上がった身体に見える。衣装は地味だけれど、その中の身体はやっぱりそれなりに筋肉がついていそう。毎日、車のパーツの下に潜って精密な作業をしていることで自然に鍛えられているのだと思わせる。○毎日の継続が佐藤を美しくする公式サイトに掲載されているback numberの清水依与吏のコメントにこういうものがあった。奇跡、運命、と聞くとひとまず、やたらキラキラしていて触れない位美しいものをイメージしてしまいますが、本当はもっと泥くさくて汗くさくて実はもっとそばにあるものなのかもしれないなと思いました。佐藤はまさに、泥くさく汗くさい、でもいてくれてすごくうれしい人物になっていた。とはいえ、スクリーンに映し出された佐藤の顔は、特徴的な瞳をはじめとして、鼻筋も通り、横顔なんてパーフェクトに美形である。だが作品のなかでは、その美しさは華やかさではなく、端正な美として静かに機能する。たとえるなら、小さくシンプルなネジ。ロケットや飛行機、車など機械製品を完成させるのに欠かせない、よくできた一本。一流の技術者によってつくられた精巧な(人間は部品であるという意味ではありません、念のため)。そんなイメージだ。瀬々監督の演出も地に足のついた人間をしっかり見つめているからと思うが、勝手な想像をすると、佐藤がアクションの稽古を長らくやり続けてきたことが、彼のカラダを磨き抜かれた一本の精巧なネジのように感じさせるのではないだろうか。そして、それが、誠実なひとりの男・尚志の像につながったのではないか。ネジを作るために試行錯誤すること、アクションがうまくなるために鍛錬を続けること、誰かをただただ思い続けること……すべては等価であり、何かを極めるための、毎日の継続が人間の精神性を強く美しくする。そんな哲学的なことを、我々は佐藤健から学ぶのだ。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年01月12日映画『DESTINY 鎌倉ものがたり』で描かれる古都・鎌倉は、人間と、魔物に幽霊、妖怪が共生している不思議な土地。そこに暮らすミステリー作家・一色正和(堺雅人)と妻・亜紀子(高畑充希)は日々、奇妙な出来事に出くわしながらも楽しい日々を送っていた。ところがある日、亜紀子が不慮の事故で亡くなって、正和は黄泉の国へと追いかけていく。監督は、先ごろ、2020年東京オリンピックの開閉式の演出を手がけるチームのひとりにも選ばれ、『ALWAYS 三丁目の夕日』を大ヒットさせた山崎貴で、最新のCG、VFX技術がふんだんに使われている。冒頭、嫁いだばかりの亜紀子が、正和の車に乗って鎌倉にやって来るところから、生活圏である鎌倉の風景までもが、レイヤーが重ねられた絵画のように見える。魔物や幽霊が人間世界に当たり前に侵食している土地という設定なので、前半の鎌倉も十分現実離れしてファンタジックにもかかわらず、後半の、中国の武陵源と鳳凰古城を参考にして描いた黄泉の国が輪をかけてファンタジック。夢の世界の二段重ねの、なかなかない映画だ。鎌倉の自然も、正和夫婦の暮らす古民家も、どこもかしこもリアルなアニメのように微細に作り込まれているため、俳優もナチュラルな芝居では埋没してしまうだろう。そこで、舞台出身の堺雅人、高畑充希、堤真一、舞踊家の田中泯などのダイナミックな動きや表情がファンタジーと現実を接続する役割を果たす。なかでも堺が凄い。これまで、ドラマ『リーガル・ハイ』シリーズや『半沢直樹』、大河ドラマ『真田丸』で見せてきた、トゥーマッチにも思えるくらいのカラダの動きや表情が、視聴者を惹きつけてやまなかった堺だが、その力は、映画という大スクリーンでこそ、いっそう発揮することを見せつけた。堺の喜怒哀楽、一挙手一投足が、『鎌倉ものがたり』とは、この世とあの世のふたつの世界だけでなく、この世にもたくさんのレイヤーが重なっているという世界のスケールの広さや深さを表している。最初は、それこそ高畑充希とふたりして、トゥーマッチかなあと思って見ていると、いつの間にか慣れてしまい、最後は黄泉の国でのふたりの冒険が、ジブリアニメを見ているように、心が自由になっていくのだ。洋画の『ナルニア国物語』とか『ハリー・ポッター』シリーズのように、日本の実写ファンタジーで、風呂敷が歌舞伎の波幕のように大きく広がったのは、CG、VFX技術ではなく、俳優・堺雅人の力だ。○顔の筋肉を自由自在に動かす堺まず、冒頭、亜紀子を助手席に乗せて車を運転しているときの、堺の横顔に注目してしまった。眉と額の境がくっきりしていて、眉尻から頬骨の脇を通って、顎に至るまでの顔の筋肉の流れも、まるで薄い面をかぶっているように見える。堺はこの面をじつに自由自在に動かして表情をつくっている。要するに表情筋の動きがいいのだ。それが、『リーガル・ハイ』や『半沢直樹』で火が付き、その後、いろいろなドラマで踏襲された“顔芸”エンターテインメントを開拓した。だが、劇中のそれ(いわゆる顔芸)は最初、正和のある種の自己愛につながっている。かなりの年齢まで独身を貫いていたくらいの変わり者の作家である。なぜか、かなり年の離れた亜紀子と結婚することになったものの、その独特な生活に亜紀子は呆れるばかり。ふだんは穏やかそうだが、仕事や趣味に夢中になり過ぎて、そのときだけ感情表現がオーバーになる。さらに彼は、子供の頃知ってしまった、父母の秘密がトラウマになっていた。『リーガル・ハイ』でパロディをやっていた金田一耕助みたいなところもある。それが突然、亜紀子が黄泉の国に行ってしまい、彼女の魂を取り返しに行くあたりから、彼のモチベーションは亜紀子になって、みるみる頼もしくなっていく。○映画の技術を後押しする魅力印象に残っているのは、ある場面で、堺雅人が、悲しみを表現するときに、涙を流すのではなく、カラダで表現するところ。心の痛みをカラダの痛みに置き換えて表現するのは、演劇的表現だ。これが、この映画ではかなり効いていた。最近、アニメーション映画『君の名は。』や『この世界の片隅に』で描かれる背景や人間描写がリアルなこの現実よりも豊かに細かく描かれ、人間の方は、漫画の絵を真似しているという逆転現象が起こっているところで、堺雅人は想像力の限界まで人間の感情を表現するという偉業をやってのけた。亜紀子を迎えにいって黄泉の国をふたりで逃げ、ある伏線によって事態に変化が起こる流れは、脚本もよくできているし、CGもすばらしいし、音楽もいいのだが、やっぱり俳優の表情が、映画のわくわく感を後押しする。だからこそ、映画がすてきな体験になった。堺雅人は、魔法の仮面をかぶっている。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2018年01月05日鶏スープ専門のラーメン店北海道・札幌市西区にお店を構える「麺屋 丸鶏庵(メンヤ マルチアン)」。2007年にオープンしてから地域の人に愛され続け、今年で10週年を迎えました。鶏スープを専門とするラーメン店です。丸鶏にこだわったスープ・多方面の意味をもつマルチ・「◯」にこだわる、という3つの丸から「丸鶏庵」と名付けたのだそう。小上がりありなので、家族やグループでも訪れやすい2017年6月、10週年を機に店内をリニューアルしたばかりで、清潔さをうかがえる綺麗な内装です。カウンター席の他、小上がりにテーブル席が2台あるため、家族連れや数名で訪れた際も入りやすくなっています。店内の随所に丸鶏をイメージしたオブジェが飾られているので、待ち時間の間に店内を見渡してみてください。炙り味噌をつかった贅沢な味噌ラーメン濃厚なラーメンが好みの人には、味噌ラーメンがおすすめです。こだわりの鶏白湯スープに、強火のフライパンで炙った味噌を合わせた極上スープを堪能できます。「丸鶏庵」ではスープだけではなく、麺や具材にもこだわっています。トロトロのチャーシューは、継ぎ足しで使っている自家製のたれに漬け込み、味がしっかりと染みた絶品です。もっちりとした食感が楽しい特注の中太縮れ麺は、北海道産の高級小麦・春よ恋を100%使っています。芳醇な小麦の香りが特徴的な春よ恋は、濃厚なスープとも相性がよく、口に運ぶとその風味を楽しめます。お店自慢の人気No1「鶏白湯の塩ラーメン」「丸鶏庵」が自慢する鶏白湯スープは、こだわりの丸鶏を中心にガラやモミジなどを、強火で長時間煮込み白濁させた鶏100%のもの。素材の旨味が濃縮されたスープが絶品と評判で、訪れる人の多くはこの塩ラーメンを注文するという看板商品。濃厚さの中にまろやかな味わいを感じることができ、くどくない絶妙なバランスが素晴らしい逸品です。地域の人に愛される、心も身体も温めるラーメン「丸鶏庵」では濃厚な鶏白湯スープとさっぱりとした鶏清湯スープをつかった2種類のラーメンを提供しています。そのため、小さいお子様から年配の方まで、老若男女に好かれるラーメン店となりました。札幌市営地下鉄東西線「琴似駅」徒歩15分。わざわざ歩いてでも食べに行きたい絶品ラーメンが待っています。是非とも訪れてほしい1軒です。スポット情報スポット名:麺屋 丸鶏庵住所:北海道札幌市西区山の手6-6-2-11電話番号:011-640-3710
2017年12月26日『探偵はBARにいる3』が公開中だからというわけではないが、大泉洋は、ミステリアスだ。え? と思った人もいると思うが、まあ、話を聞いてほしい。大泉洋は、たしかに、一見、わかりやすいアイコンである。故郷の北海道をこよなく愛しながら、芝居やバラエティーをやっている、気取らず親しみやすい、ユーモアにあふれたおしゃべり上手な好人物という印象を彼に対してもっている人が多いと思う。それを、いやいや違うと覆すつもりはない。改めてプロフィールをおさらいすると、大泉洋は、北海道で劇団TEAM NACS活動と平行しながら出演していた北海道ローカルのバラエティー番組『水曜どうでしょう』から火がついて、みるみるうちに全国区の人気を獲得。テレビドラマ、映画、舞台と大活躍している。前述の魅力につけ加え、バラエティー番組では何かと弄られ、そのつどボヤくのも特徴で、困り顔が似合う俳優という印象もある。そこが愛らしい。と同時に、気になるのは、そこなのだ。ほんとうに、この人は弄られボヤくキャラなのだろうか。○ハードな事件に巻き込まれる探偵大泉洋が主演の『探偵はBARにいる3』の“探偵”(なぜか名前がなく“探偵”のみ)は、ススキノのプライベートアイとして、街を知り尽くし、困った人を助けるお仕事をしていて、しょっちゅう命の危機にさらされている。映画の1でも2でも3でも、なかなかハードな事件に巻き込まれているのだが、常に飄々としていて、どんなに酷い目にあっても、笑いにしてしまう。それは、脚本家の古沢良太の持ち味でもあるのだろうけれど、大泉洋と相乗効果を成して、よりいっそう楽しい。真冬の北海道の海の上、ハダカで小舟に磔にされる場面なんて、実際、その場にいたら笑えない寒さだと思うが、大泉洋はみごとなまでに笑いの場面以外の何ものでもなくしてしまう。3では、1と2にあった、ザッツ昭和のハードボイルド探偵もののイメージーー血がほとばしる暴力シーンやオネエチャンのハダカもいっぱいみたいな部分がずいぶんとソフトになり(これは、吉田照幸監督の個性か、テレビで放送するときのBPO対策か不明)、大泉洋はますます軽やかになった。だが、話は重い。探偵の相棒・高田(松田龍平)の知り合いに依頼された、女子大生(前田敦子)行方不明事件を追っているうちに、裏に危険な組織があることがわかる。そして、その組織に関わっている女性・マリ(北川景子)は、かつて彼女が行き倒れていたときに探偵が助けた人物だった。とても重たい秘密をもった彼女を、探偵は救おうと奔走する。そのクライマックスには誰もが驚かされるだろう。探偵が、マドンナ的役割のゲスト女優といい感じになるのはシリーズのお決まりで、とりわけ今回の探偵とマリはかなりいい感じになる。でも、そのいい感じになり方も、恋愛映画の金字塔『恋人たちの予感』にオマージュを捧げた微笑ましいものになっている。ススキノのプライベートアイとして、あらゆる意味で百戦錬磨であるはずの探偵なのに、この可愛さは何? という、いわゆるギャップ萌えを狙っただけにとどまらず、おそらく、そんなにあらゆる面で強くなんかなれない男性観客にも親近感を呼ぶこと請け合いだ。こんなふうに男からも女からも共感の眼差しを一身に受ける探偵。その一見、そんなに強そうに見えない彼が、一度やると決めたことには、危険を承知でぶつかっていく姿に胸を熱くしながら、でも、きっと、探偵はすごく強いのだと、私は勝手に思う。本当は、寒さも熱さも痛みもへっちゃらの不死身の男で、でも、ちょっと弱そうに見せているエンターテイナーなのだと。○大泉洋の魅力とはその疑惑の真偽に関してはどうでもよくて、こう見えて実は……というミステリアスな部分をちらつかせているところが探偵の魅力であり、そっくりそのまま、大泉洋の魅力ではないかと思う。古沢良太は、大泉は「どんなことを書いてもどうにかしてくれるだろうと信頼しています」とテレビブロス12月2日号で語っていた。それはつまり、大泉洋はなんでもウェルカムな最強の俳優であるということだ。だって、ふつう、ハダカで冬の海に出ないですよ。よっぽど強靭ですよ。それをやっておきながら、ボヤく。困り顔する。ほんとうに、強くて、できる男は、それを見せないということを、大泉洋は体現している。つまり、彼の人生最大の演技は、彼が本当はいじられキャラでもボヤきキャラでも困り顔キャラでもないってことなんではないか。大泉洋に何度か取材をしたことがあるが、常に話が面白くなるように気にかけてくれていることもひしひしと感じる。すべてを笑いに変えられることは、ほんとうの強さだ。大泉洋の脳みそや身体の中で、いったいどんなふうにして、すべてをエンターテインメント化しているのか、その工程こそが、最大のミステリーである。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2017年12月08日主演の滝沢秀明が初の弁護士役に挑戦し、“ソロ”で主題歌も担当することで話題となっている、2018年2月スタートの新オトナの土ドラ「家族の旅路 家族を殺された男と殺した男」。この度、新たに遠藤憲一、片岡鶴太郎、谷村美月、横山めぐみが本作に出演することが発表された。小杉健治による小説「父と子の旅路」をドラマ化する本作は、30年前に起こった一家3人惨殺事件をめぐる、骨太の泣けるサスペンス。主演の滝沢さんが演じるのは、両親を惨殺されたことで法律家への道を選んだ弁護士・浅利祐介。物語は、ある女から死刑囚の再審請求を依頼されたことから始まる。その死刑囚とは、ほかでもない祐介の家族を殺害した犯人で…というストーリー。■遠藤憲一が死刑囚役! 重要なのは“若い頃の回想シーン”!?そんな一家3人を殺害した罪で死刑執行を待つ柳瀬光三を演じるのは遠藤憲一。妻に逃げられ、自らの病もあり、一人息子を預けようと奔走するが、偶然の成り行きで殺人犯として逮捕。手放した息子の幸せだけを心の支えに執行の日を待つという役どころ。遠藤さんは30年間刑務所で暮らしてきた男のスゴみ、そして若き日の悲劇をシリアスに演じる。原作を読んだと言う遠藤さんは、「最近では、あまりないような重厚なドラマになる予感がします」と話し、役柄については「僕が演じる柳瀬光三役は、現在、死刑執行を待つ服役の身です。原作を読んだときにも感じていましたが、刑務所のシーンだけではなく、若い頃の回想シーンがとても重要だと思っていたので、僕のこの歳で、若い頃の光三をやらせてもらえるのか?と、いう気持ちはありました。それが今回、20代の光三と現在の光三の両方を演じさせていただくことになり、感情の面でもとても演じるのが難しい光三役は、やりがいのある役だと感じています」とコメント。主演の滝沢さんについては「ずいぶん前に共演していて、僕の中ではそのときの“さわやかで真っ直ぐ”なイメージのままです。彼も色々な経験を積まれて、大人の魅力も増したでしょうし、どんな風に演技でご一緒してくださるのかとても楽しみです」と共演を喜んでいる。また、「このドラマはテレビドラマの中でも、もう一歩深く入っていかなくてはいけない作品だと感じていますので演者たちも戦いだと思います」と一層身を引き締めて取り組まなければいけないと語り、「勝負型のドラマもいいと思います。深い時間に放送されるので、視聴者の方がのめりこんでじっくり観てくださるよう、見ごたえのある作品にしていきたいです」と意気込みを見せた。■そのほか主要人物のキャスティングも決定そして、再審請求を依頼してきた謎の女性・河村礼菜を谷村美月。奔放な人生を歩んだ母を反面教師として育った礼菜。祐介と出会い、心惹かれていくが…。また、祐介が頼り慕う弁護士事務所所長・澤田陽一郎を片岡鶴太郎。礼菜の母・あかねを横山めぐみが演じる。片岡さんは「かつて『家裁の人』という裁判ドラマで裁判官役を演じましたが、25年の月日を経て今回は弁護士役としてその経験がこの骨太な人間ドラマの一助になればと思っております。期待に応えられるよう、精一杯演じさせていただきます」と語る。谷村さんは「主演の滝沢さんは学生の頃からテレビなどで拝見していた方なので、恐縮する思いでいっぱいですが、胸をお借りするつもりで、河村礼菜役を精一杯努力して演じたいと思います」とコメント。今回の役柄は、いままでにあまり演じたことのないタイプのキャラクターだと言う横山さんは、「泥臭く情熱的に演じたいと思います」と意気込み、「滝沢さんとは、NHKドラマ『鼠、江戸を疾る』で共演して以来、2度目になります。そのときに感じた印象は、どちらかと言えば寡黙な方で、とても繊細で華のある、美しい俳優さんだと思います。また、お会いできるのがとても楽しみです。魅力的なキャストが集まっていてとても嬉しいです。皆さんと熱い芝居がぶつかり合う予感がします」と話している。「家族の旅路 家族を殺された男と殺した男」は2018年2月3日(土)より毎週土曜日23時40分~東海テレビ・フジテレビ系にて放送(全8話予定)。(cinemacafe.net)
2017年12月06日樋口真嗣(『シン・ゴジラ』)が総監督を務める最新作「ひそねとまそたん」の発表会見が12月3日(日)、「東京コミックコンベンション2017」が開催中の千葉県・幕張メッセで行われた。オリジナルのテレビアニメーションとして2018年に放送される予定だ。『ローレライ』『日本沈没』、そして『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』といった話題作を手がけ、昨年、社会現象を巻き起こした『シン・ゴジラ』では、庵野秀明総監督とともに第40回日本アカデミー賞の最優秀監督賞に輝いた樋口監督。その最新作発表の場に選ばれたのが、アメリカから上陸したポップカルチャーの祭典“東京コミコン2017”だ。ドラゴンがコスプレをしたら?奇想天外なオリジナルストーリー主人公は航空自衛隊の岐阜基地に勤務を始めた新人、甘粕ひそね。彼女の仕事は、基地に秘匿された戦闘機に擬態するドラゴン「OTF(変態飛翔生体)」に乗り込み、ドラゴンを大空高く舞い上げる飛行要員…という設定だ。国家的な命運を左右するとも言われるドラゴンには、 はたしてどんな秘密が隠されているのか?そんな本作の奇想天外な発想について、樋口監督は「昔から日本にいる不老不死のドラゴンが、戦闘機のコスプレをして、空を飛んだらどうなるか考えていた」と誕生秘話を明かした。ちなみに、タイトルにある“まそたん”はドラゴンの名前だという。脚本は「あの花」の岡田麿里!さらに豪華スタッフが結集!“あま絵”の青木俊直がキャラクター原案シリーズ構成(脚本)を手がけるのは、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の岡田麿里。「以前、岡田さんと別の企画を開発していて、それは流れてしまったが、お互い『このまま、さようならは嫌ですね』って思いがあって。岡田さんにも温めていた話があって、(会話の)キャッチボールをするなかで、岡田さんとならできるかなと。岡田さんにアニメというフィールドに引きずり込まれたのが最大の理由」(樋口監督)。この日の会見には樋口監督をはじめ、キャラクター原案の青木俊直氏、モンスターコンセプトデザインを手がけるコヤマシゲト氏、アニメーション制作を担当する「ボンズ」の代表取締役である南雅彦氏が出席した。樋口監督は、青木氏がウェブで公開した「連続テレビ小説 あまちゃん」モチーフの“あま絵”に「惚れた」そうで、「この絵が動き、物語性が付いたら、すごいだろうなと。それなら、手描きのアニメーションがいいなと思った」と映像面での構想について語った。『シン・ゴジラ』の次、なぜテレビアニメ?樋口総監督は、会見の締めくくりとして、新たな挑戦としてテレビアニメを選んだ理由を以下のように語った。「昨年の『シン・ゴジラ』で、劇映画については突き詰めてしまった感があり、同じことをしても縮小再生産にしかならないと思った。今の自分が何をしたいか、何ができるか…。その可能性として、いちばんやりたいのがアニメーションという形態だった」今後、声優陣の発表も待たれるが「無理を言って、声を先に録るプレスコを採用し、すでに3~4話分、収録している。もちろん、絵も作っています」とファンの期待をあおっていた。「ひそねとまそたん」は2018年放送決定。(text:cinemacafe.net)
2017年12月03日「2017年(第35回)毎日ファッション大賞」の表彰式が11月29日、都内で行われ、 ハイク(HYKE)の吉原秀明と大出由紀子が大賞を受賞した。表彰式で、吉原は「自分たちなりの信念を持ち、真摯に取り組んできた結果が今回の受賞につながったと思うし、受賞したことで歩んできた道が間違っていなかったと背中を押してもらえたと感じている。今回の受賞は自分たちが考えたことやビジョンを形にしてくれた工場や附属業者の人たち、お店の人、プレスの方たちなどの協力のおかげ」とあいさつ。大出は「1997年に代官山に古着屋をオープンしてから創業20年という節目の年に受賞できてうれしい。グリーン時代からずっとノミネートされていて、とれるとれる詐欺みたいになっていたので、やっぱりとれるんだと思いました」と喜びを語った。また、新人賞・資生堂奨励賞はユイマナカザト(YUIMA NAKAZATO)の中里唯馬、ファッション界に功績を残した人に贈られる鯨岡阿美子賞はスタイリストの高橋靖子がそれぞれ受賞。話題賞はアシックスとGINZA SIX、特別賞は島精機製作所の島正博会長に決まった。中里は「いばらのような道を歩いてきた中で、転機となる1年だった。これまでの衣装デザインでは、1人1人それぞれの人のためのデザインをしてきたが、技術の進化によって縫製をせずにぴったりとフィットする新しい服ができた。これからも恐れずに時代を切り開いていきたい」と挨拶。高橋は「今回の受賞で何年やってきたのかを初めて知った。今まで55年やってきたのと同じように明日からもやっていきたい」と喜びを語った。表彰式の後に行われたパーティーでは、ユイマナカザトがパリのオートクチュールコレクションで発表したコレクションを紹介するファッションショーも行われた。
2017年12月03日巨匠に愛される二宮和也は、日の本一の屈折男子。『ラストレシピ~麒麟の舌を持つ男~』でもその個性は健在だった。現在上映中の『ラストレシピ~麒麟の舌を持つ男~』(滝田洋二郎監督)を見る前は、クリント・イーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』(06年)+倉本聰脚本の連続ドラマ『拝啓、父上様』(07年)+山田洋次監督の映画『母と暮せば』(15年)のような作品かと想像していた。主人公・二宮和也が戦火のなかでも人に喜んでもらえる美味しい料理を作り続けるというような、とにかく戦時中の出来事を丁寧に再現しつつ、家族やかかわりのある人物たちとの触れ合いを描いたヒューマニズムにあふれた映画に違いないと。ところがその予測は外れ、二宮演じる主人公は現代の料理人だった。彼と戦争をつなげるのは、一度食べたものは完ぺきに再現できる天才的味覚と料理の腕を買って、太平洋戦争開戦直前の満州で料理人・山形直太朗(西島秀俊)が考案した伝説のフルコース“大日本帝国食菜全席”のレシピを再現してほしいという依頼だった。物語はたちまちミステリーの様相を呈し、二宮演じる・天才料理人・佐々木は、料理探偵のごとく、伝説の料理のヒントを探っていくうち、レシピ誕生にまつわるある重大な出来事を知ることになる。○二宮が出す、どこか世を拗ねた空気映画は、太平洋戦争開戦直前の満州でレシピ作りに全身全霊を注ぐ西島秀俊のパートと、それを調べる現代の二宮和也のパートの2層になっている。ずしりと思い戦争記録映画かと思ったら、ドンデン返しのある娯楽ミステリー映画のような世界に寄せているところもあって、広い層が楽しめるようになっている。後半、出てくる、2つの、ある悲しい出来事の描きがあまりに唐突で、連続ドラマにおける“チャンネルを変えさせないための引き”もしくは“次週も見てもらう引き”みたいで戸惑いを隠せない部分もあったとはいえ(未見の方はぜひ、自分の目で確かめてください)、満州パートも、現代日本パートも、出演俳優はみな真摯で、瞬間瞬間をビビッドに演じている。西島秀俊は、ひたすらまっすぐ料理に勢力を注いでいて、二宮和也は、料理の腕(舌)は確かだが、どこか斜に構え、世を拗ねた空気を出している。この世を拗ねた感は、二宮和也の得意技である。それを、故・蜷川幸雄が好んでつくった映画『青の炎』(03年)や舞台『シブヤから遠く離れて』(04年)は、二宮が演じる屈折男子を存分に味わえる作品になっていた。クリント・イーストウッドの心も捉えたという『青の炎』から14年、『ラストレシピ』の二宮演じる佐々木も、オトナになっても屈折男子というふうで、綾野剛演じる友人に手を焼かれている。とはいえ、最初、料理するとき、料理にまっすぐ向き合ってなさすぎに見えて、『拝啓、父上様』で料理人の役を体験済みなのに……と思っていたところ、佐々木がラストレシピ探しを終える頃、ずいぶんと料理への向き合い方が変わっていくのだ。この映画は、ラストレシピ探しであると同時に、屈折男子・佐々木の自分探しの旅でもある。そのダイナミズムを、二宮和也はじつに巧みに繊細に演じている。大雑把な料理ではない、繊細な繊細な味付けで。主人公とはいえ、佐々木は傍観者のようなもの。にもかかわらず、劇的で俳優が熱っぽい満州パートにかき消されないで、主役として立っていられるのは、二宮だからこそだろう。変化を、台詞などに頼らず、向き合う心情によって、姿勢が変わり、指先への神経の伝わり方も変わり……さらに過去から引き継ぎ、その肉体にひっそり隠れていたものがひょいと顔を出すような神秘な部分まで。やっぱり、イーストウッド、蜷川幸雄、倉本聰、山田洋次など巨匠に起用されるだけはある。○ちょっとちがう角度から真実に光をその演技の原動力は何か。なんといっても二宮和也が、日本を代表する屈折男子だからだろう。屈折とは、世の中に決して埋没しないことだ。誰もが、なんとなく、声の大きな方向に流れていってしまうなか、ほんとうにそれでいいのか? と立ち止まって疑問を発し続けることだ。かつて、倉本聰が二宮に当てた手紙でも、二宮の魅力を逆説的に語っているものがあったが、まさにそれ。『ラストレシピ』も、ともすれば、戦争中の悲劇に「泣けました」「感動しました」(あと「美味しそうでした」とかも)という感想ばかりがついてしまう可能性もある映画になりかねないが、二宮和也の斜に構えた空気がそれを留まらせる。ほんとにそれだけ? と。それは『硫黄島からの手紙』+『拝啓、父上様』+『母と暮せば』+『青の炎』の魂でもある。映画の宣伝で出演したNHK『あさイチ』プレミアムトークで、役者ではなくアイドルだと達観していたことが話題になったが(10月27日放送)、それもまた、彼特有の屈折ゆえの発言ではないかと思う。役者として熱くまっすぐ芝居を語ることなく、ちょっとちがう角度から真実に光を当てる。なかなかできるものではない。巨匠はそういう若者に弱いのだ。ほんとうにニクイほど巨匠転がしである。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2017年11月23日映画『シン・ゴジラ』が12日、テレビ朝日系で地上波初放送され、放送時のCMを挟むタイミングに賞賛の声があがっている。同作は、『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明が脚本と総監督を担当、『のぼうの城』『進撃の巨人』の樋口真嗣が監督と特技監督を務め、300人を超えるキャストが集結。興行収入82.5億円を記録して、2016年の実写邦画ランキング第1位に輝き、日本アカデミー賞で7つの最優秀賞を受賞した。地上波放送では作中にCMが多く挟まれるため、タイミングによっては集中力を分断してしまいかねないが、同作は冒頭の約20分をCMなしで放送。さらにその後もちょうど展開のとぎれるタイミングでCMを挟んでいったために、Twitterでは「絶妙すぎる」「配慮がすごい」「作品を愛しているのが伝わってきた」「テレビ朝日の本気を感じた」と賞賛の声が相次いだ。一方で、改めて他作品の地上波放送のCMのタイミングや、昨今のテロップ入り視聴者参加型企画の安易さに疑問の声も。「なぜこの配慮を洋画でもやってくれないのか」「dボタン連打企画やTwitter連動企画にならなくてよかった」と語る人が相次いだ。
2017年11月13日アイドルデュオ・タッキー&翼の滝沢秀明が出演するメンズビゲン新TVCM「シラガー登場篇」が28日より全国でOAされる。CMでは、白髪の気になる年齢にさしかかった男性の代表として滝沢秀明が登場。普通の男性の日常に現れるそいつ=白髪の化身「シラガー」が滝沢に忍び寄るストーリーを描く。男性誰しもが「シラガー」に付きまとわれる可能性を見せる。バスで通勤中、会社でPCに向かって仕事をしている時、蕎麦屋でランチをしている時、だんだん存在感を増す「シラガー」に「どうする?」と悩む滝沢。増殖し、家でくつろぐシラガーに驚くが、片手にサクッとメンズビゲンで染め、黒髪の化身であるクロガーとハイタッチする。最後は、滝沢の爽やかな笑顔で締めくくられる。
2017年10月28日道ならぬ恋の扱いに日本中がデリケートになっているいま、あえての、道ならぬ恋を描いた映画が、ベストセラー恋愛小説を原作にした『ナラタージュ』(行定勲監督)である。高校教師で、しかも既婚者・葉山(松本潤)と、女子高生・泉(有村架純)が、お互いの孤独を埋めるように惹かれ合っていく。一度は別れたものの、大学生になった泉と葉山が再会すると、忘れられない想いが静かに激しく燃え上がってしまう。妻との離婚が成立していない先生に心を痛めた泉は、彼女だけを想ってくれる青年・小野(坂口健太郎)とつきあってみる。だがそれは泉を救うどころか、ますます苛むことに……。有村架純が、撮影中ずっと苦しかったというようなことをインタビューで語っていたが、画面は常に皮膜が一枚かかったような薄曇りのような感じで、雨もしょっちゅう降っている(しっとりキレイではある)、ロケ地の富山は、空も海もどことなくどんよりしている(それがいい雰囲気ではある)。○葉山のろくでなし感が魅力にそれもこれも、葉山先生がはっきりしないからだ。映画を観た人はたいてい葉山先生に責任を求めたくなる。でも、彼の、ふわっと曖昧で手応えない感じこそ魅力ともいえるから、困りもの。松本潤が、葉山の憎みきれないろくでなし感をいい塩梅に演じている。松本潤が、道ならぬ恋を描いた作品に出演するのはこれがはじめてではない。実は、得意ジャンルと言ってもいいくらいだ。映画『東京タワー Tokyo Tower』(05年)では、親子ほど年齢の離れた人妻との恋を、『僕は妹に恋をする』(07年)では、双子の妹との倒錯的な恋、テレビドラマ『きみはペット』(03年)では、年上のお姉様に飼われるような関係、『失恋ショコラティエ』(14年)では、またまた人妻に恋しながら、セフレまで作るという割り切った関係を描いた作品で、どの人物も鮮やかに演じていた。おそらく、少女漫画のキャラクターのような顔立ちが、状況の生々しさを回避させ、罪悪感よりも夢気分を高めることに成功できる稀有な俳優なのだ。よく、ラブストーリーの背景は、夜景やイルミネーションなどでキラキラさせてムードを盛り上げるのだが、松本潤は自家発電でキラキラしていて、背景要らずである(あればあったで一層輝くが)。だが『ナラタージュ』では、そのキラキラを封印し、最大の武器・目ヂカラをメガネでぼかし、髪は中途半端に伸びたカツラを着用し、体重も少々増量することで、腕力も全然ない、冴えない三十代の教師に化けた。キラキラなしでも(なにしろ背景も、前述のごとくいつもどんよりしているのだ)相手に道を踏み外させてしまうという、さらなる難関に松本潤は挑んだ。とりわけ私が驚いたのは、葉山先生の後ろ姿だ。なんの変哲もない、シャツと、ズボンという言葉が似合いそうなパンツを身に着けた先生のお尻は、ダンサーとかアスリートとかスター俳優のものではなく、研究職や作家などに多そうな、あまり意識していない感じに見えた。もちろん、かっこ悪くなりすぎないギリギリの線は死守しているのだが、いかにもふつうの人のお尻に見えたのだ。ここに、私は、地方都市の高校教師(体育の先生じゃない)で、妻とは別居しているためひとり暮らしの三十代を演じる、松本潤の気合いを見たような気がした。○『浮雲』を思わせるアプローチ大事なのは、この、一見なんでもない感じの先生に、なぜ、泉がそんなに惹かれて離れられないのかというところ。劇中、映画が好きな葉山と泉が観る映画のひとつに、成瀬巳喜男監督の『浮雲』(55年)がある。これがまさに、なぜ、そんなにもこの男がいいのか? という映画だ。既婚の男が、ある女と腐れ縁のような関係になって、結局、彼女を破滅させてしまう悲恋もの。こんなふうに描くと身も蓋もないが、何度別れようとしても、離れられないふたりがもどかしいけれどロマンチックで、一度観ると忘れられない。女を演じる高峰秀子も美しいが、なんといっても、妻とはなかなか別れず、さらに別の女とも関係してしまう、女性の敵としか思えない男を演じる森雅之の力だ。知的なその外観をなんとも美しく思わせるのは、全身から堕落の芳香が滲み出ているようだから。その香りは、ゆらゆらと女を取り込んで離さない。松本潤は、キラキラとホタルのように発光するのではなく、稀代の色男・森雅之のようなアプローチで今回は迫ったのだと思う。“なぜ、惹かれてしまうのかわからない”という無言で透明な縄が、泉を、観客を捉えて離さない。松本潤はなんともおそろしい俳優なのだった。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2017年10月14日スタイリッシュな空間が魅力の大人の隠れ家「晴庵(せいあん)」は「学芸大学駅」近くにひっそりとお店を構える大人の隠れ家です。外観も店内も白を基調としたスタイリッシュな雰囲気となっています。席数は全部で24席、調理の様子や手さばきを眺めながら食事を楽しめるカウンター席と、グループでの利用も可能なテーブル席を用意。落ち着いた雰囲気の中、おいしい料理とともにゆったりとした時間が流れます。この店でしか味わえない非日常のくつろぎ時間少しだけ非日常を感じられる場所にしたいと考え、スタートしたお店のテーマは「脱・和の和」です。家庭的ともスノッブとも違う、ここでしか味わえない和の雰囲気を楽しんでほしい、そんな思いを込めてお店を展開しています。2003年5月に創業し、2013年の10周年を機に店内を大規模改装し、ますますパワーアップしています。ぜひここでささやかな非日常の食事の時間を過ごしてください。お酒と一緒に味わいたい! 自慢の肴メニュー季節の食材に合わせたお酒と一緒に味わいたい肴がたくさん用意されています。中でもぜひ味わってほしい自慢のおすすめメニューを見ていきましょう。まずは「すだちで和える旬野菜サラダ」です。すだちの爽やかな香りとさっぱりした味を楽しむ一品となっています。旬の野菜のおいしさを味わえます。「桃と生ハムの白和え」も自慢の一品です。白和えとフルーツ? そう思った人はぜひ食べてみてください。意外な組み合わせのおいしさに驚くはずです。このメニューは季節ごとにフルーツが変わる人気の肴となっています。「7種類のお刺身盛り合わせ」で新鮮なおいしさを堪能この店に訪れたら必ず注文してもらいたいのがお刺身です。「晴庵」では、天然ものの海の幸を味わえるのが大きな魅力のひとつとなっています。おすすめなのは「7種類のお刺身盛り合わせ」。早朝一番に仕入れる、その日のおいしいおすすめの鮮魚が7種類も堪能できる人気メニューとなっています。新鮮なお刺身の味わいに、思わずお酒が進んでしまうこと間違いなしです。こだわりの素材で作り上げる「晴庵」ならではの料理使用されているのは、店主自ら市場で見極めた鮮魚や三浦活々水産の朝どれ鮮魚、三浦の契約農家青木農園から仕入れる有機野菜といったこだわりの厳選素材ばかりです。調味料を含め、お店で使用するすべての素材は丁寧に選ばれています。東急東横線「学芸大学駅」から歩いて4分ほどの場所に、お店はあります。おいしいお酒と旬の肴で贅沢な時間を過ごすことができる「晴庵」は、あなたのお気に入りのお店になるはずです。スポット情報スポット名:晴庵住所:東京都目黒区鷹番 3-19-21電話番号:03-3711-0161
2017年10月01日2016年7月に劇場公開され、興行収入82.5億円超え、2016年実写邦画ランキング第1位を獲得、日本アカデミー賞では最優秀作品賞ほか最優秀監督賞、最優秀撮影賞など7部門を制覇した『シン・ゴジラ』。日本が世界に誇るゴジラ映画のヒット超大作が、ゴジラの“誕生月”でもある11月に、地上波初放送されることになった。第1作の『ゴジラ』(1954年11月3日)が公開されておよそ60年。2014年にはハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』として映画化され、全世界で大ヒットを記録するなど、日本で誕生したゴジラは世界の“キング・オブ・モンスター”といわれるまでになった。そんな“ゴジラ”を日本において復活させ、歴史的な大ヒットを記録したのが本作。日本製作のゴジラ映画としては、『ゴジラ FINAL WARS』(2004年)以来、12年ぶり。『エヴァンゲリオン』シリーズの庵野秀明が脚本と総監督を担当、『のぼうの城』『進撃の巨人』の樋口真嗣が監督と特技監督を務め、長谷川博己、竹野内豊、石原さとみなどをはじめ、328名に及ぶ豪華キャストが集結した。今回の地上波放送を行うテレビ朝日としては、2005年8月14日の『GODZILLA』(1998年)以来のゴジラ映画放送となる。庵野総監督は、その圧倒的な映像表現で、まったく新しいゴジラを生み出すことに成功した。史上最大となる体長118.5mのスケールはもちろん、国内シリーズ初のフルCGでゴジラを表現。想像をはるかに超える最強の完全生物として、見るものを恐怖に陥れた。さらに斬新だったのは、「現代日本に初めてゴジラが現れたとき、日本人はどう立ち向かうのか?」という壮大なテーマ。ゴジラが東京に上陸する、というリアリティを限界まで追求した映像は、まるでドキュメンタリーとも思えるような仕上がりに。次から次へと現れる豪華キャストたちが織りなす、“怪獣映画”というジャンルにとらわれない“人間ドラマ”にも注目だ。なお、12年ぶりのゴジラシリーズ放送となる11月は、ゴジラの誕生月でもある。11月17日(金)には、ゴジラ映画史上初となるアニメーション映画作品『GODZILLA 怪獣惑星』の公開が控えるなど、ゴジラムーブメントはさらに過熱していく様子。東京・六本木のテレビ朝日本社でも『シン・ゴジラ』の地上波デビューを記念した展示を予定しているほか、テレビ朝日の人気番組と連動し、地上波を超えたスケールでゴジラの魅力をお届けしていくという。『シン・ゴジラ』は11月12日(日)21時~テレビ朝日系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2017年10月01日いまや世界をも魅了する人気ロックバンド「ONE OK ROCK」と『シン・ゴジラ』監督の庵野秀明がコラボレーションした新TVCM「ONE OK ROCK × 庵野秀明『Go, Vantage Point.』」が完成、7月30日(日)夜に全国民放地上波にて一斉オンエアされた。CMの舞台はアメリカと日本。朝と夜、雨と晴れなど、全く異なる時間帯や全く異なる場所で「ONE OK ROCK」メンバーと庵野監督が、それぞれ「Honda」のNEW CIVICを運転。“自分の外には自分の知らない感情が無数に存在し、全く矛盾する幸福感を持つ人たちが、隣り合わせに生きている”、そんな世界をCIVICで走りながら、両者が同じタイミングで世の中への問いかけを行っている。そして、世界の人々に対し「自分を、もっともっと連れ出すんだ」と呼びかけ、それぞれ異なる場所へと車を走らせていく――。本TVCMに出演している「ONE OK ROCK」や庵野監督は、「Go, Vantage Point. 自分を、もっともっと連れ出すんだ」という本CMのメッセージや世界観を体現している代表として、今回のコラボレーションが実現。「ONE OK ROCK」は、今年1月にはアルバム「Ambitions」を全世界で同時リリースし、キャリア史上最大規模となる日本全国32公演を回るツアーを開催。現在は各国でAmbitions World Tourを開催中。また、脚本・総監督を務めた『シン・ゴジラ』が大ヒット、各映画賞を席巻した庵野監督は、現在、ファン待望の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を制作中だ。もともと、「ONE OK ROCK」のTakaが自身のインスタグラムに6月1日(木)、「#10969GVP」のハッシュタグを付けナンバープレートの画像を投稿、海外で撮影中であることを報告すると、約13万件の「いいね!」が付き、「意味深すぎる」「何か意味があるの?」などのコメントが相次ぎ、ファンたちをザワつかせていた。さらに6月16日(金)には、渋谷109に屋外広告が出現し、特設サイトにてカウントダウンがスタート。「ONE OK ROCK」と「Honda」は公式SNSアカウントに「#10969GVP」のハッシュタグ付きでこの屋外広告の画像を投稿。「ONE OK ROCK」やTakaさんのインスタグラムには8万~12万件もの反響があり、話題を呼んでいた。今回のTVCMオンエア後も、渋谷や品川の街中や山手線内に、写真家の森山大道氏が「ONE OK ROCK」や庵野監督を撮影して制作したスペシャルグラフィックを展開していく予定という。本CMの放送でSNS上には「庵野さん可愛い!CM出てくれるとか嬉しいわ」「Take what you wantは曲に合いすぎてヤバかった」「めっちゃカッコイイ!!」「これ庵野さんやったんか…」などなど、多くの反響が上がっていた。「ONE OK ROCK × 庵野秀明『Go, Vantage Point.』(60秒)」は全国にて順次オンエア中。(text:cinemacafe.net)
2017年07月31日大野智が忍者に扮する映画『忍びの国』(中村義洋監督)が好評上映中だ。戦国時代、“どんな堅牢な門でも彼の前では意味をなさない“と一目置かれる無門という名の忍者(大野智)がいた。この時代、織田信長が次々と国を攻略し、勢力を拡大していく中で、なぜか大名のいない伊賀の国を手中に収めることができなかった。無敵の織田軍の侵攻を阻んだのが、無門だった……というお話だ。観る前、なんの前情報も入れずにいたときは、てっきりコメディと思っていた。なぜなら、ポスターのビジュアルで、大野智がにやりと笑っていて、キャッチコピーが「織田軍1万人VS オレ1人?」とポップな雰囲気で躍っていたので、楽しげな話と思いこんでしまったのだ。でも、楽しいところもあるが、それだけではなかった。冒頭、伊賀の忍者同士がふた手に分かれて闘うシーンがある。それは、忍者としての腕を競うもので、大野智の華麗なアクションを楽しんでいたら、衝撃的な展開となり、のっけから、忍の道の険しさを見せつけられる。生と死が紙一重の、とても非情な道を歩んでいる大野くん……と思ったら、家に帰ると、嫁・お国(石原さとみ)からは、お金を稼がないうだつのあがらない男扱いされていた。伊賀一の忍びと言われる男も、妻にはかたなしで、なんとか大金を獲得して、男をあげようと、大きな戦いに挑んでいく。どんな堅牢な門も開けてしまう、なかなかの強者であるにもかかわらず、妻が閉ざした家の門は開けられないというギャップも面白さだ。大野くんが、まるで、家庭で顧みられない現代の企業戦士(サラリーマン)にも見えてしまった。○忍者の異形性が際立ついまの企業戦士は長引く不況で、ブラックな会社も多く、命の心配もないこともない。とはいえ、やはり戦国はもっと死が隣り合わせで、ことは深刻。大野くんが所属する忍者集団は、“虎狼の輩”と呼ばれる、人を人とも思わない、まさに獣の集団だ。そういうところが、これまでの忍者もののアクションとはまた違って、人間を超えた迫力で見せる。大野以外の忍者役の方々も含め、のびやかで爽快で、イマジネーションあふれる動きの数々に、忍者の異形性を見せつけられて楽しい。喜々として走り、飛び、殺し……という感じ。でも、演じている人たちが、大野を含め、全員、無理してなくて、当たり前のようにやっているふうに見えるのだ。こんな凄いことを、しれっと、楽しそうにやっている、そこに彼らの恐さがある。死をも恐れず、目的にただまっすぐにぶつかっていく彼らを止めることは難しい。とりわけ、すごいのは、宿命のライバル的な存在になる、鈴木亮平演じる下山平兵衛との一騎打ちのシーン。役によって極端に肉体改造をし、映画『変態仮面』に代表される濃密な肉体アクションにも定評ある、鈴木の迫力は圧倒的だが、大野は、そんな彼にも淡々と向き合う。その差が、ふたりの闘いをよりスリリングにする。大野智は、もともと、どんな場でも、淡々として見える。淡々と、嵐のコンサートや歌番組では巧みな踊りを見せ、リーダーではあるが、ぼくが引っ張ってます! という感じを見せない。ソロ活動では、淡々と芸術的な絵を描き、淡々とアクション活劇の舞台(『センゴクプー』『バクマツバンプー』など)をやり、怪物の国の王子(『怪物くん』)や死神(『死神くん』)や大企業の社長(『世界一難しい恋』)を演じている。○ジャニーズならではの特性何が彼をそうさせるのか、と思えば、嵐としてデビューする前に、2年間、京都の劇場に出演していた体験は大きいのではないか。そういえば、先日『あさイチ』に出た大野は、その2年で「ダンスを極めた」というような発言をしていたが、その口調にも、アイドルであり、スターでありながら、何か職人のような風情を感じさせるのだ。任務を最高の水準で全うする、そんな精神が彼の全身からにじみ、浮ついたところがいっさいない。十代のときに故郷を離れ、毎日舞台に立ち(しかも1日複数公演もあったとか)、自分の技を磨き、どうしたら舞台が魅力的なものになるか考え抜いた、その積み重ねが、大野智の、ちょっとやそっとでは動揺しない、心の強さをつくりあげたのではないか。大野の話でなくて恐縮だが、嵐のメンバーのひとり、松本潤が以前、舞台『白夜の女騎士(ワルキューレ)』(06年)に主演したとき、舞台の奈落に潜んでいて、床の扉を開けて中から人を出すという場面があった。主役にもかかわらず、その作業を彼もやっていたのだが、じつに淡々と手際よく、やっている姿に目を見張ったことがあり、凄いですねとインタビューで向けたら「ジャニーズの舞台で、そういう仕掛けも行うことに慣れているのだ」と語っていたことがあった。ジャニーズのスターたちは、スターとして輝くだけでなく、地道に作業する職人でもあるのだと思わされたエピソードであったが、ドラマや映画などに観る大野智は、かなりそのジャニーズならではの特性を引き受けているように感じる。『忍びの国』で、忍者たちが、農民のいでたちから忍者の格好になって大暴れ、みたいなシーンがあるのを見て、大野智も日々、こんなふうに、アイドルやスターの衣裳に着替えて、そのお仕事という実務を完璧に行う、職人気質のひとなんじゃないかと思った。だからこそ、信頼できる。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2017年07月17日映画『22年目の告白-私が殺人犯です-』(入江悠監督)が人気だ。公開から3週連続で動員ランキング1位となった。私は新宿の劇場に観に行ったが、若い男子や女子がグループでわいわい観に来ていて賑わっていた。95年に起こった連続殺人事件がいよいよ時効を迎えた2017年、「私が殺人犯です」というサブタイトルままに、ぬけぬけと犯人(藤原竜也)が公衆の面前に現れる。一連の殺人事件の手記を書籍化した犯人は、自己プロデュース能力に長け、世間からカリスマのように扱われていく。当時、事件を追っていた刑事(伊藤英明)は、自分の代わりに先輩刑事を殺され、妹まで、事件を機に行方不明になっていた。22年目に表れた犯人に、言いようのない憤りを感じるものの、法の元、手をだすことはできない。そんな時、この事件を追っていたジャーナリスト(仲村トオル)が、犯人を報道番組のゲストに迎えることになった。そこで明かされた意外な真実とは……。○中庸なしに振り切る藤原導入部からラストまで、緊張が途切れることのない117分。95年に起きた殺人事件の謎と、それに巻き込まれたたくさんの人々のやりきれない義憤の作り出す渦に、目がそらせない。なんといっても、「私が犯人です」と大衆の前に悪びれず表れる藤原竜也の圧倒的な、異能感。常軌を逸した存在(殺人の方法も酷い)でありながら、それでも人々が魅入られてしまう、まさに天使と悪魔の両面をもった人物として、彼を追う者たちを翻弄していく様が圧倒的だ。とりわけ、大衆に長いメッセージを語るところなどが、なんとも怜悧で、説得力がある。藤原竜也というと、近年、『カイジ 人生逆転ゲーム』(09年)に代表される、“クズ”キャラ(ちょっとダメな人)が似合うというイメージで、庶民から愛されているが、『I‘M FLASH!』(12年)という映画では、新興宗教の教祖役をやっていたこともあるし、彼の映画での出世作『バトル・ロワイアル』(00年)の続編『バトル・ロワイアルII【鎮魂歌】』(03年)では、革命グループを率いるリーダーを演じていた。また、彼がデビューした舞台の世界では、かの三島由紀夫が能の『弱法師』を下敷きに書いた『近代能楽集~弱法師~』(蜷川幸雄演出)で、戦争によって「この世の終わりを見た」と言い、その炎で目を灼かれて失明した凄絶な半生を生きる少年を演じたとき、クレバーな頭脳で大人を言いくるめる天才の狂気のようなもので観客を圧倒させたこともある。という点から見て、藤原竜也は、天使と悪魔、クズとエリートという、中庸なし、どっちかにとことん振り切るという極端さが、最大の魅力かと思う。その激しさ、勢いについていける者はいない。そんな藤原を、『22年目の告白』では、伊藤英明と仲村トオルが全力で追い詰めていく。『海猿』の伊藤、『あぶない刑事』『ビー・バップ・ハイスクール』の仲村と、愚直なまでに肉体班である彼らが本気出して藤原に挑みかかる三つ巴の闘いが、かなりスリリング。しかも、一見、昭和の刑事もののように、執念と肉体をつかって謎を解決していくのかとおもいきや、巧妙な仕掛けが施されているところが、今日的だ。その展開に生きてくるのが、藤原竜也の、上昇と落下を物凄いスピードで繰り返す絶叫マシーンのような唯一無二の才能だ。藤原竜也とは、凄絶なエンタテインメントマシーンなのだ。○同時期の作品でありながら両極端な『リバース』ところで、『22年目の告白』が公開された時、藤原は、テレビドラマ『リバース』(TBS)に出演中だった。そこでの藤原は、冴えない男の役を、衣裳や髪型だけでなく、顔の肉感や姿勢に至るまで、人に見られることがあまりない地味な男として演じきった。同時期に発表される作品で、これほど極端なのも、さすがである。大学時代に雪山で、友人を亡くした4人の男たちが、数年後、友人の死の真相を突きつけられるという湊かなえのミステリー小説を原作にしたドラマは、藤原演じる主人公の行く末が、心底愕然となるもので、ネタバレ厳重注意。だから、以下は『リバース』の結末を知っている人だけ読んでほしい。○以下、『リバース』ネタバレあり『22年目の告白』のサブタイトル「私が殺人犯です」というのを観ると、『リバース』のネタバレを堂々としているみたいで、ちょっと面白い。偶然、2作が近い時期に発表されたのか、それとも狙ったのか、そう考えることもエンタテインメントとして、ひととき楽しめた。■著者プロフィール木俣冬文筆業。『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中。ドラマ、映画、演劇などエンタメを中心に取材、執筆。著書『挑戦者たちトップアクターズ・ルポルタージュ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』、構成した書籍に『庵野秀明のフタリシバイ』『堤っ』『蜷川幸雄の稽古場から』などがある。最近のテーマは朝ドラと京都のエンタメ。
2017年07月02日映画『メアリと魔女の花』の公開記念緊急イベント「でほぎゃらりー株主鼎談~いま、アニメーション背景を語る。~」が7月1日(土)、都内にて開催され、庵野秀明(カラー)、川上量生(ドワンゴ)、西村義明(スタジオポノック)が出席した。同作は、スタジオジブリ出身の米林宏昌監督がメガホンを取り、イギリスの児童文学を原作に、7年に1度しか咲かない不思議な花“夜間飛行”を偶然見つけた主人公のメアリの大冒険を描く。一夜限りの不思議な力を発揮し、魔法世界の最高学府であるエンドア大学への入学を許可されたメアリだが、彼女がついたウソが大切な人を大事件に巻き込んでしまう。ジブリ制作部門解散後の2015年にスタジオジブリの手描き美術が消えてしまうことを危惧し、背景美術スタジオ「でほぎゃらりー」を設立した庵野さん、川上さん、西村さんの3人。イベントは、「でほぎゃらりー」設立の経緯や、それぞれの出会いのエピソードなどが語られてスタートした。庵野さんの口からは「手描きはこれから状況的に厳しくなっていくと思います。デジタルのほうが効率がいいし、儲かるので。その中で、伝統工芸のようなものはなるべく残していきたい。でほぎゃらりーができたときも、『とにかく新人を採ってほしい』と」などと思いが語られた。「新人が毎年、3人でも、5人でも入って、それが10年、20年と残ってくれれば」とも。デジタルが主流になっているものの、「手描き背景という技術とそのよさというものはなるべく残していきたい」とコメント。トークでは、アニメの背景美術の精度が高ければ長回しがきくことや、アニメは不要なものを描かないなど情報をコントロールできる特性を持つこと、手描きで背景を制作する際の着眼点などが語られた。高畑勲監督と宮崎駿監督の制作方法の違いなども話題にあがり、ファンは熱心に耳を傾けた。西村さんは、美術大学の学生と話をした際に学生がグラフィックデザインなどの経験はあるものの(紙に)絵を描くことをしてきていない現状を知ったことや、一方では、ディズニーアニメーションスタジオやピクサーアニメーションスタジオでクリエーターになる人たちは絵を描いてきている人であることを指摘。「絵を描いて、絵にするという作業をしてからクリエーターになっていくという人が極端に減ってきているという現状があるような気がします」と問題提起される一幕もあった。さらに、トークでは、人工知能(AI)による画像処理ツールも話題に。西村さんが「ああいうものはどこまでいけるのですかね?」と質問すると、川上さんは「最終的には、人間ができることが基本的には全部できると思います。100年はかからないと思います。もっと早いと思いますけど」とコメント。「人間と同じような人工知能を作ろうと思うと、人間のことを学習しないとコンピューターも進化できないので、そういう意味では、もし手描きの技術がなくなってしまった未来に、それを再現することは人工知能を使ってもできない可能性が高いと思います」と続けた。庵野さんは、「(アニメの制作では手描きとデジタルを)両方混ぜることが一番いいと思います。そのためには手描きの技術を持っていないとできないです」と語っていた。『メアリと魔女の花』は7月8日(土)から全国にて公開。(竹内みちまろ)■関連作品:メアリと魔女の花 2017年7月8日より全国東宝系にて公開(C) 2017「メアリと魔女の花」製作委員会
2017年07月01日