リコーは3月29日、独自インクジェット技術を応用した立体複製画制作技術を開発したと発表した。今回開発した技術では、同社のインクジェット技術に加え、画像処理技術、3Dプリント技術などを応用することで、複製画を立体的に制作することができる。従来の平面的な複製画に比べ、絵の具の盛り上がり、筆のタッチ、キャンパスの生地目など実際の絵画の凹凸を高精細に再現することが可能。また、インクも光を照射することで瞬時に硬化する同社独自のUV硬化インクを採用し、高い硬度と密着性を保ちながら延伸性にも優れるため、印刷対象物の多様な形状に柔軟に適応することができるとしている。同社は2016年10月7日~2017年1月21日まで上野の森美術館で開催されるデトロイト美術館展の東京展に特別協賛し、展覧会場で販売予定の複製画に同技術を提供する。同展では、立体的な複製画に直接触れることが可能になる予定だ。
2016年03月30日新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2月25日、再生可能エネルギー熱利用の低コスト化と普及促進を実現するための技術開発6テーマに着手すると発表した。NEDOでは、2014~2018年度の研究開発プロジェクト「再生可能エネルギー熱利用技術開発」において、再生可能エネルギー熱利用のコストダウンを促し、その普及拡大に貢献することを目的とした技術開発に取り組んでおり、これまでに、コストダウンを目的とした地中熱利用技術およびシステムの開発、各種再生可能エネルギー熱を利用するトータルシステムの高効率化・規格化、評価技術の高精度化などの開発を行ってきた。今回、これらに加えて、「都市インフラ活用型地中熱利用システムの開発」、「都市域における、オープンループシステムによる地下水の大規模熱源利用のための技術開発」、「オープンループ型地中熱利用システムの高効率化とポテンシャル評価手法の研究開発」、「地中熱利用システムを含む空調熱源トータルシステムシミュレーションの開発」、「太陽熱集熱システム最適化手法の研究開発」、「太陽熱を利用した熱音響冷凍機による雪室冷却装置の開発」の6テーマを新たに採択した。NEDOはこれらの技術開発により、2018年度までに地中熱利用システムについて導入コスト・運用コストをそれぞれ20%低減、その他再生可能エネルギー熱利用システムについて導入コストを10%程度低減することを目指すとしている。
2016年02月25日順天堂大学(順天堂大)と慶應義塾大学(慶大)は2月19日、ヒト末梢血から作製したiPS細胞を効率的に神経幹細胞に誘導する技術を開発したと発表した。同成果は順天堂大医学部脳神経内科の服部信孝 教授、ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授と、慶大医学部生理学教室の岡野栄之 教授によるもの。2月18日(現地時間)の米国科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。同研究グループはこれまで、パーキンソン病患者からiPS細胞を作製し病態メカニズムを再現することに成功しているが、皮膚を採取する必要があるため患者の負担が大きく、研究の大規模化を妨げていた。一方、より採取の負担が少ない血液からもiPS細胞を作ることはできるが、血液由来のiPS細胞は神経系に分化しにくいことが課題となっていた。今回の研究では培養中の酸素濃度を低くすることで未分化iPS細胞を強制的に神経系に分化する環境を作り出し、末梢血由来iPS細胞を効率よく神経系の細胞に分化させることができた。同手法を用いることで患者に負担の大きい皮膚生検をせずに、通常の血液検査程度の量の血液から樹立したiPS細胞でも、神経難病研究を効率よく進められるようになる。同研究グループは今後、この方法を用いて順天堂医院に通院する数千人のパーキンソン病の患者からパーキンソン病iPS細胞バンクを構築し、パーキンソン病の病態研究・再生医療を促進していくとしている。
2016年02月19日キーエンスはこのほど、包装機械や容器・ラベルについての基礎知識が学べるWebサイト「包装技術入門」を公開した。「包装」にかかわる技術は、製造ラインにおける生産性や、製品自体の品質を高めるために欠かせないものとなっている。その一方で、包装にはさまざまな種類があるため、製品特性にマッチした最適な包装形態を選ぶためには、それぞれの違いや特長を把握する必要がある。「包装技術入門」ではこうしたニーズに応えるため、包装機の種類ごとの解説をはじめ、容器・ラベルなどの各種包装形態の概要・特長が掲載されている。具体的には、製袋充てん機/容器成型充てん機などの「包装機械」、缶/ビン/軟包装などの「容器の種類」、シュリンクラベル/グルーラベルなどの「ラベルの種類」の3カテゴリに関するトピックのほか、賞味期限印字など、印字工程に関する改善事例集も用意されている。
2016年02月16日VSNは2月9日、IT技術者を対象に実施した、「今後、現場におけるニーズが高まると思うIT技術に関する調査」の結果を公表した。有効回答数は164件。調査期間は2015年9月16日~10月7日。今後、現場におけるニーズが高まると思うOS・サーバ・ストレージ・データベース分野におけるIT技術については、「仮想化」「クラウド」に関する技術ニーズが「1年以内」では最も高いニーズとなった。「3~5年以内」で「1年以内」よりニーズが高くなりそうな技術は「Windows Server 2016」「OpenStack」「Hadoop」が挙げられている。ネットワーク・セキュリティ・運用関連では、「1年以内」にニーズが高まる技術として「SDN」「次世代ファイヤーウォール」「総合運用ツール」が上位に挙げられた。「3~5年以内」で「1年以内」よりもニーズが高くなりそうなのは「IPv6」、「ITプロセスオートメーション」という結果となった。開発ツール・方式・言語に関しては、「IoT」が「1年以内」「3~5年以内」共に上位となる結果に。「1年以内」では、次いで「Java」「Python」が挙げられている。「3~5年以内」のニーズでは、「Java」「DevOps」のニーズが「1年以内」のニーズと比べて低い予想となった。
2016年02月09日1月12日から15日まで東京ビッグサイトで行われていたウェアラブルEXPOでは、さまざまな新技術や製品がお披露目されていた。ここではセンサー類と、技術そのものについて触れてみたい。○5cmの高低差もわかる気圧センサーやスマホから使える統合センサーオムロンブースでは圧力センサーを発表。感度を最大に上げると、5cm単位の上下移動を検知できるという。利用例としては、腕の位置で計測値が変わる血圧計に組み込み、腕の高さを合わせるというデモを行っていた。歩数計に組み込めば、「坂を上っている」と「平地を歩いている」の差を判断して消費カロリー推測に役立つと、自社のコンシューマー製品を意識した説明だった。また、各種センサー(温度、湿度、照度、音量、気圧、加速度)を、腕時計くらいの大きさに統合した環境複合センサーをコンセプト展示。現場での熱中病防止、オフィスでの環境チェック、見守り用といった応用例を紹介していた。ロームは、複数のセンサーを集めた「ロームセンサーメダル」を展示。圧力・加速度・地磁気センサーと管理用プロセッサ、そして通信用のBLE(Bluetooth Low Energy)モジュールを一体型にしたものだ。得られたデータをスマートフォンアプリで処理・表示させるという、ロームのセンサーデバイス評価キットとなっている。センサーメダルという名前が示す通り、33mmの円形だ。体のあちこちに取り付けてセンシングする使い方も想定している。○非接触給電規格の違いを気にせず使える端末用ICスタートアップブースでは、MAPSがワイヤレス給電のICを展示していた。現在のワイヤレス給電は、WPA(Qi)、A4WP(Rezence)、PMAという3つの規格があるが(正確にはA4WPとPMAが統合してAirFuelという名称になっている)、MAPSが開発したICはこの3規格すべてに対応する。使用している無線の周波数がA4WPとWPC/PMAで異なるため、3規格すべてに対応するにはアンテナが2本必要。だが、アンテナを1本にしてWPCとPMAだけ対応という設計も可能だ。ワイヤレス給電のデファクトスタンダードが確立する前に、ユーザーが対応規格を気にせず利用できるのは嬉しい。○おまけ(あまりウェアラブルではないもの)NTTアドバンステクノロジは、高騒音下の中でもクリアな音声を伝えるマイク「R-Talk HS310」を展示。元々はソフトウェアライブラリとして発売していたが、単体製品を望む声に応えたそうだ。アミューズメント施設や工場、コンサート会場といった騒音レベルが高い場所でも、スタッフが円滑に音声連絡や音声認識を行えるという効果が期待されている。ヘッドセットには、音声収録用のマイク(2本)と環境音取得のマイク、合計3つのマイクがあり、音声のみをきれいに拾い上げる。アミューズメント施設を想定したデモでは、ややエコーなどの不自然さがあったものの、騒音が見事にカットされていた。セメダインブースでは、同社の導電性接着剤SX-ECAシリーズを使用した光る服を展示。正確には製品版ではなく、抵抗値を下げて配線として使いやすくした試作品を使用しているそうだ。単に導電性のある接着剤のほか、配線にも利用できるという。現在は一般市販されていないが、発表以来かなり反響があったため、販売を検討しているそうだ。イノテック、ローム、スター精密の合同ブースでは、電源なしのBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンを使ったソリューション提案をしていた。スーパーやショッピングモールでの行動調査として、BLEビーコンを使って位置を判断するというのはよくある話だが、提案ではカートにBLEビーコンを取り付けている。しかも、車輪の動きで発電(エナジーハーベスト)するため、電池交換が不要だという。カートが止まっているとデータが送られてこないが、止まっているカートからもデータが来ると不必要なデータが増えるので、これで問題ないという説明だった。データ収集用の機器は、蛍光灯型の照明機器に組み込むため、工事も容易だという。
2016年01月19日JFEスチールは12月9日、プレス加工が難しい難加工部品に適用可能な新しい成形技術を開発したと発表した。新技術は、通常二段階でのプレス加工のうち、これまで人の経験や勘に頼っていた一工程目の形状を論理的に算出された最適形状に設計することで、難形状部の加工を可能にする。また、軟鋼から超ハイテン材まで強度にかかわらず適用できるため、部品の性能やデザイン性の向上、軽量化を測ることができる。同社は、同技術を用いてエアスポイラー一体型の自動車用バックドアを試作。エアスポイラーは張り出しが大きい形状のため成形が難しく、現状では樹脂製の別部品が取り付けられているが、今回開発した新しい成形技術を適用し、鋼板からエアスポイラーを一体で成形することに成功した。JFEスチールは今後、同技術の実生産への適用に向けて顧客との共同開発を積極的に行っていくとしている。
2015年12月10日●端末間をLTEでつなぐ11月26日と27日、NTTドコモは横須賀のドコモ R&Dセンターにおいて、最新の技術動向を展示するプライベートショー「DOCOMO R&D Open House 2015」を開催した。5G関連の展示については別記事で紹介したが、そのほかにも商品化の有無を問わず、さまざまなドコモによる新技術が展示されていた。ここでは展示内容の中から、筆者が気になった面白い技術について紹介していこう。○LTEによる端末間直接通信通常、LTEでの通信は基地局と端末を介して行うわけだが、これを端末間で行おうというもの。はじめは、PHSのトランシーバーモードのようなものを想像したのだが、そういった使い方のほか、端末同士の協調までは基地局を介して行い、データ通信だけを端末間で行うようにできるとのこと。これにより、たとえば屋外で対戦型ゲームのマッチングをしたり、特定の基地局の範囲内にある端末の情報をチェックして、その割合から最適な広告を表示する(たとえばサラリーマンが多いから髭剃りのCMを流すなど)といった使い方が想定されているという。同様の技術としては無線LANを使った「Wi-Fi Direct」などがあるが、LTEなので到達する距離が非常に長い点などが優位だという。展示されていたのはクアルコムのモデムのファームウェアを書き換えて機能が使えるようにしたものだということで、技術的にはいつ搭載されてもおかしくないところまできているようだ。あとは走査の際のパケット消費をユーザーがどこまで許容するかなど、気になる点もあるが、技術的には面白そうだ。●実用性の高い技術もたくさん○SNS翻訳で世界中に口コミ情報をNTTメディアインテリジェンス研究所が開発した「崩れ日本語正規化技術」を使い、崩れた日本語もかなり正確にニュアンスを含めて翻訳できるというシステム。東京オリンピックを前に、日本語SNSに流れている日本語の情報を外国人にも利用しやすくしようという試みで、来年中のサービス開始を目指しているとのこと。ドコモはこのほかにも翻訳サービスをいくつか展示しており、外国人とのコミュニケーションを円滑化するという意味では有効なツールになり得るだろう。○WiGigは来年登場?「ミリ波非接触高速転送システム」として展示されていたのが、60GHzのミリ波を使い、SUICAなどのように一瞬タッチ(実際には非接触なので触らなくてもいい)すれば動画などの大きなコンテンツも瞬時に転送できる機能。ここまで書いてお気付きの方もいらっしゃると思うが、これはWi-Fiアライアンスが策定したIEEE802.11adこと「WiGig」そのものだ。実際のところ、QualcomのSnapdragon 810は内部的にすでにWiGig対応しているそうで、来年のハイエンド端末はWiGig対応してくる可能性が非常に高い。300MBクラスの動画が2~3秒で転送できるそうなので、かなり実用性は高そうだ。○VoLTEにBGMや効果音がつけられるVoLTEでは「EVS」という高音質な音声コーデックを使っているが、これを単に音声通話の品質を高めるためだけでなく、通話にBGMや効果音を付けてみたら?という発想で開発中。実際に試してみたが、仲のいい友人となら、LINEのスタンプのような感覚で色々な突っ込み系効果音を鳴らしてみたくなる。BGMと効果音を同時に使えたらさらに面白いことになりそうだ。○スマホをエージェントにして電動車イスのトレーニング今年のグッドデザイン大賞にも選ばれた電動車イス「WHILL Model A」にスマートフォンを取り付け、インタラクティブなトレーニングシステムにしてしまおうという仕掛け。人員コストの削減に加え、走行ログなどから上達に合わせたトレーニングの提案が行えるというもの。シニア世代の生活に寄り添うパーソナルエージェントを目指しているとのことで、大変楽しみ。横須賀市の「ソレイユの丘公園」で実証実験を行っているそうなので、行かれる方はWHILLの乗り心地も含めて体験してみてはいかがだろうか。●いい意味でドコモらしくないアイディア○最もドコモらしくない?「イノベーションチャレンジ」最後に、社内の有志で開発され、ハッカソンなどに出展されるなどした、業務とは関係ない個人的なプロジェクトが「イノベーションチャレンジ」としてまとめて展示されていた。個人的にはこのコーナー、ドコモという大企業のイメージからかけ離れた自由な発想と熱意に溢れていて、非常に居心地がよかった。細かい説明はキャプションに譲るので、写真を中心にご覧いただきたい。***1日ではちょっと回りきれないほどの展示物があり、ここでは紹介しきれなかった技術発表も多数あった。プライベートショーにしておくのはもったいないと思ったほどで、ドコモという企業への印象がかなり変わった1日でもあった。それにしてもユニークな技術が多数、商品化もされないままになっているのは少々もったいない。ぜひ、周辺機器メーカーなどにも開示する機会を設けてもらいたいと思った。
2015年12月01日ルネサス エレクトロニクス(ルネサス)は11月26日、人工知能ベンチャーであるクロスコンパス・インテリジェンスの人工知能技術を導入したソリューションを開発し、ルネサスグループのルネサス セミコンダクタ マニュファクチャリングの那珂工場の製造ラインで試験運用した結果、製造装置や産業機器などのリアルタイム異常検知が可能となる技術的な見通しが立ったと発表した。ルネサスが開発したソリューションは、同社のR-INプラットフォームに人工知能技術を実装したもの。同社のR-INエンジンは低電力で高速通信・高速処理が可能なため、大量のデータを上位のネットワークに低電力かつ高速で転送することができ、CPUの処理余力に人工知能技術を実装することで、データを高度な解析モデルで処理し、上位が必要な情報のみを送信することが可能となる。これにより、これまで見ることができなかった異常をエッジデバイスで検知し、リアルタイムに生産に反映させることができるようになるとする。また、上位の分析・解析との連携で装置間状態を詳細にモデリングすることで柔軟な生産が可能となり、エッジデバイスの解析結果を上位で時系列に解析し高度な予兆保全を実現することができる。なお、同社は12月2日から4日まで東京ビッグサイトで開催される「システム コントロール フェア2015」に出展し、那珂工場で検証した異常検知の成功事例および人工知能技術によって異常検知を簡単に確認できる技術のデモンストレーションを披露する予定となっている。
2015年11月26日ブリヂストンは11月25日、同社のタイヤセンシング技術「CAIS」のコンセプトに基づく路面状態判別技術の実用化に成功したと発表した。同社によると、このようなタイヤセンシング技術の実用化は世界初だという。同技術は、タイヤのトレッド(路面との接地面)内側に装着した加速度センサにより、タイヤのトレッドの振動を検出し、その情報を無線で車載解析装置へ送信するというもの。タイヤ内に装着された独自の発電装置を用いて駆動している。この技術により、降雪などによる路面状態の急激な変化をリアルタイムに感知することが可能で、「乾燥」「半湿」「湿潤」「シャーベット」「積雪」「圧雪」「凍結」といった7つの路面状態を車載解析装置によって判別できる。また、路面状態の判別結果は車内ディスプレイを介して、ドライバーへタイムリーに伝達される。同社は、2011年11月からネクスコ・エンジニアリング北海道と共同で同技術の試験を進めており、今回ライセンス契約を締結した。
2015年11月26日11月18日~20日、組込み総合技術展「Embedded Technology 2015」およびIoT総合技術展「IoT Technology 2015」が神奈川・パシフィコ横浜にて開催されている。本稿では富士通グループのブース展示についてレポートする。○非接触で人の視線を検出できるシステム「EyeExpert」富士通コンピュータテクノロジーズが提供する視線検出システム「EyeExpert」は、人の視線の位置を非接触で検知することができるものだ。同システムは7.1cm × 1.2cm × 1.2cmの小型視線センサーと制御ソフトウェアから構成されており、たとえば小型視線センサーを店舗に設置し、得られたデータを分析することで、陳列改善や商品開発などのマーケティングへ活用するなどといった利用方法が考えられる。ほかにも、作業時の視線を記録して見落としを防止するなどといった業務支援、ユーザーが機器操作をする際のアシストに役立てるといった利用例が想定されている。小型視線センサーは50~80cmの距離にある視線を検出。また1個につき60cm × 40cm程度の範囲の認識が可能で、最大4個の視線センサーから収集したデータを記録することができる。同社は導入支援サービスなども提供するとしている。○手のひら静脈センサー「PalmSecure」現在、本人確認の手段として「バイオメトリクス(生体)認証」が注目されつつあるが、そのなかでも手のひらや指などの静脈パターンを読み取る「静脈認証」は、高精度でかつ偽造やなりすましなどの不正行為に対する技術として有力だ。 富士通が開発した非接触型の静脈認証は、静脈認証装置から離れた位置にある手のひらに近赤外線光を照射することで、皮下組織にある静脈中の還元ヘモグロビンが近赤外線光を吸収し、黒く映し出される。このパターンと比較照合することで本人認証を行うものとなっている。センサーに直接触れる必要がないため衛生的であり、またIDカードも不要なので災害などに強いソリューションであるといえる。
2015年11月18日NECはこのほど、人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術の開発や、AI技術を活用したソリューション展開を強化すると発表した。これに伴い体制面の強化も図り、研究・開発やコンサルティングなどに関わるAI関連要員を、2020年度までに約1000人に拡充していくという。本稿では、NECのAIへの取り組みについてお届けしたい。○AI要員を1000人体制に拡充NECはAI技術の定義について、「学習」「認識・理解」「予測・推論」「計画・最適化」といった人間の知的活動をコンピュータで実現するものとしている。1980年代から関連技術の開発を進めるなど、同社のAIへの取り組みの歴史は長く、音声認識、画像・映像認識、言語・意味理解、機械学習、予測・予兆検知、最適計画・制御等の主なAI関連技術に関して、世界初もしくは世界トップレベルの技術を有しているという。同社の執行役員を務める江村克己氏は、AI関連事業への注力について次のようにコメントした。「当社は社会価値創造の取り組みを進めており、社会課題を解決する社会ソリューション事業に注力している。その中核となるビッグデータ・IoT・セキュリティなどの分野に、長年にわたり研究開発を続けてきたAI技術を積極に取り入れ、進化させていきたい。こうしてAI関連事業の強化を図るとともに、安全・安心な社会づくりなど、より大きな社会価値創造を実現していく」○防犯やマーケティングへの期待が高い新たなAI技術とは?NECは同日、「一歩進んだAI技術」として、新たに開発した「時空間データ横断プロファイリング」も発表した。この技術は、複数の場所で撮影された長時間の映像データから、特定のパターン(時間・場所・動作)で出現する人物を高速に分類・検索するというもの。NECが得意とする顔認証技術などと組み合わせることで、AI技術としての利用が可能となる。時空間データ横断プロファイリングは、大量の映像データから顔の「類似度」をもとにグループ化し、特定の出現パターンに合致する対象の発見が可能なアルゴリズム。この技術により、顔の類似性から同一人物と見なせる出現パターンを分類し、出現時間・場所・回数等での検索を行うことが可能となる。例えば、カメラ映像中の「同じ場所で頻繁に出現する人物」や「複数の場所に現れた人物」を発見し、防犯や犯罪捜査など、従来人手ではできなかった新たな知見や気づきを見いだす高度な解析を実現する。街角に設置されたカメラ映像中ののべ100万件の顔データを時空間データ横断プロファイリングにより解析したところ、同じ場所に長時間・頻繁に現れる人物の検索・抽出をたった10秒で行ったという。「この技術のポイントは、未知の事象を検出できることにある」と江村氏は強調した。NECは2016年度中に時空間データ横断プロファイリングを実用化し、今後、道に迷った観光客へのおもてなしや、振る舞い・表情から心情を理解するマーケティングなどへも展開していく予定。そのほか、江村氏は11月2日に発表した、予測に基づいた判断や計画をソフトウェアが最適に行うAI技術「予測型意思決定最適化技術」について解説を行った。同技術を適用した水需要予測に基づく配水計画では、浄水・配水電力を20%削減する配水計画を生成できたという。最後に江村氏は、将来を見据えた取り組みとして、脳型コンピュータの開発に向けた学術機関との連携の取り組みについても言及。「こうした新しいAI技術も非常に重要だ。NECとしてはオープンイノベーションで推進していく」と力強く訴えた。
2015年11月18日トヨタ自動車は11月6日、2016年1月に人工知能技術の研究・開発の拠点として、新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE(TRI)」を米国カリフォルニア州のシリコンバレーに設立し、今後5年間で約10億ドルを投入することを発表した。人工知能技術は、これからの産業技術の基盤を担うとともに、新たな産業を創出すると期待される重要技術である。今後トヨタは、TRIを技術イノベーションの拠点と位置づけ、人工知能技術に関する研究・開発を加速させる。具体的には、人工知能技術を通じてビッグデータを活用することにより、これからの社会が直面するさまざまな課題を解決し、将来の持続可能なモビリティ社会の実現はもとより、誰もが安心して安全・自由に、より豊かに暮らすことができる社会の実現を目指し、革新的な商品の企画・開発を進める方針だ。トヨタのExecutive Technical Advisorであるギル・プラット氏がTRIのCEOに就任し、優秀な研究者を集めるとともに、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学に設立した研究センターとの連携を進めるなど、研究体制を強化していく。
2015年11月06日PFUは10月28日、標的型サイバー攻撃対策として新たな検知技術を開発したと発表した。新技術は、多くの技術が採用している、マルウェア自身の特性や振る舞いに基づくものではなく、攻撃者の行動に着目したものだという。標的型サイバー攻撃は一般的に、侵入前に標的組織の情報を入手する「情報収集」から、標的型メールのURLをクリックさせることで、ツールをダウンロードさせて遠隔操作し、情報を窃取する「組織内部侵入」といったプロセスを踏む。これに対して同社の研究チームは、組織内部侵入における攻撃者の行動プロセスに着目した「攻撃者行動遷移モデル」を構築した。このモデルを利用したものが、標的型サイバー攻撃の検知を実現する新たな検知技術「Malicious Intrusion Process Scan」となる。複数の協力組織において実証実験を重ねており、セキュリティ対策が施された実際の業務環境(合計約10万端末)における複数の標的型サイバー攻撃を検知し、効果を確認しているという。検知技術は「リアルタイム把握」と攻撃者行動遷移モデルを特徴としている。攻撃者は標的とした端末と通信して攻撃活動を行うため、端末の通信を監視する。エージェントレスで監視することで、攻撃者に気づかれることなくリアルタイムに攻撃者の行動を把握できるとしている。攻撃者行動遷移モデルでは、前述の攻撃行動の通信が通常の業務上行われる通信を装っているケースがあり、正しく検知できないことがありうるという。そのため、侵入直後から攻撃行動に移るまでの流れを「攻撃者行動遷移モデル」と照合し、検知精度を高める。この新技術は、千葉県・幕張で行われる情報セキュリティEXPOのPFUブースで公開される。
2015年10月28日森永製菓は15日、ベイクドチョコ技術に、半生ケーキ製造技術のノウハウを取り入れた「半熟ショコラ」を発売する。○ベイクドチョコ技術と半生ケーキの技術が融合した新食感チョコレート菓子・デザート業界では、近年、半熟カステラや半熟チーズケーキなどしっとりやわらかくとろりとした食感を楽しむ商品が人気を集めているという。同商品は、チョコレートを焼く同社の特許製法ベイクドチョコ技術を、半生ケーキの製造技術と融合させた商品。ケーキとチョコレートを一緒に焼き、中を柔らかく"半熟"に仕上げたコンビネーションチョコレートとなる。チョコレートは、ほろ苦いセミビターチョコの味わい。チョコレートのベーシックな風味を大切にしながら、食感はしっとりやわらかく仕上げた、濃厚な食感と味わいが特徴となる。隠し味にキルシュ(チェリーブランデー)を使用した。アルコール分は0.7%。つまんで食べやすいようにスティック形状になっている。内容量5本で、参考小売価格は194円(税込)。
2015年09月10日富士フイルムは9月3日、カラーネガフィルム「フジカラー F-II400」が国立科学博物館の「重要科学技術資料(未来技術遺産)」に登録されたと発表した。未来技術遺産の登録制度は、科学技術の発展を示す技術的な資料や、国民生活や社会、文化に大きな影響を与えた科学技術資料の保存と次世代への継承を目的に、2008年から実施されているもの。昨年度までに184件が登録されている。このたび登録された「フジカラー F-II400」は、富士フイルムが1976年10月に発売したカラーネガフィルム。それまでのカラーネガフィルムに比べて、感度を約4倍に引き上げ、世界初の高感度(ASA400)を実現した製品だ。フジカラー F-II400によって、ストロボがなければ撮影できなかった室内でも明るく撮れるようになったり、シャッタースピードを4倍速くできたことで手ブレの解消につながったり、とカラー写真の撮影領域拡大に貢献した。
2015年09月04日パイオニアは9月2日、レーザーディスク(LD)プレーヤーの3機種が、国立科学博物館の「重要科学技術資料(未来技術遺産)」に登録されたと発表した。未来技術遺産は、科学技術の発展を示す技術的な資料や、国民生活や社会、文化に大きな影響を与えた科学技術資料の保存と次世代への継承を目的に、2008年に制定された制度。昨年度までに184件が登録されている。今回、未来技術遺産として登録されたのは、世界初の業務用LDプレーヤー「PR-7820」、家庭用のLDプレーヤー「LD-7000」、そして世界初のコンパチプレーヤー(LDのほかにCDの再生も可能)「CLD-9000」だ。レーザーディスクは、パイオニアが開発した光学式ディスクの規格。アナログで記録されている映像と音声を、レーザーピックアップで読み取る方式を採用している。1979年に業務用プレーヤーの「PR-7820」を発売した後、1981年に民生用の国内向けモデル第1号として「LD-1000」を発売。映像を再生できるディスク媒体として一時代を築いた。その後、DVDやBDなどの普及に伴い、2009年にプレーヤーの製造から撤退しているが、レーザーディスクプレーヤーの開発によって培われたピックアップ技術やサーボ技術などは、現在でもさまざまな製品に生かされている。
2015年09月02日国立科学博物館は9月1日、「国立科学博物館重要科学技術仕様(愛称:未来技術遺産)」に、ソニーの「AIBO」など25件を選定した。「未来技術遺産」は日本の科学技術の歴史を示す事物で、科学技術の発達史上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つもの、ならびに国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えたものを、国立科学博物館が選定し登録するというもの。2008年から毎年発表されており、昨年は日本初の噴流式洗濯機「電機洗濯機 SW-53」や富士フイルムの「フジカラー 写ルンです」などが選出された。今年は「AIBO」のほか、世界初の産業レーザディスクプレーヤであるパイオニアの「PR-7820」、海軍航空本部が製作した「海軍航空機用塗料識別標準(色見本帳)」などが登録された。2015年度登録の「未来技術遺産」は以下の通り:
2015年09月01日大分キヤノンは8月4日、デジタルカメラおよび交換レンズの生産技術力強化を目的として、大分キヤノン安岐事業所内に総合技術棟を新設すると発表した。2016年内の稼働を目指す。高性能かつ高品質の製品を継続して生産するために、キヤノンでは生産の国内回帰や内製化を推進し、カメラ生産技術をさらに高めていく必要があるとしている。こうした状況を踏まえ、大分キヤノンでは総合技術棟を建設することを決定。2016年年初に着工し、稼働予定は2016年第4四半期内だ。総合技術棟には生産技術部門、製品技術部門、生産工機部門などを集結させ、効率性の高い生産体制の確立を目指す。
2015年08月04日楽天は7月29日、インターネットの未来を予測し、新たなテクノロジーを創出するための研究機関「楽天技術研究所」の海外拠点を、シンガポール(楽天技術研究所 Singapore)と米国ボストン(楽天技術研究所 Boston)に新設した。「楽天技術研究所」は、所属する研究者たちの専門性を生かした活動を支援し、インターネット全般における先進技術を革新的なサービスにつなげる研究機関で、インターネット企業の技術研究所として産学連携にも積極的に取り組んでおり、教育機関と人材交流を図りつつ、アカデミックな知識を取り入れながら研究を進めている。同社はこれまで、東京以外の研究所として、2010年6月にニューヨーク、2014年2月にパリに設立しており、今回の新設で4カ国5拠点での展開となる。今回新設した「楽天技術研究所 Singapore」は、心理学や行動科学、モバイルソーシャル分野を研究領域の主体とし、これらの知見に基づいた顧客満足度を高めるインターネットサービスの研究を実施。同成果は同社の各事業にフィードバックし、さらなるサービスの向上を図る。一方、「楽天技術研究所 Boston」の研究領域は、機械学習や深層学習、AI分野を主体とし、特に人工知能分野の研究を推進。世界の各開発拠点にいるビッグデータチームとも連携し、ビッグデータ活用のさらなる高度化を図る。また、新設の両研究所は、シンガポールおよびボストンを中心とした海外の大学・研究機関と積極的に連携し、海外における研究者の採用を進める。その第一弾として、「楽天技術研究所 Singapore」では同日より、アジア各国・地域のデータサイエンティストを対象に、楽天の子会社となるVikiの保有するデータを用いた課題解決のコンテスト「Rakuten-Viki Global TV Recommender Challenge」を行っていく。
2015年07月30日米Intelと米Micron Technologyは28日(現地時間)、不揮発性メモリの新技術「3D XPoint テクノロジー」の開発に成功したことを発表した。現在のNANDテクノロジーに比べ、1,000倍の高速化、10倍の集積度向上を実現したという。両社は2015年のサンプル出荷を目指して開発を進めていく。3D XPoint テクノロジーは、IntelとMicronが10年以上にわたって研究開発を進めてきた画期的なメモリ技術。性能や集積度、消費電力、不揮発性、コストなどにおいて、優位性を兼ね備えており、1989年に登場したNANDフラッシュメモリ以来の大きな技術革新となる。高密度なクロスポイント配列構造とメモリセルを積層化できることが特徴で、当初は2層、ダイあたり128Gb(ギガビット)の容量で生産する。将来的には積層数の増加と微細化技術により、さらなる大容量化を見込む。
2015年07月29日Wi-Fi Allianceは7月14日、近接情報認識の新技術である「Wi-Fi Aware」について記者説明会を開催した。現在、世界で65億人のモバイルユーザーと19億人のSNSアクティブユーザーがいるといわれている。時間軸とで見た場合、SNSでは「現在の近く」で起こっている出来事を知ることができるが、そこで重要となるのは発言の位置情報だ。例えば、小売店やイベント会場、自治体が近接情報を活用することで、より多くの収益を上げ、価値を高められる。2019年には、433億ドルの利益をもたらすと予想されている。近接情報の多くは、GPSやBluetoothビーコンなどの位置データ、あるいは「○店にいる」というチェックイン情報を元にしている。GPSは屋内では使えないか、または精度が大幅に落ちるうえ、サーバー情報をベースとした「近くにいる人」の情報は、少々古くなりやすい。また、大規模なイベントでデータ通信が多く発生すると、サービスレベルが低下する問題もある。○双方向の近接情報認識、新技術の「Wi-Fi Aware」そこで「Wi-Fi Aware」だが、これはWi-Fi Allianceの「Neighbor Awareness Networking」テクノロジーにもとづいた新しい近接情報認識技術で、各端末はサービス名と固有値を含めた小さなデータを発する。このデータ(ハートビート)を受信することで、近くに同じサービスの共有を希望するユーザーがいると、端末だけで判断できる仕組みだ。Wi-Fi Awareは、従来のBluetoothビーコンとは異なり、双方向でのデータのやり取りが可能であり、必要に応じてWi-Fi Directによる直接通信も行える。やや語弊はあるが、ニンテンドーDSの「すれちがい通信」を、多種のアプリケーションで使えるように標準化したようなものと思えばよいだろう。○チップベンダーからの支持は得ており、モバイルOSのAPIサポートが普及への課題フェルナー氏の説明によると、Wi-Fi Awareは、Wi-Fi Alliance内のチップベンダーから幅広い支持を受けている。すでに5社のベンダーが、対応チップを出荷しているという。ただし、Wi-Fi Aware対応アプリを作成するためには、モバイルOSがWi-Fi Aware用のAPIを提供しなければならない。現時点で対応を公表しているOSベンダーはないものの、水面下では動いているようだ。質問に対して「来年には対応スマホが出るだろう。あるいはOSに組み込まれる前に、一部ベンダーの独自実装でエコスステムを作るかもしれない」と回答していた。Wi-Fi Awareについては、YouTubeで「Wi-Fi Aware: Discover the world nearby」という日本語の説明ビデオが公開されているので、参考にするとよいだろう。
2015年07月14日東芝は7日、マイクロ波磁界により、多層からなる磁性体が磁化する向きを、層を選択して反転させる新技術の実証を発表した。この磁化反転技術を応用することで、HDDをはじめとした高密度磁気記録製品の大容量化が期待できる。HDDなどで採用されている磁気記録は、従来、記録ビット(磁石)を微細化することでより多くのデータを記録する大容量化を果たしてきたが、微細化による高密度化は限界に達しつつある。今回の実証実験では、次世代技術として開発されているマイクロ波磁界を印加する記録方式を採用。多層からなる磁性体が磁化する向きを、層を選択して反転させる新技術を実証した。同社が実証した磁化反転技術では、多層記録媒体に、異なる強磁性共鳴周波数を有する磁性体層を積層。これに、強磁性共鳴周波数に応じた周波数のマイクロ波磁界を印加すると、特定の磁性体層のみに磁化振動を励起できる。磁化振動が励起された層は、磁化反転に必要なエネルギーが低減される(マイクロ波アシスト効果)ため、層を選択した磁化反転が可能になるという。同技術は、従来シミュレーションで予測されてきたが、今回初めて同社が実証した。「磁気記録に応用できる基本的な技術」とし、記録層を多層化(3次元構造)したHDDや磁気メモリ、磁気テープなど、高密度磁気記録製品への応用が期待できる。同技術は、国立行政法人 科学技術振興機構における研究成果展開事業の一環として、2015年7月8日にスペインで開催される国際学会(ICM2015)で発表される。
2015年07月07日三菱電機(三菱電)は6月23日、高精度GPS移動計測装置であるモービルマッピングシステム(MMS)の新技術として、リアルタイムレーザー点群生成技術を開発したと発表した。MMSは車両にGPSアンテナ・レーザースキャナー・カメラなどの機器を搭載し、走行しながら道路周辺の3次元空間位置データ(レーザー点群)を高精度で取得するシステム。道路の維持管理に必要な道路台帳附図作成業務をはじめとした公共測量や路面調査、トンネルの調査点検などに活用されているが、従来法では取得したデータをGPS位置補正情報と組み合わせる事後処理が必要となり、計測結果がすぐに確認できないという課題があった。同社が開発した新技術では、車で走行しながらリアルタイムに3次元空間位置データを作成することができるため、測量現場での確認が可能となり、測量業務の効率化を図ることができる。また、短時間のデータの差分を抽出することができ、イベント会場などでの不審物の早期発見に活用することもできるという。今後、同技術を従来のMMSが活用されてきた測量分野に加え、災害対策、警備・監視、社会インフラ管理、ITSなどの新たな分野に展開し、顧客ニーズに合わせて今年度から順次製品化する予定だ。
2015年06月24日ロームは6月16日、物流用途や医療用途のプリンタ向けに高画質かつ高速印字を実現する、新構造を採用したサーマルプリントヘッド技術を開発したと発表した。医療用途のプリンタでは、リストバンドや医療容器ラベルのような微細領域に高精度の写真や微細な文字を印字するといった高解像度と印字品質が求められる一方で、インクを使わずに安全である、といったニーズが求められている。従来、サーマルプリントヘッドは、高速に連続印字をする場合に完全に放熱しきれず蓄熱するため、発熱体の温度が徐々に上昇してしまうことで、発色にじみが発生し、印字品質が低下するといった問題があった。今回開発された新構造のサーマルプリントヘッドは、材料と構造の見直しを抜本的に実施し、独自の微細加工技術と組み合わせることで、医療分野で使用される小型ラベルなどで、従来では表現しきれなかった小さな文字をプリントすることを可能とする600dpiの解像度と300mm/秒の印字速度を実現した。また、高熱伝導材料と新構造を組み合わせることで、高速印字の際に問題となっていた放熱性を従来品比の数倍に高めることに成功。高速連続印字時でも発熱体部の温度を安定させることができるため、高速でも印字品質を損なわず鮮明な印字を実現したという。なお、同社では今後、同技術を用いた製品の2015年中の量産化とともに、高画質と印字速度を活かしたラインアップの拡充を目指すとしている。
2015年06月16日技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)主催のシンポジウム「ひらめきを形に!設計が変わる新しいモノづくり」が6月30日に開催される。TRAFAMは少量多品種で高付加価値の製品・部品の製造に適した三次元積層造形技術や、金属などの粉体材料の多様化および高機能複合化技術などの開発を通じて、次世代のものづくり産業を支える三次元積層技術システムを核とした新しい日本のものづくり産業の創出を目指して昨年4月に設立された技術研究組合。組合員には産学から32法人が名を連ね、近畿大学にレーザ方式、東北大学に電子ビーム方式の金属積層用の要素技術研究機を製作し、設置するなど、2018年度末までに世界最高水準の装置を完成させることを目標に研究を進めている。今回のシンポジウムは3Dプリンタの将来性および開発の必要性について理解を深めることを目的としており、TRAFAMの研究成果報告のほか、産業技術総合研究所の金山敏彦 副理事長をはじめとする有識者による3Dプリンタに関する講演や、パネルディスカッションを行う予定となっている。参加費は無料で、現在TRAFAMのホームページにて参加申し込みを受付けている。「ひらめきを形に!設計が変わる新しいモノづくり」シンポジウムの開催概要開催日時:6月30日(火) 10:00~17:25会場: TKPガーデンシティ竹橋(2階)大ホール/東京都千代田区一ツ橋1-2-2参加費: 無料参加者数: 200名 (予定)申し込み方法: TRAFAMのホームページより事前登録 (先着順)
2015年06月11日技術開発による進歩が日々行われている医療技術の分野。医療の発展はすなわち人々の生活を豊かにすることでもあるが、一方で医療機器の発展が人の技術を不要にし、仕事を奪う現実もあるという。今回は歯科用機器専門メーカーであるシロナデンタルシステムズ田澤氏に最新の歯科用機器業界の動向についてインタビューを行った。○最新技術が人の仕事を奪う!?――今回ご紹介いただくのはこの「歯科用CAD/CAMシステム」ということなのですが、これはどのような機械なのでしょうか?これまで入れ歯や補綴物(ほてつぶつと読む。差し歯などのこと)の制作加工は『歯科技工士』と呼ばれる資格を持つ専門職の方たちの仕事でした。しかし、この歯科用CAD/CAMシステムを使用することで、カメラを歯牙上で動かすだけで3Dフルカラーイメージを生成するなど設計や加工工程の一部をコンピュータで行うことができるようになりました。――これまで人の手で行っていたものを機械が一部行うようになったのですね。弊社では『セレックACオムニカム』という歯科用CAD/CAMシステムを販売しています。セレックは来院1回でオールセラミックの修復が可能な『チェアサイドソリューション ワンデートリートメント』を提供することが可能で、これは歯科用CAD/CAMシステム導入による効率化がもたらしたものです。――このように歯科用機器の技術が進むことは、一方で歯科技工士など人の手が不要になることとイコールでもあると思います。歯科技工士の資格や技術が不要になる将来がくるのでしょうか?弊社のセレックのケアに携わる求人に応募された歯科技工士の方の中でも、『セレックのような歯科用CAD/CAMシステムは歯科技工士の仕事を奪う”敵”だと思っていました』と話される方もいました。確かに歯科診療・歯科技工の現場においては、既に歯科技工士の仕事を一部機械が引き受けるようになっています。それは確かに、一面的に見ると人の仕事を奪っているというふうにも見えます。ただ、その現実は『人間』と『機械』の対立があり、機械が人間の仕事を奪う……というようなものでは決してありません。先ほどお話した歯科技工士の方も、『料理教室の先生が包丁の使い方を生徒に教えるように、歯科用CAD/CAMシステムの使い方を歯科医に教える人が必要だ……と気付いたときに、自分の将来の展望が見えた気がしました』と話してくださいました。私はこの半年で延べ400名以上の応募者と面接してきましたが、『歯科用CAD/CAMシステムは敵だ』思っていた歯科技工士・歯科衛生士たちが弊社に入社し、結果として活躍している現状もあることをお伝えしたいですね。――単に機械が仕事を奪ったわけではないのですね。実際には歯科技工士・歯科衛生士さんを必要とする新たな仕事が生まれ、これまでの仕事がより高度で創造的な仕事へと変化し、歯医者さんや患者さんに素晴らしいサービスを提供する仕事へと進化しているという側面もあるということです。――機械と人間の対立は、おそらくどこの業界でも起きている問題だと思います。一方で単に対立構造で見るのではなく、機械の導入により新たな業務が発生するということもあるということですね。どうも有難うございました。
2015年06月10日富士通研究所は5月1日、複雑で大規模な業務アプリケーションから、業務ロジックの複雑度を可視化する技術を開発したと発表した。新技術により、アプリケーション資産を簡易的に分析するだけで業務ロジックを可視化できるという。同社によると、同種の技術の開発は世界初とのこと。同技術は2016年度の実用化を目指し、さまざまな業種や多様な言語の業務システム分析に適用・検証していく意向だ。企業で運用している業務アプリケーションは長年の開発保守により複雑化していることが多く、機能強化や改善などビジネスの環境変化に即した迅速な対応が難しくなっているという。とりわけ業務アプリケーションの機能追加などで必要となるアプリケーションの実態把握において、特に他社が開発保守したプログラム資産を活用する場合は、人手による分析が必要で多大な時間を要することから、重要な課題になっているとのことだ。しかし、従来はプログラムの大きさや条件分岐の数の多さなどから比較的重要な部分を見極める際、業務に関係する処理を実行する業務ロジックとプログラム間のデータ共有や形式チェック処理などを実行する制御ロジックとの区別は困難だったという。新技術は、業務ロジックをプログラムの記述から自動的に識別する技術と、業務ロジックの複雑度を場合分け数などの指標で定量化する技術からなる。業務ロジックの識別技術では、業務システムが担当者の入力する業務データから実行する、業務に関係する判断や計算である業務ロジックをプログラムの記述から自動的に識別する。チェック処理などは条件判断では無いため、業務ロジックから除くとのこと。複雑度の定量化技術では、業務ロジックにおいて条件の組み合わせと結果の対応を表形式で表した決定表(ディシジョン・テーブル)の大きさと、業務ロジックの複雑度が対応することに着目し、決定表の大きさを決める「条件に関係した項目数」「場合分けの数」「計算式に関係した項目数」の3つの指標を定義したという。決定表の作成には詳細な分析が必要なため、これらの指標に相当する特徴量を、決定表を作成しなくてもプログラムの変数や条件分岐の数から近似的に計算する手法を開発し、大規模資産を対象とした分析を可能にしたとのこと。プログラムを分析した結果、業務ロジックの複雑度が大きい物は、業務に関係する判断や計算処理が多くあることがわかったという。COBOLで記述した業務アプリケーションの約1,200本のプログラムを対象に業務ロジックの複雑度を上位・中位・下位のグループに分ける社内実験では、業務的な計算を行っているプログラムが上位に含まれ、形式的チェックしか行っていないプログラムは下位に含まれることが確認できたとしている。同技術により、人手を要する業務アプリケーションの分析作業に費やす時間を短縮し、ビジネスの環境変化に即した機能強化や改善などの迅速な対応が可能になるという。同社の社内実験では、行数ベースで分析対象の3割程度のソース・プログラムには業務判断や計算を含まないことを確認できたとのことだ。例えばシステムの再構築などの作業で必要となる初期分析で、分析作業の範囲を絞り込み、業務ロジックの複雑度が大きい物から重点的な把握が可能になるとしている。さらに、同社が開発したソフトウェアの機能構造を自動的に地図化する「ソフトウェア地図」の、ビルの高さに業務ロジックの複雑度を適用することで、地図の区画が表す機能の単位で複雑な業務ロジックが含まれるかどうかを確認できるため、プログラムのサイズによらず優先的に調査する範囲を見つけることができるという。
2015年05月02日ブロケード コミュニケーションズ システムズは4月20日、LANスイッチの新製品および拡張技術を発表した。新製品のBrocade ICX 7250の参考価格は2,000米ドル、既に出荷開始している。拡張機能のうちSwitch Port Extenderの最初のリリースは2015年後半を予定、OpenFlow 1.3対応は、Brocade ICX 7450および7750に2015年4月中に実装予定。新製品のICX 7250は、他の同等スイッチを上回る10Gbpsのポート密度を備え、キャンパス・ネットワークを圧迫するユーザーの膨大なビデオおよびワイヤレス・トラフィックに対応する。Switch Port Extenderは、ネットワークの導入と継続的なメンテナンスを容易にする新しい技術。これにより、キャンパス・ネットワークを構成する分散設置したBrocade ICX 7250/7450/7750の各スイッチ間でネットワーク・サービスを共有し、管理の統合を可能にする。OpenFlow 1.3のサポートは、ICX 7450と7750のスイッチ各製品が対象。これにより、LANアーキテクチャにおけるSDNソリューションの導入を容易にすると共に、これらのスイッチをBrocade Vyattaコントローラと組み合わせて利用することで、ネットワーク全体でのSDNによる自動化を実現可能になるとのこと。
2015年04月21日大日本印刷(DNP)は4月15日、ナノインプリント技術を活用した市場創出型超微細加工の新ビジネスを開始すると発表した。同社は従来よりナノインプリント技術の開発に取り組んでおり、十数nmの半導体回路パターンの金型製作や、透明なフィルムの表面に数百nmの微細な凹凸を転写形成し光の反射を防止する超低反射フィルムなどの成果を得ている。今回発表した事業では、これらの開発で培ったノウハウを活かし、マスター金型製作から試作品作り、製品の量産化までを一貫して行う。nm単位からμm単位までの微細形状の加工に対応可能で、大型ロール状のフィルム基材を加工し、ロール状に巻取り製造・納入する「ロールtoロール」の金型や製品の量産も提供可能だ。マスター金型については、6インチ角の基板上に20nm程度の微細バターンや3次元形状パターンを形成した金型、大型基板(1200mm×1000mm)上にサブミクロン単位のパターンを形成した金型、μm単位のパターンを形成した1500mm×930mmの面サイズの金型を作製することができる。今後、同ビジネスをデバイスメーカー、光学部材、ライフサイエンスなどの分野に向け提供していく計画で、2016年に20億円の売上を見込んでいるという。
2015年04月15日