最愛の息子の命を奪われた、拓磨さんの両親の怒りがいまも収まるどころか増すばかりなのは、A氏と東電の不誠実な対応の数々だ。 「拓磨の遺体が見つかり、無言の帰宅をした拓磨に『会いに来てほしい』とA氏とその上司に電話で懇願しました。拓磨のパソコンから見つかった遺言に、A氏による無視のことが書かれていたからです。しかし2人は、『移動の足がない』、『ほかに優先する用事がある』などといって来ることを拒みました。人の命より大切な用事っていったいなんでしょうか。A氏は今でも拓磨の墓前に来てくれないどころか、一度も『申し訳ない』と言ってくれません」(明さん) さらに拓磨さんが自殺した2カ月後の8月に当時の大月支社長から「(芦澤さん夫妻は)署名活動などして会社に挑戦的。私の上司もお怒りだ。新盆見舞いに行く予定だったが行かない。今後いっさい関わらない」と電話で威嚇されたことがあったという。 両親は、拓磨さんの自殺に関する社内調査結果にも不信感を抱く。 「’11年7月に調査責任者のC氏やA氏らが、無視やいじめなどの事実は認められないと口頭説明に来たのです。その説明を文書化して欲しいと依頼すると、A4の紙1枚に14行だけ、『芦澤宅で説明したとおり』などと書かれた中身のないものが手渡されました」 明さんは無視の客観的証拠を探そうと、拓磨さんが業務で使用していたパソコンのデータ開示を求めた。だが東電はいったんは了承したものの、削除してしまったという。 山梨支店で管理職を務めていただけに、明さんは東電の隠ぺい体質はよく知っている。 「業務中の事故で誰かが死んでも、会社に都合よく理由付けをしてしまうこともありました。そういう体質があったところに、福島第一原発事故でより隠蔽体質が強くなった。不祥事や事故が起きても社内の専門部署でチェックして、都合の悪い事実は外に出さないようになったのです」 息子の死を無駄にしないためには裁判で争うしかないと二人は決意した。東電に籍を置く限り戦えないと考えた明さんは、’14年6月に退職。 ’11年に労災を申請し不支給決定があったが、’14年の12月、労災不支給を取り消す行政訴訟と、A氏と東京電力を相手どった損害賠償請求裁判を甲府地裁に起こした。 裁判で、東電の主張の信ぴょう性が揺らぐ場面があった。 A氏の先輩社員B氏は損害賠償裁判の証人尋問で、「いじめの社内調査は受けた記憶がない。調査責任者の副支社長C氏のことも知らない」などと証言。だが、前出の東電の内部向けの調査報告書には、「B氏はもっと面倒見るように言ったことが認められる」と書かれていた。明さんが入手した、C氏の大学ノートにも「もっと面倒見ろとA氏を怒った」とB氏から聞き取りした結果が記されている。 社内調査を受けていないというB氏の証言と食い違っていたのだ。損害賠償裁判でのB氏の証言内容を聞いたC氏本人も「私はB氏にも聴取しているし、その内容をノートにメモした」と発言している。 芦澤さん夫妻の弁護団の一人、山際誠弁護士は、裁判の今後についてこう語る。 「業務で心理的負荷が発生したことが自殺につながるなどした場合の労災認定基準を厚生労働省では定めており、拓磨さんが受けていた“無視”は『弱、中、強』の『強』に当たると考えられます。こうした状況を見て、無視が不法行為と認定されれば、A氏に損害賠償請求が認められるだけなく、東京電力にも使用者責任が及ぶかも知れません。さらに東電が職場環境を調整する安全配慮義務を怠ったとなれば、そこにも責任が生まれることになるのです」 本誌は、A氏にコメントを求めた。A氏は「拓磨さんを無視していません」とした上で、職場に置いてきぼりにしたことや、ご両親への謝罪についてはこう答えた。 「たまたま作業というか仕事が重なってしまったので、置いておくというか、連絡が取れませんでした。(謝罪については)、本人が悩んでいたことに気づけなかったことは申し訳ないが、それ以外はしっかりと対応していたと思います」 東京電力にも取材を申し込むと、「個別の裁判に関する内容につきましては、回答を差し控えさせていただきました」(東電パワーグリッド広報)との回答だった。 3年に渡る裁判は8月3日に行政裁判、8日に損害賠償請求裁判が結審を迎える。 息子の自殺から6年。いまだに東電からの情報が出ない状況に、父親の明さんは唇をかみしめながらこう言う。「東電は事件を風化させたがっているのかもしれませんが、拓磨が死を賭してまで訴えようとした『第二、第三の自分を作らないで欲しい』との願いを消し去ることだけはしたくありません」 (取材・文・撮影/桐島瞬) ←前編にもどる
2017年08月05日風俗店では、それぞれに「禁止行為」というものが定められています。勤務する女性の嫌がる行為はもちろんですが、業態によってサービスの範囲が決められており、それを逸脱することは、店舗側が禁じていることがほとんどです。一般的に店外でのデートを迫るケースや、いわゆる本番行為が禁止されている業態にもかかわらず、行為をしてしまうなどのケースが実際に発生しているといわれています。そのような場合、あとで店舗側の従業員に呼び出され、100万円単位の高額な迷惑料を請求されることがあります。禁止行為をしなければいい話ではあるのですが、ハメを外しすることもあるようで、被害にあっている人が少なくないのだとか。いくらなんでも100万円は高すぎますし、支払いたくはないでしょう。仮に請求を受けた場合、支払い義務発生するのでしょうか?不動法律事務所の若井亮弁護士にお伺いしました。 Q.風俗店などで禁止行為をしてしまい、100万円を請求された。言うとおりに支払う必要がありますか?*画像はイメージです:ケース・バイ・ケースです。すぐに支払わず、まずは弁護士に相談しましょう。「まず“罰金”という名目の金銭については、支払いに応じる必要はありません。罰金とは刑事罰ですから、国家が私人に対して科すもので、個人が個人に請求することはできないのです。お店や女の子との間で皆さんが支払い義務を負うとすれば、損害賠償義務になります。賠償の範囲については理論上、治療費やアフターピル代、通院交通費といった実費のほか、女の子がお店を休んだのであればその分の休業補償、精神的苦痛を被ったときの慰謝料、お店の営業上の損害など多岐にわたり得ます。このように損害の範囲は無限に拡大する可能性があるため、相手側の請求金額が妥当なものかどうかはきちんと見極める必要があります。なお、禁止行為をやっていないのにやったと決めつけられたり、相手側から禁止行為を持ちかけられ応じただけであるにもかかわらず高額な請求をされたりするなどのケースもありますが、このような相手側の行為は恐喝罪に該当する可能性があります。お店がトラブル発生時に身分証明書の提示を求める(場合によってはコピーを取る)ことはよくあることなのですが、家族や職場に発覚することを恐れる心理をうまく利用して、不当な要求を通そうとするのです。このようなときは、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。風俗店でのトラブルは人に知られたくない部分であるだけに思い悩み、“お金で解決できるなら”と支払ってしまう人も多いようですが、一度払うとその後何かと理由をつけて請求されることが多いようです。たとえば、お店との問題は解決したが女の子個人との間の問題はまだ終わっていない(逆もあり得ます)とか、話し合いの後に女の子が精神的に病んでしまったまたはお店を辞めてしまったので、さらに賠償して欲しいなどという要求が考えられます」(若井弁護士) 仮に被害にあってしまった場合は弁護士なしに自分の力だけで解決するのは難しいようです。こういったトラブルが起きてしまった場合は、弁護士に相談し対応を協議するのが良いでしょう。また、そのようなトラブルに巻き込まれないような遊び方をすることも重要といえます。 *取材協力弁護士:若井 亮(不動法律事務所。「迅速対応」「分かりやすい説明」「徹底した報告」をモットーとしている。不当要求への対応、詐欺被害への対応を多く経験している)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*antoniodiaz / Shutterstock
2017年08月04日インタビューに答えるアンドレア・ポライトジャーナリスト、ジェフ・ポールのTwitterより 2015年、米ダラスに住むニーリー・モルドヴァンという女性ブロガーがウェディング・フォトグラファーを訴えた。それから約2年半。長い裁判がようやく結審した。事の顛末を辿ってみよう。 2014年10月、ニーリー・モルドヴァンと夫アンドリューが結婚式を挙げた。記念すべき式の撮影は、ウェディング・フォトグラファーのアンドレア・ポライトに依頼した。パーティは滞りなく終わったが、その数週間後に事件は起こった。モルドヴァンはポライトに、「高解像度の写真はいつもらえるのか」と問い合わせのメールを送った。ポライトは「契約では、アルバムが完成したらお渡しすることになっています」と返信。そのやり取りの前に、ポライトはアルバムの表紙を飾る写真を選ぶよう夫妻に頼んでいた。これは契約に盛り込まれており、150ドルの料金がかかるオプションだった。しかし、夫妻はこの150ドルを支払うことを拒否。これを受け、ポライト側はアルバムの製作作業を中断していたという。 メールを返信した2日後、ポライトは自分がとんでもない事態に巻き込まれていることを知る。夫妻は地元テレビ局にコンタクトを取り、「悪徳業者が写真を人質に取って法外な料金をふんだくろうとしている」と話している様子が報道されてしまったのだ。「本当にショックです。すでに千ドル以上払っていたのに、さらに150ドルも払えだなんて。あれは私たちの思い出なのに」と涙ながらに訴える花嫁の姿は、地元民の同情を買うには十分だった。 「一夜にして、13年かけて築いてきた私のビジネスは崩れ去りました。私はダラスのエリートを何組も撮影していたんです。中傷やいやがらせが始まり、恥をかきました」とポライトは当時の様子を語る。実際、100件近くあった予約が取り消されたという。モルドヴァンはYelpでポライトの会社に酷いレビューを書いたり、ソーシャルメディアやブログでも彼女を非難し続けた。 翌2015年3月、ポライトはモルドヴァン夫妻を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こした。約2年に渡る法廷闘争の末、陪審はモルドヴァン側による中傷や軽蔑、悪意の満ちるコメントなどを有罪と認め、判事は約100万ドルの支払いを夫妻に命じた。 ポライトはダラス・ニュースの取材に応え、「私は、自分の成し遂げたことを誇りに思います。自分自身の評判を取り戻すことは闘いでした」と語る。一方モルドヴァンはTwitterなどのアカウントに鍵をかけ、沈黙している。
2017年08月03日今、航空会社のトラブルといえばユナイテッド航空が想起されるが、今回はパナマのコパ・エアラインの機内で起こった。 サラ・セレステ・ファルファン・ガルシアという名の女性が、パナマからリマへのフライトに搭乗した。彼女はコパ・エアラインのポイントプログラムメンバーで、ビジネスクラスを予約していた。彼女の子どもと他の親類はエコノミークラスに座ることになっていたという。ビジネスクラスには持ち帰り自由のブランケットが用意されており、ガルシアさんはそれを手に取り、エコノミークラスに座る我が子に手渡しに行った。すると、キャビンアテンダント(CA)がその行為を見咎め、止めるように声をかけてきた。そのCAは、彼女がFacebookに書き込んだ内容によると「暴力的な言葉を使い、体を押して」きたという。 2人は小競り合いになり、CAは「警察を呼ぶ」と言って、彼女とその家族に飛行機から降りるよう通告。駆けつけたパトカーでガルシアさん一行は警察署へ連行された。 双方の主張は真っ向から異なっている。ガルシアさんは「あのCAは足を引きずるふりをして、さも私に傷つけられたかのように振る舞っていた。飛行機から引きずり下ろされことで子どもが精神的苦痛を強いられたので損害賠償を請求する」と既に法的手続きを進めている。 コパ・エアラインは自社の従業員を全面的に擁護。「任務を正しく遂行したスタッフへの攻撃的かつ混乱を招く態度は許しがたい。実際にクルーはケガを負い、着陸後、医師の診断を仰いでいます」と、ガルシアさんに対しこちらも法的手段を取るようだ。
2017年08月01日*画像はイメージです:マンションを購入する際、できればトラブルなく生活を迎えたいものですが、購入時に知らなかったことが原因で、楽しく迎えるはずの新居での生活が一変してしまうこともあります。そこで、今回は、マンションの購入時には知らなかった近隣工事による騒音の問題に絞って、損害賠償請求の可否を検討してみます。 ■騒音と損害賠償請求損害賠償請求の相手として、まずは騒音を出している当事者、つまり、工事施工業者(あるいは依頼した施主)が考えられます。この場面においては、工事による騒音が、一般人を基準として受任の限度を超えるか否かで判断します。そして、受忍限度については、侵害行為の態様、侵害の程度、騒音との位置関係、防音措置が取られているか、あるいは、関係法令に違反しているかなどの事情を総合考慮して判断することになります。例えば、建設工事に関しては、騒音規正法という法律が存在していて、騒音を伴う一定の『特定建設作業』(例えば、くい打ち作業など)についての騒音規制をしています。騒音規制の内容は、「特定建設作業の場所の敷地の境界線において、85デジベルを超える大きさのものではないこと」などと定められています。工事施工業者に対する損害賠償請求(主として慰謝料請求)が認められるか否かの判断に際しては、この騒音規正法に反しているかなどの視点で総合的に検討されることになるでしょう。 ■マンションの売主に対する損害賠償請求の可否その他の損害賠償請求の相手としては、マンションの売主を想定することもできます。近隣工事による騒音被害が『瑕疵かし』(=欠陥)に該当するという主張(瑕疵担保責任)や、これを隠して売られたために損害を被ったという主張(不法行為責任)などが考えられますが、ここでは、瑕疵担保責任の追及に限定して検討してみます。 ■瑕疵担保責任の追及これまでに蓄積されてきた『瑕疵』に関する裁判例によれば、瑕疵とは、物理的な欠陥に限らず、近隣環境の瑕疵や心理的な瑕疵も含まれるとされています。つまり、マンションそのもの(防音設備も含めて)には生活上何らの支障もないけれども、例えば、近隣に暴力団事務所が存在しているような場合(環境瑕疵)や過去にその物件で殺人事件があった場合(心理的瑕疵)などにも瑕疵に該当する場合があります。近隣での建設工事による騒音についても、環境瑕疵に該当する可能性があります。ただし、騒音があるからといって直ちに瑕疵とはなりませんので、前出の受忍限度の考え方はここでも妥当すると思われます。なお、近隣における建設工事は、半年や1年程度のものが大半だと思いますが、その長短は瑕疵かどうかの判断にも影響するとともに、損害の大小にも影響すると考えられます。 ■何が賠償の対象となるかさて、瑕疵担保責任が認められるとして、賠償の対象となる損害は二つ考えられます。一つは、騒音の存在によりマンションの交換価値が下がっているとして、本来の交換価値との差額を賠償の対象(損害)とすることが考えられます。この場合には、交換価値の低下を客観的に証明しなければなりません。ただし、近隣工事が半年ないし1年で終了し、その後は騒音が無くなるとすると、賠償の対象となる損害がどの範囲になるのかは非常に難しい問題を含みます。もう一つは、騒音の存在により精神的な損害を被ったとして慰謝料請求をすることが考えられます。近隣工事による騒音が瑕疵と評価される場合には、通常生じる損害として賠償の対象となると考えられます。 ■夜勤の人が昼間に眠れない損害は?先に出てきた騒音規制は、睡眠を想定して夜間の騒音を規制しています。そのため、夜勤を日常としている方は、睡眠時間となるはずの昼間に工事が実施されるという非常に辛い立場に置かれます。さすがに、昼間も工事ができないとなると、何も建設できなくなりますから、上記規制時間帯はやむを得ないと思われますが、夜勤の方が昼間の工事により睡眠障害等の影響を受ける場合には、損害の大小、つまり、賠償額の問題に集約されることになると考えられます。 ■最後に瑕疵担保責任を追及する場合には、善意・無過失であることが要求されます。つまり、瑕疵を認識し、あるいは、認識することが容易であった場合には瑕疵担保責任を追及することができません。そのため、購入前には、散歩がてら近隣の様子をチェックしておくべきといえそうです。 *著者:弁護士 河原﨑友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*kurosuke / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月29日7月21日、船越英一郎(57)の所属事務所が松居一代(60)へ法的措置の準備に入ったと発表した。一連の行為を名誉毀損や業務妨害行為に当たるとするもので、この日は奇しくも船越の誕生日だった。 「所属事務所は『これ以上看過できない』として、訴えを決断。まずは松居さんのブログや動画の削除について仮処分申請を求めるようです」(芸能関係者) それだけ船越側も本気なのだろう。離婚問題に詳しいレイ法律事務所の松下真由美弁護士は、夫婦間の名誉毀損行為についてこう語る。 「夫婦間のSNSを使った暴露行為は、最近増えているんです。“リベンジ暴露”と呼ばれるもので、立派な違法行為。事務所側としては、損害賠償よりもリベンジ暴露をやめさせたいと思います。しかし仮処分決定が出ても、松居さんがブログや動画でのリベンジ暴露を辞めないこともあるうる。その場合、松居さんは1日あたり数万円程度の“間接強制金”を課される可能性があります。それはリベンジ動画をやめるまで加算されていくのです」 だが一部で松居のブログ収入は月3千万円以上ともいわれている。1日数万円程度で松居の暴走を止めることは困難。お金が続く限り船越と“差し違え”覚悟で発信を続けられるのだ。船越側の訴訟準備が報じられた当日にも、松居は全文英語でのスピーチを投稿。これまで主張してきた“船越が不倫している”という内容を、世界に発信し始めたのだ。 「松居さんはブログでも世界進出計画を明かしています。アメリカを拠点として、ビジネス展開をしていくつもりのようです。その際にSNSなどの発信力が強ければ、成功しやすくなることは間違いありません。“ゲリラ戦”を繰り広げるほど、ファンが増えて次のビジネスの足掛かりにもなる。だから彼女は強気を貫いているのでしょう」(前出・芸能関係者) リベンジ暴露の裏にあった“恐怖のシナリオ”。いっぽう徹底抗戦の構えの松居を前にして、船越自身は憔悴するばかりだという。 「船越さんはホテルを転々とする日々。『NHKに迷惑かけたくない』と出入りの際も帽子やマスクをかぶって変装しているそうです。また先日には渡辺謙さん(57)の不倫釈明会見を見て『あまり責められてないね』と羨ましそうに漏らしていました」(テレビ局関係者)
2017年07月26日*画像はイメージです:北海道の飲食店で、「客に早く帰ってほしかった」と噴射したスプレーにライターで引火させ、利用客にやけどを負わせるという事件がありました。お店のルールを守らない人を退店させる権利はお店側にもありますが、実力行使は基本的にNGです。退店させる際、強い口調により退店してもらう、あるいは、警察の介入をお願いするなどの方法が考えられますが、上記の件は、違法であることは読者の皆さまもお分かりかと思います。今回は、どういった場合にお店側は強制退店させられるのか、見ていきたいと思います。 ■お店が閉店時間を迎えた場合閉店時間を迎えた場合、いきなり強い口調による退店を強制するのは難しいと思います。徐々に退店を促すコールを強くしていき、30分経っても依然として帰らないというような場合には、威力業務妨害罪にもなりかねませんので、「これ以上居続けると、警察を呼びますよ」と言う警告を発して帰ってもらうというのがよろしいかと思います。 ■入店時に2時間制などと時間が決められていた場合後の予約のお客様を案内する都合もあるでしょうし、予め入店時間についてアナウンスしていたのであれば、時間になる少し前から時間のコールをし、退店が少しでも遅れた場合には、ある程度強く退店を強制しても問題ないかと思います。 ■何も注文しないで居座り続ける場合どの程度の時間、何も注文しないのかによりますが、30分以上何も注文しないまま居座り続ける場合には、退店の要請をしてもよろしいかと思います。「注文します」と言いつつ、その後もしないまま居続ける場合には、威力業務妨害そのものですので、警察を呼ぶなどの対処をしてもよろしいかと思います。 ■禁煙席で喫煙した場合現在は、分煙が常識化していますので、禁煙席で喫煙した場合には、お店のルール違反だということで、即退店を命じてもよろしかと思います。拒否するようであれば、威力業務妨害ということで警察を呼ぶなどの対処をしてもよろしいかと思います。 ■そのほかに一般的には、お店の業務を適正に行える範囲内かどうか、周りのお客様が我慢できる限界を超える程度かどうかが一つの基準になるかと思います。それを越えれば、刑事では威力業務妨害ということになりますし、民事では営業権侵害ということで損害賠償請求の対象となるものと思います。 *著者:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)【画像】イメージです*wavebreakmedia / Shutterstock
2017年07月21日7月4日以降、自身のブログやYouTubeチャンネルを使って船越英一郎(56)を総攻撃してきた松居一代(60)。サイバーエージェントによる削除要請を受けトーンダウンしたように思えたが、13日に動画を投稿。脚本家・大宮エリー(41)が船越に送ったとおぼしき手紙を暴露し、2人の“深い関係”をにおわせる新たな“爆弾”を投下したのだ。 「松居さんは船越さんが書いたとするノートやパスポートも持っていて、動画で公開しています。これらはすべて、船越さんが別宅に置いていたものを無断で持ち出したそうです。船越さんが被る損失は1億円近いとも言われており、松居さんは裁判を起こされることもありうるでしょう。でも彼女はお金を持っているため、そんなもの怖くない。“バイアグラ男を抹殺したい!”という執念が彼女を突き動かしているのです」(スポーツ紙記者) 実際、船越の別宅マンションでは不審な現象が起きていたという。夫妻の知人が本誌に打ち明ける。 「騒動前、船越さんが住む別宅マンションで郵便物がなくなっていたそうです。船越さんも『何かおかしいな?』と不審に思ったみたいで、ポストに設置された監視カメラを確認したと聞きました」 さらに現場では、こんな“恐怖の目撃証言”も……。 「今年5月の早朝でした。松居さんが船越さんの別宅マンションにいて、ポストを漁っていたんです。夫婦なので問題ないのかなと思いましたが、念のため船越さんに伝えました……」(近所の住人) 離婚問題に詳しいレイ法律事務所の松下真由美弁護士は、松居の行動の危険性を指摘する。 「別宅内のものを勝手に持ち出す行為は、罰せられない可能性が高いです。親族相盗例というものがあって、親族間の窃盗は刑を免除されるのです。ただ夫婦とはいえ、2年以上別居しているならプライバシーが確立していると思います。マンションに無断で入る行為は、住居侵入罪にあたる可能性がありますね。また松居さんの動画は名誉棄損に当たる可能性が高いです。民事・刑事どちらでも違法性を問うことができると思います。民事だと名誉毀損によって被った損害賠償請求ができるでしょう。刑事だと3年以下の懲役、もしくは禁固、または50万円以下の罰金が科せられるでしょう」
2017年07月18日*画像はイメージです:近年、自動車が高速道路を逆走するといったニュースが相次いでいます。道路を逆走しただけではなく、他の自動車と正面衝突し、結果自動車が大破し大怪我や時には人命が失われることも少なくありません。このような逆走事故が起こるケースとしては、運転者が降り口を間違え慌ててターンし元の車線に戻ろうとする場合や、SAから本線に戻る場合に誤って逆方向の車線に進入してしまった場合などが考えられます。また、運転者の高齢化により認識能力が衰え、高速道路の出入口を間違えてしまうといった場合もあります。以下では、もし高速道路を逆走してしまった場合、法律的にどのような罰則や処分が課せられるのかについて紹介します。 ■高速道路逆走で事故を起こすと重い罪にまず、故意に高速道路を逆走して事故を起こし、人を死亡または負傷させた場合、自動車運転死傷行為処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)の「危険運転致死傷罪」にあたります。同罪の刑は、逆走して人が死亡した場合は1年以上(20年以下)の懲役、負傷させた場合は15年以下の懲役と定められています。結果の重大性からすると、このように重い罪に問われることはやむを得ないでしょう。行政処分としては「減点62点(死亡)又は55点(負傷)」と定められています(道路交通法施行令)。なお、過失により道路を逆走し、人を死傷させた場合は、同法の「過失運転致死傷罪」にあたり、7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金に処せられます。 ■逆走しても事故を起こさなければ処罰は軽くなる一方で、ただ逆走しただけで事故を起こさず、人が死傷しなかった場合、適用される処罰・処分は大きく変わってきます。まず、人が死傷していないということで、上記の危険運転致死傷罪には該当しません。道路交通法という交通の安全や危険防止を図るための法律により、処罰が科せられることになります。道路の逆走について、道路交通法では、自動車が本来の通行部分と異なる部分を通行した場合として、「通行区分違反」の行為と扱っており「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」の刑事罰が定められています(道路交通法119条第1項2の2)。さらに、行政処分として「反則金9,000円(普通車の場合)」及び「減点2点」と定められています(道路交通法施行令)。ただし、反則金納付制度により、上記反則金を納付すれば刑事罰が科せられることはありません。また、通行区分違反の行為については過失犯の定めはなく、過失(うっかり)で逆走したとしても処罰を受けることはありません。 このように、逆走行為は大事故に繋がりかねない大変危険な行為である一方で、法律上定められている処罰は比較的軽微なものであるのが実情です。 ■逆走事故の過失割合は原則「100:0」逆走事故に伴い損害が発生した場合、損害賠償金の支払いについて、逆走車両と他の車両との間での過失割合が問題となります。逆走行為は、それ自体が罪となる行為ですので、事故を起こした場合の過失割合も、基本的には逆走車両に一方的に過失があるとされ、原則として「加害者側(逆走):被害者側=100:0」となります。ただし、被害者側も、逆走してくることを早い時点で遠方から認識し得たにも拘わらず、何も回避措置をとることなく漫然と車を進行していたような場合など、不注意があったとして過失が認められる場合がないわけではありません。相手方の違反行為により損害を被ったとしても、やはり運転者自身も自動車を運転する際には注意をすることが必要です。 ■逆走した人が認知症を患っていたら過失を免れる?まず、認知症を患っている者が高速道路を逆走し、事故を起こして人を死傷させた場合、運転行為に過失があると判断されると、自動車運転死傷行為処罰法の過失運転致死傷罪により処罰されます。この場合に科せられる刑は、7年以下の懲役もしくは禁固又は100万円以下の罰金です。ただ、負った怪我の程度が軽く、また量刑を定めるにあたって斟酌すべき事情(情状)がある場合には、任意的に刑を免除することができます。一方で、運転者が重度の認知症を患っており、そもそも責任能力がないというような場合、刑事責任が問われないケースもあります。この場合、民事上の損害賠償についても責任能力がないとして、賠償責任を負わないことになります(民法713条)。ただ、運転者を監督すべき者がいる場合には、監督義務を怠ったとしてその者が損害賠償義務を負うことはあり得ます(民法714条)。 なお、高齢者による交通事故の増加に伴い、道路交通法が平成29年の3月に改正されました。それによると、高齢者の免許更新時や一定の違反行為の際に、認知機能の検査が義務付けられ、認知症のおそれがあるとされた高齢者には、特別の高齢者講習が課されることになりました。運転手の高齢化に伴う交通事故の増加をいかに抑えるか、今後の大きな課題といえます。 *著者:弁護士 渡部孝至(弁護士法人はるかぜ法律事務所代表弁護士。『身近な弁護士』をモットーに、ご依頼者様の目線で親切・丁寧・迅速な対応を行い、リーズナブルなご費用で良質なサービスを提供することを使命としている。)【画像】イメージです*jamesteohart / Shutterstock
2017年07月16日*画像はイメージです:将来結婚しようと思っている相手と婚約をしても、同棲して過ごすうちに相手の嫌なところが見えてきて、結婚を取り消したいなどと思うようなケースもあるようです。実際に結婚をしていたら、自分の意志だけではなく相手の合意などが無いと離婚できない事を知っている人も多いかと思いますが、もしも婚約の段階で別れたいと思った場合、自由に婚約を破棄することが出来るのでしょうか。婚約とは何なのか、そして、婚約の解消は法律ではどのように定められているのかといった点について解説していきたいと思います。 ■そもそも婚約って何?婚約とは、将来に婚姻(=法律上正式な結婚)をしようという男女間の約束のことです。男女がお互いに誠心誠意、将来夫婦になろうと約束すると、婚約が成立します。婚約は、単なる口約束で契約書にしなかった場合や、同棲や結納、挙式などを行っていなかった場合でも“理屈上は”成立しえます。しかし、そのような場合ですと、婚約が本当に成立したかどうかを争われると、誠心誠意の約束があったという証明が難しくなってしまいます。なお、婚約と紛らわしい言葉で“内縁”というものがあります。内縁というのは、“事実上は夫婦だが婚姻届を出していない”という男女関係のことです。そのため、婚約とは全く意味が違います。 ■婚約の解消についていつでも、そして特に理由が無くても、一方的に婚約を破棄することは原則として自由です。婚約を破棄するために、例えば婚約後に相手方の好ましくない情報(結婚歴があった、犯罪歴があった等)が見つかったというような事情は、全く必要ではありません。「えっ!?」と思われるかもしれませんが、そもそも婚姻はあくまで純粋に自由な意思に基づいてなされるべきものですので、一旦婚約が成立したからといってそれを理由に婚姻を強制することはできないのです。この点が婚約と結婚の大きな違いとなっています。 ■慰謝料の請求はできる?婚約を破棄された側が婚約破棄の責任を追及することも、原則としてできません。しかし、破棄を申し出た側に落ち度がある場合には、破棄された側は損害賠償を請求することができる場合があります。この場合、婚約を信じたことによって被った損害や精神的損害について、婚約破棄した側は損害賠償を支払わなければなりません。例えば、婚約した後で相手方に子どもがいると分かったという場合、一般論として落ち度があるのは、子どもがいると告げなかった相手方であると考えられますので、告げられた側が婚約破棄するのは自由と考えられます。その場合は、告げられた側が婚約破棄しても、そのことについて慰謝料を支払う義務はないでしょう。また仮に、子どもがいると告げてくれていれば婚約しなかったし、相手方はそのことをよく分かっていたはずだというような場合を想定すれば、具体的な事情によれば、逆に相手方に損害賠償を請求できる可能性もありえるでしょう。もっとも、具体的な事情は下記のように様々なものが考えられます。 ・双方の年齢(若い年齢なのか、円熟した年齢なのか、年齢差があるのかなど)・婚約前に相手方に疑わしい事情はなかったのか・相手方に結婚歴や子どもの有無をはっきり確認したのか・結納や結婚式の予約などを既にしていたのか 損害賠償が実際に認められるかどうかは、このような事情を踏まえて検討する必要があり、非常に複雑です。お困りでしたら、お気軽にご相談ください。 *著者:弁護士 近藤美香(秋葉原よすが法律事務所。家事事件を専門的に取り扱い、500件以上の家事事件を取り扱った経験を持つ。JADP認定の夫婦カウンセラーの資格を保持している。)【画像】イメージです*マハロ / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月11日*画像はイメージです:夏の行楽シーズンが近づいてきました。中には、海外旅行などの計画を立てている人もいらっしゃるのではないかと思います。しかし、いつにもましてこれからの時期に気をつけたいのが交通事故。浮かれ気分で車でレジャーに向かう人が多いぶん、いつもより危険があります。仮に交通事故に巻き込まれてけがをしてしまい、楽しみにしていた旅行に行けなくなったとしましょう。場合によってはキャンセル料が発生することもありえます。このような場合、事故の加害者に対して、旅行のキャンセル料は請求することができるのでしょうか。今回はこの点について解説していきたいと思います。 ■損害賠償に含まれる損害とはどういうものか?一見、事故と関係がありそうな損害であっても全てが損害賠償の対象となるわけではありません。判例は、事故と「相当因果関係」がある損害に限り、賠償の範囲に含まれるとしています。典型的な例は、治療費や入通院費、後遺障害に対する慰謝料等が含まれます。 ■旅行のキャンセル料も賠償の範囲に含まれる交通事故のために旅行に行けなくなった場合、そのキャンセル料についても賠償の範囲に含まれるという判例が複数あり、原則的に、加害者に対して請求できるという実務が定着しているようです。ただ、例えば、事故が起こる前に仕事の予定が入って旅行をキャンセルする必要が生じ、その後事故が発生したという場合には、キャンセル料の発生と交通事故の間には相当因果関係がないと判断されることになるでしょう。このような場合には、キャンセル料を請求できないと考えられます。 いくらキャンセル料が返ってきたとしても、楽しみにしていた旅行に行けなくなるのは困りますし、その後けがの後遺症が残っては、後々大変な思いをすることになります。事故を起こさないのはもちろんのこと、交通ルールを守るなどして事故に遭わないようできる範囲での自衛をすることも大切です。 *著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)【画像】イメージです*kojikoji / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月06日仕事は大概、雇用主と請ける側で契約書が存在するもの。とくに契約社員やフリーランスで仕事をしている場合は、雇用期間の定めやなどを事細かに文書にしておくのが一般的です。しかし、極稀に「じゃあお願いしますね」などと、口約束で仕事を請けることがあります。フリーライターのBさんもその1人で、ある業者から口頭による執筆依頼をうけ、記事を書いていました。ところが、5ヶ月程度経過したある日、突然「執筆依頼を停止します」とメールで告げられ、以降何の説明もなく連絡も取れなくなったそうです。Bさんはその収入をアテにしていただけに、納得のいかないものを感じているそうです。なんとかならないのでしょうか?ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士にお伺いしました。Q.口約束でしていた仕事を突然破棄された。不当性を訴えることはできますか?*画像はイメージです:契約の存在やその期間ができれば、不当性を訴えることができる可能性もあります。「ライターへの原稿依頼は、委託契約だと思います。民法でいう請負に近い類型です。口頭でも契約は可能です。口頭契約の問題は、証明の問題です。契約の有無・内容につき当事者間で争いになった場合に、書面があればともかく、口頭の時には立証が困難です。委託が継続していたという実績自体、一つの証明材料にはなると思います。原稿のやりとり、委託料の振込等の痕跡などでその「実績」は示せるでしょう。それにより「契約の存在」を証明したうえで、いかなる場合に解除できるかですが、請負と解釈できる場合であれば損害を賠償しなければ解除はできません(民法637条)。仮に委任だとして同じでしょう。ということで、その旨伝えて、交渉ということになるでしょう」(森川弁護士)口頭だけに契約の立証ができるかどうかが争点となるようです。Bさんに限らず、フリーランスの場合口頭契約が続き、収入の柱になっているケースが少なくありません。やはり仕事を請ける際にはなんらかの書面を残しておいたほうがいいかもしれません。Bさんのようなケースになってしまった場合は、契約の存在やその継続性や期間を証明できるものを集めたうえで弁護士に相談するなどし、対策を考えましょう。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*chombosan / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月03日*画像はイメージです:今年3月、大阪市城東区の分譲マンションに住む男性が、購入した部屋の近くに設置された生ごみ処理機(ディスポーザー)の臭気がひどく住み続けられないとして、不動産会社に約5,800万円の損害賠償請求を起こす事案がありました。購入時、不動産会社から臭気について説明がなく、入居後間もなくひどい臭いと騒音がするようになり、住めないほどになったそう。原告は不動産会社の過失を主張しています。しかし、被告側は「売買締結時には臭気がなく、管理の問題」として請求棄却を求めているようです。このようなことはレアケースですが、分譲・賃貸にかかわらず、物件に住んだあと、知らされていなかった事態が出てくることも稀にあります。そのようなとき、部屋を買った・借りた人間は不動産会社に損害賠償請求することはできないのでしょうか?銀座ウィザード法律事務所の小野智彦弁護士にお聞きしました。 ■損害賠償を受け取ることができる?「大阪のケースのように、部屋の近くにディスポーザーの排気口があり、臭くて日常生活を送れないというのであれば、正当な家賃を払って住んでいる意味がありませんね。賃貸借契約における貸主の義務は、借主に貸した家屋を支障なく使ってもらう義務がありますし、借主はその義務の履行に対しての対価として家賃を支払うわけです。部屋の近くにディスポーザーの排気口があって、臭くて支障をきたすというのであれば、それをなんとかしてもらう権利が借主に発生し、家主はそれに従う義務があります。家主は、その義務を行わない限り、債務不履行ということになり、家賃の値引きに応じる、あるいは、借主からの解約に応じなければならなくなります。解約の場合には、敷金礼金、引っ越し代などの損害賠償請求をされる可能性が高いものと思います。仲介会社については、あらかじめそのような事情を知っていたながら、借主に説明しなかったということになりますと、やはり支障をきたす物件を仲介したということになりますので、仲介手数料や引っ越しにかかる費用など、損害賠償請求される可能性が高いものと思います。またこれは分譲についても同様です」(小野弁護士) 不動産会社がその事実を知りながら、借主や購入者に説明をしなかった場合は、損害賠償請求される可能性が高いのですね。 *取材協力弁護士:弁護士 小野智彦(銀座ウィザード法律事務所。浜松市出身。エンターテイメント法、離婚、相続、交通事故、少年事件を得意とする。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*kuro / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月02日*画像はイメージです:高齢者の運転する車の事故報道を見聞きする機会が増えたのではないでしょうか。よくあるのが、アクセルとペダルを踏み間違えるパターン。この操作をすると、意図せぬ暴走で惨事になることもあります。統計によれば、交通事故の総数は減っていますが、65歳以上の高齢者ドライバーによる事故の割合は増加しているようです。このデータもあり、2015年に道路交通法が改正されて75歳以上の認知症対策が免許更新時に行われ、免許返納制度も採用されました。 ■暴走が認知症による勘違いから起こったら問題は、たいていの事故が意図的な暴走運転ではなく、高齢者の勘違いから起こっていることです。もし、その高齢者に軽度の認知症が認められたとしたら、死傷者が出た場合でも罪に問われるのでしょうか?星野宏明弁護士にお訊きしました。「交通事故の加害者には、不法行為責任として、被害者に損害賠償をしなければなりません。これは民事上の責任で、たいていの方は事故に備えて任意保険に加入されていますよね。問題は刑事責任で、自動車運転過失致死傷罪に問われます」では、事故を起こした高齢者が認知症だったら?「これは認知症の進行具合によっては、刑事罰の責任能力がなく加害者本人は無罪となります。民事の場合は、運転していた加害者に監督義務者がいる場合、その人が相当の注意を尽くしていたと認められなければ、監督義務者が本人の代わりに賠償責任を負います。認知症が軽度だったり、減弱がある場合は、有罪に問われますが、執行猶予が付される場合もありえます」 ■認知症が認められたら運転させない環境を作る重度の認知症を患う高齢者が車を運転するというのは、非情に怖いことです。あげく、交通事故を起こして巻き込まれた側にとっては「そもそも、そんな人間が監督義務者が同乗していたとしても、運転させるのが間違っている」と憤りを感じるはずです。となると民事でなんとかしたいと訴えることになるのですが、星野弁護士によれば「認知症患者を介護している親族の負担と責任のバランスも考慮しなければならず、介護に疲弊していたり、運転ではいちいちどちらのペダルを踏んでいるか見るのは困難でしょう。また、高齢者が高齢者を介護することも珍しくなく、監督義務者に賠償するだけの資力がない場合もあります。単に誰かに責任を負わせればいいという問題でないのですが、それでは被害者の気持ちの持って行き場がなく、救済を図る方法の模索をしなければならないでしょう」と、現状では認知症患者に対する法や、被害者への救済が後手に回っています。ただし、「認知症でない高齢者が事故を起こせば、それはただの過失です。量刑は死亡結果や負傷結果にとどまるか、被害者の数、適用罪名等、ケースバイケース」とのこと。アクセルとブレーキの踏み間違いは若い人でもうっかりやってしまうことがあるので、慣れていることとはいえ、加齢に従って感覚も鈍くなりますのでご注意を。そして、高齢者が家族にいるなら、可能であれば運転させずに若い家族がハンドルを握る環境を作るようにしたいものです。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:梅田勝司(千葉県出身。10年以上に渡った業界新聞、男性誌の編集を経て独立。以後、フリーのライター・編集者として活躍中。コンテンツ全般、IT系、社会情勢など、興味の赴く対象ならなんでも本の作成、ライティングを行う。Twitterアカウントはこちら)【画像】イメージです*sacco / PIXTA(ピクスタ)
2017年07月01日*画像はイメージです:医療従事者はそのほとんどが患者の症状を治癒するため、奮闘しているものと思われます。しかしごく一部に、自分の儲けを考え、あくどい診療をする医師もいるようです。例えば、本当は歯を抜く必要がないにもかかわらず、「虫歯」だと言って抜いた挙句、高額な義歯を埋め込んだり、さほど重大でもないのに「深刻である」と告げ、入院を促したりすることがあると聞きます。このような「嘘の診療」を行った場合、どのような罪に問われるのでしょうか?あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお聞きしました。 ■どのような罪に問われる?「医師については、詐欺罪が成立します。傷害罪が成立する可能性も考えられます。まず、詐欺罪ですが、2つの詐欺罪が成立する可能性があります。第1に、患者に対する詐欺罪です。実際には行っていない診療について診療費が発生したかのように装い、支払を請求して受領することは、詐欺罪となります。第2に、社会保険診療報酬支払基金に対する詐欺罪です。医師は、診療報酬請求明細書を社会保険診療報酬支払基金に提出して、診療報酬を請求します。実際に行っていない診療内容を明細書に記載し、診療費が発生したかのように装い、請求して受領することは、詐欺罪になります。次に、患者に対する傷害罪です。医療行為は、患者の同意があって初めて正当化されます。例えば、手術は、形式的には傷害罪に該当します。ですが、患者の同意があるので、犯罪にはなりません。同意したとは異なる内容の治療が行われていた場合、同意がないまま治療行為が行われたときと同じように、傷害罪が成立する余地があります。なお、文書偽造罪は成立しません。文書偽造罪は、作成名義を偽ることで成立します。嘘の内容の文書を作成しても、刑法上の文書偽造ではないからです。診断書を発行した場合には、嘘の内容の診断書ということになります。診療報酬請求明細書も、嘘の内容です。ですが、どちらも作成した医師が、自分の名義で作成した文書なので、偽造ではありません」(高野倉弁護士) ■患者はどのような対応を取ればいい?悪徳医師がいるといわれても、患者はまったくわからないもの。仮に被害にあってしまった場合、どのような対応を取ればいいのでしょうか?同じく高野倉勇樹弁護士にお聞きすると…「被害に遭った患者としては、損害賠償請求を行うことが考えられます。騙し取られた治療の額を損害額として、損害賠償を請求できます。また、実際よりも悪い状態であるという嘘の診断をされたり、望まない治療を受けさせられていたのであれば、慰謝料を請求する余地があります。このほか、詐欺罪で刑事告訴することも可能です」(高野倉弁護士) 実際に被害にあった場合、損害賠償請求などを行うことができるようです。ただし、闇雲に「慰謝料」「損害賠償請求」と言っても、その主張が正当であるか疑問視されてしまうでしょう。「納得のいかない診療を受けた」という場合は、弁護士に相談し、医師が下した診断の正当性などを慎重に議論することをおすすめします。 *取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中【画像】イメージです*studiolaut / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月30日*画像はイメージです:ドラマなどでたまに「結婚式中に教会を飛び出す」シーンを見かけることがありますよね。現実ではなかなか起こることはないかと思いますが、その後別れることになるでしょうから、婚約破棄のようにも思えますし、そもそも結婚をしないならご祝儀を返してほしいといった事態にもなるでしょう。そこで今回は、結婚式中に教会を飛び出したら、どんな法的責任を負うことになるのか、解説してみたいと思います。 ■挙式費用の返還についてまず、挙式費用が発生していた場合ですが、新郎新婦のいずれの名義で申込をしていても、双方とも、教会に対する挙式費用の支払義務は残ります。教会側(式場側)は、何ら落ち度なく、挙式を提供していたのですから、挙式費用を免れることはできません。また、挙式費用は、1つの不可分な挙式サービスに対する債務であり、新郎新婦いずれも不可分債務の債務者となります。したがって、式場側から請求があれば、どちらが飛び出したかにかかわらず、双方とも教会に対する挙式費用支払義務が残ります。また、飛び出さなかった人が教会に対し全額支払った場合には、他方に対し、求償することができます。不当な婚約破棄による不法行為の損害賠償として請求することも可能でしょう。したがって、挙式費用は請求可能です。 ■婚約破棄の慰謝料について挙式前にすでに入籍していた場合は、法律上の婚姻関係がすでに成立しています。挙式途中であっても、もはや婚約ではなく、正式の婚姻関係にあります。したがって、すでに入籍済みの場合は、配偶者に対する不貞行為の証拠や離婚原因となり、かつ、慰謝料発生事由となります。また、入籍がまだの場合は法的な婚姻関係にはありませんが、関係性が挙式まで至っているのであれば、法的には婚約の段階に至っていると評価できます。そして不当な婚約破棄は、それ自体、婚約(婚姻予約)という相手方の法的利益を違法に侵害するものとして、やはり慰謝料発生原因となり得ます。ただし、婚約があるにすぎない場合は、入籍して法律上の婚姻関係が成立している場合と比較して、一般的に慰謝料の額は低くなりがちです。 ■ご祝儀の返還の必要性挙式途中で飛び出した人に対し、ご祝儀の返還を求めるのは難しいです。婚約破棄による不法行為の損害賠償の範囲の問題となり、因果関係が認められる範囲では、飛び出した人に対し賠償請求できる可能性はあります。 万が一「結婚式中に教会から飛び出した」なんてことがあれば参考にしてみてください。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*evesang / Shutterstock
2017年06月27日*画像はイメージです:夕方のニュース番組などでよく見かけるゴミ屋敷問題。近隣にゴミ屋敷があると、臭いや衛生上の問題が気になりますし、「火事が発生したら?」と思わず心配になってしまいます。ただ、マイクを向けられた当の本人は、ゴミは自分のものであり、自分の敷地内だから問題ないと、片付ける意向を示さないこともあるようです。確かに、ゴミはその人の物で、ゴミが放置されているのがその人の家であれば、他人が口出しをすることはできないように思います。そこで今回は、分譲マンション内で発生したゴミ屋敷問題に対象を絞り、「分譲マンションからゴミ屋敷の家主を追い出すことができるのか?」について検討してみます。 ■分譲マンションには共有部分と専有部分がある問題検討に先立ち、分譲マンションの共用部分と専有部分という用語を確認しておきましょう。分譲マンションには、廊下や階段に代表される共用部分と、居室(102号室などの「家」の部分)に代表される専有部分という構造上の区分があります。このうち、共用部分は、居室の持ち主である区分所有者全員の共有に属するとされています(建物区分所有法第11条1項本文)。そのため、共用部分については、区分所有者全員で構成される管理組合という団体で管理することになります。全員のものだから全員で管理するということです。他方で、居室のような専有部分は、原則として、その居室を所有する区分所有者が自由に使用し、管理します。その人の物ですから当然のことです。 ■原則として、居室内(専有部分)のゴミ屋敷問題に口を出すことはできないが……例えば、廊下にゴミを放置あるいは置いている人がいたとします。先ほど述べたとおり廊下は管理組合が管理する共用部分にあたるので、管理組合から違反者に対してゴミの撤去を求めることになります。他方で、居室内(専有部分)は、これを所有する人が自由に使えるわけですから、そこにゴミが溜まっていようが、管理組合が口を出すことはできません。 ■分譲マンションに住む住民全体に不利益が生じている場合は例外しかし、いくら居室内(専有部分)の問題といっても、ゴミ屋敷の場合には、部屋からの異臭が廊下やベランダを通じて漏れ出てくることもありえますし、虫が湧いて出てくるようなこともあります。このような事態が確認されれば、それはもはや居室内の問題に留まりません。異臭や虫の発生が確認できるようなマンションでは、マンション全体の価値が著しく低下し、他の住民にも大きく影響を与えます。このような事態(他の区分所有者らの共同の利益に反する状態)にまで発展した場合には、管理組合が居室内のゴミ屋敷問題に口を出すことができるようになります。 ■追い出しまで可能か?ゴミ屋敷の家主を追い出す方法としては、区分所有法59条に基づく競売請求を行うことが考えられます。競売請求が認められて、競落者が現れれば、ゴミ屋敷の家主は家を失い、マンションに住むことはできなくなります。つまり、追い出された状態になります。ただし、この競売請求を行うことができるのは、「他の方法によっては」障害を除去できない場合に限定されています。つまり、(1)ゴミの撤去の請求(同法57条)や(2)居室の使用禁止(同法58条)の方法によっても解決が期待できない場合にのみ競売請求ができることになります。ゴミ屋敷であっても所有権を奪うということになりますから、所有権を奪わずに解決できるのであればそちらを優先しなさいということです。裁判例の中には、ゴミ屋敷所有者に対して、区分所有法58条第1項に基づき、3ヶ月の居室使用禁止(前記(2)の手段)と損害賠償を認めた事案があります。この事案は、居室の使用禁止ですので、ゴミの撤去は含まれず、また、3ヶ月経過すればゴミ屋敷の家主は戻ってこられるということになります。そのため、判示においては「根本的な解決にならない」とも指摘されています。したがって、ゴミの撤去請求や居室の使用禁止では根本的な解決を図れないような場合には、上記のように競売の請求を行うことができると考えられます。この場合、競売によりゴミ屋敷の家主は自宅を失い、マンションから追い出されるという結論になります。 *著者:弁護士 河原崎友太(浦和法律事務所。2017年2月にマンション管理士に登録。ご相談に際しては、ご相談に見える方が、弁護士に何を期待しているのかを見定め、丁寧な事情聴取、解決方法の提案を心がけています)【画像】イメージです*koti / PIXTA(ピクスタ)
2017年06月14日6月8日の午前9時15分頃に、阪神高速道路池田線の上り線でトラック同士の事故があり、破損した荷台から豚が逃げ出すという出来事がありました。豚は無事に捕獲されましたが、逃げ出した影響で、高速道路は約5時間半にわたり通行止めになりました。豚が高速道路内に逃げ出し通行止めになることは珍しい出来事ですが、このことは何かの罪に問われるのでしょうか?解説していきたいと思います。*画像はイメージです:■直接の罰則はない事故が原因となり、結果的に通行止め状態を発生させてしまったことを直接罰する規定はありません。事故については、注意義務違反があれば、それに対して自動車運転過失致傷などの罪には問われます。また、積載重量や積載方法の違反があれば、それも道交法違反となりますが、単に事故が原因で結果的に通行止め状態となり、かつ、それが過失であれば罰則はありません。 ■道路往来妨害罪道路を損壊または閉塞して道路の往来を妨害した場合、刑法124条の往来妨害罪が成立する可能性があります。道路を閉塞とは、障害物による道路を塞ぐことを意味しますので、通行止めとすることも、道路を閉塞させる行為に該当はします。しかし、道路の往来妨害罪は、過失犯処罰規定がなく、過失の交通事故によって、通行止めとなっても、刑法上の道路往来妨害罪とはなりません。この点、過失によって、電車の往来に危険を生じさせた場合は、刑法129条の過失往来危険罪という規定がありますが、道路については過失による往来妨害処罰規定はありません。 ■民事の賠償はある以上は刑事罰の話ですが、刑罰法規に該当しなくても、民事上の賠償責任は残ります。したがって、事故による当事者間の損害賠償の他、有料道路であれば、運営元会社に対し、通行止めとなったことによる賠償責任はあります。もっとも、過失による事故にすぎない場合は、通行止めとなったことの賠償責任まで追及されるケースはあまりないと思います。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです* Kichigin / Shutterstock
2017年06月12日先日、ある掲示板の運営者がネットTVに出演。累計30億円という多額の損害賠償請求を受けていることを明かしたうえで、「踏み倒した」と発言しました。彼によると賠償請求は10年経過すると時効となるそうで、「そんなものは払わなければいい」などと発言。その態様が物議を醸すことになりました。*画像はイメージです:民事裁判で賠償義務が認められているにもかかわらず、「無視して踏み倒す」行為は、やはり許されていいものではないように思われます。強制的に支払いを迫ることはできないのでしょうか?星野法律事務所の星野宏明弁護士にお訊きしました。 ■支払いに応じない場合強制執行を行うが……「民事では、債務者の預金や不動産、現金その他財産の差押によって、債権者の金銭債権を回収することになっています。これを強制執行といいます。強制執行するためには、支払いを命じる判決などの債務名義が必要です。損害賠償を命じる判決もこの債務名義となりますが、債務者が判決で命じた内容に従って任意に支払いをするとは限りません。そうすると、判決の内容を強制的に実現するために、強制執行をする必要があります。しかし、強制執行するために、債権者側で債務者の保有している財産を調査し、裁判所からは時に現実的には困難なまでの財産の特定を債権者側に求められることがあります。そのようなとき、賠償を命じる判決に債務者が従わない場合であっても、(1)債権者側が債務者の財産を調査できない(2)債務者に本当に財産がないに該当する場合は、強制執行しても実際には債権を回収できないことになります」(星野弁護士) ■踏み倒しても刑事罰にはならない「実際の事件では支払いを命じる判決があっても、債権者側が債務者の財産を調査できない場合や、債務者に本当に財産がないケースはかなり多数あります。このような場合、執行官の強制執行妨害など積極的な妨害をしない限り、判決にただ従わないだけでは判決を無視して踏み倒しても犯罪ではないので刑事罰になりません。したがって現状は、債務者が判決に従わず財産が不明か不存在のため強制執行による判決内容実現も不可能で、事実上支払いを命じる判決を踏み倒されるケースは多数に上ります」(星野弁護士) ■法改正での改善が期待される「現在の運用では、預金などを金融機関の本店に一括して調査照会できないなどの不都合もあり、踏み倒しとなるケースが後を絶ちません。民事執行法改正により、債務者の預金の金融機関本店への一括調査手続きの導入などが議論されているところであり、今後の改善が期待されますが、それでも債務者に本当に財産がない場合には債権回収の対策のしようがありません」(星野弁護士) 残念ながら損害賠償請求を「踏み倒す」行為は、現状可能となってしまっているようです。今後の制度改善に期待したいところですね。 *取材協力弁護士:星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*buri327 / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月29日*画像はイメージです:住居に関する会社の福利厚生は、住宅手当や社宅制度があります。社宅制度の内容は会社によってまちまちでしょうが、社有社宅にせよ借上げ社宅にせよ、退職時には社宅から退去することが一般的です。では、従業員が退職するときに「退職したんだから明日社宅を出ろ!退去が遅れたら退職日以降の賃料を払え!」と言われた場合、このような即時退去または賃料全額負担の要請に応じなければならないでしょうか。今回は、退職時の社宅退去時期などについて解説します。 ■「明日出ていけ」という要請には応じなくともよいある程度の規模の会社で社宅制度を導入している場合には、社宅管理規程が置かれていることが多く、自己都合退職であれば2週間から1ヶ月程度の退去のための猶予期間が置かれていることが多いです。もし、社宅に関する規程がなかった場合であっても、上記程度の合理的な猶予期間なくなされる即時退去には応じる必要がありませんし、会社の元従業員に対する賃料相当額の損害賠償請求も認められないでしょう。なお、賃料に占める社宅使用料の割合にもよるのですが、社宅制度による補助は給与と同視されますので、会社が即時退去に応じないことを理由に未払給与から社宅使用料を超える金額を天引きすることは違法の可能性が高いです。 ■社有社宅と借上げ社宅とで違いはあるか社宅制度は、居住者が役員または従業員の地位を有する者その他会社の認める者であることを前提に、福利厚生の一環として、一定期間に限定して従業員に安く住居を利用させるものです。ですから、会社が物件を所有している社有社宅であろうと、民間の賃貸物件を借りている借上げ社宅であろうと、会社と従業員との契約は、条件付使用貸借または独自の社宅利用契約であるといえます。賃貸借契約とされることはないといってよいでしょう。そのため、会社と従業員等の関係では、社有社宅と借上げ社宅の場合とでとくに違いはなく、基本的には社宅管理規程によって定まります。「明日出ていけ」という要請に応じる必要がないことも同じです。会社によっては、従業員個人名義の契約でも借上げ社宅制度が利用できたり(まぁこれは住宅補助に当たるでしょうが)、退職時に法人名義から個人名義への変更を認めて退職後も同じ住居に住み続けたりもできるようです。このように、社宅制度は基本的に会社が内容を自由に決められるものですが、「明日出ていけ!無理なら賃料相当額の全額を払え!」という極端な要請についてまで従業員が従う義務はないというのが結論ですね。 *著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)【画像】イメージです*tkc-taka / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月24日東京・新宿や上野などの歓楽街では、道を歩く人に「お遊びいかがですか」「3,000円ポッキリでキャバクラいかがですか」などと声をかける「キャッチ」が存在しています。言葉巧みに誘うキャッチに「それなら良いな」とついていくと、飲食した後に「ビール1杯10万円」など法外な金額を請求される、いわゆる「ぼったくり被害」の報告が、あとをたちません。地元民なら、ある程度危険地帯がどこであるかは理解しているのですが、旅行中の人々などが餌食になってしまい、楽しい旅行が台無しになることもしばしば。法外な値段を要求された場合、ほとんどの人は脅されるなどして金額を支払ってしまっているようです。しかし、本来なら断ることもできるはず。店側が当初の「甘い言葉」と違う「法外な値段」を要求してきた場合、断ることはできないのでしょうか?ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解を伺いました。Q.ぼったくり店からの「法外な請求」支払いを拒否することはできる?*画像はイメージです:できます。諦めずに戦いましょう。「表示の仕方にもよると思いますが、たとえば3,000円で飲み放題の場合、適用範囲が、どの範囲なのか(時間・種類等)、その上で、それがわかる形で表示されていたか、が問題になると思います。契約行為として、認識して飲食したか、ということになると思います。そのような表示がないまま、法外な金額を請求されることは、恐喝や強要、もしくはいわゆる“ぼったくり条例”違反です(東京都など)。適切に料金表示をしなかったり、不当な勧誘・取り立てをした場合には、6月以下の懲役または50万円以下の罰金さらに営業停止命令があり得ます。あきらめずに闘いましょう!」(森川弁護士) ありえないほど高額な値段を「そうなる」と認識させずに店側が請求した場合は、恐喝・強要やぼったくり条例違反に該当する犯罪行為となるようです。怖い思いをするかもしれませんが、安易に支払わず毅然とした態度をとり、戦うようにしましょう。 *取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*つきのさばく / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月21日5月7日、川谷絵音さんが『ワイドナショー』(フジテレビ系)で復帰。メインコメンテーターの松本人志さんやヒロミさんらとトークを繰り広げましたが、視聴者からは川谷さんに対して厳しい声が多かったようです。騒動がここまで大きくなった原因は、不倫発覚後2人が交際が事実であるにもかかわらず、“友達で押し通す予定”といったLINE上のやりとりが発覚したことにあると思われます。このほかにもお笑い芸人と女性芸能人の不倫のやりとりなど、たびたびLINEの内容が流出し、週刊誌などに掲載される事案が発生しています。これは本来極めて私的なやりとりですから、不特定多数に公表されるべきものではないはず。このような行動は、罪になるのではないでしょうか? Q.LINEの内容を勝手に出版社にリーク……これは犯罪ではありませんか?*画像はイメージです:基本的に犯罪にはならないと思われますが、不法アクセス禁止法違反に該当する場合はあります。当然ながらLINEの内容はプライバシーで保護されるべきものですから、この内容を不特定多数の目に触れるようなメディアに掲載することは、プライバシー侵害による不法行為になります。したがって、該当者のLINEをスクリーンショットする、ログを取ってダウンロードするなどして個人情報を持ち出した人間、そしてその情報を不特定多数に公表した出版社・Web管理者は、不法行為に基づく損害賠償請求を受ける可能性があります。しかし、基本的にこれらの行為は犯罪行為とはいえません。もっとも、LINEの内容を盗んだ経緯がログイン・パスワードなどを不正入手したうえで、スマートフォンに不正に侵入し、得たものであれば、不正アクセス禁止法違反となり、その罪を問われる可能性があります。芸能人が不倫など不適切なやりとりをしている内容が公表された場合、当人たちの「バツの悪さ」や訴訟費用、世間への心象などから提訴に踏み切らないことが一般的ですが、他人のプライバシーを勝手に公表することは民事上、場合によって刑事上の責任を問われるおそれがあるため、するべきではありません。 *記事監修弁護士:弁護士 清水陽平(法律事務所アルシエン。インターネット上でされる誹謗中傷への対策、炎上対策のほか、名誉・プライバシー関連訴訟などに対応。)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*aijiro / Shutterstock
2017年05月19日*画像はイメージです:自分がカラオケで歌う様子を動画投稿サイト『YouTube』で投稿した男性に対して、東京地裁が、カラオケ機器メーカーの著作隣接権を侵害するとして公開禁止を命じる判決を言い渡したという報道がありました。しかし、YouTubeは、JASRACやNEXTONEなどの著作権管理事業者と包括契約をしており、これらの管理楽曲をYouTubeで使用することは可能なはずです。なぜ、今回、公開禁止を命じる判決が言い渡されたのでしょうか?また、「著作権」とは異なる「著作隣接権」とは何でしょうか?アクシアム法律事務所の高木啓成弁護士にお伺いしました。 ■1.著作隣接権とは?作詞・作曲をした人は、「著作者」として、「著作権」が発生し、この「著作権」は、音楽ビジネスでは、JASRACやNEXTONEなどの著作権管理事業者が管理しています。そして、これらの著作権管理事業者は、様々な楽曲の利用者(レコード会社、放送局、コンサートホール、YouTubeなどの動画投稿サービス)に対して、楽曲の使用を許諾する代わりに著作権使用料を徴収しています。YouTubeは、これらの著作権管理事業者と包括契約して著作権使用料を支払っているので、利用者は、楽曲をカバーしてYouTubeに投稿することができるわけです。他方、作詞家・作曲家ではなく、その楽曲を歌った歌手やバックミュージシャン、多額のレコーディング費用をかけて楽曲の音源を制作したレコード会社には、「著作権」は発生しません。しかし、これでは、たとえば、その楽曲CDの海賊版が出回ったとき、歌手やレコード会社は差止請求や損害賠償請求ができない、ということになってしまいます。これでは不都合なので、歌手やレコード会社(正確にいうと、「レコード製作者」)にも、著作権に似た「著作隣接権」という権利が与えられており、海賊版などに対して法的請求ができるようになっています。そして、重要なところですが、YouTubeなどの動画投稿サービスは、「著作権」はクリアしているものの、一部を除き「著作隣接権」はクリアしていません。ですので、たとえばCDの音源をアップロードすることは、そのCD音源の「レコード製作者」の「著作隣接権」の侵害になってしまうのです。 ■2.今回の判決今回の判決を読むと、「自分がカラオケで歌う様子をYouTubeで投稿した男性は、カラオケ機器メーカーの“レコード製作者”としての“著作隣接権”を侵害している」という判断がなされています。ただ、ひとつ疑問が生じます。「レコード製作者」の権利は、音楽をマスターテープなどに固定(録音)することにより発生します。CDの音源のように、レコーディングを行ってマスターテープに固定(録音)することが典型例です。逆にいうと、音楽を何かに固定(録音)しなければ「レコード製作者」の権利は発生しないはずです。しかし、通信カラオケの音楽は、一部の楽曲を除き、カラオケ店での利用者のリクエストに応じて、専用サーバーから、その楽曲のmidiデータ(譜面やテンポ、音の種類などの情報)が配信され、店内のカラオケ機器が受信し、その都度、その機器付属のシンセサイザーで再生する方法で演奏されているはずです。カラオケ機器や専用サーバーに、カラオケ楽曲の全ての音源が保存されているわけではありません。だから、利用者が、曲のキーやテンポを自由に変更できるわけです。そうすると、それぞれのカラオケ曲については、音楽の「固定」という過程が存在しないように思います。それぞれのカラオケ曲にレコード製作者の著作隣接権が発生するのか、またはカラオケ機器のシンセサイザー音源自体に著作隣接権が発生するのか、検討の余地があるように思います。ただ、今回、被告側がこの部分を詳細に争わなかったので、原告であるカラオケ機器メーカーの主張が全面的に認められたのだと考えられます。 *取材協力弁護士:高木啓成(アクシアム法律事務所。エンターテイメント法務、離婚や不貞行為などの男女関係の法律問題、交通事故(被害者側)、労働問題(会社側、従業員側どちらも対応)を取り扱う。)*取材・文:編集部【画像】イメージです*ろじ / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月16日*画像はイメージです:東京都立川市でカーブミラーを叩き割った男性が、逮捕されるという出来事がありました。同市では2月以降カーブミラーを割られる被害が40件以上確認できており、関与していないか調査しているとのことです。ところで、このカーブミラーを叩き割るというこの行為はどのような罪に当たるのでしょうか?交通事故にも繋がりかねない行為ですが、解説してみたいと思います。 ■カーブミラーを破壊することはどのような罪になるのかカーブミラーを破壊した場合に成立する可能性のある犯罪としては、刑法261条の器物損壊罪や同法124条の往来妨害罪が考えられます。もっとも、このうち往来妨害罪は、「陸路」、つまり道路そのものを損壊したといえる場合に成立する犯罪です。しかし、カーブミラーは道路そのものではなく、道路の付属設備に過ぎないと考えられることから、結論としては、カーブミラーを破壊しても往来妨害罪には該当せず、器物損壊罪が成立するのみということになるでしょう。器物損壊罪が成立する場合、犯人は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料に処せられる可能性があります。なお、刑法上の器物損壊罪が成立するのは、あくまでもカーブミラーを「故意に」損壊した場合に限られます。したがって、例えば交通事故でカーブミラーを壊してしまった場合のように、故意ではなく「過失で」損壊してしまったに過ぎない場合には、器物損壊罪は成立しません。ただし、たとえ過失であっても民法上の不法行為は成立しますので、交通事故でカーブミラーを壊してしまった場合でも、カーブミラーの所有者に対する損害賠償責任は免れません。 ■壊されたカーブミラーが原因で交通事故が起きたら…?また、壊されたカーブミラーが原因で交通事故が発生したといえるのであれば、犯人が事故当事者に対しても損害賠償責任を負う可能性はあるでしょう。しかし、通常は、犯人が事故当事者に対してまで責任を負うことは少ないのではないかと思います。なぜなら、カーブミラーが壊されていた結果、道路の見通しが悪かった場合でも、運転者はそのような道路状況を前提に前方に注意して運転すべきであり、仮に事故が発生した場合も、事故発生の直接の原因は、運転者の前方不注視であると判断されることの方が多いと考えられるからです。他方で、確かにカーブミラーが壊されていたことも、事故発生の一因ではあるでしょうが、それはあくまでも間接的な原因に過ぎず、法律上の因果関係まで認められることは少ないだろうと思います。ただし、例えば犯人がカーブミラーを破壊した際、現に車両がカーブに差し掛かっており、運転者もカーブミラーを見ながら運転していたにも関わらず、突然カーブミラーが破壊された結果、交通事故が発生してしまったというような特殊な事情がある場合には、犯人が事故当事者に対しても損害賠償責任を負うことは十分考えられます。 *著者:弁護士 髙田 英治(髙田総合法律事務所。企業法務をメインとしつつ、相続・離婚・交通事故等の個人に関わる法律問題も幅広く取り扱う)【画像】イメージです*TATSU / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月15日*画像はイメージです:ゴールデンウィークも終わり、これからだんだんと暖かくなっていきますね。ただ、そうなってくると食べ物の取り扱いに気を遣わないといけませんよね。例えば、飲食店で食事をした後に、嘔吐や下痢などに悩まされたり、寄生虫を食べてしまったり……。そういった被害に遭った場合に損害賠償ができるのか、どうすればいいのかについて考えてみました。 ■食中毒!? と思ったら生ものなどを食べた後、おなかの調子が悪い、吐き気がするといった場合、食中毒が疑われます。重篤な症状になる前に病院で診察を受けましょう。食中毒にもさまざまな原因があり、症状が出るまでの期間等も異なるようです。まずは、病院で原因を特定してもらうことが第一歩だと思います。医師との問診等により、特定の食品からの感染が明らかになれば、医師から保健所へ届出をして食中毒と認定してもらうことも出来る可能性があります。食品衛生法では、医師は食中毒患者と診断した際は、最寄りの保健所長に届けなければいけないということになっています。保健所から食中毒であると認定されてしまえば、飲食店は営業停止等の処分を受ける可能性があります。また、そこに至らずとも調査などが入るとそれだけでよからぬ噂が立ち、客足が途絶えることもあります。それを避けるために、示談を求めてくる飲食店も有り得るでしょう。 ■個人で食中毒になった場合よくニュースなどで目にするのは、「集団食中毒」というもので、一人だけが食中毒になったというのは案外目にしません。それは、一人だけが食中毒になったとしても、そのお店で飲食したことが原因で食中毒になったかどうかという原因が特定しにくいからです。例えば、同じ日にその飲食店で食事をした何名もが同じ症状に悩まされているというのであれば、まさにその飲食店に原因があると判断しやすいですが、たまたま一人だけが食中毒になったというと、ほかで食べた物が原因じゃないかという可能性も有り得るからです。ただ、一人だけが食中毒になったといっても、絶対に損害賠償が認められないというわけではありません。はっきりとした原因さえ判明すれば、賠償は受けられます。 ■損害賠償の中身賠償の対象となるのは、まずは食べた料理の代金でしょう。誰も、食中毒になるような料理を注文したわけではありません。まともな料理を出していない以上、少なくとも食中毒の原因であると特定された料理の代金は返還を受けられます。次に、病院にかかった費用、交通費なども賠償を受けられます。すでに支払った病院代やタクシー代などのレシートは取っておくようにしましょう。その他、慰謝料、仕事を休んで収入が減った分を補てんするための休業損害分なども賠償の対象となります。慰謝料は、基本的には完治までにかかった入院、通院期間などをもとに算定します。収入が減った分については、例えば直近3か月分の平均的な金額からその治療期間にいくらくらい収入が減ったかなどを計算すれば算定できます。損害の計算は個別的な事情にも左右されます。お近くの弁護士さんにご相談することも一つの手です。きっと、皆さんのお力になってもらえると思いますよ。 *著者:弁護士 河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)【画像】イメージです*freeangle / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月12日車の維持費は思った以上に家計を圧迫するものです。効果的な節約方法があればぜひ実践したいですよね。また普通車と軽自動車それぞれの場合の維持費を比較して、車の買い替えを検討するのも手かもしれません。今回は車の維持費について詳しく解説していきましょう。■車の維持費の内訳は?車の維持費としてはどのようなものがかかってくるのでしょうか。以下で内訳を見てみましょう。【自動車税(軽自動車税)】自動車税は、車を所有するすべての人に対してかかる税です。車を持っている人はナンバープレートを登録することにより納税義務者となります。納税額は自動車の排気量によって決まります。後述する軽自動車を除いた1,000cc未満から6,000cc超まで500ccごとに納税額が変わる仕組みです。さらに自家用か営業用か、貨客兼用車かなどによっても納税額が変わってきます。納税先はナンバープレートを取得した都道府県です。納税方法は、毎年1回納税通知書が送られてくるため、その内容にしたがって納税します。軽自動車の場合は、自動車税とは別に軽自動車税を支払います。軽自動車税の対象となる法律上の「軽自動車等」の定義は、660cc以下の自動車および二輪車、小型トラクターなどの小型特殊自動車です。納税額は自動車税と同様、排気量によって決まります。納税先は市町村です。納税方法は、毎年1回送られてくる納税通知書にしたがいます。【自動車重量税】自動車重量税は自動車の重量区分にもとづいて課税される税金です。もともと、「重い車が走ることによる公道の劣化を補填するための税」という位置づけで、使途も道路特定財源に限られていました。ただし現在では道路特定財源が一般財源化されているため、使途は限定されていません。納税対象は公道を走るすべての車です。車を持っているだけでは課税されませんが、車検を通すために自動車重量税を払う必要があるため、必然的に公道を走る車はもれなく納税することになります。納税額は自動車の重量によって決まります。普通車は500キログラム以下から3,000キログラムまで、500キログラムごとに6段階の納税額が設定されています。軽自動車は重量によらず一定です。なお自動車重量税にはエコカー減免があり、エコカー以外では車を所有する年数によって納税額が上がっていきます。納税方法は、車検のときに車検料金とあわせて納税します。【自賠責保険料】交通事故を起こしてしまった際に被害者へ保証するための保険です。自動車を取得した人全員に加入が義務づけられています。車検のタイミングで車検料金と一緒に支払います。【自動車保険料】交通事故に対する損害賠償に備え、任意で加入する保険です。自賠責保険だけでは補填できないことも多いため、加入がすすめられます。【車検費用】おもに検査・登録費用、車検整備・点検費用、登録代行費用がかかります。また劣化した部品を交換する必要が出てきた場合には、その際の部品代もかかってきます。【燃料費】自動車の燃料となるガソリンの料金です。【駐車場代】駐車場を借りる場合に必要な料金です。一般的に月極めで支払います。【日常点検・整備費】消耗品や修理、点検にかかるお金です。おもな消耗品には、エンジンオイルやタイヤが挙げられます。洗車を依頼する場合にはその料金も含まれます。■普通車と軽自動車の維持費を比較すると?車の維持費を考えるとき、軽自動車のほうが普通車より安く抑えられるというイメージがあるかと思います。実際にはどのくらい維持費が違ってくるのでしょうか。以下で1年間にかかる費用を比較して見ましょう。なお普通車は2,000ccクラスの想定です。ガソリン代は年間10,000キロの走行距離で、1リットル当たり140円のガソリン代、燃費はリットル当たり15キロという数字で試算しています。駐車場代は月10,000円とします。自賠責保険料と自動車重量税は2年分をまとめて払うことになっていますが、2で割って1年分を算出します。【普通車の場合】自動車税は、排気量1.5リットル超~2リットル以下の車で39,500円です。自動車重量税は、1トン超~1.5トン以下でエコカー減税対象外、登録から13年未満の車の場合は、2年間で24,600円、2で割って1年で12,300円の計算になります。自賠責保険料は15,520円です。自動車保険料は一般的な契約内容で考えた場合70,000円程度になります。車検費用は60,000円程度が目安です。燃料費は、10,000キロ÷15×140≒93,000円程度になります。駐車場代は、10,000円×12か月=120,000円です。日常点検・整備費は多めに見積もって年間50,000円程度かかります。合計は460,320円です。【軽自動車の場合】軽自動車税は平成27年4月1日以後に最初の新規検査をした場合、年間10,800円です。自動車重量税は、エコカー減税対象外で登録から13年未満の場合、年間6,600円÷2=3,300円の計算になります。自賠責保険料は15,130円です。自動車保険料は一般的な契約内容で50,000円程度です。車検費用は40,000円程度になります。燃料費は普通車の場合と同様に計算して約93,000円です。駐車場代も普通車の場合と同様に計算して120,000円です。日常点検・整備費は多めに見積もって年間30,000円程度になります。合計は362,230円です。【普通車と軽自動車の違い】以上を見てみると、税金関係、保険料、車検費用、日常点検・整備費など、軽自動車のほうが安く抑えられていることがわかるでしょう。年間98,000円程度差があります。毎月10,000円未満の差ですが、積み重なると大きな差になるでしょう。■都内と全国平均の維持費の違いは?維持費のうち、駐車場代と自動車保険料は地域差があります。以下で詳しく見ていきましょう。【駐車場代】駐車場代は地代によって変化するため、地域差があります。都道府県別に平均の駐車場代を見てみると、都市部ほど駐車場代が高くなっているのがわかります。もっとも高い東京では30,000円超、次いで大阪は20,000円台後半です。また宮城、千葉、埼玉、神奈川、愛知、広島、京都などが10,000円台となっています。その他の地域は4,000円台~6,000円台で、都内と比べると25,000以上の差があることがわかるでしょう。なお同じ都道府県内でもエリアによって駐車場代は異なってきます。たとえば東京都内でもっとも駐車場代が高いのは港区や中央区で、月50,000円程度かかってきます。これに対して荒川区、葛飾区、練馬区などは料金が低めで、月20,000円程度です。【自動車保険料】自動車保険料は、加入者ごとに事故リスクが細かく分析されて算出されます。その際、地域も事故リスクの分析対象になっているため、地域ごとに保険料が変わる仕組みです。たとえば東京都の平均自動車保険料は48,536円となっています。47都道府県のなかでもっとも自動車保険料が高いのは愛知県で、平均53,698円です。一方もっとも保険料が低いのは沖縄県で38,770円という調査結果でした。このように地域によって10,000円以上の差が出ることがあるのが現状です。■必見!車の維持費を節約する方法!車の維持費はどう節約すればいいのでしょうか。税金や駐車場代などは節約が困難ですが、その他の項目については以下のように節約が可能です。詳しく見ていきましょう。【自動車保険の節約】自動車保険は適宜見直しをしましょう。最初に保険を申し込んだときに比べて、より現状に見合った保険が出てきている可能性もあります。場合によっては、月々の保険料が10,000円近く安くなることもあり、定期的なチェックが必要です。なお自動車保険を抑えるには、代理店を通さず申し込むのもおすすめです。「ダイレクト系」の保険と呼ばれ、電話やインターネットなどで直接申し込めます。【車検費用の節約】車検費用は申し込む事業所によってさまざまです。相見積もりを出し、安い事業所を厳選して申し込むようにしましょう。一般的に、ディーラーは安心感があるかもしれませんが、車検料金は高めです。フランチャイズ店やカー用品店、ガソリンスタンドなどは料金を安く抑えられたり、割引キャンペーンを利用できたりします。また民間の整備工場に当たってみるのも手です。さらに最近ではユーザー車検も注目を集めています。ユーザー車検とは、車の所有者自らが検査場に行って車検に通すシステムです。手数料がかからず法定費用のみであるため、車検費用を安く抑えられます。ユーザー車検を受けるためには、自動車検査証、自賠責保険証明書、自動車納税証明書、自動車重量税納付書などの必要書類を集め、インターネットで申し込みましょう。【燃料費の節約】ガソリン代を節約するためには、まず安いガソリンスタンドを利用するのが基本です。特にセルフスタンドは人件費を抑えられるため、1リットル当たり1~5円安くなっています。またガソリンスタンドでは、プリペイドカードやクオカードを活用しましょう。たとえばクオカードであれば、5,000円のカードで5,050円分、10.000円のカードで10,150円分使えるなど、数円分お得になることがあります。さらに車の走らせ方で燃費をよくすることも大切です。アイドリングストップを徹底する、急発進や急加速をやめる、エンジンブレーキを活用するなどして、燃費の向上に努めましょう。ガソリンを入れるたびに燃費を記録して意識するだけでも効果が期待できます。整備をきちんとしておくことも燃費の向上につながります。エンジンオイルの劣化やタイヤの空気圧不足は燃費を悪くしてしまいます。エンジンオイルは走行3,000キロから5,000キロで交換しましょう。またタイヤの空気圧はガソリンスタンドに行ったときなどにこまめにチェックしてください。なおもし古い車で燃費が悪いなと感じたら、燃費のよい車に買い替えるのもひとつの手です。初期費用はかかりますが、長い目で見て節約できる方法を選ぶのも重要でしょう。【日常点検・整備費の節約】急を要する修理の場合は別として、消耗品を買ったり定期点検を行ったりする際は、比較して安い店を利用するのが基本です。なかでもインターネットを利用すると費用を安く抑えられる傾向にあります。ポイントを上手に活用したり、オークションを活用してみたりするとよいでしょう。また自分でカーメンテナンスをするのも有効な方法です。洗車やワイパーゴムの交換といった気軽なところから始めてみましょう。また少し知識をつければ、タイヤに空気を入れたり、エンジンオイルやバッテリーを交換したりということもできるようになります。ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。【その他高速道路代などの節約】高速道路代はETCを活用して節約しましょう。ETCには時間や曜日ごとに割引があります。おもな割引の時間は以下のとおりです。高速道路を利用する際は、この割引の時間帯や曜日を中心にするとよいでしょう。・平日朝夕割引:地方部で、平日朝6時~9時、夕方17時~20時に割引されます。ETCマイレージサービスに登録している人限定ですが、利用回数に応じて無料通行分がつくお得な割引です。・休日割引:地方部で土曜・日曜・祝日に30%割引されます。普通車と軽自動車等限定です。・深夜割引:すべての車種について、毎日0~4時に30%割引されます。■まとめ今回は車の維持費について、その内訳や節約方法を詳しく解説しました。いかがでしたか?これまでなんとなく納税通知や請求書にしたがって維持費を払っていた、という人は、維持費の内訳を意識するだけでも費用を節約できるかもしれません。さらに今回ご紹介した節約方法もぜひ実践してみましょう。維持費を抑えて、負担の少ない快適なカーライフを過ごしてみてくださいね。
2017年05月12日*画像はイメージです:沖縄で宅配郵便業をてがける運輸会社の運転手が、ダイレクトメール約500通を破棄していたことが明らかになりました。最近では、再配達や宅配便の利便性の向上から、運送業界の負担が増加している傾向にありますが、こういった行為はどのような法に触れるのでしょうか。解説していきたいと思います。 ■民事上も刑事上も違法結論からいうと、送り主のダイレクトメール(荷物)を配達せずに廃棄している以上、民事上も刑事上も違法となります。民事の面では、損害賠償責任を負うことになりますが、捨てたドライバーが直接荷主に対して損害賠償責任を負う他、運送会社もドライバーの不法行為につき使用者責任(民法715条)を負い、賠償義務があります。ダイレクトメールを配達せずに捨てたドライバーは運送会社の業務を履行する者なので、運送会社は荷主に対して運送契約上の債務不履行責任として賠償義務を肯定することもできます。いずれにしても、民事上の賠償責任が発生することになります。 ■刑事上の責任ドライバーがダイレクトメールを配達せずに廃棄した行為は、刑法上、いくつかの罪と関連します。可能性があるのは、信書隠匿罪、(業務上)横領罪、窃盗罪、器物損壊罪、私用文書毀棄罪などですが、結論からいうと、器物損壊罪のみ成立すると考えられます。まず、ダイレクトメールは基本的には「信書」に当たらない場合が多いので、信書隠匿罪にあたる可能性は低いです。横領罪や窃盗罪は、不法領得の意思という物を自己の所有物とする意思が必要であり、廃棄目的の場合には成立しません。私用文書毀棄罪にいう私用文書とは、権利義務に関する文書をいいますので、やはりダイレクトメールは基本的に該当しないことになります。したがって、ドライバーがダイレクトメールを配達せずに廃棄した行為は、刑法上の器物損壊罪となります。 ただし、運送会社が荷主に謝罪し、自主的に補償するなどした場合は、実際には刑事事件としては立件しない可能性も高いでしょう。再配達や荷物量の急増による輸送網の疲弊が大きな問題ともなっており、対策が求められるところだと思います。 *著者:弁護士 星野宏明(星野法律事務所。不貞による慰謝料請求、外国人の離婚事件、国際案件、中国法務、中小企業の法律相談、ペット訴訟等が専門。)【画像】イメージです*Quang Ho / Shutterstock
2017年05月10日*画像はイメージです:自民党のある議員が、既婚者でありながら、愛人と結婚式を挙げていたことが判明。しかも本妻は癌で闘病中だったうえ、この愛人とは別の女性議員とも交際していたといわれています。かつては大名などを中心に妻(正室)以外の女性を妻(側室)とすることが認められていましたが、現行法ではこの「重婚」は、日本では禁止されており、犯罪になります。重婚は犯罪ということは理解している人が多いと思いますが、実際にどのような場合に法律に反するのかご存じない人も多いのではないでしょうか?そこで今回は重婚の罪について、解説していきます。 ■刑法・民法それぞれに抵触民法に以下のような条文があります。配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。(民法732条)一夫多妻制を導入している国もありますが、日本では民法によって重ねて婚姻をすることは違法と定められています。そして、刑法でも配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。(刑法184条)との条文があり、重婚をした場合は罪に問われることになります。ただし、ここにいう「婚姻」とは、婚姻届を提出した正式な結婚(「法律婚」といいます。)のことです。内縁や事実婚は含まれません。結納をした、結婚式を挙げた、同棲した、という場合も「重婚」にはなりません。なので、既婚者が配偶者以外の人と内縁関係・事実婚の関係になったとしても、「重婚」にはなりません。「重婚」になる場合は極めて限定的です。既婚者が離婚届を偽造して提出し、法律上の離婚を成立させた上で別の人と婚姻届を提出したという場合に重婚罪で処罰した裁判例があります。したがって某議員は、疑惑が事実であっても、重婚罪に問われることはありません。ただし、不貞行為の場合と同じように、損害賠償責任(民法709条)が発生する可能性はあります。重婚的な行為は、処罰されないとしても、今回のように離党を余儀なくされるなどして、社会的地位も失うことになります。既婚者でありながらほかの異性と交際とするということは、現在の世の中ではモラル的に「ありえない」行為といえます。 *記事監修弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*wavebreakmedia / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月09日(左:ユニコーンフラペチーノ/右:ユニコーンラテ) あまりの人気にバリスタが悲鳴を上げていると話題の、米スターバックスコーヒーの「ユニコーンフラペチーノ」。“インスタ映え”する鮮やかなピンクとブルーの飲み物はSNSで爆発的に広まり、提供されていない日本でも発売を希望する声が多く聞こえてくる。しかし、この快進撃に、あるカフェが「待った」をかけた。 ニューヨーク・ブルックリンにあるカフェ「The End」は、ユニコーンフラペチーノが自社の商品「ユニコーンラテ」の模倣品であると主張。顧客を混乱させ、元祖であるユニコーンラテの陰を薄くしているとして民事訴訟に打って出たのだ。 今年1月からのThe Endの利益の内、25%を昨年12月に発売したユニコーンラテの売り上げが占めているという。同店はスターバックスコーヒーが自社の看板商品の意匠を盗作したことで不当に得た利益の返還と、損害賠償を求めている。 ここで問題の飲み物を比べてみよう。ユニコーンフラペチーノはマンゴーシロップ入りのクリームフラペチーノをベースに、ピンクのパウダーと酸味のある青いシロップを混ぜ込んでヴィヴィッドな紫色に。その上にホイップクリームをたっぷりと絞り、仕上げにピンクとブルーのパウダーが振りかけられている。 一方ユニコーンラテの成分は生のカシューナッツや、コールドプレスされたショウガとレモンの果汁など。スチームミルクがピンクとブルーのパウダーで着色され、星形の小さな砂糖菓子が散りばめられている。 スターバックスの代理人は、「ユニコーンフラペチーノは、楽しくて勇ましい、カラフルなユニコーンにインスパイアされたもので、これは今、ソーシャルメディアで流行中のテーマです」とコメント。ユニコーンをテーマとしたフードやドリンクがトレンドとなっている今、その流れに乗っただけであり、特定の商品を模倣したわけではないと主張している。
2017年05月09日時間に正確な日本の鉄道ですが、まれに発生するトラブルには無力です。特に多いのが、踏切の「人立ち入り」。「なかなか開かない」「遮断機が降りそうだけれど行けると思った」などの理由から鉄道車両が近づいたにも関わらず踏切内に立ち入り、鉄道を止めてしまうことがあります。その場合、後日鉄道会社から損害賠償を請求されることがあるのは、皆さんご存知のとおりです。しかし、仮に止めてしまったとしても、「故意」でなく、自動車の故障や急な体調不良など、致し方ない理由で踏切内に立ち入り、鉄道の運行を止めた場合は、情状酌量があっても良いように思いますし、「わざとじゃないので」と支払いを拒否したくなります。そのようなことは可能なのでしょうか?星野法律事務所の木川雅博弁護士にご意見を伺いました。Q.故意ではなく、急な体調不良などで踏切を通過できず、電車を止めてしまい、鉄道会社側から請求があった場合、それを拒否することはできる?*画像はイメージです:故意でなくとも過失があれば損害賠償義務は生じる。「鉄道会社の電車を止めた人に対する損害賠償請求は民事上の責任追及であるところ、民法709条は、故意ではなく過失(注意義務違反)により他人に損害を与えた場合でも損害賠償義務を負うと定めていますから、理由のいかんを問わず、電車を止めた人に過失がある場合には鉄道会社に生じた損害を払わなければならなくなります。実際には、電車を止めてしまった場合でも鉄道会社から損害賠償請求をされることは少ないのですが、それは、(1)自動車の故障や急な体調不良で電車を止めてしまったことについて過失があるとまではいえない場合(そのように鉄道会社が判断した場合)(2)電車を止めた人に過失はあるが、鉄道会社に振替輸送費や旅客対応のための余分な人件費等の損害が生じなかった場合(3)電車を止めた人に過失があり、かつ、鉄道会社に損害は生じたが、諸々の事情により鉄道会社が請求をしない場合上記のいずれかに該当するからだといえます。つまり、法律上は、電車を止めた人の過失によって鉄道会社に損害が生じたときは、鉄道会社からの請求を拒否することはできないということなのです。踏切の警報機が鳴らなかったために踏切内に閉じ込められてしまった場合など、電車を止めてしまったことについて鉄道会社にも過失がある場合には、過失相殺により実際の賠償額は低額になります。また、自動車と列車が接触し、車両の修理費や乗客の治療費が生じたときは、自動車保険(対物・対人)を使うことができるので、その場合は実際に多額の負担を強いられることにはならないでしょう。もし、鉄道会社から損害賠償請求をされてしまった場合は、まずは自身の落ち度と保険適用の有無を検討し、次に過失相殺が適用されないかを検討することになります。なお、このように解説すると、踏切や線路内に人がいるのを見かけたときに非常停止ボタンを押すのをためらってしまうかもしれませんが、正当な理由で非常停止ボタンを押して電車を止めても鉄道会社から損害賠償請求をされることはないでしょうから、緊急の場合には非常停止ボタンを押して人命を救うことを優先していただければと思います」(木川弁護士)法律上、止めた人の「過失」によって鉄道会社に損害が生じた場合は、いかなる理由があろうとも拒否することはできないようです。ただし、減額などの余地は残されているよう。この場合は、弁護士に相談してみるのが賢い選択と言えそうですね。 *取材協力弁護士:木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)【画像】イメージです*moga / PIXTA(ピクスタ)
2017年05月08日