あなたは自分の体がもうひとつあれば…と思ったことはないだろうか。山田宗樹さんの新刊『代体』は、その技術が実現した世界の話だ。ご本人にお話を聞きました。「以前、自分が病気になって、お金で健康な人を雇って肉体を交換する、という夢を見たんです。これは面白いと思い、のちに他人の肉体ではなく人工身体に意識を転送するという設定に変えて短編を書いたんです。その時、長編でもいけるかもしれない、という手応えがありました」大病や大怪我の際、一時的に意識だけを代体と呼ばれる人工身体に移し、日常生活を続けられるシステムが成立した世界。代体メーカーに勤める八田は、代体を使用中の顧客の失踪事件に直面。はやく見つけなければ、顧客の意識は消失してしまう。「代体が人間よりも強固であれば、人は永遠の命を持ってしまう。そうではなく人造だけど人間よりも弱く、長持ちはしない設定にしました」倫理的にギリギリセーフといえるルールの中で代体を活用する人間たち。しかしルールを犯す人間が現れた時、巨大な陰謀の存在が見え隠れし、警察や省庁までもが動きだす。「プロットを決めず、その場その場で話が大きくなるように、ベストな展開を選びながら書き進めました。私自身は、肉体と意識を切り離すなんて現実的ではないという考え。あくまでもフィクションとして面白い設定を選んだんです。意識転送の理論も、ストーリーの幅を広げるためにハッタリで作ったものです(笑)」やがて代体の生みの親、麻田という研究者の存在が浮かび上がる。「最初はマッドサイエンティストをイメージしていたんです。でも書いているうちに、もう一人の存在を出したほうが面白いだろうと思って」明かされる真相に、読者は驚愕するに違いない。スピード感を増す展開のなかで、肉体とは、意識とは、魂とは、さらには神とは何かという、究極の問いかけが突き付けられる。「でも実は、これは一人の少年の物語でもある。そのセンチメントはきっと、共感してもらえるはず」心を揺さぶるエンタメ小説である。◇『代体』 代体メーカーの営業マン、八田が担当する患者が失踪。後日、代体だけが無残な姿で発見され、患者の意識は消失していた。しかし…。KADOKAWA1700円◇やまだ・むねき作家。1965年生まれ。『直線の死角』で横溝正史ミステリ大賞を受賞してデビュー。2013年に『百年法』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ジバク』『ギフテッド』など。※『anan』2016年6月22日号より。写真・土佐麻理子(山田さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年06月21日松田青子さんの最新エッセイ集『ロマンティックあげない』のカバーには、ガーリーなワンピースとチェーンソーの絵。反射的に心がざわつく組み合わせに、はっとさせられ、なぜおかしいのかと延々考えてしまう。何を隠そう、本書の読み心地はそれと相通じる世界だ。「カバー絵は、現代美術家のケリー・リームツェンの<ツイスター・シスター>という作品です。彼女自身、固定観念へのアンチテーゼを作品にしているアーティストで、以前から注目していたんです。ウェブ連載の単行本化が決まったとき、エッセイの内容とリンクしている気がしたので、編集さんに提案してみました」綴られているのは、松田さんの鋭いアンテナに引っかかった日常の違和感だ。常にウォッチングしているからこそ看過できない出来事があり、過剰な熱で語ってしまう偏愛世界がある。それに読者も引き込まれる。また、読者自身も心密かに思っていた違和感を言語化してくれる、松田さんの弁の鮮やかさ、痛快さ!「20代後半までは、気持ち悪いなと思うことがあっても、はっきりと理由がわからず、その気持ち悪さが体内にたまっていました。そうしたしっくりこない感じの原因がわかりはじめて、言葉にできるようになってきたので、私なりに問いかけてみたかったんですよね。特にジェンダーバイアスがかかった問題や、<写真はイメージです><万人受けしないかもしれないが>といった言葉の変な使い方はすごく気になる方です」アニメソング「ロマンティックあげるよ」をもじったタイトルにも、松田さんのそんな思いがにじむ。「<ホントの勇気みせてくれたらロマンティックあげるよ>という歌詞があるんです。勇気を見せる側が男性で、何かをあげる側が女性というのなら引っかかるんですが、そういうジェンダーを刺激しないニュアンスで歌われているので素直にいい曲だなあと。そもそも女性は笑顔だとか優しさだとか“あげる”ことを求められてばかり。言葉尻を逆にしてみたら、何か伝わることがあるかもしれないと思って」デビュー時から見せつけていたユーモラスかつハイセンスな言語感覚。正義を気取っているわけではないのに襟を正されるようなフェアな目線。その一部始終をご堪能あれ。◇外国映画や海外ドラマ、ブログサービス「タンブラー」、フィギュアスケート、文房具。著者のオタク心をかきたてるモチーフをフェミ視点で斬る。新潮社1600円。◇まつだ・あおこ作家、翻訳家。1979年、兵庫県生まれ。デビュー短編集『スタッキング可能』で一躍注目を集める。カレン・ラッセル『レモン畑の吸血鬼』など、翻訳家としても活躍。※『anan』2016年6月15日号より。写真・土佐麻理子(松田さん)森山祐子(本) インタビュー、文・三浦天紗子
2016年06月13日野村周平と賀来賢人という注目若手俳優が初タッグ、W主演で贈る『森山中教習所』。2人がひょんなことがきっかけで教習所に通うことになったひと夏を描く本作から、『森山中教習所』的“交通ルール講座”の特別映像が解禁となった。マイペースでテキトーな大学生・清高(野村さん)と、ポーカーフェイスでクールなヤクザの組員・轟木(賀来さん)は高校の同級生。ある日とんでもない再会をし、一風変わった教習所に通うこととなる。境遇も性格も全く違う2人がひと夏を過ごすのは、へんてこな教習所。清高は教官・サキ(麻生久美子)に恋心を抱き始め、楽しくて甘酸っぱい夏休みが平穏にすぎていくと思っていたが…。野村さんが子どものように天真爛漫でフリーダムな大学生、賀来さんがヤクザの道へと足を踏み入れたかつての同級生を演じるという、異色の取り合わせで早くも話題の本作。奇妙な教習所が舞台となるだけに、今回到着したのは、野村さんと賀来さんら主人公たちが贈る、“交通ルール講座”だ。交通ルール<その1>では、「仮免許練習中!」と書かれた厚紙を車体に貼って教習中のご一行に向けて、「練習中の表記はキチンと!」というポイントを紹介。劇中の賑やかなドライブシーンの映像や音楽も相まって楽しい特別映像となっている。また、<その2>では、野村さん演じる清高が、賀来さん演じる轟木の運転する車に轢かれるという危険なシーンが到着!人に接触したら…「トランクに詰め込んではダメ!」と2人の衝撃の再会シーンを紹介している。<その3>「危険運転は禁止!」では、教習所の美人講師である麻生久美子演じるサキに、清高が男らしい姿を見せつけようと「S字バック」を披露するシーンを紹介。野村さん自身が実際にハンドルを握りS字バックに挑戦したというから、見逃せない。さらに、本作公式サイトで公開されるという<その4>「つもり運転で帰ろう!」、<その5>「標識で人を殴らない!」ももちろん、一風変わったエピソードとなる模様。2人が森山中教習所でどんなひと夏の思い出を作ったのか、思いを馳せることができる(?)シュールな世界観を楽しんでみて。『森山中教習所』は7月9日(土)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年05月31日<おもてたんとちがう>それが、初めてマタニティライフを経験したはるな檸檬さんの本音だ。子どもを持つ喜びが、決して幸せだけで構成されてはいないことを、痛いほど味わった。そんな思いを抱きながら描いたのが、妊娠出産のキラキラした虚飾を剥いだリアルマタニティマンガ『れもん、うむもん!-そして、ママになる-』。「『子どもって可愛い~!』という声が大きすぎて、同時並行で押し寄せてきたマタニティの不安や孤独感は、どんな育児マンガにも育児雑誌にも載っていませんでした」とりわけ、分娩時から最初の1週間くらいの情報はまったくと言っていいほど見つけられなかった。「私にとってはまるで未知の領域で、つらい、しんどいが、こんなにずっしりとのしかかってくるものなんだと驚いたんです。たとえば、母乳だってすんなり最初から出るママばかりではないし、赤ちゃんもうまく吸えなかったりする。みんなが普通だと思い込んでいることが意外と違う。だからこそ、いまつらさの渦中にいたり、これから産みたいと思っているママのために、お母さんたちの肩を抱いて一緒に泣くような気持ちで描きたいと思いました」夫は協力的なのに八つ当たりしたことや、お手伝いに上京してくれた母親と大ゲンカしてしまった様子も、ユーモアを交え率直に描かれる。「ホルモンの激変と、何もかもが思い通りにならないふがいなさで、私自身すごく追い詰められました。というのも、妊娠出産育児というのは、“命”を意識する瞬間の連続だからなんですね。出産時は母子ともに絶対の安全の保証はないし、生まれた後はちょっとした失敗も腕の中にいる小さな命に関わってしまうんだと考えて怖い。でも逆に自分の限界を知るから、本当に大事なものを守ればあとはいいと諦めることも覚えます。それですごくラクになったし、『母は強し』って結局それなのかも」はるなさんが包み隠さず吐き出した思いは、見ようによっては愚痴なのかもしれない。だがママになった人たちはずっとずっとそれが言いたかったのだ。甘えていると言われるのが怖くて、自分さえ我慢すればとがんばってきたその気持ちに寄り添ってくれる本書。それは、多くの女性の慰めになるはずだ。◇はるな檸檬『れもん、うむもん!-そして、ママになる-』脳裏にちらつく「こんな自分は母親失格かも」という強迫観念。疲労困憊の妊婦たちが集まる授乳室での孤独感。知らなかったマタニティブルーの真実を赤裸々に描く。新潮社800円。(C)はるな檸檬/新潮社◇はるな・れもんマンガ家。1983 年、宮崎県生まれ。2010 年、宝塚ヲタクを題材にしたウェブ連載「ZUCCA×ZUCA」でデビュー。他の著書に『れもん、よむもん!』などが。※『anan』2016年6月1日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年05月28日5月27日(金)放送の「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)に、「活動小休止」を終えたシンガーソングライターの森山直太朗が出演し、活動再開後初めてテレビ番組での歌唱を披露する。昨年9月から「活動小休止」をしていた森山さんは、今年4月に活動を再開。休みの期間中は「普段はあんまり外に興味ないから出かけたりしないんですが、小休止とか公言しちゃったからには無理やりにでも出かけてみないと」と、友人と台湾に行くなど小旅行をするなどし、「いままでとは考え方を変えなきゃいけないのかなと思って、環境から変えようと。それで山小屋に入ってひとりの時間というものを作りました」と、活動中の日々とは違う時間を過ごしてきたという。今回、8か月ぶりの「ミュージックステーション」で披露するのは、そんな山小屋生活の中で生まれた「嗚呼」。山小屋でひとり、黙々と弾き語りで作曲していたという。詩人・作詞家であり、森山さんと楽曲を共に制作する御徒町凧とは「この曲が活動再開の皮切りになり得るかも」という話もしつつ制作を進めてきたが、仕上がりまでは難航したという。サビで「嗚呼」をひたすら連呼するこの楽曲については、「<嗚呼>には喜怒哀楽すべての感情が含まれてる。言葉を超えた響きだけで通じ合える曲」とのこと。本日の放送では、司会のタモリとのトークで山小屋生活での出来事をさらに詳しく言及する予定。活動再開を飾る森山さんの初テレビパフォーマンスと、新曲を通して森山さんの新たな世界が堪能できる時間になりそうだ。森山さんが登場する「ミュージックステーション」は5月27日(金)20時~テレビ朝日系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2016年05月27日シンガーソングライターの森山直太朗がが、きょう27日に放送されるテレビ朝日系音楽番組『ミュージックステーション』(毎週金曜20:00~20:54)で、"小休止"を終えてからの活動再開後、初めてテレビで歌唱する。森山は、昨年9月に音楽活動の"小休止"を宣言し、今年4月に活動再開。この充電期間中、「普段はあんまり外に興味ないから出かけたりしないんですが、"小休止"とか公言しちゃったからには無理やりにでも出かけてみないと」ということで、台湾などを友人たちと何度か旅行していたという。また、山小屋に入って1人の時間を作った時期もあったそうだ。今回Mステで披露するのは、この山小屋生活で、ひたすら弾き語りをして生まれたという「嗚呼」。昨年末の時点ですでにモチーフがあったものの、なかなか曲にならなかったが、「一度放置して過去のデモ楽曲の整理を始め、ひと通り過去と向き合う作業を終えて気持ちがすっきりしたら、不思議なもので自然とこの曲のメロディが出てきました」と、誕生の経緯を明かしている。タモリとのトークでは、山小屋生活について、より具体的に言及得する予定。森山は「しばしお休みをいただいて、休み明け初めてのテレビでのパフォーマンスなので、いささか緊張しておりますが、気負わず頑張りたいと思います」と話している。この日の放送では他にも、AKB48、きゃりーぱみゅぱみゅ、堂本剛、西内まりや、平井堅、ポルノグラフィティ、モーニング娘。’16が出演する。
2016年05月27日幼い頃から仲良しだった雪子と薫。成長するにつれ、雪子は作曲家を目指し、薫はプログラミングによる演奏の再現を研究。二人の価値観は隔たっていく――朝井リョウさんの新作『ままならないから私とあなた』の表題作は、二人の長い期間にわたる物語。珍しく純文学系の雑誌『文學界』に掲載されたものだ。「ずっと新人類vs老害みたいな話を書きたいと思っていたんです。はじめは会社を舞台にして新入社員が古い慣例を打破していくエンターテインメント小説の予定だったんですが、それだと既視感がありすぎて。舞台設定に迷っていた頃に『文學界』から依頼をいただき、純文学なら設定をより自由に考えられる気がしたんです。それと、合理的で新しい考え方をする人と、昔ながらのものを大切にする人をいきなり登場させるより、二人の幼少期から書いたほうが読者の人も入りやすいんじゃないかと思い、構成を決めました」つまり新人類=コンピューターで音楽を作る薫、老害=人間が奏でる生演奏を大切にする雪子というわけなのだろうか。「メールが使われ始めた頃は、手書きの手紙のほうが思いが伝わるとさんざん言われましたよね。新しいものが登場すると、必ず批判して排除しようとする動きがある。でも電子媒体で読んだからといって作品の価値が落ちるわけではない。そこを考える話にしたかったんです」ならば著者は技術革新に好意的なのかと思いきや、逆に「自分自身が老害になりそうなので」と言う。「私自身、新しいものを試そうとしないんです。今あるものですませようとしてしまう。そうやって新しいものを遠ざけていくことが、老害的思考に繋がるんだろうなと思って。でもネット世代ですし、年齢的に新人類と言われる世代でもあるので、どちらにも足を突っ込んでいる今の状態のうちに書きたいなと」だから雪子の気持ちも、薫の言い分も、とことん掘り下げた。また、二人の恋愛事情も、きちんと書きたかったことのひとつ。「私たちの世代は草食系と言われますが、確かに恋愛の優先順位が高くない気がします。できないことが少なくなって、日常生活で自分を変える必要がないのに、恋愛は思い通りにいかないことがたくさんあるから嫌になるんだと思う。だから、雪子が思い通りにならないながらも恋人とお互いの体に触れ合う場面はちゃんと書いておきたかった」もう一編「レンタル世界」は、結婚式などで他人に友人に扮してもらうなど、人のレンタルがモチーフ。「日常生活で嘘をつくことは誰でもあるのに、“レンタル業界”には批判的な目線があるな、と。仲がいいからこそ言えないこと、嘘をつくこともある。人との関係の築き方に、もっと選択肢があってもいいと思いました。それに、“空気みたいにいるのが当たり前”という関係が礼賛されていることへのカウンターパンチも書きたかった」さて、今や人工知能が小説を書く時代。その点についてはどうか。「排除するのでなく、利用したいです(笑)。今回も舞台設定を考える作業を人工知能に外注したかったくらい。読者を楽しませるための舞台設定やセオリーに関しては人工知能に勝てなさそう。だから文章そのものの温度で勝負するしかないです。“この人の書く文章が好き”と言われる作家にならなければと、これを書きながら感じました」という文章世界もぜひ、たっぷり味わって。◇二人の少女の成長と、隔たっていく価値観を描いた表題作のほか、レンタル業で他人になりすます女性と知り合った〈俺〉の戸惑いを描く「レンタル世界」を収録。文藝春秋1400円◇あさい・りょう作家。1989年生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』でデビュー。2013年『何者』で直木賞を受賞。同作が今秋映画化。近著に『世にも奇妙な君物語』。※『anan』2016年5月25日号より。写真・岡本あゆみ(朝井さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年05月24日思わず惹きつけられる、カバーの装画。朝井まかてさんの『眩(くらら)』に使われているのは、江戸のレンブラントとも称される葛飾応為の代表作のひとつ、「吉原格子先之図」だ。朝井さんにお話を伺った。「原宿の太田記念美術館で展覧会が開かれたときに観に行き、この絵の前で立ちすくむほどの衝撃を受けました。奥行きのある大きな空間を描いていますが、想像するよりずっと小さな作品。他の浮世絵師とはまるで違う光と影の表現。真ん中に陣取る花魁は影なんです。すぐに応為の人生に迫ってみたいと思いました」葛飾応為は、葛飾北斎の三女・お栄の雅号。父の右腕として絵筆を執り、代作も引き受けたほどの才能の持ち主だが、時代が時代だけに、彼女をめぐる記録は極端に少ない。「遺っているわずかな手紙や、北斎の弟子たちなど周辺の証言などから、お栄の人物像を読み解いていきました。弟子の証言にもあるように、“侠気に富んだ”気っ風のいい性格。江戸の女性観では“貞女”が褒め言葉ですから、規格外だった彼女は、奇女と見なされていたようです」四六時中絵のことばかり考えているさまや、結婚の失敗、兄弟子であり自分の絵の理解者でもあった善次郎との恋といった虚実ないまぜのエピソードで彩りながら、本書は「なぜ応為は『吉原格子~』のようなすばらしい絵に到達できたのか」という答えに迫る。「北斎と応為との関係は、杉浦日向子さんの『百さるすべり日紅』でも読んではいましたが、いい具合に記憶が薄れていて、イメージに引っ張られることなく消化できていました。目の前の仕事に、寝食を忘れて没頭するようなところが私にもあって、『わかるわかる』とうなずきながら執筆していました(笑)」いまで言うなら、タダで配るチラシの小さなイラスト仕事までも全力でやってしまったという応為。「依頼主が『こんなにすごいものを描いてくれなくても』と言っても、『いつのまにか精密に描いてしまうのだ』と答えたという逸話が残っています。他愛もない仕事も手を抜くことのできない、本当の意味でプロフェッショナルだったと思います」恋にも仕事にもまっすぐに情熱を注いだ応為は、働く現代女性と相通じるものがある女性。時代小説の垣根を越えて、楽しめるはず。◇光と影を艶やかに浮かび上がらせる応為の20代から60代までを、史実を織り込みながら追う。彼女の鮮烈な生き方に触れてみたい。新潮社1700円◇あさい・まかて作家。1959年、大阪府生まれ。2008年に小説現代長編新人賞奨励賞を受賞してデビュー。『恋歌』が、本屋が選ぶ時代小説大賞2013と、’14年の第150回直木賞を受賞。※『anan』2016年5月18日号より。写真・岡本あゆみ(朝井さん)森山祐子(本) インタビュー、文・三浦天紗子
2016年05月17日この度NHK宮崎放送局は、地域ドラマ「宮崎のふたり」を制作する事を発表。本作には、柄本明、森山未來、池脇千鶴らが出演することもこのほど明らかになった。定年退職した男・幸彦(柄本明)は、ひとり宮崎にやって来た。悪態ばかりつく、かなり嫌なオヤジである。 幸彦はかつて新婚旅行で訪れて以来、40年ぶりの宮崎のようだ。妻の京子(原田美枝子)から送られてきた謎のハガキを手に旅する幸彦は、宮崎生まれのタクシー運転手・詠介(森山未來)とその彼女・咲耶(池脇千鶴)に出会う。そして詠介・咲耶のふたりと共に、新婚旅行の際に訪ねた宮崎の思い出の地をたどる中で、これまで犠牲にしてきた妻との時間を取り戻そうとするが…。物語の主な舞台は、新婚旅行の定番コースだった宮崎市・日南市。 異国情緒あふれる南国・宮崎の風景は、日本中の若者の憧れだった。1960年代から70年代にかけて、「新婚旅行ブーム」に沸いた宮崎県。全盛期には年間37万組もの新婚カップルが訪れたとか。そして、それから月日は流れ、いま団塊世代をはじめ、当時訪れた夫婦が新婚旅行の地を再び旅する“もう一度、ハネムーン”が人気となっている。そんな本作は、“もう一度、ハネムーン”を題材に、 新婚旅行から40年…連れ添い続ける夫婦の愛が描かれていく。キャストには、定年退職をし宮崎にやって来た男・幸彦役に、「竜馬がゆく」など時代劇ものから『ウォーターボーイズ』のオカマバーのママなど幅い演技を見せつける柄本さん。妻・京子役に『世界から猫が消えたなら』の公開を控える原田美枝子が演じ、地元のタクシー運転手・詠介、その彼女咲耶役に『苦役列車』で「日本アカデミー賞」優秀主演男優賞を受賞した森山さん、『ジョゼと虎と魚たち』『そこのみにて光り輝く』の池脇さんが好演する。そのほか市毛良枝も出演し、5月から宮崎県宮崎市、日南市ほかにてオールロケで撮影される。脚本は、「リッチマン、プアウーマン」「大切なことはすべて君が教えてくれた」などを手がけてきた安達奈緒子が担当。音楽は、 大河ドラマ「篤姫」などの吉俣良が手掛け、また劇中歌には、「NHK紅白歌合戦」にも出演し、宮崎の新婚旅行ブーム時に流行したデューク・エイセスの「フェニックス・ハネムーン」が使用される。「宮崎のふたり」は10月19日(水)22時~BSプレミアムにて放送開始。(cinemacafe.net)
2016年04月28日森山大道による写真集『Daido Moriyama: Terayama』が登場。2016年4月より順次、全国で発売される。写真集は、長らく絶版となっていた寺山修司の名エッセイ集『スポーツ版 裏町人生』と、それをイメージし森山大道自身がプリントした写真を掲載。デザイン・造本を手がけた町口覚が『スポーツ版 裏町人生』から「ボクシング」「競輪」「相撲」「競馬」「闘犬」をテーマにした5篇を選び、厳選された森山の写真118枚とともに、散っていったスポーツマンたちの裏町人生を綴った。本のデザインにもこだわりが見える。不織布加工された表紙を陣取る森山の代表作「三沢の犬」の起毛の手触り、タイポグラフィと造本の妙など、本好きを魅了する。写真と言葉の交わりにより、まったく違った表現力と強さをもった森山大道の写真と寺山修司の言葉を体感してみて。なお、2016年4月5日(火)から9月25日(日)までの期間は、青森県三沢の寺山修司記念館で森山大道写真展「裏町人生〜寺山修司」も開催されている。8月6日には、森山本人のトークショーもあるので、チェックしてみて。【概要】写真集『Daido Moriyama: Terayama』<日本語版>価格:4,500円+税全国発売:2016年4月より順次取り扱い店舗:代官山 蔦屋書店、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI店、オンラインサイト写真:森山大道 文:寺山修司『スポーツ版 裏町人生』よりブックデザイン:町口覚 出版社:株式会社マッチアンドカンパニー版型:本文=縦189mm× 横126mm(四六判変型)頁数:本文358頁上製本(スリーブケース入り)※初版限定1000部【展覧会情報】森山大道写真展「裏町人生〜寺山修司」会期:2016年4月5日(火)〜2016年9月25日(日)開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで)入館料:一般個人 530円(常設展310円+企画展220円)、一般団体 430円(20名以上)、高大生100円、小中学生50円 ※土曜日は、小中学生無料会場:寺山修司記念館エキジビットホール住所:青森県三沢市大字三沢字淋代平116-2955■開催記念トーク 森山大道(写真家) × 町口覚(グラフィックデザイナー/パブリッシャー)× 笹目浩之(テラヤマ・ワールド代表/寺山修司記念館副館長)日時:8月6日(土)13:00~会場:寺山修司記念館 屋外多目的スペース【問い合わせ先】株式会社 マッチアンドカンパニーTEL: 03-3470-6423
2016年04月24日ドラマ化もされ話題となった、21歳でのデビュー作『野ブタ。をプロデュース』から12年近く。白岩玄さんが久々に学園小説を上梓した。その名も『ヒーロー!』。「『野ブタ。~』を出した後でスクールカーストを書いた小説と言われたのが頭に残っていて。そういう造語が使われることで、なおさら教室内の階級が固定され、学生を幸せにしないような気がしたんです。それで、もっと違う形でいじめの問題を書きたいなと思っていました」ヒーロー好きの新島英雄は高校2年生。彼は学校のいじめをなくすため、演劇部の佐古鈴に無理やり演出を頼み、休み時間に大仏のマスクをかぶってパフォーマンスを開催。いじめの標的からいじめっ子たちの目をそらすことに成功する。「明るく解決する話にしたくてヒーローものにしました。パフォーマンスの内容は考えれば考えるほど出てきて楽しかったです。後から思い出したんですが、中学生の時、大仏のマスクをかぶった主人公の劇を演出したことがあったんです。やっていることが変わりませんね(笑)」やがてライバルが登場、闘争心に燃える鈴は本来の目的を見失う…。鈴の視点で描かれる本作。最初は、英雄の視点で最後まで書いたという。なぜ書き直したのか。「英雄の立場から書いたら、彼一人にとっての正義を書くことになる。でもこの本では、今の世の中にはいろんな正義があるということが書きたかった。それで、英雄にとっての正義を冷めた目で見る女の子の目から書くことにしたんです」やがて鈴の心も大きく動き、さらにパフォーマンスも変化していく。久々に学園ものを書いてみて、自身の変化にも気付いたという。「演劇部の愚直で真面目な先輩が出てくるんですが、昔はああいう存在が書けなかった。今は、ああいう人こそ裏のヒーローだと思う。それに、信頼できる大人が書けるようになりました。自分も年を重ねて、大人は大人で苦しんでいるんだと分かったからでしょうね」◇しらいわ・げん作家。1983年、京都市生まれ。2004年『野ブタ。をプロデュース』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は芥川賞候補にも。他の著作に『空に唄う』『愛について』『未婚30』など。◇いじめを防ぐため、みんなの関心を無理やりさらう。そんな狙いで英雄と鈴が始めた休み時間の大仏マンショーは、意外な方向へ…。河出書房新社1400円※ 『anan』2016年4月20日号より。写真・土佐麻理子(白岩さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年04月19日ミュージシャン・渡辺俊美さんによる大反響のお弁当エッセイ『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』がコミックに。コミック版の作者、荒井ママレさんにコミック化に際し、工夫した点をお聞きしました。***「私は独身で、女のひとりっ子なので、男だけの家庭の空気を出せるか多少不安もありました。だけど原作を読んだら愛情に溢れていたので、これなら描けると思ったのです」そう語るのは、コミック版の作者である荒井ママレさん。同名の原作はTOKYO No.1 SOUL SETなどで活躍するミュージシャンの渡辺俊美さんによるエッセイなのだが、シングルファーザーの彼は、息子の登生(トーイ)くんとふたり暮らし。高校入学を機に、息子の希望で父が3年間、毎日弁当作りをすることに。「原作は俊美さんの視点なので、息子思いのいいお父さんといった印象が強いのですが、トーイさんから直接お話を聞いて印象が変わった部分も大きくて。距離が近くてお互いを必要としているけど、ひとりの人間として見ているところがステキで、マンガに出せたらと思いました」仕事で慌ただしい日々を送りながらも、父は弁当で毎日しっかり愛情を示し、多感な時期の息子もそれを素直に受け止める。一緒に過ごす時間や交わす言葉が決して多くないときも、弁当が豊かなコミュニケーションになっているのだ。しかも俊美さんの作る弁当が、いちいちおいしそうで、グルメマンガとしての楽しみも。ただしそこは、マンガ家泣かせでもあったようで……。「お弁当は冷めているもので、しかも箱の中に整然と並んでいるので、シズル感でおいしさを表現できない難しさがありました。だから料理シーンではなるべく素材に寄るなどして、臨場感を意識したんです」原作モノを手がけるのは、初めてだったという荒井さん。「キャラクターも空気感も、読んで素直にニコッとできるお話は、自分からあまり出てこないので、今までにない描き方ができたと思います」思わず笑みがこぼれるだけでなく、読んだらきっと、大切な人に弁当作ってあげたくなる(あるいは作ってもらいたくなる!)はずだ。◇ミュージシャン・渡辺俊美さんによる人気エッセイのコミカライズ。息子トーイくんの視 点で描いたコミック版オリジナルエピソードが奥行きを与えている。弁当作りのヒントがより詰まった原作(マガジンハウス 1500円)も併せて読みたい!小学館552円(C)荒井ママレ・渡辺俊美/小学館◇あらい・ままれマンガ家。第63回小学館新人コミック大賞に入選して、デビュー。著作に『おもいでだま』(全4巻/小学館)がある。現在は次回作に向けて準備中。※『anan』2016年4月20日号より。写真・森山祐子(本)インタビュー、文・兵藤育子
2016年04月19日少年愛やSFを題材とする名作で少女マンガに革命を起こした、竹宮惠子さん。『少年の名はジルベール』は、竹宮さんがマンガ家を志して上京、『風と木の詩』(以下、『風木』)を発表して社会に衝撃を与えるまでのほんの5~6年間を綴った自伝であり、青春記だ。’70年に、竹宮さんと萩尾望都さんが、盟友の増山法恵さんによって出会い、東京都練馬区大泉の古い木造アパートで同居生活を送る。竹宮さんたちは、のちに<大泉サロン>と呼ばれるようになるその場所で、「24年組」「ポスト24年組」に名を連ねるマンガ家の山岸凉子さん、ささやななえこさん、佐藤史生さんらと、創作論やマンガ談議に花を咲かせた。「私の一生の中でもいちばんドラマティックな部分ですね。’72年の秋には、萩尾さん、増山さん、山岸さんの4人で45日間の欧州取材旅行にも行きました。とにかく本物を見て、たとえばドアノブの遊びの部分はどんなふうになっているのかなど、リアリティを込めたいという一心で」実は、<大泉サロン>があったのは、わずか2年ほど。才能がせめぎ合うからこその、萩尾さんへの複雑な思いは、読んでいるだけで胸がキリキリしてくる。また、『風木』誕生を巡ってバトルを繰り広げたYさん、布石を打ってくれたMさん、ふたりの編集者とのドラマも熱い。「若かったんですね。感情をうまくコントロールしたりできずに、苦しんだ時期もありました。ただ、私としてはもう終わったことなので、学生たちにも率直に話すんです。若いと、目の前の苦難がいつまで続くのか見えないのがつらいけれど、私の体験を知ると、少し楽になるようです。困難が砂漠に突然現れた壁だとしたら、突破するのに、私は壊すでもなく、乗り越えるでもなく、ずっと壁に沿って歩くタイプなんです。きっとどこかに、ひょいと抜けられる穴があるように思うので(笑)。そういう道もあるのだと、教えたい」また「創作(クリエイション)」の本質に触れている名文もたくさんある。マンガファンでなくても感動必至の一冊だ。◇たけみや・けいこマンガ家、京都精華大学学長。1950年、徳島県生まれ。’68年にデビュー。『ファラオの墓』『風と木の詩』『地球(テラ)へ…』で人気を不動のものに。2014年、紫綬褒章を受章。◇カラーの口絵ページや大泉サロン内部を描いたイラストなども収録。『風木』のジルベール誕生の瞬間など少女マンガの歴史的事件が目白押し。小学館1400円※『anan』2016年4月20日号より。写真・岡本あゆみ(竹宮さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2016年04月19日メールより気持ちが通じる、手書きの手紙の価値が見直される中、とくに人気を集めているのが一筆箋。「書くのはほんの数行。便箋の手紙ほど書くプレッシャーは少なくて書きやすいのに、受け取った人にはとても良い印象を与えられる、素晴らしいコミュニケーションツールです」(手紙文化振興協会 代表理事・むらかみかずこさん)お店でも一筆箋は大人気。「季節の柄など和風のデザインだけでなく、モダンなもの、ポップなものなどバリエーションが増えていて、選ぶ楽しさも増しています」(銀座・伊東屋・中村里佳さん)基本的な心構えや書き方のポイントさえ押さえれば、今日からあなたも一筆箋の達人に変身!以下で初心者のための一筆箋Q&Aをご紹介します。Q.一筆箋、どんなふうに使うもの?A.物のやり取りをする時などに添えて。「贈り物や書類に添えるなど、何か物のやり取りをする時に添えるのが一番多いパターン。もちろん、口頭で言葉を伝えることはできるけれど、あえて手書きのメッセージを添える、ということに意味があります。あなたの好感度がグッと増しますよ」(むらかみさん)Q.字が下手なんですが、大丈夫?A.きれいに見せるコツがあります。「手書きの手紙は美しい文字を送るのではなく、気持ちを送るものです。手書きであるだけで、すでに価値があるのだと知ってください。大切なのは文字の美しさではなく、読みやすさ。読みやすく見せるポイントは、太字のペンを使い、大きく堂々と書くこと。そして爽やかな印象になる青インクを使うことです」(むらかみさん)Q.書くのはボールペンでいい?A.万年筆がおすすめ。「ボールペンはメモ書き用に開発された手軽な筆記具。気持ちを込めるなら、やはり万年筆を。インクのにじみも、文字を味わい深く見せてくれます」(むらかみさん)。「高級な万年筆も素敵ですが、1000円台でも、書き心地のよいものがありますよ」(中村さん)◇なかむら・りか銀座・伊東屋インフォメーション主任。店内案内をはじめ、商品選びの相談等も受けている。自身も手紙を書くことが多いそう。◇むらかみ・かずこ手紙文化振興協会 代表理事。心が通じる手紙の書き方、楽しみ方を発信。手紙の書き方アドバイザー(R)の認定講座なども手がける。※『anan』2016年4月13日号より。写真・森山祐子文・板倉ミキコ
2016年04月12日小説でも短編と長編では楽しみ方が異なるように、4コママンガにはいわゆるストーリーマンガとはひと味違った楽しみ方がある。どちらかというと男性向けのものが多いなか、辻灯子さんの『敗者復活戦!』は女性のファンも多い4コママンガとして注目したい作品だ。作者の辻さんにお話を聞いた。***舞台は商店街の一角にある古本屋。祖父母の営むこの店を手伝っている30代の月穂さんは、外資系の優良企業に勤めていた過去を持ち、ちょっとミステリアスな雰囲気を漂わせている。脳天気な女子高生がそこでアルバイトをすることになり、彼女の親友とともに月穂さんとのちぐはぐなやり取りが描かれていく。「30代って、自分としてはあくまでも20代の延長なのに、世間がそれなりの扱いをしてくるので、違和感を抱きがちなんですよね。今までみたいに勢いで走れないところが、30代の女性を描く面白さだと思います」一見クールビューティな月穂さんにも、実は子どもっぽくてわがままなところがあり、女子高生たちのイメージする大人の女性像が崩れていく過程も、なんだか妙にリアル。自らの経験に置き換えればわかることだが、それぞれの年代や立場になってみなければ見えない景色があることに、改めて気づかせてくれる。「4コママンガなので、ドラマ性において物足りないところもあると思うのですが、良いドラマよりも良いオチを、と思ってその切れ味にはこだわっています。3コマ目まで描いて真っ白なコマをじいっと眺めたり、トイレに行ってみたり(笑)。いつものたうち回ってますよ」◇つじ・とうこマンガ家。主な作品に『ただいま勤務中』『ただいま勉強中』『ただいま独身中』『よゆう酌々』(すべて芳文社)など。“アラサー女子の名手”として男女問わず人気。◇激務のエリートOLから足を洗った月穂さん。半リタイア状態で祖父母の古本屋を手伝うなか、アルバイトを探す女子高生がやって来る。『まんがホーム』で連載中。芳文社619円(C)辻灯子/芳文社※『anan』2016年4月6日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年04月05日職場やプライベートで言いたいことをうまく伝えられなかったり、心の中のホンネを言えず我慢したこと、ありませんか?言葉のニュアンスの違いは、たとえ些細なことに思えても人間関係に影響を与えるものだから、言葉選びや言い方にはどうしても慎重になってしまいがち。でも、「どうせ伝わらないし」と諦めているなら…ちょっと待って。「伝え方はセンスでなくて技術。料理と同じで、実はレシピがあるんです。それを知るだけで、誰でもきちんと伝わる話し方ができるようになります」と、『伝え方が9割』の著者で、anan本誌でも人気の連載コラムを持つ佐々木圭一さん。「伝え方において一番大切なのは、自分が思ったままを話すのではなく、まず相手が何を考えているのかを想像しながら話すこと。それを踏まえて“レシピ”を上手に使えば、言いたいことを言いつつ、相手に好かれるコミュニケーション力をつけることができますよ」今回は伝え方についての悩みを持った女子が集合。佐々木さんから、伝えるコツについてアドバイスをいただきました。ここからあなたも、“伝え上手”になるためのヒントをきっと得られるはず。■お悩み1何を言ってほしいのか、相手の欲している言葉を考えすぎて、本当に自分が思っていることを伝えられません…。(夕貴さん26歳・モデル)A.メモ帳を買って言いたいことを書き出してみる伝える前に相手の気持ちを考えている時点で、コミュニケーション上級者。電車でどう席を譲るか迷ってしまうのも、目の前の人の反応をさまざま予想できているから。これは素晴らしいことですし、悩むことはないですよ。ただし、気を使ったり遠慮をすることを続けていれば、“伝えられない”というはがゆさは解消されません。それを解決するには、紙に書き出すことが有効です。僕自身も、頭の中を整理するときは一度紙に落とすようにしています。それは書き出すことで、頭の中の空き容量が増え、冷静に考えられるようになるから。次々に浮かんでくる言葉を一度紙に落とし、相手の状況や自分の目的と照らし合わせながら整理することで、答えが見えてくるかもしれません。まずはメモ帳を買うことからスタートしてみることをオススメします。■年上の女性に自分の気持ちを伝えるのが苦手!変に気を使ってしまったり。どうすれば遠慮せずに話せますか?(新宮志歩さん24歳・司会業)A.「あなた限定」という方法が最適です目上の人に気を使うのは悪いことではなく、むしろ「伝える」ための第一歩。ただ行きすぎると仕事がスムーズに進まなかったり、自分の実力を出しきれず悔しい思いをするということにもなるでしょう。そういうときは「あなた限定」というレシピがオススメ。例えば、部下の話を聞こうとしない上司・山本さんがいるとします。「私の話を聞いてください!」と言えばムッとされるリスクがありますが、「山本さんにだけには聞いてほしくて」「山本さんにしか相談できない話があって…」と伝え方を変えると、印象は変わります。自分が特別だと言われると、人間は気持ちよく動けるのです。しかも、上司にとって“頼られる”ことは部下が考える以上にうれしいこと。言い方ひとつで、生意気なヤツからかわいがられる後輩へとステップアップできるはず。◇ささき・けいいちコピーライター、作詞家、上智大学非常勤講師。株式会社ウゴカス代表。『伝え方が9割』シリーズは累計85万部の大ヒット。アメブロ「伝え方の秘密」も更新中。※『anan』2016年3月30日号より。写真・森山祐子文・中村朝紗子
2016年03月27日仕事でも恋愛でも、「こんなとき、相手の気持ちに沿ってスムーズな伝え方ができたら……」と思った経験はありませんか?そんな“伝え下手”な悩みをもつアンアン女子が、解決のためのアドバイスを佐々木圭一さんからいただきました!■お悩み1自分では怒ってるつもりはないのに、言い方がキツイのか、「そんなに怒らないでよー」とよく言われてしまいます…。(柴本愛沙さん33歳・会社員)A.相手の「認められたい欲」を刺激すること柴本さんに使ってほしいのは、「認められたい欲」を刺激するという方法です。仮に後輩が遅刻してきたとします。今まで通り「遅刻しないでよ」とストレートに言えば、そのセリフがいくら正しくても“この人怖い”という印象が強く残ってしまうかもしれません。これを「認められたい欲」を使って言い換えると「遅刻みたいにつまらないことであなたの評価を落としたらもったいないよ」となります。“評価を落としたらもったいない=あなたはいま評価されている”というメッセージが自然に伝わり、相手も快く行動を変えてくれる確率がアップ。相手を怖がらせないために思っていることを言わないという選択肢もありますが、それでは仕事の質が落ちたり、ストレスも溜まっていく一方。言いたいことは、伝え方を工夫しながら言っていきましょう。■お悩み2彼にしてほしいことを上手に伝えたい。これから一緒に住むので、今後は家事も分担してほしいのですが…。(木之本もよさん27歳・編集)A.「選択の自由」に見えることを相手に与える。「家事を手伝ってよ!」と言われれば、カレは自分が悪者にされたような気分になるかもしれません。かわいく上手にお願いするには、「選択の自由」を使いましょう。お願いごとが家事の分担であれば、「お風呂掃除と食器洗い、どっちがいい?」と選択肢を並べて聞いてください。すると相手も自然に、どちらかを選んでくれるはず。カレからすれば、選択肢を自由に選べるので尊重されていると感じて、前向きに動いてもらえる確率が上がります。一方、木之本さんからすれば、どちらに転んでも目的は達成されるというわけです。この「選択の自由」は、忙しい人をランチに誘うときや、乗り気でないカレをお出かけに誘うときにも活用できますよ。僕の感覚値ですが、「YES」の確率を2~3割上げることができるのではないでしょうか。◇ささき・けいいちコピーライター、作詞家、上智大学非常勤講師。株式会社ウゴカス代表。『伝え方が9割』シリーズは累計85万部の大ヒット。アメブロ「伝え方の秘密」も更新中。※『anan』2016年3月30日号より。写真・森山祐子文・中村朝紗子
2016年03月26日8歳の少年が交通事故で死んだ。事故加害者の夫と不倫中の派遣社員・千恵子、パン工場で働きながら少年を育てていたシングルマザーの吉乃、加害者の夫で編集者の健二、加害者で人気スタイリストの美里。事故によって、それぞれが抱えることになった喪失とかすかな光を描いた連作短編集『一瞬の雲の切れ間に』。ドキュメンタリー映画の俊英、砂田麻美さんが初めて挑戦した完全なるフィクションだ。「最初に決めたのはタイトルでした。たまたま仕事で長崎の原爆資料館に行ったとき、原爆投下の状況を説明した文章の中に<一瞬の雲の切れ間に>という言葉があって、それがすごく印象に残ったんです。ほんの一瞬の出来事で、一生背負わなければいけない罪を犯してしまったり、運命がまるきり変わってしまうような事柄に遭遇したりするんだ、と。それを軸に据えたら、語り手としてどんな人を据えたらいいのかのイメージが一気に湧いてきました」事故から数えて2年ほどの年月。その間に起きたことや、それ以前の過去を、語り手それぞれが回想する形で物語が進む。そのときに浮かび上がるのは、人間というものの善悪入り交じる複雑な多面性だ。「映像は人物に確たるキャラクターを持たせないと伝わりにくいので、多くを語らせずに観客にゆだねる表現をします。だからよけいに、“書く”ことでしかできない表現を意識しました。できるだけ裏の裏までえぐって、その人のいいところも悪いところも余すところなく書こうと」執筆は主にスタバで。1日10枚とノルマを決めてコツコツ書いた。「5枚しか書けなかったら、翌日巻き返して15枚書く。スイッチが入れば周りが見えないほど集中できる方なので、そこまでいくと、脳裏に浮かんでいるイメージを文章に変換させることができるのですが」ちなみに本作には、5人の語り手がいるのだが、そのラストに登場するのは、意外な人物だ。「事件をめぐる人間関係の枠から、少し距離がある人物を1人出そうというのは最初に決めていて、その人物が、この物語を束ねる存在になるだろうという予感はありました」サスペンスフルに展開するエンディングと、その先に見える一条の光。その完成度を、ぜひご覧あれ。◇少年の死亡事故に直接的、間接的に関わった人々の胸の内が語られる連作短編形式。後悔、懺悔、赦し、希望など千々に心乱れる人々を描く。ポプラ社1400円◇すなだ・まみ映画監督。1978年生まれ。是枝裕和監督らの監督助手を務め、初監督作品『エンディングノート』で日本映画監督協会新人賞等を受賞。それをもとに小説『音のない花火』を発表。※『anan』2016年3月23日号より。写真・岡本あゆみ(砂田さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗子
2016年03月22日2014年の連載開始時から注目されている柏木ハルコさんの『健康で文化的な最低限度の生活』。生活保護という難題に挑んだ意欲作だ。柏木さんに話を聞いた。「以前は恋愛の話を描くことが多かったのだけど、東日本大震災を機に視点が外へ向き、社会の問題を描きたいと思うようになりました。そういう意味でも生活保護って世の中の矛盾が出やすい場所なんですよね」新米ケースワーカーの義経えみるは、右も左もわからないまま現場を任されてしまう。荒れ放題の家を訪問したり、自殺予告の電話がかかってきたり、これまでの人生で会ったこともないような人たちを相手に、無力さを痛感する日々。貧困、虐待、うつ病など重いテーマを扱っているのに、読んでいて苦しさよりも前向きな気持ちが先に立つのは、どの立場にも寄りすぎない作者のフラットで優しい視点のおかげだ。「誰かを断罪するような描き方をしたくないんです。弱い部分は誰にでもあるし、責めてもしょうがないところだと思うから。意見の異なる読者を切り捨てるのではなく、一緒に考えられるかたちが理想です」「どうして働かないの?」「生活保護でパチンコなんてあり得ない」「親戚がいるなら彼らに養ってもらうべきだ」などどれも正論かもしれないが、それぞれの“やんごとなき事情”を丁寧に描くことで、制度の枠内で解決することの難しさを浮き彫りにする。描き進めるほどに新たな疑問や問題が出てきて、テーマが減る気がしないという柏木さん。キャリアを積んでも、この作品からはさまざまな発見があるようだ。「これまでマンガは自己表現だと思っていたけれど、今回は取材などをして大部分をインプットしながら描いているので、チャレンジが多く楽しいです。小手先で演出するよりも、現実のほうがよっぽど興味深いなという気持ちで今は描いています」◇柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(C)柏木ハルコ/小学館◇新卒公務員として福祉事務所に配属された義経えみるが、同僚と生活保護の現場で奮闘するドラマ。3巻では、不正受給と扶養照会の問題が取り上げられている。現在、『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中。小学館552円(C)柏木ハルコ/小学館◇かしわぎ・はるこマンガ家。1994 年、女性の性欲を描いた『いぬ』でデビュー。映画化された『ブラブラバンバン』や闘牛がテーマの『も~れつバンビ』、短編集『失恋日記』などが。※『anan』2016年3月23日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年03月19日デビュー作『罪の余白』が映画化されるなど注目を浴びる若手、芦沢央さん。最新作『いつかの人質』も二転三転の展開で読者を引き込む心理サスペンス。「最初に、今までとは違う犯罪の動機ってなんだろう、と考えたんです。これはどうか、と思いついてから、ならば誘拐じゃないか、と」終盤に明かされる犯人の意外な動機から組み立てられているからこそ、全貌を知らない読者は心地よく翻弄されていくというわけだ。3歳の時に連れ去り事件にあい、その時の怪我で視力を失った宮下愛子。12年後、母親の反対を押し切って友人らと出かけたコンサート会場で彼女は再び何者かに誘拐される。一方、12年前の連れ去り事件の犯人の娘、江間優奈も失踪していると判明。優奈の夫が懸命に妻の行方を追う一方、愛子の両親は娘の安否を気遣いながらも心がすれ違っている。夫婦のあり方が対照的だ。「最初の連れ去り事件以来、愛子の母親は過保護になって娘の行動を制限している。愛子は2度目に誘拐される前も閉じ込められ、いってみれば人質のような状態だったんです。これは12年間時が止まってしまった宮下家の成長物語でもあるんです」一方、江間夫婦の間に何があったかも、次第に明らかになっていく。また、誘拐された愛子が視力以外の感覚を駆使して脱出を試みる様子は非常にスリリング。「愛子が最後までぶれないでいてくれた。彼女がこの物語を救ってくれたなと思います」次第に立ち上ってくるのは“夢”というテーマ。「私自身、12年間作家を目指していたんですが、もしなれなかったら周囲に合わせる顔がない、という気持ちがありました。夢を追いかけるというのはキラキラしたイメージがありますが、将来に焦点を当てすぎて自分の現在や過去がよどんでしまうこともある。夢を持つのはそんなにいいことなのかという、ネガティブな面も書きたかった」展開のテンポのよさ、やがて辿りつく犯人の動機、そしてそこからの展開にも読者は圧倒されるはず。「読んだ人がこの場面で“はっ”とするだろう、と考えるのが楽しくて。暗い話のわりには本人はニヤニヤしながら書いています(笑)」◇12年前の誘拐事件の際に視力を失った愛子は、はじめて友達同士で出かけたコンサート会場で誘拐されてしまう。犯人の目的とは?KADOKAWA1800円◇あしざわ・よう作家。1984年生まれ。2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞してデビュー。他の著作に『悪いものが、来ませんように』『今だけのあの子』が。※『anan』2016年3月16日号より。写真・岡本あゆみ(芦沢さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年03月11日クローズドサークル(悪天候で閉ざされた館などの閉鎖空間のこと)、複数の惨劇や密室殺人、内輪にいる意外な犯人…。“新本格”といわれる推理小説のそうしたお約束が詰込まれた『樹液少女』は、どんでん返しの連続で、興奮必至。その著者が、彩藤アザミさん。「中学時代に新本格にハマって読み漁ったので、私自身“ミステリー小説”というとそれをイメージしてしまいます。なので、デビュー作よりもっと謎解きの要素を濃いめに、舞台も『ド直球ですが、嵐の山荘モノがやりたいんです!』と、私から編集さんに持ちかけました」旭川の人里離れた山頂に建つ豪奢な館の主は、磁ビスクドール器人形と陶芸の天才作家、架かがみちよ神千夜。その館でひっそりと暮らす彼女は、年1回だけ得意客のために懇親会を催す。作者秘蔵の最高傑作「樹液少女」も、ひと目見られるはずだった。その日、吹雪によって陸の孤島のようになった架神邸。密室状態の一室で、無残な死体が見つかった。誰が、何のために―。館にいる全員が容疑者という状況で、密室トリックや、架神の作品に刻印されている英数字の意味など、読者はちりばめられた謎に翻弄される。「ハウダニット(どうやって犯行を行ったか)のトリックは出尽くしているともいえるので、むしろどのタイミングで、どれくらいの情報を明かしていくのかという読み物としての面白さに力を入れました。個人的に推理小説では、特殊な知識がなくても正解が導けるのがいいと思っています。暗号にしても、ちょっとしたヒントで誰でも解けるようにしようと、意識して書いています」館での悪夢の5日間が終わり、犯人も犯行も暴かれたと思った後で、すべてが明確になる「後日談」がある。ここで活躍するのが、此代乃春(このよのはる)だ。吹雪のために足止めされ、館にたどり着けなかった彼は、安楽椅子探偵よろしく、鮮やかに推理を披露する。なかなかキャラ立ちした彼ゆえ、シリーズ化の期待も高まる。昨年の4月には初稿を書き上げ、そこから改稿を重ねてきた。「『出版できるんだろうか』と不安になるほどでした(笑)」ビスクドールというミステリアスな芸術品の雰囲気とも相まって、読み応えたっぷりだ。◇さいどう・あざみ作家。1989年、岩手県生まれ。2014年、『サナキの森』で第1回新潮ミステリー大賞を受賞。引きこもり女子が、80年前に起きた密室殺人の謎解きに挑む作品でデビュー※『anan』2016年3月9日号より。写真・岡本あゆみ(彩藤さん)森山祐子(本)インタビュー、文・三浦天紗
2016年03月08日自分の理想の家を求め、マンション見学にいそしむ25歳の居酒屋店員、沼越さん。女ひとりで家を買うという一見高いハードルに対峙する沼越さんは、<大きい夢なんかじゃありません><自分以外の誰の心もいらないんですから>と真剣だ。その姿に心を動かされ、いつしか不動産の販売スタッフまでもが、仕事を超えて応援するように…。家を買うことをめぐり、人生や人とのつながりを考えさせてくれる池辺葵さんの『プリンセスメゾン』。2巻では、沼越さんは、より具体的になってきた“購入可能物件”に案内される。内見中のうっとり笑顔が超かわいい。「連載を始めて、あらためて家とは何だろうと考えるようになりました。私自身はこれまで、2年くらい経つと家移りして気分を変えたくなる方でした。でも年齢を重ねるにつれ引っ越し先の町になじむのが大変になってきたこともあり、沼ちゃんのように、理想の居場所を探したいなと思うようになってきましたね」沼越さんの家探しのかたわら描かれるのが、ミステリアスな老女や若き女性編集者らと、彼女たちの住まいとの関係だ。そのほか、沼越さんが背負っている過去のドラマや、彼女のマンション探しを手伝う<持井不動産>の面々とのふれあいなど、サブストーリーにも揺さぶられる。また、池辺さんのアーティスティックな絵のタッチにも注目。繊細な風景描写にも魅せられるが、登場人物の表情における表現力は特に群を抜いている。ほぼ輪郭とメガネだけしか描き込まれてない<持井不動産>の伊達さんでさえ、微細な感情を不思議と読み取れてしまうのは、池辺さんの画力の賜物だ。本作を描くにあたり、東京でマンション巡りの取材もしているそう。「私自身が沼ちゃんになって、『これぞ運命!』というマンションに出合い、その高揚感も交えて描きたいなと思っているんです」◇来るオリンピックに備えて注目を集める東京で、自分のためにマンション購入を考えている沼越幸。理想の家は見つかるのか?web「やわらかスピリッツ」で連載中。小学館552円◇理想のマンションを求めて、女たちは真摯に人生と向き合う。(C)池辺葵/小学館◇いけべ・あおいマンガ家。2009年デビュー。祖母の洋裁店を継いだ女性を描く『繕い裁つ人』は映画化もされた。老婆の簡素な暮らしを彩る、優雅な夢物語『どぶがわ』など著書多数。※『anan』2016年3月9日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・三浦天紗子
2016年03月04日大植真太郎、森山未來、平原慎太郎ら3人の男性ダンサーによるダンス作品『談ス』の全国ツアーが、3月1日の神奈川公演をもって開幕した。2014年に青山円形劇場で初演、昨年12月の北九州、さらには今年2月のストックホルム公演とブラッシュアップを重ね、今回、ダンス公演としては破格な1か月間で全15都市をめぐる大規模なツアーが開催される。ここでは、3月3日に行われた東京公演初日の模様をレポートする。【チケット情報はこちら】『談ス』が始動したのは、2年前の春。大植が拠点とするストックホルムに「何か創ろう」と集った3人が、黒板にチョークであれこれ書きとめながら作品づくりに取り組んだという。幕開き後、ひとり、またひとりと舞台に上がる彼らは、もしかしたら、その“アイデア出し”の場から直接やって来た? と思えるほど、まるで気負いがない自然な様子。互いに引っ張り合ったり、寄っかかったり、押し合ったりと、ごく日常的な動作から徐々に複雑化、振りがヒートアップしていく場でさえ、「そこそこ!」「痛い痛い!」と、ずっと“普通に”喋り続け、さらには大音量で鼻歌まで歌ってみせ「創作の場はまさにこうだったのでは」と想像を膨らまされる。なるほど『談ス』とは、“ダンス”であり、“談す”であって、そんな日常的な言葉があることで、彼らのダンスはより気さくに、臨場感たっぷりに、こちらに近づいてくる。そこに登場する重要アイテムが、チョーク。立てたチョークの形を模倣したり、床に絵や文字を書いたり、上から超巨大チョークが降りてきたり、しまいには数百本ものチョークが床一面にばらまかれ、チョークと戯れながらのダンスを展開。シャープに、またしなやかに魅せる森山、力強さが魅力の大植、躍動感たっぷりの平原と、それぞれの持ち味を活かしたソロから、二人、三人とダイナミックに組んでみせる変化に富んだ場面が連なり、笑いと驚きに溢れた時間はあっという間に過ぎていく。初演では用いられなかったプロジェクターの活用で、床に書いた絵や文字を見せたり、踊りを俯瞰の映像で見せたりする工夫も効果的だ。小学校の教室の片隅、プロレスの技をかけ合って全力でふさげていた男子たちが、そのまま大人になったような雰囲気の彼らだが、「このままずっと観ていたい」と思わせるダンスの力はさすが。各地で回を重ね、作品が進化していくさまを追いかけて行きたい気持ちにもなる。東京公演ののちは名古屋、大阪、松本をはじめ、3月29日(火)の沖縄公演まで日本各地で上演。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2016年03月04日大植真太郎、森山未來、平原慎太郎ら3人の男性ダンサーによるダンス作品『談ス』の全国ツアーが、3月1日の神奈川公演をもって開幕した。2014年に青山円形劇場で初演、昨年12月の北九州、さらには今年2月のストックホルム公演とブラッシュアップを重ね、今回、ダンス公演としては破格な1か月間で全15都市をめぐる大規模なツアーが開催される。ここでは、3月3日に行われた東京公演初日の模様をレポートする。【チケット情報はこちら】『談ス』が始動したのは、2年前の春。大植が拠点とするストックホルムに「何か創ろう」と集った3人が、黒板にチョークであれこれ書きとめながら作品づくりに取り組んだという。幕開き後、ひとり、またひとりと舞台に上がる彼らは、もしかしたら、その“アイデア出し”の場から直接やって来た? と思えるほど、まるで気負いがない自然な様子。互いに引っ張り合ったり、寄っかかったり、押し合ったりと、ごく日常的な動作から徐々に複雑化、振りがヒートアップしていく場でさえ、「そこそこ!」「痛い痛い!」と、ずっと“普通に”喋り続け、さらには大音量で鼻歌まで歌ってみせ「創作の場はまさにこうだったのでは」と想像を膨らまされる。なるほど『談ス』とは、“ダンス”であり、“談す”であって、そんな日常的な言葉があることで、彼らのダンスはより気さくに、臨場感たっぷりに、こちらに近づいてくる。そこに登場する重要アイテムが、チョーク。立てたチョークの形を模倣したり、床に絵や文字を書いたり、上から超巨大チョークが降りてきたり、しまいには数百本ものチョークが床一面にばらまかれ、チョークと戯れながらのダンスを展開。シャープに、またしなやかに魅せる森山、力強さが魅力の大植、躍動感たっぷりの平原と、それぞれの持ち味を活かしたソロから、二人、三人とダイナミックに組んでみせる変化に富んだ場面が連なり、笑いと驚きに溢れた時間はあっという間に過ぎていく。初演では用いられなかったプロジェクターの活用で、床に書いた絵や文字を見せたり、踊りを俯瞰の映像で見せたりする工夫も効果的だ。小学校の教室の片隅、プロレスの技をかけ合って全力でふさげていた男子たちが、そのまま大人になったような雰囲気の彼らだが、「このままずっと観ていたい」と思わせるダンスの力はさすが。各地で回を重ね、作品が進化していくさまを追いかけて行きたい気持ちにもなる。東京公演ののちは名古屋、大阪、松本をはじめ、3月29日(火)の沖縄公演まで日本各地で上演。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2016年03月04日蝶の羽ばたきのような些細なことが大きな出来事を引き起こすことをバタフライ効果という。平山瑞穂さんの新作『バタフライ』のタイトルの意味は、そこにある。「自分のなんでもない行動が誰かの人生に影響を与えているのに、本人はまったく自覚していない。自分たちの日常にもそういうことが起こっているのではないか、という発想がはじまりでした」本作はたった1日の間に、いろんな人の行動が重なって思わぬ出来事が起きる過程を描いた群像劇。登場するのは継父を憎む女子中学生、不登校の少年、正義感の強い元教師の老人、上司に不満を持つOL、小さな工務店の2代目社長、ネットカフェで暮らす青年…。「事実上の主人公は中学生の2人。この年頃は自意識が芽生えているのに自分の力では何もできず、虐げられやすい立場にいる。そこで苦しんでいる子たちは結構いるのではないかと思い、彼らが救われるように描きたかったんです」他の登場人物は、最終的に起きる事件から逆算して生み出したという。彼らの一本の電話が、路上での会話が、公園でのやりとりが、ある出来事を引き起こす。といってもみな駒のように配置されているのではなく、一人一人の事情が奥行きとリアリティを持って描かれているのが魅力。「結局いちばん書きたいのは個々の人間とその人生模様。そこは手抜きをしなかったつもりです。頑張っているのに納得のいく人生を送れていない人ばかりになったのは、意図したことではありません。自分が潜在的に、そういう人たちを書きたかったんだと思います」また、バタフライ効果という仕掛けについては、あるルールを設けた。「一人の人物が何度も少年たちの人生に関わるのは話ができすぎていますよね。ですから一人が2回以上、事件に結びつく役割を果たすことはしない、と決めました」すべてを知るのは作者と読者のみ。全員が幸せになるわけではないが、「いつもその人物の人生の一部を切り取っているにすぎない、と意識して書いています。そのなかで、いい方に向かっていくことが描けたら」あなたも日常のなかで、誰かの人生を変えているかもしれない。そう実感できる一冊だ。◇中学生の七海は、母親の再婚相手から性的虐待を受け苦しんでいた。彼女が心許せるのは、オンラインゲームのチャット相手で…。幻冬舎1500円◇ひらやま・みずほ作家。1968年生まれ。’04年『ラス・マンチャス通信』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞してデビュー。著作に『あの日の僕らにさよなら』『忘れないと誓ったぼくがいた』など。※『anan』2016年3月2日号より。写真・岡本あゆみ(平山さん)森山祐子(本)インタビュー、文・瀧井朝世
2016年02月29日悩めるオトナ女子の感情を丁寧にすくい取る西炯子さん。2巻完結の本作『カツカレー』は『姉の結婚』に続いて、またしても結婚がテーマの物語だ。「結婚のことは前作でやり尽くした感があるけど、あと1回考えてもいいかなと思って描きました。大卒で働き始めた場合、主人公のような30歳手前の女性って、結婚について考えざるを得ないんですよね」斉藤美由紀は28歳の会社員。売れない劇団員の同棲相手と潔く別れて、結婚相談所で婚活を始めるのだが、なかなか思うような人と巡り会えず、どんな人と結婚したいのかさえもわからなくなってくる。「私自身も描いていてわからなくなりました(笑)。普通の人でいいとは言うけど、普通の人なんていないっていう常套句があるじゃないですか。本当にその通りで、自分で選べるからこそ軸がどんどんずれてきて、結婚する意味を見失いそうになる瞬間が必ず来るんですよね」美由紀は思い通りにいかない鬱憤を読書カフェの筆談用ノートに書き綴るのだが、ある日、見知らぬ男から辛辣な返事を書き込まれてしまう。「男性でも女性でも一歩踏み込んでくれる人って、大人になるとなかなかいないですよね。SNSなんかとはまったく別のところで、そういう人がいたらいいのになっていう気持ちもちょっとありました」そもそも美由紀は、結婚に恋愛感情はいらないと考えて恋人と別れたのだが、自分の決断は間違っていないと思いつつ、周りの意見を気にせずにはいられない弱さもある。「私はストーリーマンガを描くと、どうしても自分が嫌いなタイプの主人公になってしまうんです。そういう面倒な女性が幸せになるのが、私の物語では一番いい構造らしく、自分が好きになるような女性をなかなか幸せにできないんです(笑)。女の子のちょっと汚い部分を描くのが好きなのかもしれないですね」はたして美由紀は、お見合いの末に幸せをつかむことができるのか。西さんが見聞きした婚活ネタを盛り込んでいるというだけあって、ためにもなる一冊。そして今回も渋くて色気のあるオジサマが登場します!◇婚活中の美由紀は、思い通りにいかない不満と迷いをカフェのノートに書き綴っていた。辛辣な返事を書き込んだ中年男と思いがけない交流が生まれ……。小学館各429円◇結婚について何度でも考えよう。迷える婚活女子の必読書。(C)西 炯子/小学館フラワーコミックスα◇にし・けいこマンガ家。高校在学中にデビュー。『娚の一生』『姉の結婚』など大人の恋愛を描いた作品が人気。アラフォー女性が主人公の「初恋の世界」を月刊フラワーズで連載中。※『anan』2016年2月24日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年02月23日大植真太郎、森山未來、平原慎太郎の3人のダンサーによるダンス作品「談ス」。今年3月、1か月をかけ全国15都市をめぐる日本ツアーを実施する。またツアーに先立ち、2月24日(水)~2月26日(金)にかけて同作のストックホルム公演も実施。3人に創作の過程、ツアーへの意気込みを聞いた。「談ス」チケット情報2014年に青山円形劇場で初演された「談ス」は、組み体操のようなダンスや、舞台にチョークで文字や絵を描いていき、それと3人の動きを組み合わせていくパフォーマンスなど、ひとつひとつの動きをダイナミックに表現することで、見る人の目を惹きつける新しいダンスだ。3人はワークショップを重ね「談ス」を作り上げた。きっかけはストックホルムを拠点に活動する大植のもとに、それぞれ留学でイスラエルにいた森山と、スペインにいた平原が集まり行った合宿稽古だ。しかし、そのときスタジオがとれず、稽古は寒い屋外に。自然と家で作品について話し合うことが増えた。「真太郎さんの家にあった黒板にチョークでどんどんアイデアを書き込んでいった。イタズラ書きでも何でもとにかく書き込んで、本当はコンセプトをまとめていくつもりだったのだけれど、その空間や、黒板に出来上がった絵、アイデアやイメージを、そのまま舞台にのせても面白いんじゃないかということに。それが、クリエーションの場で流れた時間をそのままを舞台上で見せる『談ス』になったんです」(森山)。作られた作品は青山円形劇場での初演でさらにブラッシュアップされた。「(円形の舞台では)東西南北がわからなくなってしまうことがあって、それが面白くもあり、怖くもあった。僕らが用いている手法は、相手の体重を使って踊るやり方ですが、気づいたのは、円形では『正面』が移動するので動きが円運動になりやすいということ。途中から、これはイケると思うようになったんです」(平原)。今回の全国ツアーでは、会場の規模も状況もかわるが、それについては「円形劇場でできたから、大きめの会場で客席が遠くても大丈夫と、どこかで思っていました」(大植)。1か月にわたる全国ツアーについての期待は大きい。「ダンス作品がこれだけ全国をまわるなんてあまりないこと。いい意味で異質な作品。ダンスに興味がなかった人でも楽しんでいただける見方が、たくさんあります」(森山)。「作品自体どんどん変化していくし、その余地のある作りになっている。臨場感あると思いますよ。『あ、決まり事をやっているな』とか、『今のはアドリブでしょ?』とか、そういうものも全部含めて、お客さんに提示できたらいいですね。」(平原)。この3人だから出来上がった「談ス」。各地での上演のたびに、さらに新しい「談ス」を見せてくれそうだ。公演は2016年3月1日(火)の鎌倉芸術館での神奈川公演を皮切りに、3月3日(木)よりイイノホールでの東京公演、その後、全国をめぐる。チケットは発売中。
2016年02月09日小林裕美子さんが描く、コミックエッセイのタイトルは「産まなくてもいいですか?」。なんともドキッとする問いかけ。出産は、言うまでもなく女性にとって人生の一大イベントだ。結婚していても、いなくても、はたして自分は子どもを産むのかと誰だって考えたことがあるだろう。著者の小林裕美子さんは、結婚から10年以上経て一昨年に第一子を出産。これは自身の出産を挟んで制作された物語だ。「結婚してから、子どもをほしいと思えない時期が4~5年ありました。仕事が楽しくて、当時は何を言われても耳に入ってこなくて。だけど周りの人が徐々に産みだして、いつまでも仕事優先でいいのかなと悩むように。そのときの不安定な気持ちを描いてみようと思ったのです」主人公のチホは結婚2年目。夫婦仲は良く、共働きで気ままな生活を送っている。しかしながら双方の親からは、孫の誕生を期待され、友人・知人からもときに露骨に、ときに遠慮がちに「子どもはまだ?」と言われる日々。当の本人はというと、子どものことについて夫と腹を割って話したこともなく、そもそもほしいのかどうかもわからない。そのため、いろんな立場の人と話をすることで、自分の抱えているモヤモヤをクリアにしていこうとする。小林さんは物語を作るにあたり、結婚しているけれども子どものいない女性たちにインタビューを行った。「働いている方は特に、ゆくゆくはほしいけれども今ではない、というふうにタイミングを計っているところがありました。産むかどうかを女性に任せてもらえるのはありがたいのですが、自分で決めたら背負わなければいけないものもそれだけ多くなる。そう考えると、居心地のいい今の生活をわざわざ変えなくてもいいのかなって思っちゃいますよね」一方で、「産むことが当たり前」な人には、産まないことが理解できなかったりもする。たとえそれが「産めない」のだとしても。多様なライフスタイルや価値観が認められているかのように見える世の中だが、産む人と産まない人、そして産めない人の間にはいまだ深い溝があることを思い知らされる。とはいえ、「胸に刺さる」あるいは「耳タコ」のようなシビアなエピソードさえ素直に受け入れられるのは、ほのぼのとしたタッチのなせる業といえるだろう。「産むかどうかを悩むのは、決して自分勝手なわけではなく、当たり前のことなのだと伝えたいですね」悩んだぶんだけ、責任感と他者への優しい視点が生まれることを、チホの導き出す答えが教えてくれる。◇出産することに踏ん切りがつかない31歳のチホが、なぜ迷っているのか、自分の心と真摯に向き合う様を描いた、悩める女性のためのコミックエッセイ。幻冬舎1000円◇こばやし・ゆみこマンガ家、イラストレーター。不妊治療について描いた『私、産めるのかな?』、親の介護を扱った『親を、どうする?』など、身近な問題をテーマにした著書がある。※『anan』2016年2月10日号より。写真・森山祐子インタビュー、文・兵藤育子
2016年02月09日今、未婚カップルのセックスレスが増えているそう。アンアン読者200人へのアンケートでも3人に1人が経験者との結果が。そんなセックスレスに直面した時、女性はどう思っているのか気になりませんか?そこで、セックスレス経験者に「直面した時の気持ち」を赤裸々に語ってもらいました。参加してくれたのは、セックスレス解消中のあゆみさん(27歳・事務)、経験者のみきさん(25歳・商社勤務)、かおるさん(27歳・金融)。そして、現在セックスレス進行中という、ちかさん(26歳・SE)、けいこさん(34歳・事務)の5人です。* **――かおるさんは、セックスしなくなった1年間、どういう気持ちでした?かおる:セックスって、自分が肯定されていることを感じられる、究極の行為だと思うんです。だから、レスになってしまってからは「私、そんなにダメかなぁ」と落ち込んでいました。けいこ:私は、恋人同士として危機的な状況だと感じているこちらの気持ちを全く意に介さない彼の態度に、イラッとすることが多かったですね。かおる:「ハグしているだけで幸せ」と言われても、困るんですよね…。みき:あ、私はその彼の気持ち、わかります…。けいこ:そっかぁ。たぶん私は、女性は当然求められるものだと思っていたから、傷ついたのかも。ちか:そうかもね。私は、本当はしたいんだけど、言いづらくて。女の子だから…というよりも、家族に性の話をするのが恥ずかしいのと似た感じ。あゆみ:私は、したい!というよりは、しないと恋人同士じゃなくなってしまうような焦りを抱いていました。かおる:セックスが恋人を恋人たらしめる、みたいな?あゆみ:うん。しなくても別にいいんだけど、家族や友達ではなく恋人でい続けたいから、したほうがいいなって。――恋愛関係ならではのときめきを保とうと努力していたんですね。みき:私、2年以上恋愛のドキドキ感を維持できたことがなくて、あゆみさんの話を聞いて、なんだか感動…。あゆみ:でも、やっぱり長く付き合ってると家族感は出ちゃうから、頑張らないとな、と思ってる。セックスをカンフル剤的に使おうかと(笑)。かおる:体調のメンテナンスにもなりますよね。いちゃいちゃすると、次の日の仕事も元気に頑張れる。※『anan』2016年2月10日号より。写真・森山祐子
2016年02月05日セックスレスの悩み、人に話したことありますか。雑誌『anan』のアンケートによると女性200人のうち、セックスレス経験者は3人に1人。その悩みを自分で抱えている女性は6割以上もいることが判明。では、逆に男性はセックスレスについてどう思っているのでしょうか。その本音を、たかしさん(32歳・通信)、かずきさん(30歳・金融)、ひとしさん(31歳・メーカー)、まさきさん(29歳・コンサルタント)、よしおさん(32歳・コンサルタント)の経験者5人に語ってもらいました。* **――参加男性の中では、たかしさんを除いて、みなさんレス経験は1度ということですが…。よしお:僕は、同棲してすぐにレスになりました。たかし:あ、僕も。レスになったのは、二人とも同棲してからのことです。よしお:それまでは週に1回はしていたんです。でも、引っ越し後の最初の土日に、バタバタしていてしなかった。それがいけなかったかなと。まさき:僕は同棲はしていないんですけど、彼女がよくうちに来ます。でも、部屋の中を全裸で歩き回ったりするんですよ。一同:え!それはすごい。まさき:それで女として見ろっていうほうが、無理ありますよね…。かずき:僕は、奥さんと出会って1か月で同棲し、2か月で結婚したんです。――おぉ、スピード婚ですね。かずき:レスになったのは、一緒に住み始めてすぐ。最後は1年くらい前…。――やはり同棲が原因?かずき:いや、僕は奥さんの前にも何度か同棲経験はあるんですが、レスになったのは初めてです。ひとし:そうなんですね。僕は、したいけど彼女に拒まれるということが何度かあって。それで、だんだんこちらもしたい気持ちが消えていってしまい、徐々に回数が減っていきました。たかし:僕も1人目の相手はそうでした。向こうが乗り気じゃないのがわかると、次第にこっちもその気が失せてくるというか…。ひとし:意地の張り合いにならない?たかし:「してやらないぞ」みたいなね(笑)。あと、1人目の子は、“マグロ”になることがあって。一同:それは嫌だ…!たかし:それがNOの意思表示なのかなとも捉えてしまいますよね。ひとし:拒否の姿勢を見せられると、自分も傷つきたくないから、しなくてもいいやとなります。たかし:「やりたい」という気持ちより、プライドのほうが勝るというか。――彼女が拒む理由は聞きました?ひとし:束縛系の彼女で、なぜだかいつも浮気を疑われてたんです。あと家事の分担なんかで喧嘩が続いて、セックスするムードにならなくなりました。かずき:僕は、結婚を決めた時点で少しセックスに尻込みするようになったところがあります。たかし:父親になる覚悟、ということですか?かずき:うまく言えないんですけど、そうですね。※『anan』2016年2月10日号より。写真・森山祐子
2016年02月05日