旗揚げから31年目を迎えた演劇集団キャラメルボックスが、劇団史上初の「2時間の作品を2作品、同一キャストで上演する」という企画にチャレンジ。8年ぶりの再演となる『きみがいた時間 ぼくのいく時間』が2月20日、新作『フォーゲット・ミー・ノット』が22日、大阪・サンケイホールブリーゼにて幕を開けた。キャラメルボックス チケット情報両演目は、SF作家・梶尾真治の短編小説シリーズ『クロノス・ジョウンターの伝説』を原作に作られた物語で、どちらも、物質を39年前の過去に飛ばすことができるマシン“クロノス・スパイラル”を使ったタイムリープものだ。『フォーゲット~』は、『きみがいた時間~』ともリンクする設定で描かれ、両作で同一人物を演じる役者がいるなど、2作を同一キャストで上演することの意味や、キャラメルボックスだからこそできることを追求しているのがひしひしと伝わってきた。『きみがいた~』は、クロノス・スパイラルの研究員・秋沢里志(阿部丈二)が、交通事故で亡くした妻・紘未(林貴子)を助けるべく、クロノス・スパイラルで39年前にタイムリープする物語。何よりも研究が一番大事だった里志が、紘未を亡くした後はただ紘未を救うために生きていく。里志を演じる阿部の演技は、時に胸が苦しくなるほど真に迫るものがあり、その切なさをまとった姿や、老け役にもリアリティを持たせて多くの観客の涙を誘う。また、里志の妹・真帆役の渡邊安理が狂言回し的な役どころを担い、心地良いテンポ感で物語を運んでいく他、里志を囲む人間たちが笑いどころもたっぷりに、緩急のある展開で観る者の心を揺さぶっていく。一方、新作の『フォーゲット~』は、記憶を失った男・春山恵太(筒井俊作)を中心に、過去と現代を交錯させながら物語が展開。登場人物たちの服装や話す内容が観客のヒントになり、春山が何者なのか、なぜその場所にいるのか、それが明確になるまでは観る側も推測していく面白さがあり、引き込まれていく。本作で描かれているのは、親が子を、子が親を思う気持ち。それぞれにいろんな葛藤、苦悩、後悔を抱えながら、それでも前向きに生きていこうとする様が胸に響く。さまざまな年代、さまざまな目線で感情移入ができる物語だ。『きみがいた~』ではコミカルな役で笑わせた筒井は、本作では真っ直ぐな主人公。また、『きみがいた~』で頭の固い研究員を演じた阿部が、本作では同役を演じると共に、笑いを誘う役どころも担うなど、キャラクターの違いが楽しめるのもこの企画の面白いところ。「人が人を思う気持ち」をブレずに描き続ける同劇団の物語に心動かされると共に、若手からベテランまでが躍動する劇団員の層の厚さを、改めて感じさせられた。大阪公演は2月24日(水)まで、東京公演はサンシャイン劇場にて3月11日(金)から27日(日)まで上演。チケットは発売中。取材・文:黒石悦子
2016年02月22日梶尾真治の人気小説『クロノス・ジョウンターの伝説』(徳間書店刊)を舞台化したキャラメルボックスのタイムトラベルストーリー “クロノス・シリーズ”の最新公演が、「キャラメルボックス 2016ダブルチャレンジ」と銘打ち、2月・3月に大阪・東京で上演される。キャラメルボックス チケット情報ダブルチャレンジとは2時間の物語を同一キャストにて2作同期間に上演する企画で、劇団史上初の試み。今回の2演目には、初演時に上川隆也主演作として上演された『きみがいた時間 ぼくのいく時間』及び、同じく“クロノス・シリーズ”を原案とした劇団主宰・成井豊渾身の書き下ろし最新作『フォーゲット・ミー・ノット』が選ばれた。両作には39年前の過去へ跳ぶことが出来るタイムマシン「クロノス・スパイラル」が登場する。それぞれの主人公がどのような想いを抱えて過去へと跳ぶのか……。今公演の出演者、西川浩幸、阿部丈二、筒井俊作の3名に作品へ寄せる胸の内を訊いた。8年ぶりの再演となる『きみがいた時間 ぼくのいく時間』にて主人公・秋沢里志を演じる阿部丈二は「秋沢が常に中心にいるお話なので、それに対する責任感はあります。と同時に、今の僕達が再演する意味や価値を必ずどこかに含ませないといけないので、基本的には初演ありきですが、その中に自分がやる意味を探していこうと考えています。初演をなぞる気は全くありません」と力強く語る。また、クロノス・シリーズ最新作にしてシリーズ史上重要な位置付けとなる『フォーゲット・ミー・ノット』にて主人公・春山恵太を演じる筒井俊作は「恵太は過去へ辿り着いた瞬間に記憶喪失になってしまうんです」と、この役へのアプローチの難しさを吐露し、その上で「稽古場で助け船を出してくれる仲間達に感謝しつつ、毎日奮闘しています」と告白。すると、西川浩幸は「新しい筒井俊作が見られる絶好のチャンス」と後輩を鼓舞しながらも、「成井の今やりたいことが凝縮されている脚本なので、自分達もより理解を深めていきたい」とベテランらしい言葉を口にした。SFドラマの高揚感とヒューマンドラマの熱量をミックスさせた独自の世界観が人気のクロノス・シリーズ。「シリーズ史上重要な位置付け」という言葉の意味は、是非劇場で体感して欲しい。キャラメルボックス 2016ダブルチャレンジ [クロノス・ジョウンターの伝説]『きみがいた時間 僕のいく時間』『フォーゲット・ミー・ノット』は2月20日(土)から24日(水)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて、3月11日(金)から27日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文:園田喬し
2016年02月12日