開催まで1カ月を切っているにも関わらず、東京五輪・パラリンピック組織委員会(以下組織委)による“迷走”が止まらない。事の発端は6月22日に共同通信が報じた、組織委が五輪競技会場での酒類の販売を認める方向で調整しているとしたニュース。まん延防止等重点措置などで飲食店による酒類の提供が今も厳しく制限されている中での、五輪への“特別扱い”には世間の不満が爆発。報道を受けた丸川珠代五輪相(50)は、同日の記者会見で「大会の性質上、ステークホルダー(スポンサーなどの利害関係者)の存在があるので組織委はそのことを念頭に検討される」と発言。この発言によって、五輪のゴールドパートナーであるアサヒビールの公式SNSには批判が殺到する事態にまでなった。しかし、その夜に事態は急転する。同日の22時頃、共同通信は組織委が酒類販売を見送る方針を固めたことを報じたのだ。翌日には組織委の橋本聖子会長(56)が記者会見で、「少しでも国民の皆さんに不安があるようなことがあれば(酒類の提供は)断念しないといけない」と正式に酒類の提供中止を発表した。アサヒビールも、23日に公式サイトで次のようにコメントしている。《当社は大会組織委員会の酒類提供見送りの決定を支持します。また昨日、酒類提供容認の報道を受け、当社から大会組織委員会へ酒類提供を見送るように提言を行いました》反発を予測できず、すぐに方針を変更する組織委の“朝令暮改ぶり”には失笑する声が相次いだ。《オリンピックでの酒類販売、医療、飲食の団体から猛反対をくらって中止になったみたいだけど、そもそも、そう言う発想が狂気の沙汰》《この朝令暮改はどう考えてもお粗末だなぁ》衆議院議員の小沢一郎氏(79)もTwitterで次のように呟いていた。《批判が強いからやめる。全てが場当たり的で、いい加減。無責任極まりない。国民の命と生活を第一に考えていないから、こうなる。考え方の根本が間違っている。》
2021年06月24日都内某所にある「ノーマスクカフェ」の外観6月のとある平日、夜7時過ぎ。東京都心から郊外に向かう下り電車の中は、小池百合子都知事のテレワーク推奨の影響もあってか、立っている人がパラパラといる程度。それほど“密”な状態ではないが、もちろんほぼ全員がマスクをつけている。コロナ禍で見慣れた光景だ。■耳鼻咽喉科専門医の助言で「ノーマスク」にところが、よく見るとマスクをつけていない大学生風の若い男性と、20代くらいの1組の男女が。彼らは知り合いというわけではなさそうだが、ある駅に着くと図ったかのように3人とも降りて同じ方向に歩きだし、駅から5分ほど歩いたところにある一軒のカフェに入って行った。このカフェ、実はノーマスクカフェとして「コロナはただの風邪だからマスクなんて不要」という“ノーマスク派”にちょっと有名なのである。店内は2~4人掛けのテーブル席が30席くらいあるが、外から見る限り半分ほど埋まっていて、お酒をのんでいる人が多いようだ。その客たちがみんなノーマスクなのはもちろん、3~4人いる20~30代くらいの店員も全員マスクをつけていない。今どき珍しいが、なぜ、この店では誰もマスクをつけていないのか。その日は混んでいたので潜入はあきらめ、後日、それほど混んでいない昼間に店に入ると理由がわかった。店内のテーブルの上に一枚のチラシが置かれているのだ。そのチラシには赤い字で目立つように、「マスクは感染予防にならない」と書いてあり、横に女性医師の写真とコメントが載っている。その医師はMさんという耳鼻咽喉科専門医。専門医というのは認定試験に合格した医師のみが名乗れる特別な資格である。そのM医師がマスクの効果にはっきりと疑問を投げかけ、チラシの一番上には「専門家による助言に基づき、スタッフはマスクを着用しません」と書かれている。そんなチラシが店内のすべてのテーブルだけでなく、出入り口のドアの目立つところにも貼ってあるので、店内にいるとマスクをつけ続けていることのほうが居心地の悪さを感じてつい外したくなるし、また、日ごろからマスクをつけていない“ノーマスク派”の人たちが居場所を求めてこのカフェに来ているようだ。なぜ、マスクが感染予防に効果がないのか。チラシに書かれているM医師の説明によると、一般的なマスク(不織布マスク)の網目の大きさよりウイルスの粒子の方が小さいので、マスクをしていてもウイルスが入ってくるから予防にならない、とのこと。■マスクの有効性は科学的に示されているが…たしかに、ウイルスの粒子自体はマスクの網目より小さいが、新型コロナウイルスで注目されている感染経路は飛沫感染。咳やくしゃみといった飛沫と一緒にウイルスが放出され、それを近くにいる人が口や鼻などから吸い込んで感染してしまう。ウイルスを含んだ飛沫はウイルスの粒子よりもかなり大きいので、マスクでブロックすることができる。実際、理化学研究所などがスーパーコンピューター「富岳」を使って不織布マスクで実験したところ、顔に隙間なく着用した場合は、飛沫や飛沫より小さいエアロゾルをほぼブロックでき、マスクと顔に隙間がある場合でも、約7割ブロックできることがわかったと発表した。もちろん、エアロゾルなどはマスクだけで100%防ぐことは難しいので、富岳を使った実験のチームリーダーである神戸大学システム情報学研究科の坪倉誠教授は、マスクだけでなく、換気を行うことも大事だとしているが、感染予防としてのマスクの有効性は科学的に示されている。また、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も、マスクの徹底と換気の重要性を記者会見などで何度も強調している。■M医師は「取材拒否」その点についてM医師はどう考えているのか、話を聞くべく取材を申し込んだが、「取材拒否」という返答だった。ノーマスクカフェに置かれたチラシには、M医師の言葉として以下のようなことも書かれている。「マスクは使い方によっては不衛生です」「マスクに期待できる効果は唾液を飛ばさないこと。つまりマスクには唾液がたくさんついているということです。さらに表面には細菌やウイルスが付着しているため、触ると不衛生です」M医師は他に、ブログや動画などで「コロナは大騒ぎしすぎ」、「症状がないなら病気とは言えない」、「私の耳鼻咽喉科はこんなにヒマなことはこれまでにない、というほどヒマ。医療崩壊間際!と叫んでいた情報は、本当なのだろうかと疑う」といった発言も。夜の9時近くになってもノーマスクカフェから客がひける様子はない。客の楽しそうな声が店の外まで漏れ聞こえてくる。このカフェ、実は約1か月後に開幕される東京五輪の男子サッカー日本代表戦などが行われる大規模会場と同じ市内にある。大会組織委員会は、1万人まで観客を入れるという。もしサッカー観戦後に熱狂した観客が近くにあるこの店を訪れ、マスクを外して大騒ぎしたら……。東京都内は23区と多摩地域が緊急事態宣言からまん延防止等重点措置に切り替わったとはいえ、まだまだ気を引き締めないといけないと思うのだが──。
2021年06月24日東京五輪開催の是非を23区に直撃東京五輪の開会まで残り1か月となった。6月20日には東京都の緊急事態宣言が解除され、自粛は緩和された。しかし都内では新型コロナウイルスの混乱が収束したとは言い難く、国民からは開催に対して根強い反対論が巻き起こっている。そこで週刊女性は6月15日~6月18日の期間、東京23区の区長に対して、五輪開催に「賛成」「反対」または「その他(理由つきで)」を問うアンケート調査を行った。五輪の開催については国や都に判断の権限があるため、区長は拒否することができない。しかし、区長には同時に区民の命を守る責務がある。地域単位で五輪の開催に表明した取り組みとしては、東京都小金井市の議会が話題となっていた。小金井市の議会は6月3日、「東京オリンピック・パラリンピック開催の中止を求める意見書」を賛成多数で可決した。全国の議会で初めて、五輪の中止要請を求めたのだ。同じくコロナ禍での開催強行について、開催の中心地である23区の区長たちは、本音ではどう考えているのだろうか……。国立感染症研究所は6月15日、コロナ感染に関する試算を公表した。試算では、6月に緊急事態宣言を解除することで、7月末~8月に1日1000人規模の感染者の山がくると示している。■死人が出ても仕方ないそんな状態でなぜ宣言を解除するのか? 長年、五輪の問題点を指摘している著述家の本間龍さんによると、「今宣言を解除するのは、明らかに五輪の開催に合わせたもの。五輪があることでさまざまな対処が甘くなり、夏以降、また緊急事態宣言を出さなければならなくなるかもしれない。そうすれば、経済的な損失も数兆円規模になるでしょうね」それだけではなく、「夏は熱中症患者が増えることから、例年、医療機関に負担がかかる。そこにコロナも加わる。政府は、ある程度なら死人が出ても仕方ないと考えているとしか思えません」会場でのコロナ対策も十分とは言えないという。「アスリートに対しては厳しくルールを決めているので、ある程度は感染を防げるかもしれません。問題は、参加するボランティアです。彼らは希望すれば組織委員会からワクチン接種を受けられますが、対象者は通訳や選手の荷物を持つ人など選手の身の回りの人に限られており、全ての人が打てるわけではない。選手と違って隔離されずに自宅に帰るので、意味がない」接種のハードルも高く、「ボランティア向けのワクチン接種は6月18日に始まりましたが、会場は現在のところ、東京に1か所あるだけ。ここに全国のボランティアが2回も打ちに来られるわけがありません」その他、海外から来たメディアやスポンサー関係者は街を自由に動き回れるうえ、実効性のある規制もないため感染拡大の危険性は高いという。ところが政府の危機感は薄く、6月17日の記者会見で菅義偉首相は、会場に観客を入れて開催する意向を表明。翌日にコロナ分科会の尾身茂会長が「主催者や政府、開催地が一体となって取り組むべき感染対策がほとんど議論されてこなかった」と批判する事態に発展している。■23区の区長が出した答えそんな状況下で、東京23区の区長たちはアンケートにどう答えたのか。集計したところ、「賛成」したのは7区で、江東区、墨田区、千代田区、目黒区、港区、江戸川区、大田区。「その他」と回答し賛成と明言することは避けたものの、開催に前向きな意見を寄せたのが、杉並区、中央区、北区、世田谷区だ。ほかに「(判断は)検討中」「感染状況を見て決める」などという回答をしたのが葛飾区、板橋区、台東区、文京区。「回答する立場にない」と意見を明言しなかったのは中野区、荒川区、足立区だ。その中で足立区だけは開催の賛否については語らずも、「小・中学生の会場での観戦など(安全性が)不透明な部分も多く、苦慮しています」と23区で唯一、開催についての危険性を懸念する考えを示した。豊島区、新宿区、練馬区、渋谷区、品川区からは回答がなかった。そして驚くことに、「反対」を表明した区はゼロだった。住民の命が深刻な危険にさらされるという危機感のある首長はいないということなのだろうか……。この結果に本間さんは、「想像どおりの結果ですね。とにかく政府は、やりさえすれば成功と言う。区長たちの回答からは、国や都が責任を取るから自分たちは判断しないという考えが感じられますね」賛成した自治体については、「江東区は五輪会場となる施設が最も多い区です。他の賛成する区も、五輪の会場があるところがほとんど。中止になれば本番に向けてさまざまな準備をしてきた予算もムダになるため、批判にさらされてしまう。今さら反対しても仕方がないということでしょう」感染拡大が収まらない状況下で強行開催される東京五輪。もはや、自分の命は自分で守るしかないようだ。■開催「反対」の区長はゼロという結果に賛成・江東区現在、国、東京都、組織委員会において、選手・大会関係者の行動管理や健康管理の徹底、地域医療へ影響が生じない医療・検査体制の整備などに取り組んでいる。江東区は、現下の状況においては、まずは感染防止に全力を挙げ、区民にとって安全安心な大会が開催されることが何より大事なことと考えている。・墨田区現在、国を挙げて安全・安心な大会の実現に向けて取り組んでいますので、開催に反対する考えはありません。・千代田区区民や来訪されるすべての皆様、そしてアスリートの皆様の安全・安心に対し、万全の体制を整え大会を迎えるのが私たちの責務と考えています。・目黒区コロナ禍の中での開催については、様々な意見があることは承知しております。政府や組織委員会、東京都等では、感染症に関する専門家の意見を踏まえ、大会開催による感染防止策等が検討されており、安全・安心な大会が開催できることと考えております。・港区五輪は万全の感染防止対策のもとで行われるべきである。区は、これまで地域とともに、スポーツ振興や文化プログラムの実施、各国の文化紹介などに取り組んできた。五輪開催地の東京や日本の魅力が世界に発信され、各国の情報ももたらされることで、複雑化する世界情勢の中での相互理解や国際交流が深まることを期待する。・江戸川区区民の安全・安心が守られることが前提。開催都市としての役割を果たすことが大切であるため。・大田区オリンピック・パラリンピックは、国際的な相互理解や友好関係を増進させ、平和・共生社会・環境などに配慮した崇高な理念に基づく世界最大のスポーツの祭典です。大会開催には、安全・安心な環境を整えることが重要です。国や東京都、大会組織委員会は、選手や大会関係者の水際対策の徹底や行動制限、健康管理など、新型コロナウイルスの感染予防策を徹底して行うこととしており、選手等だけでなく国民にも感染が広がらないよう十分配慮した対応がなされると考えています。その他(実質賛成)・北区大会開催に向け、感染症対策について万全を期すよう特別区長会を通じて、国と東京都に求めているところであり、引き続き、感染状況を注視しながら、関係団体と連携を図り、感染症対策の徹底に向けた取組を進めていきます。理由:新型コロナウイルスの感染防止のために万全の対策を講じることが前提と考えているため。・中央区新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい国民生活に甚大な影響を与えています。その中で迎える事になる2020大会。人々の安心安全を守るためにあらゆる努力を惜しまず、感染症の災禍を乗り越えて、最大限の安心安全な環境を整える事が第一です。その上で、オリンピック・パラリンピック憲章にある、すべての人々の平和への希求、スポーツをするすべての人々の人権表現である四年に一度の人間の可能性への挑戦を、友情、連帯、フェアプレー精神と共に、コロナに打ち勝つ象徴的事業として、人知を結集して実施すべきと考えます。・杉並区中止の判断が出てない以上、粛々と進めていく。理由:招致に関しては、都議会等で民主主義の原理に基づき決定された内容であるので、杉並区としては、区ができることを行っていく・世田谷区区はオリンピックの開催の可否について判断する立場にないが感染防止対策を万全にし、リスクを最小限にすることを最優先に東京2020大会に向けて役割を果たしていきたい。■5区の区長が無回答その他(検討中)・葛飾区五輪開催有無は都が判断する事項であり、どちらに決まっても、区は都と連携して対処していく予定です。もし開催することとなった場合は、本区が関わるパブリックビューイングや聖火リレーなどについては、国、都の動向や感染対策の方法などを見極めた上で、実施可否を判断する予定です。・板橋区東京2020大会の開催については、感染の状況やその拡大防止対策などを十分に考慮したうえで、総合的に判断されるものと考えている。・杉並区中止の判断が出てない以上、粛々と進めていく。理由:招致に関しては、都議会等で民主主義の原理に基づき決定された内容であるので、杉並区としては、区ができることを行っていく・台東区組織委員会が国と東京都とともに様々な対策を進めており、区として引き続き、情報収集を行って参ります。・文京区新型コロナウイルス感染の状況に応じ、決定されるべき理由:新型コロナ感染症対策を踏まえ、大会組織委員会、国、都などの関係機関の動向を注視しながら、取組を進めていくため。その他(明言せず)・荒川区五輪について、賛成・反対を示す立場にない。五輪の開催については、国や都、また組織委員会において、適切な判断・対応がなされるものと考える。・中野区東京オリンピック・パラリンピックの開催に、賛成・反対の考えを示す立場にないと認識している。今は、中野区としてできる新型コロナウイルス感染症拡大防止の取組や円滑なワクチン接種の実施、そして感染症の影響による生活困窮など区民や区内事業者の支援に全力を尽くす思いである。・足立区区内の感染者は減少傾向ですが、区民の健康と安全安心 への影響を懸念しています 。 開催については、組織委員会と東京都の判断と認識しており ますが 、 例えば小・中学校 の児童生徒の会場での観戦など不透明な部分も多く、苦慮しています。無回答・練馬区、新宿区、豊島区、品川区、渋谷区
2021年06月22日感染拡大を心配される東京オリンピック「医学的な観点から考えれば、五輪は中止すべきであると思います」そう断言するのは、約40年にわたりワクチン研究をしてきた横浜市立大学名誉教授・奥田研爾先生。■東京五輪で感染爆発の可能性「ジョンズ・ホプキンス大学では開催国の70%以上の人がワクチンを打ってから始めるべきだと提言しています。私も同様の考えで、全国民の7割以上の人が抗体を保有すれば、その人々が盾となり新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐことができると推測します」(奥田先生、以下同)現在、国内でワクチンを2回接種したのは全体の5%以下。五輪が開幕する7月23日までに、ワクチン接種を完了する日本人は5分の1にも満たないともいわれている。そういった状況下でオリンピックを開催すれば、「再び感染拡大のリスクは高まる」と奥田先生は警鐘を鳴らす。さらに、大会のために来日する選手と大会関係者、およそ9万4000人の管理に対しても疑義を唱える。「特に、検査やワクチンのしっかりしていない開発途上国の選手が、ワクチンを接種したり検査したりしてから参加できるのか疑問です。また、来日後の選手やスタッフの行動を把握できるのかも疑わしい」選手の宿泊に関しては、選手村に入らず独自に宿泊先を取ることも可能という扱いだ。この場合、選手村で検査を受ける必要があるとのことだが、先日、『日曜報道THEPRIME』(フジテレビ系)にリモート生出演した千葉県知事・熊谷俊人氏は、「千葉県でいえば、幕張とかに組織委員会が大量にホテルを予約されているんですけど、それがどういう方なのかなどですね、そういう情報が十分に共有されていないところがありますので」と漏らしている。雲行きは、そうとう怪しい……。こうした不安を払拭するために、政府や東京都、組織委員会は、PCR検査を徹底したうえで、選手・関係者を外部と遮断する──、いわゆる『バブル方式』を導入すると計画している。しかし、奥田先生は「完全に封じ込めることはできない」と指摘する。「陰性だったとしても、それが偽陰性の可能性もあります。新型コロナウイルスは、潜伏期間が1~14日間、多くは3~4日といわれ、無症状時に他者へ感染させてしまうケースが4割とも。繰り返しますが、大規模な大会を開催するなら、7割以上の人がワクチンを接種し集団免疫を獲得してからです」独米PR戦略大手『ケクストCNC』の世論調査によれば、東京五輪の開催に対して、日本56%、イギリス55%、ドイツ52%、アメリカ33%が「同意しない」と回答。「日本はいまだワクチンを自国で作れていない国です。さらに、ワクチンの接種率も先進国の中で最低レベル。もし五輪を開催し感染が拡大すれば、世界から非難のまとになるでしょう」あまりにもリスクが大きすぎる東京五輪。しかし、状況は開催へと向かっている。もし今のまま東京五輪が開かれたら──。考えられる最悪のシナリオをシミュレーションしてみたい。7月23日、静まり返った会場に無数の花火が打ち上がる──。新国立競技場で幕を開けたオリンピック開会式は、これまで見たことがないような異様な雰囲気に包まれていた。一般観客の姿がないスタジアム、喜色満面の作り笑いを浮かべた各国要人や五輪関係者が、入場行進をする選手団に拍手をおくる。盛り上がり以上にむなしさを感じさせるオリンピックが幕を開けた。大会直前になっても、世論は賛成と反対に揺れていた。その理由のひとつが、政府、東京都、組織委員会の変わらない危機管理意識の低さだ。入国後、五輪関係者などにPCR検査を繰り返すことなどを条件にする一方、選手に対しては2週間の待機を免除する特別措置をとっていた。つまり、選手は入国直後から練習することも可能で、運営上必要な関係者(技術スタッフ含む)も必要な感染予防を行えば隔離されず、ホテルと会場などの往復をすることができるのだ。2月に行われたテニスの全豪オープンでは、選手をチャーター機で入国させ、その後、2週間のホテルでの隔離生活(毎日PCR検査を実施)を命じた。万全の対策を講じたが、それでも選手や関係者から感染者が発生してしまった。ところが東京五輪は、各国選手団がそれぞれのスケジュールで来日する統一性のなさに加え、隔離生活を免除。案の定、感染者が発生してしまい、その杜撰な管理体制に対して、各国メディアが一斉に糾弾する事態に発展した。政府は、水際対策を怠ったホストタウンに非があると責任を回避し、さらにアンチ五輪の声は高まっていった。「五輪が始まれば一転する」──。関係者の折伏が連日響き渡るも、競技が始まってからも旗色はよくならない。ワクチンの副反応を怖がり、接種を拒否した日本人選手に対する世間の誹謗中傷に加え、直前に2回目の接種を完了したことで副反応による体調不良を訴えるアスリートも散見されるように。海外の報告によれば、ワクチンの副反応で多いのは、打った筋肉部位の痛み(75%)、倦怠感(50%)、頭痛(44%)などだが、いずれも通常は1~2日で治まる。仮に、急激な血圧低下で意識を失うアナフィラキシーショックが生じても、ボスミンなどのアドレナリン注射で症状は治まるのだが、国民に対してワクチンについての説明が不足しているのが現状だ。■浮かれた選手から陽性者も……輪をかけて、柔道やレスリングなど選手同士が激しくぶつかり合う種目から陽性者が発覚してしまう。練習相手を務めていたメダル候補の選手も隔離されることになり、「コロナによって奪われたメダル」などの見出しがネットニュースで躍る。悲劇の選手がいる一方、選手村への酒類の持ち込み、コンドームの無料配布が仇となり、ハメをはずしている最中に感染したことが発覚した、お騒がせ選手も報道された。なんとか不安ムードを払拭したい関係者は、猛反発にあったパブリックビューイング──ではなく、開会式後に聖火が移されるお台場聖火台エリアに一縷の望みをかけていた。ただでさえ人出の多いお台場エリアだが、五輪開催時は『オリンピックプロムナード』と称し、数々のイベントが行われた。結果として、人数制限こそ設けたものの夏の陽気に浮かれた人々が大挙して押し寄せる。その様子を海外の放送局が「コロナウイルス培養地」と発信し、いろいろな意味で物議を醸すことに。時を同じくして、お台場ではトライアスロンが行われており、かねてから問題視されていた水質汚染が再浮上。関係者が「コロナに比べればマシ」とも取れる失言を発し大顰蹙を買ってしまう。フィールド外では、看護師をめぐって五輪のボランティアとワクチン接種のボランティアが駆け引きを行い、どこまでも国民不在のオリンピックは盛り下がっていく……。◆ ◆前回の’64年東京五輪は、戦後の復興という大きなテーマに向かって、国民が同じ方向を向いていた。しかし、今回の東京五輪はそうではない。政府や東京都、組織委員会、IOCは開催ありきで話を進め、国民にいたっても賛成派と反対派で真っぷたつに分かれている。前出の奥田先生は説明する。「ワクチン接種が間に合わないなら、抗新型コロナウイルス治療薬として、未承認だがアビガンやストロネクトール、カモスタットなどの薬剤がある。治療について医師が正しい知識を持つことが前提だが、それらを組み合わせればほとんどの人が早期であれば治療可能であると、私を含め多くの治療にあたる医師たちが口にしています。エイズも、3種類の治療薬を混合し、飲むことで、今では先進国において亡くなる人は、ほぼいなくなりました。あるものを有効活用し、正しく議論し、総力戦でコロナに立ち向かったうえでオリンピックに舵を切るなら、まだ理解を示すこともできる。しかし、現状は現実的な議論が足りない」最悪のシナリオは“if”でしかない。だが、あまりにも問題が山積みだ。PROFILE●奥田研爾(おくだ・けんじ)●横浜市立大学名誉教授、元横浜市立大学副学長。ワクチン研究所を併設した奥田内科クリニック院長。’12年には元日本エイズ学会理事など。著書に『この『感染症』が人類を滅ぼす』(幻冬舎)、『感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ』(主婦の友社)など多数。
2021年06月16日開催を目前にして、JOCの経理部長が自ら死を選んだ。何があったのか──「とても優しそうな人でした。庶民的な一戸建てに、家族と仲よく暮らしていらっしゃったのに……」近所の主婦は、驚きの表情を隠せない。■Aさんは東京五輪全体の金の流れを把握していた事件は、地下鉄都営浅草線『中延(なかのぶ)駅』で起きた。6月7日の朝9時22分、2番線『泉岳寺行き』のホーム、最後尾の車両位置で電車を待っていた52歳の男性Aさん。列車が入ってくる直前、彼は線路に飛び込んだ。その光景は複数人の乗客らが目撃していた。ホームにいた乗客は、「小さなカバンを足元にそっと置いて、何事もないかのように、静かにスッと飛び込んだんです」と、話している。飛び込みが起きてから約30分後に、Aさんはようやく電車の下から救出されて病院に搬送された。だが11時40分、搬送先の病院で死亡が確認された。電車は上下線で24本が運休して、最大で76分遅延。およそ1万人の足に影響したが、10時51分には全線で運転が再開された。この飛び込み自殺、轢死(れきし)事件で亡くなったAさんは、なんとJOC(日本オリンピック委員会)の経理部長という要職に就いている人物だった。冒頭の主婦は続ける。「そんなに偉い人だとは思っていませんでしたよ。こぢんまりしたお宅だったのでね」そんなAさんは、職場では莫大な金を動かしていた──。五輪関係者は、こう話す。「JOC経理部長であるAさんは、東京オリンピック全体のお金の流れを把握していました。そんな彼が開催の約6週間前に自ら死を選ぶなんて……関係者はみな首をかしげていますよ」思い出されるのは、あの事件だ。スポーツ紙記者が指摘する。「学校法人・森友学園への国有地売却をめぐる公文書改ざん問題。財務省近畿財務局の職員だった赤木俊夫さんが、上司からの指示で公文書を改ざん。命令とはいえ、罪の意識に苛まれた赤木さんは自殺しました。このことが、みな頭に浮かびましたよ。Aさんも組織との板挟みに苦しんでいたんじゃないかって」■税金が不透明に使用されている!あるイベント関係者は、五輪の金の流れを次のように言及する。「五輪は公共事業のようなもの。それなのに、大手広告代理店に予算をほぼ丸投げしていて、すべてお任せ状態」広告代理店を選定する際は、「一応、競争入札があるんですが、暗黙の了解があって……。だいたい同じ広告代理店が仕切って、その代理店に下請け企業からキックバックがあったりと、まあやりたい放題ですよ。国民の多大な税金がつぎ込まれているわけだから、不透明な金の流れは本来、許されるべきではない」5月26日、衆院文化委員会で五輪組織委員会が広告代理店に委託しているディレクターの日当が35万円と高額すぎることが問題になった。「氷山の一角でしょう。6月5日には、同じく組織委の現役職員が不透明な金の流れをTBS系の報道番組『報道特集』で告発しています。これからもポロポロ出てくる可能性はありますね」(同・イベント関係者)Aさんも、この一件に巻き込まれていたのだろうか──。JOCに問い合わせると、このような回答があった。《ご理解について誤解があるようですので補足させていただきます。東京2020大会の運営を担うのは、本会ではなく別組織の東京2020大会組織委員会です。そのため本会では大会運営に関する予算は取り扱っておらず、もちろん当該職員(Aさん)も携わっておりません。事実に基づかない報道はお控えください。~以下、略》だが、前出のイベント関係者はこれに対して真っ向から反論する。「確かに五輪に関わっているJOC、組織委員会、さらには招致委員会は表面上、別組織の形になっています。ですが、本体であるJOCの経理部長がすべての金の流れを把握できる立場にあるのは間違いないですよ」そもそも“JOCの親玉であるIOC(国際オリンピック委員会)にも問題がある”と話すのは、スポーツ評論家の玉木正之さんだ。「IOCのことを“金を巻き上げるマフィア”だと言う人もいます。JOCも似たようなものですかね。“スポーツと平和”を高らかに掲げながら、それを利用して暴利をむさぼっているんですから。まともな組織だと思ってはいけないんです」JOCの職員たちは、Aさんの死をどのように受け止めているのか。新宿にあるオフィス前で職員を出待ちしたが、話しかけるやいなや足早に逃げていくばかりだった。「箝口令(かんこうれい)までではないですが、上からやんわりと“話さないように”とクギを刺されているみたいですね」(前出・イベント関係者)■JOCはどんな形であれ透明性を示すべき組織の隠ぺいに関わって、良心の呵責に苛まれる。実直な人ほど、精神的に追い込まれてしまうもの。Aさんは、どんな人物だったのだろうか──。埼玉県の指折りの県立進学高校から法政大学を経て、西武鉄道グループの不動産会社であるコクドに入社した。JOCには当初、コクドからの出向だったが、その後JOC専任となった。「Aさんは10年ほど前に一戸建ての自宅を購入。1階でピアノ教室をやっている奥さん、20歳を越えた2人の娘さんの4人で暮らしていました」(近所の住民)毎朝、スーツ姿に帽子をかぶり、いかにも事務職らしい小型のバッグを持って通勤していたAさん。「背が高くて、いつも颯爽と歩いていてカッコよかったですよ。顔はいかにもまじめそうで、きっちりとした方なんだろうと思っていました」(同・近所の住民)自分に誠実であろうとしたAさんにとって、最終的な選択肢は“死”しかなかったのかもしれない。玉木さんは、語気を強めてこう話す。「JOCという組織はどんな形であれ、透明性を示すべきです。マスコミも五輪のバックにいるスポンサーや広告代理店に気兼ねせずに、徹底追及してほしい!」前出のイベント関係者も、「今は五輪開催を疑問視する声も多いですが、いざ始まったらわかりません。日本人選手がメダルをとったら、国民のボルテージが一気に上がって、この事件のことなんて忘れ去られてしまうんじゃないかな」準備してきた晴れの一大イベントを見ることなく、天国へ旅立たれたAさん。彼のためにも、真相究明の手を緩めてはいけないのだ。
2021年06月15日大野智昨年末に嵐がグループでの活動を休止して半年がたった。5人そろった姿が見られず、寂しい思いをしていたファンにとって、朗報が!「6月に中国で開催される『第24回上海国際映画祭』に、嵐のライブ映画が出品されるんです。監督は2002年に公開された5人の初主演映画『ピカ☆ンチ LIFE IS HARDだけどHAPPY』でおなじみの堤幸彦さんが務めます」(スポーツ紙記者)5人が“復活”することを喜ぶファンも多いだろう。しかし、現在のメンバーの雰囲気は当時のように和気あいあいとはいかず─。「最近は、メンバー同士で連絡をとることもなく、少々距離ができているように見えます。やはり“あの報道”が原因でしょうか」(芸能プロ関係者)■どこから情報が漏れたんだ“あの報道”とは、今年4月に『女性自身』が報じた、大野智と新恋人との京都旅行だ。「4月初めに30代の女性とふたりだけで京都を訪れました。Jr.時代にお世話になっていた旅館に連れていったことや女性と親しげに歩くツーショット写真が掲載されるなど、恋人関係にあることは明らか。昨年11月に、『週刊文春』で結婚を意識して交際していたシングルマザーの女性がいたことが報じられましたが、すでに彼女とは破局していました」(前出・スポーツ紙記者)今年から個々で活動する4人とは違って、大野は芸能活動も休止している。とはいえ、ファンにとっても、本人にとっても、この報道は衝撃だったようで……。「大野さんはごく限られた人にしかカノジョの存在を打ち明けていませんでした。それなのに、公になったことで、周囲には“どこから情報が漏れたんだろう”とこぼしていましたよ。よほどショックだったのか、最近は親しい友達との連絡も絶っているといいます」(大野の知人)大野が疑心暗鬼になるのも無理はない。少し前にも同じようなことがあったからだ。「昨年シングルマザーの女性と交際が報じられた際も、ふたりが海で親しげに寄り添う様子など、仲間内でしか出回っていない写真が表に出て、そうとうショックを受けていました。それから半年足らずで、同じようなことが起きてしまいました」(同・大野の知人)ただ、あるレコード会社関係者は、今回の京都旅行に苦言を呈する。「大野さんには“危機管理能力”が足りないように思いますね。大野さんは仲よくなるとプライベートなことも話しますが、必ずしも彼を慕って近づいてくる人ばかりではありません。その証拠に、短い期間で女性との関係をリークされているので、周りの人を信用しすぎず、もう少し慎重に行動したほうがいいのではないでしょうか」大野は、そうした思慮を欠いた行動によって“ある約束”を破ってしまった。「2019年に二宮和也さんが結婚して以降、メンバー同士で“自分たちもいい年齢なのだから、恋人がいてもいいと思うけど、仕事先やファンに迷惑をかけないようにしよう”と決めていました。その点で、今回の大野さんの行動は、ふさわしくなかった。表舞台に出なくなり、動向を気にするファンを心配させてしまいましたからね」(同・レコード会社関係者)■コロナ禍で堂々と京都旅行そもそも、新型コロナウイルスの影響で、世間が“自粛ムード”に包まれる中、旅行に行ったことを問題視する人も。「ジャニーズ事務所内では、コロナ禍に県をまたぐ移動をしたこと自体を咎める声も上がっているようです。現在、ジャニーズのタレントは、不要不急の外出を避けるよう注意されています。大野さんも、基本的には都内にいて、京都を訪れた際も“緊急事態宣言”期間を避けるなど、彼なりに注意はしていたようですが、やはり軽率な行動であることに変わりありません」(別のレコード会社関係者)大野も、ファンを心配させたことは悔やんでいるだろうが、一部のファンは彼に冷ややかな視線を向けている。「活動休止を発表したときに、“休みたい”と話していましたし、恋人と過ごすのはいいと思います。ただ、京都という人目につく場所を堂々とふたりで歩いたことはどうなのかなと。いくら芸能活動をしていないとはいえ、プロとしての意識を欠いているのではないでしょうか」(大野ファンの女性)メンバーはそうした厳しい声も受け止めながらも、松本潤と櫻井翔は大野に対して“憂慮”を抱えている。「ふたりはもちろんですが、相葉雅紀さんも二宮さんも、決して大野さんを責めるようなことは言っていません。むしろ、メンバーは今回の報道に対して、“いまは芸能界から離れているのだから、そっとしてあげてほしい”と心配していますよ」(テレビ局関係者)■東京五輪で“再結成”に黄信号とはいえ、大野の行動によって、5人の足並みが乱れたことも事実だ。「相葉さんと櫻井さんは、MCを務める嵐の後続番組が軌道に乗り始め、二宮さんも、活動休止前からの日テレ系レギュラー番組『ニノさん』をはじめ、仕事に打ち込んでいます。松本さんも2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』で主演を務めることが発表されるなど、それぞれの仕事が定着し、ファンも安心した矢先の報道でしたからね……」(同・テレビ局関係者)5人の気持ちがひとつになっていないと心配なことが。「今年7月に開催される東京オリンピックで“再結成”することが難しくなったのではないでしょうか。嵐は、2019年に『NHK東京2020オリンピック・パラリンピック放送スペシャルナビゲーター』に就任し、現在も変更になっていません。ただ、いまの状態では全員そろうとは思えませんね」(前出・芸能プロ関係者)これまでも、オリンピックで復活する可能性は報じられていたが、実現するには大野の了承が不可欠だ。「大野さんは、期間限定の活動に対しても否定的な反応でした。今回、自分のプライベートが報じられたことで、“表舞台に戻りたくない”という思いを強めてしまったのではないでしょうか」(同・芸能プロ関係者)5人がもう一度集まるのは、“百年先”にならない……よね?
2021年06月10日大坂なおみ「2018年の全米オープン以降、長い間うつに苦しんでおり、その対処に本当に悩まされてきたというのが真実です」波紋を呼んだ大坂なおみの“会見拒否”は、衝撃の告白とともに新たな局面を迎えることに─。自身のことを内向的だと表現する大坂は、もともと記者会見が得意ではなかった。大勢のメディアを相手に話すことは、彼女にとって大きなストレスになっていたのだ。「5月開幕の全仏オープンを前にして、ついに会見に出ないことを宣言。実際に1回戦勝利後の会見に姿を現さず、罰金1万5000ドルを科されました。すると彼女は大会の棄権を発表。同時に、うつ病に悩まされてきたことを告白しました。きっかけは2018年の全米オープン。米国のスターであるセリーナ・ウィリアムズを破った試合では、容赦ないブーイングを浴びせられていましたからね」(スポーツ紙記者)周囲の声が、若きスターの心を人知れず蝕んでいた。「しばらくコートを離れる」とのことだが、その様子について知るものはごく少ないという。「現状については、関係者の間でも情報が限られているんです。本人の口からは何も語られていませんし……。憶測が飛び交ってしまっている状態ですね」(テニス関係者)■「テニスを離れる」は珍しくない今後について詳細を語らないままの大坂。彼女を長年、取材してきたテニスライターの山口奈緒美さんに、今回の休養について尋ねた。「テニスは“メンタルスポーツ”とも言われていて、記者会見ができないほどの精神状態なのであれば、“一度テニスを離れる”というのは通常の判断です。若くして大きな成功を手にした選手が、深刻なストレスやスランプで競技を離れてしまうというケースは過去にもありました」現在、世界ランクで唯一大坂の上に位置するオーストラリアのアシュリー・バーティは、15歳からプロツアーを戦い、特にダブルスで大活躍していたが、18歳で一度テニスから離れている。「2年たって復帰し、今ではナンバーワン。しばらく距離を置くというのはテニスでは考えられる話です」(山口さん)シングルスで国民の期待をともに背負う錦織圭も、6月2日の試合後、「1回ちょっと、テニスから離れて。早く治してほしいと思う」と精神面で悩む後輩への気遣いを見せた。メンタルケアのため、表舞台を一度離れることとなった日本のヒロイン。心配されているのは、開幕まで約50日となった東京五輪だが……。「大坂選手は出場すると思いますよ。今まで繰り返し強い思いを語ってきましたからね。4月にも国際テニス連盟の公式ウェブサイトで“私にとって、五輪出場はずっと夢だった”とコメント。祖国の大会に出ることは、彼女にとって人生の目標なんですよ」(前出・スポーツ紙記者)ただ現在は、コロナ禍でその開催自体が危ぶまれている。5月上旬に行われた会見で、大坂はそのことにも触れていた。「“もちろん開催してほしいと思っています”と述べながら、“もし人々を危険にさらすのであれば、そして人々が開催を居心地悪く感じているのであれば、私たちは今すぐに議論すべきです”とも発言。感染拡大の危険を冒してまで開催を強行することには、疑問を持っているようです」(同・スポーツ紙記者)■うつで「棄権」したのではないアスリートとしては待ち望んだ大会だが、開催国の人々の気持ちが優先されるべきだとの考えだ。五輪には、彼女にとってプラスな面もある。「オリンピックではテニスの4大大会のような会見の義務はありません。実際、直近のリオ五輪でも取材を受けなかった選手は大勢います。大坂選手にとっては、うつを悪化させる要素がないことで、参加しやすい環境なのは確かです」(同・スポーツ紙記者)それでも軽々しく口を開くことはない大坂。しかし、五輪出場には光も見える。「全仏オープンを棄権してすぐ“五輪には絶対出ます”とは言えないかと。精神的な問題を抱えているのであれば、1か月程度で簡単に戻ってこられるとは思えません。ただ、今回告白したのは“2018年からのうつの悩み”。棄権したのも“今、精神的に不安定だから”というわけではなく、“騒動になって周囲に迷惑をかけている”ことと“このまま続けると自分の健康が乱されてしまう”ことが理由。現在うつ状態でないのであれば、五輪に出られる可能性はあると思います。東京五輪は彼女の夢で、参加できるかはコンディションとの兼ね合いになりますね」(山口さん)気になる大坂の状態について、心療内科医の伊井俊貴先生にも話を聞いた。「うつ病というのは、精神的な落ち込みが2週間以上続く状態。“気分が落ち込む”程度ではなく、不思議なくらい気持ちがまったく反応しなくなり、“うれしい”“悲しい”といった感情がなくなってしまう。半年ほどの経過で症状がよくなることが多いですね。大坂選手の場合は2018年からずっとうつ病だったというより、症状があるときとそうでないときの“波”があるような状態かと思います」■うつの原因はメディア対応棄権を決断したのは、「このまま続けるとダメになる」とその周期を自分で予測できたからだとも。「五輪に向けて調子を整えることを目標にしていると考えた場合、現時点で無理をしないように負担を避けるのは、先を見越した正しい選択だといえます。大坂選手は、何がストレスになっているかを具体的に示したうえでその環境の改善を求め、それが叶わなかったときに初めてうつであることを告白。そして即座にそこから離れることを決断しました。今回の対応は、心理学的に見て最適なものです」(伊井先生、以下同)彼女が会見を拒否したことは、医学的に理解できる対応だという。「大坂選手が何に対してストレスを感じているかが重要。彼女にとってテニスをプレーすることはストレスになっておらず、原因は記者会見やメディアへの対応だとされていますよね。“うつなのになぜプレーできるんだ”という指摘は間違っています。彼女の“会見だけやめることはできないか”という要求は何もおかしくありません」夢の舞台である東京五輪のため、メダルへの布石ともいえる適切な対応をとった大坂。コートへの華麗なリターンを支えるには、その決断を静かに見守るべきだろう。
2021年06月08日札幌市が制作した招致PR動画(YouTube『SapporoPRD』より)《東京大会を実現するためには、我々はいくつかの犠牲を払う必要がある》《(緊急事態宣言下でも東京五輪は開催するか?)答えはイエスだ》《前例のないアルマゲドンに見舞われない限り、東京五輪は計画通りに進むだろう》国際オリンピック委員会(IOC)会長のトーマス・バッハほか、委員会の重鎮らが言いたい放題だ。特に最古参のディック・パウンド氏が用いた“アルマゲドン(最終戦争)”は強烈だが、彼らに共通する認識は「東京五輪開催の事実は動かない」ということなのだろう。菅義偉首相ら政府は5月28日、9都道府県に発出している緊急事態宣言の再延長を発表。6月20日の解除で調整を進めているようだ。全国紙記者は「バッハ会長の都合では」と首を傾げる。「もともと5月17日に来日予定とされたバッハ会長ですが、第4波に伴う宣言によって延期。一方で5月27日にはオンラインで、約200か国の選手を前に対して“自信を持って東京に来てほしい”と雄弁に語っていたわけですが、では、なぜ自分は来日を延期したのか(苦笑)。橋本聖子(東京五輪・パラリンピック組織委員会)会長も、言いたい放題のバッハ会長らに“強い意志の表れが言葉に”、“犠牲発言は誤訳だった”などと擁護する始末。菅首相ともども、そこまでIOCに対して下手に構える理由はなんなのか」5月に共同通信が行った世論調査では、東京五輪・パラリンピック開催の可否に約6割が大会そのものを「中止すべき」と回答していたが、現在はさらなる増加も考えられる。ますます国民の“五輪アレルギー”は拡大しそうだ。■2030“札幌五輪”開催を目指しているこの“アレルギー”は10年先にも侵食しようとしている。2020年1月、日本オリンピック委員会(JOC)は2030年の冬季五輪・パラリンピック開催の候補地として札幌市を正式決定。招致活動が叶えば、晴れて“札幌大会”が開催されるのだが、北海道の地に“逆風”が吹き始めている。4月7日に北海道新聞社が市民を対象にした世論調査で、招致に「賛成」「どちらかといえば賛成」と答えた人は48%に対し、「反対」「どちらかといえば反対」は50%と賛成派を上回ったことを報じていた。反対の理由として「他にもっと大事な施策がある」「お金がかかる」の多数意見の他に、「新型コロナウイルス対策に力をいれてほしい」などの声も複数あったとしている。「この1か月後の5月5日、東京五輪の“テスト大会”として位置付けて開催された『北海道・札幌マラソンフィスティバル2021』に、全国から疑問の声が上がりました。すると、その直後に札幌市は『まん延防止等重点措置』を政府に要請し、5月16日には北海道にも緊急事態宣言が発出されることに。そして数々のIOC発言です。もしも今、市民への世論調査を行ったとしたら、招致への“反対”票はさらに重ねられるのではないでしょうか」(前出・全国紙記者)実際に“五輪アレルギー”は広がっているのだろうか。2030年の冬季五輪・パラリンピックの招致を目指す札幌市スポーツ局招致推進部調整課に、東京五輪向けられている“中止論”の影響について聞くと、「様々なご意見はいただいております。“招致すべきでない”というご意見から“やはり招致はすべきだ”という両面のご意見をいただいております」現在、2030年大会の招致活動は、開催に関心がある各国の都市が対応、調整している段階にあるという。札幌市も同様の立場にある一方で、2020大会の会場都市(マラソン・競歩)でもあることから現在はそちらに尽力しているようだ。■東京五輪を中止にできないわけ2019年6月、それまでは原則的に五輪開催地の決定は7年前としていたが、IOCは新たに決定の時期を設けない規定を設けた。これを受けてか、JOCの山下泰裕会長は2020年1月に「早ければ来年(2021年)に決まるかもしれない」として「(札幌大会の)チャンスはあるぞ、と思いました」と言及していた。「同じく昨年1月には、秋元克弘札幌市長がバッハ会長と会談しています。また2018年にもJOCの竹田恒和会長と町田隆敏副市長が、2030年大会の招致を目標とすることを伝えにバッハ会長に会いにスイスのIOC本部を訪れています。JOCが札幌大会の招致にかなり力を入れていることは明確に伺えますね。昨年に大会が延期されたことで、また開催地の決定時期は流動的になったのかもしれませんが、菅首相をはじめとした政府、橋本会長ら組織委員会が頑なに五輪中止を拒む理由は、もしかしたら2030年大会の招致も関係しているのでは、と見てしまいますよ」(前出・全国紙記者)バッハ会長は6月中旬、そして7月23日の東京五輪開幕にも合わせて来日すると見られている。その際に、2030年に向けた会談は行われるのだろうか。「(バッハ会長との面談は)ございません。(会長が札幌に来ることも)予定はございません。来日は2020年のためであって、基本的に2030年のことでこちら(札幌市)にいらっしゃるということは予定もないですし、今後も考えられません」(札幌市スポーツ局招致推進部調整課)果たして開催中止の選択肢は存在しているのだろうか。
2021年06月01日左から内村航平、錦織圭、池江璃花子、八村塁7月23日に開幕を控える東京五輪。日本オリンピック委員会はアスリートへの新型コロナウイルスワクチンの接種に向けてスケジュール調整を進めている。6月1日より順次、ファイザー製ワクチンの接種が始まるようだ。「ワクチンは国際オリンピック委員会(IOC)からおよそ2万人分が無償提供されるもので、まずは選手と監督やコーチ、大会関係者を含めた約1600人が接種します。日本政府が供給を進めるワクチンとは異なるものとしていますが、開催ありきのコロナ関連施策を進める菅義偉首相や小池百合子都知事に批判の声が上がるのは必至。全国各地で高齢者を対象とした一般接種がスタートしているとはいえ、優先されるアスリートたちにまたもいわれなき“矛先”が向かう恐れもあります」(全国紙スポーツ部記者)共同通信が5月に行った東京五輪・パラリンピック開催の可否を問う世論調査では、約6割が大会そのものを「中止すべき」と回答している。それでも「安心、安全な大会は可能」と繰り返す菅首相に代わり、“中止”を訴える声がアスリートに相次いだのだ。「特に急性リンパ性白血病から劇的な復帰を果たして、競泳メドレーリレー代表内定を勝ち取った池江璃花子選手に“辞退”を促す意見は酷でした。SNS上でのこうした意見に対し、“私は何も変えることはできない”と、苦しい胸の内を明かした彼女を皮切りに、アスリートたちが次々と五輪に対する意思を表明し始めたのです。なかでも、トッププロテニスプレーヤーの錦織圭選手は開催されれば“出ない選択肢はない”としつつも、“死者が出てまでも開催すべきことではない”と中止もやむなしの心情を明かしたのです」(前出・全国紙スポーツ部記者)■錦織発言”に呆れたアマ選手すると、錦織選手の持論に噛み付いたのが、2008年の北京五輪・柔道で金メダルを獲得したのちに総合格闘技に転向した石井慧だ。自身のツイッターで錦織発言の記事を引用して、《競技により五輪の立ち位置は違う。テニスやゴルフなどはプロも確立されているし五輪と並ぶ名誉も何かあるだろう。五輪の為に命を削り名誉と金のために命をかけてる選手は世界に沢山いる。だからこんな綺麗事を言うな》と明言。こうしたツイートを受けてプロゴルファーの松山英樹は5月18日、『マスターズ・トーナメント』参加のために赴いたアメリカから、《やるべきではないのかな》と日本の医療関係者を気遣いつつ、《自分自身は五輪も大事だが、それ以上にメジャーというのが大事というのもある。その中で、五輪に懸けている他のスポーツ選手のことを考えると、やってほしいという複雑な気持ち》と、他競技のアスリートの立場にたって発言。彼が言う“五輪に懸けている選手”とは、かつて石井選手がそうだった“アマチュア”選手のことを指すのだろう。「たしかにオリンピックに対する意識は、プロとアマでは違うでしょう。それでも、錦織選手の発言を聞いて、石井選手のように違和感を覚えたアスリートは多いのではないでしょうか」とは、マイナースポーツも取材するスポーツ専門雑誌の編集者。錦織選手が《死人が出てまでも》と述べた5月10日、彼はローマで開催された『BNLイタリア国際』というテニスの国際大会に出場していたのだが、同日のイタリアでの新規感染者は5077人で死者は198人を記録。日本では前者が4938人で後者は75人(イタリア、日本ともにロイター通信調べ)と、彼が滞在したイタリアの方が“リスク”が高かったとも言える。「錦織選手自身が滞在したイタリアでも、日本以上に死者が出ていたわけです。じゃあ、テニスも“死人が出てまで開催すべきではない”となる。彼はオリンピックの延期が決まった昨年も、早々と“よかったです”“ほっとしました”とツイッターを更新していました。彼にとっては五輪よりもグランドスラムの方が大事なのでしょう。考え方は選手それぞれなので、そこに文句はない。ただ、五輪を目指して4年間闘ってきた選手からすれば“あなたが言うことではない”と思ってしまうのもわかる。錦織選手の言葉は、五輪アスリートを代表するものではないのかと」(前出・スポーツ専門雑誌編集者)かつてはアマチュアの大会だった五輪に“プロフェッショナル”が参加したのは、ファン・アントニオ・サマランチ(元IOC会長)体制だった1992年のバルセロナ五輪でのこと。バスケットボールにおいて、マイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソンらNBAのプロ選手たちが結成した“ドリームチーム”は強烈なインパクトを残した。■プロとアマの歴然たる収入格差以降、プロの出場が拡大された五輪。そもそも、プロフェッショナルと“アマチュア”の違いとは何なのだろうか。1980年代から夏・冬季五輪や多くのアスリートを取材してきたスポーツライターの増島みどり氏が解説する。「日本では多くの選手が、社員として給料と活動費の支援を受け、引退しても会社に残れる、実業団という日本独自の形で競技を続けてきました。今は、企業と契約を結ぶプロアスリートが増えており、彼らは確定申告の際、職業欄に、例えば、プロ陸上選手、などと記入します。海外から見ると、実業団選手もある意味でプロにうつるかもしれません」プロとアマで違うのは収入面で見るとわかりやすい。例えば国内のプロスポーツで最も高給取りとされるプロ野球選手の平均年俸は4206万円で、Jリーガーは3218万円となっている。そして錦織圭選手はというと、アメリカメディアのスポーツ選手長者番付(2021年版)によると約29億円(年収)だ。「一方で実業団に所属するアマ選手は競技にもよりますが約400万円と、一般サラリーマンと同額程度の収入であることも多く、レスリング金メダリストの吉田沙保里や伊調馨らトップアスリートであれば特別契約が交わされていたそう。それでも当時の総収入は1000万円から2000万円ほどではないでしょうか。五輪出場にも意欲を見せる楽天(ゴールデンイーグルス)の田中将大選手は、今年の年俸は推定9億円。ゴルフの松山選手も昨年は10億円以上稼いでいるでしょうし、4月に制した『マスターズ』の優勝賞金は2億円以上ですから、今年はさらに増えるでしょう。アマ選手も、五輪の結果次第では所属先からボーナスや報奨金が支払われるとはいえ、同じアスリートでも“格差”はあると思います」(スポーツマネジメント会社営業担当)アスリートとしての立場もかなりシビアだ。5月14日に《僕たち選手には変える力がない》と五輪開催について口を開いた体操の内村航平選手。続けて《目の前のできることを、僕は体操選手なので体操をやること、練習すること、試合があればその試合に出ること、これを仕事としてやっている》と、スポーツを“仕事”と言い表した彼も、現在は微妙な立場に置かれている。3度の五輪出場で個人総合2連覇を含めた計7つのメダルを獲得し、世界選手権でも6連覇を果たした内村選手。そんな世界的“レジェンド”は4度目の五輪出場を目指す今年、コロナ禍による赤字から所属先だった『リンガーハット』との契約が打ち切られることに。現在は自動車販売業者の『ジョイカルジャパン』とプロ契約をして、種目別の鉄棒に絞って出場を目指している。「あの内村選手でさえ契約先がままならない現実。もしかしたら彼らのスポーツは“趣味や遊び、また余暇でやっている”と思われている方もいるかもしれません。ですが、ものすごくシビアな世界でしている仕事で、一つの“契約”で人生の全てが変わる選手もいます。それこそ、“五輪に出場する”“メダルを獲得する”を条件に契約を交わしている選手もいるではないでしょうか」(前出・スポーツマネジメント会社営業担当)■アスリートが五輪にこだわるわけ一方で、お金の問題もさることながら、アスリートにとってやはり五輪は特別な大会であり「名誉」でもある。各競技にはそれぞれの世界一を競う「世界大会」があるのだが、例えば世界柔道(選手権大会)は毎年、世界体操(競技選手権)は2年に1回開催される。以前は4年に1回だった世界陸上(競技選手権大会)も、1991年の東京大会以降は2年に1回開かれている。一方で4年に1回開催される五輪は、注目度から言えば世界大会とは大きな差がある。「五輪で3連覇を達成した柔道の野村忠宏さんは、“いくら世界選手権で勝っても、日本の皆さんにそれはわかってもらえない。オリンピックでの3連覇にこだわり続けたのは、幼稚園や保育園に通う幼児や主婦の方など、日頃は全くスポーツに関わらない人たちに応援してもらって、メダルを喜んでもらえたというのが自分の中でもすごい喜びだった”と常々話していました。普段ならテレビ放送で見向きもされない競技が、つい見入って応援してしまうのも五輪が持つ特別な魅力。やはり、その場に立つことは名誉なことで、彼らアスリートにとっては目標でもあるんですよ」(前出・スポーツ局ディレクター)NBAの『ワシントン・ウィザーズ』に所属し、日本人初のプレーオフ進出を果たした八村塁選手。世界で活躍するトッププロの1人に数えられる彼が、昨年12月のシーズン開幕前に、かねてより「夢の舞台」と位置付けていた五輪をあらためて《前からずっと出たいと思っていた大きな大会》と語った。シーズン終了とともに、男子バスケットボール日本代表に合流する見込みだ。とはいえ、選手を含めて多くの国民が気にするところは、本当にこのまま東京五輪が開催されるのか、というところだ。前出の増島氏は「選手たちの5年を思えば、最大限サイズダウンし、通常とは違う様式になっても、オリンピックを中止にしてほしくはありません」と話す。「出場について前向きな姿勢を示せば、SNSなどに辛らつな批判が寄せられ、選手たちは委縮していました。ワクチンを打つか打たないかも、もちろんコンディションを優先するため接種の選択は自由ですが、五輪特権だと批判されるかもしれない。彼らは私たち日本の代表ですから私はどんどん打って欲しい。また選手だけではなく、五輪に関わる1人でも多くの関係者がホストとして打てるような環境整備が重要です。自国で2度の接種を終え、練習も自由、マスクなしの生活を送る国外の選手たちは、検査だけで陽性者を入れない前提の『バブル方式』に、むしろ強い不安を抱くでしょう」(増島氏)コロナが世界で蔓延する今、多くのスポーツ大会で採用されているのが、開催地をバブル(泡)で包むように選手や関係者を隔離して、ダイブとの接触を遮断する『バブル方式』。しかし、全てにおいて後手後手に見える菅首相や小池都知事らトップに「安心、安全な大会」が遂行できるとは思えないのも事実だ。■ボランティア8万人分のワクチンJOCの籾井(もみい)圭子常務理事は5月26日、選手を含む五輪関係者へのワクチン接種を始めるにあたり、「高齢者への優先接種に影響を及ぼさない」とあらためて一般人への接種と無関係であることを強調。7月23日の開幕までに対象者に2回の接種が行われ、競技団体のスケジュールは公表しない方針だ。6月1日から接種が始まる、IOCが東京五輪のために用意したというワクチンは2万人分。優先される選手団や大会関係者に加えて、例えば選手との距離が近い料理人やベッドメイクなどの選手村や宿泊施設に携わるスタッフは接種できるのかもしれない。しかし、大会組織委員会が募集した8万人とされる一般ボランティア全員には行き渡らないだろう。彼らの「安心、安全」は本当に守られるのだろうか。「昨年の延期から1年経つのに、ワクチン接種はおろか医療体制の改善など、政府は何をやっていたんだ、という話ですよ。それにコロナで仕事を失いかねないのはアスリートだけでなく、すでに全国で1500件(東京商工リサーチ調べ、5月21日時点)の企業が経営破綻しています。全ての国民が我慢を強いられている現状では、日に日に中止を求める声が高まるのも当然なのかもしれません。ただ、アスリートを批判するのはお門違い。池江選手が“オリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけ”としたように、アスリートは来る日のために粛々と仕事をしているだけ。そこはプロもアマも関係ありません」(前出・全国紙スポーツ部記者)「安心、安全な大会」とは、“バブル”の中だけの話なのかもしれない。
2021年05月30日東京五輪NHKのナビゲーターは“5分の4嵐”になるのか?いまだ開催をめぐる議論や調整が進まない、東京オリンピック・パラリンピック。本来開催される予定だった昨年、テレビ各局の五輪関連番組のメインMCが誰だったか、覚えているだろうか。■NHKは嵐、出演の可能性は?まずNHK。もともとは昨年末で活動休止、事実上の解散状態となっている嵐を「スペシャルナビゲーター」として起用する予定だった。しかし五輪はコロナによって延期され、嵐は予定どおり2020年の12月31日をもって活動を休止。では、もし五輪が開催されるとなった場合、NHKのナビゲーターは、どうなるのだろうか。スポーツ紙放送担当記者が言う。「昨年、五輪のテーマ曲として米津玄師作詞作曲の『カイト』が発売されました。そのため、曲の使用はもちろん、芸能活動をお休みしている大野(智)くんをのぞく4人が再集結したり、リレー形式などでそれぞれが競技ごとにリポートやインタビューなど担当するという可能性も、なくはないのではないでしょうか」まさかの“5分の4嵐”が再集結ということになるのなら、NHKの五輪番組への注目度も高まることは間違いない。さらに、嵐のメンバーとジャニーズの後輩を組ませるパターンも考えられると、前出の記者は続ける。「『VS嵐』の後継番組としてスタートした『VS魂』(フジテレビ系)には、相葉(雅紀)くんのほかに風間(俊介)くんはじめ、佐藤勝利くんに藤井流星くん、岸優太くん、そして美 少年の浮所(飛貴)くんらが出演しています。二宮(和也)くんが始めたYouTubeチャンネルや、櫻井(翔)くんと相葉くんが出演するサイダーのCMも、Hey! Say! JUMPの山田(涼介)くんなど後輩が嵐のメンバーと共演するなど、嵐と後輩という組み合わせが増えています。そうなると、NHKの五輪番組も、嵐のメンバーと後輩を組み合わせるという可能性も考えられます」後輩の中で、抜擢される可能性が高いのは、山田涼介、Sexy Zone中島健人、King & Princeの平野紫耀の3人が有力だと言う。なぜならこの3人は、昨年、新型コロナウイルス感染拡大防止のための、ステイホームや医療従事者への感謝のメッセージ映像に出演し、NHKで放送された顔ぶれでもある。「五輪開催とコロナ対策は、もはやセットといっても過言ではありません。そういう意味でも、コロナ対策を呼びかけた彼ら3人が五輪関連の番組も担当するというのは、非常に意味のあるキャスティングにつながると思います」■ジャニーズ起用率が高すぎる!?では、民放はどうか。昨年までの情報を振り返ると、まず日本テレビが明石家さんま、TBSは安住紳一郎アナ、フジテレビが関ジャニ∞の村上信五、テレ朝は正式発表されず、テレビ東京が小泉孝太郎という顔ぶれだった。前出のスポーツ紙放送担当記者が言う。「嵐が活動休止してしまったNHKとは違い、民放各局は、この顔ぶれがそのまま引き継ぐ可能性は高いのではないでしょうか。テレ朝は大きなスポーツ大会でのキャスター経験も豊富な松岡修造がなんらかの形で関わるのではないかとみられています。各局メインのMCに、お抱えの元アスリートやそれぞれの局の人気番組を担当する面々が加わる布陣になりそうです」やはり民放も、NHK同様ジャニーズタレントの起用が予想されると言うのはある芸能記者。「日テレに『news zero』の櫻井君が登場するこもあり得ますが、NHKで『カイト』を使用する場合には厳しいでしょう。そうなると『シューイチ』が好評なKAT-TUNの中丸(雄一)くん抜擢が考えられます。TBSは中居くんと安住アナの黄金タッグ、テレ朝は世界水泳を放送し、最も注目度の高い池江選手も関係することから、北島康介さんの登場が濃厚ですし、世界体操で松岡修一さんとタッグを組んだHey! Say! JUMPの知念(侑李)くんもあるかもしれません」こうなるとテレビ東京だって、ジャニーズの可能性を捨てきれない。テレ東は世界卓球を毎回放送し、伊藤美誠選手など人気選手が出場する競技のため、本来なら好感度が高かった福原愛の起用が考えられたというが、不倫騒動でその線は消えかけている。「テレ東は『テレ東音楽祭』で毎年、TOKIOの国分太一くんが総合MCを務めています。また同局での活躍ぶりから、薬丸裕英さん、井ノ原快彦さんあたりも候補にあがっているのではないでしょうか」(同前)それにしても、各局ジャニーズ・元ジャニーズ率の高さが伺える。「知名度、好感度、各局への貢献度や実績など、退所も相次いで、弱体化しているのではないかという声もありますが、やはりなんだかんだ層の厚さはすごいです」(同前)いずれにせよ、東京五輪が中止にならなければの話ではあるが……。〈取材・文/渋谷恭太郎〉
2021年05月28日世界各国で、セクシュアルマイノリティ(通称:LGBTs)など、いろいろなマイノリティに対する考え方は徐々に変わってきています。「人権や多様性を尊重する」というのは、一見当たり前のように感じるもの。しかし根深い差別意識や偏見によって、なかなか社会に認められないのが現状です。2021年5月24日、自民党はLGBTsへの理解を促進するための法案について審査を行いました。議論では肯定的な声も多い中、「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTsは背いている」という意見も。懸念について国会で議論することを条件に、法案は了解されました。日本の『多様性への理解』に有働由美子アナがズバリ同日に放送された情報番組『news zero』(日本テレビ系)では、今回の審査について特集。そこで、1本の動画を紹介しました。映っているのは、2013年にニュージーランドで行われた、同性婚を認める法案審議での議員の発言。議員は「私たちがやろうとしているのは、愛し合う2人の結婚を認めることだけ」「この法案は関係のある人には素晴らしいもので、関係のない人は今まで通りの人生が続くだけだ」と、同性婚に肯定的な意見を述べました。このスピーチは以前からネットで何度も話題になっており、多くの人から議員の言葉を称賛する声が上がっています。番組のメインキャスターである有働由美子アナウンサーは「まさにこの言葉に尽きるんじゃないかと思う」とスピーチに共感。続いて、解説の小野高弘さんはこのようにコメントしました。今自民党の会合で話し合っているのは、『差別禁止』よりもっと手前の段階ですよね。「理解を促進しましょう」っていう、そういう法案についてなんです。もう、それですら揉めてきたわけですよね。news zeroーより引用紹介したスピーチは8年前のものであり、性的指向に対する差別を禁ずる国が多数存在する現状。小野さんの言葉を受け、有働アナは最後にこのような言葉でコーナーを締めくくりました。まあ、この段階の議論で揉めている日本で、あと2か月で多様性を掲げたオリンピック、パラリンピックが開催されます。news zeroーより引用東京五輪はコンセプトの1つとして『多様性と調和』を掲げています。「LGBTsへの理解を促進する」という段階で議論をしている日本への皮肉ともいえる有働アナの言葉は、ネットでまたたく間に話題になりました。・最後にさらっとキレキレなブラックユーモアをいう感じがかっこいい。・リアルタイムで番組を見ていて、このひと言で「おお!」ってなった。・本当に、かなり遅れた段階で揉め続けてるんだよね…と思うと悲しい。人はいろいろな性質を持って生まれてきます。異なる人生を歩む人が幸せになったからといって、自分の幸せや権利が妨害されるわけではありません。多様性を認めるということは、1人でも多くの人が幸せになれる社会につながるのではないでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2021年05月28日新型コロナウイルス感染症の事態収束の兆しが見えない中でのオリンピック開催を巡り、世間ではネガティブな意見が絶えず飛び交っています。そんな中、ネット上で「開催の是非に関しては抜きにして、素晴らしい」とフランスの動画が注目を集めました。動画はフランスの公共放送『フランス・テレビジョン』が公開したもの。浮世絵調で描かれたアニメーションの中で、日本を連想させやすい力士がさまざまなオリンピックの競技種目に挑戦し、最終的にオリンピックの会場に到着するというもの。動画は、フランス・テレビジョンのYouTubeチャンネルで見ることができます。Sumo - Jeux Olympiques d’été Tokyo 2021 - France TV -最後まで見入ってしまう構成に、ネット上では「斬新」「動画のクオリティは素直に素晴らしい」と称賛の声が寄せられました。・めちゃくちゃかっこいい。・さすが芸術大国!・今回はこんな競技もあるのかと、動画を通して知ることができるのは素晴らしい。なのに、相撲は種目に入っていないというのが面白い。オリンピックの開催を巡り、さまざまな意見が出ているものの、動画の圧倒的なクオリティと見る人を惹きつける構成には、多くの人が感動を覚えたはずです。[文・構成/grape編集部]
2021年05月22日オリンピックの会場となる国立競技場前東京五輪を開催すべきか否か――。差し迫ったこの問題を巡って、議論がおかしな方向にむかっていることを、寄せられた意見などを通して肌で感じているというフィフィ。国民からの反対意見が止まず、五輪を中止する署名が35万筆も集まっているなか、ついに佳境を迎えた東京五輪“狂想曲”について思うこととは──?* * *東京五輪開催の可否を巡って、政府やIOCは、日本ならできる、日本国民ならできるなど、精神論で押し切って開催しようとしている傾向がありますよね。開催に賛成か反対か──。まず前提として私自身は専門家ではないので、開催すべきか否か意見を言う立場にありません。言うべきではないです。ただ、開催の可否についてしっかりと議論をすべきだとは思います。確かにやれなくはないと思う。だけど、疫病という見えない相手なだけに、決行後のリスクがどこまで高まるのかわからないわけです。だからこそ、専門家の方たちが示した科学的根拠に基づいて、どこまでのラインなら大丈夫なのか、きちんと線引きをするべきだと思うんです。開催するにしろ中止するにしろ、その判断が専門家の示した科学的な根拠に基づいているのであればまだ納得がいくのに、精神論を持ち出して強行しようとするからおかしなことになるわけです。たとえば、精神論で“選手の気持ちを考えてください”と、選手の気持ちを盾にして開催しようとすれば、当然、選手の方に辞退してくださいといった声が寄せられることになってしまう。水泳の池江璃花子選手にもそういった声が寄せられていましたよね。そうではなく、きちんと科学的根拠を示せばみんなすっきりするし、いまのように選手が責められる状況にはならないんじゃないかと思うんですよね。■「野党に利用されていますよ」そもそも考えてみてください。この状況下でこれまで頑張ってきたものを諦めているのは、果たして五輪選手だけなんですか?と。なぜ五輪だけが特別視されているのでしょうか。留学を諦めた人、起業を諦めた人、長く続けていた商売を畳んだ人、芸術関係の公演、コンサートなどが中止になった人……疫病を抑えるために、それぞれみんないろんなことを諦めているわけ。価値観は人それぞれで、ある人にとっては五輪と同じくらい、そのコンサートが大きな価値を持つものだったかもしれない。そんななかで五輪だけを特別視するから、板挟みになった選手もどんどん肩身が狭くなってしまうわけです。また、中止論を唱える野党が出てきたため、対立する保守系・右派の人たちが意地でも開催すると言い始めていますよね。これも政局に利用されている感じがして気持ちが悪いです。実際、私が先ほど述べたような五輪を特別視することに疑問を呈したツイートをしたところ、「フィフィさん野党の肩を持つんですか?」「野党に利用されますよ」そんなコメントが多々寄せられました。だけど、そういう問題じゃないでしょと。右派がこう言っているから……左派がこう言っているから……というのは、あまりに幼稚で単純な構図です。政治家も批判のために五輪を持ち出しているけど、もはやそんなことをやっている次元ではない。すべてを科学的に考えないといけない。あいつが嫌いだから反対意見を言おうとか、そういうことじゃないでしょと。■状況が絡み合って意味のわからないことにこうした風潮が生まれる一因には、政府や報道の煮え切らない態度もありますよね。たとえば、政府は開催を強行しようとしているから、中止したことによる賠償金については「考えたことがない。あるのかどうかも検討がつかない」と濁しています。それによって、賠償金がネックになるから中止できないなと思っている人もいるはず。はっきりしないから国民の不安も募る。また、各国のメディアでは「開催は難しいだろう」という見方が多いけど、国内の主なテレビ局はスポンサーである多くの日本企業が五輪に絡んでいるから、積極的な中止論を報道するのを控える傾向にありますよね。だけど、そもそもスポンサーというのは、企業のイメージアップのためになるわけだから、この状況でどう動くかということでも、ある意味イメージアップを図れるんじゃないかと思いますけどね。苦渋の決断だし、勇気のいることではあると思うけど、議論をしましょうと声を上げるだけでも、逆に国民に対して良い印象を与えることもできるんじゃないかと。いずれにしろ、こうした状況が絡み合って、さまざまな憶測が生まれ、開催可否の議論が精神論や右だの左だの、意味のわからない方向性になってしまっているように感じます。疫病は撲滅するのに、一般的に数年はかかると言われています。アフターコロナの世界では、考え方も、生活様式も、そしてスポーツのあり方も変わっていくでしょう。いままでの様式に戻そうとするから、無理やり従来の形で強行しようという意見も出てくるけど、戻すのではなく変えるべきところは変えていく。いままで通りにやろうというのではなく、どういう形で変えていけるのかを考えていくことが大切になってくるんじゃないかと思います。〈文・岸沙織〉
2021年05月16日2021年7月23日に開幕予定の東京五輪。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の流行が収まらない中での開催について、国内外で賛否の声が上がっています。同年5月7日に、競泳の池江璃花子(いけえ・りかこ)選手は、自身のSNSに「辞退して」「開催について反対の声を上げてほしい」といったメッセージが寄せられていることを明かしました。「五輪中止させて」の声に、池江璃花子が持論を展開内容に40万いいね池江選手はそういった声に対し、Twitterを通してアスリートの1人としての持論を展開しています。池江選手の投稿は波紋を呼び、国内にいる複数のアスリートたちが同様のコメントを発表。一連の出来事に対する報道は、海外メディアでも取り上げられています。加藤浩次「選手にいうことじゃない」同月10日に放送された情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)では、池江選手が発表したコメントについて特集。番組に出演していた、元競泳選手でスポーツジャーナリストの松田丈志さんは、池江選手の投稿について、こう意見を述べました。本当に素晴らしいコメントを出してくれたなっていう風に思うんですけれども、今回の件でいうとSNSで池江選手にダイレクトメッセージなどで連絡をして、要は「反対の声を上げてほしい」っていってるわけですよ。それって、やはり池江選手は病気から奇跡的な回復をして代表権を獲得して、今回のオリンピックはやはり印象付ける選手の1人だと思うんですね。そういう選手の影響力を使って、ある意味開催してほしくない人たちが、自分たちの声を拡大して伝えてほしいっていうことですから、それ自体は本当によくないことだなと思いますし。逆にいえば、オリンピックを推進、やりたいと思っているひとたちも、個人の影響力を使って自分たちの意見をリードしていきたいっていうやり方はよくないと思いますね。スッキリーより引用「開催に対して賛成派であれ否定派であれ、個人の影響力を使って自分の意見をリードさせるやり方はよくない」という松田さん。番組のMCを務める加藤浩次さんは、松田さんの意見に同調し、次のようなコメントを発しました。そこは本当に、直接池江選手にするっていうのは、池江選手は「なんていえばいいの」と思うし、そりゃ一生懸命頑張って病気を克服した選手に、それを利用するっていうのは、本当に、僕はダイレクトメッセージを送っている人は卑劣だなって思いますよ。やり方としては。選手にいうことじゃないと。それはIOC(国際オリンピック委員会)ないし、そして組織委員会に訴えるべきことであって、選手は別ですもんね。スッキリーより引用加藤さんは「池江選手の影響力を利用しようとする行為は卑劣だと思う。そもそも選手にいうべきことではない」とキッパリ。番組を見た人からは、次のような声が相次いでいます。・本当にその通りだと思う。池江選手の心情を思うと、とても悲しくなる。・「選手じゃなくてIOCにいってほしい」という言葉は、ごもっとも。・いろいろな意見があるのは理解できるけど、それを一個人の選手に求めるのは、違うように感じる。コロナウイルスがまん延する中での開催について、不安を覚えるのは当然です。さらなる感染拡大への不安や、ただでさえひっ迫している医療体制への影響を考えると、反対の意見を述べたくなる気持ちは否定できません。しかし、一個人である選手に「出場を辞退してほしい」などと訴え、状況を変えようとするのは見当違いといえるでしょう。松田さんや加藤さんの意見は、多くの人の共感を呼びました。[文・構成/grape編集部]
2021年05月10日新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の世界的な流行によって、1年の開催延期が決定された東京五輪。開催日は2021年7月23日に変更されましたが、同年5月現在、コロナウイルスは終息するどころか、さらに感染を広げています。東京五輪を開催すれば、世界中の選手が来日する上、多くの医療従事者が協力を求められることに。開催に対し、「今はそんな場合ではない。中止にするべきだ」という声が相次いでいます。東京五輪の反対意見ついて、池江璃花子選手が持論を展開白血病の治療で一度は東京五輪の代表の座を逃したものの、開催の延期によって奇跡的に内定をつかんだ競泳の池江璃花子(いけえ・りかこ)選手。同月7日、池江選手はTwiterで「辞退してほしい」「開催の反対に声を上げてほしい」といった意見が寄せられていることを明かしました。そういった東京五輪の開催反対を求める声に対し、池江選手は丁寧な言葉で持論を展開しています。いつも応援ありがとうございます。Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」などのコメントが寄せられている事を知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、↓— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021 今このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事だと思っています。私も、他の選手もきっとオリンピックがあってもなくても、決まったことは受け入れ、やるならもちろん全力で、ないなら次に向けて、頑張るだけだと思っています。1年延期されたオリンピックは↓— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021 期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。↓— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021 長くなってしまいましたが、わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守っていてほしいなと思います。— 池江 璃花子 (@rikakoikee) May 7, 2021 池江選手だけでなく、きっと多くの選手がコロナ禍での開催に不安を感じているでしょう。しかし、五輪開催の決定権は選手にはありません。現在も選手たちは、私たちと同じように感染や重症化のリスクにおびえながら生活を送っています。決定権のない選手にそういった言葉を投げかけるのは、見当違いといえるでしょう。一連の投稿に対し、合計でおよそ40万件もの『いいね』が寄せられました。文章を通して、池江選手のもどかしい気持ちは多くの人に伝わったようです。・選手個人にそんなことをいってもね…。企業の不祥事で社員を叩くようなものでは?・五輪開催反対の気持ちは分からないでもないけど、選手に「辞退しろ」というのは違うでしょ。・すごく言葉を選んで発言してるのが伝わってくる。お門違いの批判だよ…。五輪は多くのアスリートにとって世界の頂点であり、あこがれの場所。だからこそ、今の状況は心苦しいものでしょう。「今やるべきことをまっとうし、応援してくれる人の期待に応えたい一心でいる」という池江さんの言葉は、きっとほかの選手も同じはず。東京五輪がこの先どうなるかは分かりませんが、懸命に練習している選手個人に中止を求める声がなくなることを祈るばかりです。[文・構成/grape編集部]
2021年05月08日左から菅義偉首相、池江璃花子選手、小池百合子都知事5月5日、東京五輪の本番コースを使用した、テスト大会に位置付けられた『北海道・札幌マラソンフェスティバル2021』が開催された。一般ランナーの参加中止措置がとられた同大会が終了すると、その午後に北海道は「まん延防止等重点措置」を国に要請。そして札幌市は、新たに126人の新型コロナウイルスの感染が市内で確認されたことを発表したのだった。「2回目の緊急事態宣言が全国で3月21日に解除され、その4日後に聖火リレーがスタート。そして4月25日に4都府県に発令された宣言も、当初は5月11日までという短期間に納めようとしていました。5月17日にIOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長の来日が調整されていたことから、これも“五輪ありきの施策ではないか”との見方がされています。東京五輪の強行姿勢を崩そうとしない菅義偉首相をはじめとする政府、そして都知事の小池百合子に対する国民、都民の不信感は日に日に募っています」(全国紙記者)5月2日には西村康稔経済再生担当相が記者会見で、「屋外でマスクをつけていても感染が確認される事例の報告が相次いでいる」と不要不急の外出を控えるよう訴えるも、一方でスポンサー車両のパレードを引き連れた聖火リレーは中止されずにGW中も強行するなど、その矛盾点も指摘されている。昨年にコロナ感染拡大の観点から延期となり、7月21日に開会式を予定している「東京2020オリンピック」だが、第4波とされる状況下で国民の多くが開催を疑問視している。4月に共同通信が実施した世論調査では、「中止すべき」と「再延期すべき」が合わせて7割を超えていたのだが、1か月過ぎた今では割合はさらに増加していることも考えられる。先の札幌マラソンにおいても、沿道の応援客に紛れて「東京五輪中止」などと書かれたプラカードやメッセージボードを掲げる者も現れるなど、一部で明確に中止を求める運動も見受けられるようになっている。「特にネットでは、“東京五輪の中止”を求める声が高まっています。ツイッターでは“東京五輪の中止を求めます”“東京オリンピック中止”といったハッシュタグをつけた投稿が目立つようになり、一時はトレンド入りするほどに。また、かつて都知事選に立候補した宇都宮健児弁護士は、東京五輪中止を呼びかけるオンライン署名を始めて開始2日間で、20万(5月7日正午時点)に届こうとしています。招致計画自体を反対していた宇都宮氏だけにコロナに関係なく政治的な面も見受けられますが、声を上げる著名人に追随する国民が多いのも事実。波は大きくなりそう」(前出・全国紙記者)署名の宛先はバッハ会長や菅首相、小池都知事、丸川珠代五輪相、そして橋本聖子五輪組織委会長となっているが、互いの出方を牽(けん)制することに必死に見える彼らには“国民の声”は届かないのかもしれない。■池江さん、五輪出場を辞退して一方で、東京五輪の中止を求める声は“現場”に向けられようとしている。実際に競技に参加するアスリートだ。急性リンパ性白血病から劇的な復帰を果たし、見事に競泳メドレーリレー代表内定を勝ち取った池江璃花子選手。組織員会や大会スポンサー、大手広告代理店ら携わる関係者から“東京五輪の象徴”としての期待を一身に受ける彼女だが、そのツイッターには応援する声のほかに、《池江璃花子さん、オリンピック出場を辞退していただけませんか?人の命より大事な夢などありません。このまま選手として参加したら、コロナで多くの人を死なせた東京オリンピックにあなたも加担したことになります》《池江選手ほどの実力があり、影響力のある選手だからこそ、「今の状況のオリンピックには出ない」という決断をして欲しいと思います。そんな池江選手に、他の選手達も続くでしょう》《子どもの運動会が無くなった、修学旅行も無くなった、部活動もできないと聞いてもオリンピックは必要だと思いますか?》池江選手に「辞退」を求め、中止に向けて声を上げるように訴えるリプライがつけられているのだ。いずれも緊急事態宣言発令後の4月下旬から5月上旬にかけて投稿されたもので、ほかにも同じく競泳の瀬戸大也選手や、陸上競技の新谷仁美選手ら特にメディア露出の多い有名アスリートに同様の声が投げかけられている。■アスリートが「辞退」できない現実五輪競技を取材するスポーツジャーナリストは「アスリートを責めるのはやめてほしい」と擁護する。「それこそ大半の選手がスポーツに人生をかけています。記録も去ることながら、結果を出すことは彼らの生活にも直結するわけで、特に東京五輪という“晴れ舞台”でメダルを狙える選手、全盛期を迎えている選手は是が非でも出場したいのが本音でしょう。アスリートにとって、五輪でのメダル獲得は人生における大きな目標であることは理解してほしい」また引退後は“元オリンピアン”、“元メダリスト”という肩書きで、国や公共団体、また組織委員会などが主催するスポーツイベントにも呼ばれることもある。さらにタレントやキャスターへの転身を考えているのならば、スポンサーや広告代理店の意に反することはできないといった事情もある。「それにマイナースポーツの場合、五輪は競技発展の場でもあります。そこで出場選手が辞退や中止などと“声が上げた”とすれば、他の選手や所属する連盟にも迷惑がかかるおそれがある。ある種、閉鎖的な世界で生きているのも事実で、アスリート自らが辞退を申し出るにはあまりにもリスクが大きい。彼らも非常に弱い立場にいるのです。そういう意味では、彼らも、のらりくらりと対応を先伸ばして責任をなすりつけようとする政治家たちの犠牲者。批判の矛先まで“アスリートファースト”にはしないでほしいですよ」(前出・スポーツジャーナリスト)五輪が開催する方向で進んでいる今、アスリートたちができるのは本番で100%のパフォーマンスを披露し、国民に勇気と元気を与えるために粛々と準備を整えることだけだ。
2021年05月07日東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が、日本スポーツ協会公認スポーツドクターを200人程募集していると報じられた。各紙によると大会開催期間中に競技会場などで熱中症や新型コロナ感染の疑いがある人、体調不良を訴えた観客などの対応に従事してもらうという。応募締め切りは今月14日までとのこと。公認スポーツドクターとは医師免許取得後4年が経過し、必要な講習を受講して得られる資格。いっぽうで五輪大会への従事はボランティアとなり、交通費などを除いて報酬は支給されないという。五輪の医療従事者をめぐっては、組織委が日本看護協会に医療スタッフとして看護師約500人の確保を要請したことも明らかになったばかり。また看護師への待遇も交通費や食事の提供は規定されているが、肝心の報酬については明記されていないというのだ。菅義偉首相(72)は4月30日に、「看護協会の中で現在、休んでいる方もたくさんいると聞いている。可能だと考えている」と要請を容認していた。「国内ではインド由来の変異株も発見され、パンデミックが深刻化しています。新規陽性者数の高止まりが続いている大阪では、重症病床使用率が99.7%にまで達している状況です。兵庫県ではコロナ対応にあたる看護師が、全国各地から46人派遣されると決まったばかり。医療逼迫が喫緊の課題となっているなか、『五輪を開催すべきでない』という声は高まっています」(全国紙記者)NHKによると立憲民主党は、「五輪開催に必要な医療従事者の確保よりも感染者の治療とワクチンの接種に充てることを優先すべき」と大型連休明けに提言すると報じられている。五輪開催まで残すところ80日と迫るなか、医療従事者を無償でかき集めようとする組織委に批判が殺到している。《看護師に続いて今度は医師をただ働きさせるとは!どれだけ五輪搾取をやれば気がすむのか》《なんでスポーツドクター資格者が「新型コロナウイルス感染症の疑いがある人への救急対応」を無償でやらなあかんのん?》《このご時世にこれをボランティアで募集とは、どこまで人を見下す政府なのか…》
2021年05月04日聖火リレーと共に全国を回るキャラバン隊(インターネットより)4月25日、東京都をはじめとした4都府県に緊急事態宣言が発令され、スポーツやエンターテイメント関連の各種イベントが無観客での実施、もしくは中止や延期を強いられている。かたや3月25日にスタートしたあの“一大イベント”は今なお続けられてーー。「聖火リレーは現在、九州沖縄地方を回り、各地でセレブレーション(聖火到着を祝うイベント)を行いつつ、ランナーがトーチをつなげています。しかしながら、福岡県内を車椅子で走る予定だった“世界最高齢”の118歳の女性が新型コロナウイルスの感染拡大の観点から辞退を申し入れたように、出走を取りやめるランナーが相次いでいるのも事実。何より、国難にある中で聖火リレーが中止の議論対象にもならないことに、世間からは懐疑的な声も上がっています」(全国紙記者)4月22日には、香川県内で聖火リレーの沿道警備をしていた県警の巡査部長のコロナ陽性が発表された。同巡査部長が感染した経緯は明らかになっていないものの、聖火リレーがコロナも運んでいる可能性は否定できなくなった。「特に芸能人や元オリンピアンなどの著名人が走るルートには、沿道に見物客が集まりやすく密になる場面が見受けられます。ランナーを応援しようと思わず声をあげてしまうこともあるでしょう。見物客や警備にあたる警察関係者、リレーに関わるスタッフに当のランナーと、屋外とはいえ誰もが感染しうるリスクを今一度考える必要がありそう。特に重症化しやすいとされる高齢者ならばなおさらのこと。118歳女性の辞退は家族からすれば命を守るための当然の決断と言えますが、『毎日新聞』の報道によると、彼女をランナーに推薦したのは命を扱う大手生命保険会社だったそうで……」(前出・全国紙記者)東京五輪の「ゴールドパートナー」として、いわば大会スポンサーとして名を連ねている同企業だけに、どうやら聖火ランナーには“スポンサー枠”があるようだ。この大会スポンサーと聖火リレーは無関係ではない。■スポンサーのための“パレード”テレビのニュース番組やワイドショーでもしばしば映し出される聖火リレーの現場は、沿道に向かって爽やかに手を振って走るランナーや、聖火をつなぐセレブレーションの様子ばかりだが、実は同時にビッグイベントが進行している。先の「ゴールドパートナー」や「ワールドワイドオリンピックパートナー」ら、東京五輪大会スポンサーの“キャラバン隊”によるパレードが行われているのだ。インターネット上では、これまで聖火が回った地域で撮影された写真や動画が多数アップされているのだが、ランナーが走る前の道を、それぞれのスポンサー色に装飾された派手な大型トラックが何台も連なって通過していく。大音量の音楽を流し、車上のDJが沿道の見物客を煽るように声を上げ、トラックの周囲ではパフォーマーが手を振ったり、踊ったりと大盛り上がり。まさにパレードの様相だ。沿道の見物客も同様に手を振り返し、一行をスマホで撮影しようと前列へと押し合っている様子もうかがえた。聖火リレー以上に“密”を作っているようにも思える光景だった。これは何のためのイベントなのだろうか。広告代理店の営業マンは「出資スポンサーのためのイベント」と解説する。「例えば、世界最高峰の自転車レース『ツール・ド・フランス』のスタート前に行われるキャラバン隊が有名ですが、元は大会の協賛金不足を補うためにスポンサーを募る手段として始まったものです。今では大会を盛り上げるのに不可欠なイベントとして、各スポンサーがいかに観客の目を引くか趣向を凝らし、グッズを配ったりと競争しあうように宣伝、PRをする場になりました。オリンピックでも出資スポンサーへの“特典”として、本来ならば世界が注目する聖火リレーを宣伝の場として提供するべく“キャラバン隊”を企画したのではないでしょうか。ただ、開催自体に批判が向けられている、またさらなる感染者を出しかねない現状ではキャラバン隊を表立ってアピールできない事情があるのかもしれません(苦笑)」ただただ聖火をつなげているわけではなさそうだ。
2021年04月28日27日、丸川珠代五輪担当相(50)は閣議後の記者会見で、7月に開幕を予定している東京オリンピックの医療体制について発言。毎日新聞など複数メディアによると「医療の現場を預かるのは東京都。こうしたい、ああしたいという声は何も届いてこない。どのように支援すればいいのか戸惑っている」と述べた。丸川氏は2週間前に政府の事務方を通じ、東京都に医療提供体制の方針を示すよう求めたという。しかし、具体的な方針は示されていないとし「東京都が大会の主催者としての責任、医療の現場を預かるものとしての責任をどのように果たすのか。明確な方向性を示していただきたい」と東京都に苦言を呈した。東京都を批判する丸川氏だが、SNS上では、丸川氏自身も当事者意識が薄すぎるのではとの批判が相次ぐ。《相手が何も言ってこないから、こっちも何もしない。オリンピックまで3ヶ月きって責任擦り付けあってる場合じゃないと思うけど》と、五輪担当相としての職務を全うしていないのではという指摘も。また、開会式まで90日を切った今でさえ政府と都の足並みが揃わない点について《この時期に、オリンピックの感染対策について、都と政府(五輪相)と情報交換できてないの?》《責任のなすりつけ。中止に向けての伏線?》など、呆れの声があがっている。丸川氏は、今月20日に五輪人件費予算について「守秘義務で見せてもらえない資料がある」と述べ、五輪相としての責任感が薄いのではとの批判が殺到したばかり。東京都、組織委員会、政府の間で責任を擦り付けあっている間は、世論もオリンピック開催に前向きな気持ちにはなれなさそうだ――。
2021年04月27日新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)が日本で感染拡大してから、2021年4月時点で1年以上が経過しています。事態は収束に向かうどころか、1日の新規感染者数が増加する一方。同月25日には、三度目となる緊急事態宣言が東京都、京都府、大阪府、兵庫県の4都府県で発令されました。日本はワクチンの接種実績もまだ少なく、コロナウイルスとの闘いは今後も続いていくと予想されます。膳場貴子アナ、政府の対策にズバリ同月24日に放送された情報番組『報道特集』(TBS系)でも、コロナウイルスの状況や政府の対策について特集しました。番組では同月23日に行われた会見で、丸川珠代五輪担当大臣が質問を受けている様子を放送。同番組に出演するジャーナリストの金平茂紀さんは「緊急事態宣言と五輪は無関係であるというバッハIOC会長の発言に、国民からは怒りの声が上がっているが、同じ認識か」と質問しました。問いに対し、丸川大臣は「IOCと東京都が話をした上での発言かは分からない。国民の安心安全を第一で、開催の準備を進めていく」と回答しています。ほかにも、質問を受けるたびにどこかはぐらかした返答をする丸川大臣。一連のやり取りを見た膳場貴子アナウンサーは、真剣な表情でこのようにコメントしました。政府がどれだけ当事者意識を持っているのか疑問に感じる局面が、とても多いんですけれども。丸川大臣の答えを聞いていても、「本当に五輪担当大臣ですか?」という印象でした。報道特集ーより引用「こんなにも他人ごとで、本当に五輪担当大臣なのだろうか」と、正直に疑問を明かした膳場アナ。会見に参加していた金平さんも膳場アナのコメントに共感し、「会見では逃げの体制をとっていたように感じた。なんのための担当大臣なのか」と述べました。忖度せずハッキリと物をいう膳場アナの姿はネットで拡散され、称賛する声が上がっています。・ほかの情報番組も、これくらいズバッといってほしい。膳場アナはさすがです。・「なんでこんなに他人ごとなんだろう?」とモヤモヤしていたので、スッキリしました。・膳場アナがかっこよかった。本来は、こういう指摘ができて当たり前だと思う。4月現在、東京五輪開催までおよそ90日。開催を不安視する声が相次いでいますが、現段階では実行が予定されています。コロナウイルスが終息する見込みがなく、感染者が増加している状況での開催は、不安視する人が多いでしょう。また、三度目の緊急事態宣言に対し「五輪を開催したいがために国民を振り回しているのではないか」という疑問の声が上がっているのは事実です。コロナウイルス感染や景気の悪化により、命を落とす人は少なくないはず。「国民の命と五輪開催が天秤に乗せられている」と感じる人も少なくないこの状況は、いつになったら終わるのでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2021年04月25日2021年4月22日、お笑いタレントのイモトアヤコさんはInstagramを更新し、東京五輪の聖火ランナーを辞退したことを報告。辞退の理由をつづったところ反響を呼んでいます。イモトさんは、鳥取県の実行委員会より「感染拡大の懸念により、著名人の公道走行は遠慮してほしい」と要請を受け、今回の決断にいたったそうです。Instagram上で、鳥取県の名峰『大山』の写真とともに、自身の想いを投稿しました。「県外から鳥取を訪問することを懸念して」が主な辞退理由にされておりますが私は不用不急ではない県外への訪問は普段からお仕事でさせてもらってます。もちろん1日ごとに変わる状況に配慮し人が集まらないという対策をしながら出来るかぎりの中でベストを尽くしてます。自分の気持ちとしては自意識過剰ながら私が公道をランナーとして走ることで人がたくさん集まってしまうのではないかということがわたしの一番の懸念点です。この混沌とした前例も正解もない状況の今、五輪を目指すアスリートの皆さまはじめ関わってらっしゃるたくさんの方々がそれぞれの「最適解」を出しながら一つ一つ決断されていると思います。さまざまの個の考え方があって良いんじゃないかなあと私自身は思うのです。#日々鍛錬されているアスリートの皆さまへの尊敬の想いを込めてみたく#そんなことを自分の言葉で伝えてみたくimotodesseーより引用 この投稿をInstagramで見る イモトアヤコ 公式(@imotodesse)がシェアした投稿 自身が公道を走ることで、多くの人が集まることを懸念し、辞退を選択したイモトさん。本来は聖火ランナーとして、地元である鳥取県を走りたいと願っていたことでしょう。著名人の聖火ランナーについて、さまざまな憶測が報道される中、自分の言葉で話したいという気持から、今回の投稿をしたといいます。コメント欄には、イモトさんの決断を応援する声などが寄せられました。・イモトさんの気持ち、十分伝わってます。今は我慢の時ですね。・イモトさんが走られないのはとても残念ですが、決断されたことはすごく理解できます。・仕方ないですよね。本当は走りたいのにそこを我慢するのも選択肢の1つ。応援していますよ。イモトさんはじめ、聖火ランナーの人たちはそれぞれ難しい決断を迫られているのかもしれません。早く、何の気兼ねもなく、どこへでも行ける世の中に戻ることを祈るばかりです。[文・構成/grape編集部]
2021年04月23日新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の影響で、2020年から延期している東京五輪。2021年3月25日からは、聖火リレーが始まりました。予定では全国各地を回り、同年7月23日に東京都内を走って到着することとなっています。しかし、コロナウイルスがまん延する中で聖火リレーをすることに、批判や心配の声も出ているのも事実。大阪府では、公道の走行を中止して万博記念公園の代替コースを走りました。中村時広知事「機会を与えられず、すみません」同年4月21日からは愛媛県を走る予定でしたが、中村時広知事は公道でのリレーを中止することを決断。産経ニュースによると、走る機会がなくなった市民ランナーや、著名人が式典に集い、1列に並んで順番に聖火を引き継いだといいます。聖火ランナーとして決まっていた人にとっては、せっかくの記念がコロナウイルスの影響で走れなくなってしまい、残念に思った人もいるでしょう。中村知事は「走ることを楽しみにしていたみなさんに機会を与えられず、すみません」と、泣きながら陳謝しました。ネット上では、中村知事の判断にさまざまなコメントが寄せられていました。・英断だと思う。知事のやり切れない気持ちも分かります。早く元の生活に戻りたい。・泣いているところを見て、知事も毎日大変だっただろうなと思いました。つらい気持ちが伝わってきた。・ランナーにとっては残念だと思うけど、県民の命を守るためにもいい判断だと思います。・知事も毎日大変だと思うので、ゆっくり休んでもらいたい。愛媛県では同日、過去2番目の感染者数が確認されています。また、複数のクラスターも発生。知事の判断が、多くの人を感染から守るきっかけとなることを願います。[文・構成/grape編集部]
2021年04月22日2021年3月、福島県から聖火リレーがスタート。サッカー“なでしこジャパン”の面々《現在特に症状はないものの、今後は感染防止拡大を最優先として保健所等のご指示に従い、回復に取り組んでまいります》4月13日、山本耕史に新型コロナウイルス感染の陽性判定が出たことが、所属事務所のHP上で発表された。これにより、4月23・25日に出演予定だった舞台『シブヤデアイマショウ』を降板。山本は、いわゆる“無症状”のようだ。「ご家庭には奥さんである元女優の堀北真希さん、それに幼い2児の子どもたちもいるだけに心配ですね。第4波とされる中、誰もが感染しうる状況で致し方ないとはいえ、彼が感染したことでまた“聖火リレーの意義”が問われるかもしれません」(スポーツ紙記者)現在、感染が広がる主要都市で「緊急事態宣言」に代わる「まん延防止等重点措置」の適用が検討されている。それでも行われる「東京2020オリンピック聖火リレー」について、公道の利用の中止、もしくは聖火リレー自体の中止を検討する自治体も出始めている。■“ノーマスク”で走る姿に違和感3月25日に福島県のJヴィレッジからスタートした聖火リレー。“第1走者”を務めたサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」のメンバー(2011年時のメンバー)をはじめ、各界の著名人らが全国各地でトーチをつないでいる。そんな彼らをひと目見ようと、特に芸能人が走る区間の沿道には応援する人が集まり、一時的に密になる場面が各種報道で伝えられた。そして主役であるランナーたちがマスクを着用しない、いわば“ノーマスク”で走っている姿に違和感を覚える人もいたのでは。そして山本もまた4月4日、岐阜県が推薦する聖火ランナーとして関ケ原町内を走っていたのだ。彼の場合、コロナ感染時の状況と時期が明確にされていないことから、少なからず聖火リレー時に自身が感染した、また他者に感染させた可能性がなかったとは言い切れない。これから走るランナー、また受け入れる自治体にも不安が広がりそうだ。岐阜県の県庁地域スポーツ課によると、山本が走ったのはミニセレブレーションが行われた笹尾山登山口から笹尾山山頂までの山道。関ヶ原の合戦における「石田三成陣跡」の碑が建つ屈指の名所だ。ゴールの山頂には数十人の観覧客の姿があったものの、沿道ではマスクを着用したスタッフが伴走しただけで、山本の周囲で密になるような状況はなかったようだ。とはいえ、主役である山本はマスクを着用していなかったのだが、これはどういった判断によるものなのか。「(東京オリンピック・パラリンピック競技大会)組織委員会として、走行時において一定の距離を確保した上で、マスクを着用しないことを可能とする、というルールになっております。今回もですが、他のランナーの方を見ていただくとわかるように、沿道と距離をとり、セキュリティーを務めるランナーの方もマスクをしっかりした上で走り、また声を出さないとか、唾液などが飛ばないような形で運営することで“マスクをしなくても走れる”というような状況でして、組織委員会のルールと照らし合わせても問題ないということです」(岐阜県庁地域スポーツ課) 公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会のHPには、聖火リレーの《感染症対策について》として《聖火ランナーの遵守事項》が書かれている。主な事前対策として、 《実施2週間前から当日までの間、会食をしない、密集する場所への外出を避けるなど、新型コロナウイルス感染リスクの高い行動をご遠慮ください》 《体調が悪い場合や感染が疑われる場合は、速やかに、保健所や診断書に報告・相談をお願いします》 などを呼びかけている。しかしPCR検査については、《走行前72時間以内のPCR検査又は抗原定量検査を推奨します。検査費用については組織委員会が負担します》と、あくまで“推奨”であって“義務”としていないのだ。 また当日の対策として、体調が悪い場合の参加見合わせ、検温と消毒、体調管理チェックシートの提示などの措置が取られるとのこと。そして、気になるランナーのマスク着用に関してはこう書いてある。 《マスクをご着用ください。(ただし、走行時においては、一定の距離を確保した上で、マスクを着用しないことを可能とします。)》 各自治体はこのルールにのっとって、山本を含めたランナーがマスクを着用しなくてもいい、と判断しているようだ。■参加は聖火リレーだけではなかったところが、山本が参加したのは聖火リレーだけではなかった。2016年のNHK大河ドラマ『真田丸』で石田三成役を演じただけに、完走後にゆかりの地である関ケ原町が主宰したトークショーにも参加。マスク着用を義務付けられた、約200名の観覧客を前に登壇したのだ。同町の教育委員会教育課に当日の様子を聞くと、「山本さんは元気で(体調不良等は)まったくないように見えました。トークショーではマスクは外されていましたが、観覧客はもちろん、聞き手の方との距離は十分にとっていました。時間にして1時間程度で、マスクなしで接触があったのはその聞き手の方のみですが、体調は問題ないと聞いております」感染防止対策はしっかりとられていたようだが、楽しみにしていた観覧客へのサービスの側面もあったのだろう。マスクの着用は省かれたようだ。■マスク着用では“うまみ”がない「聖火リレーに参加を決めた芸能人もマスクで顔を隠されては“うまみ”がありませんからね。でも、テレビでは見栄えの面でマスクなしで走っているところばかり抜かれますが、実際には各自治体は出走直前までマスク着用を促し、マスクなしのフォトセッション時も十分な距離をとって気をつけていますよ。それでも、有名芸能人であれば聖火リレー以外のところでも現地の営業イベント等に呼ばれる可能性もあるわけで、全国に“出張”させる立場の組織委員会としてはマスク着用を曖昧なルールにするのではなく、多くの国民に納得してもらえるような明確な基準を設ける必要も考えないといけないのかも」(全国紙記者)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会広報局に「聖火ランナーはマスクをしなくてもいい」とする理由を問い合わせると、メールにて次の回答が送られてきた。「走行時は周囲と一定の距離を確保しているため、マスクを着用しないことを可能としています。ただしご希望される方には走行時もマスクを着用いただいております」あくまでもランナーの判断に委ねている、ということだろうか。では、「今後、ランナーにマスクを義務付けるか」について、「今のところその予定はございません。上記のとおりご希望される方にはマスクを着用いただきます」東京五輪の開幕まで100日となった4月14日、小池百合子都知事は「コロナとの闘いを超えて開催できる大会にしていく。そしてまたそれを皆さんと共に果たしていく、そのような大会へと向かっていきたい」と、あらためて開催への強い意志を示してみせた。ドタバタが続く組織委員会と共に、強いリーダーシップをもって国民や自治体、そして矢面に立ちながらも五輪のために走る聖火ランナーたちを牽引してほしい。
2021年04月15日祖父母が通うヘアサロン店主と池江璃花子選手暗雲立ち込める東京五輪に吉報が舞い込んだ。競泳選手の池江璃花子が、東京五輪代表選考会を兼ねる日本選手権に出場し、2種目で優勝。400メートルメドレーリレーと400メートルリレーの日本代表に内定した。「4月4日の100メートルバタフライでの優勝後のインタビューで“努力は必ず報われるんだなというふうに思いました”と語っていました。日本選手権に出場するのは3年ぶり。まさに奇跡です」(スポーツ紙記者)10代から日本を代表する選手として活躍した彼女を、病魔が襲ったのは突然だった。「2019年の2月、オーストラリアで合宿を行っていたところ、体調不良で緊急帰国。その後の検査で、急性リンパ性白血病と診断されました。当時は、五輪どころか命に関わる事態といわれていましたね」(同・スポーツ紙記者)抗がん剤や造血幹細胞移植といった治療を受け、2019年12月に退院。その直後のコメントでは「2024年のパリ五輪を目指す」と語るなど、長い闘病生活が始まるのかと思いきや、約1年半後となる今、彼女は東京五輪の代表選手に内定した。■医師も驚く池江選手の復活劇これまで多くの白血病患者を担当してきた江戸川病院腫瘍血液内科部長の明星智洋医師も、驚異的な復活に驚きを隠せない。「急性リンパ性白血病は同種移植をしない場合、通常2年間治療することが多いのですが、池江さんの場合、年齢的に若いことと、いいドナーが見つかったため、早めの同種移植を行ったのかもしれません。ただ、臓器にできたがんのように切除して終わりというものではなく、治療は長丁場になるんです」治療の副作用も重くのしかかる。「通常、同種移植といった他人の造血幹細胞の移植を行うと、移植片対宿主病という免疫反応が出てしまい、内臓の機能が低下します。さらに副作用で筋力や免疫力も落ち、その状態が最短でも半年近く続きます」(明星医師)治療後も油断はできない。「一般的に、成人の急性リンパ性白血病の5年生存率は30~40%。治療を終えても元どおりの生活ができるとは限りません。寛解状態になっても再発する可能性も抱えています。そのため、治療後も最低5年間は経過を見ますので、彼女は今でも定期的に病院に通っていると思われます。そのような中でトレーニングを積んで大会に臨み、復帰を遂げたのですから奇跡の復活といえます」(明星医師)アスリートには、この偉業はどう映ったのか。北京五輪の男子400メートルメドレーリレーの銅メダリストで、現在はスポーツ解説者を務める宮下純一さんはこう語る。「率直に“本当に病気をしていたのかな”と思いました。プロの水泳選手の場合、大きな大会の後、次のシーズンまで1か月くらいオフを取ったりしますが、それでも練習再開時に筋力の低下を覚えます。彼女がプールでの練習を再開したのは、昨年3月。1年近くのブランクは取り返しがつかなくなりかねません」治療に時間を取られながらも、トレーニングを重ねていたようだ。「前評判では“エントリーした種目を全部泳ぎきれるか”という懸念の声もあったほどでした。しかし彼女は懸垂などで肩甲骨まわりを重点的に鍛え、体重も増やして水を押し返すパワーと推進力を得ていました。泳ぎにも迷いや苦しみを感じさせませんね」(宮下氏、以下同)この復活劇は彼女の人柄やメンタルの強さも大きい。「以前、対談したこともありますがとてもまっすぐな子ですよね。結果を出している選手だと天狗になったりするものですが、彼女はいつもきちんと受け答えします。そんな人柄だからこそ、みんな手を差し伸べたり応援したくなるんだと思います」周囲の期待を背負い、それに応える彼女。実際、今回の復帰にも多くの支えがあった。「栄養士をつけて体重と栄養管理をし、コーチたちも白血病の闘病中である彼女にどのような練習をさせるか苦心したようです。担当の西崎勇コーチは“頑張りすぎないように頑張らせるのが大変”と語っていました。周囲の支えが大きかったと思います」■地元・江戸川区から歓喜の声吉報に沸く池江の地元・東京都江戸川区だが、彼女と家族ぐるみの付き合いがある『ヘアーサロン安曇野』の店主の喜びは計り知れない。「最近は会えてないけど、成人式の写真を彼女のおじいさんからいただいたので店内に飾っています。病気を治しただけでもすごいのに五輪なんて夢のようですよ」その写真は成人の日にインスタグラムに投稿された晴れ着姿。これは都内のフォトスタジオで撮られていたようだ。「2020年の年始、つまり退院してまもなく撮影しに行ったそうです。池江さんの仕事先の紹介で知ったそうですが、完全にプライベート撮影のようでした」(池江家の知人)自身の成人式の1年前に撮影した晴れ着姿。それには並々ならぬ気持ちがあった。「1ポーズ約1万円というスタジオだったそうですが、50ポーズくらい撮って、費用は約50万円ほど。一般的な成人式の写真って数万円とかですから規格外ですよね。一緒に祖母、祖父、母親、兄、姉も含めた家族写真も撮影したそうです。当時は、池江さんの容体がこの先どうなるかわからない状況でしたから、万が一のことを考えて早めに、そして多めに成人式と家族の写真を撮ったんでしょうね」(同・池江家の知人)■あの子はよく頑張った深い絆で結ばれた池江の家族。困難を乗り越えた彼女をどう思っているのか。4月上旬、池江家のほど近くに住む祖父母を訪ねると、祖母が対応してくれた。─出場が決まってから、お孫さんとお話ししましたか?「ええ、直接は会えていないですが、今は便利な電話がありますから」─どんなお話を?「ひと言“おめでとう”って言ったら、ありがとうって。喜んでいましたよ」─早くお孫さんに会ってお祝いしたいのでは? 「コロナですからね、お祝いしたいのはやまやまですが……。しばらく本人にも会っていないんですよ。本人も大会中はホテル住まいらしいので。あっ、確か今日もこれから試合じゃないかしら」孫の活躍をうれしそうに語る祖母。─オリンピック内定を決めましたが、なぜここまで頑張れたんでしょうか?「どの家族も一緒だと思いますが、やはり家族の支えでしょうね。ほんと、あの子はよく頑張りましたよ」孫の偉業に、感極まったように声を震わせながら話してくれた。今回の快進撃の秘密、それは支え合う家族の絆だったのかもしれない。
2021年04月13日競泳の池江璃花子(いけえ・りかこ)選手が、2021年4月8日、東京五輪の400メートルリレーの代表に内定。池江選手は、同月4日にもメドレーリレーで代表に内定しており、今回で2つ目の日本代表入りとなります。競泳・池江璃花子選手が東京五輪代表に白血病回復からの内定に「素晴らしい奇跡」この日、女子100メートル自由形で優勝し、2冠を達成した池江選手。2019年2月に、白血病であることを公表していたため、競泳で復活した姿は多くの人の心を打ちました。ネット上では「おめでとう!」「暗い話題が続く中でいいニュース!」などの声が上がっています。池江さんの輝く姿は、同じく白血病を患っている人たちへの励みにもなるでしょう。これからも、努力し続ける池江選手を応援したいですね。[文・構成/grape編集部]
2021年04月08日2021年4月4日、競泳の池江璃花子(いけえ・りかこ)選手が、東京五輪の代表に内定しました。池江選手は100mバタフライ決勝で57秒77の記録を打ち出して優勝。また、400mメドレーリレーの派遣標準記録を突破しています。インタビュー中では感極まり、美しい涙を流した池江選手。代表の内定について、このようにコメントをしています。「57秒台が出るとは思わなかったし、リレーの派遣標準記録も切れると思わなかった。一番戻ってくるのが時間がかかる種目だと思っていた。優勝も狙っていなかったけど、何番でもここにいることに幸せを感じようと思った。仲間たちが全力で送り出してくれて、とても幸せ。本当にうれしかった。言葉にできない。ものすごく自信がついたレースだった」サンケイスポーツーより引用池江選手は2019年2月に、白血病であることを公表。当時、東京五輪は2020年に開催が予定されていたため、多くの人から惜しむ声が寄せられていました。五輪は多くのアスリートにとって、目標といえる大会です。池江選手は白血病の発覚に加え、東京五輪への出場が絶望的だったことに大きなショックを受けたことでしょう。つらい治療を乗り越えた後、リハビリや練習に励んできた池江選手。今回の内定に対し、多くの人から祝福する声が寄せられています。[文・構成/grape編集部]
2021年04月04日東京五輪・パラリンピック組織委員会は4月1日、『週刊文春』及び『文春オンライン』に掲載された、五輪の開閉会式の演出に関する記事について、厳重抗議したと発表した。同委員会は、内部資料を掲載して販売することは著作権の侵害にあたるとし、掲載誌回収やオンライン記事の全面削除、資料破棄などを求めている。『週刊文春』で報じられたのは、開閉会式制作チームのメンバーだった振付師のMIKIKO氏のチームがIOCにプレゼンした280ページに及ぶ内部資料(昨年4月6日付)。記事内では演出内容についての言及や、資料の一部画像が掲載されている。MIKIKO氏は当時、五輪開閉会式の演出担当の責任者を務めていた。同誌の報道によると、昨年4月にはIOCに開会式案のプレゼンも行っており、その企画は高い評価を得ていたという。しかし昨年5月、急遽責任者が佐々木宏氏(66)に変更となる。その後佐々木氏は、それまでのMIKIKO氏の企画案を無視し、IOCに新たな企画案のプレゼンを重ねた。しかし、それらの案はIOCに認められなかったため、佐々木氏はMIKIKO氏の案を切り貼りして作成した企画を提出していたという。佐々木氏は、女性芸能人の容姿侮蔑を理由に、3月18日に辞任している。組織委員会の抗議文書には《さらに、制作チームの当時のクリエイティブディレクターなど、内容を知りうる全ての関係者には、あらためて守秘義務の遵守徹底を求めてまいります》とMIKIKO氏を示唆するような表現も。MIKIKO氏は、文春の直撃を受けても「守秘義務からお答えできない」と報じられていた――。再び巻き込まれる形となったMIKIKO氏には、同情の声がSNS上で多く寄せられている。《MIKIKOさん、はた迷惑だろうな》《今回の暴露で、mikiko氏が傷ついてしまうことが一番心配》《何の罪もないMIKIKO先生の負担があるんじゃないかと心配になります…》さらに、今回の抗議声明をうけて五輪組織委員会への批判も高まるいっぽうだ。《おそらくは元々の案をそのままではないにせよ、切り貼りしたような案で進めているのでは》《ボツにしたんでしょ? なら公開してもいいじゃないのよ? 》《え?クビにした人のプランですよね》身から出た錆、と組織委員会に対する世間の視線は冷ややかだ。「不採用になった案を“勝手に公開していい”という機密保持契約はほとんどないでしょうから、情報の漏洩がに批判が集まるのは仕方ないでしょう。しかし、これだけの報道があった後『MIKIKOさんの企画案を一度ボツにしたにもかかわらず、やっぱりその案を切り貼りして開会式を行おうとしていたんだ』と、組織委員会の自分勝手な行動が推測されてしまった。火に油を注ぐ形になってしまいましたね」(社会部記者)この状況下、はたしてどのような開会式が開催されるのだろうか――。
2021年04月02日「彼女には『鉄の女』でいる理由がある」東の夫はそう言って微笑む。3月18日、突如「胃がん」を公表した東ちづる。会見では、同情は無用!と言わんばかりのバイタリティーに満ちた姿で報道陣を圧倒してみせた。数々の困難をステップアップにつなげてきた東。彼女の周りには、差別や偏見、病と闘い、ともに称え合うたくさんの仲間の姿があった──。東ちづる撮影/伊藤和幸■オリパラ大会公式文化プログラムを担当中、胃がんが発覚東京にある渋谷区文化総合センター大和田のホール。その舞台上に女優でタレントの東ちづる(60)の姿があった。悪魔のような魔法使いのような黒の衣装。まるでハロウィンのようなコスチュームに身を包み、演者やスタッフたちに向かってテキパキ指示を出している。「みんなタイミングをもっと合わせて、ちゃんとお客さんのほうを向いてくださいね」3月18日、東が座長を務める「まぜこぜ一座」の舞台『月夜のからくりハウス渋谷の巻』のリハーサルが行われていた。全盲の落語家、ろう俳優、義足や車椅子のダンサー、自閉症のダンサー、小人プロレスラー、女装詩人、ドラァグクイーンなど“マイノリティー”にくくられる演者がズラリ。そこに極悪レスラーのダンプ松本やアコーディオン奏者なども加わり、障がいの有無にかかわらず、まぜこぜになって、パフォーマンスを披露していく。東は、障がいのある人や生きづらさを抱えた人たちの創作活動を行う「まぜこぜ一座」を2017年に旗揚げし、演劇の総合演出を務めてきた。そんな実績が認められ、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会公式文化プログラム「東京2020NIPPONフェスティバル」のひとつの文化パート総指揮者にも就任。「多様性」がテーマとなる映像制作の準備も着々と進んでいた。だが、冒頭のリハーサル同日、突然開かれた記者会見で東は「胃がん」を公表した。「私、胃がんだったようなんです。でも、内視鏡で切除しまして、こんなふうに元気になって、日々バリバリやっております!」昨年11月末に、胃痛と貧血の症状で診察を受けたところ胃潰瘍(いかいよう)と診断され、1週間の入院。念のため12月初旬に受けた精密検査で早期の胃がんが発見されたのだ。今年2月3日に内視鏡的粘膜下層剥離術を行い、13日には退院していたという。会見での姿は溌剌(はつらつ)としていたが、改めて本人に話を聞いてみた。「胃潰瘍が、がんを教えてくれたと私は思っています。胃潰瘍にならなければ気がつかない可能性もありましたから」東は「スキルス性胃がん」を恐れていたと明かす。医師に詳しい説明を聞きに行く前、家にいた夫にはこう告げていた。「たぶん早期のがんなんだと思う。でも、もしスキルス性だとしたら今後のことを話し合いたい」スキルスとは、「硬い腫瘍」を意味する言葉。一般の胃がんとは異なり、胃の壁に沿って染み込むように患部が広がっていく。症状が現れにくく、悪化してから発見されることが多い。5年生存率は7%未満といわれている。そのため、「死」を連想しなかったわけではなかった。「いちばんに考えたのが、引き受けたオリパラの仕事でした。引き継いでくれる人を探さなきゃならないと思った。これは私じゃなかろうが、実現させねばならない。とりあえず、あと1、2か月命があるんだったら、ガッチリと信頼できる映像班で、編集もこんな感じでとどう伝えればいいか真剣に考えました。あとは夫が1人になったらどうなるのか、形見はどうしよう、少ないけど遺産はどうなるのか、最後に旅行にも行きたいなとか……」東の夫、堀川恭資さん(58)は、妻の異変を感じ取っていた。「具体的に言葉には出さないけど、長く一緒にいるので、僕には彼女が普段と違って見えて、不安な気持ちでいるのがわかりました」それでも、悩んだのはたったのひと晩。スキルス性ではなく、初期の胃がんと判明した後は、すっかり普段のペースを取り戻していた。東には、がん告知に動じずにいられた理由がある。30年以上にわたり『骨髄バンク』の活動に携わり、数々の死を目にしてきたからだ。「こういう活動をしていると、私より若い人がたくさん亡くなるんですよ。ある日突然、仲間がいなくなる。骨髄移植で成功する人もいれば、亡くなってしまう人もいる。毎日のように弔電を打って、白い花を贈っていた時期もあります。“なんでうちの子なの……”って泣くご遺族の姿もたくさん見てきました。人生は本当に思いどおりにはならない。生と死は隣り合わせだと学んだんですよ」ひと呼吸おいて、「今の私はたまたまラッキーだっただけですね」と微笑(ほほえ)み、その声は弾んでいた。「私、胃がんだと聞いて、自分の身体にゴメンなさいと謝りました。私が悪い、生活を改めますと誓った。生っきよう♪一生懸命生きようって、思いましたね。自分を使い切ろう。絶対無駄にしないぞ、と」■優等生の挫折と母の言葉1960年、広島県因島市(現在の尾道市因島)で、造船関係の仕事をしていた父と会社員だった母の長女として生まれた。「母親は、子育て本を読みあさって、それはもう一生懸命に私を育ててくれました」幼いころから、母親は毎晩本の読み聞かせをしてくれたという。「母からは『1番にならないといけない』『優しい子でいてね』『ちゃんとしなさい』と教えられ、私もそれに頑張って応えていました」成績はずっとトップクラス。家の居間の壁には東の賞状がずらりと貼られていた。周囲の期待を感じ、いつの間にか何となく教師を目指すようになっていた。目標は、国立の広島大学の教育学部。誰もが彼女の合格を信じて疑わなかった。ところが──受験は失敗。そのとき、母がつぶやいた言葉が忘れられない。「母はボソッとつぶやくように言いました。“18年間の期待を裏切ったわねぇ”って。それはとてもリアルでした。景色が霞(かす)んで、壁の賞状がボンヤリと目に入った」あまりに大きな衝撃だった。浪人する道もあったが、母親の言葉にショックを受けた東は、大阪の短大に滑り込む。小さな島から出て、大阪という大都会でひとり暮らし。それまでの自分を知る人が誰もいないという解放感を堪能し、卒業の日を迎えた。■有名企業の会社員から芸能界へ当時は、「青田買い」という言葉があるくらい就職には有利な時代である。誰もが知っている有名企業に就職し、イベントプロモーション、ショールームを運営する会社の広報部に配属された。「年功序列もなくて、新入社員でもすぐ企画が出せました。ワクワクするような毎日でしたね。職場の雰囲気も労働条件もよかった。お茶くみとかコピー取りといった雑用は一切なし。それでも、女性の昇格には高い壁があった。後輩の男性社員に追い越され、納得できないこともありました」東は、満たされた日々を送るために「仕事以外」のことに熱中した。休日のアルバイト、ウインドサーフィン、テニス、スキー、ディスコ、食べ歩き、旅行、デート……。忙しく時間を使うことで「生きている」という実感を得ようとした。「会社の有休を週末にフルに使って、黒姫高原のペンションに居候してアクティブに活動してましたね。インストラクターの資格を取るくらい熱中してました」このころ、東には学生時代から交際していた恋人がいたが、大失恋を経験する。「原因は私の強い依存心。ムードだけの口約束だけでは不安だった私は、結婚への約束、保証が欲しかった。それが彼のプレッシャーになったんですね」当時は、結婚や出産を機に退職する「寿退社」が華だった。結婚が決まらない人はやがて「お局」と呼ばれるようになっていく。「寿退社」という選択肢を失った東は、進むべき道に迷い始めていた。「私は組織には合わないんじゃないか、と思うようになっていました。とはいえ安定からこぼれ落ちるのも怖い。一方で、もっと自分を表現できる仕事がしたい、という思いも強くなっていたんです」そんなある日、十二指腸潰瘍を発症。医者には「仕事を辞めればきっと治りますよ」とあっさり言われてしまう。時代はバブル期。一流ブランドの会社を捨ててもどうにかなる気もしていた。「スキーのインストラクターにでもなればいいぐらいに思って、会社を退社しました」会社を辞めた東に声をかけたのは、芸能事務所に勤める友人だった。「遊びにこない?」と誘われたのは芸能プロダクションのオーディション。軽い気持ちで会場へ向かった。それが人生を大きく変えることになるとも知らずに……。ド派手なファッションだった東は司会者の目に留まり、ステージに上げられた。何しろ、髪はソバージュ、ピンクのヘアバンド、白い革ジャンにピンクのTシャツ、白いパンツにハイヒール……。「いつクラブやディスコ、パーティーに誘われても大丈夫なように、普段からそんなスタイルだったんですよ(笑)」実は、友人が東をオーディションに出演させるよう仕組んでいたのだという。「そのオーディションは、新人の最終選考でした。テレビ局のプロデューサーやディレクター、制作会社の人たちが審査員だったんですね」東は、ステージでテレビに対する自分の意見を語った。そして男性司会者と腕相撲をして勝ってみせた。さらに、ガタイのいい司会者に向かって、「ここさぁ、あなたの仕事としては面白く見せるところでしょ?」とツッコミ、会場を沸かせたのだった。「私は何の欲もないから、すごいリラックスしてたんです。みんなめっちゃ緊張してやってるのに、私は普通に笑いを取りにいったんですね」その場でグランプリを受賞。審査員の数人が、「この子をすぐ使いたい」と次々手を挙げた。初仕事はテレビの情報番組のレポーターだった。「会社で広報担当をやっていて、イベントなどでレポーターに指示を出す立場でしたから、何をすべきか現場のノウハウはすべてわかっていたんですね。なんて要領のいい子だと思われました(笑)」当時は、芸能界の仕事は単なるアルバイトのつもりだったが、だんだんテレビの仕事が増え、東は現場をこなしながら実力を磨いていった。帯番組の司会を務めるようになると、料理番組『金子信雄の楽しい夕食』(朝日放送)の出演を射止め、全国ネットにデビュー。2年後には『THE WEEK』(フジテレビ系)の司会に抜擢(ばってき)されて上京する。時事問題を扱うバラエティー番組やドラマにも出演するようになり、大阪6本、東京で5本のレギュラー番組を持つ超売れっ子になった。「お嫁さんにしたい女優ナンバーワン」にも選ばれている。■少年の本当の気持ちが知りたい東は、そんな活躍の一方で、骨髄バンク啓発の活動を始めるようになる。きっかけは32歳のとき。自宅で情報番組を見ていると、画面に17歳の高校生が現れた。「彼は白血病でした。私の故郷の因島の男の子で、余命いくばくもないかもしれないとナレーションが入りました。とにかく泣かす音楽と泣かす演出でした。けれど、その子は泣くでも怒るでもない。それでスタジオのアナウンサーが『病気に負けずに頑張ってほしいですね』と言ったんですね。『えー!』と思いましたよ。だって、頑張ってんじゃん。泣き言も言わずに」テレビの仕事を始めて7年。東はテレビの持つ巨大な力の強さをひしひしと感じていた。ところが、その情報番組は“お涙ちょうだいの演出”にすぎず、少年の真意はくんでいないと感じ、愕然(がくぜん)とした。少年の本当の気持ちが知りたくて、「居ても立ってもいられなくなった」彼女は、連絡先を調べ、彼の自宅に衝動的に電話をしてみた。「少年のお父さんが出ました。けれど、全国から電話があったんでしょうね。『どうもありがとうございます』と言うだけで切られてしまいました。しばらくして、男の子の妹から私の元に分厚い手紙が送られてきたんです」手紙には、「骨髄バンク啓蒙(けいもう)のためのポスターを作ってほしい」と綴(つづ)られていた。それこそが少年がテレビに出て伝えたかったことだったのだ。「だったら、番組でそのことを伝えるべきじゃないか。それはすごく申し訳ないことをしたなと思いました。私の番組じゃないけど、テレビ業界にいる人間としてね。これは完璧に作り手の課題だと思ったわけなんですね」東は、少年が出演した番組の担当者にも連絡を入れた。「彼はなぜテレビに出たのか、そしてどうしてメッセージが伝わらなかったのかと尋ねたら、担当ディレクターから『テレビだよ、数字取らなきゃ』と言われました。それも正解ですよ。でも『数字も取りつつメッセージも発信する、両方できるんじゃないですか』と言ったら『まじめだね』と」骨髄バンクとは、白血病をはじめとする血液疾患などのため「骨髄移植」などが必要な患者と、骨髄を提供するドナーをつなぐ事業のことだ。厚生労働省の調査によると、日本では毎年新たに約1万人以上が白血病などの血液疾患を発症している。そのうち骨髄移植を必要とする患者は、年間2000人を超える。東が活動を始めたのは、日本で骨髄移植が実施される以前のことだ。自分が何か行動を起こさなきゃいけない、という衝動に駆られたと言う。「何もしないということは、溺れている人を見て素通りするような感覚があった」錚々(そうそう)たる一流の業界の仲間を集めてポスターを制作。プロのクリエーターたちによるモノクロ写真を使った斬新な仕上がりだった。病院、学校、企業に配布し、貼ってほしいと呼び掛けたが、想定外の壁に直面する。「いろんなポスターが送られてくるから貼る場所がない、と断られるんですよ。そのとき、骨髄バンクがまったく認知されていないと知りました。日本中の患者さんをつなげて、骨髄バンクを知ってもらうことが先決だと思い、関係者を探して連絡をとっていったんです」やがて患者会と連携して講演やシンポジウムなどを開催するようになる。しかし、「骨髄バンクについて語ろう」という趣旨のイベントを開いても、集まるのは関係者だけ。興味のない人をどう巻き込むかが課題だった。「そこで思いついたのが、『泣いて笑ってボランティア珍道中!』というタイトルをつけ、さらに『芸能界の裏側まで話しちゃう!』というコピーで一般の人々を呼び込み、骨髄バンクの話をしてパンフレットを持っていってもらうという作戦でした」芸能人による活動には、反発もあった。週刊誌などは、こぞって「売名行為だ、偽善だ」「パフォーマンスだ」という記事を書きたてた。「そのときに闘ってくれたのが、所属事務所ではなく活動仲間でした。出版社に電話して『まったくパフォーマンスなんかじゃないですよ。東さんは全部自分で動いているんですよ』と言ってくれたり、手紙を出してくれたりしたんです。あ、大人になっても仲間ってできるんだと思いましたね」全国骨髄バンク推進連絡協議会元会長の大谷貴子さん(59)は、自身が白血病を発症し、ドナーから移植を受けたことから活動を始めた。彼女は、東をこう評価する。「東さんは決して迎合しないし、ヘラヘラもしない。だから敵もいるけど、味方もたくさんいます。脳より先に足が動く人ですね。賢いんだけど、ずる賢いイメージの“クレバー”ではなく、“スマート”な人。だからダメなものはダメとはっきり言ってくれる。でも、とっても楽しい人でもあります」■母と娘でカウンセリングへ芸能界での活躍、骨髄バンク啓蒙運動の陰で、東は精神的な悩みも抱えていた。自分がAC(アダルトチルドレン)なのだと知ったのは、37歳のときだ。「あのころの私は、周囲の期待通りに振る舞いながら1人になると、訳のわからない焦燥感に押しつぶされそうだった。『生きていて何の意味があるのだろうか』なんて思い悩んでいたころでした」アダルトチルドレンとは、子ども時代に、親との関係で何らかのトラウマ(心的外傷)を負ったと考えている成人のことで、その傷が現在の生きづらさやパーソナリティーに影響を及ぼす状態を指す。「18年間の期待を裏切った」大学受験に落ちた日、そう口にしたことを母は忘れてしまっていた。だが、母の言葉に東は、その後も長くとらわれていた。そのため、東は高校時代の記憶が抜け落ちている。これは「解離」と呼ばれる精神障害のひとつ。記憶、意識、感情、感覚、思考などの心の働きが、一部切り離されてしまっていたのだ。「母に遠慮している自分を変えたかった。そばから見れば仲よし親子だけど、実は関係性は崩れていた。ちょうど父が亡くなった後で、大きな反省と未練もありました。もっと対話すべきだったなあという。とにかく母が生きているうちに関係を取り戻したい、そして本当の私を知ってほしいと思った。また、母自身にも、妻、母ではなく、それ以前のアイデンティティーを取り戻してほしいという思いがありました」東は「カウンセリング」という心理療法を2人で受診したいと母に迫った。しかし、母親の説得には2年もの時間がかかった。母親の英子さん(82)が言う。「カウンセリングなんて言われても理解できないですよ。催眠術かけられるのかなって(笑)。でも、ちづるから『そうじゃないから』って何度も説得されて、受けました」8か月、計12回にわたって母とカウンセリングを受けた。「変化はめちゃめちゃあった」と東は言う。「それ以前は、母が傷つかないような、悲しませないような言動をしていたと思うんです。お互いに心配をかけてはいけないと思いがちだった。でも今は、『今日はしんどい』『私は嫌だ』と普通に言えるようになったんですね」母親の英子さんは、自分の盲信に気づいたという。「私は、21歳という若いときにあの子を産んで、それも未熟児だったから、余計になんとかちゃんと育てなきゃ、という気持ちがあった。だから、育児書を読みあさって『あの子のために』と頑張ってきた。それが、あの子につらい思いをさせてたなんて考えてもいませんでした。『ああ、そうだったの?』と素直に謝れました」カウンセリングが終わって飲みに行った日、母は娘に謝罪の言葉を伝えたのだ。東はその言葉を聞いて初めて、「私は母に謝ってほしかったんだ」と自覚したという。■夫の難病と向き合い、団体設立東は、パートナーである堀川恭資さんと暮らして今年で26年目になる。堀川さんは、広告などにタレントやモデルなどをキャスティングする、キャスティング・コーディネーターをしていた。共通の友人であるスタイリストから紹介されたのが出会いだった。東の第一印象を堀川さんはこう振り返る。「面白い人だなと思ったのと、ほかの芸能人とは違うなと思いましたね。すごく勉強熱心で、やっぱり会社員を経験しているせいかなとも思いました」映画や食事に出かけるうちに距離を縮め、’95年には事実婚、’03年に入籍した。夫は飲食店を経営するようになり、幸せな生活を送っていた。ところが2010年、突然堀川さんが「ジストニア痙性斜頸(けいせいしゃけい)」を発症してしまう。自分の意思とは関係なく、筋肉が収縮する症状が首や肩に生じるもので、頭が回転したり、前後左右に傾いたりする。脳の機能がうまく働かなくなることが原因で発症するらしいが、詳細は明らかにはなっていない。東が言う。「2年間は寝たきりでした。しんどかったのは、最初は病名がわからなかったこと。闘う相手がわからないのが気持ち悪かったですね。どう治療していいかもわからない」それでも、西洋・東洋医療、民間療法など、宗教と霊的なもの以外は何でもやってみた。そして専門の医師と出会ったことで徐々に改善し、現在では多少の苦労はあるものの、車椅子生活を送っている。自動車の運転や軽い散歩もできるほどになった。堀川さんが言う。「発症して2年間は、本当に彼女もつらかったと思う。僕をみて仕事に行って『彼がどうなってるかわからないから』と好きなお酒も飲まずに急いで帰ってきてね。寝ていても僕は熟睡するまでずっと頭が動いているからその衣(きぬ)ずれで彼女は眠れなかっただろうし」2012年、夫がリハビリに励む中、東は『一般社団法人Get in touch』を発足。音楽やアートなどエンターテイメントを通じて、誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指す活動をスタートさせた。「なぜやるの?」と反対し続ける堀川さんに東は言った。「他者のため、社会のためにやることがあなたのためにやることなの。このままだったら、私たちは生きづらくてたまらない。社会が少しは変わってくれないと、我慢すること、耐えること、諦めることばっかりになってしまう。やらなければ何も変わらない」そして、2人の意見がぶつかったまま、『Get in touch』のイベントの日が訪れる。東が会場に到着すると、「東ちづる様」と書かれた段ボールが届いていた。差出人は書かれていない。「え?なんだろ?」「怖い、怖い」もしかしたら、反対派の嫌がらせかもしれない。訝(いぶか)しく思いながら中を開けてみると、中には「Get in touch」のロゴマークが印刷された缶バッジが何百個も入っていた。「夫からのプレゼントだったんですね。私に内緒でスタッフからロゴマークのデータをもらいプリントしてたんです」堀川さんは今、妻に“感謝”を伝えたいという。「反対していた当時は、自分のことだけでも大変なのに、なぜ社会のために他者のためにと……。理解するまでに時間がかかりましたね。今振り返ってみると、僕も含めて『まぜこぜ』の社会のためにやらなければということだったんですね。今彼女に伝えるとしたら、やっぱり『ありがとう』かな。病気になって11年間ありがとう、一緒にいてくれて26年間ありがとう」『Get in touch』の活動の中で、スタッフの目に東はどう映っているのだろうか。2015年から事務局の中心スタッフとして活動している柏木真由生(まゆう)さん(47)は「ちづるさんと一緒だとジェットコースターに乗っている感覚」だと言う。「とにかく走り出す。(クルマは)走りながら組み立てるわよ!という感覚ですね。それでも、しっかりメンテナンスもして、乗り遅れないでね、と声をかけることも忘れない。ちづるさんは『ピンチはチャンス』が口癖です。どんなことでも面白がる」驚かされるのは、車椅子ユーザーの関係者が、のんびりしていたりすると、東が「もう、遅い。立って歩きなさいよ~」などと言ったりすることだ。そう言われた車椅子の人はうれしそうに笑い返す。柏木さんたちスタッフは、初めて耳にした時は驚いて言葉を失ったという。「私たちにしてみれば完全にアウトですよね。でも、ちづるさんには普通のこと。『障がい者にはやさしく接しなければならない』と思っていたら、あんな冗談はとても言えない。けど、ちづるさんは言っちゃう。誰でもできることじゃないですよね」腫れ物に触るのではなく、自然ときついジョークも交わせる関係。その自信と覚悟があるからこそ、ぐっと距離を縮められるのだ。■ハッピーエンドにはしない昨年11月、東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会公式文化プログラムの依頼を受けた東は、引き受けるかどうか1か月以上悩んだと明かす。「今までずっと粛々と『Get in touch』の活動を続けてきて、こんな晴れ舞台に出て、もしもバッシングを受けたら活動自体に傷がつくんじゃないか、という不安もありました。もちろん、たくさんのプロがいる中、私でいいのかということもありましたけどね」背中を押してくれたのは、仲間の言葉だった。『Get in touch』のメンバーに「こんな依頼が来ているんだけど」と打ち明けると、「ちづるさんがずーっとやってきたことの積み重ねが大きな形になりますね」「やっとですね、やっとですね。こういうチャンスを作るために私たちは頑張ってきたんですよね」みんな口々にそう言って涙を流したのだ。東も目を潤ませて言った。「ああ、そうか。こういう仲間がいるんだったら大丈夫だなと思いましたね」世界配信される映像のテーマは『多様性』。タイトルは「MAZEKOZEアイランドツアー」だ。「冠パートナー企業がJALなので、飛行機で多様な島をツアーしていくというコンセプト。(飛行機の)機内に乗るとドラァグクイーンのCAさんがいて、『さあ、みなさま。次の島はですね』と案内をする。その島には、障害のあるダンサーや全盲のシンガー・ソングライターなどがいろんなパフォーマンスを見せてくれる。いろんな人たちが参加して、アートや音楽やパフォーマンスを見せていくというもの。1本の映画ですね。これは、私の29年目になる活動の集大成なんです」東は、作品にこんな思いを込めようとしている。「ここ何年か、『多様性を目指す』とか『共生社会を目指す』という言い方をされることが多いんですが、“目指す”というのがそもそもおかしい。すでに私たちは、『まぜこぜの社会』にいるんです。全員が多様な色とりどりの人たちの1人で、一緒に生きているんだと。でも現実は、多様な特性が理解されなかったり、尊重してもらえないことで、生きづらさを感じている人がたくさんいます。傷ついている人がすぐそばにいるのに、なぜそのことに気づけないのか?頭では人権を理解しているつもりでも、実感はできていないのかもしれませんね」韓国や欧米と比較しても、日本の「多様性」への意識は遅れていると指摘する。「LGBTQを差別していないと言うけれど、日本はうわべだけ。例えば、欧米や韓国のドラマでは、学校や会社が物語の舞台になると、日常的にマイノリティーの小人や同性愛者や障がい者が登場します。日本の映画やドラマでは彼らが出てくるとしたら、それがメインテーマになってしまう。それを克服する感動ものになっちゃう。『日常的に一緒にいる』という描き方がまだできないんですね」そこで東は「共生・多様性」を可視化、体験化できる映像を企画したのだ。「私たちの作品の内容は基本的には、楽しく笑えて泣けて、最後はモヤモヤする。すっきりはさせません。実は最初はハッピーエンドにしてたんですよ。でも、森喜朗前会長の女性蔑視の発言があって、やめました。世界中が怒ったのに、私が『日本は多様性OKですよ』みたいな映像を作ったら、私が見せかけのヒューマニズム、美談にしちゃうことになるでしょう?」東の考えやアイデアを言語化し、舞台の脚本を担当する尾崎ミオさん(55)は言う。「ちづるちゃんは、パッションと感性の人。一緒にワクワクしながら刺激的な冒険の旅を楽しんでいる感覚がある。面白いからやめられない(笑)」夫の堀川さんは、東の体調を気遣いながらも、こう理解を示す。「手術後も100%体力は戻ってないけど、彼女にはやらなきゃいけないことがいっぱいあるので、気は張っていると思います。彼女は外から見ると『強い、可愛くない、女らしくない』と思われるかもしれない。けれど、僕からしたら『弱くて優しい女性』です。でも、そのままだと男社会で闘うことができないから、あのサッチャーのように『鉄の女』でいるのかもしれないですよね」今、東ちづるは「多様性・共生」という言葉を死語にしたいと意気込んでいる。「ピンチはチャンスだなと思ってるんです。ピンチってことは、こうじゃない別の方法を選べ、ということ。あ、ほかにもっといい方法があるんだってサイン。だから、まったくめげないですね!」《取材・文/小泉カツミ》こいずみかつみノンフィクションライター。社会問題、芸能、エンタメなど幅広い分野を手がける。文化人、著名人のインタビューも多数。著書に『産めない母と産みの母~代理母出産という選択』など。近著に『崑ちゃん』『吉永小百合 私の生き方』がある
2021年03月27日新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の影響で1年延期となった東京五輪ですが、2021年3月25日、ついに聖火リレーの出発式が福島県楢葉町にある『Jヴィレッジ』で行われました。出発式では、聖火リレーの公式アンバサダーを務めるお笑いコンビ『サンドウィッチマン』が登場。伊達みきおさんは「世界中の人に感謝の気持ちを込めて、我々は被災地を回りたいと思います」と挨拶をしていました。伊達みきお「賛否あるのは分かる」コロナウイルスの感染拡大への不安などから、賛否両論の声が上がっている、東京五輪の開催。当初は多くの著名人が参加する予定でしたが、お笑いタレントの田村淳さん、俳優の黒木瞳さんをはじめ、辞退が相次いでいます。そんな中、伊達さんはブログの中で「コロナで日本中、世界中がまだまだ大変な状況なのは誰もが承知している。開催に賛否があるのもよく分かる」とつづりながらも、五輪開催への想いを明かしています。アスリートの皆さんは、開催を信じ金メダルを目指して一生懸命に練習している。でも、なかなかこのご時世『開催して欲しい!』って公に言えないでいると聞いた。それって凄く辛いと思う。コロナ対策を厳重にしっかり考えて、本当に気を付けてオリンピック・パラリンピックが開催される事を祈っております。そして我々は、日本代表のオリンピック・パラリンピックの出場選手達を精一杯応援する。大会の開催に際しては、色々と制限はあるだろうけど、このどんよりとした世の中を明るく切り替えるチャンスだとも思う。出来れば、そんな大会になって欲しいですね。サンドウィッチマン 伊達みきおオフィシャルブログーより引用コロナ禍の複雑な状況の中、堂々と「開催してほしい」とはいえない関係者や選手たちの気持ちを汲み、応援したいとつづった伊達さん。その熱い想いに心を打たれた人々から、さまざまなコメントが寄せられています。・泣けた。考えるところはあるけれど、みんなが笑顔になれたらいい。期待しています!・賛否両論はありますが、私としては楽しみにしてきたし、なんとかやってほしいと願ってきました。・コロナ禍の開催は正直心配。でもサンドさんのアンバサダーは頑張ってほしいし、応援しています!開催が決定したのであれば、過去を振り返った時に「あの時やっぱり、やってよかった」と思えるよう、感染対策を徹底しながら応援をしたいですね。[文・構成/grape編集部]
2021年03月25日2021年3月17日、東京五輪・パラ五輪の開閉会式の企画・演出で統括役を務める、クリエイティブディレクターの佐々木宏氏の発言が週刊誌で報じられました。その内容は、タレントの渡辺直美さんにブタをモチーフにした衣装を着せ、『オリンピッグ(ブタ)』というキャラとして式典に起用するというもの。ネットでこの件が報じられると、批判する声が殺到。「他人の体型を下品なネタにするなんて」「ブタに例えるのは侮辱している」と怒りの声が上がりました。同日、佐々木氏は大会組織委員会を通して「心から反省し、お詫び申し上げる」とコメントしています。『オリンピッグ』問題に渡辺直美がコメント翌18日、所属事務所である吉本興業ホールディングス株式会社のウェブサイトに、渡辺さんがコメントを掲載。議論を呼んでいる『オリンピッグ』の話題について、渡辺さんは冷静に思いを明かしています。「オリンピックの件ですが、去年、会社を通じて内々に開会式への出演依頼をいただいておりましたが、コロナの影響で オリンピックも延期となり、依頼も一度白紙になったと聞いておりました。それ以降は何も知らされておらず、最初に聞いていた演出とは違うこの様な報道を受けて、私自身正直驚いております。表に出る立場の渡辺直美として、体が大きいと言われる事も事実ですし、見た目を揶揄されることも重々理解した上でお仕事をさせていただいております。実際、私自身はこの体型で幸せです。なので今まで通り、太っている事だけにこだわらず『渡辺直美』として表現していきたい所存でございます。しかし、ひとりの人間として思うのは、それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております。私自身まだまだ未熟な部分もありますので、周りの方にご指導いただきながら、これからも皆様に、楽しんでいただけるエンターテイメントを作っていけるよう精進して参りたいと思います。」吉本興業ホールディングス株式会社ーより引用ひと昔前は、人の身体的特徴や生まれ持った性質を『笑いのネタ』にすることが当たり前のように行われてきました。しかし時代は移り変わり、人権意識は日々アップデートされています。2021年の価値観でいうと、体型を他人が笑いのネタにするのは批判されてしかるべき行為といえるでしょう。怒りや不快感をあらわにせず、冷静に人権意識についての考えを述べた渡辺さん。その対応に、多くの人から称賛する声が上がっています。・渡辺さんの対応の、なんと素晴らしいことか。こういうのを『大人の対応』っていうんですね。・ブタに例えるだなんて、世間の認識的には侮辱でしょう。発想が小学生のいじめみたい。・渡辺さんが自ら体型をネタにするのと、他者がいじるのは全然違う。自分の体型を個性と受け入れている人もいれば、コンプレックスを抱えて苦しい思いをしている人もいます。渡辺さんのコメントは、苦しんでいる人の心にも寄り添ってくれたのではないでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2021年03月18日