2015年、中国観光客が日本で「爆買い」する姿がニュースで話題になりました。現在、世界で起きている流れはアメリカがゆっくり衰退し、中国が強大化して存在感を高めているようです。このまま中国が世界の覇権を握って、アメリカにとって代わることがあるのでしょうか。今回は、駿台予備校世界史科講師の茂木誠さん著書『ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ日本人が知らない100の疑問』(SBクリエイティブ)から、「中国の実情と日本の中国に対する向き合い方」の部分を取り上げて紹介したいと思います。■勢いのある中国の「張り子の虎」疑惑現在、勢力を拡大している中国ですが、実は「張り子の虎」ではないかという疑惑があります。たとえば、GDPや輸出額といった各国政府が発表している統計数字は適当にごまかしている数字ではないかと著者も指摘してます。通常、きちんとした民主国家であれば、そのような統計数字は二重、三重にチェックが入り、信用に値するものとなります。しかし、中国の場合は共産党の独裁政権なので、第三者機関というものがないのです。メディアもすべて国営で国の監視下にあるので、都合の悪い情報は流しません。中国は長い間、年間8%の成長率を目標にし達成(2014年度は7.3%との発表)してきましたが、これが本当ならば、貧困層にも富が広がり、暴動発生を食い止められるとのこと。しかし、実際のところは年間20万件の暴動が発生しています。実際は4%くらい、もしくは貿易額から見ればマイナス成長ではないかとみる人もいるようです。■中国の反日感情の「正体」は何なのか中国は改革開放政策により市場経済に移行したことで、経済発展を遂げました。しかし、そこで貧富の差が大きくなり、人民の不満が爆発。ところが中国の共産党政権が経済自由化の先頭に立って懐を肥やし、強権を握る共産党幹部が振興財団となったため、人民の怒りの声を聞くことができません。そこで人民の怒りの「はけ口」が外部に必要となり、日本はちょうどいい標的になってしまったのです。1990年代の江沢民政権の時代から反日教育がスタートし、これが大成功。この教育は2015年の現在、30代半ばから下の年代がされているそうです。まったく残念としかいいようがありません。■これからの日本と中国とのつきあい方著者は今後、中国とのつきあい方について「中国の挑発には一切乗らない、必要以上に関わらない」ことが大切といっています。しかも、「今の日中の関係は理想的だ」とも。なぜならば、中国との緊張関係が続いたおかげで日本人は自国のことを真剣に考え、守るためにはどうすればよいかを議論するようになったから。中国の脅威がなければ、特定秘密法や安保法制などは実現しなかったでしょう。*本書では他にも、一般人が国際ニュースを見て疑問を感じやすい100のポイントを取り上げ、世界史と絡めて解説をしてくれています。歴史の成り立ちから学び、国際ニュースの本質を理解したい人には最適の本。ぜひ本書を一読してみることをおすすめします。(文/齊藤カオリ)【参考】※茂木誠(2015)『ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ日本人が知らない100の疑問』SBクリエイティブ
2015年12月29日中国の新しい指導部を選ぶ会議が11月15日に開かれ、習近平氏が中国共産党の新しい総書記として、党の最高指導部にあたる政治局常務委員会の舵取りを担い、李克強氏が副首相としてサポートにあたる新体制が決定しました。米国に次いで世界第2位の経済規模を誇り、アジアや世界の金融市場への影響力も大きい中国の新しい指導部の政策などについて、以下に弊社の見解をまとめます。従来の指導部の主要メンバーであった、習総書記と李副首相が新指導部のメンバーとなったことは、おそらく、これまでの政策の変更よりもむしろ継続を示唆していると考えられます。習氏の前任の総書記であった胡錦濤氏(国家主席)が今回の中国共産党大会で掲げた、2020年までにGDPおよび一人当たりの国民所得を2010年比で倍にするという目標は、実質経済成長率にして年率約7%を示唆するものです。習総書記を中心とする新指導部は、2015年までの第12次5ヵ年計画に沿ってさらなる改革を進めるものとみられ、特に、民間部門の発展や手ごろな価格の住宅の供給、ヘルスケア、社会福祉(特に、賃上げ、個人消費の促進、食の安全確保、環境汚染の抑制)などに注力すると考えられます。また、銀行改革も進むとみられます。このことは、金利や為替相場の柔軟性を高め、より市場原理に基づいた運営を行なうことが既に示唆されているのと整合的な動きです。なお、最も重要なことは、持続可能で調和の取れた社会発展を目指すとする、胡錦濤氏提唱の理論「科学的発展観」を、中国共産党の指導思想へと格上げする党規約改正案が14日に閉幕した党大会で承認されたことです。このことは、中国が低付加価値の産業(なかでも環境汚染を引き起こすような産業)からハイテク産業へとより迅速に移行を進めることを意味すると考えられます。つまり、ハイテクや環境関連分野の中国および世界の企業にとって、明らかにポジティブな動きとみられます。習総書記の父である習仲勲・元副首相が、鄧小平時代の改革の最前線にいた人物だということは、今後の中国を見通す上で押さえておきたい点の一つです。つまり、習総書記には、経済政策面だけでなく、政治面でも、改革のDNAが備わっていると考えられます。ただし、習総書記は、急激な変化よりも緩やかな変化を好むとされています。また、政治局常務委員会は、従来の9名から7名に削減されました。このことは、今後、中国指導部内での合意形成の過程が短縮されることを示唆する良い兆候だと考えられます。なお、常務委員会には、江沢民前国家主席に近いとされる人物が3、4名選ばれたものの、胡錦濤氏に近い人物としては、李克強副首相が選ばれたのにとどまりました。ただし、胡氏、李氏とも、共産主義青年団(共青団)の出身であり、互いに関係が深いことから、胡氏は今後も一定の影響力を持ち続ける可能性があります。高級幹部の子弟「太子党」の代表格である習氏と、共青団出身の李氏との組み合わせは基本的に、向こう10年で中国共産党がより民主化を進めることを示唆している可能性があります。重慶市のトップを務め、新指導部入りが確実視されていた薄熙来氏の失脚もあり、現時点では、中国共産党内の主要派閥の力関係に大きな歪みはないと考えられます。王岐山副首相が党中央規律検査委員会のトップに選ばれたことは驚きです。同氏は、欧米流の金融自由化の支持者であり、経済・金融改革を牽引してきた経験から、金融・経済を担当する副首相に就くとの見方が有力でした。2、3週間前に、同氏が他の担当に就くとの噂が流れると、改革が滞り、中国の経済成長が危ぶまれるとして、株価に影響が見られました。王氏が始めた改革を次の金融・経済担当者が継続するかどうかがわからないとして、改革の先行きが不透明になり、株式市場が動揺する可能性も考えられます。弊社では、王氏に代わって経済分野を担当するのは、ビジネスや経済面での経験が豊かな、天津市党委書記の張高麗氏だとみています。同氏が、経済担当の副首相となることは、中長期的に有益だと考えられます。同氏は、深セン、山東、天津という、経済が発展した地域でリーダーシップをとってきた幅広い経験があるほか、市場経済政策を支持する人物として知られています。我々が特に注目するのは、同氏が深セン市党委書記を務めていた際に行なった政策転換です。同氏は、深センをテクノロジー拠点と位置付け、ハイテク・フェアの開催などにより、深セン経済の牽引役を、労働集約型の産業から高技術、高付加価値の産業へと移行させました。こうした経歴から、同氏には、ハイテク分野での進歩に注力しながら、中国の経済・金融政策を上手く舵取りする能力が備わっていると考えています。(2012年11月19日 日興アセットマネジメント作成)●日興アセットマネジメントが提供する、国内外での大きなイベント発生時の臨時レポート「フォローアップ・メモ」からの転載です。→「フォローアップ・メモ」【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年11月19日