ダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』が、2月14日に開幕。これに先立ち、再演版となる『おおきく振りかぶって』の公開ゲネプロと囲み取材が行われた。【チケット情報はこちら】ひぐちアサの野球マンガ『おおきく振りかぶって』を、成井豊が舞台化する本シリーズ。囲み取材では、主人公・西浦高校ピッチャーの三橋廉役を演じる西銘駿が「笑いの絶えない現場だった」と楽しい稽古を振り返る。一方で、脚本・演出を手がけた成井は2作品で4試合というゲーム数の多さを強調しつつ、「打席やボールカウントの行方を、みんなで忘れる瞬間があった」と裏話を披露。登壇したキャストから口々に「すみません!」と謝罪の声が飛ぶと、会見場は笑いに包まれた。三橋とバッテリーを組むキャッチャー・阿部隆也役の大橋典之は、再演版への出演でシリーズ全てに登板。これを踏まえて、三橋と阿部の信頼関係を「足し算が掛け算に変わって、相乗効果が生まれてきた」と表現する。『秋の大会編』でメイン対戦校となる、武蔵野第一高校ピッチャー・榛名元希役の神永圭佑はシリーズ初参加。野球経験はあるものの「左投げは初めて」らしく、投球ポーズの会得に苦労したエピソードを語った。榛名の相棒となる同校キャッチャー・秋丸恭平役の佐伯亮は「オープニングとエンディングのダンスに注目してください」と呼びかける。ダンスシーンに用いられる楽曲は、初演に同じくBase Ball Bearの「ドラマチック」。再演版には新曲「いまは僕の目を見て」も挿入されることから、Base Ball Bearのメンバーも応援に駆けつけた。小出祐介は「アニメ版(2007年)で使ってもらうため、『ドラマチック』は1か月くらいかけてつくった大切な楽曲」と思い入れを語り、関根史織・堀之内大介は「新曲も印象的なシーンで使っていただけて光栄です」と笑顔を覗かせる。公開ゲネプロでは、球場に見立てた八百屋舞台をところ狭しと走り回るキャストによって白熱した試合がスピーディに展開。三橋にとって因縁の三星学園と繰り広げる初試合、前年度に甲子園へ出場した強豪・桐青高校との初陣を通じて、西浦高校野球部としてチームの結束が高まっていく様子が描かれた。上演時間は約120分(休憩なし)。公演は2月24日(月・祝)まで、東京・サンシャイン劇場にて。チケットぴあでは現在、当日引換券を販売中。取材・文:岡山朋代
2020年02月17日2003年に始まった連載が今なお続く、ひぐちアサによる人気野球漫画『おおきく振りかぶって』。アニメ化やゲーム化に続き、2018年2月には『おおきく振りかぶって』、さらには同年9月に『おおきく振りかぶって 夏の大会編』と、2度にわたって舞台化されたことも話題を呼んだ。そして2月14日(金)、『おおきく振りかぶって』の再演と、第3弾となる新作『おおきく振りかぶって 秋の大会編』を交互に上演するダブルヘッダー公演が東京・サンシャイン劇場にて開幕する。脚本・演出は今回も、演劇集団キャラメルボックスの成井豊が手がける。主人公は、中学時代は野球部のエースだったものの、祖父が経営する学校だったため「ヒイキでエースをやらせてもらっている」と言われ続け、弱気で卑屈な性格になってしまった三橋廉。隣県にある西浦高校に入学した彼は、部員わずか10名の弱小野球部に強引に入部させられ、はからずもエースを任される。西浦高校の挑戦の始まりを描く『おおきく振りかぶって』から、春の大会を経て大きく成長した彼らが次なる戦いに挑む『秋の大会編』へ……。11日間の日程中には、両作を1日で観られる日も用意されており、文字通り“ダブルヘッダー”を楽しんでみるのも一興だ。ダブルヘッダー特別公演 『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』はサンシャイン劇場で2月24日(月)まで上演。文:町田麻子
2020年02月12日ダブルヘッダー特別公演『おおきく振りかぶって』『おおきく振りかぶって 秋の大会編』の顔合わせが、12月中旬に東京都内で行われた。【チケット情報はこちら】ひぐちアサの野球マンガ『おおきく振りかぶって』を舞台化する本シリーズ。“ダブルヘッダー特別公演”を謳う今回は、2018年2月に上演された第1弾『おおきく振りかぶって』の再演版と、第3弾となる新作『おおきく振りかぶって 秋の大会編』の2作品が同時上演される。脚本・演出は、これまで本シリーズを手がけてきた成井豊が担当。稽古初日となるこの日、キャスト・スタッフが一堂に会し“船出”に向けて決意を新たにした。ひと言ずつの挨拶で「2020年もマウンドに立てて、本当に嬉しく思っています!」と口火を切ったのは、主人公の西浦高校ピッチャー・三橋廉を演じる西銘駿。劇中で彼とバッテリーを組む捕手・阿部隆也役の大橋典之は「成長の過程を描けたら」と意気込んでみせる。原作者ひぐちから届いた応援メッセージが代読されると、成井は「スピード感を大切に、寒い時期のサンシャイン劇場を熱くしましょう!」とカンパニーを鼓舞した。続いて再演版・新作の順で本読みが行われると、稽古場の空気は一気にヒートアップ。モノローグや実況中継によって、一球ごとに緻密な心理戦が繰り広げられる『おお振り』ならではの臨場感があたりを満たした。特に再演版では、西銘をはじめとする初演の参加メンバーがすぐに勘を取り戻し、表情や声色を自在に操りながらキャラクターを演じる様子が見受けられる。武蔵野第一高校との激闘が綴られる新作は疾走感にあふれ、早くもスピード感を意識する成井の要望に応えていた。なお、本読みパートは後日「げきぴあ」にて2回に分けてレポートする。また、再演版&新作チケットの2種のチケットの購入者には「ダブルヘッダー特別公演記念特典」として原作者ひぐちのサイン入り描き下ろしミニ色紙が贈呈される。“西浦高校バッテリー”と“武蔵野第一高校バッテリー”の2バージョンを揃えてみては。(両作1回ずつの観劇で色紙1枚贈呈。)公演は、2020年2月14日(金)から24日(月・祝)まで東京・サンシャイン劇場にて。チケットぴあでは現在、12月21日(土)10:00からの一般発売を前に、先行先着チケットが販売中だ。取材・文:岡山朋代
2019年12月20日東野圭吾の初期の傑作ミステリ「仮面山荘殺人事件」が成井豊の演出、平野綾、木戸邑弥、元乃木坂46の伊藤万理華、辰巳琢郎らをキャストに迎えて舞台化。9月28日に東京・サンシャイン劇場で開幕した。【チケット情報はこちら】成井にとっては「容疑者Xの献身」、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」に続き、3作目の東野作品の舞台化となる本作。舞台は製薬会社社長の森崎伸彦(辰巳)が所有する山荘。数か月前に事故で亡くなった娘・朋美(平野)を偲ぶため、朋美の婚約者だった高之(木戸)や従妹の雪絵(伊藤)、親友だった作家の桂子(星乃あんり)ら、朋美を知る8名が山荘に集まるが、そこに逃亡中の銀行強盗犯2人組が侵入する。やがて一人が死体で発見されるが、状況から見て犯人は強盗犯ではないことが判明し…。時折、高之と朋美の出会いや婚約に至る経緯、そして突然の悲報といった過去の回想が差し込まれる以外は、ほとんどの場面が山荘の広間で展開するため一見すると演劇向きにも思える。演出はシンプルで、前半はゆったりとしたテンポで進むが、殺人事件が起きてからは一気にギアチェンジ!山荘での殺人に加え、朋美の死の真相をめぐる謎とき、犯人の判明、そこからの驚きの行動、そしてまさかの大どんでん返しとジェットコースターのような驚くべきアップダウンが繰り広げられる。東野作品がこれほど絶大な人気を得ている要素のひとつが、ミステリ、推理小説としてのクオリティの高さ、謎解きの面白さだけにとどまらない、人間ドラマのパートがもたらす感動だが、本作でもそれはいかんなく発揮されている。本作でこの部分を大きく担っているのが、平野が演じるいまは亡きヒロイン・朋美の存在である。事故で夢を絶たれた絶望、高之との出会いをきっかけに明るさを取り戻していくさまが、決して多いとは言えない出演シーンの中で感情豊かに表現されているのに加え、そんな彼女を心から大切に思っている周囲の人々(とそう思わない人間)によって、彼女の人間性、そしてこの事件の真相が浮かび上がってくる。山荘での殺人事件は誰が何のために起こしたのか? 朋美の死は本当に事故なのか? それとも他殺なのか? 登場人物のひとりが途中でこう漏らす。「死体よりも生きている人間の方が怖い」――。登場人物たちの仮面が1枚ずつはがされ、その素顔が露わになっていくが、全てが明らかになったとき、観客は東野が紡ぎ出し、成井が組み立てたこの芝居の構造そのものにあっと驚かされる。「仮面山荘殺人事件」は、10月6日(日)までサンシャイン劇場、10月11日(金)から13日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼ、10月19日(土)に新潟市民芸術文化会館・劇場にて上演。取材・文:黒豆直樹
2019年09月30日10代のころから役者を志し、キャリアを積み重ねて、芸歴はすでに30年以上。ヤクザや刑事、孤高にグルメを楽しむ輸入雑貨商など、幅広い役柄を演じてきた松重豊(56)が、映画『ヒキタさん!ご懐妊ですよ』(10月4日公開)では、男の妊活に挑む小説家を好演。本作が映画初主演となる。「(映画初主演について)周りの方がいろいろおっしゃってくれるほど、そんなに本人は意識してないです。最近“バイプレーヤー”なんて呼ばれたりしますけど、その言葉自体、あのドラマ(『バイプレーヤーズ』’17年・テレビ東京)をやることになって、初めて認識したくらいで。だから、初主演になにか感慨がありますかって言われても、ないに等しいんですよね」(松重・以下同)本作は、年の離れた妻・サチ(北川景子)と夫婦2人で気ままな生活を続けていくつもりだった小説家のヒキタクニオ(松重)が、ある日「ヒキタさんの子どもに会いたい」とサチが言いだして……。“男の妊活”というテーマを、コミカルに温かく描く。役作りで意識したのは?「実はね、役作りって今までとくにやったことないんです。たとえば瓦職人の役なら『俺の瓦が一番だぞ』って気持ちが入っていればいいわけだから。今回も、もし自分が年の離れた奥さんに、突然『子どもがほしい』って言われたらどうしようっていう“if”を考えました。ただ、北川景子さんと並んだときに、ちゃんと夫婦に見えるのかっていうのは不安でしたね。だって、2回りも年齢差があるんですから。数えてびっくりしました(笑)。でも、現場でコミュニケーションを取るなかで、本物の夫婦なんじゃないかって関係性を作ることができて。押しも押されもせぬ美女と、そういう幸せな時間を過ごせたのは役得でしたね」最近、世間のイメージが“強面”から“かわいい”に変わってきている気がするが。「正直なところ戸惑ってますよ。僕は自分の顔を鏡で見るのも好きじゃないほうなんで。これまでは“強面”ってイメージで、道行く人にも声をかけられなくてラクだったんですけどね。遠藤(憲一)さんとか、光石(研)さんとかもそうだと思うんですけど、僕ら自分たちのこと“かわいい”なんて、見苦しいこと考えてませんからね。やめてくれよって思います(笑)。でも、亡くなった大杉(漣)さんだけは、自分のことを『かわいいでしょ?』って意識していたんじゃないかな(笑)」芸能生活30年以上。これまで演じたなかでハマり役だと思ったのは?「瀬々敬久監督の映画『SFホイップクリーム』(’02年)で、宇宙のある星に犯罪者を移送する役をやったんですけど、あれは楽しかったですね。ちなみに、移送されるのが武田真治くん。フィリピンで撮影をして、現地の人が宇宙人役で。くだらないのに、すごく笑えるんですよ」今後、やってみたい役は?「僕はけっこう受け身でご依頼いただいたものにお応えするってスタンスだから、この役がやりたいって思わない。まあ、ヤクザや刑事は年に何回もやってますから、まったく毛色の違う役がありがたかったりします。今回のヒキタさんはそれこそ、これまで演じたことのないタイプだったので、すごくおもしろかったです」役者を始めたばかりの自分に、どんな言葉をかけたい?「無視しますね。身長が180センチ以上もあって、いつもケンカ売ってやろうなんて思ってる若い俳優、僕は相手にしませんから(笑)」
2019年09月30日そのトリックの斬新さと予想を裏切る展開で、東野圭吾作品“初期の名作”と名高い小説『仮面山荘殺人事件』。本作の初舞台化作品が本日9月28日、東京・サンシャイン劇場で幕を開ける。東野圭吾作品といえば、映画やドラマ、舞台化などのメディアミックス作品も数多いのは御存知の通り。しかしこの『仮面山荘殺人事件』は、これまで映像化も舞台化もされてこなかった。1990年刊行の作品ということもあり、ミステリ好きの間では知られているものの、一般の東野作品ファンでも「読んだことがなかった」という人が多いのではないだろうか?そんな今作の演出を手がけるのは、演劇集団キャラメルボックスの成井豊。東野作品では『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の舞台化を手がけ、高い評価を得ているだけに、今作にかける意気込みは大きい。そもそも、今回の舞台化は成井自身の「この作品を舞台化したい」という強い要望から実現したものなのだ。物語の舞台となるのは、製薬会社社長が所有する山荘。交通事故で亡くなった社長の娘を偲ぶため、娘の婚約者や従姉妹など、8人の男女が集まってくる。ところがその山荘へ逃亡中の銀行強盗が侵入、何度も脱出を試みる8人だが、そこで殺人事件が発生し……というストーリー。この緊張感溢れる密室劇を具現化するため、キャストも実力派が顔を揃えた。主演は声優としてのキャリアはもちろん、近年はミュージカル界で活躍がめざましい平野綾と、2.5次元作品から本格ミュージカルまで幅広い活躍を見せる木戸邑弥。山荘の所有者である製薬会社社長役に辰巳琢郎、従姉妹役には乃木坂46卒業後初の舞台出演となる伊藤万理華らが名前を連ねる。また、5月に活動休止を発表したキャラメルボックスから畑中智行、坂口理恵、筒井俊作、原田樹里らも出演。成井作品の世界観を体現する存在として、しっかりとしたチームワークを見せてくれることだろう。トリックに騙される快楽はもちろん、事件の根底にある人と人との「思い」が判明したときのカタルシス、これこそが東野作品の真骨頂。舞台ならではの熱量で、ぜひその感動を味わおう。舞台『仮面山荘殺人事件』は、10月6日(日)までサンシャイン劇場で公演の後、10月11日(金)から13日(日)までサンケイホールブリーゼ、10月19日(土)には新潟市民芸術文化会館 劇場に上演される。文:川口有紀
2019年09月28日尾崎豊のデビュー当時から20代前半のライブ映像と貴重な映像記録を集約した映画『尾崎豊を探して』が、ライブ・ビューイング・プレミアムとして全国公開。上映期間は、2020年1月3日(金)から16日(木)までの2週間限定。26歳の若さで夭折した尾崎豊、彼は何を伝えようとしたのか既成のルールの中で生きていく苦悩を歌に託し、優しさとは何か、愛するとは何かを求め続けたシンガーソングライター尾崎豊。高校生の時、シングル「15の夜」とアルバム『十七歳の地図』でデビューを果たし、3枚目のシングル「卒業」で彼の名は全国へと広まった。さらに、2ndアルバム『回帰線』、3rdアルバム『壊れた扉から』のヒットを受けて尾崎の人気は絶頂期を迎えることとなる。10代の若者たちのカリスマ的存在となった尾崎だが、20代を迎える頃、突然無期の限活動休止を発表し渡米。音楽の方向性に迷走し、異国でもその答えを出せなかった尾崎は、帰国するも闇の精神状態へ。ツアー中止、アルバム発売延期の繰り返し、母の死……。そして26歳の若さで夭折した。「卒業」「I LOVE YOU」などヒット曲に隠されたメッセージ映画『尾崎豊を探して』では、短い人生の中で世に送り出された「卒業」「I LOVE YOU」「シェリー」「15の夜」など、今も輝き続ける楽曲にフォーカスし、尾崎が“何を伝えようとしていたのか”に迫る。新宿ルイードの初ライブにさかのぼり、地方公演、ニューヨーク、大阪球場、国立代々木競技場、そしてなにげない日常まで、400時間にも及ぶ映像記録から断片をひろい集めてより合わせた。本作をプロデュースした音楽プロデューサーの須藤晃は、「I LOVE YOU」「卒業」「15の夜」に関わった人物でもある。そんな須藤は、公開にあたって「彼を追いかけているだけの時間だった気がする。絶対に追いつかない、捕まえようとするとふっと消えてしまうような。彼の言おうとすることを作品に落とし込むことだけに必死だった。正体を見たことはなかったんじゃないかと不安になったことが何度もある。尾崎豊の人生にまっすぐ真剣にぶつかってケジメをつける。青くさいですが、それが大人としての僕たちの責任だと思います。」と述べている。【作品情報】『尾崎豊を探して』公開期間:2020年1月3日(金)~16日(木)2週間限定全国公開監督・撮影・編集:佐藤輝プロデュース:須藤晃/御領博/福田信制作:テル・ディレクターズ・ファミリィ制作協力:アイソトープ/カリントファクトリー製作:『尾崎豊を探して』製作委員会(ライブ・ビューイング・ジャパン/マザーエンタープライズ/ソニー・ミュージックレーベルズ/東京テアトル/グランドマザーミュージックビジョン/KDDI)配給:東京テアトル/ライブ・ビューイング・ジャパンタイトル&キャッチコピー:日暮真三ポスターデザイン:十河岳男2019年/カラー/16:9/STEREO/95分/DCP PG12
2019年09月13日「I LOVE YOU」「卒業」「シェリー」「15の夜」で知られる尾崎豊のデビュー当時から20代前半のライブ映像と貴重な映像記録で構成された『尾崎豊を探して』が、ライブ・ビューイング・プレミアムとして来年1月に公開されることが決定した。尾崎さんは、人がつくりあげたルールの中で生きていく苦悩を歌に託し、優しさとは何か、愛するとは何かを求め続け、26歳の若さで死去した。尾崎さんの歌は何を伝えようとしていたのか…。新宿ルイードの初ライブに遡り、地方公演、N.Y.、大阪球場、国立代々木競技場、そして何気ない日常まで、400時間にもおよぶ映像記録から断片をひろい集め、糸をつむぐようにより合わせた「尾崎豊を探す旅」。映像作家・佐藤輝の執念に突き動かされた編集作業を経て、初めて陽の目をみるありのままの尾崎さんが映し出される。今回の公開決定に合わせて、本編から厳選された映像とポスタービジュアルも到着。映像は、ライブ映像などが収められた2種類が公開された。30秒版60秒版『尾崎豊を探して』は2020年1月、全国にて公開予定。(cinemacafe.net)
2019年09月10日東野圭吾の小説『仮面山荘殺人事件』がこの秋、初めて舞台化される。とある山荘を舞台に繰り広げられる密室劇。1990年に発表され、その予想を裏切る展開から“初期の名作”と名高い作品だ。【チケット情報はこちら】平野綾、木戸邑弥、辰巳琢郎と注目のキャストが揃う中、脚本・演出を担当するのはこれまでも『容疑者Xの献身』『ナミヤ雑貨店の奇蹟』と東野作品の舞台化を手がけてきたキャラメルボックスの成井豊。ほとんどの東野作品を読んではいたものの、今作は「タイトルが恐そうだったから」という理由でつい後回しにしていたのだとか。そして初めて読んだのが2年ほど前。「もう、大感動して。“これを舞台でやりたい!”と思ってしまったんですよ。山荘に閉じ込められた人々の間で起こる殺人事件なので、舞台にもしやすい。これは面白いのではないか、と。ただ問題は、私の場合はそういう“舞台にしやすい”ものをむしろやらない人間だということ(笑)」この作品を自ら舞台化しても、自分らしさは出ない。それでもやりたい!と思ったのは、この作品の中からとある“思い”を感じたから。「これはネタバレになっちゃうんで詳しくは言えないんですけど、最後真相がわかった時のヒロインの思い、ですよね。そもそもトリックの凄さだけでは終わらない、人間ドラマの深さが東野作品の魅力。今作もそこに感動したんです」山荘に集まる人物のひとり、雪絵を演じるのは元乃木坂46の伊藤万理華。グループ卒業後、初の舞台出演となる。「ソロになってからも舞台はやりたいし、いつかやるんだろうなというのはずっと思ってました。でも乃木坂時代に出ていた舞台は、周りに頼れる人……メンバーという仲間がいた中でやってきたもの。今度はひとりで戦うというのが、今すごく恐怖で。でもこの作品に呼ばれたということは、何か意味があるんだろうなと思ってるんです」そんな不安をポツリと吐露した伊藤に、成井が優しく語りかける。「大丈夫、“ひとりで戦わなくちゃ”って思うのは初日だけ。稽古場に行ったら色んな人が寄ってきて仲良くなれるし、そもそも今回は出演者みんなが舞台上にいる時間が多いから、ひとりで戦ってる場合じゃない(笑)。チームとして強くならないと、演劇は面白くないから!」。その言葉を聞いて、ホッとしたように笑う伊藤。「舞台の稽古をしている間は、いつもの自分よりテンションもモチベーションも一段上がっている気がする。その状態が好き」と舞台愛を語る伊藤に、成井も笑顔を見せる。出演者たちがチーム一丸となり、客席が“騙される”快楽。ぜひ劇場で体感して欲しい。舞台『仮面山荘殺人事件』は9月28日(土)から10月6日(日)まで東京・サンシャイン劇場、10月11日(金)から13日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼ、10月19日(土)に新潟市民芸術文化会館(りゅーとぴあ)で上演。
2019年07月11日キャラメルボックス初期の代表作『ナツヤスミ語辞典』が5月18日、六本木・俳優座劇場で幕を開けた。【チケット情報はこちら】小学校の産休代用教師だったクサナギ(多田直人)のもとに、カブト(石森美咲)、ヤンマ(金城あさみ)、アゲハ(石川彩織)の3人の教え子たちから手紙が届く。そこに書かれていたのは、3人が夏休みの中学校で体験した不思議な出来事だった……。30年前の1989年に初演された本作は、1991年に再演、2003年に再々演された。今回、演出の成井豊が上演を決めた理由は、劇団史上初の試みとして劇団員全員に再演したい作品についてアンケートをとったところ、この作品が一位となったからだという。それほど頻繁に上演されている作品ではないにもかかわらず、根強い人気を誇る本作。劇団員の気持ちと呼応するように、公演初日のカーテンコール、鳴り止まない拍手から、観客もいかにこの作品を待ち望んでいたかがよくわかる。初期作品ということで、近年のキャラメルボックスしか知らない観客は少し戸惑うかもしれない。俳優のエネルギッシュな台詞回しでスピーディーに展開し、物語はとてもファンタジックで、いかにも“演劇らしい”勢いに満ちた作品だ。しかし、逆にそんな部分が新鮮に感じられる。物語はカブトたち中学生と、学校に現れた不思議な男女、ウラシマ(鍛治本大樹)とナナコ(森めぐみ)の出会いにより、思いもかけない方向へと転がっていく。もう子どもではないから、いろいろと飲み込まなければいけないことがあるのはわかる。かといって、自分の心を封じ込めて、大人の言うことを飲み込むこともできない……中学生という不安定な年頃のリリカルさが、観る人の胸へダイレクトに響いてくる。本公演のホームグラウンドであるサンシャイン劇場に比べて距離感が近い劇場での上演ということも、作品の魅力を増幅しているのかもしれない。また、初演でカブトを演じた伊藤ひろみが今作ではヤンマの母親役を、クサナギを演じた西川浩幸がクサナギへ手紙を運んでくる「郵便屋」役として出演している。往年のファンにとってはたまらないキャスティングであると同時に、入団4年目で初主演の重責を担う石森美咲をベテラン勢がしっかりと支えていく構図は、劇団としての歴史と懐の深さをも感じさせる。思い返せば学生時代、夏休みに突入したというだけで、毎日が魔法をかけられたようにキラキラと輝いていなかっただろうか?そんな日々を思い出すような、特別な時間と空間に満ちた舞台。これもまた、演劇という魔法のなせる業なのかもしれない。公演は5月26日(日)まで、東京・俳優座劇場で上演される。前売りチケットは完売。5月23日(木)追加公演のみチケットぴあで当日引換券を発売中。当日券は開演の1時間前から劇場にて販売。取材・文:川口有紀
2019年05月20日演劇集団キャラメルボックス『スロウハイツの神様』が、3月22日、東京・サンシャイン劇場で開幕した。辻村深月の同名小説を原作に、アパート“スロウハイツ”のオーナーである脚本家・赤羽環(原田樹里)と、住人の小説家チヨダ・コーキ(大内厚雄)、環の友人たちの共同生活が描かれてゆく。2017年に上演され、演劇好きのみならず、原作ファンからも高い評価を得た作品だ。【チケット情報はこちら】劇団史上最短での再演というが、観るとその理由に納得がいく。まずは初演時、SNSを中心に好評価が広まっていただけに、「観たかった!」という人のニーズを叶えていること。特に初演時は東京公演のみだったものの、今回は大阪公演も。待ちわびていた人も多いのでは?また、原作はもともと群像劇の要素が強い。環とコーキだけでなく、画家志望のすみれ(小林春世)、漫画家の卵である壮太(玉置玲央)、映画監督を目指す正義(松村泰一郎)らクリエイターへの夢を持つスロウハイツの他の住人たちとの関係性が、作品の印象に大きく影響してくる。初演時とほぼ変わらないキャストでの再演が叶ったことから、俳優陣のコンビネーションも強固なものとなり、会話もより自然なものに。もしかしたら中盤までは、初演よりもさらに静かな印象を受けるかもしれない。ただ重要なのは、この作品は彼らの何気ない会話ひとつひとつが見事な伏線となっているということ。スロウハイツでの生活のリアリティが増していることで、後半にやってくる“怒涛の伏線回収”の効果が増している。今作は“人と人との物語”であるのは当然だが、上質のミステリーでもあるのだ。ひとつの大きな謎が解けた後にもっと大きな謎の秘密が明かされ、観客に畳み掛けられていく構造の見事さ。しかもパズルのピースひとつひとつは、登場人物たちの“想い”だ。だから初演を観た観客は、記憶が新しいうちにこの再演を観られるのはとても幸運なことなのではないだろうか? 1度観たときには気がつけなかった、別の感動が訪れるはず。かつ、演出の成井豊によればこの再演では新たなシーンが追加されているとのこと。初見の観客も、ある意味“決定版”を観られるというわけだ。どうしても長編原作を舞台化する際にはカットせざるをえないエピソードが出てしまうものだが、今回は平日公演の開幕前に原作内のエピソードが短編演劇として上演される試みも。原作ファンとしてはたまらないし、その後の本編がより深く楽しめるような仕掛けになっている。小説の舞台化では定評のあるキャラメルボックスだが、こんなにも“幸せな舞台化”は珍しいのではないだろうか? 待望の再演、ぜひその機会を逃さないで欲しい。公演は3月31日(日)まで東京・サンシャイン劇場、4月5日(金)から7日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。取材・文:川口有紀※「辻村深月」の「辻」は二点しんにょう
2019年03月25日キャラメルボックスの最新作、『リトル・ドラマー・ボーイ』が12月1日、東京・八王子市芸術文化会館で幕を開けた。【チケット情報はこちら】12月のある日、恩師の病気の報を受け、18年ぶりに地元である八王子に帰ってきた矢野トオル(鍛治本大樹)。右手で触れただけで他人の怪我や病気を治す能力を持つ彼は、その力が人に知られないよう居場所を点々と変えて生きてきた。ところが恩師の家から帰る途中、瀕死の男(畑中智行)を発見したトオルは、思わずその力を使ってしまう。翌日、トオルの家に十文字(阿部丈二)と名乗る男がやってくる。トオルを縛り上げ、男の行方を問いただす十文字。十文字の仕事は殺人代行業、つまり殺し屋だった……。成井豊の書き下ろし新作である今作。往年のキャラメルファンなら「あれ?」と思うのではないだろうか。ヒーリング能力を使うたびに自らの身体を犠牲にしていくという青年・矢野トオルは、1996年に上演された『TWO』の主人公。そして昭和マニアでうんちくを延々と語り続ける殺し屋・十文字は、昨年公演『ティアーズ・ライン』に登場し強烈な印象を残した。いわばクロスオーバー作品というわけだ。魅力的なキャラクターには、物語を動かしてゆく力がある。特に今回は人を“救う”能力を持つ男と、“殺し屋”という対象的な組み合わせ。そこにトオルが助けた男の謎めいた行動、病の恩師を助けたいというトオルの葛藤、トオルを呼び寄せた幼馴染の本意など、さまざまな人の思惑が絡んでストーリーが進む。十文字によるトオルの監禁シーンから回想形式で物語がスタートするのは『ティアーズ・ライン』と同じ構成。昨年公演を観ているとクスリとなる、これも“お楽しみ”のひとつだ。トオルを演じた鍛治本は、キャラメルボックス本公演での主役は初めて。彼自身が持つ、不器用ながらも優しそうな雰囲気が、トオルという役柄にぴったりとはまった。自己犠牲的なトオルの力は、結局は彼の家族を傷つけることと紙一重だ。それでも力を使ってしまう、そんな“弱さ”をも魅力に昇華している。ユニバース世界の映画ではないが、再び彼が登場したら?……そんな未来へのワクワクも感じさせてくれる。タイトルは、キリスト生誕のエピソードを歌ったクリスマスソングから。三賢者のように贈り物はなくても、代わりに太鼓を叩いた貧しい少年のように、“他者のために何かをしたい”と思うのがそもそものクリスマスではなかったか。そんな本来のスピリットを改めて感じさせてくれるような、心温まる作品だ。公演は12月7日(金)から9日(日)大阪・サンケイホールブリーゼ、12月15日(土)から25日(火)まで東京・サンシャイン劇場で上演される。取材・文:川口有紀
2018年12月05日『リトル・ドラマー・ボーイ』という曲をご存知だろうか?曲名でピンと来ない人も聴けば必ず納得する、定番のクリスマスソングだ。12月から始まるキャラメルボックスのクリスマスツアーは、この曲名を冠した新作を上演する。【チケット情報はこちら】昨年冬公演『ティアーズ・ライン』に登場し、強烈なインパクトを残した“昭和マニアの殺人代行業者”十文字が再び登場する今作。「十文字は、これまで自分が描いてきたキャラクターの中でも極めて特殊なんです。彼でまた別の物語を作りたい、と考えたところからスタートしました。そこで“誰と出会ったら面白いか?”を思案し、浮かんだのが1996年に上演した『TWO』のトオルだったんです」そう語るのは作・演出の成井豊。人の怪我や病気を治す不思議な力を持つ青年・トオルを演じるのは、劇団本公演で初めての主演に抜擢された鍛治本大樹。「トオルは素朴で純粋な人なんですが、自分にもダメージを与えるので能力を使ってはダメだと言われているのに使ってしまう、そんな弱い部分もある。言ってしまえば“へなちょこ”。で、へなちょこといえば鍛治本だろうと(笑)」そんな裏話を語る成井の横で「喜んでいいのかなあ」と苦笑する鍛治本。劇団主催の俳優教室を経て2007年に入団、成井曰く「怒っているのを見たことがない」という素の優しげな雰囲気は、トオルにぴったりだと思える。「入団してすぐに主役をやるタイプではなく、“こいつはどうなっちゃうんだろう”と思ったりしたことも。でも外部への客演をきっかけにぐっと変わっていって、近年の鍛治本には僕も驚かされっぱなしです」と成井。今作で大きな期待を寄せられる鍛治本だが、やはり成井作品での主演は初めて感じることも多いようだ。「キャラメルボックスの主役って大変なんだな、といま実感しています。セリフ量も多いし、いろんな人と会話をしながら、自分でも物語を転がしていかなきゃいけない。毎日の稽古は、洗濯機の中でぐるぐる回されて目が回ってるような感覚。でもこれは、やってみないとわからなかった」稽古場では、まさに奮闘する鍛治本の姿が。殺陣稽古で俳優の大内厚雄がアクションをつけていく。さらに細かい動きで気になるところを畑中智行が指摘する。どちらもキャラメルでは数々の作品の主役を背負ってきた“先輩”たちだ。「稽古中はいろんなアドバイスをくださったり、導いてくれる。先輩方って凄いな、と思いますね」(鍛治本)。その言葉通り、劇団員が一体となって作品を作り上げていく姿勢に“劇団”ならではの強さを垣間見た。疾走感あふれるストーリーながら、イエス・キリスト生誕を歌ったタイトル曲の如く、作品の根幹にはクリスマススピリットがあふれている。1年の締めくくりにふさわしい舞台となりそうだ。公演は12月1日(土)の東京・八王子を皮切りに、大阪を巡演、12月15日(土)から25日(火)まで東京・サンシャイン劇場で上演。なお八王子では、公演に先がけ無料の公開稽古を11月24日(土)から11月27日(火)まで実施。詳細は公式HPに記載。取材・文:川口有紀
2018年11月22日9月6日、池袋・サンシャイン劇場で『おおきく振りかぶって 夏の大会編』が開幕した。高校野球部を描いた大ヒット人気漫画の舞台版第2弾。17日(月・祝)まで上演後、28日(金)から30日(日)まで大阪にて公演する。【チケット情報はこちら】続編ではあるが物語は独立しており、<夏の大会編>で主人公の属する西浦高校は2校と試合をする。コーチ役の渡邊安理いわく「相手が変わればこちらの気持ちも変わるので面白い」。試合シーンでは演出・成井豊の「得点がいっぱい入るので忙しい」との言葉通り、怒涛の乱打戦が繰り広げられている。前半と後半はまったくカラーの違うチームとの試合。西浦高校は新たな戦い方を模索せざるを得なくなり、部員ひとりひとりの課題が浮き彫りとなる。「臨場感がすごい」と言うのは、Wキャストで主人公のバディ・阿部役を演じる大橋典之。傾斜のある“やおや舞台”の前面では、おおきく振りかぶるバッターたち。舞台中央奥で高く飛び、フライをキャッチする内野守備。次塁のベースに向かって駆け抜けるランナー……彼らの熱気が客席へとなだれ込む。初演に比べキャストに野球経験者が多いことで、じっくり野球の研究をし、試合にリアリティが増した。キャプテン花井役の白又敦は「新メンバーが入ってキャプテンとしてどう引っ張っていくかを悩んだ」そうだ。花井は物語前半に大きな壁に立ち向かうこととなり、白又はその苦悩を熱演している。主人公・ピッチャー三橋とキャッチャー阿部には大きな変化が訪れる。三橋役の西銘駿は、「初演では阿部に引っ張ってもらった。今回は三橋自身がエースとして自分で考えていく」と三橋の心境の変化を見せていきたいと意気込む。大橋は「阿部は“狡猾”と言われるけど、野球で勝ちたいという純粋な思いを根底に役を作りたい」と舞台に臨む。一方、初演から続き阿部役の猪野広樹は「バッテリーの関係がこう変わっていったというのを演じたい」と、ふたりの関係の変化に注力。次々と変化する試合の戦況に呼応するように、チームメンバーや相手の選手たちも自分なりの課題と向き合っていく。登場人物それぞれにドラマがあるダイナミックな構成だ。成井演出では「ここぞ!」という瞬間に、音楽がかかり踊り、興奮が高まる。「1時間45分頃起こる危機的状況をどう乗り越えるのか……そこがたまらない。ぜひお客さんにも味わって欲しい」と熱く語った。彼らの夏は、まだこれからだ。取材・文:河野桃子
2018年09月11日9月6日(木)より東京・池袋 サンシャイン劇場で本番を迎える『おおきく振りかぶって 夏の大会編』、舞台初日を3週間後に控えた稽古場を取材した。【チケット情報はコチラ】今作は、2月に上演した『おおきく振りかぶって』の第二弾。甲子園を目指す高校野球部を舞台にした原作マンガは、これまでのスポ根ものとは違い、気弱で卑屈な少年ピッチャーを主人公にし大ヒットしている。脚本・演出は前作に続き演劇集団キャラメルボックスの成井豊。長年、小説原作の舞台化に力を入れてきた成井が得意とする、演劇的な感動あふれる舞台になりそうだ。この日は前半の山場の稽古。野球の試合シーンでは、同時に20人以上が登場する。実際の試合を早回しにしたように、次々と選手がバッターボックスに立ち攻守交代していく。舞台に人が入り乱れめまぐるしいが、そんな中でもそれぞれの人物にドラマがある。誰が誰を意識しているのか、誰の台詞を観客に届けるかなど、整理していく。成井は気になる俳優をひとりひとり呼び「今、君の役の盛り上がりが作れていないのがわかる?」「ここは君の役にとってはこんな意味があるシーンだよね。調節できるかな?」と穏やかに問いかける。中でも前半の鍵となる役を演じる白又敦や大村わたるは、真剣に頷く。俳優それぞれに自分の役の全体像を理解させ、組み立てさせていく。同時に、ほかの俳優も自主的に円陣を組み「あのシーンはこうしてみないか?」と相談する。主人公・三橋役の西銘駿は、気弱で自信がないがみんなが目を離せないエースを演じている。震えながらも高くまっすぐな声が、芯の強さを感じさせる。前回よりも役が馴染み、より体温のある三橋となるのではと期待させる。バディでもある阿部役は今回ふたり。この日の稽古では大橋典之が演じ、精悍な顔立ちと直情的な表現が西銘と良いバランスだ。Wキャストの猪野広樹との違いも楽しみ。ほか、初参加の一色洋平は抜群の運動神経で、チーム一の実力者という説得力を持たせる。また各自、短いシーンでそれぞれのキャラクターを見せる。野球部を支える役どころとして、成井の演出を知るキャラメルボックスの劇団員らが出演。監督役の渡邊安理は今シリーズ初参戦ながら、強い声と安定した立ち姿でチームの土台となる。多田直人は場の空気に合ったアドリブを連発し、その自然さに周囲の俳優たちの笑いがこぼれ、目が輝く。成井らしい青春の音楽に彩られ、まもなく、青い夏の幕が開く。東京公演は9月17日(月・祝)まで。その後、28日(金)・29日(土)・30日(日)には大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ で上演。取材・文:河野桃子
2018年08月24日俳優の松重豊が17日深夜に放送されたラジオ番組『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送/毎週火曜25:00~27:00)にゲスト出演し、番組パーソナリティの星野源と仲良くなった経緯を語った。ある作品で初共演を果たしたという星野と松重。その撮影を行っていたある日、主役を務める星野はかなりお腹の調子を崩していたとのこと。当時を振り返り松重は「待ちがすごくて…」と、時代劇であったため、星野がトイレのたびに衣装の着脱に手間取っていたことを明かした。その様子を見て「大変だな」と思った松重は星野を気遣い、それとなく「音楽やられてるんですよね」と話を振り、そこから音楽トークで意気投合した。LINEの連絡先を交換して、「こんな曲知っていますか?」と、互いにお気に入りの楽曲を送り合っているうちにさらに話が弾み、その日のうちに「ご飯へ行きましょう」となったと明かす。さらに、松重と星野は、演劇の話でも盛り上がったという。松重は、15歳から大人計画の芝居を見ていたという星野に驚いたと話し、それを受けて星野も「あの頃はまだ大人計画がエログロって言われていたので」と語った。そして松重は「だからド変態だなって思った」と星野を評し、星野も「そうですね(笑)。『変態だね!』って言われましたもん、『君は変態だね』って」と告白した。
2018年07月19日演劇集団キャラメルボックスの最新公演『無伴奏ソナタ』は、キャラメルの芝居を日本各地にお届けする「グリーティングシアター」。東京公演のあとツアーへと出発するメンバーを激励するため、5月17日の昼公演の終演後、イベント「出航式」が行われることに。【チケット情報はこちら】すべての人間の職業が、幼児期のテストで決定される時代。音楽の才能を見出され「メイカー」となった青年・クリスチャンの生き様を描いたこの作品は、オースン・スコット・カードの同名小説の舞台化。2012年、2014年に引き続き3回目の上演となる。当日、平日マチネ公演にもかかわらず会場は満員御礼!静謐な雰囲気から一気に感情を上昇させられてゆくラストシーンの余韻をまだ残したまま、製作総指揮プロデューサー・加藤昌史の司会でイベントがスタートした。まずは、脚本・演出をつとめた成井豊が挨拶。「大学時代に演劇をやっていたがその後挫折し、高校教師になった。“演劇をもう一生できないんだ”と思ってる時期にこの小説を読み、クリスチャンの人生に自分を重ねてしまった。57歳になった今、3度目の上演にもかかわらず稽古になるとやはり泣いてしまう。この物語には誰もの心を動かす普遍性があると思います」と語った。続いて質疑応答コーナーに。架空の世界の物語ながら、今の時代にも通じるものがあるのでは?という質問には「稽古中、成井が“確実に現代は、初演のときよりも法律によって管理される割合は高まっている”ということを言っていて、まさしくそうだなと思います」と岡田達也がコメント。また、今回のツアーでは多数の高校生に向けた非公開公演も控えていることから、客演の文学座・石橋徹郎は「こういう時代に生まれた彼らがこの作品を観てどう思うだろう、というのは意識的になる」と答えた。シリアスなコメントも出つつも、客席からの質問コーナーでは爆笑が何度も起こるにぎやかな雰囲気に!「劇中の楽器は生演奏?」という質問に「すごくたくさん練習はしました!」とドヤ顔で答えるクリスチャン役・多田直人に加藤Pが「コラ!」とツッコミ。ちなみに劇中に出てくる架空の楽器の音は、グラスに水を入れ並べた「グラスハープ」という楽器のものとのこと。また、限られた出演者で多くの登場人物を演じる作品のため、早替えの苦労話なども飛び出した。最後は出演者と客席で、作中に出てくる『シュガーの歌』を合唱し、出航式は終了。初演から引き続きクリスチャン役をつとめる多田直人いわく、今回あらためて感じたのはこの作品が「お客様と一緒に作り上げていく作品」だということ。その理由はラストシーンを劇場で体感してもらえれば必ずわかるはずだ。ふだん劇場に足を運べない人こそ、このチャンスにその感動を味わおうではないか。東京公演は好評のうちに幕を閉じたが、ツアーは始まったばかり。愛知公演は5月24日(木)・25日(金)に東海市芸術劇場、長野公演は6月2日(土)にまつもと市民芸術館、大阪公演は6月23日(土)・24日(日)にサンケイホールブリーゼにて上演。取材・文:川口有紀
2018年05月23日俳優の水谷豊が、21日(10:30~11:00)に放送されるテレビ朝日系番組『プーシキン展開幕SP 水谷豊の絶品名画探訪』に出演し、フランス風景画の魅力に迫る。水谷豊=テレビ朝日提供水谷は14日から開催される「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」のスペシャルサポーターを務めている。そんな水谷が開幕直前の会場・東京都美術館を訪れ、初来日となるモネ「草上の昼食」の他、ルノワール、セザンヌ、ゴーガン、ルソーなど、フランス風景画コレクションの名作を鑑賞。名画に隠されたエピソードや印象派画家の知られざる秘話、風景画と時代背景の密接なつながりなど、「プーシキン美術館展」の魅力に迫る。さらに、アイドルグループの欅坂46に所属し、現役美大生である佐藤詩織が、フレンチの巨匠・吉野建シェフが「プーシキン美術館展」に出展する名画のエッセンスを一皿に込めたフルコースを堪能する。
2018年04月13日ひぐちアサによる人気高校野球漫画を原作にした舞台「おおきく振りかぶって」が2月2日に開幕、それに先駆け公開ゲネプロと囲み取材が行われ、囲み取材には主演の西銘駿、猪野広樹、久住小春、白又敦、納谷健、脚本・演出の成井豊(キャラメルボックス)が登壇した。舞台「おおきく振りかぶって」チケット情報囲み取材で主人公・三橋廉 投手を演じる西銘は「原作ファンの皆様を絶対にがっかりさせない!という想いでやってきました」と語りつつも、自身としては「舞台2作目で初主演ということで、最初は本当に緊張して。千秋楽までちゃんと主演としてやっていけるのかな、という不安はあった」と明かし、稽古を経て「今は不安はない」と自信の表情を見せた。猪野は「原作の世界観をどう出すかを大事にやってきたのですが、それプラス(出演者)22人の個性をプラスして、舞台だからこそできる『おおきく振りかぶって』をみんなでつくりました」と語り、バッテリーを組む西銘については「しゅんしゅん(西銘)が人懐っこい人なので、そのペースにのみこまれました」と笑顔。男勝りな監督を演じる久住は「稽古場でも最初は『男に見えない』と言われて悩みましたが、みんなが助けてくれて支えてくれてなんとか初日を迎えられました」、白又は好きなシーンを問われ「夏の大会の1回戦の対戦校・桐青高校のバッテリーの語り」と挙げる。主役校・西浦高校にまつわるシーンでは「合宿明けの練習風景。チームが出来上がっていく、高校球児らしさが描かれていると思います」と語った。ぜひ注目を。自身は野球未経験ながら、突出した才能を持つ田島を演じる納谷は「身体の動かし方の効率だったり、どういうところに意識を置けば上手な選手に見えるのか、というのは特に意識して稽古を重ねてきました」と役作りを振り返った。成井は「舞台上で会話して人間ドラマをつくろうと、役者たちにさかんに言いました。ですので、できあがったものはおそらく舞台上に登場した22人、ひとりひとりの人生、ひとりひとりの感情を客席に向かってぶつける、そういう生々しいお芝居になったんじゃないかと思います。ぜひそれを楽しんでいただきたいです」とコメント。弱気で卑屈な性格の主人公・三橋廉が、野球を通じて仲間と共に成長していく姿を描く本作。舞台でも、練習や試合の中の対話で生まれる感情の変化、そこから繋がるパフォーマンスの変化が芝居によって繊細に描かれる。また、セット転換や映像は使わず、音、照明、芝居であらゆるシーンを表現。試合の表現は見どころだ。ダンスシーンなどもあり、生の舞台だからこその『おおきく振りかぶって』が楽しめる作品となっている。公演は2月12日(月・祝)まで東京・サンシャイン劇場にて上演中。取材・文:中川實穗
2018年02月07日キャラメルボックスの最新作、『ティアーズライン』が12月15日、東京・サンシャイン劇場で開幕した。キャラメルボックス「ティアーズライン」チケット情報今回の作品は、実に1年半ぶりとなる成井豊のオリジナル新作。探偵社の調査員・横手道朗(畑中智行)が謎の男・十文字(阿部丈二)に監禁される場面から物語は始まる。十文字は自分の職業は殺人代行業……つまり殺し屋で、横手とその同僚・鯉川(多田直人)を殺すよう依頼を受けたという。しかし今日は特別に道朗の「死にたくない理由」に納得すれば見逃してやる、とも。そこで、この24時間にあった出来事を話しだす道朗。その内容は「オーストラリアに旅行に行き、現地で倒れ昏睡状態のはずの母親・克子(大森美紀子)が、なぜか自分の目の前に現れた」というにわかには信じがたいものだった。一方、文部科学大臣の息子・能代翔平(山崎雄也)のスキャンダルを探っていた鯉川が窮地に陥り、道朗はそちらのトラブルにも巻き込まれてしまうことに。舞台上では道朗と十文字の会話と、道朗の過去の場面が展開されてゆく。いきなり“事件”から始まり、謎が少しずつ解き明かされていく展開はミステリー小説のようでもあり、スピード感はまさに「ジェットコースター演劇」。けしてシンプルな物語ではないが、情報量の多さを感じさせないのは俳優たちの熱演と、キャラクターの魅力によるところが大きい。特に今回の公演は、畑中、阿部、多田という近年劇団公演で主役をつとめることが多い3人がメインキャストに揃い踏みし、三者三様の魅力を見せている。「昭和マニアの殺し屋」という濃いキャラクターで緊張感と笑いを振りまく阿部、これまでの出演作品の中でも一番コミカルで飄々とした役なのでは?という多田。そして「等身大の青年」を演じさせたら随一の畑中も、一見普通ながら大きな喪失を抱えているという難しい役どころ。どの俳優たちも新境地が見え、かつちゃんと魅力的に見えるのは、劇団公演の書き下ろし作品ならでは、だ。また、主軸となっているのは「母と子」の物語。道朗と克子という「一見ありふれた母と子の関係」と、それとは対照的な文部科学大臣・妻成美(坂口理恵)と翔平という母と子も描かれる。後者の関係性は、観客によってはかなり胸をえぐられる人もいるのではないだろうか?前者は母の愛が息子を本当の意味で“救済”し再生させ、後者はトラブルの中でふたりの関係が再生してゆく。このコントラストが物語に深みを与え、改めて家族や身の回りの“大切な人”について考えさせてくれる。まさにクリスマスシーズンにふさわしい作品といえるだろう。公演は12月25日(月)まで東京・サンシャイン劇場、12月28日(木)・29日(金)に兵庫・明石市立市民会館大ホールで上演される。チケットぴあでは公演前日までチケット発売中。取材・文:川口有紀
2017年12月19日ラストシーン、舞台が暗転した瞬間に、待ちきれないような大喝采が会場を包む。演劇集団キャラメルボックス『スロウハイツの神様』が、7月5日、東京・サンシャイン劇場にて開幕した。キャラメルボックス『スロウハイツの神様』チケット情報原作は、辻村深月の同名人気小説。アパート“スロウハイツ”を舞台に、オーナーである脚本家の赤羽環と、住人である小説家チヨダ・コーキ、そして友人たちの共同生活が描かれてゆく。10年前、自分の小説を模した集団自殺事件が発生し、インタビューで答えた言葉がきっかけでバッシングを受けたコーキ。休業を経て復活したコーキと知り合った環は、スロウハイツでの生活にコーキを誘う。すでに活躍している環とコーキ以外は、画家、漫画家、映画監督と皆クリエイターへの夢を持つスロウハイツの住人たち。そこへ小説家志望の少女・加々美莉々亜が新たに加わったことから、少しずつその生活に変化が現れる……。原作は文庫本で上下2巻という大ボリュームで、群像劇の側面が強い。今回2時間の舞台にするにあたり、脚本・演出の成井豊が取った方法は、物語の主軸となっている「赤羽環とチヨダ・コーキ」のエピソードを中心にする、というもの。序盤こそただの住人同士に思える環とコーキだが、徐々にふたりがどういう関わりを持っていたか、莉々亜は何者か?などさまざまな謎が明かされてゆく。ふたりのドラマに焦点を絞ったことで、ミステリー的要素を解き明かす楽しさもより強調された印象だ。特に些細なセリフが伏線になっていたことが一気に明かされ、環とコーキの“本当の過去”が判明する終盤のカタルシスは凄まじく、劇場のあちこちからすすり泣きが聞こえるほど。観終わった後に「もう一度観たい」と思う人も多いのではないだろうか?また、この作品の登場人物は皆、過去に傷を負ったり、何かしらの秘密や葛藤を抱えている。そのエピソードはときに重く、人間臭く、苦さを残すものもある。しかしシリアスなエピソードの中でも、俳優たちが見せるコミカルな場面がフッと心を軽くしてくれるのは、舞台版ならではの強みと言えるだろう。劇中で、チヨダ・コーキの作品は中高生は夢中になるが、大人になるといつしか手に取らなくなる「いつか、抜ける」ものである、ということが強調される。そしてコーキ自身もそれを良しとしている、と。でも、たとえ作者自身がそう思ったとしても、作品に救われる人は確かに存在する。そして想いは“届き”、新たなバトンを紡ぎ続ける……そんな希望に満ちたラストシーンに、エンターテインメントにこだわり続けてきた劇団の矜持が、どこか重なる。この作品は、「創作物」を愛するすべての人へのエールでもあるのだ。公演は7月16日(日)まで、東京・サンシャイン劇場で上演される。取材・文:川口有紀
2017年07月07日ある日突然、17歳だった自分が25年の歳月を“スキップ”してしまったら……北村薫の小説『スキップ』が演劇集団キャラメルボックスの成井豊の作・演出により13年ぶりに舞台化され、4月26日にサンシャイン劇場で初日を迎えた。昭和40年初頭、女子高生としてごく普通の生活を送っていた一ノ瀬真理子。体育祭を終えて帰宅し、自分の部屋でお気に入りのレコードをかけながらついうとうとしてしまう……次に彼女が目覚めた時、そこは見知らぬ場所だった。目の前に現れた同い年ほどの少女は、自分はあなたの娘で、真理子は今42歳だという……。この舞台では、真理子を2人1役で演じるのが最大の特徴だろう。17歳の真理子を演じるのは乃木坂46を卒業後、本格的な舞台は初挑戦となる深川麻衣。実は稽古前は「レコードのかけかたもわからなかった」という彼女だが、蓋を開けてみれば彼女の初々しさと芯の通った存在感が、「昭和の時代の女子高生」によく合う。そして、42歳の真理子を演じるのは霧矢大夢。外見は42歳、しかし中身は女子高生という難しい役どころを、深川が演じる“17歳の真理子”と時には入れ替わり、時に同時に演じてゆく。いつしかこのふたりがすんなりと同一人物に見えてくるのは、舞台作品ならではの魅力だ。人生が“スキップ”する……一見SF的な設定だが、この作品の肝はそこではない。突然日常を壊され、さまざまなものを失った真理子。彼女は最初こそ動揺するものの、やがて「夫、娘を持ち、高校の国語教師である桜木真理子」という自分の状況を受け入れる。そして夫と娘の助けを借りながら、かつての真理子の役割を果たすことを選択する。それは努力と、何よりも勇気が必要な行動のはずだ。しかし彼女の選択がすんなりと腑に落ちるのは、ふたりの女優の演じる姿から「真理子」という人はそういう人だ、という説得力が溢れるからだろう。また、日常を壊されたのは真理子だけではない。夫は“42歳の”妻を、娘は“42歳の”母を失う。彼らは戸惑いつつもまたそれを受け入れ、17歳の真理子の支えとなる。その優しさと強さに救われる気分になる観客も多いはずだ。そしてそれも、42歳の真理子が、彼女の年月の中で積み上げてきたもののひとつ。観ているうちに気付かされる。真理子ほどの数奇な境遇でなくても、未来がどうなるかわからず、不確定の出来事が起こっていくのは私たちも同じ。何が起こるかわからない日常もまた、「冒険」なのだと。新しいものごとが始まってゆくこの季節に、背中を押してくれるようなそんな作品だ。公演は5月5日(金・祝)まで、池袋サンシャイン劇場で上演される。前売券は予定枚数終了。当日券は各公演日の前日に電話予約を受付。詳細は公式サイトに掲載( )。取材・文:川口有紀
2017年04月27日3月4日、演劇集団キャラメルボックス『鍵泥棒のメソッド』終演後に、原作映画の監督である内田けんじを迎えたトークイベント「鍵泥棒のメソッドのメリット」が開催された。初演、再演ともに出演している岡田達也司会のもと、脚本・演出の成井豊、2014年の初演に出演した多田直人、今回ゲストとして参加している久保田秀敏が登壇。5人それぞれの作品に対する思いなどが語られ、大いに盛り上がった。キャラメルボックス『鍵泥棒のメソッド』チケット情報この日に行われた公演は、キャラメルボックス31年の歴史の中でも初めての試みとなる「新人抜擢ステージ」。物語の主軸となるふたりを入団3年目の若手が演じるというチャレンジングなものだった。内田は「自分の子どもである作品が成井さんと結婚して、かわいい孫が生まれたよう。だから『何をやってもかわいい』というおじいちゃんのような気持ちで見ていました」と人一倍楽しんだ様子。それを受けて多田が「身内ながら、メンバーがみんな助け合って演じているのがいいなと思う」、岡田も「ドキュメンタリーな部分も見せていくのが劇団の強み」と話す。ゲストの久保田は「キャラメルボックスはセリフ回しがとにかく速い。最初はついていくのに必死でした」と告白すると、成井が「劇団をはじめて10年くらいは、たっぷり演技する力がないから速くなってしまっていた。それからゆっくりやってももつようになってきたけれど、今映像を見ると『遅い!』と思ってしまう」と、あえてテンポを速くして密度を上げていると明かす。『鍵泥棒のメソッド』も、初演に比べると5分ほど短縮されているという。内田が「自分が描いたキャラクターにぴったりすぎてはつまらない。自分でも『この人がやったらどうなっちゃうんだろう?』とワクワクするような人を選ぶようにしている」というキャスティングのコツを明かすと、成井がすかさず「内田さんは日本の芸能界全員の中から選べるからいいですよ! うちは劇団員の中からなんとか選ばないといけないんですから」と言い、会場はその日いちばんの爆笑に。とはいえ、成井も「わりと合っている役と、そうでもない役を交互に演じてもらうようにしている」「ベテランにこそ楽できない役を与える」と、劇団ならではのキャスティングの秘訣を語っていた。キャラメルボックスにとって、映画を原作とした舞台は初めてのこと。岡田や多田は初演時、「どうやって演じるべきか、映画を穴があくほど観ました」と振り返る。さらに多田が「行き着いた先は顔芸でした」と笑いを誘う。その顔芸は再演の畑中智行にも受け継がれているのだとか。さらに岡田が「千秋楽に向けて、ひとつでも笑いを増やしていけたら」と意欲を見せた。原作者も太鼓判をおす舞台版『鍵泥棒のメソッド』は、今後さらに面白さを増していきそうだ。東京公演は3月12日(日)まで。3月18日(土)から20日(月・祝)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。取材・文/釣木文恵
2017年03月06日松重豊が主演する人気ドラマ「孤独のグルメ」。シリーズ「Season6」の制作が発表され話題となっている本作だが、先日2月18日(土)より無事クランクインを迎え、現在順調に撮影が行われているという。個人で輸入雑貨商を営む“井之頭五郎”は、商用で様々な街を訪れる。そして一人、ふと立ち寄っ た店で食事をする。そこで、言葉で表現できないようなグルメたちに出合うのだった――。松重さん扮する主人公・井之頭五郎が、仕事の合間に各地のグルメをひとり味わい楽しむ人気ドラマシリーズ「孤独のグルメ」。本ドラマは、作・久住昌之、画・谷口ジローによる同名コミックを原作に、2012年にドラマ化。好評を博しこれまでに「Season5」までが放送され、スペシャル版も制作されてきた。そんな本シリーズが、今回4月クールに初登場。もちろん主人公には五郎演じる松重さんが出演。初めての春を迎える本作は、いつにも増していろいろな国やジャンルのグルメが続々登場、これまでにない食が満載となっている。先日、都内某所で無事クランクインを迎えた松重さんは、「あれから5年、ちょっと胃拡張になったようです」とシリーズ放送開始当時をふり返りコメント。また原作者の久住氏は「五郎の台詞もまた新鮮な気持で書いています。ワンパターンを恐れず、けれど前 を向いて作って行きたいと思っているので、よろしくお願いします」と初心に返っていると話し、「あたりまえのことですが、谷口さんがこれほどまでに緻密に、繊細に、美しく描いてくれたからこそ、『孤独のグルメ』はこれほど長いこと、多くの人々に読んでもらえ、ドラマも愛されているのです。原作者としては感謝の念しかありません。穏やかでやさしいけれど、決して妥協の無い仕事をし続けた人でした。『孤独のグルメ』の新作マンガがもう読めないと思うと、原作者本人としても本当にさびしいです。ご冥福をお祈りします」と先日死去した谷口氏についてもコメントを残している。ドラマ24「孤独のグルメ Season6」は4月7日より毎週金曜日深夜0時12分~テレビ東京系にて放送。(cinemacafe.net)
2017年03月01日霧矢大夢、深川麻衣がダブル主演する舞台『スキップ』の前売チケットが2月25日に発売開始され、1時間で全ステージが完売。そこで、急遽追加公演が決定した。舞台『スキップ』チケット情報直木賞受賞作家、北村薫の名作『スキップ』をキャラメルボックスの成井豊が脚本・演出を手掛け、4月26日(水)から5月5日(金・祝)まで東京・サンシャイン劇場で上演する。本作は2004年、成井により初舞台化され好評を博した舞台で、13年ぶりの上演。主人公の一ノ瀬真理子がうたた寝から目を覚ますと25年後、夫と娘がいる高校教師になっていたというストーリー。大人になった真理子を霧矢、高校生の真理子を深川が演じる。なお深川は今作が舞台初主演となる。追加公演は4月30日(日)午後5時と5月4日(木)午後5時の2回で、前売チケットは3月25日(土)午前10時から発売開始する。◆成井豊(脚本・演出)コメントプロデューサーから「成井さん、追加公演します」と言われて、ビックリしました。喜びと同時に、それだけたくさんの人が期待しているのだなと、強いプレッシャーを感じました。でも、大丈夫。霧矢大夢さんや深川麻衣さんなど、すばらしいキャストが集まってくれたし、何より原作の北村薫さんの小説『スキップ』はとびっきりおもしろい。必ずや、見に来た人すべての心に深く残る、美しく温かい芝居にします。
2017年02月28日俳優の松重豊が、11日に亡くなった漫画家の谷口ジローさんに対して、自身のブログで追悼のコメントを発表した。谷口さんが原作の久住昌之氏とタッグを組んだ代表作『孤独のグルメ』は、2012年にドラマ化。主人公・井之頭五郎を松重が演じ、season5まで制作されるなど人気シリーズとなった。現在も定期的にスペシャルドラマが放送され、作品は「夜食テロ」ドラマと呼ばれた。松重は13日に自身のブログ「修行が足りませぬ」に、フランス版『孤独のグルメ』の画像をアップ。ブログ内で「谷口ジロー様。」と話しかけ、「原作のようにハンサムじゃなかったけれど、先生の作品に出られて光栄でした」と追悼の意を綴った。
2017年02月13日ヴィジュアル系バンド・ゴールデンボンバーの喜矢武豊が舞台『犬夜叉』に主演することが6日、わかった。同作は高橋留美子による同名漫画を舞台化。原作は1996年から2008年まで小学館『週刊少年サンデー』で連載され、2001年には第47回小学館漫画賞も受賞、アニメ化もされ幅広い世代で人気を得た。喜矢武が演じるのは、主人公の犬夜叉。妖怪の父と人間の母の間に生まれた半妖の少年で、砕け散ってしまった"四魂の玉"のかけらを求めて旅をすることになる。また、戦国時代へタイムスリップしてしまうヒロイン・日暮かごめを、乃木坂46の若月佑美が演じる。そのほか、殺生丸役に佐奈宏紀、桔梗役に伊藤純奈(乃木坂46)、弥勒役に滝口幸広、楓役に野口かおる、和尚役に小林健一、奈落役に木村了の出演が決定している。原作の高橋は「舞台は大好きなので、どのように仕上がるかものすごく楽しみです」と期待のコメントを寄せた。公演は4月6日~15日、天王洲銀河劇場にて行われる。同作の発表を受けて、喜矢武豊は自身のTwitterアカウントを更新。「犬夜叉ファンに叩かれないようにがんばります」と意気込みを語った。(C)高橋留美子/小学館 (C)2017 ネルケプランニング/ユークリッド・エージェンシー/小学館
2017年02月06日直木賞受賞作家、北村薫原作の小説を舞台化した『スキップ』が、13年の時を経て、今春、サンシャイン劇場での上演が決定した。高校2年の主人公、一ノ瀬真理子がある日、うたた寝から目を覚ますと25年後の夫と娘がいる高校教師になっていたという設定で、大人になった真理子役を霧矢大夢が演じることは既に発表されていたが、今回、17歳の真理子役に、元乃木坂46の深川麻衣が決定したと発表された。なお、深川は舞台初主演で霧矢とのダブル主演となる。舞台『スキップ』チケット情報その他のキャストは、真理子の娘・美也子役をキャラメルボックスの木村玲衣、密かに真理子に思いを寄せる新田役を碓井将大のほか、柿喰う客の深谷由梨香、長濱慎、範宙遊泳の熊川ふみ、キャラメルボックスの原田樹里らの出演が決定している。全キャスト発表に伴い、メインヴィジュアルの公開と原作の北村薫、主演の霧矢大夢、深川麻衣よりコメントが寄せられた。■北村薫(原作者)コメント前回の公演は新聞の劇評でも絶賛されました。しかし、世評以上に、観客の方々が舞台にぐいぐいと引き込まれ心をふるわせていたことが記憶にあざやかです。もう一度観たいと願っていました。夢がかなって本当にうれしいです。■霧矢大夢コメントこの作品は、ある日、高校生だった真理子が、目覚めると突然大人になっている。しかも高校教師という立場になっている、というストーリーです。気が付くと夫がいて、娘もいる。見た目は大人なんだけど、中身は17歳。その現実を自分なりに受け入れて、健気に、ピュアに、その状況に立ち向かっていく。そんな一生懸命な真理子を表現したいなと思っています。演出の成井豊さんとも初めてですし、キャラメルボックスのエネルギッシュなお芝居に刺激を受けて、自分なりの真理子像を作っていきたいと思います。■深川麻衣コメント今回の舞台『スキップ』では、主人公の一ノ瀬真理子役を、霧矢大夢さんと一人二役ではなく、二人一役で演じさせて頂くということで、どんな風になるのかとても楽しみにしています。稽古はこれからですが、脚本を読ませて頂いて、面白くなること間違いないと確信しています。大きな役で、個人的にはもの凄く緊張しているのですが、みなさんと力を合わせて、毎日の稽古を励んでいきたいと思います。ぜひぜひ観に来てください。■NAPPOS PRODUCE『スキップ』原作:北村薫『スキップ』(新潮文庫刊)脚本・演出:成井豊(キャラメルボックス)2017年4月26日(水)~5月5日(金・祝)サンシャイン劇場(東京・池袋)出演:霧矢大夢深川麻衣岡田達也粟根まこと木村玲衣碓井将大深谷由梨香長濱慎熊川ふみ原田樹里関根翔太石森美咲大滝真実山崎雄也元木諒チケット一般発売:2月25日(土)
2017年01月23日2004年、キャラメルボックスの成井豊により、舞台化された北村薫原作の『スキップ』が13年の時を経て、来春、サンシャイン劇場で上演される。物語の主人公・一ノ瀬真理子は高校2年の17歳。ある日、うたた寝から目を覚ますと25年後、夫と娘がいる高校教師になっていた……。直木賞受賞作家、北村薫の名作を舞台化した本作では、大人になった真理子と高校生の真理子がダブル主演となり、ひとりの人物を二人の女優が演じる趣向もみどころのひとつ。その「大人の真理子役」を霧矢大夢が演じる。公演は4月27日(水)から東京・サンシャイン劇場にて上演。高校生の真理子役ほか、詳細は公式サイト等で順次発表予定。■NAPPOS PRODUCE『スキップ』2017年4月27日(水)~5月5日(金・祝)サンシャイン劇場(東京都)原作:北村薫『スキップ』(新潮文庫刊)脚本・演出:成井豊(キャラメルボックス)出演:霧矢大夢、ほか
2016年12月28日キャラメルボックス 2016クリスマスツアー『ゴールデンスランバー』の東京公演が開幕した。【チケット情報はこちら】小説作品の舞台化を数多く手がけている同劇団が、伊坂幸太郎作品に初めて挑んだ今回の公演。舞台は杜の都・仙台。首相暗殺の濡れ衣をある日突然着せられてしまった宅配便ドライバー・青柳雅春(畑中智行)が、巨大な権力と陰謀から逃げ続ける姿を描く。原作が人気作品かつかなりの長編であり、2010年には映画化もされ、そちらのイメージも強い、というハードルがあった今回の舞台化。だからこそ、今作は「演劇ならではの強み」を利用することで、物語の面白さをより凝縮することに成功している。主人公が唐突に犯人に仕立て上げられるところからスタートするこの作品、青柳は縦横無尽に仙台の街を逃げ続ける。それを表現するため、舞台上にあるのは非常にシンプルなセットのみ。あえて具体的な舞台美術を最小限にすることで、仙台の街並み、マンションの部屋、公園、下水管など様々なシーンが、次から次へと観客の目には舞台上に〝見えて〟くる。初日開幕前に行われた囲み会見で、作・演出を手がける成井豊は「稽古は近年でも1、2を争う大変さだった」と語ったが、頼るのは役者の肉体と音響・照明などの演出だけという潔さで、観客は物語の疾走感を損なうことなく楽しめる、という結果に。物語のリアリティを、目の前の俳優から体感できるというのも演劇ならでは。主演の畑中智行はまさに2時間全力疾走!走り続ける彼の姿が、唐突に彼に降り掛かった不条理と緊張感を観客に知らしめる。また、青柳を助けることになる連続殺人事件犯・キルオを演じたのはキャラメルボックスには2作目の出演となるゲストの一色洋平。彼のトリッキーなアクションシーンは要注目だ。青柳の友人である森田が原作よりもフィーチャーされ、物語の「語り」として存在するのも今作ならではの大きなポイント。演じるのはゲストの山崎彬ということもあり、舞台上には居つつも物語を俯瞰して見ているというポジションにいい意味での〝異質さ〟がうまくはまっている。そして、キャラメルボックスの俳優陣達が主要キャストだけでなく、群衆など非常に多くの登場人物を演じていくのも「劇団作品」ならでは。普段は主役級を演じている俳優陣がきっちりと脇を固めることで、作品の安定感を増している。その盤石のフォーメーションが、逃げ続ける青柳を助けていくさまざまな人物たちに重なる。物語はサスペンスだが、観終わったあとには、キーとなる言葉「人間の最大の武器は、習慣と信頼だ」がしみじみと胸に迫ってくるはず。キャラメルボックスらしい〝クリスマスプレゼント〟と言えそうだ。東京公演は12月25日(日)までサンシャイン劇場で上演される。
2016年12月12日