産業技術総合研究所(産総研)は4月1日、地球観測衛星データに付加価値を付けた「ASTER-VA」を無償提供すると発表した。衛星データは、米国航空宇宙局(NASA)が運用する地球観測衛星「TERRA」に搭載された経済産業省開発の光学センサー「ASTER」で観測されたもので、NASAからインターネット回線を通じて取得・処理し、わかりやすいインターフェースで提供される。ASTER-VAは、産総研独自の擬似天然色画像合成技術を適用した画像データのほかに、地質情報を含む地図との重ね合わせのために地形の凹凸やずれをあらかじめ補正(オルソ補正)したデータ、標高データで構成される。さまざまな地理空間情報の閲覧ソフトウェアなどで使用できるように、KML形式とGeoTIFF形式のいずれかのファイル形式から選択することができる。産総研は、ASTER-VAは全世界のデータを備えており、防災や環境、農林水産業など広範な分野で利活用でき、また利用制限のない公的データ(知的基盤データ)として、地理空間情報を活用したビジネスでの利用も期待されるとしている。
2016年04月01日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月31日、金星探査機「あかつき」の試験観測について、中間報告を行った。あかつきは2015年12月7日に金星に到着。4月からの定常観測に向け、これまで試験観測を行ってきた。あかつきの観測機器の状態は良好ということで、まだ試験観測ながら、興味深い成果が得られつつある。あかつきは金星到着後、12月20日に軌道修正を実施し、現在、遠金点36万km、近金点1,000~10,000km、周期10.5日の軌道を周回している。今後、大きな軌道修正は予定しておらず、定常観測も、この軌道のまま行う計画だ。搭載した観測機器は、順次立ち上げを実施しており、現時点で概ね順調だという。あかつきの設計寿命は4年半。金星周回軌道への投入失敗があったため、観測の開始が5年も遅れてしまったが、これまでのところ、特に故障は見つかっていない。放射線による劣化が予想より低かった理由について、JAXAの中村正人・あかつきプロジェクトマネージャは、「この5年間、太陽活動が低下していたせいでは」と推測する。当初の計画よりも遠金点が高い軌道であるため、観測画像の解像度が低下する時間帯が長いものの、これはあまり大きな支障とはならないようだ。ミッション達成度を示すサクセスクライテリアにおいて、すでにミニマムサクセスを達成。フルサクセスには2年間の観測が必要なため、しばらく時間がかかるものの、試験観測を始める前に比べると、達成できる可能性は「高まったと思う」と中村プロマネ。エクストラサクセスについても、「いけるんじゃないか」との見通しを示した。現在の燃料の残量は3kg(最大7kgの可能性も)。今後、軌道制御に1kg、姿勢制御に1kg使い、残りの1kgは予備としておき、5年間観測できる可能性があるという。前回の失敗で、一時は金星観測の実現すら危ぶまれていた。もちろんまだ楽観はできないものの、ここまで状況を持ち直したことには驚くほかない。あかつき搭載の観測機器の状況については、それぞれ担当者から説明があった。「1μmカメラ(IR1)」については、東京大学の岩上直幹教授が説明した。IR1は、すでに金星の昼側と夜側の撮影に成功。昼側の観測では、金星最大の謎であるスーパーローテーションを観測するが、撮影データを画像処理すると凹凸が良く見えており、問題なく下層大気の雲の追跡ができそうだという。一方、夜側の観測では、地上付近の水蒸気を観測することが主目的であったが、実際に観測されたデータを調べてみると、主に地形が見えていることが分かった。このデータから、地表面の鉱物組成が分かると期待されている。金星に火山があるのかないのか議論されているが、IR1の観測により、この議論に決着を付ける可能性もあるとか。「2μmカメラ(IR2)」については、JAXA宇宙科学研究所の佐藤毅彦教授が説明した。IR2はスターリング式の冷凍機で検出器を冷やす必要があるが、経年劣化のため、最初はなかなかうまく冷却できなかったという。その点には苦労したものの、最近になってようやく解決、昼側も夜側も撮影できるようになったそうだ。夜側の観測では、下層からの熱放射により、雲の濃淡がシルエットのように浮かび上がる。実際に撮影した画像には、南北に広がりを持つ巨大な雲の塊が見えている。昼側の撮影では、緯度50°より高緯度側で劇的に雲の高さが変わっており、複雑な構造があることが分かった。これらは今まで、よく知られていなかったことだという。「中間赤外カメラ(LIR)」については、立教大学の田口真教授が説明した。LIRは雲自身からの熱放射を撮影するため、昼側も夜側も同じように、雲頂の温度を観測することができる。すでに定常観測に近い連続的な撮影も行っており、これまでに数10枚もの画像を取得したとのこと。LIRでは、金星到着直後に撮影された、弓状の模様が写っている画像が大きな話題となった。この大きな構造はその後4日間に渡り観測されたものの、その後は見つかっていない。何か突発的な現象だったと見られているが、そのメカニズムについては現在検討中とのことだ。「紫外イメージャ(UVI)」については、JAXA宇宙科学研究所の山﨑敦助教が説明した。UVIは雲頂で反射された太陽紫外線を観測するため、昼側でのみ使用する。これまであかつきは夜側の軌道であったため、ほとんど撮影チャンスが無かったとのことだが、4月以降は昼側の軌道になるため、本格的な観測が開始できる見込み。紫外線は、雲に含まれる吸収物質の量により反射光の明るさが変わるため、その濃度の違いによる模様が表れ、これを追うことで、雲の速度を算出することができる。紫外線観測はこれまで、他国の金星探査機でも行われてきたが、あかつきでは違う波長域も使った観測を行い、雲の成因にも迫っていくという。「雷・大気光カメラ(LAC)」については、北海道大学の高橋幸弘教授が説明した。LACはあかつきの観測機器の中で唯一高圧電源を使っているため、10日に1回、1時間程度しかない日陰時に運用が限られている。現在、慎重に電圧を上げていく運用を行っているところで、本格観測の開始は6月あたりになる見通しだ。「金星にも雷はあるのか?」というのは、30年以上も続く大論争。未だに決着が付いていないのは、これまで雷専用のカメラが無く、ノイズと雷の区別が難しかったためだが、LACは1秒間に3万回も計測することで、時間変化から両者を区別することが可能だ。あかつきでこの長年に渡る論争に決着が付けられるか、期待されている。「超高安定発振器(USO)」を使った電波掩蔽(えんぺい)観測については、JAXA宇宙科学研究所の今村剛准教授が説明した。あかつきが金星の背後に隠れるときに電波を出せば、電波は金星大気の中を通って地球に届く。この電波の周波数と強度の変化から、大気の高度方向の構造を調べることができる。電波源として搭載されているのがUSOであるが、周波数安定度が劣化していないことを確認。試験観測を、3月4日と3月25日に実施した。周波数の時間変化から気温の高度変化を算出したところ、複雑な層構造が存在することが分かった。今後、他のカメラで得られた水平方向の情報を補完する役割が期待されている。
2016年04月01日NHK『ニュース7』お天気担当の気象予報士・寺川奈津美が、4月4日からフジテレビ系情報番組『直撃LIVE グッディ!』(4月4日から毎週月~金曜13:45~15:50)の気象キャスターに就任することが31日、明らかになった。寺川は、慶応大学理工学部在学中に「第5回矢上祭理系美人コンテストグランプリ」に輝き、その後一般企業から塾講師などをへて、NHKの契約キャスターに。2008年に気象予報士の資格を取得し、2011年4月から『ニュース7』に出演していた。『グッディ!』は4月4日から放送時間を10分拡大し、大幅リニューアル。寺川は、これに伴い新設される、番組エンディングの「テラカワのお天気マニア」コーナーを担当し、その日に起きている気象情報をリケジョ能力を駆使して分析することで、生活に密着した情報を届けるという。知りたい気象情報に"ズーム"する際の独自のポーズも披露される予定だ。現場に出て取材も行っていく予定で、寺川は「女性の気象キャスターの中では、かなり体力がある方だと思うので、どんどんロケに行かせていただきたくて…今までそういうことがなかなかできなかったので、これからは"泥くさく"やっていきたいです」と意気込み。フジテレビの内ヶ崎秀行チーフプロデューサーは「どんな天気の現場にも自ら足を運び自ら汗をかいて伝える…視聴者の方々に身近に思ってもらえる気象キャスターになってもらえたらと思っています」と期待を寄せている。ちなみに、NHKからは『ニュースウオッチ9』のお天気担当を務めていた井田寛子が、今月28日からTBS系情報番組『あさチャン!』に移籍している。
2016年03月31日石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は3月22日、氷海開発のための高精度氷況観測センサによる国内実証試験に成功したと発表した。JOGMECでは、日本の資源エネルギーの安定確保を図るため、北極海などにおける資源開発に向けた技術ソリューション事業の一環として「氷海開発を支援するための高精度氷況観測技術の開発」を実施している。同事業では、施設周辺の海氷分布および接近速度を検知する「オンボード海氷レーダ」、海氷厚、積雪深および氷表面形状が計測可能な「高機能型EM-BIRD(航空機搭載型電磁誘導センサ)」、氷山などによる海底洗掘の痕跡を水中から高精度観測するための「パラメトリックサブボトムプロファイラ」の3種類の機器について、開発および高精度・高機能化を図ってきた。JOGMECは今回、これらセンサの実証実験を実施した。オンボード海氷レーダについては、精度検証に必要となるデータ取得を目的に、2016年2月25日~2月26日にかけて、東京大学が北海道紋別市にて流氷を対象に実証試験を実施。オホーツク・ガリンコタワーが運営する氷海展望塔オホーツクタワーおよび流氷砕氷船「ガリンコ号Ⅱ」に機器を設置しデータの取得を行った。高機能型EM-BIRDの実証試験は、2016年3月3日に実施され、海上技術安全研究所、北見工業大学、日本大学および北日本港湾コンサルタントが参加。ヘリコプターから同センサを吊り下げて海氷上を飛行することで、海氷の厚さ、積雪の深さおよび氷表面の形状を高精度に観測できたという。また2015年4月30日と10月7日には、東京大学および海上技術安全研究所が、長野県青木湖および北海道サロマ湖にて、ゴムボートおよび小型船舶に開発したパラメトリックサブボトムプロファイラを設置し、海底計測を実施。その精度を検証した。JOGMECは、氷海域における安全で効率的な開発を行うためには、対象海域における氷況を把握できる観測技術が必要不可欠であるとしている。
2016年03月22日宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国立天文台、アメリカ航空宇宙局(NASA)の3者は3月10日、太陽観測衛星「ひので」が撮影した部分日食の画像を公開した。公開された画像は「ひので」が3月9日午前9時(日本標準時)に高度680kmでインドネシア上空を飛翔している際に、搭載しているX線望遠鏡で撮影したもの。X線で輝く太陽コロナを背景に、新月状態の黒い月が太陽の南西(画像の右下)から現れ、北に向けて太陽面を横切って行く様子がとらえられている。「ひので」は2006年に打ち上げられた日本の太陽観測衛星。搭載された望遠鏡は、国立天文台が日本国内のパートナーとして、NASAおよび英国素粒子物理学・天文学研究会議(STFC)が国際パートナーとして参加して、共同開発された。また、これらの機関に加えて、欧州宇宙機関(ESA)とノルウェー宇宙局(NSC)が協力して、軌道上での科学運用を実施している。
2016年03月10日NECは3月9日、台湾交通部中央気象局(CWB)と地震の早期検知に向けた共同実証を開始することで合意したと発表した。CWBは台湾における地震検知の技術を有するとともに、地震発生後の状況をいち早く知らせる地震速報システムの運用実績を有している。一方、NECは、日本の気象庁と過去20年以上に及ぶ地震・津波関連システム開発の実績をもち、地盤データなどから、震源の位置、規模(マグニチュード)を瞬時に測定し、震度や到達時刻を推定する技術を有している。さらに、それらの情報をもとに、大きな地震や津波が到達することを、緊急地震速報や津波警報として知らせるシステムの開発実績もある。同実証事業では今後、台湾にある既設のセンサーを用いて、新たに開発する早期地震検出用ソフトウェアを搭載した早期地震検知システムおよびCWBでの解析結果の検証を行っていく。NECとCWBは、「本共同実証事業を通じて、台湾国土に適した、より優れた地震検出技術を確立し、将来の地震・防災に役立つシステムの開発を推進していきます。」とコメントしている。
2016年03月09日日本気象協会はこのほど、全国・都道府県別の「2016年春の花粉(スギ・ヒノキ、北海道はシラカバ)飛散予測(第4報)」を発表した。各地で花粉シーズンが始まっており、福岡では2月下旬にピークを迎えるという。現在、九州から関東地方の多くの所で花粉シーズンに突入した。2月13日は四国で、14日には、中国、北陸、東海、関東で「春一番」(立春から春分までの間に初めて吹く暖かい南よりの強い風)を観測。東京都練馬区では24度8分と夏日目前まで気温が上がり、記録的な暖かさとなった。この強い南風と気温の高さで、九州から関東にかけて花粉が一気に飛散した。1平方センチメートルあたり1個以上のスギ花粉を2日連続して観測した場合の最初の日のことを「飛散開始」としているが、同協会の観測では、東京都千代田区(大手町)で2月13日に飛散開始を確認した。春一番が吹いた14日はやや多く飛散したという。今後、2月下旬にかけての気温は、変動があるものの平年並みか、平年より高くなる所が多い見込みとのこと。このため、九州から関東地方にかけてスギ花粉の飛散数が増加し、北陸や東北地方の一部も飛散開始となると予想している。北海道では4月の気温が平年並みか高い予想のため、シラカバ花粉は例年よりやや早い4月下旬から飛散が始まる見込みだという。スギ花粉のピークは、福岡は2月下旬から3月上旬、高松・広島・大阪・名古屋・東京は3月上旬から中旬と予想している。金沢と仙台は3月中旬から下旬にピークを迎える見込み。スギ花粉のピークが終わった後は、各地でヒノキ花粉がピークを迎える。金沢と仙台は4月にヒノキ花粉が飛散するが、飛散数が比較的少なく、はっきりとしたピークはないとのこと。前シーズンと比べ、飛散数は九州・四国・東海・関東甲信地方では多いかやや多く飛び、場所によっては非常に多く飛散する所もある見込みだという。中国地方では前シーズン並み、近畿・北陸・東北地方と北海道ではやや少ないと見ている。例年と飛散数を比較すると、東北地方では例年並みの見込み。そのほかの地域では、花粉の飛散数は例年より少ない所が多いという。特に九州・四国・近畿地方と北海道では非常に少なく、例年の半分以下となると予想している。同協会のホームページでは、花粉情報を随時更新している。
2016年02月18日米国の重力波観測所「LIGO」(ライゴ)を中心とする国際研究チームは2月11日(現地時間)、宇宙で発生した重力波を初めて直接観測することに成功したと発表した。アインシュタインが重力波の存在を予言するきっかけとなった「一般相対性理論」を発表してから100周年となる今年、その正しさが裏付けられるとともに、「重力波天文学」という新しい宇宙研究の扉が開いた。発表によると、観測に成功したのは日本時間2015年9月14日18時51分(米東部夏時間同日5時51分)のことで、今から約13億年前に、質量が太陽の29倍と36倍もある2つのブラックホールが合体したときに生成された重力波であったとされる。その後、今年1月までかけて検証が重ねられ、今回の発表となった。重力波は、質量をもった物体がある法則で動く際、そのまわりの時空をゆがませ、さらにそのゆがみが波のように伝わるとされる現象で、別名「時空のさざ波」とも呼ばれている。重力波の存在は、物理学者のアルベルト・アインシュタインが1918年に、その2年前に発表した「一般相対性理論」を基に予言した。これまで計算や中性子星の動きの観測などから、間接的にその存在は証明されていたものの、直接観測に成功した例はなかった。今回観測に成功したLIGOは、レーザー干渉計という観測機器を使って観測に挑んだ。これはレーザーの光を直交するふたつの方向に向けて発射し、それぞれの反対側に置いた鏡で反射させて戻し、その2つの光を合成させて見比べるということを繰り返す。光は重力波によってゆがんだ空間に沿って飛ぶという性質があり、もし重力波によって時空がゆがめば、その分だけ光の飛ぶ距離が変わるため、合成した際に光の明るさが変化する。LIGOはワシントン州のハンフォードと、ルイジアナ州のリヴィングストンの2か所に置かれたレーザー干渉計からなり、それぞれ1辺4kmのL字型のトンネルをもち、その中をレーザー光が何度も往復している。2005年から2010年にかけても観測が行われたが検出できず、その後検出能力を上げる改良が加えられ、昨年9月から観測が再開されていた。また観測には、フランスとイタリア、オランダが開発した重力波観測所「VIRGO」(ヴィルゴ)、英国とドイツの重力波観測所「GEO 600」(ジー・イー・オー)の観測チームなども参加し、今回の世紀の大発見を支えた。今後、LIGOと同様に改良されたVIRGOや、日本の「KAGRA」(かぐら)も順次観測を開始する予定で、重力波のより詳しい研究が進む。また、重力波で宇宙を見る新しい研究が始まることで、これまで知られていた宇宙の現象に、また別の姿が見られたり、あるいは想像を超えるまったく新しい現象が見つかったりするかもしれないという期待も高まっている。【参考】・News | Gravitational Waves Detected 100 Years After Einstein’s Prediction | LIGO Lab | Caltech・Detection | LIGO Lab | Caltech
2016年02月12日米国の重力波観測所「LIGO」の観測チーム、カリフォルニア工科大学、マサチューセッツ工科大学は2月8日(現地時間)、2月11日に「重力波の探索に関する新しい情報を発表する」と明らかにした。発表内容は不明だが、アルベルト・アインシュタインが100年前にその存在を予測するも、未だ発見されていない「重力波」の検出に成功したという発表なのではないかという見方が強まっている。発表は日本時間2月12日0時30分(米東部標準時2月11日10時30分)から、米ワシントンD.C.にあるナショナル・プレス・クラブで実施される。発表文には「今年はアルベルト・アインシュタインが重力波の存在を予測してから100周年となります。それを記念し、現在も行われている重力波の観測に向けた挑戦について話します」とのみ記載されており、具体的な発表内容については明らかにされていない。また、LIGOと共同観測を行っている欧州の重力波観測所「VIRGO」も、同所にてLIGOと同時に会見を開くとしている。重力波は別名「時空のさざ波」とも呼ばれ、重力は時空を歪ませており、その重力をもつ物体が動くと、その歪みが光の速度で周囲に伝わっていくとされる現象。今から100年前にアルベルト・アインシュタインが発表した一般相対性理論の中でその存在を予測し、これまで間接的に証明されたことはあるものの、未だ直接には検出されていはいない。もし検出に成功すればノーベル賞級とされるほか、重力波を使ってブラックホールや中性子星、超新星爆発など、さまざまな天体や宇宙現象を観測することで、これまで知られていた宇宙の現象に、また別の姿が見られたり、あるいは想像を超えるまったく新しい現象が見つかったりするかもしれないと期待されている。米国や欧州、日本では1990年代から重力波を検出するためのレーザー干渉計の開発を進め、試験的な観測を実施しているが、現在まで検出はできなかった。その後、性能向上の改良を経て、昨年から再び観測が本格化しつつある。先月には、物理学者のローレンス・クラウス氏がTwitterに「LIGOが重力波の検出に成功したようだ」と書き込んだことで大きな話題となった。その後、別の物理学者も、重力波の検出成功に関して書かれた論文を盗み見たと証言するなどし、その信憑性が増しつつある。なお、LIGO、VIRGOは、このうわさに対して沈黙を続けている。○重力波の検出への挑戦重力波の検出をめぐっては、1965年に米メリーランド大学の科学者ジョセフ・ウェーバーが、巨大なアルミニウムの円柱をぶら下げて設置し、重力波が通過した際に円柱がゆがむのを検出することで重力波の存在を証明しようとしたのがそのさきがけである。1968年から69年にかけて、この2台が同時に「検出に成功」したとされるが、その後、第三者による追試など検証が行われた結果、何かの間違いだったと考えられている。レーザー光を使って空間のゆがみを検出する「レーザー干渉計」という観測機器の実用化の目処が経ち、1992年から米国で「LIGO」(ライゴ)という計画がスタートした。LIGOはワシントン州のハンフォードと、ルイジアナ州のリヴィングストンの2か所にレーザー干渉計を設置して同時観測するというもので、2005年から観測が開始された。しかし検出はできず、2010年にいったん観測を停止して改良工事を実施。そして検出能力を10倍にまで高めた「アドヴァンストLIGO」が完成し、昨年9月から運用が始まっている。またフランスとイタリア、オランダは、イタリアのピサに「VIRGO」(ヴィルゴ)を建設。VIRGOもLIGO同様、検出はできず、2011年に観測を停止し、検出能力を10倍も高くする「アドヴァンストVIRGO」への改良が進んでいる。英国とドイツは、ドイツのハノーファーに「GEO 600」(ジー・イー・オー)を建設し、こちらも検出能力を高めた「GEO-HF」に生まれ変わっている。また日本でも、1991年ごろから宇宙科学研究所(現JAXA/ISAS)や東京大学、国立天文台に実験的なレーザー干渉計が作られ、やがてより大型の「TAMA300」という干渉計による試験を経て、現在はニュートリノの観測でも知られる岐阜県飛騨市の神岡鉱山跡に大型低温重力波望遠鏡「KAGRA」(かぐら)が建設されている。すでに重力波の観測に必要な最低限の工事は終わっており、2015年度中に重力波の試験観測を始め、また施設全体が完成する2017年度からは本格観測を開始する予定となっている。参考・LIGO Scientific Collaboration - Media Advisory for Feb 11, 2016・FEBRUARY 11th: Scientists to provide an update on the search for gravitational waves - Advanced Virgo・真貝寿明. ブラックホール・膨張宇宙・重力波 一般相対性理論の100年と展開. 光文社, 2015, 340p.・特集 重力波天文学が拓く宇宙 - 国立天文台・重力波とは? « KAGRA 大型低温重力波望遠鏡
2016年02月10日日本気象協会はこのほど、全国・都道府県別の2016年春の花粉(スギ・ヒノキ、北海道はシラカバ)飛散予測(第3報)を発表した。1月下旬にかけて、気温は平年並みか平年より低い日が多くなるという。2月から3月にかけては、西日本と東日本で平年並みか高く、北日本ではほぼ平年並みの見込み。この時期の気温が平年より高いとスギ花粉の飛散開始は早まる傾向にあることから、スギ花粉の飛散開始(※)は、西日本と東日本では例年より早く、北日本では例年並みと見ている。花粉シーズンは、2月上旬に九州・中国・四国・東海・関東地方から始まる見込み。しかしスギ花粉は飛散開始と認められる前から、わずかながら飛び始める。2月上旬に飛散開始が予測される地域では、早めの花粉対策が大切だという。スギ・ヒノキ花粉の飛散数がピークになる時期は、花粉シーズン中の気温や予想される総飛散数と関係があるとのこと。2月と3月の気温は全国的に平年並みか高いと予想しているが、ピーク時期を早めるほどではないため、スギ・ヒノキ花粉のピーク時期は例年並みの見込みだという。スギ花粉のピークは、福岡は2月下旬から3月上旬、高松・広島・大阪・名古屋・東京は3月上旬から中旬の見込み。金沢と仙台は3月中旬から下旬にピークを迎えると見ている。スギ花粉のピークが終わった後は、各地でヒノキ花粉がピークを迎える見込みだという。金沢と仙台は4月にヒノキ花粉が飛散するが、飛散数が比較的少なく、はっきりとしたピークはないと予測している。飛散数を前シーズンと比べると、九州・四国・東海・関東甲信地方では多いかやや多く、中には非常に多く飛散するところもあるという。中国地方では前シーズン並み、近畿・北陸・東北地方と北海道ではやや少ないと予測している。過去10年(2006~2015年)の平均値と比べると、花芽が多く形成される気象条件のそろった東北地方ではやや多い見込みだという。そのほかの地域では、花粉の飛散数は例年より少ないところが多いと見ている。特に九州・四国・近畿地方と北海道では非常に少なく、例年の半分以下となる見込み。※1平方cmあたり1個以上のスギ花粉を2日連続して観測した場合の最初の日
2016年01月15日京都大学(京大)は1月7日、今までX線でしか観測できないと考えられていたブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象を可視光で捉えることに成功したと発表した。同成果は同大 木邑真理子氏、磯貝桂介氏、加藤太一 助教、上田佳宏 准教授、野上大作 准教授らの研究グループによるもの。1月6日(現地時間)に英国科学誌「Nature」の電子版で公開された。同研究グループが今回観測したのは、2015年6月中旬から7月初旬にかけて急激な増光を示したブラックホール連星「はくちょう座V404星」という天体。「はくちょう座V404星」はブラックホールまたは中性子星(主星と呼ぶ)と、普通の星(主系列星: 伴星と呼ぶ)がお互いの周りを回っているX線連星の中でも、アウトバーストと呼ばれる不定期な増光現象を起こすX線新星であり、正確に距離がわかっているブラックホールの中では地球に最も近いブラックホールを主星に持つ天体として知られていた。○今までの天文学的な常識を覆す成果今回発生したアウトバーストでは、京大を中心に活動してきた国際変光星観測ネットワークVSNET teamなどを通して世界中で行われた大規模な国際協力可視測光観測によって、ブラックホールX線新星のアウトバーストにおいては過去最大の可視測光データを得ることに成功。得られたデータを解析した結果、ブラックホール近傍から出る光の変動を可視光で初めて捉えることができた。ブラックホールは一般的に光さえも吸い込む真っ黒な穴であるため、そのような天体からの光を目で見ることはできないと考えられていたが、今回の成果はブラックホールの「またたき」を、数十cm程度の望遠鏡を使えば直接目で観測できる機会があることを示唆するものだという。また、今回の研究では、このような光度変動が今まで他のX線連星で観測されていたときの光度よりも10分の1以下の、非常に光度が低い時期にも起こっていたことも判明。ブラックホール近傍から出る激しい光の変動は、今まで光度が高いときにしか観測されておらず、理論も、光度が高いことを条件とするものしか提唱されていなかったため、同研究グループはこの結果について「今までの天文学的な常識を覆すものである」と説明している。同研究グループは今後、数年以内に本格稼働を予定している同大学の3.8m望遠鏡や、2016年2 月に打ち上げ予定のX線天文衛星「ASTRO-H」を用いたX線連星の観測も視野に入れ、次にX線新星のアウトバーストが起こったときには、今回のアウトバーストの観測で実現しなかった分光観測など、口径の大きな望遠鏡の利点を生かした観測も行うとしている。
2016年01月07日ウェザーニューズは、スマートフォンアプリ「ウェザーニュースタッチ」の「星空 Ch.」において、「しぶんぎ座流星群」観測を楽しめる「流星キャッチャー」の事前登録を開始した。「流星キャッチャー」は、登録したユーザーのスマートフォンに、星が流れた瞬間から3分以内に流星動画を配信するサービス。そのほか、ウェザーニューズでは、国内6カ所と中国から流星を生中継する特別番組を、同アプリ内の「SOLiVE24 Ch.」、ニコニコ生放送、YouTubeなどで放送する。しぶんぎ座流星群は、毎年正月明けにピークを迎える流星群。流星の出現数は年によって異なる。国立天文台によると、2016年は出現のピークが観測しやすい夜間ではなく、4日夜半過ぎから5日未明までとなり、月明かりなどの影響で多くて1時間に15個程度の出現になるという。
2016年01月04日異常気象などの影響もあってか、昨今は自然災害が猛威をふるい、その被害も以前と比べて格段に大きくなっています。地震や噴火、津波などだけでなく、台風や竜巻による深刻な被害も多く聞かれます。これらの自然災害から大事なマイホームや財産を守るためにも火災保険について一度振り返ってみましょう。○洪水や噴火で自宅が被害を受けたとき火災保険に入っていれば大丈夫?火災保険は文字通り火事などによりマイホームが被害を受けたときのために加入しているものですが、ご存知のように自然災害による被害もカバーしています。火災保険にきっちり入っていれば、どんな災害の際にも家や財産は守られると考えがちですが、状況によっては補償されない場合もあるので、補償内容はしっかりチェックしておく必要があります。まずは地震による被害。地震や噴火によって火災が発生し自宅が半焼以上の被害を受けたとしても、火災保険からは契約保険金額の5%が支払われるだけ。地震などで自宅が倒壊した場合も火災保険の補償対象外となってしまいます。ですから地震や噴火による被害に備えるには、地震保険に加入する必要があります。地震保険は火災保険とセットで契約できる商品で、建物、家財それぞれ加入できます。注意したいのは地震保険は火災保険金額の30~50%までしか加入できないということ。つまり、全損した場合でも再建築するための半分の額しか受け取れません。家財も同様です。それでも東日本大震災をみてもわかるように、大地震による被害は大きくなりがちなので、加入しておくに越したことはありません。保険料は住んでいる地域によって異なり、また、火災保険と比べて高額なので保険料負担のバランスも考慮しながら備えるといいでしょう。また、津波による浸水や倒壊被害も火災保険ではなく地震保険の補償範囲です。地震による損害では家財も大きな被害を受けることが多いので建物だけでなく家財も加入しておくと安心でしょう。○地震や台風など最近は被害が増えているけど補償の見直しはどうするべき?保険が自由化される以前は、火災や風災雪災など最低限の補償を備えた住宅火災保険とそれに水災など補償を充実させた住宅総合保険の2つが主流で、どの保険会社で契約しても保険料や補償内容に違いがありませんでした。しかし、現在は損害保険会社ごとに独自の補償内容の選択肢が増え、加入者が補償を自由に選べる保険も増えています。たとえば最近増えている大型台風やゲリラ豪雨による水害。このような大雨や洪水などによる浸水被害は、旧来の住宅火災保険では補償されません。自宅を購入あるいは新築したときに加入したまま、長い間契約を見直していないという人は、現在加入している保険の補償内容をチェックしなおして、今の状況にマッチしたリスクに備える必要があります。また、大雨や洪水などによる浸水被害は建物だけでなく家財が大きな被害を受けがちです。これまではあまり気にしてこなかったという人でも、ここ数年の大災害の被害状況を見て、もしかしたら我が家も被害にあう可能性があるかもと心配している人もいるのでは?少しでもリスクがあると感じたなら、建物だけでなく家財の保険も併せて家と財産の保険の見直しを検討するといいでしょう。逆にマンションの高層階や一戸建てでも高台にあるなど浸水被害は受けにくいと考えられるなら、水災の補償ははずすという選択も。ほかにも竜巻や雷などによる被害も地形など立地によってリスクの大きさは異なるので、それぞれの環境に応じて必要な補償は万全にする一方で不要な補償は思い切って切り捨てることにより、無駄なコストをカットできます。また、オール電化の住宅なら保険料が安くなるなどの保険料も細分化されているので、見直すときにはなるべく同じ条件で各社の火災保険を比較してみることが大切です。被害にあってから補償されるかどうかあわてて確認しても手遅れです。自然災害による被害は以前よりも確実にリスクが高まっているので、大事な我が家を守るためにも一度しっかり内容を確認しておきましょう。<著者プロフィール>ファイナンシャルプランナー 堀内玲子証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別ライフスタイル別生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。
2015年12月23日アクセルスペースは12月10日、地球観測画像データのプラットフォーム「AxelGlobe」を発表、都内で記者会見を開催した。2022年までに超小型衛星「GRUS」を50機打ち上げ、地上を毎日撮影、情報を提供できる体制を整える。同社はこれまで、超小型衛星の開発を主要な業務としてきたが、新たに情報サービスの提供に乗り出す。○なぜ自社で衛星を持つのか?アクセルスペースは2008年創業の大学発ベンチャー。これまでに、「WNISAT-1」(270×270×270mm/10kg)、「ほどよし1号」(503×524×524mm/60kg)、「WNISAT-1R」(524×524×507mm/43kg)といった3機の超小型衛星を開発した実績がある。WNISAT-1/ほどよし1号は現在軌道上で運用中で、WNISAT-1Rについては2016年春の打ち上げを予定している。これまでのビジネスは、特定の顧客のための専用衛星を開発することだった。これに対し、新事業では、自社が衛星を保有し、それを使ったサービスを提供することになる。同社にとっては未知の領域となるが、参入を決めたのは「超小型衛星の利用を爆発的に広げたい」(中村友哉代表取締役)という創業以来の思いがあるからだ。従来の大型衛星の場合、1機あたりの開発費は数100億円程度になる。これだと、宇宙を利用するのは、通信・放送やリモートセンシングなど、確実に収益が見込める一部の分野に限られてしまう。そこで注目したのが超小型衛星である。1機あたりのコストを数億円まで下げられるので、様々な企業が、様々な用途に使うことが期待できる。だが、コストを1/100にしたといっても、まだ数億円だ。とても一般人が購入できるような金額ではないし、利用できる企業も限られるだろう。そこで、衛星利用の敷居をもう一段階下げるために開始するのがAxelGlobeというわけだ。衛星を所有するリスクが無くなるのため、ビジネス上のチャレンジもしやすい。AxelGlobeでは当面、衛星画像の販売が中心となる見込みだが、同社が見据えるのはさらに先だ。オープンプラットフォームとして、自社衛星だけでなく、他社衛星やドローンなどの画像も取り込み、その上でAPIを公開、事業者が独自のサービスを提供できるようにする。目指すのはそういったエコシステムの確立だ。衛星画像の販売はすでにビジネスとして存在しており、世界の市場規模は2,000億円程度だという。だが、衛星画像を活用できそうなアプリケーション市場はもっと大きく、同社がターゲットにしているのはそちらだ。農業、資源・エネルギー、森林、産業情報など、様々な応用分野が考えられているそうだ。○地上分解能2.5mを実現するGRUSAxelGlobeでは、50機の衛星コンステレーションにより、地球上の全陸地の45%を毎日撮影し、画像データを蓄積する。これは、人類が経済活動を行っているほぼ全ての領域に相当するという。従来の衛星画像サービスのように撮影場所をリクエストしなくても、基本的に全部撮っているので、欲しい画像は必ずあるというわけだ。また、全ての場所を撮影しておくことで、時間軸の変化も見えてくる。同社は「トレンドを解析して未来予測ツールとして活用できる」と期待する。AxelGlobeの第1段階として、まずは2017年中に、3機のGRUSを打ち上げる。これで、一部地域限定ながら、毎日更新の観測をスタートさせる。同社は今年、シリーズA投資ラウンドで19億円を調達しており、これを3機の開発費に充てる計画だ。GRUSのサイズは600×600×800mm、重量は80kg。同社にとって過去最大の衛星となる。この中に、口径30cmの望遠鏡を2つ搭載。どちらも仕様は同じで、それぞれ衛星進行方向の左半分と右半分を撮影することにより、57km以上という広い撮影幅を実現する。大きな1つの望遠鏡の方が地上分解能では有利だが、それよりも撮影幅を優先させた設計だ。地上分解能は、パンクロマチック(モノクロ)で2.5m、マルチスペクトルで5.0m。海外には、米Skyboxの「SkySat」のように、分解能1m以下という100kg衛星もあるが、あえて2.5mを選んだのには理由がある。高い分解能を狙うとコストが高くなり、その結果用途が限られてしまう。ズームカメラなので撮影できる範囲が狭くなるし、プライバシーが問題になるリスクもある。そして何より"レッドオーシャン"。米国ではベンチャーがひしめいており、「我々はそんなところで正面から戦う気は無い」(同)というわけだ。逆に5mくらいの解像度だと、都市の解析などには能力が足りない。そして米国の「Landsat」などが無料で提供している画像との競走になってしまい、利益の確保が難しい。分解能2.5mは、その間を狙った戦略なのだ。全エリアを毎日観測するとなると膨大なデータ量になるため、Xバンド送信機の通信速度は200Mbpsに強化。北極圏にあるスバルバード局を活用することで、地球周回の1周ごとに観測データを地上に降ろす方針だ。今後、2016年前半にエンジニアリングモデル(EM)を完成させ、それからフライトモデル(FM)の3機を順次製造する。打ち上げロケットは現時点で未定だが、2016年中には契約を締結する予定。
2015年12月11日気象予報サイト「ウェザーニュース」を運営するウェザーニューズはこのほど、ふたご座流星群観測のための12月14日夜~15日早朝の全国の天気傾向を発表した。ふたご座流星群は年間3大流星群のひとつにも数えられ、国立天文台によると、ピーク時には1時間に40個以上の流星が見られることもあるという。2015年の出現ピークは12月14日夜~15日早朝で、月明かりの影響がないため、天気がよければ前後約10年間で最高の観測条件となる見込み。同社によると、ふたご座流星群がピークとなる14日夜~15日早朝は、弱い低気圧や湿った空気の影響で全国の広い範囲で雲が広がりやすくなる。一方で、月明かりの影響はないため、雲の切れ間を狙えば十分に観測を楽しめるとのこと。中でも高気圧に近い北海道の日本海側ではよく晴れ、観測に絶好の夜空となる見込みとなっている。低気圧に近い九州南部などでは、厚い雲が広がり観測には厳しい条件となる予想。低気圧や前線、高気圧の位置次第で雲の広がり方が変化するため、最新の情報に注意が必要だという。
2015年12月09日物質・材料研究機構(NIMS)は12月3日、同機構が合成したオスミウム酸化物NaOsO3が、観測史上最強のスピン-フォノン結合を示すことを明らかにしたと発表した。同成果は、同機構 超伝導物性ユニット 山浦一成 主席研究員ら、米国オークリッジ国立研究所 スチュアート・カルダー博士らの研究グループによるもので、11月26日付けの英オンライン科学誌「Nature Communications」に掲載された。スピン-フォノン結合は磁性(スピン)と結晶格子系(フォノン)の相互作用の強度を直接的に表すもので、スピンとフォノンの相互作用が強いほど、たとえば高密度情報記録素子や超高速演算素子を低消費電力で実現できる「マルチフェロイクス材料」などの機能性材料の開発に有利であることが、最近の研究から示唆されている。今回の研究では、同機構が世界で最初に合成したオスミウム酸化物のスピン-フォノン結合を観測したところ、かつて観測されたことがない最強の結合であることが明らかになった。これは、酸化物固体のなかでオスミウムの最外殻電子軌道が空間的に大きく張り出しているためであると同機構は考察している。この構造的な特徴は、白金族元素に共通する特徴であるため、オスミウム以外の白金族元素の化合物も強いスピン-フォノン結合を持つ可能性が高いという。同物質は今後、情報通信やエレクトロニクス分野での次世代材料の新たな候補につながることが期待される。
2015年12月03日米戦略軍の統合宇宙運用センター(JSpOC)は11月25日(現地時間)、米海洋気象庁(NOAA)の気象衛星「NOAA-16」が軌道上で分解したと発表した。詳しい状況はまだ不明だが、スペース・デブリ(宇宙ゴミ)が発生したことが確認されている。JSpOCによると、分解したのは日本時間11月25日17時16分(協定世界時同日8時16分)とされる。JSpOCは世界各地に設けられたレーダーや望遠鏡で、地球の周回軌道上にある大小さまざまな物体の監視を行っている。現時点で、分解の原因は明らかになっていない。考えられる原因として、他の人工衛星やデブリとの衝突や、衛星内の燃料やバッテリーの爆発などが挙げられる。また、発生したデブリの数や軌道も明らかになっていないが、26日朝の段階でJSpOCは「現時点では、NOAA-16の破片が他の衛星に危険を及ぼすことはない」と発表している。ただ、NOAA-16が周回していた高度約850km、軌道傾斜角98度の太陽同期軌道は、地球の大気がほとんどないため、デブリの軌道にもよるが、おおむね年単位で軌道に留まり続けることになると見られる。また、摂動などの影響で軌道も変わるため、いずれ他の衛星などと衝突する可能性がないわけではない。NOAA-16はロッキード・マーティンが開発した気象衛星で、2000年に打ち上げられた。設計寿命は2年とされていたが、その予定をはるかに超えて運用が続けられ、2005年には同じ年の5月に打ち上げられた「NOAA-18」に気象観測ミッションを引き継ぎ、以降は予備機として運用されていた。しかし、2014年6月5日に衛星が故障し、復旧の見込みが立たなかったため、6月9日に運用を終了していた。○同型機はバッテリーの爆発でデブリ化NOAA-16は「タイロスN」という衛星バスを使用して造られているが、このバスを使う衛星の一部には、設計上の欠陥により、配線を留めているハーネスが外れ、配線がバッテリーに触れて短絡(ショート)を起こし、バッテリーが過充電状態となって爆発する可能性があることがわかっている。実際に過去には、「NOAA-6」、「NOAA-7」、「NOAA-8」でバッテリーの爆発が原因と見られる故障が起き、少数ながらデブリが発生したことも確認されている。また、米国防総省の気象衛星「DMSP」のうち、同じタイロスNバスを使っている「DMSP F11」が2004年に、「DMSP F13」が2015年に、バッテリーの爆発が原因と見られる事故によってデブリが発生している。そのため、今回のNOAA-16も同じ原因である可能性がある。参考・Space-Track.Org・JSpOC(@JointSpaceOps)さん | Twitter・POES・NOAA retires NOAA-16 polar satellite
2015年11月26日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月16日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)の観測データに基づく月別二酸化炭素の全大気平均濃度を公表した。「いぶき」は、環境省、国立環境研究所(NIES)、JAXAが共同で開発した温室効果ガス観測専用の衛星で、二酸化炭素とメタンの濃度を宇宙から観測することにより、その吸収・排出量の推定精度を高めることを目的とし、2009年1月の打ち上げ以降、現在も観測を続けている。二酸化炭素は高度によって濃度差があるため、地上観測点だけの濃度データでは地球大気の全体濃度を表すことできないが、「いぶき」は地表面から大気上端までの二酸化炭素の総量を観測することができる。発表によれば、2009年5月から2015年7月までの「いぶき」観測データを用いて全大気の二酸化炭素平均濃度を算出したところ、月別平均濃度は北半球の植物の光合成が活発になる北半球の夏に下がり、光合成が弱くなる北半球の冬に挙がる季節変動を経ながら年々上昇し、2015年5月には約398.8ppmを記録した。また、推定経年平均濃度(季節変動を取り除いた2 年程度の平均濃度値)は2015年7月に約398.2ppmに達した。このまま上昇傾向が続けば、月別平均濃度および推定経年平均濃度ともに、2016年中には400ppmを超える見込みだという。環境省、NIES、JAXAの3者は、今回算出した「いぶき」の観測データから解析・推定した月別「全大気」の二酸化炭素平均濃度を、NIES GOSATプロジェクトのWebページにおいて公開し、同衛星の運用が続く限り定期的に結果を更新するとしている。
2015年11月16日日本気象協会一般財団法人日本気象協会は、株式会社ポーラと共に、美容アドバイスサイト「美肌予報」を開始した。「美肌予報」は、「気象」と「肌」のビッグデータを活用したもの。2014年から共同研究をおこなっており、これまでに「肌荒風(はだあらしかぜ)」や「毛穴熱風(けあなねっぷう)」などを発見し、発表している。「美肌予報」「美肌予報」は、全国47都道府県の地域ごとの肌変化を予測して、無料の美容アドバイスをおこなう。予測の根拠となるものは、ポーラの持つ1500万件超の肌データと、日本気象協会の65年分の気象データだ。予測をもとに、美肌ケアのポイントや、食事のアドバイスなどを提供する。「美肌予報」ウェブサイト「美肌予報」ウェブサイトは、月に一回の更新。サイトでは、気象予報士からの、気象に関するコメントや、美肌アドバイザーからのケアに関するコメントが提示されている。地域ごとに美肌指数も表示してあり、毛穴・シワ・糖化・乾燥・シミ・肌冷え・敏感などのカテゴリーについて、何が問題なのかを知ることができる。日本気象協会では、気象のビッグデータを他企業と共に活用し、世の中に「新たな価値」を提供したいとしている。(画像はプレスリリースより)【参考】・日本気象協会Xポーラ、「美肌予報」を開始~気象と肌のビッグデータによる、新しい美容アドバイス~
2015年11月15日日本気象協会は11月12日、ポーラと共同で、気象と肌のビッグデータを活用して肌変化を予測する美容アドバイスサイト「美肌予報」を開設した。両社はそれぞれが持つ「気象」と「肌」に関するビッグデータを利用した共同研究を2014年から行っており、これまでも「肌荒風」や「毛穴熱風」などを発見し発表してきた。今回開設した「美肌予報」は全国47都道府県の地域ごとの肌変化を予測し、美肌のケアにつながる情報提供を目的とした無料の美容アドバイスサイト。日本気象協会の気象データと、ポーラが持つ累計1500万件を超える肌データ(全国47都道府県、16歳以上の女性のデータ)を活用することで美肌を左右する気象情報をもとに地域ごとの肌変化を予測し、美肌ケアのポイントや生活習慣・食事のアドバイスなどを提供していく。日本気象協会は、今後も気象のビッグデータを活用した他企業との共同展開を通じて、世の中に「新たな価値」を提供するための活動を続けていくとしている。
2015年11月13日理化学研究所(理研)は10月30日、絶縁性の高い磁性体「磁性絶縁体」において磁壁が金属的性質を持つことを、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を用いて観測することに成功したと発表した。同成果は創発物性科学研究センター強相関界面研究グループの藤岡淳客員研究員と上田健太郎研修生、創発物性科学研究センターの十倉好紀センター長、米国スタンフォード大学のジーシュン・シェン教授らの国際共同研究グループによるもので、10月29日付の米科学誌「Science」に掲載された。今回の研究では、絶縁性を持ち磁気的界面の伝導性の比が最も高い磁性絶縁体であるパイロクロア型イリジウム酸化物「ネオジウムイリジウム酸化物(Nd2Ir2O7)」表面の伝導特性を、走査型マイクロ波インピーダンス顕微鏡を利用し評価した。磁場をかけずに温度を下げるゼロ磁場冷却を行った後、温度が上昇していく昇温過程でインピーダンスを測定すると、常に磁性をもつ金属である常磁性金属から強い反磁性をもつ絶縁体である反強磁性絶縁体への転移温度以下ではインピーダンスは急に増加し、最低温では三桁ほど大きな値を示す。このとき、絶縁性の高い固体中に、磁壁の金属的性質といえる100nm以下の幅を持つ細線状の金属状態がランダムに分布しているのが観測された。一方、9Tの磁場を加えて温度を下げる磁場冷却を行った後に磁場をゼロに戻してから、昇温過程のインピーダンスを測定すると、ゼロ磁場冷却時よりもインピーダンスの増加が大きくなり、最低温においては二桁以上大きな値を示した。このとき、顕微鏡画像では磁壁の金属的性質を示す細線が消えており、磁場によって磁区がひとつに揃えられることで磁壁が消失することが分かった。同研究グループは今後、固体中における磁性と電子状態に関する基礎的な理解を深めていくとともに、金属的磁壁を利用した新しい磁気メモリーの実現につながることが期待できるとしている。
2015年10月30日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月20日、X線天文衛星「すざく」によるおとめ座銀河団の広域観測から、銀河団の内側から外縁部にわたって元素組成が一定であり、それが太陽系周辺の組成とほぼ同じであることがわかったと発表した。「すざく」は2005年7月に打ち上げられた観測衛星で、2015年8月に科学観測を終えた。同成果はJAXAのオーロラ・シミオネスク 研究員らによるもので、10月1日付の米天文物理学専門誌「The Astrophysical Letters」に掲載された。宇宙に存在するリチウムよりも重い元素は超新星爆発などによって放出されたと考えられている。超新星爆発には重い星を起源とするII型と軽い星を起源とするIa型があり、酸素やマグネシウムなどの軽い元素は前者から、鉄やニッケルなどの重い元素は後者によって宇宙空間に放出されたとされる。II型とIa型で宇宙空間へ放出された元素は星間物質と混ざり合い、次の世代の星に取り込まれるため、星や星間空間における軽い元素と重い元素の比率を調べることで、どの超新星爆発がどの程度発生したかを調べることができる。超新星爆発で放出された元素のほとんどは高温のガスとして銀河と銀河の間に存在しており、この高温ガスをX線で調べることで宇宙の平均的な元素組成を知ることができる。これまで、ペルセウス座銀河団では鉄の元素量が中心部から外側までほぼ同じであることが知られていたが、他の元素についてはわかっていなかった。今回の研究では、太陽系から最も近い銀河団であるおとめ座銀河団を2週間にわたり観測したデータを用い、さしわたし約1000万光年の領域における元素の量を調査した結果、鉄のほか、マグネシウム、ケイ素、硫黄の元素量が中心部から外側までほぼ均一であり、太陽系周辺の組成とほぼ同じであることがわかった。シミオネスク研究員によれば宇宙のほとんどの部分で同様だと考えられるという。「すざく」は観測を終えてしまったが、検出能力を強化したX線観測衛星「Astro-H」が2015年度中に打ち上げられる予定で、同衛星を用いた観測によって「すざく」では検出することができなかった元素についても調べることで、今回の研究成果をベースとした新たな知見の獲得につながることが期待される。
2015年10月21日日本気象協会は10月7日、今夏の気象条件などをもとに「2016年春の花粉飛散予測(第1報)」(スギ・ヒノキ花粉、北海道はシラカバ)を発表した。同発表では、2016年の花粉飛散数は前シーズンと同程度か、上回る地域が多くなると予想されている。花粉の飛散数は、前年の夏の天候が大きく影響する。前年の夏の天候に、「気温が高い」「日照時間が長い」「雨が少ない」といった気象条件がそろうと、花芽が多く形成されるため、翌年の花粉の飛散数が多くなると言われている。これらの諸条件を踏まえた結果、2016年春の花粉飛散予測は、四国地方と九州地方では前シーズン比で約1.5倍の飛散数になるという。また東海地方、近畿地方でも前シーズンより花粉がやや多く飛ぶ予測となっている。関東地方や中国地方ではほぼ前シーズン並みで、北海道や東北地方、北陸地方ではやや少ないと予想されている。例年と比較すると、夏の気象条件がそろった東北地方を除き、全国的に例年並みか少ない地域が多くなると見込まれている。その他の地域では夏の気象条件がそろわなかったため、例年より少なく、非常に少ない地域もあるという。なお、東京は前シーズン並みで、前シーズン少なかった大阪はおよそ2倍近くになると予想されている。
2015年10月07日ウェザーニューズは9月25日、9月14日に北極海の海氷の面積が456万km2を記録し、観測史上4番目の小ささとなったと発表した。北極海の海氷は通常7月から8月にかけて急速に融解し、9月に1年で最も小さい面積となる。近年、地球温暖化により、北極海の海氷の年間最小面積は減少傾向にあり、2012年には観測史上最小の328万km2を記録した。一方、北極海の海氷が減ったことで、北極海航路の商業利用や沿岸域での資源開発が活発化している。今回、ロシア側・カナダ側両航路が2年ぶりに開通し、現在も海氷域に入ることなく航行が可能な状態となっている。今後、徐々に海氷の結氷が進み海氷面積が拡大していくが、同社は10月上旬頃まで開通状態が続くとしている。
2015年09月25日宇宙航空研究開発機構(JAXA)は8月19日、陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)による桜島の緊急観測を行い、南岳山頂火口の東側で最大16cm程度、衛星に近づく変位が観測されたと発表した。同観測は気象庁からの要請に基づき行われたもので、8月16日の夜と17日の昼に実施された。「だいち2号」に搭載されたLバンド合成開口レーダ(PALSAR-2)で行った観測では、8月16日と今年1月の観測結果の比較から南岳山頂火口の東側の広い範囲で、最大16cm程度の衛星方向に近づく変位が確認された。また、8月16日とは異なる方向から実施された8月17日の観測では、今年7月の観測データとの比較から、南岳山頂付近では最大5cm程度の衛星方向に近づく地殻変動が、東側では最大6cm程度の衛星から遠ざかる地殻変動が見られた。また、地球観測用小型赤外カメラ(CIRC)によって行った観測では、8月17日に取得した画像で、相対的に温度が低い山頂付近に、周囲と比較して5度程度、高く見える場所を確認。この高温域には火口内部の高温の領域が含まれていると考えられるという。JAXAは今後も、関係機関と協力し、桜島の観測を継続するとしている。
2015年08月20日「雨の日は関節が痛む」「低気圧の日は頭痛がする」など、巷には気象と人のからだや体調にまつわる都市伝説が数多く存在します。もっともらしくて納得してしまいそうですが、実際どれほど信ぴょう性があるのか、気になりませんか?今回は、海外メディア『BBC』を参考に、気象と人体にまつわる都市伝説の真偽を科学的に検証してみましょう。■1:雨の日は関節が痛む――【真偽ははっきりしない】この悩み、よく聞きますよね。実際、雨の日や強風の日にリウマチが悪化し関節が痛むという事例はいくつも報告されていますが、じつは天気とリウマチ症状のはっきりとした関連性を示す根拠はいまだ見つかっていません。それどころか、2011年に9つの研究をもとにまとめられた報告書は、「関節リウマチの症状と天候には確実な関係はない」とさえいい切っています。いまのところ、「雨の日には関節が痛む」というのはただの“確証バイアス”だろうというのが通説です。確証バイアスとは、自分の都合のよい情報だけを信じ、集めてしまう傾向、つまり“思い込み”のこと。雨と関節痛との関連を信じている人は、それだけで雨の日には不快感を抱く傾向があるよう。いまだに賛否両論あるテーマです。■2:気圧が低くなると頭痛がする――【真】理由なく気分が落ち込んでいるとしたら、それは気圧のせいかもしれません。なにしろ、私たちの頭の上には、常に1トンもの大気が浮かんでいるのです。獨協医科大学の木元一仁氏率いる研究チームは、28人の偏頭痛患者に1年間、頭痛の症状を日記につけてもらい、毎日の気圧状態と比較する研究を行いました。そして、頭痛が気圧の低下とかなりの頻度で一致することを発見したのです。このほかに気圧の状態と鎮痛剤の売上を比較した研究もあり、そこでは気圧の低下に反比例して鎮痛剤の売上が上がっていることが証明されています。気圧の低下が、平衡感覚をつかさどるシステムを崩壊させることがその理由ではないかと考えられています。■3:寒い時期は心臓発作が増える――【真】冬は心臓発作が増加します。中国のある研究によると、心臓疾患による死亡が、春と夏に比較して40%も上昇するといいます。数十年にわたる研究にも関わらず、ちゃんとした理由はわかっていません。しかし中国では、気温が低くなると血圧が上がるようだという研究結果もあります。血圧の上昇は心臓発作のリスクを高める一因として知られていますから、このあたりに理由があるようです。■4:気候がよい時には男の子を妊娠する――【真の可能性が高い】どんな状況下でも、男女が生まれる確率は半々だと思っている人が大半でしょう。しかしその確率は気候にも左右されているというのです。北半球では、平年よりも暖かい年は男の子を妊娠する傾向が強いとされています。また、1952年にロンドンで発生した大規模な大気汚染公害“ロンドン・スモッグ”の期間は非常に寒く、その9か月後に誕生した赤ちゃんは、女の子が多かったという報告もあります。なぜこのようなことが起きるのかは、まったくの謎です。気温がホルモンバランスや精子の産生具合を変えているかもしれません。人間が環境に適応し“種”を維持するための工夫だ、と考える人もいます。とはいえ影響は軽微なものであり、地域によっても異なります。学問的にはとてもおもしろいテーマですが、家族計画に応用できるようなものでは……ないようです。■5:太陽光線のせいで亡くなる人がいる―【真の可能性が高い】太陽は地球に絶えず“磁気嵐”や“宇宙線”と呼ばれる高エネルギー粒子を浴びせています。私たちは地球の大気に守られているはずですが、実は防ぎきれていないようなのです。リトアニアの研究チームが25年にわたり100万人以上の死亡記録を調査。心臓病や脳卒中による死亡数のピークと、太陽の活動が活発になる時期とが重なることを発見しました。別の調査で、太陽の活動が活発になる時期に生まれた人々は、穏やかな時期に生まれた人々とくらべて平均寿命が5年ほど短いこともわかっています。しかし原因の究明はまだこれからです。以上、人体や体調と気象に関わる都市伝説の真偽を検証してきました。納得できるもの、信じられないものがあったのではないでしょうか?そして、理由がわからないものが意外と多いことにも驚かされます。人体をますます神秘的なものに感じますが、この結果を信じるか信じないかは自分次第です。(文/よりみちこ)【参考】※The mysterious way your body changes with the weather-BCC
2015年08月17日日本気象は4日、同日より気象庁が開始した「噴火速報」に対応したスマートフォン向けアプリ「噴火速報アラート」を公開した。App Store、Google Playよりダウンロードでき価格は無料。「噴火速報」は、2014年9月に発生した御嶽山での噴火災害を踏まえ、噴火が発生した事実を迅速かつ的確に伝えることを目的として気象庁が4日より開始するもの。阿蘇山、箱根山、浅間山などを含む、気象庁が常時観測している47の火山が速報の対象となっている。「噴火速報アラート」は、気象庁が「噴火速報」を発表した際に、通知音やポップアップ、通知バーなどで情報を届けるアプリ。アプリ内では、「噴火速報」の内容や対象市町村、対象火山の地図が表示されるほか、噴火警報ボタンから天気防災サイト「お天気ナビゲータ」へ遷移し、噴火速報以外の関連情報にもアクセスできる。
2015年08月04日千葉工業大学は7月21日、日本初の3Uキューブサットである流星観測衛星「S-CUBE」が宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機に搭載され、8月16日にH-IIBロケット5号機で打ち上げられることが決定したと発表した。「S-CUBE」は同大学惑星探査研究センターを実施責任機関として、同センターと東北大学が共同で開発を進めてきた。同衛星は3Uキューブサットというカテゴリの衛星で、10cm角のユニットからなる超小型サイズであることを特徴とする。可視カメラ1式と紫外線センサ3式を搭載しており、宇宙からの流星紫外線を観測することで、流星の発光メカニズムの解明や、流星塵成分の新たな情報を得ることが期待されている。打ち上げ後は、「こうのとり」で国際宇宙ステーションに届けられた後、「きぼう」日本実験棟から放出され地球周回軌道に投入される予定。同衛星は2度の打ち上げ失敗に見舞われた流星観測カメラ「メテオ」と相補的な関係にあり、「メテオ」との同時観測を目標としていた。
2015年07月22日アメリカ航空宇宙局(NASA)は7月14日(現地時間)、無人探査機「New Horizons」が冥王星へ最接近し、観測に成功したと発表した。同探査機と冥王星の距離は約1万2472kmで、これはニューヨークからインド・ムンバイまでの距離に相当する。New Horizonsは2006年1月に打ち上げられて以来、9年半かけて約49億kmを飛行し冥王星に到着。打ち上げ時に想定していた到着時間との誤差はわずか1分だったという。最接近後、同探査機は「観測モード」に入ったため地球との通信が行われていなかったが、その後、観測の成功が確認された。New Horizonsの観測データは今後、16カ月かけて地球へと送られてくる予定だ。
2015年07月15日●「あけぼの」によるオーロラの観測2015年6月、北海道でオーロラが観測され、赤く染まる空の写真に多くの人々が息を呑んだ。日本国内でオーロラが見られるのは非常に珍しいことで、北海道で観測されたのは今年3月以来2回、さらに3月の前は11年間にもわたり観測されたことすらなかった。オーロラの発生には、太陽の活動が大きな要因となっている。オーロラは通常、北極や南極の周辺でしか見られず、緯度の低い日本でも見られるということは、それだけ太陽活動が活発になっているという証拠でもある。そんなオーロラの活動を26年間にもわたって宇宙から見守り続けた人工衛星が、今年4月に運用を終えた。磁気圏観測衛星「あけぼの」だ。「あけぼの」はその長期間にわたる運用の中で、オーロラがどうして生成されるのか、季節や太陽活動などの変化によってどういう違いが生まれるのかといったことを観測し続け、多くの成果を残した。その観測対象はオーロラだけではなく、地球を取り巻いているヴァン・アレン帯という放射線帯にも広げられた。そして今、来年打ち上げ予定の新しい衛星「ERG」へとバトンが渡されようとしている。○オーロラと太陽活動ところで、そもそもオーロラはどのようにして発生しているのだろうか。その直接的な原因は、宇宙からやってきた電子やイオンが、地球の高層大気の原子や分子と衝突し、その結果として光を放出することでオーロラを見ることができる。原理としては蛍光灯と同じだ。その電子やイオンは太陽からやってくる。太陽からは、コロナ加熱による「太陽風」や、太陽フレアが関係しているとされる「コロナ質量放出」と呼ばれる現象によって、電気を帯びたガス(プラズマ)が高速で飛んできているためだ。そしてこれらは地球の磁場とぶつかることで、磁気圏という空間を作り出している。地球の磁場は太陽風によって圧迫され、太陽側(昼側)は押し込められ、一方で夜側は吹き流されて、全体的に彗星の尾のような形になっている。地球に磁場があるのは、地球そのものが巨大な磁石になっているためだ。地球の中には核があり、鉄が溶けて対流し、電流が生み出されていることから、磁力が生じる。たとえば方位磁石が動くのもこのためだ。そしてこの電子は、地球磁場が持つ磁力線に沿って、大気のある空間へと入り込んでくる。このときに重要となるのが、オーロラの光る高度約100~300kmよりもはるか上空、3000~1万kmぐらいのところにある、強力な電圧を作り出す電場の存在だ。この電場は地球から見て太陽の反対側の、地球の半径のおよそ10倍から100倍ぐらいの距離の位置の、地球磁気圏の中にある。太陽風のエネルギーはもともと1電子ボルト程度だが、この電場によって、最終的にオーロラを起こすことになる電子(オーロラ電子)のエネルギーは、10キロ電子ボルトぐらいにまでなる。こうして強力な電圧で加速された電子は、地球の磁場の磁力線に沿って地球に向かって入り込み、大気とぶつかることでオーロラを作り出しているのである。もしこの電圧がなければ、電子は地球までやってくることはなく、途中で磁気圏に引き返していくことになるという。このオーロラ上空の強力な電場の存在と、それがないとオーロラは光らないらしいということは、今から40年ほど前から予測されていた。こうしたオーロラの謎を探るべく、日本は1989年に、磁気圏観測衛星「あけぼの」(EXOS-D)を打ち上げた。○「あけぼの」とオーロラ「あけぼの」は1989年2月22日、内之浦宇宙空間観測所からM-3SIIロケット4号機によって打ち上げられた。「あけぼの」は地表に最も近い高度が275km、最も遠い高度が1万0500km、赤道からの傾きが75度の軌道に投入された。ちょうど地球を斜めに回り、上からと下からの両方から観測できるような軌道になっている。当初、目標寿命は1年間とされたが、最終的に2015年4月23日までの、26年2か月間という非常に長い期間にわたって運用が続けられた。磁気圏観測衛星としては世界最寿命で、海外を見渡してもそこまで生き延びた衛星はないという。その運用の中で、「あけぼの」はオーロラ電子や、その生成機構に関連する長期間にわたるデータを取得し続けた。この長期間というのが重要で、季節の変動や太陽活動、地球磁気活動の変化によって、何がどのように影響を与え、また与えられているのかということをつぶさに観測することができ、統計的に分析することが可能となった。たとえば「あけぼの」は、オーロラは冬半球ほど強い、ということを発見した。冬半球というのは南北半球のうち季節が冬の部分で、当然その反対は夏半球となる。たとえば日本は12月ごろが冬半球にあたるが、オーストラリアなどは12月は夏だから、夏半球となる。「あけぼの」の観測は、冬半球の上空にオーロラ電子が多く存在していることを示した。また、オーロラ電子が生み出される電場は、夏半球ほど地球から遠く、冬半球ほど地球に近付くということも発見した。さらに、オーロラ電子の出現する頻度も、夏半球では高度による差異が少なく、一方の冬半球では、低高度ほど頻度が増大することも発見している。これらは電場から出ている電波の強弱を観測し続けることで突き止められたという。●「あけぼの」によるヴァン・アレン帯の観測、そしてERGへ○「あけぼの」とヴァン・アレン帯「あけぼの」はまた、ヴァン・アレン帯の観測でも大きな成果を挙げた。ヴァン・アレン帯というのは、地球を取り巻いている放射線帯のことで、内帯と外帯の2つのベルトから構成されている。この放射線帯は1958年に打ち上げられた米国初の人工衛星「エクスプローラー1」によって存在が発見され、その観測機器を開発したジェイムズ・ヴァン・アレン教授の名前を取って、ヴァン・アレン帯と命名された。この発見をめぐってはこんなエピソードがある。ヴァン・アレン教授らがもともとエクスプローラー1で観測しようとしたのは、宇宙からやってくる放射線の量だった。放射線の量を測る装置は「ガイガー・カウンター」といい、数値でその量が示される。エクスプローラー1の打ち上げ後、衛星の高度が上がるにつれて、ガイガー・カウンターの数値、つまり放射線量は徐々に上がっていった。ところが、あるところを境に「0」を示すようになってしまった。ヴァン・アレン教授らはガイガー・カウンターが壊れたのだと考えたが、別の衛星による観測でもやはり「0」を示すようになってしまった。当初は高エネルギー粒子の数が本当にゼロになってしまったのではとも考えられたそうだが、ヴァン・アレン教授らの研究グループにいた、とある大学院生が、もしかするとあまりに数が多いため、機器が正常にカウントできなくなって0を示したのではないかと思い付き、より多くの粒子を計測できるように改良した機器を打ち上げた。その結果、読みは正しく、地球の周囲に高エネルギーの粒子が大量に集まっている領域、つまり放射線帯が見つかった。それがこんにち知られているヴァン・アレン帯だったのだ。「あけぼの」が造られた当時は、ヴァン・アレン帯を観測することは目的とされてはいなかったが、前述のように「あけぼの」はちょうど地球を斜めに回り、上からと下からの両方から観測できるような軌道に乗ったことから、副次的にヴァン・アレン帯の内帯と外帯を、「輪切り」するようにして、そして長期間にわたって観測することができた。実は、「あけぼの」が26年間もヴァン・アレン帯の中を通過し続けたこと自体が、一つの大きな成果だ。ヴァン・アレン帯は人工衛星にとって非常に危険な領域で、たとえば前述した、オーロラを起こす電子のエネルギーは約10キロ電子ボルトだったが、ヴァン・アレン帯の中の電子のエネルギーは、実に1000キロ電子ボルト以上にもなる。たとえばマイナスの電気を帯びた電子が人工衛星にぶつかると、衛星自体がマイナスに帯電し、ショートを起こし、衛星が壊れることもある。通常の衛星なら数年耐えられれば良いほうで、「あけぼの」が26年間も過ごせたのは非常にすごいことだ。その26年にもおよぶ運用の中で、「あけぼの」は約11年周期で変化する太陽と、それに伴って変化するヴァン・アレン帯の様子を観測することに成功した。その結果、太陽活動が極大になる時期にはヴァン・アレン帯が大きくなり、逆に極小期には小さく、スカスカの状態になること観測した。ヴァン・アレン帯が太陽活動によって変化することを実際に観測したのは「あけぼの」が世界で初めてのことだった。ヴァン・アレン帯内の高エネルギー粒子が、いつ、どのくらい増えるのかを予測するのは大事なことで、いわゆる「宇宙天気予報」の課題の一つでもある。「あけぼの」の観測はそうした予測に大きく役立つものでもあった。しかし、「あけぼの」はヴァン・アレン帯を専門に観測する衛星ではなかったため、その観測範囲は限られていた。そこで来年、ヴァン・アレン帯の観測に特化した、新しい人工衛星「ジオスペース探査衛星」(ERG)が打ち上げられようとしている。○ジオスペース探査衛星(ERG)ERGは「エルグ」、もしくはアルファベットをそのまま読み「イー・アール・ジー」と呼ばれている。ERGとはExploration of energization and Radiation in Geospaceの頭文字から採られており、直訳すると「地球の周りの宇宙空間にあるエネルギーの動きや放射線の探索」といった意味になる。ちなみに「エルグ」は、仕事量や熱量の単位の名前でもある。衛星の大きさは1m x 1m x 2mほどで、打ち上げ時の質量は360kgほどと、「あけぼの」より少し大きいぐらいの、いわゆる小型に分類される衛星だが、その内部には9種類もの観測機器を持ち、ヴァン・アレン帯を徹底的に観測することを目指している。衛星は打ち上げ後、地表に最も近い高度約300km、最も遠い高度が約3万km、赤道からの傾きが31度という軌道による。「あけぼの」と同じように地球をたすき掛けをするように回りつつも、その高度は高くなっており、ヴァン・アレン帯の中心部に突っ込むように飛行することができるようになっている。ERGでは、まずオーロラを光らせているよりも小さいエネルギーから、それよりも6桁以上大きなエネルギーまで、非常に広いエネルギーの範囲を観測することができる。また、プラズマの波と電子を10マイクロ秒という非常に高い精度で観測することができ、ヴァン・アレン帯にある電子の一つ一つのエネルギーの変化を直接検出することさえも可能とされる。そこには世界初の技術が使われているという。ERGは現在も開発中で、予定では2016年の夏ごろに、イプシロン・ロケットの2号機で宇宙へ飛び立つことになっている。「あけぼの」は2015年4月23日15時59分、停波作業が行われた。停波とは、衛星に搭載されている電波の送信機やバッテリーを停止させ、二度と電波を出さないようにするために行われる作業で、これをもって衛星は、運用を終えることになる。「あけぼの」の運用は終わったが、「あけぼの」がこの26年間で残した膨大な量の成果と知見は、今後もERGの観測計画の立案や、データの解析に役立てられるという。「あけぼの」からERGへ託されたバトンによって、私たちの住む地球の周囲にある、磁場が支配するダイナミックな宇宙空間の謎を解き明かし、本当の姿を見せてくれることだろう。
2015年07月07日