土地に出会う前から仮の図面を作成バイクや釣り、キャンプ、サーフィン…と多彩な趣味を持つ、デザインユニット『トネリコ』の君塚賢さん。都内有数の広さを持つ公園を有した住宅街でありながら、幹線道路や高速道路のインターチェンジも近い利便性に富んだ世田谷の地に、昨年自邸を建てた。「十数年前からこの近くの中古マンションに住んでいました。そのときどきの生活スタイルに合わせて3回リノベーションして暮らしていましたが、子どもが大きくなったこともあり移ることに。僕は外遊びが好きなので、山や川、海へと車で出かけるのに便利なこの辺りから離れたくなかったのです。最初はマンションを探していましたが、高騰していてなかなか良い物件がなくて。むしろ土地のほうがそれほど上がっていなかったため、戸建てを考え始めたんです。希望の条件を盛り込んで戸建てを建てたらどのくらいの敷地面積が必要か、“仮の図面”を描いてみることで、30坪はないと住みたい家は厳しいということがわかりました」。偶然出会ったというこの土地は、準防火地域の角地。通常この辺りは、建蔽率50%、容積率100%だが、耐火建築物を建てることで準防火地域と角地の緩和措置を併用して建蔽率は20%プラスされた。「ここの敷地面積は25坪ほどですが、建蔽率が70%建てられることがわかり、仮の図面で考えていたことが実現できるのではないかと思ったのです。勝手に現調したもので再度図面を引いてみて、“これははまる”と確信し、購入を決めました」。東南の角地に建つ。出入口を2方向使用できることも購入の決め手に。「玄関とガレージの場所を分けられなければ、マンションのほうが良いと思っていました」(賢さん)。板塀の内側には、四季を意識できるジューンベリーの木を中心に考えられた前庭が広がる。賢さんの愛車『ゲレンデヴァーゲン』の車高に合わせてガレージを設計。ダイニング・キッチンの下に位置する。ガレージの奥は賢さんの“秘密基地”。趣味のバイクやサーフボードのお手入れ、キャンプの準備など休日はここで過ごすことが多いそう。室内から続く浮造り仕上げの天井が贅沢。空間を立体的に。巧みなフロア構成限られた敷地を有効活用するため、スキップフロアを採用。エントランスを入るとまず200mm下がり、寝室はさらに400mm下がっている。この合計600mmの段差は、寝室の上に位置する2階のリビングの天井高2800mmをキープするため。また、ガレージの上に位置するダイニングがリビングより800mm高いのは、賢さんの愛車が収まるガレージの高さから導かれたものだ。さらに、子ども部屋は、ダイニングから続く廊下から400mm下がる。下に位置する1階の洗面室やバスルームに高い天井は不要のため、その分コンパクトな子ども部屋の天井高を確保している。「空間を立体的にとらえ、面積ではなく体積で考えていきました。それぞれの空間が心地よく感じられるよう天井高や広さを設定。さらに、リビングやダイニング、子ども部屋など各部屋での行動や目線の動きを想像し、光の入り方や風の抜け、借景を取り込んでいます」。動線の先には窓を設け、目線が抜けるように設計した。また、床のフローリングに使用した浮造り仕上げの栗の木を壁や天井(1階)にも採用し、連続性をもたせた。ボリュームの異なる高低差で変化をつけ、段差を利用した開口で奥行を出すなど、細部まで計算され尽くした空間は、体感的な広さを実現している。天井高を確保するため、リビングはダイニングより低めに設定。ダイニングの下がガレージ。元気に育っている“バキラ”は、賢さんが独身時代に小さなポットで購入したもの。「人が集まるところが好きみたいなので(笑)、リビングに置いています」。板塀に囲まれた前庭に面した寝室は、玄関から600mm掘り下げた。緑に癒される落ち着いた空間に。「街と一拍置きたかった」と、板塀内に前庭やベンチを設けた。ベンチは、玄関の外部から内部へとつながり、視線も通す。寝室を掘り下げたことで生まれた上部の段差を開口にし、光と視線の抜けを取り入れた。奥のガレージに続く部分はガラスにし、奥行を演出。足触りのよい浮造り仕上げの栗の木を床だけでなく、壁や天井にも採用。経年変化が楽しめるのも魅力。前庭へと抜けを造ったバスルーム。趣のある檜の風呂蓋はふるさと納税の返礼品で、オーダーメイドしたもの。バスルームを使用していても洗面台が使えるように、トイレ側(奥)と、バスルーム側(手前)に2か所設けた。「外出時に着ていたものを一時的にかけられるオープンなクロークが欲しかった」と、玄関近くに設置。コロナ禍になり、手洗い場が重宝。人を招くことを前提に「人を招くことが好き」という君塚さん夫妻。コロナ禍による自粛生活前は、毎週末のように友人たちが集まっていたこともあり、新しい家もそれを前提に設計した。「キッチンは誰でも入りやすいよう開かれたものにしたくて、対面式を希望しました。レンジフードもあえて真ん中につけました」とは、妻の奈々子さん。キッチン側は200mm堀り下げ、カウンターに座る人と目線を合わせ、コミュニケーションを取りやすくした。また、「ビアガーデンをしたいという構想もありました」とは、賢さん。3階に広いテラスを造ることは戸建てを建てるうえで必須だったという。「この辺りは、歩いてくると家に囲まれていますが、3階のレベルになると奥の森の木へと視線が抜け、富士山も眺めることができます。この抜けの良さもこの土地を決めたポイントですね」(賢さん)。グリーンに囲まれた広々としたテラスには、飲食をする際の使い勝手を考えてシンクをつけた。板張りの塀で視線を遮っているため、周囲を気にせず楽しむことができる。「住み始めたのが昨年の4月で、最初の緊急事態宣言が出たときでした。そのため、なかなか人を呼べず、まだ本領発揮していません。楽しみは取っておこうと思います(笑)」(奈々子さん)。造作のキッチンカウンターは円形のダイニングテーブルと同様の人工大理石。「キッチンに立っていると全体が見渡せて気持ちいいです」と奈々子さん。目線の高さも合い、会話も弾む。『アルヴァ・アアルト』のスツールは奈々子さんのお気に入り。「これを置くことを前提にカウンターを造作しました」。シンクは下げて手元を隠した。『無印良品』のバスケットを入れることを想定してデザインした収納。普段は見せたくない電子レンジなどは引き戸で隠すことができる。3階へと続く、キャンチレバーのミニマルな階段。階段を昇っているとトップライトから空に視線が抜け、まるで空に向かっているよう。トップライトからたっぷりの光が降り注ぐ3階。グラフィックデザイナーの奈々子さんの仕事場所でもある。全開できる扉の奥が広々としたテラス。板塀に囲まれた、緑豊富な心地よいテラス。「ビアガーデンをする日が待ち遠しいです」と賢さん。「家族でコミュニケーションを取る場」というリビングにはテレビはなく、エタノールの暖炉がさりげなく置かれている。バックの白い壁にプロジェクターで映画を映し出し、家族で鑑賞することもある。大らかに暮らせる自在空間造作のソファが置かれたリビングから数段上がった子ども部屋の前の廊下は、通常の廊下よりも広めにとった多目的なスペース。「子ども部屋をミニマムにしているため、子どもたちにとってはここが第2の部屋です。机代わりにして本を広げたり、腰掛けて読書したり。壁にプロジェクターで映し出した映画を観る時には、ソファのクッションを取り外してゴロンと寝転がったりも。自由に過ごしていますね」(賢さん)ダイニングに置かれたアームチェアは、『トネリコ』がアーティゾン美術館(東京都中央区)のためにデザインしたもの。賢さんの師であるデザイナーの内田繁氏の椅子をオマージュしたものであり、座り心地も抜群である。ここに座って見上げると、吹き抜けを介して3階フロアのトップライトから空へと視線が抜け、開放感に包まれる。「一度、スタッフの方たちがいらしたとき、ソファや椅子だけでなく、階段や段差などいろいろなところに座っていたのが面白かったですね」と奈々子さん。思い思いに過ごせる場所がそこここにあり、それぞれ見える景色も変わる君塚邸は、自由度が高く、暮らしの楽しみを運んでくれる。「また数年経つと状況が変わるかもしれませんが、僕ら家族の今の生活では、戸建てのこの状態がベストです。今ではマンションは考えられませんね。素材の経年変化とともに生活の変化を楽しみ、そのときどきのベストを考えながら暮らしていきたいですね」(賢さん)。3階から2階を見下ろす。スキップフロアの楽しい構成がよくわかる。階段の手すりとアームチェアの脚とは同じ太さにし、統一感をもたらしている。リビングの窓からは、前庭から伸びたジューンベリーの樹が楽しめる。ユニークな掛け時計は、イタリアの巨匠・ガエタノ・ペッシェの作品。丸太のテーブルは『トネリコ』の米谷ひろし氏から譲り受けたもの。廊下より400mm下げた子ども部屋。左側が中2の娘さん、右側が小5の息子さんの部屋。それぞれ好きな色でベッドをペインティングした。真ん中の壁は簡単に外せるため、いずれは一部屋にすることも可能。『トネリコ』の代表作、フロアランプ『MEMENTO』。光を灯すと、空間全体に光のアートが拡散される。コンセントは表に出ないよう工夫して設計。ここでは造作ソファの中に設置し、右側のスピーカーともつないでいる。スマホ立ても『トネリコ』のオリジナル。調光スイッチも隠して設置。子どもたちがよく見るという給食メニューや学校行事等の書類は扉の中に貼り、表は常にすっきり。
2021年08月23日街全体を暮らしの一部に建築家の西川日満里さん、坂爪佑丞さん、琴ちゃんが暮らす家は、西川日満里さんが共同主催するツバメアーキテクツと、設計事務所に勤務する坂爪佑丞さんの共同設計だ。琴ちゃんの誕生をきっかけに、2019年に竣工。「自邸を設計し、実際に住んでみて気づくことがたくさんありました。たとえば大きく開いたトップライトは、1年を通して暮らしてみることでその良さと難しさの両方を知ることができます」家は阿佐ヶ谷の賑やかな通りに面して建つ。「都市に住むと、徒歩圏内に暮らしに必要な場所を持つことができます。週末は銭湯に行って広々としたお風呂を楽しんだり、図書館を利用したり、遊びに来た友人とすぐ近くの料理店へ足を運びます。家の外で生業が広がっているので、それらを利用し、共存しながら暮らしたいと思いました」リビングから見上げる窓の外に、テラスに植栽した緑が広がる。吹き抜けの最上階の天窓から差し込む時間とともに変化する光が、様々な表情を加える。リビングの床は明るい色のタイルカーペット。床暖房で冬は暖かく、床に座って過ごすことが多いそう。「小さな子どもがいる家で白のカーペットはメンテナンスが心配でしたが、部分的に剥がして洗濯ができるため問題なく使えています」ダイニングテーブルの上のアートの作家さんは……、なんと、家の壁を塗った左官屋さん。「目地をパテで塗りつぶしてから仕上げの塗装をするのですが、下地の段階で止めてもらいました」「床に置いたエチオピアのコーヒーテーブルは把手がついていて移動させるのも簡単なので重宝しています」。天井と壁は同じ素材だが、天井だけツヤのある塗料を使い、光の反射を楽しんでいる。「なにか楽器を弾けるようになりたいと思い立ち、最近ピアノを始めました」と佑丞さん。両サイドにお気に入りのアートを飾る。「ラワン材の壁は、ビスが効くため好きな場所に絵を飾ることができます」モロッコのテーブル、李朝時代の脚付きテーブル、アフリカの民芸家具と、様々な国、違った時代の家具をチョイス。家のあちこちに居場所を作る「都市部の狭小地ですが家に“庭をつくりたい”と考えて、まずその庭の場所をどこに作るか考えました。生まれ育った家や、1つ前に住んでいた賃貸のアパートにも植栽を楽しめるテラスがあり、そこで過ごす時間がとても気持ちがよかったので、新しい家にも季節を感じられる庭があるといいなと思いました」決まったのがリビングからも寝室からも庭の緑を楽しめる場所。リビングからは樹々を見上げて木漏れ日を楽しみ、すぐ横の小部屋は樹々の成長を間近で見守ることができる。寝室の横の本に囲まれた小さな空間は、階下の家族の存在を感じながら、ひとりだけの時間を作れるとっておきのスペース。ピアノを弾いたり、テラスの緑の手入れをしたりと、様々なことをしながら過ごせる場所があることで、小さいながらも豊かな時間を過ごすことができる。「簡単に動かせて多目的に使える家具を多く使い、住みながら生活スタイルを整えることを楽しんでいます。動物の巣作りの感覚です。まず大きなストラクチャーを作り、その後に小さな居場所を作っていきました」テラスの横の部屋は、将来的に琴ちゃんのお部屋になるかも。窓の外の緑をすぐ近くで楽しめる特等席。本を読みながら、ゆったりとした時間を過ごす。リビングと耐力壁に隙間を開けることで、広がりを感じられる。本は一箇所に集めるのではなく、家のそこここで手に取れるようにしている。階段の吹き抜けを通して、一階まで光が落ちる。夏はトップライトに簾をかけ、木漏れ日のような光を楽しんでいる。階段はグレーにグリーンを混ぜ、自然界にある色に近づけた。寝室の横の小さなスペースは、周囲を本に囲まれたお籠もり感抜群の場所。椅子に座って視線を上げると、寝室の窓から空が見えて気持ちいい。それぞれの窓に機能と役割を分担開口は、いろいろな風景を楽しみ、様々な役割を持たせて作られている。「レマン湖のほとりに立つコルビュジエが母親に贈った小さな家は、フレーミングした窓を作り風景を切り取ることで湖の美しさを際立たせていました。この家は雑居ビルと住宅が入り混じる雑多な地域に建っていることもあり、慎重に開口部の位置を調整し、それぞれから見える風景を考えました」リビングの棚下に開いた窓からは、吹き抜ける風と共に、通りの緑や行き交う人を眺めることができる。テラスに面した窓は庭を楽しみ、道路に面した窓は高い位置に作ることで視線を遮り、流れる雲を眺めることができる。「模型で検討しても、実際の空間とはずれが必ずあります。現場に入ってからも窓の位置を微調整していました」リビングから50cm下げた位置にあるキッチンは、にじり口から中に入っていくような感覚。天井が低く、籠もる感じが心地よい。タイルは光を反射するものを選び、横の窓は住宅地の奥まで見通せる場所を狙って開けている。リビングの棚の下に開けた小窓から、賑やかな通りを眺める。階段の踊り場には、写真家の中村絵さんの台南で撮った作品を。「ガラスのように艶感のある仕上げにしていただき、台南の街に開いた窓のように楽しんでいます」「寝室の窓から外を見ると、偶然なのか赤い瓦屋根やピンクの壁の家が多く立ち並んでいました。その色に合わせて、透け感のある淡いピンクのカーテンを選びました」右の絵は住宅全体を使って個展を開いた奥誠之さんの作品。「1階をアトリエとして設え1ヶ月ほど滞在しながら実際に絵を描いていただき、展示期間中は作品を部屋に飾って、ご近所の方含めたくさんの方に見ていただきました。この作品はこどもたちが囲むテーブルのようにも、池のようにも、様々な風景に見えるところが好きです」1階にはコミュニティを育むスペースを1階の通りに面した部屋は街の一部となり、ギャラリーとして使ったり、喫茶店を開いたり、いろいろな住み方を楽しめるよう考えられている。同時に夫婦それぞれの仕事場の延長として使ったり、将来的にはこどものための部屋として活用することも想定している。「阿佐ヶ谷は外から訪れる街というよりも、そこに住む人が日常的に街で過ごす比率が高い街だと思います。地域の人が協力して街の雰囲気をつくっていこうとする意識があり、1Fをオープンにすることでこの家もその輪の中に参加できるとよいですね」通りに面した1階の部屋で今年3月に開催された奥誠之さんの個展「小さな部屋に絵具を渡す」。琴ちゃんも一緒に絵を描いた。©Yurika Kono住宅の中に奥誠之さんの絵を飾り鑑賞する試み。©Naohiro Tsutsuguchi1階の通りに面した部屋では、イベントを開いたり、打ち合わせをしたりと多目的に使っている。1階は玄関とバスルームが、同じ素材で連続する。大理石のモザイクタイルを使ったバスルーム。「エストニアで宿泊した古民家の石に囲まれた水回りがとても気に入って、そこをイメージして造りました」。琴ちゃんがお風呂で遊んでいる間、洗面台の横のスペースで仕事をすることもあるそう。通りに面した1階の窓はショーウィンドウのような役割を持たせている。季節の花を飾り、道行く人の目を楽しませている。外壁材は経年変化する素材を採用。1階から3階までのスキップフロア。2.5階に設けたテラスの緑がリビングと寝室の3層に心地よい視覚効果をもたらす。窓に当たった風が家の中を周るシカケになっている。テラスの下が回廊式のキッチン。その下の1階が洗面バスルーム。画像提供/ツバメアーキテクツ・坂爪佑丞坂爪邸設計ツバメアーキテクツ+坂爪佑丞 所在地東京都杉並区構造木造規模地上3階 延床面積73㎡
2021年08月09日日本を代表する建築家のひとり、隈研吾。彼のこれまでの活動を「公共性」を軸に振り返る展覧会、『隈研吾展新しい公共性をつくるためのネコの5原則』が、東京国立近代美術館で9月26日(日)まで開催されている。これまでにない大規模な個展だ。隈研吾は1954年生まれ。1964年開催の東京オリンピックの際に見た丹下健三の国立屋内総合競技場(現・国立代々木競技場)に衝撃を受け、幼少期より建築家を志した。コロンビア大学客員教授を経て、90年に隈研吾建築都市設計事務所を設立した後は、20か国を超す国々でその土地の環境や文化に溶け込む建築を手掛けている。国立競技場の設計への参画はもちろんのこと、根津美術館やサントリー美術館、角川武蔵野ミュージアムに富山市ガラス美術館など数多くの美術館建築を手掛けていることから、美術ファンにも知られた存在だ。本展は、彼の手掛けた建築の「公共性」という部分に着目。隈自身がピックアップした建築と映像作品、前庭に展示されるトレーラーハウスを合わせ、合計74件を5つのキーワードで読み解いていく。第一会場エントランス本展は、有料の第1会場と入場無料の第2会場からなる2部構成。第1会場では、序論として、隈も参画した国立競技場のディテール模型が並ぶ。国立競技場ディテール模型国立競技場ディテール模型以降は彼が手掛けた68件の建築が怒涛のように並んだ展示が続く。本展は、時系列ではなく、自身が考える建築の5つの原則「孔」「粒子」「斜め」「やわらかい」「時間」で分類され、構成されている。「孔」のセクションで紹介されている「V&Aダンディー」は、日本の鳥居に着想を得て、街と川をつなぐ孔を作っている。スコットランド《V&Aダンディー》2018年の模型栃木県に建設された《那珂町馬頭広重美術館》は、建物内にトンネル状の孔を明けて、街と建物の背後にある里山をつなげようとしている。《那珂町馬頭広重美術館》2000年の模型《那珂町馬頭広重美術館》2000年の模型「粒子」の項目では、細かいパーツを組み合わせて全体を形作る建築物を紹介している。国立競技場はこの粒子の概念を象徴した建物だ。青山《サニーヒルズジャパン》部分 2013年代々木《国立競技場》2019年の模型このほか、「斜め」や「やわらかい」、「時間」のカテゴリーで隈研吾の建築が語られている。キャプションに添えられた作品解説も隈本人によるものだ。なお、展覧会のタイトルにちなみ、会場内にはネコが時々出現しているのでお見のがしなく。浅草《浅草文化観光センター》2012年の模型よく見ると…浅草《浅草文化観光センター》2012年の模型(部分)かわいいネコがいる注意書きにもネコ第2会場では、人間ではなく、「ネコ」の視点から都市のあり方を見直すリサーチプロジェクト《東京計画2020(ニャンニャン)ネコちゃん建築の5656(ゴロゴロ)原則》(Takramとの協働)とVR展示が行われている。ネコにGPSをつけた記録や、ネコの習性、生態を取り入れた新しい都市の考え方だ。国内外に数多くの建築物を残してきた隈研吾。彼の建物の魅力と本質に迫ることができる重厚な内容の展覧会だ。『隈研吾展新しい公共性をつくるためのネコの5原則』6月18日(金)~9月26日(日)、東京国立近代美術館にて開催取材・文:浦島茂世
2021年06月22日建築家・隈研吾と中川政七商店(Nakagawa Masashichi Shoten)がコラボレーションし、「くまとしか(Kuma to Shika)」プロジェクトを発表。暮らしの道具全10種を2021年6月18日(金)より、中川政七商店直営店と、東京国立近代美術館で開催の「隈研吾展 新しい公共性をつくるためのネコの5原則」にて数量限定発売する。「くまとしか」プロジェクト、建築×"暮らしの道具"新国立競技場などの設計を手掛け、日本を代表する建築家である隈研吾。生活雑貨を中心に展開する中川政七商店とのコラボレーションプロジェクト「くまとしか」では、建築の発想や素材を"暮らしの道具"に取り入れ、工芸の新しい姿を提案する。建築技法を用いた「組み木の飾り棚」日本の木造建築で用いられる"組み木"の技法を、住宅のスケール感に溶け込むよう巧みに設計された「組み木の飾り棚」。シンプルな台形のパーツを組み合わせると、幾何学的なシルエットの棚が現れる。付属のフックで壁に取り付けることも可能だ。建築素材を用いた「飛散防止シートのバッグ」大胆なプリーツが印象的な台形型のトートバッグには、実は建築現場で建物の養生に使われる飛散防止用のメッシュシートが用いられている。丈夫さと、折りたためる直線的で使いやすいデザインが魅力的。同素材のフラットポーチも用意する。【詳細】隈研吾×中川政七商店「くまとしか」発売日:2021年6月18日(金)発売場所:中川政七商店直営店、中川政七商店オンラインショップ、東京国立近代美術館「隈研吾展」■商品例組木の飾り棚 8,800円和紙の折りタペストリー 55,000円銅のはつり折敷 17,600円飛散防止シートのバッグ(中) 6.380円飛散防止シートのバッグ(大) 7,700円(各グレー・ホワイト)飛散防止シートのフラットポーチ(A4) 2,750円飛散防止シートのフラットポーチ(A3) 3,300円(各グレー・ホワイト)タイルのマグネット 1,650円植物で染めた花ふきん(クマザサ・スギ) 各1,320円かや織ガーゼハンカチ(クマザサ・スギ) 各1,320円※店舗により商品の取扱が異なる。※なくなり次第終了。【問い合わせ先】中川政七商店 渋谷店TEL:03-6712-6148
2021年06月20日スコットランド初のデザイン博物館「V&Aダンディー」や、この夏、いよいよ世界にお披露目される「国立競技場」の設計への参画など、国際的に注目される建築家・隈研吾。彼の公共性の高い建築68件を、隈本人が「ネコ目線」で解説するという、なんとも不思議かつ大規模な個展が、6月18日(金)より東京国立近代美術館で開催される。この展覧会『隈研吾展新しい公共性をつくるためのネコの5原則』について、隈研吾本人に聞いた。飼いネコを捨てられて建築家に――まず、本展のタイトルを聞いた人の多くが「なぜネコ?」と思うと思うのですが、隈さんはもともとネコがお好きなのですか?実は子どもの頃から大のネコ好きです。それが高じて獣医になろうと思っていたほど。ところがネコ嫌いの父親に飼いネコを捨てられてしまい、それを機に建築の道に進んだのです。――隈さんの建築の原点には、本当にネコがいたというわけですね。最近気づいたのですが、僕がやってきたことは、コンクリートの冷たい建築の中に、ネコのように小さくて柔らかく、温かいものを取り入れること。ネコとバータ-(交換)で建築家になったという想いがあるからか、自分の建築の中にネコ的なものを取り戻したかったんでしょうね。オドゥンパザル近代美術館(トルコ) 2019 (c)Erieta Attali――それで展覧会でも、ご自分の建築を、「孔」とか、形や素材の「やわらかさ」といった、ネコの好む5つの要素ごとに解説されているんですね。そう、ル・コルビュジエの「近代建築の5原則」ならぬ、隈研吾の「ネコの5原則」ね。隈建築のキーワードのひとつは「ウェルカム感」――隈建築といえば、木材を使った、和のテイストを取り入れた建築、という印象を勝手に持っているのですが、それもネコと関係があるのでしょうか?そうですね、路地裏をうろついているネコは、やはり木とか土とか自然の感触が好きでしょ。それから和のテイストに関しては、僕自身は「日本的」であることにこだわってはいません。ただ、本展を企画した保坂健二朗さん(ゲスト・キュレーター/滋賀県立美術館ディレクター(館長))が、僕の建築の特徴を、“たくさんの人が集まる場所”と言ってくれたように、僕の設計の大事な基準が、いかにウェルカムな感じを作るかということなんです。La Kagu 2014 (c)SS Co., Ltd.そう考えると日本の伝統建築は、少しだけひさしが出ていたり、縁側があったり、西洋の石の建築に比べて、だんぜん人を迎え入れる感覚があるんです。木で格子を作るとちょっと向こう側が見えるから入ってみたくなるとか、そういう日本の伝統建築の方法は、大いに参考になりますね。ミラーの関係にある?2つの国立競技場――今回はコロナ後の人間の生活に生かすために、隈さんの建築が集まる神楽坂のネコたちにGPSをつけて彼らの生態を調査した、《東京計画2020ネコちゃん建築の5656原則》も発表されています。この「東京計画2020」とは、20年前の東京オリンピック前に丹下健三が打ち出した「東京計画1960」への応答とのことですが。そうです。丹下健三は1964年の東京オリンピックの時に、代々木の国立競技場を設計しました。そして僕は、東京オリンピック2020の国立競技場の設計に参画した。丹下さんの時には、日本は高度経済成長のピークでしたが、今は右肩下がりの日本経済に、コロナが追い打ちをかけている。僕はこの2つの国立競技場は「ミラー=合わせ鏡」の関係にあると思っています。――「ミラーの関係」とは?たとえば丹下さんの国立競技場は、水泳競技などの体育館ですから、天井を高くする必要はないのです。しかし彼は競技場の屋根を高く吊ることにこだわりました。一方、僕らが意識したのは、競技場をいかに地面に近い低層階にするかということ。それから素材も丹下さんがコストをかけてコンクリートをふんだんに使ったのに対し、僕らは日本で一番流通している安い木材を使っているんです。――地面や木材を身近に感じるというのも、路地裏や自然の素材が大好きな「ネコ的視点」ですね。後世の人が1964年と2020年のオリンピック・イヤーは本当に対照的だったと認識してくれるような案を出したのですが、最初に「木材を使って、低層階にしたい」と提案した時、スタッフのみんなが「それカッコいいよね」と賛同してくれて、これが今の時代の感性なんだと思いましたね。――つまり新しい国立競技場は、丹下健三建築へのアンチテーゼと言ってしまっていいですか?大丈夫です。ポスト・コロナの公共建築とは?――では最後に、コロナ後の公共建築について、隈さんのお考えをいただけますか?雲の上の図書館/ YURURI ゆすはら 2018(c)Kawasumi・Kobayashi Kenji Photograph Officeテレワークが進んだポスト・コロナは、人間がハコを出る時代になると思います。それまでは、高層のコンクリートのハコの中に住んだり、働くことが一種のステイタスでしたが、そんな都会のハコの中にいなくても仕事はできると多くの人が気づきました。こうして自然に帰った人があらためて集まる場所が、21世紀の新しい公共性だと思うのです。そこを訪れた人が好きなところに座って好きなことができる。そんなネコが集う日だまりのように誰でも受け入れてくれる空間が、これからの公共建築に求められていると思っています。取材・文:木谷節子撮影:渡邊明音【開催情報】『隈研吾展新しい公共性をつくるためのネコの5原則』6月18日(金)~9月26日(日)、東京国立近代美術館にて開催
2021年06月15日美しい森と湖で知られる北欧の国フィンランド。 日本でもファンの多いフィンランドのモダニズムの原点を築いた建築家、エリエル・サーリネン(1873-1950)の活動を紹介する展覧会が、7月3日(土)よりパナソニック汐留美術館にて開催される。サーリネンはヘルシンキ工科大学在学中に出会ったゲセリウスとリンドグレンと共同で設計事務所を設立。1900年のパリ万博フィンランド館をこのふたりとともに設計し脚光を浴び、ヘルシンキ郊外の湖畔に、設計事務所兼共同生活の場 ヴィトレスクを設けた。住宅、商業建築、公共建築、駅や都市のデザインと、次第に幅を広げていくサーリネンの設計活動は、多様な文化を受け容れつつ民族のルーツを希求した初期のスタイルから、独自の形態を通じて新しいフィンランドらしさを提示しようというモダニズムへと展開していった。1923年アメリカに移住。自ら設計したクランブルック・アカデミー・オブ・アート(美術学校)で教鞭をとるほか、同じく建築家となった息子のエーロ・サーリネン(1910-1961)と建築事務所を設立し、ともに設計に励んでいた。同展では、渡米前のフィンランド時代の活動にスポットをあて、公共建築や都市計画から、住宅や生活のデザインまでを紹介。つねに革新を求めつつ、自然や風土に根ざし、光と陰影をとりこんで豊かな表情を見せるサーリネンのデザインに、これからの生活のあり方を考え直すためのヒントが隠されていそうだ。≪1900年パリ万国博覧会フィンランド館≫ラハティ市立博物館≪ヴィトレスクのサーリネン邸のダイニングルーム≫Photo: Ilari Järvinen/Finnish Heritage Agency, 2012エリエル・サーリネン≪椅子「コティ」≫1897年 フィンランド・デザイン・ミュージアム蔵エリエル・サーリネン≪バラのタペストリーのスケッチ≫1904年 フィンランド・デザイン・ミュージアム蔵≪建築家エリエル・サーリネンの肖像写真≫Photo: Daniel Nyblin/ Finnish Heritage Agency, 1897【開催概要】『サーリネンとフィンランドの美しい建築展』会期: 7月3日(土)~9月20日(月)会場:パナソニック汐留美術館時間:10:00~18:00(8月6日、9月3日は20:00、入館は閉館30分前まで)休館:水曜、8月10日(火)~13日(金)公式サイト:
2021年06月07日世界の映画ファンが注目している「アカデミー映画博物館」がいよいよ2021年9月末、アメリカ・ロサンゼルスに誕生します。建物の設計を担当したのは、スター建築家のレンゾ・ピアノ。オープンに先駆けて開かれたオンラインプレス内覧会で、気になる博物館の詳細が披露されました!クール!浮いている博物館【女子的アートナビ】vol. 197まずは、アカデミー映画博物館の外観からご紹介。博物館はロサンゼルスの中心地にある広大な敷地内に、2つの建物で構成されています。ひとつは、1939年建築のビルを修復したもので、もうひとつはガラスとコンクリートからなる球形の建築物。設計者は、「建築界のノーベル賞」と呼ばれるプリツカー賞を受賞した建築家、レンゾ・ピアノ氏です。特に目を引くのが、球形の建築物。コンクリートなのに地上からほぼ浮いています!内覧会では、ピアノ氏がこの建物について「地上に浮かせて下に広場をつくった点を気に入っている」とコメント。上部には重そうなガラスドームも乗っていますが、これらは薄板状の特注強化ガラスを使っているとのこと。さすがクールで斬新な設計です。オープニングを飾るのは…『宮崎駿展』!アカデミー映画博物館のコンセプトは、「映画の芸術と科学に特化した世界最高の施設」。単なる博物館ではなく、映画製作について体験したり学んだりできる、さまざまなプログラムが用意されています。例えば、没入型常設展『映画の物語(Stories of Cinema)』では、映画のきらびやかな歴史を紹介。脚本や衣装デザイン、特殊効果や演出など、映画製作の舞台裏についても深く知ることができます。また、常設展示のほかにも、さまざまな企画展が予定されています。9月のオープニングを飾る企画展は『宮崎駿展』。宮崎監督の全作品が日本語音声英語字幕付き、および英語吹替版で上映されるほか、絵コンテや背景画、セル画なども展示されます。作品のワンシーンを大規模上映したり、登場人物やストーリーが変容していく様子を体験できるインスタレーションがあったりと、同博物館ならではの工夫された展示空間が用意される予定。宮崎作品の世界にどっぷりとつかれそうです。4月からバーチャル・プログラムがスタート!アカデミー映画博物館では、9月のオープニングに先駆けて、4月からプレ・オープニング・プログラムがはじまります。例えば、4月22日のイベント『Breaking the Oscars Ceiling(オスカーの天井を破る)』では、オスカー受賞者のなかでも特に偉業を成し遂げた女性たち、俳優のソフィア・ローレンさんやウーピー・ゴールドバーグさんなど4名が登場します。また、4月25日に予定されている第93回アカデミー賞授賞式にあわせ、同博物館のサイトでオンライン対談や映画上映、教育プログラムも実施されます。現地にはなかなか行けませんが、オンラインなら気軽に見ることができそうです。まずはぜひ、博物館の公式サイトをチェックしてみてくださいね。
2021年03月25日株式会社カッシーナ・イクスシーは、 “LIFE CRUISE” と題した年間の展示テーマのもと、2021年2月22日 より各直営店でスタートする春の展示「rebEARTH(リ バース)」に際し、Cassina の新作アイテムを展示発表いたします。Cassina, CIVIL BENCH & CAPITOL COMPLEX COLLECTION■ LIFE CRUISE 20212020年という特別な一年を経て、私たちは自分の暮らしを見つめ直す好機を得ました。心地よい暮らしとは何か。誰のための暮らしなのか。2021年は、今の自分にとって豊かだと感じるものを探し求める旅が続いていくことでしょう。人生がよく旅に例えられるように、私たちの日々の暮らしは旅と同じくらい様々な出合いや発見、気づきに満ちています。季節や時間、過ごし方によって、家の中で心地よいと感じる場所を転々とする。ライフスタイルが変われば、新しく加わる家具や小物が増える。流れる月日の中で成熟しながら個性や深みを増していくインテリアは、旅と同じように心に潤いを与えてくれる、大切な存在と言えます。2021 年は「LIFE CRUISE」を年間テーマに、展示展開いたします。■春の展示 “rebEARTH” 2月下旬スタート大地、自然はいつでもそこにあり、大きく包み込んでくれる偉大さがあります。どんなことがあっても季節は巡り、また春が訪れる。私たちはその変わらない安心感に支えられています。家という存在もまた、大地と同じように私たちを包み込んでくれるものです。木のフレームや籐張りといった素朴な自然素材、そして砂や土、岩など原始的な自然にインスパイアされたインテリアアイテムを用い、家の中でも母なる大地を感じ、感謝し、讃える。2021 年の新たな旅の始まりに、再び原点を見つめ直します。“Hommage à Pierre Jeanneret” Collection 新作 2アイテム追加常に偉大な建築家の作品を研究することに従事してきたCassina は、 ピエール・ジャンヌレへのオマージュとして発表したコレクションに、2つのアイテムを追加しました。Cassina, KANGAROO・KANGAROO(カンガルー)ラウンジチェアチャンディガールにある総合病院のホール用に作成され、多くの個人邸にも収められています。Cassina, CIVIL BENCH・CIVIL BENCH(シヴィル・ベンチ)ベンチ1955 年から1956 年の間に、チャンディガール議会メンバーの宿泊施設とアパートメント用にデザインされました。“Tableware collection by Le Corbusier” 発表Cassinaは、Ginori1735及びル・コルビュジエ財団と共同で、ル・コルビュジエによる最初のテーブルウエアコレクションを発表しました。Service Prunier by Le Corbusier・ディナープレート/スープディッシュ/デザート・サラダプレート/スモールコーヒーカップ&ソーサ―Collection Chandigarh by Le Corbusier・Collection Chandigarh by Le Corbusier‘La main ouverte’(手)スクエア/‘Poisson’ (魚)ラウンド/‘La course du soleil’ (太陽の動き)長方形Home Accessories生活雑貨の2021年春のコレクションは、“rebEARTH(リ バース)”テーマにセレクトしました。2つの言葉をかけ合わせたこのテーマは、“Rebirth(再生・復活)”=地球と再びつながること、“Earth(地球)”=大地や岩壁、土などの素材・カラーを表しています。深みのある色や砂、土、テラコッタなどの原始的な自然にインスパイアされたコレクションは、荒々しい風景や長い時間をかけて形成された地球を感じることができます。陶器や石の素材、テラコッタに深みのあるプロイセンブルーやコバルトブルーを組み合わせ、地球という壮大な永遠の存在を想起させます。VIPS AND FRIENDSぜひご高覧賜りますようよろしくお願い申し上げます。カッシーナ・イクスシー 2021年春の展示「LIFE CRUISE-rebEARTH(リ バース)」<日程>青山本店、福岡店 2021年2月22日(月)~名古屋店 2021年3月1日(月)~大阪店 2021年3月8日(月)~最新の店舗営業状況についてはウェブサイトをご覧ください。カッシーナ・イクスシー 企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2021年02月07日株式会社アイチ金属は、19世紀末イタリア北部のトレヴィーゾで創業したメタルファニチャーブランド〈 De Castelli(デカステッリ)〉の日本国内独占販売権を取得、日本橋三越本店、伊勢丹新宿店にて販売を開始したことをご報告いたします。創業100年を超え、ベネチア建築ビエンナーレやミラノサローネで話題となったイタリアのメタルファニチャーブランド〈 De Castelli(デカステッリ)〉。その圧倒的な存在感は、海外において多くの人々を魅了し続けてきました。この度、日本のみなさまによりお楽しみいただけるよう、2021年2月1日より日本橋三越本店を皮切りに2月20日より伊勢丹新宿店にて期間限定のイベントを開催いたします。日本においてのこうした規模での販売は今回が初めて。展示する商品も一通りのラインアップをご用意しています。サイズは日本の住宅に合うサイズから、さらに存在感のあるものまでをそろえており、会場にないシリーズに関しても画像などでご紹介いたします。まずはお気軽に会場にお越しいただき、その圧倒的な存在感と質感とを、皆様にご体験いただければ幸甚です。〈 De Castelli(デカステッリ)〉についてデカステッリの歴史は19世紀末に遡ります。もとはランボロギーニ社と同じイタリアの農機具を製造する鍛治メーカーでした。現代になり、4代目のアルビノ・セラートがCEOに就任すると、金属の知識を豊富に持つ熟練の職人たちの協力を経て、優美な金属製家具の製造という領域に大胆に進出しました。同時に、家具だけではなく、オーダーを受けてから素材やオブジェの開発にも挑戦しています。イタリアにおけるデカステッリのプロジェクトの中で、最も著名といっていいのは、イタリア建築業界の重鎮であるチーノ・ズッキが設計した、ヴェネツィアの建築ビエンナーレにあるイタリアパビリオンの巨大な玄関オブジェ“Archimbuto”です。その品質と価値は高く評価され、当初は暫定的な設置物だったものが、現在では恒久的な展示物となっています。この、エイジング加工された金属仕上げのノウハウは様々な建築家や著名ブランドから高く評価され、数多のブランドショップにも採用されています。メタルファニチャーの可能性〈 De Castelli(デカステッリ)〉の家具は、構造体に木材を採用することで現実的な重量に落とし込みながら、表面すべてに特殊加工した金属を用いて優美でありながらも圧倒的な存在感のあるメタルファニチャーを具現化しています。単に光沢のあるメタルとは異なり、深い世界観のある独自のエイジング加工が施されているため、見飽きることのないゆらぎをもたらします。もちろん、家具としての機能性も十分に備えています。収納スペースも豊富でありしっかりとした収納が可能なのも特徴です。機能性と優美さを兼ね備えながら、唯一無二の存在感を有している稀有な家具のひとつだと言えます。メタルファニチャーは素材や加工、重量などにより高価なものになりますが、数世代にわたる保有が可能であり資産価値への魅力も高まります。自然の恵みである素材と、現代感覚の詰まった加工技術の融合を長くお楽しみいただけます。日本にきたストーリー2020年6月、名古屋で金属加工業を営むアイチ金属が日本総代理店として、日本でのデカステッリ販売を開始しました。もともとアイチ金属は、ハイエンド家具を自ら展開するような商社的企業ではなく、特殊な金属処理を施した金属加工品の受注をメインとした企業です。アイチ金属代表である山田が、金属加工技術を追及する中で世界各地を訪れるなか、イタリアのミラノサローネでデカステッリに出会い衝撃を受けたことが日本での販売の始まりでした。アイチ金属もほぼ同様の技術を持っており、同時にその技術を目当てに多くの建築家などから高い評価を得てきたという経緯があったのです。アイチ金属とデカステッリの技術に対する意識は、驚くほど似ていました。協議の結果、日本での展開をアイチ金属が請け負うことで決定します。デカステッリはミラノにショールームを有している、れっきとしたハイエンドブランド。通常であれば商社などの領域であると考えられますが、日本での展開をアイチ金属にまかせるという決断は、2社の思考の近さと親和性を証明するアクションとなりました。商品シリーズの一例■YOROI ヨロイヨロイは、武士の鎧にインスパイアされ生まれた製品です。天然オーク材のフレームをDe Castelli特製の金属で覆った表面のパーツがデザインの核になっており、大きな引き出しと小さな2点の引き出し、そして、左右の湾曲ドアで構成されています。金属で覆われた、その生き生きとした形状は、ミニマリズムを追求しつつも、アールデコ特有のインパクトを与えるデザインとなっています。■CELATO セラートセラートとは“隠された記憶”を意味します。その堅牢な外観から、現代版の巨石碑のような存在感を醸し出し、「聖なる巨石の下に財宝が眠る」という伝承のごとく、内部には秘密のスペースが隠されています。セラートは複数のモザイク状のパーツから構成され、それぞれのピースに美しさ、機能、そして、個性があり、同じピースは一つとして存在しません。この特徴により、セラートは、アヴァンギャルドなデザインでありながら、伝統とモダンが融合した独特の雰囲気を醸し出しています。■MAREA マレアマレアは、イタリア語で、“潮の流れ”を意味する通り、職人の手の温もりが残る金属の表面が、酸化を経て、時の流れの形跡が重なり合うように、水墨画を彷彿とさせる繊細で芸術的な存在感を作り出しています。まるで 潮の流れが次々と波を送り出し、砂浜に跡を残すような美しいデザインです。チェスト、サイドボード、キャビネットで構成されるコレクションの各製品には、すべて職人の手作業による仕上げが施されており、その結果、優美な水彩模様が金属の表面に現れ、世界でたった一つの作品に仕上がっています。■PANDORA パンドラ52伝統的な花瓶の形を模した引き出しユニットパンドラは、ミステリアスで強烈なインパクトを持つ現代版の宝箱です。あらゆるモノを収納し、“隠す”ために作られました。パンドラは製品によって、1つの引き出しから6つの引き出しを持ち、好みに応じて収納タンス、収納テーブル、またはベッドサイドテーブルとして活用できる汎用性を有しているので、リビングルームからベッドルーム、バスルームに至るまで様々な空間で活躍します。・合計税込110万円以上ご成約のお客様に対してDe CASTELLI「COPYCAT(コピーキャット)」で真鍮燻し仕上げしたランチョンマットを2枚進呈・合計税込220万円以上ご成約のお客様に対してDe CASTELLI「PLACAS(プラカス)」ステンレス燻し仕上げたコーヒーテーブル(Φ60cm×H45cm)を1台進呈会期:1)日本橋三越本店 本館5階 パーソナルショッピングデスク 期間:2021年2月1日(月)~2月12日(金)2)伊勢丹新宿店 本館5階 センターパーク/ ザ・ステージ#5 期間:2021年2月20日(土)~3月02日(火)*一例でご紹介した商品は実際に展示商品がないものもございます。【アイチ金属とは】株会社アイチ金属は1985年愛知県名古屋市に金属製建具メーカーとして創業。「金属の可能性を追求し、金属が住まいを彩る、豊かなライフスタイルを提供する。」という企業理念を掲げ、門扉・階段・手摺等、建築金属製品の図面製作から製造までを一貫した自社生産体制で行っています。熟練の職人による優れた技術力と高い意匠性を併せ持つ弊社の製品は高級戸建て住宅、マンション、ホテル、商業施設等、幅広い分野で採用され、これまで全国の著名建築家やデザイナーとの建築プロジェクトを多数手掛けています。また、2015年ドイツVeroMetal(R)社と日本総代理店契約を締結し、同社の特殊メタルコーティングによる加飾技術で2019年には特許を取得しました。革新的技術によりこれまでにない新たなデザインの建築金属製品を創出し続けています。企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2021年02月03日イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)が展開する「グッド グッズ イッセイ ミヤケ(GOOD GOODS ISSEY MIYAKE)」の建築構造にヒントを得た「WAKU」バッグに新型が登場。2021年1月5日(火)より発売される。建築構造に着想を得た「WAKU」バッグに新型が登場「グッド グッズ イッセイ ミヤケ」のオリジナルプロダクトである「WAKU」バッグは、建築構造の一つであるトラス構造から着想を得たデザインが魅力。新型は、その構造を活かしたミニマルなバックパックだ。特徴となる“枠”の黒いラインが、デザイン性を高めるだけでなく、自立を可能にしてくれる。また、内側には荷物の整理に便利な3つのポケットを備えるなど、機能性も抜群。丈夫で軽量なのも嬉しいポイントだ。【詳細】「WAKU」新型バックパック発売日:2021年1月5日(火)価格:38,000円+税サイズ:W25 X H40 X D12.5cmカラー:ブラック、オフホワイト、カーキ、ライトブルー【店舗情報】グッド グッズ イッセイ ミヤケ住所:東京都渋谷区猿楽町19-8 T2ビルTEL:03-5457-3017営業時間:12:00~19:00
2021年01月08日池田エライザと田口トモロヲがW主演する、“建築×グルメ”をテーマにした新ジャンルのドラマ「名建築で昼食を」が、スペシャルドラマとして帰ってくることが分かった。建築、旅、暮らしなどを題材に独自の世界観で多数執筆している作家・甲斐みのりの「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」を原案に、7月クールに放送・配信された本作。今回のスペシャルは、連続ドラマのその後を描いた60分の拡大版で放送。久しぶりに千明(田口さん)から横浜の名建築巡りの誘いの連絡が入るところから始まる。ロケ地は、ホテルニューグランドをはじめ、神奈川県立音楽堂、神奈川県立図書館、横浜市開港記念会館、コーヒーの大学院。また、劇中では謎に包まれていた建築模型士・千明の過去が明かされる。藤役の池田さんは「春野藤として帰ってくることができて嬉しいです」と今回の放送を喜び、「美味しいグルメはもちろん、西洋東洋が艶やかに混ざったホテルニューグランドの美しい色彩や、神奈川県立図書館のスタイリッシュさ等、盛り沢山です。トモロヲさん演じる、いつもは頼もしい植草千明師匠が、今回はなんだかシュンとしているのも見所です」と今回の物語について語る。一方、田口さんは「日本の街中に存在する宝石のような建物達。その世界でお茶や食事を味わいおっとりする至福の時。市井の人のささやかな贅沢を再び皆さまと共有出来ることを楽しみにしています。こういう大変な時期ですから、名建築という名湯に心身ともに浸かって穏やかな瞬間を過ごして頂ければ嬉しいです」とコメントを寄せている。そして、謎多き建築模型士・千明の過去と密接に関係する重要な役として加藤登紀子も出演。「大好きな横浜です。しかも私には特別の思い出もあるホテルニューグランドでの撮影。本当に楽しい時間でした」と撮影をふり返り、「田口トモロヲさん、池田エライザさんとのドラマに出演させていただくなんて、みんなに自慢したい、素敵なプレゼントです。皆様もドラマの中の空間と時間を、どうぞ楽しんで下さい」とメッセージ。なお、ドラマで訪れた名建築の魅力を原案の甲斐さんが解説する番組オフィシャルブックが12月18日(金)発売。藤、千明のInstagramに掲載されたノスタルジックな乙女建築写真、インテリアに注目が集まった藤の部屋、絶品ランチやお土産情報などドラマの世界観を凝縮している。<あらすじ>藤(池田エライザ)と千明(田口トモロヲ)は仕事が忙しく最近連絡を取っていない。と、そこへ久しぶりに千明から横浜の名建築巡りの誘いの連絡が入る。向かったのは、日本を代表する建築家・前川國男が手掛けた神奈川県立図書館と音楽堂。前川の師匠コルビジェ譲りの美しい色彩でデザインされた壁や、太陽光の取り込みを綿密に計算した外壁のブロックなど、戦後を代表するモダニズム建築を堪能する。横浜の名建築巡りをしている中、千明が横浜へやって来た本当の目的を察した藤は、千明をホテルニューグランドへ誘う。そこで千明を待っていたのは、気品のある女性、宇野依子(加藤登紀子)。渡したいものがあると彼女が差し出したのは、建築家であった父・幸一による手書きの設計図であった…。「名建築で昼食を」スペシャル 横浜編は2021年1月23日(土)テレビ大阪にて13時25分~、BSテレ東/BSテレ東4Kにて12時~放送。ひかりTVにて1週間先行配信。(cinemacafe.net)
2020年12月17日新しく家を建てたいと思った時、家族にとって快適で住みやすい家を…と望みますよね。今回は、2級建築士の資格をもっている私がマイホームを建てる際にこだわったところや、建てた後に気づいた失敗点、そして家づくりのポイントなどを紹介します。こだわって満足!【家事室・勾配天井・リビング階段】【その1室内干し部屋兼家事室】わが家で気に入っているところは、「家事室」です。室内干し兼家事ができる専用の部屋「家事室」は、生活導線を考えて、洗濯物を干すベランダの近く(わが家は2階)に絶対に作ろうと決めていました。この部屋に洗濯物を取り込んでたたみ、衣類はそのまま2階の各収納場所へ。室内干しもできるように伸縮ワイヤーを設置してあります。このワイヤーは使用しないときはコンパクトになるのでジャマになりません。それほど広くないスペースですが、作ってよかったと思える大満足の部屋です。【その2勾配天井(寝室)】勾配天井とは傾斜になっている天井のことですが、この天井のおかげで開放感が生まれます。この勾配天井が昔から大好きだったので、寝室に取り入れました。寝室は開放感がない方が落ち着く人もいると思いますので好き嫌いは分かれまずが、私はとてもお気に入り。のびのびできる空間を感じながら眠りにつくことができています。【その3リビング階段】最近とても増えているリビング階段。私は「階段」は見せ方次第で空間の印象が大きく変わる大切なものだと思っています。そのため、階段は、もっとも人が行き交うリビングに作ろうと決めていました。結果、空間に奥行きが生まれ、開放感がある印象のリビングになったこと、子どもたちが2階に上がるときも把握できることなど、リビング階段にしてよかったと満足しています。ちなみに、空調の効きが悪くならないか心配でしたが全然問題ありません。上:室内干し兼家事室(ワイヤーを出している状態)下:勾配天井作ればよかった!【玄関(土間)収納】5歳と1歳の子どもと生活する中で、建ててから失敗したなと思ったのは、「玄関(土間)収納」を作らなかったことです。「玄関(土間)収納」は、シューズクロークや玄関クロークともいわれています。これは、玄関からつながった土間の収納スペースなので、帰ってきたら室内に物を持ち込まず、そのまま置いておくことができます。例えば、ベビーカーや子どもの自転車、三輪車、ヘルメット、外での遊び道具。そして雨に濡れたアウターや服。玄関の掃除道具など、あげればきりがありません。扉やシェードで目隠しをすると玄関からは見えなくなるので、とてもスッキリとした印象になります。スペースがなくて断念したけれど…その便利さを知っていたのに、なぜ作らなかったのか…、それはスペースがなかったのです。以前から、家を建てるなら便利な玄関収納は絶対にほしい!と思っていました。ですが、玄関が洗面・脱衣所の隣にあり、洗面・脱衣所を広くとりたいという思いも強かったので、玄関収納は断念。そのかわりに、玄関から室内に上がって一番近いところに収納を設けたのですが、思えば玄関から近いとはいえ室内に変わりはありません。やはり土足のまま玄関に収納できるスペースを、洗面・脱衣所のスペースを少し狭めてでも作ればよかったなと思っています。つければよかった!【ダウンライト照明の調光機能】2つ目に失敗したなと思ったことは、リビングの照明にダウンライトに「調光機能」をつけなかったことです。調光機能とは、照明の明るさや暗さを調節できる機能のこと。家を建てる時、調光機能がついているダウンライトも検討したのですが、コスト面の関係で、調光機能をなしにしてしまいました。ところが住み始めて、子どもがお昼寝をしたり、夜に作業をしたりする時など、明るさを変えられたら…と思うことが増えてきたのです。調光機能がついていると節電にもなることを考えると、初期投資として、多少コストがかかってもやっぱりつけておけばよかったと感じています。快適な家づくりのための重要なポイント!【生活動線】最後に私が思う家づくりで一番重要なポイントは、「生活動線」を意識することです。生活動線の中でも、もっとも動きが多いであろう「家事動線」。例えば食料を買ってきたものの冷蔵庫やパントリー(食糧庫)までの動線が長いと、食料などの荷物を運ぶのが大変です。そこで、パントリーをキッチンの手前に作るか、奥に作るのかも考える必要があります。奥に作ると必ずキッチンを通らないといけないので本当に食料やキッチンまわりのものだけの収納になるでしょうし、人の行き来が多くなりそうな手前だと、食料の他にも何か他にも収納するものが増えるかもしれません。自分の生活スタイルに合っている位置を考える必要があります。生活導線を書き出してみましょう動線はある程度シュミレーションできるかもしれませんが、私は簡単でもいいので、実際に書き出すことをおすすめします。間取り図があるのならば、そこに動線を書きこむだけでOK。間取り図がなくても紙に簡単に部屋名などを書いて、動線を考えて書き込んでみるとイメージしやすいと思います。快適な家づくりのために今回は、私の満足しているポイントとともに、失敗したと感じる点を紹介しましたが、いかがでしたか?子どもがいる家庭であれば将来のこともある程度考えなければなりません。何のためにこの部屋や収納があるのか、何のために使用するのかなど、目的を明確にしたうえで家づくりを考えてみると、きっとうまくいくのではないかと思います。今回紹介したものが、少しでも家づくりの参考になれば幸いです。<文・写真:ライターmayumi>
2020年11月21日京都市京セラ美術館では、開館1周年記念展「モダン建築の京都」を、2021年9月25日(土)から12月26日(日)まで、新館「東山キューブ」にて開催する。京都の“モダン建築”を探る文明開化が推し進められた明治時代、東京遷都をきっかけに、京都には歴史都市としての意識や近代化への意識が生まれ、数々の「モダン建築」が誕生することとなった。その後も京都市京セラ美術館の建物をはじめ、明治、大正、昭和期に建てられた建築の多くは、今なお活用されている。現代にあって、合理的で均質な現代建築により個性に乏しい街並みや建築が次々と生まれるなか、歴史的建造物の保存活用は、独自性ある都市や建築の未来を考える鍵となっている。この観点から見れば、神社仏閣といった明治以前の古建築はもちろんのこと、優れた近代建築も数多く存在する京都は、歴史的価値を有する建築を保存・活用してきた“生きた建築博物館”だということもできよう。京都市京セラ美術館初の大規模建築展開館1周年記念展「モダン建築の京都」は、京都のモダン建築を代表する京都市京セラ美術館を会場に、古建築だけにとどまらない京都のもうひとつの魅力に迫る、同館初の大規模建築展覧会だ。京都に現存するモダン建築を40ほど取り上げ、オリジナル図面や模型、写真などの豊富な資料を通して、建築史・時代背景・現代的価値といった多角的な視点から紹介する。展覧会概要京都市京セラ美術館 開館1周年記念展「モダン建築の京都」会期:2021年9月25日(土)〜12月26日(日)会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」住所:京都府京都市左京区岡崎円勝寺町124※詳細は決まり次第告知【問い合わせ先】京都市京セラ美術館TEL:075-771-4334
2020年10月05日池田エライザと田口トモロヲがW主演する真夜中ドラマ「名建築で昼食を」のメインビジュアルが到着した。本作は、アドリブを交えながら名建築を巡る、ドキュメンタリー要素のある新感覚ドラマ。ノスタルジックで可愛らしい“乙女建築”にフォーカスをあて、フランク・ロイド・ライト、前川國男、安藤忠雄…後世に残したい名建築が続々と登場する。今回完成した本作のメインビジュアルは、田口さん演じる千明が追いかけているノスタルジックで可愛らしい“乙女建築”の世界観をイラストで表現。イラストと実写を組み合わせた1枚に。新進気鋭のデザインユニット「LABEL A」による制作だ。また、池田さんが演じる広告代理店勤務の春野藤の親友・綾子役を、若手女優の小川紗良が、千明いきつけの喫茶店マスター役を、日本を代表するフォークロックシンガーであり、詩人、俳優としても活躍する三上寛が演じることも決定。小川さんは「同い年の池田さんとのセッションを楽しみながら、そして何より健康第一で、心安らぐドラマにしていきたいと思います」と意気込み、三上さんは「音楽の現場に身を置きながら、演技の世界に対する興味を失う事ができないのは、たくさんのスタッフと共に仕事する、音楽でいうならオーケストラのようなそれは、実は、『孤独の領域』を維持する事だからだろう。私はこの人物の事を、こういう風に捉えますということは、『貴方は誰ですか』という問い掛けになるからだと思っています」とコメントしている。なお、本作のオープニング&エンディングテーマ曲も発表。オープニングテーマ曲は「Gi Gi Giraffe」の「Picture」。エンディングテーマ曲は、浦上想起の「未熟な夜想」に決定した。第1話「アンスティチュ・フランセ東京」あらすじ春野藤(池田エライザ)は、「乙女建築」なる写真をSNSでアップしている植草千明(田口トモロヲ)とメッセージを交わす中、一緒に名建築でランチをすることに。訪れたのは、1952年にフランス語学校として設立されたアンスティチュ・フランセ東京。千明と一緒に乙女建築を巡り、独特の建築の見方の楽しさや、千明の人となりに触れることによって藤は、次第に「乙女建築」に惹かれていく。そして、友人綾子(小川紗良)とカフェ開業に向けて話し合い、決意を強めるのであった――。第2話「自由学園明日館」あらすじ藤が元カレから預けられたぬか床を悶々とした気持ちで混ぜていると、千明(田口トモロヲ)から「女子高でランチしませんか?」とのお誘いが…。向かったのは、世界的建築家フランク・ロイド・ライトが設計した自由学園明日館。100年前に建てられた女子高の中に数々の「乙女建築」を発見する。増築された講堂など「名建築の時代を経ての変化」を目の当たりにし、千明の言葉から自分も変わらなければと感じた藤。色々な悩みから少し前向きな気持ちに――。真夜中ドラマ「名建築で昼食を」は8月15日放送開始(テレビ大阪は毎週土曜日深夜0時56分~、BSテレ東/BSテレ東4Kは毎週土曜日深夜0時~)。ひかりTVにて1週間先行配信。(cinemacafe.net)
2020年08月08日緑と建築の融合最寄りの駅から、高木のユリノキが彩る並木道を歩くこと10分。一本裏に入った住宅街に、建築家の新井崇文さんの自宅兼アトリエがある。建てたのは10年前。建物正面に施した木製ルーバーには程よくツタがからまり、エクステリアの植栽とともに涼しげな空気を放っている。「建てた当初は板塀だけでかたい感じでしたが、10年経ってツタや植栽が育ち、いい具合に緑と建築が融合してきました」高低差があり、東西には隣家が迫っている敷地。プライバシーの確保と開放的な空間を両立させるために、建物はL字型にし、西側には独立壁を設けた。南側の道路からの視線は木製ルーバーでカット。周囲からの視線を気にすることなく、ゆっくり過ごせる中庭が生まれた。道路側からの視線をカットするために設けた木製ルーバーは、縦、横に変化をつけた。程よくからまったツタが涼やかな印象。左側の独立壁は、西側の隣家からの視線をカット。中庭からリビング・ダイニングを見る。建物に沿ったL字の軒天はベランダ下で、スギを採用。壁の一部にボリュームをもたせ、戸棚状の収納を設置。キャンプグッズや園芸グッズを収納。自然を感じる“外の部屋”「中庭を“外の部屋”みたいに使いたかった」と話す新井さん。中庭に面するリビング・ダイニングには大きな開口を設け、建具も引き込み式にし、床レベルもデッキスペースとほぼフラットにした。カーテンやブラインドは使用せず、フルオープンにしているため、ふらっと中庭に出ることができ、気軽に楽しめる外空間となった。デッキスペースが4畳、周辺含めて12畳ほどという中庭。「これを部屋のように使うと、30坪ほどの家がそれ以上の広がりを感じられますよね。花が咲き、実がなれば鳥がくるし、風が吹けば草木の音がし、木洩れ日も揺れる……。自然のいろいろな変化が感じられる贅沢な部屋です。自然に癒されて、全く疲れないため、何時間でも本を読んでいられますね」中庭に面する建具は全て木材を使用。右側の壁は耐震壁で、建具がすっぽり収まるサイズにした。リビング・ダイニングからフラットに続く中庭。気軽に出られるため、仕事の合間のコーヒーブレイクも外で過ごすことが多いという。直径140cmの大きめな円卓は家具屋にオーダーしたもの。椅子はYチェアをはじめハンス・J・ウェグナーの作品をデザイン違いで揃えた。通風を考えて設えた南側の窓。視線をカットしながら風を通す、スダレを入れた扉窓を採用。中庭までのアプローチの途中に小窓を設けた。植物などを飾り、ゲストを迎える。リビング・ダイニングは和モダンな雰囲気。障子から差し込む光もまた美しい。非日常を呼び込むアプローチ住宅街でありながら避暑地にでも来たかのような錯覚をしてしまう新井邸。リビング・ダイニングから眺める豊富なグリーンの視覚効果はもちろんだが、道路から中庭、玄関までのアプローチにもその秘密がありそうだ。駐車場脇の青々と美しい植栽に沿って進むと、階段があり、数段昇ると左に折れ、絞られた空間のゲートが現れる。そこを抜けると中庭が広がり、右へ折れて数段昇るとデッキスペースへ……。左右に曲がり、段差や空間にメリハリをつけたアプローチにより、先のよめないワクワク感が非日常を呼び込んでいるようだ。植栽に沿っておかれた枕木が入り口へと導く。大谷石を敷いた通路の先にゲートが。宅配便などの受け渡しはここで行う。ゲートを入り、右に折れるとデッキスペースへ。天気の良い日は家族で食事をすることも。「グリーンが育ち、木陰が増え、以前よりも過ごしやすくなりました」菜園デッキで育てた野菜を食卓へ1階はリビング・ダイニングに加え、キッチンや新井さんの仕事スペースであるアトリエまでつながったワンルーム。カラマツの無垢の床や砂漆喰の壁・天井など、自然素材を生かした仕上げが心地よい。また、新井邸には独立した玄関がない。「かつて親しいお宅に行くときに縁側から入っていましたよね。そんなフランクな感じにしたかったので、中庭経由でリビング・ダイニングに入れるようにしました」玄関もLDKの一部として使用することで、ワンルームがさらに広がりを感じ、中庭との一体感も高めた。中庭に隣接した菜園デッキは、安全な食材へのこだわりから設けられた。「料理に使うもの」を中心に季節の野菜や果物をご夫妻で育て、収穫し、旬の味を楽しんでいる。「中庭や菜園デッキには、日本の気候で無理なく育つ植物を4、50種類植えています。四季を身近に感じ、緑や光、風など自然の恵みを取り入れた豊かな暮らしを大切にしていきたいですね」独立した玄関は設けず、中庭からそのままリビング・ダイニングへ入ることも。右奥には対面キッチン、左奥は新井さんの仕事スペースがある。新井さんも立つことが多いというキッチン。サンワカンパニーの白い換気扇が可愛らしい。新井さんが最も気に入っているというキッチンからの眺め。「キッチンは中庭を眺める特等席ですね。気持ちよく料理ができます」(写真/ご本人提供)段差を設けておこもり感を加えた新井さんのアトリエ。段差を利用し、デスク下の奥まで続く収納を設置。クラシックのCDがズラリ。玄関をLDKと一体とするために、収納をしっかり設け、靴や傘など全て納めた。駐車スペースの上に位置し、中庭に隣接した菜園デッキ。しそやきゅうり、カボチャ、トマトなど季節の野菜や果物を育てている。「植えるのは妻で、使うのは私です(笑)」。2階のバスルームからも中庭が楽しめる。内装は水に強いサワラの木を採用したハーフユニットバス。5,6年前からご夫妻で作っているという自家製みそ。2年、3年と熟成しているみそもある。4歳から習っていたというヴァイオリン。現在は月に数回しか弾かないそうだが、眺めのよいこの部屋で弾くのは格別。新井邸設計新井アトリエ一級建築士事務所所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積99.28㎡
2020年07月20日池田エライザと田口トモロヲのW主演で、“建築×グルメ”をテーマにした新ジャンルのドラマ「名建築で昼食を」が放送されることが決定した。作家・甲斐みのりの「歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ」を原案にした本作。池田さん演じるカフェ開業を夢見るOL春野藤が、田口さん演じる「乙女建築」巡りを趣味とする中年の建築模型士・植草千明とSNSで出会うことからスタート。名建築巡りをしていく中で次第に心を通わせ、仕事に恋に悩み多き藤は千明の何気ない言葉に心動かされ、勇気づけられ、前に進んでいく…という、1人の女性が挫折と葛藤を繰り返しながら成長していく物語だ。「仕事帰り、ふとテレビをつけて見る建築のドキュメンタリーが好き」と話す池田さんは、「このお話に声をかけていただけて光栄ですし、名建築にて美味しく楽しく、作品に挑めるなんてこの上なく幸せです。皆様に楽しんでいただけるよう、春野藤として、新鮮な気持ちで素直にお芝居に取り組みたいです」と意気込む。名建築巡りの指南役となる田口さんは「たんなる情報にならず、ドラマ映像ならではの観て、感じて、五感を刺激して、おっとり楽しめる作品になれればと思います」と話し、「こういう大変な時代だからこそ、"人と建築と食"のホッと一息つける、癒しと許しのあるドラマをご覧いただければ幸いです。どうぞヨロシクお願い致します」とコメントしている。本作は、アドリブを交えながら名建築を巡るドキュメンタリーパートを組み合わせたハイブリッドな作りにも挑戦。新感覚ドラマとなっている。ロケ地には、現存する日本最古のビヤホール、アール・デコの旧宮邸、気軽にお茶のできるフランク・ロイド・ライト建築、安藤忠雄による歴史的建造物のリノベーション建築など。意外と知られていない、名建築の中で頂ける絶品ランチを紹介する。真夜中ドラマ「名建築で昼食を」は8月15日スタート。毎週土曜日深夜0時56分~テレビ大阪にて、毎週土曜日深夜0時~BSテレ東/BSテレ東4Kにて放送。※ひかりTVにて1週間先行配信(cinemacafe.net)
2020年07月16日買い替えを考えていたMさん一家が11年前に購入した建売住宅をリノベーションして住み直してから1年ほど。Mさんは全面的に刷新された室内空間にとても満足しており「言うことなし」というが、当初は買い替えて別の場所に引っ越しをすることも考えていたという。しかし、映像系の仕事をされているMさんの友人たちがそれぞれ好みに合った家を建て始めたのを見て、自分たちにも同じことができるのではと考え直すことに。さらに、都心で生活がしやすいことに加え、ゆくゆくは夫婦2人だけで住むことを考えたら現状のサイズ感がちょうどいいと判断。また、奥さんが素敵にリノベーションされている家をネットで見つけたこともあり、買い替えでも建て替えでもなくリノベーションすることを決めたという。Mさんは「リノベーションでわれわれの気に入るようなものにできるとは思っていなかったんですが、妻が見つけた家がとても良い感じで仕上がっていたのでこれは可能性があるかも」と思ったという。設計は奥さんがネットで見つけた家を手がけた建築家の比護さんに依頼。そして、まず最初に現状でぜひとも改善したい点を伝えた―――「生活動線が良くない」「1階が暗くて洗面所とお風呂が必要のあるとき以外は行きたくない場所になっている」「バルコニーの床が腐ってきている」等々。壁は時間が経って味わいが出るよう漆喰仕上げに。天井も同じ意図から濃いめの色に塗った。3つのハイサイドライトデザインのテイストに関しては他の作品も含めて気に入っていたので比護さんに多くをお任せするかたちになったが、上述の改善点のほかに「居心地が良くて生活がしやすい」、さらに「時間が経って“くたびれ感ではなく味わいが出るような家”にしたい」(Mさん)と伝えた。どのように変えたのか2階部分を順に見ていこう。「もっとダイナミックに開く予定だった」と比護さんが話すのは南側につくられたハイサイドライトだ。予算の関係と暑さを心配して大きめの窓を3つつくることに落ち着いた。以前は同じ南側上部にロフトが設けられていて部屋に圧迫感を与えていたが、今はその部分に木の骨組みだけが残り、新たに開けられた窓から差し込む光が室内に十分な光を供給している。ロフトのあった部分に木の骨組みが残る。南側の上部には3つのハイサイドライトがつくられた。キッチンの奥に立つ壁の家型がとても印象的。キッチンのカウンターは映像系の仕事をされている奥さんの仕事机、子どもたちの勉強机としても使用される。右奥の洗濯スペースと浴室とキッチンがこのカウンターを中心に回遊できる。2階を特徴づける2つの壁と浴室2階で特に目を引くのが家型の壁だ。開口の上部がアール状になっていて柔らかな印象を与える。構造上必要なこの壁が家型のデザインに落ち着いたのは設計の途中段階だったという。「思っていた以上に家型のイメージが強くなりましたが、ハイサイドライトを設けた南側を空が見えるエリアにしてそれを隅のほうにまで通したかった。それで北側の天井と同じ勾配にして東側まで抜けるようにしたら結果的に家型になったということで、アイコンとして強く見せるという意図はありませんでした」(比護さん)この家型の壁の背後に鮮やかな青色の壁が見えてこれもまた2階の空間を大きく特徴づけている。この東端の壁は1階でも青色に塗られているが、これには同じ色に塗ることで1・2階の壁がつながっているかのように感じさせたいという意図があった。さらに2階に比べ1階が暗めだったので奥に鮮やかな色を見せることで楽しい雰囲気に変えることも狙ったという。1階にあった浴室は2階の東端にすえた。以前は浴室が使用時以外は誰も行かない無駄な場所のようになっていたため、使っていないときは空間の一部として中庭のような存在にできたらと、ガラス張りの部分をつくって南側のハイサイドライトから入る光によって光庭のようにも感じられるものとした。洗い場部分が広くとられた浴室。昼間はハイサイドライトから入る光で光庭的な役割も果たす。南側のハイサイドライトから浴室へと光が差し込む。浴室前から奥にリビングを見る。キッチンから見る。奥の右側に洗濯機が置かれている。キッチンと本棚家型の壁の手前にあるのがキッチンスペースだ。最初につくられた家の模型を見て「お母さん、これなら大丈夫だよ」と娘さんが家事動線に太鼓判を押したというが、浴室、洗濯スペースとキッチンが回遊できるつくりにしたのは奥さんが仕事をしながらこなす家事の大変さを考えてのことだった。子どもたちの様子を見ながら仕事ができるように、キッチン周りのプランも検討が重ねられたという。そのキッチン近くから反対の端にかけて北側の壁に棚がつくられているほかこの家の各所に棚がつくられている。これらの棚は「おしゃれなモノをたくさんお持ちだったので、モノを楽しめるベースをつくる目的で考えられたもの」という。本棚に関しては「本もたくさんお持ちだったので本が楽しめてかつそれが生活とちゃんと重ねていけるように家の中のいろんなところにたくさんつくりました」(比護さん)。北側の壁の横幅いっぱいにつくられた棚。既存の窓と同じ高さに揃えるなどの工夫がなされている。奥さんの友だちに大好評というキッチン。作業をしながらお喋りと飲食を楽しむことができる。以前よりも生活のクオリティが上がったというMさん。「住みやすくて愛すべき家にしていただいた」とも。奥さんは「寝室も気持ちいいし1階にいる時間が増えて以前のように下に降りるのがいやではなくなった」という。ともに映像関係の仕事に携わるMさん夫妻。家から生じるストレスが解消され、「言うことなし」の状態になった現在、クリエイティブな仕事には「心を良い状態にしておくことが大事」というMさんは、奥さんとともに日々の生活の充実にとどまらず仕事への好影響を感じ取っているようにうかがえた。2階の床に開けられたネコ用の穴。青い壁が1・2階とつながっているのがわかる。グリーンの架けられたバルコニーの壁は外からの視線の遮りと内部からの抜けの両方を考慮してこの形になった。東側奥の青い壁にネコ用の階段がつくられている。玄関近くから奥(東側)を見る。床にはコルクが貼られている。映像系の仕事をされている奥さんのワークペース。壁のコーナー部のアールが左右の空間を柔らかにつなげて広がり感を出している。手前が子ども部屋で奥が主寝室。ガラス戸にしたため暗かった玄関が明るくなりまた街とのつながりも感じられるようになった。以前は階段を上がってすぐ玄関だったが、階段を道路側に少し延ばしてつくり直した。階段室が壁で囲われて扉がありまたキッチンスペースが囲われていた以前の状態と比べると、見違えるほど開放的で明るくなった。奥さんはソファに座ってハイサイドライトから見える雲の動きなどを眺めてぼーっとして過ごすのが好きだという。M邸設計一級建築士事務所ikmo所在地東京都目黒区構造木造規模地上2階延床面積86.21㎡
2020年07月15日曜日と時間で使い方が変わる1階井の頭線池ノ上駅からほど近い、線路の土手に面して建つ建築家の江頭 豊さんの自邸は、フレキシブルに人と人をつなぐ装置として設計されている。一家4人で夕食を囲む自邸の1階『DOTEMA』は、平日の昼間はコワーキングスペース、週末はワークショップやキッチンスタジオ等のイベントスペースにもなる。そして同じ敷地内に、4戸の賃貸ワンルームも併設している。豊さんは朝食を1階のカウンターでゆっくりと摂るのが日課なのだそう。「子どもたちがバタバタと2階で朝ごはんを食べている間に、僕は1階で優雅にコーヒーなど楽しんでいます(笑)。家族で1階で夕食をとったあとは、そのままここでお酒を飲んで、プロジェクターで映画を楽しむことも多いですね」平日はノートパソコンを広げて仕事もする。まさにひとつの空間の使い方を臨機応変に変えているのだ。外のデッキスペースは、1階の土間からシームレスにつながっており、イベント時の交流の場となったり、賃貸の住人達との交流の場になったり、近くの子どもがやって来てブランコで遊ぶ。自在な使い方ができる“間”が、人と人との関係を紡ぎ、豊かなコミュニティを創造している。カフェのようなお洒落な空間だけれど、自宅のリビングでもある。棚いっぱいのCDとレコードは豊さんのコレクション。キッチンのカウンターの並びにはターンテーブルも。ブルーのタイルが空間に色を添えている。カウンター下のガラスタイルも美しい。照明器具は、ひとつひとつ違う場所で買い集めたものだそう。天井の6面体のスピーカーが空間全体に良い音を響かせる。天井の照明用レールに渡した小さな粒つぶのLEDライトが可愛い。オールステンレスの本格的なキッチン。将来、飲食店としても活用できるように、ダブルシンク、大型食洗機の設備を整えた。カウンターはグルリと回遊できるので、子どもたちはキックボードや自転車でグルグル回って遊ぶのがブーム。書籍は自由に手にとって閲覧できる。1階には小上がりも(手前)。「1段高い場所はイベントの際にステージとしても使えます」。プロジェクターも設置。トイレの鏡には女優ライトが。「既存の照明器具を6つ配置しています」。2階の洗面所の鏡も同様の仕様。4戸の賃貸住宅を併設自邸の隣は4戸の賃貸住宅になっている。江頭さんの以前のお宅は、賃貸住宅があった場所にあったのだそう。「家の隣に空いていたスペースを買い受けて敷地を広げ、現在の家を作りました」ウッドデッキは、江頭さん家族、賃貸の住人、そして『DOTEMA』を利用する方の共通の庭。賃貸の住人たちとここでバーベキューを楽しむこともあるのだそう。ガルバリウムを平葺きした外観。手前の4戸がワンルームの賃貸住宅。現在は満室。敷地の奥が自邸と『DOTEMA』。ウッドデッキではバーベキューを楽しむ。コンクリートの擁壁はコの字に曲げてベンチとして使えるようにしている。賃貸の4部屋は、それぞれ壁の色が違う。1階はモルタルの土間があり、2階の部屋はロフトが付く。1階は、週末や夜間、ガラリと雰囲気を変える。1階には豊さんの仕事部屋も。ステンシルを使い番号をDIYしたロッカーは、コワーキングスペースを利用する方に貸し出している。2階の自宅部分はくつろげる雰囲気に2階は家族のプライベート空間。針葉樹合板の木目を活かした、ナチュラルでリラックスできる雰囲気の第2のリビング。交流の場である1階の『DOTEMA』とは違った魅力を楽しめる。窓からの眺めも、1階は線路の緑の土手を、2階からは風景の広がりを堪能できる。天井高を活かし、ロフトを造っている。普段使わないモノや、季節の衣類を収納している。右側の引き戸を開けると、2階への階段が現れる。1階をパブリックな使い方をする場合に、この引き戸でプライベートな住居と分けている。2階のリビングはたっぷりとした天井高。針葉樹合板の壁がくつろげる雰囲気。2階の窓の外は大きく開けていて眺めがいい。「遮る高い建物もないので、遠く三軒茶屋のキャロットタワーも見えます」下駄箱は2階に。靴を横向きに並べてディスプレイするように収納するスタイルは、靴のデザインを楽しめる。靴好きなら真似したい方法だ。2階にはロフトも。ロフトは白に塗装。収納として利用している。晴くんと優ちゃんの勉強はリビングで。愛想のいい猫のララちゃんが乗っているカウンターテーブルは、子どもたちと一緒にDIYしたのだそう。扉のないシームレスなリビング寝室とリビングの間は扉をつけず、シームレスな空間に。寝室の傾斜のある天井は巣ごもり感たっぷり。ゆっくりと朝まで熟睡できる。「今はベッド2つ並べて4人川の字に寝ています」子どもたちの成長に合わせて2階の空間も、そして1階で育む人々との絆も、変化しながら豊かに成長していくに違いない。右側がリビング、左側が寝室。扉はつけず、壁でゆるやかに仕切っている。水道管で作ったラックに家族の服を収納。この家と広場の模型は7歳の晴くんの作品!「建物が好きなようで、ゲームの『マインクラフト』でもカッコいい建築を作ってますね」と建築家のお父さんは目を細める。視線が抜ける柱の向こうが2階のミニキッチン。主に葉月さんが使っている部屋。将来は子ども部屋にすることも可能。「バスルームは換気を良くしたかったので、ベランダに面した場所に作りました。目隠しのために柵を高くしています」洗濯機が一段高い位置にあるのは、この下が2階に上がる階段になっているため。「洗濯物を出し入れする際、腰をかがめなくて良いので楽です」江頭邸設計江頭 豊(DOTEMA)+越浦太朗建築設計事務所所在地東京都世田谷区 構造木造規模地上2階 延床面積195㎡
2020年07月06日梅雨に入り、雨が続くと湿度が気になりますね。ジメジメを感じているのは、家も同じ。今回は二級建築士による家にカビが生える原因の解説とカビを防ぐ湿気対策についてお伝えします。カビが発生する原因は?ジメジメした場所に、カビが発生する印象をもっている人が多いのではないでしょうか?実際には湿度が高い以外に、カビが発生する条件があります。それは“空気が停滞していること”と“カビのエサになるものがある”ことです。カビのエサというのは、いわゆる「ホコリ」。これに関しては、基本的なところで清潔を保つことですが、日常的に掃除をしていても完全になくすことは不可能といえるでしょう。そのため湿度を下げることと空気を循環させることが、カビを抑える効果的な方法となります。以上を踏まえて、場所別に対処法を見ていきましょう。クローゼット・押し入れクローゼットや押し入れといった密閉空間は、湿気がたまりやすくなっています。特に布団の収納に押し入れを使っている場合は注意を。1日寝た布団には寝汗がたまり、そのまましまうと湿度を上げる原因に。まずは布団の下にすのこなどを置いて、空気が循環できるように対策しましょう。布団については基本的に、晴れている日に布団を干すという対応になりますが、それができないこともありますよね。そんなときに役に立つのが除湿剤です。市販のもので、押し入れ用やクローゼット用などが売っているので、活用してください。靴箱靴箱も湿気のたまりやすい場所です。1日履いた靴は、すぐに靴箱にしまわずに1日は靴箱の外に置いておきましょう。特に長靴を濡れたまま入れてしまうと、あっという間にカビができてしまうことも。靴箱も除湿剤で対応することが可能ですが、もっと手軽なところで、靴を置くところに新聞紙を敷いておくという方法があります。新聞紙も水分を吸ってくれますので、ときどきチェックをして新聞紙を交換すると湿気対策になります。新聞紙を敷いておくと、靴についた土汚れなども新聞紙に収まるため、靴箱掃除がラクに済みます。水回り言うまでもなく、水回りはジメジメしやすい場所です。原則として、水を使用したあとは水気を拭きとるというのが対策。たとえばお風呂を使用した後は、スクイージーで壁の水気をきる、キッチンのシンクは寝る前に布などで水分を拭きとるといった具合です。トイレは、使わないときはフタを閉めておくだけでも湿気を抑えることができます。部屋全体雨の日であっても、窓を開けて換気することが原則です。湿度を上げてしまいそうですが、窓を開けずにいると空気が停滞してしまいます。窓を開けていなくても、建材を通して外気は入ってきています。また水回りがある以上、そこから湿気が発生するため、室内の湿度はどんどん上がるのです。そのため窓を開けた換気が必要になります。窓を開けるときには2か所以上開け、空気が流れるようにします。ただし雨が吹き込んでくるときには、窓を開けずに除湿器を使用したり、エアコンの換気機能を活用するようにしましょう。扇風機を天井に向けて、空気を循環させるのも効果的です。注意をしたいのは、家具の配置です。本棚やローボードなどが壁にぴったりとくっついていると、家具と壁の間の空気が動かず、カビの温床になりかねません。家具は壁から2センチ以上離して、空気が流れるだけの隙間を作るようにしてください。特に北側に位置する部屋は要注意です。太陽の光が当たらず、ジメジメしやすい場所になってしまいますので、北側の部屋の窓も解放し、家全体として空気を循環させるようにしましょう。梅雨が明けても、日本の夏は湿度が高い地域がほとんど。対策を怠らないようにして、快適な住まい作りを心がけてくださいね。<文・写真:ライター沖田かへ>
2020年06月25日丘の途中の敷地小長谷邸は住宅に建築家である小長谷さん、奥さんで照明デザイナーの真理子さんの仕事場が併設されている。敷地はそのためのスペースが取れるような場所を5年ほど探して見つけた。丘の途中にある敷地は370㎡と広かったものの、旗竿敷地で、かつ、旗部分の端には古い擁壁がありその擁壁が高いところで6m、低いところで2.5mと南から北に向けて高さにかなりの差があった。擁壁に沿って走る道路から見下ろした印象は敷地いっぱいに立った古家の印象も相まって暗く少しじめっとして決して良いものではなかったらしい。建築家の小長谷さんはしかし問題なく家を建てられる土地だと判断したという。「庭をゆったりとつくりながら建てるとまったく違う環境になるだろうと思いました。と同時に古いコンクリートブロックの擁壁も亀裂や歪みがなかったのでよほどのことがない限り崩れることはないだろうと」。敷地を見てピンときたという真理子さんは「道路から下がった場所でちょっと暗い感じはしたんですが、敷地の上の土地の高さが2段階あって、1段上が公園になっている。それですごく面白くて個性的な土地だなと。反対側は下への眺めが開けているので2階はすごく景色が良さそうだし、いい案を考えてくれるんじゃないかと思った」と話す。西側の道路から2階の事務所部分を見る。真鍮製の扉が玄関。道路からは小さな家のように見えるがこの下に1階の住居部分がつくられている。右に緑のある部分が公園になっていて、その一段上に道路が走る。南側の庭を見る。中央部分に見えるのが古い擁壁。その左の1段高くなった部分に公園がある。反対の北側は下へと傾斜していて開口からは遠くまで視線が抜ける。本棚の右側に主寝室への入口がある。1階をコンクリート造に家のつくりの大枠はこの敷地条件から導かれたといっていいだろう。万が一、擁壁が崩れても問題の無いようにまず1階部分をコンクリートにする。そうすることで擁壁の近くまで建物を建てることができるし、古い擁壁をつくり直さずに浮いたコストを建物のほうにかけることができる。そしてさらにそれによって思い切った建築ができるだろう。敷地を見てすぐに浮かんだというこの小長谷さんのアイデアが実現されることになる。そして「1階をコンクリートにしたうえで、2階部分の床に車が駐車できるようにすること」を大前提にどのような住空間にするかを考えていった。しかし「コンクリートはどうしても閉じているとか重たいなどの印象があった。自分たちの家は木造で建てるものだと思っていた僕らにとってそれが感覚的にどうなんだろうと思った」という。「それで南北両側の開口を思いきり開けて視線が抜けるようにして景色と庭の両方を楽しめるようなつくりに」したという。南側の庭を見る。庭は夫妻で木を植えている。「“キャンプ場のような感じで日本の雑木林のような雰囲気にしたいね”って言っています」(真理子さん)。公園の木と90cmほど出た庇があるため夏でも日差しの強い時間帯は直射光がほとんど入らないという。キッチンは当初正面の本棚の位置であったが、真理子さんの「庭を見ながら料理をしたい」との要望から位置が変更された。壁式に見えるが実はラーメン構造。壁の両端部分に柱状の鉄筋が隠れている。開口から向こう側の丘まで視線が抜ける。真理子さんが照明計画でいちばん悩んだのがキッチン部分だった。階段が斜めに走り吊り戸棚もないこの場所で考えたのがバー状の照明で、真鍮をカットした材の表面を小長谷さんが研磨して仕上げた。フードも同様にして製作された。“高架下”の住空間「コンクリートの堅牢な壁に囲まれた家というより、敷地にコンクリートの下駄を置いたぐらいの感じで、コンクリートの壁2枚とその上に屋根があって、あとはぜんぶ1階は公園というか庭の一部みたいな感じ」とイメージを共有していたお2人。さらに「家族では“高架下”って呼んでいましたね。そのくらいざっくばらんで楽しさがあるというか。家のスケールを超えた工場とか、家らしくない空間に住んでみたいという変な願望があったので、これは“高架下”だと思ったとき、すごく興奮しました」と続ける。その“高架下”の両サイドの開口のサッシには木を採用したが、このガラス面のレイアウトが面白い。「1階は3.46mという天井高なのでアルミサッシなどの既製品が使えない。スチールなどで特注でつくるとコストが高くなるというのと、この地域は防火制限がゆるくて網ガラスや防火サッシにする必要がないので、木を使って自由な窓面をつくってみようと思いました。ガラスの配置を均一とすると庭との境界を強く感じてしまったので、ランダムな配置として外の風景とインテリアが親和するようにしました」(小長谷さん)リビングの窓際にはハンモックがぶら下がる。家族全員で使っているという。同じく窓際に置かれているのは古いミシンの脚部分を使ってつくられたテーブル。素材とディテールレスコンクリートの躯体と木サッシの質感のコンビネーションが目に心地良いが、素材選びにはいたるところでこだわった。2階の玄関扉とインターフォン、その脇の窓枠、そしてキッチンのフードと照明部分には真鍮、2階では玄関の土間と壁面に黒皮鉄板を採用、2階の床はコンクリートの地肌をそのまま残して黒い薄い塗料を塗った。キッチンや扉にはアフリカのブビンガという個性的な木目の木を使っている。躯体は防水コンクリートでつくったため仕上がりと防水も兼ねたものになったが、そのほか全体的に素材をそのままを使うようにしたのは経年変化を楽しみながらイニシャル、ランニングも含めコストを抑えるという意図から。コストを抑えるためにはテーブルやキッチンのフード、照明器具などを自ら製作するなどのほかディテールレスも目指した。「建築家はよく手間のかかるディテールを考えますが、カッコ良くはなるけれどもコストがかかる。この家ではディテールレスをどこまでできるかを試してみました」1階の木サッシまわりでは、嵌め殺しの窓の部分を見ると上に木の枠がない。「コンクリートを打つときに溝/目地を取ってそのへこんだところにガラスを差し込んでいます。そうすると材料も減るしコンクリートとガラスのみのミニマムな納まりとなり、とてもすっきりとした見映えになるのです」壁に架かる絵はこの敷地の元住人であった画家の遺族から譲り受けたもの。照明器具はアンティーク。家具屋さんに製作してもらった棚の間に大谷石を挟んで組み立てたのは小長谷さん。半地下の納戸兼パントリーから南側の庭を見る。この場所は息子さんの読書スペースになっているという。階段は手動で上下の位置を変えられる。リビングより半階上が子ども部屋で下の半地下部分が納戸兼パントリー。洗面上の額縁に入ったガラスを右にずらすと収納棚が現れる。南側に設けたこの浴室/洗面所では洗濯物も干す。浴室/洗面所からリビングを見る。浴室には珍しいペンダント照明は真理子さん設計のオリジナル。階段脇の壁がガラスのため事務所からも景色を存分に楽しむことができる。階段近くに北側の庭への出入り口がある。その右側を進むと子ども部屋/納戸がある。玄関を入ってすぐの場所から2階部分を見る。両サイドとも開口から視線が抜けて気持ちの良い事務所スペース。オフィスっぽさを避けるために天井の照明のほかに必要な場所にペンダント照明を下げている。子どもたちの勉強、工作、お絵描きスペースにもなっている。真理子さんの事務所と打ち合わせスペース。窓際のペンダント照明は「カフェなどのお店」のようにも見えるようこの場所に下げた。子どもたちの勉強・工作・お絵描きのスペースにもなっている。ケースの中には小長谷さんが集めた鉱石が入っている。手前の黄鉄鉱はきれいな立方体だが自然そのままの形という。鉱石のガラスケースの横には世界の珍しい草木の実。道路側から建築事務所のスペースを見る。梁の間には全般照明用のLEDのライン照明が入る。正面の黒皮鉄板には磁石で図面を貼ったりしているという。最近はひたすら庭の木々と格闘しているという小長谷夫妻。「木を買ってきては自分たちで植えて少しずつ増やしてます。芝も含めてキャンプ場みたいな感じでちょっとワイルドな雰囲気にしようかと思っています」(小長谷さん)。真理子さんが「1階のソファで横になったりハンモックに乗っていると気持ちがいい」というのにはおそらく2人で植えて育てたこの庭の緑の存在もあるのだろう。コストの関係でとりあえず入れずにすましたが、小長谷さんが「冬はそれがあれば完璧」と話すのは薪ストーブ。「デザインしたものをつくってくれるところがあるのでリビングにいつか付けたいなと」。いつでも入れられるようにコンクリートスラブと木造の屋根には穴をあけてあるという。「それは楽しみでしょう?」と聞くと即座に「そうですね」との答えが笑顔で返ってきた。奥の照明はこの空間が大きく天井も高いので1、2個では少し寂しい印象になる。そこで高さをランダムに変えて8個の裸電球をぶら下げた。はじめ、壁の間は現状より90㎝狭く設計したが、「家族みんなが集まる場所」を検討した結果幅を広げることに。南側の庭/公園側から見る。大きな開口が両サイドにあるため建物を通して向こう側の景色が見える。小長谷邸設計小長谷亘建築設計事務所照明設計内藤真理子/コモレビデザイン所在地東京都町田市構造RC造+木造規模地上2階地下1階延床面積148.64㎡
2020年06月10日建築ジャーナル(2020年5月号)にプライムの作品が掲載されました。住宅建築、一般建築、子供の空間など、多くの作品が掲載されています。建築ジャーナル(2020年5月号)にプライムの作品が掲載されました。住宅建築、一般建築、子供の空間など、多くの作品が掲載されています。是非ご覧いただければと思います。掲載作品一覧:【青谷福音ルーテル教会】【白鷺の家】【末広の家】【フラッツCN】【Bridge-桜上水の家】【ブーメラン・プランの家】【東邦電気工事ビル】【山に向かう家】【いまいづみ幼稚園未来館】【フラッツAL】【加賀の子ども】【まついハウス】【Onefor3-柿の木坂の家】【天遥かな家】【にぬふぁ保育園】プライム一級建築士事務所
2020年06月08日寺田倉庫株式会社が運営する建築倉庫ミュージアムは、緊急特別企画として、「隈研吾・西澤明洋が語るアフターコロナの建築とデザイン -建築倉庫×クリエイティブナイト-」を2020年5月14日19時よりYouTubeにてライブ配信いたします。建築倉庫ミュージアムは現在、新型コロナウイルスの感染予防および拡散防止のため臨時休館しておりますが、この期間にも建築および建築模型の魅力をより多くの方に伝えるべく、オンラインコンテンツの充実に力を入れております。今回は、建築倉庫ミュージアムの取り組みのひとつである「建築領域における可能性の拡張」に対し、様々なジャンルのクリエイターを招いたトークセミナー「クリエイティブナイト」を主宰する株式会社エイトブランディングデザインに共鳴いただいたことから、本コラボレーションが実現いたしました。登壇者には、同社代表であり、アーキテクチュアル・シンキング(建築的思考術)を提唱するブランディングデザイナー・西澤 明洋氏と、建築倉庫が運営する模型保管サービス「ARCHI-DEPOT ONLINE」にて、数多くの建築模型を保管する建築家・隈 研吾氏をお迎えいたします。「アフターコロナの建築的思考術」、「建築×ブランディング」、「建築模型の価値」等をキーワードに、第一線で活躍する両氏が、「今」考える建築とデザインについて語ります。【開催概要】タ イ ト ル:緊急特別企画「隈研吾・西澤明洋が語るアフターコロナの建築とデザイン -建築倉庫×クリエイティブナイト-」日 時 :2020年5月14日 19:00~20:10(終了予定)配 信 URL:建築倉庫ミュージアム公式YouTubeチャンネル 視 聴 方 法:詳細は建築倉庫公式サイトおよび各種SNSをご確認ください。公式サイト:公式SNSTwitter :: :料 金 :無料【隈研吾氏について】 年生まれ。東京大学建築学科大学院修了。1990年隈研吾建築都市設計事務所設立。2009年~2020年3月、東京大学教授。2020年4月より東京大学特別教授。1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では、原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代に、アフリカのサハラ砂漠を横断し、集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。これまで20か国を超す国々で建築を設計し、(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、他)、国内外で様々な賞を受けている。その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。【西澤明洋氏について】 年生まれ。株式会社エイトブランディングデザイン代表。ブランディングデザイナー。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド開発、商品開発、店舗開発など幅広いジャンルでのデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD(R)」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、サンゲツ「WARDROBE sangetsu」、芸術文化施設「アーツ前橋」、手織じゅうたん「山形緞通」、純金工芸「SGC」、農業機械メーカー「OREC」、ブランド買取「なんぼや」、ドラッグストア「サツドラ」、博多「警固神社」、など。著書に『アイデアを実現させる建築的思考術』(日経BP社)、『ブランドをデザインする!』(パイ インターナショナル)などがある。グッドデザイン賞をはじめ、国内外100以上の賞を受賞。企業プレスリリース詳細へ本記事に掲載しているプレスリリースは、株式会社PR TIMESから提供を受けた企業等のプレスリリースを原文のまま掲載しています。FASHION HEADLINEが、掲載している製品やサービスを推奨したり、プレスリリースの内容を保証したりするものではございません。掲載内容に関するお問い合わせは、株式会社PR TIMES()まで直接ご連絡ください。
2020年05月10日初めてのお家づくり。やりたいことや夢はあっても実際どうしたらいいか分からない。そんな方が多いのではないでしょうか?間取りや要望に固執しすぎてかえって使いにくい家になってしまった。なんて話もよく耳にします。R+houseの建築家は日当たりや風の通りはもちろん、お客様1人1人のライフスタイルをヒアリングすることで、要望を取り入れながらも使いやすく将来的な事まで考えた住宅を提案してくれます。今回ご紹介するお宅はお子様が5歳の女の子と2歳の男の子でやんちゃ盛り。剣道をやっているご主人と現在育休中の奥様の4人暮らしです。子育てに追われながらも家事をするのがとても大変!という奥様の為に建築家がどのようなお家を設計したのかご覧ください。外観は黒!ガルバリウム鋼板と木のコントラストが美しい四角い家広く、少し小高い敷地に悠然と建つ、黒いガルバリウム合板の壁で覆われたお家。軒天には天然木のレッドシダーを使い黒と木のコントラストが非常に美しいお家です。敷地面積:366.66㎡(110.91坪)1階床面積:77.01㎡(23.29坪)2階床面積:53.82㎡(16.28坪)延べ床面積:130.83㎡(39.57坪)回遊動線が連続する使いやすい間取り1階、2階とも生活動線が回遊できる設計になっているため、どこへいくにもぶつかることなく最短の距離で家事ができます。周りを見渡せるので育児をすながらの家事もラクラクです♪テーマはシンプルに使いやすく~玄関~家族用とお客様用の2つの動線を分けた2Way玄関。剣道から帰って来たご主人が、防具をしまうのに使いやすいようopenな収納にしています。玄関から入ってきたお客様からは見えにくくする、ちょっとした工夫は建築家のならではのアイデアです。~キッチン~家の中心にあるキッチン。LDKを見渡せるようにできています。正面にある窓からは天気の良い日は富士山を眺めることができるので、奥様の気持ちも安らぎながら、家族のご飯の準備にも力が入ります。建築家の先生は景観を大事にしながら設計をしてくれるのもgood!です。~LDK~LDKは小上がりの畳コーナーを含めると24.5帖と広々空間。大きな掃き出し窓からはたくさん光も入りとっても明るいリビングになっています。床材は120mm幅の天然のオーク材を使用しているので、裸足で歩いても天然木のサラッとした足触りが気持ちが良いです。~洗面~洗面はW1650mmとかなり大きめ。これは朝、洗面が取り合いになっているお施主様の為に建築家の先生が並んでも十分使えるようにと提案してくれました。お客様のライフスタイルを反映してオンリーワンの提案をしてくれるのも建築家住宅の魅力です。~openクローゼット・インナーバルコニー~2階はお客様も入らないプライベートな空間ということとフレキシブルに使いたいというお施主様の要望から、あえてopenなクローゼットにしました。将来子供部屋にする空間もお子様が小さいうちは大空間で伸び伸び遊ばせたいというお考えから、回遊できる大きなスペースを作っています。インナーバルコニーは、東と南からサンサンと太陽の光が差し込む場所に設計されています。1850mm×2730mmのインナーバルコニーはお布団や洗濯物を干すだけでなく、ちょっと景色を眺めながらお茶もできるカフェスペースとしてもお使いいただけます。~フリースペース~将来的な子供部屋は今は広く、お子様の成長に合わせて間仕切りを設けられるように設計されています。明るく、風通しも良い子供部屋ならお子様もきっと喜ぶはず。5歳のお姉ちゃんは今からピンクのお部屋にしたいと目を光らせてお話してくれました。まとめ家事と子育て。子育て世代の奥様は必ず直面する問題です。上手く両立するのはとても難しい。新しく家を建築する方の中には、とても期待している方も多いのではないでしょうか?でも自分たちだけではどうしたらどういうお家なら子育てと家事、どちらもラクなお家にできるか分からない。なんていう方は、建築のプロである建築家の先生と一緒にお家を建てるのもひとつの方法です。建築家に頼むと費用が高い!頼み方が分からない!そんな方はぜひ「R+house」にお気軽にお問い合わせください。きっとあなたの素敵なお家が見つかるはずです。リンク新築・リフォーム!お家の事ならお任せ下さい!些細なご相談やお困り事、何でもお気軽にお問合せ下さい^^お待ちしております!●R+houseさいたま東鳥海建工●●リフォーム鳥海建工●●イベント情報●●レンタルスペース●
2020年03月31日家族や仕事など、時とともにライフスタイルは変化していくもの。大きな買い物である家も、その変化に柔軟に対応できるものがいいですよね。土地や資金などさまざまな制約はありますが、発想の転換で希望は叶うかもしれません。どの家にも存在する“あるもの”を増やすことで、家族が輝く暮らしを実現した家を、〔建築家住宅R+house(アールプラスハウス)〕の施工事例から見てみましょう!シャープな外観の「3アプローチハウス」モノトーンでシャープな外観が目を引くこの住宅。よく見ると、玄関がいくつかあることに気づきます。「3アプローチハウス」というコンセプトのこの家には、入口や玄関がなんと”3つ”も!その数に驚くかもしれませんが、ひとつひとつのドアに、生活を少しラクに、潤いを与えてくれる役割があるのです。まずは、暮らしの中心となる“1つ目のドア”『玄関』から。壁面と同色のドアを開いてみると、白壁と木のぬくもりが美しい室内が。外観とのコントラストが開放感を引き立てています。玄関の先には、大容量のシューズクローク。写真では見えませんが、そこに“2つ目のドア”があります。シューズクロークと外部をつなげるドアなので、例えばそのドアから自転車を屋内に入れておくこともできます。雨の日などは動線にも無駄なく、便利に利用できます。“3つ目のドア”はなんと…将来奥様が開業予定のヘッドスパサロンの入口なんです!玄関と分けることで、プライベートもしっかりと確保されているのがうれしいですね。壁を白くしたことで、この入口の空間自体がお店のサインにもなっています。それぞれ役割を持つ3つのドアが用意されていることで、オン/オフの切り替えができる上に、生活動線がよりなめらかになるよう設計されています。『建築家住宅R+house』の夢がつまった家づくり家族が集い、くつろぎ、楽しむ場所次は、居住スペースを見てみましょう。□いつも家族が自然と集まる大空間リビング1階はリビングと水回り。空間を贅沢に使ったリビングは、広々と開放感のある大空間に!階段もリビング横に設置することで、家族が集うというリビングの機能がより強調されています。来客時や将来こどもができた際に利用予定の畳スペースなど、時とともに表情が変化する楽しみも。そして、奥にはもうひとつの楽しみを生み出す場所が……?□趣味部屋が作れるのは注文住宅ならでは!なんと、この土間は旦那様の趣味に利用するガレージ。車、キャンプ、スノーボード、ダイビングなどアウトドアが好きな旦那様。かさばるアウトドアグッズをまとめて収納したり、メンテナンスしたりできる、贅沢で楽しさに満ちた空間です♪横がリビングなので、家族の存在を感じながら作業ができるのもうれしいですね。もちろん車への荷物の積み下ろしも楽ラク。外出のハードルが低くなり、趣味がより一層楽しくなりそうです。理想をカタチにする建築家のアイデアをご紹介♪動線で、暮らしはもっと楽しくなる水回りも機能的。洗面スペースの横には広い洗濯スペースが。洗濯してから干すまでの一連の作業がこのスペースで完結します。「R+houseに住み始めてから、今まで住んでいた家よりも、室内干しの洗濯物が乾きやすくなったのがうれしいです。」と奥様。R+houseは高い気密性を担保しているため、機械換気をする仕組みがしっかり整っています。それゆえに洗濯物が以前よりも乾きやすくなっているのですね。生活動線が考えられているだけではなく、これなら夜でも雨の日でも、好きなときに洗濯することができるので助かりそうです。洗濯物が乾いたら、ハンガーごと2階に運んで、そのままファミリークローゼットに収納。畳むという手間を省略する動線設計で、洗濯をする奥様の負担がぐんと軽減できます!家族それぞれの笑顔が増える家づくり家族それぞれの希望ややりたいことを尊重しながら、生活がちょっとラクに楽しくなる。そんな家族の笑顔が増える理想の暮らしも、R+houseなら実現することができます。あなたの要望から、世界にひとつだけの住まいをつくる、建築家住宅・R+house。暮らしをより彩る家づくりをお手伝いします!建築家住宅 R+houseの建築家と共につくる”理想の家”
2020年03月24日この面積で暮らせるのか保坂邸は約19㎡。建築面積ではなく延床でだ。これはさすがにとてつもなく狭いのではないか、そう思って訪れたが、室内を拝見してまず最初に「意外と大きい」と感じた。たぶん、この印象は上に大きく抜けた吹き抜けから受けたものだろう。この吹き抜けがなかったら「大きい」という印象はなかったに違いない。建築家である保坂さんでさえ、この床面積ではたして住むことができるのかとの思いをずっと抱きつつ設計を進めていたくらいなのだ。「この大きさのものは設計したことがないので実績がない。不安でしょうがなかった」という保坂さん。実は当初、2階建てでの設計を考えていたという。通勤を考えて購入した土地は横浜に建てた前の家と敷地の大きさもプロポーションも似ていた。当然ながら同じ2階建てで考えていたが、ある日、要望を出してほしいと伝えていた妻のめぐみさんからの話で変更することに。グリーンが狭い空間に潤いをもたらす。椅子の下も収納スペースに使っている。道路から室内を見る。窓の部分も収納に活用。棚はコンクリートに付けた凹みに載せているだけ。平屋でつくる「そのときちょうど読んでいた江戸時代の生活の本の話をしたんです。当時は家族4人で4畳半でも決して狭くないという生活をしていて、それがここでは2部屋以上取れる。それくらいの広さだと考えたらまったく狭くないと思ったのでその話だけをしました。そしたら保坂に“わかった”って言われて、“えーっ、わかったの?”って思ったんですけれど、そのあとは何を聞かれるわけでもなく、しばらくして出てきたが平屋の案でした」平屋案に至ったのには横浜の家とは異なる敷地条件もかかわっていた。「決定的に違うのは南北に7階建てのマンションが立っている点で、2階建てにすると床と天井の高さが近くてトップライトを開けると空よりもマンションが見えている印象が強くなってしまうんです」(保坂さん)奥にベッドが置いてありそのまた奥の外部にバスタブがある。間にキッチンがあるため、手前のテーブルのところで夜遅くまで起きていても奥で寝ている人には気にならないという。左右の壁の間の寸法はいちばん広いところで2425mm。キッチン側から道路側を見る。キッチンと奥のスペースの間には段差が設けられている。キッチンに並ぶものには料理好きのめぐみさんのこだわりが感じられる。オーディオ関係は前の家の時よりも大きなものに取り替えた。レコードはちょうどその幅の分凹ませたコンクリートの壁に立てかけられている。ポジティブに考えるとはいえ床面積は横浜の家と比べほぼ半分。「前の家でもすごくコンパクトな生活だなと思っていたのにその半分になる。ふとんのサイズは半分にならないし椅子だって半分の大きさにはならない」。しかもめぐみさんからは大きなベッドがほしい、冷蔵庫を大きくしたいという要望も出ていた。自身もオーディオ関係を大きなものに取り替えたいと思っていた。いずれの要望も厳しい敷地条件とは逆方向を向くもの。さらに、トップライトからの採光のシミュレーションをしてみると11月から2月の半ばくらいまでまったく直射光が入らないことが分かったという。しかし狭さに関しては読んでいた本から、「“やってみればできるかもね”ってポジティブになれた」し、光に関しても「北欧でも直射日光がまったく当たらない季節があるので、ある意味冬は北欧のような生活ができる」というふうにポジティブな方向に頭を切り替えた。「冬は直射光が入らないんですが、トップライトから天空光が柔らかく入るのでそれを楽しむ空間にしようと。夏は燦燦と光が入るので北欧から南国までの光の変化を楽しめるというコンセプトで行こうということになりました」天井を見上げる。トップライトは2つの円弧からできている。ぶら下がっているコンクリートの壁は南からの光を反射させてベッド上の天井を照らす。トップライトからの光が時間ごとに違う場所に光の筋をつくり出す。ベッド側から天井を見る。狭くてもなんでもある内部の設計コンセプトも狭さゆえに向かう方向とは逆の方向で基本方針を立てた。「面積からするとヴィジュアル的にも生活的にもいろいろとそぎ落とす方向に行きかねないところで古代ローマのハドリアヌス帝などが大事にしていた〈学問、入浴、演劇、音楽、美食」という5つの要素を、こういう小さな家でも大事にできるようにしよう」と。こうして露天風呂も加わった保坂邸。保坂さんは冒頭にも書いたように実際に住み始めるまで不安でしょうがなかったというが、すべて杞憂に終わりお2人とも充実した日々を過ごしているようだ。「すべてがここにあるという感じがしています。前の家ではモノをなるべくもたない生活を楽しんでいたんですが、ここではほしいものはなんでもあってそれを楽しむ生活をしている感じがします」とめぐみさん。めぐみさんは「都会で露天風呂をつくっても入らないのでは」と思ったがとても快適で2人とも毎日入っているという。大きめのシャワールームが風呂の隣のスペースにつくられている。キッチン側から奥を見る。狭いためトイレとシャワールーム以外は扉をつくらないという方針のもと、コンクリートの仕切りの間のスペースをクローゼットとしている。保坂さんもこう話す。「日本でも戦前までは多くの人が狭くても豊かに住んでいましたが、現代はそうした生活とは完全に一回切れて住宅事情というのができていて脈々と受け継がれてきたものが途絶えている気がします。でも実際にこの狭いスペースで自分が生活をしてみると、このぐらいでも住めるというかむしろ楽しく暮らせる。そして、生活で大事にしているものをすべて入れ込んでいるから密度も濃い感じがしますね」住み始めて、狭くても楽しく豊かに過ごせるだけでなく、さらにまったく予想だにしなかった楽しみも生まれているという。「引っ越してガラス戸のすぐ向こうを人が通るなんてまったくイメージもできなかったし、想像すると少し怖い感覚すらあって窓を開けられないんじゃないかとも思っていました。でも今はふつうに窓も開けていて、そうすると話しかけてくる人がいたり中には“家の中を見せて”っていう人もいるんです」(めぐみさん)。そうしたコミュニケーションが楽しく近所の方ともつながりができたという。前の家とはまた異なる楽しみを何重にも感じながら暮らしているお2人の話の端々から暮らしの充実ぶりがうかがえた。窓の上には旅行先で購入した小物などが置かれていた。コーナー部分も本の収納スペースに。反対側のコーナーにも同様に本が置かれている。コンクリート壁にいくつかニッチをつくって収納スペースにしている。奥は保坂さんがよく使うペンのペン挿し。左のコンクリートの段差はハンコや付箋などの小物を置くためにつくられたもの。家の前の道路も保坂邸の敷地。ここを近所の人たちが通勤や買い物などで通り、室内のお2人に声をかけてくる人もいるという。玄関は右の側面につくられている。保坂邸設計保坂猛建築都市設計事務所所在地東京都文京区構造RC造規模地上1階延床面積18.84㎡
2020年03月23日モダニズム建築の宝庫といわれるインディアナ州コロンバスを舞台に、建築の声に耳をすませる対照的な男女を描いた映画『コロンバス』の公開日が3月14日(土)に決定、その予告編映像が解禁された。主人公のジンは、『スター・トレック』シリーズや『search/サーチ』で知られ、今年1月にはJホラー『THE JUON/呪怨』のリブート作品『ザ・グラッジ/The Grudge』(原題)が全米公開、先日は第92回アカデミー賞ノミネート発表を担当したジョン・チョー。ケイシー役には『スプリット』『スウィート17モンスター』で注目を集める若手女優ヘイリー・ルー・リチャードソン。予告編では、高名な建築学者の父を見舞うため、モダニズム建築の街として知られるコロンバスを訪れるジンの姿が。渋々、この街に滞在することになったジンは、地元の図書館で働くケイシーという女性と出会う。ジンは父親との確執から建築に対して複雑な思いを抱える一方、この街の建築に誰よりも詳しいケイシーは薬物依存症の母親のため、この街に留まり続けるしかない。そんな対照的な2人が巡る、街中にあふれる有名建築物たちが次々に映し出され、“建築のもつ人を癒す効果”を感じさせる映像となっている。メガホンをとったのは、これまでロベール・ブレッソンやアルフレッド・ヒッチコックについてのドキュメンタリーを撮り、名匠・小津安二郎の作品に欠かせない脚本家の野田高悟(のだ・こうご)に因んでコゴナダと名乗る新進監督。奥行きを生かした画面の構図や、間の取り方など、小津の芸術性を研究し、全てのシーンで「映画の教科書」のような巧みな構図を実現している。『コロンバス』は3月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:コロンバス 2020年3月よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開©2016 BY JIN AND CASEY LLC ALL RIGHTS RESERVED
2020年02月07日人間は周囲の環境から影響を受けながら成長します。そう思えば、「子どもが賢く育つ家」もあれば、そうではない家もありそうです。お話を伺ったのは、2010年に上梓した著書『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)が高く評価された一級建築士の八納啓創さん。そのままずばり、「子どもが賢く育つ家というものはあるのでしょうか」と聞いてみました。構成/岩川悟取材・文/清家茂樹写真/玉井美世子(インタビューカットのみ)「時間泥棒」になるツールの扱いに要注意「賢い」とひとことでいっても、そのとらえ方は人それぞれでしょう。子どもが社会に出たときにストレスフリーで過ごせて、楽しく生きていくために必要な力を身につけていることを「賢い」というのなら、これまでの記事で述べてきたように、その賢さは家の使い方次第で大きく伸ばすことができます。リビング学習やダイニング学習では、社会で生きていくために重要なさまざまな社会性を伸ばせますし(インタビュー第2回参照)、子ども部屋の使い方によって、子どもに自立を促す訓練をさせることもできます(インタビュー第3回参照)。では、他に子どもの成長のためにできる家やインテリアの使い方などについて、わたしがおすすめするものをいくつか紹介しておきましょう。まずはテレビの扱いです。テレビというものは、無意識に観ているとどんどん時間を奪ってしまうものです。人生を無駄にさせるものだといっても大げさではないでしょう。ですから、本当に観たい番組だけを観るという習慣をつけることが大切です。そのための方法は、テレビを観ないときには画面に布をかけておくというもの。また、リモコンの電池をつねに抜いておいて、使うときだけ入れる。そうすると、無意識にテレビを観ることがなくなります。これらのことは、ゲーム機やパソコンなどの扱いにもいえます。ゲーム機をテレビにつなぎっぱなしにせず、遊ばないときはしまう。パソコンもタイマーをセットして決まった時間でスリープモードになるようにする。そのようにして、「時間泥棒」になるツールが子どもの時間を奪ってしまわないようにしましょう。また、ファミリーライブラリーとでもいうような、家族でひとつの本棚を共有することもおすすめです。むかしからずっとある良書はやはりいい本です。そういった、親が好きな本、あるいは子どもが大人になったら読んでほしい本を本棚の高い位置に置いておく。小さいうちは下の棚を使っていた子どもも、成長するうちにそれらの本に興味を持ちはじめるでしょう。「そろそろ読めるかな」と挑戦して「やっぱりまだ読めない」とあきらめても、またいずれ挑戦するはずです。そうした、より高みを目指す姿勢が、賢い子に育つための下地となってくれるのです。家の使い方に対する夫婦間の価値観の共有が重要そして、まずなによりも夫婦で家の使い方に対する価値観を共有することが大切であり、大前提となります。リビング学習やダイニング学習をどうするのか、子ども部屋の扱いはどうするのか、そういったことについて夫婦で話し合って、できるだけ価値観を一致させることが理想です。たとえば、母親は「わたしは小さい頃にひとり部屋で育って寂しかったから、子ども部屋はいらない」、父親は「俺はきょうだいと同部屋だったから、子どもに個室を絶対与えてあげたい」というように、両親の意見が完全にバラバラだと、子どもは混乱してしまいます。もちろん、子ども自身に注目することも大切です。夫婦で話し合って、「小さい頃はダイニングで勉強をさせて、中学生になったら個室で勉強させる割合を半々くらいにしようか」といった方針になったとしても、子どもがダイニング学習でしっかり成果を出し続けていればそのままでもいい。子どもの様子を見ながら夫婦で話し合って、家や個室の使い方の方針をつねに更新していきましょう。子育ては親が思っている以上に大変で当然それから、これは直接的に家の使い方についての話ではありませんが、もうひとつつけ加えるなら、子育てそのものに対しての認識を夫婦で改めてほしいと思います。いま、共働き家庭が増えているとはいえ、やはり家庭での子育ての中心を担うのは母親でしょう。その母親のなかには、「子育てが難しい」「きちんと子育てできないわたしは駄目な人間だ」と思っている人も多いものです。でも、きちんとできなくて当然なのです。そもそも、日本の家庭の歴史を振り返ると、戦前までは大家族で住んでいて、子育てを担うのは子どもの祖父母でした。子どもの両親は働きに出ていたわけです。しかも、心理学的にも子育てをするための最適年齢は50歳以上といわれています。そう考えると、戦前の日本では理想的な子育てができていたといえます。ところが、1950年代以降にアメリカのライフスタイルを取り入れた結果、核家族化が進んで子どもと祖父母との関係性は希薄になり、子育ては主に母親の仕事になりました。それまで祖父母のふたりでしていた子育てを、突然、若い母親がひとりで行うようになった。そのための文化やノウハウなんてできていません。ですから、うまくできなくて当然なのです。では父親のほうはどうでしょうか。いまでこそこんな夫は減ったかもしれませんが、妻に対して「俺は必死に働いているのに、家でゆっくり過ごしながらの子育てがなんでうまくできないんだ」なんて考える夫もなかにはいます。でも、しっかりやり取りができる大人を相手にする仕事と、勝手の利かない子どもを相手にする子育てでは、後者のほうが比較にならないほど難しいものです。まずは、夫婦ふたりで、子育てとは本当に難しいものだと認識することが大切です。そのうえで、どうやって子育てのサポート体制を整えるのかを考えてください。子どもが賢くすくすくと育つには、子どものいちばん身近にいるお母さんの精神状態が安定していることがなによりも大切です。『なぜ一流の人は自分の部屋にこだわるのか?』八納啓創 著/KADOKAWA(2015)■ 一級建築士・八納啓創さん インタビュー記事一覧第1回:子どもの人格形成への影響力大!リビングとダイニングが極めて重要な場であるわけ第2回:一級建築士が語るリビング学習のメリット。「子ども部屋で勉強」ではなぜいけないの?第3回:「日本の子ども部屋」に欠けている大事な思想。子どもの個室が持つ本質的な役割とは第4回:子どもが賢く育つ家はどうつくる?一級建築士がアドバイスする家とインテリアの使い方【プロフィール】八納啓創(やのう・けいぞう)1970年6月15日生まれ、兵庫県出身。一級建築士。株式会社G proportionアーキテクツ代表取締役。「孫の代に誇れる建築環境をつくり続ける」を100年ビジョンに、一般建築ではデザイン性と省エネ性能、快適性を追究。住宅設計では、「笑顔があふれる住環境の提供」をコンセプトに、年齢層は20代から80代、会社員から経営者、作家など幅広い層の住宅や施設設計に携わる。また、現在では、これまで携わってきた公共・商業建築設計の経験と住環境ノウハウを生かして、商業建築プロジェクトや建物環境再生による商業施設の活性化プロジェクト等にもかかわっている。著書に『「住んでいる部屋」で運命は決まる! 心も空間も、スッキリさせる方法』(三笠書房)、『住む人が幸せになる家のつくり方』(サンマーク出版)、『わが子を天才に育てる家』(PHP研究所)がある。【ライタープロフィール】清家茂樹(せいけ・しげき)1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
2020年01月18日20世紀以降の国内外のアンビルト/未完の建築に焦点を当てた展覧会『インポッシブル・アーキテクチャー ―建築家たちの夢』が、国立国際美術館で3月15日(日)まで開催されている。この展覧会は、これまで完成に至らなかった構想、提案に留まった刺激的なアイディア、技術的には可能であったものの、社会的条件や制約で実施できなかったプランなど、アンビルト/未完の建築を、約40人の建築家、美術家による図面、模型、関連資料を通して読み解いていくもの。展覧会のタイトルに使われている「インポッシブル」という言葉は、単なる「不可能」という意味ではない。ここでの不可能は、建築の可能性の境界を問い、不可能性に焦点をあてること。つまり、建築における極限の可能性や潜在力を浮かび上がらせようとすることが、この展覧会のねらいである。例えば、展示される《ウラジーミル・タトリン、第3 インターナショナル記念塔》のCG映像やヤーコフ・チェルニホフの書籍挿絵にあるように、1930年代のロシアでは、大胆な曲線を描いた建築を構想していた。実際つくるには相当の技術が必要であろうが、当時の社会的な制約により実現には至っていない。そのようにこの展覧会を見て行くと、完成や実現がなされなかった建築には、既存の制度に対して批評が込められていたり、作者の夢や思考がより直接的に表現されているのではないか、ということに気づくはずだ。なかなか見ることも考えることもできない、貴重な建築の側面が分かる、とても興味深い展覧会である。【関連リンク】 国立国際美術館( )映像制作:長倉威彦《ウラジーミル・タトリン、第3 インターナショナル記念塔》CG 映像 1998 年ヤーコフ・チェルニホフ 書籍『建築ファンタジー 101 のカラー・コンポジション、101 の建築小図』より 挿図 1933 年 個人蔵ブルーノ・タウト《生駒山嶺小都市計画、遠望図、1933 年12 月》1933 年 大和文華館蔵制作監修:瀧澤眞弓《瀧澤眞弓、山の家、模型》1986 年 個人蔵安藤忠雄《中之島プロジェクトⅡ―アーバンエッグ(計画案)公会堂、断面図》1988 年 ギャラリー ときの忘れもの蔵山口晃《都庁本案圖》(会田誠提案による)2018 年 個人蔵 撮影:宮島径
2020年01月08日都内のホテルで開かれたぐるなびの2019年「今年の一皿」記者発表会に、世界的建築家の隈研吾さんが登場! 今年最も話題となった食べ物が紹介されました!「今年の一皿」にノミネートされたのは…?「今年の一皿」とは、日本の食文化を遺産として記録し後世に残すために2014年にはじまったもので、今回で6回目となります。飲食店情報サイト「ぐるなび」のビッグデータから抽出されたデータをもとに、ぐるなび会員アンケート、メディア関係者が審査してノミネートされた4点のなかから「今年の一皿」が決まります。今回ノミネートされたのは、「スパイスカレー」、「タピオカ」、「チーズグルメ」、「発酵食メニュー」の4点。どれも今年話題になったものばかりですね。このなかから、特に日本の世相を反映し象徴する食が「今年の一皿 」として選出されます。まずは準大賞の発表です。それは……発酵食メニューです!2019年は発酵食材を使った飲食店やカフェなどが増え、さらに健康志向から、納豆やみそなど日本の伝統的な食文化が再評価されたことなどが選定理由となっています。「今年の一皿」は…?そして、2019年「今年の一皿」は……タピオカです!選ばれた理由として、ブームを越えて社会現象になったこと、お店が増えて自分好みにカスタマイズするなど多様性に富んだ楽しみ方ができること、などが挙げられました。隈さんも大好き…発表会の会場には、スペシャルプレゼンターとして建築家の隈研吾さんが登場! 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとなる新国立競技場の設計を手がけたことでも知られる隈さんが、メッセージを述べました。隈さんタピオカさん、おめでとうございます(笑)。私もタピオカは大好きです。やわらかいものが好きで、建築も都市も、今はやわらかい方に向かっていると思いますので、今年の一皿として、やわらかい、ふわふわのタピオカは最高だと思います。700店舗を制覇!ステージ上には「たぴりすと。」の奈緒さんと華恋さんも登場。現在大学4年生のお二人は、これまでに700店舗で1,500杯以上のタピオカを飲んだという筋金入りのタピオカ愛好家です。SNSでタピオカについて発信するだけでなく、ドリンク容器のポイ捨てをなくすためのゴミ拾い活動を呼び掛けて実践するなど、社会問題にも積極的に取り組んでいるとのこと。お二人ともスタイルがよく、お肌もつやつや! タピオカは美容にもよさそうですね~。明治期から食べていた…!続いて、タピオカに詳しいフリーライター・同志社女子大学非常勤講師の長友麻希子さんと、WEBマガジン『メガブラジル』編集長の麻生雅人さんも加わり、トークセッションが行われました。大学院在学中に、論文『日本におけるタピオカ』を発表されたこともある長友さんによると、日本でタピオカを食べはじめたのは明治期とのこと。西洋料理の食材として紹介されたのが最初で、スープの浮き実や、デザートのタピオカプディングとして入ってきたそうです。意外にも長い歴史があったのですね。また、ブラジルの食文化に詳しい麻生さんによると、現在ブラジルではタピオカがグルテンフリーのダイエット食として人気があり、都会のおしゃれな市場で売られていたり、タピオカのファストフード店ができたりしているそうです。麻生さんはタピオカ粉でつくるクレープや、パン、揚げ物など、さまざまな料理も紹介してくれました。ブームはまだまだ続く…?今年ブレイクしたタピオカですが、まだブームは続くのでしょうか?タピオカの原料キャッサバ芋例えば、タピオカの原料であるキャッサバ芋は、グルテンフリー食材として注目されているので、この先さまざまな形で日本の食文化に取り入れられていく可能性があるそうです。2020年にタピオカがどう進化していくのか、引き続き注目していきたいですね。以上、2019年「今年の一皿」発表会レポートでした!料理写真:画像提供「ぐるなび総研」
2019年12月10日仕事と暮らしをひとつに都心にもアクセスがいい、静かな住宅街。そこで龍光寺建築設計一級建築士事務所を営む、龍光寺眞人さんと池守由紀子さん、そして二人のお子さんが暮らし始めた住まいを訪ねた。事務所兼住宅の建物の入り口は大きなガラス張りで、いわゆる戸建という感じはしない。「ここはなんだろう?という感じで見ながら通り過ぎる人もけっこういますね」と話す龍光寺さん。以前もこのあたりに家を借りて暮らしていたという。「ただ、仕事場が別だと子どものことも心配で仕事にも集中できなかったので、職住を一緒にしたいと思い土地を探し始めました」。なかなか空きが出ず、2年ほどかかったという土地探しも、やっと古い家屋のある24坪ほどの土地を購入し、自分たちで設計を始めた。そしておよそ8カ月の工事を経て今年完成した。打ち合わせスペースの土間は基礎をそのまま現しにした。その下には床暖房が埋められている。半地下の仕事スペースは、壁に向かって仕事はしたくないと、中央に円形のテーブルを置いた。内と外のいい関係設計にあたってまず考えたことは、自分たちの生活と街との距離感だったという。「この敷地内で事務所は別棟にする案もあったのですが、そうすると壁が増えてコストもかかるし、何より仕切って別世界をつくるようなことはしたくなかったんです。このあたりに長年住んでいますから近所の人などの雰囲気もわかっているので、街に向けてオープンに暮らした方が気持ち良さそうだな、というイメージがありました」と龍光寺さん。入り口にガラス張りのサッシを選んだことや、入ってすぐの打ち合わせスペースは土間で外との段差がほとんどないことからも、内と外との境界がいい意味であいまいになっていることを感じる。「家の中は下から上に向かって徐々にプライベートになっていきます。壁をつくると狭くなるのでなるべく仕切らず、窓は大きく取りました」。ドアを開けると土間の床と高い天井の開放感のあるゆったりとした打ち合わせスペース。その奥の半地下が夫婦の仕事場。土間から階段を上がるとダイニング、さらに階段を上がるとプライベートなリビングや子ども部屋や水周りとなっており、各スペースが壁ではなく階段によって分けられている。ダイニングスペースからは階段下、その向こうの外の通りへの見通しもよく、子どもが遊んでいる気配も感じられる。ダイニングから上がったフロアにはテレビを観たりする小さなリビングスペースを。奥が子供部屋で、梯子の上のロフトは夫婦の寝室。ダイニングからの気持ちの良い見下ろし。天井には木毛セメントボードを貼った。階段はスチールで見通しを邪魔しないすっきりさ。リビングスペースの窓は大きく取るために、ビル用のサッシを入れた。さりげない親しみやすさをこうして考えられた家には、近所の子どもや友人たちもよく遊びに来るという。そんな時は土間の打ち合わせスペースがパーティー会場に。「近所の子はガラス越しに中が見えるから遊びに来やすいみたいですね。それに若い人は共働きなどで日中家にいる人が少ないから、なんとなく安心感もあるのかなと。自分たちとしてはやっと仕事と生活を一緒にすることができて、子どもも見ながら仕事もするというのは効率としてはあまりよくないかもしれませんが、精神的な面では安定しましたね」と池守さん。「子どもたちには、私たちの設計した家をいろいろと見せていたので、早く自分の家がほしかったみたいですごく喜んでくれています。でも、家の写真を携帯電話の待ち受け画面にしている僕がいちばん気に入っているかもれません」と龍光寺さんは嬉しそうに話す。空間が狭くならないよう、照明器具は最低限のものを。電球ソケットは思ったよりも明るく、灯りをつけないときは存在感もさりげない。ロフトの寝室は子ども部屋ともつながっており気配も感じられるので、大人も子どもも安心して眠れる。バスルームも建具はつけずにシャワーカーテンのみで仕切る。メンテナンスも簡単。大きなガラスが印象的な外観。手前の駐車スペースから入り口ドアまでの動線も親しみやすさを感じる。
2019年12月09日