言葉や文字によって表現される、色気。その秘密について、新潮社編集者・西山奈々子さんにお話を聞きました。文芸編集者が考える、色気を感じる文章の秘密。語られない部分を想像する、行為そのものが色っぽい。女性作家の登竜門として知られる、「女による女のためのR-18文学賞」。事務局を担当する西山さんは以前ノンフィクション雑誌にいたそうで、異動当初はノンフィクションと文芸の表現の差を感じたと言います。「ノンフィクションの文章は、物事を正確に伝えることが第一。一方、文学は、何を書いて何を書かないか、そのメリハリが大切だと思います。厚みをもたせて描写される部分と、何かあるはずなのに一切描かれない空白の部分、そのコントラストが読者の想像を掻き立てる。よく“行間を読む”といいますが、色気はこの“行間”からこそ匂うのでは」“この文体の文章が色っぽい”などの定型がないところも、文章表現のおもしろさ。「私は川上弘美さんの音にしたときの響きが豊かな文章に艶っぽさを、三島由紀夫の文章には耽美な色気、宮沢賢治の文章には抑圧された色気を感じます。ぜひ本を通じて、多種多様な色気と出合ってほしいですね」少し斜に構えた視線が、読者の妄想を掻き立てる。「新人賞の原稿を見ていると、色気のある文章を書くには削ぎ落とす勇気が必要だな、と思います」西山さんいわく、すべてを説明するのは小説では野暮になる。色気を感じさせる文章には、思わせぶりな仕掛けがある、とのこと。「プロの作家は、想像の種になるエッセンスを上手に選んで読者に与え、書きすぎることがない。読み手はそのエッセンスを元に、書かれていない部分はもちろん、後日談まで想像したり…。さらに物事を真正面からではなく、少し斜に構えた目線から切り取られていると、“思わせぶり感”が上がり、色っぽくなると思います。それによって読者はよりヤキモキさせられますし、それこそが文章から色気を感じる理由なのでは」作者と読者の世界で、秘密を共有する悦び。文章を読むという行為には、どこか“覗き見”のような感覚があるのでは、と西山さん。「同じ物語でも、映画やドラマなどは大勢の人が関わって作り上げられていて、どこか“公に見せる”ことが意識されている気がします。でも小説の場合、読んでいる間は作者と読者しか存在しないので、そこに密な空気が生まれます。閉じた世界で、作者が書いた秘密を共有する感じ。少し背徳感がありますよね。そう考えると、読書自体がとても色っぽいし、ドキドキする行為だと思います」他者の視点が入ってこない分、一人で思い切り想像の翼を広げられるのも、読書の楽しみのひとつ。「本が1冊あればどこでも色気を味わえる、手軽さも魅力です」短編アンソロジーは新しい色気に出合う扉。何を色っぽいと感じるかは人それぞれ好みがあるもの。ベクトルが同じ作家と出会った瞬間は、それこそ至上の瞬間だと西山さん。どうすれば、自分好みの“色気のツボ”を持つ作家と出会えるのか。「おすすめしたいのが、あまり読んだことのない作家の短編小説が収録されているアンソロジー。短い小説は文字量が少なく、物事を説明する余地があまりないので、長編小説より色気を孕みやすいというのがまずひとつの理由。また、色気は相性なので、合わない相手に努力をしたところで合わないものは合わない(笑)。我慢しながら向かい合うより、別の作家を試してみたほうがいいと思う。短編アンソロジーならよりどりみどりなので、おすすめです」にしやま・ななこ新潮社編集者。「女による女のためのR-18文学賞」を担当。4月中旬に第19回の受賞者を発表予定。※『anan』2020年4月1日号より。イラスト・micca取材、文・河野友紀(by anan編集部)
2020年03月29日毎月1日、ママのひとり時間に読みたい素敵な本と、おすすめの新作絵本を紹介する連載企画がスタート! 今月はママにおすすめのお弁当やつくりおきなどのレシピ本3冊と、子どもと一緒に読みたい楽しい3冊の絵本をご紹介します。読書は、ママのリフレッシュする時間にも、親子のコミュニケーションを深める時間にも、とってもいいものです。ぜひ、読んでみてくださいね。ママにおすすめの新刊_01『にぎりっ娘。のはじめての子どもべんとう』にぎりっ娘お弁当動画人気No.1を誇る“にぎりっ娘”さん初の著書。冷蔵庫にあるものでつくる、簡単・可愛い・等身大のお弁当レシピは真似したくなること必至。子どもが好きな味付け“甘み”を活かしたレシピは、大人もごはんが進むものばかりです。新入園・入学の前にチェックしておきたい一冊。『にぎりっ娘。のはじめての子どもべんとう』にぎりっ娘 /学研(Gakken)1/29(水)発売ママにおすすめの新刊_02『一生使えるつくりおきBEST』スガつくりおき歴20年! 月間アクセス数140万を超える人気「つくりおきブロガー」スガさんによる新刊。一生つくり続けたい158のレシピは、時短・節約・体にやさしいと3拍子揃ったものばかり。家族の健康を考えて、一家に一冊は置いておきたい保存版。『一生使えるつくりおきBEST』スガ/扶桑社1/30(木)発売ママにおすすめの新刊_03『果実とパンの組み立て方』ナガタユイ人気のフルーツサンドをはじめ、ジャムやコンポートを使ったサンド、タルティーヌ、ナッツやドライフルーツの合わせ方など、パン好きなら絶対に知っておきたい鉄板ルールを紹介。おいしさを引き出す果物の切り方、加熱や乾燥による味や用途の変化なども解説してあるので、プロを目指す人も必見の一冊。『果実とパンの組み立て方』ナガタユイ/誠文堂新光社 2/10(月)発売キッズにおすすめの新刊_01『100』名久井直子小さな数しか数えられない子に、「100ってどのくらい?」を伝えるビジュアル絵本。どんぐり、貝がら、輪ゴム、金魚、積み木。暮らしの中にある、いろいろなものの100個を、見て感じて楽しもう! 「風船100個をふくらます」「スーパーボール100個を弾ませる」など、撮影時の苦労を想像して見るのも◎。『100』名久井直子 作、井上佐由紀 写真/福音館書店2/10(月)発売キッズにおすすめの新刊_02『もしものせかい』ヨシタケシンスケ『りんごかもしれない』『りゆうがあります』などで人気の絵本作家・ヨシタケシンスケさんの新刊。ある日、大切なオモチャが“もしものせかい”に行ってしまうことに。大事なものを失った時や思いがけない別れが訪れた時、「どうやって心に空いた穴を埋めたらいい?」を考える、やさしさに満ちた心温まる絵本。『もしものせかい』ヨシタケシンスケ/赤ちゃんとママ社1/28(火)発売キッズにおすすめの新刊_03『あぶない!どーする?』穂髙順也動物学者であり、『ざんねんないきもの事典』シリーズの今泉忠明さんが監修を担当。敵が現れた時、動物たちはどんな身の守り方をするの? ヤマアラシ、フグ、アルマジロ、スカンクが登場し、個性的な防御の仕方を紹介。ページを開く前に、どんな身の守り方をするか想像をめぐらせても楽しい!『あぶない!どーする?』穂髙順也 著、西藤 燦 絵、今泉忠明 監修/岩崎書店 1/30(木)発売それでは、来月もお楽しみに。edit&text/Yukiko Takeda
2020年02月01日松坂桃季さん主演で映画化されたベストセラー『ツナグ』の続編『ツナグ 想い人の心得』について、作者の辻村深月さんに話を聞きました。あなたが会いたいのは誰?あの名作の続編登場。松坂桃季さん主演で映画化もされ、ベストセラーとなった辻村深月さんの『ツナグ』。一度だけ、一晩だけ会いたい死者に会わせてくれるツナグという使者をめぐる連作長編小説だ。このたび待望の続編『ツナグ 想い人の心得』が刊行された。辻村さんが続編を書くのはこれが初めて。「いろんな人が『ツナグ』を読んでくださって、“自分だったらこの人に会いたい”“死者に再会を拒否されたらどうなるんですか”といったフィードバックがすごくあったんです。1年に1編くらいのペースで続編を書いてきました。1年間他の仕事をしながらツナグのことを考えて温め続け、締め切りがきたら2日間で一気に書きあげるのは、すごく充実感がありました」ツナグの少年・歩美にまた会えると期待を高めてページをめくると、「おやっ?」と思うはず。「私も小説の続編を読んで“あれっ”となって惹き込まれた経験がたくさんあるんです。だから自分でもやってみたかったんです(笑)」前作から7年後という設定の本作。各編、設定や展開に工夫あり、深いドラマあり。どの話も胸打たれる場面が必ずあり、改めて著者のストーリーテラーっぷりが堪能できる。ツナグに会えるかどうかは、“ご縁”次第だが、この続編自体が、さまざまな“ご縁”で生まれている。「映画化の影響は大きいですね。公開当時キャストの方々がよくインタビューなどで“死んだ人に会えるとしたら誰に会いたいですか”と聞かれていて。その時、松坂桃季さんが宮本武蔵、桐谷美玲さんが沖田総司と答えていたんです。歴史上の人物という発想が自分の中になかったので、そういう話も書こう、と思いました。ただ、あまりに時代が異なると同じ日本語であっても言葉が今と異なるかもしれない。そこをどう見せるかも考えたかった」一方、以前『東京會舘とわたし』を執筆した際の取材で“ご縁”があり、亡くなった娘に会いたいと願う母親の話が生まれたという。「戦時中に東京會舘で結婚式を挙げた女性にお話をうかがっていたら、結婚後お嬢さんを2人産んで、でもお一人は成人後に亡くなったそうで…。娘さんを亡くした後の人生を聞いているうちに、どうにかして『ツナグ』でその方とお嬢さんを会わせたい、という気持ちに駆られ、書かせてほしいとお願いしました」実は『ツナグ』の執筆中、辻村さん自身も担当編集者の死を体験した。「血縁以外で、そばにいて当たり前だと思っていた人がいなくなってしまうのは初めてのことでした。身近な人を喪うとはどういうことか、歩美と一緒に考えたので、当時の気持ちもすごく入っていると思います」本作では、社会人となった歩美の内面的な前進も読みどころだ。「前作で、歩美は生きている人間の都合で死者を呼び出していいのか悩みますが、それは私の悩みでもあったんです。でも次第に、みんなが再会するのは死者本人というより、依頼者が会いたいと望んでいるその人の姿、鏡のような存在なんだと思えてきて。そう考えた時、死者に対して“どうぞいらしてください”と書こうと、作者の心も決まりました」またツナグに会えたことが、心から嬉しくなるこの続編。「書き終えたあとも、歩美や、新しい登場人物の今後も気になって。時間がかかるかもしれないけれど、ライフワークとして書き続けていきたいと思うようになりました」辻村深月『ツナグ 想い人の心得』顔も知らない父親、戦国時代の領主、最愛の娘…。死者との再会を望む人々と使者ツナグの物語。前作未読でも大丈夫。でも、2作合わせてぜひ。新潮社1500円つじむら・みづき1980年生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞し、デビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、翌年『鍵のない夢を見る』で直木賞、‘18年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。ほかに『青空と逃げる』『傲慢と善良』など著作多数。※『anan』2019年12月4日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年11月29日村田沙耶香さんの新作『生命式』は、2009年~’18年の間に発表した短編を選りすぐった作品集。「読み返してみて、昔からこんなことを考えていたなとか、今に繋がる内容だなと思うものも多いですね」いちばん古い作品「街を食べる」は、東京に住む主人公が、街で摘んだ雑草を食べようとする話。「私が千葉に住んでいた頃は、家族が近所で山菜を摘んできて調理していました。でも東京に来てからは、道端の草を食べるのには抵抗がある。その生理的な嫌悪感はなんだろう、と思ったのがきっかけです」村田さんはいつも、自分の中の固定観念や常識を疑っている。「自分の中にある常識を破壊するために、小説で実験をしているところがあります。短編は思い切った実験ができるのがいいですね」人に対する嫌悪感のない女性が主人公の「パズル」、自分よりも年配の人を書きたかったという「夏の夜の口付け」「二人家族」、女の子の部屋のカーテンの視点で綴られる「かぜのこいびと」…。おとぎ話のような「大きな星の時間」は、NHK Eテレの番組『おやすみ王子』で吉沢亮さんが朗読した一編。「依頼があった時に、吉沢さんが王子様の格好をして読むと勘違いしておとぎ話風のものを書きましたが、実際は彼氏が彼女に朗読するという設定でした(笑)。寝る前に読むお話なのでグロテスクな描写は避けたのですが、薄気味悪い話になってしまいましたね(笑)」表題作「生命式」は2013年発表。亡くなった人の肉体を調理してみんなで食すという儀式が描かれる。「こんな変なことを書いたら怒られるかなと思い、おそるおそる締め切りより半月ほど早く提出したら、担当編集者さんがノリノリで、参考にと料理の本を送ってくれました(笑)。他にも受け入れてくれている人が多くて、小説ってなんでもできるんだなってしみじみ感じて、転機になりました。ここから『殺人出産』や『消滅世界』に繋がっていきました」死んだ人間の毛髪や骨を服やインテリアに使用することが当たり前となった社会が舞台の「素敵な素材」、文化や環境による食生活の断絶をブラックなオチで語る「素晴らしい食卓」。読者がぐっと身近に感じるのは「孵化」なのでは。幼い頃から、所属するコミュニティによって異なる人格を演じてきた女性の物語だ。「私も子どもの頃は今より内向的で、でもバイト先では“しっかり者”、友達からは“ほんとにアホ”と言われたりしてきました。そうすると、みんなと繋がるFacebookで、どの人格の文体で書いたらいいのか分からなくて。他の人はどうしているのかな、という妄想があってできた短編です」グロテスクなものからふんわりした作品、ユーモラスなものまで、著者のエッセンスが詰まった一冊。「作家の多面性の部分と、何かゆるぎない部分があるんだなということと、両方感じてもらえるといいなと思っています」むらた・さやか作家。1979年生まれ。2003年『授乳』で群像新人文学賞優秀賞受賞。’13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、’16年『コンビニ人間』で芥川賞受賞。『生命式』人が亡くなると行われる奇妙な儀式を描く表題作のほか、世の中のタブーを覆す世界を提示し、固定観念を揺るがす12編を収録。河出書房新社1650円※『anan』2019年10月30日号より。写真・土佐麻理子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年10月23日駆け出しの脚本家・甲斐千尋は気鋭の映画監督・長谷部香から脚本の題材の相談を受ける。それは、千尋の少女時代に故郷で起きた一家殺人事件についてだった――湊かなえさんの新作『落日』は、創作というテーマとミステリーが絡み合う、読み応え満点の長編だ。凄惨な事件を映画化しようとする監督と脚本家が見つける真実とは。「私はよく、編集者から一言投げてもらって、そこから話を作るんです。今回は、版元の社長から“裁判”、担当編集者から“映画”という言葉をいただき、なら裁判シーンのある映画を作る話にしようと思いました」(湊かなえさん)なんとも意外な出発点だが、「自分の小説が映像化された時、みんな同じ方向を見ているようで、ちょっとずつ違うんだなと気づいたことがあって。それで、監督は真実を知りたいという人物、千尋は自分の見たいものだけを見たいという人物にして、それぞれなぜその気持ちが強いのかを考えていきました」実は香は一時期、その街でのちに殺される一家の隣に住んでいたことがある。香が真相を知りたがる一方、千尋は事件にさほど思い入れがない。「自分の身近で事件が起きたといえば、いろんな情報を知っていると思われがち。でもそうとは限らない。田舎での事件の伝わり方やとらえ方の違いも書きたかったところです」少しずつ調べを進めていく千尋たちにも、実は複雑な過去がある。それが少しずつひもとかれ、二人の創作に対する姿勢や事件との関連も浮かび上がる。この有機的な繋げ方が、まさに手練れの技。また、本作のために、はじめて裁判を傍聴したとか。「ドラマのように真実がさらけだされるのかと思ったら、実際には報告会のよう。加害者の本当の気持ちは、本人が語らない限り誰も知りえない。そこを考える役割を果たすのが、映画や小説なのかなと思いました」事件の真相が見えてきた時、2人の女性の胸によぎるのは、絶望ではない。『落日』というタイトルは最初から頭にあったという。「私は舞台『屋根の上のヴァイオリン弾き』の劇中歌の<サンライズ・サンセット>が好きで。日が昇って日が沈む、人の営みはその繰り返しだという歌です。再生に繋がる一日の終わりもあるんじゃないかと思ってこのタイトルにしました」そう、本作は胸を熱くさせられる、再生の物語なのだ。湊かなえ『落日』かつて小さな町で起きた、兄が両親と妹を殺した事件。真相を知ろうと調べ始めた監督と脚本家は、やがて自分自身の人生と向き合う。角川春樹事務所1600円みなと・かなえ1973年生まれ。2007年「聖職者」で小説推理新人賞を受賞、同作収録の『告白』が話題に。以降ヒットメーカーとして活躍。‘16年には『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞。※『anan』2019年10月2日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年10月01日水墨画家で小説家の砥上裕將さんに、デビュー作『線は、僕を描く』についてお話を聞きました。水墨画の世界へ足を踏み入れた青年。芸術×青春の鮮烈なデビュー作。墨の濃淡だけで鮮やかな森羅万象を描き出す。そんな芸術の魅力と奥深さに引き込まれるのが砥上裕將さんのメフィスト賞受賞作にしてデビュー作『線は、僕を描く』。王道の青春小説であり、極上の芸術小説でもある本作のモチーフは水墨画。実は砥上さん自身が水墨画家だ。「学生時代、大学で水墨画の揮毫(きごう)会があったんです。面白いなと思って質問したら、巻き込まれる形で自分でも始めていた流れですね」巻き込まれたというのが本作の主人公、霜介(そうすけ)と似ているかも?大学生の彼はひょんなことから水墨画の巨匠・篠田湖山(しのだこざん)に気に入られ、内弟子になることに。それに反発した湖山の孫、千瑛(ちあき)は霜介に勝負を申し出て…。水墨画のトリビアがちりばめられるなか、成長していく彼らの姿が活き活きと描かれる。水墨画といっても画風もさまざまであるところが興味深いが、「抽象と具象、どちらを心掛けたらいいのかというのは絵を描く人間が陥りやすい罠。答えはないですよね。ただ、水墨画はもともと禅の修行で、心を治めるために自分の内面を描くものだったんです。発達するにつれ技巧を重視する画風が生まれ、対立構造が生まれた。その対立を物語の中で書こうと思いました」霜介や千瑛以外の登場人物たちも魅力的。特に篠田門下の野性的な西濱と完璧な技術を持つ斉藤という青年は、女性に人気が高いのだそう。「実は彼らの外見については妹が考えたものなんです(笑)。特に斉藤は妙に人気があってびっくりです」そして魅せられるのが、描く過程や完成した絵の描写。「点をひとつ加えるだけで全体のバランスが変わってばっと景色が広がることがある。それは魔法のように見えることがあると思います」読めばきっと、水墨画に興味が湧くはず。それにしても、霜介に勝算はあるのか。巨匠に目をつけられた彼は、他の人と何が違うのだろう?「素直さですね。言われたことを素直に聞き入れて反応できることが大きな才能だというのは、あらゆる技芸に言えると思います」霜介と千瑛のライバル関係とその勝負の行方も気になるところ。最後まで読者を楽しませてくれる。「明るく温かい作品を書いていきたい」と語る砥上さん、今後も要注目です。砥上裕將『線は、僕を描く』交通事故で両親を亡くし孤独感を抱く霜介。ある日、アルバイト先の展覧会会場で水墨画の巨匠・篠田湖山に気に入られ、内弟子にされるが…。講談社1500円とがみ・ひろまさ1984年生まれ。福岡県出身。水墨画家。本作で第59回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。ちなみに本作の登場人物で自分に一番近いのは、霜介の友人の古前君なのだとか。※『anan』2019年8月7日号より。写真・土佐麻理子(砥上さん)中島慶子(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年08月12日「ずっと女の一代記を書いてみたかったんです。一人の人ではなく、立場の違う3人の人生について書きたいなと思っていました」窪美澄さんの話題の新作『トリニティ』は、1960年代に創刊された新雑誌編集部で出会う、3人の女性の人生を濃密に描く長編。50年前、出版社で出会った3人。生き方を模索した女性たちの物語。「女性が生まれ育ちに関係なく、才能があれば働いていける時代の始まりが、‘60年代くらいからという気がします」ただ、物語は現代から始まる。就職したが挫折した奈帆という若い女性が、祖母の知人で元ライターの登紀子から来し方を聞く。売れっ子だった登紀子、新雑誌の表紙挿画に大抜擢されたイラストレーターの妙子、編集部で雑務を担当したのち結婚退社した鈴子。出版社で出会った3人の人生がひもとかれていく。「登紀子や妙子は当時活躍された実在の方と重なる部分もありますが、小説に書いた人生は私の創作です。鈴子はフィクションの人物で、女性は24歳までに結婚しろという風潮があった時代、専業主婦を選んだ人も登場させたかったんです」鈴子が順調に家庭を築く一方、登紀子や妙子は忙殺されながらも仕事や恋や結婚、出産の何を選び優先するかという問題に直面する。「妙子は全部手に入れたがる自分に罪悪感を抱いている。今の女性はそうした罪悪感は薄いかもしれませんが、周りを見ると35歳前後で出産する女性が多くて。ある程度仕事ができるようになるまで子育てする気になれない状況があると思う。自分の人生自分で選んでいるつもりでも、時代ごとの社会的な要因に左右されているなと感じます」印象的なのはデモの場面。騒乱にまみれ、3人は男性たちへの不満を叫ぶ。「女を馬鹿にするな!」と。「編集者に“ここは女性たちの祝祭の夜にしてください”と言われて。私自身、今まで男性に馬鹿にされたといっぱい思い出して、かさぶたをめくられる気持ちでした(苦笑)」登紀子たちの苦悩は、今もあまり変わらないのかもしれない。でも、「彼女たちは、その後の女性たちが生きていく線路を少し敷いたと思う。奈帆という現代の女性を登場させたのは、そのバトンは繋がっていくんだ、と書きたかったからです」バトンはあなたにも渡されている。『トリニティ』 ‘60年代に出版社で出会った鈴子、登紀子、妙子の3人。仕事、恋、結婚、子育て―欲しいものを求めてあがき、生き抜いた彼女たちの人生とは。新潮社1700円くぼ・みすみ1965年生まれ。‘09年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞受賞。‘11年『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞、‘12年『晴天の迷いクジラ』で山田風太郎賞受賞。※『anan』2019年5月29日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2019年05月23日あなたは、“母親”についてどれだけのことを知っているだろうか?生まれたときから身近に感じていたら、感覚的には知っているつもりになるかもしれない。でも、パーソナルな情報を思い出そうとすると、実はあやふや…。その“母親”についての知識を直球で問うのが『母の日テスト Dear Mom』である。いちばん近くにいた人と“文字”を介して、再び出会う日。昨年、「母の日」をまえに、西武・そごうが公式サイトで公開した「全国一斉母の日テスト」の動画が話題となった。母親に関する100の質問と、その解答への母親からのコメントのやりとりは、温かな笑いと感動を生んだ。そのテストをもとに作られたのがこの本である。設問は、「あなたの母の年齢」から、「あなたの母がじつは好きだったアイドル」など、事実から母の胸中まで、実に幅広い。答えているうちに、そもそも聞いたこともなかったり、いかに知らないことが多いかと呆然とする人も続出するだろう。それと同時に、親子の会話の多くが、親から子への問いかけと子から親への社会への疑問で成立していたことにも気づくかもしれない。この本の楽しみは、自分で書き込むことはもとより、母親による答え合わせで倍となる。昨年の例をみると、そこには、甘い採点や、容赦ないコメント、思いがけない突っ込みも…。文字を介すると、独自の愛情表現がにじむような余白が生まれる。書籍化にあたり、自由に書ける往復書簡や質問項目もプラス。コミュニケーションツールとして、より深く踏み込める作りとなっている。再び手元に戻ってきたときには、自分の知らなかった一人の人間としての“母”が浮かび上がるだろう。今年は、5月12日が「母の日」だ。今更、深く語り合うのが照れくさい人ほど、この本を使ってみてはどうだろうか。互いに書き上げる過程や、世界で一冊のこの本が完成した瞬間から、相手への新たな問いかけや、答えが生まれる。そこから、また新たな母の日の物語が始まっていく。『母の日テストDear Mom』100の質問のほか、母との思い出を振り返ったり、これからを考えるページもあり完成が楽しみになる。カバーはメッセージカード付き。祥伝社1500円※『anan』2019年5月15日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2019年05月11日読書猿さんの著書『問題解決大全』から、選択に役立つ6つのメソッドのうちのひとつ「フランクリンの功罪表」を紹介します。選択の際、賢人たちが残したメソッドをぜひ活用してみてください。「やるか」「やらないか」のどちらが有益かクリアに(例:買うか、買わないか。転職をするか、しないか。結婚や交際の進退)。物事を「実行するか」「しないか」という二択で迷ったときに、実行する場合のメリットとデメリットをそれぞれ挙げて、比較、選択する方法。その場でパッと判断したい気軽なことから、「いま付き合っている彼と結婚していいのか、否か」など大事な選択まで、幅広く使える。<例題>結婚相手は、いま付き合っている彼でいいの?STEP1:メリットとデメリットを書き出す。紙の中央に縦線を1本引く。決定したい項目について、左側が「賛成(またはメリット)」、右側が「反対(またはデメリット)」の意見を書く欄とし、賛成する理由(メリット)と、反対する理由(デメリット)を、それぞれ思いつくだけ書き出す。重要度の高い選択の場合は、ひとつの視点に囚われないよう、この作業を数日かけて行うこと。例)縦線の左側に、彼と結婚する「メリット」、右側に「デメリット」を書く。大事なことなので、数日かけて思いつくだけ書き出そう。STEP2:釣り合うものを消していく。賛成の理由1つに対し、それと釣り合うレベルの反対の理由を1つ(あるいは複数)見つけて、両者に取り消し線を引き、相殺していく。賛成複数に対して、反対が1つ、という比率でもいい。これも重要度の高い選択の場合は、数日かけて行う。例)スタート初日から数日後に「メリット」と「デメリット」が出揃ったら、「気を遣わない」というメリットと、「トキメキがない」というデメリットが同じくらいの大きさ、といった感じで両者を相殺。この作業も即座にではなく、数日かけて。STEP3:最後まで残った一方を実行。賛成(メリット)のほうが多く残れば「実行」、反対(デメリット)のほうが多く残れば「実行しない」ことが、決定すべき選択肢となる。例)最終的に残ったのは、メリットの「子供好き」なので、いまの彼と結婚してOK、という選択の後押しに。読書猿さん読書家。ブログなどでフォロワーから質問を受け、それに合う本を紹介。処女作『アイデア大全』(フォレスト出版)に続き、『問題解決大全』(同)が大ヒット。※『anan』2019年1月30日号より。イラスト・林田秀一取材、文・保手濱奈美(by anan編集部)
2019年01月26日賢人たちの選択メソッドが集結!読書猿さんの著書『問題解決大全』から、選択に役立つ6つのメソッドのうちのひとつ「お山の大将」を紹介します。短時間で、複数の中から最適なひとつが選べる(例:メニュー選び、買い物、人事採用)。時間をかけずにベストな選択をしたい、というときに有効なのがこのツール。向いているのは、メニュー選びなど“感性”に訴えかけるもの。人事採用といった時間をかけたほうがいいような事例も、相手との相性を重視するなら、フィーリングという意味でこれを活用するのが得策。<例題>メガネを新調したい!いろいろある中から、何を選ぼう。STEP1:「お山の大将」を選ぶ。複数の候補の中から、ひとまず目についたものを「お山の大将」とする。対象となる候補の数は、頭の中で扱いきれる数、つまり10個(人)以内が望ましい。例)たくさんのメガネから、とりあえず目についた“丸い黒縁”を「お山の大将」にする。STEP2:大将と比較する。残りの候補から1つを選び、「お山の大将」と比較。より良いほうを残す。例)店を回りながら、他の形や素材と比較。その中から「お山の大将」を、より自分に似合うと感じた“べっ甲のメガネ”と入れ替える。STEP3:最後まで繰り返す。STEP 2で選んだより良い「お山の大将」と、また別の候補を比較。それを繰り返し、最後まで残った「お山の大将」が、最も良い選択肢と結論づけられる。例)“べっ甲のメガネ”の中から、別のフォルムのものをかけて試し、良いほうを残す。気になるものを試して、最後に手元にあるものがベスト。読書猿さん読書家。ブログなどでフォロワーから質問を受け、それに合う本を紹介。処女作『アイデア大全』(フォレスト出版)に続き、『問題解決大全』(同)が大ヒット。※『anan』2019年1月30日号より。イラスト・林田秀一取材、文・保手濱奈美(by anan編集部)
2019年01月24日選択の際、どんなふうに考えたらいいか残念ながら学校では教えてくれません。でも実は、歴史に名を残す賢人たちが数々の思考ツールを残しているのです。ベストな選択で、人生を思い通りに。日々の細ごましたことから人生の岐路まで、私たちの毎日は選択の連続。そんな場面でより良い道を選ぶための手引きとなり得るのが、今回の課題図書『問題解決大全』。これは、アメリカ建国の父としても知られるベンジャミン・フランクリンなど賢人たちの思考法をもとに、困難に遭ったときに役立つ対処法を、“読書猿”さんという覆面の読書家がまとめた一冊。人は問題に直面したときにこそ、選択を迫られるもの。ここでは本書の中から選択に直結する6つのメソッドをピックアップ。「これらの利点は、自分にとって最善の道が、理論的に選べること。つい“なんとなく”で選ぶこともあるかと思いますが、そんな闇雲な選び方では人生が思わぬ方向に転んでしまう可能性もあります。それより選択に自覚的になること。そうすれば、人生を望む方向にコントロールできるでしょう」本書の特徴と使い方【「選び方」を選ぶことで選択のスキルが上がる】「選択メソッドは、1つではなく多数あります。まずはそれを理解し、自分で選択法を選ぶことが第一。やり方がいろいろあると知っていれば、一つの方法でうまくいかなかったとしても、他を試すことができます。それを繰り返すことで、選択力は磨かれるのです」【選択のための“道具箱”。必要なツールを状況に応じて使って】「今回紹介するメソッドは、便利なツールを一つにまとめた道具箱のように、手元に置いておいてください。こうしてツールをたくさん持っていると、状況に応じて選択方法を使い分けることができ、ツールを駆使すれば、複雑な選択にも対応できるようになります」6つのメソッドはこちら。A:お山の大将/短時間で複数の中から最適なひとつが選べる例えば…メニュー選び、買い物、人事採用B:フランクリンの功罪表/「やるか」「やらないか」のどちらが有益かクリアに。例えば…買うか、買わないか。転職をするか、しないか。結婚や交際の進退。C:ぐずぐず主義克服シート/なかなか「やる」という選択ができないとき。例えば…家事、面倒な事務作業、語学の勉強D:ケプナー・トリゴーの決定分析/複数の候補に優先順位をつけたいとき。例えば…就職先の検討、旅行先の検討E:行動デザインシート/悪い習慣を「やめる」という選択をしたいとき。例えば…つまみ食いをやめる、無駄遣いをやめるF:機会費用/目先の計画を実行してよいか検討したいとき。例えば…引っ越し、留学、行列に並ぶかどうか読書猿さん読書家。ブログなどでフォロワーから質問を受け、それに合う本を紹介。処女作『アイデア大全』(フォレスト出版)に続き、『問題解決大全』(同)が大ヒット。※『anan』2019年1月30日号より。イラスト・林田秀一取材、文・保手濱奈美(by anan編集部)
2019年01月24日年が明ければ冬本番、外に出るのが億劫なほど寒い日がやってきたら読書のチャンス!暖かく居心地のいい部屋で本の世界に浸るのも、お出かけとはまた違う幸せな時間です。 レザーが心地よく手にフィット。『土屋鞄製造所』のブックカバー 漫画、小説、実用書から新聞まで、スマホや専用タブレットを使いペーパーレスで読むことができる便利な時代ですが、紙には紙のよさがあり、待ちに待った新刊や好きな作家の作品ほど直接手に取って読みたくなるものではないでしょうか。コンパクトな文庫本なら、ブックカバーを付けることで愛着も倍増。ぺらぺらの素のままよりも手にフィットしやすくなり、読み終えるまで本のくたびれも防ぐことができます。 ランドセルや革鞄を手がける『土屋鞄製造所』から発売する文庫カバーは、ナチュラルなレザーのよさが存分に楽しめるアイテム。装飾を施さなくても、上質なヌメ革の色艶が心地よく、何年も使っていくほどに味わいが増していきます。贅沢な一枚仕立てで、レザーのしおりが一体化している便利なつくりもうれしいポイントです。 自分で作る、スモールレザーアイテム 読書もいいけれど、モノづくりも好きという人には同じく『土屋鞄製造所』から発売されている「レザークラフトキット ツールBOX」をおこもりタイムにご提案。ヌメ革のツールボックスを作ることができるキットで、革から道具まで制作に必要なものがオールインワンでセット。家にあるハンマーなど道具をいくつか用意すれば、部屋が工房に早変わり!作り方の説明書も付いていますが、HPで動画をチェックすることもできるので安心です。できあがったツールボックスは、収納力がありポーチやペンケースなどにも使えそう。プレゼント用として自ら作ったものを贈るのも、想いがこもっていて素敵ですね。 ナチューラ ヌメ革ブックカバー文庫サイズ各¥10,000/土屋鞄製造所レザークラフトキット ツールBOX¥12,000/土屋鞄製造所土屋鞄製造所:kimyongduckstyling:Rina Taruyamatext : Momoko Yokomizo
2019年01月05日編集部:学研キッズネット編集部学研キッズネットfor Parentsの記事からわかった、すくすく伸びる子どもたちのために本当に大切なことをふり返る特集第5回のテーマは「ナナメの関係をきずける第3の場」です。人間関係を「タテ」「ヨコ」「ナナメ」で考えたことがあるでしょうか。親子や師弟(先生と生徒)の関係がタテの関係、友人関係がヨコの関係。そのように考えると子どもたちは1日の大半をタテかヨコの関係のなかで過ごしているといえますね。「ナナメ」というのはタテやヨコのつながりから少し離れた関係のことです。祖父母だったり近所のおじさんおばさんであったり、子ども会のような年齢を超えたつながり、地域の活動やワークショップといった場で出会う人たちもこの関係にあたります。家庭を第1の場、学校を第2の場と考えたとき、第3の場で出会う人たちと考えても良いでしょう。人間はいろいろな生き方ができるということを知るには、さまざまな人に出会うのが一番。豊かな人間関係は、子どもに逃げ場や救い、そして生きる力を与えてくれます。このページの目次「第3の場所」が子どもの生きる力を育ててくれる読書は心の土壌を耕す「第3の場所」は保護者が楽しめる場所でもある1.「第3の場所」が子どもの生きる力を育ててくれるこれからの社会で生きていくためには、多様な価値観への理解やコミュニケーション力がますます必要になってくる、と考えるのは中曽根陽子さん。そのためには社会に出る前に少しでも多くの多様な人と触れ合う機会がほしいもの。そこで役に立つのが「家庭や学校・日ごろの課外活動以外の第3の場所」です。中曽根さんは保護者自身も地域へ出て「第3の場所」をもつことをすすめています。なぜなら「親自身がいろいろな場所で人とつながり、それを家庭にもち帰ることで、子どもの世界を広げることもでき」るからです。「子どもの生きる力を育てるために、家庭以外の力も借りて、子育てをしていきましょう。」■家庭・学校以外の第3の場所が子どもの生きる力を育てる「AI時代を生き抜くために~『失敗力』が育つ6つの栄養素」(中曽根陽子さん)24時間ネットがつながるゆえの息苦しさ解消にもナナメの関係が必要と言うのは、つながり依存研究の第一人者である土井隆義教授。■つながり依存研究の第一人者にきく、子どもとSNSのリアルな関係 筑波大学土井隆義教授インタビュー第4回「複眼の教育」という観点から地域ぐるみの教育プロジェクトを行なっているのが「てらこやネットワーク」です。「複眼の教育というのは、文字どおり、1人の子どもを育てていくために、地域の大人や大学生が複数の目で子どもをしっかりと見守っていくしくみのことです。」「親子や教師のような“縦”の関係でも友だちのような“横”の関係でもない、第三者と子どもの“ナナメ”の関係を作り、子どもたちのコミュニケーションを活性化させていくことは、子どもが育つのにとても大事な要素なんです。それを地域で実践していくための学びの場でありコミュニティがてらこやです」。そう語るのは「てらこやネットワーク」の理事長・大西克幸さん。■現代版 “てらこや”で地域ぐるみの教育を NPO法人全国てらこやネットワークインタビュー第1回「てらこやネットワーク」では、地域性を活かした子ども向けの事業(合宿や体験活動など)を全国で展開しています。「大学生が企画運営の主体となっていることが特徴です。てらこやの提唱者である精神科医の森下一先生は、身近の手本となるお兄ちゃん・お姉ちゃんとの出会いが子どもの人生の転機になると言います。あのお兄ちゃん・お姉ちゃんみたいになりたいというような、身近の手本との出会いをどれだけ作っていけるか。『よき人との出会い』、これが『複眼の教育』と並んで、てらこやの大きな目標となっています。」■現代版 “てらこや”で地域ぐるみの教育を NPO法人全国てらこやネットワークインタビュー第3回「てらこやネットワーク」では「子ども食堂」も展開しています。こうした場も第3の場といえるでしょう。もう少し身近な人間関係のなかにも「第3の場」はあります。祖父母の存在です。甘やかしすぎる祖父母への対応がなかなか…と考える保護者も多いかもしれませんが、「子どもたちにとって、逃げ場や甘える場所があることは、決して悪い面ばかりではないのです」と松井美香先生。もちろん祖父母に自分たちに子育ての方針を、感謝の気持ちとともに伝えることは大事ですが、「子どもたちにとっては、厳しい人、優しい人、甘やかしてくれる人、勇気づけをしてくれる人、勇気くじきをする人等々、さまざまな人と関わることは、対人関係を学ぶ上で良いトレーニングになります。」祖父母の甘やかしを無下に否定したり、「わがままな子に育ったらどうしよう」と焦ったりする必要はなさそうです。■祖父母の甘やかしに、わたしたち親はどう対応すれば良いか「くやまない、悩まない、自分を責めない――心がラクになるアドラー流子育て」(松井美香先生)人々の多様な生き方に触れることで、子どもたちは人との心地よい距離感を体得したり、相手に思いの伝わる話し方ができるようになったり、良い目標を持てるようになったりするのでしょう。さて、このような「出会い」は本の世界にも共通するものがあります。↑目次に戻る2.読書は心の土壌を耕す読書は心の土壌を耕す"/>子どもたちが社会に出たとき、多様な価値観を受け入れ、さまざまな考え方をもつ人とコミュニケーションをとっていくためには言語能力が欠かせません。『学研 新レインボー小学国語辞典』の監修もしている言語学者の金田一秀穂先生はこのように言っています。「語い力をデジカメの画素数にたとえて、画素数が少なくても写真は写るけれど、よりクリアに表現するためには画素数が多い方がいい。言葉もそれと同じで、たくさん言葉を知らなくても話はできるけれど、自分の気持ちや状況をより明確に伝えるためには、多くの言葉を知っていた方がいい」■実践!国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第1回読書時間の長い子どもは「論理的思考」「意欲・関心」「他者理解」能力が高いという結果も出ています。このデータを分析した渡邊純子さんは、「過去に読書習慣があったかどうかも、意識・行動などに関する得点に関係して」おり、「小学生のときに本をよく読んでいた中学生、中学生のときに本をよく読んでいた高校生は、論理的思考、意欲・関心、人間関係などの項目で得点が高い」ことから、「年齢が低いころからの継続的な読書習慣が、子どもが生きていくにあたって基礎となる力を伸ばす要因となっている」と言います。■子どものころの読書は生きる力を養う「データで読み解く、子どもとスマホ」(渡邊純子さん)地域で小さな文庫を40年間開いてきた「みどり文庫」の細谷みどりさんは、「『子どもたちの居場所づくり』や『大人と子どもが個人的に信頼関係をきずける場』の提供に本が介在するというところに文庫としての役割があるのではないか」と考えます。このような小さな文庫が近所にあったら、本を借りに親子で立ち寄ってもいいですね。細谷さんも「読書」と「生きる力」との関係について言っています。「本によって培われた先を読む力、推測力や判断力が、本当の『考える力』になっていくのではないでしょうか。目に見えることだけに頼っていると、目の前のことしか見えなくなります。先を見通す力は、動物的な本能や自分の身を守るための直観力にもつながります。わたしはこうした動物的な本能が、現代の人たちには薄れてきているのではないかと危惧しています。」■みどり文庫(後編)~本には人間本来の能力を引き出す力がある~みどり文庫細谷みどりさんインタビューより「本に年齢はなく、いつから読んでも遅くはないのだけれど、いい本に、いいタイミングで出会うこと、そのときにしかない『出会い感』はとても大事な気がします。」そう語るのは子どもの本の専門店で配本事業も行なう「クレヨンハウス」の早崎志乃さん。映画の原作になった本や、自分の興味のある分野の本から読書の世界に入ってみるのもおすすめだそうです。■クレヨンハウスインタビュー~本選びのプロに聞く、子どもの本の魅力とは?~クレヨンハウス早崎志乃さん、馬場里菜さんインタビューより読書が好きになるきっかけはいろいろあります。読み聞かせをされた経験、した経験、歯医者さんの待合室にあった本との出会いなど……。親野智可等先生が、8つの実話を紹介してくれています。■いろいろなきっかけで読書が好きになる伝記が人生を変えるきっかけをくれることもあります。■伝記が人生を考えるきっかけになる「子どもが伸びる親力」(親野智可等先生)本に描かれた世界や生き方に感銘を受けるためには、やっぱり「読む力」が大切!メールやSNSで文字を追うだけでなく、まとまった文章を読む力を養うことで、子どもの出会いの場はずっと大きく広がっていくのですね。ここで、ある編集部員の話を紹介すると、小学生の子どもが学校での人間関係がうまくいかなかったとき、ゆいいつの居場所となったのが学校の図書室でした。司書の先生からの適切な声かけもあって本の世界に目覚め、「この主人公はここまでされても立ち上がるのか!」「こんな知恵でピンチを切り抜けるのか」「この登場人物はなんて賢いんだ!」などと言いながらさまざまなシリーズを読みふけっているうちに、うまくいかなかった友だちともおすすめの本を貸し借りする仲になったようです。まさに本が様々な出会いを運び、成長へと導いた例と言えるでしょう。↑目次に戻る3.「第3の場所」は保護者が楽しめる場所でもある子どもたちに多くの出会いを経験してほしい、本も読んでほしい。そのために、わたしたち親はどうしたら良いのでしょうか。保護者だって人間です。外の世界に出て行くのが苦手なタイプ、読書が苦手なタイプ、読み聞かせがどうしても苦手で……という人もいると思います。まずは「てらこやネットワークの大西さん」の言葉から。「てらこや食堂というのは…、実は親の解放の場にもなっているんです。子育ての痛みなりつらさなりをぽろっと言える場。『そうそう、うちも』と言える場として非常に大事だなと思っています。環境が人を育てていくんです。子どもたちの一番の環境は家庭、とくに母親。その母親の健全なメンタルを維持安定させていくには、相談できる仲間だったり、ガス抜きができる居場所だったりが必要なんです」■現代版 “てらこや”で地域ぐるみの教育を NPO法人全国てらこやネットワークインタビュー第4回「ノヴィーニェこども食堂」を営むトニー・ジャスティスさんも、こう言っています。「(こども食堂について)さまざまな境遇の子どもの居場所、がんばっているお母さんのストレスを解消して、楽しく過ごせる場所になれば良いなと、みんなでがんばっています。」■アフリカ出身トニーさんが主催する国際色豊かな子ども食堂&寺子屋を体験してきたNPO法人アフリカヘリテイジコミティ理事・トニー・ジャスティスさんインタビューより子どもたちが地域の活動に参加するには、まず保護者が情報を集め、申し込むという作業が必要です。奥手な保護者だと、知らないコミュニティに参加するという時点でついつい臆してしまうと思うのですが、主催者のこのような意図を知ると、「ちょっと行ってみようかな。申し込んでみようかな」という気持ちになりますね。前出の読書についても、家に本がたくさんあり、親が四六時中、読書している姿を見せられれば良いのですが、そこまではなかなかできません。では、「国語辞典をケースから出してリビングに置いておく」という簡単な方法はどうでしょう。「国語辞典は身近に置いておくといいんです。ケースに入れて子ども部屋の本棚に入れるのではなく、ケースから出してリビングに置いておき、なにかあったらすぐ調べられるようにしておく。テレビで聞いてわからない言葉をその場で調べる。スマホでもその言葉をピンポイントで調べることができますが、国語辞典で調べると、オマケとして、同音異義語や反対語、イラストなどもいっしょに書いてありますから、一石二鳥にも三鳥にもなります。」(学研プラス 小中学生事業部 辞典編集室 森川聡さん)「国語辞典は、必ずなにかとセットになって使うものだと思うんです。テレビで聞いた知らない言葉、図鑑にのっている知らない言葉、鉄道でも戦隊ヒーローでもなんでもいいので、調べてみるといいですね。忍者とか、手裏剣とかも国語辞典にはのっているので。」(同編集室 今井優子さん)■実践!国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第3回国語辞典とセットでも使いたい図鑑の選び方を教えてくれるのは、学研プラス小中学生事業部 図鑑・辞典編集室の松下清さん。「親子でいっしょに本屋さんへ行って、お子さんが気に入った図鑑を選ぶのがいいと思います。とくにお母さんは、図鑑は同じシリーズでそろえたい願望があるんですよ。棚にきれいに並べたいんですよね。でもそれは大人の都合です。子どもの本ですから、子どもが気に入って『欲しい』という図鑑を買ってあげてください。」■「知識への扉をひらく図鑑のひみつ」図鑑編集室インタビュー第4回学研プラス小中学生事業部 図鑑・辞典編集室松下清さんインタビューより文字や文章が苦手でも、「国語辞典なら読める」という考え方もあります。「(国語辞典に載っている)ひとつひとつの言葉の解説はTwitterと同じくらいの分量ですからね。厚みにたじろがず、辞典を開いてみればじつはとてもシンプルなんですよ。」(前出今井さん)■実践!国語辞典を楽しく使いこなそう 学研 子ども向け国語辞典編集室インタビュー第4回こんなに手軽なら、大人であるわたしたちも気負わず楽しめそうです。子どもがすくすく成長するために大切なことは何か。それは、大人が成長し、人生を豊かにするために必要なことと同じようでもあります。子どもに良いと思うことを実践していくにあたっては、無理せず継続的に、ナナメの関係の力を借りながら、自分の世界を少しずつ広げるつもりで楽しみながらやっていきましょう。次回は「没頭する大人たち」をテーマに、何かを追求し続ける人たちの言葉の数々をお届けします!次のページ子どものころ、好きなことに夢中になったらこうなった。没頭して生きる大人たちの言葉↑目次に戻る学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2018年12月27日編集部:学研キッズネット編集部勉強も服の好みも価値観も、幼い頃から母の言いなりになってきた史織。中学受験に失敗し、友だちとの人間関係も壊れてしまった彼女が、父の実家であり転勤先でもある佐渡について行くことを決めるところから『君だけのシネマ』は始まります。「佐渡に行きたい!」でも母はどんな反応をするだろう、心が大きく揺れ動く史織の姿を想像しながら、わたしは白黒ハッキリさせることが極めて苦手だった自分の子ども時代を思い出しました。「アンケートの選択肢になぜ『どっちでもいい』という答えがないのかな」といつも思っていたわたしのような子どもが、圧倒的な自信で迫ってくる母親にあれこれ口を挟まれていたらどうなっていただろうと思うと、史織のことをとても他人事とは思えません。新潟から佐渡へ親子といえども人間どうし。相手が誰であろうと「嫌なことは嫌」と言いたいものですが、史織の母には、そう一筋縄ではいきません。母は、がんばって勉強していい中学に入り、レベルの高い教育を受けることが子どもの「将来」のためだと信じています。友だちと地元の公立中学に行きたいという史織の主張をねじふせたうえ、最後の小学校生活を楽しみたいとどんなに訴えても、受験直前には小学校を休むことを強要します。「六先生を送る会も来なかったの、史織だけだったよ」「いくら受験でも学校来ないのって、さみしくない?言えばいいじゃん。学校行きたいって」仲のいい級友からの一言に怒りを爆発させ、さらに9年間がんばったかいもなく中学受験に失敗して地元の中学に進学することになった史織は学校に通えなくなっていきます。そんな史織のようすを見て、はじめて子どもと向き合うことにした父は佐渡への転勤を決めてきます。「佐渡に行けば……絶対、学校に行く」ふりしぼる思いで母を納得させた史織は父についていくことにするのですが、そこで目にしたのは、周囲が何と言おうと夢に向かって邁進する大好きな祖母「さっこちゃん」の姿でした。さっこちゃんの夢は、映画館のない佐渡にミニシアターをつくること祖父の亡きあと、二間の和室を改造してミニシアターをつくりたいというさっこちゃんは、精力的で楽しそうです。門の色を塗り替えたり、庭を手入れして流木を置いたり、カフェコーナーで出すコーヒーのブランドにこだわったり、自由な態勢で映画が観られるように座席を工夫したり。映画館の立ち上げ、運営、お客さんの呼び込み。映画館を軌道に乗せるにはやるべきことがいっぱいです。そんなさっこちゃんの片腕となって活躍するのが、史織と、佐渡の中学に通う映画好きな史織の親戚・桐谷瑛太、モノを創るのがすばらしく上手な、しかしクラスでは「変わり者」として敬遠されている藤原一花でした。自分の世界をしっかり持っている瑛太や一花に比べて、史織はいつでも、何を決めるにも自分の感性を否定してくる母の心の声に縛られ苦しめられます。史織ほどではないにしても、自分の直感を信じきれない感覚はだれにでも思い当たる節があるのではないでしょうか。だからこそ、それを受け止めるさっこちゃんの言葉に少なからず勇気づけられるのかもしれません。「史織のセンスは、史織だけのものだよ。もし九十九人が、そのいすを選ばなくても、史織がステキって思ったら、たった一人でもそれでいいと思うな」「私は逃げることって……選ぶことだと思うんだ。……自分が心地好くいられる場所を選ぶことが逃げることなら、逃げるって悪くない。そう思わん?」自分の選択は、自分の心に聞いて判断する。だれかと本音で関わることで、相手にも自分の個性を発見してもらう。「自分が(・)やりたいこと」や「自分が(・)好きなもの」を「自分が(・)選ぶ」という経験は少しずつ史織に生きる希望をもたらし、彼女を明るい方へと押し出していきます。やがて迎える母親との対峙――。愛されたいから苦しんでしまう中学生の頃の自分がこの物語を読んだなら、間違いなく史織に肩入れし、「あなたのため」と言いながら子どもに依存する母親に憤慨していたと思います。けれども今のわたしは物語を読みながら、「自分も母親として子どもを縛っていないだろうか」「子どもにとって母親とは、かくも絶対的な存在なんだ」ということを痛感しました。史織は母親に認められたい。認められたいだけでなく、心から喜んでほしい。だからこそ限界までがんばってしまうのだし、母の良しとするものが自分にとっても良いのだと思い込もうとするのでしょう。そのうちに自分の本心がわからなくなり、自分がうまくいかないのは母親の言う通りにしなかったからだ、つらくても母親の言う通りにするべきなのだ、というように母親に支配されていく、その過程が本当に恐ろしいと思いました。親子関係に問題がなくても、何のために生きているのだろう、自分は将来どんなふうに生きていけばよいのだろうと考える中学生は多いでしょう。この作品は、そんな迷える中学生に生きるヒントを与えることと思います。同時に、大人が読むことで、わが身の2種類の親子関係を振り返るきっかけにもなるのではないでしょうか。この物語には、『人生フルーツ』と『ニュー・シネマ・パラダイス』という2つの実在する映画作品が登場します。特に『ニュー・シネマ・パラダイス』は物語の軸ともいえる存在です。この映画を観てから『君だけのシネマ』を手に取るのもおすすめです。DATA『君だけのシネマ』(高田由紀子・作PHP研究所)『君だけのシネマ』(高田由紀子・作PHP研究所)学研キッズネット編集部(がっけんきっずねっと)『学研キッズネット』は、1996年にオープンした小・中学生のためのWebメディアです。学研の子ども向け書籍や雑誌の編集ノウハウを活かし、子どもたちが安全に楽しめるサイトとして運営しています。子どもたちのしあわせのために、家族のしあわせのために、有益な情報やサービスをお届けできるよう、いつも精一杯がんばっています。すくすく伸びる子どもたちのために
2018年11月12日日本の美意識をテーマにした『CANALIZE(キャナライズ)』は、「つくるのありかた」を発信するプロジェクトとしてスタートしたクリエイティブユニット。ウェブメディアや出版、ショップなど様々な活動をしている中に、オリジナルウェアとなる『CNLZ(シーエヌエルゼット)』を発表しています。 『CNLZ』では、シーズンテーマを特に設けることはありません。常に技術やデザインをアップデートしながら、着実な服作りをしています。つまり、トレンドに左右されない普遍的なベーシックウェアが魅力ということ。とはいえ、ありきたりな服はひとつもなく、今回ご紹介するブラウスひとつとっても、細部までこだわりが詰まっています。ブランドのテーマは、 「For Your New Lifestyle」。袖を通すと、今まで知らなかった自分を見つけられるような服なのです。 知的さを与えてくれるブラウス。ボリュームブラウス各¥26,000/CILZ(アルファPR)ファーストシーズンから続く大人気のボリュームブラウス。リネン生地のブラックがまさにそれで、新たにコットン生地のベージュが登場。膨張してしまいがちなドルマンスリーブですが、着用すると驚くほどすっきりしたシルエットに。一見シンプルなブラウスに見えますが、腕を動かすと袖に表情が生まれ、それが女性らしさを引き出してくれます。また、程よいモックネックで首も長く見えるという嬉しい効果も。 秋の夜長に読みたい本にも注目!Canalize book vol.0&vol.1各¥1,650/CANALIZE(アルファPR)「Canalize book」とは、『CANALIZE』が年に1度出版するライフスタイルブック。vol.0のテーマは、「未来」について。ファッションだけでなく、建築や映画、音楽、テクノロジー、食など、時代お先端で活躍する人々に取材し、18名の今とこれからについて掘り下げています。一方、vol.1はまるっとファッションについて特集。あえて足を運びたいショプや、未来につながる活動、今ファッションで起きていることについて迫った内容に。読書の秋に真っ先に読みたい本です。 CANALIZEアルファ PR03-5413-3546
2018年10月23日ママ向け自伝は究極の育児書『母脳』黒川伊保子著《 紹介者 》ライター小和野薫子さんViViをはじめ女性ファッション誌のライターとして活躍されている小和野薫子さん。5歳の男の子と3歳の女の子のママ。いいものを見つける感度の高さは、育児アイテムにも生かされています。ママが持てる読書タイムはごくわずか。有意義なものにしたいですよね。本の世界を楽しみつつ、育児にもいいインスピレーションを与えてくれる。そんな欲張りな願いを叶えてくれる本を紹介。カフェでつかの間の読書タイムもともと読書が大好きで、長男の出産前は毎日半身浴をしながら2時間くらい読書を楽しんでいたほど。妊娠で頭が育児モードになり、育児書を中心にいろいろと乱読していました。でも出産してからは読書の時間がなく、隙間時間にSNSの育児情報を見る程度に。子ども2人を幼稚園に通わせるようになったので、最近また読書を再開しました。近所のカフェで、美味しいコーヒーを片手に過ごす読書の時間は至福のひとときです。自伝から子育てのインスピレーションをハウツー本、タレント本、マンガ、「子どもを東大に」的な教育本まで、あらゆるジャンルの育児書を読んできました。最近は、ザ・育児書より自伝タイプの本から子育てのインスピレーションを得ています。「この人はどういう風に育てられたのか」。ちらっと、だけど濃厚に登場するお母さんの姿に注目しています。結婚式の両親への手紙みたいに、その人の半生から垣間見られる母親の姿ってリアルでとても刺激を受けます。おすすめはこの3冊ひとつは、人工知能研究者でエッセイストの黒川伊保子さん著の『母脳』。著者の息子への愛に満ち溢れた、とてもエモーショナルな一冊。母としての気持ちに共感し、憧れるのはもちろん、研究者としての視点が勉強にもなる。私は前書きの2ページで泣きました。2冊目は、瀧靖之さんの『「賢い子」は図鑑で育てる』。こちらも科学者の方が自分の子育てを書いた説得力のある1冊。手を離れた後も子どもが幸せな人生を歩んでいくにはどうしたらいいか、と考えさせられました。最後は、『テルマエ・ロマエ』の漫画家ヤマザキマリさんの体験的人生論、『国境のない生き方』。独自の生き方を貫いている人のご両親って、本当にスケールが大きくて育児が独創的。育児に正解はない、ということを改めて感じました。Text:Kyoko Isobe
2018年09月01日『からすのパンやさん』、「だるまちゃん」シリーズで知られる絵本作家のかこさとしさん。思い出の一ページはどこ?かこワールドを巡る一日。1959年のデビュー以来、親から子、そのまた子へと愛読されてきた。5月に92歳で逝去され、はからずも回顧展となる本展は200点以上の原画(※超高精彩の複製中心)が登場、過去最大規模の展覧会に。開催地の川崎市は作家としての原点ともいえる場所。大学卒業後、民間の研究所に勤務しながら市内でセツルメント活動(地域住民の生活向上のため、医療、教育などの助力をする社会事業)に従事。子ども向けの紙芝居、幻灯の制作に携わった。『どろぼうがっこう』は当初、紙芝居として披露されたのだとか。会場では子どもたちとの出会いに始まり、科学・歴史絵本など幅広いジャンルで活躍した軌跡をたどる。8月18日(17時~)は学芸員によるギャラリートーク、翌19日(14時~、先着270名)にはセツルメント時代の幻灯の上映会も開催。絵本以前のかこワールドを体験してみて。ありとあらゆる形のパンが描き分けられているのが楽しさの理由。『からすのパンやさん』偕成社刊©1973,Satoshi KAKOからだの本シリーズ。食べ物が排泄されるまでを旅になぞらえて。『たべもののたび』童心社刊泥棒も学校に?意外性に子どもは大受け。『どろぼう学校』偕成社刊©1973,Satoshi KAKOかこ・さとしセツルメント活動を経て、絵本作家の道へ。児童文化研究者としても活躍。著書600点以上。(2015年撮影)かこさとしのひみつ展―だるまちゃんとさがしにいこう―川崎市市民ミュージアム神奈川県川崎市中原区等々力1-2(等々力緑地内)7月7日(土)~9月9日(日)9:30~17:00(7/21・28、8/4・11・18は~19:00。いずれも最終入場は閉館30分前まで)月曜休(7/16 は開館。翌17日休)一般600円ほかTEL:044‐754‐4500※『anan』2018年7月11日号より。文・松本あかね(by anan編集部)
2018年07月09日読み終えた時、きっとあなたの中で何かが変わっている。そう断言したくなるのは、蛭田亜紗子さんの新作長編『エンディングドレス』。「3~4年前から自分で洋服を作るようになったので、洋裁の話を書きたいなと思っていました」夫を病で亡くし、後を追うつもりの麻緒(あさお)は偶然見つけた「終末の洋裁教室」に通いはじめる。最終的に死に装束の製作を目的とした教室だ。「夫と二人だけで完結していた世界が壊れてしまったことにより、もう一度周囲と関わり直していく、という面もあるのかなと思いました」そこにいたのは寡黙な先生と、3人の年配のご婦人の生徒たち。「実際に手芸店で布を選んでいる年配の方たちをよく見かけていて、素敵だなと思って。登場する3人はそれぞれ違う印象になるよう、おっとりした人、ちゃきちゃきした人、ミステリアスな人と書き分けました」麻緒たちは〈はたちのときにいちばん気に入っていた服〉〈十五歳のころに憧れていた服〉といった課題に臨む。きっと読者も、自分ならどんな服を作るか考えるはず。「服によって過去が想起される課題を考えました。他の生徒のおばあさんたちも、90代、80代とそれぞれ年齢が違うので、作る服もまったく異なってくるだろうと思いました」課題をこなし完成品を披露しあうたび、それぞれの人生が浮かび上がる。麻緒も夫との過去を振り返ることになるが、そこには後悔や罪悪感も含め、複雑な心情が含まれる。「後悔なども抱えて人は生きていくものだから、清廉潔白な主人公にはしたくなかった。きれいなおとぎ話にはせず、あえて厳しい面も書きたいと思いました」教室での人生模様だけでなく、家族や旧友との関わりも描かれ、さらにはファストファッションのあり方など現代的な問題も垣間見える。丁寧に針を運んで縫ったかのような繊細な細部の設定、巧みな仕上げ方。エンディングドレスの製作についても、思わぬ展開が待っている。「洋裁は手順通りやればいつかは出来上がるし、作れば作るほど上手くなる。それは服作り以外にも影響する部分があると思いました」何かを作ること、着ること、人と関わること。かけがえのないものがいくつも見えてくる一冊だ。ひるた・あさこ1979年、北海道生まれ。2008年「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞、’10年『自縄自縛の私』でデビュー。著作に『凜』など。写真の洋服はご自身で製作したもの。病気で夫を亡くし後を追うことにした麻緒は、死に装束を作る洋裁教室に通いはじめる。だが、課題をこなすうちに心に変化が……。ポプラ社1500円※『anan』2018年7月4日号より。写真・水野昭子(蛭田さん)大嶋千尋(本)インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年07月02日静かな空間で1人読書したいときもあれば、周囲の喧騒をBGMに本が読みたいときもあります。どんなシチュエーションであっても譲れないのは、自分の好きな飲み物がかたわらにあること。 BEER & CAFE BERGコーヒーとビールが気軽に楽しめる先駆け的存在。新宿駅構内にあり、1日に1500人もの人が訪れる多くの人に愛されている繁盛店。職人手作りのソーセージや天然酵母のパンなど、安くて美味しい食事とビール(&コーヒー)を毎日朝7時から楽しめて、多くの人でにぎわっています。 パフスリーブシャツ¥35,000、プリーツスカート¥98,000/ともにTOUJOURS(トゥジュー代官山ストア)、ブレスレット¥29,000/DAN TOMIMATSU(ベルジェ) コーヒーが飲みたくなる本コーヒーを好んだ作家や芳しい香りの描写、どこかにコーヒーと接点があ理、読むと思わずコーヒーが飲みたくなる、そんな5冊を紹介します。 写真右から「茨木のり子の家」茨木のり子著平凡社¥1,800女流詩人・茨木のり子の詩と自宅の写真を納めた作品集。日曜日の朝、食卓に漂うコーヒーの香りから、当たり前にある豊かさを再認識した作品。 「ぼくは散歩と雑学が好き」植草甚一著ちくま文庫¥1,200映画や音楽の評論家として活躍した植草甚一が、アメリカのカルチャーについて綴ったエッセイ集。喫茶店でその日購入した本を並べてコーヒーを飲んでいた、本とコーヒーの相性の良さを体現した人。 「戀愛譚」 東郷青児文筆選集東郷青児著野崎泉選創元社¥2,400美人がで知られる画家・東郷青児が書いた恋愛にまつわる文筆集。青年時代を過ごしたモンマルトルのカフェへの憧れ、男女の淡い恋の駆け引きを詩的で幻想的なタッチで表現しています。カフェ文化に近いところにいた作家。 「路上のジャズ」中上健次著中公文庫¥900学生運動が盛んだった頃、コーヒー=不良の飲み物、そんなコーヒーはジャズと一緒に飲まれていました。 「これで駄目なら若い君たちへー卒業式講演集」カート・ヴォネガット著円城塔訳飛鳥新社¥1,600アメリカの著名なSF作家カート・ヴォネガットが高校や大学の卒業式でしたスピーチをまとめた講演集。直接コーヒーが登場するわけではないのですが、コーヒーと一緒に楽しみたい一冊。 (選書してくださったのは、荻窪にある街の本屋「Title」店主辻山良雄さん) ビールが飲みたくなる本美味しそうな描写につられて、ビールが飲みたくなる日があってもいい。ビールと本好きで知られる本屋の店主オススメの5冊です。 写真右から「わたしは英国王に給仕した」ボフミル・フラバル著阿部賢一訳河出書房新社¥2,200ビール醸造所の息子として生まれたチェコ人の小説家・フラバルの作品には必ずビールが登場する。ホテルの給仕見習いになった主人公が出世していく様子が、ホラ話のようなエピソードをふんだんに交えて語られていて、その語り口が酔っ払いのよう。酒場の様子もにぎやかに描写されていておもしろい。 「風の歌を聴け」村上春樹著講談社文庫¥390青春の一片を描いた村上春樹のデビュー作。主人公の僕と鼠がひたすらビールを飲む話で、一見、時間の無駄だが、人生には無駄なことも必要でそれが人の深みになるという象徴的なエピソード。 「吾輩は猫である」夏目漱石著新潮文庫¥630書き出しの一文はあまりに有名ですが、物語の結末は覚えてますか?ラストで猫の運命をわけてしまったのが、ビールでした。 「アンソロジービール」赤塚不二夫、阿川佐和子ほか著パルコ出版¥1,600お弁当、おやつなど食べ物にまつわるエッセイ集。アンソロジーシリーズのビール編。作家と酒の本はあれど、ビールに的を絞っている本。 「ベルギービール大全<新>」三輪一記+石黒謙吾著アスペクト¥2,200ベルギーは九州ほどの大きさの小さな国なのに、ビールの銘柄は約800種類もあって、ものすごく多様性があります。デザイン性の高いラベルや専用グラスを眺めるだけでも、奥深さを感じます。 (選書してくださったのは、世田谷にある「ビールが飲める本屋」B&B店主嶋浩一郎さん) 本とコーヒー、本とビールの関係が深いお店 SNOW SHOVELING散歩がてらに立ち寄りたい本屋マンションの2階のドアを開けると、非日常な空間が広がり、本をはじめ手にとって眺めたくなる素敵なものが並んでいます。店内でじっくり過ごすもよし、気に入った本とビールをテイクアウトして、近くの駒沢公園で読書するのもよし。 SHOP DATA東京都世田谷区奥沢4-35-7深沢ビル2F-Ctel: 03-6432-3468open: 13:00 - 19:00(火・水曜休) コクテイル書房築100年の長屋で古本に囲まれる古本とお酒、そして本の中に出てくる料理を再現したメニューを楽しめるのが魅力のお店。大正時代に建てられた趣のある店内は、囲炉裏のある小上がりの席とカウンター席があり、女性ひとりでいらっしゃるお客さんも多いそう。 SHOP DATA東京都杉並区高円寺北3-8-13tel: 03-3310-8130open: 昼の部11:30 - 15:00(月曜・火曜休み), 夜の部17:00 - 23:00 Cat’s Meow Booksネコ本が並ぶネコのいる街の本屋「本とネコとビール(とコーヒー)に囲まれた場所が作りたかった。」というオーナーの安村さんの思いを形にした本屋さん。 SHOP DATA東京都世田谷区若林1-6-15tel: 03-6326-3633open: 14:00 - 22:00火曜休 fuzkue静けさが約束された「本が読める店」気兼ねなく読書したいときに足を運びたい「フヅクエ」。私語厳禁。お互いを気にせず思い思いのひとり時間を楽しめるお店。 SHOP DATA東京都渋谷区初台1-38-10二名ビル2Fopen: 12:00 - 24:00不定休(web, SNS等でご確認ください LAB TOKYO早起きして読書したい、そんなときに渋谷の真ん中・道玄坂にのびのびとコーヒー(もちろんビールも)が楽しめるお店。広い店内は席数も多く、コーヒースタンドも併設。朝7時開店なので、美味しいコーヒーを飲みながらゆったり読書に集中するもよし。 SHOP DATA東京都渋谷区道玄坂2-10-7新大宗ビル1 号館2Ftel: 050-1744-9496open: 7:00 - 19:00(L.O. 18:30)無休(年末年始をのぞく) BUNDAN COFFEE & BEER文豪由来のコーヒーを味わって本好きな人なら、作品の中に登場する美味しそうな料理の味をきっと想像したことがあるはず。文豪にちなんだホットコーヒーや本の中のメニューを実際に味わえるお店。 SHOP DATA東京都目黒区駒場4-3-55日本近代文学館内tel: 03-6407-0554open: 9:30 - 16:20(L.O. 15:50)日・月・第4木曜休)(文学館に準ずる) onkul vol.9より
2018年06月25日夏は多くの海水浴客で賑わう一式海岸から徒歩10分。見えてくるのは黒い格子が目印の平屋のおうち。 ようこそ、くつろぎの空間へ 「Kubu ( クブ ) 」 とはバリ語で「小屋」、「Suria (スーリア)」は「太陽」の意味。BALI島では、漁師の方々は網を紡いだり、また農作業の合間に食事や休憩をする場所を「Kubu」と呼び、人々の暮らしには欠かせない存在として馴れ親しまれているそう。お店にも、様々な方が集い、寛ぐ場所でありたいとの思いと降り注ぐ太陽の日差しから名付けたのだとか。 裸足でゆったりとくつろげる空間 店内には、日本、モロッコ、インド、バリ、と生まれも育ちも様々な家具たちが出迎える。絵本や木のおもちゃなどもあるので、小さなお子さまも一緒に寛げるのもうれしい。オーナーが選んだお気に入りの本を読みながら、ゆったりとくつろげる Cafe 、そして、レンタルスペースとして様々な用途に利用できる居心地のよい空間。 ヘルシー&エシカル人の温もりが感じられる、雑貨、アクセサリーなども取り扱いも。また、カフェとして、週代わりのランチやお飲み物が用意され、ランチは「酵素玄米ご飯」を主とした体に優しいお野菜たっぷりのメニュー。月に一度、本場タイで学んだシェフによるタイのフルコースまで楽しめるのだとか!ランチはテイクアウトもあるそうなので、竹皮のお弁当を買ってピクニックというのも楽しいですね。 自慢の広いテラスでは、焚き火をしたりBBQ をしたりと、用途も様々。ペットとのお散歩途中の休憩場所としても利用してもよく、地元の人々からも憩いの場になっているのだとか。 くつろぎ+学びの場4畳半の和室やカフェスペース、テラスなど一棟丸ごと、様々な用途に合わせて使えるレンタルスペースに。日や週によって、5歳から通える英会話教室や編み物教室、朝ヨガ、お灸のセルフケア講座からお味噌作りまで、様々なクラスが開催され、学ぶと集う、がくつろぎの空間で一緒に楽しめる。 これからの時期、楽しいイベント開催の情報も盛りだくさん。 プラネタリウム・プランナー、かわい じゅんこさん主催の、一冊の本から、宇宙へと心を運ぶ「宙と本」。(6月16日(土)14:00〜16:00) ※参加費3,000円(お茶・デザート付) 今回の1冊は、「天の川幻想-ラフカディオ・ハーン珠玉の絶唱-」(小泉八雲/船木裕訳)。 七夕を目前に、小泉八雲によって語られる日本の七夕に、私たち日本人の星空へ思いを馳せて。 「薔薇を纏う」(6月21 (木) - 6月26日 (火))期間中、 LAURAMICAさんの薔薇で染めた下着やお洋服の展示販売会を開催。奥出雲産無農薬の薔薇で染めた布で作られたワンピースやリラックスウェア、また、シルクシフォンのトップスや、パンツ、エプロンドレス、コート。薔薇のエネルギーであふれ、女性性を目覚めさせてくれる「薔薇」。KUBU が薔薇一色になる一週間。 そして、季節ごとに開催される、人気の「お灸講座」。( 6月29日(金)10:30〜12:00 )※参加費3,000円(お持ち帰りお灸・薬膳茶付) 様々な症状をセルフケアするためのツボ、お灸の使い方を学びます。講座の後は、旬の食材を使った「薬膳ランチ」もご提供 (料金別)。 賑やかな夏がくる前の、ほんの心地よいひとときに触れに、ぜひお出かけください。 KUBU suria HP:::@kubusuria 〒240-0111 神奈川県三浦郡葉山町一色1918Tel/Fax: 046-874-9900Cafe Open: 10:00 - 17:00 定休日:月曜日(不定休:土、日)
2018年06月03日絵本が大好きな長男と次男。私も昔から絵本が好きなので読み聞かせは大歓迎なのですが、たまに読み聞かせには向いてない本を本棚から持ってきます。はっきりと「つまる!!」と言われました。(※「つまらなくない」の意)仕方がないので引き続き目次ページを読み進めていたのですが、案の定2人で違う遊びを始めたのでした…。
2018年05月23日本年度の本屋大賞が辻村深月さんの『かがみの孤城』に決まった。4度目のノミネートでの栄冠だ。作家生活14年目にして進化し続ける人気作家・辻村深月さんの今、そしてこれから。開けていなかった扉を開くことができました。――新作『青空と逃げる』は、父親が交通事故に巻き込まれたのちに失踪、周囲の悪意から逃げるために母親の早苗と小学生の息子・力ちからが逃避行を続ける物語です。新聞に連載された長編ですね。辻村:連載する3年ほど前、まだ直木賞を受賞する前に依頼を受けました。毎日掲載する新聞連載に堪えうる作家だと認めてもらえたのが光栄でした。どんな話がいいか打ち合わせをしている時、「辻村さんが書く親子の話が読みたい」と言われて。私がこれまで書いてきた親子は、親にとって子どもは保護の対象であり、子どもにとって大人は反発の対象となる場合が多かった。それで今回は、母親も子どもも、お互いにきちんと対話する話にしようということになりました。「逃避行だから実際の風光明媚な場所を入れてほしい」「できれば4~5か所出してほしい」「できれば最後に泣かせてほしい」といろいろオーダーされ、そのおかげで景色を丁寧に描写するなど、それまで開けていなかった扉をここでもまた開くことができました。――母子は最初、四国の四万十へ行きます。そのあと家島や別府温泉など、場所を変えていく。実際に取材に行かれたのですか。辻村:四万十は数年前に女友達と行きました。取材旅行だったわけではないのですが、四万十川の広がりや青さ、カワエビが美味しかったことなどを思い出しながら書きました。家島は『島はぼくらと』に出てくる冴島のモデルなんです。ですから、『青空と逃げる』に出てくるこの島の女の子は、『島はぼくらと』に出てくるシングルマザーの娘さんがその後少し成長した姿をイメージしています。漁港のおばちゃんたちは同一人物だと思っていただいていいです(笑)。――そうだったんですか!この作品では『島はぼくらと』に出てくる谷川ヨシノという、地域活性デザイナーも意外なところで登場し、そんなリンクも楽しいですね。新たに取材した場所は?辻村:別府温泉には行きました。早苗が各地で仕事を探すので、「温泉地ならいろいろと仕事があるはず」と、担当者に薦められたんです。資料にあった、海辺の砂風呂でお客さんに砂をかける「砂かけ」の女性にお話を聞いたら、「砂かけは女の仕事で、ここは女の職場だから」と言われて、ああ、早苗にはここで働いてほしいと思いました。実際に取材した分、書いていて楽しかったですね。早苗たちに、もうここに住んでほしいと思ったくらい。高崎山の猿も実際に見に行ったので、読み返していてやっぱり楽しいですね。――早苗は元舞台女優ですが、出産を機に専業主婦になっている。そんな彼女が、各地で仕事を見つけ、周囲と人間関係を築いていく姿が頼もしく、痛快でした。辻村:まわりの女友達を見ていて、やる前から諦めている人が多いなと感じていたんですよね。家庭に入った女の人が、「私はもう働いてないから」と諦め口調で話していたりする。本当は使える翼があるのに長い間しまっているためにもう自分は飛べないと思っているんじゃないかな、って。早苗は閉じていた翼を開いていくんです。読んでくれた方の感想に、最後に早苗と力が“選べる自由”を獲得したことが素晴らしい、とあって。今、貧困の問題や家族の関係性などから、選べないから追いつめられることってたくさんあると思うんです。早苗も、他に方法がないから、最初はただ逃げざるをえない。彼らが自分たちの今後を選べるところに連れていくまでを、私は書きたかったのかもしれないなと後から思いました。――事件の謎が解明されたのちの、ラストが素晴らしかったです。辻村作品は緻密な構成が魅力ですが、いつも結末を考えずに書き始めるというから驚きます。『かがみの孤城』も、伏線が見事に回収されるあの見事な終盤、当初は何も考えていなかったそうですね。辻村:そうですね。『アンアン』に連載した「ハケンアニメ!」もそう(笑)。いつも何も決めずに書きだす時は、「ここ」と思える場所に辿り着けるか分からず、やっぱり怖いです。「でもこれまでも絶対、何かが降りてきてラストに辿り着けたんだから」という気持ちの積み重ねで、10何年もやってきた感じがあります(笑)。――今後の刊行予定などは。辻村:6月には短編集『噛み合わない会話と、ある過去について』が出ます。いくつかの媒体に書いた短編をまとめたものですが、実は一冊にまとめる時を見越してどれも共通する裏テーマとして、“結晶化された過去”というものを設定していました。いじめられた過去だったり、いい友達同士だと思っていた過去だったり、そうした結晶化された過去を持つ2人がその思い出について語るけれど……という。読んでくれた人から「よくぞこれを書いてくれた」という感想の声がもう届いていたりして、一冊読み終えた時には、不思議とスカッとしてもらえると思います。それと来年、『週刊朝日』に連載した「傲慢と善良」という婚活の話が刊行の予定です。つじむら・みづき1980年2月29日生まれ、山梨県出身。2004年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。‘11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、‘12年『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞。今年、4度目のノミネートである本屋大賞を『かがみの孤城』で受賞。他の著作に『朝が来る』『東京會舘とわたし』など。※『anan』2018年5月23日号より。写真・女鹿成二インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年05月21日マスキングテープは知ってるけど、メンディングテープは知らないという方、結構いるんじゃないでしょうか。セロハンテープのように使えるのに、セロハンテープのように目立たず、黄ばまず、書き込める!そんなメンディングテープの利点を実際に使用して明らかにしていきます。セロハンテープやマスキングテープともちょっと違う「メンディングテープ」ってご存知ですか?セロハンテープやマスキングテープとはちょっと違う、DIYに役立つテープなんです。今回は、そんなメンディングテープを実際に使用し、その特徴を明らかにしていきます。100均でも売ってる!メンディングテープは近頃、有り難いことに100均でも売られています。今回は〔セリア〕で購入してきました。セロハンテープのように使えるようです。テープ幅は18mmで長さは7.6mと表記されていますね。テープを見てみると、このように半透明で、糊の付いていない面の触り心地はマット感があります。実はこのメンディングテープは、「アセテートフィルム」という素材でできており、つや消し加工(「マットフィニッシュ」)が施されているのです。それでは、一体どのような特性があるのか、使っていきながら見ていきましょう。破れてしまったノートの補修にチャレンジ!メンディングテープの、「変質・変色しにくく、長期の使用に耐える」「貼ると目立たなくなる」という特徴を活かして、破れてしまったノートの補修に挑戦してみたいと思います!子供が描いてくれたこんな絵だったら、絶対大事にしたいですよね(絵は撮影用です)。このように破れてしまったページに対して、セロハンテープなどで貼って繋げていくのと同じ要領で、メンディングテープを使用してみましょう。ご覧の通りの目立ちにくさです!セロハンテープだと1年もすると黄ばんで剥がれやすくなってしまいますが、メンディングテープならば安心です。ノートに限らず、本や雑誌など、紙製品の補修にもってこいですね。メンディングテープで補修した部分の下をわざと破り、セロハンテープで補修してみました。目立ちますねところで「メンディング」は、日本語で「補修」という意味に当たります。アメリカでは、日本におけるセロハンテープのような位置づけで使用されていると言います。丈夫さだけではなく、きれいに切れてベタつかないという利点があり、使い勝手バツグンなのです。そのほかの特徴も凄い!こちらは、先程補修したノートのページをコピー印刷したものです。セロハンテープのほうが黄ばんでいるのに対して、メンディングテープは白さを維持しています!コピー物の色味が重要になる場面では、メンディングテープが威力を発揮します。さて、今度は絵本の裏面に、何やら持ち主の女の子の名前が書き込まれています。実はこれ、メンディングテープを貼った上から書かれています!このようにテープの上から字がかけるので、タグ的な活用にも向いているのです。活用方法はほかにも色々!メンディングテープはほかにも色々な使い道があります。例えば、「すき間を塞ぐ」。貼っても目立たないという利点を活かして、部屋の隅など汚れが入り込みそうな部分に予め貼っておくという活用方法が考えられます。みなさんもぜひ、自分なりの活用方法を見つけてみてはいかがでしょうか!
2018年04月11日シンプルで質のいいものと向き合い続けてきた〔無印良品〕。そのブックセレクト〔MUJIBOOKS〕から、新たに文庫本シリーズが発売されました。〔無印良品〕らしく、インテリアにも馴染むシンプルなデザインの文庫本たちは、いったいどのようなコンセプトや特徴を持っているのでしょう?「ずっといい言葉と。」『茨木のり子』(著者:茨木のり子発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)〔無印良品〕が展開する〔MUJIBOOKS〕は、「ずっといい言葉と」をコンセプトに掲げた本のセレクトショップ。創業以来、モノ本来のすがたを、「素」となる少しの言葉で伝えてきた〔無印良品〕。今回誕生した〔MUJIBOOKS〕の文庫本たちには、そんな〔無印良品〕が古今東西の書物から集めた「素の言葉」「ずっといい言葉」が詰まっています。「人と物」をつなぐ本たち左から順に、●『柳 宗悦』(著者:柳 宗悦発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『花森安治』(著者:花森安治発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『小津安二郎』(著者:小津安二郎発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)〔MUJIBOOKS〕の文庫本では、職業のジャンルを問わず「くらしを見つめた文筆家」を取り上げ、複数の短編や写真などを集めて1人1冊の仕立てに編集しています。2018年2月現在、発行されている文庫本は全6冊(『人と物1〜6』)。「人と物」第一弾では「くらしを考える仕事、三者三様」をコンセプトに、『柳宗悦』『花森安治』『小津安二郎』の3タイトルが登場。いずれも、美術評論家、雑誌編集長、映画監督と、それぞれの立場から「くらし」を見つめた人物です。左から順に、●『佐野洋子』(著者:佐野洋子発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『茨木のり子』(著者:茨木のり子発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)●『米原万里』(著者:米原万里発行元:株式会社良品計画価格:税抜500円)第二弾は「くらしを味わう言葉、三者三様」がコンセプト。絵とことば、詩やエッセイ、翻訳された言葉など、さまざまな形で言葉と向き合った『佐野洋子』『茨木のり子』『米原万里』の3タイトルとなっています。シンプルなデザイン中には文章だけでなく、本人の写真や系譜、原稿の写真なども数多く掲載されています。〔MUJIBOOKS〕の文庫本は、〔無印良品〕らしいシンプルでおしゃれなデザインが特徴。クリーム色の表紙と、クラフト紙のような素材の帯がやさしい印象です。読み終わったら、インテリアとして飾ることもできます。本棚の中はもちろん、机の上、飾り棚の上など、いろんな場所になじんでくれそうです。〔MUJI BOOKS〕で、本のある毎日を。コンセプトやデザインなど、さまざまな箇所に〔無印良品〕らしさが散りばめられた〔MUJIBOOKS〕の文庫本。読書好きの方も、普段あまり本を読まないという方も、ぜひ一冊手に取ってみてはいかがでしょうか?あなたの暮らしを豊かにしてくれるような、「ずっといい言葉」と出会えるかもしれません。女子にとにかく優しい! 無印良品のアトレ恵比寿西館を徹底リサーチ
2018年03月05日マウンティングされたわけでも、悪意をぶつけられたわけでもない、なのにあの時、なぜか不快に感じたのは、こういうことか――そんな発見をもたらしてくれそうな小説がある。飛鳥井千砂さんの『そのバケツでは水がくめない』だ。「関係性の話を書きたいと思ったんです。こういうことはたくさんの人が経験している気がしたので」アパレルに勤める理世は、デザイナーの美名と友人同士のような関係を築くが、いつしか彼女の言動に心がざわつくように。仕事仲間なだけに、なんとか関係を良好に維持しようとするのだが…。「才能のある人とそのマネージャーみたいな間柄。相手に強く出られないから、どんどん歪みが深くなりそうですよね。理世は善良な小市民タイプ(笑)。真面目で一生懸命な人だと思います。最近は、自分の悩みを他人に相談するなんて悪いと思っている人って結構いる気がします。理世もそのタイプで、一人で抱え込んでいってしまうんです」それとなく傷つくことを言い、指摘すると無邪気に「悪気はなかった、傷つくと思わなかった」と言う美名。「相手を傷つけたうえ、“そんなことを気にするなんてお前が小さい人間だからだ”と暗に言って罪悪感を持たせる。手が込んでいますよね」関係がこじれた理由のひとつは、一度理世が美名のデザインに駄目出しをしたからとも読める。「否定されて平気な人はいませんよね。でも大人になると、駄目出しされても全人格を否定されたわけじゃないと理解して乗り越えていくようになる。美名はそのあたりの感覚が故障しているのかも」そんな彼女、どうやら毒親に苦しめられてきたようなのだが、「そういう背景を知ると、救ってあげたくなるかもしれない。でも専門家でもない素人が簡単にできることではないし、まず本人が自分のことは自分しか救えないんだと気づかないと、人は変われないと思います」そんな相手に尽くすのは、穴のあいたバケツに水をくむようなもの。「なのに人は水が溜まらないと、自分のくみ方が悪いのかも、と思ってしまう。そうではなく、相手に穴があいているんだと気づけば、楽になれる。今そういう悩みを持っている人に届くといいなと思っています」アパレルに勤める理世は、新ブランドのデザイナーに美名をスカウト。親しくなる二人だが、次第に美名の態度が変化し、理世を追い詰める。祥伝社1700円あすかい・ちさ作家。1979年生まれ。’05年、「はるがいったら」で第18回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。著作に『タイニー・タイニー・ハッピー』『女の子は、明日も。』『砂に泳ぐ』など。※『anan』2018年2月7日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年02月04日子どもを習いごとに行かせなくても、自宅で英語環境を作って学ばせたいと考えるパパやママが増えています。家庭英語の学習教材では、特にセット教材に人気が集まっていますが、「ベスト」な教材は、それぞれの家庭で異なるもの。そこで今回は、代表的な英語教材の特徴を含めつつ、満足度の高い教材に出会うために押さえておくべきポイントをお伝えしていきます。■まずは2、3年後の到達目標を決めようまず、どのように買いそろえる教材を決めていけば良いのか、各家庭の英語目標レベルを定めます。例えば、下記のように個々の目標はさまざまです。・小学校の英語学習が始まる前に、苦手意識を作らせない・英語を十分に聞き取れる耳を育てる・定型表現のマスター~バイリンガルの基礎作りを行う「小学校の英語学習が始まる前に、苦手意識を作らせない」ことを目的にする家庭の場合、NHK Eテレ「えいごであそぼ」でおなじみのキャラクターやパペットたちが出てきて、遊びの要素が多い『 えいごであそぼプラネット(旺文社) 』などで遊びながら、様子を見てみましょう。一方、「不自由なく英語を聞き取れる耳を作る」以上のレベルを目指す場合、日本語交じりの教材では、必要な英語のインプット量の確保は難しくなってきます。系統だったカリキュラムの下、バランスの良い教材がそろえられている、英語のみのものを選ぶようにします。『 Worldwide Kids(ベネッセ) 』や、スモールステップでグレード別になっている多聴多読教材『 Oxford Reading Tree 』などから取り組むと、十分な基礎力を培っていくことができます。そこから定型表現のマスター、そしてバイリンガルの基礎作りへと広げていきます。■習得の近道は子どもの興味を伸ばしてあげることしかし、いくら親が頑張っても、子どもが英語にあまり興味がない場合はどのような教材選びをすれば良いでしょうか。英語の早期学習を始めるメリットは、「自然な英語の音、リズムへの慣れと体得」につきます。「英語時間の習慣化」という目的を、まずはクリアできることを目指しましょう。普段から、本より歌を楽しんでいるようであれば、セット教材にこだわらず、好きな分野の音楽教材を優先的した方が効果的です。実年齢に関係なく、英語への慣れを意識した『 Super Simple Learning 』や、定型表現を歌って踊って学ぶ『 Genki English!! 』のCDといった、手軽に取り組める教材を試してみてください。特に、歌は長期記憶にも役立ちますので、手始めには歌が一番です。英語そのものに慣れれば、後から学びの範囲を広げられるので、まずは焦らずに楽しい経験を増やしてあげましょう。■おすすめのCD/DVDの聞き流し、掛け流し教材最後に、かけ流し教材としておすすめなのが、0歳から始める場合、『 エンジェルコース(アルク) 』は音声のインプット量も十分で万人向けです。しかし、10ヶ月を過ぎる頃から、どんなに良い教材を使っても、一方的な聞き流しだけでは、教材の購入費、および英語にかける時間に対して、子どもの英語力の伸長が期待できなくなるため、「聞き流しだけ」というのはおすすめできません。英語は言葉であり、生きたかかわりを通してしか学ぶことができないのです。まずは、1日に20~30分くらい英語の時間がとれれば十分。平日は、車の中で、歌を聞きながら歌う、寝る前に一緒に英語の絵本を開いたり、週末にDVDや動画をみて、アクティビティを一緒に楽しんだり…。英語とのふれあい方を工夫すれば、両親がフルタイムで働いている場合でも、家庭英語教育を続けることは可能です。親子の関わりの中で、一緒に学ぶ喜びを共有できる教材に出会えると良いですね。
2018年01月19日昨今話題の一冊、それが金井真紀さんのインタビュー&スケッチ集『パリのすてきなおじさん』だ。「フランスに詳しいわけではなかったんです。でも、前からおじさんには興味がありました」パリ在住40年のジャーナリスト広岡裕児さんを案内&通訳に、2週間の滞在中に街角のおじさんたちに声をかけ、話を聞いたという。「本当に立ち話だけの人もいましたし、お宅にお邪魔して3時間以上話を聞いた人も。全員は載せられず、泣く泣く削りました」パリ人たちとの粋で軽い会話が楽しめる一冊かと思いきや、内容は実に深い。職業や履歴はもちろん民族も宗教もみな違い、その生き方や深い言葉にふと胸を衝かれる。「多様だとは思っていましたが、思っていた以上でした。アルジェリア出身の人といっても、アラブ人とベルベル人がいたり、インドカレー屋さんだと思ったらスリランカ出身の人だったり。世の中は想像以上に込み入っていると感じました」祖国マリを出て妻子と離れ、出稼ぎ生活を36年送るシビーさん、ユダヤ人家族のなかで自分だけが生き残ったロベールさん、「イスラム教徒とイスラム主義は違う」と語るクスクス屋のファイサルさん…。〈静かな心でいれば、強くなれる〉〈ほとんどの問題は、他者を尊重しないから起こる〉など、深い言葉も飛び出してくる。たった2週間でここまでの数の人から、深い話を引き出す金井さんのインタビュー力と記事の構成力に驚くばかりだ。「推測ですが、人生が思い通りに進んでいる人ばかりではないようでした。でも自分はここまで歩んできたと、隠さず話してくれる。それが年を重ねる良さでもあるのかなとも思います。私があまりに何も知らないので“分かってない人来ちゃったなー”と、仕方なくゼロから話してくれたのかもしれませんが(笑)」市井の人が好きという金井さん。「全部を知ることはできないから、断片を拾うしかない。でも断片を集めることで何かが見えてくるかもしれない、という気持ちがあります。だからこうして、街で普通に暮らす人たちを集めてみる、みたいなことが好みなんだと思います」おじさんたちにも惚れるけど、著者にも惚れてしまう!下は自称25歳から上は92歳まで、パリの街角で出会った男性たちに話を聞いたインタビュー&スケッチ集。イラストも金井さんの自筆。柏書房1600円かない・まき1974年生まれ。作家、イラストレーター。著書に『世界はフムフムで満ちている達人観察図鑑』『酒場學校の日々フムフム・グビグビ・たまに文學』『はたらく動物と』。※『anan』2018年1月17日号より。写真・水野昭子インタビュー、文・瀧井朝世(by anan編集部)
2018年01月16日猫好きにとってはブームであろうがなかろうが、猫は無条件に愛おしい存在。自分の飼い猫はもちろん、よその家の猫や野良猫でも、姿を見ればついカメラを向けてしまう…。そんな猫好きの心をくすぐる一冊が『猫の撮リセツ』。「猫は宇宙一かわいい」がもはや口癖というフォトグラファー、清水奈緒さん初の著書だ。「世の中にはさまざまな猫の本や写真集があるのに、猫の撮り方のおしゃれな実用書はない。あれば楽しいのに…とずっと思っていたんです」そんな長年の秘めた思いから生まれた本書のテーマは、“飾りたくなる猫の写真を撮ること”。「猫って姿もしぐさもすごく絵になるんです(笑)。だから、日々の記録やSNS用にスマホでラフに撮るだけじゃなく、せっかくならちゃんと撮って部屋に飾ってほしいなと」この本にはそのためのアイデアがぎっしり。雑誌や書籍でおしゃれな猫写真をたくさん撮ってきた清水さんのテクニックを、マニアックなまでに余すところなく紹介している。「飼い猫を撮るのは基本的には家の中。必ずしも好条件ばかりではありません。でも、おしゃれで片付いた空間じゃなくても、工夫次第でフォトジェニックな写真は撮れます。今回は実例を挙げていろんな提案をしていますが、まずトライしてみてほしいのが、高い場所にいる猫を下から見上げる構図。背景となる天井は白がほとんどですし、情報量を減らせるのですっきりと見せられます。あとは、ペンなどをゆっくり動かして目線をもらうワザもおすすめ。首を傾げたり、いい表情が撮れるはず」まさに猫を飼っている人はすぐに試したくなるアイデアが満載だが、ページをめくるごとに目に飛び込んでくるのは、思わずキュンとする猫たちの愛らしい姿や表情。猫を飼っていない人にとっても、写真集として十分楽しめる内容に。いや、むしろ愛猫とフォトセッションをするような幸せな暮らしを夢想して、身悶えすることになるかも!?しみず・なお写真家。京都市生まれ。同志社大学文学部英文科卒業。シカゴ美術学院で写真の基礎を学び、大阪で内池秀人氏に師事。現在は東京を拠点に雑誌、書籍等で活動。愛猫デコと暮らす。飾りたくなる猫写真を撮るテクニックを、かわいい実例写真とイラストとともに紹介。猫好きは必見の、おしゃれで使える一冊。エクスナレッジ1500円本書の写真から。2枚目・首傾げポーズはペンで興味をひきつつ撮影。3枚目・高い所が好きな猫の習性を生かして下から撮影。覗き込む顔にはドヤ感も。※『anan』2018年1月3・10日号より。写真・清水奈緒文・野尻和代(by anan編集部)
2018年01月04日たくさんの本と木のぬくもりに包まれたくつろぎの空間ライブラリー、カフェ、キッズコーナーなどが併設されたこの店は、地域のコミュニティに欠かせない場所です。気持ちもリフレッシュされ、ホッと一息つけるリビングのような空間で、飲食を楽しみながら自由に本を読むことができます。併設されたカフェでは、本格的なピッツァも食べられることができます。ゆったりと過ごすことができるので、遠方から訪れる人も多くいるそうです。オススメ本を持ち寄ってみんなで育てるライブラリー閲覧できる本は約13,500冊!そのすべてが利用者からの寄贈で構成されています。全ての本には、「感想カード」が付いており、寄贈者の情報と寄贈者からのメッセージが記入されています。本を読んだ人も感想を連ねることができ、本を通じて会話や交流が生まれるきっかけに一役買っています。会員登録(有料)をすると、本を借りることができます。またこの場所では、会員企画のおしゃべりを楽しむ読書会やハンドメイド作品を作る会、ウクレレの練習会など様々なイベントが多数開催されており、いずれもドリンク片手に気軽なスタイルで交流を楽しめます。ほくほくのお芋とバジル香る「ジェノベーゼ」ピッツァカフェの人気メニューである「ジェノベーゼ」(756円)は、バジルのフレッシュな香りとじゃがいものホクホク感がたまらないシンプルなピッツァです。片手で食べることができるので、読書をしながらでも味わうことができます。ナポリピッツァの王道「マルゲリータ」(540円)は、トマトソースにとろけるモッツァレラチーズがたまらない逸品です。釜で焼き上げた熱々のピッツァを目当てに訪れる人も少なくはありません。もちろんドリンクだけの利用もOKです。人気ドリンクの「ナチュラルソーダ」(429円~※フレーバーによって価格が異なります。)には、レモンやオレンジ、ライムなどフレッシュなフルーツを使用したフレーバーが味わえ、ピッツァの塩気との相性も抜群です。ドリンクメニューには、オーガニックコーヒーにくわえ、大阪産のクラフトギールなどアルコールも揃っているので、本を読む目的でなくとも訪れたいカフェです。店内の窯で焼き上げる本格ピッツァと本で癒しの時間をハイレベルなピッツァとドリンクを提供するカフェと、多数の図書の中からその日の一冊を見つけて、自分のお気に入りの場所にしてみてはいかがでしょうか。大阪市営地下鉄中央線「森ノ宮駅」の2号出口から徒歩1分、もりのみやキューズモールBASEの2Fです。JR環状線「森ノ宮駅」から徒歩3分というアクセスの良さもうれしいポイントです。もりのみやキューズモールBASEの駐車場が利用でき、利用額によって駐車料金が無料になるサービスがあります。お買い物のひと休みに、休日に、まちライブラリーで過ごしてみませんか?スポット情報スポット名:まちライブラリー@もりのみやキューズモール/ピッツァフォルノカフェ もりのみやキューズモール店住所:大阪府大阪市中央区森ノ宮中央2-1-70電話番号:【まちライブラリー】06-6949-9222【ピッツァフォルノカフェ】06-6755-4348
2017年11月29日秋の夜長にと思い、ひさしぶりにお気に入りの本を読もうとしたら、くしゃみが止まらなくなった。そんな経験はありませんか?紙は湿気を吸いやすく、カビや黄ばみがワンサカしていたり、小さな虫が湧いていたりと油断ができないものです。この機会にお気に入りの本を手入れしてみませんか。本が好きで、日々購入して読んでいる方も多いと思います。本の数が増えてしまうと、手入れがしにくくなり本棚の奥底にずっと眠っているというのはよくある話です。そんな本を久しぶりに取り出してみたら、カビが生えていた、虫が湧いていた、黄ばんでいたという経験はありませんか。ついつい放置してしまいがちな本ですが、きちんとお手入れしてきれいな状態を保ってみましょう。今回は、もう一度確認しておきたい本の保管方法や、お手入れ方法を紹介します。■目次1.本の虫干し法2.古書の掃除の仕方・菌、黄ばみなど3.簡単ブックカバー4.簡単しおりまとめ1. 本の虫干し法本を好んですみつく害虫もいるため、定期的な虫干しの作業が必要です。本にすみつく害虫は、人体には影響はありませんが、成虫になると飛び回り室内にさらなる虫が発生してしまいます。どんどん産卵して数を増やすため、数が多くなる前に虫干ししましょう。■虫干しに適している時期時期は9月から11月までが適しています。冬に入る前の晴天の日を選び、午後3時くらいまでが適している時間です。この時期の湿度は50%前後にまで低下しており、本の虫干しに適しています。■虫干しのやり方本棚から本を取り出し、ぱらぱらとめくるだけです。作業はとても簡単なのですが、本の数が多くなると1日がかりの作業になります。図書館では数十日かけて、虫干しの作業をするそうです。■簡単な虫干し方法ベランダなどを利用し虫干ししましょう。新聞紙を敷いたら、本を90度くらいで立てておきます。できれば日当たりがよく、風通しのよいところを選んでください。スペースがなければ、室内に広げて、扇風機を当てると虫干しになります。■エッセンシャルオイルを吹きかけるベランダなどを利用し虫干ししましょう。新聞紙を敷いたら、本を90度くらいで立てておきます。できれば日当たりがよく、風通しのよいところを選んでください。スペースがなければ、室内に広げて、扇風機を当てると虫干しになります。■エッセンシャルオイルを吹きかける2. 古書の掃除の仕方・菌、黄ばみなど■洗剤で拭き取る二度吹き不要の「弱アルカリ性洗剤」が家庭にあるなら、それを使いましょう。ガラス用洗剤や、お家用洗剤で二度吹き不要の洗剤が売られています。乾いた布にシュッと吹きかけてから、本の表紙を拭き取ります。使い古したTシャツを使うと、本を傷めません。■消しゴムで汚れを落とす手あかがついた部分をちょっとだけ落としたいなら、消しゴムを使うのが便利です。消しゴムで強くこすり過ぎると、本の光沢や特殊加工が消えてしまう場合があるため、目立たない場所で試してみてください。■本の黄ばみの解消暗い場所で本を保管するのが一番黄ばみ防止になります。それでも長く保管しておくと黄ばむことがあるため、紙やすりを使って落としていきましょう。紙やすりは150~400番を使い、仕上げに800~1200番を使うときれいな仕上がりになります。3. 簡単ブックカバー■紙袋で作るブックカバーおしゃれなデザインでいつか使おうと思って取っておいた紙袋は、ブックカバーにリメイクしてみましょう。紙袋に本を当てたら、上下3cm、左右10cm余裕をもってカットします。上下を本から数mm余裕を持たせて、内側に折り込みましょう。左右を本に折り込んだら完成です。■三角しおり4. 簡単しおり折り紙を使って簡単な三角しおりを作ってみましょう。折り紙を半分に折り、さらに半分に折って折りジワを付けます。四方の1つを内側に向かって三角に折ります。反対側に折り曲げたら、三角に折ったもう一方を上に向かって折り曲げます。はみ出た三角の部分を最初に折った三角の部分に入れましょう。すると四角の形ができあがります。これで三角のしおりの完成です。カラフルな千代紙や、包装紙でも同じように作ることができます。文庫本は小さなサイズの折り紙で作ってみてください。まとめ大切な本だからこそ、長く丁寧に保管したいものです。少し手間ではありますが、天気の良い時間がある日にゆったりと行ってみてください。きっと爽やかで心地よい気持ちになれるはずです。きれいになった本を化粧したい方は、かわいい柄でブックカバーやしおりも作ってみて楽しんでくださいね。
2017年11月01日