サマリーMEDEL GALLERY SHU(千代田区内幸町1-1-1 帝国ホテルプラザ東京2F)では、7月4日(火)より7月16日(日)まで、早野樹(はやのいつき)・もりかわさくの二人展「過程と痕跡」を開催いたします。それぞれ、東京芸術大学大学院(早野)と多摩美術大学(もりかわ)に在籍中であり、絵画と陶芸作品を作成する気鋭の現代アーティストです。本展は陶芸作品とその制作過程で描いたドローイングの両方を展示して、それぞれがどのように影響しているのかを考察する機会です。これからの活躍が期待される若きアーティストの作品展示にご期待ください!展示概要二人の作家に共通するのはドローイングを陶芸作品と結びつけて制作を行なっているところです。ドローイングのように気が向くままの感覚で土を扱ったり、あるいはドローイングから現れた形を陶器に起こしたりなど、ドローイングから見出す“過程”と“痕跡”のようなものを作陶(陶器)に結びつけています。本展では、その“過程”と“痕跡”がお互いの作陶(陶器)にどう影響を与えているのか、どのよう見え方が変化するのかを考察する機会としています。二人の作品は、一見無造作で荒削りなフォルムながら、深い味わいを醸し出し、そのアンバランスなバランスが完成度をより高く感じさせる不思議な力で私たちを魅了します。二次元のアウトプットをさらに三次元へとトランスフォームさせ、その実体を賛美しつつ、それぞれのプロセスとの関係を捨て去ることはしない、それ以上に関係が深まるように見えてくる・・・この一連の創作がどのように私たちに迫り来るのか、大変楽しみな展示です。本展は二人もドローイングと陶器/彫刻作品を展示したします。これからの活躍が期待される若きアーティストの作品にご期待ください。早野樹早野樹 プロフィールフォト陶芸=器(用途性)ではなく、(文化的な受け皿)という解釈で制作しています。土という素材はプロセスによって触覚と身体の共鳴が起き、陶芸の本能的な魅力を自身の想う「アイドル像」に偶像崇拝的な形でアプローチし、昇華させることを試みています。それは「アイドル」の放つ精神的な魅力を、陶芸の性質に触れ感じ、何かを作りたいという人間の本能を土という物質で表現したいからです。1998年4月28日生まれ2022年東京藝術大学学部工芸科卒業、同大学美術研究科陶芸専攻中2018年東京藝術大学工芸科入学2019年陶芸専攻選択2021年安宅賞受賞2021年4月 手捻り作品をメインに制作。→日常にある陶器の価値観に対して、既存の陶芸の価値観から新しい価値観を生み出したいと考え、自身の感じる現代文化をモチーフに作品制作し始める。2022年2月 第70回東京藝術大学卒業修了展「キッチュ」→主に手捻り作品計90作品と、既製品を用いて床置きで展示。作品タイトルにある「キッチュ」は(ロウカルチャーの流行り)として、陶芸は元々ハイカルチャーの世界である。安価な既製品、瓶やペットボトル、現代における器として存在しているモノを現代の陶器と捉え、自身の作品である用途性を持った手捻り作品とオブジェを同じ空間に存在させる事で、現在の陶芸(用途性)に対する価値観や在り方に焦点を当て、「新しい価値観(概念的な器)とは何か」というテーマで展示。2022年 東京藝術大学学部工芸科卒業、同大学美術研究科陶芸専攻中→アイドルシリーズ制作開始(本展のメイン展示)ユニット(早野樹)不良娘上上(早野樹)トルソー6(早野樹)もりかわさくもりかわさくプロフィールフォト2001年東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科在学中。絵画と陶器を軸に制作をしている。最近では「良い部分」と「悪い部分」が如何に共生していくかというテーマで「ツノ」や「窓」といったモチーフを扱い、絵画や彫刻に起こしている。展示歴2021「memento mori」(新宿眼科画廊)2021「Liquitex the challenge 2021」(三鷹市芸術文化センター)2022「五美大交流展 小作品展」(3331 Arts Chiyoda 104ギャラリー)2022「3331ART FAIR 2022」(3331 Arts Chiyoda)2022「∴」(多摩美術大学八王子キャンパス)2022 「長亭gallery展2022」(changthing gallery)2023「FACE2023」(SOMPO美術館)2023「いい芽ふくら芽 in TOKYO 2023」(大丸東京)2023「五美術大学交流展」(銀座洋協ホール)2023「ARTISTNEWGATE ファイナリスト展」(あべのハルカス)2023「ACTアート大賞展2023受賞者展」(Art Complex Center)2023「第41回 上野の森美術館大賞展」(上野の森美術館)2023「geisai#22」(東京ビッグサイト)受賞歴2021「Liquitex the challenge 2021」リキテックス賞大学部門 受賞2022「長亭gallery展2022」入選2023「FACE2023」入選2023「第3回ARTIST NEW GATE」ファイナリスト選出2023「いい芽ふくら芽 in TOKYO 2023」アートファクトリー賞,YOD gallery賞2023「第41回 上野の森美術館大賞展」入選2023「五美交アワード」東京展賞2023「ACTアート大賞展2023」優秀賞作品(もりかわさく)作品(もりかわさく)作品(もりかわさく)作品(もりかわさく)ギャラリーインフォメーションMEDEL GALLEYRY SHU東京都千代田区内幸町1-1-1帝国ホテルプラザ東京2F info@medelgalleryshu.com 11:00〜19:00(最終日は17時まで)MEDELとは、日本語で「物の美しさをほめ味わうこと」を意味する「愛でる」からきています。唯一無二のアートを賞美し、慈しむという行為を介して、アーティストと鑑賞者、ギャラリーの間に喜びの行き交いが成立してほしいという想いを込め名づけました。“時代を共にする人々にとっての財産であり、未来の社会を照らす火である”とアーティストの活動・作品を定義し、人々の心に残る独創性に富んだスタイルの作品を鑑賞者と共に愛でつつ、次世代に残るようなマーケットや美術史的評価を確立してゆくことが当ギャラリーのミッションです。そのような私たちの活動を通して、独創的な表現を受け容れる多様な社会的風土の醸成に資することができれば、これに勝る喜びはありません。The word “MEDEL” is from the Japanese word “めでる,” which means "to praiseand appreciate beauty" in Japanese.We named the gallery MEDEL with the intention of creating a pleasant exchange between the artist, the appreciator,through the unique artwork.We define artists’ activities and works of art as "an inheritance for the people who share the same era and a fire that will light up the society of the future”, and we hope to establish a market and an art historical reputation that will last for the next generation while appreciating works of art with the viewers, which are full of originality and style that will remain in people’s minds.Through our activities, we are more than happy to contribute to the development of a diverse social culture that accepts creative expression.早野樹|Itsuki Hayano もりかわさく|Saku Morikawa Duo Show 過程/痕跡 July 4〜July 16, 2023 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年06月14日「原発事故当初、私たちはどれだけ放射線量があるかも知らされず、防げたはずの被曝をさせられました。私たちのデータを使って被曝を過小評価する論文を書くなんて許せない」そう話すのは、福島第一原発から北西約50~60キロに位置する福島県伊達市在住の主婦、佐藤千晶さん(仮名・49)。佐藤さんは昨年末、東京大学と福島県立医科大学(以下、県立医大)に対し、伊達市民の個人被曝データに関する論文に、倫理指針違反と、研究不正の疑いがある、と申し立てを行った。その論文は政府の被曝基準の参考資料になっている。著者は、原発事故直後から福島の被曝問題にかかわってきた、東京大学名誉教授の早野龍五氏と福島県立医大講師で、伊達市の市政アドバイザー・宮崎真氏だ。主婦の佐藤さんが、どのように東大名誉教授らの論文の問題点や不正を暴いたのか。その経緯を追った。「そもそも私は、伊達市が原発事故後に行ってきた被曝防護対策に、不信感を持っていました」伊達市は、全村避難となった飯舘村に隣接。市内には、年間被曝線量が20ミリシーベルトを超える怖れのある“特定避難勧奨地点”もあった。仁志田昇司前市長は、原発事故後、線量の高い順にA・B・Cの3エリアに分け、高い順に除染する計画を発表した。「私は、いちばん線量が低いCエリアに住んでいます。時間はかかっても、除染はしてもらえると思っていました」しかし、Cエリアの除染がされることはなかった。仁志田前市長は11年から子供を中心に、ガラスバッジと呼ばれる個人の線量を累積する線量計を配布。12年から1年間は、約6万人の全市民に配布し、個人線量を検証した。「仁志田前市長は、『国が除染の目安とする空間線量率、毎時0.23マイクロシーベルトを超えていても、個人の年間追加被曝線量に関しては、一般人の限度とされる年間1ミリシーベルトを超えない』として、Cエリアの除染を取りやめたんです」佐藤さんによると、そもそもガラスバッジを室内に放置していた人がほとんどだった。「子供はランドセルに入れっぱなしだったし、屋外授業のときは、先生が集めて1カ所に保管していたと聞きました。知人は車の中に吊していました。実際の被曝量より過小評価になるのは当然です」折に触れて、SNSでそのような問題点を指摘してきた佐藤さん。16年の春、佐藤さんに「リタイアした物理学者です。お伝えしたいことがあります」とフェイスブックでお友だち申請があった。高エネルギー加速器研究機構(KEK)の物理学者、黒川眞一名誉教授だった。黒川さんから「早野氏らが書いた論文が出るらしい」という噂を聞いた佐藤さんも、「またデータが利用される」と不安を感じたという。そんな黒川さんと佐藤さんが初めて会ったのは、17年の初めだった。それ以後、佐藤さんは、黒川さんに解説してもらいながら、論文を読み解いていく。佐藤さんは、論文の解析と並行して、市と両研究者がやりとりしたデータをすべて開示するよう、市や県立医大に次々と情報開示請求をかけていった。佐藤さんは入手した資料から、“倫理指針違反”に当たる事例をいくつも発見していく。「通常、こうした論文へのデータ提供に“同意”する人は約5割程度。にもかかわらず伊達市民の個人線量と航空調査による空間線量率との関係を示した第1論文(※1)には、ほぼ全伊達市民のデータが使われていました」(黒川さん)佐藤さんは、黒川さんの指摘を受け、ガラスバッジに同封されていた同意書を思い出し、過去に開示請求しておいた公文書を見直してみた。すると、市と研究者がやりとりした文書の中に、市が宮崎・早野両に渡した住民の個人線量データがあったのだ。「住民の個人情報は黒塗りにされていましたが、同意・不同意の欄があり、これは両研究者とも容易に見られるはずなんです」さらに、除染問題に熱心な高橋一由市議が議会で追及したところ、正式な同意者数が判明した。ガラスバッジを受け取った住民5万8,481万人のうち、同意者が3万1千151人。不同意者が97人、残りの2万7千233人は同意書が未提出。「早野・宮崎両氏は、同意のないデータが含まれていることを知っていながら、無視して使用した可能性があります。論文にデータを使う場合は、医学倫理規範に則って、事前に被験者に対して論文の内容を説明し、同意の有無を確認する必要があります。同意の確認をしなかったり、同意のないデータを使ったりすると、倫理指針違反です」(黒川さん)今回、早野氏らが誤りを認めた生涯の個人線量と除染の効果を検証した第2論文(※2)にも、倫理指針違反は当てはまる。「県立医大から、本研究について承認がおりる約3カ月前の15年9月、早野氏は、伊達市で開かれたICRP(国際放射線防護委員会)のセミナーに参加。すでに伊達市民のデータを用いて講演を行っていました」(佐藤さん)これだけにとどまらない。「両氏は、伊達市民の内部被曝と外部被曝の関係を示す論文を“第3論文”として書く予定だと『研究計画書』に記載しています。なのに、思った結果が出なかったのか、まったく違う論文を提出していた。これは重大な研究不正です」(黒川さん)また、論文をあとで検証しようとしても、それもできない状況にある。「早野氏らは、研究計画書に記された研究期間より1カ月も早く研究を終了し、その時点で、研究で使用したデータベースはすべて廃棄しています。倫理指針では、データはできるだけ長期間保管するように定めているのに、これも倫理指針違反です」(佐藤さん)黒川さんは第2論文の問題点を10個ほど指摘する批判論文を、18年8月に論文を発行した出版社に投稿。それは11月には早野氏にも送られたが、いまだに正式な返答はない。早野氏は先月8日、文科省の記者クラブ宛てに、「70年間の累積線量計算を3分の1に評価していた。初めて気づいた。意図的ではない」などと2枚の声明文を発表。一方、東大で本格調査が始まり、伊達市でも第三者委員会による調査が始まった。本誌の取材に早野氏は、「東大の本格調査や、伊達市の第三者委員会は始まったばかりなので、現時点で申し上げられることはございません」とメールで返答した。個人データを提供したとみられる伊達市は、「調査委員会で調査を進めているが、データ提供について不明な点があった」と回答した。論文共著者の宮崎氏は、「同意を得ていないデータが含まれていることは把握していなかった」。第2論文の誤りについては、「伊達市民及び住民の方々、関係者の皆様に深謝します。伊達市の行う第三者委員会に全面的に協力します」と、メールで返答した。第3論文が研究計画書通りに発表されなかったことについては「内部被曝調査の結果で、ほとんどの方から有意な数値が出ていない。(ごく一部の)有意な結果だけ用いたのでは代表性にかけるとの意見を伊達市からいただき論文化に至らなかった」と回答した。このように、疑惑の多い宮崎・早野論文を、放射線防護の参考資料として採用していたのが、原子力規制委員会の諮問機関でもある放射線審議会だ。放射線審議会は1月25日、「宮崎・早野論文には同意のないデータが使用されていた」として、参考資料から削除する決定を下した。しかし一方で、「学術的な意義において全否定されるものではない。本審議の結論には影響しない」といった見解を表明した。つまり、個人線量での被曝管理は過小評価にはつながらない、という宮崎・早野論文の結論を踏襲するということだ。今回の件に関し、最後に佐藤さんは決意をこう述べた。「伊達市民のデータを使って政府の政策に影響を与える論文を書いておきながら、紙切れ2枚で訂正した早野氏には、伊達市民の前で会見を開いて報告してほしい。このままではこのデータが次に原発事故が起きたときの世界基準にされてしまう。今ここに住んでいる人たちの人権を守るためにも、“がまん量”とも言われる被曝許容量が引き上げられないよう、これからも当事者として追及していきます」(※1)Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): 1. Comparison of individual dose with ambient dose rate monitored by aircraft surveys/Makoto Miyazaki and Ryugo Hayano/J. Radiol. Prot. 37 (2017) 1-12(※2)Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): II. Prediction of lifetime additional effective dose and evaluating the effect of decontamination on individual dose/Makoto Miyazaki and Ryugo Hayano/J. Radiol. Prot. 37 (2017) 623-634
2019年02月15日「とても頭の切れる方でした。だから、あの早野龍五氏が原発事故や被曝についてツイッターで発信していると知り、注目していたんです」こう語るのは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の物理学者、黒川眞一名誉教授。黒川さんは伊達市民の個人被曝データに関する論文について数々の誤りと問題点を指摘している。その論文の著者は東京大学名誉教授の早野龍五氏。共著者は福島県立医大講師で、伊達市の市政アドバイザー・宮崎真氏だ。黒川さんは40年ほど前、早野氏と共に素粒子物理学の研究をしたことがあるという。ところが早野氏が14年に出版した『知ろうとすること』(新潮文庫)を読んで仰天した。「彼はこの本で、あきらかにいくつかのウソを書いていた。たとえば、『福島原発事故のときより大気内核実験のころのほうが、放射性降下物は多かった』と述べている。しかし、私がデータを調べたら全く事実と異なっていました」こうした経緯から、早野氏が福島県伊達市民の被曝に関する論文を出す、と聞いた黒川さんは不安を感じていた。伊達市では、仁志田前市長が11年からガラスバッジと呼ばれる個人の線量を累積する線量計を、子供を中心に配布。12年から1年間は、約6万人の全市民に配布し、個人線量を検証した。仁志田前市長は、『国が除染の目安とする空間線量率、毎時0.23マイクロシーベルトを超えていても、個人の年間追加被曝線量は、一般人の限度とされる年間1ミリシーベルトを超えない』として、除染するはずだったエリアの除染を取りやめた。早野氏らは当時測った累積線量のデータを使って、伊達市民の個人線量と航空機調査による空間線量率との関係を示した論文(第1論文)や生涯の個人線量と除染の効果を検証した論文(第2論文)を発表している。それらの論文について黒川さんは「彼らの論文は、物理学の論文としての体をなしていない」と語る。「第1論文の最後部分にこんなことが書かれています。《各参加者が実際に住民登録された住所に住んでいたのか、(中略)ガラスバッジを正しく装着していたか不明である。(中略)それゆえ厳密にいえば、ガラスバッジで測定された値は、必ずしも実際の個人線量と等しいとは言えない。これは、この論文の限界であるといえる。しかしながら私たちは、それらが(中略)得られた結果に大きく影響しないと信じる。》」こんな文言があったら学部の卒論レベルでも落第するレベルだという。「彼らは自ら、参加者が登録された住所に住んでいたか、ガラスバッジを正しく装着していたか不明である、と論文の限界を認めています。にもかかわらず、そうしたことは論文の結果に大きく影響しないと“信じる”と言っている。物理学の論文で“信じる”などというあいまいな言葉を使ってはいけない。それに、結果に“大きく影響しない”というなら、“大きく”の誤差が、もとの3倍なのか5倍なのか、その数字と根拠を示さないといけません」そして論文の問題点をいくつか指摘してくれた。「伊達市民の個人線量と航空機調査による空間線量率との関係を示した、第1論文の図4(この記事では図A)を見てください。左から2番目に薄い黒丸だけの部分があります(1)。これは、統計において大きく外れた値のことで、ここでは99%以上の人の被曝線量が、ゼロ(不検出)だったことを示しています」5千人いたら4千950人の被曝線量がゼロというわけだ。こんなことは統計のゆらぎでは説明できないほど起こる確率が小さい。それなのにこのようなところが3つもあるのは、何らかの解析過程での誤りがあることはほぼ間違いがありません、と黒川さん。「先のようなおかしなところはいくつもあり、それらは結果的に個人の被曝線量を過小評価することになるのは間違いない。これをもとに政府の政策を決めるのはとんでもないし、それ以上に被曝を平均で考えるのがおかしいんです」図Aを再び見てほしい。「突き抜けている線があるでしょう(3)。おそらく年あたりに換算すると10ミリシーベルトの被曝する人が何人もいるはず。また、子供と大人では、被曝に対する耐性も違います。そこを考慮していないのが問題なんです」今回、早野氏らが誤りを認めた、伊達市民の、生涯の個人線量と除染の効果を検証した第2論文にも、「ねつ造と思われてもしかたない」という図や数値が複数あるという。そのひとつが、除染の効果が少ないことを示す第2論文の図6(この記事では図B)だ。黒川さんは指摘する。「図6は伊達市でもっとも線量が高いAエリアに住んでいた425人を対象に、事故から7~38カ月の個人の被曝線量と、空間線量率(曲線)の関係を示しています。除染前の、事故後17カ月間と、除染後の、事故後23ヶ月を比べると、後者のほうが、個人線量の分布を示す“箱”の位置が急に低くなるのがわかります」これは除染の効果があったことを示している。「ところが図6では、本来の計算式から導き出される値より約20%低い空間線量率(下の曲線)がかぶせられていて、個人線量の中央値が除染後に空間線量と同じくらいになってしまい、除染の効果がわかりづらくなっています。しかも、なぜ約20%低く見積もったのか、論文にその根拠も示されていません」黒川さんは、「少しでも除染の効果を低く見せるための印象操作ではないか」と推察する。以下は、その根拠だ。「論文には、この曲線は空間線量の中央値と係数0.10を使って描いたと一応説明されています。ただ、そうだとするとおかしなことになります。論文には空間線量の平均が2.1μSv/hであると書かれているからです。図から計算すると中央値は3.3μSv/hとなります。このような被曝線量の分布では、中央値は平均値より必ず小さくなければならないからです」そもそも、この時期は、Aエリアに住む多くの住民は避難していたので、正しく評価することは難しい。実際に、伊達市発行の『3年間の記録』にも、12年1月時点で、Aエリアの特定避難勧奨地点の住民68%が避難しているとある。黒川さんは第2論文の問題点を10個ほど指摘する批判論文を、18年8月に論文を発行した出版社に投稿。それは11月には早野氏にも送られたが、いまだに正式な返答はない。早野氏は先月8日、文科省の記者クラブ宛てに、「70年間の累積線量計算を3分の1に評価していた。初めて気づいた。意図的ではない」などと2枚の声明文を発表。一方で東大でも本格調査が始まり、伊達市でも第三者委員会による調査が始まった。本誌の取材に早野氏は、「東大の本格調査や、伊達市の第三者委員会は始まったばかりなので、現時点で申し上げられることはございません」とメールで返答。個人データを提供したとみられる伊達市は、「調査委員会で調査を進めているが、データ提供について不明な点があった」と回答。論文共著者の宮崎氏は、「同意を得ていないデータが含まれていることは把握していなかった」。第2論文の誤りについては、「伊達市民及び住民の方々、関係者の皆様に深謝します。伊達市の行う第三者委員会に全面的に協力します」と、メールで返答した。第3論文が研究計画書通りに発表されなかったことについては「内部被曝調査の結果で、ほとんどの方から有意な数値が出ていない。有意な結果だけ用いたのでは代表性にかけるとの意見を伊達市からいただき論文化に至らなかった」と回答した。このように、疑惑と偽りの多い“宮崎・早野論文”を、放射線防護の参考資料として採用していたのが、原子力規制委員会の諮問機関でもある“放射線審議会”だ。放射線審議会は1月25日「宮崎・早野論文には同意のないデータが使用されていた」として、参考資料から削除する決定を下した。しかし一方で、「学術的な意義において全否定されるものではない。本審議の結論には影響しない」といった見解を表明した。つまり、個人線量での被曝管理は過小評価にはつながらない、という“早野・宮崎論文”の結論を踏襲するということだ。黒川さんは強い口調でこう述べた。「早野さんは、私の反論論文を読んでいるわけだから、なんの反応もないのはおかしい。学者なら早く、私に対してきちんと回答するべきです」
2019年02月15日有機食材宅配で知られる大地を守る会では、放射能問題の専門家を招いて、消費者のための放射能連続講座を開催中。次回の講座は7月21日に開かれる。この講座は、昨年3月12日に発生した東京電力福島第一原発の事故以降、いまだに続く放射能問題に対する消費者の不安を、少しでも解消するために企画されたもの。これまで合計231名(第1回122名、第2回109名)が参加するなど、高い関心を集めている。消費者の関心の高い6つのテーマを設定し、汚染の実態と今後の予測、海の汚染状況、低線量内部被ばくの問題など、それぞれの専門家が講演を行う。7月21の第3回は「測定を市民のために~陰膳法から学ぶ~」がテーマ。各地の自治体で取り組みの始まっている「給食まるごとセシウム検査」など、放射能測定機器を私たちの生活にどう生かすべきかを学ぶ。参加希望の人は「大地を守る会公式ホームページ」より申し込みを。【第3回イベント概要】 ■タイトル:「測定を市民のために~陰膳法から学ぶ~」 ■講師:早野龍五氏(東京大学大学院理学系研究科教授) ■コーディネーター:津田大介氏(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト) ■日時:7月21日13:30~16:00 ■場所:千代田区立日比谷図書文化館 ■参加費:大地を守る会の宅配会員・ウェブストアユーザーは無料。非会員は500円。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年07月13日