日本フィルハーモニー交響楽団(日本フィル)が9月4日(金)・5日(土)に開催する第723回定期演奏会が楽しみだ。毎年ユニークな選曲で彩られる正指揮者山田和樹と日本フィルの東京定期。今回は新型コロナウイルス感染防止対策にともない、プログラムの規模縮小が迫られる中、今だからこそ出来ることを考え抜いたというプログラムが披露される。前半は、アメリカ生まれのジャズの巨人ジョージ・ガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム変奏曲」と、映画『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』で知られるフレンチ・ジャズの巨匠ミシェル・ルグランの「チェロ協奏曲(日本初演)」が当初の予定通り披露される。ここでは、ピアノの沼沢淑音とチェロの横坂源という若きソリストの瑞々しい感性にも期待したい。一方後半は、新人作曲家五十嵐琴未への新作委嘱(日本初演)とラヴェルの愛らしく繊細な《マ・メール・ロワ》が披露される。山田和樹が強く推す五十嵐の新作は、このような時期に相応しい抒情的な作品に仕上がる見込みだとのこと。2つの日本初演が行われる同公演は、Withコロナへの対応が求められる今だからこその好企画と言えそうだ。詳細: ●日本フィルハーモニー交響楽団第723回東京定期演奏会2020年9月4日(金)19:00開演2020年9月5日(土)14:00開演会場:サントリーホール指揮:山田和樹[正指揮者]チェロ:横坂源ピアノ:沼沢淑音(プログラム)ガーシュウィン:アイ・ガット・リズム変奏曲ミシェル・ルグラン:チェロ協奏曲(日本初演)五十嵐琴未:新作ラヴェル:バレエ音楽《マ・メール・ロワ》
2020年08月14日滝千春が、大好きなプロコフィエフの作品で、デビュー10周年記念リサイタルを行う。滝千春(vl) チケット情報「語り掛けてくる旋律、独創的で誰も思いつかない音楽の展開がとても好き。彼が作るリズムも、私に合っているみたいです」作曲家に向き合うとき、多くの場合は意識して心がけることがあるという滝だが、プロコフィエフに関してはそんな努力を必要とせず、「唯一意識することがあるとすれば、どう弾けば自分が楽しいか、聴く人に楽しく聴こえるか」だと話す。「高校2年生で初めてソナタ第2番に取り組んだときから、自然で何の無理も感じませんでした。近代ロシアの作曲家に親しみを感じることが多いようです。スターリン体制下で思い通りの活動ができない葛藤のなか生まれた、美しいだけでない音楽に共感するのかもしれません」今回は原曲がヴァイオリンの作品と、バレエ音楽の編曲ものなどを取り上げる。「まず、ヴァイオリニストだからこそ表現できるプロコフィエフの魅力を伝える意味で、ふたつのヴァイオリンソナタは欠かせません。加えて、彼が大切にしていた物語というものが存分に表現できる作品を取り上げます。彼は自ら短編小説も書いていて、例えば『ピーターと狼』はそれを音楽に置き換えて表現したものだと思います。ユーモアもあり、小さな作品の中に彼の想いが詰まっていると感じるのです。ピーターのテーマは有名ですし、聴いていて心がウキウキする、楽しい場面をリサイタルの中に盛り込みたいと思いました」物語を創作するような感性の持ち主だったプロコフィエフ。それだけに、「シンデレラ」や「ロミオとジュリエット」というバレエ音楽においても「登場人物のキャラクターを際立たせる旋律を創ることが上手。それにより物語に立体感が生まれる」と滝は話す。共演は、高校時代の同級生でモスクワ音楽院で学んだピアニストの沼沢淑音。「3年間ともに学んだ仲間ですが、卒業後、実は一度も会っていないんです。その後のご活躍は見聞きしているので、共演が楽しみ。お互い遠慮も妥協もない音楽づくりができるのではないかと期待しています」デビューからの10年を振り返ると、自身の中に多くの変化があった。「自分がどこまでこの楽器を弾きこなせるようになるのか、先生を変える経験も経て、上手になりたいという想いで走り続けた10年でした。そんな中、ヴァイオリンを弾くことでその先に何があるのかを考えるようになりました。東日本大震災が起きたこと、ベルリンで難民支援活動に参加した体験などを経て、考えが変化していきました。今は個性あるヴァイオリニストとして存在を確かなものにしたいと同時に、社会のために何かができる人間でありたいと思っています」公演は東京・紀尾井ホールにて3月8日(木)19:00開演。チケットは発売中。取材・文:高坂はる香
2018年01月31日