「マッチポンプ」は、「自分で意図的に問題を起こしておいて、自分でもみ消す」ことを意味する和製英語。世の中にはびこるそんなマッチポンプ……もとい、デキレースの仕組みを懇切丁寧に解説した書籍『マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~』が注目を集めています。作中に描かれているのは、「水主マヒロ」が受賞した「コブラ社小説大賞」の裏側や、保険会社の口車に乗ることで起こった悲劇「白々しい姫」、世のはやりがマスメディアによって作られていることを童話調で解説した「マッチポンプ売りの少女」など、現実のどこかとシンクロしそうなシニカルで不幸なストーリーばかり……。著者のマネー・ヘッタ・チャンに作品についてお話を聞きました。――この本の登場人物は誰もがラストで不幸になっています。これ、全部本当に起こりうる話なのでしょうか……?「当然です!はやりの話から、保険の話、不動産の話、婚活詐欺、そして日本破たんの可能性にまで触れていますが、基本的に周囲で本当に被害に遭った人の話を元に書いています」――普通に暮らしている分には、日本は過ごしやすい国ですが……「もちろん日本はいい国ですよ。それだけに、皆、隣にいる人を無条件で信用してしまう。でも契約社会の海外では、何事もまず相手を疑ってかかり、細かいところまで自分で調べた上で契約書を交わすのが当たり前です。日本のようにいとも簡単に周囲を信用するのは本当に恐ろしいことなんですよ」――確かに私も保険や不動産など、自分がよく分からないジャンルについてはいわゆるプロと呼ばれるような方々に丸ごと任せてしまいがちです「そこが落とし穴。いい国である日本にも、結婚するときや家を買うとき、保険に加入するときなど、一大決心が必要な場面に限って悪いやつが現れるんです。大枚をはたいて買ったマンションが欠陥住宅だったり、40年間コツコツ払い続けた保険がゴミ保険だったりすると、取り返しがつきませんよね。本を読んで、ぜひそういう大事な局面で痛い目を見ないようにしていただきたいです」――では、痛い目を見ている人がもっとも多いのは?「だまされている人が多いという意味では、第三章の『マッチポンプ売りの少女』でしょう。これは、"カニちゃんファッション"のはやりを例に、メディアが情報操作をしているという話ですが、今の政治も実は同じ構造です。マスコミが支持率を下げようと思えば簡単に下がります。数年前にもとある漫画好きの首相の支持率が下がったことがありました。彼に政治的失態はほとんどなかったことからも、私はそこに何らかの裏の力が働いたのではないかと考えています」――先ほどのお話の中にあった"カニちゃんファッション"のほかにも、"EKB48のももちん"など、どこかで聞いたような名前が出てきますがこれは?「ももちんは架空のアイドルですよ。私の脳内アイドルだから、現実にいるアイドルとは無関係ですし、水主マヒロもリアルな方とはまったくの別人です。モデルのカニちゃんも偶然ですね。たまたま愛称が甲殻類だっただけです」「今のところどこからも苦情は来てません。残念、楽しみにしてたのに」と話すマネー・ヘッタ・チャン。本書の最終章で触れられている「日本破たん」が現実のものになってしまったとしても、あなただけは生き残る気がします。(朝井麻由美+プレスラボ)『マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~』(マネー・ヘッタ・チャン著/あさ出版)『マッチポンプ売りの少女 ~童話が教える本当に怖いお金のこと~』CM (主題歌付き)【関連リンク】【コラム】今だから言えるよこしまな目的のためにがんばったこと【コラム】自分の職業に偏見を持たれていることってある?【コラム】「君はみんなのものだから……」私が唖然としたフラれ方
2011年09月11日