「旭川は人口33万人強の土地。そんな場所なのに、吉田病院と旭川厚生病院で同時期に国内最大規模のクラスターが発生するのは想定外でした」市立旭川病院の院内感染対策チーム責任者である柿木康孝先生は、こう嘆く。北海道の感染拡大が止まらず、特に深刻なのが旭川市。12月9日には陸上自衛隊から派遣された看護官らが到着した。「約1カ月で197人の感染が判明し、ほぼ半分のスタッフしか残っていなかった吉田病院に看護官ら5人が加わりました(11日時点)。旭川厚生病院では269人(11日時点)が感染、通常の診療が不可能になり新規患者受け入れも原則休止に。さらに旭川赤十字病院では厚生病院から転院してきた妊婦の陽性が判明し、当面、分娩が中止へ。同じ病棟にある耳鼻科、泌尿器科も新規入院患者を一時停止。濃厚接触者の看護師、麻酔科医計14人は自宅待機のため、緊急度の低い手術は1週間以上、延期の事態となりました」(地元紙記者)冒頭の柿木先生は、現在の厳しい状況下に危機感を募らせる。「うちの病院では、不要不急の来院は控えてもらうよう呼びかけていますが、発熱外来もあるため、人員の配置が難しい状況です。これ以上、感染者が増えれば病棟を閉鎖してコロナ患者にあてないといけなくなります。それを多くの病院でやると一般の患者さんが“難民”になってしまいます」国内最大となった旭川厚生病院のクラスター発生は深刻だった。「勤務する医師が8日、『通常業務は全くできず、医療崩壊、機能不全に陥っている状態』と話していました」(前出・地元紙記者)同病院の赤羽弘充副院長は本誌にこう語る。「外来に来ていた患者さんもほかの病院への振り分けをして、対応しています。やっと態勢も整ってきたところです。旭川で、これだけクラスターが発生したのは、気候が大きく関係していると感じています。冷え込みだした時期と重なるんですよね。温度と湿度の関係によるクラスターは大都市圏の東京や大阪などでも今後、十分ありえると思います。今後寒くなると、クラスターが南下するのは間違いないでしょう」「女性自身」2020年12月29日号 掲載
2020年12月17日新型コロナウイルスの止まらぬ感染拡大によって、日本でも懸念される医療崩壊。これは緊急事態宣言が出された大都市だけの問題ではない。北海道の感染症指定病院の一つ、市立旭川病院血液内科診療部長の柿木康孝医師は東京での感染者急増に警戒を強めているという。「北海道ではまだ医療崩壊するまでには至っていませんが、東京のような事態が1カ月ほどの時間差で地方にも波及してくるのではと、警戒感が高まっています。このまま感染が広がると、旭川市内の患者数は500~600人になると試算されています。ところが最大でも170床しかベッド数が用意できないことが判明しています。病床が足りなくなるかもしれないことが一番の恐怖です」未曽有の医療崩壊連鎖を止めるため、私たちはどうすべきなのか――。神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎医師はこう語る。「新型コロナを抑えこむために、最もシンプルな対策は外出をしないこと。これ以上の感染拡大を防ぐことが肝要です。とある感染症指定病院では、3床ある指定ベッドに入院しているうちの2人は無症状だそうです。症状のない人のケアのために、多くの看護師や医師が目を血ばしらせて、寝不足で働かされています。彼らが体調を崩したら、本来医療を受けるべき患者さんが困ります。軽症者移送用のホテルをさらに借り上げるなど、政府は意味あることにリソース(資源・資産)を集中すべきです」順天堂大学病院・総合診療科の内藤俊夫教授も言う。「病院に来る場合には必ずマスクをつけてきていただきたいのです。マスクをしていれば、その患者がのちに新型コロナの感染者だとわかったとしても、診察しただけの医師や看護師は濃厚接触者とはみなされず症状が出るまでは医療行為を続けることができるのです」政府も私たちも現場医師の警告に耳を傾けない限り、現実に進行している医療崩壊はもう止められないかもしれない――。「女性自身」2020年4月28日号 掲載
2020年04月16日4月7日に安倍晋三首相が7都府県での緊急事態宣言の発令方針を表明するなど、ますます猛威を振るっている新型コロナウイルス。治療者は増えるいっぽうで、ワクチンなどの特効薬はまだ開発されていない。現在、新型コロナ肺炎に対しては対症療法(病気の原因に対してではなく、主要な症状を軽減するための治療)がメインとなり、治療内容も病院や医師の判断によって異なってくる。“解熱剤を飲むだけ”という患者がいるいっぽうで、3月17日に陽性結果が判明した日本サッカー協会会長の田嶋幸三さん(62)はこう語る。「治療薬に関しては、すべて医師に任せていました。具体的な薬の名前は申し上げられないのですが、点滴と飲み薬でした。それと採血と採尿、便の検査がありました。薬の反応を診ていたのだと思います。入院当初、処方された薬が効かず、人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)を使用しても対処できなかった場合は、(治療は)終わりという説明を受け、入院の同意書にサインをしました」。田嶋さんは4月2日に退院したばかり。「隔離され、18日間まったく部屋からは出られませんでした。家族とも面会できず、電話で話すだけ。私が死んでいたら、志村けんさんと同じように、家族に会えないまま火葬されていたでしょう」田嶋さんは退院後にWEB上で会見し、「保健所では、うちの家族ですらPCR検査をしてもらえなかった」という言葉も話題になっている。濃厚接触の可能性もあるのに、なぜなのだろうか。そのことについても聞くと、「保健所が“防波堤”になっている面もあると思います。検査数を増やしていくだけでは、あっという間に患者数も増え、医療崩壊を招くことになってしまいます。マスクやゴーグルなど医療に必要な物資不足も起こっているようです。人工呼吸器などはもちろん、感染防止のための防護服の増産、新型ワクチンの開発など、すべてにスピード感を持って同時進行であたることが大事だと思います」田嶋さんが言うように、医療用物資の不足は深刻化しているという。市立旭川病院血液内科診療部長の柿木康孝さんによれば、「現在は少し好転しましたが、3週間前に、通常のように使用するとマスクが2~3週間しか持たないという状況になりました。いま切迫しているのは、医療用ガウンです。安い袖付きのビニールガウンなどで代用して対応していますが、綱渡り状態です。医療者が防護具を使えなくなると、同僚、患者そして医療者の家族と、どんどん感染が広がります。国には、供給が途切れないようにしていただきたいです」4月1日に安倍首相が全世帯に“布マスク2枚”を配布すると発表して話題を呼んだが、政府の対策も、もっとスケールやスピードをアップしないと、感染激増を防ぐどころか、医療崩壊を招きかねない状態にあるというのだ。「女性自身」2020年4月21日号 掲載
2020年04月07日