歌舞伎座「三月大歌舞伎」『菅原伝授手習鑑 寺子屋』、「四月大歌舞伎」『夏祭浪花鑑』に出演する尾上菊之助、片岡愛之助の両名が、都内で取材に応じ、演目の見どころをはじめ、2ヶ月連続となる共演について思いを語った。ふたりの共演は、昨年6月の博多座公演以来で、菊之助は「それ以来、仲良くさせていただいている。愛之助さんは博多座公演を終えてから、怒涛のスケジュールを過ごされていたので、心配していました」と回想。愛之助は「何かの折には、お電話くださったりして、精神的に救われています。がっつりと組ませていただき、身に余る光栄です」と再共演の喜びを語った。現在開催中の歌舞伎座「三月大歌舞伎」(26日千穐楽)では、昼の部にて歌舞伎三大名作のひと『菅原伝授手習鑑』から、松王丸と千代、源蔵と戸浪という夫婦二組の悲劇を描く屈指の名場面『寺子屋』を上演。松王丸を菊之助が初役で、武部源蔵を愛之助が勤め、忠義心と親子愛の間に揺れる人々の、胸打つ一幕が繰り広げられる。2024年3月歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 寺子屋』左より、松王丸=尾上菊之助、武部源蔵=片岡愛之助 (c)松竹菊之助は「親子の情愛が深く描かれている。先人たちが築き上げた宝物で、エベレストのような高い山。入口に立ててているのかも分かりませんが、憧れの気持ちをもって、挑ませていただきたい」と決意を新たにする。一方、愛之助は「源蔵というお役は2度目で、とても重くて、精神的に疲れるんですが、終わると本当にやり遂げたと思える。毎日が幸せですし、菊之助さんとの芝居のキャッチボールが楽しい」と充実感をにじませた。また、菊之助の長男・尾上丑之助が、物語の要となる小太郎を演じており、愛之助は「凛として、すごく声が素敵ですね。しびれます」。菊之助は少し照れくさそうに、目を細めていた。2024年3月歌舞伎座『菅原伝授手習鑑 寺子屋』左より、戸浪=坂東新悟、小太郎=尾上丑之助、武部源蔵=片岡愛之助 (c)松竹続く、「四月大歌舞伎」では昼の部にて、「大坂の夏」の風情を感じる見どころ満載の『夏祭浪花鑑』を上演。大阪で実際に起こった事件をもとに、浪花の侠客の生き様が描かれる義太夫狂言で、愛之助が団七九郎兵衛/徳兵衛女房お辰(二役)、菊之助が一寸徳兵衛を演じる。昨年6月の博多座公演に続く、愛之助の団七と菊之助の徳兵衛コンビでの上演に注目が集まる。2023年6月博多座『夏祭浪花鑑』一寸徳兵衛=尾上菊之助(c)松竹2022年9月大阪松竹座『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛=片岡愛之助(c)松竹愛之助は『夏祭浪花鑑』での団七九郎兵衛の演技などが評価され、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したばかりで、「(受賞後)こんなに早く、文部科学大臣賞を先に取られた先輩の菊之助さんとご一緒させていただき、こんなありがたいことはない」と声を弾ませ、「今の大阪弁とは少し違いますが、ネイティブな大阪弁がしゃべられるのは、自分にとってやりやすい」と大阪出身の利点も語った。菊之助は「受賞理由が、『毛穴から上方のニオイがする』ですから。その団七に向かっていくのは、かなりのプレッシャーがありますが、何とか食らいついていきたい。愛之助さんの団七は本当にかっこいい」とほれぼれした様子。愛之助も「日々判を押した芝居ではなく、変化球を楽しめる役者さんは素晴らしい。江戸の代表の方が、上方の言葉をすごく勉強していらっしゃって、見事に言葉を使われている。本当に違和感がないんです」と菊之助のストイックな姿勢を絶賛していた。取材・文・撮影(会見写真):内田涼<公演情報>■歌舞伎座「三月大歌舞伎」【昼の部】11:00~一、菅原伝授手習鑑『寺子屋』二、四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言『傾城道成寺』三、元禄忠臣蔵『御浜御殿綱豊卿』【夜の部】16:15~一、通し狂言『伊勢音頭恋寝刃』二、六歌仙容彩『喜撰』2024年3月3日(日)~3月26日※18日(月)休演<公演情報>■歌舞伎座「四月大歌舞伎」【昼の部】11:00~一、双蝶々曲輪日記二、七福神三、夏祭浪花鑑【夜の部】16:30~一、於染久松色読販二、神田祭三、四季2024年4月2日(火)~26日(金)※休演:10日(水)、18日(木)会場:東京・歌舞伎座
2024年03月13日歌舞伎界の新世代を担う存在として注目を集める市川染五郎。2023年も1月の歌舞伎座から12月の南座まで毎月のように役をつとめ上げたが、2024年も忙しい日々が続きそうだ。1月の歌舞伎座での「壽 初春大歌舞伎」では、『狐狸狐狸ばなし』、『鶴亀』、そして祖父・松本白鸚、父・幸四郎との3人芝居による『息子』に出演する。『狐狸狐狸ばなし』は人々の愛と欲望が交錯する騙し合いを描いたコメディ。染五郎が演じるのは、主人公の伊之助(幸四郎)の雇人でちょっと頭が弱そうに見えて、実は騙す側にいるという役どころ。既に何度か稽古をつけてもらったそうだが、幸四郎から特に指摘されたのは、又市のふたつの顔の見せ方。「正気に戻っている部分とのギャップをしっかり見せること。それから『アホのフリをしている芝居ではなく、お客さまも騙すつもりで、正気に戻るところで初めてそうではないとわかるように演じればいい』と言われました」『狐狸狐狸ばなし』特別ビジュアル『狐狸狐狸ばなし』特別ビジュアルこれまで演じたことのないタイプの役で「難しい」と語りつつ「去年から今年にかけて、たくさんの舞台に立たせていただいて、一つひとつ全く違う色の役をやらせていただいているので、こうやってまた新境地というか、経験したことのない役柄をやらせていただけるのが嬉しいです」と充実した表情を見せる。『息子』はお尋ね者となって大坂から逃げてきた若い男(幸四郎)と火の番の老爺(白鸚)の会話を中心に展開。互いの身の上を語る中で、実はふたりが親子であることがわかってくるという人間ドラマで、染五郎はお尋ね者の金次郎を探す捕吏を演じる。祖父、父との競演について染五郎は「3人だけの作品というのは踊りならありますけど、こういうセリフ劇ではなかなかないので、それを祖父と父とやらせていただけるというのは嬉しいですね」と語る。こちらも既に稽古が始まっているが(12月下旬取材時)、「日常会話を自然に、本当に日常で会話しているようなラフな感じで、生活感みたいなものを見せられたらと言われています。何度も繰り返し稽古をして、意識しなくても言えるくらいのところまでやっていかないと生活感というのは出せないと思っていて、時代物のセリフともまた違って、普段から喋っている感じ、普通の会話がすごく難しかったりします」とも。物語についても「金次郎が、いつ火の番が自分の父親であると気づくのかという部分もいろんな解釈があるみたいで、実は最後までわからないという解釈もあるそうです。父がどう演じるのかわかりませんが、(白鸚と幸四郎が)実際の親子という部分をお客さまが重ねて見るというのもこの作品の楽しみ方かなと思っています」と見どころを明かしてくれた。2023年はさまざまな役を演じた1年となったが、最も印象に残った作品、役柄を尋ねると第39回俳優祭(国立劇場)での『菅原伝授手習鑑』の吉田社頭車引の場における松王丸の役を挙げた。「お客さまにとってもそうだと思いますが、高麗屋というと『勧進帳』の弁慶、や『菅原伝授手習鑑』の松王丸、『伽羅先代萩』の仁木弾正など、スケールの大きな立役のイメージがあるので、THE 高麗屋と言える役をやらせていただけたのがすごく嬉しかったです。祖父に役を教わることも最近はなかなかなかったのですが、松王丸は祖父に見てもらって、声の出し方から決まりの形、小道具の扱い方というところから教わりました。やはり僕は、役者として目標というか、そこに行き着きたいと思っている存在が祖父なので、直接、教わることができて嬉しかったですし、早いうちから祖父にいろんなことを教わっておきたいと改めて思いました」2024年は1月の歌舞伎座に始まり、2月には博多座、そして4月には四国こんぴら歌舞伎(旧金毘羅大芝居)に出演することが発表されている。「2月の博多座では江戸川乱歩の『人間豹』という小説を祖父と父で歌舞伎化した作品を再演します。ずっと憧れてきた作品で『いつかは……』と思っていたので、こんなに早く叶って嬉しいです。既に打ち合わせを重ねて、自分もアイディアを出させていただいていて、前回から変わる部分もありますし、進化させた作品にしたいと思っています」取材・文:黒豆直樹<公演情報>歌舞伎座「壽 初春大歌舞伎」【昼の部】11:00~一、 當辰歳歌舞伎賑 五人三番叟 英獅子二、 赤穂義士外伝の内 荒川十太夫三、 江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし【夜の部】16:00~一、 鶴亀二、 寿曽我対面三、 息子四、 京鹿子娘道成寺 鐘供養の場2024年1月2日(水)~27日(土)※休演9日(火)、18日(木)会場:東京・歌舞伎座チケット情報:()公式サイト:
2024年01月02日令和6年1月歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』夜の部『京鹿子娘道成寺』に出演する中村壱太郎と尾上右近が、作品ゆかりの地である和歌山県日高川町の道成寺を訪れ成功祈願を行った。壱太郎が前半日程(1月2日(火)~14日(日))、右近が後半日程(1月15日(月)~27日(土))でそれぞれ白拍子花子を歌舞伎座で初めて演じる『京鹿子娘道成寺』は、安珍と清姫の伝説を題材にした道成寺物と呼ばれる作品群の集大成。鐘供養のため大勢の所化が集まる紀州・道成寺が作品の舞台となっている。冷たく澄んだ空気の中、本堂で成功祈願を終え「今年1年を振り返るような時間でもあり、来年最初の舞台は歌舞伎座で道成寺を踊るのだという気持ちの高まりや、一歩を踏み出す覚悟を自分の中に落とし込む時間となりました」と語った壱太郎。右近も「今年の8月に自主公演で演じさせていただいた際も公演前にお参りさせていただき、半年以内にこうしてもう一度お参りさせていただけたこと、とても深いご縁を感じます」と感慨深げな様子を見せた。■中村壱太郎 コメント『京鹿子娘道成寺』を歌舞伎座で演じさせていただくと聞いたときは、新年の始まりであるということも含めて2024年が華やかになるようにという思い、道成寺に込められたドラマや祈りの想いをひとりでも多くの人に届けたいという思いがこみ上げました。■尾上右近 コメント歌舞伎にとって大切な『京鹿子娘道成寺』という作品をお正月に壱太郎さんと一緒に、歌舞伎座という大舞台で勤めさせていただけるのは幸運なこと。この幸運を、舞台をご覧いただくお客様にさらに大きなものにしてお届けするというのが、自分の全うすべき役者人生だなと感じています。<公演情報>令和6年1月歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』2024年1月2日(火)~27日(土) 東京・歌舞伎座令和6年1月歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』夜の部『京鹿子娘道成寺』特別ビジュアルチケット情報:()詳細はこちら:
2023年12月22日12月3日(日)、歌舞伎座新開場十周年「十二月大歌舞伎」が開幕した。三部からなる公演は、第一部が『旅噂岡崎猫(たびのうわさおかざきのねこ)』と『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』、第二部が『爪王(つめおう)と『俵星玄蕃(たわらぼしげんば)』、第三部が『猩々(しょうじょう)』と『天守物語(てんしゅものがたり)』と、師走を彩る豪華ラインナップとなっている。そんな、歌舞伎の多彩な魅力が詰まった本公演の初日オフィシャルレポートが到着した。第一部の『旅噂岡崎猫』は、化け猫伝説を題材に趣向が凝らされたひと幕。本作のもととなるのは、三代目市川猿之助(二世猿翁)が昭和56(1981)年、エンターテインメント性を取り入れて154年ぶりに復活上演して以来、人気作として上演を重ねてきた『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』。当月、おさん実は猫の怪を勤める坂東巳之助は、平成28(2016)年の全国巡業公演にて、猫の怪を初役で勤めている。今回は「岡崎無量寺」の場に新たな趣向を取り入れている。岡崎の無量寺にやって来たのは、由井民部之助(中村橋之助)と幼子を連れたお袖(坂東新悟)夫婦。ふたりは、主君の病平癒祈願のための道中でお袖の母親おさんがこの世を去ったことを知る。そんな中、日も暮れたために一夜の宿を求めてここへ辿り着くが、そこにはなんと死んだはずのお袖の母・おさん(坂東巳之助)の姿。無量寺に向かう道中には、民部之助とお袖が客席通路を練り歩く演出もあり、場内を盛り上げる。いかにも怪しげな雰囲気に包まれる空間で、おさんが放つ只者ならぬ異様な佇まいに観客の視線が釘付けとなり、民部之助とお袖の端正な姿が対比として浮かび上がる。死から蘇ったと語るおさんだが、実はその正体は……。次々現れる猫と戯れるなどおさんが人間ならざる仕草を見せたのち、次第に本性を顕す様子は最大の見どころ。江戸時代から伝わる「日本三大怪猫伝」のひとつである「岡崎の猫」の怪奇譚をもとにした趣向に富んだ演出で歌舞伎ならではのケレン味を存分に堪能できる。続く『今昔饗宴千本桜』では古典歌舞伎とNTTの技術を始めとした最新のテクノロジーが融合した“超歌舞伎”が歌舞伎座に初降臨。歌舞伎の名作『義経千本桜』と、バーチャル・シンガー初音ミクの代表曲である「千本桜」の世界観に着想を得て書き下ろされた本作は、超歌舞伎の初演である「ニコニコ超会議2016」で上演された記念碑的な作品で、この度は獅童の次男・小川夏幹が初お目見得することでも話題の舞台。さらに、中村勘九郎と中村七之助が超歌舞伎に初出演。見どころ満載の一幕だ。冒頭では、獅童に続いて、今回更なる進化を遂げた「獅童ツイン」が姿を現し、バイリンガルに獅童の同時通訳を務めて客席からは驚きの声が上がった。物語の幕が開くと、御神木の千本桜のもとで桜の節会が執り行われている。白狐の尊(中村獅童)、朱雀の尊(中村勘九郎)、舞鶴姫(中村七之助)、初音の前(中村蝶紫)らが居並ぶ華やかさ、満開に咲き誇る桜の美しさに目を奪われる。ここへ千本桜を我が物にしようとする青龍が襲い掛かるが、白狐と初音の前の娘・美玖姫はそれぞれ狐と蝶に姿を変えて落ち延びていくのだった……。物語は、それから千年後へ――。美玖姫と青龍の精(澤村國矢)、白狐の生まれ変わりである佐藤四郎兵衛忠信(獅童)と青龍による立廻りの場面は、客席も巻き込むような大迫力。陽櫻丸(小川陽喜)と夏櫻丸(小川夏幹)のふたりが花道から元気いっぱいに登場する場面では、昨年1月に初お目見得して以来の歌舞伎座出演となる陽喜が、溌剌とした台詞で成長ぶりを見せ、夏幹は力強くも可愛らしい名乗りと見得で観客を魅了した。クライマックスでの獅童とミクによる宙乗りでは、客席にペンライトが光り輝き、場内の盛り上がりも最高潮に。桜の花びらが降り注ぎ、熱気溢れる場内を上がっていく中、本舞台には朱雀の尊の勘九郎、舞鶴姫の七之助、陽櫻丸の小川陽喜と夏櫻丸の小川夏幹らがペンライトを手に並び、超歌舞伎ならではの高揚感に包まれた。最後には鳴りやまぬアンコールの声に応えて花道より獅童が登場。歌舞伎座での上演が実現したことについて、「ミクさんファンの皆様、超歌舞伎ファンの皆様がここに導いてくださいました。伝統を守りつつ、革新を追求する!これが中村獅童の生き方、これが超歌舞伎!!」と声を上げ、割れんばかりの拍手と熱狂に包まれる中、幕を閉じた。勇ましい立廻りが胸に響く、講談から生まれた新作歌舞伎『俵星玄蕃』第二部は、鷹と狐の決闘、ダイナミックな舞踊劇『爪王』で幕開き。動物文学の作家・戸川幸夫の感動作を平岩弓枝が脚色した中村屋所縁の舞踊劇。雪が降り積もる角鷹森。「吹雪」と名付けた鷹(中村七之助)を飼う鷹匠(坂東彦三郎)のもとへ庄屋(中村橋之助)がやって来て、村で悪さをする狐の退治を頼む。やがて鷹匠と吹雪は山へ向かい、鋭く牙を剥き出す狐(中村勘九郎)と対峙。勘九郎の狐と七之助の鷹には、細かい仕草の隅々に生命力と闘志が漲り、幻想的な世界が広がる。緊張感漂う決闘の末、狐に破れてしまった鷹は、谷底へと消えていき……。季節が過ぎた頃、吹雪は再び狐と対峙するため、果敢に大空を舞っていく。そしてついに狐を討ち負かす吹雪は、誇らしげに鷹匠のもとへと戻ってくるのだった。ダイナミックな舞踊で表現される狐と鷹の激しい闘い、鷹と人間の絆が胸に染み入る一幕に、大きな拍手が送られた。続いては、この度が初演となる演目、槍の名手・俵星玄蕃と赤穂義士の心の交流を描いた『俵星玄蕃』。人間国宝の講談師・神田松鯉の脚本協力、昨年好評を博した『荒川十太夫』のスタッフにより、新たな舞台が誕生する。時は元禄15年12月13日、槍の名手・俵星玄蕃(尾上松緑)の道場に、玄蕃が贔屓にする夜鳴きそば屋の十助(坂東亀蔵)が訪ねて来る。ふたりで酒を酌み交わすうち、赤穂義士の討入りが噂される吉良邸に用心棒の仕官を誘われていることを話す玄蕃。実は十助は、そば屋に身をやつして吉良邸の動向を探る赤穂義士のひとり、杉野十平次で……。義士たちが素性を隠し、虎視眈々と吉良邸討入りの準備を進めるなかで登場する槍の名手・俵星玄蕃は、講談や浪曲でも有名な人物。玄蕃を慕うも、正体を明かせぬ杉野との交流を織り交ぜながら、討入り前夜から当日までを情感豊かに描く物語だ。筋書のインタビューで「歌舞伎のセオリーに則して、歌舞伎ならではの『俵星玄蕃』をお見せしたいと思います」と語った松緑。槍の名手としての見せ場を勇ましい立廻りで表し、義に生きる玄蕃の姿が胸に響く。歌舞伎座では、尾上松緑主演による「赤穂義士外伝」を2カ月連続上演する。赤穂義士が討入りを果たした当月には討入り前夜と当日を描く本作を初演、そして新年1月には、討入りの後日譚を描き好評を博した『荒川十太夫』を再演。それぞれ義を貫く男の生き様、赤穂義士との交流が胸を打つ、講談から生まれたふたつの物語に期待が高まる。幻想的で詩情豊かな物語で観客を魅了する歌舞伎座初演『天守物語』酒好きの霊獣が舞う、華やかな舞踊『猩々』で幕を開ける第三部。猩々とは古くから中国に伝わる水中に棲む霊獣で、酒を好み、無邪気に舞い戯れる妖精のような存在。酒に酔った猩々が水上での戯れを見せる猩々舞がみどころで、酒好きの霊獣からはあふれる愛嬌と品格が漂う。今回猩々を勤めるのは、尾上松緑と中村勘九郎。壺から酒を酌む仕草や、盃を傾けて嬉しそうに酒を飲む仕草など随所に施される細かい振付が見どころだ。中国・揚子江のほとり。ふたりの猩々(尾上松緑、中村勘九郎)は酒売り(中村種之助)に勧められるままに大好きな酒を飲むと、酒の徳を謳いながら、上機嫌に舞って見せる。やがて、酒売りに酒壺を与えて猩々は打ち寄せる波間に姿を消すが、その酒壺は……。格調高く朗らかな舞台に客席には自然と笑顔が広がった。続いては、この度が初演となる『天守物語』。今年、生誕150年を迎えた泉鏡花の戯曲のなかでも屈指の名作とされる本作は、姫路城(白鷺城)の天守に隠れ住む姫の伝説を題材に、鏡花ならではの幻想的な世界を織り込んだ至上の恋の物語。歌舞伎では、昭和30(1955)年に六世中村歌右衛門の富姫で初演し、近年では坂東玉三郎が昭和52(1977)年に富姫を初演して以来、自身が演出も勤めながら大切に上演を重ねてきた。今回は、中村七之助が富姫を勤め、演出の玉三郎が富姫の妹分・亀姫を初役で勤めることでも話題の物語だ。播磨国姫路にある白鷺城の天守閣。ここは、人間たちが近づくことのない、美しい異界の者たちが暮らす別世界。この世界の主こそ、美しく気高い富姫(中村七之助)だ。そこへ富姫を姉と慕う亀姫(坂東玉三郎)が訪れると、富姫は久しぶりの再会を喜び、土産として白い鷹を与える。玉三郎の亀姫は可憐で可愛らしく、妹分の亀姫を可愛がる七之助の富姫には貫禄ある美貌が漂う。美しいふたりが生首を手に微笑みあう場面は、鏡花ならではの妖しい魅力に満ち溢れます。亀姫に仕える朱の盤坊(中村獅童)、舌長姥(中村勘九郎)なども奇怪な存在として作品の世界観に深みを持たせる。その夜、行方知れずとなった城主播磨守の白鷹を探しにやって来たのは、播磨守に仕える姫川図書之助(中村虎之介)。そこで富姫と図書之助が運命的な出会いを果たし……。美しい異形の世界の住人と、この世の人間とが織りなす幻想的で詩情豊かな物語で観客を魅了した。歌舞伎座新開場十周年「十二月大歌舞伎」は2023年12月26日(火)まで、東京・歌舞伎座で上演中。<公演情報>歌舞伎座新開場十周年「十二月大歌舞伎」【第一部】11:00~一、旅噂岡崎猫二、今昔饗宴千本桜【第二部】14:45~一、爪王二、俵星玄蕃【第三部】17:45~一、猩々二、天守物語2023年12月3日(日)~26日(火)※休演11日(月)、19日(火)※貸切(幕見席は営業)第一部:15日(金)、24日(日)会場:東京・歌舞伎座チケット情報:公式サイト:※公演期間終了のため、舞台写真は取り下げました。
2023年12月04日11月2日(木)、歌舞伎座新開場十周年「吉例顔見世大歌舞伎」が開幕した。熱狂を巻き起こした初演から6年ぶりの再演となる『極付印度伝(きわめつきいんどでん)マハーバーラタ戦記』を上演する昼の部と、秀山十種の内『松浦の太鼓(まつうらのたいこ』、義太夫狂言の傑作『鎌倉三代記(かまくらさんだいき』、そして「顔見世」を彩る舞踊三題をお届けする『顔見世季花姿繪(かおみせづきはなのすがたえ』で締めくくる夜の部。それぞれ初日公演のオフィシャルレポートが到着した。世界三大叙事詩のひとつ「マハーバーラタ」を原典とした『マハーバーラタ戦記』は、尾上菊之助がSPAC(静岡県舞台芸術センター)の芸術総監督・宮城聰が演出した『マハーバーラタ~ナラ王の冒険~』を観て感銘を受けたことがきっかけで、青木豪の脚本、宮城總の演出により、2017年に初演。今回、事前に行われた取材会で「二幕目の婿選びのシーンでインド映画の舞踊を模した踊り合戦」が加わることを菊之助が明かしており、映画『RRR』で話題となった「ナートゥダンス」のような激しい踊りの場面が登場するなど、脚本と構成が練り直された再演となった。初演に引き続き尾上菊五郎が仏の化身である那羅延天で出演、主人公・迦楼奈とシヴァ神の二役を勤める菊之助、我斗風鬼写(がとうきちゃ)とガネーシャの二役を勤め、今回が初出演となる菊之助の長男・丑之助の、親子孫の3人が共演することも大きな話題だ。開幕するとそこは、神々の世界。神々は人間界を見下ろし、争いを繰り返す人間たちを嘆く。黄金を身にまとっているかのように煌びやかに居並ぶ神々は、神聖さを感じさせる。中央に聳える那羅延天(ならえんてん/尾上菊五郎)が「この世の終わりが始まる」と告げると、滅びの神・シヴァ神(尾上菊之助)は人間たちが始める戦争で世界が滅ぶだろうと語る。このままでは世界は滅びてしまうと、太陽神(坂東彌十郎)が世界の終わりを止めるため慈愛に満ちた子を人間界へ送り救世主にしたいと告げる一方、軍神である帝釈天(坂東彦三郎)は圧倒的な武力をもって世界を支配すべきだと言い、それぞれ若く徳の高い汲手姫との間に迦楼奈と阿龍樹雷をもうける。母なるガンジス川に泰平を祈っている汲手姫(くんてぃひめ/中村米吉)のもとへ太陽神が現れると、汲手姫は迦楼奈(かるな/尾上菊之助)を宿し、瞬く間に美しい耳飾りの子を産み落とす。しかし、まだ恋すら知らない身であり恐ろしくなった姫は、生まれたばかりの赤子をガンジス川へ流してしまい……。 十六年が経ち、亜照楽多(あでぃらた/河原崎権十郎)と羅陀(らーだー/市村萬次郎)夫婦に育てられた迦楼奈は天性の弓の才能を秘めた青年へと成長を遂げるが、ある日、太陽神から人間界の救世主であるとのお告げを受けると、弓の修業のために家を出る決断をし、旅立つのだった。王が亡くなったばかりの王宮では、王妃である汲手姫の前に百合守良(ゆりしゅら/坂東亀蔵)、風韋摩(びーま/中村萬太郎)、阿龍樹雷(あるじゅら/中村隼人)、納倉(なくら/中村鷹之資)、沙羽出葉(さはでば/上村吉太朗)の五王子が並ぶ。五王子の名乗りの台詞は歌舞伎らしさに溢れ、王子たちとその従兄弟である鶴妖朶王女(づるようだおうじょ/中村芝のぶ)と道不奢早無王子(どうふしゃさなおうじ/市川猿弥)姉弟による王位継承争いが勃発すると、仙人久理修那(くりしゅな/中村錦之助)の助言により王位を競う武芸大会が開かれることに。都へやってきた迦楼奈もその武芸大会に出場し阿龍樹雷と対峙するが、鶴妖朶は自らが国を治めるべく迦楼奈を仲間に引き入れる。憎しみに駆られ五王子を亡き者にしたい鶴妖朶と、永遠の友と誓った約束を貫く迦楼奈。ふたりの関係は果たして……。また、迦楼奈と阿龍樹雷は、それぞれ葛藤しながらも自らの使命を受け入れていく。菊之助と隼人のふたりは初演でも話題となった客席を貫く両花道を走る馬車に乗ると、激しい立廻りを見せ、客席もヒートアップ。汲手姫という同じ母親を持つふたりの運命がぶつかり合う場面に拍手が止まない。戦乱の場面では、迦楼奈を演じる菊之助と、我斗風鬼写を演じる丑之助が親子で立廻りを見せると、観客からは大きな拍手が送られ、丑之助はハッキリとした口跡で重要なセリフを聞かせた。両花道を使った効果的な演出をはじめ、屏風を模した大道具、甲冑の衣裳デザインなど視覚的な楽しさから、歌舞伎座の空間に響き渡る国際色豊かな音楽、次々に繰り広げられる怒涛の展開は時が経つのを忘れてしまうほど。溢れんばかりの躍動感と哲学的な問いの余韻を残し、客席は大きな拍手で満たされた。仁左衛門の松浦候に鳴り止まない拍手夜の部は、秀山十種の内『松浦の太鼓』で幕開き。元禄十五年、師走の両国橋。俳人の宝井其角(中村歌六)は、笹売りに身をやつした赤穂浪士の大高源吾(尾上松緑)に出合う。其角の俳諧の弟子でもある源吾は、其角の詠んだ上の句に「明日待たるゝその宝船」と下の句を残し去っていく。その後の物語に大きな役割を果たす意味深な付句に、緊張した空気が漂う。そして翌日、大名・松浦鎮信(片岡仁左衛門)の屋敷では、其角を招き句会が催されているが、松浦侯は源吾の妹で腰元のお縫(中村米吉)の姿を見て苛立ち、其角から前日の源吾の話を聞くと、赤穂には忠義に篤い浪士がいないのかとさらに苛立ちが増す。するとそこへ、隣の吉良邸から陣太鼓の音が……。ひとつふたつと指折り数える松浦侯は赤穂浪士による討入りを覚る。その松浦侯の姿は本作最大の見所で、観客も心高鳴る様子で熱い視線を注ぐのだが、大名の風格と教養そして喜怒哀楽を自在に現し愛嬌を備える松浦侯は、忠義を重んじる武士の精神を持っている。「忠臣蔵」外伝の人気作を、2002年以来21年ぶりに歌舞伎座で演じる仁左衛門の姿に拍手が鳴り止まなかった。続いては、義太夫狂言の傑作『鎌倉三代記』。今回の上演では、中村時蔵と梅枝の親子が三浦之助義村と時姫をそれぞれ初役で勤めることが話題。中村芝翫が3度目となる佐々木高綱を勤める本作は、大坂夏の陣をモデルとして、三浦之助義村は木村重成、時姫は千姫、佐々木高綱は真田幸村であるとされ、鎌倉時代に舞台は置き換えられている。三浦之助の母が病に伏す絹川村の侘びた住居。京方と鎌倉方の争いのさなか、京方の三浦之助(中村時蔵)が現れ、恋人である鎌倉方の時姫(中村梅枝)が出迎える。戦へ戻ろうとする三浦之助に時姫は夫婦の契りを交わしてほしいと嘆願するも拒絶され、自害しようとしますが三浦之助に止められてしまう。時姫は父の北條時政と恋人の三浦之助との板挟みに苦しみ、ついに苦渋の決断を下し……。二枚目の若武者である手負いの三浦之助を時蔵が、“三姫”と呼ばれる女方の大役のひとつである時姫を梅枝が勤め、運命に翻弄される男女を色濃く演じると、客席はその一挙手一投足に見入った。前半では可笑しみを見せる藤三郎が、後半では佐々木高綱(中村芝翫)としての本性を現し、勇将たる姿でこれまでの計略を語る対照的な姿に観客は沸き立つ。趣向に富んだ重厚な義太夫狂言の傑作に、大きな拍手が送られた。夜の部を締めくくるのは、『顔見世季花姿繪』。最初は、春の七種行事を曽我兄弟の仇討ちと結びつけた舞踊『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』から。親の仇である工藤祐経の館に現れた、曽我五郎(中村種之助)と曽我十郎(市川染五郎)の兄弟。工藤を討とうと血気づく兄弟を、春の七種を摘む静御前(尾上左近)が押し止める。七種の名を巧みに織り込んだ長唄に乗せ、若手3人が華やかに踊る姿に客席は温かい空気に包まれた。続いては、清元による『三社祭(さんじゃまつり)』。浅草寺本尊の観音像を拾い上げたふたりの漁師(坂東巳之助、尾上右近)が粋な踊りを見せると、頭上に黒雲が下りてきて、ふたりに悪玉と善玉が取りつく。悪玉と善玉の面をつけて競うように踊るふたりは、軽快で可笑しみに溢れ、躍動感ある勢いを見せる。悪玉の巳之助と善玉の尾上右近という踊り巧者ふたりの競い合いに拍手喝采、大いに盛り上がった。そして最後は、吉原の遊廓を舞台に風情ある踊りで魅せる『教草吉原雀(おしえぐさよしわらすずめ)』。男女の鳥売り(中村又五郎、片岡孝太郎)が吉原の客を様々な鳥たちにたとえて踊り、吉原通いの様子や廓の風習を伝える。鳥刺し(中村歌昇)が登場し、賑やかさが加わり客席も浮き立つ。やがて3人の正体が明らかになると、驚きと共に沸き上がり、華やかに幕となった。歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」は2023年11月25日(土)まで、東京・歌舞伎座で上演中。<公演情報>歌舞伎座新開場10周年「吉例顔見世大歌舞伎」【昼の部】11:00~極付印度伝『マハーバーラタ戦記』【夜の部】16:30~一、秀山十種の内 松浦の太鼓二、鎌倉三代記三、顔見世季花姿繪2023年11月2日(木)~25日(土)※休演:10日(火)、20日(月)会場:東京・歌舞伎座チケット情報:公式サイト:※公演期間が終了したため、舞台写真は取り下げました。
2023年11月04日10月2日(月)、歌舞伎座新開場十周年「錦秋十月大歌舞伎」が東京・歌舞伎座で開幕。初日公演のオフィシャルレポートが到着した。昼の部は、「大南北」と称される四世鶴屋南北の出世作『天竺徳兵衛韓噺(てんじくとくべえいこくばなし)』で幕開きし、続いて日本映画界が誇る名匠・山田洋次が歌舞伎座で初めて脚本・演出を勤める『文七元結物語(ぶんしちもっといものがたり)』、夜の部は義太夫狂言の人気作『双蝶々曲輪日記 角力場(ふたつちょうちょうくるわにっき すもうば)』に始まり、華やかな舞踊『菊(きく)』、『水戸黄門(みとこうもん)』で打ち出し。まさに芸術の秋にふさわしい、歌舞伎の魅力が詰まった多彩な演目が揃う内容となっている。『天竺徳兵衛韓噺』は江戸時代初期、東南アジア諸国の見聞録を残した実在の商人・徳兵衛を主人公に、南北作品ならではの奇抜な趣向が散りばめられた名作。祖父・二世松緑、父・初世辰之助も勤めた所縁ある徳兵衛を、当代の尾上松緑が初役で勤める。松緑は開幕前、「私も久々に白髪ではないかつらをかぶり、若々しい役に心ときめかせております。エンターテイメント性に溢れた楽しい芝居を御目に掛けたいと考えております」とコメント。数々の仕掛けと、ひとときも目の離せない展開をドラマティックに魅せていく。物語の中で、宗観から妖術を譲り受けると次々と摩訶不思議な妖術を繰り出す徳兵衛。大屋根に出現する大蝦蟇(おおがま)や、徳兵衛自身が蝦蟇の姿となって見せる立廻りなど、ケレン味溢れる演出に客席から万雷の拍手が送られた。続く『文七元結物語』は、落語をこよなく愛し、「“文七元結”は落語として屈指」と話す山田洋次が生み出す、これまでとは一味違った趣のある舞台。人柄がよく左官として確かな腕を持ちながらも、困ったことに大の博打好きな主人公・長兵衛を中村獅童が、そんな長兵衛の女房お兼を寺島しのぶが勤める。山田監督からも「息ぴったり」と評された、獅童としのぶによる初の夫婦役に注目が集まる。物語中、言い争いながらも互いへの情愛が滲みでる長兵衛とお兼のやり取り、登場人物それぞれの持つ人情味が深みを醸し出し、江戸時代の生き生きとした空気感が場内に広がる心温まる物語。山田監督が筋書の脚本・演出のことばの中で「人間は信ずるにたるものだという、おおらかな人間への肯定がこの作品を美しい物語にしている」と寄せたように、幕切れには鳴りやまぬ拍手で、清々しい感動に包まれた。人気狂言に始まり48年ぶり新演出の『水戸黄門』で締めくくる夜の部『双蝶々曲輪日記 角力場』から始まる夜の部。大坂堀江の角力小屋では、人気力士の濡髪長五郎(中村獅童)と素人力士出身の放駒長吉(坂東巳之助)の取組が行われるとあり大賑わいだ。濡髪贔屓の山崎屋の若旦那与五郎(巳之助 二役目)は、恋仲の藤屋遊女吾妻(中村種之助)を茶屋へ向かわせ、角力小屋へと入る。取り組みが始まると、結果はなんと放駒が勝利する番狂わせ。獅童が濡髪長五郎の貫禄と懐の深さを見せ、巳之助が愛嬌ある放駒長吉とつっころばしの山崎屋与五郎の2役を華麗に演じ分ける。放駒と濡髪、ふたりの性格や力の違いが巧みに描かれ、その好対照が観客の心を惹きつける。義太夫狂言の人気作に大きな期待を寄せずにはいられない。夜の部2本目は、菊の精たちが揃って戯れる姿が可憐で美しく、秋の清々しさが場内いっぱいに広がる舞踊『菊』。秋の一面に咲き乱れる色とりどりの菊の花、そこへ市川男寅、中村虎之介、中村玉太郎、中村歌之助勤める菊の精がやって来て、羽根つきに興じる。やがて、中村雀右衛門、中村錦之助による菊の精が現れしっとりと恋心を舞い、舞台は華やかさで溢れる。夜の部最後を締めくくるのは『水戸黄門』。二代水戸藩主・水戸光圀が、助さんと格さんを供に連れ立ち、日本諸国を漫遊しながら世直しを行う“勧善懲悪”の物語は、すでに江戸時代から講談などで人気を博し、映画やテレビドラマも多数制作され、世代を超えて愛されてきた大作。本作は、テレビドラマの脚本も手掛けた宮川一郎が昭和50年に書き下ろし、歌舞伎座では実に48年ぶりの上演となった。黄門様を勤めるのは、テレビドラマなどでも活躍の場を広げる坂東彌十郎。四国金毘羅のうどん屋を背景に、中村福之助勤める佐々木助三郎(助さん)、中村歌之助勤める渥美格之進(格さん)を引き連れて、大活躍する心温まる物語となっている。彌十郎の黄門様が「はっはっはっ!」と笑顔を見せるたびに舞台上がぱっと華やぎ、そのおおらかさに自然と心温まるような魅力を発揮。それぞれの事情を抱える個性豊かな登場人物たちが絡み合い展開するドラマは、笑いあり涙あり、人間の喜怒哀楽が情緒豊かにあらわされ、心がすっきりと晴れ渡る人情味溢れる舞台に歌舞伎座は温かい拍手で包まれた。歌舞伎座新開場十周年「錦秋十月大歌舞伎」は2023年10月25日(水)まで、東京・歌舞伎座で上演される。<公演情報>歌舞伎座新開場十周年「錦秋十月大歌舞伎」【昼の部】11:00〜一、天竺徳兵衛韓噺二、文七元結物語【夜の部】16:30〜一、双蝶々曲輪日記二、菊三、水戸黄門2023年10月2日(月)〜10月25日(水)※休演:10日(火)、17日(火)会場:東京・歌舞伎座公式サイト※公演期間が終了したため、舞台写真は取り下げました。
2023年10月04日尾上松緑が主演を務める新作歌舞伎『俵星玄蕃』『荒川十太夫』が、2023年12月から2024年1月にかけて2カ月連続で歌舞伎座にて上演されることが決定した。今回の2作では、江戸時代に起きた「赤穂事件」をもとにした物語が描かれる。12月に上演される『俵星玄蕃』は、赤穂義士たちが素性を隠して、虎視眈々と吉良邸討入りの準備をしている中で出会う槍の使い手・俵星玄蕃を主人公にした作品。赤穂義士の杉野十平次との心の交流が描かれ、討入り前夜から当日の物語が展開される。浪曲では三波春夫のものが有名だが、今回は講談の人間国宝である神田松鯉に脚本協力を仰ぎ、昨年好評を博した松緑主演・西森英行演出・竹柴潤一脚本のトリオにより、新たな舞台が誕生する。そして来年1月に上演される『荒川十太夫』は、松鯉の口演による『赤穂義士外伝』をもとにした作品で、昨年10月に歌舞伎座で初演。討ち入り後の後日談として、高田馬場の決闘で有名な赤穂義士のひとり、堀部安兵衛の切腹の際に介錯をつとめた下級武士の荒川十太夫の苦悩と、武士としての覚悟が情感豊かに描き出される。■尾上松緑 コメント御機嫌宜しゅう御座居ます、尾上松緑ですこの度、東京歌舞伎座に於きまして、今年の十二月に『俵星玄蕃』、来年一月に『荒川十太夫』と、講談から起こしました新作歌舞伎を二ヶ月連続で上演します事が決定致しました昨年、初演致しました『荒川十太夫』は賞を頂いたりと、お客さんもとても喜んで下さっていた手応えは有りましたが再演が叶い、友人であり尊敬している神田伯山先生との約束が一つ果たせた事、嬉しく思いますまた、伯山先生から御縁を繋いで頂き台本協力等、様々なお教え、御力添えを賜っている神田松鯉先生には言葉では言い尽くせ無い感謝の念で一杯です今年十二月に初演予定の書き下ろし「俵星玄蕃」は忠臣蔵事件の討ち入り前夜から当日そして、来年一月再演予定の『荒川十太夫』は討ち入り後の顛末を物語った作品となります「俵星」は原作をベースにしながら、より歌舞伎味を強く「荒川」は前回の台本を手直ししながらも、講談ベースをより色濃く二作品の毛色の違いを出して行けたらと計画中です話は続いておりますので二夜連続ドラマとして観て頂ければ幸いと思っております二作品共、脚本竹柴潤一さん、演出西森英行さんと、何でも言い合える仲間と再び手を組める事も心強く存じています御好評頂ければ、今後も年一本位のペースで古典歌舞伎に準じた新作歌舞伎を発表出来ればいいなとも胸の内に願っておりますまた、個人的には私は再来月の歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」にて、片岡仁左衛門の兄さんが松浦鎮信公を演じられます「松浦の太鼓」で赤穂浪士の一人である大高源吾を勤めさせて頂きますこの芝居もまた討ち入り当夜を描いた作品で御座居まして、続けて観ても話に矛盾は御座居ません或る意味、忠臣蔵三夜連続ドラマを観る様な感覚でお楽しみ下さると私もより嬉しいです共演者、スタッフ、松竹株式会社と共に、また新たにお客さんに喜んで貰え、再演を望まれる作品となる様に努力致しますどうか応援の程を宜しくお願い致します■神田松鯉 コメント嬉しいニュースが二ツ届いた。第一は、講談「俵星玄蕃」の歌舞伎化である。飲兵衛で槍の名人俵星と赤穂義士杉野十平次の物語は、かつて歌にまでなった名作。第二は、昨年秋に初演された『荒川十太夫』が、早くも来年の正月歌舞伎座で再演されるという。快挙である。こうして講談を次々と歌舞伎化して下さる尾上松緑丈には只々感謝をするばかりだ。真ッ直でいて懐が深く、豪放と細心を併せもつ松緑丈の舞台に今から胸を躍らせている。■西森英行(演出)コメント『俵星玄蕃』・『荒川十太夫』、歌舞伎座二ヶ月連続上演。この挑戦的かつ意欲的な興行に、演出として参加させて頂けることを、心より光栄に思います。『荒川十太夫』は、緻密な心理劇の構造を俳優の皆さんと共有し、古典劇現代劇の技法を融合させ、あたかも古くから上演を重ねてきたかのような歌舞伎作品として昇華させることを考え続けて作り上げました。『俵星玄蕃』では、人として生きる誇りとは何か、根源的な問いを抱える俵星玄蕃の心模様を縦糸に、重層的な対話劇と活劇を織り合わせ、新たな人間ドラマを描く歌舞伎作品として、醸成していきたいと考えています。赤穂事件により、その人生が色濃く浮き彫りになった俵星玄蕃と荒川十太夫。二人の男、二つの物語から浮かび上がるのは、時代が変われど、現代を生きる私たちにも受け継がれている「日本人のこころ」。講談の世界で、声とことばで聴くものの心を震わせ続けてきた物語、古から受け継がれる「こころ」を、優れた歌舞伎俳優さんの肉体を通して、現代に甦らせたいと思っています。尾上松緑さんは、若かりし頃から一意専心、歌舞伎への、伝統への深い思いを青い炎のように胸の内にたぎらせ続けてきました。俵星玄蕃、荒川十太夫、二人の人物を通して、松緑さんの達人の居合の如き魂の一閃を、目撃して頂きたいと思っています。<公演情報>令和5(2023)年12月歌舞伎座『俵星玄蕃』2023年12月 東京・歌舞伎座で上演令和6(2024)年1月歌舞伎座『荒川十太夫』2024年1月 東京・歌舞伎座で上演
2023年09月20日12月歌舞伎座公演にて、坂東玉三郎演出による『天守物語』が上演されることが発表された。文豪・泉鏡花の戯曲の中でも屈指の名作とされる『天守物語』は、白鷺城(姫路城)の天守閣にまつわる伝説をもとにした、美しい異形の世界の者とこの世の人間との夢幻の物語。天守閣の最上階に棲む美しく気高い天守夫人・富姫と若き鷹匠・姫川図書之助の恋が描かれ、美の本質、真の純粋さを希求した傑作として知られる。歌舞伎では、昭和30(1955)年に六世中村歌右衛門の富姫で初演。近年では、坂東玉三郎が昭和52(1977)年に富姫を初演して以来、自身が演出も勤めながら大切に上演を重ねてきた。そして今年5月には、「平成中村座姫路城公演」にて玉三郎の演出により、中村七之助が富姫を初役で勤め、好評を博した。本公演では、七之助の富姫、中村虎之介の図書之助、中村勘九郎の舌長姥/近江之丞桃六、中村獅童の朱の盤坊の配役に、演出をする玉三郎が富姫の妹分である亀姫役を初役で勤める。<公演情報>「歌舞伎座新開場十周年 十二月公演」公演日程:2023(令和5)年12月会場:東京・歌舞伎座上演演目:『天守物語』ほか一般前売:11月14日(火) 10:00より電話予約・WEB受付開始■出演天守夫人富姫:中村七之助姫川図書之助:中村虎之介舌長姥/近江之丞桃六:中村勘九郎朱の盤坊:中村獅童亀姫:坂東玉三郎
2023年09月12日歌舞伎座新開場十周年『八月納涼歌舞伎』3部それぞれの特別ポスターが公開された。第一部『裸道中』『大江山酒呑童子』のポスターは、どこか憎めない愛嬌をもつ勝五郎と、喧嘩をしつつも夫への愛情が滲む女房のみきの姿をとらえた『裸道中』と、盃を重ねて心地よく踊る童と本性を現した荒々しい鬼神の姿が印象的な『大江山酒呑童子』の世界が凝縮された1枚。第二部『新門辰五郎』『団子売』は、江戸町火消しのシンボルでもある纏と並ぶ松本幸四郎演じる新門辰五郎と、明るく軽やかな風俗舞踊『団子売』に出演する坂東巳之助演じる杵造、中村児太郎演じるお福が映し出されている。そして第三部『新・水滸伝』には、役人たちの不正による国の乱れに憤り、腐った体制に反旗を翻し縦横無尽に暴れまわる梁山泊に集結した豪傑たちが登場。熱く燃え上がる魂を表すかのような朱色の世界に、個性豊かな登場人物が鮮やかに浮かび上がっている。これらの特別ポスターは、歌舞伎座ほかにて順次掲出予定。なお『八月納涼歌舞伎』は、8月5日(土) から27日(日) まで歌舞伎座で上演される。<公演情報>歌舞伎座新開場十周年『八月納涼歌舞伎』8月5日(土) ~27日(日) 歌舞伎座歌舞伎座新開場十周年『八月納涼歌舞伎』ビジュアル詳細はこちら:
2023年07月27日6月16日(金) 12時より歌舞伎の公式有料動画配信サービス「歌舞伎オンデマンド」にて、今年5月に上演された歌舞伎座『團菊祭五月大歌舞伎』の全演目の有料配信がスタートした。「歌舞伎オンデマンド」は最新の舞台作品から選りすぐりの名演、歌舞伎俳優によるトークショーなど、“いつでもどこでも楽しめる”歌舞伎コンテンツをお届けするサービス。劇場で感じる迫力はそのままに、配信ならではの目線や細かい仕草、俳優の息遣いなどを楽しむことが出来る。また、初代尾上眞秀の初舞台を記念した特別インタビューも配信することが決定。初舞台を振り返る貴重なインタビュー映像の配信は、歌舞伎オンデマンド初となる。『音菊眞秀若武者(おとにきくまことのわかむしゃ)』で初代尾上眞秀として初舞台を踏み、10歳とは思えない堂々とした立居振る舞いで、可憐な女童と凛々しい岩見重太郎の2つの姿を見事演じきった尾上眞秀。インタビュー映像には、初舞台が決まった時の心境や祖父・尾上菊五郎からの教え、約1カ月の舞台を乗り切った元気の源などを、自身の言葉で語った等身大の姿が収められている。<配信情報>「團菊祭五月大歌舞伎」配信期間:6月16日(金) 12:00~7月6日(木) 23:59まで※購入後7日間繰り返しご視聴可能配信場所:歌舞伎オンデマンド【配信演目】■舞台映像6演目:2,200円~3,300円(税込)『寿曽我対面』、十二世市川團十郎十年祭『若き日の信長』、初代尾上眞秀初舞台『音菊眞秀若武者(おとにきくまことのわかむしゃ)』、『宮島のだんまり』、春をよぶ二月堂お水取り『達陀(だったん)』、『梅雨小袖昔八丈』『髪結新三』配信はこちら:【初代尾上眞秀初舞台記念セット】『音菊眞秀若武者』:3,700円(税込)【収録内容】1. 本編2. 初代尾上眞秀初舞台記念「尾上眞秀特別インタビュー」3. イヤホンガイド「Web講座」※ご視聴には歌舞伎オンデマンド連携の配信プラットフォーム「MIRAIL(ミレール)」の会員登録(無料)/ログインが必要です。
2023年06月16日歌舞伎座新開場十周年「團菊祭五月大歌舞伎」が5月2日(火) に東京・歌舞伎座で開幕。その初日レポートが到着した。「團菊祭」は、ゆかりの演目、出演者で魅せる歌舞伎座五月興行恒例の祭典。昼の部は、江戸歌舞伎の様式美溢れる人気作『寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)』から。幕が開くと、中村梅玉演じる工藤左衛門祐経が富士の巻狩りの総奉行に任じられた祝宴を催し、中村魁春演じる傾城・大磯の虎や、大名たちが居並んでいる。そこへ坂東巳之助演じる小林朝比奈の仲介により現れたのは、尾上右近演じる曽我十郎と尾上松也演じる五郎の兄弟。父の仇を討とうとはやる五郎は、工藤に詰め寄るが……。父の仇である工藤を討ち取りながらも若くして散った兄弟の死を悼み、中世以降、広く愛されてきた「曽我もの」の作品の中でも、特に祝祭性の高い人気の場面が『寿曽我対面』だ。どっしりとした貫禄を見せる梅玉の工藤に清新なエネルギー溢れる十郎と五郎が向かっていく。梅玉が筋書の聞き書きで「周りが活きのいい後輩ばかりですから新鮮です。期待している後輩たちに負けないように」と語ったように、若手俳優の活躍も目覚ましい一幕となった。続いては「十二世市川團十郎十年祭」『若き日の信長(わかきひののぶなが)』。文豪・大佛次郎が十一世市川團十郎のために書き下ろし、昭和27(1952)年に初演された本作。十一世、十二世團十郎が大切にし、当代の團十郎に受け継がれた成田屋ゆかりの演目で十二世市川團十郎を偲ぶ。秋の夕景から始まり、冬の冷たい朝、清洲城の堀外、堀内の書院に轟く雷鳴まで、市川團十郎演じる信長の複雑に変わりゆく心情に合わせ巧みに変化していく舞台美術も印象的で、信長が自分の苦しみを理解してもらえず平手中務政秀(中村梅玉)に死なれた悔しさと淋しさを吐露する場面は、人々の心を惹きつける。「信長が亡き父を思う気持ちや、父と息子の関係性や距離感には、自分自身と通じるものを感じています。父の十年祭で上演できることをありがたく思います」と取材会で語った團十郎。父・十二世團十郎から教わったという十年祭にふさわしい演目に、客席からは故人を懐かしむあたたかな拍手が送られた。続く、華やかな舞踊と豪快な立廻りがみどころの『音菊眞秀若武者(おとにきくまことのわかむしゃ)』では寺嶋眞秀が初代尾上眞秀を名のり初舞台を勤めた。舞台は藤の花が咲き誇る山里曲輪。国守の祝いの宴が催されるなか、剣術指南役に連れられ一人の女童(尾上眞秀)がやってくる。はつらつとした声を場内に響かせた眞秀演じる女童は、大伴家茂(市川團十郎)、藤波御前(尾上菊之助)とともに可憐な舞を披露する。やがて、自身が実は岩見重太郎という男子であることを明かすと、後半では長坂趙範(尾上松緑)やその手下、大狒々を相手に勇ましく立廻り、凛々しい姿を見せる眞秀。さらには忽然とあらわれた弓矢八幡(尾上菊五郎)の威徳によって重太郎は狒々を退治。今回の初舞台のためにシャネルのサポートにより制作された明るい色合いで華やかな祝幕を背景に花道を豪快に引っ込むと、その堂々とした姿に割れんばかりの拍手が送られた。尾上菊之助が5年ぶりに髪結新三役に挑む『梅雨小袖昔八丈 髪結新三』夜の部は、歌舞伎の様式美を堪能できるひと幕『宮島のだんまり(みやじまのだんまり)』から。幕が開くと舞台一面に浪幕が。やがて大薩摩の豪快な演奏が場内に響き渡ると、浪幕が振り落とされ舞台は海辺の厳島神社へ。いわくあり気な巻物を読みふける傾城浮舟太夫(中村雀右衛門)、巻物を奪おうとする源氏の智将・畠山庄司重忠(中村又五郎)らが登場する。さらに浮舟を捕えようとする人々、ついには平家一門を率いる平相国清盛(中村歌六)も現れ、源平物語でおなじみの登場人物たちによる巻物を巡っての「だんまり」を展開。「だんまり」は、暗闇のなか善悪入り乱れた登場人物たちが無言で宝物を探り合う歌舞伎独特の演出の一つ。美しい絵面で展開される、歌舞伎らしさを感じられるひと時だ。本作の特徴である主役の傾城浮舟太夫は、男の盗賊という自らの正体を明かすと、上半身は男、下半身は女の姿で、男の勇ましさと遊女の色っぽさを同時に表現する「傾城六方」で花道の引っ込み、独特の風情をみせた。続いては、春をよぶ二月堂お水取り『達陀(だったん)』。「お水取り」で知られる東大寺二月堂の修二会の行を題材に、二世尾上松緑が創作し、昭和42(1967)年に初演された舞踊劇。舞台となるのは、修二会の法会が行われている奈良・東大寺の二月堂。法会を取り仕切る僧の集慶(尾上松緑)が東大寺に所縁ある故人たちの名を記した過去帳を読み上げるところへ、どこからともなく青衣の女人(中村梅枝)が現れる。この女は、集慶のかつての恋人。やがて女人は幻想の集慶(尾上左近)の手を取り昔の思い出を踊り……。東大寺に伝わる僧集慶と青衣の女人の伝説が巧みに取り入れられた本作は、幻想的な雰囲気と艶やかな情感が漂う前半から、降り注ぐ火の粉を物ともせずダイナミックな群舞を見せるクライマックスまで、圧巻の舞台が続く。「練行衆の誰一人が欠けても成り立たない集団の芸術」と松緑が話す通り、舞台上に並んだ練行衆が一体となり大きなうねりを生み、劇場全体がその渦に引き込まれていくかのよう。「お水取りの行をリスペクトしたうえで、皆が共通の意識をもって、その旗を立てられたゴールに向かっていくと、1日1日研ぎ澄まされたものになるのではないか」と語る松緑の作品への真摯な思いも伝わる一幕。静と動のコントラストが美しい舞踊劇に客席からは大きな拍手が巻き起こった。夜の部を締めくくるのは、河竹黙阿弥による名作『梅雨小袖昔八丈 髪結新三(つゆこそでむかしはちじょう かみゆいしんざ)』。白子屋の一人娘のお熊と手代の忠七が恋仲であることを知った髪結新三(尾上菊之助)は、忠七を騙してお熊を誘拐し、身代金をせしめようと企む。新三はお熊を取り戻そうとやってきた俠客の弥太五郎源七(坂東彦三郎)を追い返すも、続いてやってきた老猾な家主の長兵衛(河原崎権十郎)にやり込められてしまい……。河竹黙阿弥の没後百三十年、五代目菊五郎の没後百二十年、初演から百五十年という節目の年でもある本年。今回5年ぶりに再び髪結新三役に挑む尾上菊之助は、場面や関わる相手によって変化していく新三という江戸の市井の人間を生き生きと体現。筋書では「幕開きに演目の全体像をご説明する解説がつきます。江戸から明治への転換期という混乱の中で生まれた物語で、そこに込められた、何を大切に生きていくべきかというメッセージを感じていただきたい」と演出へのアプローチも語った菊之助。黙阿弥らしい七五調の台詞も耳に心地よく、初鰹の売り声など、随所に江戸の市井の人々の姿が感じられる本作。江戸歌舞伎の粋を感じられる一幕となった。「團菊祭五月大歌舞伎」は5月27日(土) まで歌舞伎座で上演される。「團菊祭五月大歌舞伎」の詳細はこちら:チケット購入リンク:写真提供:松竹(株)※無断転載禁止
2023年05月08日4月歌舞伎座「鳳凰祭四月大歌舞伎」昼の部『新・陰陽師』で脚本・演出、そして蘆屋道満役を勤める市川猿之助が、安倍晴明を祀る晴明神社にて成功祈願を行った。本公演は、夢枕獏が描いた伝奇小説『陰陽師』を原作に、歌舞伎ならではの演出や工夫が凝らされた作品。猿之助の脚本・演出のもと、次代を担う花形俳優が顔をそろえ、新たな「陰陽師」の世界が誕生する。神社には、出演者(市川猿之助、坂東巳之助、中村壱太郎、尾上右近、中村隼人、中村児太郎、中村福之助、中村鷹之資、市川染五郎)が書いた絵馬を猿之助が代表して奉納。京都・南座『三月花形歌舞伎』に出演中の尾上右近、中村鷹之資もその場に駆けつけた。成功祈願の様子左より)中村鷹之資、市川猿之助、尾上右近併せて、本公演の特別ポスターも公開。猿之助扮する蘆屋道満からはいかにも怪しげな雰囲気が漂い、まるでその指先から伸びた糸で登場人物たちを操っているかのようなビジュアルに。道満が広げた手の下には、中村隼人の安倍晴明、市川染五郎の源博雅、坂東巳之助の平将門、中村壱太郎の滝夜叉姫、尾上右近の興世王、中村児太郎の桔梗の前、中村福之助の俵藤太、中村鷹之資の大蛇丸ら総勢八人の個性豊かなキャラクターが並んでいる。本ポスターは歌舞伎座ほかにて掲出される。■市川猿之助 コメント公演が成功するように座中一丸となって、良いものをこれから作り上げ、初日が開いてからも努力していこうということを晴明様にお誓い申し上げました。絵馬に書いた言葉は「神恩感謝」。4月にこうして公演をやらせていただけるということがすでにありがたいことですから、まずは感謝を申し上げて、そこからものごとが始まるということです。今回の『新・陰陽師』は同じ夢枕獏先生の原作をもとにしていますが、前回の公演から10年経ってリニューアルという意味も込めて、古典歌舞伎の形式でお届けします。若手それぞれに見せ場を作りますので、普段彼らがいかに古典歌舞伎を学んできたかということの成果をお見せいたします。彼らにとっても色々な発見がある舞台になるのではないかと。昼夜二部制ということもあり、久しぶりに三幕構成としてひとつのお芝居をじっくりと観ていただきます。ひとりでも多くの方に劇場に足を運んでいただいて、お芝居を楽しんでいただければと思っております。<公演情報>歌舞伎座新開場十周年記念「鳳凰祭四月大歌舞伎」『新・陰陽師』2023年4月2日(日) 初日~27日(木) 千穐楽『新・陰陽師』特別ポスター
2023年03月18日新年を飾る歌舞伎座の「壽 初春大歌舞伎」。2023年1月2日(月) より、歌舞伎座新開場十周年と銘打ち三部制で開催される同公演より、第二部で上演される『人間万事金世中(にんげんばんじかねのよのなか)』に出演する坂東彌十郎が取材に応じた。2023年に没後130年を迎える名作者・河竹黙阿弥による喜劇『人間万事金世中』は、明治の文明開化の新風俗を描いた「散切物(ざんぎりもの)」と呼ばれる世話狂言。いつの時代も変わらない、金に翻弄される人々の滑稽さ、軽薄さをユーモアたっぷりに描き出す。イギリスの戯曲『money』を黙阿弥が翻案したもので、登場人物の名前も英名の「ジョン・ヴェセイ」を辺見勢左衛門、「エヴリン」を恵府林之助、「クララ」をおくらとするなど、翻案劇ならではの遊び心もうかがえる一風変わった作品。前回の上演は2004年(平成16年・大阪松竹座)まで遡り、今回19年ぶりの上演。歌舞伎座でも珍しい演目となる本作について彌十郎も「翻案ものならではの洒落で洋物っぽいところを出せれば面白い」としつつ、「“黙阿弥調”と呼ばれる独特の台詞と散切物のテンポというのが消えてしまわないようにしなければ。松緑のおじさま(二世尾上松緑)の音源を聴くとすごく軽やかで素敵なんですよね。それが上手くできれば。ただ早くやればいいというわけではなくお客様に伝わらないといけない」と語る。本作で彌十郎が演じるのは主役のケチで強欲な辺見勢左衛門。「本当に救いようのないくらい嫌なやつなんだけど、結局最後には笑えちゃう。お客様が芝居が終わって、“初春”のお気持ちでお帰りいただけるようになれれば」。役づくりについては「第一に松緑のおじさまのイメージと、それを受け継いだ富十郎のお兄さん(五世中村富十郎)のイメージを自分の中にどう入れ込んでいくか」と思案中の様子。『人間万事金世中』より、辺見勢左衛門に扮する坂東彌十郎イメージビジュアル提供:松竹(株)『人間万事金世中』辺見勢左衛門に扮する坂東彌十郎イメージビジュアル提供:松竹(株)共演には妻・おくら役の中村扇雀ほか気心の知れた同年代の面々が並ぶ。「僕が主役と言うより皆さんで一緒につくる芝居だと思っているので、皆さんと相談してつくりあげたい」と和やかに話すも、6年ぶりの歌舞伎座での主演ということで「感無量。全身全霊でいきたい」と気合は充分(前回は2017年「八月納涼歌舞伎」第二部にて父・初世坂東好太郎の追善『修禅寺物語』夜叉王役で主役を勤めた)。「(今回の公演が成功して)面白いね、またやりたいねとなれば、またかけられる。あくまで挑戦とチャンスをいただいて、テストされていると思って臨みます」と背筋を伸ばす。2022年に吸収したものを一気に放出したい2022年は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での好演で注目を集め、年末は大晦日放送の「第73回NHK紅白歌合戦」のゲスト審査員にも決定している。大きな飛躍となった一年を「常に前進することだけを考えていますが、今までの年よりは大きく前進できたかなと思っています。でももっともっと前進していきたい」と振り返り、「来年は2022年に吸収したものを一気に放出したい」と精力的。また、大河ドラマをきっかけに、普段歌舞伎を観ない視聴者から「歌舞伎というものをみてみたい」というメッセージが届くこともあるとのことで、「本当に嬉しいですし、それを裏切ってはいけない」と責任を滲ませる。ただ、「歌舞伎は本当に間口が広いですから、どうしてもいきなり観たら嫌になっちゃうという演目もあると思うんです。歌舞伎を薦めるのは一番難しい」とも。「自主公演を含めてこれからどんどんやっていきたいなと思います」と今後の歌舞伎の普及についても意欲をみせる。ちなみに勢左衛門には貧乏ゆすりをするという癖があるそうで、貧乏ゆすりをしてみせる一幕も。「強欲なのに貧乏ゆすりをする。おかみさんにも『貧乏ゆすりをするからお金がたまらない』と言われてそれでイライラして貧乏ゆすりをしたり。物語にあまり関係ないんだけど、それが自然にできたらいいなと」。ドケチだけれどどこか憎めない、彌十郎ならではの勢左衛門に期待したい。「壽 初春大歌舞伎」は2023年1月2日(月) より27日(金) まで東京・歌舞伎座にて、三部制で上演。<公演情報>歌舞伎座新開場十周年「壽 初春大歌舞伎」2023年1月2日(月・祝)~2023年1月27日(金)第一部 11:00~第二部 14:15~第三部 17:45~【休演】10日(火)・19日(木)【貸切】第一部:6日(金)
2022年12月27日10月4日から歌舞伎座で開幕する「芸術祭十月大歌舞伎」の第二部『祇園恋づくし』(作・小幡欣治、演出・大場正昭)に出演する中村鴈治郎と松本幸四郎が取材に応じた。両名による再演は、7月の大阪松竹座以来、わずか3カ月ぶりという異例の早さ。「まさかこんなに早いとは。歌舞伎座は大きいので、雰囲気の違いに怖さもありますが、やるからには楽しんでもらいたい」(鴈治郎)、「うれしい限りですね。切羽詰まった話ですけど、それが笑えるのが魅力。面白く楽しいお芝居なので、喜んでいただければ」(幸四郎)と意気込みを語った。日本三大祭のひとつ「祇園祭」を背景に、京と江戸の意地と粋が絡み合う恋模様を描く本作。鴈治郎が大津屋次郎八と妻のおつぎ、幸四郎が指物師留五郎と芸妓染香をそれぞれ、二役早替わりで演じる様も見どころになっており、「やっぱり、二役やらないと面白くない。(幸四郎は)気心も知れているし」と鴈治郎。幸四郎は男役の留五郎を演じる際には、白粉を落とす“離れ業”を披露しており、「まさか、落とすとは思わなかった。うそだろって(笑)。あの早変わりはすごいよ」(鴈治郎)、「間に合っちゃったんですよね(笑)」(幸四郎)と丁々発止のやりとりを披露した。『祇園恋づくし』と言えば、次郎八と留五郎が、京と江戸のお国自慢を披露する巧みな台詞のやり取りも見逃せない。鴈治郎は「東男に京女という言葉もあって、このお芝居はその逆ですが、本音がつかみにくくて、裏で何を考えているか分からない京男の“あるある”な部分が描かれている」と語り、「今回はこっちがアウェイで、巨人阪神戦みたいなもの」と歌舞伎座公演に対し、ユーモアあふれる持論を展開。幸四郎も「いわば郷土自慢ですけど、お互いをけなし合う芝居になってしまうと、後味が悪くなってしまうので」と演じる上での意識を明かした。7月松竹座での共演で、すっかり意気投合した様子のふたり。鴈治郎が「僕から逃げようとするシーンがあるんですけど、逃げる前からリードが広いと、捕まえられなくなる。歌舞伎座は広いから」と“注文”を出すと、幸四郎は「僕に対して『何かするんだろ?』って警戒心を感じてらっしゃるみたいで(笑)。逆にこちらも何か思いついたら、躊躇なく投げかけたい。そういう緊張と勇気を与えてくださっている。責任は取らないですけど、上演時間だけは気をつけないと(笑)」と不敵な笑みを浮かべていた。取材・撮影・文=内田涼<公演情報>「芸術祭十月大歌舞伎」2022年10月4日(火)~27日(木) 歌舞伎座【休演】11日(火)、19日(水)第一部:11:00~第二部:14:30~第三部:18:15~
2022年10月01日歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部『安政奇聞佃夜嵐』が8月5日から東京・歌舞伎座で上演されるのに先駆け、物語の主人公となる青木と神谷を演じる松本幸四郎、中村勘九郎のコメントと2ショット写真が到着した。本作は明治の初めに実在した脱獄事件をもとに、大正3(1914)年に古河新水(十二世守田勘弥)が、時代設定を世情不安定な安政期に改め、書き下ろした世話物。人足寄場(監獄)で苦役の日々を過ごす青木と神谷の2人が隅田川を渡る脱獄を計画するところから物語は始まり、2人が隅田川を泳いで脱獄するシーンは、青木と神谷による面白味あふれるやりとりが人気の名場面となっている。本作について幸四郎は「曽祖父の初代吉右衛門と六代目菊五郎で上演しているのに、知っているのは島抜けの泳いでいくところくらいで、そこが昔からすごく気になっていました(笑)。その場面の写真は「菊・吉」といえば必ず出てくるものだったので。勘九郎さんと一緒にやりたいお芝居の最たるもので、その機会がきて本当に良かった!なんでかは分からないけれど(笑)」とコメント。勘九郎は「『島抜け』というワードが出てきた時に、子供の頃に六代目(菊五郎)の曽祖父の写真集で、おじい様の泳いでいる姿と播磨屋さんが水を怖がっている写真を見て、子供心にも面白くて惹かれたのを思い出しました。子別れや敵討ちもありますが、歌舞伎ならではのばかばかしさもあって、『歌舞伎』が詰まった作品ですよね。引いて見るとちょっと間抜けな人たちの話ですが、頑張って生きている人の姿が短いなかに詰まっている気がします。」と語った。(C)松竹また「島抜けの場面の、泳げる青木と泳げない神谷の関係性をどう見せるか。『〇〇島からの脱出!』みたいな壮大な感じではないけど(笑)。やっぱりこの二人ならではの息であったり、お客様がそこで安心する、共感する意味での反応を貰える芝居にしたい。上演をあまりいろんな方でやられていない作品だからこそ、これは二人でしかできないだろというところを目指したいですね。勘九郎さんと僕の二人の芝居で歌舞伎を堪能してもらいたい!季節感をさしおいてでも、今一番そこを楽しんでいただける作品ではないかと思っています。役者が生で、舞台で、お芝居をする、芸をお見せする、それをお客様に堪能していただくというところを目指して選んだ作品です。」(幸四郎)、「幸四郎さんと僕には『かわいらしさ』があると思うんですよね(笑)。悪いやつなんだけど、どこか憎めないチャーミングさが出せたらいいなと。僕が演じる神谷は水がだめなんですが、川を渡る場面で幸四郎さん演じる青木が神谷を『安心させる』とト書きがあるので、今回は青木がいったいどう安心させてくれるのか楽しみにしてます(笑)」(勘九郎)とそれぞれ意気込みを寄せている。(C)松竹<公演情報>歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」第二部『安政奇聞佃夜嵐』8月5日(金) ~30日(火) 東京・歌舞伎座出演:松本幸四郎(青木貞次)、中村勘九郎(神谷玄蔵)ほか歌舞伎座 公式サイト:
2022年08月04日松竹大谷図書館が所蔵する戦前の歌舞伎座の筋書と絵本番付が、Web上で閲覧できるデジタルアーカイブで公開された。演劇・映画専門の私立図書館・松竹大谷図書館では、明治22年に初開場した東京歌舞伎座の戦前までの筋書約1,180冊のデジタル撮影と保存のための資金調達を目的としたクラウドファンディングを実施。このたび図書館HP内のデジタルアーカイブ「芝居番付検索閲覧システム」において検索・閲覧が可能に。図書館所蔵の歌舞伎座開場当時から戦前までの番付全種類をWebで一覧できるようになり、より充実したデータベースとなった。今回デジタル化された筋書と絵本番付は、現在の劇場プログラムにあたる資料。明治初期には新しい形式の番付として演目の挿絵と配役(役割)が掲載された木版刷の【絵本番付(絵本役割)】が発行されていたが、印刷技術が発達するにつれて、配役とあらすじが掲載された活版印刷の【筋書】も発行されるようになり、さらに大正期に入ると【筋書】には出演俳優の写真や談話などが掲載されるようになった。また劇場からのお知らせのほか、化粧品など様々な広告が掲載された【筋書】は、出版当時の社会や世相を反映した生活文化を物語る貴重な資料でもある。明治45(1912)年4月絵本番付、筋書松竹大谷図書館は、これら資料のデジタルアーカイブ公開により「演劇界のみならず、近代から戦前の日本の社会や文化、出版分野などの研究発展にも寄与できれば」としており、今後も貴重資料のデジタル化プロジェクトを進め、希少性や利用頻度の高いものから順次公開していく予定だ。■松竹大谷図書館所蔵貴重資料デジタルアーカイブ「芝居番付検索閲覧システム」※デジタルアーカイブ公開後は資料保護のため、原則として資料現物の閲覧はできなくなります。
2022年07月01日2022年8月、実に3年ぶりに歌舞伎座に帰ってくる「八 月納涼歌舞伎」にて、世界中で愛される“漫画の神様”、手塚治虫の漫画『新選組』が上演される。誰もが親しみをもって楽しむことができるエンタテインメント性に溢れる作品を生み出し、奇想天外なアイディアとファンタジー性で読者を虜にし続けた唯一無二の漫画家、手塚治虫の作品が歌舞伎として上演されるのは今回が初。手塚治虫漫画の表現を追求し、極限までその可能性を押し広げ、世界中の多くのクリエイターに影響を与えるだけでなく、その作品世界には、命の尊さ、生きることの意味を問う壮大なテーマ性が内包され、時を超え、国の垣根を飛び越えて、今なお世界中で幅広い世代に読み継がれている。多くの代表作のなかでも、歴史を題材にした作品では、実在した歴史上の偉人たちと架空のキャラクターが絶妙に絡み合い、ドラマティックな物語を創出。壮大なファンタジーのなかに、人が生きている実感、真実の光を照らし出す。歴史上の人物や事件を題材にして数多くの作品を生み出してきた歌舞伎との親和性も高く、手塚治虫の生み出した歴史漫画がどのように歌舞伎として上演されるのか、今から期待が高まる。深草丘十郎(手前)と鎌切大作(奥)(c)Tezuka Productions今回、手塚治虫の描いた数多くの漫画から初めて歌舞伎としての上演に選ばれた『新選組』は、1963(昭和38)年1月号から10月号まで、集英社の月刊誌「少年ブック」で連載され、その独自の視点と解釈で描き出された作品世界は多くのクリエイターに影響を与え、手塚治虫の隠れた名作として評価の高い作品だ。父の仇を討つため、「新選組」に入隊し剣の腕を磨く少年・深草丘十郎(ふかくさ きゅうじゅうろう)の成長と、どこか謎を秘めた親友・鎌切大作(かまぎり だいさく)との友情を描き、幕末の京都を舞台に、近藤勇、土方歳三、沖田総司や芹沢鴨らおなじみの新選組隊士たち、さらに坂本龍馬との出会いを通じて、深草丘十郎の姿を生き生きと描き出す。近年、『ワンピース』や『NARUTO -ナルト-』、『風の谷のナウシカ』といった漫画を原作とした歌舞伎作品が注目を集めるなか、遂に“漫画の神様”手塚治虫の作品が「八月納涼歌舞伎」で上演される。歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」は、1990(平成2)年から始まり、十八世中村勘三郎(当時、勘九郎)と十世坂東三津五郎(当時、八十助)を中心に、花形が活躍する公演として人気を博してきた。この「納涼歌舞伎」によって、歌舞伎座では1年12ヶ月を通じて歌舞伎興行が開かれるようになり、平成の歌舞伎の一大ブームを巻き起こすことに。2022(令和4)年8月、コロナ禍以降、実に3年ぶりの公演となる。歌之助が深草丘十郎、福之助が鎌切大作。勘九郎・七之助と競演左から)中村福之助、中村歌之助(c)松竹気になる配役は、父の仇を討つため「新選組」に入隊する深草丘十郎に中村歌之助、どこか謎を秘めた丘十郎の親友・鎌切大作に中村福之助が決定。勘三郎、三津五郎と共に「納涼歌舞伎」を盛り上げてきた中村芝翫の三男である歌之助と次男の福之助が、手塚治虫が生み出した魅力的なキャラクターである深草丘十郎と鎌切大作という若いふたりの剣士を躍動的に勤めることに注目だ。そして、中村勘九郎と中村七之助の出演も決定し、中村屋兄弟といとこにあたる福之助・歌之助兄弟との競演も話題必至。夏の暑さを吹き飛ばし、熱気溢れる舞台が展開される予感の歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」、チケットは7月14日10時より一般発売。中村勘九郎(c)松竹中村七之助(c)松竹出演者コメント【中村歌之助:深草丘十郎(ふかくさ きゅうじゅうろう)役】まさか歌舞伎座で主役をさせていただけるなんて…プレッシャーもありますが、すごく嬉しいです!勘九郎の兄から手塚治虫先生の「新選組」が面白いと伺って兄たちと読みました。幕末の話でありながらも、現代に通ずるテーマ性があり、若い人にも観ていただきたいです。手塚治虫先生の作品は、母方の祖父が「鉄腕アトム」を見せてくれたり、小さい頃から作品に触れていたのでご縁を感じています。初めて歌舞伎になるときに、主人公の丘十郎として舞台に立たせていただけることは有難く、光栄です。「八月納涼歌舞伎」は若手が一致団結してやる公演でもあるので、今回「新選組」を8月の歌舞伎座でさせていただけることも、すごく嬉しいです。勘九郎の兄や七之助の兄はじめ錚々たるみなさんが出てくださると思うので、周りにも支えていただいて、ひと月がんばりたいです。出演が決まったときは、家族みんなで喜びました。父(芝翫)は「チャンスだからがんばりなさい。本当によかったね」と言ってくれました。母(三田寛子)はひたすら「がんばりなさい。もらったチャンスをものにするのよ」と。兄弟の反応は…一番上の兄(橋之助)からは「ずるいなぁ…」と。僕ら二人にすごい嫉妬が…。丘十郎と大作の関係は、僕たち兄弟の関係とどこか似ているようで、二人に合っているのかもしれません。兄と芝居をするのはすごく楽しみですし、二人が成長していく過程を日に日に観ていただけたら嬉しいです。左から)中村福之助、中村歌之助(c)松竹【中村福之助:鎌切大作(かまぎり だいさく)役】とにかく楽しみでしょうがないです! がんばります!!!数年前に勘九郎の兄から、手塚治虫先生の「新選組」が面白いからと勧めていただいてすぐに読みました。兄弟で回し読みしながら、新選組をそう描くんだ!と、とても面白くて、これが歌舞伎になったら…と想像したり、ワクワクしながら読みました。今回、鎌切大作を勤める上では、手塚治虫先生のファンや「新選組」を愛していらっしゃる方々に舞台を観ていただいたときに、「あ、鎌切大作だ!」と自然に馴染んでいただけるように演じられたら、それがベストだと思っています。まだ誰もやっていないお役に臨めることも、楽しみでしようがないですね。「八月納涼歌舞伎」は、小さい頃から勘三郎の伯父や父が出ていた公演なので、そこに出させていただけることは身の引き締まる思いです。さらに今回、「新選組」というお芝居ができるのは、「新選組」を勧めていただいた勘九郎の兄に感謝ですし、今、自分たちができる最高のパフォーマンスを出し切れるようにがんばりたいと思います!公演概要歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」2022年8月会場:歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)原作:手塚治虫企画協力:手塚プロダクションチケット一般前売:7月14日(木)10:00より
2022年05月30日2022年6月2日(土)開幕の「六月大歌舞伎」第二部『信康』にて、歌舞伎座で初めて主演を勤める市川染五郎が、演出の齋藤雅文と共に徳川信康ゆかりの地を訪問。その様子が公開された。近年は歌舞伎以外にも、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で薄幸の美青年・源義高役で注目を浴び、劇場版オリジナルアニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』で主人公の声優に挑戦、シュウウエムラのアンバサダーに起用されるなど活躍の幅を広げている染五郎が勤めるのは、「六月大歌舞伎」第二部で上演される『信康』の主人公・徳川信康。21歳という若さで命を落とした徳川家康の嫡男・徳川信康を、父・家康との心の葛藤に焦点を絞って描き、昭和49年に第三回大谷竹次郎賞(その年の優れた新作歌舞伎に贈られる賞)を受賞。天下統一目前の織田信長に抗うことができず苦悩する家康や、哀れさを漂わせつつも家のために潔く生きる信康の姿など、時代に翻弄された親と子の運命がドラマティックに描き出される感動作だ。今回、信康の父であり後に江戸幕府を開く徳川家康を松本白鸚を勤め、祖父と孫の共演にも注目が集まる。岡崎城にて。左は演出の齋藤雅文上演を翌月に控えた5月13日、ふたりが最初に訪れたのが、信康が城主をつとめたこともある岡崎城(愛知県岡崎市)。「三河武士のやかた家康館」で学芸員の説明に耳を傾け、展示されている資料を見つめる染五郎。劇作家の齋藤雅文は、かつて同じ信康を描いた『反逆児』の舞台化を手掛けたこともあり、岡崎城にもつい先月訪れたそう。『信康』の舞台でも、序幕は「岡崎城本丸書院の場」から始まることもあり、徳川家の居城として栄華を誇った土地に立ち、染五郎は初めて訪れた岡崎城で多くのことを吸収した様子。市内にある若宮八幡宮の首塚にも立ち寄り、手を合わせた。若宮八幡宮にて織田信長に謀反の疑いをかけられたことにより、父・家康から岡崎城を離れることを命じられた信康は、岡崎から遠く離れた遠州二俣城へと移される。『信康』では、岡崎城の場面に続き、「二俣城外の丘の場」「二俣城本丸広間の場」へと場所が移る。実際の信康がたどった足跡と同じく、岡崎城を訪ねたふたりは、続いて静岡県浜松市の二俣城跡へと場所を移した。二俣城はかつて信康が最期のときを過ごした場所だ。二俣城跡にてここで自害した信康の墓は、すぐ近くの清龍寺にある。息子の信康を供養するために家康が建立した寺であり、「清瀧寺」の名も家康がつけたとされる。その清龍寺が今回の「悲運の武将・徳川信康の足跡をたどる旅」の終着点。二俣城跡にて信康の墓は雨風を防げるように廟の中にあり、住職の案内で門が開かれると、墓前で染五郎と齋藤雅文が手を合わせる。雨のため、本堂にて行われた法要でも神妙な面持ちで手を合わせる染五郎。訪問を終えた染五郎は「来なければ分からないことがたくさんありますし、自分が想像していなかった角度からも信康のことを知ることができ、多くの収穫がありました」とコメントを寄せた。ゆかりの地で多くを吸収した染五郎が来月の舞台でどのような姿を見せるのか期待が高まる。新しい『信康』を作っていきたい【市川染五郎コメント 】今回、自分が演じる役のゆかりの地を訪れることができ、大変嬉しかったです。来なければ分からないことがたくさんありますし、自分が想像していなかった角度からも信康のことを知ることができ、多くの収穫がありました。信康が自害した二俣城跡は、事前にネットでも調べていましたが、今日実際に訪れてみて、何もないからこそ、「ここでこういうことがあったのだな」と想像することができ、より信康のことを知ることができました。ゆかりの地を訪れ、現代に生きる私たちには想像もつかないような覚悟を持って生きなければならなかった時代の信康の悲劇的な運命、強さを肌で感じることができました。今回は、齋藤さんに脚本・演出に入っていただき、新しい『信康』を作っていきたいと思っていますので、是非劇場にお運びいただければと思います!【齋藤雅文(演出)コメント 】この地に立ってみて、信康の切なさや、家康は本当に信康を愛していたのだなということを実感できた気がします。切ないけれど男らしい、いい物語になるような、大きなヒントをもらった気がします。そして、染五郎さんは信康という役にとても合っている方だということを、この地に来てさらに感じました。信康は激しいキャラクターですが、とても切なく、青春を生き抜いた男、いいドラマになると確信しました。期待してください!「六月大歌舞伎」は東京・歌舞伎座にて6月2日(木)から27日(月)まで。チケット発売中。
2022年05月14日歌舞伎座地下2階木挽町広場にて「関東・甲信越地方物産展」が開催中です!東京・銀座にある群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」は、群馬県内で大人気の定番商品を多数ご用意し、出店しております。ぜひ、お越しくださいませ!「関東・甲信越地方物産展」について内容●日程:2022年4月29日(金)~2022年5月29日(日)●時間:10:00~18:30(休館日は18:00閉場)●場所:歌舞伎座地下2階 木挽町広場(東京都中央区銀座4丁目12−15)地図 : 会場では、群馬県民のソウルフードとして馴染み深い「焼きまんじゅう」をお家で焼けるセットや群馬県を代表する美味を多数ご用意!!みなさまのご来店を心よりお待ちしております!焼きまんじゅう調理イメージ売場の様子ぐんまちゃん家とは?群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」は、首都圏における「群馬県の情報発信の拠点」として、群馬県のPRに取り組んでいます。「ぐんまちゃん家(ち)」という名前は、友だちが「○○ちゃん家に遊びに行く」といった感じで、アットホームな、首都圏の方と群馬県が双方向にコミュニケーションする場所になればという思いが込められています。1Fショップでは、群馬県の特産品・名産品の販売や体験を通じ、都内にいながら群馬県の魅力を感じていただけます。2Fレストラン「銀座つる」では、こだわりの群馬県産食材を使用した料理により、群馬県の「食」の魅力を発信しています。ぐんまちゃん家1Fショップ入口2Fレストラン「銀座つる」店内お問い合わせ先群馬県観光魅力創出課兼東京事務所(ぐんまちゃん家)【所在地】〒104-0061東京都中央区銀座7-10-5 The ORB Luminous 1F・2F【電話】03-3571-3086【FAX】03-3571-3089【E-mail】 g-info@pref.gunma.lg.jp 【公式HP】「ぐんまちゃん家」東京・銀座にある群馬県のアンテナショップ : 群馬県アンテナショップ「ぐんまちゃん家」営業案内〒104-0061東京都中央区銀座7丁目10-5The ORB Luminous 1・2階■ショップ(1階)[営業時間](月~土)11:00~20:00(日)11:00~19:00 (短縮営業中)[定休日]年末年始TEL:03-3571-7761FAX:03-3571-7762■観光案内[営業時間]11:00~18:00[定休日]土曜・日曜・祝日、年末年始TEL:03-3571-3086FAX:03-3571-3089■レストラン「銀座つる」(2階)[営業時間]ランチ11:30~15:00ディナー17:00~22:00[定休日]日曜・祝日、年末年始TEL:03-3571-7763FAX:03-3571-3087ぐんまちゃん家周辺地図地図 : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年05月10日冬景色の中に時折春の兆しを目にする如月。歌舞伎座では義太夫狂言の傑作から世話物、新歌舞伎、歌舞伎舞踊など芝居好きにはこたえられない狂言が揃った。第一部一幕目は新作歌舞伎の人気狂言『御浜御殿綱豊卿(おはまごてんつなとよきょう)』。次期将軍と目される徳川綱豊卿の別邸ではお浜遊びが行われている。そこへ見物したいと願い出たのが元赤穂浪士の富森助右衛門。そのわけとは。ふたりの台詞のやりとりに緊迫感がみなぎって……。真山青果の代表作『元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)』の一幕だ。中村梅玉の綱豊、尾上松緑の助右衛門、中村東蔵の新井勘解由、中村魁春の江島。二幕目は獅子物と呼ばれる歌舞伎の舞踊の一つ『石橋(しゃっきょう)』。唐の国の清涼山にある聖なる石橋に、獅子の精達が顕れる。牡丹の花と戯れて、やがて力強い獅子の踊りを見せる。能の「石橋」から材を得た舞踊。獅子の毛ぶりなど躍動感たっぷりの踊りが見どころだ。中村錦之助ほかの出演。第二部一幕目は『春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)』。早春の候、工藤祐経の館に現れた曽我十郎と曽我五郎の兄弟。父の敵を前にいきり立つふたりを静御前が諫める。やがて三人は春の七種の行事を織り込んだ、美しく春らしい踊りを踊る。二幕目は歌舞伎三大名作の一つ『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)』の二段目『渡海屋・大物浦』。渡海屋銀平の船問屋で、九州へと落ちのびる源義経の一行が船出を待っている。この銀平、実は平知盛。平家再興をもくろみ、亡霊の姿を借り海上で義経たちを討とうとする。悪鬼のような凄まじい闘いの末、壮絶な最期を遂げる。片岡仁左衛門が渡海屋銀平実は平新中納言知盛を一世一代として勤める。第三部一幕目は『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』。京の外れの山中で山樵(やまがつ)に身をやつした男がひとりの白拍子と出会い、ともに踊り始めるが、白拍子は色仕掛けで男から笛を奪おうとする。男は実は主の源義朝を殺害した長田太郎で、その功により平家の大名となっていた。白拍子と長田の問答は虫づくしの歌詞となっており、手踊りから立廻りへと展開していく古風さにあふれた洒落た舞踊劇だ。中村芝翫の山樵実は長田太郎、中村雀右衛門の白拍子。二幕目は『鼠小僧次郎吉(ねずみこぞうじろきち)』。刀屋新吉と芸者のお元は恋仲だが、横恋慕する侍から大金百両と大事の刀を奪われてしまう。心中を決意したふたりを止めに入った稲葉幸蔵。この男が義賊と名高い鼠小僧だった。河竹黙阿弥が五代目尾上菊五郎に書き下ろした人気作。六代目、そして当代の菊五郎も演じてきた音羽屋ゆかりの狂言だ。尾上菊之助の稲葉幸蔵、中村雀右衛門の大黒屋抱え松山、中村歌六の辻番与惣兵衛。今月もひきつづき客席は間隔を開けた2席並びの配置となっている。チケット入手の際には確認を。※第三部『鬼次拍子舞』に出演を予定していた中村芝翫は新型コロナウイルス感染症 「陽性」であることをうけ、当面の間休演。「山樵実は長田太郎」役は坂東彦三郎が務める。(最新情報は歌舞伎美人ホームページ にてご確認ください 。文:五十川晶子『二月大歌舞伎』2022年2月1日(火)~2022年2月25日(金)会場:東京・歌舞伎座
2022年02月01日東京・歌舞伎座内の食事処「花篭」は、2月限定の「歌舞伎座アフタヌーンティー」を、2022年2月1日(火)から25日(金)まで提供する。歌舞伎の演目をイメージしたメニューなどを提供する「歌舞伎座アフタヌーンティー」の2月の新メニューでは、第2部「武蔵坊・辨慶(弁慶)」から着想したスイーツに注目。「武蔵坊・辨慶(弁慶)」生誕の地といわれる闘鶏神社に今も残る、辨慶の産湯を沸かしたといわれる釜を、最中で表現した。釜は上下2つに分かれており、上には柚子餡、下には粒餡をあしらっている。メニューには、「節分・二の午・バレンタイン」をテーマにした、この時期ならではのスイーツ&セイボリーも。「歌舞伎座アフタヌーンティー」ロゴ入りのチョコを添えた「歌舞伎座バレンタインチョコプリン」は、食感の良いバナナチップスと爽やかなミントをトッピングして。歌舞伎座ベーカリーで毎日焼き上げるデニッシュは、ハート型のホワイトチョコレートを飾ったこの時期だけの特別フレーバーで用意する。また、セイボリーは、節分にちなんだ歌舞伎座らしい定式幕カラーの恵方巻や、二の午を意識したひとくち稲荷を用意。ハンバーグにはハートの人参をあしらい、バレンタインならではのビジュアルに仕上げている。【詳細】「歌舞伎座アフタヌーンティー」提供期間:2022年2月1日(火)~25日(金)※1日30食限定※2月8日(火)・17日(木)は休演日につき休止場所:歌舞伎座 3階 食事処「花篭」住所:東京都中央区銀座4-12-15時間:13:10~15:00 / 17:00~18:30料金:2,600円※予約は観劇2日前の17:00まで※メニューは変更となる場合あり<メニュー>・花かご歌舞伎座 バレンタインチョコプリン、ハートのホワイトチョコデニッシュ、苺のレアチーズケーキ、辨慶の釜、抹茶ドームクーヘン、キウイ寒天・お重定式幕恵方巻、ひとくち稲荷、バレンタインハンバーグ、サーモンとアボカド、玉子焼、ガリ・ドリンク温かいほうじ茶(ポット入り)、ワンドリンク※ホットコーヒーの注文に限りおかわり自由
2022年01月22日大看板から花形、若手まで賑やかな顔ぶれが揃い妍を競う10月の歌舞伎座。演目も、洒落た歌舞伎舞踊に時代狂言、抱腹絶倒の世話狂言と、バランスよく贅沢な狂言建てとなっている。第一部一、天竺徳兵衛新噺小平次外伝御家追放となった小平次は女房のおとわと故郷の小幡で暮らしていた。ところが小平次が留守の間におとわは馬士の多九郎と不義密通を。ある日、多九郎は邪魔になった小平次を殺そうと毒薬を手に入れる。三代猿之助四十八撰の内の一つで、実在の人物天竺徳兵衛を描いた物語に四世鶴屋南北『彩入御伽草子』の小平次の怪談を取り入れた歌舞伎らしい荒唐無稽さ溢れる一本だ。今回は小平次の物語に焦点をあて、早替り、幽霊の仕掛けを盛り込んでスピーディーに展開していく。二、俄獅子多くの人々で賑わう江戸の吉原の様子を描いた長唄舞踊だ。洒落た歌詞に合わせ、粋でいなせな鳶頭に華やかな芸者が登場。芸者や太鼓持ちが仮装をし踊りながら練り歩いた、吉原の三大行事のひとつ「吉原俄」を思わせる。江戸の廓の風情と獅子物の面白さを味わいたい。第二部一、時平の七笑平安時代。左大臣の藤原時平は謀反の疑いをかけられた右大臣の菅原道真をかばうが、ついに道真謀反の証拠が。道真は時平に天皇の守護を頼み去っていくが、ひとりになった途端時平は、こらえきれずに笑い出し……。『菅原伝授手習鑑』でも敵役として描かれる藤原時平が、ここでは前半いかにも善人といった様子で登場する。ひとり肩をふるわせてさまざまな笑いを見せる場面がみどころのひとつとなる。二、太刀盗人田舎者の万兵衛から、黄金造りの太刀を盗むすっぱの九郎兵衛。万兵衛が騒ぎ立てるが、太刀は自分のものだと言い合う。本当の持ち主を見極めるため問答に。九郎兵衛は先に問に答える万兵衛の様子をこっそり盗み聞きするのだが……。「松羽目物」のひとつで、田舎者の万兵衛とスリの九郎兵衛のふたりが一拍ずつ遅れて踊る趣向にワクワクさせられる。第三部一、松竹梅湯島掛額本郷駒込の吉祥院へ、「紅長(べんちょう)」の名で知られる紅屋長兵衛たちが木曽の軍勢から逃れてくる。一方八百屋お七は小姓吉三郎との叶わぬ恋を嘆いている。紅長はお七をつけ狙う源範頼の家来からお七を匿うため欄間へ隠してやる。だが雪の夜、吉三郎に会いたい一心で、お七は火の見櫓へ上り木戸を開けさせるために鐘を叩く。紅長は、かけると身体がぐにゃぐにゃになる“お土砂”を使ってお七の恋を助ける。この「吉祥院お土砂の場」に抱腹絶倒だ。「火の見櫓の場」ではお七が「人形振り」で吉三郎への思いの丈を表現する。二、喜撰桜満開の京都へ現れた喜撰法師。法師は茶汲み女お梶に見とれ二人のクドキに。ほろ酔い気分の喜撰は迎えにやってきた大勢の所化たちと賑やかに踊り庵に帰っていく。『六歌仙容彩』は天保2(1831)年初演の変化舞踊。なかでも「喜撰」は、桜の枝を錫杖に見立ててのチョボクレや住吉踊りなど、洒脱で軽やかさが人気の舞踊だ。文:五十川晶子『十月大歌舞伎』2021年10月2日(土)~2021年10月27日(水)会場:東京・歌舞伎座
2021年10月02日東京・歌舞伎座内の食事処「花篭」では、「歌舞伎座アフタヌーンティー」を、2021年8月3日(火)から28日(土)まで提供する。“スイカ”モチーフのメニューなどを楽しめる夏アフタヌーンティー歌舞伎座の演目をイメージしたメニューなどを提供する「歌舞伎座アフタヌーンティー」。8月は、演目『三社祭』の舞台である浅草にちなんだ菓子「松風」や、“スイカ”モチーフなどの夏らしいメニューを提供する。スイカを模したパンは、歌舞伎座ベーカリーでの焼き立てを提供。また、歌舞伎座の売店でおなじみの菓匠「花見」を代表する菓子「白鷺宝」も、中も外も本物そっくりのスイカモチーフで楽しめる。一方、『三社祭』にちなんだ菓子「松風」は、皮に黒砂糖を使用した、香ばしい口あたりが特徴。和菓子の人気店「亀十」のものを用意する。そのほか、寒天の金魚と小豆を浮かべた、爽やかな桃味のゼリー「銀座涼菓 金魚」や、マンゴーと杏仁を合わせた「真夏のプリンパフェ」など、夏らしいメニューを取り揃える。詳細歌舞伎座アフタヌーンティー〈1日30食限定〉提供期間:2021年8月3日(火)〜28日(土)※8月10日(火)・19日(木)は休演日につき休止場所:歌舞伎座 3階 食事処「花篭」住所:東京都中央区銀座4-12-15時間:(1) 13:00〜15:00 (2) 16:30〜18:15料金:2,400円※予約は利用日の2日前17:00締切(予約については歌舞伎座ホームページにて確認)※メニューは変更となる場合あり
2021年07月29日市川海老蔵が7月4日(日)初日を迎える『七月大歌舞伎』の第三部で、2019年7月以来2年ぶりの歌舞伎座出演となる『雷神不動北山櫻』を上演する。二世市川團十郎により初演された『雷神不動北山櫻』は、 歌舞伎十八番の『毛抜』、『鳴神』、『不動』の3作品が織り込まれている成田屋ゆかりの通し狂言で、海老蔵が2008年、成田山開基1070年の際に新たな脚本と演出で上演して以来、好評を博し再演を重ねてきた人気の演目だ。7度目の上演となる今回は、更にブラッシュアップした魅力ある作品になっているという。 本作で善悪、個性豊かな5役、鳴神上人(なるかみしょうにん)、粂寺弾正(くめでらだんじょう)、早雲王子(はやくものおうじ)、安倍清行(あべのきよゆき)、不動明王(ふどうみょうおう)を早替わりで勤め、空中浮遊や豪快な荒事芸を披露する海老蔵がその思いを語った。昨年は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため「十三代目市川團十郎白猿襲名披露」が延期に。今回、2年ぶりとなる歌舞伎座の出演について、「毎年7月に出演していたので、通常の流れに戻った形での出演となりました。懐かしい気持ちで、責任も感じております」と心境を語った。『雷神不動北山櫻』については、「特に大切にしているのは荒事の根底にある善は助かり、悪は滅びるという勧善懲悪の精神です。この作品を二世團十郎が初演した頃は朝から日が暮れるまで、丸一日の演目でした。私が2008年に作り変えさせていただいたものは、昼の部、夜の部の2部制におさまるようにしましたので、その時点で従来の作品よりコンパクトになっています。本来ですと今までの形で上演したかったのですが、コロナ禍で上演時間にも制約がありますので、4時間近い演目を休憩時間含め2時間ちょっとにまとめなければなりません。色々大変ではありますが、皆様にお楽しみいただけるように精一杯勤めます」と、これまでより短時間の中でも歌舞伎十八番の歴史や格式を重んじながらお客様に喜んでいただけるよう様々な部分で演出を工夫していることを明かした。海老蔵が新たな構成でつくり直した『雷神不動北山櫻』は2008年に新橋演舞場にて初演。父・十二世市川團十郎の生前に「このようなことをしたい」という話を打ち明けたものの、「歌舞伎十八番の『鳴神』、『毛抜』という古典をしっかりとやった上でないと了承できないというのは暗黙の了解でした。そこで先ずは古典をしっかりと演じ、父に見ていただいた上で、この作品の制作が始まりました。『鳴神』、『毛抜』、『不動』の主人公は成田屋にとりまして大切なお役です。古典として守るものは守っていきながら新たに早雲王子、安倍清行を作り上げました」と当時を振り返る。さらに「私にとって転機になったと言ってもよい作品です。(初演時に)もともと入っていたやる気のスイッチがさらに加速するスイッチを入れてくれた演目だと思います。私としては、30歳で座頭としてひとつの小屋を背負うという、出世作に近い作品。先祖に感謝です」と、真摯に作品への思いと感謝を述べた。見どころは、「全部です」と語り、「空中浮遊や早雲王子による立廻りがあったり、単独でも上演される『鳴神』、『毛抜』や安倍清行の早口の弁舌があったりと各所に見どころがございます。2時間に凝縮したことで、歌舞伎をご覧になられたことのない方にもさらに観やすい仕上がりになっています」と自信を滲ませた。『七月大歌舞伎』の第1部と第2部は7月4日(日)から29日(木)まで、第3部は7月4日(日)から16日(金)まで東京・歌舞伎座にて上演。
2021年06月29日初夏の訪れを目前に、古典歌舞伎から新たに上演される作品、時代ものから世話物、舞踊劇と、色とりどりの狂言建ての歌舞伎座。今月も三部制となっている。第一部の一幕目は『御摂勧進帳』。兄頼朝と不和になり、都を落ち行く源義経は、武蔵坊弁慶らとともに山伏に姿を変えて奥州平泉を目指す。一行は安宅の関で関守の富樫左衛門と斎藤次祐家らの詮議を受けるが、弁慶の忠義心に心打たれた富樫は義経一行と見破りながらも通過を許す。だが斎藤次の疑いは晴れないままだ。さて一行はどうなるのか。弁慶が番卒の首を次々と天水桶に投げ込み、金剛杖で芋を洗うような演技から、通称「芋洗い勧進帳」とも呼ばれる。江戸歌舞伎の気分にあふれた一幕。もう一幕は『夕顔棚』。田舎の百姓家。旧盆の夕暮れ、軒先には美しい夕顔の花が咲いている。湯上がりの夕涼みを楽しむ爺と婆とふたりで酒を酌み交わしていると、盆踊りの唄が聞こえてくる。実は盆踊りが催されるのは久しぶりのこと。その唄に耳を傾けるうち、ふたりは昔を思い出す。昭和26(1951)年に歌舞伎座で初演された清元の舞踊。厳しい状況を生きる現代の私たちに優しく語りかける一幕。第二部は『桜姫東文章』下の巻。36年ぶりとなる人気の配役で大きな話題となった4月の「上の巻」に続き、「下の巻」が上演される。『東海道四谷怪談』でおなじみの四世鶴屋南北が得意とする、退廃的で残酷な美の世界を堪能したい。桜姫の悪婆とお姫様の言葉が入り混じった台詞も聞きどころだ。桜姫への執念を抱き続ける清玄は、元弟子だった残月と、元は桜姫の局の長浦に殺されてしまう。後始末をしたのは墓穴掘りの権助。ひょんなことから女郎として売りに出された桜姫と再会するが……。運命と愛欲に翻弄される3人の運命は?第三部の一幕目は『京人形』。日光東照宮の眠り猫の作者として有名な左甚五郎を主人公にした舞踊劇だ。京の都で見初めた小車太夫のことが忘れられない彫工の名人・左甚五郎は、太夫に生き写しの人形を彫る。出来上がった人形相手に酒宴を始めると不思議なことに人形が動き出す。だがその仕草は男性そのもので……。前半は人形の精が男性の仕草と色っぽい傾城を踊り分け、後半は甚五郎が大工道具を用いたユニークな立廻りを見せる。二幕目は『日蓮』。戦乱と天災が相次いだ鎌倉時代。夜更けの比叡山では、古いお堂の前に修行僧たちが集まっている。蓮長は飲まず食わずで十日間こもり続け、ついに読経の声も途絶えてしまった。成弁がその身を案じてお堂の中へと踏み込んでみると……。強い信念によって蓮長から名を改めた日蓮。これまでも日蓮を描いた歌舞伎作品はあったが、今回日蓮聖人降誕八百年を記念して作られ新たに上演される。文:五十川晶子『六月大歌舞伎』演目【第一部】11:00開演一、『御摂勧進帳 加賀国安宅の関の場』二、『夕顔棚』【第二部】14:10開演『桜姫東文章 下の巻』【第三部】18:00開演一、『銘作左小刀 京人形』二、日蓮聖人降誕八百年記念『日蓮─愛を知る鬼(ひと)─』※『日蓮-愛を知る鬼(ひと)-』の鬼の正式表記は角なし2021年6月3日(木)~2021年6月28日(月)会場:東京・歌舞伎座
2021年06月03日歌舞伎座「六月大歌舞伎」が6月3日(木)に初日を迎える。この度、本公演の第3部として上演される、横内謙介の構成・脚本・演出、市川猿之助の演出・主演による『日蓮』の特別ポスターが公開された。歌舞伎座では昨年8月の公演を再開。「五月大歌舞伎」は9日遅れで初日の幕を開け、5月12日より上演中だ。席数は1808席の50%(904席)、各部完全入替えの3部制により、引き続き感染予防対策を徹底して、5月28日の千穐楽まで公演を続けていくという。「日蓮聖人降誕八百年記念」の記念公演となる、今回の『日蓮』。これまでにも歌舞伎では江戸時代から日蓮を採り上げた作品が多く存在するが、今回は、3代目市川猿之助(現・猿翁)のスーパー歌舞伎(『八犬伝』『カグヤ―新竹取物語―』『新・三国志Ⅰ~Ⅲ』)や21世紀歌舞伎組公演(『雪之丞変化』『龍神伝』『新・水滸伝』)で数多くの話題作を手掛け、4代目市川猿之助によるスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』(脚本・演出)、『新版オグリ』(脚本)でも称賛を浴びた劇団扉座の横内謙介が構成・脚本・演出。そして市川猿之助が演出並びに主演(蓮長後の日蓮)を務める注目の舞台だ。特別ポスターは4月某日、都内スタジオでスチール撮影が行われた。撮影は、渞忠之(ミナモトタダユキ)。猿之助からの信頼も篤く、互いに意見を交わしながら和やかに撮影は進んだという。採用されたのは猿之助から「ちょっとやってみるから撮ってみて」と提案した、躍動感に溢れる姿を捉えた1枚。演目の舞台は戦乱が続き天災が相次いだ鎌倉時代。飢餓や疫病が流行り、世相が混乱を極めるなか、蓮長は人々が救われぬ世に疑問を抱く。そして物語は今を生きることの大切さを説き、強い信念のもと蓮長から日蓮へと名を改め、人々の幸せを願う力強い姿が描く。沈鬱した憂き世に希望の光を照らし、溢れる想いの力が観る者の心に響く舞台に期待したい。■公演情報歌舞伎座「六月大歌舞伎」6月3日(木)~6月28日(金)会場:歌舞伎座
2021年05月20日歌舞伎座ではコロナ禍の中、2020年8月に公演再開し、今年1月からは席数50%、三部制の上演が続いている。そんな中、今月も松羽目物、舞踊、時代狂言に生世話物と、見どころの多い狂言建てとなっており、大看板から若手まで、実力、人気ともに備えた俳優たちが元気に顔を揃える。第一部『猿翁十種の内小鍛冶』。能の五番目もの(切能)を舞踊化した演目だ。義太夫節の節も踊りも力強い前後の場に、コミカルな間狂言が挟まり、飽きさせない三場の構成になっている。第一場は稲荷社で、一条院から三条小鍛冶宗近に御剣を打つよう宣旨が下るが、昨刀に欠かせない相槌をつとめる者がいない。その宗近の前に稲荷明神が現れ、古今の名剣について威徳を説く。ふたりの弟子と巫女が現れる間狂言があり、第三場はまさに鍛冶場。宗近と明神がダイナミックに御剣を打ち上げる。市川猿之助の童子実は稲荷明神。もう一本は『歌舞伎十八番の内勧進帳』。安宅関にかけて「またかのせき」と言われるほど上演頻度は高く人気も高い。ドラマチックな展開の面白さと長唄舞踊の要素の両方をあわせもつ、歌舞伎の古典作品の中でも傑作中の傑作。兄頼朝と不和となった源義経。武蔵坊弁慶らは山伏姿となり、義経は強力姿となって、都から奥州へと落ちる。加賀の国安宅関所で関守の富樫左衛門に咎められるのだが……。松本白鸚(A日程)と松本幸四郎(B日程)が日替わりで弁慶を勤めるというかつてない親子競演だ。白鸚はこれまで1150回弁慶をつとめており、史上最年長となる78歳での上演ともなる。第二部は『絵本太功記尼ケ崎閑居の場』。本能寺の変を題材にした全十三段の義太夫狂言の名作だ。光秀が謀反を起こし最期を迎える十三日間を一日一段という形で構成されている。十段目の「尼ケ崎閑居の場」は歌舞伎の代表的な役柄が揃い「太十」という通称で人気だ。実悪の典型となる武智光秀のスケールの大きさ、息子十次郎と許嫁初菊の悲恋、祖母の皐月、母の操という三代の女性の悲しみが描かれる。光秀の竹槍に刺された皐月は、苦しみながらも大罪をおかした息子光秀を諫める。また深傷を負って戻ってきた十次郎の戦物語も心を打つ。真柴久吉(羽柴秀吉)と佐藤正清(加藤清正)が登場し、時代物らしい歌舞伎の様式美も堪能できる。武智光秀を中村芝翫が勤める。もう一本は文楽から歌舞伎に移された竹本の舞踊で『団子売』。年の初めに餅の曲搗きをする夫婦者の団子売がにぎやかに踊る。中村梅玉、片岡孝太郎の夫婦で。第三部は『桜姫東文章』上の巻。『東海道四谷怪談』で知られる四世鶴屋南北の作。建長寺の僧と稚児が心中し、僧ひとりが生き残ってしまうが、稚児は吉田家の息女・桜姫に生まれ変わる。新清水の清玄となった僧が桜姫に再会することからドラマは始まる。剃髪しようとする姫の前に、姫と子までなした男・釣鐘権助が現れ……。大家のお姫様である桜姫が伝法な言葉遣いと姫言葉をない交ぜにする奇抜な趣向や、南北得意の生世話の手法を生かした文化文政時代の歌舞伎の代表作だ。清玄・釣鐘権助に片岡仁左衛門、白菊丸・桜姫に坂東玉三郎。1980年代の清玄桜姫といえば孝玉コンビ。このふたりの顔合わせに、歌舞伎ファン以外にも大勢が熱狂したものだ。2021年の春、ふたりの清玄桜姫に会いに行こう。文:五十川晶子公演情報歌舞伎座『四月大歌舞伎』演目【第一部】11:00開演一、『猿翁十種の内小鍛冶』二、『歌舞伎十八番の内 勧進帳』【第二部】14:45開演一、『絵本太功記尼ヶ崎閑居の場』二、『団子売』【第三部】18:00開演『桜姫東文章』上の巻2021年4月3日(土)~4月28日(水)会場:東京・歌舞伎座
2021年04月03日東京・歌舞伎座内にある食事処「花篭(はなかご)」から、「歌舞伎座アフタヌーンティー」の2021年3月のメニューが登場します。「歌舞伎座アフタヌーンティー」「歌舞伎座アフタヌーンティー」は、歌舞伎座や歌舞伎の演目をモチーフにしたスイーツが楽しめるアフタヌーンティー。3月の新メニューでは、春らしい“花かご”に入ったスイーツや、お重に入った華やかなメニューを提供されます。演目にちなんだ“都鳥”モチーフの和菓子注目は、3月に歌舞伎座で上演される演目「隅田川」をイメージした“言問最中”です。江戸末期創業の和菓子屋・向島 言問団子が手掛ける「言問最中」は、作品にも登場する在原業平の和歌に出てくる“都鳥”をモチーフにした和菓子。香ばしいみやこがね餅米の皮に、上品な甘さの白餡を沢山詰め込まれています。雛祭りプリンや桜の和菓子も桜の季節に合わせた彩り豊かな和スイーツもラインナップ。ほんのりピンクがかったプリンは、ひな祭りの“菱餅”をイメージして春色に。和スイーツの定番・あんみつやきんつばは、桜風味にアレンジして春らしい味わいに仕上げられています。その他、ちらしのご飯や桜えびのご飯など、見ているだけで楽しい色鮮やかなメニューも用意。一足早く春らしい雰囲気を満喫できるアフタヌーンティーを楽しめます。【詳細】「歌舞伎座アフタヌーンティー」3月のメニュー<30食限定>会場:歌舞伎座 食事処「花篭(はなかご)」住所:東京都中央区銀座4-12-15時間:1)12:20~14:30、2)16:30~18:30価格:2,400円(税込)メニュー:<花かご>演目商品 言問最中、雛祭りプリン、桜餅あんみつ、桜きんつば、ワッフル、本日のフルーツ<一の重>ローストビーフのサラダ、ミックスナッツ、塩昆布<二の重>料理長特製 ちらしのご飯・桜えびのご飯・山菜のご飯、玉子焼 ガリ<飲み物>ポットのほうじ茶+ワンドリンク※ワンドリンクは、コーヒー(ホット・アイス)、紅茶(ホット・アイス)、ハーブティー(ホット)、緑茶(ホット)から選べる
2021年03月05日東京・歌舞伎座内にある食事処「花篭(はなかご)」から、「歌舞伎座アフタヌーンティー」の2021年3月のメニューが登場。「歌舞伎座アフタヌーンティー」「歌舞伎座アフタヌーンティー」は、歌舞伎座や歌舞伎の演目をモチーフにしたスイーツが楽しめるアフタヌーンティー。3月の新メニューでは、春らしい“花かご”に入ったスイーツや、お重に入った華やかなメニューを提供する。演目にちなんだ“都鳥”モチーフの和菓子注目は、3月に歌舞伎座で上演される演目「隅田川」をイメージした“言問最中”だ。江戸末期創業の和菓子屋・向島 言問団子が手掛ける「言問最中」は、作品にも登場する在原業平の和歌に出てくる“都鳥”をモチーフにした和菓子。香ばしいみやこがね餅米の皮に、上品な甘さの白餡を沢山詰め込んだ。雛祭りプリンや桜の和菓子も桜の季節に合わせた彩り豊かな和スイーツもラインナップする。ほんのりピンクがかったプリンは、ひな祭りの“菱餅”をイメージして春色に。和スイーツの定番・あんみつやきんつばは、桜風味にアレンジして春らしい味わいに仕上げた。その他、ちらしのご飯や桜えびのご飯など、見ているだけで楽しい色鮮やかなメニューも用意。一足早く春らしい雰囲気を満喫できるアフタヌーンティーを楽しんでみてはいかがだろう。【詳細】「歌舞伎座アフタヌーンティー」3月のメニュー<30食限定>会場:歌舞伎座 食事処「花篭(はなかご)」住所:東京都中央区銀座4-12-15時間:1)12:20~14:30、2)16:30~18:30価格:2,400円(税込)メニュー:<花かご>演目商品 言問最中、雛祭りプリン、桜餡あんみつ、桜きんつば、ワッフル、本日のフルーツ<一の重>ローストビーフのサラダ、ミックスナッツ、塩昆布<二の重>料理長特製 ちらしのご飯・桜えびのご飯・山菜のご飯、玉子焼 ガリ<飲み物>ポットのほうじ茶+ワンドリンク※ワンドリンクは、コーヒー(ホット・アイス)、紅茶(ホット・アイス)、ハーブティー(ホット)、緑茶(ホット)から選べる
2021年02月21日義太夫狂言に新歌舞伎、鶴屋南北作品に舞踊と、2月の歌舞伎座も見どころの多い演目が揃った。第一部は時代物の名作『本朝廿四孝』の『十種香」。戦国時代、長尾謙信の娘・八重垣姫は許嫁で切腹した武田勝頼の姿絵を仏間にかけて香を焚き菩提を弔う。その絵にそっくりな男・花づくりの簑作が現れ、姫は一目で恋に落ち、腰元の濡衣に仲立ちを頼む。その簑作こそ本物の勝頼だった……。八重垣姫は歌舞伎の立女方がつとめる大役「三姫」のひとつで、品格の中に濃い情愛を表現するのが難しいとされる。配役は以下の通り。八重垣姫中村魁春武田勝頼市川門之助白須賀六郎中村松江原小文治市川男女蔵腰元濡衣片岡孝太郎長尾謙信中村錦之助もう一本は『泥棒と若殿』。荒れ果てた屋敷へ泥棒に入った伝九郎は侍に出刃を向けて金を要求するが、金はないと突っぱねられる。この侍が実は松平成信、領主の次男だった。御家騒動に巻き込まれ幽閉されて飢え死にしそうになっているのだった。伝九郎は不憫に思い、成信の世話をしはじめ、ふたりの奇妙な同居生活が始まる。立場の異なるふたりに芽生える絆……山本周五郎の原作。伝九郎尾上松緑松平成信坂東巳之助梶田重右衛門中村亀鶴鮫島平馬坂東亀蔵第二部は片岡仁左衛門と坂東玉三郎の麗しさとふたりの至芸を堪能する二幕。『於染久松色読販』は『桜姫東文章』や『東海道四谷怪談』を生み出した鶴屋南北の原作。土手のお六と鬼門の喜兵衛は悪事を働く夫婦者。お六のもとへ、かつて使えていた奥女中の竹川から手紙が届くところからドラマが動き始める。惚れた男のために悪事を働く「悪婆」と呼ばれる婀娜なお六と、強悪な喜兵衛の夫婦による、アンチヒーロー・ヒロインの魅力をたっぷりと。土手のお六坂東玉三郎山家屋清兵衛河原崎権十郎油屋太郎七坂東彦三郎鬼門の喜兵衛片岡仁左衛門もう一本は『神田祭』。江戸前のすっきりした踊りを見せる粋な鳶頭にあでやかな芸者。祭囃子に浮き立つ江戸の情緒を堪能したい。清元舞踊の一幕。鳶頭片岡仁左衛門芸者坂東玉三郎第三部は十七世中村勘三郎三十三回忌追善狂言二本が上演される。『奥州安達原』「袖萩祭文」。雪の降る中盲目の袖萩が幼い娘お君に手を引かれて父・平傔仗直方のもとへとやってくる。親の反対を押し切って駆け落ちした袖萩は対面を許されないため、三味線を手に祭文になぞらえて身の上を語り、娘の姿を一目見せようとする。そこへ夫の安倍貞任が姿を現し……。袖萩中村七之助安倍貞任中村勘九郎娘お君中村長三郎安倍宗任中村芝翫平傔仗直方中村歌六浜夕中村東蔵八萬太郎義家中村梅玉もう一本は『連獅子』。文殊菩薩が住むといわれる清涼山のふもとの石橋に狂言師の右近と左近が手獅子を持って現れ、石橋の由来や、獅子の親が仔を谷底へ落とすという故事を踊って見せる。能の「石橋」を題材とした長唄の舞踊。ユーモラスな間狂言「宗論」をはさんで、後半は親獅子と仔獅子の勇壮な舞を楽しみたい。狂言師右近後に親獅子の精中村勘九郎狂言師左近後に仔獅子の精中村勘太郎法華の僧蓮念中村鶴松浄土の僧遍念中村萬太郎新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言を受け、開演時間が早まった。第一部は10:30、第二部が14:15、第三部が17:30となっているのでご注意を。文:五十川晶子歌舞伎座『二月大歌舞伎』2021年2月2日(火)~2021年2月27日(土)会場:東京・歌舞伎座
2021年02月02日