宙組トップスター・朝夏(あさか)まなとが、大劇場公演『神々の土地』『クラシカル ビジュー』で宝塚歌劇団を退団する。稽古に励む今、「最後の作品を最高の舞台にしたい、と没頭しています。芝居とレヴュー、それぞれの世界が濃くて切り替えが大変です」と笑顔で語る。宝塚歌劇宙組 チケット情報ミュージカル・プレイ『神々の土地』は、朝夏の主演作『翼ある人びと ―ブラームスとクララ・シューマン―』を手掛けた演出家・上田久美子の書き下ろし。革命の気運が高まるなか、ロマノフ家の一員として王朝を救う道を模索するドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフを演じる。「皇族側と民衆側の両方を客観的に見ながら最良の道を考える人物です。行動力があり、機が熟すまで待つ大人の男性。上田先生には『明るくて聡明な中に少し翳りのあるところが持ち味に合うのでは』と仰っていただきました」。彼の国を想う部分が、組を想うトップという立場と自然に重なると言う。またドミトリーに大きく絡む女性がふたりいることも今作の興味深いところ。伶美(れいみ)うらら演じる大公妃イリナと、星風(ほしかぜ)まどか演じる皇女オリガだ。「愛なのか恋なのか家族愛なのか…はっきり言葉にできない深い想いがイリナに対してあり、オリガにも情愛を抱き、それぞれに軽いうわついたものでない愛情があるところが描かれています」と熱い眼差しで語る。レヴューロマン『クラシカル ビジュー』は、宙組らしく宇宙のプロローグから始まる。「夢の扉が開くようなワクワクする音楽とダンスです」。ダンスの名手でもある朝夏に、黒燕尾でのソロのダンスも用意された。「自分の培ってきたものを下級生に継承する意味でも大切な場面ですし、今できるこれ以上ない表現を追究したいです」。2015年のトップ就任以降、『TOP HAT』『王家に捧ぐ歌』などに主演し様々な魅力を見せてきた。「自分自身ここまで来れると思っていなかった。支えてくれた周りの方々のおかげです。毎公演大きな壁を乗り越える感じでしたが、とても充実していました」。次期宙組トップスターの真風涼帆(まかぜ・すずほ)にも、「彼女がいてくれて作品の幅なども広がり、すごく感謝しています」と言葉を紡ぐ。「今の宙組は一人一人の意識が高く、いい意味でリラックスしていると思う」。そんな宙組での毎日が満たされているからこそ、退団後のことは全く考えが及ばないと明るく言い切る。「今はただ、宝塚で得たものを最後の舞台で表現し尽くしたいという想いです」。公演は兵庫・宝塚大劇場にて8月18日(金)から9月25日(月)まで。チケット発売中。東京宝塚劇場公演は10月13日(金)から11月19日(日)まで。9月10日(日)より一般発売が開始される。取材・文:小野寺亜紀
2017年08月08日こんにちは、島本薫です。フィギュアスケート選手から、プロスケーターとしての第一歩を踏み出した浅田真央さんのアイスショー、「THE ICE(ザ・アイス)」が今年も開幕しました。本日は、その大阪公演の模様をお届けします。■「THE ICE 2017」:浅田真央さんのスケート人生を振り返るプログラム構成に2007年の初開催から今年で11年目となる「THE ICE(ザ・アイス)」は、浅田真央・浅田舞の姉妹を中心に、数々のプロスケーターと現役選手が集う個性豊かなアイスショーです。スケーターは普段のプログラムやエキシビションナンバーを披露するにとどまらず、誰かと組んでコラボレーションしたり、出演者のダンスバトルがあったり、全員でミュージカルのような動きをしたりといろいろな表情を見せてくれます。こうした魅力もこのショーならでは。とくに今年の「THE ICE 2017」は、真央さん自身「引退後初めてのショーなので、改めて感謝の思いを皆さんにお伝えできれば」と話すように、これまでのスケート人生を振り返り、支えてくれた人たちへの感謝のメッセージがあふれでた構成になっていました。オープニングはショパンの「バラード第1番」(バンクーバーオリンピックの翌年のエキシビションで使用)を使い、バーを持ってのバレエレッスンを模した「静」から、出演者全員が赤と黒の衣装をまとって舞い踊る「動」の「リチュアルダンス」(昨シーズンのショートプログラムで使用)へと切り替わり、一気に会場を沸かせます。このときの音源となった演奏をしたピアニストの鈴木羊子さんも、ショーのためにスペインから帰国し、生演奏を披露してくれる豪華なおまけもあり、節目となる今年のショーを盛り上げてくれました。「THE ICE 2017」前半のハイライトは、11組の出演者でリレーする「浅田真央プログラム・スペシャルメドレー」。なんとも贅沢なことに、真央さんの使用した楽曲をつなぎつつ、それぞれのスケーターが披露したかつてのプログラムを堪能できる構成になっているのです。■浅田真央さんがこれまでに使用した曲目でつなぐ「真央メドレー」真央さんがまだジュニア時代に使用していた曲に始まり、最後のプログラムにいたるまでの9曲をつなぐこのメドレー。自然と真央さんが滑ったときの演技が思い起こされるのですが、同時に演技者一人ひとりの世界観が醸し出され、二重に見ごたえのあるものになっています。それもそのはず、ほとんどのプログラムはその人が「かつて滑っていた」ものなのですから……!「トゥーランドット」や「ロミオとジュリエット」、「白鳥」などはさまざまなスケーターが使用していることで有名ですが、どんな曲であれ、誰かが素晴らしい演技をすれば、わたしもこの曲で滑りたいと思う人が現れ、次の人に受け継がれていくのでしょう。メドレーの幕開けは、真央さんが世界ジュニアを制したときのショートプログラム「虹の彼方に」。竹馬のようなスケート靴を履いた中国の黒竜江省雑技団のアクロバティックな演技とともに、姉の舞さんが軽やかに滑ります。「シェヘラザード」で登場したのは、ソチオリンピック金メダリストのアデリナ・ソトニコワさん。この曲もさまざまなスケーターたちが滑ってきたものです。ふんわりしたメロディが流れると、タキシードを着た織田信成さんがとびきりの笑顔で「スマイル」を披露。織田さんも真央さんと同じく、エキシビションでこの曲を使っていましたね。「ラヴェンダー」こと「ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア」の切ないメロディに合わせて宇野昌磨さんが昨年のショートプログラムを滑ると、そのまま鈴木明子さんがご自身のエキシビションを披露。陽気なドラムのリズムが印象的な「Sing Sing Sing」に乗って滑るのは、カナダのアイスダンスカップル、ケイトリン・ウィーバー&アンドリュー・ポジェ組。そして、ラフマニノフの「鐘」。滑るのは、羽生結弦選手の振り付けを手掛けていることでも有名な、カナダのジェフリー・バトルさん(初めてこの曲をスケートに使ったのは彼なんです)。中盤で小塚崇彦さんが現れたかと思うと、バンクーバーオリンピックのときの真央さんのステップを完璧に再現。いわゆる「完コピ」に、会場がどよめきます。甘やかな「愛の夢」で雰囲気を一転させるのは、中国のペア、チン・パン&ジャン・トン組。重厚なピアノの和音が響き、髙橋大輔さんが登場。ご自身もトリノオリンピックで使用したラフマニノフの「ピアノ協奏曲第二番」を、軽やかなジャンプと圧倒的なステップで魅せてくれます。そこへ流れる妖しげなメロディは、真央さんの現役最後のプログラムとなった「リチュアルダンス」。このときの赤い衣装に黒いスカートで現れた真央さんは、しばし髙橋さんとふたりで魔術的な世界を作り出したかと思いきや、くるりと身をひるがえして相手の手に黒いスカートだけを残し、赤いロングスカート姿に変身。最後を飾る曲を妖艶に舞い踊ります。最後まで滑り切れなかったプログラムを今ここで演じられることは、演技者にとっても観客にとっても得がたい貴重な瞬間でした。メドレーが終わったあとは、全員が集まって笑顔のハイタッチ!観客も割れんばかりの拍手を送っていました。■「ここからが本当のスタート(by 浅田真央)」「(今は)苦しいことがひとつもない(by 村上佳菜子)」ショーの一部と二部の間には、日替わりゲストを交え、舞さんのMCでトークショーが行われます。わたしが見た7月31日のゲストは、真央さんと同じく現役引退を発表した村上佳菜子さん。晴れやかな笑顔で活動の場を広げていることを報告し、「今は毎日が新鮮で、苦しいことがひとつもない」と話す姿が印象的でした。……トップ選手でい続けるということは、それだけ大変なことなんですね。第一部で真央さんと佳菜子さんが披露したコラボプログラムの曲、加藤ミリヤさんの「旅人」は、ふたりで旅行したときに聴いた思い出の曲だそうです。ふたりの大好きな動きや懐かしい仕草をたっぷり詰め込んで作り上げたそうで、おそろいのデニムスカートで追いかけっこやお尻スピンをしたり、氷に寝そべったりする微笑ましい姿に、会場がやわらかな雰囲気に包まれました。皆さんにメッセージをと促され、「ここからが本当のスタートだと思っています。前に進んで精一杯頑張ります」と話す真央さんと、「いろんなことにチャレンジしていきたい」と話す佳菜子さん。自分らしいセカンドキャリアを切り拓いていけるよう、これからのふたりを見守っていきたいものです。■フィナーレも真央カラー。試合では見られないサプライズ・デュエットもさて、後半のハイライトは、やはり真央さんの演技です。ショーのために新しくつくられたふたつのプログラムには、それぞれ今年ならではのテーマが秘められていました。ひとつめは、ラフマニノフの「エレジー~スイートメランコリー~」。二度のオリンピックで使用した思い入れのある作曲家の曲を使い、スケート人生の集大成のプログラムとなっています。もうひとつは、ララ・ファビアンが歌う「Wind Beneath My Wings」。「愛は翼にのって」という邦題で知られていますが、「あなたという風を翼に受けて(わたしは飛んでいた)」というのが歌詞本来の意味です。あなたがいてくれたから、わたしは飛んでこられた。わたしの輝きは、あなたの支えがあってこそ。応援してくれてありがとう。――そんな感謝の思いを込めたプログラムをしっとりと魅せてくれたあとは、怒涛のフィナーレへ。「アイ・ガット・リズム」のピアノ演奏に始まり、「カルメン」「踊るリッツの夜」「チャルダッシュ」と真央さんが使用した楽曲の中でもテンポのいいものをメドレーにして、出演者がグループになって踊りつなぎ、会場を盛り上げます。最後に薄紫の衣装を身につけた真央さんが登場し、「蝶々夫人」を滑り出すものの――今日の蝶々さんは、帰国したまま帰らぬ夫を待つ哀しみを表現するにとどまりませんでした。東側の客席から、蝶々さんの夫に扮した海軍士官姿のジェフリーが現れたのです。ふたりのデュエットの美しいこと……!試合では見ることのできなかった物語の続きに、客席からすすり泣く声も聞こえました。「蝶々夫人」の筋書き通り、夫は去り、蝶々さんは息絶えるという結末が待っているとはいえ、うれしくも美しいサプライズでした。グランドフィナーレで観客も踊りまくった後は、キャスト全員で「メリー・ポピンズ」を熱演。真央さんとジェフがそれぞれメリー・ポピンズと親友バートの衣装を着ていることもあって、ミュージカルのような大迫力でした。8月の名古屋公演の模様は、9月16日(土)の19時半から日テレプラスで放映される予定です。会場の熱気を味わってみてくださいね。
2017年08月08日中国の伝統舞踊や歌舞、声楽、器楽にクラシックバレエやモダンダンスを融合させた総合芸術団体として、世界中で上演を重ねている上海歌舞団。日本でも2005年に『覇王別姫』、2007年には『WILD ZEBRA』と公演のたびにファンを増やしており、今回は2年前の日本ツアーで絶賛を浴びた『朱鷺』が待望の再来日だ。日中国交正常化45周年を祝う記念公演でもある本作。8月の公演を前に、7月19日、メインダンサーの朱潔静と王佳俊、オフィシャルサポーターを務める草刈民代を迎えて制作発表会が行われた。舞劇『朱鷺』-TOKI- チケット情報本作では『羽衣伝説』や『白鳥の湖』などの異類婚姻譚をモチーフに、村の青年ジュンと朱鷺の精ジエの時空を超えた出会いと別れが描かれる。朱と王の表現力豊かな踊りはもちろん、東洋の切り絵を思わせる舞台美術や、切なくドラマチックな楽曲、美しいグラデーションの衣装、一糸乱れぬアンサンブルなど見どころも満載だ。物語は終盤、自然破壊を繰り返す人類と消えゆく朱鷺の姿も描かれ、現代社会に警鐘を鳴らす作品となっている。上海歌舞団団長・陳飛華は「今年は総勢70名と、2年前より大きな規模で来日いたします。本作のテーマは“地球、生命、人類”。細かいところまで手を加えており、さらに良い舞台になっていると思います」と話した。「セットや衣装など、すべての面でアジアの美学を込めた作品。必要なのは、とても細かい動きや表現です」と言うのは、スラリとした美女の朱だ。「こういう朱鷺の動きを踊りに取り入れています。実際に朱鷺の様子を一日中観察したんですよ」と、立ち上がって腕を背と頭に巻き付けるような動きを披露した。王も「最後のほうの現代の場面では、無機質なセットに、踊りもコンテンポラリーダンスに近いものになります」と、叙情的な古代の場面とは異なる面もあることを解説。「日本のアニメやラーメンが大好き。終演後の楽しみです」と照れ笑いするなど、端正な横顔に若い青年らしい素顔をのぞかせた。オフィシャルサポーターとして登壇した草刈は、上海歌舞団の魅力を「中国文化のテイストが土台にある上で、素晴らしい舞台が展開されているところ。それはこの舞踊団にしか表現できないものです」と語る。「ダンサーも国によって特徴や魅力があるんですよ。王さんは美しくてたくましいですが、けしてマッチョではない。朱さんも優しいたたずまいですが、強さも感じさせるのが魅力です。アンサンブルのフォーメーションがビシッと揃っているところも、東洋のカンパニーならではと感じますね」と、海外での舞台経験も多い元ダンサーならではの視点で話した。草刈も太鼓判を押す、唯一無二の舞台。公演は8月29日(火)・30日(水)東京・Bunkamura オーチャードホール、9月2日(土)・3日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、9月6日(水)から10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、9月13日(水)・14日(木)大阪・オリックス劇場にて。取材・文佐藤さくら
2017年08月04日カルト的な人気を誇り、1975年に映画化もされたミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』。2011年にはいのうえひでのり演出、古田新太主演で上演、大きな話題を呼んだ。そして今秋、再び古田が『ロッキー~』に帰ってくる。演出を担うのは、いのうえから直々の指名を受けた河原雅彦。さらに新参加となる小池徹平を加えた3人に話を聞いた。ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』チケット情報元々『ロッキー~』の大ファンだという河原も、前回のいのうえ版を「完璧」と絶賛。だが映画寄りに作られたいのうえ版に比べ、「僕のロッキー体験としては、作り手側が意図しないところで、お客さんが楽しみ方をどんどん発展させていった印象が強い。例えば雨のシーンでは、客席でも新聞紙を傘代わりにして、水鉄砲の水で雨を降らせたり。そういうものが僕の中のロッキーであり、ロッキーの楽しみ方なんです」。古田演じるフランク・フルターは、服装倒錯バリバリのマッド・サイエンティストで、『ロッキー~』の世界観を具現化したような人物。古田は「作品自体がフランクへのお膳立て。要はただのエゴの強い人なんだけど、つまりはそれって舞台上で問答無用に振る舞える役でもある。そういった役は、やっぱりやっていて楽しいし面白いですよ」と笑う。そんなフランクの城へと迷い込んでしまうのが、小池演じるブラッドとソニン演じるジャネットの新婚カップル。「キャスティングされた理由がわからない」と苦笑いを浮かべる小池だが、「第一印象から本当に好きだなって思える作品。テーマパークのような世界観も好きですし、歌もすごくキャッチーで!今回参加出来るのがすごく楽しみで、お話いただいた時からずっとソワソワしていました」と期待を膨らませる。近年注目を集めているダンスチーム“東京ゲゲゲイ”のリーダーMIKEYが振付を手掛け、メンバーも出演もするなど河原版ならではの趣向は随所に。「やっぱり僕は見世物小屋的な、客席に入った瞬間にワクワク出来るような劇場体験が好きですし、かつてはそのために劇場に通っていた。そういう意味でロッキーって、初期衝動に非常に近いんですよね」と河原。するとすかさず古田が、「ある意味古典ともいえる作品なのに、オイラたちの初期衝動に近いってどんだけ初期なんだよ!(笑)」とツッコミ。「でも僕ら世代にも確実に引っかかりますし」と小池が続くと、河原も「どの時代もみんなはしゃぎたいからね。バカは絶えないってことかな(笑)」。思いっきりバカになれる、誰をも魅了する劇場体験がここにある。公演は11月7日(火)から11月12日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木、11月16日(木)から12月3日(日)まで東京・サンシャイン劇場で上演。その後、北九州・仙台・松本・大阪と各地を巡る。東京の2会場と仙台公演については現在、先行抽選プレリザーブのエントリーを受付中。取材・文:野上瑠美子
2017年08月02日宝塚歌劇星組『阿弖流為-ATERUI-』東京公演が7月31日に開幕した。この作品は日本青年館ホールのこけら落とし公演。主演は星組の礼真琴が務める。星組の二番手スターとして高い人気を誇る礼は、これまで本拠地・宝塚での主演経験はあるものの、東京の地で主演を務めるのは初。新劇場での東京初主演と“初ものづくし”となった。宝塚歌劇星組公演『阿弖流為-ATERUI-』チケット情報新国立競技場の建設に伴い2015年3月、36年の歴史に幕を下ろした旧・日本青年館。日本青年館ホールはその後継施設で、以前より南に約100メートル場所を移した敷地に立つ。7月にオープンし、記念コンサートなどを行っているものの、一般客を入れた公演は今回が初めてで、この日が本格スタートとなる。宝塚歌劇団は旧・日本青年館も東京の拠点のひとつとし、宝塚ファンの間でもなじみのある劇場だっただけに、そのこけら落とし公演となる本作は大盛況でチケットはすでに完売。特に初日のこの日は、建物の外観やロビーの写真を撮るファンの姿も多く見られた。物語は高橋克彦の小説『火怨』が原作。8世紀、大和朝廷が蝦夷征伐に乗り出す時代を背景に、故郷を守る為に立ち上がった蝦夷の若き指導者・阿弖流為が、大きな歴史の流れの中、仲間たちとともに大和との戦いに挑んでいくさまをスペクタクルに描いていく。巨大な中央政権に挑む地方勢力の悲劇を単なる悲劇ではなく、どこか希望も残るステージに仕立てているのが宝塚らしく爽やか。LEDボードを使った映像や激しい立ち回りも見どころだ。そして何と言っても主演の礼が、力強くも涼やか。もともと歌も芝居もダンスも秀でたスターだが、大きな心を持つ優しく強い阿弖流為に説得力があったのは、この人の持ち前の求心力あってこそだろう。カーテンコールで礼はまず、「日本青年館ホールのこの舞台に一番最初に立たせていただく幸せを感じ、身の引き締まる思いでいっぱいです」と挨拶。「全員が心をひとつに、力をあわせて駆け抜けたい」と公演への意気込みを語ると同時に、「この作品がこけら落とし公演でよかったと思っていただける作品になるよう、全力で頑張ります」と、こけら落とし公演主演という栄誉ある大役への意気込みも。カーテンコールは4度繰り返され、満員の客席は最後にはスタンディングオベーションになるほどの大盛り上がりとなった。星組公演『阿弖流為-ATERUI-』は8月6日(日)まで同劇場で上演。なお、日本青年館ホールではこのあと、9月25日(月)から10月15日(日)まで、元宝塚星組トップスター・北翔海莉主演ミュージカル『パジャマゲーム』の上演などが控えている。
2017年08月02日NHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で、うたのお兄さんを歴代最長の9年間務めた横山だいすけ。そんな彼の念願だったというミュージカル・コンサートツアー『だいすけお兄さんの世界迷作劇場 2017』が、7月25日兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールでスタート。卒業後初の記念すべきツアー公演、その終演直後に話を聞いた。「だいすけお兄さんの世界迷作劇場2017」チケット情報幼い頃からうたのお兄さんに憧れ、技術を磨くため国立音楽大学音楽学部声楽学科を卒業し劇団四季に入団。その後夢を叶えた“だいすけお兄さん”は、同番組を卒業した4月から活動の幅を広げ、人気が止まらない。ブログ読者は16万人以上。ドラマやバラエティ番組に出演し、8月公開の映画『くまのがっこう&ふうせんいぬティニー』では主題歌を担当する。冒頭で「みんなー!こんにちはー!」と登場すると、子どもも大人も「こんにちはー!」と最高の笑顔で返す。テレビで観ていただいすけお兄さんに、世代を超えて興奮しているのが伝わってくる。物語仕立ての第1部では、ある有名なキャラクターに扮し、歌やダンス、芝居とミュージカル俳優の一面を見せて大活躍。アクションシーンでは子どもたちから「がんばれー!」と掛け声も。「笑顔や掛け声を頂くとエネルギーが湧きます! “迷作劇場”というタイトルの通り、皆さんがよく知る名作にワクワクやドキドキ、面白さを加えたミュージカルになっているのですが、僕たちなりの味付けが皆さまに伝わっているのを感じて嬉しかったです」と明るく話す。演出は元劇団四季の仲間で、ミュージカル『魔女の宅急便』も手掛けた岸本功喜。子どもが大好きな童謡にオリジナル曲(歌詞/岸本功喜・作曲/小島良太)を組み合わせ、親子で自然に盛り上がれる構成になっている。ミュージカルのラストの曲『大人への一歩』は、キャストが横一列に並び観客に真っ直ぐ歌いかけ、その深いメッセージ性が心を打つ。「このオリジナル曲は育児で壁にぶつかる親御さんにも届くような温かい詞になっています。“一歩踏み出せば世界は無限に広がる”というような歌詞に僕自身もグッときます。観て下さる方の希望につながればと思います」。第2部のコンサートでは、人気の『ぼよよん行進曲』などが登場、観客も“ぼよよよ~ん”の歌詞に合わせて体を動かし楽しんでいた。「番組を卒業してから“子どもたちロス”でしたので、子どもたちの目を見ながら歌える環境がとても幸せです。これからもいろんな名作を僕たちの色に変えて届けていきたいです」と先々にまで思いを馳せ、爽やかな笑顔を見せた。8月6日(日)まで関西8か所で全17公演を実施。秋から全国ツアーも開催決定。取材・文:小野寺亜紀
2017年08月01日今秋、待望の新橋演舞場での再演が決定した『スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)ワンピース』。累計20万人を動員した作品の再演に際し、製作発表記者会見が行なわれ、主人公ルフィを演じる市川猿之助、脚本・演出を務める横内謙介、そして松竹株式会社取締役副社長の安孫子 正が登壇した。『スーパー歌舞伎Ⅱ(セカンド)ワンピース』チケット情報安孫子副社長の挨拶では「初演の初日が終わった後、いつ再演しようかとすぐに考えた」と同作の勢いを感じる印象的なひと言が。「歌舞伎好きの人だけでなく、ワンピース好きの人、特に小中学生の来場も多く、幅広い層に観てもらうことができた。ぜひ多くの人に歌舞伎を知ってもらうきっかけになれば」と語った。「2年前の会見時は、歌舞伎界と漫画界を敵に回すのではと思っていた。猿之助さんの原作未読発言もあり、「そんなこと言っちゃダメだ!」とまるでウソップのような気持ちでした」と会場を笑わせたのは脚本・演出を務める横内。初演では東京公演を経て、よりワンピースへの理解が深まったと語り、特に印象的だったことについて「東京では手下1、2としていたキャラクターに、大阪、福岡ではそれぞれ役名をあたえたら、役者たちがより輝きはじめた」ことをあげ、「東京公演後の練り直しが多かった分、東京で観てくれた人たちにまた観てもらわないといけないという気持ちがあった」と再演を喜んだ。原作の尾田栄一郎から「何をやってもルフィにしか見えないから大丈夫」と言われたという猿之助は、今作について「再演ということになりますが、また新たなワンピースという気持ちで作っております。一度観た方は本当に同じ作品だろうかという驚きをもって、初めての方にはワンピースの世界を楽しんでもらえればと。ぜひ期待してください」と意気込みを語った。また特別マチネとして開催される、麦わらの一味に若手を抜擢した『麦わらの挑戦』ついては「これまで先輩である僕に支えられていた部分があると思いますので、僕がシャンクスに回ったときに、ルフィ役の尾上右近、そしてルフィを支える若手の彼らがどうなるかお手並み拝見ですね」と話した。質疑応答では今作の演出プランについて聞かれ、「(主題歌を担当する)ゆずのステージからインスピレーションをもらっています。5月にゆず20周年のライブを見て刺激を受けたので、演出、最新技術を取り入れてみたいなと思っています」と語る場面も。歌舞伎で表現する新たなワンピースの世界。原作者も太鼓判を押すルフィとその仲間たちの冒険を、ぜひ劇場で体験してみてほしい。公演は10月6日(金)から11月25日(土)まで。チケットの一般発売は10月公演分が8月20日(日)、11月公演分が9月18日(月・祝)より。
2017年07月28日サーカス、マジック、演劇が融合した独創的なパフォーマンスを追求するスイスのユニット〈ズィメルマン エ ド・ペロ〉が、3年ぶりに来日公演を行う。2013年『シュフ・ウシュフ』、2014年『ハンスはハイリ』に続いて3度目となる日本で披露するのは、マルタン・ズィメルマンによる初のソロ作品『Hallo』。初日を控え、コンセプト・演出・デザイン・振付・出演の5役をこなすズィメルマンが、抱負を語った。マルタン・ズィメルマン『Hallo』チケット情報「サーカス学校で学び、約20年にわたって様々なことをやってきた私が、まさに機は熟したという想いで作ったのが、この作品です。様々な人物を演じ分けるのではなく、あくまでひとりの人間を描きます。状況の変化によって、その人物の様々な側面や感情が見えてくる。人間一人ひとりが持つ神秘性、複雑さを表現しようと思ったんです」。人の心の内面へと踏み入るのは、創作者にとって時に困難な作業に違いない。だが、ズィメルマンの場合、自らの得意分野である舞台美術の存在が、発想に飛躍をもたらす。物を対置させることで、人物からリアクションを引き出し、局面が有機的に変化していくのだ。「“フレーム”を使います。ショーウィンドウのように周囲から見られる枠の役割も果たすし、もしかしたら人生という枠なのかもしれない。しかもそのフレームは、もろくて壊れたりもする。枠が壊れたときに、人はどうなるのか。自由になるかもしれないし、愚行に走るかもしれません」。数あるサーカスの要素の中で特に興味を持ったのは、道化だという。「クラウンという存在自体が、リスクをはらんでいます。夢見がちでいながら、どこか悲劇的で、いつもアクシデントに巻き込まれている。まさに悲喜劇がそこにはあるし、シュールレアリスムのような不条理な存在ともいえる。私はクラウンのような化粧をしているわけでもないし、フィジカルなアクターと自称していますが、クラウンの持つユーモアとその裏にある悲しみを表現するのが好きなんです」。今回のクリエーションで発見したこととしてズィメルマンが語った次の言葉が哲学的示唆に富み、興味深い。「人間は、困難な状況に置かれ、もがけばもがくほど、生命に近づく。居心地の良い暮らしや安易な状況は、人間を生命や人生から遠ざけてしまいます」。言葉に頼らないステージだが、多くを物語る。時に他者を意識し、時に自らを持て余し、置かれた状況に対処しながら一喜一憂する登場人物は、まさに人間そのものであり、揺れ動く心を描いていくのがドラマであるなら、ズィメルマンの生み出す世界はドラマの真髄といっていい。マルタン・ズィメルマン『Hallo』は、東京芸術劇場 プレイハウスにて7月29日(土)・30日(日)に上演。
2017年07月28日9月8日(金)から東急シアターオーブでブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』が上演される。【チケット情報はこちら】同作はジョニー・デップ主演で2004年に公開された映画『ネバーランド』を、アメリカで今最も注目を集める女性演出家の一人、ダイアン・パウルスの演出で舞台化。不朽の名作『ピーターパン』の知らざれる誕生秘話を実話に基づいて描いた感動のドラマで、2015年にブロードウェイで開幕して以来、観る者を魅了。今回が日本初上演となる。7月29日(土)にはBSフジで同作の魅力に迫った特別番組の放送が決定。番組では坂上忍がサンフランシスコに向かい、本公演を観劇。主演ビリー・タイへのインタビューや、美しい演出の仕掛け、ピーターパンのキャラクターの秘密に迫るほか、ゲイリー・バーロウ(TAKE THAT)の楽曲もたっぷり楽しめる。チケットは発売中。■BSフジ『坂上忍が見つけた「ネバーランド」』放送日時:7月29日(土)17:30~再放送:8月6日(日)26:00~、8月27日(日)26:00~※フジテレビオンデマンドでも7月28日(金)より無料配信!■ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』日程:9月8日(金)~24日(日)会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ 11階)※生演奏、英語上演、日本語字幕あり作詞・作曲:ゲイリー・バーロウ / エリオット・ケネディ脚本:ジェームズ・グラハム演出:ダイアン・パウルス振付:ミア・マイケルズ
2017年07月27日20世紀を代表する振付家、モーリス・ベジャール没後10年を迎える今秋、彼が率いたモーリス・ベジャール・バレエ団が日本公演を行う。7月24日、一般の観覧者約500人を招いての特別記者会見および秘蔵映像上映会が開催され、ジル・ロマン芸術監督、ダンサーの那須野圭右が公演への抱負を語った。モーリス・ベジャール・バレエ団 チケット情報ベジャールについて、「モーリスの作品を稽古していると、彼がいつもそばにいるように感じる」と話すロマン。11月の日本公演では、Aプロはベジャールがモーツァルトのオペラに振付けた『魔笛』を、Bプロではロマン振付の『アニマ・ブルース』『兄弟』、ベジャール振付『ピアフ』、またバレエの金字塔と言われる『ボレロ』も上演する。このうち『兄弟』は「ふたりの日本人ダンサー、那須野と大貫真幹にインスピレーションを得て創った」とロマン。主演の那須野は「お前らいつも一緒にいるな、兄弟みたいだな、というところから始まりました。ジルが僕をメインに創ってくれた初めての作品。日本で上演できてとても嬉しい」と笑顔を見せた。「このプログラムには複数の関係性が紡ぎ出されています。『兄弟』では美空ひばりさんの「ラ・ヴィ・アン・ローズ」を使っていますが、これはモーリスの作品『ピアフ』に繋がる。ラヴェルの音楽も用いているが、これは『ボレロ』と響き合う──。ベジャール作品と現代の新作をふたつの柱として上演していく、私たちの姿を映しています」(ロマン)ベジャールの命日にあたる11月22日と翌23日に開催される、東京バレエ団との特別合同ガラ〈ベジャール・セレブレーション〉の内容も明らかに。今回はその稽古のための来日でもあったロマンだが、第1部の『テム・エ・ヴァリアシオン』では、「日記を綴るように、現在のカンパニーの姿をモーリスに伝えたい」。さらに第2部『ベジャール・セレブレーション』はベジャール作品の傑作集で、ここに東京バレエ団のダンサーたちが参加。那須野は彼らの指導を担う。「ベジャールは東京バレエ団を愛していた。没後10年にここでコラボレーション行うのは、不可欠で重要なことです」(ロマン)。秘蔵映像上映会では、これまでの日本公演の映像、また次回上演予定作品のハイライト映像が披露され、ベジャールの多様で鮮やかな作品世界が蘇った。「秋の公演を楽しみにしていてください」と締めくくったロマン。那須野も、ダンサーとしては「これが最後の舞台になると思う。ぜひ観に来ていただきたい」と思いを明かし、充実の舞台を予感させた。公演は11月17日(金)から26日(日)まで、東京文化会館、11月28日(火)・29日(水)に兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホールにて。なお、東京公演のインターネット先行を7月27日(木)午前10時より受付。取材・文:加藤智子
2017年07月26日宝塚歌劇団星組トップスター・紅ゆずるが主演するマサラ・ミュージカル『オーム・シャンティ・オーム ―恋する輪廻―』が、7月22日(土)に梅田芸術劇場メインホールで開幕した。世界的に大ヒットしたインド映画『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』の舞台化で、初日の公演を原作映画の監督ファラ・カーン氏も観劇し、カーテンコールでは真っ先に立ち上がって拍手を送った。本場のトップ舞踊監督さえ興奮する星組のパワーは、真夏の熱風よりも熱かった!宝塚歌劇星組公演 マサラ・ミュージカル「オーム・シャンティ・オーム-恋する輪廻-」チケット情報今年1月に東京で紅のプレお披露目公演として上演、大劇場公演『THE SCARLET PIMPERNEL』を経ての再演だけに、星組生がより濃厚なスパイスを作品に降り注ぎパワーアップしているのを感じた。1幕では紅の表情豊かに歌い踊る姿が一層エネルギッシュで、脇役俳優オームの個性を際立たせる演技では観客の大きな笑いを誘う。綺咲愛里(きさき・あいり)扮するスター女優シャンティに恋をし、夢は叶うと信じている真っ直ぐな心も、ピュアな芝居や歌からより強く伝わってきた。30年後の2幕では、オームの生まれ変わりのスター俳優となって堂々登場、女性たちをはべらせ数々のナンバーを披露する。あらゆる場面でセンターオーラを放ち、ラブロマンの色が深まる綺咲とのデュエットではふたりの絆もしっかり見せた。綺咲は顔立ちや佇まいが華やかで、エキゾチックな雰囲気がヒロインにぴったり。切ない女心を巧みに演じた。また新キャスティングの七海(ななみ)ひろきが、妻のシャンティにひどい仕打ちをする大物プロデューサーのムケーシュを熱演。歩き方、煙草をくわえる仕草、決して本音で笑わない目の表情など、真のヒール役の凄みを存分に表現した。美稀千種(みき・ちぐさ)演じるオームの母親の温かさと柔軟な演技も観客の心をつかむ。インド特有の節に多彩なジャンルをミックスした音楽性の豊かさ。指先や首の動きまで見入ってしまうノリのいいダンス。コメディからサスペンス、ホラーまでとことん振り切り観客を引き込む展開。中毒性のあるボリウッドの粋が詰まった今作に、大阪の観客はときに笑い、大いに引き込まれていた。また今回初演ではなかった客席降りのアンコールフィナーレが加わった。軽妙なツッコミも入る振付レクチャーの後、音楽がかかると自然に観客も体が揺れ出演者と共にマサラ気分で踊り出す。曲が終わると「ウワーッ!」と劇場全体が大歓声に包まれた。紅もとびきりの笑顔を見せ、「インドの心をもって千穐楽まで突っ走ります!」と明るく宣言した。公演は、8月7日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。チケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2017年07月25日世界で最も愛されているミュージカルのひとつ、『ウエスト・サイド・ストーリー』。音楽、振付、ストーリーすべてが高い完成度を誇る、まさにミュージカルの金字塔であるこの作品が、東急シアターオーブ5周年記念公演として、7月から上演が始まっています。渋谷ヒカリエ 14階、東急シアター オーブのホワイエにあるシアターバーでは、ミュージカルまでの待ち時間や休憩時間に、地上約70メートルからの景色を見ながらカクテルを楽しめるのが嬉しい。再開発が進み、刻々と表情を変える渋谷の街並みは、まさに今しか見ることのできない景色。夏の夜に、渋谷の夜景の特等席=シアターバーで、ミュージカルとともにグラスを傾けてみてはいかがでしょうか。■『ウエスト・サイド・ストーリー』コラボメニューこちらの公演にあわせて、11階のカジュアルイタリアン「THE THEATRE TABLE(シアターテーブル)」では、『ウエスト・サイド・ストーリー』コラボレーションメニューを7月30日までの期間限定で提供しています。(写真左)ニューヨークサンドイッチ 1600円(税込)移民の町NYでファンの多いソウルフード。シャークスの女性たちが歌う 名曲「America」のエネルギッシュな曲にあわせて、ローストポーク、 ピクルス、チェダーチーズをスパイシーソースでサンド。フライドポテト、 オニオンリングもご一緒に。(写真右)チョコレートパフェ TONIGHT 1300円(税込)主人公・トニーとマリアの悲しい恋をイメージしたシックな大人のパフェ。 チョコレートムースにほろ苦いキャラメルクリーム、 キャラメリゼしたヘーゼルナッツとバナナが合わさった、 焼きメレンゲなど食感の楽しいパフェです。SOMEWHERE <サムウェア> 1000円(税込)「淡い思い出」をイメージしたカクテル。劇中歌「サムウェア」に連想させると共に、マリアのかわいらしさと強さも感じられる一杯です。※アルコール入りMAMBO! <マンボ!> 1000円(税込)ダンスシーンのスピード感や情熱を、酸味とほろ苦さで表現。ゼリーの食感で遊び心を加え、思わず「MAMBO!」と叫びたくなる一杯。※ノンアルコール
2017年07月25日ミュージカル『ビリー・エリオット』の初日開幕を前に、7月21日、東京・TBS赤坂ACTシアターでプレスコールと囲み取材が行われた。本作は映画『リトル・ダンサー』の舞台化で、イギリスの炭鉱の町でバレエダンサーを夢見る少年ビリーの姿が描かれる。映画版と同じくスティーヴン・ダルドリーが演出を、リー・ホールが脚本と歌詞を担うほか、エルトン・ジョンが音楽として参加している。ミュージカル『ビリー・エリオット』チケット情報プレスコールでは、本作を代表する4ナンバーが披露された。バレエガールズとのかわいく華やかな「Shine」や、ビリーと親友のマイケルがコミカルなタップで魅せる「Expressing Yourself」。また「Solidarity」ではラインダンスが印象的で、アンサンブルキャストも実力派ぞろいであることを知らしめる。そしてビリーたちが一番の見どころとして挙げていたのが「Angry Dance」。父親にバレエを反対されたビリーがタップで怒りを表現するナンバーなのだが、ひとりの少年が放出しているとは思えないパワーと、レベルの高いタップに圧倒された。囲み取材に参加したのは、ビリー役の加藤航世、木村咲哉、前田晴翔、未来和樹、山城力。さらにビリーの父親役の吉田鋼太郎と益岡徹、ビリーにバレエを教えるウィルキンソン先生役の柚希礼音、島田歌穂が顔をそろえた。すでに開幕しているプレビュー公演の手ごたえを聞かれた吉田は、「僕ら大人は2か月、ビリーたちは1年半以上の稽古を頑張ってきて、その甲斐のある幕開けでした」と自信に満ちた表情を見せる。また益岡、柚希は、「感動することが多い舞台」と改めて本作に立つ幸せを噛みしめているよう。さらに島田は、「ビリー役の彼らが日々どんどん輝いていく」と少年たちの成長に目を潤ませつつ、「1日1日を宝物にして最後まで走り抜けたい」と抱負を語った。プレビュー公演ですでにビリー役としてデビューしている加藤と前田は、「たくさんの拍手をもらえてすごく気持ちがよかった!」と喜びに顔を輝かせる。デビューを控える木村、未来、山城はいまだ緊張気味ながらも、「舞台に立つのが楽しみで、今はワクワクした気持ち」と期待に胸を膨らませていた。バレエだけでなく、タップ、演技、歌、縄跳びなど、多くのスキルが求められるビリー役。それらを完璧にこなす5人に吉田が、「とにかくこいつらがすごい! 今のうちに潰しておかないとえらいことになる」とコメント。会場が爆笑に包まれるとともに、本作のクオリティの高さを決定づけるひと言となった。東京公演は10月1日(日)まで。その後、10月15日(日)から11月4日(土)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。取材・文:野上瑠美子
2017年07月24日トップスター・珠城(たまき)りょう率いる宝塚歌劇月組の新作、浪漫活劇『All for One ~ダルタニアンと太陽王~』が、7月14日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。宝塚歌劇月組『All for One~ダルタニアンと太陽王~』チケット情報小池修一郎が脚本・演出を手掛ける本作は、世界中でさまざまに作品化されているアレクサンドル・デュマ原作の『三銃士』をモチーフに、新たな発想で創作したロマンチック・アクション・ミュージカル。ルイ14世が治めるフランスを舞台に、銃士隊の新入りダルタニアンの愛と勇気の冒険活劇を、共に戦う三銃士との友情を交えて壮大なスケールで描いている。珠城演じる銃士隊一の剣の遣い手ダルタニアンを中心とした銃士隊の総踊りで始まるプロローグ。テーマ曲を歌いながらダイナミックに魅せ、観客を物語の世界へと惹き込んでいく。素直で嘘がない、爽やかな雰囲気のダルタニアンは珠城にピッタリの役どころ。珠城と共に銃士隊の中心となる三銃士を演じるのは、世紀の色男と称されるアラミスの美弥(みや)るりか、沈着冷静なアトスの宇月颯(うづき・はやて)、大胆不敵なポルトスの暁千星(あかつき・ちせい)だ。それぞれに個性たっぷりに演じ、ブルーのデニム地で作られたスタイリッシュなコスチュームもサラリと着こなし、佇まいのカッコ良さで魅せる。それでいて笑いどころもたっぷりと、緩急つけた演技で楽しませてくれる。女性客の心を揺さぶるダルタニアンの“壁ドン”も見どころのひとつだ。またトップ娘役・愛希(まなき)れいかは、太陽王と称されたルイ14世とダルタニアンが酒場で出会う娘ルイーズの二役に挑んでいる。男役も経験してきただけに、ルイ14世をナチュラルに演じているのが印象的。変幻自在でありながら安定感のある演技力で演じ分けているのが面白い。組替え後、初の大劇場公演となる月城(つきしろ)かなとは、銃士隊と対立する護衛隊の隊長ベルナルド役。ダークな空気感をまといながらも美しい。ちょっとヌケた一面も見せる、憎めない敵役だ。さらに、専科の沙央(さおう)くらまが、ルイ14世のいとこモンパンシェ公爵夫人で存在感を発揮。コミカルな名演で客席の笑いを誘う。それぞれが個性を際立たせつつ、集団になればピタリと息の合ったフォーメーションで目を奪う。大人数での立ち回りなど、アクションも見応えたっぷり。宝塚歌劇ならではの、ロマンチックかつ痛快な冒険活劇に仕上がっている。公演は兵庫・宝塚大劇場にて8月14日(月)まで上演。チケットは発売中。東京宝塚劇場公演は9月1日(金)から10月8日(日)まで。7月30日(日)より一般発売開始。取材・文:黒石悦子
2017年07月21日2014年に白井晃演出で日本初演され、大好評を博したミュージカル『アダムス・ファミリー』が帰って来る!原作はアメリカの人気漫画で、1991年に映画化され、2010年にブロードウェイでミュージカル化された作品だ。おばけ一家の女主人モーティシアを、初演に続いて演じる真琴つばさは「再演は嬉しい」と声を弾ませる。【チケット情報はこちら】「一見、変わったキャラクターばかりのアダムス一家ですが、実はどこにでもいる普通の家族。家庭それぞれに事情があるように、黒い服を着ていたり人の不幸が好きだったりするだけ。不幸が好きと言っても、彼らが人を不幸にするわけではなく、ちょっと面白がっている程度ですし。その奥にあるのは普遍的な家族愛で、親が子供を心配する気持ちや嫁姑問題など、身近な事柄が描かれている。こういう人、いるよね!と楽しんでいただける、“エンタテイメント・ファミリー・ドラマ”だと思います」初演では、映画顔負けの迫力と慈愛に満ちたモーティシア役を見事に造形。夫ゴメス役の橋本さとしを相手に、息の合った夫婦ぶりを見せた。「橋本さんは、ちょっと尻に敷かれているような旦那さんの雰囲気がうまい、マルチェロ・マストロヤンニみたいな方。妻をいい気分にして、させてくれるんです。モーティシアは“私が全てを操っているわよ”という顔をしているけれど、実は少女のようなところがあり、家族に助けられている。皆さんにも共感していただけるポイントではないでしょうか。私自身も演じながら、例えば夫とつき合っていた頃のことを思い出すシーンなどで、何度か涙ぐみそうになりました」男声でも女声でもない音域と独特の声を持ち、他の声とハーモニーになりにくいという真琴にとって、キーを変えずに挑むことができたモーティシア役はまさにはまり役だが、今回は壮一帆とのWキャストということで、新たなモーティシア像の誕生にも期待がかかる。「Wキャストって、自分にないものを見ることができて面白いんです。相手の方が描くモーティシアは最高の教本ですよ。壮さんは関西人だから物怖じせず、誰とでもしっくりいくでしょうし、目線の使い方なども巧いと思うので、そこは参考にしたいです。私より年下の壮さんを見習って、心は若く、でも年齢分の経験値は活かそうかと(笑)。初演以上に、母として、女性として、さらに思いやりや艶っぽさを出したいですね」今春には乃木坂46メンバーとの『あさひなぐ』、秋には『にんじん』、そして本作と、ポピュラーな題材の舞台が続く。「『あさひなぐ』は客席がほぼ男性で新鮮でした。そこでは尼さんを演じ、『にんじん』では家政婦さん、そして『アダムス・ファミリー』では妖怪のお母さん。レパートリーがどんどん広がっています(笑)。宝塚歌劇団時代にも狼男からヴィヴィアン・リー(スカーレット・オハラ)までを演じた年がありましたが、女役を演じた後は男役の演技にも変化が起き、優しさや柔軟性が出たんです。ですから、今年の仕事の経験で自分の演技がどう変わるかも楽しみですね」取材・文:高橋彩子
2017年07月20日劇団四季ミュージカル『ライオンキング』が7月16日、東京・四季劇場[夏]で再スタートの幕を開けた。『ライオンキング』は1998年に東京・浜松町の四季劇場[春]で日本初演の幕を開けて以降、ロングランを続けてきたが、同劇場が竹芝エリア再開発に伴い一時休止。5月28日に18年5か月にわたる同劇場での公演はいったん幕を下ろしたが、会場を四季劇場[夏]へと移し無期限ロングラン公演を継続する。【チケット情報はこちら】作品は、アフリカのサバンナを舞台に、ライオンの子シンバの成長を通し“生命の連環”という深遠なテーマを描き出す物語。斬新なパペットで表現される動物たち、アフリカの大地の雄大さが伝わる美しい舞台美術、エルトン・ジョンらが作り出したキャッチーな音楽で幅広い年齢層に愛され、“ミュージカルの王者”と称されている作品だ。その総公演数は日本演劇史上最多の11000回、観客動員数は1120万人超と、前人未到の数字を誇っている。この日は新たなスタートを切る『ライオンキング』を見守ろうと集まった観客で埋め尽くされ、開演前から期待と興奮の熱気で一杯の様子。本編終了後のカーテンコールでは、会場から万雷の拍手が上がり、カーテンコールは実に11回にもおよんだ。主人公のシンバ役を務めた永田俊樹は「『ライオンキング』にとって新たなスタートとなる、この四季劇場[夏]での公演に、シンバ役のひとりとして出演できることをとても光栄に思います。「サークル・オブ・ライフ(生命の連環)」という深遠なテーマの中で、生命の営みや親子の絆、心の成長を描いた本作。作品のメッセージをお客さまへしっかりとお届けできるよう、一回一回の舞台を誠心誠意努めていきたいと思います」と語った。公演はロングランでの上演を予定、現在12月30日(土)公演分までチケット発売中。
2017年07月18日宝塚歌劇団星組トップスター・紅ゆずるのプレお披露目公演として1月に東京で上演されたマサラ・ミュージカル『オーム・シャンティ・オーム ―恋する輪廻―』が、梅田芸術劇場メインホールで再演される。インド舞踊、ディスコミュージック、ラップなど多彩なエンターテインメントがミックスされたミュージカル。紅は東京初演の観客の熱い反応に「よし!」と手応えを感じたそうで、「関西のお客様にも面白いときは大いに笑っていただき、気楽に観てほしいです」と楽しさをアピールした。宝塚歌劇星組公演 マサラ・ミュージカル「オーム・シャンティ・オーム-恋する輪廻-」チケット情報舞台は1970年代と現代のインド映画界。脇役俳優のオーム・プラカーシュ・マキージャーが、スター俳優オーム・カプールとなって生まれ変わり、人気女優シャンティへの愛のために奮闘する。ふたりのオーム役を演じる紅はガラリと人格が変わるのがポイント。「1幕は周りに翻弄されている“のび太”くんのような感じですが(笑)、2幕は苦労を知らないワガママな御曹司。初演では典型的な嫌われ者としてコメディ風に演じていたのですが、今回はどうしようかなと考えているところです」。それぞれのキャラクターが個性的であればあるほど、盛り上がるのがこの作品の面白さだという。「1幕と2幕で役の年代が違うので全員でガラっと雰囲気を変えることができたらと思います。場面ごとに素敵なナンバーがあるので、各場面のキーポイントを定めて魅せていきたいです」。シャンティを裏切る夫のプロデューサー、ムケーシュ役は七海ひろきが新たに演じる。「大人の男を目指してほしいですね。オームから見たムケーシュは、“どこまで根が腐ってるんだ!”という悪代官のようで…(笑)」。ムケーシュとのサスペンス映画ばりの展開も見ものだ。今作はインド映画の傑作『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』の舞台化。そのストーリーラインがかなり忠実に再現されているので、映画ファンも喜ぶであろう箇所が随所に散りばめられている。さらに“夢を叶える”という普遍的なテーマが、様々なナンバーや台詞にのせて展開し、観客の胸を打つ。「小柳(奈穂子)先生の作品はコメディな部分はもちろん、ホロッとさせる場面も多いので、お客様に楽しんでいただきたいです」。大劇場お披露目公演『THE SCARLET PIMPERNEL』を経て感じたのは「宝塚歌劇という世界観を壊してはいけない」ということ。幼い頃から宝塚歌劇を愛してきた紅が、褐色の肌で歌い踊るマサラ・ミュージカルで夢の世界の裾野を広げる。公演は、7月22日(土)から8月7日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。チケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2017年07月10日藤木直人が主演を務める音楽劇『魔都夜曲』が、7月7日に東京・Bunkamura シアターコクーンにて開幕した。【チケット情報はこちら】1930年代の中国・上海を舞台に、激動の時代に秘められた恋と人間模様を描き出す本作。マキノノゾミが脚本を、河原雅彦が演出を手がけ、日本政府の要人を父に持つ自由奔放な御曹司・白河清隆(藤木)、日中ハーフの女性・周紅花(マイコ)と、その兄・周志強(小西遼生)の3人を中心とした人間ドラマが展開される。“音楽劇”にふさわしく、物語はバンドのジャズ演奏で幕を開ける。舞台となるジャズクラブ「ル・パシフィーク」の歌姫・字春(秋夢乃)は、メロウなナンバーを艶っぽく歌唱。やがて登場したクラブの支配人・新田日出夫(橋本さとし)とボーイ・サミー(コング桑田)の狂言回しぶりに、観客は自然と“魔都”上海へいざなわれていく。出会ったばかりの清隆、紅花、志強はすぐに意気投合し、夜の街に繰り出すことに。3人が上海観光を楽しむ様子は、本間昭光作曲のオリジナルメインテーマ『オピウム・ラヴァーズ』の軽やかなリズムにのって展開され、ついには上海に暮らす数多くのキャラクターが登場するきらびやかなステージングに発展。妖しくも色鮮やかなネオン街を背景に、最後には全員で合唱する1幕前半の見せ場となった。藤木は目付け役である外交官・籾田(山西惇)の説教に対し、背もたれを飛び越えてソファに正座で着地して懇願してみせる――といった大きなリアクションや、終始たたえている朗らかな笑顔で周囲の人間を自分のペースに巻き込む、屈託のない“御曹司”ぶりを見せつけた。対するマイコは、国と身分の異なる清隆に惹かれていく紅花の喜びと戸惑いを、振れ幅の広い表情で演じる。このふたりの恋愛がどのように変化するのか、結末は劇場で確かめてほしい。このほか、繰り返し歌われるオードウェイの唱歌『旅愁』をはじめ、中国民謡『茉莉花(ジャスミン)』などキャストが歌声を響かせるシーンも見どころ。東京パフォーマンスドールの高嶋菜七と浜崎香帆がWキャストで演じる李香蘭が『蘇州夜曲』をしっとりと歌い上げる場面もあり、多彩な楽曲が作品に華を添えている。東京公演は7月29日(土)まで。その後、8月5日(土)・6日(日)に愛知、8月9日(水)から13日(日)まで大阪に巡演する。取材・文:岡山朋代
2017年07月10日英国ロイヤル・バレエ団のスターとして活躍したタマラ・ロホが2012年より芸術監督を務め、大躍進を続けているイングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)、その日本公演が間もなく開幕する。7月6日に開催された開幕記者会見には、ロホ芸術監督と、彼女のもとに集った選りすぐりのダンサー5人が登壇、16年ぶりとなる日本公演への意気込みを語った。【チケット情報はこちら】「私が芸術監督になってから、ENBはいろいろな変革を遂げてきました。新しいダンサーも迎え入れています。ぜひ、私たちの今の姿を見ていただきたい」と自信たっぷりの笑顔を見せるロホ。今回彼らが上演するのは、ENBの伝統的レパートリーの『コッペリア』と、ロホのもとで進められた画期的プロジェクトのひとつ、『海賊』だ。後者は2013年にカンパニー初演、英国のバレエ団による初の『海賊』全幕上演と注目された。現役ダンサーでもあるロホは両作品に主演。芸術監督との両立について彼女は、「私が踊ることで、カンパニーに注目していただき、ほかの素晴らしいダンサーたちを知っていただくいい機会になれば」と話す。また「自分の身体で示し、技術を、思いを継承することはとても重要なこと」とも。世界中からロホのもとに集まったダンサーたち。その個性は実に多彩だ。「ラテンならではの情熱的なダンサー」と彼女に紹介されたのは、セザール・コラレス。「『海賊』は花火みたいな作品。僕も出演しない日はチケットを買って客席で観たいくらいなんだ」とジョークをとばす。「今のENBは、タマラ自身。彼女がキャリアを通してやりたかったことを、このカンパニーで実現している」と話すのは、英国人プリンシパルのローレッタ・サマースケールズ。リード・プリンシパルの高橋絵里奈は、「ENBは私にとって家族。皆とともに母国日本で踊ることをずっと夢見ていた。嬉しい、いえそれ以上のことです」と感無量の様子だ。つい先日、ENBへの正式入団が発表されたユルギータ・ドロニナは『コッペリア』に主演。「コメディ・タッチのバレエを楽しんでいます。軽やかなバレエで、お子さんにも楽しんでいただけると思うわ」。イサック・エルナンデスはメキシコ出身。「ENBは前進あるのみ。タマラを中心に、つねにアイデンティティを表現し、皆で力を合わせ、新しいバレエの形を見出すことができるところ」と、カンパニーの特別感を強調した。「私の出身国、スペインはバレエの伝統が浅いけれど、逆に自由にいろんな伝統を取り込む機会に恵まれた。いいところをあわせて皆に伝えていきたい」と、未来を見据えるロホ。勢いに満ちた彼らの、エネルギッシュな舞台を楽しみたい。公演は7月8日(土)より、東京文化会館にて。チケットは発売中。取材・文:加藤智子
2017年07月07日水樹奈々と平原綾香がWキャストで主演するミュージカル『ビューティフル』の公開稽古が7月5日、都内にて行われた。ミュージカル『ビューティフル』チケット情報『ビューティフル』は、「ユーヴ・ガッタ・フレンド」「ナチュラル・ウーマン」などで知られるアメリカのシンガー・ソングライター、キャロル・キングの半生を、キャロルや同時代の作曲家らが生み出した60年代アメリカ音楽のヒットソングで綴るミュージカル。2013年にブロードウェイで初演され、トニー賞をはじめ、グラミー賞、オリヴィエ賞などを受賞した。日本では今回が初演となる。この日の公開稽古には、キャロル役の水樹と平原に加え、中川晃教、伊礼彼方、ソニン、武田真治らが参加。劇中歌5曲を含む5シーンが披露された。水樹は「ワン・ファイン・デイ」を情感豊かに歌うとともに、伊礼彼方扮する夫、ジェリー・ゴフィンとの間に少しずつ亀裂が入っていく様子を繊細に表現。平原は夫と別れたのち、傷心を乗り越え名曲「ナチュラル・ウーマン」を生み出すシーンを力強く歌い上げた。稽古披露後の会見では、水樹は「キャロルは常人には耐えられないひどい環境に置かれることもあるのですが、どんな時でも笑い飛ばして、諦めない心で前に進んでいくエネルギーがある。キャロル・キングのすごさを改めて感じています」と現在の心境を語り、平原は「彼女はどんなに傷つけられても常に愛を配っている。“すべての人に愛を”というのが、私がキャロルを演じる上でのテーマ。彼女の人間的魅力が出るような演技をしたい」と意気込みを語った。キャロルの友人である作曲家、バリー・マンを演じる中川晃教は「昨年自分が主演したミュージカル『ジャージー・ボーイズ』でも“音楽が主役”のミュージカルが熱いと再認識したが、(同じ流れを汲む)『ビューティフル』で、水樹さんと平原さんがキャロルを演じる。多岐に渡って活躍するおふたりがこのミュージカルシーンで花開こうとしているところに自分も携われることに縁を感じる」と熱弁。ジェリー役の伊礼は「ひと言お伝えしたいんですが…浮気はよくないです。浮気をしているのは(役の上であって)けして僕じゃないのですが、水樹さんと平原さんからすごい白い目で見られる」と語り、笑いを誘っていた。公演は7月26日(水)から8月26日(土)まで、東京・帝国劇場にて。チケットは発売中。
2017年07月06日赤井ヒガサの人気コミックを舞台化する『王室教師ハイネ -THE MUSICAL-』のメインビジュアルが公開された。舞台『王室教師ハイネ -THE MUSICAL-』チケット情報見目麗しいがひと癖もふた癖もある4人の王子と、その教育係に任命された王室教師ハイネの物語。舞台版は6月20日に最終回を迎えたTVアニメ版に続き9月に上演される。ハイネと4王子役はアニメ版で声を担当した俳優がそのまま続投。ハイネ役に植田圭輔、4人の王子に安里勇哉、安達勇人、廣瀬大介、蒼井翔太が出演する。公開されたメインビジュアルは原作コミックス第1巻(スクエア・エニックス刊)のカラーイラストを完全再現。美麗な世界観を垣間見ることができる。公演は9月7日(木)から10日(日)まで東京・Zeppブルーシアター六本木、9月16日(土)から18日(月・祝)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて。チケットの一般発売は7月29日(土)午前10時より。
2017年07月05日今年のコンサートは、『美輪明宏の世界~シャンソンとおしゃべり~』と題して開かれる。フランス生まれのシャンソンは、これまでも、自作の曲、日本の抒情歌などとともに長く歌ってきたもの。しかし、今こそ、その歌が持つ魅力を届けたいのだという。新しいプログラムに込めた思いを美輪明宏に聞いた。美輪明宏の世界 チケット情報美輪が今年のコンサートで全面的にシャンソンを取り上げたいと思ったのは、危機感が発端だった。「最近は若い方の中に“シャンソン”という言葉自体がわからないという人がいらして、化粧品か何かのことだと思っていたとおっしゃるので(笑)、私、シャンソンはそこまで衰退しているのかと唖然としたんです」。国立音楽大学付属高校を中退後、16歳にしてプロの歌手として活動を始めたときから、クラシック、タンゴ、ラテン、ジャズと、様々な音楽を歌ってきた美輪だが、中でもシャンソンは得意とするところ。甘い愛を歌う魅惑的なもの、失恋を歌うセンチメンタルなもの、人生の現実的な問題を歌うリアリスティックなものなど、シャンソンはいくつものジャンルに分かれており、歌われるその世界の豊かさに、美輪の表現力が活かされるのだ。「私のコンサートに来ると映画を何本も観たような気分になると言ってくださる方もいらっしゃいます。お芝居のようにいろんな物語や感情が描かれた、こういうドラマチックな大人の歌もあるのよと、聞いたことのない方にもぜひ知っていただきたいんです」さらに美輪には、かつて自身が歌ってきた場所の熱を届けたいという思いもある。たとえば、江戸川乱歩や三島由紀夫、川端康成などが集った伝説のライブハウス“銀巴里”。「ジャン=ポール・サルトルやボーヴォワール、ジャン・コクトーが集まったパリのカフェのように、銀巴里を文化の発信地にしていったんです。その後の渋谷の“ジァンジァン”もそうでしたが、そういう大人のロマンを楽しめる場所と時間を、せめてこのコンサートで再現できたらなと思っています」。原曲の壮大さを伝える美輪ならではの「愛の讃歌」ももちろん歌われる。ほか、最初の大ヒットとなった「メケメケ」、美輪の訳詞がより深く人間の生き方を問う「愛する権利」など、珠玉のシャンソンが並ぶ予定だ。合間のおしゃべりでは、シャンソンにまつわる話も聞ける。「いろんなケースの人生の歌がありますから、身の上相談をするつもりで来ていただければなと思います(笑)」と冗談めかしたが、美輪は歌でもまた、生きる力をくれる。公演は9月8日(金)から24日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウス、10月13日(金)愛知県芸術劇場 大ホールにて。チケット発売中。取材・文:大内弓子※曲目は変更になる場合がございます。ご了承くださいませ。
2017年07月05日1996年のオフ・ブロードウェイの開幕以降、世界で愛され続けるミュージカル『RENT』が7月2日、東京・シアタークリエで開幕した。出演は村井良大、堂珍嘉邦・ユナク(Wキャスト)ら。初日に先駆け1日には囲み取材が開催され、出演者が意気込みを語った。舞台「RENT」チケット情報20世紀末のNYを舞台に、貧困やHIV感染症、薬物依存症、同性愛といった様々な困難や問題に直面しつつ、夢を掴もうと日々を懸命に生きる若者たちの姿が、キャッチーなロックサウンドで綴られていく青春群像劇。2年ぶりとなる今回の公演は、連日満員御礼の熱狂となった2015年公演のキャストが多数続投するとともに、新たなキャストも加わり、充実のステージとなっている。ビデオ・アーティストであり、物語の語り部でもあるマーク役は前回に続き村井良大。「『RENT』がさらにパワーアップして帰ってきました。人生を変える作品と言っても過言ではないくらい、とても素敵なパワーに満ち溢れています。前回50回くらい本番をやったのに、新キャストのパワーをもらって、毎日新鮮に、新しい『RENT』が出来ています」と自信の表情。マークの友人であり引きこもりのロッカー、ロジャーを演じる堂珍嘉邦とユナクも「新しいキャストも含めて、絶対に2年前より確実に深まっているものが、それぞれにある」(堂珍)、「緊張感も違うし、もっといい芝居を見せられる自信がある」(ユナク)と、前回を超える作品が出来たとアピール。同じく続投組、ドラァグクイーンのエンジェルを演じる平間壮一(丘山晴己とWキャスト)も「『RENT』というのは、自分の人生がすごく表れる作品。2年という月日はすごく長く、それぞれに色々なことを経験しているので、みんなの芝居を観て「あ、深まったな」と感じた」と話した。出演はほかに青野紗穂・ジェニファー(Wキャスト)、光永泰一朗、上木彩矢・紗羅マリー(Wキャスト)、宮本美季、NALAWら。公演は8月6日(日)まで、東京・シアタークリエにて。その後、愛知、大阪、福岡でも上演される。チケットは発売中。
2017年07月04日昨年、入団9年目の早さで宝塚歌劇団月組のトップスターに就任した珠城(たまき)りょう。鬼才・小池修一郎が手掛ける浪漫活劇『All for One ~ダルタニアンと太陽王~』では恵まれた体躯と運動神経を活かし、無敵のヒーロー・ダルタニアン役に挑む。「立ち回りが好きなのでお稽古が楽しいです」と明るく意欲的な姿が頼もしい。宝塚歌劇月組『All for One ~ダルタニアンと太陽王~』チケット情報デュマの「三銃士」をベースに新たな着想で描く娯楽大作。銃士隊のダルタニアンはバレエに熱中気味のルイ14世に剣術を教えているが、ある日ブルボン王家を揺るがす王の秘密を知ることになる。「この作品は小池先生の完全なオリジナルです。これほどコメディ要素が強いとは想像していませんでした(笑)。周りのキャラクターが濃くて個性豊か。ダルタニアンは純粋で真っ直ぐな青年なので、シンプルに演じるほど際立つかなと思います」と話す。トップ娘役の愛希(まなき)れいかがルイ14世に扮するのも話題だが、「私はいつも通り役を演じるだけですんなり作品に入り込めています。愛希は元男役ということも活きているし、国王陛下だけどお茶目な憎めないキャラクターとして描かれているので、お客様にも楽しんでいただけるはず」と笑顔を見せる。また三銃士との信頼関係は冒頭から出来上がっている設定ゆえ、「チームワークの良さをきちんと見せたい」と意気込む。敵対するベルナルド役は雪組から組替えとなった月城かなと。「彼女も私と同じですごく芝居が好きなのを感じます。後半のがっつりとした絡みが楽しみです」と語る。立ち回りは中世の時代の長い剣・レイピアを使ったものから宮廷剣術まで幅広い。体力勝負とも言えるが、学生時代水泳部などに所属し活躍していた珠城。「体育会系でストイックなところがあります。相手の戦法を自分なりに分析し、校内マラソン大会で1位を取り返したことも(笑)。前向きな精神はスポーツで養いました」と。その姿は「芯のぶれない強さがある」というダルタニアン役に通じる。「この1年、私をトップとして受け入れてくれる人たちがいたから、伸び伸びとさせていただけました。『グランドホテル』のときより肩の力が抜けて、舞台を作るのがどんどん楽しくなっています。私が真剣に作品に取り組んでいる姿を見せるのが大事だと思います」と話す若きリーダー。この夏、舞台人としてさらに大きく飛躍する。公演は兵庫・宝塚大劇場にて7月14日(金)から8月14日(月)まで上演。チケットは発売中。東京宝塚劇場公演は9月1日(金)から10月8日(日)まで。7月30日(日)より一般発売が開始される。取材・文:小野寺亜紀
2017年07月03日初演から37年目を迎える名作ミュージカル『ピーターパン』の記者会見が、6月29日、都内にて開かれ、演出の藤田俊太郎と主要キャストが登壇した。10代目ピーターパンに抜擢されたのは、若干13歳の新星、吉柳咲良。さらに共演者の鶴見辰吾、神田沙也加、石井正則、宮澤佐江、入絵加奈子、久保田磨希が顔をそろえ、華やかな舞台衣裳も披露した。ミュージカル『ピーターパン』チケット情報会見の冒頭を飾ったのは、ピーターが歌う、本作を代表するミュージカル・ナンバー「アイム・フライング」。吉柳ののびやかで力強い歌声に、抽選で招待された一般オーディエンスからも大きな拍手が送られた。演出の藤田は、読売演劇大賞優秀演出家賞に輝くなど、年々その評価を高めている若手注目株。「演出家として『ピーターパン』を手がけることは夢でした」と切り出すと、「ファンタジーでありつつきちんと現代性のある作品をつくりたい」と現段階のビジョンを明かした。近ごろ将棋界やスポーツ界など中学生の活躍が目覚ましいが、演劇界における期待の星がこの吉柳。「13歳の今の自分にしかできないピーターを演じたい」としっかりとした口調で語ると、9年ぶりにフック船長役にカムバックした鶴見も、「52歳にしかできないフック船長を演じたい」と続き、会場の笑いを誘った。鶴見と同じく『ピーターパン』の世界に戻ってきたのは神田。6年ぶりのウェンディ役に、「とても思い入れのある役であり作品なので、新たな装いのもとでまたやらせていただけるのはすごく嬉しいです」と顔をほころばせる。また誇り高きインディアンの酋長の娘、タイガー・リリーを演じるのは宮澤。「こんなに短いスカートはアイドル時代にも履いたことがない」と照れつつも、「タイガー・リリーの凛々しい部分、強気な部分がカッコよかったと伝わるよう、役になりきって頑張りたい」と力強く語った。さらに石井、入江、久保田といったベテラン陣が、しっかりと脇を固める藤田演出版の『ピーターパン』。なかでも久保田演じるライザの存在は、このリニューアルのキーパーソンとなりそうだ。というのもライザは、現実世界であるダーリング邸とネバーランドを行き来できる唯一の大人という設定。藤田は「ライザがふたつの世界の架け橋になるんじゃないか。それが今回の演出の第一歩になっています」と話した。子供はもちろん、大人も楽しめる本格ミュージカル。今回はどんな新しい冒険を見せてくれるのか。夏の開演が待ち遠しい。ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』は7月24日(月)から8月3日(木)まで東京国際フォーラム ホールCにて上演。取材・文:野上瑠美子
2017年06月30日上海歌舞団による舞劇「朱鷺」の世界観を垣間見ることができる動画が公開中だ。同作は2015年に全国30会場12万人を動員、今夏には再演が東京、名古屋、大阪で決定している。舞劇「朱鷺」チケット情報地上に舞い降りた朱鷺の精ジエと青年ジュンが1000年の年月の間、時空を越え、国境を越え、心を通わせる儚くも美しい愛の物語。メインダンサーの朱潔静(ジュ・ジエジン)と王佳俊(ワン・ジヤジュン)は、共に中国で映画・テレビドラマ、舞台、オペラなどの分野で活躍。「国家一級演員」の称号を持つダンサーだ。このふたりを擁する上海歌舞団は中国の伝統舞踊に、クラシックバレエやモダンダンスを取り入れて、多彩な踊りの要素を融合する独創性に富んだ舞台作品を創作。アメリカ、カナダをはじめ海外でも公演を重ね、世界的に評価されているカンパニーだ。公演は8月29日(火)・30日(水)東京・Bunkamura オーチャードホール、9月2日(土)・3日(日)愛知県芸術劇場 大ホール、9月6日(水)から10日(日)まで東京国際フォーラム ホールC、9月13日(水)・14日(木)大阪・オリックス劇場にて。
2017年06月29日「ダンス×演劇×J-POP」をコンセプトに、ユーモアと感動あふれる独自の世界を展開する、男性だけのジャズダンスエンターテイメント集団「梅棒」。彼らがダンスヴォーカルグループ・w-inds.の千葉涼平らをゲストに迎えて送る第7回公演『ピカイチ!』が6月23日、東京・Zeppブルーシアター六本木で開幕。初日に先立ってゲネプロが行われた。梅棒 チケット情報物語の舞台は「青梅英雄学園」。そう、今作は、青春をテーマにし続けてきた梅棒にはうってつけの学園モノなのだ。オープニングでの校長(伊藤今人)のトークに続いて、舞台は朝の登校風景に。個性豊かな生徒達が学校にやって来る。野球部員、かっこつけメンズ、コギャル、オタク……。中でも目を引くのが、溌剌とした女の子、浅香尚子(吉川友)。彼女はクラスのアイドルだ。そんな浅香に、生徒のひとり、道玄坂光徳(鶴野輝一)は思いを寄せ、彼女もまんざらではない様子。お色気たっぷりの蝉時雨貂子先生(suzuyaka)と熱血体育教師の蒙古斑彦摩呂先生(一色洋平)が温かく見守る中、学園には賑やかながらも平和な時間が流れていた。ところが、学園の日常は、転校生、豪徳寺孟(千葉涼平)が現れたことで一変する。容姿端麗、頭脳明晰にして、強烈なスター性と色香を振りまく豪徳寺。誰もが彼を前にすると理性を失ってしまう。実は彼は、ある恨みを隠し持って学園を訪れていた……。さて、道玄坂は浅香から、生徒会長選挙に立候補して当選したら、浅香のあるものをもらう約束を取りつける。ところが、これを盗み聞きした生徒が周囲に言いふらした結果、そのあるものを目当てに、男子達が次から次に立候補。学園は仁義なき戦いに突入する。票を巡り、様々な交渉や駆け引きを行う生徒達。さらに、浅香の荷物を漁る謎の覆面男、そして学校には妖怪たちまで姿を現し、学園はかつてない大混乱に見舞われる。果たして、熾烈を極める選挙戦の行方は、覆面男の正体は、恋の結末は、いかに??梅棒と言えば、毎回、誰もが知るJ-POPや懐メロなどの名曲を独自のストーリーに当てはめ、書き下ろし楽曲のようなマッチングを生み出すのも特長だが、今回もその趣向は健在。お馴染みの曲が、驚くようなシチュエーションに生かされるさまをご堪能いただきたい。さらに、魅惑の新曲も!そして勿論、最大の見どころはダンス。超絶的なオーラを放つ千葉、とある役としてパワフルな技を見せる魚地菜緒をはじめ、キャラクターそれぞれが、個性を活かした躍動感ある踊りを披露してくれる。梅雨の憂鬱も吹き飛ばす梅棒の快作を、お見逃しなく。公演は7月2日(日)まで。その後、大阪、福岡、愛知を巡演。取材・文:高橋彩子
2017年06月26日38年前、22歳の大竹しのぶが主演した伝説のミュージカル『にんじん』。原作はジュール・ルナール原作の児童文学。フランスの片田舎を舞台に、真っ赤な髪にそばかすだらけの顔をした少年“にんじん”と彼を取り巻く家族の物語だ。今回、その“にんじん”を演じるのは、初演時22歳で同役を演じた大竹しのぶ。この7月で還暦を迎える大竹が、38年のときを経て10代の少年役に挑む。このたび行なわれた製作発表記者会見には、大竹しのぶ、中山優馬、宇梶剛士、キムラ緑子らが出席。それぞれが公演への思いを語った。【チケット情報はこちら】主演を務める大竹は、「38年ぶりに、にんじんと出会えることになりました」とうれしそうな表情を見せる。「もう一度やりたい役は何か聞かれ、ぱっと浮かんだのがこのにんじんでした。演じたのは38年前ですが、歌も全部覚えていてそれだけ心に残っている作品。友人や兄弟に“わたしまた今度にんじんやることになったの”と話しても、みんな1回観ただけなのに歌詞や曲を覚えていて。そのくらい、音楽、芝居というのは人の心に生き続けるものなのだなと、改めて教えてくれた作品でもあります」と、38年ぶりの再演に熱い思いをにじませた。そして大竹とは初共演になる中山は、兄・フェリックス役を演じる。大竹との共演に心躍らせる半面、役を聞いたときは驚いたそう。「はじめてこのお話をいただいたとき、大竹さんと共演させていただけると聞き、やったー!と思っていたら、大竹さんの兄役だと言われ、何かの間違いじゃないのかな?というところからはじまりました(笑)。台本も読ませていただきましたが、自分にはまだまだ足りないところがあるので、稽古場で色々つかんで、一生懸命演じていきたいと思います。」と、真摯に決意を口にした。ミュージカル初出演となる宇梶は父親役を演じる。「原作も読みましたが、どうも名付け親以外はそんなにいい人が出てこない(笑)。個人が悪いとかではなく、閉塞した状況の中で人間がもがきながら生きている話だなぁと思いました。様々な葛藤が書かれていますが、観たみなさんが我がことのように感じていただけたら良いのかなと」と語った。母親役のキムラ緑子は、オファーが来た際にんじんを大好きな少女の役だと思い、14~16歳を演じられると楽しみにしていたという。「蓋を開けてみると『あっ、いじめるほうだったんですね』と。困ったなぁ、という感じです」と笑う。「わたしは厳しく苛め抜く役ですが、必死で生き抜くにんじん少年の横に、しのぶさんと共に並ぶことができて幸せだなぁと思います」と話した。38年ぶりににんじんを演じる大竹はもちろん、豪華キャストが揃い、栗山民也の新演出と期待の高まる今作品。親子2世代で『にんじん』を読んだ方も多いはず。そんな家族揃っての観劇にもうれしい子ども料金も設けられているほか、桟敷席の販売も。夏休みには家族揃って“にんじん”に会いに行こう。公演は8月1日(火)から8月27日(日)まで新橋演舞場、9月1日(金)から9月10日(日)まで大阪松竹座で上演。東京公演は6月25日(日)より一般発売開始。
2017年06月23日2015年に日本で世界初演の幕をあけ話題となった『デスノート THE MUSICAL』の待望の再演が、まもなく富山公演からスタートする。ブロードウェイで活躍するフランク・ワイルドホーンが音楽を手がけるなど世界トップレベルのクリエイターたちが制作、日本のほか韓国版も上演され、ワールドワイドな展開を見せているミュージカルだ。再演でも、主役の夜神月をWキャストで務める浦井健治と柿澤勇人、月を追い詰める探偵L役の小池徹平ら、当たり役だと好評を博したキャストたちが続投。初演を超える熱演に期待が高まる。6月中旬、その稽古場を取材した。『デスノート THE MUSICAL』チケット情報はこちら原作は言わずと知れた大ヒット漫画『DEATH NOTE』。名前を書かれた人間は40秒以内に死ぬ“死神のノート”を手に入れた高校生・夜神月が、正義の名の下、犯罪者たちを粛清していくという物語だ。この日は初の“通し稽古”(本番同様、冒頭から最後まで通して行う稽古)とのことで、稽古場にはピリッとした空気が流れている……かと思いきや、意外に和やかな雰囲気。些細な会話で俳優たちが笑い転げている。だが「はじめます」の声がかかるととたんに静かになり、熱を帯びたような空気になった。オープニングは、40秒からカウントダウンしていく時計の音と映像。この段階で映像が使われている稽古場というのも珍しいが、減っていく数字が不穏さを煽っていく。続いてシーンは月が通う高校の教室へ。現代日本の、ありふれた光景だ。月ら生徒たちと教師が、正義について議論している。ここで歌われる「正義はどこに」は作品を貫くテーマだ。「正義は社会の基準」という教師に対し、月は「正義は権力の道具でしかない」と反論する。のちに自らを正義と信じ暴走していく月の危うい信念が伝わると同時に、議論を尻目に携帯をいじっている同級生たちの姿なども興味深い。この日の月は浦井健治。落ち着いた声のトーンと余裕のある表情で月の頭脳明晰さが伝わってくるが、一方ですでに少し狂気をも感じる。そして物語が進むにつれ迫力は増していき、カッとした表情や焦り、怒りを隠した笑顔など、その細かい表現から目が離せない。L役の小池徹平も熱演だ。物を指先でつまむ独特の動作や前屈みの姿勢などが印象的な特異なキャラクターだが、こちらは抑えた演技の中で、確実にこの役柄を体現。死神レム役の濱田めぐみの情感のこもった歌、弥海砂を演じる唯月ふうかのアイドルっぷりなども相変わらずの安定感。そしてこの日の稽古場で何よりインパクトがあったのは、今回初参加で死神リュークを演じる石井一孝。うっすら死神メイクをしているとはいえ、その眼ヂカラ、大きな口、動きまで原作のイメージ通り! まるでCGのようだ。さらに迫力の歌声にも度肝を抜かれること間違いナシ。石井本人も楽しそうで、その姿がそのまま、月ら人間たちの行動を面白がるリュークそのものだった。カンパニー全体のまとまりやハーモニーもよく、総じて初演よりぐっと迫力が増している印象。公演は6月24日(土)に富山オーバード・ホールで開幕。台湾、大坂公演を経て、9月には東京・新国立劇場 中劇場で上演される。
2017年06月22日1987年6月17日に帝国劇場で幕を開けたミュージカル『レ・ミゼラブル』日本公演が、6月17日に30周年記念日を迎えた。“日本初演30周年記念公演”と銘打つ今年の公演だが、6月11日からはスペシャルウィークとして、本編の上演後、歴代キャストが登壇するスペシャルカーテンコールを開催。中でもまさに30歳の誕生日となったこの日は、“超スペシャル版”だ。初演のジャン・バルジャン役の鹿賀丈史をはじめ、約150名の歴代・現役キャストが登壇、さらに本作の産みの親であるアラン・ブーブリル(オリジナルフランス版脚本)とクロード=ミッシェル・シェーンベルク(作曲)も駆けつけ、この記念日を祝った。チケット情報はこちらスペシャル・カーテンコールは、この日登壇した現役・歴代キャスト150名による、1幕ラストのビッグナンバー『ワン・デイ・モア』からスタート。オリジナルキャストである鹿賀が最初のワンコーラスを歌った時点で、客席からはため息と歓声の入り混じったような声が起きる。その後も、次々と新旧のキャストが歌い継ぐと同時に、大スクリーンにその顔が映し出されると、その都度大きな拍手が沸き起こった。『レ・ミゼラブル』は“スターを作るミュージカル”と称されているが、本作でデビューを飾り初演時にアンサンブルとして出演していた藤田朋子、2011年から子役として出演していた加藤清史郎らの姿も見える。初演の初日のステージにも立っていた鹿賀は「今日の舞台を拝見しましたが、初演時の勢いよりもっと元気のいい舞台でした。…が、これもすべて我々が始めたこと(笑)」と茶目っ気たっぷりに挨拶。同じく初演キャストである島田歌穂は「私にとって大きく人生を開いていただいた作品。生涯、感謝し続けます」と話す。2003年からバルジャンを演じていた別所哲也は「僕にとって俳優人生で大切な大切な役であり、作品」と言い、2007年からマリウス役を演じていた山崎育三郎は「僕は『レ・ミゼ』が大好きで、アタマから最後までひとりで歌えるくらい『レ・ミゼ』おたく」と作品愛を語った。さらに作曲家のシェーンベルク自らが弾くピアノにのせ、バルジャンのナンバー『彼を帰して』を新旧6名のバルジャン役者が歌うパフォーマンスに劇場は大きな感動で包まれ、ラストは誰もが知る名曲『民衆の歌』の大合唱へ。1時間超に及ぶスペシャルなカーテンコールは、熱い熱い拍手の中、幕を下ろした。終幕後に行われた囲み取材には、歴代バルジャン役の鹿賀、今井清隆、別所、初演キャストである島田、岩崎宏美、鳳蘭、現バルジャン役の福井晶一、ヤン・ジュンモ、吉原光夫が出席。鹿賀は「あっという間の30年。これだけ大掛かりなミュージカルを日本でやったのは、たぶん『レ・ミゼラブル』が初めてだった。その最初に作った時の気持ちを、初演の時には生まれていなかったような若い人たちが受け継いでくれている。今日は一緒に歌うことが出来て感動しました。非常にいい時間でした」と語っていた。公演は7月17日(月・祝)まで帝国劇場にて。福岡・大阪・愛知公演もあり。
2017年06月19日