モダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州コロンバスを舞台に、2人の対照的な男女の出逢いと心象風景、そして建築物の声に耳をすませ新たな人生に向かって歩き出す姿を描いた『コロンバス』の公開が決定。併せて、ポスタービジュアルと場面写真が解禁となった。■ストーリー韓国系アメリカ人のジンは、講演ツアー中に倒れた高名な建築学者の父を見舞うため、モダニズム建築の街として知られるコロンバスを訪れる。父の容態が変わらないためこの街に滞在することになったジンは、地元の図書館で働くこの街の建築に詳しいケイシーという女性と出会う。ジンは父親との確執から建築に対しても複雑な思いを抱え、コロンバスに留まることを嫌がり、ケイシーは薬物依存症の母親の看病を理由に、コロンバスに留まり続ける。どこまでも対照的な2人の運命が交錯し、互いの共通項である建築を巡り、語ることで、それぞれの新しい人生に向かって歩き出す…。■小津安二郎へオマージュを捧げたコゴナダ監督初長編作1920年代に機能主義の建築として成立し、ル・コルビュジエをはじめ現在も建築デザインに多大な影響を与え続けているモダニズム建築。本作の舞台は、エーロ・サーリネンによるミラー邸(アレキサンダー・ジラルドの内装)やノース・クリスチャン教会をはじめ、I.M.ペイ、リチャード・マイヤー、ジェームス・ポルシェックなどの代表作が建ち並ぶモダニズム建築の宝庫インディアナ州コロンバス。建築を巡る2人の心象風景を美しく描き出した珠玉の物語は、全てのカットが巨匠たちによる建築へのラブレターとも言うべき映像美に彩られ、サンダンスをはじめ23の映画祭にノミネートされ8冠を獲得。是枝裕和監督が2度監督賞を受賞しているクロトゥルーディス賞では、『君の名前で僕を呼んで』を抑えて撮影賞を受賞。11月25日(月)現在、全米映画批評No.1サイト・ロッテントマトでは満足度97%を記録している。本作は、これまでロベール・ブレッソンやアルフレッド・ヒッチコックについてのドキュメンタリーを撮り、小津映画に欠かせない脚本家の野田高悟に因んでコゴナダと名乗る新進監督による長編デビュー作。奥行きを生かした画面の構図や間の取り方など小津安二郎監督の芸術性を研究し、全てのシーンで「映画の教科書」のような巧みな構図を実現した彼は、小津監督と同じような感覚を現代につなぐことに成功した本作で一躍注目を集めた。主人公のジンを演じるのは『スター・トレック』『search/サーチ』のジョン・チョー。ピープル誌の「最も魅力的な男性50人」にランクインするほど人気上昇中の彼は、『THE JUON/呪怨』のリブート作品『The Grudge』(原題)への出演が決まっている。ケイシー役には『スプリット』『スウィート17モンスター』の若手注目女優ヘイリー・ルー・リチャードソン。さらに、“インディーズ映画の女王”と称されるパーカー・ポージーや、マコーレー・カルキンの実弟ロリー・カルキン、ミシェル・フォーブスなど実力派のバイプレーヤーが競演。一方で“建築のもつ人を癒す効果”が鍵となる本作では、第2の主人公として街中にあふれる建築物たちが、ポストロック・バンドの「ハンモック」による美しい音楽とともに、効果的に演出されている。今回解禁されたポスタービジュアルには、遠くの建築物を望むジンとケイシーの姿が。「美しいこの街で二人は出逢い、そしてまた歩き出す…」のコピーが添えられ、建築物巡りを通して2人の関係性がどのように発展していくのかにも期待が膨らむ1枚に仕上がっている。『コロンバス』は2020年3月よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2019年11月27日毎年秋に開催されるイベント『生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪(イケフェス大阪)』が10月26日(土)から始まるが、ひと足早く連携企画『大阪〈生きた建築〉映画祭2019』がシネ・ヌーヴォで開幕する。大阪は長い歴史の中で巨大建築や有名建築家が設計した価値のあるビルが建ち並び、庶民の親しみやすさやエネルギーが活気ある街並みを生み出してきた。また、天王寺の再開発や、大阪駅周辺の新ビル建設ラッシュなど、大阪は現在も新陳代謝を繰り返しており、歴史ある建築の価値はよりいっそう高まっているといって良いだろう。そこで魅力ある建築を公開して、大阪の生きた建築を楽しめるのが“イケフェス大阪”だ。映画祭はその関連企画で、現在ではもう見ることのできない大阪の“かつての街並み”が登場する映画作品を上映する。今年は4作品を上映。昭和初期が舞台で法善寺横丁や戦前の路地、生國魂神社の参道が登場する『夫婦善哉』をはじめ、旧松坂屋大阪店屋上、かつての心斎橋筋歩道橋が記録されている『黒薔薇昇天』、味園ビル地下のダンスホール・スタジオ80、梅田地下街が映し出される『ガキ帝国』、2000年代の阿倍野歩道橋、法円坂住宅団地などが描かれる『ナショナルアンセム』が揃った。両方に参加することで、セットやデジタル合成では決して描くことのできない“かつて”生きていた建築と街の風景をスクリーンで堪能し、現在も大阪で生きている建築をイベントで楽しむことができる。なお“イケフェス大阪”はこの他にも関連イベントが多数予定されており、詳細は公式サイトに掲載されている。大阪〈生きた建築〉映画祭201910月19日(土)から25日(金)までシネ・ヌーヴォで開催上映作品『夫婦善哉』『黒薔薇昇天』『ガキ帝国』『ナショナルアンセム』生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪10月26日(土)、27日(日)に開催
2019年10月19日ちひろ美術館・東京では、企画展『「ちひろさんの子どもたち」谷川俊太郎×トラフ建築設計事務所』を開催中。詩人の谷川俊太郎による“子どもの詩”や、トラフ建築設計事務所による“子どものへや”が登場し、いわさちひろの絵の中の子どもたちに新たな息吹を吹き込む。生涯にわたり子どもをテーマに描いた絵本画家、いわさきちひろ(1918~1974)。水彩絵の具を駆使したやわらかな色合いで、のびやかに描かれる子どもや花の作品は、今なお高い人気を得ている。同展は、そんなちひろが描いた子どもたちをテーマに谷川俊太郎が書き下ろした詩、“ちひろさんの子どもたち”をテーマに、谷川とトラフがコラボレートする企画展だ。詩人として第一線で活躍している谷川俊太郎。その幅広い詩作の中で、子どもに向けた詩や、子どもの目線で描いた詩を、ちひろの絵とともに展示。ちひろの絵に谷川が言葉を寄せた絵本『なまえをつけて』の作品も紹介され、詩と絵の組み合わせによる豊かな世界が立ち上がる。また、鈴野浩一と禿真哉からなるトラフ建築設計事務所は、ちひろの絵の中で多くの子どもが帽子をかぶっていることに着目し、そこから大きな麦わら帽子の形をした“子どものへや”を設計。さらに、トラフの代表的なプロダクトで、形を自由に変えられる紙の器「空気の器」のインスタレーションも館内に広がる。会期中は、アーティストトークやワークショップ、コンサートなど、さまざまな関連イベントも開催。ちひろの絵を見て、言葉に触れ、その空間に入り込む。個性あふれる谷川とトラフの感性を感じ取りながら、いわさきちひろの世界をより深く味わいたい。【関連リンク】 ちひろ美術館・東京()
2019年08月06日東京・品川の建築倉庫ミュージアムでは、企画展「Wandering Wonder -ここが学ぶ場-」を、2019年5月22日(水)から9月1日(日)までの期間で開催する。“学び・育ちの場”に焦点本企画展は、戦後の⺠主化とともに大きく発展を遂げてきた、日本の教育施設と生涯学習施設に焦点を当てたもの。学びの場・育ちの場と聞いて連想される場所は様々だが、幼稚園から大学までの教育施設、図書館や美術館といった生涯学習施設の枠にとどまらず、福祉施設、体験型学習施設、アフタースクール、オルタナティブアートスペースなども含め、学びや育ちの場として計画された建築作品を、全14組の建築家による計18作品21点の建築模型と、写真などの関連資料を通じて紹介する。横河健、隈研吾、シーラカンスアンドアソシエイツら出展出展建築家・作品は、横河健/横河設計工房「六町ミュージアム フローラ」、隈研吾建築都市設計事務所「愛徳幼稚園」、⻑坂大 東畑建築事務所 Méga「KYOTO Design Lab」、シーラカンスアンドアソシエイツ「流山市立おおたかの森小・中学校、おおたかの森センター、こども図書館」など、幼稚園から美術館まで様々。少子高齢化や都市部への人口集中、グローバル社会、ワークライフバランス推進、あるいは学校教育における授業時間数の変更といった社会的な要素が及ぼす影響と共に多様化している、様々な建築空間を知ることが出来る。また、内部が一般公開されていない建築物についても、一部の作品は内部の画像をディスプレイで展示。展示室内には椅子も配置されているので、模型と画像をじっくりと見ながら、その設計意図に思いを馳せることが出来るのも、本企画展ならではの魅力の一つだろう。開催概要「Wandering Wonder -ここが学ぶ場-」会期:2019年5月22日(水)〜9月1日(日)※7月1日(月)〜7月19日(金)の期間は休館※同時開催:展示室A「ガウディをはかる-GAUDIQUEST-」〜2019年6月30日(日)会場:建築倉庫ミュージアム展示室B(東京都品川区東品川2-6-10)開館時間:火〜日 11:00〜19:00(最終入館18:00)、月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)※障害者手帳の所持者とその付添者1名は無料。入場料:一般 3,000円、大学生/専門学校生 2,000円、高校生以下 1,000円※展示室Aの観覧料含む。※オンラインチケット制。詳細は公式ウェブサイトより。<出展建築家>山本理顕設計工場横河健 | 横河設計工房隈研吾建築都市設計事務所坂茂シーラカンスアンドアソシエイツ⻑坂大東畑建築事務所 Méga梓設計川原田康子+比嘉武彦 | kw+hg アーキテクツ佐藤慎也+古澤大輔+馬場兼伸+黑川泰孝ブルースタジオ吉村靖孝建築設計事務所原田真宏+原田麻魚|MOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO⻄田司+一色ヒロタカ+勝邦義+岩崎修 | オンデザイン山﨑健太郎デザインワークショップ
2019年05月10日皆さんは今の「住まいの満足度」はどれくらいですか?住む年数によって多少変わってくることもありますが、やはり住まいに対する満足度は購入したり住み始めたりした時に決まってくるものかもしれません。注文住宅を建てた人でも、すべての人が「住まいの満足度」が高いわけではないようなんです。そこで、注文住宅での住まいの満足度を上げるために必要なことをご紹介します。■ 注文住宅を建てた人も意外と低い、住まいの満足度!住まいのプロに出会えるマッチングサービスを運営するSUVACO(スバコ) 株式会社が、同社に登録している日本全国の会員283名を対象に「住まいに関するアンケート」を行いました。まず「現在の住まいの満足度」をパーセンテージで表すと、平均では63%となりました。最も多いゾーンは70%台で、全体の28.3%。100%満足しているという人はわずか1.8%にとどまるという結果になり、多くの人が何らかの不満を持っていることが明らかになりました。なお、現在の居住形態について聞くと1番多かったのは「注文住宅」で、次に多かったのは「集合住宅を賃貸」でした。この2つを比較してみると、注文住宅の人は満足度が70%前後に集中している一方で、集合住宅を賃貸している人は満足度が30%台から70%台までとばらつきが目立ちます。なにより注目したいのは、自分の理想を詰め込んだはずの注文住宅でも、最も多かった満足度は70~79%となり、思ったより低めであること。これは、設計段階からの不満や住んでから気づいた点など、自由設計ならではの難しさもある分、マイナスになっていることがうかがえます。cba / PIXTA(ピクスタ)また、集合住宅の賃貸が注文住宅に比べて平均満足度が低くなっているのは、ある意味では当然といえるでしょう。特に間取りや部屋の狭さ、収納の少なさ、自分の好きなようにカスタマイズができないとった不満などが、満足度を下げる要因になっていると思われます。■ 注文住宅における満足度には「建築過程」も大きく関わっていた!次に、現在の住まいの満足度に対する理由をご紹介します。良い点として多く挙げられていたのが「立地・環境の良さ」「間取り」「広い」でした。逆に悪い点として挙げられていたのは「狭い」「古い」「間取り」でした。また、「注文住宅購入者」だけで限定してみると、「(建築士やハウスメーカーなど)業者との関係」が良い点3位、悪い点4位とそれぞれで上位にランクイン。アンケートでも、「建築家さんと納得いくまで約1年打ち合わせさせていただきほぼ理想通りで完成しました」という意見もあれば、「担当のプランナーさんの提案力不足もあり、失敗したと思える箇所が多々ある」という意見もありました。freeangle / PIXTA(ピクスタ)自由度が高く、さまざまな思いや理想を掲げて挑む注文住宅。ただ単に家のスペックだけではなく、建築の過程も大きく影響を及ぼしていることがわかります。■ 建築士など専門家の活用が満足度を上げるポイント今回のアンケートでわかった「現在の住まいへの不満」からは、次の住まいの満足度を上げるコツも見えてきます。セーラム / PIXTA(ピクスタ)満足度が90~100%の人のアンケートでは、「納得のいく家になったから」「終の住処として、こだわりを話しました。少し無理して満足いくものに仕上げました」「自分の好み、イメージどおりのリノベーション」など、自分の住まいについてとことん追求し、自分好みの家に仕上げている様子がうかがえました。TATSU / PIXTA(ピクスタ)一方、満足度の低い人からは、「しておけばよかったことがたくさんある」「もっと考える時間が欲しかった」など、作った後から後悔の念が生まれたというコメントが。また、満足度の高い人ほど建築士やハウスメーカーととことん話し合い、良い信頼関係を築きながら住まいづくりをしていたことも判明。ucchie79 / PIXTA(ピクスタ)「リノベーションでも信頼できる業者を見つけてとことん相談でき、自分でもかなり調べ物に費やしたのでとても満足のいく出来となった」「尊敬する建築家に依頼し、十分に相談し、期待以上の住宅になったから」といったコメントからもうかがえるように、良い関係性を築ける専門家探し、そしてその専門家の活用が重要な要素であることがわかりました。もちろん、「収納」「設備」「家事動線」といったポイントも満足度を上げる大きなポイントですが、そういった住みやすさを専門家にとことん相談できるかという点は大きいでしょう。今回のアンケートでは、時間をかけてじっくりとなんでも相談できる専門家を探し、その専門家と一緒に理想の住まいを作っていくことが、注文住宅における満足度アップのために大切だと分かったと思います。注文住宅を考えている人は、ぜひこのアンケートを参考にしてみてください。【参考】※「住宅満足度」平均値は63%満足度が低い理由TOP3 は「狭い」「古い」「間取り」
2019年03月11日できるだけ施主の夢を実現するため、様々な要望を受け入れ、設計図面として表現するのが、我々設計者の仕事。しかし仕事をしていくなかで、「お施主さんにされると、これは困ってしまうな」ということもあります。今回は設計者側から施主にあえて苦言を呈しながらお伝えすることで、より良い信頼関係を構築していけるようお願いする内容にしたいと思います。その困ることを3つご紹介します。■ 1. 施主が自分でプランを書いてくる場合WorldWideStock / PIXTA(ピクスタ)たまに自分でプランを描いてくるお施主さんがいらっしゃいます。夢を自分の手で形にしたい想いは尊重したいですが、それを設計者に見せることはできれば控えてほしいです。なぜかというと、その案ありきで進んでしまうからです。そうなると家づくりに発展が生まれず、滞ってしまう可能性があります。もう少し具体的に説明すると、設計者は、つくったプランを実現に結びつけるうえで、法規や構造、施工など様々な問題に直面していきます。それを解決しやすく、かつ施主の要望をくみとるプランを設計者はつくっています。施主が考え出したプランは設計図ではなくて、自分の要望図なのであるということを認識してほしいと思います。■ 2. 施工業者を施主が指定する場合Ushico / PIXTA(ピクスタ)施主と施工業者が知り合いである場合などに、こういうことがよくあります。ここで設計者として気になるのは、指定された施工者が過去にどんな仕事をしてきたかということです。たとえば設計事務所との仕事を一切やったことがない施工業者の場合、技術やイメージ、意志の疎通が取りにくく、作業がなかなか進まなかったり、余計な費用が発生したりする場合が出てきます。それによって被害を受けるのはお施主さんです。でもお施主さんは施工業者と知り合いということで、なかなか言いたいこともいえない……。そんな状況になると設計者も調整ができず、能力を十分に発揮しづらくなります。施主、設計者、施工業者の3者はほどよい距離感をとった関係性でないと、チームとしての緊張感を保てないことをご理解いただければと思います。■ 3. 施主が商品を自分で発注(施主支給)する場合あけび / PIXTA(ピクスタ)見積もり金額を安くするために、施主側で商品を発注して工事で取り付けてもらう場合があります。施主支給ともいいます。これは施工者に対して敬意を払っていない行為であると私は感じます。商品に何かトラブルがあったとき困るのはお施主さんです!極楽蜻蛉 / PIXTA(ピクスタ)どういうことかというと、何か不具合があったとき、施工側が責任をとれない、ということです。施工業者は何か不具合などが生じたときに、メーカーの保証、もしくは会社で入っている保険などを活用しながら、工事後のメンテナンスを行うことが多いようです。それを施主が引き受けるというのは手間やお金、苦労がかかってしまうのです。そのときちょっと安く仕上がることよりも、長期的な視野を持って家づくりを行ってほしいと我々は考えます。YsPhoto / PIXTA(ピクスタ)いかがでしたか?上記は我々設計者だけが困ることではなく、工事をする施工者、そして家をつくる施主本人にまでつながります。これらが発端でトラブルになることも多いです。家づくりはこれからの家族の将来を描くとても楽しい作業です。でも小さくても何かしらトラブルはおきます。そのトラブルをできるだけ早く解消するため、お施主さんと我々作り手はチームとして動いているわけです。その関係性を大事に考え、行動していただければと思います。
2019年02月26日20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエ。彼の建築作品で世界文化遺産でもある国立西洋美術館(本館)で、ル・コルビュジエの絵画とそのルーツに迫る展覧会『ル・コルビュジエ絵画から建築へ—ピュリスムの時代』が開催されている。『ル・コルビュジエ絵画から建築へ—ピュリスムの時代』()
2019年02月26日今回は、女性一級建築士である筆者が、失敗しない間取りにするために注意すべき3つのポイントについてお話いたします。家を建てる際に間取りを決められないという人は意外と多いようです。1年近くも打合せしても、なぜか堂々巡り……。どのようにすれば、理想の間取りにすることができるのでしょうか?■ 1.インターネットの情報だけに踊らされない!Mills / PIXTA(ピクスタ)インターネットの利用によって、多くの人が、家に関しての情報を得ることも、発信することもできるようになりました。リビングにサンルームを造ったら、室内物干しができて便利だった!玄関に、キッチンからも出入りできる収納をつくったら、家事が楽になった!上記のような「便利だった!」「よかった!」という情報を、我が家にも取り入れたいと思うことは、決して間違ってはいません。しかし、家の設計は、敷地や道路、方位、法令などの条件から作成していくため、まったく同じ条件の家はありません。そのため、取り入れたい間取りが、自分の家で可能であるとは限りませんし、無理に取り入れたことで、別の場所が使いにくい間取りになることもあるのです。インターネットの情報は、参考程度にして、設計者や施工者など、専門家の意見を大切にしましょう。マハロ / PIXTA(ピクスタ)■ 2.間取りへの要望は「引き算」で考える!プラナ / PIXTA(ピクスタ)「明るくて広いリビングダイニングがほしい」「庭でバーベキューがしたい」「書斎がほしい」「家事コーナーでよいから、私専用のスペースがほしい」。ふじよ / PIXTA(ピクスタ)このように、家族それぞれの希望はたくさんあると思います。しかし実際には、敷地や予算の制限から、ご家族すべての希望をかなえるのは難しいのが現状です。間取りの要望をまとめて設計者に伝えるには、以下のようにするのが最適です。まず初めに、家族それぞれが自由に、家への要望を紙に書きだす家族で重なった要望は、「家に求めるもの」として残す要望が重ならない、または意見が拮抗するものは、引き算をして要望から消していく残った要望を紙にまとめ、設計者に渡すRina / PIXTA(ピクスタ)こうすることで、家族の思いもまとまりやすく、また設計者にも「家に求めるもの」のイメージが伝わりやすくなります。また、同時に「家に求めないもの」も補足として伝えてみてください。余計なところにお金をかけない配慮が可能になり、具体的な家へのイメージが設計者に伝わります。■ 3.専門家のセカンドオピニオンを聞く要望を整理し、設計者に伝えたけれども……、なかなか希望通りの間取りにならない、間取りにピンと来ない場合も多いと思います。そんなときは思い切って、専門家のセカンドオピニオンを聞く方法もあります。IYO / PIXTA(ピクスタ)病院と並び、建築の世界も、専門家によるセカンドオピニオンを聞くことが普通になってきています。そして設計事務所や不動産コンサルタント事務所では「間取り相談」や「間取り診断」を実施しています。「間取り相談」のメリットとしては、建築士が変われば、まったく違う間取りができることが多いデメリットとしては、今の設計者との空気感が、若干、悪くなる場合があるなどです。こちらの図面は「間取り相談」を行う前のものです。セカンドオピニオンの意見を参考に建物の大きさや配置は一切変えずに、間取りだけ変えると以下のようになりました。ここまで間取りを変えることができます。いかがでしたか?マイホームへの夢は、十人十色、さまざまです。間取りづくりのポイントをおさえ、後悔や失敗のないマイホームづくりを進めてくださいね。(しかまのりこ)
2019年02月18日それぞれぴったりな男性は異なってくるのですがその中でも保育士の女性にぴったりな男性をいくつか紹介します。子供好きな男性は保育士の女性にとって魅力的保育士の女性におすすめの男性は、子供好きな男性です。子供が好きなだけでなく、世話好きだと尚いいでしょう。もし子供ができた時も母親だけが育児をするのではなく、父親も育児に積極参加してくれる可能性が高まります。それによって、育児の負担を分散させることができるため、円満な家庭も作りやすくなります。精神的に甘えさせてくれる男性もぴったり保育士の女性は常に子供の面倒を見ているので精神的なストレスもしくは負担が発生する時もあります。その時に保育士女性の話をしっかりと聞いてくれる男性は、精神的に甘えられるのでお勧めです。何か問題が発生した時、気軽に話せるようになるために頼もしい存在として頼っていくことができます。そして色んな問題や悩みを話すことで、ストレス解消でき、再び保育士の仕事を円滑に行えるようになるので重要です。家事を手伝ってくれる男性は心強い存在勤めている保育園の状況によっては、急に出勤しなくてはいけない場合もあります。そこで家事を手伝ってくれる男性は、急な仕事が発生した時も代わりに家事をしてくれる可能性が高いです。また保育園や子供の状態によっては、定時を過ぎても仕事をしなくてはいけない時も出てきます。そんな時も代わりに家事をしてくれる男性ならば、家に帰宅した時に少しでも疲労回復できるので、保育士の女性にぴったりです。特に料理や掃除の他に洗濯を行ってくれる男性は、自分が休みたいという時も代わりに家事をしてくれる可能性があり、良好な関係を築きやすく、円満な夫婦生活を続けやすいです。
2019年02月17日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。ほぼ諦めていた「建築条件外し」がとんとん拍子に実現してしまい、愛する新宿の土地を手に入れられることになり、喜びと戸惑いが冷めやらぬ鳥夫婦です。■ 営業Sさんは最後までやり手さて、晴れて新宿くんと結婚できることになった鳥夫婦。Sさんから電話を受けた一週間後にはY社へと伺い、「建築条件外し合意書」に判を押しに行きました。Sさん「保奈美さん(40代半ばだと思われる女性設計士さん)には何か話されました?」鳥夫婦「いいえ、まだ何も。近々謝罪の電話でもしようかと思っていたのですが……」Sさん「あ、それは、ちょっと、待っていてもらえますかね?」Sさんの指示通り、その後はR社に何もアクションしないようにしていました。そして次にR社の人と接することになったのは、土地決済日。銀行の来客室にて、R社の設計部長さんと久しぶりにお会いしました。設計部長さんさんは鳥夫婦の顔を見るなり立ち上がり、「このたびは、大変申し訳ございませんでした!」と謝罪されました。ビックリしてしまい、「いえいえ、とんでもありません!こちらこそ……」と慌てて鳥夫婦も頭を下げました。この状況から、Sさんが、すべて、うまくやってくれたのだと察しました。きっと「R社の方が良くなかった」という流れに持って行ってくれたのでしょう。だから建築条件外しの土地代も請求されなかったのかもしれません。本当にSさんには良くしていただきました。竣工の暁には、Sさんに写真と御礼メールを送らせていただこうと思いました。(しかし竣工後にメール送ったところ、宛先不明で返ってきてしまいました。残念ながら転職されていたみたい)また、保奈美さんには会わないまま「保奈美さんにも、申し訳なかったとよろしくお伝えください」と設計部長さんに伝える形で終わりました。■ なぜ土地代アップなしで建築条件外しができたか?個人的な状況なのでお役に立たないと思いますが、一応、今回のありがたい結末を迎えた要因について、まとめておきます。以下がSさんからお聞きしたもの。今回の分譲地は、諸事情あり、手続きの結果によっては分譲の話自体がなくなるリスクがあったので、そもそもR社が弱腰だった(当初の契約書にも、もし分譲不可能になっても了承するよう記載されていた)最初から「建築条件を外せ」と要求していたら、おそらく土地代アップを求められていただろうが、鳥夫婦も検討した上での要求であったY社は老舗、R社は新しい会社であり、つながりで成り立っているこの業界でY社の立場は強かった(R社はいつも非公開で仲介業者に売ってもらっている)R社社長とマブダチの反町(隆史似の)支店長が、ちょうど2か月前にSさんの支店に配属されてきたのもラッキーだった以下は鳥の思う、その他要因。複数棟を同時設計&施工することによるコストダウンが得られず、1棟分だけまた新たに客を探して設計し直し&施工するのは、R社としてもやりたくなかったのではないかR社がちょうど今後の経営方針に「個人住宅の注文住宅設計に力を入れていく」と打ち出していたので、社内的に「設計力を高めよう」「設計力がないといけない」という自省の雰囲気があったのではないか老舗のY社、やり手のSさんに担当してもらえた地縁があったということで、ほとんど運によるところが大きいですかね……。でもね、ジタバタ努力すると、運が(同情して)向いてくれると思うんですよ!(鳥)
2019年01月18日これから住居を新築されるなかで、子ども部屋には親御さんの想いがいろいろこめられているはずです。私も子どもを持つ親として、どうするのが良いのかをよく考えます。今回は親、建築士という2つの観点から、子どものための空間について、読者の方と一緒に考える回にできればと思います。■ ゆるやかな子どもスペースのすすめ小学生くらいまでは、個室という存在を意識させなくてもいいのかなという気持ちが私の中にあります。こちらの写真のお宅では、家具でゆるく間仕切りをするという形をとっています。子どもが小さいうちは、明快に部屋をつくりあげないほうがいい、というお施主さんの考えからです。私もこの考えに賛同し、提案させていただきました。このような空間を用意することで、成長につれて子どもがどのように自分の空間をつくっていくかというのも、親として興味深く見ていけるはずです。■ 小さいうちは家族に開いた大らかな空間をこちらの写真のお宅では、自分の机以外で本を読んだり、勉強したりできる居場所を家の中につくりました。大人が見守ることのできる学習環境、または大人とともに育んでいく学習環境をつくっていきたいというお施主様の思いに私が賛同し、それを形にしたものです。小学生くらいまでの時期は、できるだけ家族に開いた大らかな空間をつくっておくことも大切にしたいと私は考えます。■ 子どもが個室をもつということプラナ / PIXTA(ピクスタ)子どもに個室が必要かどうか。これはまず自分が子どもだった頃を思い出し、考えてみることも大切です。ちなみに私の子どもの頃のお話しをさせていただきますと、小学校高学年くらいからは、兄弟で使っていた大きな子ども部屋を置き家具で2つに仕切って使っていました。しかし、高校受験を控えるにあたって、どうしても勉強に集中したくなりました。そこで私は、あまり使っていない多目的室があったので、そこを弟の部屋にし、2つに分けていた部屋を私の部屋にしたいと親と弟に提案しました。YsPhoto / PIXTA(ピクスタ)これにより、かなり集中できる環境をつくることができ、無事高校受験をパスすることができました。それから高校に入学し、部屋もそのままに元の生活を送ると、余剰空間に何かものを置きたい、と考え始めました。余計なものが部屋に増え始め、勉強もなかなか手につかなくなってしまいました。部屋が広すぎると、このようなことが生じるという失敗例です。身をもって実感いたしました(笑)。■ 個室を持つことは独立心にもつながるFast&Slow / PIXTA(ピクスタ)ですが、自分一人でいるという実感を個室によって感じることができたのは確かです。それは高校卒業後、家を出て一人暮らしをしてみたいという独立心につながりました。いつも親が見ているのが当たり前ではないということに気付かせ、でも部屋を出ると家族が待っているよという環境。小さくていいからつくってあげてほしいし、そういう機会を子どもに与えてあげてほしいと私は思います。住居計画の段階で子どものこれからを想像したり、自分の過去の経験を振り返ることは、きっと家族の将来を構築する作業となるはずです。
2018年12月26日建築事務所が手がける新キオスク建築家が手がける千代田区一番町のキオスク「BIRD BATH&KIOSK(バードバスアンドキオスク)」では、「Biople by CosmeKitchen(ビープル バイ コスメキッチン)」が厳選したオーガニック商品の取り扱いを開始しました。いつでも気軽にオーガニックアイテムを「BIRD BATH&KIOSK」は、建築家谷尻誠氏らの手によって企画設計された、キオスク型のコーヒースタンド。“水飲み場”という意味の同店は、小鳥が羽を休める止まり木のような、ほっとできる空間作りがされています。そんなコーヒースタンドで取り扱われているのは、ナチュラル&オーガニックショップ「Biople by CosmeKitchen」がセレクトした、自慢のオーガニック商品の数々。通勤途中や休憩中に気軽に立ち寄り手に取ることができます。オーガニック食品や自然派コスメが、より身近な物になることでしょう。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社マッシュホールディングスのプレスリリース
2018年12月26日寺⽥倉庫が運営する建築倉庫ミュージアムでは、企画展「- Green, Green and Tropical - 木質時代の東南アジア建築展」を2019年2月6日から5月6日まで開催する。Eleena Jamil「Bamboo Playhouse」2015年 © Eleena Jamil Architect同企画展は、東南アジア諸国で注目を集める新世代の建築家やデザイナーによる木質デザインおよび建築空間の新潮流に焦点を当て、建築や家具デザイン、さらには調査研究を通して俯瞰するもの。紫檀、黒檀、チーク、マホガニーといった高品質の木材だけでなく、竹や籐などの植物材料も揃う東南アジア圏。古くから地元住民の間で共有されてきたノウハウの蓄積によって、多種多様な木質建築に富んでいる。同展では、伝統的あるいは慣習的に展開されてきたスローテクノロジーとも分類されるような建築群を紹介すると共に、「科学的に再現できない素材と技術」に注目し、隠されたシステムを明らかにしていく。坂茂「Paper Temporary Shelter - Philippines」2014年 ©Voluntary Architects Network素材は、時間と環境の流れの中でそれ自体が少しずつ変化していく。本来、自然由来の生の素材は、加工されて“地域の土着材料”による製品として日々の生活に取り入れられていく。また、たとえ製品として完成されたものでも“再生材料”として再構築され活かされ続ける可能性を持ち、そして予期せぬ災害が発生した場合、人々は従来の材料や技術による“緊急対応”によって、自身の知恵を活かそうとする。会場では、東南アジア圏におけるこれらの素材活用方法に関する3つのテーマセクション「<Vernacular / Conventional>地域性と土着材料」、「<Recycled Materials>再生材料の可能性」、「<Emergency Response>緊急対応の建築」に加え、同地域で実施されてきた調査研究やフィールドサーベイの成果、未来を見据えたレジリエントな建築技術の展望が紹介される。Adi Purnomo「Tanah Teduh #4」2013年 ©Adi Purnomo,Riichi Miyake参加作家は、建築家のAhmad Djuhara、Adi Purnomo、Andry Widyowijatnoko、Eleena Jamil、Ling Hao、Eriksson Furunes&Leandro V. Locsin Partners+Boase、坂茂、芦澤竜一、柄沢祐輔、デザイナーのAlvin Tjitrowirjo、Kenneth Cobonpue、研究者の岡部明子、畑聰一+清水郁郎、Joseph Yumi Espina+サンカルロス大学など。2019年2月23日の14時からは、Eleena Jamilを始めとしたゲストによる記念対談も開催。参加費は無料、事前申し込みが必要となる。【展覧会情報】- Green, Green and Tropical – 木質時代の東南アジア建築展会期:2019年2月6日〜5月6日会場:建築倉庫ミュージアム 展示室B住所:東京都品川区東品川2-6-10時間:11:00〜19:00(最終入館18:00)入場料:一般3,000円、大学生・専門学校生2,000円、高校生以下1,000円(展示室Aの企画展示「新素材研究所」の観覧料含む)※障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名無料休館日:月曜(祝日の場合、翌火曜休館)、2019年3月4日~3月26日の期間
2018年12月21日吹き抜けの基本的な役割は、上の階と下の階を結びつけるというものです。それによって、平面では感じられなかった上下の断面的な空間関係が生まれてきます。空間そのものの大きさによる立体的なひろがりは、視覚的な開放感だけでなく、家族の雰囲気や声をつなげ、住まいをより豊かに感じさせることができます。とはいいましても、天井を高くすると、それによって部屋の空気が温まりにくくなるというデメリットも生じます。空調などを検討しながら吹き抜けに対する明確な目的を考えるということも大切です。そこで今回は、吹き抜け空間に対する温熱環境をどうフォローしていくかについて、お伝えしていきます。■ 吹き抜けの空気の流れまず吹き抜けによる空気の流れを確認していきましょう。ご存知の方も多いと思いますが、温かい空気は上にいき、冷たい空気は下にいきます。それが冬のここちよさを妨げる要因となっています。つまり、上下空間の温度差にムラがないようにすることがポイントとなってきます。■ 熱が逃げにくい箱を用意すること、つまり断熱が大事!OrangeMoon / PIXTA(ピクスタ)温度差にムラが出ないようにするためには、熱が逃げにくい住まいの箱を用意すること、つまり断熱基準を満たすことが重要です(住まわれている地域ごとに断熱基準が定められています)。どんなにいい設備を導入しても、その温まった空気が外に逃げていっては元も子もありません。できればお住まいの地域で設定されている断熱基準より1ランク上くらいにするとより良いでしょう。■ 暖房をどうするか?maroke / PIXTA(ピクスタ)エアコンの温風がなかなか下まで届かず温まった気がしない。みなさんも経験されたことがあるのではないでしょうか。これを解消するには、まず全館暖房にしていただくのがベストな考え方です。全館暖房が予算的にはどうしても厳しいというかたは、吹き抜けのあるリビング空間をきちんと部屋として仕切れる構成とし、エアコンとガス温水式床暖房の併用して使用するのがよいでしょう。床部分の暖かさを維持できるようにすることが重要です。しっかり断熱がされているだけで大分良い温熱環境となるはずです。断熱工法と暖房形式については様々なアプローチがあります。これらについてはまた別の機会をもうけて詳しく書かせていただこうと思っております。いかがでしたか。この記事が吹き抜け空間を住まいで実現する後押しになれましたでしょうか?「この設備があれば大丈夫!」というふうにとらえるのではなく、部屋の空気の流れをについて理解し、そのためには空間をどう暖めて循環させてゆけば温度差が生じないか。これらの点をよく考えて取り組んでいけば、快適な吹き抜け空間を手に入れることができるはずです。
2018年11月27日先日もご紹介した建築業で働いているカルロスさんの生活のアイディアを紹介します。どこの国でもそうなのかもしれませんが、家を建て直すときは古いものが邪魔になります。全部のものを大切にしまい込むということは少ないようです。特に親の家を譲り受けて建て直すときなどは、いろいろと古いものが出て来たりしますよね。しかし、カルロスさんはそのような古いものを無料か、かなり低価格で受け取り、自宅で使っています。今回は超レトロなアイテムの再生法をご紹介いたします。■ 「古いドア」大邸宅の大きすぎるドアを小さくして使う!まず玄関のドアです。このドアはだいたい400年前のドアだそうです。そのため、高さが3m以上あり大きすぎるので、家を壊すときに払い下げになりました。ちなみにドアは比較的売りやすいもののひとつです。というのは、古いドアは乾燥しているので良いギターが作れるからです。ギターを作る人は、街を歩いて取り壊すことが決まった古い家などを訪ねて譲ってもらいます。古いドアから何百万円もするギターが作られこともあるのです。しかし、このドアはカルロスさんのおかげで、ドアとして生き続けることが決まりました。実は大きすぎるドアの真ん中部分を切ってもう一度繋げ、現状に合った大きさのドアに作り変えたのです。古いドアの問題は鍵のセキュリティですが、このように古いドアに鍵を付け替えています。古いドアの鍵は開けにくいというデメリットもありますがこれなら大丈夫です。■ 「古い照明器具」温かい光が溢れる家に!ランプを使ったことがない人には、これがびっくりするものだとは感じないかもしれません。こういうデザインの照明器具だと思った人も多いと思います。でも、これはオイルランプをリメイクしているのです。元々は電球のところに本当の「火」が付いていたのです。昔のものはデザインが素敵ですよね。私はろうそくも好きですし、普段、火を見る生活を好んでしていますが、やはり現実的に考えると電気を使った照明の方が安全です。カルロスは、しばらくはオイルを使って利用していたそうですが、とても気に入っていたので電化することにしたのだそうです。こちらはアンティークな照明器具。スペインなら病院などに使われていたようなタイプのデザインです。こちらは書斎の机に置くタイプの照明器具を絵画の照明に。ピラミッド型の照明をあえて逆さにつけました。モロッコ製のエスニックなデザインが素敵です。これは、屋根瓦です。スペインの屋根瓦はこんな形。屋根瓦にペイントして、壁に取り付け、内部に電球を設置して照明器具として使っています。■ 「テラスの洗面所」台は昔、おばあちゃんが使っていた(と思われる)ミシン台これはテラスの洗面所。テラスの掃除やちょっとした手洗いなどに使います。洗面の下の台は、なんとなく見たことがあるもの?若い方は見たことがないかもしれません。昭和博物館にあったような……。これは足踏みミシンの台です。足踏みミシンは、簡単に電気ミシンにできるんです。電気ミシンに作り変えてもらうと、台が不必要になるのですが、カルロスはデザインがとても気に入り、ミシンの台に大きな陶器の深鉢を置いて洗面所にしたのです。■ 「洗面台」寝室にあったサイドベッドテーブルを使用!バスルームにもいろいろな工夫が見られます。こちらの洗面所は、寝室にあるサイドテーブルに昔のホウロウの白いタライを乗せています。こちらの角度の方がわかりやすいですか?奥に見えるのは、トイレットペーパー。植木鉢を置くアイアンの三脚の上に陶器の深鉢を置いてトイレットペーパー置きに。アイアンの三脚は結構色々使えますよ。こちらは別のトイレにあったペーパーホルダー。モルテロというスペイン版すり鉢を置くための台なんです。下の部分はスパイスを入れる引き出し。本来はキッチンにあるものですが……。■ 建築家ならでは!レトロアイテムを取り入れた暮らし捨てる前にこれは何かに使えないかなと考えて、まったく別の使い方をしていく暮らし。素敵なものが次々生まれて、楽しくなりますね。改めて、古いものをもっと大切にしたいと思いました。
2018年11月17日こんにちは。新宿に注文住宅を建てて暮らしている鳥と申します。300万円値引きをしてもらえるなら建築条件付きの家の契約をしようと決断し、土地仲介の営業Sさんに交渉しに来た鳥夫婦です。■ やり手の営業Sさんに会う久しぶりに仲介Y社の営業Sさんにお会いする。あの、コロコロ笑いながら、ソフトな語り口で、相手の心を開かせながら、キチッと落としどころに落とさせるSさんに……。3か月前のあの日……。Sさんの運転する車に乗せられ、設計R社に連れて行かれた日……。道中の会話で、Sさんには奥さんとお子さんがいらっしゃって、数年前に東京の外れの建売住宅を購入されたと聞きました。「不動産業のプロは、建売を選んだんだ」と印象に残ったのと同時に、ご家庭でのSさんを垣間見てしまいました。こんなに紳士で礼儀正しいSさんも、腹を出したままブーと寝屁したりするのだろうか?風呂前に裸になると、腰振りダンスしながら家人に近づいたりするのだろうか?(え?鳥夫だけ?)仕事でやり手なSさんそのままに、夜もキッチリ落とすのだろうか?あの日、そんなことを考えながら車に揺られていたなあ……。やだねえ、下世話な男性雑誌の表紙を見ては「ったく、しょうもないな」と苦笑しているくせに、自分も同類じゃん。などとつらつら思いながら、Y社の最寄駅で、鳥夫を待っていました。■ 鳥夫婦で最後の戦略会議さて、腰振りながら……ではなく普通に現れた鳥夫と、しばらく二人で周囲を散歩しながら、最後のすり合わせをしました。「いいか、鳥は女だから、感情的な役をやってくれ。いかにもR社のプランニングに残念な気持ちでいるか、土地は気に入っているのに、R社の家を買わないといけないことが悲しいか、訴えるんだ。でも鳥は空気を読めず、余計なことを口走る癖があるからな。基本的にはしゃべるな。俺がしゃべるから」「わかった!!」万が一、建築条件付きを外してもらえる可能性も考え、いきなり上物の値引き話にいくのはやめました。「土地はとても気に入っている」ということを強くアピールし、「もし条件を外してくれるとしたら、いくら土地代をアップされるか」を聞き出すシナリオに微修正。Sさんのご尽力で土地代80万円値引きをしてもらったとはいえ、すでに当初の予算より400万円オーバー。建築条件外しにより土地代1割アップしたとして、さらに340万追加。これで当初の予算より740万円オーバー。こうなると、もう諦めざるを得ないのですが……。■ Sさんとの交渉スタート!!そしてY社のビルの前に着きました。階段を上り、念のため携帯の録音アプリをONにして、Y社のドアを開けました。「ああー、どうもどうも、お久しぶりですねえ」Sさんは、相変わらずコロコロとした笑顔にソフトな語り口で迎えてくれました。コミュニケーションがそれほど得意ではない上に緊張MAXの鳥夫。人見知りで狂女予備軍の鳥。二人とも気の利いた挨拶や世間話のひとつもできず、Sさんのそつないアイスブレイクの会話に、ニヤニヤ相槌を打つばかり。ましてや緊張に耐え切れず上の空状態である今は、世間話をする余裕などありません。顔を紅潮させた鳥夫が、メモを片手に、すぐに本題を切り出しました。Sさんに新宿くん(※土地のこと)をご紹介いただいた頃は、家造りの知識のまったくないド素人だった鳥夫。あれから約3か月。鳥夫は、コンサルさんにに教わった知識のおかげで、Sさん相手に説得力のある話を展開していきました!(鳥)■この連載の一覧を見る■
2018年11月15日今回は建築業で働いているカルロスさんの家を訪問しました。カルロスさんは建築で使われる素材に対して深い愛情を持っている人です。建築素材だけではなく、家具や家にある小物類にいたるまで大切にしています。古くなって捨てられているとどうにかして使えないかをいつも考えています。そんなカルロスさんの家をご紹介いたします。■ スペインの典型的な家をリノベーションスペインの細い道。ここにある家はどれも少なくとも築150年です。カルロスさんの家は左側の列の2番目。家の下にあるトンネル状のアーチをくぐり抜けて行きます。ここではよく観光客が写真を撮影してるんですよ。くぐり抜けると、玄関が見えてきました。■ 玄関は2階に!下にある入り口ではなく、階段を登ると玄関です。階段にもタイルが貼り付けてあります。■ 好きなものを好きなように飾る!こちらが玄関です。玄関には額装された古い家の窓。存在感があり、どっしりして、そしてこの窓を何百年もの間に開け閉めしていた人たちの息遣いが感じられます。玄関を上にしたのは、日の当たる部屋を居間と台所にしたかったから。いつもいる場所や人を招待する場所は明るい方がいいですよね。■ 窓のある明るいキッチンキッチンは自然光の中でお料理したい。お風呂やトイレ、キッチンには窓がない場合がありますが、湿気のこもりやすいところこそ窓が必要です。キッチンの家具の台の部分はスペインでは石を使うのが普通です。大理石やブラジル産のグラーノと呼ばれる石などですが、カルロスの家の台所はイケアの板を使っています。木のぬくもりがあっていいですね。窓のあるキッチンはやはり和みますね。おまけにここは2階。そして興味深いことに坂の多い街は裏と表とでは高さが違うため、実は表通りからすると4階に当たるのです。そのためこの窓から誰かが覗き込むということもなく、時には鳥のさえずりを聞きながらお料理ができます。キッチンはオープンタイプでダイニングとリビング、応接室、すべてを兼ねた部屋が隣に繋がります。キッチンがオープンだと臭いや煙などがソファーを汚してしまうのではないかと心配する人もいるかもしれません。だからキッチンには窓が必要なのです。そして、ちょっとしたおつまみを作りながらゲストとおしゃべりができるキッチン。理想的です!あちらこちらに並べられたアート作品。■ 1階に降りると「プライベートスペース」こちらは階下にある寝室。寝室はふたつあります。書斎。日本的に言えば多分4畳半くらいの小さなスペース。でも、その方が集中できます。シャワーのスペースにも窓があります。窓にもお気に入りのものがたくさん。バスマットは丸めてカゴにのせています。バスマットのカゴの右側は古いお香を炊くもの。骨董品です。多分イスラム教の寺院で使っていたものでしょう。左側にある蓋つきのツボ。日本なら梅干しが入っているようなツボですが、これはトイレのゴミ箱です。床は磨いていない大理石。自然の石の温かさを重視しています。■ 好きなものが周りにある幸せキッチンのある階の上は屋根の一部を取り払ってルーフバルコニーにしています。お気に入りの骨董品や素材についての詳細は、またの機会に紹介します。
2018年10月06日フランス・パリを拠点に活動する気鋭の建築家・田根剛の展覧会「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building」が、東京オペラシティアートギャラリーで10月19日から12月24日まで開催。連携企画として「田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research」を、乃木坂のTOTO ギャラリー・間で、10月18日から12月23日まで開催する。〈新国立競技場案 古墳スタジアム〉東京 2012image: courtesy of DGT.フランスを拠点に世界各地でプロジェクトを進め、現在幅広い注目を集める気鋭の建築家・田根 剛。20代の若さでドレル・ゴットメ・田根(DGT.)として「エストニア国立博物館」の国際設計競技に勝利し、選出から約10年の歳月を経た2016年秋に同プロジェクトが竣工を迎えるなど、国内外の注目がさらに高まっている。また、2012年に行われた新国立競技場基本構想国際デザイン競技(ザハ・ハディド案選出時)に参加し、11人のファイナリストに選ばれた「古墳スタジアム」は幅広い層に知られるきっかけとなった。2017年のDGT.解散後はAtelier Tsuyoshi Tane Architectsをパリに設立し、活動の場をさらに広げている。本展は、「Archaeology of the Future— 未来の記憶」を共通のテーマにしながら、田根の密度の高いこれまでの活動と、建築は記憶を通じていかに未来をつくりうるかという挑戦を、ふたつの会場で紹介。東京オペラシティアートギャラリーでは「Digging & Building」と題して、場所をめぐる記憶を発掘し、掘り下げ、飛躍させる手法と、そこから生み出された「エストニア国立博物館」や「古墳スタジアム」といった代表作や、最新プロジェクトを大型の模型や映像などによって体感的に展示する。〈エストニア国立博物館〉タルトゥ 2006-16photo: Eesti Rahva Muuseum / image courtesy of DGT.本展の冒頭、“gallery 1”では田根がどのプロジェクトにおいても実施するイメージとテキストを使ったリサーチの手法を、天井高6mの空間を使って展示。場所から連想される膨大なイメージを壁面に貼り、分類/調査を繰り返すことで思考を整理していくこの方法を田根は「Archaeological Reseach(考古学的リサーチ)」と呼んでいる。本展では、「記憶」という概念そのものを、リサーチする実験空間として体験できる。“gallery 2”では、「エストニア国立博物館」や「新国立競技場案 古墳スタジアム」をはじめ、現在進行中のプロジェクトなどを含む7つの作品を、展示室全体を使って空間的に展示。各プロジェクトは1/10から1/100のスケールの大型模型で紹介され、全長10mにおよぶ「エストニア国立博物館」は、身体的な空間体験を可能にする。いずれのプロジェクトにも「Archaeological Research」の過程で集められたさまざまな資料やオブジェクトが伴い、ひとつの建築ができあがるまでの思考をたどる手掛かりとなる。また「エストニア国立博物館」については、設計競技に提出された模型の実物が展示される他、短いながらも密度の高い2004年以降100作品以上の田根の全活動を、30mのコリドールを使ったタイムラインとして総鑑できる展示も登場する。そして「建築は未来の記憶をつくること」という田根の思想に共鳴したアーティストの藤井光が、各プロジェクトの映像制作で参加。歴史や記憶の生成に着眼し、現代社会の諸事項を再検証する作品で知られる藤井が、竣工プロジェクトおよびパリの田根のアトリエを訪問し、撮影を行った。「エストニア国立博物館」は、2画面の大型プロジェクションで展示。場所の記憶を継ぐ建築とそこに住まう人が、あらたな記憶を重ねながら未来をつくっていく姿を見ることができる。〈Archaeological Research〉 2018TOTO ギャラリー・間においては「Search & Research」に基づき、建築における思考と考察のプロセスが展開され、「Archaeological Research」の方法論を展観。ふたつの展覧会は、場所の記憶をさまざまな角度から分析することで新たな系をつくり、未来につながる建築へと展開させていく、田根の探求と実践のプロセスを総合的に提示しようとするものとなる。「記憶は現在を動かし、未来をつくる ——」 この信念にもとづいた田根の創造は、都市の担い手である私たち一人ひとりにとって建築の持つ力や使命、未来への可能性を考えるきっかけとなるだろう。【展覧会情報】田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Digging & Building会期:10月19日〜12月24日会場:東京オペラシティ アートギャラリー住所:東京都新宿区西新宿3-20-2時間:11:00〜19:00、金・土11:00〜20:00(最終入場は閉館の30分前まで)休館日:月曜日(12月24日は開館)料金:一般1,200円(1,000円)、大・高生800円(600円)、中学生以下無料 ※()内は15名以上の団体料金、障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料、割引の併用および入場料の払い戻し不可 ※同時開催「収蔵品展064 異国で描く」、「project N 73 中村太一」の入場料を含む ※収蔵品展入場券200円(各種割引は無し)あり田根 剛|未来の記憶 Archaeology of the Future―Search & Research会期:10月18日〜12月23日会場:TOTO ギャラリー ・ 間住所:東京都港区南青山1-24-3 TOTO 乃木坂ビル3F時間:11:00〜18:00休館日:月曜・祝日(11月3日、12月23日は開館)料金:入場無料
2018年09月28日上下階へ移動するための動線として、階段というものがあります。この場所のデザインは住宅の内部を演出し、さらにはその個性をかたちづくる部分が大きいと私は考えています。階段が住宅空間を決めると言っても過言ではないと思います。このことは十年以上住宅設計の仕事に携わり、建築写真を撮られているカメラマンの撮影に立ち会ったり、自分で住宅の写真を撮影していて気がつきました。特にそれは狭小住宅であればあるほど感じます。といいますのも、たとえば狭小3階建て住宅だと、平面プランのパターンがだいたい決まってきます。ですので、部屋同士の平面的な関係よりも階と階の断面的な関係が見せ場となり、そこに階段の存在が大きく関係してくることが多くなるのです。さあ!階段という存在に着目しながら住宅空間をいっしょに見ていきましょう。■ 鉄骨階段から生まれる開放感クライアントがこういう階段がいいと見せてくださる画像のほとんどは、鉄骨階段であることが多いです。鉄骨階段は木製階段よりコストが高くなってしまいます。しかしながら、やはり部材が木材ほどゴツくはならないので、デザインに軽やかさが生まれ、よりその置かれた空間に開放感を与えることができます。また木とうまく組み合わせることで、仕上げの美しさと強度をうまく融合させることができるのも強みです。上の画像のように、段板を木で仕上げ、支える部分を鉄骨とすることで階段に浮遊感が生まれます。■ 木製階段による一体的な意匠もちろん木製でも工夫次第で鉄骨同様のとまではいきませんが、軽やかなストリップ階段が可能です。階段のすきまから入る光がここちよいです。木はその材料なりに良い部分ももちろんあります。特に日本ではだいたいが木造住宅であることが多いので、より空間のしつらえとの一体感を出すことができます。階段と収納との融合ですと、階段下を収納に活用しながらすっきり仕上げることも可能です。■ 動物のための階段もある階段は人間だけのものでしょうか?動物のための階段をつくりたい、といったリクエストにこたえた提案ももちろんしています。こちらは家具としても使っているのですが、飼っている猫ちゃんのための階段にもなります。猫は高いところが好きですので、ここをとんとんとんと猫が歩いて上がっていきます。高いところから、家族を気ままに見下ろしている姿がとてもかわいらしかったです。家具から現しの梁をつたい、ロフトに行き、そしてロフトの階段を下りてまた家具の階段を上っている姿を見ていると、今度は猫のための家をつくってみたくなりました(笑)。このように階段のデザインによって住宅の個性がよりいっそう引き出されます。階段という存在を中心に住宅を見たとき、そこからどんな生活が派生するかを個性としてとらえなおす、そんな住宅の見方もまた面白いと思いませんか?今度住宅を実際に見たり、雑誌などで見たときには、階段を中心にその空間をながめてみてはいかがでしょうか。
2018年09月03日家に帰ると、たいていの方は部屋着に着替えるかと思います。リラックスできる服装になり、オンとオフを切り替える行為です。では、どこで部屋着に着替えるかというと、それぞれのご家庭によって違うことでしょう。私はその違いを家づくりの打ち合わせを行うことでいつも気づかされます。でも、家族の中ではそれが当たり前。知らないうちにルールができあがっています。新しく家づくりを行う上で、「着替える場所を家族で決めてしまおう」というご家族もいらしたりします。今回は、その着替えるというオン、オフ切り替えの場所の選択肢や部屋との関係を、3つの事例をふまえながらお伝えしたいと思います。■ 1. 個人の部屋の場合Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)衣類はそれぞれの部屋に置いて管理して、個人個人がそこで着替えるという場合が一番多いかと思います。家に帰ってきて、まず自分の部屋に荷物を置いて、そこで着替えをします。部屋に造り付けた(もしくは置いた)収納を開けて衣服を取り出してリラックスモードに切り替えます。■ 2. 脱衣・洗面室の場合naka / PIXTA(ピクスタ)まずは洗面所に行き、服を脱いで洗濯機に入れ、そのまま入浴したりシャワーを浴びる方もいらっしゃるかと思います。そこで部屋着になって夕食にのぞむ方もいらっしゃるでしょう。ここを着替える拠点にしたいとおっしゃっていたお施主さんには、一気に着替えができるよう、タオルなどのほかに、下着や部屋着のストックを収納できるスペースを設計したりしました。ご趣味などが関係してくる場合もあります。海の近くに住んでいらっしゃる方で、サーフィンをほぼ毎日やっている方がいらっしゃいました。Graphs / PIXTA(ピクスタ)その方は庭からお風呂にアクセスし、シャワーを浴びてから洗面室に入り、そこですべて着替えてしまうのです。その方にとっては、浴室と脱衣・洗面室が玄関のようでした(笑)。■ 3. ウォークインクローゼットの場合KWphoto / PIXTA(ピクスタ)ウォークインクローゼットのように、衣類のストック場所となっているところを着替えの場所としたい、という方もいらっしゃいます。自分のお部屋に隣接した使い方や、洗面所に隣接した使い方。玄関近くにシューズインクローゼットの延長上として隣接している方もいらっしゃいました。ウォークインクローゼットといっても、その大きさや隣接するお部屋などでスタイルが変わってきます。以上のように、様々な方々のお宅を設計してきましたが、着替えに最適な場所はやはり人それぞれです。今までの生活習慣や、できればこうしたかったという思いから、着替えをする空間が生まれます。Graphs / PIXTA(ピクスタ)家づくりを行う際、ご自分の生活習慣についてなんでもざっくばらんに設計者へお話していただけたらと思います。設計者側としては、先入観を持たずにお話をお聞きしています。お施主さんの話を聞くと、「そういえば、そうだよな」という新たな発見を感じながら、自分自身の生活スタイルを改めて考え直す機会にもなったりします。あなたが今日帰って着替えるところはどこなのか、もう一度とらえ直してみてはいかがでしょうか。
2018年08月04日不動産検索サイトや不動産販売の広告などでよく目にする「建築条件付き土地」。その意味についてなんとなく知っている人は多いと思いますが、その中身をしっかりと理解している人は少ないのでは?建築条件付き土地の中身を理解するために、少し変わった角度から建築条件付き売地を考えてみます。実は「売主のタイプ」の違いによって、その建築条件付き土地の性質や「メリット・デメリット」に違いが出る場合があるのです。以下ではその「売主のタイプ」を大きく2種類に分け、その違いを解説します。■ 売主タイプ1.昔ながらの不動産業者HAKU / PIXTA(ピクスタ)このタイプの売主はその多くが、建築条件付き土地の販売を建売住宅販売の一形態と考えている傾向があります。宅地建物取引業法では、建築確認(許可)等を取得していなければ土地建物一体での売買契約は禁止されています。しかし、土地の販売期間短縮や販売経費削減をしたい、さらに土地売却益だけでなく建設工事でも利益を得たい売主が、建築確認等を取得したり現実に建設工事に着手しなくても土地建物をセットで販売(請負)したいと考えた場合に、土地の売買契約に建物請負契約締結の条件を付した「建築条件付き土地」という方法を選択するのです。つまり、本来は土地建物一体での販売をしたいのに法の制限によりそれができないため、やむを得ず建築条件付き土地売買という形態をとっている場合が多いのです(もちろん違うケースもあります)。■ 売主タイプ2.ハウスメーカーなどの建設業者HAKU / PIXTA(ピクスタ)このタイプの売主はその多くが、土地売買契約より建設工事請負契約にその比重を置いています。つまり土地を販売する目的自体が「建物を売るため」なのです。そのため、このタイプの売主は土地販売時にかなり踏み込んだ建物の打ち合わせを行います。土地の販売自体が主たる目的ではないため、購入希望者の建物ニーズが自社商品と合わない場合はその時点で土地購入を積極的に勧めません。建設工事請負契約が円滑に進まない可能性がある顧客と土地売買契約を結ぶメリットがないのです。■ 売主タイプ1のメリット・デメリット売主タイプ1の建築条件付き土地の場合、先述のようにその売主は土地売却益だけではなく建設工事請負による利益を期待している場合がほとんどです。そのため、見込んでいた利益が土地売却だけで得られるなら、この建築条件を外せるケースも多く見受けられます。「土地は気に入ったけど、建物ニーズが合わない」「この土地にどうしても別のハウスメーカーで建てたい」などの場合、その交渉を受け付けてくれやすいのはこのタイプの売主なのです。また、不動産業者が売主のため、上下水道などの供給施設がすでに整備されている土地も多く、権利関係(差し押さえ等)や隣地境界トラブルも整理されている土地が多いのもメリットといえるでしょう。Graphs / PIXTA(ピクスタ)ただ、もちろんデメリットもあります。上記のように建築条件を外す交渉がうまくいっても、その売買条件変更にともなう価格のアップを要求される場合が多いのです。それで結局予算オーバーとなるケースも見られます。だからといってその価格が割高であるという意味ではありません。建築条件付き土地の場合、その価格設定は条件なしの土地と比べ若干低めに設定している場合も多いのです。■ 売主タイプ2のメリット・デメリット売主タイプ2の建築条件付き土地のメリットですが、この売主はそもそも建物を売るのが主たる目的なので、土地の検討当初からその土地に最適な参考プランや推奨仕様など、かなり充実したものを用意している場合が多くみられます。そのため、自分で建設業者を見つけて別々に発注するよりも割安で良質な住宅が手に入る場合があります。タカス / PIXTA(ピクスタ)デメリットは、このタイプの建築条件を外すことはほぼできないということです。建物を売るのが目的なので条件外しの交渉さえ受け付けてもらえないでしょう。どうしてもその土地を購入したい場合はその指定された建物を購入(請負契約)するしか選択肢は無いのです。ただし、土地売買契約後の打ち合わせによって請負契約が不調に終わる場合は土地売買契約も解除されます。いかがでしたか?ここで取り上げた以外にも様々な売主さんはいますが、建築条件付き土地を検討される場合は「売主のタイプ」を知り、そのメリット・デメリットを知ったうえで購入を判断する材料のひとつにしてください!【参考】※東京都都市整備局不動産取引の手引き
2018年06月15日設計者・建築士は、設計提案を施主様に行うため、まずヒアリングを行います。私の設計事務所では、そのお施主様の思いを形に結びつけるため、独自にヒアリングシートを作成してお話を伺っています。今回はいかにヒアリングが大事かについてご紹介。ヒアリングでは、施主様が要望を設計者にお伝えしたいと思っているでしょうし、私たちはそれを聞いて十分に理解しようと考えているのです。■ 施主はヒアリングにどんなふうに臨めばいい?ヒアリングシート私たち設計者にとってヒアリングという機会は、提案をよりよくするためのものであります。もっと言うと、プレゼンのなかに、提案、そしてヒアリングが含まれていると言っても過言ではないです。そのくらい私は、ヒアリングを大事に考えています。では、お施主様としては、ヒアリングにどんなふうにのぞめばいいのか。どう伝えるのがいいのか。あまりかまえる必要はありませんが、こうしたほうがコミュニケーションを取りやすいですよということを簡単に2つほどご紹介したいと思います。■ 1.あるだけ要望をすべて吐き出してみよう!これはまず、お願いしていますし、できるだけお施主様が考えていることすべてを吐き出していただくように、私も努力しています。そして、施主様には何でも言っていただいています。Rina / PIXTA(ピクスタ)そのなかで私たちは、要望と、その奥にかくされた、施主様の欲している本質を読み解き、それらから形にするヒントを得ようとしています。このようにする理由は、要望の組み合わせ次第でこれは無理だろうと思えた矛盾が、実現する可能性がでてきたりもするからです。それは提案において核になる可能性を多く秘めていたりもします。いろいろな要望が出たあと、私はお施主様にそのなかで優先順位をつけてもらい、要望の整理をします。そうすると、フィルターにかかるように、提案へむけた方針が見えてきます。■ 2.イメージや好きの共有をするために施主様がどんなイメージをもっているのか、そして何が好きなのか。これらを共有することが設計提案をするうえで私は大切にしています。ではその共有をどのように行えばいいのか。node / PIXTA(ピクスタ)例えば、雑誌の切り抜きなどでもいいでしょう。ネットで集めた画像をスマホで見せてもいいかもしれません。言葉のほかに視覚的な情報を相互で確認できることは、要望と提案のずれを少なくします。以前までは、住宅雑誌やその一部をコピーしたファイリングなどを持ってきた方が多かったです。しかし現在では、スマホから、ダウンロードした画像データを見せてくれたり、SNSツールを活用したサイトから収集した画像を見せていただいたりなど、情報共有の手段がより多彩になってきています。イメージをわかりやすく伝達する手段ができたことで、よりお施主のイメージが私たち設計者に伝わるようになりました。これはとても便利ですね!これらのやりとりは、家づくりに対し、設計者と施主様が同じ方向を見て進んでいくためのものでもあります。お互いの信頼感にもつながりますし、意志の疎通がよりスムーズになることは間違いないです。shimi / PIXTA(ピクスタ)それは、家という完成形をともに描くための大事な関係性の構築となっていくことでしょう。このプロセスを経て、私は設計者として、施主様の求めていることや敷地、法規など様々な情報を体のなかに染み渡らせて設計提案へと望みます。あとはおまかせください!と言った感じです!!
2018年05月28日/ランニングコストって?ランニングコストとは、経営学用語の1つで一般的に企業などにおいて設備や建物、機会を維持するために必要となるコストのことをいいます。「建物」にかかるランニングコストには、保全費、管理費、修繕費、水道光熱費、冷暖房にかかる費用などがあります。また上記でいうところの「建物」のほかに、イニシャルコストというものがあります。イニシャルコストは建築時費用のことを指し、ランニングコストは建築後費用を指します。2種類のランニングコスト建物を建てるときをイニシャルコストといい、建てた後をランニングコストといいました。ランニングコストはつまるところ維持費や管理費ともいえます。不動産を得る不動産投資の世界では、このランニングコストを2つに分けることができます。固定資産税・都市計画税建物は建てた後の方がコスト面に負担が掛かります。この2つは不動産を所有しているだけでも掛かる税金で、毎年発生します。管理修繕費不動産投資物件(主にアパートやマンション)の運用を行うには、当然に「管理」が必要です。空室率の低い投資物件は、この管理面がしっかりと行き届いています。管理費用には以下の2種類(その他を除く)があります。これらを行う業者が「不動産管理会社」です。PM(プロパティマネジメント)費PM費とは、入居者管理費のことをいいます。主な仕事内容に、賃料の集金、滞納の催促、入退去手続、募集、苦情の受付・対処、リフォームの手配などがあります。BM(ビルマネジメント・ビルメンテナンス)費BM費とは、建物管理費のことをいいます。主な仕事内容に、共用部の清掃(エントランス・ゴミ置き場・廊下など)、エレベーターの維持管理、法定消防点検、受水槽の点検などがあります。その他また上記2つ以外にも、以下のような管理費用があります。入居者募集費用入居者を募集するのに掛かる費用としては、仲介手数料や宣伝広告費などが考えられます。共用部の水道光熱費共用廊下やエントランスホールの電気などの費用もかかります。リフォーム費建物は人間と同じく歳を取ります。老築化が進めば室内をリフォームし、空室率を上げる必要があります。税金(不動産所得)不動産によって得た所得を「不動産所得」といい、これにも税金が課せられます。不動産所得は【総収入-諸経費】なので、最後に掛かるコストと考えてよいでしょう。まとめ不動産投資で掛かるランニングコストは、まとめると以下3つです。固定資産税・都市計画税管理費用等(PMフィー、BMフィー)不動産所得税など建築時にも膨大な費用は要しますが、実はそれよりもランニングコストの費用の方が掛かります。しっかりと計画を立てる必要がありそうです。
2018年03月11日建築模型に特化した国内唯一のミュージアム、天王洲アイルの建築倉庫ミュージアムにて、リニューアル後初の企画展「ル・コルビュジエ / チャンディガール展 -創造とコンテクスト-」が、5月26日から7月16日まで開催。ル・コルビュジエ、キャピタル全体図のスケッチ、平面図と遠近法図、説明文つき、チャンディガール1950~1965年 1951年7月24日 所蔵 ル・コルビュジエ財団近代を代表する巨匠建築家として知られる、ル・コルビュジエ。そしてその活動は、彼が提唱した「近代建築5原則」が示す通り、合理主義的な考えと技術革新を伴って発展していく世界のイメージに根ざし、一つの普遍的論理が広く世界で通用するという信念に基づくと考えられてきた。しかし、彼が場所の環境や風景、また風土や文化など、計画にかかわるコンテクストに多くの注意や関心を払っていたことはあまり知られていない。特に、インドのチャンディガールをはじめとする晩年の作品群では、こうした関心が、彼の建築・都市デザインの直接的なインスピレーションの源となって、より複雑な全体の生成に寄与している。本展は、ル・コルビュジエの手によるチャンディガールでの作品群を例にとり、ヨーロッパから遠く離れたインドという異質の環境下における、彼のクリエイションとその土地ならではのエレメントとの関係を考察する。展示では、貴重な建築資料や模型、建築家自身の手によるオリジナルスケッチや油彩画、リトグラフなどの美術作品に加えて、写真家ホンマタカシがチャンディガールで撮影した写真や映像作品を紹介する。ル・コルビュジエ「牡牛 XVIII」1959年、所蔵 大成建設株式会社チャンディガールで、民主主義とインドの気候とを総合的にモニュメント化する言語を模索していったコルビュジエ。その結果、とりわけキャピトル・コンプレックスは、初期のデザインを支配していた一元的に普遍を志向する堅苦しい幾何学から解放され、幾何学的要素とピクチャレスクな要素が混在することより複雑な総体として結実した。今回は、その主要な構成要素の一部をなす議事堂内部を巨大模型で再現する。また、絵画を中心とした芸術作品を多く残した芸術家としても知られるコルビュジエの油彩画「牡牛 XVIII」(1959年)を展示。最晩年に制作され、彼の創作活動を対立概念間の運動として総括するリトグラフの詩画集「二つの間に」(1964年)も展示し、併せて本展のために新たに翻訳されたル・コルビュジエの詩文(田中未来訳)を紹介する。Takashi Homma「High Court 1」2013 Lambda print © Takashi Homma Courtesy of TARO NASUチャンディガールでの計画最初期から、キャピトル・コンプレックスの建物群の配置と全体のスケール感は、後背に広がるヒマラヤ山脈との関係性と共にコルビュジエが特に注意を払って検討したとされる。今回100分の1のスケールで新たに製作されたキャピトル・コンプレックスの三つの建物である「高等裁判所」、「議事堂」、「合同庁舎」が、実際の位置間隔と同様に展示室床に配置される。来館者はその中を自由に歩き回り、コルビュジエが意図したキャピトル・コンプレックスの密度感や建築物同士の距離感を体感することができる。また、写真家ホンマタカシがインドに足を運び撮影した「チャンディガール」シリーズより、初公開作品を含む写真と映像作品を展示。本作はチャンディガールを通り抜ける風や匂い、空間へ差し込む光を念頭において構成される。チャンディガールという計画都市全体がある意味一つの構造物であり、それぞれの建築が都市に包み込まれているスケール感がさりげなく示され、そこに暮らす人々の生活やそこに流れる時間が切り取られており、チャンディガールが現在も生き続ける都市であることを実感することができる。それはまさしくコルビュジエが注目した、建築とそれを取り囲む気候との関係を写しとろうとするものであり、本作によって、模型だけでは伝えきれないチャンディガールという都市のリアリティを補う。建築模型を広く一般に公開する“ミュージアム”であるだけでなく、模型専門の“保存”機能をもつ、新しいかたちの本ミュージアムならではの7部構成の本展。多種にわたる展示によって、コルビュジエがそこで見聞きし、感じ、考え、そして表現しようとしたものを感じ取ることができると同時に、それらを通して、コルビュジエ作品に宿る、近代思想をも超えようとする精神を垣間見る機会を提供する。【展覧会概要】ル・コルビュジエ / チャンディガール展 –創造とコンテクスト-(Le Corbusier / Chandigarh -Creation and Context-)会期:2018年5月26日(土)〜7月16日(月・祝)会場:建築倉庫ミュージアム住所:東京都品川区東品川2-6-10時間:11:00~19:00(最終入館18時)休館日:月曜日(祝日の場合、翌火曜休館)入場料:一般 3,000円、大学生/専門学校生 2,000円、高校生以下 1,000円
2018年03月08日華やかな一方で多忙なイメージがある建築の世界。その第一線で働くママ・パパたちは、子育てと仕事をどうやって両立しているのか。そのリアルな実態がわかるエッセイ集『子育てしながら建築を仕事にする(学芸出版社)』が刊行されました。そこで、編著者で「キュープラザ二子玉川」の商環境デザインを手がけた3歳児ママ・成瀬友梨さんをはじめ、建築家パパの三井祐介さんと豊田啓介さんも参加したトークイベントに潜入! さらに後日、成瀬さんにインタビューし、両立するための工夫や職場の環境づくり、働くママにとって過ごしやすい家づくりなどのアドバイスをいただきました。 ■「あきらめること」から始まる仕事と育児本でもトークイベントでも、多くのママ・パパが語っているのが「あきらめる」ことの大切さ。建築家は自分ですべての事柄を決定し、ディテールにとことんこだわる仕事ですが、育児が始まるとそうはいきません。「仕事をしていると子どもが気になるし、子どもといると仕事が気になる。葛藤もありますが、最近は鈍感力が身についてきました。例えば、忙しくても早く帰って家族と夕飯を食べたり、ビールを飲んですぐに寝ちゃったり。やってみると、結果はそう変わらなかったりするんですよね。すべてを自分がコントロールすることをあきらめることで、人が育つという面もあります(豊田さん)」。「私は、建築家の仕事と並行して7年間続けてきた大学助教の仕事を、辞める決断をしました。学生に対応する時間が足りなくなり、子どもと過ごす時間もボーッとすることが多く、体力気力の限界になってしまったんです。今やっている仕事も、細かいところには目をつぶってスタッフに任せている部分が多い。歯がゆい気持ちもありますが、今は我慢の時だと思っています(成瀬さん)」。育児も同様で、すべてを夫婦だけでやろうとするのではなく、あきらめが肝心。ベビーシッターや病児保育を利用したり、近所の知り合いやママ友に保育園の送迎を頼んだりと、周囲に頼ることが大切だと話してくれました。■「スケジュール管理」と「得意分野」で分担 本に登場する夫婦は、育児・家事の協力体制が完璧! それぞれの仕事や家族の行事など、あらゆる予定をスケジュール管理アプリで共有し、互いに助け合っています。「妻も仕事がかなり忙しいうえ、高齢の両親のサポートもある。だから、掃除や料理は僕がやることが多いんですが、家事は得意なので全然苦ではありません。妻は、買うと高いからと夜中に教材を自作したり、科学の実験装置を作ったりと、子どもの自発的な学習を促すための時間を惜しまない。お互いが得意なことを、自然と分担している感じです(三井さん)」「私は保育園への送り迎えや食事の用意、夫は掃除・洗濯・ゴミ出しなどを担当しています。私が出張の場合、夫は子どもにごはんを作って食べさせ、寝かしつけまでこなしてくれるので、本当にありがたい。2歳くらいまでまでは熱を出すことも多かったので、区の病児保育にはずいぶんお世話になりました(成瀬さん)」ほかにも、ルンバや食洗機・食材宅配サービスを活用したり、ファミリーサポートやベビーシッターを頼んだりと、両立するための方法は家族によってさまざま。試行錯誤しながら、自分たちに合ったスタイルを模索しているようです。■「クリエイティブな時間=1人時間」を確保する方法子どもが生まれるまでは1日中建築のことを考えていた建築家たちにとって、クリエイティブな時間をどう確保するかも重要な課題。仕事と子育てに追われる日々の中で、それぞれ工夫をしているようです。「子どもを寝かしつけた後で夜中まで本を読んだり考えごとをしたり、もう一度事務所に戻って作業をすることもあります。また、他業種の人に会ったり、面白そうなイベントに参加したりと、自分の世界を広げることも大事。どうしても夜の外出が多くなってしまうんですが、夫は快く送り出してくれます(成瀬さん)」「夕食はできるだけ家族そろって食べたいので、子どもを寝かしつけた後に1人で外出して、時間を確保することが多いですね、近所に3、4軒ある行きつけのバーで、ビールを飲みながら思考をめぐらせたり図面をチェックしたり。深夜1時ごろに帰宅して就寝、翌朝7時に起きるというサイクルです(豊田さん)」何かと忙しい子育て期に「自分だけの時間」を確保するのは難しいもの。お互いの仕事を尊重し合うこと、そして夫婦が同等に子育てスキルを身につけることが大切だと感じました。 ■ママ建築家・成瀬友梨さんにインタビュー! 働くママが子育てしやすい家とは?――まず、この本を出版しようと思ったきっかけを教えてください。成瀬さん:私は東京大学工学部建築学科の助教として学生の指導をしていたんですが、女子学生から「子育てと建築の仕事を両立する将来が想像できない。大変そうで、とても真似できない」と言われることが多かったんです。才能ある若者たちが「仕事か、子育てか、どちらかを選ばないといけない」と考えているとしたら、本当にもったいない。そこで、実際に両立している人々を紹介することで「自分にもできる!」ということを伝え、背中を押したいと考えたのがきっかけです。実際に、本が出来上がってみると、建築家に限らず、これから子どもを持とうとしている方や子育て中の方、会社のマネジメント層にも役立つ本になったと実感しています。――確かに建築家に限らず、子育てしながら働くことは「大変」というイメージが強いですよね。成瀬さん:実際に経験してみると、自分の時間が減ってしまうのは大変なのですが、豊かになったことの方がずっと多いんですよ。以前は、仕事に夢中で休日も常にインプットの時間でしたが、子どもがいると強制的にペースダウンするので、季節による太陽の光や緑の変化に敏感になりました。週末には公園で思いっきり遊んだり、保育園の友達家族と昼間からお酒を飲んだりと、世界が広がっていくのも楽しい。子どもができてからバリアフリーの大切さに気づくことができ、世の中には本当に多様な人がいることも知りました。――この本に出てくる建築家の皆さんは、会社の理解のもとで周囲と協力しながら仕事をしている印象を受けました。働くママが職場で協力を得るためのコツを、ぜひ教えてください。成瀬さん:子育てだけが大変なのではなく、それぞれにさまざまな事情があると認識することが、大前提だと思います。そのうえで、ほかの人が困っていたらいつでも相談にのる、協力する、というスタンスでいることが一番大事なのではないでしょうか。――子どもがいると、家に対する考え方も変わってきます。建築家の目線から見て、子育てしやすい家とはどんな家だと思われますか?成瀬さん:子どもが元気に動き回れるように、広くてのびのびした家がいいでしょうね。実利的には、玄関が広いのが一番。子どもが小さいうちは、ベビーカーや三輪車などいろいろと置くものがありますし、宅配便の荷物をちょっと置いておくのにも便利です。玄関で子どもの支度をすることも多いので、狭いと苦労するかもしれませんね。また、玄関が広いと全体の印象として余裕があるように見える、という効果もあります。――最後に、働くママ・パパへのメッセージをお願いします。成瀬さん:子育てを終えた方からは「子育ては大変だけど、さみしいくらいあっという間に過ぎてしまうもの」とよく言われます。その言葉を信じて、楽しんでいけたら素敵ですよね。私も怪獣のような子どもを抱えていますが、仕事も家庭も欲張りに生きていきたい。完璧じゃなくていいから毎日を大切にしていきたいと思っています。参考図書: 「子育てしながら建築を仕事にする」 (学芸出版社)著・編集 成瀬友梨ゼネコン、アトリエ、組織事務所、ハウスメーカー、個人事務所等、異なる立場で子育て中の現役男女各8名の体験談を集めたエッセイ集。仕事と子育ての両立に奮闘しながら、欲張りに楽しむリアルな姿が見えてくる。成瀬友梨 プロフィール1979年愛知県生まれ。2007年東京大学大学院博士課程単位取得退学。同年に成瀬・猪熊建築設計事務所共同設立。と2010年〜2017年東京大学助教。地域・ライフスタイル・コミュニケーションという観点から建築を考え、シェアをキーワードに設計を行う。主な編著書に『シェアをデザインする』『シェア空間の設計手法』等。
2018年02月27日ピロティとはピロティとは、2階建以上の建物で1階部分が柱のみの外構空間となっている建築物のことをいいます。この建築様式は、フランスで活躍した建築家ル・コルビュジエによって広められたとされています。その代表的な作品が「サヴォア邸」です。実はこの建築物、一度大学の授業で模擬演習として設計したことがあります(筆者は建築家専攻出身)。当時の設計技術では到底なしえない神業であったと、教授から学びました。余談が過ぎましたが、そんな神業は長い時を経て、近代住宅のひとつの様式として日本でも認知されるようになりました。その有効な活用方法についてみてみましょう。ピロティの有効活用(メリット)ピロティはかなり優れた建築様式で、そのメリットには以下のようなものが挙げられます。駐車場や遊戯スペースとしての利用津波災害から家を守る!(耐津波災害性能)ピロティは容積率に影響しない!一般的に多くみられるのが駐車場としての利用ですね。複数台駐車することができ、家自体が軒となるので、雨風を心配する必要がないですね。また遊戯スペースとして利用している住宅も見受けられます。のびのびと遊ぶことができるので、子どもの発育を手助けしてくれる様式です。物件を探していらっしゃる方は、参考にしてみるのも良いかもしれませんね!(ご近所の友人を招いてBBQもできちゃいますね!)そして、なんといっても津波災害から家を守ってくれるのが最大の特徴といえます。東日本大震災時でさえもピロティ建築が残ったことから、水害に強いといった認識が高まりました。また風通しも良いので、台風にも強いといえるでしょう。災害から家族を守ってくれる家は、教育環境としても安全といえますね!最後になりますが、実はピロティは容積率算定に関係しません。室内型のガレージなんかだと、延べ床面積の1/5までは容積率算定には入れなくて良いのですが、広いガレージを作る場合だと1/5を超えてしまい、容積率算定の基準となってしまいます。しかし先述したように、ピロティは面積に関わらず建築できるので、住居部分(部屋)の容積率を目一杯使うことができます(つまり部屋を広く設けられる)。この点もメリットといえます。まとめピロティは災害にも強く、子どもの発育にも適した建築様式であることが分かりました。物件探しをお考えのお母さんは、ぜひピロティ建築を提案してみてください!
2018年01月06日家づくりのプロである建築家さんが、テーマに沿って、過去に手掛けた住まいの事例とノウハウを解説するシリーズです。今回のテーマは「家族がくつろげるリビング」!今回は、荒木毅建築事務所(東京都杉並区)の荒木毅さんに、事例をご紹介いただきます。荒木毅建築事務所建築家・荒木毅◆作品名:CH13◆依頼者について:4人家族旦那様(40代後半)/奥様(40代後半)/お子様(13歳/10歳)※すべて建物完成時の情報◆所在地:東京都中庭で、家族のため空間をひとつながりに「家族で暮らすリビングは、広く明るくのびやかな空間でありたい……」依頼者のご要望のひとつに「中庭」がありました。以前住んでいた家に中庭があり、親しみを感じていたそうです。そこで中庭を中心に、リビング・ダイニングや書斎コーナーなど、家族のための空間が一体となり広く確保されるよう考えました。家族のための空間は、それぞれ使いやすい位置にありながらもひとつながりとなり、家族の気配を感じながらものびのびとした生活ができる空間構成となっています。家族一緒に暮らす生活が、より楽しくなるキッチンキッチンは家族の暮らす空間のなかに配置。奥様の使い方をそのまま形にした、機能的で丈夫なスチール製のキッチンは、家族と目の合う位置に設け、親子や夫婦のつながりを生んでいます。すぐ近くに杉板で作られた小上がりのダイニングでは、ちゃぶ台でお食事を。中庭に面したこんもりと盛り上がった、黒い人研ぎの土間にはダイニングテーブルも似合います。生活スタイルに合わせ、変化を楽しめると思います。外部との一体感も大切にした、土間や2階ホール1階の床のほとんどを、コンクリートの土間に。とはいえ、家族が長い時間くつろぐスペースなので、熱容量が大きいコンクリートを活用して蓄熱式床暖房を入れました。土間は泥のついた植木や自転車を入れても、食事を作る際に水などを飛ばしても大丈夫。気を使うことのない、丈夫な床です。2階にも家族のためのホールを作り、広い外部デッキとつながる空間としました。吹抜けで中庭ともつながっています。室内だけの「ひとつながり」でなく、外部空間とも一体感の味わえ、生活の仕方に極端に気を使わなくても良い包容力のある空間が広がります。合理的な採光がそのまま形になった外観建物南側の平屋部分は日差しをハイサイドライトより採り入れ、建物北側の2階建て部分は、中庭を介して日差しを取り入れています。中庭は木製縦格子で外部と、2階デッキは南棟のナナメの屋根で隣家と隔てられているので、中庭や2階デッキがワンクッションとなり、家族のプライバシーを守っています。中庭を介して1年中日差しが1階北側奥まで届くよう工夫しました。そんな合理的な採光がそのまま形になった外観も特徴です。建築家情報事務所名:荒木毅建築事務所建築家名:荒木毅HP:事務所所在地:東京都杉並区対応エリア:全国
2017年12月25日竣工とは竣工とは、建築工事が完了したことを意味します。また同じような意味に「竣成(しゅんせい)」といったものがあります。工事が完了した次には、確認の検査が行われます(竣工検査)。竣工検査からその後の流れについて、確認してみましょう。竣工検査後の流れ竣工検査工事施行者と工事の監理者である建築士による、最終チェックが入ります。完了検査の立ち会い竣工検査と同様、工事施行者・建築士と立ち会います。完了検査の立ち会いが無事に終えたら(工事完了後)、4日以内に地方公共団体などに「完了検査申請書」を提出する必要があります。しかしこの手続きについては、建築士が代行してくれます。完了検査にも立ち会います。建主検査工事施行者・建築士立ち会いのもと、建主(依頼者)による目視確認を行います。理想通りの設計となっているかを、今一度確認するわけですね。もし、計画的に言っていない点があった場合には、その箇所を指摘してするようにしましょう。引き渡し不具合がないかを確認する工事に不具合がないか、実際に立ち会って確認を行います。工事担当者や営業責任者とともに、不備がないかをチェックします。たとえば、床や壁などに傷や汚れはないか、建具の開け閉めはスムーズか、設備は正常に動くかといったことを、担当者に説明してもらいながら確認していきます。もし、この竣工検査後の立ち会いで不具合が見つかった場合には、引き渡しまでに修理してもらうか、入居後に修理するかを取り決めます。この場合の注意点としては、業者とその旨を約束する書類を控えることを忘れないようにしましょう。後々のトラブルを防止します。保証書をもらう立ち会いによる工事の修正などが済んだら、次は施行会社から以下のものを受け取りましょう。施行会社の押印のある「工事完了書」「鍵」と「保証書」「検査済証」(確認検査機関が発行)保証書には定期点検とアフターメンテナンスの内容や時期、設備などが故障した場合の連絡先などが書かれているので、大切に保管しておきましょう。竣工図が提出される追加工事なども含めた引き渡し時の図面を、建築士より渡される。瑕疵検査の立ち会い建主と工事施行者との間で、1年後に改めて竣工における瑕疵がないかを確認する約束をします。工事施行は、施工主と建築士とのこまめな連携が重要です。納得のいくよう、建築士を中心に相談を重ねていくのが良いでしょう。
2017年12月04日建築基準法とは建物を建てる際の敷地や構造、設備及び用途に関する守るべき最低基準を定めている法律のことをいいます。1950年に制定された建築基準法は、国民の生命、健康および財産を保護すべく、都市計画法、宅地造成等規正法、消防法などさまざまな法律の規制を受けます。このことから、建築基準法は建物を建築するうえで最も基本となる法律とされています。そのため、着工前の「建築確認」や工事中の「中間検査」、工事完成後の「完了検査」、違法建築物の「是正勧告」などについての規定も定められています。また建築基準法は以下の2種類に大別することができます。建物自体の安全性や構造・防災・衛生などについて定めた「単体規定」都市の防災や環境向上などの観点から定めた「集団規定」1の単体規定では、具体的には居室の採光(床面積の7分の1以上)や換気(20分の1以上の開口部を設ける)、トイレ、電気設備など、個々の建物を建築する際の基準がまとめられており、全国一律に規定されます。一方、2の集団規定では、敷地と道路に関する基準(接道義務など)、建物の用途や形態に関する基準(建ぺい率や容積率、高さ制限、各種斜線制限など)、都市再生特別地区等、防火地域、景観地区などが集団規定に当たります。また集団規定は、都市計画区域及び準都市計画区域に限ってその規定が適用されます。建築前に確認したい代表的な法令とは建物の建築には、実に多くの法令が絡んでいます。その代表例が、上記で述べた「建築基準法」といえます。建物建築時の基準となるこの法律ですが、そもそもほかの法令も理解していないと、これを理解することは難しいといえるでしょう。数ある法令の中でも、建築基準法と密接に絡んでいる都市計画法について確認してみましょう。都市計画法都市計画法とは、都市の将来あるべき姿(人口、土地の利用方法、主要施設等)を想定する都市計画に基づき、必要な事項を定めている法律のことをいいます。都市計画法では、計画的に街づくりを行う「都市計画区域」と、都市計画区域外の区域で放置すれば、将来、都市としての整備や開発、保全に支障が生じるおそれのある区域であるとして指定される「準都市計画区域」があります。また都市計画区域内では、積極的に市街化する「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」とに線引きします。この市街化区域内では、異なる地域が混在しないよう、その地域ごとの用途や使用目的に合った建築物が建つよう、地域ごとに細かく分けられます(例:住宅地と工業地を分ける、など)。これを「用途規制」といいます。建物を建てるには、建築基準法に適しているかどうかを確認する前に、まず都市計画法に適しているかどうかを確認しなければならないといえるでしょう。
2017年11月30日東京・六本木の森美術館で、「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」が2018年4月25日(〜9月17日まで)にスタートした。前日に行われた内覧会より本展の見どころをレポートしよう。建築家・建築史家の藤本照信が監修する本展では、日本の建築を読み解く鍵と考えられる「可能性としての木造」「超越する美学」「安らかなる屋根」「建築としての工芸」「連なる空間」「開かれた折衷」「集まって生きる形」「発見された日本」「共生する自然」と9つの特質で章を編成し、機能主義の近代建築では見過ごされながらも、古代から現代までその底流に脈々と潜む日本建築の遺伝子を考察する。レポートする上で特筆すべきはなんといっても圧倒的な展示ボリューム。100のプロジェクトに400を超える点数で、古くは縄文時代の住居から、現在進行中の建築物や未来の計画案など現代建築までを一挙に紐解いている。紹介されている建築家の名を挙げれば、フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright)や丹下健三、黒川紀章、安藤忠雄、磯崎新、隈研吾、杉本博司、SANAA......建築プロジェクトには、平等院鳳凰堂(1053年)、厳島神社(1241年)といった世界文化遺産から古代出雲大社本殿や伊勢神宮正殿、東京オリンピック国立屋内総合競技場(1964年)、日本武道館(1964年)から、現代に建てられた豊島美術館(2010年)や、東京スカイスリー(2012年)、ラ コリーナ近江八幡 草屋根(2014年)、台中国家歌劇院(2016年)などの建築まで......といった網羅具合だ。中でも、「建築としての工芸」のセクションで紹介されている、千利休作と伝えられる現存する茶室建築として日本最古の国宝・待庵は必見だ。京都で実物の待庵を見たことがある人も多くいらっしゃるだろうが、ここでは、ものつくり大学が原寸スケールで再現した模型を、間近で見るだけでなく中に入ることができる。本展の監修者である藤本氏の「千利休は、炉の位置、床の間、腰壁に貼られた紙、障子とそこから入る光、たった2畳のスペースにどこをとっても直しどころのない、完璧かつ芸術的な場を作り出した」という語りにもあるように、用の美を秘めた日本建築の遺伝子を実感すれば、普段は無意識的な日本人としての遺伝子が目覚めてくるだろう。「連なる空間」セクションで紹介されている丹下健三自邸(1953年)は、1/3スケールの巨大模型で再現されている。丹下健三は、広島平和記念公園(1954年)、大阪万博記念公園(1970年)など、戦後の国家的プロジェクトを牽引した建築家。1/3とはいえど、宮大工の技術により実物と変わらない高精度で作り上げられた模型はさらに、タブレットPCを通じて当時の様子が伺える写真とともに鑑賞することもできる。デジタル技術とのコラボレーションといえば欠くことのできない、ライゾマティクス・アーキテクチャーが作り上げた日本建築の原寸スケールを3Dで体験できる空間だ。「Power of Scale」と名付けられたこのインスタレーションでは、レーザーファイバーと映像により、桂離宮や中銀カプセルタワーなど日本建築の空間概念が大小様々なスケールで原寸再現され、鑑賞者はその空間の中に入り込んでダイナミズムを体感することができる。あまりにも見応えがあるので、小休憩を兼ねて展示の中間に設けられたブックラウンジにもぜひ注目していただきたい。ここは、戦後のモダニズム建築時代を牽引してきたデザイナーたちの名作家具で構成されており、丹下健三研究室が設計したマガジンラック付ベンチを囲むように、剣持勇や長大作、大江宏のデザインした椅子が並び、それらに腰掛け書籍を閲覧したりして過ごすことができる。現在では美術館に所蔵されているものも多く、普段手に触れることさえできない名作たちだが、今なお現役で使用されている希少な家具を集め、本来の機能のまま使用ができる大変貴重な機会である。過去に類を見ないこの大掛かりな建築をテーマとした展示により、日本の過去と現在だけでなく、未来像が今ここで照らし出される。【展覧会情報】建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの会期:2018年4月25日〜9月17日会場:森美術館住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階時間:10:00〜22:00(火曜10:00〜17:00、いずれも入館は閉館時間の30分前まで)入館料:一般1,800円 学生(高校・大学生)1,200円 子供(4歳〜中学生)600円 シニア(65歳以上)1,500円最終更新: 5月2日
2017年11月25日