河野太郎行政改革担当相は2020年9月17日にTwitterを更新。自身の公式サイトに『行政改革目安箱(縦割り110番)』を設置したことを報告しました。行政改革目安箱(縦割り110番)を立ち上げました。無駄な規制、仕事を妨げている規制、役所の縦割りで困っていること等々、規制に関する情報をお送りください。霞ヶ関の住民からのインプットも歓迎します。 — 河野太郎 (@konotarogomame) September 17, 2020 この『行政改革目安箱(縦割り110番)』は、行政の縦割りの弊害をなくすための提案や情報提供を国民に広く募る目的で設置されたもの。ウェブサイトでは「すべてのメールを河野太郎本人が目を通しますが、ご返信、ご返答ができない場合がございます」とも記していました。開設と同時に反響が上がり、同月18日現在、受付を一時停止しています。行政改革目安箱(縦割り110番)にたくさんのメールありがとうございます。予想を遥かに超える数のご意見をいただきました。今までにいただいたご意見の整理を行いますので新規の受付を一時停止させていただきます。また再開する場合はお知らせ致します。ご協力誠に感謝申し上げます。— 河野太郎 (@konotarogomame) September 17, 2020 菅義偉首相は同月16日に行われた就任記者会見で、行政の縦割り打破や規制改革に取り組む方針を示しており、河野大臣に『縦割り110番』の設置検討を指示していました。ネット上では「スピード感ある対応で素晴らしい」を称賛する声が多数上がる一方、個人事務所のウェブサイトに設置されたことについて「通報者の個人情報が漏洩するリスクがある」「行政の私物化に当たるのでは」といった疑問を呈するコメントも上がっています。『行政改革目安箱(縦割り110番)』に寄せられた意見が、政治の場にきちんと届き、建設的な議論につながることを多くの人が望んでいるでしょう。[文・構成/grape編集部]
2020年09月18日2020年9月16日午後、自民党の菅義偉総裁が衆参両院本会議で第99代首相に選出。同月17日未明に、首相官邸で各閣僚が順番に記者会見を行いました。この日、14番目に会見を行ったのは、菅内閣の行政改革・規制改革担当相に就任した河野太郎大臣。河野大臣は、新内閣の発足時に深夜に及ぶまで各閣僚が順番に首相官邸で会見を行う慣例に対し、苦言を呈しました。例えば、この記者会見も各省に大臣が散ってやれば、もう今ごろ皆が終わって寝てますよね。それを延々ここでやるっていうのは前例主義、既得権、権威主義の最たるものだと思いますので、こんなものさっさとやめたらいいと思います。スッキリーより引用時短勤務やフレックス制度など企業の働き方改革が求められる中、閣僚をはじめ関係者が深夜に会見を行うことに、疑問を投げかけた河野大臣。この発言はネット上でも反響を呼び、コメントが多数寄せられています。・河野さんの毅然とした態度はいつも清々しくて好き。・いいツッコミだ。1人ずつ夜中までしなくてもよいし、スピード感を持ってやってもらいたい。・その日の夜中に順番待ちをする必要はないですよね。非効率的。・誰も見ていない時間に新内閣の閣僚会見を行うなんて意味がない。河野さんの発言に、スカッとしました。菅内閣では、新型コロナウイルス感染症対策と経済再生を最優先に、行政の縦割り打破や規制改革に取り組む方針を示しています。首相はこの中で、規制改革の一環として、国民から縦割り行政の情報提供を電話やメールで受け付ける窓口『縦割り110番』を設置するという考えを明らかにしており、河野大臣は、その設置検討を指示されているとのこと。国の中枢部の意識改革が進むことで、社会全体の働き方にポジティブな影響が広がるといいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年09月17日2020年9月16日、安倍晋三総理大臣は午前中の臨時閣議で内閣総辞職をしました。首相官邸のTwitterアカウントは、退任にともない、Twitterユーザーに向けた安倍総理のメッセージを投稿。反響を呼んでいます。官邸スタッフです。本日、安倍内閣が総辞職するにあたり、安倍総理からのメッセージです。 pic.twitter.com/5OxHj0rnZJ — 首相官邸 (@kantei) September 15, 2020 「毎回、たくさんの『いいね』やコメントをいただき、大いに励まされながら、安倍内閣はさまざまな課題にチャレンジすることができました」と感謝の言葉を述べた安倍首相。「残念ながら残された課題もある」と述べつつも「国論を二分するような困難な課題に挑戦し、達成できたこと、実現できたことがある」と内閣の成果について振り返っています。7年8か月にわたる長期政権の間、外交・安全保障に関わる分野で目立ち、国内外で評価を得た一方、消費税増税や、森友学園の国有地値引きや公文書改ざん問題などについては批判の声もありました。菅義偉総裁が第99代の総理大臣に同日午後、自民党の菅義偉総裁が、衆参両院の本会議で行われる総理指名選挙を経て、第99代の総理大臣に就任します。新内閣では、自民党の重要業務の執行を担う幹部4人に、続投した二階俊博幹事長ほか、総務会長に佐藤勉議員、政務調査会長に下村博文議員、選挙対策委員長に山口泰明議員が内定。平均年齢70歳以上の男性陣が、令和時代の日本の舵取りを担うリーダーとして、活躍することになります。[文・構成/grape編集部]
2020年09月16日2020年5月23日、女子プロレスラーである木村花さんが亡くなりました。22歳という若さでこの世を去った、木村さん。自宅に遺書が残っていたため、警視庁は自ら命を絶ったと見ています。木村さんはバラエティ番組への出演をきっかけに、SNSで不特定多数から「早く消えてくれ」「テレビに出るな」といった誹謗中傷を受けていました。【訃報】女子プロレスの木村花さん22歳が逝去インスタで「さようなら」と投稿ネットが普及したことによって、著名人への誹謗中傷行為は絶えません。きっと相手の顔が直接見えない点に加え、反撃されにくいため攻撃しやすいのでしょう。今回の騒動を受け、これまで誹謗中傷に耐えてきた多くのタレントが、新時代の『いじめ』に苦言を呈しています。木村花さんの騒動を受け、誹謗中傷の特定が容易になるよう制度改正か産経ニュースによると、同月26日、高市早苗総務相は記者会見で木村さんの件について「匿名で他人を誹謗中傷する行為は、人として卑劣で許しがたい」とコメント。誹謗中傷による被害を減らすため、今後は発信者の特定を容易にするための制度改正をスピード感を持って行うと述べました。インターネットは匿名のように見えますが、誹謗中傷や名誉棄損などの被害を受けた場合、個人情報の開示を求めることができます。しかし弁護士に依頼をして裁判を起こしたり、高額の金銭や時間が必要になったりと、被害者に大きな負担がかかってしまいます。※写真はイメージ制度改正によって、今より手軽に加害者を特定できるようになり、泣き寝入りをする人が減るかもしれません。また、「簡単に個人情報を特定される」という風潮になれば、軽い気持ちで誹謗中傷をする人もいなくなるでしょう。高市総務相のコメントに対し、ネットではいろいろな意見が上がっています。・どこから誹謗中傷になるかの判断基準が難しそうだけど、抑止効果は強そう。・誹謗中傷をなくすのは残念ながら無理でしょう。でも、1人でも被害者を減らすように社会が考えないと。・デメリットもあるだろうけど、心が壊される人が減るならアリ。ネット社会に適応したルールを作らないとね。著名人だけでなく、きっと今も多くの人がネットでの誹謗中傷に悩まされていることでしょう。デジタル社会ならではの問題に社会全体がしっかりと向き合い、加害行為を看過しない、やらないという意識を持っていたいものです。[文・構成/grape編集部]
2020年05月26日2020年5月15日、Twitterで『#検察庁法改正案の強行採決に反対します』というハッシュタグがトレンド1位になりました。検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案に対し、「安倍晋三首相と関係が強い、黒川弘務東京高検検事長の定年延長のためではないか」と疑う声がネット上で相次いだのです。法務省は黒川氏の勤務延長との関係性を否定した上で、「検察権行使に圧力を加えるものではなく、三権分立に反しない」とコメント。また、安倍首相は同月14日の記者会見で「従来と変わりなく、恣意(しい)的な人事が行われることはまったくないと断言したい」と述べています。小泉今日子の『政治的発言をした理由』に反響同月16日に放送された情報番組『報道特集』(TBS系)では、今回の騒動について特集。自身が代表取締役を務める株式会社明後日のアカウントで、タレントの小泉今日子さんが政治的発言をした件が取り上げられました。今回の件について小泉さんは、番組に対しこのように思いを明かしました。政治について発言したのは、選挙には行くけれど政治に対して無関心という立場でいた私たちが作っていた現実を突きつけられたような気がしたからです。ずっと違和感や不信感を抱いていたけれど、その問題を後回しにしていた。そういう大人がきっとたくさんいて、ハッシュタグのツイートにつながり、若い人たちにも広がったと思っています。そして、それぞれの心の中で自分たちはこの国で生きているのだということを改めて考えるきっかけにはなったのではないかと思います。報道特集ーより引用Twitterで何度も同ハッシュタグを使って検察庁法改正案に疑問を投げかけ、「読んで、見て、考えた。その上で今日もつぶやかずにはいられない」とつづった小泉さん。日本では著名人が政治の話をすることをタブー視する風潮がある中、ほかにも多くの著名人が同ハッシュタグで政治的発言をしていました。現状を「選挙には行っても政治に無関心だった自分たちが作ったもの」と受け止めている小泉さんのコメントに、多くの人が考えさせられたようです。・自分もまさに「選挙に行くけど関心を後回しにしていた」大人の1人。心に刺さりました。・確かに日本には「政治を語ってはいけない」という風潮がある気がする。・賛であれ否であれ、国民一人ひとりが政治に興味を持って自分の意見を持つことが大切ですね。今回の件だけでなく、世界中で感染拡大している新型コロナウイルス感染症によって生活にいろいろな変化が起こり、多くの人が政治に関心を持つようになったようです。政治はすべての国民の生活に関係しています。自分の人生のためにも、知り、考え、発信することが大切ではないでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2020年05月17日DJ NOBUが音楽業界への補償を求め3月26日、政治家に直訴したと発表した。新型コロナウイルスの影響下で葛藤の生まれるなか、一歩踏み出した形だ。同日、DJ NOBUはコロナウイルスの感染拡大に伴いクラブやライブハウスが《思いきった措置が出来ない》とTwitterで言及。そして《経済的な理由で営業停止でない現状に対し、何らかの補償を検討してもらえないのか》と政治家に直訴したことを明かした。《補償の確約には至りませんでした》とつづりながらも、《現在補償を必要としているのは音楽業界だけではないことから、今後も根気よく声を上げていかなければなりません》とつづったDJ NOBU。そして《なるべく多くの人たちと協力し合っていければと思います》と結んでいる。これに対して、政治家からも声が上がっていた。DJ NOBUと対面した無所属・寺田学議員(43)は《クラブやライブハウス側が自粛要請を受けながらも経済的な理由で営業停止できずにいたり、破綻覚悟で閉鎖している現状に、何らか助成ができないのか、切実な訴えです》とツイート。また共産党・小池晃議員(59)は《自粛要請しながら補償は「これから考える」(予算委での安倍首相答弁)はあんまり。超党派で声あげよう!と相談》とつづっている。音楽業界を含め、日本の文化界は苦境に立たされている。劇作家であり演出家の野田秀樹氏(64)は文化行事などの自粛を政府が要請したことに対し、3月1日に公式サイトで意見書を公開した。同サイトで野田氏は「感染症の専門家と協議して考えられる対策を十全に施し、観客の理解を得ることを前提とした上で、予定される公演は実施されるべき」とした上で、「ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません」と訴えている。いっぽうでJazzTokyoによると、ドイツのモニカ・グリュッタース文化大臣は「文化は良き時代においてのみ享受される贅沢品などではない」「自己責任ではない困窮や困難に対応し、これを救済しなくてはなりません」など、フリーランスのアーティストへの支援に前向きだという。各国の状況はもちろん違う。しかし、声を上げることで変わるものがあるかもしれない。
2020年03月27日自民党・柴山昌彦文部科学大臣(53)が9月8日、高校生の「昼食の時間に政治の話をする」などのツイートに「こうした行為は適切でしょうか?」と返信。ネットで非難の声が上がっている。6日、《大学入試英語成績提供システムの運営に関する協定書については、以前記者会見で締結済みの主体を発表しましたが、この度、英検が正式に加わりました》とTwitterに投稿した柴山大臣。その投稿に、ある教員から英検への不満が寄せられた。教員に高校生は呼応し、そのことから2人のやりとりが始まった。そして教員は「政策を進めている」現政権に投票しないよう周囲にも呼びかけて欲しいと投稿。すると高校生は《私の通う高校では前回の参院選の際も昼食の時間に政治の話をしていたりしていたのできちんと自分で考えて投票してくれると信じています》《もちろん今の政権の問題はたくさん話しました》とつづった。すると柴山大臣は高校生の同ツイートを引用し、こう返信した。《こうした行為は適切でしょうか?》高校生は《昼食の時間に政治の話》をし、そうして周囲と話をすることで《考えて投票してくれる》と信じている。また《今の政権の問題》についても話しており、政治の関心が強いようだ。しかし教育の振興に携わる立場である柴山大臣は、何故かそうした高校生の行動を“適切かどうか”に疑問を抱いている。Twitterでは非難の声が上がっている。《そのように話の出来る環境を醸成する素晴らしい高校だと思いますし、すごくえらい高校生だと思います てかそういう芽を摘んでどんな日本人を育てたいんですか?》《何が不適切なんでしょうか。素晴らしいじゃないですか。まさか、自党に批判的な「政治の話」は許さないとでも?文科大臣としての資質が問われますよ》《18歳で選挙権が与えられた意義を具現化してるじゃん》柴山大臣はその後に《ちなみにこういう文脈ですから》とつづり、教員が現政権に投票しないよう高校生に呼びかけた前述のツイートを取り上げた。しかし、こんな声が上がっている。《文脈は理解しました。いろいろな情報を元に高校生が判断した上で自身の考えを持つことは悪いことではないと思います》《今回の文脈では、自民党に投票しないことを薦めているだけであって、もし自民党に賛成している人がいれば無視するんじゃ無いんですか?》《ツイッターで呼びかけただけ。するかしないかは本人が判断。何が問題?》柴山大臣は8月、自身について《大半が批判なのに》といった声が上がった際に《サイレントマジョリティは賛成です》と反論していた。また同月に応援演説をしたところ、ある大学生が入試改革への反対を訴えた。その結果として警察官が取り囲んで遠ざける騒ぎとなったが、Twitterで大学生の反対の声について《わめき散らす声》と表現して非難の声が上がっていた。
2019年09月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「参院選ふり返り」です。新たな政治のスタート。ふり返りは必須。7月に行われた参議院議員通常選挙は、人々の不平や不満を一手に引き受けた2つの政党が注目を集めました。一つは、「消費税廃止。税金は稼いでいる人から取る」と、反貧困をテーマにした、れいわ新選組。もう一つは、集金方法や報道体制などNHKに対する不満を訴えた、NHKから国民を守る党(N国)です。どちらの代表もこれまで、地道な政治活動を続けてきました。れいわ新選組代表の山本太郎さんは、当選はしませんでしたが、個人名票を99万票集め、賛同者から4億円の寄付を集めました。それだけ大勢支える人がいることは与党に対するプレッシャーにもなっています。今回の選挙では、立憲民主党や共産党が比例選挙区の票数を減らしており、れいわやN国に流れたといわれています。この状況について、「人々が飛びつきやすいテーマを掲げたポピュリズムだ」と言う人もいますが、そう捉えるのは早計でしょう。既存の政党が、漠然とした理想を掲げるにとどまり、市民のリアルな声を聞いてこなかった結果の表れではないかと思います。また、48.8%という、過去2番目の投票率の低さも問題になりました。僕は街に出て、20~30代の若者に取材をしましたが、投票に行かない理由は、政治に対する諦めや不信感からではなく、「国の政策と自分の生活につながりがあると思えない」という、接点のなさからだと気付きました。しかし、「日々の生活をするのに精一杯」のあなたの状況は、社会の制度を変えることで改善できるかもしれません。なにも発言しないまま選挙にも行かず、社会のルールづくりに参加しなければ、不利益な状況を打破できず、搾取され続けることになるかもしれません。また、世界に目を向け、他の国の暮らしや制度と比べて日本の現状を知ることも大事だと思います。いままでの日本は豊かでしたが、働く人口はますます減り、日本企業は、いつの間にか世界から後れをとっています。教育レベルも思うようには伸びていません。参院選が終わったいまこそ、当選した新しい議員がどんな働きをしてくれるのか、注目の2党は期待に応えてくれるのか、目を離してはいけません。堀 潤ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2019年9月4日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年08月29日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「骨太の方針」です。掲げられた案件はスピーディに実行されます。「骨太の方針」とは、政府が毎年発表している「経済財政運営と改革の基本方針」の通称です。これが始まったのは2001年、小泉政権のときです。当時、官僚たちに利権が集中し、汚職などが問題になっていました。また、官僚主導の仕組みでは、思い切った政策をとろうとしても時間がかかり、抜本的な改革が実現しづらかったのです。そこで、政治家主導の流れを作っていこうと、骨太の方針を掲げました。当時はバブルが崩壊し、長引く平成不況のど真ん中。社会保障や税制の一体改革を柱とし、スピーディに大胆に実行していく新しい仕組みづくりをしようとしました。総理を議長とし、各大臣、学者や民間企業のトップ、有識者などから構成された経済財政諮問会議で検討された、国の税財政や経済政策の基本方針がまとめられます。小泉政権下では、郵政民営化や、不良債権をなくし、地方分権をどう進めていくかなどが話し合われました。安倍政権になってからは、法人税率の引き下げ、働き方改革、外国人の労働者の受け入れ拡大、プライマリーバランス(国の基礎的財政収支)の黒字化などが進められました。6月に決定した最新の「骨太方針2019」は内閣府のホームページに公開されています。「第4次産業革命による高度な経済、便利で豊かな生活が送れる社会の実現」「人生100年時代の到来を見据え、誰もがいくつになっても活躍できる社会の構築」と、最低賃金の引き上げ、男性の育休取得、ロストジェネレーションや65歳以上の雇用など、多岐にわたる案件が掲げられています。骨太の方針に盛り込まれたことは、次の国会の大きな焦点になり、そこで決定されれば、着実に法制度化され、国の構造が変わっていきます。スピード感を持って進められるのは良いことですが、官邸にそこまでハンドルを任せて大丈夫なのだろうか?という意識も大事です。また、今年のような選挙イヤーでは、政治家は目先の成果を求められ、骨太の方針に盛り込んでいいはずの難しい問題は先送りにされる節もあります。年金問題や雇用の問題など、もっと切り込んでほしいところなのですが、悩ましいですね。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2019年8月28日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年08月23日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「政治家と官僚」です。間接的には国民も官僚の人事に関わっています。森友学園をめぐる文書改ざん、自衛隊の日報隠蔽、加計学園の獣医学部新設など、政治家と官僚にまつわる問題が度々起きています。ここで政治家と官僚の違いについて改めて整理すると、政治家は、国民が選挙によって選んだ、「私たちの代表」です。これに対し官僚は、各省庁ごとに採用された公務員で、国民の代表ではありません。基本的には、政治家が官僚に対して指示を出し、官僚はそれを実行する立場にあります。なにか不祥事を起こした場合、政治家ならば、次の選挙で当選させない、ということができますが、官僚については国民が人事に関わることはできませんでした。しかし、官僚機構のなかだけで人事を決めることで、官僚と民間の癒着構造ができ、天下り問題が取りざたされるようになりました。省庁のトップに上がれなかった人たちの受け皿として、機能していない公益法人を作り、無駄な税金が使われた。そこで、第1次安倍政権は「官民人材交流センター」を内閣府に設置。国家公務員の再就職先を民間企業と相談しながら支援するというもの。その後、民主党政権になり、官僚の勝手にはさせないと、政治主導にしようとしたのですが、うまくいきませんでした。第2次安倍政権になり、平成26年に国家公務員法の一部を改正。「内閣人事局」を作って、国家公務員の幹部の人事を政府が行うことになりました。主に官房長官に一任されており、最大の人事権を持つのは内閣総理大臣です。こうして、間接的ではありますが、国民は官僚の人事に関われるようになったんです。ところがそこで起きたのが、出世したい官僚が、人事権を持つ政治家に擦り寄り、忖度するようになったということ。その結果、冒頭のような問題を引き起こました。官僚の指揮命令系統は大変整っているため、あってはならない文書改ざんまで、上司の命令が通ってしまいました。裏を返せば、よいこともスムーズに処理されているということですが…。原因は内閣人事局の設置ではないと、僕は思います。問題再発を防ぐには、各省庁に適切な人材を配置できる政治家を、私たちが選ぶということなのではないでしょうか。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。新刊『堀潤の伝える人になろう講座』(朝日新聞出版)が好評発売中。※『anan』2018年7月11日号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・有咲ヘア&メイク・尾口佳奈(KOHL)インタビュー、文・菅野綾子(by anan編集部)
2018年07月08日ヘンリー王子とメーガン・マークルの結婚式が迫る中、招待客に関する意外な情報が明らかになった。政治指導者である英首相のテリーザ・メイ氏、米大統領のドナルド・トランプ氏は招かれないという。ケンジントン宮殿のスポークスマンが「英政府が検討し、王室が決定したことである」と「Digital Spy」などのメディアに語った。ヘンリー王子が昨年カナダで「インヴィクタス・ゲーム」を一緒に観戦したり、ラジオで対談したりと、いままで交流を深めてきた前大統領のオバマ氏とミシェル夫人も招かれないとのことだ。王室リポーターのリチャード・パーマーは、2人の結婚式にこうした要人が招かれない理由として、式場となるウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂のスペースが広くないため2人と本当に親しい人たちだけが招待されていると指摘。また、ヘンリー王子が王位を継承する可能性は低いため、政治関係者を呼ぶ必要性がないとも語っている。本日ケンジントン宮殿のツイッターアカウントは、以前から伝えられていた通りヘンリー王子とメーガンが2,640人の一般市民を式に招待したことを発表。メンタルヘルスの向上に貢献している女性など、特別な背景を持つ招待客を数名紹介している。一般市民の招待客は、ウィンザー城の敷地内で新郎新婦や王室メンバーの到着や、パレードへ出発する2人などを間近で見ることができるという。(Hiromi Kaku)
2018年04月11日友達と政治の話をしようとすると空気が悪くなる。社会に関心がある人はすぐ“意識高い系”というレッテルを貼られる。ただ、目の前に広がる社会のことを知りたくて、周りとああでもないこうでもないと話したり意見を交換したりしたいだけなのに、すぐそばにあるはずの「生きていること」と「社会や政治」が遠く感じる。そんな風に思っている若者はきっと多いはず。そんな世代のためのイベント「Youth Conference (ユース・カンファレンス)」が12月17日(日)に上智大学で開催される。若者たちが集って政治や社会のことをじっくり考え、語る場だ。主催するのは「市民のためのシンクタンク ReDEMOS」。これまで政策解説ムービーを制作したり、女性の権利やLGBTQなどのテーマでイベントを開いてきた、元SEALDsメンバーが設立した団体である。未来の社会は若者がつくっていくもの今回なぜ若者向けのイベントを企画したのか、ReDEMOS代表の奥田愛基(おくだあき)さんに聞いた。発端は、高校生や大学生から同世代が集まる場をつくってほしいと言われたことです。社会や政治のことって学校ではなかなか話しにくい話題だけど、みんなどこかで考えなきゃいけないと思っている。考えなきゃいけないっていうか、いまの若い世代だったら考えちゃうめっちゃ大事なこと。これまで色々なシンポジウムを企画してきたけど、実は来る人の年齢層は高め。でも、未来の社会は若者がつくっていくもの。みんなが日々どんなこと考えているか、どんな社会を作りたいかを自由に語ったり、学べる場を作りたいと思って企画しました。だから、今回のイベントの対象は中学、高校、大学生にしたという。ReDEMOSメンバーの高野千春(たかのちはる)さんは「テーマは社会や政治だけど、身構えないでふつうの感覚で来てほしい」と語る。生きづらさは誰しもが感じているもの。社会を変えたいとかそこまで強く思わなくても、何かしたいけどどうやって関わっていいかわからない人とか、関心があるけど誰と話していいかわからない人とか、そんな若い世代が集う場になればいいなと思います。ふつうの感覚でふらっと来てくれたらいいな。申し込みフォームはこちら
2017年12月15日選挙権の年齢を20歳から18歳に引き下げる法改正・選挙制度改正が2016年に実施されました。先日の衆議院選挙で、初めて投票したという18歳も多かったと思います。そこでパパママ世代に調査! 18歳選挙権についてどう思いますか。Q.18歳選挙権、どう思う?1.賛成 27.8%2.どちらかといえば賛成 28.2%3.どちらかといえば反対 19.7%4.反対 6.0%5.わからない・どちらとも言えない 18.4%最も多いのはどちらかと言えば賛成という人で28.2%。賛成という人も27.8%と次に多く、両方を合計すると56%と過半数を超える結果になりました。■政治に関心を持つきっかけになってほしいいろんな問題はあるかもしれないけど、政治離れが加速していると言われる若者に興味を持ってもらうためにも、選挙権を与えるのはいいことという人が多数派でした。「良いことだと思います。娘の高校では、政治状況を高校生の視点から学んで、公正に判断できるような能力を育成する取り組みも始まっています」(神奈川県 50代女性)「18歳からの選挙権に賛成です。意味がわからなくても、関心を持つきっかけは大切なことです。面倒だとかだるいとか言わずに、選挙に足を運ぶ大人になってほしいです」(神奈川県 40代女性)「選挙のときに高齢者よりの政策ばかり選ばれると困るから、年齢の引き下げはいいことかも。18歳でもしっかりしている子はたくさんいるし、30代だってどうしようもないのはたくさんいる」(神奈川県 30代女性)■18歳はやはりまだまだ子どもなのでは…反対派の人は、18歳ではまだちゃんとした判断ができないのではないかという不安があるようです。何歳まで子どもなのか、何歳から大人なのかは難しい問題ですが、実施された今となっては、子どもへの政治や選挙に対する教育が求められているようです。「18歳を大人と見なすのなら、少年法も見直すべきでは?」(徳島県 40代女性)「人数稼ぎのための年齢の引き下げにしか思えない。学力低下も騒がれているのに選挙権!?」(静岡県 40代男性)「うーん、きちんと真面目に考えて投票するか不安です。タレント議員や人気バンドのファンですといった議員とかに入れそう」(千葉県 40代女性)■国民が変わるチャンス! 若者に期待したい新しい風が吹くことによって、国民全体が変わるチャンスと捉えている人もいました。自分の子どもが投票するとなったら、親も投票に対して意識が高まります。そういった意味では、親世代の投票率の向上にも効果はあるのかもしれません。「18歳に選挙権の年齢を下げることで、教育の場で選挙を意識させることができると思われるし、そうした教育を受けた若者が年齢を重ねていくことで、選挙や政治に対して意識の高い国民に変わっていくのかなと期待もできます。もちろん親である私も意識するようになりました。18歳のみならず、その親世代にもいい影響を与えるのではないでしょうか」(神奈川県 40代女性)Q.18歳選挙権、どう思う?アンケート回答数:8602件 ウーマンエキサイト×まちcomi調べ
2017年11月10日11月5日(日)今夜放送される加藤浩次と若手議員との“徹底トーク”政治バラエティ「加藤浩次vs政治家~政治のオモシロイところ集めました~」に、「仮面ライダーゴースト」で主演を務めた俳優の西銘駿が出演。初コメンテーターに緊張しながらもハードな収録をこなした。本番組は今年3月にフジテレビの深夜帯で放送された特別番組がゴールデン初進出したもので、ワイドショーなどの司会も担当する加藤さんが“若手”アラフォー議員たちと徹底トークすることで、政治を難しいものではなく身近なものとして感じられるようにすると同時に、政治ニュースの裏に“こんなことがあったんだ”、彼らの毎日は“こんな生活なんだ”、実は笑顔の裏で“こんな本音を抱えているんだ”など、「へぇ!」と思うことが連続の内容。今回は波乱の衆院選からわずか1週間後の収録という日程にも関わらず、ニュースな議員からキャラが立った議員まで総勢17人が出演。6時間に及ぶ収録では「議員の恋愛事情」から「憲法改正」まで白熱の議論が繰り広げられたそう。そんな収録現場にひとり“若者代表”として参加した19歳の西銘さん。「仮面ライダーゴースト」では主人公・天空寺タケル(仮面ライダーゴースト)役を熱演、ヒーローとして人類を救った彼だが、政治バラエティへの参加は初。もちろんコメンテーターも初体験。少々緊張した面持ちで収録に臨んだ西銘さんだが収録の感想については「政治に対するイメージががらっと変わりました!いままで持っていたのは堅いイメージでしたが、実際議員の皆さんの仕事の内容そのものや、寝る間も惜しんで取り組んでいる姿をみて感動すらしました」とのこと。同時に「憲法改正など難しい話も多かったのでそこについていけない自分に対しては“どうして、国の大切な話をしているのに…”と、悔しかったです」と語り、「仮面ライダーは、空想の世界。今回の議題はすべてリアルなもの。もっと自分の意見も言いたかったですし、もっと勉強もしたいと思いました」と今後への課題とでもいうべき点を挙げた。一方で不倫や恋愛スキャンダルが話題になることについて「政治家って芸能人に近いな、と思いました」と“共通点”を感じたことを明かし「僕もファンがいるからこそ、変な写真を撮られてはいけないと思っています」と、芸能人としての“心構え”を新たにしているようだった。ファンや同世代の若い視聴者へ「政治への興味を持つきっかけになれば」とメッセージをくれた西銘さん。素朴な疑問を持って政治トークに参加した彼の新鮮なリアクションにも注目だ。「加藤浩次vs政治家~政治のオモシロイところ集めました~」は11月5日(日)19時~フジテレビ系で放送。(笠緒)
2017年11月05日「音楽に政治を持ち込むな?だったら恋愛も持ち込むな」。インタビューの冒頭からそんな言葉が飛び出した。牛田悦正(うしだ よしまさ)aka UCD、25歳。UCDは大学で哲学を学びながら、2015年夏に解散した学生団体SEALDsの中心メンバーとして、路上でマイクを持ち続けた。そして今年の10月18日、初のヒップホップアルバム『BULLSXXT』をリリース。今回Be inspired!は、マルチな才能を持つUCDに政治や哲学、音楽に対する思いを聞いた。本も読まず、考えずに主張するのはダサい。でも世界にいるのに俯瞰するのもダサい。僕は、原発が賛成なのか反対なのかどっちかだという議論にしたくなかった。一方的に主張することに対して違和感があったし、本も読まずに、道端で主張をする意味なんてない。体験談の共有も意味なんてない。賛成にせよ反対にせよ、どちらもメリットがあるはずでそれを考えてから主張すべきだと思った。だから最初僕はデモすることも反対だったんだ。日本社会に欠けているのは「哲学的に思考すること」。だからUCDは当時通った大学の図書館に原発の関連本を100冊購入してもらい、かたっぱしから読んで、考えた。しかし、ジレンマが待っていた。「どっちかに“決断”しなきゃいけない。それが政治だった」。結局意見を主張しないといけないんですよ。考えるだけじゃだめだった。100冊読むと、結局「なにを信じるか」ということしか残らない。そこには原発大丈夫だっていう煽りとダメだっていう煽りしかないから。哲学って思考をすることそのものだから、決断を留保するしかない。思考の限界だと思った。思考に留まるのは、いまの日本社会の「病」とまで言い切るUCD。社会の中で生きているのに、その社会を上空から俯瞰しつづける思考は、社会に何もなさない。「考えているからいいじゃん」という言い訳として消費されるだけだ。「でも重要なのは」、とUCDは続ける。「ちゃんと思考しないと決断できない。だからどっちも必要なんです。僕が言いたいのは、本当に考えたら決断できると思うし、すべき責任があるということ」。でも人間は、考え抜いても決断できない時もある。だから最終的に政治は、どちらを信じるかの “賭け”だと思う。人間はそうやって生きている。だからこそ危うい。どっちを選んでも決断は間違いうる。でも、「だから決断しない」んじゃなくて、データを集めて、しっかり考えて、ちゃんと指標をもつ。その上で、「未知のもの」に乗り出してみる。誠実に未来のためにギャンブルすることは、時に負けるし、時に惨めかもしれないけど、誇り高いことだ。音楽と政治が関係ないなら、音楽と恋愛も関係ない日本の音楽シーンは、海外に比べて政治的発言がタブーとされている。「音楽に政治を持ち込むな」。「音楽は純粋であるべき」。こんな言説をよく聞く。「音楽だって政治じゃん」と言い切るUCDは、この現状に対してどう考えているのだろうか。一言で言えば「じゃあ音楽、聞くなよ」ですよね。音楽と政治関係ないなら、音楽と恋愛も関係なくなる。詞がある時点でそこには必ず何らかの意味があるし、詞がない音楽だってなんらかのテーマがある。表現ってそういうことでしょ。政治がないところ、言葉がないところに行きたいなら、行けばいい。でも、そこは戦場ですよ。音楽が政治的な意味を持つのは、歌詞が政治的である時だけではない。音楽そのものが政治的になる瞬間があって、それがどういう時かって、例えばヒップホップのアーティストが「世の中がどうなろうと構わん」「民主主義が壊されようと、国家が壊されようと、それでも俺たちは歌うぜ!踊るぜ!」って言っている時だと思う。ヒップホップは、黒人の貧困層から生まれた音楽。抵抗の音楽なのだ。生きづらい閉塞的な時代、極貧の中で、ピストルで撃ち合っていた少年たちが、「撃ち合うんじゃなくて、一緒に踊ろうよ、歌おうよ」と言い続けてきたのだ。その音楽がいま世界中に届いている。ヒップホップがどれだけの人を救っているか、計り知れない。人間の生のクオリティをあげ、よりよく共に生きること。これが政治だとすると、「踊ろうよ」という呼びかけが、政治的じゃないはずがない。高学歴であるとかそんなんはどうでもいい。2017年10月18日にPvineから1st Album『BULLSXXT』を発売。「Stakes」を含む全11曲収録のバラエティに富んだ作品なので、お聴き逃しなく。月23日(木)にはアルバムリリース記念インストア・ミニライブ&サイン会を開催。日時:2017年11月23日(木・祝)21:00スタート場所:タワーレコード渋谷店4Fイベントスペース内容:ミニライブ&サイン会UCD: photos by memeText by Reina Tashiro ーBe inspired! この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!どこで生まれても“ハーフ”はつらい。24歳の混血児ラッパーが「社会への怒り」を前向きに発信する理由。 日本で人種や国籍の異なる親から生まれた子ども(“ハーフ”と呼ばれることが多い)の数は年々増えている。2016年には日本人と外国人の間に生まれた子どもの割合は、日本人の出生数の...
2017年10月21日日本の政治についてあなたはどれくらい知っているだろうか。「親しみが感じられない」「なにから知識を身に付けていいかわからない」と思う人は少なくないだろう。なんせ日本の若者の投票率は32.6%。この投票率の低さから日本の若者の政治への関心の低さや一人の投票で何かが変わるわけではないという諦めの姿勢がうかがえる。政治が身近じゃない。2014年に行われた第47回衆議院議員総選挙では、60代の投票率68.3%だったのに対し、20代の投票率は32.6%であった(参照元:総務省)。若者が政治について積極的でないという事実が一目瞭然だ。最近では若者の投票率をあげるため、人気のアイドルやタレントを啓蒙イメージキャラクターに起用し、選挙を身近に感じてもらおういう動きも見られている。しかし、それらに本当の効果があるのだろうか。それをきっかけに自分にとっての政治に対する意見や民主主義を考える人がいるとは率直に言って考えづらい。自分なりの意見をしっかり持たずして投票し、その時の投票率が上がったところで意味がない。政治への関心や意見を持つ時というのは、身近で共感のあるスピーチを聞いた時、他者と社会の問題について語り合うことができた時などであろう。#BUD09で呼びかけられたある集いPhoto by WOODDY政治を遠く感じていた若者たちにとって、SNS上で呼びかけられたり集められた集いはちょっとした好奇心をそそり気軽に参加できる身近なものとして捉えられるだろう。今回のようにSNSから発信されるものが政治への関心や参加の高まりをつくり、国民の政治への態度を変えていくかもしれない。そしてそれは現在の日本の民主主義を変える大きな一歩となり、一人ひとりが社会の問題を自分に関係のある問題として考えるきっかけとなるだろう。
2017年10月17日”私おしゃれでモデルやってて、政治も考えてる頭いい子なんです”って自分をアピールするために活動してる訳じゃないそう言い放ったのは中川えりな、弱冠20歳。現在彼女は上智大学で神学・哲学を学びながら、フリーモデルとして雑誌、ミュージックビデオで活躍している。また、SEALDs(日本の自由で民主的な社会を守るための緊急アクションの学生団体)の元メンバーであり、ポリティカルな顔を持つことでも有名だ。“ハタチ”という若さを感じさせない政治観を持つ彼女に今回Be inspired!はインタビュー。SEALDsが解散した今、彼女の類稀なファッションセンスと知性で、どうやって政治と若者の距離を近づけていくのかを聞いた。 あなたにとって「政治を考えること」とはなにか?そんなシンプルな難題に彼女はおもむろにこう答えた。数年前まで、政治を考えることは『義務(DUTY)』だと思っていた。政治に興味を持つ派とか持たない派とかなくて、みんなが選挙にいくべきだって。でも今は、『責任(レスポンシビリティ)』だと思ってる。『責任(レスポンシビリティ)』は『応答する能力(レスポンスできるアビリティ)』のこと。政治や社会のあり方について自分の頭で考え、応答する能力を自覚し活用することによって果たすことができる。私たちには社会をよりよくする能力があって、その能力に気づけたほうが、我慢するよりもずっと楽だと思った意思表示は、公の場で行われる非暴力の抗議活動「デモ活動」や「座り込み」だけではない。ツイッターやインスタグラム、フェイスブックなどSNSを使えば誰もが政治に参加できる時代で、彼女のこの発言は、同世代へ向けたエールのように聞こえた。 日本は、若い人が政治のことをツイッターでつぶやくと『なにもわかってないくせに言うな』みたいに叩く風潮があるけど、そんなの全部無視すればいいし、間違っても別にいい1月に成人式を終えたばかりのえりな。彼女はなぜそんなにも政治を考え、社会に意思表示をするようになったのだろうか。 新聞もロクに読めなかった18歳。高3の12月に上智大学の神学部に受かって、大学入学後の知識のために(キリスト教)カトリックの勉強をしようと地元の教会に通うことにした。赤ちゃんの時にカトリックの洗礼を受けてたけど、教会には通い始めたのは高校生になってから。そこの神父さんがとても社会派な人で、彼から安保や原発についての説教をたくさんされた18歳になり教会に通うようになるまで、政治に関する知識もなく、新聞も深く考えて読むことはなかったと語る彼女。神父との出会いが政治へ関心を持った大きなきっかけだという。また、これまで震災の被災地でボランティアをしたこともなかったえりな。政治的・社会的な出来事がある度に、現地へ足を運ぶ神父やSEALDsメンバーから、現場へ行き「自分の目で見て体験すること」の大切さを学んだそうだ。実際に2016年の夏、えりなは彼女自身の目で沖縄の米軍基地問題を目撃するために沖縄へ足を運んでいる(2016年の夏に沖縄に行った時の写真 ) 初めての座り込みで「セルフィー」した19歳。2015年5月3日(憲法記念日)に創設され、2016年8月15日(終戦の日)に解散したSEALDs。えりなは何がきっかけで、SEALDsに参加したのだろうか。通ってる大学の教授が神学の勉強会をやってて、そこに参加してた年配の女性に、国会前でやってる安保法案に反対する座り込みのビラを渡された。新聞とかを読んでて自分も前から反対の気持ちがあったけど、自分は行かないって思ってた。デモとか座り込みってなんか怖いと思ってたし。だけど、その時ちょうど誕生日が近くて、誕生日のパワー(笑)を借りてその日だけなら行けるかもって。それに、誕生日に一人で座り込みに行って自撮りしたらおもしろくね?(笑)って思っちゃって、6月24日(19歳の誕生日)に初めて国会前に行って座り込みしたんだ。学校のめっちゃ近くだったから授業の合間に行ったんだけど、当日も行くかどうかすごく迷ったのを覚えてる(SNSに投稿した「座り込み」に参加した時のセルフィー) 初めて座り込みに参加した当時、SEALDsの存在さえ知らなかったえりな。誕生日の時に撮ったセルフィーのツイートが拡散され、SEALDsに彼女の存在が知れ渡り、メンバーと連絡を取るようになったという。そして彼女はSEALDsのデモに参加した経緯についてこう語る。政治の話なんてしたことがなかった友達のハル(HIGH(er) magazine編集長、ブロガー)が、実は前からSEALDsと関わりがあって、私が座り込みに参加した投稿を見て、SEALDsのデモに一緒に行こうって誘ってくれたの。その数日後、待ち合わせして一緒に国会前に行ったのが、私が初めてSEALDsのデモに参加したきっかけ。何回か参加していたらライングループに入らない?ってメンバーの人に誘われて、気づいたらメンバーになってた。その時はラインに190人くらいいて、最年長が28歳の大学院生の人だったと思う 「私にしかできないこと」に気付いた20歳。神父と出会い、信仰を通して政治に関心を抱くようになった18歳。そしてSEALDsに入り、「デモ」「座り込み」「SNS」など、政治への意思表示の方法を知った19歳。現在、インスタグラムのフォロワーは5000人を越え、次々と国内外のファッション・カルチャー誌のモデルとして活躍する20歳の彼女は、自分の存在をどのように同世代へ向けて発信しようとしているのか。ファッションやカルチャーが好きな日本の若者と政治への距離感をこう考察する。今の日本の若い人たちは、政治に関心がない分、政治的な言動に対して変な偏見もないように感じる。今はインスタグラムとかで海外の情報が手に入りやすくて、ケンダル・ジェナーが選挙キャンペーンに参加してるのを見てたりとか、政治参加に対するハードルが下がっているみたい。あと、カルチャーが好きな人でコアな人は、自分が着ている服の意味や歴史を知ってたりするけど、それは、自分で自分の行動を選び取る能力があるのを自覚して、自分の行動に責任を持とうとしているように感じるし、選挙やデモとかの政治参加もそれと同じじゃないかなって思う 彼女が思い描く「民主的政治空間」とは「私は政治の専門家ではない」。そう語る彼女は、政治と若者を繋ぐためイベント『Making-Love Club』を3月2日(木)に渋谷で開催する。イベント全体のテーマは「民主的政治空間を作ること」。そして、今回のトークセッションで取り上げるイシューは「アメリカ大統領選後の国際情勢と日本の政治」だ。彼女のファッションセンスと政治に対するスタンスをどう織り交ぜてイベントに落とし込んでいくのか。今回は、市民のためのシンクタンク『ReDEMOS(リデモス)』の研究員を招いて開催する。それは、内輪受けみたいなイベントにしたくないこともあるし、広い見方ができる専門家のような立場の人が必要だと感じたから。政治の話をする時によく起きるのが、自分たちだけが正義で、自分たちと考えが違う人はおかしい人だって決めつけること。大統領選も、自分たちがトランプを批判してれば勝たないんだと思い込んでた人たちがアメリカの中にある分断に向き合おうとしていれば結果は違ったんじゃないかなって感じる。今の日本の若い人達でこれから政治の話をしていくという時、そういった『偏見』が一番怖いんだってことを忘れないようにしたいという思いがある政治に興味がない若者が多く存在する現代の日本で、イベント『Making-Love Club』の必要性はなんなのだろうか。イギリスではEUの離脱が決まり、アメリカではトランプ大統領が誕生した。本当の民主主義ってなんだろうと考えさせられた出来事だったと思うし、『Post-truth』って言葉が流行るくらい、ニュースを見てても何が本当か分からないと感じる人はたくさんいると思う。これは日本でも同じで、大切なニュースを表面的にしか取り上げない報道ばかりで、根本にある問題が見えてこなかったりする。去年の夏議論に上がった憲法改正についても、『今と昔は時代が違うのに、憲法だけ70年間1度も変わってないのはおかしいよね、だから変えるべきだ』って声があった。言葉だけ見たら『そうかも』って納得しちゃう。だけど、そんな時に必要だったことは『憲法ってなんであるの?』『憲法って何?』って改めて問い直すことだったと思う。今回は大統領選について取り上げる。『こんなひどいことを言うトランプさんが大統領になってしまって大変ですね』って共感しあうだけじゃなんの解決にもならない。『トランプがやばいっていうけど何がやばいの?』、『ヤバいってどういうこと?』ってところから、『民主主義ってなんなの?』ってところまで、一からざっくばらんにみんなで話せる空間を作りたい。そして、『アメリカって政治やばいらしいねー』って言いながら、自分の国の政治のこと何にも知らないでいることもめっちゃヤバいことなんだってことにも気づける場にしたい。『ぶっちゃけ、どうなの?』って問い直すことを『Making-Love Club』ではやりたい。政治だけじゃなくてセックスについても!政治への関心が皆無な日本の若者に、政治を考えるきっかけを作り、政治に対しての「責任感」を芽生えさせるのは彼女なのかもしれない。直向きな政治への強い思いと、独創的なファッションセンスを持ち合わせた中川えりなが、日本の若者と政治との距離をグッと近づけてくれると信じている。 Erina Nakagawa『Making-Love Club』モデル中川えりなと、3つのインディペンデントマガジンによるカルチャーイベント。カルチャーが交錯する時代を捉え、トークイベントでは、セックスや政治など、ターゲット層が潜在的な興味を寄せるテーマを取り上げる。音楽ライブではBig Love Recordsから、今メディアから注目を集めるAya Gloomyを向かえ、新世代アイコンとして話題沸騰中の小山田米呂がDJとして参戦。バイリンガルカルチャーマガジンWooly、モデルでブロガーのHaruが編集長を務めるHigh(er) Magazine、元出版社にて編集の経験を積み、独立した綿貫大介率いるEmotional Loveの三媒体のキュレーションにより、感度の高いユース層に向けたコンテンツを用意している。日時:2016 年3月2日(木) 19:45-23:00 ※イベント開始は20:00を想定場所:ロフト9〒150-0044 渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 1F TEL:03-5784-1239ウェブサイト:入場料: 1500円+1ドリンク<Time Schedule>19:45-20:00 DOOR OPEN / DJ20:00-20:40 Talk Session 1部20:40-21:05 DJ by 小山田米呂 21:05-21:20 Short Film by UMMMI.21:20-22:00 Talk Session 2部22:05-22:35 Live by Aya Gloomy Photos by Miri Matsufuji Text by Jun Hirayama ーBe inspired! この記事を読んでいる人はこの記事も読んでいます!【ギャラリー】写真家 Miri Matsufuji 撮り下ろし:モデルErina Nakagawa photos by Miri...
2017年02月24日クリスマス、お正月とイベント続きの年末年始。主婦や母親にとっては、ゆっくりする暇もなく、疲れがとれたのかたまったのかわからないまま、また新たな年が始まったという人も多いことでしょう。一年で一番寒くて、朝がツライこの時期を乗り越えると、あっという間に今年度も終わり。1学期や2学期に比べると半分の日数しかない3学期なのに、行事も多く、新年早々慌ただしく毎日が過ぎていきます。昨年3月にこの 「ママは政治一年生」 の連載を始めて、それに合わせるかのように、政治の話題に事欠かなかった2016年ですが、今年も、政治の話題満載の一年になりそうです。まずは、今月20日に、いよいよドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領に就任します。経済、軍事、さまざまな情勢が全く予測できず、日本だけでなく、世界の国々、世界のリーダーたちが戦々恐々、様子見をしているような状況です。アメリカの産業を守るための策を講じることにも躊躇がないトランプ氏ですから、日本経済への影響も心配です。日本のお隣・韓国でも、朴槿恵大統領の職務停止状態を受け、6月ごろには大統領選が行われると予想されています。3月にはオランダ、4月にはフランス、秋にはドイツでも選挙があり、アメリカ大統領選挙のようなグローバル化への懸念、難民問題などから国民の鬱憤や不安がどこへ向かうのか、国際的な協力の姿勢から自分たちの国さえよければいいという「○○ファースト」の意思が多数を占めることも予想されています。では、日本の2017年は、どんなことが話題になってくるでしょうか。2017年の政治のカギは何か2016年、国内政治の話題・総ナメ状態だったのは、小池百合子東京都知事の誕生です。今年は、6月に東京都議会議員選挙が行われるので、「知事VS都議会」(というよりは、「小池VS都議会自民党」と言い切ってもよい)の対決構図がどのように変化するか、大いに注目されます。その前、2月には、小池知事になって初めて編成された東京都の予算案についての議会での議論が始まります。補償を含む築地市場の延期に係る諸費用など、知事が用意した予算で議会がすんなり納得するのか、注目されます。また、都議会自民党の大人気ない知事イジメをしている光景には、都民もウンザリしてしまいます。そんな態度では自分の立場も危うくなりますから、大人の対応で戦ってほしいですね。また天皇陛下の生前退位についての法整備も、今年の早いうちにやらなくてはなりません。通常国会での優先議案です。そして、なんといっても、今年の政治の大きな課題は、国民一人一人の生活が少しでも上向くこと。円安や株価上昇等で企業の業績はアップしているのに、国民一人ひとりのお財布状況はなかなか改善されていません。統計的には「実収入」は、2016年も前年に比べてわずかながら増えているのに、消費は相変わらず前年と比べると落ち込んでいるのが実態です。つまり、「つかわず、貯めこむ」ということ。それでは経済活動が止まり、ますます景気は良くならなくなってしまいます。収入を得た人たちが消費するようになること、これが2017年、日本の大きな目標です。これまでお財布の紐を固くしてきた母たちが、将来を不安に思うことなく必要に応じて消費できるかどうかはこの1年の政策によって変わってきます。そのためにはお給料を上げること、将来への漠然とした不安をなくすために、実態をともなった「成長戦略」を本気で作ることが、政治の使命と言えそうです。待機児童対策や働き方改革、介護離職ゼロ、給付型奨学金、大学入試改革などは個別政策ですが、ウーマンエキサイトの読者が気になる話題が今年も満載。この連載で、個別テーマも一つひとつ取り上げていきたいと思います。
2017年01月10日年賀状に、お正月の準備、そしてそして大掃除……。クリスマスが終わったと思ったら、まだやらなければいけないことはいっぱい。12月は主婦にとって、ママにとって「なんて忙しいの!」と声をあげたくなる時期ですね。そんな慌ただしい12月は、政治も大忙しです。今年は特に、この年の瀬も押し迫って、ロシアのプーチン大統領が来日(それも初来日!)。そして26日には、安倍総理がハワイの真珠湾を訪問。来年1月に任期満了となるアメリカのオバマ大統領と最後の日米首脳会談を行うことになっています。ビール税に住宅ローン減税、いったいどうなる?今年は特に、政治の話題が年末まで事欠かないのですが、例年でも翌年度の国家予算の編成作業があるので、結構大変なのです。予算編成の前に税制の改正についても決めなくてはならなりません。ビールやエコカー、住宅ローンの減税はどうなるのかなど、日々の生活にも関わるだけに、チラチラと気になっている人も多いのではないかと思います。103万円の壁だった配偶者控除が150万円にさて、今回注目の税制改正は、やはり「配偶者控除」についてでしょう。これまで妻の年収が103万円以下であれば適用されていた夫の所得から38万円を控除する「配偶者控除」の、妻の年収要件が拡大されることになったのです。具体的には妻の年収要件を150万円以下まで拡大、その後は段階的に控除額を減らしながらも適用され、201万円を超えると控除の対象から外されることになります。 また、夫の年収も、これまでは制限がなく、妻の年収だけが条件とされてきましたが、今回の改正により、38万円の控除を受けられるのは夫の年収が1120万円以下の場合ということになります。その後、段階的に減らされて1220万円を超える夫の年収があった場合は、妻の年収が150万円以下でも控除は受けられなくなります。配偶者控除は年収をコントロール、果たしてその結果は?今回の改正のポイントは二つ。一つは、配偶者控除適用の年収要件を拡大することで、妻のパートなどの収入を少し増やすことができるようになるということ。もう一つは、夫の年収要件を設けることで、拡大する控除の財源が不足しないようにしようということです。 配偶者控除については、不要論と必要論が激しく対立しています。子育てや家事、介護などで働きたくても働けないという人も多い中、専業主婦という選択を否定するかのようにもとれるため、配偶者控除には一定の意義があるという考え方もあります。一方、子育てや家事、介護があっても、出来る範囲で働く(働いてもらう)ためには、年収をコントロールすることになる配偶者控除は不要であるという意見もあります。 今回の改正は、妻の年収は拡大しつつ、制度は残すという、いわば「折衷案」ともとれる内容となりました。人口減少社会の中で、労働力不足や税収不足の現実を考えると、誰もが納税者となる制度は大事かもしれません。世帯単位で考える日本の税制も、未来永劫今のままでいいというわけでもないでしょう。とはいえ、子育てや介護などで十分に働く環境がない人も多いし、そもそも子育てと仕事の両立はそう簡単なことではないのです。そういうことを幅広く考えながら、どんな社会を作っていくのか、そのために必要な税制は何かを、これからは真剣に考えていく必要がありそうですね。
2016年12月27日「政治のことよく分からない!」とはっきりいうのは恥ずかしい。そんな人のための連載「ママは政治一年生」を執筆する政治ジャーナリストの細川珠生さんに、これだけは知っておきたい! 2016年の重要な政治ニュースランキングをインタビュー! 第5位~3位を発表した 前編 に続き、いよいよ後編の第2~1位発表です。第2位 世界の女性リーダーたち細川珠生――第2位は女性リーダーです。小池百合子東京都知事の誕生は今年の政治トピックとして忘れてはならないですね。初の女性都知事ということでも注目されましたが、それ以上に、これまでの政治の文化を変えるリーダーの誕生に、日本中が沸きました。その後、蓮舫氏が民進党の新代表に就任し、野党第一党の党首が女性というのも、旧社会党の土井たか子氏以来、30年ぶりのことでした。世界的にも、女性リーダーの躍進は目覚ましいものがあります。イギリスのテリーザ・メイ首相、台湾の蔡英文総統、動向が不安定ながらも、韓国の朴槿恵氏大統領など、日本と関係の深い国は次々に女性リーダーが誕生しています。アメリカも、ヒラリークリントン氏に女性初の大統領という期待がありましたが、残念ながら、それは実現されませんでした。――日本も女性が政治を動かす時代が来たってことですね!細川珠生――いえいえ、世界と比べるとまだまだ! 日本は、政治、経済、教育、健康分野を総合した男女平等度としては、144カ国中111位。女性首相を二人も誕生させているイギリスは20位、女性大統領の誕生はかなわなかったアメリカは45位ですが、この2カ国と比較しても、日本はかなりの低さ。漸く都知事に女性が誕生しましたが、女性初の総理大臣、あるいは企業における女性管理職の増加は、まだまだ難しそうな気がします。とはいえ、小池都知事には、これまでの男性政治家にはできなかったような都政を期待したいですね!第1位 参議院選挙細川珠生――第1位は参議院選挙です! 今年の政治のトピックとして最も重要なのは、参議院の通常選挙。選挙の結果により、日本国憲法の改正の発議が可能となる、改憲勢力が初めて3分の2を超えたということも、戦後の政治にはなかったこととして、特筆すべきことですね。また、この参議院選挙から、選挙権が「18歳以上」に引き下げら、初めて高校生が有権者となりました。主に高校で、「主権者教育」も始まって、新たに有権者となった10代は、本当に一生懸命政治を考え、将来を考え、選挙に参加したことが、投票率にも表れました。10代の投票率は45.45%と、20代、30代より高かったのです。これからは、親子で政治をしっかりと考えていく習慣がつけば、10代の投票の意義もより高いものになるでしょう。来年には、衆議院選挙が行われると言われています。来年もまた、若い世代の一票を期待したいと思います!第3~5位の 前編 はこちら! (イラスト・インタビュー ちゃず)
2016年12月02日アメリカ次期大統領のトランプ氏へのさまざまな注目が集まる中、2016年は残りわずか。この一年、政治の世界ではめまぐるしい出来事が起こったけど、「政治のことがよく分からない!」とはっきりいうのは恥ずかしい。そんな人のための連載「ママは政治一年生」を執筆する政治ジャーナリストの細川珠生さんに、2016年のこれだけは知っておきたい! 重要な政治ニュースをランキング形式で教えてもらいました。 第5位 アメリカ大統領選細川珠生――第5位はアメリカ大統領選です! 11月9日未明、オバマ大統領の次、第45代アメリカ大統領に、ドナルド・トランプ氏が選ばれましたよね。元ファーストレディで、上院議員、国務長官を務めた政治のプロ、ヒラリー・クリントン氏を僅差で破っての勝利に、アメリカのみならず、世界中が仰天したのは、世界のニュースで今年一番のトピックとも言えるでしょう。実業家としての手腕はあっても、政治経験ゼロ。トランプ氏に会ったことがある日本の政治家も、選挙の時にはゼロという、異例中の異例の、アメリカ新大統領の誕生です。――トランプ氏が大統領になって、日本は大丈夫なんでしょうか…。細川珠生――日本は、唯一の同盟国(日米安保条約を結んでいる国)として、アメリカは世界の国々の中でもっとも重要な国です。その日米安保条約によって駐留している日本国内の米軍の費用を、全額日本が持つべきだというのが、選挙中のトランプ氏の発言でした。でも、日本に米軍が駐留しているのは、日本を守るためだけではなく、アメリカの世界戦略の一環でもあるのです。このあたりは、トランプ氏も、もう少し勉強してほしいというのが、日本側の本音。 また「アメリカ第一主義」を唱えるトランプ氏は、移民によって雇用が奪われること、質の良い日本製品によってアメリカの製造業が脅かされていると訴えていました。市場開放を目指すTPPには反対し、あくまでもアメリカの国益と、アメリカ人が損をしない、そういう政策をとることを選挙では訴えてきましたが、どこまで本気でやろうとしているのかが、世界の国々にとっては脅威なのです。またオバマ政権で優先してきた、黒人やヒスパニック系、移民などへの政策は、軒並みくつがえされるとも言われています。アメリカ国内のみならず、世界が注視するトランプ次期アメリカ大統領。日米関係は世界の安定の上においても最重要でもあるだけに、来年も、トランプ氏から目が離せませんね。第4位 子育て支援の政策細川珠生――第4位は子育て支援の政策が進んだことです。安倍政権は、4年前のスタート時から、「女性の活躍」を、日本が変わるための重要な要素として、進めてきました。そのための「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」は、最優先で取り組む政策と考えられています。待機児童解消のために、これまでの施設保育(保育園の増設)だけでなく、ベビーシッターの費用を公費で補助することも検討中。また長時間労働を改善し、育児中の時短勤務の拡大やテレワークの活用、また男性の育児休業の取得増加など、今年になって矢継ぎ早に、多様な働き方を国の方針として進めていくようになりました。ただ、長い年月の中で作られた日本社会の象徴とも言える「働き方」は、なかなかその文化を変えられず、すぐに成果が表れることを期待するのは難しいかもしれません。 ――細川さんが子育てをされている中で変化したなと思うことはありますか?細川珠生――私は子どもを出産してから、全てベビーシッターを利用しながら仕事との両立をしてきましたが、これまで、シッターへの補助がなかったことを考えると、ようやく一歩でも前進、と思います。すぐに日本の社会は変わらない、変えられなくとも、女性が結婚しても、出産しても、社会で自分の役割を得られるという社会を目指すのなら、どうすればよいか、根気よく訴えていくことが必要ですね。子供の教育費を支援する「給付型奨学金」(返済の必要のない奨学金)や返済猶予の期間を設ける(働き初めてからすぐは、給与も少なく返済が困難であることに対応)も、来年度から実現の方向です。所得制限が設けられたりと、利用できる家庭は限定されていますが、第一歩ではありますね。第3位 消費税細川珠生――第3位は消費税です。2014年4月に、消費税が17年ぶりに増税し、8%となりました。法律により、一度延期はしたものの、2017年4月に2回目の引き上げを行って、最終的に10%になることが決まっていました。今年6月に、安倍総理は2度目の延期を決め、2019年10月に行うと表明。その理由を、日本経済が本格的に改善していないことを挙げています。 消費税の増税は「社会保障と税の一体改革」の中で、決められました。その狙いは、今の社会保障制度を維持すること、そのための安定的な財源を確保するということです。しかしながら、10%まで引き上げを行っても、子育て支援を含む社会保障制度の充実のためには、増税5%のうちの1%しか充てられません。残る4%は、社会保障制度の安定、特に国の借金である赤字国債の返済に約3%、7兆円が充てられることになっています。子育て支援のためには7000億円しか充てられないことを考えると、ケタが一つ違ってびっくりしますね。そもそも、日本の社会保障制度は、人口が増えていくことを前提に作られています。すでに人口減少社会となった日本では実態にあっていないことはあきらか。老後の安心が少子化対策にもつながることからも、増税の延期を繰り返すより、制度の根本的な改善が必要です。第1~2位の発表は 後編 へと続きます! 後編はこちら→ (イラスト・インタビュー ちゃず)
2016年12月01日ブロッコリーにキュウリにネギ、はたまたほうれん草まで、緑の野菜片手に足早に駆けつける女性たち。向かった先は駅前の選挙演説。緑をトレードマークに選挙を戦う女性候補者・小池百合子氏の東京都知事選は、かつてないほどの盛り上がりを見せました。野菜を持った女性たちの声援に囲まれる選挙なんて、私もこれまで見たことがありませんでした。都民だけでなく、日本中の関心を集めたことは、地方政治や行政に関心を持つ扉を開いたという大きな効果がありました。その選挙戦を勝ち抜いた小池氏は、東京都としては初めての女性知事となり、その後も途切れることなく、注目を集めています。小池氏の動くところにはマスコミだけでなく、一般人もゾロゾロ。その見事なまでの発信力に、小池氏と対峙していると思われる旧態依然とした政治のおじさま方も、タジタジといったところではないでしょうか。就任から100日以上が経ち、小池知事自らも、「今度は(問題の)あぶり出しから、答えを出していくという段階」と言うように、小池氏によって分かった数々の都政の問題を、どうまとめていくのか、解決していくのか、そちらに関心が集まっていくことになるでしょう。その「解決」が、都民も納得できるものかどうか、小池氏にとって、これからが政治家としての力量が問われることになります。実際、小池百合子都知事になって良くなったの?私はこの100日の小池氏の都知事ぶりは高く評価しています。その理由は大きく二つが挙げられると思っています。一つは、都政の問題がよく分かるようになったこと。これまで都政だけでなく、地方政治、もっというなら、政治そのものに興味のなかった人にまで、都庁を例とした地方行政や議会のしくみや関係などに興味を持つきっかけができたことは、本当に大きな功績です。都政の問題なので、都民以外の人にはあまり関係ないのではという不安をよそに、自分の住んでいるところはどうなのか、と関心を持つようになったなど、「小池ブーム」は全国に広がっていることを実感します。小池ブームの象徴は、「選挙戦での野菜片手に集まる女性」のように感じますが、私のインタビューに小池氏は「私は国会議員時代から、女性の支持の方が多いのよ」と答えていました。つまり、小池知事の誕生は、必ずしも、今まで政治に関心がなかった人たちの目覚めによるものではなく、男女問わず、「何かを変えたい」「悪しき慣習のようなものを変えてほしい」という強い思いによるものだということも、今も9割近い都民の支持を得ている理由であると言えるでしょう。「都民は気づかない」と思われていた私たちが変わる時豊洲新市場の問題、オリンピックの競技会場建設の問題が象徴的に、優先的に進められてきましたが、その真髄は、「どうせ都民には気づかれない」という傲慢(ごうまん)とも言える都庁の体質の中で物事が決められ、その決定の根拠は何かと聞かれれば答えに窮す、そんな馴れ合い体質でした。都民の税金を財源に事業を行う以上、説明のつかないことは行うべきではありません。そのためには、「徹底した情報公開」しか手段はないでしょう。「都民は気づかない」という風土を、私たち都民も変えていかなえればならないのです。私が小池知事を評価する二点目は、何事も「速い!」ということ。小池知事も、なにかにつけ「スピード感を持って」と発言しているように、さまざまな対応が本当に速いと実感します。豊洲やオリンピック関連の調査結果については、「中途半端」などという批判も出ていますが、両方とも、就任2ヶ月を前に、9月末には中間報告などを公表。「3ヶ月以内に」と言われても速い方だというのがこれまでの感覚ですから、これはものすごく速いスピードです。また、都民の要望の多かった待機児童対策として、都庁内保育園を、これまた9月末に開所しました。都知事選をきっかけに、都政や政治に関心を持った人の受け皿を作りたいと言っていたことも、10月30日の「希望の塾」の開塾で実現。まさに超ハイスピードの有言実行は、政治家としての信用にもつながっていくことでしょう。実は、私は20年近く前から、地方自治の改革に興味を持ち、かつて週刊誌で9ヶ月にわたり、全国の地方自治の改革ばかりを取材し連載していた経験を持ちます。そのころは、東京都は取材の価値なく、先進的な取り組みをしている地を取材し、東京に戻ってくると、改革など無縁の東京の空気が「ピタッと止まっている」と感じたものでした。今は、講演などの機会で週に1度は地方へ行きますが、逆に、地方が「ピタッと止まっている」と感じることが多くなったのは、もちろん、さまざまな要因があるとはいえ、この東京の変化に驚きを隠せません。地方自治の取材をしていた時も、その狙いは、「あの地でできるなら、この地でもできる」「そのために大事なのは、まっとうなリーダーを選ぶこと」「そしてそのリーダーを選ぶ権限は、私たちに有権者にある」ということでした。政治は、そして社会は、私たちの手で変えられる。いえ、私たちの手で変えなくてはならないのです。小池知事が「希望の塾」の塾頭としてのあいさつの中で、「皆さんがプレーヤーに」と言っていたことは、そのような意味があると思います。
2016年11月09日最近、野菜、特にレタスなどの葉物が高いと感じませんか? どうも、9月の台風や長雨の影響か、日照不足でよく育っていないということのようだけど、野菜が高いのは、家計にも大打撃。かといって、家族の健康を管理する者として全く食べないというわけにもいかないし、主婦としては、スーパーに行くたびに頭を悩ませてしまいます。生産者である農家の皆さまも大変でしょう。お天気の影響をもろに受ける農業や漁業は、安定的に作物が収穫できることに、どれだけの努力をされているか、頭が下がります。ここ数年の異常気象や、自然災害の甚大さを考えると、お天気の影響を受けずに、野菜が育ち、私たちの食卓にも安定して届く方法がもっと進んでいくといいのに、と思わずにはいられません。そんなふうに農業を行っていくのが当たり前になるかどうかわかりませんが、私は、今、世の中で話題になっている、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)がその一つの契機になるのではないかと、期待しているのです。今、行われている国会でも、TPPに関する審議が本格的に始まりました。でも、まだまだ「TPPって、一体なに?」と思っている人も多いし、野菜の値段の変動がなくなることになるのかよくわかりませんね。協議のメンバーだったアメリカも、次期大統領候補が共に慎重姿勢を見せていることから、日本もこれを進めることはいいことなのか、悪いことなのか、わからないことだらけです。そもそもTPPって何?TPPは、太平洋を囲む12カ国(日本、米、カナダ、シンガポール、ニュージーランド、マレーシア、ベトナム、ブルネイ、オーストラリア、メキシコ、ペルー、チリ)が、さまざまな経済活動のために、連携のルールを作りましょうというもの。農産品に関するルールも含まれています。2年以上にわたる協議の末、昨年10月に参加12カ国で大筋合意しました。どんなルールかといえば、輸出入の時にかかる関税の撤廃が象徴的な一例ですが、それ以外にも、知的財産権(例えば著作権の有効期限の延長や短縮)、サービス(携帯電話の国際ローミング料金の引き下げ)、出店の規制緩和(例えば外国でコンビニなどを出店に課せられていた資本規制が緩くなる)など、21分野にわたります。農産品についてのルールは、「関税の撤廃」に含まれます。日本は9018品目の輸入品の95.1%について行うことが決まりました。ただ撤廃のタイミングは、例えば、ブドウやエビは即時だけれど、アジやサバは16年かけて行うなど、品目によって差があります。工業品については、全ての製品の関税が撤廃されますが、農産品については、参加国平均を下回る81%にとどまり、国内農産品への影響へ配慮したことが伺えます。関税を撤廃するということは、日本の製品が海外(提携国内)で安く売れ、売り上げや利益につながる一方、海外からも安い輸入品が入ってくるということ。より国際的な競争力が求められることになります。でもそれは、全ての参加国に当てはまることです。それでもこの協定を結ぶことにしたのは、今やどの国も、自分たちの国だけでは経済発展に限界があり、環太平洋の12カ国で共に手を携えながら発展していくことを目指すという理由があるからです。野菜高騰が再び訪れないためにはどうしたらいい?日本の農産品は関税の撤廃率も低く、他の物に比べ保護されているという印象ですが、保護するだけでは、生き残っていけないのも現実です。そこで、例えば、野菜工場などをもっと進め、気候の影響を受けずに安定的に、しかも安全でおいしい野菜が生産できれば、日本の国内にとっても、海外との競争においても、有利になるはずです。漁業も、養殖技術が進んできていますが、農水業は後継者不足の問題も深刻。国際競争力と高めるために、新しい生産や経営体制を取り入れていくことも必要です。今までとは違った方法を生み出すいいチャンスとなるのが、このTPPとも言えるのです。今年2月にTPPの署名式がニュージランドで行われましたが、署名後2年以内に、全ての国が国内法の手続きを終え、全ての署名国が国内法の手続きを完了してから60日後に発効することが決まっています。最長でもあと1年半。確かに、大変なこともありますが、「ピンチをチャンス」に、「レタスが高すぎて買えない!」ということがないように、農業従事者だけでなく、オールジャパンで知恵を絞っていくことが必要ですね。
2016年10月21日長雨や真夏に戻ったような暑さに苦しめられている日々が続いていますが、もう10月。季節は秋ですね。政治の世界でも「秋の臨時国会」と呼ばれる時期になり、政治家の方たちも、選挙区での活動より東京での国会活動が忙しくなってきました。9月26日に、第192臨時国会が召集され、11月20日までの66日間、国会での論戦が繰り広げられることになります。「国会」とはよく耳にするものの、実はどんなふうに行われているか、「なんとな~く」しかわからない、もしくは「全然分からない!」という人も多いでしょう。去年の安保法制の審議の時には、女性国会議員もみなパンツスーツ直用で、大乱闘が起こりましたが、あとは、大臣が失言をした時など、何かハプニングが起きた時しか、印象に残っていないかもしれませんね。9月26日に始まったばかりの国会も、8月に行われた内閣改造で新しく大臣になった人にとっては、初めての国会。問題なく答弁が進んでいくのか、安倍総理にとっても、緊張を強いられる場となりそうです。全部で3つの「国会」があるって知ってる?さて、今回は臨時国会といって、正に読んで字のごとく、臨時的に開かれる国会です。そのほかには、通常国会と特別国会とあり、全部で三種類の国会があります。通常国会は、毎年一回開かれることが憲法で決められ(52条)、国会法で1月に召集(2条)、期間は150日(同10条)、そして延長は1回のみ(同12条)と細かく決められています。臨時国会については、憲法53条で、衆参いずれかの総議員の4分の1以上の要求があれば開催をしなくてはならないことになっています。また議員からの要求がなくても、衆議院の任期満了による選挙の後と、参議院の選挙の後は、必ず開かなくてはなりません。今年の参議院選挙の後も、8月1日から3日までのわずか3日間ですが、臨時国会が開かれました。選挙の後の臨時国会では正副議長を選ぶこと、また衆議院選挙の後は、首班指名、つまり総理大臣を選ぶという最重要案件があります。臨時国会は期間は自由、延長は2回までできます。また特別国会は、衆議院の解散による選挙の後に開かれる国会のことで、直近では、第188特別国会が2014年12月24日から3日間開かれました。ところで、この「192」とか「188」などの回数ですが、いつからの通し番号だとおもいますか?実はこれ、戦後の新憲法の下、新しく国会の制度ができてからの通し番号なんです。第1回は、1947年5月20日から12月9日まで開かれましたが、閉会してすぐ、12月10日から第2回が開かれました。今回の臨時国会は、6月1日に通常国会が閉会して、間に3日間の臨時国会があったものの、論戦という意味においては、約4か月ぶりとなります。終戦直後は、一日も休む暇なく国会が連続して開かれていたことを考えると、それだけ、決めなければならないこと、新しく制度を作らないといけないことがたくさんあったということがなんとなく伺えますね。秋の臨時国会では何が議論されるのかさて、通常「秋の臨時国会」と呼ばれるものは形式上、総議員の4分の1以上の要求に基づき開かれるということになっていますが、毎年だいたいこの時期に開かれることが慣例化しています。昨年は、通常国会が95日間の長期延長を行い、1月26日から9月27日まで開かれていたこともあり、秋の臨時国会は開かれませんでしたが、これはかなり異例のことです。今回の臨時国会では、まず経済対策としての3兆2800億円の第二次補正予算案の審議、またTPPの国会承認と関連法案の審議が行われる予定となっています。また総理大臣や他の大臣も出席して行われる予算委員会では、野党は、まずは経済状況が好転しないことへの責任追を行うことが予想されます。また天皇陛下の生前退位に関すること、北朝鮮や中国の軍事的脅威の問題なども取り上げられることになるでしょう。これは逆に野党が追及にあうことですが、二重国籍問題も話題になりそうですね。また参議院選挙の結果、衆参両院で初めて、憲法改正の発議に必要な3分の2以上の議席を、改憲勢力が占めることになったことから、参議院では5年ぶりに憲法審査会も再開されることになっています。12月にはロシアのプーチン大統領が来日し、ロシアに不法占拠されている北方領土の返還交渉が行われ、何かしらの進展があることが期待されています。その後、年明けには「解散総選挙」があるとも言われています。小池百合子東京都知事になって初めての都議会定例会も開かれ、そちらの動向も気になりますが、国会の方にも、ぜひ注目してみてください。
2016年10月01日野党第一党・民進党の新しい代表に蓮舫氏が選ばれました。岡田克也前代表の任期満了による代表選でしたが、参院選や東京都知事選での結果を受け、岡田代表は続投しないことを表明。26日から始まる臨時国会に備え、新代表や執行部人事を整えるというのが、今回の代表選の意味でした。女性の活躍推進が目に見える形になった容赦ない"口”撃が特徴で、強い女のイメージの蓮舫氏ですが、48歳、双子(一男一女)の母というところに、親近感をもつ人もいるでしょう。小池百合子東京都知事の誕生で、日本の首都・東京のトップも女性になり、野党第一党の代表も女性となれば、それだけでも「女性の時代」到来を予感させます。皮肉にも、野党が対峙する安倍政権が掲げてきた「女性の活躍推進」によって、女性がトップに就くことを後押しする世論が作られていたということも、一つの要因であると解釈できるでしょう。蓮舫氏の登場で何が変わる?野党第一党といっても、所属国会議員数は衆参合わせて147人。自民党の413人と比べると3分の1強の勢力しかなく、野党4党(民進、社民、共産、生活)が結集しても190人と、半分にも満たないことから、政権交代への道のりは現状ではかなり厳しいものだと言わざるを得ません。そんなこともあり、野党共闘という選挙戦略の見直しもさることながら、そもそも野党第一党として、党の考え方、自民党政権と何が違うのか、どんな政策を出していこうとしているのか、根本からの練り直しが迫られています。その中で誕生した、蓮舫氏。初の女性という点からも、これまでの、男性中心の政治の世界で見落とされていた視点を存分に生かして、検討に値するような選択肢の一つを、有権者に提示していくことが、民進党に求められている重要な課題です。政権交代が可能な野党が存在することは、政治の質を上げる上でも非常に重要です。その意味からも、民進党が政権を担える政党になることは、国民にとっても有益であると思いますが、その民進党の代表に選ばれた蓮舫氏は、二重国籍問題では大きな失点を作りました。日本は、国籍法第16条で、二重国籍を禁じています。日本国籍を選択した場合、他国の国籍放棄は「努力義務」とされており、罰則規定もありませんが、法律上は違法です。特に、立法府、つまり法律を作る立場の国会議員が、二重国籍を「違法ではない」と言い切ることは、政治家として非常に問題。法律をどう考えているのか、大いに疑問です。この点については、26日から始まる臨時国会で、与党から追及も厳しくなるでしょう。蓮舫氏が初の女性総理大臣になるのは難しい?今後、二重国籍問題によって、蓮舫氏には「いばらの道」が待ち構えていると思いますが、一方、初の女性総理大臣候補としても、以前から期待が大きかった人物です。しかし、参議院議員である蓮舫氏には、その期待は夢のまま終わる可能性の方が大きいのです。日本は、有権者によって選ばれた国会議員の中から、総理大臣を選び、その総理大臣が各大臣を任命し、国会と内閣が一体となって国民に対して責任を負うという議院内閣制をとっています。総理大臣は、衆参両院で、それぞれ「首班指名選挙」を行い、過半数を得た人が選ばれることになっています。もし、衆参が別々の首班を選んだ場合は、憲法の規定により、衆議院での議決が優先されることになります。首班指名だけでなく、予算案の議決や条約の批准などについても、衆議院の議決が優先され(「衆議院の優越性」)、また、総理大臣の専権事項である解散権が行使できるのは衆議院だけであることからも、これまでの総理大臣は、全て衆議院議員でした。参議院議員ではいけないという明確な規定はないものの、これらの衆参の意義の違いを考えれば、蓮舫氏が参議院議員のまま、野党第一党のトップとして政権交代を目指すのは、やや非現実的と言われても仕方ないかもしれません。まずは、衆議院議員として党代表になること、蓮舫氏個人の最優先の課題はそこにあるとも言えます。
2016年09月20日7月は参院選、都知事選と続き、政治は大忙しでしたが、その後、安倍総理も夏休みを取ったりと、少しゆっくり過ごしていたかのような8月。でも、政治は相変わらず忙しく、動いていました。その一つが、国の予算を作る作業です。教育から年金まで、子どもとあなたの人生に関係国家予算なんて、関心のない人も多いでしょう。でも、ママたちでも大いに関係のある子育てや教育、そして老後の年金や介護、医療など、生活に直結することから国の防衛など、ちょっと遠いテーマまで、国の予算がなければ成り立たたず、実はとってもとっても重要。今回は、国家予算がどのように決まるかという仕組みを紹介しますね。ここ数日、各省庁による「〇〇億円の概算要求」とか、「〇兆円の概算要求」という新聞記事が、連日一面に掲載されていました。その理由は、各省庁が来年度に向けて「こんな事業をするから、これだけの予算が欲しい」と財務省に概算を要求するのですが、その期限が8月末だったからなのです。各省庁が事業を考え、予算案を組む基本となる方針は何かというと、毎年6月ごろまでに閣議で決められる「骨太の方針」というもので、今年は6月2日に「骨太2016」として閣議決定されました。前日の6月1日に、安倍総理が記者会見を行い、消費税再増税を見送ることを表明しましたが、来年度も消費税は8%であることを前提に、再増税を延期した理由でもある経済の回復を優先するという方針も、この「骨太2016」にも盛り込んでいるのです。各省庁は何を要求しているのか例えば、厚生労働省は過去最高となる31兆1217億円で、その中には「働き方改革」として877億円、待機児童対策として1169億円、保育所などの受け皿整備に712億円、年度途中からでも保育園入園が可能となる「入園予約制」の導入を自治体に促すなどの事業案が盛り込まれています。文部科学省でも、大学進学者への無利子奨学金支給者を2万4千人増員するための必要経費や教員を3000人増員分の経費などを計上しています。各省庁は8月末を期限に概算要求を行い、その後、財務省の査定が行われます。その中で、事業そのものが削られたり、額が減らされたりします。ここに挙げた事業がそのまま実現できるわけではありません。そこで、提出された概算要求の査定が行われている年末までの間、関係者、関係団体、あるいは自治体などが、国会議員に何とか減らされないよう「陳情」します。最終的には、例年12月20日に、財務省がそれらを「財務省原案」として取りまとめ、12月25日に閣議決定。翌年の通常国会に「予算案」として提出されて、衆参両院で審議、採決を行って、年度が替わる直前の3月末に予算が確定する、という流れになっています。9月から12月までが来年度の予算獲得のためには重要財務省原案が出てから閣議決定されるまでの間にも、復活折衝など、関係者にとっては“命懸け”の交渉が行われますが、国会に提出されてからは、無修正で成立することが「慣例」となっているため、実は概算要求が出てから年末までが、各省庁にとっては、どれだけ予算が獲得できるか重要な期間となってきます。つまり、9月から12月までですね。平成27年度予算では、保育園・幼稚園の無償化が概算要求で計上されたにもかかわらず、財務省の査定で削られて、復活折衝を経て、何とか、5歳児だけ、それも所得制限を設けて無償化するという最低限の予算しか獲得できなかった、ということもありました。国家予算の仕組みなんて、どうなっているのか分からなくて、ついつい無関心でいてしまいますが、私たちの生活には大きく影響することなので、ちょっと頑張って関心をもつと、また違った角度からの政治が見えてくるかもしれません。
2016年09月01日参院選の最中から話題をさらってきた東京都知事選も、いよいよ7月31日の日曜日には、新しい知事が誕生することになります。それにしても、今回ほど盛り上がった都知事選はなかったのではないかと思うほど、参院選よりもたくさんの報道がなされたように感じますね。そもそも、今回選挙が行われることになったのは、前知事の舛添要一氏がお金の問題で辞任し、連日その報道がされたことが背景にあるからでしょう。舛添前都知事の問題は、春ごろから報道が始まり、約3ヶ月間「東京の話題」でいっぱいだったということになります。事実上の候補者は3人。あなたの一票を誰に捧げるかさて、都知事選では、これまでで最多の21人が立候補していますが、事実上は、自民党・公明党・日本のこころを大切にする党が推薦する増田寛也さん、野党四党が推薦する鳥越俊太郎さん、どこの推薦も受けない小池百合子さんの、この3人で争われることになりました。増田寛也さんは、直前の参院選でも国民から信任を受けた政権与党から推薦を受けているという信頼や、旧建設省出身で岩手県知事を務めたという経験から実務能力があることをアピール。鳥越俊太郎さんは、ジャーナリスト出身ということで、都政の問題や都民の問題意識に「聞く耳」を持っていることをアピールしています。そして、小池百合子さんは、現役の自民党衆議院議員ながら、自民党の推薦を得られなかったということから、組織(特に自民党の都連)の論理ではなく、都民が考える都政の実現を掲げています。待機児童や高齢者の問題、首都直下型地震への対応など、東京が抱える問題についての各候補者の考えについては、三者三様ではあるものの、裏付けとなる財源については、知事になってみないと分からないという点も多く、候補者が掲げる政策はまだ実現可能性としては未知数です。それに、何を一番重視していくのかということになると、都民も個々に関心が違うでしょう。都民の有権者は約1100万人。都民全員が納得できる政策など、なかなか難しいと思います。都知事を選ぶ重要ポイントは?では、何を基準に都知事を選べばよいのかを考えると、私は「東京都知事の資質」として何を求めるのか、ということになると思っています。首都・東京のトップとしてふさわしいのはどういう人なのかということです。舛添前都知事も、ご本人は頭脳明晰、申し分のない経歴をお持ちでしたが、公私混同など「資質」を疑うことが多々あったことで、都民からの信用を無くし、辞任することになりました。それが今回の選挙の原点であるならば、都知事としてふさわしい資質のある人を選ばなくてはなりません。東京都は、世界第三位の経済大国・日本の首都。人口は約1300万人で、都政の予算規模はスウェーデンに匹敵する13兆円。都庁で働く人も16万人もいます。これは先ごろ、EU離脱で話題になった英国で働く日本人の数ともほぼ同じ。その巨大組織を束ねる立場としては、やはり組織での指導力が必要です。同時に、首都の顔としの華やかさや話題性も必要です。4年後の東京パラリンピック・オリンピックを控え、国を挙げて準備をしていくことを考えると、政権との関係も重要です。また、今回は、主な候補者が出そろったのが、告示2日前。参院選が重なったこともありますが、政党は候補者選定に手間取り、その過程では政党のさまざまな思惑が働いたことも、それなりに報道され、私たちの前にさらけ出されましたね。政党の論理ではなく、都民のためにいかにあるべきかということをどれだけ考えているかということはとても重要です。いよいよ、あと数日で新しい都知事が決まることになりますね。その新しい都知事を決めるのは、都民有権者です。ぜひ、東京都知事としてふさわしいと思う人を、しっかり考えて、投票に行ってほしいと思っています。
2016年07月30日参議院選挙が始まりました。6月22日の公示日から7月10日の投開票日まで18日間、候補者や政党の訴えが街のあちらこちらで聞こえます。今回の選挙から、選挙権が18歳以上となり、新たに240万人の有権者が誕生。高校生の中にも投票できる人がいるということで、教育現場では「主権者教育」に力を入れています。また自治体の判断によっては、期日前投票の時間延長や、指定された投票所以外でも駅やショッピングセンターなど、人が多く集まる場所に投票所を設けることができる(共通投票所)など、より投票しやすい環境ができるもの、今回の大きな特徴です。その目的は、投票率のアップ。特に20代、30代の若い世代の投票率のアップに期待がかかります。60代と20代の投票率は35%以上の開きが選挙は年代が上がるほど投票率が高く、2014年12月の衆院選では、60代の投票率は68.28%。それに対して、20代は半分未満の32.58%でした。若い人たちが政治に関心を持つことは大きな課題ですね。ただ、若い人たちだけではなく、全体で見ても投票率はとても低いのです。特に参院選は、衆院選と比べても平均で5%くらい低く、55%前後が続いています(衆院は60%前後)。ウーマンエキサイト読者のみなさんも、「選挙? うーん……」となかなか投票所に足が向かなかった経験があるのでは? 日曜日は出かける用事があるし、かといって、期日前投票もしそびれてしまったなどと、悪気はないのだけど、正直、選挙にはなかなか行かない、あるいは、他の用事との兼ね合いの中で、優先度が低いなんて言う人も珍しくないでしょう。そもそも、誰に入れたいいのかも分からないから、行かないというのが本音かもしれません。しかし、今回の参院選はちょっと頑張って投票所に足を運んでください。選挙は民主主義の基本中の基本。政治は、私たちの社会のルールを決め、国の進むべき道を決めるところであり、私たちは選挙によって、その代表者たる議員を選ぶのです。「主権が国民にある」とはそういうことですね。みなさんの一票が子どもたちの未来にも影響してくるのです。 ママの一票が子どもの未来を切り開く私たちの一票によって、国の方向性が決まり、また社会のルールが決められるということでもあります。民主主義とは主権者たる国民が政治に責任もつこととも言えます。そして主権者としての国民が、唯一政治に参加できる機会が選挙なのです。テレビやネットなどで、情報収集はできるし、時には政治を話題にする機会もあるかもしれませんが、とにかく一票を投じなければ、意思表示をしたことにはならなし、政治に対する不満や期待も、一票を投じることによって、解決や実現へ近づくのです。候補者のどこを見て選べばいい?ぜひとも、選挙に行ってほしいと思いますが、「どうやって判断したらいいのかわからない」という方のために、今回の選挙のポイント、いくつかお知らせしましょう。判断材料となる公約は、最近ではマニフェストと呼ばれることも多いですが、できれば一度はさらっとでもいいので読んでほしいと思います。各政党のホームページにも掲載されているし、選挙期間中には新聞の折り込みで配布されます。また新聞の記事としても掲載されます。今回の大事な政策は、「消費税再増税の再延期の是非と景気回復策」でありますが、それだけでなく、自分の興味あるテーマについて、政党を横断的に読み比べてみると良いと思います。例えば、少子化対策については、各党どんな政策メニューを並べているのか、年金や介護に関わる政策はどうか、エネルギーは? 教育は? と、各党の政策を「横に見る」と違いが見えてきます。政権である自民・公明等は、これまでの政策の評価という意味もあるし、民進党を中心とする野党は、政権を批判し、それとは相反する政策を並べるのが常です。今回は特に、民進党、共産党、社民党、生活の党の野党4党で統一候補を出しています。野党の政策を判断するときは、この4党の政策を合わせてみることも重要です。政策実行の裏付けとなる財源も大事。できる範囲でしっかりと公約を読んで、投票に行ってくださいね。
2016年06月23日女医でタレントの西川史子(45)が19日、TBS系バラエティ番組『サンデー・ジャポン』(毎週日曜9:54~11:30)に生出演。不祥事続きの政治家について、「政治家という職業が下品になっている」と苦言を呈した。番組では、舛添要一都知事の辞職決定のニュースを紹介。次期都知事の候補について意見を言い合った。西川は「舛添さんだけではなくて、その前の猪瀬さんも、石原さんも同じようにファーストクラスを使ったり、いろいろしてきた」と指摘し、「政治資金規制法を見直さなきゃいけない。この人だけの問題じゃない」と根本的な見直しが必要だと主張。「政治家という職業があまりに下品になっているのがよくないなと思いますね」と話した。タレントのテリー伊藤は、次期都知事について「想像力のできる知事」が必要だと意見。「『(東京)オリンピックを成功させる』って言うけど、オリンピックはほとんど成功しますよ。大事なのは、そのあとの"オリンピックロス"」と持論を展開し、「特に団塊の世代はとりあえず2020年まで頑張ろうとか、もっと上の人はあそこまで生きようかとか…。2020年以降、都民をどう導いていくか」と語った。
2016年06月19日6月1日に、1月4日から続いていた第190回通常国会が、150日間の会期通りに閉会したのと合わせて、安倍総理は来年4月に予定されていた、消費税10%への増税を延期することを表明しました。2年前の2014年4月に、5%から8%へ増税して、一気に家計が窮屈になった記憶があるだけに、「増税延期はありがたい」と思った人も多いのでしょうか。私自身も、家計を預かる主婦として、「来年4月にまた増税!?」と思うと、財布の紐は固くなるし、来年4月以降は、なお「買い控え」すると思ってきたので、ひとまずはあと3年半、増税の心配がないことはありがたいと思うのが、正直な気持ちです。増税延期でリーマン・ショック級の世界経済の悪化?そもそも来年4月の増税も、当初は昨年1月に行うはずでしたが、2014年の11月に1年半の延期を決めました。その時にはいかなる理由や条件もなしに、2017年4月には必ず増税すると安倍総理が表明して、それを争点に、延期表明の一か月後、2014年12月に衆議院の解散総選挙が行われました。増税するまでの間に、経済状況を良くして、国民生活が増税に堪えうるようにするというのが、いわば「選挙公約」だったわけです。公約ではありませんでしたが、もし増税を再び延期する場合は、「リーマンショック級の世界経済の悪化」や「東日本大震災並みの自然災害」が条件だと国会で答弁してきました。来年の増税を判断するのに、この二点を判断基準にしてきたのは、次ような経緯からです。今回の総理の記者会見では、現在の状況が「リーマンショック級の世界経済の悪化」や「東日本大震災並みの自然災害」にぴったりと当てはまるとはいっていません。あくまでも、今の日本の経済状況、国民生活の現実をみた上での「新しい判断」であると強調しました。公約違反の批判は覚悟の上、今回の増税再延期の判断をしたことについて、参議院選挙で国民の信を仰ぎたいというのが、安倍総理の意向です。一方、野党の民進党も増税延期を主張し、国会の終盤で「増税延期法案」を提出しましたが、安倍総理に対しては、経済状況が改善されていないということへの失政と公約違反を批判。これから参院選挙でもそこを格好の攻撃材料にしていく戦略です。参院選挙、私たちはどこを見て選べばいい?実際に、日本の経済状況は、世界の他の国と比べてもあまりよくありません。私たちにはあまり実感がない数値ですが、四半期ごとにでるGDPでは、今年1-3月期(速報値)は、前期比0.4%増でしたが、その前の期である、2015年10-12月期は前期比1.1%減。政府目標は年率で2%なので、目標到達はしてないという状況です。ただ、リーマンショックの時は、7.2%減、東日本大震災の時は2.6%減ですから、確かにリーマンショック級、あるいは東日本大震災並みの経済状況の失速とは言い切れませんね。このあたりが、増税延期を判断するのに迷う点であったことは確かでしょう。しかし、昨年の実質賃金は、前年に比べて0.9%減、今年4月の2人以上世帯の消費支出も前年同月に比べて0.4%減、3月は5.3%減でした。賃金が増えないのだから、支出も増えないのも当然ですが、一方で「買うものがない」という声も大きく聞こえることも事実です。つまり、経済や産業の根本的な構造改革をしない限り、景気も、国民生活もよくならないのです。そのためには、あと10ヶ月後に増税をするのには、あまりにもリスクが高いと、私自身も思います。改革・改善を行いながら経済を強くするには、もう少し時間が必要です。消費税の増税は、民主党政権だった2012年6月26日に、「社会保障と税の一体改革」として、関連8法が成立をして決まりました。その中には、「社会保障制度改革推進法」や「年金機能強化法」の他にも、「子ども・子育て支援法」や「改正認定こども園法」など、私たちにも関係のある法整備も行われていたのですが、その目的は、「社会保障の機能強化と制度維持、その財源確保」というものでした。少子高齢社会である日本は、これから必要な社会保障費は益々増えていきます。ただ、だからといって、財源のためにひたすら増税していくということでよいわけはありません。根本的な社会保障制度全体の改革が必要です。参院選挙では、各党、各候補者がその点において、どのように考えているかをぜひ判断の一つにしてみてください。
2016年06月03日