女優の深田恭子がミュージカル『100万回生きたねこ』で初舞台に挑戦する。6月29日、この作品の製作発表が開催され、W主役を務める成河(そんは)と深田が作品の魅力や意気込みを語った。ミュージカル「100万回生きたねこ」のチケット情報1977年の初版からロングセラーを重ね、累計刊行部数210万部を超える、佐野洋子原作の絵本『100万回生きたねこ』。ある時は王様に、ある時は泥棒にと、100万回生まれ変わり様々な飼い主に飼われながらも自分のことしか好きにならなかったとらねこが、ある時彼に見向きもしない1匹の白いねこに出会い、初めて愛情を知る物語。過去に沢田研二×山瀬まみ(1996年)、森山未來×満島ひかり(2013年)と上演を重ねてきた名作が今回、舞台のみならず近年は映像界にも着実に活動の場を広げている実力派俳優・成河と、人気女優・深田という期待の顔合わせで新たに生まれ変わる。主に映像の世界で活躍し、女優として第一線で活躍してきた深田だが、「(舞台は)なかなか踏み込めない世界で、そう簡単にはいかないものと思っていましたし、自分が舞台に立っている姿なんて想像もつきませんでした。きちんとお稽古をして、基礎から学びなおして、現場に挑みたい」と初舞台への思いを語る。プレッシャーは「ないわけではないです」と言いつつも、「映像の世界ですと、皆様にお届けするのが出来上がってから。舞台というのはその日、その時間に、わざわざ観に来てくださって出来るもの。(プレッシャーを)その温かさに変え、自分の励みにしたい」と前向きな気持ちでいる様子。演出を務めるのはイスラエルの演出家ユニット、インバル・ピント&アブシャロム・ポラック。深田は彼らが演出をした2013年公演を映像で観たとのことだが「ふたりが作り出すこの独特な世界観、そしてこの『100万回生きたねこ』というお話に一瞬で魅了されました。この役で初舞台が踏めるなら、本当に幸せなことだなと思います」と話す。成河も「ミュージカルではありますが、歌とダンスとお芝居がすごく自然に溶け合ってひとつの作品を作っている。ここまでのバランスのものは日本では観たことがない。すごく感動した」と作品への惚れ込みようを語った。この日の会見では、成河と深田による劇中歌『私のねこ』の披露も。オルガンや空き缶、おもちゃのピアノなどを使い、どこか懐かしくも可愛らしいナンバーを楽しそうに演奏し歌っていたふたりは、「常におもちゃ箱をひっくり返したみたいな楽しさがあるんですよ。そのなかにちょっと詩的な部分や哲学的な部分がある。すごく美しい舞台なんです」(成河)、「毎日自分でもピアノを弾きながら歌ったりするくらい、とにかくこの世界観が好き」(深田)とその魅力をアピールしていた。公演は8月15日(土)から30日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウス、10月2日(金)から4日(日)まで大阪・シアターBRAVA!にて。チケットは発売中。ほか、金沢公演もあり。
2015年06月30日左が「VANIRU」のレオニール様最近、ニューハーフや男の娘、女装男子など、男性的な“性”を感じない男性が増えています。一方で、それらとはまた違う“美人男子”というジャンルがあるのをご存知でしょうか。 筆者は先日、VANIRU(ヴァニル)というロックバンドのボーカル・レオニールにハマっているという友人からその単語を聞き、存在を知りました。一体“美人男子”のどんなところに女性たちが魅了されているのか。今回は同じくVANIRUが好きだという3人のアラサー、アラフォー女性たちに、“美人男子”の魅力について語っていただきました。突き放されるからこそ追いかけたくなる美人男子――まず、皆さんのお好きなレオニール様がカテゴライズされる“美人男子”とは、一体どんな男子なのでしょうか。榎本由美(以下、榎本):肉体的ではなく、精神的な色気があって、天使でもあり悪魔でもある、二面性を持つ存在ですね。生まれ持ったオーラを纏っている感じというか。すずきゆき(仮名:以下、すずき):ただ美しいだけでなく憂いがあって、何か想像を絶する重荷を背負っている感じがします。だから「苦悩を私にだけ言ってほしい」と思わせるので、母性本能をくすぐられるんです。きむらさとみ(仮名:以下、きむら):凛とした美人で、ミステリアス。自分が美人だとわかってはいるんだけどナルシストじゃない。格好つけてる感じがしなくて自然なので、嫌味がないんですよね。――他の男性アイドルとの違いは何ですか。榎本:男性アイドルは現実的で、日常感がありすぎますよね。クラスで少し格好良かった子が頑張ればなれる感じというか。あと商売の匂いもします(笑)。きむら:もてはやされる筋肉も、頑張って筋トレしたらつきました!って感じですよね。あと、結局、恋愛沙汰も出てくるから生身の人間すぎるんです。やっぱり空想の世界にいさせてくれるかが大事。すずき:男性アイドルはモテることをわかった上で、女性を意識した媚びがあります。「俺、格好いいでしょ?」って感じで近づいてくる感じ。レオニール様はライブでも笑顔ひとつ見せないし、「好きなら勝手に付いて来れば?」っていう突き放しがあるからこっちが追いかけたくなるんです。美人男子は希少価値が高い!――宝塚と比べるとどうでしょうか。すずき:宝塚は舞台の上で“王子様を演じている”というのが強すぎるので、憧れの男性としては意識できないですよね。美人男子は演じているのではなく、生まれもっての何かミステリアスなオーラを感じます。榎本:美男な女性より、美人な男性の方がハードルが高いし、希少価値も高いと思いますね。――普通の人が頑張ってなれるものでもなく、手が届かないからこそ憧れるんですね。それでは他の芸能人やキャラクターで例えると誰でしょうか。きむら:『ベルサイユのばら』のオスカルですかね。すずき:デビュー当時のGACKTやhyde、沢田研二とか。榎本:美輪明宏さんが一番近いかと思います。あとは『悪魔の花嫁』というホラーファンタジー漫画のデイモスですね。――お話を聞いていると、90年代に流行したビジュアル系バンドが近いのかなと感じますが、VANIRUと他のビジュアル系アーティストとの違いはなんですか。きむら:絶妙な壁を作って、アーティストとファンの主従関係を作っているところですね。トークが上手でファンと同じ目線で居るバンドが多い中で、それは違うかな。榎本:見た目と音楽の完成度の高さですね。庶民的なバンドが多い中で、突出したオーラがあると思います。現実の恋愛と妄想の恋愛は両立できる中央が榎本由美さん――それでは皆さん、レオニール様を性的な対象として見ているのでしょうか。榎本:手の届かない孤高の存在で居てほしいので、そういうのはないですね。すずき:私は逆にありますよ!男性として性的な魅力を感じているからこんなにのめり込んでいるんだと思います。でもそこには現実感はなくて、妄想の中で、自分を3割増し可愛くして、良いように想像しています(笑)。――なるほど、いずれにせよ現実の恋愛とは全く別のものということですね。榎本:憧れの世界だから現実として手に入ってしまわないほうが良いんだと思います。すずき:女性は現実では子供を産むし、夫や子供など自分以外の存在を守っていくという本能がある。でも、現実の幸せと、心の栄養として非現実な妄想の憧れを持つ幸せ、どちらも持てるから楽しいんだと思います。きむら:現実と妄想のバランスを持てば両立できるし、勝手に妄想するので浮気でもないですよね。現実のパートナーも、レオニール様が目の前に現れて恋に落ちるなんて思っていないから放っておいてくれます(笑)。今の女性たちが追い求めるものとは――美人男子のような存在が女性たちに求められている理由はなんだと思いますか。すずき:私は商社で働いているんですが、上司も部下も男性なんです。そういう現実に周りにいる男性に疲れ切っていて、癒しをレオニール様に求めていますね。「心のビタミン剤」です(笑)。榎本:今は現実の男性に幻滅している女性も多いのだと思います。現実的な男性の嫌なところは、人間の生々しいところ。人として直接的に見たくないところもあります。きむら:あまりに謎めいているから、探求心をくすぐられるんだと思います。レオニール様には特に、SNSとか一生やってほしくないです!(笑)解らないものに魅力を感じるし、妄想をするのがとにかく女性にとっては楽しいんだと思います。――最近、ルナシーが復活したりと、かつてのヴィジュアル系ブームが再来しています。やはり女性が男性を“追い求める”というのは何十年も変わらないということでしょうか。きむら:そうですね。かつて10代だった女の子がいま主婦になって、時間の余裕がないけど、まだまだ旦那さん以外の美しいオスに惹かれたいという生物の本能なのかもしれないですよね。すずき:アラフォーバブル世代がまだまだ元気で、元々好きなアーティストをもう一度追いかけたいのだと思います。今は若い時より経済的に余裕を持てるようになってきて、好きだったアーティストをもう一度聴いて、あの頃とはまた違う新たな発見がしたい、ときめきたいと思っているのかもしれないです。手が届かない崇高な存在だからこそ、憧れとして追いかけて自分だけの想像の中で楽しむ。現実の恋愛とは別の幸せを見つけたい。そんなオンナ達の、いくつになっても変わらない飽くなき妄想と欲望が理解できたでしょうか。あなたも、アイドルや俳優ではなく新たに追い求める存在として“美人男子”はいかが?●VANIRU公式サイト●榎本由美公式ブログ(笹崎ひかる)
2015年04月02日---------------------------------------------------------------------------初恋、初体験、結婚、就職、出産、閉経、死別……。人生のなかで重要な「節目」ほど、意外とさらりとやってきます。そこに芽生える、悩み、葛藤、自信、その他の感情について気鋭の文筆家、岡田育さんがみずからの体験をもとに綴ります。「女の節目」は、みな同じ。「女の人生」は、人それぞれ。誕生から死に至るまでの暮らしの中での「わたくしごと」、女性にとっての「節目」を、時系列で追う連載です。---------------------------------------------------------------------------○初めての恋が、墓場まで続く「三つ子の魂百まで」という諺(ことわざ)がある。三歳児のときの性分は、百歳になるまで変わらない、といった意味だ。「What is learned in the cradle is carried to the tomb.(ゆりかごで身についたことは、墓場まで運ばれる)」という言い方もある。数えで三つは、満年齢で一、二歳。物心つく以前の「三つ子の魂」も、ゆりかごの中での出来事も、大人から授かった体系立った知識ではなく、自然とついた癖や、性分のようなもの。生まれる前から先天的に備わっているわけではないが、後天的と呼ぶほどのものでもない。たとえば誰かを特別に好もしく思ったとき、平たく言うと、恋愛感情を抱いたとき。私はいつもこの諺を思い出す。誰に教わったわけでもないのに、まだ恋も知らぬうちから、気づいたら既にそうだった、私だけの「好みのタイプ」がある。大抵は男性で、世に言う「男らしさ」に少し欠けている、あるいは、その手の固定観念から解き放たれている。しかも向こうは私が「好み」ではない。「私のことを何とも想っていない、男っぽくない男の子」というのが、三つ子の頃から、おそらく百まで希求してやまない、恋愛対象の基本形だ。理想が実像を伴ったのは、3歳11カ月の大晦日。特別に夜更かしを許されてNHK「紅白歌合戦」を観ていた私は、軍服を模した衣装でスモークとサーチライトの中を歌い踊る沢田研二に、初めての恋をした。特定の異性をかっこいいと感じたのは、それが初めてだ。歌詞の内容も聞き取れず、夢か現実かもわからなかったが、居間に鎮座するこのテレビという箱は「かっこいいものを映す装置」なのだと強烈に思い知った。以来、チャンネルを回しながらブラウン管に映る「かっこいいもの」を探した。1980年、名曲「TOKIO」発売から3週間後に東京で生を享けた私が、約4年かけてゆりかごの中で導いた結論は、「男は、化粧が濃ければ濃いほど、都会的でかっこいい」というものだった。以来、マッチョな益荒男に恋をしたためしがない。○忘れられない文化系メガネ男子4歳の春を迎えると近所の幼稚園に通いはじめ、私は驚愕の事実に直面する。年中組の教室には、ジュリーやYMOやデヴィッド・ボウイみたいな、アイシャドウが虹色にきらめく男子はいなかった。まぁ当然である。初めての集団生活で「好きな男の子はいるの?」と訊かれるたび、仏頂面で「ここにはいない」と答えていた。自慢じゃないが、当時の私は男によくモテたのだ。人生で最もリアルが充実していた時代だ。しかし、言い寄る男児たちは誰も彼もがイモくさく、ジュリーには程遠い。もっと電飾やパラシュートや袖のふくらんだシルクブラウスが似合いそうな、化粧を施せば妖しく大変身しそうな、美しい容貌の男はいないのか。よくよく教室を探してみると、これが一人だけ見つかった。Kくんは小柄で線が細く、肌の色が白く、髪質は柔らかで、いつも室内で絵本を読んでいた。運動会やお遊戯では目立たないが、その影の薄さがまた存在の透明感を高めている。たしか眼鏡も掛けていたと思う。あるいは記憶を都合よく捏造しているのだろうか。いずれにせよ、現在に至るまで私の「メガネ男子萌え」の原点にあるのは、この彼への憧れなのである。忘れられない出来事がある。同じクラスには、ジャイアンとブタゴリラを足して二で割ったような、典型的なガキ大将の男児がいた。彼らは室内でも戦隊ごっこやプロレスごっこをする。力任せに暴れ回るので、女児たちのおままごとテリトリーを平気で侵犯してくる。ガキ大将が級友を投げ飛ばしてくるたびに、女児たちは仕方なく場を譲り、逃げて行った先でまた新しくおとなしくおままごとを始める。あるとき、ままごとの民が祖国を追われてディアスポラ先に選んだのは、Kくんたちが読書やお絵描きなどの文化活動を営む一角だった。プロレス男子から逃げてきた我らままごと女子のリーダーが、「本日これよりこの土地は我々が領有するので、即刻明け渡すように」と一方的に通達した。教室内の力関係は「プロレス男子>ままごと女子>文化系男女」であり、強き者が弱き者からとことん奪い尽くすのが世の常だ。強奪と迫害の連鎖。Kくんたちが無言で絵本を片付けようとする姿を見て、私はままごと女子の一員として、どうにも我慢ならなかった。細かな経緯は忘れたが、気がついたらガキ大将の一派に殴り込みをかけて宣戦布告していたのだ。「貴様たちが所構わずドンパチ始めるせいで、我々のままごとスペースが蹂躙され、結果、Kくんたち罪もない人々までもが苦しめられている。これは教室内に平和を取り戻すための戦争である」というのがその理屈。愛する人が心穏やかに暮らす日常、その未来は私が守る。たとえこの手が血に染まっても構わない。それに、災厄を退ける勇猛果敢な姿を見れば、もしかしたらKくんが「かっこいい」私に惚れて、晴れて相思相愛になれるかもしれない。……当時は本気でそう思っていたのだ。我ながら、ルーシーとペパーミント・パティを足して二で割ったような、厄介な恋する女児だったと思う。もちろん園児のやることだから、最終的には好戦的な男女が入り乱れて、プロレスどころではない掴み合いの大乱闘。先生が仲裁に入る頃には、教室の隅で震えるKくんが私を見る目は、野獣に怯える小動物のそれになっていた。○私は最低、あなたは最高「三つ子の魂百まで」という諺がある。誰かに恋愛感情を抱いたとき、それがうまくいかなくなったとき、私はいつもこの諺を思い出す。狼狽と恐怖に顔を引きつらせた男。ためいき一つ残して去っていった男。「君には僕よりもっとふさわしい相手がいるはずだよ」と慰めてくれた男。Kくんに似たいろんな男を好きになり、彼らのように生きたい、彼らに似合う私でありたい、と思って行動してきたのに、どれもこれも実を結ばなかった。私がジュリーを好きになったように、彼らにも、私のことを好きになってもらいたかった。でも、その方法がわからなかった。好きでもないガキ大将の襟首を掴むことは簡単なのに、静かに絵本を読む彼らの眼鏡には、指一本、触れられなかった。私の汚れた手で乱暴に触ると、美しい彼らの存在が、はらはらと壊れてしまうかもしれないと思ったから。外に出て真っ黒に灼けるまで遊び、裏山の池で泥まみれになってザリガニを釣り、昆虫を捕まえようとして叩き潰し、時にガキ大将と掴み合いの喧嘩をしながら、私は「綺麗な男の子」が好きだった。Kくんだけは、真っ白のまま、穢したくないと思っていた。彼と、彼の住む世界にだけは、きちんとこの手を石鹸で洗って殺菌消毒してからでないと、触れてはならないと思っていた。これが私の「初恋」だ。Kくんの両親が営む歯科医院は今も我が家の近所にあり、帰省すると前を通ることもあるのだが、私は卒園後、彼と会ったことは一度もない。ひょっとしたら本当は、メガネ男子でも美少年でもなかったのかもしれない。それでもいい。私の記憶の中でだけ、彼はずっと「綺麗な男の子」であり続ける。彼があの綺麗な彼のまま、この地球のどこかに存在し続けていてくれたら、私はそれだけで生きていける。卒園の頃になって、母親が好きでよく聴いていた荒井由実「卒業写真」の歌詞を、完璧に理解できた瞬間がある。「変わってゆく私を、あなたは時々、遠くで叱って」とお願いしたくなる男の子。その最初は、Kくんだった。二度と会えなくても、思い出すだけで、汚れた手を石鹸で洗いたくなる男の子。そんな気持ちをこんなふうに歌えるユーミンは、天才だなと思った。思い出の中で白く綺麗に光り輝き、すでに顔もぼやけてしまったKくんの存在は、特定の宗教をもたない私にとって、もはや恋愛というより信仰の対象に近い。○「よそはよそ、うちはうち」幼稚園や保育園というのは、同世代の子供と初めての共同生活を送る場所だ。同じ家庭に育つきょうだいとはまた別の意味で、自分と他者との「違い」に気づかされる場所でもある。生まれが違う、育ちが違う、家庭環境次第で性格や倫理観も違う。もっと言えば、親の経済力によって金銭感覚が、学歴や職歴によって向学心が、その他、人生におけるさまざまな価値観が、すでにして決定的に違うのだ。運転手つきの黒塗りのクルマで送り迎えされているご令嬢もいたし、幹線道路を一人で渡って雨漏りのするボロ屋へ帰る私のような園児もいた。親が「お受験」させるために遠方から越境してくる子もいたが、女の子はいい学校へ行くと嫁の貰い手がなくなる、とのたまう父兄もいた。我が子には有害な食材を与えないと徹底する親もいて、私が園庭の蛇口から水を飲んだら白い眼で見られたこともある。小さな「違い」が積み重なると反発が起きる。そもそもなぜ、私たちはここにいるのだろうか。ただ年齢が同じで家が近所だったというだけで、一緒に狭い空間に閉じ込められ、つねに比較されながら『幼馴染』と呼ばれるなんて、たまったもんじゃないぜ……その後の学校生活でもさんざん味わう羽目になる、あの感情が最初に芽生えたのも、幼稚園でのことだった。しかし一方で、級友たちとの間に「違い」があって初めて、私は自分自身の「欲望」を具体的に知るようにもなった。あの子のお家はリビングの照明がお城みたいなシャンデリア、私もお金持ちの家に生まれたかった。あの子のママが作るお弁当はいつもとっても美味しそう、私も料理上手のママが欲しかった。Kくんは色が白くて目鼻立ちが整っていて理知的で物静かで上品で、見惚れるほどかっこいい。私もKくんみたいになりたい、Kくんに似合う女の子でいたい。でも、できない。きょうだいと一つのオモチャを奪い合うのとは意味合いが異なり、もっと広い意味で「自分にはないもの」を求めるようになった。「差」のあるところに「欲望」が生まれる。その欲望は、満たされないほど燃え上がる。それが愛でも、憎悪でも、「自分にはないもの」への荒ぶる気持ちを鎮めて飼い馴らすのは本当に難しい。そういえばスイス人の血を引く級友がいて、彼女はそれだけのことでいじめられていた。みんな童話の絵本で見た金髪碧眼のプリンセスには憧れてなりたがっていたのに、すぐ横にいる色素の薄い彼女のことは「違う」子として泣かせてばかりいた。私だって、我がものにならないKくんを、いつ傷つける側に回っていたともしれない。「三つ子の魂百まで」という諺を思い出す。他の誰かを羨むたびに、両親からさんざん聞かされた「よそはよそ、うちはうち」という言葉とともに。世の中から「違い」をなくそう、と言う政治家や教育者もいるだろう。でも私たちは、まず「違い」を知らなければ、「今とは違う自分になりたい」と願うようにもならない。格差と不満に気づいて己の「欲望」を正しく知ることは、それはそれで大事なことと思うのだ。人は、誰に教えられるわけでもなく「自分にはないもの」に惹かれる。これは、ゆりかごの中で身につけた習性なのかもしれない。どんなにきれいに石鹸で手を洗っても、実際にはほとんどが手に入らない。フラレる前に終わった失恋。よそはよそ、彼は彼、私にないものをいくら欲しても、そのまま望む通りには得られないのだと思い知った、初めての「節目」は、4歳の恋だった。ちなみに私、今までの人生で「一目惚れした相手がゲイ男性だった」という確率が非常に高い。三つ子の頃から「私のことを何とも想っていない、化粧映えする綺麗な男子」ばかりを選んでいるのだから、当然といえば当然なのだが……もちろんいずれも、フラレる前に消える恋だ。きっと百まで、墓場まで、この調子なのだと思う。<今回の住まい<私が生まれ育った街は幹線道路を挟んで貧富の差が激しく、「富」の地区には有名芸能人の豪邸なども立ち並んでいた。幼稚園のクラスメイトのお屋敷に招かれると、天井が高く煌びやかな装飾で、グランドピアノが一台置いてあるだけの広大な空間があった。今は何にも使っていないの、と言われたそこが「ボールルーム」の名残だと気づくのは、大人になってからである。私は「貧」地区の出身です。岡田育1980年東京生まれ。編集者、文筆家。老舗出版社で婦人雑誌や文芸書の編集に携わり、退社後はWEB媒体を中心にエッセイの執筆を始める。著作に『ハジの多い人生』『嫁へ行くつもりじゃなかった』、連載に「天国飯と地獄耳」ほか。紙媒体とインターネットをこよなく愛する文化系WEB女子。CX系の情報番組『とくダネ!』コメンテーターも務める。イラスト: 安海
2014年10月03日11月19日(月)に東京・中野サンプラザホールにて「瞳みのる・森本タローライブ」が開催される。【公演情報はこちら】瞳みのると森本タローはともにザ・タイガースのメンバーとして活躍。ザ・タイガースは1971年1月24日、日本武道館での「ザ・タイガースビューティフルコンサート」を最後に、その活動を休止し、グループを解散。以来、瞳みのるは芸能界から去り、メンバーとの絶縁は2008年の年末の再開まで、38年にも及んだ。その後「沢田研二ライブツアー2011」のゲスト出演を経て、再びドラムスティックを握ったPEEこと瞳みのると、現在はバンド「森本タローとスーパースター」で音楽ばかりでなく、ファンを守り続けているタローの2人が、今なお変わらぬファンの声援に応えるライブが今回の公演。少年時代よりその行動を共にした二人の間で、タイトルは竹馬の友を意味する「Childhood Friend」に決まった。40年のブランクを感じさせないステージ、気になる方はご確認を。チケットは発売中。
2012年11月06日Facebookをはじめ、ビジネスでSNSを利用する人も多い昨今。しかし、現実世界にだって、ビジネスに役立つネットワークづくりの場があるのです!それが新宿ゴールデン街。日々あらゆる人種が集い、数々の伝説・逸話を持つこの街には、ネットじゃ拾えないレアな情報・人脈がてんこ盛りです。時代が変わり、昔ながらの怪しくディープな空気は残しつつも安全になったこの街で、今こそ、"リアルSNS"デビューを!戦後の闇市に端を発する、アヤシさ目一杯の新宿ゴールデン街。かつて赤塚不二男が、タモリが、沢田研二が、そして今でもあまたの文壇、マスコミ関係者、芸能人が集います。そんな伝説の飲み屋街は新宿駅からわずか8分。歌舞伎町1丁目にあります。映画のセットみたいな古い佇(たたず)まいはそのままに、今では健全なお店が多数。そんな中から、今回は仕事で使えそうな3店をご紹介します。■昔懐かしいアナタの青春が聴ける!『音盤酒場 青春』小さな扉を入ると、まるで屋根裏部屋に続くような狭く急な階段。そしてカウンターには、積み重なったレコードの山!そう、『音盤酒場 青春』さんはアナログ盤が聴けるお店です。歌謡曲を中心に、なんと4,000枚もあるとか。多感な時代に聞いたあの曲を聴けば、まさにその人の「青春」がよみがえるというわけです。「接待利用も多いですね。銀座とかには行き飽きたけど、ゴールデン街は初めてという取引先の方と来られたり」(マスター)初ゴールデン街で昔懐かしの曲。なるほど、このシチュエーションなら、接待慣れした相手も大満足でしょう。もちろんリクエストもOK。レコード世代以外に、古き良き日本の名曲にハマった若いお客さんも多いそうです。「単純にいい曲を来世へ残したいという思いだけですが、実際、いい歌は時代によらず、若い人たちにも受け入れられていますね」■貴重なネタと大人の振る舞いを授かる!『ガルシア』演劇・映画・音楽関係者に雑誌編集者、さらに看護師、東大教授、キックボクシングジム講師、シロアリ駆除会社社長などなど、経験上、驚くほどいろんな業界の人に出会えるお店、それが『ガルシア』さんです。「意識していませんけど、確かにいろんな方が来てくれますね」と店主のかなえさん。彼女は舞台女優としても活動しています。この店では、下手すれば一生出会うことはない方たちに出会えるのですから、貴重な体験も多々生まれます。ある落語家さんと出会って、初めて寄席を見に行ったり、写真週刊誌の編集者に福島原発事故の壮絶にリアルなお話を聞いたり……。同じ場にいた常連の会社員の方は、「営業先や友人に話したら、みんな興味津々でした!」と後日談を語ってくれました。さまざまな業種の方たちとのトークできるので、話のネタを仕入れるだけでなく、リアルな人脈が広がっていきます。さらに、今回取材した中で一番狭い店内では、社会人力も養われます。「お酒の飲み方って、それ自体がコミュニケーションだと思うんです。特にウチみたいに狭いお店だとお互いに気を遣い、込んできたら『どうぞ』と席をつめたり、みんなの会話の流れを読んだり。そういうカッコいい大人の振る舞いも身に付く場所だと思いますね」(かなえさん)■ステキな出遭いもアリそな予感!『Heavy Gauge』BAR『Heavy Gauge』は、ロックな雰囲気が最高にCOOL!なお店です。マスターの成瀬さんは、少年っぽい空気と大人の落ち着きを併せ持つ魅力的なキャラクターで、ライブハウスで活動するシンガー・ソングライターとしての顔も。そして同店のミリョクのひとつは、男女の出会いの場だと思います。「ウチの店というか、ゴールデン街自体がそうじゃないですかね。やっぱり、飲みに来て、お店の人やお客さんと、初対面でも自然に話せる空気がありますから。この店で初めて出会って結婚した方や、僕のライブを見に来て出会った女性と付き合ってる人も、確かにいますね」(成瀬さん)そう話す成瀬さんも奥さんと知り合ったのはこの街だったとか。お店での取材中、一人で飲みに来ていた女性に話をうかがいました。「ゴールデン街って、何か起こりそうな雰囲気がするんですよ。それに女性一人でも安心して入れるココみたいなお店があるから、つい来ちゃいますね」ディープでリアルなゴールデン街ならではのネットワークづくりとスキルアップ。うまく活用すれば、ビジネスだけでなく、一人の大人としても差がつくこと間違いなしです!(OFFICE-SANGA 岩井浩)
2012年10月17日森田芳光監督の遺作となった映画『僕達急行 A列車で行こう』のブルーレイとDVDの発売を記念して、9月7日(金)に新宿バルト9で、森田監督作品をオールナイトで上映する“森田芳光 オールナイトで行こう!”が開催される。その他の写真今回のイベントは、大画面で観たい森田監督作を3本上映し、監督ゆかりの人々のトークショーも行う日本映画ファン必見の内容。上映作品は、1981年の商業映画デビュー作『の・ようなもの』をはじめ、1984年に沢田研二を主演に迎えて製作され、現在も熱狂的なファンを多くもつ傑作『ときめきに死す』、そして森田監督が完成させながらも公開初日を迎えることが叶わなかった遺作『僕達急行…』の3作品。いずれもソフト化されているタイトルだが、当日はすべてを35ミリプリントで上映。森田監督の意図した通りの映像を、新宿バルト9の大画面で堪能できる貴重な機会となる。当日は、『の・ようなもの』で主演を務め、森田映画の“常連”としても知られる伊藤克信ら、監督とゆかりのあるゲストによるトークショーが行なわれるほか、入場者特典として『僕達急行…』のプレスシート(非売品)がプレゼントされる予定。『僕達急行 A列車で行こう』Blu-ray&DVD発売記念 森田芳光 オールナイトで行こう!上映作品:『僕達急行A列車で行こう』『の・ようなもの』『ときめきに死す』日時:9月7日(金) 22時40分開場/23時開映/翌5時45分終了予定会場:新宿バルト9料金:3000円※上映前にトークショーあり/登壇者:伊藤克信ほか(予定)プレリザーブあり/プレリザーブ期間:発売開始~8月17日(金)まで受付8月18日(土)より一般発売
2012年08月08日1975年5月5日『白い部屋』から1990年2月21日『DOWN』まで、全102回に及ぶ『夜のヒットスタジオ』出演時の映像を収録したDVD『沢田研二 in 夜のヒットスタジオ』が、12月21日(水)にリリースされる。沢田研二の公演情報『危険なふたり』『LOVE』『カサブランカダンディ』『TOKIO』『ス・ト・リ・ッ・パー』『時の過ぎゆくままに』『勝手にしやがれ』『憎みきれないろくでなし』『サムライ』などのヒット曲をはじめ、『夜のヒットスタジオ』恒例のオープニングメドレー歌唱シーンも含んだ豪華6枚組約589分。『沢田研二 in 夜のヒットスタジオ』12月21日(水)発売26250円DISC別収録曲【DISC-11975~1977】白い部屋巴里にひとり時の過ぎゆくままに立ちどまるなふりむくなウィンクでさよならコバルトの季節の中でさよならをいう気もない勝手にしやがれ【DISC-21977~1978】憎みきれないろくでなしMY WAY危険なふたり勝手にしやがれサムライダーリング【DISC-31978~1979】LOVE(抱きしめたい)カサブランカダンディOH !ギャルロンリーウルフ【DISC-41979~1981】カサブランカダンディOH !ギャルロンリーウルフTOKIO恋のバッドチューニング酒場でDABADAおまえがパラダイスバイバイジェラシース・ト・リ・ッ・パー【DISC-51982~1985】麗人おまえにチェック・イン6番目のユウウツ背中まで45分晴れのちBLUE BOYきめてやる今夜どん底渡り鳥はぐれ鳥はるかに遠い夢灰とダイヤモンド絹の部屋指【DISC-61986~1990】アリフ・ライラ・ウィ・ライラ時の過ぎゆくままに夢を語れる相手がいればヴォラーレホワイトルーム -White Room-スタンド・バイ・ミー -STAND BY ME-闇舞踏無宿女神やさしく愛してきわどい季節チャンスTRUE BLUESTRANGER-ONLY TONIGHT-ポラロイドGIRLDOWN
2011年12月07日台湾出身の人気ユニット・F4のヴィック・チョウが主演する映画『一万年愛してる(原題:愛〔イ尓〕一萬年)』が、2012年1月より日本で劇場公開されることが決定した。さらに、同4日(水)に東京・シネマート新宿にて特別上映会も行われ、ヴィック・チョウと加藤侑紀が舞台挨拶に登壇する。ヴィック・チョウの公演チケット情報同作は、ロックバンドを組んでいる台湾人の若者・奇峰(チーファン/ヴィック・チョウ)と、恋人のプロポーズを断って、日本を飛び出し台湾にやってきた橘子(みかん/加藤侑紀)が出会い、3か月限定で付き合うことになった男女のラブ・コメディ。台湾在住の日本人監督・北村豊晴の長編デビュー作で、日本の滋賀県でも撮影された。タイトルの『愛〔イ尓〕一萬年』は、奇峰が歌う曲のタイトルで、沢田研二の楽曲『時の過ぎゆくままに』をカバーした。また、同作の公開を記念し、3日(火)に東京・渋谷公会堂にて、ヴィック・チョウにとって1年ぶりとなるファンミーティング「WILL YOU STILL LOVE ME IN 2012?」を開催する。ヴィック・チョウと加藤侑紀が出演し、映画にちなんだ恋愛に関するプログラムが行われる。『一万年愛してる』は、2012年1月5日(木)より東京・オーディトリウム渋谷にて公開。なお、特別上映会のチケットとファンミーティングのチケットは、インターネット先行抽選「プレリザーブ」をチケットぴあにて受付を予定。
2011年11月16日アカデミー賞2部門を受賞した『リトル・ミス・サンシャイン』のプロデュースチームが再び集結し、全米で大ヒットを記録した家族ドラマ『サンシャイン・クリーニング』の公開を目前にして、スペシャル試写会イベントが7月2日(木)に行われた。サプライズゲストに映画の応援隊長として吉本興業の人気芸人、平成ノブシコブシ(徳井健太・吉村崇)とはんにゃ(川島章良・金田哲)が映画のストーリーにある清掃員のコスチュームを身にまとい、試写会場を掃除しに登壇。映画に絡めた面白トークを繰り広げ、立ち見が出るほどの観客でいっぱいの劇場は歓声と笑い声に沸いた。映画を観て「心の葛藤に共感した」というはんにゃの金田さん。主演の2人が「ダメ姉妹」ということで、「ダメな女性」についてどう思うか?と質問されると「ぶっちゃけちゃっていいですか?ダメな女性、いいと思いますよー。ダメでもがんばっていたらいいですねー」と金田節で主張。相方の川島さんも「僕より天然な人が好きなんですよ」と、“ダメ女性好き”に共感すると、平成ノブシコブシの徳井さんは、「ダメなところを補ってあげたいなって思わされますよね。守ってあげたいなって。意外にしっかりした人のほうが少ないと思いますよ。完璧な人なんてね、いないでしょ」と真面目にフォローした。次に、劇中ちょっと変わったキャラクターの家族が登場することに因んで、「みなさんの家族の中で変わった方はいますか?」と話が展開すると、「僕のお母さんは僕より天然ですからね。実家に帰ったりすると、『牛乳とミルクどっちにする?』って聞かれるんですけど、一緒だろー!みたいなね。でも僕には分かるんですよ。牛乳が冷たくて、ミルクが温かいやつって(笑)」(川島さん)、「僕のお父さんは僕の給食費を使って、パチンコ行ってましたからね。給食費を使って、景品で皮ジャン獲って帰ってくるんですよ」(徳井さん)とそれぞれ変わった家族ぶりを告白。対して金田さんは「僕のは本当に真面目な家族なんですよ!」とアピールし、ほかの3人からも「本当に金田のところは良い家族」とのコメントを受けると、「すごいんだぜ!」と再び強調して観客の笑いを誘った。最後に、映画の中には事件現場の清掃員という一風変わった職業が出てくることに対して、“変わったアルバイト経験”について聞かれると、「いろんなキオスクに朝方に新聞を届ける仕事していました。本当に肉体労働で、それでだいぶマッチョになりましたもん」と会場を笑わせた金田さんをはじめ、「僕はね、『しゃけ弁当がいいですか?焼き肉弁当がいいですか?』って聞くだけで1万5,000円貰える、本当ただそれだけのバイトしてました」(川島さん)、「僕は某有名遊園地の裏側で電気が通ってるかチェックしてました。イエス・ノー・イエスー・ノーOK!ってね」(徳井さん)、「僕はね、コンビニでバイトしていたんですけど、歌手の沢田研二さんがそのコンビニに来て、棚に並んでいるサラダを全部買っていったんですよ。だいぶサラダ好きですよ、あの人。それで僕、その後『あの人はサラダ研二だ』って叫んだら、その次の週からシフトが減りましたよ」(吉村さん)と各々の経験を披露した。『サンシャイン・クリーニング』は7月11日(土)より渋谷シネクイント、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。■関連作品:サンシャイン・クリーニング 2009年7月11日より渋谷シネクイント、TOHOシネマズシャンテほか全国にて公開©2008 Big Beach LLC.
2009年07月03日