ファッションやカルチャー雑誌に連載を持ち、ラジオパーソナリティーも勤める次世代の歌舞伎俳優、尾上右近。名優六代目尾上菊五郎を曾祖父、往年の映画スター鶴田浩二を祖父に持ち、父親は清元節の宗家・清元延寿太夫。昨年、自身も七代目清元栄寿太夫を襲名。現在、歌舞伎俳優にして清元の太夫でもある、初の“二刀流”を貫くパワフルな開拓者だ。「第五回 研の會」チケット情報「20代は特に限界を超えることで伸びしろが出てくる時期。無理と分かっていることも存分にチャレンジしたい」と右近。実践の場として、2015年より毎年上演するのが自主公演『研の會』だ。今年は第5回の節目とあって、四代目市川猿之助が芸術監督を勤める京都芸術劇場春秋座を会場に、シリーズ初となる東京・京都、2都市での開催を実現する。演目は、右近が弁天小僧を演じる『弁天娘女男白浪』と、猿翁十種より舞踊『酔奴』。『弁天娘~』は高祖父の五代目菊五郎が19歳で初演後、代々の菊五郎に受け継がれる音羽屋のお家芸だ。右近が10代前半で今の菊五郎の元へ勉強に入り、舞台袖から初めて観たのもこの芝居だった。「これから自分は尾上右近としてやっていくのだと、子供心にも意識した憧れの根本にあるようなお芝居です」。物語は痛快な義賊もの。5人の盗賊が七五調で名乗りをあげる演出は、秘密戦隊ゴレンジャーなど後のヒーロー番組にも影響を与える。片や『酔奴』は、雪の中で酔っぱらった男がいろんな人間に扮する様を踊りで表現する。右近の義太夫の師匠、鶴澤藤蔵ら文楽座の特別出演で贈る。「猿之助のお兄さんに澤瀉屋のお家芸をご提案いただき、春秋座でやらせていただけることに。ご縁として繋がりがあってありがたいなと。技術としては難しいですが、踊りは見る人の解釈に委ねられるのが最大の魅力。散々おどけていた男が最後はふと正気に戻ったような顔になる。流れる胡弓の音色も絶妙で。僕は田舎育ちの男の寂しさがほんのり香って切なくなるけど、どう感じていただけるのか楽しみです」。共演に中村梅丸ら後輩が出演するのも今回が初めて。20代後半となり、いずれは後輩を引っ張る立場になることも「ほんのり意識し始めた」と笑う。自身の生まれる以前と以後の2つのルーツに由来する演目を得て、さらなる高みを目指す。「『弁天娘~』は何百年も続く歌舞伎の古典が、現代の漫画にもありそうな面白さだったり、衣裳や舞台に見る色彩の美しさなど、歌舞伎を初めてご覧になる方にも楽しめる要素がいっぱい。チラシは『弁天娘~』が東映の任侠映画、洒落の踊り『酔奴』が三枚目なのに色気がある藤山寛美さんのイメージです。まったく違う面白さがあるので、存分に楽しんでもらえたらと思います」。公演は8月28日(水)・29日(木)京都芸術劇場春秋座、9月1日(日)・2日(月)東京・国立劇場小劇場にて上演。チケット発売中。取材・文:石橋法子
2019年08月23日「能装束と歌舞伎衣裳」展が、2019年10月7日(月)から11月29日(金)まで、文化学園服飾博物館にて開催される。「能装束と歌舞伎衣裳」展では、日本の伝統芸能である「能」と「歌舞伎」、両者の魅力を、それぞれの衣裳を通じて紹介する。芸能衣裳ならではの大胆で華やかな意匠に着目するとともに、「能」「歌舞伎」の衣裳の特色や共通点も明らかにする。「能」は、江戸時代に幕府の儀式用の芸能として隆盛を極め、その装束は各大名による豪華絢爛な仕上がりとなっている。また、同じく江戸時代に庶民からの人気を博した「歌舞伎」の衣裳は、市井の風俗にも影響を与えた。会場には、文化学園服飾博物館が所蔵する彦根藩主・井伊家旧蔵の江戸時代・明治時代を中心とした能装束と、松竹衣裳株式会社の所蔵する現代の歌舞伎衣裳を展示。舞台映えする、ダイナミックなデザインに注目だ。【詳細】「能装束と歌舞伎衣裳」展会期:2019年10月7日(月)~11月29日(金)場所:文化学園服飾博物館住所:東京都渋谷区代々木3-22-7開館時間:10:00~16:30(10月11日、11月15日は19:00まで。入館は閉館の30分前まで)休館日:日曜日、祝日※10月22日、11月6日~8日は休館 ※11月3日(日)、4日(振休)は開館入館料:一般 500円、大高生 300円、小中生 200円 ※20名以上の団体は100円引き※障がい者とその付添者1名は無料■ギャラリートーク「歌舞伎衣裳について」松竹衣裳株式会社・高橋孝子日時:10月19日(土) 13:30~(12:30より受付順30名)
2019年08月23日昭和50年から、多くの古典芸能ファンに親しまれてきた「第46回NHK古典芸能鑑賞会」が、今年も東京・渋谷のNHKホールで開催される。日本の伝統芸能の各ジャンルを代表する方々の出演で、一夜限りの贅沢な舞台が繰り広げられる。【チケット情報はこちら】幕開きは箏曲で宮城道雄作曲の「越天楽変奏曲」。昭和3年、昭和天皇即位の大典の奉祝曲として作られた大合奏曲だ。雅楽の「越天楽」を主題にしており、令和に改まった年に相ふさわしい作品を、牧瀨裕理子ほか宮城合奏団の演奏で堪能できる。続いて、舞踊・清元「四季三葉草」。「式三番叟」を「四季三葉草」ともじった題名にし、四季の草花を詞章に詠み込んだ曲で、歌詞は「とうとうたらり」や「おおさえおおさえ」など、「三番叟」の定型句に、さまざまな草花をあしらい、洒落のきいたものだが、舞踊としては、ほかの「三番叟物」同様、品格を保った御祝儀的色彩の濃い作品となっている。今回は、芸術院会員の花柳壽應の翁、花柳壽輔の三番叟、花柳ツルの千歳という配役にて、素踊りで演じられる。次は、大蔵流の狂言「髭櫓」。新天皇が即位した際に行われる大嘗会にまつわる、夫婦の喜劇だ。立派な髭ゆえに大嘗会の犀の鉾の役を任された夫だが、妻と夫婦喧嘩となり、怒った妻は近所の女たちに加勢を頼み、夫の髭を剃ってしまおうと計画する。人間国宝の山本東次郎演じる夫を中心に、おおらかな笑いが繰り広げられる。そして最後は、文楽座特別出演による歌舞伎「義経千本桜・川連法眼館の場」で締めくくる。狐が親を思う情愛を描いた名作「川連法眼館の場」は、人形浄瑠璃文楽を先行作品として歌舞伎で繰り返し上演されているが、今回は一夜限りの豪華な舞台として、歌舞伎俳優と文楽座の共演が行われるのが、大きな話題だ。次々と大役を勤め、芸域を広げる尾上菊之助の忠信、立役・女方ともに芸を極める中村時蔵の義経に、文楽太夫の最高峰、豊竹咲太夫の浄瑠璃、華麗な撥さばきをみせる鶴澤燕三の三味線という配役が見どころだ。取材・文:七海友信
2019年08月20日8月17日(土)・18日(日)に東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンにて「九團次・廣松の会」が開催される。市川海老蔵一門として全国各地で公演を行うほか、バラエティー番組出演やCM出演など、歌舞伎以外でも幅広く活躍をしている市川九團次と、女方を軸に活躍し様々な可能性を持つ若手のひとり、大谷廣松が今回初めてふたりで公演を行う。【チケット情報はこちら】先日都内で行われた取材会で、九團次は今回ふたりでの自主公演を行うことになった経緯を「『九團次の会』を4年前からはじめて、毎回色々な形で挑戦をさせてもらってきました。廣松さんとは、普段から“何かできたらいいね”と話をしていました。本興行での舞台出演も非常に大事ですが、自分で主役を経験する事は勉強にもなるし度胸も尽く。真ん中に立って長台詞を喋り、長時間踊る事はなかなか本興行では経験できません。今回は上手くスケジュールも合い、この公演が決まりました」と語った。今回の演目は、茂山逸平監修による『柿山伏』(かきやまぶし)、そして挨拶を挟み、藤間勘十郎振付・中村京蔵 構成による『女夫蝶花臺』(つがいのちょうはなのしまだい)三場、「蝶の道行」竹本連中、「石橋」長唄囃子連中、というラインナップ。狂言、綺麗に化粧をした男女の姿を観ることのできる歌舞伎演目など、様々な日本の伝統芸能を1度に観ることが出来る。日本特有のエンタテインメントである歌舞伎、狂言を、まだ観劇経験の少ないお客さんにもぜひ観ていただきたいと語る九團次と廣松。見どころを尋ねるとふたりは以下のように語った。「歌舞伎は歴史があって、何百年も続いて今があるというのを考えるとゾクゾクします。歌舞伎は割とその当時に起こった題材にしているので、その当時を覗くことが出来ます。着物・鬘・セット・音楽家などの素晴らしさにも目を向けていただきたいです」(九團次)「日本の伝統的な喜劇である狂言。そしてお芝居の『蝶の道行』での恋の行末の心中、蝶に生まれかわるという物語性や、衣裳・道具・鬘など、諸々を含めての非日常を提供できたらと思います。これがみんなの憧れる恋の形であり、だから現代まで残ってきたんだ…ということを色彩美とともに味わっていただきたいですね。また『蝶の道行』の衣裳は素敵なので、衣裳での感情表現というのを非常に注目していただきたい。衣裳は言葉が要らない部分ですから、役者の表現と衣裳の表現が重なったときに、色々なものが見えてくると思います。それを頑張って見せられるようにしていきたいです」(廣松)すでに稽古は大詰めを迎え、いよいよふたりの公演は目前に迫った。九團次は「自主公演でいつも考えるのは、観に来ていただいたお客様にチケット代が高いねと絶対思われないようにしようという事です。安い!と思ってもらえるように、生き様を観ていただきたい。ご納得いただくものをお見せします」と意気込みを語った。
2019年08月09日毎年GWの2日間、幕張メッセで開催される大規模イベント「ニコニコ超会議」。そのイベントホールを会場に、約5千人の観客を前に上演されてきた、中村獅童とバーチャルシンガー初音ミクの主演舞台「超歌舞伎」。NTTの最新映像技術を駆使し、巨大画面に映し出された映像上の俳優と生身の歌舞伎俳優が共演する、新時代の歌舞伎エンターテインメントだ。2016年の初演から今年で4回目を迎えた注目作が、遂に南座に初お目見えする。「南座新開場記念 八月南座超歌舞伎」チケット情報演目は、獅童の宙乗りや新作を含む南座仕様の豪華3本立て。まずは、観客参加型の解説『超歌舞伎のみかた』に始まり、出雲のお国(初音ミク)とその恋人・名古屋山三(中村獅童)らが次々に踊る新作舞踊『お国山三 當世流歌舞伎踊』、美玖姫(初音ミク)と白狐が転生した佐藤四郎兵衛忠信(中村獅童)がご神木の千本桜を守るため、邪悪な青龍(澤村國矢)と戦う軍物語『今昔饗宴千本桜』へと続く。千本桜の大詰ではバーチャルシンガーの初音ミクが本領発揮、獅童らと観客を煽るなどライブさながらの演出で盛り上げる。「通常、専門の方がやる大向う(掛け声)も自由に参加していただけますし、大詰では立ち上がって声援を送ったり、サイリウムを振りながら楽しめます」。そう話すのは、初演から獅童の敵役を勤め、本作では全演目に出演する澤村國矢。全47公演中、8回ある『今昔饗宴千本桜』のみのコンパクトな公演「リミテッドバージョン」では、中村獅童に替わり主演の大役も勤める。「こういう機会をもらうこと自体すごいことですが、それを成功させなければ、僕たちワキをやってきた人間にとって、これが希望となるのか、ならないのかが変わる。節目の8月だと思い、一か月間大切に挑んでいきたい」と決意を語る。幕張での初演では、初音ミクが登場した際に沸き起こる歓声に圧倒された。「ただ、そこから歌舞伎の立廻りの迫力や臨場感を目の当たりにしたことで、お客様の情熱が、ミクさんもすごいけど電話屋(NTTの屋号)さんの技術もすごいし、歌舞伎もすごい!と分散していった。それは生の舞台である歌舞伎が持つ力だと思うんですね。だから毎年楽しみにしていてくださり、ここまで続けてこられた。演じていて自信になりました」。そんな幕張のファンには歌舞伎の劇場を、歌舞伎ファンには初音ミクの世界をそれぞれ体験してほしいという。「すっぽんや花道など、歌舞伎の劇場ならではの機構をフル活用した演出になると思います。初役の忠信では、狐のぶっ返りで引っ込む狐六法を勉強させていただきます。いつか演じてみたかった役が超歌舞伎で叶いました。大立廻りでは自分の持てる最大限を使って大暴れするので、ぜひ注目していただきたいですね」。公演は8月2日(金)から26日(月)まで、京都・南座にて上演。チケット発売中。取材・文・撮影:石橋法子
2019年07月30日話題のスポットやエンタメに本誌記者が“おでかけ”し、その魅力を紹介するこの企画。400年の歴史を誇る日本の伝統芸能「歌舞伎」。じつは記者、舞台公演を見たいと思いつつ足を運んだことがありません。しかしここ数年、ずっと気になっていたのがシネマ歌舞伎。なんでもスクリーンで歌舞伎が体験できるのだとか。そこで今回、公開中の坂東玉三郎の『鷺娘/日高川入相花王』を観賞してきました。■シネマ歌舞伎『鷺娘/日高川入相花王』7月4日まで(『天守物語』は7月5~11日。ともに東劇ほか全国各地で上映。上映スケジュール・ラインナップ等はシネマ歌舞伎のHPにて)聞くとこのシネマ歌舞伎、意外なことに、初上演が’05年1月とすでに14年の歴史を持つジャンルだったのです。歌舞伎の裾野を広げるべく、スクリーン上映が始まったのだそう。たしかに懐ろ具合が気になる記者でも気軽に行けるのがうれしいところ。本作は、’06年シネマ歌舞伎公演時のものから新たに坂東玉三郎(69)自身の監修で補正・調整を行ったものだそうで、全身が包まれるような臨場感ある音響マジックが体験できました。そして舞台公演とは違う見どころが、演者のこまやかな表情、繊細な刺しゅうが施された衣裳、黒子などの動きは大きなスクリーンだからこそ確認できる点。おそらく舞台公演を見た人はシネマ歌舞伎も見て(その逆もしかり)、作品をより楽しんでいるような気がしました。どちらにもそこだけでしか体験できない醍醐味があるということです。毎月作品を替え上映し、歌舞伎の魅力を伝える試み。スクリーンならではの迫力をぜひ体験してみてください。
2019年07月01日日本舞踊協会の新作舞踊公演シリーズ「未来座 SAI」の第三回公演が行われる。【チケット情報はこちら】日本舞踊松本流の家元で、シリーズの立ち上げメンバーでもある歌舞伎俳優の松本幸四郎は、「日本舞踊協会ではもともと2月に古典、7月に新作を上演していて、新作は少しお休みしていたのですが、古典と新作は両輪という考えから、2017年にこのシリーズが誕生しました」と語る。毎回、SAIに異なる漢字を当てて公演を行う同シリーズ。第一回では「賽」の字を掲げて“水”がテーマの新作4つを上演し、第二回では「裁」として『カルメン』が原作の新作舞踊を再構成して送ったが、今回は「彩」の字のもと、2つの新作を上演する。その1つ目、『=ぴのきお=』は、童話『ピノキオ』を日本に置き換えた作品で、檜の人形=ぴのきおが、様々な人形と出会い、幾多のトラブルを乗り越えて成長する姿を描く。「皆様に馴染みのある題材ですし、ファンタジーなので、心情や風景、人間ではないものなどを表すことのできる日本舞踊には適していると思います。脚本・演出・振付の西川扇与一さんは新作の経験も豊富な方ですから、日本舞踊にもともとある人形振りという技術を駆使しつつ、新しい踊りを見せてくれるでしょう。檜男のWキャスト、花柳大日翠(おおひすい)さんと藤間爽子さんは対照的な雰囲気なので、見比べる楽しみもあります。語り(録音)で参加する坂東流家元の坂東巳之助さんは、役者の技も使ってくれるはずです」2つ目は、四季を描いた『春夏秋冬』。京舞・井上流の家元であり人間国宝の井上八千代が未来座に初出演する話題作だ。「舞踊協会の新作公演に、井上八千代先生が出演するのは初めて。若い舞踊家達から出てきたアイデアで、彼らの熱意が先生に伝わって実現に至ったのだと思います。京舞という踊り、そして先生の芸は、非常に洗練され、それでいてリアルで、素晴らしい。どうやっても届かない憧れであり、だからこそ日本舞踊家として何ができるか考えさせられます。例えるなら、歌舞伎にとっての能狂言のような存在ですね。皆様に堪能していただくのは勿論、若い舞踊家には同じ舞台上でぜひ、色々なものを吸収してもらいたいです」「日本舞踊にはまだ身体だけでストーリーが展開する舞踊劇が、本当の意味では確立されていない」とし、「書割と共に平面的に進化してきたのが日本舞踊。立体的な群舞を入れるなどして奥行きを使うこともできるし、逆に映像を含め書割にこだわることもできる。まだまだ様々な可能性があると思う」と語るなど、幸四郎の日本舞踊への情熱は尽きない。「昔は花嫁修業や役者の心得であった日本舞踊も、今ではプラスアルファの特別な世界になりました。着物で踊るカッコよさや美しさを味わっていただき、浮世離れした別世界を楽しんでいただければと願っています」取材・文:高橋彩子
2019年06月14日六月花形新派公演『夜の蝶』が6月6日より三越劇場で開幕した。昭和30年代、銀座で人気を二分していた実在のクラブのマダムをモデルに描いた本作。新派の女方・河合雪之丞に対し、現代演劇の女方である篠井英介が新派に初参加して、華やかな世界の裏にある意地の張り合いを舞台上で繰り広げる。出演する雪之丞と篠井に公演の見どころや意気込みを聞いた。【チケット情報はこちら】原作は1957年に発表された川口松太郎の小説で、同年7月映画化。同年10月には花柳章太郎と初代水谷八重子により舞台化され、さらに坂東玉三郎と当代水谷八重子によって再演された。今回の公演では、銀座随一の高級クラブ“リスボン”のマダムである葉子を雪之丞が、京都で舞妓あがりのお菊を篠井がそれぞれ演じ、ふたりの女方対決が見どころとなっている。雪之丞は「せっかく女方同士でやるのだから、女同士のバトルをしっかりご覧いただきたい。これまでの『夜の蝶』とは少しニュアンスが違う作品に仕上がったと思う」と話す。一方の篠井は、今回が新派初参加。「100年以上の歴史があり、日本の郷愁を誘う芝居を作り続けてきた新派。若い頃から憧れを持って観てきたので、本公演に呼ばれた時は、ちょっと怖かった。歴史と格式ある劇団に飛び込むというのはなかなか勇気のいることなので」と思いを語りつつ、「雪之丞さんや(喜多村)緑郎さんとご一緒なら助けてもらえるかなと甘えた気持ちがあった」とも。本作の見どころについては「女の戦いといっても殴り合うわけではなく、独特の皮肉や嫌味から火花が見えるところが面白い。ネタバレになるので詳しくは言えないが、映画とはまた違う、素敵なエンディングを迎える」と教えてくれた。篠井の女方としての魅力について、雪之丞は「花組芝居や翻訳劇で女方をされていることは存じ上げていた。実は公演前から、篠井さんは新派に向いているのではないかなと思っていた。日本舞踊の基礎もあるし、現代的な要素もお持ちなので。一緒に稽古をして、私の目に狂いはなかったなと思う」と話した。それに対して篠井は「そういう風にご覧になってくださっていたなら、本当に幸せ。うれしい理解者であられてくださったなと思う」と照れ、「雪之丞さんは粋で洒落ていて格好いい。葉子というこれぞ新派の女方が演じるべきお役を演じられる姿を、自分が出ていないところでは見惚れています」と返していた。ほかに喜多村緑郎、瀬戸摩純、山村紅葉らが出演する。公演は28日(金)まで。10日(月)と18日(火)の公演終了後にアフタートークあり。チケット発売中。文・取材:五月女菜穂
2019年06月07日「今春から、しのぶさんは自身も所属している芸能プロダクションに息子さんを所属させたそうです。これからは歌舞伎だけではなく、芸能界でも活躍させたいという思いがあるのでしょう」(芸能プロ関係者)2年前にデビューし、今年は3月と4月に東京・歌舞伎座に連続出演した、寺島しのぶ(46)の長男・眞秀くん(6)。「芸能事務所入りした眞秀くんを、しのぶさんはテレビ各局に売り込んでいます。その甲斐あって、4月6日放送の『サワコの朝』と5月17日放送の『A‐Studio』(ともにTBS系)で親子共演を果たしました。舞台慣れしているためか、眞秀くんはリラックスした様子で終始堂々としていましたね。歌舞伎のセリフを披露してみせたり、スタッフの持っていたカンペを見つけて『なんて書いてあるの!?』と言ってスケッチブックを奪ったり、子どもらしいお茶目な一面でスタジオを盛り上げていました(笑)」(テレビ局関係者)眞秀くんは4歳のとき、“将来の夢は仮面ライダー”と語っていたが、いまは“ライダー俳優”に憧れているという。「同じ事務所の俳優・菅田将暉さん(26)は16歳のころに『仮面ライダーW』で主演を務めました。眞秀くんは『いつかあのお兄ちゃんみたいになりたい!』と話しているそうです。今回の芸能事務所入りも、本人の希望をかなえてあげるためだったのだと思います」(前出・芸能プロ関係者)今年5月、『スポーツ報知』のインタビューで歌舞伎役者の夢について聞かれると「半分くらいなりたいかな」と答えていた眞秀くん。だが、寺島は人一倍、長男を歌舞伎役者にすることにこだわっていたはず――。音羽屋の第一子に生まれながらも、女性であるがゆえに歌舞伎役者にはなれなかった寺島。跡継ぎになれるのは、弟・尾上菊之助(41)だけ。彼女はその悔しさをこう振り返っている。《弟が6歳で初舞台を踏んだ時、「どうして年上の私が舞台に立てないの」と腹が立つやら悲しいやらで、それに男中心の梨園ですから、我が家は弟を中心に回っていて、私一人が取り残されていく気がして……》(『週刊現代』15年10月17日号)だからこそ、自分が継げなかった音羽屋の名跡を、なんとしても眞秀くんに継がせたかったのだ。実際、寺島は07年にフランス人のローラン・グナシア氏(51)と結婚した際、会見で「男の子ができたら歌舞伎役者にしたい」と語っていた。「まだ言葉も話せないうちから眞秀くんに父や弟の舞台映像を見せ続け、歌舞伎のイロハを叩きこみました。さらに眞秀くんが2歳のときから日本舞踊を習わせるなど、早くから英才教育に乗り出したんです。そして、17年5月の初お目見えでようやく夢がかないました」(梨園関係者)しかし一転、昨年4月のネットニュースのインタビューでは、寺島は息子の将来についてこう語っている。《歌舞伎の世界はそう簡単にいかないことはよく分かっています。本人がもしやりたいというのなら、やればいい。無理に歌舞伎の世界へ入ってほしいとは思っていません》(18年4月27日配信『仕事DeepDive』)いったい、彼女にどんな心境の変化があったのか――。「ローランさんは、自主性を重んじる教育方針だそうです。眞秀くんが幼いころは、その教育方針の違いから衝突することも多かったとか。でも最近では、しのぶさんも『本人がやりたいことを目いっぱいやらせればいいんだ!』と考え方が変わってきたといいます。また、眞秀くんが今年の4月から小学校に入ったことも大きかったようです。眞秀くんは出身者に歌舞伎役者が多いA学校ではなく、別の有名私立B学校に進学しました。梨園とはまったく関係のないB学校のママ友たちと交流するうちに、寺島さんは『子どもにはさまざまな経験をさせたほうがいい』と考えるようになったのでしょう」(前出・テレビ局関係者)いつの日か、“ライダー歌舞伎”が見られる日が来るかも!?
2019年06月07日歌舞伎俳優の中村獅童とバーチャルシンガー初音ミクがコラボする「超歌舞伎」が8月、京都・南座に初登場。公演に向けて、出演の中村獅童、澤村國矢が意気込みを語った。「南座新開場記念 八月南座超歌舞伎」チケット情報2016年よりニコニコ超会議で上演を重ねてきた「超歌舞伎」は、NTTによる最新の情報通信技術を用いて行う新たな歌舞伎興行。今回の「八月南座超歌舞伎」は、『超歌舞伎のみかた』、中村獅童と初音ミクによる新作舞踊『お国山三 當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)』、今年のニコニコ超会議で上演した『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』を新たな演出でお届けする三本立て公演。またリミテッドバージョンでは『今昔饗宴千本桜』のみを、別配役で上演する。初演より出演している獅童は「歌舞伎を観たことがない若者を振り向かせることが中村獅童の使命と思っておりますので、伝統を守りつつ革新を追求するスタイルはこれからも貫き通したいです。今まで歌舞伎を観たことがないような方々も、いつの間にか“大向う”の掛け声が上手になってきていて。NTTさんにも“電話屋”という屋号ができました(笑)。毎年最後には燃え尽きて、何とも言えない感動が味わえる。南座でもそんなお芝居を作りたいと思っております」と力を込める。同じく初演より獅童、初音ミクの敵役として共演している國矢は「超歌舞伎の1か月間公演は初めてなので、どんな公演になるのか楽しみです。それとともに、リミテッドバージョンでは獅童さんの役を演じますので、獅童さんがお客様を燃え上がらせたあの魂を引き継いでやらなければならないプレッシャーに押し潰されそうですが、全身全霊で臨みたいと思います」と意気込みを語った。初の劇場公演となる今回、獅童に構想を尋ねると「初音ミクさんと宙乗りがしたくて、今ミクさんを説得しているところです。ご本人のお返事待ちです(笑)」とにっこり。通常の歌舞伎公演とは異なる、映像とコラボした歌舞伎ということでの見どころも多い。「回を重ねるごとにデジタルも進化している。ミクさんの踊りもどんどん上達されています(笑)。陰で並々ならぬご努力をされているのを見て、我々も身が引き締まります。また、歌舞伎ならではの色彩美には僕もすごくこだわっていて。日本特有の伝統色や歌舞伎のお化粧法も楽しんでいただければと思います。お客様参加型の演目ですので、歌舞伎を観たことがない若い方はもちろん、いつも南座にお越しいただいているお客様にも一緒に盛り上がっていただけるとうれしいです」。南座新開場記念「八月南座超歌舞伎」は8月2日(金)から26日(月)まで京都・南座にて。6月5日(水)23:59までプリセール受付中。6月6日(木)一般発売。
2019年06月04日永遠のベストセラーで古典の名著「歎異抄」を初めてアニメーション映画化する『歎異抄をひらく』。この度、本作に出演する人気声優たちからコメントが到着。新たな場面写真も公開された。鎌倉時代、1200年代初め。貧しい農家に生まれながらも賢く利発な平次郎は、ある日、親鸞聖人と出会い、多くを学び成長していく。やがて京に戻った親鸞聖人を追って故郷を離れた平次郎は、「唯円」という名を授かり、仲間たちとともに親鸞聖人のもとで仏教を学ぶ。そんな中、かつての友人が苦境に立たされていると知った唯円は、なにも出来ない自分への無力感にとらわれ苦悩する。なぜ、善人よりも悪人が救われるのか?人は、なぜ生きるのか?「すべての人間が悪人であり、救われるために条件はない」という親鸞聖人の言葉の真意が、解き明かされていく――。「善人なおもって往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」という一文で知られる古典文学の名著「歎異抄」は、司馬遼太郎や西田幾多郎らの愛読書としても有名。本作では、この歎異抄の著者と言われる唯円が親鸞聖人と出会い、仲間たちと共に迷い悩みながら、成長する姿を描いていく。また、登場キャラクターの声は、豪華な声優陣が担当。のちに「歎異抄」を著す唯円役には、「アイドリッシュセブン」の増田俊樹。唯円とは幼なじみで同い年の壮賢役を、「黒子のバスケ」「Free!」の細谷佳正。2人の幼なじみ・権八役を「フリージング」の市来光弘。権八の妹・アサ役を「HUGっと!プリキュア」キュアアンジュ役の本泉莉奈。ほかにも、親鸞聖人の弟子たちに、三木眞一郎(慧信房役)、白井悠介(燈念役)、伊藤健太郎(明法房役)。そして親鸞聖人役は、俳優・石坂浩二が演じる。今回、アフレコした感想や本作の見どころを語るコメントが到着。キャストたちの作品への熱い想いに注目だ。※一部抜粋石坂浩二こんな大きな哲人を演じるのは初めてです。素晴らしく美しい画面に負けぬ様に声で表現する難しさを感じました。ましてや、あの親鸞聖人の言葉です。時代感、人間一人一人がまだ強かった時代を、上手く滲ませる事が出来ていたらいいなと思います。作品は素晴らしいものです。ぜひご覧ください。増田俊樹純朴でありながらも探究心を持った青年像を意識し、常に自身と向き合い考え続けることで、教えをさらに深く知っていく彼らしい直向きさを演じるように心がけました。この作品の唯円達の生き様を見ていただき、彼らの生き方を感じ、観ていただいた皆様の生き方に少しでも変化が生まれると嬉しいです。考え方ひとつ変えるだけで世界のあり方が変わります、そんなひとつのきっかけになると嬉しいです。細谷佳正物語の主人公である平次郎の静的な雰囲気が引き立つように、『まずは行動してみる』という動的なキャラクターとして壮賢が存在できたらいいなと考えていました。僕もこの物語の中の少年たちにとっての親鸞のように、本や映画、先人の言葉に意識を傾けて来ましたし、今もそれを吸収しながら生きています。僕自身は、自分が良いと感じる多くのことから良いところを取捨選択し、自分に取り入れていますが、『自分以外の何かに対し(ある回答)を求める』という行動は、少年少女が大人になって行くなかで通って行くことなのだろうなと、アフレコをしながら思いました。。本泉莉奈純粋無垢で無邪気な少女時代と、成長し再会した時との差が出るよう意識しました。環境や境遇と共に変化していく彼女の思いを感じていただけたら幸いです。観ていただいた皆様にはぜひ「幸せ」とは何か、改めて見つめ直す機会にしていただければと思います。この作品を通して感じたものが、日々の生活の中で少しでも良い影響に繋がれば嬉しいです。市来光弘全ての人間が悪人、悪人こそ救われるべき…という言葉には考えさせられるものがありました。今回出演するまで『歎異抄』を知らなかったのですが、調べてみると歴史が深く、いろいろな研究がされていることを知りました。難しい題材ではありますが、アニメーションになることによって、理解がしやすいものになったのではないかと思います。目と耳で素直に楽しんでいただけたら嬉しいです。三木眞一郎『歎異抄』をわかりやすく、その上で登場人物たちの成長物語にもなっておりますので、あまり構えずにご覧いただければと思います。白井悠介最初、燈念は唯円のことを気にくわない後輩として少し意地悪な態度をとるのですが、悪くなりすぎないように気を付けながら演じさせていただきました。唯円がどのようにして大人へと成長していくのかが見どころです!そしてその道中で出会う人々がどう影響を与えていくのかも見どころだと思います!伊藤健太郎僕自身、今作で初めて『歎異抄』に触れたので、新鮮でした。長い年月読み継がれてきた書物には、先人達の知恵と教えが詰まっているのだなぁと、改めて感じることが出来ました。純粋にアニメーション映画を楽しんでもらいながら、今まで自分が触れたことのない教えや物語を知ってもらえるいい機会になればと思います。『歎異抄をひらく』は5月24日(金)よりシネマート新宿、角川シネマ有楽町ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2019年05月17日中村獅童念願の企画、オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』が、ついに5月11日(土)、その幕を開ける。歌舞伎では初となる倉庫と新宿歌舞伎町での公演。演出の赤堀雅秋とともに、創作真っ只中の稽古場で話を聞いた。【チケット情報はこちら】『女殺油地獄』といえば、これまで数々の名優によって演じられてきた近松門左衛門の傑作。借金で首が回らなくなった放蕩息子の与兵衛が、金欲しさがゆえに親身にしていたお吉を殺めてしまう。獅童は「今起きてもおかしくない事件」と表し、「赤堀さんは日常を切り抜くのが非常に上手な演出家さん。これも殺しは殺しですが、どこかその人たちの日常というか、気づいたら殺人鬼になってしまったような……。そういった日常を淡々と見せていければと思っているんです」と続ける。赤堀も「表現する場所が演劇だろうが、映画だろうが、今回であれば歌舞伎だろうが、僕がやっているのはただ単に人間を見せていく、目の当たりにしていただくということだけ」と、歌舞伎の現場でも普段と変わらぬ姿勢を貫く。さらに「だからものすごく地味だと思いますよ」と笑い、確かに稽古風景を見ても、派手な仕掛けやアクションは皆無。ただ通行人役の俳優に対しても、「エキストラみたいな芝居をしないで」と声をかけるなど、すべての登場人物を生きた人間へと変化させていく。注目の共演者には、大人計画の荒川良々が歌舞伎に初参加。荒川と歌舞伎の相性について、「めちゃくちゃいいと思いますよ」と赤堀も太鼓判を押す。「ただ古典と言われるものも、もとは歌舞伎俳優さんがゼロからつくり出したものですよね。その点、荒川くんもまず“荒川くん”という素材がそこにあって、彼がお客さんに対して何をやったら1番面白いかをゼロから考えていく。そのつくり方は歌舞伎であろうが、普段とまったく変わらないと思います」獅童にとって荒川は長年の友であり、待望の歌舞伎初共演。荒川の稽古場での様子について、「全然違和感がないんですよ。白稲荷法印というインチキ祈祷師の役で、もちろんひとつの型はあるんですが、それをあの人が自分なりの捉え方で演じた時のインパクトがものすごくて!」と驚きを隠せない。さらに赤堀も「だからこれを機に、普段歌舞伎を観ない人にむしろ来て欲しいですね。こんなに面白いものだとか、こんなにゾクゾクするほどカッコいいものだとか。僕らが歌舞伎の入り口になれたら、それはすごく嬉しいことだと思います」と期待を寄せた。公演は5月11日(土)から17日(金)まで、東京・天王洲アイル 寺田倉庫、5月22日(水)から29日まで(水)東京・歌舞伎町 新宿FACEで上演。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年04月26日中村獅童が倉庫、さらには新宿・歌舞伎町での歌舞伎公演に挑む話題作、オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』。映画監督、俳優としても活躍する赤堀雅秋が、初めて歌舞伎の脚本、演出を担う。コクーン歌舞伎『四谷怪談』(2016年)で演出助手を務めて以降、獅童と親交を深めてきたという赤堀。この異色の組み合わせから生まれる歌舞伎とはいかなるものなのか。ふたりに話を聞いた。【チケット情報はこちら】“伝統と革新”の精神で、これまでチャレンジングな企画を次々と打ち立ててきた獅童。このオフシアター歌舞伎も、獅童が長年あたためてきた企画のひとつだ。「20代でニューヨークの舞台に立った時、いろいろな演劇のスタイルがあることを知りましたし、また幼少期に観た唐十郎さんのテント芝居など、アングラに対する憧れも自分の中にはあったと思います。そういった影響、そして今自分がやるべきことを考えた時、倉庫で歌舞伎をやってみたいなと。古典を守りつつ革新を追求する。そんな自分なりの生き方を追求していく上で、“獅童らしい”スタイルをつくっていく。そのためにもこの企画を成功させて、続けていきたいと思っているんです」『四谷怪談』の現場に参加したことで、歌舞伎に対する考えが大きく変わったと言う赤堀。「青臭い言い方ですけど…」と前置きした上で、「歌舞伎も自分たちの演劇も“魂”は変わらない」と語る。そしてその思いは、自ら演出を手がける本作でも同じようで、「なにか奇をてらったものをやろうとも思いませんし、極めてアナログに、それでもお客さんの心にちゃんと届くような作品を、歌舞伎と寄り添いながらつくっていけたらと思います」と続ける。倉庫での歌舞伎公演を考えた時、獅童の頭にパッと浮かんだ演目がこの『女殺油地獄』。油まみれの凄惨な殺しの場面が大きな見せ場となるだけに、赤堀は「僕が人殺しの作品ばっかりやっているから声をかけられたのかな」と笑う。一方獅童は、「歌舞伎のダークな部分を見せたい」とひと言。さらに「現代で起こってもおかしくない、事件性をもった演目ですからね。こういった危険な演目をアングラな倉庫、そして歌舞伎町でやることに大きな意味を感じています」と明かす。また四方を客席に囲まれた舞台を採用したことについて、「手を伸ばせば届くような、ライブ感のある、生々しい感覚のお芝居になればいい」とは赤堀。獅童も「観客がこの事件を“目撃”してしまったようなものになれば」と期待を寄せる。公演は5月11日(土)から17日(金)まで、東京・天王洲アイル 寺田倉庫、5月22日(水)から29日まで(水)東京・歌舞伎町 新宿FACEで上演。一般発売は4月6日(土)。前日の4月5日(金)10時よりチケットぴあにて先着先行プリセールを受付する。取材・文:野上瑠美子
2019年04月04日京都最大の花街、祇園甲部の芸妓と舞妓が新作の舞を披露する「都をどり」。明治5年の創始以来、今年で147年目。京都の春を告げる風物詩だ。現在、祇園甲部歌舞練場が耐震対策による休館中のため、今年は67年ぶりに京都・南座で上演することに。『御代始歌舞伎彩(みよはじめかぶきのいろどり)』と題して、全8景仕立てで贈る。「南座新開場記念 都をどり」チケット情報今年は新天皇ご即位を寿ぎ、『御代始歌舞伎彩』という題名に。後白河院の御所に集う白拍子や遊女など女性芸能者たちの歌舞を描いた第3景『法住寺殿今様合(ほうじゅうじどのいまようあわせ)』、桂離宮を舞台に美しい秋の風情を表現した第6景『桂離宮紅葉狩(かつらりきゅうもみじがり)』、そして門跡寺院である桜を背景に、全員登場して華やかなフィナーレを繰り広げる第8景『大覚寺桜比(だいかくじさくらくらべ)』と、京都が天皇や皇室にゆかりの地であるということを改めて感じられる演目が揃う。また、出雲阿国と名古屋山三の斬新な舞を見せる第4景『四条河原阿国舞(しじょうがわらおくにのまい)』や、南座付近のお茶屋の座敷で繰り広げられるしっとりした舞を披露する第7景『祇園茶屋雪景色(ぎおんちゃやのゆきげしき)』など、南座や祇園を舞台にした演目も登場する。今年の総をどりの着物は、67年前に南座で開催された総をどり衣裳を現代版にアレンジした復刻版で、文様の雪輪のまわりにおめでたいことの兆しとして現れる瑞雲や松竹梅、桜や紅葉などの草花を配置。帯も毎年、異なる模様で、今年は新天皇ご即位に祝賀の意を込めて「小槌に分銅」とおめでたい絵柄に。総勢16名で魅せる総をどり。そろいの着物でずらりと舞台に並ぶ様は壮観だ。また、今年は来場者全員に芸妓・舞妓の写真が掲載された「写真帳」もプレゼント。「都をどり」は京都・南座にて4月1日(月)~27日(土)まで上演。チケット発売中。取材・文:岩本和子
2019年04月01日夜桜の、幻想的な景色のなかで上演される能──。そのえもいわれぬ美しさで多くの人々の心を捉えてきた靖国神社の「夜桜能」が、今年27回目の開催を迎える。その発案者で企画を手がける宝生流能楽師・田崎隆三に話を聞いた。【チケット情報はこちら】「とにかく毎年、お天気が問題で」と、冒頭から苦笑いの田崎。「野外での能は夏の催しとして一時ブームになりましたが、春に、というのは少ないんです。しかし、桜の下での上演は視覚的に遥かに美しい。行ってみたら良かった、という方が多く、当初はひと晩の上演が、その後三晩連続で開催するまでになり、さらに、能楽堂の公演よりも圧倒的に若いお客さまが多く来てくださるように」と明かす。能楽の未来のためには、もっと若い人たちが足を運びやすい催しを、という強い思いもあった。「能は難しい」と先入観を持つ初心者をも感動させる、その秘密は──?「能では珍しかったイヤホンガイドの解説を導入したり、動きの少ないものは避けたりと、いろいろ吟味して演目を決めています。今年の第一夜は『祇王』。私と甥の田崎甫とふたりで仏御前、祇王を演じますが、彼は昨年、宗家の内弟子を卒業、能楽師として独り立ちしたこともあって、両ジテ(重要な役柄をふたりで演じる)の曲にしました。第二夜は、宝生流宗家による『鞍馬天狗』。牛若丸や子どもたちが活躍する人気の曲です。第三夜も、梅若実さんが『恋重荷』と比較的わかりやすい曲目を演じられます」という。三夜とも舞囃子、狂言も上演されるとあって、夜桜を堪能しながら、肩肘張らずに本格的な能楽体験ができるまたとないチャンスとなる。ともに舞台に立つ田崎甫に「夜桜能」への思いを聞くと、「そもそも、能は屋外で演じられるものでした。建物の中では、その魅力は半減してしまう。自然とともにあった、能本来の形を味わっていただけたら、と思います。しかも桜の花の下という、これ以上ない景色。演じるほうにも、普段とは違う高揚感、その場に酔いしれる感覚があるかもしれませんね」。『祇王』について尋ねると、「自分なりの解釈ではありますが、平清盛に寵愛されたふたりの遊女が舞を競い合い、せめぎ合うことで、ふたりの舞が合う──。先生と一緒に舞う機会はあまりないので、楽しみです」と、笑顔に緊張感をにじませた。第27回奉納 靖国神社 夜桜能は4月2日(火)・3日(水)・4日(木)、靖國神社能楽堂及び内苑にて。会場は気象状況により新宿文化センターに変更の可能性あり。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2019年03月18日千葉の市原湖畔美術館では、古典日記文学『更級日記』に着想を得た、12組の女性アーティストによるグループ展「更級日記考―女性たちの、想像の部屋」を4月6日から7月15日まで開催する。日本文学の古典として名高い「更級日記」は、今から1000年前の平安時代に13歳の少女、菅原孝標女が同美術館の所在地である、現在の市原市にて綴り始めた日記と言われている。現実世界の暮らしに一喜一憂しながらも、少女時代の物語世界への夢を抱き続けた、ひとりの女性の約40年が綴られ、その世界観は現代に生きる女性の共感を大いに呼ぶだろう。女性にとって、「日記」とはどのような表現だと言えるか、それは個人的でありながら、他者や世界とつながるもの、また日々の記録でありながら想像が拡がる、創作の部屋のような場所なのではないか。そういったテーマを背景に、本展では12組の女性アーティストによる多様で、独自で、そして親しみを感じられる、想像の世界を紹介。「アート」にとどまらず、デザイン、マンガ、お笑い、ダンスなど、多種多様な世界で活躍する女性アーティストたちが一堂に会し、手書きの日記からインスタレーションに映像作品、刺繍や手芸、写真など、多様なメディアの表現世界が楽しめる。碓井ゆい「empty names」撮影:ミヤギフトシ展示作品には、碓井ゆいによる、フランスの香水「MITSOUKO」に着想を得て自己と他者の関係をテーマに制作した「empty names」、大矢真梨子による、教会で撮り続ける作品シリーズ「10 flowers」、今日マチ子による、デビュー作「センネン画報」の原画、荒神明香による、夜な夜な収拾した事故車のガラスの破片をシャンデリアに再生した作品「toi,toi,toi」、鴻池朋子による、3.11の東日本大震災以降ライフワークの一つになっている「物語るテーブルランナー」、五所純子による、2010年1月1日よりブログで公開をはじめた日めくりカレンダーに女性誌のコラージュをした手書きの日記「ツンベルギアの揮発する夜」、光浦靖子による、長年のあいだコツコツと制作を続けている手芸作品が並ぶ。光浦靖子「メイランド」撮影:ただ小林エリカ「Your Dear Kitty, 2 Diaries」©Erika Kobayashi Courtesy of Yutaka Kikutake Galleryまた、UMMMI.による、遠距離恋愛のカップルの日記的コミュニケーションを描く「ROSE CITY」の映像インスタレーション、小林エリカによる、アンネ・フランクと実父の日記を題材に扱った映像作品「2 Diaries」を中心としたインスタレーション、髙田安規子・政子による、刺繍を施した作品を組み合わせたインスタレーションが展開。矢内原美邦は、本展のために書き下ろした短編の一部、映像作品を展示する他、会期中に展覧会の内容を反映させたパフォーマンスを行い、渡邉良重は、展覧会広報物のグラフィック制作を担当する他、自身がこれまで大切に集めていた身の回りの品々を用いた作品を展開する。渡邉良重「わたしがそれらにかえしたもの 」 撮影:戎康友12組それぞれの想像の部屋を覗き込むような展覧会となる。なお、展覧会に関連するイベントも多数開催予定。詳細は決まり次第、美術館ホームページにて発表される。【展覧会情報】更級日記考―女性たちの、想像の部屋会期:4月6日~7月15日会場:市原湖畔美術館住所:千葉県市原市不入75-1時間:平日10:00~17:00、土曜・休前日9:30~19:00、日曜・祝日9:30~18:00※最終入館は閉館の30分前まで休館日:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)料金:一般800円(700円) 大高生・65歳以上600円(500円)※( )内は20名以上の団体料金。中学生以下・障害者手帳をお持ちの方とその介添者1名は無料
2019年03月08日V6の三宅健が、25日に放送されたラジオ番組『三宅健のラヂオ』(bayfm/毎週月曜24:00~24:30)で、歌舞伎俳優の市川海老蔵と共演している歌舞伎について語った。現在公演中の六本木歌舞伎第三弾『羅生門』で、歌舞伎に初挑戦している三宅は、「恐ろしいですよ。私はもう気が気じゃないです。気もそぞろ。眠れない」と心境を吐露。稽古をするにつれて、歌舞伎のセリフが増えていったそうで、「歌舞伎俳優のみなさんのセリフを聞きながら真似をするんですけど難しいんですよ」と明かした。また、20日間ほどの稽古について、「こんなに目まぐるしく台本が変わることは経験したことがない。作っては壊し、作っては壊しという現場に常々対応されている方ばかりなので、みなさんの対応力にビックリ。素晴らしいなと思うけど、それについていくのがやっと」と苦労を語り、「ダンスをやってきたって、何の役にも立たないの。今は自分のできる限りのことをやるしかないんですど、本当に難しい」と話した。共演している海老蔵については、「海老蔵さんはすぐに覚えちゃうし、すぐに出来ちゃう人だから、稽古初日に『明後日から本番でもいいよ』なんておっしゃってましたけど、私はそうはいきませんって感じで」と尊敬の念を込めて話しつつ、「海老蔵さんが良いものを求める人だから、殺陣の型も新たなものになったりする。私の頭の中はキャパオーバーです」とポツリ。最後は、「僕のファンの中には、歌舞伎を初めて見る方もいらっしゃると思うけど、この六本木歌舞伎は歌舞伎を見たことがない方にも優しく作られている。歌舞伎ってこんなにすごいんだ、海老蔵さんをはじめとする歌舞伎俳優さんってこんなにすごいんだということを知っていただきたい」とアピールしていた。
2019年02月28日グランフロント大阪のナレッジキャピタル1階にあるメルセデスブランドの発信拠点「Mercedes me Osaka」にて2月21日、国立文楽劇場・うめだ文楽とコラボしたラッピングカーの展示がスタートし、除幕式が行われた。「うめだ文楽2019」チケット情報今回ラッピングされたのは、3月29日(金)よりグランフロント大阪北館4階のナレッジシアターにて上演される「うめだ文楽2019」の上演演目『義経千本桜 ~道行初音旅~』と『二人三番叟』の世界を描いたアートワーク。除幕式では人形遣いの吉田玉勢(たませ)と吉田簑紫郎(みのしろう)らが『義経千本桜 ~道行初音旅~』に登場する文楽人形の静御前と佐藤忠信を操り、パフォーマンスを行った。『義経千本桜 ~道行初音旅~』は、源義経が吉野山に身を隠しているという噂を聞き、桜が満開の吉野山までやってきた静御前と家臣・佐藤忠信の物語。初回よりうめだ文楽のビジュアルアートワークを担当する池田壮平は「うめだ文楽が5周年ということで、華やかさを一番念頭に置いてデザインしました。メインのフロント部分は、静御前を真ん中に、忠信、狐という構図で構成させていただきました。物語では、忠信が実は狐の化けた姿で、鼓が狐の親。鼓に寄り添いたいという気持ちを表現するためにそういった形にしました。また、鼓から広がる音色というものを着物に見立てて、全体を包み込むように車体をデザインしました」と、デザインで注力したポイントを紹介。そんな池田の話を聞き、前回公演からうめだ文楽のリーダーを務め、静御前を操る簑紫郎は「すごく斬新で素敵なデザインだなと思います。デザイナーさんがお芝居をよくご存知だからこその構成で、素晴らしいですね。本番を観ていただく前に、この斬新なコラボレーションを見ていただいて、気持ちを高めていただければ」とコメント。忠信を操る玉勢も「メルセデスのようなカッコいい車に文楽を現代アートとして表現してくださったことをすごく光栄に思います。世界中の方々に見ていただけるとうれしく思います」と喜びを語った。コラボラッピングカーの展示は3月31日(日)まで。また、メルセデス ミーに併設のDOWNSTAIRS COFFEEでは、期間中コラボドリンク「桜ヨーグルトソーダ」「ホワイト抹茶ラテ」を提供中。ご注文された方にはオリジナルコースターをプレゼント。「5th Anniversary うめだ文楽2019」は、3月29日(金)から31日(日)グランフロント大阪北館4階 ナレッジシアターにて上演。チケット発売中。取材・文:黒石悦子
2019年02月27日歌舞伎俳優の市川海老蔵とV6の三宅健が出演する六本木歌舞伎第三弾『羅生門』の公開舞台稽古が22日、東京・EXシアター六本木で行われた。初めて歌舞伎を見る人でも楽しめる仕掛けが散りばめられた舞台に、報道陣からも何度も笑いが起こった。六本木歌舞伎は、海老蔵の新しい歌舞伎を作っていきたい思いから2015年に始まった。第3弾となる今回は、芥川龍之介の代表作『羅生門』を、第1弾から引き続き三池崇史監督が演出し、海老蔵に加え、歌舞伎初挑戦の三宅が出演。生きるための悪という人間のエゴイズムを描いた文学作品が、新たな解釈でよみがえる。相次ぐ天変地異で人々は飢え、生きるためには手段を選ばぬ世の中。ある日、行き場をなくした下人(三宅)が羅生門の楼上に登る。そこで下人が目にしたものは、折り重なる死体の中、死人の髪を抜く老婆(海老蔵)の姿であった。聞けば、髪を抜いて金にするという。下人もまた生きるために、老婆の衣を剥いで駆け出すが、そこに鬼=茨城童子(市川右團次)が現れ、切り捨てられてしまう。その後、海老蔵が本人役で登場し、下人に声をかける。「市川海老蔵です。歌舞伎俳優です」などと話しかけて下人を混乱させるユニークな掛け合いの中、海老蔵は下人に、渡辺綱(海老蔵)の家臣・宇源太として別の人生を生きてみることを提案。舞台上に消し幕が現れ、三宅は下人から宇源太となり見得を切り、花道も使って渡辺綱の行方を追っていく…といった展開だ。海老蔵は渡辺綱、老婆、市川海老蔵(本人役)、三升屋兵庫之助三久の4役、三宅は下人、宇源太の2役に挑戦し、それぞれの役になりきって迫真の演技を披露。海老蔵は、全く異なるキャラクターを見事な演じ分け、三宅は習得した見得のほか、宇源太を演じている場面では、茨城童子らとの刀を使った立ち回りの見せ場も。六本木歌舞伎ではお馴染みになりつつある海老蔵の本人役の登場シーンでは、三宅とのユーモアあふれる掛け合いに報道陣からも笑いが。海老蔵に促されて三宅がモノマネを披露する場面もあり、毎回違ったやりとりが繰り広げられそうだ。そのほかにも、出演者が役を演じながらわかりやすく解説するシーンや、三宅のキャラクターを生かしたシーンなどもあり、歌舞伎初心者や三宅のファンが楽しめる工夫が施されている。六本木歌舞伎第三弾『羅生門』は、東京公演はEXシアター六本木にて2月22日~3月10日、大阪公演はオリックス劇場にて3月13日~17日、札幌公演はわくわくホリデーホール(札幌市民ホール)にて3月21日~24日。
2019年02月22日歌舞伎俳優の市川海老蔵、V6の三宅健が22日、東京・EXシアター六本木で行われた六本木歌舞伎第三弾『羅生門』の公開舞台稽古に参加した。六本木歌舞伎は、海老蔵の新しい歌舞伎を作っていきたい思いから2015年に始まった。第3弾となる今回は、芥川龍之介の代表作『羅生門』を、第1弾から引き続き三池崇史監督が演出し、海老蔵に加え、歌舞伎初挑戦の三宅が出演。生きるための悪という人間のエゴイズムを描いた文学作品が、新たな解釈でよみがえる。ついにこの日、新たな『羅生門』がお披露目された。海老蔵は渡辺綱、老婆、市川海老蔵、三升屋兵庫之助三久の4役、三宅は下人、宇源太の2役を演じ、それぞれの役になりきって迫真の演技を披露。海老蔵は、見事な演じ分けで魅了し、三宅は力強い見得のほか、宇源太を演じている場面では、茨城童子らとの刀を使った立ち回りの見せ場も。また、海老蔵が本人役で登場し、下人役と宇源太役の三宅に話しかけるシーンでは、2人のユーモアあふれる掛け合いに会場から笑いが起こった。歌舞伎初挑戦の三宅は「海老蔵さんをはじめとする歌舞伎の世界の方々とご一緒させていただき身の引き締ます思いです。みなさんとお芝居をさせていただく中で、時代も空間も飛び越えた真に迫る表現力のすごさを目の当たりにしています。来る日も来る日も修練を積み重ね、歌舞伎俳優という人生を生きて来た人のすごさを今この眼で見届けられることに感動しています」と心境を告白。「そんな方々とご一緒させていただけることに日々感謝と敬意を払い、ひと公演ひと公演を噛み締めながら大切に演じていきたいと思います。そんな厳しい荒波の中で揉まれて、この公演が終わった時には一皮も二皮もむけたタフな漢になれるように精一杯努めたいと思います。そして、強面な見た目とは裏腹にとっても優しい人柄の三池さん。三池さんの描く独創的な羅生門の世界にこの1カ月どっぷりと浸かり私の身も心も捧げたいと思います」と意気込んでいる。なお、東京公演はEXシアター六本木にて2月22日~3月10日、大阪公演はオリックス劇場にて3月13日~17日、札幌公演はわくわくホリデーホール(札幌市民ホール)にて3月21日~24日。
2019年02月22日3月2日(土)の群馬・ながめ余興場を皮切りに、全国12か所を巡る「中村七之助 特別舞踊公演2019」。本公演で舞踊『汐汲』をひとりで務め、七之助とともに中村屋を盛り立てる中村鶴松に話を聞いた。【チケット情報はこちら】一門おなじみの巡業公演で、鶴松が1演目を担うのは初めて。一昨年の大学卒業後、芸道1本となり、昨年は年間通して舞台に出続けた。1月の「新春浅草歌舞伎」では女形4役を務め、今回は1演目を任されたことで、立役・女形の中から自身で女形の舞踊を選んだ。『汐汲』は、能『松風』による海女の悲恋を描いた演目。日本舞踊を嗜む人なら誰しも踊る演目だけに、舞踊の基礎が試される。女形の見本でもあり、一番身近で尊敬する先輩でもある七之助には、舞踊をフィギュアスケートの採点になぞらえ、こうアドバイスされたという。「踊りは芸術点と技術点があると思う。鶴松は技術点がある方だが、芸術点、いわゆる魅せる踊りがまだまだ」。また坂東玉三郎からは「女形は襟を一瞬見ただけでも役柄の違いがわかる衣裳の着方を真似なさい」と声がけされた。『汐汲』をいずれも得意とする玉三郎、七之助の助言を受け、今回は長めの尺で踊ることから衣裳、小道具の気配りはもちろんのこと、佇まいの美しさ、魅せる女形を追求する。『汐汲』の前は、七之助、鶴松による『芸談』。毎年フジテレビ系で放映される密着番組でも公開していない一門の秘蔵映像が楽しめる。また10歳で中村屋の部屋子となった鶴松は、児童劇団の子役時代の写真も披露されるという。そのほか『汐汲』、七之助が四役早替りを務めるハイライトの『隅田川千種濡事』の簡単な解説も行う。立役・女形ともに演じるが、鶴松は「最近、女形の魅力にハマっている」のだと語る。「このところ玉三郎さんとご一緒いただく機会が多く、いくつになっても勉強し続ける姿勢を見習いたいです。“役者の色”とは、人生の歩みそのものではないかと。役柄は古風でも、玉三郎さんや七之助さんには現代的な美しさがあります。立ち姿だけでもキレイと思っていただけるような美しさを磨いていきたいです」。「中村七之助 特別舞踊公演2019」は、3月2日(土)から3月19日(火)にかけ、群馬、宮城、埼玉、長野、石川、福島、大阪、広島、千葉、岐阜(2会場)、愛知にわたる全国12会場にて公演を行う。チケットは発売中。取材・文:横山由希路
2019年02月22日3月の博多座は花形歌舞伎が登場。片岡愛之助はじめ、尾上松也、中村壱太郎ら花形役者が揃い踏みで「鯉つかみ」を上演する。開幕を前に、博多座への登場は4年半ぶりとなる片岡愛之助が公演に対する思いや意気込みを語った。【チケット情報はこちら】4年半前も『鯉つかみ』に出演した愛之助だが、今回は「通し」での上演となるため雰囲気が変わると語る。「歌舞伎は“見取(みどり)狂言”と言って、異なった演目の見せ場となる場のみを上演するケースが多いんです。それはそれで見どころたっぷりで面白いのですが、“通し狂言”はストーリーを追って上演するので、歌舞伎を初めてご覧になる方でもわかりやすいのが魅力ですね。そして特にこの作品は、本物の水を使った立ち廻り、宙乗り、早替りなど「ケレン」と呼ばれる演出がたっぷり。エンターテインメント性豊かな舞台なので、きっと楽しんで頂けると思います」。客席前列には実際に水が飛んでくるシーンもあるそうで「僕がバシャバシャ動き出したら、皆さんビニールをさっと上げられて。アトラクションのような感覚も魅力かも(笑)」と笑顔で続けた。そういった様々な演出の他、愛之助本人が十役を演じ分けることも話題となっている。「それぞれのキャラが際立っておりますから、逆に演じやすいようにも感じます。なかでも注目して頂きたいのは、奥方漣と余呉左衛門かな。船の上での恋模様がなかなか面白いですけど、いわゆる僕と僕、なんですよ(笑)。そこはちょっと苦労というか工夫したかな。その恋がどう盛り上がるのか…。それは舞台でお楽しみください(笑)」「演じてて思うのは、歌舞伎って飽きないんですよね。説明をしすぎてなくて、お客様が考える行間というのがちゃんと空いている。だから何回見ても新たな発見がある」と歌舞伎の魅力を語る愛之助オススメの観劇方法は「願わくば、イヤホンガイドなど借りて歌舞伎の豆知識なども頭に入れ、ポイントを押さえた上で、2度めは無しで観て頂く。それが歌舞伎をより楽しむ方法ですかね」尾上松也、中村壱太郎といった花形のフレッシュな魅力も楽しみのひとつ。「壱ちゃんとはご一緒することが多いので、あうんの呼吸で凄く楽ですし、松也くんは逆に久しぶりの共演となるので、どんな風に反応しあえるのかが楽しみ。舞台は役者同士のキャッチボールはもちろん、お客様とのキャッチボールが成立して初めて作品ができあがると思ってます。“熱い”博多のお客様とのキャッチボールを今から楽しみにしております!」見どころ満載の「三月花形歌舞伎」は3月3日(日)から24日(日)まで博多座にて上演。チケット発売中。
2019年02月15日「初世尾上辰之助 三十三回忌追善狂言」として『義経千本桜 すし屋』『暗闇の丑松』『名月八幡祭』を上演する二月大歌舞伎。尾上松緑が、父・初世辰之助(三世尾上松緑を追贈)への思いを、合同取材会で語った。【チケット情報はこちら】「父が死ぬまでの日数を、自分が超えるとは思っていませんでした。死ぬか、役者を辞めるかだと考えていた」と語る松緑。初世辰之助が40歳の若さで亡くなったのは1987年のこと。松緑(当時、二代目尾上左近)は12歳だった。2年後には祖父・二世尾上松緑も他界。2月に44歳となる松緑は「40を超えてから、父だったら、祖父だったらどうだろうと考えるようになりました。33年経ち、父をご存知ないお客様もいらっしゃるかもしれませんが、父という役者がこういうものを演じていた、ということを感じていただけるよう一生懸命勤めます」と意気込む。いがみの権太を演じる『義経千本桜 すし屋』は今回が初役。「権太には不良青年なりに親不孝を償わなければならないという気持ちがある。悪ぶっているけれどシャイなところが僕に近いと思います。祖父のイメージが強い役ですが、父の権太にも若さゆえの魅力がありました。(尾上)菊五郎のお兄さんのもとで音羽屋の権太をいちから勉強しながら、どこかに祖父、父、自分と続く“紀尾井町”らしさを出したいですね」『名月八幡祭』の縮屋新助役については「父は粋でいなせな役のイメージが強く、『名月八幡祭』なら(新助よりも)三次役の人だったかもしれませんが、2度か3度、新助をやった時、朴訥とした、人の良い田舎の商人が、恋をして自分の中で消化しきれなくなるという演じ方をしていました。最後は逆上する凄みもあり、強く印象に残っています。父は“陰”か“陽”かでいうと“陰”の強い役者で、後半に怒りを爆発させる役が得意でした。今回はその父と36年前に共演された(片岡)仁左衛門のお兄さんと(坂東)玉三郎のお兄さんが、三次役、美代吉役で出てくださいます。思いがけないことで有難いですし、おふたりにリードされながら自分なりの新助を作っていけたらと考えています」父が得意とした「後半に怒りを爆発させる役」として、松緑がほかに、自身も国立劇場で一昨年に演じた『坂崎出羽守』とともに例に挙げたのが『暗闇の丑松』の丑松。今回は菊五郎が演じる。「父は丑松や出羽守を演じる時、家でも機嫌が悪かった(笑)。一方、僕も昨年演じた『素襖落』のようなお狂言ものの時は祖父も父も普段からリラックスしていました。役者というのは演目によって変わるんだなと子供心に思った記憶があります。父、祖父が死に、自分も子供ができて感じるのは、実在の人物にしろ歌舞伎のために書かれた役にしろ、他人の人生を演じるのは結構な責任を伴うということ。だからこそ、『名月八幡祭』新助も『すしや』権太もそうですが、人間の心理を細かくえぐる役は面白いし、素敵だなと思うんです」公演は2月2日(土)より、東京・歌舞伎座にて。チケットは発売中。取材・文:高橋彩子
2019年02月01日「大阪が世界に誇る伝統芸能・文楽の魅力をより多くの人に知ってもらいたい」と、大阪の放送局とナレッジキャピタルがひとつになり、2015年に初開催されたうめだ文楽。その5周年記念となる『うめだ文楽2019』に向けて、1月28日、会場であるナレッジシアターが入るグランフロント大阪北館のUMEKITA FLOORにて、プレ・パフォーマンスが開催された。「うめだ文楽2019」チケット情報今回の上演演目『義経千本桜』の静御前と狐が、ランチタイムで賑わうフロアに登場。吉田簑紫郎、吉田玉彦、吉田簑之、吉田玉延が人形を操りながら練り歩き、サラリーマンやOLらに公演をPRした。パフォーマンスを終えて、本公演のリーダーを務める簑紫郎は「今回は5周年ということで初めての二演目。『二人三番叟』と『義経千本桜』を上演します。分かりやすくて華やかで、初めてご覧になる方でも頭の中を空っぽにして楽しんでいただけるような演目を選ばせていただきました。文楽って、最初はちょっと入りづらいかなとか、敷居が高いイメージを持たれている方も多いと思うのですが、若い人が多い梅田の中心でやることで、初めての方にも気軽に親しんでいただければ」とアピール。また、これまでの4年を通して「毎回、初めてご覧になる方が半分以上で、リピーターになってくださるお客様もいらっしゃいます。次は10回を目標に続けていけるように頑張りたい」と意気込みを見せた。『うめだ文楽2019』は、3月29日(金)から31日(日)まで大阪・グランフロント大阪 北館4F ナレッジシアターにて上演。『二人三番叟』、『義経千本桜 道行初音旅』の上演のほか、東儀秀樹、三浦しをん、桂南光、上田誠ら日替わりゲストとのトークショーもあり。チケットは発売中。取材・文:黒石悦子
2019年01月30日モーツァルトのオペラを、ヨーロッパの管楽アンサンブルの演奏に乗せて狂言師たちが演じる狂言風オペラシリーズ。2002年に始まり国内42公演、ドイツ7公演を重ねてきたこのシリーズに、昨年新たに能と文楽が加わり、まったく新しいステージとして誕生したのが『狂言風オペラ“フィガロの結婚”モーツァルト・管楽八重奏版』だ。笑いに加え、日本の伝統芸能とクラシック音楽のエッセンスを融合したこの舞台の再演がこのほど決定。製作発表記者会見が1月11日、大阪市内の大槻能楽堂で行われた。狂言風オペラ「フィガロの結婚」チケット情報昨年に引き続き芸術総監督は観世流能楽師、人間国宝の大槻文蔵が務め、8月に惜しくも亡くなった笛方藤田流の藤田六郎兵衛による脚本・演出を踏襲する。スイスより来日するクラングアート・アンサンブルが序曲や間奏曲などを演奏。伯爵を桐竹勘十郎(人形)、豊竹呂太夫(語り)、鶴澤友之助(三味線)、伯爵夫人を観世流シテ方、赤松禎友(能)、そしてフィガロ、スザンナほかを野村又三郎、茂山茂らの狂言方が演じる。「能の謡(うたい)と文楽の義太夫は、トーンも発声の仕方も違う。大いなるミスマッチと思っていましたが、舞台稽古の二日目に、これはいけると確信を持った。それぞれの役割分担がぴったりと合いました」と豊竹呂太夫。南北朝・室町時代に生まれた能と、泰平の江戸時代に生まれた文楽とでは、求められる“音”が異なる。この奇跡的な融合を実現した昨年の舞台を振り返り、大槻文蔵は次のように語った。「西洋のアンサンブルが、われわれの仲を取り持ってくれたような感じがします。そしてややもすれば水と油になりそうな西洋の楽器と日本の楽器も、こんなにうまく融合するのかというほどうまくいきました。もうひとつの成功のもとは、能面と人形が加わったこと。無機的な能面と人形の作り出す世界に沿って『フィガロの結婚』という物語の有機的な部分が生まれ“いかに真面目にやりながら面白いところが出てくるか”という味わいが、われわれの思った以上に出せたのではないかと思っています。六郎兵衛先生が遺したお仕事をさらに深める形で、面白い舞台を創りたいと思います」公演は、3月16日(土)愛知・豊田市コンサートホール、17日(日)山形・河北町総合交流センターサハトべに花、18日(月)青森・八戸市中央公会堂、20日(水)大阪・大槻能楽堂、21日(木・祝)滋賀・びわ湖ホール中ホール、24日(日)兵庫・あましんアルカイックホール・オクトにて。チケットは発売中。取材・文:金子真由
2019年01月23日企画・構成・総合演出をジャニー喜多川、演出を滝沢秀明が手掛ける舞台『滝沢歌舞伎ZERO』が2月3日(日)に開幕する。その製作発表会見が行われ、主演を務めるジャニーズJr.のSnow Man(岩本照、深澤辰哉、渡辺翔太、阿部亮平、宮舘涼太、佐久間大介)をはじめ、関西ジャニーズJr.の向井康二、正門良規、ジャニーズJr.の目黒蓮(宇宙 Six)、影山拓也、田中誠治が登壇した。【チケット情報はこちら】松竹株式会社の安孫子正副社長が、「『滝沢歌舞伎』の新しい出発になる」と話した今作。2006年の初演から滝沢が務めてきた主演は、本シリーズに8年連続で出演するジャニーズJr.の6人組「SnowMan」が引き継ぐ。その大役をうけてメンバー岩本は「まさかこんな日がくるとは」と気持ちを明かし「新しいスタートをきれるメンバーの一員になれることを嬉しく思います」と真摯に語ると、深澤は「Snow Manは滝沢くんがいたから今ここにいます」、渡辺も「僕たちは『滝沢歌舞伎』で育ちました」と振り返り、阿部は「滝沢くんと『滝沢歌舞伎』のファンの皆様に、この作品を受け継いだのがこのメンバーでよかったと思っていただけるものにしてみせます!」、宮舘は「全身全霊で生きている証を舞台に吹き込み、お客様に届けたいです!」、佐久間は「今持てる力をすべて出してます!」と意気込んだ。今作でやりたいことについて尋ねられた向井は「フライングはひとつの夢」と語りながらも「恐れ多いので引っ張るほうをやりたいです!」と笑いを誘う。目黒は「今回、変面(一瞬で“お面”を変える中国の伝統芸能)をやらせてもらえるそうなので、あの一瞬でマスクが変わる謎を解けることにびっくりしています」、影山は「前回、初出演したときに太鼓でソロの役をいただいたので、今回の(新演出である)“メカ太鼓”のメンバーに入って進化を観ていただけたら」、田中も「去年は太鼓のシーンで苦戦したので今年はパワーアップしたいです。(“メカ太鼓”メンバーに」立候補します!」と宣言し盛り上げた。また、今作への出演にまつわる滝沢とのエピソードを問われSnow Manが「“やるよ”とひとこと言われた」、向井が「“堂々とすればいいんだよ”と言われた」など披露するなか、正門は「僕は何も言われてない。ほんまに出るんかな…」とメンバーを笑わせ、場を和ませていた。本作のポスターのイメージは桜だが、「滝沢くんが“Snow Manは、桜が散るのではなく“舞う”ようにいろいろな場所で花を咲かせる、という意味も込めた”とおっしゃっていました」(岩本)と熱い思いが込められている。そんな本作は、京都・南座にて2月3日(日)から25日(月)、東京・新橋演舞場にて4月10日(水)から5月19日(日)まで上演。取材・文:中川實穗
2019年01月11日東京・銀座にある劇場「新橋演舞場」にて、2019年12月に新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』を上演することが発表されました。歌舞伎のみどころやキャスト・製作スタッフなどをご紹介します。原作漫画と歌舞伎の世界観を、同時に楽しんでみませんか。2019年12月新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』が上演決定!1982年2月号の『アニメージュ』で連載が始まった、宮崎 駿監督のアニメ『風の谷のナウシカ』。その2年後にはアニメーション映画となり、2019年12月に初めて歌舞伎として上演されることが決定しました。全7巻からなる原作漫画の世界を、昼夜通し上演される今回の歌舞伎。連載中に映画化された内容とは異なって、原作漫画のすべてが上演されます。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』のみどころ出典:『シネマ・コミック風の谷のナウシカ』( Studio Ghibli・H1994年3月号まで13年連載された原作漫画『風の谷のナウシカ』は、単なるSF漫画・ファンタジー漫画という枠を超えて、宮崎 駿監督のさまざまな思いが込められた大作。「王蟲(おーむ)」が花道を歩くのか?「メーヴェ(架空の飛行装置)」での飛行シーンはどう表現されるのか?架空の生物や巨大な武器兵器など、歌舞伎には登場しない要素があふれる『風の谷のナウシカ』を、どのように歌舞伎で表現するのかに注目です。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』キャストは?辺境の小国「風の谷」の族長の娘である主人公・ナウシカ役を尾上菊之助さん、ナウシカと対立する大国トルメキアの司令官・皇女クシャナ役を中村七之助さんが務めます。世界に知られるヒロインたちが、歌舞伎の女方ではどのように表現されるのか期待大です。ほかにも尾上松也さん、坂東巳之助さん、尾上右近さんの出演が発表されました。ナウシカ役:尾上菊之助さん尾上菊之助さんは、「通し狂言 増補双級巴 石川五右衛門」や「通し狂言 姫路城音菊礎石」で主演を務める歌舞伎役者。TBS系連続ドラマ「下町ロケット」では伊丹大役を演じ、歌舞伎の世界を超えて活躍しています。クシャナ役:中村七之助さん中村勘三郎の次男である中村七之助さんは、ほっそりとした容姿と寂しげな美しい風情が魅力の、若女方の歌舞伎役者。歌舞伎の舞台のみならず、映画やドラマ、バラエティ番組などでも活躍しています。脚本は宮崎駿監督との共同脚本に名を連ねる丹羽圭子さん脚本を手がけるのは、映画『借りぐらしのアリエッティ(2010年)』や『コクリコ坂から(2011年)』で、宮崎 駿監督との共同脚本に名を連ねる丹羽圭子さんです。演出は、2018年8月に「新橋演舞場」で上演された新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』を手がけた「G2」が担当。宮崎映画の脚本家と、歌舞伎舞台の演出家がタッグを組みます。新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』概要※イメージ演目新作歌舞伎 風の谷のナウシカ公演開始2019年12月昼の部・夜の部 通し上演場所新橋演舞場出演尾上菊之助、中村七之助、尾上松也、坂東巳之助、尾上右近製作脚本:丹羽圭子演出:G2詳細スポット情報スポット名:新橋演舞場住所:東京都中央区銀座6-18-2電話番号:03-3541-2600
2018年12月26日2019年3月に全国12か所で開催される「中村七之助 特別舞踊公演2019」。この公演について中村七之助が意気込みを語った。【チケット情報はこちら】本公演は、中村屋一門が行うおなじみの全国巡業公演。古くは十八世勘三郎が率いた親子会に始まり、2005年からは勘九郎と兄弟で務めてきた。2018年は歌舞伎座・平成中村座で行われた十八世勘三郎七回忌追善興行のほか、「平成中村座スペイン公演」、パリ公演「ジャポニスム2018」などで大役を果たし、2019年末上演の「風の谷のナウシカ」歌舞伎版への出演も発表された七之助が全国各地に足を運ぶ。群馬・ながめ余興場や岐阜・かしも明治座、東座といった昔ながらの芝居小屋での公演では、客席から演者までの間が2メートルあるかないかの至近距離で立ち回りや舞踊が繰り広げられる。演目は、中村鶴松が美しい海女の姿に扮する「汐汲」。ハイライトは、鶴屋南北の「於染久松色読販」から見どころを抜粋した「隅田川千種濡事」だ。「於染久松色読販」は2018年2月の博多座でも七之助が七役を演じており、自身も「平成中村座などでも、これまで自分が演じてきた自負がある」と語る。今回、七之助は許嫁・お光、油屋娘・お染、丁稚・久松、土手のお六の四役早替りを務める。演目を迷っていた七之助に「歌舞伎を初めて観る人に醍醐味を伝えるとしたら、早替りを見せるのはどうでしょう」と声をかけたのは、「隅田川千種濡事」で共演する中村いてうだと言う。「隅田川千種濡事」に決めた七之助は、演目の見どころを「男も女も見せることができて、エンターテインメント性があるところ」と語る。さらに「この演目は舞台裏が非常に大変で、共演者、スタッフがひとり欠けたら成立しない。しかも毎日違う会場で、広さも使える部分もそれぞれ違う。昨日捌けられた部分が、今日は捌けられないこともある。お客さまとの距離もとても近い。私にとっては本当に毎日がチャレンジで、とても楽しみです」と続けた。「汐汲」の前には、七之助、鶴松による「芸談」が行われる。ここでは「隅田川千種濡事」を観るにあたって、七之助が演目の予備知識を解説。さらに「中村屋ヒストリー」と題し、十八世勘三郎など中村屋の秘蔵映像を振り返りながら、七之助と鶴松が懐かしい話に華を咲かせる。「中村七之助 特別舞踊公演2019」は、3月2日(土)より群馬・ながめ余興場を皮切りに開催。チケットの一般発売に先駆けて、群馬、埼玉、長野、石川、広島、千葉、岐阜公演の抽選先行、大阪公演は先着先行を実施中。取材・文:横山由希路
2018年12月26日「現代能『陰陽師 安倍晴明』~晴明 隠された謎…~」が、来年2019年1月9日(水)、10日(木)に東京・中野サンプラザホールで追加上演されることになった。2001年に初演され、これまで海外公演を含め20回以上の上演を重ねてきた本作。今年9月に野村萬斎の演出、藤間勘十郎の脚本補綴により新たな『陰陽師 安倍晴明』が誕生し、注目を集めたが、早くも再演が決まった。【チケット情報はこちら】12月に東京都内で行われた取材会では、葦屋道満役の梅若実玄祥、演出と安倍晴明役を務める野村萬斎が参加した。萬斎は本作について、「現代能というタイトルではあるが、能、狂言、宝塚、日本舞踊、そしてイリュージョンやプロジェクションマッピングなど現代のハイテクをも使っている。能や狂言の入り口になる作品でもあるし、能や狂言を基にしたエンターテイメントのあり方のひとつの指針となる作品だ」と話す。そして「仕掛けばかりではなくて、(梅若)実先生、(葛葉姫/榊の前を演じる)大空ゆうひさん、私も含めた3人が激突するという“技合戦”もご注目いただきたいし、能の囃子と歌舞伎の鳴物も含めた“演奏合戦”もある。本当に見応えもあるものかと思う」と語った。10月下旬から約3週間、十二指腸潰瘍で入院していた梅若実玄祥は「つい1か月前に退院して、12月9日の襲名披露も何とか無事に終えた。体力的にはまだ完璧に復活はしていないが、今回も萬斎さんの力を借りて、一生懸命やらせていただきたい」と意気込む。作品については「萬斎さんが安倍晴明、僕が葦屋道満というのは僕の念願でもあった。割と短い作品だが、内容が詰まっていて、楽しめる作品だと思うので期待してほしい」と話した。9月公演の観客の反応について問われた梅若実は「たくさんアンケートを頂いたが、つまらなかったというものはなかった」と話して笑いを誘い、「ご覧になった方が“これが能なんですか”と仰っていた。萬斎さんがうまく芝居と能の中間を演出してくれている。飽きの来ない作品だと思う」と語った。共演する大空ゆうひについて、萬斎は「宝塚のスターであるということは言わずもがなだが、ある意味道場破り的な、アウェイ感が強い環境で堂々と演じ切られているのはさすがだ。実力と技術がないとなかなかできない」と絶賛。梅若実は「宝塚時代からファンだが、男も女も超えたところで演じている人なので、僕としてはやりやすいし、だからこそ能に近くなっている感じがする」と話していた。公演は1月9日(水)14時、10日(木)18時30分の2公演。チケット発売中。文・写真:五月女菜穂
2018年12月20日京都・南座の「當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」12月公演の夜の部で、『義経千本桜』に親子孫三代で出演する片岡仁左衛門、片岡孝太郎、片岡千之助が会見を開いた。『當る亥歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎』チケット情報「新開場した南座で、親子孫三代が揃って出演させていただけるのは本当にうれしいです。東京でも3人が揃った舞台があったのですが、千之助はまだ小さかった。今回彼は子役ではない役を演じるので、非常に楽しみであり心配でもあります」と仁左衛門。孝太郎も「南座という大きな劇場で、大きな役を息子にいただき、同じ場面に私も出られるなんて、不安もありますが、とても楽しみです」と話す。千之助は「3人揃って舞台に立つのは、ほぼ10年ぶりでとても光栄です。何もかも吸収させていただきたいという一心です」と決意を見せる。『義経千本桜』の「木の実」では、仁左衛門がいがみの権太、孝太郎が若葉の内侍、千之助が主馬小金吾(しゅめのこきんご)を演じる。仁左衛門は「千之助はまだ舞台経験も少ないですが、無理な荷物を背負わさないと。自分に相応な荷物ばかりを背負わしていると、芸が身に付かない。30キロの荷物しか持てないところに、60キロを背負わす。60キロが持てなくても、次に挑戦したときの30キロは楽になるんです」と、期待を寄せる。孝太郎は「父に手とり足とり息子の稽古をつけてもらった。親バカなもので、思ったよりマシでしたが(笑)、まだまだという部分もあります。彼が稽古でどう消化して南座に来てくれるか、期待しています」と語る。これを受け、千之助は「背負いきれない荷物かもしれませんが、30キロを持ち、次には40キロの荷物が持てるような経験をさせていただきたいです」と応えた。小金吾は若葉の内侍の家来。主人を守る役だが、「木の実」の場面で一行は茶屋で会ったいがみの権太に言いがかりをつけられてしまう。「『小金吾討死』では立ち廻りの場面もあり、ひとりで大勢の敵を相手にするので、強くなければいけない。強く、真摯で格好いい小金吾を演じたい」と千之助が言うと、仁左衛門は「命がけでご主人を守るという、強い一心も必要だね」と優しくアドバイスし、祖父の顔をのぞかせた。また、孫には「お客さんが必要とする役者、役者が必要とする役者になってほしいといつも言っている」と明かす。孝太郎も仁左衛門からそう言われ続けて育ち、同じ考えだという。千之助は「祖父は僕にとってヒーローみたいな存在。先日も楽屋を出るときに『寒いやろ』とマフラーを貸してくれて、本当に男前でカッコいいんです(笑)。いつか自分も少しでも近づきたいですし、父に対しても同じ思いです。立役は祖父、女方は父から学べるので、本当に恵まれている。ふたりの言うような役者になりたいです」と気持ちを込めた。公演は12月1日(土)から26日(水)まで南座にて。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2018年11月29日