*画像はイメージです:忘年会や新年会など飲み会が連日のようにある、という方も多いのではないでしょうか?お酒の飲み過ぎが原因で気分が悪くなったり、中には嘔吐した経験がある方もいらっしゃるかと思います。突発的に吐き気を催したのか、トイレまで間に合わず……といった光景も見かけられますね。今回はそんな、電車内での嘔吐について法的な観点から解説してみたいと思います。 まず、刑事上の犯罪になるかどうかですが、“故意に”嘔吐物を相手に引っかけた場合には、「暴行罪」、働いている人に同じようなことをすれば「威力業務妨害罪」になる可能性はありますが、そうでない限りは大丈夫です。誰かの大事な物を嘔吐物によって使い物にならなくしてしまった場合は、「器物損壊罪?」と思うかも知れませんが、この罪は故意犯しか罰しませんので、やはり罪にはなりません。また、嘔吐物が相当悪臭を放ちますので、迷惑防止条例の「悪臭行為に当たるのか?」と考えられる方もいるかと思いますが、基本的には当たりません。ですので、電車内での嘔吐で、警察の世話になることはまずないと思っていただいて結構です。では、民事上は何らかの法的責任が発生するでしょうか?場合分けして、個別に見ていきましょう。 ■1 吐いた上に処理をしないことは?吐いたものをそのまま放っておくと、当然の如く鉄道会社の方が清掃などの処理をすることになります。嘔吐行為は、通常はお酒の飲み過ぎによっておきるもので、いわゆる不注意によって清掃などをさせる手間を発生させることになりますので、本来は損害賠償請求の対象になります。ただ、通常、吐くような人は、既に自分の嘔吐物を処理することなどできないでしょうし、鉄道会社もそのことを見越して清掃の大勢を整えているようですので、特に損害賠償請求をしないそうです。 ■2 誰か(人・物)を汚した場合理屈は同じで、不注意によって嘔吐し、それによって誰かを汚してしまうわけですから、それによってクリーニング代が発生したり、その物が使い物にならなくなったりするわけです。従って、それに掛かった費用は、損害賠償請求されることになります。 ■3 車内清掃で遅延などした場合車内清掃で遅延した時間にもよるでしょうけど、通常の嘔吐物程度であれば、最短での時間によって清掃が可能でしょうし、損害を発生させるほどの遅れがでるとも思えませんので、特に遅延させたことそのものについて損害賠償請求されることはないものと思います。 *この記事は2014年6月に掲載されたものを再編集しています。*著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです* andriano.cz / Shutterstock
2018年01月04日*画像はイメージです:日本の正月に欠かせない食材、餅。その歴史は古く、縄文時代から食べられていたといわれています。日本人に最も愛された食べ物と言っても、過言ではないかもしれません。現在も親しまれる餅ですが、人間の生命を奪うことも。正月には、高齢者を中心に喉に詰まらせ、窒息死する事案が毎年発生しています。このような場合、責任は誰が負うのでしょうか。そして、損害賠償を請求可否についても気になるところです。 ■責任は誰に?まず、実際に餅を製造した会社に責任を追及することが考えられます。この場合、消費者と製造業者との間に直接の契約関係はないので、民法709条の不法行為責任を追及することになります。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(民法第709条不法行為による損害賠償)餅を喉につまらせた原因が製造会社の過失や故意によるものであれば、当然被害者側は損害賠償できることになります。さらに、一般消費者である被害者側が製造業者の過失等を立証することは困難であることから、製造物責任法により、商品に欠陥があることを立証することで足りることになります。「製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。」(製造物責任法第3条)なお、販売業者に対して責任を追及する場合には、消費者と直接の契約関係にあることから、販売業者の債務不履行責任を追及することになります。 ■損害賠償請求するのは難しい?理論上は損害賠償が可能ですが、実際のところは難しいといわざるをえません。餅が日本で古来から受け継がれてきた食材であり、特有の粘り気があって噛み切りにくく喉に詰まる危険性があることは一般に広く周知されていることから、そのような餅を製造した製造業者に、製品に「欠陥」があるとして責任追及することは困難ではないかと思われます。同じような事例として「こんにゃくゼリー」による窒息事故があります。こちらの場合、餅と比較すると危険度が認知されていなかったことから損害賠償が認められる余地もありそうですが、結果的には「食品自体に危険性はなく警告表示も不十分ではない」として、訴えは棄却されています。 餅の喉つまりによる窒息死については、製造会社に明らかな過失等がない限り、自己責任となってしまう可能性が高いといえます。楽しい正月が悲劇の日にならないよう、餅を食べるときは十分気をつけましょう。 *記事監修弁護士: 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*プロモリンク / PIXTA(ピクスタ)
2018年01月01日*画像はイメージです:今年11月、運送会社に勤めていた女性事務員が配送する商品を盗みオークションサイトに出品していたため、懲戒解雇処分になっていたことが明らかになりました。本件、盗んだ商品を販売していますが、どのような罪状になるのか、また、補償があるのかといった点について解説してみたいと思います。 ■窃盗・詐欺罪に本件は窃盗罪と詐欺罪になると思います。まず他人の商品を盗み取っているわけですから窃盗罪になります。次に盗んだ商品をオークションに出品し、落札した人からお金をだまし取っているいるわけですから詐欺罪になります。この窃盗罪と詐欺罪は、同じ人が犯した複数の犯罪(併合罪)ということになり、懲役の長期の上限が窃盗の懲役の長期の上限(10年)の1.5倍(15年)となり、重く処罰される可能性があるわけです。 ■商品の落札者の責任は?盗品と知らず落札した場合や、落札した後に盗品と知ったという場合であれば、責任はありません。普通ないことですが、落札者が盗品と知って購入した場合には、落札者は盗品有償譲受の罪の責任を負います。盗品を購入するような人がいれば、窃盗の件数が増えかねませんので、盗品有償譲受の罪は、窃盗罪や詐欺罪よりも重く、「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」で処罰される可能性があります。 ■被害者の補償は?盗んだ人に対して損害賠償請求することも考えられますが、配送会社の事務員が盗んだということであれば、配送会社に補償してもらうことになるでしょう。 *著者:弁護士 冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)【画像】イメージです*TAROKICHI / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月25日*画像はイメージです:大企業では、社員に対し様々な福利厚生が用意されています。その内容は住居や保険、保養所・寮・クラブ活動など、多岐に亘ります。一方、中小企業は費用を福利厚生にかけることが難しいため、内容はどうしても限られてしまいます。零細企業になると「まったく用意されていない」というケースもあります。そのような企業に勤務する者にとっては、非常に納得のいかない事態。そもそも「福利厚生がまったくない」のは許されるのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解をお伺いしました。 ■「福利厚生がまったくない」のは許される?「結論からいうと、法律で義務づけられている福利厚生もないというのは許されません。福利厚生とは、事業主が労働者のために提供する給料以外のサービスのことをいいます。福利厚生には、雇用保険制度への加入など事業者に法律上の義務がある法定福利厚生と、食堂や社員寮の充実といった事業者に法律上の義務がない法定外福利厚生があります。法定福利厚生については、事業主に法律上の義務があるわけですから、ないというのは許されません」(冨本弁護士) ■法定福利厚生の種類は?「法定福利厚生には、以下のようなものがあります。(1)雇用保険制度への加入雇用保険は、国が失業した労働者に、必要な給付を行ったり、再就職の手助けをしたりするための制度です。事業主は、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある人を雇い入れた場合、雇用保険制度に加入し保険料を支払わなければなりません(雇用保険法第5条・6条)。保険料は労働者と事業主の双方が負担します。 (2)労災保険制度への加入労災保険は、仕事が原因で怪我をしたり、病気にかかったり、死亡したり、あるいは通勤途中で事故にあったりした労働者に対し、国が事業主に代わって補償する制度です。事業主は、労働者(パートやアルバイトも含みます。)を1人でも雇い入れていれば労災保険制度に加入しなければなりません(労働者災害補償保険法第3条)。保険料は事業主の全額負担です。 (3)健康保険制度への加入健康保険は、労災以外で怪我をしたり、病気にかかったり、死亡したりしたり、出産したりした、労働者やその家族に対し、国が一定の給付をする制度です。一定の業種で常時5人以上労働者を雇い入れている場合、事業主は、健康保険制度に加入し保険料を支払わなければなりません(健康保険法第3条第3項)。保険料は、事業主と労働者の折半です。 (4)厚生年金保険制度への加入厚生年金保険は、労働者が高齢・障害で働けなくなった場合、あるいは労働者が死亡した場合に、労働者やその家族に対し、国が一定の給付をする制度です。一定の業種で常時5人以上労働者を雇い入れている場合、事業主は、健康保険制度に加入し保険料を支払わなければなりません(厚生年金法第6条第1項)。保険料は、事業主と労働者の折半です」(冨本弁護士) ■法定福利厚生がないとどうなるの?「法定福利厚生がないことによって、労働者は、本来もらえるはずの保険給付がもらえなくなる場合があります。この場合、事業主は、労働者から、その分の額を損害として賠償請求されてしまいます」(冨本弁護士) 福利厚生には法律上の義務がある法定福利厚生と、法定外福利厚生があり、法定福利厚生を用意していない企業については、労働者から損害賠償可能性があるとのこと。自分の会社が法定福利厚生に入っていないという場合は、弁護士に損害賠償請求を含めて相談してみましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*polkadot / PIXTA(ピクスタ)
2017年12月09日「すでに兵庫県、大阪府、鹿児島県、滋賀県などでは自転車保険加入が義務化されています。背景にあるのは、自転車事故による損害賠償額が、場合によっては“超高額”になってしまうことなんです。とくに’13年に兵庫県で起きた事故は、自転車保険を意識させる大きな出来事だったと思います。当時小学5年生の少年が、夜間走行中、62歳女性に正面衝突。女性は頭蓋骨骨折の重傷で、一命は取り留めたものの、意識が戻らなかった。女性への損害賠償額は、9,521万円。子どもの起こした事故のため、監督責任のある母親に賠償命令が神戸地裁から下されました」 そう話すのは、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さん。埼玉県は今年10月、自転車保険への加入について、これまでの努力義務から義務に引き上げる条例を公布した。施行は来年4月からされる。同じく京都府でも、自転車保険の加入が義務化されることになった。挙げた賠償額は、現実離れした額に思えるかもしれない。しかし、自転車事故は、乗る人なら誰もが起こすリスクがあるのだ。 「朝、ぎりぎりまで子どもがぐずって保育園に急いで自転車を飛ばすママさんや、仕事帰りに夕飯の買い出しに追われる主婦でも加害者となりうるため、“まさか”に備える必要があるのです」(柏木さん) では、自転車保険に入るまえに知っておくべきことは何だろうか。柏木さん、ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに教えてもらった。 【ポイント1】「個人賠償責任保険」の重複加入に注意! 一般的に販売されている自転車保険とは、自身に対する「死亡保障」や「入院保障」と、事故を起こした場合に被害者への補償に充てる「個人賠償責任保険」という保険がパッケージ化されたもの。個人賠償責任保険については、“知らない間に加入していた”という人も多いのだ。 「クレジットカードに年間費数千円で付加しているので、加入している人も多いはずです。また、自身に覚えがなくても火災保険や自動車保険に組み込まれていたり、マンション住まいの場合は管理組合で各種保険に加入していることもあります」(柏木さん) 【ポイント2】月額数百円で加入できる商品が多数 具体的な保険商品について、風呂内さんはこう語る。 「『au損保:自転車向け保険 Bycle』は、『本人タイプ』、家族で入れる『家族タイプ』などのコースがあり、どのコースでも個人賠償責任の上限額が2億円以上という特徴があります。『本人タイプ』で個人賠償責任保険の上限額が最大2億円の商品は、月額360円です。また、『東京海上日動:ネットでeジョー「eサイクル保険」』は、条件次第で本人タイプ・個人賠償責任保険無制限が、月額170円という低価格に抑えられます」(風呂内さん) 【ポイント3】自転車そのものにかける保険も 2で挙げた商品のように、個人に保険をかけるのではなく、自転車そのものに保険をかけるものもある。それが、自転車店などで、自転車安全整備士による点検整備を経て受け取れる「TSマーク」だ。 「このマークには、1年更新型の賠償責任保障が組み込まれています。個人向けの商品との違いは、TSマーク付きの自転車に乗っていれば自転車保険に加入していない場合でも補償の対象になる点。マークには青色と赤色の2種類があり、それぞれ補償内容が異なります。相手側が死亡、重度後遺障害を残した場合の賠償責任補償の上限が、青色1,000万円、赤色は1億円です」(柏木さん) 【ポイント4】自転車の受け取りは自転車店で! 最近では、ネットで気軽に自転車を購入する人も多い。しかし、商品の受け取りは、あえて近所の自転車店で行ったほうがよいと柏木さん。 「店頭では安全上の注意や、条例のこと、自転車保険に関しての説明も、きっとしてくれるはずです。保険加入も含め、自転車事故への備えを考えるきっかけにしましょう」(柏木さん) 【ポイント5】保険金が下りないケースも 「当然のことながら、けんかや、嫌がらせなど故意による事故は対象外です。また、飲酒運転や『幼児2人同乗基準適合車』ではないのに子どもを同乗させるなどの“法令違反”を犯していた場合、保険金が支払われないことになるでしょう」(柏木さん) ひとたび事故を起こせば、高額な賠償額を前に、“事故破産”にもなりかねない自転車事故。加入している人も、これから検討するという人も、まず相手を思いやった“安全運転”を心がけよう。
2017年12月08日「全国平均で、自転車が関わる人身事故は交通事故全体の約2割。ですが埼玉県は3割と高く、自転車事故が多い県と言えます。にもかかわらず’16年の県内調査では、自転車保険の加入率は45%と半数以下にとどまっていたため、加入の義務化に踏み切りました」 そう語るのは、埼玉県・県民生活部の職員。埼玉県は今年10月、自転車保険への加入について、これまでの努力義務から義務に引き上げる条例を公布した。施行は来年4月からされる。同じく京都府でも、自転車保険の加入が義務化されることになった。 生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんは、自転車保険における都道府県の取り組みについてこう語る。 「すでに兵庫県、大阪府、鹿児島県、滋賀県などでは自転車保険加入が義務化されています。背景にあるのは、自転車事故による損害賠償額が、場合によっては“超高額”になってしまうことなんです」 日本損害保険協会のホームページによると、次のような判例が出ている。 【ケース1】賠償額9,266万円 男子高校生が自転車で歩道から車道を斜めに横断した際、対向車線から自転車で直進してきた24歳男性会社員と衝突。男性会社員には言語機能の喪失等重大な障害が残った。(’08年・東京地裁判決) 【ケース2】賠償額6,779万円 男性がペットボトル片手に下り坂を猛スピードで走行。交差点に進入した際、38歳の女性に衝突。女性は脳挫傷で3日後に死亡。(’03年・東京地裁判決) こうした事件が後を絶たない、と柏木さんが続ける。 「とくに’13年に兵庫県で起きた事故は、自転車保険を意識させる大きな出来事だったと思います。当時小学5年生の少年が、夜間走行中、62歳女性に正面衝突。女性は頭蓋骨骨折の重傷で、一命は取り留めたものの、意識が戻らなかった。女性への損害賠償額は、9,521万円。子どもの起こした事故のため、監督責任のある母親に賠償命令が神戸地裁から下されました」 兵庫県では、全国に先駆けて’15年10月に義務化をスタートさせている。同県の県民生活局の職員に話を聞いてみた。 「交通事故件数は減っているものの、人対自転車の事故は’13年までの10年間で1.9倍増。事故に遭われた方がすみやかに賠償を受けられるためにも、保険加入義務化の声は上がっていたんです。’13年には24.3%だった加入率が、’16年に義務化してからは60%、’17年には64.7%に増えました」 先に挙げた賠償額は、現実離れした額に思えるかもしれない。しかし、自転車事故は、乗る人なら誰もが起こすリスクがあるのだ。 「朝、ぎりぎりまで子どもがぐずって保育園に急いで自転車を飛ばすママさんや、仕事帰りに夕飯の買い出しに追われる主婦でも加害者となりうるため、“まさか”に備える必要があるのです」(柏木さん)
2017年12月08日こんにちは、海外在住プロママライターのさとうあきこです。職場には、正社員という太い中心柱が存在し、アルバイトやパートはそれを支える補助的役割を担ってきました。ところが、近年のアルバイトは、正社員並みの重責を押し付けられる傾向が強くなり、学生であればその本分である学業に大きな影響が出るほど過酷な労働条件下で働く例が増えています。それこそが『ブラックバイト』です。万一あなたのアルバイト先がブラックだったとき、どう対処すればいいのか、味方になってくれる法律と一緒にご紹介 します。●1.ブラックバイトの問題点って何?ブラックバイトは、そこで働くアルバイターたちに過剰な責任を押し付けるだけでなく、契約書でしばりつけ、アルバイトを辞めることさえ難しい泥沼へと追い込んでいくこともあります。まず、多くのアルバイターたちはアルバイトの契約書を熟読せずにサインしがちです。ブラックバイトはそれを見越して、労働法に触れる内容をも盛り込んでいることがあります。そして、その契約内容に見合わないアルバイターの行動に対して、損害賠償を求めてくることさえあります 。労働時間を変更したり減らしたりすること、労働内容の見直しを求めること、辞めることさえも、損害賠償の対象とされる場合があるのです。さらには、世の中にこのようなブラックバイトがあまりに多く横行しているため、アルバイターたちは自分のバイト先が”ブラック”であることに気づかず 、一つのブラックバイトを辞めても、またブラックバイトにハマるという悪循環に陥ってしまいがちなのです。●2.要チェック!アルバイトを決めるその前に確認しよう①~③そのアルバイトがブラックかどうかは、アルバイター本人に見極める目を持つ必要があります。そして、不当な扱いを受けたなら、それを証明する必要も あります。①口先や広告内容に騙されず、募集内容、労働条件は契約前にきっちりと確認して、そのコピーを必ず保管しておくことが大切。契約において、口約束は一切通用しません 。必要な条件や内容は、アルバイター側から申し出て契約書に記載してもらいましょう。②自分がどれだけの時間・どれだけの労働を行ったのか記録を残しましょう。タイムカードや勤務表などを自分のためにコピーしておく、毎日自分の労働内容を時間経過とともに細かくメモしておく、給料と明細と労働内容の照合を欠かさない などが大切です。小さな相違であっても、見つけたら報告して訂正を求めます。③その他にも、契約内容外の労働やアルバイターとしての労働範囲を超えた強い勧誘や自腹営業などを求められた時には、その場ではっきりと断ります。一方で、セクハラやパワハラを受けた時には、職場内の仲間と結束したり、証拠を集めたりして、相手に認めさせる材料を用意してから交渉する のが得策でしょう。●3.アルバイトに労働法は適用されない?そんなことはありません。アルバイターも法律上労働者であることに変わりがなく、条件さえ満たせば、労働法によって得られる権利がたくさんあります。例えば、時間給は分刻みで計算され、実働時間だけでなく、その準備としての清掃や片付け、仕込みなどの時間も労働時間として認められます。深夜などの割増手当、有給休暇を取得する権利もあります。もちろん、最初の契約内容と異なるシフトや仕事内容を求められた場合には、それを拒否し、それによって発生する収入減少分の一部を休業手当として請求することも可能 なことがあります。ブラックバイトが言う、「アルバイトにそんな権利はない!」という言葉を信じないよう、注意しましょう。●4.まとめとして~アルバイターにも権利はある!正社員とアルバイトの違いは、正規雇用か非正規雇用かにあります。従来両者は、労働量や労働内容が異なるから、給与や待遇も異なるという前提で共存してきました。ところが、近年のアルバイトは、正規雇用の正社員と変わらない労働を要求されながらも、相変わらず低い賃金や保障しか受けられず、ブラック化しています。では、解決策として、労働力を必要としている企業側が正社員を増やせばいいのかというと、人件費削減の必要性から簡単ではなく、アルバイターも仕事とそこからの収入を必要としています。だからこそ、アルバイターの労働条件の底上げのため、多くの労働法がアルバイターにも適用されるようになってきている のです。アルバイトとはいっても、立派な労働力であることを認識して、契約内容や労働内容に注意を払いましょう。そして、現場で「どうせ、アルバイトだし…」と泣き寝入りする前に、弁護士や「ブラックバイトユニオン」などの組合に相談しましょう。●参考図書ブラックバイトに騙されるな!大内裕和 著ブラックバイト大内裕和・今野晴貴 著●ライター/さとうあきこ●モデル/杉村智子
2017年12月07日*画像はイメージです:システム業界などでは、以前勤めていた会社から「ちょっとわからないことがあるんだけど……」と電話がかかってくることが稀にあるようです。中には、自分が構築したシステムに重大なバグや設計ミスが発覚することもあるのだとか。そのようなとき、会社側から「責任をとってほしい」「改修作業をしてほしい」などと、持ちかけられることもあるようです。労働者側としては落ち度があったとはいえ、既に雇用契約は切れているうえ、新しい仕事もあり、応じたくはありません。このような場合、労働者は賠償責任や改修作業に応じるべきなのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士にお伺いしました。 ■賠償責任の有無や改修作業に応じる義務は?「改修作業に応じる義務はないですが、担当者に落ち度があれば損害賠償請求に応じる義務がある場合もあるのではと考えます。通常、会社と担当者との間では労働契約(雇用契約)があるのではと考えられます。労働契約(雇用契約)の場合は、労働者は使用者の指揮命令に従って労務を提供する義務を、会社の方は賃金を支払う義務を負います(民法623条)。したがって、労働契約の期間中であれば、担当者は、改修作業を行わなければいけません。しかし、担当者が退社して、労働契約が終了しているとなると、担当者は、労務を提供する義務を負いません」(冨本弁護士) ■請負の場合は応じる義務が発生「なお、会社と担当者との法律関係が、労働契約(雇用契約)でなく、請負契約ということであれば、担当者は改修作業に応じる義務があります。請負であれば、請負人は仕事を完成させる義務を、会社の方は報酬を支払う義務を負います(民法632条)。また、請負の場合、納品されたものに欠陥があれば、会社としては、請負人に対しその修理をするよう請求できます(民法634条1項)。したがって、請負であればですが、担当者が開発したシステムに重大なバグが存在し、会社から回収作業を求められた場合、担当者としては応じる義務があります」(冨本弁護士) ■「落ち度」が認められれば損害賠償を負う場合もあるが……「会社と担当者の関係が労働契約(雇用契約)の場合でも、担当者に落ち度があれば、たとえ労働契約が終了した後といえども、損害賠償責任を負う場合があります。ただし、会社は労働者を指揮監督していたわけですから、損害の公平な分担という考え方から、会社の労働者に対する損害賠償請求については、裁判上かなり制限され、軽い落ち度であれば認められないこともあります。法律上は以上のようになると考えますが、改修作業がそれ程難しくないのであれば、退職した担当者としては、制限されているとはいえ賠償責任を負わないようにするために改修に協力し、会社の方も、退社した担当者に協力してもらう以上、相応の対価を支払うのが現実的であるかと考えます」(冨本弁護士) 担当者に「落ち度」があると判断された場合は、損害賠償責任を負うケースもあるようです。改修作業については、請負契約でなければ、原則応じる必要はないとのこと。法的には以上ですが、ブラック企業などは強行な損害賠償や無償による改修作業を求めてくることも考えられます。その場合は、弁護士とともに然るべき措置を取りましょう。 *取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです* stefanphotozemun / Shutterstock
2017年11月23日*画像はイメージです:先日、ある有名人が「自分の住所をネットに書き込まれた」として、警察に被害届を提出したものの、受理されなかったことを告白し、話題となりました。昨今SNSや掲示板などで個人の住所や電話番号が第三者によって書き込まれることは稀にあるだけに、「他人事とは思えない」という声があがっています。本当に住所などの個人情報をネットに書き込むことは違法ではないのでしょうか?インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。 ■刑法上違法とはいえない「刑法上、違法というためには、当然、刑法に違反していることが必要です。刑法には色々な罪が定められていますが、刑法に定められている罪以外のものについては、罪とされることがないのが原則です。この原則は罪刑法定主義と呼ばれます。氏名や住所を公開することは、どの刑法上の罪にも当たりません。このようなことをされると、“名誉毀損だ”と主張する方が多いように感じますが、名誉毀損は社会的評価の低下がなければ成立しません。氏名や住所が公開されても、社会的評価が低下することはないため、名誉毀損が成立することはありません。今回、警察が被害届を受理しなかったのは、このような理由と考えられ、極めて当然の対応ということになります」(清水弁護士) ■民事上は不法行為となる余地がある「しかし、氏名や住所はプライバシーとして保護される余地があります。承諾なくプライバシーを公開すれば、プライバシー侵害となり、これは民事上、不法行為ということになります。したがって、この例でも、氏名や住所を公開した人物に対して、プライバシー侵害として損害賠償請求をする余地があります。ただし、住所や氏名が開示されただけということだと、賠償額としては高くはならないと思われます。なお、損害賠償請求は、その公開した人物に対してすることが必要です。しかしインターネット上に公開された場合、公開した人が誰かということが分からない場合が多いのではないかと思います。この場合、発信者情報開示請求という手続きを経てからでないと、損害賠償請求をすることができません。したがって、公開した人の責任追及をしようとしても、少々大変かもしれません」(清水弁護士) 刑法に反していないため警察が被害届を受理しない行為は「当然のこと」なのだそう。しかし、書き込んだ人物を特定することができれば、民事上の不法行為に問うことができる可能性は高いようです。インターネット上に他人の個人情報を書き込むのはやめましょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)【画像】イメージです*Graphs / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月19日*画像はイメージです:交通違反などが原因で、パトカーから止まるよう指示されることは、多々あります。そんなときほとんどの人は指示に従うことでしょう。しかし、なかには逃げたいと思う人もいるはず。交通違反以外に「やましいこと」がある場合などは、実際に逃走するケースもあるようです。 ■死亡事故を起こすケースも稀に発生するのが、パトカーから逃げようとして事故を起こし、運転者が亡くなってしまうケース。この場合、逃走するほうに非があるのはわかるのですが、追い立てたパトカー側にも責任を問う声があります。このような場合、運転者の遺族としては警察に補償を求めたいところ。また、仮に何の罪もない通行中の一般人を巻き込んだ事故となれば、こちらの家族も治療費や補償を警察に求めていきたいところでしょう。警察に補償を求めることはできるのか。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説して頂きました。 ■警察に補償を求めることはできる?「警察官などの公務員の違法な行為によって損害を受けた場合には、その公務員が所属する国又は公共団体に対して、国家賠償法による損害賠償請求をすることが考えられます(国家賠償法1条1項)。パトカーに追跡されていた車が事故を起こしたようなケースでは、その追跡行為が違法である場合に限り、その警察を設置している公共団体に対して、国家賠償法に基づく損害賠償請求をすることができます。そして、どのような場合に警察官の追跡行為が違法となるかについて、最高裁判所は、「およそ警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断してなんらかの犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由のある者を停止させて質問し、また、現行犯人を現認した場合には速やかにその検挙又は逮捕に当たる職責を負う(警察法2条、同65条、警察官職務執行法2条1項)」として職責を認定しています。そのうえで「職責を遂行するために被疑者を追跡することはもとよりなしうるところ」として、追跡行為自体の正当性を認めています。「警察官がかかる目的のために交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合」については、その「追跡が当該職務目的を遂行する上で不必要であるか、又は逃走車両の逃走の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし、追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当であることを要する」として、逃走態様や交通状況等の事情から判断して追跡が不相当と言える場合には違法性を認めるとしました(昭和61年2月27日判決)。これは、パトカーに追跡されていた車に同乗していた者や、事故に巻き込まれた一般人のような第三者が損害賠償請求する場合だけでなく、パトカーに追跡されていた車を運転していた本人が損害賠償請求をする場合にも、警察官の追跡行為が違法となるのはどのような場合かについての判断基準となっています。この判例を受け、実際の裁判例を見てみると、損害賠償請求が認められたものとしては、警察官が、暴走行為をするバイクを停車させるために幅寄せ等の行為をした結果、バイクが標識と衝突し、運転者が死亡、同乗者が重傷を負った事例において、幅寄せ行為等に警察官の過失が認められ、追跡方法が違法であると判断され、損害賠償請求が一部認容されたものがあります。(徳島地裁平成7年4月28日判決)」(大達弁護士) ■損害賠償が認められる可能性は低い?「その他、警察官の呼びかけを無視して逃走をしているような場合で、警察官の追跡行為が違法とされた目立った例は見当たりません。警察官の追跡行為が違法とされる可能性がある例として考えられるのは、下記の条件をすべて満たすような限定的な場面と思われます。・逃走運転者の人物や住所が警察に知れていて、後に逮捕や検挙、任意の取り調べが容易でその場での追跡が不必要である・追跡原因となった違法事由や嫌疑が軽微なものである・追跡行為によって事故等が起こる具体的な危険性が生じている上記の条件をすべて満たしつつ、漫然と追跡し続けた結果として事故が発生したような場合でない限り、国家賠償法に基づく損害賠償請求が認められる可能性は低いと考えられます。なお、事故に巻き込まれた第三者は、事故を起こした運転者やその保険会社に対して、損害賠償請求をすることができ、それによって損害はある程度填補され得ます(自動車損害賠償保障法3条、民法709条)」(大達弁護士) 警察による追跡行為が違法とされる例は限定的のようです。補償を求めることができるケースもありますが、無用なトラブルを避けるためにも、やましいところがないのであれば、パトカーに呼び止められた場合には、素直に応じることが無難なようです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*curvabezier / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月18日マンションを売却する際に注意することのひとつに瑕疵担保責任があります。この瑕疵担保責任によって、物件を引き渡した後に損害賠償を請求されるといった事例も少なくありません。トラブルを未然に防ぐためにも瑕疵担保責任についてしっかり学んでおきましょう。難しそうだけど瑕疵担保責任って重要なの?瑕疵担保責任とは不動産売買の際に重要なもののひとつで、簡単に言うと、「物件に問題や欠陥があった場合の責任」です。マンションを売却する場合は、そのマンションで買主がきちんと生活できることを保証する責任が売主にあるということを意味しています。細かく分けると、瑕疵が「通常必要な品質や性能を有していない」という意味にあたります。売主が故意に隠したものはもちろん、過失(気付かなかった)であっても責任を負うことになります。その場合、買主が欠陥や問題を見つけてから1年以内であれば売主に責任を追及できることになっています。責任の追求とは具体的に契約の解除か、損害賠償請求を指します。瑕疵担保責任は、宅地建物取引業法と民法で定められているものです。民法の「第570条(売主の瑕疵担保責任)」には、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。」とあります。民法第566条は、売買の目的物が契約に達せない時は、買主は契約の解除を求めるか、損害賠償を請求することができるという内容です。また、買主がこの事実を知った時から契約の解除や損害賠償の請求は1年以内に実行しなければならないと記載されています。ただし、いつから欠陥や問題が始まったのか判断がつきにくいため、売買の際に瑕疵担保責任についても契約を結ぶのが一般的です。通常は引き渡し後3か月や6か月、古い物件の場合は瑕疵担保責任を負わないという「瑕疵担保責任免責」を設定するケースもあります。買主に不利が及ばないための瑕疵担保責任ですが、売主にも不利が及ばないような配慮もされています。マンションの価格を無料査定してみる瑕疵担保責任で多い事例は何?マンションの売却後に瑕疵担保責任を追及されるケースには、いくつか特徴があります。一番多いのはやはり設備や設置機器の故障や不具合でしょう。例えば、給湯器が故障していてお湯が出ないなどです。またエアコンの効きが悪いなども瑕疵担保責任の対象になります。買主に追求された場合、売主が修理費用を負担することになります。また、換気扇から異音がするといったことも瑕疵担保責任の対象になります。細かいところで言えば、「蝶番に付いているはずのネジが1つない」といったことでも、追求されると瑕疵担保責任の対象になります。こうしたことは、普段の生活をしている分には気にならないのですが、買主の新生活を保証する責任があるため、瑕疵担保責任の対象になります。「契約に不利なので言いたくない」という売主もいますが、後で追求される前に気になる点を不動産会社に話しておいた方がいいでしょう。また、住居内で家族が死亡した場合も注意が必要です。自然死であれば瑕疵担保責任の対象にはなりませんが、自殺の場合は瑕疵担保責任の対象になる、といったように素人では判断の難しいケースもあります。このようにご自身で判断が付きづらい場合も、あらかじめ不動産会社に確認するのが無難です。瑕疵担保責任の内容は契約書に記載するマンションの売買を行う際は不動産売買契約を交わしますが、同時に売主が瑕疵担保責任を負うかどうかを決め、契約書に記載してから取り交わすことになります。これはマンションの売却後、物件に欠陥があった場合にどのように対応するのか、あらかじめ決めておくためです。あまりにも物件が古い場合は、双方の合意のもと売主が瑕疵担保責任を負わない「瑕疵担保責任免責」を選択する方法もあります。一方、売主が瑕疵担保責任を負う場合は、引き渡しからどれくらいの期間かなどを取り決めます。それは売買契約に瑕疵担保責任についての記載を行わない場合、民法の規定が採用されるからです。民法では期間が限定されないため、売主は半永久的に瑕疵担保責任を負うことになってしまうのです。不動産売買は宅地建物取引主任者などが執り行うため、瑕疵担保責任のことについてはほとんどお任せすることとなります。しかし「分からないので」と言いなりになっていては売主に不利な契約となる可能性もあります。しっかり瑕疵担保責任の知識を得ておくことも、売主としての責任と言えるでしょう。まとめ愛着を持って住んでいたマンションの次の住人は新しい買主です。売主には、買主の新生活を保障する責任があるということを覚えておきましょう。そのためにも瑕疵担保責任について正しい知識を得ることはとても重要です。ただし2017年に民法の改正案が可決され、3年以内に施行されることになっています。改正民法では実は瑕疵担保責任という概念がなくなり、買主の権利がさらに拡大する見通しです。マンションの売却を検討している方は改正民法の動向にも注目しておきましょう。まずはマンションの価格を無料査定してみる
2017年11月16日スマホを見たことで浮気が発覚してしまった。そんなケースは割とよくみる光景ではないかと思います。そんな話を聞くたびに、私は「それだけはやったらあかんやつやで」と思ってしまいます。 確かに「別に良くない?」と言われると、まぁ見られても困るもんはないし、別にいいかなぁと思うのですが、僕は恋人にそれをされたら、僕自身は困らなくても、彼女の将来が不安になってしょうがないので、やっぱり怒ります。そこで今日は、他人のスマホを見て何がマズいの?という方に向けて、筆者が「他人のスマホだけは勝手に見たらマズい」と強く思う理由を、真剣にお伝えしたいと思います。■理由その1:プライバシーの侵害である可能性がマズい相手の知らないところでスマホを覗き見てしまう心理としては、好奇心と不安(猜疑心)の二つがあるかと思います。なんとなく気になったから、という軽いものと、もしかして自分の知らないところで女の子と遊びに行ってるんじゃ?という重いものまで、理由が様々あるでしょう。しかし、どんな理由であれ、相手のプライバシーの塊であるスマホを見る行為は「プライバシーの侵害」にあたり、損害賠償を求められる可能性があります。(*1)これは相手が許した、許さないの問題ではなく、そういうリスクのある行為を自然にできてしまう考え方の方がマズいと言えます。恋人同士だったからという理由で許されても、同じような感覚で他人のスマホを見てしまったら、プライバシーの侵害になってしまい、とんでもないことになりかねないのです。 恋人がそんなことしたら放っておけますか?■理由その2:断りをいれられない関係性がマズいそんな大げさな、と思われる方でも、よくよく考えてみてほしいことがあります。もし仮に相手がこちらの浮気を疑っていたとしたら、その疑いを自分に相談もしないまま、勝手にスマホを見た、ということになります。それって二人の信頼関係は大丈夫なの?と思うわけです。スマホ見るぐらいなら直接言えよ、と。そもそも「私はあなたが浮気をしているんじゃないか」と不安に思っている、ということを直接言えない関係であるという事実が、二人の信頼関係にとって良くないのではないかと思います。二人の信頼関係を本気で憂うのであれば、スマホを勝手にみた相手に怒る内容は、「なんで勝手に見るの?」ではなく、「私ってそんなに信用ないの?」でなくてはならないのです。「スマホを見た」という行為だけ見ると、人によっては些細な問題かもしれませんが、「スマホを黙って見られる関係だった」という事実を見ると、決して些細な問題ではないように思うのです。■理由その3:勝手に見れちゃうセキュリティレベルがマズい今度は視点を変えて、見られた側の問題。今のスマホは他人がロックを外せないように、指紋認証のパスワードを導入しているものは増えてきました。しかし、まだまだパスコードという数字、もしくは指でなぞる線の描き方のパターンでロックをかけている人も多いようです。スマホを見た相手にも問題がありますが、スマホを見られた本人にも問題があります。そんなセキュリティレベルでは、Webサイトのログインパスワードも誕生日で設定していそうでとても不安になります。もし将来その人と結婚をして、口座を一緒にでもしてごらんなさい。ハッキングされてしまいますよ。■結論:やっぱり見ちゃダメだし、見られちゃダメうーん、考えれば考えるほど、マズいです。やっぱり。見ることで得られるメリットがあまりない割に、見ることで発生するデメリットの方が明らかに大きい行為です。あ、理由、もう一つ思いつきました。恋人のスマホを勝手に見てしまう人は、リスクとリターンのバランス感覚が悪すぎるので、マズい。これも追加しておきましょう。(川口美樹/ライター)(*1)参考:「夫・妻/彼氏・彼女の携帯を勝手に見ると犯罪になるの?」(ハウコレ編集部)
2017年11月09日*画像はイメージです:婚約後に相手の嫌なところが見えてきて婚約を取り消したくなるケースもあるかと思います。たとえば相手に多額の借金があった場合、婚約を取り消したいと考える人もいることでしょう。今回は上記の場合に婚約を取り消せるのか、また、婚約の定義や婚約取り消しに伴う損害賠償について解説してみたいと思います。 ■婚約とは何か実は、民法上では婚約とは何か、また、何をすれば婚約になるのかという規定は定められていません。しかし、法律学上は、将来適法な婚姻をしようという男女間の約束のことをいう、といわれています。たとえば「同棲はするが婚姻届は出さないでいよう」という約束や、あるいは同性間の約束は、婚約にはあたりません。もちろん、そのような二人の間で何らかの契約が成立していると考える余地は十分ありえますが、伝統的な法律学は、その状態を「婚約」という言葉では表現していないのです。法律学の理屈上は、男女二人が自分自身の真意に基づいて上記の約束をすれば、それだけで婚約は成立することになります。契約書にしたり仮祝言などの儀式を行ったりしなければならないというわけではありません。とはいえ、婚約が一方的に破棄されてしまった場合にこのような外形的な事実が全くないとなると、裁判官に「そもそも婚約が成立したとは言えない」と判断されてしまう可能性もあります。理屈上のことはともかく実際には、ある程度の外形的事実がなければ婚約の事実を証明することができないために、婚姻は成立していないと判断される傾向にあります。 ■婚約成立後に別れることはできる?婚約が成立しているといえるときに、相手が多額の借金を背負っていると判明した場合には、別れることはできるのでしょうか?結論から言えば可能です。何故かというと、婚姻はあくまで純粋に自由な意思に基づいてなされるべきものですので、「一旦婚約したのだからその約束どおり婚姻しろ」と強制することはできないからです。あなたとしては相手方に婚約破棄を通告するだけで足り、それ以上特に何かをする必要はありません。 ■損害賠償についてなお、一般論としては、婚約破棄に正当な理由がない場合には、破棄された側に損害賠償を支払う義務が発生する場合はあります。しかし、具体的な状況にもよりますが、相手が多額の借金をしているという事実は婚約破棄の正当な理由にあたるといえる場合が多いと思われますので、その場合は損害賠償を支払う義務はないと考えられます。 ■婚姻後の場合だと異なってくるところで、多額の借金があると判明したのが婚姻した後だったという場合には、このように簡単に別れられるとは限りません。仮に相手方が話し合いの段階(=協議・調停)で離婚に応じてくれればよいですが、応じてくれない場合には、あなたが離婚訴訟を提起して裁判官に認めてもらわなければ離婚できないのです。一般的な話として、離婚訴訟では、離婚を求められる側に「離婚原因」がなければ、離婚を認めてもらうことができません。相手方の多額の借金が離婚原因にあたる可能性はあるのですが、借金がいくら以上なら離婚できる、いくら未満なら離婚できないという単純な話ではありません。それ以外にも様々な事情を総合して、たとえば相手方が怠惰な性格をしている、働く意思がない、生活能力がない、それ故に「婚姻関係を継続し難い重大な事由」がある、と裁判官が判断してくれれば、(相手方が拒否していても)裁判離婚が認められることになります。そのためには、離婚訴訟の中で、相手方の怠惰な性格などをあなたが立証(証拠をもって証明すること)していかなければなりません。相手方の多額の借金が判明した場合、そのことを理由とする婚約破棄は比較的容易ですが、離婚となると簡単にできるとは限りません。その点をよく踏まえたうえで、相手方との関係を今後どうしていくべきか、よく検討すべきでしょう。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*kai / PIXTA(ピクスタ)
2017年11月02日*画像はイメージです:月17日、CD585枚を山中に廃棄したとして、福岡県内に住む30代の男性が逮捕されたことが判明。このような不法投棄は紛れもない犯罪ですが、罪の重さや定義などは、いまいちよくわからないのも事実。そこでピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。に、CD投棄事件と絡めて解説していただきました。 ■不法投棄の罪の重さは?「不法投棄は、“廃棄物の処理及び清掃に関する法律”により、不法投棄者は五年以下の懲役もしくは一千万円以下の罰金(法人の場合は三億円以下の罰金)に処せられる場合があります。ここで不法投棄とは、同法で定められた処分場以外の場所に廃棄物を投棄することです。もっとも、廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべき、とされています。CDが、直ちに廃棄物に当たるか否かは、そのCDの状態等によって、ということにはなりますが、よほどの新品ではない限り、通常は廃棄物にあたるものと思います。そうでければ、不法投棄しないでしょう」(森川弁護士) 不法投棄者は個人の場合5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、法人の場合3億円以下の罰金に処される場合があるそうです。重罪ですね。不法投棄は絶対にしないようにしてください。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*poosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月30日頭髪が生まれつき茶色いのに学校から黒く染めるよう執拗に強要されたという大阪府立高校3年の女子生徒が、府に損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。このニュースに、Twitter上では著名人からも憤りの声が多数寄せられている。 脳科学者の茂木健一郎氏(55)は《女子生徒が全面的に正しい。学校や、大阪府は、根本的な勘違いをしている》と怒りのツイート。 学校側は生徒に対し、入学直後から1~2週間ごとに黒染めを指導。染色を繰り返したため生徒の頭皮はかぶれ、髪はぼろぼろに。生徒は教諭から「母子家庭だから茶髪にしているのか」などと中傷されたほか、茶髪を理由に文化祭や修学旅行の参加も認められなかったそうだ。 さらに、学校側は「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒染めさせることになる」と、生徒の代理人弁護士に伝えたという。 この発言に《これは本当に酷いね》とツイートしたのは城田優(31)。《これ本気で言ってるのでしょうか?恐ろしすぎる》と憤りを露わにした。 日本の高校に通ったフィフィ(41)は、自身も頭髪指導をされた経験があるという。《アフリカ大陸出身の私もパーマか?って聞かれたり…天パにストパーかけろと強要する先生もいて、パーマかけろって本末転倒だよね》とツイートした。 高校生の頭髪をめぐっては東京都でも、茶髪やパーマが生まれつきかどうか確認する「地毛証明書」の提出を求める都立高校があるが、《黒髪ストレートじゃない人だけに「地毛証明書」を求めるのも人権侵害》という声も。頭髪指導をめぐる議論はまだまだ続きそうだ。
2017年10月28日10月23日、NHKが定例会見を行い、俳優・小出恵介(33)の所属事務所との損害賠償請求を含む協議について言及した。今年6月、小出が『フライデー』に17歳の女性との“淫行疑惑”を報じられた影響で、同局の土曜ドラマ『神様からひと言~なにわお客様相談室物語~』が放送中止になっていたのだ。 「NHKのドラマは全6話まで撮影が終わっていたにも関わらず、お蔵入りになってしまいました。1話あたり5千万円ほどで、NHKだけでも違約金は3億円に上るそうです。ほかに出演予定だったドラマや映画、CM等もろもろ計算すると、違約金の総額は5億円以上とも言われています」(芸能関係者) 同局の木田幸紀放送局長は損害賠償について「(小出の)所属事務所と協議し、合意にいたりました」と報告。「内容に関しては公表を差し控えたい」としたものの、「こちらの求めていた通りの合意でした」と説明した。 実は3カ月前、本誌は謹慎生活中の小出を直撃している。そこで語っていた“複雑胸中”とは――。 7月下旬の午後4時ごろ、自宅マンションから姿を現した彼に記者が声をかけた。 ――『女性自身』です。事件に関して何かおっしゃりたいことは? 「……」 報道直後は小出が一方的に叩かれていたが、高校生と報じられていた相手女性が“シングルマザー”と判明。それ以降、ネット上では彼女のプライバシーが次々とさらされるという事態に発展した。小出と関係を持ったことを、当初は自慢げにSNSで吹聴していたとされ、女性への心ないバッシングもあった。 いずれにせよ、これまで明らかになっているのは、女性側の声ばかり。小出の“言い分”もあるはずだが、彼は口を開いてこなかった。 ――小出さんも、いろいろお話されたいことがあるのでは。 「ええ、そうですね。なんか、自分もやっぱり発言させてもらえない色んな事情があって……。ただ、世の中の空気がどういうふうになっているのか、僕も知りたいなって思ってるんです。でも、なかなか触れられなくて……」 ――NHKの違約金だけで3億円と聞きました。 「金額のことは分かりません。もちろん違約金が発生していることは知っています」 ――小出さんと事務所、どちらが払うんですか。 「まだ協議中です」 そして、今後についてはこんな“不安”を語った。 ――復帰はいつごろに? 「正直、分からないです。事務所もどうするかわからないみたいなので」 彼は現在も、猛省の日々を送っている。
2017年10月23日*画像はイメージです:昨今、電車の窓ガラスが割れる事故が頻発しています。9月21日には、午前9時にJR東海道線の川崎~品川間で、そして午後1時半頃には東急東横線菊名~妙蓮寺間で窓ガラスが割れる事故が発生しました。幸いけが人などは出なかったようですが、かなりのスピードを出す乗り物であるうえ、電車がすれ違った場合かなりの風圧が発生することから、乗客が危険な状況にさらされることは間違いありません。仮に電車の窓ガラスが割れ、乗客が負傷した場合、責任は誰が取るのでしょうか。治療費の請求などが可能であるかも気になります。エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に見解をお伺いしました。 ■電車の窓ガラスが割れ負傷した場合誰が責任を取る?「満員電車の窓が割れると一口に言っても様々な原因が考えられると思いますので、次のとおり場合分けしてみましょう。(1)満員電車に詰め込まれた乗客の圧力によって割れた場合(2)線路の敷石が跳ね上げられて割れた場合(3)投石など第三者の行為によって割れた場合今回は(1)(2)(3)のそれぞれについて解説してみたいと思います。まず、旅客運送に関しては、商法は590条1項で、次のように定めています。「旅客ノ運送人ハ自己又ハ其使用人カ運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ旅客カ運送ノ為メニ受ケタル損害ヲ賠償スル責ヲ免ルルコトヲ得ス」これは、鉄道などの旅客運送において乗客が損害を負った際には、旅客運送上の注意を怠っていなかったことを旅客運送会社自身が証明しない限り、その会社が損害賠償責任を負うとするもので、今回のケースでは、いずれの場合においても、鉄道会社が注意を怠ったかどうかがポイントとなります。以下、この前提を基に(1)、(2)、(3)について考えてみます。 ■(1)満員電車に詰め込まれた乗客の圧力によって割れた場合まず、通常想定しうる乗車数を超えているにも関わらず、駅員や乗務員等が乗車規制などの措置をとらなかったため、電車の窓ガラスが車内からの乗客による圧力に耐えられず割れてしまい乗客が怪我をしたというような場合についてです。また、整備不良等によって窓ガラスに欠陥が生じており、それに満員電車の乗客による圧力が加わったことによって窓ガラスが割れ、乗客が怪我をしたような場合には、鉄道会社が旅客の運送に関し注意を怠っていたといえそうなので、鉄道会社は損害賠償責任を負うことになると思われます。 ■(2)線路の敷石が跳ね上げられて割れた場合次に、敷石が跳ね上げられることにつき、相当の注意をしていたとしても跳ね上げられる危険のある敷石を発見できなかったというような場合についてです。これは、例えば、電車が通る直前にカラス等のいたずらによって線路上に置石がされた場合などのような不可抗力的な場合でない限りは、そのような危険を排除するという旅客運送上の注意を怠るものとして、鉄道会社は損害賠償責任を負う可能性が高そうです。 ■(3)投石など第三者の行為によって割れた場合最後に第三者の故意による違法行為が原因で窓ガラスが割れたような場合についてです。原則として、その行為をした者が民法709条に基づく損害賠償責任を負うこととなり、旅客運送事業者が責任を問われることにはならなさそうです。ただし、その行為が行われることが予見できたのにこれを防止しなかったなどの事情、具体的には線路に侵入防止のフェンスを設置しなかったとか、線路のすぐ脇で投石を伴う騒動が生じている状況を知りながら、何らの措置も取らずに通常運行したことにより投石事故が生じたような場合には、鉄道会社は旅客運送上の注意を怠ったものとして、損害賠償責任を負う可能性もあると思われます。毎日お世話になる人も多いであろう電車。満員電車には様々なトラブルがつきものですが、譲り合いの精神で環境は大幅に変わりますので、乗車時には時間にも心にも余裕をもって利用したいものですね」(大達弁護士) 鉄道会社が旅客運送上の注意を怠ったことにより窓ガラスが割れたと認められた場合は、損害賠償責任を負う場合があるようです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*R-DESIGN / PIXTA(ピクスタ)
2017年10月19日*画像はイメージです:昨今、芸能人や一般人に対して「ドッキリ」を仕掛ける番組が増加しています。「ヤラセ」ではないかとの声もありますが、仮に本当に騙している場合、少々「やりすぎ」と感じることもあります。場合によっては、騙された側がドッキリと告げられ、怒り出すことも。通常このような場合は番組側が謝罪するなどしてとりなすため、問題にはならないのですが、あまりにも度が過ぎる場合は、「提訴」に踏み切ることもあるかもしれません。「ドッキリ番組」で騙された側が違法性を主張することはできるのでしょうか?パロス法律事務所の櫻町直樹弁護士にご意見を伺いました。 ■違法性を主張することはできる?「ヤラセではなく“本当に騙している”、つまりそのような“ドッキリ”を仕掛けられることについて本人の同意を得ていないということであれば、それが民事上の不法行為、あるいは刑事上の犯罪行為にあたる場合には、損害賠償責任を負ったり、刑罰が科せられたりする可能性があります。例えば、対象者が所有する自動車のタイヤをパンクさせるという行為をドッキリとしておこなった場合、当該行為は“器物損壊”として、民事上の損害賠償責任を負う可能性と、刑事上の犯罪として刑罰を受ける可能性(3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。刑法261条)があるといえます。なお、“ドッキリ”の具体的内容によっては、対象者の権利や利益を侵害していない、あるいは損害が生じていないとして、法的な責任を負わないというケースもあるかもしれませんが、例えば、大声で人を驚かすというようなドッキリについては、人の左耳もと近くで携帯用拡声器を通じてやにわに大声で“市長”と怒鳴りつけた行為を、暴行罪(刑法208条)にあたると判断した裁判例があります(大阪地裁昭和42年5月13日判決・判時487号70頁)ので、状況によっては同じように“暴行”と判断されることもあるでしょう。ですから、“これぐらいなら大丈夫だろう”と軽率に判断し、行為に及ぶことは控えたほうがよいと思います」(櫻町弁護士) ヤラセではく本当に騙されている場合、その内容によっては違法性を主張できることもあるようです。 ■肖像権侵害の可能性も「また、“ドッキリ”の場合は、対象者の驚いている様子等を撮影し、これを放送することになると思いますが、本人の同意を得ないで容貌等を撮影する行為、また、それを不特定多数に公表する行為については、“肖像権侵害”として民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。例えば、刑事裁判の被告人につき、法廷での容貌などを撮影した行為、及びその写真を週刊誌に掲載して公表した行為が不法行為にあたるかが争われた裁判で、最高裁判所は(“肖像権”という表現は使っていませんが)“人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する”、“人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当”としています(最高裁判所平成17年11月10日判決民集59巻9号2428頁)」(櫻町弁護士) 本当に騙されているとするなら、法律違反が発生する可能性が高い番組であるようですね。 *取材協力弁護士:櫻町直樹(パロス法律事務所。弁護士として仕事をしていく上でのモットーとしているのは、英国の経済学者アルフレッド・マーシャルが語った、「冷静な思考力(頭脳)を持ち、しかし温かい心を兼ね備えて(cool heads but warm hearts)」です。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*あんころもち / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月25日*画像はイメージです:月30日、SNS『GREE』内で自分になりすまし、他人を罵倒する書き込みをされたとして、長野県に住む男性がなりすまし実行犯に対し、723万円の損害賠償を求めた裁判の判決が大阪地裁で行われました。その中で裁判長は「社会的評価を低下させ、名誉権を侵害した」として、被告側に130万円を支払うよう命令。「なりすまし」行為で名誉権侵害が成立することが、司法によって認められることになりました。 ■なぜ723万円が130万円に減額された?今回の判決で、なりすまし行為が名誉権侵害であることが認められましたが、723万円の損害賠償請求額が130万円に大幅に減額されたことも事実。被害者としては納得がいかないかもしれません。なぜこのような金額になったのでしょうか。インターネット問題に詳しい法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に、ご意見を伺いました。「賠償額については、慰謝料と認容額の約1割分が「弁護士費用」として認められるのが通常の実務です。慰謝料額についてはこれまでの蓄積から概ね30~100万円程度の間で、裁判官の心証により認定されることが多いです。なお、これらのほかに、インターネット上の権利侵害の場合には誰がやっているか不明であるため、発信者情報開示請求が必要になり、そのために調査費用(弁護士費用)がかかることになります。これについても認めてもらえる方向になってきていますが、報道だけからは、この件でそれが認められているかは明らかではありません。ただ、金額が比較的高いことからすると、認められていると想像されます」(清水弁護士)今回の損害賠償額は、過去の判例から見ると、一般的な金額といえるようです。 ■なりすまし被害に遭った場合どのように犯人を特定する?TwitterやFacebookなどでは、たびたびアカウントが乗っ取られる事態が発生し、誰にでも「なりすまし」をされるリスクがあります。仮になりすましを受けた場合損害賠償請求を行うことができることは分かりましたが、どのようにすれば相手を特定できるでしょうか。法律事務所アルシエンの清水陽平弁護士に方法などをお伺いすると……。「なりすましの場合、それだけでは一般的には権利侵害とはいえないですが、名誉毀損やプライバシー侵害がある内容が含まれていれば、それを理由にして発信者情報開示請求を行うことで特定することができる余地があります」(清水弁護士)「なりすまされただけ」では一般的に権利を侵害しているとはいえませんが、名誉毀損やプライバシー侵害に遭った場合は、それを理由に発信者開示請求を行い、犯人を特定できる可能性があるそう。そうはいっても、自分が受けている被害が名誉毀損やプライバシー侵害にあたるかどうかは、判断のつきにくいところ。まずはインターネット問題に精通した弁護士への相談してみることが、第一歩といえるでしょう。 *取材協力弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*Pretty Vectors / Shutterstock
2017年09月12日*画像はイメージです:中古住宅の購入を検討する上で、住宅の欠陥の有無は気になるところです。しかし、目に見えないところに欠陥がある場合には、当該欠陥についての告知を受けない限りは、発見することが難しいです。例えば、中古住宅の前住民が自殺していたような場合には多くの人がその購入を戸惑うと思います。この意味で、その物件は欠陥ある物件といえそうですが、売主が告知してくれない限りは、知る機会すらありません。このような『いわくつき』の物件のことを、『事故物件』と呼ぶことが多いようですが、今回は、このような『事故物件』を、『事故物件』ではない価格で売却した売主及び仲介した不動産業者の責任について考えてみます。 ■事故物件とは『事故物件』という単語に明確な定義はないようですが、一般的には、いわくつきの物件であり、購入者が心理的に購入を躊躇うような物件、法律的にいえば、心理的な瑕疵(=欠陥)のある物件を示しているといえます。ただ、この心理的なものについては、人によって感じ方は違うかもしれません。自殺に限っても、10年前に自殺があった物件と、1ヶ月前に自殺があった物件とでは感じ方は変わるのではないでしょうか。裁判上も、自殺からどのくらいの期間が経過しているのかといった事情のほか、居住目的か事業用目的かといった事情を総合考慮した上で、心理的な瑕疵といえるかの判断がされています。 ■売主の責任は?売買契約における売主は、法律上、瑕疵担保責任を負っています(民法570条)。この瑕疵担保責任は、欠陥のある物件を売ったことに対する売主の責任であり、売主の認識を問わずに発生する責任とされています。つまり、売主が欠陥の存在を知らなかった場合であっても、売主には欠陥ある物件を売ったことに対する責任があるということです。したがって、前住民の自殺が心理的な瑕疵に該当する場合においては、この瑕疵担保責任に基づき、買主から契約の解除を求められ、売買代金の返金及び損害賠償請求を受ける可能性があります。では、売主が、心理的な瑕疵の存在を知りながら、これを買主に告知しなかった場合はどうでしょうか。この場合にも、先ほどの瑕疵担保責任は当然発生しますが、そのほかにも、告知義務違反による損害賠償請求、あるいは、契約上の違約金の請求等を受ける可能性があります。 ■仲介不動産業者の責任は?仲介に入った不動産業者が、買主に対して、心理的な瑕疵を告知しなかった場合はどうでしょうか。まず、先ほど述べた瑕疵担保責任は、あくまで売主の責任ですから、仲介不動産業者がこの責任を負うことはありません。ただし、心理的な瑕疵の存在を把握していたか、あるいは把握できて当然という場合には、瑕疵担保責任ではなく、告知義務違反を問われる可能性は残されます。まず、売主からは心理的な瑕疵の存在を聞かされていたものの、あえてこれを告知しなかった場合は、心理的な瑕疵に該当するため、不動産仲介業者にも告知義務が認められ、仲介不動産業者にも告知義務違反が認められることになるでしょう。この場合、買主から損害賠償請求を受けることは十分に考えられます。 他方で、売主から心理的な瑕疵の存在を聞かされていなかった場合はどうでしょうか。この場合には、通常の不動産仲介業者に求められるだけの注意義務をもって対応していたにも関わらず、心理的な瑕疵を把握することができなかったといえれば、責任を負うことはないと考えられます。ただし、売主の説明に不信な点があることに気がついていたにも関わらず、調査を行わなかった場合などにおいては、不動産業者としての責任追及を受ける可能性は十分にあるといえそうです。 中古物件の購入者としては、『事故物件』であることを隠されないためにも、また、万が一隠された場合に備えて、是非とも、過去の事故・事件の存否を売主や仲介不動産業者に確認しておきたいところです。 *著者:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*kirin / PIXTA(ピクスタ)
2017年09月01日*画像はイメージです:「私は、ある株式会社の常務取締役を務めておりますが、社長から『他の取締役と意見が合わないから辞めてくれないか』と言われました。辞めざるを得ないのでしょうか。会社に対して何も主張できないのでしょうか」取締役のかたからこのようなご相談をいただきました。通常の労働者であれば、労働法によってその地位が保護されていますが、取締役などの会社の役員は会社との関係でどのような立場になるのでしょうか。 ■労働者との違い株式会社と取締役との法律関係は、雇用関係ではなく、委任関係とされています(会社法330条)。従業員が取締役に選任されるにあたって、退職手続をとり、退職金をもらう人もいらっしゃるかと思いますが、それはいったん労働契約が終了するためです。したがって、労働者の場合と異なり、取締役には労働契約法上の解雇規制(労契法16条)の適用はありません。なお、取締役の中には、従業員兼務取締役という立場の人もいて、この場合は労働者の地位が残っていると考えられています。次に、任期中に取締役を解任したい場合には、株主総会決議によって解任することができます(会社法339条1項)。取締役の解任には、労働契約上の解雇規制とは異なり、特段の理由を必要とせず、株主総会決議があれば自由に取締役を解任することができます。 本件では、常務取締役ですので、通常従業員兼務取締役ではなく、純然たる取締役です。そうだとすると、労働者ではありませんので、労働契約法上の解雇規制の適用もなく、当該会社の株主総会決議によって、解任することができます。 ■取締役解任の損害賠償請求それでは、取締役の解任の場合には、会社に対して何も主張できないのでしょうか。会社法339条2項は、解任された取締役は、その解任について正当な理由がある場合を除き、株式会社に対し、解任によって生じた損害の賠償を請求することができると規定しています。これは、取締役の解任の自由を保障しつつ、正当な理由がある場合を除いて、解任そのものによる損害賠償を認めることで、取締役の任期に対する期待保護と株主の会社支配権の確保との調和を図ったものと説明されています(法定責任説)。この会社法339条2項により請求できる損害賠償の範囲は、取締役が解任されなければ在任中および任期満了時に得られた利益の額とされており、典型的には残任期分の役員報酬相当額となります。一方で、慰謝料や弁護士費用は原則として認められません。 ■損害賠償請求が認められないケースも先ほど、損害賠償額の範囲について触れましたが、どんなケースで損害賠償請求が認められるのでしょうか?これについては、会社法339条2項には記載があり「正当な理由」のある解任を除き損害賠償請求が認められる、とされています。つまり、「正当な理由」がある場合には、取締役解任に対する損害賠償請求は認められないことになります。取締役解任の「正当な理由」の有無で争われる主要なケースは以下のような4つに大別されます。 (1)法令・定款違反行為、心身の故障(2)職務への著しい不適任など(3)経営上の判断の失敗(4)主観的な信頼関係喪失(大株主の好みや、より適任な者がいるというような単なる主観的な信頼関係喪失) それぞれのケースが正当な理由に該当するかどうかですが、(1)(2)に関しては、正当な理由に該当するとされています。(3)については正当な理由の有無について争いがあるとされており、(4)は正当な理由とは原則として認められません。 本件では、他の取締役と意見が合わないという理由だけでは、④の主観的な信頼関係喪失といえ、正当な理由は認められないでしょう。したがって、本件では、残任期分の役員報酬相当額の損害賠償請求が認められる可能性が高いといえます。 *著者 弁護士 小林 洋介(センチュリー法律事務所。一つ一つのご相談には個性があり、解決策もさまざまです。それぞれのご相談の事情や時代の変化に応じて、既存の解決策にとらわれず、新しい解決策を常に模索し、提案し続けていきたいと考えております)【画像】イメージです*プラナ / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月31日ものまね歌手の荒牧陽子(36)が26日深夜放送の日本テレビ系「24時間テレビ」内の「今夜限り!生しゃべくりでタレコミ続出!その真相を初告白007」に生出演。5年ぶりのテレビ復帰を果たした。 荒牧は5年間表舞台から姿を消した理由を「のどが潰れてしまったので静養していたのと、あとはショーをやらせていただいた」と説明。MCをつとめた、くりぃむしちゅーの上田晋也(47)から「今は完治した?」と聞かれると「はい!」と笑顔で答えた。 復調ぶりを裏付けるように浜崎あゆみ(38)、坂本冬美(50)、新ネタのchay(26)らものまねをメドレーで披露。上田はこの5年でレベルアップを絶賛した。 「荒牧は11年、くりぃむしちゅーがMCをつとめた日テレの『スター☆ドラフト会議』に彗星のごとく登場。出演するやいなや、倖田來未(34)らのものまねで一躍ブレーク。その後、壮絶な争奪戦の末に大手芸能プロの系列事務所に所属しテレビのオファーが殺到しすっかり売れっ子になっていました」(テレビ局関係者) ところが13年1月、「激務から来る喉・体調・メンタル不調」を理由に芸能活動一時休止を宣言。今回の復帰まで、プライベートは波乱万丈だったというのだ。 「13年5月に仕事で知り合った年上のテレビプロデューサーと結婚。しかし略奪婚だったため結婚前から夫の前妻と揉め、ついには前妻から損害賠償を求めて提訴されてしまったのです。結果は敗訴。このゴタゴタが原因でテレビから消えていたが、14年ごろから仕事復帰。16年秋ごろには晴れて第1子を出産して、ようやく平穏が訪れていました」(芸能記者) 人生の荒波を乗り越え、母になっただけにその芸に磨きがかかったようだ。
2017年08月28日*画像はイメージです:近年、「終活」という言葉がクローズアップされてきていますが、それに従って、自分の財産の整理や相続について計画をする人が増えているように感じます。そのような人が、自分の死後の財産をどのように残すかを決めるために、どのような方法があるかを考えた場合、真っ先に思い浮かぶのは、遺言書ではないでしょうか。しかしながら、遺言は場合によっては記載通りに遺産が継承されないこともあるのです。どういったことなのか解説していきたいと思います。 ■遺言は無視される?日本における相続では、民法で法定相続分という割合が決まっており、相続人の間で、この法定相続分に従って、亡くなった人(法律用語で「被相続人」といいます)の遺産を分割するのが原則です。ただし、遺産分割は、被相続人の財産の死後における処遇を決めるものですので、被相続人の意思を反映させるべきとも考えられています。その意思表示の方法が「遺言」です。法律上、遺言は、相手方の受領を必要としない相手方の無い単独行為であるとされています。要するに、遺言をした人が死亡すると、原則として、受け取る相続人の意思にかかわらず、遺言に書かれた内容どおりに財産が承継されるということです。ただし、 判例上、相続人の間で、被相続人が残した遺言の内容と異なった遺産分割協議を行うことは禁止されないとされています。「遺言は無視されちゃうの?何で?」と思うかもしれませんが、財産の承継を指定された相続人において、遺産を受け取りたくないという場合もあります。例えば、親が実家の土地建物を長男に継いでほしいと思い、これを長男に相続させるという遺言を残していたけれども、長男は実家を出ており、自分の家も所有してるため、実家に戻る予定はないというような場合です。このような場合に、長男が引き継がなければならないとすると、長男は「自分は住まないし、維持費用もかかるので、実家を売却して手放したい」などと考えることも十分にありえます。もし、他の兄弟が承継して実家を残してくれるというのであれば、遺言にこだわらずに、他の兄弟に承継してもらったほうが、実家は残るので、そのほうがかえって被相続人の意思にも適うという見方もできます。このような考えもあり、相続人が遺言と異なる遺産分割の合意をすることは認められていて、その場合は、結果として、被相続人が思い描いたような財産承継がなされないということになります。遺言を残す側からしたら、遺言が守られない場合があるということに納得がいかないかもしれません。しかし、財産を残したい被相続人の側だけでなく、もらう側の相続人にも立場や事情があります。 ■相続対策よりも…遺言を残すことを考えている人にとっては、自分の遺志をしっかり残すということが、なによりも大事かもしれません。しかし、その前に、遺志を受け取る側の迷惑になっていないかをよく考えたり、いざ自分が亡くなってしまった後に、受け取る側の相続人に迷惑だと思われないように、生きているうちに家族・親族としっかりコミュニケーションをとっておくということを忘れないようにしてほしいです。当たり前のことのように思われるかもしれませんが、コミュニケーション不足による親族間のトラブルは少なくありませんし、お金の問題ですから解決も難しいです。問題が大きくなってしまうと疎遠・絶縁となってしまったというケースも珍しくはありません。普段からのコミュニケーションを大切にしているという前提があってこそ、われわれ弁護士の専門的な助言が、遺言を残したい方の想いを実現するためにより役立ってくるのだと思っています。 *著者:千屋全由(丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士。企業関係の相談・紛争処理から貸金返還や交通事故等の損害賠償請求といった個人の法的トラブルまで、様々な案件に携わっている)【画像】イメージです*EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月25日「記事が出て1週間がたった8月17日の夜、彼女が名古屋・中日劇場で出演していた舞台『音楽喜劇のど自慢上を向いて歩こう』のスタッフや出演者が集まって食事会があったんです。上原さんは落ち込んでいるようすはなく、最後まで参加しました。それどころか、ふだんよりも積極的に話しかけにいったり、出席者たちと盛り上がっていましたよ」(参加者の1人) 8月10日発売の『女性セブン』で、14年に自殺した夫・TENNさん(享年35)の“自死の真相”を報じられた上原多香子(34)。TENNさんの葬儀は、同年9月に大阪市内でしめやかに執りおこなわれた。あれから3年、彼女は“悲劇の妻”であり続けてきたが――。 「今回、TENNさんの弟が“もう黙っていられない”と、残されていた遺書を公開したのです。そこには、彼女が不倫していたことが書かれ、不倫相手の俳優の実名を挙げて、“彼と幸せになってほしい”という衝撃的な言葉が記されていたんです」(スポーツ紙記者) 遺族はこれまで、自殺の真相について堅く口を閉ざしてきたが、その陰ではさまざまなことが起きていた。 「じつは、彼が亡くなった数カ月後に、精神的なダメージを受けたということを含めて、ご遺族から彼女に対して損害賠償請求がされたんです。金額は3~4千万円と聞いています。ご遺族としては、せめて法的なことだけでもきっちりしておかないと、気持ちの整理がつかなかったのでしょう。でも、上原さんも応じる気持ちはあったのですが、お金の問題もあって、話し合いが延び延びになって……」(前出・TENNさんの知人) さらに遺族の態度が硬化したのは今年5月。『フライデー』で上原の“新恋人”が報じられたときだ。“新恋人”として報じられたのは、演出家のコウカズヤ(40)。みずから劇団を主宰する、新進気鋭の演劇人だ。冒頭のとおり、名古屋での舞台関係者との食事会では、明るい表情を見せていたという上原。その背後には、この新しい彼と目指す“新生活”があったのだ。 「コウさんは、彼女の不倫が原因でTENNさんが自殺したことも知ったうえで、彼女と付き合い始めたんです。だから今回の報道が出ても気持ちに変わりはなく、しっかりと彼女を支えていくつもりですよ」(コウの知人) 上原が食事会で見せたようすは“カラ元気”ではないと、彼女の知人も話す。 「彼女は、報道に動じていませんよ。いつか出るものと思っていましたから。もちろん、TENNさんには申し訳ないという気持ちはあるでしょう。でも、前に進むしかないという気持ちのほうが大きいんです。いまの彼女には、コウさんの存在が支え。彼と再婚するつもりで、周囲にもそう話していて、それが励みになっているんです。じつは7月上旬に、“妊娠”の兆候が出て、産婦人科にも通ったそうです。どうしても子供がほしいという気持ちなんでしょうね。ただ、TENNさんのご遺族からしたら、“何を浮かれて……”と思われるのは、しかたないかもしれませんね」 待ち受けるのは茨の道か――。
2017年08月22日*画像はイメージです:満員電車での痴漢は毎日のように起こっていて、いまだに容疑者がレール上を走って逃げる事件が後を経ちません。ほかにも色々な場所で痴漢犯罪は行われており、中には酔いつぶれて駅のホームで寝ている女性を介抱するフリして痴漢行為を働く者もいるほどです。一方で、最近は痴漢も他人が疑われるよう、巧みに手を伸ばして痴漢行為を働き他人に罪をなすりつけたり、中には女性が男と組んで痴漢をでっちあげて恐喝する事件も報道されています。 ■冤罪の汚名を苦に自殺を図った場合、遺族の損害賠償請求は認められる?痴漢犯罪は、通常「迷惑防止条例」が適用され罰金刑となりますが、悪質な場合は刑法の強制わいせつ罪が適用され、最悪の場合は懲役です。仮に冤罪で逮捕され、精神的に追い詰められた人が「冤罪だ」という遺書を残して自殺した場合、家族は無罪を信じて損害賠償を起こすことができるのでしょうか?自身でも痴漢事件の弁護を担当された経験のある水田法律事務所・河野 晃弁護士に伺ってみました。「一概に可能とは言い難いです。痴漢の被疑者となって逮捕勾留されたとしても、被害者がその被疑者を真犯人であると信じて被害申告したのであれば、『虚偽の被害申告をした』という意味で故意はなく、また、過失を問うための材料にも乏しいケースがほとんどであると思われるからです」そうなのです。たとえ冤罪だと言い張っても、被害者が痴漢に遭った、そしてその人が真犯人だと確信するそれなりの理由があるわけです。そして、有罪が確定されている場合、損害賠償を起こすとしても、冤罪だという遺言だけで請求が認められるわけではないそうです。河野弁護士によると、「請求が認められるとしたら、被害者とされていた女性が、虚偽の被害申告をしたことが後に明らかになったケースでしょうね。例えば示談金目的で、されてもいない痴漢をでっち上げたことが判明したケースであれば損害賠償が認められるでしょうね」とのことです。 ■物理的に痴漢行為に無理がある、証言があやふやな場合は取り調べ段階から冤罪を主張ちなみに、河野弁護士が担当されたケースではどうだったのでしょうか?「私は、残念ながら、痴漢事件で無罪を争ったことはありません。ただ、痴漢事件が特別なわけではありません。他の事件同様、無罪を争うケースを担当することがあるかもしれませんね。もし、痴漢冤罪被害に巻き込まれた場合は、弁護士のアドバイスを受けるまでは迂闊にしゃべらないということを心掛けると良いと思います。独自の判断で事実に反する自白をするなど、もってのほかです」痴漢犯罪で逮捕されると、悪質でなければ先に述べたように迷惑防止条例違反で略式裁判となり罰金を科されるケースが多いそうですが、絶対にやっていないと本人が主張する場合は法廷での裁判となります。冤罪被害にあった場合は、最終的には法廷で白黒つけるよりほかありません。卑劣な痴漢犯罪は残念ながら多くの女性が体験しており、犯人の逮捕には痴漢犯罪が多い満員電車などで鉄道警察をはじめ多くの関係者が地道な努力をしています。しかし、中には先に述べたケースのように、巧妙に嵌められてしまう場合もあるのです。その場合、自分がやっていないのが確かであれば、それを主張するしかありません。それと力になってくれる信頼のある弁護士に弁護を依頼して、最初から冤罪を主張していくこと。そして女性の近くでは怪しまれる行動を控えること。痴漢行為はもちろん男として最低のことですので、絶対にしないことです。 *取材協力弁護士:河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居の低い気軽に相談できる弁護士を目指している。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです*Andrey_Popov / Shutterstock
2017年08月20日*画像はイメージです:お盆が終わりに近づき、夏のレジャーも一段落といったところでしょうか。今年も楽しく安全に夏のレジャーを満喫された方が大半だとは思いますが、今年の夏はレジャー施設のアトラクションに関する事故のニュースが多かったように感じます。そこで、今回は、もしアトラクションの利用者等が事故に遭ったときは誰がどのような責任を負うかについて解説します。また、「事故により負傷・死亡した場合でも施設運営者は一切の責任を負いません」等の(免責を伴う)同意書にサインした場合は責任追及が不可能となってしまうのかという問題についても併せて述べたいと思います。 ■事故が発生したら過失のある人に責任追及を行うことができるアトラクションの事故原因には整備不良や点検不足、耐用年数を超えた部品の使用等様々なものがありますが、何らかの人為的ミスの場合には、そのミスをした人に過失(事故の結果を回避する義務違反)があると考えられます。また、整備や点検作業には問題がないが、使われている部品に不備があった場合にはメーカーに過失が認められることもあります。今年の夏、バンジージャンプの命綱が切れて男性が負傷するという事故がありましたのでこれを例にすると、この事故の場合、報道によれば約3ヶ月前に専門業者がワイヤを点検した際には異常がなく、また、施設職員も開園前後に命綱の強度を確かめており、確実な原因は不明とのことです。各点検作業がマニュアル等に沿った確実なものであったかや、ワイヤや金具の耐用年数等に問題はなかったかなどがポイントとなり、各点検作業に問題がなかった場合には部品製造業者の過失を考えることになるでしょう。なお、このような事故の場合、過失の有無で判断するという点は、民事責任も刑事責任も違いはありません。また、過失の特定は非常に困難な場合も少なくないのですが、ほとんどの場合レジャー施設は施設管理者賠償責任保険などの保険に入っていますので、一定の調査が終わり次第、訴訟提起をしなくとも保険金によって治療費等の損害が賠償されることがあります。ただし、利用者が係員の指導に従わずに危険な遊び方をしていたり、身長・年齢制限等に反して利用していたりした場合には、利用者にも過失があるとして過失相殺がされることがあります。 ■免責同意書にサインしていても損害賠償を求めることは可能アトラクションの中でもバンジージャンプ等のとくに危険なものについては、「事故により負傷・死亡した場合でも施設運営者は一切の責任を負いません」旨の条項が入った(免責を伴う)同意書に署名を求められることがあります。しかし、利用者が死傷した場合に事業者側の責任をすべて免責する条項は消費者契約法や公序良俗に反するものですので、施設運営者は過失がある限り損害賠償義務を負います。ただし、過失相殺があり得ることは上記のとおりですし、たとえば「施設運営者の判断によって利用を中止した場合には料金を返金しません」などの同意書記載の他の条項については有効ですので、免責部分が無効であるからといって同意書の全体が無効になるわけではないことには注意してください。危険なアトラクションであってもレジャーである以上は安全が保障されなければなりませんので、危険なものであればあるほど施設運営者側は高度の注意を払って安全に務める必要があるといえるでしょう。他方、そのようなことはないとは思いますが、利用者の皆様はスリルを求めるあまり危険な利用方法をすることなく、係員の方の指示に従ってくださいね。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野・長塚・木川法律事務所(旧星野法律事務所)。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*じゃぁきぃ / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月17日歌手のテイラー・スウィフトが、元ラジオDJのデヴィッド・ミューラーに対してのセクハラ裁判に勝訴した。この訴えは、2013年6月コロラド州デンバーのペプシ・センターにおける「レッド・ツアー」のライブ前にテイラーがデヴィッドにセクハラを受けたというものだったが、今回テイラーは損害賠償たった1ドル(約110円)の「名誉」の裁判に勝訴し、その額をこのような性的暴行の被害者のための基金に寄付するという。テイラーの声明には「判事ウィリアム・J・マルティネス氏及び慎重な判断を下してくださった陪審員の方々、そして私の弁護団に感謝を述べたいです。彼らは、私や性的暴行によって沈黙をさせられてきた被害者の方々のために戦ってくれました。そして、この4年に及ぶ苦しい試練と2年続いた裁判の間サポートしてくれた全ての人々に感謝します」「このような裁判には多大な費用がかかり、これを賄うことができる自分自身というものを自覚しています。私の望みはこのような性的暴行の被害者の声に手をさしのべることで、近い将来には彼らをサポートしているいくつかの団体に寄付を行いたいと思っています」とつづられている。一方のミューラーは、テイラーがデンバーのラジオ局KYGO-FMにこの暴行を告げたことで自身の「夢の仕事」を失ったとしてテイラー本人を300万ドル(約3億3000万円)の損害賠償を求め提訴していたが、テイラーにこの象徴的な1ドルの逆提訴をされていた。さらにミューラーは、テイラーの母アンドレア・スウィフトと彼女のラジオ関係者も提訴していたが、1週間にわたる公判の後1日もかからずに陪審員から棄却された。今月11日には裁判所において、テイラーの元ボディーガードも暴行が行われた現場を目撃したとし、「私は見たんです。ミューラー氏がテイラーに腕を回した時、手がスカートの方にのびました。テイラーは飛び上がって、スカートを下げ、女性がいる場所へ逃げていました」と証言していた。最近テイラー自身もこの事件が「卑劣でぞっとする」とし、「彼は私のお尻を触り続けたので遠くに逃げたのです。掴まれたのです。とても長い時間でした」と告白していた。(C)BANG Media International
2017年08月16日*画像はイメージです:月11日、京セラドーム大阪で練習中のオリックス・バファローズ中島宏之選手に鉄パイプが落下。右腰から背中に当たるという事故が発生しました。幸い、中島選手は命に別状なく軽症でしたが、一歩間違えれば大事故だっただけに、衝撃が広がりました。ちなみに、原因は広告を取り付ける作業をしていた作業員が誤って落としてしまったためだったそうです。このようなケースでは死亡事故も発生しており、社会問題化しつつあります。仮に作業員の過失で人を死傷させてしまった場合、「誰が、どのように」責任を取ることになるのでしょうか?ともえ法律事務所の寺林智栄弁護士に見解をお伺いしました。 ■責任は誰がとる?「最近増えている工事現場の落下事故。落ちてくるのは鉄パイプや工具など、当たれば命に関わるものばかりです。落下させたことについて、誰がどのような責任を問うのか考えてみたいと思います。落下によりけがをした人、被害者が亡くなった場合にはその遺族は、もちろん実際に落下させた人に過失があれば、損害賠償を請求できます。治療費や慰謝料等々が含まれます。ただ、落下させた本人は莫大な賠償金を支払えるだけのお金を持っていないことも少なくありません。そこで、法律上は使用者責任、代理監督者責任というものが認められており、建設会社の社長や現場監督などにも責任を追及することができます」(寺林弁護士) ■犯罪は成立する?「業務上の注意を怠った結果このような事故が起こったということであれば、業務上過失致死傷罪が成立する可能性があります。これも、事故を起こした本人だけでなく、社長や現場監督にも成立する可能性があります。成立すると5年以下の懲役刑もしくは禁固刑、又は100万円以下の罰金に処されることとなります。東京オリンピックも近くなり、首都圏では大規模な工事が増えています。一度事故が起きれば重い責任が課されることとなります。工事関係者の皆様には、十分な注意をお願いしたいものです」(寺林弁護士)厳しい環境での作業は非常に大変だと思いますが、事故が起きないよう十分に注意してもらいたいものですね。 *取材協力弁護士:寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*TATSU / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月16日*画像はイメージです:「隣の住民が深夜に音楽を鳴らしていてうるさい!」住民のかたから、大家さんや賃貸物件管理会社のもとへはこんな苦情が届きます。こんなとき、あなたが大家さんだったら、どのように対処しますか?多くの場合は、苦情元となっている住民からヒアリングを行い、必要に応じて注意喚起をすることになるでしょう。でも、注意しても一向に改善されない、むしろ、対抗するかのようにひどくなっていくような場合には、法的な手段を考えていく必要があります。そこで、迷惑行為に対抗する一手段としての賃貸借契約の解除(追い出し)が可能かについて考察してみます。 ■そもそも迷惑行為をしている賃借人を追い出せるの?部屋を借りている人は、契約又は目的物の性質によって定まった用法に従い、その部屋の使用をしなければならないという用法遵守義務を負っています(民法616条で準用される民法594条第1項)。例えば、賃貸借契約の中で、ピアノなどの楽器の使用を禁止するという用法が定められていれば、賃借人は部屋で楽器を使用してはいけません。また、このような特約による用法が定められていなくても、深夜にピアノを大音量で弾くようなことがあれば、あまりにも常識はずれな行動として、用法遵守義務違反となる可能性が高いといえます。用法遵守義務違反が認められる場合、大家さんは、部屋を貸している人との賃貸借契約を解除することができます(民法541条)。契約違反しているから出て行ってくれという具合です。ただし、部屋の貸し借りの契約については、「信頼関係破壊の法理」と呼ばれる考え方があり、義務違反行為があっただけではなく、義務違反の結果として信頼関係が破壊されていると評価できて初めて解除できるという扱いになっているので、この点は注意が必要です。 ■騒音、ゴミ屋敷、ペット飼育といったケースでは?用法違反行為にもいろいろなケースがありますが、代表的な用法違反行為といえば、冒頭で挙げたように騒音の問題でしょう。騒音の場合、その頻度や時間帯、音量等を考慮して、近隣住民において受忍すべき限度を超えていると認められれば、義務違反行為として契約を解除できるでしょう。裁判例の中には、徹夜マージャンやカラオケ、歌声、喧嘩、床を叩く音などの事案で解除が認められたケースがあります。次にゴミ屋敷の問題ですが、ゴミの放置による多少の不潔状態が継続した程度では解除できないと考えられますが、これも、社会常識の範囲を超えるようなゴミの量になれば別でしょう。裁判例においても、2年以上にわたってゴミ屋敷の状態が継続した事案において、衛生上の問題だけではなく、火災の危険性も加味した上で、契約の解除を認めた事案があります。ペット飼育については、建物の損傷や臭い、鳴き声による騒音、安全面などが判断材料とされているようです。もちろん動物の種類も検討対象となり、犬でいえば、小型犬か否かに言及する裁判例もあります。ペット飼育が判明した時点では安全性などの問題が認められないとしても、将来における安全性等の問題までが解決されているわけではありませんから、大家さんとしては、用法遵守義務違反を理由として、契約の解除を検討していくことになるでしょう。 ■喫煙行為による損害賠償請求が認められたケースも数年前に、階下に住む住民によるベランダでの喫煙行為によって、健康被害を受けたとして損害賠償請求訴訟が提起され、不法行為が認められた事案がありました。マンションである以上、近隣からのタバコによる煙の流入について、一定程度受忍する必要があるものの、受忍限度を超えていれば不法行為が成立すると判断されています。したがって、受忍限度を超えるようなベランダ喫煙に対しては、健康被害を受けた近隣住民からの損害賠償請求とは別に、大家さんからの契約解除の言い渡しもあり得るかもしれませんのでご注意を。 *著者:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*kiko / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月12日昨今は「完全紹介制」「会員制」の飲食店が増加しています。情報化社会の中で敢えて住所などを公開せず、ひっそりと営業することで、「存在価値を上げたい」「来てくれるお客様を大切にしたい」などの狙いがあるようです。当然そのような店舗はお客様に対しネットに住所や評価を書きこまないよう求めるわけですが、中にはそれを無視する形で飲食店の評価サイトに投稿する人もいるようです。店側としては情報の削除を求めるのは当然のことでしょう。書き込んだ人間が断り続けるのなら、損害賠償などの法的措置に出ざるを得ません。しかし、仮に提訴したとしても、訴えが認められない可能性が高いというのです。本当でしょうか?桜丘法律事務所の大窪和久弁護士に真相を聞いてみました。Q.完全紹介制の情報を勝手にサイトに投稿されたうえ、削除要求にも応じない…損害賠償は可能ですか?*画像はイメージです:名誉毀損や営業に支障がでた場合でない限り、損害賠償は認められないものと思われます。「飲食店の情報についてサイトに掲載されたことについて損害賠償を求める裁判はいくつかなされておりますが、公開されている裁判例を見る限りでは名誉棄損等が伴う場合でなければ基本的には損害賠償を認めていません。紹介制の店舗がサイトに掲載されたことについて損害賠償を求めた裁判(ニュースなどでも取り上げられました)についても、店舗側の訴えが否定されています。同判例で裁判所は、店舗情報について公開するかしないかについては営業権の一つとして認められているものの、店舗情報がそのサイト以外では公開されていることや、店舗情報の掲載が名誉棄損等を伴うものではないことを理由として、店舗情報の公開を違法とは認めませんでした。裁判所が上記判断を行ったのは、サイト運営者の表現の自由や受け手の知る権利を重視しているという理由からだと考えられます。もっとも、店舗情報が完全非公開であり、かつ情報開示により実際に営業に支障が生じたという場合であれば、損害賠償が認められる余地はあるでしょう」(大窪弁護士) 過去の裁判事例を見る限り、名誉毀損や情報開示によって営業に支障が生じたというケースでない場合、損害賠償請求などを行ったとしても、認められる可能性は低いようです。 *取材協力弁護士:大窪和久(桜丘法律事務所所属。2003年に弁護士登録を行い、桜丘法律事務所で研鑽をした後、11年間、いわゆる弁護士過疎地域とよばれる場所で仕事を継続。地方では特に離婚、婚約破棄、不倫等の案件を多く取り扱ってきた。これまでの経験を活かし、スムーズで有利な解決を目指す。*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*amadank / PIXTA(ピクスタ)
2017年08月10日